(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】連続的抽出による血漿分画
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20240528BHJP
C07K 1/30 20060101ALI20240528BHJP
C07K 14/76 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C07K16/00
C07K1/30
C07K14/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572759
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2022064372
(87)【国際公開番号】W WO2022248648
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501091604
【氏名又は名称】ツェー・エス・エル・ベーリング・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム・エル・メンヤヴィ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA70
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA60
4H045GA05
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、血漿サンプルからの免疫グロブリン及び/又はアルブミンの精製のための方法に関し、該方法は、血漿のサンプルを中鎖脂肪酸と混合すること、及び混合物から可溶性免疫グロブリンを回収することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするための条件下で、中鎖脂肪酸と接触させること、
- [ここで、条件は、約4.6~約5.0の間のpH範囲を含む];
- それにより、免疫グロブリンの溶液を形成すること
を含む、免疫グロブリン、好ましくは免疫グロブリンG(IgG)の溶液を得るための方法。
【請求項2】
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために、約4.6~約5.0の間のpH範囲を含む条件下で中鎖脂肪酸と接触させること、
- それにより、免疫グロブリンを含む可溶性タンパク質含有成分と、アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分とを含む懸濁液を形成すること;
- 可溶性タンパク質含有成分を不溶性タンパク質含有成分から分離して、精製された免疫グロブリンの溶液を得ること
を含む、免疫グロブリンの精製のための方法。
【請求項3】
可溶性タンパク質含有成分を不溶性タンパク質含有成分から分離する工程は、第1の保持液及び第一のろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に懸濁液を供給することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1のろ液を回収することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
場合により、動的フィルター要素又はタンジェンシャルフローろ過(TFF)を含むろ過ユニットを使用して、第1のろ液を濃縮することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a) 第1のタンクにおいて:血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために、約4.6~約5.0の間のpH範囲を含む条件下で中鎖脂肪酸と混合して、それにより可溶性免疫グロブリン及び不溶性アルブミンを含む懸濁液を形成すること;
b) 不溶性アルブミンを含む第1の保持液と、可溶性免疫グロブリンを含む第一のろ液とを生じるように適合された動的フィルター要素を含む第1のろ過ユニット中に、該懸濁液を供給すること;
c) 場合により、第一のタンク中に保持液を流すことにより、第1のタンク中の懸濁液を希釈すること;
d) 第2のタンクにおいて第1のろ液を回収すること、並びに
e) 場合により、第1のろ液を濃縮すること
を含む、血漿からの免疫グロブリンの精製のための方法。
【請求項7】
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするための条件下で中鎖脂肪酸と接触させること、
- [ここで、条件は約4.2~約5.0の間のpH範囲を含む];
- それにより、免疫グロブリンの溶液及びアルブミンの沈殿物を形成すること
を含む、免疫グロブリンの溶液及びアルブミンの沈殿物を得るための方法。
【請求項8】
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために約4.2~約5.0の間のpH範囲を含む条件下で、中鎖脂肪酸と接触させること、
- それにより、免疫グロブリンを含む可溶性タンパク質含有成分と、アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分とを含む懸濁液を形成すること;
- 不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離して、精製された免疫グロブリンの溶液とアルブミンを含む懸濁液とを得ること
を含む、免疫グロブリン及びアルブミンの精製のための方法。
【請求項9】
不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は、第1の保持液及び第1のろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に懸濁液を供給することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1のろ液を回収することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
場合により、動的フィルター要素を含むろ過ユニットを使用して、第1のろ液を濃縮することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
a) 第1のタンクにおいて:血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために、約4.2~約5.0の間のpH範囲及び場合により約8mS/cm~約12mS/cmの間の導電率を含む条件下で、中鎖脂肪酸と混合して、それにより可溶性免疫グロブリン及び不溶性アルブミンを含む懸濁液を形成すること;
b) 不溶性アルブミンを含む第1の保持液と、可溶性免疫グロブリンを含む第一のろ液とを生じるように適合された動的フィルター要素を含む第1のろ過ユニット中に、該懸濁液を供給すること;
c) 場合により、第1のタンク中に第1の保持液を流すことにより、第1のタンク中の懸濁液を希釈すること;
d) 第2のタンクにおいて第1のろ液を回収すること、並びに
e) 場合により、第1のろ液を濃縮すること
を含む、血漿からの免疫グロブリン及びアルブミンの精製のための方法。
【請求項13】
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするための条件下で中鎖脂肪酸と接触させること、
- [ここで、条件は約4.15~約4.25の間のpH範囲を含む];
- それにより、アルブミンを沈殿させること
を含む、アルブミンの沈殿物を得るための方法。
【請求項14】
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために、約4.15~約4.25の間のpH範囲を含む条件下で中鎖脂肪酸と接触させること、
- それにより、免疫グロブリンを含む可溶性タンパク質含有成分と、アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分とを含む懸濁液を形成すること;
- 不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離して、アルブミンを含む沈殿物又は懸濁液を得ること
を含む、アルブミンの精製のための方法。
【請求項15】
不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は、第1の保持液及び第1のろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に懸濁液を供給することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1のろ液を回収することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
場合により、動的フィルター要素を含むろ過ユニットを使用して、第1のろ液を濃縮することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
a) 第1のタンクにおいて:血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために、約4.15~約4.25の間のpH範囲及び場合により約8mS/cm~約12mS/cmの間の導電率を含む条件下で中鎖脂肪酸と混合して、それにより可溶性免疫グロブリン及び不溶性アルブミンを含む懸濁液を形成すること;
b) 不溶性アルブミンを含む第1の保持液と、可溶性免疫グロブリンを含む第一のろ液とを生じるように適合された動的フィルター要素を含む第1のろ過ユニット中に、該懸濁液を供給すること;
c) 場合により、第1のタンク中に第1の保持液を流すことにより、第1のタンク中の懸濁液を希釈すること;
d) 第1の保持液を回収すること
を含む、血漿からアルブミンを精製するための方法。
【請求項19】
第1のろ液を濃縮する工程e)は、免疫グロブリンが濃縮された第2の保持液及び免疫グロブリンが枯渇した第2のろ液を生じるように適合された、動的フィルター要素又は静的タンジェンシャルフローろ過(TFF)を含む第2のろ過ユニットにおいて、ろ液を連続的濃縮プロセスにかけることを含む、請求項6又は12に記載の方法。
【請求項20】
免疫グロブリンが枯渇した第2のろ液は、第1のタンク中へと流されて戻される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
免疫グロブリンが濃縮された第2の保持液は、第2のタンク中へと流されて戻される、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
可溶性タンパク質(免疫グロブリン)が濃縮されたろ液(透過液)を生じるように適合された第1のろ過ユニットにおける動的フィルター要素は、動的クロスフローフィルター要素である、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
免疫グロブリンが濃縮された保持液を生じるように適合された第2のろ過ユニットにおける動的フィルター要素は、動的クロスフローフィルター要素又はタンジェンシャルフローろ過(TFF)である、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
動的クロスフローフィルター要素は回転クロスフローフィルター要素である、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
回転クロスフローフィルター要素はフィルターディスクを含み、好ましくはここでフィルターディスクはシャフト部材に取り付けられる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
回転クロスフローフィルター要素は、1つより多くのフィルターディスク及び1つより多くのシャフト部材を含む、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
フィルターディスク膜はセラミック膜である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
血漿のサンプルはヒト血液由来である、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
血液由来血漿のサンプルは、新鮮な血漿、場合によりプールされた血漿から得られた、脱クリオ血漿又はクリオリッチ血漿を含み、場合により、ここで血漿は遠心分離にかけられたものである、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
血漿のサンプルはろ過助剤を含まず、かつ/又はアルコールもしくは他の分画処理を受けていない、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
血漿サンプルのpHは、中鎖脂肪酸との接触の前に約4.6~約5.0のpH範囲に調整される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
血漿サンプルのpHは、pH約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、又は約5.0に調整される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
血漿サンプルのpHは、中鎖脂肪酸との接触の前に約4.2~約5.0のpH範囲に調整される、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
血漿サンプルのpHは、pH約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、又は約5.0に調整される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
血漿サンプルのpHは、中鎖脂肪酸との接触前に約4.15~約4.25のpH範囲に調整される、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
血漿サンプルのpHは、pH約4.15、約4.2、又は約4.25に調整される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
血漿サンプルの導電率は、約5mS/cm~約12mS/cm、好ましくは8mS/cm~約12mS/cmである、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
血漿サンプルのpHは、中鎖脂肪酸との接触前に血漿を実質的に希釈することなく調整される、請求項1又は37に記載の方法。
【請求項39】
血漿サンプルは、中鎖脂肪酸と混合される工程の前に緩衝液で希釈される、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
希釈は、約1:0.5、約1:0.75、約1:1、約1:1.25、約1:1.5、約1:1.75、約1:2、約1:3、又は約1:4希釈である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
中鎖脂肪酸は、一般構造式CH
3(CH
2)
nCOOHを含む脂肪酸から選択され、ここで該脂肪酸はC6~C12カルボン酸である、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
脂肪酸は:エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、又はカプリン酸(デカン酸)、又はそれらの塩もしくはエステルから選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
脂肪酸はカプリル酸(オクタン酸)又はその塩もしくはエステルである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、(血漿サンプル中)総タンパク質1gあたり約0.30g、総タンパク質1gあたり約0.35g、総タンパク質1gあたり約0.40g、総タンパク質1gあたり約0.45g又は総タンパク質1gあたり約0.50gである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.300g、又は総タンパク質1gあたり約0.325g、又は総タンパク質1gあたり約0.350g、又は総タンパク質1gあたり約0.375g、又は総タンパク質1gあたり約0.400g、又は総タンパク質1gあたり約0.425g、又は総タンパク質1gあたり約0.450gであり、好ましくはここで脂肪酸、より好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり少なくとも約0.350gである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、(血漿サンプル中)総タンパク質1gあたり約0.35g、総タンパク質1gあたり約0.40g、総タンパク質1gあたり約0.45g、総タンパク質1gあたり約0.50g又は総タンパク質1gあたり約0.55gである、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.35gに等しいか又は約0.35gより多い、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.35gに等しいか又は約0.35gより多いが、総タンパク質1gあたり1.1gより少ないか又は総タンパク質1gあたり約1.1gより少ない、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
血漿サンプルを中鎖脂肪酸と接触させる工程は、血漿サンプルと脂肪酸とを混合して、中鎖脂肪酸と血漿サンプルとの均一なエマルションを得ることを含み、好ましくはここで混合は、均一なエマルションの形成を可能にするように激しい混合である、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
