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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】周波数ミキサ、トランシーバ
(51)【国際特許分類】
   H03D 7/14 20060101AFI20240528BHJP
   H03D 7/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H03D7/14 A
H03D7/00 F
H03D7/00 D
H03D7/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573310
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 CN2022081928
(87)【国際公開番号】W WO2022247410
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】202110591105.9
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516010548
【氏名又は名称】セインチップス テクノロジー カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】陳志林
(57)【要約】
本開示は、入力信号端に接続され、前記入力信号端の入力信号に基づいて差動信号を生成し、前記差動信号を第1の出力端及び第2の出力端に出力するように構成されたトランスコンダクタンス回路と、局部発振信号端と前記トランスコンダクタンス回路の第1の出力端及び第2の出力端に接続され、前記局部発振信号端の局部発振信号と前記差動信号とを混合して周波数混合信号を生成し、前記周波数混合信号を前記第1の出力端及び第2の出力端に出力するように構成されたスイッチ回路と、出力信号端に接続され、負荷を提供するように構成された負荷回路と、前記スイッチ回路と負荷回路との間に接続され、前記周波数混合信号を増幅するように構成された増幅回路と、を備える周波数ミキサを提供する。本開示はトランシーバをさらに提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号端に接続され、前記入力信号端の入力信号に基づいて差動信号を生成し、前記差動信号を第1の出力端及び第2の出力端に出力するように構成されたトランスコンダクタンス回路と、
局部発振信号端と前記トランスコンダクタンス回路の第1の出力端及び第2の出力端に接続され、前記局部発振信号端の局部発振信号と前記差動信号とを混合して周波数混合信号を生成し、前記周波数混合信号を前記第1の出力端及び第2の出力端に出力するように構成されたスイッチ回路と、
出力信号端に接続され、負荷を提供するように構成された負荷回路と、
前記スイッチ回路と負荷回路との間に接続され、前記周波数混合信号を増幅するように構成された増幅回路と、を備える、
周波数ミキサ。
【請求項2】
前記トランスコンダクタンス回路は、第1のトランスを備える、
請求項1に記載の周波数ミキサ。
【請求項3】
前記第1のトランスは、
第1端が前記入力信号端に接続され、第2端が接地端に接続された第1の1次コイルと、
第1端、第2端がそれぞれ前記トランスコンダクタンス回路の第1の出力端、第2の出力端に接続され、中間タップが前記接地端に接続された第1の2次コイルと、を備える、
請求項2に記載の周波数ミキサ。
【請求項4】
前記増幅回路は、
ゲートが互いに結合された第1のトランジスタデバイスと第2のトランジスタデバイスを含む共通ゲート回路であって、前記第1のトランジスタデバイスは、ソースが前記スイッチ回路の第1の出力端に接続され、ドレインが前記増幅回路の第1の出力端に接続され、前記第2のトランジスタデバイスは、ソースが前記スイッチ回路の第2の出力端に接続され、ドレインが前記増幅回路の第2の出力端に接続された共通ゲート回路と、
ソースが互いに結合された第3のトランジスタデバイスと第4のトランジスタデバイスを含む共通ソース回路であって、前記第3のトランジスタデバイスは、ゲートが前記スイッチ回路の第1の出力端に結合され、ドレインが前記増幅回路の第2の出力端に結合され、前記第4のトランジスタデバイスは、ゲートが前記スイッチ回路の第2の出力端に結合され、ドレインが前記増幅回路の第1の出力端に結合された共通ソース回路と、を備える、
請求項1に記載の周波数ミキサ。
【請求項5】
前記第1のトランジスタデバイスのゲートは第1のコンデンサの第1極に接続され、前記第2のトランジスタデバイスのゲートは第2のコンデンサの第1極に接続され、前記第1のコンデンサの第2極及び前記第2のコンデンサの第2極はいずれも接地端に接続され、
