(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】呼吸窮迫を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/07 20060101AFI20240528BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240528BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240528BHJP
C07K 5/113 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
A61K38/07
A61P11/00 ZNA
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/14
A61K9/72
A61P31/14
C07K5/113
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573084
(86)(22)【出願日】2022-05-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 IL2022050573
(87)【国際公開番号】W WO2022254429
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523444796
【氏名又は名称】エス.アイ.エス. シュロフ イノベーティブ サイエンス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】プリモール,ナフタリ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA24
4C076BB25
4C076BB27
4C076FF61
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA23
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB33
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、ZEP3、ZEP4で示されるペプチド又はその塩を含有する医薬組成物を使用する呼吸窮迫の処置又は防止に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、それ必要とする対象における呼吸窮迫の処置又は防止における使用のための、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドを含む医薬組成物。
【請求項2】
呼吸窮迫を処置することが、前記対象における血中酸素飽和度の低下レベルを増加させることを含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
呼吸窮迫を処置することが、前記対象の呼吸数の増加レベルを低下させることを含む、請求項1又は2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記対象が、肺高血圧、急性胸部症候群、感染性肺疾患、低酸素血症、呼吸不全、呼吸窮迫症候群、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、肺塞栓、睡眠時無呼吸、高山病、糖尿病性ケトアシドーシス、及び肺がんによって引き起こされる呼吸窮迫から選択される疾患又は障害に罹患している、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記対象が、肺高血圧、急性胸部症候群、低酸素血症、呼吸不全、呼吸窮迫症候群、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、肺塞栓、睡眠時無呼吸、高山病、糖尿病性ケトアシドーシス、及び肺がんによって引き起こされる呼吸窮迫から選択される疾患又は障害に罹患している、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記対象が、過剰な運動に従事しているか、又は過剰な喫煙を実践している、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記ペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列又はその塩を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記ペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する前記ペプチドのナトリウム塩である、請求項7に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記ペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列又はその塩を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記ペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する前記ペプチドのナトリウム塩である、請求項9に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
吸入による投与のために製剤化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
気管内投与用に製剤化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
気管支内投与用に製剤化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
鼻腔内投与用に製剤化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
肺胞内投与用に製剤化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
溶液、懸濁液、粉末、スプレー又はエアロゾルの形態で製剤化されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容される賦形剤が、結合剤、充填剤、希釈剤、界面活性剤又は乳化剤、流動促進剤又は滑沢剤、緩衝剤又はpH調整剤、等張化剤、湿潤剤、増粘剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、溶媒、香味剤、着色剤、及びそれらの混合物又は組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
それを必要とする対象において呼吸窮迫を処置又は防止する方法であって、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドの治療有効量を含む医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項20】
呼吸窮迫を処置することが、前記対象における血中酸素飽和度の低下レベルを増加させることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
呼吸窮迫を処置することが、前記対象の呼吸数の増加レベルを低下させることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、肺高血圧、急性胸部症候群、感染性肺疾患、低酸素血症、呼吸不全、呼吸窮迫症候群、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、肺塞栓、睡眠時無呼吸、高山病、糖尿病性ケトアシドーシス、及び肺がんによって引き起こされる呼吸窮迫から選択される疾患又は障害に罹患している、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、肺高血圧、急性胸部症候群、低酸素血症、呼吸不全、呼吸窮迫症候群、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、肺塞栓、睡眠時無呼吸、高山病、糖尿病性ケトアシドーシス、及び肺がんによって引き起こされる呼吸窮迫から選択される疾患又は障害に罹患している、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、過剰な運動に従事しているか、又は過剰な喫煙を実践している、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
コロナウイルスに感染した対象の処置における使用のための、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドを含む医薬組成物。
【請求項26】
前記コロナウイルスがβ-コロナウイルスである、請求項25に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項27】
前記β-コロナウイルスが重症急性呼吸器症候群(SARS)-CoV-2である、請求項26に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項28】
前記対象がサイトカインストームに罹患している、請求項25~27のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項29】
前記対象が呼吸器症候群に罹患している、請求項25~27のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項30】
前記呼吸器症候群が、ウイルス性肺炎、肺血管浮腫、肺塞栓、重症急性呼吸器症候群、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される、請求項29に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項31】
前記ペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列又はその塩を有する、請求項25~30のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項32】
前記ペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する前記ペプチドのナトリウム塩である、請求項31に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項33】
前記ペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列又はその塩を有する、請求項25~30のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項34】
