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▶ ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニアの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】神経変性のための新規治療ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/435 20060101AFI20240528BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
A61P25/28
A61P25/16
A61K38/17
A61K38/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574374
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 US2022032223
(87)【国際公開番号】W WO2022256694
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/196,480
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】508230226
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】コーエン ピンカス
(72)【発明者】
【氏名】ミラー ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】キム ス-ジョン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA20
4C084BA23
4C084CA28
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA151
4C084ZA161
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA20
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本明細書には、SHMOOSEと呼ばれる新しいミトコンドリアペプチドの産生につながる、新規な、ミトコンドリアにコードされるオープンリーディングフレームが記載される。SHMOOSEは58アミノ酸ペプチドであり、かつそのオープンリーディングフレーム内に、アルツハイマー病、脳構造、脳遺伝子発現、および認知に関するリスクを著しく増加させたゲノムワイドに有意な小塩基多型(SNP)を含有する。SHMOOSEは、ニューロンタイプの細胞の生存率を増加させ、かつアミロイドベータの毒性から保護した。メタボローム研究により、その機能障害および調節不全がアルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患における脳の生理学的に注目すべき領域での細胞死につながる本ペプチドの、エネルギー最適化における役割が明らかになった。処置および診断のための方法および組成物が、ペプチド類似体およびペプチド誘導体を含めて、記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列
を有するミトコンドリアペプチド、またはその断片、類似体、もしくは誘導体を含む、組成物。
【請求項2】
ミトコンドリアペプチドが、アミノ酸配列
を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ミトコンドリアペプチドが、SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:92またはSEQ ID NO:97~SEQ ID NO:107のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ミトコンドリアペプチドが、
のアミノ酸配列を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ミトコンドリアペプチドが、
または
に対して、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上のパーセンテージ同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
ミトコンドリアペプチドが19~70アミノ酸長である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ミトコンドリアペプチドが翻訳後修飾または人為的修飾を有する、請求項1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
人為的修飾が、peg化、脂肪酸コンジュゲーション、ポリペプチド伸長、IgG-Fc、CPT、HSA、ELP、トランスフェリン、またはアルブミン修飾を含む、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される賦形剤または薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
疾患および/または状態を処置する方法であって、
該疾患および/または状態の処置を必要とする対象に、ある量のミトコンドリアペプチドを投与する工程を含み、該ミトコンドリアペプチドが、
のアミノ酸配列、またはその断片、類似体、もしくは誘導体を有する、前記方法。
【請求項11】
ミトコンドリアペプチドがSEQ ID NO:93のアミノ酸配列の断片であり、該断片がアミノ酸配列
を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ミトコンドリアペプチドが19~70アミノ酸長である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記疾患および/または状態が、
神経変性疾患および/または神経変性状態、任意でアルツハイマー病または基準を上回るアミロイドベータレベルを特徴とするもの
を含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
ミトコンドリアペプチドが、前記対象の脳脊髄液におけるタウレベルを増加させる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ミトコンドリアペプチドが、前記対象の脳におけるアミロイドベータレベルまたはアミロイドベータ斑を減少させる、請求項13記載の方法。
【請求項16】
ミトコンドリアペプチドが、前記対象の内側頭皮質(interior temporal cortex)組織の体積の減少を低減または阻害する、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、一塩基多型(SNP)位置に「A」アレルを有するSNP rs2853499の保因者である、請求項13記載の方法。
【請求項18】
神経変性疾患および/または神経変性状態がパーキンソン病である、請求項13記載の方法。
【請求項19】
ミトコンドリアペプチドが、前記対象の上頭頂葉皮質組織の体積の減少を低減または阻害する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、生物学的試料において測定される
を、健常正常対象と比較して多量に発現する、請求項10記載の方法。
【請求項21】
1つまたは複数のバイオマーカーを検出する方法であって、
該1つまたは複数のバイオマーカーに関する決定を望む対象から得られた生物学的試料における1つまたは複数のバイオマーカーの存在、非存在、または発現レベルを検出する工程、および
該1つまたは複数のバイオマーカーの存在、非存在、または発現レベルを検出する工程
を含み、
該1つまたは複数のバイオマーカーが、配列
のペプチドまたは一塩基多型(SNP)rs2853499を含む、前記方法。
【請求項22】
存在、非存在、または発現レベルを検出する工程がイムノアッセイを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数のバイオマーカーが、「A」アレルが一塩基多型(SNP)位置にあるSNP rs2853499を含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
SEQ ID NO:94を有するペプチドの存在が検出された場合に、前記対象を、ある疾患および/もしくは状態と診断するか、または該疾患および/もしくは状態を有する可能性が増加していると診断する工程、あるいは
健常対象と比較して、SEQ ID NO:93を有するペプチドの低い発現レベルが検出された場合に、前記対象を、ある疾患および/もしくは状態と診断するか、または該疾患および/もしくは状態を有する可能性が増加していると診断する工程、あるいは
「A」アレルが一塩基多型(SNP)位置にあるSNP rs2853499が検出された場合に、前記対象を、ある疾患および/もしくは状態と診断する工程
をさらに含み、
該疾患および/または状態が神経変性疾患および/または神経変性状態である、請求項21記載の方法。
【請求項25】
神経変性疾患および/または神経変性状態が、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
その必要がある対象におけるミトコンドリア由来ペプチドの遺伝子型を検出する方法であって、rs2853499である一塩基多型(SNP)における遺伝子型を検出するために、該対象から得られた生物学的試料をアッセイする工程を含む、前記方法。
【請求項27】
前記対象において前記SNPでのAアレルを検出する工程をさらに含み、該対象がアルツハイマー病を有するか、またはアルツハイマー病発症のリスク因子を有する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記検出が、
アルツハイマー病を有するかまたはアルツハイマー病発症のリスク因子を有する対象において、対照対象におけるそれよりも高い、前記SNPでのAアレルのカウント
を検出する、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記対象にアルツハイマー病治療を投与する工程をさらに含む、請求項27~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、神経変性疾患または神経変性障害、任意でアルツハイマー病に関する決定を望む、請求項26~29のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する陳述
本発明は、米国国立衛生研究所によって交付された助成金番号AG055369、AG062693、AG061834およびAG068405の下に、政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2021年6月3日に出願された米国仮特許出願第63/196,480号に対する、米国特許法第119条(e)に基づく優先権の主張を伴い、この米国特許出願は、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
配列表の参照
「SequenceListing-065715-000102WO00_ST25」という名称のテキストファイルとして2022年6月3日に提出された、作成日2022年6月3日およびサイズ39,992バイトの配列表は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0004】
発明の分野
本明細書には、神経変性疾患などの代謝関連疾患および組成物の処置において使用するための、ミトコンドリアペプチドに関係する方法および組成物が記載される。
【背景技術】
【0005】
背景
近年のオミクスにより、神経生物学およびアルツハイマー病(AD)における新規な機能的ゲノム要素が明らかになっているが、2つの構成要素、すなわちマイクロプロテインとミトコンドリアDNA変異は、なお精密に調べる必要がある。マイクロプロテインは小さなオープンリーディングフレーム(sORF)によってコードされる生物学的に活性なペプチドである。これらのペプチドは、計算能力の制約と生化学的な制約とにより、何十年もの間、見落とされてきた。しかし今日では、まだ特徴づけられていないマイクロプロテインが、高分解能ゲノミクスおよび高分解能プロテオミクスによって、何千、何万と明らかになっている。
【0006】
マイクロプロテインは神経生物学を理解する絶好の機会になる。過去20年間にミトコンドリアにコードされるマイクロプロテインがいくつか研究されてきた。そのようなマイクロプロテインの一つが、アルツハイマー病(AD)患者の後頭葉からクローニングされた24アミノ酸ペプチド、ヒューマニンである。ヒューマニンは、その発見以来、AD病変を、一つにはその三量体型受容体シグナル伝達およびアミロイドベータ毒性防御によって、減弱することが見いだされている。最近、認知年齢および循環ヒトレベルがヒューマニンsORF9内の一塩基多型(SNP)と関連することが報告されたことから、他のミトコンドリアSNPが、まだ特徴づけられていないマイクロプロテインに影響を及ぼすかもしれないことが示唆された。
【0007】
ミトコンドリア由来ペプチド(MDP)はmtDNA小オープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされる一群のペプチドである。16,569bpのミトコンドリアゲノムは、酸化的リン酸化に関与する13の大タンパク質:ATP6、ATP8、CO1、CO2、CO3、CYB、ND1、ND2、ND3、ND4L、ND4、ND5およびND6をコードしており、9~40アミノ酸のsORFを含むようにミトコンドリアゲノムを再アノテーションすることにより、数百の推定MDP sORFが明らかになった。ミトコンドリアはエネルギーの生成と細胞死の制御において鍵となる要素である。ミトコンドリアは、核ゲノムにコードされているかまたはミトコンドリア代謝の二次産物である逆行性シグナルによって、細胞と通信する。
【0008】
最近になって、ミトコンドリアゲノムによってコードされるミトコンドリア由来ペプチドが、これらの制御プロセスにおける重要な要素として同定されている。ミトコンドリア由来の逆行性シグナルペプチドは、ヒト疾患を処置するための治療的かつ診断的な遺伝子およびペプチドの同定に役立つと考えられる。
【発明の概要】
【0009】
以下に、諸態様およびその局面を、範囲の限定ではなく例示と説明を意図した組成物および方法を挙げて、記載し、説明する。
【0010】
本明細書では、アミノ酸配列
を有するミトコンドリアペプチド、またはその断片、類似体、もしくは誘導体を含む組成物が開示される。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは、アミノ酸配列
を含むことができる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドはSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:92またはSEQ ID NO:97~SEQ ID NO:107のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含むことができる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは、
のアミノ酸配列を含むことができる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは、
または
に対して、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上のパーセンテージ同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは19~70アミノ酸長であることができる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは翻訳後修飾または人為的修飾を有することができる。例えば人為的修飾には、peg化、脂肪酸コンジュゲーション、ポリペプチド伸長、IgG-Fc、CPT、HSA、ELP、トランスフェリン、またはアルブミン修飾を含めることができる。さまざまな態様において、組成物は、薬学的に許容される賦形剤または薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。
【0011】
本明細書では、疾患および/または状態を処置する方法が開示される。さまざまな態様において、本方法は、疾患および/または状態の処置を必要とする対象に、ある量のミトコンドリアペプチドを投与する工程を含み、該ミトコンドリアペプチドは、
のアミノ酸配列、またはその断片、類似体、もしくは誘導体を有する。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは、SEQ ID NO:93のアミノ酸配列の断片であることができる。さまざまな態様において、前記断片はアミノ酸配列
を含むことができる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは19~70アミノ酸長であることができる。例えば、前記疾患および/または状態には、神経変性疾患および/または神経変性状態、任意でアルツハイマー病または基準を上回るアミロイドベータレベルを特徴とするもの、を含めることができる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは対象の脳脊髄液におけるタウレベルを増加させる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは、対象の脳におけるアミロイドベータレベルまたはアミロイドベータ斑を減少させることができる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは、対象の内側頭皮質(interior temporal cortex)組織の体積の減少を低減または阻害することができる。さまざまな態様において、対象は、一塩基多型(SNP)位置に「A」アレルを有するSNP rs2853499の保因者でありうる。例えば神経変性疾患および/または神経変性状態はパーキンソン病でありうる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは、対象の上頭頂葉皮質組織の体積の減少を低減または阻害することができる。さまざまな態様において、対象は、生物学的試料において測定される
を、健常正常対象と比較して多量に発現することができる。
【0012】
本明細書には、1つまたは複数のバイオマーカーを検出する方法が記載される。さまざまな態様において、本方法は、1つまたは複数のバイオマーカーに関する決定を望んでいる対象から得られた生物学的試料において、前記1つまたは複数のバイオマーカーの存在、非存在、または発現レベルを検出する工程;および前記1つまたは複数のバイオマーカーの存在、非存在、または発現レベルを検出する工程を含むことができる。さまざまな態様において、前記1つまたは複数のバイオマーカーは、配列
のペプチドまたは一塩基多型(SNP)rs2853499を含むことができる。例えば、前記存在、非存在、または発現レベルを検出する工程はイムノアッセイを含む。さまざまな態様において、前記1つまたは複数のバイオマーカーは、「A」アレルが一塩基多型(SNP)位置にあるSNP rs2853499を含むことができる。さまざまな態様において、本方法は、SEQ ID NO:94を有するペプチドの存在が検出された場合に、対象を、ある疾患および/もしくは状態と診断するか、または該疾患および/もしくは状態を有する可能性が増加していると診断する工程、あるいは健常対象と比較してSEQ ID NO:93を有するペプチドの低い発現レベルが検出された場合に、対象を、ある疾患および/もしくは状態と診断するか、または該疾患および/もしくは状態を有する可能性が増加していると診断する工程、あるいは「A」アレルが一塩基多型(SNP)位置にあるSNP rs2853499が検出された場合に、対象を、ある疾患および/もしくは状態と診断する工程を含むことができる。例えば、前記疾患および/または状態は、神経変性疾患および/または神経変性状態である。さまざまな態様において、前記神経変性疾患および/または神経変性状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、およびそれらの組合せからなる群より選択することができる。