前記第3のトランジスタデバイスのソース及び前記第4のトランジスタデバイスのソースはいずれも前記接地端に接続され、前記第3のトランジスタデバイスのゲートは第3のコンデンサの第1極に接続され、前記第3のコンデンサの第2極は前記スイッチ回路の第1の出力端に接続され、前記第4のトランジスタデバイスのゲートは第4のコンデンサの第1極に接続され、前記第4のコンデンサの第2極はスイッチ回路の第2の出力端に接続される、
請求項4に記載の周波数ミキサ。
【請求項6】
前記共通ソース回路は共通ソース・共通ゲート回路であり、
前記共通ソース・共通ゲート回路は、ゲートが互いに結合された第5のトランジスタデバイスと第6のトランジスタデバイスをさらに含み、前記第3のトランジスタデバイスのドレインは、第5のトランジスタデバイスを介して前記増幅回路の第2の出力端に結合され、前記第4のトランジスタデバイスのドレインは、第6のトランジスタデバイスを介して前記増幅回路の第1の出力端に結合される
請求項5に記載の周波数ミキサ。
【請求項7】
前記第5のトランジスタデバイスのゲート及び第6のトランジスタデバイスのゲートはいずれも第5のコンデンサの第1極に接続され、前記第5のコンデンサの第2極は前記接地端に接続される、
請求項6に記載の周波数ミキサ。
【請求項8】
前記トランジスタデバイスは、電界効果トランジスタ又は三極管である、
請求項4~7のいずれか一項に記載の周波数ミキサ。
【請求項9】
前記負荷回路は誘導性負荷を含む、
請求項1に記載の周波数ミキサ。
【請求項10】
前記誘導性負荷は、第2のトランス及び/又はインダクタンスである、
請求項9に記載の周波数ミキサ。
【請求項11】
第1極がスイッチ回路の第1の出力端に接続され、第2極がスイッチ回路の第2の出力端に接続されたフィルタコンデンサをさらに備える、
請求項1に記載の周波数ミキサ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の周波数ミキサを備える、
トランシーバ。
【請求項13】
前記トランシーバは、通信トランシーバ又はレーダトランシーバである、
請求項12に記載のトランシーバ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月28日に中国特許庁に提出された特許第202110591105.9号の優先権を主張し、当該特許出願の内容を参照により本出願に援用する。
本開示は、周波数ミキサの技術分野に関するものであるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
移動通信技術(例えば、第5世代移動通信5G)の発展に伴い、情報伝送の速度、遅延、信頼性などに対する要求がより高くなっているが、ビームフォーミング、大規模アンテナアレイ(Massive MIMO)などは、上記要求を実現するための2つの重要な技術である。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、周波数ミキサ、トランシーバを提供する。
第1態様において、本開示は、
入力信号端に接続され、前記入力信号端の入力信号に基づいて差動信号を生成し、前記差動信号を第1の出力端及び第2の出力端に出力するように構成されたトランスコンダクタンス回路と、
局部発振信号端と前記トランスコンダクタンス回路の第1の出力端及び第2の出力端に接続され、前記局部発振信号端の局部発振信号と前記差動信号とを混合して周波数混合信号を生成し、前記周波数混合信号を前記第1の出力端及び第2の出力端に出力するように構成されたスイッチ回路と、
出力信号端に接続され、負荷を提供するように構成された負荷回路と、
前記スイッチ回路と負荷回路との間に接続され、前記周波数混合信号を増幅するように構成された増幅回路と、を備える、
周波数ミキサを提供する。
第2態様において、本開示は、上記の周波数ミキサを備えるトランシーバを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、関連技術における周波数ミキサの回路図である。
図2図2は、関連技術における別の周波数ミキサの回路図である。
図3図3は、本開示による周波数ミキサの構成ブロック図である。
図4図4は、本開示による周波数ミキサの回路図である。
図5図5は、本開示による別の周波数ミキサの回路図である。
図6図6は、本開示によるトランシーバの構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
