(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された皮膚構築物
(51)【国際特許分類】
A61L 15/40 20060101AFI20240528BHJP
A61L 15/32 20060101ALI20240528BHJP
A61K 35/36 20150101ALI20240528BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240528BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240528BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20240528BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20240528BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240528BHJP
【FI】
A61L15/40 100
A61L15/32 310
A61K35/36
A61P17/02
A61P43/00 121
A61K38/39
C07K14/78
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573171
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 US2022032726
(87)【国際公開番号】W WO2022261248
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507295048
【氏名又は名称】ストラタテック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】カマー, アレン アール.
(72)【発明者】
【氏名】グラッツ, ケネス アール.
(72)【発明者】
【氏名】アレン-ホフマン, ビー. リン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BD39
4B065CA44
4B065CA46
4C081AA01
4C081AA12
4C081BA12
4C081CD121
4C081CD34
4C081DC02
4C081EA02
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA23
4C084MA02
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB48
4C087CA04
4C087MA02
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA61
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA71
(57)【要約】
本開示は、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷部位での局所使用のための生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物であって、前記構築物は同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞およびマウスコラーゲンを含み、前記構築物は、ヒト細胞外マトリクス(ECM)タンパク質を堆積し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する、構築物。
【請求項2】
前記構築物が、ヒト細胞外マトリクスタンパク質を堆積し、凍結保存からの解凍後に可溶性因子を分泌する、請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
前記構築物が、解凍後1~4時間、前記可溶性因子の持続的分泌を提供する、請求項2に記載の構築物。
【請求項4】
前記分泌される可溶性因子が、ヒト増殖因子、サイトカイン、インターロイキンおよび/またはマトリクスメタロプロテイナーゼである、請求項1に記載の構築物。
【請求項5】
前記分泌される可溶性因子が、炎症、増殖、肉芽形成および既存のマトリクスの再形成を誘導して、前記創傷部位における再生皮膚治癒を促進する、請求項4に記載の構築物。
【請求項6】
前記分泌される可溶性因子が、bFGF、GM-CSF、HGF、IL-1α、IL-6、IL-8、IL-10、MMP-1、MMP-3、MMP-9、PlGF、SDF-1α、TGF-β1、VEGF-Aおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の構築物。
【請求項7】
前記分泌される可溶性因子が、インビトロ再培養後1~168時間で、pg/cm
2/hの範囲で存在する、請求項5に記載の構築物。
【請求項8】
前記構築物が、無傷の皮膚に存在する1つまたは複数のECMタンパク質を含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項9】
前記構築物が、ヒトECMタンパク質を活発に産生する、請求項1に記載の構築物。
【請求項10】
前記構築物が、無傷の皮膚と実質的に同様の重層化されたECMを組織化する、請求項1に記載の構築物。
【請求項11】
前記ヒトECMタンパク質が、線維性I型およびIII型コラーゲン、VI型コラーゲン、デコリン、ラミニン332ならびにこれらの組み合わせの空間分布を有するECMタンパク質からなる群から選択される、請求項18に記載の構築物。
【請求項12】
前記構築物が、構造的に組織化された真皮層を含む、請求項11に記載の構築物。
【請求項13】
前記構築物が、支持タンパク質、VI型コラーゲンおよびデコリンとともにI型およびIII型線維性コラーゲンを含む、請求項12に記載の構築物。
【請求項14】
前記構築物が、基底膜および真皮表皮接合部を含む、請求項11に記載の構築物。
【請求項15】
前記構築物が、IV型コラーゲンおよびラミニン332の空間分布を含む、請求項14に記載の構築物。
【請求項16】
前記可溶性因子の前記分泌が、前記同種異系の細胞化された構築物を網状化した後に増加する、請求項1に記載の構築物。
【請求項17】
前記皮膚線維芽細胞がヒト皮膚線維芽細胞である、請求項1に記載の構築物。
【請求項18】
前記構築物がグリセリンをさらに含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項19】
前記構築物が、増殖のおよそ1週間または8日後に、新たに合成されたヒトECM分子を含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項20】
深達性部分層(DPT)熱傷に対して成人/成体患者を処置する方法であって、同種異系の細胞化された構築物をDPT創傷部位に適用することを含み、前記同種異系の細胞化された構築物は、同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞、およびマウスコラーゲンを含み、前記同種異系の細胞化された構築物は、ヒトECMタンパク質を堆積し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する、方法。
【請求項21】
前記同種異系の細胞化された構築物は、再上皮化を増加させる組織化されたECMを提供する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記同種異系の細胞化された構築物を前記DPT創傷部位に適用する前に、前記同種異系の細胞化された構築物を網状化することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
