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特表2024-521855力センサ、力センサ制御式電子機器、及び力センサ制御式導体加熱素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】力センサ、力センサ制御式電子機器、及び力センサ制御式導体加熱素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/84 20060101AFI20240528BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L29/84 A
C09D11/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573401
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 US2022031639
(87)【国際公開番号】W WO2022251742
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/194,748
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】520307078
【氏名又は名称】リクイッド エックス プリンティッド メタルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】グウェンゴ チェンゲット
(72)【発明者】
【氏名】スウィッシャー ロバート ジー
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー オリン ビー
(72)【発明者】
【氏名】ベイブ ウイリアム エス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァジー ベス
(72)【発明者】
【氏名】ペトラック クリスティアナ エム
(72)【発明者】
【氏名】ベイブ グレゴリー
【テーマコード(参考)】
4J039
4M112
【Fターム(参考)】
4J039BC08
4J039BC10
4J039BC59
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA03
4J039GA24
4M112BA01
4M112BA07
4M112CA02
4M112DA02
4M112EA02
4M112EA11
4M112EA13
4M112EA14
(57)【要約】
本明細書に開示するのは、フレキシブル基板上に抵抗加熱器及び力感応素子を形成する方法、及び車両内の座席加熱器のような力応答性導電加熱器を提供するためにこれらの素子を含むデバイスである。本方法は、印刷工程の前及び/又は工程中に30℃から90℃に加熱されたフレキシブル基板上に導電インクを印刷する段階と、基板を硬化させてその上に導電パターンを生成する段階とを含む。導電インクは、一般的に、少なくとも1つの金属錯体及び溶媒から調合された無粒子金属錯体組成物と任意的な導電充填剤材料とを含む。
【選択図】 図24B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル力センサであって、
導電インクを用いて印刷された第1の電極を含む第1のフレキシブル基板と、
導電インクを用いて印刷され、かつ導電層でオーバーコートされた第2の電極を含む第2のフレキシブル基板であって、前記第1の電極及び前記導電層が、互いに対面し、かつ分離距離を有する間隙によって分離される前記第2のフレキシブル基板と、
を含み、
前記フレキシブル力センサが、前記力センサの長手延長に対して垂直な方向における前記第1及び第2のフレキシブル基板の圧縮時に電気信号を開始するように構成される、
フレキシブル力センサ。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極と、送受信機と、コントローラとに接続された制御回路を更に含み、
前記制御回路は、前記電気信号を前記送受信機に伝達して、記録された力又は抵抗の変化を前記コントローラに通信するように構成される、
請求項1に記載の力センサ。
【請求項3】
前記間隙は、メッシュ布地、前記第1及び第2の電極の領域に開口部を含むポリマーフィルムによって形成された材料フレーム、孤立特徴部、又はそのいずれかの組合せによって維持される請求項1に記載の力センサ。
【請求項4】
前記孤立特徴部は、前記第1のフレキシブル電極に対面する前記導電層の面に接合されたシリコンエラストマーのビードによって形成される請求項3に記載の力センサ。
【請求項5】
前記分離距離は、少なくとも20ミクロン、又は少なくとも40ミクロン、又は少なくとも60ミクロン、又は少なくとも100ミクロンのような、少なくとも10ミクロンである請求項1に記載の力センサ。
【請求項6】
前記第1及び第2のフレキシブル基板は、ホットメルト接合フィルム、感圧接合フィルム、又は感圧接着剤によって、或いは、前記第1及び第2の電極を含む領域の外側を縫合することによって接合される請求項1に記載の力センサ。
【請求項7】
前記第2の電極の前記導電インクは、無粒子金属錯体組成物を含み、
前記無粒子金属錯体組成物は、
少なくとも1つの金属錯体であって、
少なくとも1つの金属、
前記金属に対するシグマドナーであり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第1の配位子、及び
前記第1の配位子とは異なり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第2の配位子、
を含む前記少なくとも1つの金属錯体と、
溶媒と、
を含み、
前記金属錯体は、前記溶媒中で少なくとも250mg/mlの25℃で測定した溶解度を有し、
前記少なくとも1つの金属、前記少なくとも1つの第1の配位子、及び前記少なくとも1つの第2の配位子は、前記導電インク中に化学量論的量で提供される、
請求項1に記載の力センサ。
【請求項8】
前記第1及び第2の電極の前記導電インクの各々が、無粒子金属錯体組成物を含み、
前記無粒子金属錯体組成物は、
少なくとも1つの金属錯体であって、
少なくとも1つの金属、
前記金属に対するシグマドナーであり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第1の配位子、及び
前記第1の配位子とは異なり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第2の配位子、
を含む前記少なくとも1つの金属錯体と、
溶媒と、
を含み、
前記金属錯体は、前記溶媒中で少なくとも250mg/mlの25℃で測定した溶解度を有し、
前記少なくとも1つの金属、前記少なくとも1つの第1の配位子、及び前記少なくとも1つの第2の配位子は、前記導電インク中に化学量論的量で提供される、
請求項1に記載の力センサ。
【請求項9】
前記導電インクは、硬化後に前記フレキシブル基板上にナノ粒子を形成して前記導電パターンを形成する請求項7又は請求項8に記載の力センサ。
【請求項10】
前記導電層は、無粒子金属錯体組成物を含む導電インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷される請求項1に記載の力センサ。
【請求項11】
前記導電層は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装填熱可塑性ポリマー、カーボン装填シリコン、カーボン装填ポリマー箔、ベロスタット、又はそのいずれかの組合せを含む請求項1に記載の力センサ。
【請求項12】
前記第1のフレキシブル基板及び前記第2のフレキシブル基板は、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラステイン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、レザー、又はその配合物から構成される群から個々に選択される請求項1に記載の力センサ。
【請求項13】
前記導電インクは、前記フレキシブル基板の繊維を共形的に被覆する請求項1に記載の力センサ。
【請求項14】
力センサ制御式抵抗加熱器であって、
第3の導電インクを用いて少なくとも1つの導電パターンが印刷され、かつ電流を流して熱を発生させるように構成された第1のフレキシブル基板、及び
前記導電インクを用いて印刷された少なくとも1つのバスであって、前記少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、かつ電源への接続を提供するように構成された前記少なくとも1つのバス、
を含む抵抗加熱器と、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の力センサと、
前記力センサの前記少なくとも1つの電極に接続され、かつ前記力センサからの前記電気信号をコントローラに伝達するように構成された制御回路と、
を含み、
前記コントローラデバイスは、前記力センサからの前記電気信号に少なくとも部分的に基づいて前記電源から前記抵抗加熱器への電力の供給を制御するために加熱器コントローラと通信するように構成される、
力センサ制御式抵抗加熱器。
【請求項15】
前記抵抗加熱器の前記少なくとも1つの導電パターンの少なくとも一部分が、保護誘電体コーティングでオーバーコートされる請求項14に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項16】
5-15ボルト電気系統に接続された時に、前記抵抗加熱器の前記少なくとも1つの導電パターンは、1-30オームの抵抗率を有するように、-40℃から60℃で10-400ワット毎平方メートルを発生するように、約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で加熱するように、及び/又は、少なくとも400ワット毎平方メートルの電力密度を伝達するように、構成される請求項14に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項17】
前記第3の導電インクは、無粒子金属錯体組成物を含み、
前記無粒子金属錯体組成物は、
少なくとも1つの金属錯体であって、
少なくとも1つの金属、
前記金属に対するシグマドナーであり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第1の配位子、及び
前記第1の配位子とは異なり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第2の配位子、
を含む前記少なくとも1つの金属錯体と、
溶媒と、
を含み、
前記金属錯体は、前記溶媒中で少なくとも250mg/mlの25℃で測定した溶解度を有し、
前記少なくとも1つの金属、前記少なくとも1つの第1の配位子、及び前記少なくとも1つの第2の配位子は、前記第3の導電インク中に化学量論的量で提供され、
前記導電インクは、硬化後に前記フレキシブル基板上にナノ粒子を形成して前記導電パターンを形成する、
請求項14に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項18】
前記第3の導電インクは、少なくとも1つの導電充填剤材料を更に含み、
前記少なくとも1つの金属錯体及び前記少なくとも1つの導電充填剤材料は、50:50から99:1の導電充填剤材料に対する金属錯体の比で前記導電インク中に提供される、
請求項17に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項19】
前記第3の導電インクの前記溶媒は、有機溶媒を含む請求項17に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項20】
前記導電インクのうちの全ての前記溶媒は、1又は2以上の極性プロトン性溶媒を含み、
前記1又は2以上の極性プロトン性溶媒は、水、アルコール、及びアミンのうちの1又は2以上を含む、
請求項17に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項21】
前記第3の導電インクの前記溶媒は、アルコール又はアミン、グリコール、導電充填剤可溶化剤、及び水を含む請求項17に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項22】
前記導電充填剤可溶化剤は、N-メチル-2-ピロリドンを含む請求項21に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項23】
前記少なくとも1つの導電充填剤材料は、導電ポリマー、金属酸化物、及びカーボンベースの材料のうちの1又は2以上を含む請求項21に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項24】
前記導電ポリマーは、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリフェニレン、ポリアニリン(PANI)、又はポリフェニレンエチレンのうちの1又は2以上を含む請求項23に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項25】
前記カーボンベースの材料は、グラフェン、カーボンブラック、グラファイト、又はカーボンナノチューブのうちの1又は2以上を含む請求項23に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項26】
前記第3の導電インクは、
50:50から99:1の導電充填剤に対する金属錯体の比で提供された10-40重量%の前記導電充填剤材料及び前記金属錯体と、
2-10重量%のアルコール又はアミンと、
2-15重量%のグリコールと、
10-25重量%の導電充填剤可溶化剤と、
40-70重量%の水と、
を含む、
請求項18に記載のセンサ制御式加熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、これによりその全体が引用によって組み込まれる「力センサ、力センサ制御式電子機器、及び力センサ制御式導体加熱素子」という名称の2021年5月28日出願の米国仮特許出願第63/194、748号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
この開示は、一般的に、力センサ及び加熱素子のようなフレキシブルプリント電子機器と、力センサ制御式電子機器を提供するために加熱素子のような他の電子機器と組み合わせた力センサとに関する。
【背景技術】
【0003】
プリント電子機器は、世界で最も急速に成長している技術の1つであり、幅広い製品の中への複合電子機能の統合を提供する。適切なインクは、これらのプリント電子機器の製造に対して不可欠であり、導電インクは、様々な電極に対する最も重要な材料であると考えられている。一般的に、導電性金属ナノ粒子から構成される導電インクは、様々な印刷システム及び技術を使用して基板を印刷又は被覆し、その後に乾燥又は焼結させて望ましい形状を有する金属トレース又はワイヤを形成するのに使用される。これらのインクは、ガラスのような基板上に導電経路を提供する従来方法に伴う困難の一部に対するソリューションを提供するが、それらは、インクを硬化させる際に使用される高い焼結温度で溶融又は変形する場合がある織物には一般的に適しておらず、及び/又はそれらが織物の曲げ又は延伸時に導電性の低下を頻繁に示すのでフレキシブル基板に適していない。
【0004】
それにも関わらず、電子織物又は「e-織物」のようなフレキシブル電子機器における現在の関心は、広範囲の電子素子の開発に至っている。例えば、米国特許出願公開2018/0132310号明細書は、織物の模様内への金属ナノワイヤの包含によって形成された導体加熱素子を説明し、米国特許第7、132、630号明細書は、印加電圧による抵抗加熱を提供するために織物内への導電性ポリアニリン繊維の包含を説明している。欧州特許出願公開第0302590号明細書は、ピロール又はアニリン化合物の水溶液の布地への付加によって形成された導電布地を説明しており、そこでは、布地模様内のピロール又はアニリンの重合は、抵抗加熱器を提供する。
【0005】
力抵抗センサも従来技術に説明されているが、一般的に剛性かつ非延伸性であり、これは、e-織物に特に関連する制限である。そのような素子は、ユーザの歩行、圧力分布、及び/又は回内運動に関するデータを発生させるために靴の靴底又は中底に包含されている。例えば、靴の中底上での使用のためのピエゾ抵抗圧力センサを説明している米国特許第6、155、120号明細書及び第6、516、545号明細書を参照されたい。センサは、メッシュ布地の上部及び底部層を導電性カーボンブラック粒子材料で含浸し、それらの間にピエゾ抵抗材料を置くことによって形成される。電気抵抗性カーボンインクの第1の面と導電性銀インクの第2の面との間を延びる位置合わせされた導電粒子の縦列としての電気絶縁導電経路を開示している米国特許第5、408、873号明細書も参照されたい。
【0006】
米国特許第6、543、299号明細書、米国特許第8、161、826号明細書、及び米国特許第8、661、915号明細書に開示されているようなよりフレキシブルな力センサは、ピエゾ抵抗材料によって覆われた導電ワイヤコアの横列及び縦列から形成された圧力変換器アレイを含み、米国特許第10、180、721号明細書は、圧縮性ポリマー基板上の導電ストランドの電極を用いて形成された布地ベースの力センサを説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開2018/0132310号明細書
【特許文献2】米国特許第7、132、630号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0302590号明細書
【特許文献4】米国特許第6、155、120号明細書
【特許文献5】米国特許第6、516、545号明細書
【特許文献6】米国特許第5、408、873号明細書
【特許文献7】米国特許第6、543、299号明細書
【特許文献8】米国特許第8、161、826号明細書
【特許文献9】米国特許第8、661、915号明細書
【特許文献10】米国特許第10、180、721号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2019/0249026号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2020/0369061号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2011/0111138号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2013/0236656号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2020/0369061号明細書
【特許文献16】米国特許第9、487、669号明細書
【特許文献17】米国特許第9、920、212号明細書
【特許文献18】米国特許第10、738、211号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開番号US 2020/0283653号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらのソリューションのある一定のものは、フレキシブル抵抗加熱器及び力センサを提供するが、各々は、フレキシブル基板に導電素子を形成するように織られた材料の導電ストランドの使用、又はフレキシブル基板が曲げ及び延伸のような法線応力を受ける時に性能が劣る導電インクの使用を説明している。従って、織物と一体化したフレキシブル電子素子を提供するインク及び方法を開発する必要性が当業技術に依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に説明するのは、導電インクと、それらのインクを織物のようなフレキシブル基板上に印刷してフレキシブルプリント電子機器を形成する方法とである。従って、本発明の開示は、導電インクと、それらのインクをフレキシブル基板上に印刷して導電パターンを形成する方法と、センサ、電極、トレース、アンテナ、及び加熱素子などのようなそれらの導電パターンを含むフレキシブルプリント電子機器とに関する。
【0010】
導電インクは、少なくとも1つの金属錯体と溶媒とを含むほぼ無粒子の溶液である。導電インクは、更に、導電充填剤材料のような追加成分を含む場合がある。堆積時に、導電インクは、基板及び特に織物基板の繊維を共形的に被覆する。硬化後に、導電インクは、金属ナノ粒子を含む連続導電コーティングを形成する。
【0011】
無粒子金属錯体組成物の少なくとも1つの金属錯体は、一般的に、少なくとも1つの金属と、少なくとも1つの第1の配位子と、少なくとも1つの第2の配位子とを含む。例示的金属は、銀、金、白金、及び銅を含む。例示的な第1の配位子は、アミンと硫黄含有化合物とを含み、例示的な第2の配位子は、カルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸を含む。
【0012】
導電充填剤材料は、導電ポリマー、金属酸化物、及びカーボンベースの材料のうちの1又は2以上を含む場合がある。例示的導電充填剤材料は、少なくともカーボンブラック、グラファイト、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、グラフェン、ポリフェニレン、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリアニリン(PANI)、及びポリフェニレンエチレンを含む。導電充填剤が導電インクに含まれる時に、少なくとも1つの金属錯体及び少なくとも1つの導電充填剤は、50:50から99:1の導電充填剤に対する金属錯体の比で提供される場合がある。
【0013】
溶媒は、炭化水素溶媒である場合がある。これに代えて、溶媒は、少なくとも水、アルコール、アミン、アミノアルコール、ポリオール、及びその組合せを含む群から選択された少なくとも2つの極性プロトン性溶媒のような1又は2以上の極性プロトン性溶媒を含む場合があり、かつ炭化水素溶媒を実質的に含まない場合がある。
【0014】
金属錯体は、少なくとも50mg/ml、又は少なくとも250mg/ml、又は少なくとも500mg/ml、又は少なくとも1,000mg/ml、又は少なくとも1,500mg/ml、又は少なくとも2,000mg/mlの溶媒中の25℃での溶解度を有することができる。
【0015】
導電インクを印刷する方法は、一般的に、導電インクをフレキシブル基板上に堆積させる段階と、基板を硬化させてその上に導電パターンを生成する段階とを含む。フレキシブル基板を硬化させる段階は、基板を熱及び/又は光に露出することによって達成することができる。例えば、基板は、250℃未満、又は200℃未満、又は150℃未満の温度でのような熱への露出によって硬化させることができる。これに代えて又はこれに加えて、硬化させる段階は、2から20パルスの光への露出によるような織物基板を照射する段階、例えば、フォトニック硬化段階を含む場合があり、又は赤外線への露出を含む場合がある。
【0016】
硬化した状態で、基板上の導電パターンは、5Ω/□、2Ω/□、1Ω/□程度まで低い又は更に低いシート抵抗を有する場合がある。基板上の導電パターンは、少なくとも5,000S/m、又は少なくとも10,000S/m、又は少なくとも50,000S/m、又は少なくとも100,000S/m、又は少なくとも1,000,000Sm、又は少なくとも10,000,000S/m、又は更に2x107S/mのような少なくとも1,000S/mの導電率を有することができる。
