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特表2024-521805予熱を用いた付加製造技術を利用する、アルミニウム合金製部品の製造方法
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  • 特表-予熱を用いた付加製造技術を利用する、アルミニウム合金製部品の製造方法 図1
  • 特表-予熱を用いた付加製造技術を利用する、アルミニウム合金製部品の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】予熱を用いた付加製造技術を利用する、アルミニウム合金製部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/362 20210101AFI20240528BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20240528BHJP
   B22F 10/20 20210101ALI20240528BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20240528BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240528BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20240528BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240528BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240528BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240528BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240528BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240528BHJP
【FI】
B22F10/362
C22C21/00 L
B22F10/20
B22F10/64
B22F1/00 N
B22F10/38
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y40/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573046
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 FR2022050981
(87)【国際公開番号】W WO2022208037
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2105626
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519367223
【氏名又は名称】シーテック コンステリウム テクノロジー センター
【氏名又は名称原語表記】C-TEC CONSTELLIUM TECHNOLOGY CENTER
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】シェアブ,ベシール
(72)【発明者】
【氏名】シャアニ,ラヴィ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA14
4K018BA08
4K018BB04
(57)【要約】
互いに重ね合わされた連続的な金属層(20・・・20)の形成を含む、部品(20)の製造方法であって、各層は、アルミニウム合金(15)の堆積によって形成され、アルミニウム合金は、エネルギー供給を受けて、溶融して凝固することによって前記層を形成し、部品の製造中、各層の形成前に、アルミニウム合金粉末は25℃以上かつ160℃未満または300℃~500℃の温度に保たれ、300℃~400℃の温度での製造後の熱処理を部品に適用することを含み、製造後の熱処理は、温度上昇によって開始され、温度は、1分間につき5℃を超える温度上昇にしたがって実現され、溶体化処理とそれに続く焼入れを含まないことを特徴とする製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ね合わされた連続的な金属層(20・・・20)の形成を含む、部品(20)の製造方法であって、各層が、数値モデルから定義されるパターンを描き、各層が、アルミニウム合金の粉末(15)を光ビーム(12)または荷電粒子ビームへ曝露して粉末の溶融とそれに続く凝固を導くことによって形成され、方法が、
- 部品の製造中、各層の形成前に、アルミニウム合金粉末は、25℃以上かつ160℃未満または300~500℃の温度(T)に保たれる、
- 方法は、300~400℃の温度(T’)での製造後の熱処理を部品(20)に適用することを含む、
- 製造後の熱処理は、1分間につき5℃を超える温度上昇(ΔT’)に部品を曝すことによって行われる、
- 方法は、溶体化処理とそれに続く焼入れを含まない、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
アルミニウム合金が、
- 合計で0.30%以上、好ましくは0.30~2.50%、好ましくは0.40~2.00%、より好ましくは0.40~1.80%、さらにより好ましくは0.50~1.60%、さらにより好ましくは0.60~1.50%、さらにより好ましくは0.70~1.40%、さらにより好ましくは0.80~1.20%の質量分率にしたがった、Zr、Sc、Hf、Ti、V、Er、Tm、Ybおよび/またはLuの中から選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったMg、
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったZn、
