(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】股関節CPM機械
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
A61H1/02 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574608
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 US2022031653
(87)【国際公開番号】W WO2022256348
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523453075
【氏名又は名称】ロドリゲス,ミシェル シー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,ミシェル シー.
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA09
4C046AA10
4C046AA45
4C046BB08
4C046CC11
4C046CC13
4C046DD02
4C046DD14
4C046DD16
4C046DD26
4C046DD33
4C046DD46
(57)【要約】
分回しの動きならびに直線的な股関節屈曲/伸展を、必要とする患者に安全に行うかまたは実施するための方法および装置または機械が提供される。(本明細書で交換可能に使用される)装置または機械は、好ましくは持続的他動運動装置である。装置は、手術脚を完全に支持し、股関節を回旋に対して中立位置に保つことによって股関節外旋/内旋の実際の量を制御する。動作中、患者は、一般に手術脚を上にした状態で横臥位になる。この体位であれば、分回しの動きならびに直線的な股関節屈曲/伸展を患者に対して安全で効果的に実施することができる。患者の他の体位を使用することができ、通常、患者固有である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脚の運動のための持続的他動運動(CPM)機械であって、
本体と、
前記本体から延びる1つまたは複数のアームであって、各アームが、前記本体に対して3つ(X、YおよびZ)の軸に沿って動かせる、1つまたは複数のアームと、
各アームの端部から取り付けられるか、またはそこから延びるハンド部と
を備え、
前記ハンド部が、前記患者の前記脚を支持するように構造化され、
前記1つまたは複数のアームが、前記患者に、前記患者の脚の分回しの動きならびに直線的な股関節屈曲/伸展が行われるように動くようにプログラム可能である、持続的他動運動(CPM)機械。
【請求項2】
前記1つまたは複数のアームの各々が他のアームから独立して動かせる、請求項1に記載のCPM機械。
【請求項3】
前記本体を前記患者に対して適切な位置に固定するためのスタンドをさらに備える、請求項1に記載のCPM機械。
【請求項4】
前記ハンド部が、スイベルジョイントを介して前記アームに接続される、請求項1に記載のCPM機械。
【請求項5】
前記機械が前記機械の前記アームを所定の動きで動かすために、前記機械によって実行可能な命令のプログラムを有形に具現化する、前記機械によって読み取り可能なプログラム記憶装置をさらに備える、請求項1に記載のCPM機械。
【請求項6】
前記プログラム記憶装置が、アプリケーションを介してスマートフォンとインターフェースするようにプログラムされる、請求項1に記載のCPM機械。
【請求項7】
アームが1つのみである、請求項1に記載のCPM機械。
【請求項8】
患者の脚の運動のための持続的他動運動(CPM)機械であって、
本体と、
前記本体に対して3つ(X、YおよびZ)の軸に沿って動かせる、前記本体から延びる単一のアームと、
前記患者の前記脚を支持するために、前記アームの端部に取り付けられたハンド部と
を備え、
前記アームが、前記患者に、前記患者の脚の分回しの動きならびに直線的な股関節屈曲/伸展が行われるように動くようにプログラム可能である、持続的他動運動(CPM)機械。
【請求項9】
