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特表2024-521822マルチビーム顕微鏡、および検査部位に応じて調整された設定を用いてマルチビーム顕微鏡を動作させるための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】マルチビーム顕微鏡、および検査部位に応じて調整された設定を用いてマルチビーム顕微鏡を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20240528BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20240528BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/22 502B
H01J37/244
H01J37/147 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573210
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022061042
(87)【国際公開番号】W WO2022248141
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102021205394.7
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521126944
【氏名又は名称】カール ツァイス マルティセム ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト シュテファン
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101BB03
5C101EE03
5C101EE08
5C101EE14
5C101EE19
5C101EE22
5C101EE33
5C101EE43
5C101EE44
5C101EE48
5C101EE49
5C101EE51
5C101EE59
5C101EE68
5C101EE69
5C101EE70
5C101FF02
5C101FF15
5C101FF25
5C101FF56
5C101FF57
5C101FF58
5C101FF59
5C101GG04
5C101GG05
5C101GG34
5C101GG37
5C101GG49
5C101HH35
(57)【要約】
改善されたマルチビームシステム、およびマルチビームシステムを用いる改善されたウェーハ検査方法を用いて、ウェーハ検査の精度または速度を低下させるマルチビーム効果が検査位置に応じて補正される。この目的を達成するために、改善されたマルチビームシステムは、検査位置に応じて、例えば、ウェーハ縁部からの距離に応じて、引き出し電界に影響を及ぼし、一様化するための手段を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の1次粒子ビーム(3)および複数の2次粒子ビーム(9)を有するマルチビームシステム(1)であって、
- 空間分解検出器(207)と、
- ウェーハ(7)の構造化表面(25)の部分の一括走査を目的として前記複数の1次および2次粒子ビーム(3、9)を偏向させるための少なくとも1つの偏向系(110、222)と、
- 前記検出器(207)および前記偏向系(110、222)を駆動するための制御デバイス(800)と、を備え、
前記制御デバイス(800)および前記検出器(207)が、前記複数の2次粒子ビーム(9)のラスタ配列(41)の時間平均化された検査像を取り込み、かつ/あるいは2nm、1nm、またはそれ未満の空間分解能をもって前記構造化表面(25)の部分のデジタル像を取り込むように構成されている、
マルチビームシステム(1)。
【請求項2】
前記制御デバイス(800)が、前記ラスタ配列(41)の前記時間平均化された検査像を取り込むための第1の動作モードにおいて、前記偏向系(110)を用いて複数の前記1次粒子ビーム(3)を前記ウェーハ(7)の前記構造化表面(25)の部分にわたって時間T1内に迅速に走査し、前記構造化表面(25)の部分の前記デジタル像を記録するための第2の動作モードにおいて、前記偏向系(110)を用いて前記複数の1次粒子ビーム(3)を前記ウェーハ(7)の前記構造化表面(25)の部分にわたって時間T2内に低速で走査するように構成されており、T1<T2、好ましくは、T1<T2/10、例えば、T1<T2/100である、請求項1に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項3】
前記検出器(207)が第1の検出器(207a)および第2の検出器(207b)を包含し、前記マルチビームシステム(1)が、前記制御ユニット(800)によって駆動され、動作中に、前記複数の2次粒子ビームを前記第1の検出器(207a)上または前記第2の検出器(207b)上のどちらかへ偏向させるように構成されたビーム偏向器(224)を有する検出ユニット(200)を備える、請求項2に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項4】
前記ビーム偏向器(224)が、動作中に、前記複数の2次粒子ビームを前記第1の検出器(207a)上または前記第2の検出器(207b)上のどちらかの定位置に維持するように構成されている、請求項3に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項5】
前記検出器(207)が、前記複数の2次粒子ビーム(9)の前記ラスタ配列(41)の前記時間平均化された検査像、ならびに2nm、1nm、またはそれ未満のピクセル寸法を有する高空間分解能での前記構造化表面(25)の部分の前記デジタル像の同時取り込みのために設計されている、請求項1に記載のマルチビームシステム。
【請求項6】
前記検出器(207)が、電子から光子を発生させる電子変換要素を包含し、光子が、前記ウェーハ表面(25)の部分を取り込むための第1の高速光検出器、および前記ラスタ配列(41)の前記検査像を取り込むための第2の低速光検出器を同時に用いて検出される、請求項6に記載のマルチビームシステム。
【請求項7】
前記制御デバイス(800)が、前記ラスタ配列(41)の前記検査像から、前記複数の粒子ビーム(3、9)の入射場所の変化、ならびに前記粒子ビーム(3、9)の焦点の形状またはサイズの変化に存する複合マルチビーム効果を決定し、前記複合マルチビーム効果に基づいて前記マルチビームシステム(1)の設定パラメータの変更を導出し、設定するようにさらに構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項8】
前記制御デバイス(800)が、前記マルチビームシステム(1)の一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素を含む、照明経路(13)および検出経路(11)の複数の構成要素に接続されており、前記複合マルチビーム効果を低減することを目的とする、一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素を含む、前記照明経路(13)および前記検出経路(11)の前記構成要素の前記設定パラメータを駆動するように構成されている、請求項7に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項9】
前記マルチビームシステム(1)が、駆動を目的とする前記制御デバイス(800)に接続された以下の構成要素:
- 前記複数の1次粒子ビーム(3)のための準静的偏向器(107)と、
- 前記1次粒子ビーム(3)および2次粒子ビーム(9)の前記走査偏向のための動的偏向器(110)と、 - 前記2次粒子ビーム(9)の前記走査偏向のための動的偏向器(222、224)と、
- 可変集束効果を有する静電または磁気レンズ(306.2、307、103.2、102)と、
- 前記1次粒子ビーム(3)に影響を及ぼすための多極要素(306.2)のラスタ配列と、
- 前記ウェーハ表面25と前記マルチビームシステム1の対物レンズ系102の対電極151との間の一様な引き出し電界(113)を設定するための補正電極153と、
をさらに包含する、請求項8に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項10】
- 動作中に第1の電圧差V1を供給するための、対物レンズ(102)、または前記対物レンズ(102)の部分の下方の対電極(151)の電気接触部と、
- ウェーハ(7)を受容し、前記対物レンズ(102)の下に位置決めするための受容区域(505)を有する変位台(500)と、
- 動作中に第2の電圧差V2をウェーハ(7)に印加するための前記受容区域(505)の電気接触部と、をさらに備え、
前記変位台(500)が、動作中にウェーハ(7)の縁部領域内で一様である引き出し電界(113)を発生させることを目的として少なくとも1つの第3の電圧差V3を供給するための電気接触部を有する少なくとも1つの補正電極(153)を前記受容区域(505)の周辺部内にさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項11】
前記制御ユニット(800)が像評価のためのユニット(812)をさらに包含し、前記制御ユニット(800)が、前記複合マルチビーム効果の少なくとも部分を補正することを目的とする補正信号を用いて像評価のための前記ユニット(812)を駆動するように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項12】
複数の1次粒子ビーム(3)および複数の2次粒子ビーム(9)を有するウェーハ検査マルチビームシステム(1)であって、
- ウェーハ(7)を受容するための変位台(500)と、
- 空間分解検出器(207)と、
- 前記1次粒子ビーム(3)を前記ウェーハ(7)の構造化表面(25)の部分にわたって一括走査することを目的として前記複数の1次粒子ビーム(3)を偏向させるための第1の偏向系(110)と、
- 前記検出器(207)上の前記2次粒子ビーム(9)の焦点(15)を一定に維持するために複数の2次粒子ビーム(9)を偏向させるための第2の偏向系(222)と、
- 制御デバイス(800)と、
- 前記マルチビームシステム(1)の一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素(151、153、505)を含む、照明経路(13)および検出経路(11)の複数の構成要素と、を備え、
前記制御デバイス(800)が、複数の検査位置(33、35)における検査タスクのリストを獲得し、前記リストを通して作業するように構成されており、
前記制御デバイス(800)が、検査位置(33、35)における複合マルチビーム効果を低減することを目的として、前記一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素(151、153、505)を含む、前記照明経路(13)および前記検出経路(11)の前記構成要素の設定パラメータを設定するようにさらに構成されている、
ウェーハ検査マルチビームシステム(1)。
【請求項13】
前記制御ユニット(800)が、ウェーハ(7)の縁部(43)からの検査位置(33、35)の距離を検出し、ウェーハ縁部(43)によって生じる複合マルチビーム効果を補償するようにさらに構成されている、請求項12に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項14】
前記制御ユニット(800)が、前記検査位置(33、35)における測定または検査前にCADデータから検査位置(33、35)におけるウェーハ(7)の前記組成を決定し、前記組成によって生じる複合マルチビーム効果を補償する(41)ようにさらに構成されている、請求項12または13に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項15】
前記制御ユニット(800)がメモリをさらに含み、同様の検査部位における記憶された検査タスクから、記憶されたパラメータを決定し、検査位置(33、35)における複合マルチビーム効果を低減することを目的として、前記記憶されたパラメータを設定するように構成されている、請求項12~14のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項16】
前記制御ユニット(800)が、隣接した検査部位における先行検査タスクからパラメータを決定し、検査位置(33、35)における複合マルチビーム効果を低減することを目的として前記パラメータを設定するようにさらに構成されている、請求項12~15のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項17】
前記制御ユニット(800)が、複合マルチビーム効果を少なくとも部分的に補償するために前記第1および第2の偏向系(110、222)を駆動するための走査プログラムを変更するようにさらに構成されている、請求項12~16のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項18】
前記制御ユニット(800)が、複合マルチビーム効果を少なくとも部分的に補償するために前記マルチビームシステム(1)の作動点を変更するようにさらに構成されている、請求項12~17のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項19】
ウェーハ(7)を検査するためにマルチビームシステム(1)を設定する方法であって、以下のステップ:
- ウェーハ(7)上の基準位置を第1の時間T1内に迅速に走査することによって検出器カメラ(207)を用いて複数の粒子ビームのラスタ配列(41)の時間平均化された第1の基準像の像を記録するステップと、
- 検査位置(33、35)に標的を定めるステップと、
- 前記検査位置(33、35)を前記第1の時間T1内に迅速に走査することによって前記検出器カメラ207を用いて検査位置(33、35)における前記複数の粒子ビームの前記ラスタ配列(41)の時間平均化された第1の検査像の像を記録するステップと、
- 前記ラスタ配列(41)の前記第1の検査像および前記ラスタ配列(41)の前記第1の基準像を分析し、前記検査部位(33、35)における最適な結像を目的として前記マルチビームシステム(1)を調整するための選択された設定パラメータを導出するステップと、
- 前記選択された設定パラメータを用いて前記マルチビームシステム(1)を設定するステップと、
- 第2の時間T2内の前記検査位置(33、35)の低速走査によって高空間分解能をもって前記ウェーハ(7)の前記表面(25)の検査像を記録するステップであって、T1<T2、好ましくは、T1<T2/10、例えば、T1<T2/100である、ステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記選択された設定パラメータを用いて前記マルチビームシステム(1)を設定した後に前記基準位置を前記第1の時間T1内に迅速に走査することによって前記検出器カメラ(207)を用いて前記複数の1次ビームの前記ラスタ配列(41)の時間平均化された第2の基準像の像を記録することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記検査位置(33、35)を前記第1の時間T1内に迅速に走査することによって前記検出器カメラ(207)を用いて前記複数の1次ビームの前記ラスタ配列(41)の時間平均化された第2の検査像の像を記録し、前記選択された設定パラメータを用いた前記マルチビームシステム(1)の前記設定をチェックすることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記選択された設定パラメータが、以下のパラメータ:
- 変位台(500)を用いた前記ウェーハ(7)の再位置合わせ、
- 前記ウェーハ7の前記表面25における引き出し電界113の電界プロファイルに影響を及ぼすために電極(151、153、505)を駆動すること、
- 前記ラスタ配列(41)のオフセットを補償するためにビーム偏向器(107、110、222)を駆動すること、
- 前記ラスタ配列41のスケールを調整することを目的として前記マルチビームシステムの作動点を変更すること、
- デジタル像の評価を変更すること、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記選択された設定パラメータを前記検査位置(33、35)に付与することと、前記付与の記憶と、をさらに含む、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記検査位置(33、35)に付与された前記記憶された設定パラメータを用いた前記検査位置(33、35)における少なくとも第2のウェーハ(7)の繰り返し検査をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記基準位置が先行検査位置(33、35)に対応する、請求項19~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記基準位置が基準物体上の位置に対応する、請求項19~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
マルチビームシステム(1)を用いたウェーハ検査方法であって、以下のステップ:
a. ウェーハ(7)上の検査位置に標的を定めるステップと、
b. 前記検査位置に基づいて、前記検査位置における最適な結像のための、あらかじめ決定された、前記マルチビーム顕微鏡(1)の設定パラメータを決定するステップと、
c. 前記決定された設定パラメータを設定するステップと、
d. 前記検査位置における前記ウェーハ(7)の前記表面(25)の部分の像を記録するステップと、
を含む、方法。
【請求項28】
- 前記検査位置に付与された前記マルチビーム顕微鏡の既定の設定パラメータをロードすることと、
- 2つの隣接した検査位置に付与された少なくとも2つの設定パラメータから前記検査位置における最適な結像のための前記設定パラメータを補間することと、
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
- 前記検査位置に関する先験的情報を決定することをさらに含み、前記先験的情報が、以下の情報項目:
- 前記ウェーハ(7)の縁部(43)からの前記検査位置の距離、
- 前記検査位置における前記ウェーハ(7)の前記表面(25)における材料組成に関するCAD情報、
- 先行検査位置における先行像記録からの前記検査位置の距離、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記設定パラメータが、前記検査位置における前記ウェーハ(7)の前記表面(25)における一様な引き出し電界(143)を発生させるための電圧値を含み、前記電圧値が前記電極(151、153、505)に供給される、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
半導体構成要素などの、より一層小さく、より一層複雑な微細構造の絶え間ない発展に伴って、小寸法の微細構造を生産し、検査するためのプレーナ生産技術および検査システムを開発し、最適化することが必要とされている。例として、半導体構成要素の開発および生産はウェーハの設計の監視を必要とし、プレーナ生産技術は、高スループットで信頼性の高い生産のためのプロセス監視およびプロセス最適化を必要とする。さらに、近年では、リバースエンジニアリングのため、および半導体構成要素の顧客固有の個別構成のための半導体ウェーハの分析が要請されている。したがって、ウェーハ上の微細構造を高精度で調査するために高スループットをもって用いることができる検査手段が必要とされている。
【0002】
半導体構成要素の生産において用いられる典型的なシリコンウェーハは最大300mmの直径を有する。各ウェーハは、最大800mm2のサイズを有する30~60個以上の繰り返し領域(「ダイ」)に細分される。半導体装置は、プレーナ集積技法によってウェーハの表面上に層状に作製された複数の半導体構造を含む。半導体ウェーハは、通例、生産プロセスのゆえに平面表面を有する。この場合の集積半導体構造の構造サイズは、数マイクロメートル(μm)から、5ナノメートル(nm)の限界寸法(CD:critical dimension)に及び、構造寸法は、近い将来、より一層小さくなり、将来、構造サイズまたは限界寸法(CD)は、3nm未満、例えば、2nmになる、または1nmさえも下回ると予想される。小さい構造サイズの場合、限界寸法のサイズの欠陥が非常に大きい区域内で迅速に識別されなければならない。いくつかの適用物のためには、検査デバイスによって提供される測定の精度に対する仕様要件は、例えば、2桁または1桁倍、より一層高い。例として、半導体特徴の幅は、1nm未満、例えば、0.3nm、またはさらにそれ未満の精度をもって測定されなければならず、半導体構造の相対位置は、1nm未満、例えば、0.3nm、またはさらにそれ未満の重ね合わせ精度をもって決定されなければならない。
【0003】
したがって、本発明の一般的目的は、4nm未満、3nm未満、またはさらに、2nm未満の分解能による半導体特徴の高精密測定を容易にする、荷電粒子を用いて動作する多重粒子ビームシステム、および高スループットをもってそれを動作させるための関連方法を提供することである。
【0004】
MSEM、マルチビーム走査型電子顕微鏡(multi-beam scanning electron microscope)は、荷電粒子システム(荷電粒子顕微鏡(charged particle microscope)、CPM)の技術分野における比較的新しい発展である。例として、米国特許第7244949(B2)号および米国特許出願公開第2019/0355544号に、マルチビーム走査型電子顕微鏡が開示されている。マルチビーム電子顕微鏡またはMSEMの場合には、サンプルに、フィールドまたはラスタ状に配置された、複数の個々の電子ビームが同時に照射される。例として、各個々の電子ビームが、隣接した個々の電子ビームから1~200マイクロメートルのピッチによって隔てられた、4~10000本の個々の電子ビームを1次放射として提供することができる。例として、MSEMは、例えば、六角形ラスタ状に配置されており、個々の電子ビームがおよそ10μmのピッチによって隔てられた、およそJ=100本の隔てられた個々の電子ビーム(「ビームレット」)を有する。複数のJ本の個々の荷電粒子ビーム(1次ビーム)は共通対物レンズを通じて調査対象のサンプルの表面上に集束させられる。例として、サンプルは、可動台上に組み立てられたウェーハチャックを介して収容された半導体ウェーハであることができる。1次の個々の粒子ビームによるウェーハ表面の照明中に、相互作用生成物、例えば、2次電子または後方散乱電子がウェーハの表面から発する。それらの出発点は、いずれの場合も複数のJ本の1次の個々の粒子ビームが集束させられるサンプル上の場所に対応する。相互作用生成物の量およびエネルギーはウェーハ表面の材料組成およびトポグラフィに依存する。相互作用生成物は、複数の2次の個々の粒子ビーム(2次ビーム)を形成し、粒子ビームは共通対物レンズによって収集され、マルチビーム検査システムの投影結像系によって、検出面内に配置された検出器に向けられる。検出器は、複数の検出ピクセルを各々含む、複数の検出領域を含み、検出器はJ本の2次の個々の粒子ビームの各々のための強度分布を測定する。例えば、100μm×100μmの像視野のデジタル像がプロセスにおいて取得される。
【0005】
従来技術のマルチビーム電子顕微鏡は一連の静電および磁気要素を備える。静電および磁気要素のうちの少なくとも一部は、複数の電荷を帯びた個々の粒子ビームの焦点位置および非点収差補正を適合させるために調整可能である。従来技術の荷電粒子を用いるマルチビームシステムは1次または個々の2次荷電粒子ビームの少なくとも1つのクロスオーバ面をさらに備える。さらに、従来技術のシステムは、設定をより容易にするための検出システムを備える。従来技術のマルチビーム粒子顕微鏡は、複数の1次ビームを用いてサンプル表面の像視野の上を完全に掃引するための複数の個々の1次粒子ビームを用いたサンプル表面の領域の一括走査のための少なくとも1つのビーム偏向器(「偏向走査器」)を備える。さらに、従来技術からのシステムは、1次ビーム束が1次ビーム束の発生デバイスから対物レンズへ案内され、2次ビーム束が対物レンズから検出システムへ案内されるように構成されたビームスプリッタ機構を備える。2021年4月29日に出願された国際出願PCT/EP2021/061216号に、マルチビーム電子顕微鏡、およびそれを動作させるための方法に関するさらなる詳細が記載されている。同出願の開示は全体が本明細書において参照により組み込まれる。
