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特表2024-521754アルコール使用障害と診断された個体の大量飲酒軽減におけるナルトレキソンのエピジェネティックモデレータの有効性
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】アルコール使用障害と診断された個体の大量飲酒軽減におけるナルトレキソンのエピジェネティックモデレータの有効性
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6883 20180101AFI20240528BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240528BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 31/7084 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20240528BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C12Q1/6883 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
A61K31/485
A61K31/7084
A61K31/7048
A61K31/4178
A61K31/185
A61P25/32
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572581
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022030946
(87)【国際公開番号】W WO2022251375
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/192,952
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509001010
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ コロラド,ア ボディ コーポレイト
(71)【出願人】
【識別番号】519342839
【氏名又は名称】エムユーエスシー ファウンデーション フォー リサーチ ディベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アントン, レイモンド エフ
(72)【発明者】
【氏名】シャハト, ジョセフ ピー.
【テーマコード(参考)】
4B063
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QX01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086CB23
4C086EA03
4C086GA07
4C086NA05
4C086ZC39
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA08
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZC39
(57)【要約】
AUDを有する対象におけるナルトレキソン応答を予測するための方法が開示される。いくつかの実施形態では、方法は、対象から単離されたゲノムDNA試料に、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態を決定するために、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していることを含み、ここで1つ以上の領域は、ミューオピオイド受容体(OPRM1)遺伝子、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子、およびドーパミン輸送体(SLC6A3)遺伝子から選択される遺伝子の部分配列であり、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域の決定されたメチル化状態は、対象におけるナルトレキソン応答を予測するものである。さらに、各AUD患者から得られた、OPRM1遺伝子、COMT遺伝子および/またはSLC6A3遺伝子に関連する特定のメチル化部位の組み合わせのメチル化状態に基づいて、AUDと診断された患者をナルトレキソン投薬で治療するための方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール使用障害(AUD)を有する対象におけるナルトレキソン応答を予測するための方法であって、対象から単離されたゲノムDNA試料に、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態を決定するために、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していることを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域が、ミューオピオイド受容体(OPRM1)遺伝子、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子、およびドーパミン輸送体(SLC6A3)遺伝子からなる群から選択される遺伝子の部分配列であり、さらに、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域の決定されたメチル化状態が、対象におけるナルトレキソン応答を予測する、方法。
【請求項2】
アッセイされる単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域が、OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、SLC6A3遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
OPRM1遺伝子の1つ以上の領域が、OPRM1転写開始部位(TSS)の上流に130のヌクレオチドおよび下流に600のヌクレオチドを含み、場合により、配列番号2~10のうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
SLC6A3遺伝子の1つ以上の領域が、配列番号12~20のうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
COMT遺伝子の1つ以上の領域が、配列番号28~38のうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
SLC6A3 VNTRが、配列番号22~25のうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型の少なくとも2つ、場合により3つすべてのメチル化状態が決定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
OPRM1遺伝子の少なくとも1つの領域、ならびにSLC6A3遺伝子および/またはCOMT遺伝子の少なくとも1つの領域のメチル化状態が決定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
OPRM1遺伝子の少なくとも1つの領域が、配列番号1のヌクレオチド位置274、277、357および419からなる群から選択され、さらに、
(i)SLC6A3の少なくとも1つの領域が、配列番号11のヌクレオチド位置576および1102、配列番号11のヌクレオチド位置1102、ならびに配列番号21のヌクレオチド位置46からなる群から選択され、かつ/または
(ii)COMT遺伝子の少なくとも1つの領域が、配列番号27のヌクレオチド46および107からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
対象が、以下のメチル化値の組み合わせ:
(a)ヌクレオチド位置27に関して0.147未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置419に関して0.488未満と、配列番号11のヌクレオチド位置576に関して0.651未満かつ/または配列番号11のヌクレオチド位置1102に関して0.648未満かつ/または配列番号21のヌクレオチド位置46に関して0.089未満との組み合わせ;および/あるいは
(b)配列番号1のヌクレオチド位置27に関して0.147未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置277に関して0.157未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置357に関して0.126未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置419に関して0.488未満と、配列番号27のヌクレオチド位置46に関して0.587未満かつ/または配列番号27の位置107に関して0.546未満との組み合わせ
を有する場合、ナルトレキソンへの肯定的な応答が予測される、請求項8および9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ゲノムDNAが、血球、場合により末梢血単核細胞および頬側細胞からなる群から選択される細胞から、ならびに/または細胞、場合により血液、唾液、脳脊髄液および/もしくはその任意の画分もしくは成分を含有する生物学的試料から単離される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行している前に、単離されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で変換することをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アルコール使用障害(AUD)を有する対象を治療するための方法であって、
(a)対象から単離されたゲノムDNA試料に、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態を決定するために、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していることであって、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域が、ミューオピオイド受容体(OPRM1)遺伝子、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子およびドーパミン輸送体(SLC6A3)遺伝子からなる群から選択される遺伝子の部分配列であり、さらに、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域の決定されたメチル化状態が、対象におけるナルトレキソン応答を予測するものである、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していること;ならびに
(b1)単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態が、対象がナルトレキソンへ有利に応答すると予測している場合、対象を有効量のナルトレキソンで治療すること;または
(b2)有効量の、アカンプロサート、トピラマート、フルオキセチン、オンダンセトロン、もしくはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい非ナルトレキソン剤で対象を治療することのいずれか
を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、方法。
【請求項14】
アッセイされる単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域が、OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、CSLC6A3遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
OPRM1遺伝子の1つ以上の領域が、OPRM1転写開始部位(TSS)の上流に130のヌクレオチドおよび下流に600のヌクレオチドを含み、場合により、配列番号2~10のうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
SLC6A3遺伝子の1つ以上の領域が、配列番号12~20のうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
COMT遺伝子の1つ以上の領域が、配列番号28~38のうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
SLC6A3 VNTRが、配列番号22~25のうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型の少なくとも2つ、場合により3つすべてのメチル化状態が決定される、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
OPRM1遺伝子の少なくとも1つの領域、ならびにSLC6A3遺伝子および/またはCOMT遺伝子の少なくとも1つの領域のメチル化状態が決定される、請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
OPRM1遺伝子の少なくとも1つの領域が、配列番号1のヌクレオチド位置274、277、357および419からなる群から選択され、さらに、
(i)SLC6A3の少なくとも1つの領域が、配列番号11のヌクレオチド位置576および1102、配列番号11のヌクレオチド位置1102、ならびに配列番号21のヌクレオチド位置46からなる群から選択され、かつ/または
(ii)COMT遺伝子の少なくとも1つの領域が、配列番号27のヌクレオチド46および107からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
対象が、以下のメチル化値の組み合わせ:
(a)ヌクレオチド位置27に関して0.147未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置419に関して0.488未満と、配列番号11のヌクレオチド位置576に関して0.651未満かつ/または配列番号11のヌクレオチド位置1102に関して0.648未満かつ/または配列番号21のヌクレオチド位置46に関して0.089未満との組み合わせ;および/あるいは
