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特表2024-521871マイクロチップキャピラリー電気泳動アッセイ及び試薬
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  • 特表-マイクロチップキャピラリー電気泳動アッセイ及び試薬 図1A
  • 特表-マイクロチップキャピラリー電気泳動アッセイ及び試薬 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】マイクロチップキャピラリー電気泳動アッセイ及び試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
G01N27/447 301B
G01N27/447 331E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573618
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022031738
(87)【国際公開番号】W WO2022256383
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】17/368,377
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/335,756
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】リールマン、 ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】カロー、 ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダーハインツェ、 ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ノール、 ニコル、 エム.
(57)【要約】
タンパク質薬物製品試料の純度を評価し、タンパク質薬物製品試料中の不純物を同定するためのマイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)アッセイ及び試薬が提供される。タンパク質薬物試料中の分析物を分析するための方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性電気泳動試料緩衝液であって、
155~200mMの2-ヨードアセトアミドと、
0.50~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、
60~95mMのリン酸ナトリウムと、を含み、
前記水性電気泳動試料緩衝液は、8以下のpHを有する、水性電気泳動試料緩衝液。
【請求項2】
前記pHは、6である、請求項1に記載の水性緩衝液。
【請求項3】
200mMの2-ヨードアセトアミドと、1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、を含む、請求項1に記載の水性緩衝液。
【請求項4】
水性電気泳動試料緩衝液であって、
165.9mMの2-ヨードアセトアミドと、
0.81%のドデシル硫酸リチウムと、
81mMのリン酸ナトリウムと、を含み、
前記水性電気泳動試料緩衝液は、6.0のpHを有する、水性電気泳動試料緩衝液。
【請求項5】
水性電気泳動試料緩衝液であって、
200mMの2-ヨードアセトアミドと、
1.2%のドデシル硫酸リチウムと、
60mMのリン酸ナトリウムと、を含み、
前記水性電気泳動試料緩衝液は、6.0のpHを有する、水性電気泳動試料緩衝液。
【請求項6】
水性電気泳動試料緩衝液であって、
200mMの2-ヨードアセトアミドと、
1.2%のドデシル硫酸リチウムと、
60mMのリン酸ナトリウムと、を含み、
前記水性電気泳動試料緩衝液は、8.0のpHを有する、水性電気泳動試料緩衝液。
【請求項7】
水性電気泳動試料緩衝液であって、
0.50~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、
45~75mMのリン酸ナトリウムと、
80~155mMのジチオスレイトールと、を含み、
前記水性電気泳動試料緩衝液は、8以上のpHを有する、水性電気泳動試料緩衝液。
【請求項8】
前記pHは、8である、請求項7に記載の水性緩衝液。
【請求項9】
前記pHは、9である、請求項7に記載の水性緩衝液。
【請求項10】
80mMのジチオスレイトールを含む、請求項8に記載の水性緩衝液。
【請求項11】
142mMのジチオスレイトールを含む、請求項8に記載の水性緩衝液。
【請求項12】
1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、を更に含む、請求項7に記載の水性緩衝液。
【請求項13】
水性電気泳動試料緩衝液であって、
0.69%のドデシル硫酸リチウム、
69mMのリン酸ナトリウム、及び
80~155mMのジチオスレイトールからなり、
前記水性電気泳動試料緩衝液は、9.0のpHを有する、水性電気泳動試料緩衝液。
【請求項14】
水性電気泳動試料緩衝液であって、
1.2%のドデシル硫酸リチウム、
60mMのリン酸ナトリウム、及び
80mMのジチオスレイトールからなり、
前記水性電気泳動試料緩衝液は、8.0のpHを有する、水性電気泳動試料緩衝液。
【請求項15】
タンパク質薬物試料中の汚染物質又は不純物を同定するための方法であって、前記方法は、
前記タンパク質薬物試料を請求項1に記載の緩衝液に添加して、緩衝タンパク質薬物試料を形成するステップと、
前記緩衝タンパク質薬物試料を45~75℃に5~15分間加熱して、変性緩衝タンパク質薬物試料を形成するステップと、
前記変性緩衝タンパク質薬物試料に検出可能な標識を添加し、それを30~40℃で10~40分間加熱して、変性標識タンパク質薬物試料を形成するステップと、
前記変性標識タンパク質薬物試料を希釈し、それをマイクロチップキャピラリー電気泳動システム上でMCEに供して、希釈された前記タンパク質薬物試料を分離して、電気泳動図を生成するステップと、
前記タンパク質薬物、汚染物質、及び/又は不純物に対応する、前記電気泳動図中のピークを同定するステップと、を含む、方法。
【請求項16】
前記緩衝タンパク質薬物試料は、60℃で10分間加熱される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記標識タンパク質薬物試料は、35℃で15分間加熱される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記希釈されたタンパク質薬物試料は、3.6μg/mlである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
タンパク質薬物試料中の汚染物質又は不純物を同定するための方法であって、前記方法は、
タンパク質試料を請求項5に記載の緩衝液に添加して、緩衝タンパク質薬物試料を形成するステップと、
前記緩衝タンパク質薬物試料を45~75℃に5~15分間加熱して、変性タンパク質薬物試料を形成するステップと、
前記変性タンパク質薬物試料に検出可能な標識を添加し、それを30~40℃で10~40分間加熱して、変性標識タンパク質薬物試料を形成するステップと、
前記変性標識タンパク質薬物試料を希釈し、それをマイクロチップキャピラリー電気泳動システム上でMCE分析に供して、電気泳動図を生成するステップと、
汚染物質又は不純物に対応する、前記電気泳動図中のピークを同定するステップと、を含む、方法。
【請求項20】
前記緩衝タンパク質薬物試料は、60℃で10分間加熱される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記試料は、35℃で15分間加熱される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記希釈されたタンパク質薬物試料は、3.6μg/mlである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記検出可能な標識は、DY-631 N-ヒドロキシスクシンイミジルエステルである、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記検出可能な標識は、ジメチルスルホキシド(DMSO)で再構成され、続いて200mMのリン酸ナトリウムpH7.2緩衝液で希釈される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の緩衝液と、
