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▶ レキット ベンキサー フィニッシュ ベスローテン フェンノートシャップの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】水溶性フィルム及びパッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20240528BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240528BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240528BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20240528BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C08L29/04 Z
C08J5/18 CEX
C08K5/053
C08K5/11
C08L71/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574449
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2022064721
(87)【国際公開番号】W WO2022253814
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2107974.4
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316001892
【氏名又は名称】レキット ベンキサー フィニッシュ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】アル-バヤティ アリアス ユニス
(72)【発明者】
【氏名】フールマン ザシャ
(72)【発明者】
【氏名】ハルバー アクセル
(72)【発明者】
【氏名】マーカム ナオミ
(72)【発明者】
【氏名】シュメルツレ クラウディア
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA29
4F071AA81
4F071AC05
4F071AE04
4F071AF01Y
4F071AF05
4F071AF14
4F071AH04
4F071BB06
4F071BC01
4J002BE02W
4J002BE02X
4J002CH02Y
4J002CH02Z
4J002EC046
4J002EC047
4J002EC056
4J002EC057
4J002EH086
4J002EH087
4J002FD020
4J002FD026
4J002FD027
4J002FD02Y
4J002FD02Z
4J002FD200
4J002GC00
4J002GG02
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、2種以上のポリビニルアルコール樹脂、及びフィルムの少なくとも20質量%の量で存在する少なくとも1種の可塑剤を含む水溶性フィルムであって、少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂が少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有し、少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂が50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する、水溶性フィルムに関する。本発明はさらに、2種以上のポリビニルアルコール樹脂、及びフィルムの少なくとも20質量%の量で存在する少なくとも1種の可塑剤を含む水溶性フィルムを製造するための直接キャスト押出方法であって、少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂は少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有し、少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂は50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性フィルムであって、2種以上のポリビニルアルコール樹脂、及び前記フィルムの少なくとも20質量%の量で存在する少なくとも1種の可塑剤を含み、少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂が、少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有し、且つ、少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂が、50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する、水溶性フィルム。
【請求項2】
前記可塑剤が室温又は周囲温度で液体である、及び/又は、前記可塑剤が前記フィルムの20~35質量%の量で存在する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール樹脂が、80%~90%の加水分解度を有する、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記可塑剤が、グリセリン及びその誘導体;C2-C6アルキレングリコール及びその誘導体、好ましくは1,2プロピレングリコール;ポリアルキレングリコール;カルボン酸のエステル、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、マレイン酸又はコハク酸のエステル;及び/又はそれらの任意の2つ以上の組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フィルムが2種以上の可塑剤を含み、好ましくは前記フィルムが2種の可塑剤を含み、より好ましくは可塑剤どうしの比が1:1~8:1である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項6】
