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特表2024-521866ねじ山形成ねじ及び硬化アルミン酸塩含有無機組成物を含む留め付け装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ねじ山形成ねじ及び硬化アルミン酸塩含有無機組成物を含む留め付け装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/06 20060101AFI20240528BHJP
   C04B 22/16 20060101ALI20240528BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240528BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240528BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20240528BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20240528BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C04B28/06
C04B22/16 A
C04B22/06 Z
C04B22/14 A
C04B24/06 A
E02D5/80 101
E04B1/41 503B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573480
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022067027
(87)【国際公開番号】W WO2023280570
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21184423.8
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シェーンライン
(72)【発明者】
【氏名】メメット-エミン クムル
【テーマコード(参考)】
2D041
2E125
4G112
【Fターム(参考)】
2D041GA02
2E125AA51
2E125AE01
2E125BA13
2E125CA82
4G112MA00
4G112MB12
4G112MB42
4G112PB03
4G112PB10
4G112PB13
4G112PB17
(57)【要約】
軸部と少なくとも1つのねじ山螺旋とを有し、そのねじ山螺旋が軸部上に配置されている、ねじと、硬化化合物とを含み、ねじが、基材(被留め付け材)の穴に配置され、軸部と穴の壁との間の間隙に、硬化アルミン酸塩含有無機組成物が充填されている、留め付け装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と少なくとも1つのねじ山螺旋とを有し、前記ねじ山螺旋は前記軸部上に配置されている、ねじと、
アルミン酸塩含有無機硬化化合物と
からなり、
前記ねじは、基材(被留め付け材)の穴に配置されており、前記軸部と前記穴の壁との間の間隙は前記硬化化合物で充填されている留め付け装置であって、
前記アルミン酸塩含有無機硬化化合物は、1成分における、水性相中の、少なくとも1種のアルミン酸塩含有セメント構成要素、並びにリン酸、メタリン酸、亜リン酸、ホスフィン酸及びホウ酸からなる群から選択される少なくとも1種のブロッキング剤と、更なる成分における、アルミン酸塩含有セメント構成要素のための開始剤とを含有する、多成分セメント質系を硬化させることによって得られること、を特徴とする、
留め付け装置。
【請求項2】
前記開始剤が、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の混合物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の留め付け装置。
【請求項3】
前記開始剤が、活性剤成分及び促進剤成分からなること、を特徴とする請求項1又は2に記載の留め付け装置。
【請求項4】
前記活性剤成分がアルカリ水酸化物を含み、前記促進剤成分がリチウム塩を含む、請求項3に記載の留め付け装置。
【請求項5】
前記活性剤成分が水酸化ナトリウムであり、前記促進剤成分が硫酸リチウムである、請求項4に記載の留め付け装置。
【請求項6】
前記更なる成分が、クエン酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸及びグルコン酸、並びにこれらの混合物、好ましくはクエン酸、酒石酸又はこれらの混合物からなる群から選択される遅延剤を含有する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の留め付け装置。
【請求項7】
