(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】抗CD127剤を投与することによってCD127陽性がんを処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240528BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240528BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/02
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023573437
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2022000365
(87)【国際公開番号】W WO2022248940
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517118478
【氏名又は名称】オーエスイー・イミュノセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ポワリエ
(72)【発明者】
【氏名】イレーヌ・バチェッリ
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】サブリナ・パンガム
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、免疫療法の分野に関する。本発明は、がんの処置及び/又は予防のための抗CD127剤、特に抗CD127抗体又は関連化合物の新規臨床使用を提供する。
本発明は、患者に治療用量の抗CD127剤を投与することによって、CD127陽性がん、特にCD127陽性白血病又はCD127陽性固形腫瘍を有する患者を処置する方法に関し、前記抗CD127剤は、CD127陽性がん細胞を標的とするマクロファージの抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を増強する能力を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、CD127陽性腫瘍細胞の、とりわけマクロファージによる貪食を増強することによる、CD127陽性がんを有する患者の処置における医薬として使用するための抗CD127剤、特に抗CD127抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体ミメティックであって、抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない、抗CD127剤。
【請求項2】
CD127陽性がんが、白血病である、特に急性リンパ性白血病(ALL)である、とりわけT細胞ALL又はB細胞ALLである、請求項1に従って使用するための請求項1に記載の抗CD127剤。
【請求項3】
CD127陽性がんが、CD127過剰発現性急性リンパ性白血病(ALL)、CD127及び/又はJAK-STAT経路突然変異型ALL、BCR-ABL1様ALL、並びに:t(1;19)、t(12,21)、MLL再編成、高二倍体核型、4番染色体トリソミー及び10番染色体トリソミーの1つの細胞遺伝を有するB細胞前駆体ALLからなる群から選択される、請求項1又は2に従って使用するための請求項1又は2に記載の抗CD127剤。
【請求項4】
CD127陽性がんが、固形がんである、特に中皮腫である、請求項1から3のいずれか一項に従って使用するための請求項1から3のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項5】
CD127陽性がんが、特にマクロファージによる、CD127陽性腫瘍細胞の貪食によって処置される、請求項1から4のいずれか一項に従って使用するための請求項1から4のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項6】
前記患者においてリンパ球枯渇を誘導しない、請求項1から5のいずれか一項に従って使用するための請求項1から5のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項7】
IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブクラス、特に哺乳動物IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブクラス、とりわけ哺乳動物IgG4のサブクラスに属する定常鎖を含む抗CD127抗体又はその抗原結合性断片である、請求項1から6のいずれか一項に従って使用するための請求項1から6のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項8】
キメラ抗体、ヒト化抗体及び完全ヒトモノクローナル抗体からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に従って使用するための請求項1から7のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項9】
少なくとも
・VHCDR1配列番号3、
・VHCDR2配列番号4、
・VHCDR3配列番号5又は配列番号6
のアミノ酸配列を含むVH鎖
及び少なくとも
・VLCDR1配列番号7又は配列番号8、
・VLCDR2配列番号9又は配列番号10、
・VLCDR3配列番号11
のアミノ酸配列を含むVL鎖
を含む、抗CD127抗体又はその抗原結合性断片である、請求項1から8のいずれか一項に従って使用するための請求項1から8のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項10】
抗CD127抗体又はその抗原結合性断片が、IL-7のCD127への結合によって誘導されるIL-7Rシグナル伝達経路のアンタゴニストである、請求項1から9のいずれか一項に従って使用するための請求項1から9のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項11】
がんの従来処置と組み合わせて使用される、請求項1から10のいずれか一項に従って使用するための請求項1から10のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項12】
特に同時、別個又は逐次使用のための、化学療法剤、標的化がん療法剤、免疫治療剤及び放射線療法剤からなる群から選択される少なくとも1つの第2の治療剤と組み合わせた、請求項1から11のいずれか一項に従って使用するための請求項1から11のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項13】
少なくとも1つの第2の治療薬が、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、抗血管新生剤、細胞周期制御/アポトーシス調節剤、ホルモン調節剤及び抗がん免疫原剤、特に抗がん抗体、とりわけ腫瘍標的化抗体からなる群から選択される、請求項12に従って使用するための請求項12に記載の抗CD127剤。
【請求項14】
特に同時、別個又は逐次使用のための、抗CD3剤、特に抗CD3抗体、抗PD1剤、特に抗PD1抗体、抗PDL1剤、特に抗PDL1抗体、抗CTLA4剤、特に抗CTLA4抗体、CD137のアゴニスト、特にアゴニスト抗CD137抗体、抗VEGF剤、特に抗VEGF抗体、抗CLEC-1剤、特に抗CLEC-1抗体、抗CD28剤、特に抗CD28抗体、抗CD19剤、特に抗CD19抗体、及び抗CD47剤、特に抗CD47抗体、抗SIRPa剤、特に抗SIRPa抗体、抗Bcl-2剤、特にベネトクラクス、チロシン/キナーゼ経路の阻害剤、デキサメタゾン、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、アラノン(ネララビン)、アスパラギナーゼ黒脚病菌(Erwinia chrysanthemi)(又はアーウィナーゼ)、アスパラス(又はカラスパルガーゼペゴル-mknl)、ベスポンサ(イノツズマブオゾガミシン)、ブリナツモマブ(又はビーリンサイト)、及びセルビジン(又はダウノルビシンヒドロクロリド若しくはルビドマイシン)、クロファラビン(又はクロラール)、シクロホスファミド、シタラビン、ダサチニブ(又はスプリセル)、ドキソルビシンヒドロクロリド、グリーベック(メシル酸イマチニブ)、アイクルシグ(ポナチニブヒドロクロリド)、イノツズマブオゾガミシン、メシル酸イマチニブ、キムリア(又はチサゲンレクロイセル)、ビンクリスチン、マルキボ(硫酸ビンクリスチンリポソーム)、メルカプトプリン(又はピュリネソール若しくはプリクサン)、メトトレキサートナトリウム(又はトレキサール)、ネララビン、オンキャスパー(又はペグアスパラガーゼ若しくはPEG-アスパラギナーゼ)、ポナチニブヒドロクロリド、プレドニゾン、ピュリネソール(メルカプトプリン)、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンクリスチンリポソームからなる群から選択される少なくとも1つの第2の治療薬と組み合わせた、請求項1から13のいずれか一項に従って使用するための請求項1から13のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項15】
少なくとも1つの第2の治療薬が、デキサメタゾン及び/又はオンキャスパー(又はペグアスパルガーゼ若しくはPEG-アスパラギナーゼ)及び/又はビンクリスチン、特に、デキサメタゾン及びオンキャスパー(又はペグアスパルガーゼ若しくはPEG-アスパラギナーゼ)及びビンクリスチンである、請求項14に従って使用するための請求項14に記載の抗CD127剤。
【請求項16】
患者がCD127陽性腫瘍細胞を有すると評価された後、前記患者に投与される、請求項1から15のいずれか一項に従って使用するための請求項1から15のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項17】
患者のCD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食を促進するための医薬として使用するための抗CD127剤であって、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない、抗CD127剤。
【請求項18】
前記患者が、白血病、特に急性リンパ性白血病(ALL)、とりわけT細胞ALL又はB細胞ALL、及び固形がん、特に中皮腫からなる群から選択されるCD127陽性がんを有する、請求項17に従って使用するための請求項17に記載の抗CD127剤。
【請求項19】
がんの従来処置と組み合わせた、請求項17又は18に従って使用するための請求項17又は18に記載の抗CD127剤。
【請求項20】
特に同時、別個又は逐次使用のための、化学療法剤、標的化がん療法剤、免疫治療剤及び放射線療法剤からなる群から選択される少なくとも1つの第2の治療剤と組み合わせた、請求項17から19のいずれか一項に従って使用するための請求項17から19のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項21】
請求項6から10のいずれか一項に従って規定される、請求項17から20のいずれか一項に従って使用するための請求項17から20のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に関する。本発明は、がんの処置及び/又は予防のための抗CD127剤、特に抗CD127抗体又は関連化合物の新規臨床使用を提供する。
【0002】
本発明は、CD127陽性がんを有する患者の処置において使用するための抗CD127剤、及び治療用量の抗CD127剤を患者に投与することによってCD127陽性がん、特にCD127陽性白血病又はCD127陽性固形腫瘍を有する患者を処置する方法に関し、前記抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない。
【0003】
本発明はまた、特にCD127陽性腫瘍細胞の、とりわけマクロファージによる貪食を増強することによるCD127陽性がんを有する患者の処置における医薬として使用するための抗CD127剤、特に抗CD127抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体ミメティックに関し、前記抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない。
【0004】
本発明はまた、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない抗CD127剤の治療量を、それを必要とする患者に投与することによって、CD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食を促進する方法に関する。
【0005】
本発明はまた、CD127陽性腫瘍細胞、特にCD127陽性白血病又はCD127陽性固形腫瘍細胞を有する、とりわけCD127陽性急性リンパ性白血病を有する患者の処置のための、CD127陽性細胞、特に腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない抗CD127剤を提供する。
【0006】
本発明はまた、CD127陽性がんを有する患者の処置において使用するための抗CD127剤、及び患者に治療用量の抗CD127剤を投与することにより、CD127陽性がん、特にCD127陽性白血病を有する患者を処置する方法に関し、前記抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、好ましくは、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない。
【0007】
本発明はまた、CD127陽性腫瘍細胞、特にCD127陽性白血病又はCD127陽性固形腫瘍細胞を有する、とりわけCD127陽性急性リンパ性白血病を有する患者の処置のための、CD127陽性がん細胞を標的とするマクロファージの抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を増強する抗CD127剤を提供し、好ましくは、抗CD127剤は、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない。
【0008】
本発明はまた、患者のCD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食を促進するための医薬として使用するための抗CD127剤に関し、前記抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない。
【0009】
本発明はまた、患者のCD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食を促進する医薬を調製するための抗CD127剤の使用に関し、前記抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない。
【背景技術】
【0010】
本発明は、抗体依存性細胞貪食機序によるCD127+腫瘍細胞の貪食を増強するための抗CD127剤の使用を初めて提供する。本発明の実施例に例証されるように、急性リンパ性白血病等の白血病だけではなく中皮腫等の固形がんのような種々の種類のがんを含むCD127+がんを有する患者は、本記載に開示されるような抗CD127剤を用いる処置に対して正に応答する可能性が高い。T細胞においてIL-7Rシグナル伝達経路を阻害する抗体の能力によって自己免疫疾患を処置するためのいくつかの抗CD127抗体が先行技術において公知であるが、本明細書では、腫瘍細胞の貪食を増強する抗CD127剤の能力による新規な臨床使用が提供される。本発明は、先行技術に記載されるようなT細胞ではなく、他の細胞に対する抗CD127剤の効果に依拠し、他の疾患及び細胞集団(特にIL-7Rシグナル伝達経路が機能障害性である腫瘍;臨床において見られることが多い状況)を標的とすることを可能にする。
【0011】
がんは、大きな世界的な健康上の懸念であり、年間およそ950万人が死亡し、1年以内に2,000万人を超える人々ががんを発症する(世界保健機関による世界がん報告書、2018年)。いくつかの悪性細胞がCD127発現を呈すると示されている。これは、例えば、セザリー皮膚リンパ腫(その60%)又は小児急性リンパ性白血病の場合であり、小児急性リンパ性白血病では小児の約15%がCD127において機能獲得型突然変異を発生し、これらの腫瘍を部分的にIL-7依存性とする(Shochatら、2011)。急性リンパ性白血病(ALL)は、多数の未熟リンパ球の発生を特徴とする血液細胞のリンパ球系のがんである。ALLは、迅速に進行し、通常未処置のままである場合には数週間又は数ヶ月以内の致死性である。根底にある機序には、迅速な細胞分裂をもたらす複数の遺伝子突然変異が含まれる。骨髄中の過剰な未熟リンパ球は、新規赤血球、白血球細胞及び血小板の生成に干渉する。
【0012】
ALLは、通常、最初に化学療法(デキサメタゾン、ビンクリスチン及びPEG-アスパラギナーゼ、Malard及びMohty、The Lancet 2020)で処置される。これに、通常数年にわたってさらなる化学療法が続けられる。化学療法処置は普通、限定されるものではないが、疲労、毛髪脱落、あざができやすいこと及び出血、感染、貧血(低赤血球数)、吐き気及び嘔吐を含むいくつかの副作用を引き起こす。ALLの追加の及び/又は異なる処置は、くも膜下腔内化学療法又は放射線療法を含み得る。標準処置後に疾患が再発する場合には、幹細胞移植が使用される場合もある。
【0013】
多数の既存の処置にもかかわらず、がんを処置する改善された方法が依然として必要である。抗体技術、例えば、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)免疫療法及びモノクローナル抗体の使用をベースとする新規処置が使用されており、更に研究されている。実際、CAR-T細胞、抗CD3及び抗CD19二重特異性抗体の投与を含むいくつかの戦略が、ALLを発症している患者を処置するために現在開発中である。それにもかかわらず、これらの戦略には、欠点があり、その中でも、これらの療法の費用及び主に、投与される化合物と関連する毒性に言及することができる。すべてのB系統サブタイプにおける標的CD19マーカーの遍在性発現のために、ALLの処置の際にこれらの戦略は、宿主内での付随的損傷につながる可能性がある。したがって、先行技術の処置と同一の欠点を有さないALLの新規処置が必要である。
【0014】
CD127は、CD127と、他のサイトカイン受容体(IL-2R、IL-4R、IL-9R、IL-15R及びIL-21R)によって共有される共通γ鎖とから構成されるヘテロ二量体IL-7受容体の一部である。CD127は、胸腺細胞、T-及びB細胞前駆体、成熟T細胞、単球並びに一部の他のリンパ系及び骨髄系細胞で発現される。研究は、IL-7Rは成熟T細胞の増殖及び分化において重要な役割を果たすということを示した。更に、共通γ鎖を用いるCD127の二量体化によって誘導されるシグナル伝達は、T細胞発達及びT細胞メモリーの維持において中心的役割を果たす。CD127の発現は一般に、CD4及びCD8末梢T細胞の両方において中枢及びエフェクターメモリー機能と関連する。
【0015】
本発明者らは、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない抗CD127剤が、CD127陽性がんの処置において、特にCD127陽性ALLの処置において、特にCD127陽性中皮腫の処置において有用であり得ることを同定した。定義されるように抗CD127剤を投与することによって、本発明者らは、宿主の免疫細胞によるがん細胞の貪食が増大されることを観察した。したがって、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない抗CD127剤の、それを必要とする患者への投与は、CD127を発現するがん細胞の貪食につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO2015/189302
【特許文献2】WO2018/104483
【特許文献3】WO2020154293
【特許文献4】米国特許公開第2007/0254295号
【特許文献5】米国特許第5,618,829号
【特許文献6】米国特許第5,639,757号
【特許文献7】米国特許第5,728,868号
【特許文献8】米国特許第5,804,396号
【特許文献9】米国特許第6,100,254号
【特許文献10】米国特許第6,127,374号
【特許文献11】米国特許第6,245,759号
【特許文献12】米国特許第6,306,874号
【特許文献13】米国特許第6,313,138号
【特許文献14】米国特許第6,316,444号
【特許文献15】米国特許第6,329,380号
【特許文献16】米国特許第6,344,459号
【特許文献17】米国特許第6,420,382号
【特許文献18】米国特許第6,479,512号
【特許文献19】米国特許第6,498,165号
【特許文献20】米国特許第6,544,988号
【特許文献21】米国特許第6,562,818号
【特許文献22】米国特許第6,586,423号
【特許文献23】米国特許第6,586,424号
【特許文献24】米国特許第6,740,665号
【特許文献25】米国特許第6,794,393号
【特許文献26】米国特許第6,875,767号
【特許文献27】米国特許第6,927,293号
【特許文献28】米国特許第6,958,340号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Malard及びMohty、The Lancet 2020
【非特許文献2】Belarifら、Nature Communication 2018
【非特許文献3】Akkapeddi、Leukemia、2018
【非特許文献4】Ellis, J.ら、Br. J. Clin. Pharmacol. (2019)
【非特許文献5】Herold, K. C.ら、JCI Insight (2019)
【非特許文献6】Williams, J. H.ら、AAPS J. (2020)
【非特許文献7】Zenatti PPら、Nat. Genet. 2011
【非特許文献8】Shochat Cら、J. Exp. Med. 2011
【非特許文献9】Roberts KGら、Cancer Cell. 2012
【非特許文献10】Geronら、Nature Communication 2022
【非特許文献11】Belarifら、Nature Communication 2018
【非特許文献12】Yuら、Journal of Hematology & Oncology
【非特許文献13】Tayら、Front Immunol 2019
【非特許文献14】Duら、Cell Res 2018
【非特許文献15】Condo-Royoら、Drugs Context 2020
【非特許文献16】Yang及びAmbrogelly、Current Opinion in Biotechnology 2014
【非特許文献17】Okasakiら、J Mol Biol 2004
【非特許文献18】Agnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186 (1994)
【非特許文献19】Bystrynら、Clinical Cancer Research Vol. 7、1882-1887, July 2001
【非特許文献20】Gomes-Silvaら、Biotech J. 2017
【非特許文献21】Alsadeqら、Blood 2018
【非特許文献22】Richard-Carpentierら、Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2020
【非特許文献23】Ringら、PNAS 2017
【非特許文献24】Loら、J Biol Chem. 2017
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、CD127陽性がん細胞を標的とするマクロファージの抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を増大する能力を有するが、CD127陽性細胞に対する(特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する)抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない本明細書で定義されるような抗CD127剤が、健康なリンパ球を温存しながら腫瘍細胞の貪食を増強し、白血病前臨床マウスモデルの生存率を改善することを初めて示した。とりわけ、本明細書で定義されるような抗CD127剤の投与は、CD127+細胞、特にALL腫瘍細胞の、とりわけT細胞ALL腫瘍細胞及び/又はB細胞ALL腫瘍細胞及び/又は悪性中皮腫細胞の貪食を増大する。とりわけ、本発明者らは、IgG4免疫グロブリンドメインを有する抗CD127抗体は、腫瘍細胞の貪食の増大と比較して、正常細胞の、特に正常T細胞のADCPは大きく影響を受けないまま、CD127陽性腫瘍細胞のADCPを増大する能力を有することを例証した。
【0019】
抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)を含むいくつかの機序によって標的化された腫瘍細胞を死滅させる。抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)では、免疫エフェクター細胞の表面上のFcγ受容体(FcγR又はFCGR)は、標的細胞に特異的に結合する抗体のFc領域に結合する。ADCCを媒介できる細胞は、非特異的細胞傷害性細胞である。対照的に、抗体依存性細胞性貪食(ADCP)は、標的細胞を貪食するためにファゴサイトに依存する。ADCPは、高度に調節されたプロセスであり、これでは抗体は結合している標的を取り除き、Fcドメインを特異的貪食細胞上のFcγ受容体に連結することによって貪食を開始する。ADCCとは異なり、ADCPは、FcγRIIa(CD32a)、FcγRI(CD64)及びFcγRIIIa(CD16)を介して単球、マクロファージ、好中球及び樹状細胞によって媒介される場合があり、ここではマクロファージ上のFcγRIIa(CD32a)が主要な経路に相当する。これら3種の受容体は、抗体のFc部分と相互作用し、したがって、抗体に結合し、それによってADCC及び/又はADCPを誘導できる。
【0020】
抗CD127剤、特に抗CD127抗体、とりわけ抗CD127アンタゴニスト抗体又は関連化合物は、宿主の免疫系の細胞と直接的に相互作用することによって(前記抗CD127抗体の、T細胞においてIL-7Rシグナル伝達経路を阻害する能力によって)自己免疫疾患及び炎症性疾患の処置において有用であることが知られている。特に、これらの抗CD127剤は、静止状態のヒトT細胞に影響を与えることなく、抗原が会合したメモリーT細胞生存の生存を阻害することによって、自己免疫疾患及び炎症性疾患の処置において有用であることが知られている(Belarifら、Nature Communication 2018)。抗CD127剤はまた、IL-7Rシグナル伝達経路を阻害するその能力のためにT-ALLに対する前臨床活性を有すると報告されている(Akkapeddi、Leukemia、2018)。しかし、IL-7Rシグナル伝達経路を阻害するその能力のために抗CD127モノクローナル抗体(GSK2618960及びPF-06342674/RN168)を使用して自己免疫疾患及び炎症性疾患(糖尿病及びシェーグレン症候群)を処置するためにIL-7Rを標的とするこれまでの試みでは、臨床開発は、健康なリンパ球に対する有害な作用によって停止された及び/又は複雑なものになった(Ellis, J.ら、Br. J. Clin. Pharmacol. (2019)、Herold, K. C.ら、JCI Insight (2019)及びWilliams, J. H.ら、AAPS J. (2020))。
【0021】
それにもかかわらず、宿主の免疫細胞による、特にマクロファージによるCD127陽性腫瘍細胞の貪食を増強及び/又は誘導することによってCD127陽性がんを処置するための、ADCP能力を有するが、CD127陽性細胞(特に健康なリンパ球)に対するADCC能力を有さない抗CD127剤の使用は、知られていなかった又は示唆されていなかった。更に、興味深いことに、CD127陽性がんを処置するための本明細書で上記に定義されるような抗CD127剤(すなわち、ADCP能力を有し、CD127陽性細胞に対する(特に健康なリンパ球に対する)ADCC能力を有さない)の投与と関連する副作用は、CD19陽性細胞を標的とし、健康なBリンパ球の枯渇につながる現在開発中の処置、例えばブリナツモマブと比較して限定されることが観察されている。特に、本発明者らは、抗CD127抗体がそれ自体で、健康なCD127+リンパ球を温存しながら宿主の免疫細胞によるCD127陽性腫瘍細胞の貪食を増強又は開始できることを初めて例証する。実際、ADCP+/ADCC-抗CD127剤N13B2-hVL6は、健康なボランティアにおいてリンパ球枯渇につながらない(NCT03980080)。
【0022】
抗CD127抗体、特に抗CD127-IgG4抗体は、他の治療剤を必要とすることなくそれ自体で、ADCP機序によるCD127陽性腫瘍細胞の貪食を増大できるということが初めて例証される。
【0023】
要するに、CD127陽性腫瘍細胞に対するADCP能力を有するが、CD127+細胞(免疫細胞を含む)に対するADCC能力を有さない抗CD127剤を使用する本発明及びCD127陽性腫瘍細胞を有する患者を処置するためのこのような薬剤の投与を含む方法は、以下の利点を有する:
- このような薬剤で処置される患者の免疫細胞に対する細胞傷害性がない、特に、患者のマクロファージ及び/又は健康なリンパ球の数を低減しない、
- IL-7Rシグナル伝達経路が機能障害性である(例えば、健康な細胞と比較してIL-7Rシグナル伝達経路を増強、サイレンシング、活性化又は阻害することができない)腫瘍、臨床において見られることが多い状況を有する患者を標的とできる(Zenatti PPら、Nat. Genet. 2011; Shochat Cら、J. Exp. Med. 2011; Roberts KGら、Cancer Cell. 2012; Geronら、Nature Communication 2022)、
- 生存率及び生存期間を増強する。
【0024】
CD127を発現する腫瘍細胞を有する、がん、特に白血病、とりわけALLを有する患者を、ADCP能力を有するが、CD127陽性腫瘍細胞に対するADCC能力を有さない抗CD127剤で処置することは明らかではなかった。特に、抗CD127剤(例えば、IL-7によって誘導されるIL-7Rシグナル伝達経路を阻害するために先行技術において使用された薬剤)を、細胞がIL-7R-シグナル伝達経路遮断に対して抵抗する(その経路が構成的に活性化されているか、又はその経路を活性化できないために)腫瘍を有する患者に投与することは明らかではなかった。それは多数の臨床状況に対応する(Zenatti PPら、Nat. Genet. 2011; Shochat Cら、J. Exp. Med. 2011; Roberts KGら、Cancer Cell. 2012; Geronら、Nature Communication 2022)。例えば、IL-7Rシグナル伝達経路の構成的活性化を有する、IL7Rが突然変異したALLは、T-ALLにおいて非常に蔓延している。本発明の抗CD127剤の特性、すなわち、そのADCP能力及びCD127+細胞に対するADCC能力の欠如によって、IL-7Rシグナル伝達経路に対するその活性と独立した腫瘍細胞の貪食の増強を通したこのようなカテゴリーの患者の処置が可能となる。
【0025】
本発明者らは驚くべきことに、本発明の実施例においてN13B2-hVL6と呼ばれる抗体のような、ADCP能力を有するが、CD127陽性細胞(免疫及び腫瘍細胞を含む)に対するADCC能力を有さない抗CD127剤が、白血病及び固形腫瘍に対して抗腫瘍活性を有していることを観察した。N13B2-hVL6は、CD127に対するアンタゴニストモノクローナル抗体であり(Belarifら、Nature Communication 2018)、そのものが、主にIL-7/IL-7R経路によって媒介される生存促進性及び増殖促進性シグナル伝達カスケードを効率的に遮断するその能力によってその抗白血病効果を媒介すると仮定された。驚くべきことに、本発明者らは、N13B2-hVL6の白血病及び固形腫瘍に対するものを含む抗腫瘍効果は一貫して、ADCPを誘導するその能力によって媒介されることを見出したが、がん(ALLを含む)の処置のための抗IL-7R抗体についてのその機序はこれまで報告されていない。この頑強なADCP誘導のために、以下のことが予測される:すなわち、CD127発現、特に高CD127発現を有する白血病を含むがんは、IL-7R経路に対するその機能的依存性に関わらず、本明細書で上記に定義されるような抗CD127剤での処置に対して正に応答し、それによって、その腫瘍細胞の表面にCD127の十分な発現を有するいかなる患者にも、特にこれらの腫瘍細胞が白血病、とりわけALLと関連する場合に、治療機会が開かれる。重要なことに、このことは、経路の構成的活性化を有する、IL-7Rが突然変異したALLを含み、これは、DND41細胞株等のT-ALLにおいて非常に蔓延している。IL7Rの構成的活性化突然変異は、この種の抗体によってアンタゴナイズすることができないので、N13B2-hVL6によるIL-7R標的化に対して不応性であると以前に予測されていた。
【0026】
更に、本発明者らは驚くべきことに、ADCC能力を欠く抗CD127剤は、強力なADCP能力を有し、CD127陽性腫瘍細胞に対して効果的であるということを見出した。ADCC及びADCPは両方ともFcγRへの結合に頼るものである。IgG4形式は、FcγRIを除くすべてのFC受容体に対して弱い親和性しか有さず、したがって、Fc媒介性エフェクター機能の不十分な誘導因子であるので、例えば、N13B2-hVL6は、ほとんどのIgG4抗体がそうであるように、ADCC能力を欠くIgG4抗体である(Yuら、Journal of Hematology & Oncology、Tayら、Front Immunol 2019)。すべてのFc媒介性エフェクター機序が、抗体のFc部分のFcガンマ受容体への結合に頼るので、ADCC能力を欠く抗体は、他のFc媒介性エフェクター機能、例えばADCPを誘導することができないと予測される。したがって、高レベルのADCCを誘導することなく高レベルのADCPを誘導する能力を有する抗CD127剤を提供することは、非常に予想外である。
【0027】
本発明者らはまた、抗CD127 IgG4抗体、例えばN13B2-hVL6が、ADCPを誘導する能力を有することを見出し、非常に驚いた。IgG4抗体は普通、Fc媒介性エフェクター機能、例えばADCPを欠く。IgG4形式の抗体は、FcγRIを除くすべてのFC受容体に対して弱い親和性しか有さず、したがって、Fc媒介性エフェクター機能の不十分な誘導因子である(Yuら、Journal of Hematology & Oncology、Tayら、Front Immunol 2019)。例証的に、すべての現在承認されている抗PD-1抗体は、PD1+CD8+Tリンパ球のFc媒介性排除を避けるためにIgG4形式である。逆に、腫瘍微小環境(TME)において免疫抑制性Treg細胞によって発現されるCTLA-4に対する抗体(例えば、イピリムマブ)は、ADCC/ADCP機序を介するTregの排除を促進するために臨床においてIgG1形式で使用される(Duら、Cell Res 2018)。驚くべきことに、N13B2-hVL6はIgG4抗体であるが、本発明者らは、参照貪食促進性抗CD47抗体のもの(例えば、CD127高白血病細胞株、例えば、REHにおける)よりも優れている場合がある強力なレベルのADCPを誘導することができることを見出した。また予想外に、N13B2-hVL6は、すべての試験した白血病細胞株において、すべての他のIgG1形式の抗CD127抗体(1A11、HAL及びEffi3-VH3VL3)と比較して、優れたADCP能力を呈した。
【0028】
更に、本発明者らはまた、本発明の方法において使用されるべき、又は本発明に従って使用するための抗CD127剤は、がん、特に白血病、とりわけT細胞及びB細胞白血病の処置において普通投与される他の治療用化合物と比較して、正常T細胞に対するADCP能力への影響を有さないか、又は有意ではない影響を有することを例証する。したがって、本発明の方法に従う抗CD127剤の使用は、CD127陽性腫瘍細胞の貪食の増大につながり、一方で、宿主の正常T細胞集団を枯渇させず、それによって、がんの複数の抗体関連処置と関連する副作用を低減する。特に、本発明者らは、健康なヒトに本明細書で定義されるような抗CD127剤を投与することがリンパ球枯渇につながらないことを初めて示す。更に、抗CD3抗CD19二重特異性薬剤のような重度の有害作用を誘導する現在承認されている薬物を投与されているヒトにおける観察結果とは対照的に、これらの健康的なボランティアにおいて有害作用は観察されなかった(Condo-Royoら、Drugs Context 2020を参照されたい)。
【0029】
一態様では、本発明は、CD127陽性がんを有する患者の処置、特にCD127陽性腫瘍細胞の、とりわけマクロファージによる貪食を増強することによる処置における医薬として使用するための抗CD127剤、特に抗CD127抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体ミメティックに関し、抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない。
【0030】
別の態様では、本発明は、CD127陽性がん、特にCD127陽性白血病又はCD127陽性固形がん、とりわけCD127陽性ALL、殊にCD127陽性T細胞ALL又はB細胞ALLを有する患者の処置、特に、CD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食による処置において使用するための抗CD127剤に関する。
【0031】
別の態様では、本発明は、CD127陽性がん、特にCD127陽性白血病又はCD127陽性固形がんを有する患者、とりわけCD127陽性T細胞ALL又はB細胞ALLを有する患者を、CD127陽性腫瘍細胞の、特に患者のマクロファージによる貪食を増大することによって処置する方法に関する。
【0032】
本発明はまた、CD127陽性腫瘍細胞の貪食を増強することによる、がん、特に白血病又は固形がんの処置のための医薬の製造のための抗CD127剤の使用に関する。
【0033】
一部の実施形態では、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の治療上有効量が、がんを有する対象に投与される。
【0034】
本発明は更に、CD127陽性がんを有する患者、特にCD127陽性白血病を有する、とりわけCD127陽性ALLを有する患者、又は特にCD127陽性固形腫瘍を有する、とりわけCD127陽性悪性中皮腫を有する患者の処置のための、CD127陽性がん細胞を標的とするマクロファージの抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有する(すなわち、アイソタイプ対照であり得る陰性対照、例えばMOTA-hIgG4と比較して、前記活性を増大する)抗CD127剤であって、特に、前記活性がマクロファージによって達成されるか又はマクロファージに関わる、抗CD127剤に関する。
【0035】
本発明はまた、CD127過剰発現性ALL(過剰発現性ALLは、健康な骨髄におけるCD127発現に対してALL細胞におけるCD127発現を比較することによって決定され得る)、BCR-ABL1様ALLを含むCD127及び/又はJAK-STAT経路突然変異型ALL(健康な細胞とは対照的に)、並びにt(1;19)、t(12;21)、MLL再編成、高二倍体核型、4番染色体トリソミー及び10番染色体トリソミーの細胞遺伝を有するB細胞前駆体ALLからなる群から選択されるALLを有する患者の処置のための、CD127陽性がん細胞を標的とするマクロファージの抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有する(すなわち、陰性対照と比較して前記活性を増大する)抗CD127抗体又はその抗原結合性断片であって、特に、前記活性がマクロファージによって達成されるか又はマクロファージに関わる、抗CD127抗体又はその抗原結合性断片に関する。特定の実施形態では、本発明は、CD127野生型T-ALL(HPB-ALL細胞株)、CD127突然変異型T-ALL(DND41細胞株)、t(1;19)B-ALL(697細胞株)、t(12;21)B-ALL(REH細胞株)及びt(5;12)B-ALL(NALM6細胞株)からなる群から選択されるALLの処置のための、CD127陽性がん細胞を標的とするマクロファージでの抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有する(すなわち、陰性対照と比較して前記活性を増大する)抗CD127抗体又はその抗原結合性断片であって、特に、前記活性がマクロファージによって達成されるか又はマクロファージに関わる、抗CD127抗体又はその抗原結合性断片に関する。
【0036】
別の態様では、本発明は、本明細書で定義されるような抗CD127剤及び医薬ビヒクルを含む、哺乳動物宿主、特にヒト宿主への投与に適した医薬組成物に関する。
【0037】
特に、本発明は、患者、特にCD127陽性がんを有するヒト患者の処置において使用するための医薬組成物であって、CD127陽性腫瘍細胞の貪食を増大し、CD127陽性がん細胞を標的とするマクロファージの抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を(陰性対照と比較して)増大する抗CD127剤、及び医薬ビヒクルを含む、組成物に関する。
【0038】
本発明はまた、特に白血病、とりわけALLにおいて、特に固形腫瘍、とりわけ悪性中皮腫において、CD127陽性がんを有する患者を処置するための治療剤の組合せに関し、前記組合せは、CD127陽性腫瘍細胞の貪食を増大し、CD127陽性がん細胞を標的とするマクロファージの抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有する(すなわち、陰性対照と比較して前記活性を増大する)抗CD127剤を含み、組合せは、少なくとも第2の(すなわち、別個の)治療剤を更に含む。
【0039】
特定の実施形態では、本発明は、CD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食を増強することによって、がん、特に本明細書で特定されたがんの群において選択されるがんを有する患者において、CD127陽性腫瘍細胞、特にCD127陽性T-若しくはB-ALL細胞又はCD127陽性中皮腫細胞の亜集団を枯渇させるための、本明細書で定義されるような抗CD127剤の使用に関する。
【0040】
本発明はまた、患者のCD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食を促進する(増強する及び/又は誘導する)ための医薬として使用するための抗CD127剤に関し、抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、抗CD127剤は、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない。
【0041】
本発明はまた、患者のCD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食を促進する(増強する及び/又は誘導する)ための医薬を調製するための抗CD127剤の使用に関し、抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、抗CD127剤は、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない。
【発明を実施するための形態】
【0042】
・定義
本明細書で使用される場合、「抗体」は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え、キメラ、ヒト化、二重特異性、多重特異性及び改変抗体並びにその一価及び二価抗原結合性断片を含む。更に、「抗体」は、合成抗体、単鎖抗体及びその断片を含む。抗体は、ヒト又は非ヒト抗体であり得る。非ヒト抗体は、ヒトにおけるその免疫原性を低減するために組換え法によってヒト化され得る。より詳しくは、用語「抗体」は、モノクローナル抗体又は組換えモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」は、異なるアミノ酸配列の抗体の混合物を含有する「ポリクローナル」抗体調製物とは対照的に、抗体が共通の重鎖及び共通の軽鎖アミノ酸配列を共有する抗体分子の調製物を指すように意図される。モノクローナル抗体は、ファージ、細菌、酵母又はリボソームディスプレイのようないくつかの公知技術によって並びにハイブリドーマ由来抗体によって例示される古典的な方法によって作製できる。したがって、用語「モノクローナル」は、1つの核酸クローンに由来するすべての抗体を指すように使用される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「抗体の抗原結合性断片」とは、できる限りその天然形態でCD127に対する抗原結合能力を示す抗体の一部、すなわち、本発明の抗体の構造の一部分に対応する分子を意味し、このような断片は特に、対応する4鎖抗体の抗原結合特異性と比較して、前記抗原に対して同一又は実質的に同一の抗原結合特異性を示す。有利なことに、抗原結合性断片は、対応する4鎖抗体と同様の結合親和性を有する。しかし、対応する4鎖抗体に関して抗原結合親和性が低減した抗原結合性断片も、本発明に包含される。抗原結合能力は、抗体と標的断片の間の親和性を測定することによって決定できる。これらの抗原結合性断片はまた、抗体の「機能的断片」と呼ばれる場合もある。本発明の特定の実施形態の説明のために、前記抗体のCDRを含む可変ドメインを含有する抗体の抗原結合性断片は、Fv、dsFv、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2を包含する。
【0045】
抗体の抗体及び抗原結合性断片は、少なくとも軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、各々は、CDR(相補性決定領域)と呼ばれる3つの超可変ドメインを含む。これらのドメインは、抗原、すなわちCD127、特にヒトCD127の認識部位、最も具体的にはヒトCD127の細胞外ドメインを包含し、それによって抗原認識特異性を規定する。
【0046】
各軽鎖及び重鎖可変ドメイン(それぞれVL及びVH)は、VL-CDR1(又はLCDR1)、VL-CDR2(又はLCDR2)、VL-CDR3(又はLCDR3)、及びVH-CDR1(又はHCDR1)、VH-CDR2(又はHCDR2)、VH-CDR3(又はHCDR3)と呼ばれる3つのCDRを有する。
【0047】
抗体及びその抗原結合性断片は、限定されるものではないが、IgA、分泌性IgA、IgE、IgG及びIgMを含む一般的に公知の免疫グロブリンクラスのいずれかを含み得るか又はそれに由来し得る。IgGサブクラスもまた、当業者に周知であり、限定されるものではないが、ヒトIgGl、IgG2、IgG3及びIgG4が挙げられる。
【0048】
抗原結合性抗体ミメティクスは、抗原に特異的に結合するが、抗体と構造的に関連していない有機化合物である。それらは普通、約3~20kDaのモル質量を有する人工ペプチド又は小さいタンパク質である。核酸及び小分子も同様に抗体ミメティクスと考えられることもあるが、人工抗体、抗体断片及びこれらから構成される融合タンパク質は考えられない。抗体を上回る一般的な利点として、より良好な溶解度、組織浸透、熱及び酵素に向けた安定性、並びに相対的に低い生成コストがある。抗体ミメティクスは、治療剤及び診断剤として開発されている。抗原結合性抗体ミメティクスはまた、アフィボディ(affibodies)、アフィリン(affilins)、アフィマー(affimers)、アフィチン(affitins)、DARPin及びモノボディ(Monobodies)を含む群の中で選択され得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「特異的に結合する(specifically binds to)」又は「特異的に結合する(binds specifically)」とは、本発明の方法において使用されるべき又は本発明に従って使用するための抗CD127剤の能力であって、他の分子、特に他のタンパク質と結合しないか又は大幅に弱い結合親和性で結合しながら、CD127と相互作用し、CD127、好ましくはヒトCD127と結合する能力を指す。結合及び結合特異性は、SPR(表面プラズモン共鳴、例えばBiacore)、ELISA又はウエスタンブロット解析によってアッセイできる。特定の実施形態では、抗CD127剤のCD127に結合する能力は、結合親和性が少なくとも約1×10-6M、1×10-7M、1×10-8M、1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、1×10-12M又はそれ以上のものである、及び/又は非特異的タンパク質に対するその親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で標的に結合する場合に、特異的であると考えられる。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「CD127」は、哺乳動物種からのCD127、好ましくはヒトCD127、最も好ましくは配列番号1のヒトCD127に関する。CD127はまた、インターロイキン-7受容体サブユニットアルファ(IL7R-α)としても知られ、ヒトでは、IL7R遺伝子によってコードされるタンパク質である。CD127は、I型サイトカイン受容体であり、機能的インターロイキン-7受容体及び胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)受容体のサブユニットである。CD127は、NCBI配列番号NP_002176.2で参照されるタンパク質に相当する場合がある。或いは、CD127は、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質に相当する場合がある。本発明において使用される抗CD127剤によって認識され、それに結合する可能性が高いCD127の細胞外ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列に相当する場合がある。