【0006】
ウェーハ検査のための走査型電子顕微鏡の場合には、結像が、高信頼性、高結像忠実度、および高繰り返し精度をもって実施され得るよう、結像条件を安定した状態に維持することが望まれる。スループットは、複数のパラメータ、例えば、変位台の、および新たな測定部位における再位置合わせの速度、ならびに取り込み時間の単位あたりに測定される面積に依存する。後者は、とりわけ、ピクセル上の滞留時間、ピクセルサイズ、および個々の粒子ビームの数によって決定される。加えて、マルチビーム電子顕微鏡のためには、時間のかかる像の後処理が必要となり得、例として、マルチビームシステムの検出システムによって荷電粒子から発生した信号は、複数の像部分視野または部分視野からの像視野が統合される前に(「スティッチング」)、デジタル的に補正されなければならない。
【0007】
概して、以前の方法は、特に、マルチビーム顕微鏡を用いて半導体を検査し、それに関連する測定精度に対して高い要求が課される場合には、もはや十分でないことが見出された。半導体が検査される際には、必要とされる高い測定精度を低下させる多数の特殊効果が発生する。複合効果は、複数の荷電粒子ビームのラスタ配列、ならびに複数の荷電粒子ビームからの個々の粒子ビームの異なる形状またはサイズに関連する。例として、これらの効果のうちの一部は生体サンプルの場合には発生しないか、またはそこでは観察され得ない。他の効果は非常に小さいため、それらは、2nmよりも良好、または1nmよりも良好な、高度化した測定精度による半導体検査の場合にのみ作用する。効果はウェーハ検査中の分解能または信号強度を低下させる。さらに、例えば、ウェーハ表面上の構造の寸法または距離の測定精度は、これらの効果が発生した際に悪影響を受ける。原理的に、これらの効果のうちの一部は、マルチビーム顕微鏡の設定の変更によって少なくとも部分的に補償され得る。しかし、不要な効果を回避することを目的としてマルチビーム顕微鏡の最善の設定を決定し、設定するための以前の方法は、高スループットでのウェーハ検査タスクのためには低速すぎるか、または複雑すぎる。例として、多数の1次ビームの最善の焦平面を決定し、設定するための以前の方法はスループットに悪影響を与える。例として、米国特許第10,388,487号は、第1の設定パラメータを用いた第1の測定における物体特性の決定、およびその結果得られる第2の設定パラメータであって、第2の測定においてそれらを用いて物体を測定するための、第2の設定パラメータの導出(derivation)を記載している。例えば、焦点位置および非点収差補正などのビーム特性が物体特性から決定される。しかし、この方法は、第2の改善された測定に先立って、高分解能での第1の測定が行われなければならないため、スループットを低下させる。米国特許第10,535,494号のさらなる例は、2次ビームのビーム形状を決定するために用いられるが、ビーム自体のラスタ配列を決定するためには用いられない検出システムを記載している。DE102018124044B3は、複数の2次電子ビームを検出器チャネルに割り当てることによって局所的サンプル帯電の比較的小さい効果を補正することのみ可能である検出システムを記載している。2nmよりも良好、または1nmよりも良好な測定精度に対する高度化した要求のためには、検出システムおよび2次粒子経路のみを考慮することも、もはや十分でない。
【0008】
マルチビームシステムは、まさに、より高いスループットという背景を前にして用いられるが、複数の荷電粒子ビーム、例えば、複数の荷電粒子ビームのラスタ配列、あるいは個々の粒子ビームの異なる形状またはサイズに関連する複合効果が発生する。従来技術からのマルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための方法によれば、これらの複合効果はマルチビームシステムの複雑な分析および調整を必要とし、これはマルチビームシステムのスループットを大幅に低下させる。上述の背景、ならびにスループット/速度、およびより一層小さい構造の精密測定に対する高度化する要求を前にして、それゆえ、既存のマルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための方法は改善を必要としている。これは、特に、HV構造を有する研磨ウェーハ表面の検査に当てはまる。それゆえ - システムドリフトおよび同様のものが無いという完全に現実的でない仮定の下でさえも - 従来技術からの方法を用いて関連作動距離を有する既定の作動点において多電子顕微鏡を設定することはもはや十分でない。
【0009】
複数の1次ビームの複合マルチビーム効果を労せず直接決定することはできない。1次ビームの複合マルチビーム効果、例えば、1次ビームのラスタ配列の歪み、1次ビームのラスタ配列の倍率差、あるいは1次ビームの焦点の形状およびサイズの偏差の発生は、欠陥のある結像、例えば、ウェーハの表面構造の像の不正確な位置決め、または表面構造の寸法もしくは面積の不正確な測定を生じさせる。1次ビームの複合マルチビーム効果の相当な発生がある場合には、これは、2次粒子の信号強度の完全な喪失にまで至る、2次粒子の信号強度の予想される減少をさらに生じさせ得る。特に、検出経路の高速調整のための既知の方法が適用され、かくして、2次粒子の信号強度を高く維持することを目的として1次ビームの複合マルチビーム効果を補償する場合には、物体の不正確な結像の効果が残存する。しかし、特に、ウェーハ検査の場合には、表面構造の位置および寸法が重要であり、2nm未満、理想的には、1nm未満、またはそれ未満の高精度で決定されなければならない。したがって、本発明は、特に、上述の複合効果が、ウェーハ検査のスループットがプロセスにおいて低下させられることなく、低減または補償される、改善されたマルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための改善された方法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、荷電粒子の複数のビームとウェーハ表面との相互作用の間に生じる複合マルチビーム効果(complex multi-beam effects)が補償される、改善されたマルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための改善された方法を提供する。本発明の一実施形態によれば、複合マルチビーム効果は、複数の2次ビームの歪み、ならびに検出器上の焦点のサイズおよび形状の変化の組み合わせによって特徴付けられ得る。さらなる実施形態によれば、複合マルチビーム効果は、特に、ウェーハの縁部の近傍において、または先行検査位置の近傍において生じるか、あるいは1つの複合マルチビーム効果のサイズは、ウェーハの縁部、または先行検査位置からの検査部位の距離に直接依存する。補償のために、複合マルチビーム効果の特徴付けもしくは分類、ならびに方策(measures)の導出、例えば、1次もしくは照明経路の調整、および2次もしくは検出経路の調整が行われる。方策のこの導出によれば、複合効果を打ち消すために適した、1次および2次経路を設定または調整するためのパラメータが導出される(derived)。さらに、マルチビームシステムは、複合マルチビーム効果を最小限に抑えるか、または補償するために適した手段をウェーハまたはウェーハ表面の直近に備え得る。これらの手段を用いることで、ウェーハ表面とマルチビームシステムの対物レンズの最後の電極との間の電界が影響を受け、電界は1次粒子ビーム(primary particle beams)および2次粒子ビーム(secondary particle beams)に同時に作用する。
【0011】
本発明のマルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための方法は、1次ビームおよび2次ビームの複合マルチビーム効果が検査部位において決定され、照明システムおよび検出システムの構成要素の両方のパラメータを変更することを通じて複合マルチビーム効果を補償するための方策が実施されることによって、高結像忠実度での高速ウェーハ検査の問題を解決する。特に、これは、原則的に常に同様であるウェーハのルーチン検査、および同様の原因を有する同様のマルチビーム効果が常に発生している際に促進される。
【0012】
一実施形態では、1次ビームの複合マルチビーム効果は、複数の2次ビームのラスタ配列(raster arrangement)、ならびに2次ビームの少なくとも1つの焦点(focal point)の形状またはサイズの時間平均化された測定によって決定される。この場合には、測定信号に対する半導体ウェーハの表面構造化の影響が時間平均化によって低減される。複数の2次ビームのラスタ配列、ならびに2次ビームの少なくとも1つの焦点の形状またはサイズの分析が、1次ビームの確度の高い複合マルチビーム効果を推測するために用いられ、照明経路のための補正方策が導入される。この場合、測定の方法は繰り返され得る。したがって、ウェーハ検査の枠内において、基準物体を用いることを必要とすることなく、純粋に、2次ビームの累積した複合マルチビーム効果を決定することから、構造化されたウェーハの表面上の検査位置における1次ビームの複合マルチビーム効果を決定することが可能である。測定の時間平均化の結果、例えば、複数の1次ビームを用いて検査位置において物体表面を非常に迅速に走査することを通じて、ここで測定を非常に迅速に実施することができる。
【0013】
さらなる実施形態では、1次ビームの複合マルチビーム効果は先験的情報から決定される。さらに、一部の複合マルチビーム効果は、ウェーハ表面上の検査位置に、特に、ウェーハの縁部、または先行検査位置からの検査位置の距離に依存することが見出された。ウェーハ上の検査位置はあらかじめ知られているため、本発明の一実施形態によれば、この依存性を用いて複合マルチビーム効果を補償することができる。例として、マルチビームシステムを駆動するためのパラメータは、あらかじめ知られた検査位置に依存し得る。例として、先行検査位置の効果を低減するために一連の検査タスクを変更することができる。さらなる実施形態では、非一様な引き出し電界(extraction field)によって生じる縁部効果がウェーハ受容区域の周辺部内の追加の電極によって低減される。検査中に、補正電圧が追加の電極に印加される。一例では、複合マルチビーム効果が低減されるよう、複数の異なって駆動可能な電極セグメントによって形成された対電極を通じて引き出し電界が設定される。
【0014】
原理的に、複合マルチビーム効果を決定する方法は検査タスク中に実施することもできる。それゆえ、1次ビームの可変の複合マルチビーム効果、または1次ビームの予想外の偏差を検出することも可能である。
【0015】
本発明の第1の実施形態によれば、改善されたマルチビームシステムは、検査位置におけるウェーハ表面の表面コントラストとは無関係に、検査タスク中に複数の2次ビームの焦点(focal points)を検出するように構成された空間分解検出デバイスを備える。さらに、改善されたマルチビームシステムは、メモリ、および複数の2次ビームの焦点から複数の1次ビームの焦点の現在のラスタ配列を決定し、この現在のラスタ配列を用いて既定のラスタ配列からの偏差を決定するように構成された計算ユニットを有する制御ユニットを備える。一実施形態によれば、制御ユニットは、複数の2次ビームの所定の焦点の少なくとも1つの現在の形状およびサイズを決定するようにさらに構成されている。例として、複数の2次ビームの少なくとも2つの焦点の異なる形状またはサイズが決定される。制御ユニットは、既定のラスタ配列からの現在のラスタ配列の偏差を分析し、これを用いて1次ビームの特定の複合マルチビーム効果の発生を推測するようにさらに構成されている。一実施形態によれば、制御ユニットは、焦点の所定の形状およびサイズからの少なくとも1つの所定の焦点の現在の形状およびサイズの偏差を決定する。さらに、制御ユニットは、1次ビームの複合マルチビーム効果の考えられる原因を決定するように構成されている。一例では、制御ユニットは、それらの発生確率に従ってソートされた、1次ビームの複合マルチビーム効果の複数の考えられる原因を決定する。一例では、複合マルチビーム効果の考えられる原因の決定の際に、機械学習アルゴリズムが適用される。機械学習アルゴリズムは、発生頻度の高い原因、例えば、以前の検査位置の近傍、またはウェーハの縁部への近接を伴う、発生頻度の高い複合マルチビーム効果の増大するセットによって訓練され得る。
【0016】
制御ユニットは、検査位置における複合マルチビーム効果の最も可能性が高い原因に応じてマルチビームシステムの照明経路(illumination path)および検出経路(detection path)を調整するための方策を決定するようにさらに構成されている。複数の制御パラメータがこの決定の枠内で決定され、該パラメータは、マルチビームシステムの照明経路内および検出経路内の構成要素(components)を駆動または設定するために用いられる。これらのパラメータはまた、マルチビームシステムの照明経路または検出経路の特定の構成要素におけるすでに設定されたパラメータ値に関連する変更であり得る。可能な構成要素は、荷電粒子の複数のビームのための準静的偏向器、荷電粒子の複数のビームの走査偏向のための動的偏向器、荷電粒子の複数のビームのための可変集束効果を有する静電または磁気レンズ、荷電粒子の複数のビームのための多極要素およびエネルギーフィルタ、あるいはさもなければ、荷電粒子の複数のビームの各個々のビームが影響を及ぼされ得る、アレイ構成要素を含む。一例では、調整手段は、特に、物体表面とマルチビームシステムの対物レンズ系との間の一様な引き出し電界を設定するためのパラメータを含む。
【0017】
一実施形態では、制御ユニットは像評価のためのユニットに接続されており、例えば、像処理によって、複合マルチビーム効果の少なくとも部分を補正することを目的とする補正信号を像評価のためのユニットに提供するように構成されている。像評価のためのユニットはマルチビームシステムの検出ユニットに接続されており、補正信号を用いて検出ユニットの像情報の補正を実施するように構成されている。例として、複数の1次ビームのラスタ配列の、高精度で知られた歪み、射影歪み、または倍率収差が下流の像評価におけるデジタル像処理によって補償され得る。例として、個々の像を統合する際に(「スティッチング」)、個々の1次ビームの位置偏差を考慮することができる。
【0018】
マルチビームシステムは、半導体ウェーハのための物体ホルダを有する変位台を備え、該物体ホルダは、ウェーハを受容し、マルチビームシステムの対物レンズの下方に位置決めするために適する。この目的を達成するために、物体ホルダは、厚さTおよび外径Dを有する実質的に平面状のウェーハを受容する(receiving)ための受容区域(reception area)またはウェーハチャック(wafer chuck)を含む。ウェーハのための受容区域は、マルチビームシステムの電極系とウェーハとの間の電圧差を印加するために制御ユニットへの電気接点を含む。電極系は対物レンズの下方に設置されているか、または対物レンズの部分であり、制御ユニットへの電気接点を含む。制御ユニットは、ウェーハ表面と電極系との間に、動作中にウェーハ表面と平行な等電位線を有するウェーハ表面と垂直な引き出し電界の電界プロファイルを作り上げるために、動作中に好適な電圧を電極系およびウェーハ表面に供給するように構成されている。この電界は引き出し電界と称される。
【0019】
複合マルチビーム効果を伴わない検査タスクのためには、特に、引き出し電界が一様な形を有し、検査位置にわたってウェーハ表面上で一定の既定の電界強度を形成することが必要である。したがって、電圧差を通じて、できるだけ一様である引き出し電界を発生させる試みがなされる。しかし、特に、ウェーハの縁部の近傍において、引き出し電界の非一様性が発生する。この複合マルチビーム効果は縁部効果または境界効果とも称される。第2の実施形態では、物体ホルダは、受容区域の上方の高さDEを有するリング状補正電極をさらに含み、該補正電極は受容区域の周辺部内に配置されており、内径DI>Dを有し、これにより、ウェーハが受容されたとき、ウェーハの縁部とリング状電極との間に各方向において一定の距離Gが形成される。リング状電極は受容区域に対して絶縁され、制御ユニットに電気接続されており、これにより、受容区域上に配置されたウェーハの電圧に対する電圧差が動作中にリング状電極に印加され得る。マルチビームシステムの制御ユニットは、動作中に、受容区域、およびその上に配置されたウェーハに第1の電圧を供給し、一様な引き出し電界を発生させることを目的として、縁部効果を低減するためのリング状電極に第2の電圧を供給するように構成されている。
【0020】
第3の実施形態では、上述の電極系は、互いに絶縁され、制御ユニットに各々電気接続されている、複数の、例えば、2つ、4つ、8つ、またはそれより多くの電極によって形成されている。制御ユニットは、動作中に検査位置において一様な引き出し電界を発生させるために、動作中に、異なる電圧を複数の電極に供給するように構成されている。測定はどの時点においても1つの検査位置において実施されるのみであるため、検査位置に応じてリング電極の少なくとも1つのセグメントの電圧を変更することが有利である。
【0021】
マルチビーム顕微鏡を用いた結像に関連する多くの効果はトポロジ条件に非常に強く結びついている。例として、ウェーハの縁部はウェーハ検査の最中に大きな影響を及ぼす。ウェーハの縁部に対する検査位置の相対位置は、特に、ウェーハ検査の状況においてあらかじめ知られるため、検査部位(inspection site)に標的を定める(homing in)際に、ウェーハの縁部からの検査位置の距離に応じた検出経路および照明経路の両方の改善された調整をあらかじめ実施することができる。第4の実施形態では、マルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための方法であって、この枠内では、マルチビームシステムの照明経路および検出経路の構成要素のパラメータがウェーハの縁部または境界からの検査位置の距離に応じて設定される、マルチビームシステムおよび方法が提供される。この目的を達成するために、マルチビームシステムは、ウェーハの縁部または境界からの検査位置の距離を決定する制御ユニットを備える。制御ユニットは、距離、およびマルチビームシステムの現在の作動点から複合マルチビーム効果を決定する。さらに、制御ユニットは、検査位置におけるマルチビームシステムの動作中に、複合マルチビーム効果を低減するか、または完全に回避するために適したパラメータを用いてマルチビームシステムの照明経路および検出経路の構成要素を駆動するように構成されている。本方法の一実施形態は、ウェーハの縁部からの距離に応じた異なる検査部位のための検出経路および照明経路の改善された調整のパラメータの獲得および記憶を包含する。次に、ウェーハの検査中に、所定の、および記憶されたパラメータから、次の検査部位に応じて、検出経路および照明経路の両方の改善された調整の最適パラメータが決定され、設定される。
【0022】
多数のさらなる複合マルチビーム効果はウェーハの表面上の検査位置に依存し、したがって、原理的に、あらかじめ知られることが見出された。第5の実施形態では、マルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための方法であって、この枠内では、先験的情報に応じて、マルチビームシステムの照明経路および検出経路の構成要素のパラメータが設定される、マルチビームシステム方法が提供される。一例では、マルチビームシステムは、この目的を達成するための制御ユニットを備え、制御ユニットは、少なくとも検査位置における、物体の組成を該検査位置における測定または検査前に決定する。この場合、物体の組成の決定は、例えば、検査位置においてウェーハ内に形成された半導体構造に関するCAD情報からの、物体の材料組成の決定を含む。組成に基づいて、予想される複合マルチビーム効果の決定、および複合マルチビーム効果を低減するか、もしくは完全に回避するために適したマルチビームシステムのパラメータの設定が行われる。代替例では、先験的情報は、例えば、他のウェーハ上の、同様の検査部位における以前の検査からの情報から成る。一例では、本方法は、複数のウェーハの連続した検査中に同一の検査位置に応じた動的補正を記憶することを包含する。
【0023】
多数のさらなる複合マルチビーム効果はウェーハの表面上の隣接した検査位置に依存し、したがって、原理的に、あらかじめ知られることが見出された。第6の実施形態では、マルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための方法であって、この枠内では、隣接した検査位置に応じて、マルチビームシステムの照明経路および検出経路の構成要素のパラメータが設定される、マルチビームシステムおよび方法が提供される。一例では、マルチビームシステムは、この目的を達成するための制御ユニットを備え、制御ユニットは、例えば、同じ物体上の先行検査によって生じた検査位置における物体の現在の電荷分布を該検査位置における測定または検査前に決定する。現在の電荷分布に基づいて、予想される複合マルチビーム効果の決定、および複合マルチビーム効果を低減するか、もしくは完全に回避するために適したマルチビームシステムのパラメータの設定が行われる。同じウェーハ上の同じ検査位置に繰り返し標的を定める方法によって特別例が形成される。
【0024】
実施形態に係る、方法、および方法の適用のために設計されたマルチビーム顕微鏡は、物体の表面上の特定の検査位置のための検出経路および照明経路の両方の改善された調整を容易にする。第7の実施形態によれば、方法は、マルチビーム顕微鏡、および物体との相互作用に関する2つの根本的に異なる情報項目を獲得し、評価するという基礎に基づく。第1に、複数の2次ビームのラスタ配列が検出され、評価される。第2に、2次ビームの少なくとも1つの焦点の形状およびサイズが検出され、評価される。また、2次ビームの複数の焦点の、例えば、少なくとも3つの焦点の形状およびサイズを評価することも可能である。
【0025】
どちらの情報項目も、物体の表面の部分の結像を走査する間に獲得される。この場合、J本の1次ビームの複数のJ個の焦点が物体の表面にわたって走査方式で移動させられ、物体表面上の複数のJ個の走査位置が同時に照明される。この目的を達成するために、複数のJ本の1次ビームの走査偏向のための第1の偏向ユニットが1次経路または照明経路内に設置されている。J本の1次ビームのJ個の焦点の各入射場所は、J本の1次ビームを用いた走査照射の短い期間の間に、検出器上に収集され、結像される(imaged)、2次電子のための線源場所を形成する。2次電子の複数のJ個の線源場所は、J本の1次ビームを用いた走査照射に従って物体表面にわたって同期的に移動する。したがって、検出器上のJ本の2次ビームの焦点がJ個の同じ検出場所にとどまるよう、J個の線源場所から発したJ本の2次ビームの走査偏向のための第2の偏向ユニットが、検出経路または2次経路とも称される、2次電子の結像経路内に設置されている。この場合、2次経路内の第2の偏向ユニットは1次経路内の第1の偏向ユニットと同期させられる。
【0026】
複数のJ本の1次ビームを用いた走査照明、および走査照明と同期した複数のJ本の2次ビームの信号の獲得の結果として、複数のJ個の2次元デジタル像情報項目に変換された複数のJ個の時系列データストリームが獲得される。各像情報項目は、1次ビームの焦点による物体表面の空間分解された照明による2次電子の空間分解された発生率を表現する。この場合、2次電子の発生率は、局所的表面条件、例えば、構造化されたウェーハ表面の局所的材料組成に依存する。検出経路および照明経路の両方を調整するための焦点自体の形状およびサイズならびに焦点のラスタ配列に関する情報は、物体表面上の構造化の影響が、表面上の複数の走査位置を平均化することによって低減されるよう、時間平均化された方式で獲得される。しかし、測定は、完全に構造化されていないウェーハまたは構造化されていない試験物体に対しても実施され得る。それゆえ、本方法は複数の物体のために可能にされ、特別な測定または校正物体は必要とされない。特に、検出経路および照明経路の両方を調整する方法は物体表面上の検査位置における検査タスク中にも実施され得る。
【0027】
例として、したがって、これは、検出経路および照明経路の両方を調整する方法が高速自動焦点のために用いられることも可能にする。概して、これは、検出経路および照明経路の両方を調整する方法が動的補正のために用いられることを可能にする。動的補正に関しては、2021年4月29日に出願された、PCT特許出願国際出願PCT/EP2021/061216号が参照される。その結果、同出願は全体が参照により本開示に含まれる。
【0028】