前記ハンド部が凹形状であり、前記アームの幅よりも長い、請求項8に記載のCPM機械。
【請求項10】
前記アームが、前記本体を実質的に取り囲むバンドによって前記本体に接続され、前記バンドが、前記本体の高さの少なくとも一部を上下に動くことができる、請求項8に記載のCPM機械。
【請求項11】
前記アームが、前記バンドの正面長さの少なくとも一部に沿って前後に動くことができる、請求項10に記載のCPM機械。
【請求項12】
前記ハンド部が、前記アームの長さの少なくとも一部に沿って動くことができる、請求項8に記載のCPM機械。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
股関節温存の整形外科分野は、過去20年間で飛躍的に成長している。股関節における関節鏡検査によって、極めて高度な手術が現在行われている。股関節は、3度の動きを有する球関節であり、これは、股関節が直線的に動くだけでなく回転もすることを意味する。これらの患者の術後のリハビリテーションは、疼痛、可動性、および最終的には機能に関する手術の成果と患者の転帰とに役立つ。
【0002】
最も重大で一般的な術後合併症のうちの1つは、関節および周囲の軟組織における瘢痕組織および癒着の形成である。現在、瘢痕組織の生成を最小限に抑え、関節包と関節唇との間の癒着の形成を防ぐのを助けるために、持続的他動運動(continuous passive movement:CPM)機械または持続的他動運動(CPM)装置(本明細書で交換可能に使用される)が術後に使用されている。
【0003】
持続的他動運動のメリットはかなり大きい。多くのメリットの中でも、CPMは、術後の最初の数日間/数週間の関節の硬直を回避するのに役立ち、それにより、関節の線維症に進行する可能性が減少する。さらに、CPMは、関節腔中の滑液を増加させ、軟組織拘縮を防ぐことによって関節ROMを改善し、自動股関節可動域(ROM)(特に股関節外転)を改善することができる。CPMはまた、関節軟骨の維持に役立ち、疼痛を緩和し、筋痙攣を軽減するのに役立つ。他のメリットとしては、組織再構築の促進および栄養の強化における補助、関節血種および関節周囲浮腫の最小化、ならびに麻酔下での関節徒手整復の必要性の減少が挙げられる。
【0004】
術後の股関節は、関節の完全な機能的運動性に対応するように、理想的には、直線的な動きだけでなく、一般に股関節分回し(Hip Circumduction:HC)として知られている回旋の動きも必要とする。術後、患者は、毎日かなりの時間(通常4~6時間)のCPM使用を済ませる必要がある。一般に、この治療は手術後最初の4~6週間必要とされる。いくつかの事例では、関節への微小破壊処置を伴うと、CPMは術後12週間まで推奨される。
【0005】
現在、股関節への直線的な動きを補助するかまたは行う機械または装置がある。しかしながら、重要な股関節の分回しを行う医療装置はない。代わりに、術後の患者は膝CPM機械を使用しなければならないが、膝CPM機械は、それが行う運動が厳しく制限されている。これらの従来技術の膝CPM機械の主な欠点は、患者があおむけ(仰臥位)で横たわっている間、膝CPM機械が直線的な(股関節屈曲/股関節伸展)運動しか行わないことである。
【0006】
結果として、HCの動きは、現在、認可された理学療法士によって行われなければならない。これは、通常患者が理学療法セッションのために療法士の診療室に行くと行われる。実際に、これらの理学療法セッションは、通常週に3回しか計画されない。追加のHCの動きセッションが、理想的には、少なくとも20分間のセッションで最低でも1日に6回実施されるべきである。しかし、これはしばしば非現実的または不十分である。これらの在宅セッションは、通常、無免許で、概して訓練が不十分な在宅介護者によって行われる。在宅介護者は、通常、医療チームからHCの実施方法に関する訓練を受け、その後、これを4~6週間行うように求められる。
【0007】