凍結保存された同種異系の細胞化された構築物を解凍して、前記同種異系の細胞化された構築物を前記DPT創傷部位に適用することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記同種異系の細胞化された構築物が、解凍後1~4時間、前記可溶性因子の持続的分泌を提供する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
熱傷に対して成人/成体患者を処置する方法であって、同種異系の細胞化された構築物を、熱傷に対して処置することを必要とする成人/成体患者の無傷の皮膚要素に投与することを含み、前記構築物は、同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞およびマウスコラーゲンを含み、前記同種異系の細胞化された構築物は、ヒトECMタンパク質を堆積し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する、方法。
【請求項26】
深達性部分層熱傷に対して成人/成体患者を処置する方法であって、同種異系の細胞化された構築物を、熱傷に対して処置することを必要とする成人/成体患者の無傷の皮膚要素に投与することを含み、前記構築物は、同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞、およびマウスコラーゲンを含み、前記同種異系の細胞化された構築物は、ヒトECMタンパク質を堆積し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する、方法。
【請求項27】
外科的介入を必要とする成人/成体患者を処置する方法であって、同種異系の細胞化された構築物を外科的に調製された創傷床に適用することを含み、前記構築物は、同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞、およびマウスコラーゲンを含み、前記同種異系の細胞化された構築物は、ヒトECMタンパク質を堆積し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒト細胞外マトリクスタンパク質を堆積し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された皮膚構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
重度の熱傷を患う患者は、長く痛みを伴う回復に直面する。いくつかの深達性部分層熱傷など、外科的介入が必要とされる場合、患者自身の皮膚または死体からの皮膚が創傷領域に移植され得る。自家移植片は、死体皮膚の使用に付随する拒絶の可能性を低減させるが、患者はさらなる外傷に耐える必要がある。必要とされているのは、治癒を促進し、患者によって拒絶される可能性が低い移植片である。
【発明の概要】
【0003】
創傷部位での局所使用のための生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物が、本開示の様々な態様に属し得、構築物は、同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞(dermal fibroblasts)およびマウスコラーゲンを含む。いくつかの態様において、構築物はヒト細胞外マトリクス(ECM)タンパク質を堆積し、および/または活発に産生し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する。
【0004】
いくつかの態様において、構築物はヒト細胞外マトリクスタンパク質を堆積し、凍結保存から解凍した後に可溶性因子を分泌する。構築物は、解凍後1~4時間、可溶性因子の持続的分泌を提供する。
【0005】
いくつかの態様において、分泌される可溶性因子は、ヒト増殖因子、サイトカイン、インターロイキンおよび/またはマトリクスメタロプロテイナーゼである。分泌される可溶性因子は、炎症、増殖、肉芽形成および既存のマトリクスの再形成を誘導して、創傷部位における再生皮膚治癒を促進する。分泌される可溶性因子は、bFGF、GM-CSF、HGF、IL-1α、IL-6、IL-8、IL-10、MMP-1、MMP-3、MMP-9、PlGF、SDF-1α、TGF-β1、VEGF-Aおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。分泌される可溶性因子は、インビトロ再培養後1~168時間で、pg/cm2/hの範囲で存在する。
【0006】
いくつかの態様において、構築物は、無傷の皮膚とよく似た重層化されたECMおよび/または無傷のヒト皮膚と実質的に類似する重層化されたECMを組織化する。構築物は、無傷のヒト皮膚に存在する1つまたは複数のECMタンパク質、または無傷のヒト皮膚に存在する複数のECMタンパク質を含み得る。ヒトECMタンパク質は、線維性I型およびIII型コラーゲン、VI型コラーゲン、デコリン、ラミニン332ならびにこれらの組み合わせの空間分布を有するECMタンパク質からなる群から選択される。構築物は、構造的に組織化された真皮層を含み、構築物は、支持タンパク質、VI型コラーゲンおよびデコリンとともにI型およびIII型線維性コラーゲンを含み得る。構築物は、基底膜および真皮表皮接合部を含み、構築物は、IV型コラーゲンおよびラミニン332の空間分布を含み得る。
【0007】
いくつかの態様において、可溶性因子の分泌は、同種異系の細胞化された構築物を網状化した後に増加する。
【0008】
本開示の他の態様には、深達性部分層(DPT)熱傷に対して成人/成体患者を処置する方法であって、同種異系の細胞化された構築物をDPT創傷部位に適用することを含み、前記同種異系の細胞化された構築物は、同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞およびマウスコラーゲンを含む、方法が含まれる。同種異系の細胞化された構築物は、ヒトECMタンパク質を堆積し得、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する。
【0009】
いくつかの態様において、同種異系の細胞化された構築物は、再上皮化を増加させ、加速させ、および/または促進する確立された組織化されたECMを提供する。構築物の再上皮化の増加、加速および/または促進は、同等の表面積の自家移植片に対する比較であり得る。
【0010】
一態様において、方法は、同種異系の細胞化された構築物をDPT創傷部位に適用する前に、同種異系の細胞化された構築物を網状化することをさらに含む。
【0011】
別の態様において、方法は、凍結保存された同種異系の細胞化された構築物を解凍して、同種異系の細胞化された構築物をDPT創傷部位に適用することをさらに含む。同種異系の細胞化された構築物は、解凍後1~4時間、可溶性因子の持続的分泌を提供する。
【0012】
本開示のさらなる態様には、熱傷に対して成人/成体患者を処置する方法であって、同種異系の細胞化された構築物を、熱傷に対して処置することを必要とする成人/成体患者の無傷の皮膚要素に投与することを含み、構築物は、同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞およびマウスコラーゲンを含み、同種異系の細胞化された構築物は、ヒトECMタンパク質を堆積しおよび/または活発に産生し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する、方法が含まれる。
【0013】
本開示のさらなる態様には、深達性部分層熱傷に対して成人/成体患者を処置する方法であって、同種異系の細胞化された構築物を、深達性部分層熱傷に対して処置することを必要とする成人/成体患者の無傷の皮膚要素(dermal element)に投与することを含み、構築物は、同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞およびマウスコラーゲンを含み、同種異系の細胞化された構築物は、ヒトECMタンパク質を堆積しおよび/または活発に産生し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する、方法が含まれる。
