(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】CHK-1阻害剤の医薬用塩
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20240528BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240528BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240528BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/497
A61P35/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574776
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2022064935
(87)【国際公開番号】W WO2022253907
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523107927
【氏名又は名称】センチネル オンコロジー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523453754
【氏名又は名称】ファーマエンジン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】メジャー,メリエル
(72)【発明者】
【氏名】トラバース,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】パーカー,ジェイク
(72)【発明者】
【氏名】ノーゼン,ジュリアン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC48
4C086GA07
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、マレイン酸塩、トシル酸塩、ベシル酸塩、およびマロン酸塩から選択される、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩を提供する。また、これらの塩の特定の結晶形、これらの塩の調製方法、これらの塩を含有する医薬組成物、および治療における使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイン酸塩、トシル酸塩、ベシル酸塩、およびマロン酸塩から選択される、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
マレイン酸塩である、請求項1に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
塩比(酸:遊離塩基のモル比)が約1:1である、請求項1または2に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
結晶化度が50%~100%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
6.9±0.2°および/または26.4±0.2°および/または11.8±0.2°および/または17.9±0.2°における主要な°2Th(°2Theta)ピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、請求項2に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンB塩。
【請求項6】
実質的に
図25に示すようなXRPDスペクトルを有するパターンB塩である、請求項2に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸塩。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に規定される5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項8】
がんの治療おける使用のための、請求項1から6のいずれか一項に規定される5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に規定される5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩と、治療的に活性な別の薬剤とを含む医薬組み合わせ。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に規定される薬学的に許容可能な塩の調製方法であって、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルをテトラヒドロフランに分散させて混合物を形成する工程と、該混合物を45℃~65℃の範囲(例えば、55℃~65℃、特に約60℃)の高温に加熱する工程と、必要量の酸を該混合物に添加する工程と、該混合物を定められた期間、該高温または該高温付近に維持する工程と、該混合物を冷却して該薬学的に許容可能な塩を単離させる工程と、を含む方法。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に規定される薬学的に許容可能な塩の調製方法であって、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルを、テトラヒドロフランとアセトニトリルの混合液(例えば、1:1混合液)中に分散させて混合物を形成する工程と、該混合物を45℃~55℃の範囲(例えば、約50℃)の高温に加熱する工程と、必要量の酸を該混合物に添加する工程と、該混合物を定められた期間、該高温または該高温付近に維持する工程と、該混合物を冷却して該薬学的に許容可能な塩を単離させる工程と、を含む方法。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に規定される薬学的に許容可能な塩の調製方法であって、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルを、テトラヒドロフランと水の混合液(例えば、該混合液は、テトラヒドロフランを75%(v/v)~97%(v/v)、水を3%(v/v)~25%(v/v)含有し、より好ましくは、テトラヒドロフランを約95%(v/v)、水を約5(v/v)含有する)に分散させて混合物を形成する工程と、該混合物を45℃~65℃の範囲(例えば、約50℃~60℃)の高温に加熱する工程と、必要量の酸を該混合物に添加する工程と、該混合物を定められた期間、該高温または該高温付近に維持する工程と、該混合物を冷却して該薬学的に許容可能な塩を単離させる工程と、を含む方法。
【請求項13】
前記酸がマレイン酸であり、得られる薬学的に許容可能な塩がマレイン酸塩である、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記マレイン酸塩がマレイン酸塩パターンA塩である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記パターンA塩を相対湿度50%超の雰囲気中でコンディショニングすることにより、前記パターンAマレイン酸塩をパターンBマレイン酸塩に転換する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
本明細書中の実施形態1.1から1.48、実施形態2.1から2.16、実施形態3.1から3.30、実施形態4.1、および5.1から実施形態5.13のいずれか1つに規定される発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Chk-1阻害剤化合物5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの医薬用塩、それらの調製方法、それらを含有する医薬組成物、およびがん等の疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Chk-1は、DNA損傷ストレスやDNA複製ストレスに応答した細胞周期チェックポイントの誘導に関与するセリン/スレオニンキナーゼである[Tseら,Clin. Can. Res. 2007;13(7)]。細胞周期チェックポイントは、細胞周期の移行の順序とタイミングを制御する調節経路である。多くのがん細胞はG1チェックポイント活性化が障害されている。例えば、Hahnら、また、Hollsteinらは、ヒトがん全体の約50%に見られる腫瘍抑制遺伝子であるp53遺伝子の変異に腫瘍が関連していることを報告している[N Engl J Med 2002,347(20):1593;Science,1991,253(5015):49]。
【0003】
Chk-1阻害は、S期内チェックポイントおよびG2/Mチェックポイントを抑止する。Chk-1阻害は、周知のDNA損傷剤に対する腫瘍細胞の感受性を選択的に高めることが示されている。この感受性増加作用が証明されたDNA損傷剤の例としては、ゲムシタビン、ペメトレキセド、シタラビン、イリノテカン、カンプトテシン、シスプラチン、カルボプラチン[Clin. Cancer Res. 2010,16,376]、テモゾロミド[Journal of Neurosurgery 2004,100,1060]、ドキソルビシン[Bioorg. Med. Chem. Lett. 2006;16:421-6]、パクリタキセル[WO2010149394]、ヒドロキシ尿素[Nat. Cell. Biol. 2005;7(2):195-20]、ニトロイミダゾール低酸素標的薬TH-302(Mengら,AACR,2013 アブストラクトNo.2389)、および電離放射線[Clin. Cancer Res. 2010,16,2076]が挙げられる。McNeelyらによるレビュー論文[Pharmacology & Therapeutics(2014),142(1):1-10]も参照されたい。
【0004】
最近発表されたデータでは、Chk-1阻害剤がPARP阻害剤[Cancer Res 2006.;66:(16)]、Mek阻害剤[Blood. 2008;112(6):2439-2449]、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤[Blood. 2005;105(4):1706-16]、ラパマイシン[Mol. Cancer Ther. 2005;4(3):457-70]、Src阻害剤[Blood. 2011;117(6):1947-57]、およびWEE1阻害剤[Carrassa,2021,11(13):2507;Chaudhuriら,Haematologica,2014 99(4):688.]と相乗的に作用し得ることも示されている。
【0005】
さらに、Chk-1阻害剤は免疫療法剤と併用すると利点があることが証明されている[Mouwら,Br J Cancer,2018.(7):933]。Chk1阻害剤は、STINGシグナル伝達を通じて自然免疫応答を誘導するcGASを活性化させることや、インビボで、PD-L1の発現を誘導し、抗PD-L1と相乗作用を示すことが示されている[Senら,Cancer Discov 2019 (5):646;Senら,J Thorac Oncol,2019.(12):2152]。
【0006】
化学療法や放射線療法に対する耐性は、従来の治療法の臨床的課題であるが、Chk-1の関与が示されているDNA損傷応答の活性化と関連づけられている[Nature;2006;444(7):756-760;Biochem. Biophys. Res. Commun. 2011;406(1):53-8]。
【0007】
また、Chk-1阻害剤は、単剤または併用で、DNA損傷およびチェックポイント経路の恒常的活性化が特に複製ストレスを通じてゲノム不安定性を駆動する腫瘍細胞の治療に有用であり得ると考えられる。この表現型は、例えば急性骨髄性白血病(AML)患者由来の試料において、複雑核型と関連している[Cancer Research 2009,89,8652]。小分子阻害剤またはRNA干渉法によるインビトロでのChk-1キナーゼの拮抗は、DNA損傷レベルが高いAML試料のクローン原性を大きく低下させる。これに対して、Chk-1阻害は正常な造血前駆細胞に影響を及ぼさない。さらに、最近の研究では、腫瘍微小環境が遺伝的不安定性を駆動すること[Nature;2008;(8):180-192]や、Chk-1の減少が低酸素/再酸素化に対する細胞の感受性を増加させること[Cell Cycle;2010;9(13):2502]が示されている。神経芽腫において、キノームのRNA干渉スクリーンにより、Chk-1の減少が8種の神経芽腫細胞株の成長を阻害することが証明された。ファンコニ貧血DNA修復の欠損が見られる腫瘍細胞は、Chk-1阻害に対する感受性を示した[Molecular Cancer 2009,8:24]。Chk-1特異的阻害剤PF-00477736は、30種の卵巣がん細胞株の成長を阻害すること[Bukczynskaら,23rd Lorne Cancer Conference]や、トリプルネガティブ乳がん細胞の成長を阻害すること[Cancer Science 2011,102,882]が示されている。また、PF-00477736は、MYCがん遺伝子によって駆動されるマウス自然発症がんモデルにおいて選択的単剤活性を示した[Ferraoら,Oncogene(2011年8月15日)]。RNA干渉法または選択的小分子阻害剤によるChk-1阻害は、B細胞リンパ腫のインビトロとインビボマウスモデルとの両方においてMYC過剰発現細胞のアポトーシスをもたらす[Hoglundら,Clinical Cancer Research,2011]。後者のデータは、B細胞リンパ腫/白血病、神経芽腫、ならびに一部の乳がんおよび肺がんなどのMYCによって駆動される悪性腫瘍の治療にChk-1阻害剤が有用性を有するであろうことを示唆する。Chk-1阻害剤はまた、ユーイング肉腫や横紋筋肉腫をはじめとする小児腫瘍モデルにおいて有効であることも示されている[Lowery,2018. Clin Cancer Res 2019,25(7):2278]。Chk1阻害剤は、DNAポリメラーゼのBファミリーと合成致死性であり、複製ストレス、DNA損傷、および細胞死を増加させることが示されている[Rogersら,2020,80(8);1735]。他の細胞周期調節遺伝子も、CDK2やPOXM1をはじめとするChk-1阻害剤に対する感受性を与えることが報告されている[Ditanoら,20201.11(1);7077;Braniganら,2021 Cell Reports 34(9):1098808]。
【0008】
DNA修復経路の活性を低下させる変異が、Chk1阻害との合成致死性相互作用をもたらし得ることも報告されている。例えば、RAD50複合体やATMシグナル伝達を撹乱する変異は、Chk1阻害に対する応答性を高める[Al-Ahmadieら,Cancer Discov. 2014.(9):1014-21]。同様に、ファンコニ貧血相同DNA修復経路における欠損は、Chk1阻害に対する感受性をもたらす[Chenら,Mol. Cancer 2009 8:24,Duanら,Frontiers in Oncology 2014 4:368]。また、Rad17遺伝子産物の機能喪失を有するヒト細胞は、Chk1抑制に対して感受性がある[Shenら,Oncotarget,2015.6(34):35755]。
【0009】
Chk-1キナーゼの阻害剤を開発するための様々な試みがなされてきた。例えば、WO03/10444およびWO2005/072733(どちらもMillennium社名義)は、Chk-1キナーゼ阻害剤としてアリール/ヘテロアリール尿素化合物を開示している。US2005/215556(Abbott社)は、キナーゼ阻害剤として大環状尿素を開示している。WO02/070494、WO2006014359、およびWO2006021002(いずれもIcos社名義)は、Chk-1阻害剤としてアリール尿素およびヘテロアリール尿素を開示している。WO/2011/141716およびWO/2013/072502はどちらも、Chk-1キナーゼ阻害剤として置換ピラジニル-フェニル尿素を開示している。WO2005/009435(Pfizer社)およびWO2010/077758(Eli Lilly社)は、Chk-1キナーゼ阻害剤としてアミノピラゾールを開示している。
【0010】
WO2015/120390は、Chk-1キナーゼ阻害剤として一種の置換フェニル-ピラゾリル-アミン類を開示している。開示された化合物の1つは、化合物5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルであり、その合成がWO2015/12039の実施例64および合成方法Lに記載されている。この化合物は塩酸塩の形態で開示されている。
【0011】
WO2018/183891(Cascadian Therapeutics社)は、化合物5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩とWEE-1阻害剤との組み合わせを開示している。しかし、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの具体的な塩は開示されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(本発明)
現在、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルがいくつかの鉱酸および有機酸と結晶塩を形成することが分かっている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
