(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】量子鍵配送ネットワーク及びその多機能ノード
(51)【国際特許分類】
H04B 10/70 20130101AFI20240528BHJP
H04B 10/27 20130101ALI20240528BHJP
【FI】
H04B10/70
H04B10/27
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572731
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 IB2022054201
(87)【国際公開番号】W WO2022248953
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102021000013700
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100221556
【氏名又は名称】金田 隆章
(72)【発明者】
【氏名】マルティネッリ,マリオ
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA11
5K102AA15
5K102AB11
5K102AH02
5K102MB11
5K102MB20
5K102MC07
5K102PB01
5K102PD17
5K102PH22
5K102PH24
5K102PH31
(57)【要約】
本発明は、量子鍵の配送のためのネットワーク(100)、及びその多機能ノードに関する。ネットワーク(100)は、単一光子源(12)を含む光子源ノード(10)と、複数の多機能ノード(20、120)と、を備え、複数の多機能ノード(20、120)は、光子源ノード(10)と、複数の多機能ノードの間とに、それぞれの光通信チャネル(F)によって接続される。各多機能ノード(20、120)は、光子源ノード(10)によって送信された光子を受信するための光入力ポート(21)に接続された偏光安定器(25)と、偏光安定器(25)の下流に配置され、第1のアクチュエータ(24)によって制御される第1の波長板(22)及び第2の波長板(23)と、を含む送信ユニット(Tx)を備える。各多機能ノード(20、120)は、偏光安定器(25)と、第2のアクチュエータ(29)によって制御される第1の波長板(22)と、第1の波長板(23)の下流に配置され、各光子の論理状態を検出するように構成された偏光ビームスプリッタ(26)と、少なくとも1つの光検出器(27a、27b)と、検出された光子の論理状態を受信するように構成された計数レジスタ(28)と、を含む受信ユニット(Rx)を更に備える。各多機能ノード(20、120)は、第2の波長板(23)と偏光ビームスプリッタ(26)との間に配置され、送信機構成又は受信機構成に従って多機能ノード(20)を動作させるようにアクティブ化/非アクティブ化可能な光スイッチ(30)を更に備える。送信機構成では、送信ユニット(Tx)は、光入力ポート(21)を介して多機能ノード(20)に入射する光子を変調し、変調された偏光光子を多機能ノード(20、120)の光出力ポート(32)に供給する。受信機構成では、受信ユニット(Rx)は、光入力ポート(21)を介して多機能ノード(20、120)に入射する変調された光子を復調する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子鍵(50)の配送のためのネットワーク(100)であって、
単一光子源(12)を含む光子源ノード(10)と、
複数の多機能ノード(20、120)と、を備え、
前記複数の多機能ノード(20、120)は、前記光子源ノード(10)と、前記複数の多機能ノードの間とに、それぞれの光通信チャネル(F)によって接続され、
各多機能ノード(20、120)は、
前記光子源ノード(10)によって送信された光子を受信するための光入力ポート(21)に接続された偏光安定器(25)と、前記偏光安定器(25)の下流に配置され、第1のアクチュエータ(24)によって制御される第1の波長板(22)及び第2の波長板(23)と、を含む送信ユニット(Tx)と、
前記偏光安定器(25)と、第2のアクチュエータ(29)によって制御される前記第1の波長板(22)と、前記第1の波長板(23)の下流に配置され、各光子の論理状態を検出するように構成された偏光ビームスプリッタ(26)と、少なくとも1つの光検出器(27a、27b)と、検出された前記光子の前記論理状態を受信するように構成された計数レジスタ(28)と、を含む受信ユニット(Rx)と、
前記第2の波長板(23)と前記偏光ビームスプリッタ(26)との間に配置され、送信機構成及び受信機構成のうちの1つに従って前記多機能ノード(20)を動作させるようにアクティブ化/非アクティブ化可能な光スイッチ(30)と、を備え、
前記送信機構成では、前記送信ユニット(Tx)は、前記光入力ポート(21)を介して前記多機能ノード(20)に入射する前記光子を変調し、変調された偏光光子を前記多機能ノード(20、120)の光出力ポート(32)に供給し、
前記受信機構成では、前記受信ユニット(Rx)は、前記光入力ポート(21)を介して前記多機能ノード(20、120)に入射する前記変調された光子を復調する、
ネットワーク(100)。
【請求項2】
前記ネットワークは、スーパーバイザデバイス(60)を備え、
光スイッチングアレイ(40)は、前記各多機能ノード(20)に関連付けられ、
前記光スイッチングアレイ(40)は、前記光子源ノード(10)から出る前記量子鍵(50)の配送のための前記光通信チャネルを形成する前記多機能ノード(20)を選択するために、前記スーパーバイザデバイス(60)によって操作可能である、
請求項1に記載のネットワーク(100)。
