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特表2024-521943筋修復及び再生における2’-O-ラムノシルイカリシドIIの使用
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  • 特表-筋修復及び再生における2’-O-ラムノシルイカリシドIIの使用 図1
  • 特表-筋修復及び再生における2’-O-ラムノシルイカリシドIIの使用 図2
  • 特表-筋修復及び再生における2’-O-ラムノシルイカリシドIIの使用 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】筋修復及び再生における2’-O-ラムノシルイカリシドIIの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7048 20060101AFI20240528BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240528BHJP
   C12N 5/077 20100101ALN20240528BHJP
   C12N 1/38 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
A61K31/7048 ZNA
A61P21/00
A61P17/02
A61P21/04
A61P43/00 111
C12N5/077
C12N1/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575335
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2021105138
(87)【国際公開番号】W WO2023279315
(87)【国際公開日】2023-01-12
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】519002014
【氏名又は名称】中国科学院深▲チェン▼先進技術研究院
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN INSTITUTES OF ADVANCED TECHNOLOGY CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】1068, Xueyuan Avenue, Shenzhen University Town, Nanshan District, Shenzhen, Guangdong 518055, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】王新▲ルゥァン▼
(72)【発明者】
【氏名】秦嶺
(72)【発明者】
【氏名】曹会娟
(72)【発明者】
【氏名】李玲
(72)【発明者】
【氏名】楊文耀
(72)【発明者】
【氏名】黄翠珊
(72)【発明者】
【氏名】施科達
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BD43
4B065CA44
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、筋修復及び再生における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの使用に関する。具体的には、筋肉疾患の治療又は予防、筋修復の促進又は筋再生の促進のための薬物又は試薬の製造における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの使用を開示する。上記筋損傷は、外傷性筋損傷又は非外傷性筋損傷である。上記非外傷性筋損傷は、筋原性筋萎縮、廃用性筋萎縮、筋ジストロフィー、サルコペニア、筋病変、筋無力から選択される。本発明は、筋細胞の増殖又は分化を促進し、筋管の数を増加させ、筋管の形成を促進し、筋管の長さを増加させ、筋管の幅を増加させ、筋芽細胞の分化を促進し、又は筋細胞の融合を促進するなどの面における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの作用を初めて実証する。2'-O-ラムノシルイカリシドIIの使用方向を広げながら、筋肉関連疾患に治療経路を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋細胞数が減少し、筋細胞が小さくなり、又は筋細胞が老化することによる筋肉疾患の治療もしくは予防のための、又は筋修復の促進、筋再生の促進のための薬物の製造における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの使用。
【請求項2】