【0014】
本開示のさらなる態様には、外科的介入を必要とする成人/成体患者を処置する方法であって、同種異系の細胞化された構築物を外科的に調製された創傷床に適用することを含み、構築物は、同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞およびマウスコラーゲンを含み、同種異系の細胞化された構築物は、ヒトECMタンパク質を堆積し、および/または活発に産生し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する、方法が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物の製造および構成要素を図示する。
【0016】
【
図2A】一次抗体を省いた新生児包皮を用いた免疫染色のための陰性対照画像であり、表皮層(E)または真皮層(D)中に目に見えるECMタンパク質染色をもたらさなかった。
【0017】
【
図2B】ヤギ抗III型コラーゲンで免疫染色された新生児包皮が真皮層中に明瞭な染色をもたらしたことを示す。破線は、上皮層と真皮層の間の接合部を示す。
【0018】
【
図2C】緩く組織化されたECMを示す、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物上でラット抗I型コラーゲンを使用した、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物の新生皮膚上皮の陽性対照免疫染色を示す。スケールバー=200μm。
【0019】
【
図3A】生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物の製造中および凍結保存後の、真皮層および表皮/真皮接合部中に典型的に存在するタンパク質の間接免疫蛍光を示す。ECMタンパク質の検出のための代表的な蛍光画像を示す。StrataGraftの断面上のECMタンパク質(コラーゲン、ラミニン332およびデコリン)を検出するために、市販の抗体を用いた間接免疫蛍光法を使用した。核をDAPIで染色した。
【
図3B】生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物の製造中および凍結保存後の、真皮層および表皮/真皮接合部中に典型的に存在するタンパク質の間接免疫蛍光を示す。StrataGraftによって合成された線維性I型およびIII型コラーゲンを示し、主な構造成分に相当する。
【
図3C】生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物の製造中および凍結保存後の、真皮層および表皮/真皮接合部中に典型的に存在するタンパク質の間接免疫蛍光を示す。コラーゲン構造の構築を誘導する役割をインビボで果たすVI型コラーゲンおよびデコリンの蓄積を含む、StrataGraftの細胞成分によってヒトコラーゲンが堆積および組織化されたことを示す。
【
図3D】生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物の製造中および凍結保存後の、真皮層および表皮/真皮接合部中に典型的に存在するタンパク質の間接免疫蛍光を示す。IV型コラーゲンおよびラミニン332の空間分布を示し、StrataGraftが基底膜ゾーンおよび真皮表皮接合部を組織化したことを示す。
【0020】
【
図4A】解凍後および網状化後の生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物からの分泌された因子の相対レベルの分析を示す。生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物を解凍し、示された時間(横軸)再培養し、各分析物の分泌速度を各時点で決定した。インターロイキンの分泌の結果を示す。エラーバーは、平均値から±1標準偏差を表す。IL、インターロイキン。
【
図4B】解凍後および網状化後の生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物からの分泌された因子の相対レベルの分析を示す。生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物を解凍し、示された時間(横軸)再培養し、各分析物の分泌速度を各時点で決定した。増殖因子およびサイトカインの分泌の結果を示す。エラーバーは、平均値から±1標準偏差を表す。bFGF、塩基性線維芽細胞増殖因子;GM-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;HGF、肝細胞増殖因子;PlGF、胎盤増殖因子;SDF-1α、間質細胞由来因子1α;FGF-β1、トランスフォーミング増殖因子β1;VEGF-A、血管内皮増殖因子A。
【
図4C】解凍後および網状化後の生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物からの分泌された因子の相対レベルの分析を示す。生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物を解凍し、示された時間(横軸)再培養し、各分析物の分泌速度を各時点で決定した。マトリクスメタロプロテイナーゼの分泌の結果を示す。エラーバーは、平均値から±1標準偏差を表す。MMP、マトリクスメタロプロテイナーゼ。
【0021】
【
図5】生体分子因子分泌を測定するためのインビトロ実験設定を示す。網状化されていないおよび網状化されたStrataGraftから収集された馴化培地中で、一連の可溶性創傷治癒因子のタンパク質レベルを定量した。
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、同種異系の培養されたケラチノサイトを含む組成物、ヒト適用のためのこのような組成物を調製する方法およびこのような組成物を投与する方法を包含する。特に、このような組成物は、ヒト細胞外マトリクスタンパク質を堆積し、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する。
【0024】
本開示の同種異系の培養されたケラチノサイト組成物は、手術を必要とする熱傷の耐久性のある創傷閉鎖および再生治癒を補助するために使用され得る、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物である。本開示の同種異系の培養されたケラチノサイト組成物は、正常なヒト皮膚線維芽細胞が包埋されたコラーゲンマトリクス上で成長した代謝的に活性な同種異系のヒトケラチノサイトの完全に重層化された上皮層を含有する。
【0025】
本開示の組成物の生細胞(例えば、線維芽細胞、NIKS細胞など)は代謝的に活性であり、組成物が創傷に適用された後に、創傷床を整え、組織の再生および修復を促進し、感染を低減させ得る一連の増殖因子、走化性因子、サイトカイン、炎症媒介物質、酵素および宿主防御ペプチドを分泌する。本開示の組成物の生細胞、すなわちケラチノサイトおよび皮膚線維芽細胞は、核型的に安定である。さらに、ケラチノサイトおよび皮膚線維芽細胞は足場非依存性増殖を示さない。
【0026】
例示的な実施形態において、組成物は、StrataGraft(登録商標)である。別の例示的な実施形態において、組成物は、ExpressGraft(商標)である。
【0027】
創傷治癒は、止血、増殖、遊走、再上皮化、ならびにECM堆積および再形成を促進して皮膚の完全性を回復させるために、様々な細胞型において複雑で協調した時空間的活動を伴う。熱傷創傷は、典型的には組織の焼痂、水疱形成、全身性損傷、およびいくつかの事例では当初の損傷部位を超える損傷を引き起こす創傷進行を伴うので、特有の検討事項を提示する。熱傷創傷の深さは、治癒のために必要とされる臨床的介入の程度を決定する上での重要な要因である。浅達性部分層熱傷と呼ばれる、表皮および真皮乳頭層を通って広がる熱傷は、非手術的に処置され得、一般に瘢痕なしに治癒する。これに対して、深達性部分層(DPT)熱傷は、より下方の真皮または真皮網状層を通って広がり、典型的には、創傷閉鎖を達成するために患者の健康な皮膚から採取された自家移植片の外科的配置などのより広範な臨床的介入を必要とする。