残念ながら、様々な理由のために、この仕組みは高度なコンプライアンス違反につながる。第1に、HCの動きは実施することが肉体的に難しく、在宅介護者は、脚を完全に持ち上げることが負担であり、一般にルーチンに不慣れであるためにすぐに疲れる。第2に、患者は通常、自宅での人間工学的な設備が不十分であり、このことは、困難な状況をより難しくする。第3に、患者も介護者も、動き(HC)が適切で十分に実施されているという自信があまりないことが多い。これらの要因および他のことにより、HCの動きへのコンプライアンスが低下し、その結果、長期転帰が悪化する。
【0008】
従来の運動機械はすべて、重大な欠点を有する。術後患者の中には、HCの動きを行うために、ママルー(Mamaroo)として知られている乳児用装置を使用しようと試みる者もいる。実際には、患者は装置に枕または他の柔らかい材料を詰め、その後その上に自分の術脚を置く。この手法の重大な欠点は、この手法が極めて小さい最小量の回転しか行わないことである。ママルーは、動く乳児用シートとして設計されている。したがって、ママルーをベッドまたはテーブル上に置くことは安全ではない。代わりに、患者は、股関節装具である2本の松葉杖を使用しながら、床に降りてママルーを使用し、その後安全に床から立ち上がろうし、自分の手術脚に20ポンドの体重負荷(WB)圧力しかかけない。
【0009】
患者が股関節屈曲/股関節伸展の直線的な動きと股関節分回しの回旋の動きの両方を安全に受けることを可能にする装置が必要である。患者がベッドに、または理学療法台の上に横たわっている間に、股関節分回しの回旋の動きを患者に行う装置が必要である。
【発明の概要】
【0010】
分回しの動きならびに直線的な股関節屈曲/伸展を、必要とする患者に安全に行うかまたは実施するための方法および装置または機械が提供される。(本明細書で交換可能に使用される)装置または機械は、好ましくは持続的他動運動装置である。装置は、手術脚を完全に支持し、股関節を回旋に対して中立位置に保つことによって股関節外旋/内旋の実際の量を制御する。動作中、患者は、一般に手術脚を上にした状態で横臥位になる。この体位であれば、分回しの動きならびに直線的な股関節屈曲/伸展を患者に対して安全で効果的に実施することができる。患者の他の体位を使用することができ、通常、患者固有である。
【0011】
発明によれば、患者は、一般に、手術脚を上にした状態で横向きに寝る。この体位では、Y軸は身体の長さ(頭から足まで)に沿っており、X軸は身体の正面から身体の背面までの平面であり、Z軸は天井から床まで、または骨盤の垂直高さを通って延びると考えると便利である。この体位では、本方法および股関節CPM装置は、すべての3つ(X、YおよびZ)の軸に沿って患者の脚の動きを安全に生成する。この場合も、患者が他の体位になることが可能であり、これは患者の状態および必要性によって決まる。装置のアームは患者の脚の必要な運動を行い、これにより、理学療法士が行うであろう患者の脚の運動が正確にシミュレートされる。具体的には、本発明のCPM機械は、患者の股関節の多次元運動をも生成し、それにより、自宅、または、入院患者および外来患者の診療所などの他の環境において、必要な治療運動が行われる。
【0012】
本発明の重要な利点は、このCPM治療を行うために、患者がもはや別の人、すなわち診察室にいる医療従事者、または自宅にいる介護者に頼る必要がないことである。さらに、患者は、股関節手術後に必要な脚の運動を実現するために、複数の機械を必要としない。代わりに、患者は、両方の必要な動き(股関節屈曲/伸展および股関節分回し)を実施するために、1つの装置のみを必要とする。患者は、独力で股関節CPMに乗り、股関節CPMから降りることが可能である。その上、理学療法診療所は、理学療法士が患者の治療セッションのこの動きを20分間手動で実施する代わりに、股関節CPMを使用することが可能である。
【0013】
いくつかの実施形態では、CPM機械は高さが調整可能であり、部品を装置の本体に向かって畳み込むかまたは折り畳むことができる。折畳み位置では、機械は、例えば患者の家に容易に運搬できるように、より小さく、より便利な形状に圧縮される。内部には、機械は、脚を時計回りと反時計回りの両方に分回しするように、ならびに股関節屈曲/伸展で動かす、必要な機構/技術とともに、長円型の軸に沿った軌道パターンでアームを動かすための手段を収容する。生成される運動は3次元であるので、1つまたは複数のロボットアームが、身体に向かっておよび身体から離れて(X軸、股関節および膝関節屈曲/伸展)、頭部に向かって上に、および足に向かって下に(Y軸、股関節および膝関節屈曲/伸展)、ならびに天井/床に向かって上におよび下に(Z軸、股関節外転/内転)動くことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1Aは細長いハンド部をもつ本発明の股関節CPM機械の単一アームの実施形態の斜視図を示す。