前記ペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する前記ペプチドのナトリウム塩である、請求項33に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項35】
吸入による投与のために製剤化されている、請求項25~34のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項36】
気管内投与用に製剤化されている、請求項25~34のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項37】
気管支内投与用に製剤化されている、請求項25~34のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項38】
鼻腔内投与用に製剤化されている、請求項25~34のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項39】
肺胞内投与用に製剤化されている、請求項25~34のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項40】
溶液、懸濁液、粉末、スプレー又はエアロゾルの形態で製剤化されている、請求項25~39のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項41】
薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項25~40のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項42】
前記薬学的に許容される賦形剤が、結合剤、充填剤、希釈剤、界面活性剤又は乳化剤、流動促進剤又は滑沢剤、緩衝剤又はpH調整剤、等張化剤、湿潤剤、増粘剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、溶媒、香味剤、着色剤、及びそれらの混合物又は組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項41に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項43】
少なくとも1つの他の活性剤と同時投与される、請求項25~42のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項44】
前記少なくとも1つの他の活性剤が抗ウイルス剤である、請求項43に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項45】
前記少なくとも1つの他の活性剤が、クロロキン、ケルセチン、ビタミンD、ヒスピズリン、シルシマリチン、スルファサラジン、アルテミシン、ウコン、及びそれらの混合物又は組合せからなる群から選択される、請求項43に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項46】
同時投与が、単一の組合せ組成物、実質的に同時に投与される別々の個々の組成物、及び別々のスケジュールで投与される別々の個々の組成物の投与から選択されるレジメンで行われる、請求項43に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項47】
コロナウイルスに感染した対象を処置する方法であって、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドを含む医薬組成物を前記対象に投与するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸窮迫に罹患している対象を処置する方法であって、ZEP3又はZEP4と示されるペプチド及びその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸窮迫は、酸素供給及び/又は換気が不十分であり、それによって動脈血酸素分圧(PaO2)及び動脈血酸素飽和度(SpO2)が低下する場合に生じる状態である。SpO2値が90%未満である場合、典型的には酸素補給が必要である。更に低いSpO2値では、機械的呼吸補助が使用される。
【0003】
呼吸窮迫は、様々な状態によって引き起こされ得る。未熟児では、呼吸窮迫は、肺胞の表面張力を低下させ、肺胞を膨張させたままにして肺胞の安定性を維持するのに必要な圧力を低下させるリン脂質混合物である界面活性剤の欠乏によって引き起こされる。小児において、呼吸窮迫は、気管外又は胸内気道、肺胞、肺血管系、胸膜腔、又は胸部の障害によって引き起こされ得る。
【0004】
呼吸窮迫は、呼吸器疾患、心血管疾患、血液疾患、又は中枢神経系疾患に続発する場合もある。ケトアシドーシスを発症する糖尿病患者は、過呼吸による呼吸窮迫である発症するリスクが高い。高高度環境及び中高度環境(高度1,500~3,500メートル)では、低酸素症に起因する疾病症候群が起こる可能性があり、それによって、高高度肺水腫(HAPE)が生じ、その結果、PaO2値及びSpO2値が低くなる。
【0005】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、典型的には成人において起こり、それによって肺の肺胞における流体の蓄積が血流及び器官から酸素を奪う。これは、肺に影響を及ぼす外傷又は疾病によって引き起こされ得る。
【0006】
コロナウイルス(CoV)は、コロナウイルス科(Coronavirinae)サブファミリーに属するウイルスの大きなファミリーである。ヒトにおいて重篤な生命を脅かす感染を引き起こすことが知られている3つのコロナウイルス、すなわち、重症急性呼吸器症候群(SARS)-CoV、中東呼吸器症候群(MERS)-CoV、及びSARS-CoV-2が存在し、後者は、COVID-19と名付けられたウイルス性肺炎疾患の世界的流行の原因として同定された。
【0007】
COVID-19感染の最も一般的に観察される症状は、発熱、空咳及び呼吸困難である。呼吸困難及び頻呼吸を経験している患者の肺のCTスキャンは、片側又は両側のすりガラス陰影を明らかにし、これは疾患全体にわたってより明確な硬化に進行する場合がある。これらの陰影は、血管浮腫に典型的なD-二量体の血漿濃度の増加を伴う(van de Veerdonk et al.Kinins and cytokines in COVID-19:A comprehensive pathophysiological approach,doi:10.20944/preprints 202004.0023.v1)。
【0008】
一部のCOVID-19患者は、高い死亡率を伴う重度のARDSを発症する。この高い重症度は、核因子カッパB(NF-κB)経路を調節する過剰活性化機構であり、肺胞上皮細胞及び内皮細胞を含む非免疫細胞におけるIL-6シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)及びNF-κBシグナル伝達の同時活性化によって刺激されるインターロイキン-6(IL-6)増幅因子によって誘導される可能性が最も高いサイトカインストームに依存する(Hojyo et al.Inflamm.Regen.2020;40:37.doi:10.1186/s41232-020-00146-3)。
【0009】
Tolourianら(COVID-19 interactions with angiotensin-converting enzyme 2(ACE2)and the kinin system;looking at a potential treatment,J.Renal Inj.Prev.2020;9(2):e19)は、アンジオテンシン変換酵素-2(ACE2)がCOVID-19の病因において重要な役目を果たすことを開示した。特に、SARS-CoV-2は、宿主細胞に侵入するための受容体としてACE2を使用する。ACE2への結合は、宿主細胞に侵入するためにウイルスエンベロープ上に発現されるスパイク糖タンパク質を介して起こることが示された。ACE2を遮断することは、ウイルスが細胞に侵入することを防止し、したがって、COVID-19患者を処置するために望ましい。
【0010】
U.S.4,619,916は、式p-GLU-X-TRP(式中、Xは、p-GLU及びTrpとは異なる特定のアミノ酸である)に対応するL-アミノ酸から作製された13種のトリペプチド、並びにそれらの調製方法、それら含有する医薬製剤、並びに降圧剤及び鎮痛剤としてのその使用について説明している。
【0011】
U.S.7,220,725及びWO2002/012269は、pGlu-Asn-Trp-Lys(Octanoyl)-OH(ZEP3)及びpGlu-Asn-Trp-Thr-OH(ZEP4)を含む新規ペプチド、並びに疼痛の処置における局所投与用のペプチドの鎮痛有効量を含む医薬組成物について説明している。
【0012】
U.S.9,012,397及びWO2012/131676は、ペプチドZEP3又はZEP4を含む局所医薬組成物、並びにヘルペスウイルス感染、水痘ウイルス感染、発疹、昆虫咬傷、クラゲによる刺傷、火傷、乾癬、かゆみ、皮膚アレルギー反応、薬物又は内科的処置の副作用又は合併症の結果としての皮膚病変、及び低色素症からなる群から選択される皮膚障害を処置するためのそれらの使用について説明している。
【0013】
Gaynesら(Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.54,E-Abstract 5416,2013)は、実験的に誘発された化学的角膜損傷のラットモデルにおける、眼痛の低減及び侵害受容の経路の改変におけるペプチドZEP4の鎮痛効果について説明している。
【0014】
WO2019/186561は、炎症性サイトカイン及びメディエーターの放出を低減させるか、又はその活性を阻害する際に使用するための特定のテトラペプチドを含む医薬組成物について説明している。本出願は更に、炎症性眼障害を含む炎症状態における炎症性サイトカインの放出に関連する症状の処置及び軽快に関する。
【0015】
WO2021/059266は、皮膚の老化の様々な徴候を処置する、防止する、最小限にする、減弱させる又は逆転させる際に使用するための、特定のテトラペプチドを含む組成物について説明している。組成物は、皮膚のハリ又は弾力性を改善し、小じわ又はしわを滑らかにし、皮膚の毛穴及び色素沈着過剰を低減させ、皮膚の厚さ、輝き及び/又は柔らかさを増加させるのに有用である。
【0016】
WO2021/059267は、特に眼の変性障害、加齢障害及び外傷誘発性障害の処置、防止、最小化、減弱又は逆転に使用するための、特定のテトラペプチドを含む医薬組成物について説明している。
【0017】