【0013】
本明細書には、その必要がある対象におけるミトコンドリア由来ペプチドの遺伝子型を検出する方法が記載される。さまざまな態様において、本方法は、ある一塩基多型(SNP)における遺伝子型を検出するために、対象から得られた生物学的試料をアッセイする工程を含むことができる。例えば前記SNPはrs2853499である。さまざまな態様において、本方法は、対象において前記SNPでのAアレルを検出する工程を、さらに含むことができる。例えば、対象はアルツハイマー病を有するか、またはアルツハイマー病発症のリスク因子を有する。さまざまな態様において、本検出は、アルツハイマー病を有するかまたはアルツハイマー病発症のリスク因子を有する対象において、対照対象におけるそれよりも高い、前記SNPでのAアレルのカウントを検出することができる。さまざまな態様において、本方法は、対象にアルツハイマー病治療を投与する工程を、さらに含むことができる。さまざまな態様において、対象は、神経変性疾患または神経変性障害、任意でアルツハイマー病に関する決定を望む。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の態様のさまざまな特徴を例示のために説明する添付の図面と合わせて解釈すれば、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1-1】図1A~1Fは、ミトコンドリアrs2853499が、SHMOOSEのアミノ酸配列を変化させ、ADおよびニューロイメージングモダリティに関連することを表している。新規マイクロプロテインを明らかにするためにミトコンドリアDNAバリアントをどのように使用することができるかを示す橋渡し図。(A)アルツハイマー病に関連するミトコンドリア一塩基多型(「SNP」)の視覚的表現。SNPは、「SHMOOSE」と名付けられたペプチドのアミノ酸配列を変異させて、「SHMOOSE SNP」をもたらす。ソーラープロット(Solar Plot)と呼ばれる、MiWASのGWASマンハッタンプロット相当の図。外側の青色を超えて延びているSNPは、0.05のパーミュテーション経験p値(permutation empirical p value)で統計的に有意である。最も有意なmtSNPはrs2853498とrs2853499であった。これらはどちらもハプログループU決定性(haplogroup U determining)であり、後者はSHMOOSEにミスセンス変化を引き起こす。(B)4つのコホート(ADNI、ROSMAP、LOAD、ADC1/2)におけるSHMOOSE SNPのオッズ比。これらのコホートは、アルツハイマー病(AD)を有する人々およびADを有さない人々で構成されている。SHMOOSE SNPを有する人々はADの確率が30%高い。ADNI、ROSMAP、LOADおよびADC/1/2におけるrs2853499のメタ分析フォレストプロット。バーは95%信頼区間を表す。(C)同SHMOOSE SNPを有する人々では海馬の萎縮が速い。これは、ADおよび神経変性全般のどちらにとっても、高度に有意である。傍海馬に対するSHMOOSE.D47Nおよび年齢の有意な効果を図解する、UK Biobankにおけるニューロイメージングに基づくPheWAS。他の有意な効果は、ECおよびPCCに関して、図12に記されている。(D)SHMOOSE SNPは58アミノ酸のSHMOOSEペプチドの47番目のアミノ酸をアスパラギン酸(D)からアスパラギン(N)に変える。すなわち、rs2853499はSHMOOSEの47番目のアミノ酸を変える。RosettaTTFoldによるSHMOOSEとSHMOOSE.D47Nのコンピュータシミュレーションモデル。
図1-2】図1A~1Fは、ミトコンドリアrs2853499が、SHMOOSEのアミノ酸配列を変化させ、ADおよびニューロイメージングモダリティに関連することを表している。新規マイクロプロテインを明らかにするためにミトコンドリアDNAバリアントをどのように使用することができるかを示す橋渡し図。(E)SHMOOSE発現が脳側頭皮質においてより高い場合は、ミトコンドリア発現もより高い。ヒト側頭皮質においてSHMOOSEと共発現する遺伝子によってエンリッチされたGO細胞ターム(GO cellular term)(n=69)。(F)SHMOOSEは神経細胞の核およびミトコンドリアに検出される。mtDNA含有細胞とmtDNA非含有細胞(すなわちrhoゼロ細胞)における約6kDaのSHMOOSEのウェスタンブロット検出。ラミニンB1は核マーカーであり、GRSF1アイソフォームはミトコンドリアマーカーであり、GAPDHはサイトゾルマーカーである。
図2図2A~2Cは、生物学的組織におけるSHMOOSEのレベルを定量するための新しいアッセイまたは試験を表している。SHMOOSEのアミノ酸32~58に対する抗体を使って酵素結合免疫吸着サンドイッチアッセイ(ELISA)を開発した。ヒト脳脊髄液(CSF)におけるSHMOOSEレベルは、年齢、タウ、および脳白質微細構造に相関する。(A)SHMOOSEのRNAレベルは、アルツハイマー病脳の側頭皮質においてより高い。AD症例の側頭皮質におけるSHMOOSE RNA発現。有意性は全正規化ミトコンドリア遺伝子カウントに対する負の二項回帰後のpAdj<0.05として表されている。(B)脳脊髄液におけるSHMOOSEの実際のペプチドレベルは、年齢、タウ、およびリン酸化タウと相関する。タウおよびリン酸化タウはアルツハイマー病関連バイオマーカーである。ヒトCSF SHMOOSEレベル(pg/ml)と年齢との相関。回帰モデルは共変数として生物学的性別を含む;p値<0.001。SHMOOSEとCSF総タウ(pg/ml)との相関。回帰モデルは共変数として生物学的性別および年齢を含む;p値<0.05。SHMOOSEと、CSF中の、残基181がリン酸化されたタウ(pタウ181;pg/ml)との相関。回帰モデルは共変数として生物学的性別および年齢を含む;p値<0.05。(C)SHMOOSEの実際のペプチドレベルは、多くの神経変性疾患に関与する脳の領域である帯状皮質における脳白質の悪化と関連する。72人の認知障害のない中高年齢者において、より高いCSF SHMOOSEは、脳梁体および両側上放射冠におけるより低いDTI FAと有意に関連した。回帰モデルは、年齢、申告された性別および臨床的認知症尺度スコアを含んだ。色つきのボクセルは、ボクセルワイズの多重比較に関する補正後のFSLThreshold-Free Cluster Enhancementによるp値<0.05を示す。放射線学的配向(L=R)で表されている。
図3図3A~3Cは、SHMOOSEが、ヒト、細胞およびマウスにおけるミトコンドリアおよびリボソーム遺伝子発現変動と関連することを表している。実線の枠はミトコンドリアタームを表し、破線の枠はリボソームタームを表す。(A)は、SHMOOSE SNP(アルツハイマー病と関連する同SNP)を有するヒトが、ミトコンドリアおよびリボソーム遺伝子発現変動とも関連することを表している。14人のSHMOOSE.D47N保因者または55人のSHMOOSE基準アレル保因者がカラーコード化された、主成分分析(PCA)。破線はPC2の中央値を表す。14人のSHMOOSE.D47N保因者のうち、11人は中央PC2値未満である(p値<0.05;一般化線形モデル)。PCA図の右側に、SHMOOSE.D47N保因者によってエンリッチされたGO細胞区画ターム(GO cellular compartment term)を示す。(B)は、SHMOOSEの変異体型(SHMOOSE.D47N)が、神経細胞についてミトコンドリア内膜遺伝子発現ならびにリボソーム遺伝子発現の変化を引き起こすことを表している。10uMのSHMOOSEまたはSHMOOSE.D47Nで処置した神経系細胞に関する24時間後のインビトロ遺伝子発現シグネチャーのPCA。PCA図の右側に、SHMOOSE.D47N処置神経系細胞によってエンリッチされたGO細胞区画タームを示す。(C)は、SHMOOSEをマウスに注射した場合も、リボソームおよびミトコンドリア遺伝子発現が変化することを表している。マウスに対する14日間のSHMOOSE処置後にSHMOOSEによってエンリッチされた、肝臓組織での、対応するPCAプロットおよびGO細胞区画ターム。
図4図4A~4Fは、ミトコンドリアエネルギー論に対するSHMOOSEの効果を表している。SHMOOSEは、ミトコンドリアに局在して代謝活性および酸化的消費速度を高める生物学的に活性なマイクロプロテインである。(A)SHMOOSEは、細胞に与えられると、ミトコンドリアに移動する。SHMOOSEで処置した分化SH-SY5Y細胞(1uM)は、15分後にミトコンドリアに局在した。ブロットの一番上の部分は5秒曝露を表す。ブロットの2番目の部分は30秒曝露を表す。SHMOOSE処置条件では12kDa付近にSHMOOSE二量体も同定され、それらはミトコンドリア画分において最も顕著だった。ラミニン、GRSF1およびGAPDHは、それぞれ核、ミトコンドリアおよびサイトゾル画分を表す。(B)SHMOOSEは、細胞に与えられた場合、代謝活性を用量依存的に高める。SHMOOSEと変異体SHMOOSE.D47Nとの間で、このバルク代謝活性に差はない。ここでも、これが、アルツハイマー病と関連するSHMOOSEのバージョンである。1uMのSHMOOSE(淡青色)およびSHMOOSE.D47N(濃青色)が、どちらも1uMおよび10uMにおいて、共に細胞代謝活性に対する効果を有することを図解するMTTアッセイ結果。有意性は独立t検定でp値<0.05と定義した。(C)SHMOOSEは基礎細胞酸素消費速度を高めるが、変異体SHMOOSE.D47Nは高めない。ベースライン3回目の測定に正規化された、ミトコンドリア予備容量に対するSHMOOSEおよびSHMOOSE.D47Nの効果。統計的有意性は独立t検定を使って決定された。(D)SHMOOSEおよび変異体SHMOOSE.D47Nは、ミトコンドリアのストレス対処能力を高める。基礎OCRに対するSHMOOSEおよびSHMOOSE.D47Nの効果。有意性は独立t検定でp値<0.05と定義した。(E)SHMOOSE発現は、家族性アルツハイマー病変異を有するニューロンにおいて最も高い。FAD APP変異、FAD PSEN変異およびFAD APP+PSEN変異を有するiPSC由来のニューロンにおけるSHMOOSE発現。SHMOOSE発現は後者の細胞タイプにおいて最も高かった。有意性は全正規化ミトコンドリア遺伝子カウントに対する負の二項回帰後のpAdj<0.05と定義した。(F)神経細胞において、SHMOOSEはアミロイドベータに対して防御するが、変異体SHMOOSE.D47Nは防御しない。SHMOOSEで処置した神経系細胞は、アミロイドベータ42誘導毒性に対して防御する。有意性は独立t検定でp値<0.05と定義した。
図5A図5A~5Eは、SHMOOSEのさまざまな特徴を表している。SHMOOSEはミトコンドリア内膜タンパク質ミトフィリン(mitofilin)に結合する。(A)SHMOOSEは98のタンパク質からなる結合複合体の一部である。これらのタンパク質のうちの一つはミトフィリンと呼ばれ、ミトコンドリア内膜に存在する。カスタムSHMOOSEポリクローナル抗体を使って免疫沈降させたSHMOOSEスパイク神経系細胞溶解物の模式的プロテオミクス解析。
図5B図5A~5Eは、SHMOOSEのさまざまな特徴を表している。SHMOOSEはミトコンドリア内膜タンパク質ミトフィリンに結合する。(B)SHMOOSEは神経細胞中のミトフィリンと共免疫沈降する。SHMOOSE抗体またはミトフィリン抗体で免疫沈降させることによるSHMOOSE/ミトフィリン相互作用の相互ウェスタンブロット検証。
図5C図5A~5Eは、SHMOOSEのさまざまな特徴を表している。SHMOOSEはミトコンドリア内膜タンパク質ミトフィリンに結合する。(C)合成SHMOOSEは細胞外のミトフィリンに結合する。組換えミトフィリンとSHMOOSEが相互作用することを図解する相互ドットブロット。
図5D図5A~5Eは、SHMOOSEのさまざまな特徴を表している。SHMOOSEはミトコンドリア内膜タンパク質ミトフィリンに結合する。(D)細胞におけるミトフィリンレベルが低い場合、代謝活性に対するSHMOOSEの効果は低下する。ミトフィリンをsiRNAでノックダウンした場合、SHMOOSEが神経系細胞代謝活性の効果を有しないことを示すMTTアッセイ。ベースライン吸光度値を統制するためにY軸は正規化されている。統計的有意性はp値<0.05で独立t検定を使って決定された。
図5E図5A~5Eは、SHMOOSEのさまざまな特徴を表している。SHMOOSEはミトコンドリア内膜タンパク質ミトフィリンに結合する。(E)ミトフィリンのN末に結合するSHMOOSEのコンピュータシミュレーション。SHMOOSE(黄色)とミトフィリン(茶色)の相互作用のHDOCK予測。ミトフィリンに対する予測相互作用残基はそのc末に存在する。
図6A図6Aは、肝臓トランスクリプトームがSHMOOSE処置マウスを2週間後に対照と識別することを表し、図6Bは、SHMOOSEが2週間後のマウスにおける肝臓酵素ASTおよびALTを減少させることを表し、図6Cは、2週間後の高脂肪食給餌マウスでの体重増加を減弱することを表し、図6Dは、視床下部トランスクリプトームがSHMOOSE処置マウスを2週間後に対照と識別することを表し、図6EはSHMOOSE処置後の視床下部トランスクリプトームが強いリボソームおよびミトコンドリア遺伝子発現変化を示すことを表し、図6Fは、SHMOOSEが、cFOSによる測定で、視床下部ニューロンを活性化することを表している。
図6B図6Aの説明を参照のこと。
図6C図6Aの説明を参照のこと。
図6D図6Aの説明を参照のこと。
図6E図6Aの説明を参照のこと。
図6F図6Aの説明を参照のこと。
図7図7はミトコンドリアスーパーオキシドに対するSHMOOSEの効果を表している。SHMOOSEはミトコンドリアスーパーオキシドを低減する。IMMT siRNAはミトコンドリアスーパーオキシドを低減し、その場合、SHMOOSEには効果がない。細胞中のミトフィリンレベルが低下すると、活性酸素種の低下に対するSHMOOSEの効果は減弱される。
図8図8Aは、近接依存性ミトコンドリア標識法(proximity mitochondria labeling strategy)を使って、HEK293細胞ミトコンドリアにおいてSHMOOSEが検出されたことを表している。ペプチド配列DNSYPLVLGPK(SEQ ID NO:96)を図8Aに示す。図8Bは、SHMOOSEがミトコンドリア内膜に存在することを表している。
図9A図9Aは、SHMOOSEが神経細胞に与えられた場合、それはミトコンドリアに移動して、ミトコンドリア超複合体に、最も顕著にはATP5に、結合することを表している。
図9B図9Bは、免疫沈降を使ってSHMOOSEを細胞から引き出した場合、ATP5がそれにくっつくことを表している。SHMOOSEはATP5に結合する。
図9C図9Cは、SHMOOSEとATP5サブユニットBおよびOとが細胞外で結合することを表している。
図9D図9Dは、ATP5中でSHMOOOSEが結合するタンパク質の視覚的表現である。ATP5OおよびATP5Bは結合するが、ATP5A1は結合しない。
図10図10は、MTTによって測定された類似体スクリーニングアッセイを表している。上:各バーはSHMOOSEの断片(25アミノ酸長)を表す。下:各バーはSHMOOSEのホスホミメティック断片(25アミノ酸長)を表す。細胞モデルはSHSY5Yである。本発明者らは103の類似体/誘導体を作製した(表1参照)。
図11図11は、活性が高くなっているSHMOOSEの例示的類似体を表している。図11は、14アミノ酸:PCLTTWLSQLLKDN(SEQ ID NO:95)を有する配列を有するSHMOOSEペプチドの例示的類似体を表す。SEQ ID NO:95の配列から、それぞれ11アミノ酸を有するこの類似体の3つの異なる解析ウィンドウPCLTTWLSQLL(SEQ ID NO:108)、CLTTWLSQLLK(SEQ ID NO:109)およびLTTWLSQLLKD(SEQ ID NO:110)を特徴づけた。SEQ ID NO:108およびSEQ ID NO:109の配列からのアミノ酸CWLLLL(SEQ ID NO:111)によって疎水面が形成される。SEQ ID NO:110の配列からのアミノ酸WLLLL(SEQ ID NO:112)によって疎水面が形成される。
図12図12は、各ニューロイメージングマーカーに対するSHMOOSE.D47Nおよび年齢の有意な効果を図解するUK Biobankにおけるニューロイメージングに基づくPheWASを表している。SHMOOSE.D47は、皮質の厚さ、体積、軟膜表面積、WM表面ヤコビアンならびに海馬傍回、嗅内皮質(EC)、前帯状皮質(ACC)、後帯状皮質(PCC)および側頭極(TPO)を含むいくつかの傍辺縁領域におけるGM/WMコントラストと有意に関連する(クラスタワイズ、RFT補正p値<0.05。カラーはp値を表す。
図13図13は、SHMOOSE mtSNPが、より速い認知低下と関連することを表している。SHMOOSE mtSNP(Aアレル)を有する個体は、認知低下が加速していると予測された。モデルは、混合効果成長モデルから推定される効果を現す。赤いトラジェクトリーはSHMOOSE.D47N保因者を表す。効果は年齢65歳から始まると推定される。
図14図14はSHMOOSE ELISAの標準曲線を表している。標準曲線の範囲は100~250,000pg/mlである。
図15図15は、タウを媒介因子としたSHMOOSEに対するpタウ181の効果を表している。間接効果(ACME)は、複合的間接および直接効果(ADE)(15.83;p値<0.01)より低く、有意でない(-0.15)。総タウに対するpタウ181の効果は有意であったが(6.025;p値<0.01)、pタウ181について統制した場合、SHMOOSEに対する総タウの効果は有意でなかった(-2.56)。
図16図16は、8人のAPOE4保因者を表すためにカラーコード化した主成分分析(PCA)を表している。破線はPC2の中央値を表す。統計的に有意ではないものの、8人のAPOE4保因者中5人がPC2中央値未満だった。
図17A図17A~17Cは、皮質、視床下部および海馬に関するPCAおよびGOオントロジーエンリッチメントを表している。(A)皮質では、PCAによって、SHMOOSE処置マウスが媒体から十分に分離され、CNS細目について細胞構成要素ターム(cellular component term)がエンリッチされた。
図17B図17A~17Cは、皮質、視床下部および海馬に関するPCAおよびGOオントロジーエンリッチメントを表している。(B)視床下部では、PCAによって、SHMOOSE処置マウスが媒体から十分に分離され、CNS細目について細胞構成要素タームがエンリッチされた。
図17C図17A~17Cは、皮質、視床下部および海馬に関するPCAおよびGOオントロジーエンリッチメントを表している。(C)海馬では、PCAによってSHMOOSE処置マウスが十分に分離されず、タームはエンリッチされなかった。
図18図18A~18Dは、注射を受けたマウスに対するSHMOOSEの効果を現している。(A)2週間後に、SHMOOSE処置マウスのASTレベルは、高脂肪食の対象処置マウスと比較して低かった(p値<0.1)。(B)同様に、SHMOOSE処置マウスにおけるALTレベルも低かった(p値<0.2)。(C)SHMOOSEは対象と比較して体重増加を減弱する。(D)SHMOOSEは食物摂取量を変化させない。
図19図19A~19DはコホートごとのミトコンドリアDNA主成分分析を表している。(A)ADNIコホート内でのmtPCA。SHMOOSE Aアレル保因者は一つにまとまる。(B)RUSH ROSMAP mtPCA。SHMOOSE Aアレル保因者はやはり一つにまとまるようである。(C)LOADコホート内でのmtPCA。SHMOOSE Aアレル保因者は3つの異なるクラスター内にある。(D)ADC1/2コホート内でのmtPCA。SHMOOSE Aアレル保因者は3つの異なるクラスター内にある。