【0017】
基板は、堆積工程の前及び/又は中に30℃から60℃又は40℃から90℃のような堆積工程の前及び/又は中に30℃から90℃の温度まで加熱される場合がある。
【0018】
基板上への堆積は、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、回転スクリーン工程印刷、空圧エアロゾルジェット印刷、超音波エアロゾルジェット印刷、押出印刷、スロットダイ印刷、マイクロ分散、直接書込印刷、インクジェット印刷、又は組合せを通じたものである場合がある。導電インクが無粒子に留まる時に、それは、インクジェット印刷を通じて印刷され、0.2mm未満又は更に0.1mm未満のような0.5mm未満のインク滲みを示す印刷パターンを生成することができる。
【0019】
印刷パターンは、導電インクの少なくとも2層、又は少なくとも4層、又は少なくとも6層、又はそれ以上のような導電インクの1又は2以上の層を含むことができる。
【0020】
フレキシブル基板は、ポリマー、有機及び合成繊維、プラスチック、レザー、金属、セラミック、ガラス、シリコン、半導体を含む場合があり、かつ他の固体を使用することができる。有機及び無機基板を使用することができる。基板は、有機又は合成繊維で形成された編み、織り、又は不織の織物又は布地のような織物である場合がある。そのような織物基板の例示的繊維は、有機材料(例えば、綿、セルロース、絹、木材、羊毛繊維、レザー)に加えて、少なくともポリエステル、ポリアミド、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラステイン、及び他の合成材料を含む。基板は、Kapton(登録商標)のようなポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエーテルスルホン(PES)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリアミド(PA)及びポリアミドイミド(PAI)フィルムのようなフレキシブルポリマーである場合がある。
【0021】
本発明に開示するインク及びそれらのインクを印刷する方法は、導電パターンがフレキシブル基板上に印刷されることを可能にし、すなわち、電子素子を組み込むことができる製品の範囲を大きく広げる。例えば、本発明の開示は、フレキシブル基板上に提供される力センサ及び抵抗加熱器と、座席クッション及び/又は座席台座又は衣料物品でのような抵抗加熱器の力起動式制御とを提供する。
【0022】
従って、本発明の開示はまた、電流を伝達して熱を発生させるように構成された少なくとも1つの導電パターンがその上に印刷されたフレキシブル基板を含む抵抗加熱器に関する。抵抗加熱器は、少なくとも1つの導電パターンに接続されて加熱器コントローラ及び電源への電気接続を提供するように構成された少なくとも1つのトレース又はバスを更に含む場合がある。少なくとも1つのトレース又はバスは、本発明の開示の導電インク及び方法を使用して印刷することができ、又は配線構成要素及び/又は接点を含む場合がある。導電パターン及び/又はプリントバスの少なくとも一部分は、保護誘電体コーティングでオーバーコートされる場合がある。
【0023】
自動車電気系統のような5-15ボルト電気系統に接続された時に、抵抗加熱器は、約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で加熱することができ、1-30オームの抵抗率を有するように構成することができ、-40℃から60℃で10-400ワット毎平方メートルを発生することができ、及び/又は少なくとも400ワット毎平方メートルの電力密度を伝達するように構成することができる。
【0024】
本発明の開示はまた、フレキシブル基板上に直接印刷することができるフレキシブル力感応抵抗器又は力センサに関する。力感知デバイスは、一般的に、分離距離を有する間隙によって少なくとも1つの導電層から分離された少なくとも1つの電極層を含む。少なくとも1つの電極層は、本明細書に開示する導電インクのいずれかを使用して印刷された少なくとも1つの電極を含むことができる。少なくとも1つの電極層は、導電インクを使用してフレキシブル基板上に印刷された第1及び第2の電極を含む場合があり、第1及び第2の電極は、互いに平行に又は相互嵌合的に配置することができる。フレキシブルセンサの様々なフレキシブル基板は、少なくとも1つの電極が少なくとも1つの導電層に面し、かつ分離距離を有する間隙によってそこから分離されるように位置決めすることができる。力が力センサに印加されると、少なくとも1つの電極と導電層とがより近い近接度にもたらされ、すなわち、分離距離と力センサの電気抵抗率とを低減し、かつ力センサに印加された力を示す電気信号を発生する。
【0025】
本発明の開示は、更に、導電インクを用いて印刷された第1の電極を含む第1のフレキシブル基板と、導電インクを用いて印刷されて導電層でオーバーコートされた第2の電極を含む第2のフレキシブル基板とを含む力センサに関する。第1の電極と導電層とは互いに対面し、かつ分離距離を有する間隙によって分離される。第1の電極、第2の電極、及び導電層は、実質的に同じ寸法を有する場合があり、かつ各々の周囲が一致するように位置決めされる場合がある。フレキシブル力センサは、力センサの長手延長に対して垂直な方向の第1及び第2のフレキシブル基板の圧縮時に電気信号を開始するように構成される。
【0026】
本明細書に開示する力センサの電極層の各々は、本明細書に開示する導電インクのいずれかを使用して印刷することができる。
【0027】
本明細書に開示する力センサのうちのいずれかの少なくとも1つの導電層は、本発明に開示する導電インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷される場合があり、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装填熱可塑性ポリマー、カーボン装填シリコン、カーボン装填ポリマー箔、ベロスタット、又はそのいずれかの組合せ、又はこれらの材料のいずれかの組合せのうちのいずれかを含むことができる。
【0028】
本明細書に開示する力センサのうちのいずれかでの間隙は、メッシュ布地、第1及び第2の電極の領域に開口部を含むポリマーフィルムによって形成された材料フレーム、孤立特徴部、又はそのいずれかの組合せによって維持することができる。例示的孤立特徴部は、第1のフレキシブル電極に対面する導電層の面に接合させたシリコンエラストマーのビードによって形成される場合がある。
【0029】
個々のセンサに対する力感度範囲は、プリント導電層間の分離距離、様々な層の導電率、及び/又はセンサに組み込まれた導電層の数によって制御することができる。
【0030】
力センサは、更に、制御回路、送受信機、及びコントローラを含む場合があり、制御回路は、電気信号を送受信機に伝達して記録された力又は抵抗の変化をコントローラに通信するように構成される。
【0031】
コントローラデバイスは、記録された力を外部接続可能機械と通信し、接続デバイスを給電して移動、照明、及び加熱などを開始するような特定アクションを制御することができる。例えば、本発明の開示による力センサ及び抵抗加熱器は、力センサ制御式抵抗加熱器を提供するために接続される場合がある。
【0032】
従って、本発明の開示はまた、抵抗加熱器のセンサ制御のためのデバイスに関する。そのようなデバイスは、一般的に、抵抗加熱器を含む少なくとも1つの加熱層と、力センサを含む少なくとも1つの感知素子と、デバイスに電力を中継し、かつ感知素子の少なくとも1つの力センサを通じてデバイスとの接触を感知するように構成された電子素子とを含む場合がある。感知コントローラは、感知素子から電気信号を受信し、かつ電気信号に応答して抵抗加熱器に制御信号を送信するように構成することができる。このようにして、感知素子上の個々の力は、加熱素子の微調整制御を提供するために加熱素子にフィードバックを提供し、かつバッテリ使用の節約又はユーザのための快適制御の改善を可能にすることができる。例えば、仮にユーザが手動で加熱器をオンにしたが、座席に位置決めされていないとすれば、加熱器はオフにすることができ、又は力センサの少なくとも1つによって感知されるように、仮にユーザが座席の背部ともはや接触しないように座席内でシフトしたとすれば、座席の背部内の加熱器は、オフにされるか又はより高い又は低い電力を提供することができる。
【0033】
本明細書の実施形態の態様、特徴、利益、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び付属図面に関して明らかであろう。以下の図では、類似の数字は、様々な図で類似の特徴を表している。本発明に開示する実施形態の図を示すこれらの図面での特徴及び構成要素は、特に逆を明記しない限り、必ずしも縮尺通りに描かれていないことに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】導電スレッドを組み込むことによるような導電材料を織物に組み込む従来技術の方法を示す図である。
図1B】導電スレッドを組み込むことによるような導電材料を織物に組み込む従来技術の方法を示す図である。
図1C】導電スレッドを組み込むことによるような導電材料を織物に組み込む従来技術の方法を示す図である。
図2】絶縁又は保護層間に導電トレースを組み込む従来技術の方法を示す図である。
図3A】Evolon(登録商標)に印刷されたナノ粒子銀インクの単層に関する走査型電子顕微鏡写真(SEM)の異なる倍率画像である不織布上に印刷された従来技術のナノ粒子インクの態様を示す図である。
図3B】Evolon(登録商標)に印刷されたナノ粒子銀インクの単層に関する走査型電子顕微鏡写真(SEM)の異なる倍率画像である不織布上に印刷された従来技術のナノ粒子インクの態様を示す図である。
図3C】繊維を緑色に着色し、ナノ粒子銀インクを赤色に示す不織布の横断面視SEM画像である不織布上に印刷された従来技術のナノ粒子インクの態様を示す図である。
図3D図3Cに示す不織布の全体を通してナノ粒子銀インクの分布を示す(すなわち、ナノ粒子銀インクだけを示す)不織布上に印刷された従来技術のナノ粒子インクの態様を示す図である。
図3E】Evolon(登録商標)又は改質Evolon(登録商標)上に印刷されたナノ粒子インクの2から5層に対して抵抗測定値を示す不織布上に印刷された従来技術のナノ粒子インクの態様を示す図である。
図4A】従来技術のナノ粒子インクによる織物繊維のコーティングを示す概略図である。
図4B】本発明に開示する無粒子インクによる織物繊維の共形コーティングを示す概略図である。
図5】異なる量の歪み(すなわち、織物の延伸)の下で従来技術の導電材料を用いてスクリーン印刷された編み織物を示す図である。
図6】本発明に開示する方法に有用なインクジェットプリンタ設定を示す図である。
図7A】本発明に開示する導電インクをその一部分上に共形被覆させた織布を示す図である(左側は被覆、右側は被覆なし)。
図7B】織物の被覆部分に関するSEM画像(倍率150x)である。
図7C】織物の被覆部分に関するSEM画像(倍率800x)である。
図8A】本発明に開示する導電インクをその上に印刷させた織物の横断面視SEM画像(70,000xでの斜視図)である。
図8B】本発明に開示する導電インクをその上に印刷させた織物の横断面視SEM画像(70,000xでの側面図)である。
図8C】導電トレースがナノ粒子を含むことを示す高倍率(250,000x)でのSEM画像である。
図9】本発明に開示する例示的金属錯体(D2O中のエチレンジアミノ銀(I)イソ酪酸)のプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)走査と、本発明に開示する導電インクの例示的金属錯体の構造(右上)とを示す図である。
図10】本発明に開示する溶媒(極性プロトン性溶媒及びD2Oに溶解させたエチレンジアミノ銀(I)イソ酪酸)に溶解させた金属錯体の無粒子溶液を含む例示的導電インクのプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)走査を示す図である。
図11】本発明に開示するある一定の態様によるインク及び方法を使用する織物上の導電トレースに対する複数回の洗濯サイクル後での抵抗(Ω)のグラフである。
図12】本発明に開示するある一定の態様によるインク及び方法を使用する織物上の導電トレースに対する歪みの増大(延伸)に伴う抵抗変化のグラフである。
図13】本発明に開示するある一定の態様によるインク及び方法を使用する織物上の導電トレースに対する曲げサイクルの増加に伴う抵抗変化のグラフである。
図14】本発明に開示するある一定の態様によるインク及び方法を使用して印刷されたe-織物近接センサの写真である。
図15】付番ブロックが抵抗測定のための検査場所であることを示す本発明に開示するある一定の態様による例示的5-トレース加熱器素子の概略図である。
図16A】測定値が図15に示す場所で得られ、データが場所36に対して1.0に正規化されている本発明に開示するある一定の態様に従って形成された5-トレース加熱器からの抵抗測定のグラフである。
図16B図16Aに示すデータの期待値(図16Aの点線)からの偏差を示すグラフである。
図17A】本発明に開示するある一定の態様に従って形成された5-トレース加熱器の直列回路を示す図である。
図17B】本発明に開示するある一定の態様に従って形成された5-トレース加熱器の並列回路を示す図である。
図18A】本発明に開示するある一定の態様に従って形成された5-トレース加熱器に対して電力増加に伴う温度増加の線形性を明らかにするグラフである。
図18B】本発明に開示するある一定の態様に従って形成された5-トレース加熱器に対して経時的に抵抗ドリフトのないことを明らかにするグラフである。
図18C】本発明に開示するある一定の態様に従って形成された5-トレース加熱器に対して温度にわたって抵抗ドリフトのないことを明らかにするグラフである。
図19A】本発明に開示するある一定の態様による力センサの断面の概略図である。
図19B図19Aで構成した力センサのセンサ素子に印加される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図20A】本発明に開示する力センサの断面の概略図である。
図20B】低抵抗率カーボンインクを用いて印刷された図20Aで構成した力センサのセンサ素子に印加される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである
図20C】高抵抗率カーボンインクを用いて印刷された図20Aで構成した力センサのセンサ素子に印加される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである
図21】本発明に開示する力センサの断面の概略図である。
図22】本発明に開示する力センサの断面の概略図である。
図23A】本発明に開示する力センサの断面の概略図である。
図23B図23Aで構成した力センサのセンサ素子に印加される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図24A】力センサの電極層と導電層の間に間隙を維持するメッシュ又は網地を示す本発明に開示する力センサの断面の概略図である。
図24B】電極層と導電層の間に間隙を維持するためのスペーサフレームを示す本発明に開示する力センサの電極層に関する上面図である。
図24C】電極層と導電層の間に間隙を維持するためのスペーサドットを示す本発明に開示する力センサの電極層に関する上面図である。
図25A】本発明に開示する力感知デバイスの電極1及び2の写真である。
図25B】本発明に開示する力感知デバイスの電極1及び2を示し、電極層の上に導電層を含む写真である。
図26A】本発明に開示する力センサの断面の概略図である。
図26B図26Aで構成した力センサのセンサ素子に印加される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図27A】本発明に開示する力センサの断面の概略図である。
図27B図27Aで構成した力センサのセンサ素子に印加される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図27C】本発明に開示する力センサの断面の概略図である。
図27D図27Cで構成した力センサのセンサ素子に印加される法線力の関数としての電気抵抗を示すグラフである。
図27E】印刷された電極領域及び電気接続を各々が含む2つのフレキシブル層を示す本発明に開示する力センサの上面図である。
図27F】第1の電極を含む第1のフレキシブル基板を示す図である。
図27G】導電層によって覆われた第2の電極と、電極層と導電層間の間隙を維持するための孤立特徴部とを含む第2のフレキシブル基板を示す図である。
図28】本発明に開示する力センサ制御式導電加熱を提供するために力センサと加熱素子を統合した自動車座席の概略図である。
図29A図28に示す自動車座席の例示的機能を説明し、その上に力センサを印刷させて座席ボルスターの移動を提供する座席ボルスター材料の外側を示す図である。
図29B図28に示す自動車座席の例示的機能を説明し、その上に力センサを印刷させて座席ボルスターの移動を提供する座席ボルスター材料の内側を示す図である。
図29C】座席ボルスターの移動を提供するヘッドレスト上のセンサの例示的位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明では、本発明の開示は、導電インク、織物及びフレキシブル基板上にこれらのインクを印刷する方法、織物のようなフレキシブル基板上に印刷された導電トレース、及びこれらの導電トレースを含む電子デバイス(例えば、e-織物)に関連付けられた様々な代替実施形態及び実施の関連で明らかにされる。以下の説明では多くの例示的実施形態を開示するが、本特許出願の範囲は、開示する実施形態に限定されるのではなく、開示する実施形態の組合せ、並びに開示する実施形態の修正をも包含する。
【0036】
定義及び略語
【0037】
本明細書に開示する導電インク、それらのインクを使用して印刷されたトレース、及び印刷された電子素子及びデバイスの様々な態様は、結合され、取り付けられ、及び/又は接合された構成要素を説明することによって例示することができる。本明細書に使用する場合に、「結合される」、「取り付けられる」、及び/又は「接合される」という用語は、2つの構成要素間の直接接続又は該当する場合に介在する又は中間にある構成要素を通じた相互の間接接続のいずれかを示すのに交換可能に使用される。対照的に、1つの構成要素が別の構成要素に「直接に結合される」、「直接に取り付けられる」、及び/又は「直接に接合される」と言及する場合に、当該実施例では介在要素が示されない。
【0038】
本明細書に開示する導電インク、トレース、プリント電子素子及びデバイス、及び方法の様々な態様は、1又は2以上の例示的実施を参照して説明して示すことができる。本明細書に使用する場合に、用語「例示的」は、「例、事例、又は例示として役立つ」ことを意味し、本明細書に開示するデバイス、システム、又は方法の他の変形よりも好ましいか又は有利であると必ずしも解釈すべきではない。「任意的な」又は「任意的に」は、それに続いて説明される事象又は状況が生じるとは限らないこと、及びその説明にはその事象が生じる事例と生じない事例とを含むことを意味する。更に、本明細書に使用する「含む」という単語は、「含むが、これに限定されない」ことを意味する。
【0039】
本明細書では、「下側」又は「底部」及び「上側」又は「上部」のような相対語を使用して図面に示す1つの要素の別の要素に対する関係を説明することができる。相対語は、図面に描いた向きに加えて、本明細書に開示する要素及び/又はデバイスの異なる向きを包含することを意図していることは理解されるであろう。例示的に、図面に示す力センサの態様を裏返した場合に、他の要素の「底部」側にあるとして説明した要素は、関連する図面に示すように、他の要素の「上部」側に向けられることになる。従って、用語「底部」は、図面の特定の向きに応じて「底部」と「上部」の両方の向きを包含することができる。
【0040】
同じく本明細書及び特許請求の範囲に使用する場合に、単数形「a」、「an」、及び「the」は、関連上明らかに他を意味しない限り、複数形への言及を含むことに注意されたい。例えば、「a」織物、「a」上側層、「a」金属、「a」インク、及び「the」金属錯体に言及しているにも関わらず、これらの構成要素のいずれか及び/又は本明細書に説明するあらゆる他の構成要素の1又は2以上を使用することが可能である。
【0041】
更に、いずれかの作動例又は別途示す場合を除き、例えば、本明細書及び特許請求の範囲に使用される原材料の量を表す全ての数字は、全ての事例で用語「約」によって修飾されるものと理解しなければならない。従って、そうではないと指示しない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲で明らかにされる数値パラメータは、本発明の開示によって得られる望ましい特性に応じて変化する場合がある近似値である。各数値パラメータは、最低でも特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、少なくとも、報告される有効桁数を考慮して通常の丸め技術を適用することによって解釈しなければならない。
【0042】
本発明の広い範囲を明らかにする数値範囲及びパラメータが近似値であるにも関わらず、具体的な例で明らかにされる数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、それぞれの検査測定に見られる標準的な変動から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0043】
「実質的に」とは、10%以内又は5%以内のような互いに20%以内の値、位置、又は配置を示すと理解することができる。本明細書に使用する「実質的に含まない」とは、微量の成分だけを含むことを意味すると理解される。「微量」とは、かろうじて検出可能であり、対象になる組成物、工程、又は次に形成される物品の機能特性に利点を与えない成分の量的なレベルである。例えば、微量は、本明細書に開示する無粒子インク調合物のいずれかの構成要素の1.0重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.05重量%、又は更に0.01重量%を含むとすることができる。本明細書に使用する「全く含まない」とは、成分が完全に含まれないことを意味すると理解される。
【0044】
フレキシブル基板及び織物基板という用語は、本明細書を通して交換可能に使用され、特に別段の指示がない限り、織り又は不織の有機基板又は合成基板を意味すると理解される。更に、繊維に言及する場合に、それは、特に別段の指示がない限り、織り又は不織のフレキシブル基板の一部とすることができる。
【0045】
用語「フレキシブル」は、織物又は基板の材料に関連して使用する場合に、曲げ性、すなわち、基板の長手方向平面からの変位を意味すると理解することができる。同じく、フレキシブルとは、基板を延伸する、すなわち、基板材料の1又は2以上の軸線に沿って引っ張ることが可能であることを示すと理解することができる。
【0046】
別段の定めがない限り、本明細書に使用する全ての技術用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0047】
本発明の態様
【0048】
