(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】抗CD3抗体変異体、融合タンパク質および適用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240528BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240528BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240528BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20240528BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20240528BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240528BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240528BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20240528BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240528BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240528BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240528BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240528BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240528BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C07K19/00
C07K14/54
C07K14/715
C07K16/30
C07K14/47
C12N15/24
C12N15/12
C12N15/62 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 E
A61K38/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574487
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2022096501
(87)【国際公開番号】W WO2022253248
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】202110628817.3
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521501093
【氏名又は名称】クレ バイオテクノロジ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チー シャンドン
(72)【発明者】
【氏名】パン チン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA41
4C084DA12
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB01
4C085BB11
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
抗CD3抗体変異体、融合タンパク質および適用を提供する。抗CD3抗体に対して突然変異を行うことによって、その変異体を得られる。提供される融合タンパク質は、(1)抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3二重特異性抗体、(2)抗腫瘍関連抗原(TAA)、抗CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質、(3)抗腫瘍関連抗原(TAA)およびIL15/IL15Ra含有融合タンパク質を含む。抗体分子をコード核酸分子およびベクター、ならびに抗体分子の製薬用途をさらに提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD3抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、VLCDR1、VLCDR2、VLCDR3を含み、前記抗CD3抗体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:29~34に示されるVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3を含む抗CD3抗体変異体であって、
前記抗CD3抗体変異体の突然変異部位は、
SEQ ID NO:30に示される配列の10番目の部位、
SEQ ID NO:31に示される配列の2番目の部位および7番目の部位、
SEQ ID NO:33に示される配列の3番目の部位および4番目の部位、
SEQ ID NO:34に示される配列の4番目の部位、5番目の部位、6番目の部位および7番目の部位のいずれか一つまたは二つ以上を含むことを特徴とする、前記抗CD3抗体変異体。
【請求項2】
前記突然変異とは、アミノ酸が置換されることを指すことを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項3】
変異体の突然変異部位は、
SEQ ID NO:30に示される配列における10位のAがEに置換され、
SEQ ID NO:31に示される配列における2位のGがSに置換され、7位のSがGに置換され、
SEQ ID NO:33に示される配列における3位のNがWに置換され、4位のKがLに置換され、
SEQ ID NO:34に示される配列における4位のYがNまたはRに置換され、5位のSがKに置換され、6位のNがGに置換され、7位のLがGに置換される部位のいずれか一つまたは二つ以上を含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項4】
VHCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:35に示されたとおりであるか、または、
VHCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:36に示されたとおりであるか、または、
VLCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:37または38に示されたとおりであるか、または、
VLCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:39、40または41に示されたとおりであることを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項5】
前記VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3のアミノ酸配列は、
(1)SEQ ID NO:29、35、31、32、37、39、
(2)SEQ ID NO:29、35、36、32、37、40、
(3)SEQ ID NO:29、35、36、32、38、41、のいずれかの一組の配列に示されたとおりであることを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項6】
前記抗体変異体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:1、2または3に示される配列の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域から選択されるか、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有することを特徴とする
請求項5に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項7】
前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域との間には、ジスルフィド結合を形成するための突然変異があり、前記突然変異の部位は、次のいずれか一種または二種以上の組み合わせを含み、突然変異部位は、EUに従って番号付けられ、前記重鎖可変領域は、VHで表され、前記軽鎖可変領域は、VLで表されることを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【表1】
【請求項8】
前記抗CD3抗体変異体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4またはその変異体から選択される重鎖定常領域、ならびにヒトκ鎖、λ鎖またはその変異体から選択される軽鎖定常領域をさらに含み、前記重鎖定常領域は、Fc断片またはその変異体を含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項9】
前記抗体変異体は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、および前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むscFvであり、前記連結断片のアミノ酸配列は、好ましくは若干のGGGGSリピート、より好ましくは3個のGGGGSリピートであることを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項10】
癌を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗CD3抗体変異体の適用。
【請求項11】
前記癌は、結腸直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、前立腺、腎臓、子宮頚、骨髄がん、リンパ腫、白血病、甲状腺、子宮内膜、子宮、膀胱、神経内分泌、頭頚部、肝臓、鼻咽頭、精巣、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群から選択されるか、または前記の部位で発生することを特徴とする
請求項10に記載の適用。
【請求項12】
核酸分子であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗CD3抗体変異体をコードすることを特徴とする、前記核酸分子。
【請求項13】
発現ベクターであって、
請求項12に記載の核酸分子を含むことを特徴とする、前記発現ベクター。
【請求項14】
抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子であって、
第1の単量体および第2の単量体を含むヘテロ二量体形態であり、
前記第1の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片および第1のFc鎖を含み、
前記第2の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片、抗CD3抗体断片および第2のFc鎖を含み、
前記軽鎖断片は、VLドメインおよびCLドメインを含み、前記Fd断片は、VHドメインおよびCH1ドメインを含み、前記第1の単量体または前記第2の単量体において、前記軽鎖断片は、前記Fd断片と対になって抗TAAのFabドメインを形成し、ここで、前記第1の単量体の軽鎖断片は、前記第1のFc鎖に融合され、前記抗CD3抗体断片のN末端は、前記第2の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、前記第2のFc鎖に融合され、
または、
前記第1の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片、サイトカイン機能領域、第1のFc鎖を含み、
前記第2の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片、抗CD3抗体断片、および第2のFc鎖を含み、
前記サイトカイン機能領域は、IL-15およびIL-15Raを含み、ここで、前記サイトカイン機能領域のN末端は、前記第1の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、前記第1のFc鎖に融合され、前記抗CD3抗体断片のN末端は、前記第2の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、前記第2のFc鎖に融合され、
または、
前記第1の単量体は、抗TAA抗体断片、サイトカイン機能領域、第1のFc鎖を含み、
前記第2の単量体は、抗TAA抗体断片、抗CD3抗体断片、および第2のFc鎖を含み、ここで、
前記サイトカイン機能領域のN末端は、前記第1の単量体の抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、前記第1のFc鎖に融合され、前記抗CD3抗体断片のN末端は、前記第2の単量体の抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、前記第2のFc鎖に融合され、
前記第1のFc鎖と前記第2のFc鎖とは、交換可能であることを特徴とする、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項15】
前記抗TAA抗体断片は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、および前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むscFv形態であり、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記抗TAA抗体断片のアミノ酸融合順序は、「VH~VL」もしくは「VL~VH」であり、「~」は、連結断片を表わし、または、
前記抗CD3抗体断片は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、および前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むscFv形態であり、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記抗CD3抗体断片のアミノ酸的融合順序は、「VH~VL」もしくは「VL~VH」であり、「~」は、連結断片を表わし、または、
ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記サイトカイン機能領域のアミノ酸断片の融合順序は、「IL-15~IL-15Ra」または「IL-15Ra~IL-15」であり、「~」は、連結断片を表わし、好ましくは、前記IL-15~IL-15Raの配列は、SEQ ID NO:42に示されたとおりであり、前記IL-15Ra~IL-15の配列は、SEQ ID NO:43に示されたとおりであることを特徴とする
請求項14に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項16】
前記抗CD3抗体断片のアミノ酸配列は、CD3結合特異性抗体、抗体断片、単一ドメイン抗体またはそのヒト化形態から選択され、好ましくは、前記抗CD3抗体断片のアミノ酸配列は、SP34、OKT3、UCTH1またはその誘導体から選択されることを特徴とする
請求項14に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項17】
前記抗CD3抗体断片は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記抗CD3抗体断片の重鎖可変領域は、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3を含み、前記抗CD3抗体断片の軽鎖可変領域は、VLCDR1、VLCDR2、VLCDR3を含み、前記VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3のアミノ酸配列は、請求項5に記載の抗CD3抗体変異体のいずれか一組の配列に示されたとおりであることを特徴とする
請求項14に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項18】
IL-15RaおよびIL-15は、IL-15/IL-15Ra複合体を形成し、IL-15は、IL-15、IL-15Raに結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、IL-15Raは、IL-15Ra、IL-15に結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、好ましくは、前記IL-15/IL-15Ra複合体は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15またはIL-15Raのアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであり、前記IL-15Raの親配列は、SEQ ID NO:45に示されたとおりであることを特徴とする
請求項14に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【表2】
【請求項19】
前記IL-15は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15のアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであることを特徴とする
請求項14に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【表3】
【請求項20】
