(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】感染症の治療のための内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
A61N5/06 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572638
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 US2022036508
(87)【国際公開番号】W WO2022266554
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522289390
【氏名又は名称】フリースタイル パートナーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン、ジェニファー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】フィーニー、ベンジャミン エックス
(72)【発明者】
【氏名】デグラツィア、グレゴリー ディー
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA03
4C082PC10
4C082PE10
4C082PG12
4C082PG16
(57)【要約】
病原体を不活性化するための内視鏡照射装置が開示される。この装置は、制御素子と、制御素子によって管理されるプローブとを含む。 約222nmのピーク照射を提供するUVC光源は、プローブ及び制御素子の少なくとも一方と一体である。約235nmを超える照射を減衰させる減衰素子は、UVC光源によって生成されたUVC光の経路に位置する。減衰素子は、医療用プローブ及び制御素子の少なくとも一方と一体である。一つの実施の形態では、減衰素子は、UVC光源とUVC光によって照射される生体組織との間に配置されるバンドパスフィルタの形をとる。または、減衰素子は、発光ダイオードの結晶構造内に配置され、約235nmを超える伝達を制限又は減衰させるドーパントである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御素子と、
前記制御素子によって方向付けられるプローブと、
前記プローブ及び前記制御素子の少なくとも一方と一体であり、約222nmのピーク照射を提供するUVC光源と、
前記UVC光源によって生成されたUVC光の経路に位置すると共に、前記医療用プローブ及び前記制御素子の少なくとも一方と一体であり、約235nmを超える照射を減衰させる減衰素子と、
を備える、
病原体を不活化するための内視鏡照射装置。
【請求項2】
前記減衰素子はバンドパスフィルタを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記減衰素子は、約235nmを超えるUVC光の伝達を制限するように構成された発光ダイオードを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記発光ダイオードは前記プローブに位置する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記発光ダイオードは、前記プローブから半径方向外向きにUVC光を伝達する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記医療用プローブは、前記医療用プローブから間隔を開けた位置で生成されるUVC光を伝達するための光ファイバを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記光ファイバは、前記医療用プローブから半径方向外向きにUVC光を伝達する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記光ファイバは、UVC光を実質的に一方向に伝達する、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記減衰素子は、前記UVC光源に位置するバンドパスフィルタを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記減衰素子は、前記光ファイバに位置するバンドパスフィルタを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記UVC光源は発光ダイオードを備え、前記減衰素子は、前記発光ダイオードを画定する化学格子に含まれる、235nmを超えるUVC光の伝達を減衰させるためのドーパントを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記プローブは、前記コントローラから分離可能なドローンを備え、前記コントローラは前記ドローンを離れた位置から方向付ける、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記ドローンは発光ダイオードを含み、前記減衰素子は235nmを超えるUVC光の伝達を減衰させるためのドーパントを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記プローブは、前記UVC光源によって照射されているヒト及び動物の体の内部にある組織上の位置を識別するための可視光を伝達するための可視光源を含む遠位端を画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記プローブの前記遠位端は、前記可視光源によって生成された前記可視光の画像を医療専門家に提供するための撮影装置を含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記プローブは、前記UVC光源と前記UVC光によって照射される組織との間の距離を識別するための距離センサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記プローブは、(i)平凸レンズ、(ii)両凸レンズ、(iii)平凹レンズ、(iv)両凹レンズ、(v)正メニスカスレンズ、及び(vi)負メニスカスレンズのうちの一つを備える光学素子と、前記UVC光の照射領域を変更するためのコリメータとを含む遠位端を画定する、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(先行出願)
本願は、2020年1月21日に出願された米国仮出願第62/963,682号の優先権を主張する、2020年3月5日に出願された米国特許第11,071,799号の優先権を主張する、2021年7月19日に出願された米国特許出願第17/379,694号の一部継続出願としての優先権を主張するものであり、これらの全体が参照として組み込まれる。本願はまた、2020年1月21日に出願された米国仮出願第62/963,682号の優先権を主張する、2020年3月5日に出願された米国特許第11,071,799号の優先権を主張する、2020年12月11日に出願された米国特許第11,020,501号の優先権を主張する、2021年5月28日に出願された米国特許出願第17/333,558号の一部継続出願であり、これらの全体が参照として組み込まれる。本願はまた、2018年7月6日に出願された米国仮出願第62/694,482号及び2018年2月20日に出願された米国仮出願第62/632,716号の優先権を主張する、2019年2月19日に出願された米国特許第11,135,324号の継続出願である、米国特許出願第17/333,565号の一部継続出願であり、これらの全体が参照として組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に細菌及び他の病原体を活性化するために使用される装置に関する。より具体的には、本発明は、ヒト又は他の動物の体内組織に見られる感染を不活化するために紫外光を利用する内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト又は他の動物の感染組織は、抗生物質の積極的投与を用いて治療されてきたことが知られている。抗生物質は感染症を解決するのに非常に効果的であることが証明されているが、抗生物質に対する副作用はますます広まっている。実際、抗生物質の使用が非常に成功したため、抗生物質が過剰処方され、抗生物質耐性の病原体が発生したと広く考えられている。
【0004】
抗生物質の過剰な使用が抗生物質耐性菌の発生につながり、医療界に不安を呼び起こしている。さらに、抗生物質は善玉菌と悪玉菌とを同様に殺すことも知られている。しばしば、善玉菌の損失が抗生物質のさらなる使用を必要とする病気につながる。一般に、細菌感染は、例えば副鼻腔、膀胱、結腸、肝臓等のいくつかの組織に限られる。しかし、局所的な細菌を根絶するための、服用又は点滴された抗生物質が生体全体に広がり、副作用を引き起こすこともある。
【0005】
細菌感染を局所な方法で治療することで、抗生物質の副作用を除くことができると考えられてきた。細菌感染を根絶するために様々な波長の紫外光を使用することが一つの考えである。動物に装置を挿入して感染組織への照射を試みることによるUVA、UVB、及びUVC光の使用が提案されてきた。しかし、これらの幅広い波長は組織のDNAを変化させがん細胞の成長につながることが知られている。さらに、感染した内部組織に照射するために期待されている既知の装置は、いかなる形であれ制御を保証するために必要な要素を備えていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、医療上の不都合な問題を引き起こすことのない感染組織の局所的治療を提供する装置を提供し、適切な治療が達成されることを保証するために必要な制御を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
