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特表2024-521941神経刺激(neurostimulation)システム
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  • 特表-神経刺激(neurostimulation)システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】神経刺激(neurostimulation)システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240528BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20240528BHJP
   A61N 1/378 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
A61N1/378
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574855
(86)(22)【出願日】2022-05-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022064504
(87)【国際公開番号】W WO2022253714
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21382494.9
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】523454924
【氏名又は名称】インブレイン ニューロエレクトロニクス エスエル
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145791
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 志麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】バッカー,バート
(72)【発明者】
【氏名】デクレ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ガリード アリザ,ホセ アントニオ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C053JJ21
4C053JJ27
4C053JJ40
(57)【要約】
本発明は、特に皮質および/または深部脳刺激のための神経刺激システム(100)に関し、神経刺激システムは、
- 少なくとも1つのインプラント装置(110)であって、
- 少なくとも1つの第1のアンテナ(112)、および
- 少なくとも1つの電極を備えた少なくとも1つの電極アレイを有する、少なくとも1つのリード(114)
を備える少なくとも1つのインプラント装置(110)と、
- 少なくとも1つの第2のアンテナを備えた、少なくとも1つのウェアラブルデバイス(130)と、を備え、
少なくとも1つのウェアラブルデバイス(130)は、少なくとも1つのインプラント装置(110)をワイヤレスに制御し、少なくとも1つのインプラント装置(110)とワイヤレスに通信するように構成され、少なくとも1つの電極は、還元グラフェン酸化物、好ましくは水熱還元グラフェン酸化物から作られている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に皮質および/または深部脳刺激および/または変調のための、神経変調システム(100)であって、
- 少なくとも1つのインプラント装置(110)であって、
- 少なくとも1つの第1のアンテナ(112)、および
- 少なくとも1つの電極を備えた少なくとも1つの電極アレイを有する、少なくとも1つのリード(114)
を備える少なくとも1つのインプラント装置(110)と、
- 少なくとも1つの第2のアンテナを備えた、少なくとも1つのウェアラブルデバイス(130)と、を備え、
前記少なくとも1つのウェアラブルデバイス(130)が、前記少なくとも1つのインプラント装置(110)をワイヤレスに制御し、前記少なくとも1つのインプラント装置(110)とワイヤレスに通信するように構成され、前記少なくとも1つの電極が、還元グラフェン酸化物、好ましくは水熱還元グラフェン酸化物から作られている、神経変調システム(100)。
【請求項2】
前記インプラント装置(110)が、パルス発生器をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の神経変調システム(100)。
【請求項3】
前記インプラント装置(110)が、信号、特に神経生理学的信号、を獲得するための記録システムおよび/または感知システムをさらに備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の神経刺激システム(100)。
【請求項4】
前記ウェアラブルデバイス(130)が再充電可能であることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の神経刺激システム(100)。
【請求項5】
前記ウェアラブルデバイス(130)が、前記少なくとも1つのインプラント装置(110)をワイヤレスに充電または給電するように構成されることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の神経刺激システム(100)。
【請求項6】