【0051】
用語「がん」及び「腫瘍」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、身体の他の部分に浸潤又は伝播する可能性を有する異常な細胞成長を含む疾患の群を指す。用語「がん」は、原発性及び転移性がんの両方を更に包含する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「処置」又は「処置すること」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果は、限定されるものではないが、以下のうち1つ又は複数を含む:疾患に起因する1つ又は複数の症状を緩和すること、疾患の程度を減少すること、疾患を安定化すること(例えば、疾患の悪化を防ぐこと又は遅延すること)、疾患の伝播を防ぐこと又は遅延すること、疾患の再発を防ぐこと又は遅延すること、疾患の進行を遅延すること又は減速すること、疾患状態を寛解させること、疾患の(部分的又は完全)緩解を提供すること、疾患を処置するために必要な若しくは使用される1つ若しくは複数の他の薬物療法の投与される用量を減少させることができること、生活の質を高めること、並びに/又は生存を延長すること、ALLの化学療法剤処置若しくは新規処置の副作用、例えば、重症サイトカイン放出症候群及び抗CD3抗CD19二重特異性抗体の投与を含む処置の神経毒性副作用を防ぐこと若しくは緩和すること。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「抗体依存性細胞媒介性貪食」又は「ADCP」とは、細胞媒介性反応を指し、細胞媒介性反応においては、ファゴサイト、特にマクロファージが、標的細胞上の結合された抗体を認識し、その後標的細胞を貪食し、ファゴソーム内でのその消化につながる。抗CD127剤は、厳密に1を超える貪食スコアを誘導できる場合、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによるADCP能力を有すると考えられうる。貪食スコアは、関連アイソタイプ対照と比較したCTG陽性細胞(マクロファージ)内のCPD蛍光の幾何平均の変化倍数によって乗じられた、関連アイソタイプ対照と比較したCTG陽性細胞(マクロファージ)内のCPD/CTG二重陽性細胞のパーセンテージの変化倍数である。
【0054】
抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食を、対照実験(例えば、抗CD127剤の不在下で又はアイソタイプ対照の存在下で実施される同一実験)と比較して少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より一層好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%増大できる場合に、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによるADCP能力を有すると考えられうる。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「抗体依存性細胞性細胞傷害性」又は「ADCC」とは、表面上に抗原によって認識される抗体を発現している、抗体によってコーティングされた標的細胞を、Fc受容体を有するエフェクター細胞が認識し死滅させることができる免疫機序を指す。とりわけ、ADCCは、標的細胞上に発現されたエピトープへの抗CD127剤(例えば抗体)の結合、及びFc受容体を発現するエフェクター免疫細胞(本質的にNK細胞及び活性化リンパ球)のその後のFc依存性動員、その結果としての主にグランザイム/パーフォリンベースの機序による標的細胞の死滅を指す場合がある。特定のADCCスコアを誘導することができる、特に免疫細胞に対する、特にT細胞に対するADCC活性を有さない抗CD127剤は、エフェクター細胞としてヒトNK細胞及び細胞溶解を測定するための放射活性クロム(Cr51)標識を使用して厳密に500cpm未満の特定のスコアを誘導することができる薬剤(例えば抗体)に起因する可能性がある。ADCCアッセイは、51Cr標識されたT細胞(標的細胞)のヒトNK細胞(エフェクター細胞)との、1T細胞に対して10NKの比率での共培養によって実施されうる。細胞傷害性(ADCC)は、37℃、5% CO2での4時間のインキュベーション後のこの共培養の上清における、1分あたりの放射活性カウント(cpm)の測定によって評価できる。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語IL-7シグナル伝達経路は、IL-7がIL-7Rに結合し、ヤヌスキナーゼ(JAK)-1及び-3、シグナルトランスデューサー及び転写アクチベーター5(STAT5)並びにホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3-k)を含むいくつかのシグナル伝達経路の活性化を引き起こす場合に誘導される、細胞内分子経路に関連する。IL-7シグナル伝達経路は、IL-7Rが刺激されない(例えば、IL-7の不在下)陰性対照と比較して、PI3-k及び/又はSTAT5及び/又はERKのリン酸化が増大される場合に活性化されると考えられうる。
【0057】
・本発明の方法において使用されるべき又は本発明に従う使用のための抗CD127剤
本明細書で使用される場合、抗CD127剤は、CD127、特にヒトCD127、特に配列番号1のヒトCD127に、特に(ヒト)CD127の細胞外ドメインに、最も具体的には、配列番号2のヒトCD127の細胞外ドメインに結合する、特に特異的に結合する、抗体;抗体の抗原結合性断片;抗原結合性抗体ミメティクス;抗体、抗体の抗原結合性断片又は抗原結合性抗体ミメティクスを含む高分子からなるリストから選択される化合物を指す。本発明の方法において使用されるべき又は本発明に従う使用のための抗CD127剤は、マクロファージによるCD127陽性腫瘍細胞に対する抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を増大する能力を更に有し、特に免疫細胞に対する、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)活性を有さない。本発明の特定の実施形態では、本発明の方法において使用されるべき又は本発明に従う使用のための抗CD127剤は、マクロファージによるCD127陽性腫瘍細胞に対する抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を増大する能力を有し、好ましくは、特に免疫細胞に対する、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)活性を有さない。
【0058】
CD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食の増大は、2つの実験、すなわち抗CD127剤の存在下での1つの実験及び抗CD127剤の不在下での1つの実験におけるCD127陽性腫瘍細胞の貪食の比較によって評価できる。抗CD127剤の不在下での同一の実験と比較した、CD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食の増大は、貪食が対照と比較して少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より一層好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%上昇する場合に考えられうる。
【0059】
本発明の方法において使用される又は本発明に従う使用のための抗CD127剤は、CD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる増大した抗体依存性細胞性貪食(ADCP)活性を示す。抗体ADCP増大は、CD127陽性細胞に対する特異的貪食が、抗CD127剤の不在下での又はアイソタイプ対照の存在下での同一のCD127陽性細胞の貪食と比較して、抗CD127剤の存在下で10%優れている場合に陽性と考えられうる。ADCP特性は、ADCPアッセイ、例えば、本発明の実施例において開示される試験で評価できる。とりわけ、ADCPアッセイは、以下の工程を含み得る:蛍光色素で標識された白血病細胞を、抗CD127剤の存在下で又は抗CD127剤の不在下で、別の蛍光色素で標識された貪食細胞、特にマクロファージと共に1時間共培養すること、及び貪食細胞内の白血病細胞の蛍光を測定すること。ADCPアッセイは、好ましくは、ヒトマクロファージの存在下で実行される。
【0060】
本発明の抗CD127剤は、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対するADCC、及び/又は腫瘍細胞のADCCを誘導しない。特に、本発明に従って使用されるべき抗CD127剤のADCC潜在力は、本明細書において上記で開示される方法に従って、又は本発明の実施例に従って、とりわけ、本発明の
図10B及び
図10Cにおいて例証される実施例において使用される方法に従って評価できる。
【0061】
本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、限定されるものではないが、抗原結合性抗体断片及び抗原結合性抗体ミメティックのような抗体又は関連化合物であり、CD127陽性細胞に対するADCPを増大しない及び/又は特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対するADCC活性を増大する別の抗体又は関連化合物と比較して、CD127陽性細胞に対する増強された抗体依存性細胞媒介性貪食(ADCP)活性を有し、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を有さず、抗CD127剤は、CD127を認識し結合することができるが、CD127陽性腫瘍細胞の抗体依存性細胞媒介性貪食の能力の増強を全く有さない一部の抗CD127抗体を含む。
【0062】
本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、ヒト化抗体であり、抗体のヒト定常ドメインに由来する定常ドメインを含む、抗CD127抗体又はその抗原結合性断片である。
【0063】
本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、キメラ抗体、ヒト化抗体及び完全ヒトモノクローナル抗体からなる群から選択される。
【0064】
本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、抗体である本発明に従う完全抗CD127剤と同一の機能を共有し、500、400、300、200、100又は50個より下方又はそれと等しいアミノ酸を有し、少なくともCD127に結合する能力、ADCPを誘導する能力を有し、ADCC活性を有さない、抗体の抗CD127抗原結合性断片である。特に、本発明に従う抗体の抗CD127抗原結合性断片は、80~200、特に100~200、特に80~160、特に100~160個のアミノ酸のサイズを有し、少なくともCD127に結合する能力を有する。
【0065】
本発明の特定の実施形態では、本発明の抗CD127剤は、抗CD127抗体の機能的断片である。このような抗体の機能的等価物としては、限定されるものではないが、CD127に結合する分子が挙げられ、但し、これらの機能的断片がADCP能力を有し、ADCC能力を有さないことが条件となる。適した機能的断片は、例えば、完全抗体の末端切断型形態を含む可能性がある。特に、機能的等価物は、本記載に開示される任意の抗CD127抗体又はその抗原結合性断片とその全長にわたって少なくとも80%の同一性、とりわけ、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、殊に少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。本明細書で使用される場合、用語「完全抗体」とは、本発明に従う抗CD127剤である抗体を指し、本発明の機能的等価物は同様の機能を有する。本発明の提示において参照される同一性のパーセンテージは、例えば、Needleman and Wunsch 1970のアルゴリズムを使用して、比較されるべき配列のグローバルアラインメントに、すなわち、その全長にわたる配列のアラインメントに基づいて決定される。この配列比較は、例えば、10.0に等しい「ギャップオープン(Gap open)」パラメータ、0.5に等しい「ギャップエクステンド(Gap Extend)」パラメータ及び行列「BLOSUM 62」を使用することによって、ニードル(needle)ソフトウェアを使用して行うことができる。ニードル等のソフトウェアは、ウェブサイトebi.ac.uk worldwideで「ニードル」の名称の下で入手可能である。したがって、本発明は、CD127陽性細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞媒介性貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を有さない、CD127のアンタゴニストである、ポリペプチド、特に抗体の機能的断片を提供し、前記ポリペプチドは、配列番号27の重鎖及び配列番号28の軽鎖から構成される抗体N13B2hVL6と、少なくとも80%の同一性、とりわけ、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、殊に少なくとも99%の同一性を有する配列を有する連続アミノ酸を含む。
【0066】
特定の実施形態では、抗体軽鎖定常ドメインは、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来する。
【0067】
とりわけ、抗体重鎖定常ドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域に、特にIgG4重鎖定常領域に由来する。「に由来する」とは、IgG4(S228P)又はIgG1(E333A)等のアミノ酸置換によるいくつかの点突然変異(punctual mutations)を包含することを意味する(Yang及びAmbrogelly、Current Opinion in Biotechnology 2014並びにOkasakiら、J Mol Biol 2004を参照されたい)。当業者に周知のこれらの突然変異は、一般に、いくつかの親の鎖の特性を改変する。例えば、それらは、親抗体と比較してより少ない免疫原性につながる、又はFcγ受容体結合を抑制する、又はモノマー抗体の二量体化を回避する、又は抗体をヒト治療的使用にとってより良好にする二量体化を安定化する。
【0068】
本発明の特定の実施形態では、本発明の方法に従って使用されるべき又は本発明に従って使用するための抗CD127剤は、CD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる抗体依存性細胞性貪食(ADCP)を増大し、宿主においてCD127-がん細胞の貪食を増大し、ここで、抗CD127剤は、IgG4哺乳動物免疫グロブリンのクラスに属し、ADCC活性を有さない抗体又はその抗原結合性断片である。本発明のより特定の実施形態では、抗CD127剤は、抗体又はその抗原結合性断片であり、IgG4哺乳動物免疫グロブリンのクラスに属する。
【0069】
本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、IL-7のCD127への結合によって誘導されるIL-7Rシグナル伝達経路のアンタゴニストである。言い換えれば、本発明の方法において使用される又は本発明に従って使用するための抗CD127剤は、抗CD127剤の不在下でのIL-7とCD127の間の結合と比較して、IL-7とCD127の間の結合を破壊又は遮断する能力を有する。本明細書で使用される場合、CD127アンタゴニスト剤、特に抗CD127アンタゴニスト抗体又は関連化合物は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、IL-7の生物活性を遮断、抑制又は低減する天然又は合成の任意の化合物を指す。特に、CD127アンタゴニストは、IL-7とCD127の間の相互作用を阻害する。特に、CD127アンタゴニストは、IL-7によって誘導されるホスファチジルイノシトール3-キナーゼ及び/又はERKシグナル伝達経路の活性化を阻害又は低減する。本発明では、抗体(又はその抗原結合性断片)は、前記抗体(又はその抗原結合性断片)が、対照抗体(すなわち、IL-7にもCD127にも特異的に結合しない抗体)の存在下でのIL-7のCD127へのKD値と比較して、Blitzによる結合競合アッセイにおけるIL-7のCD127へのKD値の、1logよりも、好ましくは2logよりも、より好ましくは3logよりも、最も好ましくは4logよりも優れた増大を誘導する場合に、IL-7のCD127への結合を低減、阻害又は遮断すると考えることができる。
【0070】
特定の実施形態では、抗CD127剤は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ及び/又はERKシグナル伝達経路の活性化を誘導しない、並びに/又はSTAT5のリン酸化を誘導しない、特に、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ及びERKシグナル伝達経路の活性化を誘導しない、並びにSTAT5のリン酸化を誘導しない。
【0071】
特定の実施形態では、抗CD127剤は、患者においてリンパ球枯渇を誘導しない、特に、患者においてリンパ球枯渇につながらない。リンパ球枯渇は、患者におけるリンパ球の全体数の低減に相当する。抗CD127剤は、抗CD127剤が存在する場合、患者に由来する生体試料中のリンパ球の全体数が、患者から得られた対照試料(例えば、抗CD127剤の投与前に同一患者から得られた試料)と比較して、又は当業者に公知の健康なヒトにおけるリンパ球の通常数と比較して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも30%、より一層好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも10%以上である場合に、リンパ球枯渇を誘導しないと考えることができる。リンパ球枯渇は、本出願に開示される方法に従って、例えば
図11で例証される方法によって評価され得る。本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、
少なくとも
・VHCDR1配列番号3、
・VHCDR2配列番号4、
・VHCDR3配列番号5又は配列番号6
のアミノ酸配列を含むVH鎖
及び少なくとも
・VLCDR1配列番号7又は配列番号8、
・VLCDR2配列番号9又は配列番号10、
・VLCDR3配列番号11
のアミノ酸配列を含むVL鎖
を含む抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片であり、
前記抗CD127抗体又はその抗原結合性断片は、CD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞に対してADCP活性を示す。一実施形態では、抗ヒトCD127抗体又は抗原結合性断片は、患者に投与された場合に、マクロファージによるCD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞の貪食を増強し、ADCC活性を有さず、がんを有する患者を処置するために使用される。前記抗ヒトCD127抗体又は抗原結合性断片は、好ましくは、本明細書で上記に定義されるようなIL-7とCD127の間の結合のアンタゴニストである。特に、前記抗体又はその抗原結合性断片は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブクラス、特にIgG4のサブクラスに属する定常鎖を含む。
【0072】
CDRドメインは、KABAT番号付けに従って同定されている。
【0073】
特定の実施形態では、抗CD127剤は、
少なくとも
・VHCDR1配列番号3、
・VHCDR2配列番号4、
・VHCDR3配列番号5
のアミノ酸配列を含むVH鎖
及び少なくとも
・VLCDR1配列番号7、
・VLCDR2配列番号9、
・VLCDR3配列番号11
のアミノ酸配列を含むVL鎖を含む抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片である。
【0074】
本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、
少なくとも
・VHCDR1配列番号3、
・VHCDR2配列番号4、
・VHCDR3配列番号6
のアミノ酸配列を含むVH鎖
及び少なくとも
・VLCDR1配列番号8、
・VLCDR2配列番号10、
・VLCDR3配列番号11
のアミノ酸配列を含むVL鎖
を含む抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片である。
【0075】
本発明の特定の態様では、抗CD127剤は、
配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15又は配列番号22、特に配列番号15又は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメイン、及び
配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号23、配列番号24、配列番号25又は配列番号26、特に配列番号19又は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメイン
を含む抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片であり、
前記抗CD127抗体又はその抗原結合性断片は、CD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞に対するADCP活性を示し、ADCC活性を有さない。一実施形態では、抗ヒトCD127抗体又は抗原結合性断片は、患者に投与されると、マクロファージによるCD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞の貪食を増強し、がんを有する患者を処置するために使用される。前記抗ヒトCD127抗体又は抗原結合性断片は、好ましくは、本明細書で上記に定義されるようなIL-7とCD127の間の結合のアンタゴニストである。特に、前記抗体又はその抗原結合性断片は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブクラス、特にIgG4のサブクラスに属する定常鎖を含む。
【0076】
特定の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号30の配列からなる定常重鎖に連結されて、完全抗体重鎖を構成する。
【0077】
特定の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号31及び配列番号32から選択される配列、特に配列番号31からなる定常軽鎖に連結されて、完全抗体軽鎖を構成する。
【0078】
特定の実施形態では、抗CD127剤は、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む又はそれからなる重鎖可変ドメイン、及び配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む、抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片である。
【0079】
特定の実施形態では、抗CD127剤は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む又はそれからなる重鎖可変ドメイン、及び配列番号19に示されるアミノ酸配列を含む又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む、抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片である。
【0080】
特定の実施形態では、抗CD127剤は、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む又はそれからなる重鎖可変ドメイン、及び配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む、抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片である。
【0081】
本発明の特定の態様では、抗CD127剤は、配列番号20又は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む又はそれからなる重鎖、及び配列番号21、配列番号28又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含む又はそれからなる軽鎖を含む、抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片であり、
