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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】BTK阻害剤及びその中間体の合成
(51)【国際特許分類】
   C12P 17/08 20060101AFI20240528BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20240528BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20240528BHJP
   C07D 493/08 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20240528BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20240528BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20240528BHJP
   A61P 31/12 20060101ALN20240528BHJP
   A61P 37/02 20060101ALN20240528BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20240528BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20240528BHJP
   A61K 31/519 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
C12P17/08 ZNA
C12N9/99
C07D487/04 140
C07D493/08
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P29/00
A61P31/12
A61P37/02
A61P25/28
A61P9/00
A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572786
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022030997
(87)【国際公開番号】W WO2022251404
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/194,307
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/223,693
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/336,367
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ヨンガン
(72)【発明者】
【氏名】コリー,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】デズモンド,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ディ・マソ,マイケル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】フォーステーター,ジェイコブ・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】キューテ,ジェフリー・ティー
(72)【発明者】
【氏名】クール,ナディーン
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,リード
(72)【発明者】
【氏名】レヴェスク,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ナルシンハン,カルティク
(72)【発明者】
【氏名】オッテ,ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】プライアー,クリストファー・ケー
(72)【発明者】
【氏名】シェヴリン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シロタ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】タン,ルシ
(72)【発明者】
【氏名】タイスリヴォングス,デヴィッド・エー
(72)【発明者】
【氏名】ターンブル,ベン・ダブリュー・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジシュン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,カイジオン
【テーマコード(参考)】
4B064
4C086
【Fターム(参考)】
4B064AE47
4B064CA21
4B064CA22
4B064DA01
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、化合物 A又は薬学的に許容されるその塩を作るのに使用される中間体の製造を含めた、式(I)のBTK阻害薬である化合物A又は薬学的に許容されるその塩の製造で有用な効率的合成方法に関するものである。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物3:
【化1】
又は薬学的に許容されるその塩の製造方法であって、
a)緩衝液又は水中で、補因子をイソプロピルアミン及びトランスアミナーゼ酵素と組み合わせて、試薬混合物を製造する段階;及び
b)化合物2:
【化2】
を前記試薬混合物に加えて、化合物3を含む溶液を製造する段階
を含む方法。
【請求項2】
a)無機塩基を添加して、化合物3を含む溶液のpHを約12~約14に調節する段階;
b)溶媒及び無機塩を添加して、化合物3を含む二相混合物を製造する段階であって、当該二相混合物が有機層及び水層を含む段階;
c)前記得られた二相混合物から溶媒を用いて前記有機層を分離する段階;
d)前記得られた二相混合物の前記有機層を酸の溶媒中溶液と合わせて、化合物3′:
【化3】
[式中、HXは薬学的に許容される酸から選択される。]を含むスラリーを製造する段階;及び
e)前記スラリーを濾過して化合物3′を固体として得る段階
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HXがp-トルエンスルホン酸であり、段階dにおいて、p-トルエンスルホン酸の溶媒中溶液を前記得られた二相混合物の前記有機層と合わせて、化合物3aを含むスラリーを製造すること;及び前記スラリーを濾過して化合物3aを固体として得ることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
化合物3′:
【化4】
[式中、HXは薬学的に許容される酸である。]の製造方法であって、
a)トランスアミナーゼ酵素を、緩衝液又は水、及び固体支持体と合わせ、次にインキュベーションを行って、固定化トランスアミナーゼ酵素を製造する段階;
b)前記固定化トランスアミナーゼ酵素を緩衝液又は水で洗浄する段階;
c)アミノ基転移溶媒で洗浄する段階;
d)化合物2をイソプロピルアミン及びアミノ基転移溶媒と合わせて、反応流を提供する段階;
e)前記反応流を前記固定化トランスアミナーゼ酵素と合わせて、化合物3を含むスラリーを製造する段階;
f)前記化合物3を含むスラリーを前記固定化トランスアミナーゼ酵素から分離して、化合物3を含む溶液を製造する段階;
g)前記化合物3を含む溶液を、酸のアミノ基転移溶媒中溶液と合わせて、化合物3′を含むスラリーを製造する段階;及び
h)前記スラリーを濾過して、化合物3′を固体として得る段階
を含む方法。
【請求項5】
前記固定化トランスアミナーゼ酵素を水で洗浄する段階及び次に前記固定化トランスアミナーゼ酵素をイソプロパノール:PEG-400:水混合物で洗浄する段階をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
化合物2を含水アミノ基転移溶媒中のイソプロピルアミンと合わせて、段階d)での前記反応流を調製する段階をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記緩衝液又は水、前記アミノ基転移溶媒及び前記反応流を、前記固定化トランスアミナーゼ酵素上に連続的に通過させる連続反応系で段階b)、c)及びe)を行うことをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記連続反応系が充填床反応器(PBR)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
a)前記化合物3を含む溶液を蒸留してイソプロピルアミン及び水を除去して、結果的に得られる化合物3を含む溶液を製造する段階;及び
b)前記結果的に得られる化合物3を含む溶液に水を加えて、水含有量を約0~約前記アミノ基転移溶媒の水飽和点に調節する段階
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
HXがp-トルエンスルホン酸であり、
前記化合物3を含む溶液を、p-トルエンスルホン酸のアミノ基転移溶媒中溶液と合わせて化合物3a:
【化5】
を含むスラリーを製造する段階;及び
前記スラリーを濾過して、3aを固体として単離する段階
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
化合物4′
【化6】
[式中、HXは薬学的に許容される酸である。]の製造方法であって、
a)化合物3′を弱配位性溶媒に加える段階;
b)シラン還元剤又はボラン還元剤、及びルイス酸を加え、加熱して約30~約70℃として、結果的に得られる溶液を製造する段階;
c)アルコールを加えて、化合物4′を含む溶液を製造する段階;
d)前記溶液を冷却して、化合物4′を含むスラリーを製造する段階;及び
e)前記スラリーを濾過して化合物4′を固体として得る段階
を含む方法。
【請求項12】
段階c)で前記アルコールを加えた後に、薬学的に許容される酸を加えて、化合物4′の薬学的に許容される塩を得る段階をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
HXがp-トルエンスルホン酸であり、段階a)で化合物3aを弱配位性溶媒に加える段階及び段階c)で化合物4a:
【化7】
を含む溶液を製造する段階をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
段階a)での前記弱配位性溶媒がアニソール及びスルホランの混合物であり、段階b)での前記シラン還元剤がトリエチルシランであり、段階b)での前記ルイス酸が三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラートであり、トリエチルシラン:三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラートの比が3:1未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
段階a)で、2,3-ジヒドロチオフェン1,1-ジオキシド又は2,5-ジヒドロチオフェン1,1-ジオキシドも加える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
段階b)で、トリエチルシラン及び三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラートを加え、反応器中で加熱して約30~約70℃として、結果的に得られる溶液を製造し、前記反応器が密閉反応器であるか、又は反応圧力を制御することができる反応器である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
化合物4bの製造方法であって、
a)化合物3′を有機溶媒に加える段階;
b)有機塩基を加えて反応混合物を製造する段階;
c)前記反応混合物にシラン還元剤及びトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートを加えて、結果的に得られる溶液を製造する段階;
d)前記結果的に得られる溶液に水を加えて化合物4bを含む二層混合物を作り、前記二層混合物が上層及び下層を有しており、前記化合物4bを含む二層混合物から前記下層を分離する段階;
e)前記下相を冷却して、結果的に得られるスラリーを製造する段階;及び
f)前記スラリーを濾過して、化合物4bを固体として得る段階
を含む方法。
【請求項18】
化合物7:
【化8】
の製造方法であって、
a)化合物5:
【化9】
の第1の非プロトン性溶媒中スラリーに第1の塩基の溶液を加えて、結果的に得られる混合物を製造する段階;
b)第2の塩基の溶液を前記結果的に得られる混合物と合わせる段階;
c)化合物6:
【化10】
の第2の非プロトン性溶媒中溶液を加えて、化合物7を含む溶液を製造する段階;
d)水溶液を前記化合物7を含む溶液と合わせて、化合物7を含む二相混合物を製造する段階であって、前記二相混合物が水層及び有機層を含む段階;
e)前記化合物7を含む二相混合物から前記有機層を分離する段階;
f)アルコール、水又はアルコール-水混合物を前記有機層に加えて、結果的に得られる化合物7を含むスラリーを製造する段階;及び
g)前記スラリーを濾過して、化合物7を固体として得る段階
を含む方法。
【請求項19】
上記の段階a)で臭化リチウムを加える段階をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
連続攪拌槽反応器中で前記結果的に得られる混合物を前記第2の塩基及び化合物6の溶液と合わせる段階をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
a)第1の塩基の溶液を化合物5及び臭化リチウムの第1の非プロトン性溶媒中溶液に加えて、前記結果的に得られる混合物を製造する段階;及び
b)栓流反応器中で、前記結果的に得られる混合物を、1)前記第2の塩基の溶液及び2)化合物6の第2の非プロトン性溶媒中の溶液と合わせて、化合物7を含む溶液を製造する段階
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
化合物A:
【化11】
又は薬学的に許容されるその塩の製造方法であって、
a)塩基を、請求項16の化合物7:
【化12】
と請求項12の化合物4′:
【化13】
の反応溶媒中混合物を含むスラリーに加えて、結果的に得られる混合物を製造する段階;
b)前記結果的に得られる混合物を加熱して、化合物Aを含む溶液を製造する段階;
c)結晶化溶媒を加えて、化合物Aを含むスラリーを製造する段階;及び
d)前記スラリーを濾過して、化合物Aを固体として得る段階
を含む方法。
【請求項23】
化合物4a:
【化14】
を、上記段階a)で使用する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記塩基がN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
a)水を前記結晶化溶媒として加えて、化合物Aを含むスラリーを製造する段階;
b)前記スラリーを冷却し、酢酸を加えてpHを約11~約4に調節する段階;及び
c)前記スラリーを濾過して化合物Aを固体として得る段階
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、それによってその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
2022年5月25日に作成された上記のASCIIコピーは、25247-WO-PCT_SL.txtという名前で、サイズは24,009バイトである。
【0003】
本発明は、化合物A又は薬学的に許容されるその塩を製造するのに使用される中間体又は薬学的に許容されるその塩の製造を含む、式(I)のBTK阻害剤である化合物A又は薬学的に許容されるその塩の製造に有用な効率的な合成方法に関する。
【化1】
【背景技術】
【0004】
ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)は、チロシンキナーゼのTecファミリーの構成員であり、初期のB細胞発生及び成熟B細胞の活性化及び生存の制御に重要な役割を果たしている。BTKは、増殖因子、B細胞抗原、ケモカイン、及び自然免疫受容体などの複数の受容体の下流で機能し、細胞増殖、生存、分化、運動性、血管新生、サイトカイン産生及び抗原提示などの多くの細胞プロセスを開始する。
【0005】
BTK欠損マウスモデルは、BTKがアレルギー性障害及び/又は自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患において果たす役割を示している。破骨細胞、マスト細胞及び単球におけるBTKの発現は、これらの細胞の機能にとって重要であることが明らかになっている。たとえば、マウス及びヒトでは、IgE介在のマスト細胞活性化の障害と活性化単球によるTNF-α産生の減少がBTK欠乏症と関連していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、小分子阻害剤によるBTKの阻害は、血液悪性腫瘍、免疫障害、がん、心血管疾患、ウィルス感染、炎症、代謝/内分泌機能障害、及び神経障害に治療を提供するものである。化合物化合物Aは血液悪性腫瘍などの疾患や障害を治療するのに使用できるが、化合物Aを製造する既存のルートでは複数段階のプロセスが必要とされる。特に、炭化水素出発材料から(N. M. A. J. Kriek et al. Eur. J. Org. Chem. (2003) 2003(13):2418-27;C. E. Lunse et al. ACS Chem. Biol. (2011) 6(7):675-78;F. Amann et al. Org. Process Res. Dev. (2016) 20(2):446-51)又はL-セリン(J.-C. Gauvin et al. 特許番号WO 2007/105154 A2、及びM. J. Dunn et al. J. Org. Chem. (1995) 60(7):2210-15)からの遊離塩基を含む重要な中間体4′:
【化2】
(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニニウム塩の公知の合成は、いくつかの保護基操作などの複数の合成段階が必要とされることから非効率的かつ複雑である。化合物4′を製造するためにこれまで開発されてきた困難かつ時間のかかる合成選択肢を考慮すると、合成段階数を最小とし、より持続可能な形で化合物Aを得るために化合物4′製造への保護基の使用を最小とする合成経路が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、化合物Aの製造に使用される中間体の製造を含む、化合物A:
【化3】
又は薬学的に許容されるその塩の合成に有用な方法に関するものである。本発明の方法は、既知の手順に勝る利点を提供し、化合物Aの製造において有用な中間体を製造するためのより効率的な経路を含むものである。
【0008】
本発明の他の実施形態、態様及び特徴について、下記の説明、実施例及び添付の特許請求の範囲でさらに説明されるか、それらから明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、化合物A又は薬学的に許容されるその塩の製造で使用される中間体の酵素的製造方法を提供する。
【0010】
本発明の第1の実施形態では、化合物3:
【化4】
又は薬学的に許容されるその塩を製造する方法は、
a)緩衝液又は水中で、補因子をイソプロピルアミン及びトランスアミナーゼ酵素と組み合わせて、試薬混合物を製造する段階;及び
b)化合物2:
【化5】
を前記試薬混合物に加えて、化合物3を含む溶液を製造する段階
を含む。
【0011】
第1の実施形態のさらなる態様において、本発明は、上記工程c)で化合物2を添加した後、溶液を約25℃~約70℃に加熱して、化合物3を含む溶液を製造するさらなる段階を含む、化合物3の製造方法に関する。
【0012】
第1の実施形態のさらなる態様において、前記緩衝液は、pH約6~約12の四ホウ酸ナトリウム水溶液である。
【0013】
第1の実施形態のさらなる態様において、本発明は、上記段階bで、化合物2を添加した後、無機塩基を溶液に添加することでpHを約7~約9に維持して、化合物3を含む溶液を製造することを含む、化合物3の製造方法に関する。
【0014】
第1の実施形態のさらなる態様において、化合物3の製造方法は、上記の段階(c)で化合物2を添加した後、真空又は窒素吹き込みを適用することによってプロセスで製造されるアセトン副生成物を除去することで化合物3を含む溶液を製造するさらなる段階を含む。
【0015】
第2の実施形態において、本発明は、化合物3′:
【化6】
[式中、HXは薬学的に許容される酸である。]の製造方法であって、
a)無機塩基を添加して、化合物3を含む溶液のpHを約12~約14に調節する段階;
b)溶媒及び無機塩を添加して、化合物3を含む二相混合物を製造する段階であって、当該得られた二相混合物が有機層及び水層を含む段階;
c)前記得られた二相混合物から溶媒を用いて前記有機層を分離する段階;
d)前記得られた二相混合物の前記有機層を酸の溶媒中溶液と合わせて、化合物3′を含むスラリーを製造する段階;及び
e)前記スラリーを濾過して化合物3′を固体として得る段階
を含む方法に関するものである。
【0016】