前記筋損傷は、外傷性筋損傷又は非外傷性筋損傷を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記非外傷性筋損傷は、筋原性筋萎縮、廃用性筋萎縮、筋ジストロフィー、サルコペニア、筋病変、筋無力のいずれか1つ又は複数を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
筋細胞の増殖又は分化を促進し、筋管の数を増加させ、筋管の形成を促進し、筋管の長さを増加させ、筋管の幅を増加させ、筋芽細胞の分化を促進し、又は筋細胞の融合を促進するための薬物又は試薬の製造における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの使用。
【請求項5】
筋分化中のMyog又はMymk遺伝子の発現を向上させ、筋管特異的タンパク質Myosin 4遺伝子の発現、又はタンパク質の翻訳を促進する薬物又は試薬の製造における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの使用。
【請求項6】
2'-O-ラムノシルイカリシドIIを含む、筋疾患を治療又は予防し、筋修復又は筋再生を促進する薬物組成物。
【請求項7】
2'-O-ラムノシルイカリシドIIを含む、筋分化中のMyog又はMymk遺伝子の発現を向上させ、筋管特異的タンパク質Myosin 4遺伝子の発現、又はタンパク質の翻訳を促進する試薬。
【請求項8】
被験者に2'-O-ラムノシルイカリシドIIを投与するステップを含む
筋肉疾患を治療又は予防し、筋修復又は筋再生を促進する方法。
【請求項9】
被験者又は筋細胞に2'-O-ラムノシルイカリシドIIを投与するステップを含む
筋細胞の増殖又は分化を促進し、筋管の数を増加させ、筋管の形成を促進し、筋管の長さを増加させ、筋管の幅を増加させ、筋芽細胞の分化を促進し、又は筋細胞の融合を促進する方法。
【請求項10】
被験者又は筋細胞に2'-O-ラムノシルイカリシドIIを投与するステップを含む
筋分化中のMyog又はMymk遺伝子の発現を向上させ、筋管特異的タンパク質Myosin 4遺伝子の発現、又はタンパク質の翻訳を促進する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に属し、具体的には、筋修復及び再生における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
転倒、捻挫などの骨格筋の外傷性損傷は、スポーツ医学においてよく見られる損傷であり、発生率が10~55%である。骨格筋は、それ自体が修復能力を有し、身体が損傷を受けると、修復及び再生期に急速に進むことになる。しかし、繰り返しの過度使用、深刻な外傷などを経た後、このような再生能力は著しく低下する。修復速度が遅くなるため、損傷部位に瘢痕組織を形成しやすく、筋肉の収縮性の低下をもたらし、同時に二次損害の確率を増加させ、今後の生活及び運動に深刻な不良結果を与える。
【0003】
骨格筋の発達及び再生は、衛星細胞の増殖分化を必要とし、衛星細胞が筋損傷のシグナルを受けた後、自身から筋芽細胞への分化を活性化し、大量の筋管を形成し、筋管同士が互いに融合することにより、修復及び再生の目的を達成する。このような修復は、単に衛星細胞に依存するだけでなく、各細胞間の関連性及び筋肉形成中の特定の遺伝子の活性化をも必要とし、例えば、筋原性調節因子ファミリー(MRFs)は、重要な役割を果たし、主に筋芽細胞の分化、融合及び筋管形成などを調節する。
【0004】
骨格筋萎縮のような骨格筋の非外傷性損傷は、主な症状として、筋線維が細くなり、更には消失し、筋体積の減少、筋機能不全などの筋肉関連問題をもたらす。筋萎縮は、神経原性、筋原性、廃用性の筋萎縮という3つのタイプを含み、筋無力を引き起こしやすく、転倒を引き起こし、患者を長期間にわたって寝かせ、最終的には患者の独立性及び生活の質に影響を与える。筋萎縮後の回復及び再建期間は、主に運動に大きく依存するが、患者が高齢者であるか又は大手術を行ったばかりであれば、効果的な運動を行うことができない。現在、筋萎縮中の筋細胞修復及び再生に対する有効な治療薬は少ない。
【0005】
2'-O-ラムノシルイカリシドII(2''-O-rahmnosyl icariside II)は、漢方薬インヨウカクの茎葉を乾燥した後の抽出物における活性成分である。インヨウカクは、メギ科イカリソウ属(Epimedium)の植物である。《神農本草経》に初めて記載され、腎を温めて陽気を補充し、筋骨を強め、風湿を取り除くという効果を有し、現在、《中国薬典》は、インヨウカク(E.Brevicornum)、ホザキイカリソウ(E.Sagittatum)、ジュウモウインヨウカク(E.Pubescens)、ホザキイカリソウ(E.Wushanense)及びキバナイカリソウ(E.Koreanum)を含む5種類のインヨウカク植物を収録している。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、従来技術に基づき、筋形成分化及び筋管形成を促進すると共に、骨格筋の外傷性及び非外傷性損傷に抵抗した後の修復及び再生に役立つ2'-O-ラムノシルイカリシドIIの薬物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の一態様は、筋細胞数が減少し、筋細胞が小さくなり、又は筋細胞が老化することによる筋肉疾患の治療もしくは予防のための、又は筋修復の促進、筋再生の促進のための薬物の製造における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの使用を提供する。