前記TAAは、CD20、CD19、CD30、CD33、CD38、CD40、CD52、slamf7、GD2、CD24、CD47、CD133、CD239、CD276、PD-1、CEA、Epcam、Trop2、TAG72、MUC1、MUC16、mesothelin、folr1、CLDN18.2、PDL1、EGFR、EGFR VIII、C-MET、HER2、FGFR2、FGFR3、PSMA、PSCA、EphA2、ADAM17、17-A1、NKG2D ligands、MCSP、LGR5、SSEA3、SLC34A2、BCMA、GPNMBまたはGlypican-3から選択されることを特徴とする
請求項14に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項21】
前記第1のFc鎖および前記第2のFc鎖は、重合してFcセグメントを形成し、前記Fcセグメントは、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、好ましくはIgG1 Fc、またはヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、前記タンパク質分子は、Fcヘテロ二量体形態であり、好ましくは、前記Fcヘテロ二量体は、以下の突然変異の組み合わせを含むが、これらに限定されず、以下の突然変異は、EUに従ってカウントされることを特徴とする
請求項14に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【表4】
【請求項22】
前記タンパク質分子は、Fcセグメントを含み、Fcセグメントの選択により、以下の突然変異の組み合わせを含むが、これらに限定されない免疫エフェクター機能が排除され、以下の突然変異は、EUに従ってカウントされることを特徴とする
請求項14に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【表5】
【請求項23】
(1)SEQ ID NO:05、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(2)SEQ ID NO:08、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(3)SEQ ID NO:09、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(4)SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(5)SEQ ID NO:05、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:07、
(6)SEQ ID NO:01、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:07、
(7)SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:07、
(8)SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:07、
(9)SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、
(10)SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:21、
(11)SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:23、
(12)SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、
(13)SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、
(14)SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:25、
(15)SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:27、
(16)SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、のいずれか一組の配列に示されるアミノ酸断片の融合によって得られることを特徴とする
請求項14に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項24】
核酸分子であって、
請求項14~23のいずれか1項に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子をコードすることを特徴とする、前記核酸分子。
【請求項25】
癌を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項14~23のいずれか1項に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子の適用であって、
前記癌は、結腸直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、前立腺、腎臓、子宮頚、骨髄がん、リンパ腫、白血病、甲状腺、子宮内膜、子宮、膀胱、神経内分泌、頭頚部、肝臓、鼻咽頭、精巣、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群から選択される癌を含むか、または前記の部位で発生することを特徴とする、前記癌を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項14~23のいずれか1項に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子の適用。
【請求項26】
抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質であって、
二つのポリペプチド鎖を含み、いずれか一つのポリペプチド鎖は、抗TAA抗体断片、サイトカイン機能領域、Fc断片を含み、前記抗TAA抗体断片は、scFv形態であり、前記サイトカイン機能領域は、IL-15およびIL-15Raを含み、前記サイトカイン機能領域のN末端は、前記抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、前記Fc断片と融合することを特徴とする、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質。
【請求項27】
IL-15RaおよびIL-15は、IL-15/IL-15Ra複合体を形成し、IL-15は、IL-15、IL-15Raに結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、IL-15Raは、IL-15Ra、IL-15に結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、好ましくは、前記IL-15/IL-15Ra複合体は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15またはIL-15Raのアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであり、前記IL-15Raの親配列は、SEQ ID NO:45に示されたとおりであることを特徴とする
請求項26に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質。
【表6】
【請求項28】
前記IL-15は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15のアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであることを特徴とする
請求項26に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質。
【表7】
【請求項29】
前記融合タンパク質は、Fcセグメントを含み、Fcセグメントの選択により、以下の突然変異の組み合わせを含むが、これらに限定されない免疫エフェクター機能が排除され、以下の突然変異は、EUに従ってカウントされることを特徴とする
請求項26に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質。
【表8】
【請求項30】
前記融合タンパク質のいずれか一つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:28に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有することを特徴とする
請求項26に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質。
【請求項31】
核酸分子であって、
請求項26~30のいずれか1項に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質をコードすることを特徴とする、前記核酸分子。
【請求項32】
癌を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項26~30のいずれか1項に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質の適用であって、
前記癌は、結腸直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、前立腺、腎臓、子宮頚、骨髄がん、リンパ腫、白血病、甲状腺、子宮内膜、子宮、膀胱、神経内分泌、頭頚部、肝臓、鼻咽頭、精巣、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、以及骨髄異形成症候群から選択される癌を含むか、または前記の部位で発生することを特徴とする、前記癌を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項26~30のいずれか1項に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質の適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学技術の分野に関し、具体的には、抗CD3抗体変異体、融合タンパク質および適用に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞と呼ばれるTリンパ球(T lymphocyte)は、骨髄由来のリンパ系幹細胞であり、胸腺で分化、成熟した後、リンパおよび血液循環を通じて、全身の免疫器官および組織に分布し、免疫機能を発揮する。T細胞は、ウイルス感染細胞および癌細胞を迅速に排除できる非常に効率的な殺傷細胞である。T細胞の殺傷効果には、免疫シナプスの形成が必要であるが、このプロセスは、抗原提示細胞の表面MHC分子と提示された抗原ペプチドによって形成される複合体とのTCR識別に大きく依存する。活性化された免疫シナプスは、細胞毒素およびサイトカインを放出して殺傷効果を果たす。免疫シナプスの形成プロセスにおいて、T細胞と標的細胞との間の距離によって制限され、二重特異的または多重特異性抗体指向性T細胞は、免疫シナプスの形成をシミュレートする必要があり、一端は、CD3を標的とすることでT細胞のTCR受容体への架橋を達成し、他端は、標的細胞表面抗原を標的とすることによって標的細胞への架橋を達成する。CD3分子は、すべての成熟T細胞の表面に発現され、TCRと非共有結合して、完全なTCR-CD3複合体を形成し、抗原刺激に対する免疫応答に共同に関与し、現在、二重特異性抗体において適用が最も多く、且つ最も成功している免疫エフェクター細胞表面のトリガー分子である。CD3を標的とする二重特異性抗体は、T細胞表面のCD3および腫瘍細胞表面の抗原にそれぞれ結合することで、細胞傷害性T細胞(cytotoxic T cell、TcまたはCTL)と腫瘍細胞との距離を縮め、従来のT細胞の二重活性化シグナルに依存するのではなく、T細胞を直接活性化し、T細胞が癌細胞を直接殺傷するように誘導する。
【0003】
開示されたCD3抗体において、OKT3は、画期的な影響力を有する抗体であり、最初に市販された治療用抗体として、疾患の治療におけるモノクローナル抗体の使用の先駆的抗体となる。SP34は、現在、サルと反応することができる少ないCD3抗体の一つである。近年、科学界は、二重抗体の分野で新たな進歩を遂げ、それによって、様々な種類の新規CD3二重抗体(CD3-BsAb)を開発した。現在、異なる構造を有する100を超えるCD3-BsAbの開発に成功した。多数の形態により、半減期、免疫原性、治療効果の反応種類、固形腫瘍への浸透能力等の抗体の多くの特性を決定する。アムジェン(Amgen)のブリナツモマブ(Blinatumomab)(BiTE形式のCD19xCD3)は、2014年にFDAによって承認され、現在最も成功しているCD3-BsAb二重抗体である。当該薬物は、再発性または難治性急性リンパ性白血病(ALL)患者の治療に使用される。標準的な化学療法と比較して、ブリナツモマブで治療された患者の40%異常が、完全または部分奏効(CR/PR)を達成でき、全生存期間の中央値は、数か月改善されることができる。ブリナツモマブに加えて、CD19、CD20、CD38、BCMA、CD33およびCD123等の現在臨床試験が行われている他のCD3-BsAbが多数ある。さらに、1/2期臨床試験において、急性骨髓性白血病(AML)に患う患者は、MacroGenics会社のFlotetuzumab(CD123xCD3-BsAb)で治療され、その全奏効率(ORR)は、30%である。Abbvie/Genmab会社のEpcoritamab(CD20xCD3-BsAb)の別の1/2期臨床試験において、びまん性リンパ性大細胞型B細胞腫瘍(DLBCL)の患者は、44%の完全奏効(CR)および11%の部分奏効(PR)が示され、濾胞性リンパ腫の患者では100%の奏効(PR)が示される。他のいくつかのCD20xCD3二重抗体も同様の優れた結果を取得し、例えば、NSGマウスにおいて、Regeneron会社のREGN1979(CD20xCD3-BsAb)は、RocheのRituximab (CD20モノクローナル抗体)よりも腫瘍成長を制御でき、CD3二重抗体薬の治療効果をさらに証明する。再発または難治性(R/R)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の治療におけるRocheのCD20xCD3 T細胞結合二重特異性抗体グロフィタマブ(glofitamab)(CD20-TCB)に関する最新データによると、当該延長研究には、過剰前治療を受けた高難治性DLBCL患者が含まれており、58.3%の患者がその初期治療に反応せず、約3分の一(33.1%)の患者は、以前にCAR-T細胞治療を受けていた。独立審査委員会(IRC)の評価によると、追跡期間中央値12.6ヶ月で、患者(61/155)の39.4%がCR(主な治療効果項目)を達成し、患者(51.6%、80/155)の半数は、全奏効(部分奏効[PR]+完全奏効[CR]の患者比率、二次治療効果項目)を達成し、安全性の観点から、サイトカイン放出症候群(CRS)は、最も一般的な有害事象であり、63.0%の患者で発生する。CRS事象は、予測可能であり、一般に低悪性度(主にグレード1[47.4%]またはグレード2[11.7%])であり、初回投与時に発生し、CRSのためにグロフィタマブ治療を中止した患者は1名のみである。グレード3以上のCRSの発生率は、低く(3.9%)、グレード5の事象はない。グロフィタマブは、CD20を標的とする二つのFab領域、およびCD3を標的とする一つのFab領域を含む、新規「2:1」構造パターンを有する。
【0004】
アムジェン会社のブリナツモマブは、臨床試験でサイトカインストーム(CRS)が最も重要な毒性副作用の一つであることを示す。CD19発現腫瘍細胞が多数の健康なB細胞およびT細胞と同じ環境にある場合、CD3-BsAbを介したT細胞の活性化は、突然起こり、IFN-γ、IL-6およびTNF-α等の炎症性サイトカインを過剰に放出し、最終的には、発熱から多臓器不全に至るまでの症状を引き起こす。しかしながら、CRSは、ブリナツモマブに特有の毒性副作用ではない。事実上、CRSは、ほとんどのCD3-BsAbおよびCAR-Tの治療で頻繁に発生する。ヒト化マウスモデルでは、CD3-BsAb誘導CRSの主な媒介物は、活性化T細胞によって産生されるTNF-αであり、単球による炎症性サイトカインの大量分泌を引き起こすことが示される。研究によると、上流TNF-αおよびその下流のIL-1βまたはIL-6を遮断すると、CRSを効果的に軽減できることがわかる。さらに、マウスおよびサルモデルで行われたいくつかの前臨床研究によると、CD3の親和性(即ち、「より弱い」CD3を使用する)を低下させることによって、サイトカインストームの程度を軽減できることがわかる。
【0005】