第2の実施形態のさらなる態様において、本発明は、上記段階(b)で得られた二相混合物を濾過してトランスアミナーゼ酵素を除去する段階をさらに含む、化合物3′の製造方法に関する。
【0017】
第2の実施形態のさらなる態様において、本発明は、
a)上記段階(c)で前記有機層を分離した後、有機層を濃縮することによりイソプロピルアミンを除去し、結果的に化合物3を含む溶液を製造する段階;及び
b)前記得られた化合物3の溶液を、酸の溶媒中溶液と合わせて、化合物3′を含むスラリーを製造する段階
をさらに含む、化合物3′の製造方法に関する。
【0018】
第2の実施形態のさらなる態様において、本発明は、化合物3を含む前記有機層に水を加えて水分含有量を約0~有機層のほぼ水飽和点に調節してから、上記の段階d)で前記酸の溶媒中溶液を加える段階を含む、化合物3′の製造方法に関する。
【0019】
第2の実施形態のさらなる態様において、本発明は、HXがp-トルエンスルホン酸、p-ベンゼンスルホン酸又は塩酸から選択される薬学的に許容される酸である、化合物3′の製造方法に関する。
【0020】
第2の実施形態のさらなる態様において、HXはp-トルエンスルホン酸であり、化合物3′は、化合物3a:
【化7】
として表され、化合物3aの製造方法はさらに、
a)p-トルエンスルホン酸の溶媒中溶液を前記得られた二相混合物の前記有機層と合わせて、3aを含むスラリーを製造する段階;及び
b)前記スラリーを濾過して3aを固体として得る段階
を含む。
【0021】
第3の実施形態において、本発明は、
a)無機塩基を添加して、化合物3を含む溶液のpHを約12~約14に調節する段階;
b)前記化合物3′を含む溶液を蒸留してイソプロピルアミンを除去する段階;
c)塩基及びジ-tert-ブチルジカーボネートの溶媒中溶液を加えることで、結果的に生じる化合物3c:
【化8】
を含む二相混合物を製造する段階であって、当該結果的に生じる二相混合物が水層及び有機層を含む段階;
d)溶媒を加えることで化合物3cを含む前記結果的に生じる二相混合物の前記有機層を分離する段階;
e)酸の溶媒中溶液を前記有機層に加えることで化合物3′を含むスラリーを製造する段階;及び
f)前記スラリーを濾過することで、化合物3′を固体として得る段階
を含む、化合物3′の製造方法に関する。
【0022】
第3の実施形態のさらなる態様において、本発明は、上記の段階(c)で製造された化合物3cを含む前記結果的に生じる二相混合物を濾過して、前記トランスアミナーゼ酵素を除去するさらなる段階を含む、化合物3′の製造方法に関する。
【0023】
第3の実施形態のさらなる態様において、化合物3′は化合物3aであり、前記化合物3aの製造方法は、
a)上記の段階e)でp-トルエンスルホン酸の溶媒中溶液を、前記化合物3cを含む前記有機層に加えることで、化合物3aを含むスラリーを製造する段階;及び
b)前記スラリーを濾過することで、化合物3aを固体として得る段階
をさらに含む。
【0024】
本発明の第4の実施形態において、前記化合物3′の製造方法は、
a)トランスアミナーゼ酵素を緩衝液又は水、及び固体支持体と合わせ、次にインキュベーションを行って、固定化トランスアミナーゼ酵素を製造する段階;
b)前記固定化トランスアミナーゼ酵素を緩衝液又は水で洗浄する段階;
c)アミノ基転移溶媒で洗浄する段階;
d)化合物2をイソプロピルアミン及びアミノ基転移溶媒と合わせて、反応流を提供する段階;
e)前記反応流を前記固定化トランスアミナーゼ酵素と合わせて、化合物3を含むスラリーを製造する段階;
f)前記を化合物3含むスラリーを前記固定化トランスアミナーゼ酵素から分離して、化合物3を含む溶液を製造する段階;
g)前記化合物3を含む溶液を酸のアミノ基転移溶媒中溶液と合わせて、化合物3′を含むスラリーを製造する段階;及び
h)前記スラリーを濾過して、化合物3′を固体として得る段階
を含む。
【0025】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記化合物3′の製造方法は、上記段階(a)で補因子を前記トランスアミナーゼ酵素及び前記緩衝液と合わせて、トランスアミナーゼ混合物を製造することをさらに含む。
【0026】
第4の実施形態のさらなる態様において、上記段階(a)での前記緩衝液は、pH約4~約11の緩衝液である。
【0027】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記緩衝液は、リン酸カリウム水溶液であり、その緩衝液のpHは約6~約8である。
【0028】
第4の実施形態のさらなる態様において、上記段階b)では水を用いて、段階(b)で前記固定化トランスアミナーゼ酵素を洗浄する。
【0029】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記化合物3′の製造方法は、前記固定化トランスアミナーゼ酵素を水で洗浄する段階及び次に前記固定化トランスアミナーゼ酵素をイソプロパノール:PEG-400:水混合物で洗浄する段階をさらに含む。
【0030】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記化合物3′の製造方法は上記で記載の通りであり、上記段階c)での前記アミノ基転移溶媒は含水アミノ基転移溶媒である。
【0031】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記化合物3′の製造方法は、前記固定化トランスアミナーゼ酵素を乾燥させてからそれを前記反応流と合わせる段階をさらに含む。
【0032】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記化合物3′の製造方法は、上記段階(d)で、化合物2を含水アミノ基転移溶媒中のイソプロピルアミンと合わせて、前記反応流を調製する段階をさらに含む。
【0033】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記化合物3′の製造方法は、上記段階e)で前記反応流を前記固定化アミノ基転移酵素と合わせた後、当該溶液を約25℃~約70℃に加熱して、化合物3を含むスラリーを製造する段階をさらに含む。
【0034】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記固定化トランスアミナーゼ酵素を、化合物2を含む新たな反応流で再利用して、化合物3を含むスラリーを製造することができる。
【0035】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記化合物3′の製造方法は、上記の段階b)、c)及びe)を、前記緩衝液又は水、前記アミノ基転移溶媒及び前記反応流を前記固定化トランスアミナーゼ酵素上に連続的に通過させる連続反応系で行うことを含む。
【0036】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記化合物3′の製造方法は、
a)前記トランスアミナーゼ酵素を緩衝液又は水と合わせて前記トランスアミナーゼ酵素を含む溶液を生成する段階;
b)前記溶液を前記固体支持体上に連続的に通過させる連続反応系で前記トランスアミナーゼ酵素を含む前記溶液を固体支持体と合わせることで、前記固定化トランスアミナーゼ酵素を生成する段階;及び
c)前記緩衝液又は水、前記アミノ基転移溶媒及び前記反応流を前記固定化トランスアミナーゼ酵素上に連続的に通過させる連続反応系で、前記第4の実施形態の段階b)、c)及びe)を行う段階
を含む。
【0037】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記連続反応系は充填床反応器(PBR)である。
【0038】
第4の実施形態のさらなる態様において、前記化合物3′の製造方法は、化合物3を含む前記溶液を蒸留することでイソプロピルアミンを除去する段階をさらに含む。
【0039】
第4の実施形態のさらなる態様において、本発明は、
a)化合物3を含む前記溶液を蒸留してイソプロピルアミンを除去して、結果的に得られる化合物3を含む溶液を製造する段階;及び
b)化合物3を含む前記得られた溶液に水を加えて、水含有量を約0~前記アミノ基転移溶媒の水飽和点に調節する段階
をさらに含む、化合物3′の製造方法に関する。
【0040】
第4の実施形態のさらなる態様において、化合物3′は化合物3aであり、前記化合物3aの製造方法は、
a)化合物3を含む前記溶液を、p-トルエンスルホン酸のアミノ基転移溶媒中溶液と合わせて、化合物3aを含むスラリーを製造する段階;及び
b)前記スラリーを濾過して、3aを固体として単離する段階
をさらに含む。
【0041】
第4の実施形態のさらなる態様において、化合物3′は化合物3bであり、前記化合物3bの製造方法は、
a)前記化合物3を含む溶液を塩酸と合わせて、化合物3bを含むスラリーを製造する段階;及び
b)前記スラリーを濾過して3bを固体として単離する段階
をさらに含む。
【0042】
本発明の第5の実施形態において、前記化合物4′
の製造方法
【化9】
[式中、HXは薬学的に許容される酸である。]は、
a)化合物3′を弱配位性溶媒に加える段階;
b)シラン還元剤又はボラン還元剤、及びルイス酸を加え、加熱して約30℃~約70℃として、結果的に得られる溶液を製造する段階;
c)アルコールを加えて化合物4′を含む溶液を製造する段階;
d)前記溶液を冷却して、化合物4′を含むスラリーを製造する段階;及び
e)前記スラリーを濾過して、化合物4′を固体として得る段階
を含む。
【0043】
第5の実施形態のさらなる態様において、化合物4′は化合物4a:
【化10】
であり、前記化合物4aの製造方法は、上記段階a)で化合物3aを弱配位性溶媒に加える段階をさらに含む。
【0044】
本発明の第5の実施形態のさらなる態様において、上記段階a)における前記弱配位性溶媒は、アニソール及びスルホランの混合物である。
【0045】
第5の実施形態のさらなる態様において、上記段階a)で、2-スルホレンとも称される2,3-ジヒドロチオフェン1,1-ジオキシド又は3-スルホレンとも称される2,5-ジヒドロチオフェン1,1-ジオキシドを加える。
【0046】
本発明の第5の実施形態のさらなる態様において、上記段階b)での前記シラン還元剤はトリエチルシランであり、上記段階b)での前記ルイス酸は三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラートであり、トリエチルシラン:三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラートの比は3:1未満である。
【0047】
第5の実施形態のさらなる態様において、上記段階d)で、反溶媒を加えて、化合物4′を含むスラリーを得る。
【0048】
本発明の第5の実施形態のさらなる態様において、前記化合物4aの製造方法は、密閉反応器又は反応圧力を制御することができる反応器で行う。
【0049】
第5の実施形態のさらなる態様において、前記化合物4aの製造方法は、段階b)で、トリエチルシラン及び三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラートを加え、反応器中で加熱して約30~約70℃として、結果的に得られる溶液を製造することを含み、当該反応器は密閉反応器であるか、反応圧力を制御することができる反応器である。
【0050】
本発明の第6の実施形態において、前記化合物4b:
【化11】
の製造方法は、
a)化合物3aを弱配位性溶媒に加える段階;
b)シラン還元剤及びルイス酸を加え、加熱して約30℃~約70℃として、結果的に得られる溶液を製造する段階;
c)アルコールを加えて、化合物4aを含む溶液を製造する段階;
d)塩酸の溶液を加えて、化合物4aを含むスラリーを製造する段階;及び
e)前記スラリーを濾過して化合物4bを固体として得る段階
を含む。
【0051】
本発明の第7の実施形態において、前記化合物4bの製造方法は、
a)化合物3′を有機溶媒に加える段階;
b)有機塩基を加えて反応混合物を製造する段階;
c)前記反応混合物にシラン還元剤及びトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートを加えて、結果的に得られる溶液を製造する段階;
d)前記結果的に得られた溶液に水を加えて化合物4bを含む二層混合物を作り、当該二層混合物が上層及び下層を有しており、当該下相を前記二層混合物から分離する段階;
e)前記下相を冷却して、結果的に得られるスラリーを製造する段階;及び
f)前記スラリーを濾過して、化合物4bを固体として得る段階
を含む。
【0052】
化合物4bの製造についての第7の実施形態のさらなる態様において、前記シラン還元剤はクロロジメチルシランである。
【0053】
第7の実施形態のさらなる態様において、化合物3′は化合物3aであり、前記化合物4bの製造方法は、上記段階a)で化合物3aを有機溶媒に加える段階をさらに含む。
【0054】
第7の実施形態のさらなる態様において、上記段階(e)で反溶媒を加えて、化合物4bを含むスラリーを得る。
【0055】
本発明の第8の実施形態において、本発明は、化合物7:
【化12】
の製造方法であって、
a)第1の塩基の溶液を化合物5:
【化13】
の第1の非プロトン性溶媒中スラリーに加えて、結果的に得られる混合物を製造する段階;
b)第2の塩基の溶液と前記結果的に得られる混合物を合わせる段階;
c)化合物6:
【化14】
の第2の非プロトン性溶媒中溶液を加えて、化合物7を含む溶液を製造する段階;
d)水溶液を前記化合物7を含む溶液と合わせて、化合物7を含む二相混合物を製造する段階であって、前記二相混合物が水層及び有機層を含む段階;
e)前記有機層を前記化合物7を含む二相混合物から分離する段階;
f)アルコール、水又はアルコール-水混合物を前記有機層に加えて、結果的に得られる化合物7を含むスラリーを製造する段階;及び
g)前記スラリーを濾過して、化合物7を固体として得る段階
を含む方法に関する。
【0056】
第8の実施形態のさらなる態様において、前記化合物7の製造方法は、上記段階(a)で臭化リチウムを加えるさらなる段階を含む。
【0057】
第8の実施形態のさらなる態様において、前記化合物7の製造方法は、連続攪拌槽反応器において前記結果的に得られる混合物を前記第2の塩基及び化合物6の溶液と合わせるさらなる段階を含む。
【0058】
第8の実施形態のさらなる態様において、前記化合物7の製造方法は、
a)第1の塩基の溶液を、化合物5及び臭化リチウムの第1の非プロトン性溶媒中溶液に加えて、結果的に得られる混合物を製造する段階;及び
b)栓流反応器(PFR)において前記結果的に得られた混合物を、1)前記第2の塩基の溶液及び2)化合物6の第2の非プロトン性溶媒中溶液と合わせて、化合物7を含む溶液を製造する段階をさらに含む。
【0059】
第8の実施形態のさらなる態様において、前記化合物7の製造方法は、前記二相混合物からの前記有機層を活性炭で処理し、次にその混合物を濾過するさらなる段階を含む。
【0060】
第8の実施形態のさらなる態様において、前記化合物7の製造方法は、上記段階1)を行う前に前記有機層を蒸留する段階をさらに含む。
【0061】
本発明の第9の実施形態において、化合物A:
【化15】
又は薬学的に許容されるその塩の製造方法は、
a)反応溶媒中の化合物7:
【化16】
及び化合物4′:
【化17】
[式中、HXはそれの薬学的に許容される酸である。]の混合物を含むスラリーに塩基を加えて、結果的に得られる混合物を製造する段階;
b)前記結果的に得られる混合物を加熱して、化合物Aを含む溶液を製造する段階;
c)結晶化溶媒を加えて、化合物Aを含むスラリーを製造する段階;及び
d)前記スラリーを濾過して、化合物Aを固体として得る段階
を含む。
【0062】
第9の実施形態のさらなる態様において、前記化合物Aの製造方法は、上記段階a)で化合物4a:
【化18】
を用いる段階を含む。
【0063】
第9の実施形態のさらなる態様において、前記化合物Aの製造方法は、前記塩基としてN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を用いる段階をさらに含む。
【0064】
第9の実施形態のさらなる態様において、前記化合物Aの製造方法は、上記段階(a)の前記結果的に得られる混合物を加熱して約40~約85℃として、化合物Aを含む溶液を製造する段階を含む。
【0065】
第9の実施形態のさらなる態様において、前記化合物Aの製造方法は、
a)前記結晶化溶媒として水を加えて化合物Aを含むスラリーを製造する段階;
b)前記スラリーを冷却し、酢酸を加えてpHを約11~約4に調節する段階;及び
c)前記スラリーを濾過して、化合物Aを固体として得る段階
をさらに含む。
【0066】
本発明の実施形態において、本開示のプロセスは、「ワンポット」プロセスとして単一容器内で実施されてもよいか、段階を順次行っても良い。明瞭を期して、留意すべき点として、具体的に別断の指定がない限り、本発明の段階及び反応は同時又は順次に行うことができる。実施形態において、中間体生成物を単離しても良い。やはり留意すべき点として、有機溶媒などのある用語が複数回使用される場合、各場合での定義は事前の選択とは独立している。例えば、以前の選択とは独立に、プロセスの各段階について、同一又は異なる有機溶媒を選択することができる。
【0067】
定義
特定の技術用語及び科学用語を下記で具体的に定義する。本書類中のどこかで具体的に定義されないかぎり、本明細書中で用いられる全ての他の技術用語及び科学用語は、本開示が関係する技術分野の当業者により共通に理解される意味を持つ。すなわち、本明細書で用いられる用語はその通常の意味を有し、それの各場合において独立している。それにもかかわらず、別段の記述がある場合を除き、以下の定義が本明細書全体及び特許請求の範囲に適用される。化学名、一般名及び化学構造は、同じ構造を説明するのに互換的に用いられることがあり得る。ある化合物が化学構造及び化学名の両方を使用して参照され、構造と名称の間に曖昧さが存在する場合、構造が優先する。これらの定義は、別段の断りがない限り、用語が単独で使用されているか、他の用語と組み合わせて使用されているかに関係なく適用される。
【0068】
用語「例えば(e.g.)」又は「例えば(for example)」に続くあらゆる例は、網羅的又は限定的であることを意味するものではない。
【0069】
本明細書及び本開示全体を通じて使用される場合、以下の用語は、別断の断りがない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0070】
本明細書で使用される場合、「式(I)の化合物」、「化合物(I)」、及び「化合物A」という表現は、同じ化合物を指し、互換的に使用することができる。
【0071】
添付の特許請求の範囲を包含する本明細書中で用いられる場合、言葉の単数形、例えば「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「その(the)」などは、文脈によって他の形で明瞭に記載されていない限り、それらの対応する複数形の言及を包含する。
【0072】
本明細書で使用される場合、「少なくとも一つの」品目又は「1以上の」品目という用語はそれぞれ、リストから選択される単一の品目並びにリストから選択される2以上の品目の混合物を含む。
【0073】
反する内容が明瞭に記載されていない限り、本明細書に挙げられている全ての範囲は包括的である。すなわち、その範囲は、その範囲の上限及び下限についての値、並びに中間にある全ての値を含む。全ての範囲が、全ての包含される下位範囲を含むものでもあるが、必ずしも明瞭に記載されているとは限らない。1例として、本明細書に記載される温度範囲、パーセント、均等物の範囲などには、その範囲の上限及び下限、及びその間の連続するあらゆる値が含まれる。本明細書で提供される数値、及び「約」という用語の使用には、±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、及び±10%の変動、及びそれらの等価数値が含まれ得る。数値的に定義されるパラメータ(例えば、本明細書に記載の温度又は反応時間の長さ)を修正するために使用される場合に、「約」は、そのパラメータが記載された数値よりも最大10%上下に変動し得ることを意味し、適切な場合には、言及されるパラメータは最も近い整数の四捨五入されても良い。例えば、約30℃の温度は、25℃と35℃の間で変動する可能性がある。さらに、本明細書で使用される「又は」という用語は、適切な場合には組み合わせることができる代替物を意味する。すなわち、「又は」という用語には、列記された各選択肢が別個に含まれる。
【0074】
本明細書で使用される場合、化合物2は、本明細書ではシレン(Cyrene)又は(1S,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-オンとも称され得る。化合物3は、本明細書では(1S,4R,5S)-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミンと称されることもある。化合物3aは、本明細書では(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネートと称されることもある。化合物3bは、本明細書では(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミニウム塩酸塩と称されることもある。化合物4aは、本明細書では、(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネートと称されることもある。化合物4bは、本明細書では、(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウム塩酸塩と称されることもある。化合物5は、本明細書では、5-ブロモ-4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンと称されることもある。化合物6は、本明細書では、メチル2-クロロ-4-フェノキシベンゾエートと称されることもある。化合物7は、本明細書では、(2-クロロ-4-フェノキシフェニル)(4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)メタノンと称されることもある。式Iの化合物、化合物Aは、本明細書では、(2-クロロ-4-フェノキシフェニル)(4-{[(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-イル]アミノ}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)メタノンと称されることもある。