前記ウェアラブルデバイス(130)が人間の耳に形状フィットすることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の神経刺激システム(100)。
【請求項7】
前記ウェアラブルデバイス(130)が、個人設定されたおよび/またはカスタマイズされた、人間の特定の耳への形状フィットを有することを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の神経刺激システム(100)。
【請求項8】
前記ウェアラブルデバイス(130)がデバイスソフトウェアを備えていることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の神経刺激システム(100)。
【請求項9】
前記ウェアラブルデバイス(130)が、モバイルデバイス(150)、好ましくは、スマートフォンおよび/もしくは別の個人電子デバイス、ならびに/またはデータベースステーションと、ワイヤレスにデータをやり取りするように構成されていることを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の神経刺激システム(100)。
【請求項10】
前記モバイルデバイス(150)が、前記ウェアラブルデバイス(130)から受信したデータを処理するように、および/またはデータベースステーションとのネットワークデータリンクを確立するように構成されたソフトウェアアプリケーションを備えていることを特徴とする、請求項7に記載の神経刺激システム(100)。
【請求項11】
前記インプラント装置(110)がワイヤレスに再充電可能であることを特徴とする、請求項1から10の一項に記載の神経刺激システム(100)。
【請求項12】
前記インプラント装置(110)が、インプラント部位に解剖学的にフィットされ、頭蓋に植え込まれるように構成されていることを特徴とする請求項1から11の一項に記載の神経刺激システム(100)。
【請求項13】
神経刺激の方法であって、
- パルス発生器を備えたインプラント装置(110)と、ウェアラブルデバイス(130)との間に第1の双方向ワイヤレス接続(120)を確立するステップと、
- 前記ウェアラブルデバイス(130)から前記第1の双方向ワイヤレス接続(120)を介して前記インプラント装置(110)にパルス指令を送信して、標的の刺激を生じさせるステップと、を含む方法。
【請求項14】
前記インプラント装置(110)によって記録された信号を、前記インプラント装置(110)から前記第1の双方向ワイヤレス接続(120)を介して前記ウェアラブルデバイス(130)に送信するステップをさらに含む、請求項13に記載の神経刺激の方法。
【請求項15】
前記第1の双方向ワイヤレス接続(120)を介して、前記ウェアラブルデバイス(130)によって前記インプラント装置(110)をワイヤレスに充電するステップをさらに含む、請求項13または請求項14に記載の神経刺激の方法。
【請求項16】
少なくとも、
- 少なくとも2つのインプラント装置(110)を提供するステップと、
- パルス発生器を備えたインプラント装置(110)同士の間に双方向ワイヤレス接続を確立するステップと、
- 刺激設定および/または治療パラメータおよび/またはフィードバック情報および/または刺激パルスの同期に関する情報をやり取りするステップと
をさらに含む、請求項13から15の一項に記載の神経刺激の方法。
【請求項17】
少なくとも、
- 少なくとも2つのウェアラブルデバイス(130)を提供するステップと、
- ウェアラブルデバイス(130)同士の間に双方向ワイヤレス接続を確立するステップと、
- 刺激設定および/または治療パラメータおよび/またはフィードバック情報および/または刺激パルスの同期に関する情報をやり取りするステップと
をさらに含む、請求項13から16の一項に記載の神経刺激の方法。
【請求項18】
少なくとも、
- 前記ウェアラブルデバイス(130)、モバイルデバイス(150)、および第2のウェアラブルデバイス(130)の間に、直接および/または間接的に双方向ワイヤレス接続を確立するステップと、
- 刺激設定、治療パラメータ、フィードバック情報、および刺激パルスの同期に関する情報をやり取りするステップと
をさらに含む、請求項13から17の一項に記載の神経刺激の方法。
【請求項19】
請求項1から12の一項に記載の神経刺激システム(100)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変調(neuromodulation)システム、特に皮質および/または深部脳刺激および/または変調のための帽状腱膜下インプラントシステムと、神経変調の方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
実際に、皮質および/または深部脳刺激および/または変調は、特にパーキンソン病、てんかん、および慢性疼痛などの神経変性疾患の診断および治療の方法であることが知られている。これに関して、視床下核および/または淡蒼球内節のような脳エリアまたは領域に植え込まれたリードを用いた電気刺激は、例えば、薬剤抵抗性のパーキンソン病を患う患者の振戦症状を緩和することができる。さらに、リードが植え込まれた脳領域またはエリアからの信号を記録することができ、インピーダンス測定を使用して脳組織の状態を判定することができる。
【0003】
これに関連して、神経補綴(neuroprosthetic)デバイスは、神経系と電気的にインターフェースを取ることによって神経疾患、障害、および症状を監視、予防、および治療するための強力な道具である。それらは、神経組織に植え込まれると、神経活動を記録し、神経活動を電気的に刺激することができる。現在、大半の神経補綴技術は、神経組織とのインターフェースが電極に基づいている。