当業者が本開示の技術案をよりよく理解するために、以下に図面を組み合わせて本開示の実施形態による周波数ミキサ、トランシーバを詳しく説明する。
【0006】
以下では図面を参照して本開示について十分に説明するが、示される実施形態は異なる形式で体現されてもよく、本開示は、以下に説明する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示を徹底して完全なものにするために提供され、当業者に本開示の範囲を十分に理解させるように提供される。
【0007】
本開示の実施形態の図面は、本開示の実施形態をさらに理解するために使用され、明細書の一部を構成し、詳細な実施形態とともに本開示を解釈するためのものであり、本開示に対する制限を構成するものではない。本開示の上記、他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して詳細な実施形態を説明することにより、当業者にさらに明らかとなるであろう。
【0008】
本開示の各実施形態及び実施形態における各特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0009】
本開示で用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本開示を限定することを意図しない。例えば本開示で用いられる「及び/又は」という用語は、1つ又は複数の、関連する列挙された項目の任意の組み合わせ及び全ての組み合わせを含む。本開示で用いられる単数形の「1つ」及び「当該」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。本開示で用いられる「含む」、「……からなる」という用語は、前記特徴、全体、ステップ、操作、要素及び/又は構成要素の存在を指定しているが、1つ又は複数の他の特徴、全体、ステップ、操作、要素、構成要素及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【0010】
特に限定されない限り、技術的及び科学的な用語を含む、本開示で用いられる全ての用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術及び本開示の背景でのそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本開示で明確にそのように限定されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味を有すると解釈されるべきではないことも理解されたい。
【0011】
移動通信技術(例えば、第5世代移動通信5G)の発展に伴い、情報伝送の速度、遅延、信頼性などに対する要求がより高くなっているが、ビームフォーミング、大規模アンテナアレイ(Massive MIMO)などは、上記の要求を実現するための2つの重要な技術である。
【0012】
上記の2つの技術はいずれも、トランシーバに大規模なフロントエンドアンテナアレイを集積することを必要とし、これはトランシーバ内の周波数ミキサの線形性に対して非常に高い要求を課す。また、トランシーバの消費電力は、電池寿命や使用コストに直接影響するため、高い線形性を確保しつつ、できるだけ消費電力を低減することが望ましい。
【0013】
しかしながら、従来のトランシーバでは、消費電力等が要求を満たすことができない。
関連技術において、周波数ミキサ(アクティブ・ダブルバランス・ギルバート周波数ミキサ)の回路図としては、図1に示すように、トランスコンダクタンス回路(トランスコンダクタンス段)、スイッチ回路(スイッチ段)、負荷回路(負荷段)、及び、負荷回路とスイッチ回路との接続点に接続された増幅回路(増幅段)を主に備えているものがある。
【0014】
ここで、トランスコンダクタンス回路は具体的には共通ソーストランスコンダクタンス回路であってもよく、増幅回路は具体的には中間周波数増幅回路、例えば中間周波数の共通ソース増幅回路(図1を参照)又は中間周波数のトランスインピーダンス増幅回路(図2を参照)であってもよい。
【0015】
しかしながら、上記のアクティブ・ダブルバランス・ギルバート周波数ミキサには、増幅回路及び周波数ミキサの他の部分(周波数ミキサのコア)がそれぞれ独自の電流Iamp(即ち図中のIamp1+Iamp2)及びIcore(即ち図中のIcore1+Icore2)を有しているため、周波数ミキサにおける総電流Itotal=Icore+Iamp、即ち、増幅回路及び周波数ミキサの他の部分がそれぞれ独自の消費電力を持ち、周波数ミキサ全体の消費電力が高くなるという問題があった。
【0016】
