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特表2024-521747新しいN,N-ジメチルトリプタミン塩および結晶塩形態
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】新しいN,N-ジメチルトリプタミン塩および結晶塩形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/16 20060101AFI20240528BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C07D209/16 CSP
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/30
A61P25/04
A61P25/36
A61K31/4045
A61K47/12
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572503
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 US2022030912
(87)【国際公開番号】W WO2022251351
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/192,938
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】523405753
【氏名又は名称】アタイ セラピューティクス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Atai Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ファヴァツ, マジェド
(72)【発明者】
【氏名】ショート, グレン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076CC01
4C076CC41
4C076DD24
4C076DD24Q
4C076DD42
4C076DD42Q
4C076EE59
4C076FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086GA13
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZC39
(57)【要約】
本開示は、N,N-ジメチルトリプタミン塩および結晶塩形態、その調製、前記塩および結晶塩形態を含む医薬組成物、ならびに神経性疾患および病態の治療におけるその使用を提供する。
【選択図】図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DMTフマル酸塩形態A、DMTコハク酸塩形態A、DMTリンゴ酸塩形態A、DMTシュウ酸塩形態A、DMT硫酸塩形態A。
【請求項2】
約10.78、約15.38、約15.73、約15.97、約16.93、約18.33、約19.61、約19.75、約20.49、約23.55、約23.91、および/または約24.94においてピーク(°2θ)を含むX線粉末回折(XRPD)パターンを提供する、請求項1に記載のDMTフマル酸塩結晶形態A。
【請求項3】
実質的に表6に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTフマル酸塩結晶形態A。
【請求項4】
実質的に表5に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTフマル酸塩結晶形態A。
【請求項5】
実質的に図1に従うXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTフマル酸塩結晶形態A。
【請求項6】
実質的に図8に従う熱重量分析(TGA)サーモグラフを示す、請求項1に記載のDMTフマル酸塩結晶形態A。
【請求項7】
実質的に図8に従う示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを示す、請求項1に記載のDMTフマル酸塩結晶形態A。
【請求項8】
実質的に図11に従う動的蒸気収着(DVS)等温線を示す、請求項1に記載のDMTフマル酸塩結晶形態A。
【請求項9】
周囲条件下で測定したとき、約151.8℃の融点を有する、請求項1に記載のDMTフマル酸塩結晶形態A。
【請求項10】
約9.75、約14.27、約16.90、約19.58、約20.58、約23.08、約23.39、約24.83、約26.79、および/または約27.60においてピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項11】
実質的に表8に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項12】
実質的に表7に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項13】
実質的に図2に従うXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項14】
実質的に図10に従うTGAサーモグラフを示す、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項15】
実質的に図10に従うDSCサーモグラフを示す、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項16】
実質的に図13に従うDVS等温線を示す、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項17】
実質的に図14に従う可変温度XRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項18】
実質的に図15に従うDSC等温線を示す、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項19】
実質的に図16に従うXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項20】
実質的に図17に従うXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項21】
実質的に図17に従う単結晶X線回折(SCXRD)パターンを提供する、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項22】
実質的に図18に従うDVS等温線を示す、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項23】
実質的に図19に従うTGAサーモグラフを示す、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項24】
実質的に図19に従うDSCサーモグラフを示す、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項25】
周囲条件下で測定したとき、約141.9℃の融点を有する、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項26】
周囲条件下で測定したとき、約141.9℃の融点と、請求項28に記載のSCXRDパターンと、を有する、請求項1に記載のDMTコハク酸塩結晶形態A。
【請求項27】
約9.92、約13.96、約16.55、約19.71、約20.16、約22.07、約22.23、約22.79、約23.82、約25.06、および/または約29.87においてピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTリンゴ酸塩結晶形態A。
【請求項28】
実質的に表10に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTリンゴ酸塩結晶形態A。
【請求項29】
実質的に表9に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTリンゴ酸塩結晶形態A。
【請求項30】
実質的に図3に従うXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTリンゴ酸塩結晶形態A。
【請求項31】
実質的に図9に従うTGAサーモグラフを示す、請求項1に記載のDMTリンゴ酸塩結晶形態A。
【請求項32】
実質的に図9に従うDSCサーモグラフを示す、請求項1に記載のDMTリンゴ酸塩結晶形態A。
【請求項33】
実質的に図12に従うDVS等温線を示す、請求項1に記載のDMTリンゴ酸塩結晶形態A。
【請求項34】
周囲条件下で測定したとき、約109.1℃の融点を有する、請求項1に記載のDMTリンゴ酸塩結晶形態A。
【請求項35】
約11.05、約15.32、約15.89、約16.24、約19.71、約19.88、約22.22、約23.54、約23.92、約24.40、約25.03、および/または約25.47においてピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMT硫酸塩結晶形態A。
【請求項36】
実質的に表12に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMT硫酸塩結晶形態A。
【請求項37】
実質的に表11に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMT硫酸塩結晶形態A。
【請求項38】
実質的に図4に従うXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMT硫酸塩結晶形態A。
【請求項39】
実質的に図6に従うTGAサーモグラフを示す、請求項1に記載のDMT硫酸塩結晶形態A。
【請求項40】
実質的に図6に従うDSCサーモグラフを示す、請求項1に記載のDMT硫酸塩結晶形態A。
【請求項41】
周囲条件下で測定したとき、約105.2℃の融点を有する、請求項1に記載のDMT硫酸塩結晶形態A。
【請求項42】
約5.86、約14.63、約17.60、約19.26、約20.32、約22.03、約23.57、約24.34、約25.78、および/または約27.51においてピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTシュウ酸塩結晶形態A。
【請求項43】
実質的に表14に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTシュウ酸塩結晶形態A。
【請求項44】
実質的に表13に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTシュウ酸塩結晶形態A。
【請求項45】
実質的に図5に従うXRPDパターンを提供する、請求項1に記載のDMTシュウ酸塩結晶形態A。
【請求項46】
実質的に図7に従うTGAサーモグラフを示す、請求項1に記載のDMTシュウ酸塩結晶形態A。
【請求項47】
実質的に図7に従うDSCサーモグラフを示す、請求項1に記載のDMTシュウ酸塩結晶形態A。
【請求項48】
周囲条件下で測定したとき、約135.2℃の融点を有する、請求項1に記載のDMTシュウ酸塩結晶形態A。
【請求項49】
請求項1に記載のDMT結晶塩形態を含む、医薬組成物。
【請求項50】
神経性疾患または病態を治療する方法であって、有効量の請求項1に記載のDMT塩を対象へと投与することを含む、方法。
【請求項51】
前記神経性疾患または病態が、精神神経障害、月経前不快気分障害、季節性情動障害、不安、不安障害、社会不安障害、全般性不安障害(GAD)、意欲消失障害、双極性障害、外傷後ストレス障害、身体醜形障害、気分または感情の異常、気分変調、統合失調性感情障害、統合失調症、パニック障害、外傷性ストレス障害、恐怖性障害、異常な気分を伴うパーソナリティ障害(境界性パーソナリティ障害、統合失調の障害、および統合失調型障害など)、ならびに自殺念慮、または、反芻/非生産的な反復的な考えが人の挙動/気分/集中する能力に悪影響を与える、強迫性障害、嗜癖(ニコチン、アルコール、コカイン、オピオイド、アンフェタミン、メタンフェタミン、ヘロイン、モルヒネ、フェンシクリジン、3,4-メチレンジオキシ-メタンフェタミンだけでなく、他の嗜癖物質への嗜癖などの物質使用障害を含む)、嗜癖行動(摂食、ギャンブル、セックス、ポルノ、ビデオゲーム、仕事、エクササイズ、霊的な強迫観念、自傷、旅行、およびショッピングの嗜癖を含む)、摂食障害(神経性無食欲症、神経性過食症、およびむちゃ食い障害を含む)、または疼痛(偏頭痛もしくは頭痛に関連付けられた疼痛、または慢性疼痛を含む)である、請求項50に記載の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2021年5月25日に出願された米国仮特許出願第63/192,938号の優先権および利益を主張するものであり、その全内容は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、新しいN,N-ジメチルトリプタミン塩および結晶塩形態、その調製および使用に関する。新しい塩および塩形態は、神経性疾患および病態を治療するための医薬組成物の中へと組み込まれてもよい。