【0004】
刺激のために、電極は、通常、植え込み型パルス発生器(IPG:Implantable Pulse Generator)によって制御される。
【0005】
脳治療インプラント用の従来のIPGの体積と大きさのかなりの部分は、充電バランス阻止コンデンサ(charge-balancing blocking-capacitors)、コネクタ、一次または再充電可能バッテリ、および気密性の、通例は金属製の、容器によって占められている。
【0006】
加えて、植え込まれている従来のIPGは、故障したり、装備された技術が旧式化したりした場合に、工学的選択肢、技術のアップグレード、および外科的交換の大半に多大な制約を課す。
【0007】
このことが、一方における、数十億の人の手で日常的に使用されている、そしてとりわけプロバイダやサブスクリプションを変更するたびに交換される、スマートフォン、タブレット、ラップトップなどのようなハイテク機器と、他方における、ハードウェアの改良なしに十年あるいはそれ以上にわたって植え込まれたままにされる、保守的な技術を用いて設計された、電子的な植え込み型医療機器との間に、着実に広がりつつあるギャップを生じさせる。
【0008】
この1つの例外は蝸牛インプラントである。このインプラントは、通例は22個の電極(対して、深部脳刺激用の通例は4~8個のセグメント、または脊髄刺激用の8~16個のパドル電極)からなるアドレス指定可能なアレイを、リアルタイムの音声処理および蝸牛神経刺激のために使用する。蝸牛システムの1つの利点は、音声の記録および処理ならびに刺激用の電子機器が患者の耳の後ろに担持されることである。しかし、音声処理および恒久的なリアルタイムの蝸牛刺激の高帯域幅は、ウェアラブルな電子耳掛け式(behind-the-ear)容器と、電極を備える植え込まれたリードの植え込まれた二次アンテナとの間の良好なワイヤレス結合を必要とする。これは通常、耳掛け式デバイスからアンテナ(中心に置かれ、頭蓋骨の中に取り付けられた磁石インプラントによって適所に維持される)へのケーブル接続によって実現されるが、これは、負担が大きく、嵩張り、外見的に次第に受け入れられなくなっている解決法である。
【0009】
胸部に植え込まれるIPGおよび首の内部に走るリードケーブルを頭蓋インプラントに置き換えるいくつかの提案がなされているが、そのようなインプラントは、手術を複雑にし、インプラント領域の骨を弱くする複雑な頭蓋骨手術を要し、手術直後と長期間の両方において感染リスクを増大させると共に皮膚侵食を増大させ、一方で、技術の旧式化の問題を解決せず、さらなる頭部手術を意味する交換は、胸部植え込みと比べて煩雑で難しい。
【0010】
米国特許出願公開第2019/0054295(A1)号明細書から、深部脳刺激(DBS)および皮質脳波記録法(ECoG)用のモジュール式システムが、取り付けられた電極アレイを介して脳の所望領域に印加されるように適合された電気刺激信号を生成するための植え込み型神経変調器を有し得ることが知られている。電気信号を収集して集約し、その電気信号を神経変調器に送信するために、アグリゲータモジュールが使用されてよい。さらに、電気信号の生成を制御し、電気信号をアグリゲータに送信するために、アグリゲータモジュールと通信状態にある制御モジュールが使用されてよい。すなわち、いくつかの電極アレイ同士を接続し、信号および刺激ならびに一部の計算を外部デバイスまたはウェアラブルデバイスと共有するアグリゲータが設けられる。しかし、アグリゲータは、植え込み型の部分を含んでいる。これにより、再度、この提案される解決法が皮膚をまたぐことになり、感染経路を作り出し、恒久的なケアを必要とする。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の目的は、上述された種の必要条件を提供する神経変調システムを好都合に、特に、関係する手術の程度および頻度が軽減されるような形で、発展させることである。
【0012】
神経変調システムに関する上記目的は、請求項1の特徴によって達成される。神経変調システムに関する本発明の有利な構成が従属請求項に記載され、また以下にも記載される。
【0013】
本発明によれば、特に皮質および/または深部脳刺激および/または変調のための、神経変調システムが提供され、これは、
- 少なくとも1つのインプラント装置であって、
- 少なくとも1つの第1のアンテナ、および
- 少なくとも1つの電極を備えた少なくとも1つの電極アレイを有する、少なくとも1つのリード
を備える少なくとも1つのインプラント装置と、
- 少なくとも1つの第2のアンテナを備えた、少なくとも1つのウェアラブルデバイスと、を備え、
少なくとも1つのウェアラブルデバイスは、少なくとも1つのインプラント装置をワイヤレスに制御し、少なくとも1つのインプラント装置とワイヤレスに通信するように構成され、少なくとも1つの電極は、還元グラフェン酸化物、好ましくは水熱還元グラフェン酸化物から作られている。
【0014】
