(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】フィンゴリモド薬用塩、製造方法、それを含む医薬組成物及び使用
(51)【国際特許分類】
C07C 215/28 20060101AFI20240528BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240528BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240528BHJP
C07C 213/10 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C07C215/28 CSP
A61K31/137
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/06
A61P25/00
C07C213/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574191
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2022095013
(87)【国際公開番号】W WO2022253077
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】202110601645.0
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521504049
【氏名又は名称】上海雲晟研新生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】陳志祥
(72)【発明者】
【氏名】朱涛
(72)【発明者】
【氏名】劉▲ル▼
(72)【発明者】
【氏名】王▲ティ▼▲ティ▼
(72)【発明者】
【氏名】応述歓
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC01
4C076FF01
4C076FF11
4C076FF68
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206FA08
4C206KA16
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA43
4C206MA47
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA03
4C206NA14
4C206ZA01
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB20
4H006AD15
(57)【要約】
フィンゴリモド薬用塩、製造方法、それを含む医薬組成物及び使用を提供する。フィンゴリモド薬用塩は、フィンゴリモド遊離塩基と炭素数6以上の有機酸から形成される塩である。フィンゴリモド薬用塩の溶解度及び安定性は、何れも比較的に良く、市場化の見通しが良好である。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iに示されるフィンゴリモドの塩であって、
【化1】
そのうち、Xは炭素数6以上の有機酸、又はヒドロキシル基を含むエステルであり、nは0.5~2.0であり、
好ましくは、前記塩は薬用塩である、
式Iに示されるフィンゴリモドの塩。
【請求項2】
前記炭素数6以上の有機酸が、C6~C30の有機酸であることを特徴とする、
請求項1に記載のフィンゴリモドの塩。
【請求項3】
前記C6~C30の有機酸が、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、アゼライン酸、デカン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸、グリセリン酸、リグニン酸、エンボン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、及びナフテン酸誘導体のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されず、
例えば、前記ナフテン酸誘導体が、ナフテン酸エステルを含むが、これに限定されないことを特徴とする、
請求項1又は2に記載のフィンゴリモドの塩。
【請求項4】
前記フィンゴリモドの塩が、単相結晶、非晶質、又は混晶の形態であり、
例えば、前記フィンゴリモドの塩が、溶剤と形成される溶媒和物を含み、
好ましくは、前記溶媒和物が、フィンゴリモドの塩の水和物、及びフィンゴリモドの塩と有機溶剤から形成される溶媒和物を含み、
好ましくは、前記有機溶剤が、エタノール、アセトン、及びジメチルスルホキシドのうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されないことを特徴とする、
請求項1~3の何れか1項に記載のフィンゴリモドの塩。
【請求項5】
フィンゴリモド遊離塩基を、前記X(例えば、炭素数6以上の有機酸)と中和反応させ、前記フィンゴリモドの塩を得るステップを含むことを特徴とする、
請求項1~4の何れか1項に記載のフィンゴリモドの塩の製造方法。
【請求項6】
フィンゴリモド遊離塩基を無機酸において溶液とし、炭素数6以上の有機酸を無機塩基において溶液とし、更に2種の溶液を混合して、前記フィンゴリモドの塩を得るステップを含むことを特徴とする、
請求項1~4の何れか1項に記載のフィンゴリモドの塩の製造方法。
【請求項7】
フィンゴリモドの塩の結晶形であって、
好ましくは、前記結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶形であり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bであり、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.1°±0.2°、21.8°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.1°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、21.8°±0.2°、23.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.1±0.2°、17.7°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、20.6°±0.2°、21.8°±0.2°、23.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、基本的に
図1に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸結晶形Bにおいて、フィンゴリモドとエンボン酸とのモル比は1:0.5であり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bの製造方法は、以下の通りである:
エンボン酸を溶剤1と混合し、エンボン酸溶液を得て、フィンゴリモド塩酸塩を溶剤2と混合し、これに前記エンボン酸溶液を添加し、攪拌し、反応させ、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを得て、
前記溶剤1はアルカリ溶液であり、
前記溶剤2は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、又は前記少なくとも2種の溶剤の混合物であり、好ましくは水であり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.5°±0.2°、18.5°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.5°±0.2°、18.0°±0.2°、18.5°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°、24.3°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、基本的に
図4に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aは、無水物又はトンネル水和物であり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸結晶形Aにおいて、フィンゴリモドとエンボン酸とのモル比は1:0.5であり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aの製造方法は、以下の通りである:
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを乾燥し、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aを得て、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Iであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.0°±0.2°、8.9°±0.2°、19.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.0°±0.2°、3.3°±0.2°、5.6±0.2°、5.9°±0.2°、6.9°±0.2°、8.9°±0.2°、9.8°±0.2°、15.0°±0.2°、16.2°±0.2°、18.0°±0.2°、18.8°±0.2°、19.1°±0.2°、19.6°±0.2°、19.9°±0.2°、21.0°±0.2°、21.8°±0.2°、25.2°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、基本的に
図8に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Jであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、5.3°±0.2°、10.1°±0.2°、10.8°±0.2°、18.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.6°±0.2°、21.7°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形JのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、5.3°±0.2°、6.3±0.2°、9.5°±0.2°、10.1°±0.2°、10.8°±0.2°、13.5°±0.2°、17.0°±0.2°、17.8°±0.2°、18.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.6°±0.2°、21.7°±0.2°、22.0°±0.2°、24.5°±0.2°、25.5°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形JのX線粉末回折パターンは、基本的に
図9に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Cであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、6.4°±0.2°、19.8°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、6.4°±0.2°、9.6°±0.2°、15.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、6.4°±0.2°、9.6°±0.2°、13.6°±0.2°、15.1°±0.2°、15.6°±0.2°、19.8°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、基本的に
図10に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Dであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、10.1°±0.2°、20.3°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、6.7°±0.2°、10.1°±0.2°、16.9°±0.2°、18.8°±0.2°、20.3°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、6.7°±0.2°、7.2°±0.2°、10.1°±0.2°、16.9°±0.2°、18.8°±0.2°、20.3°±0.2°、23.8°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、基本的に
図11に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Eであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.3°±0.2°、19.0°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、9.8°±0.2°、17.3°±0.2°、17.7°±0.2°、19.0°±0.2°、21.8°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、9.8°±0.2°、17.3°±0.2°、17.7°±0.2°、19.0°±0.2°、19.3°±0.2°、20.0°±0.2°、21.8°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、基本的に
図12に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Fであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.7°±0.2°、18.0°±0.2°、21.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.7°±0.2°、9.2°±0.2°、16.4°±0.2°、17.0°±0.2°、18.0°±0.2°、19.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.7°±0.2°、8.0±0.2°、9.2°±0.2°、11.3°±0.2°、16.4°±0.2°、17.0°±0.2°、18.0°±0.2°、18.8°±0.2°、19.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、基本的に
図13に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Gであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.6°±0.2°、7.2°±0.2°、19.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.6°±0.2°、7.2°±0.2°、18.1°±0.2°、18.4°±0.2°、19.9°±0.2°、21.8°±0.2°、22.6°±0.2°、25.1°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.6°±0.2°、7.2°±0.2°、9.0±0.2°、9.5°±0.2°、10.0°±0.2°、11.2°±0.2°、11.6°±0.2°、11.8°±0.2°、12.1°±0.2°、13.1°±0.2°、13.5°±0.2°、15.1°±0.2°、17.0°±0.2°、18.1°±0.2°、18.4°±0.2°、18.9°±0.2°、19.1°±0.2°、19.9°±0.2°、20.5°±0.2°、20.9°±0.2°、21.8°±0.2°、22.6°±0.2°、23.2°±0.2°、23.9°±0.2°、24.7°±0.2°、25.1°±0.2°、27.6°±0.2°、28.1°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、基本的に