(b)配列番号1のヌクレオチド位置27に関して0.147未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置277に関して0.157未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置357に関して0.126未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置419に関して0.488未満と、配列番号27のヌクレオチド位置46に関して0.587未満かつ/または配列番号27の位置107に関して0.546未満との組み合わせ
を有する場合、ナルトレキソンへの肯定的な応答が予測される、請求項20および21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ゲノムDNAが、血球、場合により末梢血単核細胞および頬側細胞からなる群から選択される細胞から、ならびに/または細胞、場合により血液、唾液、脳脊髄液および/もしくはその任意の画分もしくは成分を含有する生物学的試料から単離される、請求項13から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行している前に、単離されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で変換することをさらに含む、請求項13から23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示の主題は、2021年5月25日に出願された米国仮特許出願第第63/192,952号の利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
本出願と共に提出されたASCIIテキストファイル(名前:1586_24_PCT_ST25.txt;サイズ:285キロバイト;作成日2022年5月25日)における電子的に提出された配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
助成金の記載
本発明は、国立衛生研究所の国立アルコール乱用・アルコール依存症研究所によって授与されたグラント番号AA017435およびAA017633の下、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0004】
本開示の主題は、いくつかの実施形態において、アルコール使用障害と診断された患者におけるナルトレキソン応答を予測するための方法に関する。本開示の主題はまた、いくつかの実施形態では、アルコール使用障害を有する対象を、対象におけるOPRM1、COMTおよび/またはSLC6A3ゲノム遺伝子座の部分配列のメチル化状態に少なくとも部分的に基づいて予測される、対象のための治療戦略を用いて治療する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
オピオイドアンタゴニスト、ナルトレキソンは、アルコール使用障害を有する個体において大量飲酒を軽減するが(AUD;Jonas et al.,2014a)、すべての人に有効ではない。ゲノム因子は、その有効性の多様性を説明し得る。最も広く研究されているゲノム因子は、μ-オピオイド受容体(MOR)OPRM1をコードする遺伝子におけるrs1799971一塩基多型(SNP)であり、これは、エンドルフィン結合ドメイン中のヒトOPRM1ポリペプチドのアミノ酸40にアスパラギン酸またはアスパラギンをコードし、β-エンドルフィンに対するMOR結合親和性の増加に関連するA/G SNPである(Bond et al.,1998)。この機能獲得型SNPはまた、ナルトレキソンに対するMOR親和性を増加させることができ(Weerts et al.,2013)、ナルトレキソンの効果を増加させる。しかしながら、AUDについてのナルトレキソンのランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスでは、rs1799971のナルトレキソン応答の緩和を裏付ける弱い証拠しか発見されていない(Hartwell et al.,2020;Jonas et al.,2014b)。
【0006】
ナルトレキソンは、アルコール誘導性ドーパミン放出に対するオピオイド媒介性下流効果によって飲酒を減少させると考えられているので(Benjamin et al.,1993;Gonzales&Weiss,1998)、ドーパミンの再取り込みおよび不活性化に関連するゲノム因子もまた、その効果を緩和し得る。したがって、治療を求めていないAUD個体における短期間のナルトレキソン投与のヒト実験室研究では、OPRM1 rs1799971での変異、およびドーパミン輸送体(DAT)をコードする遺伝子であるSLC6A3の3’非翻訳領域における40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型を相互作用させて、アルコールの自己投与および腹側線条体のアルコールキュー誘発性活性化に対するナルトレキソンの効果を予測することが以前に報告された(Anton et al.,2012;Schacht et al.,2013;米国特許出願公開第2018/0371542 A1号も参照されたく、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。9反復(9R)アレル遺伝子と比較して、SLC6A3 VNTR 10反復(10R)アレルは、おそらくシナプスのドーパミン蓄積を減少させる、AUDにおける比較的大きな線条体DAT発現と関連しており(Heinz et al.,2000)、ナルトレキソンは、プラセボと比較して、rs1799971 Gアレルを有し、SLC6A3 10Rアレルについてホモ接合性であった個体において最も自己投与およびキュー誘発性腹側線条体活性化を減少させた。これらの発見は、推定的にrs1799971 Gアレルによって付与されるナルトレキソンに対するより大きなMOR親和性への傾向が、シナプスドーパミン蓄積における遺伝的に影響された減少が存在する場合でのみ有益であり得ることを示唆した。
【0007】
この発見はその後、治療を求めるAUD患者における16週間のナルトレキソンRCTの二次分析において再現され、拡張されたAnton et al.,2020;米国特許出願公開第2018/0369238号も参照されたく、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。OPRM1 rs1799971遺伝子型単独では、大量飲酒に対するナルトレキソンの効果を有意に緩和しなかったが、ドーパミン不活性化酵素カテコール-O-メチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子であるCOMT(COMT;Anton et al.,2020)において、rs1799971と、SLC6A3 VNTRおよびrs4680(val158met)SNPの両方との間に上位相互作用があった。rs4680 valアレルは、おそらくSLC6A3 10反復アレルと同様の方法で(しかし、DATおよびCOMTの発現は脳全体で変化するので、おそらく異なる脳領域において)シナプスドーパミン蓄積を減少させる、COMT有効性の3~4倍の増加に関連した(Chen et al.,2004;Lachman et al.,1996)。本明細書に開示されるように、ナルトレキソンは、プラセボと比較して、rs1799971 Gアレルを有し、SLC6A3 10Rまたはrs4680 valアレルのいずれかについてホモ接合性である個体において、最も効果的に大量飲酒を減少させた。これらのデータは、遺伝的な素因によるMOR機能の強化とシナプスへのドーパミン蓄積の減少の組み合わせが、優れたナルトレキソン応答と関連付けられることを再び示唆した。
【0008】
身体由来の(遺伝性/生殖系列)上位遺伝子効果は、ナルトレキソンの有効性を予測するのに有用であり得るが、ゲノム因子がナルトレキソン応答に影響を及ぼすことができる普遍的な機構は、(遺伝性、またはより起こりやすい出生後の、例えば過度のアルコール使用による獲得性のいずれかであり得る)エピジェネティック修飾である。CpG(シトシン、続いてグアニン)ジヌクレオチド中のシトシン残基におけるDNAメチル化は、遺伝子プロモーター領域内のアイランドに不均衡にクラスター化され、転写因子結合に影響を及ぼし、クロマチンを圧縮するヒストンデアセチラーゼ複合体を動員し、それによって遺伝子発現を低下させる(Jones、2021)。ナルトレキソンの神経化学的作用機序、および本発明者らより前の、AUDにおけるナルトレキソンの有効性に影響を及ぼす特定の遺伝子バリアントの相互作用の観察を考えると、OPRM1、SLC6A3および/またはCOMTメチル化の違いもまた、ナルトレキソン応答を緩和する可能性がある。各遺伝子のプロモーターのメチル化は、その発現およびそれがコードするタンパク質の機能に対する下流効果と関連付けられた。神経由来細胞株のOPRM1プロモーターメチル化の増大は、MOR発現の減少と関連付けられ(Andria&Simon、1999)、血液中のSLC6A3プロモーターメチル化の増大は、線条体DAT利用可能性の減少と関連付けられ(Wiers et al.,2018)、ヒト細胞株におけるCOMTプロモーターメチル化の増大は、COMT発現の減少と関連付けられた(Swift-Scanlan et al.,2014)。重要なことに、血液中のSLC6A3プロモーターメチル化は、黒質におけるメチル化と高度に相関し(Wiers et al.,2018)、末梢白血球中のCOMTプロモーターメチル化は、前頭葉前部皮質を含む(PFC;Ursini et al.,2011)、様々な脳領域における神経組織メチル化と高度に相関し(Murphy et al.,2005)、ここでCOMTは、ドーパミン不活性化の主要な機構である(Matsumoto et al.,2003)。この研究の大部分は動物で行われ、一部はヒトで再現されなかったが、末梢SLC6A3およびCOMTメチル化が神経メチル化のバイオマーカーであり得るといういくつかの証拠がある。
【0009】
OPRM1、SLC6A3、およびCOMTプロモーターのメチル化は、すでにAUDおよび飲酒と関連付けられている。OPRM1プロモーターのメチル化は、対照と比較してAUD個体においてより大きく(Zhang et al.,2012)、OPRM1メチル化が独立して飲酒に対するナルトレキソンの影響を緩和しなかったにもかかわらず、数人の個体のOPRM1 CpG部位のメチル化は、治療中のAUD再発を予測した(Lin et al.,2020)。同様に、SLC6A3プロモーターのメチル化は、AUD個体において対照よりも大きかったが(Hillemacher et al.,2009;Wiers et al.,2015)、いくつかの研究では、これらの群の間に差は見られなかった(Jasiewicz et al.,2015;Nieratschker et al.,2014)。COMTプロモーターの低メチル化は、rs4680 metアレル保有者においてのみではあるが、より危険な飲酒と関連していたが(Swift-Scanlan et al.,2014)、今までナルトレキソン応答とは関連付けられていなかった。したがって、一定期間にわたるアルコール摂取が全ゲノムにわたる、および特定の遺伝子におけるDNAメチル化に影響を及ぼし得るといういくつかの証拠があるが、個体間にはかなりの変動/不一致がある。重要なことに、これまで、ナルトレキソンまたは何らかの他の特定の治療の応答に影響を及ぼす/予測する、何らかの特定のCpGメチル化パターンの指標は存在しなかった。
【発明の概要】
【0010】
この概要は、本開示の主題のいくつかの実施形態を列挙し、多くの場合、これらの実施形態の変形および置換を列挙する。この概要は、多数の様々な実施形態の単なる例示である。所与の実施形態の1つ以上の代表的な特徴の言及も、同様に例示的である。そのような実施形態は、典型的には、言及された1つ以上の特徴の有無にかかわらず存在することができる。同様に、それらの特徴は、本概要に列挙されているか否かにかかわらず、本開示の主題の他の実施形態に適用することができる。余計な繰り返しを避けるために、この概要は、そのような特徴のすべての可能な組み合わせを列挙または提案していない。
【0011】
本開示の主題は、いくつかの実施形態において、アルコール使用障害(AUD)を有する対象におけるナルトレキソン応答を予測するための方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、対象から単離されたゲノムDNA試料に、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態を決定するために、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していることを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、ここで、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域は、ミューオピオイド受容体(OPRM1)遺伝子、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子、およびドーパミン輸送体(SLC6A3)遺伝子からなる群から選択される遺伝子の部分配列であり、さらに、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域の決定されたメチル化状態は、対象におけるナルトレキソン応答を予測する。いくつかの実施形態では、アッセイされる単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域は、OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、SLC6A3遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子の1つ以上の領域は、OPRM1転写開始部位(TSS)の上流に130のヌクレオチドおよび下流に600のヌクレオチドを含み、場合により、配列番号2~10のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、SLC6A3遺伝子の1つ以上の領域は、配列番号12~20のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、COMT遺伝子の1つ以上の領域は、配列番号28~38のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、SLC6A3 VNTRは、配列番号22~25のうちの1つ以上を含む。
【0012】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型の少なくとも2つ、場合により3つすべてのメチル化状態が決定される。