更に、上記筋肉疾患は骨格筋関連疾患である。
更に、上記筋損傷は、外傷性筋損傷又は非外傷性筋損傷である。
更に、上記非外傷性筋損傷は、筋原性筋萎縮、廃用性筋萎縮、筋ジストロフィー、サルコペニア、筋病変、筋無力から選択される。
【0008】
本発明の別の態様は、筋細胞の増殖又は分化を促進し、筋管の数を増加させ、筋管の形成を促進し、筋管の長さを増加させ、筋管の幅を増加させ、筋芽細胞の分化を促進し、又は筋細胞の融合を促進するための薬物又は試薬の製造における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの使用を提供する。
【0009】
本発明の更に別の態様は、筋分化中のMyog又はMymk遺伝子の発現を向上させ、筋管特異的タンパク質Myosin 4遺伝子の発現、又はタンパク質の翻訳を促進する薬物又は試薬の製造における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの使用を提供する。
【0010】
本発明の更に他の態様は、2'-O-ラムノシルイカリシドIIを含む、筋疾患を治療又は予防し、筋修復又は筋再生を促進する薬物組成物を提供する。
更に、上記2'-O-ラムノシルイカリシドIIは、薬物組成物中の唯一の活性成分とする。
【0011】
本発明の更に別の態様は、2'-O-ラムノシルイカリシドIIを含む、筋分化中のMyog又はMymk遺伝子の発現を向上させ、筋管特異的タンパク質Myosin 4遺伝子の発現、又はタンパク質の翻訳を促進する試薬を提供する。
本発明の更に別の態様は、被験者に2'-O-ラムノシルイカリシドIIを投与するステップを含む、筋肉疾患を治療又は予防し、筋修復又は筋再生を促進する方法を提供する。
本発明の更に別の態様は、被験者又は筋細胞に2'-O-ラムノシルイカリシドIIを投与するステップを含む、筋細胞の増殖又は分化を促進し、筋管の数を増加させ、筋管の形成を促進し、筋管の長さを増加させ、筋管の幅を増加させ、筋芽細胞の分化を促進し、又は筋細胞の融合を促進する方法を提供する。
本発明の更に別の態様は、被験者又は筋細胞に2'-O-ラムノシルイカリシドIIを投与するステップを含む、筋分化中のMyog又はMymk遺伝子の発現を向上させ、筋管特異的タンパク質Myosin 4遺伝子の発現、又はタンパク質の翻訳を促進する方法を提供する。
更に、上記の方法は、診断又は治療目的ではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、筋細胞の増殖又は分化を促進し、筋管の数を増加させ、筋管の形成を促進し、筋管の長さを増加させ、筋管の幅を増加させ、筋芽細胞の分化を促進し、又は筋細胞の融合を促進するなどの面における2'-O-ラムノシルイカリシドIIの作用を初めて実証する。従って、2'-O-ラムノシルイカリシドIIは、筋肉疾患の治療又は予防、筋修復の促進又は筋再生の促進に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】イカリチン母核を有する化合物の構造分析である。
図2】6種類の化合物によるC2C12細胞から筋管への形成を誘導するMyosin 4-488蛍光染色写真である。
図3】異なる濃度の2'-O-ラムノシルイカリシドIIによるC2C12細胞から筋管への形成のMyosin 4-488蛍光染色写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の上記の目的、特徴及び利点をより容易に明らかにするために、以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明の実施可能な範囲を制限するものと理解されるべきではない。
【0015】
本発明の技術案において、2'-O-ラムノシルイカリシドIIは、植物から単離されてもよく、化学合成によって得られてもよく、その抽出及び合成に用いられる基本原料及び技術に関する論文が存在する。2'-O-ラムノシルイカリシドIIは、インヨウカクの成分の1つであり、英語名が2"-O-rahmnosyl icariside II(2-(Hydroxymethyl)-4-[(1R)-1-hydroxy-2-{[6-(4-phenylbutoxy)hexyl]a mino}ethyl]phenol)であり、化学式がC33H40O14であり、分子式は以下の通りである。