図1Bは細長いハンド部をもつ本発明の股関節CPM機械の単一アームの実施形態の斜視図を示す。
【
図2-1】
図2AはアームがXYZ軸に沿って様々な位置にある、単一アームの実施形態の斜視図を示す。
図2BはアームがXYZ軸に沿って様々な位置にある、単一アームの実施形態の斜視図を示す。
【
図2-2】
図2CはアームがXYZ軸に沿って様々な位置にある、単一アームの実施形態の斜視図を示す。
図2DはアームがXYZ軸に沿って様々な位置にある、単一アームの実施形態の斜視図を示す。
【
図3】
図3Aは本発明の股関節CPM機械の2アームの実施形態の斜視図を示す。
図3Bは本発明の股関節CPM機械の2アームの実施形態の側面図を示す。
【
図4】
図4はスタンドの異なる位置を示す、本発明のCPM機械の代替実施形態の斜視側面図である。
【
図5】
図5は患者が股関節CPM機械のハンド部と連結された状態である、本発明のCPM機械の異なる実施形態の平面図を示す。
【
図6】
図6は患者が股関節CPM機械のハンド部と連結された状態である、本発明のCPM機械の異なる実施形態の平面図を示す。
【
図7】
図7は運搬および保管しやすいように折り畳まれた股関節CPM機械の一実施形態の正面図、側面図を示す。
【
図8】
図8はハンド部のないアーム30aおよび30bの一実施形態の斜視図を示す。
【
図10】
図10はアーム30の患者の方に取り付けることができるハンド部40の異なる実施形態の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図を参照すると、股関節CPM機械または股関節CPM装置1の実施形態が示されている。本体10は、一般に、CPM機械1のアームを動かすための手段、例えば、モータ、ギア、アクチュエータなどを収容する矩形の筐体である。本体10は様々な形状であり得、必ずしも矩形であるとは限らない。本体10は、1つまたは複数のアーム30が本体10の内部に接続され、本体10の内部中に延び、実質的に地面に平行な方向に本体10から離れて外側に延びることを可能にする1つまたは複数の開口部12を含む。本体10が、装置の必要な部品を収納し、脚の重量を支持できるほど十分に強いのであれば、本体10はいかなる好適な材料から構成されてもよい。
【0016】
図1aは、本発明の股関節CPM装置1の一実施形態の斜視図を示す。股関節CPM装置1は、(本明細書で交換可能に使用される)スタンド、ベースまたは脚部20上に配置された矩形の本体10を有する。本体10は、一般に、股関節CPM装置1の1つまたは複数のアーム30の運動を駆動または誘導するモータ、ギア、ベルトなど(図示せず)を収容する矩形または正方形の筐体である。しかしながら、本体10の正確な形状は重要ではなく、一般に、モータ、ギアなどを収容し、必要に応じて1つまたは複数のアーム30を動かすような形状である。本体10はまた、股関節CPM装置1が持ち運びできることが好ましいので、できる限りコンパクトになるように設計される。
【0017】
スタンドまたはベース20は本体10を支持する。
図1および
図2の実施形態のベース20は概して正方形であり、容易に運搬できるように4つの車輪22とともに組み立てられる。ベース20についての他の形状および機能が可能であるが、この実施形態では、正方形パターンにより安定性が得られる。ベース20は、本体20の高さを調整することができるように、垂直方向に調整可能であってもよい。ベースまたはスタンド20は、股関節CPM装置をより一層コンパクトでより運搬しやすくするために、組立式または折畳み式であってもよい。
【0018】
装置は、機械1の本体10から延びる1つまたは複数のロボットアーム30を含む。
図1Aおよび
