(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ポリエステルからなる織物基本モノフィラメント
(51)【国際特許分類】
D01F 6/84 20060101AFI20240528BHJP
C08G 63/18 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
D01F6/84 301B
C08G63/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571935
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 FR2022050879
(87)【国際公開番号】W WO2022243621
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】517215467
【氏名又は名称】アンスティテュ ナシオナル デ シアンス アプリケ ドゥ リヨン
(71)【出願人】
【識別番号】505257028
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(71)【出願人】
【識別番号】507237956
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ジャン・モネ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100179925
【氏名又は名称】上出 真紀
(72)【発明者】
【氏名】シュター マルク
(72)【発明者】
【氏名】ルクレール クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ポロニ メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】コレラ マリオン
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ルソー アラン
【テーマコード(参考)】
4J029
4L035
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC02
4J029AC03
4J029AD01
4J029AE02
4J029BA03
4J029BD07A
4J029CF19
4J029HA01
4J029HB02
4J029JB131
4J029JB151
4J029JF321
4J029JF331
4J029JF341
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
4J029KF02
4J029KF07
4L035AA05
4L035BB33
4L035BB36
4L035BB89
4L035BB91
4L035EE01
4L035GG02
4L035GG05
4L035HH01
(57)【要約】
本発明は、240℃より高い又はそれに等しい融点Tm、2.5cN/texより大きい又はそれに等しい引張強度、及び10%より大きい又はそれに等しい破断時伸度を有する、ポリエステルからなる織物基本モノフィラメント、さらには、かかるモノフィラメントを製造するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のポリエステルからなる織物基本モノフィラメントであって、
【化1】
(式中、mは、エチレングリコールフランジカルボキシレート単位の総数を表し、nは、シクロヘキサンジメタノールフランジカルボキシレート単位の総数を表すが、nは、ゼロを含まず、m+n≧25である)
EGと表されるエチレングリコール単位とCHDMと表されるシクロヘキサンジメタノール単位のモル比が、0/100mol/mol~20/80mol/molの範囲であり、前記織物基本モノフィラメントが、240℃より高い又はそれに等しい融点Tm、2.5cN/texより大きい又はそれに等しい引張強度、及び10%より大きい又はそれに等しい破断時伸度を有する、
織物基本モノフィラメント。
【請求項2】
前記ポリエステルが、PMMA当量において45000g/molより大きい、優先的には55000g/molより大きい質量平均モル質量を有する、請求項1に記載の織物基本モノフィラメント。
【請求項3】
前記ポリエステルが、0.7dL/gより大きい、極めて優先的には0.8dL/gより大きい固有粘度を有する、請求項1及び2のいずれかに記載の織物基本モノフィラメント。
【請求項4】
3cN/texより大きい又はそれに等しい引張強度、及び15%より大きい又はそれに等しい破断時伸度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の織物基本モノフィラメント。
【請求項5】
14%未満、優先的には12%未満の収縮率を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の織物基本モノフィラメント。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の、少なくとも1種の織物基本モノフィラメントを含む布帛。
【請求項7】
ポリエステルからなる織物基本モノフィラメントを調製するための方法であって、
・一般式(II)の、RFCと表される、フランジカルボキシレート系の化合物を含む組成物のエステル交換のステップであって、
【化2】
(式中、Rは、1~3の炭素原子を含むアルキル基又は水素原子を表す)
組成物が、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールとの混合物から選択される少なくとも1種のグリコール化合物をさらに含み、
このエステル交換ステップを、180℃~280℃の範囲で、少なくとも1℃/分の傾斜で上昇する温度で、ルイス酸触媒の存在下で、グリコール化合物/RFCモル比が1.1~2の範囲、優先的には1.1~1.2の範囲で実施する、ステップと、
・260℃より高い又はそれに等しい温度及び100mbar未満の圧力で実施され、それによりポリエステルが得られる溶融重縮合ステップであって、前記1,4-シクロヘキサンジメタノールが、前記エステル交換ステップの組成物において、前記ポリエステルにおけるエチレングリコール単位とシクロヘキサンジメタノール単位のモル比が、前記重縮合ステップの結果、0/100mol/mol~20/80mol/molの範囲となるような含有量で存在する、溶融重縮合ステップと、
・前記ポリエステルを紡糸し、それにより織物基本モノフィラメントを得るステップと、
を順次含む、方法。
【請求項8】