本発明において、「予防」という用語は、本発明に記載の薬物組成物又は健康機能食品組成物を投与することにより、筋肉疾患又はその症状のうちの少なくとも1つの発生を抑制又は遅延させる任意の行為を意味する。なお、再発を予防又は抑制するために、病態が寛解した被験者を治療することを含む。
本発明において、「治療」という用語は、本発明に記載の薬物組成物を投与することにより、筋肉疾患又はその少なくとも1つの症状を寛解、軽減、又は除去するなど、症状を改善又は有益に変化させる任意の行為を指す。
本発明において、「薬物組成物」という用語は、特定の目的のために投与される組成物を意味する。本発明において、筋肉疾患又はその症状のうちの少なくとも1つを予防又は治療するために投与されることを意味する。
【0016】
本発明の下記実施例で用いられるイカリサイドII(Icariside II)、イカリチン(Icaritin)、エピメジンA(Epimedin A)、エピメジンB(Epimedin B)、エピメジンC(Epimedin C)は、いずれも成都瑞芬思想生物科技有限公司から購入したものである。製品番号は、順に113558-15-9、118525-40-9、110623-72-8、110623-73-9、110642-44-9であり、純度がいずれも98%以上である。化合物結晶をバイオグレードのジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解し、10 mMの保存液とし、4℃の冷蔵庫で保存し、使用に備える。2'-O-ラムノシルイカリシドIIは、白色結晶粉末であり、分子量が660.66であり、製品番号が135293-13-9であり、ロット番号がwkq19051304であり、純度が98%以上である。本発明で用いられる2'-O-ラムノシルイカリシドIIを生物学的乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解し、10 mMの保存液とし、4℃の冷蔵庫で保存し、使用に備える。
【実施例
【0017】
実施例1 イカリチン母核を有する化合物の安全濃度の測定及び筋管形成促進性能の評価
インヨウカクには複数の有効成分が含まれ、本発明は、イカリチン母核から6種類の具体化合物を選択して評価した。各化合物の構造及び関係を図1に示した。本実施例において、筋芽細胞C2C12細胞は、中国科学院上海生命科学研究院細胞資源センターから入手され、細胞は、5%ウシ胎児血清及び1%二重抗体a-MEMを含む培地で培養された。細胞を96ウェルプレートに2,000細胞/ウェルで接種し、プレートに接種してから24時間後に投与処理を開始した。実験は、正常群(Normal)、2'-O-ラムノシルイカリシドII群(2"-O-rahmnosyl icariside II)、イカリサイドII群(Icariside II)、イカリチン群(Icaritin)、エピメジンA群(Epimedin A)、エピメジンB群(Epimedin B)、エピメジンC群(Epimedin C)に分けられ、各群の薬物濃度は、それぞれ0.01 μM、0.1 μM、1 μM、10 μMの用量であり、薬物をそれぞれ48時間及び72時間作用させた後、10%のCCK-8試薬で3時間インキュベートし、490 nmの波長でOD値を測定し、結果を以下の表に示した。実験データを平均値(Mean)±標準偏差(SD)で表し、SPSS 25.0を用いてデータ処理を行い、ANOVA検定を用いて統計学的分析を行い、薬物群とそれに対応する正常群のP値を統計分析し、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001である。
【0018】
上記安全濃度の測定後に、投与量を選択した。
筋芽細胞C2C12細胞は、中国科学院上海生命科学研究院細胞資源センターから入手され、細胞は、10%ウシ胎児血清及び1%二重抗体a-MEMを含む培地で培養された。細胞を48ウェルプレートに10,000細胞/ウェルで接種し、2日間培養した後、細胞密度が約80%となった時、実験を開始した。実験は、正常群(Normal)、筋形成分化対照群(Control)、筋形成分化+イカリサイドIIの低、高用量群(Icariside II:0.1 μM、1 μM)、筋形成分化+エピメジンAの低、高用量群(Epimedin A:1 μM、10 μM)、筋形成分化+エピメジンBの低、高用量群(Epimedin B:1 μM、10 μM)、筋形成分化+イカリチンの低、高用量群(Icaritin:1 μM、10 μM)、筋形成分化+イカリインの低、高用量群(Icariin:0.1 μM、1 μM)、筋形成分化+2'-O-ラムノシルイカリシドIIの低、高用量群(2"-O-rahmnosyl icariside II:1 μM、10 μM)に分けられ、実験中、正常群では、細胞を5%ウシ胎児血清及び1%二重抗体α-MEMを含む培地で培養し続け、対照群では、2%ウマ血清及び1%二重抗体α-MEMを含む培地でC2C12細胞の筋芽細胞への分化を誘導し、薬物群では、対応する用量の2'-O-ラムノシルイカリシドIIを筋形成分化培地に加え、薬物最終濃度は、それぞれ0.1 μM、1 μM、10 μMである。実験を4日間観察し続け、2日ごとに対応する培養液を1回交換した。実験終了時、細胞を4%パラホルムアルデヒド(中性)で30分間固定し、その後、0.1% Triton-100で10分間室温処理し、リン酸塩緩衝液で3回洗浄した後、特異的ミオシン抗体Myosin 4-488染液(濃度1%)を加え、4℃で一晩放置し、翌日、染液を捨て、リン酸塩緩衝液で3回洗浄し、励起光が488 nmの箇所で蛍光撮影し、結果を図2に示した。