前記緩衝液中で電気泳動用の試料を調製するための説明書と、を備える、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月19日に出願された米国仮特許出願第62/644,933号の利益及び優先権を主張する、2019年3月15日に出願された米国特許出願第16/355,050号の一部継続出願である、2021年6月1日に出願された米国特許出願第17/335,756号の一部継続出願である。本出願はまた、2018年3月19日に出願された米国仮特許出願第62/644,933号の利益及び優先権を主張する、2019年3月15日に出願された米国特許出願第16/355,050号の一部継続出願である。これらの出願の各々は、その全体が参考として援用される。
【0002】
本発明の態様は、概して、キャピラリー電気泳動の分野、特に、マイクロチップキャピラリー電気泳動を対象とする。
【背景技術】
【0003】
現在の品質管理(QC)検査室における生物学的製品の試験要求を満たすためには、堅牢で、再現性があり、ユーザフレンドリーな技術の実装が重要である。技術のアップグレードは、高品質の分析データを継続的に生成し、無効な検査結果及び機器関連の調査件数を最小限に抑えながら、生産量の増加を促進するために必要である。電気泳動は、生成物の純度及び断片化分析のためにQCにおいて歴史的に使用されてきたが、この手法は、ゲルベースからキャピラリーベースに、そしてより最近ではマイクロチップに移行している。マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)は、QC分析に必要とされる性能及び再現性の基準を維持しながら、試料分析時間の劇的な短縮を可能にする(Ouimet,C.,et al.,Expert Opin Drug Discov.,12(2):213-224(2017))。
【0004】
MCEは、バイオ医薬品の特性評価、品質管理、創薬のために医薬品業界で利用が拡大している有望な技術として登場したが、アッセイ干渉が起こりやすい場合がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、アッセイ干渉を減少させる改善されたMCEアッセイ及び組成物を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、タンパク質薬物製品中の不純物の検出を改善するためのMCEアッセイ及び組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
純度を評価し、タンパク質薬物製品試料中の不純物を同定するためのMCEアッセイ及び試薬が提供される。タンパク質薬物試料中の分析物を分析するための方法が提供される。好ましいタンパク質薬物としては、抗体及びその抗原結合フラグメントのような組換えタンパク質、並びに融合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。このアッセイは、MCE技術を使用して、タンパク質製品及びタンパク質製品中の不純物を分離、同定、及び定量する。不純物には、タンパク質凝集体、タンパク質断片、タンパク質多量体、及びアッセイ混入物が含まれるが、これらに限定されない。還元緩衝液及び非還元緩衝液もまた提供される。一部の実施形態では、本明細書において提供されるMCEアッセイ及び試薬は、REGEN-COV(商標)(casirivimab及びimdevimab)を含む治療用タンパク質製品などの抗SARS-CoV-2製品の分析及び精製試験において使用され得る。
【0008】
一実施形態は、2-ヨードアセトアミド(IAM)、ヨード酢酸(IAA)、又はN-エチルマレイミド(NEM)などのアルキル化剤を含有する非還元性水性電気泳動試料緩衝液を提供する。一実施形態では、非還元性水性電気泳動試料緩衝液は、アルキル化剤、155~175mMの2-ヨードアセトアミドと、0.50~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、65~95mMのリン酸ナトリウムと、を含有し、水性電気泳動試料緩衝液は7未満のpHを有する。一実施形態では、緩衝液のpHは6である。別の実施形態では、水性緩衝液は、166mMの2-ヨードアセトアミドと、0.81%のドデシル硫酸リチウムと、81mMのリン酸ナトリウムと、を含有する。
【0009】
別の実施形態では、非還元性水性電気泳動試料緩衝液は、アルキル化剤、例えば、50~250又は155~200又は155~250mMの2-ヨードアセトアミドと、0.50~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、40~80mM又は50~70mMのリン酸ナトリウムと、を含有し、水性電気泳動試料緩衝液は、8以下のpHを有する。一実施形態では、緩衝液のpHは8である。更に別の実施形態では、水性緩衝液は、200mMの2-ヨードアセトアミドと、1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、を含有する。
【0010】
別の実施形態では、非還元性水性電気泳動試料緩衝液は、アルキル化剤、例えば、155~200mMの2-ヨードアセトアミドと、0.50~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、50~70mMのリン酸ナトリウムと、を含有し、水性電気泳動試料緩衝液は、pH8以下を有する。一実施形態では、緩衝液のpHは6である。更に別の実施形態では、水性緩衝液は、200mMの2-ヨードアセトアミドと、1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、を含有する。
【0011】
還元緩衝液も提供される。一実施形態では、還元緩衝液は、0.5~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、55~85mMのリン酸ナトリウムと、還元剤と、を含有する水性電気泳動試料緩衝液であり、水性電気泳動試料緩衝液は、8を超えるpHを有する。一実施形態では、緩衝液のpHは9である。一実施形態では、還元緩衝液は、135~155mMのジチオスレイトールを含有する。更に別の実施形態は、0.69%のドデシル硫酸リチウムと、69mMのリン酸ナトリウムと、142mMのジチオスレイトールと、を含有する還元緩衝液を提供する。
【0012】
別の実施形態では、還元緩衝液は、0.5~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、45~85mMのリン酸ナトリウムと、還元剤と、を含有する水性電気泳動試料緩衝液であり、水性電気泳動試料緩衝液は、8以上のpHを有する。一実施形態では、緩衝液のpHは8である。一実施形態では、還元緩衝液は、80~155mMのジチオスレイトールを含有する。更に別の実施形態は、1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、80mMのジチオスレイトールと、を含有する還元緩衝液を提供する。
【0013】
HEPESベースの緩衝液もまた、開示される方法とともに使用され得る。一実施形態は、アルキル化剤、例えば55~75mMの2-ヨードアセトアミドと、0.1~1.0%のドデシル硫酸リチウムと、5~85mMのHEPESと、5~115mMの塩化ナトリウムと、を含有し、水性電気泳動試料緩衝液は、9未満のpHを有する、非還元HEPESベースの水性電気泳動試料緩衝液を提供する。別の実施形態では、緩衝液のpHは8である。更に別の実施形態では、水性緩衝液は、66.4mMの2-ヨードアセトアミドと、0.32%のドデシル硫酸リチウムと、16.2mMのHEPESと、48.6mMの塩化ナトリウムと、を含有する。
【0014】
別の実施形態は、0.05~0.75%のドデシル硫酸リチウムと、5mM~115mMの塩化ナトリウムと、5mM~115mMのHEPESと、還元剤と、を含有する、還元性HEPESベースの水性電気泳動試料緩衝液を提供し、水性電気泳動試料緩衝液は、7を超えるpHを有する。一実施形態では、緩衝液のpHは8である。一実施形態では、還元緩衝液は、35~50mMのジチオスレイトールを含有する。更に別の実施形態は、0.28%のドデシル硫酸リチウムと、41.5mM塩化ナトリウムと、13.8mM HEPESと、42.5mMのジチオスレイトールと、を含有する還元緩衝液を提供する。
【0015】