上記のアクティブ・ダブルバランス・ギルバート周波数ミキサの線形性を改善するために、図2を参照して、導関数重畳トランスコンダクタンス回路を用いることもできるが、周波数ミキサの消費電力は依然として高い。
【0017】
第1態様において、図3~5を参照して、本開示は周波数ミキサを提供する。
本開示による周波数ミキサは、入力信号と局部発振信号とを混合するように構成され、通信トランシーバ(例えば、無線周波数ミリ波通信トランシーバ、テラヘルツ周波数帯通信トランシーバ)、レーダトランシーバ等のトランシーバにおいて使用されてもよい。
【0018】
例えば、周波数ミキサは、ミリ波通信トランシーバにおいて使用されてもよく、無線周波数の入力信号と局部発振信号に基づいて、両者の周波数の減算に等しい周波数のベースバンド用の中間周波数信号を生成する。例示的に、周波数ミキサの入力信号の周波数は26GHzであってもよく、局部発振信号の周波数は22GHzであってもよく、これにより生成される中間周波数信号(ベースバンド信号)の周波数は4GHzである。
【0019】
ここで、本開示の周波数ミキサの具体的な実現形態は多様であり、例えば、集積回路のチップ(IC)に設けてもよく、常規のプリント回路基板(PCB)に設けてもよく、或いは実体の素子の組み合わせからなる。
【0020】
図3を参照して、いくつかの実施形態において、本開示の周波数ミキサは、入力信号端INに接続され、入力信号端INの入力信号に基づいて差動信号を生成し、差動信号を第1の出力端(図中左側の端)及び第2の出力端(図中右側の端)に出力するように構成されたトランスコンダクタンス回路(トランスコンダクタンス段)と、局部発振信号端とトランスコンダクタンス回路の第1の出力端及び第2の出力端に接続され、局部発振信号端の局部発振信号と差動信号とを混合して周波数混合信号を生成し、周波数混合信号を第1の出力端(図中左側の端)及び第2の出力端(図中右側の端)に出力するように構成されたスイッチ回路(スイッチ段)と、出力信号端OUTに接続され、負荷を提供するように構成された負荷回路(負荷段)と、スイッチ回路と負荷回路との間に接続され、周波数混合信号を増幅するように構成された増幅回路(増幅段)と、を備える。
【0021】
本開示の周波数ミキサにおいて、入力信号端INから入力された入力信号(例えば、無線周波数信号)はまずトランスコンダクタンス回路により差動信号に変換されてから、スイッチ回路において局部発振信号端から入力された局部発振信号(例えば、無線周波数信号)と混合(例えば、周波数減算)されて周波数混合信号(例えば、中間周波数信号)が得られ、周波数混合信号は増幅回路(例えば、中間周波数増幅回路)に注入されて増幅され、最終的に負荷回路を介して出力信号端OUTから出力される。
【0022】
本開示の周波数ミキサにおいて、増幅回路(中間周波数増幅回路)は、負荷回路と周波数ミキサの他の部分(周波数ミキサコア)の後にカスケード接続されるのではなく、負荷回路とスイッチ回路との間に「挿入」されるので、増幅回路と周波数ミキサの他の部分は「電流多重」され、即ち、共通の電流(Itotal=Icore=Iamp)を共有しているので、増幅回路は、実際に余分な電流を消費することがなく、周波数ミキサ全体の消費電力を大幅に低減し、電池寿命を長くし、使用コストを低減することができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、トランスコンダクタンス回路は、第1のトランスTF1を備える。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1のトランスTF1は、第1端が入力信号端INに接続され、第2端が接地端に接続された第1の1次コイルと、第1端、第2端がそれぞれトランスコンダクタンス回路の第1の出力端、第2の出力端に接続され、中間タップが接地端に接続された第1の2次コイルと、を備える。
【0025】
図4、5を参照して、本開示においてトランスコンダクタンス回路としてトランス(第1のトランスTF1)を採用することができる。明らかに、トランスは受動デバイスであるため、対応するトランスコンダクタンス回路は受動トランスコンダクタンス回路である。
【0026】
さらに、第1のトランスTF1は、1次コイル(第1の1次コイル)が入力信号端INと接地端との間に直接接続されてもよく、2次コイル(第1の2次コイル)がトランスコンダクタンス回路の2つの出力端の間に接続され、中間タップを有し、中間タップが接地端に接続され、これにより、第1の2次コイルが周波数ミキサ全体の動作に必要な直流経路を提供することができる。
【0027】
図1、2を参照して、いくつかの関連技術の周波数ミキサにおいて、トランスコンダクタンス回路と増幅回路の両方の回路が実際に線形性に影響を与えるため、周波数ミキサ全体の線形性が低くなってしまう。