本発明の基本的な発想は、標準的な胸部植え込みの脳刺激IPGを、例えば制御電子機器、再充電可能な電源、ならびに電力、データおよび/または制御リンクのためのアンテナまたはトランスデューサを含んでいる、ウェアラブルデバイス、特に耳掛け式デバイス、に置き換えることである。対応する相手として、とりわけ別のアンテナを備えた植え込み装置が、耳の後ろの頭皮下に置かれる。植え込み装置は追加的に、伝送電力を受信する、および/または植え込み装置のアンテナに対するウェアラブルデバイスのアンテナの相対運動によって生じる伝送電力の変動を平滑化するための、少なくとも1つのコンデンサおよび/または(電子)モジュールおよび/または素子を含んでよい。さらに、脳刺激は、患者の不快感や治療の中断を生じさせないように、連続的で滑らかである必要があるが、大半の治療用脳刺激に伴う帯域幅は、特に治療プロトコルが一旦固定されると、あまり高くない。したがって、信号の処理と治療の調節が若干遅れる、またはゆっくりした形で行われることがある。したがって、厳密には全く同じではないが、ディスク表面の塵またはその他のわずかな光学的変動に対する光ディスクシステムの感度を下げる、コンパクトディスクやブルーレイディスクの開口数の作用と同じように、コンデンサまたはモジュールの平滑化作用によって、対応するシステムがアンテナ間のワイヤレス結合の変動を補償できることが、より一層重要となる。さらに、ワイヤレス接続された植え込み装置を介して恒久的な刺激を提供する電力伝送バッファと併せて、内蔵アンテナを有するウェアラブルなまたは耳掛け式のデバイスを使用することにより、刺激パラメータの外部制御される調節が容易に可能となる。
【0015】
神経変調は、いずれも健康な神経機能を回復するため、および/または神経障害や疾患を緩和するために、とりわけ、電気刺激、神経記録または他の身体信号の記録、外部信号および/または挙動信号の記録および/または利用を含んでよいことが理解されるべきである。この分野における発展は非常に動的であり、他の用途も可能であり得ることから、この治療モダリティの列挙は、網羅的なものであることは意図されない。神経変調という用語は、本開示の文脈では、電気信号による刺激に関係するものと理解されるべきであり、さらに、(これに限定されないが)薬剤等による変調を含む。
【0016】
加えて、少なくとも1つの電極のための層状構造または膜である還元グラフェン酸化物は、白金Pt、白金イリジウム(Pt/lr)、酸化イリジウム(IrOx)、または窒化チタン(TiN)で作られた金属製の微細電極に基づく標準的な市販の神経インターフェースと比較して、優れていることが示されている。これらの金属材料は、ファラデー電流と容量電流との組み合わせを通じて生体組織と相互作用し、限られた化学的安定性を提供し、剛体である。さらに、金属の性能は、直径が数十マイクロメートルの微細電極では大きく低下し、また金属は継続的な組織刺激と共に劣化する。代わりに、還元グラフェン酸化物は、電気化学的に活性化させることができ、結果としてキャパシタンスが増大し、インピーダンスが低下する。電気化学的な活性化は電解質溶液中で行われて、荷電したイオンを構造に浸透させる。それにより、構造の外側表面が電気化学的に利用可能になって電気化学的活性化を受けるだけでなく、層間の界面もそのようになる。その結果、使用される電極は、性能を犠牲にすることなく、さらに小型化することができる。
【0017】
それ自体は非導電性である、開始材料としてのグラフェン酸化物の還元は、好ましくは水熱還元(hydrothermally reduced)によって実施され、例えば、グラフェン酸化物の構造または膜が亜臨界水に曝露される。この工程中に、水からの陽子が、薄片の酸素を含有する官能基化と相互作用して、それらを部分的に除去し、面内孔または細孔を開ける。化学還元または単に熱還元と対照的に、この工程は、構造が、導電性でありながら水溶液に対して浸透性になることを可能にする。水熱還元グラフェン酸化物の合成は、有害な化学物質を全く伴わず、そのため生体適合性が維持される。
【0018】
少なくとも1つのインプラント装置は、第1の電力受信器(特にアンテナを備える)と、電力処理システム(例えばコンデンサを備える)とを収容する筐体をさらに備えてよい。
【0019】
一般に、電力伝送と情報伝送は、同じアンテナを介して実現することができる。電力伝送と情報伝送は、誘導性および/または超音波を使用することによって実現することができる。誘導方式が選択される場合、周波数の体制は既存のシステムと同様である。周波数は、およそ30kHzから13MHzの範囲であり得る。通信、特に制御信号の伝送は、電力送信に埋め込まれる。通信と電力伝送は同時に発生し、実現されるか、または時間多重化されることが可能である。超音波方式が使用される場合、これは、超音波トランスデューサを使用してエネルギーと情報を伝送することによって実現することができる。例えば、CMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducers)のようなチップトランスデューサが使用され、いくつかの簡易な方式で内蔵され得る。使用される周波数は、kHz範囲からMHz範囲に及び得る。
【0020】
インプラント装置はまた、長期使用のために設計された再充電可能な電源を備えてよく、これも筐体に収容される。
【0021】
リード(lead)は、その近位端によって筐体に接続されてよく、電極アレイはリードの遠位端に配置されてよい。遠位端と近位端との間のリードの部分は可撓性である。また、1つのリードが別の部位またはエリアの脳組織を刺激することができるように、電極アレイが、リードに沿って離隔して配置された2つ以上の部分を備えることも考えられる。
【0022】
第1のアンテナは好ましくは、互いとの位置合わせが理想的でない場合でもウェアラブルデバイスへのワイヤレス接続が可能となるように、全方向性アンテナであってよい。
【0023】
電極アレイに配置される電極の量、大きさ、およびパターンは、好ましくは、脳組織の標的部位またはエリアに合わせて適合される。
【0024】
インプラント装置の部分または部品、特に組織と直接接触するものは、摩耗しにくく、生体適合性があると共に、分解性でない材料で作られる。それぞれの材料は、チタン、セラミック、ガラス、生体適合性ポリマー、および/またはシリコンゴム(silicon rubber)、あるいはそれらの任意の好適な組み合わせ、の群の1つであり得る。