インターロイキン-15(interleukin-15、IL-15)は、NK細胞、NKT細胞およびメモリーCD8+T細胞の機能にとって非常に重要な長さ14~15kDaのサイトカインである。IL-15は、その受容体IL-15Rαに結合して、きわめて高い生物学的効力を有する複合体IL-15スーパーアゴニスト(IL-15 SA)を生成した後に、一緒に標的細胞に形質導入され、輸送される。IL-15 SAは、IL-15Rに応答および発現する細胞、特にNK細胞/T細胞を強力に活性化し、それによって抗腫瘍および抗ウイルス機能を促進する。IL-15は、幅広い免疫調節効果を有し、T細胞、特にNK細胞、メモリーCD8+T細胞の生存、増殖および機能の調節に関与することができる。IL-15は、IL-2構造と非常に似ており、スパイラルサイトカインファミリーに属する。IL-15のヘテロ三量体受容体は、IL-2受容体とIL-2R/IL-15 Rβ(CD122)および共通のγc鎖(CD132)を共有し、これらの共通の受容体成分および共有のJAK 1/JAK 3/STAT 5シグナル伝達経路により、IL-15は、T細胞増殖の刺激、細胞傷害性Tリンパ球の産生、B細胞の免疫グロブリン合成の刺激、ならびにNK細胞の産生および持続的生存等を含む、IL-2と同じ機能を有する。多くの適応性免疫応答において、IL-2およびIL-15は、独特で、且つしばしば競合性の効果を有する。主に次のような四つのポイントがある。1.IL-2は、Tregs細胞の活性化を調節できるが、IL-15は、調節できない。2.IL-2は、誘導されたCD8+エフェクターT細胞の細胞死を活性化することによって、T細胞応答を阻害する。3.IL-15は、NK、エフェクター細胞CD8+および記憶表現型CD8+T細胞の分化において必ず必要とする役割を果たす。4.臨床研究によると、IL-15毒性は、IL-2の毒性と異なり、IL-2と比較して、IL-15は、血管毛細管漏出がほとんど観察されないことを示す。これらの要因により、IL-15は、腫瘍免疫策略においてより潜在的なサイトカインとなる。現在、複数のIL-15標的製品は、依存として臨床試験段階にあり、ここで、最も注目されるのは、IL-15タンパク質N72Dを突然変異させた後IL-15RaおよびIgG1Fcに共同発現および結合した融合タンパク質であるIL-15スーパーアゴニストN-803であり、2022年5月23日、ImmunityBioは、IL-15スーパーアゴニストN-803の販売申請をFDAに提出し、BCGワクチン(BCG)と併用してBCGワクチンに応答しない非筋層浸潤癌(NMIBC)の治療に使用される。2021年に発表された臨床データでは、N-803+BCGの併用治療効果が顕著で、CR率は71%(59/83)に達し、平均CR維持期間は、24.1か月であることを示す。1期臨床試験によると、転移性非小細胞肺がんの治療においてニボルマブ(Nivolumab)(PD-1抗体、Opdivo)トN-803を併用すると、患者の長期生存を大幅に延長できることを示す。Genentech会社は、Xencor会社と協力してIL-15サイトカインXmAb(登録商標)24306を開発し、現在Tecentriqと併用したXmAb(登録商標)24306の臨床研究を実施している。Hengrui会社のSHR-1501(IL-15融合タンパク質)は、2019年5月14日にSHR-1501臨床試験の実施が承認された。さらに、治療が奏功しなかった進行性悪性腫瘍患者に対しては、SHR-1316(PD-L1モノクローナル抗体薬)とSHR-1501とを併用する予定である。
【0006】
現在、治療のためのCD3二重特異性抗体の開発の必要性は依然として満たされておらず、固形腫瘍において直面する課題を解決し、CD3-BsAb二重抗体の安全性を向上させるには、持続的な開発研究が必要である。
【発明の概要】
【0007】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の目的は、抗CD3抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、VLCDR1、VLCDR2、VLCDR3を含み、前記抗CD3抗体のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:29~34に示されるVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3を含む抗CD3抗体変異体を提供し、前記抗CD3抗体変異体の突然変異部位は、SEQ ID NO:30に示される配列の10番目の部位、SEQ ID NO:31に示される配列の2番目の部位および7番目の部位、SEQ ID NO:33に示される配列の3番目の部位および4番目の部位、SEQ ID NO:34に示される配列の4番目の部位、5番目の部位、6番目の部位および7番目の部位のいずれか一つまたは二つ以上を含む。
【0009】
好ましくは、前記突然変異とは、アミノ酸が置換されることを指す。
好ましくは、変異体の突然変異部位は、SEQ ID NO:30に示される配列における10位のAがEに置換され、SEQ ID NO:31に示される配列における2位のGがSに置換され、7位のSがGに置換され、SEQ ID NO:33に示される配列における3位のNがWに置換され、4位のKがLに置換され、SEQ ID NO:34に示される配列における4位のYがNまたはRに置換され、5位のSがKに置換され、6位のNがGに置換され、7位のLがGに置換される等の部位のいずれか一つまたは二つ以上を含む。
【0010】
好ましくは、VHCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:35に示されたとおりであるか、または、VHCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:36に示されたとおりであるか、または、VLCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:37または38に示されたとおりであるか、または、VLCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:39、40または41に示されたとおりである。
【0011】
好ましくは、前記VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3のアミノ酸配列は、
(1)SEQ ID NO:29、35、31、32、37、39、
(2)SEQ ID NO:29、35、36、32、37、40、
(3)SEQ ID NO:29、35、36、32、38、41のいずれかの一組の配列に示されたとおりである。
【0012】
好ましくは、前記抗体変異体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:1、2または3に示される配列の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域から選択されるか、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0013】
好ましくは、前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域との間には、ジスルフィド結合を形成するための突然変異があり、前記突然変異の部位は、次のいずれか一種または二種以上の組み合わせを含み、突然変異部位は、EUに従って番号付けられ、前記重鎖可変領域は、VHで表され、前記軽鎖可変領域は、VLで表され、
【0014】
【0015】
好ましくは、前記抗CD3抗体変異体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4またはその変異体から選択される重鎖定常領域、ならびにヒトκ鎖、λ鎖またはその変異体から選択される軽鎖定常領域をさらに含み、前記重鎖定常領域は、Fc断片またはその変異体を含む。
【0016】
好ましくは、前記抗体変異体は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、および前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むscFvであり、前記連結断片のアミノ酸配列は、好ましくは若干のGGGGSリピート、より好ましくは3個のGGGGSリピートである。
【0017】
本発明の別の目的は、癌を阻害または治療するための薬物の調製における、前記抗CD3抗体変異体の適用を提供する。
好ましくは、前記癌は、結腸直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、前立腺、腎臓、子宮頚、骨髄がん、リンパ腫、白血病、甲状腺、子宮内膜、子宮、膀胱、神経内分泌、頭頚部、肝臓、鼻咽頭、精巣、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群の癌から選択されるか、または前記の部位で発生する。
【0018】
本発明の別の目的は、前記抗CD3抗体変異体をコードする核酸分子を提供する。
本発明の別の目的は、上記の核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0019】
本発明の別の目的は、抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子を提供し、それは、第1の単量体および第2の単量体を含むヘテロ二量体形態であり、
前記第1の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片および第1のFc鎖を含み、前記第2の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片、抗CD3抗体断片および第2のFc鎖を含み、前記軽鎖断片は、VLドメインおよびCLドメインを含み、前記Fd断片は、VHドメインおよびCH1ドメインを含み、前記第1の単量体または前記第2の単量体において、前記軽鎖断片は、前記Fd断片と対になって抗TAAのFabドメインを形成し、ここで、前記第1の単量体の軽鎖断片は、前記第1のFc鎖に融合され、前記抗CD3抗体断片のN末端は、前記第2の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、前記第2のFc鎖に融合され、
または、前記第1の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片、サイトカイン機能領域、第1のFc鎖を含み、前記第2の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片、抗CD3抗体断片、および第2のFc鎖を含み、前記サイトカイン機能領域は、IL-15およびIL-15Raを含み、ここで、前記サイトカイン機能領域のN末端は、前記第1の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、前記第1のFc鎖に融合され、前記抗CD3抗体断片のN末端は、前記第2の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、前記第2のFc鎖に融合され、
または、前記第1の単量体は、抗TAA抗体断片、サイトカイン機能領域、第1のFc鎖を含み、前記第2の単量体は、抗TAA抗体断片、抗CD3抗体断片、および第2のFc鎖を含み、ここで、前記サイトカイン機能領域のN末端は、前記第1の単量体の抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、前記第1のFc鎖に融合され、前記抗CD3抗体断片のN末端は、前記第2の単量体の抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、前記第2のFc鎖に融合され、
前記第1のFc鎖と前記第2のFc鎖とは、交換可能である。
【0020】
好ましくは、前記抗TAA抗体断片は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、および前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むscFv形態であり、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記抗TAA抗体断片のアミノ酸融合順序は、「VH~VL」もしくは「VL~VH」であり、「~」は、連結断片を表わし、または、前記抗CD3抗体断片は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、および前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むscFv形態であり、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記抗CD3抗体断片のアミノ酸的融合順序は、「VH~VL」もしくは「VL~VH」であり、「~」は、連結断片を表わし、または、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記サイトカイン機能領域のアミノ酸断片の融合順序は、「IL-15~IL-15Ra」または「IL-15Ra~IL-15」であり、「~」は、連結断片を表わし、好ましくは、前記IL-15~IL-15Raの配列は、SEQ ID NO:42に示されたとおりであり、前記IL-15Ra~IL-15の配列は、SEQ ID NO:43に示されたとおりである。
好ましくは、前記抗CD3抗体断片のアミノ酸配列は、CD3結合特異性抗体、抗体断片、単一ドメイン抗体またはそのヒト化形態から選択され、好ましくは、前記抗CD3抗体断片のアミノ酸配列は、SP34、OKT3、UCTH1またはその誘導体から選択される。
【0021】
好ましくは、前記抗CD3抗体断片は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記抗CD3抗体断片の重鎖可変領域は、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3を含み、前記抗CD3抗体断片の軽鎖可変領域は、VLCDR1、VLCDR2、VLCDR3を含み、前記VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3のアミノ酸配列は、請求項5に記載の抗CD3抗体変異体のいずれか一組の配列に示されたとおりである。
【0022】
好ましくは、IL-15RaおよびIL-15は、IL-15/IL-15Ra複合体を形成し、IL-15は、IL-15、IL-15Raに結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、IL-15Raは、IL-15Ra、IL-15に結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、好ましくは、前記IL-15/IL-15Ra複合体は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15またはIL-15Raのアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであり、前記IL-15Raの親配列は、SEQ ID NO:45に示されたとおりである。
【0023】
【0024】
好ましくは、前記IL-15は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15のアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりである。
【0025】
【0026】
好ましくは、前記TAAは、CD20、CD19、CD30、CD33、CD38、CD40、CD52、slamf7、GD2、CD24、CD47、CD133、CD239、CD276、PD-1、CEA、Epcam、Trop2、TAG72、MUC1、MUC16、mesothelin、folr1、CLDN18.2、PDL1、EGFR、EGFR VIII、C-MET、HER2、FGFR2、FGFR3、PSMA、PSCA、EphA2、ADAM17、17-A1、NKG2D ligands、MCSP、LGR5、SSEA3、SLC34A2、BCMA、GPNMBまたはGlypican-3から選択される。
【0027】
好ましくは、前記第1のFc鎖および前記第2のFc鎖は、重合してFcセグメントを形成し、前記Fcセグメントは、ヒト(Human)IgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、好ましくはIgG1 Fc、またはヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、前記タンパク質分子は、Fcヘテロ二量体形態であり、好ましくは、前記Fcヘテロ二量体は、以下の突然変異の組み合わせを含むが、これらに限定されず、以下の突然変異は、EUに従ってカウントされる。
【0028】
【0029】
好ましくは、前記タンパク質分子は、Fcセグメントを含み、Fcセグメントの選択により、以下の突然変異の組み合わせを含むが、これらに限定されない免疫エフェクター機能が排除され、以下の突然変異は、EUに従ってカウントされる。
【0030】
【0031】
好ましくは、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子は、
(1)SEQ ID NO:05、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(2)SEQ ID NO:08、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(3)SEQ ID NO:09、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(4)SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(5)SEQ ID NO:05、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:07、
(6)SEQ ID NO:01、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:07、
(7)SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:07、
(8)SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:07、
(9)SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、
(10)SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:21、
(11)SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:23、
(12)SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、
(13)SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、
(14)SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:25、
(15)SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:27、
(16)SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、のいずれか一組の配列に示されるアミノ酸断片の融合によって得られる。
【0032】
本発明の別の目的は、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子をコードする核酸分子を提供する。
