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特表2024-521742シリコンコーティングされた銅の製造方法、これを用いたシリコンコーティングされた酸化防止用銅及びこれを用いた半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】シリコンコーティングされた銅の製造方法、これを用いたシリコンコーティングされた酸化防止用銅及びこれを用いた半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20240528BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L21/88 Q
C23C14/14 A
C23C14/14 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572159
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 KR2022006804
(87)【国際公開番号】W WO2022250343
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0069338
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513281404
【氏名又は名称】プサン ナショナル ユニバーシティ インダストリー-ユニバーシティ コーポレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、セ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス ジェ
【テーマコード(参考)】
4K029
5F033
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029AA24
4K029AA25
4K029BA35
4K029BC01
4K029CA05
4K029EA01
4K029EA08
5F033KK03
5F033KK11
5F033MM11
5F033PP15
5F033QQ73
5F033VV07
5F033XX10
5F033XX20
5F033XX34
(57)【要約】
シリコンコーティングされた銅の製造方法、これを用いたシリコンコーティングされた酸化防止用銅及びこれを用いた半導体装置に関し、詳しくは、シリコン(Si)を蒸着してシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層の保護膜を形成して電気的な特性をそのまま保持しながら耐酸化性を有するシリコン(Si)でコーティングされた表面を含む銅に関する。本発明であるシリコンコーティングされた銅は、シリコン(Si)を蒸着させてシリコン(Si)-酸素(O)混合層が形成されたことを特徴とする。前記シリコンコーティングされた銅は、銅層(10)と、該銅層(10)上に、シリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)が混合されてなるサイコックス層(20)と、該サイコックス層(20)上に形成された第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層(30)と、該第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層(30)上に形成されたシリコン(Si)層(40)と、該シリコン(Si)層(40)上に形成された第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層(50)とで構成されることを特徴とする。本発明であるシリコンコーティングされた銅の製造方法は、シリコン(Si)をスパッタリング(sputtering)単一工程で蒸着させたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン(Si)を蒸着させてシリコン(Si)-酸素(O)混合層であるサイコックス層(20)が形成されている
ことを特徴とするシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項2】
前記シリコンコーティングされた銅は、
前記シリコン(Si)が蒸着されていない銅と金(Au)との間の電気抵抗値を有する
請求項1に記載のシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項3】
前記シリコンコーティングされた銅は、単結晶薄膜、多結晶薄膜、箔、または塊である
請求項1に記載のシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項4】
前記シリコンコーティングされた銅が単結晶薄膜である場合、400℃で30分間熱を加えても酸化が防止される
請求項3に記載のシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項5】
前記シリコンコーティングされた銅が、多結晶薄膜、箔または塊である場合、300℃で30分間熱を加えても酸化が防止される
請求項3に記載のシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項6】
前記シリコンコーティングされた銅は、200℃で60時間熱を加えても酸化が防止される
請求項1に記載のシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項7】
前記シリコンコーティングされた銅は、電気抵抗値が1.68×10-6~2.2×10-6Ω・cmである