図1Bは、本体10に1つのロボットアーム30が取り付けられている装置の一実施形態を示す。
図1Bは、収納および運搬しやすいように、装置1の本体10にほぼ密着して折畳み位置にあるアーム30を示す。
【0019】
以下で説明するように、2つ以上のアームをもつ実施形態が想定される。ロボットアーム30は、手術脚(図示せず)の重量を十分に支持するために、脚の1つまたは複数の部位において手術脚を保持し、支持する。1つまたは複数のアーム30は、好ましくは、実質的に地面に平行で本体10に対して垂直に装置1の本体10から延びる。1つまたは複数のアーム30は、好ましくは、装置1の本体10が床の上にあり、患者が台または他の支持体の上にいるときに、アーム30が患者に届くことができるように長さが調整可能になる。
【0020】
アーム30は、実質的に本体10を取り囲むバンドまたはスリーブ32を介して本体10に取り付けられるか、または接続される。バンドまたはスリーブ32は、本体10の高さまたは高さの一部を上下に動き、それによってアーム30は矢印で示されている上下方向に動かされる。アーム30は、バンド32を介して上下方向に動く。バンド32は、本体10の側面上の垂直スロットまたは溝14によって案内される。バンド32は、本体10の内部のアクチュエータおよびまたはモータアセンブリに接続され、アクチュエータおよびまたはモータアセンブリはバンド32を動かし、バンド32はアーム30を動かす。アーム30は、さらに、本体30に対して左右および内外に動くことができる。矢印は、アーム30が患者に対して3つの異なる軸に沿ってどのように動き、それによって患者の脚を3次元で動かすことができるかを示した。アーム30は、バンド32中の水平スロット34によって案内され、本体に対して左右方向に動くことができる。最後に、アーム30は、本体10に対して内外方向に動くことができる。この実施形態では、アーム30は、ハンド部40を内外方向に動かす伸縮式のスリーブ36を有する。アーム30は、両方向に、すなわち時計回りおよび反時計回りに動くようにプログラムされ得る。
【0021】
図2A~
図2Dは、動作中のアーム30の様々な運動および位置を示す。
【0022】
各アーム30は、アーム30の端部34に取り付けられたハンド部40を有する。1つまたは複数のハンド部40は、1つまたは複数のハンド部40が患者の脚をしっかりと支持するが、機械1の1つまたは複数のアーム30が動く際に患者の脚を動かすこともできるように成形される。好ましくは、ハンド部40は、凹形、またはU字形もしくはV字形である。より一層好ましくは、ハンド部は、異なる形状およびサイズの患者の脚に対応できるように調整可能である。ハンド部40は、
図1および
図2の実施形態に示されているように、アーム30の端部34に直接固定されてもよい。患者の脚との接触点が1つであるので、この実施形態ではハンド部40およびアーム30は細長い。細長いハンド部40により、脚が凹形のハンド部40の上に楽に着座し、ハンド部40によって静かに固定されることが可能になる。
【0023】
代替的に、ハンド部40は、
図6に示されているように、アーム30の運動に対応するように継ぎ手またはスイベルを介してアーム40の端部35に固定されてもよい。一実施形態では、2つ以上のアーム30がある場合、機械1のアーム30が動く際にハンド部40が患者の脚52をねじるかまたは放すことがないように、ハンド部40は横方向に旋回する。
【0024】
図3Aおよび
図3Bは、股関節CPM装置1の別の実施形態を示す。この実施形態は、1つのより大きいアーム30の代わりに2つのアーム30aとアーム30bとを有する。2つのアーム30aおよび30bは、2箇所で脚を保持または支持するが、主材は同じである。アーム30aおよび30bは、分回しの様式で、ならびに股関節屈曲/伸展で脚の運動を行うために、3次元で動く。運動は両方向(時計回りおよび反時計回り)に行われ得る。動作中、アーム30aおよび30bは、患者の脚を遠位大腿部上の第1の位置において、好ましくは膝のすぐ上(図示せず)で保持するように調整される。脚は、遠位脛骨上の一点上の第2の位置において、好ましくは足首のすぐ上で保持される。しかしながら、脚が保持される正確な位置は、特定の治療に応じて異なり得る。