- 任意に、各々0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがい、好ましくは、合計で25.00%未満、好ましくは20.00%未満、より好ましくは15.00%未満の質量分率にしたがった、Ni、Mn、Crおよび/またはCuの中から選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、各々5.00%以下、好ましくは3%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは5%以下の質量分率にしたがった、W、Nb、Ta、Y、Nd、Ce、Co、Moおよび/またはミッシュメタルの中から選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、各々1.00%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1%以下の質量分率にしたがった、Si、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、第一の変形例によると0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがった、または、第二の変形例によると1.00%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下の質量分率にしたがったFe、
- 任意に、0.06~1.00%の質量分率にしたがったAgおよび/または0.06~1.00%の質量分率にしたがったLiのうちから選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、各々0.05%(すなわち500ppm)未満かつ合計で0.15%未満の質量分率にしたがった不純物、
- 残りはアルミニウム、
である合金元素を少なくとも含む、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
アルミニウム合金が、
- 合計で0.30%以上、好ましくは0.30~2.5%、好ましくは0.40~2.0%、より好ましくは0.40~1.80%、さらにより好ましくは0.50~1.60%、さらにより好ましくは0.60~1.50%、さらにより好ましくは0.70~1.40%、さらにより好ましくは0.80~1.20%の質量分率にしたがった、Ti、V、Sc、Hf、Er、Tm、YbおよびLuの中から選択される少なくとも1つの元素およびZrであって、Zrは、上に与えられたパーセンテージ範囲の10%から100%未満を占める、
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったMg、
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったZn、
- 任意に、各々0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがい、好ましくは、合計で25.00%未満、好ましくは20.00%未満、より好ましくは15.00%未満の質量分率にしたがった、Ni、Mn、Crおよび/またはCuの中から選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、各々5.00%以下、好ましくは3%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは5%以下の質量分率にしたがった、W、Nb、Ta、Y、Nd、Ce、Co、Moおよび/またはミッシュメタルの中から選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、各々1.00%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1%以下の質量分率にしたがった、Si、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、第一の変形例によると0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがった、または、第二の変形例によると1.00%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下の質量分率にしたがったFe、
- 任意に、0.06~1.00%の質量分率にしたがったAgおよび/または0.06~1.00%の質量分率にしたがったLiのうちから選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、各々0.05%(すなわち500ppm)未満かつ合計で0.15%未満の質量分率にしたがった不純物、
- 残りはアルミニウム、
である合金元素を少なくとも含む、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
アルミニウム合金が、
- 0.30%以上、好ましくは0.30~2.50%、好ましくは0.40~2.00%、より好ましくは0.40~1.80%、さらにより好ましくは0.50~1.60%、さらにより好ましくは0.60~1.50%、さらにより好ましくは0.70~1.40%、さらにより好ましくは0.80~1.20%の質量分率にしたがったZr、
- 0.30%未満、好ましくは0.20%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったSc;
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったMg、
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったZn、
- 任意に、各々0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがい、好ましくは、合計で25.00%未満、好ましくは20.00%未満、より好ましくは15.00%未満の質量分率にしたがった、Ni、Mn、Crおよび/またはCuの中から選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、各々5.00%以下、好ましくは3%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは5%以下の質量分率にしたがった、Hf、Ti、Er、W、Nb、Ta、Y、Yb、Nd、Ce、Co、Mo、Lu、Tm、Vおよび/またはミッシュメタルの中から選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、各々1.00%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1%以下の質量分率にしたがった、Si、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、第一の変形例によると0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがった、または、第二の変形例によると1.00%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下の質量分率にしたがったFe、