【背景技術】
【0003】
N,N-ジメチルトリプタミン(以下、「DMT」)は、幻覚剤としての治療的価値を有し、固有の特性により、特に神経性疾患および病態のための魅力的な可能性のある薬物治療となる。しかしながら、透明または白色の結晶として単離されたDMT遊離塩基は、44.6℃~46.8℃の低い融点を有し、また水中溶解度が極めて低い。溶液中では、DMT遊離塩基は、迅速な分解速度を有し、また空気および光から保護して、マイナス20℃で保存されるべきである(Brito-da-Costa et al,Pharmaceuticals 2020,13,334)。DMTの塩は、フマル酸塩と塩酸塩の半水和物を含んで、改善された溶解度で調製されてきた。しかしながら、特に改善された製剤(例えば、溶解度、安定性)および性能(例えば、バイオアベイラビリティ)を容易にするために、DMT遊離塩基よりも優れた物理化学的特性を示す新しいDMT塩形態に対するニーズが依然として存在する。本開示は、DMT遊離塩基と比較して、改善された融点(より高い)、水溶解度(より高い)、および/または吸湿性(より低い)の特性が新規のDMT塩形態を提供することによって、このニーズを解決する。
【発明の概要】
【0004】
DMTの新しい塩および結晶塩形態が本明細書に記述される。具体的には、塩形態のDMTフマル酸塩形態A、DMTコハク酸塩形態A、DMTリンゴ酸塩形態A、DMTシュウ酸塩形態A、およびDMT硫酸塩形態Aが本明細書に記述される。また、DMTコハク酸塩、DMTリンゴ酸塩、DMT硫酸塩、およびDMTリン酸塩も本明細書に記述される。
【0005】
一態様によると、本開示は、DMTフマル酸塩形態Aを提供する。
【0006】
一態様によると、本開示は、DMTコハク酸塩形態Aを提供する。
【0007】
一態様によると、本開示は、DMTリンゴ酸塩形態Aを提供する。
【0008】
一態様によると、本開示は、DMTシュウ酸塩形態Aを提供する。
【0009】
一態様によると、本開示は、DMT硫酸塩形態Aを提供する。
【0010】
一態様によると、本開示は、DMTコハク酸塩を提供する。
【0011】
一態様によると、本開示はDMTリンゴ酸塩を提供する。
【0012】
一態様によると、本開示はDMT硫酸塩を提供する。
【0013】
一態様によると、本開示は、DMTリン酸塩を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、観察されたピークを含む、DMTフマル酸塩形態Aに対するX線粉末回折(XRPD)を示す。
図2図2は、観察されたピークを含む、DMTコハク酸塩形態Aに対するXRPDを示す。
図3図3は、観察されたピークを含む、DMTリンゴ酸塩形態Aに対するXRPDを示す。
図4図4は、観察されたピークを含む、DMT硫酸塩形態Aに対するXRPDを示す。
図5図5は、観察されたピークを含む、DMTシュウ酸塩形態Aに対するXRPDを示す。
図6図6は、DMT硫酸塩形態Aに対する熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを示す。
図7図7は、DMTシュウ酸塩形態Aに対するTGAおよびDSCサーモグラフを示す。
図8図8は、DMTフマル酸塩形態Aに対するTGAおよびDSCサーモグラフを示す。
図9図9は、DMTリンゴ酸塩形態Aに対するTGAおよびDSCサーモグラフを示す。
図10図10は、DMTコハク酸塩形態Aに対するTGAおよびDSCサーモグラフを示す。
図11図11は、DMTフマル酸塩形態Aに対する動的蒸気収着(DVS)等温線を示す。
図12図12は、DMTリンゴ酸塩形態Aに対するDVS等温線を示す。
図13図13は、DMTコハク酸塩形態Aに対するDVS等温線を示す。
図14図14は、DMTコハク酸塩形態Aに対する可変温度XRPD分析を示す。
図15図15は、エタノールを溶媒として使用して調製されたDMTコハク酸塩形態Aに対するDSC等温線を示す。
図16図16は、エタノールまたはアセトンを溶媒として使用して調製されたDMTコハク酸塩形態Aに対するXRPDを示す。
図17図17は、ミリグラムスケール(XRPDデータ)またはグラムスケール(単結晶X線回折、SCXRD)で調製されたDMTコハク酸塩形態Aに対するX線回折を示す。
図18図18は、スケールアップバッチからのDMTコハク酸塩形態Aに対するDVS等温線を示す。
図19図19は、スケールアップバッチからのDMTコハク酸塩形態Aに対するTGAおよびDSCサーモグラフを示す。
図20図20は、0.34モル分率のDMTの全体的な組成物におけるDMTコハク酸塩形態Aおよびコハク酸の物理的混合物のDSC等温線を示す。
図21図21は、142℃における溶融を確認するアセトン(小規模)から調製されたDMTコハク酸塩形態Aの高温段階顕微鏡写真を示す。
図22図22は、エタノール(大規模)から調製されたDMTコハク酸塩形態Aの高温段階顕微鏡写真を示す。
図23図23は、DMTリン酸塩に対するXRPDを示す。
図24図24は、DMT遊離塩基と比較したDMTの5つの塩形態の融点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一態様では、本開示は、DMTのコハク酸塩、リンゴ酸塩、硫酸塩、またはリン酸塩を対象とする。
【0016】
一態様では、本開示は、DMTコハク酸塩を対象とする。
【0017】
また、本明細書に記述されるDMTの塩の任意の溶媒和物、例えば、水和物、複合体、および多形体も本開示に含まれる。
【0018】
DMTの塩は、結晶形態もしくは非結晶形態で、またはそれらの混合物として存在してもよい。結晶形態であるDMTの塩については、当業者は、薬学的に許容可能な溶媒和物が形成されてもよく、溶媒分子が結晶化中に結晶格子の中へと組み込まれることを理解するであろう。溶媒和物は、エタノール、イソプロパノール、DMSO、酢酸、エタノールアミン、および酢酸エチルなどの非水性溶媒を含んでもよく、または結晶格子の中へと組み込まれる溶媒として水を含んでもよい。水が結晶格子の中へとに組み込まれる溶媒である溶媒和物は、典型的に「水和物」と称される。水和物としては、化学量論的水和物だけでなく、可変量の水を含有する組成物が挙げられる。当業者であれば理解するように、水の量は、条件、例えば湿度に依存する場合がある。例えば、湿度が減少すると、水の量が減少する場合があり、また湿度が増加すると、水の量が増加する場合がある。水の量のこうした変動は、本発明の範囲内に含まれる。
【0019】
一態様では、本開示は、DMTフマル酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0020】
一実施形態では、本開示は、約10.78、約15.38、約15.73、約15.97、約16.93、約18.33、約19.61、約19.75、約20.49、約23.55、約23.91、および/または約24.94でのピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTフマル酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0021】
別の実施形態では、本開示は、表6に実質的に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTフマル酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0022】
別の実施形態では、本開示は、表5に実質的に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTフマル酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0023】
さらなる実施形態では、本開示は、実質的に図1に従うXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTフマル酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0024】
一実施形態では、本開示は、実質的に図8に従うTGAサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMTフマル酸塩形態Aを対象とする。
【0025】
一実施形態では、本開示は、実質的に図8に従うDSCサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMTフマル酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0026】
一実施形態では、本開示は、実質的に図11に従うDVS等温線を示すことで特徴付けられるDMTフマル酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0027】
一実施形態では、本開示は、周囲条件下で測定されたとき、約151.8℃の融点を有することで特徴付けられるDMTフマル酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0028】
一態様では、本開示は、DMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0029】
一実施形態では、本開示は、約9.75、約14.27、約16.90、約19.58、約20.58、約23.08、約23.39、約24.83、約26.79、および/または約27.60においてピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0030】
別の実施形態では、本開示は、表8に実質的に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0031】
別の実施形態では、本開示は、表7に実質的に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0032】
さらなる実施形態では、本開示は、実質的に図2に従うXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0033】
一実施形態では、本開示は、実質的に図10に従うTGAサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0034】
一実施形態では、本開示は、実質的に図10に従うDSCサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0035】
一実施形態では、本開示は、実質的に図13に従うDVS等温線を示すことで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0036】
さらなる実施形態では、本開示は、実質的に図14に従う可変温度XRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0037】
別の実施形態では、本開示は、実質的に図15に従うDSC等温線を示すことで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0038】
さらなる実施形態では、本開示は、実質的に図16に従うXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0039】
さらなる実施形態では、本開示は、実質的に図17に従うXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0040】
さらなる実施形態では、本開示は、実質的に図17に従うSCXRDパターンを提供することで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0041】
別の実施形態では、本開示は、実質的に図18に従うDVS等温線を示すことで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0042】
一実施形態では、本開示は、実質的に図19に従うTGAサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0043】
一実施形態では、本開示は、実質的に図19に従うDSCサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0044】
一実施形態では、本開示は、周囲条件下で測定されたとき、約141.9℃の融点を有することで特徴付けられるDMTコハク酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0045】
一態様では、本開示は、DMTリンゴ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0046】
一実施形態では、本開示は、約9.92、約13.96、約16.55、約19.71、約20.16、約22.07、約22.23、約22.79、約23.82、約25.06、および/または約29.87においてピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTリンゴ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0047】