【0028】
自家移植は、重度のDPT熱傷創傷において一般的に使用される臨床的処置である。このアプローチは、患者上のドナー部位からの健康な皮膚の切除を必要とするので、ドナー部位採取には著しい痛み、罹患性およびその他の課題が伴い、これは、自家移植を回避する再生療法の実行を促す。切除されたまたは創傷清拭された創傷部位上に移植された実験室で合成された細胞構築物は、表皮および真皮の細胞外マトリクスならびに皮膚バリア機能を最終的に回復させる細胞を創傷領域に再配置させるように、既存の生きた真皮および表皮細胞を促す。
【0029】
生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物は、正常なヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)が包埋されたコラーゲンヒドロゲルマトリクス上で成長させた、NIKS(登録商標)ヒトケラチノサイトの生きた分化した完全に重層化された表皮層からなる。製造過程の最後に、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物は、保存中に生存能および代謝活性を維持するために凍結保存される。
【0030】
いくつかの実施形態において、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物処置を受けたDPT熱傷患者の最大90%、91%、92%、93%、94%または95%が、完全な創傷閉鎖(ドレナージなしで95%の再上皮化として測定される)を示し得る。他の実施形態では、DPT熱傷を有する患者において、処置部位の最大90%、91%、92%、93%、94%または95%が、3ヶ月後に耐久性のある創傷閉鎖(ドレナージまたは包帯材の必要性なしに100%の再上皮化として定義される)を達成し得る。他の実施形態において、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物は、全層創傷において十分に耐容され、処置部位に急性免疫原性応答を誘導しない。
【0031】
完全に重層化された上皮層
本開示の組成物は、表皮様であるおよび/または表皮組織に実質的に類似する完全に重層化された上皮層を含む。完全に重層化された上皮層は、ヒトケラチノサイトを含む。いくつかの実施形態において、完全に重層化された上皮層は、NIKS細胞を含む。NIKS(登録商標)細胞はATCC(CRL-12191)で寄託され、それらの開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,989,837号および米国特許第6,964,869号にさらに詳細に記載されている。
【0032】
完全に重層化された上皮層は、様々な外因性核酸を発現するように操作されたNIKS(登録商標)細胞を包含し得る。VEGFタンパク質(例えば、VEGF-Aなど)をコードする外因性遺伝子、低酸素誘導性因子(例えば、HIF-1Aなど)をコードする外因性遺伝子、アンジオポエチン(例えば、ANGPT1など)をコードする外因性遺伝子、カテリシジンペプチドまたはその切断産物(例えば、hCAP-18など)をコードする外因性遺伝子、βデフェンシン(例えば、hBD-3など)をコードする外因性遺伝子、ケラチノサイト増殖因子(例えば、KGF-2など)をコードする外因性遺伝子、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(例えば、TIMP-1など)をコードする外因性遺伝子、外因性IL-12遺伝子、ならびに他の抗菌剤、増殖因子、転写因子、インターロイキンおよび細胞外マトリクスタンパク質をコードする外因性核酸配列を発現するように操作されたNIKS(登録商標)細胞が明確に想定される。非限定的な例として、例えば、それらの開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7498167号、同第7915042号、同第7807148号、同第7988959号、同第8808685号、同第7674291号、同第8092531号、同第8790636号、同第9526748号、同第9216202号および同第9163076号、ならびに米国特許出願公開第20190030130号を参照されたい。所望のタンパク質をコードする外因性核酸を発現するように操作されたNIKS細胞を含む組成物は、外因性核酸を含有しないNIKS細胞を含む組成物よりさらに大量のそのタンパク質(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%など、それより多く)を産生する。
【0033】
いくつかの実施形態では、完全に重層化された上皮層は、組織学によって測定された場合、約75μm~約120μmの厚さを有する。例えば、完全に重層化された上皮層は、組織学によって測定された場合、約75、80、85、90、95、100、105、110、115または120μmの厚さを有し得る。
【0034】
真皮同等層
本開示の組成物は、真皮様であるおよび/または表皮組織に実質的に類似する真皮同等層(dermal equivalent layer)を包含する。真皮同等層は、上面および下面を有し、マトリクス内にヒト皮膚線維芽細胞を含む。
【0035】
皮膚線維芽細胞
本開示の組成物は、皮膚線維芽細胞を含む真皮同等層を包含する。ほとんどの実施形態において、皮膚線維芽細胞はヒト線維芽細胞である。例示的な実施形態において、ヒト皮膚線維芽細胞は、初代正常ヒト皮膚線維芽細胞である。
【0036】
マトリクス
本開示の組成物は、マトリクスを含む真皮同等層を包含する。真皮同等層のマトリクスは、ヒトコラーゲンおよび任意でマウスI型コラーゲンを含む。いくつかの実施形態において、真皮同等層のマトリクスは、ヒトI型コラーゲン、ヒトIII型コラーゲン、ヒトIV型コラーゲン、ヒトVI型コラーゲンなどのヒト細胞外マトリクスタンパク質を含み、任意でマウスI型コラーゲンを含む。
【0037】
真皮同等物中に存在するコラーゲンは、I型マウスコラーゲンを含み得る。あるいは、真皮同等物中に存在する唯一のコラーゲンは、皮膚代替物の細胞(例えば、ヒト皮膚線維芽細胞)によって産生され得る。マトリクスは、マトリクス中に含有される細胞によって産生されるさらなる生体分子をさらに含み得る。例示的な実施形態において、真皮層は、線維芽細胞によって産生および組織化されたマトリクス(例えば、細胞外マトリクス)内に包埋された正常ヒト皮膚線維芽細胞から構成される。この実施形態のいくつかの反復(iterations)において、真皮同等層中に非ヒトコラーゲンは存在しない。この実施形態の他の反復において、真皮同等層中に最大約85%の非ヒトコラーゲンが存在する。特定の反復において、非ヒトコラーゲンはマウスである。別の反復において、非ヒトコラーゲンはマウスコラーゲンからなり、他の非ヒトコラーゲン材料を含まない。別の例示的な実施形態において、真皮同等層は、精製されたマウスI型コラーゲンを含有するゲル化コラーゲンマトリクス中に包埋された正常ヒト皮膚線維芽細胞から構成される。誤解を避けるために、この実施形態では、マウスI型コラーゲンはゲル化されて真皮層にその基本構造を与えるが、その中に包埋された正常ヒト皮膚線維芽細胞はコラーゲン(および他の生体分子)を産生し、マトリクスに寄与し得る。したがって、コラーゲンマトリクスは、マウス1型コラーゲンと(ヒト皮膚線維芽細胞から産生される)ヒトコラーゲンの両方を含み得る。
【0038】
本開示の組成物は、ヒトI型コラーゲンおよびマウスI型コラーゲンを含み得、マウスI型コラーゲンは、組成物中の総コラーゲンの90重量%以下である。例えば、いくつかの実施形態において、マウス1型コラーゲンは、組成物中のすべての型のコラーゲンの約60重量%~約90重量%である。