したがって、本発明は、第1の局面(実施形態1.1)において、臭化水素酸塩、メシル酸塩、L-酒石酸塩、エシル酸塩、L-アスパラギン酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、L-グルタミン酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、グルクロン酸塩、マロン酸塩、ナフチレン-2-スルホン酸塩、エタン-1,2-ジスルホン酸塩、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩、およびシュウ酸塩から選択される、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0014】
本明細書において、「臭化水素酸塩、メシル酸塩、L-酒石酸塩、エシル酸塩、L-アスパラギン酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、L-グルタミン酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、グルクロン酸塩、マロン酸塩、ナフチレン-2-スルホン酸塩、およびシュウ酸塩」という各用語は、それらの従来の意味で、それぞれ、臭化水素酸、メタンスルホン酸、L-酒石酸、エタンスルホン酸、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酢酸、L-グルタミン酸、マレイン酸、ゲンチシン酸、グルクロン酸、マロン酸、ナフチレン-2-スルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、およびシュウ酸からなる塩を示すために用いられる。
【0015】
また、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルのいくつかの塩は、WO2015/12039に開示された塩酸塩に比較べて特性が向上していることが分かっている。
【0016】
したがって、別の実施形態(実施形態1.2)において、本発明は、マレイン酸塩、トシル酸塩、ベシル酸塩、およびマロン酸塩から選択される、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0017】
化合物5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルは、下記の式(1)を有し、本明細書においては、便宜上、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルのマレイン酸塩、トシル酸塩、ベシル酸塩、およびマロン酸塩の各塩を、式(1)の化合物の塩または本発明の塩と呼ぶこともある。
【0018】
【0019】
式(1)の化合物は、数個の塩基性窒素原子を有し、原理的には、塩比(すなわち、遊離塩基:酸のモル比)が異なる塩を形成することができる。例えば、酸が一塩基性の場合、塩の形成に用いられる方法において使用される酸のモル当量数に応じて、モノ塩(すなわち、酸対遊離塩基のモル比が1:1である場合)またはビス塩(酸対遊離塩基のモル比が約2:1である場合)が調製され得る。塩の形成に二塩基酸(例えば、ジカルボン酸)が使用される場合、採用される特定の塩形成条件に応じて、ヘミ塩(塩中の酸対塩基のモル比が0.5:1である場合)、モノ塩、およびビス塩が形成され得る。
【0020】
したがって、さらなる実施形態(実施形態1.3~実施形態1.9)において、本発明は以下を提供する。
【0021】
1.3 マレイン酸塩である、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩。
【0022】
1.3A 本明細書において定義する結晶パターンBを有する結晶性マレイン酸塩である、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩。
【0023】
1.4 トシル酸塩である、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩。
【0024】
1.5 ベシル酸塩である、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩。
【0025】
1.6 マロン酸塩である、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩。
【0026】
1.7 塩比(酸:遊離塩基のモル比)が約1:1である、実施形態1.1から実施形態1.6のいずれか1つに記載の薬学的に許容可能な塩。
【0027】
1.8 塩比(酸:遊離塩基のモル比)が約0.5:1である、実施形態1.3または実施形態1.6に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0028】
1.9 塩比(酸:遊離塩基のモル比)が約2:1である、実施形態1.3または実施形態1.5に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0029】
式(1)の化合物の塩は、アモルファスであっても実質的に結晶性であってもよい。
【0030】
「実質的に結晶性」という用語は、50%~100%の結晶化度を有する塩を指す。この範囲内で、塩は、少なくとも55%の結晶化度、または少なくとも60%の結晶化度、または少なくとも70%の結晶化度、または少なくとも80%の結晶化度、または少なくとも90%の結晶化度、または少なくとも95%の結晶化度、または少なくとも98%の結晶化度、または少なくとも99%の結晶化度、または少なくとも99.5%の結晶化度、または少なくとも99.9%の結晶化度、例えば100%の結晶化度を有してもよい。
【0031】
本発明のある特定の塩は、いくつかの異なる結晶形つまり多形体で存在し得る。
【0032】
本願が優先権を主張する2021年6月3日付で出願された英国特許出願第2107924.9号では、ある特定のマレイン酸塩形態を、パターンA、パターンA’、およびパターンA’’と称していた。本出願では、これらの形態をそれぞれパターンA、パターンB、およびパターンCという名称に変更した。
【0033】
式(1)の化合物の塩の結晶形は、好ましくは、結晶純度が少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%であるものである。すなわち、塩の少なくとも90%(より好ましくは少なくとも95%)が単一の結晶形からなる。
【0034】
本発明の塩の結晶形は、溶媒和(例えば、水和)していてもよく、溶媒和していなくてもよい(例えば、無水であってもよい)。
【0035】
本明細書において「無水」という用語は、塩の結晶形上または結晶形中にいくらかの水が存在する可能性を排除するものではない。例えば、塩の結晶形の表面にいくらかの水が存在していてもよく、塩の結晶形本体の内部に少量の水が存在していてもよい。典型的には、無水形態は、式(1)の化合物1分子あたり0.4分子未満の水を含有し、より好ましくは、式(1)の化合物1分子あたり0.1分子未満の水、例えば、0分子の水を含有する。
【0036】
結晶形が水和している場合、それらは、例えば、最大3分子の結晶水、より一般的には最大2分子の水、例えば1分子の水または2分子の水を含有し得る。存在する水分子の数が1未満であるかまたは非整数である非化学量論的水和物が形成されてもよい。例えば、存在する水が1分子未満である場合、化合物(1)1分子あたり、例えば、0.4分子、または0.5分子、または0.6分子、または0.7分子、または0.8分子、または0.9分子の水が存在し得る。
【0037】
したがって、本発明のさらなる実施形態(実施形態1.10~実施形態1.11)では、以下が提供される。
【0038】
1.10 結晶化度が50%~100%である、実施形態1.1から実施形態1.9のいずれか1つに記載の薬学的に許容可能な塩。
【0039】
1.11 (b)結晶化度が少なくとも55%である、または、実施形態1.10に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0040】
1.11A 結晶化度が少なくとも60%である、実施形態1.11に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0041】
1.11B 結晶化度が少なくとも70%である、実施形態1.11に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0042】
1.11C 結晶化度が少なくとも80%である、実施形態1.11に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0043】
1.11D 結晶化度が少なくとも90%である、実施形態1.11に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0044】
1.11E 結晶化度が少なくとも95%である、実施形態1.11に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0045】
1.11F 結晶化度が少なくとも98%である、実施形態1.11に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0046】
1.11G 結晶化度が少なくとも99%である、実施形態1.11に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0047】
1.11H 結晶化度が少なくとも99.5%である、実施形態1.11に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0048】
1.11I 結晶化度が少なくとも99.9%である、実施形態1.11に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0049】
1.11J 結晶化度が100%である、実施形態1.11に記載の薬学的に許容可能な塩。
【0050】
粉末X線回折(XRPD)、単結晶X線回折、示差走査熱量測定(DSC)、および熱重量分析(TGA)をはじめとするいくつかの技術を用いて、結晶形の特徴を明らかにすることができる。動的蒸気収着(DVS)などの重量蒸気収着研究(GVS)によって、様々な湿度条件下での結晶の挙動を解析することができる。
【0051】
固体技術である粉末X線回折(XRPD)によって、化合物の結晶構造を解析することができる。XRPDは、本明細書中(下記の実施例を参照)や「Introduction to X-ray Powder Diffraction」、Ron JenkinsおよびRobert L.Snyder(John Wiley & Sons社,ニューヨーク,1996)に記載されているような従来の方法に従って実施することができる。XRPD回折図形において(ランダムなバックグラウンドノイズとは対照的に)はっきりした(defined)ピークが存在することは、化合物がある程度の結晶性を有していることを示す。
【0052】
ある化合物の粉末X線パターンは、X線回折スペクトルの回折角(2θ)(本明細書において、°2Thまたは°2Thetaともいう)パラメータと格子面間隔(d)パラメータとによって特徴づけられる。これらは、ブラッグの方程式nλ=2dSinθ(式中、n=1、λ=X線放射の波長、d=格子面間隔、θ=回折角)によって関係づけられる。
【0053】
したがって、さらなる実施形態(実施形態1.12~実施形態1.42)において、本発明は以下を提供する。
【0054】
1.12
図5~
図25、
図27、
図29、
図31、
図33、および
図35のいずれか1つに示すものと実質的に同様のXRPDスペクトル(但し、遊離塩基またはアモルファス塩形態のXRPDスペクトルは無視する。)を有する、実施形態1.1に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能な塩。
【0055】
1.13
図25に示すものと実質的に同様のXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2、実施形態1.3、および実施形態1.3Aのいずれか1つに記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンB塩。
【0056】
1.14 26.3±0.2°における主要な°2Th(°2Theta)ピーク(例えば、相対強度100%である)を特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2、実施形態1.3、実施形態1.3A、実施形態1.12、および実施形態1.13のいずれか1つに記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンB塩。
【0057】
1.14A 6.9±0.2°および/または26.4±0.2°および/または11.8±0.2°および/または17.9±0.2°における主要な°2Th(°2Theta)ピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2、実施形態1.3、実施形態1.3A、実施形態1.12、および実施形態1.13のいずれか1つに記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンB塩。
【0058】
1.15 6.9±0.2°、26.4±0.2°、11.8±0.2°、および17.9±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.14に記載の薬学的に許容可能なマレイン酸パターンB塩。
【0059】
1.16 15.6±0.2°および/または9.4±0.2°および/または15.8±0.2°および/または17.7±0.2°および/または26.8±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.14または実施形態1.15に記載の薬学的に許容可能なマレイン酸パターンB塩。
【0060】
1.17 15.6±0.2°、9.4±0.2°、15.8±0.2°、17.7±0.2°、および26.8±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.16に記載の薬学的に許容可能なマレイン酸パターンB塩。
【0061】
1.18
図27に示すものと実質的に同様のXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンA塩。
【0062】
1.19 6.6±0.2°および/または17.3±0.2°および/または11.1±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2または実施形態1.18に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンA塩。
【0063】
1.20 6.6±0.2°、17.3±0.2°、および11.1±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.19に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンA塩。
【0064】
1.21 26.5±0.2°および/または9.2±0.2°および/または14.3±0.2°および/または18.5±0.2°および/または25.9±0.2°および/または11.5±0.2°および/または16.9±0.2°および/または20.5±0.2°および/または15.6±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.19または実施形態1.20に記載の薬学的に許容可能なマレイン酸パターンA塩。
【0065】
1.22 26.5±0.2°、9.2±0.2°、14.3±0.2°、18.5±0.2°、25.9±0.2°、11.5±0.2°、16.9±0.2°、20.5±0.2°、および15.6±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.21に記載の薬学的に許容可能なマレイン酸パターンA塩。
【0066】
1.23
図29に示すものと実質的に同様のXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンC塩。
【0067】
1.24 6.7±0.2°および/または9.2±0.2°および/または11.5±0.2°および/または15.6±0.2°および/または17.4±0.2°および/または17.7±0.2°および/または26.3±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2または実施形態1.23に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンC塩。
【0068】
1.25 6.7±0.2°、9.2±0.2°、11.5±0.2°、15.6±0.2°、17.4±0.2°、17.7±0.2°、および26.3±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.24に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンC塩。
【0069】