前記抗CD127抗体又はその抗原結合性断片は、CD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞に対するADCP活性を示し、ADCC活性を有さない。一実施形態では、抗ヒトCD127抗体又は抗原結合性断片は、患者に投与されると、マクロファージによるCD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞の貪食を増強し、がんを有する患者を処置するために使用される。前記抗ヒトCD127抗体又は抗原結合性断片は、好ましくは、本明細書で上記に定義されるようなIL-7とCD127の間の結合のアンタゴニストである。特に、前記抗体又はその抗原結合性断片は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブクラス、特にIgG4のサブクラスに属する定常鎖を含む。
【0082】
本発明の特定の態様では、抗CD127剤は、
配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖、及び配列番号28又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖、特に、配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖、及び配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖
を含む抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片であり、
前記抗CD127抗体又はその抗原結合性断片は、CD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞に対するADCP活性を示し、ADCC活性を有さない。一実施形態では、抗ヒトCD127抗体又は抗原結合性断片は、患者に投与されると、マクロファージによるCD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞の貪食を増強し、がんを有する患者を処置するために使用される。前記抗ヒトCD127抗体又は抗原結合性断片は、好ましくは、本明細書で上記に定義されるようなIL-7とCD127の間の結合のアンタゴニストである。特に、前記抗体又はその抗原結合性断片は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブクラス、特にIgG4のサブクラスに属する定常鎖を含む。
【0083】
Table (表1)は、本発明の実施例において使用されたいくつかの抗CD127剤に対応するアミノ酸配列の種々の組合せの詳細である。この表は、単に例証目的であって、本明細書で開示される抗CD127剤は、本発明に従って又は本発明に従う方法において使用することができる唯一の抗CD127剤と考えられるべきではないということに留意されたい。
【0084】
【0085】
本発明の特定の実施形態では、本発明に従って使用されるべき又は本発明に従う方法において使用するための抗CD127剤が、本発明に従う本明細書で定義されるような抗CD127剤をコードする単離核酸分子又は単離核酸分子の群、特に抗体又はその抗原結合性断片として提供される。特に、前記核酸分子又は核酸分子の群は、本明細書で提供される定義のいずれかに従う本明細書で提供される抗体の軽鎖可変ドメイン又は軽鎖及び本明細書で提供される抗体の重鎖可変ドメイン又は重鎖をコードする。特に、単離核酸分子又は単離核酸分子の群は、
配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15又は配列番号22、特に配列番号15又は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖可変ドメイン、及び
配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号23、配列番号24、配列番号25又は配列番号26、特に配列番号19又は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖可変ドメイン
をコードする。
【0086】
とりわけ、単離核酸分子又は単離核酸分子の群は、配列番号20又は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖、及び配列番号21、配列番号28又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖をコードする。
【0087】
本発明の特定の実施形態では、本発明に従って使用されるべき又は本発明に従う方法において使用するための抗CD127剤は、以下の特性のうち少なくとも1つ、特に以下の特性のうち少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくはすべてを有する抗CD127抗体又はその抗原結合性断片又はその抗原結合性ミメティックである:a)IL-7によって誘導されるIL-7Rシグナル伝達経路のアンタゴニストである(抗CD127剤のアンタゴニスト能力は、薬剤の存在下又は不在下でSTAT5のリン酸化を測定することによって評価することができ、薬剤は、その存在下でSTAT5のリン酸化を低下させる場合に、IL-7によって誘導されるIL-7Rシグナル伝達経路のアンタゴニストであると考えられる)、b)IL-7によって誘導されるホスファチジルイノシトール3-キナーゼ及び/又はERKシグナル伝達経路の活性化を阻害又は低減する、c)TSLPによって誘導される樹状細胞の成熟を増大しない(樹状細胞成熟は、TSLP単独で処置された細胞と比較した、TSLP及び前記薬剤で処置されたTSLP受容体陽性細胞における細胞表面マーカーCD40及び/又はCD80の発現の増大を決定することによって評価できる)、d)CD127の内部移行を誘導しない、及び/又はCD127のIL7誘導性内部移行を阻害しない(CD127-内部移行は、IL7の存在によって誘導されるCD127の細胞表面発現の減少を指す;抗CD127剤の存在下でインキュベートされた細胞におけるCD127の細胞表面発現は、抗体の不在以外の点では同一である条件においてインキュベートされた細胞における細胞表面発現に対して、低減されない又は大幅には低減されない。特定の実施形態では、50ng/mLの抗体の存在下37℃で30~45分間インキュベートされる場合には、CD127細胞表面発現のレベルは、抗体の不在下でインキュベートされた細胞におけるそのレベルの少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%である。この効果は、IL-7の不在下で観察されうる)、e)T細胞に結合する。抗CD127剤が、これらの特性のうち1つを有するか、有さないかを評価する方法についての詳細は、WO2015/189302及びWO2018/104483及びWO2020154293において見出すことができる。この定義に対応する抗CD127剤は、WO2015/189302、WO2018/104483に開示されている。
【0088】
特定の実施形態では、抗CD127剤の特定の治療用量が、それを必要とする患者に投与され、用量は、患者の疾患を処置するための薬剤の有効性を維持しながら有害事象(AE)を制限するように適応される。
【0089】
・処置されるべき疾患
本発明の方法に従って処置されるべき患者は、CD127陽性がんを有する、それを発症する、又はそれを発症する可能性が高い。CD127陽性がんは、腫瘍細胞が分化抗原群(Cluster of Differentiation)127(CD127)を発現するがんである。「CD127陽性腫瘍細胞」は、その細胞表面にCD127を発現する腫瘍細胞を示す。ほとんどの場合、CD127陽性細胞は、CD127をIL-7R(IL-7R陽性細胞)を形成する複合体で及び/又はTSLPR(TSLPR陽性細胞)を形成する複合体で発現する。がんは、CD127に対する一次マウスモノクローナル抗体(マウスモノクローナル抗ヒトCD127クローン[A019D5]、カタログ351304、Biolegend社)及び無関係のモノクローナルマウス抗体(例えば、マウスモノクローナル免疫グロブリンIgG1,k、アイソタイプ対照、カタログ555746、BD Pharmingen社)及び細胞表面抗原の定量的決定のためのキット、例えばBD Quantibrite(商標)Beads(カタログ340495 BD Pharmingen社)を使用して、フローサイトメトリー評価によってCD127陽性がんのサブセットに分類されうる:CD127陽性がんは、厳密にゼロを上回る特異的抗体結合能(SABC)によって定義される。フローサイトメトリー又はRNAシーケンシングによって測定されるようなCD127発現レベルが、健康なT細胞又は正常な骨髄対照細胞でよりも高い場合、CD127を過剰発現するCD127陽性がんと考えられる。本発明の特定の実施形態では、処置されるべき患者は、白血病、特に、CD127陽性白血病を有する。白血病(leukemia)(白血病(Leukaemia)とも書かれる)は、骨髄及び他の血液形成性臓器が増大した数の未熟又は異常な白血球を生成する悪性進行性疾患である。これらは、正常な血液細胞の生成を抑制し、貧血及び他の症状につながる。白血病はまた、「液性がん」又は「血液がん」とも呼ばれる。本記載では、3つの用語「白血病」、「液体がん」及び「血液がん」は、明示的に別に記載される場合を除いて同一の意味を共有する。
【0090】
本発明の特定の実施形態では、処置されるべき患者は、急性リンパ性白血病、特に、CD127陽性ALLを有する。急性リンパ性白血病(ALL)は、血液細胞のリンパ球系のがんである。リンパ系細胞株は、リンパ球とも呼ばれる白血球細胞の1種である。リンパ球には、ナチュラルキラー細胞(細胞媒介性細胞傷害性自然免疫性において機能する)、T細胞(細胞媒介性細胞傷害性適応免疫性のための)及びB細胞(体液性抗体駆動性適応免疫性のための)が含まれる。
【0091】
本発明の特定の実施形態では、処置されるべき患者は、T細胞白血病又はT細胞ALL、特にT細胞ALL、とりわけCD127陽性T細胞白血病又はT細胞ALLを有する。
【0092】
本発明の特定の実施形態では、処置されるべき患者は、B細胞白血病又はB細胞ALL、特にB細胞ALL、とりわけCD127陽性B細胞白血病又はB細胞ALLを有する。
【0093】
T細胞ALLは、とりわけ未熟又は異常なT細胞の提供に関連する、がんである。B細胞ALLは、とりわけ未熟又は異常なB細胞の提供に関連する、がんである。
【0094】
本発明の特定の実施形態では、処置されるべき患者は、IL-7Rシグナル伝達経路が、正常な(例えば健康な)細胞と比較して構成的に活性である、がん、特にCD127陽性がん(CD127陽性腫瘍細胞を含む)を有する、特に白血病(例えば、ALL)又は固形がんを有する。
【0095】
本発明の特定の実施形態では、処置されるべき患者は、IL-7Rシグナル伝達経路が、正常な(例えば健康な)細胞と比較して機能的ではない(例えば、活性化することができない)、がん、特にCD127陽性がん(CD127陽性腫瘍細胞を含む)を有する、特に白血病(例えば、ALL)又は固形がんを有する。
【0096】
本発明の特定の実施形態では、処置されるべき患者は、IL-7Rシグナル伝達経路が、正常な(例えば健康な)細胞と比較して機能障害性である(例えば、活性化、増強、阻害又は低減することができない)、がん、特にCD127陽性がん(CD127陽性腫瘍細胞を含む)を有する、特に白血病(例えばALL)又は固形がんを有する。
【0097】
特定の実施形態では、処置されるべき患者は、CD127陽性固形腫瘍、とりわけCD127陽性固形がんを有する。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「固形腫瘍」とは、普通、嚢胞又は液体領域を含有しない組織の異常な塊を指す。固形腫瘍を含む固形がんの例として、肉腫、癌腫、中皮腫及びリンパ腫がある。
【0099】
特に、処置されるべき患者は、CD127陽性中皮腫を有する。
【0100】
本発明の特定の実施形態では、処置されるべき患者は、Bcl-2陽性がんを有する、特にBcl-2陽性ALLを有する。Bcl-2陽性がんは、腫瘍細胞がBcl-2タンパク質を発現するがんに対応する。
【0101】
本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、がんの従来の処置と組み合わせて使用される(患者に投与される)。
【0102】
本明細書で使用される場合、用語「標準又は従来の処置」とは、がんを患っている対象に普通投与されるがんの任意の処置(薬物、放射線療法等)を指す。
【0103】
本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、特に、化学療法剤、標的化がん療法剤、免疫治療剤及び放射線療法剤からなる群から選択される少なくとも1つの第2の治療剤と、同時に、別個に又は逐次使用される(患者に投与される)。
【0104】
用語「化学療法剤」とは、腫瘍成長の阻害において有効である化学物質を指す。化学療法剤の例として、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロスホスファミド、アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン、アジリジン、例えば、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa)、アルトレタミンを含むエチレンイミン及びメチルアメルアミン(methylamelamines)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスファオラルニド(triethylenethiophosphaorarnide)及びトリメチロロメラミン(trimethylolomelamine)、アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン(bullatacinone))、カンプトテシン(carnptothecin)(合成類似体トポテカンを含む)、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む)、クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIを含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンギスタチン、ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン(prednimus tine)、トロホスファミド、ウラシルマスタード、ニトロソウレア(nitrosureas)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、抗生物質、例えば、エネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシン(11及びカリケアマイシン211、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186 (1994)を参照されたい、ジネミシンAを含むジネミシン、エスペラマイシン、並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団(chromoproteinenediyneantiobioticchromomophores)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カンニノマイシン(canninomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン(idanrbicin)、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptomgrin)、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)、葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート、プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU、アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン、抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、葉酸補給物質(folic acid replenisher)、例えば、フロリン酸、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド(aldophospharnide glycoside)、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン、エダトラキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン、ジアジクオン、エルフォミチン(elfornithine)、エリプチニウムアセテート(elliptinium acetate)、エポチロン、エトグルシド、ガリウムニトレート、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダミン、マイタンシノイド(maytansinoids)、例えば、マイタンシン及びアンサマイトシン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲンナニウム(spirogennanium)、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン(trichlorotriethylarnine)、トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン(anguidine))、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロムトール(mitobromtol)、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソイド、例えば、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.].)及びドキセタキセル(doxetaxel)(タキソテール(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、Antony、France)、クロラムブシル、ゲムシタビン、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、白金類似体、例えば、シスプラチン及びカルボプラチン、ビンブラスチン、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン、ノバントロン、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロネート、CPT-1 1、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、ジフルオロメチロルニチン(DMFO)、レチノイン酸、カペシタビン、及び上記のいずれかの薬学的に(phannaceutically)許容される塩、酸又は誘導体が挙げられる。また、この定義中に、腫瘍に対するホルモン(honnone)作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(フェアストン)を含む抗エストロゲン、並びに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド及びゴセレリン、並びに上記のいずれかの薬学的に(phannaceutically)許容される塩、酸又は誘導体等も含まれる。
【0105】
標的化がん療法は、がんの成長、進行及び伝播に関与する特異的分子(「分子標的」)に干渉することによってがんの成長、進行及び伝播を遮断する薬物又は他の物質である。標的化がん療法は、「分子的標的化薬物」、「分子的標的化療法」、「精密医療」又は類似の名称で呼ばれることもある。一部の実施形態では、標的化療法は、対象にチロシンキナーゼ阻害剤を投与することからなる。用語「チロシンキナーゼ阻害剤」とは、受容体及び/又は非受容体チロシンキナーゼの選択的又は非選択的阻害剤として作用するさまざまな治療剤又は治療薬のいずれかを指す。チロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物は、当技術分野で周知であり、その全体で本明細書に参照により組み込まれる米国特許公開第2007/0254295号に記載されている。チロシンキナーゼ阻害剤に関連する化合物は、チロシンキナーゼ阻害剤の効果を再現するということ、例えば、関連化合物は、チロシンキナーゼシグナル伝達経路の異なるメンバーに作用して、チロシンキナーゼ阻害剤がチロシンキナーゼに作用したときと同一の効果をもたらすということは、当業者によって理解されるであろう。本発明の実施形態の方法において使用するのに適したチロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物の例として、限定されるものではないが、ダサチニブ(BMS-354825)、PP2、BEZ235、サラカチニブ(saracatinib)、ゲフィチニブ(イレッサ)、スニチニブ(スーテント;SU11248)、エルロチニブ(タルセバ;OSI-1774)、ラパチニブ(GW572016;GW2016)、カネルチニブ(CI 1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、イマチニブ(グリーベック;STI571)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(ザクチマ(Zactima);ZD6474)、MK-2206(それらの8-[4-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾーロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オンヒドロクロリド)誘導体、それらの類似体及びそれらの組合せが挙げられる。本発明において使用するのに適したさらなるチロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物は、例えば、米国特許公開第2007/0254295号、米国特許第5,618,829号、同5,639,757号、同5,728,868号、同5,804,396号、同6,100,254号、同6,127,374号、同6,245,759号、同6,306,874号、同6,313,138号、同6,316,444号、同6,329,380号、同6,344,459号、同6,420,382号、同6,479,512号、同6,498,165号、同6,544,988号、同6,562,818号、同6,586,423号、同6,586,424号、同6,740,665号、同6,794,393号、同6,875,767号、同6,927,293号及び同6,958,340号に記載されており、それらのすべてはその全体で参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤は、経口投与されたことがあり、少なくとも1つの第I相臨床試験、より好ましくは少なくとも1つの第II相臨床、より一層好ましくは少なくとも1つの第III相臨床試験の対象であったことがある、最も好ましくは少なくとも1つの血液学的又は腫瘍学的適応症のためにFDAによって承認されている、小分子キナーゼ阻害剤である。このような阻害剤の例として、限定されるものではないが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ、BMS-599626(AC-480)、ネラチニブ、KRN-633、CEP-11981、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、AZM-475271、CP-724714、TAK-165、スニチニブ、バタラニブ、CP-547632、バンデタニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、タンズチニブ、ミドスタウリン、エンザスタウリン、AEE-788、パゾパニブ、アキシチニブ、モタセニブ(Motasenib)、OSI-930、セジラニブ、KRN-951、ドビチニブ、セリシクリブ、SNS-032、PD-0332991、MKC-I(Ro-317453;R-440)、ソラフェニブ、ABT-869、ブリバニブ(BMS-582664)、SU-14813、テラチニブ(Telatinib)、SU-6668、(TSU-68)、L-21649、MLN-8054、AEW-541及びPD-0325901が挙げられる。
【0106】