別の実施形態では、本開示は、表10に実質的に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTリンゴ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0048】
別の実施形態では、本開示は、表9に実質的に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTリンゴ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0049】
さらなる実施形態では、本開示は、実質的に図3に従うXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTリンゴ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0050】
一実施形態では、本開示は、実質的に図9に従うTGAサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMTリンゴ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0051】
一実施形態では、本開示は、実質的に図9に従うDSCサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMTリンゴ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0052】
一実施形態では、本開示は、実質的に図12に従うDVS等温線を示すことで特徴付けられるDMTリンゴ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0053】
一実施形態では、本開示は、周囲条件下で測定されたとき、約109.1℃の融点を有することで特徴付けられるDMTリンゴ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0054】
一態様では、本開示は、DMT硫酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0055】
一実施形態では、本開示は、約11.05、約15.32、約15.89、約16.24、約19.71、約19.88、約22.22、約23.54、約23.92、約24.40、約25.03、および/または約25.47においてピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMT硫酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0056】
別の実施形態では、本開示は、表12に実質的に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMT硫酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0057】
別の実施形態では、本開示は、表11に実質的に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMT硫酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0058】
さらなる実施形態では、本開示は、実質的に図4に従うXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMT硫酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0059】
一実施形態では、本開示は、実質的に図6に従うTGAサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMT硫酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0060】
一実施形態では、本開示は、実質的に図6に従うDSCサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMT硫酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0061】
一実施形態では、本開示は、周囲条件下で測定されたとき、約105.2℃の融点を有することで特徴付けられるDMT硫酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0062】
一態様では、本開示は、DMTシュウ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0063】
一実施形態では、本開示は、約5.86、約14.63、約17.60、約19.26、約20.32、約22.07、約22.03、約23.57、約24.34、約25.78、および/または約27.51においてピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTシュウ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0064】
別の実施形態では、本開示は、表14に実質的に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTシュウ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0065】
別の実施形態では、本開示は、表13に実質的に提示されるようなピーク(°2θ)を含むXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTシュウ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0066】
さらなる実施形態では、本開示は、実質的に図5に従うXRPDパターンを提供することで特徴付けられるDMTシュウ酸塩結晶形態Aを対象とする。
一実施形態では、本開示は、実質的に図7に従うTGAサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMTシュウ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0067】
一実施形態では、本開示は、実質的に図7に従うDSCサーモグラフを示すことで特徴付けられるDMTシュウ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0068】
一実施形態では、本開示は、周囲条件下で測定されたとき、約135.2℃の融点を有することで特徴付けられるDMTシュウ酸塩結晶形態Aを対象とする。
【0069】
所与の値においてXRPDパターン内にピークがあることが本明細書で表示されるとき、これは、典型的に、ピークが引用された値の±0.2以内であることを意味する。
【0070】
本開示は、純粋な形態で単離された、または他の材料、例えば、DMTの他の塩形態もしくは溶媒和物と混合されたときの、DMTの塩形態およびDMTの塩を包含する。
【0071】
それ故に、本開示の一態様では、単離された形態、または純粋な形態のDMTコハク酸塩結晶形態Aが提供される。「単離された形態」または「純粋な形態」は、DMTコハク酸塩結晶形態Aが、試料中に存在してもよい他の材料に対して、>75%、具体的には>90%、より具体的には>95%、なおより具体的には>99%の量で存在する試料を指す。
【0072】
用語および定義
本明細書で使用される場合、これらのプロセス、表、図、および実施例で使用される記号および慣例は、現代の学術科学文献、例えば、Journal of the American Chemical SocietyまたはJournal of Biological Chemistryで使用されるものと一致する。別段の注記がない限り、すべての出発材料は、商業的な供給業者から得られ、そしてさらに精製することなく使用された。特に、以下の略語が、実施例および本明細書全体を通して使用される場合がある。
‐ DMT: N,N-ジメチルトリプタミン
‐ XRPD: X線粉末回折
‐ TGA: 熱重量分析
‐ DSC: 示差走査熱量測定
‐ DVS: 動的蒸気収着
‐ SCXRD: 単結晶X線回折
‐ RH: 相対湿度
‐ RT: 室温
‐ EtOH: エタノール
‐ Sorp: 収着
‐ Desorp: 脱着
‐ ACN: アセトニトリル
‐ DMF: ジメチルホルムアミド
‐ EtOAc: 酢酸エチル
‐ HFIPA: ヘキサフルオロ-2-プロパノール
‐ IPA: イソプロピルアルコール
‐ MeOH: メタノール
‐ NMP: N-メチル-2-ピロリドン
‐ TFE: 2,2,2-トリフルオロエタノール
‐ PTFE: ポリテトラフルオロエチレン
‐ VD: 蒸気拡散
‐ VS: 蒸気ストレッシング
‐ FE: 高速蒸発
‐ CC: クラッシュ冷却
【0073】
「担体」という用語は、治療剤がそれとともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指し、そして親水性物質、疎水性物質、および乳化剤などの親水性および疎水性の両方の特性を有する物質である、こうした液体および粉末が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という用語は、組織、システム、または個体内で、研究者、医療従事者、または個体によって求められる生物学的または医薬的な応答を引き出す活性薬剤の量を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、神経性疾患または病態という用語は、精神神経障害、(うつ病(治療抵抗性うつ病などの重度のうつ病、大うつ病性障害、および持続性うつ病性障害を含む)、緊張性うつ病、医学的状態に起因するうつ病性障害、産後うつ病、月経前不快気分障害、または季節性情動障害など)、不安、不安障害、社会不安障害、全般性不安障害(GAD)、意欲消失障害、双極性障害(双極性I型障害および双極性II~障害を含む)、外傷後ストレス障害、身体醜形障害、上記の病態を含む気分または感情の異常、気分変調、統合失調性感情障害、統合失調症、および他の精神病性障害、パニック障害、外傷性ストレス障害、恐怖性障害、および異常な気分を伴うパーソナリティ障害(境界性パーソナリティ障害、統合失調の障害、統合失調型障害など)、ならびに自殺念慮、または、反芻/非生産的な反復的な考えが人の挙動/気分/集中する能力に悪影響を与える、強迫性障害、嗜癖(ニコチン、アルコール、コカイン、オピオイド、アンフェタミン、メタンフェタミン、ヘロイン、モルヒネ、フェンシクリジン、3,4-メチレンジオキシ-メタンフェタミンだけでなく、他の嗜癖物質への嗜癖などの物質使用障害を含む)、嗜癖行動(摂食、ギャンブル、セックス、ポルノ、ビデオゲーム、仕事、エクササイズ、霊的な強迫観念、自傷、旅行、およびショッピングの嗜癖を含む)、摂食障害(神経性無食欲症、神経性過食症、およびむちゃ食い障害を含む)、ならびに疼痛(偏頭痛もしくは頭痛に関連付けられた疼痛、または慢性疼痛を含む)から選択される疾患または病態を意味する。
【0076】
本明細書で使用される場合、「治療抵抗性うつ病」または「TRD」という用語は、適切な治療に対して満足のいく応答をしないうつ病性障害を意味する。TRDは、うつ病サブタイプ、精神医学併存疾患、および併存する疾患における多様性によって影響を受ける複雑な現象である。TRD症状の発現は、最も一般的に大うつ病性障害(MDD)に関連付けられるが、それらは双極性障害のうつ病期でも見られる。
【0077】
数値的な指定、例えば、pH、温度、量、または濃度の前に使用されるとき、「約」という用語は、本明細書で別の方法で具体的に定義されない限り、最大で(+)または(-)5%まで変化する場合がある近似を表示する。
【0078】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明瞭に別様を規定しない限り、複数の参照を含む。例えば、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、その混合物を含む、複数の薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。
【0079】
「および/または」という用語は、本発明の2つの構成要素のいずれかまたはその両方を意味することが意図される。
【0080】
「対象者」、「個体」、および「患者」という用語は、本明細書では互換可能に使用され、そしてヒトを指す。
【0081】
本明細書で使用される場合、「装置」という用語は、それを必要とする患者へと薬剤を送達する能力を有する設備またはシステムを指す。
【0082】
「治療を必要とする」という用語および治療に言及する場合の「それを必要とする」という用語は、互換可能に使用され、かつ介護する人物(例えば、医師、看護師、ナースプラクティショナーなど)によってなされる治療から患者が恩恵を得るであろうという判断を指す。
【0083】