【請求項3】
前記光スイッチングアレイ(40)は、第1のポート(E1、E2)と第2のポート(W1,W2,…Wn)とを有し、
前記第1のポート(E1、E2)には、それぞれの多機能ノード(20)の入力光通信チャネル(F
in)及び出力光通信チャネル(F
out)がそれぞれ接続され、
前記第2のポート(W1,W2,…Wn)は、前記光子源ノード(10)及び/又は前記ネットワーク(100)の少なくとも1つの他の多機能ノード(20)の光スイッチングアレイ(40)の対応する第2のポート(W1,W2,…Wn)に接続される、
請求項2に記載のネットワーク(100)。
【請求項4】
各多機能ノード(20)は、前記光出力ポート(32)の上流に配置されたミラー(33)を更に備える、請求項1~3のいずれかに記載のネットワーク(100)。
【請求項5】
各多機能ノード(120)は、2つの更なる光スイッチ(131、133)を備え、
前記2つの更なる光スイッチの一方は、前記光入力ポート(21)と前記偏光安定器(25)との間に配置され、
前記2つの更なる光スイッチの他方は、前記光出力ポート(32)の上流に配置され、
前記2つの更なる光スイッチ(131、133)は、パススルー構成に従って前記多機能ノード(120)を動作させるようにアクティブ化可能であり、
前記光入力ポート(21)は、前記2つの更なる光スイッチ(131、133)を通過するパススルー光通信チャネル(F3)を介して前記多機能ノード(120)の前記光出力ポート(32)と直接的に通信する、
請求項1~3のいずれかに記載のネットワーク(100)。
【請求項6】
各多機能ノード(20、120)の前記光スイッチ(30、131、133)は、各多機能ノードを、前記送信機構成、前記受信機構成又は前記パススルー構成に構成するように、スーパーバイザデバイス(60)によって操作可能である、請求項5に記載のネットワーク(100)。
【請求項7】
前記光子源ノード(10)は、前記単一光子源(12)の下流に配置され、同期信号を生成するように構成されたシャッタ(14)を備え、前記同期信号は、同期ライン(Ls)に沿って前記ネットワークの全てのノード(10、20、120)に配送される、請求項1~6のいずれかに記載のネットワーク(100)。
【請求項8】
前記光子源ノード(10)の前記単一光子源(12)は、一対の光子を生成するように構成され、
前記一対の光子のうちの一方は、前記量子鍵(50)を生成するために前記ネットワーク内で使用され、他方は、同期チャネル(Ls)を介して前記ネットワークに沿って配送される同期信号を確立するために使用される、
請求項1~7のいずれかに記載のネットワーク(100)。
【請求項9】
光子源ノード(10)によって送信された光子を受信するための光入力ポート(21)に接続された偏光安定器(25)と、前記偏光安定器(25)の下流に配置され、第1のアクチュエータ(24)によって制御される第1の波長板(22)及び第2の波長板(23)と、を含む送信ユニット(Tx)と、
前記偏光安定器(25)と、第2のアクチュエータ(29)によって制御される前記第1の波長板(22)と、前記第1の波長板(23)の下流に配置され、各光子の論理状態を検出するように構成された偏光ビームスプリッタ(26)と、少なくとも1つの光検出器(27a、27b)と、検出された前記光子の前記論理状態を受信するように構成された計数レジスタ(28)と、を含む受信ユニット(Rx)と、
前記第2の波長板(23)と前記偏光ビームスプリッタ(26)との間に配置され、送信機構成及び受信機構成のうちの1つに従って多機能ノード(20、120)を動作させるようにアクティブ化/非アクティブ化可能な光スイッチ(30)と、を備え、
前記送信機構成では、前記送信ユニット(Tx)は、前記光入力ポート(21)を介して前記多機能ノード(20、120)に入射する前記光子を変調し、変調された偏光光子を前記多機能ノード(20、120)の光出力ポート(32)に供給し、
前記受信機構成では、前記受信ユニット(Rx)は、前記光入力ポート(21)を介して前記多機能ノード(20、120)に入射する前記変調された光子を復調する、
多機能ノード(20、120)。
【請求項10】
前記送信機構成では、前記光スイッチ(30)がオンに切り替えられると共に、前記第2のアクチュエータ(29)と前記第1の波長板(22)との間の接続を遮断するように、前記第1の波長板(22)を制御するための前記第2のアクチュエータ(29)が非アクティブ化され、前記受信機構成では、前記光スイッチ(30)がオフに切り替えられ、前記第1のアクチュエータ(24)と前記第1の波長板(22)との間の接続を遮断するように、前記第1の波長板(22)及び前記第2の波長板(23)を制御する前記第1のアクチュエータ(24)が非アクティブ化され、前記第2の波長板(23)は、零の複屈折値に設定される、請求項9に記載の多機能ノード(20、120)。
【請求項11】
前記光出力ポート(32)の上流に配置されたミラー(33)を更に備える、請求項9又は10に記載の多機能ノード(20)。
【請求項12】
2つの更なる光スイッチ(131、133)を備え、
前記2つの更なる光スイッチの一方は、前記光入力ポート(21)と前記偏光安定器(25)との間に配置され、
前記2つの更なる光スイッチの他方は、前記光出力ポート(32)の上流に配置され、
前記2つの更なる光スイッチ(131、133)は、パススルー構成に従って前記多機能ノード(120)を動作させるようにアクティブ化可能であり、
前記光入力ポート(21)は、前記2つの更なる光スイッチ(131、133)を通過するパススルー光通信チャネル(F3)を介して前記多機能ノード(120)の前記光出力ポート(32)と直接的に通信する、
請求項9又は10に記載の多機能ノード(120)。
【請求項13】