【0025】
ウェアラブルデバイスは、制御電子機器、電源、および第2のアンテナを備え、これらはすべて筐体に収容され、ウェアラブルデバイスはさらに、患者の耳の後ろのエリアに解剖学的に適合された形状フィット部分を備えている。
【0026】
インプラント装置およびウェアラブルデバイスは、電磁気両立性であってよく、すなわち、どちらも電磁気干渉を防止するように十分に遮蔽されている。さらに、とりわけ、電磁両立性に関する指令2014/30/EUが準拠されるべきである。
【0027】
インプラント装置とウェアラブルデバイスとの間のワイヤレス接続は、継続的に確立されるか、または所定の間隔内に確立することができる。
【0028】
すべての起こり得るワイヤレス接続またはデータ交換経路は、機密性のある患者データのプライバシーを確実にするために暗号化されてよい。
【0029】
可能な一実施形態では、インプラント装置は、パルス発生器をさらに備える。
【0030】
パルス発生器は、電子コンポーネントを備えており、刺激パルスを生成し、刺激パルスは、リードを通って電極アレイに、そしてさらにそれぞれの電極に送られる。刺激パルスの生成は、ウェアラブルデバイスから送られてきた受信制御信号に依存する。
【0031】
さらに、インプラント装置が、信号、特に神経生理学的信号、を獲得するための記録システムおよび/または感知システムをさらに備えることが可能である。この信号を使用して、提供される治療を改善することができる。特に、このようにして、閉または半閉ループシステムが実現され得る。また、データは、分析のために、特に治療の分析との関係で、また時間に伴う治療の監視のために使用され得る。
【0032】
別の可能な実施形態では、ウェアラブルデバイスは再充電可能である。
【0033】
ウェアラブル装置の完全性を保つために、ウェアラブル装置内部の電源は、再充電可能であり、充電方法は、ウェアラブル装置に設けられた充電ポートを用いて有線であっても、または例えば誘導充電を介してワイヤレスであってもよい。詳細には、スマートフォンやウェアラブル機器のワイヤレス充電と同様のワイヤレス充電が使用され得る。
【0034】
さらなる可能な実施形態では、ウェアラブルデバイスは、少なくとも1つのインプラント装置をワイヤレスに充電するように構成される。
【0035】
インプラント装置の再充電可能電源が、その充電容量に達するまたは達しそうになると、ウェアラブルデバイスは、電力ビーム、すなわち誘導結合、を介してワイヤレスにインプラント装置を再充電する。
【0036】
電源(例えばバッテリ)の容量は、好ましくは再充電の自動ルーチンが実装可能となるように構成され得る。そのようなルーチンは、例えば、再充電モジュールを患者の枕の中に置いておくことにより、毎晩再充電することであり得る。また、週ごとのまたは固定された再充電日を用いるカレンダーに基づくルーチンが、患者およびシステムのユーザにとって有用である。
【0037】
また、インプラント装置の電源を劣化させるメモリ効果を避けるべきであるため、再充電可能電源の種類に応じて、再充電可能電源が所定の間隔で充電されるようにされてもよい。
【0038】
誘導充電プロセスは、関係する構成要素の著しい加熱が起こらないように規模が設定される。
【0039】
さらなる可能な実施形態では、ウェアラブルデバイスは、人間の耳に形状フィットする。
【0040】
ウェアラブルデバイスが、個人設定されたおよび/またはカスタマイズされた、人間の耳への形状フィットを有することが可能である。
【0041】
ウェアラブルデバイスは、患者の耳甲介の後ろのエリアに形状フィットする、すなわち、対応する解剖学的構造に合わせて適合された、部分を備える。よって、ウェアラブルデバイスは、その外見とフィットが耳掛け式の補聴器に似ている。
【0042】
ウェアラブルデバイスを患者の必要性に合わせて適合し、個人化を提供するために、患者用の個人設定されたスリーブが提供され得る。これは例えば、個人設定された、3Dプリンティングされたエラストマーを用いて行うことができ、例えばシリコンスリーブが提供され得る。
【0043】
さらなる可能な実施形態では、ウェアラブルデバイスは、デバイスソフトウェアを備えている。
【0044】
デバイスソフトウェアは、ウェアラブルデバイスの機能が更新可能および/またはアップグレード可能であることを確実にする。
【0045】
デバイスソフトウェアは、データポートを用いて有線で、またはワイヤレスデータ接続のいずれかによって、更新および/またはアップグレードすることができる。データポートは、上述したように充電ポートの役目も果たす兼用ポートであってよい。
【0046】
さらなる可能な実施形態では、ウェアラブルデバイスは、モバイルデバイス、好ましくは、スマートフォン、別の個人電子デバイス(ラップトップやタブレットコンピュータなど)、および/またはデータベースステーションと、ワイヤレスにデータをやり取りするように構成される。
【0047】
これに関して、用語「データ」は、本発明による神経変調システムに関連する任意の値に使用される。よって、データは、インプラント装置の測定値、インプラント装置の設定パラメータ等であり得る。
【0048】
その結果、モバイルデバイスは、受信された測定値に基づいて、調節された設定パラメータをインプラント装置に送信することができる。
【0049】
設定パラメータは、まずウェアラブルデバイスに送信され、ウェアラブルデバイスは、次いでそれらをインプラント装置にワイヤレスに送信またはアップロードする。
【0050】