「治療する」および「治療」という用語は、本明細書では、予防的な手段または防止する手段を含む治療的な治療を指し、目的は、疾患または病態に関連付けられた望ましくない生理的変化を防止または減速(減少)することである。有益なまたは望ましい臨床結果としては、症状の軽減、疾患または病態の程度の減少、疾患または病態の安定化(すなわち、そこでは疾患または病態が悪化しない)、疾患または病態の進行の遅延または減速、疾患または病態の改善または緩和、および疾患または病態の寛解(部分的または全身的)が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」は、治療を受けていない場合の予想された生存と比較して生存を延長させることも意味することができる。治療を必要とするものとしては、すでに疾患もしくは病態を有するものだけでなく、疾患もしくは病態を有する傾向があるもの、または疾患もしくは病態が予防されるべきものが挙げられる。「治療」は、うつ病に関するとき、うつ病の少なくとも1つの徴候または症状を低減することも含むことができる。うつ病の徴候または症状の例としては、うつ病気分、活動への関心の低下、体重減少もしくは増加、食欲の低下もしくは増加、不眠症もしくは過眠症、精神運動興奮もしくは遅滞、疲労もしくはエネルギーの喪失、無価値感または過剰もしくは不適切な罪悪感、集中能力の低下もしくは優柔不断、または自殺念慮もしくは自殺行動が挙げられる。
【0084】
「経鼻送達」、「鼻腔内送達」、「経鼻投与」、または「鼻腔内投与」という用語は、投与経路を指し、医薬剤形は、鼻(例えば、鼻腔)へと、または鼻を通して取られる。同様に、「経鼻送達装置」または「鼻腔内送達装置」は、薬剤を鼻腔の中へと投与する設備を意味することが意図される。鼻腔内投与の非限定的な例としては、鼻腔用スプレーもしくは点鼻薬(直接滴下)の形態の溶液または懸濁液の導入、またはゲル、エマルション、もしくは軟膏の鼻腔内適用が挙げられる。
【0085】
「頬側送達」または「頬側投与」という用語は、医薬剤形が患者の頬と歯茎(すなわち、頬側口腔)との間に適用される投与経路を指す。
【0086】
「舌下送達」という用語は、医薬剤形が患者の舌の下に適用される投与経路を指す。
塩および塩形態の調製
【0087】
本開示はまた、DMTの塩および塩形態を調製するためのプロセスも対象とする。
【0088】
さらなる態様では、本開示は、DMTの塩または結晶塩形態Aを調製するためのプロセスを提供し、方法は、DMT遊離塩基を、アセトンまたはエタノールなどの好適な溶媒の存在下で、フマル酸、コハク酸、L-(-)リンゴ酸、硫酸、シュウ酸、またはリン酸などの好適な酸と接触させることであって、スラリーを形成し、1~5日以上の間撹拌することが好ましい、ことと、例えば、0.2-μmナイロンフィルタを使用するSwinnex(登録商標)陽圧フィルタアセンブリを使用することによるなどの濾過によって、形成された固体を収集することと、を含む。プロセスは、好都合なことに、約-20℃~室温前後の間で実施されてもよい。
【0089】
本開示は、-20℃~50℃の温度で、ACN、DMF、EtOAc、HFIPA、IPA、MeOH、NMP、およびTFEを含む好適な溶媒から形態AのDMT塩を再結晶化することをさらに提供する。
【0090】
DMT遊離塩基は、知られている手順に従って調製されてもよく、または商業的な供給業者から購入されてもよい。
【0091】
医薬組成物および送達
一態様では、本開示は、DMTコハク酸塩、DMTリンゴ酸塩、DMT硫酸塩、およびDMTリン酸塩(例えば、DMTコハク酸塩)から選択されるDMT塩を、1つ以上の担体および/または賦形剤と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0092】
一態様では、本開示は、DMTフマル酸塩形態A、DMTコハク酸塩形態A、DMTリンゴ酸塩形態A、DMTシュウ酸塩形態A、およびDMT硫酸塩形態A(例えば、DMTコハク酸塩形態A)から選択されるDMT塩形態を、1つ以上の担体および/または賦形剤と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0093】
DMT塩および塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を含む医薬組成物は、錠剤などの固体投与単位へと圧縮されてもよく、またはカプセルもしくは座薬へと処理されてもよい。薬学的に好適な液体によって、化合物はまた、溶液、懸濁液、エマルションの形態で、またはスプレーとして調製することもできる。錠剤を含む投与単位を作製するために、充填剤、着色剤、高分子結合剤、およびこれに類するものなどの従来の添加物の使用が企図される。一般に、任意の薬学的に許容可能な添加物を使用することができる。それを用いて医薬組成物を調製および投与することができる好適な充填剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、およびその誘導体、ならびにこれに類するもの、または好適な量で使用されるそれらの混合物が挙げられる。
【0094】
非経口投与については、DMT塩および塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を含む、水性懸濁液、等張生理食塩水溶液、および滅菌注射溶液が使用されてもよく、プロピレングリコールまたはブチレングリコールなどの薬学的に許容可能な分散剤および/または湿潤剤を含有する。
【0095】
本開示はまた、組成物のために好適な包装材料と組み合わせられた本明細書に記述されるような医薬組成物も提供し、包装材料は、医薬組成物の使用のための指導を含む。
【0096】
鼻腔内投与のために好適なDMT塩および塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を含む医薬組成物としては、活性成分が液体担体中に存在する組成物が挙げられる。様々な実施形態では、組成物は、水溶液または非水溶液、懸濁液、リポソーム分散液、エマルション、マイクロエマルション、またはゾルゲルの形態であってもよい。担体は、可溶化剤(例えば、プロピレングリコール)、界面活性剤、レシチン(ホスファチジルコリン)またはシクロデキストリンなどの吸収促進剤、粘膜付着剤、および/またはパラベンなどの防腐剤などの添加剤を含有することができる。鼻腔内製剤を作製するための当技術分野で周知の方法は、例えば、Remington,2000に見出される場合がある。さらに、鼻腔内の活性薬剤の存在を延長すること、溶解度を高めるための薬剤と組み合わせること、およびバイオアベイラビリティを増加させることなどを含む、鼻腔内投与のための化合物を製剤化するための方法が周知である。
【0097】
頬側投与および舌下投与のために好適なDMT塩および塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を含む医薬組成物としては、速溶性錠剤、ウエハース、フィルム、ストリップもしくはパッチ、口内分散性錠剤、経口ゲル、薬用ロリポップ、スプレー、ドロップ、および頬側または舌下粘膜の表面上に保持される他の製剤が挙げられる。
【0098】
皮下投与のために好適なDMT塩および塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を含む医薬組成物は、単位剤形で(例えば、単回投与アンプルで)、または数回の用量を含有し、かつ好適な防腐剤が添加されてもよいバイアルで提供されてもよい(下記を参照のこと)。組成物は、好都合なことに、溶液、懸濁液、またはエマルションの形態であってもよく、または使用する前に水もしくは別の好適なビヒクルで再構成される乾燥粉末として提示されてもよい。DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)は別として、組成物は、好適な非経口的に許容可能な担体および/または賦形剤を含んでもよい。その上、組成物は、懸濁剤、可溶化剤、安定化剤、pH調整剤、および/または分散剤を含んでもよい。
【0099】
本開示の医薬組成物としては、1つ以上の賦形剤、希釈剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、崩壊剤、減感剤、乳化剤、粘膜接着剤、可溶化剤、懸濁剤、粘度調整剤、イオン性等張化剤、緩衝剤、担体、界面活性剤、またはそれらの混合物が挙げられてもよい。本開示の医薬組成物はまた、透過促進剤、生体接着性ポリマーなどの構成要素、および活性成分の徐放性などの調節放出を提供するための手段も含んでもよい。組成物はまた、1つ以上の薬学的に許容可能な風味剤または他の味覚マスキング剤も含むことができる。
【0100】
DMTのインビボ放出速度およびインビボクリアランスは、当技術分野で周知の手段によって影響を受ける場合がある。例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどの高分子化合物の微粒子調製物中への、または微粒子調製物上への組み込み、またはリポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単層状または多層状小胞、赤血球ゴースト、またはスフェロプラストへの活性材料の組み込み。また、化合物が、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、ククルビツリル、ポリビニルピロリドン、またはポリプロリンなどの水溶性ポリマーの共有結合によって修飾されることも、本明細書において理解される。修飾された化合物は、対応する未修飾化合物よりも、投与後の血液中で実質的に長い半減期を示す場合がある。
【0101】
採用される送達装置に応じて、薬剤製品、すなわちDMTの約25%~約100%の送達が達成される場合がある。しかしながら、当業者であれば理解するように、送達される量は採用される送達装置の効率に依存するので、薬剤送達装置の性質に起因して、すべての薬剤が必ずしも送達されるわけではないことが理解される。それ故に、明瞭性のために、送達される薬剤製品の約25%~約100%は、選択された薬剤送達方法および/または装置に依存することが理解される。したがって、送達される薬剤製品の100%は、薬剤製品のすべてではない場合があるが、選択された装置が送達する能力を有する薬剤製品のすべてである。
【0102】
鼻腔内組成物
錠剤またはカプセルなどの経口剤形に対して、鼻腔内送達は、急速な吸収、治療作用のより速い発現、および腸壁または肝臓の初回通過代謝の回避を提供する。錠剤、カプセル、もしくは他の固体の嚥下に困難を有する患者、または腸不全を有する患者については、鼻腔内送達経路が好ましい場合がある。
【0103】
経鼻投与のための本開示の組成物は、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を含み、また任意選択で、経鼻投与後の活性成分の経鼻吸収を促進する吸収促進剤などの担体および賦形剤、ならびに経鼻投与後の薬剤の脳浸透を改善する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない、他の成分も含むことができる。その他の任意選択の賦形剤としては、希釈剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、崩壊剤、減感剤、乳化剤、粘膜接着剤、可溶化剤、懸濁剤、粘度調整剤、イオン性等張化剤、緩衝剤、担体、風味剤、およびそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、活性成分の粒子サイズは、約60マイクロメートル以下であり、これは、粒子と他の成分との任意の混合の均一性を確実にする、または液体ビヒクル中に適切な分散を提供するのに役立つことができる。
【0104】
吸収される薬剤の量は、数多くの要因に依存する。これらの要因としては、薬剤濃度、薬剤送達ビヒクル、粘膜接触時間、粘膜組織の静脈排出、薬剤が吸収部位のpHでイオン化される程度、薬剤分子のサイズ、およびその相対脂質溶解度が挙げられる。当業者であれば、これらの要因を考慮に入れて、適切な量の活性薬剤を送達する適切な鼻腔内組成物を容易に調製することができる。
【0105】
正常な粘膜表面(鼻粘膜または頬側粘膜など)を横切る活性成分の輸送は、任意選択的に吸収促進剤と組み合わせることによって強化することができる。これらの吸収促進剤の例としては、カチオン性ポリマー、表面活性薬剤、キレート化剤、粘液溶解薬、シクロデキストリン、高分子ヒドロゲル、それらの組み合わせ、および当業者に知られている任意の他の類似の吸収促進剤が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な吸収促進賦形剤としては、ホスファチジルグリセロールまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、もしくはリゾホスファチジン酸などのリゾホスファチジル誘導体、グリセロールまたはプロピレングリコールなどのポリオール、グリセリド、アミノ酸、およびそれらのエステルなどのその脂肪酸エステル、ならびにシクロデキストリンが挙げられる。ゲル化賦形剤または粘度増加賦形剤も使用することができる。
【0106】