本発明の別の目的は、癌を阻害または治療するための薬物の調製における、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子の適用を提供し、前記癌は、結腸直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、前立腺、腎臓、子宮頚、骨髄がん、リンパ腫、白血病、甲状腺、子宮内膜、子宮、膀胱、神経内分泌、頭頚部、肝臓、鼻咽頭、精巣、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群から選択される癌を含むか、または前記の部位で発生する。
【0033】
本発明の別の目的は、抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質を提供し、それは、二つのポリペプチド鎖を含み、いずれか一つのポリペプチド鎖は、抗TAA抗体断片、サイトカイン機能領域、Fc断片を含み、前記抗TAA抗体断片は、scFv形態であり、前記サイトカイン機能領域は、IL-15およびIL-15Raを含み、前記サイトカイン機能領域のN末端は、前記抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、前記Fc断片と融合する。
【0034】
好ましくは、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質において、そのIL-15RaおよびIL-15は、IL-15/IL-15Ra複合体を形成し、IL-15は、IL-15、IL-15Raに結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、IL-15Raは、IL-15Ra、IL-15に結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、好ましくは、前記IL-15/IL-15Ra複合体は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15またはIL-15Raのアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであり、前記IL-15Raの親配列は、SEQ ID NO:45に示されたとおりである。
【0035】
【0036】
好ましくは、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質において、そのIL-15は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15のアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりである。
【0037】
【0038】
好ましくは、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質において、それは、Fcセグメントを含み、Fcセグメントの選択により、以下の突然変異の組み合わせを含むが、これらに限定されない免疫エフェクター機能が排除され、以下の突然変異は、EUに従ってカウントされる。
【0039】
【0040】
好ましくは、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質において、そのいずれか一つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:28に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0041】
本発明の別の目的は、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質をコードする核酸分子を提供する。
本発明の別の目的は、癌を阻害または治療するための薬物の調製における、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質の適用を提供し、前記癌は、結腸直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、前立腺、腎臓、子宮頚、骨髄がん、リンパ腫、白血病、甲状腺、子宮内膜、子宮、膀胱、神経内分泌、頭頚部、肝臓、鼻咽頭、精巣、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群から選択される癌を含むか、または前記の部位で発生する。
【発明の効果】
【0042】
既存の技術と比較して、本発明は、次のような有益な効果を有する。
(1)本発明は、既存の抗CD3抗体を突然変異させて、新たな抗CD3抗体の変異体を取得する。
【0043】
(2)本発明は、より優れた生物学的活性を有する、新規構造を有する抗体分子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】CD3抗体SP34およびその突然変異体のJurkat細胞への結合のFACS検出を示すグラフである。
【
図2】抗TAA(腫瘍関連抗原)および抗CD3に対する二重特異性抗体の分子形態の設計図である。
【
図3】QP372337241461の分子設計図である。
【
図4】QP374437481461の分子設計図である。
【
図5】CLDN18.2/CD3二重抗体等の分子のCLDN18.2への結合のFACS検出の結果図である。
【
図6】CLDN18.2/CD3二重抗体等の分子のCLDN18.2への結合のFACS検出の結果図である。
【
図7】CLDN18.2/CD3二重抗体等の分子のCD3への結合のFACS検出の結果図である。
【
図8】CLDN18.2/CD3二重抗体等の分子のCD3への結合のFACS検出の結果図である。
【
図9】CLDN18.2/CD3抗体等の分子によって媒介されたPBMCによるヒト胃がん細胞NUGC4-CLDN18.2細胞の殺傷の結果図である。
【
図10】CLDN18.2/CD3抗体等の分子によって媒介されたPBMCによるヒト胃がん細胞NUGC4-CLDN18.2細胞の殺傷の結果図である。
【
図11】CLDN18.2/CD3抗体等の分子によって媒介されたPBMCによるヒト肺がん細胞HCC827-CLDN18.2細胞の殺傷の結果図である。
【
図12】CD3EGD HuGEMMマウスへの結腸直腸がん細胞MC38-hCLDN18.2の皮下移植のインビボ動物モデルにおけるCLDN18.2/CD3二重抗体分子による腫瘍成長の阻害の曲線図である。
【
図13】CD3EGD HuGEMMマウスへの結腸直腸がん細胞MC38-hCLDN18.2の皮下移植のインビボ動物モデルに投与した後各群のマウス体重変化の曲線図である。
【
図14】PBMCヒト化NOGマウスX-CLDN18.2 /MIA PaCa-2皮下移植腫瘍モデルにおけるCLDN18.2/CD3二重抗体分子による腫瘍成長の阻害の曲線図である。
【
図15】PBMCヒト化NOGマウスX-CLDN18.2 /MIA PaCa-2皮下移植腫瘍モデルにおけるCLDN18.2/CD3二重抗体分子による腫瘍成長の阻害の曲線図である。
【
図16】一種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図17】一種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図18】一種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図19】一種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図20】別の種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図21】別の種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図22】別の種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図23】別の種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図24】別の種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図25】別の種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図26】別の種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図27】別の種類の抗TAA/CD3およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質の構造形態の設計図である。
【
図28】腫瘍標的T細胞/NK細胞活性化のためのTAA/IL15二機能性融合タンパク質の構造形態図である。
【
図29】CLDN18.2/CD3/IL15多機能融合タンパク質のCLDN18.2への結合のFACS検出の結果図である。
【
図30】CLDN18.2/CD3/IL15およびCLDN18.2/IL15融合タンパク質のCLDN18.2への結合のFACS検出の結果図である。
【
図31】CLDN18.2/CD3/IL15多機能融合タンパク質のCD3への結合のFACS検出の結果図である。
【
図32】CLDN18.2/CD3/IL15およびCLDN18.2/IL15融合タンパク質のCD3への結合のFACS検出の結果図である。
【
図33】多機能融合タンパク質IL15の活性を検出するためのMo7e細胞増殖実験の結果図である。
【
図34】多機能融合タンパク質IL15の活性を検出するためのMo7e細胞増殖実験の結果図である。
【
図35】多機能融合タンパク質IL15の活性を検出するためのMo7e細胞増殖実験の結果図である。
【
図36】CLDN18.2/CD3/IL15によって媒介されたPBMCによるヒト胃がん細胞NUGC4-CLDN18.2細胞の殺傷の結果図である。
【
図37】CLDN18.2/CD3/IL15によって媒介されたPBMCによるヒト胃がん細胞NUGC4-CLDN18.2細胞の殺傷の結果図である。
【
図38】CLDN18.2/CD3/IL15によって媒介されたPBMCによるヒト肺がん細胞HCC827-CLDN18.2細胞の殺傷の結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付の図面および実施例を合わせて、本発明の技術的解決策をさらに説明する。
本実験において具体的な条件を定めていない実験方法については、通常、従来の条件に従うか、または原料もしくは商品メーカーが提示する条件に従う。具体的な出所が示されていない試薬は、市場で購入された従来の試薬である。
【0046】
本明細書において、「/」とは、「および」を指す。例えば、抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3二重特異性抗体とは、TAAとCD3とを同時に標的とする抗体を指す。
【0047】
「融合」という用語は、ペプチド結合による構成要素の直接連結、連結断片を介した構成要素の連結、または分子間相互作用による融合を指す。単一のペプチド鎖において、融合とは、ペプチド結合による直接連結、または連結断片を介した連結を指す。「多機能融合タンパク質」とは、二つまたはそれ以上の異なるエピトープ(例えば、二つ、三つまたはそれ以上の異なるエピトープ)に結合できる、二つまたはそれ以上の抗原結合ドメインを含むタンパク質を指し、多機能融合タンパク質は、サイトカイン(例えば、IL-15、IL-15Ra)等を含むこともできる。「融合位置」とは、ペプチド鎖における機能的領域またはドメインの位置を指し、当該ペプチド鎖上の各機能的断片の連結順序を示す。
【0048】
「ポリペプチド」という用語は、タンパク質およびその断片を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を指す。本発明は、アミノ酸残基の配列としてのポリペプチドを開示する。あれらの配列は、アミノ基末端からカルボキシ基末端への方向に左から右に書かれている。標準命名法に従って、アミノ酸残基配列は、アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン((Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、シメシン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(I1e,I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)およびバリン(Val、V)のように3文字または1文字のコードで命名される。
【0049】
「単鎖」という用語は、ペプチド結合によって線形的に連結したアミノ酸を含む分子を指す。
「変異体」または「突然変異体」という用語は、含まれたアミノ酸またはヌクレオチドとは異なるが、基本的な特性を保持しているポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。通常、変異体間または変異体と親抗体との間の違いは、限られており、アミノ酸配列は、一般に非常に類似している。本明細書において、変異前の抗体または抗体断片を親抗体と呼び、変異後の抗体または抗体断片を変異体と呼ぶ。変異体は、依然として抗原結合活性を有する。
【0050】
「抗体」(antibody、Ab)という用語は、少なくとも一つの抗原結合部位を含み、且つ抗原に特異的に結合できる免疫グロブリン分子(immunoglobulin、Ig)を指す。
【0051】
「抗原」という用語は、体内で免疫応答を誘導でき、且つ抗体に特異的に結合する物質である。抗原への抗体の結合は、水素結合、ファンデルワールス力、イオン結合、および疎水結合を含む両者間に形成される相互作用によって媒介された。抗原表面上で抗体に結合する領域を「抗原決定基」または「エピトープ」と呼び、一般に、各抗原には、複数の決定基がある。
【0052】
本発明で言及される「抗体」という用語は、最も広い意味で理解され、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、抗体断片、少なくとも二つの異なる抗原結合ドメインを含む多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含む。抗体は、マウス抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、および他に由来する抗体をさらに含む。本発明の抗体は、ヒト、非ヒト霊長類動物、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ニワトリ、ラクダ、アルパカ等の免疫グロブリンを含むがこれらに限定されない、任意の動物に由来することができる。抗体は、非天然アミノ酸、Fcエフェクター機能の突然変異およびグリコシル化部位の突然変異のような別の修飾を含むことができる。抗体は、抗体が所望の生物学的活性を示す限り、翻訳後修飾された抗体、抗体の抗原決定基を含む融合タンパク質、ならびに抗原識別部位に対する任意の他の修飾を含む免疫グロブリン分子をさらに含む。言い換えれば、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫活性断片、即ち、少なくとも一つの抗原結合ドメインを含む分子を含む。
【0053】
抗体の基本構造は、2本の完全に同一の重鎖(heavy chain、H)および2本の完全に同一の軽鎖(light chain、L)がジスルフィド結合によって連結されるY字型の単量体である。各鎖は、それぞれ2~5個の約110個のアミノ酸を含み、配列が類似しているが機能が異なるドメイン(機能領域とも呼ばれる)で構成される。抗体分子において、軽鎖および重鎖がN末端に近接するアミノ酸配列は、大きく変化しており、形成されたドメインを可変領域(variable region、V領域)と呼ばれ、C末端に近接するアミノ酸配列が相対的に一定な領域は、定常領域(constant region、C領域)と呼ばれる。
【0054】
重鎖および軽鎖のV領域は、それぞれVHおよびVLと呼ばれ、VHおよびVLは、それぞれ三つの領域のアミノ酸組成を有し、配列順序が非常に変化しやすく、超可変領域(hypervariable region、HVR)と呼ばれ、当該領域は、抗原エピトープに相補的な空間構造を形成し、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)とも呼ばれる。VHの3个CDRは、それぞれVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3で表され、VLの三つのCDRは、それぞれVLCDR1、VLCDR2、VLCDR3で表される。VHおよびVLの合計六つのCDRが、一緒に抗原結合部位(antigen-binding site)を形成する。CDR領域のアミノ酸の多様性は、抗体が多数の異なる抗原に特異的に結合する分子基盤である。V領域のCDRの外側のアミノ酸組成および排列順序は、比較的に変化が少なく、フレームワーク領域(framework region、FR)と呼ばれる。VHおよびVLは、FR1、FR2、FR3、FR4で表される四つのフレームワーク領域(フレームワーク領域と呼ばれる)を有する。VHおよびVLは、それぞれ三つのCDRおよび四つのFRで構成され、アミノ基端からカルボキシ基に向かう配列の順序は、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4である。
【0055】
抗体重鎖の定常領域のアミノ酸配列に従って、ヒト免疫グロブリンをIgM、IgG、IgA、IgD、IgEの五つのカテゴリーに分類できる。それは、異なるサブタイプ(アイソタイプ)に分けることができ、例えば、ヒトIgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができ、IgAは、IgA1およびIgA2に分けることができる。IgM、IgD、IgEのサブタイプは、発見されていない。軽鎖アミノ酸配列に基づいて、軽鎖をκ鎖およびλ鎖に分類できる。本発明の抗体は、任意の種類(例えば、IgM、IgG、IgA、IgD、IgE)またはサブタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)であり得る。
【0056】