図14に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Hであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、10.1°±0.2°、17.2°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、6.7°±0.2°、10.1°±0.2°、13.7°±0.2°、17.2°±0.2°、20.3°±0.2°、20.6°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、5.0°±0.2°、6.7±0.2°、7.3°±0.2°、10.1°±0.2°、13.7°±0.2°、17.2°±0.2°、18.8°±0.2°、20.3°±0.2°、20.6°±0.2°、21.8°±0.2°、22.2°±0.2°、23.7°±0.2°、27.7°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのX線粉末回折パターンは、基本的に
図15に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Kであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.4°±0.2°、6.7°±0.2°、7.3°±0.2°、10.2°±0.2°、10.5°±0.2°、17.0°±0.2°、18.9°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形KのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.4°±0.2°、6.7°±0.2°、7.3±0.2°、10.2°±0.2°、10.5°±0.2°、13.1°±0.2°、13.8°±0.2°、16.3°±0.2°、17.0°±0.2°、17.4°±0.2°、17.9°±0.2°、18.2°±0.2°、18.9°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形KのX線粉末回折パターンは、基本的に
図16に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶形は、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1であり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、12.9°±0.2°、19.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.9°±0.2°、16.1°±0.2°、19.4°±0.2°、25.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.9°±0.2°、16.1°±0.2°、19.4°±0.2°、25.9°±0.2°、29.3°±0.2°、36.0°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、基本的に
図17に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸結晶形1は無水物であり、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸結晶形1において、フィンゴリモドと1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とのモル比は1:1であり、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の製造方法は、以下の通りである:
フィンゴリモド及び1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を、それぞれ溶剤7に溶解し、攪拌し、反応させ、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1を得て、
前記溶剤7は酢酸アルキルエステルであり、前記アルキル基はC1~C5アルキル基であることを特徴とする、
請求項1~4の何れか1項に記載のフィンゴリモドの塩の結晶形。
【請求項8】
治療及び/又は予防有効量の、請求項1~4の何れか1項に記載のフィンゴリモドの塩又は請求項7に記載の結晶形、並びに薬学的に許容される補助剤を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、錠剤、カプセル剤、溶液剤、懸濁剤、長時間作用型注射剤、及び半固体製剤を含むが、これらに限定されないことを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
多発性硬化症を治療及び/又は予防するための薬物の製造における、請求項1~4の何れか1項に記載のフィンゴリモドの塩、請求項7に記載の結晶形、又は請求項8~9の何れか1項に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年5月31日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202110601645.0であり、発明名称が「フィンゴリモド薬用塩、製造方法、それを含む医薬組成物及び使用」である先行出願の優先権を主張する。上記先行出願の全文は、引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フィンゴリモド薬用塩、製造方法、それを含む医薬組成物及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系タンパク質炎症性脱髄病変を主な特徴とする自己免疫疾患であり、患者の活動、知性、更には精神状態に、何れも深刻な悪影響を及ぼす。現在、MSの世界中における発症率は、年々増加し、患者の人数は250万人を超え、女性は男性よりも罹患率が高く、罹患者は青年及び児童に及ぶ。
【0004】
フィンゴリモドは、最初に真菌ツクツクボウシセミタケ及びその近縁の冬虫夏草から分離された、比較的強い免疫阻害活性を有する化合物であり、スフィンゴシン1-リン酸(S1PR)受容体調整剤であり、構造修飾により塩酸フィンゴリモド(構造式は式IIに示される)を得て、FTY 720と命名された。
【0005】
【0006】
Novartisにより開発された塩酸フィンゴリモドカプセル剤は、世界中における最初のMSを治療する経口製剤(カプセル剤)であり、最初の児童MSを治療する薬物でもあり、MS患者の再発率を低下させる上で顕著な治療効果を有する。
【0007】
本発明者は、研究プロセスにおいて、フィンゴリモド塩酸塩は、水溶性が高いため、その経口剤形の放出速度が速すぎ、血中薬物濃度を維持するためには頻繁な投与が必要となり、患者の服薬コンプライアンスが悪くなることを見出した。特許文献WO2010055028A2には、複数種のフィンゴリモド塩酸塩の結晶形が記載され、これらの結晶形は、温度変化により結晶変換が発生するため、フィンゴリモド塩酸塩の結晶形は安定性が悪く、結晶形の変化は、溶出速度、生物学的利用能などの面に影響を及ぼし、製剤の加工性及び安定性に不利がある。
【0008】
従って、溶解度が低く、且つ徐放投与に適し、安定性が高く、臨床効果が良く、商品化に適したフィンゴリモド薬用塩型を見出すことは、現在、解決が急務となっている技術問題である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、式Iに示されるフィンゴリモドの塩を提供する。
【0010】
【0011】
そのうち、Xは炭素数6以上の有機酸、又はヒドロキシル基を含むエステルであり、nは0.5~2.0であり、
好ましくは、上記塩は薬用塩である。
【0012】
本発明の実施形態によれば、上記炭素数6以上の有機酸は、C6~C30の有機酸から選ばれてもよく、例えば、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29、C30の有機酸である。
【0013】
本発明の実施形態によれば、上記Xは、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、アゼライン酸、デカン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、トリデカン酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデカン酸、セチル酸(即ちパルミチン酸又はヘキサデカン酸)、ヘプタデカン酸、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、オレイン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸(メリシン酸)、グリセリン酸、リグニン酸、エンボン酸(即ちパモ酸)、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、及びナフテン酸誘導体(上記ナフテン酸誘導体はナフテン酸エステルを含むが、これに限定されない)から選ばれる1種又は複数種であるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の実施形態によれば、上記Xは、エンボン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ラウリン酸、セチル酸、セバシン酸、ウンデカン酸、ヘプタン酸から選ばれる1種又は複数種である。
【0015】
本発明の実施形態によれば、上記nは、0.5、1.0又は2.0である。
【0016】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドの塩は、フィンゴリモドモノパモ酸塩(即ちn=1.0であり、フィンゴリモドモノエンボン酸塩とも呼ばれる)、フィンゴリモドヘミパモ酸塩(即ちn=0.5であり、フィンゴリモドヘミエンボン酸塩とも呼ばれる)、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、フィンゴリモドラウリン酸塩、フィンゴリモドセチル酸塩、フィンゴリモドセバシン酸塩、フィンゴリモドウンデカン酸塩、又はフィンゴリモドヘプタン酸塩であってもよい。
【0017】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドの塩は、単相結晶、非晶質、又は混晶の形態であってもよい。
【0018】
本発明の実施形態によれば、上記単相結晶とは、大量のミクロな物質単位(原子、イオン、分子など)が一定の規則により配列している構造であり、フィンゴリモドの塩の非溶媒和物(例えば無水物)及び溶媒和物(例えば水和物)の結晶形の形態を含む。
【0019】
本発明の実施形態によれば、上記「混晶」という用語は、同じ化合物の異なる結晶形態及び/又は他の固体分子形態、例えば上記フィンゴリモドの塩の2種又は2種以上の結晶形及び/又は非晶質形態を含む固体を指す。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドの塩は、上記フィンゴリモドの塩と溶剤から形成される溶媒和物を含む。例えば、上記溶媒和物は、フィンゴリモドの塩の水和物、及びフィンゴリモドの塩と有機溶剤から形成される溶媒和物を含む。好ましくは、上記「フィンゴリモドの塩と有機溶剤から形成される溶媒和物」に記載の「有機溶剤」は、エタノール、アセトン、及びジメチルスルホキシドのうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されない。
【0021】
本発明は、フィンゴリモド遊離塩基を、上記X(即ち炭素数6以上の有機酸)と中和反応させ、上記フィンゴリモドの塩を得るステップを含む、フィンゴリモドの塩の製造方法を更に提供する。
【0022】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドの塩の製造方法は、溶剤中又は無溶剤の条件において行われてもよい。
【0023】
本発明は、フィンゴリモド遊離塩基を無機酸において溶液とし、上記X(即ち炭素数6以上の有機酸)を無機塩基において溶液とし、更に2種の溶液を混合して、上記フィンゴリモドの塩を得るステップを含む、フィンゴリモドの塩の別の製造方法を更に提供する。
【0024】
本発明の実施形態によれば、上記2種の製造方法において、上記炭素数6以上の有機酸は、C6~C30の有機酸であってもよい。
【0025】
本発明の実施形態によれば、上記2種の製造方法において、上記Xは、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、アゼライン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、トリデカン酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデカン酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ヘプタデカン酸、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、オレイン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸(メリシン酸)、グリセリン酸、リグニン酸、エンボン酸(パモ酸)、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、及びナフテン酸誘導体(上記ナフテン酸誘導体はナフテン酸エステルを含むが、これに限定されない)から選ばれる1種又は複数種であるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の実施形態によれば、上記エンボン酸はパモ酸(Pamoic acid)とも呼ばれ、CAS登録番号は130-85-8である。
【0027】
本発明は、例えばフィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形、フィンゴリモドの1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶形である、フィンゴリモドの塩の結晶形を更に提供する。