前記更なる成分が、石灰石充填材、砂、コランダム、ドロマイト、耐アルカリ性ガラス、砕石、礫、中礫及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の鉱物充填材を含有する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の留め付け装置。
【請求項8】
前記アルミン酸塩含有セメント構成要素が、水性相中のアルミン酸カルシウムセメント(CA)又は水性相中のスルホアルミン酸カルシウムセメント(CAS)をベースとする、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の留め付け装置。
【請求項9】
前記更なる成分のpHが10超であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の留め付け装置。
【請求項10】
前記アルミン酸塩含有成分が可塑剤も含む、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の留め付け装置。
【請求項11】
前記アルミン酸塩含有成分及び前記更なる成分が、水性懸濁液の形態である、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の留め付け装置。
【請求項12】
前記基材が、鉱物建築材料、特にコンクリートである、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の留め付け装置。
【請求項13】
前記ねじ山螺旋が、前記基材における嵌合ねじ山に螺合する、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の留め付け装置。
【請求項14】
前記ねじ山螺旋が、ねじ山外径及びねじ山ピッチを有し、前記ねじ山外径と前記ねじ山ピッチとの比が、1.0~2.0、好ましくは1.2~1.6の範囲内である、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の留め付け装置。
【請求項15】
前記ねじがコンクリートねじである、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の留め付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ山形成ねじ及び硬化アルミン酸塩含有無機組成物を含み、ねじ山形成ねじが、基材(被留め付け材)、特に鉱物建築材料、例えばコンクリートの穴に配置されており、そのねじの軸部と穴の壁との間隙には、硬化アルミン酸塩含有無機組成物が充填されている、留め付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質基材にねじ込むためのねじ山形成ねじが、特許文献1から公知である。セルフカッティングねじ山を有する、内部にねじ山形成されたスリーブが、特許文献2から公知である。特許文献3は、打撃によって設置することができ、本体としての軸部上にセルフタッピングねじ山を有する、アンカーロッドを開示している。
【0003】
公知の解決策の問題点は、基材の特性、並びに穴を作製するためのツールの種類及び条件のために、ねじ本体の外表面と穴の壁との間の環状間隙のサイズが、留め付け点によって大きく変わり得ることである。加えて、基材内でねじ山によって作製されたアンダーカットに、高荷重が作用することがあり、これは、作製された留め付け点の部分的な又は(最も極端な場合には)完全な破損につながる。これを回避し、高荷重に耐える能力を達成するために、この種のねじ山形成ねじ、特にコンクリートねじは、基材内で比較的長いねじ山のグリップ長を有する。しかしながら、これには、対応するねじを設置するための多大な労力を要する。
【0004】
加えて、据え付けプロセス中に化学結着剤(接着剤)と組み合わせない従来のコンクリートねじは、ねじ/コンクリート境界面に沿った亀裂及び空洞に起因して、不良な結合を生じる。この不良な結合では荷重値が低くなり、塩化物などの腐食性化学物質の浸透が可能になる。
【0005】
硬化型化合物で事前に充填されたボアホール内に設置されているねじ山形成ねじが、特許文献4、特許文献5又は特許文献6から公知である。このねじのねじ山は、基材内、かつ硬化型化合物が硬化した後の化合物内に固定される。
【0006】
公知の硬化型化合物、例えば、特許文献7から公知である、エポキシをベースとする二成分モルタル、又は特許文献8から公知である、ラジカル硬化型化合物をベースとする二成分モルタルは、高い充填材含有量を有し、これにより、硬化した化合物が十分な内部強度を有する場合、高粘度及び低収縮挙動が確保される。
【0007】
特許文献9による解決策の別の欠点は、ねじの本体の外表面とボアホールの壁との間の環状間隙が、低粘度の化合物に加えて、充填材を含有する硬化型化合物も使用できるように、十分なサイズのものでなければならないことである。そのため、この環状間隙を完全に充填するためには、大量の硬化型化合物が必要となる。
【0008】