正常な粘膜表面を横切る活性成分の輸送はまた、製剤が粘膜表面に付着する時間を増加させることによっても強化することができる。粘膜付着性/生体接着ポリマー、例えば、ヒドロゲルを形成するポリマーは、粘膜付着および制御された薬剤放出特性を呈し、また鼻腔内または頬側に本明細書に記述される組成物を含むことができる。鼻粘膜に結合する能力を有する代表的な生体接着またはヒドロゲル形成ポリマーは、当業者に周知であり、そしてポリカルボフィル、ポリリシン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ペクチン、カルボポール934P、ポリエチレンオキシド600K、プルロニックF127および/またはプルロニックF-68などの1つ以上のポロキソマー(poloxomer)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン(PIP)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、キサンタンガム、グアーガム、およびローカストビーンガム、が挙げられる。他の経鼻送達組成物はキトサン系であり、また活性成分の粘膜の表面上での滞留時間を増加させるのに好適であり、結果として、そのバイオアベイラビリティが増加する。粘液膜のシステインに富むサブドメインと共有結合を形成するチオール化高分子賦形剤はまた、活性成分と膜との間の接触時間を延長する粘膜付着性を提供することができる。
【0107】
鼻腔内組成物はまた、1つ以上の防腐剤も含むことができる。代表的な防腐剤としては、塩化ラウラルコニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾドデシニウム、塩化セチルピリジウム、セトリミド、臭化ドミフェンなどの四級アンモニウム塩、ベンジルアルコール、クロロブタノール、o-クレゾール、フェニルエチルアルコールなどのアルコール、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラベンなどの有機酸もしくはその塩、またはEDTAなどの複合形成剤が挙げられる。
【0108】
担体および賦形剤としては、カルボン酸残基、カルボキシメチル基、スルホプロピル基、およびメチルスルホネート基などの好適な陰イオン基を担持するイオン交換マイクロスフェアが挙げられる。陽イオン交換体などのイオン交換樹脂も使用することができる。部分的に脱アセチル化されたキチンであるキトサン、またはポリ-N-アセチル-D-グルコサミン、またはその薬学的に許容可能な塩、例えば塩酸塩、乳酸塩、グルタミン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、またはコハク酸塩。非イオン交換マイクロスフェアとして使用するために好適な他の成分としては、デンプン、ゼラチン、コラーゲン、およびアルブミンが挙げられる。
【0109】
組成物は、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびこれに類するものなどの他の成分も含むことができる。塩化ナトリウム、グルコース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、ラクトースおよびこれに類するものなどの、組成物の張性を調整する賦形剤が添加されてもよい。酸性または塩基性の緩衝剤を鼻腔内組成物に添加して、pHを制御することもできる。
【0110】
粘膜を通した活性薬剤の輸送を増加させる吸収促進剤の使用、および粘膜に沿った活性薬剤の接触時間を延長する生体接着材料の使用に加えて、活性薬剤の投与は、制御放出製剤を使用することによって制御することができる。活性成分を含み、そしてそれらを制御された様態で送達することができる、当業者に知られている多数の微粒子薬剤送達ビヒクルがある。例としては、微粒子高分子薬剤送達ビヒクル、例えば生分解性ポリマー、および非ポリマー構成成分から形成された粒子が挙げられる。これらの微粒子薬剤送達ビヒクルは、粉末、微小粒子、ナノ粒子、マイクロカプセル、リポソーム、およびこれに類するものの形態とすることができる。典型的に、活性薬剤が、添加された構成成分を有しない微粒子形態である場合、その放出速度は、活性薬剤自体の放出に依存する。典型的に、吸収速度は、粒子が直径20マイクロメートルを下回る、微粒化した形態で薬剤を提示することによって強化される。対照的に、活性薬剤が活性薬剤とポリマーのブレンドとして微粒子形態である場合、活性薬剤の放出は、ポリマーの除去によって、典型的にはポリマーマトリクスからの溶解、生分解、または拡散によって、少なくとも部分的に制御される。
【0111】
鼻腔内送達
鼻腔内送達装置は当技術分野で知られている。それ故に、鼻粘膜への薬剤の送達のために好適な任意の装置が使用されてもよい。液体組成物の投与に有用な装置の非限定的な例としては、蒸気装置(例えば、蒸気吸入器)、滴下装置(例えば、カテーテル、単回投与点滴器、複数回投与点滴器、および単位用量ピペット)、機械的スプレーポンプ装置(例えば、スクイズボトル、複数回投与定量スプレーポンプ、および単回/二回投与スプレーポンプ)、双方向スプレーポンプ(例えば、呼吸作動経鼻送達装置)、ガス駆動スプレーシステム/アトマイザー(例えば、単回投与もしくは複数回投与HFAまたは窒素噴射剤駆動定量吸入器、従来のおよび円周速度吸入器を含む)、および電動式ネブライザー/アトマイザー(例えば、パルス膜ネブライザー、振動機械的ネブライザー、および手持ち式機械的ネブライザー)が挙げられる。粉末組成物(例えば、凍結乾燥または別の方法で乾燥したプールされた組成物)の投与のために有用な装置の非限定的な例としては、機械的粉末噴霧器(例えば、手動作動カプセルベースの粉末スプレー装置および手動作動粉末スプレー装置、手動作動ゲル送達装置)、呼吸作動吸入器(例えば、単回投与または複数回投与経鼻吸入器およびカプセルベースの単回投与または複数回投与の経鼻吸入器)、および気腹装置(例えば、呼吸作動経鼻送達装置)が挙げられる。
【0112】
鼻腔内送達のための定量スプレーの使用はまた、スプレーとして投与することができる好適な媒体中の溶液または分散液中に活性成分を含むことによって達成することができる。このタイプの代表的な装置は、以下の特許、特許出願、および出版物に開示されている。国際公開第03/026559号、同第02/011800号、同第00/51672号、同第02/068029号、同第02/068030号、同第02/068031号、同第02/068032号、同第03/000310号、同第03/020350号、同第03/082393号、同第03/084591号、同第03/090812号、同第00/41755号、および薬学的な文献(Bell,A.Intranasal Delivery Devices,in Drug Delivery Devices Fundamentals and Applications,TyIe P.(ed),Dekker,New York,1988を参照のこと)、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,1975、そのすべては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
前述のものに加えて、塩/塩形態はまた、当技術分野で知られているように、灌注および圧注の形態で鼻腔内に投与することもできる。鼻灌注には、薬剤を含む溶液で鼻腔を定期的に浸漬することが関与する。鼻圧注は典型的に、薬剤を含む溶液で鼻圧注を充填し、圧注から一つの鼻孔の中へとノズルを挿入し、対象者の口を開いて呼吸し、そして溶液を一方の鼻孔の中へと流し、隔壁の周りですすぎ、そしてもう一方の鼻孔から排出することによって使用される。
【0114】
篩状などの鼻腔の上方部分に薬剤を送達する手段は、本明細書において特に関心があるものである。また、三叉神経経路に沿った薬剤の送達も関心があるものである。
【0115】
頬側組成物および舌下組成物および送達
錠剤またはカプセルなどの経口剤形に対して、経口経粘膜的送達は、鼻腔内送達のように、急速な吸収、治療作用のより速い発現、および肝臓または腸壁の初回通過代謝の回避を提供する。錠剤、カプセル、もしくは他の固体の嚥下に困難を有する患者、または腸不全を有する患者については、頬側送達または舌下送達経路が好ましい。
【0116】
頬側投与または舌下投与のための組成物としては、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)、および固体剤形を形成するための少なくとも1つの賦形剤が挙げられる。固体剤形は、口腔内または舌下で、最小限の液体曝露および体温で分解し、そして理想的には、組織への直接的な接着を介して、または頬側投与の場合には、歯茎と内側頬との間への剤形の閉じ込めを介して、口腔の体組織または舌下の組織に付着する。固体剤形は、流体、唾液、機械的侵食、またはそれらの組み合わせの補助を用いて、または用いないで、体温で分解または溶融する。別の方法として、剤形は、口腔の中へ、または舌の下に溶液スプレーまたは乾燥粉末の形態でスプレーすることができる。一般的に、組成物は、患者の口腔の内側にある身体組織、または舌の下に向かう接着剤であることができる。
【0117】
剤形は、錠剤、生体接着パッチまたはフィルム、スポンジ、薬用キャンディー、ハードキャンディー、ウエハース、ロリポップ、スプレー、ガム、丸薬、ペレット、球、それらの組み合わせ、および当業者に知られている他の形態とすることができるが、これらに限定されない。
【0118】
頬側または舌下フィルムは、本開示の医薬組成物を投与するための特に好都合なビヒクルを表す。フィルムの例としては、一態様では、粘膜付着性ポリマー中のDMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を含む組成物が挙げられる。好適な粘膜付着性ポリマーとしては、セルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、トラガカント、アルギン酸塩、ガム(カラヤガム、グアーガム、キサンタンガムを含む)、可溶性デンプン、ゼラチン、レクチン、ペクチン、およびキトサンから選択される1つ以上のポリマーが挙げられる。一部の実施形態では、粘膜付着性ポリマーは、親水性ポリマー、多糖類およびその誘導体、ならびにヒドロゲルから選択される1つ以上のポリマーを含む。一部の実施形態では、粘膜付着性ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、セルロース、例えば、カルボキシセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシエチルエチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、およびポリビニルアルコールから選択される1つ以上のポリマーを含む。一部の実施形態では、粘膜付着性ポリマーは、カルボポール(ポリアクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびガムから選択される1つ以上のポリマーを含む。一部の実施形態では、粘膜付着性ポリマーは水膨潤性である。典型的に、粘膜付着性ポリマーは、フィルム組成物の約15重量%~約60重量%の量で存在する。
【0119】
フィルム組成物は、透過促進剤および/または抗酸化剤をさらに含むことができる。例えば、一部の実施形態では、フィルム組成物は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オレイン酸アルコール、オレイン酸、オレイン酸オレイル、レブリン酸、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノール、および界面活性剤から選択される1つ以上の透過促進剤を含む、透過促進剤を含む。一部の実施形態では、透過促進剤は、フィルム組成物の約5重量%~約30重量%の量で存在する。一部の実施形態では、フィルム組成物は、抗酸化剤、例えば、トコフェロールアセテートを含む。
【0120】
一部の実施形態では、フィルム組成物は、二重層または多層フィルム組成物を形成することができる。典型的に、こうした二重層または多層フィルムは、二相性放出プロファイルを提供することができ、これはある特定の状況では有利であり得る。一部の実施形態では、速放性フィルム層は水溶性ポリマーを含む。一部の実施形態では、速放性フィルム中の水溶性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポビドン、ポリビニルアルコール(PVA)、低分子量ポリエチレンオキシド(Dow Chemicalによって供給されるPoly Ox N10などのPEO)、およびデンプン系ポリマー(Roquetteによって製造されるLycoat)から選択される1つ以上のポリマーを含む。一部の実施形態では、速放性フィルムは、任意選択で、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オレイン酸アルコール、オレイン酸、オレイン酸オレイル、レブリン酸、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノール、および界面活性剤から選択される1つ以上の透過促進剤を含む、透過促進剤も含むことができる。一部の実施形態では、速放性フィルムはまた、任意選択で、トコフェロールアセテートなどの抗酸化剤も含むことができる。
【0121】