- 任意に、0.06~1.00%の質量分率にしたがったAgおよび/または0.06~1.00%の質量分率にしたがったLiのうちから選択される少なくとも1つの元素、
- 任意に、各々0.05%(すなわち500ppm)未満かつ合計で0.15%未満の質量分率にしたがった不純物、
- 残りはアルミニウム、
である合金元素を少なくとも含む、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載の方法から形成されるアルミニウム合金製部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、アルミニウム合金製部品の製造方法であり、付加製造技術を利用するものである。
【背景技術】
【0002】
80年代以降、素材を切削することを目ざす加工技術とは逆である、素材の付加によって部品を成形することにある、付加製造技術が発展した。付加製造は、以前はプロトタイピングに限定されていたが、今では、金属部品も含めて工業製品を大量生産するために実用化されている。
【0003】
付加製造という用語は、仏規格XP E67-001によると、「デジタルオブジェクトに基づいて物理オブジェクトを、素材の付加によって、層ごとに製造することを可能にする一連の方法」と定義されている。規格ASTM F2792-10もまた、付加製造を定義している。規格ISO/ASTM 17296-1において、さまざまな付加製造方式もまた定義および記述されている。国際公開第2015/006447号において、低気孔率のアルミニウム製部品を作製するために付加製造を用いることが記述された。連続的な層の適用は一般的に、フィラー材と呼ばれる材料の塗付、ついでレーザービーム、電子ビーム、プラズマトーチまたはアークタイプのエネルギー源を用いた、フィラー材の溶融または焼結によって実現される。適用される付加製造方式がどうであろうと、付加される各層の厚みは、およそ数十ミクロンまたは数百ミクロンである。
【0004】
他の付加製造法が利用されうる。例えば、粉末の形態を成すフィラー材の溶融または焼結に非制限的に言及することができる。それはレーザー溶融またはレーザー焼結であることができる。米国特許出願公開第2017/0016096号明細書は、電子ビームまたはレーザービームタイプのエネルギービームへの粉末の曝露によって得られる局所溶融による部品の製造方法を記述しており、この方法はまた、「Selective Laser Melting(選択的レーザー溶融)」を示す頭字語SLM、またはLPBF「Laser Powder Bed Fusion(レーザー粉末床溶融)」、または「Electro Beam Melting(電子ビーム溶融)」を示すEBMによっても示される。このような方法を利用する際、各層を形成するために、薄い粉末層が、例えばトレーの形状をした、台座の上に配置される。粉末はこのように粉末床を形成する。エネルギービームは、粉末のスウィープを行う。スウィープは、あらかじめ決定された数値モデルに応じて行われる。スウィープは、粉末の溶融/凝固による層の形成を可能にする。層の形成後、層は、新しい粉末の厚みで覆われる。互いに重ね合わされた連続的な層の形成プロセスは、最終部品の獲得に至るまで繰り返される。
【0005】
付加製造によって得られるアルミニウム部品の機械的性質は、溶加材を形成する合金、またより具体的にはその組成ならびに付加製造の利用の後に適用される熱処理に依る。例えば、Mnおよび/またはNiおよび/またはZrおよび/またはCuといった元素の添加が、付加製造の結果として生じる部品の機械的性質を改善することを可能にすることができることが示された。
【0006】
一般的に、LPBFタイプの方法を利用する際に、レーザービームへの曝露を受けた粉末床は、およそ200℃の温度に至る。
【0007】
Buchbinder Damien氏他の刊行物「Investigation on reducing distortion by preheating during manufacture of aluminum components using selective lase melting」、Journal of laser applications 26.1(2014)は、LPBFタイプの方法によって製造される部品に悪影響を及ぼし得るゆがみを報告している。これらのゆがみは、部品中に残存する残留応力に起因する。上述の刊行物は、150℃を超える温度でアルミニウム合金粉末を予熱することによって、予熱なしで利用する方法と比べて、ゆがみが減少し得ることを示している。この刊行物は、粉末の最適予熱温度が250℃であると結論づけている。
【0008】
LPBFタイプの付加製造法の利用を可能にする装置の大部分は、およそ200℃の温度までの粉末の予熱を行うことを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2015/006447号
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0016096号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Buchbinder Damien氏他の刊行物「Investigation on reducing distortion by preheating during manufacture of aluminum components using selective lase melting」、Journal of laser applications 26.1(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、アルミニウム合金に基づく、付加製造によって製造される部品の耐割れ性の特性に、予熱温度が影響を与えることを確認した。予熱温度を選択することにより、また適切な製造後熱処理を利用することにより、耐割れ性は、有意に改善され得る。これが、以下に記述される本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[発明の開示]