他の留め付け要素用、例えばアンカーロッド用等として知られるカートリッジ系、例えば、特許文献10、特許文献11、特許文献12又は特許文献13から公知であるものは、ねじ山形成ねじとの使用には、環状間隙が非常に小さいことに起因して、好適ではない。なぜなら、これらのカートリッジ系が過度に粗粒の充填材を含有しているか、又は従来のねじ山形成ねじを使用して、カートリッジを破砕することができないか、若しくは破砕された場合でさえ、カートリッジ自体が過度に大きな粒子を生成するかのいずれかのためである。この用途では、ねじが設置されるまでに数回転しかできないので、硬化型化合物が確実に硬化するように、迅速な混合を確保しなければならず、これは、公知の化合物では、これまで不可能であった。
【0009】
従来の有機結着剤系、例えば樹脂は、ねじとコンクリートとの間の結合を強化することができるが、この効果は高温で失われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第0623759号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1536149号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第4,350,464号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19820671号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10311471号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第102006000414号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10002605号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第3514031号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第19820671号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0431302号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第0432087号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第0312776号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第0638705号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、特に作製が容易かつ安全であり、ねじ山形成ねじの効率的で信頼性の高い留め付けが可能であり、特に結合を強化し、運用中の高温及び火災の場合にも維持される、荷重値の増加をもたらす、留め付け装置を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、請求項1に規定された特徴を有する留め付け装置によって達成される。本発明の好ましい態様は、従属請求項に規定されている。
【0013】
本発明による留め付け装置は、硬化化合物が、1成分における、水性相中の、少なくとも1種のアルミン酸塩含有セメント構成要素、並びにリン酸、メタリン酸、亜リン酸、ホスフィン酸及びホウ酸からなる群から選択される少なくとも1種のブロッキング剤と、更なる成分における、アルミン酸塩含有セメント構成要素のための開始剤とを含有する、多成分セメント質アルミン酸含有無機系を硬化させることによって得ることができることを特徴とする。
【0014】
本発明による留め付け装置において使用される多成分セメント質アルミン酸塩含有無機系は、1成分(アルミニウム含有成分としても知られる)における、水性相中の、少なくとも1種のアルミン酸塩含有セメント構成要素、並びにリン酸、メタリン酸、亜リン酸、ホスフィン酸及びホウ酸からなる群から選択される少なくとも1種のブロッキング剤と、更なる成分(開始剤成分としても知られる)における、アルミン酸塩含有セメントのための開始剤とを含有する。
【0015】
アルミン酸塩含有成分と開始剤成分とは、セメント質無機系を使用するまで、互いに空間的に別々となるように包装され、2つの成分が互いに接触して初めて、反応が起こる。
【0016】
2つの成分は通常、フィルムパウチに包装され、サイドバイサイド系として、又はパウチインパウチ系としてのいずれかで利用可能である。しかしながら、一般に、2つの成分が互いに別々に包装され、かつねじ山形成ねじを設置することによって容易に開放され、ねじによって粉砕することができる、任意の包装及び包装形態が可能である。
【0017】
アルミン酸塩含有成分は、水性相中のアルミン酸カルシウムセメント(CAC)又は水性相中のスルホアルミン酸カルシウムセメント(CAS)をベースとする、アルミン酸塩含有セメント構成要素を含有する。本発明において使用することができるアルミン酸塩含有セメント構成要素、特にアルミン酸カルシウムを含有するセメント構成要素は、迅速な凝固及び硬化、硫酸カルシウムと混合した場合の迅速な乾燥及び収縮補償、並びに優れた耐腐食性及び耐収縮性を特徴とする。本発明における使用に好適なこのようなアルミン酸カルシウムセメントは、例えば、Ternal(登録商標)White(Imerys、仏国)である。