代替的または追加的に、ウェアラブルデバイスは、データベースステーションへのワイヤレス接続を確立することもできる。データベースステーションは、受信したデータを処理し、データを提供することが可能な、データクラウドまたはサーバステーションであり得る。データベースステーションは好ましくは、担当医師が患者のデータを遠隔から監視および調節することができるように、医療施設に位置する。
【0051】
さらなる可能な実施形態では、モバイルデバイスは、デバイスから受信したデータを処理するように、および/またはデータベースステーションとのネットワークデータリンクを確立するように構成されたソフトウェアアプリケーションを備えている。
【0052】
ソフトウェアアプリケーションは、受信したデータを評価・分析する。加えて、ソフトウェアアプリケーションは、結果を患者に対して図像的に作成するように構成されてよい。さらに、ソフトウェアアプリケーションは、最適化された治療パラメータを決定し、それを、十分に説明を受けた患者に提示してよく、患者はその後、パラメータの調節を受け入れるかまたは却下するように選択することができる。ソフトウェアアプリケーションによる受信データの分析は、人工知能に基づいてよい。
【0053】
追加的または代替的に、データ分析は、好ましくは人工知能を具備する、データベースステーションによって行われてよい。
【0054】
さらなる可能な実施形態では、インプラント装置は、ワイヤレスに再充電可能である。
【0055】
ウェアラブルデバイスは、インプラント装置をワイヤレスに充電できるように構成されることを意図されるので、したがって、インプラント装置自体が充電可能でなければならない。このようにして、インプラントに電源が提供される。
【0056】
電源を備えずに具現化されるインプラントがあり得ることが可能である。
【0057】
電源は主として、ウェアラブルデバイスを交換するまたは取り外す(睡眠やシャワー)ことと、依然として治療を提供することが可能であることとの間のギャップを埋めるためのものである。これが特定の治療に必要とされない場合、インプラントは、バッテリのない、より小さいデバイスとして具現化され得る。
【0058】
一般に、電源は、ウェアラブルデバイスが取り付けられた状態での通常の動作では、デバイスに電力供給し(バッテリを備えない蝸牛デバイスのように)、外部のデータおよびセンサならびにデータの処理とのループを閉じるべきである。
【0059】
インプラント装置が、一方が動作不良になった場合に備えて2つの別々の再充電可能電源を備えることがさらに考えられる。よって、正常な方の電源が機能を維持することができ、患者は、インプラント装置のメンテナンスの理由で手術を受ける必要はない。
【0060】
さらなる可能な実施形態では、インプラント装置は、インプラント部位に解剖学的にフィットされ、頭蓋に植え込まれるように構成される。
【0061】
インプラント装置の筐体は、インプラント部位の頭皮組織が可能な限り影響されないように、好ましくは平坦である。加えて、筐体は、頭蓋骨への適合が実現され得るように可撓性材料からなってよい。
【0062】
本発明によるインプラント装置は、胸部領域へのパルス発生器の配置とその接続が必要なくなるため、完全に頭蓋に植え込み可能である。
【0063】
本発明の目的はさらに、神経変調の方法によって解決され、この方法は、
- パルス発生器を備えたインプラント装置とウェアラブルデバイスとの間に第1の双方向ワイヤレス接続を確立するステップと、
- ウェアラブルデバイスから第1の双方向ワイヤレス接続を介してインプラント装置にパルス指令を送信して、標的の刺激を生じさせるステップと、を含む。
【0064】
これには、制御電子コンポーネントをウェアラブルデバイスに外部化することができ、それにより、インプラントの大きさを縮小し、治療パラメータの柔軟な調節(制御)を可能にするという利点がある。
【0065】
インプラント装置とウェアラブルデバイスとの間の確立される第1の双方向ワイヤレス接続は、植え込み後のインプラント装置の制御可能性を確実にし、確実なデータ交換を保証する。
【0066】
別の可能な実施形態では、神経変調の方法は、インプラント装置によって記録された信号を、インプラント装置から第1の双方向ワイヤレス接続を介してウェアラブルデバイスに送信するステップをさらに含む。
【0067】
電極アレイの電極は、一方においては、刺激インパルスを脳組織中に伝え、他方では、好ましくは個々の神経細胞の分解能で、脳信号を記録する、という2つの仕事を遂行する。記録された信号は、電極からインプラント装置のアンテナに伝送され、そこからウェアラブルデバイスに伝送される。ウェアラブルデバイスは、次いで、記録された信号をデータセットとしてモバイルデバイスに転送し、モバイルデバイスは、データを処理し、好ましくは、治療パラメータの調節が必要であるかどうかを判定するように構成されている。
【0068】
さらなる可能な実施形態では、神経変調の方法は、第1の双方向ワイヤレス接続を介して、ウェアラブルデバイスによってインプラント装置をワイヤレスに充電するステップをさらに含む。
【0069】
これには、インプラント装置の電源が消耗した時に直ちにインプラント装置が外科的に交換される必要がないという利点がある。現代の再充電可能電源はメモリ効果の点でも改良されており、そのため、インプラント装置の増大した使用期間に、せいぜい初回の外科的挿入しか必要とされない。
【0070】
さらに、方法は、
- 少なくとも2つのインプラント装置を提供するステップと、
- パルス発生器を備えたインプラント装置同士の間に双方向ワイヤレス接続を確立するステップと、
- 刺激設定および/または治療パラメータおよび/またはフィードバック情報および/または刺激パルスの同期に関する情報をやり取りするステップと、のさらなるステップを含んでよい。