本発明の開示で提供する発明は、新規な導電インクと、これらの導電インクを織物及び他のフレキシブル基板上に印刷して導電トレースを形成する方法とを含む。これらの導電トレースは、パターン化してフレキシブル電子素子を形成することができ、例えば、織物に印刷した場合に、導電トレースは、e-織物の一部又は全てを形成することができる。フレキシブル電子素子は、少なくともフィットネス及び健康管理のためのウェアラブルセンサ、産業用途に使用するガスセンサ及びフィルタ、医療用途に使用する抗菌包帯、フレキシブルエネルギ貯蔵デバイス、フレキシブル力センサ、加熱素子、バッテリ、及び通信デバイスを含む様々な用途での使用が見出される。好ましい用途では、本発明に開示する導電インク及び方法によって形成されるフレキシブル電子素子は、力感応抵抗器、すなわち、力センサと、銀ベースの織物加熱器のようなフレキシブル抵抗加熱器と、力センサ制御式加熱素子のようなその組合せとを含む。
【0049】
ここで開示する導電トレースの新規で独特な態様は、それらが、溶媒に溶解させた化学量論的金属錯体の無粒子組成物を含む導電インクを使用して形成されるということである。それにより、幅が狭く、正確に堆積可能なトレースの印刷を提供する。織布又は不織布の基板上に印刷された場合に、これらの導電インクは、フレキシブル基板の繊維を共形的に被覆し、そのような基板に加わる標準的な歪み及び力、例えば、曲げ、延伸、撚り、洗濯、摩耗などによる劣化に耐性がある。従って、本発明の開示に従って形成された導電インク及び電子素子は、従来技術に開示されたものを超える劇的改善を提供する。
【0050】
例えば、e-織物のようなある一定の従来技術の導電トレースは、図1Aから1Cに示すような織物を形成するのに使用される紡績糸の一部として導電素子を含んでいる。すなわち、導電性金属スレッドを標準的な有機、ポリマー、又は合成スレッドと織り合わせて導電性紡績糸を形成し、導電素子を有する織物を製造している。図1Aは金属巻付け紡績糸を示し、図1Bは金属充填紡績糸を示し、図1Cは金属紡績糸(すなわち、完全に金属スレッド又はワイヤによって形成された紡績糸)を示している。これらの織物は、粗い及び/又は多孔性の傾向があり、導電材料(一般的に金属)の費用のために高価なものになる場合がある。これらのコストは、紡績糸を使用して織物に特定の導電パターンを生成することによって低減することができるが、これは、一般的に、容易に修正することができない製造工程の修正を必要とする。
【0051】
これに代えて、図2に示すように、導電パターンをフレキシブル基板上に組み込み、次に織物に接着させてフレキシブル電子機器を形成している。これらのパターンは、延伸可能及び/又は洗濯可能でない場合があり、パターンの適用は、追加の手動及び/又は製造の工程を必要とする場合がある。
【0052】
導電パターンを形成するために、直接印刷方法が使用されている。本方法は、容易に拡張可能であり、既存の織物製造工程に容易に統合され、導電素子及び従って電子素子を織物内に提供するために高い処理機能の高度に自動化された手段を提供することになる。しかし、従来技術の導電インクは、良好な結果を示さないことが多い。例えば、ナノ粒子インクを使用するインクジェット印刷は、ノズルの目詰まりと、織物面との相互作用過少、例えば、溜まり、又は織物面との相互作用過多、例えば、毛管効果による延びとのいずれかに起因して困難であることが判明している。図3A及び3Bに示すように、例えば、Evolon(登録商標)のような不織布上に印刷されたナノ粒子インクは、溜まりを形成して導電パターンを形成するのに必要な程度まで繊維を被覆することができない場合がある。図3C及び3Dに示す6層のインクのような複数の層を付加した後でも、走査型電子顕微鏡写真画像は、インクが溜まりになって島になり、未被覆領域で分離されていることを示している。例えば、図3C及び3Dは、Evolon(登録商標)不織繊維(緑色)が、非連続的に上部に(図3C)及び毛管拡散により織物の厚み全体を通して(図3D)インク(赤い点)を含むことを示している。
【0053】
図3Eに示すように、これらのナノ粒子インクは、連続パターンを形成することができないので、極めて高い抵抗を示す(すなわち、導電トレースを形成することができない)。更に、ナノ粒子インクのコーティング層を追加しても、これらの印刷パターンの抵抗は減少しない。面抵抗を下げる織物の修正は、例えば、最大2桁まで可能であるが、それでも導電パターンは形成されない(図3Eの右側)。図3C及び3Dで緑色の背景上にある赤い点は、ほとんど銀の融合又は接続性のないクラスター化した銀粒子を表しており、従って、銀ナノ粒子フィルムの導電性が悪い(図4A参照)。導電性の悪さは、布地のようなほとんどの織物基板に関する低温制限で更に悪化し、この制限により、ナノ粒子インクの硬化に必要であることの多い高温で銀粒子を手順よく融合させることが不可能になる。
【0054】
更に、ナノ粒子インクを使用して織物上に形成されたパターンは、一般的に、織物の使用中に(例えば、複数回の着用及び/又は洗濯サイクル)、乏しい可撓性を示している。図5に示すように、スクリーン印刷された織布の延伸などによる歪みは、導電パターンの破損に繋がり、経時的にパターンを非導電性にしてしまう。実際に、織物に関する僅か10%の歪みで、印刷パターンでの破損の観察可能な増大と導電性の喪失とをもたらす場合がある。
【0055】
本明細書に開示する発明的工程は、溶媒に溶解させた金属錯体の無粒子組成物を含む導電インクを使用して織物上にパターンを直接印刷することにより、これらの困難の多くを回避し、従って、多種の応力及び歪みを通じて一体性を維持するプリントフレキシブル電子機器を製造するための高度に拡張可能で自動化された方法を提供する。本方法は、一般的に、直接印刷工程を使用して織物基板上に導電インクを堆積させ、次にこれを硬化させてその上に導電パターンを生成する段階を含む。従って、導電パターンは、既存の製造工程に容易に統合され、更に重要なことに、容易に拡張可能であり、高度に自動化することができる方式で織物のようなフレキシブル基板上に形成することができる。更に、本明細書に開示する方法は、導電トレースの導電率及び寿命の大幅な改善を可能にするフレキシブル基板の織物繊維上に導電インクの共形コーティングを提供する(図4B)。本明細書に使用する場合に、用語「共形」は、織物、繊維、又は基板の少なくとも面を覆い、面の輪郭に倣うコーティングを意味すると見なすものとする。
【0056】
導電インク
【0057】
本発明に開示する導電インクは、少なくとも1つの溶媒に溶解させた少なくとも1つの金属錯体を有する無粒子金属錯体組成物を含む。そのような導電インクは、米国特許出願公開第2019/0249026号明細書及び第2020/0369061号明細書に説明されている。
【0058】
金属錯体は、単核、二核、三核、及び四核以上のものとすることができる。例えば、金属錯体は、少なくとも1つの金属、少なくとも1つの第1の配位子、及び少なくとも1つの第2の配位子を有する中性金属錯体とすることができる。金属錯体は、米国特許出願公開第2011/0111138号明細書、第2013/0236656号明細書、及び第2020/0369061号明細書に説明されている通りとすることができる。金属錯体は、少なくとも1つの第1の金属を有する第1の金属錯体と、少なくとも1つの第2の金属を有する第2の金属錯体とを含むことができる。金属錯体は、米国特許第9、487、669号明細書、第9、920、212号明細書、及び第10、738、211号明細書に説明されている通りとすることができる。
【0059】
例えば、金属、金属塩、又は金属酸化物を第2の配位子と反応させるなどして最初に金属(M)と第2の配位子(L2)の間に錯体を形成することにより、中性金属錯体を形成することができる。次に、金属-第2配位子錯体を第1の配位子(L1)の過剰分と反応させ、中性金属錯体を形成することができる。第1の配位子と金属-第2配位子錯体との化学量論的反応比は、例えば、少なくとも13:1、又は少なくとも15:1、又は少なくとも20:1のような少なくとも10:1とすることができる。このように調合すると、反応混合物は、実質的に又は完全に無粒子のままであり、第1及び第2の配位子と金属の化学量論的量を有する金属錯体を形成しながら完了まで進行する。
【0060】
過剰な未反応の第1の配位子を除去して化学量論的量の金属、第1の配位子、及び第2の配位子を有する(すなわち、未配位の第1の配位子を含まない)金属錯体を準備することができる。例えば、過剰な未反応の第1の配位子は、錯体の真空蒸発で除去することができ、これは、化学量論的量の金属、第1の配位子、及び第2の配位子を有する最終乾燥粉末を得るために適切な溶媒を使用する1又は2以上の洗濯段階を含むことができる。銀金属錯体の場合に、この粉末は典型的には白色である。
【0061】
得られた精製金属錯体は、ナノ粒子及びマイクロ粒子を含む粒子を実質的に又は完全に含まず(無粒子であり)、様々な溶媒に高度に可溶性である。これは、金属、第1の配位子、及び第2の配位子の化学量論的量を含まず、及び/又は残留する未配位の第1の配位子を含む場合があり、従って、一般的にナノ粒子及び/又はマイクロ粒子のような粒子を含む従来技術の錯体とは大きく異なる(実施例の追加説明を参照されたい)。これら従来技術のナノ粒子インクをある一定の織物上に印刷する段階は、図3Aから3Dに示す走査型電子顕微鏡画像及び図4Aの概略図に観察されるように、多くの場合に、織物に浸透するのではなく、むしろ織物の上部に溜まり、従って、導電トレースを形成しないことを示している(図3E参照)。本発明に開示する導電インクは、織物基板の繊維を共形的に被覆することができ(図4B参照)、高導電トレースを形成する。
【0062】
導電インクは、任意的に、少なくとも1つの導電充填剤材料を更に含むことができる。例示的充填剤材料は、少なくとも導電ポリマー、金属酸化物、及びカーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、及びグラファイトのようなカーボンベースの材料を含む。導電充填剤材料は、市販の導電ポリマー又はカーボンベースの材料から優先的に選択することができる。可能な導電充填剤材料は、カーボンブラック、グラファイト、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、グラフェン、ポリフェニレン、CNT、ポリアニリン(PANI)、及びポリフェニレンエチレンを含む。
【0063】
織物に適用されてきた様々な種類の導電ポリマーの中でも、PANI、PT、PPyは、高い導電性と簡単な加工を提供する。特にPPyとPANIは、環境条件下での優れた安定性、良好な導電性、布地のようなフレキシブル基板上への加工作業の容易さ、簡単な合成方法、及び耐腐食性を提供する。本発明に開示する導電インクにある一定のポリマー充填剤を使用する時の一般的な懸念は、貧弱な機械的特性である。しかし、それらの事例では、熱可塑性挙動、急速な溶媒蒸発、幅広い材料との良好な適合性、優れた加工性及び良好な機械的特性を特徴とするニトロセルロースのようなポリマー添加物及び結合剤を組み込むことにより、そのような懸念を軽減することができる。従って、導電充填剤を含む導電インクは、任意的に追加の結合剤材料を含むことができる。
【0064】
導電インクは、未反応の第1の配位子と、少なくとも1つの導電充填剤及びいずれかの追加の結合剤材料のようないずれかの任意成分とを含まない少なくとも1つの精製金属錯体を炭化水素溶媒システムのような有機溶媒システムに溶解させることによって調合することができる。
【0065】
導電インクは、未反応の第1の配位子と、少なくとも1つの導電充填剤及びいずれかの追加の結合剤材料のようないずれかの任意成分とを含まない少なくとも1つの精製金属錯体を少なくとも2つの極性プロトン性溶媒のような少なくとも1つの極性プロトン性溶媒中に溶解させることによって調合することができる。一般的に、極性プロトン性溶媒は、高い極性と高い誘電率を有することができる。極性プロトン性溶媒は、例えば、酸素又は窒素に結合した少なくとも1つの水素原子を含むことができる。極性プロトン性溶媒は、例えば、少なくとも1つの酸性水素を含むことができる。極性プロトン性溶媒は、例えば、少なくとも1つの非共有電子対を含むことができる。極性プロトン性溶媒は、例えば、水素結合を提供することができる。
【0066】
炭化水素溶媒は、基板と適合しない及び/又は状況によっては推奨することができない場合があるので、極性プロトン性溶媒は、特定の基板に導電インクを堆積させるのに特に役立つ場合がある。更に、極性プロトン性溶媒は、より環境に優しいインク溶液を提供することができる。
【0067】
極性プロトン性溶媒の例としては、水、直鎖又は分岐アルコール、アミン、アミノアルコール、及びグリコールを含むヒドロキシル末端ポリオールが挙げられる。同じく極性プロトン性溶媒は、例えば、エチレングリコール及び高級グリコール類、並びにアルコール類とすることができる。極性プロトン性溶媒の特定例は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、酢酸、蟻酸、及びアンモニアを含む。
【0068】
極性プロトン性溶媒は、例えば、少なくとも1つのアミン溶媒を含むことができる。アミン溶媒は、例えば、約200g/mol以下又は約100g/mol以下の分子量を有することができる。アミン溶媒は、例えば、少なくとも1つの単座アミン、少なくとも1つの二座アミン、及び/又は少なくとも1つの多座アミンとすることができる。アミン溶媒は、例えば、少なくとも1つの一級アミン又は少なくとも1つの二級アミンとすることができる。一実施形態では、アミン溶媒は、少なくとも1つの一級又は二級アミンに結合した少なくとも1つのアルキル基を含むことができる。アミン溶媒は、直鎖又は分岐アルキル基で接続された少なくとも2つの一級又は二級アミン基を含むことができる。アミン溶媒は、少なくとも1つの二級アミンで接続された少なくとも2つの直鎖又は分岐アルキル基を含むことができる。アミン溶媒の利点は、例えば、溶媒中での金属錯体の溶解度改善及び従って可能な濃度の増大、並びに金属錯体の分解温度の低下を含む。
【0069】
溶媒は、例えば、少なくとも1つのアルコール、少なくとも1つのアミン、及び界面活性剤のような2又は3以上の極性プロトン性溶媒を有する混合溶媒システムとすることができる。例えば、混合溶媒システムは、少なくとも1つのアルキルアルコールと、少なくとも1つのジオールと、少なくとも1つのアミンと、少なくとも1つのチオラルキルジオールと、シリル界面活性剤のような少なくとも1つの界面活性剤とを含むことができ、この場合に、少なくとも1つのアルキルアルコール、少なくとも1つのジオール、及び少なくとも1つのチオラルキルジオールは同じではない。混合溶媒システムの例示的アルキルアルコールは、少なくともメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール及び2-メチル-2-ブタノールのような1から6個の炭素原子を含むことができる。混合溶媒システムの例示的ジオールは、少なくともエチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオールを含む。混合溶媒システムの例示的アミンは、少なくとも水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、及びジエチルエチレンジアミンを含む。混合溶媒システムの例示的チオアルキジロールは、少なくともチオジグリコール、1,4-ジチアン-2,5-ジオール、及び3,6-ジアチアクタン-1,8-ジオールを含む。
【0070】
例示的混合溶媒システムは、インク組成物の総重量を基準にして15から25重量%の少なくとも1つのアルキルアルコール、10から15重量%の少なくとも1つのジオール、1から3重量%未満の少なくとも1つのアミン、1から5重量%の少なくとも1つのチオアルキジール、及び0.1重量%未満の界面活性剤(例えば、0.001から0.1重量%)を含むことができる。そのような混合溶媒システムは、金錯体のような特定金属錯体に対して好ましい場合があり、この溶媒システムは、その錯体がインク組成物の総重量を基準にして5から50重量%、例えば、5から25重量%、又は5から15重量%で含まれるとすることができる。
【0071】
導電インクは、少なくとも1つの極性プロトン溶媒と、少なくとも1つの金属錯体(例えば、カルボン酸アミン銀)と、導電充填剤及びいずれかの結合剤のような任意成分のいずれかとを機械的に混合することによって調合することができる。
【0072】
含まれる時に、導電充填剤は、無粒子の銀前駆体のような無粒子金属錯体と様々な重量比で混ぜ合わせることができる。例示的重量比は、50:50の金属錯体:導電充填剤、例えば、60:40の金属錯体:導電充填剤、又は70:30の金属錯体:導電充填剤、又は80:20の金属錯体:導電充填剤、又は90:10の金属錯体:導電充填剤、又は更に99:1の金属錯体:導電充填剤、及び中間的な他の比を含む。
【0073】
示したように、導電インクは、少なくとも1つの導電ポリマーを含むことができる。特定の態様により、インクは、ポリピロール(PPy)とポリアニリン(PANI)との混合物を含むことができる。相互貫入PANI/PPyネットワークの形成は、導電ポリマーフィルムの一体性を高める時に決定的な役割を果たし、印刷中にフィルムの良好な共形的性を提供する。
【0074】
ある一定の導電有機ポリマーは、硬化したナノ粒子をポリマー母材に埋め込むことができる金属ナノ粒子の優れたホストであることは公知である。従来から、PANI又はPPyで被覆した織物は、PEDOT、PPy又はPANIのような別の導電ポリマーによる第2のコーティングのための基板として使用されている。この場合に、そのような事前被覆織物は、低温硬化が可能な銀印刷に対するシード面として使用することができる。実際に、PPyによる銀の金属化は、ナノメートル及びマイクロメートルの範囲で様々な形状及び大きさの銀粒子を発生させることができる。硬化した銀の粒径を調節することに加えて、銀印刷された織物を硬化させるのに使用される低温は、導電充填剤又はシード層を分解しないとすることができる。
【0075】
本発明者は、PPyがカルボン酸アミン銀を金属銀に還元する潜在機能を認識し、この潜在機能を無粒子銀インクの低温硬化への新しい道筋として使用する。従って、導電インクに導電充填剤を混ぜ合わせることにより、機械的、熱的、電気的、及び他の加工特性の改善を通じてそのようなインクを使用して印刷されたフレキシブル電子素子の性能を改善することができる。この混合手法では、シート対シート及びロール対ロール加工が可能になることにより、製造コストを最小にし、工程の拡張及び商業化を容易にすることができる。
【0076】
本発明の開示による例示的導電インクは、上述の比率のいずれかで金属錯体と混合された少なくとも1つの導電充填剤材料を10から40重量%、アルコール又はアミンを2から10重量%、グリコールを2から15重量%、導電充填剤可溶化剤を10から25重量%、及び水を40から70重量%含むことができる。例示的充填剤可溶化剤は、少なくともN-メチル-2-ピロリドンを含む。
【0077】
必要に応じて、1から20回のような複数の印刷サイクルを繰り返すことができる。印刷された織物は、印刷間で硬化又は乾燥させ、織物の飽和を回避することができる。被覆された織物の抵抗は、膜厚及び印刷された織物に基づいて、最適には0.01から500Ω/□、例えば、0.01から300Ω/□、又は更に0.01から100Ω/□の範囲にある。
【0078】
水素結合溶媒の粘性は、炭化水素のような非水素結合溶媒よりも本質的に大きい。更に、上昇した溶媒の沸点(エネルギ的により大きい分子間力に起因する)と極性インクの性質とにより、それらは、より緩やかに制御された乾燥時間、面張力、及び面濡れ性に起因して、厳密に炭化水素又は芳香族炭化水素の送出システムよりも高品質の薄膜及び構造の形成に関して有能で適格なシステムになる。従って、混合溶媒システムは、本発明に開示する導電インクに対して優れた適用性、溶解性、及び性能を提供することができる。
【0079】
本発明に開示する導電インクは、より低い分子量を有し、粘度調節剤として機能することができるポリアクリル酸のようなヒドロゲル及び/又はポリマーを含むように調合することができる。例えば、この組成物は、最大4重量%、又は最大3重量%、又は最大2重量%、又は最大1重量%、又は最大0.5重量%、又は最大0.1重量%、又は最大0.05重量%のような最大で5重量%のヒドロゲル及び/又はポリマーを含むことができる。組成物は、0.01重量%から4重量%、又は0.01重量%から3重量%、又は0.01重量%から2重量%、又は0.01重量%から1重量%のような0.01重量%から5重量%のヒドロゲル及び/又はポリマーを含むことができる。ポリマーは、本発明の技術分野で公知の例えばポリアセチレン、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリピロール、ポリチオフェンのいずれかのような導電ポリマーとすることができる。
【0080】
本明細書に説明する金属錯体は、25℃での少なくとも1つの極性プロトン性溶媒への溶解度が少なくとも50mg/ml、又は少なくとも100mg/ml、又は少なくとも150mg/ml、又は少なくとも200mg/ml、又は少なくとも250mg/ml、又は少なくとも300mg/ml、又は少なくとも400mg/ml、又は少なくとも500mg/ml、又は少なくとも1,000mg/ml、又は少なくとも1,500mg/ml、又は更に少なくとも2,000mg/mlであるとすることができる。
【0081】
本明細書に開示する導電インク中の有機溶媒の量は、例えば、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満、0.1重量%未満、又は0.01重量%未満とすることができる。導電インク調合物は、実質的に又は全く有機溶媒を含まないとすることができる。
【0082】
25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約800cps以下、約500cps以下、約250cps以下、又は約100cps以下とすることができる。ある一定の他の態様により、25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約50cps以下、40cps以下、30cps以下、25cps以下、20cps以下、又は更に10cps以下とすることができる。更に他の態様により、インク調合物は、約2cpsから約20cps、又は約2cpsから約15cps、又は約2cpsから約10cpsの粘性を有する。
【0083】
25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約1,500cps以上、約2,500cps以上、又は約5,000cps以上、又は更に約10,000cps以上のような約800cps以上とすることができる。
【0084】
導電インクは、1.5g/mlから0.1g/ml、又は1g/mlから0.1g/ml、又は2g/mlから0.4g/ml、又は1.5g/mlから0.4g/mlのような3g/mlから0.1g/mlのインク密度に対して調合することができる。導電インクは、7から12の範囲のpHに対して調合することができる。導電インクは、少なくとも5cps又は少なくとも10cpsのような少なくとも2cpsの粘性に対して調合することができる。
【0085】
有機溶媒システム又は極性プロトン性溶媒システムのいずれかでの導電インク調合物の分析は、インク溶液中の金属及び第1及び第2の配位子の量が化学量論的であることを示している(実施例参照)。
【0086】