【0028】
しかしながら、本開示の周波数ミキサにおいて、トランスコンダクタンス回路は、受動トランス(第1のトランスTF1)を直接用いることにより、非線形歪みを発生しないようになっており、トランスコンダクタンス回路部分の線形性を保証し、周波数ミキサ全体の線形性を向上させている。
【0029】
また、第1の1次コイル、第1の2次コイルの寸法、巻数、結合係数等のパラメータを合理的に設計することにより、入力信号端IN(例えば、無線周波数ポート)のインピーダンス整合を容易に実現することができ、また、トランスは、シングルエンドの入力信号(例えば、無線周波数信号)を差動信号に変換し、回路における偶数クロス変調成分を抑制することができる。
【0030】
本開示において、スイッチ回路及び対応する局部発振信号端は様々な形態であり得る。
例えば、図4、5を参照して、スイッチ回路はギルバートセルを用いることができる。ギルバートセルは、第7のトランジスタデバイスM7、第8のトランジスタデバイスM8、第9のトランジスタデバイスM9、第10のトランジスタデバイスM10を含む。ここで、第7のトランジスタデバイスM7と第8のトランジスタデバイスM8は、ゲートが第1の局部発振信号端INLO+(例えば、局部発振信号のプラス端)に接続され、ソースがそれぞれトランスコンダクタンス回路の2つの出力端に接続され、ドレインがそれぞれスイッチ回路の2つの出力端に接続される。また、第9のトランジスタデバイスM9と第10のトランジスタデバイスM10は、ゲートがいずれも第2の局部発振信号端INLO-(例えば、局部発振信号のマイナス端)に接続され、ソースがそれぞれトランスコンダクタンス回路の2つの出力端に接続され(即ち、それぞれ第7のトランジスタデバイスM7と第8のトランジスタデバイスM8のソースに接続され)、ドレインが、クロスした後、それぞれスイッチ回路の2つの出力端に接続される(即ち、それぞれ第8のトランジスタデバイスM8と第7のトランジスタデバイスM7のドレインに接続される)。
【0031】
ここで、第7のトランジスタデバイスM7、第8のトランジスタデバイスM8、第9のトランジスタデバイスM9、第10のトランジスタデバイスM10は、アスペクト比等の寸法が同一であり、いずれも弱反転領域にバイアスされているため、混合過程の雑音係数を効果的に低減して線形性を向上させ、局部発振信号の漏れを低減して局部発振偶数高調波成分を抑制することができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、周波数ミキサは、第1極がスイッチ回路の第1の出力端に接続され、第2極がスイッチ回路の第2の出力端に接続されたフィルタコンデンサCpをさらに備える。
【0033】
図4、5を参照して、スイッチ回路の2つの出力端(即ち、増幅回路の2つの入力端)の間には、さらにフィルタコンデンサCpが並列に接続されてもよく、スイッチング回路により発生する周波数混合信号中の高調波(例えば、高周波高調波)及び混合過程により発生するスプリアス(例えば、高周波)をフィルタリングした後、増幅回路に入力することにより、線形性をさらに改善することができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、増幅回路は、ゲートが互いに結合された第1のトランジスタデバイスM1と第2のトランジスタデバイスM2を含む共通ゲート回路であって、第1のトランジスタデバイスM1は、ソースがスイッチ回路の第1の出力端に接続され、ドレインが増幅回路の第1の出力端(図中左側の端)に接続され、第2のトランジスタデバイスM2は、ソースがスイッチ回路の第2の出力端に接続され、ドレインが増幅回路の第2の出力端(図中右側の端)に接続された共通ゲート回路と、ソースが互いに結合された第3のトランジスタデバイスM3と第4のトランジスタデバイスM4を含む共通ソース回路であって、第3のトランジスタデバイスM3は、ゲートがスイッチ回路の第1の出力端に結合され、ドレインが増幅回路の第2の出力端に結合され、第4のトランジスタデバイスM4は、ゲートがスイッチ回路の第2の出力端に結合され、ドレインが増幅回路の第1の出力端に結合された共通ソース回路と、を備える。ここで、共通ゲート回路(common-source structure path)とは、終始共通ゲート構造を使用する回路を指し、同様に、共通ソース回路(common-drain structure path)とは、終始共通ソース構造を使用する回路を指す。
【0035】