前記エステル交換ステップにおいて、180℃~280℃の範囲で、+5℃/分未満又はそれに等しい傾斜で連続的に温度が増加する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エステル交換ステップで使用される前記触媒が、ハフニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、チタンテトライソプロポキシド及びチタンテトラブトキシドから選択され、優先的にはチタンテトラブトキシドである、請求項7及び8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記重縮合ステップを、270℃より高い又はそれに等しい、好ましくは280℃より高い又はそれに等しい温度で実施する、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記重縮合ステップを50mbar未満の圧力で実施する、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記重縮合ステップに続き、前記ポリエステルを、水と接触させることにより急冷し、次いで顆粒に切断し、次いで不活性雰囲気下にて80℃~100℃の範囲の温度、大気圧未満又はそれに等しい圧力で乾燥する、形成ステップを実施する、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記形成ステップに続き、結晶化ステップを、前記エステル交換ステップで使用される前記組成物がエチレングリコールを含まない場合は、120℃から前記ポリエステルの融点までの範囲、優先的には130℃~150℃の範囲の温度で、15分~2時間の範囲の時間、実施し、前記エステル交換ステップで使用される前記組成物がエチレングリコールを含む場合は、220℃から前記ポリエステルの融点までの範囲、優先的には220℃~230℃の範囲の温度で、10分~2時間の範囲の時間、実施し、続いて固相後縮合ステップを、200℃~260℃の範囲で上昇する温度で1~60時間の範囲の時間、実施する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記固相後縮合ステップを、210℃~260℃の範囲、優先的には220℃~250℃の範囲で上昇する温度で、24時間~72時間、優先的には10時間~60時間の範囲の時間、不活性ガス流の下、実施する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法の最後のステップとして実施される前記紡糸ステップを、前記ポリエステルの前記融点を上回る温度で実施し、ダイ入口での圧力が3.3から10.0MPaの間となるよう調整し、続いて延伸ステップを一連の延伸カップ上で行い、それぞれの延伸カップが40℃~160℃の範囲の温度であり、延伸比が3~6の範囲である、請求項7~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル織物糸の分野に関し、かかるポリエステル糸を生産するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、産業及び織物の分野において、とりわけ、衣料用繊維の製造において、多くの用途がある。それらの用途の多様性により、毎年多くの量が生産されている。したがって、再生可能な資源由来のモノマーからポリエステルを合成することは興味深く、そのようなポリエステルは、石油系ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)に取って代わることを可能にする技術的特徴を有する。
フランジカルボキシレートモノマーからポリエステルを製造することについて広範囲な研究がなされてきた。これらのモノマーは、糖などの天然資源から製造することができる。ポリエステルの合成は、エステル化ステップ及び重縮合ステップを典型的に含み、続いて、結晶化及び固体後縮合ステップを含んでもよく、それにより、ポリエステルの特性が調整される。得られるポリエステルの構造、したがって特徴は、これらの種々のステップをどのように実施するかに依存する。
例えば、特許出願、WO 2015/137805は、低い含有量のジエチレングリコール単位を有するポリエチレンフラノエート(PEF)系ポリエステル、及びその合成のための方法について記載する。この合成は、ジエチレングリコールの形成を抑制する化合物の存在下におけるエステル化、及び重縮合ステップをとりわけ含む。この抑制化合物の存在により、PEF中で得られるジエチレングリコール単位を、非常に低量にすることが可能になり、その結果、得られるポリエステルの融点及び結晶化度を改善する。
特許出願、WO 2013/055860は、ジカルボン酸単位及びグリコール単位を含み、そのガラス転移温度が、広範囲のポリエステル組成物に対して比較的安定しているポリエステルについて記載する。前記特許出願は、かかるポリエステルの、多くの潜在的使用、特には、繊維としての使用について言及しているが、前記繊維への、目的の機械的特性の付与の仕方については、教示がない。
【発明の概要】
【0003】
その研究を継続し、出願人は、とりわけ布帛の生産における使用に適している、高融点及び高強度を有する織物基本モノフィラメントを見出した。この織物基本モノフィラメントは、先行技術における公知の方法について改善された、ステップと特定の操作条件との組み合わせを介して得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明は、以下の実施形態のうち少なくとも1つに関する。
1)式(I)のポリエステルからなる織物基本モノフィラメントであって、
【化1】
(式中、mは、エチレングリコールフランジカルボキシレート単位の総数を表し、nは、シクロヘキサンジメタノールフランジカルボキシレート単位の総数を表すが、nは、ゼロを含まず、m+n≧25である)
EGと表されるエチレングリコール単位とCHDMと表されるシクロヘキサンジメタノール単位のモル比が、0/100mol/mol~20/80mol/molの範囲であり、前記織物基本モノフィラメントは、240℃より高い又はそれに等しい融点Tm、2.5cN/texより大きい又はそれに等しい引張強度、及び10%より大きい又はそれに等しい破断時伸度を有する、
織物基本モノフィラメント。
【0005】
2)フラン環が、ポリエステルの少なくとも25質量%を占める、先行する実施形態に記載の織物基本モノフィラメント。
3)ポリエステルが、PMMA当量において45000g/molより大きい、優先的には55000g/molより大きい質量平均モル質量を有する、先行する実施形態のいずれかに記載の織物基本モノフィラメント。
4)ポリエステルが、0.7dL/gより大きい、極めて優先的には0.8dL/gより大きい固有粘度を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の織物基本モノフィラメント。
5)ポリエステルが、Dと示される分散度を有し、2.5未満、好ましくは2.0未満の質量平均モル質量対数平均モル質量の比(D=Mw/Mn)を表す、先行する実施形態のいずれか1つに記載の織物基本モノフィラメント。
6)エチレングリコール単位とシクロヘキサンジメタノール単位のモル比が、4/96mol/mol~15/85mol/molの範囲である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の織物基本モノフィラメント。
【0006】
