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特表2024-521870脂質化合物及び核酸送達におけるその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】脂質化合物及び核酸送達におけるその応用
(51)【国際特許分類】
   C07C 215/24 20060101AFI20240528BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240528BHJP
   C07C 213/04 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20240528BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
C07C215/24 CSP
A61K9/127
A61K9/51
A61K9/14
A61K47/18
C07C213/04
A61K31/7088
A61K48/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573569
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2022094532
(87)【国際公開番号】W WO2022247801
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】202110592439.8
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523448853
【氏名又は名称】北京啓辰生生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】林耀新
(72)【発明者】
【氏名】高成強
(72)【発明者】
【氏名】栗世▲ヨウ▼
(72)【発明者】
【氏名】王浩
(72)【発明者】
【氏名】烏磊
(72)【発明者】
【氏名】辛▲クィ▼
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076DD50
4C076FF70
4C084AA13
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA43
4C084NA13
4C086AA01
4C086AA10
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA43
4C086NA13
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB20
4H006BN10
4H006BU32
(57)【要約】
隣接するシス二重結合構造を有するイオン化可能な脂質化合物とその調製方法、及び活性治療剤(例えば核酸)送達におけるその応用である。イオン化可能な脂質化合物は比較的に高い活性物質カプセル化率、及び比較的に良い細胞トランスフェクション率又はインビボトランスフェクション率を提供することができ、特に中実構造のナノ粒子の調製に好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される構造を有する化合物。
【化1】

(ここで、Qは置換又は無置換の直鎖C2~20アルキレン基であり、前記アルキレン基の1つ又は1つ以上のC原子は、任意に独立してO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、
或いは、Qは置換又は無置換の飽和又は不飽和の4~6員環であり、前記4~6員環の環原子は、任意に独立してO、S、Nから選ばれる1つ又は1つ以上のヘテロ原子を含み、前記置換に用いられる置換基はハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~20アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~20アルコキシ基、直鎖又は分岐鎖のC2~20アルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC2~20アルキニル基、-CHCH(OH)R
【化2】

から選ばれ、
、R、R、Rは同一または異なって、それぞれ独立して水素、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C1~30アルキル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルケニル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルキニル基又は-CHCH(OH)Rから選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の1つ又は1つ以上のC原子は、任意に独立してO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、前記置換に用いられる置換基はハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルコキシ基から選ばれ、
その条件としては、R、R、R、Rのうちの少なくとも1つが
【化3】

であり、
は水素、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C1~30アルキル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルケニル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルキニル基から選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の1つ又は1つ以上のC原子は、任意に独立してO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、前記置換に用いられる置換基はハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルコキシ基から選ばれ、
は水素、C1~3アルキル基、C1~3アルコキシ基、-OHから選ばれ、
nは1~8の整数から選ばれ、mは0~8の整数から選ばれ、nとmは互いに独立して同一または異なって、
、R、R、Rのうちの少なくとも2つが
【化4】

である場合、前記基における各nと各mは互いに独立しており、同一でも異なってもよい。)
【請求項2】
Qは
【化5】

であり、
ここで、R、Rは、互いに独立して置換又は無置換の直鎖C1~10アルキレン基から選ばれ、前記アルキレン基の1つ又は1つ以上のC原子は、任意に独立してO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、Rは、水素、ハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖C1~20アルキル基、直鎖又は分岐鎖C2~20アルケニル基、直鎖又は分岐鎖C2~20アルキニル基、又は-CHCH(OH)R、又は
【化6】

であり、前記置換に用いられる置換基は、ハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルコキシ基である、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Qは
【化7】

であり、
ここで、xとyは、同一または異なって、1~8の整数から独立的に選ばれ、
好ましくは、xとyが同一または異なって、1~3の整数から選ばれ、
好ましくは、Rが直鎖又は分岐鎖C1~4アルキル基である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
は、-OHであることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の化合物。
【請求項5】
nは、4~8の整数から選ばれ、mは、4~8の整数から選ばれることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の化合物。
【請求項6】
下記の式A、B、C又はDから選ばれる:
【化8】

ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは、1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは、0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じであり、
【化9】

ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは、1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは、0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じであり、
【化10】

ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは、1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは、0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じであり、
【化11】

ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは、1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは、0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じであり、好ましくは、
【化12】

である、
請求項1~5の何れか一項に記載の化合物。
【請求項7】
生物活性物質送達システムの調製における請求項1~6の何れかに記載の化合物の応用であって、好ましくは、前記送達システムが微粒子、ナノ粒子、リポソーム、脂質ナノ粒子又はマイクロバブルである、応用。
【請求項8】
請求項1~6の何れかに記載の化合物を含む生物活性物質送達システムであって、好ましくは、前記送達システムが微粒子、ナノ粒子、リポソーム、脂質ナノ粒子又はマイクロバブルであることを特徴とする生物活性物質送達システム。
【請求項9】
請求項8に記載の生物活性物質送達システムを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~6の何れかに記載の化合物の調製方法であって、
【化13】