【0028】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bであり、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.1°±0.2°、21.8°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0029】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.1°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、21.8°±0.2°、23.4°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0030】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.1±0.2°、17.7°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、20.6°±0.2°、21.8°±0.2°、23.4°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0031】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、7.1°±0.2°、9.8±0.2°、11.2°±0.2°、11.8°±0.2°、12.6°±0.2°、13.5°±0.2°、14.3°±0.2°、14.7°±0.2°、15.5°±0.2°、16.1°±0.2°、16.7°±0.2°、17.1°±0.2°、17.7°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、19.6°±0.2°、20.0°±0.2°、20.6°±0.2°、21.8°±0.2°、22.6°±0.2°、23.4°±0.2°、23.8°±0.2°、25.2°±0.2°、26.5°±0.2°、27.5°±0.2°、30.1°±0.2°などである所に吸収ピークを有する。
【0032】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、基本的に
図1に示すとおりである。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bは、表1に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0034】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸結晶形Bの熱重量分析スペクトルは、基本的に
図2に示すとおりである。
【0035】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸結晶形Bの核磁気スペクトルは、基本的に
図3に示すとおりである。
【0036】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸結晶形Bにおいて、フィンゴリモドとエンボン酸とのモル比は1:0.5である。
【0037】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bは水和物である。
【0038】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bの製造方法は以下の通りである:
エンボン酸を溶剤1と混合し、エンボン酸溶液を得て、フィンゴリモド塩酸塩を溶剤2と混合し、これに上記エンボン酸溶液を添加し、攪拌し、反応させ、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを得て、
上記溶剤1はアルカリ溶液であり、例えば無機アルカリ溶液であり、好ましくは水酸化カリウム水溶液であり、
上記溶剤2は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、又は上記少なくとも2種の溶剤の混合物であり、好ましくは水である。
【0039】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aである。
【0040】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0041】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.5°±0.2°、18.5°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0042】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.5°±0.2°、18.0°±0.2°、18.5°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°、24.3°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0043】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.2°±0.2°、9.6°±0.2°、10.8°±0.2°、11.6°±0.2°、12.5°±0.2°、13.1°±0.2°、14.8°±0.2°、15.1°±0.2°、16.3°±0.2°、18.0°±0.2°、18.5°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°、21.6°±0.2°、22.1°±0.2°、22.6°±0.2°、24.3°±0.2°、25.2°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0044】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、基本的に
図4に示すとおりである。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aは、表2に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0046】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aの示差走査熱量分析スペクトルは、基本的に
図5に示すとおりである。一実施形態において、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aは、2つの吸熱ピーク及び1つの放熱ピークを有し、例えば、上記吸熱ピークのピーク温度は128±5℃、180±5℃であり、例えば、上記放熱ピークのピーク温度は153±5℃である。
【0047】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aの熱重量分析スペクトルは、基本的に
図6に示すとおりである。
【0048】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aは、無水物又はトンネル水和物である。
【0049】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aの核磁気スペクトルは、基本的に
図7に示すとおりである。
【0050】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸結晶形Aにおいて、フィンゴリモドとエンボン酸とのモル比は1:0.5である。
【0051】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aの製造方法は以下の通りである:
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを乾燥し、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aを得て、
好ましくは、上記乾燥の温度は25~50℃であり、例えば30℃、40℃であり、
好ましくは、上記乾燥は真空乾燥である。
【0052】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Iである。
【0053】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.0°±0.2°、8.9°±0.2°、19.9°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0054】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.0°±0.2°、3.3°±0.2°、5.6±0.2°、5.9°±0.2°、6.9°±0.2°、8.9°±0.2°、9.8°±0.2°、15.0°±0.2°、16.2°±0.2°、18.0°±0.2°、18.8°±0.2°、19.1°±0.2°、19.6°±0.2°、19.9°±0.2°、21.0°±0.2°、21.8°±0.2°、25.2°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0055】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、基本的に
図8に示すとおりである。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Iは、表3に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0057】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Iの製造方法は以下の通りである:
上記エンボン酸を溶剤1と混合し、エンボン酸溶液を得て、
フィンゴリモド塩酸塩を溶剤2と混合し、これに上記エンボン酸溶液を添加し、攪拌し、反応させ、濾過し、乾燥して、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Iを得て、
上記溶剤1はアルカリ溶液であり、例えば無機アルカリ溶液であり、好ましくは水酸化カリウム水溶液であり、
上記溶剤2は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、又は上記少なくとも2種の溶剤の混合物であり、好ましくは水である。
【0058】
本発明の実施形態によれば、上記乾燥の時間は2~7日であり、好ましくは2日である。
【0059】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Jである。
【0060】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形JのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、5.3°±0.2°、10.1°±0.2°、10.8°±0.2°、18.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.6°±0.2°、21.7°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0061】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形JのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、5.3°±0.2°、6.3±0.2°、9.5°±0.2°、10.1°±0.2°、10.8°±0.2°、13.5°±0.2°、17.0°±0.2°、17.8°±0.2°、18.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.6°±0.2°、21.7°±0.2°、22.0°±0.2°、24.5°±0.2°、25.5°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0062】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形JのX線粉末回折パターンは、基本的に
図9に示すとおりである。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Jは、表4に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0064】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Jの製造方法は以下の通りである:
フフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Iを室温乾燥条件下に放置し、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Jを得る。
【0065】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Cである。
【0066】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、6.4°±0.2°、19.8°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0067】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、6.4°±0.2°、9.6°±0.2°、15.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.4°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0068】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、6.4°±0.2°、9.6°±0.2°、13.6°±0.2°、15.1°±0.2°、15.6°±0.2°、19.8°±0.2°、20.4°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0069】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、5.4±0.2°、6.4°±0.2°、9.6°±0.2°、12.8°±0.2°、13.6°±0.2°、14.3°±0.2°、15.1°±0.2°、15.6°±0.2°、16.7°±0.2°、17.3°±0.2°、17.7°±0.2°、18.3°±0.2°、18.6°±0.2°、19.0°±0.2°、19.8°±0.2°、20.4°±0.2°、22.7°±0.2°、23.1°±0.2°、23.5°±0.2°、25.9°±0.2°、29.2°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0070】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、基本的に
図10に示すとおりである。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Cは、表5に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0072】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Cの製造方法は以下の通りである:
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Jを溶剤3において懸濁液とし、攪拌晶析して、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Cを得て、
上記溶剤3は、n-ヘプタンと酢酸エチルとの混合溶剤であり、
好ましくは、上記攪拌晶析の温度は50~80℃であり、例えば60℃であり、
好ましくは、上記攪拌晶析の時間は2~10日であり、例えば7日であり、
好ましくは、上記製造方法は、攪拌晶析後に分離し、分離して得られた固体物を乾燥して、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Cを得ることを更に含む。
【0073】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Dである。