1.26 18.5±0.2°および/または14.3±0.2°および/または21.7±0.2°および/または11.1±0.2°および/または27.6±0.2°および/または17.0±0.2°および/または25.6±0.2°および/または16.0±0.2°および/または22.2±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.24または実施形態1.25に記載の薬学的に許容可能なマレイン酸パターンC塩。
【0070】
1.27 18.5±0.2°、14.3±0.2°、21.7±0.2°、11.1±0.2°、27.6±0.2°、17.0±0.2°、25.6±0.2°、16.0±0.2°、および22.2±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.26に記載の薬学的に許容可能なマレイン酸パターンC塩。
【0071】
1.28
図31に示すものと実質的に同様のXRPDスペクトルを有する、実施形態1.12に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマロン酸パターンB塩。
【0072】
1.29 10.6±0.2°および/または6.5±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2または実施形態1.28に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマロン酸パターンB塩。
【0073】
1.30 10.6±0.2°および6.5±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.29に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマロン酸パターンB塩。
【0074】
1.31 16.6±0.2°および/または18.4±0.2°および/または14.3±0.2°および/または25.9±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.29または実施形態1.30に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマロン酸パターンB塩。
【0075】
1.32 16.6±0.2°、18.4±0.2°、14.3±0.2°、および25.9±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.31に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマロン酸パターンB塩。
【0076】
1.33
図33に示すものと実質的に同様のXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なトシル酸パターンA塩。
【0077】
1.34 9.1±0.2°および/または22.2±0.2°および/または14.9±0.2°および/または13.8±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2または実施形態1.33に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なトシル酸パターンA塩。
【0078】
1.35 9.1±0.2°、22.2±0.2°、14.9±0.2°および13.8±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするスペクトルを有する、実施形態1.34に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なトシル酸パターンA塩。
【0079】
1.36 11.7±0.2°および/または8.8±0.2°および/または15.7±0.2°および/または17.9±0.2°および/または16.5±0.2°および/または24.8±0.2°および/または22.6±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.34または実施形態1.35に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なトシル酸パターンA塩。
【0080】
1.37 11.7±0.2°、8.8±0.2°、15.7±0.2°、17.9±0.2°、16.5±0.2°、24.8±0.2°、および22.6±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.36に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なトシル酸パターンA塩。
【0081】
1.38
図35に示すものと実質的に同様のXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なベシル酸パターンC塩。
【0082】
1.39 15.5±0.2°および/または14.7±0.2°および/または25.4±0.2°および/または20.9±0.2°および/または18.1±0.2°および/または11.2±0.2°および/または13.3±0.2°および/または16.1±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.2または実施形態1.38に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なベシル酸パターンC塩。
【0083】
1.40 15.5±0.2°、14.7±0.2°、25.4±0.2°、20.9±0.2°、18.1±0.2°、11.2±0.2°、13.3±0.2°、および16.1±0.2°における主要な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.39に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なベシル酸パターンC塩。
【0084】
1.41 24.1±0.2°および/または9.4±0.2°および/または26.4±0.2°および/または16.3±0.2°および/または19.2±0.2°および/または27.0±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.39または実施形態1.40に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なベシル酸パターンC塩。
【0085】
1.42 24.1±0.2°、9.4±0.2°、26.4±0.2°、16.3±0.2°、19.2±0.2°、および27.0±0.2°における中間的な°2Thピークを特徴とするXRPDスペクトルを有する、実施形態1.41に記載の5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なベシル酸パターンC塩。
【0086】
上記の実施形態において、「主要な°2Thピーク」とは、相対強度(最大ピークに対する相対強度)が少なくとも50%であるピークを意味し、「中間的なピーク」とは、相対強度が20%~50%であるピークを意味する。ピーク位置は、少なくとも小数第4位まで測定したが、小数第1位までと±0.2°で示している。ピーク位置は概ね相対強度の降順で記載している。
【0087】
本発明の塩は、それらの熱的挙動によって、特にDSC分析およびTGA分析によって、特徴を明らかにすることもできる。したがって、さらなる実施形態において、本発明は以下を提供する。
【0088】
1.43
図26に示すものと実質的に同様のDSC特性およびTGA特性を有する、実施形態1.13から実施形態1.17のいずれか1つに規定される5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンB塩。
【0089】
1.44
図28に示すものと実質的に同様のDSC特性およびTGA特性を有する、実施形態1.18から実施形態1.22のいずれか1つに規定される5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンA塩。
【0090】
1.45
図30に示すものと実質的に同様のDSC特性およびTGA特性を有する、実施形態1.23から実施形態1.27のいずれか1つに規定される5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマレイン酸パターンC塩。
【0091】
1.46
図32に示すものと実質的に同様のDSC特性およびTGA特性を有する、実施形態1.28から実施形態1.32のいずれか1つに規定される5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なマロン酸パターンB塩。
【0092】
1.47
図34に示すものと実質的に同様のDSC特性およびTGA特性を有する、実施形態1.33から実施形態1.37のいずれか1つに規定される5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なトシル酸パターンA塩。
【0093】
1.48
図36に示すものと実質的に同様のDSC特性およびTGA特性を有する、実施形態1.38から実施形態1.42のいずれか1つに規定される5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの薬学的に許容可能なベシル酸パターンC塩。
【0094】
上記および本明細書の他の箇所に定義および記載される5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの様々な塩の中でも、マレイン酸塩は好ましい塩である。
【0095】
マレイン酸塩の利点は、1つの熱力学的に好ましい安定した形態(パターンB)を有する結晶質であり、多形の傾向が低いことである。
【0096】
25℃/60%RHと40℃/75%RHで保存して2週間にわたって実施した安定性試験では、マレイン酸塩が自由流動固体として残り、潮解や凝集が起こった形跡がなく、多形形態の変化もなく、化学的安定性が良好であったことが示された。その後6ヶ月間にわたって収集したデータは、これらの初期の知見を裏付けるものであった。
【0097】
マレイン酸塩は、水への溶解性が遊離塩基よりも向上しており、生体関連(biorelevant)溶媒への溶解性を評価したところ胃液への溶解性も向上していた。
【0098】
(同位体)
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される塩は、1つ以上の同位体置換を含んでいてもよく、特定の元素への言及は、その範囲内に当該元素のすべての同位体を包含する。例えば、水素への言及は、その範囲内に1H、2H(D)、および3H(T)を包含する。同様に、炭素や酸素への言及は、それらの範囲内に12C、13C、および14C、または16Oおよび18Oをそれぞれ包含する。
【0099】
同位体は、放射性であっても非放射性であってもよい。本発明の一実施形態において、塩は放射性同位体を含まない。このような化合物は、治療における使用に好適である。しかし、別の実施形態において、塩は1つ以上の放射性同位体を含んでもよい。そのような放射性同位体を含む塩は、診断に関連して有用であり得る。
【0100】
(本発明の塩の調製方法)
本発明の薬学的に許容可能な塩は、後述の実施例に記載の方法により、化合物5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(式(1)の化合物の遊離塩基から調製することができる。式(1)の化合物は、国際特許出願第WO2015/20390号の実施例64、方法Lに記載の方法により、下記の反応スキーム1に示すように調製することができる。
【0101】
【0102】
さらなる実施形態(実施形態2.1から実施形態2.10)において、本発明は、以下の通り、式(1)の化合物の薬学的に許容可能な塩を形成する方法を提供する。
【0103】
2.1 実施形態1.1または実施形態1.2に規定される薬学的に許容可能な塩の調製方法であって、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルをテトラヒドロフラン中に分散させて混合物を形成する工程と、混合物を45℃~65℃の範囲(例えば、55℃~65℃、特に約60℃)の高温に加熱する工程と、必要量の酸を混合物に添加する工程と、混合物を定められた期間上記高温または上記高温付近に維持する工程と、混合物を冷却して薬学的に許容可能な塩を単離させる工程と、を含む方法。
【0104】
2.2 上記酸が、マレイン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびマロン酸から選択される、実施形態2.1に記載の方法。
【0105】
2.3 実施形態1.1または実施形態1.2に規定される薬学的に許容可能な塩の調製方法であって、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルをテトラヒドロフランとアセトニトリルの混合液(例えば、1:1混合液)中に分散させて混合物を形成する工程と、混合物を45℃~55℃の範囲(例えば、約50℃)の高温に加熱する工程と、必要量の酸を混合物に添加する工程と、混合物を定められた期間上記高温または上記高温付近に維持する工程と、混合物を冷却して薬学的に許容可能な塩を単離させる工程と、を含む方法。
【0106】
2.4 上記酸が、マレイン酸、p-トルエンスルホン酸、およびベンゼンスルホン酸から選択される、実施形態2.3に記載の方法。
【0107】
2.5 実施形態1.1または実施形態1.2に規定される薬学的に許容可能な塩の調製方法であって、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルをテトラヒドロフランと水の混合液(例えば、この混合液は、テトラヒドロフランを75%~97%(v/v)、水を3%~25%(v/v)含み、より好ましくは、テトラヒドロフランを約95%(v/v)、水を約5(v/v)含む)中に分散させて混合物を形成する工程と、混合物を45℃~65℃の範囲(例えば、約50℃~60℃)の高温に加熱する工程と、必要量の酸を混合物に添加する工程と、混合物を定められた期間上記高温または上記高温付近に維持する工程と、混合物を冷却して薬学的に許容可能な塩を単離させる工程と、を含む方法。
【0108】
2.6 上記酸が、マレイン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびマロン酸から選択される、実施形態2.5に記載の方法。
【0109】
2.7 前記必要量の酸が、過剰の酸(例えば、最大1モル過剰)である、実施形態2.1に記載の方法。
【0110】
2.8 上記酸がp-トルエンスルホン酸である、実施形態2.7に記載の方法。
【0111】
2.9 上記必要量の酸が、過剰の酸(例えば、最大1モル過剰)である、実施形態2.5に記載の方法。
【0112】
2.10 上記酸が、p-トルエンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸から選択される、実施形態2.9に記載の方法。
【0113】
2.11 上記酸がマレイン酸であり、得られる薬学的に許容可能な塩がマレイン酸塩である、実施形態2.1、実施形態2.3、および実施形態2.5のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
2.12 上記マレイン酸塩がマレイン酸パターンA塩である、実施形態2.11に記載の方法。
【0115】
2.13 上記パターンAマレイン酸塩を、相対湿度50%超(例えば、相対湿度51%~90%または相対湿度51%~85%)の雰囲気中でコンディショニングすることにより、パターンBマレイン酸塩に転換する工程をさらに含む、実施形態2.13に記載の方法。
【0116】
2.14 パターンAマレイン酸塩を、相対湿度が60%超であり温度が35~45℃の範囲内にある雰囲気中でコンディショニングする、実施形態2.13に記載の方法。
【0117】
2.15 パターンAマレイン酸塩を、相対湿度70%~80%の雰囲気中でコンディショニングする、実施形態2.13または実施形態2.14に記載の方法。
【0118】
2.16 パターンAマレイン酸塩を、相対湿度約75%、温度約40℃の雰囲気中でコンディショニングする、実施形態2.14に記載の方法。
【0119】
上記の方法を実行するための特定の条件セットは、後述の実施例に記載する通りである。
【0120】
(生物学的特性および治療における使用)
式(1)の化合物およびその塩は、Chk-1の強力な阻害剤であるため、単独で、または様々な化学療法剤、免疫療法剤、もしくは放射線との併用で、広範な増殖性疾患の治療に有益であることが予想される。
【0121】
したがって、さらなる実施形態(実施形態3.1から実施形態3.10)において、本発明は以下を提供する。
【0122】
3.1 医学または治療における使用のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩。
【0123】
3.2 Chk-1キナーゼ阻害剤としての使用のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩。
【0124】
3.3 がん等の増殖性疾患の治療における放射線療法または化学療法または免疫療法の治療効果の増強に使用するための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩。
【0125】
3.4 がん等の増殖性疾患の治療における使用のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩。