7)3cN/texより大きい又はそれに等しい引張強度、及び15%より大きい又はそれに等しい破断時伸度を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の織物基本モノフィラメント。
8)14%未満、優先的には12%未満の収縮率を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の織物基本モノフィラメント。
9)非金属接着剤組成物ベースコーティングの、1つ又は複数の層でコーティングされた、先行する実施形態のいずれか1つに記載の織物基本モノフィラメント。
10)先行する実施形態のいずれか1つに記載の、少なくとも1種の織物基本モノフィラメントを含む布帛。
11)ポリエステルからなる織物基本モノフィラメントを調製するための方法であって、
・一般式(II)の、RFCと表される、フランジカルボキシレート系の化合物を含む組成物のエステル交換のステップであって、
【0007】
【化2】
(式中、Rは、1~3の炭素原子を含むアルキル基又は水素原子を表す)
組成物は、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールとの混合物から選択される少なくとも1種のグリコール化合物をさらに含み、
このエステル交換ステップを、180℃~280℃の範囲で、少なくとも1℃/分の傾斜で上昇する温度で、ルイス酸触媒の存在下で、グリコール化合物/RFCモル比が1.1~2の範囲、優先的には1.1~1.2の範囲で実施するステップと、
・260℃より高い又はそれに等しい温度及び100mbar未満の圧力で実施され、それによりポリエステルが得られる溶融重縮合ステップであって、1,4-シクロヘキサンジメタノールが、エステル交換ステップの組成物において、ポリエステルにおけるエチレングリコール単位とシクロヘキサンジメタノール単位のモル比が、重縮合ステップの結果、0/100mol/mol~20/80mol/molの範囲となるような含有量で存在する、溶融重縮合ステップと、
・ポリエステルを紡糸し、それにより織物基本モノフィラメントを得るステップと、
を順次含む、方法。
【0008】
12)一般式(II)の化合物において、Rが、1~2の炭素原子を含むアルキル基を表す、先行する実施形態に記載の方法。
13)エステル交換ステップを、1~5時間、優先的には1~3時間の範囲の時間、実施する、実施形態11及び12のいずれかに記載の方法。
14)エステル交換ステップにおいて、180℃~280℃の範囲で、+5℃/分未満又はそれに等しい傾斜で連続的に温度が増加する、実施形態11~13のいずれか1つに記載の方法。
15)エステル交換ステップで使用される触媒が、ハフニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、チタンテトライソプロポキシド及びチタンテトラブトキシドから選択され、優先的にはチタンテトラブトキシドである、実施形態11~14のいずれか1つに記載の方法。
16)エステル交換ステップを、1.5~8bar、優先的には1500~8000mbarの範囲の圧力で実施する、実施形態11~15のいずれか1つに記載の方法。
【0009】
17)重縮合ステップを、270℃より高い又はそれに等しい、好ましくは280℃より高い又はそれに等しい温度で実施する、実施形態11~16のいずれか1つに記載の方法。
18)重縮合ステップを50mbar未満の圧力で実施する、実施形態11~17のいずれか1つに記載の方法。
19)重縮合ステップに続き、ポリエステルを、水と接触させることにより急冷し、次いで顆粒に切断し、次いで不活性雰囲気下にて80℃~100℃の範囲の温度、大気圧未満又はそれに等しい圧力で乾燥する、形成ステップを実施する、実施形態11~18のいずれか1つに記載の方法。
20)形成ステップに続き、結晶化ステップを、エステル交換ステップで使用される組成物がエチレングリコールを含まない場合は、120℃からポリエステルの融点までの範囲、優先的には130℃~150℃の範囲の温度で、15分~2時間の範囲の時間、実施し、エステル交換ステップで使用される組成物がエチレングリコールを含む場合は、220℃からポリエステルの融点までの範囲、優先的には220℃~230℃の範囲の温度で、10分~2時間の範囲の時間、実施し、続いて固相後縮合ステップを、200℃~260℃の範囲で上昇する温度で1~60時間の範囲の時間、実施する、先行する実施形態に記載の方法。
【0010】
21)固相後縮合ステップを、210℃~260℃の範囲、優先的には220℃~250℃の範囲で上昇する温度で、24時間~72時間、優先的には10時間~60時間の範囲の時間、不活性ガス流の下、実施する、先行する実施形態に記載の方法。
22)固相後縮合ステップの温度が、2~10℃の範囲で段階的に上昇する、先行する実施形態に記載の方法。
23)前記方法の最後のステップとして実施される紡糸ステップを、ポリエステルの融点を上回る温度で実施し、ダイ入口での圧力が3.3から10.0MPaの間となるよう調整し、続いて延伸ステップを一連の延伸カップ(drawing cup)上で行い、それぞれの延伸カップが40℃~160℃の範囲の温度であり、延伸比が3~6の範囲である、実施形態11~22のいずれか1つに記載の方法。
24)紡糸及び延伸の段階を、中間の巻き取りなしで、連続的に実施する、先行する実施形態に記載の方法。
25)最初の延伸カップが、90℃~160℃、優先的には105℃~145℃の温度であり、最後の延伸カップの温度が、40~80℃の範囲であり、それにより、弛緩ステップを実施する、実施形態23及び24のいずれかに記載の方法。
26)最終巻き取り速度が、500から5000m/分の間、優先的には1000から3000m/分の間である、実施形態23~25のいずれか1つに記載の方法。
【0011】
定義
本明細書で言及した炭素を含む化合物は、化石又はバイオベース源であってよい。後者のケースでは、部分的に若しくは完全にバイオマス由来であってよく、又はバイオマス由来の再生可能な出発原料から得ることができる。ポリマー、可塑剤、充填剤、などが特に考えられる。
「aからbの間」という表現によって表される、あらゆる範囲の値は、aより大きくb未満の範囲である値の領域を示す一方(すなわち、境界a及びbは、除外される)、「a~b」という表現によって表される、あらゆる範囲の値は、aから最大bまでの範囲の値の領域を意味する(すなわち、厳密な境界a及びbは、包含される)。
明記されない限り、圧力は、絶対値で表される。
【0012】
本発明によるポリエステル
本発明は、式(I)のポリエステルからなる織物基本モノフィラメントに関し、
【化3】
エチレングリコール(EGと示される)及びシクロヘキサンジメタノール(CHDMと示される)モノマーの縮合に由来し、図(II)に示され、
【0013】
【化4】
(式中、
mは、エチレングリコールフランジカルボキシレート単位の総数を示し、nは、シクロヘキサンジメタノールフランジカルボキシレート単位の総数を示すが、nは、ゼロを含まず、m+n≧25であり、優先的には、m+n≧35である)
