(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】イベルメクチンの粒径を低減する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20240528BHJP
A61P 33/10 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61P33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023574168
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 GB2022051381
(87)【国際公開番号】W WO2022254199
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】315015195
【氏名又は名称】ホビオネ サイエンティア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ソブラル, ルイス
(72)【発明者】
【氏名】スーザ, ルイス ガスパル
(72)【発明者】
【氏名】セケイラ, サラ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA20
4C086ZB37
(57)【要約】
本発明はイベルメクチンの粒径を低減する方法であって、湿潤媒体又は液体媒体にイベルメクチン粒子を組み込むステップと、粒子を含む媒体を高剪断ミキサーでの混合に供するステップとを含む、方法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イベルメクチンの粒径を低減する方法であって、液体媒体にイベルメクチン粒子を組み込むステップと、前記粒子を含む前記媒体を高剪断ミキサーでの混合に供するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記粒子を含む前記媒体が、有機溶媒中、又は、有機溶媒と水の混合物中のイベルメクチンの懸濁液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機溶媒がアルコール、エステル、ケトン、エーテル、アミド、炭化水素又はハロゲン化炭化水素である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒が脂肪族アルコールであり、任意選択で前記脂肪族アルコールがC
2~C
8脂肪族アルコールである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪族アルコールがC
2~C
4脂肪族アルコールを含み、任意選択で前記脂肪族アルコールがエタノール又はイソプロパノールである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子を含む前記媒体が酸化防止剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化防止剤がパラベン誘導体、フェノール誘導体又はチオール誘導体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化防止剤がアルキルパラベン、任意選択でメチルパラベンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化防止剤がアルキル化フェノール誘導体であり、任意選択で、例えば、ブチルヒドロキシアニソールのようなアルキル化フェノールヒドロキシアニソール;ブチルヒドロキシトルエン;又はトコフェロールである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子を含む前記媒体が、イベルメクチンの脱溶媒和を最小化するための安定剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記安定剤が脂肪族モノカルボン酸アミドを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記安定剤がホルムアミドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
混合後の前記イベルメクチン粒子のD
V(90)が、60ミクロン未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
HPLC(%面積)によって測定される得られたイベルメクチン粒子の総不純物の低減が、初期のイベルメクチン粒子と比較して10%以上である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
HPLC(%面積)によって測定される得られたイベルメクチン粒子の総不純物が、3.0%以下、任意選択で2.8%以下、又は2.7%以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子を含む前記媒体が、水;有機溶媒としてのエタノール又はイソプロパノール;酸化防止剤としてのメチルパラベン;及び安定剤としてのホルムアミドを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記混合のステップにおいて、イベルメクチンの懸濁液が、500RPM~9000RPMの前記高剪断ミキサーの毎分回転数の範囲で再循環される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法
【請求項18】
イベルメクチンの懸濁液が、1000RPM~2000RPMの前記高剪断ミキサーの毎分回転数の範囲で再循環される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記混合のステップにおいて、前記イベルメクチン粒子を含む前記媒体が0℃~25℃の温度で再循環される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