一例では、検査部位に応じた検出経路および照明経路の両方の改善された調整のパラメータを決定することが反復的に実施される。最初に、パラメータの補正または変更を行うことなく像が記録される。既定または期待ラスタ配列からの複数の2次ビームのラスタ配列の偏差が検出され、評価され、焦点の既定または期待形状およびサイズからの少なくとも1つの焦点の形状およびサイズの偏差が同時に検出され、評価される。上述されたように、偏差は、ウェーハの組成の影響を解消するための複数の1次ビームを用いた物体表面の走査中の時間平均化の枠内で検出される。偏差から、偏差の推定原因が決定され、照明経路および検出経路の調整のために適したパラメータが決定される。様々な偏差、特に、複数の2次ビームのラスタ配列の、ならびに焦点の形状およびサイズの偏差の検出は、原因に関するより的を絞った結論、例えば、照明経路の乱れまたは誤差が存在し、1次ビームの複数の焦点の偏差がウェーハ表面上にすでに存在するのかどうか、あるいはウェーハの縁部またはトポグラフィが偏差の原因であるのかどうか、全体的または局所的帯電効果が存在するのかどうか、あるいは検出経路の乱れが存在するのかどうかが導き出されることを可能にする。
【0029】
ラスタ配列および複合マルチビーム効果の分析に続いて、複合マルチビーム効果の補償がモデルに従って決定される。概して、例えば、基準サンプルの、サンプル部位において補償の成功を検証することができ、微補正を実施することができる。補償を算出するためのモデルは微補正によって改善され得る。
【0030】
偏差の最もあり得る原因の決定をより一層高い精度で実施するために、例えば、追加の検出器からの、さらなる情報、または先験的情報を用いることができる。さらなる検出器は、基準区域からのサンプル表面の距離を決定するための距離センサを含み得る。このような距離センサの使用は、例えば、物体の全体的帯電と純粋に機械的な焦点ずれとの間のより良好な区別が行われることを可能にする。さらなる例は、物体表面の近傍における電界または磁界強度を測定するためのフィールドセンサを含む。先験的情報は、検査位置に関するCAD情報、または同様の物体上、もしくは同様の検査部位における以前の測定からの記憶された情報を含み得る。例として、物体の可能な非一様または局所的帯電効果がCAD情報から決定され得る。例として、ウェーハの領域は導電接続され、帯電効果を、検査部位を越えて散乱させ得る。例として、ウェーハの領域は、比較的長い期間にわたって帯電効果を蓄えるキャパシタンスを含み得る。
【0031】
概して、サンプル縁部に対する検査部位の位置は、あらかじめ知られた情報でもある。それゆえ、縁部効果、および非一様な帯電の結果としての歪みを通じてラスタ配列の歪みを考慮することが可能である。先行測定はさらなる先験的情報を形成する。例として、電荷が先行測定に起因して生じ得、漏れ電流を通じてゆっくりと消散し得るのみである。すでに走査された、隣接した検査部位の帯電はラスタ配列内の歪みを生じさせ、この先験的情報は、偏差の原因を決定する際に考慮され得る。
【0032】
原理的に、例えば、検査位置に標的を定める際に、あらかじめ複合マルチビーム効果の補償をすでに補償し得る。偏差の推定原因が決定されると、検出経路および照明経路の補正方策または調整を実施することが可能である。その後、偏差の決定が繰り返される。偏差が所定の許容範囲内にある場合には、次のステップにおいて、検査部位における物体表面の部分が測定または結像される(imaged)。偏差が所定の許容限度を依然として超える場合には、原因を決定し、検出経路および照明経路を調整するための新たなパラメータを決定することが繰り返される。例として、微補正が第2のステップにおいて決定され、実施される。
【0033】
ラスタ配列の、ならびにビーム焦点の形状およびサイズの偏差の原因は動的変更を受け得る。例として、サンプルの全体的帯電は、複数の1次ビームによる照明が増大したときに増大し、結像の間にラスタ配列の偏差の増大を生じさせ得る。このような動的効果は本発明の第8の実施形態において決定され、例えば、ラスタ配列の、ならびにビーム焦点の形状およびサイズの変化または偏差の速度が考慮される。これは、ラスタ配列の、ならびにビーム焦点の形状およびサイズの偏差が動的に補正されることを可能にし、検出経路および照明経路を調整するためのパラメータが物体表面の像部分の取り込みの間に所定の仕方で動的に変更されることを可能にする。
【0034】
第9の実施形態では、ウェーハを検査するためのマルチビームシステムは、第1および第2の電子検出器と、2次電子ビームを第1の電子検出器から第2の電子検出器へ偏向させる(deflecting)ためのビーム偏向器(beam deflector)と、を包含する。第1の電子検出器は、検査タスク中の複数のJ本の2次電子ビーム、ウェーハの物体コントラストを、高データ速度で、およびノイズをほとんど伴わずに検出することができる。第2の電子検出器は複数のJ本の2次電子ビームの焦点のラスタ配列ならびに形状またはサイズを高空間分解能で検出することができ、物体コントラストを抑制するために、ウェーハの表面上の複数の走査点にわたる信号の時間平均化が同時に実施される。その結果、複合マルチビーム収差が検査タスク中に非常に迅速に決定され得、複雑なマルチビームシステムのための最適パラメータが設定され得る。2次電子の焦点のラスタ配列ならびに形状およびサイズの分析および評価から、照明システム、検出システム、またはウェーハ上の検査位置の特性を推測することが可能である。
【0035】
概して、本発明に係るマルチビームシステムは、それが、第1の設定においてウェーハの表面に関連する検査タスクを迅速に実施するように構成され、第2の設定において複合マルチビーム収差を検出するように構成されるという仕方で構成され得る。この場合、複合マルチビーム収差は、複数の粒子ビームのラスタ配列の偏差、ならびに粒子ビームの少なくとも1つの焦点の形状およびサイズの偏差によって与えられる。一例では、複合マルチビーム収差は、複数の粒子ビームのラスタ配列の偏差、ならびに検出器上の少なくとも3本の2次ビームの焦点の形状およびサイズの偏差によって与えられる。第2の設定では、複合マルチビーム収差は、ウェーハ表面上の複数のラスタ点にわたる時間平均化、その結果、物体コントラストが平均化されることを通じて検出される。それゆえ、検査タスクと複合マルチビーム収差の検出とを迅速に切り換えることが可能であり、高スループットが得られる。実施形態によっては、本発明に係るマルチビームシステムは、ウェーハの表面に関連する検査タスクが迅速に実施される間に複合マルチビーム収差が検出されるように構成されている。複合マルチビーム収差は、ウェーハ表面上の複数のラスタ点にわたる時間平均化、その結果、物体コントラストが平均化されることを通じて検出される。それゆえ、検査タスク、および複合マルチビーム収差の検出が同時に実施され得、高スループットが得られる。
【0036】
本発明に係るマルチビームシステムは、利用可能な複数の1次粒子ビームおよび複数の2次粒子ビームを有し、空間分解検出器と、ウェーハの構造化表面(structured surface)の部分の一括走査(collective scanning)を目的として複数の1次および2次粒子ビームを偏向させるための少なくとも1つの偏向系(deflection system)と、検出器および偏向系を駆動するための制御デバイスと、を備え、制御デバイスおよび検出器は、複数の2次粒子ビームのラスタ配列の時間平均化された検査像(time-averaged inspection image)を取り込み(capture)、かつ/または2nm、1nm、もしくはそれ未満の空間分解能をもって構造化表面の部分のデジタル像(digital image)を取り込むように設計されている。制御デバイスは、ラスタ配列の時間平均化された検査像を取り込むための第1の動作モードにおいて、偏向系を用いて複数の1次粒子ビームをウェーハの構造化表面の部分にわたって時間T1内に迅速に走査し、構造化表面の部分のデジタル像を記録するための第2の動作モードにおいて、偏向系を用いて複数の1次粒子ビームをウェーハの構造化表面の部分にわたって時間T2内に低速で走査するように構成されており、T1<T2、好ましくは、T1<T2/10、例えば、T1<T2/100である。検出器は第1の検出器および第2の検出器を包含することができ、マルチビームシステムは、制御ユニットによって駆動され、動作中に、複数の2次粒子ビームを第1の検出器上または第2の検出器上のどちらかへ偏向させるように構成されたビーム偏向器を有する検出ユニットを備えることができる。ビーム偏向器は、動作中に複数の2次粒子ビームを第1の検出器上または第2の検出器上のどちらかの定位置に維持するように追加的に構成され得る。代替例では、検出器は、複数の2次粒子ビームのラスタ配列の時間平均化された検査像の、および2nm、1nm、もしくはそれ未満のピクセル寸法を有する高空間分解能による構造化表面の部分のデジタル像の同時取り込みのために設計され得る。この目的を達成するために、検出器は、電子から光子を発生させる電子変換要素を包含し得、光子が、ウェーハ表面の部分を取り込むための第1の高速光検出器、およびラスタ配列の検査像を取り込むための第2の低速光検出器を同時に用いて検出される。
【0037】
一例では、制御デバイスは、ラスタ配列の検査像から、複数の粒子ビームの入射場所の変化、ならびに粒子ビームの焦点の形状およびサイズの変化に存する複合マルチビーム効果を決定し、複合マルチビーム効果に基づいてマルチビームシステムの設定パラメータの変更を導出し、設定するようにさらに構成されている。一例では、制御デバイスは、一様な引き出し電界を設定するための構成要素を含む、照明経路および検出経路の複数の構成要素に接続されており、複合マルチビーム効果を低減することを目的として、一様な引き出し電界を設定するための構成要素を含む、照明経路および検出経路の構成要素のパラメータを適切に調整するように構成されている。
【0038】
一実施形態に係るマルチビームシステムは、駆動を目的とする制御デバイスに接続された以下の構成要素:
- 複数の1次粒子ビームのための準静的偏向器と、
- 1次粒子ビームおよび2次粒子ビームの走査偏向のための動的偏向器と、
- 2次粒子ビームの走査偏向のための動的偏向器と、
- 可変集束効果を有する静電または磁気レンズと、
- 1次粒子ビームに影響を及ぼすための多極要素のラスタ配列と、
- ウェーハ表面とマルチビームシステムの対物レンズ系の対電極との間の一様な引き出し電界を設定するための補正電極と、
を包含する。一例では、マルチビームシステムは、一様な引き出し電界をウェーハの縁部領域内に発生させるための手段をさらに備えることができ、手段は、動作中に第1の電圧差V1を供給することを目的とした、対物レンズの下方の、または対物レンズの部分の対電極の電気接触部を含む。さらに、手段は、ウェーハを受容し、対物レンズの下方に位置決めするための受容区域を含み、動作中に第2の電圧差V2をウェーハに印加することを目的とした受容区域の電気接触部を有する。さらに、手段は、受容区域の周辺部内に配置されており、動作中に電圧差V3の少なくとも3分の1を供給することを目的とした電気接点を有する少なくとも1つの補正電極を含む。
【0039】
一例では、マルチビームシステムの制御ユニットは像評価のためのユニットをさらに含む。このとき、制御ユニットは、複合マルチビーム効果の少なくとも1つの部分を補正することを目的とする補正信号を用いて像評価のためのユニットを駆動するように構成されている。
【0040】
一実施形態では、ウェーハ検査マルチビームシステム(wafer inspection multi-beam system)は、ウェーハを受容するための変位台と、空間分解検出器と、ウェーハの構造化表面の部分の一括走査を目的として複数の1次粒子ビームを偏向させるための第1の偏向系と、検出器上の2次粒子ビームの焦点を一定に維持するために複数の2次粒子ビームを偏向させるための第2の偏向系と、を備える。さらに、マルチビームシステムは制御デバイスを包含し、制御デバイスは、複数の検査位置における検査タスクのリストを獲得し(acquire)、該リストを通して作業するように構成されており、制御デバイスは、検査位置における複合マルチビーム効果を低減することを目的として、一様な引き出し電界を設定するための構成要素を含む、照明経路および検出経路の構成要素の設定パラメータを設定するようにさらに構成されている。この目的を達成するために、制御ユニットは、ウェーハの縁部からの検査位置の距離を検出し、ウェーハ縁部によって生じる複合マルチビーム効果を補償するように構成されている。制御ユニットは、検査位置における測定または検査前にCADデータから検査位置におけるウェーハの組成を決定し、組成によって生じる複合マルチビーム効果を補償するようにさらに構成され得る。この目的を達成するために、制御ユニットはメモリを含み、同様の検査部位における記憶された検査タスクから、記憶されたパラメータを決定することができ、検査位置における複合マルチビーム効果を低減することを目的としてこれらを設定することができる。制御ユニットは、隣接した検査部位における先行検査タスクからパラメータを決定することができ、実際の、または後続の検査位置における複合マルチビーム効果を低減することを目的としてこれらを設定することができる。制御ユニットは、複合マルチビーム効果を少なくとも部分的に補償するために第1および第2の偏向系を駆動するための走査プログラムを変更し得、制御ユニットは、複合マルチビーム効果を少なくとも部分的に補償するために第1および第2の偏向系を駆動するための走査プログラムを変更するようにさらに構成されている。
【0041】
マルチビームシステムを用いたウェーハ検査の方法は、ウェーハ上の検査位置に標的を定めることと、検査位置に基づいて、検査位置における最適な結像のための、あらかじめ決定された、マルチビーム顕微鏡の設定パラメータを決定することと、を含む。決定された設定パラメータが設定され、検査位置におけるウェーハの表面の部分の像が取得される。マルチビームシステムの設定パラメータは、検査位置に付与された既定の設定パラメータから決定され得るか、または検査位置における最適な結像のための設定パラメータは、2つの隣接した検査位置を割り当てられた少なくとも2つの設定パラメータから決定され得る。加えて、または代替的に、最適化された設定パラメータは検査位置に関する先験的情報から決定され得る。先験的情報は、ウェーハの縁部からの、または先行検査位置における先行像記録からの検査位置の距離、あるいは検査位置におけるウェーハの表面における材料組成に関するCAD情報を包含し得る。設定パラメータは、ウェーハの表面における一様な引き出し電界を発生させるための電圧値を含み、例えば、電圧値は電極に供給される。
【0042】
本発明は特定の実施形態に限定されず、実施形態の変形も可能である。原則的に、ウェーハが物体として参照されているが、本発明は、半導体製造において用いられるとおりの他の物体にも適用可能である。例として、物体は、半導体ウェーハではなく、マスク、例えば、EUVリソグラフィのためのマスクであることもできる。半導体ウェーハと対照的に、このようなマスクは概ね長方形であり、大幅により大きい厚さを有する。例として、この場合、物体受容区域の周りの電極はリング状の実施形態を有せず、長方形の実施形態を有する。さらに、本発明は、複数の1次電子ビームを有するマルチビームシステムに基づいて説明されているが、他の荷電粒子、例えば、ヘリウムイオンも用いられ得る。
【0043】
本発明の上述の実施形態は、結果として技術的矛盾が生じない限り、互いに完全に、または部分的に組み合わせることができる。当業者が、例示的な実施形態の明白な変形が可能であり、本記載において排除されないと考えることは自明である。
【0044】
本発明は添付の図面を参照してより一層深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】第1の実施形態に係るマルチビームシステムを示す図である。
図2】第1の実施形態に係るマルチビームシステムの機能図である。
図3】マルチビームシステムを用いた検査タスクの図である。
図4】マルチビームシステムの複数の1次ビームまたは2次ビームのラスタ配列の一例を示す図である。
図5】既定のラスタ配列からの現在のラスタ配列の偏差の例、ならびにラスタ配列の粒子ビームの少なくとも1つの焦点のビーム形状または焦点スポットサイズの偏差の例の図である。
図6】ウェーハ縁部の例を用いた物体の縁部における非一様な引き出し電界の図である。
図7】第2の実施形態に係るリング状補正電極の断面図である。
図8】第3の実施形態に係る、セグメント化された補正電極およびセグメント化された対電極の図である。
図9】第4、第5、または第6の実施形態に係るパラメータ調整を用いてマルチビームシステムを動作させるための方法の図である。
図10】第7の実施形態に係るパラメータ調整を用いてマルチビームシステムを動作させるための方法の図である。
図11】サンプルの帯電、およびマルチビームシステムの調整パラメータの動的変更の例を用いた動的挙動の図である。
図12】第9の実施形態に係るマルチビームシステムを示す図である。
図13】第1の実施形態に係るマルチビームシステムを動作させるための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下において、たとえ、これらが本文で明示的に述べられていなくても、同じ参照符号は同じ特徴を指す。
【0047】
図1は、複数の粒子ビームを用いる、マルチビームシステム1の概略図である。粒子ビームシステム1は、物体7から発し、その後、検出される、相互作用生成物、例えば、2次電子を物体7において発生させるために調査対象の物体7に衝突する複数のJ本の1次粒子ビーム3を発生させる。マルチビームシステム1は、複数の場所において物体7の表面に入射し、互いに空間的に隔てられた複数の電子ビームスポット、またはスポット5をそこで発生させる複数の1次粒子ビーム3を用いる、走査型電子顕微鏡(SEM)のタイプのものである。調査対象の物体7は、任意の所望の形態のもの、例えば、半導体ウェーハ、特に、HV構造を有する(すなわち、水平および/または鉛直構造を有する)半導体ウェーハ、あるいは半導体マスクであり、微細化要素または同様のものの配列を含むことができる。物体7の表面25は照明システム100の対物レンズ102の第1の平面101(物体面)内に配置されている。対物レンズ102の光軸105は物体7の表面25と垂直に整列しており、対物レンズ102を通るビームの進路と平行に整列している。
【0048】
1次ビームの複数のビーム焦点5は、第1の平面101内に形成された、入射場所の規則的なラスタ配列を形成する。入射場所の数Jは、5、25、またはそれより多数であり得る。実際に、ビームの数J、ひいては、入射場所5の数は、例えば、J=10×10、J=20×30、またはJ=100×100など、大幅により大きくなるように選定され得る。入射場所の間のピッチP1の例示的な値は、1マイクロメートル、10マイクロメートル、および40マイクロメートル、またはそれより大きいものである。
【0049】
第1の平面101内に形成される最小ビームスポットまたは焦点5の直径は小さいものであり得る。この直径の例示的な値は、4ナノメートル未満、例えば、3nm以下である。ビームスポット5を形成するための粒子ビーム3の集束は対物レンズ系102によって実施される。この場合、対物レンズ系102は、例えば、磁気界浸レンズを含むことができる。2020年9月30日に出願された、独国特許出願公開第102020125534号に、集束手段のさらなる例が記載されている。同特許の内容全体は本開示において参照により組み込まれる。
【0050】
物体7に衝突した1次粒子3は、物体7の表面から発する相互作用生成物、例えば、2次電子、後方散乱電子、または他の理由のために運動の反転を経験した1次粒子を発生させる。物体7の表面25から発した相互作用生成物は、2次粒子ビーム9を形成するよう対物レンズ102によって整形される。粒子ビームシステム1は、複数の2次粒子ビーム9を検出システム200へ案内するための検出ビーム経路11を提供する。検出器システム200は、2次粒子ビーム9を空間分解粒子検出器207に向けて誘導するための少なくとも1つの投影対物レンズ205を有する粒子光学ユニットを含む。この場合、検出システムを用いた結像は強く拡大され、これにより、ウェーハ表面上の1次ビームのラスタピッチ、ならびに1次ビームの焦点のサイズおよび形状は両方とも大きく拡大された様態で結像される(imaged)。例として、倍率は100×~300×であり、これにより、ウェーハ表面上の1nmは100nm~300nmに拡大されて結像される(imaged)。プロセスにおいて、例えば、100μmの直径を有するマルチビームシステムの像視野はおよそ30mmに拡大される。十分な信号強度がある場合には、検出器207上の粒子ビームの焦点の重心の小さな変化を高精密度で決定することができる。例えば、1つの方向に沿ったF本のビームを有するマルチビームシステムの場合には、より大きな像視野に応じて、スケール誤差は、F倍にさらに拡大されて可視になる。それゆえ、粒子ビームの複合マルチビーム効果、特に、例えば、光軸105から最も遠く離れて位置する反対の焦点における、指定のラスタ配列からの偏差を高精度で決定することができる。
【0051】
1次粒子ビーム3は、少なくとも1つの粒子源301(例えば、電子源)、少なくとも1つのコリメーションレンズ303.1および303.2、マルチアパーチャ機構305、ならびにフィールドレンズ307、または複数のフィールドレンズで作られたフィールドレンズ系を備えるビーム発生装置300内で発生する。粒子源301は、少なくとも1つのコリメーションレンズ303によってコリメートされるか、または少なくとも実質的にコリメートされ、マルチアパーチャ機構305を照明する、少なくとも1本の発散粒子ビーム309を発生させる。マルチアパーチャ機構305は、内部にラスタ配列状に形成された複数のJ個の開口部を有する、最少の1つのマルチアパーチャプレート306.1を含む。照明粒子ビームの粒子はJ個のアパーチャまたは開口部を通過し、複数のJ本の1次ビーム3を形成する。プレート306.1に衝突した照明ビームの粒子はプレート306.1によって吸収され、1次ビーム3の形成に寄与しない。マルチアパーチャ機構は、通常、少なくとも、さらなるマルチアパーチャプレート306.2、例えば、レンズアレイ、非点収差補正器アレイ、または偏向要素のアレイを有する。
【0052】
フィールドレンズ307および第2のフィールドレンズ308と共に、マルチアパーチャ機構305は、ビーム焦点311が中間像面321内に形成される仕方で1次ビーム3の各々を集束させる。代替的に、ビーム焦点311は仮想的なものであることができる。ビーム焦点311の直径は、例えば、10ナノメートル、100ナノメートル、および1マイクロメートルであることができる。例えば、偏向器アレイの形態の、さらなるマルチアパーチャプレート390が中間像面321内に配置され得る。
【0053】
フィールドレンズ103.1および103.2ならびに対物レンズ102は、ビーム焦点311が形成された平面321を第1の平面101上に、入射場所または焦点5のラスタ配列がそこに生じるよう結像するための第1の結像粒子光学ユニットを提供する。物体7の表面25が第1の平面101内に配置されていれば、焦点5は、対応して、物体表面25上に形成される(図2も参照)。複数の1次ビームはクロスオーバ点108を形成し、その近傍に高速偏向器110が配置されており、後者は、複数の焦点5が物体表面25の上を同時に移動させられるよう複数の1次ビーム3を一括して同期的に偏向させるために用いられる。偏向器110は、制御ユニット800によって、物体7の表面25が複数の焦点5を用いて走査され、表面25の複数の2次元像データが獲得され得るように駆動される。加えて、さらなる準静的偏向器107が配置されており、後者は、複数の1次ビーム3を、光軸105の周りにセンタリングされる様態で整列させることができる。
【0054】
対物レンズ102、および投影システム200の投影レンズ機構205は、第1の平面101を検出面上に結像するための第2の結像粒子光学ユニットを提供する。それゆえ、対物レンズ102は、第1および第2の粒子光学ユニットの両方の部分となるレンズまたはレンズ系であり、その一方で、フィールドレンズ103、307、および308は第1の粒子光学ユニット、または照明経路13にのみ属し、投影レンズ205は第2の粒子光学ユニット、または検出経路11にのみ属する。
【0055】
フィールドレンズ103と対物レンズ系102との間において第1の粒子光学ユニットのビーム経路内にビーム分割器400が配置されている。ビーム分割器400は対物レンズ系102と投影対物レンズ205との間のビーム経路内の第2の光学ユニットの部分でもある。ビーム分割器400は、追加的に、少なくとも、照明ビーム経路13内の、ビーム分割器400の収差を補償することを目的として利用可能な補正要素420を有する。
【0056】