装置1のアーム30aおよび30bはまた、動作中に足が下腿と適切な整合を維持するように足を支持する。この実施形態では、足を中立の足首姿勢で保持および支持することができるように、アーム30aは、オプションのブーツ型アタッチメント(図示せず)を用いて足首に接続される。2つのアーム30aおよび30bは、3つの軸平面(X、Y、Z)に沿って連動してまたは独立して動くことができる。複合動きは、個々の患者の特定のニーズおよび体型に合わせて構成され得る。本体中の開口部12は、アーム30aおよび30bが、3つの軸平面中で必要に応じて動くことができる十分な空間を与えるように成形される。
【0025】
図3Bは、一方のアーム30bの側面と、本体10の側面と、本体10の下部から延びる脚部20とを示す機械1の側面図である。ハンド部40aおよび40bは、それぞれアーム30aおよび30bに取り付けられている。
【0026】
一実施形態では、機械1によって生成される運動により、人間の動きを再現するために、ロボットアームが異なる距離(大腿アーム対下腿アーム)を移動し、運動を(1度に2つ以上の運動の軸に沿って)結合することが可能になる。この実施形態の動作では、2つのアーム30aおよび30bは、ロボットアーム30aおよび30bと、プログラムされた運動とを介して人間の運動をシミュレートする。この実施形態におけるアーム30aおよび30bは連動して動く必要はないが、人間の腕の運動が異なるのと同様に、各アームによって動かされる移動量/距離は異なる。
【0027】
使用時には、股関節CPM機械1は、通常、床または他の安全な支持体上に配置される。
図4は、脚部が、運搬のための圧縮位置から使用のための位置にどのように動かされるかを示すために、脚部が異なる位置にあるCPM機械の側面図を示す。
図3Aおよび
図3Bは、ハンド部40がアームの患者(図示せず)の方に取り付けられた状態で患者に向かって延ばされたアーム30を示す。
【0028】
ベース、スタンドまたは脚部20は、本体10の底部12に固定される。ベース、スタンドおよび/または脚部20は、好ましくは調整可能であり、(
図4に示されている)所定の位置にロックすることができる転倒防止キックスタンドまたは支持体24を含む。
図4に示されているように、脚部20は、本体10に密着するように床から折り畳むことができる。この実施形態では、脚部24は、安定性のために本体10の前と後の両方から延びる。好ましくは、装置1を容易に運搬することができるように、スタンドまたは支持体24は、装置1のベース20または車輪22に折り畳まれ/そこから折り開ける。スタンドおよび脚部20の正確な構成は重要ではなく、アーム30が動いている間、転倒またはぐらつくことなく1つまたは複数のアーム30が患者の脚の重量に耐えることができるように、スタンドが機械1に安定性を与える限り変更されてもよい。一実施形態では、装置は、本体10の底部12から垂直に延び、床の上に置かれている2つ以上の脚部20を有する。
【0029】
図5および
図6は、患者と連結された股関節CPM装置1の平面図を示す。
図5の1アームの実施形態についてのアーム30と、
図6の2アームの実施形態についてのアーム30aおよび30bとが異なる、股関節CPM装置1の実施形態。1アームの実施形態についてのハンド部40、ならびに2アームの実施形態についてのハンド部40aおよび40bは、上面視で示されている。図示の両方の実施形態では、患者50は、台60または他の好適な表面部上に横向きに横たわっている。手術脚52は上向きの脚である。
図5では、細長いハンド部40は患者の手術脚を支持している。オプションのエクステンダ45は、患者50の足を支持するためにハンド部40から延びる。
図6では、2つのハンド部30aおよび30bは、患者の手術脚52上の2つの異なる位置において脚と連結され、支持している。2ハンドの実施形態では、一方のアーム30aは膝の上で脚52を保持し、一方のアーム(他方のアーム)30bは手術脚52の足首および足の領域中で脚52を保持している。好ましくは、第2のハンド部40bは、足をいくらか支持するために足首の近くに配置される。この実施形態では、脚52が股関節CPM装置1のアームによって異なる位置に動かされると、ハンド部40aおよび4bはアーム30aおよび30bに対して旋回することができる。一般に、1つまたは複数のハンド部40は、必要に応じて患者52の脚52と足とを支持するように成形され、構成され得る。いずれの実施形態における動作においても、1つまたは複数のアームは、治療の動きで脚52を受動的に動かすために、(ユーザまたはオペレータによって予めプログラムされた)3次元パターンで動く。
