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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】コーティング組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/07 20060101AFI20240528BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240528BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240528BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240528BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240528BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240528BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C09D183/07
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/20
B32B27/00 102
B32B27/40
D06N3/14 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573316
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 CN2021080128
(87)【国際公開番号】W WO2022188084
(87)【国際公開日】2022-09-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユーシェン
(72)【発明者】
【氏名】シ,リリ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ホンギュ
(72)【発明者】
【氏名】フェン,ヤンリー
(72)【発明者】
【氏名】シー,チン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リンフェイ
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055AA11
4F055AA18
4F055AA21
4F055AA27
4F055BA13
4F055FA15
4F055FA21
4F055FA27
4F055FA34
4F055GA02
4F055HA18
4F100AA01D
4F100AA20D
4F100AK51C
4F100AK52D
4F100BA04
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA23D
4F100CB00B
4F100DG11A
4F100DJ01B
4F100EH462
4F100EH46D
4F100EJ08D
4J038DL031
4J038DL032
4J038DL042
4J038DL111
4J038HA446
4J038JC38
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038LA06
4J038MA14
4J038MA15
4J038PC08
(57)【要約】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を開示する。シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物は、ポリウレタンへの良好な接着をもたらすヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物であり、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料のためのトップコートを提供するために使用される。トップコートは、この組成物の硬化生成物である。トップコートおよびシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を作製する方法、ならびに前記シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料の使用も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物であって、
成分(i)、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有し、不飽和基が、アルケニル基、アルキニル基またはこれらの混合から選択され、25℃において100~500,000mPa・sの粘度を有する、1種または複数のオルガノポリシロキサンポリマー、
成分(ii)、1種または複数の充填材処理剤によって任意選択で疎水性処理された、無機強化充填材、例えば微細分割シリカ、
成分(iii)、1分子当たり少なくとも2つ、または少なくとも3つのケイ素結合水素(-Si-H)基を含有する、ポリオルガノシロキサン、
成分(iv)、ヒドロシリル化触媒、
成分(v)、前記組成物の1~5重量%の量のアセチルアセトンジルコニウムと、
前記組成物の1~6重量%の量の1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、および/もしくは式
【化1】
[式中、Rは、1~6個の炭素を有するアルキル基であり、Rは、1~6個の炭素を有するアルコキシ基であり、z=0、1または2である]の1種もしくは複数のエポキシシランまたはこれらの混合物との組み合わせを含む、接着促進剤、ならびに
成分(vi)、エコ溶媒、ならびに任意選択で、
成分(vii)、硬化シリコーン粉末
を含む、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物。
【請求項2】
ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の成分(iii)が、次のもの:
Si-H含有基、(CHSiO1/2基およびSiO4/2基を含む、またはこれらからなるシリコーン樹脂、
Si-H含有基およびSiO4/2基を含む、またはこれらからなるシリコーン樹脂、
Si-H含有基、(CHSiO2/2基およびSiO4/2基を含む、またはこれらからなるシリコーン樹脂、
Si-H含有基、SiO4/2基および(CSiO1/2基を含む、またはこれらからなるシリコーン樹脂の1つまたは複数を含み、
上の各々が、1つまたは複数のCH-SiO3/2(T)基、およびメチルがフェニル基または他のアルキル基またはこれらの混合によって置き換えられた代替物を含んでもよい、
請求項1に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物。
【請求項3】
硬化シリコーンエラストマー粉末(vii)が、0.01~100μmの平均粒子サイズを有する、請求項1または2に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項4】
前記エコ溶媒(vi)が、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソノナデカンおよびこれらの混合物、または25℃において≧5mPa・s以上から25℃において100mPa・s以下(≦)の粘度を有するトリメチル末端ポリジメチルシロキサンを含む、またはこれらからなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の皮革コーティング組成物。
【請求項5】
前記組成物が、加えて、次の添加剤:硬化抑制剤、硬化シリコーンエラストマー粉末、可使時間延長剤、潤滑剤、難燃剤、顔料、着色剤、熱安定剤、圧縮永久歪み改善添加剤、きしり止剤およびこれらの混合物の1つまたは複数を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物。
【請求項6】
成分(v)の前記エポキシシランが、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシランから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物。
【請求項7】
硬化時に得られる、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物の反応生成物であるトップコートを含む、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料。
【請求項8】
次の層
(a)布支持層;
(b)(a)に接着したスポンジ/接着剤層;
(c)スポンジ/接着剤層(b)に接着した好適なポリウレタンスキン層;および
(d)請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化生成物
を含み、層(b)が実質的に層(a)と(c)との間に挟まれており、層(c)が実質的に層(b)と(d)との間に挟まれている、請求項7に記載のシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を、好適なポリウレタンスキン層に接着し、硬化させるステップを含む、トップコートを有するシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を調製する方法。
【請求項10】
次のステップ:ポリウレタンスキン層(c)を剥離ライナー上に塗布し、次いで、前記ポリウレタンスキン層(c)を乾燥させること;スポンジ/接着剤層(b)をスキン層(c)上に塗布し、スポンジ/接着剤層(b)を乾燥させる前またはこれが部分的に乾燥した後に、布支持層(a)を、前記スキン層(c)から遠い前記スポンジ層(b)の面に、積層を開始することによって適用すること;部分的に調製されたシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を形成するために、必要な場合、前記剥離ライナーを除去し、請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物(d)の層を、前記ポリウレタンスキン層(c)に塗布し、硬化させること
による、請求項9に記載のトップコートを有するシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を調製する方法。
【請求項11】
次のステップ:請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を、剥離ライナー上に塗布し、硬化させて、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート(d)を形成すること、ポリウレタンスキン層(c)を、硬化した前記シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート(d)に塗布し、次いで乾燥させること、スポンジ/接着剤層(b)をスキン層(c)上に塗布すること、およびスポンジ/接着剤層(b)を乾燥させる前またはこれが部分的に乾燥した後に、布支持層(a)を、前記スキン層(c)から遠い前記スポンジ層(b)の面に、積層を開始することによって適用すること
による、請求項9に記載のトップコートを有するシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を調製する方法。
【請求項12】
約2~50μmの乾燥膜厚が得られるように、前記シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を塗布し、硬化させる、請求項9、10または11のいずれか一項に記載のトップコートを有するシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を調製する方法。
【請求項13】
前記シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を、噴霧、ローリング、刷毛塗り、スピンコーティング、ディップコーティング、溶媒キャスティング、スロットダイコーティング、噴霧コーティング、ナイフコーティングまたはグラビアコーティングから選択される技法の1つまたは複数を使用して塗布する、請求項9、10、11または12のいずれか一項に記載のトップコートを有するシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を調製する方法。