検出システム200は、複数のさらなる構成要素、例えば、静電レンズ206、および複数のさらなる磁気レンズ208、209を備える。投影レンズ210と共に、レンズは、2次ビームを空間分解検出器上に集束させ、プロセスにおいて、検出器平面207上の複数の2次ビーム9の焦点15のラスタ配列が一定のままになるよう、磁気レンズの結果として複数のビームの結像スケールおよびねじれを補償する役割を果たす。この場合、第1および第2の磁気レンズ208および209は互いに逆に設計され、反対方向の磁界を有する。磁気レンズ208および209を適切に駆動することによって、2次電子ビームのラーモア回転を補償することができる。加えて、開口絞り214が配置された、2次ビームのさらなるクロスオーバ点212が投影対物レンズ205内に配置されている。さらに、検出システム200は、2次ビーム9のクロスオーバ点の近傍に配置され、第1のビーム偏向器110と同期して動作させられ、2次ビーム9の焦点15が検出面207上の定位置にとどまるよう1次ビーム3のビーム偏向を補償する、利用可能な第2の一括ビーム偏向器222を有する。検出システム200は、利用可能なさらなる補正要素、例えば、マルチアパーチャプレート216およびさらなる第3の偏向系218を有する。
【0057】
国際特許出願、国際公開第2005/024881号、国際公開第2007/028595号、国際公開第2007/028596号、国際公開第2011/124352号、および国際公開第2007/060017号、ならびに公開番号、独国特許出願公開第102013016113号および独国特許出願公開第102013014976号を有する独国特許出願から、このようなマルチビーム粒子ビームシステム、ならびに例えば、粒子源、マルチアパーチャプレート、およびレンズなどの、その内部で用いられる構成要素に関連するさらなる情報を得ることができ、これらの出願の開示はその全範囲が参照により本出願に組み込まれる。
【0058】
多重粒子ビームシステムは、多重粒子ビームシステムの個々の粒子光学構成要素を制御すること、およびマルチ検出器207によって取得された信号を評価し、分析することの両方のために構成されたコンピュータシステムまたは制御システム800をさらに備える。この場合には、制御またはコントローラシステム800は複数の個々のコンピュータまたは構成要素から構築され得る。例として、制御ユニット800は、検出システム200のために利用可能な第1の制御モジュール820、および照明システム100のための第2の制御ユニット830を有する。
【0059】
さらに、制御ユニット800は、電圧をサンプル7に供給するために利用可能な制御モジュール503を有し、該電圧は以下においてサンプル電圧とも称される。使用時、対物レンズ102と、物体7の、例えば、ウェーハの表面25との間に電界113が発生する。使用時、電界113は、サンプル表面25に到達する前に1次ビーム3の1次粒子を減速し、複数の1次ビーム3に対するさらなる集束効果を発生させる。同時に、この電界113は、使用時、物体7の表面25から出てくる2次粒子を加速する役割を果たす。したがって、電界113は引き出し電界113とも称されるが、この時点では、引き出し電界113は、2つの効果:第1に、1次ビーム3を減速し、集束させる効果、および、第2に、2次電子ビーム9を整列させ、加速する効果を有するという事実が明示的に言及される。したがって、引き出し電界113、あるいは引き出し電界113の強度および一様性は、1次粒子ビーム3のラスタ配列に、ならびに1次粒子ビーム3の焦点5の形状およびサイズに、ならびに加えて、また、2次粒子の収量および2次粒子9の形状および方向に大きな影響を及ぼす。理想的な場合には、2次粒子は、直角に、または物体表面25と垂直に引き出される。非一様な引き出し電界113は、例えば、2次ビーム9の方向の偏差をもたらし得、これは、さらなる収差と共に、検出経路13内の2次ビーム9のラスタ配列の偏差、あるいは検出器207上の2次ビーム9の焦点15のサイズおよび形状の変化をもたらす。非一様な引き出し電界113は、より早い段階における1次粒子の偏向、ひいては、照明ビーム3のラスタ配列の偏差、ならびに物体表面25上の1次ビーム3の焦点5の形状およびサイズの変化をすでにもたらす。したがって、引き出し電界113の非一様性は2重の様態で互いに重畳し、増幅する。引き出し電界113の全体的変動は、全体的効果、例えば、物体7の傾きもしくはzオフセット、または物体7の均一な帯電のゆえに生じ得る。引き出し電界113の局所的変動は、局所的効果、例えば、物体縁部、もしくはウェーハの縁部、物体のトポグラフィによって引き起こされる物体7の一般的な高さの差、または局所的帯電のゆえに生じ得る。引き出し電界113の変動は静的であるか、または時間変動し得る。例として、静的変動は物体7の不変のトポグラフィまたは縁部から生じる。時間変動する変動は、時間変動する帯電効果から生じる。特に、ラスタ配列は、物体7における、または物体表面25とマルチビーム顕微鏡1の対物レンズ102内の電極との間の引き出し電界113の変動に非常に敏感に反応する。
【0060】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るマルチビームシステム1のさらなる機能的態様を断面で概略的に示す。照明システム100は、粒子源301、マルチビーム発生デバイス300の低速補償器330、およびマルチビーム発生デバイス300の高速補償器332を有するマルチビーム発生デバイス300を備える。例として、マルチアパーチャプレート305への入口におけるビーム強度が変更されることを可能にする磁気コンデンサレンズ303.1および303.2は低速補償器330である。例として、複数の1次ビームを迅速に偏向させることができる偏向器アレイ306.2は高速補償器332である。照明システム100は、低速補償器130、例えば、磁気レンズ103.1および103.2、あるいはさらなる準静的ビーム偏向器107をさらに備える。低速補償器130は、対物レンズ系102の磁気レンズ、ビーム分割器400、およびビーム分割器の補正要素420によってさらに形成される。照明システム1は、高速補償器132、例えば、偏向器アレイ390、または対物レンズ系102内の高速静電集束レンズをさらに備える。対物レンズ102は、追加的に、一様な引き出し電界を設定するための、本発明の第3の実施形態に係る、さらなる迅速に駆動可能な電極セグメントを含むことができる。照明システム100の駆動可能構成要素(301、330、332、130、132)は照明デバイス830の制御ユニットに接続されており、動作中に後者によって駆動される。さらに、照明システム100は、1次ビーム3の高速の一括ビーム偏向のための第1の高速ビーム偏向器110を備える。ビーム偏向器110は走査モジュール860によって駆動される。
【0061】
空間分解検出器207に加えて、マルチビームシステム1の検出システム200は検出システム200の低速補償器230および検出システム200の高速補償器232をさらに備える。例として、磁気レンズ208および209ならびに磁気レンズ210は低速補償器230である。例として、ビーム偏向器214または静電レンズ206は高速補償器232である。さらに、検出システム200は、2次ビーム9の高速の一括ビーム偏向のための第2の高速ビーム偏向器222を備える。第2のビーム偏向器222は走査モジュール860によって第1のビーム偏向器110と同期して駆動される。2次ビーム9は第1のビーム偏向器110および第2のビーム偏向器222の両方を通過する。第2のビーム偏向器222は、検出ユニット207への入射時にさもなければ生じる2次ビーム9の走査運動を補償する、いわゆる走査防止(anti-scan)を実施するように設計されている。検出システム200は、例えば、開口絞り214の周辺部内に配置された利用可能なさらなるセンサ238をさらに有する。
【0062】
半導体ウェーハ7は変位台500によって対物レンズ102の下方に位置決めされる。変位台500は、サンプル7の表面25を物体面または第1の平面101内に6自由度で位置決めすることができる6軸変位台であることができる。この場合、z方向における位置精度は50nm未満であり、例えば、30nmよりも良好である。変位台500の位置は、この場合、制御ユニット880のセンサ520によって監視され、制御される。一様な引き出し電界のためのサンプル電圧は、検出モジュール200の低速および高速補償器230、232と共に、検出ユニット820の制御モジュール820を介して制御される。加えて、第2の例示的な実施形態に従って、ウェーハ7の周辺部内に配置された、少なくとも1つのさらなる補正電極を駆動することが可能である。
【0063】
検出ユニット207は、2次電子を光に変換するための少なくとも1つのシンチレータ、および複数の光-光学検出器を含み得る。このような検出器はCMOSまたはCCDセンサであるか、あるいはさもなければ、複数のフォトダイオード、例えば、アバランシェフォトダイオードによって形成され得る。センサはシンチレータの真後ろに配置され得るか、あるいは光学結像系またはライトガイドがシンチレータとセンサとの間に配置され得る。また、電子を直接検出し、これらを電気信号に変換するセンサを用いることも可能である。番号、独国特許出願公開第102018124044号を有する独国特許に、検出ユニットの特別な形態が記載されており、同特許の開示は全体が参照により本出願に組み込まれる。そこでは、検出ユニット207は、2次粒子ビームの複数の焦点15が上に形成されるシンチレータから成る。発生した光は結像系を介してファイババンドル上に結像され(imaged)、各ファイバはフォトダイオードに結合されている。結像系は、発生した光のうちの一部をCMOSセンサ上へ向けるビーム分割器をさらに包含する。このセンサを用いることで、ラスタ配列、ならびに個々の焦点15の形状およびサイズを監視することが可能である。ビーム分割器を用いて光のうちの一部をアウトカップリングする代わりに、代替的に、CMOSカメラを通して、シンチレータによって逆方向に放射された光、すなわち、入射粒子ビームの方向に放射された光を取り込み、評価することも可能である。
【0064】
検出ユニット207は、アナログ電気信号、例えば、センサの電圧の時系列をデジタル信号の時系列に変換する像データ変換器280に接続されている。例として、複数のJ本の2次ビームの像データ変換器280は利用可能な並列コンピュータアーキテクチャを有する。この場合には、像データ変換器280は、例えば、並列に接続されたASICとして設計され得る、並列に接続された複数のアナログ-デジタル変換器を包含する。2つの偏向系110および222の走査周波数FSはサンプル表面25上の焦点5上における1次ビーム3の滞留時間の逆数におおよそ対応する。この滞留時間は、通例、50nsである。しかし、10ns、20ns、または100nsの滞留時間も可能である。像が記録されている間、読み出し周波数、または像データ変換器280を用いたデータ変換の周波数FCは走査周波数FSに対応し、したがって、複数の像ピクセルのためのデジタル像データはFS=FCをもって複数の焦点のために獲得される。偏向系、および像データ変換器280を用いたアナログ-デジタル変換の通常のクロックレートは、この場合には、FS=FC=10MHz~100MHzであるが、100MHz超のより高いクロックレートも可能である。
【0065】
制御ユニット800は、照明デバイス100を制御するために利用可能な制御モジュール830、変位台500を制御するための制御モジュール880、および検出ユニット200を制御するための制御モジュール820を有する。データ獲得デバイス810が、第1に、像データ変換器280に、および第2に、像データメモリ814に接続されている。加えて、デジタル像処理ユニット812が像データメモリ814とデータ獲得デバイス810との間に配置されている。センサデータモジュール818は、例えば、検出モジュール200のさらなるセンサ238から、または位置センサ520を有する変位台500の制御モジュールから、2次ビーム9のラスタ配列および他のセンサ信号の時間平均化されたデータを受信する。制御ユニット800は、センサデータモジュール818のセンサデータを評価し、対応する制御信号、例えば、照明システム100および検出システム200の構成要素を設定するためのパラメータを決定する、利用可能な制御プロセッサ840をさらに有する。
【0066】
図2のとおりのマルチビーム粒子ビームシステム1では、サンプル7は、第1に、1次粒子を減速し、第2に、サンプルから出てきた2次粒子を加速する上述の引き出し電界113を発生させるための電位にある。サンプル電位を設定するために、サンプルまたはウェーハ7のための受容台は物体電圧のための電圧供給503に接続される。
【0067】
図3を参照してウェーハ検査の方法が説明される。図3は、一連の第1の検査位置33、第2の検査位置34、および第3の検査位置35を有するウェーハ7の表面25を示す。第3の検査位置はウェーハ縁部43から距離47にある。その上面25をもって、ウェーハはマルチビームシステム1の第1の平面または物体面101内に配置される。この場合、ウェーハは複数の1次ビーム3の最適な焦平面内に配置される。本例では、複数のJ本の1次ビーム3は長方形のラスタ配列41を有する。複数の1次ビーム3によって走査される第1の像視野17.1の中心21.1は、対物レンズ102の対称軸105とおおよそ整列している。像視野17.1~17.kは一連のウェーハ検査タスクの異なる検査位置に対応する。例として、既定の第1の検査位置33および第2の検査位置34は制御ファイルから読み出される。本例では、第1の検査部位33は第2の検査位置に隣接しており、像視野17.1および17.2は第1の中心位置21.1および第2の中心位置21.2を有する。次に、第1の検査位置33の第1の中心位置21.1は最初に対物レンズ102の軸105の下に位置合わせされる。この場合、ウェーハの座標系を検出し、ウェーハを位置合わせするための方法は従来技術から知られている。
【0068】
次に、複数のJ本の1次ビーム3は、偏向器110をいずれの場合にも小さい部分視野31.11~31.MNにわたって走査することによって、共に偏向させられ、プロセスにおいて、各ビームは、異なる部分視野、例えば、部分視野31.mmまたは部分視野31.m(n+1)を走査する。例示的な走査パターンまたは走査経路27.11および27.MNが、最初の部分視野31.11内、および最後の部分視野31.MN内に概略的に示されている。さらに、例示的に、それぞれの異なる1次ビームの焦点5.11、…、5.MNは、いずれの場合にも、割り当てられた部分視野の左上隅に示されている。さらに、部分視野31は中心を各々有し、部分視野31.mnの中心29.mnは例示的に十字形によってラベル付けされている。ここで、複数の部分視野31.11、…、31.MNは、いずれの場合にも、焦点5.11~5.MNを有する複数のJ本の1次ビームによって並列に走査され、デジタル像データ記録がJ本の部分視野31.11~31.MNの各々のために獲得され、各像データ記録は、例えば、8000×8000ピクセルを含むことができる。この場合、ピクセルサイズは規定することができ、例えば、2nm×2nmであることができる。しかし、4000×4000~10000×10000ピクセル超の異なるピクセル数も可能であり、例えば、3nm、1nm、またはそれ未満の他のピクセルサイズが設定され得る。第1の像視野17.1のデジタル像データが獲得されると、第1の像視野17.1の個々の部分視野31.1~31.MNの像データは組み合わせられ、像データ記録を形成する。その後、第2の検査位置34が対物レンズ102の軸の下に位置決めされ、第2の像視野17.2のデジタル像データが獲得される。手順は、例えば、像視野17.kを有する第2の検査位置35を用いて継続される。当然、1次ビーム3のラスタ配列41は長方形のラスタ配列に限定されず、他のラスタ配列は、例えば、六角形ラスタ、または同心リングもしくは1つのリング上の1次ビームの配列を含む。この場合、デジタル像データの横方向分解能は物体表面25上の1次ビーム3の焦点5の直径によって実質的に決定される。図4は、表面25上の例えば10μmのピッチpsを有する六角形ラスタを有する複数のJ=91本の1次ビーム3の配列を有する典型的なラスタ配列41を示す。1つの方向に沿った一部のビームは5.11、5.21、5.31、5.41、および5.51によって示されている。例示の目的のために、周辺部における外側の焦点は、追加的に、理想的なラスタ配列の縁部を示す線45によって接続されている。
【0069】
検査タスクの最中、ラスタ配列41は物体表面25にわたって同期的に変位させられ、ウェーハ7の表面25の像データが獲得される。偏向デバイス222を用いた走査防止は、2次ビーム9のラスタ配列41が検出器207上で定位置に固定したままとどまること、または静止したままとどまることを確実にする。しかし、検査タスクの前または最中における検出器207の検出面内のラスタ配列41の変化が存在し得、該変化は物体表面25上の半導体構造の位置および再現忠実度を著しく阻害する。この場合、ラスタ配列41の破壊的変化が1次ビーム11内に生じ、1次ビーム3の焦点5のラスタ配列41の変化をもたらす。1次ビームのラスタ配列41の変化は2次ビーム9のラスタ配列41の対応する変化をもたらし、後者は、無論、物体表面25上の1次ビーム3の焦点5において生じる。2次ビーム9のラスタ配列41の変化は2次経路内でなおも増幅され、最終的に、例えば、検出器207の平面内における2次ビーム9の焦点15の変化したラスタ配列41a~41gを生じさせ得る。2次ビーム9の焦点15の変化したラスタ配列は、焦点15の変化した形状およびサイズと共に、複合マルチビーム効果とも称される。
【0070】
複数のJ本の2次ビーム9のラスタ配列41を獲得するために、本発明に係るマルチビームシステム1は、様々な方法を実施するように構成され得る。第1の方法では、像信号の時間積分による像データ変換器280による信号の時間平均化が行われる。この目的を達成するために、像データ変換器280は走査周波数FSに対して大幅により低いデータ変換周波数FC<FSで動作させられ、これにより、像データの平均化は物体表面25上の複数の焦点にわたって実施される。例として、データ変換周波数FCは、走査周波数の1/10、FC<FS/10、あるいはさらに、それよりも小さく、例えば、FC<FS/100、またはFC<FS/1000、またはそれよりさらに大幅により小さいものであることができる。一例では、像データ獲得は2つの検出器を並列に用いて実施され、第1の検出器は、走査周波数に等しい第1のデータ変換周波数FC1=FSにおける第1の像データ変換器を用いた高分解能結像のために動作させられ、第2の検出器は、像評価周波数における第2の像データ変換器を用いて動作させられ、したがって、第1の検出器を用いた検査位置における像部分の高分解能結像の間に、ラスタ配列の数個の像のみまたは1つの像のみが決定される。一例では、高分解能像は8000×8000ピクセルを含み、50nsの滞留時間またはFS=20MHzの走査周波数を有し、このとき、これはおよそ3.2sの像記録時間T2をもたらす。例として、第2の検出器カメラは、例えば、0.1s~10msの像記録時間T1、または1Hz~およそ0.1kHzの像周波数を有する、10~100フレーム/秒のフレームレートを有するCMOSセンサであることができる。それゆえ、高分解能像を記録する間に、ラスタ配列のおよそ30~300個の検査像を生成することができる。
【0071】
データ変換周波数FCを低減することの代替として、走査周波数を増大させることも可能である。例として、ラスタ配列41を測定するための走査周波数を、50MHzから500MHzへ、10倍に増大させることができる。例として、走査周波数FSをFS=10×FCまたはFS>100×FCに増大させることができる。第1の方法では、空間的に分解されたデジタル像データから2次ビームごとの平均値を評価し、ラスタ配列の変化を検出する、センサデータモジュール818による信号の時間平均化が行われる。第2の方法では、信号の時間平均化は、走査偏向器110および222を用いた高速走査によって実施される。
【0072】
図5は、理想的ラスタ配列45に対するラスタ配列41の変化の数個の例を示す。図5は、検出器207上の2次ビームの焦点15のラスタ配列ならびに形状およびサイズの偏差を示す。図5aは、pr>psの間隔またはピッチを有するビームのピッチの変化を示す。上述されたように、理想的ピッチは、例えば、ps=10μmである。結像スケールの変化は、例えば0.1%、またはさらに、それより小さい、例えば、2nmの、間隔またはピッチの変化をもたらす。スケール誤差は、ラスタ配列41a内の最大に離間したビーム焦点の間で、ピッチの変化にビームの数を乗算したものによって累積し、対角線に沿って最大9本のビームを有する図5aの例では、18nmまで累積する。100×~300×の倍率による検出器207上への物体表面25上のラスタ配列の結像の拡大を通じて、誤差は2μm~5μmまで累積する。図5aは、増大したピッチprを有するラスタ配列41aの拡大を示しているが、ピッチprは低減もし得る。例示の目的のために非常に大きな倍率変化が示されている。
【0073】
検出経路の倍率を通じて、複合マルチビーム効果は、拡大された様態で検出カメラ上に結像される(imaged)。加えて、複合マルチビーム効果の原因(ウェーハ上の帯電、縁部、傾き等)は2次電子にも影響を及ぼす。例として、この場合には、より低いエネルギーの2次電子は、より高いエネルギーの1次電子よりも引き出し電界の変動により敏感に反応し、例えば、サンプルの影響のせいで1次ビームの偏差に加えてさらなる歪みが追加される。
【0074】
図5bは、オフセットベクトルdによって横方向にオフセットしたラスタ配列41bを示す。ラスタ配列のオフセットもしくは変位、または移動はデジタル像データにおけるオフセットをもたらし、例えば、複数の像部分をスティッチする際に収差を生じさせ得る。図5cは、圧縮されたラスタ配列41cを示す。ラスタ配列の圧縮は、1つの方向、例えば、ここでは、変更されたピッチprxによって指示されるとおりの、x方向のみにおける間隔またはピッチの変化に対応する。加えて、局所的効果が発生し得、ラスタ配列41d内の個々のビームの局所的ビーム偏向のみを生じさせ得る。図5dにおいて、5本のビームの例を用いて、具体的には、ビームの目標位置15.is、および現実の位置15.ir、ならびにスポット位置の局所的変位61の例を用いて、これが示されている。図5eは、ラスタ配列41f内の少なくとも1本のビームの偏差したビーム形状の効果を示す。ビーム15.jrは理想的なビーム形状を有し、それから、例えば、ビーム15.irはサイズに関して偏差しており、さらなるビーム15.kaは形状に関して偏差している。図5eは、ラスタ配列にわたる焦点の形状またはサイズの秩序立った偏差の単純化された例を示している。本例では、少なくとも3つの焦点の少なくとも3つの形状またはサイズからプロファイルを推測することができ、それゆえ、局所的効果と傾きなどの全体的効果とを区別することが可能である。本例は、焦点15.uaが焦点15.qaよりも対物レンズに接近して配置された、ウェーハ表面25に対する焦平面または最善の設定平面101の斜めの傾きの効果を明らかにしている。例えば、焦点15.qaおよび15.uaならびに中心焦点15.00の形状およびサイズを検出することによって、秩序立った傾きをビーム焦点の形状およびサイズの偏差の他の原因と区別することが可能である。しかし、原理的には、全ての焦点の形状の偏差およびサイズの偏差を決定することも可能である。
【0075】
最後に、図5fは、理想的なラスタ配列45に対して角度Aでねじれた、ねじれたラスタ配列を示す。
【0076】
また、ラスタ配列の他の偏差、例えば、台形歪みも可能である。さらに、偏差は、通常、個々の偏差の組み合わせまたは重ね合わせとして発生する。
【0077】
マルチビームシステム1は検査タスクのための既定のパラメータを用いて設定される。制御プロセッサ840は、動作中に検査タスクのための様々な既定のパラメータを決定し、これを用いてマルチビームシステム1の構成要素を駆動するように構成されている。パラメータによって駆動される構成要素は、例えば、照明システム100の低速および高速補償器130、132、マルチビーム発生デバイス300の低速および高速補償器330、332、検出システム200の低速および高速補償器230、232、あるいは変位台500を含む。例として、ウェーハ7の表面25上の個々のビーム焦点5の間隔またはピッチpsはこれらのパラメータを通じて設定され、焦点は平面101内の最適な焦平面内に設定される。さらなる可変パラメータは、例えば、コンデンサレンズ303を用いて設定され得る、ビーム強度を含む。ノイズ性能はビーム強度および滞留時間を通じて設定することができる。引き出し電界の強度を決定するパラメータは、分解能、および、2次電子の運動エネルギーにさらに影響を及ぼす。物体表面上のラスタ配列のいくらかのねじれが対物レンズ系102の磁気レンズの集束効果を通じて起こる。走査プログラムはさらなるパラメータを用いて設定される。検出システムのさらなる構成要素は、2次ビーム9の複数の焦点15が既定の位置において検出器207に入射し、そこで一定に保持され、これにより、像データが時系列シーケンスで獲得され得るよう、パラメータによって駆動される。まとめると、パラメータのセットは作動点とも称される。第1の実施形態に係るマルチビームシステム1の制御プロセッサ840は、マルチビームシステム1を複数の異なる既定の作動点において動作させるように設計されている。
【0078】