請求項1に記載のシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項8】
前記シリコンコーティングされた銅は、
銅層(10)と、
前記銅層(10)上に、シリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)が混合されてなるサイコックス層(20)と、
前記サイコックス層(20)上に形成された第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層(30)と、
前記第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層(30)上に形成されたシリコン(Si)層(40)と、
前記シリコン(Si)層(40)上に形成された第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層(50)とで構成される
請求項1に記載のシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項9】
前記第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層(30)及び第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層(50)は、厚さが5~30nmである
請求項8に記載のシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項10】
前記第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層(30)及び第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層(50)は、厚さが1~10nmである
請求項8に記載のシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項11】
前記サイコックス層(20)は、厚さが0.8~1.2nmである
請求項8に記載のシリコンコーティングされた酸化防止用銅。
【請求項12】
銅(Cu)にシリコン(Si)をスパッタリング(sputtering)単一工程で蒸着させる
ことを特徴とするシリコンコーティングされた銅の製造方法。
【請求項13】
前記スパッタリング(sputtering)は、アルゴン雰囲気下で行う
請求項12に記載のシリコンコーティングされた銅の製造方法。
【請求項14】
前記スパッタリング(sputtering)は、常温~350℃で1~5分間行う
請求項12に記載のシリコンコーティングされた銅の製造方法。
【請求項15】
シリコン(Si)を蒸着させてシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層であるサイコックス層(20)が設けられた銅を含む
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
前記サイコックス層(20)は、厚さが0.8~1.2nmである
請求項15に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンコーティングされた銅の製造方法、これを用いたシリコンコーティングされた酸化防止用銅及びこれを用いた半導体装置に関し、より詳しくは、シリコン(Si)を蒸着してシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層の保護膜を形成して電気的な特性をそのまま保持しながら耐酸化性を有するシリコン(Si)でコーティングされた表面を含む銅に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、銅は導電性物質であって、活用価値が高く、広く使用されている。このような銅は、薄膜、箔又は塊状構造体等として用いられる。しかし、銅は耐酸化性が弱いことから極めて高い信頼性を要する場合、長時間の使用が必要な場合、または高い温度で使用される場合には用いることができず、銅に比べて抵抗が高く、かつ価格も高価な金が用いられている。
【0003】
したがって、経済的に有利であり、物性に優れた銅をより効率的に利用するためには、このような酸化の問題を解決する技術が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、Siを蒸着によってSi-O-Cu保護層を形成して酸化を防止するとともに、高温でも酸化に安定な銅薄膜、箔または塊状構造体等を製造する方法を提供することである。
【0005】
発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に限定されず、言及されていないまた他の技術的課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者には明確に理解される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリコンコーティングされた酸化防止用銅であって、シリコン(Si)を蒸着させてシリコン(Si)-酸素(O)とシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層が形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記シリコンコーティングされた銅は、前記シリコン(Si)が蒸着されていない銅と金(Au)との間の電気抵抗値を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記シリコンコーティングされた銅は、電気抵抗値が1.68×10-6~2.2×10-6Ω・cmであることを特徴とする。