呼吸窮迫を処置又は防止する組成物及び方法に対する必要性は依然として満たされていない。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、呼吸窮迫を処置又は防止するのに有用な組成物であって、ZEP3若しくはZEP4として示されるペプチド又はその薬学的に許容される塩を含む組成物を提供する。本発明は、呼吸窮迫に罹患している対象の血中酸素飽和度の低下レベルを増加させるか、又は呼吸数の増加レベルを低下させるための組成物の使用方法を更に提供する。コロナウイルスに感染しているか又はCOVID-19を有する対象、特に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に罹患している対象の処置であって、ZEP3若しくはZEP4又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の投与を含む処置が、本発明の範囲内で更に提供される。
【0019】
ここで、ZEP3、ZEP4又はその塩を含む医薬組成物が、血中酸素飽和レベルを増加させることによって呼吸窮迫を処置することにおいて有用であることが初めて開示される。したがって、本明細書に開示された組成物は、血中酸素飽和度レベルの低下を経験している対象を処置し、それによって正常な動脈血酸素分圧(PaO2)及び動脈血酸素飽和度(SpO2)の値を回復させるのに有効である。SARS-CoV-2に感染した患者を処置する及びCOVID-19患者が経験する症状を低減するか又は軽快させる際のZEP3、ZEP4又はその塩を含む医薬組成物の使用も本明細書に初めて開示される。本発明は、急性炎症肺モデルにおいて試験されたZEP3と示されるペプチドのナトリウム塩を含む医薬組成物が、酸素飽和レベルを有意に増加させ、肺における好中球の存在を阻害し、ACE2 mRNA発現を低減するのに有効であったという予想外の知見に部分的に基づく。ZEP3ナトリウムはまた、特定の肺の炎症性サイトカインを有意に低減し、それによって重度のCOVID-19患者においてしばしば起こるサイトカインストームを防止するのに有効であった。
【0020】
第1の態様によれば、それを必要とする対象における呼吸窮迫の処置又は防止における使用のための、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドの治療有効量を含む組成物が提供される。したがって、一実施形態によれば、本発明は、それを必要とする対象における呼吸窮迫を処置又は防止する方法であって、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドの治療有効量を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。各可能性は、別々の実施形態を表す。別の実施形態によれば、本発明は、それを必要とする対象における呼吸窮迫を処置又は防止するための医薬の調製のための、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドの使用を提供する。
【0021】
一部の実施形態によれば、対象は、肺高血圧、急性胸部症候群、感染性肺疾患、低酸素血症、呼吸不全、呼吸窮迫症候群、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、肺塞栓、睡眠時無呼吸、高山病、糖尿病性ケトアシドーシス、及び肺がんによって引き起こされる呼吸窮迫から選択される疾患又は障害に罹患している。各可能性は、別々の実施形態を表す。他の実施形態によれば、対象は、肺高血圧、急性胸部症候群、低酸素血症、呼吸不全、呼吸窮迫症候群、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、肺塞栓、睡眠時無呼吸、高山病、糖尿病性ケトアシドーシス、及び肺がんによって引き起こされる呼吸窮迫から選択される疾患又は障害に罹患している。各可能性は、別々の実施形態を表す。更に他の実施形態によれば、対象は、過剰な運動に従事しているか、又は過剰な喫煙を実践している。
【0022】
様々な実施形態によれば、呼吸窮迫を処置することは、対象における血中酸素飽和度の低下レベルを増加させることを含む。他の実施形態によれば、呼吸窮迫を処置することは、対象の呼吸数の増加レベルを低下させることを含む。
【0023】
別の態様によれば、コロナウイルスに感染した対象の処置における使用のための、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドの治療有効量を含む組成物が提供される。したがって、ある特定の実施形態によれば、本発明は、コロナウイルスに感染した対象を処置する方法であって、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドの治療有効量を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。各可能性は、別々の実施形態を表す。他の実施形態によれば、本発明は、コロナウイルスに感染した対象を処置するための医薬の調製のための、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドの使用を提供する。
【0024】
別の態様によれば、COVID-19を有する対象の処置における使用のための、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドの治療有効量を含む組成物が提供される。したがって、更なる実施形態によれば、本発明は、COVID-19を有する対象を処置する方法であって、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドの治療有効量を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。各可能性は、別々の実施形態を表す。更なる実施形態によれば、本発明は、COVID-19を有する対象を処置するための薬剤の調製のための、pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)、pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)、及びその薬学的に許容される塩から選択されるペプチドの使用を提供する。
【0025】
一部の実施形態によれば、コロナウイルスはβ-コロナウイルスである。他の実施形態によれば、β-コロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群(SARS)-CoV-2である。更なる実施形態によれば、対象は、SARS-CoV-2に軽度に感染している。更に他の実施形態によれば、対象はSARS-CoV-2に重度に感染している。ある特定の実施形態によれば、コロナウイルスに感染した対象はサイトカインストームに罹患している。他の実施形態によれば、コロナウイルスに感染した対象は、呼吸器症候群に罹患している。更なる実施形態によれば、呼吸器症候群は、肺血管浮腫、肺塞栓、ウイルス性肺炎、重症急性呼吸器症候群、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0026】
一部の実施形態によれば、ペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列又はその塩を有する。
【0027】
他の実施形態によれば、ペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列又はその塩を有する。
【0028】
様々な実施形態によれば、医薬組成物は、配列番号1及び配列番号2のいずれか1つに示される配列を有するペプチドのナトリウム塩を含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0029】
ある特定の実施形態によれば、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0.1%~約5%w/wのペプチド又はその塩を含む。特定の実施形態によれば、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0.5%~約2%w/wのペプチド又はその塩を含む。
【0030】
一部の実施形態によれば、ペプチド又はその塩の治療有効量は、各値を指定範囲内で含む、約0.001mg/kg~約1,000mg/kgの範囲である。追加の実施形態によれば、ペプチド又はその塩の治療有効量は、各値を指定範囲内で含む、約0.1mg/日~約1,000mg/日の範囲である。
【0031】
一部の実施形態では、投与は気管内である。他の実施形態では、投与は気管支内である。更なる実施形態では、投与は鼻腔内である。他の実施形態では、投与は肺胞内である。更に他の実施形態では、ペプチド又はその塩は、ネブライザー又は吸入器を使用する吸入によって投与される。
【0032】
追加の実施形態では、医薬組成物は、溶液、懸濁液、粉末又はスプレーの形態である。各可能性は、別々の実施形態を表す。更なる実施形態では、医薬組成物はエアロゾルの形態である。特定の実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0.01~約100ミクロンの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する液滴を含むエアロゾルの形態である。
【0033】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む。特定の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、結合剤、充填剤、希釈剤、界面活性剤又は乳化剤、流動促進剤又は滑沢剤、緩衝剤又はpH調整剤、等張化剤、湿潤剤、増粘剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、溶媒、香味剤、着色剤、及びそれらの混合物又は組合せのうちの少なくとも1つを含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0034】
更なる実施形態によれば、医薬組成物は、少なくとも1つの他の活性剤と同時投与される。更なる実施形態によれば、少なくとも1つの他の活性剤は、抗ウイルス剤である。他の実施形態によれば、少なくとも1種の他の活性剤は、クロロキン、ケルセチン、ビタミンD、ヒスピズリン、シルシマリチン、スルファサラジン、アルテミシン、ウコン、及びそれらの混合物又は組合せからなる群から選択される。各可能性は、別々の実施形態を表す。更なる実施形態によれば、治療剤の同時投与は、単一の組合せ組成物、実質的に同時に投与される別々の個々の組成物、及び別々のスケジュール下で投与される別々の個々の組成物から選択されるレジメンで行われる。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0035】