【0075】
医学で使用する場合、本明細書に記載の化合物の塩は、薬学的に許容される塩である。しかしながら、他の塩も、本発明による化合物又は薬学的に許容されるその塩の製造に有用であり得る。本発明の化合物が酸性である場合、好適な「薬学的に許容される塩」は、無機塩基及び有機塩基を含む薬学的に許容される無毒性塩基から製造される塩を指す。無機塩基の例としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、亜マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛、及び類似の塩などがある。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。
【0076】
薬学的に許容される有機無毒性塩基から誘導される塩には、1級、2級及び3級アミン、置換アミン、例えば天然置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N-ジベンジルエチレン-ジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチル-モルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩などがある。
【0077】
本発明の化合物が塩基性である場合、塩は、薬学的に許容される無毒性の酸、例えば無機及び有機酸から製造することができる。そのような酸には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ムコ酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などがある。そのような酸のさらなる例には、アリールスルホン酸類、例えばp-トルエンスルホン酸、3-メチル-トルエンスルホン酸、2-メチル-トルエンスルホン酸、p-ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、2,6-ナフタレンスルホン酸、並びに塩酸、臭化水素酸塩、硫酸、酢酸、フェニル酢酸、トリメチル酢酸、テトラフルオロホウ酸、テトラフェニルホウ酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸又はカンファースルホン酸などがあるが、これらに限定されるものではない。具体例は、クエン酸、臭化水素酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。好ましいものは、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及び塩酸である。
【0078】
上記の薬学的に許容される塩及び他の代表的な薬学的に許容される塩の製造については、Berg et al., “Pharmaceutical Salts,” J. Pharm. Sci., 1977:66:1-19によってより詳細に記載されている。
【0079】
本明細書における1種類以上の化合物は、溶媒和されていない形態、並びに薬学的に許容される溶媒(例えば、水、エタノールなど)と溶媒和された形態で存在し得るものであり、この開示は、溶媒和された形態と溶媒和されていない形態との両方を包含することを意図する。「溶媒和物」は、ある化合物と1以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、種々の度合のイオン結合及び共有結合(例えば、水素結合)を伴う。この態様の特定の場合では、溶媒和物は、例えば、1以上の溶媒分子が結晶性固形物の結晶格子内に組み込まれている場合、単離が可能なものである。「溶媒和物」は、液相と単離可能な溶媒和物との両方を包含する。好適な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノラート、メタノラートなどが挙げられる。「水和物」は、溶媒分子がHOである溶媒和物である。
【0080】
本開示はさらに、すべての単離された形態の化合物及び合成中間体を含む。例えば、同定された化合物は、それの溶媒和物、水和物、立体異性体、及び互変異体などの化合物のすべての形態を包含することが意図される。
【0081】
当業者は、特定の化合物、特に特定のヘテロ原子及び二重結合若しくは三重結合を含む化合物が、容易に相互変換する互変異体、構造異性体であり得ることを認識するであろう。一般的な互変異体対は、ケトン-エノール、アミド-ニトリル、ラクタム-ラクチム、複素環(例、グアニン、チミン、シトシンなどの核酸塩基)でのアミド-イミド酸互変異性、アミン-エナミン及びエナミン-イミンである。(ピロロピリミジニル)メタノン-(ピロロピリミジニル)メタノール互変異体対が、本出願に含まれる。
【化19】
【0082】
当業者は、本明細書に提示される化合物などのキラル化合物が、等価である多くの異なる形で描画できることを認識するであろう。
【0083】
「アルキル」という用語は、炭素原子及び水素原子のみからなり、不飽和を全く含まない直鎖若しくは分岐の炭化水素鎖基を指す。アルキルは、別断の断りがない限り、1~10個の炭素原子を含むことができる(例えば、C-C10アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~8個の炭素原子を含む(例えば、C-Cアルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~4個の炭素原子を含む(例えば、C-Cアルキル)。他の実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はペンチルから選択される。他の実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、1-プロピル(n-プロピル)、1-メチルエチル(n-プロピル)、1-ブチル(n-ブチル)、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(4-ブチル)、1,1-ジメチルエチル(n-ブチル)又は1-ペンチル(n-ペンチル)から選択される。他の実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル又はブチルから選択される。他の実施形態では、アルキルはメチルである。
【0084】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、各環が最大7員であり、少なくとも一つの環が芳香族である安定な単環式又は二環式炭素環を意味することを意図するものである。そのようなアリール要素の例には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントリル又はアセナフチルなどがある。本発明の1実施形態では、アリールはフェニル又はナフチルである。1実施形態では、アリールはフェニルである。
【0085】
本明細書で使用される場合、補因子という用語は、トランスアミナーゼ酵素と組み合わせて作用する非タンパク質化合物を指す。本明細書に記載の改変トランスアミナーゼ酵素との使用に適した補因子には、ピリドキサール5′-リン酸(PLP)又はピリドキサミン5′-リン酸(PMP)など(これらに限定されるものではない)のビタミンB6ファミリーからの化合物などがある。一部の実施形態では、補因子はピリドキサール5′-リン酸・1水和物である。
【0086】
本明細書で使用される場合、緩衝液は、液体混合物に添加されると、液体混合物のpHを一定の値に維持するように機能する溶液を指す。本発明の実施形態では、緩衝液は、四ホウ酸ナトリウム水溶液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液(「トリス」)、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタン水溶液(「ビス-トリス」)、トリエタノールアミン水溶液(TEOA)、リン酸カリウム水溶液、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸水溶液(HEPES)、又は2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸水溶液(TES)から独立に選択される。さらなる実施形態では、緩衝溶液は、四ホウ酸ナトリウム水溶液又はリン酸カリウム水溶液から独立に選択される。
【0087】
本明細書で記載のトランスアミナーゼ酵素は、本明細書において配列番号1として示される市販のトランスアミナーゼである酵素1からの指向進化の産物である(Yasuda, N.; Cleator, E.; Kosjek, B.; Yin, J.; Xiang, B. et al. Org. Process Res. Dev. 2017, 21, 1851-1858;PCT公開WO2010/099501及びWO2013/036861及びUS特許第9,109,209号に記載)。酵素1(配列番号1)は、Codexis, Inc., Redwood City, Californiaから凍結乾燥無細胞溶解物として市販されている。トランスアミナーゼ酵素は、ケトンからアミンへの立体選択的還元を触媒することができる。本明細書で使用される場合、トランスアミナーゼ酵素は、凍結乾燥無細胞溶解物、粗溶解物、全細胞タンパク質、無細胞溶解物、又は精製酵素であることができる。
【0088】
実施形態において、本明細書に記載のトランスアミナーゼ酵素は、参照トランスアミナーゼアミノ酸配列(酵素1-配列番号1)と比較して、1以上のアミノ酸の違いを有し得るアミノ酸配列を有する。本発明で使用されるトランスアミナーゼ酵素は、配列番号1と実質的な同一性を有するアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、トランスアミナーゼ酵素は、配列番号1と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。本明細書に記載のトランスアミナーゼ酵素には、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、6、7又は8を有する酵素1、2、3、4、5、6、7又は8のものなどがあるが、これらに限定されるものではない。酵素2から酵素8は、同日に同時出願された別の共有特許出願に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
本発明において有用なトランスアミナーゼ酵素のさらなる例は、PCT公開WO2010/099501、WO2012024104及びWO2013036861にも記載されており、特にはWO2010/099501からの配列番号74及び102、及びWO2012/024104からの配列番号206、並びにその刊行物によって網羅させる他のものである。本発明の一部の実施形態では、トランスアミナーゼ酵素は、酵素1(配列番号1)又は酵素6(配列番号6)から選択される。本発明の実施形態では、本明細書に記載のトランスアミナーゼ酵素には、配列番号1で下記に示すアミノ酸配列を有する酵素1を含む。
【0090】
MAFSADTPEIVYTHDTGLDYITYSDYELDPANPLAGGAAWIEGAFVPPSEARISIFDQGFYTSDATYTVFHVWNGNAFRLGDHIERLFSNAESIRLIPPLTQDEVKEIALELVAKTELREAIVWVAITRGYSSTPLERDVTKHRPQVYMYAVPYQWIVPFDRIRDGVHLMVAQSVRRTPRSSIDPQVKNFAAGDLIRAIQETHDRGFELPLLLDFDNLLAEGPGFNVVVIKDGVVRSPGRAALPGITRKTVLEIAESLGHEAILADITPAELRDADEVLGCSTAGGVWPFVSVDGNSISDGVPGPVTQSIIRRYWELNVEPSCLLTPVQY(配列番号:1)。
【0091】
実施形態では、本明細書に記載のトランスアミナーゼ酵素には、配列番号2で下記に示すアミノ酸配列を有するトランスアミナーゼ酵素2を含む。
【0092】
MAFSLDTPEIVYTHDTGLDYITYSDYELDPANPLAGGAAWIEGAFVPPSEARISIFDQGFYTSDATYTVFHVWNGNAFRLGDHIERLFSNAESIRLIPPLTQDEVKEIALELVAKTELREAIVWVAITRGYSSTPLERDVTKHRPQVYMYAVPYQWIVPFDRIRDGVHLMVAQSVRRTPRSSIDPQVKNFAAGDLIRAIQETHDRGFELPLLLDFDNLLAEGPGFNVVVIKDGVVRSPGRAALPGITRKTVLEIAESLGHEAILADITPAELRDADEVLGCSTAGGVWPFVSVDGNSISDGVPGPVTQSIIRRYWELNVEPSCLLTPVQY(配列番号2)。
【0093】
実施形態では、本明細書に記載のトランスアミナーゼ酵素には、配列番号3で下記に示すアミノ酸配列を有するトランスアミナーゼ酵素3を含む。
【0094】
MAFSLDTPEIVYTHDTGLDYITYSDYELDPANPLAGGAAWIEGAFVPPSEARISVFDQGFYTSDATYTVFHVWNGNAFRLGDHIERLFSNAESIRLIPPLTQDEVKEIALELVAKTELREAMVWVAITRGYSSTPLERDVTKHRPQVYMYAVPYQWIVPFDRIRDGVHLMVAQSVRRTPRSSIDPQVKNFAAGDLIRAIQETHDRGFELPLLLDHDNLLAEGPGFNVVVIKDGVVRSPGRAALPGITRKTVLEIARSLGHEAILADITPAELRDADEVLGCSTAGGVWPFVSVDGNSISDGVPGPVTQSIIRRYWELNVEPSCLLTPVQY(配列番号3)。
【0095】
実施形態では、本明細書に記載のトランスアミナーゼ酵素には、配列番号4で下記に示すアミノ酸配列を有するトランスアミナーゼ酵素4を含む。
【0096】
MAFSLDTPEIVYTHDTGLDYITYSDYELDPANPLAGGAAWIEGAFVPPSEARISVFDQGFYTSDATYTVFHVWNGNAFRLGDHIERLFSNAESIRLIPPLTQDEVKEIALELVAKTELREAMVWVAITRGYSSTPLERDVTKHRPQVYMYAVPYQWIVPFDRIRDGVHLMVAQSVRRTPRSSIDPQVKNFASIDLIRAIQETHDRGFELPLLLDHDNLLAEGPGFNVVVIKDGVVRSPGRAALPGITRKTVLEIAESLGHEAMLADITPAELRDADEVLGCSTAGGVWPFVSVDGNSISDGVPGPVTQSIIRRYWELNVEPSCLLTPVQY(配列番号4)。
【0097】
実施形態では、本明細書に記載のトランスアミナーゼ酵素には、配列番号5で下記に示すアミノ酸配列を有するトランスアミナーゼ酵素5を含む。
【0098】
MAFSLDTPEIVYTHDTGLDYITYSDYELDPANPLAGGAAWIEGAFVPPSEARISVFDQGFYTSDATYTAFHVWNGNAFRLGDHIERLFSNAESIRLIPPLTQDEVKEIALELVAKTELREAMVWVAITRGYSSTPLERDVTKHRPQVYMYAVPYQWIVPFDRIRDGVHLMVAQSVRRTPRSSIDPQVKNFASIDLIRAIQETHDRGFELPLLLDHDNLLAEGPGFNVVVIKDGVVRSPGRAALPGITRKTVLEIAESLGHEAMLADITPAELRDADEVLGCSTAGGVWPFVSVDGNSISDGVPGPVTQSIIRRYWELNVEPSCLLTPVQY(配列番号5)。
【0099】
実施形態では、本明細書に記載のトランスアミナーゼ酵素には、配列番号6で下記に示すアミノ酸配列を有するトランスアミナーゼ酵素6を含む。
【0100】
MAFSLDTPEIVYTHDTGLDYITYSDYELDPANPLAGGAAWIEGAFVPVSEARISVFDQGFYASDATYTAFHVWNGNAFRLGDHIERLWSNAESIRLIPPLTQDEVKEIALELVAKTELREAMVGVAITRGYSSTPLERDVTKHRPQVYMYAVPYQWIVPFDRIRDGVHLMVAQSVRRTPRSSIDPQVKNFASIDLIRAIQETHDRGFELPLLLDHDNLLAEGPGFNVVVIKDGVVRSPGRAALPGITRKTVLEIARSLGHEAMLADITPAELRDADEVLGCSTAGGVWPFVSVDGNSISDGVPGPVTQSIIRRYWELNVEPSCLLTPVQY(配列番号6)。
【0101】
実施形態では、本明細書に記載のトランスアミナーゼ酵素には、配列番号7で下記に示すアミノ酸配列を有するトランスアミナーゼ酵素7を含む。
【0102】
MAFSLDTPEIVYTHDTGLDYITYSDYELDPANPLAGGAAWIEGAFVPVSEARISVFDQGFYASDATYTAFHVWNGNAFRLGDHIERLWSNAESIRLIPPLTQDEVKEIALELVAKTELREAMVGVVITRGYSSTPLERDVTKHRPQVYMYAIPYQWIVPFDRIRDGVHLMVAQSVRRTPRSSIDPQVKNFASIDLIRAIQETHDRGFELPLLLDHDNLLAEGPGFNVVVIKDGVVRSPGRAALPGITRKTVLEIARSLGHEAMLADITPAELRDADEVLGCSTAGGVWPFVSVDGNSISDGVPGPVTQSIIRRYWELNVEPSCLLTPVQY(配列番号7)。
【0103】
実施形態では、本明細書に記載のトランスアミナーゼ酵素には、配列番号8で下記に示すアミノ酸配列を有するトランスアミナーゼ酵素8を含む。
【0104】
MAFSLDTPEIVYTHDTGLDYITYSDYELDPANPLAGGAAWIEGAFVPPSEARISVFDQGFYTSDATYTAFHVWNGNAFRLGDHIERLFSNAESIRLIPPLTQDEVKEIALELVAKTELREAMVWVAITRGYSSTPLERDVTKHRPQVYMYAVPYQWIVPFDRIRDGVHLMVAQSVRRTPRSSIDPQVKNFAAGDLIRAIQETHDRGFELPLLLDHDNLLAEGPGFNVVVIKDGVVRSPGRAALPGITRKTVLEIARSLGHEAILADITPAELRDADEVLGCSTAGGVWPFVSVDGNSISDGVPGPVTQSIIRRYWELNVEPSCLLTPVQY(配列番号8)。
【0105】
本発明の実施形態では、無機塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム又はリン酸カリウムから独立に選択される。さらなる実施形態では、無機塩基は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから独立に選択される。
【0106】
本発明の実施形態では、溶媒は、2-メチルTHF、THF、MTBE、CPME、トルエン、アニソール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル(IPAc)、又はC-C10アルキルアルコール、例えば、n-ブタノールから独立に選択される。さらなる実施形態では、溶媒は、2-メチルTHF、MTBE又はIPAcから選択される。一部の実施形態では、溶媒は2-メチルTHFである。
【0107】
本発明の一部の実施形態では、無機塩は、炭酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選択される。さらなる実施形態では、無機塩は炭酸カリウム又はリン酸カリウムである。
【0108】
本発明の一部の実施形態では、酸は、アリールスルホン酸類、例えば、限定されないが、p-トルエンスルホン酸、3-メチルトルエンスルホン酸、2-メチルトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、2,6-ナフタレンスルホン酸、並びに塩酸、臭化水素酸、硫酸、酢酸、フェニル酢酸、トリメチル酢酸、テトラフルオロホウ酸、テトラフェニルホウ酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、又はカンファースルホン酸(これらに限定されるものではない)から独立に選択される。さらなる実施形態では、酸は、p-トルエンスルホン酸又は塩酸から独立に選択される。
【0109】
本発明の一部の実施形態では、塩酸(有機溶媒中)は、1,4-ジオキサン中の塩酸、ジエチルエーテル中の塩酸、CPME中の塩酸、又は37%塩酸水溶液から独立に選択されるが、これらに限定されるものではない。或いは、塩酸は、塩化トリメチルシリル又は塩化アセチルをメタノール又はエタノールと混合することによって、有機溶媒中でイン・サイツで調製することもできる。