病原体を不活性化するための内視鏡照射装置が開示される。この装置は、制御素子と、制御素子によって管理されるプローブとを含む。 約222nmのピーク照射を提供するUVC光源は、プローブ及び制御素子の少なくとも一方と一体である。約235nmを超える照射を減衰させる減衰素子は、UVC光源によって生成されたUVC光の経路に位置する。減衰素子は、医療用プローブ及び制御素子の少なくとも一方と一体である。一つの実施の形態では、減衰素子は、UVC光源とUVC光によって照射される生体組織との間に配置されるバンドパスフィルタの形をとる。または、減衰素子は、発光ダイオードの結晶構造内に配置され、約235nmを超える伝達を制限又は減衰させるドーパントである。
【0008】
本発明の装置は、抗生物質の有害な副作用及び癌組織の成長を引き起こすことが知られている安全でない光を用いることなしに、感染組織の局所領域に安全で感情的な量の光を提供する。プローブの使用は、ヒト又は他の動物の体の内部の感染部位への光の伝達を可能にする。例えば、235nmを超える伝達を減衰させながら約222nmのピーク放射照度を有する光を減衰させることは、動物の体の内部の細菌又はウイルス感染の安全な根絶又は不活化を可能にする。装置は、動物の体の内部の手術部位を殺菌するために、内視鏡手術と同時に使用され得る。一つの非限定的な例は腎臓の癌性腫瘍の切除である。切除箇所に放射線を照射して感染の可能性を低減するために、切除の後又は同時に、本発明の装置が体腔内に挿入され得る。特に重要なのは、大腸菌が問題となり得る結腸又は消化管に対して行われる手術である。本発明の装置は、大腸菌及び他の細菌又は結腸手術から広がる有害な病原体を根絶するのに好適である。
【0009】
本発明の装置は、手術と無関係の細菌又はウイルス感染の治療にも使用され得る。例えば、クレブシエラ菌、サルモネラ菌、赤痢菌、プロテウス菌、エンテロバクター、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス、ヘリコバクター・ピロリ(潰瘍を引き起こすことが知られる)、ボツリヌス菌のような細菌又はウイルス感染を不活化するために、例えば、患者の口から胃にプローブが挿入されうる。
【0010】
加えて、クロストリジウム・ディフィシレ、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、大腸菌、赤痢菌、クロストリジウム・ディフィシレ、及びサルモネラ菌のような結腸又は小腸内の病原体を局所的に不活化するために本発明の装置が直腸に使用され得る。感染症を引き起こす憩室炎も治療され得る。さらに、消化管のどこかにいる寄生虫は、本発明の装置による照射によって不活性化され得る。
【0011】
呼吸器感染症も、プローブを用いた患者の食道、気管支、及び肺へのUV光の照射によって治療され得る。副鼻腔感染症も、プローブの挿入によって治療され得る。抗生物質がウイルス性呼吸器感染症に感情的であることは知られていないが、紫外光の使用は、ウイルスを不活化する紫外線の能力により呼吸器系のウイルス量を減少させるのに十分に好適であり得る。
【0012】
上記の用途は単なる例であり、動物の体の内部での病原体の局所的な根絶を提供するためのさらに多くの用途が、この新たな技術の範囲内にあることが考えられる。約235nmを超える伝達を減衰させながら、約222nmのピーク放射照度を有する持つUVC光を局所的に投与することで、抗生物質の過剰投与への依存を減らす安全かつ効果的な方法を提供し、動物の体の内部の感染症のより迅速な除去及び根絶も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面と関連させて考慮して以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるように、本発明の他の利点は容易に理解され得る。
【0014】
【
図3】プローブの遠位端に位置する発光モジュールの平面図
【
図4】プローブの遠位端に位置する発光モジュールの側断面図
【
図6A】発光ダイオード及び光ファイバケーブルと使用される光学素子の代替的な実施の形態を示す図
【
図6B】発光ダイオード及び光ファイバケーブルと使用される光学素子の代替的な実施の形態を示す図
【
図8】感染組織を照射するために患者の腹部に挿入されるプローブを示す図
【
図9】UVC光を半径方向外向きに照射する光ファイバケーブルを有するプローブの代替的な実施の形態を示す図
【
図10】塩化クリプトンランプを含む本発明の装置の代替的な実施の形態を示す図
【
図11】制御素子から分離可能なプローブを含む更なる代替的な実施の形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、本発明の内視鏡装置が概して10で示されている。装置10はプローブ12と制御素子14とを含む。一つの実施の形態では、プローブ12は、遠位端16と、制御素子14と相互接続される近位端18とを含む。この実施の形態では、制御素子14は、外科医、医療専門家が使用中に握るための又はロボットマニピュレータ用のハンドル20として画定される。したがって、制御素子14は、以下にさらに説明される方法でユーザがプローブ12を管理することを可能にする。装置10は、他の内視鏡装置から独立して、又は他の内視鏡装置と組み合わせて使用されることが考えられる。