用語「免疫治療剤」は、本明細書で使用される場合、がん細胞に対する身体の免疫応答を間接的若しくは直接的に増強、刺激若しくは増大する、及び/又は他の抗がん療法の副作用を減少させる、化合物、組成物又は処置を指す。免疫療法は、したがって、がん細胞に対する免疫系の応答を直接的若しくは間接的に刺激若しくは増強する、及び/又は他の抗がん剤によって引き起こされていた可能性がある副作用を減少させる、療法である。免疫療法はまた、当技術分野で免疫学的療法、生物学的療法生物反応修飾物質療法及び生物療法とも呼ばれる。当技術分野で公知の一般的な免疫治療剤の例として、限定されるものではないが、サイトカイン、がんワクチン、モノクローナル抗体及び非サイトカインアジュバントが挙げられる。或いは、免疫治療的処置は、対象に一定量の免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞、B細胞…)を投与することからなる場合がある。免疫治療剤は、非特異的でありうる、すなわち、免疫系を全般的にブーストし、その結果、ヒト身体が、がん細胞の成長及び/又は伝播と闘うことにおいてより効果的になる、又はそれらは特異的でありうる、すなわち、がん細胞自体に標的化される場合があり、免疫療法レジメンは、非特異的及び特異的免疫治療剤の使用を組み合わせることができる。非特異的免疫治療剤は、免疫系を刺激する又は間接的に改善する物質である。非特異的免疫治療剤は、がんの処置のために主療法として単独で、並びに主療法に加えて使用されており、この場合には、非特異的免疫治療剤は、他の療法(例えば、がんワクチン)の有効性を増強するためのアジュバントとして機能する。非特異的免疫治療剤はまた、この後者の状況では他の療法の副作用、例えば、ある特定の化学療法剤によって誘導される骨髄抑制を低減するために機能できる。非特異的免疫治療剤は、重要な免疫系細胞に対して作用し、二次的応答、例えば、サイトカイン及び免疫グロブリンの生成の増大を引き起こすことができる。或いは、薬剤は、それ自体がサイトカインを含む場合がある。非特異的免疫治療剤は、一般に、サイトカイン又は非サイトカインアジュバントとして分類される。いくつかのサイトカインは、免疫系をブーストするために設計された全身非特異的免疫療法として、又は他の療法と共に提供されるアジュバントとしてがんの処置において応用されてきた。適したサイトカインとして、限定されるものではないが、インターフェロン、インターロイキン及びコロニー刺激因子が挙げられる。本発明によって企図されるインターフェロン(IFN)として、IFNの一般的な種類、IFN-アルファ(IFN-α)、IFN-ベータ(IFN-β)及びIFN-ガンマ(IFN-γ)が挙げられる。IFNは、例えば、その成長を減速すること、より正常な挙動を有する細胞への発達を促進すること、及び/又はその抗原の生成を増大し、ひいては、がん細胞を免疫系が認識し、破壊しやすくすることによって、がん細胞に対して直接的に作用できる。IFNはまた、例えば、血管新生を減速すること、免疫系をブーストすること、及び/又はナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞及びマクロファージを刺激することによって、がん細胞に対して間接的に作用できる。組換えIFN-アルファは、ロフェロン(Roferon)(Roche Pharmaceuticals社)及びイントロンA(Schering Corporation社)として商業的に入手可能である。本発明によって企図されるインターロイキンとして、IL-2、IL-4、IL-11及びIL-12が挙げられる。市販の組換えインターロイキンの例として、プロロイキン(Proleukin)(登録商標)(IL-2;Chiron Corporation社)及びネウメガ(Neumega)(登録商標)(IL-12;Wyeth Pharmaceuticals社)が挙げられる。Zymogenetics, Inc.社(ワシントン州、シアトル)は、IL-21の組換え形態を現在試験しており、これも、本発明の組合せにおいて使用するために企図されている。本発明によって企図されるコロニー刺激因子(CSF)として、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF又はフィルグラスチム)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF又はサルグラモスチム)及びエリスロポエチン(エポエチンアルファ、ダルベポエチン)が挙げられる。1つ又は複数の増殖因子での処置は、伝統的な化学療法を受けている対象において新規血液細胞の作製を刺激するように働き得る。したがって、CSFでの処置は、化学療法と関連する副作用を減少させることにおいて役立つ場合があり、より高用量の化学療法剤が使用されることを可能にする場合がある。種々の組換えコロニー刺激因子、例えば、ニューポジェン(登録商標)(G-CSF;Amgen社)、ニューラスタ(ペルフィルグラスチム(pelfilgrastim);Amgen社)、ロイカイン(Leukine)(GM-CSF;Berlex社)、プロクリット(エリスロポエチン;Ortho Biotech社)、エポジェン(Epogen)(エリスロポエチン;Amgen社)、アルネスプ(Arnesp)(エリスロポエチン)が、商業的に入手可能である。本発明の組合せ組成物及び組合せ投与法はまた、「細胞全体での」及び「養子」免疫療法法を含み得る。例えば、このような方法は、免疫系細胞(例えば、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、例えば、CC2+及び/又はCD8+T細胞(例えば、腫瘍特異的抗原及び/又は遺伝的強化法で拡張されたT細胞)、抗体を発現するB細胞又は他の抗体産生若しくは抗体提示細胞、樹状細胞(例えば、GM-CSF及び/若しくはFlt3-L等のDC拡張剤と共に培養された樹状細胞並びに/又は腫瘍関連抗原負荷樹状細胞)、抗腫瘍NK細胞、いわゆるハイブリッド細胞又はそれらの組合せの注入又は再注入を含み得る。このような方法及び組成物では、細胞溶解物もまた有用でありうる。このような態様において有用でありうる臨床試験における細胞性「ワクチン」として、カンバキシン(Canvaxin)(商標)、APC-8015(Dendreon社)、HSPPC-96(Antigenics社)及びメラシン(Melacine)(登録商標)細胞溶解物が挙げられる。がん細胞から放出された抗原と、任意選択でミョウバン等のアジュバントと混合されたその混合物(例えば、Bystrynら、Clinical Cancer Research Vol. 7、1882-1887、July 2001を参照されたい)も、このような方法及び組合せ組成物中の構成成分でありうる。
【0107】
特に、前記免疫治療剤は、抗CD3剤、特に抗CD3抗体、抗PD1剤(特に抗PD1抗体)、特にPD1のアンタゴニスト、とりわけアンタゴニスト抗PD1抗体、抗PDL1剤(特に抗PDL1抗体)、特にPDL1のアンタゴニスト、とりわけアンタゴニスト抗PDL1抗体、抗CTLA4剤(特に抗CTLA4抗体)、特にCTLA4のアンタゴニスト、とりわけアンタゴニスト抗CTLA4抗体、CD137のアゴニスト、特に、アゴニスト抗CD137抗体、抗CLEC-1剤(特に抗CLEC-1抗体)、特にCLEC-1のアンタゴニスト、とりわけアンタゴニスト抗CLEC-1抗体、抗VEGF剤、特に抗VEGF抗体、抗CD19剤、特に抗CD19抗体、及び抗CD47剤(特に抗CD47抗体)、特にCD47のアンタゴニスト、とりわけ抗CD47アンタゴニスト抗体、抗SIRPa剤(特に抗SIRPa抗体)、特に抗SIRPaのアンタゴニスト、とりわけ抗SIRPaアンタゴニスト抗体、抗CD28剤(特に抗CD28抗体)、特に抗CD28のアンタゴニスト、とりわけ抗CD28アンタゴニスト抗体、抗Bcl-2剤(特に、ABT199又はGDC-0199とも呼ばれるベネトクラクス)、ベネトクラクス等のチロシン/キナーゼ経路の阻害剤からなる群から選択される。
【0108】
放射線療法はまた、患者への放射線照射又は付随する放射性医薬品の投与を含み得る。放射線照射の供給源は、処置される患者の外部である場合も、内部である場合もある(放射線照射処置は、例えば、外部照射療法(EBRT)又は近接照射療法(BT)の形態でありうる)。このような方法の実施において使用される放射活性元素として、例えば、ラジウム、セシウム-137、イリジウム-192、アメリシウム-241、金-198、コバルト-57、銅-67、テクネチウム-99、ヨウ素-123、ヨウ素-131及びインジウム-111が挙げられる。
【0109】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の治療剤は、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、抗血管新生剤、細胞周期制御/アポトーシス調節剤、ホルモン調節剤及び抗がん免疫原剤、特に抗がん抗体、とりわけ腫瘍標的化抗体からなる群から選択される。
【0110】
本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、化学療法、標的化療法、放射線療法、骨髄移植及び/又は操作された免疫細胞によって処置されている又は処置された又は処置される予定の患者に投与される。特定の実施形態では、抗CD127剤は、化学療法、標的化療法、放射線療法、骨髄移植及び又は操作された免疫細胞による処置に対して抵抗性である患者に投与される。化学療法は、がん細胞を死滅させる薬物の使用に相当し、通常、固形がん及び急性リンパ性白血病を含む白血病を有する小児及び成人の誘導療法として使用される。化学療法は、単独で、又は他の処置と組み合わせて使用され得る。化学療法剤はまた、地固め及び維持相において使用できる。標的化療法は、がん細胞内に存在する特定の異常に焦点を合わせた標的化薬物処置の使用に相当する。これらの異常を遮断することによって、標的化薬物処置は、がん細胞を死滅させることができる。標的化療法は、単独で、又は他の処置と組み合わせて使用できる。標的化療法は、地固め療法又は維持療法として使用できる。放射線療法は、高出力ビーム、例えばX線又は陽子を使用して、がん細胞を死滅させる。骨髄移植は、幹細胞移植としても知られ、地固め療法として、又は再発が生じる場合にはそれを処置するために使用できる。この手順によって、がん(特に白血病)を有する者が、がん性(特に白血病)骨髄を、健康なヒトから得たがんを含まない骨髄(特に白血病を含まない骨髄)と置き換えることによって、健康な骨髄を再確立することを可能にする。操作された免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞の使用に相当する。T細胞は、CAR分子で操作されうる。CARはT細胞の膜内に局在する。CARは、その細胞外部分として、抗体由来抗原認識ドメイン(普通、ScFv断片)を含み、その細胞内ドメインとして、特定の腫瘍抗原に対して活性化される能力をT細胞に付与するTCR由来活性化ドメインを含む、キメラ分子である(Gomes-Silvaら、Biotech J. 2017)。
【0111】
本発明の特定の実施形態では、抗CD127剤は、化学療法、標的化療法、放射線療法、骨髄移植及び/又は操作された免疫細胞のうち少なくとも1つの処置に対して不十分な応答を経験する患者に投与される。
【0112】
本発明の特定の実施形態では、処置されるべき患者はまた、炎症性中枢神経系(CNS)障害又は疾患を有する(Alsadeqら、Blood 2018)。特に、処置されるべき患者は、CNS障害又は疾患及びがん、特にALL、とりわけB-ALL、殊に以下に記載されるようなALLを有する。
【0113】
本発明の特定の実施形態では、処置されるべき患者は、以下の群:CD127+ALL、CD127過剰発現性ALL(これは、ALL細胞及び健康な骨髄細胞におけるCD127発現を比較することによって決定できる)、BCR-ABL1様ALLを含む、CD127及び/又はJAK-STATシグナル伝達経路が(健康な細胞と比較して)突然変異したALL(正常(例えば健康な)細胞と比較してIL-7Rシグナル伝達経路が機能障害性である(例えば、活性化、増強、阻害又は低減できない)ALL)、並びにt(1;19)、t(12,21)、MLL再編成、高二倍体核型、4番染色体トリソミー及び10番染色体トリソミーの細胞遺伝を有するB細胞前駆体ALLから選択される、ALLを有する。特定の実施形態では、本発明は、CD127野生型T-ALL(HPB-ALL細胞株)、CD127突然変異型T-ALL(DND41細胞株)、t(1;19)B-ALL(697細胞株)、t(12;21)B-ALL(REH細胞株)及びt(5;12)B-ALL(NALM6細胞株)からなる群から選択されるALLの処置のための、CD127陽性がん細胞を標的とするマクロファージの抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有する(すなわち、陰性対照と比較して、前記活性を増大する)抗CD127抗体又はその抗原結合性断片であって、特に、前記活性がマクロファージによって達成されるか又はマクロファージに関わる、抗CD127抗体又はその抗原結合性断片に関する。
【0114】
・薬剤の組合せ
本発明の一実施形態では、本発明の方法において使用するための又は本発明に従って使用するための抗CD127剤は、別の治療剤のような少なくとも第2の有効成分と組み合わせて患者に投与される。前記第2の有効成分として、限定されるものではないが、プロバイオティクス及び後記されるような治療剤が挙げられる。本発明の方法において使用するための又は本発明に従って使用するための抗CD127剤は、いくつかの異なる第2の有効成分と共に投与されうる。
【0115】
したがって、本発明はまた、少なくとも1つの第2の有効成分と組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せに関する。組合せは、CD127陽性腫瘍細胞の貪食を増強することによるCD127陽性がんの処置において使用するためのものである。第2の有効成分は、CD127陽性腫瘍細胞の貪食に対する何らかの効果を必ずしも有するものではないが、がんの処置において有用な他の特性を有する場合がある。
【0116】
一部の実施形態では、本発明の方法において使用するための又は本発明に従って使用するための抗CD127剤は、標準(従来)処置と組み合わせて患者に投与される。したがって、本発明は、がんの処置において使用するための、本発明の方法において使用するための又は本発明に従って使用するための抗CD127剤の、従来処置との組合せに関する。本明細書で使用される場合、用語「標準又は従来処置」とは、がんを患っている患者に普通投与されるがんの任意の処置(薬物、放射線療法等)を指す。
【0117】
一部の実施形態では、本発明の方法において使用するための又は本発明に従って使用するための抗CD127剤は、少なくとも1つの、例えばがんを処置するためのさらなる治療剤と組み合わせて対象に投与される。このような投与は、同時、別個又は逐次でありうる。同時投与のために、薬剤は、必要に応じて1つの組成物として又は別個の組成物として投与されうる。さらなる治療剤は通常、処置されるべき障害と関連する。例示的治療薬として、他の抗がん抗体、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、抗血管新生剤、抗がん免疫原剤、細胞周期制御/アポトーシス調節剤、ホルモン調節剤及び後記される他の薬剤が挙げられる。
【0118】
一部の実施形態では、本発明の方法において使用するための又は本発明に従って使用するための抗CD127剤は、化学療法剤、標的化がん療法剤、免疫治療剤又は放射線療法剤と組み合わせて使用される。
【0119】
一部の実施形態では、本発明の方法において使用するための又は本発明に従って使用するための抗CD127剤は、化学療法剤又は標的化療法剤と組み合わせて使用される。したがって、本発明は、CD127陽性がんの処置において使用するための、CD127のアンタゴニストと化学療法剤又は標的化療法剤との組合せに関する。
【0120】
第2の治療剤は、抗CD3剤、特に抗CD3抗体、抗PD1剤、特にアンタゴニスト抗PD1抗体、抗PDL1剤、特にアンタゴニスト抗PDL1抗体、抗CTLA4剤、特にアンタゴニスト抗CTLA4抗体、CD137のアゴニスト、特にアゴニスト抗CD137抗体、抗VEGF剤、特に抗VEGF抗体、抗CLEC-1剤、特に抗CLEC-1抗体、抗CD28剤、特に抗CD28抗体、抗CD19剤、特に抗CD19抗体、及び抗CD47剤、特に抗CD47抗体、とりわけ抗CD47アンタゴニスト剤、殊に抗CD47アンタゴニスト抗体、抗SIRPaアンタゴニスト剤、とりわけ抗SIRPaアンタゴニスト抗体、抗Bcl-2剤(特に、ABT199又はGDC-0199とも呼ばれるベネトクラクス)、チロシン/キナーゼ経路の阻害剤、デキサメタゾン、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、アラノン(Arranon)(ネララビン)、アスパラギナーゼ黒脚病菌(Erwinia chrysanthemi)(又はアーウィナーゼ(Erwinaze))、アスパラス(Asparlas)(又はカラスパルガーゼペゴル(Calaspargase Pegol)-mknl)、ベスポンサ(イノツズマブオゾガミシン)、ブリナツモマブ(又はビーリンサイト)、及びセルビジン(又はダウノルビシンヒドロクロリド若しくはルビドマイシン(Rubidomycin))、クロファラビン(又はクロラール)、シクロホスファミド、シタラビン、ダサチニブ(又はスプリセル)、ドキソルビシンヒドロクロリド、グリーベック(メシル酸イマチニブ)、アイクルシグ(ポナチニブヒドロクロリド)、イノツズマブオゾガミシン、メシル酸イマチニブ、キムリア(又はチサゲンレクロイセル)、ビンクリスチン、マルキボ(Marqibo)(硫酸ビンクリスチンリポソーム)、メルカプトプリン(又はピュリネソール(Purinethol)若しくはプリクサン(Purixan))、メトトレキサートナトリウム(又はトレキサール(Trexall))、ネララビン、オンキャスパー(又はペグアスパラガーゼ/PEG-アスパラギナーゼ)、ポナチニブヒドロクロリド、プレドニゾン、ピュリネソール(メルカプトプリン)、硫酸ビンクリスチン又は硫酸ビンクリスチンリポソームからなるリストから選択されうる。本発明の特定の実施形態では、第2の治療薬は、デキサメタゾン、抗CD47アンタゴニスト抗体、チロシンキナーゼ経路の阻害剤からなるリストから選択される(Malard及びMohty、The Lancet 2020)。
【0121】
本明細書で使用される場合、抗CD47アンタゴニスト剤、特に抗CD47アンタゴニスト抗体は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、CD47の生物活性を遮断、抑制又は低減する天然又は合成の任意の化合物を指す。特に、CD47アンタゴニストは、CD47とそのリガンドのうちの1つ、特にSIRPaとの間の相互作用を阻害するを阻害する。
【0122】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の有効成分と組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せが提供され、少なくとも1つの第2の有効成分は、抗CD47アンタゴニスト剤、特に、抗CD47アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片である。
【0123】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の有効成分と組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せが提供され、少なくとも1つの第2の有効成分は、抗SIRPaアンタゴニスト剤、特に、抗SIRPaアンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片である。
【0124】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の有効成分と組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せが提供され、少なくとも1つの第2の有効成分は、抗Bcl-2剤、特にベネトクラクス(例えば、Richard-Carpentierら、Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2020を参照されたい)である。特定の実施形態では、化合物のこの組合せ(すなわち、抗CD127剤及び抗Bcl-2剤)は、化学療法と組み合わせて、特に、同時に、別個に又は逐次投与される。
【0125】
チロシン/キナーゼ経路の阻害剤は、チロシンキナーゼを阻害する医薬品である。これらの阻害剤は普通、チロホスチンと呼ばれる。これらの阻害剤は普通、アデノシン三リン酸(ATP)、チロシンキナーゼのリン酸化実体、チロシンキナーゼの基質と競合するか、又はチロシンキナーゼの構造を改変し、それによってそのリン酸化活性を改変する。
【0126】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の有効成分と組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せが提供され、少なくとも1つの第2の有効成分は、限定されるものではないが、アクロニムTKI(チロシンキナーゼ阻害剤)と呼ばれる医薬品のような、チロシン/キナーゼ経路の阻害剤である。TKIの例としては、限定されるものではないが、チロホスチン、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ダサチニブ、スニチニブ、アダボセルチブ、ラパチニブが挙げられる。
【0127】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の有効成分と組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せが提供され、少なくとも1つの第2の有効成分は、抗Bcl-2剤である。抗Bcl-2剤は、潜在的アポトーシス促進活性及び抗悪性腫瘍活性を有する抗アポトーシスタンパク質B細胞リンパ腫2(Bcl-2)の阻害剤である。本発明の特定の実施形態では、抗Bcl-2剤は、ベネトクラクス(ABT199又はGDC-0199とも呼ばれる)、オブリメルセン、ナビトクラクス、オバトクラックス、オバトクラックスメシレートからなる群から選択される。抗Bcl-2剤は、細胞性アポトーシスを阻害するBcl-2によって誘導される細胞性経路を遮断することによって腫瘍退縮を誘導することが知られている。このタンパク質を標的化することは、がん療法において、特にALL療法において、高い有効性を有することが実証されている。
【0128】
特定の実施形態では、少なくとも1つの標準治療処置(SOC処置)と組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せが提供される。SOC処置は、ある特定の種類の疾患のための適切な処置として医療専門家によって承認され且つヘルスケアの専門家によって広く使用されている処置と考えられる場合がある。また、最良実施、標準医療及び標準療法とも呼ばれる。特定の実施形態では、特定のがんの種類、特に急性リンパ性白血病(ALL)、とりわけT細胞ALL又はB細胞ALLの少なくとも1つの標準治療処置と組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せが提供される。標準治療処置には、それを必要とする患者への化学療法剤、例えば、ペメトレキセド(アリムタ)、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン(ジェムザール)、ビノレルビン、ドキソルビシン、パクリタキセル、又は放射線療法、又は免疫治療剤、例えば、アバスチン(ベバシズマブ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ニボルマブ(オプジーボ)、イピリムマブ(ヤーボイ)の投与が含まれていた。特定の実施形態では、少なくともデキサメタゾン、オンキャスパー(ペグアスパラガーゼ/PEG-アスパラギナーゼとしても知られている)及びビンクリスチンを含む、ALLの少なくとも1つの標準治療処置(SOC処置)と組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せが提供される。より特定の実施形態では、デキサメタゾン、オンキャスパー(ペグアスパラガーゼ/PEG-アスパラギナーゼとしても知られている)及びビンクリスチンと組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せが提供される。
【0129】
特定の実施形態では、
- 化学療法剤、例えば、ペメトレキセド(アリムタ)、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン(ジェムザール)、ビノレルビン、ドキソルビシン、パクリタキセルを含む葉酸類似体、
- 免疫治療剤、例えば、アバスチン(ベバシズマブ)を含む抗VEGF剤、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ニボルマブ(オプジーボ)を含む抗PD-1剤、イピリムマブ(ヤーボイ)を含む抗CTLA4剤
を含む中皮腫の少なくとも1つの標準治療処置(SOC処置)と組み合わせた、本発明の方法において使用するための又は本発明に従う使用のための抗CD127剤の組合せが提供される。
【0130】
本発明の特定の実施形態では、
a)CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、ADCC活性を有さない、抗CD127剤、特に、抗CD127抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体ミメティック、並びに