イベルメクチンの懸濁液が0℃~5℃の温度で再循環される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記混合の後に、回収されたイベルメクチン粒子を酸化防止剤で洗浄するステップをさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記酸化防止剤が、アルキルパラベン、任意選択でメチルパラベン;又はアルキル化フェノール誘導体、任意選択でアルキル化フェノールヒドロキシアニソール、例えば、ブチルヒドロキシアニソールである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記洗浄のステップが0℃~25℃の温度、任意選択で0℃~5℃の温度で実施される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の方法によって、得ることができる又は得られたイベルメクチン粒子。
【請求項25】
液体媒体中のイベルメクチン粒子の懸濁液におけるイベルメクチンの粒径を低減するための、高剪断混合の使用。
【請求項26】
前記液体媒体が、水;エタノール又はイソプロパノールを含む有機溶媒;及びホルムアミドを含む安定剤を含む、請求項25に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[001]本発明は、イベルメクチンの粒径及び関連物質の含有量を制御するように設計された新しい方法に関する。一態様では、この方法は、粒径を下流の製剤化に適切なレベルまで低減するための、湿潤媒体又は液体媒体中でのイベルメクチンの微粉化を含む。好ましい態様では、この方法は、生成物を微粉化するために使用される溶媒混合物中にあるイベルメクチンの精製も含む。イベルメクチンの精製は、微粉化中の関連物質のパージによって起こる。この方法の別の重要な特徴は、ラジカルスカベンジャーとして作用する適切な酸化防止剤を使用して、微粉化中の空気酸化によるイベルメクチンの分解を防ぐことを含むことである。酸化防止剤は、保管中のイベルメクチンの空気酸化も防ぐ。
【0002】
[発明の背景]
[002]分子構造(I)の化合物であるイベルメクチンは、寄生虫によって促進される他の疾患の中でも、アタマジラミ、疥癬、河川盲目症、糞線虫症及びリンパ管フィラリア症の処置用に処方される抗蠕虫活性医薬物質である。
【化1】
【0003】
[003]イベルメクチンは、80%以上の成分B1a及び20%以下の成分B1bによって構成される。化合物Iは、米国特許第4,199,569号に最初に開示され、この米国特許には、その調製方法が、80%以上のアベルメクチンB1a及び20%以下のアベルメクチンB1bによって構成された化合物IIであるアバメクチンの、ウィルキンソン触媒である触媒トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロライドの存在下での水素化を含むことが記載されている。
【化2】
【0004】
[004]この方法は、水素化の後にイベルメクチンを単離するための、2回の連続した再結晶化を記載している。第1の再結晶化は、エタノール、ホルムアミド及び水の混合物(4:10:2)中で実行され、イベルメクチンを40~50℃で溶解させ、その後終夜撹拌下で徐冷することによって結晶化する。第2の再結晶化は、エタノール及び水の混合物(4:4)中で第1結晶化から得られた生成物を35~40℃で溶解させ、続いて終夜撹拌下で徐冷することによって実行される。発明者らによって記載される条件下で、イベルメクチンは83重量%の収率でアバメクチンから得られる。著者らは、約80%の成分B1a、20%の成分B1bを含有する混合物中のイベルメクチンを特許請求している。
【0005】
[005]イベルメクチンの分析的プロファイルを記載する刊行物(Analytical Profiles of Drug Substances、vol.17、1988、155~184頁)で、著者は、溶液中及び固体状態での生成物の安定特性について記載した。著者によれば、イベルメクチンは多くの官能基を含み、イベルメクチンは酸性及び塩基性溶液中で不安定である。生成物の劣化速度は、酸性度の増加及び塩基度の増加の両方で増加する。酸性溶液中ではイベルメクチンは、2つの糖環の加水分解反応を受け、単糖及びアグリコン副生物をもたらす。塩基性溶液中ではイベルメクチンは、異性化を受け、2-エピ-イベルメクチン及びΔ2-イベルメクチン副生物をもたらす。溶液中でのイベルメクチン安定性に最適なpHが、6.3であることに留意されたい。中性条件下でのイベルメクチンの主な劣化モードは、8a位での副生物、すなわち8a-オキソイベルメクチン及び8a-ヒドロペルオキシドイベルメクチンを生成する酸化である。イベルメクチンは光不安定性でもあり、その光劣化に由来する生成物は、C8~C9及びC10~C11オレフィンの幾何異性体である。著者は、純粋なイベルメクチンは、無関係な反応物及び不純物がない場合、結晶状態で安定な分子であることも報告している。それにもかかわらず、固体状態でのイベルメクチンの空気酸化は公知の現象であり、そのことは、不純物8a-オキソイベルメクチンが、欧州及び米国の両方の薬局方のイベルメクチン関連物質試験に記載されているという事実によって認識される。
【0006】
[006]米国特許第6,072,052号は、ヒドラジンを含むロジウム塩及びロジウム-ホスフィン錯体を用いたアバメクチンの選択的な水素化によって、イベルメクチンを調製する方法を特許請求している。発明者らは、触媒は良好に溶解するが、イベルメクチンはあまり溶解しない親油性溶媒を用いた抽出による触媒の除去によって、水素化から得られたイベルメクチンが精製される方法を記載している。発明者らによれば、脂肪族炭化水素などの親油性溶媒を混合物に添加して、触媒を溶解すると、イベルメクチンは混合物から沈殿する。発明者らは、HPLCによる、1.3%のアベルメクチン、94.8%のイベルメクチン及び25%のテトラヒドロアベルメクチンを含有する、粗製イベルメクチンを得ることに言及している。