【0016】
装置10は、Far-UVC光とも言われる約222nmのピーク照射を提供するUVC光源22を含む。一つの実施の形態では、UVC光源22は、ヒト又は他の動物の内部組織及び器官で発見される病原体を不活化するためのFar-UVC光を放射する。UVC光源22は、発光ダイオード(LED)24又は塩化クリプトンランプ26(
図10)のいずれかの形をとる。別の実施の形態では、LED24はプローブ12に配置され、塩化クリプトンランプ26は制御素子14に配置される。LED24は塩化クリプトンランプ26よりもコンパクトであるため、
図1及び
図2に最もよく示されているように、LED24をプローブ12の遠位端16に配置することが可能である。また、LED24を制御素子14に配置することも可能である。塩化クリプトンランプ26は典型的なLED24よりもかなり大きいため、制御素子14に配置するのにより適している。UVC光源22は、制御素子14内に配置された充電池27によって、又は電源への電気的接続によって給電され得る。
【0017】
LED24は、LEDモジュール28の一部として含まれる。この実施の形態では、複数のLED24は、プローブ12を画定する管状部材30の遠位端16に位置するLEDモジュール28と一体になっている。管状部材30は、配線が設けられ遠位端16に電荷又は信号を送ることができていれば、円筒形を含む任意の形をとっても良い。このため、「管状」という文言はプローブ12の形状又は構成を限定するものではない。LEDモジュール28はまた、装置10が使用されている際に照射される組織又は器官の像を使用者に提供する、動物の体の内部を撮影するための撮影装置32を含む。撮影装置は、医療専門家に用いられる内視鏡カメラと同様の回路によって可視画像を提供する。さらに、モジュール28は、例えば、組織又は器官上に可視印36を投影することにより照射領域を識別するための可視光を発生させる、可視光源34を含む。この構想は米国特許第11,071,799号明細書にさらに定義されており、その内容全体が参照により組み込まれる。
【0018】
減衰素子48は、235nmを超えるUVC光の伝達を減衰させるために含まれる。または、減衰素子48は230nmを超えるUVC光の伝達を減衰させる。235nm(又は230nm)を超えるUVC光は、少量の伝達であっても動物組織の変質を引き起こして癌細胞を形成すると考えられている。したがって、Far-UVC光の伝達と減衰素子との組み合わせは、動物の器官又は内部組織上の病原体へ照射するためのUVC光の使用を安全にする。
【0019】
LED24が実施された場合、LED24の格子構造内のドーパントの使用が減衰素子48として機能する。一つの実施の形態では、ドーパントは、LED格子がFar-UVC光を放射する際に、235nm(又は230nm)を超えるUVC光を吸収するバンドパスフィルタとして機能する。または、ドーパントは、235nm(又は230nm)を超える照射を防ぐために、LED格子の照射を変更する。
【0020】
または、
図5に示されるように、減衰素子48は、LED24によって生成された照射の経路に配置されたバンドパスフィルタ50である。したがって、バンドパスフィルタ50の形態の減衰素子48がその機能を果たすため、LED格子が235nm(又は230nm)を超える照射を減衰させるためにドーパントを特別に含まなくても良い。しかし、減衰素子48がドーパントとバンドパスフィルタ50との両方を含み得ることは、当業者によって理解されるべきである。
【0021】
図6に示されるように、光学素子52は、UVC光の光源22によって伝達されるUVC光を変更するために含まれ得る。この実施形態では、光学素子は、光源22によって伝達された光を集束又は拡散させるように構成されたレンズの形態をとる。光学素子52は、(i)平凸レンズ、(ii)両凸レンズ、(iii)平凹レンズ、(iv)両凹レンズ、(v)正メニスカスレンズ、及び(vi)負メニスカスレンズ、及びコリメータのいずれか一つの形態をとり得る。特定の状況において、光学素子52は、照射の表面積を減少させる、又は組織へのエネルギー伝達を増加させるために、照射される組織上に焦点又は焦線を生成し得る。または、光学素子52は拡散光を発生させ、光源22による組織への照射面積を増加させる。この構想は米国特許第11,071,799号にさらに定義されており、その内容全体が参照により組み込まれる。撮影装置32及び可視光源34は、減衰素子48又は光学素子52に関連する歪みの影響を受けることなく、組織62(
図8)に向かう可視画像を提供するためのモジュール28から独立していても良いことは理解されるべきである。
【0022】
一つの実施の形態では、光学素子52はバンドパスフィルタとしても機能するように考案されている。または、光学素子52は、減衰素子がバンドパスフィルタ50であろうとドーパントであろうと、減衰素子48と組み合わされて動作する。この例では、光学素子52とバンドパスフィルタ50とは、UVC光の経路に層状に配置されている。
【0023】