本発明の第一の対象は、互いに重ね合わされた連続的な金属層の形成を含む、部品の製造方法であって、各層は、数値モデルから定義されるパターンを描き、各層は、アルミニウム合金の粉末を光ビームまたは荷電粒子ビームへ曝露して粉末の溶融とそれに続く凝固を導くことによって形成され、該方法は、以下を特徴とする:
- 部品の製造中、各層の形成前に、アルミニウム合金粉末は、25℃以上かつ160℃未満または300~500℃の温度に保たれる、
- 方法は、300~400℃の温度での製造後の熱処理を部品に適用することを含む、
- 製造後の熱処理は、部品中の残留応力を減らして亀裂の形成を制限するように、1分間につき5℃を超える温度上昇に部品を曝すことによって行われる、
- 方法は、溶体化処理とそれに続く焼入れを含まない。
【0013】
粉末は好ましくは、25~150℃、またさらに好ましくは第一の変形例によると80℃~130℃の温度に保たれる。
【0014】
製造後の熱処理の際に、温度上昇は好ましくは1分間につき10℃超または1分間につき20℃超または1分間につき40℃超または1分間につき100℃超である。製造後の熱処理の際に、温度上昇は瞬間的であり得る。
【0015】
本発明の別の対象は、本発明の第一の対象による方法から形成されるアルミニウム合金製部品である。
【0016】
他の利点および特徴は、以下に挙げられる図面に示され非制限例として与えられる本発明の特定実施形態の以下の説明からよりはっきりと分かるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】LPBFタイプの付加製造法を示す図である。
図2】鋭角のところに亀裂を有する、LPBF製造法によって製造されたアルミニウム合金製部品の画像を示している。
図3】LPBF製造法によって製造された試験片の形状を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[特定実施形態の開示]
説明において、相反する指示がない限り、
- アルミニウム合金の呼称は、The Aluminum Associationの命名法に従っており、
- 化学元素の含有量は、%で示され、また質量分率を示す。x%~y%の記号表記は、x%以上でありかつy%以下であることを示す。
【0019】
不純物とは、非意図的に合金中に存在する化学元素を意味する。
【0020】
図1は、レーザー粉末床溶融(LPBF)タイプの付加製造法の動作を示している。溶加材15は、台座10の上に配置されるアルミニウム合金製粉末の形態をしている。エネルギー源、この場合レーザー源11は、レーザービーム12を発する。レーザー源は、光学システム13によってフィラー材につながれ、その動きは、数値モデルMに応じて決定される。レーザービーム12は、伝播軸Zに沿って伝播し、数値モデルに依存するパターンを描く、面XYに沿った動きをたどる。面は例えば、伝播軸Zに垂直である。粉末15とのレーザービーム12の相互作用は、粉末の選択的溶融とそれに続く凝固を引き起こし、結果として層20・・・20の形成をもたらす。層が一つ形成されると、該層は、溶加材の粉末15で覆われ、そして別の相が、先に作製された層に重ね合わせられて形成される。一層または各層を形成する粉末の厚みは、例えば10~250μmであり得る。
【0021】
本発明者らは、部品の製造中かつ/または製造後熱処理の際の合金の割れ感受性を制限するために、層の厚みの増加が有益であり得ることを確認した。層の厚みの増加は、最適の条件における各粉末層の完全な溶融を保証するために、レーザー出力、ベクトル偏差(2つの連続的なレーザーパス間の距離)および/またはレーザーのスウィープ速度の適合を好ましくは伴う。各層の厚みは例えば、10~250μm、好ましくは30~250μm、好ましくは50~200μm、好ましくは60~180μm、好ましくは80~180μm、好ましくは90~170μm、好ましくは100~160μmであり得る。
【0022】
台座10はトレーを形成し、その上に粉末層が連続して堆積する。台座は、あらかじめ決定された予熱温度Tで、レーザービーム12に曝露される前の粉末の予熱を可能にする、加熱手段を有する。加熱手段はまた、製造された層を温度Tに保つことも可能にする。加熱手段は、抵抗器、あるいは誘導加熱器もしくは、粉末床の周りのまたは粉末床の上の加熱要素といった別の粉末床加熱方法による加熱器を含み得る。加熱要素は、加熱ランプまたはレーザーであり得る。
【0023】
粉末は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有し得る。
- 5~100μm、好ましくは5~25μm、または20~60μmの平均粒径。所定値は、粒子の少なくとも80%が、特定範囲における平均サイズを有していることを示すものである。
- 球形。粉末の球形は例えば、モルフォグラニュロメーターを利用することによって決定されることができる。
- 良好な流動性。粉末の流動性は例えば、規格ASTM B213または規格ISO 4490:2018に準じて決定されることができる。規格ISO 4490:2018によると、流動時間は、好ましくは50秒未満である。
- 好ましくは0~5体積%、より好ましくは0~2体積%、さらにより好ましくは0~1体積%の低気孔率。気孔率はとりわけ、走査型電子顕微鏡またはヘリウムピクノメトリー(規格ASTM B923を参照)によって決定されることができる。
- より大きい粒子に密着する、サテライト粒子と呼ばれる小さな粒子(粉末の平均サイズの1~20%)の量が少ないこと(10体積%未満、好ましくは5体積%未満)または存在しないこと。
【0024】
粉末は例えば、ガス噴射アトマイズ、プラズマアトマイズ、水噴射アトマイズ、超音波アトマイズ、遠心力アトマイズ、電解および球状化、または粉砕および球状化によって得られることができる。
【0025】
本発明による粉末は好ましくは、ガス噴射アトマイズによって得られる。ガス噴射アトマイズ法は、ノズルを通じた溶融金属の流し込みから始まる。溶融金属には次に、場合によっては他のガスを伴う、窒素やアルゴンのような中性ガスの噴射が衝突し、非常に細かい水滴にアトマイズされ、水滴は微粒化塔の内部に落ちることによって冷却および凝固する。粉末は次に、缶の中に収集される。ガス噴射アトマイズ法は、不規則な形態をもつ粉末を作り出す水噴射アトマイズとは違って、球形をもつ粉末を作り出すという利点を有する。ガス噴射アトマイズの別の利点は、とりわけ球形および粒径分布のおかげである、良好な粉末密度である。この方法のさらに別の利点は、粒径分布の優れた再現性である。
【0026】
本発明による粉末は、その製造後、とりわけその湿気を減少させるために乾燥されることができる。粉末はまた、その製造とその利用との間に包装および貯蔵されることもできる。