導電インク調合物は、粒子、マイクロ粒子、及びナノ粒子、及び金属マイクロ粒子及び金属ナノ粒子のような金属粒子を実質的に又は全く含まないとすることができる。特に、金属錯体を有する導電インク調合物は、堆積又は印刷の前及び堆積又は印刷中にナノ粒子及び/又は金属ナノ粒子を実質的に又は全く含まないとすることができる。導電インクは、堆積後であるが金属に還元される前(例えば、硬化前)にナノ粒子及び/又は金属ナノ粒子を含む粒子を実質的に又は全く含まないとすることができる。例えば、ナノ粒子のレベルは、1重量%未満、0.1重量%未満、又は0.01重量%未満、又は0.001重量%未満とすることができる。金属ナノ粒子のレベルは、1重量%未満、0.1重量%未満、又は0.01重量%未満、又は0.001重量%未満とすることができる。例えば、SEM及びTEM、UV-Visを含む分光法、動的光散乱、プラズモン共鳴などを含む本分野で公知の方法を使用して粒子の組成を検査することができる。ナノ粒子は、例えば、1nmから500nm又は1nmから100nmの直径を有することができる。マイクロ粒子は、例えば、0.5μmから500μm又は1μmから100μmの直径を有することができる。
【0087】
硬化により、インクは、基板、例えば、フレキシブル基板上に連続導電トレースを形成し、硬化中に原位置に形成された金属ナノ粒子を含むことができる(図8Aから8B参照)。金属ナノ粒子は、5から100nm、又は10から50nm、又は更に20から40nmのような1から500nmの直径を有することができる(図8C参照)。
【0088】
金属錯体
【0089】
金属錯体は、導電線の形成に有用な金属、特に半導体及び電子産業に使用される金属を含むことができる。例示的金属は、少なくとも銀、金、銅、白金、ルテニウム、ニッケル、コバルト、パラジウム、亜鉛、鉄、スズ、インジウム、及びそれらの合金を含む。金属錯体は、単一金属中心又は2つの金属中心を含むことができる。
【0090】
例えば、金属錯体は、少なくとも1つの金属、少なくとも1つの第1の配位子、及び少なくとも1つの第2の配位子を有する中性金属錯体とすることができる。第1の配位子は、加熱した時に固体生成物を形成することなく揮発するように適応させることができる。例えば、第1の配位子は、例えば、250℃以下、又は200℃以下、又は150℃以下の温度で加熱すると揮発することができる。酸素の存在下又は非存在下で加熱を行うことができる第1の配位子は、金属に対する還元体とすることができる。第1の配位子は、アニオンでもカチオンでもないという中性状態にあるとすることができる。
【0091】
第1の配位子は、単座配位子、又は例えば二座配位子又は三座配位子を含む多座配位子とすることができる。第1の配位子は、テトラヒドロチオフェンのようなチオエーテル、ホスフィン、又はアミン化合物とすることができる。ある一定の例では、第1の配位子は、式R1-S-R2を有するチオエーテルのようなチオエーテルとすることができ、ここで、R1及びR2は、C1-C3アルキルとは独立して選択することができ、又は硫黄と共に飽和複素環化合物を形成することができる。例示的チオエーテルは、少なくとも硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化ジプロピル、硫化ジイソプロピル、硫化エチルメチル、及びテトラヒドロチオフェンを含む。ある一定の例では、第1の配位子は、少なくとも2つの一級アミン基を有するアミン化合物を含むことができる。一級アミンは、アルコールよりも強い還元剤であり、極性プロトン性溶媒と均質な溶液を形成することができる。更に、第1の配位子は、2つの一級アミン末端基を含んで二級アミン基を含まないか又は1つの一級アミン末端基と1つの二級アミン末端基とを含むことができる。この後者の例では、二級アミン末端基は、直鎖アルカン、又はヒドロキシ又はアルコキシのような極性基で置換することができる。更に別の例では、第1の配位子は、2つの一級アミン末端基と1つの二級アミン基とを含むことができる。第1の配位子は、アルキルアミンを含むアミンとすることができる。アルキル基は、直鎖状、分枝状、又は環状とすることができる。架橋アルキレンを使用して複数の窒素を互いに接続することができる。アミンでは、炭素原子の数は、例えば、15以下、又は10以下、又は5以下とすることができる。
【0092】
第1の配位子の分子量は、例えば、約1,000g/mol以下、又は約500g/mol以下、又は約250g/mol以下とすることができる。
【0093】
ある一定の例では、第1の配位子は、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジアミノシクロヘキサン、又はジエチルエチレンジアミンである。
【0094】
第2の配位子は、第1の配位子とは異なっており、かつ同じく金属錯体の加熱時に揮発することができる。例えば、第2の配位子は、揮発性の小有機分子と同様に二酸化炭素を放出することができる。第2の配位子は、加熱した時に固体生成物を形成することなく揮発するように適応させることができる。第2の配位子は、例えば、250℃以下、又は200℃以下、又は150℃以下の温度で加熱すると揮発することができる。酸素の存在下又は非存在下で加熱を行うことができる。第2の配位子は、アニオン性とすることができる。第2の配位子は、自己還元性とすることができる。
【0095】
第2の配位子は、カルボン酸とすることができる。カルボン酸は、直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を含むことができる。一実施形態では、第2の配位子は芳香族基を含まない。第2の配位子は、-N(H)-C(O)-Rで表されるアミドとすることができ、ここでRは、炭素原子数10以下、炭素原子数8以下、炭素原子数6以下、又は炭素原子数5以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。同じく第2の配位子は、N含有二座配位子とすることができる。
【0096】
カルボン酸を含む第2の配位子の分子量は、例えば、約1,000g/mol以下、又は約500g/mol以下、又は約250g/mol以下、又は約150g/mol以下とすることができる。
【0097】
ある一定の例では、第2の配位子は、イソ酪酸、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、ギ酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、又は酒石酸とすることができる。
【0098】
すなわち、金属錯体は、少なくとも1つの金属、少なくとも1つの第1の配位子、及び少なくとも1つの第2の配位子を含むことができ、ここで金属は、銀、金、白金、又は銅とすることができる。例示的な第1の配位子は、アミン及び硫黄含有化合物を含み、例示的な第2の配位子は、カルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸を含む。例示的溶媒は、少なくとも水、アルコール、アミン、アミノアルコール、ポリオール、及びその組合せを含む群から選択された少なくとも2つの極性プロトン性溶媒のような1又は2以上の極性プロトン性溶媒を含む。
【0099】
ある一定の他の態様により、金属錯体は、少なくとも1つの第1の金属を有する少なくとも1つの第1の金属錯体、少なくとも1つの第2の金属を有する少なくとも1つの第2の金属錯体、少なくとも1つの第3の金属を有する少なくとも1つの第3の金属錯体などを含むことができ、ここで各金属錯体は、化学量論的量の金属、及び第1及び第2の配位子を含むことができる。例えば、金属錯体は、上記に詳述した通りに形成された(すなわち、金属、及び第1及び第2の配位子の化学量論的量を有する)2つの中性金属錯体を含むことができる。
【0100】
本発明に開示するある一定の他の態様により、金属錯体は、金属合金をもたらす(例えば、織物基板では硬化後に)ように構成することができる。金属錯体は、第1の金属と、少なくとも1つの第1の配位子と、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子とを含む少なくとも1つの第1の金属錯体と、第1の金属錯体とは異なる少なくとも1つの第2の金属錯体であって、第2の金属と、少なくとも1つの第1の配位子と、第1の配位子とは異なる第2の配位子とを含む上記第2の金属錯体と、少なくとも1つの溶媒とを含むことができる。(i)第1の金属錯体の量と第2の金属錯体の量の選択、(ii)第1及び第2の金属に対する第1の配位子の選択と第2の配位子の選択、及び(iii)溶媒の選択は、均質な組成物を与えるように適応させることができる。
【0101】
更に他の態様により、金属錯体は、(I)又は(II)の酸化状態にある少なくとも1つの第1の金属と、少なくとも2つの配位子であって、少なくとも1つの第1の配位子がアミンであり、少なくとも1つの第2の配位子がカルボン酸アニオンである上記少なくとも2つの配位子とを有する少なくとも1つの第1の金属錯体と、第1の金属錯体とは異なる少なくとも1つの第2の金属錯体であって、(I)又は(II)の酸化状態にある少なくとも1つの第2の金属と、少なくとも2つの配位子であって、少なくとも1つの第1の配位子が硫黄化合物であり、少なくとも1つの第2の配位子が第1の金属錯体のカルボン酸アニオンである上記少なくとも2つの配位子とを含む中性錯体である上記第2の金属錯体とを含むことができる。
【0102】
本発明に開示するある一定の他の態様により、金属錯体は、少なくとも1つの第1の金属錯体であって、(I)又は(II)の酸化状態にある少なくとも1つの第1の金属と、少なくとも2つの配位子であって、少なくとも1つの第1の配位子がアミンであり、少なくとも1つの第2の配位子がカルボキシル酸アニオンである上記少なくとも2つの配位子とを含む中性で非対称の錯体である第1の金属錯体と、第1の金属錯体とは異なる少なくとも1つの第2の金属錯体であって、(I)又は(II)の酸化状態にある少なくとも1つの第2の金属と、少なくとも2つの配位子であって、少なくとも1つの第1の配位子が硫黄化合物であり、少なくとも1つの第2の配位子が第1の金属錯体のカルボキシル酸アニオンである上記少なくとも2つの配位子とを含む中性で非対称の錯体である上記第2の金属錯体と、少なくとも1つの有機溶媒であって、第1の金属の原子パーセントが全金属含有量に対して約20%から約80%であり、第2の金属の原子パーセントが約20%から約80%である上記少なくとも1つの有機溶媒とを含むことができる。
【0103】
これらの金属合金に使用する例示的金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、及びHgを含む。特に、銀、金、及び銅を含む貨幣金属を使用することができる。金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、及び銀を含む貴金属を使用することができる。他の好ましい実施形態では、白金、ニッケル、コバルト、及びパラジウムを使用することができる。更に、鉛、鉄、スズ、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、亜鉛、及びアルミニウムを使用することができる。本発明の技術分野で公知の他の金属及び元素を使用することができる。
【0104】
第1の金属錯体は、銀、金、銅、白金、ニッケル、イリジウム、又はロジウムの錯体である。例えば、第1の金属錯体は銀錯体とすることができる。第2の金属錯体は、銀、金、銅、白金、ニッケル、イリジウム、又はロジウムの錯体である。例えば、第2の金属錯体は金錯体とすることができる。二元合金を形成する金属の二元組合せの例としては、少なくともAg-Au、Pt-Rh、Au-Cu、Zn-Cu、Pt-Cu、Ni-Al、Cu-Al、Pt-Ni、及びPt-Irが挙げられる。
【0105】
金属合金の金属錯体は、2又は3以上の配位子を含む複数の配位子、又は2つだけの配位子を含むことができる。例えば、互いに異なる第1の配位子と第2の配位子とが存在することができる。第1の配位子は、シグマ電子供与又は配位結合を提供することができる。第1の配位子は、アニオンでもカチオンでもない中性状態にあるとすることができる。第1の配位子の例は、アミン、酸素含有配位子、及び酸素化エーテルと環状チオエーテルを含むチオエーテルとを含む硫黄含有配位子を含む。非対称型又は対称型のアミンを使用することができる。アミンは、例えば、少なくとも2つの一級又は二級のアミン基を含むことができる。単座配位子を使用することができる。多座又は複座の配位子を使用することができる。アルキルアミノ配位子を使用することができる。
【0106】
第2の配位子は、第1の配位子とは異なるものとすることができ、かつ金属錯体の加熱時に揮発することができる。例えば、それは、一部の実施形態では、プロペンのような揮発性小有機分子と同様に二酸化炭素を放出することができる。第2の配位子は、アニオン電荷を担持して中性錯体を提供することができる、最小数の原子を有するキレート剤とすることができる。第2の配位子は、アニオン性とすることができる。例えば、第2の配位子は、小アルキル基を有するカルボン酸を含むカルボン酸とすることができる。アルキル基の炭素原子数は、例えば、10以下、又は8以下、又は5以下とすることができる。第2の配位子の分子量は、例えば、約1,000g/mol以下、又は約250g/mol以下、又は約150g/mol以下とすることができる。
【0107】
本発明に開示する金属錯体は、乾燥状態(粉末)の時に又は少なくとも1つの溶媒中でインクとして調合される時に(すなわち、金属錯体と少なくとも1つの溶媒とを含む無粒子組成物)、ナノ粒子及びマイクロ粒子を含む粒子が実質的に又は全くないとすることができる。
【0108】
直接印刷及び堆積方法
【0109】
例えば、ピペッティング、インクジェット印刷、リソグラフィ又はオフセット印刷、グラビア又はグラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、マイクロ分散直描印刷、スクリーン印刷又は回転スクリーン工程印刷、オフセット印刷、ステンシル印刷、ドロップキャスト、スロットダイ、ロール対ロール、スタンピング、ロールコーティング、スプレーコーティング、フローコーティング、押出印刷、及びスプレー又は空圧又は超音波エアロゾルジェット印刷のようなエアロゾル送出を含む本発明の技術分野で公知の方法を使用して、本発明に開示する導電インクを堆積させることができる。インク調合物と基板を堆積方法に適応させることができる。
【0110】
開示する導電インクは、ピペッティング、ステンシル印刷、圧延、吹付け、又はインクジェット印刷のような直接印刷方法で堆積させることができる。ある一定の例では、インクジェット印刷を使用して導電インクを堆積させる。
【0111】
開示する導電インクは、織物の面上に直接印刷することができる。
【0112】
ある一定の織物基板は、織物を事前洗濯すること及び任意的に酸素プラズマ、コロナ、及び/又は化学エッチング(例えば、酸性、苛性)で処理することのような織物の前処理から利益を得ることができる。従って、本発明に開示する導電インクは、酸素プラズマ、コロナ、及び/又は化学エッチングで前処理した後で織物基板上に印刷することができる。
【0113】
ある一定の織物基板は、コーティングを付加することで利益を得ることができる。例えば、紙及び/又は綿布のようなセルロースベースの基板は、インクの滲みを低減し、その上に形成されるトレースの導電性を高めるためにコーティングを必要とする場合がある。すなわち、導電パターンを印刷する前に、セルロース又は綿ベースの基板をポリウレタンコーティングのような透明層で被覆することができる。
【0114】
開示する導電インクの粘性は、堆積方法に適応させることができる。例えば、粘性は、インクジェット印刷に適応させることができる。25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約200cps以下、又は約50cps以下、又は更に約25cps以下のような約500cps以下とすることができる。25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、少なくとも50cpsとすることができる。25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約25cps以下のような約50cps以下とすることができる。ある一定の他の態様により、25℃で測定したインク調合物の粘性は、例えば、約2cpsから約20cps又は約2cpsから約10cpsとすることができる。インク調合物の粘性は、極性プロトン性溶媒の選択比(例えば、水とアミンとの比)によって調節することができる。
【0115】
これに代えて、開示する導電インクの粘性は、例えば、結合剤、樹脂、又はインク調合物の粘性を濃くするか又は増大することができる他の添加物又は固形物の添加などにより、15cps、又は20cps、又は更に25cpsを超えるように調合することができる。例えば、インク中の溶存固形物の濃度は、約2,000mg/ml、又は1,500mg/ml以下、約1,000mg/ml以下、約500mg/ml以下、約250mg/ml以下、約100mg/ml以下、約50mg/ml以下、又は約10mg/ml以下に適応させることができる。
【0116】
開示する導電インクの濡れ性を適応させるために添加物を含めることもできる。例えば、界面活性剤、分散剤、着色剤(例えば、染料)、及び/又は結合剤のような添加物を使用して、1又は2以上のインク特性を必要に応じて制御することができる。例えば、親水性結合剤は、ある一定の織物を濡らす上で助けになり、従って、織物繊維を共形的に被覆する導電トレースを提供する(すなわち、導電トレースの導電性を改善する)上で助けになる場合がある。例えば、導電インク調合物は、最大8重量%、又は最大6重量%、又は最大4重量%、又は最大2重量%、又は最大1重量%、又は最大0.1重量%、又は最大0.05重量%のような最大で10重量%の1又は2以上の添加物を含むことができる。組成物は、0.01重量%から4重量%、又は0.01重量%から3重量%、又は0.01重量%から2重量%、又は0.01重量%から1重量%のような0.01重量%から5重量%で添加物を含むことができる。
【0117】
本発明に開示する導電インク調合物は、界面活性剤、分散剤、着色剤(例えば、染料)、及び/又は結合剤のような添加物を実質的に又は全く含まない。
【0118】
ノズルを使用して前駆体を堆積させることができ、ノズルの直径は、例えば、200μm未満、又は更に100μm未満とすることができる。粒子がないことにより、ノズルの目詰まり防止に役立たせることができる。ノズルは、インクを液滴状に堆積させることができ、液滴サイズは、100μm未満、又は50μm未満、又は更に30μm未満のような200μm未満とすることができる。ノズルは、インクを液滴状に堆積させることができ、液滴の体積は、100ピコリットル(pl)未満、又は50pl未満、又は25pl未満、又は更に15pl未満でとすることができる。液滴は、60滴/インチより大きい、90滴/インチより大きい、200滴/インチより大きい、500滴/インチより大きい、1,000滴/インチより大きい、1,500滴/インチより大きい、2,500滴/インチより大きい、4,000滴/インチより大きく、又は6,000滴/インチより大きいような30滴/インチより大きい密度で堆積させることができる。
【0119】
導電インクは、標準的な室温及び圧力のような周囲条件下で織物基板を印刷することができる。
【0120】
織物基板は、インクの堆積前及び/又は堆積中に加熱することができる。例えば、織物基板は、40℃から90℃の温度に加熱することができる。図6を参照すると、加熱されたプラテン12とノズルアセンブリ14とを含む例示的インクジェットプリンタ10を示している。使用時に、本発明に開示する導電インクは、インクの液滴を堆積させることができるようにプリンタ10に装填することができる。プラテン12は、印刷中に30℃から60℃又は40℃から90℃のような30℃から90℃の温度に加熱することができる。
【0121】
本明細書で液滴のサイズ及び密度、液滴の体積、及びノズルサイズに対して特定の数を列挙するが、これらの値は、選択した印刷方法、選択したプリンタ(例えば、ノズル構成)、導電インクの粘性、及び望ましいカバレージに応じて変わる場合がある。
【0122】
すなわち、本発明に開示するある一定の方法により、堆積中に低温で加熱される織物のような基板上に導電インクを堆積させた後に、インク調合物中の金属錯体を金属構造に変換する硬化段階が続くとすることができ、ここで、硬化段階は、本明細書に詳述する硬化段階のいずれかによるものとすることができる。
【0123】
本発明に開示するある一定の他の方法により、周囲温度(及び圧力)の織物のような基板上に開示する導電インクを堆積させた後に、インク調合物中の金属錯体を金属構造に変換する硬化段階が続くとすることができ、その場合に、硬化段階は、本明細書に詳述する硬化段階のいずれかによるものとすることができる。
【0124】
印刷された織物又は布地を印刷間で硬化又は乾燥させ、布地の飽和を回避することができる。被覆された布地の抵抗は、トレース寸法(例えば、厚み)、導電インク組成物、及び印刷されたフレキシブル基板、例えば、布地に基づいて、一般的に0.01から500Ω/□の範囲にある。
【0125】
例示的銀インク調合物は、水とアルコール及び/又はアミンのいずれかのような2又は3以上の極性プロトン性溶媒に溶解させた化学量論的量の第1及び第2の配位子を有する銀錯体を含むことができる。一般的に、そのようなインク溶液は、銀錯体を250mg/ml以上、例えば、500mg/mlで含むように調合される。これらの溶液は透明である。導電インクの堆積中に織物を加熱により、印刷領域外へのインクの滲みを低減することができる。例えば、本発明に開示するインク及び方法を使用して形成された導電トレースは、0.4mm未満、又は0.3mm未満、又は0.2mm未満、又は更に0.1mm未満のような0.5mm未満のインクの滲みを提供することができる。本明細書に使用する場合に、用語「インクの滲み」は、インク堆積精度の尺度を意味すると見なすことができ、インクが延びることができるトレースの定められた縁部(意図された境界)からの距離に関して言及される。
【0126】
本発明に開示する態様によるインク組成物の500mg/mlの例示的溶液は、25℃で約5から15cpsの粘性、約1.0から1.3g/mlの密度、少なくとも10から13のpH、約15から34dyn/cmの面張力、及び約15から25重量%の銀含有量を有することができる。そのようなインクのインクジェット印刷は、プラテン12(図6)上で30℃から90℃に加熱された織物基板に対して60から6000滴/インチで5から200μmの液滴として、例えば、1270滴/インチで65μmの液滴としてインクを堆積させる段階を含むことができる。次に、この織物は、200℃未満の温度で30分未満の時間、例えば、140℃で2から20分にわたって又は140℃で10分にわたって硬化させることができる。これに代えて、30分未満の時間、例えば、2から20分にわたって又は10分にわたって赤外線に露出することにより、織物を硬化させることができる。本方法から得られる例示的線幅は約2mmとすることができ、0.2mm未満、又は更に0.1mm未満のような0.5mm未満のインクの滲みを提供することができる。更に、このパターンは、5Ω/□未満、又は1Ω/□/未満、又は0.1Ω/□から0.9Ω/□のような10Ω/□/未満の抵抗率を示している。
【0127】
本発明に開示する導電トレースは、10.Ω/□未満、又は8.0Ω/□未満、又は6.0Ω/□未満、又は4.0Ω/□未満、又は2.0Ω/□未満、又は0.1Ω/□から1.0Ω/□のような1.0Ω/□未満のシート抵抗値を有することができる。抵抗加熱器のような導電トレースの特定用途では、2.0Ω/ 又は10.0Ω/ を超えるなどの増大したシート抵抗から利益を得ることができる。
【0128】