図7は、プローブによって画定される軸からオフセットされた方向に照射を提供することが望ましい状況で使用される代替プローブ54を示す。この実施の形態では、代替プローブは、代替プローブ54の遠位端16を近位端18とそこからすぐ先に延びる管状壁56との間の角度に方向転換させるエルボー56を画定する。この構成は、方向性のある照射を提供することで、非限定的な例として、結腸壁、腸壁、胃内壁、呼吸器系、及び副鼻腔の感染組織に照射を行うために特に有用である。
【0024】
図8は、患者の腹壁58を通して腹部に挿入される装置10を示す。腹部58でのプローブ12の所望の位置への移動を補助するために、最初に内視鏡スリーブ60が腹部の開口に挿入される。内視鏡スリーブ60は、プローブが患者の腹部58に容易に出入りするための滑らかな表面を提供する、プローブ12を受け入れる。こうして、プローブ12の遠位端16は、感染領域64を有する器官62又は他の組織に向かって容易に移動させられる。
【0025】
このように、LED24は、感染領域64の最適な照射を可能にする感染領域64に近接する所定の距離に配置され得る。プローブ12は、LED24の感染領域62からの距離を検出するために、LEDモジュール28と一体となった又はモジュール28とは別である距離センサ66を含むことが理解されるべきである。センサ62は、コントローラ又は同等のものを介してインジケータ68と相互接続され、適切な距離が達成され、感染領域62への照射が開始されたこと使用者に示す。
【0026】
装置のさらなる実施の形態が、
図9及び
図10に概して110で示される。代替装置110の実施の形態は、塩化クリプトンランプ26によって生成される照射に関して説明される。一方、LED24は、代替装置110のための照射を生成するのにも好適であり得る。この実施の形態では、塩化クリプトンランプ26は制御素子14内に位置する。
【0027】
塩化クリプトンランプは、光ファイバケーブル170の束にUVC照明を提供する。光ファイバケーブル170は、プローブ112の遠位端116に配置された光学モジュール172にUVC光を既知の方法で伝達する。光学モジュール172は、光ファイバケーブル170をプローブ112の軸方向に矢印174に沿ってUVC照射を向けるように方向付ける。光ファイバケーブル170の端部からの照射は、UVC光の非コヒーレント性によりLED24よりも方向性を持った照射を実現すると考えられる。さらに、塩化クリプトンエキシマ技術の使用は、現在利用可能なLED技術よりも高エネルギーでのUVC光を照射し、内部組織の病原体のより急速な不活化の可能性を提供すると考えられる。
【0028】
塩化クリプトンは、約222nmにピーク放射照度を有するFar-UVC光を生じることが知られている。しかし、230nmを超えるヒト又は他の動物が浴びるには安全でないレベルでの照射も生成される。したがって、上記で説明したように、減衰素子148を含むことが望ましい。
図5Bを参照すると、減衰素子148は、光ファイバケーブル170の端部で放射された照射の経路内のプローブ112の遠位端116に位置する。よって、塩化クリプトンランプ26によって生成されたFar-UVC光は、光ファイバケーブル170の端部から出るまでバンドパスフィルタ150によって減衰されない。
【0029】
または、減衰素子148は、
図5Cに示すように、UVC照射の経路において塩化クリプトンランプ26に隣接又は近接して位置する。よって、230nm(又は235nm)を超えるFar-UVC光は、光ファイバケーブル170を通過する前に減衰する。一つの実施の形態では、光ファイバケーブル170は管状外面176を含むが、Far-UVC光がケーブル170の端部から出るときに放射照度の損失を経験しないように、Far-UVC光が外面176を通過することを防がれる。よって、Far-UVC光を拡散又は集束するために、
図6Bに示すように、光学素子152は減衰素子148とは独立してプローブ112の遠位端116に位置し得る。または、光ファイバケーブル170のそれぞれはプローブ112の遠位端116において、UVC光を単一の焦点に向けてその点における照射エネルギーを最大にするように方向付けられる。
【0030】
さらなる実施の形態では、光ファイバケーブル170は、
図9に示すように、Far-UVC光が半径方向外向きに放射されるように半透明部178を含む。よって、広範囲に及ぶ細菌又はウイルス感染を不活化するために、例えば結腸、小腸、胃、呼吸器、及び副鼻腔の広い部位が照射され得る。光ファイバケーブル170は、既知の方法でケーブル170について軸方向に光を伝達する一方で、光が半径方向外向きに放射されることを防ぐ不透明部180を含む。半透明部178はプローブ112を通って遠位端116に向かって延びる一方不透明部180は塩化クリプトンランプ26に近接して配置される。
【0031】
この実施の形態では、プローブ112の管状部材130は、患者の感染組織にUVC光を到達させるために必然的に半透明である。
図5Cに示し、上記説明したように、減衰素子148は、230nm(又は235nm)を超える光を光ファイバケーブル170に入る前に減衰させるために、UVC光源122に隣接し位置し得る。または、