いくつかの実施形態において、第1のトランジスタデバイスM1のゲートは第1のコンデンサC1の第1極に接続され、第2のトランジスタデバイスM2のゲートは第2のコンデンサC2の第1極に接続され、第1のコンデンサC1の第2極及び第2のコンデンサC2の第2極はいずれも接地端に接続され、第3のトランジスタデバイスM3のソース及び第4のトランジスタデバイスM4のソースはいずれも接地端に接続され、第3のトランジスタデバイスM3のゲートは第3のコンデンサC3の第1極に接続され、第3のコンデンサC3の第2極はスイッチ回路の第1の出力端に接続され、第4のトランジスタデバイスM4のゲートは第4のコンデンサC4の第1極に接続され、第4のコンデンサC4の第2極はスイッチ回路の第2の出力端に接続される。
【0036】
本開示の実施形態において、2つの構造が「結合される」とは、2つの構造が互いに電気的に接続されていることを意味し、例えば、2つの構造間のリード線に他のデバイスが設けられてもよく、2つの構造が同じ信号源に電気的に接続されてもよい。
【0037】
本開示の実施形態において、2つの構造が「接続される」とは、リード線以外のデバイスを介することなく、2つの構造がリード線によって直接接続されること、即ち、2つの構造における電気信号が理論上常に等しいことを意味する。
【0038】
本開示の実施形態において、「トランジスタデバイス」とは、電気的にトランジスタと同等であり得る(又はトランジスタの機能を果たす)1つ又は複数の素子の組み合わせを指す。
【0039】
いくつかの実施形態において、トランジスタデバイスは、電界効果トランジスタ又は三極管である。
【0040】
例示的に、上記のトランジスタデバイスは、電界効果トランジスタ(MOS)又は三極管(例えば、バイポーラトランジスタ)の形態であってもよく、例えば、N型電界効果トランジスタ(NMOS)はNPN型三極管を使用してもよく、P型電界効果トランジスタ(PMOS)はPNP型三極管を使用してもよい。
【0041】
図4を参照して、例示的に、本開示の周波数ミキサにおいて、増幅回路は共通ゲート回路と共通ソース回路を備えてもよく、共通ゲート回路は、ゲートが結合されたトランジスタデバイスを含み、共通ソース回路は、ソースが結合されたトランジスタデバイスを含み、各トランジスタデバイスのドレインは、それぞれ増幅回路の2つの出力端に接続される。
【0042】
図1、2を参照して、いくつかの関連技術の周波数ミキサにおいて、中間周波数のトランスインピーダンス増幅回路と中間周波数の共通ソース増幅回路のいずれを用いても、中間周波数帯での入力インピーダンスが大きく、周波数ミキサのコアのカスケード接続インピーダンスが不整合となって損失が大きくなるため、この部分の損失を補うために増幅回路の利得を大きくする必要があるが、増幅回路の消費電力がさらに大きくなってしまう。
【0043】
本開示において、共通ゲート回路を通じて、増幅回路とスイッチ回路との間のインピーダンス整合を容易に実現することができ、カスケード接続の損失を低減し、インピーダンス不整合の損失を補うために生じる余分な電力消費を回避する。
【0044】
また、共通ゲート回路と共通ソース回路との2段回路構造の増幅回路を用いるため、2段回路における少なくとも4つのトランジスタデバイスの特性(例えば、バイアス電圧、アスペクト比寸法等)を調整することにより、2段回路の3次非線形トランスコンダクタンスが逆極性かつ同振幅となるようにし、2段回路の合成ノードにおいて3次トランスコンダクタンスのキャンセルを実現し、増幅回路の線形性を向上させることができる。
【0045】
さらに、2段回路の1次トランスコンダクタンスは極性が同じであるため、この2段回路構造は、十分な振幅増幅を実現するために、比較的大きい中間周波数利得をさらに提供することができる。
【0046】
このように、共通ゲート回路と共通ソース回路とを備える周波数ミキサを用いることにより、周波数ミキサの消費電力をさらに低減することができ、周波数ミキサの線形性を改善することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、共通ソース回路は共通ソース・共通ゲート回路である。共通ソース・共通ゲート回路は、ゲートが互いに結合された第5のトランジスタデバイスM5と第6のトランジスタデバイスM6をさらに含み、第3のトランジスタデバイスM3のドレインは、第5のトランジスタデバイスM5を介して増幅回路の第2の出力端に結合され、第4のトランジスタデバイスM4のドレインは、第6のトランジスタデバイスM6を介して増幅回路の第1の出力端に結合される。
【0048】
いくつかの実施形態において、第5のトランジスタデバイスM5のゲート及び第6のトランジスタデバイスM6のゲートはいずれも第5のコンデンサC5の第1極に接続され、第5のコンデンサC5の第2極は接地端に接続される。