前記送信ユニット(Tx)は、送信光通信チャネル(F1)を介して、前記光入力ポート(21)と前記光出力ポート(32)との間に接続され、前記受信ユニット(Rx)は、受信光通信チャネルを介して、前記光入力ポート(21)に接続される、請求項9~12のいずれかに記載の多機能ノード(20、120)。
【請求項14】
前記送信機構成では、前記光スイッチ(30)がオンに切り替えられ、2つの更なる光スイッチ(131、133)がオフに切り替えられると共に、前記第2のアクチュエータ(29)と前記第1の波長板(22)との間の接続を遮断するように、前記第1の波長板(22)を制御するための前記第2のアクチュエータ(29)が非アクティブ化され、前記受信機構成では、前記更なる光スイッチ(131)がオフに切り替えられ、前記第1のアクチュエータ(24)と前記第1の波長板(22)との間の接続を遮断するように、前記第1の波長板(22)及び前記第2の波長板(23)を制御する前記第1のアクチュエータ(24)が非アクティブ化され、前記第2の波長板(23)は、零の複屈折値に設定される、請求項12又は13に記載の多機能ノード(120)。
【請求項15】
前記パススルー構成では、前記2つの更なる光スイッチ(131、133)はオンに切り替えられる、請求項12~14のいずれかに記載の多機能ノード(120)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子暗号の技術分野に関する。特に、本発明は、量子鍵の配送のためのネットワーク及びその多機能ノードに関する。
【背景技術】
【0002】
量子鍵配送(QKD)は、対称的(すなわち、送信機及び受信機において同時に実体化するビット列)で絶対的に安全な「鍵」(すなわち、いかなるアルゴリズム及び計算能力を有していても復号化が不可能である鍵)を2つのノード(以下、送信機Tx及び受信機Rxという。)間で共有することを可能にする技術である。量子という形容詞は、鍵が単一光子の(古典的には偏光状態として知られている)スピン状態を使用して生成されるという事実を意味する。
【0003】
量子力学では、粒子のスピン状態が正確に測定できるのは、それが正確な参照基底(base)(これは直線、対角、又は円形であり得る)内にある場合のみであり、そうでない場合は、測定は、完全にランダムな値を生成することが知られている。2つ目の量子の性質は、粒子のスピン状態が複製できないことである。3つ目の量子の性質は、光に関し、あらゆる光通信チャネル(自由空間、光ファイバ、又は光集積ガイド)において単一光子を生成して伝播させることが可能であることに関する。
【0004】
光子のこれらの性質に基づき、1984年にC.H.ベネットとG.ブラッサードは、本特許出願で言及されるBB84として知られるプロトコルを開発した。
【0005】
BB84プロトコルでは、送信機Txは、(ビット論理シーケンスに従って)既知の基底及び既知の状態又はコードにおいて生成された単一光子のシーケンスを送信する。受信機Rxは単一光子(減衰によって失われた単一光子を除く)を受信し、ランダムに選択された基底における状態を測定する。この状態の測定がビット論理シーケンスを生成する。受信機Rxは、測定に使用された一連の基底を、公衆通信チャネルを用いて、送信機Txに送信する。送信機Txは、正確であることの確認を受信機Rxに送信する。このようにして、送信機Tx及び受信機Rxは、量子鍵を構成する論理的なビットの部分列を共有する。
【0006】
BB84プロトコルに従ったQKDのオリジナルスキームは、ポイントツーポイント伝送であり(すなわち、送信機Txが1つの受信機Rxのみと接続されている)、複屈折のない光通信チャネルを介した送信機Txと受信機Rxとの間の量子鍵の通信に関する。より一般的な例では、複屈折を示す光通信チャネルがある場合、送信の終了時に、偏光安定器と呼ばれる装置によって元の基底を再確立する必要がある。
【0007】
送信機Txは、単一光子源、すなわち、平均して1つの光子だけを送信するように強度が弱められた光子源(微弱光子源)と、アクチュエータによって制御され、単一光子源から出た単一の偏光した光子が送られる第1及び第2の波長板とを含む。第1の波長板は、光子のスピンの基底(基底は、直線、対角又は円形であり得る)を確立することを可能にし、第2の波長板は、鍵を構成するビットの論理シーケンスを生成する状態又はコード(例えば、1に相当する論理ハイ状態、0に相当する論理ロー状態)を確立することを可能にする。
【0008】
受信機Rxは、複屈折の光通信チャネルの場合に初期基底の再配向を可能にする偏光安定器と、アクチュエータによって制御され、偏光安定器の下流に配置され、ランダムなプロセスによって初期基底を復元する(又は復元しない)ことを可能にする波長板とを含む。受信機は、偏光ビームスプリッタ(PBS)を更に備える。偏光ビームスプリッタには、波長板から出る各光子が割り当てられる。偏光ビームスプリッタは、偏光した光子のハイ論理状態とロー論理状態とを区別し、それらを光検出ユニットに送信し、そこから計数レジスタに送信し、それにより送信機Txによって送信されたコードを再構成できるように構成されている。
【0009】
送信機Tx及び受信機Rxの構成要素は、同期チャネルによってそれらの間にも接続され、送信機と受信機との間で、単一光子源のすぐ下流にある送信機Txに配置されたシャッタの制御信号によって、又は単一光子源の同一のパルスによって、典型的に生成される同期信号を配送する。
【0010】
上記の量子鍵配送システムでは、受信機Rxが基底情報とコード情報の両方を持ち、このことにより、BB84プロトコルの完全性が十分に満たされている。しかし、このように構成されたシステムにはいくつかの欠点がある。
【0011】
第1に、システムの構成要素が変更又はアップグレードされた場合、送信機Tx全体及び/又は受信機Rx全体がアップグレードされなければならない。これは機能的に不利であり、経済的にもコストがかかる。