であり、
ここで、1)還元において、還元剤の存在下で化合物A1のカルボキシ基をヒドロキシ基に還元して化合物A2を得る、2)酸化において、酸化剤の存在下で化合物A2のヒドロキシ基をアルデヒド基に酸化して化合物A3を得る、3)ハロゲン化-還元において、まず酸性条件で化合物A3のアルデヒドα-水素とハロゲン化試薬とをハロゲン化反応させて中間体であるα-ハロゲン化アルデヒドを得た後、還元剤の存在下でα-ハロゲン化アルデヒドのアルデヒド基をヒドロキシ基に還元して化合物A4を得る、4)エポキシ化において、化合物A4を塩基の存在下で分子内の求核置換反応を行ってエポキシ化合物A5を得る、5)開環反応において、化合物A5をアミンと開環反応させて最終化合物を得ることを特徴とする調製方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2021年5月28日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202110592439.8であり、発明名称が「化合物及び核酸送達におけるその応用」である先行出願の優先権を主張する。当該先行出願の全文は、引用により本願に組み込まれる。
[技術分野]
本発明は医薬化合物の技術分野に属し、具体的にはイオン化可能な脂質化合物、その調製方法、及び活性治療剤(例えば核酸)の送達におけるその応用に関する。
[背景技術]
核酸は低分子干渉RNA(siRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、リボザイム、プラスミド及び免疫刺激性核酸を含み、様々なメカニズムで機能する。mRNAを例にすると、mRNAは遺伝情報をDNAから細胞質のリボソームに輸送してタンパク質の翻訳を行うRNAであり、それは細胞核に入る必要がないため、遺伝子変異のリスクをもたらすことがなく、特定の細胞産物の発現を実現するために使用することができる。これらの核酸はタンパク質又は酵素の欠陥に関連する疾患の治療に有用である。しかしながら、治療環境において核酸はいろいろな課題を直面する。例えば、mRNAは一本鎖構造で非常に不安定であり、体内に入るとすぐにヌクレアーゼによって分解される。また、mRNAは、比較的に大きい分子量を有し、且つ大量に負に帯電しているため、負に帯電した細胞膜を通して標的細胞に入ることが困難である。従って、如何にmRNAを細胞に効果的に送達するかは、そのインビボでの応用を実現するための技術的なキーポイントである。類似の問題は、様々な治療用核酸にも存在している。
【0002】
遺伝子治療において、イオン化可能な脂質化合物は、様々な疾患を治療する核酸の優れた送達ベクターであることが既に証明された。上記イオン化可能な脂質化合物は、アミン基が適当な酸性条件でプロトン化して正に帯電したヘッド基を形成することができ、そのテールが疎水性炭素鎖からなり、帯電した部分が負に帯電したRNAとの静電的な結合に用いられると共に、疎水性テールが、それが親油性粒子に自己組織化することを可能にする。イオン化可能な脂質化合物がDSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン)又はDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)、コレステロール(CHOL)及びPEG化脂質[DMG-PEG2000(1,2-ジミリスチル-rac-グリセリル-3-メトキシポリエチレングリコール2000)又はDSPE-PEG2000(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール2000)]のような他の3種類又は4種類の脂質と組み合わせて自己組織化して形成した脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)は、核酸の送達に用いられ、ヌクレアーゼによって分解されないように核酸を保護すると共に、細胞への取り込みを促進することができる。現在、イオン化可能な脂質化合物は、核酸送達において多大な進歩を遂げたが、依然として送達効率が低いという問題が存在しており、これも業界の発展を制約するボトルネック問題の一つである。
[発明の概要]
本発明は、生物活性分子(例えば、mRNA、siRNA、micRNA、タンパク質、ポリペプチドなど)の送達に用いることができる新規なイオン化可能な脂質化合物を提供する。アミン基構造がプロトン化して正に帯電したカチオン基を形成できることに鑑み、本発明に係るイオン化可能な脂質化合物は、特に、DNA、RNA又は他のヌクレオチド分子のような負に帯電した活性物質の送達に適用される。
【0003】
本発明は、上記イオン化可能な脂質化合物を含む生物活性物質送達システムを更に提供し、上記送達システムは、微粒子、ナノ粒子、リポソーム、脂質ナノ粒子又はマイクロバブルであってもよい。本発明の一実施形態において、上記送達システムは脂質ナノ粒子である。このような脂質ナノ粒子は、生物活性物質(例えば、mRNA)を細胞、組織又は器官に効率よく送達し、生物活性物質に対する効率的な制御を実現することができる。本発明において、上記イオン化可能な脂質化合物は、標的細胞又は個体に送達する生物活性物質や更に含まれる他の物質(例えば、その他の陰イオン、陽イオン、又はイオン化可能な脂質化合物、合成又は天然のポリマー、界面活性剤、コレステロール、炭水化物、タンパク質、リン脂質など)と組み合わせて微粒子、ナノ粒子、リポソーム、脂質ナノ粒子又はマイクロバブルを形成する。上記生物活性物質は気体、液体又は固体の形態であってもよく、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド又は低分子であってもよい。本発明において、上記送達システムは、さらに任意に医薬賦形剤と組み合わせて医薬組成物を形成することができる。
【0004】
本発明は、これらの新規なイオン化可能な脂質化合物の合成方法を更に提供する。
【0005】
本発明は、生物活性物質送達システムの調製における上記新規なイオン化可能な脂質化合物の応用を更に提供する。上記送達システムは、微粒子、ナノ粒子、リポソーム、脂質ナノ粒子又はマイクロバブルであってもよい。本発明の一実施形態において、上記送達システムは脂質ナノ粒子である。
【0006】
本発明に係るイオン化可能な脂質化合物は、式Iで表される構造
【0007】
【化1】
【0008】
を有する。
【0009】
(ここで、Qは置換又は無置換の直鎖C2~20アルキレン基であり、上記アルキレン基の1つ又は1つ以上のC原子は、独立して任意にO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、或いは、Qは置換又は無置換の、飽和又は不飽和の4~6員環であり、上記4~6員環の環原子は、独立して任意にO、S、Nから独立的に選ばれる1つ又は1つ以上のヘテロ原子を含み、上記置換に用いられる置換基は、ハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~20アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~20アルコキシ基、直鎖又は分岐鎖のC2~20アルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC2~20アルキニル基、-CHCH(OH)R
【0010】
【化2】
【0011】
から選ばれ、
、R、R、Rは同一または異なって、それぞれ独立して水素、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C1~30アルキル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルケニル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルキニル基、-CHCH(OH)Rから選ばれ、上記アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の1つ又は1つ以上のC原子は、独立して任意にO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、上記置換に用いられる置換基は、ハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルコキシ基から選ばれ、
その条件としては、R、R、R、Rのうちの少なくとも1つが
【0012】
【化3】
【0013】
であり、
は水素、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C1~30アルキル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルケニル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルキニル基から選ばれ、上記アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の1つ又は1つ以上のC原子は、独立して任意にO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、上記置換に用いられる置換基はハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルコキシ基から選ばれ、
は水素、C1~3アルキル基、C1~3アルコキシ基、-OHから選ばれ、
nは1~8の整数から選ばれ、mは0~8の整数から選ばれ、nとmは互いに独立して同一または異なって、
、R、R、Rのうちの少なくとも2つが
【0014】
【化4】
【0015】
である場合、上記基における各nと各mは、互いに独立しており、同一でも異なってもよい。)
本発明の好ましい実施形態において、Qは、置換又は無置換の直鎖C2~20アルキレン基であり、上記アルキレン基の1つ又は1つ以上のC原子は、独立して任意にO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、
好ましくは、Qは
【0016】
【化5】
【0017】
(ここで、R、Rは、互いに独立して置換又は無置換の直鎖C1~10アルキレン基から選ばれ、上記アルキレン基の1つ又は1つ以上のC原子は、独立して任意にO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、Rは、水素、ハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖C1~20アルキル基、直鎖又は分岐鎖C2~20アルケニル基、直鎖又は分岐鎖C2~20アルキニル基、又は-CHCH(OH)R、又は
【0018】
【化6】
【0019】
であり、上記置換に用いられる置換基は、ハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルコキシ基である。)であり、
好ましくは、Qは
【0020】
【化7】
【0021】
(ここで、xとyは、同一または異なって、独立して1~8の整数から選ばれ、Rは、上記と同様に定義され、好ましくは、x又はyは、同一または異なって、1~3の整数から選ばれ、例えば、1、2又は3であり、好ましくは、Rは、直鎖又は分岐鎖のC1~4アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基などである。)である。
【0022】
本発明のいくつかの実施例において、上記飽和又は不飽和の4~6員環は、ピペラジニル基又はシクロヘキシル基である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、Rは-OHである。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、nは4~8の整数から選ばれ、mは4~8の整数から選ばれる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、上記式Iの化合物は、下記の式A、B、C又はDである。
【0026】
【化8】
【0027】
(ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じである。)
【0028】
【化9】
【0029】
(ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じである。)
【0030】
【化10】
【0031】
(ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じである。)
【0032】
【化11】
【0033】
(ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じである。)
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、上記式Iの化合物は、表1に示す以下の化合物から選ばれる。
【0034】
【表1】