【0019】
結果から分かるように、6つの化合物のうち、いずれも類似した母核を有し、大部分の化合物は糖基を有するが、筋分化を促進する能力に大きな差が見られた。2'-O-ラムノシルイカリシドIIのみが、筋管形成を促進し、筋管の数、幅及び長さを増加させるより良好な能力を有する一方で、他の化合物は、筋管形成を抑制するより高い又は軽微な作用を有する。
【0020】
実施例2 C2C12細胞から筋管への形成の調節に対する2'-O-ラムノシルイカリシドIIの影響
筋芽細胞C2C12細胞は、中国科学院上海生命科学研究院細胞資源センターから入手され、細胞は、10%ウシ胎児血清及び1%二重抗体a-MEMを含む培地で培養された。細胞を48ウェルプレートに10,000細胞/ウェルで接種し、2日間培養した後、細胞密度が約80%となった時、実験を開始した。実験は、正常群(Normal)、筋形成分化対照群(Control)、筋形成分化+2'-O-ラムノシルイカリシドIIの低用量、中用量、高用量群(2"-O-ラムノシルイカリシドII:0.1 μM、1 μM、10 μM)に分けられ、実験中、正常群では、細胞を5%ウシ胎児血清及び1%二重抗体α-MEM培地を含む培地で培養し続け、対照群では、2%ウマ血清及び1%二重抗体α-MEMを含む培地でC2C12細胞から筋芽細胞への分化を誘導し、薬物群では、対応する用量の2'-O-ラムノシルイカリシドIIを筋形成分化培地に加え、薬物最終濃度は、それぞれ0.1 μM、1 μM、10 μMである。実験を4日間観察し続け、2日ごとに対応する培養液を1回交換した。実験終了時、細胞を4%パラホルムアルデヒド(中性)で30分間固定し、その後、0.1% Triton-100で10分間室温処理し、リン酸塩緩衝液で3回洗浄した後、特異的ミオシン抗体Myosin 4-488染液(濃度1%)を加え、4℃で一晩放置し、翌日、染液を捨て、リン酸塩緩衝液で3回洗浄し、励起光が488 nmの箇所で蛍光撮影し、結果を図3に示した。写真をImage-Pro Plus software(Version 6.0、Media Cybernetics、American)に導入して筋管の数、筋管の長さ、筋管の幅を定量化した。実験データをMean±SDで表し、Graphpad prism 6 software(Graphpad Software Inc、San Diego、CA、USA)を用いてデータ処理し、ANOVA検定を用いて統計学的分析を行い、p<0.05は統計学的意義を有する。
【0021】
結果から分かるように、2'-O-ラムノシルイカリシドIIは、筋管形成を促進し、筋管数を増加させ、筋管の幅及び長さを更に増加させることができ、統計的差異を有する。
【0022】
実施例3 この実験において、C2C12細胞の筋形成分化、筋細胞融合に対する2'-O-ラムノシルイカリシドIIの調節状況を評価した。
C2C12細胞は、中国科学院上海生命科学研究院細胞資源センターから入手され、細胞は、10%ウシ胎児血清及び1%二重抗体a-MEMを含む培地で培養された。細胞を12ウェルプレートに30,000細胞/ウェルで接種し、2日間培養した後、細胞密度が約80%となった時、実験を開始した。実験は、正常群(Normal)、筋形成分化誘導対照群(Control)、筋形成分化誘導+2'-O-ラムノシルイカリシドII群(10 μM)に分けられた。実験中、正常群の細胞は、実験開始時に細胞を収集してmRNAを抽出した。対照群では、2%ウマ血清及び1%二重抗体α-MEMを含む培地でC2C12細胞から筋芽細胞への分化を誘導し、薬物群では、対応する用量の2'-O-ラムノシルイカリシドIIを筋形成分化培地に加え、最終濃度は10 μMである。実験を3日間観察し続け、1日ごとに対応する培養液を1回交換した。対照群の細胞及び薬物群の細胞は、実験後1日、2日、3日に細胞を収集してmRNAを抽出した。mRNAをAxygenRNA抽出キットで抽出・精製し、精製したmRNAからTaKaRa逆転写キットでcDNAが得られ、cDNAを
キットで増幅し、切断し、増幅プライマーは以下に示す通りである。
M-GAPDH 上流プライマー3'-CATGTTCCAGTATGACTCCACTC-5' 配列番号1
下流プライマー3'-GGCCTCACCCCATTTGATGT-5' 配列番号2
M-Myog 上流プライマー3'-GAGGAAGTCTGTGTCGGTGG-5' 配列番号3
下流プライマー3'-CCACGATGGACGTAAGGGAG-5' 配列番号4