一実施形態は、タンパク質薬物試料中の汚染物質又は不純物を同定するための非還元MCE法であって、タンパク質試料を上述の非還元緩衝液に添加して、緩衝タンパク質薬物試料を形成するステップを含む方法を提供する。緩衝タンパク質薬物試料を65~85℃で5~15分間加熱して、変性緩衝タンパク質薬物試料を形成する。一実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、70℃で10分間加熱される。
【0016】
別の実施形態では、タンパク質薬物試料中の汚染物質又は不純物を同定するための非還元MCE法は、タンパク質試料を上述の非還元緩衝液に添加して、緩衝タンパク質薬物試料を形成するステップを含む。緩衝タンパク質薬物試料を50~72℃で5~15分間加熱して、変性緩衝タンパク質薬物試料を形成する。あるいは、緩衝タンパク質薬物試料を45~75℃の間で5~15分間加熱して、変性緩衝タンパク質薬物試料を形成する。一実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、60℃~65℃で10分間加熱される。別の実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、63℃で10分間加熱される。別の実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、60℃で10分間加熱される。
【0017】
一部の実施形態では、タンパク質薬物試料を検出可能な標識と混合し、30~40℃で20~40分間又は10~40分間加熱して、変性標識タンパク質薬物試料を形成する。他の実施形態では、タンパク質薬物試料を検出可能な標識と混合し、30~40℃で15分間加熱して、変性標識タンパク質薬物試料を形成する。検出可能な標識としては、Dyomics DY-631 NHSエステルが挙げられるが、これに限定されない。一部の実施形態では、標識は、MilliQ精製水によって希釈され、他の実施形態では、標識は、リン酸ナトリウム緩衝液中で希釈される。一部の例では、検出可能な標識は、ジメチルスルホキシド(DMSO)で再構成され、続いて200mMのリン酸ナトリウムpH7.2緩衝液で希釈される。他の色素、フルオロフォア、発色団、質量タグ、量子ドットなど、及び米国特許第6,924,372号に開示されているものを含む、他の検出可能な標識を使用することができる。一実施形態では、標識が添加されたタンパク質薬物試料は、35℃で30分間加熱される。別の実施形態では、標識が添加されたタンパク質薬物試料は、35℃で15分間加熱される。過剰な標識は、必要に応じて、例えば、スピンフィルタを使用することによって、試料から除去される。更に別の実施形態では、過剰な標識はクエンチされない。更に別の実施形態では、過剰な標識は除去されない。
【0018】
変性標識タンパク質薬物製品を希釈し、MCEに供して、マイクロチップキャピラリー電気泳動システム上で希釈されたタンパク質薬物試料を分離して、電気泳動図を得る。一実施形態では、0.5mg/mlで開始し、次いでマイクロチップ上に注入される試料の最終濃度は、MCEに対して9μg/mlである。別の実施形態では、0.2mg/mlで開始し、次いでマイクロチップ上に注入される試料の最終濃度は、MCEに対して3.6μg/mlである。電気泳動図は、タンパク質薬物製品及び不純物に対応するピークを含む。本方法は、タンパク質薬物製品、汚染物質、及び/又は不純物に対応する、電気泳動図中のピークを同定することによって終了する。
【0019】
別の実施形態は、タンパク質薬物試料中の汚染物質又は不純物を同定するための還元MCE法を提供する。本方法は、タンパク質試料を上記の還元緩衝液のいずれか1つに添加して、緩衝タンパク質薬物試料を形成することによって開始する。緩衝タンパク質薬物試料を65~85℃、好ましくは75℃で10分間加熱することによって、緩衝タンパク質薬物試料を変性させて、変性タンパク質薬物試料を形成する。タンパク質薬物試料を検出可能な標識と混合し、30~40℃で20~40分間加熱して、変性標識タンパク質薬物試料を形成する。一実施形態では、標識が添加されたタンパク質薬物試料は、35℃で30分間加熱される。
【0020】
他の実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、緩衝タンパク質薬物試料を50~72℃、好ましくは60℃で10分間加熱することによって変性されて、変性タンパク質薬物試料が形成される。例えば、タンパク質薬物試料を検出可能な標識と混合し、30~40℃で15分間加熱して、変性標識タンパク質薬物試料を形成する。別の実施形態では、標識が添加されたタンパク質薬物試料は、35℃で15分間加熱される。
【0021】
過剰な標識は、必要に応じて、例えば、スピンフィルタを使用することによって、試料から除去される。更に別の実施形態では、過剰な標識はクエンチされない。更に別の実施形態では、過剰な標識は除去されない。例示的な検出可能な標識としては、Dyomics DY-631 NHSエステルが挙げられるが、これに限定されない。使用され得る他の検出可能な標識としては、他の色素、フルオロフォア、発色団、質量タグ、量子ドットなど、及び米国特許第6,924,372号に開示されるものが挙げられる。
【0022】
1つの実施形態では、試料濃度についての確立されたアッセイ範囲は、0.4mg/ml~0.6mg/mlであり、これは、約7μg/ml~11μg/mlの分析される最終濃度に対応し、これは、マイクロチップキャピラリー電気泳動システムでのMCE分析に供されて、電気泳動図が生成される。別の実施形態では、試料濃度の確立されたアッセイ範囲は、約3.6μg/ml~11μg/mlの分析される最終濃度に対応する、0.2mg/ml~0.6mg/mlである。本方法は、タンパク質薬物製品、汚染物質、及び/又は不純物に対応する、電気泳動図中のピークを同定することによって終了する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】典型的な非還元試料分析の電気泳動図を示す。
【0024】
図1B】典型的な還元試料分析の電気泳動図を示す。X軸は時間(分)を表し、Y軸は相対蛍光単位(RFU)を表す。移動時間の増加は、タンパク質サイズの増加に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.定義
本発明を説明する文脈における(特に特許請求の範囲の文脈における)「a」、「an」、「the」という用語、及び類似の指示対象の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0026】
本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中で他に示されない限り、その範囲内に入る各別個の値を個々に言及する省略法として役立つことが単に意図され、そして各別個の値は、本明細書中に個々に列挙されたかのように本明細書中に援用される。
【0027】
「約」という用語の使用は、約+/-10%の範囲で記載された値の上又は下のいずれかの値を記載することが意図され、他の実施形態では、値は、約+/-5%の範囲で記載された値の上又は下のいずれかの値の範囲であり得、他の実施形態では、値は、約+/-2%の範囲で記載された値の上又は下のいずれかの値の範囲であり得、他の実施形態では、値は、約+/-1%の範囲で記載された値の上又は下のいずれかの値の範囲であり得る。前述の範囲は、文脈によって明確にされることが意図され、更なる限定は暗示されない。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書中に提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「~など」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることが意図され、そして他に特許請求されない限り、本発明の範囲に対して限定をもたらさない。本明細書中のいかなる言語も、特許請求されていない任意の要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されるべきではない。
【0028】
「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに連結された2つ以上のアミノ酸残基を含む分子をいう。タンパク質には、ポリペプチド及びペプチドが含まれ、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγ-カルボキシル化、アルキル化、ヒドロキシル化及びADPリボシル化などの修飾も含まれ得る。タンパク質は、タンパク質ベースの薬物を含めて、科学的又は商業的対象であり得、タンパク質には、とりわけ、酵素、リガンド、受容体、抗体及びキメラ又は融合タンパク質が含まれる。タンパク質は、周知の細胞培養法を使用して種々のタイプの組換え細胞によって産生され、概して、遺伝子工学技術(例えば、キメラタンパク質をコードする配列、又はコドン最適化配列、イントロンを含まない配列など)によって細胞に導入され、ここで、タンパク質は、エピソームとして存在し得るか、又は細胞のゲノムに組み込まれ得る。