【0027】
本発明者らは、アルミニウム合金部品を作製するために付加製造法を利用した。しかしながら、本発明者らは、粉末が160℃~290℃の温度で予熱される場合、製造された部品がとりわけ鋭角のところに割れのリスクを有し得ることに気づいた。図2は例えば、Zrをおよそ1%の質量分率にしたがって有するアルミニウム合金から形成された部品上の亀裂の発生を示している。亀裂は、図上で円によって囲まれている。アルミニウム部品はLPBFによって製造されており、粉末は200℃で予熱されており、製造に続いて300℃の温度で2時間の製造後の熱処理が行われた。亀裂は、製造後の熱処理の後に発生した。
【0028】
本発明者らは、亀裂が恐らく、最適ではない、粉末の予熱温度に結びついていると推定する。慣例の付加製造法によると、粉末床の温度は一般的に、150℃~200℃である。付加製造法によって形成される層は、数時間を超え得る長時間の間、そのような温度範囲を受ける可能性がある。これらの状況は、割れを助長すると考えられる。このように、本発明者らは、160℃~290℃の温度で粉末を予熱することを避けるべきであると考える。
【0029】
本発明者らは、予熱された粉末床の温度が160℃未満かつ好ましくは30℃超であるときに、部品がより優れた耐割れ性を有することを確認した。好ましくは、粉末床の予熱は、140℃以下、または、より良くは、130℃以下の温度で行われることができる。予熱温度は、室温を超える。粉末床の予熱温度Tの好適な範囲は、25℃≦T≦150℃、好ましくは50℃≦T≦150℃、好ましくは50℃≦T≦140℃、好ましくは60℃≦T≦140℃、好ましくは70℃≦T≦135℃、好ましくは80℃≦T≦130℃である。
【0030】
製造後の熱処理を利用すると、製造が付加製造法によって行われている場合、残留応力の除去を可能にする応力除去条件および硬化相の析出を作り出すことができる。それは熱応力除去とも言われる。本発明者らは、製造後の熱処理の設定温度T’が300℃~500℃であることが好ましいことに気づいたのであり、製造後の熱処理の継続時間は利用される温度と部品の体積とに適合しており、一般に、製造後の熱処理の継続時間は10分~50時間である。300℃~400℃の製造後の熱処理の温度T’が、好適である。これらの温度で、製造後の熱処理の継続時間は、好ましくは30分~10時間である。
【0031】
製造後の熱処理の温度に加えて、製造後の熱処理を開始する温度上昇は、できるだけ速いことが好ましい。例えば、温度上昇中に、温度上昇速度ΔT’(通常、当業者は、℃/分または℃/秒単位での「heating rate(加熱速度)」で表す)は、好ましくは1分間につき5℃超または1分間につき10℃超、またさらに好ましくは1分間につき20℃超またより有利には1分間につき40℃超、またより有利には1分間につき100℃超である。温度上昇とは、部品が製造後の熱処理中に受ける温度上昇を意味する。温度上昇が瞬間的であること、すなわち製造された部品が、製造後の熱処理の開始時点で、製造後の熱処理の設定温度T’を受けることが最適であるようである。瞬間的な温度上昇は、製造された部品を設定温度T’に既に達している熱い炉の中に配置することによって、または流動床や溶融塩浴タイプの迅速な加熱手段によって得ることができる。温度上昇はまた、誘導加熱によって保証されることもできる。
【0032】
部品の外部での同じ温度上昇に対して、部品の内部の温度の変化は、とりわけ熱媒体(液体または空気または不活性ガス)および部品の形状に依る。特に、部品の厚みにおける温度または表面の温度は異なり得る。先に言及された温度上昇が部品の外部の温度に相当するのはこのためである。上述の値の範囲内での、製造後の熱処理の温度上昇の際の、予熱温度Tと製造後の熱処理温度T’と温度上昇速度ΔT’との組み合わせは、優れた耐割れ性を有する部品の獲得を可能にする。
【0033】
一代替案によると、予熱温度は、効果的な応力除去を得ることができる条件に相当する。温度範囲Tはその場合、300℃~500℃であり得る。この温度範囲では、部品の製造条件が引き起こす残留応力がより少ないと考えられる。この代替案によると、先に記述されたような応力除去の製造後熱処理は、やはり適切である。
【0034】
一可能性によると、製造後の熱処理は、300℃~500℃の温度での熱間等方圧加圧によって取って代わられるかまたは補われることができる。HIP処理はとりわけ、伸び特性および疲労特性をそのうえ向上させることを可能にすることができる。熱間等方圧加圧は、製造後の熱処理の前、後または代わりに行われることができる。HIP処理は、500~3000バールの圧力で、0.5~10時間の継続時間の間、行われることができる。
【0035】
第一の変形例によると、粉末15を形成する金属は、少なくとも以下の合金元素を含むアルミニウム合金である:
- 合計で0.30%以上、好ましくは0.30~2.50%、好ましくは0.40~2.00%、より好ましくは0.40~1.80%、さらにより好ましくは0.50~1.60%、さらにより好ましくは0.60~1.50%、さらにより好ましくは0.70~1.40%、さらにより好ましくは0.80~1.20%の質量分率にしたがった、Zr、Sc、Hf、Ti、V、Er、Tm、Ybおよび/またはLuの中から選択される少なくとも1つの元素;
これらの元素は、部品の製造の際かつ/または製造後の熱処理の際に出現し得る分散質の形成および/または固溶体硬化により、合金の機械的強度の増加を可能にすることができる。元素Zr、Sc、HFおよびTiは、等軸粒の出現を促進することによりレーザー溶融の際に粒状構造を制御することをそのうえ可能にすることができる。
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったMg;
この元素は、固溶体硬化により、合金の機械的強度を増加させることを可能にすることができる。しかしながら、この元素はレーザー溶融の際の蒸気に敏感である可能性があり、このことは、煙の形成および溶融領域の不安定性に導く可能性がある。これらの理由により、この元素の添加は制限すべきでありまた好ましくは避けるべきである。
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったZn;
この元素は、固溶体硬化により、合金の機械的強度を増加させることを可能にすることができる。しかしながら、この元素はレーザー溶融の際の蒸気に敏感である可能性があり、このことは、煙の形成および溶融領域の不安定性に導く可能性がある。これらの理由により、この元素の添加は制限すべきでありまた好ましくは避けるべきである。