【請求項14】
請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物でコーティングされる前に、プラズマ処理、コロナ放電処理、UV-C/オゾンまたは真空-UV照射から選択される好適な活性化方法を使用して、前記ポリウレタンスキン層を活性化させる、請求項9、10、11、12または13のいずれか一項に記載のトップコートを有するシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を調製する方法。
【請求項15】
家具、装飾、ハンドバッグ、旅行鞄、衣類、履物、車の内装、車の座席および医療用ベッド/座席等における、またはこれらのための、請求項7もしくは8に記載の、または請求項9から14のいずれか一項に記載の方法によって調製されたシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物に関する。シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物は、ポリウレタンへの良好な接着をもたらすヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物であり、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料のためのトップコートを提供するために使用される。トップコートは、この組成物の硬化生成物である。トップコートおよびシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を作製する方法、ならびに前記合成皮革材料の使用も開示する。
【背景技術】
【0002】
天然皮革に対する多様な合成代替物が開発されている。これらは、安価な代替物として、多種多様な用途に使用される。合成皮革は、例えば、家具、装飾、ハンドバッグ、旅行鞄、衣類、履物、車の内装および車の座席等の用途によく使用される。
【0003】
合成皮革を作製するために使用されるより一般的な材料の1つはポリウレタン(PU)であり、これは、ジまたはトリイソシアネートと、好適なポリオール、実例としては、下に示すアルキレンポリオール、またはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールもしくはポリカーボネートポリオールなどとを反応させることによって一般に調製される、交互コポリマーである。それぞれのイソシアネートとポリオールとは、下に示すように、カルバメート/ウレタン結合の形成を通じて重合する。
【化1】
【0004】
合成PU皮革として使用される、複数の層を含む多数の代替ポリウレタン(PU)系合成皮革複合材料がある。おそらく、最も一般的なPU系合成皮革複合材料の1つは、典型的には、底部から上部に、
(i)布支持層、
(ii)(i)に接着/積層したPUスポンジ/接着剤層、
(iii)スポンジ/接着剤層(ii)に接着したPU「スキン層」、および最後に
(iv)スキン層上の、別名で「上塗り層」とも称される、PUトップコート
を含む。このようなPU系合成皮革複合材料において、疑義を回避するために述べると、層(ii)は、層(i)と層(iii)との間に実質的に挟まれており、層(iii)は、層(ii)と層(iv)との間に実質的に挟まれている。「実質的に」とは、4つの別個の層があるが、それぞれの層の間の界面に、層同士の間の相互混合があってもよいことを意味する。
【0005】
PU系合成皮革複合材料の使用には、天然皮革に対して複数の利点があり、とりわけ、遥かに安価に生産され、水を吸収しない。多様な色で調製することができ、天然皮革とは異なり、経時的に乾燥しない。しかしながら、以下のことを含めて、複数の問題もある:
(i)模造品の人工的な外観を有し、プラスチックの臭いがあるとしばしば言われる、
(ii)本皮とは異なり、とりわけ、容易に穴が開くまたは裂けることがあるため、経時的に不良な耐候性/耐経年劣化性を有する、および
(iii)時間経過によって、本革と同じ光沢または風格を発現しない。
さらに、ますます厳重となる安全規制を満たし、合成皮革として利用するためには、例えば、難燃性、煤煙濃度、コーティング層が使用時に剥離しないようにするための好適な接着強度、耐熱性、耐汚染性、耐溶媒性および耐加水分解性等に関する、厳格な物理的特性要件を満たす必要がある。PU系材料は、上述の物理的特性要件の少なくともいくつかを満足できないことが多い。
【0006】
天然皮革に対する合成代替物の別の群は、シリコーン系合成皮革材料である。このようなシリコーン系合成皮革材料は、上に論じたPU系材料に対して複数の利点を有することができる。例えば、シリコーン系合成皮革材料は一般に、製造後の合成皮革製品に少なくとも部分的に残存することが多い、可塑剤、有毒な重金属または環境上問題となる溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)を使用しない、より環境保全型の生産方法を使用して調製することができる。
【0007】
シリコーン系合成皮革複合材料は、複数の経路を介して作製することができるが、一般に、布支持層と、2つ以上のヒドロシリル化硬化性液体シリコーンゴム組成物の層と、剥離ライナーとを使用して製造される。例えば、第1の液体シリコーンゴム(LSR)組成物を剥離ライナー上にコーティングしてもよく、次いで硬化させて、第1の層またはスキン層を形成する。通常は第1のLSR組成物とは異なる物理的特性を有する、第2のLSR組成物を、硬化した第1の層に接着して接着剤層を形成し、布支持層を、硬化前の第2のLSR層に接着し、その後、第2のLSR組成物を硬化させて、スキン層と布支持層との間に位置する接着剤層を形成する。シリコーン系皮革複合材料を形成するために適当であると考えられる、ヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の1つまたは複数の追加の層もまた、剥離ライナーと布層との間に塗布してもよい。例えば、保護トップコートとして、スキン層の上に第3の層が提供されてもよい。必要な場合、必要なときに、剥離ライナーは後に除去される。
【0008】
このようなシリコーン系合成皮革複合材料は、例えば、広い温度範囲にわたるより良好な可撓性、ならびに優れたUVおよび熱への耐性を提供できるため、物理的特性の観点から、従来のPU合成皮革を凌駕することができる。トップコートは、防汚性などの有利な特性の提供に資するため、特に重要である。トップコートはまた、ヒトの皮膚に優しく、使用者に優れた手触りを提供すると考えられる。しかしながら、このようなシリコーン系合成皮革複合材料は、一般に、調製がより高価であり、そのため、すべての使用に全面的には好適ではないかもしれない。
【0009】
シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を生産するという概念は、代替的アプローチであると考えられることもあるが、シリコーン材料の層をポリウレタン材料の層に接着するのが非常に困難であるという根本的な問題を有する。なぜなら、シリコーンエラストマー性材料とポリウレタンとは、大きく異なる極性を有し、弱い分子間吸引力を生じるに過ぎないため、および互いに相互作用することができる化学的に活性な基を含有しないためである。
【発明の概要】
【0010】
したがって、産業界は、1つまたは複数のPU層を、シリコーン系材料トップコートと組み合わせて両方使用することから便益を提供することができる、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料であって、シリコーン系材料トップコートが、標準的なPUトップコートまたは上塗り層の置き換えとして提供され、硬化すると、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料において隣接するPU層(しばしばPU「スキン」層と称される)に接着することができる、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を提供することを所望している。
【0011】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物であって、
成分(i)、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有し、不飽和基が、アルケニル基、アルキニル基またはこれらの混合物から選択され、25℃において100~500,000mPa・sの粘度を有する、1種または複数のオルガノポリシロキサンポリマー、
成分(ii)、1種または複数の充填材処理剤によって任意選択で疎水性処理された、無機強化充填材、例えば微細分割シリカ、
成分(iii)、1分子当たり少なくとも2つ、または少なくとも3つのケイ素結合水素(-Si-H)基を含有する、ポリオルガノシロキサン、
成分(iv)、ヒドロシリル化触媒、
成分(v)、組成物の1~5重量%の量のアセチルアセトンジルコニウムと、
組成物の1~6重量%の量の1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、および/もしくは式
【化2】
[式中、Rは、1~6個の炭素を有するアルキル基であり、Rは、1~6個の炭素を有するアルコキシ基であり、z=0、1または2である]の1種もしくは複数のエポキシシランまたはこれらの混合物との組み合わせを含む、接着促進剤、ならびに
成分(vi)、エコ溶媒、ならびに任意選択で、
成分(vii)、硬化シリコーン粉末
を含む、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
上のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化から得られるトップコートは、ポリウレタンに容易に接着するが、具体的には、シリコーン/ポリウレタン合成皮革のポリウレタンスキン層に容易に接着するが、耐汚損性にも優れた架橋シリコーンエラストマー性マトリックスを提供するように設計され、すなわち、硬化トップコートは、清掃が容易で、良好な耐引掻き性を有する。
【0013】
本明細書に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化層の形態のトップコートを有する、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料も提供される。
【0014】
本明細書に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化の反応生成物として形成されるシリコーンコーティング、これを利用したトップコートおよびシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を作製する方法、ならびにシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料から作り出された製品の使用も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(i)オルガノポリシロキサンポリマー
1種または複数のオルガノポリシロキサンポリマーが、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有し、不飽和基が、アルケニル基、アルキニル基またはこれらの混合物から選択され、25℃において100~500,000mPa・sの粘度を有する、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の成分(i)。
オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、式(I):
SiO(4-a)/2 (I)