b)デキサメタゾン及び/若しくはオンキャスパー及び/若しくはビンクリスチン、特にデキサメタゾン及びオンキャスパー及びビンクリスチン、並びに/又は抗CD47アンタゴニスト抗体及び/若しくは抗SIRPa抗体及び/若しくは抗BCL2剤及び/若しくはチロシン/キナーゼ経路の阻害剤、特にデキサメタゾン
を含む、化合物の組合せが提供される。
【0131】
本発明の特定の実施形態では、
a)少なくとも
・VHCDR1配列番号3、
・VHCDR2配列番号4、
・VHCDR3配列番号5又は配列番号6
のアミノ酸配列を含むVH鎖
及び少なくとも:
・VLCDR1配列番号7又は配列番号8、
・VLCDR2配列番号9又は配列番号10、
・VLCDR3配列番号11
のアミノ酸配列を含むVL鎖
を含む、抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片であり、
CD127陽性細胞、特にCD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによるADCP活性を示し、ADCC活性を有さない、抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片、並びに
b)デキサメタゾン及び/若しくはオンキャスパー及び/若しくはビンクリスチン、特にデキサメタゾン及びオンキャスパー及びビンクリスチン、並びに/又は抗CD47アンタゴニスト抗体及び/若しくは抗SIRPa抗体及び/若しくは抗BCL2剤及び/若しくはチロシン/キナーゼ経路の阻害剤、特にデキサメタゾン
を含む、化合物の組合せが提供される。
【0132】
特定の実施形態では、化合物の組合せ中に存在する抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体は、
少なくとも
・VHCDR1配列番号3、
・VHCDR2配列番号4、
・VHCDR3配列番号5
のアミノ酸配列を含むVH鎖
及び少なくとも
・VLCDR1配列番号7、
・VLCDR2配列番号9、
・VLCDR3配列番号11
のアミノ酸配列を含むVL鎖
を含む。
【0133】
特定の実施形態では、化合物の組合せ中に存在する抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体は、
少なくとも
・VHCDR1配列番号3、
・VHCDR2配列番号4、
・VHCDR3配列番号6
のアミノ酸配列を含むVH鎖
及び少なくとも
・VLCDR1配列番号8、
・VLCDR2配列番号10、
・VLCDR3配列番号11
のアミノ酸配列を含むVL鎖
を含む。
【0134】
本発明の特定の態様では、化合物の組合せは、
i)配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15又は配列番号22、特に配列番号15又は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメイン、及び
配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号23、配列番号24、配列番号25又は配列番号26、特に配列番号19又は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメイン
を含む抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片である抗CD127剤
並びに
ii)デキサメタゾン及び/若しくはオンキャスパー及び/若しくはビンクリスチン、特にデキサメタゾン及びオンキャスパー及びビンクリスチン、並びに/又は抗CD47アンタゴニスト抗体及び/若しくは抗SIRPa抗体及び/若しくは抗BCL2剤及び/若しくはチロシン/キナーゼ経路の阻害剤、特にデキサメタゾン
を含む。
【0135】
特定の実施形態では、化合物の組合せ中に存在する抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体は、
配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン、及び配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は
配列番号15に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン、及び配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は
配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメイン、及び配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメイン
を含む。
【0136】
本発明の特定の態様では、化合物の組合せは、
- 配列番号20又は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖、及び配列番号21、配列番号28又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖を含む、抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体又はその抗原結合性断片である抗CD127剤、
並びに
- デキサメタゾン及び/若しくはオンキャスパー及び/若しくはビンクリスチン、特にデキサメタゾン及びオンキャスパー及びビンクリスチン、並びに/又は抗CD47アンタゴニスト抗体及び/若しくは抗SIRPa抗体及び/若しくは抗BCL2剤及び/若しくはチロシン/キナーゼ経路の阻害剤、特にデキサメタゾン
を含む。
【0137】
特定の実施形態では、化合物の組合せ中に存在する抗ヒトCD127アンタゴニスト抗体は、配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれで構成される重鎖、及び配列番号28又は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖、特に、配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれで構成される重鎖、及び配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖を含むか、又はそれからなる。
【0138】
・CD127陽性がんを処置するための特定の方法
一部の実施形態では、本発明の方法又は本発明に記載されるような抗CD127剤の使用は、CD127陽性がんを有し、従来の処置、例えば化学療法並びに/又は抗CD3、抗CD19及び/若しくは抗CD47化合物の投与による、そのがんの処置に付随する有害な副作用を有する患者を処置するためのものである。有害な副作用には、サイトカイン放出症候群、重症神経毒性、類洞閉塞症候群、肝毒性、リンパ球枯渇が含まれうる。
【0139】
特定の実施形態では、本発明の方法又は本発明に記載されるような抗CD127剤の使用は、補完処置として、がん、特にALL、特にCD127陽性がんを有する患者を処置するためのものであり、患者は、第1の処置、特に、化学療法、幹細胞移植を伴う化学療法、放射線療法、手術及び/又は免疫療法で処置されている又は処置されていた者である。
【0140】
特定の実施形態では、本発明の方法又は本明細書で記載されるような抗CD127剤の使用は、補完処置として、がん、特にCD127陽性がん、特にALLを有する患者処置するためのものであり、使用の方法は、患者がCD127陽性がんを有するか否か、特に、患者がCD127陽性白血病又は固形がん、特にCD127陽性ALLを有するか否かを決定する第1の工程を含む。
【0141】
特定の実施形態では、患者がCD127陽性腫瘍細胞を有すると評価された後、本発明の抗CD127剤が前記患者に投与される。
【0142】
特に、患者からこれまでに得られた生体試料、特に血液試料が、CD127陽性細胞の存在についてアッセイされる。
【0143】
特定の実施形態では、本発明に従った、CD127陽性がんを有する患者を処置するための方法は、以下の工程を含む:
a)患者がCD127陽性腫瘍細胞を有するか否かを決定すること、
b)患者がCD127陽性腫瘍細胞を有する場合に、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない、有効量の抗CD127剤、特に、抗CD127抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体ミメティックを、患者に投与すること。
【0144】
特定の実施形態では、本発明の方法又は本明細書に記載されるような抗CD127剤の使用は、ALLを有し、ALLの従来処置での処置のためにリンパ球枯渇を起こしている患者を処置するためのものである。
【0145】
特定の実施形態では、本発明の方法又は本明細書に記載されるような抗CD127剤の使用は、ALLを有する患者を、ALLから生じた転移性細胞が中枢神経系内を通過する前に処置するためのものである。抗CD127剤の使用は、実際、ALLの従来処置とは対照的に、転移性細胞が中枢神経系に伝播することを妨げる可能性がある。
【0146】
特定の実施形態では、本発明の方法又は本明細書に記載されるような抗CD127剤の使用は、転移性細胞を有し、前記転移性細胞が中枢神経系に到達していないALLを有する患者を処置するためのものである。抗CD127剤の使用は、実際、ALLの従来処置とは対照的に、転移性細胞が中枢神経系に伝播することを妨げる可能性がある。
【0147】
特定の実施形態では、本発明の方法又は本明細書に記載されるような抗CD127剤の使用は、ALLを有する、特に、従来処置の毒性のために、又はこのような処置に対する患者の非応答性状態のために、又はこのような処置に対する獲得された抵抗性のために、ALLの従来処置で処置できない患者を処置するためのものである。
【0148】
特定の実施形態では、本発明の方法又は本明細書に記載されるような抗CD127剤の使用は、ALLを有し、ALLの従来処置での処置に対して正に応答しない患者、特に、以下の薬物:抗CD3剤、特に抗CD3抗体、抗CD19剤、特に抗CD19抗体、及び抗CD47剤、特に抗CD47抗体、特に抗CD47アンタゴニスト剤、特に抗CD47アンタゴニスト抗体、抗SIRPaアンタゴニスト剤、とりわけ抗SIRPaアンタゴニスト抗体、抗Bcl-2剤、特にベネトクラクス、チロシン/キナーゼ経路の阻害剤、デキサメタゾン、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブアラノン(ネララビン)、アスパラギナーゼ黒脚病菌(Erwinia chrysanthemi)(又はアーウィナーゼ)、アスパラス(又はカラスパルガーゼペゴル-mknl)、ベスポンサ(イノツズマブオゾガミシン)、ブリナツモマブ(又はビーリンサイト)、及びセルビジン(又はダウノルビシンヒドロクロリド若しくはルビドマイシン)、クロファラビン(又はクロラール)、シクロホスファミド、シタラビン、ダサチニブ(又はスプリセル)、デキサメタゾン、ドキソルビシンヒドロクロリド、グリーベック(メシル酸イマチニブ)、アイクルシグ(ポナチニブヒドロクロリド)、イノツズマブオゾガミシン、メシル酸イマチニブ、キムリア(又はチサゲンレクロイセル)、ビンクリスチン、マルキボ(硫酸ビンクリスチンリポソーム)、メルカプトプリン(又はピュリネソール若しくはプリクサン)、メトトレキサートナトリウム(又はトレキサール)、ネララビン、オンキャスパー(又はペグアスパラガーゼ/PEG-アスパラギナーゼ)、ポナチニブヒドロクロリド、プレドニゾン、ピュリネソール(メルカプトプリン)、硫酸ビンクリスチン又は硫酸ビンクリスチンリポソームのうちの少なくとも1つに対して応答しない患者を処置するためのものである。特定の実施形態では、患者は、抗CD47アンタゴニスト抗体、抗SIRPa抗体、抗Bcl-2剤、オンキャスパー、ビンクリスチン、チロシン/キナーゼ経路の阻害剤及びデキサメタゾン、特にデキサメタゾン、とりわけ、デキサメタゾン及びオンキャスパー及びビンクリスチンからなるリストから選択される化合物での処置に対して正に応答しない。
【0149】
一部の実施形態では、本発明の方法又は本明細書で記載されるような抗CD127剤の使用は、CD127陽性がんを有し、有害な副作用を有することについて公知である従来処置、例えば、化学療法並びに/又は抗CD3化合物の投与及び/若しくは抗CD19化合物及び/若しくは抗CD47化合物の投与及び/若しくは抗SIRPa化合物の投与及び/若しくは抗Bcl-2剤の投与及び/又はデキサメタゾンの投与及び/若しくはチロシン/キナーゼ経路の阻害剤でまだ処置されていない患者を処置するためのものである。
【0150】
一部の実施形態では、本発明の方法又は本明細書で記載されるような抗CD127剤の使用は、CD127陽性がんを有する、デキサメタゾンの投与等の従来処置に対して抵抗性である患者を処置するためのものである。
【0151】
一部の実施形態では、本発明の方法又は本明細書で記載されるような抗CD127剤の使用は、CD127陽性がんを有し、まだ転移していない患者を処置するためのものである。
【0152】
一部の実施形態では、本発明の方法又は本明細書で記載されるような抗CD127剤の使用は、CD127陽性がんを有し、小児である(すなわち、15歳未満である)患者を処置するためのものである。
【0153】
一部の実施形態では、本発明の方法又は本明細書で記載されるような抗CD127剤の使用は、IL-7Rシグナル伝達経路が機能障害性である、特に、機能性ではない又は構成的に活性化されないCD127陽性がんを有する患者を処置するためのものである。
【0154】
・ブリナツモマブ又はデキサメタゾンのような抗CD19剤での処置と置き換えて抗CD127剤で処置されるべき患者を選択する方法
本発明の一実施形態では、CD127陽性がん、特にALL、とりわけT細胞ALL又はB細胞ALL、殊に、CD127過剰発現性急性リンパ性白血病(ALL)、CD127及び/又はJAK-STAT経路突然変異型ALL、BCR-ABL1様ALL、並びにt(1;19)、t(12,21)、MLL再編成、高二倍体核型、4番染色体トリソミー及び10番染色体トリソミーのうち1つの細胞遺伝を有するB細胞前駆体ALLを有し、本記載で定義されるような抗CD127剤の投与によって処置できる患者を選択する方法が提供され、方法は、腫瘍細胞によるCD127の発現の測定及び腫瘍細胞によるCD19の発現の測定を含み、患者は、i)腫瘍細胞がCD127を発現する場合、及びii)ブリナツモマブのような抗CD19剤による処置に対して抵抗性であることを意味する腫瘍細胞がCD19を発現しない場合に、抗CD127剤の投与によって処置できる。
【0155】
本発明の一実施形態では、CD127陽性がん、特にALL、とりわけT細胞ALL又はB細胞ALL、殊に、CD127過剰発現性急性リンパ性白血病(ALL)、CD127及び/又はJAK-STAT経路突然変異型ALL、BCR-ABL1様ALL、並びにt(1;19)、t(12,21)、MLL再編成、高二倍体核型、4番染色体トリソミー及び10番染色体トリソミーのうち1つの細胞遺伝を有するB細胞前駆体ALLを有し、本記載で定義されるような抗CD127剤の投与によって処置できる患者を選択する方法が提供され、方法は、デキサメタゾンでの処置に対する腫瘍細胞の抵抗性の測定を含み、腫瘍細胞がデキサメタゾンに対して抵抗性である場合には、方法は、単独の又はデキサメタゾンと組み合わせた本明細書で記載されるような抗CD127剤での処置に対する腫瘍細胞の抵抗性の測定を更に含む。
【0156】
・患者が抗CD127剤での処置に対して応答する見込みを決定する方法
一実施形態では、本発明は、がんと診断された患者が抗CD127剤での処置から恩恵を受ける見込みを決定する方法に関し、方法では、患者から以前に得た生体試料、特に血液試料が、CD127陽性細胞の存在についてアッセイされ、このような細胞が試料中に含有される場合には、患者の状態は、本明細書で記載されるような抗CD127剤での処置から恩恵を受ける可能性が高いと考えられる。
【0157】
一実施形態では、本発明は、がんと診断された患者が抗CD127剤での処置から恩恵を受ける見込みを決定する方法に関し、方法では、患者から以前に得た生体試料、特に血液試料が、CD127陽性細胞の存在についてアッセイされ、このような細胞が試料中に含有される場合には、IL-7Rシグナル伝達経路の活性が測定され、且つこの経路が機能障害性であるか否か、特に、機能性ではない又は構成的に活性ではないかを評価するために正常細胞と比較され、経路が機能障害性である場合には、患者の状態は、本明細書で記載されるような抗CD127剤での処置から恩恵を受ける可能性が高いと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
図面の説明文
【
図1】患者由来異種移植片(PDX)実験における微小残存病変(MRD)根絶を示す図である。(A)及び(B)は、t(1;19)B-ALLを有する2人の異なる小児患者から生じた2つのPDXの移植後の日数にわたるマウスの生存の確率に相当する。マウスは、ADCP能力を有する2つの異なる抗CD127剤(赤色のアンタゴニスト抗CD127剤(N13B2-hVL6)及び緑色の中立の(すなわち、アンタゴニストではなく、アゴニストでもない)抗CD127剤、Effi-3-VH3VL3)並びに陰性対照(青色)で処置されている。(C)は、4つの異なるT-ALL PDXの状況における、すべて白血病を発症した対照マウスとは対照的に、N13B2-hVL6で処置されたマウスの末梢血における白血病性芽球の不在を示す。
【
図2】患者由来異種移植片(PDX)実験における顕性白血病の遅延した発症を示す図である。(A)及び(B)は、t(1;19)B-ALLを有する2人の異なる小児患者から生じた2つの顕性白血病PDXの移植後日数におけるマウスの生存の確率に相当する。(A1)及び(B1)において例証される結果は、ADCP能力を有するアンタゴニスト抗CD127剤(赤色、N13B2-hVL6)及び陰性対照(青色)で処置されたマウスに相当する。(A2)及び(B2)において例証される結果は、ADCP能力を有する中立の(すなわち、アンタゴニストではなく、アゴニストでもない)抗CD127剤(緑色、Effi-3-VH3VL3)及び陰性対照(青色)で処置されたマウスに相当する。(C)及び(D)は、B-ALL及びT-ALLの顕性白血病PDXコホートにおけるADCP+/ADCC-抗CD127剤N13B2-hVL6(橙色)及び陰性対照(青色)で処置されたマウスの生存のパーセンテージに相当する。(E)は、ADCP+/ADCC-抗CD127剤のin vivo有効性(対照処置されたマウスと比較した、N13B2-hVL6処置されたマウスの生存時間の増大変化倍数)とALL患者由来異種移植細胞において検出されたCD127発現レベルとの間の相関を例証する。
【
図3】異なる種類の急性リンパ性白血病から生じた腫瘍細胞株のパネルにおける、N13B2-hVL6の特異的抗体結合の定量化を示す。Jurkat、HPB-ALL及びDND41は、3つの異なるT細胞ALL細胞株に相当する。697、NALM6及びREHは、3つの異なるB-ALL細胞株に相当する。特異的結合性N13B2-hVL6は、各細胞株でのアイソタイプ対照のものと比較した蛍光強度の変化倍数として評価した。
【
図4】漸増濃度のN13B2-hVL6の存在下での貪食指数の変動を示す図である。(A)アンタゴニスト抗CD127剤(N13B2-hVL6)で処置された異なる種類の急性リンパ性白血病細胞株から生じた腫瘍細胞の正規化された貪食指数。(B)患者白血病細胞でADCP+/ADCC-抗CD127 N13B2-hVL6剤を用いてin vitroで測定された貪食指数と、対照処置と比較した、この同一の薬剤を用いてin vivo処置によって誘導された変化倍数(FC)PDXマウス生存との間の相関。
【
図5】対照と比較した、ADCP+ADCC-能力のN13B2-hVL6で処置された試料における白血病細胞の貪食を示す図である。白血病細胞(NALM6細胞株)は赤色であり、ヒトM1マクロファージは、緑色である。白色矢印は、白血病細胞を貪食しているマクロファージを指す。
【
図6】T-ALLモデルにおける白血病細胞の正規化された貪食指数を示す図である。2つのT-ALL細胞系統(右側のHPB-ALL及び左側のDND41 IL7-R突然変異型)は、漸増用量の抗CD127抗体(N13B2-hVL6、1A11及びEFFI-3-VH3VL3)で処置されている。
【
図7】B-ALLモデルにおける白血病細胞の正規化された貪食指数を示す図である。3つのB-ALL細胞株(左上部の697 t(1;19)BCP-ALL、右上部のNALM6 DUX4 BCP-ALL及び下部のREH t(12;21) BCP-ALL)は、漸増用量の抗CD127抗体(N13B2-hVL6、1A11、HAL及びEFFI-3-VH3VL3)で処置されている。
【
図8】マクロファージに対する抗CD127抗体及び抗CD47抗体の毒性を示す図である。抗CD127抗体(N13B2-hVL6)又は抗CD47抗体(5F9)で処置されたマクロファージの生存力が、漸増用量の抗体を用いて評価されている。
【
図9】抗CD127抗体又は抗CD47抗体を用いてALLを処置するための治療ウィンドウを示す図である。正常T細胞対罹患細胞(B-ALLのREHモデル)の貪食指数が、漸増用量の抗CD127抗体(N13B2-hVL6)又は抗CD47抗体(5F9)で処置された試料において比較されている。
【
図10】健康な免疫細胞に対するin vitro毒性効果を欠くことを示す図である。(A)陰性対照抗体(hlgG4)と比較した、抗CD47抗体(5F9)、抗CD127抗体(N13B2-hVL6)を用いて処置された場合のマクロファージによるマクロファージの貪食(本明細書では「自己貪食」と呼ばれる)。(B)本発明に従って使用される抗CD127剤(N13B2-hVL6)及び陽性対照(ADCC活性を有することが知られている抗CD127抗体)の存在下でのナチュラルキラー細胞(NK)によるヒトT細胞に対するADCC。(C)本発明に従って使用される抗CD127剤バリアント(N13B2-h3、N13B2-hVL3、N13B2-hVL4、N13B2-hVL5及びN13B2-hVL6)及び陽性対照(ADCC活性を有することが知られている抗CD127抗体)の存在下でのナチュラルキラー細胞(NK)によるヒトCD127+細胞に対するADCC。VL3、-VL4、-VL5、VL6及びN13B2-h3は、CDRドメインの同一のサブセット(配列番号3のHCDR1、配列番号4のHCDR2、配列番号6のHCDR3、配列番号8のLCDR1、配列番号10のLCDR2及び配列番号11のLCDR3に相当する)を共有するが、異なるフレームワーク配列を有する。N13B2-hVL6は、配列番号22の重鎖可変ドメイン及び配列番号26の軽鎖可変ドメインを有し;N13B2-hVL3は、配列番号22の重鎖可変ドメイン及び配列番号23の軽鎖可変ドメインを有し;N13B2-hVL4は、配列番号22の重鎖可変ドメイン及び配列番号24の軽鎖可変ドメインを有し;N13B2-hVL5は、配列番号22の重鎖可変ドメイン及び配列番号25の軽鎖可変ドメインを有する。
【
図11】N13B2-hVL6で処置した健康なボランティアの血液中のリンパ球数を示す図である。(A)及び(B)は、単回投与用量漸増コホート(SAD、1回の静脈内注射)及び複数回投与用量漸増コホート(MAD、2回の静脈内注射、15日間隔)に参加している健康なボランティアから採取した血液試料において測定したリンパ球カウントに相当する。
【
図12】白血病細胞に対するデキサメタゾンの効果を示す図である。(A)デキサメタゾン(HPB-ALL細胞株、48時間処置)に対するT-ALL細胞の抵抗性の例。(B)HPB-ALL細胞におけるデキサメタゾン用量依存性のCD127発現の誘導(48時間処置)。
【
図13】他の白血病処置と組み合わせたADCP+/ADCC-抗CD127剤の有効性を示す図である。(A)デキサメタゾン治療(10μM、48時間)を伴う(赤色三角)又は伴わない(黒色点)N13B2-hVL6に応じたHPB-ALL T-ALL細胞の貪食指数。(B)ADCP+/ADCC-抗CD127剤N13B2-hVL6と共の(赤色三角)又はアイソタイプ対照と共の(青色点)抗CD47抗体(5F9、マグロリマブ)処置に応じたNALM6 B-ALL細胞の貪食指数。(C)顕性白血病ALL PDXのコホートにおける、陰性対照(青色点)、ADCP+/ADCC-抗CD127剤N13B2-hVL6(橙色三角)、ALL標準治療処置(デキサメタゾン、ビンクリスチン及びPEG-アスパラギナーゼを含む化合物の組合せの投与からなる;紫色四角)又はN13B2-hVL6と上記で記載されるような標準治療の組合せ(デキサメタゾン、ビンクリスチン及びPEG-アスパラギナーゼを含む化合物の組合せ;緑色逆三角)を用いて処置された、顕性白血病ALL PDXを有するマウスの生存のパーセンテージ。
【
図14】本説明で定義されるようないくつかの抗CD127抗体を用いて処置された白血病細胞の貪食指数を示す図である。(A)BCP-ALL細胞株において、及び(B) REH t(12;21)BCP-ALL細胞株におい。NB13B2-hVL6、VL3、VL4、VL5及びN13B2-h3は、CDRドメインの同一のサブセット(配列番号3のHCDR1、配列番号4のHCDR2、配列番号6のHCDR3、配列番号8のLCDR1、配列番号10のLCDR2及び配列番号11のLCDR3に相当する)を共有するが、異なるフレームワーク配列を有する。N13B2-hVL6は、配列番号22の重鎖可変ドメイン及び配列番号26の軽鎖可変ドメインを有し;VL3は、配列番号22の重鎖可変ドメイン及び配列番号23の軽鎖可変ドメインを有し;VL4は、配列番号22の重鎖可変ドメイン及び配列番号24の軽鎖可変ドメインを有し;VL5は、配列番号22の重鎖可変ドメイン及び配列番号25の軽鎖可変ドメインを有する。N13B2アルファ及びベータは、N13B2-hVL6と密接に関連するCDRドメイン(6つのCDRドメイン内に1つ又は2つの突然変異のみを有する)(配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9及び配列番号11の配列のCDR)を共有するキメラ抗CD127抗体である。