【0035】
本発明に係るイオン化可能な脂質化合物は、本分野で既存の方法で合成することができ、例えば、1当量又は1当量以上のアミンと1当量又は1当量以上のエポキシ基末端化合物とを適切な条件で反応させて形成する。イオン化可能な脂質化合物の合成は、溶媒有り又は無しの場合に行い、且つ上記合成は25~100℃の範囲内の比較的に高い温度で行うことができる。任意に、得られたイオン化可能な脂質化合物を精製することができる。例えば、イオン化可能な脂質化合物の混合物を精製して特定のイオン化可能な脂質化合物を得ることができる。或いは、混合物を精製して特定の立体異性体又は位置異性体を得ることができる。上記エポキシドは、市販から入手できるか、又は合成して調製されてもよい。
【0036】
ある実施例において、アミンの全てのアミノ基は、エポキシ末端化合物と完全に反応して第3級アミンを形成する。他の実施例において、アミンのアミノ基は、すべてエポキシ末端化合物と完全に反応するわけではないため、イオン化可能な脂質化合物に第1級アミン又は第2級アミンが生成される。これらの第1級アミン又は第2級アミンをそのままにするか、又は例えば異なるエポキシ末端化合物などの別の求電子試薬と反応させてもよい。過剰のアミンをエポキシ末端化合物と反応させると、様々なテール数を有する複数種の異なるイオン化可能な脂質化合物が生成されることは、当業者に明らかである。例えば、ジアミン又はポリアミンは、分子の各アミノ基にテールとして1つ、2つ、3つ又は4つのエポキシ基から誘導された化合物を含んで第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンを生成することができる。ある実施例において、同じタイプの2種類のエポキシ末端化合物を使用する。他の実施例において、2種類又は2種類以上の異なるエポキシ末端化合物を使用する。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明のイオン化可能な脂質化合物は、下記のような一般的な調製方法で調製することができる。
【0038】
【化12】
【0039】
ステップ1:還元
還元剤の存在下で化合物A1のカルボキシ基をヒドロキシ基に還元させて化合物A2を得る。還元剤の実例としては、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウムなどを含むが、これらに限定されない。反応に用いられる溶媒の実例としては、エーテル系(例えば、エチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン及びジクロロエタンなど)、炭化水素系(例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、ベンゼン及びトルエンなど)、及びこれらの溶媒の2種又は2種以上からなる混合溶媒を含むが、これらに限定されない。
【0040】
ステップ2:酸化
酸化剤の存在下で化合物A2のヒドロキシ基をアルデヒド基に酸化して化合物A3を得る。酸化剤の実例としては、2-ヨードキシ安息香酸(IBX)、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、ジクロロクロム酸ピリジニウム塩(PDC)、デス・マーチン酸化剤、二酸化マンガンなどを含むが、これらに限定されない。反応に用いられる溶媒の実例としては、ハロゲン化炭化水素(例えばクロロホルム、ジクロロメタン及びジクロロエタンなど)、炭化水素系(例えばn-ペンタン、n-ヘキサン、ベンゼン及びトルエンなど)、ニトリル系(例えばアセトニトリルなど)、及びこれらの溶媒の2種又は2種以上からなる混合溶媒を含むが、これらに限定されない。
【0041】
ステップ3:ハロゲン化-還元
まず、酸性条件で化合物A3のアルデヒドのα-水素をハロゲン化試薬とハロゲン化反応させて中間体であるα-ハロゲン化アルデヒドを得、次に還元剤の存在下でα-ハロゲン化アルデヒドのアルデヒド基をヒドロキシ基に還元して化合物A4を得る。酸性条件を提供する実例としては、DL-プロリンを含むが、これらに限定されない。ハロゲン化試薬の実例としては、N-クロロスクシンイミド(NCS)及びN-ブロモスクシンイミド(NBS)を含むが、これらに限定されない。還元剤の実例としては、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを含むが、これらに限定されない。
【0042】
ステップ4:エポキシ化
化合物A4を塩基の存在下で分子内の求核置換反応を行ってエポキシ化合物A5を得る。塩基の実例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水素化ナトリウムのようなアルカリ金属の水酸化物又は水素化物を含むが、これらに限定されない。反応に用いられる溶媒の実例としては、ジオキサンと水の混合物を含むが、これに限定されない。
【0043】
ステップ5:開環反応
化合物A5をアミン(例えばN,N-ビス(2-アミノエチル)メチルアミン)と開環反応させて最終化合物を得る。反応に用いられる溶媒の実例としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、トリクロロメタン、ヘキサン、トルエン、エチルエーテルなどを含むが、これらに限定されない。
【0044】
上記調製方法における原料A1は、市販から入手されてもよく、汎用の方法で合成されてもよい。
【0045】
本発明に係るイオン化可能な脂質は、分子構造に隣接する2つのシス二重結合が含まれるため、その後送達システムに応用されて活性物質(例えば核酸とmRNA)をカプセルする場合、比較的に高いカプセル化率及び比較的に良い細胞トランスフェクション率を備え、また、脂質ナノ粒子を調製する場合、得られた脂質ナノ粒子の粒子径は、より均一になる。本願に係るイオン化可能な脂質化合物は、特に中実構造のナノ粒子の調製に好適である。
【0046】
本発明に係るイオン化可能な脂質化合物は、薬物送達システムに用いられる場合、ポリヌクレオチド、低分子、タンパク質、ペプチド、金属などを含む薬剤をカプセルすることができる。上記イオン化可能な脂質化合物は、薬物送達システムの調製に適するいくつかの特性、即ち、1)脂質により不安定な薬剤を複合及び「保護」する能力、2)インビボでのpH値を緩衝する能力、3)「プロトンスポンジ」として機能すると共にインビボでの溶解を引き起こす能力、及び4)負に帯電した活性物質における電荷を中和する能力を備える。
【0047】
上記薬物送達システムは粒子形態であってもよい。ある実施例において、粒子直径は1 μmから1000 μmの範囲内である。ある実施例において、粒子直径は1 nmから1000 nmの範囲内である。例えば、粒子直径は1 μmから100 μmの範囲内であり、又は1 μmから10 μmの範囲内であり、又は10 μmから100 μmの範囲内であり、又は20 nmから800 nmの範囲内であり、又は50 nmから500 nmの範囲内であり、又は80 nmから200 nmの範囲内であり、又は1 nmから100 nmの範囲内であり、又は1 nmから10 nmの範囲内である。粒子の粒子径範囲が1 nmから1000 nmの範囲内である場合、本分野において一般的に記載されたナノ粒子である。上記粒子は、当該分野で既知の任意の方法で調製することができる。これらの方法は、噴霧乾燥、単一及び二重エマルション溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、ナノ沈殿、マイクロフルイディクス、簡単と複雑な凝集及び当業者によく知られている他の方法を含む(ただし、これらに限定されない)。
【0048】
また、上記薬物送達システムは、マイクロバブル、リポソーム又は脂質ナノ粒子脂質ナノ粒子であってもよく、これらは薬剤の送達に好適である。
【0049】
本発明に係るイオン化可能な脂質化合物により形成された送達システムを介して送達することができる活性物質は、治療剤、診断剤又は予防剤であり得る。活性物質の特性に応じて、低分子化合物、核酸、タンパク質、ペプチド、金属、同位体標識化合物、ワクチンなどに属するものであってもよい。
【0050】
本発明に係るイオン化可能な脂質化合物により形成される送達システムは、標的化分子を修飾して特定の細胞、組織又は器官を標的できる標的化剤にすることもできる。標的化分子は、送達システム全体に含まれてもよく、又はその表面のみに位置してもよい。標的化分子はタンパク質、ペプチド、糖タンパク質、脂質、低分子、核酸などであってもよく、その実例としては、抗体、抗体断片、低密度リポタンパク質(LDL)、トランスフェリン(transferrin)、アシアロ糖タンパク質(asialycoprotein)、受容体リガンド、シアル酸、アプタマーなどを含む(ただし、これらに限定されない)。
【0051】