【0018】
アルミン酸塩含有成分がアルミニウム含有セメント(CAC)と硫酸カルシウム(CaSO4)との混合物を含む場合、水和中に急速なエトリンガイト形成が起こる。コンクリート化学において、アルミン酸カルシウムを硫酸カルシウムと反応させることによって、アルミン酸三硫酸六カルシウム水和物が形成され、急速な凝固及び硬化、並びに収縮補償又は膨張さえももたらす。収縮補償は、硫酸塩含有量を適度に増加させることで達成することができる。
【0019】
アルミン酸塩含有成分は、アルミン酸塩含有成分の総重量を基準として、少なくともおよそ40重量%、好ましくは少なくともおよそ50重量%、より好ましくは少なくともおよそ60重量%、最も好ましくは少なくともおよそ70重量%、およそ40重量%~およそ95重量%、好ましくはおよそ50重量%~およそ90重量%、より好ましくはおよそ65重量%~およそ85重量%、最も好ましくはおよそ70重量%~およそ80重量%のアルミン酸塩含有セメントを含む。
【0020】
あるいは、アルミン酸塩含有成分は、アルミン酸塩含有成分の総重量を基準として、少なくともおよそ20重量%、好ましくは少なくともおよそ30重量%、より好ましくは少なくともおよそ40重量%、最も好ましくは少なくともおよそ50重量%、およそ20重量%~およそ80重量%、好ましくはおよそ30重量%~およそ70重量%、より好ましくはおよそ35重量%~およそ60重量%、最も好ましくはおよそ40重量%~およそ55重量%のアルミニウム含有セメントと、アルミン酸塩含有成分の総重量を基準として、少なくともおよそ5重量%、好ましくは少なくともおよそ10重量%、より好ましくは少なくともおよそ15重量%、最も好ましくは少なくともおよそ20重量%、およそ1重量%~およそ50重量%、好ましくはおよそ5重量%~およそ40重量%、より好ましくはおよそ10重量%~およそ30重量%、最も好ましくはおよそ15重量%~およそ25重量%の硫酸カルシウム、好ましくは硫酸カルシウム半水和物とを含むことができる。
【0021】
アルミン酸塩含有成分に含有されるブロッキング剤は、リン酸、メタリン酸、亜リン酸、ホスフィン酸及びホウ酸からなる群から選択され、好ましくはリン酸又はメタリン酸であり、最も好ましくはリン酸、特にリン酸の85%水溶液である。アルミン酸塩含有成分は、アルミン酸塩含有成分の総重量を基準として、少なくともおよそ0.1重量%、好ましくは少なくともおよそ0.3重量%、より好ましくは少なくともおよそ0.4重量%、最も好ましくは少なくともおよそ0.5重量%、およそ0.1重量%~およそ20重量%、好ましくはおよそ0.1重量%~およそ15重量%、より好ましくはおよそ0.1重量%~およそ10重量%、最も好ましくはおよそ0.3重量%~およそ10重量%のブロッキング剤を含む。好ましい態様では、アルミン酸塩含有成分は、アルミン酸塩含有成分の総重量を基準として、およそ0.3重量%~およそ10重量%のリン酸の85重量%水溶液を含む。
【0022】
アルミン酸塩含有成分は、可塑剤を含有することができる。好適な可塑剤は当業者に公知であり、例えば、低分子量(LMW)を有するポリアクリル酸ポリマー、ポリホスホネートポリオックス及びポリカーボネートポリオックスのファミリーからの超可塑剤、並びにポリカルボキシレートエーテル群からのエタクリル系超可塑剤、並びにこれらの混合物、例えば、Ethacryl(商標)G(Coatex、Arkema Group、仏国)、Acumer(商標)1051(Rohm and Haas、英国)又はSika(登録商標)VisoCrete(登録商標)-20 HE(Sika、独国)から選択することができる。好適な可塑剤は、市販の製品である。アルミン酸塩含有成分は、アルミン酸塩含有成分の総重量を基準として、少なくともおよそ0.2重量%、好ましくは少なくともおよそ0.3重量%、より好ましくは少なくともおよそ0.4重量%、最も好ましくはおよそ0.5重量%、およそ0.2重量%~およそ20重量%、好ましくはおよそ0.3重量%~およそ15重量%、より好ましくはおよそ0.4重量%~およそ10重量%、最も好ましくはおよそ0.5重量%~およそ5重量%の可塑剤を含むことができる。
【0023】
本発明の有利な態様では、アルミン酸塩含有成分は、以下の特性を単独で又は組み合わせて、更に含むことができる。
【0024】
アルミン酸塩含有成分は、加えて増粘剤を含むことができる。使用することができる増粘剤は当業者に公知であり、有機製品、例えば、キサンタンガム、ウェランガム又はDIUTAN(登録商標)ガム(CPKelko、米国)、デンプン由来のエーテル、グアー由来のエーテル、ポリアクリルアミド、カラギーナン、寒天及び鉱物製品、例えば粘土、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。好適な増粘剤は、市販の製品である。アルミン酸塩含有成分は、アルミン酸塩含有成分の総重量を基準として、最少のおよそ0.01重量%、好ましくは少なくともおよそ0.1重量%、より好ましくは少なくともおよそ0.2重量%、最も好ましくは少なくともおよそ0.3重量%、およそ0.01重量%~およそ10重量%、好ましくはおよそ0.1重量%~およそ5重量%、より好ましくはおよそ0.2重量%~およそ1重量%、最も好ましくはおよそ0.3重量%~およそ0.7重量%の増粘剤を含むことができる。