- 任意に、各々0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがった;好ましくは、合計で25.00%未満、好ましくは20.00%未満、より好ましくは15.00%未満の質量分率にしたがった、Ni、Mn、Crおよび/またはCuの中から選択される少なくとも1つの元素;
これらの元素は、部品の製造の際かつ/または製造後の熱処理の際に出現し得る分散質の形成および/または固溶体硬化により、合金の機械的強度の増加を可能にすることができる。
- 任意に、各々5.00%以下、好ましくは3%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは5%以下の質量分率にしたがった、W、Nb、Ta、Y、Nd、Ce、Co、Moおよび/またはミッシュメタルの中から選択される少なくとも1つの元素;
これらの元素は、部品の製造の際かつ/または製造後の熱処理の際に出現し得る分散質の形成および/または固溶体硬化により、合金の機械的強度の増加を可能にすることができる。
- 任意に、各々1.00%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1%以下の質量分率にしたがった、Si、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択される少なくとも1つの元素;
これらの元素は、部品の製造の際かつ/または製造後の熱処理の際に出現し得る分散質の形成および/または固溶体硬化により、合金の機械的強度の増加を可能にすることができる。
- 任意に、第一の変形例によると0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがった、または、第二の変形例によると1.00%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下の質量分率にしたがったFe;
この元素は、部品の製造の際かつ/または製造後の熱処理の際に形成され得る分散質の形成および/または固溶体硬化により、合金の機械的強度の増加を可能にすることができる。
- 任意に、0.06~1.00%の質量分率にしたがったAgおよび/または0.06~1.00%の質量分率にしたがったLiのうちから選択される少なくとも1つの元素;Liは、固溶体硬化により、合金の機械的強度を増加させることを可能にすることができる。しかしながら、この元素はレーザー溶融の際の蒸気に敏感である可能性があり、このことは、煙の形成および溶融領域の不安定性に導く可能性がある。これらの理由により、この元素の添加は制限すべきであり、好ましくは避けるべきである。
Agは、固溶体硬化により、合金の機械的強度を増加させることを可能にすることができ、かつ例えばAl2Cuタイプの析出物といった、他の硬化析出物の核生成を容易にすることを可能にすることができる。
- 任意に、各々0.05%(すなわち500ppm)未満かつ合計で0.15%未満の質量分率にしたがった不純物;
- 残りはアルミニウム。
【0036】
第二の変形例によると、粉末を形成する金属15は、少なくとも以下の合金元素を含むアルミニウム合金である:
- 合計で0.30%以上、好ましくは0.30~2.5%、好ましくは0.40~2.0%、より好ましくは0.40~1.80%、さらにより好ましくは0.50~1.60%、さらにより好ましくは0.60~1.50%、さらにより好ましくは0.70~1.40%、さらにより好ましくは0.80~1.20%の質量分率にしたがった、Ti、V、Sc、Hf、Er、Tm、YbおよびLuの中から選択される少なくとも1つの元素およびZrであって、Zrは、上に与えられたパーセンテージ範囲の10%から100%未満を占めることがわかっている;
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったMg;
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったZn;
- 任意に、各々0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがった;好ましくは、合計で25.00%未満、好ましくは20.00%未満、より好ましくは15.00%未満の質量分率にしたがった、Ni、Mn、Crおよび/またはCuの中から選択される少なくとも1つの元素;
- 任意に、各々5.00%以下、好ましくは3%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは5%以下の質量分率にしたがった、W、Nb、Ta、Y、Nd、Ce、Co、Moおよび/またはミッシュメタルの中から選択される少なくとも1つの元素;
- 任意に、各々1.00%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1%以下の質量分率にしたがった、Si、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択される少なくとも1つの元素;
- 任意に、第一の変形例によると0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがった、または、第二の変形例によると1.00%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下の質量分率にしたがったFe;
- 任意に、0.06~1.00%の質量分率にしたがったAgおよび/または0.06~1.00%の質量分率にしたがったLiのうちから選択される少なくとも1つの元素;
- 任意に、各々0.05%(すなわち500ppm)未満かつ合計で0.15%未満の質量分率にしたがった不純物;
- 残りはアルミニウム。
【0037】
第三の変形例によると、粉末15を形成する金属は、少なくとも以下の合金元素を含むアルミニウム合金である:
- 0.30%以上、好ましくは0.30~2.50%、好ましくは0.40~2.00%、より好ましくは0.40~1.80%、さらにより好ましくは0.50~1.60%、さらにより好ましくは0.60~1.50%、さらにより好ましくは0.70~1.40%、さらにより好ましくは0.80~1.20%の質量分率にしたがったZr;
- 0.30%未満、好ましくは0.20%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったSc;
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったMg;