少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有する前記ポリビニルアルコール樹脂と、50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する前記少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂との比が、1:1~12:1である、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項7】
水溶性フィルムを製造するための直接キャスト押出方法であって、前記水溶性フィルムは、2種以上のポリビニルアルコール樹脂、及び前記フィルムの少なくとも20質量%の量で存在する少なくとも1種の可塑剤を含み、少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂が少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有し、且つ、少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂が50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する、方法。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコール樹脂が80%~90%の加水分解度を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記可塑剤が室温で液体である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
a)少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂、及び50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂を、押出機に供給するステップ、
b)押出機内で前記ポリビニルアルコール樹脂を少なくとも1種の可塑剤と合わせて混合物を形成するステップ、
c)混合物をダイを通して押し出して、水溶性組成物であって、2種以上のポリビニルアルコール樹脂、及び前記組成物の少なくとも20質量%の量で存在する少なくとも1種の可塑剤を含む前記水溶性組成物を形成するステップ、ここで、前記ポリビニルアルコール樹脂のうち少なくとも1種が少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有し、且つ、前記ポリビニルアルコール樹脂のうち少なくとも1種が50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する、及び
d)前記水溶性組成物から水溶性フィルムを形成するステップ
を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップc)及びd)を組み合わせて、ステップb)で形成された混合物をダイを通して押し出して、水溶性フィルムであって、2種以上のポリビニルアルコール樹脂及び前記フィルムの少なくとも20質量%の量で存在する少なくとも1種の可塑剤を含む前記水溶性フィルムを形成することを含む単一のステップc)とし、ここで、前記ポリビニルアルコール樹脂のうち少なくとも1種が少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有し、且つ、前記ポリビニルアルコール樹脂のうち少なくとも1種が50,000g/モル未満の重量平均分子量を有し;好ましくは、ステップc)は、水溶性塊の複数のペレット又は顆粒を形成することを含み、ステップd)は、ペレット又は顆粒をフィルムに形成することを含み;より好ましくは、ペレット又は顆粒は第2の押出機に通されてフィルムが形成され、任意に第2の押出機は単軸又は二軸押出機であってもよい、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ステップc)が、溶融物を押し出すことを含み、前記溶融物が続いてステップd)で処理されてフィルムを形成し;好ましくは、水溶性溶融物を、少なくとも1つの開口部を備えるダイプレートを通して少なくとも1本のロープの形態で押し出して、1つ又は複数の切断ブレードを使用して前記ロープ又は各ロープを切断してペレット又は顆粒にすることによって、ペレット又は顆粒が形成され、ここで、1つ又は複数の切断ブレードは1つ又は複数の回転切断ブレードであってもよく;又は、好ましくはペレット又は顆粒が第2の押出機に通されてフィルムが形成され、ここで、任意に第2の押出機は単軸又は二軸押出機であってもよい、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水溶性フィルムを含む水溶性パッケージであって、好ましくは、前記水溶性パッケージが組成物を含み、より好ましくは、前記組成物が自動食器洗い用組成物である、水溶性パッケージ。
【請求項14】
水溶性パッケージを調製するための方法であって、
a)請求項1~6のいずれか1項に記載の第1のフィルムを熱成形して、少なくとも1つのポケットを製造するステップ、
b)前記ポケット又は各ポケットを組成物で少なくとも部分的に充填するステップ、及び
c)第2のフィルム、好ましくはポリビニルアルコールフィルム、より好ましくは請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルムを、充填された前記ポケット又は充填された各ポケットの上部に配置するステップ、及び
d)第1のフィルムと第2のフィルムを一緒にシールするステップ
を含む、方法。
【請求項15】
組成物を包装するための、請求項1~6に記載の水溶性フィルムの使用であって、好ましくは組成物が、自動食器洗い組成物、洗剤組成物、又は洗濯用組成物である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、水溶性フィルムに関する。より具体的には、水溶性フィルムは、2種以上(more than one)の水溶性ポリビニルアルコール樹脂を有し、所望の形成特性及びシール特性を有する。本発明はさらに、水溶性フィルム、特にポリビニルアルコール樹脂を含む水溶性パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