【0025】
アルミン酸塩含有成分はまた、抗菌剤又は殺生剤を含むことができる。抗菌剤又は殺生剤は、イソチアゾリノンファミリーの化合物、例えば、メチルイソチアゾリノン(MIT)、オクチルイソチアゾリノン(OIT)及びベンゾイソチアゾリノン(BIT)、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。好適な抗菌剤又は殺生剤は、市販の製品である。Ecocid K35R(Progiven、仏国)及びNuospet OB 03(Ashland、蘭国)が、例として挙げられる。アルミン酸塩含有成分は、アルミン酸塩含有成分の総重量を基準として、少なくともおよそ0.001重量%、好ましくは少なくともおよそ0.005重量%、より好ましくは少なくともおよそ0.01重量%、最も好ましくは少なくともおよそ0.015重量%、およそ0.001重量%~およそ1.5重量%、好ましくはおよそ0.005重量%~およそ0.1重量%、より好ましくはおよそ0.01重量%~およそ0.075重量%、最も好ましくはおよそ0.015重量%~およそ0.03重量%の抗菌剤又は殺生剤を含むことができる。
【0026】
アルミン酸塩含有成分はまた、少なくとも1種の充填材、特に有機又は鉱物充填材を含むことができる。充填材は、石英粉末、好ましくはおよそ16μmの平均粒径(d50%)を有する石英粉末、ケイ砂、粘土、フライアッシュ、石英ダスト、炭酸塩化合物、顔料、酸化チタン、軽質充填材及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。好適な鉱物充填材は、市販の製品である。石英粉末Millisil W12又はW6(Quarzwerke GmbH、独国)が、例として挙げられる。アルミン酸塩含有成分は、アルミン酸塩含有成分の総重量を基準として、少なくともおよそ1重量%、好ましくは少なくともおよそ2重量%、より好ましくは少なくともおよそ5重量%、最も好ましくは少なくともおよそ8重量%、およそ1重量%~およそ50重量%、好ましくはおよそ2重量%~およそ40重量%、より好ましくはおよそ5重量%~およそ30重量%、最も好ましくはおよそ8重量%~およそ20重量%の少なくとも1種の充填材を含むことができる。
【0027】
アルミン酸塩含有成分に含有される含水量は、アルミン酸塩含有成分の総重量を基準として、少なくともおよそ1重量%、好ましくは少なくともおよそ5重量%、より好ましくは少なくともおよそ10重量%、最も好ましくは少なくともおよそ20重量%、およそ1重量%~およそ50重量%、好ましくはおよそ5重量%~およそ40重量%、より好ましくはおよそ10重量%~およそ30重量%、最も好ましくはおよそ15重量%~およそ25重量%である。
【0028】
可塑剤、増粘剤、及び抗菌剤又は殺生剤の存在は、セメント質成分の全体的な無機性を変化させない。
【0029】
アルミン酸塩含有成分は、水性相中に、好ましくはスラリー又はペーストの形態で存在する。
【0030】
本発明の開始剤成分は、アルミン酸塩含有セメント構成要素のための開始剤を含む。
【0031】
開始剤成分中に存在する開始剤は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の混合物を含む、活性剤成分及び促進剤成分からなる。
【0032】
特に、活性剤成分は、水酸化物、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、硝酸塩、炭酸塩及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含み、好ましくは、活性剤成分は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、より好ましくは、カルシウム金属塩、例えば、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム若しくはリン酸カルシウム、ナトリウム金属塩、例えば、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム若しくはリン酸ナトリウム、カリウム金属塩、例えば、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム若しくはリン酸カリウム、又はリチウム金属塩、例えば、水酸化リチウム、硫酸リチウム、炭酸リチウム若しくはリン酸リチウムであり、最も好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0033】
開始剤成分は、開始剤成分の総重量を基準として、少なくともおよそ0.01重量%、好ましくは少なくともおよそ0.02重量%、より好ましくは少なくともおよそ0.05重量%、最も好ましくは少なくともおよそ1重量%、およそ0.01重量%~およそ40重量%、好ましくはおよそ0.02重量%~およそ35重量%、より好ましくはおよそ0.05重量%~およそ30重量%、最も好ましくはおよそ1重量%~およそ25重量%の活性剤を含む。