本発明に係るイオン化可能な脂質化合物によって形成される送達システムは、1種又は1種以上の医薬賦形剤と組み合わせて動物(ヒトを含む)への投与に適する医薬組成物を形成することができる。「医薬賦形剤」という用語は、任意の種類の無毒性・不活性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤などを意味し、乳糖、トレハロース、グルコースとスクロースなどの糖;コーンスターチと馬鈴薯澱粉などの澱粉;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースと酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;ゼラチン;タルク;落花生油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、コーン油と大豆油などの油;プロピレングリコールなどのジオール;オレイン酸エチルとラウリン酸エチルなどのエステル類;ツイーン80(Tween 80)などの界面活性剤;リン酸緩衝液、酢酸塩緩衝液とクエン酸塩緩衝液などの緩衝剤;着色剤;甘味剤;調味剤及び芳香剤;防腐剤及び酸化防止剤などを含むが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の医薬組成物は、経口、経直腸、静脈内、筋肉注射、膣内、鼻腔内、腹腔内、経頬又は経口若しくは経鼻噴霧などの形態でヒト及び/又は動物に投与することができる。
【0053】
本明細書において使用されるように、「アルキル基」という用語は、1~30個の炭素原子を含む炭化水素部分から1つの水素原子を除去してなる飽和炭化水素基を意味する。アルキル基の実例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ウンデシル基及びn-ドデシル基を含む(ただし、これらに限定されない)。
【0054】
「アルケニル基」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する炭化水素部分から1つの水素原子を除去してなる1価の基を表す。アルケニル基は例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、1-メチル-2-ブテン-1-イルなどを含む。
【0055】
「アルキニル基」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する炭化水素から1つの水素原子を除去してなる1価の基を指す。代表的なアルキニル基は、エチニル基、2-プロピニル(プロパルギル基)、1-プロピニルなどを含む。
【0056】
「アルコキシ基」という用語は、上記に定義されたアルキル基が酸素原子を介して母体分子に結合されたものを指す。アルコキシ基の実例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基及びn-ヘキシルオキシ基を含む(ただし、これらに限定されない)。
【0057】
「ハロゲン基」及び「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる原子を指す。
【0058】
「飽和又は不飽和の4~6員環」という用語は、4~6個の環原子を有する環を指し、上記環原子はC、N、S、Oであってもよく、その実例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの4~6員飽和のシクロアルキル基、フェニル基などの4~6員アリール基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基などの4~6員複素環基、トリアゾリル基、アゾリル基、イソアゾリル基、チアゾリル基などの4~6員ヘテロアリール基を含むが、これらに限定されない。本発明の幾つかの実施例において、上記飽和又は不飽和の4~6員環は、ピペラジニル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0059】
「置換」(「任意に」という用語の有無を問わず)及び「置換基」という用語は、全ての原子の価数を維持する条件で1つの官能基を別の官能基に変化する能力を指す。何れかの特定の構造における1つ以上の位置が、指定された群から選択される1つ以上の置換基で置換される場合、上記置換基はそれぞれの位置において同一でも異なってもよい。
[図面の簡単な説明]
図1]イオン化可能な脂質II-37のpKaの曲線である。
【0060】
図2]イオン化可能な脂質II-37により形成されたmRNAをカプセルするLNPの細胞トランスフェクション率である。
【0061】
図3]イオン化可能な脂質II-37により形成されたpDNAをカプセルするLNPの細胞トランスフェクション率である。
【0062】
図4]イオン化可能な脂質II-37により形成されたsiRNAをカプセルするLNPの細胞トランスフェクション率である。
【0063】
図5]イオン化可能な脂質II-37及び市販の分子MC3によりそれぞれ形成されたmRNAをカプセルするLNPの細胞トランスフェクション率の比較である。
【0064】
図6]担持されたmRNAをCy5で標識し、それぞれイオン化可能な脂質II-37及び市販の分子MC3により、mRNAをカプセルするLNPを形成し、上記LNPによりmRNAを細胞内に送達する効率を蛍光染色で観察したことである。
【0065】
図7]イオン化可能な脂質II-37及びC14-113によりそれぞれ形成されたmRNAをカプセルするLNPの細胞トランスフェクション率の比較である。
【0066】
図8]MTT法によるII-37-LNP及びC14-113-LNPの細胞毒性測定である。
[発明を実施するための形態]
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明・解釈するものであり、本発明の請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明の請求の範囲内に含まれる。
【0067】
特に説明のない限り、下記の実施例に使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって調製することができる。
【0068】
実施例1 イオン化可能な脂質II-37の合成
【0069】
【化13】
【0070】
リノレニルアルコール(a2)の合成:0℃でテトラヒドロフラン950 mLにLiAlH(7.20 g)、リノール酸(50 g、a1)を加えた後、混合物を25℃で2 h撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)により反応完了を示した後、反応液に水(7.2 mL)、NaOH水溶液(7.2 mL、質量分率15%)及び水(21.6 mL)を順次加えてクエンチし、そして適量のNaSOを加えて15分間撹拌してからブフナーロートにより濾過し、且つ酢酸エチルを用いて濾過ケーキを洗浄し、濾液を収集して蒸発濃縮し、目的生成物であるリノレニルアルコール(a2)47.4 gを得た。
【0071】
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.27-5.44 (m, 4 H), 3.63 (t, J = 6.63 Hz, 2 H), 2.77 (t, J = 6.44 Hz, 2 H), 1.97-2.12 (m, 4 H), 1.57-1.63 (m, 1 H), 1.20-1.46 (m, 18 H), 0.83-0.95 (m, 3 H)
(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナール(a3)の合成:室温でアセトニトリル170 mLにリノレニルアルコール(25.0 g、a2)及び2-ヨードキシ安息香酸(39.4 g)を加えた後、混合物を85℃で4 h撹拌した。反応液をブフナーロートにより濾過し、且つジクロロメタンを用いて濾過ケーキを洗浄し、濾液を収集して蒸発濃縮し、目的生成物である(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナール(a3)24.0 gを得た。
【0072】
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 9.76 (t, J = 1.76 Hz, 1 H), 5.25-5.43 (m, 4 H), 2.76 (t, J = 6.17 Hz, 2 H), 2.41 (td, J = 7.33, 1.87 Hz, 2 H), 2.04 (q, J = 6.84 Hz, 4 H), 1.56-1.68 (m, 2 H), 1.22-1.36 (m, 14 H), 0.88 (t, J = 6.73 Hz, 3 H)
(9Z,12Z)-2-クロロ-オクタデカ-9,12-ジエン-1-オール(a4)の合成:0℃でアセトニトリル246 mLに(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエナール(43.0 g、a3)、DL-プロリン(5.62 g)及びN-クロロスクシンイミドを加えた後、0℃で2 h撹拌した。反応完了後、無水エタノール(246 mL)を用いて反応液を希釈し、更に水素化ホウ素ナトリウム(8.8 g)を加えた後、0℃で4 h撹拌した。反応混合物に水(120 mL)を加えてクエンチし、且つメチル-tert-ブチルエーテルを用いて抽出し、有機相を合わせてから飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後濾過し、蒸発濃縮し、目的生成物である(9Z,12Z)-2-クロロ-オクタデカ-9,12-ジエン-1-オール(a4、46 g)を得、そのまま次のステップに用いた。
【0073】