【0029】
「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖からなる免疫グロブリン分子を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVR又はVH)及び重鎖定常領域を有する。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含有する。各軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を有する。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ、以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプ又はサブクラスのグリコシル化及び非グリコシル化免疫グロブリンの両方への言及を含む。「抗体」という用語は、抗体を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体などの、組換え手段によって調製、発現、作製又は単離された抗体分子を含む。抗体という用語はまた、2つ以上の異なるエピトープに結合することができるヘテロ四量体免疫グロブリンを含む二重特異性抗体も含む。二重特異性抗体は、概して、米国特許第8,586,713号に記載されている。
【0030】
「Fc融合タンパク質」は、2つ以上のタンパク質の一部又は全てを含み、これらのうちの1つは、免疫グロブリン分子のFc部分であり、これらは、そうでなければ、天然に一緒に見出されない。抗体由来ポリペプチドの種々の部分(Fcドメインを含む)に融合された特定の異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は、例えば、Ashkenazi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,88:10535(1991)、Byrn et al.,Nature 344:677(1990)、及びHollenbaugh et al.,”Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”,in Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pages 10.19.1-10.19.11(1992)に記載されている。「受容体Fc融合タンパク質」は、Fc部分に結合した受容体の1つ以上の細胞外ドメインを含み、一部の実施形態では、免疫グロブリンのCH2及びCH3ドメインが後に続くヒンジ領域を含む。一部の実施形態では、Fc融合タンパク質は、1つ以上のリガンドに結合する2つ又はそれ以上の別個の受容体鎖を含む。例えば、Fc融合タンパク質は、例えば、IL-1トラップ又はVEGFトラップなどのトラップである。
【0031】
「MCE」又は「マイクロチップキャピラリー電気泳動」という用語は、分析物のマイクロチップベースのキャピラリー電気泳動(CE)分離をいう。
【0032】
II.MCEアッセイ及び緩衝液
タンパク質薬物試料中の分析物を分析するための方法が提供される。タンパク質薬物としては、抗体及びその抗原結合フラグメント、融合タンパク質、並びに組換えタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。このアッセイは、MCE技術を使用して、タンパク質製品及びタンパク質製品中の不純物を分離、同定、及び定量する。不純物には、タンパク質凝集体、タンパク質断片、タンパク質多量体、及びアッセイ混入物が含まれるが、これらに限定されない。還元緩衝液及び非還元緩衝液もまた提供される。
【0033】
マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)は、インプロセス試験、ロットリリース、及び安定性指標に好適なタンパク質純度及び不純物の分析を提供する。casirivimab及びimdevimabのようなタンパク質試料は、試料を加熱し、アルキル化試薬(非還元)又は還元試薬(還元)のいずれかとともにドデシル硫酸リチウム(LDS)を添加することにより変性させて調製した。理論に束縛されることを意図しないが、これは、線状の負に荷電したタンパク質-LDSポリペプチド鎖を生成し、次いで、これをアミンエステル色素とともにインキュベートして、任意の遊離アミン基を共有結合的に標識する。標識された試料は、マイクロチップ上に注入され得、ここで、電流の適用は、質量電荷比に従って試料成分を分離する。検出は、電気泳動図を生成するレーザ誘起蛍光によって行うことができる。電気泳動図の分析は、存在する不純物と比較した試料の相対的純度を提供する。
【0034】
A.緩衝液
1.非還元緩衝液
一実施形態は、155~200mMのアルキル化剤、例えば2-ヨードアセトアミドと、0.50~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、60~95mMのリン酸ナトリウムと、を含有する非還元性水性電気泳動試料緩衝液を提供し、水性電気泳動試料緩衝液は、7未満のpHを有する。一実施形態では、緩衝液のpHは6である。別の実施形態では、水性緩衝液は、166mMの2-ヨードアセトアミドと、0.81%のドデシル硫酸リチウムと、81mMのリン酸ナトリウムと、を含有する。
【0035】
別の実施形態は、155~200mMのアルキル化剤と、0.50~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、60~95mMのリン酸ナトリウムと、を含有し、8以下のpHを有する、非還元性水性電気泳動試料緩衝液を提供する。別の実施形態では、緩衝液のpHは8である。別の実施形態では、水性緩衝液は、200mMの2-ヨードアセトアミドと、1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、を含有する。
【0036】
別の実施形態は、155~200mMのアルキル化剤と、0.50~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、60~95mMのリン酸ナトリウムと、を含有し、8未満のpHを有する、非還元性水性電気泳動試料緩衝液を提供する。別の実施形態では、緩衝液のpHは6である。別の実施形態では、水性緩衝液は、200mMの2-ヨードアセトアミドと、1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、を含有する。
【0037】
2.還元緩衝液
還元緩衝液も提供される。一実施形態では、還元緩衝液は、0.5~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、65~95mMのリン酸ナトリウムと、還元剤と、を含有する水性電気泳動試料緩衝液であり、水性電気泳動試料緩衝液は、8を超えるpHを有する。別の実施形態では、上記還元緩衝液は、0.5~1.5%のドデシル硫酸リチウムと、45~95mMのリン酸ナトリウムと、還元剤と、を含有し、水性電気泳動試料緩衝液は、8以上のpHを有する。一実施形態では、緩衝液のpHは9である。別の実施形態では、緩衝液のpHは8である。
【0038】
還元剤は当技術分野で公知である。例示的な還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT、CAS 3483-12-3)、β-メルカプトエタノール(BME、2 BME、2-ME、b-mer、CAS 60-24-2)、2-アミノエタンチオール(2-MEA-HCl、システアミン-HClとも称される、CAS 156-57-0)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP、CAS 5961-85-3)、システイン塩酸塩(Cys-HCl、CAS 52-89-1)、又は2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム塩(MESNA)が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチド及びタンパク質ジスルフィド結合の固相還元を可能にするためにチオールベースの還元剤が固定化された樹脂を含有する固定化還元剤カラムなどの、タンパク質結合を還元するための他の方法が当技術分野で公知である。ジスルフィド結合を切断するのに好適な更なる還元剤もまた想定される。