【0012】
第2に、よく知られているように、装置内の単一光子源及び光検出ユニットは、非常に低温に保たれなければならないことがある。そのため、装置の送信機Tx及び受信機Rxは、極低温技術によって制御された環境下に配置されなければならない。これは、スペース及びメンテナンスの点で悪影響を及ぼし、論理的に不利である。
【発明の概要】
【0013】
従来技術の欠点を克服することが本発明の目的である。
【0014】
特に、本発明の目的は、ネットワークアーキテクチャの定義においてより高い柔軟性を可能にするように構成された、量子鍵の配送のためのネットワーク、及びその多機能ノードを提示することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、各ノードが光子源ノードの共有を維持しつつネットワークの他の任意のノードと量子鍵とを交換するように構成された、量子鍵配送のためのネットワークを提示することにある。
【0016】
本発明のこれら及び他の目的は、本明細書の不可欠な部分を形成する添付の特許請求の範囲の特徴を組み込む量子鍵配送のためのネットワーク、及びその多機能ノードによって達成される。
【0017】
第1の態様によれば、本発明は、単一光子源を含む光子源ノードと、それぞれの光通信チャネルによって光子源ノードとその間に接続される複数の多機能ノードとを含む量子鍵配送用ネットワークに関する。
【0018】
各多機能ノードは、送信ユニットを備え、送信ユニットは、光子源ノードによって送信された光子を受信するための光入力ポートに接続された偏光安定器と、偏光安定器の下流に配置され、第1のアクチュエータによって制御される第1の波長板及び第2の波長板と、を含む。
【0019】
各多機能ノードは、受信ユニットを更に備え、受信ユニットは、偏光安定器と、第2のアクチュエータによって制御される第1の波長板と、第1の波長板の下流に配置され、各光子の論理状態を検出するように構成された偏光ビームスプリッタと、少なくとも1つの光検出器と、検出された光子の論理状態を受信するように構成された計数レジスタと、を含む。
【0020】
各多機能ノードは、第2の波長板と偏光ビームスプリッタとの間に配置され、送信機構成又は受信機構成に従って多機能ノードを動作させるようにアクティブ化/非アクティブ化可能な光スイッチを更に備える。送信機構成では、送信ユニットは、光入力ポートを介して多機能ノードに入射する光子を変調し、変調された偏光光子を多機能ノードの光出力ポートに供給する。受信機構成では、受信ユニットは、光入力ポートを介して多機能ノードに入射する変調された光子を復調する。
【0021】
この特徴の組合せにより、単一光子源は、ネットワークの全ての多機能ノードによって共有される。これには、光子源ノードのコストが全多機能ノードで共有されるため、経済的な利点があるが、例えば、極低温装置を使用する可能性のある特定の部屋の中、又は専門的な技術者によって監視される部屋の中に単一光子源が設置可能であるため、特に物流的及び機能的な利点がある。
【0022】
さらに、光子源ノードは、ネットワークの多機能ノードに影響を与えることなく更新可能である。技術革新の激しい状況において、この機能は、システム構築への投資を強化するという点で非常に重要である。
【0023】
さらに、多機能ノードはその機能に関係なく構造的に同じであるため、ネットワークは、規模の経済を達成させることができる。各多機能ノードは、スーパーバイザデバイスによって割り当てられた時間内に、ネットワークの他のノードと量子鍵を交換することができる。
【0024】
一実施形態では、ネットワークは、スーパーバイザデバイスを備える。光スイッチングアレイは、各多機能ノードに関連付けられる。光スイッチングアレイは、光子源ノードから出る量子鍵の配送のための光通信チャネルを形成する多機能ノードを選択するために、スーパーバイザデバイスによって操作可能である。
【0025】
一実施形態では、光スイッチングアレイは、第1のポートと第2のポートとを有する。第1のポートには、それぞれの多機能ノードの入力光通信チャネル及び出力光通信チャネルがそれぞれ接続される。第2のポートは、光子源ノード及び/又はネットワークの少なくとも1つの他の多機能ノードの光スイッチングアレイの対応する第2のポートに接続される。
【0026】
一実施形態では、各多機能ノードは、光出力ポートの上流に配置されたミラーを更に備える。
【0027】
一実施形態では、各多機能ノードは、2つの更なる光スイッチを備える。2つの更なる光スイッチの一方は、光入力ポートと偏光安定器との間に配置され、他方は光出力ポートの上流に配置される。2つの更なる光スイッチは、パススルー構成に従って多機能ノードを動作させるようにアクティブ化可能であり、光入力ポートは、2つの更なる光スイッチを通過するパススルー光通信チャネルを介して多機能ノードの光出力ポートと直接的に通信する。
【0028】
一実施形態では、各多機能ノードの光スイッチは、各多機能ノードを、送信機構成、受信機構成又はパススルー構成に構成するように、スーパーバイザデバイスによって操作可能である。
【0029】
一実施形態では、光子源ノードは、単一光子源の下流に配置され、同期信号を生成するように構成されたシャッタを備え、同期信号は、同期ラインに沿ってネットワーク内の全てのノードに配送される。
【0030】
一実施形態では、光子源ノードの単一光子源は、一対の光子を生成するように構成され、一対の光子のうちの一方は、量子鍵を生成するためにネットワーク内で使用され、他方は、同期チャネルに沿ってネットワークに沿って配送される同期信号を確立するために使用される。
【0031】
第2の態様によれば、本発明は、送信ユニットを備える多機能ノードに関し、送信ユニットは、光子源ノードによって送信された光子を受信するための光入力ポートに接続された偏光安定器と、偏光安定器の下流に配置され、第1のアクチュエータによって制御される第1の波長板及び第2の波長板と、を含む。