本発明の更なる実施形態及び適用可能性の全範囲は、以下に与えられる詳細な記述から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲内での様々な変更及び改変は、この詳細な記述から当業者に明らかになるであろうから、詳細な記述及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、単に例示として与えられているにすぎないことは理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、呼吸窮迫に罹患しているか又は呼吸窮迫を発症するリスクを有する対象、例えばコロナウイルスに感染した対象を処置するための方法であって、ZEP3、ZEP4として示されるペプチド又はその塩を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。本発明は、呼吸窮迫に罹患しているか又は呼吸窮迫を発症するリスクを有する対象の処置における使用のための、ZEP3、ZEP4として示されるペプチド又はその塩を含む医薬組成物を更に提供する。
【0037】
予期せぬことに、本発明の医薬組成物は、PaO2及びSpO2の値が低下した対象において動脈血酸素分圧(PaO2)及び動脈血酸素飽和度(SpO2)を上昇させることによって、呼吸窮迫の有効な処置を提供する。本発明は、酸素飽和レベルの統計学的に有意な増加が、ZEP3と示されるペプチドのナトリウム塩の単回投与の12時間後に既に急性炎症肺モデルにおいて検出されたという予想外の知見に部分的に基づく。増加は、投与の少なくとも48時間後に発揮された。本発明は、COVID-19に関連する様々な症状を軽減し、それによって疾患の悪化を防止するための医薬組成物の使用方法を更に提供する。驚くべきことに、急性炎症肺モデルにおいて試験したZEP3ナトリウムの単回気管内投与は、肺における好中球の存在を阻害するのに有効であり、ACE2 mRNA発現を低下させることが更に示された。ZEP3ナトリウムはまた、IL-1α、IL-6、IL-12、IL-17、KC、MCP-1、TNF-α、CXCL10、及びG-CSFを含むがこれらに限定されない肺の炎症性サイトカインを有意に低減し、これは、重度のCOVID-19患者においてしばしば起こるサイトカインストームの防止におけるその有効性を示す。
【0038】
ある特定の態様及び実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、以下の配列pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH(配列番号1)を有するZEP3と示されるペプチドを含み、pGluはピログルタミン酸又はその薬学的に許容される塩である。ZEP3は、例えば、米国特許第7,220,725号に記載の手順により生成され得る。ZEP3は、アミド結合によってペプチド配列のLys残基の側鎖に結合したC8アルキル(本明細書ではオクタノイル)を有する(Lys(オクタノイル))。当業者は、リジンがアミノ含有側鎖を有することを理解することができる。したがって、リジンを包含するペプチドは、前述のリジン側鎖アミノ官能基を介して修飾され得る。具体的には、リジン側鎖アミノ基は、一級アミン(-NH2)であり、カルボン酸含有部分との反応によりアミドに変換される。「Lys(オクタノイル)」という用語は、リジンアミノ側鎖がオクタン酸と反応し、それによってオクタノイル基(C7H15C(O))を含むオクタノイルアミド(C7H15C(O)NH)を形成する、そのような反応の生成物を指すことを理解すべきである。リジンのアミノ側鎖の化学的置換の文脈において「C8アルキル」に言及する場合、その言及はカルボニルに化学的に結合した基に対するものであることが更に理解されるべきである。換言すれば、化学構造RC(O)NHを有する断片が参照され、ここで、Rは、C7H15であるアルキル基である。
【0039】
ある特定の態様及び実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、以下の配列pGlu-Asn-Trp-Thr-OH(配列番号2)を有するZEP4と示されるペプチドを含み、pGluはピログルタミン酸又はその薬学的に許容される塩である。ZEP4は、例えば、以下の手順によって生成され得る:
【0040】
ZEP4の合成は、クロロトリチルクロリドレジン(CTC)の固体支持体上での9-フルオロメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸の逐次合成によって行われ得る。CTC樹脂(125gr)にFmoc-スレオニン(t-ブチル;79gr)負荷し、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA;160gr)を固体支持体に対するアミノ酸のカップリング剤として使用する。Fmoc保護基を25%ピペリジンとジメチルホルムアミド(DMF)の混合物で除去し、樹脂-ペプチドを濾過してDMFで洗浄する。第2のアミノ酸、Fmoc-Trp(85gr)を、(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)/ヒドロキシベンゾチアゾール(OHBT)の混合物により活性化し、DIPEAの添加により第1のアミノ酸に結合させる。上記のようにFmoc基を除去し、樹脂-ペプチドを濾過し、DMFで洗浄する。第3のアミノ酸、Fmoc-Asn(trt)(119gr)を、HBTU/HOBTにより活性化し、DIPEAの添加により結合させる。上記のようにFmoc基を除去し、樹脂-ペプチドを濾過し、DMFで洗浄する。第4のアミノ酸pGlu(26gr)を、HBTU/HOBTにより活性化し、DIPEAにより結合させる。
【0041】
ペプチド-樹脂をDMFで完全に洗浄した後、IPAで洗浄し、減圧下で乾燥させる。ペプチドを、TFA(95%)及びトリイソプロピルシラン(TIS)(5%)により、室温で2時間、樹脂並びにThr及びAsnの保護基から同様に切断する。メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を添加してペプチドを沈殿させ、濾過して乾燥させる(収量46gr)。
【0042】
粗生成物(46gr)をアセトニトリル(ACN)/水の混合物に溶解し、分取HPLCシステム(4”、RP C-18 100-120A細孔径)にロードし、相A-水中0.1%TFA及び相B-ACNを含有する勾配系を使用して精製する。溶出は、45分間で相Bを徐々に増加させる(3%から33%)ことにより行う。純度が97%を超える画分を収集する。合わせた画分を、相A:0.2%の酢酸及び相B:ACNを含有する勾配を使用して、同じHPLCシステムで溶出する。溶出は、30分間で相Bを徐々に増加させる(10%から40%)ことにより行う。純度が97%を超える画分を収集し、合わせ、凍結乾燥する(収量29gr)。最終生成物はM.W.を有する。(MS)530.5;及び純度97.3%(HPLC)。
【0043】
ペプチドZEP3及びZEP4は、塩として組成物に組み込むことができる。本明細書で使用される場合、「塩」という用語は、ペプチド分子の塩基付加塩とも名付けられるカルボキシル基の塩、及びアミノ基又はグアニジノ基の酸付加塩を指す。好適な塩基付加塩としては、以下に限定されないが、ナトリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、アルミニウム、第二鉄及び亜鉛の金属塩;アンモニア、第一級、第二級、第三級及び第四級アミンから誘導されるアンモニウム塩であって、その非限定的な例が、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミン、フェニルエチルベンジルアミン、ジベンジルエチレンジアミン、プロカイン、クロロプロカイン、ピペリジン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、キニーネ、コリン及びN-メチルグルコサミンであるアンモニウム塩が挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。グリシン、オルニチン、ヒスチジン、フェニルグリシン、リジン、及びアルギニンなどのアミノ酸を含む塩が企図されている。各可能性は、別々の実施形態を表す。更に、ペプチド分子のカルボン酸基及びアミノ基又はグアニジノ基によって形成される任意の双性イオン塩もまた企図される。
【0044】
好適な酸付加塩としては、以下に限定されないが、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リンなどの無機酸から誘導される塩、並びに酢酸又はシュウ酸などの脂肪族モノ-及びジ-カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などの有機酸から誘導される塩が挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。したがって、塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが含まれる。各可能性は、別々の実施形態を表す。アルギニン酸塩などのアミノ酸の塩及びグルコン酸塩又はガラクツロン酸塩も企図される。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0045】
酸付加塩は、遊離塩基形を十分な量の所望の酸と接触させて塩を生成する、当技術分野の既知の方法によって調製することができる。塩基付加塩は、遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させて塩を生成する当技術分野の既知の方法によって調製することができる。
【0046】
本発明の一実施形態では、ペプチドは、ZEP3のナトリウム塩(pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-OH.nNa(式中、nは1又は2である);以下、「ZEP3ナトリウム塩」又は「ZEP3Na」と称する)である。特定の実施形態では、ZEP3のナトリウム塩は、以下の式:pGlu-Asn-Trp-Lys(オクタノイル)-ONaを含む。ZEP3ナトリウム塩は、例えば、以下の手順で生成され得る:
【0047】
ZEP3(3.1g)を、水中のNaHCO3(100mM)(50g/l)に溶解する。溶液をHPLCイオン交換カラム(2.5×22cm Luna C18、100A、15ミクロン)に注入し、移動相A:H2O中2mMのNaHCO3;移動相B:CH3CN/H2O(8/2)中2mMのNaHCO3;及び移動相C:水中100mMのNaHCO3からなる勾配によって溶出する。実行あたりのロード:最大5%(W/W%ペプチド/固定相)。流量:4.8cm/分(24mL/分)。勾配手順は以下の通りである:20分の相C;5分の相A;18分の相B;及び7分の相C。生成物を含有する画分を収集し、減圧下で濃縮してアセトニトリル(110g/l)を除去し、次いで凍結乾燥する[収量2.2g(71%)]。最終生成物は、99.7%の純度(HPLC)、3.1%のナトリウム含有量及び50mg/mlの水の溶解度を有する。
【0048】