図20図20A~20Iは、UKBでの言語中枢(上側頭回および下前頭回)、背外側および内側前頭前皮質、中枢運動、および後頭視皮質おけるSHMOOSE.D47Nの効果を表している。(A~I)順に、モデル化された白質表面積、軟膜表面積、表面ヤコビアン、灰白質/白質コントラスト、皮質厚、皮質体積、溝深さ、平均曲率、およびガウス曲率。グレースケールはp値を示す。効果を緩い未補正p値<0.05で示す。
図21-1】図21A~21Iは、ADNIにおける、未補正p値<0.05の緩い閾値での、内側側頭皮質および後帯状皮質などの辺縁領域におけるSHMOOSE.D47Nの効果を表している。(A~I)順に、モデル化された白質表面積、軟膜表面積、表面ヤコビアン、灰白質/白質コントラスト、皮質厚、皮質体積、溝深さ、平均曲率、およびガウス曲率。グレースケールはp値を示す。効果を緩い未補正p値で示す。
図21-2】図21-1の説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本明細書において言及する参考文献はすべて、参照によりその全体が、あたかも完全に記載されたかのように、本明細書に組み入れられる。別段の定義がある場合を除き、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed.,Revised,J.Wiley&Sons(New York,NY 2006)およびSambrook and Russel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,NY 2012)は、本願において使用される用語の多くについての一般的指針を、当業者に与える。
【0017】
当業者には、本発明の実施に使用することのできる本明細書記載の方法および材料と類似するまたは等価な、多くの方法および材料がわかるであろう。事実、本発明は、決して、記載の方法および材料に限定されない。
【0018】
本明細書にいう「投与すること」および/または「投与する」とは、患者に薬学的組成物を送達するための任意の経路を指す。送達の経路には、非侵襲的な経口(口からの)、外用(皮膚)、経粘膜(鼻腔、バッカル/舌下、膣、眼および直腸)および吸入経路、ならびに非経口経路、および当技術分野において公知の他の方法を含めうる。非経口とは、一般に、眼窩内、注入、動脈内、頸動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、嚢下、皮下、経粘膜または経気管を含む、注射と関連する送達経路を指す。非経口経路では、組成物は、注入用または注射用の溶液または懸濁液の形態にあるか、または凍結乾燥粉末でありうる。
【0019】
本明細書において使用される用語「約」が、参照数値表示と共に使用される場合、それは、本明細書において別段の具体的規定がある場合を除き、その参照数値表示プラスまたはマイナス5%までを意味する。例えば「約50%」という表現は45%~55%の範囲を包含する。さまざまな態様において、用語「約」が、参照数値表示と共に使用される場合、それは、その請求項において特に規定されているのであれば、その参照数値表示プラスまたはマイナス当該参照数値表示の4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.25%までを意味することができる。
【0020】
「類似体」とは、本発明のSHMOOSEペプチドに関して本明細書において使用される場合、SHMOOSEのペプチド断片を指す。さまざまな態様において、類似体は、基準ペプチドと比較してほぼ同じまたは増加した活性を有する。さまざまな態様において、活性の増加は、活性の少なくとも5%の増加である。さまざまな態様において、活性の増加は、活性の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、175%、または200%の増加である。
【0021】
本明細書において使用される場合、「誘導体」とは、基準ペプチドに基づいて設計されたペプチドを指す。さまざまな態様において、誘導体ペプチドは、基準ペプチドとほぼ同じまたは増加した機能的活性を有することができる。さまざまな態様において、活性の増加は、活性の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、175%、または200%の増加である。さまざまな態様において、誘導体は、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または付加を含む。さまざまな態様において、誘導体ペプチドは、15個までのアミノ酸の置換、欠失または付加を含む。さまざまな態様において、誘導体ペプチドは、10個までのアミノ酸の置換、欠失または付加を含む。さまざまな態様において、誘導体ペプチドは、5個までのアミノ酸の置換、欠失または付加を含む。さまざまな態様において、誘導体ペプチドは、3個までのアミノ酸の置換、欠失または付加を含む。さまざまな態様において、誘導体は、天然に存在するアミノ酸の置換、欠失または付加を含まない。さまざまな態様において、誘導体はD47Nバリアントではない。
【0022】
「バリアント」および「変異体」とは、本発明のSHMOOSEペプチドに関して本明細書において使用される場合、「野生型」SHMOOSEペプチドと比較して1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸の置換、欠失または付加を有するペプチドを指す。例えばバリアント「D47N」は、ヨーロッパ人の約25%に見いだされるSHMOOSEペプチドのバージョンであり、この変異体/バリアントはADのリスクを30%増加させる。
【0023】
本明細書にいう「調節」または「調節する」または「調節すること」とは、応答のアップレギュレーション(すなわち活性化または刺激)、ダウンレギュレーション(すなわち阻害または抑制)、または組み合わされたもしくはばらばらのそれら二つを指す。
【0024】
本明細書にいう「薬学的に許容される担体」とは、本発明において有用な、従来の薬学的に許容される担体を指す。
【0025】
本明細書にいう「促進する」および/または「促進すること」とは、細胞または生物の特定挙動の増強を指す。
【0026】
本明細書にいう「対象」には、限定するわけではないが、例えば伴侶動物、農用動物および動物園動物など、哺乳動物および他の動物を含む、すべての動物が含まれる。用語「動物」は、任意の生きた多細胞脊椎生物を包含することができ、このカテゴリーには、例えば哺乳動物、トリ、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、齧歯類動物などが含まれる。同様に、用語「哺乳動物」は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物をどちらも包含する。さまざまな態様において、対象はヒトである。
【0027】
本明細書にいう「治療有効量」とは、処置される対象において所望の効果を達成するのに十分な、指定された組成物または組成物中の活性作用物質の量を指す。治療有効量は、限定するわけではないが、対象の生理的条件(年齢、性別、疾患のタイプおよびステージ、全身の健康状態、与えられた投薬量に対する応答性、所望する臨床効果)および投与経路を含むさまざまな要因に依存して、変動しうる。臨床分野および薬学分野の当業者は日常的な実験方法によって治療有効量を決定することができるだろう。
【0028】
本明細書にいう「処置する」、「処置すること」および「処置」とは、治療的処置と予防措置または防止措置の両方を指し、その目的は、たとえその処置が最終的には不成功であるとしても、標的とした状態、疾患または障害(「不具合」と総称する)を防止する、または減速(軽減)させることである。処置を必要とする者には、既に不具合を有する者、ならびに不具合を生じやすい者、または不具合が防止されるべき者が含まれうる。
【0029】
本明細書には、新規ミトコンドリアペプチドを使った処置のための方法および組成物が記載される。ゲノムワイドスキャニングによって同定された、新規ミトコンドリアペプチドと関連するミトコンドリア一塩基多型(SNP)変異は、神経変性と関連する。
【0030】
SHMOOSE(Small Human Mitochondrial Open reading frame Over the SErine-tRNA(セリンtRNA上の小ヒトミトコンドリアオープンリーディングフレーム))は、神経変性疾患に関連づけられる新たに発見されたペプチドである。したがって、人工的SHMOOSEペプチド類似体は、これらの状態の防止および処置において使用することができうる。本発明は、新たに発見されたミトコンドリア由来ペプチドであるSHMOOSEのペプチド類似体ファミリーの組成物を包含する。本発明は、ヒトの循環および組織におけるSHMOOSEペプチドのレベルを検出するための抗体およびアッセイも包含する。
【0031】
SHMOOSEは、小ミトコンドリアDNAオープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされる。SHMOOSEは神経細胞およびCSFにおいて検出された。具体的には、質量分析と、SHMOOSE基準配列に対して設計された抗体とを使って、神経細胞の核およびミトコンドリア中のSHMOOSEを検出した。SHMOOSEは、天然変性領域を含有する配列
を有する58アミノ酸ペプチドである。ミトコンドリア由来ペプチド(MDP)は、逆行性ミトコンドリアシグナル伝達ならびにミトコンドリア遺伝子発現において鍵となる要素である。ヒト核ゲノムと比較して、ミトコンドリアはさほど大きくない約16,570bpの環状ゲノムを有し、それは、表面上は、いずれも電子伝達鎖系の構造構成要素である13のタンパク質コード遺伝子しか含んでいない。
【0032】
ミトコンドリアDNA(mtDNA)の複製と転写開始は、核コードタンパク質によって制御されており、単一のポリシストロニック前駆体として転写され、それが戦略的に配置された22のtRNAを切り出すことによって個々の遺伝子にプロセシングされて(tRNA中断モデル)、2つのrRNAと13のmRNAを生じると考えられている。
【0033】
ヒトミトコンドリアは重鎖中に2つの近接したプロモーター(メジャーおよびマイナー)、そして軽鎖に1つのプロモーターを有し、それにより、3つの異なる単一ポリシストロニック転写産物を生じる。重鎖メジャープロモーターが、全ミトコンドリアRNA(mtRNA)転写産物の80%を担っている。遺伝子全体が単一の転写産物として転写されると考えられるが、個々のrRNA、tRNAおよびmRNA転写産物の存在量は著しく異なり、rRNAが最も豊富である。このプロセシング構造は、ミトコンドリアにおける、まだ探求されていない一群の転写後プロセシングを示す。
【0034】
重要なことに、ミトコンドリアから同定されるmRNA種の多くは、伝統的なミトコンドリアタンパク質コード遺伝子にマッピングされない、ばらばらの短いものである。例えば、そのようなmRNAが16S rRNAから複数、確認されている。RNA末端の並列解析(Parallel analysis of RNA ends:PARE)では、ミトコンドリアについて極めて多くの予想される切断部位と予想外の切断部位とが発見されていることがわかる。tRNAおよびmRNAの大部分は5'末に明瞭な支配的切断部位を有するが、rRNAには遺伝子内切断部位がとりわけ豊富である。注目すべきことに、ポリシストロニックなmRNAからの小さなオープンリーディングフレーム(sORF)によってコードされる11~32アミノ酸長の生物学的に活性なペプチドを示す有力な証拠が、台頭しつつある小ペプチドの分野から得られている。
【0035】
ミトコンドリアは、核ミトコンドリアDNA転移またはミトコンドリア起源の核挿入物(NUMT)のプロセスにより、そのゲノムを宿主の核に移して、染色体「ドッペルゲンガー」を残したと考えられている。NUMTは、mtDNAのすべての部分から、元の配列とはさまざまな相同性度を有する、さまざまなサイズで生じる。核ゲノムには全mtDNAを見いだすことができるが、ほとんどの場合、かなりの配列の変性を伴う。大半のNUMTは<500bpの小さな挿入物であり、>1500bpは12.85%に過ぎない。パーセンテージ同一性はサイズと逆相関し、NUMTとmtDNAの間の平均パーセンテージは79.2%であって、同一性の範囲は63.5%~100%である。
【0036】
本明細書にはあるミトコンドリアペプチドが記載される。一態様において、ミトコンドリアペプチドは、アミノ酸配列
を有するペプチド、またはその類似体もしくは誘導体を含む。
【0037】
一態様において、ミトコンドリアペプチドは19~70アミノ酸長である。ある特定態様において、ミトコンドリアペプチドは58アミノ酸長である。さまざまな態様において、SHMOOSE類似体は25アミノ酸長または約25アミノ酸長である。さまざまな態様において、SHMOOSE類似体は、20~30アミノ酸長、または18~20、20~22、22~24、24~26、26~28、28~30もしくは30~32アミノ酸長である。一態様において、ミトコンドリアペプチドは合成アミノ酸を含む。一態様において、ミトコンドリアペプチドは、
に対して、約25%未満、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、またはそれ以上のパーセンテージ同一性を有する。
【0038】
さまざまな態様において、表1中の配列を有するペプチドが提供される。さまざまな態様において、表1中の任意の配列に対して約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するペプチドが提供される。いくつかの態様において、表1中の
のペプチドに対して約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するペプチドが提供される。
【0039】
当業者は、パーセンテージ同一性の程度を確定するための、基準アミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間に比較ウィンドウを設定することを含む、当技術分野において公知の方法に従って、パーセンテージ同一性を確定することができる。
【0040】
別の態様において、ミトコンドリアペプチドは、翻訳後修飾または他のタイプの修飾、例えば人為的修飾を有する。さまざまな態様において、これには、とりわけ、例えばpeg化、脂肪酸コンジュゲーション脂質化、反復ポリペプチド伸長、IgG-Fc、CPT、HSA、ELP、トランスフェリン、またはアルブミン修飾が含まれる。さまざまな態様において、これらの修飾は、無修飾ペプチドと比較して、ペプチドの安定性を改良し、酵素分解を低減し、ペプチドの半減期を増加させ、または細胞透過性を増加させることができる。本明細書にはペプチドが記載される。さまざまな態様において、ペプチドは19~70アミノ酸長である。さまざまな態様において、ペプチドは組換えペプチドであるか、または実験室で合成される。さまざまな態様において、ペプチドは位置1(すなわち最初のN末アミノ酸)がX1、位置2は(X2)であり(以下同様にX3、X4、5、X6など)、ここで、X1、X2、X3、X4、X5、X6などは、天然アミノ酸または合成アミノ酸からなる群より選択される。別の態様において、ミトコンドリアペプチドは、翻訳後修飾または他のタイプの修飾、例えば人為的修飾を有する。さまざまな態様において、これには、とりわけ、例えばpeg化、脂肪酸コンジュゲーション脂質化、反復ポリペプチド伸長、IgG-Fc、CPT、HSA、ELP、トランスフェリン、またはアルブミン修飾が含まれる。例えば修飾には、その類似体または誘導体中の対応するX1、X2、X3、X4、X5、X6などの位置におけるホルミル化、リン酸化、アセチル化が含まれうる。さまざまな態様において、ペプチドは、
に対して、約25%未満、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、またはそれ以上のパーセンテージ同一性を有する。
【0041】
さまざまな態様において、ペプチドは、表1中の
のペプチドに対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を有する。さまざまな態様において、ペプチドは、
の一部分、例えば
のうちの3つ以上、5つ以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上のアミノ酸を含むものに対して、75%、80%、85%、またはそれ以上のパーセンテージ同一性であり、ここで前記部分はX1、X2、X3、X4などで始まる。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:3、1、15、2、4、25、98、100、103、104、105または107のペプチドに対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有し、ここで、前記部分はX1、X2、X3、X4などで始まる。
【0042】
さまざまな態様において、ペプチドは、表1中のペプチドのいずれか1つである。
【0043】
本明細書には、その必要がある対象に、ある量のミトコンドリアペプチドを投与する工程を含む、細胞の代謝活性化を必要とする対象における細胞の代謝活性化を、ミトコンドリアペプチドを使って増加させる方法が記載される。一態様において、ミトコンドリアペプチドは、19~70アミノ酸長であって、
の配列またはその類似体もしくは誘導体を有する。一態様において、ミトコンドリア由来ペプチドは58アミノ酸長である。一態様において、ミトコンドリア由来ペプチドは25アミノ酸長または約25アミノ酸長である。一態様において、ミトコンドリア由来ペプチドは表1中のペプチドのいずれか1つである。一態様において、ミトコンドリア由来ペプチドは、表1中のSEQ ID NO:3のペプチドである。
【0044】
さまざまな態様において、細胞の代謝活性化を増加させる必要がある対象には、神経変性疾患を有する者が含まれる。さまざまな態様において、細胞の代謝活性化を増加させる必要がある対象には、神経変性疾患を有するリスクが増加している者が含まれる。さまざまな態様において、細胞の代謝活性化を増加させる必要がある対象には、神経変性疾患を有することの1つまたは複数の症状を有するまたは示すと疑われる者が含まれる。神経変性疾患には、ALS、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、運動失調および麻痺、例えば脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、および当技術分野において認識されている他のあらゆる神経変性疾患が含まれる。さまざまな態様において、上述の疾患には、顕性変異型および散発型、例えば散発性のALS、アルツハイマー病およびパーキンソン病が含まれる。さまざまな態様において、疾患または状態はアルツハイマー病(AD)である。さまざまな態様において、疾患または状態は認知症である。さまざまな態様において、ADは遅発性アルツハイマー病(LOAD)である。
【0045】
本明細書には、処置を必要とする対象に、ある量のミトコンドリアペプチドを投与する工程を含む、ミトコンドリアペプチドを使って疾患および/または状態を処置する方法が記載される。一態様において、ミトコンドリアペプチドは、19~70アミノ酸長であって、
の配列、その類似体または誘導体である。一態様において、ミトコンドリア由来ペプチドは58アミノ酸長である。一態様において、ミトコンドリア由来ペプチドは25アミノ酸長または約25アミノ酸長である。一態様において、ミトコンドリア由来ペプチドは表1中のペプチドのいずれか1つである。一態様において、ミトコンドリア由来ペプチドは、表1中のSEQ ID NO:3のペプチドである。さまざまな態様において、ミトコンドリア由来ペプチドは、SEQ ID NO:3、1、15、2、4、25、98、100、103、104、105または107を有するペプチドである。さまざまな態様において、本方法は、ペプチドを投与する前に、処置を必要とする対象を選択する工程を、さらに含む。選択は、例えば、ミトコンドリアペプチドの発現レベル、または本明細書にさらに説明するSNPの存在または非存在に基づくことができる。一態様において、投与されるミトコンドリアペプチドの量は、ミトコンドリアペプチドの治療有効量である。一態様において、対象は哺乳動物である。一態様において、対象はヒトである。
【0046】