【0032】
多機能ノードは、受信ユニットを更に備え、受信ユニットは、偏光安定器と、第2のアクチュエータによって制御される第1の波長板と、第1の波長板の下流に配置され、各光子の論理状態を検出するように構成された偏光ビームスプリッタと、少なくとも1つの光検出器と、検出された光子の論理状態を受信するように構成された計数レジスタと、を含む。
【0033】
各多機能ノードは、第2の波長板と偏光ビームスプリッタとの間に配置され、送信機構成又は受信機構成に従って多機能ノードを動作させるようにアクティブ化/非アクティブ化可能な光スイッチを更に備える。送信機構成では、送信ユニットは、光入力ポートを介して多機能ノードに入射する光子を変調し、変調された偏光光子を多機能ノードの光出力ポートに供給する。受信機構成では、受信ユニットは、光入力ポートを介して多機能ノードに入射する変調された光子を復調する。
【0034】
一実施形態において、送信機構成では、光スイッチがオンに切り替えられると共に、第2のアクチュエータと第1の波長板との間の接続を遮断するように、第1の波長板を制御するための第2のアクチュエータが非アクティブ化される。一方、受信機構成では、光スイッチがオフに切り替えられ、第1のアクチュエータと第1の波長板との間の接続を遮断するように、第1の波長板及び第2の波長板を制御する第1のアクチュエータが非アクティブ化され、第2の波長板は、零の複屈折値に設定される。
【0035】
一実施形態では、多機能ノードは、光出力ポートの上流に配置されたミラーを更に備える。
【0036】
一実施形態では、多機能ノードは、2つの更なる光スイッチを備える。2つの更なる光スイッチの一方は、光入力ポートと偏光安定器との間に配置され、他方は光出力ポートの上流に配置される。2つの更なる光スイッチは、パススルー構成に従って多機能ノードを動作させるようにアクティブ化可能であり、光入力ポートは、2つの更なる光スイッチを通過するパススルー光通信チャネルを介して多機能ノードの光出力ポートと直接的に通信する。
【0037】
一実施形態では、送信ユニットは、送信光通信チャネルを介して、光入力ポートと光出力ポートとの間に接続され、受信ユニットは、受信光通信チャネルを介して、光入力ポートに接続される。
【0038】
一実施形態において、送信機構成では、光スイッチがオンに切り替えられ、更なる光スイッチがオフに切り替えられると共に、第2のアクチュエータと第1の波長板との間の接続を遮断するように、第1の波長板を制御するための第2のアクチュエータが非アクティブ化される。一方、受信機構成では、両方の光スイッチがオフに切り替えられ、第1のアクチュエータと第1の波長板との間の接続を遮断するように、第1の波長板及び第2の波長板を制御する第1のアクチュエータが非アクティブ化され、第2の波長板は、零の複屈折値に設定される。
【0039】
一実施形態では、パススルー構成において、2つの更なる光スイッチはオンに切り替えられる。
【0040】
本発明の更なる特徴及び目的は、以下の説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明は、非限定的な例として提供され、添付の図面に示された特定の例を参照して以下に説明される。これらの図面は、本発明の様々な態様及び実施形態を示し、様々な図面における構造、構成要素、材料、及び/又は同様の要素を示す参照数字は、適宜、同様の参照数字で示される。
【0042】
【
図1】本発明の好ましい実施形態に係る、量子鍵の配送のためのネットワークを概略的に示す。
【
図2】
図1の量子鍵の配送のためのネットワークの各多機能ノードに関連する光スイッチングアレイを概略的に示す。
【
図3】
図1の量子鍵の配送のためのネットワークの単一光子源ノードを概略的に示す。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る多機能ノードを概略的に示す。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る多機能ノードを概略的に示す。
【
図6】量子鍵の配送のためのネットワークを、それを構成する多機能ノードが取り得る動作構成において概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、様々な変更及び代替構成の影響を受け得るが、説明のために提供されるいくつかの実施形態を以下に詳細に説明する。
【0044】
いずれにしても、本発明を図示された特定の実施形態に限定する意図はなく、逆に、本発明は、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲内に入るすべての変更、代替、及び均等の構造をカバーすることを意図することが理解されなければならない。
【0045】
したがって、以下の説明において、「例えば」、「等」、「又は」の使用は、別段の記載がない限り、限定のない非排他的な代替を示し、「また」の使用は、別段の記載がない限り、「含むが、限定されない」を意味し、「含む/備える」の使用は、別段の記載がない限り、「含む/備えるが、限定されない」を意味する。
【0046】
図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態に係る量子鍵の配送のためのネットワークが示されている。
【0047】
概して参照番号100で参照されるネットワークは、光子源ノード10と複数の多機能ノード20とを含む。
【0048】