例として、センサデータモジュール818(図2参照)は、動作中に像データの時間平均化を通じて物体コントラストを平均化し、2次ビーム9の現在のラスタ配列41の焦点位置15を測定するように設計されている。加えて、焦点15の少なくとも1つの、例えば、焦点15.irまたは焦点15.kaの形状およびサイズを決定することができる。センサデータモジュール818は、現在のラスタ配列41、ならびに少なくとも1つの焦点15の形状およびサイズを制御プロセッサ840へ伝送するように構成されている。制御プロセッサ840は、それらから、事前設定された作動点における理想的ラスタ配列45からの現在のラスタ配列41の偏差、ならびに少なくとも1つの焦点15の形状の偏差およびサイズの偏差を決定するように構成されている。制御プロセッサ840は、偏差からの破壊的影響を推測し、破壊的影響を低減するために適した対応するパラメータ変更を決定するように構成されている。破壊的影響に対応する、ラスタ配列41の、ならびに2次ビーム9の少なくとも1つの焦点15の形状およびサイズの偏差はあらかじめ決定することができる。同様に、破壊的影響を低減するために適した、作動点のパラメータの必要とされる変更をあらかじめ決定し、これらを記憶することが可能である。この目的を達成するために、制御プロセッサ840は、様々な作動点のためのパラメータに加えて、特定の破壊的影響を低減するために適したパラメータ変更も記憶される、記憶モジュールを含む。
【0079】
ラスタ配列の変化ならびに焦点の形状およびサイズの変化のための数種の破壊的影響または原因が以下に列挙される。
【0080】
例えば、ウェーハの偏差した厚さの結果としての、機械的焦点ずれは、ラスタ配列内の焦点の倍率またはピッチの変化をもたらし、ラスタ配列41aに係る増大したスポット径をもたらす。加えて、例えば、図5eにおける焦点5.irに基づいて示されるように、焦点の変化したサイズが存在し得る。機械的焦点ずれは台または変位台500のz運動によって補償され得る。代替的に、または加えて、引き出し電界113の強度を変更することができ、照明経路および検出経路内のさらなる静電構成要素を、焦点のずれた物体表面上に集束するように設定することができる。引き出し電界は以下において説明される。磁気レンズ、例えば、対物レンズ102の励磁を変更することによって、機械的焦点ずれを補償するためのさらなる選択肢が提供される。
【0081】
例えば、ウェーハが撓んだときの、サンプル表面の局所的傾斜は、引き出し電界の一様な勾配、ラスタ配列41bに係るラスタ配列のオフセットを生じさせる。加えて、典型的な非点収差、例えば、一定非点収差が複数のビームにわたって発生し得、図5eにおけるビーム5.kaのビーム形状のような一定の楕円形ビーム形状を生じさせ得る。補正方策として、ウェーハ7を傾けることが可能である。代替的に、物体表面25の傾斜、または引き出し電界113の電界勾配の効果を打ち消す、引き出し電界113における狙いを定めた一様な電界勾配を発生させることが可能である。引き出し電界は以下において説明される。ウェーハ表面25上の1次ビーム3のラスタ配列41bのオフセットは、1次経路内の偏向器107によって補償され得る。代替的に、または加えて、非点収差の適切な補正は、例えば、利用可能な高速および低速補正要素130、132ならびに偏向系110、222を用いて実施され得る。
【0082】
ウェーハの縁部における非一様な引き出し電界113の効果は、一定非点収差と組み合わせて、ラスタ配列41bの移動またはオフセットを生じさせる。以下において、縁部効果を補正するための手段が説明される。ウェーハ7の縁部における複合マルチビーム効果と、傾きの結果もたらされる効果とは非常に類似し得る。補償方策は類似し得る。しかし、ウェーハの縁部においては、像視野にわたってより大きく変化する収差が生じ、例えば、像視野にわたって一定のオフセットおよび均一な非点収差は存在せず、焦点の位置の若干の歪み、または非点収差のより複雑な電界依存性が存在する。
【0083】
サンプル表面25の一様な帯電は、同様に、倍率の変化および拡大したスポット径を生じさせる。同時に、図5bに対応するラスタ配列41bの横方向変位が生じる。この場合には、引き出し電界113を、例えば、帯電を打ち消すために、帯電と同期した様態で動的に増大させることができる。この目的を達成するために、サンプル電位は、例えば、引き出し電界を一定に維持し、サンプル帯電を打ち消すために、電圧V2を通じて動的に同期的に適合させられる。サンプル電位または電圧V2に依存する電位V1およびV3も、引き出し電界を一定に維持するために、同様に適合させられる(図6図8および以下の説明を参照)。加えて、照明経路13および検出経路11内のさらなる静電構成要素が、帯電した物体表面25への集束のために設定され得る。1次ビームのラスタ配列41bのオフセットは照明システム内のビーム偏向器107によって補償され得る。物体表面25の帯電はまた、引き出された2次電子9の運動エネルギーの変化を生じさせ、それゆえ、図5fに示されるように、2次ビーム9のラスタ配列の変化した回転を生じさせ得る。2次電子ビーム9のラスタ配列41の回転は、磁気レンズ対を異なって駆動することによって補償され得る。
【0084】
1次ビーム3のラスタ配列41の像視野17に係る検査位置(33、35)におけるサンプル表面の部分の局所的帯電は、同様に、横方向オフセットと併せて倍率の変化を生じさせる。しかし、加えて、ラスタ配列41の縁部ビームの焦点5の形状の変化が生じる。縁部ビームは、一方の方向において隣接したビームをもはや有しないそれらのビームである。焦点5の形状変化およびサイズ変化の効果はラスタ配列41の角部において特に顕著である。
【0085】
検査位置33および35などの検査位置は、先行する、もしくは隣接した検査位置、または隣接した像視野の潜在した帯電によって影響を受ける。これは、特に、図3の例のように、検査位置33が2つの像視野17.1および17.2から一体にスティッチされる場合に、発生し得る。これは、引き出し電界113の非一様な勾配、およびラスタ配列41bに対応する、ラスタ配列のオフセットを生じさせる。加えて、ラスタ配列41cに対応するラスタ配列の歪みが生じる。さらに、非点収差の線形的に増大するプロファイルが複数のビームにわたって発生し得、図5eにおけるビーム5.kaのビーム形状のような、楕円形ビーム形状を生じさせ得る。例として、これらの効果は、検査位置のシーケンスを変更することによって影響を受け得る。
【0086】
局所的帯電は、図5dに示されるように、個々のスポット位置またはスポット形状を歪ませるのみである。局所的帯電効果は、作動点を最適化すること、または走査方略の変更によって影響を受け得る。この場合、作動点を調整することは、ランディングエネルギーまたはビーム電流を調整することを含むことができる。この場合、走査方略を変更することは、短い滞留時間をもって生成された多くのフレームにわたる平均化と併せた高速走査を含み得る(これは「フレーム平均化」としても知られる)。この場合、ビーム電流をなおも低減することができ、平均化が行われる像の数を増大させることができる。さらなる走査方略は、連続して個々に走査され、その後、一体にスティッチされる、より小さい部分視野への部分視野31の分解に存する。さらなる選択肢は、像生成中の放電プロセスの狙いを定めた導入を含み、このような放電プロセスは、結像中の一時的停止によって、または刺激放電によって、例えば、マルチビームシステムを、ミラーモードとして知られるもので動作させることによって発生され得る。さらなる例では、測定対象の検査位置は先行照射によって事前に帯電し得る。例として、検査位置における走査手順は、局所的帯電効果を低減または補償するために、より低い速度において、およびより小さい照射線量を用いて実施され得る。さらなる手段は、偏向走査器110を通じた部分視野サイズの調整、および例えば、図5dにおける1次ビーム15.irのような、個々の1次ビームのビームオフセット61に係る個々の部分視野の個々のデジタル像の横方向位置のデジタル補正である。
【0087】
制御プロセッサ840は、複合マルチビーム収差のための破壊的影響または原因の所定の関係を記憶するように構成されている。複合マルチビーム収差は、ラスタ配列41の変化、ならびに少なくとも1つの焦点の、例えば、3つの焦点または全ての焦点の、形状およびサイズの変化を意味すると理解される。さらに、制御プロセッサ840は、破壊的影響を補正または補償するための既定のパラメータを記憶するように構成されている。制御プロセッサは、現在決定された複合マルチビーム収差から破壊的影響または原因を推測するようにさらに構成されている。この場合、制御プロセッサは、破壊的影響または原因、ならびに破壊的影響または原因を補正または補償するために適切に変更されたパラメータの記憶された関係に頼り、変更されたパラメータを用いてマルチビームシステム1を駆動する。
【0088】
それゆえ、マルチビームシステムの第1の実施形態は、物体7、好ましくは、半導体ウェーハを検査するためのマルチビームシステム1を動作させるための改善された方法を含む。本方法は図13に示されており、以下のステップを含む:
【0089】
ステップ1:実質的に平面状の物体7を変位台500の受容区域505上に配置し、変位台500を用いて物体7の物体表面25を物体面101内に配置する。
【0090】
ステップ2:既定のラスタ配列41の複数のJ本の1次ビーム3によって生成された複数のJ個の焦点5を用いて物体表面25を照明する。
【0091】
ステップ3:既定のラスタ配列41の複数のJ本の1次ビーム3を第1の複数の走査位置にわたって同期的に偏向させることによって、複数のJ個の焦点5を有する物体表面25を走査する。
【0092】
ステップ4:1次ビーム3の複数の焦点5において物体表面25から複数の焦点5から発生した複数の2次粒子を収集し、複数の2次粒子を空間分解検出器207上に集束させる。
【0093】
ステップ5:空間分解検出器207を用いて2次粒子の信号を検出し、2次粒子の複数の焦点15の像を生成する。一例では、信号の検出は、第2の複数の走査位置にわたる2次粒子の信号の時間平均化を包含する。
【0094】
ステップ6:2次粒子の複数の焦点15の像から既定のラスタ配列45に対する2次粒子の複数の焦点15のラスタ配列41の変化から成る複合マルチビーム効果を決定する。一例では、ラスタ配列41の変化を決定することは、追加的に、2次粒子の複数の焦点15の少なくとも1つの焦点15のビーム形状の偏差の決定を含み、ビーム形状の偏差は楕円度または直径の偏差を含む。
【0095】
この場合、ラスタ配列41の偏差は、以下の誤差:スケール誤差41a、オフセット誤差41b、歪み41c、ねじれ41g、またはラスタ配列41の個々のビームのみの局所的偏差41dのうちの少なくとも1つを含む。
【0096】
焦点15の形状およびサイズの変化は、以下の収差:一定非点収差、ラスタ配列41内の位置に対する非点収差の線形依存性を有する線形非点収差、一定焦点収差、ラスタ配列41内の位置に対する焦点収差の線形依存性を有する線形焦点収差のうちの少なくとも1つを含む。
【0097】
ステップ7:ラスタ配列41の変化の少なくとも1つの原因を決定する。ここで、ラスタ配列41の変化は、オフセット誤差、等方性のスケール差、2つの非平行方向の間の歪みまたは倍率差、回転、または台形歪みを包含する。
【0098】
さらなるステップでは、ラスタ配列の全体的変化および局所的変化に応じて、ラスタ配列41の変化の分解が実施され得る。
【0099】
ステップ8:ラスタ配列の変化を補償するためのマルチビームシステムの構成要素を駆動するための最適化されたパラメータを決定し、最適化されたパラメータを用いてマルチビームシステムを駆動する。
【0100】
この場合、決定は、例えば、複合マルチビーム効果の個々の正規化された効果を補償するために適したパラメータ変更の記憶された表を用いて実施される。このとき、最適化されたパラメータは、例えば、ラスタ配列の変化の大きさに、関連する記憶されたパラメータ変更を乗算することによって算出される。第1の実施形態の具体例は、ラスタ配列41のオフセット誤差と、楕円度の形態のビーム形状の偏差との組み合わせからの、平面状物体表面25の局所的傾斜誤差の決定を含む。さらなる例では、第1の実施形態は、ラスタ配列41のスケール差と、少なくとも1つの焦点の直径偏差の形態のビーム形状偏差との組み合わせから、平面状物体表面25の間隔誤差を決定することを含む。さらなる例では、第1の実施形態は、事実上不変のビーム径の場合には、ラスタ配列41のスケール誤差とラスタ配列41のオフセットとの組み合わせから、平面状物体表面25の全体的帯電効果を決定することを含む。さらなる例では、第1の実施形態は、ラスタ配列41のオフセット、およびオフセットの方向における歪み、あるいは2つの非平行方向の間の倍率差から、トポグラフィ構造、例えば、物体43の縁部からの距離を決定することを含む。さらなる例では、第1の実施形態は、既定のラスタ配列からの少なくとも2つの焦点の少なくとも2つの異なる位置偏差から成る、ラスタ配列の不規則な変化から、局所的帯電効果を決定することを含む。さらなる例では、第1の実施形態は、既定のラスタ配列からの少なくとも1つのビーム整形偏差および少なくとも1つの位置偏差を含む少なくとも2つの焦点の少なくとも2つの偏差から成る、ラスタ配列の不規則な変化から、局所的帯電効果を決定することを含む。
【0101】
ステップ9:照明システム内のマルチビーム顕微鏡の、および引き出し電界の、および必要とされる場合には、また、検出システムの、最適化されたパラメータを設定し、物体表面の高分解能像を取り込む。
【0102】
最適化された設定パラメータは、マルチビームシステム1の照明経路13内および検出経路11内の構成要素のパラメータを包含し、また、第1の検査位置(33、35)における変位台500とのウェーハ7の再位置合わせも包含し得る。さらに、引き出し電界113が照明経路および検出経路内に配置されており、マルチビーム顕微鏡の最適化されたパラメータを設定することは、ウェーハ7の表面15上の検査位置(33、35)における引き出し電界113に影響を及ぼすための補正電極を駆動することを包含する。補償器は、ウェーハ7の表面25上のラスタ配列41のオフセットを補償するための偏向装置107、ならびに例えば、ラスタ配列41のスケールを設定するための、マルチビームシステム1の作動点の変更、ビーム偏向器110のための走査プログラムの変更、およびデジタル像評価の変更を含む。
【0103】
ステップ8および9の間に、任意選択的に、複合マルチビーム効果を獲得するための第2の動作方法から、ステップSTUにおける物体表面の部分の迅速および高分解能の像取り込みのための第1の動作モードへの切り換えが存在し得る。
【0104】
それゆえ、複合マルチビーム効果41を決定するための方法は、ウェーハ7の構造化表面25の部分を走査し、ウェーハ7の表面構造の像コントラストを平均化することによって、検出器カメラ(detector camera)207を用いて多数の粒子ビーム9のラスタ配列41の時間平均化された検査像の像を記録することと、既定の、または理想的ラスタ配列45からの複数の粒子ビームの入射場所15のラスタ配列41の少なくとも1つの偏差、ならびに粒子ビームの焦点15の形状およびサイズの変化を決定することを目的として検査像を分析することと、を含む。
【0105】
一例では、像コントラストを平均化することは、T1<T2、好ましくは、T1<T2/10、例えば、T1<T/100未満の像記録時間をもってウェーハ7の表面25の部分を迅速に走査することによって達成される。ここで、T2は、高空間分解能、および2nm、1nm、もしくはそれ未満のピクセル寸法をもって表面25の部分の像を記録するための時間に対応する。T1は、通例、100ms未満、好ましくは、10ms未満である。一例では、ウェーハ7の表面構造の像コントラストの平均化は、検出信号を時間的に平均化することによって実施される。
【0106】
特に、物体の縁部において、非一様な引き出し電界の結果としてのマルチビーム効果が発生することが見出された。例として、電子はウェーハ縁部の方向に偏向させられる。図6は一例を示す。複数の1次ビーム3aによってウェーハ7の縁部43の近傍において像視野17内に複数の焦点が形成される。対電極151が対物レンズユニット102の下方終端を形成し、電圧V1にある。例として、電圧V1は大地電位にあるか、またはV1=3kVにあることができる。ウェーハ表面25と対電極151との間の電圧差は、通例、20kV~35kV、例えば、30kVである。例として、ウェーハは-27kVの電圧にある。
【0107】
対物レンズユニットは、1次ビームをウェーハ表面25上に集束させることを目的とした集束磁界を形成するためのソレノイド149を含む。1kV~4kVに及ぶ電圧V2、例えば、2kVが、変位台500内のウェーハ受容区域505を通じてウェーハ7またはウェーハ表面25に供給される。電圧差V2-V1を通じて対電極151とウェーハ表面25との間に引き出し電界113aが生じる。引き出し電界113は、通例、ウェーハ表面25において1~5kV/mmの電界強度を有し、その結果、1次電子3は減速させられる。この場合、ウェーハ受容区域505はウェーハ台500に対して絶縁されており、ウェーハ台500は大地電位または0kVにある。引き出し電界113aは等電位面を通じて概略的に示されている。しかし、ウェーハ7の縁部43では高さの差DWが存在し、ウェーハの縁部43の近傍では等電位面はもはやウェーハ7の表面25と平行に延びず、1次ビーム3aは偏向させられる。非一様な縁部電界の結果、したがって、1次ビームのラスタ配列は、図5cに示される歪みと同様の歪みを経験する。加えて、さらなる効果が発生し得る。本発明の第2の実施形態によれば、縁部領域内の効果はウェーハ7の周辺部内の追加の電極によって補償される。図7に、第2の実施形態が示されている。電圧V3を供給され、絶縁材155を介して受容区域505から絶縁された補正電極153がウェーハ7の周りの周辺部内に配置されている。補正電界が電圧V3を通じてウェーハ7の周りの周辺部内に発生し、引き出し電界113bの一様化が得られる。補正電極153は、ウェーハ7からの距離G、およびウェーハ受容区域505の上方の高さDEを有する。距離Gはウェーハの外周にわたって変化し得る。電圧V3の強度は、引き出し電界113bの非一様性が最小限に抑えられるよう、ウェーハ7の異なる厚さDW、ウェーハ縁部と補正電極153との間の局所的距離G、および検査位置35とウェーハ縁部43との間の距離47に基づいて設定される。この場合、ウェーハ7の厚さDWはおよそ0.7mmであり、およそ50μm~100μmの偏差を有する。例として、電極153の高さDEはウェーハ7の厚さDW未満であり、電圧V1に対する補正電圧V3の差は、電圧V1に対する電圧V2の差よりも大きくなるように選定される。例として、厚さは、DE<0.5DW、またはさらに、それ未満になるように選定される。例として、V3は-2kV~-4kVに設定される。例として、ウェーハ7は、対電極151に対して|V1-V2|=28kVの電圧差の絶対値にある。例として、補正電極153は、ウェーハ7に対して|V2-V3|=3~6kVの電圧差の絶対値にある。電圧差V2-V3は、それがウェーハ縁部43と電極153との間に追加的な電界の寄与の形を形成するように設定され、該電界の寄与の効果は追加の等電位線113cによって示されている。この電界の寄与はウェーハ表面25と対物レンズ102との間の引き出し電界113bの平滑化および一様化を確実にする。理想的には、距離Gは、できるだけ小さくなるように、例えば、0.5mm、または0.2mm、またはそれ未満になるように選定される。不変の引き出し電界113bのために、ウェーハ7は、きわめて正確にセンタリングされなければならず、外周に沿った厚さDWの変化を全く有してはならない。厚さDWの、補正電極の高さDEの局所的偏差、および距離Gの局所的偏差は、補正電圧V3の最適な調整された設定によって検査位置ごとに考慮され得る。概して、一様な引き出し電界のための補正電圧はウェーハ縁部からの検査位置の距離に基づいて設定され得る。一実施形態では、連続的な補正電極の補正電圧は、ラスタ配列の検査像の評価に基づいて、例えば、ウェーハ縁部の近傍における先行検査位置に基づいて、現在の検査位置に合わせて局所的に調整される。
【0108】
図8は本発明の第3の実施形態を示す。第3の実施形態では、補正電極153は、複数のセグメントの形で、例えば、8つのセグメント153.1~153.8の形で具現される。さらに、対電極151は、複数のセグメントの形で、例えば、8つのセグメント151.1~151.8の形で具現される。補正電極のセグメント153.1~153.8または対電極のセグメント151.1~151.8に、例えば、8つの異なる電圧を供給することを通じて、できるだけ一様である引き出し電界が得られる。補正電極153.2のための電圧V3.2は例示的な仕方で示されている。第2および第3の実施形態では、制御ユニット800は、引き出し電界の一様化をもたらすために、電圧供給ユニット503を通じて、サンプル電圧V2、および少なくとも1つの補正電極153、153.2のための少なくとも1つの補正電圧V3、V3.2の両方を利用可能にするように構成されている。さらに、制御ユニット800、特に、照明デバイス830の制御ユニットは、引き出し電界の一様化をもたらすために、少なくとも1つの対向電圧151を対物レンズ系102に供給するように構成されている。サンプル電圧V2、少なくとも1つの対向電圧V1、および少なくとも1つの補正電圧V3もしくはV3.2は、マルチビームシステム1を駆動するための迅速に可変のパラメータを形成する。
【0109】
したがって、本発明の一実施形態は、マルチビーム顕微鏡1のための変位台500と、縁部43および直径Dを有するウェーハ7を受容するための受容区域505を有する変位台500を有するマルチビーム顕微鏡1であって、受容区域505によって動作中に電圧V2がウェーハ7に印加され得る、マルチビーム顕微鏡1と、を備える。さらに、リング状電極153が受容区域505の周辺部内において変位台500上に配置されている。リング状電極153は内径DI>Dを有し、これにより、ウェーハ7が受容されたとき、ウェーハ7の縁部43とリング状電極153との間に距離が形成される。リング状電極153は、動作中に電圧V3がリング状電極153に印加され得るよう、受容区域505から絶縁されている。一例では、リング状電極153は、少なくとも1つの第1の電圧V3が印加され得る、複数の、例えば、2つ、4つ、8つ、またはそれより多くの相互に絶縁された電極セグメントから形成されている。
【0110】
マルチビーム顕微鏡を用いた結像に関連する多くの効果はトポロジ条件に非常に強く結びついている。図6に基づいて示されるように、ウェーハ7または物体の縁部43は、概して、大きな影響を及ぼす。ウェーハ7の縁部43に対する検査位置の相対位置は、特に、ウェーハ検査の状況であらかじめ知られるため、検査部位に標的を定める際に、ウェーハの縁部からの検査位置の距離に応じた、一様な引き出し電界113を含む、検出経路および照明経路の両方の改善された調整をあらかじめ実施することができる。第4の実施形態では、マルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための方法であって、この枠内では、マルチビームシステムの照明経路および検出経路の構成要素のパラメータが物体の縁部または境界からの検査位置の距離に応じて設定される、マルチビームシステムおよび方法が提供される。マルチビームシステム1の制御ユニット800は、物体の境界または縁部43からの検査位置の距離を決定するように構成されている。制御ユニット800は、距離、およびマルチビームシステム1の現在の作動点から複合マルチビーム効果を決定するようにさらに構成されている。さらに、制御ユニット800は、マルチビームシステム1を検査部位において動作させるためのパラメータを決定するように構成されており、該パラメータは、複合マルチビーム効果を低減するか、または完全に補償するために適している。さらに、検査位置においてマルチビームシステム1を用いて検査タスクを実施している間に、制御ユニット800は、パラメータを用いて、マルチビームシステム1の、引き出し電界113を含む、照明システム100および検出システム200の構成要素を駆動し、サンプル電圧V2および少なくとも1つの補正電圧V3を、相まって複合マルチビーム効果を低減するか、または完全に補償するために適した追加のパラメータとして変位台500上の電極に供給するように構成されている。
【0111】
それゆえ、本発明の第2および第3の実施形態は、縁部43、厚さDW、および外径Dを有する実質的に平面状の物体7を受容するための受容区域505、ならびに受容区域505の上方の高さDEを有するリング状電極153を有する変位台500を説明する。後者は受容区域505の周辺部内に配置されており、内径DI>Dを有し、これにより、物体7が受容されたとき、縁部43とリング状電極153との間に距離Gが形成される。この場合、電極153は、動作中に異なる電圧差がリング状電極153に印加され得るよう、受容区域505から絶縁されている。
【0112】