活性成分の頬側送達または舌下送達のために好適な多数の組成物および送達ビヒクルがある。DMTまたはその薬学的に許容可能な塩に加えて、剤形の他の構成成分としては、デンプン、マンニトール、カオリン、硫酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩、粉末セルロース誘導体、二塩基性および三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポリエチレンオキシドなどのポロクサマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アニオン性賦形剤、カチオン性賦形剤、両性イオン性賦形剤、こうした賦形剤については参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,436,950号を参照しながら、高分子ヒドロゲル、粉末マイクロスフェア粘膜付着性組成物、チオール化高分子賦形剤、ポリカチオン性材料、キトサン、架橋デンプン、脂肪、炭水化物、ポリオール、緩衝剤、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、メトセル(methocel)、塩化ナトリウム、水、乳酸、塩化ベンザルコニウム、脱塩水、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、水素化植物油、風味剤、リン脂質、キシリトール、カカオ、それらの組み合わせ、および当業者に知られているその他の類似の賦形剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
透過促進剤も存在することができる。代表的な透過促進剤としては、23-ラウリルエーテル、アプロンチニン(aprontinin)、アゾン、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、シクロデキストリン、硫酸デキストラン、ラウリン酸、リゾホスファチジルコリン、メントール、メトキシサリチル酸ナトリウム、オレイン酸メチル、オレイン酸、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン、ポリソルベート(polysorbatc)、EDTAナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム(sodium glycodeoxyocholate)、ラウリル硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、スルホキシド、短鎖および中鎖のモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド、ならびに他のポリオールエステル、および様々なアルキルグリコシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
結合剤も存在することができる。好適な結合剤としては、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシメチルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ポリビニルプロリドン、ゼラチン、ポリエチレングリコール、デンプン、天然ガム(アカシア、アルギネート、グアー、およびアラビアゴムなど)、ならびに合成ガムおよびワックスが挙げられるがこれらに限定されない、セルロースなどの物質が挙げられる。
【0124】
皮下組成物および送達
皮下投与については、水性懸濁液、等張食塩水溶液、および滅菌注射溶液が使用されてもよく、任意選択で、プロピレングリコールまたはブチレングリコールなどの分散剤および/または湿潤剤を含んでもよい、薬学的に許容可能な賦形剤を含有する。加えて、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製されてもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してもよい。任意選択で、懸濁液はまた、高度に濃縮した溶液の調製を可能にするために、塩/塩形態の溶解度を増加させる好適な安定剤または薬剤も含有してもよい。別の方法として、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)は、使用する前の、好適なビヒクル、例えば、滅菌された発熱物質を含まない水を用いた構成のための粉末形態であってもよい。溶液または懸濁液は、周知の装置および技法を使用して、注射によって対象に皮下投与されてもよい。自己投与を可能にする場合がある自動注射器を含む、任意の適切なシリンジを好都合なことに使用してもよい。
【0125】
投薬
神経性疾患または病態を有する患者に投与されるDMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)の用量は、本明細書で画定するように、典型的に、約0.1mg/kg~約1mg/kgである。典型的なヒト用量(50~80kgの体重の成人に対する)は、約5mg~約80mgの用量と等しいことになる。一実施形態では、用量は、約20~60mg、約30~60mg、約40~60mg、またはその間の任意の特定の量など、約10mg~約60mgであり、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、30mg、31mg、32mg、33mg、34mg、35mg、36mg、37mg、38mg、39mg、40mg、41mg、42mg、43mg、44mg、45mg、46mg、47mg、48mg、49mg、50mg、51mg、52mg、53mg、54mg、55mg、56mg、57mg、58mg、59mg、および60mgを含む。本開示では、「約20~60mg」など、範囲が記載される場合、発明者は、その範囲内の全ての個別の値を企図するが、その一部は具体的に述べられるが、単に簡潔性の目的のために、そのすべては述べられない。
【0126】
特定の実施形態では、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)は、24時間の期間にわたる1回以上の用量、例えば、1、2、3、4、または5回の用量で患者に投与されてもよい。しかしながら、対象に投与される総用量は、24時間にわたって約100mgを超えてはならない。
【0127】
使用
一態様では、本開示は、神経性疾患または病態の治療において使用するために、DMTコハク酸塩、DMTリンゴ酸塩、DMT硫酸塩、およびDMTリン酸塩から選択されるDMT塩(例えば、DMTコハク酸塩)を提供する。
【0128】
一態様では、本開示は、神経性疾患または病態の治療において使用するために、DMTフマル酸塩形態A、DMTコハク酸塩形態A、DMTリンゴ酸塩形態A、DMTシュウ酸塩形態A、およびDMT硫酸塩形態Aから選択されるDMT塩形態(例えば、DMTコハク酸塩形態A)を提供する。
【0129】
一態様では、本開示は、有効量のDMTコハク酸塩、DMTリンゴ酸塩、DMT硫酸塩、およびDMTリン酸塩から選択されるDMT塩(例えば、DMTコハク酸塩)を対象へと投与することを含む、神経性疾患または病態を治療する方法を提供する。
【0130】
一態様では、本開示は、有効量のDMTフマル酸塩形態A、DMTコハク酸塩形態A、DMTリンゴ酸塩形態A、DMTシュウ酸塩形態A、およびDMT硫酸塩形態Aから選択されるDMT塩形態(例えば、DMTコハク酸塩形態A)を対象へと投与することを含む、神経性疾患または病態を治療する方法を提供する。
【0131】
本開示のDMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を投与するために、DMTフマル酸塩を投与するために一般的に使用可能な任意の好適な方法を使用してもよい。好都合なことに、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)は、経口的に、非経口的に、経粘膜的に、鼻腔内で、頬側で、または舌下で投与されてもよい。一態様では、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)は、非経口的に、例えば、静脈内または筋肉内注射によって投与されてもよい。
【0132】
上記の態様のうちのいずれか1つでは、神経性疾患または病態は、例えば、精神神経障害である場合がある。
【0133】
DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)で治療される場合がある精神神経障害の例としては、うつ病(例えば、TRD)、不安、双極性障害、外傷後ストレス障害、上記の病態を含む気分または感情の異常、気分変調、統合失調性感情障害、統合失調症およびその他の精神病性障害、パニック障害、外傷性ストレス障害、恐怖性障害、気分異常を伴う摂食障害およびパーソナリティ障害(境界性パーソナリティ障害、統合失調および統合失調型障害ならびに自殺念慮など)、または、反芻/非生産的な反復的な考えが、人の挙動/気分/集中する能力に悪影響を与えることが挙げられる。
【0134】
上記の態様のうちのいずれか1つでは、神経性疾患または病態は、例えば、嗜癖である場合がある。
【0135】
DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)で治療される場合がある嗜癖の例としては、ニコチン、アルコール、コカイン、オピオイド、アンフェタミン、メタンフェタミン、ヘロイン、モルヒネ、フェンシクリジン、3,4-メチレンジオキシ-メタンフェタミンだけでなく、他の嗜癖物質への嗜癖などの物質使用障害が挙げられる。
【0136】
上記の態様のうちのいずれか1つでは、神経性疾患または病態は、例えば、嗜癖行動である場合がある。
【0137】
DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)で治療される場合がある嗜癖行動の例としては、摂食、ギャンブル、セックス、ポルノ、ビデオゲーム、仕事、エクササイズ、霊的な強迫観念、自傷、旅行、およびショッピングに対する嗜癖が挙げられる。
【0138】
特定の実施形態では、本開示は、対象に有効量のDMTコハク酸塩、DMTリンゴ酸塩、DMT硫酸塩、およびDMTリン酸塩から選択されるDMT塩(例えば、DMTコハク酸塩)を投与することを含む、うつ病(治療抵抗性うつ病、大うつ病性障害および持続性うつ病性障害、緊張性うつ病、医学的状態によるうつ病性障害、または産後うつ病などの重度のうつ病を含む)を治療する方法を提供する。一実施形態では、DMT塩は、経粘膜的に(例えば、頬側、舌下、または鼻腔内)投与されてもよい。
【0139】
特定の実施形態では、本開示は、対象に有効量のDMTフマル酸塩形態A、DMTコハク酸塩形態A、DMTリンゴ酸塩形態A、DMTシュウ酸塩形態A、およびDMT硫酸塩形態Aから選択されるDMT塩形態(例えば、DMTコハク酸塩形態A)を投与することを含む、うつ病(治療抵抗性うつ病、大うつ病性障害および持続性うつ病性障害、緊張性うつ病、医学的状態によるうつ病性障害、または産後うつ病などの重度のうつ病を含む)を治療する方法を提供する。一実施形態では、DMT塩形態は、経粘膜的に(例えば、頬側、舌下、または鼻腔内)投与されてもよい。
【0140】
特定の実施形態では、本開示は、対象に有効量のDMTコハク酸塩、DMTリンゴ酸塩、DMT硫酸塩、およびDMTリン酸塩から選択されるDMT塩(例えば、DMTコハク酸塩)を皮下投与することを含む、うつ病(治療抵抗性うつ病、大うつ病性障害および持続性うつ病性障害、緊張性うつ病、医学的状態によるうつ病性障害、または産後うつ病などの重度のうつ病を含む)を治療する方法を提供する。
【0141】
特定の実施形態では、本開示は、対象に有効量のDMTフマル酸塩形態A、DMTコハク酸塩形態A、DMTリンゴ酸塩形態A、DMTシュウ酸塩形態A、およびDMT硫酸塩形態Aから選択されるDMT塩形態(例えば、DMTコハク酸塩形態A)を皮下投与することを含む、うつ病(治療抵抗性うつ病、大うつ病性障害および持続性うつ病性障害、緊張性うつ病、医学的状態によるうつ病性障害、または産後うつ病などの重度のうつ病を含む)を治療する方法を提供する。
【0142】
併用療法
本明細書に記述される方法は、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を唯一の活性成分として投与することを含む。しかしながら、1つ以上の追加の薬剤と組み合わせてDMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を投与することを含む、神経性疾患または病態を治療するための方法も、本開示の範囲内に包含される。
【0143】
一態様では、これらの追加的な薬剤は、当技術分野で知られているように、治療される疾患または障害のために適切な治療薬である。一部の実施形態では、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)は、SSRI、三環系抗うつ薬(TCA)、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)、またはセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)などの1つ以上の抗うつ薬または抗不安薬と組み合わせて対象に投与されてもよい。
【0144】