ネットワーク100の各多機能ノード20は、光スイッチングアレイ40に関連付けられている。光スイッチングアレイ40は、光子源ノード10から出る量子鍵50の配送チャネルを形成する多機能ノード20を選択するために、スーパーバイザデバイス60によって制御可能である。各多機能ノード20の光スイッチングアレイ40は、それぞれの光通信チャネル、例えば光ファイバFによって、光子源ノード10と、それらの間とに接続される。あるいは、各光通信チャネルは、自由空間通信チャネルであってもよい。
【0049】
図2に更に詳細に示されているように、各光スイッチングアレイ40は、第1のポートE1、E2と第2のポートW1,W2,…Wnとを有し、第1のポート(E1、E2)には、それぞれの多機能ノード(20)の入力光通信チャネルF
in及び出力光通信チャネルF
outがそれぞれ接続され、第2のポートW1,W2,…Wnは、光ファイバFによって、光子源ノード10及び/又はネットワーク100の他の光スイッチングアレイ40の対応する第2のポートW1,W2,…Wnに接続される。各多機能ノードの入力光通信チャネルF
in及び出力光通信チャネルF
outは、光ファイバ、又は、代替的に、自由空間通信チャネルである。光スイッチングアレイ40は、多機能ノード20に統合されて統合多機能ノード70を形成できる。この場合、多機能ノードの入力光通信チャネルF
in及び出力光通信チャネルF
outは、光ファイバ統合通信チャネルである。
【0050】
図1のネットワーク100を参照すると、各多機能ノード20の光通信アレイ40は、3つの多機能ノード20の光スイッチングアレイに接続されているが、左上に配置された多機能ノード20の光スイッチングアレイ40は例外であり、光子源ノード10にも接続されている。このような構成のネットワーク100では、光子源ノード10にも接続された光スイッチングアレイ40は、4つの第2ポートW1~W4を有する。4つの第2ポートのうちの1つは光子源ノード10への接続用であり、3つはネットワークの他の光スイッチングアレイ40への接続用である。他の光スイッチングアレイ40のそれぞれは、ネットワーク100のそれぞれの光スイッチングアレイ40に接続される3つの第2ポートW1~W3を有する。
【0051】
本明細書で後に詳細に説明するように、各多機能ノード20は、2つの可能な構成、すなわち送信機構成及び受信機構成に従って動作できるように構成される。
【0052】
特に、送信機構成では、各多機能ノード20は、光子源ノード10から到着する光子を変調するように構成される。具体的には、送信機構成において、各多機能ノード20は、直線、対角、又は円形であり得る基底と、量子鍵を構成するビットの論理シーケンス、例えばハイ論理状態又は1(光子のスピン上向きに相当)、ロー論理状態又は0(光子のスピン下向きに相当)を生成する状態値、又はコードとを選択する。さらに、送信機構成において、各多機能ノード20は、入力として受信された変調光子を出力に送信するように構成される。また、スーパーバイザデバイス60は、多機能ノード20に関連付けられた光スイッチングアレイ40を構成して、変調光子を他の多機能ノード20に送る。
【0053】
受信機構成では、各多機能ノード20は、送信機構成の多機能ノード20から到着した変調光子を復調するように、すなわち受信基底を決定し、各光子に関連付けられた状態値又はコードを抽出するように構成される。
【0054】
図3を参照すると、光子源ノード10は、単一光子源12、すなわち、コマンドパルスごとに平均して1つの光子(微弱な光子源)のみを送信する程度まで強度を弱めた光子源を含む。好ましくは、光子源ノード10は、単一光子源12のすぐ下流に配置され、同期信号を生成する機能を有するシャッタ14を更に備える。同期信号は、同期ラインLsに沿ってネットワーク100の全ての多機能ノード20の間に配送される。
【0055】
あるいは、単一光子源12は、ヘラルド型、すなわち、光子のペアを生成するように構成される。光子のペアの一方は、ネットワーク100において、量子鍵50を生成するために使用され、他方は、同期信号チャネルLsを介してネットワーク100に沿って配送される同期信号を確立するために使用される。
【0056】
最後に、光子源ノード10は、レンズ(後続の光学部品が自由空間内で動作する場合)によって、ファイバ間溶接によって、又は通信チャネルが光ファイバ型である場合は単一の光ファイバコネクタによって表される光出力ポート16を備える。本明細書で説明される例では、光出力ポート16は、光ファイバFが接続されるコネクタで構成され、コネクタは、光子源ノード10をネットワーク100の光スイッチングアレイ40に接続する。
【0057】
図4は、本発明の第1実施形態に係る多機能ノード20を詳細に示す。
【0058】
多機能ノード20は、光入力ポート21、例えば光ファイバコネクタを備え、光入力ポート21で入力光子を受信する。前述のように、これらの光子は、光子源ノード10、又はネットワークの他の多機能ノード20から来ることがある。
【0059】
多機能ノード20は、光出力通信チャネルFout上で光子を伝送し、ネットワーク100の他の多機能ノード20に送信することができる光出力ポート32、例えば光ファイバコネクタを更に備える。
【0060】
多機能ノード20の光入力ポート21及び光出力ポート32は、後続の光学部品が自由空間で動作する場合、レンズの形状、ファイバ間溶接の形状、又はシングルモード光ファイバコネクタの形状を有してもよい。
【0061】
多機能ノード20は、光入力ポート21の下流に、第1のアクチュエータ24によって制御される第1の波長板22及び第2の波長板23を更に備える。第1の波長板22及び第2の波長板23には、光子源ノード10の単一光子源12から出る単一偏光光子、又は量子ビットが送られる。
【0062】