【0126】
3.5 がん等の増殖性疾患の治療における放射線療法または化学療法または免疫療法の治療効果を増強するための医薬の製造のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の使用。
【0127】
3.6 がん等の増殖性疾患の治療のための医薬の製造のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の使用。
【0128】
3.7 がん等の増殖性疾患の予防または治療方法であって、放射線療法、免疫療法、または化学療法と組み合わせて、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩を患者に投与する工程を含む方法。
【0129】
3.8 がん等の増殖性疾患の予防または治療方法であって、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩を患者に投与する工程を含む方法。
【0130】
3.9 上記がんが、癌腫、例えば、膀胱、脳、乳房、結腸、腎臓、表皮、肝臓、肺、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺、前立腺、胃腸管系、または皮膚の癌腫;白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、またはバーキットリンパ腫などの造血器腫瘍;骨髄系の造血器腫瘍、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、または前骨髄救性白血病;甲状腺濾胞がん;間葉起源の腫瘍、例えば、線維肉腫または横紋筋肉腫;中枢神経系または末梢神経系の腫瘍、例えば、星細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、髄芽腫、または神経鞘腫;黒色腫;精上皮腫;奇形がん;骨肉腫;色素性乾皮症;角化棘細胞腫;甲状腺濾胞がん;ユーイング肉腫またはカポジ肉腫から選択される、実施形態3.3から実施形態3.8のいずれか1つに規定される、使用のための薬学的に許容可能な塩、使用、または方法。
【0131】
3.10 上記がんが、乳がん、結腸がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、神経膠腫、ユーイング肉腫、リンパ腫(例えば、マントル細胞リンパ腫)、髄芽腫、および白血病から選択される、実施形態3.9に記載の使用のための薬学的に許容可能な塩、使用、または方法。
【0132】
また、本明細書に記載される式(1)の薬学的に許容可能な塩は、以下の治療に有用であり得ると考えられる。
(a)MycやCCNE1をはじめとするがん遺伝子によって駆動されるがん;
(b)RAD17(例えば、RAD17変異腫瘍)、RAD50、TP53、またはATMに欠損が見られるがん等の、細胞周期またはDNA損傷修復経路の調節が解除されているがん(例えば、変異(例えばp53の変異)によってG1/S期DNA損傷チェックポイントが失われたがん等の、DNA修復機構の欠陥や細胞周期の欠陥がある腫瘍)、あるいはファンコニ貧血;および
(c)Chk1またはATRの増幅など、高レベルの複製ストレスを伴うがん。
【0133】
したがって、さらなる実施形態(実施形態3.11から実施形態3.23)において、本発明は以下を提供する。
【0134】
3.11 上記がんが、DNA修復機構の欠陥、細胞周期の欠陥、または高レベルの複製ストレスを特徴とするものである、実施形態3.3から実施形態3.10のいずれか1つに規定される使用のための薬学的に許容可能な塩、使用、または方法。
【0135】
3.12 上記がんがp53陰性腫瘍またはp53変異腫瘍である、実施形態3.11に記載の使用のための薬学的に許容可能な塩、使用、または方法。
【0136】
3.13 上記がんが、MYCがん遺伝子によって駆動されるがんである、実施形態3.3から実施形態3.10のいずれか1つに規定される使用のための薬学的に許容可能な塩、使用、または方法。
【0137】
3.14 上記MYCがん遺伝子によって駆動されるがんが、B細胞リンパ腫、白血病、神経芽腫、髄芽腫、乳がん、または肺がんである、実施形態3.13に記載の使用のための薬学的に許容可能な塩、使用、または方法。
【0138】
3.15 p53陰性腫瘍またはp53変異腫瘍(例えば、乳がん、結腸がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、神経膠腫、および白血病から選択されるがん)の患者の治療において放射線療法、免疫療法、または化学療法と組み合わせて使用するための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩。
【0139】
3.16 上記治療が、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の投与に加えて、シタラビン、エトポシド、ゲムシタビン、シクロホスファミド、Wee1阻害剤、およびSN-38から選択される化学療法剤の患者への投与を含む、実施形態3.3から実施形態3.15のいずれか1つに記載の使用のための薬学的に許容可能な塩。
【0140】
3.17 DNA修復機構の欠陥、細胞周期の欠陥、または高レベルの複製ストレスを特徴とするがんの患者の治療のための医薬の製造のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の使用。
【0141】
3.18 上記がんが、p53陰性腫瘍またはp53変異腫瘍である、実施形態3.17に記載の使用。
【0142】
3.19 DNA修復機構の欠陥、細胞周期の欠陥、または高レベルの複製ストレスを特徴とするがんの患者(例えば、ヒト患者)の治療方法であって、治療上有効量の実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩を患者に投与する工程を含む方法。
【0143】
3.20 上記がんが、p53陰性腫瘍またはp53変異腫瘍である、実施形態3.19に記載の方法。
【0144】
3.21 上記がんが、RAD17変異腫瘍またはATM欠損RAD50変異腫瘍である、実施形態3.3から実施形態3.10のいずれか1つに規定される使用のための薬学的に許容可能な塩、使用、または方法。
【0145】
3.21 ファンコニ貧血の治療における使用のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩。
【0146】
3.22 ファンコニ貧血の治療のための医薬の製造のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の使用。
【0147】
3.23 ファンコニ貧血の治療を必要とする対象(例えば、ヒト対象)におけるファンコニ貧血の治療方法であって、治療上有効量の実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩を対象に投与する工程を含む方法。
【0148】
本発明のChk-1阻害剤塩は、単独で使用してもよく、多剤耐性がんに罹患している対象を治療するためにDNA損傷性の抗がん剤および/または放射線療法および/または免疫療法と組み合わせて使用してもよい。がんがある薬剤に対して耐性を有するとみなされるのは、腫瘍が最初に当該薬剤に応答してから当該薬剤による治療中に腫瘍成長速度が正常に戻った場合である。腫瘍が「薬剤に応答する」とみなされるのは、腫瘍量(tumour mass)の減少または腫瘍成長速度の減少を示す場合である。
【0149】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の投与に先立って、患者が罹患しているかまたは罹患している可能性があるがんが、Chk-1キナーゼ阻害剤化合物または化学療法剤(DNA損傷剤など)とChk-1キナーゼ阻害剤化合物との組み合わせによる治療に対して感受性を有するがんであるかどうかを判定するために、患者をスクリーニングしてもよい。
【0150】
より詳細には、患者が罹患しているかまたは罹患している可能性があるがんが、DNA修復機構の欠陥、細胞周期の欠陥、または高レベルの複製ストレス、例えばp53変異による細胞周期の欠陥を特徴とするがんであるかどうか、あるいは、p53陰性がんであるかどうかを判定するために、患者をスクリーニングしてもよい。
【0151】
p53変異またはp53の欠如を特徴とするがんは、例えば、Allredら,J. Nat. Cancer Institute,Vol.85,No.3,200-206(1993)に記載されている方法や、本出願の導入部で挙げた論文に記載されている方法によって、同定することができる。例えば、免疫染色法などの免疫組織化学的方法によってp53タンパクを検出し得る。
【0152】
診断試験は、典型的には、腫瘍生検試料、血液試料(脱落した腫瘍細胞の単離および濃縮)、便生検、痰、染色体分析、胸水、腹水、または尿から選択される生体試料に対して実施される。
【0153】
p53以外に、RAD17、RAD50、およびファンコニ貧血相補群のメンバーなどの他のDNA修復因子の変異により、単独または化学療法との併用でのChk1阻害剤に対する応答を予測し得る。これらのDNA修復経路に変異を含むがんは、腫瘍生検組織または血中循環腫瘍DNA(ctDNA)のDNA配列解析によって同定してもよく、あるいはファンコニ貧血の場合は、Duanら,Frontiers in Oncology vol.4,1-8(2014)に記載されているように、FANCD2に対する抗体を用いて腫瘍生検標本におけるDNAフォーカス形成を評価することによって同定してもよい。
【0154】
このように、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩は、スクリーニングを受け(例えば、患者から採取された1つ以上の生体試料を試験することによって)、p53変異を特徴とするがんまたはp53陰性がん、あるいは、RAD17変異もしくはRAD50変異またはファンコニ貧血相補群のメンバーの変異を含むがんに罹患していることが判明した患者の部分母集団のメンバーを治療するために使用され得る。
【0155】
したがって、さらなる実施形態(実施形態3.24から実施形態3.30)において、本発明は以下を提供する。
【0156】
3.24 スクリーニングを受け、Chk-1キナーゼ阻害剤化合物または化学療法剤(DNA損傷剤など)とChk-1キナーゼ阻害剤化合物との組み合わせによる治療に対して感受性を有するであろうがんに罹患していると判定された対象(例えば、ヒト対象)におけるがんの治療における使用のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩。
【0157】
3.25 スクリーニングを受け、DNA修復機構の欠陥もしくは細胞周期の欠陥、例えばp53変異による細胞周期の欠陥を特徴とするかまたはp53陰性がんであるがんに罹患していると判定された対象(例えば、ヒト対象)におけるがんの治療における使用のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩。
【0158】
3.26 スクリーニングを受け、p53変異を特徴とするがんまたはp53陰性がん、あるいは、RAD17変異もしくはRAD50変異またはファンコニ貧血相補群のメンバーの変異を含むがんに罹患していると判定された対象(例えば、ヒト対象)におけるがんの治療における使用のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩。
【0159】
3.27 実施形態3.24から実施形態3.26のいずれか1つに規定される使用のための医薬の製造のための、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の使用。
【0160】
3.28 スクリーニングを受け、Chk-1キナーゼ阻害剤化合物または化学療法剤(DNA損傷剤など)とChk-1キナーゼ阻害剤化合物との組み合わせによる治療に対して感受性を有するであろうがんに罹患していると判定された対象(例えば、ヒト対象)におけるがんの治療方法であって、治療上有効量の実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩、および必要に応じて化学療法剤(DNA損傷剤など)、を投与することを含む方法。
【0161】
3.29 スクリーニングを受け、DNA修復機構の欠陥もしくは細胞周期の欠陥、例えばp53変異による細胞周期の欠陥を特徴とするかまたはp53陰性がんであるがんに罹患していると判定された対象(例えば、ヒト対象)におけるがんの治療方法であって、治療上有効量の実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩を投与することを含む方法。
【0162】
3.30 スクリーニングを受け、p53変異を特徴とするがんもしくはp53陰性がん、あるいは、RAD17変異もしくはRAD50変異またはファンコニ貧血相補群のメンバーの変異を含むがんに罹患していると判定された対象(例えば、ヒト対象)におけるがんの治療方法であって、治療上有効量の実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩を対象に投与する工程を含む方法。
【0163】
(併用療法)
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩は、単独で、あるいは化学療法剤(特に、DNA損傷剤)、放射線療法、または免疫療法との併用療法で、増殖性疾患の様々な病状または病態の予防または治療に有用であると考えられる。このような病状および病態の例は、上記に記載されている。
【0164】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩は、単独で投与されるかDNA損傷剤やその他の抗がん剤および抗がん療法と組み合わせて投与されるかにかかわらず、一般的には、そのような投与を必要とする対象、例えばヒトまたは動物の患者、好ましくはヒトに投与される。
【0165】
本発明の別の実施形態である実施形態4.1によると、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と、別の化学療法剤、例えば抗がん剤との組み合わせが提供される。
【0166】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と共投与され得る化学療法剤として、例えば、以下が挙げられる:
・トポイソメラーゼI阻害剤
・代謝拮抗物質
・チューブリン標的薬
・DNA結合剤およびトポイソメラーゼII阻害剤
・アルキル化剤
・モノクローナル抗体
・抗ホルモン剤
・シグナル伝達阻害剤
・プロテアソーム阻害剤
・DNAメチルトランスフェラーゼ
・サイトカインおよびレチノイド
・低酸素誘発性DNA損傷剤(例えば、チラパザミン、TH-302)。
【0167】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と組み合わせて投与され得る化学療法剤の特定の例として、以下が挙げられる。
メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、およびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード類;
カルムスチン、ロムスチン、およびセムスチンなどのニトロソウレア類;
トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミド、およびヘキサメチルメラミンなどのエチレンイミン/メチルメラミン化合物;
ブスルファンなどのアルキルスルホン酸塩類;
ダカルバジンなどのトリアジン類;
葉酸塩、メトトレキサート、トリメトレキサート、5-フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、5-アザシチジン、2,2’-ジフルオロデオキシシチジン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アザチオプリン、2’-デオキシコホルマイシン、エリスロヒドロキシノニル-アデニン、リン酸フルダラビン、および2-クロロデオキシアデノシンなどの代謝拮抗物質;
カンプトテシン、トポテカン、およびイリノテカンなどのI型トポイソメラーゼ阻害剤;
エピポドフィロトキシン類(例えば、エトポシドおよびテニポシド)などのII型トポイソメラーゼ阻害剤;
パクリタキセル、タキソテール、ビンカアルカロイド類(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン)、およびエストラムスチン(例えば、リン酸エストラムスチン)などの抗有糸分裂剤;
アクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、およびダクチノマイシンなどの抗生物質;
L-アスパラギナーゼなどの酵素;
インターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン-2G-CSF、およびGM-CSFなどの、サイトカイン類および生物学的応答調節剤:
レチノイン酸誘導体(例えば、ベキサロテン)などのレチノイド類;
メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモダゾール、ニコチンアミド、5-ブロモデオキシウリジン、5-ヨードデオキシウリジン、およびブロモデオキシシチジンなどの放射線増感剤;
