(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】プリオン病を検出する方法及び材料
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240528BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01N33/68
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575367
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 US2022032299
(87)【国際公開番号】W WO2022260977
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(71)【出願人】
【識別番号】506083040
【氏名又は名称】クレイトン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン,ピーター アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフ,ティファニー エム.
(72)【発明者】
【氏名】シュワベンランダー,マーク ディー.
(72)【発明者】
【氏名】バーツ,ジェイソン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,キー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045BB03
2G045CA25
2G045CA26
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(57)【要約】
本明細書は、ミスフォールドポリペプチドを検出する方法及び材料を提供する。例えば、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)から試料を収集するように設計された装置(例えば、給餌装置)が提供される。一部の場合、給餌装置から取得された1匹以上の哺乳動物からの試料中のミスフォールドポリペプチドの存在又は不在に少なくとも部分的に基づいて哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)において1つ以上のプリオン病(例えば、慢性消耗病(CWD))を検出するために使用され得る方法及び材料が提供される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリオン病について非ヒト哺乳動物の集団を評価する方法であって、
給餌装置の試料収集表面を拭き取って試料を含むスワブを得るステップであって、前記給餌装置がリザーバ及び試料収集表面を含み、前記リザーバが餌を含有し、前記餌が前記リザーバから前記試料収集表面まで通過できる、ステップ、
前記試料からポリペプチドを抽出して抽出物を得るステップ、
前記抽出物を濃縮して濃縮抽出物を得るステップ、
前記濃縮抽出物中のミスフォールドポリペプチドの存在を検出するステップ、
前記ミスフォールドポリペプチドの前記存在が検出された場合、前記非ヒト哺乳動物の集団を、前記プリオン病を有すると特定するステップ、並びに
前記ミスフォールドポリペプチドの前記存在が検出されない場合、前記非ヒト哺乳動物の集団を、前記プリオン病を有していないと特定するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記試料収集表面が、ステンレス鋼、雲母、スレート、アルミニウム、セラミック及びガラスからなる群から選択される材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記餌が、トウモロコシ、大豆、オート麦及び市販の飼料ペレットからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が、唾液、粘液及び舌上皮細胞からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非ヒト哺乳動物が、ヘラジカ、ダマジカ、アメリカヌマジカ、ミュールジカ、ホエジカ、アメリカヘラジカ、パンパスジカ、アカシカ、トナカイ、ノロジカ、サンバー、ニホンジカ、オジロジカ、レイヨウ、ヤギ、ラクダ、ミンク、ネコ、ウシ、ヒツジ、マウス、ラット、ハムスター、マザマジカ、アクシスジカ、マカク、キツネザル、クモザル及びチンパンジーからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記給餌装置が原生自然環境保全地域に設置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記給餌装置が、都市環境、郊外環境又は田舎環境に設置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記給餌装置が、約1~約14日間、無人状態である、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記給餌装置が農場に設置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が毎日取得される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料が毎週取得される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記スワブがコットンスワブ又はフォームスワブである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抽出物を得るために前記試料からポリペプチドを前記抽出する前に、前記スワブが溶液中に保存される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液がリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記スワブが、約-80℃~約4℃の温度で保存される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記抽出が超音波処理を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記濃縮するステップが減圧濃縮を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ミスフォールドポリペプチドが、リアルタイム振動誘導変換(RT-QuIC)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫組織化学的検査(IHC)、タンパク質ミスフォールディングサイクリック増幅(PMCA)又はウェスタンブロッティングを使用して検出される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ミスフォールドポリペプチドが、スクレイピーに関連するミスフォールドポリペプチド(PrP
Sc)、慢性消耗病に関連するミスフォールドポリペプチド(PrP
CWD)、ウシ海綿状脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrP
BSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病に関連するミスフォールドポリペプチド(PrP
CJD)、ネコ海綿状脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrP
FSE)、伝達性ミンク脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrP
TME)及びラクダ海綿状脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrP
CSE)からなる群から選択される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記プリオン病が、慢性消耗病(CWD)、伝達性ミンク脳症(TME)、ウシ海綿状脳症(BSE)、スクレイピー、ネコ海綿状脳症、有蹄類海綿状脳症及びラクダ科海綿状脳症からなる群から選択される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ミスフォールドポリペプチドを検出する方法であって、
試料収集表面を拭き取って試料を含むスワブを得るステップ、
前記試料からポリペプチドを抽出して抽出物を得るステップ、
前記抽出物を濃縮して濃縮抽出物を得るステップ、及び
前記濃縮抽出物中の前記ミスフォールドポリペプチドの存在を検出するステップ
を含む、方法。
【請求項22】
前記試料収集表面が、ステンレス鋼、雲母、スレート、アルミニウム、セラミック及びガラスからなる群から選択される材料である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記収集表面が、食品加工施設、水処理施設又は病院にある、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記試料が、血液、尿、糞便、唾液及び粘液からなる群から選択される、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記試料が毎日取得される、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記試料が毎週取得される、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記スワブがコットンスワブ又はフォームスワブである、請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抽出物を得るために前記試料からポリペプチドを前記抽出する前に、前記スワブが溶液中に保存される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記溶液がPBS溶液である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記スワブが、約-80℃~約4℃の温度で保存される、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記抽出が超音波処理を含む、請求項21から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記濃縮するステップが減圧濃縮を含む、請求項21から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ミスフォールドポリペプチドが、RT-QuIC、ELISA、IHC、PMCA又はウェスタンブロッティングを使用して検出される、請求項21から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ミスフォールドポリペプチドが、ミスフォールドタウポリペプチド、ミスフォールドアルファ-シヌクレインポリペプチド及びミスフォールドアミロイドベータポリペプチドからなる群から選択される、請求項21から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ミスフォールドポリペプチドが、プリオン病に関連している、請求項21から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記プリオン病が、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、アルツハイマー病及びパーキンソン病からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月7日に出願された米国特許出願第63/197,822号の利益を主張する。