エチレングリコール単位とシクロヘキサンジメタノール単位(CHDM)のモル比が、0/100mol/mol~20/80mol/molの範囲であり、前記織物基本モノフィラメントは、240℃より高い、優先的には245℃より高い又はそれに等しい融点Tm、2.5cN/texより大きい又はそれに等しい、優先的には3cN/texより大きい又はそれに等しい引張強度、及び10%より大きい又はそれに等しい破断時伸度、を有する。
本発明による織物基本モノフィラメントのポリエステルは、エチレングリコール単位を含んでも、含まなくてもよい。ポリエステルが、エチレングリコール単位を含まないケースでは、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレン2,5-フランジカルボキシレート)であり、PCFと表される。ポリエステルが、エチレングリコール単位を含むケースでは、ポリ(エチレン-co-1,4-シクロヘキサンジメチレン2,5-フランジカルボキシレート)であり、PECFと表され、「co」は、コポリマーを意味する。
【0014】
フラン環は、優先的には、本発明による織物基本モノフィラメントのポリエステルの少なくとも25質量%を占める。
本発明による織物基本モノフィラメントのポリエステルの質量平均モル質量を、本明細書に記載の仕方でポリエステルを造粒した後に測定したが、優先的には、PMMA当量において45000g/molより大きい、極めて優先的には55000g/molより大きい質量平均モル質量である。
本発明による織物基本モノフィラメントのポリエステルは、本明細書に記載の仕方でポリエステルを造粒した後に測定したが、優先的には0.7dL/gより大きい、極めて優先的には0.8dL/gより大きい固有粘度を有する。
本発明による織物基本モノフィラメントのポリエステルは優先的には、本明細書に記載の仕方でポリエステルを造粒した後に測定したが、Dと表される、分散度を有し、2.5未満、好ましくは2.0未満の質量平均モル質量対数平均モル質量の比を表す。
本発明によるポリエステルの融解エンタルピーは、優先的には、40J/gより大きい。
【0015】
本発明によれば、ポリエステルにおけるエチレングリコール単位とシクロヘキサンジメタノール単位のモル比は、0/100mol/mol~20/80mol/molの範囲である。かかる比は、ポリエステルの他の特徴と組み合わされ、とりわけ有用な熱機械的特性をモノフィラメントに得ることが可能になるが、例えば、融点、引張強度及び破断時伸度である。好ましくは、ポリエステルは、PECFであり、エチレングリコール単位とシクロヘキサンジメタノール単位のモル比は、4/96mol/mol~15/85mol/molの範囲である。
好ましくは、織物基本モノフィラメントは、14%未満、優先的には12%未満の収縮率を有し、先行技術のPEFフィラメントの収縮率より低く、なんらかの熱凝固ステップの前は、一般的に15%~30%程度である。
「基本モノフィラメント」という用語は、その断面の最大寸法の、少なくとも10倍より大きい長さを有する要素を指し、前記断面の形状、円形、楕円形、長楕円形、多角形、特に長方形若しくは正方形、又はオーバルに関係ない。長方形の断面のケースには、モノフィラメントは、帯の形状を有する。
織物基本モノフィラメントは、1つ又は複数の、非金属接着剤組成物ベースコーティングの層でコーティングしてもよい。この織物基本モノフィラメントは、例えば、溶融紡糸、溶液紡糸又はゲル紡糸によって得られる。それぞれの織物基本モノフィラメントは、例えば、2μm~100μmの範囲の直径を有する実質的に円形の断面を有する。
【0016】
織物糸の要素は、上記に定義したような複数の織物基本モノフィラメントの集合体であり得、ストランドと呼ばれることもある。ストランドは、好ましくは、10本より多くの織物基本モノフィラメント、好ましくは100本より多くの織物基本モノフィラメント、より優先的には500本より多くの織物基本モノフィラメントを含む。
織物糸の要素はさらに、上記に定義したような複数のストランドの集合体でもあり得る。この集合体は、撚り合わせステップ、又は撚り合わせステップの連続によって、作ることができる。この集合体を、本発明のフィラメントの要素単独で構成してよく、又は、このように異種混合の集合体の構成要素となるこれらのフィラメントで部分的に構成してもよい。
一実施形態では、非金属接着剤組成物ベース層を、接着プライマーの層により形成し、例えば、エラストマーのマトリックスに対して、糸の要素の接着性の改善を可能にする。かかる接着プライマーは、ある特定の織物繊維(特に、ポリエステル、例えば、PET、アラミド繊維、アラミド/ナイロン繊維)のプレサイジング(pre-sizing)のために、当業者によって一般に使用されるものである。例えば、エポキシ系プライマー、特にポリグリセロールポリグリシジルエーテル系プライマーを使用してよい。ブロックイソシアネート系プライマーをさらに、使用してもよい。
【0017】
別の実施形態では、非金属接着剤組成物ベース層を、樹脂とエラストマーのラテックスとのベース層により形成する。RFL(レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス)系接着剤組成物について、と同時に、例えば、WO 2015/118041に記載されるもののような接着剤組成物についても言及がなされ得る。
さらに別の実施形態では、糸の要素は、接着プライマーの層でコーティングされてよく、接着プライマーのこの層自体は、樹脂とエラストマーのラテックスとのベース層によりコーティングされる。
布帛
本発明はさらに、本発明による少なくとも1種の織物基本モノフィラメントを含む布帛にも関する。
布帛の内部では、織物基本モノフィラメントが、優先的には、本発明による1種又は複数の織物基本モノフィラメントを含む、糸の形態で使用される。
本明細書で使用する場合、「布帛」という用語は、織ること、編むこと、ボンディングすること、又は当業者に公知のあらゆる他の手段により集合させた複数の糸からなる布を意味する。
【0018】
ポリエステルを合成するための本発明による方法
エステル交換ステップ
本発明による方法は、一般式(II)の、RFCと表される、フランジカルボキシレート系の化合物を含む組成物のエステル交換のステップを含み、
【化5】
(式中、
Rは、1~3の炭素原子又は水素原子を含むアルキル基を表す)、
組成物が、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールとの混合物から選択される少なくとも1種のグリコール化合物をさらに含み、
このエステル交換ステップを、180℃~280℃の範囲で少なくとも1℃/分の傾斜で上昇する温度で、ルイス酸触媒の存在下で、グリコール化合物/RFCモル比が1.1~2の範囲で、優先的には1.1~1.2の範囲で実施する。
【0019】
「エステル交換」という用語は、本明細書においては、Rが1~3の炭素原子を含むアルキル基を表す場合は、エステル交換を、Rが水素原子を表す場合は、エステル化の両方を意味するのに使用する。