シスプラチン、カルボプラチン、スピロプラチン、イプロプラチン、オンナプラチン(onnaplatin)、テトラプラチン、およびオキサリプラチンなどの白金化合物;
ミトキサントロンなどのアントラセンジオン類;
ヒドロキシ尿素などの尿素類;
N-メチルヒドラジンおよびプロカルバジンなどのヒドラジン誘導体;
ミトタンおよびアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;
プレドニゾン、デキサメタゾン、およびアミノグルテチミドなどの、副腎皮質ステロイド類および拮抗薬;
ヒドロキシプロゲステロン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン)、メドロキシプロゲステロン(例えば、酢酸メドロキシプロゲステロン)、およびメゲストロール(例えば、酢酸メゲストロール)などのプロゲスチン類;
ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオールなどのエストロゲン類;
タモキシフェンなどの抗エストロゲン剤;
テストステロン(例えば、プロピオン酸テストステロン)およびフルオキシメステロンなどのアンドロゲン類;
フルタミドおよびロイプロリドなどの抗アンドロゲン剤;
フルタミドなどの非ステロイド性抗アンドロゲン剤;ならびに
PARP阻害剤[例えば、Cancer Res.;66:(16)に開示されているもの]、Mek阻害剤[例えば、Blood. 2008;112(6):2439-2449に開示されているもの]、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤[例えば、Blood.2005年2月15日;105(4):1706-16に開示されているもの]、wee1阻害剤[例えば、Haematologica 2014,99(4):68に開示されているもの]、ラパマイシン、およびSrc阻害剤[例えば、Blood. 2011年2月10日;117(6):1947-57に開示されているもの]などのシグナル伝達阻害剤。
抗PD-L1[例えば、Cancer Discov.2019(5):646に開示されているもの]などの免疫療法剤
【0168】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と組み合わせて使用され得る化学療法剤として、例えば、Blasinaら,Mol. Cancer Ther.,2008,7(8),2394-2404、Ashwellら,Clin. Cancer Res.,2008,14(13),4032-4037、Ashwellら,Expert Opin. Investig. Drugs, 2008,17(9),1331-1340、Trends in Molecular Medicine 2011年2月,Vol.17,No.2、およびClin Cancer Res;16(2) 2010年1月15日に記載されている化学療法剤が挙げられる。
【0169】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と組み合わせて使用され得る化学療法剤の特定の例としては、代謝拮抗物質(カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、ゲムシタビン、およびペメトレキセドなど)、トポイソメラーゼI阻害剤(SN38、トポテカン、イリノテカンなど)、白金化合物(カルボプラチン、オキサロプラチン(oxaloplatin)、およびシスプラチンなど)、トポイソメラーゼII阻害剤(ダウノルビシン、ドキソルビシン、およびエトポシドなど)、チミジル酸合成酵素阻害剤(5-フルオロウラシルなど)、有糸分裂阻害剤(ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、およびビノレルビンなど)、ならびにアルキル化剤(マイトマイシンCなど)が挙げられる。
【0170】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と組み合わせて使用され得るさらなる一連の化学療法剤は、複製フォークの停止を誘導する薬剤(前掲のAshwellら,Clin.Cancer Res.を参照)を含み、このような化合物として、例えば、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、およびヒドロキシ尿素が挙げられる。
【0171】
(ポソロジー)
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩または実施形態4.1に規定される治療のための組み合わせは、それを必要とする患者(例えば、ヒトまたは動物の患者)に、所望の治療効果、例えば、上記の実施形態3.1から実施形態3.30で述べた効果を達成するのに十分な量で投与される。
【0172】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩または実施形態4.1に規定される治療のための組み合わせは、一般に、そのような投与を必要とする対象、例えばヒトまたは動物の患者、好ましくはヒトに投与される。
【0173】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩または実施形態4.1に規定される治療のための組み合わせは、典型的には、治療的または予防的に有用であり、一般に無毒である量で投与される。しかし、ある特定の状況では、本発明の薬学的に許容可能な塩または実施形態4.1に規定される治療のための組み合わせを投与する利点が、毒性作用または副作用という欠点を上回る場合があり、その場合、本発明の薬学的に許容可能な塩または実施形態4.1に規定される治療のための組み合わせをある程度の毒性に関連する量で投与することが望ましいと考えられることもある。
【0174】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩、および、上記に説明され規定される(例えば、実施形態4.1のように)化学療法剤または放射線療法との組み合わせは、有益な治療効果を維持するために長期にわたって投与されてもよく、短期間だけ投与されてもよい。また、周期的に投与されても連続的に投与されてもよい。
【0175】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩または実施形態4.1に規定される治療のための組み合わせは、単独で(単独療法において)、または1つ以上の化学療法剤もしくは放射線療法と組み合わせて、有効量、すなわち、所望の治療効果をもたらすのに有効な量で投与される。例えば、「有効量」は、がんに罹患している対象に単独でまたはDNA損傷剤もしくは他の抗がん剤と一緒に投与された場合に、腫瘍の成長を鈍化させ、疾患の症状を改善し、および/または寿命を延長する、薬学的に許容可能な塩の量であり得る。より詳細には、放射線療法、またはDNA損傷剤もしくは他の抗がん剤と組み合わせて使用される場合の本発明の薬学的に許容可能な塩の有効量は、薬学的に許容可能な塩がDNA損傷性抗がん剤および/または放射線療法と共投与された場合に、DNA損傷性抗がん剤および/または放射線療法が単独投与された場合と比べて、より大きな応答が得られる量である。併用療法として使用される場合、「有効量」のDNA損傷剤および/または「有効な」放射線量が対象に投与されるが、これは、抗がん効果が正常に得られる量である。実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩とDNA損傷性抗がん剤とは、同じ医薬組成物の一部として対象に共投与されてもよく、別々の医薬組成物として対象に共投与されてもよい。
【0176】
別々の医薬組成物として投与される場合、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩とDNA損傷性抗がん剤(および/または放射線療法)とは、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩による増強効果が保持される限りにおいて、同時に投与されてもよく、それぞれ異なる時期に投与されてもよい。
【0177】
1つの実施形態において、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩は、DNA損傷性抗がん剤の投与前(例えば、最大8時間前、最大12時間前、または最大1日前)に投与される。
【0178】
別の実施形態において、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩は、DNA損傷性抗がん剤の投与後(例えば、最大8時間後、最大12時間後、最大24時間後、最大30時間後、または最大48時間後)に投与される。別の実施形態においては、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の1回目の投与がDNA損傷性抗がん剤投与の1日後に行われ、該化合物の2回目の投与がDNA損傷性抗がん剤投与の2日後に行われる。
【0179】
さらなる実施形態では、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の1回目の投与がDNA損傷性抗がん剤投与の1日後に行われ、2回目の投与がDNA損傷性抗がん剤投与の2日後に行われ、3回目の投与がDNA損傷性抗がん剤投与の3日後に行われる。
【0180】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩とDNA損傷性抗がん剤との投与を含む特定の投与計画は、WO2010/118390(Array BioPharma社)に記載の通りであってもよく、この特許文献の内容を参照により本明細書に援用される。
【0181】
対象に投与される本発明の薬学的に許容可能な塩の量と(併用療法の場合は)DNA損傷性抗がん剤の量および放射線量は、DNA損傷性抗がん剤の性質および効力と、疾患または病態の種類および重症度と、全身の健康、年齢、性別、体重、および薬剤耐性などの対象の特性とに依存する。当業者は、これらおよびその他の要因に応じて適切な用量を決定することができるであろう。一般的に使用されている抗がん剤および放射線療法の有効用量は、当業者によく知られている。
【0182】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の典型的な1日投与量は、単独療法で単独投与されるかDNA損傷性抗がん剤と組み合わせて投与されるかにかかわらず、体重1キログラムあたり100ピコグラム~100ミリグラム、より典型的には、体重1キログラムあたり5ナノグラム~25ミリグラム、より通常には、体重1キログラムあたり、10ナノグラム~15ミリグラム(例えば、10ナノグラム~10ミリグラム、より典型的には、1キログラムあたり1マイクログラム~1キログラムあたり20ミリグラム、例えば、1キログラムあたり1マイクログラム~10ミリグラム)の範囲であり得る。但し、必要に応じて、より高い投与量またはより低い投与量を投与してもよい。上記化合物は、毎日投与してもよく、例えば2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、10日ごと、14日ごと、21日ごと、または28日ごとに反復投与してもよい。
【0183】
しかし、最終的には、薬学的に許容可能な塩の投与量と使用される組成物の種類は、治療中の疾患または生理的状態に見合うものであり、医師の裁量に委ねられる。
【0184】
(医薬製剤)
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩および実施形態4.1に規定される治療のための組み合わせは、典型的には、医薬組成物の形態で患者に投与される。したがって、本発明の別の実施形態(実施形態5.1)において、本発明は、実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤と、必要に応じてさらなる化学療法剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0185】
さらなる実施形態では、以下が提供される。
【0186】
5.2 約1%(w/w)から約95%(w/w)までの実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と、99%(w/w)から5%(w/w)までの薬学的に許容可能な賦形剤または賦形剤の組み合わせと、必要に応じて1種以上のさらなる治療的に活性な成分とを含む、実施形態5.1に記載の医薬組成物。
【0187】
5.3 約5%(w/w)から約90%(w/w)までの実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩の組成物と、95%(w/w)から10%までの製薬上な賦形剤または賦形剤の組み合わせと、必要に応じて1種以上のさらなる治療的に活性な成分とを含む、実施形態5.2に記載の医薬組成物。
【0188】
5.4 約10%(w/w)から約90%(w/w)までの実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と、90%(w/w)から10%までの製薬上な賦形剤または賦形剤の組み合わせとを含む、実施形態5.3に記載の医薬組成物。
【0189】
5.5 約20%(w/w)から約90%(w/w)までの実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と、80%(w/w)から10%までの製薬上な賦形剤または賦形剤の組み合わせとを含む、実施形態5.4に記載の医薬組成物。
【0190】
5.6 約25%(w/w)から約80%(w/w)までの実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩と、75%(w/w)から20%までの製薬上な賦形剤または賦形剤の組み合わせとを含む、実施形態5.5に記載の医薬組成物。
【0191】
本発明の医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、鼻腔内投与、気管支内投与、眼投与、耳投与、直腸投与、膣内投与、または経皮投与に適した任意の剤形とすることができる。組成物が非経口投与を目的としたものである場合は、静脈内投与用、筋肉内投与用、腹腔内投与用、皮下投与用、または、注射、注入、もしくは他の送達手段による標的臓器もしくは標的組織への直接送達用に製剤化することができる。
【0192】
経口投与に適した医薬剤形には、錠剤、カプセル剤、カプレット、丸剤、トローチ剤(lozenges)、シロップ剤、溶液、スプレー剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤および懸濁剤、舌下錠、スプレー剤、オブラート(wafers)、またはパッチ剤およびバッカルパッチ剤が含まれる。
【0193】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は以下を提供する。
【0194】
5.7 経口投与に適している、実施形態5.1から実施形態5.6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0195】
5.8 錠剤、カプセル剤、カプレット、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、溶液、スプレー剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤および懸濁剤、舌下錠、スプレー剤、オブラート、またはパッチ剤およびバッカルパッチ剤から選択される、実施形態5.7に記載の医薬組成物。
【0196】
5.9 錠剤およびカプセル剤から選択される、実施形態5.8に記載の医薬組成物。
【0197】
5.10 非経口投与に適している、実施形態5.1から実施形態5.6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0198】
5.11 静脈内投与用、筋肉内投与用、腹腔内投与用、皮下投与用、または、注射、注入、もしくは他の送達手段による標的臓器もしくは標的組織への直接送達用に製剤化された、実施形態5.10に記載の医薬組成物。
【0199】
5.12 注射または注入用の溶液または懸濁剤である、実施形態5.11に記載の医薬組成物。
【0200】
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩を含有する医薬組成物(例えば、実施形態5.1から実施形態5.12のいずれか1つに規定されるもの)は、公知の技術に従って製剤化することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company社,イーストン,ペンシルベニア州,米国を参照されたい。
【0201】
したがって、(実施形態5.9のような)錠剤組成物は、単位用量の実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つに規定される薬学的に許容可能な塩を、例えばラクトース、スクロース、ソルビトール、もしくはマンニトールといった糖もしくは糖アルコールなどの不活性な希釈剤もしくは担体、および/または、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、タルク、炭酸カルシウムなどの非糖由来の希釈剤、または、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースもしくはその誘導体、および、コーンスターチなどの澱粉と共に含有し得る。錠剤は、ポリビニルピロリドンなどの結合剤および造粒剤、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースなどの膨潤性架橋ポリマー)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸塩)、防腐剤(例えば、パラベン)、抗酸化剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液もしくはクエン酸緩衝液)、ならびにクエン酸塩/重炭酸塩混合物などの発泡剤などの標準成分を含有してもよい。このような賦形剤はよく知られており、本明細書中で詳細に説明する必要はない。