【0007】
[007]米国特許第6,265,571号は、逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーによりイベルメクチンを精製する方法であって、クロマトグラフィーカラムがC18シリカゲルカラムを含み、溶離液が低級アルキルアルコール及び水とアセトニトリルの混合物を含む、方法を特許請求している。発明者らは、HPLCによる、95.15%の成分B1a及び2.22%の成分B1bを有するイベルメクチンを得ることを報告している。発明者らは、精製されたイベルメクチンの純度レベルが少なくとも約98%を含む方法を特許請求している。発明者らは、イベルメクチンの純度は、成分B1aの面積%に成分B1bの面積%を加え、水及び揮発性物質の残留物含有量を引くことによって計算されることを報告している。医薬品産業におけるカラムクロマトグラフィーの実施は、高圧で作動する大型ポンプ、大量の液体廃棄物をもたらす溶媒の大量消費及び長い処理時間を必要とすることに関連するいくつかの欠点を示す。
【0008】
[008]国際公開第2019/180417号は、有機溶媒又は有機溶媒の混合物又は有機溶媒と水の混合物にイベルメクチンを溶解させることによって調製された、イベルメクチンの溶液を噴霧乾燥することによって得られる、非晶質イベルメクチンを特許請求している。発明者らは、イベルメクチンの溶液を調製するために使用することができる溶媒として、エタノール、メチルエチルケトン、アセトン又は1-ブタノールに言及している。発明者らは、0.1μm~20μmの粒度分布を有する非晶質イベルメクチンを特許請求している。特許請求されている方法によって得られる、イベルメクチンの純度に関するデータは開示されていない。
【0009】
[009]イベルメクチンはヒト及び他の動物における、外部寄生虫及び内部寄生虫によって引き起こされる様々な疾患を処置するために使用されてきた。イベルメクチンは、経口錠剤(Stromectol(登録商標))、経口懸濁剤(配合製剤、例えばWedgewood Pharmacy製)、咀嚼錠(Tri-Heart Plus(登録商標))、局所投与用ローション剤(Skilice(登録商標))及びクリーム剤(Rosiver(登録商標)及びSoolantra(登録商標))の医薬品形態で市販されている。他の多くの医薬品形態が開発されており、これらには皮下製剤が含まれる(Sharun K, Shyamkumar TS、 Aneesha VA、 Dhama K、 Pawde AM、 Pal A (2019)、 Current therapeutic applications and pharmacokinetic modulations of ivermectin、 Veterinary World、 12(8): 1204~1211頁)。イベルメクチンは水中での低い溶解度及び高い浸透性を有する化合物であり、BCSクラスII薬物として分類されている。イベルメクチンの低い水溶性及び水性製剤の低い安定性のために、製剤の製造に大きな課題がある。医薬製剤の製造では、安定した生物学的利用能を保証するために、活性医薬物質からのいくつかの物理化学的特徴が必要である。従来技術は、製剤タイプを変更することによるイベルメクチンの薬物動態学的特性の修正を報告している (Albert Lo, PK.、 Fink, D.W.、 Williams, J.B.ら、 Pharmacokinetic studies of ivermectin: Effects of formulation. Vet Res Commun 9、 251~268頁(1985))。加えて、いくつかのタイプの製剤の要件は、医薬品形態にわたって活性物質の均一な分布を保証するために、活性医薬物質が低減された粒径を示すことである。
【0010】
[010]従来、固体イベルメクチン粒子の粒径を低減する方法は、典型的にはジェット粉砕を使用する乾式法として実行されてきた。製剤化プロセスに利点を与える、イベルメクチンの粒径を低減すると同時にその純度を上げることができる方法に関して、従来技術に満たされないニーズがあることを我々は現在認識している。本発明の方法は、溶媒混合物を使用した高剪断ミキサー技術を通して、湿潤媒体中のイベルメクチンの粒径を低減することができ、これは不純物のパージを可能にし、より純粋なイベルメクチンを生成する。この方法の別の関連する態様は、処理中及びさらに保管中にイベルメクチンの空気酸化を防ぐ酸化防止剤の使用を含むことである。高剪断ミキサープロセスは強い剪断力及び高温を発生させ、こうした条件にかけられると生成物の劣化を促進するおそれがある。したがって、こうしたプロセスはイベルメクチンの使用に全く適さないと考えられた。意外にも、本発明の方法は、いくつかの副反応を受けやすい敏感な化合物であるイベルメクチンの分解を促進しないことを、本発明者らは今見出した。
【0011】
[発明の概要]
[011]本発明によれば、イベルメクチンの粒径を低減する方法であって、湿潤媒体又は液体媒体にイベルメクチン粒子を組み込むステップと、粒子を含む媒体を高剪断ミキサーでの混合に供するステップとを含む、方法が提供される。
【0012】
[012]技術としての高剪断混合は、当該技術分野でよく理解されている。本発明では、バッチ若しくはインラインの高剪断ミキサー、又は超高剪断ミキサーを含む、任意の好適な高剪断ミキサー装置を使用してもよい。低剪断混合とは対照的に高剪断混合は、API材料の固体粒子の平均サイズを低減する能力を有する混合プロセスとして、本発明の目的にとって適切に理解することができる。一般に低剪断混合は、APIの平均粒径を低減しない。
【0013】
[013]したがって、本発明は、1つの好ましい態様では有機溶媒及び/又は有機溶媒と水の混合物、好ましくはさらにホルムアミドを含む湿潤媒体又は液体媒体中で、イベルメクチンの粒径を低減する方法を開示する。