第1の波長板22は、光ファイバFinを介して多機能ノード20に入る偏光光子のスピンの基底Bを確立可能にし、第2の波長板23は、鍵を構成するビットの論理シーケンス(例えば、1に相当するハイ論理状態、0に相当するロー論理状態)を生成する状態又はコードCを確立可能にする。基底は、当該分野の専門家にはよく知られているように、半波又は4分の1波の波長板の作用によって、あらかじめ定義された状態から開始される。当該分野の専門家にはよく知られているように、(ハイ又はロー)論理状態の値は、選択された基底に従って適切に方向付けられた半波長板によって生成可能である。
【0063】
多機能ノード20の入力光ファイバFinは一般的に複屈折を示すから、多機能ノード20は、波長板22及び23の上流に、偏光安定器25を更に備える。偏光安定器25は、光入力ポート21と第1の波長板22との間に接続され、入射する偏光光子を受信し、光子のスピンの基底Bを再配向させる。偏光安定器は、量子ビットの変調に使用されるポアンカレ球の元の配置を、その3つの軸全てにおいて、復元し、例えば、ドイツのNovoptel GmbH社によって製造及び販売されているモデルEPS1000である。
【0064】
偏光安定器25、第1の波長板22、第2の波長板23、及び波長板の第1のアクチュエータ24は、多機能ノード20の送信ユニットTxを構成し、光伝送通信チャネルを介して、例えば光ファイバF1又は自由空間光通信チャネルを介して、それらの間で接続され、並びに、光入力ポート21及び光出力ポート32と接続されている。
【0065】
多機能ノード20は、波長板22及び23の下流に、波長板22及び23から出る各偏光光子が導かれる偏光ビームスプリッタ26を更に備える。特に、偏光ビームスプリッタ26は、光子のハイ論理状態1又はロー論理状態0を識別し、それらを光検出器27a及び27bに送信する。光検出器27a及び27bは、それらを計数レジスタ28に送信し、メッセージコードの再構成を可能にするように構成される。
【0066】
多機能ノード20は、第1の波長板22の第2のアクチュエータ29を更に備える。アクチュエータ29は、同期ラインLsを介して、計数レジスタ28及び第1の波長板22に接続され、ランダムな手順によって初期基底Bを復元するように第1の波長板22を制御する。
【0067】
偏光安定器25、第2のアクチュエータ29によって制御される第1の波長板22、偏光ビームスプリッタ26、光検出器27a、27b、及び計数レジスタ28は、多機能ノード20の受信ユニットRxを構成し、受信光通信チャネル、例えば光ファイバF2又は自由空間光通信チャネルを介して、それらの間で接続され、かつ光入力ポート21と接続されている。
【0068】
光スイッチ30は、第2の波長板23と偏光ビームスプリッタ26との間に設けられている。
【0069】
多機能ノード20が送信機構成である場合、光スイッチ30はオン(
図4のON位置)に切り替えられ、光子は、それらを光出力ポート32に送るミラー33に向けられる。
【0070】
この場合、光子源ノード10からの偏光光子は、入力光通信チャネルFinを介して光入力ポート21に入り、送信光通信チャネルF1に沿って移動する。
【0071】
特に、光子は偏光安定器25に入り、その後、第1の波長板22及び第2の波長板23を通って進む。偏光安定器25は、偏光された光子が横切る光ファイバ内に存在する複屈折を相殺し、第1の波長板22及び第2の波長板23は、BB84プロトコルに従って基底B及び送信コードCを生成するように、第1のアクチュエータ25によって制御される。
【0072】
光子は、その経路を光スイッチ30に向かって進み、スイッチがオンになると、ミラー33に向かい、そこから光出力ポート32に向かう。光出力ポート32を出た光子は、光出力通信チャネルFout及びそれぞれの光スイッチングアレイ40を介して、ネットワーク100の他の多機能ノード20に向かう。
【0073】
好ましくは、偏光安定器25と光スイッチ30との間の光路には、複屈折がないことが必要である。さらに、多機能ノード20の送信機構成では、第2のアクチュエータは非アクティブ化され、第2のアクチュエータ29と第1の波長板22との間の接続が遮断される。
【0074】
多機能ノード20が受信機構成である場合、光スイッチ30はオフ(
図4のOFF位置)に切り替えられる。
【0075】
この場合、送信機構成であるネットワーク100の多機能ノード20から来る偏光光子は、入力光通信チャネルFinを介して光入力ポート21に入り、受信光通信チャネルF2に沿って移動する。
【0076】
特に、光子は偏光安定器25に入り、第1の波長板22及び第2の波長板23の中を進む。光子はその経路を光スイッチ30に向かって進み、光スイッチ30がオフに切り替えられると、偏光ビームスプリッタ26に向かって進む。偏光ビームスプリッタ26は、光子のハイ論理状態1又はロー論理状態0を識別し、それを光検出器27a及び27bを介して計数レジスタ28に送信し、受信コードCの再構成を可能にする。
【0077】
偏光安定器25と、光スイッチ30と、偏光ビームスプリッタ26との間の光路には、複屈折があってはならない。さらに、多機能ノード20の受信機構成では、第1のアクチュエータ24と第1の波長板22との間の接続が遮断されるように、第1のアクチュエータ24が非アクティブ化され、第2の波長板23がゼロ複屈折値に設定される(すなわち、波長板がゼロ遅延で主軸に従って配向される)。
【0078】
多機能ノード20の両方の構成(送信機構成及び受信機構成)において、BB84プロトコルの完全性は完全に満たされる。実際、多機能ノード20が送信機構成である場合、ノードのみが送信される量子鍵50の基底B及びコードCの両方を知っている一方で、多機能ノード20が受信機構成である場合、基底B及びコードCの両方の情報は、受信ユニットRxのみが持っている。
【0079】
図5は、本発明の第2実施形態に係る多機能ノード120を詳細に示している。
【0080】