【0039】
一実施形態では、還元緩衝液は、135~155mMのジチオスレイトールを含有する。別の実施形態では、還元緩衝液は、80~155mMのジチオスレイトールを含有する。
【0040】
更に別の実施形態は、0.69%のドデシル硫酸リチウムと、69mMのリン酸ナトリウムと、142mMのジチオスレイトール、又は1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、80mMのジチオスレイトールと、を含有する還元緩衝液を提供する。
【0041】
3.HEPESベースの非還元緩衝液
HEPESベースの緩衝液もまた、開示される方法とともに使用され得る。一実施形態は、アルキル化剤、例えば55~75mMの2-ヨードアセトアミドと、0.1~1.0%のドデシル硫酸リチウムと、5~85mMのHEPESと、5~115mMの塩化ナトリウムと、を含有し、9未満のpHを有する、非還元HEPESベースの水性電気泳動試料緩衝液を提供する。一実施形態では、緩衝液のpHは8である。別の実施形態では、水性緩衝液は、66.4mMの2-ヨードアセトアミドと、0.32%のドデシル硫酸リチウムと、16.2mMのHEPESと、48.6mMの塩化ナトリウムと、を含有する。
【0042】
4.HEPESベースの還元緩衝液
別の実施形態は、0.05~0.75%のドデシル硫酸リチウムと、5mM~115mMの塩化ナトリウムと、5mM~115mMのHEPESと、還元剤と、を含有する、還元性HEPESベースの水性電気泳動試料緩衝液を提供し、水性電気泳動試料緩衝液は、7を超えるpHを有する。一実施形態では、緩衝液のpHは8である。一実施形態では、還元緩衝液は、35~50mMのジチオスレイトールを含有する。更に別の実施形態は、0.28%のドデシル硫酸リチウムと、41.5mM塩化ナトリウムと、13.8mM HEPESと、42.5mMのジチオスレイトールと、を含有する還元緩衝液を提供する。
【0043】
B.アッセイ
1.非還元アッセイ
一実施形態は、タンパク質薬物試料中の汚染物質又は不純物を同定するための非還元MCE法を提供し、本方法は、タンパク質試料を上述の非還元緩衝液に添加して、緩衝タンパク質薬物試料を形成するステップを含む。緩衝タンパク質薬物試料を50~85℃で5~15分間加熱して、変性緩衝タンパク質薬物試料を形成する。一実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、75℃で10分間加熱される。別の実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、45~75℃の間で5~15分間加熱されて、変性緩衝タンパク質薬物試料が形成される。別の好ましい実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、60℃で10分間加熱される。更に別の好ましい実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、63℃で10分間加熱される。
【0044】
検出可能な標識は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で供給業者の推奨に従って調製される。その後の希釈物を、MilliQ中で供給業者の推奨に従って調製する。他の実施形態では、標識は、200mMのリン酸ナトリウムpH7.2中での希釈によって調製される。一部の実施形態では、標識は、5μM溶液に希釈される。他の実施形態では、標識は16μM溶液に希釈される。次いで、希釈した標識を変性緩衝タンパク質薬物試料に添加し、30~40℃で10~40分間加熱して、変性標識タンパク質薬物試料を形成する。別の実施形態では、次いで、検出可能な標識を変性緩衝タンパク質薬物試料に添加し、30~40℃で15分間加熱して、変性標識タンパク質薬物試料を形成する。一実施形態では、標識が添加された変性タンパク質薬物試料は、35℃で30分間加熱される。別の好ましい実施形態では、標識が添加された変性タンパク質薬物試料は、35℃で15分間加熱される。過剰な標識は、必要に応じて、例えば、スピンフィルタを使用することによって、試料から除去される。更に別の実施形態では、過剰な標識はクエンチされない。更に別の実施形態では、過剰な標識は除去されない。
【0045】
好ましい検出可能な標識としては、Dyomics DY-631 NHSエステルが挙げられるが、これに限定されない。使用され得る他の検出可能な標識としては、他の色素、フルオロフォア、発色団、質量タグ、量子ドットなど、及び米国特許第6,924,372号に開示されるものが挙げられる。
【0046】
変性標識タンパク質薬物製品を希釈し、MCEに供して、マイクロチップキャピラリー電気泳動システム上で希釈されたタンパク質薬物試料を分離して、電気泳動図を得る。一実施形態では、0.5mg/mlで開始し、次いでマイクロチップ上に注入される試料の最終濃度は、MCEに対して9μg/mlである。別の実施形態では、試料開始濃度は、0.2mg/mlである。電気泳動図は、タンパク質薬物製品及び不純物に対応するピークを含む。本方法は、汚染物質又は不純物に対応する、電気泳動図中のピークを同定することによって終了する。
【0047】
2.還元アッセイ
別の実施形態は、タンパク質薬物試料中の汚染物質又は不純物を同定するための還元MCE法を提供する。本方法は、タンパク質薬物試料を上記の還元緩衝液のいずれか1つに添加して、緩衝タンパク質薬物試料を形成することによって開始される。緩衝タンパク質薬物試料を65~85℃、好ましくは75℃で10分間加熱することによって、緩衝タンパク質薬物試料を変性させて、変性タンパク質薬物試料を形成する。別の実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、緩衝タンパク質薬物試料を50~72℃、又は45~75℃、又は好ましくは60℃で10分間加熱することによって変性されて、変性タンパク質薬物試料が形成される。更に別の好ましい実施形態では、緩衝タンパク質薬物試料は、63℃で10分間加熱される。標的タンパク質薬物試料を変性させるのに必要な温度は、標的タンパク質薬物試料の構造に応じて変化させることができる。
【0048】
次いで、標識を添加したタンパク質薬物試料を30~40℃で20~40分間又は10~20分間又は10~40分間加熱して、変性標識タンパク質薬物試料を形成する。一実施形態では、標識が添加されたタンパク質薬物製品試料は、35℃で30分間加熱される。別の好ましい実施形態では、標識が添加されたタンパク質薬物製品試料は、35℃で15分間加熱される。過剰な標識は、必要に応じて、例えば、スピンフィルタを使用することによって、試料から除去される。更に別の実施形態では、過剰な標識はクエンチされない。更に別の実施形態では、過剰な標識は除去されない。好ましい検出可能な標識としては、Dyomics DY-631 NHSエステルが挙げられるが、これに限定されない。使用され得る他の検出可能な標識としては、他の色素、フルオロフォア、発色団、質量タグ、量子ドットなど、及び米国特許第6,924,372号に開示されるものが挙げられる。
【0049】
1つの実施形態では、試料濃度についての確立されたアッセイ範囲は、0.4mg/ml~0.6mg/mlであり、これは、約7μg/ml~11μg/mlの分析される最終濃度に対応し、これは、マイクロチップキャピラリー電気泳動システムでのMCE分析に供されて、電気泳動図が生成される。別の実施形態では、試料濃度についての確立されたアッセイ範囲は、0.2mg/ml~0.6mg/mlであり、これは、約3.6μg/ml~11μg/mlの分析される最終濃度に対応し、これは、マイクロチップキャピラリー電気泳動システムでのMCE分析に供されて、電気泳動図が生成される。本方法は、タンパク質薬物製品、汚染物質、及び/又は不純物に対応する、電気泳動図中のピークを同定することによって終了する。
【0050】
C.計器類
開示されたMCEアッセイを実施するための計器類は市販されている。一実施形態では、開示されるMCEアッセイは、LabChip GXII又はLabChip GXII Touch HT及びLabChip(登録商標)HT Protein Express Chipを使用して実施される。
【0051】
III.対象のタンパク質