先願の開示は、本出願の開示の一部とみなされる(及び参照により組み込まれる)。
【0002】
連邦政府の資金に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって与えられたAI077774に基づく政府支援、及び国立科学財団によって与えられたCBET-1149424に基づく政府支援によって行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
1.技術分野
本明細書は、ミスフォールドポリペプチドを検出する方法及び材料に関する。例えば、本明細書は、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)から試料を収集するように設計された装置(例えば、給餌装置)を提供する。一部の場合、本明細書に提供される方法及び材料は、本明細書に提供される給餌装置から取得された1匹以上の哺乳動物からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチドの存在又は不在に少なくとも部分的に基づいて哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)において1つ以上のプリオン病(例えば、慢性消耗病(CWD))の存在又は不在を評価するために使用され得る。
【背景技術】
【0004】
2.背景情報
CWDは、北米及び欧州において新たに出現したプリオン病である。CWDは、米国では30州(USGS National Wildlife Health Center、"Distribution of Chronic Wasting Disease in North America"、usgs.gov/centers/nwhc/science/expanding-distribution-chronic-wasting-disease?qt-science_center_objects=0#qt-science_center_objects)、カナダでは3州(Canadian Food Inspection Agency、"Herds infected with chronic wasting disease in Canada"、inspection.canada.ca/animal-health/terrestrial-animals/diseases/reportable/cwd/herds-infected/eng/1554298564449/1554298564710)で検出されている。ノルウェー、フィンランド及びスウェーデンでのトナカイ及びヘラジカにおけるCWDの最近の発見(Benestadら、Vet. Res.、47:88(2016);及びOsterholmら、mBio、10(4):e01091-19(2019))により、世界中でCWDの伝播及び出現に対する懸念が高まっている。CWDの流行地域では、放し飼いのシカの群れにおける疾患の発生率が50%を超える可能性があり、シカ科の個体数に悪影響を及ぼす可能性がある(Millerら、J. Wildl. Dis.、40(2):320-327(2004))。CWDの人獣共通感染能はほとんど理解されていないが、CWDが、同所性種、例えば、ウシ、ネコ、ブタ、ヒツジ、及び最近示唆されているように、ヒトに伝播する可能性があるという証拠が存在する(Wolfeら、J. Wildl. Dis.、58(1):40-49(2021); Hamirら、Vet. Pathol.、44:487-493(2007); Hamirら、J. Vet. Diagn. Invest.、18:558-565(2006); Hamirら、J. Vet. Diagn. Invest.、17:276-281(2005); Bartzら、Virology, 251:297-301(1998); Mooreら、J. Virology, 91:e00926-00917(2017);及びHannaouiら、bioRxiv、2022.2004.2019.488833、doi:10.1101/2022.04.19.488833 (2022))。
【発明の概要】
【0005】
プリオン病は、ヒト(クロイツフェルト・ヤコブ病、CJD)、ウシ(ウシ海綿状脳症、BSE又は「狂牛病」)、シカ科(CWD)、ヒトコブラクダ、並びにヒツジ及びヤギ(スクレイピー)を含む広範な宿主種に影響を及ぼす。プリオンは、正常細胞プリオンポリペプチド(PrPC)のミスフォールド自己増殖形態(PrPSc)から構成される。現在、プリオン病、例えば、CWDを診断する最も広く受け入れられている方法は、PrPScの存在について脳及びリンパ組織を検死することである。
【0006】