【0202】
(実施形態5.9のような)カプセル製剤は、硬質ゼラチンの類であっても軟質ゼラチンの類であってもよく、固体状、半固体状、または液体状の活性成分を収容することができる。ゼラチンカプセルは、動物ゼラチンまたはその合成同等物もしくは植物由来の同等物から形成することができる。
【0203】
固形剤形(例えば、錠剤、カプセル剤など)は、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよいが、典型的には、コーティング、例えば、保護フィルムコーティング(例えば、ワックスもしくはワニス)または徐放性コーティングを有する。コーティング(例えば、Eudragit(商標)タイプのポリマー)は、上記薬学的に許容可能な塩を胃腸管内の所望の位置で放出するように設計することができる。このため、コーティングは、胃腸管内のある特定のpH条件下で分解し、それによって薬学的に許容可能な塩を胃または回腸もしくは十二指腸において選択的に放出するように、選択することができる。
【0204】
コーティングの代わりに、またはコーティングに加えて、薬学的に許容可能な塩を胃腸管内の様々な酸性度またはアルカリ度の条件下で選択的に放出するように適合され得る例えば放出遅延剤などの放出制御剤を含む固体マトリックス中で、薬剤を提供することができる。あるいは、このようなマトリックス材料もしくは放出遅延コーティングを、当該剤形が胃腸管を通過する際に実質的に連続的に侵食される侵食性ポリマー(例えば、無水マレイン酸ポリマー)の形態とすることができる。
【0205】
局所使用のための組成物には、軟膏、クリーム、スプレー、パッチ、ゲル、液滴、およびインサート(例えば、眼内インサート)が含まれる。このような組成物は、従来の方法に従って製剤化することができる。
【0206】
(実施形態5.10から実施形態5.12のような)非経口投与用の組成物は、典型的には、滅菌水溶液、滅菌油性溶液、または滅菌微細懸濁液として提供されるが、注射用滅菌水で即座に調製するために、微粉化された滅菌粉末状で提供されてもよい。
【0207】
直腸投与用または膣内投与用の製剤の例としては、例えば、上記活性化合物を含有する成型可能材料またはワックス状材料の成形体から形成され得る、ペッサリーおよび坐剤が挙げられる。
【0208】
吸入投与のための組成物は、吸入可能な粉末組成物または液体スプレーもしくは粉末スプレーの形態であり得、粉末吸入装置またはエアロゾルディスペンス装置を用いて標準形態で投与可能である。このような装置はよく知られている。吸入投与の場合、粉末化された製剤は、典型的には、上記薬学的に許容可能な塩をラクトースなどの粉末化された不活性固体希釈剤と共に含む。
【0209】
上記医薬組成物は、一般に、単位用量形態(unit dosage form)で提供され、そのため、典型的には、所望の生物学的活性レベルを提供するのに十分な薬学的に許容可能な塩を含有する。例えば、実施形態5.1から実施形態5.9)のいずれか1つに記載の医薬組成物である、経口投与を目的とした組成物は、上記薬学的に許容可能な塩を2ミリグラム~200ミリグラム、より通常には、10ミリグラム~100ミリグラム、例えば、12.5ミリグラム、25ミリグラム、または50ミリグラム含有し得る。
【0210】
上記医薬組成物は、必要に応じて、実施形態4.1に規定されるさらなる化学療法剤を含んでもよい。
【0211】
したがって、さらなる実施形態(実施形態5.13)において、本発明は、実施形態4.1に規定されるさらなる化学療法剤を追加的に含む、実施形態5.2から実施形態5.12のいずれか1つに規定される医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【
図1】
図1は、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル(「式(1)の化合物」)の遊離塩基のXRPDスペクトルである。
【
図2】
図2は、式(1)の化合物の遊離塩基のDSCトレースおよびTGAトレースを示す。
【
図3】
図3は、式(1)の化合物の遊離塩基のGVSプロファイルを示す。
【
図4】
図4は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)と塩酸塩のいくつかの結晶形のXRPDスペクトルを示し、上から2番目のトレースから1番下のトレースまで、塩の各結晶形は順にパターンA、パターンB、パターンC、パターンD、およびパターンEである。
【
図5】
図5は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)と臭化水素酸塩のいくつかの結晶形のXRPDスペクトルを示し、上から2番目のトレースから1番下のトレースまで、塩の各結晶形は順にパターンA、パターンB、パターンC、およびパターンDである。
【
図6】
図6は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)とメシル酸塩のいくつかの結晶形のXRPDスペクトルを示し、上から2番目のトレースから1番下のトレースまで、塩の各結晶形は順にパターンA、パターンB、およびパターンCである。
【
図7】
図7は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)とL-酒石酸塩のいくつかの形態のXRPDスペクトルを示し、上から2番目のトレースから1番下のトレースまで、塩の各形態は順にアモルファス形態(上から2番目のトレース)、パターンA(上から3番目トレース)、およびパターンB(1番下のトレース)である。
【
図8】
図8は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)とエシル酸塩のいくつかの結晶形のXRPDスペクトルを示し、上から2番目のトレースから1番下のトレースまで、塩の各結晶形は順にパターンAおよびパターンB(上から3番目と4番目のトレース)である。
【
図9】
図9は、式(1)の化合物の遊離塩基(上のトレース)とL-アスパラギン酸塩の結晶形(下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図10】
図10は、式(1)の化合物のベシル酸塩のいくつかの結晶形のXRPDスペクトルを示し、上から下に、塩の各結晶形はパターンA、パターンB、およびパターンCである。
【
図11】
図11は、式(1)の化合物のトシル酸塩のいくつかの結晶形のXRPDスペクトルを示し、上から下に、各結晶形はパターンA、パターンB、パターンC、およびパターンDである。
【
図12】
図12は、式(1)の化合物の遊離塩基と硫酸塩のいくつかの結晶形のXRPDスペクトルを示し、上から下に、各結晶形は、遊離塩基(1番上のトレース)、塩のパターンA(上から2番目と3番目のトレース)、および塩のパターンB(1番下のトレース)である、
【
図13】
図13は、式(1)の化合物の遊離塩基とリン酸塩のいくつかの結晶形のXRPDスペクトルを示し、上から下に、各結晶形は、遊離塩基(1番上のトレース)、塩のパターンA(上から2番目と3番目のトレース)、および塩のパターンB(1番下のトレース)である。
【
図14】
図14は、式(1)の化合物の遊離塩基とクエン酸塩のいくつかのアモルファスまたは結晶性の形態のXRPDスペクトルを示し、上から下に、各トレースは、遊離塩基(1番上のトレース)、アモルファス塩(上から2番目のトレース)、ならびにパターンA塩およびパターンB塩である。
【
図15】
図15は、式(1)の化合物の遊離塩基と酢酸塩のいくつかの結晶形のXRPDスペクトルを示し、上から下に、各トレースは、遊離塩基(1番上のトレース)、塩パターンA、および塩パターンBである。
【
図16】
図16は、式(1)の化合物の遊離塩基(上のトレース)とL-グルタミン酸塩のパターンA結晶形(下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図17】
図17は、式(1)の化合物のマレイン酸塩のいくつかの結晶形のXRPDスペクトルを示し、上から下に、各トレースは、パターンA、パターンB、およびパターンCのトレースである。
【
図18】
図18は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)とゲンチジン酸塩のパターンA結晶形(中央と1番下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図19】
図19は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)とグルクロン酸塩のいくつかの結晶形(パターンA-中央のトレース、パターンB-1番下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図20】
図20は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)とマロン酸塩のいくつかの結晶形(パターンA-中央のトレース、パターンB-1番下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図21】
図21は、THF(上のトレース)およびTHF:H
20(下のトレース)から単離された、式(1)の化合物のナフタレン-2-スルホン酸塩の結晶形のXRPDスペクトルを示す。
【
図22】
図22は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)とシュウ酸塩のいくつかの結晶形(パターンA-中央のトレース)、パターンB(1番下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図23】
図23は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)と硫酸塩の結晶形A、B、C、およびD(上から2番目から降順に)のXRPDスペクトルを示す。
【
図24】
図24は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)と硫酸塩の結晶形DおよびE(中央と1番下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図25】
図25は、マレイン酸パターンB塩のXRPDスペクトルを示す。
【
図26】
図26は、マレイン酸パターンB塩のDSCトレースおよびTGAトレースを示す。
【
図27】
図27は、マレイン酸パターンA塩のXRPDスペクトルを示す。
【
図28】
図28は、マレイン酸パターンA塩のDSCトレースおよびTGAトレースを示す。
【
図29】
図29は、マレイン酸パターンC塩のXRPDスペクトルを示す。
【
図30】
図30は、マレイン酸パターンC塩のDSCトレースおよびTGAトレースを示す。
【
図31】
図31は、マロン酸パターンB塩のXRPDスペクトルを示す。
【
図32】
図32は、マロン酸パターンB塩のDSCトレースおよびTGAトレースを示す。
【
図33】
図33は、トシル酸パターンA塩のXRPDスペクトルを示す。
【
図34】
図34は、トシル酸パターンA塩のDSCトレースおよびTGAトレースを示す。
【
図35】
図35は、ベシル酸パターンC塩のXRPDスペクトルを示す。
【
図36】
図36は、式(1)の化合物のベシル酸パターンC塩のDSCトレースおよびTGAトレースを示す。
【
図37】
図37は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)とビス-メシル酸塩の結晶形パターンA(中央のトレース)およびパターンB(1番下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図38】
図38は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)とビス-マレイン酸塩の結晶形パターンA(中央のトレース)およびパターンB(1番下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図39】
図39は、式(1)の化合物の遊離塩基(1番上のトレース)とビス-ベシル酸塩の結晶形パターンA(中央のトレース)およびパターンB(1番下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図40】
図40は、遊離塩基とマレイン酸塩の様々な結晶形のXRPDスペクトルを示し、1番上のトレースから1番下のトレースへ降順に、式(1)の化合物の遊離塩基、パターンAモノ-マレイン酸塩、パターンAビス-マレイン酸塩、パターンBビス-マレイン酸塩、およびパターンAヘミ-マレイン酸塩である。
【
図41】
図41は、遊離塩基(上のトレース)とヘミ-エタン-1,2-ジスルホン酸塩の結晶形パターンA(下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図42】
図42は、遊離塩基(上のトレース)とヘミ-ナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩の結晶形パターンA(下のトレース)のXRPDスペクトルを示す。
【
図43】
図43は、遊離塩基とヘミ-フマル酸塩の様々な結晶形のXRPDスペクトルを示し、1番上のトレースから1番下のトレースへ降順に、式(1)の化合物の遊離塩基、パターンAヘミ-フマル酸塩、パターンBヘミ-フマル酸塩、およびパターンCヘミ-フマル酸塩である。
【
図44】
図44は、式(1)の化合物のマレイン酸塩のパターンA結晶形の重量蒸気収着(GVS)プロットを示す。
【
図45】
図45は、式(1)の化合物のマレイン酸塩のパターンB結晶形のGVSプロットを示す。
【
図46】
図46は、式(1)の化合物のトシル酸塩のパターンA結晶形のGVSプロットを示す。
【
図47】
図47は、式(1)の化合物のベシル酸塩のパターンA結晶形のGVSプロットを示す。
【
図48】
図48は、式(1)の化合物のベシル酸塩のパターンB結晶形のGVSプロットを示す。
【
図49】
図49は、式(1)の化合物のベシル酸塩のパターンC結晶形のGVSプロットを示す。
【
図50】
図50は、式(1)の化合物のナフタレン-2-スルホン酸塩のパターンA結晶形のGVSプロットを示す。
【
図51】
図51は、式(1)の化合物のマロン酸塩のパターンB結晶形のGVSプロットを示す。
【
図52】
図52は、マレイン酸塩の様々な結晶形のXRPDパターンを示し、上から下に、各結晶形は、パターンA、パターンB、A/Bの混合物、パターンC、パターンD、およびパターンEである。
【
図53】
図53は、マレイン酸塩のパターンB結晶形のDVSプロットを示す。
【
図54】
図54は、マレイン酸パターンD塩のDSCトレースおよびTGAトレースを示す。
【
図55】
図55は、マレイン酸パターンE塩のDSCトレースおよびTGAトレースを示す。
【実施例】
【0213】
(解析方法)
(プロトン-NMR)
塩の形成(プロトンシフト対遊離塩基の観察による)と、それらの塩が1:1(遊離塩基:酸のモル比)の化学量論的塩であることの同定を、オートサンプラーを備えたJEOL製ECX 400MHz分光計を用いて収集したそれらの1H NMRスペクトルから確認した。試料は解析のための適切な重水素化溶媒に溶解した。データの取得には、Delta NMR Processing and Control Softwareバージョン4.3.を使用した。
【0214】
(粉末X線回折(XRPD))
CuKα線(45kV、40mA)、θ-θゴニオメーター、集束ミラー、発散スリット(1/2’’)、入射ビーム側および発散ビーム側の両方のソーラースリット(4mm)、ならびにPIXcel検出器を用いたPANalytical社製回折計で、粉末X線回折パターンを収集した。データ収集に使用したソフトウェアは、X’Pert Data Collector,バージョン2.2fであり、X’Pert Data Viewer,バージョン1.2dを使用してデータを表示した。XRPDパターンは、PANalytical社のX’Pert PROを用いて、周囲条件下で透過箔からなる試料ステージ(厚さ12.7μmのポリイミド「カプトン(Kapton)」フィルム)を介して周囲条件下で取得した。データ収集範囲は、2.994~35°2θ、連続スキャンスピードは1秒あたり0.202004°とした。
【0215】
(示差走査熱量測定(DSC))
45ポジションの試料ホルダーを備えたPerkinElmer社製Pyris 6000 DSCで、DSCデータを収集した。認証されたインジウムを用いて装置を検証し、エネルギー校正と温度校正を行った。0.5~3.0mgの予め定められた量の試料を、ピンホールのあるアルミニウム製鍋に入れ、1分あたり20℃で30℃から350℃まで加熱するか、実験に応じて変化させた。1分あたり20mlの乾燥窒素のパージを試料上に維持した。装置制御、データ取得、および解析は、Pyris Software v11.1.1リビジョンHを用いて行った。
【0216】
(熱重量分析(TGA))