【0110】
本発明の実施形態では、塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン、DBU、DBN、DABCO、ピリジン、及び2,6-ルチジン及び2-メチルピリジンなどのピリジン誘導体、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムから独立に選択される。一部の実施形態では、塩基はDIPEAである。
【0111】
本明細書に記載のように、「固定化」又は「固定化された」という用語は、酵素と固体支持体との間の共有結合的又は非共有結合的相互作用、多孔質基体若しくはポリマー内での酵素のカプセル化、酵素の架橋による不溶性凝集体の形成、及び当業者に公知である同様の技術を指す。このような相互作用には、水素結合、イオン又は静電相互作用、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、静電相互作用、π-π相互作用、親水性相互作用、配位的相互作用、生体特異的又はアフィニティ相互作用、共有結合的相互作用、それらの組み合わせなどがある。
【0112】
「固体支持体」又は「樹脂」という用語は、固定化支持体の固体材料組成物を指す。その固体材料は有機又は無機であることができる。固体材料の物理特性及び形状には、多孔度、形状又は形態、形状因子(粒子、モノリス)、かさ密度、架橋密度、粒径、孔径、孔径分布、粒子又は形状の分布、又は当技術分野で公知の他の特性などの特徴などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
固体支持体用の材料が無機である場合、それは固体として形成され、当技術分野で公知の適切な鉱物、セラミック、金属、又は他の無機材料から構成される。例として、無機固体材料には、ガラス、シリカ、ヒドロキシアパタイト、活性アルミナ、珪藻土(Celite(登録商標))、ケイ酸マグネシウム(Florisil(登録商標))、二酸化チタン、酸化鉄、アルミノケイ酸塩、これらの混合物及びそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
固体支持体用の材料が有機である場合、それは固体として形成され、当技術分野で公知の適切な有機ポリマーから構成される。例として、有機固体材料には、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリジビニルベンゼン、ビニル系モノマーから形成されたポリマー、ヒドロキシエチルメタクリレートとジビニルベンゼンのコポリマー、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、アクリルアミドとビニルモノマーのコポリマー、メタクリレートとジビニルベンゼンのコポリマー、フェノール-ホルムアルデヒドのコポリマー、アガロース、キトサン、セルロース、デキストラン、活性炭、これらの混合物及びそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
他の例では、固体支持体材料組成物は、有機成分と無機成分の両方の組み合わせを含有することができ、当技術分野で公知の無機材料及び有機材料からなる固体として形成される。例として、そのような材料には、ガラス、シリカ、ヒドロキシアパタイト、活性アルミナ、珪藻土(Celite(登録商標))、ケイ酸マグネシウム(Florisil(登録商標))、二酸化チタン、酸化鉄、アルミノケイ酸塩、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリジビニルベンゼン、ビニル系モノマーから形成されたポリマー、ヒドロキシエチルメタクリレートとジビニルベンゼンのコポリマー、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、アクリルアミドとビニルモノマーのコポリマー、メタクリレートとジビニルベンゼンのコポリマー、フェノール-ホルムアルデヒドのコポリマー、アガロース、セルロース、デキストラン、活性炭、これらの混合物及びそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
固体支持体の組成物は、酵素と樹脂との間の共有結合的又は非共有結合的相互作用を促進するために樹脂表面に同一又は異なる機能性を付与する追加の反応性種又は配位子をゼロ個、1個又は複数含んでいてもよい。例として、反応性種又は配位子には、強イオン交換体、弱イオン交換体、多モード配位子、修飾剤、及び疎水性修飾剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの官能基などがあるが、これらに限定されるものではない。より具体的な例では、少なくとも一つの配位子は、アミン、四級アンモニウム、スルホン酸、カルボン酸、スルホプロピル、スルホン酸メチル、ジエチルアミノエチル、カルボキシメチル、ヘキシルアミン、エチルアミン、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、トリスカルボキシメチルエチレンジアミン、(C-C)アルキル、オクタデシル、(C30)アルキル、ブチルジメチル、ビフェニル、ペンタフルオロプロピル、シアノプロピル、アミノプロピル、アリール、ビオチン、デスチオビオチン、チオール、アミド、アルコキシ、アセタール、ケタール、エステル、無水物、カルボニル、ニトリル、エポキシ、カルボキシアミド、アンモニウム、ヨード、フェノリック、イミダゾリル、モルホリニル、ピリジル、フェニル、スルフィド、ジスルフィド、スルフヒドリルケトン、アシルクロリド、イミン、ニトリル、アニリノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシル、マレイミド、ヨードアセチル、トリアジン、スルホネート、アルキルアミン、ジオール、ヒドラジド、ヒドラジン、アズラクトン、アルデヒド、ジアゾニウム、カルボキシレート、アジド、ビニルスルホン、エポキシド、及びオキシラン基、及びそれらの組み合わせなどからなる群から選択される。さらにより具体的な例では、前の群から選択される少なくとも一つの配位子は、前の群の配位子に同一又は異なる機能性を付与するために含まれるホモ二官能性又はヘテロ二官能性のスペーサーアームによって樹脂に連結される。スペーサーアームは当技術分野で公知であり、1以上のヘテロ原子、芳香族基、アルキル芳香族基、アミド基、アミノ基、尿素基、カルバメート基、エーテル基、チオエーテル基など、及びそれらの組み合わせを組み込むことができる(C-C20)アルキレン基などがあるが、これらに限定されるものではない。さらにより具体的な例では、スペーサーアームは、エチレンジアミン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、ジアミノジプロピルアミン(DADPA)、シスタミン、1,6-ジアミノヘキサン、O-(2-アミノプロピル)-O′-(2-メトキシエチル)ポリプロピレングリコール、例えばJeffamine(商標名) ED-600、非立体障害ジアミン、例えばJeffmine(商標名) EDR-148ポリエーテルアミン、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、Boc-N-アミド-dPEG11-アミン、Boc-N-アミド-dPEG-アミン、β-アラニン、アミノカプロン酸、アミノ-PEG-カルボキシレート化合物(nは2~20である)、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、無水グルタル酸、ジグリコール酸、無水ジグリコール酸、チオグリコール酸、N-スクシンイミジルS-アセチルチオ酢酸、N-スクシンイミジルS-アセチルチオプロピオネート、N-アセチルホモシステインチオラクトン、8-メルカプトオクタン酸、α-リポ酸、リポアミド-PEG-カルボキシレート化合物(nは2~20である)、チオール-PEG-カルボキシレート化合物(nは2~20である)、NHS-PEG-アセチル化チオール化合物、ジチオスレイトール(DTT)(nは2~20である)、テトラ(エチレングリコール)ジチオール、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、ポリ(エチレングリコール)ジチオール、2-メルカプトエチルアミン、アジピン酸ジヒドラジド及びカルボヒドラジドからなる群から選択される1以上である。
【0117】
1態様では、トランスアミナーゼ酵素は固体支持体上又は固体支持体内に固定化される。
【0118】
一部の実施形態では、トランスアミナーゼ酵素は、非共有結合によってポリマー樹脂上に固定化される。ポリマー樹脂としては、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン-ジビニルベンゼン、又はメタクリレート-ジビニルベンゼンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。樹脂は、Diaion(登録商標) Hp2mgl、Diaion(登録商標) SP2mgl、Purolite(登録商標) PAD950、Purolite(登録商標) ECR1090F、Amberlite(登録商標) XAD7HP、Chiralvision(登録商標) IB-ADS-1、Diaion(登録商標) HP-20などから選択することができる。
【0119】
1実施形態では、トランスアミナーゼ酵素は、弱イオン交換体及び強イオン交換体からなる群から選択される少なくとも一つの反応性配位子又は官能基を含む樹脂上に非共有結合によって固定化される。本明細書に記載されるように、反応性配位子は、四級アンモニウム基、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム、トリエチルアンモニウム基、ジメチルアンモニウム基、一級アミン基、二級アミン基、三級アミン基、スルホン酸、カルボン酸、ジエチルアミノメチル、カルボキシメチル、四級アンモニウム、スルホプロピル、スルホン酸メチル、ジエチルアミノエチル、カルボキシメチル、ヘキシルアミン、及びエチルアミン、又は直鎖状一級脂肪族アミンからなる群から選択される。1実施形態では、反応性配位子は、ヘキシルアミン又はエチルアミンからなる群から選択される。他の例では、樹脂は、Purolite(登録商標) ECR8304、Purolite(登録商標) ECR8309、Purolite(登録商標) ECR8315、Purolite(登録商標) ECR8404、Purolite(登録商標) ECR8409、Purolite(登録商標) ECR8415、Purolite(登録商標) ECR1508、Resindion(登録商標) EC-HG、Resindion(登録商標) EC-EA、Resindion(登録商標) EC-HA、Resindion(登録商標) QA、Resindion(登録商標) HFA113、Resindion(登録商標) HFA403、Resindion(登録商標) EA403、Resindion(登録商標) HA403、Resindion(登録商標) QA403からなる群から選択される。
【0120】
一部の実施形態では、トランスアミナーゼ酵素は、イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、トリスカルボキシメチルエチレンジアミン(TED)、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのキレート配位子を含む少なくとも一つの樹脂上に固定化される。1実施形態では、少なくとも一つのキレート配位子はNTAである。別の実施形態では、トランスアミナーゼ酵素は、Fe2+、Cu2+、Mg2+、Zn2+、Co2+及びNi2+からなる群から選択される少なくとも一つの金属イオンを含む、少なくとも一つのキレート配位子を含む少なくとも一つの樹脂上に固定化される。
【0121】
1実施形態では、トランスアミナーゼ酵素は、非イオン性配位子、イオン性配位子、疎水性配位子、親水性配位子、芳香族配位子、複素環基又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの反応性配位子又は官能基を含む樹脂上に非共有結合によって固定化される。1実施形態では、露出配位子は、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、メチル、エチルブチル、オクチル、オクタデシル、シアノプロピル、ペンチル、ヘキシル、アリール、オクタデシル、t-ブチル、カルボン酸、スルホン酸、アミド、アルキルチオール、又はアミン、ピリジル、イミダゾリル、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される官能基配位子又は官能基を含む。例として、配位子には、アルキルアミン、α,ω-ジアミノアルカン、フェニルアルキルアミン、2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール、N-ベンジル-N-メチルエタノールアミン、4-メルカプトエチルピリジン、2-アミノメチルピリジン、メルカプトメチルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、トリプタミン、5-アミノインドール、アミノアルキルカルボン酸、N-(3-カルボキシプロピオニル)アミノデシルアミン、N-ピロメリチルアミノデシルアミン、2-ベンズアミド-4-メルカプトブタン酸、2-メルカプト-5-ベンゾイミダゾールスルホン酸、6-アミノ-4-ヒドロキシ-2-ナフタレンスルホン酸、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、ヘキシルアミンなど、及びそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。他の例では、樹脂は、Purolite(登録商標) ECR8806、Purolite(登録商標) ECR1030、Resindion(登録商標) RB1、Resindion(登録商標) RB2、Resindion(登録商標) RB3、Resindion(登録商標) BU113、Resindion(登録商標) BU114、Resindion(登録商標) PH400、Resindion(登録商標) EC-BU、Chiralvision(登録商標) IB-ADS-4などからなる群から選択される。
【0122】
一部の実施形態では、トランスアミナーゼ酵素は、さらに反応することができる少なくとも一つの露出配位子を含む少なくとも一つの樹脂上に共有結合によって固定化される。1実施形態では、露出配位子は、アリール、ビオチン、デスチオビオチン、チオール、アミン、アミド、アルコキシ、アセタール、ケタール、エステル、無水物、カルボニル、ニトリル、エポキシ、カルボキシアミド、アンモニウム、ヨード、フェノリック、イミダゾリル、モルホリニル、ピリジル、フェニル、スルフィド、ジスルフィド、スルフヒドリルケトン、アシルクロリド、イミン、ニトリル、アニリノ、ニトロ、ハロ、アルキル、ヒドロキシル、マレイミド、ヨードアセチル、トリアジン、スルホネート、アルキルアミン、ジオール、ヒドラジド、ヒドラジン、アズラクトン、アルデヒド、ジアゾニウム、カルボキシレート、アジド、ビニルスルホン、エポキシド、及びオキシラン基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される官能基配位子又は官能基を含む。他の例では、樹脂は、Chiralvision(登録商標) IB-COV-1、Chiralvision(登録商標) IB-COV-2、Purolite(登録商標) ECR8204、Resindion(登録商標) EC-EP、Resindion(登録商標) EC-HFA、Resindion(登録商標) HFA403などからなる群から選択される。別の実施形態では、配位子をホモ二官能性又はヘテロ二官能性のスペーサーアームとさらに反応させて、同一又は異なる官能性を付与することができる。スペーサーアームは当技術分野で周知であり、1以上のヘテロ原子を組み込んでいても良い(C2-C20)アルキレン基、芳香族基、アルキル芳香族基、アミド基、アミノ基、尿素基、カルバメート基、エーテル基、チオエーテル基など及びそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。1実施形態では、スペーサーアームは、エチレンジアミン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、ジアミノジプロピルアミン(DADPA)、シスタミン、1,6-ジアミノヘキサン、O-(2-アミノプロピル)-O′-(2-メトキシエチル)ポリプロピレングリコール(Jeffamine(商標名) ED-600など)、非立体障害ジアミン(Jeffmine(商標名) EDR-148ポリエーテルアミンなど)、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、Boc-N-アミド-dPEG11-アミン、Boc-N-アミド-dPEG-アミン、β-アラニン、アミノカプロン酸、アミノ-PEG-カルボキシレート化合物(nは2~20である)、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、無水グルタル酸、ジグリコール酸、無水ジグリコール酸、チオグリコール酸、N-スクシンイミジルS-アセチルチオ酢酸、N-スクシンイミジルS-アセチルチオプロピオネート、N-アセチルホモシステインチオラクトン、8-メルカプトオクタン酸、α-リポ酸、リポアミド-PEG-カルボキシレート化合物(nは2~20である)、チオール-PEG-カルボキシレート化合物(nは2~20である)、NHS-PEG-アセチル化チオール化合物、ジチオスレイトール(DTT)(nは2~20である)、テトラ(エチレングリコール)ジチオール、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、ポリ(エチレングリコール)ジチオール、2-メルカプトエチルアミン、アジピン酸ジヒドラジド及びカルボヒドラジドからなる群から選択される1以上である。
【0123】
別の態様では、トランスアミナーゼ酵素は別の酵素に架橋されている。具体的な例では、トランスアミナーゼ酵素は別のトランスアミナーゼ酵素に共有結合的に架橋されている。より具体的な例では、この架橋は、酵素をホモ二官能性又はヘテロ二官能性のスペーサーアームと反応させて同一又は異なる官能性を付与することが介在している。スペーサーアームは当技術分野で周知であり、1以上のヘテロ原子を組み込んでいても良い(C2-C20)アルキレン基、芳香族基、アルキル芳香族基、アミド基、アミノ基、尿素基、カルバメート基、エーテル基、チオエーテル基など及びそれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。1実施形態では、スペーサーアームは、エチレンジアミン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、ジアミノジプロピルアミン(DADPA)、シスタミン、1,6-ジアミノヘキサン、O-(2-アミノプロピル)-O′-(2-メトキシエチル)ポリプロピレングリコール(Jeffamine(商標名) ED-600など)、非立体障害ジアミン(Jeffmine(商標名) EDR-148ポリエーテルアミンなど)、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、Boc-N-アミド-dPEG11-アミン、Boc-N-アミド-dPEG-アミン、β-アラニン、アミノカプロン酸、アミノ-PEG-カルボキシレート化合物(nは2~20である)、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、無水グルタル酸、ジグリコール酸、無水ジグリコール酸、チオグリコール酸、N-スクシンイミジルS-アセチルチオ酢酸、N-スクシンイミジルS-アセチルチオプロピオネート、N-アセチルホモシステインチオラクトン、8-メルカプトオクタン酸、α-リポ酸、リポアミド-PEG-カルボキシレート化合物(nは2~20である)、チオール-PEG-カルボキシレート化合物(nは2~20である)、NHS-PEG-アセチル化チオール化合物、ジチオスレイトール(DTT)(nは2~20である)、テトラ(エチレングリコール)ジチオール、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、ポリ(エチレングリコール)ジチオール、2-メルカプトエチルアミン、アジピン酸ジヒドラジド及びカルボヒドラジドからなる群から選択される1以上である。
【0124】
本明細書で使用する場合、アミノ基転移溶媒とは、トランスアミナーゼ酵素によって触媒されるケトンからアミンへの還元を助けるために使用される有機溶媒を指す。本発明の実施形態では、アミノ基転移溶媒は、2-メチルTHF、THF、MTBE、CPME、トルエン、酢酸エチル、IPAc、DMSO、IPA、アセトニトリル、DMF、NMP又はDMAcから独立に選択される。一部の実施形態では、アミノ基転移溶媒は、2-メチルTHF又はIPAcから独立して選択される。
【0125】
含水アミノ基転移溶媒とは、溶媒の含水量を増加させるために水を添加したアミノ基転移溶媒を指す。一部の実施形態では、含水アミノ基転移溶媒は、含水2-メチルTHF又はIPAcから独立に選択される。
【0126】
本明細書で使用される場合、「水飽和点」という語句は、所与の溶媒がそれ以上の水を吸収又は溶解できなくなる点を指す。例えば、一つの均一溶液である有機溶媒の場合、水の飽和点を超えると、水層と有機層の二相が観察されることになる。
【0127】