【0009】
また、前記シリコンコーティングされた銅は、
銅層10と、
前記銅層10上に、シリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)が混合されてなるサイコックス層20と、
前記サイコックス層20上に形成された第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層30と、
前記第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層30上に形成されたシリコン(Si)層40と、
前記シリコン(Si)層40上に形成された第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層50とで構成されることを特徴とする。
【0010】
また、前記シリコン(Si)層40は、厚さが3~20nmであることを特徴とする。
【0011】
また、前記第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層30及び第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層50は、厚さが1~10nmであることを特徴とする。
【0012】
また、前記サイコックス層20は、厚さが0.8~1.2nmであることを特徴とする。
【0013】
本発明は、シリコンコーティングされた銅の製造方法であって、銅(Cu)にシリコン(Si)をスパッタリング(sputtering)単一工程で蒸着させたことを特徴とする。
【0014】
また、前記スパッタリング(sputtering)は、アルゴン雰囲気下で行うことを特徴とする。
【0015】
また、前記スパッタリング(sputtering)は、常温~350℃で1~5分間行うことを特徴とする。
【0016】
本発明は、半導体装置に関し、シリコン(Si)を蒸着させてシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層であるサイコックス層20が設けられた銅を含むことを特徴とする。
【0017】
また、前記サイコックス層20は、厚さが0.8~1.2nmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
前記課題の解決手段によって、本発明は、酸化から自由な銅を、シリコン(Si)蒸着のみで作製して、製造効率が高く、地球上で最も豊富な銅(Cu)及びシリコン(Si)を用いて金を代替することができるので、経済的に高い価値がある。
【0019】
また、本発明は、シリコン(Si)蒸着によってシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)保護膜を形成して電気的特性をそのまま保持しながら耐酸化性を有する銅(Cu)を製造することができる。
【0020】
また、本発明は、製造方法が非常に簡易で、且つ安価でありながら、常温で半永久的に使用可能な抗酸化銅を製造することができる。
【0021】
また、本発明は、パターンを作製し表面処理をする場合、熱発生にも拘わらず酸化されない回路を作製することができ、熱発生による火災及び爆発を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】単結晶銅薄膜の写真であって、公知の銅のRGB値(R:184、G:115、B:51)よりも明るいRGB値(R:254、G:220、B:182)を示す。
図2】シリコン(Si)のコーティング後、350℃で30分間空気中で熱処理したシリコン(Si)がコーティングされた単結晶銅薄膜の写真である。
図3】単結晶銅薄膜のXRD測定結果を示す図である。
図4】シリコン(Si)がコーティングされた単結晶銅薄膜のXRD測定結果を示す図であって、350℃で30分間空気中の熱処理後にも結晶構造が全く変わらず、一一方向に結晶化が一層よく行われることから、表面が酸化されないことを確認することができる。
図5】一般の銅箔(foil)の写真である。
図6】シリコン(Si)をコーティングして表面処理した銅箔(foil)の写真である。
図7】250℃で30分間空気中で熱処理した一般の銅箔(foil)の写真である。
図8】シリコン(Si)をコーティングして表面処理した後、250℃で30分間空気中で熱処理した銅箔(foil)の写真である。
図9】250℃で30分間空気中で熱処理した一般の銅箔(foil)のXRD測定結果を示す図である。
図10】シリコン(Si)をコーティングして表面処理した後、250℃で30分間空気中で熱処理した銅箔(foil)のXRD測定結果を示す図である。
図11】SiCu/Al試料の熱処理温度とシリコン(Si)のコーティング厚さに依存する電気抵抗値の変化を示すグラフである。
図12】Si10Cu/Al試料のTEM断面測定結果を示す図である。
図13】高分解能TEMで観察したSi10Cu/Al深さに応じた銅原子間の距離変化を示した結果を示す図である。
図14】Si10SCCF試料表面に対するXPS分析結果を示す図である。
図15】Si10SCCF試料表面に対するTEM成分分析結果を示す図である。
図16】銅薄膜(緑色から下)上のO(ピンク色および赤色)とSi(黄色)の分布の予想図であり、(a)側面図及び(b)平面図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用される用語について簡略に説明し、本発明について具体的に説明する。
【0024】
本発明で使われる用語は、本発明の機能を考慮しながら、できるだけ現在広く使われている一般的な用語を選択したが、これは当業者の意図または判例、新たな技術の出現などによって変わり得る。したがって、本発明で使用される用語は、単純な用語の名称ではなく、その用語が持つ意味と、本発明の全般にわたる内容とに基づいて定義される。