【0030】
所望の機能を実現するために、主要な部品を多くの形で変更することができる。
【0031】
図7Aおよび
図7Bは、運搬しやすいように、アーム30aおよび30bと脚部/スタンド20とが本体10に向かって折り畳まれている、股関節CPM機械1の一実施形態の正面図および側面図を示す。オプションの収納ユニット16も含まれ、正面図および側面図に示されている。
【0032】
図8は、アーム30aおよび30bの一実施形態の図を示す。アーム30aおよび30bは、断面形状は異なることがあるが、概して円筒形である。いくつかの実施形態におけるアームは、実質的に、
図1~
図3の実施形態の場合のような直線状である。しかしながら、アームは異なる構成を有することができる。
図9Aおよび
図9Bは、アーム30の代替実施形態の平面図を示す。アームの一方の端部には、股関節CPM装置1の本体10の内部に取り付けられるロボット肩部36がある。他方の端部には、ハンド部40(図示せず)に取り付けられるロボット手首部38がある。ロボット肩部36とロボット手首部38の両方は、アームの中心軸の周りを180°回転する。手首部の端部には、ハンド部40を取り付けるためのアタッチメントロッド39がある。一実施形態では、アタッチメントは磁気式アタッチメントであるが、他のタイプのアタッチメントが可能である。手首部38と肩部36との間には、やはり180°回転するロボット肘部37がある。
【0033】
図10は、アーム30の患者の方に取り付けることができるハンド部40の異なる実施形態の側面図を示す。ハンド部40は、取外し可能であるか、または恒久的に取り付けられ得、様々な手段によって取り付けられ得る。取付け方法は、患者の脚の重量を保持するのに十分に安全でなければならない。ハンド部40は、患者の脚が動かされているときに患者の脚に過度の圧力をかけないように、ハンド部40がアーム30に対して旋回または枢動することができるように取り付けられ得る。一実施形態では、ハンド部40はU字形であるが、形状は、脚を保持または支持する任意の形状とすることができる。一実施形態では、ハンド部は、患者の脚の様々な幅に対応するように調整可能である。任意選択で、患者が快適になるように、ハンド部にクッション材が施される。一実施形態では、ハンド部40は、患者の膝部分に合わせて明確に寸法決めされる。別の実施形態では、ハンド部40は、患者の足首および足を保持するように構造化される。このようにして、足は、動作中に自然な位置に快適に保持される。
【0034】
図9Bは、磁気ロックシステムを介してロボットアーム30に取り付けられるハンド部40を示す。この実施形態におけるハンド部は、患者の膝部分を保持または支持するように設計されたものである。このハンド部は、必要に応じて他のハンド部と交換可能である。1つのアーム30をもつ
図1および
図2のハンド部40は、そのハンド部40が脚を1つの位置において保持するので、概してより長く、旋回しない。ハンド部40の長さを長くすることにより、患者の脚を快適にハンド部40に置くことが可能になる。
【0035】
一実施形態では、装置はプログラム可能であり、脚52に与えられる可動域(ROM)の量を段階的に変更することができる。好ましくは、装置は、機械が機械のアームを所定の動きで動かすために、機械によって実行可能な命令のプログラムを有形に具現化する、機械によって読み取り可能なプログラム記憶装置を含む。これは、機械1のアーム30およびハンド部40の所定の動きを駆動する統合ソフトウェアおよびハードウェア、さらには外部ソフトウェアおよびハードウェアにより達成される。最も典型的には、これは、ユーザからの入力を受信し、アームを制御するアクチュエータおよび/またはモータに信号を送信する統合コンピュータなどにより達成されるであろう。アーム30が動かされる特定の経路はオペレータによって定められ、患者の特定のニーズに応じてオペレータによって決定される。