【
図15】ELISAによって評価された、N13B2-hVL6及び対照ADCP+/ADCC+抗CD127抗体の、主FCγR、すなわちCD16a(A)、CD32a(B)及びCD64(C)への結合を示す図である。
【
図16】HPB-ALL細胞誘導性T-ALLに対するADCP+/ADCC-抗CD127 N13B2-hVL6剤の抗白血病活性の根底にある機序を示す図である。(A)ヒトマクロファージの存在下でHPB-ALL T-ALL細胞のN13B2-hVL6(赤色点)又はN13B2-hVL6 LALAPG(緑色四角)処置によって誘導された貪食指数。(B)フローサイトメトリーによって評価されたIL-7(5ng/mL)+N13B6-hVL6治療に応じたHPB-ALL細胞におけるリン酸化STAT5(p-STAT5)細胞のパーセンテージ。(C)HPB-ALL細胞株由来異種移植(CDX)モデルのin vivo照合の模式的概観。(D)対照(青色)、ADCP+/ADCC-抗CD127剤N13B2-hVL6(橙色)又はADCP-/ADCC-N13B2-hVL6 LALAPG抗CD127剤(緑色)を用いた処置に応じたHPB-ALL CDXマウスの全生存中央値。星印は、ログランク検定を用いる調査を使用したp<0.05を示す。(E) in vitroでのIL-7(暗赤色)、IL-7+N13B2-hVL6(淡赤色)、N13B2-hVL6(淡青色)処置に応じた、又はモック処置(暗青色)に応じた生存HPB-ALL細胞数。
【
図17】T-ALL患者由来異種移植に対するADCP+/ADCC-抗CD127 N13B2-hVL6剤の抗白血病活性の根底にある機序を示す図である。(A)フローサイトメトリーによって評価されたCD127を発現するT-ALL患者の白血病性芽球のパーセンテージ。フローサイトメトリーによって評価された、N13B6-hVL6用量応答処置に応じた同一の患者白血病性芽球における、IL-7刺激を用いた(5ng/mL)又は用いないリン酸化STAT5(p-STAT5)細胞のパーセンテージ(B)、及びp-STAT5陽性細胞のパーセンテージ(C)。in vitroでIL-7(暗赤色)、IL-7+N13B2-hVL6(淡赤色)、N13B2-hVL6(淡青色)処置に応じた、又はモック処置(暗青色)に応じた、死細胞のパーセンテージ(D)、及び生存細胞数(E)。(F)対照(青色)又はADCP+/ADCC-抗CD127剤N13B2-hVL6(橙色)に応じた同一T-ALL患者由来異種植マウスの全生存中央値。
【
図18】NALM6細胞誘導性B-ALLにおけるADCP+/ADCC-抗CD127 N13B2-hVL6剤の抗白血病活性の根底にある機序を示す図である。(A)ヒトマクロファージの存在下でNALM6 B-ALL細胞のN13B2-hVL6(赤色点)又はN13B2-hVL6 LALAPG(緑色四角)処置によって誘導された貪食指数。(B)フローサイトメトリーによって評価されたIL-7(5ng/mL)+N13B6-hVL6処置に応じたNALM6細胞におけるリン酸化STAT5(p-STAT5)細胞のパーセンテージ。(C)NALM6細胞株由来異種移植(CDX)モデルのin vivo照合の模式的概観。(D)対照(青色)、ADCP+/ADCC-抗CD127剤N13B2-hVL6(橙色)、又はADCP-/ADCC-N13B2-hVL6 LALAPG抗CD127剤(緑色)を用いた処置に応じたNALM6 CDXマウスの全生存中央値。星印は、ログランク検定を用いる調査を使用したp<0.005を示す。
【
図19】B-ALL患者由来異種移植に対するADCP+/ADCC-抗CD127 N13B2-hVL6剤の抗白血病活性の根底にある機序を示す図である。(A)フローサイトメトリーによって評価されたCD127を発現するB-ALL患者の白血病性芽球のパーセンテージ。フローサイトメトリーによって評価された、N13B6-hVL6用量応答処置に応じた、IL-7刺激の存在下でのリン酸化STAT5(p-STAT5)のパーセンテージ(B)、及び同一患者白血病性芽球におけるマクロファージ媒介性貪食のパーセンテージ(C)。p-STAT5評価(B)については、陽性対照としてHPB-ALL細胞株を使用した。(D)対照(青色)又はADCP+/ADCC-抗CD127剤N13B2-hVL6(橙色)に応じた同一B-ALL患者由来異種移植マウスの全生存中央値。
【
図20】DND41細胞誘導性T-ALLに対するADCP+/ADCC-抗CD127 N13B2-hVL6剤の抗白血病活性の根底にある機序を示す図である。(A)ヒトマクロファージの存在下でDND41 T-ALL細胞のN13B2-hVL6(赤色点)又はN13B2-hVL6 LALAPG(緑色四角)処置によって誘導された貪食細胞指数。(B)フローサイトメトリーによって評価されたIL-7(5ng/mL)+N13B6-hVL6処置に応じたDND41細胞におけるリン酸化STAT5(p-STAT5)細胞のパーセンテージ。(C)DND41細胞株由来異種移植(CDX)モデルのin vivo照合の模式的概観。(D)対照(青色)、ADCP+/ADCC-抗CD127剤N13B2-hVL6(橙色)、又はADCP-/ADCC-N13B2-hVL6 LALAPG抗CD127剤(緑色)を用いた処置に応じたDND41 CDXマウスの全生存中央値。星印は、ログランク検定を用いる調査を使用したp<0.05を示す。
【
図21】ヒト中皮腫におけるADCP+/ADCC-抗CD127抗体のADCP有効性を示す図である。A.ヒトMSTO-211H二相性悪性中皮腫細胞でのフローサイトメトリーによって測定されたCD127発現レベル。B.ADCP+ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6で処置されたヒトMSTO-211H二相性中皮腫細胞の貪食のパーセンテージ。C.陽性対照細胞株と比較した、フローサイトメトリーによって評価されたIL-7(5ng/mL)+N13B6-hVL6処置に応じたMSTO-211H細胞におけるリン酸化STAT5(p-STAT5)細胞のパーセンテージ。
【実施例】
【0159】
材料及び方法
ALL患者試料、ヒト白血病細胞株。白血病患者を、ヘルシンキ宣言に従ってインフォームドコンセント後にALL-ベルリン-フランクフルト-ミュンスター(BFM)2000又は2009プロトコールに従って処置した。研究は、クリスティアン・アルブレヒト大学キールの倫理委員会によって承認された(D437/17)。Jurkat、THP1、HPB-ALL、MSTO-211H及びDND41 T-ALL細胞株は、ATCCから購入した。697、NALM6及びREH B-ALL細胞株は、DSMZ(Leibniz Institute、ドイツ)から購入した。すべての細胞を試験し、マイコプラズマを含まないことがわかった。
【0160】
マウス。Hcを発現するNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG-Hc)マウスは、Lenny Shultz (Jackson Laboratories、米国、バーハーバー)と共同して、NOD-CBALs-Hc1/Ltコンジェニック系統由来の無傷のHc遺伝子を、NSG株に戻し交雑することによって生成された。NSG-Hcマウスは、シュレースヴィッヒ-ホルシュタインキール大学で病原体を含まない条件下で飼育され、政府の規制(シュレースヴィッヒ・ホルシュタイン、エネルギー転換、農業、環境、自然、デジタル化省)に従って異種移植片を作成した:白血病細胞を雌NSG-Hcマウス(6~10週齢)に静脈内に注射し、白血病生着後、フローサイトメトリー分析によって末梢血においてヒトCD45+/マウスCD45-/ヒトCD19+細胞の検出を続けた。顕性白血病の徴候(末梢血における>75%の白血病性芽球の検出、又は体重若しくは活動の喪失、臓器肥大、後肢麻痺を含む白血病の臨床徴候)を示した時点で動物を屠殺した。マウス生存率は、カプラン・マイヤーログランク統計を使用して評価した。
【0161】
微小残存病変(MRD)実験では、マウスにE2A-PBX1陽性患者(n=2患者)の10,000個のBCP-ALL患者由来異種移植細胞(n=10)を注射し、抗体N13B2-HVL6(5mg/kg)、EFFI-3-VH3VL3(1mg/kg)又はビヒクルを1日目から開始して3日毎に21日目まで静脈内に注射し、注射を14日毎に投与した。微小残存病変を、PDXマウスから単離された骨髄試料において患者特異的免疫グロブリン/B細胞受容体再編成について、PCRによって測定した。
【0162】
顕性白血病実験では、マウスにE2A-PBX1陽性患者(n=2患者)の100万個のBCP-ALL患者由来異種移植細胞(n=10)を注射した。白血病生着(末梢血中のhCD45+/hCD19+/mCD45-細胞の検出によって決定される)が1%を上回ったら、抗体N13B2-hVL6 (5mg/kg)、EFFI-3-VH3VL3(1mg/kg)又はビヒクルを3日毎に7回、その後、14日毎に静脈内に注射した。
【0163】
処置に使用される抗体。すべての抗体はOSEで生成され、エンドトキシンを含まないことがわかった。
【0164】
貪食アッセイ。in vitro貪食アッセイは、無血清RPMI中での、CellTrackerGreen(ThermoFisher社、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国、1/2000、37℃で20分)で標識された2,5×104個のヒト初代M1又はTHP1マクロファージとCPD(ThermoFisher社、1/2000 37℃で10分)で標識された5×104個の白血病細胞との1時間の共培養によって実施した。貪食はCytoFLEXフローサイトメーター(Beckman社、ブレア、カリフォルニア州、米国)及びFlowJoソフトウェア(TreeStar、BD Life Sciences社、フランクリンレイクス、ニュージャージー州、米国)を使用する分析によって分析した。貪食指数は、以下の通りに算出した:アイソタイプ対照での処置によって検出されたものと比較したCTG+マクロファージにおけるCPD+細胞のパーセンテージの変化倍数に、アイソタイプ対照を用いて検出されたものと比較したCTG+マクロファージにおけるAPC蛍光(CPD)の幾何平均の変化倍数を乗じた。正規化された貪食指数は、Ringら、PNAS 2017に記載されているように、各細胞株に対する各独立ドナーによる最大応答を100%と定義する。
【0165】
M1ヒトマクロファージ(CTG+)によって貪食された白血病細胞(CPD+)の可視化は、NIS-Elementsソフトウェア(Nikon社、港区、東京、日本)を使用したNikon ECLIPSE Ti2顕微鏡を使用してフローサイトメトリー分析と並行して調査した。
【0166】
タイムラプス顕微鏡実験を、ポリ-L-リジン0.001%でコーティングされたIbidi 18ウェルプレート中で実施した。M1ヒトマクロファージを、1/333000希釈したpHrodo-SE(ThermoFisher社)を用いて、37℃で30分間標識し、ウェルあたり0.1×106個細胞で播種した。画像を、NIS-Elementsソフトウェア(Nikon)を使用してNikon ECLIPSE Ti2顕微鏡によって4時間の間5分毎に撮影し、10時間の間15分毎に撮影した。
【0167】
第I相研究。最初のヒトにおける、第I相、無作為化二重盲検プラセボ対照、単一施設研究(EUDRACT番号2018-001832-22)を、63人の健康成人男性及び女性ボランティアで実施して、N13B2-hVL6の単回及び反復漸増用量の安全性、忍容性、PK、薬動力学及び免疫原性を評価した。N13B2-hVL6を、単回用量(0.002、0.02、0.2、1、4又は10mg/kg IV)で投与するか、又は2週間間隔で2用量を与え(6又は10mg/kg)、血液試料を採取して、研究の各時点での処置後のリンパ球カウントを評価した。
【0168】
CD127への特異的抗体結合の定量化。N13B2-hVL6及び対応するアイソタイプ対照(MOTA IgG4 S228P)を使用して、細胞を標識した(各10ug/mL、4℃で30分)。二次抗ヒトIgG Fc[HP6017]マウスIgG2a、κPE抗体(BioLegend社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、カタログ番号409304)を使用して、N13B2-hVL6の種々の細胞株への結合のレベルを検出した。
図3におけるN13B2-hVL6(FC RO)の受容体占有率の変化倍数は、アイソタイプ対照標識細胞のものと比較したN13B2-hVL6標識細胞の幾何平均PE蛍光の変化倍数として算出した。
【0169】
ADCCアッセイ。100万個のヒトの新たに単離したT細胞を、15uLの
51Cr(5mCi/ml、PerkinElmer社、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国、カタログ番号NEZ030001MC)を用い、37℃、5%CO2で1時間標識した。次いで、上清中に放射活性(放射活性ガンマカウンターによって測定される)が存在しなくなるまでT細胞を洗浄した。40万個細胞/mL(10,000細胞/w)の25μl/ウェルのT細胞-
51Cr標的細胞を、P96-マイクロタイタープレート(平底)上に播種した。200ng/mL(100ng/mL最終濃度)で3連で25μl/ウェルの抗hCD127抗体を添加し、室温で15分間インキュベートした。最終的に、200万個細胞/mL(100,000細胞/w)(比率、10NK細胞:1T細胞)の50μlのNK細胞を播種し、37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。細胞傷害性の陽性対照として、3つのウェルに75μLのSDS 10%を10分間添加し、その後、読み取った。最終的に、25μL/wの上清を放射活性リーダープレート中に入れ、100μL/wのMicroscint Scintillant(PerkinElmer社カタログ番号60136211)を添加した。上清における
51Crの放出を、放射活性ガンマカウンターによって1分あたりのカウント(cpm)で測定した。
図10Bにおける特異的ADCCは、試料ウェル平均cpm(3連)に相当する。
【0170】
図10Cで例証されたADCCアッセイのために、ヒトPBMCからネガティブ選択(NK単離キット、Miltenyi社)によってエフェクター細胞、NK細胞を精製し、150UI/mLのIL-2と共に37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。反応当日に、標的細胞CD127陽性-Luc+細胞(CD127+ルシフェラーゼ+細胞)を、白色平坦-P96プレート(Greiner社、参照655098)中で25000個細胞/ウェルでプレーティングし、抗体と共に室温で15分間インキュベートした。次いで、反応プレートに250000個NK細胞/ウェルを添加し、37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。インキュベーション後、各ウェルに基質One Gloルシフェラーゼ製品(2X)を添加して、TECANプレートリーダーにおける化学発光によって生存CD127陽性-Luc+細胞数を測定した。結果は、特異的毒性(=最大細胞傷害性(CD127+-Luc+、SDS10%を含む)と最小細胞傷害性(CD127陽性-Luc+細胞、NKを含む、抗体を含まない)の間の細胞傷害性のパーセンテージ)で表した。
【0171】
FcγRへのELISA結合。結合ELISAアッセイのために、組換えhCD64/FcγRI(R&Dsystems社、ミネアポリス、ミネソタ州、米国;参照番号1257-FC-050)又はhCD32a/FcγRIIa(R&Dsystems社、ミネアポリス、ミネソタ州、米国;参照番号1330-CD-050)又はhCD16a/FcγRIIIa(R&Dsystems社、ミネアポリス、ミネソタ州、米国;参照番号4325-FC-050)を、ホウ酸緩衝液(pH9)中2μg/mlでプラスチック上に固定化し、精製抗体を添加して、結合を測定した。インキュベーション及び洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch社;米国;参照番号709-035-149)を添加し、従来の方法によって明らかにした。
【0172】
フローサイトメトリーによるP-STAT5調査:細胞をTexMacs培地(Miltenyi社、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ;参照番号130-097-196)中で一晩飢餓にした。抗CD127剤を補給したTexMacs培地中(37℃)で30分インキュベートした後、細胞を、37℃で5ng/mLのrhIL-7(AbDSerotec社、ローリー、ノースカロライナ州、米国;参照番号PHP046)を用いて刺激した。次いで、氷上で5分間インキュベートすることによって反応を停止し、BD Biosciences社、フランクリンレイクス、ニュージャージー州、米国製のPhospho-Flowプロトコール(Cytofix/Cytoperm緩衝液及びPerm/Wash緩衝液(BD biosciences社参照番号554714)Perm緩衝液III(BD biosciences社参照番号558050))を使用して細胞を固定し、透過処理した。Phospho-STAT5検出を、AlexaFluor647抗ヒトpStat5抗体(BD biosciences社参照番号612599)を製造業者の使用説明書に従って使用して測定した。
【0173】
in vitro IL-7依存性の調査。IL-7 in vitro依存性測定のために、細胞を、3μg/mLの抗CD127剤の補給あり若しくはなし及び/又は5ng/mLのrhIL-7(AbDSerotec社、ローリー、ノースカロライナ州、米国;参照番号PHP046)あり若しくはなしのTexMacs培地(Miltenyi社、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ;参照番号130-097-196)中で培養した。
【0174】
結果
・PDX実験における微小残存病変分析における抗CD127剤効果
微小残存病変(MRD)は、患者が緩解(疾患の症状又は徴候なし)にある場合に処置の間又は処置後に患者中に残る少数の白血病細胞に与えられた名称である。白血病における再発の主原因である。
図1Aで例証されるように、CD127陽性腫瘍細胞に対するADCP能力を有する抗CD127剤で処置されたB-ALL白血病患者由来異種移植片(PDX)を有するマウスは、実験の全時間(160日)の間すべて生存し、一方で対照を用いて処置されていたすべてのマウスは、移植後80日後には死亡していた。更に、マウスの100%がMRD陰性であったことは注目すべきであり、マウスに投与された抗CD127剤の抗白血病効果及び白血病を完全に決定的に処置する潜在力を例証する。同一結果が、マウスがB-ALL患者からの異種移植片を与えられた
図1Bで例証されている。やはり、CD127陽性腫瘍細胞に向けられたADCP能力を有する抗CD127剤で処置されたマウスは、対照化合物で処置されたマウスとは対照的に生存することがわかり、更に、抗CD127剤で処置されたマウスのほとんど(80%から90%の間がMRD陰性であることがわかる。
図1Cでは、4つの異なるT-ALL患者由来異種移植マウスにおける、白血病発症に対するN13B2-hVL6での処置の影響が例証されている。白血病性芽球は、末梢血において20~90%の範囲の白血病生着を有する対照マウスとは対照的に抗CD127処置動物の末梢には存在しない。
【0175】
・顕性白血病モデルにおいて抗CD127剤を投与することの効果
顕性白血病とは、疾患が宿主動物においてすでに十分に確立している(末梢血において1~5%を上回る白血病性芽球の存在)場合に動物が処置される状況である。
図2において例証されるように、顕性白血病を発症していた、本出願において定義されるような抗CD127剤で処置されたPDXマウスは、対照化合物で処置されたマウスよりも長く生存した。第1の異種移植実験では(
図1A1及び
図1A2)では、抗CD127剤で処置したマウスは、対照抗体で処置したマウスよりも25%から50%長く生存した。これらの結果が抗CD127剤のアンタゴニスト特性に関わりなく得られたことは注目すべきであり、実際、中性の(すなわち、アンタゴニスト性でもアゴニスト性でもない)抗CD127剤で処置されたマウスでさえ、未処置マウスよりも長く生存した。同じ結果が第2の実験において得られた(
図2B1及び
図2B2)。この第2の実験において、CD127陽性腫瘍細胞に向けられたADCP能力を有する抗CD127剤を用いて処置されたマウスは、対照を用いて処置されたマウスよりも2倍長く移植後200日を超えて生存したことがわかる。この生存率は、マウスに投与された抗CD127剤のアンタゴニスト能力に関わりなく観察され、アンタゴニスト性抗CD127剤を用いて処置されたマウスについて(
図2A1及び
図2B1)、及び中性(すなわち、アンタゴニストでもなくアゴニストでもない)抗CD127剤を用いて処置されたマウスについて(
図2A2及び
図2B2)、同一結果が観察される。12の異なるB-ALL患者由来異種移植マウスのコホート(
図2C)及び15の異なるT-ALL患者由来異種移植マウスのコホート(
図2D)における顕性白血病の発症に対するN13B2-hVL6を用いる処置の影響が例証されている。両場合において、抗CD127剤を用いる処置は、対照白血病動物と比較してマウスの全生存を有意に増大した。B-ALL検体では、全生存中央値は61日から91日に延長された、p=0.007。T-ALLでは、全生存中央値は、対照動物の44日から抗CD127処置動物の71日に延長された、p=0.04)。PDX検体における50%又はそれより高いCD127陽性白血病性芽球の存在は、抗CD127 ADCP+/ADCC-剤のin vivo有効性と関連していた(
図2E)。
【0176】
・抗CD127剤が投与された場合の腫瘍細胞の貪食に対するin vitro効果
図3に例証されるように、CD127発現(CD127への特異的N13B2-hVL6結合によって評価される)は、CD127発現レベルの評価のための陰性対照としてアイソタイプ対照を使用することによって定義した場合、T細胞ALL(HPB-ALL及びCD127突然変異型DND41)及びB細胞ALL(697、NAML6及びREH)細胞株の異なる例において可変であるか、又は存在しない(Jurkat T-ALL細胞株)。細胞前処置が実施されていない
図4Aで例証されるように、CD127陽性腫瘍細胞の貪食は、CD127を発現するすべてのALL株において抗CD127剤、すなわちN13B2-hVL6によって増強され、貪食のレベルは、CD127発現のレベルと関連していた(CD127への特異的N13B2-hVL6結合の測定によって調査された)。
図4Bで例証されるように、全体的に、PDX ALL細胞で測定されたADCP+/ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6の貪食指数は、抗白血病in vivo有効性と強く相関している。
図5で示されるように、N13B2-hVL6の投与は、マクロファージによる白血病細胞の貪食につながり、腫瘍細胞の貪食を誘導、持続又は増強する抗CD127剤の正の効果を例証する。
図6及び
図7で、いくつかの異なる抗CD127抗体の、5つのCD127を発現するALL細胞株から放出された腫瘍細胞の貪食を増強する能力が試験された。4つの抗CD127抗体、すなわち、N13B2-hVL6(ADCP能力を有するが、ADCC能力なし:ADCP+/ADCC-)、3つすべてがADCP及びADCC能力を有する(ADCP+/ADCC+)、EFFI-3-VH3VL3(両方とも自社内抗体)、HAL(最初にPfizer社によって設計され、自社内で生成された)及び1A11(最初にGlaxoSmithKline社によって設計され、自社内で生成された)を漸増用量で、ヒトマクロファージの存在下で、2つのT細胞ALL細胞株(HPB-ALL及びDND41 IL7R突然変異型)及び3つのB-ALL細胞株(697 t(1;19)、NAML6 (DUX4)及びREH t(12;21))に対して投与した。マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を、上記の方法に従って評価した。
図6で、3つの抗CD127抗体はすべて、マクロファージによるT-ALL腫瘍細胞の貪食を増強するということがわかる。抗CD127抗体EFFI-3-VH3VL3は、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を増強する効率が低いと考えられうるが、この抗体はその標的CD127に対する親和性が他の試験抗体よりも小さいことは注目すべきである。抗CD127抗体N13B2-hVL6が、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食の増強において極めて効率的であることがわかる。同様の結果が、