血漿サンプル及び中鎖脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)は、少なくとも約10分、少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約25分、少なくとも約30分、少なくとも約35分、少なくとも約40分、少なくとも約45分、少なくとも約50分又は少なくとも60分の期間の間混合される、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
混合する工程の後、可溶性タンパク質含有成分(可溶性免疫グロブリン)を不溶性タンパク質含有成分(不溶性アルブミン)から分離する前にインキュベーション期間がある、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
インキュベーション期間は、少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約40分、少なくとも約50分、少なくとも約60分、少なくとも約70分、少なくとも約80分、少なくとも約90分、少なくとも約100分、少なくとも約110分、少なくとも約120分、少なくとも約130分、少なくとも約140分、少なくとも約150分又はそれ以上である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
方法の工程は、約18℃~約37℃の間の温度、好ましくは約18℃~約24℃の間の温度で行われる、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
精製された免疫グロブリンは、免疫グロブリンG(IgG)、好ましくはヒト免疫グロブリンG(IgG)を含む、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
免疫グロブリン溶液、又は濃縮された免疫グロブリンは、免疫グロブリンをさらに精製するためにさらなる処理にかけられる、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
さらなる処理は、連続的フィルター抽出のさらなる工程を含まない、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
免疫グロブリンは、低pH処理、クロマトグラフィー工程(アニオン交換クロマトグラフィー及び/又はイムノアフィニティクロマトグラフィーを含む)、ウイルスろ過及び不活化工程、濃縮並びに最終製品を例えばヒト身体に投与することができるような製剤化のようなさらなる処理にかけられる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
精製された免疫グロブリン溶液は、以下の不純物:IgA、IgM、アルブミン、α(アルファ)-2マクログロブリン、α(アルファ)-1アンチトリプシン、脂質、及びリポタンパク質の1つ又はそれ以上を含有する、請求項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
懸濁液(すなわち、血漿サンプルを中鎖脂肪酸と接触させることから得られた)の不溶性タンパク質含有成分は、不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程の後に保持されている、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
f) アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分のpHをpH約6.4~7.2の間に調整して、可溶化されたアルブミンを得ること;
g) 場合により、可溶化されたアルブミンをさらなる処理工程にかけて、それから不純物を除去すること;
h) 精製されたアルブミンを可溶化されたアルブミンから回収すること、
をさらに含む、請求項6又は12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
不溶性アルブミンは、第1のタンク中に残っている残留不溶性タンパク質であり、かつ/又は第1の保持液をさらに含んでいてもよい、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
不溶性タンパク質含有成分のpHは、不溶性タンパク質含有成分を実質的に希釈することなく調整される、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
不溶性タンパク質含有成分の導電率は、約8~約15mS/cmの間に調整される、請求項60~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
工程f)は、最初に不溶性タンパク質含有成分(不溶性アルブミン)を、7.1~7.4の間のpH、及び場合により約8~約15mS/cmの間の導電率を有する緩衝液と接触させて、さらなる懸濁液を形成すること、並びにこのさらなる懸濁液のpHを少なくともpH約6.4、好ましくは中性pH、より好ましくは約6.4~約7.2の間に調整し、それにより可溶化アルブミンを得ることを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
可溶化アルブミンは、不純物を除去するためにさらなる処理工程にかけられる、請求項60~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
- 可溶化アルブミンを、アルブミンが枯渇した保持液及び可溶性アルブミンが濃縮されたろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に供給すること;
- アルブミンが濃縮されたろ液を回収すること
を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
i) 第1のタンクに可溶化アルブミンを供給すること:
j) 可溶化アルブミンの溶液を、アルブミンが枯渇した保持液及びアルブミンが濃縮されたろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含む第1のろ過ユニット中に供給すること;
k) 場合により、保持液を第1のタンク中に流す事により第1のタンク中の溶液を希釈すること;
l) 第2のタンクにおいて、アルブミンが濃縮されたろ液を回収すること、並びに
m) 場合によりろ液を濃縮すること、
を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
工程m)は、アルブミンが濃縮された保持液及びアルブミンが枯渇したろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含む第2のろ過ユニットにおいて、ろ液を連続的濃縮プロセスにかけることを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
アルブミンが枯渇したろ液は、第1のタンク中に流して戻される、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項70】
アルブミンが濃縮された保持液は、第2のタンク中に流して戻される、請求項67~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
アルブミンが濃縮されたろ液(透過液)を生じるように適合された第1のろ過ユニットにおける動的フィルター要素は、動的クロスフローフィルター要素である、請求項67~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
アルブミン溶液を濃縮し、そしてアルブミンが濃縮された保持液を生じるように適合された、第2のろ過ユニットにおける動的フィルター要素は、動的クロスフローフィルター要素又はTFFである、請求項67~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
第1の保持液のpHは、アルブミンを可溶化するために6.4~7.2、好ましくは6.8~7.2に調整される、請求項18に記載の方法。
【請求項74】
可溶化アルブミンは、動的フィルター要素を含むさらなるろ過ユニット中に供給されて、アルブミンが枯渇した保持液及びアルブミンが濃縮されたろ液を生じる、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
濃縮されたアルブミン溶液は、60~65℃の範囲で加熱される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
加熱は90分の期間の間行われる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
加熱工程の後に、上述の加熱工程の間に変性したタンパク質を沈殿させるために、好ましくは同時に4℃に冷却されて、溶液のpHは4.20に調整されるか又は約4.20に調整される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
沈殿物はろ過により除去され、それによりろ液は、精製されたアルブミンを、好ましくは総タンパク質の95%、96%、97%、又は98%に等しいか又はそれより高いアルブミン純度で、かつ85%、86%、87%、88%、89%又は90%に等しいか又はそれより高いアルブミン収率で含む、請求項77に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫グロブリンG(IgG)のような免疫グロブリン(Ig)を血漿から抽出するための方法及びシステムに関する。
【0002】
先の出願に対する相互参照
本出願は、オーストラリア仮出願第2021901577号の優先権を主張し、その内容全体が参照によりその全体として本明細書により加入される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
特異的抗体のような精製されたタンパク質に対する需要は、かなり増加している。このような精製されたタンパク質は、治療目的及び/又は診断目的のために使用され得る。
【0004】
ヒト血液血漿は、ヒトアルブミン(HSA)、免疫グロブリン(IgG)、凝固因子濃縮物(凝固第VIII因子、凝固第IX因子、プロトロンビン複合体など)及び阻害剤(アンチトロンビン、C1阻害剤など)のような広く確立されかつ認められている血漿-タンパク質製品の製造のために数十年間工業的に利用されてきた。このような血漿由来薬物の開発の過程で、血漿分画方法が確立され、特定のタンパク質画分を濃縮した中間産物をもたらし、次いでこれが血漿-タンパク質製品のための出発組成物として役立つ。典型的なプロセスは、例えば非特許文献1において概説されている。これらの種類の分離技術は、同じ血漿ドナープールからの数種の治療用血漿-タンパク質製品の製造を可能にする。これは1つのドナープールから1つのみの血漿-タンパク質製品を製造することよりも経済的に有利であり、従って、血液血漿分画における工業的標準として適合されてきた。
【0005】
この種の分画プロセスの一例である血漿の低温エタノール分画は、E.J Cohn及び彼のチームにより第2次世界大戦の間に主にアルブミンの精製のために開発された。(非特許文献2)。コーン(Cohn)分画プロセスは、pHを中性(pH7)から約4.8まで低下させながら、エタノール濃度を段階的に、0%から40%まで増加させることを含み、アルブミンの沈殿を生じる。コーン分画は過去70年ほどにわたって発展してきたが、大部分の商業用の血漿分画プロセスは、元のプロセス又はその変形(例えば、Kistler/Nitschmann)に基づき、pH、イオン強度、溶媒極性及びアルコール濃度を利用して、血漿を一連の主要な沈殿タンパク質画分(例えば、コーン法におけるフラクションI~V)に分離する。
【0006】
コーン分画プロセスの変形は、多価IgG回収の改善を目的として開発されてきた。例えば、Oncley及び共同研究者らは、コーンフラクションII+IIIを出発物質として使用して、コーンにより記載されたものと異なる低温エタノール、pH、温度及びタンパク質濃度の組み合わせを用いて、活性免疫グロブリン血清フラクションを製造した(非特許文献3)。今日では、Oncley法は多価IgGの製造のために使用される古典的方法である。それにもかかわらず、約5%のガンマ-グロブリン(抗体リッチ部分)がフラクションIと共沈し、そして血漿中に存在する総ガンマ-グロブリンの約15%がフラクションII+III工程により失われる(表IIIを参照のこと、非特許文献2)ということが知られている。Kistler/Nitschmann法は、沈殿工程のいくつかのエタノール含有量を減少させることによりIgG回収を改善することを意図していた(沈殿B 対 フラクションIII)。しかし、増加した収率は純度を犠牲にする(非特許文献4)。
【0007】
当初は、これらの分画プロセスから誘導された免疫グロブリンG(IgG)調製物は、様々な感染性疾患の予防及び処置に首尾よく使用された。しかし、エタノール分画は、比較的粗いプロセスであるので、IgG製品は不純物を含有しており、そしてそれらを筋肉内投与しかできない程度に凝集する。その時以来、精製プロセスにおけるさらなる改善が、静脈内(IVIgと呼ばれる)及び皮下(SCIgと呼ばれる)投与に適したIgG調製物をもたらした。
【0008】
血漿約3千万リットルが2010年に世界中で処理されたと見積もられており、アルブミン約500トン及びIVIg約100トンを含むある範囲の治療用製品を提供した。IVIg市場は血漿分画市場全体の約40~50%を占める(非特許文献5)。従って、IVIgの需要は強いままであり(SCIgの増加する需要と併せて)、血漿及び関連画分からの免疫グロブリン回収を改善する必要性が残っている。好ましくは、これは、他の血漿由来治療用タンパク質の回収が不利に影響を受けないことを確実にする方法で達成されなければならない。
【0009】
商業的観点から、後の精製工程は、これらの初期の画分内の目的のタンパク質の収量及び純度に依存するので、初期の分画プロセスは、治療用タンパク質、特に血漿由来タンパク質の製造に関連する全体の製造時間及び費用にとって決定的である。低温エタノール分画プロセスのいくつかの変形がより低い操作費用でタンパク質収率を改善するために、血漿由来タンパク質について開発されてきたが、より高いタンパク質収量は典型的にはより低い純度を伴う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Molecular Biology of Human Proteins (Schultze H.E.、Heremans J.F.;Volume I: Nature and Metabolism of Extracellular Proteins 1966、Elsevier Publishing Company;p. 236-317)
【非特許文献2】Cohn EJ、et al. 1946、J. Am. Chem. Soc. 62: 459-475
【非特許文献3】Oncley et al.、(1949) J. Am. Chem. Soc. 71、541-550
【非特許文献4】Kistler & Nitschmann、(1962) Vox Sang. 7、414-424
【非特許文献5】P. Robert、Worldwide supply and demand of plasma and plasma derived medicines (2011) J. Blood and Cancer、3、111-120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
厳しい安全基準を満たす、血液由来血漿又は血清からのタンパク質の工業的規模の製造のための改善された方法及びシステムが必要である。現在使用される終了段階の技術は比較的高価であり、かつそれらの収率は最適ではない。従って、免疫グロブリンのようなタンパク質の血漿からの抽出及び精製のためのより効率的かつ経済的な方法を開発することが必要不可欠である。
【0012】
明細書におけるいずれの先行技術の参照も、この先行技術が任意の権限において一般知識の一部を形成するということを肯定も示唆もせず、又はこの先行技術が当業者により先行技術の他の部分と理解され、関連するとみなされ、かつ/もしくは組み合わされると合理的に期待され得るということを肯定も示唆もしない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
本発明は、比較的純粋な免疫グロブリン、特にIgGの調製物を、血漿から直接、かつエタノール分画工程を必要とすることなく得ることが可能であるという発見に基づく。
【0014】
さらに、本発明は、免疫グロブリン、特にIgG及びアルブミンの比較的純粋な調製物を、血漿から直接、かつエタノール分画工程を必要とすることなく得ることも可能であるという発見に基づく。
【0015】
またさらに、本発明は、アルブミンの比較的純粋な調製物を、血漿から直接、かつエタノール分画工程を必要とすることなく得ることも可能であるという発見に基づく。
【0016】
従って、第1の態様において本発明は、免疫グロブリンの溶液を得るための方法を提供し、該方法は:
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするための条件下で、中鎖脂肪酸と接触させること、
- [ここで、条件は、約4.6~約5.0の間のpH範囲を含む];
- それにより、免疫グロブリンの溶液を形成すること
を含む。
【0017】
好ましくは、条件は、約5mS/cm~約12mS/cm、好ましくは8mS/cm~約12mS/cmの導電率も含む。
【0018】
第2の態様において、本発明は、免疫グロブリンの精製のための方法を提供し、該方法は:
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために、約4.6~約5.0の間のpH範囲を含む条件下で中鎖脂肪酸と接触させること、
- それにより、免疫グロブリンを含む可溶性タンパク質含有成分と、アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分とを含む懸濁液を形成すること;
- 可溶性タンパク質含有成分を不溶性タンパク質含有成分から分離して、精製された免疫グロブリンの溶液を得ること