第2および第3の実施形態は、さらに、変位台500と、縁部効果を決定するための測定デバイスと、動作中に、電圧差を発生させることを目的として、第1の電圧V2を、受容された物体に供給し、縁部効果を低減するために第2の電圧V3をリング状電極において供給するように構成された制御ユニットと、を備えるマルチビームシステムを説明する。
【0113】
第3の実施形態では、電極153は、複数の異なる電圧V3.1~V3.8が印加され得る、利用可能な複数のセグメント153.1~153.8を有する。さらなる実施形態では、第3の実施形態に係るマルチビームシステム1の対物レンズ系102は、複数の異なる電圧V1.1~V1.8が印加され得る、利用可能な複数の対電極151.1~151.8を有する。電極の電圧供給は、物体電圧と共に、対物レンズ系102と物体の表面25との間に一様な引き出し電界113を発生させるためにこのように設計されている。
【0114】
多数の複合マルチビーム効果はウェーハの表面25上の検査位置に依存し、したがって、原理的に、あらかじめ知られることが見出された。図9に、マルチビームシステム1を動作させるための、これに基づく改善された方法が示されている。本方法を用いることで、マルチビームシステム1を動作させるためのパラメータ、例えば、照明システムまたは照明経路100の、検出システムまたは検出経路200の、ならびに一様な引き出し電界113のためのサンプル電圧または補正電圧の構成要素のパラメータが最適に設定される。組み合わせて、マルチビームシステム1を動作させるためのパラメータは、検査位置における複合マルチビーム効果を低減するか、または完全に補償するために適する。第1のステップSIにおいて、ウェーハ7が変位台500のウェーハ受容区域505上に受容され、ウェーハ7の座標系が登録される。検査タスクのリストが獲得され、例えば、第1の検査タスクが実施される。この目的を達成するために、ウェーハ7の第1の検査位置がマルチビームシステム1の光軸105に対してセンタリングされ、ウェーハ7の表面25がマルチビームシステム1の設定平面または焦平面101内に整列させられる。マルチビームシステム1を動作させるための方法は、次に、第2の、または次の検査タスクのために例示的な様態で示される。しかし、これは、任意の検査タスク、特に、第1の検査タスクであることもできる。
【0115】
次のステップSEにおいて、次の検査タスクのために複合マルチビーム効果が予測される。複合マルチビーム効果の予測は複数の構成要素からまとめられ得、複合マルチビーム効果は複数の原因によって引き起こされ得る。複合マルチビーム効果は、既定のラスタ配列からの複数の1次ビームまたは2次ビームのラスタ配列の偏差、ならびに1次ビームまたは2次ビームの、例えば、3本または全ての1次ビームまたは2次ビームの焦点の少なくとも1つの形状またはサイズの偏差の両方を含む、図5の文脈で示される効果を指す。
【0116】
ステップSERにおいて、ウェーハ7の縁部43からの検査位置の距離から複合マルチビーム効果VKRが予測される。概して、サンプル縁部43に対する検査部位の位置は、あらかじめ知られた情報である。それゆえ、縁部効果、および非一様な帯電の結果としての歪みを通じてラスタ配列41の歪みを考慮することが可能である。
【0117】
第4の実施形態に係る方法の一例は、検出経路および照明経路の改善された調整のためのパラメータの検出および記憶、ならびに物体の縁部からの距離に基づく異なる検査部位のための一様な引き出し電界のための電圧の設定を包含する。次に、ウェーハの検査中に、所定の、および記憶されたパラメータから、次の検査部位に応じて、一様な引き出し電界のための電圧の設定を含む、検出経路および照明経路の両方の改善された調整の最適パラメータが決定され、設定される。
【0118】
ステップSEDにおいて、検査位置に関する先験的情報から、例えば、設計情報、CAD情報、または先行測定から、複合マルチビーム効果VKAが予測される。
【0119】
第5の実施形態では、マルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための方法であって、この枠内では、先験的情報に応じて、照明経路および検出経路の構成要素、ならびにマルチビームシステムの一様な引き出し電界のための電圧のパラメータが設定される、マルチビームシステムおよび方法が提供される。一例では、ステップSEDにおいて、少なくとも次の検査位置における物体の組成の決定が実施される。この場合、物体の組成の決定は、例えば、検査位置においてウェーハ内に形成された半導体構造に関するCAD情報からの、物体の材料組成の決定を含む。例として、物体7の可能な非一様または局所的帯電効果がCAD情報から決定され得る。組成に基づいて、予想される複合マルチビーム効果の決定、および複合マルチビーム効果を低減するか、もしくは完全に回避するために適したマルチビームシステムのパラメータの設定が行われる。代替例では、先験的情報は、例えば、他のウェーハ上の、同様の検査部位における以前の検査からの情報から成る。
【0120】
先行測定はさらなる先験的情報を形成する。例として、電荷が先行測定に起因して生じ得、漏れ電流を通じてゆっくりと消散し得るのみである。すでに走査された、隣接した検査部位の帯電はラスタ配列内の歪みを生じさせ、この情報は、偏差の原因を決定する際に考慮され得る。ステップSEHにおいて、先行検査タスク、例えば、マルチビームシステム1の現在の状態の検出からの情報から、または先行検査位置における先行測定から予想されるウェーハの帯電効果から、複合マルチビーム効果VKSが予測される。この場合には、例えば、先行検査位置に対する次の検査位置の位置および距離が決定され、評価され得る。加えて、先行するサンプル帯電からの放電効果を考慮するために、以前の検査タスクに対する時間差が評価され得る。
【0121】
多数のさらなる複合マルチビーム効果はウェーハの表面25上の隣接した検査位置に依存し、したがって、原理的に、あらかじめ知られることが見出された。第6の実施形態では、マルチビームシステム、およびマルチビームシステムを動作させるための方法であって、この枠内では、隣接した検査位置または先行検査タスクに応じて、マルチビームシステムの一様な引き出し電界113のための電圧を含む照明経路および検出経路の構成要素のパラメータが設定される、マルチビームシステムおよび方法が提供される。一例では、マルチビームシステムは、この目的を達成するための制御ユニットを備え、制御ユニットは、例えば、同じ物体上の先行検査によって生じた検査位置における物体の現在の電荷分布を該検査位置における測定または検査前に決定する。一例では、ステップSEHは、同じ物体上の先行検査によって生じた検査位置における物体表面の現在の電荷分布を決定することを含む。例として、ウェーハの領域は導電接続され、帯電効果を、検査部位を越えて散乱させ得る。例として、ウェーハの領域は、比較的長い期間にわたって帯電効果を蓄えるキャパシタンスを含み得る。現在の電荷分布に基づいて、予想される複合マルチビーム効果の決定、および複合マルチビーム効果を低減するか、もしくは完全に回避するために適したマルチビームシステムのパラメータの設定が行われる。同じウェーハ上の同じ検査位置に繰り返し標的を定める方法によって特別例が形成される。
【0122】
ステップSECにおいて、縁部からの検査位置の距離、先験的情報、または先行検査タスクからの情報からの予測VKR、VKA、またはVKSが組み合わせられ、組み合わせた複合マルチビーム効果VKKが予測される。
【0123】
ステップPEにおいて、マルチビームシステム1を駆動するために最適化されたパラメータが決定される。マルチビームシステム1の作動点APから開始して、マルチビームシステムはパラメータの特定のセットを用いて動作させられる。作動点APのパラメータは、例えば、例として、ビーム電流、ビームピッチもしくは既定の倍率、走査プログラム、引き出し電界のサイズ、または焦点位置を設定するための、電磁または静電構成要素の電流または電圧を記述する。
【0124】
ステップPEIにおいて、理想的な検査位置における次の検査タスクに応じて作動点APに係る標準パラメータを決定する。
【0125】
ステップPECにおいて、予測される複合マルチビーム効果VKKからパラメータの少なくとも1つのパラメータ値の変更を決定する。複合マルチビーム効果を最小限に抑えるために適したパラメータ変更の例が、本発明の第1の実施形態と併せて以上においてさらに列挙されている。例として、決定は、以前に決定され、記憶された最適パラメータ値に基づいて実施され、最適パラメータ値から、例えば、補間によって、パラメータ値の変更が決定される。
【0126】
ステップPCにおいて、次の検査位置における次の検査タスクに従って、作動点APに係る、およびステップPECにおけるパラメータ変更を含む現在のパラメータPAが伝送され、決定されたパラメータ値を用いてマルチビーム顕微鏡1が駆動される。
【0127】
ステップINにおいて、次の検査位置における次の検査タスクが実施される。この目的を達成するために、ウェーハ7の次の検査位置はマルチビームシステム1の光軸105に対してセンタリングされ、ウェーハ7の表面25はマルチビームシステム1の設定平面または焦平面101内に整列させられる。現在のパラメータ値PAを用いてマルチビームシステム1が動作させられ、検査タスクが実施される。例として、検査位置におけるウェーハ表面の像部分は、5nmよりも良好、2nmよりも良好、またはさらに、1nmよりも良好な高分解能および結像忠実度をもって取り込まれる。
【0128】
ステップINと同時に、ステップMにおいて、2次粒子ビームのラスタ配列、ならびに2次ビーム経路の少なくとも1つの焦点の形状またはサイズが監視される。監視は、マルチ粒子システム(multi-particle system)1の空間分解検出器207の時間平均化された信号を獲得することを通じて実施される。物体表面25の走査中の時間平均化の結果、物体表面25上の複数の物体構造にわたる2次粒子の信号の領域平均化が達成され、2次粒子ビームの現在のラスタ配列、ならびに2次粒子ビームの少なくとも1つの焦点の形状またはサイズが1nm未満の高精度をもって確実に検出され得る。2次粒子ビームの現在のラスタ配列、ならびに2次粒子ビームの少なくとも1つの焦点の形状またはサイズの取り込みは検査タスクの間に複数回、例えば、10回または100回、実施され得る。
【0129】
ステップQにおいて、ステップMの監視結果から現在の複合マルチビーム効果が決定される。検査タスク中の現在の複合マルチビーム効果が所定の閾値を超えた場合には、マルチビームシステム1の設定パラメータを継続的に変更または更新するようステップPEへ信号が発せられ、ステップPEはステップINの検査タスク中に繰り返される。例として、したがって、これは、一様な引き出し電界のための電圧を含む、検出経路および照明経路の両方を駆動する方法が高速自動焦点のために用いられることも可能にする。概して、これは、検出経路および照明経路の両方を調整する方法が動的補正のために用いられることを可能にする。動的補正に関しては、国際特許出願国際公開第2021239380号が参照され、同出願は参照により本開示に組み込まれる。
【0130】
ステップESにおいて、結果、例えば、検査位置におけるウェーハ表面の部分のデジタル像が最後に記憶される。本例では、デジタル像情報は監視ステップMからの進行中の情報と共に記憶される。2次粒子ビームのラスタ配列、ならびに2次粒子ビームの少なくとも1つの焦点の形状またはサイズに関する進行中の情報はデジタル像処理およびデータ評価の後続のステップDVにおいて考慮される。
【0131】
第1の実施形態に係るマルチビームシステム1、および図9に係るマルチビームシステム1を用いるための方法を用いて、物体7の表面25の特定の検査位置のために、一様な引き出し電界113のための電圧の設定を含む、検出経路11および照明経路13の両方の改善された調整が促進される。検査タスクを実施するための作動点APにおいてマルチビームシステム1を設定するための改善されたパラメータを決定するための方法が第7の実施形態において説明される。本方法は、マルチビーム顕微鏡、および物体との相互作用に関する2つの根本的に異なる情報項目を獲得し、評価するという基礎に基づく。第1に、複数の2次ビーム9のラスタ配列41が検出され、評価される。第2に、2次ビーム9の少なくとも1つの焦点15の形状およびサイズが検出され、評価される。また、2次ビーム9の複数の焦点15の、例えば、少なくとも3つの焦点の形状およびサイズを評価することも可能である。合わせて、これらの偏差は複合マルチビーム効果と称される。
【0132】
どちらの情報項目も、物体7の表面25の部分の結像を走査する間に獲得される。この場合、J本の1次ビーム3の複数のJ個の焦点5が物体7の表面25にわたって走査方式で移動させられ、物体表面25上の複数のJ個の走査位置が同時に照明される。この目的を達成するために、複数のJ本の1次ビーム3の走査偏向のための第1の偏向ユニット110が1次経路または照明経路13内に設置されている。J本の1次ビーム3のJ個の焦点5の各入射場所は、J本の1次ビーム3を用いた走査照射の短い期間の間に、検出器207上に収集され、結像される(imaged)、2次電子のための線源場所を形成する。2次電子の複数のJ個の線源場所は、J本の1次ビームを用いた走査照射に従って物体表面にわたって同期的に移動する。したがって、検出器上のJ本の2次ビームの焦点15がJ個の同じ検出場所にとどまるよう、J個の線源場所から発したJ本の2次ビーム9の走査偏向のための第2の偏向ユニット222が、検出経路または2次経路11とも称される、2次電子の結像経路内に設置されている。この場合、2次経路内の第2の偏向ユニット222は1次経路内の第1の偏向ユニット110と同期させられる。
【0133】
複数のJ本の1次ビーム3を用いた走査照明、および走査照明と同期した複数のJ本の2次ビーム9の信号の獲得の結果として、複数のJ個の2次元デジタル像情報項目に変換された複数のJ個の時系列データストリームが獲得される。各像情報項目は、1次ビーム3の焦点5による物体表面25の空間分解された照明による2次電子の空間分解された発生率を表現する。この場合、2次電子の発生率は、局所的表面条件、例えば、構造化されたウェーハ表面の局所的材料組成に依存する。検出経路および照明経路の両方を調整するための焦点自体の形状およびサイズならびに焦点のラスタ配列41に関する情報は、物体表面の構造化の影響が、表面上の複数の走査位置を平均化することによって低減されるよう、時間平均化された方式で獲得される。それゆえ、本方法は複数の物体のために可能にされ、特別な測定または校正物体は必要とされない。特に、検出経路および照明経路の両方を調整する方法は物体表面上の検査位置における検査タスク中にも実施され得る。
【0134】
本方法の一例では、割り当てられた検査位置への選択された設定パラメータの付与、および付与の記憶が行われる。ウェーハ検査方法は、次に、ステップSIにおいて次の検査位置に標的を定めること、それに続き、ステップSEにおいて、次の検査位置に基づいて、検査位置における最適な結像のためのマルチビーム顕微鏡の設定パラメータを決定すること、およびステップPEにおける決定された設定パラメータの設定を含む。この場合、ステップSEは、少なくとも1つの検査位置に付与された、マルチビーム顕微鏡の既定の設定パラメータをロードすることをさらに含む。一例では、ステップSEは、次の検査位置におけるマルチビーム顕微鏡の既定の設定パラメータを決定することを含む。一例では、2つの隣接した検査位置に付与された少なくとも2つの設定パラメータから次の検査位置における最適な結像のための設定パラメータの補間が行われる。したがって、本方法は、好ましくは、繰り返される、または同様の検査位置における、物体、特に、ウェーハ7の表面25の部分を繰り返し検査することに適する。
【0135】
さらなる実施形態では、検査位置に各々付与された、マルチビーム顕微鏡の既定の異なる設定パラメータに基づく検査位置の最適化が行われる。それゆえ、マルチビーム顕微鏡1の設定パラメータへの頻繁な変更を防止することが可能である。例として、多数の検査位置に各々付与された、マルチビーム顕微鏡の既定の異なる設定パラメータに基づく一連の検査位置の最適化が行われる。例として、局所的帯電効果に基づく一連の検査位置の最適化が行われる。1つの場合には、連続した検査位置は、既存の局所的電荷の長期的な補償を有するために、狙いを定めた仕方で隣接して配置され得る。別の場合には、連続した検査位置は、帯電効果の原因となる局所的電荷が漏れ電流を通じてできるだけ長く放電されることを可能にするために、狙いを定めた様態で最大間隔をもって配置され得るであろう。
【0136】
複数の1次および2次粒子ビーム(3、9)を有するマルチビームシステム1を用いたウェーハ検査方法は、以下のステップ:
- 変位台500を用いてウェーハ7を受容するステップと、
- ウェーハ7の表面25上の一連の検査位置(33、35)における一連の検査タスクを決定するステップと、
- 検査タスクの検査位置(33、35)に基づいて、検査位置(33、35)における最適な結像を目的とするマルチビームシステム1の設定パラメータを決定するステップと、
- マルチビームシステム1の設定パラメータを、検査タスクの決定された設定パラメータに変更するステップと、
- 高分解能、および像記録時間T2>100msをもって検査位置(33、35)を走査することによって検査タスクを実施するステップと、
を含む。
【0137】
一例では、設定パラメータを決定するステップは、検査位置(33、35)に標的を定めること、ならびにT1<T2、好ましくは、T1<T2/100、またはT1<T2/1000の像記録時間をもって検査位置を迅速に走査することによって検出器カメラ207を用いて複数の2次粒子ビーム9のラスタ配列41の時間平均化された第1の検査像の像を記録すること、を含む。第1の検査像は、複合マルチビーム効果を決定するために分析され、それから、複合マルチビーム効果が少なくとも部分的に補償されるよう設定パラメータが決定される。
【0138】
一例では、設定パラメータを決定するステップは、基準位置に標的を定めること、およびT1の像記録時間をもって基準位置を迅速に走査することによって検出器カメラ207を用いて複数の2次粒子ビーム9のラスタ配列41の時間平均化された第1の基準像(first reference image)の像を記録すること、をさらに含む。ラスタ配列41の第1の検査像の分析はラスタ配列41の基準像との比較を包含する。基準位置は、先行検査位置、または変位台500上に追加的に配置された基準物体上の基準位置であり得る。
【0139】
一例では、本方法は、決定された設定パラメータを用いて検査位置(33、35)を迅速に走査することによってラスタ配列41の時間平均化された第2の検査像のさらなる像を記録することを含み得る。第2の検査像の分析から補償の成功が決定され得る。残留複合マルチビーム効果が決定され得、残留複合マルチビーム効果が少なくとも部分的に補償されるよう、改善された設定パラメータの更新された決定が行われ得る。決定された設定パラメータは検査位置(33、35)に付与され得、検査位置(33、35)に付与された設定パラメータを用いた同じ検査位置(33、35)における、例えば、少なくとも1つの第2のウェーハの、繰り返し検査が行われ得るよう、記憶され得る。概して、マルチビーム顕微鏡1の、既定の、または記憶された設定パラメータがウェーハ検査タスクのために用いられ得る。一例では、設定パラメータは、少なくとも2つの隣接した基準位置における少なくとも2つの既定の、または記憶された設定パラメータを補間することによって決定され得る。さらに、あらかじめ知られた少なくとも1つの情報項目が、設定パラメータを決定する際に考慮され得、あらかじめ知られた情報は、検査位置(33、35)における、または隣接した検査位置(33、35)における先行測定からの情報に加えて、検査位置(33、35)におけるウェーハ7の組成に関するCAD情報を包含する。加えて、本方法は、ウェーハ7の縁部からの検査位置(33、35)の距離を決定することを含み得る。
【0140】
一連の検査タスクを最適化するという枠内で、一連の検査位置(33、35)の各々のための最適な結像のためのマルチビームシステム1の一連の設定パラメータの決定は、マルチビームシステム1の設定パラメータにおける変更数が最小限に抑えられるように変更され得る。
【0141】
一例では、検査部位に応じた、一様な引き出し電界のための電圧の設定を含む、検出経路および照明経路の両方の改善された調整のパラメータを決定することが反復的に実施される。図10に、本方法が示されている。第1のステップSIは図9に係るステップSIと同一である。ステップSIに続いて、ステップSMにおいて、次の検査位置におけるパラメータの補正または変更を行うことなく、像が取得される(M1)。既定または期待ラスタ配列からの複数の2次ビーム9のラスタ配列41の偏差が検出され、評価され、焦点15の既定または期待形状およびサイズからの少なくとも1つの焦点15の形状およびサイズの偏差が同時に検出され、評価される。典型的には、3つの焦点15の既定または期待形状およびサイズからの少なくとも3つの焦点15の形状およびサイズの偏差が検出される。上述されたように3、偏差は、物体7の組成の影響を解消するための複数の1次ビーム3を用いた物体表面25の走査中の時間平均化の枠内で検出される。
【0142】
検査ステップINの最中、ラスタ配列41は物体表面25にわたって同期的に変位させられ、物体表面25の、例えば、ウェーハの像データが獲得される。偏向デバイス222を用いた走査防止は、ラスタ配列41が検出器207上で定位置に固定したままとどまること、または静止したままとどまることを確実にする。複数のJ個の像データ点のこの並行獲得は、例えば、100MHzの走査周波数FSにおいて実施される。従来の走査周波数のさらなる例が以上において指定されている。
【0143】
一例では、走査周波数はステップM1の最中に増大させられる。例として、走査周波数FSは、10倍に、例えば、50MHzから500MHzへ、または100MHzから1GHzへ増大させられ得る。増大させられた走査周波数の結果、物体表面15上のより大きい焦点領域にわたってデータ記録の平均化が実施される。
【0144】
偏差からステップQ1において偏差の推定原因が決定される。ステップPEにおいて、一様な引き出し電界113のための電圧を含む、照明経路および検出経路を調整するために適したパラメータが決定される。様々な偏差、具体的には、複数の2次ビームのラスタ配列41の、ならびに焦点15の形状およびサイズの偏差の検出は、原因に関するより的を絞った結論、例えば、照明経路13の乱れが存在し、1次ビーム3の複数の焦点15の偏差が物体表面25上にすでに存在するのかどうか、あるいは物体7の縁部43またはトポグラフィが偏差の原因であるのかどうか、全体的または局所的帯電効果が存在するのかどうか、あるいは検出経路11の乱れが存在するのかどうかが導き出されることを可能にする。
【0145】
ステップZSにおいて、例えば、追加の検出器からの、さらなる情報、または先験的情報を用いて、偏差の推定原因を決定することができる。さらなる検出器は、基準区域からのサンプル表面の距離を決定するための距離センサを含み得る。このような距離センサの使用は、例えば、物体7の全体的帯電と純粋に機械的な焦点ずれとの間のより良好な区別が行われることを可能にする。さらなる例は、物体表面25の近傍における電界または磁界強度を測定するためのフィールドセンサを含む。先験的情報は以上において図9の文脈で説明されており、検査位置に関するCAD情報、または同様の物体もしくは同様の検査部位の以前の測定からの記憶された情報を含み得る。
【0146】
偏差の推定原因が決定された後に、ステップPEにおいて、一様な引き出し電界のための電圧を含む、検出経路および照明経路の補正方策または調整が決定される。ステップSMおよびPEはまた、反復的な仕方で複数回実施され得る。例として、微補正が第2のステップにおいて算出される。最後に、ステップINにおいて、マルチビームシステムが、変更されたパラメータを用いて駆動され、同じ検査部位において検査が実施される。
【0147】
検査ステップINと同時に、ステップMにおいて、偏差の決定が再び繰り返され得る。偏差が所定の許容限度を超えた場合には、ステップQにおける原因の決定、ならびに検出経路および照明経路を調整するための新たなパラメータの決定が繰り返される。これに続いて上述のステップESおよびDVが行われる。
【0148】
第7の実施形態のさらなる例では、物体を検査するためのマルチビーム顕微鏡を設定するための方法は、以上において列挙されたステップの変形を含む。ステップSMにおいて、例えば、第2の期間の10分の1または100分の1、1000分の1または10000分の1の長さである、第1の期間T1内に物体の基準位置を迅速に走査することによって検出器カメラを用いて複数の1次ビームのラスタ配列の時間平均化された第1の基準像の像が最初に取得され、第2の期間は、物体の表面の部分の高分解能像を記録するための期間に対応する。例として、第1の期間T1は1ms~100msであることができる。例として、第2の期間T2は、およそ0.8s、1s、またはそれより長期であることができる。
【0149】