図7でBALL-細胞株で例証されている。抗CD127剤はすべて、マクロファージによるB-ALL腫瘍細胞の貪食を増強できる。抗CD127抗体N13B2-hVL6は、B-ALL腫瘍細胞の貪食を増強する効率が最も高い。
【0177】
要するに、これらの結果は、試験されたすべての抗CD127剤が、CD127突然変異型ALLを含めてALLの種類にかかわらず、ADCP作用機序によるマクロファージによるCD127陽性腫瘍細胞の貪食を増強するために効率的であることを例証し、N13B2-hVL6(ADCP+ADCC-)は、マクロファージによるCD127陽性腫瘍細胞に対して、参照抗CD47抗体5F9抗体のものを上回ることができるレベルで最強のADCP能力を実証した(
図9を参照されたい)。
【0178】
・本発明の抗CD127剤が投与される場合に、マクロファージ及び健康なT細胞に対するin vitro毒性効果がないこと、及びヒトCD127+細胞に対する、特にヒト免疫細胞に対する(特にヒトT細胞に対する)ADCC活性がないこと
マクロファージに対する抗CD127抗体(N13B2-hVL6)又は抗CD47抗体(5F9)の毒性(すなわち、細胞アポトーシス又は生存細胞の喪失につながる他の機序のような有害な効果)を評価した。結果を
図8に例証する。例証されるように、生存マクロファージの全体数は、添加される抗CD127抗体の用量によって影響を受けず、これは、抗CD127抗体が、その投与量にかかわらず、マクロファージの全体数の低減につながらないことを意味する。対照的に、抗CD47剤が投与される場合には、マクロファージの全体数は、投与された用量に応じて著しく低減し、抗CD47剤は、マクロファージに対してその枯渇につながる毒性効果を有することを示唆する。
【0179】
これらの結果によれば、ADCP+/ADCC- N13B2-hVL6抗体は、ALLの処置において現在使用される他の薬剤とは異なり、マクロファージの全体集団に対して負の影響を有さず、腫瘍細胞を貪食するその能力に対して有害効果を全く有さない。
【0180】
マクロファージによる腫瘍細胞(REH細胞株からの)及び正常T細胞の貪食は、ADCP+/ADCC-抗CD127抗体(N13B2-hVL6)及び貪食の強力な誘導のための陽性対照である抗CD47抗体(5F9)の存在下で評価した。結果を
図9に例証する。抗CD127抗体は、マクロファージによる正常T細胞の貪食に対して有意な影響を及ぼさない。抗CD47剤が投与される場合に、同様の結果が得られた。しかし、ADCP+/ADCC-抗CD127抗体(N13B2-hVL6)の投与は、抗CD47剤よりも高い、腫瘍細胞の貪食増大につながる。これらの結果は、抗CD127剤は、種々の用量で正常T細胞を無傷で残しながら腫瘍細胞の貪食を増強する可能性がより高いことを意味する。
図8及び
図9で例証された結果を組み合わせることによって、本発明者らは、本発明のADCP+/ADCC-抗CD127剤が、マクロファージによるCD127陽性腫瘍細胞貪食を大きく増強しながら、マクロファージ枯渇につながらず、健康T細胞の貪食につながらないことを初めて示す。これらの結果は、ADCP+/ADCC-抗CD127抗体(N13B2-hVL6)又は抗CD47抗体(5F9)の存在下でのマクロファージによるマクロファージの貪食(本明細書で「自己貪食」と呼ばれる)に相当する
図10Aで例証されたデータによって更に確認される。抗CD47抗体の存在下で、マクロファージは、マクロファージによるCD47の発現のために自己貪食活性を有する。抗CD127抗体が投与される場合には、マクロファージの自己貪食はない。これらの結果は、抗CD127抗体の毒性がないことを再度明確に例証する。更に、本発明において使用される抗CD127剤によって誘導されるナチュラルキラー細胞によるヒトCD127+細胞に対する、特に免疫細胞に対する(T細胞)ADCCを評価した。結果を
図10B及び
図10Cに例証する。例証されるように、ADCP能力を有し、ADCCを誘導しない抗CD127剤は、同一標的CD127に結合する抗体であるが、ADCC活性を増強することについて知られている陽性対照とは対照的に、細胞傷害性に、特にリンパ球枯渇につながらない(免疫細胞(T細胞)に対する細胞傷害性なし)。
【0181】
・抗CD127剤が投与される場合にヒトにおいて健康リンパ球に対するin vivo毒性がないこと
in vivoでヒトリンパ球に対するADCP+/ADCC-抗CD127抗体(N13B2-hVL6)の毒性(すなわち、細胞アポトーシス又は生存細胞の喪失につながる他の機序のような有害効果)を、第1相臨床試験(EUDRACT番号2018-001832-22)の際に評価した。結果を
図11に例証する。N13B2-hVL6(0.002、0.02、0.2、1、4又は10mg/kg IV又は1mg/kg SC)の単回用量又は2週間間隔で投与される2回の用量(6又は10mg/kg)の投与は、安全であり、良好な耐容性を示した。10mg/kg(単回及び2回用量)までのN13B2-hVL6に曝露されたすべての対象において、N13B2-hVL6投与後に臨床的に有意なリンパ球減少は報告されなかった。
【0182】
・抗CD127剤を単独で、又はCD127陽性ALL細胞株と組み合わせて投与する効果
本発明の説明において論じられるように、白血病のいくつかの形態は、現在の処置に対して抵抗性である。一例として、デキサメタゾンが種々の形態の白血病を処置するために使用されるが、HPB-ALL細胞株等のいくつかのT細胞ALL及びB細胞ALLは、デキサメタゾンに対して抵抗性であることが知られている(
図12Aを参照されたい)。興味深いことに、漸増濃度のデキサメタゾン処置に応じて、この細胞株において用量依存的にCD127発現が増大した(
図12B)。
【0183】
デキサメタゾンの存在下又は不在下でT-ALL HPB-ALL細胞株にADCP+/ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6を投与した。
図13Aにおいて例証されるように、抗CD127 N13B2-hVL6抗体とデキサメタゾンの組合せの共同作用効果をHPB-ALL細胞において観察することができる。これらの結果は、ADCP+/ADCC-能力を有する抗CD127剤の使用は、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を増強するために効率的であり、CD127陽性がんを処置するために効率的でありうることを意味するが、これらのADCP+/ADCC-抗CD127剤は、デキサメタゾン療法のような現在の療法に対して抵抗性であるCD127陽性がんを有する患者を処置するために有用である可能性があることも意味する。
【0184】
抗CD47抗体マグロリマブ(5F9)の存在下又は不在下でB-ALL NALM6細胞株にADCP+/ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6を投与した。
図13Bにおいて例証されるように、抗CD127 N13B2-hVL6抗体と抗CD47抗体の組合せの共同作用効果をNALM6細胞において観察することができる。これらの結果は、ADCP+/ADCC-能力を有する抗CD127剤の使用が、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を増強するために効率的であり、CD127陽性がんを処置するために効率的でありうることを意味するが、これらのADCP+/ADCC-抗CD127剤は、抗CD47剤等の他の貪食増強剤と組み合わせてCD127陽性がんを有する患者を処置するために有用である可能性があることも意味する。
【0185】
図13Cに示されるように、更に、8つのALL検体のコホートでは、ADCP+/ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6処置と、ALLにおける標準治療(SOC)処置(デキサメタゾン+オンキャスパー(ペグアスパルガーゼ/PEG-アスパラギナーゼとして知られる)+ビンクリスチン)の投与を含むSOC)との間で、顕性白血病PDX状況において相乗的な有効性が観察された。
【0186】
・種々の抗CD127剤の存在下でのマクロファージによる腫瘍細胞の貪食に対する効果
本発明の説明におけるその定義に対応するいくつかの抗CD127抗体を試験して、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を増強するその能力を評価した。
図14Aで例証されるように、同一CDRドメインであるが異なるフレームワークを共有する抗CD127抗体、及び
図14Bで例証されるように、密接に関連するCDRドメイン(6つのCDRドメイン内に1つ又は2つの突然変異のみを有する)を共有する抗CD127抗体はすべて、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を増強する同一の能力を有する。
【0187】
・種々の抗CD127剤のFCγRへの結合に対する効果
ELISA技術によるFCγRを主に活性化するN13B2-hVL6の調査(
図15)は、陽性対照ADCP+/ADCC+抗CD127抗体とは対照的に、N13B2-hVL6は、CD16a(
図15A)、CD32a(
図15B)又はCD64(
図15C)に効率的に結合しないことを示し、CD127陽性腫瘍細胞において頑強なADCPを誘導するN13B2-hVL6の予期しない能力を更に強調する。これら3つの受容体は、抗体のFcドメインを介して抗体に結合し、それによってADCC及びADCPを誘導する。例証されるように、IgG1ドメインを有する抗体は、これらの3つの受容体に結合し、これは意図されたことであり、したがって、ADCC及びADCPによる細胞クリアランス機序を誘導する可能性がある。しかし、IgG4である抗CD127抗体は、これらの受容体に結合せず、これによって、これらの抗体のADCC能力がないことを説明することができる。それにもかかわらず、このように、これらの抗体のADCP能力は予期しないものであり、なぜなら、ADCP機序がこれら3つの受容体によって特に媒介されるためである。
【0188】
・CD127陽性白血病の多様なサブタイプの処置におけるADCP+/ADCC-抗CD127剤の抗白血病作用機序
ADCP+/ADCC-抗CD127剤の抗白血病活性に対するADCP作用機序の重要性を評価するために、本発明者らは、一連の多様なALL細胞株及び臨床において観察された状況の複雑性を反映する患者由来異種移植細胞を照合した:例えば、a)細胞生存及び増殖のためにIL-7R経路に対して依存性のない(
図16)又は依存性のある(
図17)アクショナブルIL-7R経路の存在、b)非アクショナブル経路の存在(存在しない
図18、又は不十分な
図19、経路の構成的活性化につながるIL-7刺激又はIL-7Rの活性化突然変異の際のp-STAT5シグナル伝達(
図20)、T-ALLにおいて頻繁な現象)。ADCP+/ADCC N13B2-hVL6抗CD127剤のin vivo有効性に対するADCPの重要性を照合するために、本発明者らは、LALAPG突然変異の導入によってFc-DEAD-DEADバリアントを生成した(Loら、J Biol Chem. 2017)(本明細書において及び図面においてN13B2-hVL6 LALAPGとして参照される)。この突然変異は、漸増濃度の抗体N13B2-hVL6及びN13B2-hVL6 LALAPGの存在下でのp-STAT5濃度の測定によって
図16Aに例証されているように、IL-7Rシグナル伝達経路に対するN13B2-hVL6遮断活性を保ちながら、N13B2-hVL6とは対照的に、N13B2-hVL6 LALAPG抗体媒介性エフェクター機能、例えばADCP及びADCCを妨げる。
【0189】
ADCP+/ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6及びN13B2-hVL6 LALAPGは、IL-7応答性T-ALL細胞株HPB-ALLにおいてCD127シグナル伝達を効率的に阻害する(p-STAT5、
図16A)が、N13B2-hVL6のみは、これらの細胞においてADCPを誘導できる(
図16B)。このADCP+/IL-7応答性モデルのin vivo照合(
図16C)は、そのFc-DEAD-DEAD LALAPG-バリアント
図16Dとは対照的に、N13B2-hVL6の抗白血病活性を示し、これは、ADCP作用機序がこのIL-7応答性ALLにおける抗白血病活性の主な推進力であることを示す。しかし、HPB-ALL細胞株は、in vitroでその生存に対してIL-7に依存性ではない、
図16E。CD127を発現する患者由来T-ALL検体(
図17A)は、IL-7刺激の際にp-STAT5シグナル伝達を誘導できる(
図17B)。ADCP+/ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6は、患者の細胞においてCD127シグナル伝達を効率的に阻害でき(p-STAT5、
図17C)、ADCPを誘導できる(
図17D)。このT-ALL PDX検体は、in vitroでその生存及び増殖に対してIL-7に依存性であり(
図17E~
図17F)、この状況で、ADCP+/ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6は、in vivoで抗白血病活性を発揮する、
図17G。ADCP+/ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6は、ADCPを誘導する(
図18A)が、IL-7非応答性B-ALL細胞株NALM6ではCD127シグナル伝達を阻害できない(p-STAT5、
図18B)。しかし、このADCP+/IL-7非応答性モデルのin vivo照合(
図18C)は、N13B2-hVL6 LALAPGとは対照的にN13B2-hVL6の抗白血病活性を示し(
図18D)、ADCP作用機序が単独で抗白血病活性を発揮できることを示す。CD127を発現する患者由来B-ALL検体(
図19A)は、IL-7刺激の際にp-STAT5シグナル伝達を極めて弱く誘導できる(
図19B)が、ADCPは、これらの白血病細胞においてN13B2-hVL6処置によって効率的に誘導される(
図19C)。この状況で、ADCP+/ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6は、in vivoで抗白血病活性を発揮する、
図19D。ADCP+/ADCC-抗CD127抗体N13B2-hVL6は、IL-7R突然変異型、構成的活性化T-ALL細胞株DND41において、ADCPを誘導する(
図20A)が、CD127シグナル伝達を阻害できない(p-STAT5、
図20B)。しかし、このADCP+/IL-7R構成的活性化モデルのin vivo照合(
図20C)は、そのFc-DEAD-DEAD LALAPG-バリアント(
図20D)とは対照的に、N13B2-hVL6の抗白血病活性を示し、これは、ADCP作用機序が単独で、IL-7R活性化突然変異(T-ALLにおいて頻繁である)の状況でさえ、抗白血病活性を発揮できることを示す。
【0190】
更に、CD127を発現する、胸膜から生じたヒト悪性中皮腫細胞の貪食に対する抗CD127抗体N13B2-hVL6の効果(
図21A)を評価した。
図21Bにおいて例証されるように、漸増用量のADCP+/ADCC-抗CD127抗体を投与することは、CD127+ヒト中皮腫細胞の貪食を増強する。興味深いことに、これらのヒト中皮腫細胞は、IL-7刺激の際にp-STAT5シグナル伝達を誘導できず、これは、IL-7Rシグナル伝達経路の機能障害性を示す(
図21C)。
【0191】
これらの実験によって、CD127を発現する腫瘍細胞の貪食を増強することによる、特にIL-7Rシグナル伝達経路が機能障害性である場合の、CD127+がんを処置するための本発明のADCP+/ADCC-抗CD127剤の有効性が確認される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD127陽性腫瘍細胞の、とりわけマクロファージによる貪食を増強する
及び/又は誘導することによる、
CD127陽性腫瘍細胞を含むCD127陽性がんを有する患者の処置における医薬として使用するための抗CD127剤、特に抗CD127抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体ミメティックであって、抗CD127剤は、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない、抗CD127剤。
【請求項2】
CD127陽性がんが、白血病である、特に急性リンパ性白血病(ALL)である、とりわけT細胞ALL又はB細胞ALLである、請求項1に従って使用するための請求項1に記載の抗CD127剤。
【請求項3】
CD127陽性がんが、CD127過剰発現性急性リンパ性白血病(ALL)、CD127及び/又はJAK-STAT経路突然変異型ALL、BCR-ABL1様ALL、並びに:t(1;19)、t(12,21)、MLL再編成、高二倍体核型、4番染色体トリソミー及び10番染色体トリソミーの1つの細胞遺伝を有するB細胞前駆体ALLからなる群から選択される、請求項1又は2に従って使用するための請求項1又は2に記載の抗CD127剤。
【請求項4】
CD127陽性がんが、固形がんである、特に中皮腫である、請求項1から3のいずれか一項に従って使用するための請求項1から3のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項5】
CD127陽性がんが、特にマクロファージによる、CD127陽性腫瘍細胞の貪食によって処置される、請求項1から4のいずれか一項に従って使用するための請求項1から4のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項6】
前記患者においてリンパ球枯渇を誘導しない、請求項1から5のいずれか一項に従って使用するための請求項1から5のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項7】
IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブクラス、特に哺乳動物IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブクラス、とりわけ哺乳動物IgG4のサブクラスに属する定常鎖を含む抗CD127抗体又はその抗原結合性断片である、請求項1から6のいずれか一項に従って使用するための請求項1から6のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項8】
キメラ抗体、ヒト化抗体及び完全ヒトモノクローナル抗体からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に従って使用するための請求項1から7のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項9】
少なくとも
・VHCDR1配列番号3、
・VHCDR2配列番号4、
・VHCDR3配列番号5又は配列番号6
のアミノ酸配列を含むVH鎖
及び少なくとも
・VLCDR1配列番号7又は配列番号8、
・VLCDR2配列番号9又は配列番号10、
・VLCDR3配列番号11
のアミノ酸配列を含むVL鎖
を含む、抗CD127抗体又はその抗原結合性断片である、請求項1から8のいずれか一項に従って使用するための請求項1から8のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項10】
抗CD127抗体又はその抗原結合性断片が、IL-7のCD127への結合によって誘導されるIL-7Rシグナル伝達経路のアンタゴニストである、請求項1から9のいずれか一項に従って使用するための請求項1から9のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項11】
がんの従来処置と組み合わせて使用される、請求項1から10のいずれか一項に従って使用するための請求項1から10のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項12】
特に同時、別個又は逐次使用のための、化学療法剤、標的化がん療法剤、免疫治療剤及び放射線療法剤からなる群から選択される少なくとも1つの第2の治療剤と組み合わせた、請求項1から11のいずれか一項に従って使用するための請求項1から11のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項13】
少なくとも1つの第2の治療薬が、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、抗血管新生剤、細胞周期制御/アポトーシス調節剤、ホルモン調節剤及び抗がん免疫原剤、特に抗がん抗体、とりわけ腫瘍標的化抗体からなる群から選択される、請求項12に従って使用するための請求項12に記載の抗CD127剤。
【請求項14】
特に同時、別個又は逐次使用のための、抗CD3剤、特に抗CD3抗体、抗PD1剤、特に抗PD1抗体、抗PDL1剤、特に抗PDL1抗体、抗CTLA4剤、特に抗CTLA4抗体、CD137のアゴニスト、特にアゴニスト抗CD137抗体、抗VEGF剤、特に抗VEGF抗体、抗CLEC-1剤、特に抗CLEC-1抗体、抗CD28剤、特に抗CD28抗体、抗CD19剤、特に抗CD19抗体、及び抗CD47剤、特に抗CD47抗体、抗SIRPa剤、特に抗SIRPa抗体、抗Bcl-2剤、特にベネトクラクス、チロシン/キナーゼ経路の阻害剤、デキサメタゾン、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、アラノン(ネララビン)、アスパラギナーゼ黒脚病菌(Erwinia chrysanthemi)(又はアーウィナーゼ)、アスパラス(又はカラスパルガーゼペゴル-mknl)、ベスポンサ(イノツズマブオゾガミシン)、ブリナツモマブ(又はビーリンサイト)、及びセルビジン(又はダウノルビシンヒドロクロリド若しくはルビドマイシン)、クロファラビン(又はクロラール)、シクロホスファミド、シタラビン、ダサチニブ(又はスプリセル)、ドキソルビシンヒドロクロリド、グリーベック(メシル酸イマチニブ)、アイクルシグ(ポナチニブヒドロクロリド)、イノツズマブオゾガミシン、メシル酸イマチニブ、キムリア(又はチサゲンレクロイセル)、ビンクリスチン、マルキボ(硫酸ビンクリスチンリポソーム)、メルカプトプリン(又はピュリネソール若しくはプリクサン)、メトトレキサートナトリウム(又はトレキサール)、ネララビン、オンキャスパー(又はペグアスパラガーゼ若しくはPEG-アスパラギナーゼ)、ポナチニブヒドロクロリド、プレドニゾン、ピュリネソール(メルカプトプリン)、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンクリスチンリポソームからなる群から選択される少なくとも1つの第2の治療薬と組み合わせた、請求項1から13のいずれか一項に従って使用するための請求項1から13のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項15】
少なくとも1つの第2の治療薬が、デキサメタゾン及び/又はオンキャスパー(又はペグアスパルガーゼ若しくはPEG-アスパラギナーゼ)及び/又はビンクリスチン、特に、デキサメタゾン及びオンキャスパー(又はペグアスパルガーゼ若しくはPEG-アスパラギナーゼ)及びビンクリスチンである、請求項14に従って使用するための請求項14に記載の抗CD127剤。
【請求項16】
患者がCD127陽性腫瘍細胞を有すると評価された後、前記患者に投与される、請求項1から15のいずれか一項に従って使用するための請求項1から15のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項17】
患者のCD127陽性腫瘍細胞の、特にマクロファージによる貪食を
増強する及び/又は誘導するための医薬として使用するための抗CD127剤
、特に抗CD127抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体ミメティックであって、CD127陽性腫瘍細胞に対する、特にマクロファージによる抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を有し、特に免疫細胞に対する、とりわけT細胞に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有さない、抗CD127剤。
【請求項18】
前記患者が、白血病、特に急性リンパ性白血病(ALL)、とりわけT細胞ALL又はB細胞ALL、及び固形がん、特に中皮腫からなる群から選択されるCD127陽性がんを有する、請求項17に従って使用するための請求項17に記載の抗CD127剤。
【請求項19】
がんの従来処置と組み合わせた、請求項17又は18に従って使用するための請求項17又は18に記載の抗CD127剤。
【請求項20】
特に同時、別個又は逐次使用のための、化学療法剤、標的化がん療法剤、免疫治療剤及び放射線療法剤からなる群から選択される少なくとも1つの第2の治療剤と組み合わせた、請求項17から19のいずれか一項に従って使用するための請求項17から19のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【請求項21】
請求項6から10のいずれか一項に従って規定される、請求項17から20のいずれか一項に従って使用するための請求項17から20のいずれか一項に記載の抗CD127剤。
【国際調査報告】