さまざまな態様において、記載のミトコンドリアペプチド組成物または類似体組成物による処置に適した疾患および/または状態には、神経変性疾患が含まれる。神経変性疾患には、ALS、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、運動失調および麻痺、例えば脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、および当技術分野において認識されている他のあらゆる神経変性疾患が含まれる。さまざまな態様において、上述の疾患には、顕性変異型および散発型、例えば散発性のALS、アルツハイマー病およびパーキンソン病が含まれる。さまざまな態様において、疾患または状態はアルツハイマー病(AD)である。さまざまな態様において、疾患または状態は認知症である。さまざまな態様において、ADは遅発性アルツハイマー病(LOAD)である。
【0047】
さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドはCSF中のタウを増加させる。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは認知低下を低減しかつ/または認知低下の速度を低減する。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは側頭皮質組織または上頭頂葉皮質組織における疾患の徴候を低減する。さまざまな態様において、ミトコンドリアペプチドは、例えば細胞における燃料(fuel)利用を最適化することなどによって、エネルギー代謝を増加させる。さまざまな態様において、対象は、SNP12372(rs2853499)の保因者である。
【0048】
さまざまな態様において、対象はペプチド
を発現しない。さまざまな態様において、対象は、健常正常対象と比較して少量のペプチド
を発現する。別の態様において、対象は、低SHMOOSE活性の代謝シグネチャーを有する。別の態様において、対象は、高または異常SHMOOSE活性の代謝シグネチャーを有する。さまざまな態様において、対象には、SHMOOSEのドミナントネガティブ類似体および/または誘導体が投与される。
【0049】
さまざまな態様において、本発明の組成物は、任意の投与経路による送達のために製剤化されうる。「投与の経路」とは、限定するわけではないがエアロゾル、鼻腔、経口、経粘膜、経皮または非経口を含む、当技術分野において公知の任意の投与経路を指しうる。「経皮」投与は、外用クリームまたは軟膏(ointment)を使用するか、経皮パッチを使って達成されうる。「非経口」とは、一般に、眼窩内、注入、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、嚢下、皮下、経粘膜または経気管を含む、注射と関連する投与経路を指す。非経口経路では、組成物は、注入用または注射用の溶液または懸濁液の形態にあるか、または凍結乾燥粉末でありうる。経腸経路による場合、薬学的組成物は、錠剤、ゲルカプセル剤、糖衣錠、シロップ剤、懸濁剤、溶液剤、散剤、顆粒剤、乳剤、放出制御を可能にするマイクロスフェアもしくはナノスフェアまたは脂質小胞もしくはポリマー小胞の形態にあることができる。非経口経路による場合、組成物は、注入用または注射用の溶液または懸濁液の形態をとりうる。外用経路による場合、本発明の化合物に基づく薬学的組成物は、皮膚および粘膜を処置するために製剤化することができ、軟膏(ointment)、クリーム剤、ミルク剤、軟膏(salve)、散剤、含浸パッド、溶液剤、ゲル剤、スプレー、ローションまたは懸濁剤の形態にある。それらは、放出制御を可能にするマイクロスフェアもしくはナノスフェアまたは脂質小胞もしくはポリマー小胞またはポリマーパッチおよびヒドロゲルの形態にあることもできる。これらの外用経路組成物は、臨床的適応に応じて、無水型または水性型のいずれかであることができる。眼経路による場合、それらは点眼剤の形態でありうる。
【0050】
さまざまな態様において、ペプチドまたは組成物は脳室内注射によって投与される。
【0051】
本発明の組成物は、任意の薬学的に許容される担体も含有することができる。本明細書にいう「薬学的に許容される担体」とは、関心対象の化合物をある組織、器官または身体の一部から、別の組織、器官または身体の一部へと運搬または輸送するのに関与する、薬学的に許容される材料、組成物または媒体を指す。いくつかの態様において、薬学的に許容される担体は、ペプチドにとっての保存剤または安定剤としても役立ち、および/またはペプチドの分解を低減する。したがって、ペプチドと担体とを含む組成物は、担体なしでペプチドを含む組成物よりも長い「貯蔵寿命」を有しうる。さまざまな態様において、担体は、液状または固形の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、もしくは封入材、またはそれらの組合せでありうる。担体の各構成要素は、製剤の他の構成要素と適合しなければならないという点で、「薬学的に許容され」なければならない。また、担体は、それが接触することになりうるあらゆる組織または器官と接触しての使用にも、適していなければならず、つまり担体には、その治療的利益を過剰に上回る毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、または他の任意の合併症のリスクがあってはならない。
【0052】
本発明の組成物は、経口投与用に、カプセル化する、または錠剤にする、または乳剤もしくはシロップ剤に調製することもできる。組成物を強化または安定化するために、または組成物の調製を容易にするために、薬学的に許容される固形または液状の担体を加えてもよい。液状担体としては、シロップ、ラッカセイ油、オリーブ油、グリセリン、食塩水、アルコールおよび水が挙げられる。固形担体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸、タルク、ペクチン、アラビアガム、寒天またはゼラチンが挙げられる。担体は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの徐放材料も、単独でまたはワックスと共に、含みうる。
【0053】
薬学的調製物は、必要に応じて、摩砕、混合、造粒および圧縮を伴い、または硬ゼラチンカプセル剤形の場合は摩砕、混合および充填を伴う、従来の製薬技法に従って作製される。液状担体を使用する場合、調製物は、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤または水性もしくは非水性懸濁剤の形態でありうる。そのような液状製剤は、そのままp.o.投与されるか、または軟ゼラチンカプセル剤に充填されうる。
【0054】
本発明の組成物は治療有効量で送達されうる。正確な治療有効量は、所与の対象における処置の効力に関して最も効果的な結果を与えるであろう組成物の量である。この量は、限定するわけではないが、治療化合物の特徴(活性、薬物動態、薬力学およびバイオアベイラビリティを含む)、対象の生理的条件(年齢、性別、疾患のタイプおよびステージ、全身の健康状態、所与の投薬量に対する応答性、および薬物治療のタイプを含む)、製剤中の薬学的に許容される1つまたは複数の担体の性質、および投与の経路を含む、さまざまな要因に依存して変動することになる。臨床分野および薬学分野の当業者は、日常的な実験方法によって、例えば化合物の投与に対する対象の応答をモニタリングして投薬量を相応に調整することなどによって、治療有効量を決定することができうる。さらなる手引きについては、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro ed.20th edition,Williams&Wilkins PA,USA)(2000)を参照されたい。
【0055】
本明細書には、ある疾患および/または状態について個体を診断する方法が記載される。さまざまな態様において、本方法は、対象を選択する工程、1つまたは複数のバイオマーカーの存在、非存在、または発現レベルを検出する工程、および前記1つまたは複数のバイオマーカーの存在、非存在、または発現レベルに基づいて、ある疾患および/または状態について対象を診断する工程を含む。さまざまな態様において、バイオマーカーには、ミトコンドリアペプチドが含まれる。さまざまな態様において、バイオマーカーは、
を含む。例えば対象は、健常正常対象と比較して少量の、多量のまたは異常な量のペプチド
を発現するかどうかを診断されうる。さまざまな態様において、バイオマーカーの存在、非存在、または発現レベルの検出には、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗血清の使用を含む前記1つまたは複数のバイオマーカーの抗体検出、他の免疫原性検出および質量分析検出法が含まれる。
【0056】
別の一態様において、バイオマーカーは一塩基多型(SNP)を含む。さまざまな態様において、SNPは12372(rs2853499)である。SNP検出が可能な方法の情報は当業者に提供される。
【0057】
さまざまな態様において、記載のミトコンドリアペプチド組成物または類似体組成物による処置に適した疾患および/または状態には、神経変性疾患が含まれる。神経変性疾患には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、運動失調および麻痺、例えば脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、および当技術分野において認識されている他のあらゆる神経変性疾患が含まれる。さまざまな態様において、上述の疾患には、顕性変異型および散発型、例えば散発性のALS、アルツハイマー病およびパーキンソン病が含まれる。特定の態様において、本ミトコンドリアペプチド組成物または類似体組成物による処置に適した疾患および/または状態はアルツハイマー病である。
【0058】
本明細書には、1つまたは複数のバイオマーカーを検出する方法が記載される。さまざまな態様において、本方法は、1つまたは複数のバイオマーカーに関する決定を望んでいる対象から得られた生物学的試料において、前記1つまたは複数のバイオマーカーの存在、非存在、または発現レベルを検出する工程;および前記1つまたは複数のバイオマーカーの存在、非存在、または発現レベルを検出する工程を含む。さまざまな態様において、前記1つまたは複数のバイオマーカーは、配列
のペプチドまたは一塩基多型(SNP)rs2853499を含む。例えば、前記存在、非存在、または発現レベルを検出する工程はイムノアッセイを含む。さまざまな態様において、前記1つまたは複数のバイオマーカーは、「A」アレルが一塩基多型(SNP)位置にあるSNP rs2853499を含む。さまざまな態様において、本方法は、SEQ ID NO:94を有するペプチドの存在が検出された場合に、対象を、ある疾患および/もしくは状態と診断するか、または該疾患および/もしくは状態を有する可能性が増加していると診断する工程、あるいは健常対象と比較してSEQ ID NO:93を有するペプチドの低い発現レベルが検出された場合に、対象を、ある疾患および/もしくは状態と診断するか、または該疾患および/もしくは状態を有する可能性が増加していると診断する工程、あるいは「A」アレルが一塩基多型(SNP)位置にあるSNP rs2853499が検出された場合に、対象を、ある疾患および/もしくは状態と診断する工程を含む。例えば、前記疾患および/または状態は、神経変性疾患および/または神経変性状態である。さまざまな態様において、前記神経変性疾患および/または神経変性状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0059】
本明細書には、その必要がある対象におけるミトコンドリア由来ペプチドの遺伝子型を検出する方法が記載される。さまざまな態様において、本方法は、ある一塩基多型(SNP)における遺伝子型を検出するために、対象から得られた生物学的試料をアッセイする工程を含む。例えば前記SNPはrs2853499である。さまざまな態様において、本方法は、対象において前記SNPでのAアレルを検出する工程を、さらに含む。例えば、対象はアルツハイマー病を有するか、またはアルツハイマー病発症のリスク因子を有する。さまざまな態様において、本検出は、アルツハイマー病を有するかまたはアルツハイマー病発症のリスク因子を有する対象において、対照対象におけるそれよりも高い、前記SNPでのAアレルのカウントを検出する。さまざまな態様において、本方法は、対象にアルツハイマー病治療を投与する工程を、さらに含む。さまざまな態様において、対象は、神経変性疾患または神経変性障害、任意でアルツハイマー病に関する決定を望む。
【0060】
本発明は、ミトコンドリアペプチドを使った疾患および/または状態の処置の効力を向上させる方法であって、処置を必要とする対象を選択し、疾患および/または状態の処置をうける対象に、ある量のミトコンドリアペプチドを投与する工程を含み、前記ミトコンドリアペプチドが疾患および/または状態の効力を向上させ、それによって処置の効力を向上させる方法を、さらに提供する。一態様において、ミトコンドリアペプチドは、炎症性の疾患および/または状態を処置することができる組成物と同時に投与される。一態様において、ミトコンドリアペプチドは、疾患および/または状態を処置することができる組成物の投与前または投与後に、逐次的に投与される。一態様において、対象はヒトである。例えば、本発明のミトコンドリアペプチドおよび類似体組成物は、神経変性疾患を処置するための他の治療剤と、共投与することができる。共投与は、例えば単一の薬学的組成物として、または別々の組成物として、同時であることができる。本発明の組成物は、他の治療剤とは別個に、例えば独立した投与スケジュールで、投与することもできる。
【0061】
さまざまな態様において、本発明は薬学的組成物をさらに提供する。一態様において、薬学的組成物はミトコンドリアペプチドと薬学的に許容される担体とを含む。一態様において、ミトコンドリアペプチドの配列は
である。さまざまな態様において、ペプチドは、
の一部分に対して、例えば
のうちの3つ以上、5つ以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上のアミノ酸を含むものに対して、75%、80%、85%、またはそれ以上のパーセンテージ同一性であり、ここで前記部分はX1、X2、X3、X4などで始まる。さまざまな態様において、ペプチドは、表1中のペプチドのうちの1つまたは複数に対して、75%、80%、85%、またはそれ以上のパーセンテージ同一性である。さまざまな態様において、ペプチドは、表1中のSEQ ID NO:3に対して、75%、80%、85%、またはそれ以上のパーセンテージ同一性である。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:3、1、15、2、4、25、98、100、103、104、105または107のペプチドに対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する。
【0062】
いくつかの態様において、生物活性ミトコンドリアペプチドはわずか6~9アミノ酸と小さく、また一部の生物活性ミトコンドリアペプチドは19~70アミノ酸長である。一態様において、ミトコンドリア由来ペプチドは58アミノ酸長である。一態様において、ミトコンドリアペプチドは25アミノ酸長または約25アミノ酸長である。一態様において、薬学的組成物中のミトコンドリアペプチドは治療有効量のミトコンドリアペプチドを含む。一態様において、薬学的組成物は、1つまたは複数のミトコンドリアペプチドと薬学的に許容される担体とを含む。
【0063】
さまざまな態様において、本発明は、ミトコンドリアペプチドを製造する方法をさらに提供する。一態様において、製造方法は、ミトコンドリアペプチドをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを用意する工程、前記1つまたは複数のポリヌクレオチドを宿主細胞中で発現させる工程、および前記宿主細胞から前記ミトコンドリアペプチドを抽出する工程を含む。一態様において、製造方法は、1つまたは複数のポリヌクレオチドを宿主細胞中で発現させる工程、および前記宿主細胞から前記ミトコンドリアペプチドを抽出する工程を含む。一態様において、前記1つまたは複数のポリヌクレオチドは、
をコードする配列であるか、または
に対して、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%超、またはそれ以上のパーセンテージ同一性を有するミトコンドリアペプチドである。さまざまな態様において、ペプチドは、
の一部分、例えば
のうちの3つ以上、5つ以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上のアミノ酸を含むものに対して、75%、80%、85%、またはそれ以上のパーセンテージ同一性を有し、ここで前記部分はX1、X2、X3、X4などで始まる。
【0064】
さまざまな態様において、ペプチドは、表1中のSEQ ID NO:3に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。さまざまな態様において、ペプチドは、表1中のSEQ ID NO:1に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。さまざまな態様において、ペプチドは、表1中のSEQ ID NO:15に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。さまざまな態様において、ペプチドは、表1中のSEQ ID NO:2に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。さまざまな態様において、ペプチドは、表1中のSEQ ID NO:4に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。
【0065】
別の一態様において、製造方法は、液相合成または固相合成を使ったペプチド合成の工程を含む。一態様において、固相合成はFmoc合成またはBOC合成である。
【0066】
(表1)SHMOOSE類似体/誘導体、および、MTTによって測定される、SHMOOSEと比較したパーセンテージ(SHMOOSE活性を100%とする)としてのそれらの効力
【実施例
【0067】
本願に係る発明の非限定的な実施例を本明細書に記載する。
【0068】
実施例1. SHMOOSE(セリンtRNA上の小ヒトミトコンドリアオープンリーディングフレーム)ペプチド
SHMOOSEは、新たに発見された配列
のペプチドであり、その機能障害変異および調節不全は神経変性疾患と関係づけられる。したがって、人工的SHMOOSEペプチド類似体は、これらの状態の防止および処置において使用することができうる。本明細書には、アルツハイマー病(AD)を含む神経変性疾患におけるSHMOOSEの役割、SHMOOSEのペプチド類似体が、エネルギー代謝におけるそれらの役割を含めて記載される。
【0069】
実施例2. SHMOOSEの特性
SHMOOSEは、ミトコンドリアゲノムワイド関連研究を使って発見されたオープニングリーディングフレームにコードされている。SHMOOSE配列を変化させ、アルツハイマー病の病態および認知のリスクを増加させるSNPを、研究によって関連づけた。この多形はヨーロッパ系の人々には多く見られる。
【0070】
より具体的には、SHMOOSEの過剰発現はニューロンタイプの細胞の生存率を増加させる。興味深いことに、ニューロンタイプの細胞におけるSHMOOSEの作用を低下させるSNPが同定された。Aヌクレオチドを有するSHMOOSE 12372 SNP(rs2853499)は、野生型GヌクレオチドSHMOOSEと比較して、認知スコアの減少の増加と関連した。
【0071】
実施例3. 細胞代謝作用におけるSHMOOSEの役割
いかなる仮説にも束縛されるものではないが、SHMOOSEは燃料利用を最適化し、ミトコンドリアおよび核に局在する。この役割に基づけば、強力なSHMOOSE類似体を開発することにより、細胞モデルおよび動物モデルにおいて、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患を処置するなどの目的で、細胞機能におけるSHMOOSEの役割を利用することができる。
【0072】
実施例4. SHMOOSEの発現、予備的細胞生物学調査