本発明の別の実施形態では、ペプチドは、ZEP4のナトリウム塩(pGlu-Asn-Trp-Thr-OH.nNa(式中、nは1又は2である);以下、「ZEP4ナトリウム塩」又は「ZEP4Na」と称する)である。特定の実施形態では、ZEP4のナトリウム塩は、以下の式:pGlu-Asn-Trp-Thr-ONaを含む。ZEP4のナトリウム塩は、例えば、以下の手順で生成され得る:
【0049】
ZEP4(5g)を、水中のNaHCO3(100mM)(50g/l)に溶解する。溶液をHPLCイオン交換カラム(2.5×22cm Luna C18、100A、15ミクロン)に注入し、移動相A:H2O中2mMのNaHCO3;移動相B:CH3CN/H2O(8/2)中2mMのNaHCO3;及び移動相C:水中100mMのNaHCO3からなる勾配によって溶出する。実行あたりのロード:最大5%(W/W%ペプチド/固定相)。流量:4.8cm/分(24mL/分)。勾配手順は以下の通りである:20分の相C、次いで5分の相A、次いで20分の層B、及び10分の相C。生成物を含有する画分を収集し、減圧下で濃縮してアセトニトリル(110g/l)を除去し、次いで凍結乾燥する[収量4g(80%)]。最終生成物は、97.5%の純度(HPLC)、2.5%のナトリウム含有量、50mg/mlの水に対する溶解度を有する。
【0050】
本発明の原理によれば、医薬組成物は、治療有効量のZEP3、ZEP4、又はその塩を含む。「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、呼吸窮迫を和らげる、緩和する及び/又は処置するのに有効な活性剤の量を指す。典型的には、ペプチド又はその塩の治療有効量は、各値を指定範囲内で含む、約0.001mg/kg~約1,000mg/kgの範囲である。例示的な量としては、以下に限定されないが、0.001mg/kg、0.05mg/kg、0.01mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、500mg/kg、又は1,000mg/kgが挙げられ、各可能性は別々の実施形態を表す。追加的に又は代替的に、ZEP3、ZEP4又はその塩の治療有効量は、各値を指定範囲内で含む、約0.1mg/日~約1,000mg/日の範囲であってもよい。例示的な量としては、以下に限定されないが、0.1mg/日、0.5mg/日、1mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、40mg/日、60mg/日、80mg/日、100mg/日、120mg/日、150mg/日、175mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日、400mg/日、500mg/日、600mg/日、700mg/日、800mg/日、900mg/日、又は1,000mg/日が挙げられ、各可能性は別々の実施形態を表す。
【0051】
本発明のペプチドは、医薬品自体として、又は薬学的に許容される賦形剤と共に医薬組成物の一部(有効成分)として使用することができる。これらの実施形態によれば、組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0.1%~約5%w/wのペプチドを含み得る。他の実施形態によれば、組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0.5%~約2%w/wのペプチドを含む。更に他の実施形態によれば、組成物は約1%のペプチドを含む。様々な実施形態では、ペプチドの量は、各値を指定範囲内で含む、組成物1グラムあたり約200μg~約800μgの範囲である。更なる実施形態では、ペプチドの量は、各値を指定範囲内で含む、組成物1グラムあたり約300μg~約700μgの範囲である。追加の実施形態では、ペプチドの量は、各値を指定範囲内で含む、組成物1グラムあたり約400μg~約600μgの範囲である。特定の実施形態では、ペプチドの量は、組成物1グラムあたり約500μgである。
【0052】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、ペプチドの対象、好ましくはヒト対象への投与を容易にするように設計された1つ以上の化学成分、例えば薬学的に許容される賦形剤を有するペプチド又はその塩の調製物を指す。「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、本発明のペプチドの有益な治療活性及び特性を無効にしない賦形剤を指す。本発明の範囲内の好適な薬学的に許容される賦形剤としては、以下に限定されないが、結合剤、充填剤、希釈剤、界面活性剤又は乳化剤、流動促進剤又は滑沢剤、緩衝剤又はpH調整剤、等張化剤、湿潤剤、増粘剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、溶媒、香味剤、着色剤、及びそれらの混合物又は組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0053】
好適な結合剤としては、以下に限定されないが、ポビドン(PVP:ポリビニルピロリドン)、コポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、アカシア、キチン、キトサン、デキストリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン、及びポリメタクリラート、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約40%w/wの結合剤を含む。
【0054】
好適な充填剤としては、以下に限定されないが、マイカ、タルク、二酸化ケイ素、ナイロン、ポリエチレン、シリカ、ポリメタクリラート、カオリン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、微結晶セルロース、様々な糖及びデンプンの種類、多糖、デキストリン、シクロデキストリン(例えば、β-CD、ヒドロキシプロピル-β-CD、スルホブチルエーテル-CD)、及びテフロン、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0.5%~約50%w/wの充填剤を含む。
【0055】
好適な希釈剤としては、以下に限定されないが、リン酸二カルシウム二水和物、糖、ラクトース、トレハロース、シクロデキストリン、リン酸カルシウム、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、及び乾燥デンプン、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0.5%~約50%w/wの希釈剤を含む。
【0056】
好適な界面活性剤は、以下に限定されないが、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(ポリソルベート60、ポリソルベート80など)、ポリエチレングリコールトコフェリルスクシナート、ポリエトキシ化ヒマシ油誘導体(Cremophor El、Cremophor Rh40)、チロキサポール、ソルビタンアルキルエステル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(ポロキサマー)、ジオクチルナトリウムスルホスクシナート、ペルフルオロオクタンスルホナート、アルキルベンゼンスルホナート、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス二ナトリウムスルホスクシナート、リグノスルホナート、ステアリン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、及びベタイン、又はそれらの混合物若しくは組合せを含むカチオン性、アニオン性又は双性である。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約5%w/wの界面活性剤を含む。
【0057】
好適な乳化剤としては、以下に限定されないが、ステアリン酸のポリエチレングリコールエーテル、例えば、ステアレス-2、ステアレス-4、ステアレス-6、ステアレス-7、ステアレス-10、ステアレス-11、ステアレス-13、ステアレス-15、及びステアレス-20、ステアリン酸グリセリル、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ジエタノールアミン、レシチン及びポリエチレングリコール、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約5%w/wの乳化剤を含む。
【0058】
好適な流動促進剤としては、以下に限定されないが、二酸化ケイ素挙げられ、好適な滑沢剤としては、以下に限定されないが、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、ポリエチレングリコール若しくはステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸塩、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約5%w/wの流動促進剤又は滑沢剤を含む。
【0059】
好適な緩衝剤又はpH調整剤としては、以下に限定されないが、酸性緩衝剤若しくはpH調整剤、例えば短鎖脂肪酸、クエン酸、酢酸、塩酸、硫酸及びフマル酸;並びに塩基性緩衝剤若しくはpH調整剤、例えばトリス、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化マグネシウム、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。典型的には、緩衝剤又はpH調整剤は、各値を指定範囲内で含む、約3.5~約8.5の範囲のpHを得るのに好適な量で組成物に組み込まれる。一実施形態では、緩衝剤又はpH調整剤は、各値を指定範囲内で含む、約4~約7の範囲のpHを得るのに好適な量で組成物に組み込まれる。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約1%w/wの緩衝剤又はpH調整剤を含む。
【0060】
好適な等張化剤としては、以下に限定されないが、イオン性剤及び非イオン性剤が挙げられる。例えば、イオン性化合物としては、以下に限定されないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物、例えば、CaCl2、KBr、KCl、LiCl、NaI、NaBr若しくはNaCl、及びホウ酸、又はそれらの混合物若しくは組合せなどが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。非イオン性等張化剤は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、及びデキストロース、又はそれらの混合物若しくは組合せである。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約5%w/wの等張化剤を含む。
【0061】