エステル交換ステップは、一般式(I)のオリゴマーの製造を可能にし、組成物が、エチレングリコールを含まない場合(したがって、m=0)、これらのオリゴマーは、1,4-シクロヘキサンジメチレン2,5-フランジカルボキシレートオリゴマーであり、又は、組成物が、エチレングリコールを含む場合、エチレン-co-1,4-シクロヘキサンジメチレン2,5-フランジカルボキシレートオリゴマーである。このステップについての操作条件は、得られるポリエステルの構造に決定的な影響を有する。このステップで使用される組成物において、グリコール化合物/RFCモル比は、1.1~2、優先的には1.1~1.2の範囲である。
好ましくは、Rは、1~2の炭素原子を含むアルキル基を独立して表す。次いで、一般式(II)の化合物は、ジメチル2,5-フランジカルボキシレート、又はジエチル2,5-フランジカルボキシレートに対応する。かかる化合物の使用により、得られるポリエステルの分散度Dを、有意に減少させることが可能になる。
【0020】
エステル交換ステップを、優先的には1~5時間、好ましくは1~3時間の範囲の時間、実施する。
本発明によれば、エステル交換ステップを、180℃~280℃の範囲で連続的に上昇する温度で実施する。「180℃~少なくとも280℃の範囲で連続的に上昇する」という用語は、エステル交換ステップが、180℃~280℃の範囲の温度で実施され、エステル交換ステップの間、操作温度が、降下することなく上昇することを意味する。上昇する温度プロファイルを使用することにより、最終生成物にとって、おそらく有害と考えられる、あらゆる早期の結晶化を回避することができる。
好ましい構成においては、180℃~280℃の範囲で、+5℃/分未満又はそれに等しい傾斜で連続的に温度が上昇する。最高温度を達成する場合、プラトーは、エステル交換の程度が80%を超えるまで維持され得る。
好ましくは、連続的に温度が上昇する場合のエステル交換ステップの温度の最低と最高との間の時間は、少なくとも30分に等しく、優先的には少なくとも45分に等しい。
エステル交換ステップを、優先的には、1.5~8barの範囲の圧力で実施する。好ましくは、本ステップを、不活性雰囲気下にて実施する。優先的には1500~8000mbarの範囲の圧力での操作により、エステル交換ステップを液体相において実施することが可能になる一方、同時に、反応生成物、例えば、アルコール(RがH以外の場合)、又は水(Rが水素原子の場合)を除去する。
【0021】
エステル交換ステップを、ルイス酸触媒の存在下で実施する。好ましくは、ルイス酸触媒は、ハフニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、チタンテトライソプロポキシド(TIS)及びチタンテトラブトキシド(TTB)から選択される。好ましくは、ルイス酸触媒は、チタンテトラブトキシド(TTB)である。
エステル交換ステップを、100~1000ppm、優先的には150~500ppm、極めて優先的には200~450ppmの範囲の触媒の含有量を用いて実施する。
言及された範囲にわたり段階的に上昇する温度で、ルイス酸触媒の存在下、とりわけ、例えば、チタンテトラブトキシド(TTB)の触媒の存在下である、これらの操作条件により、80%を超える、さらに90%を超えるエステル交換の程度を得ることが可能になり、得られるポリエステルプレポリマーに対するエステル交換終了時の、鎖の末端に位置するエステル官能基の量は、100meq/kg未満、好ましくは80meq/kg未満、好ましくは30meq/kg未満であり、一方、同時に、ある特定のオリゴマーの早期の結晶化を回避する。エステル交換の程度は、エステル交換ステップにより生じるアルコール(又はR=Hの場合、水)の質量を、製造されるアルコール(又はR=Hの場合、水)の理論的質量により除することによって決定されるが、それは、RFC化合物の全てのエステル官能基(又はR=Hの場合、酸性官能基)が反応したと仮定する場合である。
【0022】
重縮合ステップ
本発明による方法は、260℃より高い又はそれに等しい温度及び100mbar未満の圧力で実施され、それにより一般式(I)のポリエステルが得られる溶融重縮合ステップを含む。このステップの結果、m+nの合計は、優先的には25から200の間である。
エステル交換ステップの結果、圧力を、60から120分の間、優先的には80から100分の間の期間で、徐々に低下させ、重縮合ステップの操作圧力を達成する。圧力が400mbarを下回る、好ましくは300mbarを下回る、極めて好ましくは200mbarを下回る場合、反応媒体の温度は、重縮合ステップの初期の操作温度を達成するまで上昇する。重縮合ステップの初期の操作温度までの温度の増加は、15~45分の範囲の期間にわたって起こる。
低い操作圧力、及び特に減圧相の使用により、反応系に存在するエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールが徐々に除去され、ポリマーのモル質量の増加が可能になる。好ましくは、重縮合ステップを、270℃より高い又はそれに等しい、好ましくは280℃より高い又はそれに等しい温度で実施する。好ましくは、重縮合ステップを、50mbar未満の圧力で、好ましくは可能な限り低い、例えば、優先的には1mbar未満圧力で実施する。
【0023】
重縮合ステップを、優先的には10分~5時間、好ましくは10分~2時間の範囲の時間、実施する。
重縮合ステップは、100~1000ppm、優先的には150~500ppm、極めて優先的には200~450ppmの範囲の触媒の含有量を用いて実施する。触媒を、一般的に、エステル交換ステップの前に、反応系に添加する。必要であれば、重縮合ステップにおいて使用される触媒に、エステル交換ステップにおいて使用される触媒と同一の又は異なる触媒をつぎ足してよい。
このステップの結果得られるポリエステルは、重縮合物と呼ばれ、次いで、顆粒に、糸に、又は薄膜のいずれかに形成することができる。糸は、当業者に公知の通り、紡糸系を使用して形成し、それにより、そのまま使用する、又は糸の集合体として使用することが可能な糸を得てよい。糸は例えば、その糸を所望の直径まで延伸させることができる、一連の温度制御された糸巻きを通過させることにより形成してよい。薄膜への形成は、その重縮合物を一連の冷却ローラーに通し、それにより薄膜を形成することにより行うことができる。
【0024】
好ましくは、重縮合物を、水と接触させることにより急冷し、顆粒に切断する。接触させるこの急速な配置は、顆粒の凝集を制限する。造粒ステップを実施して、それにより、サイズが実質的に均質である顆粒を形成し、それにより、後続の操作を円滑にする。
この好ましい構成において、次いで80℃~100℃の範囲の温度で、大気圧以下で、不活性雰囲気中、例えば、窒素雰囲気中で、顆粒を乾燥させる。
重縮合ステップの結果得られるポリエステルは、部分的に結晶化している。
重縮合ステップの結果得られるポリエステルは、0.50dL/gより大きい又はそれに等しい固有粘度を有する。この固有粘度は、ポリエステルのモル質量に関係し、ポリエステルのモル質量が高くなれば、この固有粘度が比例して大きくなる。そのため、このステップの結果得られるポリエステルの質量平均モル質量は、PMMA当量で表されるが、優先的には35000g/molより大きい質量平均モル質量である。好ましくは、ポリエステルの固有粘度は、0.55dL/gより大きい又はそれに等しい。