を含む。
【0019】
不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は、好ましくは懸濁液を連続的抽出ろ過にかけることを含む。好ましくは、不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は:
- 第1の保持液及び第一のろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に懸濁液を供給すること;
- 第1のろ液を回収すること
を含む。
【0020】
不溶性タンパク質含有成分を含む第1の保持液は、典型的にはアルブミンが濃縮されており、そして可溶性タンパク質含有成分を含む第1のろ液は、免疫グロブリンが濃縮されている。
【0021】
免疫グロブリンが濃縮された第1のろ液を、さらなる処理の前に濃縮工程にかけてもよい。濃縮工程は連続的濃縮プロセスを含み得、それにより、免疫グロブリンが濃縮された第2の保持液と;免疫グロブリンが枯渇した第2のろ液とを生じるように適合された、クロスフローフィルター要素又はTFFを含む第2のろ過ユニット中に、第1のろ液が供給される。場合により、免疫グロブリンが枯渇した第2のろ液は、第1のタンク中に流して戻されてもよく、かつ/又は免疫グロブリンが濃縮された第2の保持液は、第2のタンク中に流して戻されてもよい。
【0022】
当然のことながら、免疫グロブリンが濃縮された溶液は、本明細書においてさらに記載されるような標準的な技術を使用してさらなる精製にかけられてもよい。
【0023】
好ましい実施形態において、免疫グロブリンの精製のための方法が提供され、該方法は:
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために:約4.6~約5.0の間のpH範囲、及び約8mS/cm~約12mS/cmの間の導電率を含む条件下で中鎖脂肪酸と接触させること、
- それにより、免疫グロブリンを含む可溶性タンパク質含有成分と、アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分とを含む懸濁液を形成すること;
- 可溶性タンパク質含有成分を不溶性タンパク質含有成分から分離して、精製された免疫グロブリンの溶液を得ること
を含み、
- ここで場合により、不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は、第1の保持液及び第1のろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に該懸濁液を供給し、そして第1のろ液を回収することを含む。
【0024】
血液由来血漿のサンプルのpHは、例えば、濃酸(例えば酢酸)を加えて、又はpHをさらに調整する必要がある場合には酸と塩基(例えば、NaOH)との組み合わせを用いて、直接かつ実質的にサンプルを希釈することなく調整され得る。同様に、血液由来血漿の導電率は、サンプルを実質的に希釈することなく直接調整され得る。
【0025】
第3の態様において、血漿から免疫グロブリンを精製するための方法が提供され、該方法は:
a) 第1のタンクにおいて:血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために、約4.6~約5.0の間のpH範囲及び場合により約8mS/cm~約12mS/cmの間の導電率を含む条件下で、中鎖脂肪酸と混合して、それにより可溶性免疫グロブリン及び不溶性アルブミンを含む懸濁液を形成すること;
b) 不溶性アルブミンを含む第1の保持液と、可溶性免疫グロブリンを含む第一のろ液とを生じるように適合された動的フィルター要素を含む第1のろ過ユニット中に、該懸濁液を供給すること;
c) 場合により、第1のタンク中に第1の保持液を流すことにより、第1のタンク中の懸濁液を希釈すること;
d) 第2のタンクにおいて第1のろ液を回収すること、並びに
e) 場合により、第1のろ液を濃縮すること
を含む。
【0026】
従って、第4の態様において、本発明は、免疫グロブリンの溶液及びアルブミンの沈殿物を得るための方法を提供し、該方法は:
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするための条件下で中鎖脂肪酸と接触させること、
- [ここで、条件は約4.2~約5.0の間のpH範囲を含む];
- それにより、免疫グロブリンの溶液及びアルブミンの沈殿物を形成すること
を含む。
【0027】
好ましくは、条件は約5mS/cm~約12mS/cm、好ましくは8mS/cm~約12mS/cmの導電率も含む。より好ましくは、血液由来血漿が希釈される場合、導電率は、5mS/cmに等しいか又はそれ以上であるが、12mS/cm未満であるか又は約12mS/cm未満である。血液由来血漿が希釈されない場合、導電率は、8mS/cmに等しいか又はそれ以上であるが、12mS/cm未満又は約12mS/cm未満である。
【0028】
第5の態様において、本発明は、免疫グロブリン及びアルブミンの精製のための方法を提供し、該方法は:
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために約4.2~約5.0の間のpH範囲を含む条件下で、中鎖脂肪酸と接触させること、
- それにより、免疫グロブリンを含む可溶性タンパク質含有成分と、アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分とを含む懸濁液を形成すること;
- 不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離して、精製された免疫グロブリンの溶液とアルブミンを含む懸濁液とを得ること
を含む。
【0029】
不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は、好ましくは該懸濁液を連続的抽出ろ過にかけることを含む。好ましくは、不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は:
- 第1の保持液及び第1のろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に該懸濁液を供給すること;
- 第1のろ液及び第1の保持液を回収すること
を含む。
【0030】
不溶性タンパク質含有成分を含む第1の保持液は、典型的にはアルブミンが濃縮されており、そして可溶性タンパク質含有成分を含む第1のろ液は、免疫グロブリンが濃縮されている。
【0031】
免疫グロブリンが濃縮された第1のろ液を、さらなる処理の前に濃縮工程にかけてもよい。濃縮工程は連続的濃縮プロセスを含み得、それにより、第1のろ液は、免疫グロブリンが濃縮された第2の保持液;及び免疫グロブリンが枯渇した第2のろ液を生じるように適合された、クロスフローフィルター要素又はTFFを含む第2のろ過ユニット中に供給される。場合により、免疫グロブリンが枯渇した第2のろ液は、第1のタンク中に流して戻されてもよく、かつ/又は免疫グロブリンが濃縮された第2の保持液は、第2のタンク中に流して戻されてもよい。
【0032】
当然のことながら、免疫グロブリンが濃縮された溶液は、本明細書においてさらに記載されるような、標準的技術を使用するさらなる精製にかけられてもよい。
【0033】
好ましい実施形態において、免疫グロブリン及びアルブミンの精製のための方法が提供され、該方法は:
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために、約4.2~約5.0の間のpH範囲、及び約8mS/cm~約12mS/cmの導電率を含む条件下で中鎖脂肪酸と接触させること、
- それにより、免疫グロブリンを含む可溶性タンパク質含有成分と、アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分とを含む懸濁液を形成すること;
- 不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離して、精製された免疫グロブリンの溶液、及びアルブミンを含む懸濁液を得ること;
を含み、
- ここで場合により、不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は、第1の保持液及び第1のろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に該懸濁液を供給し、そして第1のろ液を回収することを含む。
【0034】
血液由来血漿のサンプルのpHは、例えば、濃酸(例えば酢酸)を加えて、又はpHをさらに調整する必要がある場合には酸と塩基(例えば、NaOH)との組み合わせを用いて、直接かつ実質的にサンプルを希釈することなく調整され得る。同様に、血液由来血漿の導電率は、サンプルを実質的に希釈することなく直接調整され得る。
【0035】
第6の態様において、血漿から免疫グロブリン及びアルブミンを精製するための方法が提供され、該方法は:
a) 第1のタンクにおいて:血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために、約4.2~約5.0の間のpH範囲及び場合により約8mS/cm~約12mS/cmの間の導電率を含む条件下で、中鎖脂肪酸と混合して、それにより可溶性免疫グロブリン及び不溶性アルブミンを含む懸濁液を形成すること;
b) 不溶性アルブミンを含む第1の保持液と、可溶性免疫グロブリンを含む第一のろ液とを生じるように適合された動的フィルター要素を含む第1のろ過ユニット中に、該懸濁液を供給すること;
c) 場合により、第1のタンク中に第1の保持液を流すことにより、第1のタンク中の懸濁液を希釈すること;
d) 第2のタンクにおいて第1のろ液を回収すること、並びに
e) 場合により、第1のろ液を濃縮すること
を含む。
【0036】
従って、第7の態様において、本発明は、アルブミンの沈殿物を得るための方法を提供し、該方法は:
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするための条件下で中鎖脂肪酸と接触させること、
- [ここで、条件は、約4.15~約4.25の間のpH範囲を含む];
- それにより、アルブミンを沈殿させること
を含む。
【0037】
好ましくは、条件は、約5mS/cm~約12mS/cm、好ましくは8mS/cm~約12mS/cmの導電率も含む。より好ましくは、血液由来血漿が希釈される場合、導電率は5mS/cmに等しいか又は5mS/cmより大きいが、12mS/cmより小さいか又は約12mS/cmより小さい。血液由来血漿が希釈されない場合、導電率は、8mS/cmに等しいか又は8mS/cmより大きいが、12mS/cmより小さいか又は約12mS/cmより小さい。
【0038】
第8の態様において、本発明は、アルブミンの精製のための方法を提供し、該方法は:
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために約4.15~約4.25の間のpH範囲を含む条件下で、中鎖脂肪酸と接触させること、
- それにより、免疫グロブリンを含む可溶性タンパク質含有成分と、アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分とを含む懸濁液を形成すること;
- 不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離して、アルブミンを含む沈殿物又は懸濁液を得ること
を含む。
【0039】
不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は、好ましくは、該懸濁液を連続的抽出ろ過にかけることを含む。好ましくは、不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は:
- 第1の保持液及び第1のろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に該懸濁液を供給すること;
- 第1の保持液を回収すること
を含む。
【0040】
不溶性タンパク質含有成分を含む第1の保持液は、典型的にはアルブミンが濃縮され、そして可溶性タンパク質含有成分を含む第1のろ液は、免疫グロブリンが濃縮される。
【0041】
当然のことながら、アルブミンが濃縮された第1の保持液を、本明細書においてさらに記載されるような標準的な技術を使用するさらなる精製にかけてもよい。
【0042】
好ましい実施形態において、アルブミンの精製のための方法が提供され、該方法は:
- 血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために:約4.15~約4.25の間のpH範囲、及び約8mS/cm~約12mS/cmの導電率を含む条件下で中鎖脂肪酸と接触させること、
- それにより、免疫グロブリンを含む可溶性タンパク質含有成分と、アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分とを含む懸濁液を形成すること;
- 不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離して、アルブミンを含む懸濁液を得ること;
を含み、
- ここで場合により、不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程は、第1の保持液及び第1のろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に該懸濁液を供給すること、及び第1の保持液を回収することを含む。
【0043】
血液由来血漿のサンプルのpHは、直接、かつサンプルを実質的に希釈することなく、例えば、濃酸(例えば、酢酸)を加えて、又はさらにpHを調整することが必要な場合は、酸及び塩基(例えば、NaOH)の組み合わせを加えて調整され得る。同様に、血液由来血漿の導電率は、サンプルを実質的に希釈することなく直接調整され得る。
【0044】
第9の態様において、血漿からアルブミンを精製するための方法が提供され、該方法は:
a) 第1のタンクにおいて:血液由来血漿のサンプルを、該サンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にするために、約4.15~約4.25の間のpH範囲及び場合により約8mS/cm~約12mS/cmの間の導電率を含む条件下で、中鎖脂肪酸と混合して、それにより可溶性免疫グロブリン及び不溶性アルブミンを含む懸濁液を形成すること;
b) 不溶性アルブミンを含む第1の保持液と、可溶性免疫グロブリンを含む第一のろ液とを生じるように適合された動的フィルター要素を含む第1のろ過ユニット中に、該懸濁液を供給すること;
c) 場合により、第1のタンク中に第1の保持液を流すことにより、第1のタンク中の懸濁液を希釈すること;
d) 第1の保持液を回収すること
を含む。
【0045】
任意の態様において、第1のタンクにおける残留懸濁液又は第1の保持液は中鎖脂肪酸と複合体化した不溶性アルブミンを含有する。アルブミンと中鎖脂肪酸との間の結合を破壊するために、残留懸濁液又は第1の保持液のpHは、6.4~6.7、好ましくは6.8~7.2に調整され得る。一実施形態において、pHは、1M水酸化ナトリウムを用いて調整され得る。場合により、次いで第1の保持液は、可溶化アルブミンのpHが安定するまで(典型的には約30~60分)混合される。次いでこの溶液を、アルブミンが枯渇した保持液及びアルブミンが濃縮されたろ液を生じるように動的フィルター要素を含むさらなるろ過ユニット(例えば、さらなるろ過ユニット、例えば
図16に示される5と等価なさらなるろ過ユニットを含む第2のシステム)に供給してもよい。
【0046】
一実施形態において、次いでアルブミンが濃縮されたろ液を、好ましくはTFF膜を使用して、タンパク質1Lあたり20~45g/Lまで、又は約20~45g/Lまで連続的に濃縮し、濃縮されたアルブミン溶液を形成する(例えば、さらなるろ過ユニット、例えば
図16に示される8と等価なさらなるろ過ユニットを含む第2のシステム)。
【0047】
次いで、濃縮されたアルブミン溶液を、60~65℃の範囲で、典型的には90分の期間にわたって加熱し得る。いずれの理論にも拘束されないが、アルブミン以外の様々なタンパク質はこの段階で変性すると考えられる。
【0048】
濃縮されたアルブミン溶液を加熱した後、溶液のpHは、典型的には1M塩酸を用いて4.20に又は約4.20に調整され得る。同時に、濃縮されたアルブミン溶液は4℃に冷却されてもよく、それにより、上述の加熱工程の間に変性したタンパク質の沈殿が形成される。次いで沈殿物をろ過により除去し得、それにより、ろ液は精製されたアルブミンを含む(典型的には、総タンパク質の95%、96%、97%、又は98%に等しいか又はそれより高いアルブミン純度で、かつ85%、86%、87%、88%、89%又は90%に等しいか又はそれより高いアルブミン収率)。
【0049】
本発明の任意の態様において、可溶性タンパク質(免疫グロブリン)が濃縮されたろ液(透過液)を生じるように適合された、第1のろ過ユニットにおける動的フィルター要素は、動的クロスフローフィルター要素である。
【0050】
本発明の任意の態様において、免疫グロブリンが濃縮された保持液を生じるように適合された、第2のろ過ユニットにおける動的フィルター要素は、動的クロスフローフィルター要素である。
【0051】
本発明の任意の態様において、アルブミンが濃縮されたろ液を生じるように適合されたさらなるろ過ユニットにおける動的フィルター要素は、動的クロスフローフィルター要素である。
【0052】
好ましい実施形態において、動的クロスフローフィルター要素は、回転クロスフローフィルター要素である。より好ましくは、回転クロスフローフィルター要素は、フィルターディスクを含む。通常、フィルターディスクはシャフト部材に取り付けられる。一実施形態において、回転クロスフローフィルター要素は、少なくとも1つのフィルターディスク及び少なくとも1つのシャフト部材を含む。
【0053】