【0014】
[014]本発明は、粒径を低減すると同時にイベルメクチンを精製し、したがってイベルメクチン中の関連物質の総含有量を低減する方法を開示する。イベルメクチンの敏感な性質を考えると、これはこの方法の特別で驚くべき利点である。有機溶媒は、例えば、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、アミド、炭化水素又はハロゲン化炭化水素であり得る。好ましい実施形態では、有機溶媒はアルコールであり、より好ましい実施形態では、有機溶媒はエタノールである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図11】実施例6のHPLCクロマトグラムである。
【
図13】実施例7のHPLCクロマトグラムである。
【
図15】出発原料の典型的なHPLCクロマトグラムである。
【
図16】出発原料の典型的な粒度分布ヒストグラムである。
【0016】
[発明の詳細な説明]
[015]好ましい態様では、粒子を含む媒体は、イベルメクチンの懸濁液を含む。したがって、典型的には、イベルメクチンの固体粒子は液体媒体中に懸濁される。本明細書で使用される液体媒体は、室温(例えば20~25℃)で液体状態にある媒体を意味する。液体媒体は、好適には有機溶媒又は有機溶媒と水の混合物を含む。イベルメクチン粒子の初期の粒径は変動してもよいが、典型的には標準的な製造方法によって生じるように、典型的には200~300ミクロン又はそれ以上のDV(90)のオーダーである。
【0017】
[016]有機溶媒は任意の好適な溶媒であってもよいが、好ましくは、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、アミド、炭化水素又はハロゲン化炭化水素を含む又はこれらからなる。これらの溶媒の1種又は複数を、例えば混合物として用いてもよい。
【0018】
[017]有機溶媒がアルコールである場合、好ましくはこれは脂肪族アルコール、例えばC2~C8脂肪族アルコールである脂肪族アルコールである。特に好ましいのは、エタノール又はイソプロパノールである。
【0019】
[018]有機溶媒がエステル、一般式RCOOR’の化合物である場合、好ましくは、これはR及びR’がアルキル基、例えば、C1~C3アルキル基であるエステル、好ましくは酢酸エチル又は酢酸イソプロピルである。
【0020】
[019]有機溶媒がケトン、一般式RCOR’の化合物である場合、好ましくは、これはR及びR’がアルキル基、例えば、C1~C3アルキル基であるケトン、好ましくはアセトン又はメチルエチルケトンである。
【0021】
[020]有機溶媒がエーテル、一般式ROR’の化合物である場合、好ましくは、これはR及びR’がアルキル基、例えば、C1~C3のアルキル基であるエーテル、好ましくはジエチルエーテル又はジイソプロピルエーテルである。任意選択で、エーテルは一般式ROの環状エーテル、例えばC6環状エーテル、好ましくはテトラヒドロフラン、又は一般式RO2の環状エーテル、例えば、C4環状エーテル、好ましくはジオキサンである。
【0022】
[021]有機溶媒がアミド、一般式RR’NCOR’’の化合物である場合、好ましくは、これはR及びR’がアルキル基、例えば、C1アルキル基であり、R’’が水素又はC1アルキル基であるアミド、好ましくは、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドである。
【0023】
[022]有機溶媒が炭化水素である場合、好ましくは、これは脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素、例えば、C6~C7脂肪族炭化水素、好ましくは、ヘキサン若しくはヘプタン、又はC7芳香族炭化水素、好ましくはトルエンである。
【0024】
[023]有機溶媒がハロゲン化炭化水素である場合、好ましくは、これは脂肪族ハロゲン化炭化水素、例えば、C1ハロゲン化脂肪族炭化水素、好ましくは、ジクロロメタンである。
【0025】
[024]液体媒体は、有機溶媒、又は有機溶媒の混合物、又は有機溶媒と水の混合物を含み、好ましくはさらにホルムアミドを含む。有機溶媒は、イベルメクチンが可溶性又は溶けやすい(freely soluble)溶媒である。プロセスの収率を上げるために、例えばアルコールと水の混合物のような、有機溶媒とイベルメクチンが不溶性の溶媒との混合物を、高剪断ミキサープロセスを実行するのに使用することができる。表1は、従来技術(Analytical Profiles of Drug Substances、 vol. 17、 1988、 155~184頁)に開示されたイベルメクチンの溶解度データを要約している。
【表1】
【0026】
[025]高剪断ミキサープロセスを実行するための液体媒体の割合は、イベルメクチンの重量に対して、例えば2vol及び30volから、好ましくは、4volから8volまでであり得る。可溶性又は溶けやすい有機溶媒と不溶性溶媒との混合物に関して、可溶性溶媒と不溶性溶媒の(体積による)割合は、例えば10~0.01、又は0.01~10、好ましくは8~1であり得る。
【0027】
[026]イベルメクチンの重量に対して、ホルムアミドとイベルメクチンの割合は、例えば、0.1vol~2vols、好ましくは0.2vol~0.4volであり得る。
【0028】
[027]イベルメクチンの重量に対して、酸化防止剤とイベルメクチンの割合は、例えば0.00001~0.001、好ましくは、0.0001~0.0003であり得る。
【0029】
[028]したがって、液体媒体は、典型的には、有機溶媒及び/又は有機溶媒と水の混合物を含む又はこれらからなる。好ましい態様では、このプロセスは、脂肪族アルコール、例えばC2~C8脂肪族アルコールである脂肪族アルコールと水の混合物中のイベルメクチン粒子の高剪断混合による微粉化を含む。例えば、C2~C4脂肪族アルコールである脂肪族アルコールと水の混合物が使用され得る。特に好ましいのは、エタノールと水の混合物である。