本明細書は、ミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)を検出する方法及び材料を提供する。例えば、本明細書は、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上の非ヒト哺乳動物、例えば、シカ科)から試料(例えば、生体試料、例えば、唾液及び/又は粘液)を収集するように設計された装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置)を提供する。本明細書に提供される装置に付着した1つ以上の試料は、試料中に存在する1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について評価され得る。一部の場合、本明細書に提供される方法及び材料は、本明細書に提供される装置から取得された1匹以上の哺乳動物からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在に少なくとも部分的に基づいて、哺乳動物の集団(例えば、シカの群れ)において1つ以上のプリオン病(例えば、CWD)を検出し、及び場合によりモニタリングするために使用され得る。
【0007】
本明細書で実証されるように、ミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)は、スワブを使用して試料収集表面から回収することができ、特定することができる。例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置は、哺乳動物(例えば、シカ科)が給餌装置から餌を食べるときに唾液及び/又は粘液が試料収集表面上に残り、試料収集表面から試料を取得でき(例えば、スワブを介して)、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について試料を評価できるように、特定の地理的領域及び/又は農場に配置することができる。1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在は、哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)における1つ以上のプリオン病の存在を検出するために使用することができる。
【0008】
本明細書に記載されるように哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)において1つ以上のプリオン病を検出する能力を有することにより(例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面に付着した1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在を判定することによって)、プリオン病の群れのレベルの環境監視のための特有で実現されていない機会を提供する。例えば、哺乳動物の野生及び飼育の集団(例えば、シカ科の群れ)におけるプリオン病の群れのレベルの監視を使用して、疾患伝播をモニタリングし、場合により制御することができる。
【0009】
概して、本明細書の一態様は、プリオン病について非ヒト哺乳動物の集団を評価する方法を特徴とする。この方法は、給餌装置の試料収集表面を拭き取って試料を含むスワブを得るステップであって、給餌装置がリザーバ及び試料収集表面を含み、リザーバが餌を含有し、餌がリザーバから試料収集表面まで通過できる、ステップ、試料からポリペプチドを抽出して抽出物を得るステップ、抽出物を濃縮して濃縮抽出物を得るステップ、濃縮抽出物中のミスフォールドポリペプチドの存在を検出するステップ、ミスフォールドポリペプチドの存在が検出された場合、非ヒト哺乳動物の集団を、プリオン病を有すると特定するステップ、並びにミスフォールドポリペプチドの存在が検出されない場合、非ヒト哺乳動物の集団を、プリオン病を有していないと特定するステップ、を含み得るか、又はそれらから本質的になり得る。試料収集表面は、ステンレス鋼、雲母、スレート、アルミニウム、セラミック又はガラスであり得る。餌は、トウモロコシ、大豆、オート麦又は市販の飼料ペレットであり得る。試料は、唾液、粘液又は舌上皮細胞であり得る。非ヒト哺乳動物の集団には、ヘラジカ、ダマジカ、アメリカヌマジカ、ミュールジカ、ホエジカ、アメリカヘラジカ、パンパスジカ、アカシカ、トナカイ、ノロジカ、サンバー、ニホンジカ、オジロジカ、レイヨウ、ヤギ、ラクダ、ミンク、ネコ、ウシ、ヒツジ、マウス、ラット、ハムスター、マザマジカ、アクシスジカ、マカク、キツネザル、クモザル及びチンパンジーが含まれ得る。給餌装置は原生自然環境保全地域に設置され得る。給餌装置は、都市環境、郊外環境又は田舎環境に設置され得る。給餌装置は、約1~約14日間、無人状態であり得る。給餌装置は農場に設置され得る。試料は毎日取得され得る。試料は毎週取得され得る。スワブはコットンスワブ又はフォームスワブであり得る。抽出物を得るために試料からポリペプチドを抽出する前に、スワブが溶液中に保存され得る。溶液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液であり得る。スワブは、約-80℃~約4℃の温度で保存され得る。抽出するステップは超音波処理を含み得る。濃縮するステップは減圧濃縮を含み得る。ミスフォールドポリペプチドは、リアルタイム振動誘導変換(RT-QuIC)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫組織化学的検査(IHC)、タンパク質ミスフォールディングサイクリック増幅(PMCA)又はウェスタンブロッティングを使用して検出され得る。