SHMOOSEの役割を読み解くために、予備研究により、細胞への投与用に、変異体D47Nサブタイプを含めてSHMOOSEを発現させ、合成できることを確認した。細胞に投与すると、SHMOOSEは、アミロイドベータ毒性アッセイにおいて、ニューロン細胞の生存率を改善することが観察された。対照的に、変異体D47N SHMOOSEはニューロン細胞の生存率を改善しなかった。
【0073】
見かけの神経細胞生存率におけるSHMOOSEの潜在的役割をさらに探求し、細胞代謝におけるミトコンドリアを考慮して、SHMOOSEは細胞における燃料利用を最適化することが、エネルギーマップ測定によって明らかになった。燃料利用のこの機能的観察結果は、SHMOOSEがミトコンドリアに局在するという観察結果によって裏付けられた。予備的構造解析により、SHMOOSEは信頼性の高いリン酸化部位を7つ有することが示された。
【0074】
実施例5. SHMOOSEの機能障害および調節不全は神経変性において幅広い効果を示す
神経変性疾患を含む疾患病態におけるSHMOOSEの役割をさらに調べるために、さらなる調査により、SHMOOSE遺伝子型がアルツハイマー病(AD)表現型を予測し、核遺伝子型と交互作用すること、SHMOOSEにおけるA SNP 12372(rs2853499)がAD、認知、脳構造および脳遺伝子発現を予測することが確認される。
【0075】
興味深いことに、上記の交互作用は、SHMOOSE mtSNPが、ADに関与する決定的脳領域である海馬の菲薄化を予測することを、さらに示した。興味深いことに、SHMOOSE mtSNPは、ADによく見られる特徴である側頭極体積の増大とも関連した。SHMOOSE発現はADではより高く、SHMOOSE mtSNP保因者の場合、ADではとりわけより高い。これらの結果は、SHMOOSEがニューロン機能において幅広い役割を持ち、SHMOOSEの機能障害および調節不全は神経変性につながることを、強く示唆している。
【0076】
SHMOOSE機能障害の幅広い効果を支持するように、SHMOOSE遺伝子型は劇的な側頭皮質遺伝子発現差と関連している。これらの結果は、SHMOOSE mtSNP保因者が、核におけるRNAプロセシング、ミトコンドリアにおける代謝処理、およびさらなる細胞外活性に関係する発現変動遺伝子を有することを実証している。
【0077】
実施例6. メタボロミクスおよび神経変性
ホメオスタシスおよびエネルギー処理におけるSHMOOSEの見かけの役割と、神経変性につながる機能障害SHMOOSEとの関係を解明するために、細胞生物学と疾患状態を調べるさらなる研究を探求した。
【0078】
本発明者らは、SHMOOSEがニューロンにおいて発現していることに気づいた。具体的には、内在性SHMOOSEが核およびミトコンドリアに見いだされる。SHMOOSEペプチド(アミノ酸32~58)に対するカスタム抗体により、SHMOOSEは、人工的SHMOOSEペプチドを含めて、細胞内部に移行することができ、ミトコンドリアおよび核に向かうことが実証された。
【0079】
エネルギー処理の機能的観察およびミトコンドリアにおける局在を結びつけて考えると、SHMOOSEは、ミトコンドリア由来のエネルギー生成能を改良することによって、Aβ毒性から保護しうる。SHMOOSEはニューロンにおいてAβ毒性から保護する。SNP12372(rs2853499)は、ニューロンをAβ毒性から保護しないD47N変異体をもたらす。これらの結果は、SHMOOSEがニューロンにおけるMTTシグナルを増加させるという観察結果によって支持される。MTTは、代謝を表すNAD(P)Hフラックスを捕捉する読出し情報である。人工的SHMOOSEペプチドを含めて、SHMOOSEは、ニューロンにおけるミトコンドリアの機能と予備容量を高める。
【0080】
SHMOOSEの遺伝子エンリッチメント解析。SHMOOSEは脂質合成およびミトコンドリア機能に関係する遺伝子発現を変化させ、変異体SHMOOSEはシグネチャーを増幅する。これはヒト関連データと合致する。SHMOOSEは、RNAプロセシングおよび脂質代謝に関係する遺伝子をオン、オフする。これはミトコンドリア遺伝子発現にも大きな効果を有する。これらの細胞は野生型の天然SHMOOSEを作るので、D47Nはこれらの効果を増幅する。
【0081】
実施例7. 動物研究
SHMOOSEは、マウスにおける体重増加を減弱し、肝臓酵素を改善する。本発明者らは、マウスに高脂肪食を2週間給餌し、SHMOOSE IP注射マウスの体重があまり増加しなかったこと、SHMOOSEが血流に入り、強い半減期(strong half-life)を有すること、SHMOOSEが、肝臓代謝に関与する酵素であるASTおよびALTを減少させることを見いだした。低下したレベルは高脂肪食からの防御を示唆する。
【0082】
実施例8. SHMOOSE類似体
本発明者らは103の類似体を作製した(表1)。図10を参照して述べると、上の図において、各バーはSHMOOSEペプチドの25アミノ酸断片を表す。本発明者らは、MTTによる測定で、2つのペプチドがSHMOOSEより大きな活性を有することを見いだした。図10において、下の図は、これらの類似体のシュードリン酸化が活性をオフにすることを示している。図11は、配列
を有するSHMOOSEペプチドの例示的類似体を表す。この類似体の配列の長さは14アミノ酸であり、それぞれ11個のアミノ酸を有する3つの異なる解析ウィンドウが特徴づけられた。
【0083】
実施例9. SHMOOSEの構造的特徴
相同性研究により、SHMOOSEの最初の15アミノ酸残基は、ミトコンドリア局在および核外輸送に関係するタンパク質配列に関係することが示唆される。このN末領域は、マウスにおける保存された26アミノ酸を含めて、哺乳動物では、より高度に保存されている。
【0084】
対照的に、30アミノ酸までのC末領域は、容易に特定することができる哺乳動物ペプチドまたはタンパク質に対して、ほとんどまたは全く相同性を有しない。これは、多細胞生物におけるミトコンドリアの起源が細菌であることを反映している。
【0085】
核およびミトコンドリアリボソームの組織化に関係する遺伝子との、ヒト脳におけるSHMOOSE共発現シグネチャーが示される。
【0086】
SHMOOSE ORFにおけるSNP(rs2853499)は神経変性と関連する。rs2853499はアルツハイマー病を予測し、ヒト脳側頭皮質の解剖所見も予測する(UK Biobank;n=20,000)。
【0087】
トランスクリプトームシグネチャー解析により、SHMOOSE mtSNP保因者、認知的に正常な個体(n=78)において、発現変動遺伝子が同定された。これは、SHMOOSEがミトコンドリア遺伝子と共発現するだけでなく、リボソーム生合成遺伝子発現を変化させることを示している。
【0088】
SHMOOSE薬物動態を研究し、ここでは、25週齢のC57/BI6マウスに、2.5mg/kgのSHMOOSEを腹腔内注射した。
【0089】
さらなる研究には、APEX融合、FLAG融合および内在性CoIPによる結合パートナーアッセイの実施;安定細胞株RNAシーケンシング;2時間、14日間および28日間のインビボ肝臓および脳RNAシーケンシング;ならびにヒト組織におけるELISA標的定量が含まれる。
【0090】
いくつかの態様では、SHMOOSEもしくはその断片またはそのSNPバリアントを、脳室内注射によって投与することが、さらに考えられる。SHMOOSEは高脂肪食を給餌されたマウスでの体重増加を減弱し、循環系に入るので、SHMOOSEの末梢効果は神経生物学的機序によって媒介される可能性が高い。SHMOOSEの神経変性との連合効果(associative effect)およびペプチドの「ドラッガビリティ」を考えると、SHMOOSEは認知症の治療標的として役立ちうるとも考えられる。それゆえに、いくつかの態様では、SHMOOSEを標的とするまたは特異的に結合(または遮断)する作用物質、例えばSHMOOSEまたはその断片に対する抗体を投与することによって、認知症を処置するまたはその重症度を低減する方法が考えられる。これは、Aβ斑およびタウを含んだ神経原線維変化ならびにシナプスと行動の欠陥を発現する、ADの三重トランスジェニックマウスモデル(3×Tg-AD)で試験しうる。
【0091】
実施例10. ミトコンドリアrs2853499は、以前はアノテーションされていなかったマイクロプロテイン内に存在し、ADおよびニューロイメージング表現型と関連する
まず本発明者らは、sORF内のミトコンドリアSNPがADと関連するという仮説を検証した。以前に、ミトコンドリアハプログループUはADNI1コホート(n=約300)においてADと関連することが報告されている。それ以降、ADNIは、複数の新しいフェーズで、そのコホートサイズを拡大しており、それらを本発明者らはミトコンドリアワイド関連研究(MiWAS)に含めた。ADNI 1、GO、2、および3(n=約800)を評価することにより、本発明者らは、ADと関連するハプログループU SNP(すなわち塩基対位置11467、12308および12372)を確認した(図1A)。これらの3つのハプログループSNPは、mt-ND4タンパク質およびmt-ND5タンパク質のアミノ酸配列を変化させない。しかし、塩基対位置12372のmtSNP(rs2853499)は、sORF、SHMOOSE(セリンtRNA上の小ヒトミトコンドリアオープンリーディングフレーム)によってコードされるマイクロプロテインのアミノ酸配列を変化させる。具体的には、rs2853499(以下、SHMOOSE.D47Nという)は、47番目のアミノ酸をグルタミンからアスパラギン酸に変化させる(図1D)。ADNIにおいて、SHMOOSE.D47N保因者は1.56のオッズ比を呈した(症例頻度:22.9%;対照頻度:15.7%;95%CI:1.06~2.30;パーミュテーション86回の経験p値<0.03)。
【0092】
さらにまた、本発明者らは、3つのさらなるコホート、Religious Orders Study(ROS)およびMemory and Aging Project(MAP)、遅発性アルツハイマー病(Late-Onset Alzheimer's Disease:LOAD)ならびにNIA Alzheimer Disease Centers(ADC1およびADC2)において、SHMOOSE.D47Nの効果を調べた。ROSMAP、LOADおよびADC1/2でのSHMOOSE.D47N保因者はそれぞれ、1.55(症例頻度:25.3%;対照頻度:17.6)、1.04(症例頻度:24.7%;対照頻度:23.0%)および1.13(症例頻度:24.0%;対照頻度:23.3%)のオッズ比を呈した。本発明者らは、コホート特異的アレル頻度差を考慮して、これらのコホートを解析した。本発明者らは、ADNIおよびROSMAPでは、SHMOOSE.D47N保因者について有意なミトコンドリアの遺伝的異質性を観察しなかったが、LOADおよびADC1/2では、SHMOOSE.D47Nについてミトコンドリアの遺伝的異質性を認め、これを本発明者らは統計モデルにおいて補正した(図19)。全体としては、ランダム効果メタ分析により、SHMOOSE.D47Nについてのオッズ比は1.30と見積もられた(95%CI:1.06~1.59;p値<0.005;図1B)。表2も参照されたい。
【0093】
(表2)コホート全体でのADに対するSHMOOSE mtSNPの効果
モデル:AD~SHMOOSE_mtSNP+年齢+生物学的性別+mtPC1+mtPC2+mtPC3
注:ADNIおよびROSMAPはSHMOOSE mtSNP混合がないのでミトコンドリアPCについて調整していない。
【0094】
加えて、本発明者らは、年齢50歳以上の米国成人の集団ベース研究であるHealth and Retirement Study(HRS)(n=約15,000)16における認知低下に対するSHMOOSE.D47Nの効果を見積もり、代替アレル保因者の方が経時的に速く認知低下を起こすことを確認した(図13)。SHMOOSE mtSNP(Aアレル)を有する個体は認知低下が加速していると予測されたので、これらの個体を、認知低下に対する早期処置の対象と同定することができる。
【0095】
GWAS/MiWASは疑似関連を生じやすいので、本発明者らは、約18,300人のヨーロッパ系個体の大きな標本でおよそ4,000のニューロイメージングモダリティを含むフェノムワイド関連研究(phenome wide association study:PheWAS)を実行した。PheWASの大きな利点は、関連する神経生物学的表現型全体にわたるSHMOOSE.D47Nの反復であり、これは標的が絞られていると共に、豊富な検出力ゆえに統計的に堅牢である。PheWASにおいて、SHMOOSE.D47N(頻度:25.5%)は、皮質の厚さ、体積、軟膜表面積、WM表面ヤコビアン、ならびに海馬傍回、嗅内皮質(EC)、前帯状皮質(ACC)、後帯状皮質(PCC)および側頭極(TPO)を含むいくつかの傍辺縁領域におけるGM/WMコントラストと有意に関連する(クラスタワイズ、RFT補正p値<0.05;図12)。年齢と共に、SHMOOSE.D47N保因者は、傍海馬(図1C)、ECおよびPCCの加速された菲薄化を呈した。すなわち、SHMOOSE.D47Nの年齢横断的トラジェクトリーは、若年と老年では逆の効果を示した。例えばSHMOOSE基準アレルは、中年者(45~65歳)および/または前期高齢者(65~75歳)での、より小さな脳構造測定値と関連し、一方、代替アレル(すなわちSHMOOSE.D47N)は、高齢者(>75歳)での構造喪失と関連した。傍辺縁領域における主要な結果に加えて、未補正p値<0.05の緩い閾値において、本発明者らは、言語中枢(上側頭回および下前頭回)、背外側および内側前頭前皮質、中枢運動、および後頭視皮質に分布するSHMOOSE.D47N効果の傾向を認めた(図20)。これとは別に、本発明者らは、ADNIパーミュテーションMiWASに使用した標本と同じ標本で実行したADNI PheWASでも、類似する傾向を認めた。本発明者らがUK Biobankにおいて認めたように、SHMOOSE.D47Nは、未補正p値<0.05の緩い閾値で、内側側頭皮質および後帯状皮質などの辺縁領域と有意に関連する(図21)。
【0096】
rs2853499はニューロイメージング結果およびADと関連した-しかもバリアントはSHMOOSEアミノ酸配列を変異させる(図1D)-ので、本発明者らは、内在性SHMOOSEを検出しようと考えた。そこで本発明者らは、69の認知障害のない死後脳側頭皮質で、SHMOOSE RNAカウントと核コード遺伝子カウントとの間の131の相関関係を評価することから始めた。これらの解析により、SHMOOSEと共発現するミトコンドリア細胞区画が明らかになった(図1E)。事実、SHMOOSEのc末に対するカスタム抗体を使用して、本発明者らは、ウェスタンブロットによって、ニューロンのミトコンドリア画分および核画分から、予想される約6kDa分子量で、SHMOOSEを検出した(図1F)。しかしながら、rhoゼロ細胞(すなわちmtDNAを有さない細胞)では、本発明者らはSHMOOSEを検出しなかったことから、SHMOOSEがミトコンドリアDNA由来であることがさらに確認された。
【0097】
全体として、本発明者らは、ADおよび脳構造と関連する新規マイクロプロテインSHMOOSEを、そのsORF内に遺伝子バリアントを同定した後に、標的とし、検出した。
【0098】
実施例11. 脳脊髄液中のSHMOOSEレベルは年齢、タウ、および脳白質微細構造と相関する
生物学的組織におけるSHMOOSEのレベルを定量するために新しいアッセイまたは試験を開発した。具体的には、SHMOOSEのアミノ酸32~58に対する抗体を使って酵素結合免疫吸着サンドイッチアッセイ(ELISA)を開発した。CSFにおけるSHMOOSEレベルは、年齢、タウ、および脳白質微細構造に相関する。AD脳の側頭皮質において、SHMOOSE RNAは対照と比較して約15%多い(AD n=82;対照n=78;図2A)。すなわち、SHMOOSEのRNAレベルは、アルツハイマー病脳の側頭皮質においてより高い。しかしマイクロプロテインレベルを直接評価するために、本発明者らは、100~250,000pg/mlの範囲の感度を有するSHMOOSE酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を開発した(図14)。南カリフォルニア大学(University of Southern California:USC)AD研究センター(AD Research Center)からの、認知障害のない個体の、79の脳脊髄試料(CSF)において、本発明者は、SHMOOSEレベルに対する、年齢、CSFアミロイドベータ、CSF総タウ、CSF中の、残基番号181がリン酸化されたタウ(pタウ181)、および白質微細構造(拡散テンソルイメージング異方性度による測定)の効果を解析した。CSF SHMOOSEレベルは、年齢、CSF総タウおよびCSF pタウ181と、正かつ有意に相関した(図2B)。このように、脳脊髄液におけるSHMOOSEの実際のペプチドレベルは、年齢、タウ、およびリン酸化タウと相関する。SHMOOSEレベルに対するpタウ181の効果が総タウによって媒介されるかどうかを決定するために、本発明者らは、総タウを媒介因子とみなす媒介分析を行った。この媒介の間接効果は統計的に有意とはみなされず、SHMOOSEタウに対するpタウ181の直接効果は、総タウを統制すると、わずかに減弱した(p値=0.060)。全体として、SHMOOSEに対するpタウ181の直接および間接効果は有意だった(p値<0.01)。したがって、pタウ181はSHMOOSEとの関係を特異的に駆動していると思われ、総タウによって媒介されるのではない(図15)。これとは別に、本発明者らは、SHMOOSEとアミロイドベータ42のCSFレベルとの間に有意な相関を認めなかった。最後に本発明者らは、CSF SHMOOSEレベルがより高い個体は、年齢、生物学的性別および認知状態(CDR検査スコア)を統制した後でさえ、脳梁体および両側上放射冠におけるDTI異方性度FAがより低いことを見いだした(図2C)。
【0099】
実施例12. SHMOOSEはミトコンドリアおよびリボソーム遺伝子発現変化と関連する
本発明者らが、SHMOOSE遺伝子型によるニューロイメージングモダリティ差を観察したことを踏まえて、本発明者らは、脳遺伝子発現がSHMOOSE遺伝子型(すなわちSHMOOSE.D47N)によって異なるという仮説を、さらに設けた。そこで本発明者らは、69の死後脳側頭皮質から得られたRNA-Seqデータを解析した(メイヨークリニック(Mayo Clinic);n=14代替アレルおよびn=55基準アレル)。本発明者らは、調整p値0.05未満で、SHMOOSE.D47Nが、脳側頭皮質において2,122の発現変動遺伝子と関連することを観察した。すなわち、メイヨークリニック側頭皮質RNA-SeqにおけるSHMOOSE遺伝子型間に、遺伝子発現差が観察された。注目すべきことに、遺伝子カウントマトリックスから導出された主成分により、クラスター化するSHMOOSE基準アレル遺伝子発現が明らかになり、一方、SHMOOSE.D47N保因者のシグネチャーは基準アレルクラスターからさらにドリフトした。第2主成分の中央値に基づいて標本をカテゴリー化することにより、SHMOOSE.D47N保因者は有意な網羅的遺伝子発現偏差を呈した(p値<0.05;図3A)。死後脳遺伝子発現がいくつかの要因(すなわち環境など)に左右されることを考慮して、本発明者らは、SHMOOSE.D47Nの有意な効果は極めて注目に値すると考える。これに対し、本発明者らは、APOE4保因者について類似する傾向に気づいた。この場合、APOE4保因者は集団標準から離れる傾向があった。ただし、その傾向は統計的に有意ではなかった(図16)。SHMOOSE.D47N保因者によるこれらの統計的発現変動遺伝子は、ミトコンドリアおよびリボソームに関するGO細胞区画タームをエンリッチした。
【0100】
次に、SHMOOSE.D47Nについての遺伝子発現に対する効果をインビトロで再現できるかどうかを決定するために、本発明者らは、神経系細胞にSHMOOSEまたはSHMOOSE.D47Nを24時間投与した後に、示差トランスクリプトミクスを行った。SHMOOSE.D47N処置細胞は、調整p値0.2未満で、1,400の遺伝子の発現変動を誘導した。すなわち、SHMOOSEで処置された細胞とSHMOOSE.D47Nで処置された細胞との間に、遺伝子発現差が観察された。事実、これらの有意な遺伝子は、69の死後ヒト脳におけるSHMOOSE遺伝子型によって観察されるもののように、ミトコンドリアおよびリボソーム細胞区画をエンリッチした。「ミトコンドリア内膜」が、最上位のエンリッチされたGO細胞区画タームだった(図3B)。