M-Mymk 上流プライマー3'-GAGCACTTAAGCCCTCCTTGT-5' 配列番号5
下流プライマー3'-CCCAGCCTTCTTGTTGACCT-5' 配列番号6
【0023】
この実験は、筋形成分化培養後1日目と2日目の筋形成分化に関連する転写因子Myog、及び筋形成分化後2日目と3日目の筋細胞融合因子Mymkを検出した。実験データをMean±SDで表し、Graphpad prism 6 software(Graphpad Software Inc、San Diego、CA、USA)を用いてデータ処理し、ANOVA検定を用いて統計学的分析を行い、p<0.05は統計学的意義を有する。
【0024】
結果から分かるように、2'-O-ラムノシルイカリシドIIは、筋形成分化及び筋細胞融合を促進し、2'-O-ラムノシルイカリシドIIは、筋形成分化中のMyog及びMymk遺伝子の発現レベルを上方制御することができ、統計的差異を有する。
【0025】
実施例4 C2C12細胞の筋形成分化後期の特異的筋管タンパク質の発現に対する2'-O-ラムノシルイカリシドIIの状況
C2C12細胞は、中国科学院上海生命科学研究院細胞資源センターから入手され、細胞は、10%ウシ胎児血清及び1%二重抗体a-MEMを含む培地で培養された。細胞を12ウェルプレートに30,000細胞/ウェルで接種し、2日間培養した後、細胞密度が約80%となった時、実験を開始した。実験は、正常群(Normal)、筋形成分化対照群(Control)、筋形成分化+2'-O-ラムノシルイカリシドII群(2"-O-rahmnosyl icariside II-10 μM)に分けられた。実験中、正常群の細胞は、実験開始時に細胞を収集してmRNAを抽出し、対照群では、2%ウマ血清及び1%二重抗体α-MEMを含む培地でC2C12細胞から筋芽細胞への分化を誘導し、薬物群では、対応する用量の2'-O-ラムノシルイカリシドIIを筋形成分化培地に加え、最終濃度は10 μMである。実験を3日間観察し続け、1日ごとに対応する培養液を1回交換した。対照群の細胞及び薬物群の細胞は、実験後1日目、2日目、3日目に細胞を収集してmRNAを抽出した。mRNAをAxygenRNA抽出キットで抽出・精製し、精製したmRNAからTaKaRa逆転写キットでcDNAが得られ、cDNAを
キットで増幅し、切断し、増幅プライマーは以下に示す通りである。この実験は、筋形成分化後2日目と3日目の特異的ミオシンMyh4のmRNAレベルを検出した。
M-GAPDH 上流プライマー3'-CATGTTCCAGTATGACTCCACTC-5' 配列番号1
下流プライマー3'-GGCCTCACCCCATTTGATGT-5' 配列番号2
M-Myh4 上流プライマー3'-CTCACCTACCAGACCGAGGA-5' 配列番号7
下流プライマー3'-CTCCTGTCACCTCTCAACAGA-5' 配列番号8
【0026】
なお、細胞を48ウェルプレートに10,000細胞/ウェルで接種し、2日間培養した後、細胞密度が約80%となった時、2%ウマ血清及び1%二重抗体α-MEMを含む培地でC2C12細胞から筋芽細胞への分化を誘導した。実験は、正常群(Normal)、筋形成分化対照群(Control)、筋形成分化+2'-O-ラムノシルイカリシドII群(10 μM)に分けられた。実験中、正常群の細胞を5%ウシ胎児血清及び1%二重抗α-MEMを含む培地で培養し続け、対照群では、2%ウマ血清及び1%二重抗体α-MEMを含む培地でC2C12細胞から筋芽細胞への分化を誘導し、薬物群では、対応する用量の2'-O-ラムノシルイカリシドIIを筋形成分化培地に加え、最終濃度は、それぞれ0.1 μM、1 μM、10 μMである。実験を4日間観察し続け、2日ごとに対応する培養液を1回交換した。実験終了時、細胞を4%パラホルムアルデヒド(中性)で30分間固定し、その後、0.1% Triton-100で10分間室温処理し、リン酸塩緩衝液で3回洗浄した後、特異的ミオシン特異的抗体Myosin 4-488染液(濃度1%)を加え、4℃で一晩放置し、翌日、染液を捨て、リン酸塩緩衝液で3回洗浄し、励起光が488 nmの箇所で蛍光撮影した。写真をImage-Pro Plus software(Version 6.0、Media Cybernetics、American)に導入してMyosin4の蛍光強度を定量化した。実験データをMean±SDで表し、Graphpad prism6 software(Graphpad Software Inc、San Diego、CA、USA)を用いてデータ処理し、ANOVA検定を用いて統計学的分析を行い、p<0.05は統計学的意義を有する。結果から分かるように、2'-O-ラムノシルイカリシドIIは、筋管特異的タンパク質Myosin 4の遺伝子及びタンパク質レベルでの発現を促進し、統計的差異を有する。
【0027】
図1
図2
図3
【配列表】
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【国際調査報告】