本発明の実施形態では、連続反応系を用いる。連続反応系の例としては、充填床反応器(PBR)、固定床反応器、移動床反応器、回転床反応器、流動床反応器、スラリー反応器、バッチ撹拌槽反応器、連続撹拌槽反応器、膜反応器、チューブインチューブ反応器、モノリス反応器、微細構造反応器、流動床反応器などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
固定化は、当業者に知られている各種方法を使用して実施することができる。これらの方法は、上記で定義のバッチ反応器又は連続反応系など(これらに限定されるものではない)の反応器構成において、トランスアミナーゼ酵素を固体支持体と組み合わせることを含む。
【0129】
本明細書で使用される場合、弱配位性溶媒とは、弱ルイス塩基性ヘテロ原子を含み得る溶媒を指す。本発明の実施形態では、弱配位性溶媒又はそれの混合物は、スルホラン、アセトニトリル、DME、エチレングリコール又はプロピレンカーボネートから独立に選択される。特定の実施形態では、スルホランが使用される場合、有機溶媒は、アニソール、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタンから独立に選択される。
【0130】
本発明の実施形態において、スルホランは、イソプロピルメチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジ-n-ブチルスルホン、ジフェニルスルホン、ビス(4-メチルフェニル)スルホンなどのジアルキルスルホン類、アルキルアリールスルホン類又はジアリールスルホン類など(これらに限定されるものではない)の他のスルホンに置き換えることができる。
【0131】
本明細書で使用する場合、シラン還元剤とは、還元剤として使用できるシラン化合物を指す。本発明の実施形態では、シラン還元剤は、トリエチルシラン、クロロジメチルシラン、フェニルシラン、エトキシジメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、トリエトキシシラン、及び1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンから選択される。さらなる実施形態では、シラン還元剤は、クロロジメチルシラン、フェニルシラン、エトキシジメチルシラン、ジエトキシメチルシラン及び1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンから選択される。他の実施形態では、シラン還元剤は、クロロジメチルシラン、フェニルシラン又はトリエチルシランから選択される。特定の実施形態では、シラン還元剤はクロロジメチルシラン又はトリエチルシランから選択される。
【0132】
本明細書で使用する場合、ボラン還元剤とは、還元剤として使用できるボラン化合物を指す。本発明の実施形態では、ボラン還元剤は、ボラン-テトラヒドロフラン錯体、ボラン-ジメチルスルフィド錯体、ボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、トリフルオロ酢酸と水素化ホウ素ナトリウム、及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムから選択される。
【0133】
本発明の実施形態では、ルイス酸は、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素・テトラヒドロフラン錯体、三塩化アルミニウム、及びトリメチルシリルトリフレートから選択される。さらなる実施形態では、ルイス酸は、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラート、又はトリメチルシリルトリフレートから選択される。
【0134】
本発明の実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールから独立に選択される。さらなる実施形態では、アルコールはメタノールである。
【0135】
本明細書で使用される場合、反溶媒とは、溶質の溶解度を低下させる溶媒を指す。
【0136】
本発明の実施形態では、反溶媒は、2-メチルTHF、MTBE、CPME、THF、アセトニトリル、及びイソプロパノール、プロパノール又はn-ブタノールなど(これらに限定されない)のC-C10アルキルアルコールから独立に選択される。
【0137】
本明細書で使用される場合、密閉反応器とは、オートクレーブ反応器などの加圧下で化学反応を行うことができる反応容器を指す。反応圧力を制御できる反応器としては、圧力制御弁、又は手動若しくは自動の背圧調整弁を備えた反応器が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
本発明の実施形態では、圧力は約24kPa~約552kPa(3.5psig~80psig)に制御される。当業者は、反応圧力が容器の充填量、つまり反応器中で反応混合物が占める反応器の体積によって決まることを認識するであろう。
【0139】
本発明の実施形態において、有機溶媒又は有機溶媒の混合物は、スルホラン、アセトニトリル、DME、2-メチルTHF、THF、CPME、DCM、DCE、又はそれらの組み合わせから独立に選択される。特定の実施形態では、有機溶媒はDMEである。
【0140】
本発明の実施形態では、有機塩基は、DIPEA、トリエチルアミン、DABCO、DBU及びDBNなどの第三級アミン塩基から独立に選択されるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、塩基はDIPEAである。
【0141】
本発明の実施形態では、第1の塩基は、ジエチルエーテル中のメチルリチウム、ジエトキシメタン中のメチルリチウム、メチルリチウム-臭化リチウム錯体から選択される。特定の実施形態では、第1の塩基は、ジエトキシメタン中のメチルリチウムである。
【0142】
本発明の実施形態において、第2の塩基は、ヘキサン中のn-ブチルリチウム、ヘプタン中のn-ブチルリチウム、トルエン中のn-ブチルリチウム、シクロヘキサン中のn-ブチルリチウム、ヘキサン中のn-ヘキシルリチウムから選択される。さらなる実施形態では、第2の塩基は、ヘキサン中のn-ブチルリチウム及びヘキサン中のn-ヘキシルリチウムから選択される。
【0143】
本明細書で使用される場合、非プロトン性溶媒とは、酸性プロトンが存在しない有機溶媒を指す。本発明の実施形態では、第1及び第2の非プロトン性溶媒は、THF、2-メチルTHF、MTBE、ジエチルエーテル、CPMe、DCM又はDCEから独立に選択される。特定の実施形態では、第1及び第2の非プロトン性溶媒はTHFである。
【0144】
本発明の実施形態では、水溶液は、水、塩酸水溶液、臭化水素酸水溶液、酢酸水溶液、塩化アンモニウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、又は酢酸を含む塩化ナトリウム水溶液の混合物から独立に選択される。さらなる実施形態では、水溶液は、酢酸水溶液、酢酸を含む塩化ナトリウム水溶液、又は塩化アンモニウム水溶液から選択される。
【0145】
本明細書で使用される場合、反応溶媒は、化合物Aを製造する反応を補助するのに使用される有機溶媒を指す。本発明の実施形態では、反応溶媒は、アルコール、2-メチルTHF、THF、MTBE、CPME、アセトニトリル、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、DMF、NMP、又はDMAcから独立に選択される。一部の実施形態では、反応溶媒はアルコールであり、それはメタノール、エタノール、イソプロパノール、又はtert-アミルアルコールから独立に選択される。さらなる実施形態では、反応溶媒はエタノールである。
【0146】
本明細書で使用される場合、結晶化溶媒は、溶質である化合物Aの溶解度を低下させる溶媒を指す。本発明の実施形態では、結晶化溶媒は、水、トルエン、アニソール、2-メチルTHF、THF、MTBE、CPME、DCM、ヘキサン、ヘプタン、又はアルコールから独立に選択される。一部の実施形態では、結晶化溶媒は水である。
【0147】
本発明の第1の実施形態では、補因子はPLPであり、緩衝液は四ホウ酸ナトリウム水溶液であり、トランスアミナーゼ酵素は酵素1(配列番号1)又は酵素6(配列番号6)から選択される。
【0148】
本発明の第2の実施形態では、無機塩基は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選択され、溶媒は2-メチルTHF又はIPAcから独立に選択され、無機塩は炭酸カリウム又はリン酸カリウムであり、酸はp-トルエンスルホン酸又は塩酸である。
【0149】
本発明の第3の実施形態では、無機塩基は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選択され、塩基は水酸化ナトリウムであり、溶媒は2-メチルTHF及びMTBEから独立に選択され、酸はp-トルエンスルホン酸又は塩酸である。
【0150】
本発明の第4の実施形態では、トランスアミナーゼ酵素は酵素1又は酵素6から選択され、緩衝液はリン酸カリウム水溶液であり、固体支持体はDiaion(登録商標) Hp2mgL、Diaion(登録商標) SP2mgL、Purolite(登録商標) ECR8415F、Purolite(登録商標)ECR8415Mから選択されるポリマー樹脂であり、アミノ基転移溶媒は含水2-メチル-THF又はIPAcから独立に選択され、酸はp-トルエンスルホン酸又は塩酸である。
【0151】
本発明の第5の実施形態では、弱配位性溶媒はアニソールとスルホランの混合物であり、シラン還元剤はトリエチルシラン又はフェニルシランから選択され、ルイス酸は三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートであり、アルコールはメタノールである。
【0152】
第5の実施形態では、段階c)でアルコールを添加した後、薬学的に許容される酸を添加して、化合物4の所望の薬学的に許容される塩を得ることができる。
【0153】
本発明の第6の実施形態では、弱配位性溶媒はアニソールとスルホランの混合物であり、シラン還元剤はトリエチルシラン又はフェニルシランから選択され、ルイス酸は三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートであり、アルコールはメタノールである。
【0154】
本発明の第7の実施形態では、有機溶媒はDMEであり、有機塩基はDIPEAであり、シラン還元剤はクロロジメチルシランである。
【0155】
本発明の第8の実施形態では、第1の塩基はジエトキシメタン中のメチルリチウムであり、非プロトン性溶媒はTHFであり、第2の塩基はヘキサン中のn-ブチルリチウム又はヘキサン中のn-ヘキシルリチウムから選択され、水溶液は酢酸水溶液、酢酸を含む塩化ナトリウム水溶液又は塩化アンモニウム水溶液から選択され、アルコールはエタノールである。
【0156】
本発明の第9の実施形態では、塩基はDIPEAであり、反応溶媒はエタノールであり、結晶化溶媒は水である。
【0157】
場合によっては、トランスアミナーゼ酵素は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8などのアミノ酸配列に基づいており、配列番号1、2、3、4、5、6、7又は8の基準配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。これらの差は、アミノ酸の挿入、欠失、置換、又はそのような変化の任意の組み合わせであることができる。場合によっては、アミノ酸配列の差異は、非保存的、保存的、並びに非保存的及び保存的の組み合わせのアミノ酸置換を含み得る。
【0158】
一部の実施形態では、このようなトランスアミナーゼポリペプチドは、少なくとも15:1のジアステレオマー比で基質を生成物に変換することもできる。一部の実施形態では、このようなトランスアミナーゼポリペプチドは、少なくとも25:1のジアステレオマー比で基質を生成物に変換することもできる。
【0159】
一部の実施形態では、このようなトランスアミナーゼポリペプチドは、少なくとも70:1のジアステレオマー比で基質を生成物に変換することもできる。
【0160】
一部の実施形態では、トランスアミナーゼポリペプチドは高度に立体選択的であり、ポリペプチドは、約50:1、60:1、及び70:1を超えるジアステレオマー比で基質を生成物に還元することができる。
【0161】
「アミノ酸」は、本明細書では、一般に知られている3文字記号、又はIUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨されている1文字記号のいずれかによって参照される。同様に、ヌクレオチドは、一般的に受け入れられている一文字コードで呼ばれても良い。
【0162】
遺伝的にコードされたアミノ酸に使用される略語は従来のもので、次のとおりである:アラニン(Ala又はA)、アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グルタミン酸(Glu又はE)、グルタミン(Gln又はQ)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リジン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、フェニルアラニン(Phe又はF)、プロリン(Pro又はP)、セリン(Ser又はS)、スレオニン(Thr又はT)、トリプトファン(Trp又はW)、チロシン(Tyr又はY)、及びバリン(Val又はV)。
【0163】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、及び「ペプチド」は、長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、脂質化、ミリスチル化、リン酸化、ユビキチン化など)とは無関係にアミド結合によって共有結合的に連結された少なくとも二つのアミノ酸のポリマーを意味するのに本明細書において互換的に使用される。この定義には、D-及びL-アミノ酸、並びにD-及びL-アミノ酸の混合物、並びにD-及びL-アミノ酸を含むポリマー、及びD-及びL-アミノ酸の混合物が含まれる。
【0164】
「組換え」は、例えば細胞、核酸又はポリペプチドに関して用いられている場合、組換えが行われていなければ天然で存在しない様態で修飾されている物質又は該物質の天然もしくは自然形態に対応する物質、或いは、それと同一であるが、組換え技術を用いる操作により及び/又は合成物質から産生又は誘導された物質に関するものである。非限定的な例には、とりわけ、細胞の天然(非組換え)形態内で見出されない遺伝子を発現する組換え細胞、又はさもなければ、異なるレベルで発現される天然遺伝子を発現する組換え細胞が含まれる。
【0165】
「パーセント(%)配列同一性」、「パーセント同一性」及び「パーセント同一である」は、ポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列間の比較を示すために本明細書において用いられ、2つの最適にアライメントされた配列を比較ウィンドウにわたって比較することにより決定され、ここで、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分は、それらの2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列と比較して付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。パーセントは、同一の核酸塩基もしくはアミノ酸残基が両方の配列内に存在する位置の数、又は核酸塩基もしくはアミノ酸残基がギャップを伴ってアライメントされた位置の数を決定して、マッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り算し、その結果に100を掛け算して配列同一性の百分率を得ることにより計算される。最適なアラインメント及び配列同一性の割合の決定は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズム(例えば、Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410;及びAltschul et al., 1977, Nucleic Acids Res. 3389-3402を参照する)を使用して行われる。BLAST分析を行うためのソフトウェアはNational Center for Biotechnology Informationのウェブサイトから公に入手可能である。
【0166】
2つの配列に関する同一性の割合を得る際にBLASTと同様に機能する多数の他のアルゴリズムが利用可能である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith and Waterman, 1981, Adv. Appl. Math. 2:482のローカル・ホモロジー・アルゴリズム、Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48:443のホモロジー・アライメント・アルゴリズム、Pearson and Lipman, 1988, N USA 85:2444の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(GCG Wisconsin Software PackageにおけるGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)、又は目視検査(全般的には、Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc.,(1995 Supplement)(Ausubel)を参照する)。また、配列アラインメント及び配列同一性(%)の決定は、GCG Wisconsin Softwareパッケージ(Accelrys, Madison WI)のBESTFIT又はGAPプログラムを、提供されたデフォルトのパラメーターを用いて使用する。
【0167】
「実質的な同一性」は、少なくとも20残基の位置の比較ウィンドウにわたって、頻繁には少なくとも30~50残基のウィンドウにわたって参照配列と比較した場合に、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも85パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも89パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性、より一層好ましくは少なくとも99パーセントの配列同一性を有するポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に関するものであり、ここで、配列同一性のパーセントは、比較ウィンドウにわたって参照配列に対して合計20パーセント以下である欠失又は付加を含む配列と参照配列を比較することにより計算される。ポリペプチドに適用される特定の実施形態においては、「実質的な同一性」という用語は、例えば、デフォルトのギャップウェイトを用いてプログラムGAP又はBESTFITにより最適にアライメントされた場合に、二つのポリペプチド配列が少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも89パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性又はそれ以上の配列同一性(例えば、99パーセントの配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換により異なる。
【0168】
所与のアミノ酸又はポリヌクレオチド配列の番号付けの文脈で用いられる場合の「に対応する」、「に対する参照(言及)」又は「に基づく」は、所与のアミノ酸又はポリヌクレオチド配列が参照配列と比較される場合の、特定されている参照配列の残基の番号付けに関するものである。換言すれば、所与の重合体の残基番号又は残基位置は、所与のアミノ酸又はポリヌクレオチド配列内の残基の実際の数的位置によってではなく、参照配列に基づいて示される。例えば、所与のアミノ酸配列は、二つの配列の間の残基マッチを最適化するためにギャップを導入することにより、参照配列に対してアライメントされ得る。これらの場合、ギャップは存在するが、所与のアミノ酸又はポリヌクレオチド配列における残基の番号付けは、それがアライメントされた参照配列に基づいて行われる。
【0169】
「立体選択性」は、化学的又は酵素的反応において一つの立体異性体が別の立体異性体よりも優先的に形成されることを意味する。立体選択性は、一つの立体異性体の形成が他の立体異性体より優先される部分的なものであることが可能であり、或いは、一つの立体異性体のみが形成される完全なものであることが可能である。立体異性体がエナンチオマーである場合、立体選択性はエナンチオ選択性と称され、両方のエナンチオマーの合計における一つのエナンチオマーの割合(代表的には百分率として報告される)である。或いは、それは一般に、式[主要エナンチオマー-少量エナンチオマー]/[主要エナンチオマー+少量エナンチオマー]に従いそれから計算されるエナンチオマー過剰率(EE)として(代表的には百分率として)、当技術分野において報告される。立体異性体がジアステレオ異性体である場合、立体選択性はジアステレオ選択性と称され、二つのジアステレオマーの混合物中の一つのジアステレオマーの割合(代表的には通常は百分率として報告される)であり、或いは、一般に、ジアステレオマー過剰率(DE)として報告される。エナンチオマー過剰率及びジアステレオマー過剰率はステレオマー過剰率の一種である。