開示されるMCEアッセイ及び試薬を用いてアッセイされる対象のタンパク質、例えば、タンパク質薬物製品は、原核細胞又は真核細胞における発現に好適な任意の対象のタンパク質であり得、提供される操作された宿主細胞系において使用され得る。例えば、対象のタンパク質としては、抗体若しくはその抗原結合フラグメント、キメラ抗体若しくはその抗原結合フラグメント、ScFv若しくはそのフラグメント、Fc融合タンパク質若しくはそのフラグメント、増殖因子若しくはそのフラグメント、サイトカイン若しくはそのフラグメント、又は細胞表面レセプターの細胞外ドメイン若しくはそのフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。対象のタンパク質は、単一のサブユニットからなる単純なポリペプチド、又は2つ以上のサブユニットを含む複雑なマルチサブユニットタンパク質であり得る。対象のタンパク質は、バイオ医薬品製品、食品添加物若しくは保存剤、又は精製及び品質基準に供される任意のタンパク質薬物製品であり得る。
【0052】
一部の実施形態では、タンパク質薬物製品(対象のタンパク質)は、抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、抗原結合抗体断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、又はテトラボディ、Fab断片又はF(ab’)2断片、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、又はIgG4抗体である。一実施形態では、抗体はIgG1抗体である。一実施形態では、抗体はIgG2抗体である。一実施形態では、抗体はIgG4抗体である。一実施形態では、抗体はキメラIgG2/IgG4抗体である。一実施形態では、抗体はキメラIgG2/IgG1抗体である。一実施形態では、抗体はキメラIgG2/IgG1/IgG4抗体である。
【0053】
実施形態は、任意の公知の治療用抗体治療薬とともに使用することができる。一部の実施形態では、抗体は、抗プログラム細胞死1抗体(例えば、米国特許出願公開第2015/0203579A1号に記載される抗PD1抗体)、抗プログラム細胞死リガンド-1(例えば、米国特許出願公開第2015/0203580A1号に記載される抗PD-L1抗体)、抗Dll4抗体、抗アンジオポエチン-2抗体(例えば、米国特許第9,402,898号に記載される抗ANG2抗体)、抗アンジオポエチン様3抗体(例えば、米国特許第9,018,356号に記載されている抗Angptl3抗体)、抗血小板誘導増殖因子受容体抗体(例えば、米国特許第9,265,827号に記載されている抗PDGFR抗体)、抗Erb3抗体、抗プロラクチン受容体抗体(例えば、米国特許第9,302,015号に記載される抗PRLr抗体)、抗補体5抗体(例えば、米国特許出願公開第2015/0313194A1号に記載される抗C5抗体)、抗TNF抗体、抗上皮成長因子受容体抗体(例えば、米国特許第9,132,192号に記載されている抗EGFR抗体又は米国特許出願公開第2015/0259423A1号に記載されている抗EGFRvIII抗体)、抗プロタンパク質転換酵素ズブチリシンケキシン-9抗体(例えば、米国特許第8,062,640号又は米国特許第9,540,449号に記載される抗PCSK9抗体)、抗増殖分化因子-8抗体(例えば、米国特許第8,871,209号又は同第9,260,515号に記載されるような、抗ミオスタチン抗体としても公知の抗GDF8抗体)、抗グルカゴン受容体(例えば、米国特許出願公開第2015/0337045A1号又は同第2016/0075778A1号に記載されている抗GCGR抗体)、抗VEGF抗体、抗IL1R抗体、インターロイキン4受容体抗体(例えば、米国特許出願公開第2014/0271681A1号又は米国特許第8,735,095号若しくは同第8,945,559号に記載されている抗IL4R抗体)、抗インターロイキン6受容体抗体(例えば、米国特許第7,582,298号、同第8,043,617号又は同第9,173,880号に記載されている抗IL6R抗体)、抗IL1抗体、抗IL2抗体、抗IL3抗体、抗IL4抗体、抗IL5抗体、抗IL6抗体、抗IL7抗体、抗インターロイキン33(例えば、米国特許第9,453,072号又は同第9,637,535号に記載される抗IL33抗体)、抗呼吸器合胞体ウイルス抗体(例えば、米国特許出願公開第9,447,173号に記載されている抗RSV抗体)、抗分化抗原群3(例えば、米国特許第9,447,173号及び同第9,447,173号、並びに米国特許出願第62/222,605号に記載される抗CD3抗体)、抗分化抗原群20(例えば、米国特許第9,657,102号及びUS2015/0266966A1、並びに米国特許第7,879,984号に記載されている抗CD20抗体)、抗CD19抗体、抗CD28抗体、抗分化抗原群-48(例えば、米国特許第9,228,014号に記載の抗CD48抗体)、抗Fel d1抗体(例えば、米国特許第9,079,948号に記載されている)、抗中東呼吸症候群ウイルス(例えば、米国特許出願公開第2015/0337029A1号に記載される抗MERS抗体)、抗エボラウイルス抗体(例えば、米国特許出願公開第2016/0215040号に記載されている)、抗ジカウイルス抗体、抗リンパ球活性化遺伝子3抗体(例えば、抗LAG3抗体、又は抗CD223抗体)、抗神経成長因子抗体(例えば、米国特許出願公開第2016/0017029号並びに米国特許第8,309,088号及び同第9,353,176号に記載されている抗NGF抗体)及び抗タンパク質Y抗体からなる群から選択され得る。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、抗CD3×抗CD20二重特異性抗体(米国特許出願公開第2014/0088295A1号及び同第2015/0266966A1号に記載されている)、抗CD3×抗ムチン16二重特異性抗体(例えば、抗CD3×抗Muc16二重特異性抗体)、及び抗CD3×抗前立腺特異的膜抗原二重特異性抗体(例えば、抗CD3×抗PSMA二重特異性抗体)からなる群から選択され得る。一部の実施形態では、対象のタンパク質は、casirivimab、imdevimab、ravulizumab-cwvz、abciximab、adalimumab、adalimumab-atto、ado-trastuzumab、alemtuzumab、alirocumab、atezolizumab、avelumab、basiliximab、belimumab、benralizumab、bevacizumab、bezlotoxumab、blinatumomab、brentuximab vedotin、brodalumab、canakinumab、capromab pendetide、certolizumab pegol、cemiplimab、cetuximab、denosumab、dinutuximab、dupilumab、durvalumab、eculizumab、elotuzumab、emicizumab-kxwh、emtansinealirocumab、evinacumab、evolocumab、fasinumab、golimumab、guselkumab、ibritumomab tiuxetan、idarucizumab、infliximab、infliximab-abda、infliximab-dyyb、ipilimumab、ixekizumab、mepolizumab、necitumumab、nesvacumab、nivolumab、obiltoxaximab、obinutuzumab、ocrelizumab、ofatumumab、olaratumab、omalizumab、panitumumab、pembrolizumab、pertuzumab、ramucirumab、ranibizumab、raxibacumab、reslizumab、rinucumab、rituximab、sarilumab、secukinumab、siltuximab、tocilizumab、tocilizumab、trastuzumab、trevogrumab、ustekinumab、及びvedolizumabからなる群から選択することができる。
【0054】