[式中、不可欠な数の不飽和基を含む限り、各Rは独立して、脂肪族ヒドロカルビル、芳香族ヒドロカルビルまたはオルガニル基(官能基のタイプを問わない、炭素原子に1つの遊離原子価を有する任意の有機置換基である)から選択される]の複数の基を有する。この基は、ペンダント位にあってもよく(DまたはTシロキシ基において)、末端であってもよい(Mシロキシ基において)。飽和脂肪族ヒドロカルビルは、アルキル基に限定するものではないが、典型的には1~20個の炭素原子を含有する、一価飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシルおよびオクタデシル、ならびにシクロアルキル基、例えばシクロヘキシルによって例示される。不飽和脂肪族ヒドロカルビルは、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、イソプロペニル、5-ヘキセニル、シクロヘキセニルおよびヘキセニルによって、ならびにアルキニル基によって例示される。芳香族炭化水素基は、限定するものではないが、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリルおよび2-フェニルエチルによって例示される。オルガニル基は、限定するものではないが、ハロゲン化アルキル基、例えば、クロロメチルおよび3-クロロプロピル;窒素含有基、例えば、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基;酸素含有基、例えば、ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基およびヒドロキシル基によって例示される。さらなるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基および/またはホウ素含有基を挙げることができる。下付きの「a」は、0、1、2または3でありうるが、典型的には、主に2または3である。
【0016】
シロキシ基は、Rが有機基、典型的にはメチル基である場合、短縮(省略)命名法、すなわち、「M」、「D」、「T」および「Q」によって記載することができる(シリコーンの命名法に関するさらなる教示は、Walter Noll, Chemistry and Technology of Silicones, dated 1962, Chapter I, pages 1-9に見出すことができる)。M基は、a=3であるシロキシ基、すなわちRSiO1/2に対応し、D基は、a=2であるシロキシ基、つまりRSiO2/2に対応し、T基は、a=1であるシロキシ基、つまりRSiO3/2に対応し、Q基は、a=0であるシロキシ基、つまりSiO4/2に対応する。
【0017】
オルガノポリシロキサンポリマー(i)の分子構造は、典型的には直鎖であるが、しかしながら、T基(以前に記載した通り)の存在に起因するいくつかの分枝が分子内にあってもよい。
【0018】
本明細書に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を硬化させることによって調製されるエラストマーにおいて、有用なレベルの物理的特性を達成するために、オルガノポリシロキサンポリマー(i)の粘度は、25℃において少なくとも100mPa・sであるべきである。オルガノポリシロキサンポリマー(i)の粘度についての上限は、25℃において最大500,000mPa・sの粘度に限定される。
【0019】
存在する不飽和基の量(重量%)は、ASTM E168に従って、定量赤外分析を使用して決定される。成分(i)は、別段の指示がない限り、ASTM D1084-16方法Bのカップ/スピンドル方法に基づき、粘度範囲に適当なスピンドルを使用して、25℃において100mPa・s~500,000mPa・s、または25℃において200mPa・s~150,000mPa・s、または25℃において200mPa・s~125,000mPa・s、または25℃において200mPa・s~100,000mPa・s、または25℃において測定して200mPa・s~80,000mPa・sの粘度を有する。
【0020】
各オルガノポリシロキサンポリマー(i)が、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を含有する限り、オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、ポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、または例えばアルケニルおよび/もしくはアルキニル基を含有するこれらのコポリマーから選択されうるが、任意の好適な末端基を有してもよく、例えば、トリアルキルによって終端、アルケニルジアルキルによって終端してもよく、任意の他の好適な末端基の組み合わせによって終端してもよい。
【0021】
したがって、高レベルのアルケニルおよび/またはアルキニル基、例えばビニル基が存在することを考慮すると、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンまたはジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーが好ましいことがあるが、オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、実例としては、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニル末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンまたはジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーであってもよい。
【0022】
例えば、2つの末端に、アルケニル基および/またはアルキニル基から選択される不飽和基を含有するオルガノポリシロキサンポリマー(i)は、一般式(II):
R’R’’R’’’SiO-(R’’R’’’SiO)-SiOR’’’R’’R’ (II)
によって表すことができる。式(II)において、各R’は、アルケニル基またはアルキニル基でありうるが、典型的には、2~10個の炭素原子を含有する。アルケニル基としては、限定するものではないが、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、アルケニル化シクロヘキシル基、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、または同様の直鎖および分枝状アルケニル基、ならびにアルケニル化芳香環構造が挙げられる。アルキニル基は、限定するものではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、アルキニル化シクロヘキシル基、へプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、または同様の直鎖および分枝状アルケニル基、ならびにアルケニル化芳香環構造から選択されうる。
【0023】
R’’はエチレン性不飽和を含有せず、各R’’は同じであっても異なってもよく、個々に、典型的には1~10個の炭素原子を含有する一価飽和炭化水素基、および典型的には6~12個の炭素原子を含有する一価芳香族炭化水素基から選択される。R’’は、非置換であってもよく、本明細書に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化に干渉しない1つまたは複数の基、例えばハロゲン原子で置換されていてもよい。R’’’は、R’またはR’’であり、mは整数である。
【0024】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の成分(i)は、25℃において100~500,000mPa・sの粘度を有する2種以上のオルガノポリシロキサンポリマー(i)を含んでもよい。成分(i)にオルガノポリシロキサンポリマーの混合物を使用する場合、アルケニル基、アルキニル基またはこれらの混合物から選択される不飽和基の少なくとも1つ、または1つが、1分子当たりポリマーの少なくとも5重量%、または1分子当たりポリマーの5~15重量%、または1分子当たりポリマーの6~15重量%、または1分子当たりポリマーの7~15重量%を構成してもよく、これは、ASTM E168に従って、定量赤外分析を使用して決定されうる。
【0025】
成分(i)は、典型的には、組成物の3重量%または10重量%から、組成物の50重量%または45重量%の量で存在し、例えば、オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、組成物の10~50重量%または10~45重量%の範囲内で存在しうる。
【0026】
(ii)強化充填材
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の成分(ii)は、微細分割シリカなどの強化充填材である。シリカおよび他の強化充填材(ii)は、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の加工中の「クレーピング」または「クレープ硬化」と称される現象を予防するために、1種または複数の公知の疎水化充填材処理剤で処理されることが多い。
【0027】
シリカの微細分割形態が、強化充填材(ii)として好ましい。沈降および/またはヒュームドシリカ、またはヒュームドシリカは、典型的には少なくとも50m/g(ISO 9277:2010に従ったBET方法)である比較的大きな表面積のため、特に好ましい。50~450m/g(ISO 9277:2010に従ったBET方法)、または50~300m/g(ISO 9277:2010に従ったBET方法)の表面積を有する充填材が、典型的に使用される。両方のタイプのシリカが市販されている。
【0028】
本明細書におけるシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物中の強化充填材(ii)、例えば微細分割シリカの量は、5~40重量%または5~30重量%である。いくつかの例では、強化充填材の量は、組成物の重量を基準として、7.5~30重量%もしくは10~30重量%、または組成物の重量を基準として15~30重量%であってもよい。
【0029】
強化充填材(ii)が天然では親水性である場合(例えば非処理シリカ充填材)、典型的には、処理剤で処理して疎水性にする。表面処理によって、充填材が容易にオルガノポリシロキサンポリマー(i)で濡れるようになるため、これらの表面改質強化充填材(ii)は、凝集せず、オルガノポリシロキサンポリマー(i)に均一に組み込むことができる。これによって、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の室温での機械的特性が改善し、組成物から硬化した硬化材料が得られる。
【0030】
表面処理は、組成物への導入の前に、またはin situで(すなわち、本明細書における組成物の他の成分の少なくとも一部の存在下で、これらの成分を室温以上で一緒に、充填材が完全に処理されるまでブレンドすることによって実施してもよい。典型的には、非処理強化充填材(ii)は、オルガノポリシロキサンポリマー(i)の存在下、処理剤によってin situで処理され、混合後、シリコーンゴム系材料が得られ、これに他の成分が加えられうる。
【0031】
典型的には、強化充填材(ii)は、加工中のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物のクレーピングを予防するのに適用される、当技術分野において開示されている任意の低分子量オルガノケイ素化合物によって表面処理されうる。例えば、充填材を疎水性にし、そのため、取り扱いが容易となり、他の成分との均一な混合物が得られる、オルガノシラン、オルガノポリシロキサンもしくはオルガノシラザン、例えばヘキサアルキルジシラザン、短鎖シロキサンジオール、または脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、例えばステアリン酸エステル。具体例としては、制限するものではないが、シラノール末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン、ジメチルシラノール末端ビニルメチル(ViMe)シロキサン、テトラメチルジ(トリフルオロプロピル)ジシラザン、テトラメチルジビニルジシラザン、シラノール末端MePhシロキサン、各分子内に平均2~20個のジオルガノシロキサンの反復基を含有する液体ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザンが挙げられる。加工助剤として、シリカ処理剤と一緒に少量の水を加えてもよい。
【0032】
充填材は、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物に、前記充填材とオルガノポリシロキサンポリマーとを含むマスターバッチまたはベースの形態で導入されうる。マスターバッチまたはベースに使用されるオルガノポリシロキサンポリマーは、成分(i)と同様の構造のものであってもよいが、あるいは、成分(i)と同じ範囲内の粘度を有するが、ポリマーの5重量%未満のアルケニルおよび/またはアルキニル含有量を有するオルガノポリシロキサンポリマーであってもよい。必要な場合、ヒュームドシリカは、好適な疎水化剤を混合物に導入することによって、マスターバッチの調製中にin situで疎水性処理してもよい。