【0170】
「高度に立体選択的」は、少なくとも約85%の立体異性過剰率で基質をその対応生成物に変換しうる化学的又は酵素的反応に関するものである。
【0171】
「変換」は基質から対応生成物への酵素的変換を意味する。「変換パーセント」は、特定の条件下で一定時間内に生成物に変換される基質のパーセントを意味する。したがって、例えば、ポリペプチドの「酵素活性」又は「活性」は基質から生成物への「変換率」として表されうる。
【0172】
固定化酵素調製物は、認識された多数の利点を有する。それらは、例えば、酵素調製物に貯蔵安定性をもたらすことが可能であり、有機溶媒中での酵素安定性を改善することが可能であり、そして反応流からのタンパク質除去を補助することが可能である。「安定な」は、例えば有機溶媒を含有する溶媒系において、所与の条件下で固定化酵素がその構造コンホメーション及び/又はその活性を保持し得ることを意味する。安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり10%未満の活性を喪失する。安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり9%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり8%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり7%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり6%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり5%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり4%未満の活性である。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり3%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において、1時間当たり2%未満の活性を喪失する。好ましくは、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系において1時間当たり1%未満の活性を喪失する。
【0173】
本明細書中で用いられる場合、「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、互いに共有結合している2以上のヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドは、全体がリボヌクレオチドから構成されていること(すなわち、RNA)、全体が2′デオキシリボヌクレオチドから構成されていること(すなわち、DNA)、又はリボヌクレオチドと2′デオキシリボヌクレオチドとの混合物から構成されていることが可能であり、ゲノム、mRNA、cDNA又は合成起源、又はそれらの何らかの組み合わせのDNA若しくはRNAを含むことが可能である。ヌクレオシドは、代表的には、標準的なホスホジエステル結合により互いに連結されるが、ポリヌクレオチドは1以上の非標準的な結合を含みうる。ポリヌクレオチドは一本鎖又は二本鎖であることが可能であり、或いはポリヌクレオチドは一本鎖領域と二本鎖領域との両方を含むことが可能である。更に、ポリヌクレオチドは、代表的には、天然に存在するコード化核酸塩基(すなわち、アデニン、グアニン、ウラシル、チミン及びシトシン)から構成されるが、それは1以上の修飾及び/又は合成核酸塩基、例えばイノシン、キサンチン、ヒポキサンチンなどを含みうる。一部の実施形態においては、そのような修飾又は合成核酸塩基は、アミノ酸配列をコードする核酸塩基である。
【0174】
本明細書で用いられる場合、「生体触媒作用」、「生体触媒」、「生体変換」及び「生合成」という用語は、有機化合物に対する化学反応を引き起こすための酵素の使用を指す。
【0175】
本明細書で用いられる場合、「欠失」は、参照ポリペプチドからの1以上のアミノ酸の除去によるポリペプチドへの修飾を意味する。欠失は、酵素活性を保持しつつ及び/又は進化した酵素の改善された特性を保持しつつ、参照酵素を構成する1以上のアミノ酸、2以上のアミノ酸、5以上のアミノ酸、10以上のアミノ酸、15以上のアミノ酸又は20以上のアミノ酸、アミノ酸の総数の最大10%又はアミノ酸の総数の最大20%の除去を含みうる。欠失はポリペプチドの内部部分及び/又は末端部分に導入されうる。種々の実施形態においては、欠失は連続セグメントを含むことが可能であり、或いは不連続でありうる。欠失は、代表的には、アミノ酸配列において「-」により示される。
【0176】
本明細書で用いられる場合、「挿入」は、参照ポリペプチドと比較した場合の1以上のアミノ酸の付加によるポリペプチドへの修飾を意味する。挿入はポリペプチドの内部部分又はカルボキシ若しくはアミノ末端に存在しうる。本明細書で用いられる挿入は、当技術分野で公知の融合タンパク質を含みうる。挿入はアミノ酸の連続セグメントであることが可能であり、或いは、天然に存在するポリペプチドにおけるアミノ酸の1以上により分離されていることが可能である。
【0177】
「アミノ酸置換セット」又は「置換セット」なる語は、参照配列と比較した場合のポリペプチド配列におけるアミノ酸置換の一群を意味する。置換セットは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個又はそれ以上のアミノ酸置換を有しうる。
【0178】
本明細書で用いられる場合、「単離ポリペプチド」は、それに天然で付随する他の夾雑物(例えば、タンパク質、脂質及びポリヌクレオチド)から実質的に分離されたポリペプチドを意味する。この用語は、天然に存在する環境又は発現系(例えば、宿主細胞内のもの、又はイン・ビトロ合成によるもの)から取り出された又は精製されたポリペプチドを含む。組換えポリペプチドは細胞内に存在すること、細胞培地内に存在することが可能であり、或いは例えば溶解物又は単離調製物のような各種形態で調製されうる。したがって、一部の実施形態において、組換えポリペプチドは、単離されたポリペプチドでありうる。
【0179】
例示的な方法及び材料を本明細書で記載しているが、本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料も、本開示の実施又は試験に使用することができる。その材料、方法及び実施例は単なる例示であり、限定することを意図したものではない。トランスアミナーゼ酵素は、凍結乾燥された無細胞溶解物粉末として使用した。別断の断りがない限り、溶媒及び試薬は市販されており、入荷した状態で使用した。
【0180】
図式
(2-クロロ-4-フェノキシフェニル)(4-{[(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-イル]アミノ}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)メタノン又は化合物Aを合成するための本発明の方法の全体を図式1にまとめてある。その全体プロセスは高度に収束的な合成であり、化合物Aは二つの中間体、すなわち(2-クロロ-4-フェノキシフェニル)(4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)メタノン(本明細書では化合物7と称される)と(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミン(本明細書では化合物4′と称される)の適切な塩の間の反応から製造される。
【0181】
図式1.
【化20】
【0182】
本発明は、バイオマスの熱分解によって容易に得られる生体再生可能な材料である(1S,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-オン(本明細書ではシレン又は化合物2と称する)から出発して化合物4′の適切な塩への保護基を含まない合成経路を記載するものである。
【0183】
イソプロピルアミンをアミノ基供与体として使用すると、組換えトランスアミナーゼ酵素は、良好なジアステレオマー選択性で、化合物2の(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミン(本明細書では化合物3と称する)への変換を触媒できることが見出された。
【0184】
本明細書に記載のように、これらのアミノ基転移反応は水溶液中で行うことができ、その後、好適な後処理法を行って、水溶性化合物3を塩として単離することができる。減圧又は窒素吹き込みを適用して水溶液中でアミノ交換反応を実行して、アセトン副生成物を除去すると、シレン(2)とアセトン副生成物との間のアルドール副反応がアセトンを介して最小限に抑えられるため、化合物3の収率と純度を向上させることができる。
【化21】
【0185】
あるいは、本発明は、有機溶媒中で固定化トランスアミナーゼ酵素を使用して化合物3を製造する方法を記載する。このアプローチは、水溶性化合物3からのタンパク質の除去と単離を大幅に簡素化するものである。面倒な抽出及び酵素変性手順を行わずに、化合物3を有機溶媒から塩として直接単離することができる。
【0186】
固定化トランスアミナーゼ酵素を用いるアミノ基転移反応をバッチで行うことができ、そこでは、反応が完了した後に固定化されたトランスアミナーゼ酵素を濾過して除去することができる。固定化トランスアミナーゼ酵素を使用する反応は、回転床又は回転バスケット反応器で行うこともでき、そこでは、固定化トランスアミナーゼ酵素をバスケット内に保持し、生成物を濾過せずに回収することができる。或いは、アミノ基転移反応は連続反応系で実施することができ、反応流を固定化トランスアミナーゼ酵素上を連続的に通過させ、生成物を回収する。後者のアプローチでは、固定化トランスアミナーゼ酵素の取り扱いがさらに合理化され、酵素1kgあたりに得られる生成物の量が増加することで、アミノ基転移反応の効率が向上する。
【0187】
本明細書に記載のアミノ基転移反応により、主生成物としての化合物3と、少量生成物としての化合物3のシスジアステレオマーである(1S,4S,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミン(3d)が生成される。
【化22】
【0188】
当業者は、化合物3と3dのジアステレオ比が、トランスアミナーゼ酵素の選択、アミノ基転移溶媒の選択、反応温度及び反応時間によって決まることを認識するであろう。所与の酵素についての化合物3と3dのジアステレオマー比は、トランスアミナーゼ酵素が水性溶媒中で使用されるか、固体支持体上に固定化されているかによっても決まる。本明細書に記載のアミノ基転移反応に関しては、所与のトランスアミナーゼ酵素を固体支持体に固定化すると、ジアステレオマー比が低下する。この効果は、実施例1A対実施例1Cによって実証されるが、これに限定されるものではない。化合物3を塩3′として単離する際に、ジアステレオマー比のさらなる向上がある。化合物3を塩3′として単離する際に水を添加すると、ジアステレオマー比をさらに改善することができる。
【0189】
さらなる態様において、本発明は、化合物3又はその塩の化合物4′への変換を説明するものである。この前例のない変換は、化合物3′をボラン又はシラン還元剤及びルイス酸と組み合わせることで進行することが認められた。特に、本発明は、有機溶媒としてのスルホランの存在下に、トリエチルシラン及び三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラートを使用して化合物4′を製造する方法を説明するものである。この試薬及び溶媒の組み合わせにより、活性還元剤であるジボランとフッ化トリエチルシリルをイン・サイツで生成されることが認められた。活性還元剤はガス状であるため、反応圧力を制御できる密閉反応器又は反応容器内で反応を行うことにより、4′の形成時に圧力を上昇させることが有利である。
【0190】
さらに、市販の5-ブロモ-4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(本明細書では化合物5と称する)、及び2-クロロ-4-フェノキシ安息香酸メチル(本明細書では化合物6と称する)から化合物7を製造する方法も記載されている。化合物7の製造方法は、当業者に共通に知られているように、バッチで実施することができる。本明細書に示されるように、化合物7の製造方法は連続反応系で実行して、極低温の必要性を回避することができる。
【0191】
略称
測定:
g/L:グラム/リットル
mg:ミリグラム
min:分
ml、mL:ミリリットル
mM:ミリモル、1mMは1リットルあたり1000分の1モルの濃度である。
mmol:ミリモル、1モルの1,000分の1(炭素-12 12グラム中の原子数に等しい化学物質の量)。
N:規定度、溶液中の溶液のグラム当量重量であり、モル濃度を当量係数で割ったものである。
rpm:毎分回転数
ul、uL、μl、μL:マイクロリットル
CPME:シクロペンチルメチルエーテル
DABCO:1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DBN:1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DCM:ジクロロメタン
DCE:1,2-ジクロロエタン
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
DME:1,2-ジメトキシエタン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
iPrNH:イソプロピルアミン
LB培地:ルリア-ベルターニ培地、細菌の培養及び増殖用の市販の栄養価の高い培地
NMP:N-メチル2-ピロリドン
Boc:tert-ブトキシカルボニル
IPA:イソプロパノール
IPAc:酢酸イソプロピル
KOH 水酸化カリウム
2-メチルTHF:2-メチルテトラヒドロフラン
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル
NaOH:水酸化ナトリウム
OD600:600nmでの光学濃度
PBR:充填層反応器
pCK110900:大腸菌(E.coli)における組換えタンパク質の発現系
PEG:ポリエチレングリコール
Ph:フェニル
PLP:ピリドキサール5′-リン酸
PMP:ピリドキサミン5′-リン酸
TB:テリフィック培地(Terrific Broth)、市販の細菌の培養及び増殖用の栄養豊富な培地
THF:テトラヒドロフラン
TMS:トリメチルシリル
TsOH:p-トルエンスルホン酸。
【0192】
この開示全体を通じて追加の略語が定義される場合がある。
【実施例
【0193】
実施例1A:(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(3a)の製造
【化23】
ピリドキサール5′-ホスフェート・1水和物(1g)を緩衝液500mL(0.1M四ホウ酸ナトリウムと1.56Mイソプロピルアミン、pH9.5)に溶解させた。次いで、酵素1(配列番号1)(10g、20重量%)を添加し、室温で溶解させた(酵素1は、Codexis, Inc., Redwood City, Californiaから凍結乾燥無細胞溶解物として市販)。次いで、(1S,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-オン(2)(49.9g、389mmol)を加え、混合物を33~37℃で27時間加熱した。反応中、真空と窒素流を適用して生成したアセトンを除去した。反応の過程にわたってpHを調節して、pHを7.9~8.6に維持して、(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミン(3)(15:1 d.r.)の溶液を得た。
【0194】
記載された反応液を50重量%NaOH溶液(28mL)でpH13.4に調節した。混合物を10~15℃に冷却し、温度を25℃以下に維持しながら炭酸カリウム(83.3g)をゆっくりと加えた。2-メチルTHF(300mL)を加え、得られた混合物を室温で終夜撹拌して酵素変性させた。次いで、変性タンパク質固体を濾去し、フィルターケーキを2-メチルTHFで洗浄した(50mLで3回)。水性濾液を2-MeTHF(75mL)で抽出した。合わせた有機層を減圧下に濃縮してイソプロピルアミンを除去した。次いで、得られた(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミン(3)の溶液に2-メチルTHFを添加して、総量を200mLに調節した。次いで、水を加えて含水量を3~3.6重量%に調節した。次いで、2-メチルTHF(150mL)中のp-トルエンスルホン酸・1水和物(73.6g、387mmol)を40℃で4時間かけて滴下した。得られたスラリーを冷却して室温とし、2時間熟成させた。そのバッチを濾過した。フィルターケーキを湿(2重量%水)2-メチルTHF(50mL)及び脱水2-メチルTHF(50mL)で洗浄した。湿ケーキを50℃で終夜乾燥させて、3aを固体として得た(92.1g、収率79%、127:1 d.r.)。融点227℃(DSC);1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz) δ 7.96 (br s, 3H), 7.49 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.13 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 5.40 (s, 1H), 4.61 (s, 1H), 3.98 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 3.68 (m 1H), 3.12 (br m, 1H), 2.30 (s, 3H), 2.04 (m, 2H), 1.57 (m, 1H), 1.43 (m, 1H) ppm; 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz) δ 145.6, 138.5, 128.7, 125.9, 99.1, 73.5, 67.5, 47.9, 23.7, 21.3, 19.1 ppm.
【0195】
実施例1B:(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(3a)の製造
【化24】
ピリドキサール5′-ホスフェート・1水和物(500mg)を緩衝液(0.1M四ホウ酸ナトリウムと1.56Mイソプロピルアミン、pH9.8)250mLに溶かした。次いで、酵素1(配列番号1)(3.75g、15重量%)を添加し、室温で溶かした。次いで、(1S,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-オン(2)(25g、195mmol)を加え、混合物を35℃で29時間加熱した。反応中、真空と空気流を適用して、生成したアセトンを除去した。次いで、この流れを冷却して室温とし、50重量%NaOH 10mLを加えてpHを12に調節した。次いで、50重量%NaOHを使用してpHを12に維持しながら、反応混合物を窒素吹き込みを使用して真空下で濃縮してイソプロピルアミンを除去した。pH12の反応混合物に、THF(62mL)中のジ-tert-ブチルジカーボネート(42.6g、195mmol)の溶液をシリンジポンプを介して25℃で2.5時間かけて加えた。添加中、pHをモニタリングし、追加の50重量%NaOHを添加してpHを10より高く維持した。反応液を22~25℃で終夜熟成させた。次いで、MTBE(250mL)を加え、混合物を2時間撹拌した。バッチを濾過し、固体をMTBEで洗浄した。濾液の層を分離し、水層をMTBE(150mL)で抽出した。合わせた有機層を15重量%NaCl(100mL)で洗浄し、濃縮した。2-MeTHFを加え、溶液を濾過して固体を除去して、化合物3cの2-MeTHF溶液(82.7g)を得た。次いで、2-メチルTHF(320mL)と続いてp-トルエンスルホン酸・1水和物(100g、581mmol)を加え、反応液を加熱して35℃として、終夜熟成させた。次いで、得られたスラリーを冷却して21℃とし、4時間熟成させた。スラリーを濾過し、2-MeTHFで洗浄し(100mLで2回)、真空乾燥させて、3aを固体として得た(43.5g、収率74.0%、>30:1 d.r.)。融点227℃(DSC);1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz) δ 7.96 (br s, 3H), 7.49 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.13 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 5.40 (s, 1H), 4.61 (s, 1H), 3.98 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 3.68 (m 1H), 3.12 (br m, 1H), 2.30 (s, 3H), 2.04 (m, 2H), 1.57 (m, 1H), 1.43 (m, 1H) ppm; 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz) δ 145.6, 138.5, 128.7, 125.9, 99.1, 73.5, 67.5, 47.9, 23.7, 21.3, 19.1 ppm.