【0049】
図5を参照して、上記の周波数ミキサの増幅回路における共通ソース回路はさらに共通ソース・共通ゲート回路であってもよく、即ち、共通ソース回路は、ゲートが互いに結合された2つのトランジスタデバイス(第5のトランジスタデバイスM5と第6のトランジスタデバイスM6)をさらに含み、ソースが互いに結合された2つのトランジスタデバイス(第3のトランジスタデバイスM3と第4のトランジスタデバイスM4)のゲートは、それらを介して増幅回路の2つの出力端にそれぞれ接続される。
【0050】
例示的に、図5を参照して、周波数ミキサの増幅回路において、共通ゲート回路は第1のトランジスタデバイスM1及び第2のトランジスタデバイスM2を含み、第1のトランジスタデバイスM1及び第2のトランジスタデバイスM2は、ゲートがそれぞれ第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2を介して接地され、ソースがそれぞれスイッチ回路の2つの出力端に接続され、ドレインがそれぞれ増幅回路の2つの出力端に接続される。ここで、第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2は、第1のトランジスタデバイスM1及び第2のトランジスタデバイスM2のゲートに交流を供給することに相当し、利得を向上させることができる。
【0051】
共通ソース・共通ゲート回路は、ソースが結合された第3のトランジスタデバイスM3及び第4のトランジスタデバイスM4と、ゲートが結合された第5のトランジスタデバイスM5及び第6のトランジスタデバイスM6とを含む。ここで、第3のトランジスタデバイスM3及び第4のトランジスタデバイスM4は、ソースがいずれも接地され、ゲートがそれぞれ第3のコンデンサC3と第4のコンデンサC4を介してスイッチ回路の2つの出力端に接続され、当該第3のコンデンサC3と第4のコンデンサC4は遮断機能を果たす。第3のトランジスタデバイスM3と第4のトランジスタデバイスM4は、ドレインがそれぞれ第5のトランジスタデバイスM5と第6のトランジスタデバイスM6を介して(或いは、これらと直列に)増幅回路の2つの出力端に接続され(第3のトランジスタデバイスM3のドレインは第2の出力端に接続され、第4のトランジスタデバイスM4のドレインは第1の出力端に接続され)、第5のトランジスタデバイスM5及び第6のトランジスタデバイスM6のゲートは第5のコンデンサC5を介して接地され、第5のコンデンサC5は、第5のトランジスタデバイスM5のゲートに交流を供給して利得を向上させる役割も果たす。
【0052】
いくつかの実施形態において、負荷回路は誘導性負荷を含む。
いくつかの実施形態において、誘導性負荷は、第2のトランスTF2及び/又はインダクタンスである。
【0053】
図5を参照して、本開示の周波数ミキサにおける負荷回路は、トランス(例えば、第2のトランスTF2)、インダクタンスといった、「インダクタンス特性」を有する負荷であり得る。
【0054】
ここで、各誘導性負荷は1つの出力信号端OUTにのみ対応しているため、図5を参照して、誘導性負荷は、増幅回路の2つの出力端にそれぞれ接続され、かつ出力信号端OUTと接地端に接続される。
【0055】
例えば、誘導性負荷が第2のトランスTF2である場合、その1次コイル(第2の1次コイル)の両端がそれぞれ増幅回路の2つの出力端に接続され、中間タップがハイレベル端VDDに接続され、その2次コイル(第2の2次コイル)の両端がそれぞれ出力信号端OUTと接地端に接続される。
【0056】
図1、2を参照して、いくつかの関連技術において、増幅回路が2つに分割されているため、誘導性負荷を用いると、各増幅回路に対応して別個の誘導性負荷が必要となり、即ち、周波数ミキサ全体として2つの誘導性負荷が必要となるため、比較的大きいスペースを占め、周波数ミキサの大型化(例えば、周波数ミキサを有するチップの大型化)を招いていた。
【0057】
しかしながら、図5を参照して、本開示の実施形態において、増幅回路は1つだけであり、かつ負荷回路とスイッチ回路との間に位置するため、負荷回路が誘導性負荷を用いる場合も誘導性負荷が1つあればよく、周波数ミキサの寸法(例えば、周波数ミキサ付きチップの寸法)を小さくすることができる。
【0058】
もちろん、図4を参照して、負荷回路は、誘導性負荷に限らず、抵抗負荷、並列LRC (インダクタンス・抵抗・コンデンサ)負荷、能動負荷など、他の任意の形式の負荷を含んでもよい。
【0059】