- 任意に、0.30%未満、好ましくは0.10%未満、より好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがったZn;
- 任意に、各々0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがった;好ましくは、合計で25.00%未満、好ましくは20.00%未満、より好ましくは15.00%未満の質量分率にしたがった、Ni、Mn、Crおよび/またはCuの中から選択される少なくとも1つの元素;
- 任意に、各々5.00%以下、好ましくは3%以下、かつ合計で15.00%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは5%以下の質量分率にしたがった、Hf、Ti、Er、W、Nb、Ta、Y、Yb、Nd、Ce、Co、Mo、Lu、Tm、Vおよび/またはミッシュメタルの中から選択される少なくとも1つの元素;
- 任意に、各々1.00%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下、かつ合計で2.00%以下、好ましくは1%以下の質量分率にしたがった、Si、La、Sr、Ba、Sb、Bi、Ca、P、B、Inおよび/またはSnの中から選択される少なくとも1つの元素;
- 任意に、第一の変形例によると0.50~7.00%、好ましくは1.00~6.00%の質量分率にしたがった、または、第二の変形例によると1.00%以下、好ましくは0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらにより好ましくは700ppm以下の質量分率にしたがったFe;
- 任意に、0.06~1.00%の質量分率にしたがったAgおよび/または0.06~1.00%の質量分率にしたがったLiのうちから選択される少なくとも1つの元素;
- 任意に、各々0.05%(すなわち500ppm)未満かつ合計で0.15%未満の質量分率にしたがった不純物;
- 残りはアルミニウム。
【0038】
好ましくは本発明による合金は、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%の質量分率のアルミニウムを含む。
【0039】
粉末の溶融は、部分的または全体的であり得る。好ましくは、曝露される粉末の50~100%が、より好ましくは80~100%が溶融する。
【0040】
好ましくは、本発明の一特定例によると、アルミニウム合金は以下を含む:
- 0.50~3.00%、好ましくは0.50~2.50%、好ましくは0.60~1.40%、より好ましくは0.70~1.30%、さらにより好ましくは0.80~1.20%、さらにより好ましくは0.85~1.15%;さらにより好ましくは0.90~1.10%の質量分率にしたがったZr;
- 1.00~7.00%、好ましくは1.00~6.00%、好ましくは2.00~5.00%;より好ましくは3.00~5.00%、さらにより好ましくは3.50~4.50%の質量分率にしたがったMn;
- 1.00~6.00%、好ましくは1.00~5.00%、好ましくは2.00~4.00%、より好ましくは2.50~3.50%の質量分率にしたがったNi;
- 任意に、1.00%以下、好ましくは0.50%以下、好ましくは0.30%以下;かつ好ましくは0.05以上、好ましくは0.10%以上の質量分率にしたがったFe;
- 任意に、1.00%以下、好ましくは0.50%以下の質量分率にしたがったSi;
- 任意に、1.00~5.00%、好ましくは1.00~3.00%、好ましくは1.50~2.50%の質量分率にしたがったCu。
元素Hf、Ti、Er、W、Nb、Ta、Y、Yb、Nd、Ce、Co、Mo、Lu、Tm、Vおよび/またはミッシュメタルは、得られる材料の硬度の増加を可能にする微細な金属間化合物または分散質の形成に導くことができる。当業者に知られているように、ミッシュメタルの組成は一般的におよそ45~50%のセリウム、25%のランタン、15~20%のネオジムおよび5%のプラセオジムである。
【0041】
一実施形態によると、La、Bi、Mg、Er、Yb、Y、Scおよび/またはZnの添加は避けられるのであり、これらの元素の各々の好適な質量分率はそうなると0.05%未満、また好ましくは0.01%未満である。
【0042】
別の実施形態によると、Feおよび/またはSiの添加を避ける。しかしながら、これらの2つの元素が上に定義されたような含有量で一般的なアルミニウム合金の中に概して存在していることが当業者に知られている。上に記述されたような含有量はつまり、FeおよびSiについての不純物の含有量にも相当し得る。
【0043】
元素AgおよびLiは、析出硬化によって、または固溶体の性質へのそれらの作用によって、材料の強度に影響を及ぼすことができる。
【0044】
任意に、合金は、結晶粒を精錬するための少なくとも1つの材料、例えばAlTiCやAlTiB2(例えばAT5BやAT3Bの形態)もまた、各々50kg/トン以下、好ましくは20kg/トン以下、さらにより好ましくは12kg/トン以下の量により、かつ合計で50kg/トン以下、好ましくは20kg/トン以下の量により、含むことができる。
【0045】
付加製造における部品の製造用エンクロージャ(ひいては粉末床)を加熱するための手段はいくつも存在する。例えば、加熱装置の付いた組立トレー、さもなければ組立トレーの下および/または内部および/または粉末床の周りに配置されることができる、レーザー、誘導、加熱ランプもしくは加熱抵抗器による加熱器の利用を挙げることができる。粉末床を加熱するためにレーザーを利用する場合、このレーザーは好ましくは焦点がずれており、粉末の溶融のために使用される主レーザーと同軸であるか、あるいは主レーザーと別個であり得る。
【0046】
一実施形態によると、方法は、高い堆積速度を伴う組立方法であり得る。堆積速度は例えば、4mm/s超、好ましくは6mm/s超、より好ましくは7mm/s超であり得る。堆積速度は、スウィープ速度(単位はmm/s)とベクトル偏差(単位はmm)と層の厚み(単位はmm)との間の積として計算される。
【0047】
一実施形態によると、方法は、レーザー、また任意には複数のレーザーを利用することができる。
【0048】