例えば水溶性自動食器洗浄機(ADW)用カプセルの製造など、複雑なマルチチャンバー熱成形プロセスに使用される現在市販されている水溶性フィルムは、主に水溶液キャストプロセスによって製造されている。このプロセスは、フィルム内の水分含量が3%を超えることを可能にし、これは可塑剤として作用することでフィルムに弾力性を与える。
さらに、このようなキャスト溶液プロセスでは、ポリビニルアルコール-ポリカルボキシレート-ポリ酢酸ビニルコポリマー樹脂を使用することができる。これらのポリマーでは、ポリビニルアルコールホモポリマーと比較して、より自由に特性を調整できる。しかしながら、これらのコポリマーは、溶融温度が高いので分解する傾向があるため、押出成形プロセスでは使用できない。さらに、このプロセスは、すべての固体材料を溶解し、水を蒸発させるのに必要な大量のエネルギーも必要とする。さらに、製造設備は乾燥工程のため広大なスペースを必要とする。
ブロー押出プロセスで製造された水溶性フィルムも入手可能である。これらのフィルムは、熱成形に必要な、求められる均一な厚さを達成できるようにブロープロセスを制御することが難しいため、主にシュリンクラップなどの用途に使用される。ブロー押出を使用して加工された水溶性フィルムは、組成物を溶融してフィルムを製造する前に、2~3回の熱応力ステップ、即ち、高せん断力下で固体と液体をブレンドし、押出機内で材料を配合するステップにさらされる。ブロー押出プロセスのさらなる困難及び制限は、水溶性フィルムに液体可塑剤を高量でブレンドすることが難しいことである。
【0003】
本発明の実施形態の目的の1つは、これらの制限を克服し、熱成形して成分の適切な包装にするのに望ましい特性を有する押出水溶性フィルムを開発することである。
フィルムが熱成形に適しており、望ましい特性を備えているためには、弾性再収縮を可能にする熱成形温度にさらされるのに適していなければならず、成形ステップ中に200~950mbarの成形真空レベルに3秒未満さらされる間、フィルムは化学的及び物理的堅牢性を備えていなければならない。これが、熱成形包装の場合、消費者による包装内のすべての成分への偶発的接触をなくすのを確実にし、これにより、通常の使用中に洗剤の活性成分との接触を避ける必要がある洗剤の包装の場合に特に重要である;フィルムは、20Nを超えるシール強度(シールされた試験片を引き離す引張試験機によって測定)又は300Nを超えるシール強度(圧縮力試験機によって測定)を達成する必要があり;フィルムは、活性組成物の漏れを防ぐために、熱劣化に対して長期のシール安定性を示さなければならない。
【0004】
ヒートシールプロセス中に適切な機械的安定性を確保するには、高重量平均分子量のポリマーが必要であることが知られている。残念ながら、これらのポリマーは溶融粘度が高いため、キャスト押出時に問題となる。さらに、高重量平均分子量ポリマーを単独で含むフィルムは、熱成形プロセスに必要な弾性特性を有しないことが分かっている。
高重量平均分子量のポリビニルアルコール樹脂を含み、液体可塑剤の含有量が低い水溶性フィルムは、マルチコンパートメント製品において不十分な成形挙動を示した。
欧州特許第2529002号には、フィルムにおける異なる高重量平均分子量のポリビニルアルコール樹脂の組み合わせが記載されている。しかしながら、欧州特許第2529002号は、低重量平均分子量のポリビニルアルコール樹脂の存在を開示しておらず、直接押出プロセスについても記載していない。上で述べたように、高重量平均分子量のポリビニルアルコール樹脂は高い溶融粘度を示し、これはキャスト押出プロセス中に問題となる。さらに、高重量平均分子量のポリビニルアルコール樹脂は、熱成形プロセスに必要な弾性特性を備えていない。従って、欧州特許第2529002号は、本発明の所望のフィルム特性を有していない。
【0005】
本発明は、熱シールプロセスに適した堅牢性の向上に加えて、溶融粘度が低下し、所望の弾性特性を有する水溶性フィルムを提供することによって、上記の問題を解決することを目的とする。さらに、本発明の目的は、シール強度が高く、成形特性が向上した水溶性フィルムを開発することである。
本発明の実施形態の目的はまた、水溶性フィルムを製造するための改良されたプロセスを提供することである。
さらに、本発明の実施形態の目的は、水溶性フィルムを含む改良された水溶性パッケージを提供することである。
また、本発明の実施形態の目的は、本明細書に明示的に開示されているか否かにかかわらず、従来技術の少なくとも1つの問題を克服することである。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明の第1の態様によれば、2種以上のポリビニルアルコール樹脂、及びフィルムの少なくとも20質量%の量で存在する少なくとも1種の可塑剤を含む水溶性フィルムであって、少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂が少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有し、少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂が50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する、水溶性フィルムが提供される。
水溶性フィルムは、少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂、及び50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂、並びにフィルムの少なくとも20質量%の量で存在する可塑剤を有するので、水溶性フィルムは、熱シールプロセスに適した堅牢性の向上に加えて、所望の弾性特性を持ちながら、低い溶融粘度を有する。
驚くべきことに、本発明によるフィルムは、異なる重量平均分子量のポリビニルアルコール樹脂及び少量の可塑剤の組み合わせを有さない水溶性フィルムと比較した場合、より高いシール強度及びより良好な成形特性を有することも発見された。
「水溶性」という用語は、本明細書では、20℃で10分以内に水に少なくとも部分的に溶解又は分散する材料を指すのに使用される。「水溶性パッケージ」という用語は、本明細書では、20℃の水中で10分以内に少なくとも部分的に分散、崩壊、又は破裂して、パッケージの内容物が周囲の水中に流出することが可能となるパッケージを指すのに使用される。