【0025】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の意味を有する記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0026】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は種々の相異なる形態で具現されることができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0027】
本発明の解決しようとする課題、課題の解決手段、発明の効果を含む具体的な事項は、以下に記載する実施形態及び図面に含まれている。本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成する方法は、添付図面と共に詳しく後述する実施形態を参照すれば、明確になる。
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明をより詳しく説明する。
【0029】
本発明は、シリコンコーティングされた銅の製造方法に関し、シリコンを蒸着させてシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層を形成する。
【0030】
より具体的には、銅の表面にシリコンをスパッタリング(sputtering)単一工程で蒸着して該シリコンをコーティングする。前記スパッタリング(sputtering)は、アルゴン雰囲気下に行われ、常温~350℃で1~5分間行うことが好ましい。前記スパッタリング(sputtering)遂行時、温度及び遂行時間の範囲よりも高いか低いと、結晶粒界と電位などが形成されることによって結晶性が低下するので、前記温度範囲内で行うことが好ましい。本発明の実施形態では190℃で75秒、150秒および300秒間行われた。
【0031】
前記シリコンコーティングされた銅の製造方法により製造されたシリコンコーティングされた銅は、シリコンを蒸着させてシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層であるサイコックス層20が形成されることを特徴とする。
【0032】
本発明のシリコンコーティングされた銅は、RGB値が、それぞれ、250~260(赤)、210~220(緑)および155~165(青)であることを特徴とする。図1は、185nm厚さの単結晶銅薄膜(single crystal copper thin film、以下、SCCFという)の写真であり、図2は、シリコンをコーティングした後、350℃で30分間、空気中で熱処理を行った銅の写真である。同じ大きさに製造したとき、図1の単結晶銅薄膜はRGB値が254(赤)、220(緑)、及び182(青)を示し、本発明の図2のシリコンコーティング後、空気中で熱処理した銅は、RGB値が255(赤)、216(緑)及び159(青)であることが観察された。公知の銅のRGB値が185(赤)、115(緑)および51(青)であることに鑑みると、本発明により製造されたシリコンコーティングされた銅は、酸化が防止されたことが分かり、350℃で30分間の熱処理を施したにも拘わらず、前記単結晶銅薄膜と類似するように保持されて酸化が防止されることを確認することができる。
【0033】
図5図8は、空気中における熱処理の前と後の銅箔(foil)と、シリコンコーティングされた銅箔(foil)の写真を比較して示した。図5の銅箔(foil)を250℃で30分間熱処理(図7)して比較したとき、一般の銅箔(foil)は暗く変化したことを確認することができる。一方、図6のシリコンコーティングされた銅箔(foil)を同一の条件下で250℃で30分間熱処理(図8)して比較したとき、シリコンコーティングされた銅箔(foil)は、本来の色をそのまま維持していることを確認することができる。
【0034】
図3及び図4は、単結晶銅薄膜(SCCF)と、シリコンでコーティングした後に熱処理した単結晶銅薄膜のXRD測定結果を示した。図4に示されているように、シリコンでコーティングした後、空気中の350℃で30分間熱処理後にも結晶構造が全く変わらず、むしろ一方向に結晶化が一層よく行われ、表面が酸化されていないことを予測することができる。
【0035】
図9図10は、空気中の熱処理後の銅箔(foil)と、シリコンコーティングされた銅箔(foil)のXRD測定結果を示した。図9の銅箔(foil)を250℃で30分間空気中で熱処理(図10)して比較したとき、銅箔(foil)は、図9ではCuO相を示すが、シリコンコーティングされた銅箔(foil)は、図10に示されているように、元の銅構造を保持することが分かる。
【0036】
また、本発明のシリコンコーティングされた銅は、図11に示すように、銅塊(bulk Cu)の抵抗値である1.68×10-6Ω・cmと、金塊(bulk Au)の抵抗値である2.2×10-6Ω・cmとの間の抵抗値を有することを特徴とする。
【0037】
本発明のシリコンコーティングされた銅は、前記シリコンが蒸着されていない銅と類似の電気抵抗値を維持する。
【0038】
本発明のシリコンコーティングされた銅は、200℃で60時間熱を加えても酸化が防止される。
【0039】
図11は、SiCu/Al試料の熱処理温度とシリコンのコーティング厚さに依存する抵抗の変化を示した。ゾーンAは、厚さ185nmの単結晶銅薄膜(SCCF)試料の熱処理による抵抗の変化であり、ゾーンBは、シリコンコーティングされた単結晶銅薄膜(SCCF)試料(Si5SCCF)およびそれを熱処理した後の抵抗の変化である。ゾーンCは、5nmよりも厚くシリコンコーティングされた単結銅薄膜(SCCF)試料の抵抗の変化である。ゾーンDは、銅塊(bulk Cu)及び金塊(bulk Au)の抵抗を示し、ゾーンBおよびCと比較した。