【0013】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子の少なくとも1つの領域、ならびにSLC6A3遺伝子および/またはCOMT遺伝子の少なくとも1つの領域のメチル化状態が決定される。いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子の少なくとも1つの領域は、配列番号1のヌクレオチド位置274、277、357および419からなる群から選択され、さらに(i)SLC6A3の少なくとも1つの領域は、配列番号11のヌクレオチド位置576および1102、配列番号11のヌクレオチド位置1102、ならびに配列番号21のヌクレオチド位置46からなる群から選択され、かつ/または(ii)COMT遺伝子の少なくとも1つの領域は、配列番号27のヌクレオチド46および107からなる群から選択される、いくつかの実施形態では、対象が以下のメチル化値の組み合わせを有する場合、ナルトレキソンへの肯定的な応答が予測される:
(a)ヌクレオチド位置27に関して0.147未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置419に関して0.488未満と、配列番号11のヌクレオチド位置576に関して0.651未満かつ/または配列番号11のヌクレオチド位置1102に関して0.648未満かつ/または配列番号21のヌクレオチド位置46に関して0.089未満との組み合わせ;および/あるいは
(b)配列番号1のヌクレオチド位置27に関して0.147未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置277に関して0.157未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置357に関して0.126未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置419に関して0.488未満と、配列番号27のヌクレオチド位置46に関して0.587未満かつ/または配列番号27の位置107に関して0.546未満との組み合わせ。
【0014】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、ゲノムDNAは、血球、場合により末梢血単核細胞および頬側細胞からなる群から選択される細胞から、ならびに/または細胞、場合により血液、唾液、脳脊髄液および/もしくはその任意の画分もしくは成分を含有する生物学的試料から単離される。
【0015】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行している前に、単離されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で変換することをさらに含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示の主題はまた、アルコール使用障害(AUD)を有する対象を治療する方法に関する。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、(a)対象から単離されたゲノムDNA試料に、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態を決定するために、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していることであって、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域は、ミューオピオイド受容体(OPRM1)遺伝子、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子およびドーパミン輸送体(SLC6A3)遺伝子からなる群から選択される遺伝子の部分配列であり、さらに、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域の決定されたメチル化状態は、対象におけるナルトレキソン応答を予測するものである、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していること;ならびに(b1)単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態が、対象がナルトレキソンへ有利に応答すると予測している場合、対象を有効量のナルトレキソンで治療すること;または(b2)有効量の、アカンプロサート、トピラマート、フルオキセチン、オンダンセトロン、もしくはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい非ナルトレキソン剤で対象を治療することのいずれか、を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、アッセイされる単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域は、OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、CSLC6A3遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子の1つ以上の領域は、OPRM1転写開始部位(TSS)の上流に130のヌクレオチドおよび下流に600のヌクレオチドを含み、場合により、配列番号2~10のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、SLC6A3遺伝子の1つ以上の領域は、配列番号12~20のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、COMT遺伝子の1つ以上の領域は、配列番号28~38のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、SLC6A3 VNTRは、配列番号22~25のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型の少なくとも2つ、場合により3つすべてのメチル化状態が決定される。いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子の少なくとも1つの領域、ならびにSLC6A3遺伝子および/またはCOMT遺伝子の少なくとも1つの領域のメチル化状態が決定される。いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子の少なくとも1つの領域は、配列番号1のヌクレオチド位置274、277、357および419からなる群から選択され、さらに(i)SLC6A3の少なくとも1つの領域は、配列番号11のヌクレオチド位置576および1102、配列番号11のヌクレオチド位置1102、ならびに配列番号21のヌクレオチド位置46からなる群から選択され、かつ/または(ii)COMT遺伝子の少なくとも1つの領域は、配列番号27のヌクレオチド46および107からなる群から選択される、いくつかの実施形態では、対象が以下のメチル化値の組み合わせを有する場合、ナルトレキソンへの肯定的な応答が予測される:
(a)ヌクレオチド位置27に関して0.147未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置419に関して0.488未満と、配列番号11のヌクレオチド位置576に関して0.651未満かつ/または配列番号11のヌクレオチド位置1102に関して0.648未満かつ/または配列番号21のヌクレオチド位置46に関して0.089未満との組み合わせ;および/あるいは
(b)配列番号1のヌクレオチド位置27に関して0.147未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置277に関して0.157未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置357に関して0.126未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置419に関して0.488未満と、配列番号27のヌクレオチド位置46に関して0.587未満かつ/または配列番号27の位置107に関して0.546未満との組み合わせ。いくつかの実施形態では、ゲノムDNAは、血球、場合により末梢血単核細胞および頬側細胞からなる群から選択される細胞から、ならびに/または細胞、場合により血液、唾液、脳脊髄液および/もしくはその任意の画分もしくは成分を含有する生物学的試料から単離される。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行している前に、単離されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で変換することをさらに含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0018】
したがって、本開示の主題の目的は、アルコール使用障害を有する対象におけるナルトレキソン応答を予測する方法、および/またはアルコール使用障害を有する対象を、対象がナルトレキソンに十分に応答すると予測されるか否かの結果に少なくとも部分的に基づいて、対象に適切であると予測される治療戦略で治療する方法を提供することである。
【0019】
上述した本開示の主題の目的は、本明細書で開示される組成物および方法によって全体的または部分的に達成され、他の目的は、本明細書で以下に最もよく説明されるように添付の図面と関連して説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【0020】
添付の図面は、参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示の主題のいくつかの代表的な実施形態を示し、本明細書と共に開示の組成物および方法を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】16週間の試験中の大量飲酒日の割合(PHDD)に対するナルトレキソン(白三角)の効果を、プラセボ(黒丸)と比較して、SLC6A3プロモーターメチル化(y軸)およびOPRM1プロモーターメチル化(x軸)の関数として示す一連のグラフである。SLC6A3およびOPRM1メチル化は、表示目的のために低群および高群(中央値より低いメチル化レベルおよび高いメチル化レベル)に分けられる。ナルトレキソンは、プラセボと比較して、より低いSLC6A3プロモーターおよびOPRM1プロモーターのメチル化を有する参加者においてPHDDをより減少させた。図は、独立変数がプロモーターメチル化レベル(低または高)およびナルトレキソンまたはプラセボ治療であり、従属変数が治療期間(月)にわたる大量飲酒日の割合である線形混合モデルからの推定周辺平均(±標準誤差)である。
図2】16週間の試験中の大量飲酒日の割合(PHDD)に対するナルトレキソン(白三角)の効果を、プラセボ(黒丸)と比較して、COMTプロモーターおよびOPRM1プロモーターメチル化の関数として示す一連のグラフである。COMTおよびOPRM1メチル化は、表示目的のために低群および高群(中央値より低いメチル化レベルおよび高いメチル化レベル)に分けられる。ナルトレキソンは、プラセボと比較して、より低いCOMTプロモーターおよびOPRM1プロモーターのメチル化を有する参加者においてPHDDをより減少させた。図は、独立変数がプロモーターメチル化レベル(低または高)およびナルトレキソンまたはプラセボ治療であり、従属変数が治療期間(月)にわたる大量飲酒日の割合である線形混合モデルからの推定周辺平均(±標準誤差)である。
図3】16週間の試験中の大量飲酒日の割合(PHDD)に対するナルトレキソン(白三角)の効果を、プラセボ(黒丸)と比較して、SLC6A3 VNTRおよびOPRM1プロモーターメチル化の関数として示す一連のグラフである。SLC6A3およびOPRM1メチル化は、表示目的のために低群および高群(中央値より低いメチル化レベルおよび高いメチル化レベル)に分けられる。ナルトレキソンは、プラセボと比較して、より低いSLC6A3 VNTRおよびOPRM1プロモーターのメチル化を有する参加者においてPHDDをより減少させた。図は、独立変数がプロモーターメチル化レベル(低または高)およびナルトレキソンまたはプラセボ治療であり、従属変数が治療期間(月)にわたる大量飲酒日の割合である線形混合モデルからの推定周辺平均(±標準誤差)である。
図4A】OPRM1プロモーター領域(配列番号1)のヌクレオチド配列の描写である。小文字は転写されていないヌクレオチドを示し、大文字はエクソン配列を示す。転写開始部位(GAT)は、3行目の濃い灰色(図の白黒版)および赤色(図のカラー版)で強調され、翻訳開始部位(ATG)は、6行目で淡い灰色(図の白黒版)および青色(図のカラー版)で強調されている。Illumina BeadChip上のCpGジヌクレオチドは、淡い灰色(図の白黒版)および緑色(図のカラー版)で強調されており、上付き数字は各部位に固有のIllumina IDを指す(図4Bも参照されたい)。
図4B】Illumina IDおよびGenome Reference Consortium Human Build 37;GRCh37からの染色体位置を示す表である。図4Bにおいて灰色(図の白黒版)または黄色(図のカラー版)で強調されている部位1~10は、以下のように他の部位と組み合わせた、ナルトレキソン応答の最も重要な予測因子である部位である。
図5A】分析されたSLC6A3プロモーター(配列番号11)領域のヌクレオチド配列の図である。小文字は転写されていないヌクレオチドを示し、大文字はエクソン配列を示す。転写開始部位(GAG)は、濃い灰色(図の白黒版)または赤色(図のカラー版)で強調されている。Illumina BeadChip上のCpGジヌクレオチドは、淡い灰色(図の白黒版)または緑色(図のカラー版)で強調されており、上付き数字は各部位に固有のIllumina IDを指す(図5Cも参照されたい)。
図5B】分析された3’非翻訳領域(UTR;配列番号21)領域のヌクレオチド配列の図である。小文字は転写されていないヌクレオチドを示し、大文字はエクソン配列を示す。転写開始部位(GAG)は、濃い灰色(図の白黒版)または赤色(図のカラー版)で強調されている。Illumina BeadChip上のCpGジヌクレオチドは、淡い灰色(図の白黒版)または緑色(図のカラー版)で強調されており、上付き数字は各部位に固有のIllumina IDを指す(図5Cも参照されたい)。
図5C】Illumina IDおよび染色体位置(Genome Reference Consortium Human Build 37;GRCh37)を示す表である。図5Cにおいて淡い灰色(図の白黒版)または黄色(図のカラー版)で強調されている部位は、部位相互作用表に列挙された他の部位と組み合わせた、ナルトレキソン応答の最も重要な予測因子である部位である。