重鎖および軽鎖の定常領域は、それぞれCHおよびCLと呼ばれる。IgG、IgA、IgDの重鎖定常領域は、CH1、CH2、CH3の三つのドメインを有し、IgM、IgEの重鎖定常領域は、CH1、CH2、CH3、CH4の四つのドメインを有する。
【0057】
ヒンジ領域(hinge region)は、CH1とCH2との間に位置し、豊富なプロリンを含むため、伸ばしたり曲げたりしやすく、Y字型の二つのアーム間の距離を変えることができ、二つのアームを同時に抗原エピトープに結合するのに有利する。
【0058】
「Fab断片」という用語は、抗原結合断片(fragment of antigen binding、Fab)であり、VL、VH、CLおよびCH1ドメインと構成される抗体断片を表わし、単一の抗原エピトープ(一価)に結合する。当業者は、一定条件下で、抗体分子鎖の特定の部分がタンパク質加水分解酵素によって容易に様々な断片に加水分解されることを知っている。パパインは、ヒンジ領域のN末端から抗体分子を二つの完全に同一の抗原結合断片(Fab)および結晶化可能な断片(Fc)に加水分解される。
【0059】
「Fd断片」という用語は、VHおよびCH1ドメインで構成される抗体断片を指す。
「Fc」、「Fcセグメント」、「Fc断片」、「Fcドメイン」という用語は、抗原結合活性を有しない結晶化可能な断片(fragment crystallizable)を指し、抗体がエフェクター分子または細胞表面Fc受容体(FcR)に相互作用する部位である。Fc断片は、表面に対応するFc受容体を有する細胞に結合し、異なる生物学的効果を生み出す。ADCC効果(抗体依存性細胞媒介性細胞毒性効果、antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)において、抗体のFabセグメントは、ウイルス感染細胞または腫瘍細胞の抗原エピトープに結合し、そのFcセグメントは、殺傷細胞(NK細胞、巨噬細胞等)表面のFcRに結合し、殺傷細胞を媒介して標的細胞を直接殺傷する。Fc断片は、重鎖定常領域CH1を除く抗体の定常領域ポリペプチド、即ち、ヒト免疫グロブリンIgA、IgD、IgG重鎖定常領域のカルボキシ基末端の二つの定常領域ドメインCH2およびCH3、ならびにヒト免疫グロブリンIgEおよびIgM重鎖定常領域のカルボキシ基末端の三つの定常領域ドメインCH2、CH3およびCH4を含む。Fc断片は、多くの場合、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、好ましくはIgG1 Fc、またはヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択される。
【0060】
Fcは、2本の鎖から構成されることができ、本明細書において、Fc断片の2本の鎖を第1のFc鎖および第2のFc鎖と記載し、第1のFc鎖および第2のFc鎖は、それぞれ突然変異されることができ、本発明は、特定に限定されない。Fc断片は、Fcドメイン内の単一のポリペプチド鎖を指すこともできる。抗体のFcセグメントは、免疫エフェクター機能を排除するように選択でき、次のような突然変異の組み合わせ(EUによってカウントされる)を含むが、これらに限定されない。
【0061】
【0062】
突然変異によって設計されたFc変異体の間は、空間充填効果、静電ステアリング、水素結合作用、疏水作用等を形成することができる。Fc変異体間の相互作用は、安定なヘテロ二量体の形成に有利する。好ましい突然変異設計は、「Knob-in-hole」形態の突然変異設計である。
【0063】
scFv(single chain antibody fragment)、または単鎖抗体は、リンカー(linker)を介して連結された抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域で構成される。「連結断片」は、IL-15をIL-15Raに連結し、CD3抗体のVHをVLに連結することができ、タンパク質の正しいフォールディングおよびペプチド安定性を確保する。「連結断片」は、好ましくは(GGGGS)nであり、ここで、nは、0、1、2、3、4、5またはそれ以上であり得る。連結断片配列が短すぎる場合、二つのタンパク質の高次構造のフォールディングに影響を及ぼし、相互に干渉する可能性があり、連結ペプチド配列が長すぎる場合、連結ペプチド配列自体が新しい抗原となるため、免疫原性の問題が生じる。
【0064】
腫瘍関連抗原(tumor-associated antigen、TAA)とは、胚性タンパク質、糖タンパク質抗原、扁平上皮抗原等を含む、腫瘍細胞または正常細胞に存在する抗原分子を指し、臨床腫瘍の診断に一般的に使用される。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の固有のものではなく、正常細胞でも微量合成されることができるが、腫瘍細胞が増殖すると高度に発現するため、「関連抗原」と呼ばれる。腫瘍関連抗原は、例えば、CD20、CD19、CD30、CD33、CD38、CD40、CD52、slamf7、GD2、CD24、CD47、CD133、CD239、CD276、PD-1、CEA、Epcam、Trop2、TAG72、MUC1、MUC16、mesothelin、folr1、CLDN18.2、PDL1、EGFR、EGFR VIII、C-MET、HER2、FGFR2、FGFR3、PSMA、PSCA、EphA2、ADAM17、17-A1、NKG2D ligands、MCSP、LGR5、SSEA3、SLC34A2、BCMA、GPNMBまたはGlypican-3であり得る。
【0065】
「ベクター」という用語は、それが連結している別のポリヌクレオチドを輸送できるポリヌクレオチド分子を指す。ベクターの一つの種類は、「プラスミド」であり、これは、環状の二本鎖DNA環を指し、ここで、追加のDNAセグメントに連結されることができる。ベクターの別の種類は、ウイルスベクターであり、ここで、追加のDNAセグメントは、ウイルスゲノムに連結されることができる。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーマル哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーマル哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入された後に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムとともに複製されることができる。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指示することができる。通常、組換えDNA技術で有用である発現ベクターは、通常、プラスミドの形態である
「IL-15」、「IL-15Ra」という用語は、その突然変異体または断片であり得る。
【0066】
「第1の」、「第2の」という用語は、説明の目的でのみ使用され、その重要性の程度を示したり暗示したりするものではない。
本発明は、既存のCD3抗体SP34を親抗体として用い、その可変領域を突然変異させて、CD3抗体変異体を取得する。本発明は、異なる標的を標的とし、異なる構成を有するいくつかのタンパク質分子もさらに提供する。
【0067】
「IL-15~IL15Ra」は、次のような配列を使用することができる。
SEQ ID NO:42
【0068】
【0069】
「IL15Ra~IL-15」は、次のような配列を使用することができる。
SEQ ID NO:43
【0070】
【0071】
一.抗CD3抗体変異体の取得、および抗TAA(腫瘍関連抗原)/CD3二重特異性抗体形態の設計
実施例1:抗CD3抗体変異体の取得、分子クローニング、一過性発現、およびタンパク質の精製
1.分子クローニング:ヒト化抗CD3抗体SP34(Wileman et al.、1990;US 8236308)を親抗体として使用し、そのCDRを突然変異させ、安定性の高い抗体をスクリーニングして、三つの変異体を取得する。CD3親抗体SP34およびその変異体の軽鎖および重鎖可変領域を、連結配列を介して単鎖抗体VH-VLに構築し、且つそのC末端にヒトIgG1のFCセグメントが融合され、分子クローニングによって、真核発現ベクターpQDを構築してロードする。クローン番号およびタンパク質の配列番号は、次の表に示されたとおりである。
【0072】
【0073】
アミノ酸配列は、次のように示されたとおりである。
SEQ ID NO:01 QD3685
【0074】
【0075】
SEQ ID NO:02 QD3689
【0076】
【0077】
SEQ ID NO:03 QD3690
【0078】
【0079】
SEQ ID NO:04 QD3679(hSP34 VH-VL-FC)
【0080】
【0081】
注:下線付き部分のアミノ酸は、抗体の重鎖可変領域であり、波線部分は、軽鎖可変領域であり、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の間の斜体部分は、連結配列である。可変領域のアミノ酸順序は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、太字部分且つ下部太線部分は、それぞれHCDR1、HCDR3、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3を示す。親抗体とその突然変異体CDR配列との比較は、次の表に示されたとおりである。
【0082】
【0083】
2.タンパク質発現:293E細胞の細胞密度を1×106/mlに調整する。プラスミドおよびトランスフェクション試薬PEIを準備し、トランスフェクションに必要なプラスミドの量は、100μg/100ml細胞であり、PEIとプラスミドとの質量比は、2:1である。プラスミドおよびPEIを均等に混合し、15分間放置する。プラスミドとPEIとの混合物を293Eの細胞にゆっくりと加え、8%CO2、120rpm、37℃のシェーカー内に入れて培養する。トランスフェクションの5~6日目に、水平遠心分離機で4700rpmで20分間遠心分離し、細胞上清を収集して精製する。
【0084】
3.タンパク質精製:
タンパク質アフィニティークロマトグラフィー:細胞培養液を高速遠心分離した後に上清を採取し、GEのプロテインAクロマトグラフィーカラムを使用してアフィニティークロマトグラフィーを実行する。クロマトグラフィーに使用される平衡緩衝液は、1×PBS(pH7.4)であり、細胞上清をローディングして結合した後、紫外線がベースラインに戻るまでPBSで洗浄し、次いで溶出緩衝液0.1Mグリシン(pH3.0)を使用して目的タンパク質を溶出し、Trisを使用してpHを中性に調節して保存し、タンパク質体積排除クロマトグラフィー:イオン交換によって得られた生成物を限外ろ過によって濃縮した後に体積排除クロマトグラフィーを実行し、例えば、GEのSuperdex200ゲルを使用して分離して、可能性のある凝集体および他の成分を除去して、高純度の目的生成物を取得する。得られたタンパク質の純度分析は、SDS-PAGE及SEC-HPLC検出によって分析されることができる。タンパク質濃度は、UV分光光度法によって測定される。
【0085】
細胞発現タンパク質の収量および純度は、次の表に示されたとおりであり、QP3679、即ち親ヒト化抗CD3抗体SP34の収量は、68.64mg/Lであり、抗CD3抗体突然変異体は、すべて親抗体QP3679よりも高い発現収率を示し、これは、突然変異体の収量がより高く、タンパク質がより安定的であり得ることを示し、同時にSEC-HPLCによってタンパク質の純度は、すべて非常に良好である。
【0086】
【0087】
実施例2:CD3を天然に発現するJurkat細胞に結合する抗CD3抗体変異体のFACS検出
抗CD3抗体結合活性のFACS検出:ヒトリンパ球性白血病細胞(Jurkat細胞)は、天然CD3を発現し、FACS(フローサイトメトリー、fluorescence activated cell sorter)によって抗CD3抗体およびその突然変異体のJurkat細胞への結合を検出する。1E5/ウェルJurkat細胞をU字型96ウェルプレートに播種し、氷PBSで1回洗浄し、1200rpmで3分間遠心分離し、洗浄完了後、200μL/ウェルに従って3%FBS/PBSブロッキング溶液を加え、氷上で1時間インキュベートする。ブロッキング完了後、1200rpmで3分間遠心分離した後、上清を振り捨て、様々な濃度のサンプルをインキュベートし、氷上で2時間インキュベートし、氷PBSで3回洗浄し、PE-抗ヒトFC抗体を1:200の希釈率、50μl/ウェルでインキュベートし、充分に混合し、氷上で1時間置き、氷PBSで3回洗浄する。200μl/ウェルのPBSに細胞を再懸濁し、FACS機器で平均蛍光値を読み取り、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。
【0088】
図1に示されるように、結果は、抗CD3抗体SP34およびその突然変異体QP3685、QP3689、QP3690は、すべてjurkat結合活性を維持することを示す。
【0089】
実施例3.抗TAA(腫瘍関連抗原)および抗CD3を含む二重特異性抗体形態の設計
CD3二重抗体は、治療的効果を果たし、主に、腫瘍細胞上に発現される腫瘍関連抗原(TAA)およびT細胞上のCD3標的に同時に結合することにより、これら二つの細胞を架橋結合させて免疫シナプスを形成し、T細胞が活性化され、それによって腫瘍細胞を殺傷する。多価TAA抗体は、特に標的の特異性が十分でない場合に、標的の選択性を向上させることができる。CD3二重抗体の安全性を向上させる主な方向性は、TAAの選択性を向上させ、同時に適切なCD3抗体親和性を選択することで独副作用を軽減しながら有効性を維持することができ、それによって腫瘍の選択性を向上させ、健康な細胞の標的を減少させる。
【0090】
本発明によって提供される抗TAA(腫瘍関連抗原)および抗CD3の二重特異性抗体分子形態の設計は、
図2に示されたとおりである。
図2に示される抗TAAおよび抗CD3の二重特異性抗体分子は、第1の単量体(
図2の左側部分)および第2の単量体(
図2の右側部分)を含む。第1の単量体は、Fd断片(VHおよびCH1を含む)を有する鎖1、ならびに軽鎖断片(VLおよびCLを含む)および第1のFc鎖を有する鎖2等の二つの鎖を含む。第2の単量体も、Fd断片(VHおよびCH1を含む)を有する鎖1、ならびに軽鎖断片(VLおよびCLを含む)、抗CD3抗体断片(
図2におけるCD3抗体、これは、scFv形態である)、および第2のFc鎖を有する鎖2の二つの鎖を含む。第1の単量体または第2の単量体において、軽鎖断片およびFd断片は、それぞれ対になって抗TAAのFabドメインを形成する(
図2におけるTAA抗体の機能を実現するために)。従来の抗体とは異なり、第1の単量体の軽鎖断片は、第1のFc鎖に融合され、同時に抗CD3抗体断片のN末端は、第2の単量体の軽鎖断片に融合され、抗CD3抗体断片のC末端は、第2のFc鎖と融合する。第1のFc鎖および前記第2のFc鎖は、重合してFcドメインを形成する。Fcドメインは、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcまたはその変異体を形成することができる。
【0091】
二重特異性抗体の分子クローニング、一過性発現、およびタンパク質精製:
1.分子クローニング:
図2に示されるように、TAAは、CLDN18.2を選択し、抗CLDN18.2/CD3二重特異性抗体を設計し、ここで、CLDN18.2抗体配列については、特許文献CN202010344676.8の抗体QP14611463の配列を参照することができ、抗CD3抗体は、それぞれSP34配列およびその変異体QP3685、QP3689、QP3690の抗体軽鎖重鎖配列を使用する。QP374537493746の抗CD3抗体配列は、SP34から選択され、QP090837493746、QP090937493746、QP091037493746の抗CD3抗体配列は、QP3685、QP3689、QP3690から選択される。タンパク質の発現および配列番号は、次の表に示されたとおりである。
【0092】
【0093】
同時に比較するために、他の2種類の形態CLDN18.2/CD3二重抗体分子QP372337241461およびQP374437481461を構築し、特許US20200055932A1に基づいて、アムジェン会社のCLDN18.2/CD3二重抗体分子AMG910を構築し、AMG910タンパク質をQP3693と番号付ける。タンパク質の発現および配列番号は、次の表に示されたとおりである。
【0094】
【0095】
QP372337241461の分子設計は、
図3に示されたとおりである。QP374437481461の分子設計は、
図4に示されたとおりである。
2.クローン構築方法:
表4および表5に示されるようにクローンを設計し、全長発現ベクターを構築する。プライマー設計:オンラインソフトウェアDNAWorks(v3.2.4)(http://helixweb.nih.gov/dnaworks/)を使用して、組換えに必要な遺伝子断片を合成するための複数のプライマーを設計する。断片スプライシング:TaKaRa会社Primer STAR GXL DNAポリメラーゼの取扱説明書に従って、上記で設計した複数のプライマーを用いて、PCR増幅により組換えに必要な遺伝子断片を得る。第1段階PCR:50μLのPCR反応系は、10μLのPrimerSTAR GXL Buffer(5×)、4μLのdNTP Mixture(2.5mmol・L-1)、1μLの上記に示されるような各プライマー、1μLのPrimeSTAR GXL DNAポリメラーゼを含む。PCR反応条件は、98℃で2分間、98℃で20秒間、55℃で15秒間、68℃で30秒間を30サイクルとし、68℃で5分間である。第2段階PCR:第1段階のPCR生成物をテンプレートとして使用し、最初および最後のプライマーを用いて、第1段階と同じ条件でPCR増幅を実行する。PCRは、目的断片を増幅するために構築する。発現ベクターpQDの構築および酵素消化:識別配列と酵素消化部位とが異なる特性を有するBsmBI等のいくつかの特殊な限制エンドヌクレアーゼを使用して、発現ベクターpQD(シグナルペプチドを有する)を設計および構築し、BsmBI酵素でベクターを消化し、ゲルを備蓄のために回収する。発現ベクターの組換え構築:組換え標的遺伝子断片およびBsmBIで酵素消化した発現ベクターpQD(シグナルペプチド断片を有する)を回收し、3:1の比率でそれぞれDH5α感受性細胞に加え、0℃で30分間氷浴し、42℃で90秒間ヒートショックし、,5倍量のLB mediumを加え、37℃で45分間インキュベートし、LB-Amp平プレートを塗布し、37℃で一晩培養して、単一クローンを選択し、シーケンシングによって、それそれそれぞれの目的のクローンを取得する。