【0074】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、10.1°±0.2°、20.3°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0075】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、6.7°±0.2°、10.1°±0.2°、16.9°±0.2°、18.8°±0.2°、20.3°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0076】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、6.7°±0.2°、7.2°±0.2°、10.1°±0.2°、16.9°±0.2°、18.8°±0.2°、20.3°±0.2°、23.8°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0077】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、5.0±0.2°、6.7°±0.2°、7.3°±0.2°、8.9°±0.2°、10.1°±0.2°、10.5°±0.2°、13.1°±0.2°、13.5°±0.2°、13.8°±0.2°、15.5°±0.2°、16.2°±0.2°、16.9°±0.2°、17.4°±0.2°、17.8°±0.2°、18.8°±0.2°、19.5°±0.2°、20.3°±0.2°、22.2°±0.2°、23.8°±0.2°、25.7°±0.2°、27.4°±0.2°、29.1°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0078】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、基本的に
図11に示すとおりである。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Dは、表6に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0080】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Dの製造方法は以下の通りである:
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを良溶剤1に溶解し、揮発晶析して、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Dを得る。
【0081】
上記良溶剤1は、エタノールと水との混合溶剤であり、
好ましくは、上記揮発晶析の温度は室温である。
【0082】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Eである。
【0083】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.3°±0.2°、19.0°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0084】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、9.8°±0.2°、17.3°±0.2°、17.7°±0.2°、19.0°±0.2°、21.8°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0085】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、9.8°±0.2°、17.3°±0.2°、17.7°±0.2°、19.0°±0.2°、19.3°±0.2°、20.0°±0.2°、21.8°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0086】
より更に、本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、7.3°±0.2°、7.5°±0.2°、8.6°±0.2°、8.9°±0.2°、9.1°±0.2°、9.8°±0.2°、10.1°±0.2°、10.5°±0.2°、11.9°±0.2°、13.1°±0.2°、16.4°±0.2°、17.1°±0.2°、17.3°±0.2°、17.7°±0.2°、18.2°±0.2°、19.0°±0.2°、19.3°±0.2°、20.0°±0.2°、21.2°±0.2°、21.8°±0.2°、22.8°±0.2°、23.2°±0.2°、23.9°±0.2°、24.3°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0087】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、基本的に
図12に示すとおりである。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Eは、表7に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0089】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Eの製造方法は以下の通りである:
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを良溶剤2に溶解し、揮発晶析して、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Eを得る。
【0090】
上記良溶剤2はジオキサンであり、
好ましくは、上記揮発晶析の温度は50~80℃であり、例えば60℃である。
【0091】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Fである。
【0092】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.7°±0.2°、18.0°±0.2°、21.9°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0093】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.7°±0.2°、9.2°±0.2°、16.4°±0.2°、17.0°±0.2°、18.0°±0.2°、19.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.9°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0094】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.7°±0.2°、8.0±0.2°、9.2°±0.2°、11.3°±0.2°、16.4°±0.2°、17.0°±0.2°、18.0°±0.2°、18.8°±0.2°、19.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.9°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0095】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、基本的に
図13に示すとおりである。
【0096】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Fは、表8に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0097】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Fの製造方法は以下の通りである:
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを溶剤3においてスラリーとし、攪拌晶析して、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Fを得て、
上記溶剤3は、n-ヘプタン、酢酸イソプロピル、又はこれらの混合溶剤である。
【0098】
好ましくは、上記攪拌晶析の温度は50~80℃であり、例えば60℃である。
【0099】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Gである。
【0100】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.6°±0.2°、7.2°±0.2°、19.9°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0101】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.6°±0.2°、7.2°±0.2°、18.1°±0.2°、18.4°±0.2°、19.9°±0.2°、21.8°±0.2°、22.6°±0.2°、25.1°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0102】
より更に、本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.6°±0.2°、7.2°±0.2°、9.0±0.2°、9.5°±0.2°、10.0°±0.2°、11.2°±0.2°、11.6°±0.2°、11.8°±0.2°、12.1°±0.2°、13.1°±0.2°、13.5°±0.2°、15.1°±0.2°、17.0°±0.2°、18.1°±0.2°、18.4°±0.2°、18.9°±0.2°、19.1°±0.2°、19.9°±0.2°、20.5°±0.2°、20.9°±0.2°、21.8°±0.2°、22.6°±0.2°、23.2°±0.2°、23.9°±0.2°、24.7°±0.2°、25.1°±0.2°、27.6°±0.2°、28.1°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0103】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、基本的に
図14に示すとおりである。
【0104】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Gは、表9に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0105】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Gの製造方法は以下の通りである:
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを溶剤5においてスラリーとし、攪拌晶析して、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Gを得て、
上記溶剤5は、N,N-ジメチルホルムアミドと水との混合溶剤である。
【0106】
本発明の実施形態によれば、上記撹拌晶析の温度は50~80℃であり、例えば60℃である。
【0107】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Hである。
【0108】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、10.1°±0.2°、17.2°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0109】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、6.7°±0.2°、10.1°±0.2°、13.7°±0.2°、17.2°±0.2°、20.3°±0.2°、20.6°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0110】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、5.0°±0.2°、6.7±0.2°、7.3°±0.2°、10.1°±0.2°、13.7°±0.2°、17.2°±0.2°、18.8°±0.2°、20.3°±0.2°、20.6°±0.2°、21.8°±0.2°、22.2°±0.2°、23.7°±0.2°、27.7°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0111】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのX線粉末回折パターンは、基本的に
図15に示すとおりである。
【0112】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Hは、表10に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0113】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Hの製造方法は以下の通りである:
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを良溶剤3に溶解し、貧溶剤を徐々に添加し、撹拌晶析して、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Hを得る。
【0114】
上記良溶剤3は、エタノール、イソプロパノール、ジオキサン、及びジメチルスルホキシドのうちの1種又は2種以上であり、好ましくはエタノールであり、
上記貧溶剤は水である。
【0115】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Kである。
【0116】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形KのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.4°±0.2°、6.7°±0.2°、7.3°±0.2°、10.2°±0.2°、10.5°±0.2°、17.0°±0.2°、18.9°±0.2°、20.4°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0117】
更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形KのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.4°±0.2°、6.7°±0.2°、7.3±0.2°、10.2°±0.2°、10.5°±0.2°、13.1°±0.2°、13.8°±0.2°、16.3°±0.2°、17.0°±0.2°、17.4°±0.2°、17.9°±0.2°、18.2°±0.2°、18.9°±0.2°、20.4°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0118】
より更に、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形KのX線粉末回折パターンは、基本的に
図16に示すとおりである。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Kは、表11に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0120】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Kの製造方法は以下の通りである:
フィンゴリモド遊離塩基を溶剤6に溶解し、エンボン酸を添加し、攪拌し、反応させ、上記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Kを得て、
上記溶剤6は酢酸アルキルエステルであり、例えば、上記アルキル基はC1~C5アルキル基であり、例えば、上記溶剤6は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチルのうちの一種又は複数種であり、好ましくは酢酸n-ブチルである。
【0121】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶形は、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1である。
【0122】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、12.9°±0.2°、19.4°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0123】
更に、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.9°±0.2°、16.1°±0.2°、19.4°±0.2°、25.9°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0124】
更に、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.9°±0.2°、16.1°±0.2°、19.4°±0.2°、25.9°±0.2°、29.3°±0.2°、36.0°±0.2°などである所に特徴的なピークを有する。
【0125】
より更に、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、6.4°±0.2°、9.6±0.2°、12.9°±0.2°、13.9°±0.2°、14.4°±0.2°、15.7°±0.2°、16.1°±0.2°、16.5°±0.2°、17.4°±0.2°、18.3°±0.2°、19.4°±0.2°、20.0°±0.2°、21.0°±0.2°、21.6°±0.2°、22.4°±0.2°、23.5°±0.2°、24.1°±0.2°、25.1°±0.2°、25.9°±0.2°、29.3°±0.2°、30.3°±0.2°、32.6°±0.2°、36.0°±0.2°などである所に吸収ピークを有する。
【0126】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、基本的に
図17に示すとおりである。
【0127】
本発明の一実施形態によれば、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1は、表12に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0128】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の示差走査熱量分析スペクトルは、基本的に
図18に示すとおりであり、一実施形態において、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1は、125℃及び144℃である所に吸熱ピークを有する。
【0129】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸結晶形1の熱重量分析スペクトルは、基本的に
図19に示すとおりである。一実施形態において、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸結晶形1は、120±5℃までに重量損失がない。
【0130】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸結晶形1は無水物である。
【0131】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸結晶形1の核磁気スペクトルは、基本的に
図20に示すとおりである。
【0132】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸結晶形1において、フィンゴリモドと1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とのモル比は1:1である。
【0133】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の製造方法は以下の通りである:
フィンゴリモド及び1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を、それぞれ溶剤7に溶解し、攪拌し、反応させ、上記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1を得て、
上記溶剤7は酢酸アルキルエステルであり、例えば、上記アルキル基はC1~C5アルキル基であり、好ましくは前記溶剤7は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルのうちの1種又は2種以上、好ましくは酢酸エチルであり、
好ましくは、上記撹拌反応の温度は、25~80℃であり、好ましくは40~60℃であり、更に好ましくは60℃である。
【0134】
好ましくは、上記撹拌反応は、フィンゴリモド溶液を1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸溶液に滴下し、又は1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸溶液をフィンゴリモド溶液に滴下することを指す。
【0135】
本発明は、上記フィンゴリモドの塩及び/又は塩の結晶形、並びに薬学的に許容される補助剤を含む医薬組成物を更に提供する。
【0136】
本発明において、上記医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、溶液剤、懸濁剤、(長時間作用型)注射剤、及び半固体製剤を含むが、これらに限定されず、その目的はヒト又は他の哺乳動物などの生体への化合物(即ち活性成分)の投与を促進することであり、好ましくは注射剤であり、より好ましくは長時間作用型注射剤である。
【0137】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモドの塩及び/又は塩の結晶形の濃度は、15 mg/mL以上である。
【0138】
本発明において、上記薬学的に許容される補助剤は、生理的又は薬学的に許容される担体、希釈剤、媒介物及び/又は賦形剤のうちの1種又は複数種を含む。
【0139】
本発明の実施形態によれば、上記薬学的に許容される補助剤は更に、懸濁化剤、湿潤剤、浸透圧調整剤、溶剤、安定剤、緩衝剤、及び界面活性剤から選ばれる1種又は複数種であってもよい。
【0140】
本発明の実施形態によれば、上記懸濁化剤の濃度範囲は0~75 mg/mLであり、好ましくは10 mg/mL~75 mg/mLであり、例えば30 mg/mL、40 mg/mL、50 mg/mL又は75 mg/mLである。
【0141】
本発明の実施形態によれば、上記懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリエチレングリコール4000、及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種又は複数種であり、好ましくはポリエチレングリコール4000である。
【0142】
本発明の実施形態によれば、上記湿潤剤の濃度範囲は1 mg/mL~10 mg/mLであり、好ましくは1 mg/mL~5 mg/mLであり、例えば1 mg/mL、1.5 mg/mL、2.0 mg/mL、2.5 mg/mL、3.0 mg/mL、3.5 mg/mL、4.0 mg/mL、4.5 mg/mL又は5.0 mg/mLであり、好ましくは1 mg/mLである。
【0143】
本発明の実施形態によれば、上記湿潤剤は、Tween20、Tween80及びポロキサマー188から選ばれる1種又は複数種であり、好ましくはポロキサマー188である。
【0144】
本発明の実施形態によれば、上記緩衝剤は、リン酸、リン酸塩、枸櫞酸、枸櫞酸ナトリウム、塩酸及び水酸化ナトリウムから選ばれる1種又は複数種である。
【0145】
本発明の実施形態によれば、上記溶剤は水であり、例えば注射用水である。
【0146】
実例として、上記医薬組成物は、
(a)フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩又はその結晶形、例えばフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1、
(b)ポリエチレングリコール4000、
(c)ポロキサマー、
(d)リン酸水素二ナトリウム、
(e)リン酸二水素ナトリウム、及び
(f)注射用水、を含んでもよく、
且つ、任意に、上記医薬組成物は水酸化ナトリウム又は塩酸を含んでもよい。
【0147】
本発明は更に、
(1)湿潤剤、緩衝剤及び懸濁化剤を、溶剤に溶解するステップと、
(2)篩掛け後のフィンゴリモド固体粒子に適量の溶剤を添加し、充分に湿潤させ、分散させるステップと、
(3)溶剤で目標体積に定容して、懸濁液を得るステップと、を含む製造方法であって、
上記溶剤は水であり、例えば注射用水である、上記医薬組成物の製造方法を提供する。
【0148】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド固体粒子は、フィンゴリモド、フィンゴリモド薬学的に許容される塩、又はその塩の結晶形から選ばれてもよい。
【0149】
本発明の実施形態によれば、上記フィンゴリモド固体粒子は、フィンゴリモドエンボン酸塩又はその結晶形、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩又はその結晶形を含むが、これらに限定されない。
【0150】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)において、湿潤剤、緩衝剤及び懸濁化剤を、溶剤に順次溶解し、例えば注射用水に溶解してもよい。
【0151】
本発明の実施形態によれば、ステップ(2)において、フィンゴリモド固体粒子を篩に掛け、例えば400メッシュの篩に掛けてもよい。
【0152】
本発明は、多発性硬化症を治療及び/又は予防する薬物の製造における、上記フィンゴリモド薬用塩の使用を更に提供する。
【0153】
本発明は、上記医薬組成物又は薬物を適用者に投与することを含む、多発性硬化症を治療及び/又は予防する方法を更に提供する。
【0154】
本発明は、多発性硬化症を治療及び/又は予防する薬物の製造における、上記医薬組成物の使用を更に提供する。
【0155】
特に説明のない限り、本発明の明細書及び特許請求の範囲に使用される以下の用語は、下記意味を有する:
本発明において、上記「薬学的に許容される」、「担体」、「希釈剤」、「媒介物」、又は「賦形剤」という用語は、特定の薬剤(活性成分)と共に含有されて医薬組成物を形成することができ、且つ固体又は液体であってもよい、1種の物質(又は複数種の物質)を指す。上記固体担体は、デンプン、硫酸カルシウム二水和物、石膏粉末、タルク粉末、乳糖、スクロース、雲母、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などを含むが、これらに限定されない。上記液体担体は、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、塩水溶液及び水などを含むが、これらに限定されない。上記担体又は希釈剤は、当該分野で知られている遅延又は定時的放出材料を含んでもよく、例えば、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリルを単独、又は蝋、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸メチルなどと共に含んでもよい。
【0156】
本発明の実施形態によれば、上記「溶媒和物」という用語は、薬物、及び化学量論又は非化学量論的な1種又は複数種の溶剤分子(例えばエタノール)を含む分子複合体である。溶剤が薬物と密接に結合する場合、得られた複合体は、湿度に関係なく明確に限定された化学量論を有する。しかし、溶剤が薬物に弱く結合する場合、チャネル溶媒和物(channel solvate)及び吸湿性化合物の場合と同様に、溶剤含有量は湿度と乾燥条件に依存する。このような場合、複合体は通常、非化学量論的なものである。
【0157】
本発明の実施形態によれば、上記「水和物」という用語は、薬物、及び化学量論又は非化学量論的な水を含む溶媒和物を記述する。「相対湿度」という用語は、所定の温度での水蒸気の量と、当該温度及び圧力で維持できる水蒸気の最大量との比率を指し、百分率によって表示される。
【0158】
当該分野の常識から逸脱しない上で、上記それぞれの好ましい条件を、任意的に組み合わせれば、本発明のそれぞれの好適例を得ることができる。
【0159】
本発明に使用される試薬及び原料は、何れも市販されている。
【0160】
本発明において、上記室温は、環境温度が10~35℃であることを指す。
【0161】
本発明の有益な効果:
本発明のフィンゴリモド薬用塩の溶解度及び安定性は、何れも比較的に良く、市場化の見通しが良好である。従来技術におけるフィンゴリモド塩酸塩の水溶性及び安定性が何れも不十分であるなどの欠点を解決した。
【0162】
本発明のフィンゴリモド薬用塩を含有する組成物は、良好な安定性、安全性及び長い薬物持続放出周期を有する。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【
図1】実施例1で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのXRPDパターンである。
【
図2】実施例1で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのTGAパターンである。
【
図3】実施例1で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bの
1H-NMRパターンである。
【
図4】実施例3で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのXRPDパターンである。
【
図5】実施例3で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのDSCパターンである。
【
図6】実施例3で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのTGAパターンである。
【
図7】実施例3で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aの
1H-NMRパターンである。
【
図8】実施例4で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形IのXRPDパターンである。
【
図9】実施例5で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形JのXRPDパターンである。
【
図10】実施例6で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのXRPDパターンである。
【
図11】実施例7で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのXRPDパターンである。
【
図12】実施例8で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのXRPDパターンである。
【
図13】実施例9で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのXRPDパターンである。
【