【0196】
本明細書で使用される場合、d.r.は「ジアステレオマー比」を表すために使用される。最初の数字は、(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミンである生成物の割合を示し、2番目の数字は、(1S,4S,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミンである生成物の割合を示す。
【0197】
実施例1C:(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(3a)の製造
【化25】
ピリドキサール5′-ホスフェート・1水和物(13.7g)を100mMリン酸カリウム緩衝液pH7.0(1.67リットル)に加え、混合物を冷却して4℃とした。1N KOH(58g)を使用してpHをpH6.95に調節した。次いで、酵素1(334.6g)を1.25時間かけて加えた。次に、樹脂Diaion(登録商標)HP2MGL(2.50kg、水和)を加え、混合物を4℃で60時間インキュベートした。次いで、混合物を水1.75リットルで希釈し、15分間撹拌した。
【0198】
5℃に冷却した1.7リットルのジャケット付きカラムに固定化トランスアミナーゼスラリーを充填した。カラムを2.5cm/分の線速度で水で140分間洗浄し、その後、イソプロパノール:PEG-400:水(88:10:2重量%)の混合物で1.5~2.5cm/分の線速度で150分間洗浄した。カラムを暖めて20℃とし、イソプロパノール:PEG-400:水の混合物を流出液が18℃に達するまでカラムに流した。次いで、水飽和酢酸イソプロピルを2.5cm/分の線速度で135分間カラムに流した。カラムを60℃に加熱した。室温で(1S,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-オン(2)(2.0kg、15.6mol)、イソプロピルアミン(1.153kg、19.5mol、1.25当量)、及び水飽和酢酸イソプロピル16.8リットルを合わせることで反応流を調製した。混合物を3時間の滞留時間でカラムに流した。最初の15時間は流れを迂回させ(5カラム体積)、その後生成物流を72時間回収して、(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミン(3)の溶液(13.7kg、8.06重量% 3、13:1 d.r.)を得た。
【0199】
次いで、混合物を減圧下で約3リットル(出発物質に対して約3体積)まで濃縮し、その後、酢酸イソプロピル5.5リットルを流して、最終体積を3リットルとした。次いで、溶液を35℃に温め、次の溶液を加えた。2-メチルTHF(6.5L)中のp-トルエンスルホン酸・1水和物(1.65kg、8.67mol)を1.5時間かけて添加した。得られたスラリーを37~40℃で30分間熟成させ、次いで室温で終夜撹拌した。スラリーを濾過し、湿ケーキを2-メチルTHFで洗浄した(6リットルで2回)。ケーキを真空/N吹き込み下で18時間乾燥させて、3aを固体として得た(2.4kg、収率71% 2.4kg、72時間の間に流した化合物2の量に基づく収率71%、35:1 d.r.)。融点227℃(DSC);1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz) δ 7.96 (br s, 3H), 7.49 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.13 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 5.40 (s, 1H), 4.61 (s, 1H), 3.98 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 3.68 (m 1H), 3.12 (br m, 1H), 2.30 (s, 3H), 2.04 (m, 2H), 1.57 (m, 1H), 1.43 (m, 1H) ppm; 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz) δ 145.6, 138.5, 128.7, 125.9, 99.1, 73.5, 67.5, 47.9, 23.7, 21.3, 19.1 ppm.
【0200】
実施例1D:(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(3a)の製造
【化26】
ピリドキサール5′-ホスフェート・1水和物(0.716g)を100mMリン酸カリウム緩衝液pH7.0(102mL)に加え、混合物を4℃に冷却した。1N KOH(4.63g)を使用してpHをpH6.80に調節した。次いで、酵素6(配列番号6)(17.9g)を4回で投入し、得られた混合物を1時間熟成させた。次に、樹脂Diaion(登録商標)HP2MGL(150g、水和)を加え、混合物を4℃で60時間インキュベートした。
【0201】
次に、固定化トランスアミナーゼスラリーを、4℃に冷却した10mm×300mmのガラスジャケット付きカラムに充填した。カラムを水118mLで2cm/分の線速度で洗浄し、次いでイソプロパノール:PEG-400:水混合物(86:10:4重量%)175mLで2cm/分の線速度で洗浄した。カラムを20℃に温め、次いで水飽和2-MeTHF 118mLを2cm/分の線速度でカラムに流した。カラムを60℃に加熱した。室温で(1S,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-オン(2)(100g、0.78mol)、イソプロピルアミン(28.8g、0.48mol、1.25当量)、及び水飽和2-MeTHF 840mLを加えることで、反応流を調製した。混合物を90分間の滞留時間でカラムに流した。流れを71時間回収して、(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミン(3)の溶液(296.3g、12.6重量%3、34:1 d.r.)を得た。
【0202】
次いで、混合物を減圧下に濃縮して約190mL(出発物質に対して約5体積)とし、その後、2-MeTHF 260mLを流して最終体積190mLとした。次いで、水2.85mL(1.5%)、続いて2-MeTHF 75mLを加えた。次いで、湿溶液を35℃に温め、湿ったp-トルエンスルホン酸・1水和物(65.9g、347mmol)の2-MeTHF(190mL)中溶液を1.5時間かけて加えた。得られたスラリーを37~40℃で30分間熟成させ、次いで室温で終夜撹拌した。スラリーを濾過し、湿ケーキを2-MeTHFで洗浄した。ケーキを真空/N吹き込み下で18時間乾燥させて、3aを固体として得た(79.1g、収率76%、71時間の間に流した化合物2の量に基づく、385:1 d.r.)。融点227℃(DSC);1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz) δ 7.96 (br s, 3H), 7.49 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.13 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 5.40 (s, 1H), 4.61 (s, 1H), 3.98 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 3.68 (m 1H), 3.12 (br m, 1H), 2.30 (s, 3H), 2.04 (m, 2H), 1.57 (m, 1H), 1.43 (m, 1H) ppm; 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz) δ 145.6, 138.5, 128.7, 125.9, 99.1, 73.5, 67.5, 47.9, 23.7, 21.3, 19.1 ppm.
【0203】
実施例1E:(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(3a)の製造
【化27】
ピリドキサール5′-ホスフェート・1水和物(0.18g)を100mMリン酸カリウム緩衝液pH6.7(27.3mL)に加え、混合物を4℃に冷却した。次いで、酵素6(配列番号6)(4.50g)を加え、得られた混合物を1時間熟成させた。次に、樹脂ECR8415M(37.8g、水和)を加え、混合物を4℃で60時間インキュベートした。
【0204】
固定化トランスアミナーゼスラリーを、4℃に冷却した10mm×300mmのガラスジャケット付きカラムに充填した。カラムを2cm/分の線速度で水118mLで洗浄し、次いで2cm/分の線速度でイソプロパノール:PEG-400:水混合物(86:10:4重量%)170mLで洗浄した。カラムを昇温させて20℃とし、次いで水飽和2-MeTHF 118mLを2cm/分の線速度でカラムに流した。カラムを加熱して60℃とした。室温で(1S,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-オン(2)(200.g、1.56mol)、イソプロピルアミン(115g、1.95mol)及びの水飽和2-MeTHF 1.68リットルを合わせることによって、反応流を調製した。混合物を45分間の滞留時間でカラムに流した。流れを95時間回収して、(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミン(3)の溶液(1005g、10.2重量% 3、30:1 d.r.)を得た。
【0205】
次いで、溶液(108g)を減圧下で約55mL(出発物質に対して約5体積)まで濃縮し、その後、2-MeTHF 77mLを流して最終体積55mLとした。次いで、水0.82mL(1.5%)、続いて2-MeTHF 22mLを加えた。次いで、湿溶液を昇温させて35℃とし、2-MeTHF(55mL)及びp-トルエンスルホン酸・1水和物(19.44g、102mmol)の水(1.65mL)の混合物中溶液を1.5時間かけて加えた。得られたスラリーを37~40℃で30分間熟成させ、次いで室温で終夜撹拌した。スラリーを濾過し、湿ケーキを2-MeTHFで洗浄した。ケーキを真空/N吹き込み下で18時間乾燥させて、3aを固体として得た(23.0g、95時間の間に流した2の量に基づく収率77%、94:1 d.r.)。融点227℃(DSC);1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz) δ 7.96 (br s, 3H), 7.49 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.13 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 5.40 (s, 1H), 4.61 (s, 1H), 3.98 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 3.68 (m 1H), 3.12 (br m, 1H), 2.30 (s, 3H), 2.04 (m, 2H), 1.57 (m, 1H), 1.43 (m, 1H) ppm; 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz) δ 145.6, 138.5, 128.7, 125.9, 99.1, 73.5, 67.5, 47.9, 23.7, 21.3, 19.1 ppm.
【0206】
実施例1F:(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-塩酸塩(3b)の製造
【化28】
ピリドキサール5′-ホスフェート・1水和物(0.96g、3.62mmol)を100mMリン酸カリウム緩衝液pH6.9(130.4mL)に加え、混合物を4℃で0.25時間熟成させた。続いて、1N KOH(6.58mL)を添加することによって溶液のpHを6.9に再調節した。次いで、酵素1(24.19g)を同じ容器に約0.5時間かけて投入し、続いて追加の100mMリン酸カリウム緩衝液pH6.9(5.98mL)ですすぎ、混合物を2時間撹拌した。次に、樹脂Diaion(登録商標)HP2MGL(171.77g、水和)を添加し、続いて100mMリン酸カリウム緩衝液pH6.9(11.97mL)ですすぎ、混合物を4℃で48時間熟成させた。得られた固定化トランスアミナーゼスラリー混合物を冷(4~8℃)水(150mL)で希釈し、4℃で15分間撹拌し、一部をフリットフィルター漏斗に移した。続いて、母液を真空濾過により除去して、固定化酵素樹脂の湿ケーキ(約30g)を得た。次いで、湿ケーキを次のようにしてスラリー洗浄した。すなわち、冷水をフィルターに投入し、約3分間撹拌し、続いて母液を濾過により除去した。このプロセスを3回繰り返し、最初の洗浄には水120mLを使用し、その後の水洗浄には水90mLを使用した。次に、固定化トランスアミナーゼを、冷却イソプロパノール:PEG-400:水混合物(88:10:2重量%)90mLで3回、同様にスラリー洗浄した。続いて、水飽和IPAc 90mLを用いて同様のスラリー洗浄を3回行った。続いて、過剰な水で飽和したIPACを穏やかな濾過によって除去して、固定化トランスアミナーゼ樹脂の湿ケーキを生成し、その一部を次の反応に利用した。
【0207】
固定化トランスアミナーゼ樹脂(15.02g)を、(1S,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-オン(2)(10.04g、78mmol)、イソプロピルアミン(5.77g、98mmol)、及び水飽和酢酸イソプロピル(60mL)の混合物と合わせた。内部保持メッシュを取り外したSpinChem(登録商標)S2RBRを反応器に配置し、最大約400rpmまで徐々に遠心させて樹脂をRBRに負荷し、反応を通じて回転を維持した。容器を加熱して60℃とし、約75時間熟成させた。反応終了後、反応流を冷却して室温とし、反応流を濾過によって回収して、化合物3の溶液(68.97g、10.2重量% 3、10.5:1 d.r.)を得た。
【0208】
溶液を減圧下で最終体積13mLまで濃縮した。2-メチルTHF(50mL)を加え、溶液を再び減圧下で最終体積13mLまで濃縮した。2-メチルTHF(50mL)及び水(127μL)を加え、溶液を加熱して40℃とした。次いで、塩酸溶液(3M CPME中溶液)を2時間かけて添加した。40℃でさらに2時間熟成させた後、得られたスラリーを冷却して室温とし、終夜熟成させた。次いで、スラリーを濾過し、固体を2-メチルTHFで洗浄した。固体を真空/N吹き込み下で乾燥させて、3bを固体として得た(6.57g、収率49.3%、38:1 d.r.)。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz) δ 8.26 (br s, 3H), 5.45 (s, 1H), 4.59 (s, 1H), 3.97 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 3.73 - 3.58 (m, 1H), 3.06 (s, 1H), 2.12 - 1.99 (m, 2H), 1.68 - 1.52 (m, 1H), 1.45 - 1.42 (m, 1H) ppm; 13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz) δ 98.6, 73.0, 66.9, 47.3, 23.2, 18.6 ppm.
【0209】
実施例1G:(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-臭化水素酸塩(3c)の製造
【化29】
(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミン3a(87.9g、67.1mmol)の2MeTHF中の9.86重量%溶液を丸底フラスコに入れ、減圧下で濃縮した。2-MeTHF(50mL)を加え、このプロセスを繰り返して水とイソプロピルアミンを除去した。2MeTHF(70mL)を加え、続いてHBr水溶液(9.1mL、81.0mmol)を40℃でゆっくりと加えた。次いで、二相混合物を40℃で濃縮し、次に2-MeTHF(50mL)を加え、このプロセスを繰り返して過剰の水を除去した。残留物を2-MeTHF(50mL)に溶かし、40℃に加熱した。メタノール(5mL)を加え、溶液を終夜で室温まで放冷した。得られたスラリーを濾過し、2-MeTHFで洗浄した(20mLで2回)。単離した固体を40℃で2MeTHF(60mL)及びメタノール(6mL)から再結晶し、続いて60℃でメタノール(25mL)中で再結晶した。2MeTHF(10mL)を室温で添加して、回収率を向上させた。得られた固体を濾過し、2-MeTHFで洗浄し(20mLで2回)、乾燥させて、化合物3cを白色固体として得た(7.86g、100重量%、>200 d.r.)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.09 (s, 3H), 5.42 (s, 1H), 4.60 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 3.98 (dd, J = 7.3 Hz, J = 0.6 Hz, 1H), 3.74 - 3.60 (m, 1H), 3.16 - 3.03 (m, 1H), 2.19 - 1.83 (m, 2H), 1.67 - 1.50 (m, 1H), 1.49 - 1.36 (m, 1H) ppm; 13C NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 98.52, 73.02, 67.00, 47.36, 23.24, 18.54.
【0210】
実施例2A:(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(4a)の製造
【化30】
(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホナート(3a)(1.5kg、4.98mol、96:4 d.r.)を、室温でスルホラン(3.00リットル)とアニソール(4.50リットル)の混合物に懸濁させ、混合物を窒素雰囲気下に置き、オーバーヘッド撹拌しながら撹拌した。次いで、トリエチルシラン(3.98リットル、24.89mol)を加え、続いて三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(1.26リットル、9.95mol)を加え、混合物を40℃で約18時間加熱した。得られた均質溶液を、内部温度が45℃以下に維持されるような速度でMeOH(2.00リットル)で反応停止してから、その後の反応停止した溶液を加熱して60℃として約2時間加熱した。この混合物に(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(4a)(15g、1mol%)を加え、得られたシード床を60℃で約1時間熟成した後、6時間かけて20℃まで冷却し、この温度でさらに18時間熟成させた。スラリーを濾過し、湿ケーキを2:1体積比2-MeTHF:MeOHの溶液(3.00リットル)で洗浄し、続いて9:1体積比2-MeTHF:MeOHの溶液で洗浄した(3.00リットルで2回)。ケーキをNを吹き込みながら約18時間真空乾燥させて、4aを得た(1.14kg、収率76%、>500:1 d.r.)。1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz) δ 7.71 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.25 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.10 (ddd, J = 10.8, 4.4, 2.3 Hz, 1H), 3.53 - 3.47 (m, 2H), 3.39 - 3.34 (m, 1H), 3.33 (t, J = 10.8 Hz, 1H), 3.17 (tt, J = 11.0, 4.4 Hz, 1H), 2.37 (s, 3H), 2.17 (dt, J = 12.3, 2.8 Hz, 1H), 1.77 - 1.73 (m, 1H), 1.60 (見かけのqd, J = 12.5, 4.2 Hz, 1H), 1.47 - 1.38 (m, 1H) ppm. 13C NMR (MeOH-d4, 125 MHz) δ 143.5, 141.8, 129.9, 126.9, 79.2, 69.2, 65.6, 48.0, 28.6, 27.0, 21.3 ppm.