【0096】
3.タンパク質発現:
293E細胞の細胞密度を1×106/mlに調整する。プラスミドおよびトランスフェクション試薬PEIを準備し、トランスフェクションに必要なプラスミドの量は、100μg/100ml細胞であり、PEIとプラスミドとの質量比は、2:1である。プラスミドおよびPEIを均等に混合し、15分間放置する。プラスミドとPEIとの混合物を293Eの細胞にゆっくりと加え、8%CO2、120rpm、37℃のシェーカーに入れて培養する。トランスフェクションの5~6日目に、水平遠心分離機で4700rpmで20分間遠心分離して、細胞上清を収集して精製する。
【0097】
4.タンパク質精製:
タンパク質アフィニティークロマトグラフィー法:細胞培養液を高速遠心分離した後に上清を採取し、GEのプロテインAクロマトグラフィーカラムを使用してアフィニティークロマトグラフィーを実行する。クロマトグラフィーに使用する平衡緩衝液は、1×PBS(pH7.4)であり、細胞上清をローディングして結合した後、紫外線がベースラインに戻るまでPBSで洗浄し、次いで溶出緩衝液0.1Mグリシン(pH3.0)を使用して目的タンパク質を溶出し、Trisを使用してpHを中性に調節して保存し、タンパク質体積排除クロマトグラフィー:イオン交換によって得られた生成物を限外ろ過によって濃縮した後に体積排除クロマトグラフィーを実行し、例えば、GEのSuperdex200ゲルを使用して分離して、可能性のある凝集体および他の成分を除去して、高純度の目的生成物を取得する。得られたタンパク質の純度分析は、SDS-PAGE及SEC-HPLC検出によって分析されることができる。タンパク質濃度は、UV分光光度法によって測定される。精製プロセス全体でエンドトキシンが厳密に管理され、精製タンパク質のエンドトキシン含有量は、1EU/mg未満である。
【0098】
結果は、CLDN18.2/CD3二重特異性抗体QP374537493746、QP090837493746、QP090937493746およびQP091037493746の細胞発現収率が高く、HPLC-SEC純度が95%を超え、生産可能であることを示す。
【0099】
実施例4:二重特異性抗体とCLDN18.2との結合活性のFACS検出
実験段階:
CLDN18.2を安定的に発現する細胞株CHOS-CLDN18.2を採取し、1E5/ウェル細胞CHOS-CLDN18.2をU字型96ウェルプレートに播種し、氷PBSで1回洗浄し、1200rpmで3分間遠心分離し、洗浄完了後、200μL/ウェルに従って3%FBS/PBSブロッキング溶液を加え、氷上で1時間インキュベートする。ブロッキング完了後、1200rpmで3分間遠心分離した後、上清を振り捨て、様々な濃度のサンプルをインキュベートし、氷上で2時間インキュベートし、氷PBSで3回洗浄し、PE-抗ヒトFC抗体を1:200の希釈率、50μl/ウェルでインキュベートし、充分に混合し、氷上で1時間置き、氷PBSで3回洗浄する。200μl/ウェルのPBSに細胞を再懸濁し、FACS機器で平均蛍光値を読み取り、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。
【0100】
図5および
図6に示されるように、結果は、CLDN18.2/CD3二重特異性抗体QP374537493746、QP090837493746、QP090937493746およびQP091037493746は、すべてCLDN18.2に結合することを示す。
図5に示されるように、TAA標的CLDN18.2に対する本発明の
図2の二重抗体QP374537493746、QP090837493746、QP090937493746およびQP091037493746の結合親和性は、抗CLDN18.2抗体IgG形態QP14611463の結合親和性と相当であり、設計の予想どおりに対照抗体AMG910(1:1形態)QP3693よりも顕著に強力である。
【0101】
実施例5:二重特異性抗体とCD3との結合活性のFACS検出
ヒトリンパ球性白血病細胞(Jurkat細胞)は、天然CD3を発現し、FACS検出によって抗CD3抗体およびその突然変異体のJurkat細胞への結合を検出する。1E5/ウェルJurkat細胞をU字型96ウェルプレートに播種し、氷PBSで1回洗浄し、1200rpmで3分間遠心分離し、洗浄完了後、200μL/ウェルに従って3%FBS/PBSブロッキング溶液を加え、氷上で1時間インキュベートする。ブロッキング完了後、1200rpmで3分間遠心分離した後、上清を振り捨て、様々な濃度のサンプルをインキュベートし、氷上で2時間インキュベートし、氷PBSで3回洗浄し、PE-抗ヒトFC抗体を1:200の希釈率、50μl/ウェルでインキュベートし、充分に混合し、氷上で1時間置き、氷PBSで3回洗浄する。200μl/ウェルのPBSに細胞を再懸濁し、FACS機器で平均蛍光値を読み取り、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。
【0102】
図7および
図8に示されるように、結果は、CLDN18.2/CD3二重特異性抗体QP374537493746、QP090837493746、QP090937493746およびQP091037493746は、すべてCD3に結合することを示す。
図7に示されるように、本発明の
図2の二重抗体QP374537493746、QP090837493746、QP090937493746およびQP091037493746は、結合CD3親和性によって二つのカテゴリーに分類され、ここで、QP374537493746、QP090837493746は、CD3に対する結合親和性が弱く、QP090937493746およびQP091037493746は、親和性が強いが、これら二つの分子のCD3に対する結合親和性は、すべて対照抗体AMG910(1:1形態)QP3693よりも顕著に弱く、これは、CD3二重抗体の安全性を向上させるためにCD3抗体親和性を低下させるという我々の予想と一致している。
【0103】
実施例6:CLDN18.2/CD3二重特異性抗体によって媒介されたヒト胃がん細胞のT細胞殺傷
実験方法:選択された標的細胞は、CLDN18.2を安定的に発現するヒト胃がん細胞株NUGC4-CLDN18.2である。エフェクター細胞は、ヒトPBMCである。E:T比10:1に従って、様々な濃度の抗体を加え、37℃、5%CO2で48時間培養し、CytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega、G1780-1000 assays)を使用して、細胞培養上清中のLDHを検出し、細胞毒性%を定量する。標的細胞の最大溶解率(100%)は、1%であり、Triton X-100で標的細胞を処理して細胞を溶解し、すべてのLDHを放出する。標的細胞自発、エフェクター細胞自発、標的細胞+エフェクター細胞自発等の対照ウェルを設定する。式%細胞毒性(Cytotoxicity)=[(実験(Experimental)-エフェクター自発(Effector Spontaneous)-標的自発(Target Spontaneous))/(標的の最大値(Target Maximum)-標的自発(Target Spontaneous))]×100に従ってデータを分析する。
【0104】
図9および
図10に示されるように、結果は、QP374537493746、QP090837493746、QP090937493746およびQP091037493746は、すべてPBMCを媒介してヒト胃がん細胞NUGC4-CLDN18.2細胞を殺傷することができることを示す。
図9に示されるように、本発明の
図2の二重抗体QP374537493746、QP090837493746、QP090937493746およびQP091037493746によって媒介されたヒト胃がん細胞NUGC4-CLDN18.2細胞のPBMC殺傷活性は、すべて対照分子QP3693(AMG910)よりも強い。本発明で選択されたCD3抗体のCD3への結合親和性は、すべてAMG910分子のCD3抗体(
図7を参照する)の親和性よりも弱いが、標的細胞に対する殺傷能力には影響を及ぼさない。
【0105】
実施例7:CLDN18.2/CD3二重特異性抗体によって媒介されたヒト肺がん細胞のT細胞殺傷
実験方法:選択された標的細胞は、CLDN18.2を安定的に発現するヒト肺がん細胞株HCC827-CLDN18.2である。エフェクター細胞は、ヒトPBMCである。E:T比10:1に従って、様々な濃度の抗体を加え、37℃、5%CO2で48時間培養し、CytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega、G1780-1000 assays)を使用して、細胞培養上清中のLDHを検出し、細胞毒性%を定量する。標的細胞の最大溶解率(100%)は、1%であり、Triton X-100で標的細胞を処理して細胞を溶解し、すべてのLDHを放出する。標的細胞自発、エフェクター細胞自発、標的細胞+エフェクター細胞自発等の対照ウェルを設定する。式%細胞毒性(Cytotoxicity)=[(実験(Experimental)-エフェクター自発(Effector Spontaneous)-標的自発(Target Spontaneous))/(標的の最大値(Target Maximum)-標的自発(Target Spontaneous))]×100に従ってデータを分析する。
【0106】
図11に示されるように、結果は、CD3二重抗体分子QP374537493746、QP090837493746、QP090937493746およびQP091037493746は、PBMCを介してヒト肺がん細胞HCC827-CLDN18.2細胞を殺傷させることができることを示す。本発明の
図2の二重抗体QP374537493746、QP090837493746、QP090937493746およびQP091037493746によって媒介されたヒト肺がん細胞HCC827-CLDN18.2細胞のPBMC殺傷活性は、すべて対照分子QP3693(AMG910)よりも強い。HCC827-CLDN18.2細胞ではNUGC4-CLDN18.2の結果を再現する(
図9を参照する)。
【0107】
実施例8:CD3ヒト化マウスモデルの動物薬効
腫瘍成長に対する抗CLDN18.2/CD3二重抗体分子の効果をCD3ヒト化マウス(CD3EDG HuGEMM)モデルで評価する。指数増殖期の結腸直腸がん細胞MC38-hCLDN18.2細胞を収集し、播種に適した濃度になるまでPBSに再懸濁する。各実験マウスの右背中に5×106のMC38-hCLDN18.2細胞を皮下接種し、腫瘍の成長状況を定期的に観察し、腫瘍が平均体積約100mm3まで成長すると、腫瘍の大きさおよびマウス体重に基づいて、ランダムにグループ分けて投与する。投与方案は、次のとおりである。
【0108】
【0109】
上記の表に示される方案に従って、6回投与し、週2回腫瘍を測定し、腫瘍阻害率は、表7に示され、腫瘍阻害曲線は、
図12に示され、結果によると、投与後21日目に、0.6mpkの低用量群におけるQP374537493746の腫瘍阻害率(TGI)は、89.29%に達し、0.7mpk群(0.7mpkのAMG910群のモル濃度は、1.2mpkのQP374537493746に相当する)における対照抗体AMG910の腫瘍阻害率(TGI=86.5%)よりも優れるか、または同等であり、即ち、QP374537493746は、半分の用量で対照抗体AMG910と同じ腫瘍阻害効果を達成することができることを示す。
図13は、投与後の各群のマウスの体重変化であり、結果によると、投与群のマウスの体重は、基本的に変化がなく、成長が良好であり、薬物の安全性が良好であることを確認できることを示す。
【0110】
【0111】
実施例9:ヒト化NOGマウスモデルの動物薬効
実験目的:PBMCヒト化NOGマウスX-CLDN18.2/MIA PaCa-2皮下移植腫瘍モデルにおける被験物のインビボ薬効を評価する。細胞培養:X-CLDN18.2/MIA PaCa-2細胞をインビトロで培養し、培養条件は、10%ウシ胎児血清を加えた培地、37℃、5%CO2である。週に2回一般の継代を実行する。細胞が指数増値期に維持する場合、細胞生存率が95%を超える場合、細胞を收取し、生存細胞パーセンテージをカウントし、接種する。動物:NOGマウス、メス、6~8週齢、体重18~20G。実験に合計36匹(24plus50%)が必要である。動物は、資格を有するサプライヤーから提供される。腫瘍接種: 5*106個のX-CLDN18.2/MIA PaCa-2および2*106個のPBMC細胞を混合して各マウスの右首および背中に接種する。接種と同時に実験動物には耳標を付け、後続の実験の唯一の確認マークとなる。腫瘍が成長するのを待ち、腫瘍平均体積が約60~100mm3に達する時点でランダムにグループ分けて投与する。実験のグループ分けおよび投与方案は、表8を参照する。
【0112】
【0113】
上記の表に示される方案に従って、5回投与投与し、週2回腫瘍を測定し、腫瘍阻害率は、表9を参照し、腫瘍阻害曲線は、
図14を参照し、投与後15日目の結果によると、低用量群4mpkにおけるQP374537493746の腫瘍阻害率(TGI)は、92.3%に達し、高用量群8mpkにおけるQP374537493746の腫瘍阻害率(TGI)は、99.8%に達し、いずれも5mpk群(AMG910 5mpk群のモル濃度は、QP374537493746高用量群8mpkに相当する)における対照抗体AMG910の腫瘍阻害率(TGI=69.3%)よりも有意に良好であることを示す。
図15は、投与後の各群のマウスの体重変化を示し、結果は、投与群のマウスの体重がほぼ変化せず、成長が良好で、良好な薬物の安全性を証明することを示す。
【0114】
【0115】
二:抗TAA(腫瘍関連抗原)、抗CD3抗体、およびサイトカインIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質形態の設計
CD3二重抗体は、血液腫瘍において大きな可能性を示しているが、CD3二重抗体は、固形腫瘍の治療において依然としていくつかの課題に直面する。CD3二重抗体療法は、固形腫瘍組織におけるT細胞浸潤および免疫阻害に関連し、浸潤T細胞が少ない場合、CD3二重抗体治療に対する耐性が生じやすくなる。IL15は、T細胞およびNK細胞を活性化し、これらの細胞の増殖および生存を媒介する可溶性サイトカインである。本発明は、そのサイトカインIL15成分がT細胞を含む免疫細胞の増殖を刺激し、腫瘍の免疫微小環境を変化せることができることを期待する、TAA/CD3/IL15多機能融合タンパク質を設計する。
【0116】
実施例10:抗TAA(腫瘍関連抗原)、抗CD3、およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質形態の設計
本発明は、様々な抗TAA(腫瘍関連抗原)、抗CD3、およびIL15/IL15Ra含有多機能融合タンパク質を提供する。
【0117】
1.第1の種類の多機能融合タンパク質は、
図16~
図19を参照することができ、融合タンパク質分子は、第1の単量体(図の左側部分)および第2の単量体(図の右側部分)を含む。第1の単量体は、Fd断片(VHおよびCH1を含む)を有する鎖1、ならびに軽鎖断片(VLおよびCLを含む)、サイトカイン機能領域(IL15およびIL15Raを含む)、第1のFc鎖を有する鎖2等の二つの鎖を含む。第2の単量体は、Fd断片(VHおよびCH1を含む)を有する鎖1、ならびに軽鎖断片(VLおよびCLを含む)、抗CD3抗体断片(図におけるCD3抗体、これは、scFv形態である)、および第2のFc鎖を有する鎖2等の二つの鎖を含む。第1の単量体または第2の単量体において、軽鎖断片およびFd断片は、それぞれ対になって抗TAAのFabドメインを形成する(図における抗-TAA抗体の機能を実現するために)。サイトカイン機能領域のN末端は、第1の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、第1のFc鎖に融合され、抗CD3抗体断片のN末端は、第2の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、第2のFc鎖と融合する。第1のFc鎖および第2のFc鎖は、重合してFcドメインを形成する。
【0118】
図16~
図19において、scFv形態の抗CD3抗体断片は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、ならびに重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むことができる。ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、抗CD3抗体断片のアミノ酸の融合順序は、「VH(CD3)~VL(CD3)」、または「VL(CD3)~VH(CD3)」であり得、「~」は、連結断片を表わす。サイトカイン機能領域のアミノ酸断片の融合順序は、「IL-15~IL-15Ra」、または「IL-15Ra~IL-15」であり得る。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
2.第2の種類の多機能融合タンパク質は、
図20~
図27を参照することができ、タンパク質分子は、第1の単量体(図の左側部分)および第2の単量体(図の右側部分)を含む。第1の単量体は、抗TAA抗体断片(VHおよびVLドメインを含むscFv形態である)、サイトカイン機能領域(IL15およびIL15Raを含む)、第1のFc鎖を含み、第2の単量体は、抗TAA抗体断片(VHおよびVLドメインを含むscFv形態である)、抗CD3抗体断片(図におけるCD3抗体は、scFv形態である)、ならびに第2のFc鎖を含む。サイトカイン機能領域のN末端は、第1の単量体の抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、第1のFc鎖に融合され、抗CD3抗体断片のN末端は、第2の単量体の抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、第2のFc鎖と融合する。第1のFc鎖および第2のFc鎖は、重合してFcドメインを形成する。