ミスフォールドポリペプチドは、スクレイピーに関連するミスフォールドポリペプチド(PrPSc)、慢性消耗病に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPCWD)、ウシ海綿状脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPBSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPCJD)、ネコ海綿状脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPFSE)、伝達性ミンク脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPTME)又はラクダ海綿状脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPCSE)であり得る。プリオン病は、慢性消耗病(CWD)、伝達性ミンク脳症(TME)、ウシ海綿状脳症(BSE)、スクレイピー、ネコ海綿状脳症、有蹄類海綿状脳症又はラクダ科(camilid)海綿状脳症であり得る。
【0010】
別の態様では、本明細書は、ミスフォールドポリペプチドを検出する方法を特徴とする。この方法は、試料収集表面を拭き取って試料を含むスワブを得るステップ、試料からポリペプチドを抽出して抽出物を得るステップ、抽出物を濃縮して濃縮抽出物を得るステップ、及び濃縮抽出物中のミスフォールドポリペプチドの存在を検出するステップを含み得るか、又はそれらから本質的になり得る。試料収集表面は、ステンレス鋼、雲母、スレート、アルミニウム、セラミック又はガラスであり得る。収集表面は、食品加工施設、水処理施設又は病院にあり得る。試料は、血液、尿、糞便、唾液又は粘液であり得る。試料は毎日取得され得る。試料は毎週取得され得る。スワブはコットンスワブ又はフォームスワブであり得る。抽出物を得るために試料からポリペプチドを抽出する前に、スワブが溶液中に保存され得る。溶液はPBS溶液であり得る。スワブは、約-80℃~約4℃の温度で保存され得る。抽出は超音波処理を含み得る。濃縮するステップは減圧濃縮を含み得る。ミスフォールドポリペプチドは、RT-QuIC、ELISA、IHC、PMCA又はウェスタンブロッティングを使用して検出され得る。ミスフォールドポリペプチドは、ミスフォールドタウポリペプチド、ミスフォールドアルファ-シヌクレインポリペプチド又はミスフォールドアミロイドベータポリペプチドであり得る。ミスフォールドポリペプチドは、プリオン病に関連し得る。プリオン病は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、アルツハイマー病又はパーキンソン病であり得る。
【0011】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を本発明を実施するために使用することができるが、適切な方法及び材料は以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及びその他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾が生じた場合、定義を含む本出願が優先される。さらに、材料、方法及び実施例は、単なる例示であり、限定することを意図したものではない。
【0012】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1-1】
図1A~1Hは、振盪を使用したフォーム又はコットンスワブからの伝達性ミンク脳症(TME)PrP
Scのハイパー(HY)株の回収率を示す図である。様々な長さの時間、室温で乾燥させたフォーム及びコットンスワブの両方の3回の連続抽出(1回目、2回目、3回目)から回収したHY PrP
Scの代表的な96ウェル免疫ブロット(
図1A、1C、1E及び1G)及び定量化(
図1B、1D、1F及び1Hの棒グラフ)。折れ線グラフは、室温で乾燥させた後の、HY TME脳ホモジネート(実線)又は超純水(破線)で湿らせたスワブの水分含量を表す。PrP
Sc回収率の結果は、総回収率の平均±SEM、n=4として表され、折れ線グラフのデータ点は、水分含量の平均値を表す、n=3。*は、試料とそれぞれの未乾燥対照(0時間)との間の有意差(P<0.05)を示す。
【
図2-1】
図2A~2Dは、超音波処理を使用して抽出したフォームスワブから抽出したHY TME PrP
Scの回収率を示す図である。未乾燥(0時間)又は室温で24時間乾燥させたフォームスワブの3回の連続抽出(1回目、2回目、3回目)から回収したHY TME PrP
Scの代表的な96ウェル免疫ブロット(
図2A及び2C)及び定量化(
図2B及び2D)。超音波処理時間は、5秒間の超音波処理、その後の5秒間のインキュベーションを伴う1、3、6又は12サイクルのパルス処理からなる。プリオン回収率の結果は、総回収率の平均±SEM、n=4として表される。
【
図3-1】
図3A~3Fは、超音波処理によりフォームスワブから抽出したCWD PrP
Scの回収率を示す図である。未乾燥(0時間)又は室温で24時間乾燥させたフォームスワブの3回の連続抽出(1回目、2回目、3回目)から回収したCWD PrP
Scの代表的な96ウェル免疫ブロット(
図3A、3C及び3E)及び定量化(
図3B、3D及び3F)。各抽出には15秒間(3サイクルのパルス処理)の超音波処理を使用した。プリオン回収率の結果は、総回収率の平均±SEM、n=4として表される。*は、24時間乾燥させた試料とそれぞれの未乾燥の対照(0時間)との間の有意差(P<0.05)を示す。
【
図4-1】