【0211】
実施例2B:(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(4a)の製造
【化31】
(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(3a)(8g、26.5mmol、>99:1 d.r.)及び2,3-ジヒドロチオフェン1,1-ジオキシド(16mg、0.2重量%)を、室温でスルホラン(16mL)とアニソール(24mL)の混合物に懸濁させ、混合物を窒素雰囲気下に置き、オーバーヘッド攪拌機で撹拌した。次いで、トリエチルシラン(23.3リットル、146mmol)を加え、続いて三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(8.1mL、63.7mmol)を加えた。容器を密閉し、約345kPa(50psi)に設定した圧力制御バルブ(PCV)を取り付けた後、混合物を加熱して40℃として約20時間経過させた。得られた均質溶液を、内部温度を45℃以下に維持するような速度でMeOH(16mL)で反応停止してから、その後の反応停止した溶液を加熱して60℃として約2時間経過させた。この混合物に、(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(4a)(80mg、1重量%)を加え、得られたシード床を60℃で約1時間熟成させた後、6時間かけて20℃まで冷却し、この温度でさらに18時間熟成させた。スラリーを濾過し、湿ケーキを2:1体積比2-MeTHF:MeOHの溶液(16mL)で洗浄し、続いて9:1体積比2-MeTHF:MeOHの溶液で洗浄した(16mLで2回)。ケーキをN吹き込みしながら約18時間真空乾燥して、4aを得た(6.0g、収率74%、>500:1 d.r.)。
【0212】
実施例2C:(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウム塩酸塩(4b)の製造
【化32】
(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(3a)(10.0g、33.2mmol、96:4 d.r.)を室温でスルホラン(20mL)とアニソール(30mL)の混合物に懸濁させ、混合物を窒素雰囲気下に置き、オーバーヘッド撹拌しながら撹拌した。次いで、トリエチルシラン(15.9mL、100mmol)を加え、続いて三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(8.4mL、66.4mmol)を加え、混合物を加熱して50℃として約18時間経過させた。得られた均質溶液を、内部温度が45℃以下に維持されるような速度でMeOH(10mL)で反応停止してから、その後の反応停止した溶液を加熱して60℃として約2時間経過させた。HCl(4Mジオキサン中溶液、12.5mL)をゆっくりと加え、混合物に(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウム塩酸塩(4b)(112mg、2重量%)をシードとして加えてから、ゆっくり冷却して室温とし、約18時間熟成させた。スラリーを濾過し、湿ケーキを2-MeTHFで洗浄した(20mLで2回)。ケーキをNを吹き込みながら約18時間にわたり真空乾燥させて、4bを得た(4.87g、収率88%、>100:1 dr)。1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz) δ 4.13 (ddd, J = 10.8, 4.4, 2.3 Hz, 1H), 3.55 - 3.48 (m, 2H), 3.43 - 3.38 (m, 1H), 3.37 (t, J = 10.8 Hz, 1H), 3.21 (ddd, J = 15.3, 11.0, 4.1 Hz, 1H), 2.21 (dt, J = 12.2, 2.8 Hz, 1H), 1.79 (見かけのdq, J = 13.4, 3.5, 3.0 Hz, 1H), 1.64 (見かけのqd, J = 12.5, 4.2 Hz, 1H), 1.51 - 1.42 (m, 1H) ppm. 13C NMR (MeOH-d4, 125 MHz) δ 79.3, 69.2, 65.6, 48.0, 28.7, 27.1 ppm.
【0213】
実施例2D:(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウム塩酸塩(4b)の製造
【化33】
(1S,4R,5R)-6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-4-アミン4-メチルベンゼンスルホネート3a(10g、33.2mmol、>100:1 d.r.)を室温でDME(50mL)に懸濁させ、混合物を窒素雰囲気下に置き、磁気撹拌しながら撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.80mL、33.2mmol、1.0当量)を1回で加え、バッチを室温で約5分間撹拌した。クロロジメチルシラン(14.74mL、133mmol、4.0当量)をゆっくりと加え、続いてトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(12.59mL、69.7mmol、2.1当量)を加え、混合物を加熱して30℃として約20時間経過させた。得られた均一溶液を水(4.18mL、232mmol、7当量)で反応停止し、相を分離した。下層を冷却して室温とした後、((2S,5R)-5-アミノテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)メタノール塩酸塩(100mg、1重量%)をシード添加した。次いで、得られたスラリーに2-メチルテトラヒドロフラン(30mL)を約30分間かけて加え、混合物を室温で約18時間熟成させた。スラリーを濾過し、湿ケーキを2-MeTHFで洗浄した(20mLで2回)。ケーキをNを吹き込みしながら約18時間にわたり真空乾燥して、4b(3.13g、収率56%、>100:1 d.r.)を得た。1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz) δ 4.13 (ddd, J = 10.8, 4.4, 2.3 Hz, 1H), 3.55 - 3.48 (m, 2H), 3.43 - 3.38 (m, 1H), 3.37 (t, J = 10.8 Hz, 1H), 3.21 (ddd, J = 15.3, 11.0, 4.1 Hz, 1H), 2.21 (dt, J = 12.2, 2.8 Hz, 1H), 1.79 (見かけのdq, J = 13.4, 3.5, 3.0 Hz, 1H), 1.64 (見かけのqd, J = 12.5, 4.2 Hz, 1H), 1.51 - 1.42 (m, 1H). 13C NMR (MeOH-d4, 125 MHz) δ 79.3, 69.2, 65.6, 48.0, 28.7, 27.1.
【0214】
3.化合物7の合成
A.臭化リチウム添加剤を使用しない合成
実施例3A:(2-クロロ-4-フェノキシフェニル)(4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)メタノン(7)
【化34】
5-ブロモ-4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(5)(5.0g、21.5mmol)のTHF(60mL)中スラリーに、温度を-30℃以下に維持しながら-35℃でジエチルエーテル中のメチルリチウム(1.6M、14.1mL、22.6mmol)を加えた。次いで、混合物を冷却して-65℃以下とし、反応温度を-60℃以下に維持しながらヘキサン中のn-ブチルリチウム(2.7M、8.4mL、22.6mmol)を滴下し、得られたスラリーを1時間撹拌した。次いで、温度を-60℃以下に維持しながら、2-クロロ-4-フェノキシ安息香酸メチル(6)(5.71g、21.72mmol)のTHF(10mL)中溶液を滴下した。得られた混合物をこの温度でさらに1.5時間撹拌し、酢酸(2.7mL、47.3mmol)の添加により反応停止し、次いで昇温させて室温とした。混合物を水(37.5mL)で洗浄し、層を分離した。THFを減圧下に除去し、エタノール(70mL)で置き換えた。得られたスラリーを室温で熟成させ、濾過し、固体をエタノール(25mL)で洗浄して、乾燥後に7を得た(6.71g、収率81%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 13.40 (s, 1H), 8.74 (s, 1H), 8.12 (s, 1H), 7.59 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.48 (tt, J = 7.5 Hz, J = 2.2 Hz, 2H), 7.29 - 7.23 (tt, J = 7.5 Hz, J = 1.1 Hz, 1H), 7.22 - 7.14 (m, 3H), 7.01 (dd, J = 8.5 Hz, J = 2.4 Hz, 1H) ppm. 13C NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 185.9, 159.1, 155.1, 154.0, 1511.9, 151.8, 138.4, 134.0, 132.1, 131.8, 130.4, 124.8, 119.7, 119.2, 116.2, 115.4, 113.9 ppm.
【0215】
B.フロー反応器における臭化リチウムを用いた化合物7の合成
実施例3B:(2-クロロ-4-フェノキシフェニル)(4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)メタノン(7)
【化35】
溶液Aの調製:5-ブロモ-4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(5)(1.20kg、5.16モル)及び臭化リチウム(1.57kg、18.12モル)をTHF(27リットル)に溶解した。均一な溶液が生成されるまで混合物を撹拌した。得られた溶液の含水量は250ppm(7.2モル%)であった。混合物を冷却して-27℃とし、ジエトキシメタン中のメチルリチウム(2.88M、1.92リットル、5.53mol)を滴下した。混合物を昇温させて室温とし、5の0.173M溶液を得た。
【0216】
溶液Bの調製:市販のn-ブチルリチウムのヘキサン中溶液(1.435M)を含む溶液B。
【0217】
溶液Cの調製:2-クロロ-4-フェノキシ安息香酸メチル(6)(1.356kg、5.162mol)をTHF(9.183kg)に溶かした。
【0218】
溶液Dの調製:10重量%NaCl水溶液(9.0リットル)に酢酸(1.11リットル)を加えた。
【0219】
56.09mLのステンレス栓流反応器(PFR)中、化合物5を含む溶液A(0.173M、3.90kg/h)及びn-ブチルリチウムのヘキサン中溶液を含む溶液B(1.435M、5.91g/分)を予冷し、-27℃で合計0.727分間合わせた。次いで、215mL PFR中、得られたAB流を、化合物6を含有する溶液C(0.468M、1.53kg/h)と合計2.074分間合わせてから、溶液Dで反応停止した。得られた二相混合物を回収し、相を分離した。
【0220】
7の1.38kgを含む有機層を加熱して30℃とし、減圧下に濃縮して11リットルとした。得られたスラリーを加熱して45~50℃とし、30分間熟成させた。内部温度を45~50℃に維持しながら、エタノール:水(2/3、体積比)混合物(17.8リットル)を3時間かけて加えた。スラリーを放冷して室温とし、終夜撹拌した。混合物を濾過し、固体をエタノール(4.1リットル)で3回洗浄し、窒素流を用いて真空下で乾燥させて、化合物7を得た(1.25kg、流した化合物5の量に基づいて収率75%、投入した化合物5の量に基づいて収率63%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 13.40 (s, 1H), 8.74 (s, 1H), 8.12 (s, 1H), 7.59 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.48 (tt, J = 7.5 Hz, J = 2.2 Hz, 2H), 7.29 - 7.23 (tt, J = 7.5 Hz, J = 1.1 Hz, 1H), 7.22 - 7.14 (m, 3H), 7.01 (dd, J = 8.5 Hz, J = 2.4 Hz, 1H) ppm. 13C NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 185.9, 159.1, 155.1, 154.0, 1511.9, 151.8, 138.4, 134.0, 132.1, 131.8, 130.4, 124.8, 119.7, 119.2, 116.2, 115.4, 113.9 ppm.
【0221】
実施例4A:(2-クロロ-4-フェノキシフェニル)(4-{[(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-イル]アミノ}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)メタノン(A)
【化36】
(2-クロロ-4-フェノキシフェニル)(4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)メタノン(7)(0.5kg、1.3mol)及び(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウム4-メチルベンゼン-1-スルホネート(4a)(434g、1.43mol)をエタノール(4リットル、8V)中でスラリー化した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(420g、3.25mol)を加え、反応混合物を加熱して80℃とし、12時間撹拌した。反応液を冷却して55~65℃とし、水(2リットル、2V)を加えた。溶液をポリッシングフィルターに通し、続いてエタノール/水=4/1(体積比、0.5リットル、1V)を流した。次いで、濾過した溶液を35±5℃に冷却し、生成物シード(1g、0.2重量%)を加え、混合物を少なくとも15分間熟成させた。追加の水(5.5リットル、11V)を10時間かけて加え、混合物を35±5℃で3~5時間熟成させ、次いで少なくとも1時間かけて冷却して20℃とした。酢酸(37mL、0.5当量)を25℃でpH6~8に達するまで滴下した。次いで、所望の上清濃度が得られるまで、スラリーを20℃で少なくとも3~5時間熟成させた。スラリーを濾過し、生成物を2:3(体積比)エタノール:水(1リットル)で3回洗浄した。湿ケーキを真空及び窒素流下で≦50℃で乾燥させて、化合物Aを得た(557g、収率89%)。1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 12.78 (s, 1H), 8.63 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 8.28 (s, 1H), 7.65 (s, 1H), 7.59 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.52 - 7.45 (m, 2H), 7.26 (tt, J = 7.3, 1.1 Hz, 1H), 7.22 - 7.17 (m, 3H), 7.03 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 4.69 (s, 1H), 4.22 - 4.13 (m, 2H), 3.48 - 3.42 (m, 1H), 3.41 - 3.34 (m, 2H), 3.18 - 3.11 (m, 1H), 2.25 - 2.17 (m, 1H), 1.79 (dq, J = 15.1, 3.2 Hz, 1H), 1.60 (qd, J = 12.3, 3.9 Hz, 1H), 1.41 (tdd, J = 13.3, 10.5, 3.9 Hz, 1H) ppm. 13C NMR (151 MHz, D DMSO-d6) δ 189.65, 158.59, 156.25, 155.19, 154.10, 152.71, 136.08, 133.32, 131.17, 130.78, 130.27, 124.62, 119.59, 119.04, 116.35, 116.11, 100.54, 77.69, 69.82, 64.24, 46.18, 29.29, 27.06 ppm.
【0222】
実施例4B:(2-クロロ-4-フェノキシフェニル)(4-{[(3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-イル]アミノ}-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)メタノン(A)
【化37】
窒素雰囲気下に、(2-クロロ-4-フェノキシフェニル)(4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)メタノン(7)(1.0g、2.6mmol)及び(3R,6S))-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3-アミニウムクロリド(4b)(0.48g、2.86mmol)をエタノール(10mL、10V)中でスラリー化した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(0.84g、6.51mmol)を加え、反応混合物を80℃に加熱し、18時間撹拌した。反応物を冷却して45~55℃とし、水(2.5mL、2.5V)を加えた。反応液をさらに冷却して35±5℃とした。酢酸(0.094g、0.6当量)の水溶液(水7.5mL、7.5V)を5時間かけて加え、混合物を35±5℃で1~2時間熟成させた後、少なくとも1時間かけて冷却して20℃とした。次に、所望の上清濃度が得られるまで、スラリーを20℃で10~15時間終夜熟成させた。スラリーを濾過し、生成物を1/1(体積比)エタノール:水(5mL)で2回洗浄した。湿ケーキを真空及び窒素流下で≦50℃で乾燥させて、化合物Aを得た(1.055g、収率85%)。1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 12.78 (s, 1H), 8.63 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 8.28 (s, 1H), 7.65 (s, 1H), 7.59 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.52 - 7.45 (m, 2H), 7.26 (tt, J = 7.3, 1.1 Hz, 1H), 7.22 - 7.17 (m, 3H), 7.03 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 4.69 (s, 1H), 4.22 - 4.13 (m, 2H), 3.48 - 3.42 (m, 1H), 3.41 - 3.34 (m, 2H), 3.18 - 3.11 (m, 1H), 2.25 - 2.17 (m, 1H), 1.79 (dq, J = 15.1, 3.2 Hz, 1H), 1.60 (qd, J = 12.3, 3.9 Hz, 1H), 1.41 (tdd, J = 13.3, 10.5, 3.9 Hz, 1H) ppm. 13C NMR (151 MHz, D DMSO-d6) δ 189.65, 158.59, 156.25, 155.19, 154.10, 152.71, 136.08, 133.32, 131.17, 130.78, 130.27, 124.62, 119.59, 119.04, 116.35, 116.11, 100.54, 77.69, 69.82, 64.24, 46.18, 29.29, 27.06 ppm.
【0223】
実施例5:凍結乾燥された無細胞溶解物粉末としての酵素の調製
34μg/mLのクロラムフェニコール及び1%(w/v)グルコースを補充したLB培地25mLに、pCK110900ベクター内のトランスアミナーゼをコードするプラスミドを保有する大腸菌(K. coli)W3110株細胞のグリセロールストック20μLを接種した。細胞を、飽和するまで30℃/250RPMで18時間増殖させた。翌日、34μg/mLのクロラムフェニコール及び0.1mMピリドキシンを補充したTB 1リットルを含む2.8リットルフラスコを、初期OD600が0.05になるまで終夜飽和培養物で継代培養した。この培養物を、OD600が0.6~0.8に達するまで、30℃/250RPMで約2.5時間増殖させた。タンパク質産生を、30℃/250RPMで20時間にわたり1mM IPTGで誘発した。細胞を遠心によりペレット化し、上清を廃棄した。細胞ペレットを液体窒素中で急速冷凍し、解凍し、0.1mM PLPを補充した氷冷50mMトリエタノールアミン-HCl緩衝液(pH7.5)5mL(ペレット1グラム当たり)で再懸濁させた。この懸濁液を20℃で30分間振盪し、その後細胞を氷上に置いて冷却し、高圧均質化(16,000PSI)により破砕した。次いで、得られた溶解物を、4℃で45分間にわたり10,000×gで遠心することによって清澄化した。遠心後、上清を冷凍し、凍結乾燥した。このプロトコールに従って、配列番号1から配列番号8の任意のトランスアミナーゼ酵素を調製することができる。
【0224】
前記及び他の特徴及び機能又はそれらの代替物の種々のものは多数の他の異なる系又は適用へと望ましく組み合わされ得ると理解されるであろう。また、それにおける現在予期されない又は予想されない種々の代替、修飾、変更又は改良が当業者によって後に行われ得ると理解されるであろうが、これらもまた、以下の特許請求の範囲に含まれると意図される。
【配列表】
2024521786000001.app
【国際調査報告】