【0034】
開始剤成分に含有される含水量は、開始剤成分の総重量を基準として、少なくともおよそ1重量%、好ましくは少なくともおよそ5重量%、より好ましくは少なくともおよそ10重量%、最も好ましくは少なくともおよそ20重量%、およそ1重量%~およそ60重量%、好ましくはおよそ5重量%~およそ50重量%、より好ましくはおよそ10重量%~およそ40重量%、最も好ましくはおよそ15重量%~およそ30重量%である。
【0035】
促進剤成分は、水酸化物、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、硝酸塩、窒化物、炭酸塩及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含み、好ましくは、促進剤成分は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、やはり好ましくは、水溶性のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、より好ましくは、カルシウム金属塩、例えば、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム若しくはリン酸カルシウム、ナトリウム金属塩、例えば、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ギ酸ナトリウム若しくはリン酸ナトリウム、又はリチウム金属塩、例えば、水酸化リチウム、硫酸リチウム、硫酸リチウム一水和物、炭酸リチウム、塩化リチウム、ギ酸リチウム若しくはリン酸リチウムであり、最も好ましくは硫酸リチウム又は硫酸リチウム一水和物である。
【0036】
開始剤成分は、開始剤成分の総重量を基準として、少なくともおよそ0.01重量%、好ましくは少なくともおよそ0.05重量%、より好ましくは少なくともおよそ0.1重量%、最も好ましくは少なくともおよそ1.0重量%、およそ0.01重量%~およそ25重量%、好ましくはおよそ0.05重量%~およそ20重量%、より好ましくはおよそ0.1重量%~およそ15重量%、最も好ましくはおよそ1.0重量%~およそ10重量%の促進剤を含む。
【0037】
特に好ましい態様では、活性剤成分はアルカリ水酸化物を含み、促進剤成分はリチウム塩を含む。よりいっそう好ましい態様では、活性剤成分は水酸化ナトリウムであり、促進剤成分は硫酸リチウムである。
【0038】
開始剤成分はまた、少なくとも1種の遅延剤を含有することができる。十分な製作時間を確保するために、開始剤成分に加えて、モルタル組成物の時期尚早な硬化を防止する少なくとも1種の遅延剤を、特定の濃度で使用することができる。
【0039】
本発明による開始剤成分に含有される少なくとも1種の遅延剤は、クエン酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、グルコン酸及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、クエン酸と酒石酸との混合物である。開始剤成分は、開始剤成分の総重量を基準として、少なくともおよそ0.1重量%、好ましくは少なくともおよそ0.2重量%、より好ましくは少なくともおよそ0.5重量%、最も好ましくは少なくともおよそ1.0重量%、およそ0.1重量%~およそ25重量%、好ましくはおよそ0.2重量%~およそ15重量%、より好ましくはおよそ0.5重量%~およそ15重量%、最も好ましくはおよそ1.0重量%~およそ10重量%の遅延剤を含む。開始剤成分の特に好ましい態様では、クエン酸/酒石酸の比は、1.6/1である。
【0040】
開始剤成分はまた、少なくとも1種の鉱物充填材を含有することができる。少なくとも1種の鉱物充填材は、例えば、石灰石充填材又は石英充填材、ケイ砂、砂、コランダム砕石、礫、中礫及びこれらの混合物から選択することができる。石灰石充填材、例えば様々な炭酸カルシウムが好ましい。充填材が開始剤成分中に存在する場合、炭酸カルシウム又は炭酸カルシウム類の混合物が最も好ましい。開始剤成分は、開始剤成分の総重量を基準として、少なくともおよそ20重量%、好ましくは少なくともおよそ25重量%、より好ましくは少なくともおよそ30重量%、やはりより好ましくは少なくともおよそ35重量%、最も好ましくは少なくともおよそ40重量%、およそ20重量%~およそ95重量%、好ましくはおよそ25重量%~およそ90重量%、より好ましくはおよそ30重量%~およそ85重量%、やはりより好ましくはおよそ35重量%~およそ80重量%、最も好ましくはおよそ40重量%~およそ75重量%の少なくとも1種の鉱物充填材を含むことができる。少なくとも1種の鉱物充填材は、アルミニウム含有セメントの粒径と相補的な粒径を有するように選択される。
【0041】
有利な態様では、開始剤成分はまた、以下の特性を単独で又は組み合わせて含むことができる。
【0042】