本発明に開示する方法に使用することができる例示的システムは、Fujifilm Dimatix製DMP2850及びDMP2931を含む。このプリンタを使用する場合に、本発明に開示する導電インクは、5から200μmの液滴サイズ又は100pl未満の液滴体積を使用して、プラテン上で予備加熱された織物に60から6000滴/インチを用いて印刷することができる。次に、織物は、このデバイスのプラテン上で140℃10分にわたる又は10分にわたる赤外線への露出などで硬化させるか又はオーブン又は他の領域に移動して硬化させることができ、ここで金属錯体内の金属が固体の導電性金属に変わる。硬化は、本明細書に開示するいずれかの方法によるものとすることができる。
【0129】
本発明に開示するインク及び印刷方法によって達成可能な導電性に影響を与える主因子は、インク化学と織物の面エネルギとの適合性、織物のサイズ及び構造(織り、不織)、O2プラズマなどによる織物の前処理、及び高分解能トレースを与える印刷中の織物の原位置加熱、及び低温硬化(200℃未満、硬化に関する以下の節を参照)などの硬化方法を含む。従って、本発明に開示するインク及び方法は、図4Aから4Eに示す従来技術のインクを超える大きい利点を提供するものであり、従来技術では、インクの粒子がインクジェットデバイスのノズルを詰まらせる場合があり、インクを使用して形成されたトレースが一般的に非導電性であり(すなわち、非常に高いシート抵抗を示す)、高い硬化温度を必要とするので多くの織物に適合しない。
【0130】
上記で詳述した通りに印刷された例示的織物を図7Aから7Cに示している。図7Aに示すのは、印刷されたセクション(左)と印刷されなかったセクション(右)とを有する織布基板のクローズアップ図であり、印刷は、加熱された基板上で本発明に開示する導電インクを使用して行っている。図7B及び7Cは、SEM(倍率150x及び800x)で撮影された印刷済み織物の走査型電子顕微鏡画像(SEM)を示している。これらの画像は、印刷中の基板加熱が基板繊維のより良い「染色」をもたらすことを明らかにしている。すなわち、本発明の開示による無粒子インクは、加熱された織物基板の外面をより良く貫入する(例えば、織物の繊維に浸み込む)ことができ、又はより完全に被覆することができ(例えば、織物の外面を包み込む又はその中に浸み込む共形コーティング)、織物基板上の染料として機能して加熱された基板に形成されたパターンの導電性を改善する。粒子(ナノ粒子、薄片など)を含む従来技術の導電インクは、どうしても織物に貫入することができず、図4A及び4Bに示すように織物基板の上部に位置したままであることが分かっている。このために、従来技術のインクは、標準的な摩滅消耗を通じて織物基板に加わる擦過及び他の力によって除去されやすい状態にある。従って、原位置熱硬化により、布地スレッドの周りでより良いコーティング(すなわち、共形コーティング、図4G参照)が容易にされる。
【0131】
本発明者は、原位置硬化を使用して本発明の開示による導電インクを用いて印刷された織物(編み織物、織布、及びEvolon(登録商標)のような不織布)のシート抵抗値が、ほとんどの織物基板に対して原位置外硬化よりも改善されることを見出した。原位置硬化は、シート抵抗を低減し、一部の事例では原位置外硬化した導電トレースから測定された値よりも数桁も低減し、インクの滲みを低減する。これらの結果は、検査された全ての印刷層数(導電トレースの層数)に対して一貫していた。従って、インクジェット印刷などによるインクの堆積中に織物の加熱を含む本発明に開示する方法は、トレース分解能の改善だけでなく、トレースの導電性の改善ももたらす。
【0132】
これに加えて、本発明の開示による導電インクを用いて印刷された編み及び不織布(Evolon(登録商標))のシート抵抗値は、酸素プラズマ又はコロナによる前処理によって改善された。従って、インクジェット印刷などによるインクの堆積前及び/又は堆積中に織物の加熱を含む本発明に開示する方法は、織物の前処理も含むことができ、未処理の織物を超えるトレース導電率の改善を提供することができる。
【0133】
フレキシブル基板
【0134】
広範な固体材料は、本発明に開示する導電インクの堆積(例えば、印刷)に役立たせることができる。有機及び無機の基板を使用することができる。ポリマー、有機繊維及び合成繊維、プラスチック、金属、木材、紙、レザー、セラミック、ガラス、シリコン、半導体、及び他の固形物のようなフレキシブル基板を使用することができる。
【0135】
フレキシブル基板は、フレキシブルポリマー又はポリマーフィルムとすることができる。例示的ポリマーフィルムは、Kapton(登録商標)のようなポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエーテルスルホン(PES)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、及びポリアミド(PA)及びポリアミドイミド(PAI)フィルムを含む。
【0136】
フレキシブル基板は、有機又は合成繊維によって形成された編み、織り、又は不織の布地のような織物であるとすることができる。そのような織物基板の例示的繊維は、有機材料(例えば、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、レザー、スエード)に加えて、少なくともポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ポリエステル-スパンデックス、ナイロン、ナイロン-スパンデックス、Evolon(登録商標)、エラステイン、及び他の合成材料を含む。これらの材料のいずれかの混合も可能である。
【0137】
フレキシブル基板は、高度な可撓性を有する織物、すなわち、3方向又は4方向に延伸可能な材料とすることができる。例示的材料は、少なくともポリエステル(PE)を含み、これは、少なくともx軸及びy軸で最大10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、又は更に150%以上の可撓性(織物の平面上での延伸性)を有することができる。例えば、例示的フレキシブル材料は、x平面及びy平面に沿ってそれぞれ最大10%×10%、又は20%×20%、又は20%×40%などまで延伸させることができる。
【0138】
織物は、その上への導電インクの堆積を改善し、シート抵抗を低減することができるO2プラズマ又はコロナのような反応ガスで前処理することができる。
【0139】
これに加えて、本明細書に開示する導電インクの堆積又は印刷の前に織物を事前洗濯して乾燥させることができる。
【0140】
導電インクの硬化
【0141】
本発明に開示する導電インク調合物が周囲温度又は高温のいずれかで織物基板のような基板上に印刷された状態で、それらを硬化させて導電パターンを形成することができる(すなわち、金属構造に変換される)。硬化させる段階は、印刷された基板を加熱する段階、及び/又は印刷された基板に放射線を照射する段階を含むことができる。ある一定の例では、印刷された基板は、60分未満、例えば、30分未満、又は15分未満の時間、200℃以下、例えば、150℃以下、又は100℃以下の温度に加熱することで硬化させることができる。ある一定の例では、印刷された基板を10分にわたって140℃に加熱して又は赤外線に10分にわたって露出して1Ω/□未満の抵抗値を有する導電パターンを形成する。
【0142】
導電インクの堆積中に基板を加熱した又はしなかった(すなわち、周囲温度で織物に印刷して硬化させた又は高温で織物に印刷して硬化させた)編み、織り、及び不織の織物のシート抵抗値を検査した。最も低いシート抵抗は、織りポリエステル上の導電トレースの場合に見出され、織物は、印刷中に周囲温度又は高温であったが、編み織物も不織布も、加熱された基板への印刷から利益を受けた。
【0143】
ある一定の例では、織物基板上の導電トレースは、これに加えて又はこれに代えて、フォトニック硬化などによるパルス光への露出で硬化させることができ、この場合に、パルス数は2から20の範囲である。これに代えて又はこれに加えて、硬化させる段階は、赤外線への露出などにより、織物基板上の導電トレースを照射する段階を含むことができる。
【0144】
本明細書に開示する溶媒システムでの金属錯体の高い溶解度により、高導電率/低抵抗を有する硬化した連続導電性フィルム又はトレースが提供される。例えば、本発明の開示による銀インクは、1Ω未満の抵抗を有するトレースを提供し、この場合に、トレースは、金属を少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は更に99.5%と同程度含む。
【0145】
保護コーティング
【0146】
本明細書に開示する導電インクを使用して形成された導電トレースは、誘電体コーティングのような保護コーティングで被覆することができる。例えば、トレースの全て又は一部は、水性誘電体ポリマー溶液で被覆することができる。例示的ポリマー溶液は、少なくともアクリルポリマー及びポリウレタンポリマーを含む。
【0147】
保護コーティングは、塗装、吹付け、又は印刷(例えば、インクジェット印刷)によって堆積させることができる。ポリマー溶液の粘性は、適切な溶媒及び溶媒混合物で希釈することにより、ある一定の織物及び堆積方法に対して調節することができる。そのようなコーティングは、熱処理、溶媒の蒸発、照射(例えば、UV処理)、又はそのいずれかの組合せによって硬化させることができる。例示的コーティングは、導電トレース上に印刷され、織物を30分以下、例えば、20分以下にわたって160℃以下、例えば、150℃以下に加熱することで硬化するアクリルベースのコーティングを含む。
【0148】
この組成物は、インクジェット、グラビア、フレキソ、又はスクリーン印刷技術を用いて印刷することができ、その場合に、インクの粘性は、特定の技術に対して調節され、例えば、25℃で測定した粘性は、インクジェット印刷では2から40センチポアズ、又はフレキソ印刷では100から400センチポアズ、又はグラビア印刷では50から300センチポアズとすることができる。
【0149】
例示的保護誘電体コーティング組成物は、米国特許出願公開番号US 2020/0283653号明細書に開示されており、これは、水性結合剤、250nm未満の粒子径を有する無機ナノ粒子、及び1又は2以上の極性プロトン性溶媒を含むものである。水性結合剤は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース、ヒドロゲル、又はその組合せとすることができる。無機ナノ粒子は、SiO2ナノ粒子、Al23ナノ粒子、TiO2ナノ粒子、ZrO2ナノ粒子、ナノクレイ、又はその組合せとすることができる。無機ナノ粒子は、コロイド粒子とすることができる。無機ナノ粒子は、100nm未満、又は更に50nm未満の粒径を有することができる。従って、例示的保護誘電体コーティング組成物は、2から15重量%の水性結合剤、100nm未満の粒子径を有する1から5重量%のコロイド状シリカ、及び水性溶媒を含むことができ、この組成物は25℃で測定した粘性が2から400センチポアズである。
【0150】
コーティングは、250℃以下で30分以下にわたる露出によるような熱、又はフォトニック硬化を通じて硬化させることができる。硬化の前に、誘電体コーティング組成物を乾燥させることができる。
【0151】
コーティングは、図11に示すように、導電トレースの耐洗濯性を改善することができ、導電トレースの耐擦過性も改善することができる(実施例の表5を参照)。
【0152】
トレースの接触点又はパッドのような接触領域の上に追加の導電コーティングを提供することができる。そのようなコーティングは、導電ポリマーを含むことができ、印刷されたトレースとの導電接触を提供すると同時に、トレースを擦過から及び/又は洗濯サイクル中に保護することができる。
【0153】
フレキシブル抵抗加熱器
【0154】
本発明に開示する導電インク及びそれらのインクを印刷する方法は、極端な又は過酷な条件を含む様々な条件下で効率的に温かさを送出することができる抵抗加熱器のような電子素子をフレキシブル基板上に形成するのに使用することができる。抵抗加熱器は、抵抗器に電流を流し、電気エネルギを熱エネルギに変換することによって作動する。本発明の開示は、本明細書に開示する導電インクのいずれかを使用して少なくとも1つの導電パターンをその上に印刷させたフレキシブル基板を含むフレキシブル抵抗加熱器を提供し、導電パターンは、電流を流して熱を発生させるように構成される。
【0155】
抵抗加熱器は、導電トレースと同じ導電インク、又は本明細書に開示する導電インクの別のものを用いて印刷された少なくとも1つのバスを更に含むことができ、その場合に、少なくとも1つのバスは、少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、電源への接続を提供するように構成される。これに代えて、配線された構成要素又は接点としてのバスを含むことができ、その場合に、そのような構成要素は、表面実装することができる(例えば、導電性エポキシを用いて装着される)。
【0156】
導電パターン及び/又はバスは、保護コーティング、例えば、上記で説明したコーティングのいずれかでオーバーコートすることができる。例示的保護誘電体コーティング組成物は、米国特許出願公開番号US2020/0283653号明細書に開示されている。
【0157】
電力は、電源からバスに供給することができる。電源は、加熱器を駆動するのに必要な電圧及び電流を供給することができるバッテリパックとすることができる。例えば、4Aの電流機能を有する24VのDCバッテリを使用することができる。電源は、壁コンセントのような電気差込み口とすることができる。電源は、自動車の5-15ボルトの電気系統とすることができる。電源の電圧は、望ましい電圧を達成するために電圧を上下させるDC-DCコンバータなどを使用して導電トレース及びバスに供給される電圧よりも高く又は低くすることができる。
【0158】
電源は、加熱器コントローラ(例えば、マイクロコントローラ回路)で制御して例えば電力をオン又はオフにし、又はバス(及び導電パターン)への電力を調節することができる。場合により、加熱器コントローラは、別々の電源から又は例えば図35に示すように同じ電源から電力を引き出す。従って、電源は、加熱器コントローラを稼働するのに必要な電圧及び電流を供給することができる。
【0159】
加熱器コントローラは、加熱器の機能を制御し、加熱器電源を制御し、安全モニタ(例えば、センサ、感知トレース)を提供し、電源のステータスのような抵抗加熱器の態様に関するステータス(例えば、電圧、温度のようなバッテリステータス、加熱器抵抗、加熱器の電流引き込み、導電性バスの電圧低下など)、及びユーザに対する加熱器のステータス(例えば、加熱器オン、加熱器レベル、加熱器温度)を提供する。例示的ユーザ提示ステータスは、図28に示す表示器30のような表示灯の点灯による電源オン/オフ及び電源レベルを含むことができ、これは、自動車座席に位置決めされた抵抗加熱器のステータスを表示するものである。
【0160】
抵抗加熱器は、バスを通じて比較的大きい電流を流し、導電パターンに電流を送出することができる。導電パターン又はバスに亀裂又は裂け目のような障害が発生した場合に、パターン又はバスの残余を流れる電流がホットスポットを発現させる場合がある。そのような危険な状態を軽減するために、抵抗加熱器に感知トレースを追加することができる。例えば、本明細書に開示する導電インクのいずれかを使用して印刷された感知トレースは、バスのいずれか又は両方に又は導電パターンに沿う点で接続することができ、バスの電気特性を表す信号を生成するように構成することができる。感知トレースは、バスとの接続点での電圧を測定することができ、定められたレベルよりも大きい電圧降下は、損なわれた導電パターン又はバスを表すことになる。電圧降下は、例えば、マイクロコントローラを使用するアナログ-デジタル変換器、比較器のようないずれかの感知回路で測定することができる。バス又は導電パターンの一体性エラーを示す信号は、抵抗加熱器の作動を修正し、例えば、加熱器の電源を切ることができる。
【0161】
抵抗加熱器は、衣類に使用するウェアラブル加熱器又は加熱素子、又は自動車産業での抵抗加熱素子(例えば、座席加熱器、電気自動車加熱器)などとしての用途を見出すことができる。一例では、抵抗加熱器の少なくとも導電パターンは、自動車座席カバーの裏面のような織物に直接に印刷される。これに代えて、フレキシブル基板に抵抗加熱器を印刷することができ、例えば、座席カバーの材料の下、又は座席材料と発泡クッション材料との両方の下に位置決めされるフレキシブルポリマーフィルムに導電パターンが印刷される。フレキシブルポリマー基板を印刷する場合に、抵抗加熱器は、自動車座席材料の底面、又は自動車座席のクッションの発泡層のような別の織物に積層、粘着、又は接合させることができる。
【0162】
例示的5-トレース加熱器を図15に示している。これらの加熱器は、それぞれ図17A及び17Bに示すように直列又は並列に配置することができる。
【0163】
図15で付番ブロックに示すように、トレースに沿って様々な点で取得した抵抗測定値は、トレース長に関して直線的に変化することが見出された(2つの5-トレース加熱器からの測定値に関しては図16Aを参照されたい)。実際に、各点での抵抗の計算値と測定値は、非常に近いことが判明した(すなわち、鰐口クリップによる接地接続と手動チッププローブとを使用して測定した抵抗、図16B参照)。類似の結果は、7トレース加熱器でも観察された。印刷/工程関連の抵抗の変動を調べるために、左から右へ、右から左への抵抗測定が行われた。トレース長に対して正規化した場合に、5-トレース及び7トレース加熱器からの抵抗測定値は、予想される抵抗と顕著な相関を示している。
【0164】
本発明に開示する抵抗加熱器の利点は、可撓性があって薄く、急速に熱くなる/冷えることである。抵抗加熱器に電流が供給された状態で、ほぼ直ちに加熱が開始される。上限温度は、印刷されたトレースに供給される全電圧に基づいて制限することができ、その場合に、上限設定値は、加熱速度にほとんど影響を与えないことが見出された(すなわち、65℃への加熱と85℃への加熱は同じ速度で生じる)。
【0165】
温度は、平衡に達するまで電力と共に直線的に増加する(約2ワットの電力で100°F、図18A参照)。更に、本発明に開示するインク及び方法を使用して印刷された抵抗加熱器に対する抵抗は、時間(図18B)又は温度(図18C)に伴ってドリフトすることが観察されない。そのような結果は、トレース毎に一様に観察され、僅か3Ωの全体的な偏差を示すに過ぎない。
【0166】
すなわち、抵抗加熱器は、400ワット毎平方メートルを超える電力密度を伝達するように構成することができる。例えば、本発明に開示する抵加熱器は、少なくとも600ワット毎平方メートル、例えば、少なくとも800ワット毎平方メートル、又は少なくとも1,000ワット毎平方メートル、又は少なくとも1,500ワット毎平方メートルの電力密度を伝達することができる。これに代えて、抵抗加熱器は、400ワット毎平方メートル未満、例えば、350ワット毎平方メートル未満、又は300ワット毎平方メートル未満、又は200ワット毎平方メートル未満、又は更に100ワット毎平方メートル未満の電力密度を伝達するように構成することができる。抵抗加熱器は、少なくとも10ワット毎平方メートルの電力密度を伝達するように構成することができる。
【0167】
自動車の電気系統のような5-15ボルトの電気系統に接続された時に、少なくとも1つの導電パターンは、1-30オームの抵抗率を有し、及び/又は-40℃から60℃で10から1500ワット毎平方メートルを発生させ、及び/又は少なくとも400ワット毎平方メートルの電力密度、例えば、最大1500ワット毎平方メートルを伝達し、及び/又は約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で熱くなるよう構成することができる。抵抗加熱器からの熱出力は、導電インク中の金属又は合金、導電トレースの幅、導電トレースの厚み、トレースの抵抗、及びインク組成物中のいずれかの他の成分(例えば、他の導電ポリマーなど)のような様々な設計因子に依存することになり、従って、特定の用途に合わせて調節することができる。更に、電源の選択、導電パターンの全体的なサイズ、及び基板材料の選択により、熱出力を調節することができる。基板として使用する織物に応じて、本明細書に開示する導電インク及び方法によって形成される抵抗加熱器は、30℃から150℃の範囲の温度に到達することができる。
【0168】
銀ベースの織物抵抗加熱器の電気性能及び熱性能を改善する一手法は、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、グラファイト、金属酸化物、及び導電ポリマーのような他の導電材料を充填剤として組み込むことである。そのような導電充填剤材料と導電性金属とを混ぜ合わせることにより、平均的な導電性及び熱伝導性の特徴を有する導電性複合物が得られる。より重要なことは、この複合物がフィルムの一体性、印刷中の共形的な布地コーティング、及び低い加熱器製造コストを示すと期待されることである。銀は最も導電性の高い金属であるために、銀ベースの複合物は、最大加熱器温度の観点で高い加熱器性能を有する低い電気抵抗を示すことができる。更に、そのような複合インクは、導電ポリマーがいずれかの空隙又は亀裂を埋めるために、主として相互接続の改善により、素朴な銀フィルムを用いて印刷されたデバイスと比べてより均一な熱分布を提供することができる。
【0169】
すなわち、これらの追加の導電充填剤材料の使用により、織物布地及びシートのような最終的な印刷基板の可撓性を維持するか又は更に改善することができ、無粒子の銀インクとほぼ同じ方法で織物基板では個々の繊維の共形コーティングを改善することができる。
【0170】
フレキシブル力センサ
【0171】
本発明に開示する導電インク及びそれらのインクを印刷する方法を使用して力感応素子を印刷することができる。従って、本発明の開示はまた、間隙距離によって少なくとも1つの導電層から分離された少なくとも1つの電極層を含む力感知デバイスに関する。少なくとも1つの電極層は、導電インクを使用して第1のフレキシブル基板上に印刷された少なくとも1つの電極を含むことができる。少なくとも1つの電極層は、シャント型力感応抵抗器のように、導電インクを使用してフレキシブル基板に相互嵌合的に印刷された第1及び第2の電極を含むことができる。
【0172】
少なくとも1つの導電層は、本明細書に開示する導電インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷される第2のフレキシブル基板上の導電トレース又は領域(本明細書では導電性ストリップとも呼ぶ)を含むことができ、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースのフィルム(CNT)、カーボン装填熱可塑性ポリマー、カーボン装填シリコン、カーボン装填ポリマー箔、ベロスタットのいずれか、又はその組合せを含むことができる。
【0173】
図19Aを参照すると、第1のフレキシブル基板102は、その上に印刷された第1及び第2の電極(それぞれ、106a及び106b)を含むことができる。更に、第1及び第2の基板(それぞれ、102及び108)は、第1の基板102上の第1及び第2の電極(106a,106b)が第2の基板108上の印刷された導電性領域110に直接に対向し、かつこれら2つの基板層間に形成された間隙112によってそこから分離されてセンサのピエゾ抵抗特性を与えるように配置することができる。分離距離は、導電層と電極層の間の距離を埋める織物で維持することができる。例示的織物材料は、メッシュ布地又は網地を含む(図24A参照)。
【0174】