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.25 - 5.51 (m, 4 H), 3.97-4.07 (m, 1 H), 3.79 (dd, J = 12.01, 3.63 Hz, 1 H), 3.59-3.70 (m, 1 H), 2.67-2.90 (m, 2 H), 1.96-2.15 (m, 5 H), 1.64-1.82 (m, 1 H), 1.20-1.49 (m, 15 H), 0.89 (br t, J = 6.75 Hz, 3 H)
2-[(7Z,10Z)-ヘキサデカン-7,10-ジエン]オキシラン(a5)の合成:室温で1,4-ジオキサン450 mLに(9Z,12Z)-2-クロロオクタデカ-9,12-ジエン-1-オール(45 g、a4)及び水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム120 gを水585 mLに溶解)を加え、滴下完了後に混合物を35 ℃で2 h撹拌した。TLCにより反応完了を示した後、分液ロートにより反応液を分離し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後濾過し、蒸発濃縮した後、高速カラムクロマトグラフィーによって石油エーテル/酢酸エチルで溶出して残留物を精製し、目的生成物である2-[(7Z,10Z)-ヘキサデカン-7,10-ジエン]オキシラン(a5)29.11 gを得た。
【0074】
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.27-5.46 (m, 4 H), 2.87-2.98 (m, 1 H), 2.70-2.85 (m, 3 H), 2.46 (dd, J = 5.00, 2.75 Hz, 1 H), 1.94-2.21 (m, 4 H), 1.24 -1.58 (m, 17 H), 0.78 - 1.00 (m, 3 H)
II-37の合成:室温でエタノール10 mLに2-[(7Z,10Z)-ヘキサデカン-7,10-ジエン]オキシラン(5 g)及びN,N-ビス(2-アミノエチル)メチルアミン(739 mg)を加えた後、混合物を90℃で36 h撹拌した。反応液を蒸発濃縮した後、高速カラムクロマトグラフィーによりジクロロメタン/メタノールで溶出して残留物を精製し、粗生成物II-37(4 g)を得た。再び高速カラムクロマトグラフィーによりジクロロメタン/メタノールで目的生成物を精製し、II-37(2.2 g)を得た。
【0075】
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 5.27-5.44 (m, 12 H), 3.48-3.79 (m, 3 H), 2.63-3.00 (m, 12 H), 2.16-2.61 (m, 12 H), 2.05 (q, J = 6.80 Hz, 12 H), 1.18-1.57 (m, 51 H), 0.89 (t, J = 6.88 Hz, 9 H)
ESI-MS:m/z 910.8 [M+H], 911.8 [M+2H], 912.8 [M+3H]
実施例2 イオン化可能な脂質II-37の解離定数(pKa)
イオン化可能な脂質は、核酸への結合及び細胞内での核酸分子の放出を許可することという2つの主な役割を有する。脂質のpKaは重要な要素であり、なぜなら、脂質が核酸に結合するために低いpH値で正に帯電する必要があるが、形成されたLNPに毒性をもたせないのは中性pH値で電荷を持たないことが要求されているからである。TNS染料結合試験で測定したところ、イオン化可能な脂質II-37のpKaは6.81であり、結果を、図1に示した。
【0076】
実施例3 II-37によりmRNAをカプセルして脂質ナノ粒子を調製した
イオン化可能な脂質II-37、DSPC、CHOL及びDMG-PEG2000を、それぞれモル比35%:15%:48.5%:1.5%で配合して有機相としてエタノール溶液を調製し、水相としてLucferase mRNA(LucRNA)をpH=4の水溶液に溶解した。ナノメディシン製造装置(カナダPNI社、Ignite型番)でマイクロフルイディクス技術により水相と有機相を体積比3:1でナノ粒子の懸濁液に調製した。調製後、限外濾過して濃縮を行って最終的にLucRNA-LNP脂質ナノ粒子を得、2~8℃で保存して置いた。
【0077】
Zetasizer Proナノ粒子サイズ電位分析装置(Malvern Panalytical)でLucRNA-LNP粒子径及びZeta電位を表現した。F-280蛍光分光光度計(天津港東)によりRibogreenの方法でLucRNA-LNPのカプセル化率を検出した。多機能マイクロプレートリーダー(BioTek、型番SLXFATS)によりルシフェラーゼレポーター遺伝子法で調製されたLucRNA-LNP CHO細胞のトランスフェクション率を検出した。LucRNAをインビトロで転写する方法としては、CHO-K1細胞を、細胞密度2.5×10個の細胞/mLでプレートに播種し、細胞コンフルエンスが30%~50%になるとトランスフェクションした。各ウェルにLucRNA 2 μgをトランスフェクションし、陽性対照としてトランスフェクション試薬Lipofectamine MessagerMAX(ThermoFisher Scientific)を用いてトランスフェクションを行い、トランスフェクション試薬の取扱説明書に従ってトランスフェクション操作を行った。48 hトランスフェクションした後多機能マイクロプレートリーダーを用いてタンパク質発現量を検出した。陰性対照は、LucRNA-LNPを添加しない細胞培地であった。実施例3の検出結果を、表2に示した。
【0078】
【表2】
【0079】
実施例3の結果から分かるように、新規な脂質化合物を配合して調製した脂質ナノ粒子LucRNA-LNPは、粒子径が108 nm程度であり、LucRNA-LNPの粒子径分布が比較的に狭く(PDIが比較的に小さく)、カプセル化率が96%にも達した。インビトロでの細胞トランスフェクション率は、100万にも達した。イオン化可能な脂質II-37により調製されたLNPによりカプセルされたmRNAは、非常に良い物理化学的パラメータを有するだけでなく、極めて高い細胞トランスフェクション率を有することが示された。
【0080】
更に、同じLNPを用いて多機能マイクロプレートリーダー(BioTek、型番SLXFATS)によりルシフェラーゼレポーター遺伝子の方法で調製されたLucRNA-LNP HEK293T細胞のトランスフェクション率を検出したところ、トランスフェクションされたLucRNA量は、それぞれ0.5 μg、1.0 μg、2.0 μgであった。LucRNAをインビトロで転写する方法としては、HEK293T細胞を、細胞密度2.5×10個の細胞/mLでプレートに播種し、細胞コンフルエンスが30%~50%になるとトランスフェクションした。陽性対照としてトランスフェクション試薬Lipofectamine 2000(ThermoFisher Scientific)を用いてLucRNA 0.5 μgをトランスフェクションし、トランスフェクション試薬の取扱説明書に従ってトランスフェクション操作を行った。48 hトランスフェクションした後多機能マイクロプレートリーダーを用いてタンパク質発現量を検出した。陰性対照は、LucRNA-LNPを添加しない細胞培地であった。当該インビトロ細胞トランスフェクション率は、図2に示す通りであり、イオン化可能な脂質II-37により調製されたLNPによりカプセルされたmRNAは、細胞トランスフェクション率が極めに高く、同じmRNA量をトランスフェクションする場合、市販のLipofectamine 2000より約10倍高いことが分かった。
【0081】
実施例4 II-37によりDNAをカプセルして脂質ナノ粒子を調製した
イオン化可能な脂質II-37、DSPC、CHOL及びDMG-PEG2000を、それぞれモル比45%:10%:43.5%:1.5%で配合して有機相としてエタノール溶液を調製し、水相としてLucferase DNA(pDNA)をpH=4の水溶液に溶解する。水相と有機相を体積比3:1でナノメディシン製造装置(カナダPNI社、Ignite型番)にてマイクロフルイディクス技術によりナノ粒子の懸濁液に調製した。調製後、限外濾過して濃縮を行い、最終的にpDNA-LNP脂質ナノ粒子を得、2~8 ℃で保存して置いた。
【0082】
Zetasizer Proナノ粒子サイズ電位分析装置(Malvern Panalytical)でpDNA-LNP粒子径及びZeta電位を表現した。実施例4の検出結果として、表3に示すように、新規な脂質化合物を配合して調製した脂質ナノ粒子pDNA-LNPは、粒子径が173 nm程度であり、pDNA-LNPの粒子径分布が比較的に狭かった(PDIが比較的に小さかった)。
【0083】
【表3】
【0084】
多機能マイクロプレートリーダー(BioTek、型番SLXFATS)によりルシフェラーゼレポーター遺伝子法で調製されたpDNA-LNP 293T細胞のトランスフェクション率を検出したところ、トランスフェクションされたpDNA量はそれぞれ0.5 μg、1.0 μg、2.0 μgであった。インビトロで転写する方法としては、293T細胞を、細胞密度2.0×10個の細胞/mLでプレートに播種し、細胞コンフルエンスが30%~50%になるとトランスフェクションした。陽性対照としてトランスフェクション試薬Lipofectamine 2000(ThermoFisher Scientific)を用いてpDNA 2 μg をトランスフェクションし、トランスフェクション試薬の取扱説明書に従ってトランスフェクション操作を行った。48 hトランスフェクションした後、多機能マイクロプレートリーダーを用いてタンパク質発現量を検出した。陰性対照は、pDNA-LNPを添加しない細胞培地であった。インビトロでの細胞トランスフェクション率は、図3に示す通りであり、イオン化可能な脂質II-37により調製されたLNPによりカプセルされたDNAは、極めに高い細胞トランスフェクション率を有し、即ち、II-37により調製されたLNPによりpDNA 1.0 μgをトランスフェクションしたタンパク質発現量は、Lipofectamine 2000によりpDNA 2 μg をトランスフェクションした量よりも高く、同じ2 μgのpDNAをトランスフェクションする場合、II-37のインビトロ細胞トランスフェクション率は市販のLipofectamine 2000より約3倍高いことが分った。