【0039】
同種異系の細胞化された足場/構築物
本発明の同種異系の培養されたケラチノサイト組成物は、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物であり得る。本明細書で使用される場合、「同種異系の細胞化された構築物」は、凍結保存された、患者に適用するために調製された、任意で、患者の創傷床上に配置するための寸法にされた本開示の無菌組成物である。「同種異系の細胞化された構築物」という語句は、本明細書では「同種異系の細胞化された足場」、「構築物」、または「生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物」という用語と互換的に使用され得る。
【0040】
同種異系の細胞化された構築物は、上に詳述したように、同種異系の培養されたケラチノサイト、皮膚線維芽細胞およびマウスコラーゲンを含む。
【0041】
製造
本開示の組成物を生産するための適切な製造方法は、当技術分野で以前に記載されている。例えば、それぞれ、それらの開示の全体が参照により組み入れられる米国特許第7498167号、同第7915042号、同第7807148号、同第7988959号、同第8808685号、同第7674291号、同第8092531号、同第8790636号、同第9526748号、同第9216202号、同第9163076号、同第10091983号および米国特許出願公開第20190030130号を参照されたい。
【0042】
上記実施形態のそれぞれにおいて、マウス細胞は、本開示の組成物の製造において使用されない。それにもかかわらず、本開示の組成物は、組成物の細胞が歴史的にどのように培養されたかを理由として、ある種の規制上の定義の下では異種移植製品と見なされ得る。
【0043】
凍結保存
本明細書に開示される組成物のそれぞれは、凍結保存され得る。適切な凍結保存の方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第10,091,983号に開示されている。凍結保存された組成物はグリセリンを含み得る。
【0044】
本開示の組成物が凍結保存後に解凍された後、組成物は、ヒト増殖因子およびサイトカインを含む複数のタンパク質を分泌し得る。例えば、解凍された組成物は、bFGF、GM-CSF、HGF、IL-1α、IL-6、IL-8、IL-10、MMP-1、MMP-3、MMP-9、PlGF、SDF-1α、TGF-β1およびVEGF-Aから選択されるタンパク質を分泌し得る。
【0045】
構造的および機能的特性
製造中および凍結保存からの回収後に、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物の構造的および機能的特性を決定した。無傷の皮膚に典型的に見られるECMタンパク質の発現および空間的組織化の定性的評価を行い、創傷治癒の炎症、血管新生、増殖、肉芽形成および再形成段階に関連することが知られている細胞因子の分泌の時間経過を調べた。
【0046】
インビボでの急性創傷治癒に典型的に関連する細胞外マトリクス(ECM)分子発現および分泌されたタンパク質因子に焦点を当てることによって、凍結保存後の構築物の構造的および機能的特性を特徴付けた。同種異系の細胞化された皮膚構築物(すなわち、StrataGraft)を調製し、凍結保存し、解凍し、インビトロで培養した。I型、III型、IV型、VI型コラーゲン、ラミニン332およびデコリンに対する市販の抗体を使用し、構築物の断面上の間接免疫蛍光法を使用して、ECMタンパク質発現を決定した。網状化されていないおよび網状化された構築物からの馴化培地における多重バイオマーカーアッセイおよび一重ELISAによって、可溶性タンパク質可溶性因子の分泌を定量した。結果は、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物の細胞成分が、構造的に組織化されたECMを示す、線維性I型およびIII型コラーゲン、VI型コラーゲンならびにデコリンの空間分布でECMタンパク質を堆積させたことを示した。IV型コラーゲンおよびラミニン332の空間分布は、基底膜および真皮表皮接合部の存在を示した。免疫調節、血管新生および細胞増殖に関与する可溶性タンパク質増殖因子、サイトカインおよびペプチド(bFGF、GM-CSF、HGF、IL-1α、IL-6、IL-8、IL-10、MMP-1、MMP-3、MMP-9、PlGF、SDF-1α、TGF-β1およびVEGF-A)が、インビトロ再培養後1~168時間にpg/cm2/hの範囲で観察された。いくつかの例では、これらの因子の多くのレベルは、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物の網状化によって変化し得る。したがって、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物の新生真皮同等物は、ヒト皮膚の主要なECM要素の産生および構築を含む著しい修飾を受け、生きた細胞成分は、創傷治癒に関連する増殖因子およびサイトカインを含む可溶性タンパク質因子の持続的分泌を提供する。
【0047】
再生創傷治癒は、免疫成分を動員し、サイトカイン放出の引き金を引く炎症期から始まる複雑な一連の事象を伴う。増殖段階は、創傷環境内への細胞の増殖および遊走を特徴とし、これはその後、再形成段階に特徴的なECMの合成および再組織化をもたらす。重篤な熱傷創傷は、線維芽細胞に富む血管形成された組織である肉芽組織の形成を妨げる生きていない焼痂を有することが多いので、特に問題である。人工真皮代替物(dermal substitutes)は、創傷治癒の増殖および再形成期を促進する物理的被覆物またはECMおよび細胞構成成分を提供する。様々な態様において、生きた、生物工学によって作られた同種異系の細胞化された構築物は、解凍および培養への復帰後にヒトECMタンパク質を合成および組織化し(
図3)、再生創傷治癒に関連する可溶性因子を分泌する生きたケラチノサイトおよびNHDFを有する(
図4)。
【0048】
ヒトにおいて、再上皮化は、創傷治癒の創傷閉鎖段階を担う主要な機構である。傷害付近の線維芽細胞は分化し、ECMを堆積させて、無傷の皮膚の三次元層状構造の再確立を助ける。一実施形態において、同種異系の細胞化された構築物は、無傷の皮膚と類似する重層化されたECMを組織化し、支持タンパク質、VI型コラーゲンおよびデコリンともにI型およびIII型線維性コラーゲンが存在することは構造的に組織化された真皮層を示し、IV型コラーゲンおよびラミニン332の空間分布は基底膜および真皮表皮接合部の存在を示す(
図3)。したがって、創傷部位に適用すると、同種異系の細胞化された構築物は、再上皮化を加速および促進する確立された組織化されたECMを提供し、これは、死細胞および損傷を受けたECM組織の広い領域を有するDPT熱傷創傷などの傷害において有益であることが判明している。
【0049】
同種異系の細胞化された構築物の生きた細胞成分は、創傷治癒の様々な段階に関連する増殖因子およびサイトカインを含む可溶性タンパク質因子の即時のおよび持続的な分泌を提供した。傷害後、生存している皮膚細胞および侵入している免疫細胞の両方による可溶性因子の分泌のタイムラインは、これらの多数の細胞型間での複雑な相互作用を伴う。NHDFおよびNIKS細胞のみを有するインビトロ系として、同種異系の細胞化された構築物による可溶性因子の合成および分泌の時間経過およびレベルは、分泌の多くが免疫細胞および他の皮膚細胞型によって行われるインビボでの増殖因子分泌レベルおよび時間的パターンの全体を必ずしも反映していないことに留意することが重要である。それにもかかわらず、同種異系の細胞化された構築物中のケラチノサイトおよび線維芽細胞は、創傷部位での再生皮膚治癒を促進し得る炎症、増殖、肉芽形成および既存のマトリクスの再形成を誘導する多くの重要な因子を分泌する(表2)。
【0050】