分離又は間隙112はまた、印刷された電極及び導電性領域を含む領域の外側に基板層のうちの1つをエンボス加工することで維持することができる。図24Bに示すような、開放領域を縁取るスペーサ材料(フレーム107)でこの分離を維持することができ、その場合に、開放領域は、電極(基板102上の106a,b)及び/又は導電領域の全て又は一部を含む。例示的スペーサ材料は、本明細書に開示するフレキシブルポリマーフィルムのいずれか又は結合剤を含む。この分離は、ドットのような孤立特徴部、例えば、スペーサビード(109、図24C)で維持することができる。ドット又はスペーサビードを結合剤で所定位置に保持することができ、所定位置に溶融させることができ(すなわち、熱への短時間の露出)、電極層及び/又は導電領域のような圧力センサの層の1つに印刷することができる。様々な基板層間の分離及び従って電極と導電性領域間の距離を維持するために、本明細書に開示する方法及び材料のいずれかの組合せが可能であり、かつ本発明の範囲内である。要素の選択と要素の間隔及びサイズとに関する特定の設計考慮点は、力センサのサイズに依存する場合があり、すなわち、印刷された電極、及び基板の選択、例えば、フレキシブル高い基板は、基板層間の好ましい分離距離を維持するための追加の分離要素から利益を得ることができる。
【0175】
様々な基板層間の分離、すなわち、間隙を使用して、電極と導電層間の「非接触」距離を維持することができるので、力センサを圧縮する(力センサの様々な層が接触するように圧縮する)ことにより、基板層が接触し、力センサの電気抵抗率が低下することになる。例示的分離距離は、少なくとも1μm、例えば、少なくとも10μm、又は少なくとも20μm、又は少なくとも40μm、又は少なくとも60μm、又は少なくとも80μm、又は少なくとも100μm、又は更に少なくとも150μmとすることができる。PETポリマーフィルムによって形成された分離フレームによって維持される例示的分離距離は、約180μm(~0.18mm)である。
【0176】
印刷された導電性領域と第1及び第2の電極の各々は、本明細書に開示する導電インクのいずれかのような導電インクを使用して印刷することができる。例えば、無粒子の銀インクを使用して不織布上に導電性領域と第1及び第2の電極とを印刷すると、抵抗は、印加された力の量に比例して低下する(図19B参照)。
【0177】
図25Aに示すように、少なくとも1つの電極層は、第1のフレキシブル基板102に印刷された少なくとも2つの導電トレースを含み、それによって第1及び第2の電極(106a,106b)を形成することができ、ここでは、導電トレースが相互嵌合的に構成されている。図25Bに示されているのは、第1のフレキシブル基板102上の少なくとも1つの電極の上に位置決めされた第2のフレキシブル基板108上の導電層である。
【0178】
図20Aは、本発明に開示する力センサに対する別の構成を示している。第2のフレキシブル基板上の導電層は、導電性カーボンベースのインクを用いて印刷することができる。図20Bに示すように、導電層が低抵抗率カーボンインクを用いて印刷された場合に、相応の信号を生成するのに必要な力は、図20Cに示すように、導電層が高抵抗率カーボンインクを用いて印刷された場合よりも遥かに低い。
【0179】
本発明に開示する態様による力感知デバイスの追加の構成を図21及び22に示しており、ここでは、導電層と第1及び第2の電極がフレキシブル基板の全厚を占める。すなわち、図19Aに基板厚みの一部だけを占めるように示されている層104及び110は、図21及び22に示すように基板の全厚を占めることができる。
【0180】
図23Aに示すように、力感知デバイスは、2つの導電層(110a,110b)を含むことができ、ここでは、第1の導電層は、無粒子の導電性金属インクで第2のフレキシブル基板上に印刷され、第2の導電層は、後でカーボンインクを使用して第3のフレキシブル基板114に印刷される。この様々な層を配置して、図23Aに示すように、2つの分離領域又は間隙(例えば、メッシュ布地、フレーム、エンボス加工された領域、ドットなどで与えられる分離などの図示のような2つの間隙、112a,112b)を提供することができる。
【0181】
力感知デバイスは、織物にプリント導電層及び/又は電極層を含むことができ、その場合に、印刷された導電材料が織物基板の厚みの10パーセントから100パーセントの範囲を含む。力感知デバイスは、織物基板上に印刷された電極層を含むことができ、その場合に、印刷される電極は、互いに等距離に印刷される。
【0182】
図19A、20A、21、及び22に示すように、力感知デバイスは、2層の基板(例えば、布地)、すなわち、1つの導電層と1つの電極層とを含むことができ、その場合に、導電層上の導電材料は、電極層上の印刷された電極に対面する。図19A及び21に示すように、導電層と電極層は、共に無粒子の導電性金属インク(例えば、無粒子の銀インク)を用いて印刷することができる。図20A及び22から分るように、導電層は、抵抗性カーボンインクを用いて印刷することができ、その場合に、電極層は、無粒子の導電性金属インクを用いて印刷することができる。これに代えて、力感知デバイスは、布地のような基板上に印刷された導電性金属インクの2つの層と、1つの電極層とを含むことができ、その場合に、ピエゾ抵抗カーボンインクを用いて印刷された導電層は、無粒子の導電性金属インクを用いて印刷された導電層と無粒子の導電性金属インクを用いて印刷された電極層との間に横たわることができる(図23A参照)。
【0183】
図23Aに示すように構成された力センサは、最大45ポンドの力に遭遇した場合に100から10,000Ωの範囲の電気抵抗を有することができる(図23B参照)。
【0184】
電極層及び導電層のような力センサの様々な層は、ホットメルト接合フィルム、感圧接合フィルム、感圧接着剤により、又は縫製により、第1及び第2の電極を含む領域の外側などに接合させることができる。例えば、ホットメルト接合フィルム、感圧接合フィルム、又は感圧接着剤のいずれかを使用して、間隙の分離距離を維持するフレームを形成することができ、それらはまた、力センサの層を接合するように機能することができる。
【0185】
力が力センサに印加されると、少なくとも1つの電極と導電層はより接近するので、力センサの電気抵抗率が低下する。この電気抵抗率の変化は、制御回路を用いて通信することができる。従って、本明細書に開示する力感知デバイスは、制御回路、通信デバイス(送受信機)、及びコントローラを更に含むことができ、その場合に、少なくとも1つの信号経路で少なくとも1つの印刷された電極を制御回路に接続することができる。
【0186】
従って、フレキシブル基板の圧縮は、電気信号、すなわち、抵抗の変化を開始し、この信号が、コントローラ(図33参照)と電気通信する送受信機に伝わる。制御回路は、コンピュータ、電話、タブレットのような外部の接続可能なデバイス上で可読の力センサ測定値の出力のような送受信機と外部電子デバイス間の通信を支援するために有線又は無線の通信回路を有することができる。外部電子デバイスは、コンピュータ、携帯電話、ヘッド装着式デバイス、ディスプレイ、ゲームユニット、セットトップボックス、これらのデバイスのうちの2又は3以上を含むシステム、又は他の電子機器とすることができ、かつ力感知デバイスから受信した信号を変換するソフトウエアを含むことができる。図32に示すように、力センサ及び送受信機は、自動車座席のような座席の一部とすることができる。
【0187】
力感知デバイスは、本明細書に示す基板のいずれかのようなフレキシブル基板上に印刷することができる。例えば、フレキシブル基板は、編み、織り、又は不織の基板又は織物とすることができる。この織物は、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラステイン、綿、セルロース、絹、木材、リネン、羊毛、レザー、又はその配合物で製造することができる。フレキシブル基板は、紙、羊皮紙、レザー、及びプラスチックのフィルム及び容器を含むことができる。
【0188】
従って、力感知デバイスは、少なくとも1つの導電トレースをその上に印刷させた織物を含むことができ、その場合に、少なくとも1つの導電トレースの少なくとも一部分は、保護誘電体コーティングでオーバーコートされる。少なくとも1つの導電パターンは、0.5mm未満のインクの滲み及び10Ω/□未満の抵抗を提供することができる。無粒子の導電トレースは、導電インクの2又は3以上の層を含むことができる。
【0189】
導電層と電極層の各々は、フレキシブル基板上に直接に印刷することができる。従って、電極層は、無粒子の導電性金属インクを使用してフレキシブル基板上に相互嵌合的に印刷された第1及び第2の電極を含むことができ、導電層は、導電性カーボンベースのインクを使用してフレキシブルポリマーフィルム(図26A)又はグラシン紙(図27A)上に印刷することができる。これら後者の各実施例に対する例示的性能データをそれぞれ図26B及び27Bに示している。
【0190】
本発明の開示はまた、図27Cから27Gに示すような貫通型力抵抗センサも提供する。これらの力センサは、第1のフレキシブル基板層上に印刷された第1の電極と、第2のフレキシブル基板層上に印刷された第2の電極とを含むことができる。電極層の一方又は両方は、本明細書に開示する導電インクのいずれかを用いて印刷することができる。第1又は第2の電極の一方は、導電層でオーバーコートされ、導電層と未被覆電極層とは互いに対面し、かつ分離距離を有する間隙によって分離される。フレキシブル力センサは、力センサの長手延長に対して垂直な方向に第1及び第2のフレキシブル基板を圧縮した時に電気信号を開始するように構成される。そのような配置は、編み織物基板の4方向延伸性のような基板に大きい可撓性を必要とする場合に好ましいとすることができる。
【0191】
図27Cを具体的に参照すると、フレキシブル力センサは、導電インクを用いて印刷された第1の電極を含む第1のフレキシブル基板と、導電インクを用いて印刷され、導電層でオーバーコートされた第2の電極を含む第2のフレキシブル基板とを含むことができる。図示のように、第1の電極と導電層とは互いに対面し、かつ分離距離を有する間隙によって分離されている。この間隙は、メッシュ布地、第1及び第2の電極の領域に開口部を含むポリマーフィルムによって形成された材料フレーム、孤立特徴部のいずれか、又はそのいずれかの組合せによって維持することができる。図示のように、間隙は孤立特徴部によって維持される。
【0192】
そのような力センサの例示的性能データを図26Dに示しており、印加された力に対する抵抗応答は、200回の延伸/解放サイクル(19%延伸×25%延伸、20%延伸×45%延伸を有するポリエステル4方向延伸性編み織物に関して100%の回復)の後でも実質的に同じであることが示されている。
【0193】
図27Eに示しているのは、図27Cに示すように形成された例示的貫通型力抵抗センサの写真であり、上面図と、力センサに電気接続を提供する印刷トレース又は「リード」とを示している。図27F及び27Gにはフレキシブル基板層の各々を示しており、図27Fは、導電インクを用いて印刷された電極1を示し、図27Gは、導電インクを用いて印刷され、エラストマーの孤立特徴部を接合したエラストマー導電層でオーバーコートされた電極2を示している。
【0194】
本発明の力センサの様々な実施例を本明細書に開示する導電インクのいずれか又はカーボンベースのインクを用いて印刷された1又は2以上の導電層を含むものとして説明するが、他の導電材料を使用することができ、かつ本発明の範囲内である。例えば、少なくとも1つの導電層は、本発明に開示する導電インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷することができ、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装填熱可塑性ポリマー、カーボン装填シリコン、カーボン装填ポリマー箔、ベロスタットのいずれか又はその組合せを含むことができ、その場合に、材料の特定選択により、異なる力-抵抗応答を提供することができる。
【0195】
ある一定の例では、導電層は、導電性カーボンブラックのような導電性炭素材料を含む硬化性シリコンエラストマーのようなエラストマー性ポリマーから形成することができる。例えば、導電層は、2.5%から30%、又は2.5%から20%、又は2.6%から10%、又は更に2.5%から8%のような導電性カーボンを2.5%から40%充填したエラストマー性ポリマーを含むことができる。導電層は、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%だけ導電性炭素材料を充填したエラストマー性ポリマーを含むことができる。
【0196】
本明細書に開示する力センサは、フレキシブル基板の繊維を共形的に被覆する無粒子導電性金属インクの使用を含み、それにより、本発明に開示する力センサに優れた可撓性を提供することができる。従って、これらのインクを用いて印刷された少なくとも1つの電極は、10Ω/□未満の抵抗を示すことができる。
【0197】
更に、無粒子の導電性金属インクを印刷するのに使用される方法により、0.6mm未満、例えば、0.5mm未満、又は0.4mm未満、又は0.3mm未満、又は更に0.2mm未満のインク滲みを有する導電トレースを提供する。従って、これらの力センサは、非常に小さくなるように設計することができ、広範囲のフレキシブル電子機器内に位置決め可能である。
【0198】
本発明に開示する例示的用途としては、力を測定又は制御するデバイス、衝撃を感知/測定するデバイス、血圧測定及び類似の診断、筋力の測定、座席又はベッドの占有者検出、電気スイッチ、ロボットフィードバック/制御、触覚感知/信号送信、触覚フィードバック、患者の呼吸のモニタ、ベッド/体圧(床ずれ防止)、包帯圧モニタ、足からの圧力又はショーのモニタ、又は力マッピングのためのセンサアレイが挙げられる。
【0199】
例えば、フレキシブル力センサは、自動車座席の座席カバーとして構成されるフレキシブル基板又は織物に印刷することができる(図28参照)。従って、フレキシブル力センサ26は、すなわち、人がその特定座席に座っているか否かを力センサの導電層及び電極層の圧縮によって感知することができ、それに応じて自動車の特定システムを調節し、例えば、エアバッグシステムを有効化する、座席内加熱器を起動するか又は停止することなどを行うことができる。そのような信号を制御回路28に沿って自動車座席内又は自動車内の他のシステムに送信することができる。一実施例では、力センサ26を座席の縁に位置決めすることができ(A内の分解組立図を参照)、センサにより、ユーザは座席台座22及び/又は背部24の位置を調節することができる。例えば、自動車座席の側面にある力センサ33a及び33bの例示的位置を参照されたい。自動車座席のフレキシブル織物の裏面に印刷された力センサ33a及び33bの導電トレースと接続回路とを示す、図28のセクションBに示すセンサの分解組立図を図29Aに示している。更に示しているのは、座席の望ましい動きを引き起こすことができるように(すなわち、座席台座を上下又は前後に移動する、座席を前後に移動するなど)、そこに印加された力を送受信機及び/又はコントローラ(図32参照)に通信することができる力センサ33a,bのための制御回路37である。
【0200】
フレキシブル力センサは、自動車座席に位置決めされた時に搭乗者又は運転者の体重のような特定の重量又は力を検出するように設定することができる。例えば、個人又は物体がエアバッグの展開に関連付けられた必要重量の下にある時を検出し、それに応じて自動車システムを調節するようにセンサを較正することができる。複数のセンサを座席背部に使用して自動車座席にいる人の身長及び/又は体重を決定することができ、自動車のシステム、例えば、座席位置、ミラー位置などを自動的に事前調節することができる。センサの組合せを使用して特定個人(搭乗者又は運転者)の特徴を決定することができ、その個人に対応するように自動車のシステムを設定することができるので(搭乗者又は運転者の認識)、後に自動車へ乗り込むと、それらのシステムをリセットしてその個人の好みに対応することができる。例えば、図31を参照されたい。
【0201】
力センサ制御式抵抗加熱器
【0202】
今日、自動車両に対して着座区域加熱、背もたれ加熱、アームレスト加熱、ハンドル加熱、ギアシフトレバー加熱、又は他の内面区域のための加熱器、追加照明、及び座席区域、ヘッドレスト、更にハンドルに対する位置制御部のような快適性関連の機能構成要素を装備することは公知である。例えば、座席加熱器は、車室内の乗員の近くに車両に配置された電極素子を使用する。通常、これらの電極素子、例えば、座席加熱器マットは、座席面区域、座席背もたれ、アームレスト、及び/又はハンドル又はギアシフトレバーのような乗員と接触又は近接する乗員座席の座面内に配置される。乗員に電極素子が見えないようにするために、電極素子は、典型的にシートトリムの下、カバーの下、又は車両車室を定める他の面の下に配置される。
【0203】
これらの電子素子は、搭乗者の快適性を損なってはならず、すなわち、電極素子がトリム又はカバーの下にあることに搭乗者が気付けないことが重要である。更に、そのような電極素子は、可撓性が高く、特に車両座席の座面のような面に一体化される場合に、空気及び湿度に対して透過性が高いことも必要である。
【0204】
本発明に開示するインク、及びこれらのインクを印刷して導電トレース及び従って通気性織物のようなフレキシブル基板上に直接印刷された電子素子を形成する方法は、ユーザから隠されたそのような要素を準備するのに必要なフレキシブル及び製造容易性を提供する。これらのインクは、堆積して硬化する時に、布地感触及び可撓性に影響を与えない。従って、本発明の開示は、上述の要件を満足する力センサ、抵抗加熱器、及びそのような要素の組合せを提供する。
【0205】
具体的にはかつ図34を参照すると、本発明の開示は、1又は2以上の抵抗加熱器に加えて力感応抵抗器を含むデバイスを提供する。これらの2つの構成要素を組み合わせて、抵抗加熱器のセンサ制御のためのデバイスを提供することができ、このデバイスは、一般的に、本明細書に開示する抵抗加熱器のいずれかのような抵抗加熱器を含む少なくとも1つの加熱層と、本明細書に開示する力センサのいずれかのような力センサを含む少なくとも1つの感知素子と、抵抗加熱器へ電力を中継し、力センサとの接触を感知するように構成された電子素子とを含む。
【0206】
デバイスは、更に、様々な感知素子から電気信号を受信し、これらの信号に応答して制御信号を抵抗加熱器に送信するように構成されたコントローラを含むことができる。このようにして、感知素子上の個々の力は、加熱素子に対して加熱素子の微調整制御を提供することの可能なフィードバックを提供することができる。例えば、ユーザが手動で加熱器をオンにするが、座席に位置していない場合に、コントローラは、個々の力センサからの信号(又はその欠如)を記録し、加熱器コントローラとの通信などによって加熱器をオフにすることができる(図34参照)。力センサの少なくとも1つによって感知されるような座席の背部との接触がもはや行われないようにユーザが座席で位置を逸脱させた場合に、コントローラは、座席の背部にある加熱器をオフにすることができる。そのような制御により、バッテリの使用を節約するための手段を提供することができ、それは、モータがバッテリで給電される電気自動車で特に関連する態様である。
【0207】
図28は、抵抗加熱器、照明、更に移動を可能にするモータのようなセンサ制御式応答素子を提供する要素の一例示的配置を示している。例えば、例示的自動車座席20は、力センサ制御式抵抗加熱器を含むことができる。抵抗加熱器は、一般的に、座席台座22及び/又は座席背部24上の織物カバーのような第1のフレキシブル基板を含み、その上に第1の導電インクを用いて印刷された少なくとも1つの導電パターンを有する。導電パターンは、電流を流して熱を発生させるように構成される。抵抗加熱器は、更に、第1の導電インク、又は本明細書に開示する導電インクの別のものを用いて印刷された少なくとも1つのバスを含むことができ、その場合に、バスは、少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、電源への接続を提供するように構成される。
【0208】
様々な力センサ26から送られる信号に基づいて、抵抗加熱器を制御し、すなわち、電源をオンにし、オフにし、又は様々なレベルで給電することができる。本明細書で示すように、力センサ26は、一般的に、少なくとも1つの電極を第2の導電インクで第2のフレキシブル基板上に印刷させ、かつ分離距離を有する間隙で導電層から分離させた電極層を含み、その場合に、フレキシブル力センサは、力センサの長手延長に対して垂直な方向に電極層及び導電層を圧縮した時に電気信号を開始するように構成される(少なくとも図19A、20A、21、22、23A、24、26A、27Aを参照されたい)。
【0209】
力センサは、更に、力センサの少なくとも1つの電極に接続され、力センサからの電気信号を通信デバイスに通信するように構成された制御回路28を含む。通信デバイスは、座席の一部とすることができるので、本発明に開示するインク及び方法を用いて印刷された導電トレースによって信号を通信することができ、又は有線接続によって通信することができる。これに代えて、有線又は無線の通信経路を通じて、信号を座席外部の構成要素に通信することができる。
【0210】
力センサ素子26からの信号、すなわち、センサ素子の様々な層が圧縮された場合のような力センサ素子での抵抗変化を示す電気信号に関する通信を行って、電源から抵抗加熱器への電力供給を制御することができる。例えば、力センサが自動車座席に着座した人を検出することができなかった場合に、自動車座席台座及び/又は背部にある抵抗加熱器を停止する(例えば、オフにする)ことができる(図30の自動車座席台座の力センサ26a及び制御回路28aを参照されたい)。力センサが自動車座席の背部に接触する人を検出することができなかった場合に、自動車座席背部にある抵抗加熱器を停止することができる(図30の自動車座席台座の力センサ26a及び制御回路28aを参照されたい)。外部温度が設定値を超える、例えば、80℃を超える場合に、人が自動車座席にいることを力センサが検出しても、自動車座席台座及び/又は背部にある抵抗加熱器を停止することができる(例えば、座席加熱器の偶発的な作動を回避する)。自動車座席台座及び/又は背部の抵抗加熱器は、力センサが自動車座席内に人を検出し、外部温度が設定値未満(例えば、50℃未満、又は32℃未満)に下がると自動的に起動する(例えば、オンになるか又は強くなる)ことができる。同様に、自動車座席に対して上述したように、自動車座席内の力センサに由来するこれらの信号に基づいて、ハンドル又はギアシフトカバーの抵抗加熱器を起動又は停止することができる。
【0211】
抵抗加熱器は、自動車座席に着座した人の接触点の温度を検出するように構成された自動車座席内の1又は2以上のサーミスタのような追加のセンサに基づいて制御することができる。例えば、図31の自動車座席20の台座29a及び背部29bでの接触点を参照されたい。この場合に、座席に着座した人は、座席加熱器及び/又は加熱器の温度のような座席のシステムを起動することができる。例えば、上述の力センサ26に加えて、座席は、更に、座席及び/又は着座者の温度を検出して見積るサーミスタを含むことができる。力センサ及び/又はサーミスタからの情報は、コンソール42に送信43/44することができ、ユーザは、その情報に基づいて、特定の温度設定値の達成又は座席温度の上昇/下降のような特定の行為を選択することができる。そのような構成は、自動車座席に置かれた重い物体の自動的な加熱を回避する(すなわち、人が着座していない場合に座席の自動加熱機構を起動させない)ために役立たせることができ、及び/又は座席に位置決めされた抵抗加熱器に追加の又はより少ない電力を提供することにより、座席の温度を上昇又は下降させることができる。これは、着座者が快適さを保つように温まった後で座席の温度を下げるために又はユーザが好む温度設定値(例えば、自動車のコンソール42で設定される)のような座席の特定設定値温度を維持するために役立つことができる。