一部の実施形態では、本開示は、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を用いた治療を受けている対象における不安を低減する方法を提供し、方法は、i)DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)およびii)1つ以上のベンゾジアゼピンを対象に投与することを含む。
【0145】
一部の実施形態では、1つ以上のベンゾジアゼピンは、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)と同時に、またはほぼ同時に対象に投与される。一部の実施形態では、1つ以上のベンゾジアゼピンは、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)の投与前に、例えば、シロシビンまたはその前駆体もしくはその誘導体の投与の、約10分、約15分、約20分、約30分、約45分、約60分、約75分、約90分、約105分、約120分、約150分、または約180分前などに、対象に投与される。一部の実施形態では、1つ以上のベンゾジアゼピンは、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)の後、例えば、シロシビンまたはその前駆体もしくはその誘導体の投与の、約10分、約15分、約20分、約30分、約45分、約60分、約75分、約90分、約105分、約120分、約150分、または約180分後などに、対象に投与される。
【0146】
一部の実施形態では、ベンゾジアゼピンは、アジナゾラム、アルプラゾラム、ベンタゼパム、ブレタゼニル、ブロマゼパム、ブロマゾラム、ブロチゾラム、カマゼパム、クロルジアゼポキシド、シナゼパム、シノラゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロナゾラム、クロラゼプ酸、クロチアゼパム、クロキサゾラム、デロラゼパム、デスクロロエチゾラム、ジアゼパム、ジクラゼパム、エスタゾラム、カルフルゼプ酸エチル、ロフラゼプ酸エチル、エチゾラム、フルアルプラゾラム、フルブロマゼパム、フルブロマゾラム、フルクロチゾラム、フルニトラゼパム、フルニトラゾラム、フルラゼパム、フルタゾラム、フルトプラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メクロナゼパム、メダゼパム、メチゾラム、メキサゾラム、ミダゾラム、ニホキシパム、ニメタゼパム、ニテマゼパム、ニトラゼパム、ニトラゾラム、ノルジアゼパム、ノルフルラゼパム、オキサゼパム、フェナゼパム、ピナゼパム、プラゼパム、プレマゼパム、ピラゾラム、クアゼパム、リルマザホン、テマゼパム、テトラゼパム、およびトリアゾラムからなる群から選択される。
【0147】
ある特定の実施形態では、患者は、1つ以上の5-HT2A特異的拮抗薬および/または逆作動薬と共に、本明細書に記述されるようなDMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を投与される。一部の実施形態では、患者は、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)と、1つ以上の5-HT2A特異的拮抗薬および/または逆作動薬とを同時に投与される。他の実施形態では、患者は、1つ以上の5-HT2A特異的拮抗薬および/または逆作動薬を、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)の投与前に、約10分、約15分、約20分、約30分、約45分、約60分、約75分、約90分、約105分、約120分、約150分、または約180分前など、しかしこれらに限定されない、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)の投与前に、投与される。一部の実施形態では、患者は、1つ以上の5-HT2A特異的拮抗薬および/または逆作動薬を、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)の投与後に、約10分、約15分、約20分、約30分、約45分、約60分、約75分、約90分、約105分、約120分、約150分、または約180分後など、しかしこれらに限定されない、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)の投与後に、投与される。
【0148】
好適な5-HT2A拮抗薬としては、トラゾドン、ミルタザピン、メテルゴリン、ケタンセリン、リタンセリン、ネファゾドン、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、アセナピン、MDL-100907、シプロヘプタジン、ピゾチフェン、LY-367,265、2-アルキル-4-アリール-テトラヒドロ-ピリミド-アゼピン、9-アミノメチル-9,10-ジヒドロアントラセン(AMDA)、ハロペリドール、クロルプロマジン、ヒドロキシジン(アタラックス)、5-MeO-NBpBrT、ニアプラジン、アルタンセリン、アリピプラゾール、エトペリドン、セトペロン、クロルプロチキセン、シナセリン(cinaserin)、アダタンセリン、メジホキサミン、ラウオルシン、フェノキシベンザミン、プルバンセリン、デラムシクラン、ネロタンセリン、ルバゾドン、メピプラゾール、キシラミジン、R-(+)-アルファ-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-[2-(4-フルオロフェネチル)]-4-ピペリジンメタノール(M100907)、ミアンセリン、AT 1015、DV 7028、エプリバンセリン、4F 4PP、ファナセリン、アルファ-フェニル-1-(2-フェニルエチル)-4-ピペリジンメタノール(MDL 1 1,939)、メルペロン、メスレルギン、パリペリドン、1-[2-(3,4-ジヒドロ-1/-/-2-ベンゾピラン-1-イル)エチル]-4-(4-フルオロフェニル)ピペラジンジヒドロクロリド(PNU 96415E)、(2R,4R)-5-[2-[2-[2-(3-メトキシフェニル)エチル]フェノキシ]エチル]-1-メチル-3-ピロリジノール(R-96544)、サルポグレラート、スピペロン、ジプラシドン、ゾテピン、および7-[[4-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-1-ピペラジニル]カルボニル]-1-インドール-3-カルボニトリル(EMD 281014)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
好適な5-HT2A逆作動薬としては、AC-90179、ネロタンセリン(APD-125)、エプリバンセリン、ピマバンセリン(ACP-103)、およびボリナセリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
一部の実施形態では、本開示は、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)を用いた治療を受けている患者における外傷性幻覚体験と関連付けられた負の副作用を低減する方法を提供する。一態様では、方法は、i)DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)と、ii)1つ以上の5-HT2A特異的拮抗薬および/または逆作動薬と、を患者に投与することを含む。別の態様では、方法は、i)DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)と、ii)1つ以上のカンナビノイドまたはカンナビノイド誘導体と、を患者に投与することを含む。
【0151】
一部の実施形態では、カンナビノイドは、THC(テトラヒドロカンナビノール)、THCA(テトラヒドロカンナビノール酸)、CBD(カンナビジオール)、CBDA(カンナビジオール酸)、CBN(カンナビノール)、CBG(カンナビゲロール)、CBC(カンナビクロメン)、CBL(カンナビシクロール)、CBV(カンナビバリン)、THCV(テトラヒドロカンナビバリン)、CBDV(カンナビジバリン)、CBCV(カンナビクロメバリン)、CBGV(カンナビゲロバリン)、CBGM(カンナビゲロールモノメチルエーテル)、CBE(カンナビエルソイン)、およびCBT(カンナビシトラン)からなる群から選択される。特定の実施形態では、カンナビノイドは、CBD(カンナビジオール)である。
【0152】
投与レジメンは、最適な望ましい応答を提供するように調整されてもよい。治療用量は、安全性および有効性を最適化するために、当業者に知られている日常の方法を使用して滴定されてもよい。
【0153】
本開示のさらなる態様では、うつ病(例えば、TRD)、不安、または嗜癖などの精神神経疾患または障害を治療するとき、心理療法と併せて本開示の組成物が投与されてもよい。トークセラピー、認知行動療法、疑似体験療法、バイオフィードバック療法(例えば、EEG支援療法および仮想現実支援療法)、系統的脱感作、マインドフルネス、弁証法的行動療法、対人関係療法、眼球運動による脱感作および再処理、社会リズム療法、アクセプタンス・コミットメント・セラピー、家族焦点化療法、精神力動療法、光線療法、コンピュータ療法(デジタル認知行動療法を含む)、認知改善、エクササイズ、または経頭蓋磁気刺激(TMS)などの他のタイプの療法が挙げられる。一実施形態では、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)は、例えば、デジタルプログラムDEPREXIS(登録商標)を使用して、デジタル認知行動療法と併せてうつ病を治療するために投与されてもよい。一実施形態では、DMT塩または塩形態(例えば、DMTコハク酸塩結晶形態A)は、診断横断的アプローチ(J Consult Clin Psychol.2020 Mar;88(3):179-195を参照のこと)を使用する療法と併せて(例えば、うつ病または不安を治療するために)投与されてもよい。
【0154】
本明細書に引用されるすべての参考資料、記事、出版物、特許、特許公開、および特許出願は、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。しかしながら、本明細書の任意の参考資料、記事、出版物、特許、特許公開、および特許出願の言及は、それらが有効な先行技術を構成する、または世界中のどの国においても共通の一般的知識の一部を形成するという承認またはいかなる形態の提案としても受け取られるものではなく、またそうされるべきではない。
【0155】
以下の実施例では、製品試料を以下の方法論に従って分析した。
XRPD: XRPDパターンを、長い微細焦点源を使用して生成されたCu放射の入射ビームを使用して、PANalytical X’Pert PRO MPDまたはPANalytical Empyrean回折計を用いて収集した。楕円形の段階的多層ミラーを使用して、標本を通し、そして検出器の上へとCu Kα X線を合焦させた。分析の前に、シリコン標本(NIST SRM 640f)を分析して、Si 111ピークの観察された位置がNIST認定された位置と一致していることを検証した。試料の標本を3μmの厚さのフィルムの間に挟み、透過形状で分析した。ビームストップ、短い散乱防止延長、および散乱防止ナイフエッジを使用して、空気によって生成されたバックグラウンドを最小化した。入射ビームおよび回折ビーム用のソーラスリットを使用して、軸方向の発散からの広がりおよび非対称性を最小化した。回折パターンを、標本およびData Collectorソフトウエアv.5.5から240mmに位置する走査位置感知検出器(X’Celerator)を使用して収集した。データ取得パラメータは、本明細書に表示される各パターンの画像内にリストされる。
可変温度XRPD:XRPDパターンを、長い微細焦点源およびニッケルフィルタを使用して生成されたCu Kα放射の入射ビームを使用して、PANalytical X’Pert PRO MPD回折計を用いて収集した。回折計は、対称ブラッグ・ブレンターノ配置を使用して構成された。Data Collectorソフトウエアv.2.2bを使用して、データを収集し、そして分析した。分析の前に、シリコン標本(NIST SRM 640f)を分析して、Si 111ピークの観察された位置がNIST認定された位置と一致していることを検証した。試料の標本をニッケル被覆した銅ウェル内に充填した。散乱防止スリット(SS)を使用して、空気によって生成されるバックグラウンドを最小化した。入射ビームおよび回折ビーム用のソーラスリットを使用して、軸方向の発散からの広がりを最小化した。回折パターンを、試料およびData Collectorソフトウエアv. 2.2bから240mmに位置する走査位置感知検出器(X’Celerator)を使用して収集した。各パターンに対するデータ取得パラメータは、発散スリット(DS)および入射ビーム散乱防止スリット(SS)を含んで、本明細書に表示される。アントンパール温度湿度チャンバ(THC)を使用して、温度の関数としてインサイチューXRPDパターンを収集した。標本の温度を、標本ホルダーの真下に位置するペルチェ熱電装置を用いて変化させ、そして標本ホルダー内に位置する白金-100抵抗センサーを用いてモニターした。熱電装置は、データ収集器とインターフェース接続されたアントンパールTCU50によって電力供給され、かつ制御された。