本発明の任意の態様の好ましい実施形態によれば、フィルターディスク膜はセラミック膜である。より好ましくは、セラミック膜は、5nmに等しいか又は5nmより大きく、2μmに等しいか又は2μmより小さい範囲の孔径を有する。特定の実施形態において、セラミック膜は、約0.2μm~2μmの孔径を有する。特定の実施形態において、セラミックフィルター膜は、5nmに等しいか又は5nmより大きく、200nm(0.2μm)に等しいか又は200nm(0.2μm)より小さい範囲の平均孔径を有する。特定の実施形態において、セラミックフィルター膜は、50nmに等しいか又は50nmより大きく、100nmに等しいか又は100nmより小さい範囲の平均孔径を有する。このようなフィルターディスクは、Kerafol及びFlowserveにより供給される。
【0054】
当然のことながら、血液由来血漿のサンプルは、血液、好ましくはヒト血液に由来する任意の血漿サンプルを含み得る。特定の実施形態において、血液由来血漿のサンプルは、新鮮な血漿、脱クリオ(cryo-poor)血漿又はクリオリッチ(cryo-rich)血漿を含む。血漿は、多数の提供及び/又は被験体から得られ得、そしてプールされ得る。血漿は過免疫血漿であってもよい。
【0055】
好ましくは、血漿のサンプルはろ過助剤を含まず、かつ/又はアルコールもしくは他の分画プロセスにかけられていない。
【0056】
第1、第2又は第3の態様のいずれにおいても、血漿サンプルのpHは、中鎖脂肪酸との接触及び/又は混合の前に、約4.6~約5.0のpH範囲に調整される。例えば、血漿サンプルのpHは、pH 約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0に調整され得る。血漿サンプルのpHは、pH4.6、pH4.7、pH4.8、pH4.9又はpH5.0に調整され得る。
【0057】
第4、第5又は第6の態様のいずれにおいても、血漿サンプルのpHは、中鎖脂肪酸との接触及び/又は混合の前に、約4.2~約5.0のpH範囲に調整される。例えば、血漿サンプルのpHは、pH 約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9又は約5.0に調整され得る。血漿サンプルのpHは、pH4.2、pH4.3、pH4.4、pH4.5、pH4.6、pH4.7、pH4.8、pH4.9又はpH5.0に調整され得る。
【0058】
第7、第8又は第9の態様のいずれにおいても、血漿サンプルのpHは、中鎖脂肪酸との接触及び/又は混合の前に、約4.15~約4.25のpH範囲に調整される。例えば、血漿サンプルのpHは、pH 約4.15、約4.16、約4.17、約4.18、約4.19、約4.20、約4.21、約4.22、約4.23、約4.24又は約4.25に調整され得る。血漿サンプルのpHは、pH4.15、pH4.16、pH4.17、pH4.18、pH4.19、pH4.20、pH4.21、pH4.22、pH4.23、pH4.24又はpH4.25に調整され得る。
【0059】
任意の態様において、血漿サンプルのpHは、中鎖脂肪酸と接触させる前に血漿を実質的に希釈することなく調整され得る。このようなpH調整は、酢酸のような濃酸、又はpHをさらに調整する必要がある場合には酸と塩基(例えば、NaOH)との組み合わせを加えて達成され得る。必要な場合、結果として得られた溶液の導電率は、約8mS/cm~約12mS/cmの所望の導電率を達成するように調整される。
【0060】
本発明の任意の態様の特定の実施形態において、血漿サンプルは、中鎖脂肪酸と混合される工程の前に、緩衝液で希釈され得る。血漿の希釈は、約1:0.5、約1:0.75、約1:1、約1:1.25、約1:1.5、約1:1.75又は約1:2希釈であり得る。血漿が希釈される状況において、導電率は約5mS/cm~約12mS/cmであり得る。
【0061】
血漿が希釈される緩衝液は、血漿を希釈するために適した任意の緩衝液、例えば酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸ナトリウム)であり得る。酢酸塩緩衝液は、酢酸ナトリウム三水和物及び氷酢酸を含み得る。緩衝液の濃度は、60mM、80mM、100mM、又は0.22Mであり得、そしてpH 4.1又は約4.1;4.2又は約4.2;4.3又は約4.3;4.4又は約4.4;4.5又は約4.5;4.6又は4.6;4.7又は約4.7;4.8又は約4.8を有し得る。あるいは、リン酸塩-酢酸塩緩衝液が使用され得る。リン酸塩-酢酸塩緩衝液は、10mMリン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)及び10mM酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)を含み得る。この緩衝液のpHは約4.3~約4.4であり得る。得られた溶液の導電率を、約5~約12mS/cm、好ましくは約8~約12mS/cmの所望の導電率を達成するために調整する必要がある場合、これは、例えば、より濃縮された酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸ナトリウム三水和物及び氷酢酸を含む3.5M酢酸塩緩衝液、pH5)を添加して達成することができる。
【0062】
典型的には、緩衝液は血漿を希釈するためだけではなく、血漿サンプルのpH調整を容易にするためにも使用される。従って、本発明の第1、第2又は第3の態様の任意の実施形態において、希釈された血漿サンプルのpHは、pH 約4.6~約5.0である。例えば、希釈された血漿サンプルのpHは、pH 約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0であり得る。希釈された血漿サンプルのpHは、pH4.6、pH4.7、pH4.8、pH4.9又はpH5.0であり得る。従って、本発明の第4、第5又は第6の態様の任意の実施形態において、希釈された血漿サンプルのpHは、pH約4.2~約5.0である。例えば、希釈された血漿サンプルのpHは、pH 約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9又は約5.0であり得る。希釈された血漿サンプルのpHは、pH4.2、pH4.3、pH4.4、pH4.5、pH4.6、pH4.7、pH4.8、pH4.9又はpH5.0であり得る。従って、本発明の第7、第8又は第9の態様の任意の実施形態において、希釈された血漿サンプルのpHは、pH約4.15~約4.25である。例えば、希釈された血漿サンプルのpHは、pH約4.15、約4.16、約4.17、約4.18、約4.19、約4.20、約4.21、約4.22、約4.23、約4.24又は約4.25であり得る。希釈された血漿サンプルのpHは、pH4.15、pH4.16、pH4.17、pH4.18、pH4.19、pH4.20、pH4.21、pH4.22、pH4.23、pH4.24又はpH4.25であり得る。
【0063】
任意の態様又は実施形態において、条件は、約5mS/cm~約12mS/cm、好ましくは8mS/cm~約12mS/cmの導電率を含み得る。より好ましくは、血液由来血漿が希釈される場合、導電率は、5mS/cmに等しいか又は5mS/cmより大きいが、12mS/cmより小さいか又は約12mS/cmより小さい。血液由来血漿が希釈されない場合、導電率は、8mS/cmに等しいか又は8mS/cmより大きいが、12mS/cmより小さいか又は約12mS/cmより小さい。
【0064】
例えば、希釈された血漿サンプル又は希釈されていない血漿サンプルの導電率は、約8~約12mS/cmである。そのようにして、任意の実施形態において、希釈された血漿サンプル又は希釈されていない血漿サンプルの導電率は、約8mS/cm、約9mS/cm、約10mS/cm、約11mS/cm又は約12mS/cmである。任意の実施形態において、希釈された血漿サンプル又は希釈されていない血漿サンプルの導電率は、8mS/cm、9mS/cm、10mS/cm、11mS/cm又は12mS/cmである。任意の実施形態において、希釈された血漿の導電率は、5mS/cm、6mS/cm又は7mS/cmに等しいか又はそれより大きい。典型的には、導電率は室温で測定され、好ましくは、導電率は18~25℃の間で測定される。
【0065】
任意の実施形態において、中鎖脂肪酸は、一般構造式CH3(CH2)nCOOH、[ここで、脂肪酸はC4~C10カルボン酸である]を含む脂肪酸から選択され得る。脂肪酸は、飽和でも不飽和でもよい。より好ましくは、脂肪酸は、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、オクテン酸、ペラルゴン酸(ノナン酸)、ノネン酸、又はカプリン酸(デカン酸)を含む。もっとも好ましくは、脂肪酸はカプリル酸(オクタン酸)である。また、本明細書において記載されるいずれかの脂肪酸の塩又はエステル(例えば、カプリラート)も試薬として検討される。
【0066】
第1、第2及び第3の態様の任意の実施形態において、血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.30g(血漿サンプル中)、総タンパク質1gあたり約0.35g、総タンパク質1gあたり約0.40g、総タンパク質1gあたり約0.45g又は総タンパク質1gあたり約0.50gである。好ましくは、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.300g、又は総タンパク質1gあたり約0.325g、又は総タンパク質1gあたり約0.350g、又は総タンパク質1gあたり約0.375g、又は総タンパク質1gあたり約0.400g、又は総タンパク質1gあたり約0.425g、又は総タンパク質1gあたり約0.450gである。より好ましくは、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり少なくとも約0.350gである。好ましくは、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.38gから総タンパク質1gあたり約0.50gの範囲である。より好ましくは、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.38g、総タンパク質1gあたり約0.39g、総タンパク質1gあたり約0.40g、総タンパク質1gあたり約0.41g、総タンパク質1gあたり約0.42g、総タンパク質1gあたり約0.43g、総タンパク質1gあたり約0.44g、総タンパク質1gあたり約0.45g、総タンパク質1gあたり約0.46g、総タンパク質1gあたり約0.47g、総タンパク質1gあたり約0.48g、総タンパク質1gあたり約0.49g、又は総タンパク質1gあたり約0.50gである。
【0067】
第1、第2及び第3の態様の任意の実施形態において、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり0.30g(血漿サンプル中)、総タンパク質1gあたり0.35g、総タンパク質1gあたり0.40g、総タンパク質1gあたり0.45g又は総タンパク質1gあたり0.50gである。好ましくは、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり0.300g、又は総タンパク質1gあたり0.325g、又は総タンパク質1gあたり 0.350g、又は総タンパク質1gあたり0.375g、又は総タンパク質1gあたり0.400g、又は総タンパク質1gあたり0.425g、又は総タンパク質1gあたり0.450gである。より好ましくは、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり少なくとも0.350gである。好ましくは、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり0.38gから総タンパク質1gあたり0.50gの範囲内である。より好ましくは、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり0.38g、総タンパク質1gあたり0.39g、総タンパク質1gあたり0.40g、総タンパク質1gあたり0.41g、総タンパク質1gあたり0.42g、総タンパク質1gあたり0.43g、総タンパク質1gあたり0.44g、総タンパク質1gあたり0.45g、総タンパク質1gあたり0.46g、総タンパク質1gあたり0.47g、総タンパク質1gあたり0.48g、総タンパク質1gあたり0.49g、又は総タンパク質1gあたり0.50gである。
【0068】
第4、第5及び第6の態様の任意の実施形態において、血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.35g(血漿サンプル中)、総タンパク質1gあたり約0.40g、総タンパク質1gあたり約0.45g、総タンパク質1gあたり約0.50g又は総タンパク質1gあたり約0.55gである。好ましくは、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.35g、総タンパク質1gあたり約0.36g、総タンパク質1gあたり0.37g、総タンパク質1gあたり0.38g、総タンパク質1gあたり約0.39g、総タンパク質1gあたり約0.40g、総タンパク質1gあたり約0.41g、総タンパク質1gあたり約0.42g、総タンパク質1gあたり約0.43g、総タンパク質1gあたり約0.44g、総タンパク質1gあたり約0.45g、総タンパク質1gあたり約0.46g、総タンパク質1gあたり約0.47g、総タンパク質1gあたり約0.48g、総タンパク質1gあたり約0.49g、総タンパク質1gあたり約0.50g、総タンパク質1gあたり約0.51g、総タンパク質1gあたり約0.52g、総タンパク質1gあたり約0.53g、総タンパク質1gあたり約0.54g、又は総タンパク質1gあたり約0.55gである。
【0069】
第4、第5及び第6の態様の任意の実施形態において、血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり0.36g、0.37g、総タンパク質1gあたり0.38g、総タンパク質1gあたり0.39g、総タンパク質1gあたり0.40g、総タンパク質1gあたり0.41g、総タンパク質1gあたり0.42g、総タンパク質1gあたり0.43g、総タンパク質1gあたり0.44g、総タンパク質1gあたり0.45g、総タンパク質1gあたり0.46g、総タンパク質1gあたり0.47g、総タンパク質1gあたり0.48g、総タンパク質1gあたり0.49g、総タンパク質1gあたり0.50g、総タンパク質1gあたり0.51g、総タンパク質1gあたり0.52g、総タンパク質1gあたり0.53g、総タンパク質1gあたり0.54g、又は総タンパク質1gあたり0.55gである。
【0070】
第7、第8又は第9の態様の任意の実施形態において、血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.35gに等しいか又は約0.35gより多い。好ましくは、血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.35gに等しいか又は約0.35gより多いが、総タンパク質1gあたり1.1gより少ないか又は総タンパク質1gあたり約1.1gより少ない。血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり約0.35g、総タンパク質1gあたり約0.36g、総タンパク質1gあたり約0.37g、総タンパク質1gあたり約0.38g、総タンパク質1gあたり約0.39g、総タンパク質1gあたり約0.40g、総タンパク質1gあたり約0.41g、総タンパク質1gあたり約0.42g、総タンパク質1gあたり約0.43g、総タンパク質1gあたり約0.44g、総タンパク質1gあたり約0.45g、総タンパク質1gあたり約0.46g、総タンパク質1gあたり約0.47g、総タンパク質1gあたり約0.48g、総タンパク質1gあたり約0.49g、総タンパク質1gあたり約0.50g、総タンパク質1gあたり約0.51g、総タンパク質1gあたり約0.52g、総タンパク質1gあたり約0.53g、総タンパク質1gあたり約0.54g、総タンパク質1gあたり約0.55g、総タンパク質1gあたり約0.56g、総タンパク質1gあたり約0.57g、総タンパク質1gあたり約0.58g、総タンパク質1gあたり約0.59g、総タンパク質1gあたり約0.60g、総タンパク質1gあたり約0.61g、総タンパク質1gあたり約0.62g、総タンパク質1gあたり約0.63g、総タンパク質1gあたり約0.64g、総タンパク質1gあたり約0.65g、総タンパク質1gあたり約0.66g、総タンパク質1gあたり約0.67g、総タンパク質1gあたり約0.68g、総タンパク質1gあたり約0.69g、総タンパク質1gあたり約0.70g、総タンパク質1gあたり約0.71g、総タンパク質1gあたり約0.72g、総タンパク質1gあたり約0.73g、総タンパク質1gあたり約0.74g、総タンパク質1gあたり約0.75g、総タンパク質1gあたり約0.76g、総タンパク質1gあたり約0.77g、総タンパク質1gあたり約0.78g、総タンパク質1gあたり約0.79g、総タンパク質1gあたり約0.80g、総タンパク質1gあたり約0.81g、総タンパク質1gあたり約0.82g、総タンパク質1gあたり約0.83g、総タンパク質1gあたり約0.84g、総タンパク質1gあたり約0.85g、総タンパク質1gあたり約0.86g、総タンパク質1gあたり約0.87g、総タンパク質1gあたり約0.88g、総タンパク質1gあたり約0.89g、総タンパク質1gあたり約0.90g、総タンパク質1gあたり約0.91g、総タンパク質1gあたり約0.92g、総タンパク質1gあたり約0.93g、総タンパク質1gあたり約0.94g、総タンパク質1gあたり約0.95g、総タンパク質1gあたり約0.96g、総タンパク質1gあたり約0.97g、総タンパク質1gあたり約0.98g、総タンパク質1gあたり約0.99g、総タンパク質1gあたり約1.0g、総タンパク質1gあたり約1.01g、総タンパク質1gあたり約1.02g、総タンパク質1gあたり約1.03g、総タンパク質1gあたり約1.04g、総タンパク質1gあたり約1.05g、総タンパク質1gあたり約1.06g、総タンパク質1gあたり約1.07g、総タンパク質1gあたり約1.08g、総タンパク質1gあたり約1.09g、又は総タンパク質1gあたり約1.1gであり得る。