図14】実施例10で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのXRPDパターンである。
【
図15】実施例11で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのXRPDパターンである。
【
図16】実施例13で得られたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形KのXRPDパターンである。
【
図17】実施例14で得られたフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のXRPDパターンである。
【
図18】実施例14で得られたフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のDSCパターンである。
【
図19】実施例14で得られたフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のTGAパターンである。
【
図20】実施例14で得られたフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の
1H-NMRパターンである。
【
図21】実施例21の経口処方サンプルの平均血中薬物濃度と時間の関係を示す図である。
【
図22】実施例21の懸濁剤処方サンプルの平均血中薬物濃度と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0164】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0165】
特に説明のない限り、下記の実施例に使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0166】
下記の実施例に記載されている特性及び測定:
核磁気共鳴(1H-NMR)を用いて、実施例の塩基型化合物をそれぞれ測定し、測定パラメータは以下の通りである:
1H-NMR測定は、ブルカーの型式がBruker Advance III 500Mである核磁気共鳴分光計において行われ、測定周波数は400 Mzであり、使用される溶剤は重水素化DMSOである。
【0167】
X線粉末回折計(XRPD)
XRPD測定は、ブルカーの型式がD8 AdvanceであるX線粉末回折計において行われ、且つ円形のゼロバックグラウンドの単結晶シリコン試料台を使用した。走査パラメータは以下の通りである。電圧が40 kV、電流が40 mA、走査範囲が3°~45°、走査ステップが0.02°、走査モードが連続走査である。
【0168】
示差走査熱量分析(DSC)
DSC測定は、TA Instrumentsの型式がQ2000である密閉パン装置において行われ、サンプル(約1~2 mg)をアルミニウムパンで秤量し、機器に移して測定した。測定パラメータは以下の通りである。機器を30℃で平衡にし、10℃/minの速度で昇温させ、実験雰囲気は窒素ガスである。
【0169】
熱重量分析(TGA)
TGA測定は、TA Instrumentsの型式がQ2000である装置において行われ、サンプル(約2~5 mg)をプラチナパンで秤量し、機器に移して測定した。測定パラメータは以下の通りである。機器を10℃/minの速度で昇温させ、実験雰囲気は窒素ガスである。
【0170】
HPLCによる関連物質の検出方法
【0171】
【0172】
実施例1 フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bの製造
ステップ1:292 mgの水酸化カリウムを取り、5 mLの水を添加し、水酸化カリウム溶液を得た。
【0173】
ステップ2:78 mgのエンボン酸を取り、1 mLの水を添加し、攪拌し、分散し、0.4 mLの水酸化カリウム溶液を添加し、攪拌し、濾過して、エンボン酸溶液を得た。
【0174】
ステップ3:68 mgのフィンゴリモド塩酸塩を取り、1 mLの水を添加し、攪拌し、清澄し、ステップ2で得られたエンボン酸溶液を0.6 mL添加し、攪拌し、反応させ、7 mLの水を補充添加し、30分間攪拌し、ステップ2で得られたエンボン酸溶液を0.2 mL補充添加し、続いて30分間反応させ、濾過し、フィンゴリモドエンボン酸塩を得て、XRPDにより、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bと検出された。
【0175】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのXRPDパターンは
図1に示すとおりであり、
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのXRPD解析は表1にに示すとおりであり:
【表2】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのTGAパターンは
図2に示すとおりであり、
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bの
1H-NMRパターンは
図3に示すとおりであり、
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ8.21-8.16 (t, 2H), 7.83 (s, 3H), 7.62 (d, 2H), 7.10 (m, 5H), 6.99 (m, 1H), 5.46 (s, 2H), 4.67 (s, 1H), 3.55 (s, 4H), 2.56 (m, 2H), 1.79 (m, 2H), 1.52 (m, 2H), 1.24 (d, 10H), 0.86-0.83 (t, 3H)、フィンゴリモド遊離塩基とエンボン酸とのモル比が約1:0.5であることを示している。
【0176】
実施例2 フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bの製造
ステップ1:5.84 gの水酸化カリウムを取り、100 mLの水を添加し、水酸化カリウム溶液を得た。
【0177】
ステップ2:15.6 gのエンボン酸を取り、200 mLの水を添加し、攪拌し、分散し、80 mLの水酸化カリウム溶液を添加し、攪拌し、濾過して、エンボン酸溶液を得た。
【0178】
ステップ3:13.6 gのフィンゴリモド塩酸塩を取り、200 mLの水を添加し、攪拌し、清澄し、ステップ2で得られたエンボン酸溶液を120 mL添加し、攪拌し、反応させ、1400 mLの水を補充添加し、30分間攪拌し、ステップ2で得られたエンボン酸溶液を40 mL補充添加し、続いて30分間反応させ、濾過し、フィンゴリモドエンボン酸塩を得て、XRPDにより、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bと検出された。
【0179】
実施例3フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aの製造
実施例2で製造されたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを10 g取り、40℃で一晩真空乾燥して、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aを得た。
【0180】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのXRPDパターンは
図4に示すとおりであり、
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのXRPD解析は表2に示すとおりである。
【表3】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのDSCパターンは
図5に示すとおりであり、
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのTGAパターンは
図6に示すとおりであり、
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aの1H-NMRパターンは
図7に示すとおりであり、フィンゴリモド遊離塩基とエンボン酸とのモル比が約1:0.5であることを示している。
【0181】
実施例4フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Iの製造:
ステップ1:1192.23 mgの水酸化カリウムを秤量し、20 mLの水を添加し、溶解して、濃度が約1.062 mmol/mLである水酸化カリウム水溶液を得た。
【0182】
ステップ2:3124 mgエンボン酸を秤量し、20 mLの水を添加し、攪拌し、分散し、16.725 mLの水酸化カリウム水溶液を添加し、1 h攪拌し、濾過して濾液を取り、エンボン酸カリウム溶液を得た。
【0183】
ステップ3:塩酸フィンゴリモド溶液の製造:2721 mgの塩酸フィンゴリモドを秤量し、60 mLの水を添加し、攪拌し、基本的に清澄し、濾過して濾液を取った。
【0184】
ステップ4:攪拌状態下において、20.990 mLのエンボン酸カリウム溶液を、塩酸フィンゴリモド溶液に緩やかに添加し、室温で一晩攪拌し、吸引濾過し、回収し、35℃で2日間真空乾燥して、ヘミエンボン酸塩を得て、XRPDにより、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Iと検出された。
【0185】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形IのXRPDパターンは
図8に示すとおりである。
【0186】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形IのXRPD解析は表3に示すとおりである。
【表4】
【0187】
実施例5 フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Jの製造
実施例4で製造されたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Iサンプルを取り、室温で10日間乾燥放置して、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Jを得た。
【0188】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形JのXRPDパターンは
図9に示すとおりである。
【0189】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形JのXRPD解析は表4に示すとおりである。
【表5】
【0190】
実施例6フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Cの製造
実施例5で製造されたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Jサンプルを210 mg取り、3.5 mLのn-ヘプタン及び3.5 mLの酢酸エチルを添加し、60℃で7日間攪拌し、遠心分離し、40℃で4時間真空乾燥し、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Cを得た。
【0191】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのXRPDパターンは
図10に示すとおりである。
【0192】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのXRPD解析は表5に示すとおりである。
【表6】
【0193】
実施例7フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Dの製造
実施例3で製造されたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bサンプルを25 mg取り、0.3 mLのエタノールお及び0.1 mLの水を添加し、室温で揮発させて、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Dを得た。
【0194】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのXRPDパターンは
図11に示すとおりである。
【0195】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのXRPD解析は表6に示すとおりである。
【0196】
【0197】
実施例8フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Eの製造
実施例3で製造されたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bサンプルを25 mg取り、0.2 mLの1,4-ジオキサンを添加し、60℃で揮発させて、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Eを得た。
【0198】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのXRPDパターンは
図12に示すとおりである。
【0199】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのXRPD解析は表7に示すとおりである。
【0200】
【0201】
実施例9フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Fの製造
実施例3で製造されたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bサンプルを30 mg取り、0.5 mLのn-ヘプタン及び0.5 mLの酢酸イソプロピルを添加してスラリーを形成し、60℃で7日間攪拌して、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Fを得た。
【0202】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのXRPDパターンは
図13に示すとおりである。
【0203】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのXRPD解析は表8に示すとおりである。
【0204】
【0205】
実施例10フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Gの製造
実施例3で製造されたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bサンプルを30 mg取り、0.1 mLのN,N-ジメチルホルムアミド及び1 mLの水を添加してスラリーを形成し、60℃で7日間攪拌して、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Gを得た。
【0206】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのXRPDパターンは
図14に示すとおりである。
【0207】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのXRPD解析は表9に示すとおりである。
【0208】
【0209】
実施例11フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Hの製造
実施例3で製造されたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bサンプルを100 mg取り、0.5 mLのエタノールを添加し、清澄し、1 mLの水を緩やかに添加し、攪拌晶析して、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Hを得た。