【0085】
実施例5 II-37によりsiRNAをカプセルして脂質ナノ粒子を調製した
イオン化可能な脂質II-37、DSPC、CHOL及びDMG-PEG2000を、それぞれモル比45%:15%:38.5%:1.5%で配合して有機相としてエタノール溶液を調製し、水相としてLucferase siRNA(siRNA)をpH=4の水溶液に溶解した。水相と有機相を体積比3:1で配合してナノメディシン製造装置(カナダPNI社、Ignite型番)でマイクロフルイディクス技術によりナノ粒子の懸濁液を調製した。調製後、限外濾過して濃縮を行って最終的にsiRNA-LNP脂質ナノ粒子を得、2~8 ℃で保存して置いた。
【0086】
Zetasizer Proナノ粒子サイズ電位分析装置(Malvern Panalytical)でsiRNA-LNP粒子径及びZeta電位を表現した。実施例5の検出結果は表4に示した。新規な脂質化合物を配合して調製された脂質ナノ粒子siRNA-LNPの粒子径は294 nm程度であった。
【0087】
【表4】
【0088】
多機能マイクロプレートリーダー(BioTek、型番SLXFATS)によりルシフェラーゼレポーター遺伝子法で調製されたsiRNA-LNP 293T細胞のトランスフェクション率を検出したところ、トランスフェクションされたsiRNA量はそれぞれ0.5 μg、1.0 μg、2.0 μgであった。インビトロで転写する方法としては、Lucferaseレポーターを安定的に形質転換した293T細胞を、細胞密度2.0×10個の細胞/mLでプレートに播種し、細胞コンフルエンスが30%~50%になるとトランスフェクションした。陽性対照としてトランスフェクション試薬Lipofectamine 2000(ThermoFisher Scientific)を用いてsiRNA 1.0 μgをトランスフェクションし、トランスフェクション試薬の取扱説明書に従ってトランスフェクション操作を行った。24 hトランスフェクションした後、多機能マイクロプレートリーダーを用いてタンパク質発現量を検出した。陰性対照は、siRNA-LNPを添加しない細胞培地であった。インビトロ細胞トランスフェクション率は、図4に示す通りであり、イオン化可能な脂質II-37により調製されたLNPによりカプセルされたsiRNAは、極めに高いタンパク質ノックダウン率を有することが分かった。
【0089】
実施例6 II-37と市販のイオン化可能な陽イオン脂質分子MC3との効果比較
MC3の分子式は、4-(N,N-ジメチルアミノ)ブタン酸(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルエステルであった。
【0090】
実施例3に記載の方法でそれぞれII-37及びMC3を用いて脂質ナノ粒子を調製し、具体的なモル比はII-37:DSPC:CHOL:DMG-PEG2000=45:15:38.5:1.5、MC3:DSPC:CHOL:DMG-PEG2000=45:15:38.5:1.5であり、N/P比は5:1であった。
【0091】
調製して得られた脂質ナノ粒子の物理化学的品質管理データを以下の表に示した。
【0092】
【表5】
【0093】
上記の表から分かるように、II-37により調製された脂質ナノ粒子のカプセル化率は90.5%にも達し、MC3の脂質ナノ粒子よりはるかに高く、且つ粒子径がより小さくてより均一であり、電位がより高かった。
【0094】
実施例3と同じトランスフェクション方式で調製された脂質ナノ粒子を細胞CHO-K1にトランスフェクションし、タンパク質の発現状況を調べたところ、結果は、図5に示すように、トランスフェクションされたmRNA量が同じである場合、II-37(図中にC2で示す)により調製された脂質ナノ粒子はmRNAを担持して細胞をトランスフェクションした後、細胞におけるタンパク質発現量がMC3よりはるかに高いため、II-37により調製された脂質ナノ粒子の細胞トランスフェクション率が非常に高いことを示した。
【0095】
また、担持されたmRNAをCy5で標識してCy5-mRNA-LNP(II-37)及びCy5-mRNA-LNP(MC3)を得た。293T細胞と2 h及び6 hコンインキュベートした後、LysoSensorTM Greenで細胞のリソソームに対して染色を行い、Cy5-mRNAのエンドサイトーシス効果を観察した。図6から分かるように、Cy5-mRNA-LNP(II-37)は細胞と6 hインキュベートした後、Cy5-mRNAのほとんどがリソソームに到達し、共局在係数が0.626に達したが、Cy5-mRNA-LNP(MC3)は、細胞と6 hインキュベートした後、Cy5-mRNAのエンドサイトーシスが比較的に少なく、この比較から、II-37分子の核酸送達効率がMC3分子より優れていることが分かった。
【0096】
実施例6の結果から分かるように、新規な脂質化合物を配合して調製された脂質ナノ粒子は、核酸送達効率及びインビトロ細胞トランスフェクション率がいずれもMC3分子より優れていた。
【0097】
実施例7 II-37とその構造類似体分子C14-113との比較
C14-113の構造式は以下の通りであった。
【0098】
【化14】
【0099】
実施例3に記載の方法でそれぞれII-37及びC14-113を使用して脂質ナノ粒子を調製し、具体的なモル比は、II-37:DSPC:CHOL:DMG-PEG2000=45:15:38.5:1.5;C14-113:DSPC:CHOL:DMG-PEG2000=45:15:38.5:1.5であり、N/P比は10:1であった。
【0100】
調製して得られた脂質ナノ粒子の物理化学的品質管理データを以下の表に示した。
【0101】
【表6】
【0102】
実施例3と同じトランスフェクション方式で調製した脂質ナノ粒子を細胞293Tにトランスフェクションし、タンパク質の発現状況を調べたところ、結果は、図7に示すように、トランスフェクションされたmRNA量が同じである場合、II-37(図中にII-37-LNPで示す)により調製された脂質ナノ粒子はmRNAを担持して細胞をトランスフェクションした後、細胞におけるタンパク質の発現量がC14-113よりはるかに高いため、II-37により調製された脂質ナノ粒子の細胞トランスフェクション率が非常に高いことを示した。
【0103】
また、MTT法でII-37-LNP及びC14-113-LNPの細胞毒性を測定し、ベクターの用量、作用時間などの要素による正常細胞(293T)の細胞増殖への影響を考察した。結果は、図8に示すように、II-37(図中にII-37-LNPで示す)により調製された脂質ナノ粒子はmRNAを担持して細胞を48時間トランスフェクションした後、比較的に高い用量(2 μg/mL)でも比較的良い細胞活性を維持しているため、II-37により調製された脂質ナノ粒子の細胞毒性が非常に低いことを示した。
【0104】
実施例7の結果から分かるように、新規な脂質化合物を配合して調製された脂質ナノ粒子は、細胞毒性が低く、且つmRNAのトランスフェクション率が構造類似体分子C14-113より優れていた。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の精神及び原則を逸脱しない範囲で行われた何れの修正、均等置換、改良なども、本発明の請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1】イオン化可能な脂質II-37のpKaの曲線である。
図2】イオン化可能な脂質II-37により形成されたmRNAをカプセルするLNPの細胞トランスフェクション率である。
図3】イオン化可能な脂質II-37により形成されたpDNAをカプセルするLNPの細胞トランスフェクション率である。
図4】イオン化可能な脂質II-37により形成されたsiRNAをカプセルするLNPの細胞トランスフェクション率である。
図5】イオン化可能な脂質II-37及び市販の分子MC3によりそれぞれ形成されたmRNAをカプセルするLNPの細胞トランスフェクション率の比較である。
図6】担持されたmRNAをCy5で標識し、それぞれイオン化可能な脂質II-37及び市販の分子MC3により、mRNAをカプセルするLNPを形成し、上記LNPによりmRNAを細胞内に送達する効率を蛍光染色で観察したことである。
図7】イオン化可能な脂質II-37及びC14-113によりそれぞれ形成されたmRNAをカプセルするLNPの細胞トランスフェクション率の比較である。
図8】MTT法によるII-37-LNP及びC14-113-LNPの細胞毒性測定である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される構造を有する化合物。
【化1】