【0071】
第4、第5及び第6の態様の任意の実施形態において、血漿サンプルと混合される脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)の量は、総タンパク質1gあたり0.35g、総タンパク質1gあたり0.36g、総タンパク質1gあたり0.37g、総タンパク質1gあたり0.38g、総タンパク質1gあたり0.39g、総タンパク質1gあたり0.40g、総タンパク質1gあたり0.41g、総タンパク質1gあたり0.42g、総タンパク質1gあたり0.43g、総タンパク質1gあたり0.44g、総タンパク質1gあたり0.45g、総タンパク質1gあたり0.46g、総タンパク質1gあたり0.47g、総タンパク質1gあたり0.48g、総タンパク質1gあたり0.49g、総タンパク質1gあたり0.50g、総タンパク質1gあたり0.51g、総タンパク質1gあたり0.52g、総タンパク質1gあたり0.53g、総タンパク質1gあたり0.54g、総タンパク質1gあたり0.55g、総タンパク質1gあたり0.56g、総タンパク質1gあたり0.57g、総タンパク質1gあたり0.58g、総タンパク質1gあたり0.59g、総タンパク質1gあたり0.60g、総タンパク質1gあたり0.61g、総タンパク質1gあたり0.62g、総タンパク質1gあたり0.63g、総タンパク質1gあたり0.64g、総タンパク質1gあたり0.65g、総タンパク質1gあたり0.66g、総タンパク質1gあたり0.67g、総タンパク質1gあたり0.68g、総タンパク質1gあたり0.69g、総タンパク質1gあたり0.70g、総タンパク質1gあたり0.71g、総タンパク質1gあたり0.72g、総タンパク質1gあたり0.73g、総タンパク質1gあたり0.74g、総タンパク質1gあたり0.75g、総タンパク質1gあたり0.76g、総タンパク質1gあたり0.77g、総タンパク質1gあたり0.78g、総タンパク質1gあたり0.79g、総タンパク質1gあたり0.80g、総タンパク質1gあたり0.81g、総タンパク質1gあたり0.82g、総タンパク質1gあたり0.83g、総タンパク質1gあたり0.84g、総タンパク質1gあたり0.85g、総タンパク質1gあたり0.86g、総タンパク質1gあたり0.87g、総タンパク質1gあたり0.88g、総タンパク質1gあたり0.89g、総タンパク質1gあたり0.90g、総タンパク質1gあたり0.91g、総タンパク質1gあたり0.92g、総タンパク質1gあたり0.93g、総タンパク質1gあたり0.94g、総タンパク質1gあたり0.95g、総タンパク質1gあたり0.96g、総タンパク質1gあたり0.97g、総タンパク質1gあたり0.98g、総タンパク質1gあたり0.99g、総タンパク質1gあたり1.0g、総タンパク質1gあたり1.01g、総タンパク質1gあたり1.02g、総タンパク質1gあたり1.03g、総タンパク質1gあたり1.04g、総タンパク質1gあたり1.05g、総タンパク質1gあたり1.06g、総タンパク質1gあたり1.07g、総タンパク質1gあたり1.08g、総タンパク質1gあたり1.09g、又は総タンパク質1gあたり1.1gである。
【0072】
好ましい実施形態において、血漿サンプルを中鎖脂肪酸と接触させる工程は、血漿サンプル及び脂肪酸を混合して、中鎖脂肪酸及び血漿サンプルの均一なエマルションを得ることを含む。好ましい実施形態において、混合は、均一なエマルションの形成を可能にするように激しい混合である。
【0073】
好ましくは、血漿サンプル及び中鎖脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)は、少なくとも約10分、少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約25分、少なくとも約30分、少なくとも約35分、少なくとも約40分、少なくとも約45分、又は少なくとも約50分もしくはそれ以上の期間の間混合される。
【0074】
好ましくは、混合する工程の後、可溶性タンパク質含有成分(可溶性免疫グロブリン)を不溶性タンパク質含有成分(不溶性アルブミン)から分離する工程の前にインキュベーション期間がある。インキュベーション期間は、好ましくは少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約40分、少なくとも約50分、少なくとも約60分、少なくとも約70分、少なくとも約80分、少なくとも約90分、少なくとも約100分、少なくとも約110分、少なくとも約120分、少なくとも約130分、少なくとも約140分、少なくとも約150分又はそれ以上である。
【0075】
本発明の任意の態様の任意の実施形態において、別に特定されていなければ、方法の工程は、約18℃~約37℃の間、好ましくは約18℃~約24℃の間の温度で行われる。任意の実施形態において、温度は、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、又は約24℃である。任意の実施形態において、温度は18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、又は24℃である。
【0076】
本発明のいずれかの態様に従って精製された免疫グロブリンは、好ましくは免疫グロブリンG(IgG)、好ましくはヒト免疫グロブリンG(IgG)を含む。免疫グロブリンは、IgGサブクラス IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のいずれか1つを含み得、好ましくはここで、IgGサブクラスの相対分布は類似しているか、又は血漿において典型的に観察されるIgGサブクラスの分布と実質的に同じである。場合により、IgG1は、その組成中に総免疫グロブリンの約60%~約70%の量で存在し、IgG2は総免疫グロブリンの約25%~約35%で存在し、IgG3は総免疫グロブリンの約2%~約3%で存在し、そしてIgG4は総免疫グロブリンの約0.5%~約1.5%で存在する。
【0077】
本発明の任意の態様の任意の実施形態において、免疫グロブリン溶液、又は濃縮された免疫グロブリンは、免疫グロブリンをさらに精製するためにさらなる処理にかけられる。好ましくは、さらなる処理は、連続的フィルター抽出のさらなる工程を含まない。
【0078】
特定の実施形態において、免疫グロブリンは、低pH処理、クロマトグラフィー工程(アニオン交換クロマトグラフィー及び/又はイムノアフィニティクロマトグラフィーを含む)、ウイルスろ過及び不活化工程、濃縮並びに最終生成物を例えばヒト身体に投与することができるような製剤化のようなさらなる処理にかけられる。最終製品は、免疫状態、特定の自己免疫疾患及び特定の神経性疾患の処置において使用され得る。これらの状態としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体症候、免疫性血小板減少症(ITP)、川崎病、ギラン・バレー症候群(GBS)、多発性硬化症(MS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、重症筋無力症(MG)、水疱症、強皮症、皮膚筋炎、多発性筋炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群に関連するアルツハイマー病、脳アミロイド血管症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症又は血管性認知症が挙げられる。さらに、最終IVIg及びSCIg製品は、細胞及び臓器移植のような他の医学的手技において使用され得る。
【0079】
本発明の任意の態様の任意の実施形態において、精製された免疫グロブリン溶液は、以下の不純物の1つ又はそれ以上を含有する:IgA、IgM、アルブミン、α(アルファ)-2マクログロブリン、α(アルファ)-1アンチトリプシン、脂質、及びリポタンパク質。
【0080】
任意の態様において、懸濁液(すなわち、血漿サンプルを中鎖脂肪酸と接触させることから得られた)の不溶性タンパク質含有成分は、不溶性タンパク質含有成分から可溶性タンパク質含有成分を分離する工程の後に保持される。
【0081】
当然のことながら、その後不溶性タンパク質含有成分を、例えば本明細書に記載されるように、アルブミンの精製されたフラクションを得る目的のために使用することができる。
【0082】
例えば、本発明の第3、第6又は第9の態様の状況において、血漿と中鎖脂肪酸とを混合することから得られた懸濁液を、第1のろ過ユニットを通して供給したら、任意の残留懸濁液、及び/又は第1の保持液を、精製されたアルブミンを得るためにさらに処理することができる。
【0083】
したがって、本発明の任意の態様において、方法は:
a) アルブミンを含む不溶性タンパク質含有成分のpHを、約6.4~約7.2(好ましくは約6.8~約7.2)の間のpHに調整して、可溶化アルブミンを得ること;
b) 場合により、可溶化アルブミンをさらなる処理工程にかけて、それから不純物を除去すること;
c) 可溶化アルブミンから精製されたアルブミンを回収すること
をさらに含む。
【0084】
本発明の第3、第6及び第9の態様の状況において、不溶性アルブミンは、第1のタンク中に残っている残留不溶性タンパク質であり得、かつ/又は第1の保持液をさらに含み得る。
【0085】
不溶性タンパク質含有成分のpHの調整は、不溶性タンパク質含有成分を実質的に希釈することなく直接行われ得る。このようなpH調整は、酢酸のような濃酸、又はpHをさらに調整する必要がある場合には酸と塩基(例えば、NaOH)との組み合わせを加えることにより達成され得る。例えば、不溶性タンパク質含有成分(例えば、第1のタンク中の残留懸濁液)は、1M水酸化ナトリウム又はリン酸塩緩衝液(pH7.1~7.4)を用いて6.4~7.2(好ましくは6.8~7.2)にpH調整され得る。また、水酸化ナトリウムとリン酸塩緩衝液との0.12Mでの組み合わせも企図される。必要な場合、得られた溶液の導電率は、約8mS/cm~約15mS/cmの所望の導電率を達成するために調整される。
【0086】
場合により、不溶性タンパク質含有成分のpHを調整することは、最初に不溶性タンパク質含有成分(不溶性アルブミン)を、7.1~7.4の間のpH及び場合により約8~約15mS/cmの導電率を有する緩衝液と接触させてさらなる懸濁液を形成すること、及びこのさらなる懸濁液のpHを、少なくとも約6.4、好ましくは中性、より好ましくは約6.4~約7.2、又は約6.4~約6.7、又は約6.8~約7.2の間のpHに調整し、それにより可溶化されたアルブミンを得ることを含む。
【0087】
アルブミンから脂肪酸を遊離させ、それによりアルブミンを可溶性にするようにアルブミンと中鎖脂肪酸との間の結合を破壊することができるいずれの緩衝液も、この工程における使用に適している。例えば、緩衝液は、およそpH7及び導電率約8~約15mS/cmを有し得る。この工程は、懸濁液を含有するタンクに緩衝液を加え、そしてpHが約7、好ましくは約7.2(特に、少なくとも約6.4、より好ましくは約6.4~約6.7の間、約6.4~約7.2の間、最も好ましくは約6.8~約7.2の間)に変化するまで撹拌する(例えば、5分間)ことにより行われ得る。適切な緩衝液の例はリン酸塩緩衝液である。リン酸塩緩衝液は、NaH2PO4.2H2O及びNaH2PO4.12H2Oを含み得る。緩衝液は濃度0.12M、pH7.3±0.2を有し得る。あるいは、pH調整は、上記のような、NaOHのような塩基を使用して直接行われ得る。
【0088】
可溶化アルブミンは、不純物を除去するためにさらなる処理工程にかけられてもよい。
【0089】
本発明の任意の態様の一実施形態において、可溶化アルブミンのさらなる処理は:
- アルブミンが枯渇した保持液及びアルブミンが濃縮されたろ液を生じるように適合された動的フィルター要素を含むろ過ユニット中に、可溶化アルブミンを供給すること;
- アルブミンが濃縮されたろ液を回収すること
含む。
【0090】
アルブミンが濃縮されたろ液を、場合により、さらなる処理の前に濃縮工程にかけてもよい。濃縮工程は、連続的濃縮プロセスを含んでいてもよく、それによりろ液は、アルブミンが濃縮された保持液と;アルブミンが枯渇したろ液とを生じるように適合されたクロスフローフィルター要素を含む第2のろ過ユニット中に供給される。
【0091】
本発明のこの実施形態に従って、可溶化アルブミンのさらなる処理のための方法は、従って:
d) 第1のタンクに可溶化アルブミンを供給すること:
e) 可溶化アルブミンの溶液を、アルブミンが枯渇した保持液と可溶性アルブミンが濃縮されたろ液とを生じるように適合された動的フィルター要素を含む第1のろ過ユニット中に供給すること;
f) 場合により、第1のタンク中の溶液を、保持液を第1のタンク中に流すことにより希釈すること;
g) 第2のタンクにおいて、アルブミンが濃縮されたろ液を回収すること、及び
h) 場合によりろ液を濃縮すること
を含む。
【0092】
任意の実施形態において、ろ液を濃縮する工程h)は、アルブミンが濃縮された保持液及びアルブミンが枯渇したろ液を生じるように適合された動的フィルター要素又はTFFを含む第2のろ過ユニットにおいて、ろ液を連続的濃縮プロセスにかけることを含む。場合により、アルブミンが枯渇したろ液は、第1のタンク中に流して戻されてもよく、かつ/又はアルブミンが濃縮された保持液は、第2のタンク中に流して戻されてもよい。
【0093】
好ましくは、アルブミンが濃縮されたろ液(透過液)を生じるように適合された第1のろ過ユニットにおける動的フィルター要素は、動的クロスフローフィルター要素である。好ましくは、アルブミン溶液を濃縮し、そしてアルブミンが濃縮された保持液を生じるように適合された、第2のろ過ユニットにおける動的フィルター要素は、動的クロスフローフィルター要素又はTFFである。
【0094】
代替の実施形態において、アルブミンをさらに精製するために、可溶化アルブミンフラクションを、当該分野で一般的に知られるようなアルコール沈殿法及び/又はクロマトグラフィーにかけてもよい。アルブミン中に存在する混入物の性質に依存して、様々な精製スキームが採用され得る。例えば、アルブミンは、エタノール分画のような周知の分画プロセスにかけられて、上清I、上清II+III、上清-IV-1、上清-IV-4、又はフラクションVを生じ得る。アルブミンは、AlbuRx製造プロセスのとおりに、さらにpH調整され、限外ろ過/透析ろ過され、そして低温殺菌され得る。精製アルブミンを製造するための他の方法が周知であり、アルブミンをイオン交換クロマトグラフィーにかけて、続いてAlbumex製造プロセスにおいて行われたように、ゲルろ過クロマトグラフィー及び低温殺菌を行うことを含む。適切なアルブミン精製プロセスは、Matejtschuk、P.ら(2000) British Journal of Anaesthesia 85(6);887-95、及びAustralian Public Assessment Report for Albumin (human) (2017) Therapeutic Goods Administration、8-9頁(https://www.tga.gov.au/sites/default/files/auspar-albumin-human-170502.pdfでオンラインで入手可能)において考察される。
【0095】
本明細書において使用されるように、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「含む(comprise)」及びこの用語の変形、例えば「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised)」は、さらなる添加剤、成分、整数又は工程を排除することを意図されない。
【0096】
本発明のさらなる態様及び前の段落において記載される態様のさらなる実施形態は、例として示される以下の記載から、そして添付の図面を参照して明らかとなるだろう。
【0097】
図面の簡単な説明
以下の図面は必ずしも一定縮尺で描かれておらず、代わりに、様々な実施形態の原理を説明する際に通常は強調が置かれている。以下の記載において、本発明の様々な実施形態は、以下の図面を参照して記載される:
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】
図1: 血液由来血漿、及び本発明の方法に従って得られた精製された免疫グロブリンを含む清澄化ろ液におけるIgGサブクラスの分布。
【
図2】
図2: 血液由来血漿;希釈されたプールされた血漿;オクタン酸と0時間、1時間、2時間及び3時間(それぞれT0、T1、T2及びT3)インキュベーション;並びに本発明の方法に従って製造された精製免疫グロブリンを含むUF/DFろ液のプロテアーゼ組成。プロテアーゼレベルはnkat/Lとして示される。
【
図3】
図3: 血漿、及び本発明の方法に従って得られた精製免疫グロブリンを含む清澄化ろ液において検出された不純物。
【
図4】
図4: 血漿、及び本発明の方法に従って得られた精製免疫グロブリンを含む清澄化ろ液における、プレカリクレイン活性化因子(PKA)、第IX因子(FIX)及び第XI(a)因子(FXI(a))の活性(IU/mL)。
【
図5】
図5: 血液由来血漿、及び本発明の方法に従って得られた精製免疫グロブリンを含む清澄化ろ液におけるアルブミンの濃度(g/L)。
【
図6】
図6: 血漿、及び本発明の方法に従って得られた精製免疫グロブリンを含む清澄化ろ液のタンパク質組成。ガンマ-グロブリン、アルファ-/ベータ-グロブリン及びアルブミンの相対パーセンテージを示す。
【
図7】
図7: 一定のイオン強度で異なるオクタン酸量及び異なるpHでのIgG収量(血漿1Lあたりg)。
【
図8】
図8: 一定のイオン強度で異なるオクタン酸量及び異なるpHでのアルブミン収量(血漿1Lあたりg)。
【
図9】
図9: 様々なイオン強度で一定のpHでのIgG、アルブミン、IgA及びIgMの収量(血漿1Lあたりg)。
【
図10】
図10: 様々なpH及び様々なイオン強度で清澄化され濃縮されたオクタン酸ろ液のIgG収量(血漿1Lあたりg)。
【
図11】
図11: 様々なpH及び様々なイオン強度で清澄化され濃縮されたオクタン酸ろ液のアルブミン収量(血漿1Lあたりg)。
【
図12】