例えば、1ms~100msのT1内に検査位置を迅速に走査することによって検出器カメラを用いて複数の1次ビームのラスタ配列の時間平均化された第2の検査像の像が記録される。ラスタ配列の第2の検査像はラスタ配列の第1の、または基準像と比較され、ステップQ1またはステップQにおいて、基準像に対するラスタ配列の偏差または差が分析される。ステップPEにおいて、マルチビーム顕微鏡を検査部位に適合させるためのマルチビーム顕微鏡の選択された設定パラメータの変更の決定が行われる。選択された設定パラメータの変更が補正方策として実施される。補正方策の実施に続いて、本方法は、1ms~100ms内に検査位置を迅速に走査することによる検出器カメラを用いた複数の1次ビームのラスタ配列の時間平均化された第2の基準像の像の更新された記録、ならびにマルチビームシステムの最適化された設定パラメータの更新された分析および決定を追加的に含み得る。ステップINにおいて、例えば、100ms~2000ms内に検査位置を低速で走査することによって高空間分解能をもって物体7の表面25の検査像が記録される。この場合には、選択された設定パラメータは、以下のパラメータ:
- 変位台500を用いたウェーハ7の再位置合わせ、
- ウェーハ7の表面25における引き出し電界113の電界プロファイルに影響を及ぼすために電極(151、153、505)を駆動すること、
- ラスタ配列41のオフセットを補償するためにビーム偏向器(107、110、222)を駆動すること、
- ラスタ配列41のスケールを調整することを目的としてマルチビームシステムの作動点を変更すること、
- デジタル像の評価を変更すること、
のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0150】
それゆえ、ウェーハ7を検査するためにマルチビームシステム1を設定する方法は、以下のステップ:
- ウェーハ7上の基準位置を第1の時間T1内に迅速に走査することによって検出器カメラ207を用いて複数の粒子ビームのラスタ配列41の時間平均化された第1の基準像の像を記録するステップと、
- 検査位置(33、35)に標的を定めるステップと、
- 検査位置(33、35)を第1の時間T1内に迅速に走査することによって検出器カメラ207を用いて検査位置(33、35)における複数の粒子ビームのラスタ配列41の時間平均化された第1の検査像の像を記録するステップと、
- ラスタ配列41の第1の検査像およびラスタ配列41の第1の基準像を分析し、検査部位(33、35)における最適な結像を目的としてマルチビームシステム1を調整するための選択された設定パラメータを導出するステップと、
- 選択された設定パラメータを用いてマルチビームシステム1を設定するステップと、
- 第2の時間T2内の検査位置(33、35)の低速走査によって高空間分解能をもってウェーハ7の表面25の検査像を記録するステップであって、T1<T2、好ましくは、T1<T2/10、例えば、T1<T2/100である、ステップと、
を含む。
【0151】
任意選択的に、変更された調整パラメータの成功を検証するために、選択された設定パラメータを用いてマルチビームシステム1を設定した後に基準位置を第1の時間T1内に迅速に走査することによって検出器カメラ207を用いて複数の1次ビームのラスタ配列41の時間平均化された第2の基準像の像が再び記録され得る。基準位置の代わりに、更新された像は、ラスタ配列41の時間平均化された第2の検査像のために、検査位置(33、35)においてさえも記録され得る。
【0152】
ラスタ配列の、ならびにビーム焦点の形状およびサイズの偏差の原因は動的変更を受け得る。例として、サンプルの全体的帯電は、複数の1次ビームによる照明が増大したときに増大し、結像の間にラスタ配列の偏差の増大を生じさせ得る。このような動的効果は本発明の第8の実施形態において決定され、例えば、ラスタ配列の、ならびにビーム焦点の形状およびサイズの変化または偏差の速度が考慮される。これは、ラスタ配列の、ならびにビーム焦点の形状およびサイズの偏差が動的に補正されることを可能にし、検出経路および照明経路を調整するためのパラメータが物体表面の像部分の取り込みの間に所定の仕方で動的に変更されることを可能にする。図11に、一例が示されている。図11aは、例えば、ウェーハの縁部において、ラスタ配列の歪みおよびオフセットを生じさせる、時間変動する帯電効果を示す。検査タスクが実施される前に、先行検査タスクからの電荷903がすでに存在しており、電荷は、放電効果の結果、低速で減少している。時間t0における像データ獲得の開始に伴い、複数の1次ビームによるウェーハ表面の照明および物体表面25からの2次粒子の放出の結果として、物体表面25の新たな帯電905が同時に開始する。帯電はまた、時間t1における像データ取り込みの最後に向かって飽和へ移行して行き得る。複合マルチビーム効果が帯電と並行して増大する。複合マルチビーム効果は、例えば、準静的偏向器107の好適な同期駆動によって検査タスクの期間Ts中に少なくとも部分的に補償され得る。この目的を達成するために、準静的偏向器107のための可変パラメータとしての制御信号が電荷905の予想時間プロファイルから決定され、準静的偏向器107に供給される。図11bに、同期制御信号907の一例が示されている。
【0153】
複数の2次ビームのラスタ配列、ならびに2次ビームの焦点の少なくとも1つの形状またはサイズを測定するために、本発明は、検査タスクの最中に獲得され得る時間平均化された測定信号を用いる。この場合には、測定は、高分解能結像のためにも用いられる同じ検出器によって実施され得、上述されたように実施される時間平均化は、アナログ-デジタル変換器のサンプリング速度、または走査周波数、あるいはその両方を通じて設定される。代替的に、最初にシンチレータを通じて2次電子の信号を光に変換する検出システムの場合には、ビーム分割器または偏向器が、変換器の下流に配設された光光学ユニット内に挿入され、発生した光の少なくとも一部をCMOSカメラ上へ向け得る。CMOSカメラは、通例、例えば、10~100フレーム/秒のより低いリフレッシュ速度を有し、これにより、平均化は、低減されたリフレッシュ速度によって得られる。代替的に、電子-光学経路は、第9の実施形態では、投影光学ユニット205内で、例えば、変更された偏向系224を通じて、分割され得る。図12は、ビーム偏向器224を包含する投影光学ユニット205を有するマルチビームシステム1の検出システムを示す。像の取り込みの最中には、ビーム偏向器224は、複数のJ本の2次電子ビーム9が第1の検出器207aの方向に向けられるように設定され、その検出区域上に焦点15aが形成される。例として、検出器207aは、J本の2次ビームの各々のためにちょうど1つのフォトダイオードを有する非常に高感度のフォトダイオードアレイを含み得る。ラスタ配列ならびに焦点スポットの形状およびサイズを検出するために、複数のJ本の2次ビームは、偏向器224を用いて第2の検出器207bの方向に向けられ、該第2の検出器は、例えば、シンチレータ層を有する高分解能CMOSカメラによって形成され得る。そこで、ラスタ配列ならびに焦点15bの形状およびサイズは高分解能をもって検出され得る。2本の検出アーム内の結像スケールは、例えば、第2の検出器207bの照明が第2の検出器207bの直径に一致させられるよう、レンズ201aおよび210bを用いて、ならびに間隔を用いて、プロセス内で異なって設定され得る。この場合、投影システム205aおよび205bの間の切り換えは静電偏向器224を通じて非常に迅速に実施され得る。
【0154】
本発明は以下の条項によって記述され得る。ただし、本発明は条項に限定されない。
条項1:
複数の粒子ビーム(3、9)を有するマルチビームシステム(1)を用いるウェーハ検査方法であって、方法が、以下のステップ:
- 変位台500を用いてウェーハ7を受容するステップと、
- ウェーハ(7)の表面(25)上の一連の検査位置(33、35)における一連の検査タスクを決定するステップと、
- 検査タスクの検査位置(33、35)に基づいて、検査位置(33、35)における最適な結像を目的とするマルチビームシステム(1)の設定パラメータを決定するステップと、
- マルチビームシステム(1)の設定パラメータを、検査位置における検査タスクの決定された設定パラメータに変更するステップと、
- 高分解能および像記録時間T2>100msをもって検査位置(33、35)を走査することによって検査タスクを実施するステップと、
を含む方法。
条項2:
設定パラメータを決定するステップが、以下のステップ:
- 第1の検査位置(33、35)に標的を定めるステップ、
- T1<T2、好ましくは、T1<T2/100、またはT1<T2/1000の像記録時間をもって検査位置を迅速に走査することによって検出器カメラ(207)を用いて複数の粒子ビーム(3、9)のラスタ配列(41)の時間平均化された第1の検査像の像を記録するステップ、
- 複合マルチビーム効果を決定することを目的として第1の検査像を分析するステップであって、複合マルチビーム効果が、複数の粒子ビーム(3、9)の入射場所(5、15)の歪み、ならびに粒子ビーム(3)の焦点(5、15)の形状およびサイズの変化を含む、ステップ、
- 複合マルチビーム効果が第1の検査位置(33、35)において少なくとも部分的に補償されるよう設定パラメータを決定するステップ、
を含む、条項1に記載の方法。
条項3:
設定パラメータを決定するステップが、
- 基準位置に標的を定めること、
- T1の像記録時間をもって基準位置を迅速に走査することによって検出器カメラ(207)を用いて複数の粒子ビーム(3、9)のラスタ配列(41)の時間平均化された基準像の像を記録することをさらに含み、ラスタ配列(41)の第1の検査像を分析するステップがラスタ配列(41)の基準像との比較を含む、条項2に記載の方法。
条項4:
- 決定された設定パラメータを用いて第1の検査位置(33、35)を迅速に走査することによってラスタ配列(41)の時間平均化された第2の検査像の像を記録することと、
- 複合マルチビーム効果を決定することを目的として第2の検査像を分析することと、
- 複合マルチビーム効果が少なくとも部分的に補償されるよう、改善された設定パラメータを再決定することと、
をさらに含む、条項2または3に記載の方法。
条項5:
- 決定された設定パラメータを第1の検査位置(33、35)に付与し、設定パラメータの付与を記憶することをさらに含む、条項1~4のいずれか1項に記載の方法。
条項6:
第1の検査位置(33、35)に付与された設定パラメータを用いた第1の検査位置(33、35)における少なくとも1つの第2のウェーハの繰り返し検査をさらに含む、条項5に記載の方法。
条項7:
- マルチビーム顕微鏡(1)の既定の設定パラメータをロードすることをさらに含み、既定の設定パラメータがウェーハ上のそれぞれの基準位置に付与され、検査位置(33、35)のための設定パラメータが既定の設定パラメータから決定される、条項1に記載の方法。
条項8:
設定パラメータが、少なくとも2つの隣接した基準位置における少なくとも2つの既定の設定パラメータを補間することによって決定される、条項7に記載の方法。
条項9:
一連の検査タスクの決定が、以下のステップ:
- 検査位置(33、35)の各々における最適な結像を目的とするマルチビームシステム(1)の一連の設定パラメータを決定するステップ、
- マルチビームシステム(1)の設定パラメータの変更の数が最小限に抑えられるようマルチビームシステム(1)の一連の設定パラメータに基づいて一連の検査タスクを最適化するステップ、
を含む、条項1に記載の方法。
条項10:
設定パラメータを決定する際に、少なくとも1つの以前に知られた情報項目が考慮され、以前に知られた情報項目が、検査位置(33、35)におけるウェーハ(7)の組成に関するCAD情報、隣接した検査位置(33、35)における以前の検査タスク、または検査位置(33、35)における以前の測定もしくは検査のうちの少なくとも1つを含む、条項1に記載の方法。
条項11:
設定パラメータの決定がウェーハ(7)の縁部からの検査位置(33、35)の距離の決定を含む、条項1に記載の方法。
条項12:
選択された設定パラメータが、マルチビームシステム(1)の照明経路(13)内および検出経路(11)内の構成要素のパラメータを含み、以下のパラメータ:
- 変位台(500)を用いて第1の検査位置(33、35)においてウェーハ(7)を再位置合わせすること、
- ウェーハ(7)の表面(15)における第1の検査位置(33、35)における引き出し電界(113)に影響を及ぼすことを目的として補正電極を駆動すること、
- ウェーハ(7)の表面(25)上のラスタ配列(41)のオフセットを補償することを目的として粒子ビーム(3)の照明経路内の偏向装置(107、110)を駆動すること、
- ラスタ配列(41)のスケールを調整することを目的としてマルチビームシステム(1)の作動点を変更すること、
- デジタル像の評価を変更すること、
のうちの少なくとも1つを含む、条項1~11のいずれか1項に記載の方法。
条項13:
複合マルチビーム効果(41)を決定するための方法であって、
- ウェーハ(7)の構造化表面(25)の部分を走査し、ウェーハ(7)の表面構造の像コントラストを平均化することによって検出器カメラ(207)を用いて多数の粒子ビーム(3、9)のラスタ配列(41)の時間平均化された検査像の像を記録することと、
- 既定のラスタ配列(41)からの複数の粒子ビームの入射場所(5、15)のラスタ配列(41)の少なくとも1つの偏差、ならびに粒子ビームの焦点(5、15)の形状またはサイズの変化を決定することを目的として検査像を分析することと、
を含む方法。
条項14:
像コントラストが、T1<T2、好ましくは、T1<T2/10、例えば、T1<T/100未満の像記録時間をもってウェーハ(7)の表面(25)の部分を迅速に走査することによって平均化され、T2が、高空間分解能、および2nm、1nm、もしくはそれ未満のピクセル寸法をもって表面(25)の部分の像を記録するための時間に対応する、条項13に記載の方法。
条項15:
T1が、100ms未満、好ましくは、10ms未満である、条項14に記載の方法。
条項16:
ウェーハ(7)の表面構造の像コントラストの平均化が、検出信号を時間的に平均化することによって実施される、条項13に記載の方法。
条項17:
ラスタ配列(41)の偏差が、以下の誤差:ラスタ配列(41)の個々のビームのスケール誤差(41a)、オフセット誤差(41b)、歪み(41c)、ねじれ(41g)、局所的偏差(41d)のうちの少なくとも1つを含む、条項13~16のいずれか1項に記載の方法。
条項18:
少なくとも3つの焦点(5、15)の形状またはサイズの変化が、以下の収差:一定非点収差、ラスタ配列(41)に対する非点収差の線形プロファイルを有する線形非点収差、一定焦点収差、ラスタ配列(41)に対する焦点収差の線形プロファイルを有する線形焦点収差のうちの少なくとも1つを含む、条項13~17のいずれか1項に記載の方法。
条項19:
複数の1次粒子ビーム(3)および複数の2次粒子ビーム(9)を有するマルチビームシステム(1)であって、
- 空間分解検出器(207)と、
- ウェーハ(7)の構造化表面(25)の部分の一括走査を目的として複数の1次および2次粒子ビーム(3、9)を偏向させるための少なくとも1つの偏向系(110、222)と、
- 検出器(207)および偏向系(110、222)を駆動するための制御デバイス(800)と、を備え、
制御デバイス(800)および検出器(207)が、複数の2次粒子ビーム(9)のラスタ配列(41)の時間平均化された検査像を取り込み、および/または2nm、1nm、もしくはそれ未満の空間分解能をもって構造化表面(25)の部分のデジタル像を取り込むように構成されている、マルチビームシステム(1)。
条項20:
制御デバイス(800)が、ラスタ配列(41)の時間平均化された検査像を取り込むための第1の動作モードにおいて、偏向系(110)を用いて複数の1次粒子ビーム(3)をウェーハ(7)の構造化表面(25)の部分にわたって時間T1内に迅速に走査し、構造化表面(25)の部分のデジタル像を記録するための第2の動作モードにおいて、偏向系(110)を用いて複数の1次粒子ビーム(3)をウェーハ(7)の構造化表面(25)の部分にわたって時間T2内に低速で走査するように構成されており、T1<T2、好ましくは、T1<T2/10、例えば、T1<T2/100である、条項19に記載のマルチビームシステム(1)。
条項21:
検出器(207)が第1の検出器(207a)および第2の検出器(207b)を包含し、マルチビームシステム(1)が、制御ユニット(800)によって駆動され、動作中に、複数の2次粒子ビームを第1の検出器(207a)上または第2の検出器(207b)上のどちらかへ偏向させるように構成されたビーム偏向器(224)を有する検出ユニット(200)を備える、条項20に記載のマルチビームシステム(1)。
条項22:
ビーム偏向器(224)が、動作中に、複数の2次粒子ビームを第1の検出器(207a)上または第2の検出器(207b)上のどちらかの定位置に維持するように構成されている、条項21に記載のマルチビームシステム(1)。
条項23:
検出器(207)が、複数の2次粒子ビーム(9)のラスタ配列(41)の時間平均化された検査像の、および2nm、1nm、もしくはそれ未満のピクセル寸法を有する高空間分解能による構造化表面(25)の部分のデジタル像の同時取り込みのために設計されている、条項19に記載のマルチビームシステム。
条項24:
検出器(207)が、電子から光子を発生させる電子変換要素を包含し、光子が、ウェーハ表面(25)の部分を取り込むための第1の高速光検出器、およびラスタ配列(41)の検査像を取り込むための第2の低速光検出器を同時に用いて検出される、条項23に記載のマルチビームシステム。
条項25:
制御デバイス(800)が、ラスタ配列(41)の検査像から、複数の粒子ビーム(3、9)の入射場所の変化、ならびに粒子ビーム(3、9)の焦点の形状またはサイズの変化に存する複合マルチビーム効果を決定し、複合マルチビーム効果に基づいてマルチビームシステム(1)の設定パラメータの変更を導出し、設定するようにさらに構成されている、条項19~24のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
条項26:
制御デバイス(800)が、マルチビームシステム(1)の一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素を含む、照明経路(13)および検出経路(11)の複数の構成要素に接続されており、複合マルチビーム効果を低減することを目的として、一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素を含む、照明経路(13)および検出経路(11)の構成要素の設定パラメータを駆動するように構成されている、条項25に記載のマルチビームシステム(1)。
条項27:
マルチビームシステム(1)が、駆動を目的とする制御デバイス(800)に接続された以下の構成要素:
- 複数の1次粒子ビーム(3)のための準静的偏向器(107)と、
- 1次粒子ビーム(3)および2次粒子ビーム(9)の走査偏向のための動的偏向器(110)と、
- 2次粒子ビーム(9)の走査偏向のための動的偏向器(222、224)と、
- 可変集束効果を有する静電または磁気レンズ(306.2、307、103.2、102)と、
- 1次粒子ビーム(3)に影響を及ぼすための多極要素(306.2)のラスタ配列と、
- ウェーハ表面25とマルチビームシステム1の対物レンズ系102の対電極151との間の一様な引き出し電界(113)を設定するための補正電極153と、
をさらに包含する、条項26に記載のマルチビームシステム(1)。
条項28:
- 動作中に第1の電圧差V1を供給するための、対物レンズ(102)、または対物レンズ(102)の部分の下方の対電極(151)の電気接触部と、
- ウェーハ(7)を受容し、対物レンズ(102)の下に位置決めするための受容区域(505)を有する変位台(500)と、
- 動作中に第2の電圧差V2をウェーハ(7)に印加するための受容区域(505)の電気接触部と、
をさらに備え、
変位台(500)が、動作中にウェーハ(7)の縁部領域内で一様である引き出し電界(113)を発生させることを目的として少なくとも1つの第3の電圧差V3を供給するための電気接触部を有する少なくとも1つの補正電極(153)を受容区域(505)の周辺部内にさらに含む、条項19~27のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
条項29:
制御ユニット(800)が像評価のためのユニット(812)をさらに包含し、制御ユニット(800)が、複合マルチビーム効果の少なくとも部分を補正することを目的とする補正信号を用いて像評価のためのユニット(812)を駆動するように構成されている、条項19~28のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
条項30:
複数の1次粒子ビーム(3)および複数の2次粒子ビーム(9)を有するウェーハ検査マルチビームシステム(1)であって、
- ウェーハ(7)を受容するための変位台(500)と、
- 空間分解検出器(207)と、
- 1次粒子ビーム(3)をウェーハ(7)の構造化表面(25)の部分にわたって一括走査することを目的として複数の1次粒子ビーム(3)を偏向させるための第1の偏向系(110)と、
- 検出器(207)上の2次粒子ビーム(9)の焦点(15)を一定に維持するために複数の2次粒子ビーム(9)を偏向させるための第2の偏向系(222)と、
- 制御デバイス(800)と、
- マルチビームシステム(1)の一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素(151、153、505)を含む、照明経路(13)および検出経路(11)の複数の構成要素と、を備え、
制御デバイス(800)が、複数の検査位置(33、35)における検査タスクのリストを獲得し、該リストを通して作業するように構成されており、
制御デバイス(800)が、検査位置(33、35)における複合マルチビーム効果を低減することを目的として、一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素(151、153、505)を含む、照明経路(13)および検出経路(11)の構成要素の設定パラメータを設定するようにさらに構成されている、ウェーハ検査マルチビームシステム(1)。
条項31:
制御ユニット(800)が、ウェーハ(7)の縁部(43)からの検査位置(33、35)の距離を検出し、ウェーハ縁部(43)によって生じる複合マルチビーム効果を補償するようにさらに構成されている、条項30に記載のマルチビームシステム(1)。
条項32:
制御ユニット(800)が、検査位置(33、35)における測定または検査前にCADデータから検査位置(33、35)におけるウェーハ(7)の組成を決定し、組成によって生じる複合マルチビーム効果を補償する(41)ようにさらに構成されている、条項30または31に記載のマルチビームシステム(1)。
条項33:
制御ユニット(800)がメモリをさらに含み、同様の検査部位における記憶された検査タスクから、記憶されたパラメータを決定し、検査位置(33、35)における複合マルチビーム効果を低減することを目的として、該記憶されたパラメータを設定するように構成されている、条項30~32のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
条項34:
制御ユニット(800)が、隣接した検査部位における先行検査タスクからパラメータを決定し、検査位置(33、35)における複合マルチビーム効果を低減することを目的として該パラメータを設定するようにさらに構成されている、条項30~33のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
条項35:
制御ユニット(800)が、複合マルチビーム効果を少なくとも部分的に補償するために第1および第2の偏向系(110、222)を駆動するための走査プログラムを変更するようにさらに構成されている、条項30~34のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
条項36:
制御ユニット(800)が、複合マルチビーム効果を少なくとも部分的に補償するためにマルチビームシステム(1)の作動点を変更するようにさらに構成されている、条項30~35のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
条項37:
マルチビーム顕微鏡(1)のための変位台(500)であって、
- 縁部(43)および直径Dを有するウェーハ(7)を受容するための受容区域(505)であって、受容区域(505)を介して電圧V2が動作中にウェーハ(7)に印加され得る、受容区域(505)と、