【0101】
また本発明者らは、高脂肪食を給餌(すなわち軽度の代謝攪乱)した12週齢C57BL/6Jマウスに、SHMOOSEを腹腔内(IP)注射した。2週間の研究の終わりに本発明者らはRNA-Seqのために脳と肝臓を収集した。SHMOOSE.D47N保因者について、またインビトロ実験において、本発明者らが観察したとおり、調整p値0.05未満で367の発現変動遺伝子が、肝臓においてミトコンドリアおよびリボソームタームをエンリッチした(図3C)。すなわち、SHMOOSEのIP注射後に肝臓発現差が観察された。SHMOOSEのIP注射後は、脳視床下部発現差も観察された。さらに、SHMOOSEのIP注射後は皮質発現差が観察された。ただし、本発明者らは、マウスの皮質および視床下部において、PCAによって示されるように、網羅的遺伝子発現変化を観察したものの、最もエンリッチされたタームには、リボソーム細目でもミトコンドリア細目でもなく、中枢神経系関連タームが含まれた(図17)。さらにまた、SHMOOSEのIP注射後に脳海馬発現差も観察された。また、本発明者らは、海馬における堅牢な遺伝子発現差を観察しなかった(図15)。SHMOOSEで処置されたマウスは、対照処置マウスと比較して、毒性効果も行動変化も示さず、体重増加ならびに肝臓酵素ASTおよびALT上昇の減弱(食物摂取量の変化は伴わない)を示した(図18)。
【0102】
実施例13. SHMOOSEは細胞の代謝活性を改変し、アミロイドベータ毒性から防御する
SHMOOSEはミトコンドリア遺伝子発現変動と関連したので(図4A~4C)、本発明者らは、SHMOOSEはインビトロで代謝変化を誘導するだろうという仮説を設けた。事実、SHMOOSEを外因性に細胞に投与すると、このペプチドはミトコンドリアに顕著に局在した(図4A)。1uMから10uMまでの用量依存的応答において、SHMOOSEとSHMOOSE.D47Nはどちらも、神経系細胞の代謝活性をそれぞれ10%および20%増加させた(図4B)。このように、SHMOOSEは、細胞に与えられた場合に、代謝活性を用量依存的に高める。オリゴマイシンおよびFCCPの投与後にミトコンドリア内膜を通る最大プロトン流が許容されるミトコンドリアストレス中は、SHMOOSEとSHMOOSE.D47Nが、どちらも、ミトコンドリア予備容量を高めたことから(図4C)、ミトコンドリア生物学に対するSHMOOSEの両形態の一般的効果が示唆される。しかし、SHMOOSE.D47Nと比較すると、野生型SHMOOSEは基礎酸素消費速度をおよそ20%有意に増加させた(図4D)。
【0103】
加えて、APP変異とPSEN1変異-2つの家族性AD変異-をどちらも有するiPSC由来ニューロンでは、SHMOOSE RNA発現が、変異が1つしかない由来ニューロンより3倍高かったことから、アミロイドベータ生物学におけるSHMOOSEの役割が示唆された(図4E)。同様に、アミロイドベータオリゴマーによるストレスが加わった神経細胞では、SHMOOSE投与が細胞死から保護したが、SHMOOSE.D47Nは同じようには細胞を保護しなかった(図4F)。
【0104】
実施例14. SHMOOSEはミトコンドリア内膜ミトフィリンと相互作用する
本発明者らは、共免疫沈降アッセイを行うことによって、SHMOOSEタンパク質相互作用パートナーを探索した。最終的に本発明者らは、SHMOOSEとのタンパク質相互作用パートナーとして、ミトフィリンを同定した。SHMOOSEをスパイクした後でSHMOOSE抗体に基づく免疫沈降に供したニューロン溶解物のプロテオミクス解析に基づいて、ミトフィリンを標的とした。これらの溶解物の質量分析に基づく解析により、SHMOOSEに結合する98のタンパク質が示唆されたが、p値と変化倍率によるタンパク質定量フィルタリングおよびインデキシング中に、本発明者らは、ミトフィリンを、最上位のSHMOOSE結合タンパク質候補とみなした(図5A)。事実、神経系細胞へのSHMOOSEの投与後に、本発明者らは、相互免疫沈降とそれに続くウェスタンブロットにより、SHMOOSE-ミトフィリン相互作用を検証した(図5B)。加えて本発明者らは、組換えSHMOOSEとミトフィリンの間で相互のドットベース免疫ブロットを行い、ミトフィリンとSHMOOSEならびにSHMOOSE.D47Nの間の結合を確認した(図5C)。さらにまた、siRNAを使ってミトフィリンをノックアウトした後は、MTTアッセイによって測定される神経系細胞代謝活性に対するSHMOOSEの効果がないことを、本発明者らは観察した(図5D)。本発明者らは、テンプレートベースのドッキングとテンプレートフリーのドッキングのハイブリッドアルゴリズムであるHDOCKを使って、SHMOOSEとミトフィリンの間の生物物理学的相互作用をモデル化して(図5E)、SHMOOSEとミトフィリンの間の予想される相互作用がミトフィリンのc末(残基332~413)に集中することを確認した。
【0105】
考察
本発明者らは、まず、SHMOOSEを標的とした。大きな疫学的コホートにおいて、SHMOOSE sORF内のミトコンドリアSNPが、AD、ニューロイメージングモダリティおよび脳遺伝子発現と関連したからである。4つのコホートにおいて、SHMOOSE.D47Nを有する個体は、ADのリスクの増加を呈した(OR:1.30;図1B)。ニューロイメージングに基づくPheWASにおいて、SHMOOSE.D47N保因者は、傍海馬などの内側側頭野、嗅内皮質、ならびに前および頭頂帯状皮質において、年齢に伴う萎縮が大きかった。内側側頭皮質および頭頂帯状皮質は、アルツハイマー病(AD)では脆弱であることが公知であり、病的萎縮はおそらく臨床的症状の何年も前に現れる。本発明者らはADNIにおける脳ニューロイメージングも検討し、辺縁領域において類似する効果を観察したが、多重補正後に残るものはなく、UK Biobank(n=約18,300)によって提供される検出力は不足していた。さらにまた、SHMOOSE.D47Nの年齢横断的トラジェクトリーは、若年と老年では逆の効果を示した。SHMOOSE基準アレルは、中年者(45~65歳)および前期高齢者(65~75歳)での、より小さな脳構造測定値と関連し、一方、代替アレルは、高齢者(>75歳)での構造喪失と関連した。若年標本と老年標本におけるこのような相反する効果は、年齢の影響を受ける認知機能および神経変性と頻繁に関連する他のいくつかの遺伝子について観察されている(例えば脳由来神経栄養因子)。
【0106】
このSHMOOSE SNPと神経生物学的表現型(すなわちADおよびニューロイメージングモダリティ)との間の遺伝的関連を考慮して、本発明者らは、SHMOOSEのアミノ酸残基32~58に対するポリクローナル抗体を開発することにより、SHMOOSEを生化学的に標的とした。また、本発明者らは、ニューロンのミトコンドリアおよび核において、ウェスタンブロットにより、約6kDaにSHMOOSEを検出し、一方、本発明者らは、ミトコンドリアDNAを欠く細胞では、SHMOOSE検出を認めなかった。さらにまた、本発明者らは、CSF SHMOOSEが年齢、タウ、および脳白質と正に相関することを見いだした。以前からより高レベルのCSFタウによってADが予測されているので、SHMOOSEとタウの間の相関は、SHMOOSEがADの進行性の病因に関与している可能性があり、バイオマーカーになりうることを示唆している。さらにまた、本発明者らは、より高いCSF SHMOOSEレベルは認知障害のない中高年齢者におけるDTI FAと関連することを観察した。より低いDTI FAにはさまざまな要因が寄与しうるが、これは、より低いミエリン形成レベルを反映している可能性があり、しばしば疾患状態と関連する。ミエリンの維持と修復は代謝的に要求が厳しく、エネルギー不足が存在する場合は損傷を特に受けやすいので、ミトコンドリアペプチドと白質微細構造との間の、考えうるつながりになる。おそらく、より高いCSF SHMOOSEとより低い局所DTI FAの間の関係は、脳における代謝的なストレス要因または他のストレス要因に対する、不完全な補償を示している。
【0107】
本発明者らは、生物学的機序を推察するために、ヒト集団コホートにおけるSHMOOSE SNP(すなわちSHMOOSE.D47N)を、さらに評価した。注目すべきことに、SHMOOSE.D47N SNPは単独で、ヒト脳トランスクリプトームを変化させた。SHMOOSE.D47Nを有する死後脳のPCAによる遺伝子発現シグネチャーはSHMOOSE基準アレルクラスターからドリフトしたからである。ヒト脳トランスクリプトミクスに対する環境、寿命などの報告されている効果を考えると、これは驚くべきことだった。また、インビトロでは、SHMOOSEおよびSHMOOSE.D47Nによる遺伝子発現差が、ミトコンドリア内膜区画およびリボソーム区画をエンリッチした。さらにまた、SHMOOSEのIP注射を伴うインビボ研究において、本発明者らは、肝臓において、脳を超える、リボソームおよびミトコンドリア内膜遺伝子発現変化も観察したことから、SHMOOSEは非神経系にも作用しうることが示唆された。SHMOOSEで処置されたこれらのマウスは、高脂肪食の自由摂取中に、肝臓酵素ALTおよびASTの軽度の低減を伴う体重増加の減弱を起こした。
【0108】
すべてのトランスクリプトミクス研究において、本発明者らは、ミトコンドリア内膜エンリッチメントに関する共通のテーマを観察した。SHMOOSEは複数のモデルにおいてミトコンドリア内膜ミトフィリンに結合したので、これは注目に値すると、本発明者らは考えた。ミトフィリンは、ミトコンドリアクリスタ接合部および内膜組織化を制御するMICOS複合体の構成要素である。これとは別に、本発明者らはリボソームタームについての転写エンリッチメントを観察した。これは、SHMOOSE-ミトフィリン相互作用によって説明されるかもしれない。Pathway Commons Protein-Protein Interactionsデータセットは、ミトフィリンに対する1800近い相互作用タンパク質を示しており、そのうちの137はリボソームタンパク質だからである。
【0109】
過去のMiWAS研究によって神経変性に対するmtSNPの効果は検討されているが、実験的に追跡調査されているものはほとんどない。これらのSNPは幅広いハプログループを規定するので、MiWASの機能的制約の一つは、個々のmtSNPの効果を単離することである。結果として、本発明者らは、SHMOOSE.D47Nハプログループ(すなわちハプログループU)内の他のSNPがSHMOOSEとは独立して効果(例えばtRNAに対する効果)を有する可能性を排除することができなかった。それでもなお、このSNPの唯一のミスセンス効果は、SHMOOSEマイクロプロテインへの効果であり、本発明者らは、この多重表現型法を使って、実験的検証のためのマイクロプロテイン候補(すなわちSHMOOSE)を同定した。
【0110】
本発明者らのデータはいくつかの含意を有する。第1に、SHMOOSEの発見とは別に、本発明者らは、ミトコンドリアDNAバリアントが、機能的解釈(すなわち疾患分類、構造解剖学および遺伝子発現)に役立ちうるいくつかの神経生物学的表現型と関連しうることを示した。すなわち本発明者らは、SNPによって生じるSHMOOSEの天然に存在するバージョンが、ヒトにおけるAD、脳遺伝子発現および脳解剖学と関連することを示した。第2に、本発明者らは、生物学的に機能的なマイクロプロテインをコードするsORFにミトコンドリアDNAバリアントをマッピングできることを明らかにした。遺伝学的データを有する大きなヒトコホートは全ゲノム配列決定データを追加し続けているので、この精密化されたmtDNA分解能により、さらなるマイクロプロテインが得られるだろうと予見することができる。さらにまた、プロテオミクス技術が進歩するにつれて、さらに多くのミトコンドリアにコードされるマイクロプロテインが検出されるだろうとも考えられる。第3に、SHMOOSEのCSFレベル、CSF AD関連バイオマーカー(例えばタウ)および脳白質間の相関は、SHMOOSEがバイオマーカーとしての可能性を秘めていることを示唆している。最後に、近年のマイクロプロテインの発見(例えばミトレグリン(mitoregulin)、ブラウニン(BRAWNIN)、MIEF-MP1)でも、ミトコンドリア生物学に対する大きな効果が認められているので、SHMOOSEは、ミトコンドリア生物学に影響を及ぼすもう一つのマイクロプロテインであると思われる。
【0111】
方法
ミトコンドリアワイド関連研究(MiWAS)およびmtSNP AD関連解析
ADNI1、ADNI GO、ADNI2およびADNI3におけるADほぼ確実例に対するミトコンドリア遺伝子バリアントの効果を調べた。本発明者らは、ADNI1について以前に報告されたMiWAS結果をフォローアップした。本発明者らの解析では、ADNI1、ADNI GO、ADNI2およびADNI3からのミトコンドリア遺伝子型および診断を、解析のためにすべてマージした。ADNI1標本はIllumina 610-Quad BeadChipを使って遺伝子型判定され、ADNI GO/2標本はmtSNPを含有しないIllumina HumanOmniExpress BeadChipを使って遺伝子型判定された。それでもなお、ADNI1/GO/2標本は、全ゲノム配列決定され、ミトコンドリア遺伝子型を含んだ。これらの全ミトコンドリア遺伝子型を厳格な品質管理で処理し、バリアントコールフォーマットに使用できるようにした。ADNI3標本はIllumina Infinium Global Screening Array v2(GSA2)を使って遺伝子型判定された。ミトコンドリア全ゲノム配列決定データを、PLINK(v1.9)を使って適切なフォーマットに変換し、PLINK bed/bam/bimフォーマットでADNI1およびADNI3とマージした。遺伝学的データのマージ後は、MiWAS中に、合計448の臨床的ほぼ確実例および290の対照について、138のmtSNPが残った。MiWASパーミュテーションモデルには、ADNIによって注記されたヨーロッパ系個体に対する5%のマイナーアレル頻度閾値を含めて、パーミュテーションに適格な29のmtSNPが残った。本発明者らは、さらに、mtSNPに対して主成分分析を行うことにより、ミトコンドリアの遺伝的混合の程度を評価した。これらの主成分は、他の項で記載するように、マトリックスを最小数の値で近似する固有ベクトルを出力するmtSNPマトリックスの特異値分解によって生成させた(Rにおけるprcomp関数)。ミトコンドリアの遺伝的混合の程度は低く、パーミュテーションアプローチには理想的だった。0.05を下回る経験p値を伴うmtSNPはいずれも、統計的に有意とみなした。SHMOOSE sORF中に存在してマイクロプロテイン候補となった最も有意なmtSNPについて合計957回のパーミュテーションを行った。これとは別に、本発明者らは、Religious Orders Study(ROS)およびMemory and Aging Project(MAP)、遅発性アルツハイマー病(NIA-LOAD)ならびにNIA Alzheimer Disease Center(ADC1およびADC2)コホートで構成されるRush Alzheimer's Disease Center(RADC)において、ロジスティック回帰を使ってSHMOOSE mtSNPの効果を見積もった。ROSMAP標本は全ゲノム配列決定を使って遺伝子型判定され、ミトコンドリア遺伝子バリアントを、VCFフォーマットで有資格ユーザーに利用できるようにした。LOAD標本はIllumina 610-Quad BeadChipを使って遺伝子型判定され、ADC1およびADC2標本はIluminaヒト660W-Quad BeadChipを使って遺伝子型判定された。ROSMAP(n=281症例およびn=233対照)、LOAD(n=993症例および374 n=883対照)およびADC1/2(n=2261症例およびn=654対照)におけるミトコンドリアの遺伝的混合も、ミトコンドリア主成分分析を実施することによって評価した(図13)。本発明者らは、LOADおよびADC1/2においてSHMOOSE代替アレル保因者についてミトコンドリアの遺伝的異質性を認めたので、最初の3つのミトコンドリア主成分をロジスティック回帰モデルに含め、年齢および生物学的性別を追加の共変数とした。メタ分析のために、年齢および生物学的性別をADNIモデルに含めた。SHMOOSE mtSNPの効果をROSMAP、LOADおよびADC1/2において推定した後、metafor Rパッケージのランダム効果モデルアプローチを使って、メタ分析を行った。
【0112】
ニューロイメージングフェノムワイド関連研究(PheWAS)
この研究は、承認されたプロジェクト25641の下、ADNIおよびUK Biobank Resource(ukbiobank.ac.uk)を使って行われた。本発明者らは、参加者22,392人の2018年8月公開からの脳MRIイメージング(UK Biobankデータ-フィールド:110)を使用した(biobank.ctsu.ox.ac.uk/crystal/label.cgi?id=110)。MRI取得の詳細はUK Biobank Brain Imaging Documentation(biobank.ctsu.ox.ac.uk/crystal/refer.cgi?id=1977)およびプロトコールフォーム(biobank.ctsu.ox.ac.uk/crystal/refer.cgi?id=2367)に記載されている。この研究では、そのMRIスキャンが手作業の品質評価に合格しなかった1,002人、データ取り下げまたは画像処理の失敗ゆえの45人、そして白人イギリス人祖先を持たないおよび/または遺伝学的データに関する標本品質管理に合格しなかった3,055人の参加者を採用しなかったので(biobank.ctsu.ox.ac.uk/crystal/label.cgi?id=100313)、18,330人、年齢範囲45~81歳(平均年齢=63.27+7.45歳)、男性8,729人(47.62%)およびSHMOOSE mtSNP保因者4,680人(25.53%)の標本になった。FreeSurferソフトウェアパッケージv6.0(surfer.nmr.mgh.harvard.edu)を使ってすべてのMR画像を処理することで、脳全体の形態測定値を抽出した。FreeSurferワークフローには、体動補正および体積測定T1強調画像の平均化、非脳組織の除去、自動タライラッハ変換、脳体積セグメンテーション、強度正規化、灰白質(GM)と白質(WM)の境界のテセレーション、自動トポロジー補正、および強度の最大シフトが別の組織クラスへの移行を規定する場所にGM/WMおよびGM/脳脊髄液境界を最適に配置するための強度勾配に従った表面変形が含まれる。各半球のGMおよびWM表面は、327,680の三角形として配置された163,842の頂点で構成される。表面モデルが完成すると、さらなるデータ処理および解析のために、表面膨張、対象被験者間で皮質形状を一致させるために個々の皮質折り畳みパターンを使った球状アトラス(spherical atlas)へのレジストレーション、および最後にさまざまな表面ベースの脳形態指標の作出を含む、いくつかの可変形手順を行った。MRI処理の手順はすべて、高性能並列計算のためのLONIパイプラインシステム(pipeline.loni.usc.edu)で実施した。この研究には、9つの、頂点単位での(vertex-wise)脳形態測定値、すなわち皮質厚、体積、WM表面積、軟膜表面積、溝深さ、WM表面ヤコビアン、GM/WMコントラスト、平均曲率およびガウス曲率を含めた。これらの表面ベースの指標に関する詳細な情報はsurfer.nmr.mgh.harvard.edu/fswiki/で入手できる。簡単に述べると、皮質厚値は各頂点における灰白質表面と白質表面の間の最短距離として算出した。頂点単位での体積は、GM表面とWM表面の間の各斜方切頂三角錐(obliquely truncated trilateral pyramid)を3つの四面体に分割することによって算出される。軟膜表面およびWM表面における頂点単位での表面積測定値は、各頂点に各三角形の面積の三分の一を割り当てることによって見積もられる。溝深さは、ある表面上の特定頂点位置が回と溝の間に存在する仮定上の中間面からどれくらい離れているかに関する情報をもたらす。これは、直線距離および変位の指標、脳の折りたたみがどのくらい深くどのくらい高いかを与える。表面ヤコビアンは、球状アトラスへのレジストレーションのためにその表面がどのくらい歪まされるかを測定する。GM/WMコントラストは、白質と灰白質の間の頂点ごとのパーセントコントラストを表し、ここで、WMは白質表面の1mm下でサンプリングされ、GMは皮質の厚さの30%の位置でサンプリングされる。平均曲率は、ある頂点における2つの主曲率の平均である。ガウス曲率はある頂点における2つの主曲率の積である。統計解析に先だって、信号対雑音比を増加させ、ミスレジストレーションの影響を低減するために、これら表面ベースのデータを、テセレーションされた表面上でガウスカーネルを使って20mmの半値全幅で平滑化した。すべてのUK Biobank参加者は、Affymetrix UK BiLEVE Axiomアレイ(最初の約50,000人)を使って遺伝子型判定され、Affymetrix UK Biobank Axiomアレイ(残りの約450,000人)はAffymetrix UK Biobank Axiomアレイを使って遺伝子型判定された。SHMOOSE遺伝子型はPLINK2.0ソフトウェアを使って遺伝子型判定アレイから抽出された。集団構造を捕捉するために、UKBチームは高品質遺伝子型判定データセット53から上位40の主成分(PC)を計算した。さらにまた、ミトコンドリアゲノムに隠された集団構造を捕捉するために、本発明者らは、ミトコンドリア主成分分析を使ってミトコンドリアPCも計算した。年齢関連脳構造差に対するSHMOOSE mtSNPの効果を調べるために、本発明者らは、各皮質表面頂点iにおいて、所与の形態測定値Yiについて、モデル:
Yi=切片+β1G+β2年齢+β3年齢×G+ei
で、線形混合効果回帰を実施することによって、SHMOOSE mtSNP遺伝子型と年齢の間の交互作用を評価した。式中、GはSHMOOSE mtSNP遺伝子型であり、年齢はスキャナにおける個々の年齢であり、eは残留誤差であり、切片およびβ項は固定効果である。性別、頭蓋内体積(ICV)、核およびミトコンドリアPCを、交絡変数としてモデルに加えた。すべての頂点における統計結果を、ニューロイメージングデータの空間平滑性に適合するランダム場理論(RFT)法を使って、脳表面全体のファミリーワイズエラー率(FWER)について補正した。表面ベースの解析はすべて、ビッグデータブレインワイドイメージング関連研究用のクラウドコンピューティングプラットフォームであるNeuroimaging PheWASシステムを使って行った。
【0113】
認知低下解析
HRSにおいて、本発明者らは、混合効果回帰アプローチを実施することにより、加齢過程に伴う長期的認知低下に対するSHMOOSE遺伝子型の効果を評価した。HRSは、ヒトOmni2.5アレイを使って、256のミトコンドリアSNPを直接、遺伝子型判定した。SHMOOSE遺伝子型はPLINK2.0を使って抽出した。検証されたHRS認知スコアは、エピソード記憶学習、エピソード記憶想起、意味流暢性および見当識を表す。混合効果モデルは、ヨーロッパ系個体の生物学的性別、一次年齢(linear age)および二次年齢(quadratic age)、ミトコンドリアの遺伝的祖先、およびSHMOOSE遺伝子型についての固定効果項を含んだ。被験者特異的ランダム効果は、加齢(すなわち2年ごとの追跡調査来院)中の認知スコア変化の速度の個体間変動に加えて、65歳における個体間変動を含んだ。この解析の実行にはRにおけるlme4パッケージを使用した。合計8,072の個体を45,465の合計データポイントで個別に評価した。
【0114】
SHMOOSEタンパク質構造予測
RoseTTAFoldを使ってSHMOOSEのマイクロプロテイン構造を予測した。全アルゴリズムの詳細は他で包括的に詳述されている。Alphafold2と比較して、RoseTTAFoldは、複雑なタンパク質について類似する程度の正確さを達成した。野生型バージョンのSHMOOSEとSHMOOSE.D47Nをモデル化し、出力ファイルはPDBフォーマットにダウンロードされた472だった。
【0115】
共発現解析
本発明者は、Mayoによって作成されたトランスクリプトームデータ(Synapse ID:syn5550404)を利用した。SHMOOSE転写産物カウントマトリックスを、利用可能にしたbamファイルから作成した。これは、sORFデータベースをGTF形式で構築し、RにおけるGenomicAlignmentsパッケージのsummarizeOverlaps関数を実施することによって行った。その後、正規化したカウントを使って、SHMOOSEカウントとすべての核コード遺伝子カウントとの間の相関を行い、0.05の偽陽性率(FDR)を使って多重仮説について補正した。SHMOOSE発現と統計的に相関した遺伝子を、FDR統制後に遺伝子オントロジー(GO)カテゴリーのエンリッチメントを返すclusterProfilerパッケージからのenrichGo関数を使ってエンリッチメントについて検定した。enrichGo関数からのデータ出力を使用し、Rにおけるggplot2を使ってプロットを生成させた。
【0116】
細胞
この研究に使用したSH-SY5Y細胞はATCCから購入した(CRL-2266)。細胞は、10%FBSを含むDMEM/F12中、37℃、5%CO2で成長させ、コンフルエンシーに応じて4~7日ごとに分割した。さらに、rhoゼロ細胞のために、以前に記載されているように、5ug/ml臭化エチジウム、50ug/mlウリジンおよび1mMピルビン酸をおよそ2ヶ月間加えることにより、SH-SY5Y細胞からミトコンドリアDNAを枯渇させた。すべての実験で、以前に記載されているように、1%FBSを含むDMEM/F12への10uMレチノイン酸の添加によって細胞を分化させ、培地を合計2回、48時間ごとに変えた。表示がある場合には、GenScriptが固相ペプチド合成法によって作製した化学合成SHMOOSEで、細胞を処置した。
【0117】
合成されたペプチドをレジンから切り離すには、トリフルオロ酢酸(TFA)を使用した。ペプチド合成後に、残存TFAを除去した。再構成されたSHMOOSEのpHは中性だった。
【0118】
細胞成分分画
培養SH-SY5Y細胞からサイトゾル画分、核画分およびミトコンドリア画分を調製した。核を抽出するために、細胞を氷冷DPBSで洗浄し、10mM HEPES pH7.6、3mM MgCl2、10mM KCl、5%(v/v)グリセロール、1%Triton-X100およびプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤を含有する分画緩衝液に15分間、再懸濁した後、250×gおよび4℃で5分間遠心分離した。その結果得た上清を、もう一度、18,000×g、4℃で10分間、さらに遠心分離することで、比較的純粋な細胞質画分を得た。18,000×g遠心分離前の元のペレットを、10mM HEPES pH7.6、1.5mM MgCl2、10mM KClおよびプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤中で洗浄し、250×gおよび4℃で遠心分離した。次に、洗浄したペレットを、20mM HEPES pH7.6、1.5mM MgCl2、420mM NaCl、25%(v/v)グリセロール、0.2mM EDTAおよびプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤を含有する核抽出緩衝液に再懸濁してから、氷上、振幅30%で5秒間(休止10秒)の超音波処理を3回行った。超音波処理したペレットを18,000×g、4℃で10分間遠心分離することで、比較的純粋な核溶解物を得た。ミトコンドリアを抽出するために、細胞を氷冷DPBSで洗浄し、10mM NaCl、1.5mM MgCl2および10mM Tris-HCl pH7.5を含有する2mlの低張緩衝液に、7.5分間、再懸濁した。低張インキュベーション後に、細胞をガラス製ホモジナイザーに移し、ペッスルで20回、まっすぐ押し下げることによってホモジナイズすることで、ミトコンドリアの完全性516を保ちながら、細胞を破裂させた。次に、ホモジナイズした試料2mlに、ミトコンドリアホモジナイゼーション緩衝液(mitochondrial homogenization buffer:MHB)を加えて、1×濃度(210mMマンニトール、70mMスクロース、20mM HEPESおよび2mM EGTA)にした。次に、ホモジネートを清浄な5mlチューブに移し、17,000×g、4℃で15分間遠心分離した。その結果得たペレットをMHB緩衝液中で洗浄し、さらに2回遠心分離した後、ミトコンドリアペレットをRIPA溶解緩衝液に再懸濁し、14,000×g、4℃で10分間の最終遠心分離工程を行うことで、比較的純粋なミトコンドリア溶解物を得た。外因性SHMOOSE投与については、1uMのSHMOOSEを細胞に30分間投与し、冷PBS中で2回洗浄し、分画した。5~15mgのタンパク質をNuPAGE試料緩衝液中で還元し、NuPAGE 4-12% Bis-Trisゲルで泳動した。タンパク質をPVDFメンブレンに転写し、TBS0.1%tween中の5%BSAでブロッキングし、1:1000希釈の各抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、メンブレンをTBST0.1%で洗浄し、各一次抗体起源種に対するHRPコンジュゲート二次抗体1:30,000と共にインキュベートしてから、ECl試薬を使って5分間励起した。
【0119】
SHMOOSE抗体産生およびELISA開発
ウサギ抗SHMOOSE血清は、Yenzyme Antibodies(カリフォルニア州サンフランシスコ)によって生産された。CarboxyLink固定化キットUltraLinkサポート付き(Thermo Scientific)を製造者のプロトコールに従って使用することにより、ウサギ抗SHMOOSE血清からSHOOSEアフィニティ抗体を精製した。簡単に述べると、抗血清を合成SHMOOSEペプチド固定化カラムに適用し、溶出した画分を280nMにおけるUV吸光度によって定量した。SHOOSEの循環レベルは独自のELISAによって測定した。アッセイに先だって、CSFを90%アセトニトリルおよび10%1N HClで抽出した。内在性SHMOOSEレベルを測定するために、合成SHMOOSEペプチドを標準として100pg/ml~20,000pg/mlの範囲内で使用した。簡単に述べると、96ウェルマイクロタイタープレートを抗SHMOOSEポリクローナル抗体で3時間コーティングした後、プレートをSuperBlock緩衝液(Thermo Scientific)でブロッキングした。次に、標準、対照または抽出試料、および予め力価測定された検出抗体を、適当なウェルに加え、一晩インキュベートした。次に、3回洗浄し、ウェルにストレプトアビジン-HRPコンジュゲートを加え、30分間インキュベートした。4回洗浄した後、超高感度TMB(Thermo Scientific)を加え、10~20分間インキュベートした。2N硫酸の添加によって反応を停止し、プレート分光測光器で450nmにおける吸光度を測定した。SHOOSE ELISAのアッセイ内およびアッセイ間の変動係数(CV)はそれぞれ10%未満だった。
【0120】
CSF SHMOOSEレベルとCSFタウ、CSF pタウ181および脳DTIとの間の相関
本発明者らは、南カリフォルニア大学アルツハイマー病研究センター(University of Southern California Alzheimer Disease Research Center:ADRC)によって募集された、利用可能な拡散MRI(dMRI)スキャンおよびSHMOOSEのCSF測定値を有する、79人の被験者についてのデータを考慮した。これらのうち、1人には使用できるdMRIスキャンがなく、6人は品質評価によって同定された前処理の失敗ゆえに除外した(「拡散MRI前処理」参照)。最終標本は、すべての品質検査に合格した拡散MRIスキャンと、利用可能なSHMOOSEのCSF測定値とを有する、72人の認知障害のない中高年齢者(平均65.7歳、47~82歳)を含んだ。被験者は、0(56被験者)または0.5(16被験者)の臨床的認知症尺度(CDR)スコアを有した。被験者の人種/民族性は以下のとおり自己申告された:白人(53)、アジア人(12)、アメリカインディアンまたはアラスカ原住民(3)、混合人種(4)、人種の申告なし(1);ヒスパニック/ラテン系(任意の人種)(10)、非ヒスパニック/ラテン系(任意の人種)62。MR画像は、南カリフォルニア大学アルツハイマー病研究センター(ADRC)において、3テスラSiemens Prismaスキャナで取得された。解剖学的矢状T1強調磁化調製迅速取得勾配エコー(magnetization prepared rapid acquisition gradient-echo:MPRAGE)スキャンパラメータを取得した(TR 2300ms;TE 2.95ms;1.2×1.0×1.0mm3ボクセルサイズ)。本発明者らは、64方向(b=1000s/mm2)拡散MRIスキャン(TR 7100ms;TE 71.0ms;2.5×2.5×2.5mm3ボクセルサイズ)も取得した。すべてのスキャンを品質について視認評価した。各被験者について、拡散画像を、MATLABバージョンR2014bソフトウェア(MathWorks、マサチューセッツ州ナティック)で、局所主成分分析(LPCA)ツールとライスフィルター(Rician filter)を使用し、強度バイアス補正を加えて、ノイズ除去した。DWIのひずみ補正は、FSLユーティリティ(FSL 5.0.9;(fmrib.ox.ac.uk/fsl)中のMRtrix3を使ったGibbsリンギングについての補正およびeddy_correctツールを使った渦電流補正を含んだ。本発明者らはMRtrix3を使ってバイアスフィールド補正を行った。平均b0マップを被験者特異的T1強調MPRAGE構造スキャンと整列するために、FSLおよびANTSソフトウェアを使って、エコー平面イメージング(Echo planar imaging:EPI)磁化率アーチファクトを補正した。各工程を視覚的に品質検査した。FSLソフトウェアを使って異方性度(FA)マップ-ボクセル内の拡散制限を示す-を作成した。FAは、AD特異的欠陥を検出する力を増強することが示されている微細構造完全性の指標であり、より低いFA値は典型的にはADにおける白質微細構造完全性が乏しいことを表す。DWI FAデータのボクセル単位の統計解析は、FSLベースのツール、tract based-spatial statistics(TBSS)を使って行った。TBSSは、非線形レジストレーションを適用して、すべてのFAマップを標準テンプレート空間に入れる。平均FAスケルトンを作出し、次に0.2で閾値処理することで、以下の詳述するボクセル単位の統計解析において使用した4Dスケルトン化FA画像を得た。本発明者らは、FSLのThreshold-Free Cluster Enhancement(TFCE)オプションによる一般線形モデル(general linear model:GLM)を使用して、CDRスコア、年齢および申告された性別について共変するSHMOOSEと平均FAスケルトン内のボクセル単位の白質FAの間の関係を評価した。SHMOOSE値<100は、この解析については50とコードした(5被験者)。CSFタウおよびCSF pタウ181について、生物学的性別および年齢を共変数とし、SHMOOSE CSFレベルを従属変数として、線形回帰分析を行った。これとは別に、本発明者らは、pタウ181についての効果は、総タウレベルによって媒介されるとみなした。したがって本発明者らは、Rにおいてmediationパッケージを使用して、媒介因子(すなわちタウ)に対するpタウ181、年齢および生物学的性別の効果をモデル化し、SHMOOSEに対するタウ、pタウ181、生物学的性別、および年齢の効果をモデル化して、これらのモデルを使用することで、mediate関数を使って間接効果(ACME)および直接効果(ADE)を決定した。
【0121】
ヒト脳SHMOOSE mtSNP発現変動解析
本発明者らは、Mayoによって作成された遺伝子型およびトランスクリプトームデータ(Synapse ID:syn5550404)を利用した。「RNAseq TCX」データをSHMOOSE遺伝子型によって解析した。被験者SHMOOSE遺伝子型は、ヒトHap300-Duo Genotyping BeadChipから生成されたメイヨーLOAD GWASデータから抽出した。処理および個々のサブコホートの完全な説明は以前に記載されている。簡単に述べると、ヒト脳側頭皮質からの遺伝子発現fastqファイルを、Mayo MAP-Rseqパイプラインを使って整列させた。次に、正規化リードカウントを、死亡年齢、生物学的性別およびRNA完全性について調整するために、多変量線形回帰を使って、SHMOOSE遺伝子型による発現変動について調べた。Mayoによって提供されたRにおけるソースコードに変更を加えて、SHMOOSE遺伝子型による発現変動解析を行った。結果は、少なくとも1被験者においてゼロでない生カウントを有するすべての遺伝子を含み、各遺伝子は、SHMOOSE mtSNPによる効果サイズを表すベータ値を含む。多重仮説補正はベンジャミン=ホッホベルク法を使って行った。有意な遺伝子は、RにおけるclusterProfilerパッケージを使った遺伝子エンリッチメント解析に含めた。enrichGo関数およびenrichWP関数を使用することにより、有意にエンリッチされたパスウェイを超幾何学モデルに従って抽出した。合計14人のSHMOOSE mtSNP保因者を、55人の基準アレルSHMOOSE個体に対して評価した。これらの標本は、死亡時に認知障害がなくSHMOOSE遺伝子型データも含んでいる個体を抽出することによって選択された。
【0122】
SHMOOSE処置細胞トランスクリプトミクス
分化神経系細胞を10uM SHMOOSEまたはSHMOOSE.D47Nと共に24時間インキュベートしてから、迅速RNA抽出を行った。細胞を氷冷DPBSで1回洗浄し、TRIzol(Thermo Scientific)で直ちに溶解し、Quick-RNAミニプレップキット(Zymo Research)を使ってRNAを抽出した。高品質RNAを、ポリアデニル化RNAを捕捉するライブラリー調製(mRNA-Seq Nu Quant)に使用した。そこから、調製済み試料を、Illumina NextSeq 550プラットフォームで75シングルエンドサイクルにわたって、配列決定した。各試料は2500万近いリード深度を達成した。高品質fastqファイルを、FastQCを使って保証し、kallistoを使ってヒト基準ゲノム(GRCh38.p13)にマッピングした。次に、正規化された変化倍率を使って、SHMOOSE処置細胞とSHMOOSE.D47N処置細胞の間の遺伝子発現変動を、RにおけるDESeq2パッケージを使って見積もった。遺伝子エンリッチメントは、RにおけるclusterProfilerパッケージを使って、有意に異なる遺伝子(FDR<0.2)で実行した。
【0123】
インビボでのSHMOOSE
SHMOOSEで処置されたマウスのトランスクリプトームを調べるために、12週齢の雄C57Bl/6NマウスをThe Jackson Laboratoryから入手した。マウスに高脂肪食(60%総カロリー)を10日間給餌してから、SHMOOSEの連日IP注射(2.5mg/kg)を開始した。60ul以下の体積をIP注射した。IP注射を2週間行ってから、一晩の絶食後にマウスを安楽死させ、次に脳を素早く取り出し、視床下部を摘出し、正中矢状面で半切した。半脳をさらに顕微解剖することで、海馬および皮質を摘出した。組織を急速凍結し、組織10mgあたり100ulのTRIzol(Thermo Scientific)を加えることによって、RNAを抽出した。次に、ホモジネートを16,000RCFで60秒間遠沈し、Quick-RNAミニプレップキット(Zymo Research)を使って処理した。高品質RNAを、ポリアデニル化RNAを捕捉するライブラリー調製(mRNA-Seq Nu Quant)に使用した。そこから、調製済み試料を、Illumina NextSeq 550プラットフォームで75シングルエンドサイクルにわたって、配列決定し、FastQCを使ってfastqファイルの品質を保証し、kallistoを使ってマウス基準ゲノム(GRCm39)にマッピングした。次に、正規化された変化倍率を使って、SHMOOSE処置マウスについての遺伝子発現変動を、RにおけるDESeq2パッケージを使って見積もった。遺伝子エンリッチメントは、RにおけるclusterProfilerパッケージを使って、有意に異なる遺伝子(FDR<0.2)で実行した。