図12: 様々なpH及び様々なイオン強度で清澄化され濃縮されたオクタン酸ろ液のIgA収量(血漿1Lあたりg)。
【
図13】
図13: 様々なpH及び様々なイオン強度で清澄化され濃縮されたオクタン酸ろ液のIgM収量(血漿1Lあたりg)。
【
図15】
図15: 熱処理されたアルブミンの不純物プロフィール(血漿1Lあたりg)。
【
図16】
図16: 連続的抽出ろ過システムの図式的フローチャート概観。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図16は、システム100の図式的フローチャート概観及び本発明の1つの好ましい実施形態に従う方法を説明する。血漿はタンク1に入れられ、pH及び導電率は、緩衝液/酸などを加えることにより調整される。その後、OAが加えられ、そしてOA懸濁液はタンク1においてインキュベートされる。OA懸濁液は、ポンプ2、及びパイプ12の流量調整弁3を介して第1のろ過ユニット5に供給され得、数種のポンプを使用することができる(例えば、ピストンポンプ;回転ポンプ;遠心ポンプ及び膜ポンプ)。第1のろ過ユニット5は、回転する中空シャフトを備え、これにフィルターディスクが取り付けられる(ろ液は中空シャフトの外側から内側に流れる)。第1のろ過ユニット5は、フィルターケークの厚さを一定に維持し、結果として一定のろ液流を達成するために、高さ調整可能なスクレーパーをさらに設置される。望ましいろ過圧が制御され、そして溢出弁により調節される(未ろ過懸濁液出口)。使用されるフィルターディスクは、セラミック膜、デプスフィルター層及び焼結多孔性金属フィルターディスクであり得る。第1のろ過ユニット5の容器が懸濁液で満たされたら、連続的圧力抽出及び分離が開始され得る。圧力ユニット/容器を備え得る第1のろ過ユニット5は、抽出効率及びろ過プロセスを同時に増大させるために適した内部設定及び条件を与えられる。抽出効率は、ミキサーを必要とすることなく、ユニット5における乱流混合により増加する。それにもかかわらず、乱流を生じることにより抽出プロセスを補助するために追加のミキサーを備えていてもよいということが予測され得る。さらに、本発明において開示されるより高い最終希釈倍率、例えば1:≧30もまた抽出効率を増加し、高いタンパク質(例えば、IgG)収量をもたらす。当然のことながら、任意の他のより高い最終希釈倍率(70より高い)も想定され得る。
【0100】
第1のろ液は、パイプ(又はチャネル)14に設置されている流量計6を通って流れ、そして第2のタンク7に集められる。未ろ過懸濁液(例えば、第1の保持液)は、タンク1中のパイプ13に設置された調節出口3を通って流れて戻る。第2のタンク7において規定された体積に達した場合、UF 8濃縮プロセスが、第2のろ過ユニットにおいて開始され得る。第2のタンク7中の第1のろ液は、パイプ15を通って限外ろ過(UF)システム8(例えば、TFF膜を使用するタンジェンシャルフローろ過(TFF))中に流れる。膜透過圧力は、透過液流量17がパイプ14における第1のろ液の流量と同じであるかほぼ同じになるように設定される。UFシステム8の透過液(又は第2のろ液)は、パイプ(又はライン又はチャネル)17を通って第1のタンク1に流れて戻り、一方でUF 8システムの保持液(又は第2の保持液)(=濃縮されたタンパク質)は、パイプ16を通って第2のタンク7に流れて戻る。
【0101】
本発明に従って、第1の処理ユニット5は、第1の保持液及び第1の透過液/ろ液を生じるために、第1の処理ユニット5の内容物の乱流混合のための1つ又はそれ以上の第1のフィルター要素を含む1つ又はそれ以上の回転式フィルターディスクを備える。第1の保持液は、チャネル13を通って制御弁3を介して第1のタンク1に送り返され得、一方で第1の透過液/ろ液は、別のチャネル14を介して第2のタンク7に供給され得る。第1のフィルター要素は、約5nm~5000nmの間、好ましくは20nm~100nmの間又はより好ましくは30nm~80nmの間の細孔直径を有するセラミック材料に基づくろ過膜であり得る。無機膜又は任意の他の適切な膜も、セラミックベースの膜と同様の効果をもたらし得ると予測され得る。第1のろ過ユニット5は、内部の圧力を調節するために、マノメーターのような圧力制御デバイス4を供給され得る。同様に、流量計6は、懸濁液又は溶液の流量を測定するために本発明のシステムに設置され得る。
【0102】
実施形態の詳細な説明
ここで本発明の特定の実施形態が詳細に言及される。本発明は、実施形態と併せて記載されるが、当然のことながら、本発明は、それらの実施形態に限定されるべきではない。反対に、本発明は、全ての代替、改変、及び等価物を網羅することを意図され、これらは特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に含まれ得る。
【0103】
当業者は、本明細書に記載されるものと類似するか又は等価な多くの方法及び材料を認識し、それらを本発明の実施において使用することができるだろう。本発明は、記載される方法及び材料にはいかになるようにも限定されない。当然のことながら、本明細書において開示され、そして定義される発明は、文章又は図面で言及されるか又はそれらから明らかである個々の特徴の2つ又はそれ以上の全ての代替の組み合わせに及ぶ。これらの異なる組み合わせは全て、本発明の様々な代替の態様を構成する。
【0104】
本明細書を解釈する目的のために、単数で使用される用語は複数も含み、そして逆もまた同様である。
【0105】
本発明は、免疫グロブリン、好ましくはIgGを血漿から効率的に精製するためのシステム及び方法に関する。本発明は、出発物質としての血漿の使用を有利に可能にし、そしてアルコールベースの沈殿方法を必要とすることなく、単一の工程で血漿からの免疫グロブリンの抽出を可能にする。
【0106】
本発明のさらなる利点は、出発血漿サンプルからアルブミンを同時に精製する能力であり、それにより、免疫グロブリン及びアルブミンの両方の実質的に純粋な調製物を、血漿から単一の沈殿及びろ過工程を介して迅速に得るための方法を提供する。
【0107】
本発明の方法のアプローチの特定の利益は、いずれのろ過助剤も存在しないことであり、このことは、プロテアーゼ活性がプロセスの早い段階で減少することを有利に確実にし、最大のタンパク質回収及び収量を確実にする。さらなる利点は、一部は、血漿の免疫グロブリン含有成分とアルブミン含有成分とを分離するために単一の連続的抽出ろ過方法を適用することから生じる。連続的抽出方法は、目的のタンパク質の損失を最小にする条件を使用して、例えば、不純物又は目的のものではないタンパク質を沈殿させるために必要な試薬の総量を減少させることにより、下流処理を容易にする。
【0108】
定義
用語「可溶性タンパク質含有成分」は、本発明の方法に従って、血液由来血漿のサンプルと中鎖脂肪酸との混合の後に生じる、水相の水溶性成分を指すことを意図される。典型的には、可溶性タンパク質含有成分は、免疫グロブリン、及び血漿と脂肪酸との混合の後も可溶性のままである他のタンパク質が非常に豊富である。
【0109】
用語「不溶性タンパク質含有成分」は、本発明の方法に従って、血液由来血漿のサンプルと中鎖脂肪酸とを混合した後に生じる固相の非水溶性成分を指すことを意図される。典型的には、不溶性タンパク質含有成分は、沈殿したタンパク質、主にアルブミンを含むが、血漿の脂肪酸との混合後に変性した他の混入タンパク質も含む。
【0110】
本発明の方法は、血液由来血漿のサンプルからのアルブミンの選択的沈殿を可能にする。好ましい実施形態において、沈殿は、サンプル中のアルブミンの少なくとも50%の沈殿を生じる。より好ましくは、サンプル中のアルブミンの少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又はそれ以上が沈殿する。
【0111】
「高収量」は、免疫グロブリンG又はアルブミン(さらには他のタンパク質及び免疫グロブリン)のような目的のタンパク質の収量が、可溶性又は不溶性タンパク質含有成分中のタンパク質の量の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは98%より多いということを意味する。
【0112】
サンプル中の免疫グロブリン及び/又はアルブミンの濃度は、当業者に公知の任意の手段により測定され得る。当然のことながら、免疫グロブリン又はアルブミンを測定するために使用される方法は、サンプルの性質に依存し得る。例えば、当然のことながら、サンプルがアルブミン含有沈殿物である場合、沈殿物(又はそのサンプル)を測定前に適切な緩衝液中に溶解する必要があるかもしれない。目的のタンパク質を測定するための適切なアッセイの例としては、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC;例えば、サイズ排除HPLC)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)及び定量的免疫比濁法が挙げられる。
【0113】
任意のサンプルのpH及び/又は導電率は、当該分野で公知の方法により測定され得る。典型的には、pH及び/又は導電率は室温で測定され、好ましくは、pH及び/又は導電率は18~25℃の間で測定される。導電率の測定のための単位は、ミリシーメンスパーセンチメートル(mS/cm)であり、そして標準的な導電率計を使用して測定され得る。溶液の導電率は、その中のイオンの濃度を変化させることにより変更され得る。例えば、所望の導電率を達成するために、溶液中の緩衝化剤の濃度及び/又は塩(例えば、NaCl又はKCl)の濃度を変更し得る。好ましくは、塩濃度は、以下の実施例又は本明細書中の他所に記載されるように、所望の導電率を達成するために改変される。
【0114】
パーセンテージ、pH、量又は時間又は他の参照について示される数値に関連して、「約」又は「およそ」により、特定される値の10%内の数値を含むことを意味する。
【0115】
大規模又は工業規模のプロセス又はシステム
本発明に関してより大きな規模又は工業規模は、ヒト血漿のような出発物質少なくとも200L、好ましくは少なくとも500L、なおより好ましくは少なくとも2000Lに基づく製造手順を表す。例えば、工業規模のタンパク質製造において使用される典型的な商業用血漿ドナープールサイズは、バッチあたり血漿2500Lから6000Lの範囲に及ぶ。本発明の特定の実施形態において、沈殿物は、血漿2500L~6000Lから得られる。いくつかの商業用製造プロセスは、血漿7500Lまで、10000Lまで、及び/又は15000Lまでを含むより大きな血漿ドナープールサイズも使用することが可能である。
【0116】
本発明の方法及びシステムはまた、より大きな工業規模適用のためだけでなく、スタンドアローンシステム及び/又はより小さな製造規模適用のための方法(出発物質が200L未満であり得る場合)としても使用され得る。
【0117】
出発物質
本発明の方法は、免疫グロブリン及びアルブミンの抽出のための出発物質として血液由来血漿を使用することを有利に可能にする。血漿は、新鮮な血漿、「通常」血漿、「過免疫」血漿、脱クリオ血漿(クリオ上清とも呼ばれる)又はクリオリッチ血漿であり得る。場合により、血漿は、C1阻害剤、PCC(濃縮プロトロンビン複合体)及び/又はAT-IIIのような成分を除去するために処理されている。血漿は、多数の輸血及び/又は個体から得られ得、そしてプールされ得る。
【0118】
用語「クリオ上清」(脱クリオ血漿、クリオプレシピテート枯渇血漿及び同様のものとも呼ばれる)は、クリオプレシピテートが除去された血漿(全血献血又は血漿交換のいずれかに由来)を指す。クリオ沈殿法(Cryoprecipitation)は、血漿タンパク質治療剤の大規模製造のために現在使用されている大部分の血漿タンパク質分画方法における最初の工程である。この方法は、一般的には、制御された条件下(例えば、6℃又はそれ以下)で解凍される凍結血漿をプールし、その後沈殿物をろ過又は遠心分離のいずれかで集めることを含む。当業者に「クリオ上清」として知られる上清画分は、通常は使用のために保持される。得られた脱クリオ血漿は、第VIII因子(FVIII)、フォン・ヴィルブランド因子(VWF)、第XIII因子(FXIII)、フィブロネクチン及びフィブリノーゲンの減少したレベルを有する。クリオ上清は、アルファ1-アンチトリプシン(AAT)、アポリポタンパク質A-I(APO)、アンチトロンビンIII(ATIII)、凝固因子(II、VII、IX及びX)を含むプロトロンビン複合体、アルブミン(ALB)及び免疫グロブリンG(IgG)のような免疫グロブリンを含むある範囲の治療用タンパク質を製造するために使用される共通原料を提供する。
【0119】
用語「クリオリッチ血漿」は、凍結され、その後解凍されたが、クリオプレシピテートが除去されていない血漿(全血献血又は血漿交換のいずれかに由来)を指す。
【0120】
血漿が収集場所からの輸送のために凍結された場合、凍結血漿は解凍され、次いで遠心分離前に貯蔵タンクに集められる。クリオプレシピテートは、連続的遠心分離により除去される。クリオ枯渇血漿は、ポンプでステンレス鋼分画タンク中に送られ得、そして工程内管理のためにサンプリングされ得る。
【0121】
血漿は、1より多くの個体からプールされても数百の個体からプールされても、又は単一の個体から得られても、過免疫血漿であってよい。例えば、感染に対する免疫応答を開始していた個体の血液、及び回復した個体(従ってその他は健常な個体)の血液から血漿を得てもよい。
【0122】
動的フィルター要素
本発明の任意の態様において、不溶性アルブミンから可溶性免疫グロブリンを分離するために適合された動的フィルター要素ろ過ユニットは、動的クロスフローフィルター要素である。好ましい実施形態において、動的クロスフローフィルター要素は、回転クロスフローフィルター要素である。より好ましくは、回転クロスフローフィルター要素は、フィルターディスクを含む。フィルターディスクは、通常はシャフト部材上に取り付けられる。一実施形態において、回転クロスフローフィルター要素は、少なくとも1つのフィルターディスク及び少なくとも1つのシャフト部材を含む。
【0123】
本発明の任意の態様の好ましい実施形態によれば、フィルターディスク膜はセラミック膜である。より好ましくは、セラミック膜は、5nmより大きいか又は5nmに等しい孔径から2μmより小さいか又は2μmに等しい孔径までの範囲の孔径を有する。特定の実施形態において、セラミック膜は約0.2μm~2μmの孔径を有する。特定の実施形態において、セラミックフィルター膜は、5nmより大きいか又は5nmに等しい平均孔径から、200nm(0.2μm)より小さいか又は200nm(0.2μm)に等しい平均孔径までの範囲の平均孔径を有する。特定の実施形態において、セラミックフィルター膜は、50nmより大きいか又は50nmに等しい平均孔径から、100nmより小さいか又は100nmに等しい平均孔径までの範囲の平均孔径を有する。このようなフィルターディスクはKerafol及びFlowserveにより供給される。
【0124】
当然のことながら、複数のフィルターディスク膜が、不溶性アルブミンから可溶性免疫グロブリンを分離するために適合された動的フィルター要素ろ過ユニットに含まれ得る。そのようにして、本発明の方法は、不溶性アルブミンから可溶性免疫グロブリンを分離するための1、2、3、4、5、6又はそれ以上のフィルターディスク膜の使用を企図する。複数のフィルターディスク膜は、同じか又は異なる孔径を有し得る。
【0125】
好ましい実施形態におけるろ過ユニットは圧力容器を含む。第1のタンクからの懸濁液は、入口ポートを介して圧力容器に連続的に供給され得る。容器中の懸濁液の一様な分布は、分配マニホールドを使用して達成され得る。それ故、特定の実施形態では、圧力容器は分配マニホールドを含む。いくつかの実施形態において、第1のろ過ユニットは、回転クロスフローフィルター要素を含む。好ましくは、フィルター要素は、少なくとも1つの中空中央収集シャフトに沿って等間隔を空けられた1つより多くのフィルターディスクを含む。フィルターディスクは、水平又は垂直のいずれに配置されてもよい。水平配向の場合、それらは垂直方向に配向された中空収集シャフトに沿って間隔を空けられる。収集シャフト及びディスクは回転可能である。次いで、圧力容器中の懸濁液は、通過してディスクの中空中央部分中に入るように回転フィルターディスクの外膜に浸透することが可能であり、次いでこれが中央収集シャフト中に導かれる。典型的には、次いでろ液(例えば、部分的に精製された免疫グロブリンを含む)は、フランジ付きポートを介して第1のろ過ユニットのシャフト部分から除かれ得る。圧力筐体に残っている保持液(不溶性成分を含む)は、出口ポートを介して容器から供給され得る。一般に、保持液は、懸濁液を希釈するために第1のタンクに再循環される。このようにして、第1のろ過ユニットからの保持液は、第1のタンク中の懸濁液を希釈するために利用され得る。
【0126】
回転ろ過のような動的クロスフローろ過は、最大のろ過効率をもたらす。クロスフロー効果(フィルター表面のタンジェンシャルフロー洗浄)は、フィルターディスクを回転させることにより生じ、従来の(静的)クロスフローろ過システムにおいて使用されるような固定膜を超えてポンプで大量供給することでは生じない。回転するフィルターディスクの表面に生じる極度のクロスフロー速度は、フィルター表面の高度に効率的な洗浄を確実にするが、従来のクロスフロー技術と比較して消費するエネルギー量は非常に低い。
【0127】
動的フィルター要素はまた、連続的濃縮プロセスを行うために使用され得る。このような動的フィルター要素は、典型的には1つ又はそれ以上の限外ろ過膜又は透析濾過膜を含む。
【0128】
連続的濃縮プロセスを行うためのクロスフローフィルター要素は、動的限外ろ過フィルターデバイスを含み得る。あるいは、このプロセスは、静的限外ろ過デバイス、例えば、タンジェンシャルフローろ過(TFF)を含む。
【0129】
本発明の好ましい実施形態において、濃縮プロセスを行うための動的クロスフローフィルター要素又は限外ろ過フィルターデバイスは、目的のタンパク質(例えば、本発明の第3の態様の工程e)の場合は免疫グロブリンG)の分子量より小さい分子量カットオフを有する膜を含む。分子カットオフは、目的のタンパク質の分子量の3分の1以下であり得る(例えば、約150kDaの分子量を有するタンパク質については、膜は約30~50kDaのカットオフを有し得る)。これらの実施形態において、膜カットオフは、濃縮プロセスの間目的のタンパク質を保持するように選択される。一般的な指針として、目的のタンパク質の分子量の3分の1以下の公称膜カットオフが、そのタンパク質が保持液中に保持されることを確実にするために選択され得る。