【0071】
上記で説明したように、(人間の)患者の2つの側のための2つのインプラント装置があってよい。2つのインプラント装置が互いと通信し、データ、信号、パラメータ、フィードバック等の少なくとも1つをやり取りすることが可能であると望ましく、神経変調システムの全体的機能を向上させる。
【0072】
加えて、方法は、
- 少なくとも2つのウェアラブルデバイスを提供するステップと、
- ウェアラブルデバイス同士の間に双方向ワイヤレス接続を確立するステップと、
- 刺激設定および/または治療パラメータおよび/またはフィードバック情報および/または刺激パルスの同期に関する情報をやり取りするステップと、のさらなるステップを含んでよい。
【0073】
このようにして、ウェアラブルデバイス同士も、データ、信号、パラメータ、フィードバック等の少なくとも1つをやり取りすることができる。
【0074】
さらに、方法が、少なくとも、
- ウェアラブルデバイス、モバイルデバイス、および第2のウェアラブルデバイスの間に、直接および/または間接的に双方向ワイヤレス接続を確立するステップと、
- 刺激設定、治療パラメータ、フィードバック情報、および刺激パルスの同期に関する情報をやり取りするステップと、を含むことが可能である。
【0075】
本発明はさらに、上記に定められた神経変調システムの使用に関する。
【0076】
本発明のさらなる詳細および利点は、以下に図面との関係で開示される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】従来技術の神経刺激システムの図である。
図2】本発明による神経変調システムの一実施形態の図である。
図3】取り付けられ、患者によって装着された、図2の神経変調システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
神経インプラントは、特定の神経障害およびその他の神経欠陥(例えば、難聴、パーキンソン病、切断等)を患う患者に治療の選択肢を提供する。そのような技術は、現在、ミリメートル規模の金属電極を使用して神経系を電気的に記録するかまたは刺激するかのいずれかを行う、植え込み型デバイスから構成されている。治療法としての神経インプラントのより広い受容を実現するために、この治療方式がとりわけ外科的移植からのリスクよりも勝るように、その有効性を大幅に向上させる必要性がある。
【0079】
図1は、患者に植え込まれた神経変調システム10の従来技術の実施形態を示す。
【0080】
図1に示される神経変調システム10の実施形態は、2本のリード12と、パルス発生器16と、リード12をそれぞれ個別にパルス発生器16に接続する、1つのリード12につき1本の接続ケーブル14とを備えている。
【0081】
図1から推測できるように、従来技術の神経変調システム10は、パルス発生器16が患者の胸部領域に植え込まれることを必要とする。その結果、神経刺激システム10の最初の植え込みの後に、パルス発生器16のバッテリまたは電源がその寿命の終わりに達しそうになると直ちに、事後手術が必要になる。
【0082】
さらに、接続ケーブル14は、外科的挿入の際にインパルス発生器16からリード12まで外科的に通されなければならない。これに関して、接続ケーブル14、特にパルス発生器16とリード12との間の接続が、植え込み後に患者の身体の動きに影響されないように注意が払われなければならない。
【0083】
さらには、一般に、パルス発生器16の設定またはパラメータは、植え込みの前に一回設定され、植え込み後にそれらの設定を調節することは可能でない。これは、原則として、第1世代のパルス発生器に当てはまる。現代の植え込み型パルス発生器は、パルス発生器16と端末ステーションとの間のワイヤレス接続を介して調節可能である。この端末は医療施設でのみ利用可能であることが多く、そのため、患者は設定の調節のために各施設を訪れることを余儀なくされる。
【0084】
図2は、本発明による神経変調システム100の一実施形態を示し、インプラント装置110、ウェアラブルデバイス130、モバイルデバイス150、好ましくはスマートフォン、を備えている。
【0085】
神経変調システム100は、データベースステーション(図示せず)をさらに備えてよい。
【0086】
インプラント装置110は、第1のアンテナ112、リード114、およびパルス発生器(図示せず)を備えている。
【0087】
第1のアンテナ112は、全方向性アンテナであってよい。
【0088】
リード114は、少なくとも1つの電極を有する電極アレイを備える。リード114は、近位端116および遠位端118を有し、電極アレイはリード114の遠位端118に配置されている。
【0089】
電極アレイの電極は、好ましくはグラフェン、より好ましくは水熱還元グラフェン酸化物から作られる。
【0090】
ウェアラブルデバイス130は、患者の耳の解剖学的構造に適合されたまたはそれに形状フィットする部分132と、筐体134とを備えている。
【0091】
部分132は、好ましくは、十分に可撓性で適合可能性のある材料から作られる。
【0092】
詳細には、部分132の芯は、固定された形状を有してよい。
【0093】
この形状は、身体上のインプラントの位置と解剖学的に一致する。デバイスの着用感を最適化するため、および/またはその位置をより好適に固定する(例えば、アンテナに対する動きや位置、および/または日常生活の活動中に外れるのを防止する)ために、例えばシリコンゴムまたは別の軟材料からなるスリーブを追加することが可能である。
【0094】
筐体134は、とりわけ、再充電可能な電源、制御電子装置、および第2のアンテナを収容する。