組織硬化型合金に適合した別の実施形態によると、形成された部品の溶体化処理とそれに続く焼入れおよび焼戻し、および/または熱間等方圧加圧を行うことができる。熱間等方圧加圧はこの場合、有利には、溶体化処理の代わりとなり得る。しかしながら本発明による方法は、溶体化処理とそれに続く焼入れを好ましくは必要としないため、有利である。溶体化処理は、微細な金属間化合物または分散質の増大に関与することから、特定の場合において機械的強度への不利な影響を及ぼし得る。また、複雑な形状の部品について、焼入れ作業は部品のゆがみに至らせる可能性があり、このことは、部品をそれらの最終またはほぼ最終の形状で直接に獲得するという、付加製造の利用の第一の利点を制限しかねない。
【0049】
一実施形態によると、本発明による方法はそのうえ任意に、加工処理、および/または化学的表面処理、電気化学的表面処理もしくは機械的表面処理、および/またはトライボ仕上げを含む。これらの処理はとりわけ、粗さを減らす、および/または耐腐食性を向上させる、および/または耐疲労亀裂発生を向上させるために行われ得る。
【0050】
任意には、例えば付加製造の後かつ/または製造後熱処理の前に、部品の機械的変形を施すことが可能である。
【0051】
任意には、既知の接合方法によって、単数または複数の別の部品との接合作業を行うことが可能である。接合方法として例えば、以下を挙げることができる:
-ボルト締め、リベット締めまたは他の機械的接合方法;
-融接;
-摩擦溶接;
-ろう付け。
【0052】
[実験的試験]
図3で示された幾何形状にしたがって、複数の試験片を形成した。これらの試験片は、亀裂が形成されやすい部位を成す、矢印で目印をつけられた、鋭角を有する。
【0053】
利用された合金は、Mn:4%-Ni:2.85%-Cu:1.93%-Zr:0.88%を含むアルミニウム合金であった。組成は、ICP-MS(induced Coupled Plasma Mass Spectrometry:誘導結合プラズマ質量分析)によって測定された。粉末は、ガス(アルゴン)噴射アトマイズによって得られた。粒径は主として3μm~100μmであり、27μmのD10(10%フラクタイル)、43μmのD50(メジアン径)および62μmのD90(90%フラクタイル)を伴っていた。
【0054】
EOSM290(納入業者EOS)のLPBF設備を利用して、粉末から、試験片を形成した。試験片の製造の際、動作パラメータは、レーザー出力:370W-スウィープ速度:1400mm/s-ベクトル偏差 0.11mm-各層の厚み:60μm-トレーの加熱温度(予熱温度):100℃であった。
【0055】
製造中、試験片は、250mm×250mmの寸法で20mmの厚みのトレーの上に配置された。製造後、試験片は、トレーに固定されたままに保たれ、トレーは、30mm×30mm、厚み20mmの切断部分に切り分けられ、各トレー部分は、1つの試験片に結ばれていた。
【0056】
トレーの一部に固定された、試験片のうちの一部は、製造後の熱処理によって応力除去を受けた。
【0057】
試験片をトレー(またはより具体的にはトレーの一部)に固定されたままに保つことは、理論に束縛されることなく、LPBF製造法によって誘発された残留応力を製造後の熱処理前に放免しないことを可能にする、当業者の一般的なやり方である。もし製造後の熱処理前に試験片がトレーから分離していたら、とりわけ、複雑な幾何形状の場合、試験片のゆがみが生じていた可能性がある。
【0058】
製造後の熱処理の際、試験片は以下のいずれかであった:
-応力除去温度に既に達している熱い炉の中に配置された:温度上昇はこの場合、瞬間的であるとみなされる。
-1分間につき1.6℃の温度上昇にしたがって応力除去温度に達した。
【0059】
応力除去の後、試験片を、それらのトレー部分各々から分離して、図3に示すように、割れの観察を行うことになる面を機械的に研磨した(矢印は問題の面を示している)。場合によっては生じ得る、鋭角から形成される亀裂の全長が測定された。亀裂の長さは、倍率50倍の光学顕微鏡を用いて測定された。
【0060】
表1は、8つの試験片で得られた結果を示している。
【0061】
【表1】
【0062】
試験は、製造後の熱処理の温度に既に達している炉の中に試験片を入れることによって得られる瞬間的な温度上昇が、製造後の熱処理の温度が300℃を超えるときに最適である(割れがない)ことを示している。テスト8(300℃までの段階的な温度上昇)とテスト5(300℃の温度への瞬間的な上昇)との比較は、温度上昇が迅速なこと、さらには瞬間的なことが好ましいことを示している。このように、応力除去の際の割れの発生を避けるために、温度上昇はできるだけ速いことが好ましい。
【0063】
本発明の範囲を逸脱することなく、例えば、また非限定的に、粉末をベースにした他の付加製造方法がそのうえ考慮される。
- 選択的レーザー焼結(Selective Laser SinteringまたはSLS)、
- 直接金属レーザー焼結(Direct Metal Laser SinteringまたはDMLS)、
- 選択的加熱焼結(Selective Heat SinteringまたはSHS)
- 電子ビーム溶融(Electron Beam MeltingまたはEBM)、
- レーザー溶融堆積(Laser Melting Deposition)
- 指向性エネルギー堆積(Direct Energy DepositionまたはDED)、
- 直接金属堆積(Direct Metal DepositionまたはDMD)、
- 直接レーザー堆積(Direct Laser DepositionまたはDLD)、
- レーザー堆積技術(Laser Deposition Technology)、
- レーザー操作型ネットシェイピング(Laser Engineering Net Shaping)、
- レーザークラッディング技術(Laser Cladding Technology)、
- レーザーフリーフォーム製造技術(Laser Freeform Manufacturing TechnologyまたはLFMT)、
- レーザー金属堆積(Laser Metal DepositionまたはLMD)、
- コールドスプレーコンソリデーション(Cold Spray ConsolidationまたはCSC)、
- 摩擦による付加製造(Additive Friction StirまたはAFS)、
- 通電焼結法(Field Assisted Sintering Technology,FAST)または放電プラズマ焼結(spark plasma sintering)、あるいは、
- 慣性回転摩擦溶接(Inertia Rotary Friction WeldingまたはIRFW)。
【符号の説明】
【0064】
10 台座
11 レーザー源
12 レーザービーム
13 光学システム
15 粉末
20
M 数値モデル
図1
図2
図3
【国際調査報告】