TGA: TGAは、Mettler-Toledo TGA/DSC3+分析器を使用して実施された。温度およびエンタルピー調整を、インジウム、スズ、および亜鉛を使用して実施し、次いでインジウムを用いて検証した。バランスをシュウ酸カルシウムを用いて検証した。試料を、開放アルミニウムパン内に定置した。次いで、パンをTG炉の中へと挿入した。試料パンとして構成された秤量されたアルミニウムパンを、基準プラットフォーム上に定置した。炉を窒素下で加熱した。試料を、10℃/分で、25℃から350℃まで分析した。
DSC:DSCは、Mettler-Toledo DSC3+示差走査熱量計を使用して実施された。タウラグ調整は、インジウム、スズ、および亜鉛を用いて実施される。温度およびエンタルピーは、オクタン、サリチル酸フェニル、インジウム、スズ、および亜鉛を用いて調整される。次いで、調整を、オクタン、サリチル酸フェニル、インジウム、スズ、および亜鉛を用いて検証する。試料を気密密封アルミニウムDSCパンの中へと定置し、重量を正確に記録し、蓋を貫通し、そして試料をDSCセルの中へと挿入した。試料パンとして構成された秤量されたアルミニウムパンを、セルの基準側に定置した。試料分析の前にパンの蓋を貫通した。試料を、10℃/分で、-30℃から250℃まで分析した。
環状DSC: 試料セルを-30.0℃において平衡化し、次いで、窒素下で10.0℃/分の速度で135℃まで加熱した。次いで、試料セルを冷却させ、そして25.0℃において平衡化した。これを10.0℃分の速度で250.0℃まで再度加熱した。
DVS: 自動化された蒸気収着(VS)データを、表面測定システムDVS固有機器上で収集した。試料は、分析前に乾燥しなかった。窒素パージ下で、10%RHの増分で5%~95%RHの範囲にわたって、収着および脱着データを収集した。分析のために使用した平衡基準は、5分間で0.0100%未満の重量変化であり、最大平衡化時間は3時間であった。試料の初期含水量について、データは補正されなかった。
【実施例
【0156】
A.フマル酸塩形態A
1mLのアセトン中に49.4mgのフマル酸および79.2mgのDMTを含有するスラリーを、室温にて1日の間撹拌した。固体を、0.2-μmナイロンフィルタを使用する、Swinnex(登録商標)陽圧フィルタアセンブリを用いて収集した。
【0157】
B.コハク酸塩形態A
塩をアセトンまたはエタノールのいずれかから調製し、そしてACN、DMF、EtOAc、HFIPA、IPA、MeOH、NMP、およびTFEを含む様々な溶媒および溶媒混合物から順調に再結晶した。
1)アセトン中のコハク酸塩形態Aの調製:1mLのアセトン中に65.1mgのコハク酸および98.8mgのDMTを含有するスラリーを、室温にて1日の間撹拌した。固体を、0.2-μmナイロンフィルタを使用する、Swinnex(登録商標)陽圧フィルタアセンブリを用いて収集した。
2)エタノール中のコハク酸塩形態Aの調製:0.5mLのエタノール中に57.3mgのコハク酸および86.4mgのDMTを含有するスラリーを、室温にて2日の間撹拌した。固体を、0.2-μmナイロンフィルタを使用する、Swinnex(登録商標)陽圧フィルタアセンブリを用いて収集した。
【0158】
C.リンゴ酸塩形態A
0.5mLのエタノール中に63.6mgのL-(-)-リンゴ酸および81.0mgのDMTを含有するスラリーを、室温にて2日の間撹拌した。固体を、0.2-μmナイロンフィルタを使用する、Swinnex(登録商標)陽圧フィルタアセンブリを用いて収集した。
【0159】
D.硫酸塩形態A
0.5mLのエタノール中に28.5μLの95~98%濃縮硫酸および95.8mgのDMTを含有するスラリーを、-20℃にて5日の間撹拌した。固体を、0.2-μmのPTFEフィルタを使用する、Swinnex(登録商標)陽圧フィルタアセンブリを用いて収集した。
【0160】
E.シュウ酸塩形態A
1mLのアセトン中に49.5mgのシュウ酸および99.4mgのDMTを含有するスラリーを、室温にて9日の間撹拌した。0.2-μmナイロンフィルタを使用する、Swinnex(登録商標)陽圧フィルタアセンブリを用いて残りの固体を収集する前に、単結晶を選び取った。
【0161】
F.リン酸塩
0.5mLのエタノール中に27.0μLの85%濃縮リン酸および76.1mgのDMTを含有するスラリーを、室温にて2日の間撹拌した。固体を、0.2-μmナイロンフィルタを使用する、Swinnex(登録商標)陽圧フィルタアセンブリを用いて収集した。
【0162】
上記のプロセスA~Eを、表1に要約する。
【表1-1】
【表1-2】
【0163】
G.様々な溶媒中のDMTコハク酸塩の再結晶
方法を表2に要約する。
【表2-1】
【表2-2】
【0164】
H.DMTコハク酸塩形態Aのスケールアップ調製
10mLのエタノール中に1.3014gのコハク酸および2.0447gのDMTを含有するスラリーを、室温にて4日の間撹拌した。固体を、水吸引真空濾過によって単離し、そして真空下で室温で1日の間乾燥させた。収率は理論上95.4%であった。
【0165】
上記のプロセスHを、表3に要約する。
【表3】
【0166】
I.DMTコハク酸塩形態A単結晶の調製
DMTコハク酸塩形態Aの飽和溶液を、メタノール(10mL)中のコハク酸(1.3014g)およびDMT(2.0447g)から室温にて生成した。溶液を、0.2μmのナイロンシリンジフィルタを用いて、清浄な1ドラムバイアルの中へと濾過した。1ドラムバイアルを、キャップをしていない、2mLのジエチルエーテルを含有する20-mLバイアルの内側に定置した。20-mLバイアルにキャップをし、そして室温で1日間放置した。単結晶は、1日以内に顕著になった。単結晶を選び取り、そして構造を順調に解明した(図17)。
【0167】
上記の手順に従って調製した6つの新しいDMTの塩形態の特性の比較を以下の表4に示す。
【表4-1】
【表4-2】
【0168】
DMT塩形態の5つのXRPDパターンに対するX線粉末回折(XRPD)ピーク位置が決定されている。観察された、および顕著または代表的なピークは、以下および図内に含まれるが、特性ピークは含まれない。
【0169】
J.DMTフマル酸塩形態A
1つのパターンが分析され、好ましい配向および粒子統計効果は評価されなかった。観察されたピークを図1および以下の表5に示し、また顕著なピークを以下の表6にリストする。DMTフマル酸塩形態AのXRPDパターンは、単一の単位格子によって順調にインデックス付けされ、またパターンが単一の結晶相を表すという強力な証拠を提供する。この形態は、2つのフマル酸アニオンおよび2つのDMTカチオンを含有する可能性が高い三斜晶系単位格子を有する。結果として、インデックス付けの結果から計算された404Å3の推定式単位体積は、無水物と一致するであろう。
【表5-1】
【表5-2】
【表6】
【0170】
K.DMTコハク酸塩形態A
1つのパターンが分析され、また好ましい配向および粒子統計効果を、単結晶構造から計算されたXRPDパターンに対する比較を通して評価し、そして無視できると決定した。観察されたピークを図2および以下の表7に示し、また代表的なピークを以下の表8にリストする。結晶系は直方晶系であり、また空間群はP212121である。格子パラメータおよび計算された体積は、a=8.50595(7)Å、b=10.69563(10)Å、c=16.96938(14)Å、α=90°、β=90°、γ=90°、V=1543.82(2)Å3である。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表8】
【0171】
L.DMTリンゴ酸塩形態A
1つのパターンが分析され、好ましい配向および粒子統計効果は評価されなかった。観察されたピークを図3および以下の表9に示し、また顕著なピークを以下の表10にリストする。この試料における好ましい配向の状態は知られていないため、ピークのいずれもこの材料の代表的なものまたは特性であるとは知られていないことに留意されたい。結晶系は直方晶系であり、また空間群はP212121である。格子パラメータおよび計算された体積は、a=8.50595(7)Å、b=10.69563(10)Å、c=16.96938(14)Å、α=90°、β=90°、γ=90°、V=1543.82(2)Å3である。
【表9-1】
【表9-2】
【表10】
【0172】
M.DMT硫酸塩形態A
1つのパターンが分析され、また好ましい配向および粒子統計効果は評価されなかった。観察されたピークを図4および以下の表11に示し、また顕著なピークを以下の表12にリストする。この試料における好ましい配向の状態は知られていないため、ピークのいずれもこの材料の代表的なものまたは特性であるとは知られていないことに留意されたい。DMT硫酸塩形態AのXRPDパターンは、単一の単位格子によって順調にインデックス付けされ、またパターンが単一の結晶相を表すという強力な証拠を提供する。この形態は、4つの硫酸アニオンおよび4つのDMTカチオンを含有する可能性が高い原始的な直方晶系単位格子を有する。結果として、インデックス付けの結果から計算された354Å3の推定式単位体積は、無水物と一致するであろう。
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表12-1】
【表12-2】
【0173】
N.DMTシュウ酸塩形態A
1つのパターンを分析し、また好ましい配向および粒子統計効果を、単結晶構造から計算されたXRPDパターンに対する比較を通して評価した。好ましい配向の影響は、実験的XRPDパターンにおいて留意され、そして両方のパターンの間で一貫した顕著なピークのみが代表としてリストされる。観察されたピークを図5および以下の表13に示し、また代表的なピークを表14にリストする。結晶系は単斜晶系であり、また空間群はP21/cである。格子パラメータおよび計算された体積は、a=15.01660(18)Å、b=8.37069(10)Å、c=11.03060(13)Å、α=90°、β=91.9039(11)°、γ=90°、V=1385.77(3)Å3である。
【表13-1】
【表13-2】
【表14】
【0174】
5つのDMT塩形態の熱分析を決定し、そして結果を図6図10に提示した。3つのDMT塩形態の水収着等温線を決定し、そして結果を図11図13に提示した。DMTシュウ酸塩形態AのDVSは、塩が2つの物理的形態を表示するDSCにおいて2つの吸熱を呈したため、取得されなかった。DMT硫酸塩形態AのDVSは、塩が、90%RH、RT下で1日後に潮解したため、取得されなかった。
【0175】
上述の方法に従って調製されたDMTコハク酸塩形態Aのさらなる分析を行った。結果を図14図22に提示した。それ故に、DMTコハク酸塩形態Aを、可変温度XRPDによってさらに分析して、形態変化が見ることが可能性であるかを見た。加熱中に試料を25℃、105℃、および133℃に保持し、そしてX線パターンを得た。次いで、試料を冷却中に105℃に保持した。X線パターンを、105℃および25℃での冷却中に得た。実験中のいずれの時点でも形態変化は観察されなかった(図14)。コハク酸塩はまた、より大きい実験室(グラム)スケールでも調製され、そしてさらに特徴付けられた(図18のDVS、図19のDSC/TGA)。142℃の近くでの開始を有する吸熱は、DMTコハク酸塩形態Aの溶融に起因する(図21および図22)。塩の溶融前に時として観察される102℃の近くでの軽微な吸熱および吸熱ショルダーなどの残りの事象は、コハク酸およびDMTコハク酸塩形態Aの物理的混合物で形成される共晶に起因する。共晶溶融のピーク開始は、常に1つの温度で観察され、一方で広範な吸熱についてピーク最大値が観察される温度は、混合物組成物全体に依存する。DMTの0.34モル分率の全体組成物におけるコハク酸およびDMTコハク酸塩形態Aの物理的混合物をDSCによって分析して、上記で観察された事象を確認した(図20)。DMTの0.34モル分率の組成物を、共晶組成物の最も良好な近似として恣意的に選択した。予想されるように、結果として得られるDSCサーモグラムは、102℃における開始を有する共晶溶融に対して鋭くかつ明確に定義された吸熱を示す。吸熱の明確に定義された形状は、混合物の全体的な組成が真の共晶組成物から遠くないことを示唆する。共晶溶融のすぐ右にある小さい吸熱ショルダーは、液相境界における残りの構成要素のいずれかの溶融の完了を表す。
【0176】
上述のように調製したDMTリン酸塩材料に対する代表的なXRPDパターンを図23に提示する。
【0177】
DMT遊離塩基のものと比較した、本開示の5つのDMT塩形態の上昇した融点を実証するチャートを図23に提示する。
【0178】
DMTフマル酸塩形態A、DMTコハク酸塩形態A、およびDMTリンゴ酸塩形態Aの水溶解度は、20~100mg/mLであると決定された。結果を以下の表15に示す。
【表15】
【0179】
DMTフマル酸塩形態A、DMTコハク酸塩形態A、およびDMTリンゴ酸塩形態Aの吸湿性も決定され、そして結果を以下の表16に示す。
【表16】
【0180】
DMTコハク酸塩形態Aは、試験した3つの塩形態の中で最も吸湿性が低いことが見出された。DMTコハク酸塩形態Aの他の好ましい特徴は、その高い融点、高い結晶性、ならびに吸水後、および加熱時および冷却時の物理的形態の保存である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】