図6A図6Aは、分析されたCOMTプロモーター配列の描写である。P2(膜結合型COMT)プロモーター(配列番号26)を示す。
図6B図6Bは、分析されたCOMTプロモーター配列の描写である。P1(可溶型COMT)プロモーター(配列番号27)を示す。小文字は転写されていないヌクレオチドを示し、大文字は遺伝子の第1エクソン(上)および第3(下)エクソンを示す。膜結合および可溶型アイソフォームの翻訳開始部位(ATG)は、図6Bの2行目および4行目において、それぞれ淡い灰色および濃い灰色(図の白黒版)または青色および紫色(図のカラー版)で強調されている。Illumina BeadChip上のCpGジヌクレオチドは、淡い灰色(図の白黒版)または緑色(図のカラー版)で強調されており、上付き数字は各部位に固有のIllumina IDを指す(図6Cも参照されたい)。
図6C】Illumina IDおよび染色体位置(Genome Reference Consortium Human Build 37;GRCh37から)を示す表である。図6Cにおいて淡い灰色(図の白黒版)または黄色(図のカラー版)で強調されている部位は、上記の部位相互作用表に列挙された他の部位と組み合わせた、ナルトレキソン応答の最も重要な予測因子である部位である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本研究では、飲酒に対するナルトレキソン効果のモデレータとして、OPRM1プロモーターのメチル化、ならびにSLC6A3プロモーターおよびCOMTプロモーターおよびSLC6A3 VNTRのメチル化との、その相互作用を試験した。本発明者らは、16週間のナルトレキソンのランダム化比較試験(RCT;Schacht et al.,2017)において参加者の末梢白血球から抽出したゲノムDNAを使用し、その後、本発明者らは、SLC6A3およびCOMT多型がOPRM1 rs1799971 SNPと相互作用して、ナルトレキソン応答を予測することを発見した(Anton et al.,2020)。OPRM1、SLC6A3、およびCOMTプロモーターメチル化ならびにSLC6A2 VNTRメチル化は、これらの多型に類似するが異なる、それらに起因しない様式でナルトレキソン応答へのそれらの影響において相互作用すると仮定され、その結果、OPRM1メチル化の減少(および、おそらくはMOR発現の増加)およびSLC6A3またはCOMTいずれかのメチル化の減少(および、おそらくはDATまたはCOMT発現の増加、シナプスドーパミン蓄積の発生の減少)を有するナルトレキソン治療個体は、ナルトレキソンで治療した場合、大量飲酒を最も軽減させることを実証し得る。
【0023】
多数の臨床治験が、アルコール使用障害(AUD)におけるナルトレキソンの有効性を緩和し得るゲノム因子を研究している。DNAメチル化などのエピジェネティックプロセス(その一部は、例として慢性的な重度のアルコール摂取によって獲得され得る)は、遺伝子プロモーターおよび/または他の関連するゲノム部位における転写因子結合を阻害することによって遺伝子発現を調節し、ナルトレキソンの有効性にも影響を及ぼし得る。ナルトレキソンは、推定的にはオピオイドに対する直接的な影響、およびドーパミンシグナル伝達に対する間接的な影響を介して飲酒を減少させるので、オピオイド関連遺伝子およびドーパミン関連遺伝子のメチル化は、その効果を緩和する可能性がある。この研究では、145人の治療を求めるAUD患者における16週間のランダム化プラセボ対照試験において、大量飲酒に対するナルトレキソンの効果のモデレータとして、ミューオピオイド受容体(OPRM1)、ドーパミン輸送体(SLC6A3)およびカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子のプロモーターならびにSLC6A3 VNTRのメチル化を試験した。OPRM1メチル化は、独立してナルトレキソン効果を緩和しなかったが、SLC6A3およびCOMT両方のメチル化と相互作用して緩和し(それぞれp<0.05およびp<0.01)、その結果、OPRM1およびSLC6A3またはCOMTプロモーターのメチル化の減少を有する(おそらくは、これらの遺伝子の発現の増加に関連する)ナルトレキソン治療個体は、プラセボ、ならびにOPRM1およびSLC6A3またはCOMTのメチル化がより高い個体と比較して、大量飲酒日数が有意に減少した。この効果は、この試料(Anton et al.,2020)からの過去の薬理遺伝学的データと一致しており、OPRM1、SLC6A3およびCOMTの多型に機能的アレルを有する個体がナルトレキソン応答に影響を及ぼすことを示唆した。ここで詳述されるメチル化効果は、これらの遺伝子型が統計学的モデルにおいて考慮された場合であっても持続し、したがって、以前に記載された遺伝性遺伝子変異に関連しなかった新たな発見を表す。まとめると、これらのデータは、オピオイドおよびドーパミンシグナル伝達に関連する遺伝子のエピジェネティック修飾がAUDにおけるナルトレキソンの有効性の新規な予測因子であることを示唆している。
【0024】
本発明の化合物、組成物、物品、デバイスおよび/または方法が開示され、記載される前に、それらは、特に明記されない限り、特定の合成方法または特定の組換えバイオテクノロジー法に限定されず、または特に明記されない限り、特定の試薬に限定されず、そのため、当然のことながら変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0025】
I.定義
本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、以下に特に定義されない限り、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。本明細書で使用される技術への言及は、当業者には明らかであろうそれらの技術の変形または同等の技術の置換を含む、当技術分野で一般的に理解されている技術を指すことを意図している。以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義を示して、本開示の主題の説明を容易にする。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「医薬担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物などを含む。
【0027】
範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表すことができる。そのような範囲が表現される場合、いくつかの実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表される場合、特定の値が実施形態を形成することが理解されよう。各範囲の端点は、他方の端点に対して有意であり、他方の端点とは独立して有意であることがさらに理解されよう。また、本明細書に開示されているいくつかの値があり、各値はまた、値自体に加えてその特定の値「約」として本明細書に開示されていることも理解されたい。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。当業者によって適切に理解されるように、ある値が開示されている場合、その値「以下」、「その値以上」および値の間の可能な範囲も開示されていることも理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「10以下」および「10以上」も開示されている。また、本出願全体を通して、データはいくつかの異なる形式で提供され、これらのデータは、いくつかの実施形態では終点および始点を表し、いくつかの実施形態ではデータ点の任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示されている場合、10および15より大きい、それ以上、それ未満、それ以下、およびそれに等しいこと、ならびに10から15の間が開示されていると見なされることが理解される。また、2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されていることが理解される。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13、および14も開示されている。
【0028】
「および/または」という用語は、構成要素の列挙の文脈で使用される場合、構成要素が単独でまたは組み合わせて存在することを指す。
【0029】
本明細書で使用される「任意の(optional)」および「任意に(optionally)」という用語は、続いて記載される事象、状況、要素、および/または方法工程が発生および/または存在してもしなくてもよいこと、ならびにその記載が、前記事象、状況、要素、または方法工程が発生および/または存在している場合、およびそうでない場合を含むことを示す。
【0030】
「プローブ」は、典型的には配列特異的に、例えばハイブリダイゼーションを介して、標的核酸と相互作用することができる分子である。核酸のハイブリダイゼーションは、当技術分野で十分に理解されており、本明細書で論じられる。典型的には、プローブは、当技術分野で利用可能なヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体および/またはそれらのアナログの任意の組み合わせから作製することができる。
【0031】
「プライマー」は、ある種の酵素的操作を支持することができ、酵素的操作が起こり得るように標的核酸とハイブリダイズすることができるプローブのサブセットである。プライマーは、酵素的操作に干渉しない、当技術分野で利用可能なヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体またはアナログの任意の組み合わせから作製することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「COMT」という用語は、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子または遺伝子産物、例えば、限定するものではないが、GENBANK(登録商標)バイオシーケンスデータベースのアクセッション番号NM_000754.3(配列番号40)およびNP_000745.1(配列番号41)に記載されている遺伝子産物を指す。ヒトCOMT遺伝子座は22番染色体に位置し、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000022.10(配列番号42)のヌクレオチド19,929,263-19,957,498に対応する。
【0033】
本明細書中で使用されるとき、用語「rs4680」とは、COMT遺伝子におけるSNPを指す。野生型アレルは、配列番号40のヒトCOMT cDNAのヌクレオチド721に対応するヌクレオチド位置にGを有し、配列番号41のヒトCOMTポリペプチドのアミノ酸158のバリンアミノ酸をコードする。置換多型は、配列番号40のヒトCOMT cDNAのヌクレオチド721に対応するヌクレオチド位置にAを有し、配列番号41のヒトCOMTポリペプチドのアミノ酸158のメチオニンアミノ酸をコードする。したがって、このSNPは、「Val158Met」またはその文法上の変化形と呼ばれることもある。同様に、「rs4680遺伝子型」という用語は、患者が配列番号40のヒトCOMT cDNAのヌクレオチド721にGまたはAを有するかどうか、ならびに患者が配列番号41のヒトCOMTポリペプチドのアミノ酸158にバリンまたはメチオニンを有するかどうかの両方に言及する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「DAT1」、「SLC6A3」および「DAT1/SLC6A3」という用語は、溶質キャリアファミリー6メンバー3(SLC6A3)遺伝子または遺伝子産物、例えば、限定するものではないが、GENBANK(登録商標)バイオシーケンスデータベースのアクセッション番号NM_001044.4(配列番号43)およびNP_001035.1(配列番号44)に記載されている遺伝子産物を指す。SLC6A3遺伝子は、ドーパミン輸送体1(DAT1)遺伝子とも呼ばれる。ヒトSLC6A3遺伝子座は5番染色体に位置し、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000005.9(配列番号45)のヌクレオチド1,392,905-1,445,483の逆相補体に相当する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「rs28363170」という用語は、ドーパミン輸送体(SLC6A3/DAT1)遺伝子産物のヌクレオチド配列の3’非翻訳領域(UTR)に存在する40ヌクレオチドの可変数タンデム反復(VNTR;ACTGGAGCGTGTACTACCCC AGGACGCATGCAGGGCCCCC;配列番号39)に関する多型を指す。10および9反復アレルは、最も一般的なアレルである(Doucette-Stamm et al.,1995)。同様に、用語「rs28363170遺伝子型」は、患者がどのVNTRのアレルを有するか(例えば、患者がSLC6A3/DAT1の3’UTRにいくつ配列番号39のコピーを有するか)に言及する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「OPRM1」という用語は、受容体ミュー1(OPRM1)遺伝子または遺伝子産物、例えば、限定するものではないが、GENBANK(登録商標)バイオシーケンスデータベースのアクセッション番号NM_000914.5(配列番号46)およびNP_000905.3(配列番号47)に記載されている遺伝子産物を指す。ヒトOPRM1遺伝子座は6番染色体に位置し、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NC_000006.11(配列番号48)のヌクレオチド154、360、375-154、453、491に相当する。
【0037】
本明細書中で使用されるとき、用語「rs1799971」とは、OPRM1遺伝子におけるSNPを指す。野生型アレルは、配列番号46のヒトOPRM1 cDNAのヌクレオチド423に対応するヌクレオチド位置にAを有し、配列番号47のヒトOPRM1ポリペプチドのアミノ酸40にアスパラギンアミノ酸をコードする。置換多型は、配列番号46のヒトOPRM1 cDNAのヌクレオチド423に対応するヌクレオチド位置にGを有し、配列番号47のヒトOPRM1ポリペプチドのアミノ酸40にアスパラギン酸アミノ酸をコードする。したがって、このSNPは、「Asn40Asp」またはその文法上の変化形と呼ばれることもある。同様に、「rs1799971遺伝子型」という用語は、患者が配列番号46のヒトOPRM1 cDNAのヌクレオチド423にAまたはGを有するかどうか、ならびに患者が配列番号47のヒトOPRM1 cDNAのアミノ酸40にアスパラギンまたはアスパラギン酸を有するかどうかの両方に言及する。