【0040】
ゾーンAにおいて、純SCCF(pristine)試料は、銅塊(bulk Cu)の抵抗値である1.68×10-6Ω・cmの抵抗とほぼ同じ値を有し、金塊(bulk Au)の抵抗値である2.2×10-6Ω・cmよりも小さい抵抗値を示している。しかしながら、ゾーンAにおいて、単結晶銅薄膜(SCCF)試料を200~250℃で熱処理する場合、抵抗が急激に上昇することがみられる。これは、銅が酸化され、CuOに変わったことを意味する。
【0041】
一方、ゾーンBにおいて、185nmの単結晶銅薄膜(SCCF)にシリコンを5nmコーティングした試料(Si5SCCF)は、400℃で30分間熱処理した場合にも、抵抗値の銅塊(Cu)とほぼ等しいことが分かる。
【0042】
また、ゾーンCは、シリコン層の厚さが厚くなることに伴う抵抗の変化を確認することができる。シリコンの厚さが30nmになるまでシリコンコーティングされた単結晶銅薄膜(SCCF)は、銅塊(bulk Cu)の抵抗値と金塊(bulk Au)の抵抗値との間の値を有し、シリコンの厚さが30nmになってからこそ金塊(bulk Au)の抵抗と近似になることを確認することができる。
【0043】
前記シリコンコーティングされた銅は、単結晶薄膜、多結晶薄膜、箔、または塊で製造することができる。図11で確認したように、前記シリコンコーティングされた銅が単結晶薄膜である場合、400℃で30分間熱を加えても酸化が防止される。前記シリコンコーティングされた銅が、多結晶薄膜、箔または塊である場合、300℃で30分間熱を加えても酸化が防止される。
【0044】
前記シリコンコーティングされた銅の製造方法により製造されたシリコンコーティングされた銅は、図12に示すように、銅層10と、該銅層10上にシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)が混合されてなるサイコックス層20と、該サイコックス層20上に形成された第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層30、該第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層30上に形成されたシリコン(Si)層40と、該シリコン(Si)層40上に形成された第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層50とで構成される。
【0045】
図12は、単結晶銅薄膜にシリコンを10nmコーティング(Si10Cu/Al)した試料の透過電子顕微鏡(TEM)断面測定結果を示すものであり、本発明でコーティングされたシリコンが単層で存在せずに、前記銅層10上に、シリコン(Si)-酸素(O)混合層が形成され、シリコン(Si)層と、さらに、該シリコン(Si)-酸素(O)混合層で形成されていることを確認することができる。
【0046】
より具体的には、銅にシリコン(Si)がコーティングされた層である前記第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層30、シリコン(Si)層40及び第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層50は、厚さが5~30nmであることを特徴とする。前記シリコン(Si)コーティング層が5nmよりも薄いと、酸化され易く、30nmよりも厚いと、絶縁されたり、電気伝導度が低下したりするという問題点が発生するので、前記条件であることが好ましい。
【0047】
前記シリコン(Si)層40は、厚さが3~20nmであることを特徴とする。
【0048】
前記第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層30及び第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層50は、厚さが1~10nmであることを特徴とする。
【0049】
前記サイコックス層20は、厚さが0.8~1.2nmであることを特徴とする。
【0050】
図13は、高分解能TEMで観察した深さに応じた銅原子間の距離変化を示した。図13に示すように、表面において銅(Cu)-銅(Cu)間の距離が縮まったことが分かるが、これは表面にはシリコン(Si)及び銅(Cu)の混合層が存在することを確認することができ、図14のXPS分析でシリコン(Si)及び銅(Cu)の混合層の存在を再び確認することができる。
【0051】
図14は、シリコンが10nmコーティングされたSCCF(Si10SCCF)試料表面の成分分布を確認するためのXPS分析結果である。表面の酸素がやや減少してゆき、混合層で再び増加した後に減少することを確認することができ、シリコン(Si)の分布は、酸素が谷部をなす箇所で最も大きい分布を表すことが分かる。また、酸素、シリコンおよび銅が混合層をなす箇所があり、該混合層が酸化を防ぐ重要な役割をすることと予想される。すなわち、銅の表面には、シリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層(サイコックス層20、SiCuO)、シリコン(Si)-酸素(O)混合層(SiO)及びシリコン(Si)層40の形で構成されていることを確認することができる。
【0052】