20ポジションのオートサンプラーを備えたPerkin Elmer社製Pyris 1 TGAで、TGAデータを収集した。認証された重量と認証されたアルメルおよびパーカロイ(Perkalloy)を用いて装置を検証し、温度校正を行った。1~5mgの予め定められた量の試料を、予め風袋引きしたアルミニウム製るつぼに投入し、1分あたり20℃で周囲温度から400℃まで加熱した。1分あたり20mlの窒素パージを試料上に維持した。装置制御、データ取得、および解析は、Pyris Software v11.1.1リビジョンHを用いて行った。
【0217】
(重量蒸気収着(GVS))
下記のプロトコルを用いて、本発明の塩についてGVS研究を実施した。
【0218】
IGAsorp Systems Software V6.50.48によって制御されたHiden Isochema社製水分収着分析装置(モデルIGAsorp)を用いて、収着等温線を得た。装置制御により試料を一定温度(25℃)に維持した。湿度は、乾燥窒素流と湿潤窒素流を混合することによって制御し、総流量は1分あたり250mlであった。装置は、3種類の校正済みRotronic塩溶液(10-50-88%)を測定することによって、相対湿度(RH)含有量について検証した。微量天秤(精度+/-0.005mg)によって、試料の重量変化を湿度の関数として監視した。予め定められた量の試料を、風袋引きしたメッシュステンレス鋼製バスケットに周囲条件下で入れた。完全な実験サイクルは、典型的には、一定温度(25℃)で0~90%の範囲にわたって10%RH間隔(各湿度レベルにつき60分)での3回のスキャン(収着、脱着、および収着)からなった。この種の実験は、一連の良好に決定された(well-determined)湿度範囲にわたって研究対象の試料が水分を吸収する(または吸収しない)能力を実証するはずである。
【0219】
(HPLC法1)
Agilent社製1110シリーズHPLCシステムでHPLC分析を実施した。使用カラムは、Aquity BEH Phenyl;30×4.6mm、粒子径1.7μm(Ex Waters社,PN:186004644)であった。流量は2.0mL/分とした。移動相Aは水:トリフルオロ酢酸(100:0.03%)、移動相Bはアセトニトリル:トリフルオロ酢酸(100:0.03%)とした。検出は210nmのUVにより行った。注入量は5μLとし、以下のグラジエントを使用した。
【0220】
【0221】
(HPLC法2)
Agilent社製1110/1200シリーズHPLCシステムでHPLC分析を実施した。使用カラムは、Triart C18;150×4.6mm、粒子径3.0μm(Ex Waters社、PN:186004644)であった。流量は1.0mL/分とした。移動相Aは水:トリフルオロ酢酸(100:0.1%)、移動相Bはアセトニトリル:トリフルオロ酢酸(100:0.1%)とした。検出は302nmのUVにより行った。注入量は5μL、カラム温度は40℃とし、以下のグラジエントを使用した。
【0222】
【0223】
(実施例1)
(5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル遊離塩基の調製とキャラクタリゼーション)
標題化合物の調製を、化合物を塩酸塩としてではなく遊離塩基として単離したこと以外は、WO2015/20390(この特許文献の内容を参照により本明細書に組み込む)の実施例64、方法Lの方法によって行った。粉末X線回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、および熱重量分析(TGA)によって、この遊離塩基の特徴を明らかにした。XRPDスペクトルとDSCトレースおよびTGAトレースを
図1および
図2に示す。
【0224】
この遊離塩基は結晶性であることがXRPDにより示された。DSCサーモグラフは、開始温度205.6℃、ピーク温度214℃の主な融解吸熱を示している。TGAサーモグラフは、150℃までで2.8%の重量減少を示している。固体の1H NMRスペクトルは分子構造と一致する。NMRスペクトルに有意な溶媒が存在しないため、TGAサーモグラフに示された重量損失は、材料の加熱に伴う水の損失に関連している。
【0225】
この遊離塩基のGVSプロファイルを
図3に示す。最初の脱着サイクル中、固体は、相対湿度(RH)50%から0%RHまでで2重量%減少する。その後の収着サイクル中、固体は90%RHまでで8%の水を獲得する。水分の取り込みは可逆的であり、ヒステリシスが認められる。遊離塩基の形式的な(formal)一水和物の理論含水率は4.2%であるため、湿度の極値では二水和物レベルまで水が吸収されている。
【0226】
(実施例2)
(塩の調製)
小規模法
下記の小規模法1~7により、遊離塩基から5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの酸付加塩を調製した。
【0227】
方法1:THF媒介
16本の晶析管に、5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの遊離塩基(50mg)を投入した。THF(2mL、40倍量)を添加し、得られた各混合物を60℃に加熱した。それぞれの酸(1M、1当量)を1つのアリコートとして投入した。各溶液を温度で保持し、1時間平衡化させた。次いで、溶液を室温まで冷却し、18時間平衡化させた後、ろ過により単離し、18時間真空乾燥した。結晶化が起こらなかったいくつかのケースでは、窒素による溶媒除去とMeOHを用いた固体のトリチュレーションとによって、試料をさらに操作した。溶媒低減とトリチュレーションが必要であったのは、エシル酸塩、ベシル酸塩、酢酸塩、およびマロン酸塩である。
【0228】
方法2:THF:MeCN媒介
方法2は、THF:MeCN(1:1)の混合液(1mL、20倍量)を溶媒として使用し、混合物を50℃に加熱したこと以外は、方法1と同一であった。ベンゼンスルホン塩は、溶媒低減とトリチュレーションが必要であった。
【0229】
方法3:THF:水媒介
方法3は、THF:水(95:5)(1mL、20倍量)を溶媒として使用し、混合物を50℃に加熱したこと以外は、方法2と同一であった。ベンゼンスルホン酸塩、酢酸塩、L-グルタミン酸塩、およびL-アスパラギン酸塩は、溶媒低減とトリチュレーションが必要であった。
【0230】
方法4:THF媒介、過剰の酸を使用
方法4は、酸(1M、1.84当量)を1つのアリコートとして投入したこと以外は、方法1と同一であった。この方法を用いて、塩酸塩パターンA、ヘミ-フマル酸塩パターンA、臭化水素酸塩パターンC、ビス-メシル酸塩パターンA、ビス-マレイン酸塩パターンA、ビス-ベシル酸塩パターンA、トシル酸塩パターンC、および酢酸塩パターンBを単離した。
【0231】
方法5:THF:水媒介、過剰の酸を使用
方法5は、酸(1M、1.84当量)を1つのアリコートとして投入したこと以外は、方法2と同一であった。この方法を用いて、L-酒石酸塩パターンB、トシル酸塩パターンA、リン酸塩パターンB、クエン酸塩パターンB、酢酸塩パターンB、L-グルクロン酸塩パターンA、塩酸塩パターンD、臭化水素酸塩パターンD、ビス-メシル酸塩パターンB、ビス-マレイン酸塩パターンB、ベシル酸塩パターンB、硫酸塩パターンCを単離した。
【0232】
方法6:THF媒介、過剰の酸を使用
方法6は、遊離塩基(30mg)を投入し、酸(1M、2当量)を1つのアリコートとして投入したこと以外は、方法1と同一であった。この方法を用いて塩酸パターンB塩を生成した。
【0233】
方法7:THF媒介、0.5当量の酸を使用
方法7は、すべてのケースにおいて0.5当量の酸を添加したこと以外は、方法1と同一であった。方法7を用いて、ヘミ-マレイン酸塩パターンA、ヘミ-硫酸塩パターンA、ヘミ-エタン-1,2-ジスルホン酸塩パターンA、およびヘミ-ナフチレン-1,5-ジスルホン酸塩パターンAを単離した。
【0234】
(5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル塩の中規模調製)
中規模法1
遊離塩基を300mgとしたことを除いて、小規模法1で使用したのと同様の条件を使用し、より大きい規模で塩の調製を行った。この方法で以下の塩を調製した。
・トシル酸塩パターンC、>200℃での熱サイクルによりトシル酸塩パターンDを得た。
・マレイン酸塩パターンA、40℃/75%RHでのコンディショニングによりマレイン酸塩パターンBを得た。
・ベシル酸塩パターンB
・ナフタレン-2-スルホン酸塩パターンA
【0235】
この方法を、遊離塩基100mgを用いることに変更し、以下を形成した。
・シュウ酸塩パターンA
【0236】
中規模法2
マロン酸パターンBの調製を、下記の方法に従ってスケールアップした。
5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル遊離塩基(300mg)を25mLの丸底フラスコに秤量した。THF:水(95:5、20倍量)を添加し、混合物を60℃で15分間平衡化させた。マロン酸(1当量)を投入し、混合物を60℃で15分間平衡化させた。混合物を室温まで冷却し、30分間平衡化させた。次いで、ロータリーエバポレータを用いて50℃、210rpmで混合物を急速に蒸発させた。これにより、ベージュ色の粉末を生成した。その後、これをMeOH(20倍量)中、室温で18時間熟成した。得られた懸濁液を真空ろ過により単離し、固体を45℃で週末を通じて真空乾燥した。
【0237】
中規模法3
300mgの遊離塩基と2当量の酸を用いたこと以外は、小規模法5で使用した条件を使用した。この方法と用いてビス-マレイン酸パターンA塩を調製した。
【0238】
中規模法4
300mgの遊離塩基と2当量の酸を用いたこと以外は、小規模法4で使用した条件を使用した。この方法を用いてビス-ベシル酸塩パターンBを調製した。
【0239】
熟成方法
ベシル酸塩パターンBの水熟成(24時間)後にベシル酸塩パターンCが形成された。
【0240】
マレイン酸塩Bの水熟成(24時間)後にマレイン酸塩パターンCが形成された。
【0241】
塩の調製に用いた方法とこのようにして調製した塩の物理的外観とをまとめたものを下記の表に示す。
【0242】
【0243】
【0244】
上記の方法に従って調製した塩の特徴を明らかにするデータを下記の表に示す。
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
【0249】
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
上記の方法を用いて調製したビス塩およびヘミ塩の特徴も下記に記載する。
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
(実施例3A)
(塩の水への溶解度の測定)
5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル遊離塩基および選択した塩(30mg)を晶析管に秤量し、注射用水(WFI)(1mL)を投入し、各試料を24時間にわたって放置して平衡化させた(25℃)。真空ろ過により固体を単離し、ろ液を用いてHPLC(HPLC方法1)によって溶解度を評価した。
【0259】
【0260】
(結論)
多数の結晶塩を同定したが、大部分の塩は、水和/溶媒和の傾向を示し、複雑な熱プロファイルを有していた。公知の塩酸塩(国際特許出願第WO2015/20390号の実施例64、方法Lに開示)は、多形を示し、かつ、水和/溶媒和を示す良好でない熱プロファイルを示すため、固体製剤の調製のための好ましい候補であるとは考えられない。
【0261】
トシル酸塩、マレイン酸塩、ベシル酸塩、マロン酸塩、およびシュウ酸塩はすべて、遊離塩基よりも溶解度が向上しているが、シュウ酸塩は、結晶化度が低いため、さらなる開発は考えられなかった。ビス塩は、水中で不均化を起こすため、やはりさらなる開発の候補とは考えられなかった。
【0262】
(実施例3B)
(塩の生体関連媒体への溶解度の測定)
実験:
5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの遊離塩基および選択した塩(30mg)を晶析管に秤量した。生体関連媒体(DI H2O、FeSSIF、FaSSIF、およびFaSSGF)(2mL)を投入した。試料を24時間にわたって放置して平衡化させた(25℃)。HPLCを用いて溶解度を測定した(上記の方法1を参照)。
【0263】
【0264】
遊離塩基と選択した塩の生体関連溶解度評価では、全体的に、1mg/mL未満という低い溶解度であった。一般的な傾向として、FaSSIFから、FeSSIF、FaSSGFへと塩の溶解度の増加が観察された。マレイン酸塩およびマロン酸塩は、FaSSGFへの溶解度が遊離塩基よりも向上していた。ほとんどの塩はFeSSIFとFaSSIFで同様の溶解度を示したが、マレイン酸塩では胃液において差異が観察された。
【0265】
生体関連範囲全体において、塩と遊離塩基はこれらの試験条件下での性能が類似している。しかし、マレイン酸塩は、総合的な原薬形態(solid form)性能と共に胃から腸への移行を考慮すると、有望である。
【0266】
塩酸塩は、溶解性はあるが、多形であり、複雑な熱プロファイル(水和と溶媒和を示す)を有する。
【0267】
(2週間の安定性)
(プロトコル)
実験:マレイン酸塩パターンB(30mg)を、別々の15mLのタイプIガラスバイアルに入れた。これらのバイアルに、湿気の侵入を許容するように、HDPE製プラスチックキャップを緩く取り付けた。その後、バイアルを25℃/60%RHと40℃/75%RHのICHに適合した(ICH-rated)安定性キャビネット内に置き、2~8℃で冷蔵保存した。2週間保存後、これらの試料を安定性キャビネットおよび冷蔵保存から取り出し、HPLC(方法2)によって化学的純度を評価した。関連データを波長302nmで収集した。試料はMeCN:水(1:1)中で調製した。
【0268】
マレイン酸塩パターンBは、以下の条件で2週間安定である:
25℃/60%RH、40℃/75%RH、および2~8℃。
【0269】
【0270】
最も優れていた4種の塩は、マレイン酸塩、トシル酸塩、ベシル酸塩、およびマロン酸塩であった。これらのうち、マレイン酸塩が最も優れた特性を示した。以下、これらの塩の選択された結晶形について、より詳細に説明する。
【0271】
(粉末X線回折研究)
マレイン酸塩パターンB
マレイン酸塩パターンBのXRPDスペクトルを
図25に示し、熱データを
図26に示す。当該パターンBのXRPDピークを下記の表に示す。
【0272】
【0273】
マレイン酸塩パターンA
マレイン酸塩パターンAのXRPDスペクトルを
図27に示し、熱データを
図28に示す。当該パターンAのXRPDピークを下記の表に示す。
【0274】
【0275】
マレイン酸塩パターンC
マレイン酸塩パターンCのXRPDスペクトルを
図29に示し、熱データを
図30に示す。当該パターンCのXRPDピークを下記の表に示す。
【0276】
【0277】
マロン酸塩パターンB
マロン酸塩パターンBのXRPDスペクトルを
図31に示し、DSCトレースおよびTGAトレースを
図32に示す。XRPDピークを下記の表に示す。
【0278】
【0279】
トシル酸塩パターンA
トシル酸塩パターンAのXRPDスペクトルを
図33に示し、TGAトレースおよびDSCトレースを
図34に示す。XRPDピークを下記の表に示す。
【0280】
【0281】
ベシル酸塩パターンC
ベシル酸塩パターンCのXRPDスペクトルを
図35に示し、TGAトレースおよびDSCトレースを
図36に示す。XRPDピークを下記の表に示す。
【0282】
【0283】
(重量蒸気収着研究)
特定の塩の結晶形について、上記のプロトコルを用いて得られたGVSデータを以下に説明する。
【0284】
マレイン酸塩パターンA-
図44参照
最初の収着サイクル中、固体は50%RHから90%RHまでで1.5重量%増加した。その後の脱着サイクル中、固体は0%RHまでで4%の水を失った。これは、次の収着サイクルで、90%RHで4重量%まで増加した。GVSプロファイルから、この水の取り込みは相対湿度の低下に伴って可逆的であり、ヒステリシスはごくわずかに示されるだけであることを確認した。
【0285】
0%RHと90%RHで新しいパターンを単離し、Bと名付けた。パターンBはパターンAと密接に関連している。
【0286】
マレイン酸塩パターンB-
図45参照
最初の脱着サイクル中、固体は50%RHから0%RHまでで2.5重量%を失っている。その後の収着サイクル中、固体は90%RHまでで4%の水を獲得しているが、0%RHから40%RHの間で急激な増加が見られる。0%RHでパターンAに転換し、90%RHでは変化なしである。このデータは、結晶バージョン間の相互転換が水和と関係していることを示唆している。
【0287】
トシル酸塩パターンA-
図46
最初の脱着サイクル中、固体は50%RHから0%RHまでで3.5重量%を失っているが、50%RHから10%RHまでは一定のペースで0.5重量%減少し、10%RHから0%RHまでは約3重量%の急激な減少を示している。その後の収着サイクル中、固体は、10%RHまでで約3%の水を急激に獲得しているが、10%RHから90%RHまでは一定のペースで約1%増加している。含水率3%は、トシル酸塩の一水和物に相当する。0%RHと90%RHで形態変化は見られず、このことは、周囲範囲(ambient range)全体にわたって可逆的かつ安定なチャネル水和物(channel hydrate)を示唆している。
【0288】
ベシル酸塩パターンA-
図47参照