【0030】
[029]本発明の好ましい態様では、高剪断ミキサーでの再循環中のイベルメクチンの空気酸化を防ぐために、酸化防止剤が溶媒又は溶媒混合物(すなわち液体媒体)に添加され得る。
【0031】
[030]したがって、一態様では、イベルメクチン粒子を含む液体媒体は、酸化防止剤も含む。一例では、酸化防止剤はパラベン誘導体、フェノール誘導体又はチオール誘導体を含む。
【0032】
[031]好適には、酸化防止剤は、メチル又はエチルパラベンなどのアルキルパラベンを含み得る又はそれらからなり得る。
【0033】
[032]代わりに、又は加えて、酸化防止剤は、アルキル化フェノール誘導体、好適にはアルキル化ヒドロキシアニソールを含み得る又はそれからなり得る。好ましい例としては、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン又はトコフェロールが挙げられる。代わりに、又は加えて、酸化防止剤は、システインなどのチオール誘導体を含み得る又はそれらからなり得る。
【0034】
[033]さらなる態様では、イベルメクチンの粒子を含む液体媒体が、イベルメクチンの脱溶媒和を最小化するための安定剤をさらに含む、本発明による方法が提供される。これは、液体媒体への溶解を介したイベルメクチン粒子からの溶媒和溶媒の損失を防ぐように主として設計されているが、総不純物レベルでの低減をもたらす精製又はパージングプロセスにも貢献し得る。
【0035】
[034]一例では、安定剤は脂肪族モノカルボン酸アミドを含む。好ましくは、安定剤はホルムアミドを含む又はそれからなる。エタノールなどの低級脂肪族アルコールもまた、又はホルムアミド(若しくはこれに類するもの)に加えて、安定剤として機能し得る。
【0036】
[035]実に驚くべきことに、本発明の方法は、イベルメクチンの安定性に悪影響を及ぼすことなく、イベルメクチン粒子の粒径を低減することが見出された。実際に、分解をもたらすどころか、本方法は、イベルメクチンの良好な収率を依然として保持する一方で、総不純物レベル(例えば分解生成物又は副反応生成物)を低減ヘ導くことが見出された。
【0037】
[036]一態様では、本発明は、高剪断混合の後のイベルメクチン粒子のDV(90)が、例えば、100ミクロン未満、若しくは80ミクロン未満に、又は好ましくは60ミクロン未満に著しく低減される方法を提供する。50ミクロン未満、又はさらに40ミクロン未満のDV(90)を有する粒子は、高剪断混合の長さ及び強度に応じて得ることができる。
【0038】
[037]したがって、混合ステップの継続時間は、それが粒径の必要な低減を提供する限り、任意の好適な時間であり得る。これは、イベルメクチンを組み込むように設計された最終医薬製剤に応じて、変動し得る。本発明によって提供されるイベルメクチン粒子は、経口医薬製剤の中へ組み込むのに特に好適である。本方法は、所望の場合、約30ミクロンまで下がったDV90を有するイベルメクチン粒子を提供するために用いることができる。1~4時間の混合時間が、典型的には必要である。好ましい混合時間は、約2時間又は2.5時間から約3時間又は3.5時間までである。
【0039】
[038]本方法が、イベルメクチンの粒径、及び粒子内に存在する不純物-例えばイベルメクチンの劣化生成物又は分解生成物の全レベルの両方を、同時に低減できることを我々は見出した。一態様では、本発明は、HPLC(%面積)によって測定される得られたイベルメクチン粒子の総不純物の低減が、初期のイベルメクチン粒子と比較して10%以上である方法を提供する。代替的に表現すると、本発明は、HPLC(%面積)によって測定される得られたイベルメクチン粒子の総不純物が、3.0%以下、任意選択で2.8%以下、又は2.7%以下である方法を提供する。
【0040】
[039]1つの特に好ましい態様では、イベルメクチン粒子を含む液体媒体は、水;有機溶媒としてのエタノール若しくはイソプロパノール(又は両方の混合物);酸化防止剤としてのメチルパラベン若しくはエチルパラベン(又は両方の混合物)、及び安定剤としての例えばホルムアミドなどの脂肪族モノカルボン酸アミド、を含む。
【0041】
[040]上記のように、高剪断混合ステップを実行するために、任意の好適な高剪断ミキサーを使用することができる。好ましくは、高剪断ミキサーは広範囲の毎分回転数(RPM)にわたって運転することができる。本発明の一態様では、高剪断混合ステップにおいて、イベルメクチンの懸濁液は、500RPM~9000RPMの高剪断ミキサーの毎分回転数の範囲で再循環される。
【0042】
[041]したがって、好ましい態様では、イベルメクチンの懸濁液は、1000RPM~2000RPMの高剪断ミキサーの毎分回転数の範囲で再循環される。この範囲は、粒径の緩やかで制御された低減を経時的に提供する傾向があり、これは当業者によって理解されるように、(様々な時間間隔で)液体媒体の好適なサンプリングによって適切にモニタリングすることができることを、我々は見出した。
【0043】
[042]好ましいモードでは、穏やかな毎分回転数下、好ましくはおよそ2000RPMで、高剪断ミキサープロセスは実施される。
【0044】
[043]高剪断混合ステップ、又は実際には全プロセスは、室温又はより低温で実行され得る。好ましい運転モードでは、高剪断混合ステップは0℃~5℃の温度で実行され得る。
【0045】
[044]したがって、一態様では、高剪断混合ステップにおいて、イベルメクチン粒子を含む液体媒体が0℃~25℃の温度で再循環される、本発明による方法が提供される。さらに好ましい態様では、イベルメクチンの懸濁液は0℃~5℃の温度で再循環され得る。
【0046】
[045]本発明のさらなる態様では、湿潤媒体又は液体媒体にイベルメクチン粒子を組み込むステップは、室温又はより低温で実行され得る。好ましい運転モードでは、このステップは、0℃~25℃の温度、又はより好ましくは、0℃~5℃の温度で実行され得る。このステップは、例えば、液体媒体へのイベルメクチンの組み込み又は添加を含み得、液体媒体は、水(存在する場合)、有機溶媒成分、酸化防止剤成分(存在する場合)、及び安定剤成分(存在する場合)を含む。