【0130】
1つの代替の実施形態において、濃縮プロセスを行うための動的クロスフローフィルター要素又は静的限外ろ過要素は、目的のタンパク質の分子量よりも大きい分子量カットオフを有する膜を含む。このような実施形態において、公称膜カットオフは、目的のタンパク質が膜を通り抜け、そして保持液ではなくろ液に集められることを確実にするように選択される。
【0131】
クロスフローフィルター要素が動的である実施形態において、好ましくは、この要素は、連続的濃縮プロセスを行うために適合された回転クロスフローフィルター要素である。
【0132】
さらなる好ましい実施形態によれば、連続的濃縮プロセスを行うためのろ過要素は、5nm~5000nmの間、好ましくは5nm~2000nmの間、5nm~1000nmの間、5nm~500nmの間、5nm~200nmの間、7nm~1000nmの間、より好ましくは7nm~500nmの間、なおより好ましくは7nm~100nmの間、最も好ましくは7nm~80nmの間の平均孔径を有するろ過膜を含む。当然のことながら、平均孔径は、上に示される範囲の他の組み合わせであってもよい。フィルター製造者はしばしば、公称又は平均孔径等級のような用語を商業用フィルターに割り当てており、これらは通常は実際の孔の幾何学的寸法ではなく粒子又は微生物についての特定の保持基準を満たすことを示す。
【0133】
一実施形態において、連続的濃縮プロセスを実行するろ過要素は、動的フローろ過又はTFF膜を使用するタンジェンシャルフローろ過(TFF)である。
【0134】
特定の実施形態において、連続的濃縮プロセスを実行するための回転クロスフローフィルター要素は、フィルターディスク(例えば、セラミックディスク)を含む。いくつかの実施形態において、フィルターディスクは、マイクロフィルターの平均孔径を有する膜を含む。他の実施形態において、フィルターディスクは、限外ろ過膜の平均孔径を有する膜を含む。さらなる実施形態において、フィルターディスクは、透析ろ過膜(diafilter)の平均孔径を有する膜を含む。一実施形態において、フィルターディスク膜の平均孔径は、5nmより大きいか又は5nmに等しい平均孔径から2μmより小さいか又は2μmに等しい平均孔径までの範囲にある。特定の実施形態において、フィルターディスク膜の平均孔径は、50nmより大きいか又は50nmに等しい平均孔径から500nm(すなわち、0.5μm)より小さいか又は500nmに等しい平均孔径までの範囲にある。いくつかの実施形態において、フィルターディスク膜は、50nmより大きいかもしくは50nmに等しい平均孔径から100nmより小さいかもしくは100nmに等しい平均孔径までの範囲、又は60nmより大きいかもしくは60nmに等しい平均孔径から90nmより小さいかもしくは90nmに等しい平均孔径までの範囲、又は60nmより大きいかもしくは60nmに等しい平均孔径から80nmより小さいかもしくは80nmに等しい平均孔径までの範囲にある平均孔径を有する。いくつかの実施形態において、フィルターディスク膜は、60nm又は80nmの平均孔径を有する。
【0135】
特に好ましい実施形態において、連続的濃縮プロセスを実行するための回転クロスフローフィルター要素は、限外ろ過及び/又は透析ろ過に適した孔径を有する複数のセラミックディスクを含む。例えば、要素は好ましくは、3nmの孔径を有する少なくとも1つのセラミック膜を含む。あるいは、要素は好ましくは、5nmの孔径を有する少なくとも1つのセラミック膜を含む。あるいは、要素は好ましくは、7nmの孔径を有する少なくとも1つのセラミック膜を含む。あるいは、要素は好ましくは、30nmの孔径を有する少なくとも1つのセラミック膜を含む。要素は、様々な孔径を有する複数のセラミックディスクを含み得、これらとしては、孔径が3nm及び5nmであるものが挙げられる。要素は、様々な孔径を有する複数のセラミックディスクを含み得、これらとしては、孔径が5nm及び7nmであるものが挙げられる。要素は、様々な孔径を有する複数のセラミックディスクを含み得、これらとしては、孔径が3nm及び30nmであるものが挙げられる。要素は、様々な孔径を有する複数のセラミックディスクを含み得、これらとしては、孔径が3nm、5nm、7nm及び30nmであるものが挙げられる。
【0136】
さらにさらなる好ましい実施形態によれば、連続的濃縮プロセスを実行するためのろ過要素は、ポリエーテルスルホン又は再生セルロースのようなポリマー膜の形態の膜を含む限外ろ過デバイスを含む。
【0137】
回転ろ過のような動的クロスフローろ過は、最大のろ過効率をもたらす。クロスフロー効果(フィルター表面のタンジェンシャルフロー洗浄)は、フィルターディスクを回転することにより生じ、従来の(静的)クロスフローろ過システムにおいて使用されるような固定膜を超えてポンプで大量供給することでは生じない。回転するフィルターディスクの表面に生じる極度のクロスフロー速度は、フィルター表面の高度に効率的な洗浄を確実にするが、従来のクロスフロー技術と比較して消費するエネルギー量は非常に低い。
【0138】
本発明の動的クロスフローろ過ユニット及びシステムにおいて、回転するセラミックフィルターディスクは、典型的には加圧筐体において組み立てられる。ディスクの設計は、内部の排水チャネルを示す。ろ液は、ディスクの外側から内側に輸送される。ディスクの回転は膜表面上にせん断力を生じる。この技術を用いて、フィルターケークの増加が避けられ、高いろ過流束を生じる。回転ろ過の主なパラメーターのいくつかは、セラミックフィルターディスクを回転させるための回転速度、固体含有量(ろ液の除去に起因する液体の濃縮)及び膜透過圧力である。膜透過圧力は、典型的には0.1~2.5bar、好ましくは0.2~2.4bar、より好ましくは0.4~2.0bar、0.5~1.8bar、0.6~1.6bar、0.6~1.5bar、0.7~1.5bar、最も好ましくは0.8~1.5barである。別の実施形態によれば、2barまで、好ましくは0.1~2.0barの間、又は約1.5bar、1.0bar又は0.5barの圧力がフィルターユニットにかけられる。
【0139】
温度はタンパク質溶液の粘性に効果を有し、従って、膜を用いたろ過の際の流束にも効果を有する。本発明の方法において使用しようとする出発懸濁液は、好ましくは0℃から、関心のあるタンパク質が変性する温度までの範囲内の温度を有する。温度は、典型的には約18℃から約40℃までの範囲内である。特定の実施形態において、温度は約18℃から約35℃までの範囲内である。1つの好ましい実施形態によれば、懸濁液タンク(すなわち、血漿サンプルと混合するための脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)を含むタンク)の温度は、約18℃~約40℃の間の温度である。より好ましくは、脂肪酸、好ましくはカプリル酸(オクタン酸)は、第2の懸濁液タンクにおいて約18℃~約24℃の間、場合により約21℃、約22℃又は約23℃の温度で血漿と混合される。
【0140】
さらなる好ましい実施形態によれば、フィルターユニットの温度は、好ましくは2℃と25℃との間、より好ましくは約18℃~約24℃に制御される。このような温度は、プロセスの間中、目的のタンパク質の生体反応性を維持しながら、最適な抽出プロセス及び分離プロセスを確実にする。
【0141】
ろ過は、本明細書において使用しようとする膜の材料に依存して、その膜が耐えることができるレベルと同じか又はそれより低い膜透過ろ過圧で、例えば、約0.2~約3barの圧力で行われる。膜透過圧力は、典型的には0.1~2.5bar、好ましくは0.2~2.4bar、より好ましくは0.4~2.0bar、0.5~1.8bar、0.6~1.6bar、0.6~1.5bar、0.7~1.5bar、最も好ましくは0.8~1.5barである。別の実施形態によれば、2barまでの圧力、好ましくは0.1~2.0barの間、又は約1.5bar、1.0barもしくは0.5barの圧力がろ過ユニットにかけられる。
【0142】
別の実施形態によれば、第1及び第2の懸濁液から不純物/沈殿物を分離するように適合されたろ過ユニットにおける連続的抽出プロセスは、懸濁液もしくは溶液がフィルターユニットに入る流量及び/もしくは滞留時間、並びに/又は不純物/沈殿物を含む保持液/ラフィネートの流量、並びに/又は目的のタンパク質が濃縮された第1の透過液/ろ液の流量を調節することによりさらに補助される。例えば、一実施形態において、圧力容器(ろ過プロセスユニット)に入る懸濁液又は溶液の直線速度は約0.27~1.66m/sであり得る。別の例において、不純物/沈殿物を含む保持液の直線速度は0.25~1.33m/sであり得る。別の例において、目的のタンパク質が濃縮された透過液ろ液の直線速度は0.03~0.33m/sであり得る。直線速度に断面積を乗じると体積流量が得られる。さらに、回転するフィルターディスクの速度の結果として、第1のプロセスユニットにおいて乱流が生じ得、ここで速度(接線速度と呼ばれることもある)は、約1~7m/sの間であり得る。本発明の一実施形態によれば、回転するディスクフィルターの速度は1~10m/sの間である。本発明の好ましい実施形態において、回転するディスクフィルターの速度は5~7m/sの間である。より好ましくは、回転するディスクフィルターの速度は、60ヘルツ(800rpm)で7m/sである。回転クロスフィルター要素の回転速度は、約600rpm(50Hz)と約1600rpm(100Hz)との間、好ましくは約800rpm(60Hz)と約1200rpm(80Hz)との間、好ましくは約800rpm(60Hz)、約1000rpm(70Hz)又は約1200rpm(80Hz)である。本明細書において使用されるように、Hzでの回転速度は、モーターの速度を指すことを意図される。これは、適切な較正曲線を使用してrpmでの速度と関連付けることができる。
【0143】
この方法は、出発沈殿物/材料(すなわち、血液由来血漿)からの目的のタンパク質の回収を最大にするために、連続的抽出及び分離プロセスが実現されることを可能にする。抽出プロセスの結果、ほとんど全ての目的のタンパク質が抽出され、そしてその後の段階で回収される。この方法はまた、液体又は希釈剤、例えば緩衝液又は水が閉鎖系で再循環されることを可能にし、それ故、設置面積(すなわち、大きなタンク体積)を減らすことができる一方で、プロセス全体を通して液体の量が維持される。
【0144】
なおさらなる実施形態において、本発明は、システム中に蓄積したかもしれない混入物を洗い流すために、動的クロスフローろ過と併せて逆流洗浄する工程を含む。典型的には、本発明の方法及びシステムは、逆流洗浄が起こる間はろ過が一時的に停止されるように(すなわち、供給ポンプが止められる)、一定間隔でろ過と逆流洗浄とを交互に行うことを含む。ここで液体のろ過システムへの流れは逆転する。
【0145】
当然のことながら、逆流洗浄の頻度、期間及び流量は、ろ過効率及び逆流洗浄が必要とされるまでのろ過の期間を最大にするために調整され得る。
【0146】
特定の好ましい実施形態において、逆流洗浄の頻度(及び結果としてろ過の期間)は、総タンパク質濃度又は出発物質有の不純物の数に基づいて決定される。結果として、当然のことながら、可溶化されたアルブミン調製物(比較的低い不純物)がろ過される、後のさらなる精製の工程と比較して、血漿及び脂肪酸を含む懸濁液をろ過する場合、逆流洗浄はより頻繁に必要とされる。換言すると、総タンパク質濃度及びろ液の濁度が減少するにつれて、逆流洗浄間隔の頻度も減少する(すなわち、逆流洗浄の間の期間は増加し、そして逆流洗浄が必要になるまでにろ過がより長い期間の間継続され得る)。
【0147】
タンパク質濃度及びろ液の濁度は、当該分野で公知の様々な方法によりモニタリングされ得る。特定の実施形態において、本発明の方法及び本発明のシステムは、ろ液がろ過ユニットに入るとき及び/又は出るときに、タンパク質濃度及び/又は濁度の測定を可能にするインライン検出ユニットの使用を含む。さらなる実施形態において、二波長光度計を使用して、タンパク質濃度(例えば、タンパク質濃度を検出するために適した波長、例えば260~280nmの範囲内、好ましくは約280nmで溶液の吸光度を検出ことにより)及び溶液濁度(例えば、微粒子状物質の存在により引き起こされる光散乱を検出するために適した波長で溶液の吸光度、例えば、400nm~900nm、好ましくは約600nm~約880nmの範囲内の波長での吸光度を検出することにより)の同時評価を容易にすることができる。クロマトグラフィー及びろ過ユニットと併せた使用のための二波長光度計装置は、当該分野で周知である。
【0148】
特定の例において、逆流洗浄の頻度は、15秒間隔、30秒、45秒、60秒 75秒、90秒、105秒、120秒、135秒、150秒、200秒、230秒、260秒、300秒、330秒、360秒、400秒、1000秒、2000秒、3000秒、4000秒又はそれ以上の間隔である。
【0149】
当然のことながら、逆流洗浄間隔の期間は、逆流洗浄を必要とするディスクのろ過面積及び数によって変わる。ろ過面積が大きくなるほど、典型的には、必要な逆流洗浄緩衝液の体積は大きくなり、そして逆流洗浄の期間については、逆流洗浄の間の流量によっても決まる。当業者は、システムの寸法及び使用されるディスクの数に依存して、逆流洗浄のための適切な期間、頻度、及び流量を決定することが十分できるだろう。特定の例において、逆流洗浄の期間は、約5秒、約10秒、約15秒、約30秒、約45秒、約60秒、又はそれ以上である。
【0150】
当然のことながら、実用的な理由から(かつろ過効率を最大にするために)、逆流洗浄間隔の期間は、典型的にはろ過間隔の期間より短い。特定の実施形態において、逆流洗浄間隔の期間は、ろ過間隔の少なくとも4分の1、8分の1、10分の1、16分の1又はそれ以下である。
【0151】
さらに当然のことながら、逆流洗浄の間に使用される流量は、ろ過に使用される流量と同じであっても異なっていてもよい。特定の実施形態において、動的ろ過の間の流量は、約15~100L/時の範囲、好ましくは約20~50L/時(約200ml/分~約1L/分、好ましくは約300~約900ml/分、より好ましくは約300~600ml/分)の範囲内である。好ましくは、逆流洗浄の流量は、ろ過に使用される流量よりも低く、その結果、特定の実施形態では、逆流洗浄の流量は、ろ過に使用される流量よりも約100~約400倍遅い範囲内である。
【0152】
特定の実施形態において、逆流洗浄は、第1又は第2の懸濁液に含まれる緩衝液と同じ緩衝液を用いて行われる。あるいは、逆流洗浄は、濃縮プロセスの間に得られる透過液を使用して行われ得る(例えば、動的クロスフローろ過と連結された限外ろ過を使用して、動的クロスフローろ過から得られたろ液を濃縮する場合)。
【0153】
タンパク質回収及びさらなる処理
サンプル中(例えば、上清又はその後に精製されたその調製物)のタンパク質の濃度は、当業者に公知の任意の手段により測定され得る。適切なアッセイの例としては、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC;例えば、サイズ排除HPLC)、酵素酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、比濁分析及び免疫比濁法が挙げられる。このような技術を使用して、サンプルの純度を評価することができる(例えば、プロテアーゼを含む望ましくないタンパク質混入物の存在を同定することができる)。さらに、染色及び濃度測定を用いるSDS-PAGEのようなゲル電気泳動は、サンプルの純度を評価し、そして混入しているタンパク質の存在を検出するために使用され得る。任意のジスルフィド連結ポリマーを切断するためにジチオスレイトールのような還元剤をSDS-PAGEとともに使用することが可能である。
【0154】
任意の実施形態において、溶液の導電率が測定される温度は約4℃と約37℃との間であり得、好ましくはここで温度は約18℃と約25℃との間、又は約20℃と約25℃との間(室温)である。
【0155】
免疫グロブリンを含む限外ろ過された生成物(すなわち、連続的抽出及びその後の濃縮後)は、最終製品を例えばヒト身体に投与することができるように、クロマトグラフィー工程、ウイルス不活化工程、濃縮及び製剤化のようなさらなる処理に後でかけられ得る。最終製品は、免疫状態、特に自己免疫疾患及び特定の神経疾患の処置において使用することができる。これらの状態としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体症候群、免疫性血小板減少症(ITP)、川崎病、ギラン・バレー症候群(GBS)、多発性硬化症(MS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、重症筋無力症(MG)、水疱症、強皮症、皮膚筋炎、多発性筋炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群に関連するアルツハイマー病、脳アミロイド血管症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症又は血管性認知症が挙げられる。さらに、最終IVIg及びSCIg製品は、細胞及び臓器移植のような他の医学的手技において使用され得る。
【実施例】
【0156】
実施例1: 精製されたIgGの単離
4つの独立した実験を行い、ここで本発明の方法に従ってIgGを血漿から精製した。
【0157】
全ての4つの実験において、新鮮な血漿をリン酸塩-酢酸塩緩衝液で1:2希釈し(血漿1部 対 緩衝液2部)、ここで希釈された血漿のpHは約4.6~約5.0で導電率は8~12mS/cmであった。希釈された血漿をタンク(懸濁液タンク)に移した。
【0158】
オクタン酸を懸濁液タンク中の希釈された血漿に20~60分の期間をかけて激しく混合しながら希釈された緩衝液に総タンパク質1gあたり少なくとも0.35gの量で加えて、血漿/オクタン酸エマルションを生じた。このエマルションを60~240分間約22℃でさらにインキュベートした。理論に拘束されることは望まないが、温度、遅い添加、及び激しい混合が、希釈された血漿へのオクタン酸の徹底的な分布に寄与すると考えられる。次いでこれがアルブミンとのオクタン酸のより効率的な混合をもたらし、その結果より多くのアルブミンがオクタン酸と接触し、沈殿物のより高い収量をもたらすと考えられる。最終結果は、不溶性アルブミン-オクタン酸複合体からの可溶性免疫グロブリンのより効率的な分離である。