【0025】
結晶化ステップ
ポリエステルの顆粒への形成に続き、結晶化ステップを、エステル交換ステップで使用される組成物がエチレングリコールを含まない場合は、120℃からポリエステルの融点までの範囲、優先的には130℃~150℃の範囲で15分~2時間続けて、実施することが可能であり、エステル交換ステップで使用される組成物がエチレングリコールを含む場合は、220℃からポリエステルの融点までの範囲、好ましくは220℃~230℃の範囲の温度で10分~2時間続けて実施することが可能である。
固体後縮合ステップ
得られるポリエステルの質量平均モル質量を増加させ、融点を上昇させるために、固体後縮合ステップを、結晶化ステップの後に実施するのが有用である。このステップは、不活性ガス流の下、優先的には窒素流の下、融点に近いがそれを下回る温度までポリエステルを加熱することにより実施する。
このようにして、固相後縮合ステップを、200℃~260℃の範囲で上昇する温度で1~60時間の範囲の時間、実施する。優先的には、固相後縮合ステップを、210℃~260℃の範囲、優先的には220℃~250℃の範囲で上昇する温度で、24時間~72時間、優先的には24時間~60時間の範囲の時間、実施する。好ましくは、固相後縮合ステップの温度は、2~10℃の範囲で段階的に上昇する。
【0026】
このステップを210℃~260℃の範囲、優先的には220℃~250℃の範囲で上昇する温度で実施することにより、好ましくは、ステップにおけるこの温度を、2~10℃、優先的には3~5℃の範囲で上昇させることにより、得られるポリエステルのモル質量の増加及び融点の上昇が最大化される。これにより、得られるポリエステルは、好ましくは240℃を上回る融点を有する。加えて、驚くべきことに、溶融帯、すなわち、溶融が観察される本書類の後部に記載される方法を使用するDSCにより得られるサーモグラム上で見ることができる温度範囲は、先行技術の方法を介して得られるポリエステルと比較して、有意に降下する。
固体後縮合ステップの結果、ポリエステルの固有粘度が増加し、好ましくは0.7dL/gより大きい又はそれに等しく、より好ましくは0.8dL/gより大きい又はそれに等しい。このように、ポリエステルの質量平均モル質量は、優先的には、PMMA当量において45000g/molより大きい。
Rが式(II)において水素原子以外である好ましいケースでは、ポリエステルは、低い分散度D、優先的には2.5未満の分散度Dを有する。
【0027】
形成ステップ
次いで、この後縮合ステップの結果得られるポリエステルは、とりわけ、糸へと形成することができる。
糸への形成を、ポリエステルの紡糸ステップを介して実施する。ポリエステルはポリエステルの融点を上回る温度で、押出スクリューに配置され、ダイ入口での圧力が3.3から10.0MPaの間となるよう調整される。ダイを出発する時、流れるポリエステルは、縦チャンバで冷却され、100~5000m/分、優先的には300~3000m/分、極めて優先的には300~500m/分の円周速度で回転する、ペアの室温のカップに受け入れられ、円周速度は、時間単位当たりの、カップの外側表面上で糸と接触する点の動く距離として理解される。次いで、延伸ステップを、一連の延伸カップ上で一列で実施し、それぞれの延伸カップは、105℃~145℃の範囲の温度であり、最後の延伸カップは、40℃~80℃の範囲の温度であり、延伸比は、当業者に公知の仕方で測定し、巻き取り前の最後のカップと最初の受け取りカップの速度の比は、厳密には3より大きく6まで、優先的には3.1~5、極めて優先的には3.5~5の範囲の速度の比で実施する。優先的には、最終巻き取り速度は、500から5000m/分の間、優先的には1000から3000m/分の間であるが、この速度は、最後のカップを出発するモノフィラメントの速度に対応する。単位フィラメントのサイズは、1~25dpf(デニールパーフィラメント)であり、1デニールは、9000mのフィラメント当たり1gに相当する。
【0028】
延伸比が、厳密には3より大きい、優先的には3.1より大きい又はそれに等しい、極めて優先的には3.5より大きいと、とりわけ有用な機械的特徴と、特に、引張強度とを有するモノフィラメントを得ることが可能になる。
形成ステップの結果、得られる糸は、2.5cN/texより大きい又はそれに等しい、優先的には3.0cN/tより大きい又はそれに等しい引張強度、及び10%より大きい又はそれに等しい破断時伸度、を有し、ASTM規格D885-03に従って測定される。
測定方法
収縮率
収縮率の測定は、織物基本モノフィラメントを、又は適切な場合には、織物基本モノフィラメントの集合体をマルチフィラメント糸の形態で配置することにより、0.5cN/texの張力を受けて、次いで、室温でフィラメントの初期長さL0を、予熱されたチャンバ中において、180℃で2分間経過した後の長さL1を測定することにより実施する。収縮率は、(L0-L1)/L0により計算され、%で表される。この測定により、織物の寸法安定性を定義することが可能になる。多くの用途のために、温度変化に曝された場合(使用中又は洗浄作業中)に、織物が変形しないことが重要である。この特定のケースでは、出願人は、得られた糸は、追加の熱設定操作(thermal setting operation)の前でさえ、12%未満、又はさらには10%未満の非常に低い収縮率を本来的に有したことを見出した。
【0029】
鎖の末端のエステル官能基の量
鎖の末端に位置するエステル官能基の量は、NMR分光法により測定される。
これを、アルコール鎖末端が見られるように、HFIP-d(重水素化したヘキサフルオロ-2-プロパノール)中、又はエステル鎖末端、カルボキシル基を除去した末端を調査し、DEG含有量を決定するため、25/75vol./vol.のTFA-d/CDCl
3の混合物中のいずれかで実施するが、この場合、TFA-dは、重水素化したトリフルオロ酢酸を示し、CDCl
3は、重水素化したクロロホルムを示す。
単位当たりの鎖末端のモル百分率は、以下の通り計算される。
【数1】
カルボキシル基を除去したシグナルは、本発明による方法において観察されず、そのため考慮しない。
【0030】
DEG単位の含有量の測定のための方法
DEG単位の量は、NMR分光法により測定される。
200の値をフランシグナルに与え、7.28から7.37ppmの間を積分し(100の繰り返し単位当たりのフランプロトンの数)、次いで、以下の式が適用される。
【数2】
このように、DEGモル%は、100の繰り返し単位当たりで表す。
ガラス転移温度、融点及び結晶化温度
ガラス転移温度Tg、融点Tm及び結晶化温度を、ガラス転移温度に関する、2020年3月のISO11357-2及び融点と結晶化エンタルピーに関する、2018年3月のISO11357-3の規格に従って、示差走査熱量測定法(DSC)により測定し、10K/分の推奨される温度の傾斜を適用する。
【0031】
Tg、低温と高温の結晶化温度、結晶化度及びTmを、以下のサイクルを使用して、DSCにより測定した。