【0212】
図28に示すように、座席台座の側面のような自動車座席に表示灯30を含めることができ、これらの表示灯は、加熱器の起動と(例えば、少なくとも1つのライトの点灯により)、温度レベルと(例えば、それぞれの第1、第2、及び第3のライトの点灯による高、中、低)を示すことができる。
【0213】
更に、図30に示すように、複数の力センサ(26a,26b)を自動車座席の台座及び背部の中に位置決めすることにより、そこに着座する人の体重及び/又は身長に関するフィードバックを提供することができる。そのような情報は、コントローラ(例えば、図31の42)に通信することができ、それにより、検出された特徴に基づいて及び/又は特定個人(搭乗者又は運転者)の決定された特徴に基づいて、例えば、座席位置、ミラー位置のような自動車のシステムを自動的に調節することができる。
【0214】
追加のフレキシブルプリント電子素子
【0215】
本発明の開示はまた、本明細書に開示するインク及び/又は方法を使用して少なくとも1つの導電トレース又はパターンをその上に印刷させた織物(e-織物)のようなフレキシブル基板上に印刷される追加の電子素子又は構成要素に関する。トレースは、電源又はバッテリのような電流に接続するための接触パッド又はコネクタで終端することができる。様々なハードウエア素子をトレース又はパターンの一部分に接続して電気デバイスを形成することができる。従って、e-織物上の導電パターンは、センサ(例えば、光、熱、湿度、ガス、圧力、加速度、歪み、力、及び近接)、導体、電極、回路、相互接続、ライト、アンテナ、抵抗加熱素子、スイッチ、透明導電性素子、バッテリ、又はこれらのいずれかの組合せを提供することができるトレース又はパターンとして形成することができる。本発明の開示による近接センサを有する例示的e-織物を図14に示している。そのような近接センサ34は、例えば、図28のセクションBに示すような自動車に含まれるとすることができる。例えば、近接センサの導電トレース(図29Cの35a,35b参照)を自動車座席のヘッドレストの織物裏面に印刷することができ、かつ人の手の動きのような動きを検出するように構成することができる。センサは、特定の動きの検出時にモータを起動又は停止する、例えば、ヘッドレストを上昇又は下降させるモータを起動するように構成することができる(例えば、スワイプアップしてヘッドレストを上方に移動し、スワイプダウンしてヘッドレストを下方に移動する)。
【0216】
e-織物は、ウェアラブル電子デバイスに組み込むことができ、又はウェアラブル電子デバイスであるとすることができる。e-織物は、健康管理のために又は抗菌包帯として医療産業で及びガス感知又は濾過のためのスマート衣類又はデバイスとして産業環境でのような多くの異なる産業での幅広い用途に対する使用方法を見出すことができる。e-織物は、フィットネスモニタリング、衛生上の改善、又はフレキシブルエネルギ貯蔵デバイス(例えば、バッテリ、スーパーコンデンサ)のようなスマート衣料での用途を見出すことができる。
【0217】
同じく図28に示すのは、ヘッドレストに含まれるライト(例えば、LEDライト36a,36b)である。そのようなライトは、本発明に開示するインク及び方法を使用して印刷された導電トレースによって電気的に接続されるとすることができ、又は従来の有線接続を含むことができる。これらのライトは、図14に示して本明細書で上述したような近接センサにより、及び/又は本発明に開示するインク及び方法を使用して印刷された容量性タッチセンサにより、及び/又は自動車のコンソール42内にあるコントローラ(図31)からの通信によって制御することができる。
【0218】
更に別の例示的e-織物は、例えば、方向コンパス、1又は2以上のジャイロスコープ、1又は2以上の加速度計、圧力計、歪み計、温度計、及び光ファイバを含むことができる。e-織物に使用されたセンサを使用して、e-織物を着用するユーザのパラメータをモニタすることができ、そのようなパラメータは、心拍数、呼吸数、皮膚温度、及び体の位置及び動きを含むことができる。更に、e-織物を使用して、関節角度、角速度、角加速度、及び可動域のようなユーザの全身バイオメカニクスを測定することができる。
【0219】
これらのe-織物は、従来技術のインク及び方法を使用して形成されたe-織物を大幅に超える摩滅性能、例えば、曲げ性、耐洗濯性、耐歪み性などを有することが見出されている。例えば、布地基板上の導電パターンは、少なくとも50回の洗濯サイクル、例えば、少なくとも70回の洗濯サイクル、又は更に空気乾燥を伴う100回の洗濯サイクルに耐えることができる(図11及び実施例を参照)。例えば、本発明に開示するインク及び方法を使用して形成された導電トレースの抵抗は、50回の洗濯後に50%未満、又は50回の洗濯後に30%未満、又は50回の洗濯後に15%未満、又は100回の洗濯後に70%未満、又は100回の洗濯後に60%未満、又は100回の洗濯後に40%未満、又は100回の洗濯後に30%未満、又は100回の洗濯後に20%のような複数回の洗濯サイクル後に僅かに増大するだけであるとすることができ、ここで、洗濯サイクルは、AATCC 61-2013(洗濯)に従うものとして定められる。図11に示すように、保護コーティングは、本明細書に開示するe-織物の耐洗濯性を改善することができる。
【0220】
e-織物は、耐擦過性(標準的なASTM試験方法で最大500サイクル)とすることができ、耐汗性(耐湿性)とすることができる。
【0221】
e-織物は、耐歪み性とすることができる。例えば、編みe-織物は、繋がりを失うことなく、最大50%、又は最大100%だけ延伸させることができ、一般的に、織物基板の延伸に伴って導電性の僅かな増加を示す(図12及び実施例を参照)。
【0222】
e-織物は、曲げ可能とすることができ、標準的なASTM試験方法を使用する最大10,000回の曲げサイクル後に10%未満の導電率損失を示す(図13を参照されたい)。
【0223】
本発明に開示する特定の実施形態を詳細に説明したが、本発明に開示する教示全体に照らして様々な修正、変更、及び用途を展開することができることは当業者によって認められるはずである。従って、開示した特定の配置、システム、装置、及び方法は、単に例示に過ぎず、本発明に開示する範囲に関して限定するものではない。
【0224】
実施例
導電インクの生成
【0225】
カルボン酸第2配位子を含む銀錯体(例えば、カルボン酸銀)を有する例示的導電インクは、分析的に純粋な化合物をもたらして定量的収率で進行する反応で金属酸化物又は金属酢酸塩とカルボン酸とを反応させることによって形成することができる。
【0226】
例として、酢酸銀をカルボン酸(イソ酪酸及びシクロプロペート)と反応させた。2つの銀錯体の元素分析では、イソ酪酸とシクロプロペートは、それぞれ、C,24.59、H,3.72、及びC,24.68、H,2.56であった。理論値は、イソ酪酸とシクロプロペートが、それぞれ、C,24.64、H,3.62、及びC,24.90、H,2.61である。
【0227】
次に、金属-第2配位子塩を第1の配位子の過剰分と反応させて金属錯体を形成した。典型的な調製では、イソ酪酸銀を上述のように調製し、テフロン被覆の磁気撹拌棒が入った25mlの1首14/20丸底フラスコに入れた。これに13当量のエチレンジアミンを加えた(量は以下の表1に示す通り)。反応は攪拌を伴って室温で2時間進行し、濾過して粒子を除去し、未反応のエチレンジアミンを40℃の回転式蒸発法で除去し、白色粉末を得た。追加の洗濯工程を含めることができる。次に、単離した金属錯体-エチレンジアミン銀イソ酪酸塩-を極性プロトン性溶媒(水、プロピレングリコール、イソプロパノール)の混合物に少なくとも100mg/mlになるまで溶解させて透明な導電インクを形成した(表2参照)。
【0228】
(表1)
【0229】
(表2)
【0230】
金属錯体の純度
【0231】
金属錯体の調製は、金属-第2配位子との第1配位子反応物を過剰に必要とすることが見出された(上表参照、金属錯体を生成するために13倍の過剰な第2の配位子が使用される)。例示的に、ほとんどのカルボン酸銀(I)は、ほとんどの従来溶媒に不溶である。1:1の反応(1:1のイソ酪酸銀:エチレンジアミン)では、極性プロトン性溶媒システム内で調合された場合に大量の不溶物、一部の事例では未反応のイソ酪酸銀(I)を含む暗色の生成物が生じた。従って、1:1反応によって形成された金属錯体は、恐らく全反応物の生成物への完全な変換を容易にすることができず、基板上に連続導電膜を形成することができなかったのである。
【0232】
1:6反応(1:6のイソ酪酸銀:エチレンジアミン)は、一方で、反応の濾過溶液から自然に結晶を形成した。更に,金属錯体は、確かに極性プロトン性溶媒システムに溶解したが,過剰な未反応ジアミンの存在は、インク調合物の密度、粘性、及び面張力にかなりの影響を与えることが判明した。インクとして調合された1:6生成物は、シートカバレージが悪く、極めて高いシート抵抗(>600,000Ω/□)を示している。
【0233】
精製して過剰の未反応アミン(第1の配位子)を除去した上表に列挙する1:13の反応生成物は、優れたシートカバレージを示し、1Ω/□未満のシート抵抗を示している。この精製物は、表2に示す極性プロトン性溶媒システムに溶解させた場合に、密度1.12g/ml、粘性8.55cps、面張力22.9dyn/cmの値を示している。
【0234】
従って、本発明に開示する導電インクを製造する時の重要な段階は、特に最終的な金属錯体を調製するのに使用される大幅な過剰な量の点から見て、未反応の第2の配位子を除去することである。上記で詳述した通りに精製された場合に、生成物(収率99%)は無色である。しかし、未精製の生成物は暗色の傾向があり、これは、外気に露出されると典型的にジアミンが黒ずんでしまうことに関連する可能性が高い。一般的に、アミンは、水分及び二酸化炭素を吸収し、不安定なカルバミン酸を形成することになる。そのようなアミンの化学形態分化は、ジアミノ銀(I)カルボン酸塩を不安定にする場合があり、多くの場合に、早期の銀の金属化、黒ずみ、及び粒子形成をもたらす。従って、ジアミノ銀(I)カルボン酸塩の安定性を促進させるために、特にゼロ粒子のジアミノ銀(I)カルボン酸塩組成物の同時調製を必要とする場合に、あらゆる残留アミンの除去が重要である。
【0235】
金属錯体中の配位子及び金属の化学量論比
【0236】
金属錯体は、第1及び第2の配位子と金属との化学量論的量を含むことが見出された。プロトンNMRを使用する構造解析は、D2Oに溶解させたエチレンジアミン銀イソ酪酸塩粉末が、イソ酪酸銀に配位したエチレンジアミン配位子の化学量論的量から構成されることを示している。D2O中の金属錯体に関する1H-NMRスペクトル(図9参照、Bruker製AV-360分光計での1H-NMR走査)は、予期される3つのプロトン-炭素(CH)ピーク:1つは2つのエチレンジアミンCH2基(合計4プロトン)に対するピーク、一方は単一イソ酪酸CH基(1プロトン)に対するピーク、及び1つは2つのイソ酪酸CH3基(合計6プロトン)に対するピークを示している。これらは、0.93ppmのイソ酪酸CH3、2.25ppmのイソ酪酸CH、及び2.81ppmのエチレンジアミンCH2として割り当てられた。3.978(エチレンジアミンCH2):0.928(イソ酪酸CH):6.151(イソ酪酸CH3)というプロトン整数比は、1(エチレンジアミン):1(イソ酪酸銀)、又は金属とエチレンジアミン配位子及びイソ酪酸配位子の各々との化学量論的量と一致する。
【0237】
金属錯体を2又は3以上の極性プロトン性溶媒に溶解させてインクを形成した場合に、第1及び第2の配位子と金属との化学量論比が維持されることを確認するために、上述のような3つの極性プロトン性溶媒(水、プロピレングリコール、イソプロパノール)とD2Oとの混合物に溶解させた金属錯体に対して1H-NMR試験を更に行った。図10のスペクトルは、様々な極性プロトン性溶媒と共に金属錯体(エチレンジアミン銀(I)イソ酪酸)に対して十分に分解されたピークを示し、それらは、0.93ppm(二重項,イソ酪酸CH3)、2.25ppm(七重項,イソ酪酸CH)、及び2.81ppm(一重項,エチレンジアミンCH2)として割り当てられる。
【0238】
NMR溶媒中(図9)の金属錯体と、金属錯体と2又は3以上の極性プロトン性溶媒とを含む組成物中(図10)の金属錯体とに関する化学シフト間の強い類似性は、金属錯体と極性プロトン性溶媒システムとの優れた適合性を示唆する。4.098(エチレンジアミンCH2):0.944(イソ酪酸CH):6.446(イソ酪酸CH3)というエチレンジアミン銀(I)イソ酪酸のプロトン比は、4(エチレンジアミンCH2):1(イソ酪酸CH):6(イソ酪酸CH3)と良好に一致し、これは、金属錯体を極性プロトン性溶媒担体に溶解させても配位環境に影響がないことを明らかにするものである。この結果は、更に、金属錯体を溶解させてインク組成物を形成しても、その化学組成が変化しない(化学量論組成が変化しないままである)ことを裏付けている。
【0239】
導電インクの調合
【0240】
本発明に開示する導電インクの調合に関して溶媒選択の柔軟性を明らかにするために、様々な極性プロトン性溶媒システムを試験した(以下の表3及び4を参照)。例えば、ジアミン銀(I)イソ酪酸塩錯体は、少なくとも2つの極性プロトン性溶媒を含む溶媒システム内で調合された。極性プロトン性溶媒の異なる組合せを使用する代表的なインク調合と、極性プロトン性溶媒に対して調合した場合にインクが連続した高導電性フィルム(シート抵抗0.04から0.09Ω/□)を生成することを明らかにするデータとを表3及び4に示している。
【0241】
(表3)
【0242】
(表4)
【0243】
導電インクの耐洗濯性
【0244】
上記に開示した通りのインクジェット印刷方法を使用して、本発明に開示する導電インクを様々な織物に印刷し、導電トレースを形成した。トレースは、被覆されないままであるか、又は透明なUV硬化性ポリウレタンコーティングで被覆された。これらのパターンに対するシート抵抗をAATCC 61-2013(洗濯)に従って検査した。図11に示すように、トレースに関する導電率の変化は、最大50回洗濯した後でもほとんど観察されなかった。被覆されたトレースが100回もの洗濯サイクル後に良好な導電性を示すのに対して生の(未被覆)トレースは、70回程度の洗濯サイクル後に良好な導電性を示している。対照サンプルは、僅か5回の洗濯サイクルの後に完全に導電性を失った。
【0245】
AATCC 61-2013に準拠した様々な織物の分析では、8層の印刷インクを有する導電トレースは、100回の洗濯サイクル後に3Ω未満の抵抗増加を示している。トレースの上に耐擦過性コーティングを含む場合に、抵抗は0.7Ω未満しか増加しなかった。
【0246】
耐歪み性
【0247】
織布は、本発明の開示によるインク及び方法を使用して印刷されて耐歪み性の測定を受けた。図12に示すのは、様々な延伸量(0%から230%)下での電気機械的延伸試験に対する結果である。従来技術の導電トレースの場合に、歪みがフィルムの亀裂を誘発し、導電性が低下する(図5参照)。本発明の開示によるインク及び方法を使用すると、トレースの導電性は、織物の破断点(すなわち、織物が2つに裂ける)まで増加した歪みでも、ほとんど影響を受けなかった。この普通ではない挙動は、トレースの平均スポット温度(FLIRを使用して測定、データは示さず)の極僅かな増加によって明らかにされ、この場合に、スポット温度は、延伸した導電布地を電子が流れる時に発生する熱の量と相関があり、温度が高いほど、より多くの熱が流れる電子によって発生する。
【0248】
図13に示すように、印刷されたトレースの曲げ性も試験し、本発明に開示するインク及び方法を使用して織布上に印刷された導電トレースの曲げに対して導電性の僅かな損失(<10%)が観察された(トレースの10,000回曲げ、ASTM D522-マンドレル曲げ試験に準拠して試験した)。不織布は、1,300回の曲げ後に性能低下を示すが、これは、導電トレースではなく、織物の破壊作用であると考えられる。
【0249】
耐擦過性
【0250】
本発明の開示による導電インクで織り基板を印刷し、耐擦過性コーティング(耐擦過性コーティングNSN 8030-00-164-4389)で被覆するか又は未被覆のままとした。シート抵抗は、コーティング後(対照)、10回、20回、及び30回の擦過後にいくつかの織物サンプルに対して測定された(表5参照)。
【0251】
(表5)
【0252】
以下の態様が、この出願で開示される。
【0253】
態様1:少なくとも1つの金属錯体と溶媒とを有する無粒子の金属錯体組成物と、任意的に導電充填剤材料とを含む導電インク。
【0254】
態様2:少なくとも1つの金属錯体が、少なくとも1つの金属と、金属に対するシグマドナーであり、金属錯体を加熱すると揮発する少なくとも1つの第1の配位子と、第1の配位子とは異なっており、金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第2の配位子とを含み、少なくとも1つの金属、少なくとも1つの第1の配位子、及び少なくとも1つの第2の配位子が、導電インク中に化学量論的量で提供される態様1に記載のインク。
【0255】
態様3:少なくとも1つの金属、少なくとも1つの第1の配位子、及び少なくとも1つの第2の配位子が、導電インク中に化学量論的量で提供される態様1又は2に記載のインク。
【0256】
態様4:導電インクが、硬化後にナノ粒子を形成して導電性金属を形成する先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0257】
態様5:溶媒が、炭化水素溶媒、又は炭化水素溶媒を実質的に含まない1又は2以上の極性プロトン性溶媒を含み、1又は2以上の極性プロトン性溶媒が、水、アルコール、及びアミンのうちの1又は2以上を含む先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0258】
態様6:少なくとも1つの金属錯体と導電充填剤が、50:50の金属錯体:導電充填剤、例えば、60:40の金属錯体:導電充填剤、又は70:30の金属錯体:導電充填剤、又は80:20の金属錯体:導電充填剤、又は90:10の金属錯体:導電充填剤、又は更に99:1の金属錯体:導電充填剤の比で導電インク中に提供される先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0259】
態様7:溶媒が、アルコール又はアミン、グリコール、導電充填剤可溶化剤、及び水を含む先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0260】
態様8:導電充填剤可溶化剤が、N-メチル-2-ピロリドンを含む態様7に記載のインク。
【0261】
態様9:金属錯体が、25℃で測定した場合に少なくとも1つの溶媒中で少なくとも250mg/mlの溶解度を有する先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0262】
態様10:導電充填剤材料が、導電ポリマー、金属酸化物、及びカーボンベースの材料のうちの1又は2以上を含む先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0263】
態様11:導電ポリマーが、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリアニリン(PANI)、又はポリフェニレンエチレンのうちの1又は2以上を含む態様10に記載のインク。
【0264】
態様12:カーボンベースの材料が、グラフェン、カーボンブラック、グラファイト、又はカーボンナノチューブのうちの1又は2以上を含む態様10に記載のインク。
【0265】
態様13:50:50から99:1の導電充填剤に対する金属錯体の比で提供された導電充填剤材料及び金属錯体を10から40重量%、アルコール又はアミンを2から10重量%、グリコールを2から15重量%、導電充填剤可溶化剤を10から25重量%、及び水を40から70重量%含む先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0266】
態様14:結合剤、界面活性剤、分散剤、及び染料のうちの1又は2以上から選択された添加物を0.1%から5%更に含む先行態様のうちのいずれか1つに態様1又は2に記載のインク。
【0267】
態様15:インクが、25℃で測定した場合に、25cps以下、例えば、20cps以下の粘性を有する先行態様のいずれか1つに記載のインク。
【0268】
態様16:態様1から15のいずれか1つに記載の導電インクをフレキシブル基板上に堆積させて少なくとも1つのパターンを形成する段階と、少なくとも1つのパターン内の導電インクを硬化させて少なくとも1つの導電パターンを形成する段階とを含む印刷されたフレキシブル電子素子又はデバイスを形成する方法。
【0269】
態様17:フレキシブル基板が、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラステイン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、レザーの繊維、又はその配合物を含む編み、織り、又は不織の布地を含む態様16に記載の方法。
【0270】
態様18:導電インクの堆積工程の前に及び/又は最中に基板が約30℃から約90℃、例えば、約40℃から約80℃の温度まで加熱される態様16又は17に記載の方法。
【0271】
態様19:導電インクを堆積させる段階が、2又は3以上の層を印刷する段階を含む態様16から18のいずれか1つに記載の方法。
【0272】
態様20:少なくとも1つの導電パターンが、インクジェット印刷で堆積され、かつ0.5mm未満、例えば、0.2mm未満のインク滲みを示す態様16から19のいずれか1つに記載の方法。
【0273】
態様21:少なくとも1つの導電パターンが、10Ω/□未満、例えば、5.0Ω/□未満、又は2.0Ω/□未満、又は更に0.1Ω/□の抵抗を示す態様16から20のいずれか1つに記載の方法。
【0274】
態様22:硬化させる段階が、200℃未満の温度での20分間未満の加熱、2から20パルスのパルス光への露出、赤外線への露出、又はその組合せによるものである態様16から21のいずれか1つに記載の方法。
【0275】
態様23:織物基板が、酸素プラズマ、保護コーティング、又はその両方で前処理される態様16から22のいずれか1つに記載の方法。
【0276】
態様24:導電インクを硬化させた後に導電パターンの少なくとも一部分を保護誘電体コーティングで被覆する段階を更に含む態様16から23のいずれか1つに記載の方法。
【0277】
態様25:フレキシブル基板が、フレキシブル合成基板又は有機基板である態様16から24のいずれか1つに記載の方法。
【0278】
態様26:フレキシブル基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアミドイミドのフィルム、及びその組合せから構成される群から選択されたポリマーフィルムである態様16から25のいずれか1つに記載の方法。
【0279】
態様27:印刷されたフレキシブル電子素子又はデバイスが、センサ、電極、回路、相互接続、ライト、アンテナ、抵抗加熱素子、スイッチ、バッテリ、又はそのいずれかの組合せとして機能する態様16から26のいずれか1つに記載の方法。
【0280】
態様28:フレキシブル抵抗加熱器が印刷され、かつ電流を流して熱を発生させるように構成された少なくとも1つの導電パターンを有するフレキシブル基板を含み、導電パターンの少なくとも一部分が、任意的に保護誘電体コーティングでオーバーコートされる態様16から27の方法のいずれか1つによって生成されたフレキシブル抵抗加熱器。