【0033】
本明細書に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物は、1分子当たり3個以上のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(成分iii)およびヒドロシリル化触媒(成分iv)を含む、ヒドロシリル化硬化パッケージを使用して硬化させる。
【0034】
(iii)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分(iii)は、1分子当たり少なくとも2つ、または少なくとも3つのケイ素結合水素(-Si-H)基を含有する、ポリオルガノシロキサンの形態における架橋剤である。成分(B)は通常、3つ以上の-Si-H基を含有し、水素原子が成分(i)の不飽和アルケニルまたはアルキニル基と反応して、これらとのネットワーク構造を形成することができ、それによって組成物が硬化する。成分(iii)の一部またはすべては、特に成分(i)が1分子当たり2つよりも多く(>)のアルケニルまたはアルキニル基を有する場合には、代わりに1分子当たり2つの-Si-H基を有してもよい。
【0035】
1分子当たり少なくとも2つまたは3つのSi-H基を含有するポリオルガノシロキサン(B)の分子構成は、特に制限されず、直鎖、いくつかの分枝を有する直鎖、環状またはシリコーン樹脂ベースであってもよい。
【0036】
成分(iii)に使用されるケイ素結合有機基は、メチル、エチル、プロピル、ブテニル、ペンテニル、ヘキシルまたは同様のアルキル基;フェニル、トリル、キシリルまたは同様のアリール基;3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルまたは同様のハロゲン化アルキル基によって例示することができ、これらのうちの好ましいものはメチルおよびフェニル基である。
【0037】
1分子当たり少なくとも2つまたは3つのケイ素結合水素基を含有するポリオルガノシロキサン(iii)の例としては、限定するものではないが、次のものが挙げられる:
(a)分枝状および/または連鎖延長ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
(b)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、
(c)(CHHSiO1/2単位と、(CHSiO1/2単位と、SiO4/2単位とからなるコポリマーおよび/またはケイ素樹脂、
(d)(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなるコポリマーおよび/またはシリコーン樹脂、
(e)(CHHSiO1/2単位と、SiO4/2単位と、(CSiO1/2単位とからなるコポリマーおよび/またはシリコーン樹脂、ならびにメチルがフェニル基または他のアルキル基によって置き換えられた代替物。
(f)Si-H基、例えば、(CHHSiO1/2基、(CHSiO2/2基およびSiO4/2基を含む、またはこれらからなるシリコーン樹脂。
上に言及したシリコーン樹脂はまた、T基および/もしくはD基、またはT基を含んでもよい。他の可能な架橋剤(iii)としては、次のものを挙げることができる:
(g)1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、
(h)1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、
(i)トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、
(j)トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、
(k)トリメチルシロキシ端部遮断メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(l)トリメチルシロキシ端部遮断ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、
(m)ジメチルハイドロジェンシロキシ端部遮断ジメチルポリシロキサン、
(n)ジメチルハイドロジェンシロキシ端部遮断ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、
(o)トリメチルシロキシ端部遮断メチルハイドロジェンシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、
(p)トリメチルシロキシ端部遮断メチルハイドロジェンシロキサン/ジフェニルシロキサン/-ジメチルシロキサンコポリマー、
(q)トリメチルシロキシ端部遮断メチルハイドロジェンシロキサン/メチルフェニルシロキサン/-ジメチルシロキサンコポリマー、
(r)ジメチルハイドロジェンシロキシ端部遮断/ジメチルシロキサン/-ジフェニルシロキサンコポリマーおよび/または
(s)ジメチルハイドロジェンシロキシ端部遮断メチルハイドロジェンシロキサン/ジメチルシロキサン/-メチルフェニルシロキサンコポリマー、
(t)他には、テトラキス(ジメチルシロキシ)シラン、ヒドリド末端ポリフェニルメチルシロキサン、ヒドリド末端ポリフェニル-(ジメチルヒドロシロキシ)シロキサンまたはフェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン等が挙げられる。あるいは、成分(ii)架橋剤が、充填材、例えば上の1つによって処理したシリカであってもよい。
【0038】
1つの代替では、架橋剤は、25℃において10~5000mPa・s、または25℃において10~1000mPa・s、または25℃において10~500mPa・sの粘度を有する、Q、T、Dおよび/またはM基の混合物を含むシリコーン樹脂、例えば、上に記載した(c)、(d)および/または(e)であってもよい。
【0039】
1分子当たり少なくとも2つまたは3つの-Si-H基を含有するポリオルガノシロキサン(iii)は、典型的には、成分(iii)中のケイ素結合水素原子と、組成物中の全不飽和基のそれとのモル比が、0.5:1~20:1、または0.5:1~5:1、または0.6:1~3:1となる量で加える。この比が0.5:1未満である場合、十分に硬化した組成物が得られないであろう。比が20:1を超える場合、加熱時に硬化組成物の硬度が上昇する傾向がある。
【0040】
成分(iii)のケイ素結合水素(Si-H)含有量は、ASTM E168に従って、定量赤外分析を使用して決定される。本例において、ケイ素結合水素とアルケニル(ビニル)および/またはアルキニルとの比は、ヒドロシリル化硬化プロセスに依拠する場合には重要である。一般に、この比は、組成物中のアルケニル基、例えばビニルの総重量%[V]と、組成物中のケイ素結合水素の総重量%[H]とを計算することによって決定され、水素の分子量を1、ビニルの分子量を27とすると、ケイ素結合水素とビニルとのモル比は27[H]/[V]である。
【0041】
この成分の分子量は具体的に制限されないが、粘度は、典型的には、Brookfield DV 3T Rheometerに基づいて、またはスピンドルLV-4(1,000~2,000,000mPa・sの範囲内の粘度のために設計されている)を有するBrookfield(登録商標)回転粘度計、もしくは1000mPa・s未満の粘度については、スピンドルLV-1(15~20,000mPa・sの範囲内の粘度のために設計されている)を有するBrookfield(登録商標)回転粘度計のいずれかを使用し、ポリマーの粘度に従って粘度を適応させて、25℃において15~50,000mPa・sである。
【0042】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の成分(iii)は、1分子当たり少なくとも2つまたは少なくとも3つのケイ素結合水素(-Si-H)基を含有するポリオルガノシロキサンであり、これは、下に言及する成分(iv)の触媒活性のもとで、成分(iii)におけるケイ素結合水素原子と、成分(i)におけるアルケニル基および/またはアルキニル基との付加反応によって、ポリマー(i)のための架橋剤として機能する。成分(iii)は、少なくとも5,000百万分率(ppm)のケイ素結合水素(Si-H)、または少なくとも7000ppm、または7000~12,000ppmのケイ素結合水素、または8000ppm~11,000ppmのケイ素結合水素を含有し、その結果、この成分のケイ素結合水素原子は、成分(i)のアルケニル基および/またはアルキニル基、典型的にはアルケニル基、とりわけビニル基と十分に反応して、これらとネットワーク構造を形成することができ、それによって組成物が硬化する。存在するケイ素結合水素の数量もまた、ASTM E168に従って、定量赤外分析を使用して決定される。
【0043】
成分(iii)は典型的には、全組成物中に、組成物の5~30重量%、5~20重量%、または10~20重量%の量で存在するが、存在する量は典型的には、上に記載したように、成分(iii)におけるケイ素結合水素原子と、全不飽和基、例えばアルケニルおよびアルキニル基、しばしばビニル基の総数とのモル比によって決定される。
【0044】
iv)ヒドロシリル化触媒
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物は、ヒドロシリル化(付加硬化)触媒(iv)によって触媒されるヒドロシリル化(付加)反応を介して硬化し、この触媒は、白金金属群、すなわち、白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウムおよびパラジウム、またはこのような金属の化合物から選択される金属である。ヒドロシリル化反応についての白金およびロジウム化合物の高い活性レベルに起因して、これらの触媒が好ましい。
【0045】
触媒(iv)は、白金族金属、担体に、例えば活性炭、金属酸化物、例えば酸化アルミニウムもしくは二酸化ケイ素、シリカゲルもしくは粉末木炭に付着させた白金族金属、または白金族金属の化合物または錯体でありうる。
【0046】
好ましいヒドロシリル化触媒(iv)の例は、白金系触媒、例えば、白金黒、酸化白金(アダムズ触媒)、様々な固体支持体上の白金、クロロ白金酸、クロロ白金酸のアルコール溶液、およびクロロ白金酸とエチレン性不飽和化合物との、例えば、オレフィンおよびエチレン性不飽和ケイ素結合炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体である。使用することができる可溶性白金化合物としては、例えば、式(PtCl・(オレフィン)およびH(PtCl・オレフィン)の白金-オレフィン錯体が挙げられ、この文脈においては、2~8個の炭素原子を有するアルケン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンおよびオクテンの異性体、または5~7個の炭素原子を有するシクロアルカン、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロヘプテンの使用が好ましい。他の可溶性白金触媒は、実例としては、式(PtClの白金-シクロプロパン錯体、ヘキサクロロ白金酸と、アルコール、エーテルおよびアルデヒドとの反応生成物もしくはこれらの混合物、またはエタノール溶液中の重炭酸ナトリウムの存在下でのヘキサクロロ白金酸と、メチルビニルシクロテトラシロキサンとの反応生成物である。リン、硫黄およびアミン配位子を有する白金触媒、例えば(PhP)PtCl;および白金とビニルシロキサンとの錯体、例えばsym-ジビニルテトラメチルジシロキサンも使用することができる。
【0047】
したがって、好適な白金系触媒の具体例としては、次のものが挙げられる:
(i)クロロ白金酸と、エチレン性不飽和炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体は、米国特許第3,419,593号明細書に記載されている、
(ii)六水和物形態もしくは無水物形態のいずれかにおけるクロロ白金酸、
(iii)クロロ白金酸と、脂肪族不飽和オルガノケイ素化合物、例えばジビニルテトラメチルジシロキサンとを反応させることを含む方法によって得られる白金含有触媒、
(iv)米国特許第6,605,734号明細書に記載されているアルケン-白金-シリル錯体、例えば、(COD)Pt(SiMeCl[式中、「COD」は1,5-シクロオクタジエンである]、および/または