開始剤成分は、加えて増粘剤を含むことができる。増粘剤は、ベントナイト、二酸化ケイ素、石英、アクリレート系増粘剤、例えば、アルカリ可溶性又はアルカリ膨潤性エマルション、石英ダスト、粘土及びチタン酸塩キレート剤からなる群から選択することができる。与えられる例は、ポリビニルアルコール(PVA)、疎水変性アルカリ可溶性エマルション(HASE)、HEURとして当技術分野において公知である疎水変性エチレンオキシドウレタンポリマー及びセルロース増粘剤、例えば、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、カルボキシメチル-2-ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、2-ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルメチルセルロース、2-ヒドロキシブチルメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルエチルセルロース、2-ヒドロキシプロピルセルロース、アタパルジャイト粘土並びにこれらの混合物である。好適な増粘剤は、Optigel WX(BYK-Chemie GmbH、独国)、Rheolate 1(Elementis GmbH、独国)及びAcrysol ASE-60(The Dow Chemical Company)などの市販製品である。
【0043】
開始剤成分は、開始剤成分の総重量を基準として、少なくともおよそ0.01重量%、好ましくは少なくともおよそ0.05重量%、より好ましくは少なくともおよそ0.1重量%、最も好ましくは少なくともおよそ0.3重量%、およそ0.01重量%~およそ15重量%、好ましくはおよそ0.05重量%~およそ10重量%、より好ましくはおよそ0.1重量%~およそ5重量%、最も好ましくはおよそ0.3重量%~およそ1重量%の増粘剤を含むことができる。
【0044】
遅延剤及び増粘剤の存在は、セメント質開始剤成分の全体的な無機性を変化させない。分散剤(可塑剤)も、任意選択で存在してもよい。このような分散剤は、当業者に公知である。
【0045】
開始剤を含む開始剤成分は、水性相中に、好ましくはスラリー又はペーストの形態で存在する。
【0046】
開始剤成分のpHは、10超、より好ましくは11超、最も好ましくは12超、特に10~14、好ましくは11~13の範囲内であることが好ましい。2つの成分、すなわち成分A及び開始剤成分中の水の比率は、成分AとBとを混合することによって得られる生成物における水とアルミニウム含有セメントとの比(W/CAC)又は水とスルホアルミン酸カルシウムセメントとの比(W/CAS)が、1.5未満、好ましくは0.3~1.2、最も好ましくは0.4~1.0となるように選択されることが、特に好ましい。
【0047】
アルミン酸塩含有成分は、以下のように調製することができる:リンを含有するブロッキング剤を、得られる混合物のpHがおよそ2となるように、水と混合する。可塑剤を任意選択で加え、混合物を均質化する。アルミニウム含有セメント、任意選択で硫酸カルシウム、及び任意選択で鉱物充填材を予備混合し、撹拌速度を上昇させながら、得られる混合物のpHがおよそ4となるように、混合物に徐々に加える。最後に、必要に応じて、増粘剤及び抗微生物剤/殺生剤を加え、混合物が完全に均質化するまで混合する。
【0048】
開始剤成分は、以下のように調製することができる:促進剤を活性剤の水溶液に溶解させ、任意選択で、続いて遅延剤及び分散剤を加え、混合物を均質化する。次いで、混合物が均質化するまで撹拌速度を上昇させながら、充填材(1種又は複数)を徐々に加えてもよい。最後に、混合物が最終的に完全に均質化するまで、増粘剤を加えてもよい。
【0049】
アルミン酸塩含有成分及び開始剤成分は、水性相中にあり、好ましくはスラリー又はペーストの形態、より好ましくは水性懸濁液の形態である。特に、アルミン酸塩含有成分及び開始剤成分は、それぞれの組成に応じて、ペースト状から流体状の外観を有する。好ましい態様では、アルミン酸塩含有成分及び開始剤成分は、水性懸濁液の形態であり、これによって、2つの成分を混合するときの凝固が防止される。
【0050】
アルミン酸塩含有成分と開始剤成分との間の重量比は、好ましくは10/1~1/1であり、好ましくは3/1である。混合物の組成は、好ましくは75重量%のアルミン酸塩含有成分と、25重量%の開始剤成分とを含む。代替の態様では、混合物の組成は、88重量%のアルミン酸塩含有成分と、12重量%の開始剤成分とを含む。
【0051】
セメント質アルミン酸塩含有無機系は、2つの成分を混合した後、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも15分、最も好ましくは少なくとも20分、特におよそ5分~25分の範囲内、好ましくはおよそ10分~20分の範囲内の初期凝固時間を有する。
【0052】
本発明による留め付け装置において使用されるねじは、例えば、ねじ山形成ねじ、例えばコンクリートねじ等とすることができる。
【0053】