【0124】
第1の種類の多機能融合タンパク質と同様に、scFv形態の抗CD3抗体断片は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、ならびに重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むことができる。ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、抗CD3抗体断片のアミノ酸の融合順序は、「VH(CD3)~VL(CD3)」、または「VL(CD3)~VH(CD3)」であり得、「~」は、連結断片を表わす。サイトカイン機能領域のアミノ酸断片の融合順序は、「IL-15~IL-15Ra」、または「IL-15Ra~IL-15」であり得る。さらに、scFv形態の抗TAA抗体断片は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、ならびに前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含み、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、抗TAA抗体断片のアミノ酸の融合順序は、「VH(TAA)~VL(TAA)」、または「VL(TAA)~VH(TAA)」であり得、「~」は、連結断片を表わす。
【0125】
図20~
図27に示される抗体分子の各ドメインは、同じアミノ酸配列を使用し、違いは、融合順序または構成にある。
図20を例として挙げると、融合タンパク質に対する二つのポリペプチド鎖は、(1)第1のポリペプチド鎖:VL(TAA)-VH(TAA)-IL15-IL15Ra-第1のFc鎖、(2)第2のポリペプチド鎖:VL(TAA)-VH(TAA)- VH(CD3)-VL(CD3)-第2のFc鎖のように説明される。
【0126】
3.本発明は、腫瘍標的T細胞/NK細胞活性化のためのTAA/IL15二機能性融合タンパク質を提供し、その構造形態は、
図28を参照することができ、第2の種類の多機能融合タンパク質と比較して、違いは、抗CD3抗体断片をサイトカイン機能領域(IL15およびIL15Raを含む)に置き換えることである。
図28において、タンパク質分子は、対称的な構造形態を有する。
【0127】
実施例11:CLDN18.2/CD3/IL15多機能融合タンパク質の分子クローニング、一過性発現、およびタンパク質精製
1.分子クローニング:
実施例10に従って、CLDN18.2/CD3/IL15またはCLDN18.2/IL15多機能融合タンパク質を設計し、ここで、CLDN18.2抗体は、特許文献CN202010344676.8の抗体QP14611463配列を参照することができ、抗CD3抗体は、SP34軽鎖、重鎖配列を使用し、タンパク質の発現および配列番号は、次の表に示されたとおりである。
【0128】
【0129】
同時に、Hengrui会社のIL15/IL15Ra-FCを対照として構築し、IL15/IL15Ra-FCタンパク質をQP33123313と番号付ける。
【0130】
表10に示されるようにクローンを設計し、全長発現ベクターを構築する。クローン構築、タンパク質発現およびタンパク質精製方法ついては、実施例3を参照することができる。
【0131】
実施例12:CLDN18.2/CD3/IL15多機能融合タンパク質とCLDN18.2との結合活性のFACS検出
実験段階:CLDN18.2を安定的に発現する細胞株CHOS-CLDN18.2を採取し、1E5/ウェル細胞CHOS-CLDN18.2をU字型96ウェルプレートに播種し、氷PBSで1回洗浄し、1200rpmで3分間遠心分離し、洗浄完了後、200μL/ウェルに従って3%FBS/PBSブロッキング溶液を加え、氷上で1時間インキュベートする。ブロッキング完了後、1200rpmで3分間遠心分離した後、上清を振り捨て、様々な濃度のサンプルをインキュベートし、氷上で2時間インキュベートし、氷PBSで3回洗浄し、PE-抗ヒトFC抗体を1:200希釈率、50μl/ウェルでインキュベートし、充分に混合し、氷上で1時間置き、氷PBSで3回洗浄する。200μl/ウェルのPBSに細胞を再懸濁し、FACS機器で平均蛍光値を読み取り、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。
図29および
図30に示されるように、結果は、CLDN18.2/CD3/IL15およびCLDN18.2/IL15多機能融合タンパク質が、すべてTAA標的CLDN18.2に結合し、親和性が、AMG910類似体(1:1形態)QP3693よりも強いことを示し、これは、予想と一致している。
【0132】
実施例13:CLDN18.2/CD3/IL15多機能融合タンパク質とCD3との結合活性のFACS検出
リンパ球性白血病細胞(Jurkat細胞)は、天然CD3を発現し、FACS検出によって抗CD3抗体およびその突然変異体のJurkat細胞への結合を検出する。1E5/ウェルJurkat細胞をU字型96ウェルプレートに播種し、氷PBSで1回洗浄し、1200rpmで3分間遠心分離し、洗浄完了後、200μL/ウェルに従って3%FBS/PBSブロッキング溶液を加え、氷上で1時間インキュベートする。ブロッキング完了後、1200rpmで3分間遠心分離した後、上清を振り捨て、様々な濃度のサンプルをインキュベートし、氷上で2時間インキュベートし、氷PBSで3回洗浄し、PE-抗ヒトFC抗体を1:200の希釈率、50μl/ウェルでインキュベートし、充分に混合し、氷上で1時間置き、氷PBSで3回洗浄する。200μl/ウェルのPBSに細胞を再懸濁し、FACS機器で平均蛍光値を読み取り、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。
図31および
図32に示されるように、結果は、CLDN18.2/CD3/IL15多機能融合タンパク質が、すべてCD3に結合し、親和性は、対照分子AMG910(QP3693)よりも弱いことを示し、これは、CD3抗体親和性の低下によりCD3二重抗体の安全性を向上させるという本発明者らの予想と一致している。
【0133】
実施例14:多機能融合タンパク質IL15の活性を評価するためのMo7e細胞増殖実験
Mo7e(ヒト巨細胞性白血病細胞株)細胞は、IL-15Rβγを発現し、サイトカイン増殖依存性細胞である。研究によると、休止期NK細胞およびナイーブT細胞は、中程度の親和性IL-15Rβγ表現型を発現し、サイトカインIL15/IL15Raを用いたMo7e(IL-15Rβγ)細胞増殖実験の結果は、刺激されていないPBMCの増殖実験の結果と一致する(Mol Cancer Ther、11(6) June 2012)。本発明は、Mo7e細胞増殖実験を使用して、多機能融合タンパク質IL15の活性を評価し、方法および結果は、次のとおりである。
【0134】
実験試薬:Mo7e細胞(ヒト巨細胞性白血病細胞株)は、中国医学アカデミー基礎医学研究所の再オブリソースセンターから購入され、細胞増殖および毒性検出キット(CCK-8)は、MeilunBioから購入され、製品番号は、MA0218であり、組換えヒトGM-CSFは、perprotechから購入され、製品番号は、300-03であり、ヒトIgGは、Sigmaから購入され、製品番号は、I4506であり、他の抗体は、内部で調製される。
【0135】
実験方法:Mo7e細胞は、10%FBS、2mMのL-グルタミンおよび8ng/mlのGM-CSFを含むRPMI1640培地を使用して、37℃、5%CO2インキュベーターで培養され、Mo7e細胞を収集し、800rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、GM-CSFを含まないRPMI1640培地で細胞を2回洗浄し、GM-CSFを含まないRPMI1640培地で細胞を再懸濁し、且つカウントし、80μl/ウェルで2×104個の細胞を96ウェルプレートに接種し、37℃、5% CO2インキュベーターで1時間培養し、試験される各薬用培地を4倍勾配で希釈した後、20μl/ウェルを細胞懸濁液と均一に混合し、37℃、5%CO2インキュベーターで3日間培養し、10μl/ウェルのCCK-8試薬を試験される96ウェルプレートに加え、37℃、5%CO2インキュベーターで4時間インキュベートし、96ウェルプレートを取り出し、マイクロプレートリーダーで波長450nmの吸光度を検出する。
【0136】
図33、
図34および
図35に示されるように、実験結果は、異なる設計形態のCLDN18.2/CD3/IL15およびCLDN18.2/IL15多機能融合タンパク質が、すべてIL15活性を有し、分子設計に応じて活性が強いか弱いかが異なることを示す。異なる構築形態は、IL15活性が異なる分子を産生指し、これは、最適な治療ウィンドウを選択する機会を提供する。
【0137】
実施例15:CLDN18.2/CD3/IL15多機能融合タンパク質によって媒介されたヒト胃がん細胞のT細胞殺傷
実験方法:選択された標的細胞は、CLDN18.2を安定的に発現するヒト胃がん細胞株NUGC4-CLDN18.2である。エフェクター細胞は、ヒトPBMCである。E:T比10:1に従って、様々な濃度の抗体を加え、37℃、5%CO
2で48時間培養し、CytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega、G1780-1000 assays)を使用して、細胞培養上清中のLDHを検出し、細胞毒性%を定量する。標的細胞の最大溶解率(100%)は、1%であり、Triton X-100で標的細胞を処理して細胞を溶解し、すべてのLDHを放出する。標的細胞自発、エフェクター細胞自発、標的細胞+エフェクター細胞自発等の対照ウェルを設定する。式%細胞毒性(Cytotoxicity)=[(実験(Experimental)-エフェクター自発(Effector Spontaneous)-標的自発(Target Spontaneous))/(標的の最大値(Target Maximum)-標的自発(Target Spontaneous))]×100に従ってデータを分析する。
図36および
図37に示されるように、結果は、QP374508993746、QP090109003746、QP09023688、QP36670903、QP09040905、QP09060905、QP09040907およびQP09060907が、すべてPBMCを媒介してヒト胃がん細胞NUGC4-CLDN18.2細胞を殺傷することができることを示す。ここで、QP374508993746、QP090109003746がPBMCを媒介してヒト肺がん細胞NUGC4-CLDN18.2細胞を殺傷する活性は、対照分子AMG910の活性よりも有意に優れる。他の分子によって媒介されるヒト肺がん細胞NUGC4-CLDN18.2細胞のPBMC殺傷活性は、対照分子AMG910に相当する。
【0138】
実施例16:CLDN18.2/CD3/IL15多機能融合タンパク質によって媒介されたヒト肺がん細胞のT細胞殺傷
実験方法:選択された標的細胞は、CLDN18.2を安定的に発現するヒト肺がん細胞株HCC827-CLDN18.2である。エフェクター細胞は、ヒトPBMCである。E:T比10:1に従って、様々な濃度の抗体を加え、37℃、5%CO
2で48時間培養し、CytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega、G1780-1000 assays)を使用して、細胞培養上清中のLDHを検出し、細胞毒性%を定量する。標的細胞の最大溶解率(100%)は、1%であり、Triton X-100で標的細胞を処理して細胞を溶解し、すべてのLDHを放出する。標的細胞自発、エフェクター細胞自発、標的細胞+エフェクター細胞自発等の対照ウェルを設定する。式%細胞毒性(Cytotoxicity)=[(実験(Experimental)-エフェクター自発(Effector Spontaneous)-標的自発(Target Spontaneous))/(標的の最大値(Target Maximum)-標的自発(Target Spontaneous))]×100に従ってデータを分析する。
図38に示されるように、結果は、QP090109003746、QP36670903、QP09040905、QP09060905およびQP09040907が、すべてPBMCを媒介してヒト肺がん細胞HCC827-CLDN18.2細胞活性を殺傷することができることを示す。ここで、QP090109003746によって媒介されたヒト肺がん細胞HCC827-CLDN18.2細胞のPBMC殺傷活性は、対照分子AMG910よりも有意に優れる。他の分子によって媒介されたヒト肺がん細胞HCC827-CLDN18.2細胞のPBMC殺傷活性は、対照分子AMG910に相当する。
【0139】
さらに、いくつかの他の実施例において、抗CD3抗体断片は、それぞれSP34変異体QP3685、QP3689、QP3690の抗体軽鎖、重鎖配列から選択され、実施例11の表10に示されるように、クローンを設計し、且つタンパク質を発現および精製する。結果は、QP3685、QP3689、QP3690の抗体軽鎖、重鎖配列を使用して構築された分子も、CLDN18.2結合活性およびIL15活性を有し、抗CD3分子は、CD3結合活性も融資、T細胞を媒介してヒト胃がん細胞または肺がん細胞を殺傷する効果もあることを示す。
【0140】
本発明の内容を上記の好ましい実施形態を通じて詳細に説明したが、本発明は上記の説明に限定されるものでないことを理解されたい。当業者であれば、上記の内容を読めば、本発明に対する様々な修正および変更が明らかとなるであろう。従って、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって限定されるべきである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD3抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、VLCDR1、VLCDR2、VLCDR3を含み、前記抗CD3抗体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:29~34に示されるVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3を含む抗CD3抗体変異体であって、
前記抗CD3抗体変異体の突然変異部位は、
SEQ ID NO:30に示される配列の10番目の部位、
SEQ ID NO:31に示される配列の2番目の部位および7番目の部位、
SEQ ID NO:33に示される配列の3番目の部位および4番目の部位、
SEQ ID NO:34に示される配列の4番目の部位、5番目の部位、6番目の部位および7番目の部位のいずれか一つまたは二つ以上を含むことを特徴と
し、
好ましくは、前記突然変異とは、アミノ酸が置換されることを指すことを特徴とする
、抗CD3抗体変異体。
【請求項2】
変異体の突然変異部位は、
SEQ ID NO:30に示される配列における10位のAがEに置換され、
SEQ ID NO:31に示される配列における2位のGがSに置換され、7位のSがGに置換され、
SEQ ID NO:33に示される配列における3位のNがWに置換され、4位のKがLに置換され、
SEQ ID NO:34に示される配列における4位のYがNまたはRに置換され、5位のSがKに置換され、6位のNがGに置換され、7位のLがGに置換される部位のいずれか一つまたは二つ以上を含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項3】
VHCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:35に示されたとおりであるか、または、
VHCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:36に示されたとおりであるか、または、
VLCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:37または38に示されたとおりであるか、または、
VLCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:39、40または41に示されたとおりであることを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項4】
前記VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3のアミノ酸配列は、
(1)SEQ ID NO:29、35、31、32、37、39、
(2)SEQ ID NO:29、35、36、32、37、40、
(3)SEQ ID NO:29、35、36、32、38、41のいずれかの一組の配列に示されたとおりであることを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項5】
前記抗体変異体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:1、2または3に示される配列の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域から選択されるか、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有することを特徴とする
請求項
4に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項6】
前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域との間には、ジスルフィド結合を形成するための突然変異があり、前記突然変異の部位は、次のいずれか一種または二種以上の組み合わせを含み、突然変異部位は、EUに従って番号付けられ、前記重鎖可変領域は、VHで表され、前記軽鎖可変領域は、VLで表されることを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【表1】
【請求項7】
前記抗CD3抗体変異体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4またはその変異体から選択される重鎖定常領域、ならびにヒトκ鎖、λ鎖またはその変異体から選択される軽鎖定常領域をさらに含み、前記重鎖定常領域は、Fc断片またはその変異体を含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項8】