(v)Karstedt触媒、典型的には、溶媒、例えばトルエン中に約1重量%の白金を含有する、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が使用されうる。これらは、米国特許第3,715,334号明細書および同第3,814,730号明細書に記載されている。
【0048】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物のヒドロシリル化触媒(iv)は、全組成物中に、触媒量で、すなわち、所望の条件下で付加/ヒドロシリル化反応を触媒し、組成物をエラストマー性材料に硬化させるのに十分な量または数量で存在する。反応速度および硬化の動力学を調節するために、いろいろなレベルのヒドロシリル化触媒(iv)を使用することができる。触媒量のヒドロシリル化触媒(iv)とは、一般に、組成物の重量を基準として、百万部当たり(ppm)、0.01ppmから10,000百万分率の間、または0.01ppmから5000ppmの間、または0.01ppmから3,000ppmの間、または0.01ppmから1,000ppmの間の白金族金属である。具体的な実施形態では、この触媒の触媒量は、組成物の重量を基準として、0.01~1,000ppm、または0.01~750ppm、または0.01~500ppm、または0.01~100ppmの範囲内の金属でありうる。これらの範囲は、もっぱら触媒内の金属含有量に、または指定の触媒全体(配位子を含む)に関係しうるが、典型的には、これらの範囲はもっぱら触媒内の金属含有量に関係する。触媒は、単一種として加えてもよく、2種以上の異なる種の混合物として加えてもよい。典型的には、触媒パッケージが提供される形態/濃度に応じて、存在する触媒の量は、組成物の0.001~3.0重量%、または組成物の0.1~3.0重量%、または組成物の0.1~2.0重量%、または組成物の0.1~1.5重量%の範囲内である。
【0049】
成分(v)接着促進剤
成分(v)は、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を、シリコーン/ポリウレタン合成皮革の隣接するポリウレタン層、例えばポリウレタンスキン層に接着するための接着促進剤であり、組成物の1~5重量%の量のアセチルアセトンジルコニウムと、
組成物の1~6重量%の量の次の構造の1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
【化3】
および/もしくは式
【化4】
[式中、各Rは、同じでありまたは異なり、1~6個の炭素を有するアルキル基であり、各Rは、同じでありまたは異なり、1~6個の炭素を有するアルコキシ基であり、z=0、1または2である]の1種もしくは複数のエポキシシランまたはこれらの混合物との組み合わせを含む。あるいは、各Rは、1~3個の炭素を有する、または1~2個の炭素を有するアルキル基である。あるいは、各Rは、1~3個の炭素を有する、または1~2個の炭素を有するアルコキシ基である。好ましくは、zは0もしくは1であり、またはzは0である。一実施形態では、前記エポキシシランは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、および/または3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランから選択される。
【0050】
現在の理論によって束縛されるものではないが、このような接着促進剤は、シランの加水分解および縮合を加速することによって、本シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物が塗布されている、隣接するポリウレタン層のヒドロキシル基と反応させると考えられる。
【0051】
成分(vi)-エコ溶媒
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の成分(vi)は、エコ溶媒である。任意の好適なエコ溶媒が利用されうるが、例としては、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソノナデカンおよびこれらの混合物、または25℃において5mPa・s以上(≧)から25℃において100mPa・s以下(≦)の粘度を有するトリメチル末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。25℃において5mPa・s未満の粘度を有するトリメチル末端ポリジメチルシロキサンの使用は、実際に、ストレッチマークが白色化する皮革材料をもたらすようであることが注記されている。一実施形態では、エコ溶媒は、イソヘキサデカンを含む、またはイソヘキサデカンからなる。エコ溶媒は、組成物を希釈するための手段として組成物中に存在し、組成物の30~70重量%の量で組成物中に存在する。所望により、または必要により、エコ溶媒は、パートAとパートBとのいずれかまたは両方のパートに存在しうる。
【0052】
成分(vii)任意選択の硬化シリコーンエラストマー粉末
必要な場合、任意の好適な硬化シリコーンエラストマー粉末を、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物に利用してもよい。一代替では、硬化シリコーンエラストマー粉末(vii)は、0.01~100μm、または0.01~50μm、または0.01~25μmの平均粒子サイズを有する。これらは、化学官能基、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリルオキシ基を含有してもよく、または例えばシリカ処理コーティングでコーティングしてもよい。
【0053】
硬化シリコーンエラストマー粉末は、好適な硬化性シリコーン組成物から作製される。硬化シリコーン組成物としては、例えば、付加(ヒドロシリル化)反応硬化型シリコーン組成物、縮合反応硬化型シリコーン組成物、オルガノペルオキシド硬化型シリコーン組成物および紫外線硬化型シリコーン組成物を挙げることができる。取り扱いが容易であるため、付加反応硬化型および縮合反応硬化型シリコーン組成物が好ましい。
【0054】
シリコーンエラストマー粉末は、一般に、硬化性シリコーン組成物の均一水性エマルションを作製することによって調製され、まず、硬化性シリコーン組成物を水中または界面活性剤水溶液中に分散させること、および次いで、この分散液を撹拌機、例えば、ホモジナイザー、コロイドミルまたは超音波振動器などの混合装置の作用に供することにより作製される。水性硬化性シリコーンエマルションは、硬化性シリコーン組成物が小さな平均粒子直径を有する非常に安定なエマルションを得るために、好ましくは界面活性剤を使用して調製される。次いで、水性エマルション中に存在する硬化性シリコーンを硬化させることによって、硬化シリコーン粉末の水性分散液を生成する。この硬化には、前記水性エマルションを室温で放置することによって、または水性エマルションを加熱することによって、影響を及ぼすことができる。水性硬化性シリコーンエマルションを加熱する場合、好ましい加熱温度は100℃以下であるはずであり、特に好ましい温度は40℃~95℃の範囲内である。水性硬化性シリコーンエマルションを加熱するための技法は、水性エマルションを直接加熱すること、または水性エマルションを熱水に加えることによる。成分(vii)として利用されうる市販品の例としては、実例として、Dow Silicones Corporation製のDowsil(商標) 23N、Dowsil(商標) 603T添加剤およびDowsil(商標) 9701 Cosmetic Powderが挙げられる。
【0055】
硬化シリコーンゴム粉末は、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物中に、すなわち、パートAとパートBとを一緒に混合した時点で、組成物の2.5~20重量%、または組成物の2.5~15重量%、または組成物の2.5~10重量%の量で存在する。
【0056】
任意選択の添加剤
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物は、1種または複数の添加剤を含んでもよい。これらの任意選択の添加剤の例としては、硬化抑制剤、無機非強化充填材、電気伝導性添加剤、可使時間延長剤、潤滑剤、難燃剤、顔料、着色剤、連鎖延長剤、熱安定剤、圧縮永久歪み改善添加剤、きしり止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防汚剤および光安定剤、凍結防止剤、および/または殺生剤、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
抑制剤
ヒドロシリル化硬化系を利用しているので、任意選択で、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物のより長い作用時間または可使時間を得るために、触媒の活性を遅延させるまたは阻止するための好適な抑制剤を組成物に組み込んでもよい。
【0058】
白金金属系触媒の抑制剤、一般に白金金属系触媒は、当技術分野において周知である。ヒドロシリル化または付加反応抑制剤としては、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレン性アルコール、シリル化アセチレン性アルコール、例えば、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、マレート、フマレート、エチレン性または芳香族不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素モノエステルおよびジエステル、共役エン-イン類、ヒドロペルオキシド、ニトリルならびにジアジリジンが挙げられる。米国特許第3,989,667号明細書に記載されているアルケニル置換シロキサンを使用してもよく、中でも環状メチルビニルシロキサンが好ましい。
【0059】
公知の白金触媒の抑制剤の別のクラスとしては、米国特許第3,445,420号明細書に開示されているアセチレン性化合物が挙げられる。アセチレン性アルコール、例えば2-メチル-3-ブチン-2-オールは、25℃において白金含有触媒の活性を阻止する抑制剤の好ましいクラスを構成する。これらの抑制剤を含有するヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物は、典型的には、実用的な速度で硬化させるために、70℃以上の温度で加熱する必要がある。
【0060】
アセチレン性アルコールおよびその誘導体の例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、1-フェニル-2-プロピノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0061】
存在する場合、1モルの触媒(iv)の金属当たり1モルの抑制剤という低い抑制剤濃度で、いくつかの例では、満足な貯蔵安定性および硬化速度を付与する。他の例では、1モルの触媒(iv)の金属当たり最大500モルの抑制剤という抑制剤濃度が必要となる。所与の組成物中の所与の抑制剤の最適な濃度は、定型的な実験によって容易に決定される。選択された抑制剤が提供/商業的に入手される濃度および形態に応じて、抑制剤は、組成物中に存在する場合、典型的には、組成物の0.0125~10重量%の量で存在する。上記の混合物も使用されうる。
【0062】
無機非強化充填材
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物中の無機非強化充填材は、存在する場合、破砕石英、ケイソウ土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタンおよびカーボンブラック、ウォラストナイト、および小板タイプ充填材、例えば、グラファイト、グラフェン、タルク、マイカ、粘土、層状ケイ酸塩、カオリン、モンモリロナイトならびにこれらの混合物を含みうる。単独で、または上記に加えて使用されうる他の無機非強化充填材としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(硬石膏)、ギプサム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(ブルーサイト)、グラファイト、炭酸銅、例えばマラカイト、炭酸ニッケル、例えばザラカイト(zarachite)、炭酸バリウム、例えば毒重石、ならびに/または炭酸ストロンチウム、例えばストロンチアナイトが挙げられる。
【0063】