【0124】
Seahorseアッセイ
SH-SY5Y細胞を96ウェルプレートに10,000細胞の密度でプレーティングした。翌日、細胞を合計4日間分化させた。その後、SHMOOSEまたはSHMOOSE.D47Nを24時間インキュベートし、次に、XF96細胞外フラックスアナライザー(Seahorse Bioscience)を使って、細胞リアルタイム酸素消費速度測定を行った。細胞にオリゴマイシンおよびFCCP(カルボニルシアニド4-[トリフルオロメトキシ]フェニルヒドラゾン)を負荷した後に、ATPターンオーバーおよび最大呼吸容量を算出した。さらに、細胞外酸性化速度(ECAR)を使って解糖速度を決定し、基礎レベルと比較してパーセンテージで個別に報告した。すべての読み値を、Hoechst 33342を使った総DNAカウントに正規化した。
【0125】
iPSCおよびAD脳におけるSHMOOSE発現変動
FAD変異の関数としてのSHMOOSE発現を調べるために、694のFAD変異を有するiPSC由来のニューロンからのRNA-Seqデータをダウンロードした(GEO:GSE128343)。STARを使用し、デフォルトパラメータで、fastqファイルをヒト基準ゲノム(GRCh38.p13)に整列させた。BioConductorパッケージを使ってRに整列済みのBAMファイルをロードした。発現変動解析には、SHMOOSEゲノム座標および他のミトコンドリア遺伝子を含むカスタムGTFファイルを使用した。カウントはミトコンドリアリードカウントに正規化した。カウントは、summarizeOverlaps関数により、「union」モードを使ってコールした。発現変動解析は、RにおけるDESeq2パッケージにより、負の二項回帰を使って行った。本発明者らは、同じ処理ワークフローに従ってADおよび遺伝子型によるSHMOOSE RNAの相違を評価するために、Mayo RNASeqデータ(Synapse ID:syn5550404)も使用した。
【0126】
アミロイドベータ毒性アッセイ
SH-SY5Y細胞を4日間分化させ、10uM SHMOOSEまたはSHMOOSE.D47Nと共に24時間インキュベートした後、以前に記載されているように調製されたオリゴマー化1uMアミロイドベータ42(CPC Scientific)を加えて、またはこれを加えずに、SHMOOSEまたはSHMOOSE.D47Nとのインキュベーションを、さらに行った。二色蛍光細胞生存アッセイ(LIVE/DEAD生存率/細胞毒性キット;Invitrogen(カタログ番号L3224))を使って、ヒューマニンおよびアミロイドベータ42処置後の生細胞と死細胞とを識別した。生細胞はカルセインAM色素を保持し、損傷した膜を有する死細胞はエチジウムホモダイマーの進入を許すので、生細胞対死細胞の比を定量することができる。
【0127】
SHMOOSE-ミトフィリンタンパク質相互作用
SHMOOSEインタラクトームを特定するために、複数の実験を行った。まず、1.5nmolのSHMOOSEを1mgのSH-SY5Y細胞溶解物に4℃で6時間スパイクした。溶解物は、1×Thermoプロテアーゼインヒビターカクテルおよび1mM PMSFを含むThermo Pierce CoIP溶解緩衝液を使って調製した。簡単に述べると、細胞を氷冷DPBSで2回洗浄し、氷上で15分間溶解し、12,000RCF、4℃で10分間遠心分離した。この実験を行うことの根拠は、条件間での同じタンパク質量を保証し、SHMOOSE処置が細胞に引き起こすタンパク質発現変動を回避することだった。6時間後に、5ugのカスタムc末SHMOOSE抗体にコンジュゲートされたDynabeads Aを使って、SHMOOSEを試料から免疫沈降させた。陰性対照として、SHMOOSEスパイク溶解物を、5ugのウサギIgGでも免疫沈降させた。50mMグリシンpH2.8を使ってタンパク質をビーズから溶離させ、Tris HCl pH7.5を使って溶離物をpH中性にした。次に全溶離物をLC-MSを使ったタンパク質同定のために処理した。試料を同じ体積の消化緩衝液(8M尿素、0.1M Tris-HCl pH8.5)と混合した後、Eppendorfサーモミキサー中、1200rpmで混合しながら、5mM TCEPおよび10mMヨードアセトアミドと共に、暗所、室温で、逐次的に20分間インキュベートすることにより、各試料を還元し、アルキル化した。6μlのカルボキシレート修飾磁気ビーズ(CMMB、SP3として広く公知である)を各試料に加えた。CMMBへのタンパク質結合を誘導するために、エタノールを濃度50%まで加えた。CMMBを80%エタノールで3回洗浄してから、50μlの50mM TEABで再懸濁した。タンパク質を、0.1μgのLysC(Promega)および0.8μgのトリプシン(Pierce)により、37℃で一晩消化した。消化に続いて、1mlの100%アセトニトリルを各試料に加えて最終アセトニトリル濃度を95%超に増加させることで、CMMBへのペプチド結合を誘導した。次に、CMMBを100%アセトニトリルで3回洗浄し、50μlの2%DMSOでペプチドを溶離させた。溶離ペプチド試料を真空遠心分離によって乾燥し、5%ギ酸に再構成してから、LC-MS/MSによる分析を行った。ペプチド試料を、1.9μM C18粒子が充填された75μM ID、25cm C18カラム(Dr.Maisch GmbH HPLC)上で、アセトニトリル濃度を増加させる140分勾配を使って分離し、Thermo Orbitrap Fusion Lumos Tribrid質量分析計に注入した。MS/MSスペクトルはデータ依存的取得(Data Dependent Acquisition:DDA)モードを使って取得した。MS/MSデータベース検索は、EMBLからのヒト基準プロテオーム(UP000005640_9606 HUMAN Homo sapiens、20874エントリ)に対して、MaxQuant(1.6.10.43)を使って行った。MaxQuantラベルフリー定量データの統計解析は、artMS Bioconductorパッケージで行った。これはMSstats Bioconductorパッケージ(デフォルトパラメータ)を使って、タンパク質存在量の相対的定量を行う。任意の所与の比較について、一方の条件では欠けているが、他方の条件の3つ以上の生物学的レプリケートにおいて見いだされるタンパク質の存在量は、試料間で観察された最低MS1強度から強度値を補完することによって見積もり、p値は、説明のために、0.05~0.01の間の値にランダムに割り当てた。本発明者らは、補完された変化倍率およびp値閾値に基づいて、ミトフィリン(IMMT)を標的とすることを選択した。
【0128】
第2に、本発明者らは、MSから同定されたミトフィリン相互作用を、SHMOOSE抗体およびミトフィリン抗体による一連の相互共免疫沈降実験を使って検証した。本発明者らは、分化SH-SY5Y細胞を1uM SHMOOSEで30分間処置し、上記のように、Thermo Pierce CoIP溶解緩衝液を使って細胞を溶解した。その後、本発明者らは、試料を、5ugのSHMOOSE抗体、ミトフィリン抗体、または陰性ウサギIgGと共に、室温で30分間、インキュベートした。抗体をカップリングしたDynabeads AをTBST0.1%で3回洗浄し、グリシンpH2.8、NuPAGE LDS試料緩衝液およびNuPAGE試料還元剤を使って、95Cで5分間溶離させた。次に溶離物を電気泳動のためにNuPAGE 4-12% Bis-Trisゲルにローディングした。移動したタンパク質をPVDFメンブレンに転写し、TBS0.1%tween中の5%BSAでブロッキングし、1:1000希釈の各抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、メンブレンをTBST0.1%で洗浄し、各一次抗体起源種に対するHRPコンジュゲート二次抗体1:30,000と共にインキュベートしてから、ECl試薬を使って5分間励起した。
【0129】
第3に、本発明者らは、140ngの組換えミトフィリン(OriGene)、SHMOOSEまたはSHMOOSE.D47Nをニトロセルロースメンブレン上に固定化することにより、SHMOOSE、SHMOOSE.D47Nおよびミトフィリンについて、相互ドットブロットを行った。タンパク質を乾燥した後、メンブレンを、SuperBlock(PBS)ブロッキング緩衝液(Thermo)により、室温で30分間、ブロッキングした。次に、ブロッキングされたメンブレン上に、SHMMOOSEまたはミトフィリンを、ブロッキング緩衝液中、1ug/mlの濃度において、室温で30分間、流した。メンブレンをTBSBT 0.1%で5分ずつ3回洗浄し、次に、ブロッキング緩衝液中、0.5ug/mlの各抗体と共に、室温で30分間インキュベートした。メンブレンをTSBT 0.1%で5分ずつ3回洗浄し、一次抗体起源の種に対する1:30,000二次抗体と共にインキュベートした。メンブレンをTBST 0.1%で5分ずつ3回洗浄した後、ECl試薬を使って1分間励起させた。
【0130】
MTTアッセイ
MTTアッセイを使ってミトフィリンノックダウンの効果を測定した。SH-SY5Y細胞を、96ウェルプレートに10,000細胞の密度784で播種する時に、RNAiMAX(Invitrogen)および40nMミトフィリンsiRNA(Horizon、SMARTpool)を用いるリバーストランスフェクションに付した。翌日、細胞を合計4日間分化させ、新たに40nMミトフィリンsiRNAをトランスフェクトした。2日後に分化培地を変えて、40nMミトフィリンsiRNAを加えた。MTTアッセイの24時間前に細胞を10uM SHMOOSEまたは溶媒対照で処置した。処置後の各ウェルにMTT(Sigma-Aldrich)試薬(5mg/ml)を4時間加え、溶解してから、SpectrMax M3マイクロプレートリーダーを使って吸光度を読み取った。
【0131】
SHMOOSE-ミトフィリンドッキングモデル
IMMT-SHMOOSE相互作用をモデル化するために、本発明者らはHDOCKを使用した。これは、他で記載されるとおり、テンプレートベースのモデリングと第一原理自由ドッキング(ab initio free docking)のハイブリッドアルゴリズムである。ミトフィリンを「受容体」とみなし、SHMOOSEを「リガンド」とみなした。
【0132】
上述のさまざまな方法および技法は、本発明を実行するための方法をいくつか提供している。当然ながら、必ずしも、記載したすべての目的または利点が、本明細書に記載したどの特定態様でも達成されうるとは限らないと理解すべきである。したがって例えば、本方法が、本明細書において教示または示唆されうる他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書において教示される一つの利点または一群の利点を達成するまたは最適化するような方法で行われうることは、当業者にはわかるであろう。本明細書では種々の有利な選択肢および不利な選択肢に言及する。一部の好ましい態様は特にいずれか一つのまたはいくつかの有利な特徴を含み、一方、別の好ましい態様は特にいずれか一つのまたはいくつかの不利な特徴を排除し、一方、また別の好ましい態様は特に、いずれか一つのまたはいくつかの有利な特徴の包含によって現存の欠点を軽減すると理解すべきである。
【0133】
さらにまた、当業者には、異なる態様からさまざまな特徴の利用可能性がわかるであろう。同様に、当業者は、本明細書に記載の原理による方法を行うために、上で議論したさまざまな要素、特徴および工程、ならびに上記要素、特徴または工程のそれぞれについての他の公知の等価物を取り混ぜて、それらを調和させることができる。多様な態様において、さまざまな要素、特徴、および工程のうちの一部は特に包含され、他の一部は特に排除されるであろう。
【0134】
本発明を一定の態様および実施例に関連して開示したが、本発明の態様が、具体的に開示した態様を超えて、他の代替的態様および/または使用、ならびにその変更態様および等価物にも及ぶことは、当業者には理解されるであろう。
【0135】
本発明の態様では多くの変形および代替的要素を開示した。さらなる変形および代替要素は当業者には明白であるだろう。これらの変形には、誘導されたミトコンドリアペプチド、その類似体および誘導体に関係する組成物および方法、上述の組成物の使用に関係する方法および組成物、そこで使用される技法および組成物ならびに解決策の使用、ならびに本発明の教示によって作出される産物の特定の使用などがあるが、それらに限定されるわけではない。本発明のさまざまな態様はこれらの変形または要素のいずれかを特に包含または排除することができる。
【0136】
いくつかの態様において、本発明の一定の態様を記述し主張するために使用される、成分の量、濃度などの特性、反応条件などを表す数字は、場合により、「約」という用語で修飾されていると理解されるべきである。したがって、いくつかの態様において、本明細書および本願特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、特定態様が得ようとする所望の性質に依存して変動しうる近似値である。いくつかの態様において、数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。本発明のいくつかの態様の広い範囲を説明する数値範囲および数値パラメータは近似値であるが、具体的実施例に示す数値は、実施可能である程度には正確に報告されている。本発明のいくつかの態様において提示される数値は、それぞれの試験測定値に見いだされる標準偏差に必然的に起因する一定の誤差を含みうる。
【0137】
いくつかの態様において、本発明の特定態様を説明する場合に(とりわけ下記の請求項のうちのいくつかに関して)使用される用語「一つの(a)」、「一つの(an)」および「その(the)」ならびに同様の指示は、単数と複数の両方をカバーすると解釈することができる。本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内に含まれる独立した値のそれぞれに個別に言及することを簡略化した方法として機能することを意図しているに過ぎない。本明細書において別段の表示がある場合を除き、個々の値は、あたかも本明細書に個別に具陳されているかのように、本明細書に組み入れられる。本明細書に記載するすべての方法は、本明細書において別段の表示がある場合を除き、または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書において一定の態様に関連して提供されるありとあらゆる実施例または例示表現(例えば「など」)の使用には、本発明をより良く明らかにしようとする意図しかなく、他の形で主張された本発明の範囲に制約を課すものではない。本明細書における表現に、本発明の実施に不可欠であって主張されていない何らかの要素を示していると解釈すべきものはない。
【0138】
本明細書において開示する本発明の代替的要素または態様のグループ分けは、制約とみなしてはならない。各グループの構成員は、個別に、またはそのグループの他の構成員もしくは本明細書に見いだされる他の要素との任意の組合せで、言及し、主張することができる。あるグループの1つまたは複数の構成員は、利便性および/または特許可能性を理由として、あるグループに含めること、またはあるグループから除外することができる。何らかのそのような包含または除外が行われる場合、本明細書は、変更が加えられたグループを包含し、よって本願特許請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュグループの書面による説明を満たすとみなされる。
【0139】
本発明の好ましい態様を、発明を実施するための本発明者らが知る最善の様式を含めて、本明細書に記載する。それら好ましい態様の変形も、上述の説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。当業者はそのような変形を適宜使用することができ、本発明は本明細書に具体的に記載した方法以外の方法で実施することができると考えられる。したがって、本発明の数多くの態様は、準拠法が許すとおり、本願に添付する特許請求の範囲に具陳する対象のあらゆる変更態様および等価物を包含する。さらに、上述の要素の任意の組合せは、そのすべての可能な変形において、本明細書に別段の表示がある場合、または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、本発明に包含される。
【0140】
さらにまた、本明細書の全体を通して、数多くの特許および刊行物に言及した。上で言及した参考文献および刊行物のそれぞれは、参照によりその全体が、個別に本明細書に組み入れられる。
【0141】
本明細書において使用される用語「~を含む(comprising)」または「~を含む(comprises)」は、ある態様にとって有用な組成物、方法およびそれらの各構成要素に関連して使用されるが、有用であるか否かを問わず、指定されていない要素の包含も許容される。本明細書において使用される用語が、一般に、「非限定的な(open)」用語として意図されていること(例えば「~を含む(including)」と言う用語は「~を含むが、それに限定されるわけではない」と解釈されるべきであり、「~を有する」という用語は「少なくとも~を有する」と解釈されるべきであり、「~を含む(includes)」という用語は「~を含むが、それに限定されるわけではない」と解釈されるべきであるなど)は、当業者には理解されるだろう。本明細書では、本発明を記載し特許請求するために、オープンエンドの用語(open-ended term)「~を含む(comprising)」が、「~を含む(including)」、「~を含む(containing)」または「~を有する」などの用語の同義語として使用されるが、本発明またはその態様は、その代わりに、「~からなる(consisting of)」または「~から本質的になる(consisting essentially of)」などの代替用語を使って記載することもできる。
【0142】
別段の言明がある場合を除き、本願の特定態様を説明する場合に(とりわけ特許請求の範囲との関連において)使用される用語「一つの(a)」、「一つの(an)」および「その(the)」ならびに同様の指示は、単数と複数の両方をカバーすると解釈しうる。本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内に含まれる独立した値のそれぞれに個別に言及することを簡略化した方法として機能することを意図しているに過ぎない。本明細書において別段の表示がある場合を除き、個々の値は、あたかも本明細書に個別に具陳されているかのように、本明細書に組み入れられる。本明細書に記載するすべての方法は、本明細書において別段の表示がある場合を除き、または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、任意の適切な順序で行いうる。本明細書において一定の態様に関連して提供されるありとあらゆる実施例または例示表現(例えば「など」)の使用には、本願をより良く明らかにしようとする意図しかなく、他の形で主張された本願の範囲に制約を課すものではない。「e.g.」という略号はexempli gratiaというラテン語に由来し、本明細書では限定でない例を示すために使用される。したがって「e.g.」という略号は「例えば(for example)」と同義である。本明細書における表現に、本願の実施に不可欠であって主張されていない何らかの要素を示していると解釈すべきものはない。
【0143】
「随意の」または「任意で」とは、その次に記載される状況は起こっても起こらなくてもよく、したがってその記載は、状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを包含することを意味する。
【0144】
最後に、本明細書に開示する本発明の態様は、本発明の原理を例示するものであると理解されるべきである。本発明の範囲には、使用することができる他の変更態様が含まれうる。したがって、限定するわけではないが例えば、本発明の代替的構成を本明細書の教示に従って利用することができる。したがって本発明の態様は、ここに示し説明した態様そのものに限定されない。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21-1】
図21-2】
【配列表】
2024521901000001.app
【国際調査報告】