【0038】
当技術分野で知られているように、いくつかの実施形態では、特定の遺伝子座から、例えば代替的な転写開始部位、選択的スプライシングなどによって、複数の遺伝子産物を生成することができる。本明細書に提示されているGENBANK(登録商標)アクセッション番号は、例示的であることを意図しており、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列が本明細書に明示的に開示されていない他の遺伝子産物も、対応する遺伝子名に包含されることを意図していることが理解される。したがって、例えば、配列表の配列の転写バリアントも、それによってコードされるアミノ酸バリアントと同様に、本明細書に記載の遺伝子の定義に含まれる。
【0039】
II.アルコール使用障害(AUD)を有する対象におけるナルトレキソン応答を予測するための方法
アルコール使用障害(AUD)は、強迫的なアルコール使用、アルコール摂取に対する制御の喪失、および使用していないときの否定的な感情状態を特徴とする慢性再発性脳疾患である。米国だけで推定1600万人がAUDを有すると診断されている。AUDと診断されるためには、個体は、精神障害の診断・統計マニュアル(DSM)概説されている基準の少なくとも2つを満たさなければならず、これには、摂取の量または持続期間、飲酒の減量または中止の不能性、飲酒または回復に費やした時間、渇望、飲酒による仕事、学業または家庭への妨害、摂取から生じる問題にもかかわらず摂取を維持すること、摂取により重点を置くために活動を減らすこと、摂取または酩酊しながらの危険な行動の増加、抑うつまたは不安の感情にもかかわらず摂取を継続すること、過去1年での平均摂取量の増加、および離脱症状の存在が含まれる。
【0040】
AUDの治療は、カウンセリング、行動修正、および薬理的介入を含み得る。現在、3つの薬物、ナルトレキソン、アカンプロサートおよびジスルフィラムが、アルコール使用障害を治療するために承認されている。
【0041】
内因性オピエートおよびドーパミン(DA)シグナル伝達の両方がAUDの多くの局面を調節する。アルコールのキューおよび静脈内アルコール自己投与は両方とも動物におけるDA放出を増加させ、ヒト脳イメージングは、ヒト腹側線条体(VS)における同じ機構を暗示する。このドーパミン放出およびその効果は、動物およびヒトにおいて外因的に投与されたナルトレキソンによってブロックされる。
【0042】
ナルトレキソンは、AUDの治療において有効性が証明されており、この目的のためにFDAによって承認されている。しかしながら、ナルトレキソンはAUDを有するすべての個体に作用するわけではなく、実際には少数の個体に良好に作用する。これは、遺伝子の差異がナルトレキソンの効果の根拠となるかもしれないという推測につながった。ナルトレキソンが脳のミューオピエート受容体に特異的に結合し、(腹側線条体および他の場所で)その結合が脳ドーパミン系に対する効果に関連していることを考えると、(遺伝性または獲得性のいずれかの)遺伝的変異性がナルトレキソンの有効性に影響を及ぼし得ると仮定することができる。前述のように、118位置(A118G)のミューオピエート受容体遺伝子(OPRM1)のコード化領域中の単一ヌクレオチドバリアント(SNP)が、ナルトレキソンの有効性を予測することが報告されている。しかし、これは一般的には確認されなかった。しかしながら、本発明者らの過去の研究は、このOPRM1 SNPが、ドーパミン系におけるいくつかの遺伝的バリアント、ドーパミン輸送体(DAT1)遺伝子におけるVNTR、および/またはカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子におけるSNPによって影響され、かつ/またはそれらと相互作用することを示唆した。これらの機能的バリアントは、これらのドーパミン系遺伝子に影響を及ぼす他の機構がOPRM1遺伝子と相互作用して、ナルトレキソンの有効性にも影響を及ぼし得ることを示唆している。そのような機構の1つは、DAT1およびCOMT遺伝子の遺伝子プロモーター領域および他の場所における特定のCpG部位のエピジェネティック(おそらく獲得性であり、遺伝性ではない)メチル化である。
【0043】
DA輸送体(DAT)は、線条体DAクリアランスの主要機構である。最も一般的な対立遺伝子バリアントが9反復および10反復である、DAT1遺伝子の3’非翻訳領域(DAT1/SLC6A3)における40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型(rs28363170;ACTGGAGCGTGTACTACCCCAGGACGCATGCAGGGCCCCC;配列番号39)は、DAT1機能に影響を及ぼし得る。10反復(10R)アレルと比較して、9反復(9R)アレルは、AUD個体におけるDAT1発現の減少および線条体DAT1の利用可能性の低下に関連しており、潜在的に比較的増加したシナプス外DAトーンをもたらす。これらの知見と一致して、9Rアレルを保有する個体は、10Rホモ接合体と比較して、金銭的報酬の期待および受領中により大きなVS活性化を示す。さらに、ニコチン依存性9R保有者は、喫煙後に、より大きな喫煙キュー誘発VS活性化およびより大きなVS DA放出を示す。
【0044】
したがって、いくつかの実施形態において本開示の主題は、アルコール使用障害(AUD)を有する対象におけるナルトレキソン応答を予測するための方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、対象から単離されたゲノムDNA試料に、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態を決定するために、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していることを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、ここで、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域は、ミューオピオイド受容体(OPRM1)遺伝子、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子、およびドーパミン輸送体(SLC6A3)遺伝子からなる群から選択される遺伝子の部分配列であり、さらに、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域の決定されたメチル化状態は、対象におけるナルトレキソン応答を予測する。
【0045】
いくつかの実施形態では、アッセイされる単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域は、OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。
【0046】
いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子の1つ以上の領域は、OPRM1転写開始部位(TSS)の上流に130のヌクレオチドおよび下流に600のヌクレオチドを含み、場合により、以下の部分配列を含む:
【0047】
上記の配列を参照すると、下線が引かれたヌクレオチドは、図4Aおよび図4Bで同定され、番号付けされたOPRM1プロモーターの例示的なCpG部位に対応する。開始因子コドンATGを太字のイタリック体で示す。いくつかの実施形態では、配列番号2~10のCG1~10の1つまたは複数のメチル化状態が決定される。
【0048】
いくつかの実施形態では、SLC6A3遺伝子の1つ以上の領域は、以下の部分配列のうちの1つ以上を含む:
【0049】
上記の配列を参照すると、下線が引かれたヌクレオチドは、図5A図5Cで同定され、番号付けされたSLC6A3プロモーターの例示的なCpG部位に対応する。転写開始部位GAGを太字のイタリック体で示す。
【0050】
いくつかの実施形態では、SLC6A3 VNTRは、以下の部分配列のうちの1つ以上を含む:
【0051】
上記の配列を参照すると、下線が引かれたヌクレオチドは、図5Bおよび図5Cで同定され、番号付けされたSLC6A3 VNTRの例示的なCpG部位に対応する。転写開始部位GAGを太字のイタリック体で示す。いくつかの実施形態では、配列番号12~20および22~25のCG1~11の1つまたは複数のメチル化状態が決定される。
【0052】
いくつかの実施形態では、COMT遺伝子の1つ以上の領域は、以下の部分配列のうちの1つ以上を含む:
【0053】
上記の配列を参照すると、下線が引かれたヌクレオチドは、図6A図6Cで同定され、番号付けされたCOMT P2およびP1プロモーターの例示的なCpG部位に対応する。いくつかの実施形態では、配列番号12~20および22~25のCG1~12の1つまたは複数のメチル化状態が決定される。
【0054】
いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、SCLC6A3のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型の少なくとも1つ、場合により4つすべてのメチル化状態が決定される。
【0055】
ゲノムDNAは、有核細胞を含む対象から単離された任意の生物学的試料から単離することができる。例示的な生物学的試料は、容易に得ることができる細胞が含まれ、これに限定されないが、血球を含む。いくつかの実施形態では、ゲノムDNAは、血球、場合により末梢血単核細胞および頬側細胞からなる群から選択される細胞から、ならびに/または細胞、場合により血液、唾液、脳脊髄液および/もしくはその任意の画分もしくは成分を含有する生物学的試料から単離される。
【0056】
本明細書に開示されるように、ナルトレキソン応答を予測するための本開示の方法は、対象から単離されたゲノムDNA試料に、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態を決定するために、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していることを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。ゲノムDNA試料のメチル化状態を決定するための方法は公知であり、限定するものではないが、配列決定、メチル化特異的PCR(MS-PCR)、融解曲線メチル化特異的PCR(McMS-PCR)、亜硫酸水素塩処理ありまたはなしのMLPA、QAMA(Zeschnigk et al.,2004)、MSRE-PCR(Melnikov et al.,2005)、MethyLight(Eads et al.,2000)、ConLight-MSP(Rand et al.,2002)、亜硫酸水素塩変換特異的メチル化特異的PCR(BS-MSP;Sasaki et al.,2003)、COBRA(重亜硫酸ナトリウム処理DNAのPCR産物のメチル化依存性配列の相違を明らかにするために制限酵素の使用に依存する)、メチル化感受性一塩基プライマー伸長コンフォメーション(MS-SNuPE)、メチル化感受性一本鎖コンフォメーション解析(MS-SSCA)、融解曲線複合亜硫酸水素塩制限解析(McCOBRA;Akey et al.,2002,PyroMethA,HeavyMethyl(Cottrell et al.,2004)、MALDI-TOF、MassARRAY、メチル化アレルの定量分析(QAMA)、酵素領域メチルアッセイ(ERMA)、QBSUPT、MethylQuant、定量PCR配列決定およびオリゴヌクレオチドベースのマイクロアレイシステム、パイロシーケンシング、Meth-DOP-PCRなどを含む。DNAメチル化分析のためのいくつかの有用な技術の総説は、Rein et al.,1998;Laird,2003;およびAuerkari,2006に提供され、それらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。米国特許第7,425,415号も参照されたい。
【0057】
メチル化状態を評価するための技術は、別個の手法に基づく。いくつかは、エンドヌクレアーゼの使用を含む。そのようなエンドヌクレアーゼは、非メチル化認識部位に対してメチル化認識部位を優先的に切断するか、またはメチル化認識部位に対して非メチル化認識部位を優先的に切断するかのいずれかであり得る。前者のいくつかの例は、Acc III、Ban I、BstN I、Msp IおよびXma Iである。後者の例は、Acc II、Ava I、BssH II、BstU I、Hpa IIおよびNot Iである。切断パターンの違いは、メチル化CpGジヌクレオチドの有無を表す。切断パターンは、直ちに、または容易に識別可能な産物を生成するさらなる反応の後に検出することができる。変化したサイズおよび/または電荷を検出する手段(限定されないが、電気泳動、クロマトグラフィー、および質量分析を含む)を使用して、修飾産物を検出することができる。
【0058】
あるいは、メチル化CpGジヌクレオチドの同定は、MeCP2タンパク質のメチル結合ドメイン(MBD)の、メチル化DNA配列に選択的に結合する能力を利用し得る(Cross et al.,1994;Shiraishi et al.,1999)。MBDはまた、MBP、MBP2、MBP4、ポリ-MBD(Jorgensen et al.,2006)から、または試薬、例えばメチル化核酸に結合する抗体から得ることができる。MBDは、固体マトリックスに固定化され、高度にメチル化されたDNA配列を単離するための分取カラムクロマトグラフィーに使用され得る。発現されたHisタグ付きメチル-CpG結合ドメインなどのバリアント形態を使用して、メチル化DNA配列に選択的に結合することができる。最終的に、制限エンドヌクレアーゼ消化ゲノムDNAを、発現されたHisタグ付きメチル-CpG結合ドメインと接触させる。他の方法は当技術分野で周知であり、とりわけ、メチル化CpGアイランド回収アッセイ(MIRA)が挙げられる。別の方法、MB-PCRは、PCR容器の壁に固定化された組換え二価メチル-CpG結合ポリペプチドを使用して、メチル化DNAを捕捉し、その後、PCRにより結合メチル化DNAを検出する。
【0059】
メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを検出するためのさらなる手法は、CpGジヌクレオチドモチーフのメチル化形態または非メチル化形態のいずれかを選択的に修飾する化学試薬を使用する。適切な化学試薬としては、ヒドラジンおよび亜硫酸水素塩イオンが挙げられる。本発明の方法は、好ましくは亜硫酸水素塩イオンを使用する。亜硫酸水素塩変換は、メチル化シトシンを維持しながら、非メチル化シトシンをウラシルに変換する重亜硫酸ナトリウムでDNA試料を処理することに依存する(Furuichi et al.,(1970)。この変換は、最終的に元のDNAの配列に変化をもたらす。得られたウラシルは、シトシン塩基対形成挙動とは異なる、チミジンの塩基ペアリング挙動を有することが一般的に知られている。これにより、メチル化シトシンと非メチル化シトシンとの識別が可能になる。配列の相違を評価するための分子生物学および核酸化学の有用な従来技術は、当技術分野で周知であり、文献で説明されている。例えば、Sambrook et al.,2001;Gait,1984;Hames&Higgins,1985;およびシリーズ、Methods in Enzymology,Academic Press,Incを参照されたい。