【0095】
制御電子装置は、ワイヤレス接続またはウェアラブルデバイス130に設けられたポートのいずれかを通じて更新可能なデバイスソフトウェアを備えている。
【0096】
インプラント装置110とウェアラブルデバイス130とは、第1の双方向ワイヤレス接続120を介してワイヤレス接続される。この第1のワイヤレス双方向接続120により、制御信号または指令および測定値または記録されたデータをやり取りすることができ、また、電力ビーム、すなわちインプラント装置110を充電するための誘導結合、を伝導することができる。
【0097】
さらに、誘導結合に代えて(またはそれに加えて)、超音波を使用して電力ならびに/または制御信号および/もしくは通信信号を伝送および/または受信することもできる。
【0098】
ウェアラブルデバイスが患者の頭部の両側に(すなわち左側と右側に)ある場合、デバイスは互いと通信可能でなければならない。詳細には、両方のウェアラブルデバイスに対応する1つのIPGがあり、それにより、両方のリードが1つのIPGおよび2つのウェアラブルデバイスを介して制御されるように実現され得る。接続は、例えば、BluetoothまたはNFMI(近距離磁気誘導通信)を使用することによって、または、ハブ兼結合要素であり得る携帯電話を介して間接的に、確立され得る。
【0099】
詳細には、2つのインプラント装置110があり得る。インプラント装置110間の双方向ワイヤレス接続が確立され得る。システムのこのセットアップは、次いで、刺激設定および/または治療パラメータおよび/またはフィードバック情報および/または刺激パルスの同期に関する情報をやり取りすることができる。
【0100】
また、2つのウェアラブルデバイス130が提供され得る。それらウェアラブルデバイス130間の双方向ワイヤレス接続が確立され、提供され得る。システムのこのセットアップは、刺激設定および/または治療パラメータおよび/またはフィードバック情報および/または刺激パルスの同期に関する情報をやり取りすることができる。
【0101】
システムはさらに、ウェアラブルデバイス130、モバイルデバイス150、および第2のウェアラブルデバイス130の間に、直接および/または間接的にのいずれかで双方向ワイヤレス接続を確立することが可能であり得、刺激設定、治療パラメータ、フィードバック情報、および刺激パルスの同期に関する情報をやり取りするように構成される。
【0102】
このようにして、半閉ループシステムまたはさらには閉ループシステムが確立され得る。
【0103】
セットアップまたはデータ処理の理由から、ウェアラブルデバイスはさらに、第2のワイヤレス双方向接続140を介してモバイルデバイス150にワイヤレス接続され得る。
【0104】
この第2の双方向ワイヤレス接続は、3G/4G/5G(またはそれ以降の世代)ワイヤレス、WIFIネットワーク接続、近距離接続、およびブルートゥース接続の群のうちの1つであってよい。
【0105】
モバイルデバイス150は、ウェアラブルデバイス130から受信されたデータを処理する、および/またはそのデータを表示するためのソフトウェアアプリケーションを備えている。
【0106】
さらに、このソフトウェアアプリケーションを用いて神経変調治療の設定またはパラメータを調節することが可能である。新しい設定は、モバイルデバイス150から、第2のワイヤレス双方向接続140を介してウェアラブルデバイス130に転送される。
【0107】
代替的または追加的に、モバイルデバイス150は、患者の測定データをやり取りするため、または治療の最適化された設定を受け取るために、データベースステーションへのリンクを確立することができる。データを、医療施設に位置することが好ましいデータベースステーションに転送することにより、担当する医師が治療を監視することができ、患者は臨席する必要がない。
【0108】
ウェアラブルデバイス150は追加的に、冗長性のために、データベースへの個別のワイヤレス接続を確立するように構成されてよい。
【0109】
図3に、図1のインプラント装置110が、患者の頭部に植え込まれた状態で提示されている。インプラント装置110の第1のアンテナ112は、片方の耳の後ろの頭皮下に位置し、一方、リード114の遠位端118は、電極アレイを脳組織と接触させることができるように、患者の頭蓋を貫通して達している。
【0110】
ウェアラブルデバイス130は、対応する患者の耳の後ろに配置され、ウェアラブルデバイス130の筐体134に収容された第2のアンテナと、インプラント装置110の第1のアンテナ112とは、互いと位置合わせされる。
【0111】
2つの電極アレイが脳組織の異なる標的部位を刺激するおよび/またはその部位で記録を行うように、患者がインプラント装置110とウェアラブルデバイス130の組み合わせをそれぞれの耳に装着することが可能である。
【0112】
また、1つのウェアラブルデバイス130が2つの植え込まれたインプラント装置110を制御することも可能である。これに関して、ウェアラブルデバイスは、例えば追加的なアンテナを備えてよく、またはインプラント装置110のアンテナ112が異なる周波数で制御されるかのいずれかである。
【符号の説明】
【0113】
10 従来技術の神経刺激システム
12 リード
14 接続ケーブル
16 パルス発生器
100 神経変調システム
110 インプラント装置
112 第1のアンテナ
114 リード
116 リードの近位端
118 リードの遠位端
120 第1の双方向ワイヤレス接続
130 ウェアラブルデバイス
132 形状フィット部分
134 筐体
140 第2の双方向ワイヤレス接続
150 モバイルデバイス
図1
図2
図3
【国際調査報告】