【0159】
次いで、得られた懸濁液を連続的抽出フィルターユニットに供給し、そこから保持液を懸濁液タンク中に再循環して戻し、そしてここからろ液(免疫グロブリンを含む)を第2のタンクに供給した。次いで、第2のタンクに集められたろ液を、限外ろ過及び透析ろ過システムを含む第2のユニット中に供給した。UF/DFシステムの保持液を第2のタンク中に流して戻し、一方でろ液を第1のタンクに流して戻した。
【0160】
溶液をタンパク質濃度20g/Lまで希釈し、そしてポリソルベート80(P80)の存在下でpHを約pH4.0に調整した。この溶液をさらなる清澄化デプスろ過にかけた。得られたろ液(本明細書において「清澄化ろ液」と呼ばれる)を、以下にさらに記載されるように、様々な製品特性を決定するためにさらに評価した。
【0161】
【0162】
これらの結果は、本発明の方法が、高レベルのIgGを血漿サンプルから直接単離するための高度に効率的なアプローチを提供するということを実証する。IgGの収量は高く、かつIgGの回収もまたIgGの単離のための他の商業的製造プロセスと一致する。免疫グロブリンレベルを免疫比濁法により測定した。
【0163】
IgGサブクラスの分布を免疫比濁法により決定し、そして
図1に示される結果は、精製された免疫グロブリン調製物におけるIgGサブクラスの分布が、血漿において見られる分布と類似していることを示す。
【0164】
実施例2: IgG調製物におけるプロテアーゼ及び他の混入物の決定
清澄化ろ液におけるプロテアーゼの濃度及びプロテアーゼ活性の程度を、標準的方法を使用して決定した。手短には、発色性基質ベースのアッセイを使用した。セリンプロテアーゼ活性を、発色性基質lle-Pro-Arg-pNA(S-2288)を切断するタンパク質濃縮物の能力により測定した。この反応の間、p-ニトロアニリン(pNA)が放出され、これが光度計で405nmにおいて測定される。セリンプロテアーゼ活性は、pHが8.4であり37℃の条件下で測定された。カリクレイン様活性を、発色性基質H-D-Pro-Phe-Arg-pNA(S-2302)の切断により測定した。この反応間にp-ニトロアニリン(pNA)が放出され、これを405nmにおいて光度計により動的モードで測定する。
【0165】
図2に示されるように、本発明の方法はプロテアーゼ混入を効果的に排除した。
【0166】
IgA、IgM、アルファ1-アンチトリプシンのような他の不純物は、標準的な技術を使用して決定された。IgA、IgM及びセルロプラスミンのような不純物は、より低いレベルであるがなお検出可能なレベルで存在することがわかった。他の不純物は、検出限界未満であると決定された(α-1-アンチトリプシン、α-2-マクログロブリン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、コレストリン(cholestrin)、トランスフェリン、トリグリセリド及びリン脂質)。結果を
図3に示す。タンパク質不純物は免疫比濁法により決定されたが、コレストリン トリグリセリド及びリン脂質レベルは、酵素アッセイを使用して決定された。
【0167】
プレカリクレイン活性化因子(PKA)、第IX因子及び第XI(a)因子の量も決定された。これらの結果を
図4に示す。PKAは発色性基質(上で考察したとおり)により測定され、FIXはELISAにより測定され、そしてFXI(a)は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイを使用して測定された。
【0168】
出発血漿材料中のアルブミンの量(g/L)を、実施例1に記載されるIgG調製物(すなわち、清澄化ろ液)中に存在するアルブミンの量と比較した。血漿中に存在する総アルブミンは約32.2g/Lであった。実施例1のIgG調製物中のアルブミンの量は0.341g/L未満であり、商業グレードのIgG調製物において見られるアルブミンの典型的な量と一致していた。結果を
図5に示す。
【0169】
図6に示されるさらなる結果は、実施例1において生成された免疫グロブリン調製物が、低レベルの混入物アルファ/ベータ-グロブリン及びアルブミンしか含まず、ガンマグロブリンが高度に濃縮されていることを示す。ガンマグロブリン及びアルファ-/ベータ-グロブリンレベルを、酢酸セルロース/アガロース電気泳動を使用して決定した。
【0170】
実施例3: 精製されたアルブミンの単離
実施例1の完了後に、第1のタンク中の残留懸濁液をリン酸塩緩衝液(pH7.1~7.4)と混合し、そしてpHを6.4~6.7の間に調整した。得られた溶液は可溶性アルブミンを含んでいた。あるいは、実施例1の完了後に、第1のタンク中の残留懸濁液を、1M水酸化ナトリウムを用いてpH6.4~7.2の間(好ましくは6.8~7.2)に調整した。水酸化ナトリウム及び0.12Mでのリン酸塩緩衝液の組み合わせも検討される。
【0171】
溶液をさらに処理して、総タンパク質濃度約0.2g/Lから1.0g/L未満(又は約0.2g/L~約0.5g/L)を達成した。
【0172】
手短には、アルブミンの溶液を連続的抽出フィルターユニットに供給し、そこから保持液をタンク中に再循環して戻し、そしてそこからろ液(アルブミンを含む)を第2のタンク中に供給した。第2のタンク中に集められたろ液を、限外ろ過及び透析ろ過システムを含む第2のユニット中に供給した。UF/DFシステムの保持液を第2のタンク中に流して戻し、一方でろ液を第1のタンク中に流して戻した。
【0173】
濃縮されたアルブミンを含むUF/DFの保持液は、所望のタンパク質濃度に達して完了した。このサンプルを以下の表において「CE後粗製アルブミン」と呼ぶ。
【0174】
【0175】
実施例4:パラメーターの評価
多数の独立した実験を行って、本発明の方法に従ってIgG又はアルブミンが血漿から精製される最適なパラメーターを決定した。
【0176】
全ての実験において、新鮮な血漿をリン酸塩-酢酸塩緩衝液で1:3希釈し(血漿1部 対 緩衝液2部)、ここで希釈された血漿のpHは約4.6~約5.0であり、導電率は8~12mS/cmであった。
【0177】
実験室規模の実験を行って、イオン強度、pH、希釈比、希釈タイプ(及び/又は不純物除去の際に希釈された酢酸、異なるOA濃度でのIgG及びアルブミン回収のようなパラメーターの効果を評価した。
【0178】
一定イオン強度並びに様々なpH及びOA量での収量及び不純物
プールされた血漿1キログラムを100mM酢酸ナトリウム、pH4.0で希釈した(比:1:3)。希釈された血漿を3等分し、そして濃酢酸を徹底的に混合しながら滴下することによりpHを所望のpH(4.2;4.5及び4.8)に調整した。総タンパク質濃度を、A280での吸収を測定することにより決定した。各アリコートの導電率を、8.5+/-10mS/cmの範囲内に酢酸塩緩衝液を使用して調整した。
【0179】
オクタン酸を、希釈された血漿に20~40分の期間かけて総タンパク質1gあたり少なくとも0.35gの量で希釈された緩衝液に激しく混合しながら加え、血漿/オクタン酸エマルションを最終濃度総タンパク質1gあたりそれぞれ0.5、0.75又は1.0gで得た。このエマルションをさらに60~180分撹拌し、次いでCelpure 100とともに15分間溶液1kgあたり5gでインキュベートした。次いでCH9フィルター層を使用してろ過を行った。
【0180】
その後の洗浄を、実験が行われたpH及び導電率と同じpH及び導電率に予め調整された希釈緩衝液を使用して、出発体積20%で行った。
【0181】
次いで、清澄化タンパク質溶液を15~20g/Lまで限外/透析ろ過した。溶液のpHを、透析ろ過の間に4.00±0.20に調整した。次いでタンパク質溶液を37℃で9±1時間インキュベートし、続いてpHを5.80±0.10までシフトさせた。その後の深層ろ過工程の後に、溶液を強アニオン交換カラム上にロードし、そして精製されたIgGをフロースルーで集め、そしてpHを4.80±0.10に調整した。
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
結果
低pH(4.2)及び低濃度のオクタン酸(タンパク質1gあたり0.5g)では、pH4.8と比較してアルブミンのほとんど全てが沈殿した(
図8)。pH4.8では、相当量のアルブミンが、オクタン酸処理後の清澄化及び透析ろ過されたタンパク質溶液中になお存在している。IgG収量は、pH4.2と比較してpH4.8でより高い(
図7)。
【0186】
より低い導電率及びより高いオクタン酸
pH4.20で高いオクタン酸濃度(例えば、タンパク質1gあたり1.0g)でのより低い導電率(2~5mS/cm)の効果を調べた。
【0187】
タンパク質1gあたり1gの濃度及びpH4.2でのオクタン酸の沈殿する能力を、様々なイオン強度3;4;5及び6.5mS/cmで調べた。
【0188】
【0189】
結果
結果(表6及び
図9)は、低導電率(≦5mS/cm)では、より高い導電率(≧6mS/cm)と比較してIgG収量が低いということを明らかに示す。清澄化濃縮オクタン酸ろ液中のアルブミン含有量は、より高い導電率での含有量に匹敵する。
【0190】
より高いオクタン酸及び異なるpH
タンパク質1gあたり0.55gの濃度のオクタン酸を、様々なpH(4.2、4.5、及び4.8)及び様々なイオン強度(5;6;7及び8mS/cm)で調べた - 以下の表7~10、及び
図10~13を参照のこと。
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
結果
データは、pH4.8でのIgG収量が、オクタン酸濃度にかかわらずpH 4.2及び4.5でより高いということを示す(表7及び
図10)。清澄化濃縮IgG溶液中のアルブミン(表8及び
図11)、IgA(表9及び
図12)及びIgM(表10及び
図13)の残留量は比較的低く、そしてこのオクタン酸工程の下流でさらなる処理工程(例えば、メインクロマトグラフィー精製)において容易に除去することができる。従って、IgG溶液を、現在のプロセスにおいて連続的にさらに精製することができる。
【0196】
pH4.2では、特にアルブミンの沈殿についてより高い導電率では、IgG収量はpH4.8よりもまだわずかに低いが、なお非常に許容しうるものである。適切なオクタン酸濃度(例えば、タンパク質1gあたり0.50~0.55gの範囲)では、相当量のアルブミンをオクタン酸により沈殿させることが可能であり、その結果アルブミンを高収量及び高純度で回収することもできるということも、データから明らかである。
【0197】
実施例5: 連続的ろ過
この実験において、出発血漿プールを、様々なイオン強度(60mM、80mM又は100mM)及びpH値(4.0、4.2、4.5、4.8又は5.0)を有する酢酸塩緩衝液又はリン酸塩/酢酸塩緩衝液で希釈した。
【0198】
血漿1部を緩衝液2部で羽根車ミキサーを使用して希釈した。
【0199】
希釈された血漿をタンク(懸濁液タンク)に移した。オクタン酸を懸濁液タンク中の希釈された血漿に20~40分の期間をかけて、タンパク質1gあたり0.50g OA、タンパク質1gあたり0.75 OA及びタンパク質1gあたり1.00g OAの量で、希釈された血漿に激しく混合しながら加えて血漿/オクタン酸エマルションを得た。
【0200】
次いで得られた懸濁液を連続的抽出フィルターユニットに供給し、そこから保持液を懸濁液タンク中に再循環して戻し、そしてそこからろ液(免疫グロブリンを含む)を第2のタンク中に供給した。次いで、第2のタンク中に集められたろ液を、限外ろ過及び透析ろ過システムを含む第2のユニット中に供給した。UF/DFシステムの保持液を第2のタンク中に流して戻し、一方でろ液を第1のタンク中に流して戻した。
【0201】
膜透過圧力(TMP)は、第2のユニットからの透過液(ろ液)の流れが、第1のユニットからのろ液の流れに等しくなることを確実にするように調節され、抽出プロセスの間の第1のタンク中の一定の体積を確実にする。
【0202】
ろ過ユニットは、ろ液中のタンパク質濃度が規定の閾値より低くなり、それにより最終希釈比≧1:Xに達すると停止される。
【0203】
希釈比(1:X)は、血漿プールの初期タンパク質、使用されるOA量、さらには残留OA懸濁液が達する所望のタンパク質濃度閾値濃度に依存して可変であってよい。ほぼ平均の最終希釈比は≧1:20である。特定の実施形態において、最終希釈比は≧1:12及び≧1:15、又はそれ以上(例えば、1:≧30)であった。
【0204】
タンパク質濃度が約25~約30g/Lに達すると濃縮工程が完了する(すなわち、UF濃縮液)。この最終濃縮の間、透過液は流されて廃棄される。
【0205】
次いで、透析ろ過が開始される。次いで、濃縮されたタンパク質溶液を、WFIを用いて10X体積に対して透析ろ過し、透析ろ過の間、透析ろ過の終了前にpH4.0±0.2に調整されるようにpHを0.2M塩酸(HCl)を用いてゆっくり低下させる。
【0206】
透析ろ過された溶液をタンパク質濃度20±2g/Lまで希釈し、そしてpHを約pH4.0±0.2に調整した。この溶液をさらなる清澄化デプスろ過にかけた。得られたろ液(本明細書では「清澄化ろ液」と呼ばれる)をさらに評価して、実施例6において以下にさらに記載されるような様々な製品特質を決定した。
【0207】
実施例6: 連続的ろ過
2.6Lクリオリッチ血漿を、0.2M酢酸1.26リットルを用いて希釈してpH4.8及び導電率7.5mS/cmとした。
【0208】
オクタン酸(タンパク質1gあたり0.447g)を激しく撹拌しながら60分の時間をかけてゆっくりと加えて、pH4.76及び導電率7.72を有するオクタン酸懸濁液を形成した。オクタン酸懸濁液を20℃で3.25時間インキュベートした後、実施例1の連続的抽出システムのフィードタンクに移した。連続的抽出システムを、100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.8)で処理して補充し、バックフラッシュ(backflash)タンクも同様ににした。
【0209】
オクタン酸懸濁液をろ過することなく15分の時間をかけて再循環させ、次いでろ過を開始した。バックフラッシュ時間は15秒であり、そしてろ過時間は5分であった。約5分後に、TFFシステム(
図16に示される例となるシステム)を開始し、そして再循環を上記のように約4時間行った。
【0210】
フィードタンク中のタンパク質濃度が0.2~0.5g/Lに達したら、TFFシステムからの透過液を流し出して廃棄した。
【0211】
溶液をタンパク質濃度20g/Lまで希釈し、そしてポリソルベート80(P80)の存在下でpHを約4.0に調整した。この溶液をさらなる清澄化デプスろ過にかけた。
【0212】
タンパク質1gあたり50mg DEAE A-50を清澄化ろ液溶液に加え、Tris塩基を使用してpHを5.8に調整し、そして溶液を60分間撹拌し、その後、タンパク質溶液を強アニオン交換体にロードした。フロースルーを集め、そして0.2M HClを使用してpHを4.8に調整した。得られたフォロースルーをさらに評価して以下にさらに記載されるように様々な製品特質を決定した。
【0213】
【0214】
製品関連不純物は全て定量限界未満である(
図14を参照のこと)。
【0215】
実施例7: パラメーターを調査するさらなる実験
一連の実験(以下の実施例9~15として言及される)において、不溶性アルブミン-オクタン酸複合体の形成に影響を有するいくつかのパラメーターを調べた。これらのパラメーターは:pH、イオン強度、OA濃度、希釈倍率、及び総再循環体積(最終希釈比)などである。これらのパラメーターは、不溶性アルブミン-オクタン酸複合体からの可溶性免疫グロブリンのより有効な分離をもたらす。
【0216】
以下の表(表12)は実験的試験条件を含む。
【0217】
【0218】
結果は実験室規模の実験との非常に良い一致を示す。表13は、清澄化濃縮OAろ液中のIgG収量及び主要不純物及び残留アルブミン含有量を示す。
【0219】
データは、平均88.6%(範囲:84.2~93.0%)で一貫性のあるIgG収量を示す。清澄化溶液中の平均残留アルブミンは、実施例15を除いて、血漿1リットルあたりアルブミン0.2g未満である。これは、血漿プール中のより高いIgM及びより低いOA濃度に起因して想定されることである。
【0220】
【0221】
可溶性タンパク質含有成分(免疫グロブリンG及びその他(IgA及びIgMのような成分)の回収後。任意の残留懸濁液、及び/又は第1の保持液を、さらに処理して精製されたアルブミンを得ることができる。
【0222】
実施例8: アルブミンのさらなる処理
第1の保持液タンク中の残留懸濁液は、不溶性アルブミン-OA複合体を含有する。残留懸濁液は、IgG 0.00035g/L未満、IgA 0.0002g/L未満及びIgM 0.0002g/Lを含有する。
【0223】
アルブミンとOAとの間の結合を破壊するために、1M水酸化ナトリウムを用いて残留懸濁液のpHを6.4~6.7、好ましくは6.8~7.2に調整した。混合した後、可溶化アルブミンのpHは安定した(30~60分)。この溶液を連続的抽出システムに供給して、アルブミンが枯渇した保持液及びアルブミンが濃縮されたろ液を生じた。TFF膜を使用して(例となるシステムは
図16に示される)、ろ液をタンパク質1Lあたり20~45gまで連続的に濃縮した。
【0224】
次いで濃縮されたアルブミン溶液を、60~65℃の範囲内の温度で90分間の期間の間加熱した。
【0225】
溶液のpHを、1M塩酸を用いて4.20に調整し、次いで濃縮アルブミン溶液を4℃に冷却した。沈殿物が形成され、これはアルブミン-OA複合体の破壊の間に上述のpHで溶解した。
【0226】
沈殿物をろ過により除去した。ろ液中のタンパク質は主にアルブミンからなるものであった(アルブミン収率90%で98%より高い純度)。表14及び
図15は、熱処理したアルブミンの不純物プロフィールを示す。
【0227】
【0228】
当然のことながら、本明細書において開示されそして定義される本発明は、言及されるか又は文章もしくは図面から明らかである個々の特徴の2つ又はそれ以上の全ての代替の組み合わせにまで及ぶ。これらの異なる組み合わせは全て、本発明の様々な代替の態様を構成する。
【国際調査報告】