【0281】
態様29:少なくとも1つの導電パターンが態様1から15のいずれか1つに記載の導電インクを用いて印刷され、導電パターンの少なくとも一部分が、任意的に保護誘電体コーティングでオーバーコートされる、少なくとも1つの導電パターンが印刷され、かつ電流を流して熱を発生させるように構成された少なくとも1つの導電パターンを有するフレキシブル基板を含むフレキシブル抵抗加熱器。
【0282】
態様30:導電インクを用いて印刷された少なくとも1つのバスを更に含み、少なくとも1つのバスが、少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、電源への接続を提供するように構成される態様28又は29に記載の抵抗加熱器。
【0283】
態様31:フレキシブル基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアミドイミドのフィルム、及びその組合せから構成される群から選択されたポリマーフィルムであり、又はフレキシブル基板が、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラステイン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、レザーの繊維、又はその配合物(例えば、シリコンレザー)を含む編み、織り、又は不織の布地を含む態様26から28のいずれか1つに記載の抵抗加熱器。
【0284】
態様32:少なくとも1つの導電パターンが、5-15ボルトの電気系統に接続された時に1-30オームの抵抗率を有し、-40℃から60℃で10-400ワット毎平方メートルを発生させ、約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で加熱し、及び/又は少なくとも400ワット毎平方メートルの電力密度を伝達するように構成される態様26から29のいずれか1つに記載の抵抗加熱器。
【0285】
態様33:フレキシブル基板に第2の導電インクを用いて印刷された少なくとも1つの電極を含む電極層と導電層とを含み、電極層と導電層が、分離距離を有する間隙によって分離され、フレキシブル力センサが、力センサの長手延長に対して垂直な方向に電極層及び導電層を圧縮した時に電気信号を開始する(分離距離が減少するので導電層と電極層が接触する)ように構成される態様16から27の方法のうちのいずれか1つによって生成されたフレキシブル力センサ。
【0286】
態様34:フレキシブル基板に態様1から15のいずれか1つに記載の導電インクを用いて印刷された少なくとも1つの電極を含む電極層と導電層とを含むフレキシブル力センサであって、電極層と導電層が、分離距離を有する間隙によって分離され、フレキシブル力センサが、力センサの長手延長に対して垂直な方向に電極層及び導電層を圧縮した時に電気信号を開始する(分離距離が減少するので導電層と電極層が接触する)ように構成されるフレキシブル力センサ。
【0287】
態様35:態様1から15のいずれか1つに記載の導電インクを用いて印刷された第1の電極を含む第1のフレキシブル基板と態様1から15のいずれか1つに記載の導電インクを用いて印刷され、導電層でオーバーコートされた第2の電極を含む第2のフレキシブル基板とを含むフレキシブル力センサであって、第1の電極と導電層とが、互いに対面し、かつ分離距離を有する間隙によって分離され、第1の電極、第2の電極、及び導電層が、実質的に同じ寸法を有することができ、かつ各々の周囲が一致するように位置決めすることができ、フレキシブル力センサが、力センサの長手延長に対して垂直な方向に第1及び第2のフレキシブル基板を圧縮した時に電気信号を開始するように構成されるフレキシブル力センサ。
【0288】
態様36:少なくとも1つの電極及び通信デバイスに接続された制御回路を更に含み、制御回路が、電気信号を通信するように構成される態様33から35のいずれか1つに記載の力センサ。
【0289】
態様37:電極層が、フレキシブル基板の第1の側に印刷された少なくとも2つの電極を含む態様33から35のいずれか1つに記載の力センサ。
【0290】
態様38:導電層が、第2のフレキシブル基板の第1の側に導電性ストリップを含み、導電層の導電性ストリップが、電極層の少なくとも2つの電極に対面する態様36に記載の力センサ。
【0291】
態様39:間隙が、メッシュ布地、基板層のうちの1つに対するエンボス加工、電極の領域に開口部を含むポリマーフィルムのような材料フレーム、ドット又はビード、又はそのいずれかの組合せによって維持される態様33から38のいずれか1つに記載の力センサ。
【0292】
態様40:基板層が、ホットメルト接合フィルム、感圧接合フィルム、感圧接着剤により、又は縫製により、間隙によって分離された領域の外側(すなわち、力センサの縁部)又は第1及び第2の電極を有する領域の外側などで接合される態様33から39のいずれか1つに記載の力センサ。
【0293】
態様41:導電層が、態様1から15のいずれか1つに記載の導電インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷され、又は導電性ストリップが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装填熱可塑性ポリマー、カーボン装填シリコン、カーボン装填ポリマー箔、ベロスタットのうちのいずれか又はその組合せを含む態様33から40のいずれか1つに記載の力センサ。
【0294】
態様42:抵抗性カーボンが、高導電性又は低導電性のうちの一方である態様41に記載の力センサ。
【0295】
態様43:フレキシブル基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアミドイミドのフィルム、及びその組合せから構成される群から選択されたポリマーフィルムであり、又はフレキシブル基板が、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラステイン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、レザーの繊維、又はその配合物(例えば、シリコンレザー)を含む編み、織り、又は不織の布地を含む態様33から42のいずれか1つに記載の力センサ。
【0296】
態様44:態様33から43のいずれか1つに記載の少なくとも1つのセンサと、電気デバイスと、力センサの少なくとも1つの電極に接続され、力センサから通信デバイスへ電気信号を通信するように構成された制御回路とを含むセンサ制御デバイスであって、通信デバイスが、力センサからの電気信号に少なくとも部分的に基づいて電源から電気デバイスへの電力供給を制御するように構成されるセンサ制御デバイス。
【0297】
態様45:電気デバイスが、モータ、抵抗加熱器、及びライトのうちの1又は2以上を含む態様44に記載のセンサ制御デバイス。
【0298】
態様46:態様1から15のいずれか1つに記載の第1の導電インクで印刷され、電流を流して熱を発生させるように構成された少なくとも1つの導電パターンを有する第1のフレキシブル基板と、導電インクを用いて印刷された少なくとも1つのバスであって、少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、電源への接続を提供するように構成されたバスとを含む抵抗加熱器と、態様1から15のいずれか1つに記載の導電インクで少なくとも1つの電極を第2のフレキシブル基板上に印刷させた電極層と、導電層とを含む力センサであって、電極層と導電層が、分離距離を有する間隙によって分離され、フレキシブル力センサが、力センサの長手延長に対して垂直な方向に電極層及び導電層を圧縮した時に電気信号を開始する(分離距離が減少するので導電層と電極層が接触する)ように構成された力センサと、力センサの少なくとも1つの電極に接続され、力センサからの電気信号を通信デバイスに通信するように構成された制御回路とを含む力センサ制御式抵抗加熱器であって、通信デバイスが、力センサからの電気信号に少なくとも部分的に基づいて電源から抵抗加熱器への電力供給を制御するように構成される力センサ制御式抵抗加熱器。
【0299】
態様47:抵抗加熱器の少なくとも1つの導電パターンの少なくとも一部分が、保護誘電体コーティングでオーバーコートされる態様46に記載のセンサ制御式加熱器。
【0300】
態様48:少なくとも1つの導電パターンが、5-15ボルトの電気系統に接続された時に1-30オームの抵抗率を有し、-40℃から60℃で10-400ワット毎平方メートルを発生させ、約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で加熱し、及び/又は少なくとも400ワット毎平方メートルの電力密度を伝達するように構成される態様46又は47に記載のセンサ制御式加熱器。
【0301】
態様49:力センサの電極層が、第2のフレキシブル基板の第1の側に印刷された少なくとも2つの電極を含む態様46から48のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0302】
態様50:力センサの導電層が、第3のフレキシブル基板の第1の側に導電性ストリップを含み、導電層の導電性ストリップが、電極層の少なくとも2つの電極に対面する態様47から49のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0303】
態様51:力センサの導電性ストリップが、第1又は第2の導電インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷され、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装填熱可塑性ポリマー、カーボン装填シリコン、カーボン装填ポリマー箔、ベロスタットのいずれか又はその組合せを含むことができる態様47から50のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0304】
態様52:抵抗性カーボンが、高導電性又は低導電性のうちの一方である態様51に記載のセンサ制御式加熱器。
【0305】
態様53:電極層と導電層が、分離距離を有する間隙によって分離される態様47から52のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0306】
態様54:間隙が、メッシュ布地、基板層のうちの1つに対するエンボス加工、電極の領域に開口部を含むポリマーフィルムのような材料フレーム、ドット又はビード、又はそのいずれかの組合せによって維持される態様47から53のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0307】
態様55:第1、第2、及び第3のフレキシブル基板が、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアミドイミドのフィルム、及びその組合せから構成される群から個々に選択され、又は第1、第2、及び第3のフレキシブル基板が、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラステイン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、レザーの繊維、又はその配合物(例えば、シリコンレザー)を含む編み、織り、又は不織の布地から個々に選択される態様47から54のいずれか1つに記載のセンサ制御式加熱器。
【0308】
態様56:態様28から32のいずれか1つに記載の抵抗加熱器と、態様33から43のいずれか1つに記載の複数の力センサと、通信デバイスとコントローラとを含む制御回路であって、力センサの少なくとも1つの電極に接続され、かつ力センサからの電気信号を通信デバイスに通信するように構成された制御回路とを含むセンサ制御式抵抗加熱器であって、通信デバイスが、コントローラと通信して抵抗加熱器の機能を調節するように構成されるセンサ制御式抵抗加熱器。
【0309】
態様57:コントローラが、力センサからの電気信号に少なくとも部分的に基づいて電源から抵抗加熱器への電力供給を制御するように構成される態様56に記載のセンサ制御式加熱器。
【0310】
態様58:調節機能が、抵抗加熱器への電力をオンにし、オフにし、又は抵抗加熱器に供給する電力を修正することを含む態様56に記載のセンサ制御式加熱器。
【符号の説明】
【0311】
102 第1のフレキシブル基板
106a 第1の電極
106b 第2の電極
107 フレーム
図1A
図1B
図1C
図2
図3A-E】
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図21
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
図24C
図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
図27C
図27D
図27E
図27F
図27G
図28
図29A
図29B
図30
図31
図32
図33
図34
図35
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル力センサであって、
導電インクを用いて印刷された第1の電極を含む第1のフレキシブル基板と、
導電インクを用いて印刷され、かつ導電層でオーバーコートされた第2の電極を含む第2のフレキシブル基板であって、前記第1の電極及び前記導電層が、互いに対面し、かつ分離距離を有する間隙によって分離される前記第2のフレキシブル基板と、
を含み、
前記フレキシブル力センサが、前記力センサの長手延長に対して垂直な方向における前記第1及び第2のフレキシブル基板の圧縮時に電気信号を開始するように構成される、
フレキシブル力センサ。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極と、送受信機と、コントローラとに接続された制御回路を更に含み、
前記制御回路は、前記電気信号を前記送受信機に伝達して、記録された力又は抵抗の変化を前記コントローラに通信するように構成される、
請求項1に記載の力センサ。
【請求項3】
前記間隙は、メッシュ布地、前記第1及び第2の電極の領域に開口部を含むポリマーフィルムによって形成された材料フレーム、孤立特徴部、又はそのいずれかの組合せによって維持される請求項1に記載の力センサ。
【請求項4】
前記孤立特徴部は、前記第1のフレキシブル電極に対面する前記導電層の面に接合されたシリコンエラストマーのビードによって形成される請求項3に記載の力センサ。
【請求項5】
前記分離距離は、少なくとも20ミクロン、又は少なくとも40ミクロン、又は少なくとも60ミクロン、又は少なくとも100ミクロンのような、少なくとも10ミクロンである請求項1に記載の力センサ。
【請求項6】
前記第1及び第2のフレキシブル基板は、ホットメルト接合フィルム、感圧接合フィルム、又は感圧接着剤によって、或いは、前記第1及び第2の電極を含む領域の外側を縫合することによって接合される請求項1に記載の力センサ。
【請求項7】
前記第2の電極の前記導電インクは、無粒子金属錯体組成物を含み、
前記無粒子金属錯体組成物は、
少なくとも1つの金属錯体であって、
少なくとも1つの金属、
前記金属に対するシグマドナーであり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第1の配位子、及び
前記第1の配位子とは異なり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第2の配位子、
を含む前記少なくとも1つの金属錯体と、
溶媒と、
を含み、
前記金属錯体は、前記溶媒中で少なくとも250mg/mlの25℃で測定した溶解度を有し、
前記少なくとも1つの金属、前記少なくとも1つの第1の配位子、及び前記少なくとも1つの第2の配位子は、前記導電インク中に化学量論的量で提供される、
請求項1に記載の力センサ。
【請求項8】
前記第1及び第2の電極の前記導電インクの各々が、無粒子金属錯体組成物を含み、
前記無粒子金属錯体組成物は、
少なくとも1つの金属錯体であって、
少なくとも1つの金属、
前記金属に対するシグマドナーであり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第1の配位子、及び
前記第1の配位子とは異なり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第2の配位子、
を含む前記少なくとも1つの金属錯体と、
溶媒と、
を含み、
前記金属錯体は、前記溶媒中で少なくとも250mg/mlの25℃で測定した溶解度を有し、
前記少なくとも1つの金属、前記少なくとも1つの第1の配位子、及び前記少なくとも1つの第2の配位子は、前記導電インク中に化学量論的量で提供される、
請求項1に記載の力センサ。
【請求項9】
前記導電インクは、硬化後に前記フレキシブル基板上にナノ粒子を形成して前記導電パターンを形成する請求項7又は請求項8に記載の力センサ。
【請求項10】
前記導電層は、無粒子金属錯体組成物を含む導電インク、抵抗性カーボンベースのインク、導電塗料、酸化インジウムスズ(ITO)、又はその組合せを用いて印刷される請求項1に記載の力センサ。
【請求項11】
前記導電層は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、カーボンナノチューブベースの薄膜(CNT)、カーボン装填熱可塑性ポリマー、カーボン装填シリコン、カーボン装填ポリマー箔、ベロスタット、又はそのいずれかの組合せを含む請求項1に記載の力センサ。
【請求項12】
前記第1のフレキシブル基板及び前記第2のフレキシブル基板は、ポリエステル、ポリアミド、スパンデックス、ナイロン、Evolon(登録商標)、エラステイン、綿、セルロース、絹、木材、羊毛、レザー、又はその配合物から構成される群から個々に選択される請求項1に記載の力センサ。
【請求項13】
前記導電インクは、前記フレキシブル基板の繊維を共形的に被覆する請求項1に記載の力センサ。
【請求項14】
力センサ制御式抵抗加熱器であって、
第3の導電インクを用いて少なくとも1つの導電パターンが印刷され、かつ電流を流して熱を発生させるように構成された第1のフレキシブル基板、及び
前記導電インクを用いて印刷された少なくとも1つのバスであって、前記少なくとも1つの導電パターンに電気的に接続され、かつ電源への接続を提供するように構成された前記少なくとも1つのバス、
を含む抵抗加熱器と、
請求項1に記載の力センサと、
前記力センサの前記少なくとも1つの電極に接続され、かつ前記力センサからの前記電気信号をコントローラに伝達するように構成された制御回路と、
を含み、
前記コントローラデバイスは、前記力センサからの前記電気信号に少なくとも部分的に基づいて前記電源から前記抵抗加熱器への電力の供給を制御するために加熱器コントローラと通信するように構成される、
力センサ制御式抵抗加熱器。
【請求項15】
前記抵抗加熱器の前記少なくとも1つの導電パターンの少なくとも一部分が、保護誘電体コーティングでオーバーコートされる請求項14に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項16】
5-15ボルト電気系統に接続された時に、前記抵抗加熱器の前記少なくとも1つの導電パターンは、1-30オームの抵抗率を有するように、-40℃から60℃で10-400ワット毎平方メートルを発生するように、約0.1℃/秒から約1℃/秒の速度で加熱するように、及び/又は、少なくとも400ワット毎平方メートルの電力密度を伝達するように、構成される請求項14に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項17】
前記第3の導電インクは、無粒子金属錯体組成物を含み、
前記無粒子金属錯体組成物は、
少なくとも1つの金属錯体であって、
少なくとも1つの金属、
前記金属に対するシグマドナーであり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第1の配位子、及び
前記第1の配位子とは異なり、かつ前記金属錯体の加熱時に揮発する少なくとも1つの第2の配位子、
を含む前記少なくとも1つの金属錯体と、
溶媒と、
を含み、
前記金属錯体は、前記溶媒中で少なくとも250mg/mlの25℃で測定した溶解度を有し、
前記少なくとも1つの金属、前記少なくとも1つの第1の配位子、及び前記少なくとも1つの第2の配位子は、前記第3の導電インク中に化学量論的量で提供され、
前記導電インクは、硬化後に前記フレキシブル基板上にナノ粒子を形成して前記導電パターンを形成する、
請求項14に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項18】
前記第3の導電インクは、少なくとも1つの導電充填剤材料を更に含み、
前記少なくとも1つの金属錯体及び前記少なくとも1つの導電充填剤材料は、50:50から99:1の導電充填剤材料に対する金属錯体の比で前記導電インク中に提供される、
請求項17に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項19】
前記第3の導電インクの前記溶媒は、有機溶媒を含む請求項17に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項20】
前記導電インクのうちの全ての前記溶媒は、1又は2以上の極性プロトン性溶媒を含み、
前記1又は2以上の極性プロトン性溶媒は、水、アルコール、及びアミンのうちの1又は2以上を含む、
請求項17に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項21】
前記第3の導電インクの前記溶媒は、アルコール又はアミン、グリコール、導電充填剤可溶化剤、及び水を含む請求項17に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項22】
前記導電充填剤可溶化剤は、N-メチル-2-ピロリドンを含む請求項21に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項23】
前記少なくとも1つの導電充填剤材料は、導電ポリマー、金属酸化物、及びカーボンベースの材料のうちの1又は2以上を含む請求項21に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項24】
前記導電ポリマーは、ポリピロール(PPy)、ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン](PEDOT)、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリフェニレン、ポリアニリン(PANI)、又はポリフェニレンエチレンのうちの1又は2以上を含む請求項23に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項25】
前記カーボンベースの材料は、グラフェン、カーボンブラック、グラファイト、又はカーボンナノチューブのうちの1又は2以上を含む請求項23に記載のセンサ制御式加熱器。
【請求項26】
前記第3の導電インクは、
50:50から99:1の導電充填剤に対する金属錯体の比で提供された10-40重量%の前記導電充填剤材料及び前記金属錯体と、
2-10重量%のアルコール又はアミンと、
2-15重量%のグリコールと、
10-25重量%の導電充填剤可溶化剤と、
40-70重量%の水と、
を含む、
請求項18に記載のセンサ制御式加熱器。
【国際調査報告】