本明細書に記載されるすべての重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
【0007】
少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂は、少なくとも60,000、70,000、80,000、90,000又は少なくとも100,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。
少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂は、50,000~150,000g/モル、又は60,000~140,000g/モル、又は70,000~130,000g/モル、80,000~120,000g/モル、又は最も好ましくは90,000~110,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。
有利には、少なくとも50000g/モルの重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂の存在が、ヒートシールプロセス中の適切な機械的安定性を確実にする。
少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂は、多くとも48,000、46,000、又は多くとも45,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。
少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂は、20,000~50,000g/モル、又は25,000~50,000g/モル、又は30,000~50,000g/モル、又は最も好ましくは35,000~50,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。
有利には、50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂の存在が、溶融粘度の低下を可能にし、熱シールプロセスに適した堅牢性の向上に加えて、所望の弾性特性を提供する。
【0008】
ポリビニルアルコール樹脂は冷水可溶性であってもよい。例えば、ポリビニルアルコール樹脂は、20℃の温度で可溶性であり得る。
ポリビニルアルコール樹脂は、60%~99%、好ましくは80%~99%、さらにより好ましくは80%~90%、最も好ましくは87%~89%の加水分解度を有し得る。有利には、これが、材料の溶解特性を改善する。本明細書で使用される場合、加水分解度は、ビニルアルコール単位に変換された酢酸ビニル単位の百分率として表される。
ポリビニルアルコール樹脂の粘度は、ポリビニルアルコール樹脂の重量平均分子量と相関があることが知られている。従って、本発明の水溶性フィルムの特定の重量平均分子量の組み合わせの利点への言及は、同じ特性に対する異なる粘度のポリビニルアルコール樹脂の組み合わせの効果にも当てはまる。
本明細書において、センチポイズ(cP)で指定されるすべての粘度は、20℃における4%ポリビニルアルコール水溶液の粘度を指す。
【0009】
少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂は、少なくとも7cPの粘度を有し得る。好ましくは、少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂は、10~25cP、最も好ましくは15~21の粘度を有する。
50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂は、7cP未満の粘度を有し得る。好ましくは、50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂は、4.0~6.5cPの粘度を有する。
ポリビニルアルコール樹脂は、フィルムの60質量%~85質量%の量で存在し得る。好ましくは、ポリビニルアルコール樹脂はフィルムの70~80質量%の量で存在する。
少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂と、50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂との比は、1:1~12:1、又は、1:1~9:1、1:1~8:1、1:1~7:1、1:1~6:1、1:1~5:1、1:1~4:1、1:1~3:1、1:1~2:1、又は好ましくは2:1~2.75:1であり得る。
好ましくは、少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂と、50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂との比は、2.75:1である。
【0010】
可塑剤は、室温又は周囲温度で液体の可塑剤であってもよい。例えば、可塑剤は約20~25℃で液体であってもよい。
「室温又は周囲温度で液体」とは、1気圧における可塑剤の融点が約20~25℃以下であることを意味する。
驚くべきことに、液体可塑剤を使用すると、得られるフィルムの成形特性とシール強度が向上することが発見された。
可塑剤は、グリセリン(グリセロール:glycerol)及びその誘導体、C2-C6アルキレングリコール及びその誘導体、ポリアルキレングリコール、カルボン酸のエステル、及びそれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
本発明での使用に適したC2-C6アルキレングリコールの例としては、エチレングリコール、1,2プロピレングリコール、1,3プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、及びヘキシレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。ポリアルキレングリコールの例は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
カルボン酸のエステルの例としては、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸又はコハク酸のエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