図5Dに示すように、代替減衰素子182が光ファイバケーブル170の半透明部178又はプローブ112の管状部材130の一方を覆っている。
【0032】
さらなる代替的な実施の形態が
図11に概して210で示され、第1の実施の形態と同様の要素は、200番台の同様の要素番号を含む。この実施の形態では、プローブ212は制御素子214から分離できる。プローブ212は、半透明カプセル284によって画定される照射モジュール282の形をとる。UVC光源222は、電源286とともに半透明カプセル284の内部に配置される。電源は制御エレメント214によって起動及び停止される。UVC光源222は、約222nmのピーク放射照度を有し、230nm(又は235nm)を超える放射を減衰させる減衰素子を含む。この実施の形態でのUVC光源222は、過剰な照射を減衰させるドーパントを有するLED224であることが考えられる。一方、半透明カプセル284は、コーティング又は化学的統合のいずれかの方法で減衰素子を含んでも良い。
【0033】
代替プローブ212は、感染組織の局所的な照射のために、患者に飲み込まれる、或いは患者の腹部又は器官に挿入されるように設計される。代替プローブ212は、感染組織にUVC光を周期量投与するために、長期間患者の内部にとどまることがさらに考えられる。単一の代替プローブ212又は複数のプローブ212が、感染組織を治療するために必要に応じて使用されうる。
【0034】
代替プローブ212は、内視鏡機器によって挿入されて位置に操作され得る。または、代替プローブ212は、制御素子214又は機械学習ソフトウェアによって操作され得る独立運動モジュール288を含み得る。電源286は、長期間患者の体内にとどまるペースメーカ及び他の装置と同様に、磁気共鳴及び磁気誘導によって充電できる。
【0035】
本発明を例示的に説明したが、本発明の多くの変更及び変形が可能である。したがって、本明細書において、参照番号は単に便宜上のものであり、いかなる意味においても限定的なものではなく、本発明は具体的に記載された以外の方法で実施され得ることが理解される。したがって、本発明は、この最初に記載された実施の形態に続く特許請求の範囲で具体的に記載された以外の方法で実施され得る。
【0036】
(付記)
(付記1)
制御素子と、
前記制御素子によって方向付けられるプローブと、
前記プローブ及び前記制御素子の少なくとも一方と一体であり、約222nmのピーク照射を提供するUVC光源と、
前記UVC光源によって生成されたUVC光の経路に位置すると共に、前記医療用プローブ及び前記制御素子の少なくとも一方と一体であり、約235nmを超える照射を減衰させる減衰素子と、
を備える、
病原体を不活化するための内視鏡照射装置。
【0037】
(付記2)
前記減衰素子はバンドパスフィルタを備える、付記1に記載の装置。
【0038】
(付記3)
前記減衰素子は、約235nmを超えるUVC光の伝達を制限するように構成された発光ダイオードを備える、付記1に記載の装置。
【0039】
(付記4)
前記発光ダイオードは前記プローブに位置する、付記3に記載の装置。
【0040】
(付記5)
前記発光ダイオードは、前記プローブから半径方向外向きにUVC光を伝達する、付記4に記載の装置。
【0041】
(付記6)
前記医療用プローブは、前記医療用プローブから間隔を開けた位置で生成されるUVC光を伝達するための光ファイバを含む、付記1に記載の装置。
【0042】
(付記7)
前記光ファイバは、前記医療用プローブから半径方向外向きにUVC光を伝達する、付記6に記載の装置。
【0043】
(付記8)
前記光ファイバは、UVC光を実質的に一方向に伝達する、付記6に記載の装置。
【0044】
(付記9)
前記減衰素子は、前記UVC光源に位置するバンドパスフィルタを備える、付記1に記載の装置。
【0045】
(付記10)
前記減衰素子は、前記光ファイバに位置するバンドパスフィルタを備える、付記6に記載の装置。
【0046】
(付記11)
前記UVC光源は発光ダイオードを備え、前記減衰素子は、前記発光ダイオードを画定する化学格子に含まれる、235nmを超えるUVC光の伝達を減衰させるためのドーパントを備える、付記1に記載の装置。
【0047】
(付記12)
前記プローブは、前記コントローラから分離可能なドローンを備え、前記コントローラは前記ドローンを離れた位置から方向付ける、付記1に記載の装置。
【0048】
(付記13)
前記ドローンは発光ダイオードを含み、前記減衰素子は235nmを超えるUVC光の伝達を減衰させるためのドーパントを含む、付記12に記載の装置。
【0049】
(付記14)
前記プローブは、前記UVC光源によって照射されているヒト及び動物の体の内部にある組織上の位置を識別するための可視光を伝達するための可視光源を含む遠位端を画定する、付記1に記載の装置。
【0050】
(付記15)
前記プローブの前記遠位端は、前記可視光源によって生成された前記可視光の画像を医療専門家に提供するための撮影装置を含む、付記14に記載の装置。
【0051】