一実施形態において、同種異系の細胞化された構築物は、GM-CSF、IL-6、IL-8、MMP-3およびMMP-9などの、但しこれらに限定されない細胞増殖、炎症および肉芽組織の形成に関与する可溶性因子を分泌し得る(
図4)。創傷治癒過程において、止血は傷害直後に起こり、その間に血小板およびフィブリン塊が形成され、血小板由来増殖因子(PDGF)およびTGF-βなどの因子の分泌をもたらす。4日以内に、増加した炎症は、創傷領域からの損傷した細胞、病原体および細菌の除去をもたらして、組織修復を促進する。炎症期は、IL-1、IL-6などのサイトカインおよびbFGFなどの増殖因子の増加した分泌によって特徴付けられる。GM-CSFは好中球の成熟を促し、ケラチノサイト増殖および新血管新生を増加させる。ケラチノサイトおよび線維芽細胞によって分泌されるIL-6は、それぞれさらなる好中球を誘引することによって、およびケラチノサイト増殖を増加させることによって炎症および再上皮化を促進する。IL-8は、創傷部位への好中球流入を誘導することによって炎症誘発性フィードバックサイクルを促進する。ケラチノサイトによって分泌されるメタロプロテイナーゼ(MMP-3およびMMP-9)は、細胞遊走および創収縮を増加させる。創傷治癒の次の期は、bFGF、PlGF、SDF-1αおよびVEGFなどの血管新生因子の放出によって引き起こされる血管新生を伴う。同種異系の細胞化された構築物内の細胞は、創傷治癒に関与するこれらの重要な可溶性増殖因子およびサイトカインのいくつかを産生し得、創傷部位における内因性分泌過程を補完または増強し得ることが示唆される。
【0051】
これらの分泌される因子の濃度は、創傷を再生する際に見られる典型的な濃度範囲内であり得る。創傷環境における可溶性タンパク質因子放出の正確なレベルおよびタイミングは、ECMと既存の細胞間での動的相互依存の複雑な相互関係に依存するため、測定が困難であることがあり得る。しかしながら、同種異系の細胞化された構築物の生きた細胞成分は、それらのインサイチュ対応物に類似する機能的属性を示す。
【0052】
これらの可溶性因子の多くの分泌は、同種異系の細胞化された構築物の網状化によって増加し得る(
図4)。臨床現場での網状化は、主に移植片サイズを拡大し、創傷滲出物を管理するために使用されるが、傷害後12~24時間以内にケラチノサイト遊走および炎症誘発性サイトカイン放出を促進することが示されている。いくつかの実施形態において、創傷治癒を促進する可溶性タンパク質の分泌の増加は、全身性因子の非存在下で起こり得、網状化はNHDFおよびNIKS細胞自体の分化または代謝状態に影響を及ぼし得ることを示唆している。網状化の結果としてインビトロで同種異系の細胞化された構築物において観察された応答は、インサイチュでの同種異系の細胞化された構築物から予想された応答に相当する。
【0053】
同種異系の細胞化された構築物の細胞成分は、ヒトECMタンパク質を堆積および組織化し、再生創傷治癒に関連する可溶性増殖因子およびサイトカインを分泌する。凍結保存された同種異系の細胞化された構築物におけるDEおよび真皮表皮接合部ECMタンパク質の組織化は、ヒトの皮膚と類似する。凍結保存された同種異系の細胞化された構築物の生きた細胞成分は、解凍後1~4時間という早期に可溶性タンパク質創傷治癒因子の持続的分泌を提供することができる。制御された環境における解凍後1~4時間という早期に可溶性タンパク質創傷治癒因子の持続的分泌を製造するため、凍結保存からの回復後数時間以内に可溶性タンパク質因子を連続的に産生および分泌するその能力と相まって、凍結保存された同種異系の細胞化された構築物は、重度の熱傷および他の複雑な皮膚欠損の再生的創傷治癒を促進するための魅力的な選択肢となる。
【0054】
定義
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、与えられた値が終点の「少し上」または「少し下」であり得ることを定めることによって、数値範囲の終点に柔軟性を付与するために使用される。例えば、終点は、列記された値の10%、8%、5%、3%、2%、または1%以内であり得る。さらに、便宜および簡潔さのために、「約50mg/mL~約80mg/mL」という数値範囲は、「50mg/mL~80mg/mL」という範囲に対する支持を与えることも理解されるべきである。終点はまた、FDA、USPなどの適切な規制機関によって許容される変動性に基づき得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」および「有する(having)」などは、米国特許法においてそれらに帰属する意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味することができ、一般に非限定的な用語であると解釈される。「からなる(consisting of)」または「からなる(consists of)」という用語は限定的な用語であり、このような用語とともに具体的に列記された構成要素、構造、工程などの他、米国特許法に合致するもののみを含む。「本質的に~からなる(consisting essentially of)」または「本質的に~からなる(consists essentially of)」は、米国特許法によってそれらに一般的に帰属する意味を有する。特に、このような用語は、追加の項目、材料、構成要素、工程または要素と関連して使用される項目の基本的および新規な特徴または機能に実質的に影響を及ぼさない追加の項目、材料、構成要素、工程または要素を含めることを許容することを除き、一般的には限定的な用語である。例えば、組成物中に存在するが、組成物の性質または特徴に影響を及ぼさない微量元素は、たとえ「本質的に~からなる(consisting essentially of)」のような用語に続く項目のリスト中に明示的に記載されていなくても、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語の下に存在すれば、許容され得る。本明細書では、「含む(comprising)」または「含む(including)」などの非限定的な用語を使用する場合、あたかも明示的に述べられているかのように「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語および「からなる(consisting of)」という用語に対しても、直接的な支持が与えられるべきであり、その逆も同様であることが理解される。
【0056】
本明細書で使用される場合、「無菌」という用語は、検出可能な微生物または真菌の夾雑が本質的にまたは完全に存在しない皮膚同等物を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「NIKS細胞」という用語は、細胞株ATCC CRL-12191として寄託された細胞の特徴を有する細胞を指す。「NIKS」は、near-diploid immortalized keratinocytes(近2倍体不死化ケラチノサイト)の略であり、登録商標である。
【0058】
本明細書で使用される場合、皮膚同等物に関して使用される場合の「生きた」という用語は、凍結保存後の皮膚同等物中での細胞の生存能を指す。好ましい実施形態において、「生きた」皮膚は、MTTアッセイによって測定された場合に対照の非凍結保存組織の少なくとも50%、60%、70%、80%もしくは90%のA550、または類似の生存能アッセイの読み取り値の少なくとも50%、60%、70%、80%もしくは90%を有する。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、本発明の様々な反復を例示する。以下の実施例に開示されている技術は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らによって発見された技術を代表することが当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態に変更を施し、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく類似または同様の結果をなお取得し得ることを理解すべきである。したがって、添付の図面に記載または示されているすべての事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0060】