無機非強化充填材は、存在する場合、代わりにまたは加えて、酸化アルミニウム、カンラン石群、ガーネット群、アルミノケイ酸塩、環状ケイ酸塩、鎖状ケイ酸塩および層状ケイ酸塩からなる群からのケイ酸塩から選択されうる。カンラン石群は、限定するものではないが、フォルステライトおよびMgSiOなどのケイ酸塩鉱物を含む。ガーネット群は、限定するものではないが、パイロープ、MgAlSi12、グロッシュラーおよびCaAlSi12などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含む。アルミノケイ酸塩は、限定するものではないが、シリマナイト、AlSiO、ムライト、3Al・2SiO、カイヤナイトおよびAlSiOなどの粉砕ケイ酸塩鉱物を含む。環状ケイ酸塩群は、限定するものではないが、コーディエライトおよびAl(Mg,Fe)[SiAlO18]などのケイ酸塩鉱物を含む。鎖状ケイ酸塩群は、限定するものではないが、ウォラストナイトおよびCa[SiO]などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含む。
【0064】
好適な層状ケイ酸塩、例えば利用できるケイ酸塩鉱物としては、限定するものではないが、マイカ、KAl14[SiAl20](OH)、パイロフィライト、Al[Si20](OH)、タルク、Mg[Si20](OH)、サーペンティン、例えばアスベスト、カオリナイト、Al[Si10](OH)およびバーミキュライトが挙げられる。存在する場合、非強化充填材は、累計で組成物の最大1~50重量%で存在する。
【0065】
必要と考えられる場合はいつでも、強化充填材(ii)について上に記載したように、非強化充填材も疎水性となるように処理してもよく、これによって、取り扱いがより容易となり、他の成分との均一な混合物が得られる。強化充填材(ii)の場合と同様に、表面処理によって、非強化充填材がオルガノポリシロキサンポリマー(i)で容易に濡れるようになり、より良好な加工性(例えば、粘度の低さ、より良好な離型能および/または加工機器、例えば2本ロールミルへの低接着)、耐熱性ならびに機械的特性など、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の特性が改善されうる。
【0066】
任意の好適な酸化防止剤、帯電防止剤、防汚剤および/または光安定剤を、組成物に利用してもよい。
【0067】
好ましくは、本明細書において使用されうる電気伝導性添加剤は、無機物である。シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物中に存在しうる電気伝導性添加剤の例としては、金属粒子、金属酸化物粒子、金属コーティング金属質粒子(例えば銀メッキニッケル)、金属コーティング非金属コア粒子(例えば銀コーティングされたタルクまたはマイカまたは石英)およびこれらの組み合わせが挙げられる。金属粒子は、粉末、フレークまたはフィラメント、およびこれらの混合物または派生物の形態でありうる。
【0068】
可使時間延長剤、例えばトリアゾールを使用してもよいが、本発明の範囲内で必要とは考えられない。したがって、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物は、可使時間延長剤不含であってもよい。
【0069】
潤滑剤の場合、潤滑剤は、組成物の他の要素と反応性であってもよく、これらと非反応性であってもよい。潤滑剤としては、成分(i)の基本構造と類似の基本構造を有するが、1分子当たり1つの不飽和基、例えば1つのアルケニル基のみを有するオルガノポリシロキサンを挙げることができる。あるいは、潤滑剤は有機ワックス等であってもよい。ワックスは、反応性である場合、例えば、1分子当たり15~30個の炭素を有する、または1分子当たり15~30個の炭素と、1分子当たり少なくとも1つのアルケニル化基、例えばビニル基とを有するアルケニル化ワックスであってもよい。
【0070】
非反応性潤滑剤は、所望により組成物中に存在してもよく、これらとしては、限定するものではないが、窒化ホウ素、グラファイト、硫化モリブデン等、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0071】
難燃剤の例としては、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、ウォラストナイト、マイカおよび塩素化パラフィン、ヘキサブロモシクロドデカン、リン酸トリフェニル、メチルホスホン酸ジメチル、リン酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)(臭素化トリス)、ならびにこれらの混合物または誘導体が挙げられる。
【0072】
顔料の例としては、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化チタン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス、およびこれらの混合物または誘導体が挙げられる。
【0073】
着色剤の例としては、バット染料、反応性染料、酸染料、クロム染料、分散染料、カチオン性染料およびこれらの混合物が挙げられる。
【0074】
任意選択の添加剤は2つ以上の理由のために、例えば非強化充填材および難燃剤として使用されてもよく、存在する場合、これらは両方の役割で機能しうる。存在するとき、または場合、前述の追加成分は、累計で組成物の0.1~30重量%、または0.1~20重量%の量で存在する。
【0075】
貯蔵中の時期尚早な硬化を予防するために、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物は、使用するまで、2つのパート、パートAとパートBとで貯蔵される。典型的には、パートAは、オルガノポリシロキサンポリマー(i)および強化充填材(ii)の一部と、ヒドロシリル化触媒(iv)とを含有し、パートBは、オルガノポリシロキサンポリマー(i)および強化充填材(ii)の残りと一緒に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)と、通常は、存在する場合、抑制剤とを含有するが、抑制剤の含有は、使用する抑制剤の選択に応じて変動しうる。2パート組成物は、パートB中のオルガノポリシロキサンポリマー(i)と強化充填材(ii)との量に応じて、任意の好適な比で一緒に混合するように設計することができ、したがって、15:1~1:2のパートA:パートBの重量比で混合することができるが、好ましくは2:1~1:2、または1.5:1~1:1.5、または1:1のパートA:パートBの重量比で混合される。
【0076】
任意選択の添加剤は、それぞれのパートの中の他の要素のいずれにも悪影響をもたらさない限り、必要に応じて、パートAまたはパートBのいずれかにおいて、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物に導入されうる。
【0077】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の個々のパートは、任意の好適な方法で調製してよい。この目的のために、先行技術に記載されている任意の混合技法および装置を使用することができる。使用する特定の装置は、成分および最終的な硬化性シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の粘度に応じて決定される。好適なミキサーとしては、限定するものではないが、パドルタイプのミキサー、例えば、遊星ミキサーおよび混練タイプのミキサーが挙げられる。混合中の成分の冷却は、組成物の時期尚早な硬化を回避するために、望ましいこともある。
【0078】
以前に論じたように、成分(ii)強化充填材は、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物に、充填材(例えばヒュームドシリカ)マスターバッチの形態で導入されうる。マスターバッチは、例えばヒュームドシリカを、組成物のパートAまたはパートBの両方に導入するために使用されるものである。このようなマスターバッチは、25~45重量%のヒュームドシリカと、55~75重量%の1分子当たり少なくとも2つのアルケニルおよび/またはアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサンを含みうる。オルガノポリシロキサンは、上の成分(i)ならびに/または成分(i)と同じ粘度範囲であるが、代替的なアルケニルおよび/もしくはアルキニル含有量を有するオルガノポリシロキサンでありうる。一実施形態では、ヒュームドシリカマスターバッチ中の1分子当たり少なくとも2つのアルケニルおよび/またはアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサンは、25℃において30,000mPa・sから80,000mPa・sの間の粘度と、ASTM E168に従って、定量赤外分析を使用して決定される、0.05~0.2重量%のポリマーのビニル含有量、または0.05~0.15重量%のポリマーのビニル含有量とを有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンである。このようなマスターバッチは、ヒュームドシリカとポリマーとのみを含んでもよいが、任意選択で、少量の他の成分、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジメチルヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンポリマー(10~100mPa・sの粘度と、5~20重量%または7.5~15重量%の前記ポリマーのビニル含有量(ASTM E168に従って、定量赤外分析を使用して決定される)とを有する);および/または水も含有してもよい。
【0079】
したがって、パートAとパートBとを一緒に混合する場合、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物は、次のものを含んでもよい。
成分(i)、組成物の3重量%または10重量%から組成物の50重量%または45重量%の量における、25℃において100mPa・s~500,000mPa・s、または25℃において200mPa・s~150,000mPa・s、または25℃において200mPa・s~125,000mPa・s、または25℃において200mPa・s~100,000mPa・s、または25℃において測定して200mPa・s~80,000mPa・sの粘度を有し、1分子当たり少なくとも2つの不飽和基を有する、1種または複数のオルガノポリシロキサンポリマー。例えば、オルガノポリシロキサンポリマー(i)は、組成物の10~50重量%または10~45重量%の範囲内で存在しうる。
成分(ii)、直接組成物に導入してもよく、マスターバッチの形態で導入してもよい、強化充填材、すなわち、好ましくは疎水性処理されたヒュームドシリカ;BET表面積は一般に、少なくとも50m/g(ISO 9277:2010に従ったBET方法)である。充填材は、50~450m/g(ISO 9277:2010に従ったBET方法)または50~300m/gの表面積を有し、本明細書におけるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物中の強化充填材(ii)、例えば微細分割シリカの量は、5~40重量%、または5~30重量%である。いくつかの例では、強化充填材の量は、組成物の7.5~30重量%、または10~30重量%、または組成物の15~30重量%であってもよく、マスターバッチの形態の場合、マスターバッチは、25~45重量%のヒュームドシリカと、55~75重量%の成分(i)、ならびに/もしくは25℃において50,000mPa・sから80,000mPa・sの間の粘度を有し、ポリマーの0.05~0.2重量%のビニル含有量、もしくはポリマーの0.05~0.15重量%のビニル含有量を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、または55~75重量%の上に記載したジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンとを含んでもよい。マスターバッチ組成物はまた、当初、充填材をin situ処理して疎水性にし、それによってポリマーとの混合を容易にするための処理剤も含んでもよい。
成分(iii)、全組成物中に、組成物の5~30重量%、5~20重量%、または10~20重量%の量で存在する、少なくとも2つまたは少なくとも3つのケイ素結合水素(-Si-H)基を含有するポリオルガノシロキサンであるが、存在する量は、典型的には、成分(iii)中のケイ素結合水素原子と、全不飽和基の総数とのモル比によって決定され、0.5:1~20:1、または0.5:1~10:1、または0.5:1~5:1、または1:1~5:1であり、好ましくはSi-Hが過剰である。成分(iii)の粘度は、25℃において15~50mPa・s、または25℃において15~40mPa・s、または25℃において20~35mPa・sである。