30℃から280℃への増加、280℃で2分間の等温線に続き、280℃から30℃への温度の降下、次いで、30℃で2分間の等温線、最終的には、30℃から280℃への最終増加。速度は上昇も下降も常に10℃/分に設定された。
固有粘度(IV)
固有粘度(IV)を、溶液中、フェノール/オルト-ジクロロベンゼンの混合物中で測定する。
ポリマーを、フェノール/オルト-ジクロロベンゼンの等質量混合物において、5g/Lに等しい濃度Cで溶解する。溶解を促進させるために、溶媒と顆粒の混合物を、激しく撹拌しながら120℃で数分間配置する。最終的に、ウベローデ型毛細管粘度計内に導入する前に、0.45μmのPTFEろ紙を使用して、溶液をろ過する。
【0032】
固有粘度(IV)を25℃で測定し、以下の式を使用して計算する。
【数3】
Cは、100mL当たりのgによる、溶液の濃度であり、
比粘度及び相対粘度は、以下の式を介して計算可能である。
η(比粘度)=(η-η0)/η0
η(相対粘度)=η/η0
(式中、η0は、溶媒単独での粘度であり、ηは高分子溶液の粘度である)
ポリマーの結晶化度の測定
ポリマーの結晶化度は、式:((ΔHm試料-ΔHc試料)/ΔHm°)×100を介して決定し、ΔHm試料は、最初の増加における融解のエンタルピーであり、ΔHc試料は、最初の増加における低温結晶化のエンタルピーであり、ΔHm°は、PCFと示される、ポリ(シクロヘキサンジメチレンフラノエート)の融解の標準エンタルピーであり、文献によると、137J/gに等しい。
【0033】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定
SEC分析を、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中で実施した。溶液を、1mg/mLの濃度で調製した。分析に先立って、試料を0.45μmのPTFEろ紙を使用してろ過した。
分析する試料を、自動のサンプルインジェクタ(Sample Manager pFTN)及びWaters Acquity Advanced Polymer Chromatography(APC)ポンプを使用して、APC XTカラム内に導入する。オートサンプラー(Sample Manager pFTN)により、次の試料を取ることが可能になる。
PMMA当量でMnを表すためのSEC方法
モル質量を、示差屈折率検出器(Waters RI detector)を使用して評価し、我々のポリマーの相対モル質量を、35℃でのPMMA標準から作製された校正曲線から決定することができ、使用される溶出液は、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)である。
【実施例】
【0034】
(例1)
エステル交換ステップに、ジメチルフランジカルボキシレート(DMF)及び1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHMD)を含む組成物を、1.15に等しいグリコール/DMFのモル比で供給する。この組成物を、200ppmのチタンテトラブトキシド(TTB)触媒の存在下に配置する。
エステル交換ステップを、1.7barで、180℃~260℃の範囲の温度で、+4℃/分の温度の傾斜で、20分間実施し、最高温度を一度達成したら、エステル交換の程度が90%になるまでその温度を維持する。
このステップの結果、DEG単位の存在が検出できないプレポリマーが、得られる。エステル交換の程度は90%である。
次いで、反応媒体の圧力を徐々に低下させる一方、温度を260℃で維持する。圧力がPの値<200mbarを達成する場合、温度は、20分にわたり280℃まで増加する。1時間30分真空度を低下させた後、圧力を1mbar未満、温度を280℃で90分間維持する。
【0035】
重縮合ステップの結果、重縮合物を、水と接触させることにより急冷し、顆粒に切断する。
重縮合ステップの結果得られるPCFポリエステルは、以下の特徴を有する。
・固有粘度(IV):0.57dL/g
・積分されたEG/CHDMモル比:0/100mol/mol
・鎖の末端のエステル官能基の量:11meq/kg
・数平均モル質量Mn(PMMA当量):21100g/mol
・質量平均モル質量Mw(PMMA当量):40090g/mol
・分散度(D):1.9
・融点:271℃
次いで、得られる顆粒を5時間100℃で乾燥させ、次いで、それらを130℃の温度で30分間維持する結晶化ステップで処理する。
結晶化の結果、固体後縮合ステップを、窒素流の下、顆粒を225℃の温度で25時間維持することによって実施する。
このステップの結果得られるポリエステルは、以下の特徴を有する。
・固有粘度(IV):0.81dL/g
・ガラス転移温度:90.6℃
・融点:258.4℃
・融解熱:68.3J/g
・質量平均モル質量Mw(PMMA当量):60000g/mol
・数平均モル質量Mn(PMMA当量):27200g/mol
・分散度:2.2
【0036】
(例2)
エステル交換ステップに、ジメチルフランジカルボキシレート(DMF)、エチレングリコール(EG)及び1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHMD)を含む組成物を、1.2に等しいグリコール/DMFのモル比、及び15/85mol/molに等しいEG/CHDMモル比で供給する。この組成物を、200ppmのチタンテトラブトキシド(TTB)触媒の存在下に配置する。
エステル交換ステップを、6.8barで、180℃~260℃の範囲の温度で、+4℃/分の温度の傾斜で、20分間実施し、最高温度を一度達成したら、エステル交換の程度が90%になるまでその温度を維持する。
このステップの結果、DEG単位の存在が検出できないプレポリマーが、得られる。エステル交換の程度は90%を超えている。
次いで、反応媒体の圧力を徐々に低下させる一方、温度を260℃で維持する。圧力がPの値<200mbarを達成する場合、温度は、20分にわたり280℃まで増加する。1時間30分真空度を低下させた後、圧力を1mbar未満、温度を280℃で30分間維持する。
【0037】
重縮合ステップの結果、重縮合物を、水と接触させることにより急冷し、顆粒に切断する。
重縮合ステップの結果得られるPECFポリエステルは、以下の特徴を有する。
・固有粘度(IV):0.62dL/g
・積分されたEG/CHDMモル比:4/96mol/mol
・鎖の末端のエステル官能基の量:8meq/kg
・数平均モル質量Mn(PMMA当量):22000g/mol
・質量平均モル質量Mw(PMMA当量):39600g/mol
・分散度(D):1.8
・ガラス転移温度:81.4℃
・低温結晶化温度:130℃
・結晶化の熱:30J/g
・結晶化度:14%
・融点:265℃
・融解熱:49J/g
【0038】
次いで、得られる顆粒を5時間100℃で乾燥させ、次いで、それらを、220℃の温度で20分間維持する結晶化ステップで処理する。
結晶化の結果、固体後縮合ステップを、窒素流の下、顆粒を235℃の温度で20時間維持することによって実施する。