図15は、シリコンコーティングされた銅の表面形態をより正確に確認することができるものであって、シリコンが10nmコーティングされたSCCF(Si10SCCF)試料表面に対する表面構造(TEM)を示す。図15(b)は、TEMの成分分析結果においても、図12のTEM及び図14のXPS測定結果と同様に、シリコン(Si)-酸素(O)混合層(SiO)、シリコン(Si)層40、シリコン(Si)-酸素(O)混合層(SiO)、シリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層(サイコックス層20、SiCuO)、及び銅(Cu)の順に薄膜表面が形成されていることを示し、形成されたシリコン(Si)-酸素(O)混合層(SiO)は、非晶質構造を有するため、図15(a)の画像では見えない。銅薄膜の直上のシリコン原子は、銅表面に自由に動く酸素を最適な位置(site)に固定する。一般に、酸素は、銅の平坦な表面上で比較的自由に動くが、シリコンはこれらの酸素を固定する役割を果たす。シリコン(Si)層40の厚さは、酸化を防ぐのに非常に重要ではなく、最も重要な構造は、銅薄膜の真上の原子1-2層によって決定される。
【0053】
図15(b)のキー(key)と表示された箇所において、酸素とシリコンと銅とが混合層をなすシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層(サイコックス層20、SiCuO)部分が存在し、該混合層が酸化を防ぐ重要な役割をすると予想される。
【0054】
図16は、銅薄膜上の前記サイコックス層20における、前記酸素(O)とシリコン(Si)との分布予想図を示したもので、図16(a)は、前記銅薄膜上に前記酸素(O)とシリコン(Si)が前記サイコックス層20を形成する側面図であり、図16(b)は、平面図である。前記シリコン(Si)は、前記銅表面の酸素(O)と結合して、前記銅表面上に固定する役割を果たすことと予想され、このとき、最も基本的な構造は、図16のように構成される。図16(a)の側面図および図16(b)の平面図のように、前記酸素(O)が前記銅の表面を覆った上でシリコン(Si)により固定されれば、他の酸素(O)が銅の内部へ入り込むことができないことにより、入り込むことを防ぐ役割をすると予想される。
【0055】
また、本発明は、前記シリコンコーティングされた銅の製造方法により製造されたシリコンコーティングされた銅を含む半導体装置を製造することができる。本半導体装置は、シリコン(Si)を蒸着させてシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層が形成された銅を含むことを特徴とする。前記半導体装置は、前記シリコンコーティングされた銅と同様の構成を含む。
【0056】
具体的に、前記半導体装置は、前記半導体チップパッド及び端子と連結され、表面に本発明のシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)混合層が形成されて酸化を防止する銅を含んでいるため、金を用いる場合に比して、低い電気的抵抗と剛性を有し、低コストであり、高い周囲温度にも寿命を延長されて長い間使用することができるという効果がある。また、一般的な銅が提供する利点を維持しながら、酸化抑制による電気的特性が向上し、強度が増加される効果を有する。
【0057】
より具体的に、前記第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層30、シリコン(Si)層40及び第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層50は、銅にシリコン(Si)がコーティングされた層であって、厚さが5~30nmであることを特徴とする。前記シリコン(Si)がコーティングされた層が5nmよりも薄いと、酸化され易く、30nmよりも厚いと絶縁されたり、電気伝導度が低下したりするという問題点が発生するので、前記条件であることが好ましい。
【0058】
また、前記半導体装置において、前記サイコックス層20の厚さは、0.8~1.2nmであることを特徴とする。
【0059】
前記課題の解決手段によって、本発明は、酸化から自由な銅を、シリコン(Si)蒸着のみで作製して、製造効率が高く、地球上で最も豊富な銅(Cu)とシリコン(Si)を用いて金を代替することができるので、経済的に高い価値がある。
【0060】
また、本発明は、シリコン(Si)蒸着によってシリコン(Si)-酸素(O)-銅(Cu)保護膜を形成して電気的特性をそのまま保持しながら耐酸化性を有する銅(Cu)を製造することができる。
【0061】
また、本発明は、高い温度で最も長く耐えられる物質に該当し、製造方法が非常に簡易で、且つ安価でありながら、常温で半永久的に使用可能な抗酸化銅に該当する。
【0062】
また、本発明は、パターンを作製し表面処理をする場合、熱発生にも拘わらず酸化されない回路を作製することができ、熱発生による火災及び爆発を防ぐことができ、電流密度を大きく向上させることができるので、半導体工程にも非常に大きな反響を呼ぶことができる。
【0063】
このように、前述した本発明の技術的構成は、本発明の属する技術分野における当業者が本発明の技術的思想や必須的特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できるということを理解することができる。
【0064】
したがって、以上で記述した実施形態はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではなく、本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲の意味及び範疇、並びにその等価概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0065】
10 銅層
20 サイコックス層
30 第1のシリコン(Si)-酸素(O)混合層
40 シリコン(Si)層
50 第2のシリコン(Si)-酸素(O)混合層
図1
図2
図3
図4
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【国際調査報告】