一部の実施形態では、対象のタンパク質は、Fc部分及び別のドメインを含有する組換えタンパク質(例えば、Fc融合タンパク質)である。一部の実施形態では、Fc融合タンパク質は、Fc部分にカップリングされた受容体の1つ以上の細胞外ドメインを含有する受容体Fc融合タンパク質である。一部の実施形態では、Fc部分は、ヒンジ領域、続いてIgGのCH2及びCH3ドメインを含む。一部の実施形態では、受容体Fc融合タンパク質は、単一のリガンド又は複数のリガンドのいずれかに結合する2つ以上の異なる受容体鎖を含有する。例えば、Fc融合タンパク質は、IL-1トラップ(例えば、hIgG1のFcに融合されたIl-1R1細胞外領域に融合されたIL-1RAcPリガンド結合領域を含有するリロナセプト、米国特許第6,927,044号を参照)、又はVEGFトラップ(例えば、hIgG1のFcに融合されたVEGFレセプターFlk1のIgドメイン3に融合されたVEGFレセプターFlt1のIgドメイン2を含むアフリベルセプト又はziv-アフリベルセプト、米国特許第7,087,411号及び同第7,279,159号を参照)のようなTRAPタンパク質である。他の実施形態では、Fc融合タンパク質は、scFv-Fc融合タンパク質であり、これは、Fc部分に結合された抗体の1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、可変重鎖フラグメント及び可変軽鎖フラグメント)のうちの1つ以上を含有する。
【0055】
IV.細胞培養
開示されるMCEアッセイ及び試薬を用いてアッセイされるタンパク質薬物製品は、産生された細胞培養物である。細胞培養は、バッチ培養を指す「流加細胞培養」又は「流加培養」であり得、ここで、細胞及び培養培地は、最初に培養容器に供給され、追加の培養栄養素は、培養の終了前に定期的な細胞及び/又は生成物の回収を伴って又は伴わずに、培養中に培養物に別個の増分でゆっくりと供給される。流加培養は、周期的に培養物全体(細胞及び培地を含み得る)が除去され、新鮮な培地によって置き換えられる「半連続流加培養」を含む。流加培養は、単純な「バッチ培養」とは区別されるが、細胞培養のための全ての成分(動物細胞及び全ての培養栄養素を含む)は、バッチ培養における培養プロセスの開始時に培養容器に供給される。流加培養は、標準的な流加プロセスの間に培養容器から上清が除去されない限り、「灌流培養」とは異なり得るが、灌流培養では、細胞は、例えば、濾過によって培養物中に拘束され、培養培地は、連続的又は断続的に導入され、培養容器から除去される。しかしながら、流加細胞培養中の試験対象のための試料の除去が企図される。流加プロセスは、最大作業体積及び/又はタンパク質製品に達したことが決定されるまで継続し、その後、タンパク質が採取される。
【0056】
細胞培養は、通常は特定の増殖期に細胞を継続的に増殖させるために使用される技術である「連続細胞培養」であり得る。例えば、細胞の一定の供給が必要とされる場合、又は対象の特定のタンパク質の産生が必要とされる場合、細胞培養は、特定の増殖期における維持を必要とし得る。したがって、細胞をその特定の相に維持するためには、条件を継続的に監視し、それに応じて調整しなければならない。
【0057】
細胞は、細胞培養培地中で培養される。「細胞培養培地」及び「培養培地」という用語は、哺乳動物細胞を増殖させるために使用される栄養溶液であって、典型的には、細胞の増殖を増強するために必要な栄養素、例えば、糖質エネルギー源、必須アミノ酸(例えば、フェニルアラニン、バリン、スレオニン、トリプトファン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、リジン、及びヒスチジン)及び非必須アミノ酸(例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン、及びチロシン)、微量元素、エネルギー源、脂質、ビタミンなどを提供する栄養溶液を指す。細胞培養培地は、細胞増殖を支持する原材料を供給する抽出物、例えば、血清又はペプトン(加水分解物)を含有し得る。培地は、動物由来抽出物の代わりに、酵母由来又は大豆抽出物を含有してもよい。化学的に規定された培地とは、全ての化学成分が公知である(すなわち、公知の化学構造を有する)細胞培養培地をいう。化学的に定義された培地は、血清又は動物由来ペプトンなどの動物由来成分を完全に含まない。一実施形態では、培地は化学的に定義された培地である。
【0058】
この溶液はまた、ホルモン及び増殖因子を含む、最小速度を超えて増殖及び/又は生存を増強する成分を含有し得る。この溶液は、培養される特定の細胞の生存及び増殖に最適なpH及び塩濃度に処方され得る。
【0059】
「細胞株」とは、細胞の連続継代又は継代培養を介して特定の系統に由来する細胞(単数又は複数)をいう。「細胞」という用語は、「細胞集団」と交換可能に使用される。
【0060】
「細胞」という用語は、組換え核酸配列を発現するのに好適な任意の細胞を含む。細胞には、細菌細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、非ヒト動物細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、酵母細胞、又は例えばハイブリドーマ若しくはクアドローマなどの細胞融合物などの、原核生物及び真核生物の細胞が含まれる。ある特定の実施形態では、細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット又はマウス細胞である。他の実施形態では、細胞は、以下の細胞、すなわち、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK21)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo25、HB 8065、HL-60、リンパ球、例えば、Jurkat(Tリンパ球)又はDaudi(Bリンパ球)、A431(表皮)、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT細胞、幹細胞、腫瘍細胞、及び前述の細胞に由来する細胞株から選択することができる。一部の実施形態では、細胞は、1つ以上のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(登録商標)細胞)を含む。一部の実施形態では、細胞はCHO細胞である。他の実施形態では、細胞はCHO K1細胞である。
【0061】
V.キット
一実施形態は、開示される緩衝液又は開示される緩衝液を作製するための成分のうちの1つ以上を含むキットを提供する。キットは、緩衝液又は成分のための容器を含むことができる。緩衝液は、溶液又は凍結乾燥形態であり得る。このキットはまた、必要に応じて、凍結乾燥された処方物のための希釈剤又は再構成溶液を含む第2の容器、及び必要に応じて、溶液の使用又は再構成及び/又は凍結乾燥された緩衝液若しくは粉末化された成分の使用のための説明書を備える。
【0062】
キットは、緩衝液、希釈剤、及びフィルタのうちの1つ以上を含む、開示されるMCEアッセイを実施するために必要とされる追加の試薬を更に含み得る。緩衝液及び試薬は、ボトル、バイアル、又は試験管中に存在し得る。
【0063】
以下の実施例は、本発明者らがその発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0064】
実施例1:治療用タンパク質の純度及び不純物分析のためのMCEアッセイ。
方法及び材料:
材料:
LabChip GXII又はLabChip GXII Touch HT及びLabChip(登録商標)HT Protein Express Chipを、キャピラリー電気泳動分離及びデータ収集のために使用した(Perkin Elmer)。上記に開示した非還元及び還元変性緩衝液をMCEアッセイに使用した。
【0065】
方法:
マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)は、インプロセス試験、ロットリリース、及び安定性指標に好適なタンパク質純度及び不純物の分析を提供する。casirivimab及びimdevimabのタンパク質試料は、加熱及びアルキル化剤(非還元)又は還元剤(還元)のいずれかとともにドデシル硫酸リチウム(LDS)を添加することによって試料を変性させることによって調製した。次いで、得られた試料をアミンエステル色素とともにインキュベートして、任意の遊離アミン基を共有結合的に標識した。標識された試料をマイクロチップ上に注入し、そこで電流を印加して試料成分をサイズ(低分子量から高分子量)に従って分離した。レーザ誘起蛍光によって検出を行い、電気泳動図を作成した。電気泳動図の分析は、存在する不純物と比較した試料の相対的純度を提供した。
【0066】
表1は、第1のMCEアッセイのための試料を調製するためのワークフロー手順を示す。簡単に述べると、タンパク質試料を0.5mg/mlに希釈した。1μlの非還元(NR)又は還元(R)変性緩衝液のいずれか及び4μlの希釈試料を96ウェルプレートに添加した。試料を混合し、遠心分離し、製品について指定された温度、典型的には75℃で10分間加熱した。次いで、試料を5μMの市販の色素(例えば、Dyomics DY-631 NHS Ester、PICO色素とも称される)で標識した。試料を混合し、遠心分離し、次いで35℃で30分間加熱した。次いで、標識された試料を105μlの希釈停止溶液で希釈した。LabChip GXII又はLabChip GXII Touch HTを使用して試料を分離した。