実施例1:組織製造および器官型培養
図1に示されているように、StrataGraft組織を製造した。凍結保存されたNHDFおよびNIKSを解凍し、単層培養で拡大増殖させた。NHDF細胞を採取し、I型コラーゲンと合わせ、培養容器に分注して真皮同等物(DE)層を形成した。次いで、NIKSケラチノサイトを採取し、DE上に播種し、器官型培養において完全に重層化された表皮層を発達させた。製造過程の最後に、凍結保護剤で組織を処理し、使用するまで-70~-90℃で凍結保存した。
【0061】
実施例2:免疫組織化学
標準的な技術を使用してStrataGraftの断面上のECMタンパク質を検出するために、間接免疫蛍光法を使用した。簡潔に記載すると、生産過程中に収集された発達している組織、ならびに最終生成物組織および凍結保存から回収された組織を免疫染色のために固定した。8mmの直径の円形生検として組織試料を採取し、4℃で3時間、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中1%パラホルムアルデヒドで固定し、1×PBSで洗浄し、次いで、20%スクロース中に移した。Optimal Cutting Temperature培地中に試料を包埋および凍結し、5μmの厚さで凍結切片化するために処理するまで-80℃で保存した。冷アセトン中で凍結切片を5分間固定し、風乾した。スライドを1×PBSですすぎ、3%血清(ヤギまたはロバ、二次検出のために使用される抗体の種と一致させる)を含有する1×PBSで、非特異的な抗体結合をブロックした。各抗体に固有の希釈度の、ブロッキング溶液中の一次抗体ととともに、加湿チャンバ内で、スライドを37℃で60分間インキュベートした(表1)。スライドを1×PBSで2回洗浄し、蛍光色素をコンジュゲートした二次抗体とともに、室温で30分間インキュベートした。スライドを1×PBSで2回洗浄し、4’,5-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)対比染色を加えたProlong Gold(Gibco-BRL)を載せて、デジタル画像の撮影前に暗所で、4℃で一晩保存した。
【表1】
aユニバーサル抗体リソース番号、
https://antibodyregistry.org//
【0062】
I型、III型、IV型およびVI型コラーゲンならびにラミニンおよびデコリンに対する抗体を、表1に列挙されている市販の販売元から入手した。適切な種に対するAlexa 594コンジュゲート二次抗体で、抗体染色を可視化し、細胞核をDAPIで染色した。抗体染色に対する陽性対照をヒト新生児包皮を用いて検証し、陰性対照については、一次抗体を省略した。新生DEにおいて、Alexa 488にコンジュゲートされた二次抗体で可視化された抗I型コラーゲン(表1)を用いて、入力コラーゲンの存在を検証した(
図2)。CellSensデジタルイメージングソフトウェアを備えたOlympus IX-71落射蛍光顕微鏡下で試料の断面を観察し、Optronics DI 750 CEカメラ(Coleta、GA)を用いて、200倍の倍率で画像を取得した。
【0063】
実施例3:多重パネルおよびELISA
典型的には線維芽細胞およびケラチノサイトによって分泌され、創傷治癒の異なる段階に関連する一連の可溶性タンパク質因子が表2に示されている。網状化されていないおよび網状化されたStrataGraftから収集された馴化培地中の多重バイオマーカーアッセイおよび一重酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によってタンパク質レベルを定量した。StrataGraftの2つの独立したロットの各々からの3つの凍結保存された組織を解凍し、患者適用前の組織の臨床的取り扱いに近い条件下で処理した。各ロットからの2つの組織をBrennan網状化装置で1:1に網状化した。次いで、網状化された組織および網状化されていない組織を新鮮な培地中で培養して、可溶性因子を培地中に放出させた。1、4、24および168時間後に馴化培地を収集し、製造業者の説明書に従い、分析物に対して適切な、Human Matrix Metalloproteinase(MMP)3-Plex Ultra-Sensitiveキット、V-Plex Custom Panels(Meso Scale Diagnostics、Rockville、MD)またはSingleplex Quantikine(登録商標)キット(R&D Systems、Minneapolis、MN)のいずれかを使用してアッセイした(表2)。インターロイキン-6(IL-6)およびインターロイキン-8(IL-8)について試験された試料は1:10に希釈され、血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)について試験された試料は1:2に希釈され、すべての他の試料は希釈せずに試験された。MesoScale Discovery Sector S600装置を使用して、MMP 3-PlexおよびV-Plexからの試料を処理し、Discovery Workbench V.4.0.12.1ソフトウェアパッケージ(Meso Scale Diagnostics、Rockville、MD)を使用してデータの捕捉および分析を行った。Quantikine(登録商標)プレートは、BioTek Synergy 4 Instrumentで読み取られ、統合Gen 5 V2.05.5ソフトウェアパッケージ(BioTek、Winooski、VT)を使用して分析を行った。すべての試料を2つ組で実行し、培地ブランクに対して比較した。pg分析物/cm
2StrataGraft/hとして、分析物を定量した。
【表2-1】
【表2-2】
aアッセイは、Singleplex Quantikine ELISAキット(Singleplex)、Human MMP 3-Plex Ultrasensitiveキット(3-Plex)またはV-Plex Custom Panels(V-Plex)であった。
bFGF、塩基性線維芽細胞増殖因子;GM-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;HGF、肝細胞増殖因子;IL、インターロイキン;MMP、マトリクスメタロプロテイナーゼ;PlGF、胎盤増殖因子;SDF-1α、間質細胞由来因子1α;TGF-β1、トランスフォーミング増殖因子β1;VEGF-A、血管内皮増殖因子A
【0064】
実施例4:StrataGraftの増殖特性
ヘマトキシリンおよびエオシンで染色された組織切片の組織学的分析により、ゲル化されたコラーゲンマトリクス中に包埋されたNHDFからなるDE上で成長する重層化されたケラチノサイトの十分に発達した表皮層の存在が明らかになった(
図1)。StrataGraftは、約100cm
2の表面積を有する長方形の形式で製造される。StrataGraftは、薄い分層皮膚移植片と同様の取り扱い特性を有し、皮膚移植片に対して典型的に行われるように容易に網状化され得る。
【0065】
実施例5:細胞外マトリクスの特性決定
ECMタンパク質発現を評価するために、インビボで典型的に見出される真皮タンパク質(I型、III型、VI型コラーゲンおよびデコリン)および表皮真皮接合部タンパク質(IV型コラーゲンおよびラミニン332)について、StrataGraftを免疫染色した。
図2は、新生児包皮を用いた陽性および陰性対照I型コラーゲン染色(
図2Aおよび
図2B)、ならびに製造中にAlexa 488で可視化された抗I型コラーゲンを用いた入力コラーゲン新生DEの陽性対照染色(