【0210】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのXRPDパターンは
図15に示すとおりである。
【0211】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのXRPD解析は表10に示すとおりである。
【0212】
【0213】
実施例12フィンゴリモド遊離塩基の製造
12.6 gの塩酸フィンゴリモドを取り、480 mLの水を添加し、攪拌し、清澄し、アンモニア水を緩やかに滴下し、pHを9~10に調整し、続いて1時間攪拌し、濾過し、室温で3時間真空乾燥して、11.1 gのフィンゴリモド遊離塩基を得た。
【0214】
実施例13フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Kの製造
実施例12で製造されたフィンゴリモド遊離塩基を1000 mg添加し、50 mLの酢酸n-ブチルを添加し、60℃で撹拌し、清澄し、530 mgのエンボン酸を添加し、4時間撹拌し、反応させ、室温に降温し、一晩撹拌し、濾過し、40℃で一晩真空乾燥して、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Kを得た。
【0215】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形KのXRPDパターンは
図16に示すとおりである。
【0216】
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形KのXRPD解析は表11に示すとおりである。
【0217】
【0218】
実施例14フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の製造
ステップ1:5500 mgの1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を秤量し、75 mLの酢酸エチルを添加し、水浴60℃で撹拌し、溶解し、濾過し、濾液を取った。
【0219】
ステップ2:実施例12のフィンゴリモド遊離塩基を7230 mg取り、250 mLの酢酸エチルを添加し、水浴60℃で溶解した。
【0220】
ステップ3:60℃で攪拌状態下において、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸溶液をフィンゴリモド溶液に緩やかに滴下し、17 mLの酢酸エチルを添加し、洗浄し、室温で一晩撹拌し、濾過し、85 mLの酢酸エチルで濾過ケーキを洗浄し、35℃で一晩真空乾燥し、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩を得て、XRPDにより、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1と検出された。
【0221】
フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のXRPDパターンは
図17に示すとおりであり、
フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のXRPD解析は表12に示すとおりである。
【0222】
【表13】
フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のDSCパターンは
図18に示すとおりであり、
フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のTGAパターンは
図19に示すとおりであり、
フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の1H-NMRパターンは
図20に示すとおりであり、フィンゴリモドと1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸が1:1で塩を形成していることを示している。
【0223】
実施例15フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の処方製造
【表14】
製造プロセス:
(1)表13に示される処方用量のポロキサマー188、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させ、
(2)400メッシュの篩に掛けたフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1を、表13に示される処方用量で添加し、充分に湿潤させ、分散させ、
(3)注射用水で10 mLに定容し、均一に振り混ぜ、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の懸濁液を得た。
【0224】
処方1~3で得られた処方サンプルを取り、注射針透過性及び沈降率を調べたところ、処方2で得られた処方サンプルは、注射針透過性及び沈降率が良好であることを見出した。
【0225】
実施例16フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の処方製造
表14に示されるように、実施例15の処方3におけるポリエチレングリコール4000の使用量を、それぞれ200 mg、300 mg、400mg、500 mg及び600 mgに調整して、処方の製造を行い、処方4、5、6、7及び8を得た。処方4~8サンプルを取り、注射針透過性及び沈降率を調べたところ、得られた処方サンプルは、注射針透過性及び沈降率が良好であることを見出した。
【表15】
【0226】
実施例17塩酸フィンゴリモドの経口処方サンプルの製造
3.676 mgの塩酸フィンゴリモドを取り、注射用水で溶解し、希釈し、100 mLに定容して、塩酸フィンゴリモド経口処方サンプルを得た。
【0227】
実施例18フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1処方サンプルの製造
(1)10 mgのポロキサマー188、750 mgのポリエチレングリコール4000、45 mgのリン酸水素二ナトリウム、9 mgのリン酸二水素ナトリウム及び約6 mLの注射用水を秤量し、撹拌溶解して分散させ、
(2)400メッシュの篩に掛けたフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1を242.3 mg添加し、充分に湿潤し、分散させ、
(3)注射用水で10 mLに定容し、均一に振り混ぜ、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の懸濁剤処方サンプルを得た。
【0228】
実施例19:固体安定性の比較
実施例14で製造されたフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1、実施例3で製造されたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形A、及びフィンゴリモド塩酸塩をそれぞれ取り、高温(60℃)、高湿(25℃/90%RH)、加速(40℃/75%RH)、光照明(1.2×106 Lux hr)、及び長期間(25℃/60%RH)条件下で放置し、0日目、5日目、10日目にサンプリングし、HPLCにより関連物質を検出した。
【0229】
関連物質の結果は表15に示され、本発明のフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1は比較的安定であり、各条件下で10日間放置した場合、関連物質の合計は基本的に不変であり、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aは光照明条件下で不純物が若干増加した以外、他の条件下では何れも比較的安定であることを示している。
【表16】
【0230】
実施例20:溶解度の比較
実施例14で製造されたフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1、実施例2で製造されたフィンゴリモドエンボン酸塩結晶形B、フィンゴリモド塩酸塩、及び実施例12で製造されたフィンゴリモド遊離塩基をそれぞれ取り、下記の対応する媒体にそれぞれ添加し、37℃で24時間振盪し、0.45 μmの水相濾過膜で濾過し、濾液を収集し、高速液体で溶解度の測定を行った。そのうち、対応する媒体は、pH3及びpH5は酢酸緩衝溶液であり、pH7及びpH9はリン酸緩衝溶液であり、水は超純水である。
【0231】
結果は表16に示され、フィンゴリモド遊離塩基及びフィンゴリモド塩酸塩は、各媒体への溶解度が比較的大きい差を示し、且つ高pH媒体で、フィンゴリモド塩酸塩が解離してフィンゴリモド遊離塩基となるが、本発明により製造されたフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、エンボン酸塩及び両者の結晶形の溶解度は、水中及び低pH(pHは5以下)の条件下で何れも大幅に低下し、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の水への溶解度は5.46 μg/mLであり、フィンゴリモド遊離塩基の1/4~1/5(約23 μg/mL)に相当し、塩酸フィンゴリモドの1/1000~1/2600(約14 mg/mL)に相当し、しかも各pH媒体で何れも比較的低く、即ち、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、エンボン酸塩及び両者の結晶形は、それ自体が徐放効果を有すると同時に、各pH媒体への溶解度は相当であり、放出速度はpHに最小限に依存することができ、従って体内の異なる区域のpH環境におけるその薬物放出速度に対する影響を回避し、バースト放出現象又は体内の局所区域における血中薬物濃度の過剰な上昇を生じることを回避し、しかも個体間の薬物放出の差異性を低減し、長時間作用型製剤に適しており、投与回数を低減し、患者の服薬コンプライアンスを向上させることができ、市場化の見通しは良好であることを示している。
【表17】
【0232】
実施例21 処方安定性の比較
実施例15で製造された処方3サンプルを取り、高温(60℃)、加速(40℃/75%RH)、長期間(25℃/60%RH)の条件下で放置し、0日目、5日目、10日目にサンプリングし、HPLC検出を行った。
【0233】
結果は表17に示され、本発明により製造された処方サンプルは各条件において比較的安定であり、10日間放置した後に、関連物質の合計に明らかな変化は見られなかった。
【表18】
実施例18で製造された処方サンプルは、実施例15の処方サンプルと同様の安定性を有していた。
【0234】
実施例21:薬物動態学実験
6匹の雄SDラットを2群に分け、そのうち、1つの群は、3 mg/kgの単回投与量でフィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形の処方サンプル(実施例18)を筋肉内注射投与し、投与後の0 h、1 h、3 h、7 h、24 h、4 d、7 d、11 d、15 d、20 d、25 d、30 d、35 dに血漿を採取し、別の群は、0.1 mg/kgの単回投与量でフィンゴリモド塩酸塩サンプル(実施例17)を強制経口投与し、投与後の5 min、15 min、30 min、1、2、3、4、6、8、12及び24時間に血漿を採取した。実験中、筋肉内注射群の動物は食物と水を自由に摂取でき、強制経口投与群の動物は投与前に一晩禁食し、投与の4時間後に飲食を再開した。
【0235】
血漿サンプルの採取:頸静脈から約150 μLの血液を採取し(全血を30分以内に遠心分離して血漿を分離)、抗凝固剤EDTA-K2入りの試験管に入れ、処理した後の血漿を-70℃の冷蔵庫に使用するまで保存した。
【0236】
血漿サンプルの前処理:30 μLの血漿サンプルを取り、200 μLの内部標準溶液(40 ng/mLのGlipizideアセトニトリル溶液)を添加し、1 minボルテックスし、4℃で5800 rpmで10 min遠心分離し、100 μLの上清を取り、新しいプレートに移した後、5 μLの溶液を取ってLC-MS/MS分析を行った。動物体内のフィンゴリモドの薬物動態学パラメーターは表18~表19に示され、薬物時間曲線は
図21~
図22に示される。
【0237】
結果により、フィンゴリモド経口処方群は、投与後12時間に最高血中薬物濃度に達し、24時間以内に0.3 ng/mL以上の血中薬物濃度を維持でき、MRTは僅か12 hであることを示している。フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩注射群は、投与後3時間に最高血中濃度に達し、1日内に比較的安定した血中濃度に達することができ、少なくとも15日において血中濃度を0.3 ng/mL以上に維持し、MRTは12日にまで及ぶことにより、当該製剤の効果発現速度が速く、薬物の持続放出周期が長いことを示し、Cmaxは用量に比例して増加せず、中毒濃度まで比較的大きな安全距離があり、安全性が比較的高いことを示した。
【表19】
【表20】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iに示されるフィンゴリモドの塩であって、
【化1】
そのうち、Xは炭素数6以上の有機酸、又はヒドロキシル基を含むエステルであり、nは0.5~2.0であり、
好ましくは、前記塩は薬用塩である、
式Iに示されるフィンゴリモドの塩。
【請求項2】
前記炭素数6以上の有機酸が、C6~C30の有機酸であることを特徴とする、
請求項1に記載のフィンゴリモドの塩。
【請求項3】
前記C6~C30の有機酸が、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、アゼライン酸、デカン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸、グリセリン酸、リグニン酸、エンボン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、及びナフテン酸誘導体のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されず、
例えば、前記ナフテン酸誘導体が、ナフテン酸エステルを含むが、これに限定されないことを特徴とする、
請求
項2に記載のフィンゴリモドの塩。
【請求項4】
前記フィンゴリモドの塩が、単相結晶、非晶質、又は混晶の形態であり、
例えば、前記フィンゴリモドの塩が、溶剤と形成される溶媒和物を含み、
好ましくは、前記溶媒和物が、フィンゴリモドの塩の水和物、及びフィンゴリモドの塩と有機溶剤から形成される溶媒和物を含み、
好ましくは、前記有機溶剤が、エタノール、アセトン、及びジメチルスルホキシドのうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されないことを特徴とする、
請求
項3に記載のフィンゴリモドの塩。
【請求項5】
フィンゴリモド遊離塩基を、前記X(例えば、炭素数6以上の有機酸)と中和反応させ、前記フィンゴリモドの塩を得るステップを含むことを特徴とする、
請求項
1に記載のフィンゴリモドの塩の製造方法。
【請求項6】
フィンゴリモド遊離塩基を無機酸において溶液とし、炭素数6以上の有機酸を無機塩基において溶液とし、更に2種の溶液を混合して、前記フィンゴリモドの塩を得るステップを含むことを特徴とする、
請求項
1に記載のフィンゴリモドの塩の製造方法。
【請求項7】
フィンゴリモドの塩の結晶形であって、