成分(iv)、触媒量で提供されるヒドロシリル化触媒組成物は、組成物の0.01~3.0重量%、または組成物の0.1~3.0重量%、または組成物の0.1~2.0重量%、または組成物の0.1~1.5重量%の範囲内で存在し、成分(i)と(ii)との組み合わせた重量を基準として、百万分率(ppm)で、0.01ppmから10,000百万分率の間、または0.01ppmから7500ppmの間、または0.01ppmから3,000ppmの間、または100ppmから6,000ppmの間の白金系金属を含有する。
成分(v)、組成物の1~5重量%の量のアセチルアセトンジルコニウムと、
組成物の1~6重量%の量の1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、および/もしくは式
【化5】
[式中、Rは、1~6個の炭素を有するアルキル基であり、Rは、1~6個の炭素を有するアルコキシ基であり、z=0、1または2である]の1種もしくは複数のエポキシシランまたはこれらの混合物との組み合わせを含む、接着促進剤。
成分(vi)は、エコ溶媒である。任意の好適なエコ溶媒が利用されうるが、例としては、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソノナデカンおよびこれらの混合物、または25℃において5mPa・s以上(≧)から25℃において100mPa・s以下(≦)の粘度を有するトリメチル末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。エコ溶媒は、組成物を希釈するための手段として組成物中に存在し、組成物の30~70重量%の量で存在する。任意選択で、
成分(vii)、硬化シリコーンエラストマー粉末は、0.01~100μm、または0.01~50μm、または0.01~25μmの平均粒子サイズを有する。これらは、化学官能基、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリルオキシ基を含有してもよく、または例えばシリカ処理コーティングでコーティングしてもよい。存在する場合、硬化シリコーンゴム粉末は、組成物中に、すなわち、パートAとパートBとを一緒に混合した時点で、組成物の2.5~20重量%、または組成物の2.5~15重量%、または組成物の2.5~10重量%の量で存在する。
【0080】
成分(i)~(vii)および任意の添加剤を含む組成物の合計重量%は100重量%であるが、上記の任意の好適な組み合わせであってよい。
【0081】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物において、成分を混合する順序は重大ではない。好適なパートAとBとを調製し、次いで、パートAとパートBとを、15:1から1:2の間の所定の重量比、例えば、実例としては1:1の比で、使用の直前に一緒に混合する。
【0082】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化は、ヒドロシリル化硬化に好適な温度で行われうる。例えば、約80℃~180℃、または80℃~150℃、または120℃~150℃の硬化温度。記載したシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化温度が、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料の他の層に悪影響を及ぼさないことは必須である。
【0083】
記載したシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物は、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料のためのトップコートとして利用される。なぜなら、ひとたび硬化すると、隣接するポリウレタン層への顕著な接着をもたらし、優れた耐汚損性を有し、すなわち、以下の実施例に示されるように、清掃が容易で、良好な耐引掻き性を示すためである。シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物はまた、様々な他のタイプの皮革、例えば、従来の皮革、ヌーバックまたはスエードに塗布してもよいが、ポリウレタンを伴う使用のために特に設計されている。
【0084】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物は、下に論じる方法の組み合わせによって提供されうるが、例えば、調製プロセスの最後のステップにおいて、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を作製するために、好適なポリウレタン系複合材料上にコーティングされうる。このような場合、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料は、好適な層の任意の好適な組み合わせのものであってよく、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物が塗布され、ひとたび硬化すると、層の上に接着したシリコーントップコートを形成する。
【0085】
好適なポリウレタン(PU)とは、ジまたはトリイソシアネートと、好適なポリオール、実例としては、アルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオールなどとを反応させることによって一般に調製される、交互コポリマーを意味する。それぞれのイソシアネートとポリオールとは、カルバメート/ウレタン結合の形成を通じて重合する。これらは、ポリ尿素またはポリ尿素との混合物を含まない。
【0086】
シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料は、トップコートとして機能するシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化生成物とともに、複数の、例えば2、3または4つの異なる複合層を含んでもよい。そのため、例えば、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料は、底部から上部に、
(a)布支持層;
(b)(a)に接着したスポンジ/接着剤層;スポンジ層は、典型的にはポリウレタンから作製されうるが、所望により、任意の他の好適なスポンジまたは接着剤材料を利用してもよい
(c)スポンジ/接着剤層(b)に接着した好適なポリウレタン「スキン層」;および最後に
(d)好適なポリウレタンスキン層の上部にトップコートとして提供された、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化生成物
を含んでもよい。
ここで、層(b)は実質的に層(a)と(c)との間に挟まれており、層(c)は実質的に層(b)と(d)との間に挟まれている。
【0087】
疑義を回避するために述べると、層(b)は実質的に層(a)と(c)との間に挟まれており、層(c)は実質的に層(b)と、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化生成物(d)との間に挟まれている。「実質的に」とは、4つの別個の層があるが、それぞれの層の間の界面に、層同士の間の相互混合があってもよいことを意味する。
【0088】
布支持層は、任意の好適な布材料、例えば、合成樹脂繊維、天然繊維および/またはマイクロファイバーから作製された織布、編み布または不織布から作製されうる。布材料としては、制限するものではないが、ポリエステル繊維、ビスコースレーヨン繊維、ポリアミド繊維、ナイロン、アクリル系繊維、ポリオレフィン繊維;セルロース繊維、例えば綿;および弾性布材料、例えばスパンデックスを挙げることができ、上のいずれか2つ以上の混合物として使用してもよい。布支持層は、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料の機械的強度を増強するように設計される。
【0089】
さらに、任意の好適なスポンジ層/接着剤層を、上記における成分(b)として利用してもよいが、典型的には、スポンジ層/接着剤層は、少なくとも部分的にポリウレタン材料から作製される。スポンジ層/接着剤層は、任意の所望の乾燥膜厚、例えば、50μm~1mm厚、または150μm~1mm、または250μm~1mm厚、または300μm~1mm厚であってもよい。典型的には、塗布後、任意の好適な温度、例えば、125~180℃、または125~170℃、または130~160℃で、最大20分の好適な期間、または1~10分、または1.5分~10分の期間、または2分~10分、乾燥させる。しかしながら、スポンジ層/接着剤層を布支持層に接着する好ましい方法は、積層によるものである。典型的には、このような積層ステップは、上の乾燥プロセスの一部として起こることもあり、積層は、スポンジ層/接着剤層が部分的に乾燥したとき、または乾燥ステップを開始する前に濡らしたときに開始し、前者が好ましい。
【0090】
同様に、任意の好適なポリウレタンスキン層を利用してもよい。ポリウレタンスキン層は、保護合成層として設計される。ポリウレタンスキン層は、任意の好適な乾燥膜厚、例えば、25μm~500μm厚、または25μm~300μm、または25~250μm、または50~200μm厚のものであってもよい。ポリウレタンスキン層は、任意の好適な温度、例えば、50~175℃、または75~175℃、または75~150℃、または75~140℃で、30秒~5分、または30秒~4分、または1分~4分、または1分~3分の期間、乾燥させることができる。
【0091】
シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の塗布の前に、PUスキン層を、所望により好適な活性化方法を使用して、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、UV-C/オゾンまたは真空-UV照射によって活性化させてもよい。
【0092】
そのため、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料は、布支持層として布支持体を準備すること、好適なポリウレタンの層を布支持層上に塗布すること、ポリウレタン層を乾燥させること、および次いで、本明細書に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を、ポリウレタン層上に塗布することによって調製されうる。
【0093】
あるいは、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料は、次のように調製してもよい:
布支持層(a)を取得すること、スポンジ層(b)を布支持層(a)上に塗布すること、必要な場合、スポンジ層(b)を硬化/乾燥/積層させること、ポリウレタンスキン層(c)を、布支持体(a)から遠いスポンジ層(b)の表面に塗布すること、スキン層(c)を乾燥させること、本明細書に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を、ポリウレタンスキン層の表面に塗布すること、および前記シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を硬化させること。
【0094】
あるいは、上のプロセスは、使用するまでの一時的支持体として剥離ライナーを使用して、反対に実施してもよい。この例では、プロセスは連続的であってもよく、2パートであってもよい。2パートプロセスでは、ポリウレタンスキン層(c)を、任意の好適な手段を使用して剥離ライナー上に塗布し、次いで乾燥させ、スポンジ/接着剤層(b)をスキン層(c)上に塗布し、スポンジ/接着剤層(b)を乾燥させる前またはこれが部分的に乾燥した後に、布支持体層(a)を、スキン層(c)から遠いスポンジ層(b)の面に、積層を開始することによって適用する。このような場合、部分的に調製したシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を貯蔵し、次いで、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物で別途処理することができる。このような場合、剥離ライナーを除去し、所望により、乾燥したポリウレタンスキン層を、例えばコロナ放電等によって活性化させてもよく、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物(d)を、乾燥したスキン層(c)上に塗布し、硬化させる。