可塑剤は、フィルムの少なくとも21%、22%、23%、24%又は少なくとも25%の量で存在してもよく、好ましくはフィルムの20~35質量%の間の量で存在する。
液体可塑剤は、フィルムの少なくとも21%、22%、23%、24%又は少なくとも25%の量で存在してもよく、好ましくはフィルムの20~35質量%の量で存在する。
有利には、フィルムの20~35質量%という高い可塑剤含有量は、フィルムの成形特性を改善する。これは、可塑剤がガラス転移温度を低下させ、従ってフィルムに柔軟性を与えるためであると考えられる。
フィルムは、2種以上の可塑剤を含んでもよい。好ましくは、フィルムは可塑剤のブレンドを含んでもよい。
好ましくは、フィルムはグリセリンと1,2プロピレングリコールのブレンドを含む。
【0012】
驚くべきことに、フィルムが2種以上の可塑剤、特にグリセリンとアルキレングリコール(1,2、プロピレングリコールなど)のブレンドを含む場合、フィルムのシール強度が増加することが発見された。理論に束縛されるものではないが、これは、ポリビニルアルコールヒドロキシル基と可塑剤の異なる分子サイズとの相互作用によるものであると考えられる。
可塑剤のブレンド、例えばグリセリンと1,2プロピレングリコールのブレンドの比は、1:1~8:1、例えば2:1~6:1の間、最も好ましくは4:1であり得る。
水溶性フィルムは、室温又は周囲温度で固体である可塑剤をさらに含んでもよい。
「室温又は周囲温度で固体」とは、1気圧における可塑剤の融点が約20~25℃より高いことを意味する。
適切な固体可塑剤は、周囲温度で固体又はワックス状である。適切な固体可塑剤は、固体ポリオール及び他の炭水化物を含む。
炭水化物は通常、一般化された式Cx(H2O)yで表される。本明細書での用語は、この式では完全に表すことができないグルコン酸やアミノ糖のような性質が似ている物質も含む。
【0013】
適切な固体ポリオールは、ソルビトール、グルシトール、マンニトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、イソマルトース及びイソマルトなどの糖アルコールを含む。
水溶性フィルムは一層から構成されていてもよいし、複数の層から構成されていてもよい。
水溶性フィルムは、1種又は複数の加工助剤をさらに含んでもよい。適切な加工助剤としては、モノ、ジ、トリカルボン酸/その塩、ステアリン酸などの脂肪酸/その塩、モノ、ジ、又はトリグリセリド/その塩、ヒュームドシリカ並びに無機及び有機顔料を含む。
ブロッキング防止剤もまたフィルム中に存在してもよい。適切なブロッキング防止剤は、シリカ、タルカム、ゼオライト、及びデンプンを含む。
本発明の第2の態様では、2種以上のポリビニルアルコール樹脂、及びフィルムの少なくとも20質量%の量で存在する少なくとも1種の可塑剤を含む水溶性フィルムを製造するための直接キャスト押出方法であって、ポリビニルアルコール樹脂のうち少なくとも1種が少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有し、ポリビニルアルコール樹脂のうち少なくとも1種が50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する、方法が提供される。
驚くべきことに、本発明による水溶性フィルムを直接キャスト押出方法で製造すると、透明性が良く、未溶融粒子が無い又は極めて少ないレベルのフィルムの押出が可能になることが発見された。
【0014】
直接キャスト押出方法は、
a)少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂、及び50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂を、押出機に供給するステップ、
b)押出機内でポリビニルアルコール樹脂を少なくとも1種の可塑剤と合わせて混合物を形成するステップ、
c)混合物をダイを通して押し出して、2種以上のポリビニルアルコール樹脂、及び組成物の少なくとも20質量%の量で存在する少なくとも1種の可塑剤を含む水溶性組成物を形成するステップであって、ポリビニルアルコール樹脂のうち少なくとも1種が少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有し、ポリビニルアルコール樹脂のうち少なくとも1種が50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する、ステップ、及び
d)水溶性組成物から水溶性フィルムを形成するステップ
を含んでもよい。
ステップc)及びd)を組み合わせて、ステップb)で形成された混合物をダイを通して押し出して、2種以上のポリビニルアルコール樹脂及びフィルムの少なくとも20質量%の量で存在する少なくとも1種の可塑剤を含む水溶性フィルムを形成することを含む単一のステップc)としてもよく、ここで、ポリビニルアルコール樹脂のうち少なくとも1種は少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有し、ポリビニルアルコール樹脂のうち少なくとも1種は50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する。
【0015】
或いは、ステップc)は、溶融物を押し出すことを含んでもよく、この溶融物は続いてステップd)で処理されてフィルムを形成する。このような実施形態では、ステップc)は、水溶性塊の複数のペレット又は顆粒を形成することを含み得、ステップd)は、ペレット又は顆粒をフィルムに形成することを含み得る。
ペレット又は顆粒は、水溶性溶融物を、少なくとも1つの開口部を備えるダイプレートを通して少なくとも1本のロープの形態で押し出し、1つ又は複数の切断ブレードを使用して該ロープ又は各ロープを切断してペレット又は顆粒にすることによって形成してもよく、ここで、1つ又は複数の切断ブレードは1つ又は複数の回転切断ブレードであってもよい。
ペレット又は顆粒を第2の押出機(例えば単軸又は二軸押出機であってよい)に通してフィルムを形成してもよい。
【0016】
本発明の第3の態様では、本発明による水溶性フィルムを含む水溶性パッケージが提供される。水溶性パッケージは、本発明の第2の態様の方法を使用して製造することができる。
本発明の第4の態様では、組成物を含む、本発明の第3の態様の水溶性パッケージが提供される。