【0060】
いくつかの技術は、CpGジヌクレオチドでのメチル化状態を評価するためにプライマーを使用する。プライマー設計への2つの手法が可能である。第1に、プライマーは、それ自体がいかなる潜在的なDNAメチル化部位も包含しないように設計され得る。差次的メチル化の部位における配列差異は、2つのプライマーの間に位置し、配列差異の可視化は、さらなるアッセイ工程を必要とする。そのようなプライマーは、亜硫酸水素塩ゲノム配列決定、COBRA、Ms-SnuPEおよびいくつかの他の技術で使用される。第2に、プライマーは、最初の処理された配列のメチル化バージョンまたは非メチル化バージョンのいずれかと特異的にハイブリダイズするように設計され得る。ハイブリダイゼーション後、増幅反応を実施し、当技術分野で公知の任意の検出システムを使用して増幅産物をアッセイすることができる。増幅産物の存在は、試料がプライマーにハイブリダイズしたことを示す。プライマーの特異性は、DNAが修飾されているか否かを示し、次いで、DNAがメチル化されているか否かを示す。標的に対して十分な相補性領域、例えば12、15、18または20ヌクレオチドが存在する場合、プライマーはまた、ハイブリダイゼーションに干渉しないが他の操作に有用であり得る、さらなるヌクレオチド残基を含有し得る。そのような他の残基の例は、制限エンドヌクレアーゼ切断のための、リガンド結合のための、または因子結合、またはリンカーまたは反復のための部位であり得る。オリゴヌクレオチドプライマーは、修飾メチル化残基に特異的であるようなものであってもなくてもよい。
【0061】
修飾核酸と非修飾核酸とを区別するさらなる方法は、オリゴヌクレオチドプローブを使用することである。そのようなプローブは、修飾核酸または修飾核酸のさらなる産物、例えば増幅によって得られた産物に直接ハイブリダイズし得る。プローブに基づくアッセイは、オリゴヌクレオチドの特定の配列へのハイブリダイゼーションおよびその後のハイブリッドの検出を利用する。増幅産物が検出される前に、例えば沈殿工程などのさらなる精製工程があってもよい。オリゴヌクレオチドプローブは、当技術分野で公知の任意の検出システムを使用して標識することができる。これらには、蛍光性部分、放射性標識部分、生物発光部分、発光部分、化学発光部分、酵素、基質、受容体またはリガンドが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
いくつかの実施形態では、OPMR1、DAT1/SLC6A3およびCOMT(またはそれらの一部、いくつかの実施形態では、CpGアイランド)から選択される遺伝子座の少なくとも部分配列のメチル化状態が、メチル化特異的PCR(MSP)または同等の増幅技術を使用して決定される。MSP手法では、DNAは、亜硫酸水素ナトリウム処理の結果としての配列差異を利用することによってメチル化DNAと非メチル化DNAとを識別するように設計された、プライマー対を使用して増幅され得る(Herman et al.,1996;国際公開第97/46705号)。例えば、亜硫酸水素塩イオンは、非メチル化シトシン塩基を修飾し、それらをウラシル塩基に変化させる。ウラシル塩基は、ハイブリダイゼーション条件下でアデニン塩基にハイブリダイズする。したがって、グアニン塩基の代わりにアデニン塩基を含むオリゴヌクレオチドプライマーは、亜硫酸水素塩修飾DNAにハイブリダイズし、グアニン塩基を含むオリゴヌクレオチドプライマーは、DNA中の非修飾(メチル化)シトシン残基にハイブリダイズする。DNAポリメラーゼおよび第2のプライマーを用いた増幅によって、容易に観察することができる増幅産物を得、これは順に、DNAがメチル化されたか否かを示す。PCRは好ましい増幅方法であるが、この基本技術、例えばネステッドPCRおよびマルチプレックスPCRでのバリアントも本発明の範囲内に含まれる。
【0063】
亜硫酸水素塩配列決定は、OPMR1、SLC6A3、およびCOMTから選択される少なくとも1つの遺伝子のメチル化状態を決定するための別の代替案を提供する。プライマーは、関連遺伝子の重要なCpGアイランドを介した配列決定に使用するために設計され得る。したがって、プライマーは、選択された遺伝子の目的の領域にわたって配列決定を指示するために、センスおよびアンチセンスの両方の向きで設計され得る。
【0064】
前述のように、関連遺伝子のメチル化状態を評価するための例示的な技術は、増幅産物を得るために増幅を必要とする。増幅産物の存在は、当技術分野で周知の方法を使用して直接評価することができる。それらは、アガロースまたはポリアクリルアミドゲルなどの適切なゲル上で簡単に可視化され得る。検出は、二本鎖DNAに差し込む特定の色素、例えばエチジウムブロマイドの結合、および例えばUV照明器下でのDNAバンドの可視化を含み得る。増幅産物を検出するための別の手段は、オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションを含む。あるいは、蛍光またはエネルギー移動を測定して、メチル化DNAの存在を決定することができる。
【0065】
MSP技術の具体例は、リアルタイム定量的MSP(QMSP)と呼ばれ、リアルタイムまたは終点でのメチル化DNAの信頼できる定量化を可能にする。リアルタイム法は、一般に、増幅手順の連続的な光学モニタリングに基づいており、蛍光性標識試薬を利用し、蛍光性標識試薬の産物への組み込みを定量化することができ、その定量化は、テンプレート中のその配列のコピー数を示す。そのような試薬の1つはSYBR Green Iと呼ばれる蛍光性色素であり、それは二本鎖DNAに優先的に結合し、その蛍光は二本鎖DNAの結合によって大幅に増強される。あるいは、標識プライマーおよび/または標識プローブを定量化に使用することができる。それらは、周知の市販のリアルタイム増幅技術、例えばTAQMAN(登録商標)、MOLECULAR BEACONS(登録商標)、AMPLIFLUOR(登録商標)およびSCORPION(登録商標)DZYNA(登録商標)、PLEXOR(商標)などの具体的な利用を意味する。
【0066】
いくつかの実施形態では、Infinium MethylationEPIC BeadChip(Illumina,San Diego,Californiaから入手可能)が、OPMR1、SLC6A3およびCOMT遺伝子、またはそれらの一部のうちの1つ以上の、いくつかの実施形態ではCpGアイランドのメチル化状態を決定するために使用される。
【0067】
III.ナルトレキソン応答を予測するための方法およびAUDを有する対象を治療する方法
いくつかの実施形態では、本開示の主題はまた、アルコール使用障害を有する対象を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、対象から単離されたゲノムDNA試料に、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態を決定するために、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していることを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、ここで、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域は、ミューオピオイド受容体(OPRM1)遺伝子、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子、およびドーパミン輸送体(SLC6A3)遺伝子からなる群から選択される遺伝子の部分配列であり、さらに、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域の決定されたメチル化状態は、対象におけるナルトレキソン応答を予測し、その後、続いて行われる適切な治療に関して決定する。いくつかの実施形態では、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態がナルトレキソンに有利に応答する対象を予測する場合、対象を有効量のナルトレキソンで治療する。単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態が、対象がナルトレキソンに有利に応答することを予測しない場合、代替治療が選択される。いくつかの実施形態では、そのような対象は、有効量のナルトレキソン以外の活性薬剤(本明細書では「非ナルトレキソン剤」と呼ばれる)で治療される。様々な非ナルトレキソン剤、例えば、限定されないがアカンプロサート、トピラマート、フルオキセチン、オンダンセトロン、またはそれらの任意の組み合わせを使用することができる。
【0068】
ナルトレキソンを最も効果的にするために、ミューオピエート遺伝子(OPRM1)については、列挙された平均よりも低い値を有する以下のCpG(cg)部位が、列挙された平均よりも低い値を有するDAT(SCL6A3)遺伝子CpG(cg)部位の1つと組み合わせで存在しなければならない。上記の基準が満たされる場合、患者は、上記の基準が満たされない状況と比較して、ナルトレキソンに応答する非常に大きな可能性を有するであろうと予想される(p<0.05)。すなわち、これらの特定のCpG部位について特定のメチル化レベル/頻度を試験し、受け取った後、臨床医/処方者は、上記の基準が満たされた場合、ナルトレキソンを推奨/処方することを選択することができるであろう。
*cg16180821およびcg15600751は配列番号11に存在し、cg12882697は配列番号21に存在する。
【0069】
ナルトレキソンを最も効果的にするために、ミューオピエート遺伝子(OPRM1)については、列挙された平均よりも低い値を有する以下のCpG(cg)部位が、列挙された平均よりも低い値を有するCOMT遺伝子CpG(cg)部位の1つと組み合わせで存在しなければならない。上記の基準が満たされる場合、患者は、上記の基準が満たされない状況と比較して、ナルトレキソンに応答する非常に大きな可能性(p<0.05)を有するであろうと予想される。すなわち、これらの特定のCpG部位について特定のメチル化レベル/頻度を試験し、受け取った後、臨床医/処方者は、上記の基準が満たされた場合、ナルトレキソンを推奨/処方することを選択することができるであろう。
【0070】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の主題はまた、アルコール使用障害(AUD)を有する対象を治療する方法に関する。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、(a)対象から単離されたゲノムDNA試料に、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態を決定するために、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していることであって、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域は、ミューオピオイド受容体(OPRM1)遺伝子、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子およびドーパミン輸送体(SLC6A3)遺伝子からなる群から選択される遺伝子の部分配列であり、さらに、単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域の決定されたメチル化状態は、対象におけるナルトレキソン応答を予測するものである、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行していること;ならびに(b1)単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域のメチル化状態が、対象がナルトレキソンへ有利に応答すると予測している場合、対象を有効量のナルトレキソンで治療すること;または(b2)有効量の、アカンプロサート、トピラマート、フルオキセチン、オンダンセトロン、もしくはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい非ナルトレキソン剤で対象を治療することのいずれか、を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、アッセイされる単離されたゲノムDNAの1つ以上の領域は、OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、CSLC6A3遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子の1つ以上の領域は、OPRM1転写開始部位(TSS)の上流に130のヌクレオチドおよび下流に600のヌクレオチドを含み、場合により、配列番号2~10のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、SLC6A3遺伝子の1つ以上の領域は、配列番号12~20のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、COMT遺伝子の1つ以上の領域は、配列番号28~38のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、SLC6A3 VNTRは、配列番号22~25のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子のプロモーター、COMT遺伝子のプロモーター、およびSLC6A3遺伝子の3’非翻訳領域中の40塩基対の可変数タンデム反復(VNTR)多型の少なくとも2つ、場合により3つすべてのメチル化状態が決定される。いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子の少なくとも1つの領域、ならびにSLC6A3遺伝子および/またはCOMT遺伝子の少なくとも1つの領域のメチル化状態が決定される。いくつかの実施形態では、OPRM1遺伝子の少なくとも1つの領域は、配列番号1のヌクレオチド位置274、277、357および419からなる群から選択され、さらに(i)SLC6A3の少なくとも1つの領域は、配列番号11のヌクレオチド位置576および1102、配列番号11のヌクレオチド位置1102、ならびに配列番号21のヌクレオチド位置46からなる群から選択され、かつ/または(ii)COMT遺伝子の少なくとも1つの領域は、配列番号27のヌクレオチド46および107からなる群から選択される、いくつかの実施形態では、対象が以下のメチル化値の組み合わせを有する場合、ナルトレキソンへの肯定的な応答が予測される:
(a)ヌクレオチド位置27に関して0.147未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置419に関して0.488未満と、配列番号11のヌクレオチド位置576に関して0.651未満かつ/または配列番号11のヌクレオチド位置1102に関して0.648未満かつ/または配列番号21のヌクレオチド位置46に関して0.089未満との組み合わせ;および/あるいは
(b)配列番号1のヌクレオチド位置27に関して0.147未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置277に関して0.157未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置357に関して0.126未満かつ/または配列番号1のヌクレオチド位置419に関して0.488未満と、配列番号27のヌクレオチド位置46に関して0.587未満かつ/または配列番号27の位置107に関して0.546未満との組み合わせ。いくつかの実施形態では、ゲノムDNAは、血球、場合により末梢血単核細胞および頬側細胞からなる群から選択される細胞から、ならびに/または細胞、場合により血液、唾液、脳脊髄液および/もしくはその任意の画分もしくは成分を含有する生物学的試料から単離される。
【0071】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、1つ以上のメチル化アッセイを実行するかまたは実行している前に、単離されたゲノムDNAを亜硫酸水素塩で変換することをさらに含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【実施例
【0072】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、装置および/または方法がどのようにして作製および評価されるかの完全な開示および説明を提供するように記載され、純粋に例示的であることを意図しており、本開示を限定することを意図していない。数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされてきたが、いくつかの誤差および偏差が考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、温度は℃単位または常温であり、圧力は大気圧または大気圧周辺である。
【0073】
実施例のための材料および方法
概要.CONSORTダイアグラムを含む、元となるRCTの詳細な方法は、Anton et al,2020およびSchacht et al,2017に記載されている。Medical University of South Carolina Institutional Review Boardは、すべての手順を承認し、すべての参加者は、参加前にインフォームドコンセントを提供した。試験は、最初の評価セッション、ベースライン訪問、および16週間の治療期間を通して9回のフォローアップ訪問からなった。手短に言えば、AUD治療を求める参加者を、メディア広告を用いて社会から募集し、包含/除外基準について評価し、rs1799971について遺伝子型判定した。元になるRCTの目的の1つは、ナルトレキソンの有効性に対するrs1799971遺伝子型の影響を試験することであり、そのため、マイナー(G)アレルを保有する参加者を過剰に選択し、その結果、これらの個体が投薬にランダム化された146人の参加者のうち、最終的に約50%を構成した。
【0074】
参加者.参加者は18~70歳であること;評価前の90日間の少なくとも50%の日数で大量飲酒(男性/女性について、1日少なくとも5/4回の標準量の飲酒)を報告していること;およびStructured Clinical Interview for DSM-IV(First et al,2002)による評価で、アルコール依存症のDSM-IV(精神障害の診断・統計マニュアル、改訂第4版)診断基準を満たしていることが要求された。参加者はまた、アフリカ系の低いrs1799971 Gアレル頻度に付随して、白色人種またはアジア人として自己同定することも要求された。本発明者らは、ここで使用されるメチル化アッセイに含まれる50個のSNPについての集団アレル頻度の分析が、自己報告およびSNPで同定された祖先との間の高度の一致を示したことを以前に報告した。評価前の90日間にコカインまたはマリファナの使用を報告した参加者は、いずれかの物質、またはニコチン以外の他のいずれかへの依存についてDSM-IV基準を満たさず、投薬ランダム化の際に尿薬物スクリーニングが陰性であった限り含まれた。除外基準は、(少なくとも1ヶ月間の安定した服用を要する)抗うつ薬以外の向精神薬を現在使用;現在のDSM-IV I軸診断または自殺/殺人念慮;重大な内科的疾患の病歴;肝臓酵素(ALTまたはAST)レベルが正常の3倍超;および前月のナルトレキソン、ジスルフィラムまたはアカンプロサートの使用、であった。女性参加者は、妊娠または授乳することはできなかった。以下の表は、試料の人口統計学的特性を列挙する。投薬、ランダム化および評価参加者は、投薬ランダム化の前に少なくとも4日間禁酒を維持することを要求され、次いで、壺ランダム化(Stout et al,1994)されて16週間ナルトレキソン(25mgを2日間、その後50mg)またはプラセボを投与された。ランダム化をrs1799971遺伝子型によって層別化し、性別、喫煙状態(非喫煙者対喫煙者、1日当たり10本以上の紙巻たばことして定義)、コカイン使用、抗うつ薬使用、およびAUD家族歴で投薬群間のバランスをとった。試験薬は、100mgのリボフラビンで同じように過剰にカプセル化され(高く、投薬群間で変化しなかった接着性のデータについては(Schacht et al,2017)を参照されたい)、標識されたブリスターパックに分配された。参加者および研究者は、遺伝子型および投薬の割り当てについてブラインドであった。ランダム化後、参加者は、医療管理セッションのために1、2、3、4、6、8、10、12、および16週目に戻っており、この間、最後の訪問からの毎日の飲酒を、カレンダーベースのタイムラインフォローバックインタビュー(Sobell and Sobell、1992)で評価した。ランダム化後に脱落した参加者を、16週目に戻るように補償して欠落した飲酒データ得た。投薬群全体で類似の割合で、40人の参加者が最終的に脱落したが、89%の参加者において完全な飲酒データが利用可能であった。
人口統計学的特性およびベースラインアルコール使用
*p値は、ナルトレキソン群とプラセボ群との間の差についてのχ検定およびt検定の有意性を示す。
【0075】
DNA収集およびジェノタイピング.最初の評価セッションで収集した末梢血単核細胞からゲノムDNAを抽出し(Gentra Puragene Blood Kit;Qiagen Inc.,Valencia,CA)、-80℃で保存し、rs1799971およびrs4680 SNPおよびSLC6A3 VNTRをジェノタイピングするのに使用した。これらのアッセイの詳細は、過去に説明された(Anton et al,2020)。
【0076】
メチル化アッセイ.ゲノムDNAを、Qubitフルオロメーター(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して定量した。Infinium MethylationEPIC BeadChip(Illumina,San Diego,CA)は、99.7%がCpG部位である866,895個のシトシン残基におけるメチル化をアッセイし、DNAメチル化の包括的な全ゲノムプロファイルを生成するために使用された。各対象について、500ngのゲノムDNAを亜硫酸水素塩変換し、変性させ、増幅し、断片化し、再懸濁し、BeadChipsにハイブリダイズさせた(チップあたり8試料)。8つの試料の各群は、投薬群、年齢およびニコチン使用でバランスをとるために、各チップがナルトレキソン治療参加者からの4つのサンプルおよびプラセボ治療参加者からの4つのサンプルを含み、年齢(中央値分割)およびニコチン使用(1日当たり紙巻たばこ10本以上として定義)を4つのサンプルの各群内に均等に分配した。年齢およびニコチン使用を選択したのは、これらの特性が全体的なDNAメチル化に影響を及ぼすことが知られているからである(Horvath et al,2012;Joehanes et al,2016)。ハイブリダイゼーション中、増幅および断片化されたDNAは、各CpG部位に特異的なフルオロフォア結合プローブ(メチル化部位用のもの、および非メチル化部位用のもの)にアニーリングした。次いで、処理したBeadChipをIllumina iScan Systemでスキャンし、レーザーを使用して各プローブからフルオロフォアを励起し、それらの蛍光を記録した。プローブ調査を要約すると、各CpG部位における、アレルのメチル化対非メチル化比率についての平均シグナルが得られた。
【0077】
品質管理.RnBeads Rパッケージ(Assenov et al,2014)を使用して、染色、ハイブリダイゼーション、伸長、標的除去およびゲノムDNAの亜硫酸水素塩変換の質のボックスプロットを調べた。陰性対照ボックスプロットの分布および中央値も各試料について調べた。これらのメトリクスに基づいて、ある参加者のデータは低質であると判断され、分析から除外され、145人の参加者が分析のために残された。最初の866,895個のプローブのうち、RnBeads品質管理パイプラインは、SNPと重複したため、データからの17,371個のプローブ;最も汚染されたプローブを反復的に除去するGreedycutアルゴリズムを使用して、6,105個のプローブ;および特定の状況(非CpG位置)に位置していたため、2,899個のプローブを除去し、840,520個のCpG部位が分析のために残った。データを、(Pidsley et al,2013)からの方法を使用して正規化した。
【0078】
データの質をさらに評価し、収束的な妥当性を調べるために、参加者の年齢および性別をメチル化データから推定し、喫煙者(n=57)と非喫煙者(n=88)との間のメチル化の差を試験した。まず、30,084個のCpG部位のメチル化から年齢を推定するHorvathのDNA Methylation Age Calculator(Horvath,2013)を使用して、参加者の年齢を予測した。これらの予測は、参加者の自己報告年齢と高度に相関した(r=0.882、p<0.001)。次に、HorvathアルゴリズムおよびRnBeadsはまた、性染色体メチル化に基づいて性別を予測し、両方の予測は、参加者の自己報告性別と正確に一致した。最後に、喫煙者と非喫煙者との間の全ゲノムメチル化の差をRnBeadsで試験し、これらの群間で最も有意に差次的にメチル化された5つのCpG部位を、以前の論文(Joehanes et al,2016)で喫煙者と非喫煙者とを最も強く識別した5つのCpG部位と比較した。本発明者らのデータの上位5つの部位のうち4つ(いずれもOPRM1、SLC6A3またはCOMTとは関連付けられなかった、IlluminaプローブID、cg05575921、cg21161138、cg21566642およびcg01940273)は、Joehanesの分析における最も差次的にメチル化された上位5つの部位の中にあった。
【0079】
分析された領域.図4図6は、各遺伝子のプロモーターに位置するBeadChip上のCpG部位を示す。840,520個のCpG部位が分析に利用可能であったが、各プロモーター中のすべての部位がBeadChip上に表されたわけではなかった。各プロモーター内のすべての利用可能な部位を含めた。OPRM1の場合、プロモーターは、ナルトレキソン応答に対するOPRM1メチル化の影響の最近の研究(Lin et al,2020)と一致して、転写開始部位(TSS)の130ヌクレオチド上流かつ600ヌクレオチド下流内の領域として定義された。これには10個のCpG部位(IlluminaプローブID cg22370006、cg14262937、cg06649410、cg23143142、cg23706388、cg05215925、cg14348757、cg12838303、cg22719623、cg15085086)が含まれた。SLC6A3の場合、NCBI AceViewは、3つの可能なプロモーターを列挙し、1つはTSSの上流に位置し、2つはイントロン領域に位置する。先の研究の定義に従って、AceView 5’上流領域のBeadChip上の7つのCpG部位(cg16180821、cg13202751、cg14502484、cg05030481、cg27037018、cg04210284、cg12882697)を使用した。COMTは、可溶型COMTおよび膜結合型COMTの両方をコードするアイソフォームを有し、それぞれがそれ自身のプロモーター(それぞれP1およびP2)を有する(Tenhunen et al,1994)。BeadChip上のP1プロモーター中の4つのCpG部位(cg06346307、cg22546130、cg23601416、cg01335087)およびP2プロモーター中の8つのCpG部位(cg17810098、cg23268677、cg15834517、cg24899205、cg07019740、cg11032634、cg03205258、cg12175949)を含めた。最後に、探索的に、SLC6A3 VNTR領域のCpG部位も分析した。BeadChipはこの領域に3つのCpG部位(cg15600751、cg1632193およびcg10838500)を含めるが、1つ(cg10838500)は、10Rアレルにのみ存在するタイプ「E」反復で生じる(Fuke et al,2001)。したがって、この分析のために、部位cg15600751およびcg1632193におけるメチル化を平均化した。
【0080】
統計学的分析.メチル化レベル(各領域の各部位におけるメチル化アレルの比率全体を平均化した)と投薬との間の相互作用を、線形混合モデル(SPSS v.25 MIXED)で検証し、そこでは、メチル化および投薬(ナルトレキソン対プラセボ)が被験者間要因であり、試験時間(1~4ヶ月目)が反復被験者内要因であった。従属変数は、本発明者らより前の分析(Anton et al、2020;Schacht et al、2017)と同様に、大量飲酒日の割合(PHDD;すなわち、女性/男性が標準的な飲酒量の4/5倍以上を飲んだ試験日の割合)であった。投薬相互作用よる有意なメチル化は、すべての試験月にわたるPHDDに対するナルトレキソンの効果がメチル化の関数として異なることを示し;時間相互作用による投薬による有意なメチル化は、研究においてこれらの効果がメチル化と時間の両方の関数として異なることを示した。各モデルについて、最高レベルの有意な相互作用を、各遺伝子についての中央値分割メチル化レベル、およびメチル化レベルの各組み合わせ内での投薬の単純な効果の事後試験によって解釈した(例えば、OPRM1、SLC6A3およびCOMTメチル化の高対低)。この単純な効果が有意であった群について、効果の大きさ(Cohenのd)を計算した。