(ここで、Qは置換又は無置換の直鎖C2~20アルキレン基であり、前記アルキレン基の1つ又は1つ以上のC原子は、任意に独立してO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、
或いは、Qは置換又は無置換の飽和又は不飽和の4~6員環であり、前記4~6員環の環原子は、任意に独立してO、S、Nから選ばれる1つ又は1つ以上のヘテロ原子を含み、前記置換に用いられる置換基はハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~20アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~20アルコキシ基、直鎖又は分岐鎖のC2~20アルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC2~20アルキニル基、-CHCH(OH)R
【化2】

から選ばれ、
、R、R、Rは同一または異なって、それぞれ独立して水素、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C1~30アルキル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルケニル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルキニル基又は-CHCH(OH)Rから選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の1つ又は1つ以上のC原子は、任意に独立してO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、前記置換に用いられる置換基はハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルコキシ基から選ばれ、
その条件としては、R、R、R、Rのうちの少なくとも1つが
【化3】

であり、
は水素、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C1~30アルキル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルケニル基、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖C2~30アルキニル基から選ばれ、前記アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の1つ又は1つ以上のC原子は、任意に独立してO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、前記置換に用いられる置換基はハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルコキシ基から選ばれ、
は水素、C1~3アルキル基、C1~3アルコキシ基、-OHから選ばれ、
nは1~8の整数から選ばれ、mは0~8の整数から選ばれ、nとmは互いに独立して同一または異なって、
、R、R、Rのうちの少なくとも2つが
【化4】