好適な湿潤剤としては、以下に限定されないが、グリセリン、デンプン、臭化ベンゾドデシニウム(BOB)、及びセトリミド(Cet)、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約5%w/wの湿潤剤を含む。
【0062】
好適な増粘剤としては、以下に限定されないが、ステアリン酸及びステアリルアルコールなどの脂肪酸及びアルコール;キサンタン、カラギーナン、ゼラチン、セルロースガム、アガロース、カラヤ、ペクチン、アミロペクチン、及びローカストビーンガムなどのガム類;ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP)、ポリビニルアルコール、中~高分子量ポリエチレングリコール(PEG-3350、PEG-6000など)、グルコシド、エチドロン酸4ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリルアミドコポリマー、アクリル酸ナトリウムコポリマー、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸、ヒアルロン酸、ポリグルクロン酸(ポリ-α-及び-β-1,4-グルクロン酸)、コンドロイチン硫酸、フルセララン、カルボキシメチルセルロース、ポリカルボン酸、カルボマー、ベントナイト、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、及びCarbopol登録商標の商標で入手可能な架橋ポリアクリラート材料などの様々なポリマー、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約30%w/wの増粘剤を含む。
【0063】
好適な懸濁化剤としては、以下に限定されないが、アカシア、アルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カラギーナン、コロイド状二酸化ケイ素、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、マルトデキストリン、微結晶セルロース(MCC)、ポリデキストロース、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、トラガカント、及びキサンタンガム、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約30%w/wの懸濁化剤を含む。
【0064】
好適な防腐剤としては、以下に限定されないが、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、安息香酸、ソルビン酸カリウム、EDTA三ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、EDT四ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、ベンゾフェノン、2-ブロモ-2-ニトロパン-1,3-ジオール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ジグルコン酸クロルヘキシジン、クエン酸、DMDMヒダントイン、ホルムアルデヒド、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、メチルジブロモグルタロニトリル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、エチルアルコール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、チメロサール、硝酸フェニル水銀、ジアゾリジニル尿素、イミダゾリジニル尿素、及びクオタニウム-15、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約5%w/wの防腐剤を含む。
【0065】
好適な抗酸化剤としては、以下に限定されないが、アスコルビン酸、ユビキノン、酢酸トコフェニル、パルミチン酸アスコルビル、エデト酸二ナトリウム、及び亜硫酸水素ナトリウム、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約10%w/wの抗酸化剤を含む。
【0066】
好適な溶媒としては、以下に限定されないが、水、エタノール及びイソプロパノールなどの低級アルコール、プロピレングリコール、キシレンスルホン酸アンモニウム、及び例えば、PEG-300、PEG-1450などの低分子量ポリエチレングリコールなど、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。追加の溶媒としては、以下に限定されないが、油相(例えば、エマルション組成物中)を構成する油が挙げられる。例示的な油相としては、以下に限定されないが、Miglyol 810(中鎖トリグリセリド)、ダイズレシチン(例えば、phospholipon 90)、コレステロールなど、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲で含む、約0%~約99.9%w/wの溶媒を含む。
【0067】
好適な香味剤としては、以下に限定されないが、スクラロースなどの甘味料、並びに合成香味油及び香味芳香剤、天然油、植物、葉、花及び果実からの抽出物、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。例示的な香味剤としては、ケイヒ油、ウィンターグリーン油、ペパーミント油、クローバー油、干し草油(hay oil)、アニス油、ユーカリ、バニラ、レモン油、オレンジ油、グレープ及びグレープフルーツ油などの柑橘油、並びにリンゴ、モモ、セシヨウナシ、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップル、及びアプリコットを含む果実エッセンス、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、指定された範囲内の各値を含む、約0%~約5%w/wの香味剤を含む。
【0068】
好適な着色剤としては、以下に限定されないが、アルミナ(乾燥水酸化アルミニウム)、アンナット抽出物、炭酸カルシウム、カンタキサンチン、キャラメル、β-カロテン、コチニール抽出物、カーマイン、銅クロロフィリンカリウムナトリウム(クロロフィリン銅錯体)、ジヒドロキシアセトン、オキシ塩化ビスマス、合成鉄酸化物、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、フェロシアン化第二鉄、水酸化クロムグリーン、酸化クロムグリーン、グアニン、マイカ系真珠光沢顔料、パイロフィライト、ジスチリルビフェニル二ナトリウム、マイカ、歯磨剤、タルク、二酸化チタン、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末、銅粉末、及び酸化亜鉛、又はそれらの混合物若しくは組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、医薬組成物は、各値を指定範囲内で含む、約0%~約5%w/wの着色剤を含む。
【0069】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、懸濁、可溶化、錯化、顆粒化、研和、乳化、カプセル化、封入、噴霧乾燥、及び凍結乾燥のプロセス、又はそれらの組合せによって製造され得る。医薬組成物は、上記のように1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を使用して従来の方法で製剤化することができ、これにより、医薬として使用できる調製物へのペプチド及び塩の加工が容易になる。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。一実施形態では、投与は、吸入によって経鼻的又は経口的に行われる。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、気管内、気管支内、鼻腔内又は肺胞内への投与のために製剤化されている。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0070】
本発明の医薬組成物は、上記の投与経路にとって好適な任意の形態で製剤化されてもよい。本発明の範囲内の例示的な形態としては、以下に限定されないが、溶液、懸濁液、粉末、又はスプレーが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0071】
鼻腔内投与では、本発明の組成物は、溶液若しくは懸濁液として、又はスプレーとして製剤化することができる。典型的には、このような溶液又は懸濁液は鼻分泌物に対して等張性である。好ましくは、溶液又は懸濁液は、各値を指定範囲内で含む、約6.0~約7.0の範囲のpHを有する。経鼻吸入による投与では、ペプチド又は塩は、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン又は二酸化炭素を使用して、加圧パック又はネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で簡便に送達される。各可能性は、別々の実施形態を表す。加圧エアロゾルの場合、計量された量を送達するためのバルブを提供することにより、投薬量単位を決定することができる。ディスペンサーでの使用のための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、ペプチド又はその塩と、ラクトース又はデンプンなどの好適な担体との粉末混合物を含有して製剤化されてもよい。エアロゾル化された液体又は粉末形態は、伝統的に、肺の上皮に活性剤を実質的に放出又は送達することが意図される。一部の実施形態では、エアロゾルは、経口吸入によって投与される。
【0072】
エアロゾルの形態の医薬組成物は、液滴のサイズ分布によって特徴付けられ得る。液滴サイズは、典型的には、空気動力学的中央粒子径によって特徴付けられる。「空気動力学的中央粒子径」(MMAD)という用語は、質量で粒子の50%がより大きく、質量で粒子の50%がより小さい浮遊粒子の直径を指す。好適な液滴サイズとしては、以下に限定されないが、各値を指定範囲内で含む、約0.01~約100ミクロンが挙げられる。一実施形態では、液滴は、各値を指定範囲内で含む、約0.01~約50ミクロンのMMADを有する。別の実施形態では、液滴は、各値を指定範囲内で含む、約0.1~約10ミクロンのMMADを有する。
【0073】
吸入又は吸引では、本発明の組成物は、溶液又は懸濁液並びに粉末として製剤化することができる。所望であれば、医薬組成物は、気管内、気管支内、又は肺胞内投与を達成するために当技術分野で公知であるように、鼻プロング、フェイスマスク、密閉テント若しくはチャンバー(完全若しくは半密閉)、気管内カテーテル、気管内チューブ、又は気管切開チューブの助けを借りて投与されてもよい。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0074】