ここで、負荷回路の形式が異なる場合には、それに応じて出力信号端OUTの位置、個数等が異なっていてもよい。例えば、図4を参照して、負荷回路が第1抵抗R1及び第2抵抗R2を含む場合、2つの抵抗はそれぞれハイレベル端VDDと増幅回路の2つの出力端との間に接続され、増幅回路の2つの出力端は同時にそれぞれ2つの出力信号端、即ち、第1の出力信号端OUT+(出力信号のプラス端)、第2の出力信号端OUT-(出力信号のマイナス端)に接続される。
【0060】
本開示の周波数ミキサの効果を証明するために、図1及び図2に示す関連技術における周波数ミキサと、図5に示す本開示の実施形態における周波数ミキサをそれぞれ製造し、1dB圧縮点の出力で23mWの消費電力における絶対電力(デシベル・ミリワットdBmを単位とし、周波数ミキサの線形性を特徴付ける)と、同じ1dB圧縮点の出力(2dBm)における消費電力(ミリワットを単位とし、周波数ミキサの消費電力を特徴付ける)を測定し、その結果を下記の表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1から分かるように、消費電力が同一である場合、本開示の実施形態による周波数ミキサの線形性は、関連技術における周波数ミキサよりも明らかに優れている(6dB以上向上している)。同じ1dB圧縮点の出力を実現する場合、本開示の実施形態による周波数ミキサの消費電力は、関連技術における周波数ミキサよりもはるかに低い(導関数重畳トランスコンダクタンス回路を用いた周波数ミキサに対して74%、アクティブ・ダブルバランス・ギルバート周波数ミキサに対して81.5%低減される)。
【0063】
これにより、本開示の実施形態による周波数ミキサは、出力信号の線形性を大幅に向上させることができると共に、消費電力を大幅に低減させることができ、これにより、電池寿命を延ばし、使用コストを低減することができることを証明できる。また、誘導性負荷を用いれば、本開示の実施形態による周波数ミキサの寸法(例えば、周波数ミキサ付きチップの寸法)をさらに低減することも可能である。
【0064】
第2の態様において、図6を参照して、本開示は、上記の周波数ミキサを備えるトランシーバを提供する。
【0065】
本開示のトランシーバは、上記の周波数ミキサを備えることにより、線形性が高く、消費電力が低く、寸法が小さい。
【0066】
いくつかの実施形態において、トランシーバは、通信トランシーバ又はレーダトランシーバである。
【0067】
例示的に、上記のトランシーバは、具体的には通信トランシーバ(例えば、無線周波数ミリ波通信トランシーバ、テラヘルツ周波数帯通信トランシーバ)、レーダトランシーバ等の形式であってもよい。
【0068】
もちろん、上記のトランシーバが他のシステムに用いられるトランシーバであることも、或いは、上記の周波数ミキサが他のシステムに用いられることも可能である。
【0069】
本開示では例示的な実施形態を開示し、具体的な用語が用いられているが、それらは一般的な例示的な意味としてのみ使用、解釈されるべきであり、限定を目的としたものではない。いくつかの例では、特定の実施形態に関連して説明される特徴、特性、及び/又は要素は、特に明記しない限り、単独で使用されてもよく、又は他の実施形態に説明される特徴、特性、及び/又は要素と組み合わせて用いられてもよいことは、当業者に明らかであろう。よって、添付の特許請求の範囲に記載された本開示の範囲から逸脱することなく、様々な形態及び詳細における変更が行われ得ることを当業者は理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
いくつかの実施形態において、増幅回路は、ゲートが互いに結合された第1のトランジスタデバイスM1と第2のトランジスタデバイスM2を含む共通ゲート回路であって、第1のトランジスタデバイスM1は、ソースがスイッチ回路の第1の出力端に接続され、ドレインが増幅回路の第1の出力端(図中左側の端)に接続され、第2のトランジスタデバイスM2は、ソースがスイッチ回路の第2の出力端に接続され、ドレインが増幅回路の第2の出力端(図中右側の端)に接続された共通ゲート回路と、ソースが互いに結合された第3のトランジスタデバイスM3と第4のトランジスタデバイスM4を含む共通ソース回路であって、第3のトランジスタデバイスM3は、ゲートがスイッチ回路の第1の出力端に結合され、ドレインが増幅回路の第2の出力端に結合され、第4のトランジスタデバイスM4は、ゲートがスイッチ回路の第2の出力端に結合され、ドレインが増幅回路の第1の出力端に結合された共通ソース回路と、を備える。ここで、共通ゲート回路(common-gate structure path)とは、終始共通ゲート構造を使用する回路を指し、同様に、共通ソース回路(common-source structure path)とは、終始共通ソース構造を使用する回路を指す。
【国際調査報告】