【0081】
3つの主要なモデルを試験した:1つは、OPRM1プロモーターメチル化、投薬、時間、およびこれらの因子のすべての相互作用を含み、2つ目および3つ目は、SLC6A3プロモーターメチル化またはCOMTプロモーターメチル化のいずれかが追加され、それをOPRM1プロモーターメチル化、投薬、および時間と相互作用させた。3つの一次モデルのアルファを、ボンフェローニ補正閾値p=0.0167(すなわち、0.05/3)に設定した。事後検定のアルファは、これらの検定がより高レベルの相互作用を解釈するためにのみ行われたので、p=0.05のままとした。4つ目の探索的モデルには、SLC6A3 VNTR(非プロモーター)メチル化、OPRM1プロモーターメチル化、投薬、時間、およびすべての相互作用が含まれた。各モデルは、非構造化共分散行列を使用し、メチル化およびアッセイバッチ効果の加齢に関連する変化を制御するために、年齢、および試料が載せられた特定のBeadChipの語も含んでいた。メチル化影響が、以前に報告された上位相互作用(Anton et al,2020)によって説明され得るかどうかを試験するために、追加の統計モデルを実施し、そこでOPRM1 rs1799971、SLC6A3 VNTRおよびCOMT rs4680遺伝子型(それぞれ、Gアレル保有者対Aアレルモ接合体、9Rアレル保有者対10Rアレルホモ接合体、およびmetアレル保有者対valアレルホモ接合体として二分される)における生殖細胞系一塩基多型、またはVNTR多型、ならびにそれらの投薬および時間との相互作用が、ナルトレキソン応答に対するメチル化レベルの新規/独立した影響を評価することになっていた。
【0082】
実施例1
SLC6A3プロモーターおよびOPRM1プロモーター
最高レベルの有意な相互作用は、SLC6A3プロモーターメチル化、OPRM1プロモーターメチル化、投薬群、および時間の間であった。SLC6A3およびOPRM1メチル化が中央値分割であった場合(図1;中央値はSLC6A3=0.150、OPRM1=0.170であった)、ナルトレキソンは、より低い両方のプロモーターのメチル化を有する個体において、2ヶ月目(F(1,217.46)=4.87、ナルトレキソンとプラセボとの間の平均差=16.2% HDD(95% CI=1.7~30.7%)、d=0.61、p=0.028)および3ヶ月目(F(1,232.53)=4.79、ナルトレキソンとプラセボとの間の平均差=16.5% HDD(95% CI=1.7~31.4%)、d=0.62、p=0.030)にプラセボと比較してPHDDを有意に減少させた。投薬の単純な効果は、SLC6A3およびOPRM1のメチル化の任意の他の組み合わせを有する個体においては、高SLC6A3および低OPRM1のメチル化を有する個体を除いて、いずれの時点でも有意ではなく、それらのうち、この効果は3ヶ月目で、その時点でのプラセボ群におけるPHDDの増加の関数として有意であった(F(1,241.14)=5.35、ナルトレキソンとプラセボとの間の平均差=25.7% HDD(95% CI=3.8~47.7%)、d=0.98、p=0.022))。SLC6A3のOPRM1による、投薬による、時間による相互作用は、rs28363170(SLC6A3 VNTRバリアント)遺伝子型、rs1799971(OPRM1 A118G SNP)遺伝子型、ならびにそれらの互いとの、ならびに投薬および時間との相互作用がモデルに含まれた場合でも有意なままであり、投薬によるメチル化の相互作用が新規であり/これらの他の影響とは無関係であることを示唆している。
【0083】
実施例2
COMTプロモーターおよびOPRM1プロモーター
最高レベルの有意な相互作用は、COMTプロモーターメチル化、OPRM1プロモーターメチル化、および投薬群の間であった。すべての試験月にわたって、ナルトレキソンは、プラセボと比較して、より低いCOMTメチル化およびより低いOPRM1メチル化を有する個体の間でPHDDをより減少させた。COMTおよびOPRM1メチル化が中央値分割であった場合(図2;中央値はCOMT=0.341、OPRM1=0.170であった)、ナルトレキソンは、両方のプロモーターのより低いメチル化を有する個体においてのみ、プラセボと比較して、全試験月にわたってPHDDを有意に減少させた(F(1,154.12)=5.41、ナルトレキソンとプラセボとの間の平均差=19.7% HDD(95% CI=3.0-36.5%)、d=0.85、p=0.021)。この相互作用は、rs4680(COMT val158met SNP)遺伝子型、rs1799971(OPRM1 A118G SNP)遺伝子型、ならびにそれらの互いとの相互作用、ならびに投薬および時間との相互作用が統計モデルに含まれた場合でも有意なままであり、投薬の相互作用によるメチル化が新規であり/これらの他の影響とは無関係であることを示唆している。
【0084】
実施例3
SLC6A3 VNTRおよびOPRM1プロモーター
最高レベルの有意な相互作用は、SLC6A3 VNTRメチル化、OPRM1プロモーターメチル化、および投薬群の間であった。すべての試験月にわたって、ナルトレキソンは、プラセボと比較して、より低いSLC6A3 VNTRメチル化およびより低いOPRM1メチル化を有する個体の間でPHDDをより減少させた。SLC6A3 VNTRおよびOPRM1プロモーターのメチル化が中央値分割であった場合(図3;中央値はSLC6A3=0.618、OPRM1=0.170であった)、ナルトレキソンは、両方の領域のより低いメチル化を有する個体においてのみ、プラセボと比較して、全試験月にわたってPHDDを有意に減少させた(F(1,146.43)=9.93、ナルトレキソンとプラセボとの間の平均差=28.5% HDD(95% CI=10.6~46.3%)、d=1.25、p=0.002)。この相互作用は、rs28363170遺伝子型、rs1799971遺伝子型、ならびにそれらの互いとの相互作用、ならびに投薬および時間との相互作用がモデルに含まれた場合でも有意なままであり、投薬の相互作用によるメチル化がこれらの他の影響とは無関係であることを再度示唆している。
【0085】
実施例の考察
まとめると、これらのデータは、オピオイドシグナル伝達およびドーパミンの再取り込みおよび不活性化の根底にある遺伝子のメチル化の差が相互作用して、AUD外来患者間の大量飲酒に対するナルトレキソン治療効果を予測することを示唆している。具体的には、SLC6A3およびCOMTのプロモーター領域のメチル化は、OPRM1プロモーターメチル化と相互作用して、探索的分析においてSLC6A3 3’ UTR VNTR領域のメチル化がそうしたように、ナルトレキソンの有効性に影響を及ぼした。プラセボと比較したナルトレキソンの、それが最も有効であった下位集団の大量飲酒への効果の大きさは、中~大規模に及び(0.53~1.04)、すべてのAUD個体にわたる大量飲酒に対するナルトレキソンの全体的な小さな効果よりも大きかった(Maisel et al,2013)。これらの知見は、ナルトレキソン応答の新規なエピジェネティック予測因子を示唆した。
【0086】
OPRM1メチル化が独立してナルトレキソン応答を緩和しなかったという知見は、別のAUDナルトレキソンRCTの最近の二次分析(Lin et al,2020)、ならびにOPRM1 rs1799971遺伝子型がナルトレキソンの効果を一貫して緩和しなかったと結論付けた最近のメタアナリシス(Hartwell et al,2020)と一致している。このメタアナリシスは、このOPRM1単独の薬理遺伝学的効果をやはり支持しなかった、現在の研究で使用されたデータの一次分析(Schacht et al,2017)を含む。まとめると、これらの知見は、ナルトレキソンがMORに直接拮抗するという事実にもかかわらず、OPRM1単独の遺伝的またはエピジェネティック変化の影響は、ナルトレキソン応答に一貫して影響を及ぼすほど十分に大きくない可能性が高いことを示唆している。
【0087】
対照的に、現在のデータは、ドーパミンシグナル伝達に対するナルトレキソンの下流効果の根底にあり得る遺伝子のエピジェネティック変化が、OPRM1メチル化と相互作用して、飲酒に対するその効果を予測することを示唆している。アルコールは線条体ドーパミン放出を急性的に誘発し(Boileau et al,2003)、ナルトレキソンはこの現象をブロックする(Benjamin et al,1993;Gonzales et al,1998)。DATおよびCOMTは、それぞれ線条体(Ciliax et al,1999)およびPFC(Matsumoto et al,2003)におけるドーパミン不活性化の主要な方法である。SLC6A3 VNTRおよびOPRM1 rs1799971変異は、アルコールに対する急性応答へのそれらの効果において相互作用することが以前に報告されており、その結果、各多型の機能獲得型アレルを保有する個体は、より低い快楽応答を示した(Weerts et al,2017)。より低いOPRM1、SLC6A3およびCOMTプロモーターのメチル化は、これらの遺伝子の比較的高い発現と関連付けられているので(Andria et al,1999;Murphy et al,2005;Wiers et al,2018)、ナルトレキソンは、これらの領域のより低いメチル化を有する個体における大量飲酒をより効果的に減少させ得る。なぜならメチル化のこのパターンによって、アルコール誘導性ドーパミン放出後のMOR利用能が増加し、シナプスのドーパミンクリアランスがより効率的になるからである。SLC6A3 3’UTRのメチル化に関して、遺伝子プロモーターの外側のCpGメチル化も遺伝子発現を調節することができ(Maunakea et al,2010)、3’UTRは、遺伝子発現に影響を及ぼす様々な転写後修飾に影響を及ぼし得る制御因子領域を含有する(Barrett et al,2012)。したがって、この領域のより大きなメチル化は、SLC6A3発現に影響を及ぼす転写後機能を調節し得る。本発明者らは以前に、この試料におけるナルトレキソンの有効性に対する上位遺伝子効果を報告したが、これらの遺伝子効果がモデルに含まれる場合、メチル化効果の有意性は持続し、上位性効果に起因する分散を説明した後でさえ、OPRM1メチル化と、SLC6A3およびCOMTメチル化との間の相互作用が独立してナルトレキソンの効果を予測したことを示唆している。
【0088】
したがって、本明細書に開示されるのは、OPRM1およびSLC6A3またはCOMTプロモーター、ならびにSLC6A3 3’UTR VNTRのメチル化が少ないAUD個体が、これらの領域にメチル化の他の組み合わせを有する個体よりも、プラセボと比較してナルトレキソンから利益を受ける可能性が高いという発見である。
【0089】
「継承された」遺伝子およびそれらの生殖細胞系変異がどのようにナルトレキソン応答に関連し得るかに関する研究が公開されているが、これらの遺伝的差異は、大量アルコール摂取などの「環境曝露」に起因して起こり得る遺伝子修飾を拾い上げることができない/拾い上げない。したがって、エピジェネティックメチル化パターンの使用は、根本的に異なる新規かつ生物学的に意味のある、投薬応答の生物学的予測因子を理解する方法である。さらに、大量アルコール摂取が多くの遺伝子のエピジェネティックメチル化パターンを全体的に変更し得るといういくつかの発見はあったが、これらの変化をアルコール使用障害における薬物治療応答と関連付ける試みはほとんどなかった。様々な遺伝子に多くのCpG部位が存在し、それらはアルコール曝露に起因してメチル化されている、またはされていない、または高度にもしくは低度にメチル化されている可能性があること、およびどのCpG部位が疾患および治療応答に関連するかの発見は、明白または些細な問題ではないことも認識されるべきである。これは、複数の部位(特に遺伝子転写プロモーターの領域)のメチル化が生物学的変異に必要とされやすいことに部分的に起因する。したがって、重要なのはこれらのメチル化部位のパターンである。例えば、OPRM1遺伝子のメチル化を試験したいくつかの論文は、大量飲酒者において様々なCpG部位が、非大量飲酒者と比較して高度にメチル化されいることを発見し(Zhang et al.,2012)、いくつかのCpG部位メチル化レベルが「再発飲酒」と関連付けられたが(Lin他、2020)、特にナルトレキソン応答とは関連付けられなかった。したがって、本開示の主題は、(1)CpGメチル化部位の様々な組み合わせへの焦点;さらにより重要なことには、(2)次のレベルで、いくつかの他の重要な遺伝子(DAT(SLC6A3およびCOMT)のメチル化部位が、単一遺伝子、例えばOPRM1プロモーターCpG部位のメチル化パターンにどのように付加され得るか、を提供する。それは、特定のCpG部位におけるメチル化量/頻度(低いまたは高い)の方向性、ならびに、明らかではない、したがって新規なナルトレキソン応答を予測する、いくつかの遺伝子にわたるCpG部位の遺伝子の非明白な組み合わせの発見である。この発見により、臨床医/処方者は、アルコール使用障害のどの患者をナルトレキソンで治療するかを選択する具体的な新しい知識を得ることができ、臨床ケアが改善され、患者の負担が軽減される。
【0090】
要約すると、アルコール使用障害個体のナルトレキソン応答と関連付けられる、多くのOPRM1遺伝子CpGメチル化部位からのいくつかと、多くのCOMTおよびDAT遺伝子CpGメチル化部位からの他のいくつかとの組み合わせの特定が本明細書に開示される。したがって本質的には、本開示の主題にとって重要なのは、これらの部位の発見ではなく、またはそれらが大量飲酒者(アルコール使用障害)と非大量飲酒者との間で異なるかどうかでもなく、これらの違いを治療転帰の改善のために、とのように特定の薬物療法に応用するかである。
【0091】
参考文献
以下に列挙されるすべての参考文献、ならびに、限定されないが、すべての特許、特許出願およびその刊行物、科学ジャーナル記事、およびデータベースエントリ(例えば、GENBANK(登録商標)データベースエントリおよびそこで利用可能なすべての注釈)を含む、本開示において引用されるすべての参考文献は、それらが本明細書で使用される方法論、技術、および/または組成物を補足、説明、背景を提供、または教示する範囲で、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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【0092】
本開示の主題の範囲から逸脱することなく、本開示の主題の様々な詳細を変更することができることが理解されよう。さらに、前述の説明は例示のみを目的としており、限定を目的としていない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
【配列表】
2024521754000001.app
【国際調査報告】