本発明の第5の態様では、水溶性パッケージを調製する方法であって、
a)本発明の第1のフィルムを熱成形して、少なくとも1つのポケットを製造するステップ、
b)該ポケット又は各ポケットを組成物で少なくとも部分的に充填するステップ、及び
c)第2のフィルム、好ましくはポリビニルアルコールフィルムを、充填されたポケット又はそれぞれの充填されたポケットの上に配置するステップ、及び
d)第1のフィルムと第2のフィルムを一緒にシールするステップ
を含む、方法が提供される。
いくつかの実施形態では、第2のフィルムも本発明のフィルムである。
ポケットはフランジ又はリムを備えてもよく、第2のフィルムは少なくともフランジ又はリム上で第1のフィルムにシールされてもよい。
組成物はステップb)でポケットに配置され、第2のフィルムがフランジ又はリム上にポケットを横切って配置され得る。
【0017】
ステップa)は、フィルム内に2つ以上のポケット、例えば2つ、3つ又は4つのポケットを熱成形することを含んでもよい。各ポケットは、異なる組成物、同じ組成物、又は組成物の任意の組み合わせで充填され得る。
ステップb)において、ポケット又は各ポケットを組成物で完全に充填することができる。各ポケットを部分的に充填すると、パッケージが衝撃を受けた場合にパッケージが破裂するリスクが軽減され得、パッケージが高温にさらされた場合に漏れのリスクが軽減され得る。
フィルムは、ステップd)において、例えばフランジ又はリムを横切ってヒートシールすることによって一緒にシールされる。適切なヒートシール温度は、例えば120~195℃の間、例えば140~190℃である。適切なシール圧力は、例えば250~800kPaである。シール圧力の例は、使用するヒートシール機に応じて、276~552kPa(40~80p.s.i.)、特に345~483kPa(50~70p.s.i.)又は400~800kPa(4~8bar)、特に500~700kPa(5~7bar)である。適切なシール滞留時間は少なくとも0.4秒、例えば0.4~2.5秒である。フィルムを一緒にシールする他の方法、例えば、赤外線、高周波、超音波、レーザー、溶剤、振動、電磁気、熱ガス、ホットプレート、インサートボンディング、フラクションシーリング又はスピン溶接を使用してもよい。水又はポリビニルアルコールの水溶液などの接着剤も使用することができる。接着剤は、スプレー、転写コーティング、ローラーコーティング、又はその他のコーティングによってフィルムに適用することができ、或いはフィルムに接着剤のミストを通過させることもできる。シールも水溶性であることが望ましい。
【0018】
本発明の第1のフィルムは一般に、熱成形前の厚さが20~500μm、特に70~400μm、例えば70~300μm、最も好ましくは70~160μm、特に80~150μmであり得る。第2のフィルムは一般に熱成形されることができないため、第2のフィルムの厚さは第1のフィルムの厚さより薄くてもよく、従ってシートの局所的な薄化は起こらない可能性がある。第2のフィルムの厚さは、一般に20~150μm、好ましくは40~90又は100μm、より好ましくは50~80μmであってよい。しかしながら、70~150μmの厚さを有するフィルムを使用することもできる。
必要に応じて、第1のフィルムが熱成形される前に、第1のフィルムが第2のフィルムの厚さよりも大きい厚さを有することができるように、フィルムを選択することができる。このような実施形態では、第1のフィルムが熱成形された後、第1のフィルムは第2のフィルムの厚さよりも薄い厚さを有し得る。
【0019】
パッケージに充填される組成物は特に限定されない。それは、水系に添加されるか、又は水性環境で使用される任意の組成物であり得る。
この組成物は、食器洗い用、軟水化用、洗濯用若しくは洗剤用の組成物、又はすすぎ助剤であってもよい。この場合、それは、洗濯機などの家庭用洗濯機、又は特に自動食器洗浄機を含む食器洗い機での使用に特に適している。
各ポケット内の組成物の性質は限定されない。例えば、各ポケット内では独立して固体又は液体であってもよい。固体の形態である場合、組成物は、例えば、粉末、顆粒、押出錠剤、圧縮錠剤、又は固化ゲルの形態であってよい。液状の場合には、増粘剤やゲル化剤を用いて増粘又はゲル化させてもよい。1つ又は2つ以上の相が存在してもよい。例えば、各ポケットは、液体組成物と、例えばボール、丸薬、顆粒又は斑点の形態の別個の固体組成物で独立して充填され得る。或いは、2つ以上の固相、又は2つ以上の非混和性液相が存在してもよい。
【0020】
従って、各ポケット内の組成は均一である必要は無い。例えば、製造中に、少なくとも1つのポケットを最初に硬化可能な組成物、例えばゲルで充填し、次に液体、特に水性組成物などの異なる組成物で充填することもできるし、又は組成物を別個のポケットに充填することもできる。第1の組成物は、例えば洗浄プロセス中にゆっくりと溶解し、そのチャージを長期間にわたって送達することができる。これは、例えば、柔軟剤などの成分を即時、遅延、又は持続的に送達するのに役立つ可能性がある。
2つ以上のパッケージが同時に形成される場合、パッケージされた組成物は次いで互いに分離され得る。
或いは、それらを結合したままにし、例えば、後の段階、例えば消費者による、又はパッケージのさらなる加工中に容易に分離できるように、個々のパッケージの間にミシン目を設けることができる。
パッケージが分離されている場合、フランジはその場に残される場合がある。しかしながら、より魅力的な三次元の外観を提供するために、フランジは部分的に除去されることが望ましい。一般に、2つのフィルムを互いに確実に接着したままにするためには、ある程度のフランジが必要であることを念頭に置きながら、美観を考慮して残りのフランジはできるだけ小さくする必要がある。0.1mm~5mmのフランジが望ましく、好ましくは0.5mm~4mm、より好ましくは1mm~3mm、最も好ましくは約2mmである。
【0021】
その後、パッケージを大気中の水分を吸収させるために放置するか、又は、すぐに箱に詰めて小売販売することができる。パッケージ自体は、必要に応じて外側パッケージ、例えば、水溶性パッケージが使用される前に除去される非水溶性外側パッケージ材料に包装されてもよい。
本発明のパッケージは、一般に、その使用目的に応じて、水性組成物などの組成物5~100g、特に15~40gを含有する。例えば、食器洗い用組成物の重さは9~20gであり得、軟水化組成物の重さは10~40gであり得、洗濯用組成物の重さは10~40g、特に10~30gであり得る。