【0047】
[046]本発明のさらなる態様では、この方法は、(高剪断混合ステップの後に)得られたイベルメクチン粒子を液体媒体から単離するステップを含む。これは、例えば、ろ過のステップ及び1つ又は複数の洗浄ステップを含み得る。単離ステップ、又はろ過及び洗浄ステップなどのその任意の一部は、室温又はより低温で実行され得る。好ましい運転モードでは、単離ステップ又はその任意の一部は、0℃~25℃の温度、又はより好ましくは、0℃~5℃の温度で実行され得る。
【0048】
[047]本発明のさらなる態様では、本明細書に記載される方法は、高剪断混合の後に、回収されたイベルメクチン粒子を酸化防止剤で洗浄するステップをさらに含んでもよい。これは、処理の後-例えば保管中の酸化から生成物を保護するのに役立つことを、我々は見出した。洗浄ステップなどを使用することで、最終生産物にいくらかの酸化防止剤を組み込むことができる。この洗浄ステップは、上述した単離ステップの一部であり得る。
【0049】
[048]この洗浄ステップに対して、酸化防止剤は、例えば、メチル又はエチルパラベンのようなアルキルパラベン、又は、例えば、ブチルヒドロキシアニソールのようなアルキル化フェノールヒドロキシアニソール;ブチルヒドロキシトルエン;又はトコフェロールのようなアルキル化フェノール誘導体であり得る。この洗浄ステップで使用される酸化防止剤は、高剪断混合に供されたイベルメクチン粒子を含む液体媒体中に使用される(存在する場合)酸化防止剤と、同じか異なっていてもよい。
【0050】
[049]一態様では、酸化防止剤で洗浄するステップは、0℃~25℃の温度、好ましくは0℃~5℃の温度で実施され得る。
【0051】
[050]本明細書で提供される本発明の新規方法、特に不純物レベルに対するこの方法の効果の結果として、したがって、本発明は、本明細書に記載される本発明による方法によって得ることができる又は得られた、新規イベルメクチン粒子も提供する。
【0052】
[051]さらなる態様では、液体媒体中のイベルメクチン粒子の懸濁液におけるイベルメクチンの粒径を低減するための、高剪断混合の使用もさらに提供される。
【0053】
[052]液体媒体は、有機溶媒又は有機溶媒と水の混合物を含み得る。有機溶媒は、任意の好適な溶媒であってもよいが、好ましくはアルコール、エステル、ケトン、エーテル、アミド、炭化水素又はハロゲン化炭化水素を含む又はこれらからなる。これらの溶媒の1つ又は複数が、例えば混合物として用いられ得る。有機溶媒がアルコールである場合、好ましくはこれは脂肪族アルコール、例えばC2~C8脂肪族アルコールである脂肪族アルコールである。
特に好ましいのは、エタノール又はイソプロパノールである。
【0054】
[053]したがって、液体媒体は、典型的には、有機溶媒及び/又は有機溶媒と水の混合物を含む又はこれらからなる。好ましい態様では、このプロセスは、脂肪族アルコール、例えばC2~C8脂肪族アルコールである脂肪族アルコールと水の混合物中の、イベルメクチン粒子の高剪断混合による微粉化を含む。例えば、C2~C4脂肪族アルコールである脂肪族アルコールと水の混合物が使用され得る。特に好ましいのは、エタノール又はイソプロパノールと水の混合物である。
【0055】
[054]好ましい態様では、液体媒体中のイベルメクチン粒子の懸濁液におけるイベルメクチンの粒径を低減するための高剪断混合の使用であって、液体媒体が、水;エタノール又はイソプロパノールを含む有機溶媒;及びホルムアミドを含む安定剤を含む、使用が提供される。
【0056】
[055]本発明の方法によって製造されたイベルメクチンは、必要とする患者を処置するための医薬品を提供するために、必要に応じて好適な医薬的に許容できる賦形剤とともに、医薬製剤に組み込むことができることは、当業者によって理解されるであろう。
【0057】
[056]したがって、本明細書に記載される本発明は、粒径を低減しすると同時にイベルメクチンを精製する方法を含む。この方法は好ましくは、酸化防止剤を含む溶媒混合物へのイベルメクチンの充填、目標粒径を達成するまで得られた懸濁液の高剪断ミキサーでの再循環、再循環の停止並びにろ過及び乾燥による生成物の単離を含む。本明細書に記載される有機溶媒の使用によって、イベルメクチンの粒径を低減することができるが、同時に、イベルメクチンの精製ができ、したがって不純物の総含有量を低減することができる。
【0058】
[057]イベルメクチンは2つの主成分、成分B1a及び成分B1bの混合物であり、これはいくつかの関連物質も含有している。関連物質は、不純物の総含有量として表現することができる。本明細書に記載される方法は、イベルメクチン中の不純物の総含有量を低減することができる。この効果は、イベルメクチンを微粉にするために使用される溶媒混合物中の有機溶媒の使用によって可能になる。
【0059】
[058]本発明に記載される条件下では、イベルメクチンは分解することなく高剪断力にかけられる。高剪断混合プロセスは、こうしたプロセスにかけられた化合物の分解を促進する、応力が大きい(stressful)条件を提供する。応力が大きい条件は、直線的でない(unaligned)力を発生させる機械システムを通して、化合物と溶媒の混合物を非常に高速で再循環させることを含み、粒子と高剪断ミキサーの機械部品との間及び粒子自身の間の強い衝突に追いやる。こうした衝突は、生成物の粒子を壊し、したがってそれらの粒径を低減する。機械的衝突の副次的作用は、高剪断ミキサープロセス中の温度の著しい上昇である。驚くべきことに、加水分解副反応、酸化副反応及び温度副反応に非常に敏感な活性医薬物質であるイベルメクチンを、本発明の高剪断ミキサープロセスにかけても、生成物を分解させなかった。実際、イベルメクチンは、本発明に記載される高剪断プロセス条件の下では、良好な収率で精製される。
【0060】