「ねじ山形成ねじ」という用語は、切削することなく嵌合ねじ山を雌ねじ切りし、周囲の材料が固化し、ナットねじ山も形成する「ねじ山タッピングねじ」と、嵌合ねじ山を切削し、主に予備穿孔された穴、特に止まり穴にねじ込まれる「ねじ山カッティングねじ」との両方を含むように理解されるべきである。
【0054】
ねじ山形成ねじは、特に、軸部と、ねじ山外径及びねじ山ピッチを有するねじ山とを有するねじとして、理解することができる。特に、ねじ山外径とねじ山ピッチとの比は、1.0~2.0、好ましくは1.2~1.6、より好ましくは1.2~1.45の範囲内である。概して、螺旋とシャフトとは1つの材料から作製され、一体である。あるいは、螺旋とシャフトとは、異なる材料からなることもできる。
【0055】
本発明による留め付け装置は、穴にねじ山形成ねじを用いて使用される。
【0056】
穴は、天然又は非天然起源のくぼみ、すなわち、亀裂、隙間及びボアホールなどであってもよい。これらは、様々な基材(被留め付け材)、特に鉱物建築材料又は基材、例えば、コンクリート、気泡コンクリート、レンガ積み、石灰石、砂岩、天然石及びガラス等をベースとする材料又は基材、並びに鋼製のものなどの金属基材における、典型的には止まり穴又はボアホール、特にボアホールである。基材は、好ましくはコンクリートである。
【0057】
予め製造された基材の穴にねじ山形成ねじが配置されると、ねじ山の螺旋が、基材内の嵌合ねじ山に螺合し、基材内にねじがねじ込まれる際に、ねじを形成する。特に、螺旋は、基材内の嵌合ねじ山に完全には螺合せず、その結果、ねじ軸部と穴の壁との間に十分に大きな間隙が残り、この間隙は、硬化型化合物で充填することができる。
【0058】
本発明による留め付け装置は、基材に穴を作製すること、多成分セメント質アルミン酸塩含有無機系を導入すること、及びねじ山形成ねじを設置することによって作製される。
【0059】
例えば、留め付け装置は、コンクリート成分に止まり穴を穿孔すること、多成分セメント質アルミン酸塩含有無機系を、2チャンバ系、特に2チャンバパウチ系の形態で導入すること、及び回転できるようにねじ山形成ねじを設置することによって、作製することができる。設置中にスクリューを回転させることによって、2チャンバ系が破壊され、すなわち開放され、セメント質アルミン酸塩含有無機系の成分が混合される。混合物は、止まり穴の壁とねじとの間の間隙に圧入され、そこで硬化して、硬化化合物を形成する。2チャンバ系の包装は、粉砕されるか、又は少なくとも破砕されるかのいずれかである。包装が粉砕されず、破砕されるにすぎないとしても、これは留め付け装置の性能に影響を及ぼさない。
【0060】
特に、留め付け装置は、室温を超える温度若しくは高温、例えば80℃超における荷重容量の上昇、及び/又は硬化時の結合強度の上昇を要する留め付け目的のために使用される。高温、例えば、強い日光又はそれ以外の高温に曝露されたファサード留め付け具のボアホール領域に存在する温度においてさえ、耐高温性によって、留め付け目的について、より良好な性能が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下の実施例は本発明を説明するが、それによって本発明を限定するものではない。
【実施例
【0062】
1.アルミン酸塩含有成分及び開始剤成分の生成
最初に、アルミン酸塩含有成分及び開始剤成分を、それぞれ表1及び2に指定した構成要素を混合することによって生成する。与えた比率は、重量%で表している。
【表1】
【表2】
【0063】
2.混合比
【表3】
【0064】
3.機械的性能の決定
生成後、両成分を所定の成分A:Bの比で混合し、硬質プラスチックカートリッジに充填した。硬質プラスチックカートリッジをディスペンサ内に配置し、硬化させる化合物を、コンクリートスラブにおけるボアに注入した。ボアは、150mmの深さ及び14mmの直径を有していた。圧縮空気洗浄及びブラッシングによってボアを洗浄した後、モルタルを注入した。次に、円錐状スパイラルを有するコンクリートねじを、各ボアに挿入した。モルタルがコンクリート中の鋼要素の固着を改善する能力を測定するために、24時間硬化させた後、引き抜き強度を測定した。参照として、同様の洗浄手順を行ったが、いずれのモルタルも事前に注入せずに、同じコンクリートねじを同様の寸法のボアに据え付けた。引き抜き試験の結果を表4に列挙する。
【表4】
【0065】
セメント質アルミン酸塩含有無機系をコンクリートねじ(この実施例では、ねじアンカー(コンクリートねじ)HUS3、Hilti、独国)と共に使用することによって、結合が強化され、荷重値が上昇したが、これは、主にモルタルの無機構成要素に起因し、運用中の高温及び火災の場合にも維持され得る。
【0066】
これらの結果はまた、容易に貯蔵することができ、必要に応じて水酸化ナトリウムなどの添加剤を加えることによって活性化することができるセメント質アルミン酸塩含有無機系によって、コンクリート中のコンクリートねじの荷重値を有意に改善することができることを示す。加えて、低い充填レベルを有し、微細な充填材のみを有する開始剤成分の使用によって、コンクリートねじがより容易に設置され、非常に少ないばらつきで荷重値が上昇する。
【国際調査報告】