(付記16)
前記プローブは、前記UVC光源と前記UVC光によって照射される組織との間の距離を識別するための距離センサを含む、付記1に記載の装置。
【0052】
(付記17)
前記プローブは、(i)平凸レンズ、(ii)両凸レンズ、(iii)平凹レンズ、(iv)両凹レンズ、(v)正メニスカスレンズ、及び(vi)負メニスカスレンズのうちの一つを備える光学素子と、前記UVC光の照射領域を変更するためのコリメータとを含む遠位端を画定する、付記1に記載の装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
(先行出願)
本願は、2021年7月19日に出願された米国特許出願第17/379,694号の優先権を主張する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御素子と、
前記制御素子によって方向付けられる
内視鏡プローブと、
前記プローブ及び前記制御素子の少なくとも一方と一体であり、約222nmのピーク照射を提供するUVC光源と、
前記UVC光源によって生成されたUVC光の経路に位置すると共に、前記医療用プローブ及び前記制御素子の少なくとも一方と一体であり、約235nmを超える照射を減衰させる減衰素子と、
を備える、
病原体を不活化するための内視鏡照射装置。
【請求項2】
前記減衰素子はバンドパスフィルタを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記減衰素子は、約235nmを超えるUVC光の伝達を制限するように構成された発光ダイオードを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記発光ダイオードは前記プローブに位置する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記発光ダイオードは、前記
内視鏡プローブから半径方向外向きにUVC光を伝達する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記医療用プローブは、前記医療用プローブから間隔を開けた位置で生成されるUVC光を伝達するための光ファイバを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記光ファイバは、前記
内視鏡プローブから半径方向外向きにUVC光を伝達する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記光ファイバは、UVC光を実質的に一方向に伝達する、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記減衰素子は、前記UVC光源に位置するバンドパスフィルタを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記減衰素子は、前記光ファイバに位置するバンドパスフィルタを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記UVC光源は発光ダイオードを備え、前記減衰素子は、前記発光ダイオードを画定する化学格子に含まれる、235nmを超えるUVC光の伝達を減衰させるためのドーパントを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記
内視鏡プローブは、前記コントローラから分離可能なドローンを備え、前記コントローラは前記ドローンを離れた位置から方向付ける、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記ドローンは発光ダイオードを含み、前記減衰素子は235nmを超えるUVC光の伝達を減衰させるためのドーパントを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記プローブは、前記UVC光源によって照射されているヒト及び動物の体の内部にある組織上の位置を識別するための可視光を伝達するための可視光源を含む遠位端を画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記
内視鏡プローブの前記遠位端は、前記可視光源によって生成された前記可視光
によって照明された前記組織の画像を医療専門家に提供するための撮影装置を含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記
内視鏡プローブは、前記UVC光源と前記UVC光によって照射される組織との間の距離を識別するための距離センサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記プローブは、(i)平凸レンズ、(ii)両凸レンズ、(iii)平凹レンズ、(iv)両凹レンズ、(v)正メニスカスレンズ、及び(vi)負メニスカスレンズのうちの一つを備える光学素子と、前記UVC光の照射領域を変更するためのコリメータとを含む遠位端を画定する、請求項1に記載の装置。
【国際調査報告】