本発明の医薬組成物は、所定の期間にわたってペプチド又はその塩の延長放出を可能にする制御放出製剤又は持続放出製剤として製剤化されてもよい。これらの実施形態によれば、組成物は、持続放出剤、例えば、以下に限定されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル酸又は(メタ)アクリラート系ポリマー、エチルセルロースなどを更に含んでもよい。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0075】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの他の活性剤との併用療法において使用され得る。併用療法は、本発明の原理によれば、個別に又は単一の組成物として投与される組合せ療法を含む。個別に投与される場合、別々の治療剤は、実質的に同時に、又は別々のレジメンで投与されてもよく、各可能性は別々の実施形態を表す。一部の実施形態では、併用療法の結果として達成される治療効果は、相乗的又は協同的である。本明細書で互換的に使用される「相乗的」、「協同的」及び「超相加的」という用語は、別々に投与された各薬物の個々の治療効果の合計よりも高い、ペプチド又は塩及び他の活性剤の治療効果を指す。一実施形態では、少なくとも1つの他の活性剤は、以下に限定されないが、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、融合阻害剤、ケモカイン受容体アンタゴニスト、インテグラーゼ阻害剤、サイトカイン、及びリンホカインなどの抗ウイルス剤である。各可能性は、別々の実施形態を表す。他の活性剤としては、以下に限定されないが、クロロキン、ケルセチン、ビタミンD、ヒスピズリン、シルシマリチン、スルファサラジン、アルテミシン、ウコン、及びそれらの混合物又は組合せが挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0076】
本発明の原理によれば、ZEP3、ZEP4、又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、呼吸窮迫に罹患している対象又は呼吸窮迫を発症するリスクを有する対象を処置するのに有用である。各可能性は、別々の実施形態を表す。本明細書で互換的に使用される「処置」及び「処置すること」という用語は、疾患若しくは障害、疾患若しくは障害の少なくとも1つの症状、又は疾患若しくは障害の進行を治療すること、治癒すること、緩和すること、軽減すること、変化させること、軽快させること、又は改善することを指す。具体的には、本明細書で使用される場合、呼吸窮迫を処置することは、対象における血中酸素飽和度の低下レベルを増加させること、及び対象の呼吸数の増加レベルを低下させることのうちの少なくとも1つを指す。各可能性は、別々の実施形態を表す。処置は、血中酸素飽和度及び呼吸数の正常レベルに対する、血中酸素飽和度の低下レベル又は呼吸数の増加レベルの回復又は復帰を助けることも含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。動脈血中の酸素分圧(PaO2)は、動脈血中の酸素含有量の測定値である(典型的にはmmHgで表される)。赤血球中のヘモグロビンに結合した酸素量の比(SpO2)は、酸素飽和度の測定値である(典型的には%で表される)。正常な個体は、95~100%の酸素飽和度を有し、酸素飽和度が90%未満である場合、患者は「低酸素」と考えられ、それによって呼吸窮迫を経験する。PaO2及びSpO2のレベル低下の結果として、組織中の酸素の欠乏を補うために呼吸数が上昇する。呼吸数はまた、血液のpHの低下を補うために、ケトアシドーシスを経験する個体において上昇し得る。呼吸数は、典型的には、1分あたりの呼吸の単位、すなわち、60秒の期間内に生じる完全な呼吸サイクルの数で報告される。安静時の健康な成人の正常な呼吸数は、1分あたり12~20呼吸である。
【0077】
一部の態様及び実施形態によれば、呼吸窮迫に罹患している対象を「処置」又は「処置すること」は、呼吸窮迫の進行の停止(例えば、症状の悪化がないこと)又は呼吸窮迫の進行の遅延を含む。「処置」は、呼吸窮迫に罹患している対象/患者の部分奏効(例えば、症状の軽快)又は完全奏効(例えば、症状の消失)ももたらし得る。呼吸窮迫に罹患している対象の「処置」は、以下:人工呼吸を使用する必要性を回避すること、人工呼吸の持続時間を短縮すること、並びに人工呼吸の使用に関連する任意の悪影響及び/又は合併症を低減することのうちの少なくとも1つも指し得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。呼吸窮迫の処置は、とりわけ、治療的処置(例えば、疾患修飾、好ましくは完全奏効をもたらす)及び姑息的処置(症状の軽減を含む)を含み得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「処置」及び「処置すること」という用語は、呼吸窮迫の防止又は予防的処置、すなわち、疾患の徴候を示さない対象の処置、又は病態の発症若しくは初期疾患の更なる進行のリスクを低下させるための処置も含む。予防的処置は、以前に疾患又は状態に罹患したことがある患者における疾患又は状態の再発又は再燃を防止することも指し得る。
【0079】
処置される対象は、哺乳動物、好ましくはヒトである。本発明の組成物及び方法が特に有益である患者集団の中で、それらは非炎症性疾患又は障害に罹患している者である。本発明の範囲内の疾患及び障害としては、以下に限定されないが、肺高血圧、急性胸部症候群、感染性肺疾患、低酸素血症、呼吸不全、呼吸窮迫症候群、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、肺塞栓、睡眠時無呼吸、高山病、糖尿病性ケトアシドーシス、及び肺がんによって引き起こされる呼吸窮迫が挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。ある特定の実施形態では、疾患又は障害としては、肺高血圧、急性胸部症候群、低酸素血症、呼吸不全、呼吸窮迫症候群、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、肺塞栓、睡眠時無呼吸、高山病、糖尿病性ケトアシドーシス、又は肺がんによって引き起こされる呼吸窮迫が挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。本発明の原理による呼吸窮迫の処置は、ぜんそく、気管支炎、胸膜炎、肺胞炎、血管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症及び嚢胞性線維症からなる群から選択される炎症性疾患及び障害の処置、又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置を含まないことが理解されるべきである。
【0080】
追加の態様及び実施形態では、処置は、過剰な運動に従事しているか又は重い喫煙者であり、それによって酸素飽和レベルの低下を経験するリスクを有する対象にも与えられ得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。他の態様及び実施形態では、高山病の発症のリスクを低減するために、高高度の低酸素環境で旅行するハイカーに処置が与えられてもよい。
【0081】
本発明の組成物及び方法が有益である特定の患者集団は、コロナウイルス、好ましくはβ-コロナウイルス、最も好ましくはSARS-CoV-2に感染している個体に関する。この点において、本明細書で互換的に使用される「処置」及び「処置すること」という用語は、コロナウイルス感染症に関連するか又はそれによって引き起こされる少なくとも1つの臨床症状の減弱、緩和、又は軽快を指す。一実施形態では、ZEP3、ZEP4、又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、COVID-19患者を処置するのに有用である。
【0082】
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)は、SARS-CoV-2によって引き起こされる感染性疾患である。COVID-19の一般的な症状としては、発熱、咳、及び息切れが挙げられる。緊急症状には、呼吸困難、持続的な胸痛又は圧迫、錯乱、目覚めの困難、及び即座の医学的処置を必要とする青みを帯びた顔又は唇が含まれる。重度の症状には、肺炎、急性呼吸窮迫症候群、多臓器不全及び/又は死亡が含まれ得る。現在、COVID-19患者に対する具体的処置は知られていない。一次処置は対症的である。末梢酸素の飽和度がおよそ90%未満に低下する重症例では、機械的換気が必要である。本発明の医薬組成物は、COVID-19の重症例にしばしば伴うサイトカインストームの処置及び防止において高い有効性を示す。本明細書で企図されるように、本発明の組成物は、以下に限定されないが、ウイルス性肺炎、重症急性呼吸器症候群、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む呼吸窮迫症候群を処置するのに非常に有効である。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、処置は、IL-5、IL-6、及びG-CSFからなる群から選択される肺の炎症性サイトカインの低減を含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。別の実施形態では、処置は、IL-1α、IL-6、IL-12、IL-17、KC、MCP-1、TNF-α、CXCL10、及びG-CSFからなる群から選択される肺の炎症性サイトカインの減少を含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。anti-SARS更に別の実施形態では、処置は、INF-γ、IL-1α、IL-5、IL-6、IL-12、IL-17、KC、MCP-1、TNF-α、CXCL10、ランテス、G-CSF、及びCCL3からなる群から選択される肺の炎症性サイトカインの低減を含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。追加の実施形態では、処置は、鰓肺胞液中のT細胞、好酸球、及び/又は好中球のレベルの低下を含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。更なる実施形態では、処置は抗SARS-CoV-2活性を含む。他の実施形態では、処置は、アンジオテンシン変換酵素-2(ACE-2)mRNA発現の阻害を含む。
【0083】