【0036】
この情報および実行は、例えば、装置と通信することができるスマートフォン上のアプリケーションインターフェースを介してアクセス可能であり得る。股関節CPM装置および/またはアプリケーションは、様々なパラメータについての患者の遠隔測定(データ収集)のためにセットアップされてもよい。得られたROMは、医療機関の指示に従って、術後プロトコルパラメータに関連付けられてもよい。プログラマブルデバイスは、各アーム30の方向、速度、および特別な運動を制御する。入力パラメータは、最適な運動が患者に与えられるように、患者の身長、脚の長さなどを含んでもよい。
【0037】
好ましくは、動き範囲は以下のタイプの運動および条件に対応するが、特定の状況下では他の範囲が可能である。股関節は回旋のために比較的中立の位置に保持されるので、アームは、股関節屈曲/伸展と股関節外転/内転との複合運動によって、より分回しの動きを作り出すことができる。股関節外転とは、大腿部が横方向に身体から離れることを意味する。股関節内転とは、大腿部が身体の正中線に近づくことを意味する。
【0038】
股関節の静止/ゆるみの位置(open-packed position)は、股関節が約5~8度外転した状態であるようなものであり、したがって、大腿部が水平線のすぐ北5~8度にある状態が開始点になるであろう。好ましくは、股関節は、分回し中に股関節外転が15度を超えないようにする。この制限により、分回しの動きで生じるであろう最も大きい内転は、水平線下25~30度になるであろう。もちろん、この角度は、患者の骨盤の幅に基づいてわずかに異なる。
【0039】
しかしながら、他の場合、術後の注意事項を考えると、特に同時に行われる股関節屈曲が45度のみである場合には、大腿部を身体の正中線に向かってゆっくりと優しく動かすことが安全である。これを決定するのは医療従事者に委ねられる。
【0040】
一般的な患者についての一般的な適用例では、医療従事者は、90度の股関節屈曲の状態で内転を30度まで行うことを回避することがある。機械の動きの範囲は適宜プログラムされ得る。この場合も、これらのタイプの決定は、一般的には、特定のニーズまたは患者に従って医療従事者によって決定される。
【0041】
いくつかの実施形態では、機械1は、患者の脚の重量を測定し、脚をその軌道または経路と所定の可動域とを通して安全に動かすために加える力の量を決定する。一実施形態における機械1は、レーザまたは同様の技術を使用して、患者の骨盤幅に一致するように、アーム30およびハンド部40の適切な位置を決定する。アプリケーションインターフェースとともに、機械的、機械電気的、およびソフトウェア工学的設計によって、横臥股関節CPM装置1は患者にカスタマイズされた医療処置/治療を行う。さらに、アプリケーションは、データを収集および分析することができるように、オプションで遠隔測定を行う。
【0042】
アーム30の運動は、当技術分野で知られている任意の手段によって生成され得る。手段は、通常、何らかのタイプのアクチュエータもしくはモータ、またはその両方の何らかの組合せである。一例では、アーム30の直線の動きおよび/または回転の動きを生成するために、1つまたは複数の電気アクチュエータが1つまたは複数のモータと対にされる。電気アクチュエータは、油圧および空気圧アクチュエータと比較してより正確で、信頼性があり、再現性がある傾向があるので好ましい。また、生成される摩擦が少なくなり、これは、摩耗および裂けの低減と、必要とされる保守の頻度の低減とに直接つながる。また、電気アクチュエータにより動作がより静かになり、これは特に入院患者の環境で役立ち得る。アクチュエータおよび/またはモータは、統合コンピュータまたは外部コンピュータに結合される。
【0043】
当業者には明らかであろう開示した発明の様々な改変、調整、および応用があり、本出願はそのような実施形態をカバーするものとする。したがって、本発明についていくつかの好ましい実施形態の文脈で説明してきたが、本発明の全範囲は、以下の特許請求の範囲を参照することによって測定されるものとする。
【国際調査報告】