図2C)を示す。新生児包皮の染色は、インサイチュで完全に形成されたDEの典型的な密な原線維の染色を示す。入力コラーゲンの染色は、時間が経過するにつれてのさらなる修飾の前における、コラーゲンの確立されたベースラインレベルおよびDE組織化を示し、この段階では、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、VI型コラーゲン、ラミニン332またはデコリンについての染色は存在しない(データは示さず)。
図3A~3Dは、製造の異なる段階で観察された免疫染色を記載し、凍結保存後の代表的な画像を示す。
図3Aは、ECMタンパク質の検出のための代表的な蛍光画像を示す。StrataGraftの断面上のECMタンパク質(コラーゲン、ラミニン332およびデコリン)を検出するために、市販の抗体を用いた間接免疫蛍光法を使用した。核をDAPIで染色した。
図3Bは、StrataGraftによって合成された線維性I型およびIII型コラーゲンを示し、主な構造成分に相当する。
図3Cは、コラーゲン構造の構築を誘導する役割をインビボで果たすVI型コラーゲンおよびデコリンの蓄積を含む、StrataGraftの細胞成分によってヒトコラーゲンが堆積および組織化されたことを示す。
図3Dは、IV型コラーゲンおよびラミニン332の空間分布を示し、StrataGraftが基底膜ゾーンおよび真皮表皮接合部を組織化したことを示す。
【0066】
入力コラーゲンゲル内での最初のNHDFプレーティングの時点で、StrataGraftは、新たに合成されたヒトECM分子を全く含有しなかった。8日目から33日目まで、抗原特異的免疫蛍光染色の全体的な増加が存在し、StrataGraft成熟中のヒトECMの新合成を実証した。したがって、一態様において、構築物は、増殖の約1週間または8日後に、新たに合成されたヒトECM分子を含む。真皮ECM(dermal ECM)の主要な構造成分に相当する線維性コラーゲン(I、IIIおよびVI型)およびデコリンの染色は、製造の初期段階で現れ、この染色は、大部分がStrataGraftのDEに局在していた。DE中のI型コラーゲンレベルおよび分布が、DEに局在する点状の染色として、最初に可視化され、コラーゲン染色は、より強くおよび線維性に見え始め、製造の後期段階を通じた線維性構造へのコラーゲンの再組織化を示唆した。I型コラーゲン原線維集合に関連するプロテオグリカンであるデコリンは、初期段階の間、原線維染色としてDE中に見ることができ、後期段階を通じて強度が増加し続けた。初期段階でのIII型コラーゲンに対する点状染色は、主にNDHF核に隣接して局在しており、NDHFによるデノボ合成および堆積と合致し、染色の強度は増加したが、後期段階を通じて点状分布を保持した。VI型コラーゲンに対する染色は、初期段階で真皮区画中で点状であり、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンの発現を反映し、後期段階を通じて連続的な染色パターンを呈した。
【0067】
表皮真皮接合部の主に構造成分に相当するタンパク質(IV型コラーゲンおよびラミニン)については、染色は、DEとその上を覆っているケラチノサイト層との間の領域に局在した。表皮真皮接合部に局在するIV型コラーゲンに対する染色は、製造の後期段階中にのみ見ることができた。点状のラミニン染色は、最初に初期段階で見ることができ、後期段階を通じて表皮真皮接合部により連続して密に局在し、DE全体に広がる拡散した染色を伴っていた。図の下部の強い信号は、組織を成長させるために使用されるプラスチック製品の非特異的染色を表す。
【0068】
凍結保存からの回復後、すべてのECMタンパク質に対して成熟の終了時に見ることができる染色強度および分布パターンが保持された。DAPI染色された細胞は、DEおよび表皮層全体にわたって見ることができた。
【0069】
StrataGraftの新生I型コラーゲン含有真皮同等物は、StrataGraftの細胞成分によって媒介されるヒト皮膚の主要な構造的および機能的ECM要素の産生および構築を含む著しい修飾を経る。間接免疫蛍光法は、StrataGraftの細胞成分がヒトECMタンパク質を堆積させることを実証した。I型およびIII型線維性コラーゲンの存在は、支持タンパク質、VI型コラーゲンおよびデコリンとともに、構造的に組織化されたECMを示す。StrataGraftにおけるIV型コラーゲンおよびラミニン332の空間分布は、基底膜ゾーンおよび真皮表皮接合部の存在を示す。
図6は、基底膜および真皮ECMの成分を有するECMの特性決定を示す。
【0070】
実施例6:創傷治癒因子分泌
解凍後、StrataGraft内のケラチノサイトおよび線維芽細胞は、免疫調節、血管新生および細胞増殖に関与する増殖因子、サイトカインおよび酵素を産生および分泌した。インターロイキン(IL-1α、IL-6、IL-8、IL-10)、増殖因子(塩基性線維芽細胞増殖因子[bFGF]、肝細胞増殖因子[HGF]、胎盤増殖因子[PlGF]、トランスフォーミング増殖因子β1[TGF-β1]およびVEGF-A)、サイトカイン(顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子[GM-CSF]、間質細胞由来因子[SDF-1α])およびMMP(MMP-1、MMP-3、MMP-9)が、馴化培地中で、pg/cm
2/hの範囲で検出された(
図4A~4C)。
【0071】
図5は、生体分子因子分泌を測定するためのインビトロ実験の設定を示す。網状化されていないおよび網状化されたStrataGraftから収集された馴化培地中で、一連の可溶性創傷治癒因子のタンパク質レベルを定量した。
図4Aは、インターロイキンの分泌の結果を示す。解凍後、StrataGraft内の細胞は、インビトロ再培養後1時間でおよび最長7日間、インターロイキンを産生し続けた。網状化後、IL-1αおよびIL-6の発現は、網状化されていない構築物と比較して、網状化された構築物の再培養の最初の24時間にわたってより大きかった。
図4Bは、増殖因子およびサイトカインの分泌の結果を示す。解凍後、StrataGraft内の細胞は、免疫調節、血管新生および細胞増殖に関与する増殖因子およびサイトカインを産生および分泌し続けた。網状化されていない構築物と比較して、網状化された構築物において、bFGFおよびGM-CSFのより高い発現が観察された。
図4Cは、マトリクスメタロプロテイナーゼの分泌の結果を示す。MMPの規模の変化が、インビトロ再培養後1時間でおよび最長7日間観察された。網状化されていない構築物と比較して、網状化された構築物の再培養の最初の24時間にわたって、より高い割合のMMP-3が観察された。MMP-3およびMMP-9については、網状化された構築物からのより持続的な放出が観察された。
【0072】
この分析の結果は、インビトロ再培養後1時間および168時間の間の時点での発現の動的なパターンを明らかにした(
図4A~
図4C)。いくつかの事例では、当初、発現レベルは低く、再培養において経時が経過するにつれて増加したが(例えば、MMP-1およびTGF-β1)、他の因子の発現は当初高く、時間が経過するにつれて減少した(例えば、bFGF、HGF、IL-1α)。いくつかの因子(GM-CSF、MMP-3、IL-6、IL-8)の発現は24時間でピークに達し、168時間までに低下した。いくつかの因子については、網状化された組織は、網状化されていない組織と比較してより高いレベルを分泌した。網状化されていない組織と比較して、より高い濃度のbFGF、IL-1α、IL-6およびMMP-3が、網状化された組織における再培養の最初の24時間にわたって検出され、長期培養後の網状化された組織からのより持続的な放出が、GM-CSF、IL-6、IL-8、MMP-3およびMMP-9について観察された。HGF、IL-8、IL-10、MMP-1、PlGF、SDF-1α、TGF-β1およびVEGF-Aの分泌は、網状化によって比較的影響を受けないように見受けられた。
【0073】
StrataGraftの生きた細胞成分は、創傷治癒に関連する増殖因子およびサイトカインを含む可溶性タンパク質因子の持続的分泌を提供した。いくつかの因子の分泌は、網状化によって増加した。
【国際調査報告】