このステップの結果得られるポリエステルは、以下の特徴を有する。
・固有粘度(IV):0.83dL/g
・ガラス転移温度:89℃
・融点:257℃及び265℃、重縮合ステップの結果得られる集団の一部分は、消失していないことを示す。
・数平均モル質量Mn(PMMA当量):30000g/mol
・質量平均モル質量Mw(PMMA当量):63000g/mol
・分散度:2.1
・融解熱:65J/g
【0039】
(例3)
エステル交換ステップに、ジメチルフランジカルボキシレート(DMF)、エチレングリコール(EG)及び1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHMD)を含む組成物を、1.2に等しいグリコール/DMFのモル比、及び20/80mol/molに等しいEG/CHDMモル比で供給する。この組成物を、200ppmのチタンテトラブトキシド(TTB)触媒の存在下に配置する。
エステル交換ステップを、6.8barで、180℃~260℃の範囲の温度で、+4℃/分の温度の傾斜で、20分間実施し、最高温度を一度達成したら、エステル交換の程度が90%になるまでその温度を維持する。
このステップの結果、DEG単位の存在が検出できないプレポリマーが、得られる。エステル交換の程度は90%を超えている。
次いで、反応媒体の圧力を徐々に低下させる一方、温度を260℃で維持する。圧力がPの値<200mbarを達成する場合、温度は、20分にわたり280℃まで増加する。1時間30分真空度を低下させた後、圧力を1mbar未満、及び温度を280℃で10分間維持する。
【0040】
重縮合ステップの結果、重縮合物を、水と接触させることにより急冷し、顆粒に切断する。
重縮合ステップの結果得られるPECFポリエステルは、以下の特徴を有する。
・固有粘度(IV):0.61dL/g
・積分されたEG/CHDMモル比:8/92mol/mol
・鎖の末端のエステル官能基の量:17meq/kg
・数平均モル質量Mn(PMMA当量):22500g/mol
・質量平均モル質量Mw(PMMA当量):40500g/mol
・分散度(D):1.8
・ガラス転移温度:78℃
・融点:258℃
次いで、得られる顆粒を5時間100℃で乾燥させ、次いで、それらを220℃の温度で20分間維持する結晶化ステップで処理する。
【0041】
結晶化の結果、固体後縮合ステップを、窒素流の下、顆粒を232℃で14時間維持することによって実施する。
このステップの結果得られるポリエステルは、以下の特徴を有する。
・固有粘度(IV):0.83dL/g
・ガラス転移温度:87℃
・融点:249℃及び258℃、重縮合ステップの結果得られる集団の一部分は、消失していないことを示す。
・融解熱:57.5J/g
・数平均モル質量Mn:27700g/mol
・質量平均モル質量Mw:55400g/mol
・分散度:2.2
【0042】
(例4)
エステル交換ステップに、ジメチルフランジカルボキシレート(DMF)、エチレングリコール(EG)及び1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHMD)を含む組成物を、1.2に等しいグリコール/DMFのモル比、及び25/75mol/molに等しいEG/CHDMモル比で供給する。この組成物を、200ppmのチタンテトラブトキシド(TTB)触媒の存在下に配置する。
エステル交換ステップを、6.8barで、180℃~260℃の範囲の温度で、+4℃/分の温度の傾斜で、20分間実施し、最高温度を一度達成したら、エステル交換の程度が90%になるまでその温度を維持する。
このステップの結果、DEG単位の存在が検出できないプレポリマーが、得られる。エステル交換の程度は90%を超えている。
次いで、反応媒体の圧力を徐々に低下させる一方、温度を260℃で維持する。圧力がPの値<200mbarを達成する場合、温度は、20分にわたり280℃まで増加する。1時間30分真空度を低下させた後、ポリマーを直接キャストする。
重縮合ステップの結果、重縮合物を、水と接触させることにより急冷し、顆粒に切断する。
【0043】
重縮合ステップの結果得られるPECFポリエステルは、以下の特徴を有する。
・固有粘度(IV):0.61dL/g
・鎖の末端のエステル官能基の量:20meq/kg
・積分されたEG/CHDMモル比:14/86mol/mol
・数平均モル質量Mn(PMMA当量):22300g/mol
・質量平均モル質量Mw(PMMA当量):42370g/mol
・分散度(D):1.9
・ガラス転移温度:75℃
・融点:248℃
次いで、得られる顆粒を5時間100℃で乾燥させ、次いで、それらを220℃の温度で20分間維持する結晶化ステップで処理する。
【0044】
結晶化の結果、固体後縮合ステップを、窒素流の下、顆粒を225℃の温度で14時間維持することによって実施する。
このステップの結果得られるポリエステルは、以下の特徴を有する。
・固有粘度(IV):0.83dL/g
・ガラス転移温度:84℃
・融点:248℃
・融解熱:53.9J/g
・数平均モル質量Mn(PMMA当量):27600g/mol
・質量平均モル質量Mw(PMMA当量):58000g/mol
・分散度:2.1
【0045】
(例5)
例1~4において得られるポリエステルの紡糸
紡糸試験を、先行する例に記載される4種の材料を使用して実施した。
上記の例1、2、3及び4に記載される通り製造されたポリマーを、一列の押出紡糸によって、以下の方法の特徴を有する糸(モノフィラメント)の形態で形成する。
-ダイ温度が275℃~280℃である
-最初のペアの受け取りカップの速度が、1分当たり300から600mの間の範囲である
-延伸後の巻き取り速度が、1500から1800m/分の間である
-これら2つの速度間の比が、3~5の範囲の延伸比をもたらす
-最初の3つのペアのカップ温度は、105~145℃の範囲であり、4つ目のペアのカップ温度は、45℃~75℃の範囲である。
【0046】
様々な条件下で得られる結果を下の表1中にまとめる。例11、12、13を、例1に記載の通り作ったポリマーを使用して実施し、例21、22、23を、例2に記載のポリマーを使用して実施し、例31、32、33、34及び35を、例3に記載のポリマーを使用して実施し、例41、42、43及び44を、例4に記載のポリマーを使用して実施する。
【0047】
【0048】
上記の条件下で紡糸した後、ストランドを特徴づけする。結果を下の表2に提示する。
【表2】
【0049】
0/100、4/96、8/92及び14/86のEG/CHDMジオールのモル比を有する、4種の例のポリマーを使用して実施した試験について、3より大きい延伸比が適用される場合、2.5cN/texより大きい又はそれに等しい引張強度を有するマルチストランドを得ることが可能であることが分かる。これらの特徴により、高い融点(>240℃)を有し、織物産業において使用可能であり、良好な機械的強度、高い伸度及び低い熱収縮率という利点を有する、バイオソーサブルな(biosourceable)フランモノマーを含む、マルチフィラメントが得られるようになる。
【国際調査報告】