治療有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。正確な処方、投与経路、及び投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る。投与される組成物の量は、処置される対象のある特定のパラメーター(例えば、体重、年齢、及びの疾患の重症度)に依存する。医薬組成物は、単回用量として、又は連続的若しくは断続的な様式で複数回用量として投与され得る。投与スケジュールとしては、1日1回、1日2回、1日3回などが挙げられる。「間欠的」という用語は、本明細書で使用される場合、規則的又は不規則な間隔のいずれかで停止及び開始することを指す。例えば、間欠的投与は、ある特定の期間にわたる毎日の投与、又はサイクルでの投与、又は隔日での投与であり得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0084】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」及び「1つの(an)」の使用は、文脈上他に明確に指示されない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味する。
【0085】
本明細書で使用される場合、数値の前に「約」という用語が続く場合、「約」という用語は±10%を示すことが意図される。
【0086】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をより完全に例示するために提示される。しかしながら、それらは決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された原理の多くの変形及び改変を容易に考案することができる。
【0087】
実施例1
急性炎症肺モデルにおけるZEP3Naの有効性
肺炎症へのZEP3ナトリウムの有効性を試験するために、リポ多糖(LPS)誘導性急性肺傷害モデルを使用した。特に、LPSを、それぞれ0.2又は0.8mg/マウスに相当する10又は40mg/kg体重(BW)の用量で気管内投与した。
【0088】
ZEP3ナトリウムを、LPS投与の6時間後に、25若しくは250mg/kg BW(それぞれ0.5若しくは5mg/マウス)の用量で吸入(INH)によって、又は5若しくは20mg/kg BW(それぞれ0.1若しくは0.4mg/マウス)の用量で気管内(IT)に投与し、その効果を、FACS機器を使用して、鰓肺胞液(BALF)における投与の72時間後に測定した。結果をノンパラメトリック統計により分析し、表1に要約する。
【0089】
【表1】
(+)は活性化を示す;(-)は阻害を示す;(ND)は判定されなかったことを示す。
【0090】
結果は、ZEP3Naが、LPS点滴注入後に吸入によって投与された場合、T細胞、好酸球、好中球、INF-γ、IL-1α、IL-5、IL-6、IL-12、IL-17、KC、MCP-1、TNF-α、CXCL10、ランテス、G-CSF、及びCCL3の発現を有意に阻害し、そのレベルを低下させ、マクロファージ及びB細胞のレベルを増加させたことを示す。気管内に投与した場合、ZEP3Naは、好酸球、IL-1α、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、KC、MCP-1、TNF-α、CXCL10、及びG-CSFの発現を有意に阻害し、そのレベルを低下させ、LPS点滴注入後のマクロファージのレベルを増加させた。
【0091】
肺組織における相対的なACE2 mRNA発現を以下のように決定した:肺組織からmRNAを抽出し、リアルタイム定量PCRを用いて、rplO遺伝子に対するACE2遺伝子の発現を測定した。結果を表2にまとめる。
【0092】
【0093】
LPSは0.4の値から1.36の値へのACE2 mRNA発現の増加をもたらしたが、ZEP3ナトリウム(0.1mg/ml)の投与は、有効性を示す0.001の統計的有意性で、1.36から0.22のレベルへACE2 mRNA発現を下方調節した。いずれの理論又は作用機序にも束縛されることなく、ZEP3Na作用は、少なくとも部分的に、ACE2 mRNAの下方調節を介して媒介されると企図される。
【0094】
全体として、本明細書に提示される結果は、コロナウイルス感染症に起因する肺炎を含む肺炎の治療におけるZEP3ナトリウムの効力を実証する。40mg/kgのLPSを使用して高度に攻撃的な炎症が誘導される場合、有効性は特に有意である。宿主のACE2はSARS-CoV-2によって使用されるので細胞に入るために、ZEP3Naによるその減少はコロナウイルス感染症の治療における効力を示す。
【0095】
実施例2
気管内投与におけるZEP3Naの毒性
ラットに気管内投与したZEP3Naの毒物学的効果を評価した。生理食塩水に溶解させた0.5、1.0、及び2.5mgの用量のZEP3Naを、14日間にわたって肺に毎日投与した。15日目に、脳、心臓、胸腺、肺、脾臓、肝臓、腎臓、及び生殖腺の剖検及び組織学的検査を行った。加えて、血球数及び化学パラメーターを計数した。また、気管支肺胞洗浄流体(BALF)の細胞分布(%)を、B細胞、T細胞、好中球、及びマクロファージについてFACS機器によって決定した。
【0096】
死亡又は行動の異常徴候は観察されなかった。ラットの体重は、対照群(生理食塩水)の体重と同様のままであった。検査した器官の剖検及び組織学的検査は、試験項目に関して病理学的変化を明らかにしなかった。更に、血球数及び化学は、参照項目と同等であった。B細胞、T細胞、好中球、及びマクロファージの分布に変化は見られなかった。総合すると、これらの結果は、14日間毎日最大2.5mgの濃度でのZEP3Naの気管内(IT)投与が、試験した全てのパラメーターにおいて検出可能な有害作用をもたらさなかったことを示す。
【0097】
実施例3
急性呼吸窮迫症候群の処置におけるZEP3Naの有効性
急性呼吸窮迫症候群のマウスモデルにおいて気管内投与されたZEP3Naの効果を評価した。BALB/cマウスを麻酔し、滅菌プラスチックカテーテルで経口的に挿管し、50μLのPBSに溶解させた0.2mg又は0.8mgをLPSの気管内点滴注入で負荷した。ナイーブマウス(LPS点滴注入なし)に同量の生理食塩水を注射して対照とした。LPS点滴注入の6時間後、マウスにZEP3Naを2回用量、すなわち0.1及び0.4mgで気管内投与した。LPS負荷の72時間後に研究を終了し、分析のために組織を収集した。
【0098】
動物の体重を研究中毎日決定した。体重の大きな変化は認められなかった。BALF試料を、B細胞、T細胞、好酸球、好中球、及びマクロファージ/樹状細胞の細胞組成を決定するために、FACSによる差次的細胞計数のために処理した。結果を表3にまとめる。
【0099】
【0100】
【0101】
気管内LPS投与は重度の肺炎症を誘導し、これは、LPSで処置しなかった動物と比較して、LPS処置動物における細胞組成の変化によって反映された。生理食塩水を受けた対照群と比較して、LPS処置動物のBALF中の好中球及び好酸球のより高いパーセンテージ、並びにマクロファージ/樹状細胞のより低いパーセンテージが観察された。
【0102】
0.2mgのLPSを負荷した動物では、ZEP3Na処置は、0.2mgのLPSを受けた未処置マウスと比較して、気管支肺胞好酸球のパーセンテージの有意な低下をもたらした(表3)。
【0103】
マウスあたり0.2及び0.8mgのLPSは、好酸球及び好中球の増加並びにマクロファージの存在の減少を誘発した。0.2mgのLPS炎症マウスでは、0.1及び0.4mgのZEP3Naは、好酸球のレベルを有意に阻害した。これらの細胞は、好中球と共に、様々な病原体に対する免疫応答において中心的な役割を有する。肺内でのそれらの蓄積は、急性肺傷害(ALI)及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の障害の主な原因である。加えて、ZEP3Naによるマクロファージの存在下での上昇は、感染によって損なわれた適切な肺機能の回復において極めて重要であることが企図される。
【0104】
肺液中のサイトカイン放出を検出するために、高感度マルチプレックスELISAアッセイを使用して、BALF試料中のサイトカイン濃度を評価した:IFN-γ、IL-1α、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12(p70)、IL-17A、KC、MCP-1、TNF-α、IP-10、ランテス、G-CSF、MIP-1α及びランテス。0.2mgのLPSの点滴注入後にマウあたり0.1及び0.4mgで気管内投与されたZEP3Naは、以下のインターロイキンの濃度を阻害した:IL-1α、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、KC、MCP-1、TNF-α及びG-CSF。0.8mgのLPS処置マウスでは、ZEP-3Na 0.1及び0.4mgは、IL-12及びTNF-αの産生を有意に阻害した。IL-12、IL-17、KC、MCP-1、及びG-CSFの結果を表4にまとめる。
【0105】
【0106】
【0107】
ZEP 3NaによるIL-12、IL-17、及びMCP-1の産生の阻害が、肺塞栓症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、及び高山病の処置におけるZEP3Naの有効性を示すと企図される。これらの結果は、ZEP3Naが、コロナウイルス感染症によって引き起こされるARDSを含む呼吸窮迫の処置に有効であることを更に示す。
【0108】
実施例4
酸素飽和度
リポ多糖(LPS)による炎症肺のマウスモデルにおける酸素飽和度への吸入によるZEP3Na投与の効果の評価を行った。酸素飽和度試験を、イソフルランによって麻酔したマウスに関していくつかの時点で行った。センサーをマウスの後足に取り付け、Rodent Pulse Oximeter instrument(Kent Scientific)を使用して血液中の酸素のパーセンテージを測定した。
【0109】
特に、Balb/C雌マウス(7~9週齢、18~21グラム、Envigo、イスラエル);各群10匹のマウス)を麻酔し、50μLのPBSに溶解させた800μgのLPSの気管内点滴注入のために滅菌プラスチックカテーテルを経口的に挿管した。LPS気管内点滴注入の後、血中酸素飽和レベルの顕著な低下が検出された。次いで、ZEP3Naを、LPS投与の6時間後及び14時間後に2つの用量で吸入によって投与し、血中酸素飽和度に関するZEP3Naの効果を、ZEP3Na投与の0、2、6、12、24及び48時間後にモニターした。結果を表5にまとめる。飽和データを、ANOVA、続いてTukey-Kramer検定によって分析した。有意水準は∞=0.05と定義した。動物の体重は、実験を通して実質的に一定であることが示された。
【0110】
【0111】
【0112】
結果は、吸入によるZEP3Naの投与が、LPSによって低下した酸素飽和レベルを有意に増加させたことを示す。結果は、ZEP3Na処置の12時間後に統計的に有意であり、無処置のLPSと比較しておよそ20%までの酸素飽和レベルの上昇を伴う。
【0113】
本発明は、本明細書において上記で特に示され説明されたものによって限定されないことが当業者には理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】