前記抗体変異体は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、および前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むscFvであり、前記連結断片のアミノ酸配列は、好ましくは若干のGGGGSリピート、より好ましくは3個のGGGGSリピートであることを特徴とする
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体。
【請求項9】
癌を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項1に記載の抗CD3抗体変異体の適用
であって、
前記癌は、結腸直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、前立腺、腎臓、子宮頚、骨髄がん、リンパ腫、白血病、甲状腺、子宮内膜、子宮、膀胱、神経内分泌、頭頚部、肝臓、鼻咽頭、精巣、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群から選択されるか、または前記の部位で発生することを特徴とする
抗CD3抗体変異体の適用。
【請求項10】
核酸分子であって、
請求項1に記載の抗CD3抗体変異体をコードすることを特徴とする、前記核酸分子。
【請求項11】
抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子であって、
第1の単量体および第2の単量体を含むヘテロ二量体形態であり、
前記第1の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片および第1のFc鎖を含み、
前記第2の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片、抗CD3抗体断片および第2のFc鎖を含み、
前記軽鎖断片は、VLドメインおよびCLドメインを含み、前記Fd断片は、VHドメインおよびCH1ドメインを含み、前記第1の単量体または前記第2の単量体において、前記軽鎖断片は、前記Fd断片と対になって抗TAAのFabドメインを形成し、ここで、前記第1の単量体の軽鎖断片は、前記第1のFc鎖に融合され、前記抗CD3抗体断片のN末端は、前記第2の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、前記第2のFc鎖に融合され、
または、
前記第1の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片、サイトカイン機能領域、第1のFc鎖を含み、
前記第2の単量体は、(a)Fd断片、(b)軽鎖断片、抗CD3抗体断片、および第2のFc鎖を含み、
前記サイトカイン機能領域は、IL-15およびIL-15Raを含み、ここで、前記サイトカイン機能領域のN末端は、前記第1の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、前記第1のFc鎖に融合され、前記抗CD3抗体断片のN末端は、前記第2の単量体の軽鎖断片に融合され、C末端は、前記第2のFc鎖に融合され、
または、
前記第1の単量体は、抗TAA抗体断片、サイトカイン機能領域、第1のFc鎖を含み、
前記第2の単量体は、抗TAA抗体断片、抗CD3抗体断片、および第2のFc鎖を含み、ここで、
前記サイトカイン機能領域のN末端は、前記第1の単量体の抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、前記第1のFc鎖に融合され、前記抗CD3抗体断片のN末端は、前記第2の単量体の抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、前記第2のFc鎖に融合され、
前記第1のFc鎖と前記第2のFc鎖とは、交換可能であることを特徴と
し、
好ましくは、前記抗CD3抗体断片のアミノ酸配列は、CD3結合特異性抗体、抗体断片、単一ドメイン抗体またはそのヒト化形態から選択され、好ましくは、前記抗CD3抗体断片のアミノ酸配列は、SP34、OKT3、UCTH1またはその誘導体から選択されることを特徴とする、
前記抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項12】
前記抗TAA抗体断片は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、および前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むscFv形態であり、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記抗TAA抗体断片のアミノ酸融合順序は、「VH~VL」もしくは「VL~VH」であり、「~」は、連結断片を表わし、または、
前記抗CD3抗体断片は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、および前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とを連結する連結断片を含むscFv形態であり、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記抗CD3抗体断片のアミノ酸的融合順序は、「VH~VL」もしくは「VL~VH」であり、「~」は、連結断片を表わし、または、
ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記サイトカイン機能領域のアミノ酸断片の融合順序は、「IL-15~IL-15Ra」または「IL-15Ra~IL-15」であり、「~」は、連結断片を表わし、好ましくは、前記IL-15~IL-15Raの配列は、SEQ ID NO:42に示されたとおりであり、前記IL-15Ra~IL-15の配列は、SEQ ID NO:43に示されたとおりであることを特徴とする
請求項
11に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項13】
前記抗CD3抗体断片は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記抗CD3抗体断片の重鎖可変領域は、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3を含み、前記抗CD3抗体断片の軽鎖可変領域は、VLCDR1、VLCDR2、VLCDR3を含み、前記VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3のアミノ酸配列は、
(1)SEQ ID NO:29,35,31,32,37,39; (2)SEQ ID NO:29,35,36,32,37,40; (3)SEQ ID NO:29,35,36、32,38,41のいずれか一組の配列に示されたとおりであることを特徴とする
請求項
11に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項14】
IL-15RaおよびIL-15は、IL-15/IL-15Ra複合体を形成し、IL-15は、IL-15、IL-15Raに結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、IL-15Raは、IL-15Ra、IL-15に結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、
前記IL-15は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15のアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであることを特徴とし、
【表2】
好ましくは、前記IL-15/IL-15Ra複合体は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15またはIL-15Raのアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであり、前記IL-15Raの親配列は、SEQ ID NO:45に示されたとおりであることを特徴とする
請求項
11に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【表3】
【請求項15】
前記TAAは、CD20、CD19、CD30、CD33、CD38、CD40、CD52、slamf7、GD2、CD24、CD47、CD133、CD239、CD276、PD-1、CEA、Epcam、Trop2、TAG72、MUC1、MUC16、mesothelin、folr1、CLDN18.2、PDL1、EGFR、EGFR VIII、C-MET、HER2、FGFR2、FGFR3、PSMA、PSCA、EphA2、ADAM17、17-A1、NKG2D ligands、MCSP、LGR5、SSEA3、SLC34A2、BCMA、GPNMBまたはGlypican-3から選択されることを特徴とする
請求項
11に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項16】
前記第1のFc鎖および前記第2のFc鎖は、重合してFcセグメントを形成し、前記Fcセグメントは、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、好ましくはIgG1 Fc、またはヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、前記タンパク質分子は、Fcヘテロ二量体形態であり、好ましくは、前記Fcヘテロ二量体は、以下の突然変異の組み合わせを含むが、これらに限定されず、以下の突然変異は、EUに従ってカウントされることを特徴とする
請求項
11に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【表4】
【請求項17】
前記タンパク質分子は、Fcセグメントを含み、Fcセグメントの選択により、以下の突然変異の組み合わせを含むが、これらに限定されない免疫エフェクター機能が排除され、以下の突然変異は、EUに従ってカウントされることを特徴とする
請求項
11に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【表5】
【請求項18】
(1)SEQ ID NO:05、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(2)SEQ ID NO:08、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(3)SEQ ID NO:09、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(4)SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:06、SEQ ID NO:07、
(5)SEQ ID NO:05、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:07、
(6)SEQ ID NO:01、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:07、
(7)SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:07、
(8)SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:07、
(9)SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、
(10)SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:21、
(11)SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:23、
(12)SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、
(13)SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、
(14)SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:25、
(15)SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:27、
(16)SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27のいずれか一組の配列に示されるアミノ酸断片の融合によって得られることを特徴とする
請求項
11に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子。
【請求項19】
核酸分子であって、
請求項
11に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子をコードすることを特徴とする、前記核酸分子。
【請求項20】
癌を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項
11に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子の適用であって、
前記癌は、結腸直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、前立腺、腎臓、子宮頚、骨髄がん、リンパ腫、白血病、甲状腺、子宮内膜、子宮、膀胱、神経内分泌、頭頚部、肝臓、鼻咽頭、精巣、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群から選択される癌を含むか、または前記の部位で発生することを特徴とする、前記癌を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項
11に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)/抗CD3のタンパク質分子の適用。
【請求項21】
抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質であって、
二つのポリペプチド鎖を含み、いずれか一つのポリペプチド鎖は、抗TAA抗体断片、サイトカイン機能領域、Fc断片を含み、前記抗TAA抗体断片は、scFv形態であり、前記サイトカイン機能領域は、IL-15およびIL-15Raを含み、前記サイトカイン機能領域のN末端は、前記抗TAA抗体断片に融合され、C末端は、前記Fc断片と融合することを特徴とする、前記抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質。
【請求項22】
IL-15RaおよびIL-15は、IL-15/IL-15Ra複合体を形成し、IL-15は、IL-15、IL-15Raに結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、IL-15Raは、IL-15Ra、IL-15に結合できるその突然変異、切断および様々な誘導体を含み、
前記IL-15は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15のアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであることを特徴とし、
【表6】
好ましくは、前記IL-15/IL-15Ra複合体は、次のいずれかの組み合わせに示される突然変異形態を含むが、これらに限定されず、カウント方法は、IL-15またはIL-15Raのアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいてこれを1位としてカウントされ、好ましくは、前記IL-15の親配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであり、前記IL-15Raの親配列は、SEQ ID NO:45に示されたとおりであることを特徴とする
請求項21に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質。
【表7】
【請求項23】
前記融合タンパク質のいずれか一つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:28に示されたとおりであるか、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有することを特徴とする
請求項
21に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質。
【請求項24】
核酸分子であって、
請求項
21に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質をコードすることを特徴とする、前記核酸分子。
【請求項25】
癌を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項
21に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質の適用であって、
前記癌は、結腸直腸、乳房、卵巣、膵臓、胃、前立腺、腎臓、子宮頚、骨髄がん、リンパ腫、白血病、甲状腺、子宮内膜、子宮、膀胱、神経内分泌、頭頚部、肝臓、鼻咽頭、精巣、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、皮膚扁平上皮がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、以及骨髄異形成症候群から選択される癌を含むか、または前記の部位で発生することを特徴とする、前記癌を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項
21に記載の抗腫瘍関連抗原(TAA)、およびIL-15/IL-15Ra含有融合タンパク質の適用。
【国際調査報告】