[059]以下の実施例は本発明の理解を支援するために示されるが、決してその範囲を限定する意図ではなく、そう考えるべきではない。
【0061】
[実施例]
[060]実施例1:301μmのDV(90)及び2.92%の総不純物含有量(HPLC面積%)を有するイベルメクチン(25g)を、あらかじめ0~5℃に冷却したエタノール(100ml)、水(12.5ml)、ホルムアミド(10ml)及びメチルパラベン(0.0075g)の混合物に添加した。混合物を0℃~5℃の温度に維持しながら、懸濁液を2000RPMの高剪断ミキサーを通して約3時間再循環させた。生成物をろ過し、あらかじめ0~5℃に冷却したエタノール(2.5ml)と水(22.5ml)の混合物で洗浄し、その後あらかじめ0~5℃に冷却した水(25ml)とメチルパラベン(0.0075g)の混合物で洗浄した。湿潤生成物を60℃で乾燥させて、56μmのDV(90)及びHPLC(面積%)による2.61%の総不純物含有量を有する21.75gのイベルメクチンを得た。
【0062】
[061]実施例2:301μmのDV(90)及び2.92%の総不純物含有量(HPLC面積%)を有するイベルメクチン(25g)を、あらかじめ0~5℃に冷却したエタノール(120ml)、水(15ml)、ホルムアミド(6ml)及びBHA(0.0075g)の混合物に添加した。混合物を0℃~5℃の温度に維持しながら、懸濁液を2000RPMの高剪断ミキサーを通して約3時間再循環させた。生成物をろ過し、あらかじめ0~5℃に冷却したエタノール(3ml)と水(27ml)の混合物で洗浄し、その後あらかじめ0~5℃に冷却した水(30ml)とBHA(0.0075g)の混合物で洗浄した。湿潤生成物を60℃で乾燥させて、53μmのDV(90)及びHPLC(面積%)による2.63%の総不純物含有量を有する26.1gのイベルメクチンを得た。
【0063】
[062]実施例3:301μmのDV(90)及び2.21%の総不純物含有量(HPLC面積%)を有するイベルメクチン(50g)を、あらかじめ0~5℃に冷却したエタノール(100ml)、水(50ml)、ホルムアミド(10ml)及びメチルパラベン(0.0075g)の混合物に添加した。混合物を0℃~5℃の温度に維持しながら、懸濁液を2000RPMの高剪断ミキサーを通して約3時間再循環させた。生成物をろ過し、あらかじめ0~5℃に冷却したエタノール(5ml)と水(55ml)の混合物で洗浄し、その後あらかじめ0~5℃に冷却した水(50ml)とメチルパラベン(0.0075g)の混合物で洗浄した。湿潤生成物を60℃で乾燥させて、57μmのDV(90)及びHPLC(面積%)による2.06%の総不純物含有量を有する45.5gのイベルメクチンを得た。
【0064】
[063]実施例4:295μmのDV(90)及び3.33%の総不純物含有量(HPLC面積%)を有するイベルメクチン(30g)を、あらかじめ0~5℃に冷却した水(150ml)、イソプロパノール(75ml)、ホルムアミド(6ml)及びメチルパラベン(0.0075g)の混合物に添加した。混合物を0℃~5℃の温度に維持しながら、懸濁液を2000RPMの高剪断ミキサーを通して約3時間再循環させた。生成物をろ過し、あらかじめ0~5℃に冷却したエタノール(3ml)と水(27ml)の混合物で洗浄し、その後あらかじめ0~5℃に冷却した水(30ml)とメチルパラベン(0.0075g)の混合物で洗浄した。湿潤生成物を60℃で乾燥させて、56μmのDV(90)及びHPLC(面積%)による3.03%の総不純物含有量を有する29.4gのイベルメクチンを得た。
【0065】
[064]実施例5:300μmのDV(90)及び3.22%の総不純物含有量(HPLC面積%)を有するイベルメクチン(4g)を、あらかじめ0~5℃に冷却した水(16ml)、エタノール(16ml)及びホルムアミド(1.6ml)の混合物に添加した。混合物を0℃~5℃の温度に維持しながら、懸濁液を1000RPMの高剪断ミキサーを通して約2時間再循環させた。生成物をろ過し、湿潤生成物を60℃で乾燥させて、42μmのDV(90)及びHPLC(面積%)による2.76%の総不純物含有量を有する3.66gのイベルメクチンを得た。
【0066】
[065]実施例6:300μmのDV(90)及び3.22%の総不純物含有量(HPLC面積%)を有するイベルメクチン(2g)を、あらかじめ0~5℃に冷却した水(26ml)、エタノール(30ml)及びホルムアミド(3ml)の混合物に添加した。混合物を0℃~5℃の温度に維持しながら、懸濁液を1000RPMの高剪断ミキサーを通して約2時間再循環させた。生成物をろ過し、湿潤生成物を60℃で乾燥させて、36μmのDV(90)及びHPLC(面積%)による2.87%の総不純物含有量を有する1.77gのイベルメクチンを得た。
【0067】
[066]実施例7:300μmのDV(90)及び3.22%の総不純物含有量(HPLC面積%)を有するイベルメクチン(2g)を、あらかじめ0~5℃に冷却した水(1ml)、エタノール(30ml)及びホルムアミド(3ml)の混合物に添加した。混合物を0℃~5℃の温度に維持しながら、懸濁液を1000RPMの高剪断ミキサーを通して約2時間再循環させた。生成物をろ過し、湿潤生成物を60℃で乾燥させて、56μmのDV(90)及びHPLC(面積%)による2.75%の総不純物含有量を有する0.96gのイベルメクチンを得た。
【0068】
[067]HPLCクロマトグラムは、逆相C18 HPLCカラム、寸法250×4mm、孔径5μm、25℃、検出波長254nm、移動相水/メタノール/アセトニトリル(15:34:51v/v/v)、アイソクラチックモードにより得た。
【0069】
[068]粒径データは、SympatecモジュールHELOS(ヘリウム-ネオンレーザ光学系)、分散ユニットRODOS/M、強力な製品アクセサリASPIROS、レンズR5(4.50μm~875μm)及びR4(1.80μm~350μm)、条件R5、0.1bar-1bar、18mm/s、R4、3bar、18mm/sから得た。
【0070】