最初の脱着サイクル中、固体は50%RHから0%RHまでで2.5重量%を失っている。その後の収着サイクル中、固体は90%RHまでで10%の水を獲得しているが、40%RHから60%RHまでは6%の急激な増加を示している。次の脱着サイクルは、90%RHから30%RHまでは一定のペースで約3重量%の減少を示し、30%から0%RHまでは急激に0%重量%まで減少している。ベシル酸塩の形式的な一水和物に必要な水の理論量は3.6%である。したがって、塩のこのバージョンは、三水和物に水和している。
【0289】
ベシル酸塩パターンB-
図48参照
最初の脱着サイクル中、固体は50%RHから0%RHまでで1重量%を失っている。その後の収着サイクル中、固体は90%RHまでで約2.25%の水を獲得しているが、一定のペースでの増加が認められる。ベシル酸塩のこのパターンBバージョンは、パターンAのものよりも好ましいGVSプロファイルを示している。
【0290】
ベシル酸塩パターンC-
図49参照
最初の脱着サイクル中、固体は50%RHから0%RHまでで約3重量%を失っている。その後の収着サイクル中、固体は90%RHまでで3.75%の水を獲得しているが、0%RHから20%RHの間で約2.5重量%の急激な増加が認められる。
【0291】
ナフタレン-2-スルホン酸塩パターンA-
図50参照
最初の脱着サイクル中、固体は50%RHから0%RHまでで1重量%を失っている。その後の収着サイクル中、固体は90%RHまでで約2.25%の水を獲得しているが、一定のペースでの増加が認められる。XRPD分析により、湿度の極値において固体の結晶性に変化はなかったことが示された。
【0292】
マロン酸塩パターンB-
図51参照
GVSプロファイルは、材料が0%RHまでの最初の脱着ステップで5重量%を失っていることを示す。したがって、この材料は、吸湿性があると考えられ、周囲条件で非化学量論的レベルまで水和していた。その後の収着サイクル中、固体は90%RHまでで7.5%の水を獲得しているが、30%RHから40%RHの間で約3重量%の急激な増加が認められる。この水の取り込みは可逆的であり、相対湿度の低下に伴って、吸収された水が失われる。マロン酸塩の形式的な一水和物に必要な水の理論量は3.4%であるため、塩は、湿気の極端な状態において最大二水和物レベルまで水和している。
【0293】
(実施例4)
(マレイン酸塩のさらなる調査)
マレイン酸塩について5つの結晶パターンを同定し、パターンA、パターンB、パターンC、パターンD、およびパターンEと命名した。パターンA、パターンB、およびパターンCの特徴を明らかにするデータは上記の通りであり、パターンDおよびパターンEの特徴を明らかにするデータは下記の通りである。
【0294】
上記5つの結晶パターンとA/Bパターンの混合物のXRPDスペクトルの比較を
図52に示す。
【0295】
パターンA、パターンB、パターンC、およびパターンDは、水和度が異なる変種と思われる。パターンAは、水分を吸収するとすぐにAとBの混合物に変化するため、単離が困難であることが分かっている。パターンBは比較的安定な水和物であるが、一方で、パターンCは非化学量論的な水和物であると考えられている。パターンDも、非化学量論的な水和物であると考えられており、パターンCに類似している。パターンEは、N-メチルピロリドン(NMP)溶媒和物である。
【0296】
(4A.パターンA/B混合物を介したマレイン酸塩パターンAの調製とその後の熱サイクル)
5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの遊離塩基(4.9756g)を丸底フラスコに投入し、さらにTHF(204mL、41倍量)を加えた。混合物を60℃に加熱した。次いで、この溶液にマレイン酸(1.48g、1当量)をTHF(2倍量)中の溶液として加えた。混合物を60℃で1時間放置して平衡化させた後、一晩で20℃まで放冷し、ベージュ色の懸濁液を得た。固体を真空ろ過により単離し、THFで洗浄した。この固体を40℃で20時間真空乾燥し、マレイン酸塩(SSA203)を得た。
【0297】
得られた固体(SSA203)の一部を晶析管に秤量し(50mg)、メチルイソブチルケトン(5倍量)を加えた。混合物を室温で18時間平衡化させ、パターンA/B混合物を得た。150℃まで加熱することによって熱サイクルを行い、マレイン酸塩パターンAを得た。
【0298】
(4B.高沸点非水性溶媒法によるマレイン酸塩パターンAの調製)
SSA203(実施例4Aから)を晶析管に秤量し(60mg/管)、適切な高沸点溶媒(10倍量)を加えた。混合物を、RTで約30分間平衡化させ、95℃に加熱し、4時間平衡化させた後、70時間かけてRTまで自然放冷した。その後、混合物を再び95℃に加熱し、4時間平衡化させ、3時間かけてRTまで放冷した。固体を単離し、45℃で18時間乾燥させた。
【0299】
溶媒と得られたマレイン酸塩パターンを下記の表に示す。
【0300】
【0301】
(4C.逆溶媒媒介再結晶化)
5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルマレイン酸塩(実施例4AからのSSA203))を2本の晶析管に秤量し、DMSO(4倍量)またはNMP(4倍量)を加えた。混合物を60℃に加熱した。その後、黄色の溶液を清澄化し、予熱した60℃の清浄なチューブに入れた。次いで、清澄化済みの溶液を、1本のチューブにつき80mgのマレイン酸塩が含まれるように、320μlのアリコートに分割した。その後、溶液に、適切な逆溶媒を0.5~1倍量のアリコートで加え、各添加後に最低10分間平衡化させた。これを、濁った溶液が生成するまで、または10倍量の逆溶媒が添加されるまで行った。次いで、混合物を60℃で約30分間放置して平衡化させた後、25℃に冷却し、約20時間平衡化させた。
【0302】
溶液として残ったエントリー(entries)を0℃に冷却し、約6時間平衡化させた。0℃で溶液として残った混合物を60℃に加熱し、溶媒の約半分を穏やかな窒素流によって蒸発させ、冷却して周囲温度に戻した。
【0303】
種々の溶媒の組み合わせから単離された結晶パターンを以下に示す。
DMSO/水、NMP/MeCN、およびNMP/水から単離された固体のパターンB
NMP/BuOHからのパターンA/B混合物
DMSO/BuOHおよびDMSO/MeCNから単離されたパターンC
THF+フラッシュ蒸発から単離されたパターンD
NMP/ジオキサン、NMP/n-PrOAc、NMP/トルエン、NMP/THF、およびNMP/EtOAcから単離されたパターンE
【0304】
マレイン酸塩パターンEのDSCプロファイルおよびTGAプロファイルを
図55に示す。
【0305】
(4D.マレイン酸塩パターンDの調製)
5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルの遊離塩基(4.9756g)を丸底フラスコに投入し、THF(204mL、41倍量)を加えた。混合物を60℃に加熱した。その後、溶液に、マレイン酸(1.48g、1当量)をTHF(2倍量)中の溶液として加えた。混合物を60℃で1時間放置して平衡化させた。この溶液100mlを清澄化し、予熱した60℃の清浄なフラスコに入れ、約50℃に放冷し、フラッシュ蒸発させて、マレイン酸塩パターンDを得た。
【0306】
マレイン酸塩パターンEのDSCプロファイルおよびTGAプロファイルを
図54に示す。
【0307】
(4E.アモルファスマレイン酸塩の合成)
5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリルマレイン酸塩(583.4mg)を30℃のヘキサフルオロ-2-プロパノール(6F-IPA、6倍量、1750μL)に溶解した。この溶液を清澄化し、tert-ブチルメチルエーテル(TBME、6mL)が入ったチューブに入れ、0℃に冷却した。混合物を0℃で15分間撹拌し、固体を真空ろ過により単離し、45℃で18時間にわたって乾燥させた。
【0308】
(4F.パターンAのコンディショニングによるマレイン酸パターンBの形成)
温かい真空オーブン(25℃、オーブン内の流れを活性化するためにわずかに真空を流出させた)と水分源(静的、脱イオン水のトレイ)とを用いて、マレイン酸塩パターンAを48時間にわたってコンディショニングし、コンディショニングトレイ全体にわたってマルチ試料アプローチ(XRPD試料)による継続的なモニタリングをすべての試料がパターンBであると報告されるまで行った。
【0309】
(4G.マレイン酸塩パターンBの動的蒸気収着(DVS)分析)
規定量のマレイン酸塩パターンBを、予め風袋引きしたメッシュステンレス鋼製バスケットに周囲条件下で入れた。完全な実験サイクルは、一定温度(25℃)で0~90%の範囲にわたって10%RH間隔(各湿度レベルにつき60分)での5回のスキャン(脱着、収着の繰り返し、および脱着)からなった。この種の拡張実験は、一連の良好に決定された湿度範囲にわたって研究対象の試料が水分を吸収する(または吸収しない)能力を実証するはずである。
【0310】
サイクル終了後、材料を0%RHで単離し、結晶化度を試験した後、90%RHで最低3時間保持し、結晶化度に変化があるかどうかを再度試験した。
【0311】
【0312】
固体は、最初の脱着前には約2.8重量%の水分が含まれていることを示した。最初の収着中、主な重量増加は20%RHから30%RHの間で起こった(約2重量%)。5サイクル後、材料は0に戻り、水分は含まれていなかった。
【0313】
XRPD分析により、0%RHで混合相、90%RHでパターンBが示された。30%RHから0%RHの間にヒステリシスを伴うこのプロファイルは、30%RHを超えてから無水物から水和物への遷移が平衡に達するまでに速度論的に時間が必要である可逆的なチャネル水和物に典型的なものである。
【0314】
(生物学的活性)
(実施例A)
(Chk-1キナーゼ阻害活性)
下記の材料およびプロトコルを用いて、式(1)の化合物(5-[[5-[4-(4-フルオロ-1-メチル-4-ピペリジル)-2-メトキシ-フェニル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]ピラジン-2-カルボニトリル)のChk-1キナーゼに対する活性を試験した。
【0315】
反応緩衝液:
塩基反応緩衝液:20mM Hepes(pH7.5)、10mM MgCl2、1mM EGTA、0.02%Brij35、0.02mg/ml BSA、0.1mM Na3VO4、2mM DTT、1%DMSO
*必要な補因子を各キナーゼ反応に個別に添加。
【0316】
反応手順:
(i)新しく調製した塩基反応緩衝液中で、指示された基質を調製する。
(ii)必要な補因子を上記の基質溶液に供給する。
(iii)指示されたキナーゼを基質溶液に供給し、穏やかに混合する。
(iv)DMSO中の化合物をキナーゼ反応混合物に供給する。
(v)33P-ATP(比活性0.01μCi/μl最終)を反応混合物に供給し、反応を開始させる。
(vi)キナーゼ反応物を室温で120分間インキュベートする。
(vii)反応物をP81イオン交換ろ紙(Whatman #3698-915)上にスポットする。
(viii)ろ紙を0.1%リン酸中で十分に洗浄する。
(ix)ろ紙を乾燥させ、シンチレーションカウンターで計数を測定する。
【0317】
キナーゼ情報:
CHK-1:Genbankアクセッション番号AF016582
組換え全長構築物、N末端GSTタグ付き、昆虫細胞から精製。
このキナーゼを活性化するための特別な措置は取らなかった。
アッセイにおける最終濃度=0.5nM
基質:CHKtide
ペプチド配列:[KKKVSRSGLYRSPSMPENLNRPR]
アッセイにおける最終濃度=20μM
反応混合物に追加の補因子を添加しない。
【0318】
上記のプロトコルに従って得られた結果から、式(1)の化合物のChk-1キナーゼに対するIC50値は0.00015μMであると決定された。
【0319】
(実施例B)
(ゲムシタビン併用細胞アッセイ)
対数増殖期にあるMIA PaCa-2(ATCC CRL-1420)細胞をトリプシン処理し、プレート表面から細胞を剥がす。10%ウシ胎児血清と1%ピルビン酸ナトリウムと1%L-GlutaMaxとを含有するRPMI中の96ウェルプレートに、約10,000個/ウェルの細胞を播種する。細胞を一晩かけてプレート表面に接着させる。各Chk1阻害剤試験化合物とゲムシタビンの100.5倍希釈系列を、最終最高濃度をそれぞれ3000nMおよび100nMとして作成する。各Chk1阻害剤とゲムシタビンとは、各濃度のChk1阻害剤が各濃度のゲムシタビンに添加されるように組み合わせる。各薬剤は、単剤としても試験する。薬剤を接着細胞に添加し(2連)、72時間インキュベートする。72時間目に、細胞をPromega社製Cell Titer Glo試薬で約15分間処理する。BMG社製Polarstar Omegaプレートリーダーを用いて発光(相対的発光量、RLU)を記録する。総シグナルを50%減少させる単剤濃度(IC50)を、PRISMソフトウェアと4パラメータ非線形回帰曲線フィッティングとによって算出する。併用研究の場合は、PRISMを用いて、X軸をゲムシタビン濃度、Y軸をRLUとするXYプロット上にRLUをプロットする。Chk1阻害剤の濃度ごとのRLUを、ゲムシタビン濃度の関数としてプロットする。Chk1の各濃度におけるゲムシタビン単独のIC50は、4パラメータ非線形回帰曲線フィッティングによって決定される。ゲムシタビン単独のIC50を2分の1および10分の1に減少させるChk1阻害剤のおおよその濃度を、相乗的効力の指標として算出する。
【0320】
上記のプロトコルに従って得られた結果から、式(1)の化合物単独のMIAPaca-2細胞に対するIC50値(Chk1 IC50)と、式(1)の化合物のゲムシタビン単独のIC50を2分の1に減少させるおおよその化合物濃度(2xLS)と10分の1に減少させるおおよその化合物濃度(10xLS)とを、以下に示す。
【0321】
【0322】
(医薬製剤)
(i)錠剤製剤
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つまたは上記実施例に規定される薬学的に許容可能な塩を含有する錠剤組成物を、当該化合物50mgを希釈剤としてのラクトース(BP)197mgおよび滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム3mgと混合し、圧縮して公知の方法で錠剤を形成することにより、調製する。
【0323】
(ii)カプセル製剤
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つまたは上記実施例に規定される薬学的に許容可能な塩100mgをラクトース100mgと混合し、得られた混合物を標準の不透明硬質ゼラチンカプセルに充填することにより、カプセル製剤を調製する。
【0324】
(iii)注射製剤I
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つまたは上記実施例に規定される薬学的に許容可能な塩を10%のプロピレングリコールを含む水に溶解して、活性化合物の濃度を1.5重量%にすることにより、注射による投与用の非経口組成物を調製可能である。この溶液をろ過によって滅菌し、アンプルに充填し、密封する。
【0325】
(iv)注射製剤II
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つまたは上記実施例に規定される薬学的に許容可能な塩(2mg/ml)とマンニトール(50mg/ml)とを水に溶解し、溶液を滅菌ろ過し、密封可能な1mlのバイアルまたはアンプルに充填することにより、注射用の非経口組成物を調製する。
【0326】
(v)注射製剤III
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つまたは上記実施例に規定される薬学的に許容可能な塩を20mg/mlで水に溶解することにより、注射または注入による静脈内送達用の製剤を調製可能である。その後、バイアルを密封し、オートクレーブ殺菌する。
【0327】
(vi)注射製剤IV
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つまたは上記実施例に規定される薬学的に許容可能な塩を、緩衝液(例えば、0.2M酢酸塩、pH4.6)を含む水に20mg/mlで溶解することにより、注射または注入による静脈内送達用の製剤を調製可能である。その後、バイアルを密封し、オートクレーブ殺菌する。
【0328】
(vii)皮下注射製剤
実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つまたは上記実施例に規定される薬学的に許容可能な塩と医薬品グレードのトウモロコシ油とを5mg/mlの濃度になるように混合することにより、皮下投与用の組成物を調製する。この組成物を滅菌し、適切な容器に充填する。
【0329】
(viii)凍結乾燥製剤
製剤化した実施形態1.1から実施形態1.48のいずれか1つまたは上記実施例に規定される薬学的に許容可能な塩のアリコートを、50mlのバイアルに入れ、凍結乾燥する。凍結乾燥の際、ワンステップ凍結プロトコルを用いて(-45℃)で組成物を凍結させる。アニーリングのために温度を-10℃まで上げた後、-45℃での凍結まで下げ、次に+25℃で約3400分間一次乾燥し、その次に、50℃まで温度を段階的に上げながら二次乾燥する。一次乾燥および二次乾燥時の圧力は80ミリトールに設定する。
【0330】
(均等物)
上述の例は、本発明を説明する目的で提示したものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。上記に説明し、例で示した本発明の具体的な実施形態に対して、本発明の基礎をなす原理から逸脱することなく、多くの修正および変更を加え得ることは容易に明らかになるであろう。このような修正および変更はすべて本出願に包含されることが意図されている。
【国際調査報告】