である場合、前記基における各nと各mは互いに独立しており、同一でも異なってもよい。)
【請求項2】
Qは
【化5】

であり、
ここで、R、Rは、互いに独立して置換又は無置換の直鎖C1~10アルキレン基から選ばれ、前記アルキレン基の1つ又は1つ以上のC原子は、任意に独立してO、S及びNから選ばれるヘテロ原子で置換され、Rは、水素、ハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖C1~20アルキル基、直鎖又は分岐鎖C2~20アルケニル基、直鎖又は分岐鎖C2~20アルキニル基、又は-CHCH(OH)R、又は
【化6】

であり、前記置換に用いられる置換基は、ハロゲン、-OH、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルコキシ基である、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Qは
【化7】

であり、
ここで、xとyは、同一または異なって、1~8の整数から独立的に選ばれ、
好ましくは、xとyが同一または異なって、1~3の整数から選ばれ、
好ましくは、Rが直鎖又は分岐鎖C1~4アルキル基である、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は、-OHであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
nは、4~8の整数から選ばれ、mは、4~8の整数から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
下記の式A、B、C又はDから選ばれる:
【化8】

ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは、1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは、0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じであり、
【化9】

ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは、1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは、0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じであり、
【化10】

ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは、1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは、0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じであり、
【化11】

ここで、各nは互いに独立して同一または異なって、各nは、1~8の整数から選ばれ、各mは互いに独立して同一または異なって、各mは、0~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが4~8の整数から選ばれ、各mが4~8の整数から選ばれ、好ましくは、各nが互いに同じであり、各mが互いに同じであり、好ましくは、
【化12】

である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
生物活性物質送達システムの調製における請求項1~6の何れかに記載の化合物の応用であって、好ましくは、前記送達システムが微粒子、ナノ粒子、リポソーム、脂質ナノ粒子又はマイクロバブルである、応用。
【請求項8】
請求項1~6の何れかに記載の化合物を含む生物活性物質送達システムであって、好ましくは、前記送達システムが微粒子、ナノ粒子、リポソーム、脂質ナノ粒子又はマイクロバブルであることを特徴とする生物活性物質送達システム。
【請求項9】
請求項8に記載の生物活性物質送達システムを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~6の何れかに記載の化合物の調製方法であって、
【化13】

であり、
ここで、1)還元において、還元剤の存在下で化合物A1のカルボキシ基をヒドロキシ基に還元して化合物A2を得る、2)酸化において、酸化剤の存在下で化合物A2のヒドロキシ基をアルデヒド基に酸化して化合物A3を得る、3)ハロゲン化-還元において、まず酸性条件で化合物A3のアルデヒドα-水素とハロゲン化試薬とをハロゲン化反応させて中間体であるα-ハロゲン化アルデヒドを得た後、還元剤の存在下でα-ハロゲン化アルデヒドのアルデヒド基をヒドロキシ基に還元して化合物A4を得る、4)エポキシ化において、化合物A4を塩基の存在下で分子内の求核置換反応を行ってエポキシ化合物A5を得る、5)開環反応において、化合物A5をアミンと開環反応させて最終化合物を得ることを特徴とする調製方法。
【国際調査報告】