[069]図中の参照記号は以下を含む:
Sv体積-比表面積-かさ体積当たりの材料の総表面積。
【0071】
Sm質量-比表面積-単位質量当たりの材料の総表面積。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低減された粒径を有するイベルメクチン
粒子を調製する方法であって、
有機溶媒及び水の混合物を含む液体媒体にイベルメクチン粒子を組み込むステップと、前記粒子を含む前記媒体を高剪断ミキサーでの混合に供するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記イベルメクチン粒子が、前記液体媒体に懸濁
されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機溶媒がアルコール、エステル、ケトン、エーテル、アミド、炭化水素又はハロゲン化炭化水素である、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒が脂肪族アルコールであり、任意選択で前記脂肪族アルコールがC
2~C
8脂肪族アルコールである、請求項
1又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪族アルコールがC
2~C
4脂肪族アルコールを含み、任意選択で前記脂肪族アルコールがエタノール又はイソプロパノールである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子を含む前記媒体が酸化防止剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化防止剤がパラベン誘導体、フェノール誘導体又はチオール誘導体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化防止剤がアルキルパラベン、任意選択でメチルパラベンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化防止剤がアルキル化フェノール誘導体であり、任意選択で、例えば、ブチルヒドロキシアニソールのようなアルキル化フェノールヒドロキシアニソール;ブチルヒドロキシトルエン;又はトコフェロールである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子を含む前記媒体が、イベルメクチンの脱溶媒和を最小化するための安定剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記安定剤が脂肪族モノカルボン酸アミドを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記安定剤がホルムアミドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
混合後の前記イベルメクチン粒子のD
V(90)が、60ミクロン未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
HPLC(%面積)によって測定される得られたイベルメクチン粒子の総不純物の低減が、初期のイベルメクチン粒子と比較して10%以上である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
HPLC(%面積)によって測定される得られたイベルメクチン粒子の総不純物が、3.0%以下、任意選択で2.8%以下、又は2.7%以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子を含む前記媒体が、水;有機溶媒としてのエタノール又はイソプロパノール;酸化防止剤としてのメチルパラベン;及び安定剤としてのホルムアミドを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記混合のステップにおいて、イベルメクチンの懸濁液が、500RPM~9000RPMの前記高剪断ミキサーの毎分回転数の範囲で再循環される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項18】
イベルメクチンの懸濁液が、1000RPM~2000RPMの前記高剪断ミキサーの毎分回転数の範囲で再循環される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記混合のステップにおいて、前記イベルメクチン粒子を含む前記媒体が0℃~25℃の温度で再循環される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
イベルメクチンの懸濁液が0℃~5℃の温度で再循環される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記混合の後に、回収されたイベルメクチン粒子を酸化防止剤で洗浄するステップをさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記酸化防止剤が、アルキルパラベン、任意選択でメチルパラベン;又はアルキル化フェノール誘導体、任意選択でアルキル化フェノールヒドロキシアニソール、例えば、ブチルヒドロキシアニソールである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記洗浄のステップが0℃~25℃の温度、任意選択で0℃~5℃の温度で実施される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の方法によって、得ることができる又は得られたイベルメクチン粒子。
【請求項25】
液体媒体中のイベルメクチン粒子の懸濁液におけるイベルメクチンの粒径を低減するための、高剪断混合の使用。
【請求項26】
前記液体媒体が、水;エタノール又はイソプロパノールを含む有機溶媒;及びホルムアミドを含む安定剤を含む、請求項25に記載の使用。
【国際調査報告】