【0095】
代わりの連続プロセスでは、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物(d)を、剥離ライナー上に直接塗布し、硬化させ、次いで、スキン層(c)を硬化シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物(d)上に塗布することを除いて、上のプロセスの繰り返しであり、その後、上に示したようにプロセスを続ける。
【0096】
剥離ライナーは、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を塗布し、硬化させた後、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料の外表面を保護するために、または2パートプロセスの場合に、前記シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を塗布することが所望されるまで、スキン層を保護するために提供される。
【0097】
利用した上の方法とは関係なく、約2~50μm、または5~30μm、または10~30μmの乾燥膜厚が得られるように、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を塗布し、硬化させる。この組成物は、任意の好適な温度、例えば、約80℃~180℃、または80℃~160℃、または80℃~130℃で、好適な期間、例えば、30秒~15分、または30秒~7.5分、または30秒~5分、または1~2.5分、硬化させることができる。本明細書に記載のシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物の硬化の温度が確実に、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料の他の層に悪影響を及ぼさないようにすることは重要である。
【0098】
所望により、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料を、約75℃から180℃の間の温度で、一般に、必須ではないが所望により範囲の下端に向かって、例えば、75~120℃で2~48時間、または6~36時間、または10~24時間、後硬化させてもよい。
【0099】
上の層(b)、(c)および(d)の各々は、任意の好適な塗布の方法、例えば、噴霧、ローリング、刷毛塗り、スピンコーティング、ディップコーティング、溶媒キャスティング、スロットダイコーティング、噴霧コーティング、ナイフコーティングまたはグラビアコーティングを使用して塗布されうる。
【0100】
任意の好適な剥離ライナー、例えば、Japan Asahi社製の超艶消し剥離紙ARX175DMを使用してもよい。任意の好適な剥離ライナー、例えば、Japan Asahi社製の超艶消し剥離紙ARX175DM、日本の大日本印刷株式会社製の剥離紙DE-7、DE-90、DE-43C、DE-73J、またはやはり日本の大日本印刷株式会社製の半艶消し剥離紙DE-73Mを使用してもよい。各硬化ステップは、好適な炉において、例えば、熱風炉において硬化および乾燥させることによって行ってもよく、連続プロセスの場合、コンベヤ炉において実施してもよい。
【0101】
上のプロセスは、シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料の例の調製を示す。読者は、必要があれば、所望により追加の層を材料に導入してもよいことを理解しうる。
【0102】
シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料は、異なる層の内容を考慮して、多種多様な特性を有するように設計してもよく、例えば、皮革の最終使用に必要な、優れた難燃性、煤煙濃度、耐熱性、耐汚染性、耐溶媒性および耐加水分解性等を有してもよい。想定される最終使用としては、限定するものではないが、家具、装飾、ハンドバッグ、旅行鞄、衣類、履物、車の内装、車の座席および医療用ベッド/座席等が挙げられる。
【実施例
【0103】
以下の実施例において、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を形成するヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物、および複数の比較例を試験して、研磨後の光沢の維持に関する、本明細書に記載のコーティングの利点を示す。すべての粘度は、別段の指示がない限り、ASTM D1084-16方法Βのカップ/スピンドル方法に基づいて、粘度範囲に適当なスピンドルを使用して25℃で測定する。アルケニルおよび/またはアルキニル含有量、ならびにSi-H含有量はすべて、ASTM E168に従って、定量赤外分析を使用して決定した。
【0104】
使用するシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物に使用する成分を、次の表/実施例に与える名称と一緒に、以下に規定する。
ビニル末端シロキサンポリマーは、25℃において65,000mPa・sの粘度を有し、約0.08重量%のビニル含有量を有する、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンである。
高ビニルシロキサンコポリマーは、25℃において15,000mPa・sの粘度を有し、約8.0重量%のビニル含有量を有する、ジメチルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーである。
ビニル末端シロキサンコポリマー2は、25℃において300mPa・sの粘度と、約1.15重量%のビニル含有量とを有する、ジメチルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーである。
ヒュームドシリカは、300m/gのBET表面積を有する、HDK(登録商標) T30P熱分解法シリカ(Wacker Chimie)である。
HMDZは、ヘキサメチルジシラザンである。
MVD(メチルビニルジオール)は、25℃において約30mPa・sの粘度を有し、約12.0重量%のビニル含有量を有する、ジメチルヒドロキシ末端ポリジメチルメチルビニルシロキサンである。
白金触媒は、組成物の残りに対して約5000ppmの白金金属を有する、ポリジメチルシロキサンの溶液中の白金触媒である。
抑制剤は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シランである。
シリコーンエラストマー粉末は、Dowsil(登録商標) 23N(Dow Silicones Corporation)である。
トリメチル末端SiH架橋剤は、25℃において約45mPa・sの粘度と、約7220ppmのケイ素結合水素含有量とを有する、トリメチル末端ジメチルメチルハイドロジェンポリオルガノシロキサンコポリマーである。
樹脂SiH架橋剤は、25℃において25mPa・sの粘度と、約9,000ppmのケイ素結合水素含有量とを有する、Si-Hジメチル末端樹脂Si-Hポリシロキサンである。
ZrAcAcマスターバッチは、ビニル末端シロキシポリマーの50:50マスターバッチ中のアセチルアセトンジルコニウムである。
シラン1は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
シラン2は、1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンである。
シラン3は、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンである。
【0105】
表1は、下に記載する組成におけるシリカマスターバッチのために使用した、出発材料の詳細を提供する。ヒュームドシリカを、シリカの疎水化処理剤として作用する小分子の存在下でビニル末端シロキサンポリマーと混合し、シリカとポリマーとを混合している間に、シリカのin-situ処理がなされる。以前に指示したように、使用するポリマーは、成分(i)であっても、所望により成分(i)と別のポリマーとの混合物であってもよいが、この場合、成分(i)はマスターバッチ中に存在しない。
【0106】
【表1】
【0107】
複数のLSR組成物を、2パート組成において、実施例(Ex.1~11)および比較例(comp.1~9)として調製した。
【0108】
混合する前に、パートA組成物には次のものを組み込んだ:
高ビニルシロキサンコポリマー、
ある割合の表1に示すマスターバッチ、
白金触媒、
ZrAcAcマスターバッチおよび
ある割合のエコ溶媒。エコ溶媒は、硬化プロセス中に蒸発するように設計される。
【0109】
パートB組成物には次のものを組み込んだ:
マスターバッチの残り、
樹脂SiH架橋剤、
存在する場合、抑制剤、ならびにシラン1、2および/または3、ならびに存在するエコ溶媒の残り。エコ溶媒は、硬化プロセス中に蒸発するように設計される。
【0110】
使用の直前に、パートA組成物と、それぞれのパートB組成物とを、1:1の重量比で一緒に混合して、試験対象の最終的なシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を作製した。
【0111】
以下の実施例において、混合後すぐに、調製したシリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物を、布支持層、前者に積層した発泡接着剤層、およびポリエーテルポリオールを使用して調製した、ベージュ色のポリウレタン(PU)スキン層を有する、事前に調製したポリウレタン複合材料上に塗布した。各実施例/比較例に使用するトップコートを、150℃の平均温度の炉内で、PUスキン層上に塗布し、およそ5分硬化させた。
【0112】
【表2a】
【0113】
【表2b】
【0114】
【表3a】
【0115】
【表3b】
【0116】
【表4a】
【0117】
【表4b】
【0118】
硬化したら、得られたシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料は、20μmから25μmの間の平均乾燥膜厚を有するトップコートを有していた。検査すると、実施例は一般に、艶消しの外観を呈することが見出された。
【0119】
清掃容易性能および耐引掻き性について、すべての実施例の試験を実施した。
【0120】
清掃容易性能は、試験対象のシリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料の硬化トップコートの表面に、ボールペンで印を付け、次いで、ティッシュペーパーまたは医療用ガーゼを使用することによって、すべてのボールペンの印を5分以内に直接清掃できるかを確認することによって実施した。ある皮革サンプルの同じ領域において、より多くの回数、すべてのボールペンの印を完全に清掃できる場合、より優れた清掃容易性能であることを意味する。
【0121】
耐引掻き性は、標準条件下でプラスチックまたは他の材料の表面に対する引掻きへの耐性を決定するために設計された、FORD FLTM BN 108-13試験に従って行った。この技法では、試験要件に準拠して引掻き試験機械を利用し、続いて、観測者は、制御光源を使用して引掻き線の有無を視覚的に検査し、1~5の格付けスケール(1=引掻き線がまったくない;5=著しい引掻き線)によって格付けする。
【0122】
【表5a】
【0123】
【表5b】
【0124】
比較例における耐引掻き性試験後、引掻きステップを実施した後に一部の層間剥離が観測されたことに着目した。これは、実施例においては観測されなかった。結果から、表5aにおける開示が裏付けるように、実施例はすべて、少なくとも4の清掃容易性能を有していたが、一方で、表5bにおける比較例の結果は、遥かに不良な結果を与えたことがわかる。同様に、耐引掻き性の結果は、本明細書における実施例で一貫してより良好であった。本明細書における耐汚損性(清掃容易性)の結果は、シリコーン/ポリウレタン合成皮革トップコート組成物とPUスキン層との安定な結合(前者が硬化した後)に起因するものであったと考えられる。シリコーン/ポリウレタン複合合成皮革材料の1つの主な利点は、示された高い性能を考慮すると、とりわけ純粋なシリコーン皮革と比較して、製造コストに優位性があること(高い性能/価格比)である。
【国際調査報告】