好ましくは、前記結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶形であり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bであり、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.1°±0.2°、21.8°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.1°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、21.8°±0.2°、23.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.1±0.2°、17.7°±0.2°、18.7°±0.2°、19.1°±0.2°、20.6°±0.2°、21.8°±0.2°、23.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、基本的に
図1に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸結晶形Bにおいて、フィンゴリモドとエンボン酸とのモル比は1:0.5であり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bの製造方法は、以下の通りである:
エンボン酸を溶剤1と混合し、エンボン酸溶液を得て、フィンゴリモド塩酸塩を溶剤2と混合し、これに前記エンボン酸溶液を添加し、攪拌し、反応させ、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを得て、
前記溶剤1はアルカリ溶液であり、
前記溶剤2は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、又は前記少なくとも2種の溶剤の混合物であり、好ましくは水であり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.5°±0.2°、18.5°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.5°±0.2°、18.0°±0.2°、18.5°±0.2°、19.3°±0.2°、20.4°±0.2°、24.3°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、基本的に
図4に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aは、無水物又はトンネル水和物であり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸結晶形Aにおいて、フィンゴリモドとエンボン酸とのモル比は1:0.5であり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aの製造方法は、以下の通りである:
フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Bを乾燥し、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Aを得て、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Iであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.0°±0.2°、8.9°±0.2°、19.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.0°±0.2°、3.3°±0.2°、5.6±0.2°、5.9°±0.2°、6.9°±0.2°、8.9°±0.2°、9.8°±0.2°、15.0°±0.2°、16.2°±0.2°、18.0°±0.2°、18.8°±0.2°、19.1°±0.2°、19.6°±0.2°、19.9°±0.2°、21.0°±0.2°、21.8°±0.2°、25.2°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、基本的に
図8に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Jであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、5.3°±0.2°、10.1°±0.2°、10.8°±0.2°、18.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.6°±0.2°、21.7°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形JのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、5.3°±0.2°、6.3±0.2°、9.5°±0.2°、10.1°±0.2°、10.8°±0.2°、13.5°±0.2°、17.0°±0.2°、17.8°±0.2°、18.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.6°±0.2°、21.7°±0.2°、22.0°±0.2°、24.5°±0.2°、25.5°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形JのX線粉末回折パターンは、基本的に
図9に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Cであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、6.4°±0.2°、19.8°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、6.4°±0.2°、9.6°±0.2°、15.1°±0.2°、19.8°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、6.4°±0.2°、9.6°±0.2°、13.6°±0.2°、15.1°±0.2°、15.6°±0.2°、19.8°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、基本的に
図10に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Dであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、10.1°±0.2°、20.3°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、6.7°±0.2°、10.1°±0.2°、16.9°±0.2°、18.8°±0.2°、20.3°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、6.7°±0.2°、7.2°±0.2°、10.1°±0.2°、16.9°±0.2°、18.8°±0.2°、20.3°±0.2°、23.8°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、基本的に
図11に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Eであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、17.3°±0.2°、19.0°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、9.8°±0.2°、17.3°±0.2°、17.7°±0.2°、19.0°±0.2°、21.8°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、9.8°±0.2°、17.3°±0.2°、17.7°±0.2°、19.0°±0.2°、19.3°±0.2°、20.0°±0.2°、21.8°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、基本的に
図12に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Fであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.7°±0.2°、18.0°±0.2°、21.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.7°±0.2°、9.2°±0.2°、16.4°±0.2°、17.0°±0.2°、18.0°±0.2°、19.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.7°±0.2°、8.0±0.2°、9.2°±0.2°、11.3°±0.2°、16.4°±0.2°、17.0°±0.2°、18.0°±0.2°、18.8°±0.2°、19.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、基本的に
図13に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Gであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.6°±0.2°、7.2°±0.2°、19.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.6°±0.2°、7.2°±0.2°、18.1°±0.2°、18.4°±0.2°、19.9°±0.2°、21.8°±0.2°、22.6°±0.2°、25.1°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.6°±0.2°、7.2°±0.2°、9.0±0.2°、9.5°±0.2°、10.0°±0.2°、11.2°±0.2°、11.6°±0.2°、11.8°±0.2°、12.1°±0.2°、13.1°±0.2°、13.5°±0.2°、15.1°±0.2°、17.0°±0.2°、18.1°±0.2°、18.4°±0.2°、18.9°±0.2°、19.1°±0.2°、19.9°±0.2°、20.5°±0.2°、20.9°±0.2°、21.8°±0.2°、22.6°±0.2°、23.2°±0.2°、23.9°±0.2°、24.7°±0.2°、25.1°±0.2°、27.6°±0.2°、28.1°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、基本的に
図14に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Hであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、10.1°±0.2°、17.2°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、6.7°±0.2°、10.1°±0.2°、13.7°±0.2°、17.2°±0.2°、20.3°±0.2°、20.6°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.3°±0.2°、5.0°±0.2°、6.7±0.2°、7.3°±0.2°、10.1°±0.2°、13.7°±0.2°、17.2°±0.2°、18.8°±0.2°、20.3°±0.2°、20.6°±0.2°、21.8°±0.2°、22.2°±0.2°、23.7°±0.2°、27.7°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形HのX線粉末回折パターンは、基本的に
図15に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩の結晶形は、フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形Kであり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.4°±0.2°、6.7°±0.2°、7.3°±0.2°、10.2°±0.2°、10.5°±0.2°、17.0°±0.2°、18.9°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形KのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.4°±0.2°、6.7°±0.2°、7.3±0.2°、10.2°±0.2°、10.5°±0.2°、13.1°±0.2°、13.8°±0.2°、16.3°±0.2°、17.0°±0.2°、17.4°±0.2°、17.9°±0.2°、18.2°±0.2°、18.9°±0.2°、20.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモドエンボン酸塩結晶形KのX線粉末回折パターンは、基本的に
図16に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶形は、フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1であり、そのX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、12.9°±0.2°、19.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.9°±0.2°、16.1°±0.2°、19.4°±0.2°、25.9°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、2θ値が3.2°±0.2°、9.6°±0.2°、12.9°±0.2°、16.1°±0.2°、19.4°±0.2°、25.9°±0.2°、29.3°±0.2°、36.0°±0.2°である所に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1のX線粉末回折パターンは、基本的に
図17に示すとおりであり、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸結晶形1は無水物であり、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸結晶形1において、フィンゴリモドと1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とのモル比は1:1であり、
好ましくは、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1の製造方法は、以下の通りである:
フィンゴリモド及び1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を、それぞれ溶剤7に溶解し、攪拌し、反応させ、前記フィンゴリモド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩結晶形1を得て、
前記溶剤7は酢酸アルキルエステルであり、前記アルキル基はC1~C5アルキル基であることを特徴とする、
請求項
1に記載のフィンゴリモドの塩の結晶形。
【請求項8】
治療及び/又は予防有効量の、請求項
1に記載のフィンゴリモドの塩又は請求項7に記載の結晶形、並びに薬学的に許容される補助剤を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、錠剤、カプセル剤、溶液剤、懸濁剤、長時間作用型注射剤、及び半固体製剤を含むが、これらに限定されないことを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
多発性硬化症を治療及び/又は予防するための薬物の製造における、請求項
1に記載のフィンゴリモドの
塩の使用。
【国際調査報告】