多機能ノード120は、入力として受信した光子が出力ポート32に向かう経路を辿ることができるように構成された光学手段を更に備えている点で、前述の多機能ノード20と異なる。このようにして、多機能ノード120は、光子を変調も復調もせず、単にそれ自体を通過させるパススルーノードとしても動作することができる。このような構成は、特定のネットワーク構成において有用であり得る。
【0081】
入力ポート21の直後、多機能ノード120は、2つの光スイッチ131及び133を含み、スイッチがオン又はオフにされた場合に2つの位置を推定することができる。特に、光スイッチ131は、光入力ポート21と偏光安定器25との間に配置され、他方の光スイッチ133は、光出力ポート32の上流に配置される。2つの光スイッチ131及び133は、入力ポート21を出力ポート32に接続する直線的な光路に沿って並んでいる。
図5の例では、光スイッチ131及び133がオン(
図5におけるON位置)に切り替えられると、入射光子はそれらを通過し、出力ポート32に到達するまで進む。
【0082】
一方、光スイッチ131、133がオフ(
図5におけるオフ位置)に切り替えられると、光子は偏光安定器25に送られ、そこで、多機能ノード20について前述したように、光子は進み、正確に処理され、(ノードが受信機構成である場合)受信され、又は(ノードが送信機構成である場合)変調される。
図5の例では、光スイッチ131によって向きを変えられた光子は、光路を規定するために使用されるミラー134によって偏光安定器25に導かれる。多機能ノード120が送信機構成である場合、波長板23から出る変調光子は、光スイッチ133に向けられ、光スイッチ133は、オフ位置にあるため、変調光子の向きを変えて出力ポート32に向かわせる。
【0083】
図6は、本発明の一実施形態に係る量子鍵の配送のためのネットワーク100のあり得る構成を示す。本構成は、光子源ノード10と、それぞれの光ファイバF
AB、F
BC、F
CDによって互いに接続された4つの多機能ノード(120a、120b、120c、及び120d)とを備える。
図6の例では、多機能ノード120Aの光入力ポート21は、光ファイバF
SAによって光子源ノード10に接続されている。
【0084】
図6のネットワーク構成では、多機能ノードは、
図5を参照して前述した3構成タイプ(パススルー構成、送信機構成及び受信機構成)のノードであるが、ノード120Dは、この位置ではパススルー機能を実行することがないため、
図4の2構成タイプ(受信機構成及び送信機構成)とされ得る。
【0085】
ここで、ネットワーク100の第3の多機能ノード120Cと第4の多機能ノード120Dとの間で量子鍵50を配送したいと仮定する。
【0086】
この目的のために、スーパーバイザデバイス60は、第1及び第2の多機能ノード120A及び120Bをパススルー構成にする、すなわち、それらの光スイッチ131及び133をオンに切り替えて、入力として受信された光子を出力に再送できるようにする。スーパーバイザデバイス60は、代わりに、第3の多機能ノード120Cを送信機構成にし、第4の多機能ノード120Dを受信機構成にする。
【0087】
光子源ノード10によって生成された光子は、次に、パススルー構成において多機能ノード120Aに入り、
図5に詳細に示すように、光スイッチ133に直接的に、すなわち、送信ユニットTx又は受信ユニットRxに入ることなく、そこから光出力ポート32に導かれ、パススルー光通信チャネルF3に沿って移動する。
【0088】
多機能ノード120Aの光出力ポート32から出た光子は、次に、光通信チャネルFABに沿って、第2のパススルー多機能ノード120Bに向けられ、第1のパススルー多機能ノード120Aに関して前述したのと同様に、光スイッチ133によって、直接的に光出力ポート32に向けられ、パススルー光通信チャネルF3に沿って移動する。
【0089】
パススルー多機能ノード120Bの光出力ポート32を出た光子は、次に、光通信チャネルFBCを通って、送信機構成の第3の多機能ノード120Cに導かれる。ここで光子は変調される。
【0090】
特に、
図5を参照すると、光子は偏光安定器25に入り、ここから、第1のアクチュエータ24によって制御される第1の波長板22及び第2の波長板23に入り、BB84プロトコルに従って基底B及び伝送コードCを生成する。
【0091】
光子は、光スイッチ133によって光出力ポート32に向けられ、そこから光通信チャネルFCDを通り、受信機として機能する多機能ノード120Dへの入力として受信される。
【0092】
特に、
図5を参照すると、光子は、BB84プロトコルに従って受信基底Bを生成するように、偏光安定器25に入り、ここから第1の波長板22及び第2の波長板23に入る。この目的のため、上で説明したように、第1の波長板22は、第2のアクチュエータ29によって制御され、偏光安定器25は、偏光光子によって横切られる光ファイバの中に存在するあらゆる複屈折を相殺し、第2の波長板23は、複屈折値ゼロに設定される。
【0093】
次に、光子は、偏光ビームスプリッタ26に導かれる。偏光ビームスプリッタ26は、光子のハイ論理状態1又はロー論理状態0を識別し、光子を光検出器27a及び27bに送信し、それらから計数レジスタ28に伝送し、受信コードCの再構成を可能にする。
【0094】
以上の説明から、明らかに、前述の量子鍵の配送のためのシステム及びネットワークは、提案された目的を達成できる。特に、前述の多機能ノードは、明らかに、異なるタイプのネットワークを生成するために非常に柔軟に使用できる。
【0095】
したがって、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の保護範囲を超えることなく、図面を参照して説明した解決策に変更及び変形を加えることが可能であることは、当業者にとって明らかである。
【0096】
例えば、
図1のネットワークにおいて、ノード20の代わりにノード120を使用してもよいことは明らかである。
【国際調査報告】