【表1】
【0067】
表2は、第2のMCEアッセイのための試料を調製するためのワークフロー手順を示す。手短に言えば、タンパク質試料を0.5又は2mg/mlに希釈した。10μlの非還元(NR)又は還元(R)変性緩衝液のいずれか、及び40μlの希釈試料を96ウェルプレートに添加した。試料を混合し、遠心分離し、製品について指定された温度、典型的には60℃で10分間加熱した。次いで、試料を16μMの市販の色素(例えば、Dyomics DY-631 NHSエステル)で標識した。試料を混合し、遠心分離し、次いで35℃で15分間加熱した。次いで、標識された試料を、105μlの希釈停止溶液又は希釈溶液で希釈した。LabChip GXII又はLabChip GXII Touch HTを使用して試料を分離した。
【0068】
実施例1A:非還元性緩衝液
試料調製ステップにおいて、166mMの2-ヨードアセトアミドと、0.81%のドデシル硫酸リチウムと、81mMのリン酸ナトリウムと、を含有し、pH6の非還元性水性電気泳動試料緩衝液を使用して、表1に示される一般的な調製に続いた。試料を75_℃で10分間加熱した。試料標識ステップは、5μM色素溶液を使用した。最終希釈ステップは、105μLの希釈停止溶液を使用した。
【0069】
実施例1B:還元緩衝液
試料調製ステップにおいて、0.69%のドデシル硫酸リチウムと、69mMのリン酸ナトリウムと、142mMのジチオスレイトールと、を含有し、pH9の還元水性電気泳動試料緩衝液を使用して、表1に示される一般的な調製に続いた。試料を75℃で10分間加熱した。試料標識ステップは、5μM色素溶液を使用した。最終希釈ステップは、105μLの希釈停止溶液を使用した。
【表2】
【0070】
緩衝液
200mMのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物、200mMのリン酸ナトリウム二塩基性七水和物、及び10%のドデシル硫酸リチウム(LDS)のストック溶液を調製した。あるいは、商業的に調製されたpH8のリン酸ナトリウム緩衝液を用いた。
【0071】
ストック溶液及びMilli-Q(登録商標)水を使用して、100mMのリン酸ナトリウム1%LDS pH6及び100mMのリン酸ナトリウム1%LDS pH9の溶液を調製した。
【0072】
ストック溶液及びMilli-Q水を使用して、100mMのリン酸ナトリウム2%LDS pH6及び100mMのリン酸ナトリウム2%LDS pH8の溶液を含む代替の緩衝液を作製した。
【0073】
34μLの1Mヨードアセトアミド(IAM)(Milli-Q(登録商標)水中で新たに調製)+100mMのリン酸ナトリウム1%LDS pH6 166μL+Milli-Q(登録商標)水の5μLを添加することによって、非還元緩衝液を調製した。最終濃度は、166mMの2-ヨードアセトアミド、0.81%のドデシル硫酸リチウム、及び81mMのリン酸ナトリウムであった。
【0074】
800μLの1Mヨードアセトアミド(IAM)(Milli-Q(登録商標)水中で新たに調製した)+1200μLの100mMのリン酸ナトリウム2%LDS pH8を添加することによって、代替の非還元緩衝液を調製した。最終濃度は、200mMの2-ヨードアセトアミド、1.2%のドデシル硫酸リチウム、及び60mMのリン酸ナトリウムであった。
【0075】
更に別の非還元緩衝液を、800μLの1Mヨードアセトアミド(IAM)(Milli-Q(登録商標)水中で新たに調製した)+1200μLの100mMのリン酸ナトリウム2%LDS pH6を添加することによって調製した。最終濃度は、200mMの2-ヨードアセトアミド、1.2%のドデシル硫酸リチウム、及び60mMのリン酸ナトリウムであった。
【0076】
68μLの10×還元剤(500mMのジチオスレイトール(DTT)+166μLの100mMのリン酸ナトリウム1%LDS pH9+6μLのMilli-Q(登録商標)水)を添加することによって、還元緩衝液を調製した。最終濃度は、0.69%のドデシル硫酸リチウム、69mMのリン酸ナトリウム、及び142mMジチオスレイトールであった。
【0077】
320μLの10×還元剤(500mMのジチオスレイトール(DTT)+1200μLの100mMのリン酸ナトリウム2%LDS pH8+480μLのMilli-Q(登録商標)水)を添加することによって、代替の還元緩衝液を調製した。最終濃度は、1.2%のドデシル硫酸リチウム、60mMのリン酸ナトリウム、及び80mMジチオスレイトールであった。
【0078】
実施例2A:非還元性緩衝液
試料調製ステップにおいて、200mMの2-ヨードアセトアミドと、1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、を含有し、pH8の非還元性水性電気泳動試料緩衝液を使用して、表2に示される一般的な調製に続いた。試料を60℃で10分間加熱した。試料標識ステップは、16μMの色素溶液を使用した。最終希釈ステップは、105μLの希釈停止溶液を使用した。
【0079】
実施例2B:還元緩衝液
試料調製ステップにおいて、1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、80mMのジチオスレイトールと、を含有し、pH8の還元水性電気泳動試料緩衝液を使用して、表2に示される一般的な調製に続いた。試料を60℃で10分間加熱した。試料標識ステップは、16μMの色素溶液を使用した。最終希釈ステップは、105μLの希釈停止溶液を使用した。
【0080】
実施例2C:非還元緩衝液、非クエンチング
試料調製ステップにおいて、200mMの2-ヨードアセトアミドと、1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、を含有し、pH6の非還元性水性電気泳動試料緩衝液を使用して、表2に示される一般的な調製に続いた。試料を63℃で10分間加熱した。試料標識ステップは、16μMの色素溶液を使用した。最終希釈ステップは、105μLの希釈溶液を使用した。
【0081】
実施例2D:還元緩衝液、非クエンチング
試料調製ステップにおいて、1.2%のドデシル硫酸リチウムと、60mMのリン酸ナトリウムと、80mMのジチオスレイトールと、を含有し、pH8の還元水性電気泳動試料緩衝液を使用して、表2に示される一般的な調製に続いた。試料を63℃で10分間加熱した。試料標識ステップは、16μMの色素溶液を使用した。最終希釈ステップは、105μLの希釈溶液を使用した。
【0082】
結果:
マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)は、QC分析に必要とされる性能及び再現性の基準を維持しながら、劇的に短縮された試料分析時間を可能にする。本明細書中に開示される非還元及び還元変性緩衝液を使用して、MCEアッセイを開発した。図1A図1Bは、第1のMCEアッセイからの非還元試料及び還元試料中のタンパク質の代表的な電気泳動図を示す。図1Aは、非還元分析電気泳動図を示す。0.426の主ピーク(MP)は主抗体に対応し、標識された低分子量(LMW)ピークは抗体断片に対応する。この実施例には存在しないが、場合によっては、1つ以上の高分子量フラグメントに対応するピークが存在する。図IBは、還元分析電気泳動図を示す。軽鎖(LC)、重鎖、及び非グリコシル化重鎖(NGHC)、低分子量(LMW)、及び高分子量(HMW)抗体断片に対応するピークは、それに応じて標識される。異なる製品は、生成される電気泳動図においてバリエーションを有し得、したがって、異なる標識慣例を有し得ることに留意すべきである。
【0083】
前述の明細書において、本発明は、その特定の実施形態に関連して記載されており、多くの詳細が例示の対象のために示されているが、本発明が更なる実施形態を受け入れることができること、及び本明細書中に記載される特定の詳細が、本発明の基本的な原理から逸脱することなくかなり変更され得ることは、当業者に明らかである。
【0084】
本発明は、その趣旨又は本質的な属性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよく、したがって、本発明の範囲を示すものとして、前述の明細書ではなく、添付の特許請求の範囲が参照されるべきである。
図1A
図1B
【国際調査報告】