- 受容区域(505)の周辺部内に配置されたリング状電極(153)であって、リング状電極(153)が内径DI>Dを有し、これにより、ウェーハ7が受容されたとき、ウェーハ(7)の縁部(43)とリング状電極(153)との間に距離が形成される、リング状電極(153)と、を備え、
- 電極(153)が、動作中に電圧V3がリング状電極(153)に印加され得るよう、受容区域(505)から絶縁されている、変位台(500)。
条項38:
リング状電極(153)が、少なくとも1つの第1の電圧V3が印加され得る、複数の、例えば、2つ、4つ、8つ、またはそれより多くの相互に絶縁された電極セグメントから形成されている、条項37に記載の変位台(500)。
条項39:
条項37または38に記載の変位台(500)を備えるマルチビームシステム(1)。
条項40:
マルチビームシステム(1)が、動作中に一様な引き出し電界を発生させることを目的として電圧V2および少なくとも第1の電圧V3を設定するように構成された制御ユニット(503)をさらに備える、条項39に記載のマルチビームシステム(1)。
条項41:
ウェーハ(7)を検査するためにマルチビームシステム(1)を設定する方法であって、以下のステップ:
- ウェーハ7上の基準位置を第1の時間T1内に迅速に走査することによって検出器カメラ207を用いて複数の粒子ビームのラスタ配列41の時間平均化された第1の基準像の像を記録するステップと、
- 検査位置(33、35)に標的を定めるステップと、
- 検査位置(33、35)を第1の時間T1内に迅速に走査することによって検出器カメラ207を用いて検査位置(33、35)における複数の粒子ビームのラスタ配列41の時間平均化された第1の検査像の像を記録するステップと、
- ラスタ配列(41)の第1の検査像およびラスタ配列(41)の第1の基準像を分析し、検査部位(33、35)における最適な結像を目的としてマルチビームシステム(1)を調整するための選択された設定パラメータを導出するステップと、
- 選択された設定パラメータを用いてマルチビームシステム(1)を設定するステップと、
- 第2の時間T2内の検査位置(33、35)の低速走査によって高空間分解能をもってウェーハ(7)の表面(25)の検査像を記録するステップであって、T1<T2、好ましくは、T1<T2/10、例えば、T1<T2/100である、ステップと、
を含む方法。
条項42:
選択された設定パラメータを用いてマルチビームシステム(1)を設定した後に基準位置を第1の時間T1内に迅速に走査することによって検出器カメラ(207)を用いて複数の1次ビームのラスタ配列(41)の時間平均化された第2の基準像の像を記録することをさらに含む、条項41に記載の方法。
条項43:
検査位置(33、35)を第1の時間T1内に迅速に走査することによって検出器カメラ(207)を用いて複数の1次ビームのラスタ配列(41)の時間平均化された第2の検査像の像を記録し、選択された設定パラメータを用いたマルチビームシステム(1)の設定をチェックすることをさらに含む、条項41に記載の方法。
条項44:
選択された設定パラメータが、以下のパラメータ:
- 変位台(500)を用いたウェーハ(7)の再位置合わせ、
- ウェーハ7の表面25における引き出し電界113の電界プロファイルに影響を及ぼすために電極(151、153、505)を駆動すること、
- ラスタ配列(41)のオフセットを補償するためにビーム偏向器(107、110、222)を駆動すること、
- ラスタ配列41のスケールを調整することを目的としてマルチビームシステムの作動点を変更すること、
- デジタル像の評価を変更すること、
のうちの少なくとも1つを含む、条項41~43のいずれか1項に記載の方法。
条項45:
選択された設定パラメータを検査位置(33、35)に付与することと、付与の記憶と、をさらに含む、条項41~44のいずれか1項に記載の方法。
条項46:
検査位置(33、35)に付与された記憶された設定パラメータを用いた検査位置(33、35)における少なくとも第2のウェーハ(7)の繰り返し検査をさらに含む、条項45に記載の方法。
条項47:
基準位置が先行検査位置(33、35)に対応する、条項41~46のいずれか1項に記載の方法。
条項48:
基準位置が基準物体上の位置に対応する、条項41~46のいずれか1項に記載の方法。
条項49:
マルチビームシステム(1)を用いたウェーハ検査方法であって、以下のステップ:
a. ウェーハ(7)上の検査位置に標的を定めるステップと、
b. 検査位置に基づいて、検査位置における最適な結像のための、あらかじめ決定された、マルチビーム顕微鏡(1)の設定パラメータを決定するステップと、
c. 決定された設定パラメータを設定するステップと、
d. 検査位置におけるウェーハ(7)の表面(25)の部分の像を記録するステップと、
を含む方法。
条項50:
- 検査位置に付与されたマルチビーム顕微鏡の既定の設定パラメータをロードすることと、
- 2つの隣接した検査位置に付与された少なくとも2つの設定パラメータから検査位置における最適な結像のための設定パラメータを補間することと、
をさらに含む、条項49に記載の方法。
条項51:
- 検査位置に関する先験的情報を決定することをさらに含み、先験的情報が、以下の情報項目:
- ウェーハ(7)の縁部(43)からの検査位置の距離、
- 検査位置におけるウェーハ(7)の表面(25)における材料組成に関するCAD情報、
- 先行検査位置における先行像記録からの検査位置の距離、
のうちの少なくとも1つを含む、条項49に記載の方法。
条項52:
設定パラメータが、検査位置におけるウェーハ(7)の表面(25)における一様な引き出し電界(143)を発生させるための電圧値を含み、電圧値が電極(151、153、505)に供給される、条項49~51のいずれか1項に記載の方法。
【符号の説明】
【0155】
1 マルチビームシステム
3 1次ビームまたは複数の1次ビーム
5 1次ビームの焦点
7 ウェーハ
9 2次ビーム
11 検出ビーム経路
13 照明経路
15 2次ビームの焦点
17 像視野
21 像視野の中心および検査位置の中心
25 ウェーハ表面
27 1次ビームの走査経路
29 部分視野の中心
31 部分視野
33 第1の検査位置
34 第2の検査位置
35 第3の検査位置
41 ラスタ配列
43 ウェーハの縁部
47 ウェーハ縁部からの検査位置の距離
61 スポット位置の局所的変位
100 照明システム
101 物体面または第1の平面
102 対物レンズ系
103 フィールドレンズ
105 対物レンズの光軸
107 準静的偏向器
108 クロスオーバ点
110 走査偏向器
113 引き出し電界
130 照明システムの低速補償器
132 照明システムの高速補償器
149 磁気レンズのコイル
151 対電極
153 リング状補正電極
155 絶縁材
200 2次電子を結像するための検出経路を有する検出システム
205 投影レンズ
206 静電レンズ
207 空間分解粒子検出器
208 磁気レンズ
209 磁気レンズ
210 投影レンズ
212 2次ビームのクロスオーバ点
214 開口絞りまたはコントラスト絞り
216 マルチアパーチャプレート
218 第3の偏向系
222 第2の偏向系
224 投影システム205aおよび205bの間の切り換えを有する第2の偏向系
230 検出システムの低速補償器
232 検出システムの高速補償器
238 センサ
280 像データ変換器
300 ビーム発生デバイス
301 電子源
303 コリメーションレンズ
305 マルチアパーチャ機構
306 マルチアパーチャプレート
307 フィールドレンズ
308 フィールドレンズ
309 粒子ビーム
311 中間像面内のビーム焦点
321 中間像面
330 マルチビーム発生デバイスの低速補償器
332 マルチビーム発生デバイスの高速補償器
390 偏向器アレイ
400 ビーム分割器
420 ビーム分割器の補正要素
500 変位台
503 物体電圧のための電圧供給
505 物体受容区域
520 変位台の位置センサ
800 制御ユニット
810 データ獲得デバイス
812 デジタル像処理ユニット
814 像データメモリ
818 センサデータモジュール
820 検出システムのための制御モジュール
830 照明デバイスの制御ユニット
840 制御プロセッサ
860 走査モジュール
880 変位台の制御モジュール
903 先行検査タスクからの既存の電荷
905 検査タスク中の増大する電荷
907 検査タスク中にマルチビームシステムを駆動するための動的可変パラメータ
図1
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】
図5c)】
図5d)】
図5e)】
図5f)】
図6
図7
図8
図9
図10
図11a)】
図11b)】
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の1次粒子ビーム(3)および複数の2次粒子ビーム(9)を有するマルチビームシステム(1)であって、
- 空間分解検出器(207)と、
- ウェーハ(7)の構造化表面(25)の部分の一括走査を目的として前記複数の1次および2次粒子ビーム(3、9)を偏向させるための少なくとも1つの偏向系(110、222)と、
- 前記検出器(207)および前記偏向系(110、222)を駆動するための制御デバイス(800)と、を備え、
前記制御デバイス(800)および前記検出器(207)が、前記複数の2次粒子ビーム(9)のラスタ配列(41)の時間平均化された検査像を取り込み、かつ/あるいは2nm、1nm、またはそれ未満の空間分解能をもって前記構造化表面(25)の部分のデジタル像を取り込むように構成されている、
マルチビームシステム(1)。
【請求項2】
前記制御デバイス(800)が、前記ラスタ配列(41)の前記時間平均化された検査像を取り込むための第1の動作モードにおいて、前記偏向系(110)を用いて複数の前記1次粒子ビーム(3)を前記ウェーハ(7)の前記構造化表面(25)の部分にわたって時間T1内に迅速に走査し、前記構造化表面(25)の部分の前記デジタル像を記録するための第2の動作モードにおいて、前記偏向系(110)を用いて前記複数の1次粒子ビーム(3)を前記ウェーハ(7)の前記構造化表面(25)の部分にわたって時間T2内に低速で走査するように構成されており、T1<T2、好ましくは、T1<T2/10、例えば、T1<T2/100である、請求項1に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項3】
前記検出器(207)が第1の検出器(207a)および第2の検出器(207b)を包含し、前記マルチビームシステム(1)が、前記制御ユニット(800)によって駆動され、動作中に、前記複数の2次粒子ビームを前記第1の検出器(207a)上または前記第2の検出器(207b)上のどちらかへ偏向させるように構成されたビーム偏向器(224)を有する検出ユニット(200)を備える、請求項2に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項4】
前記ビーム偏向器(224)が、動作中に、前記複数の2次粒子ビームを前記第1の検出器(207a)上または前記第2の検出器(207b)上のどちらかの定位置に維持するように構成されている、請求項3に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項5】
前記検出器(207)が、前記複数の2次粒子ビーム(9)の前記ラスタ配列(41)の前記時間平均化された検査像、ならびに2nm、1nm、またはそれ未満のピクセル寸法を有する高空間分解能での前記構造化表面(25)の部分の前記デジタル像の同時取り込みのために設計されている、請求項1に記載のマルチビームシステム。
【請求項6】
前記検出器(207)が、電子から光子を発生させる電子変換要素を包含し、光子が、前記ウェーハ表面(25)の部分を取り込むための第1の高速光検出器、および前記ラスタ配列(41)の前記検査像を取り込むための第2の低速光検出器を同時に用いて検出される、請求項に記載のマルチビームシステム。
【請求項7】
前記制御デバイス(800)が、前記ラスタ配列(41)の前記検査像から、前記複数の粒子ビーム(3、9)の入射場所の変化、ならびに前記粒子ビーム(3、9)の焦点の形状またはサイズの変化に存する複合マルチビーム効果を決定し、前記複合マルチビーム効果に基づいて前記マルチビームシステム(1)の設定パラメータの変更を導出し、設定するようにさらに構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項8】
前記制御デバイス(800)が、前記マルチビームシステム(1)の一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素を含む、照明経路(13)および検出経路(11)の複数の構成要素に接続されており、前記複合マルチビーム効果を低減することを目的とする、一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素を含む、前記照明経路(13)および前記検出経路(11)の前記構成要素の前記設定パラメータを駆動するように構成されている、請求項7に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項9】
前記マルチビームシステム(1)が、駆動を目的とする前記制御デバイス(800)に接続された以下の構成要素:
- 前記複数の1次粒子ビーム(3)のための準静的偏向器(107)と、
- 前記1次粒子ビーム(3)および2次粒子ビーム(9)の前記走査偏向のための動的偏向器(110)と、 - 前記2次粒子ビーム(9)の前記走査偏向のための動的偏向器(222、224)と、
- 可変集束効果を有する静電または磁気レンズ(306.2、307、103.2、102)と、
- 前記1次粒子ビーム(3)に影響を及ぼすための多極要素(306.2)のラスタ配列と、
- 前記ウェーハ表面25と前記マルチビームシステム1の対物レンズ系102の対電極151との間の一様な引き出し電界(113)を設定するための補正電極153と、
をさらに包含する、請求項8に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項10】
- 動作中に第1の電圧差V1を供給するための、対物レンズ(102)、または前記対物レンズ(102)の部分の下方の対電極(151)の電気接触部と、
- ウェーハ(7)を受容し、前記対物レンズ(102)の下に位置決めするための受容区域(505)を有する変位台(500)と、
- 動作中に第2の電圧差V2をウェーハ(7)に印加するための前記受容区域(505)の電気接触部と、をさらに備え、
前記変位台(500)が、動作中にウェーハ(7)の縁部領域内で一様である引き出し電界(113)を発生させることを目的として少なくとも1つの第3の電圧差V3を供給するための電気接触部を有する少なくとも1つの補正電極(153)を前記受容区域(505)の周辺部内にさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項11】
前記制御ユニット(800)が像評価のためのユニット(812)をさらに包含し、前記制御ユニット(800)が、前記複合マルチビーム効果の少なくとも部分を補正することを目的とする補正信号を用いて像評価のための前記ユニット(812)を駆動するように構成されている、請求項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項12】
複数の1次粒子ビーム(3)および複数の2次粒子ビーム(9)を有するウェーハ検査マルチビームシステム(1)であって、
- ウェーハ(7)を受容するための変位台(500)と、
- 空間分解検出器(207)と、
- 前記1次粒子ビーム(3)を前記ウェーハ(7)の構造化表面(25)の部分にわたって一括走査することを目的として前記複数の1次粒子ビーム(3)を偏向させるための第1の偏向系(110)と、
- 前記検出器(207)上の前記2次粒子ビーム(9)の焦点(15)を一定に維持するために複数の2次粒子ビーム(9)を偏向させるための第2の偏向系(222)と、
- 制御デバイス(800)と、
- 前記マルチビームシステム(1)の一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素(151、153、505)を含む、照明経路(13)および検出経路(11)の複数の構成要素と、を備え、
前記制御デバイス(800)が、複数の検査位置(33、35)における検査タスクのリストを獲得し、前記リストを通して作業するように構成されており、
前記制御デバイス(800)が、検査位置(33、35)における複合マルチビーム効果を低減することを目的として、前記一様な引き出し電界(113)を設定するための構成要素(151、153、505)を含む、前記照明経路(13)および前記検出経路(11)の前記構成要素の設定パラメータを設定するようにさらに構成されている、
ウェーハ検査マルチビームシステム(1)。
【請求項13】
前記制御ユニット(800)が、ウェーハ(7)の縁部(43)からの検査位置(33、35)の距離を検出し、ウェーハ縁部(43)によって生じる複合マルチビーム効果を補償するようにさらに構成されている、請求項12に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項14】
前記制御ユニット(800)が、前記検査位置(33、35)における測定または検査前にCADデータから検査位置(33、35)におけるウェーハ(7)の前記組成を決定し、前記組成によって生じる複合マルチビーム効果を補償する(41)ようにさらに構成されている、請求項12または13に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項15】
前記制御ユニット(800)がメモリをさらに含み、同様の検査部位における記憶された検査タスクから、記憶されたパラメータを決定し、検査位置(33、35)における複合マルチビーム効果を低減することを目的として、前記記憶されたパラメータを設定するように構成されている、請求項12または13に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項16】
前記制御ユニット(800)が、隣接した検査部位における先行検査タスクからパラメータを決定し、検査位置(33、35)における複合マルチビーム効果を低減することを目的として前記パラメータを設定するようにさらに構成されている、請求項12または13に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項17】
前記制御ユニット(800)が、複合マルチビーム効果を少なくとも部分的に補償するために前記第1および第2の偏向系(110、222)を駆動するための走査プログラムを変更するようにさらに構成されている、請求項12または13に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項18】
前記制御ユニット(800)が、複合マルチビーム効果を少なくとも部分的に補償するために前記マルチビームシステム(1)の作動点を変更するようにさらに構成されている、請求項12または13に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項19】
ウェーハ(7)を検査するためにマルチビームシステム(1)を設定する方法であって、以下のステップ:
- ウェーハ(7)上の基準位置を第1の時間T1内に迅速に走査することによって検出器カメラ(207)を用いて複数の粒子ビームのラスタ配列(41)の時間平均化された第1の基準像の像を記録するステップと、
- 検査位置(33、35)に標的を定めるステップと、
- 前記検査位置(33、35)を前記第1の時間T1内に迅速に走査することによって前記検出器カメラ207を用いて検査位置(33、35)における前記複数の粒子ビームの前記ラスタ配列(41)の時間平均化された第1の検査像の像を記録するステップと、
- 前記ラスタ配列(41)の前記第1の検査像および前記ラスタ配列(41)の前記第1の基準像を分析し、前記検査部位(33、35)における最適な結像を目的として前記マルチビームシステム(1)を調整するための選択された設定パラメータを導出するステップと、
- 前記選択された設定パラメータを用いて前記マルチビームシステム(1)を設定するステップと、
- 第2の時間T2内の前記検査位置(33、35)の低速走査によって高空間分解能をもって前記ウェーハ(7)の前記表面(25)の検査像を記録するステップであって、T1<T2、好ましくは、T1<T2/10、例えば、T1<T2/100である、ステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記選択された設定パラメータを用いて前記マルチビームシステム(1)を設定した後に前記基準位置を前記第1の時間T1内に迅速に走査することによって前記検出器カメラ(207)を用いて前記複数の1次ビームの前記ラスタ配列(41)の時間平均化された第2の基準像の像を記録することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記検査位置(33、35)を前記第1の時間T1内に迅速に走査することによって前記検出器カメラ(207)を用いて前記複数の1次ビームの前記ラスタ配列(41)の時間平均化された第2の検査像の像を記録し、前記選択された設定パラメータを用いた前記マルチビームシステム(1)の前記設定をチェックすることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記選択された設定パラメータが、以下のパラメータ:
- 変位台(500)を用いた前記ウェーハ(7)の再位置合わせ、
- 前記ウェーハ7の前記表面25における引き出し電界113の電界プロファイルに影響を及ぼすために電極(151、153、505)を駆動すること、
- 前記ラスタ配列(41)のオフセットを補償するためにビーム偏向器(107、110、222)を駆動すること、
- 前記ラスタ配列41のスケールを調整することを目的として前記マルチビームシステムの作動点を変更すること、
- デジタル像の評価を変更すること、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記選択された設定パラメータを前記検査位置(33、35)に付与することと、前記付与の記憶と、をさらに含む、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記検査位置(33、35)に付与された前記記憶された設定パラメータを用いた前記検査位置(33、35)における少なくとも第2のウェーハ(7)の繰り返し検査をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記基準位置が先行検査位置(33、35)に対応する、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記基準位置が基準物体上の位置に対応する、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
マルチビームシステム(1)を用いたウェーハ検査方法であって、以下のステップ:
a. ウェーハ(7)上の検査位置に標的を定めるステップと、
b. 前記検査位置に基づいて、前記検査位置における最適な結像のための、あらかじめ決定された、前記マルチビーム顕微鏡(1)の設定パラメータを決定するステップと、
c. 前記決定された設定パラメータを設定するステップと、
d. 前記検査位置における前記ウェーハ(7)の前記表面(25)の部分の像を記録するステップと、
を含む、方法。
【請求項28】
- 前記検査位置に付与された前記マルチビーム顕微鏡の既定の設定パラメータをロードすることと、
- 2つの隣接した検査位置に付与された少なくとも2つの設定パラメータから前記検査位置における最適な結像のための前記設定パラメータを補間することと、
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
- 前記検査位置に関する先験的情報を決定することをさらに含み、前記先験的情報が、以下の情報項目:
- 前記ウェーハ(7)の縁部(43)からの前記検査位置の距離、
- 前記検査位置における前記ウェーハ(7)の前記表面(25)における材料組成に関するCAD情報、
- 先行検査位置における先行像記録からの前記検査位置の距離、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記設定パラメータが、前記検査位置における前記ウェーハ(7)の前記表面(25)における一様な引き出し電界(143)を発生させるための電圧値を含み、前記電圧値が前記電極(151、153、505)に供給される、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】