ポケットは任意の形状を有し得る。例えば、それらは、封筒、小袋、球、半球、球の一部、円柱、立方体(角の丸い立方体を含む)又は直方体(角の丸い直方体を含む)、すなわち面がすべて同じではない又は不規則な形状の直方体の形をとることができる。一般に、パッケージは剛性がなく、膨張しているため、側面は平面ではなく、むしろ凸面になっている。パッケージが熱成形フィルムと平面フィルムから形成されている場合、2つのフィルム間の継ぎ目はパッケージのもう一方の面ではなく片面により近く現れる。パッケージの製造後のポリビニルアルコールフィルムの収縮によるパッケージの変形とは別に、必要に応じて製造段階でも変形が発生し得る。例えば、ポケットの高さよりも高い高さを有する固体又はゲル状の組成物(例えば錠剤の形態)でポケットが充填されている場合、第2のフィルムはポケットの上部に置かれたときに変形するであろう。
【0022】
一般に、パッケージの充填部分(ポケット)の最大寸法(フランジを除く)は、10cm×10cm、好ましくは8cm×8cmである。洗濯洗剤組成物の場合、パッケージの充填部分の最大寸法は、好ましくは8cm×8cmであるが、自動食器洗い洗剤組成物の場合、最大寸法は、例えば6cm×6cm以下など、より小さくてもよい。
組成物は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性若しくは両性イオン性界面活性剤又はそれらの混合物などの界面活性剤を含有してもよい。
食器洗い組成物は、洗浄力ビルダーを含んでもよい。ビルダーは、好ましくはリン酸塩不含有のビルダーである。ビルダーは、ヒドロキシカルボン酸塩(クエン酸塩、例えば無水でもよいクエン酸三ナトリウムなど)、アミノカルボン酸塩(メチルグリシン二酢酸(MGDA)など)、又はN,N-ジカルボキシメチルグルタミン酸塩(GLDA)、ジカルボン酸アミン(イミノジコハク酸(IDS)など)及び/又はリン酸塩(トリポリリン酸など)、又はそれらの塩、から選択される1種又は複数の小分子ビルダーを含んでもよい。
【0023】
組成物は、特に洗濯用又は食器洗い組成物として使用される場合、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ及びペルオキシダーゼ酵素などの酵素を含んでもよい。
組成物は、必要に応じて、増粘剤又はゲル化剤を含んでもよい。
組成物はまた、1種又は複数の追加の成分を含んでもよい。これらは、さらなる界面活性剤、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、漂白促進剤、ビルダー、泡立ち促進剤又は泡抑制剤、変色防止剤及び腐食防止剤、有機溶媒、共溶媒、相安定剤、乳化剤、防腐剤、土壌懸濁剤、土壌剥離剤、殺菌剤、pH調整剤又は緩衝剤、非ビルダーアルカリ源、キレート剤、スメクタイト粘土などの粘土、酵素安定剤、石灰スケール防止剤、着色剤、染料、ヒドロトロープ、移染防止剤、光沢剤及び香水などの従来の洗剤組成物成分を含む。使用する場合、そのような任意の成分は、一般に、組成物の総質量の10質量%以下、例えば1~6質量%を構成する。
酵素を含む組成物は、酵素の安定性を維持する物質を含有してもよい。このような酵素安定剤としては、例えば、プロピレングリコールなどのポリオール、ホウ酸及びホウ砂を含む。これらの酵素安定剤の組み合わせを使用することもできる。酵素安定剤を使用する場合、酵素安定剤は一般に組成物の0.1~1質量%を構成する。
【0024】
組成物は、組成物のpHを最適レベルに調整又は維持する成分を含んでもよい。pH調整剤の例は、NaOH及びクエン酸である。pHは、組成物の性質に応じて、例えば1~13、例えば8~11であり得る。例えば、食器洗い組成物は望ましくは8~11のpHを有し、洗濯用組成物は望ましくは7~9のpHを有し、軟水化組成物は望ましくは7~9のpHを有する。
好ましくは、組成物は自動食器洗浄用組成物である。
本発明の第6の態様では、本明細書に記載の組成物を包装するための、本発明による水溶性フィルムの使用が提供される。
本発明の第7の態様では、洗剤又は洗濯用組成物を包装するための、本発明による水溶性フィルムの使用であって、該組成物は上記の通りであってもよい、使用が提供される。
本発明のさらなる態様は、所望に応じて、又は必要に応じて、本明細書に記載される本発明の他の態様の特徴のいずれかを組み込むことができる。
発明の詳細な説明
本発明をより明確に理解できるように、例としてのみ、その1つ又は複数の実施形態をここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の水溶性フィルムの実施例と本発明以外の水溶性フィルムの参考例を示す表である。
【実施例
【0026】
本発明の水溶性フィルム及び本発明によらない水溶性フィルムを含む参考例を、図1の実施例1、2、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、22及び23、参考例3、4、5、6、14、18、19、20及び21に示された通り調製した。
シール強度試験
図1の水溶性フィルムのシール強度を評価するための試験を考案した。
図1の水溶性フィルムを、400mmのフラットダイを有する二軸押出機(ZK25*42D、直径:25mm、長さ[L/D]:42(7*6D)=1050mm、速度:300~600rpm)を使用する本発明の直接キャスト押出方法を使用して製造した。
試験には、Bruggerシール装置を使用して、160℃、400Nの圧力で水溶性フィルムを共にシールすることを伴った。
ダイを使用してシールされたフィルムから15mm×9cmのサンプルを切り出し、サンプルをZwick引張強度試験機に置いた。次いで、シールが破られるまでフィルムを引き離し、シールを破るのに必要な力を最大力として記録した。
シール強度試験は、ポリビニルアルコールの重量平均分子量がシール強度に及ぼす影響を測定するために実施した。
【0027】
シール強度試験の結果を以下の表1に示す。
【表1】


参考例3~6から、重量平均分子量が高くても低くても、単一のポリビニルアルコール樹脂のみを有する水溶性フィルムは、フィルムの20質量%の量の可塑剤の存在下で許容可能なシール強度を有することが分かる。
【0028】
対照的に、参考例3~6は、単一のポリビニルアルコール樹脂のみで調製されたフィルムは、フィルムがフィルムの30質量%の量で存在する可塑剤を含む場合、直ちに破壊されることを示す。
驚くべきことに、実施例1及び2から分かるように、重量平均分子量100,000g/モルのポリビニルアルコール樹脂と重量平均分子量44,000g/モルのポリビニルアルコール樹脂の両方を含むフィルムは、100,000g/モル又は44,000g/モルの重量平均分子量を有する単一のポリビニルアルコール樹脂のみを含むフィルムよりも高いシール強度値を有するフィルムを提供する。
シール強度に対する可塑剤の影響を調べるために、シール強度試験も実施した。
【0029】
シール強度試験の結果を以下の表2に示す。
【表2】

【0030】
表2から、液体可塑剤としてグリセリンのみを含むフィルム(実施例1、2及び7)は、液体可塑剤の量が増加するとシールが弱くなることを示すことが分かる。1,2プロピレングリコールのみを用いて調製されたフィルム(実施例8、9及び10)は、1,2プロピレングリコールの量が増加すると、シール強度がわずかに増加することを示す。
驚くべきことに、液体可塑剤のブレンドを含むフィルム(実施例11、12及び13)は、試験において最も高いシール強度を示した。
【0031】
成形評価試験
水溶性フィルムの成形特性を測定するために、90μmフィルムを100~130℃の間のさまざまな温度に設定した成形プレートの下の3つのコンパートメントのキャビティに置き、450又は800mbarの真空を適用した。
各フィルムは所望の形状に熱成形され、訓練された評価者による視覚的評価を使用して、成形挙動を評価した。形状の完全な形成が観察された場合にはスコア0が記録され、形状の形成が観察されなかった場合にはスコア8が記録される。
フィルムの成形特性に対するポリビニルアルコール樹脂の存在の影響は、上記の成形評価試験を使用して決定した。
【0032】
この試験の結果を表3に記録した。
【表3】

【0033】
上の表に示すように、少なくとも50,000g/モルの重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂、及び50,000g/モル未満の重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリビニルアルコール樹脂を有する本発明による水溶性フィルムは、低重量平均分子量ポリビニルアルコール樹脂又は高重量平均分子量ポリビニルアルコール樹脂のいずれかを単独で含むフィルムと比較した場合、改善された成形特性を示す。
【0034】
参考例20及び21は、孔や粒子が多く存在するため、適切な方法で材料を加工することができず、適切なフィルムを提供することができなかった。
上記の成形評価試験は、フィルムの成形特性に対する可塑剤の量の影響を決定するためにも使用された。この試験の結果を表4に示す。
【表4】


上の表に示すように、フィルムの20質量%から始めて可塑剤の量を増やしていくと、特に高温で、改良された成形特性を提供していることが分かる。
【0035】
フレーム溶解試験
本発明の水溶性フィルムの溶解特性を測定するために、実施例2のフィルムの45×37mmサンプルをフレーム内に置き、次いで室温で撹拌している800mLの水に加えた。サンプルに穴が現れるまでにかかった時間、及び完全に水溶性フィルムサンプルが溶解するまでの時間を記録する。
この試験の結果を表5に示す。
【表5】

【0036】
表5から、本発明による水溶性フィルムは、特に洗剤用途での使用に適した溶解時間を有することが分かる。
要約すると、表1~4に示す結果から、本発明による水溶性フィルムは、良好な溶解特性を維持しながら、改善された成形特性及びシール強度を有することが分かる。
対照的に、単一のポリビニルアルコール樹脂のみを含む水溶性フィルム、特に少量の液体可塑剤を含む水溶性フィルムは、例えば、フィルムは高いシール強度を示すが成形可能ではない、又はその逆のような、重要な特性を損なっていることが分かる。本発明によるフィルムのみが、所望の特性のすべてを提供する。
貯蔵特性
本発明によるフィルムと、50,000g/モルを超える重量平均分子量を有する単一のポリビニルアルコール樹脂のみを含むフィルムとを用いたマルチコンパートメント洗剤パウチを、熱成形(及びヒートシール)によって調製し、各30パウチを充填したドイパック中で、さまざまな条件で6週間保管した。
ゲルを含むコンパートメントの最大圧縮力を、コンパートメントが破裂するまで測定した。20回の測定から平均最大圧縮力を記録した。結果を表6に示す。
【0037】
【表6】


上記の表において、フィルムAは、50,000g/モルを超える重量平均分子量を有するポリビニルアルコール樹脂と50,000g/モル未満の重量平均分子量を有するポリビニルアルコール樹脂との組み合わせを含む。さらに、フィルムAは24%のグリセリンと1.2%の加工助剤及びブロッキング防止剤を含む。対照的に、フィルムBは、50,000g/モルを超える重量平均分子量を有するポリビニルアルコール樹脂のみを含む。フィルムBはさらに、24%のグリセリン及び1.2%の加工助剤及びブロッキング防止剤を含む。
【0038】
表6の結果から、本発明によるフィルムは、6週間にわたる保管後、本発明によらないフィルムと比較した場合、改善された保存安定性を示し、パウチフィルムは著しく少ない劣化を示したことが分かる。
水溶性パッケージの調製
実施例1及び2に提示した本発明のフィルムを、3コンパートメントキャビティを使用する熱成形機で試験して、水溶性洗剤パッケージを調製した。
最初のステップでは、フィルムをキャビティの上で加熱プレートの下に置いた。次いで、加熱プレートをフィルムに接触させ、成形真空を適用した。残りのプロセスステップでは、フィルムをキャビティ内に保持するために真空保持を適用した。3つのコンパートメントに所望の洗剤組成物を充填し、同じ組成物の密封フィルムを充填されたキャビティの上に置いた。次に、加熱したシーリングプレートをシーリングフランジに押し付けて、上部と下部のフィルムを合わせて溶接した。シーリングステップの後、パッケージを切断し、真空保持を停止して、キャビティからパッケージを取り出せるようにした。
【0039】
本発明の水溶性フィルムは、明らかな欠陥がなく、優れた成形特性及びシール特性を備えた洗剤パッケージを形成し;表5に提示したように、溶解特性は、自動食器洗い又は洗濯用途に適していた。
当然のことながら、本発明は、例としてのみ説明した前述の実施例に限定されることを意図したものではないことを理解されたい。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
【国際調査報告】