図4A~4Lは、ガラス、ステンレス鋼又は木材からのCWD PrP
Scの回収率を示す図である。未乾燥(対照)又は室温で24時間乾燥させた表面に塗布したフォームスワブ(各スワブについて2回の連続抽出の合わせた抽出物)から回収したCWD PrP
Scの代表的な96ウェル免疫ブロット(
図4A~4C)及び定量化(
図4D~4L)。各抽出には15秒間(3サイクルのパルス処理)の超音波処理を使用した。対照として、最も高い汚染レベルのCWD PrP
Scを適用した。プリオン回収率の結果は、総回収率の平均値±SEM、n=3として表される。*は、24時間乾燥させた試料とそれぞれの未乾燥の対照(0時間)との間の有意差(p<0.05)を示す。
【
図5-1】
図5A~5Dは、様々な処理条件下でのスワブを使用しないプロセスからのプリオン回収率を示す図である。200μL、400μL又は600μLのDPBSバッファーにスパイクしたHY又はCWD PrP
Scを、15秒間、30秒間又は60秒間(3、6又は12サイクルの5秒間の超音波処理、その後の5秒間のインキュベーションからなる)の超音波処理に供した。次いで試料を3時間、4時間又は5時間、減圧濃縮した。超音波処理時間の影響を試験するために、バッファー体積を200μLに固定し、凍結乾燥時間を3時間に固定した。バッファー体積の影響を試験するために、超音波処理時間を15秒間に固定し、減圧濃縮時間を5時間に固定した。濃縮時間の影響を試験するために、超音波処理時間を15秒間に固定し、バッファー体積を200μLに固定した。*は、対照と比較した有意差(p<0.05、n=4)を示す。#は、それぞれの対照(すなわち、15秒間、200μL又は3時間)と比較した有意差(p<0.05、n=4)を示す。
【
図6-1】
図6A~6Cは、試料収集表面を有する例示的な給餌装置を示す図である。
図6A。ミスフォールドポリペプチド(例えば、PrP
Sc)を監視するためのポールに取り付けられた給餌装置の側面図。
図6B。
図6Aの囲んだ領域の拡大図。穀物は中央のリザーバから流れることができ、ヒンジ付きのステンレス鋼プレートを通過してステンレス鋼の試料収集表面上に到達することができる。
図6C。給餌装置のステンレス鋼表面からCWDプリオンの試料を収集し、試料をチューブに移し(左パネル)、リアルタイム振動誘導変換(RT-QuIC)を使用して試料中のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrP
Sc)の存在を特定する(右パネル)スワブの概略的な画像。
【
図7】
図7A~7Bは、複数の試料収集表面を有する例示的な給餌装置を示す図である。
図7A。ミスフォールドポリペプチド(例えば、PrP
Sc)を監視するための給餌バンクの側面図。穀物は中央のリザーバから放出吐出口を通ってステンレス鋼の試料収集表面上に流れることができる。
図7B。
図7Aに示される給餌バンクの上面図。中央の穀物リザーバは4つの放出吐出口を備えることができ、それらの各々は穀物を別個のステンレス鋼の試料収集表面上に放出する。
【
図8-1】
図8A~8Cは、スワブ及びステンレス鋼からのCWDプリオンのRT-QuIC検出-最大点比(maxpoint ratio)としての1回目の抽出を示す図である。
図8A。CWD PrP
ScのためのRT-QuIC検出方法論。
図8B。スワブに直接塗布され、直ちに抽出されたCWD PrP
Scの連続10倍希釈物についてのRT-QuIC検出。
図8C。ステンレス鋼面に塗布され、22℃で24時間乾燥させた後拭き取られ、続いて直ちにスワブ抽出したCWD PrP
Scの連続10倍希釈物についてのRT-QuIC検出。スワブ抽出物を、RT-QuIC反応においてrecHaPrPをアミロイドにミスフォールディングする可能性があるPrP
Scの存在について解析し、全RT-QuIC実行における最大チオフラビンT(ThT)蛍光とRT-QuIC反応の開始サイクルのThT蛍光との比として決定した最大点比(MPR、平均±標準偏差)として表した。陽性シグナルの閾値は2(破線)に設定した。
【
図9-1】
図9A~9Bは、ステンレス鋼からのCWDプリオンのRT-QuIC検出-最大点比としての2回目の抽出を示す図である。CWD PrP
ScのためのRT-QuIC検出方法論は
図8Aに示される通りである。
図9A。スワブに直接塗布し、直ちに抽出したCWD PrP
Scの連続10倍希釈物についてのRT-QuIC検出。
図9B。ステンレス鋼表面に塗布され、22℃で24時間乾燥させた後拭き取られ、続いて直ちにスワブ抽出したCWD PrP
Scの連続10倍希釈物についてのRT-QuIC検出。スワブ抽出物を、RT-QuIC反応においてrecHaPrPをアミロイドにミスフォールディングする可能性があるPrP
Scの存在について解析し、全RT-QuIC実行における最大ThT蛍光とRT-QuIC反応の開始サイクルのThT蛍光との比として決定したMPR(平均±標準偏差)として表した。陽性シグナルの閾値は2(破線)に設定した。
【
図10-1】
図10A~10Bは、スワブ及びステンレス鋼からのCWDプリオンのRT-QuIC検出-アミロイド形成速度としての1回目の抽出。CWD PrP
ScのためのRT-QuIC検出方法論は
図8Aに示される通りである。
図10A。スワブに直接塗布し、直ちに抽出したCWD PrP
Scの連続10倍希釈物についてのRT-QuIC検出。
図10B。ステンレス鋼表面に塗布され、22℃で24時間乾燥させた後拭き取られ、続いて直ちにスワブ抽出したCWD PrP
Scの連続10倍希釈物についてのRT-QuIC検出。スワブ抽出物を、RT-QuIC反応においてrecHaPrPをアミロイドにミスフォールディングする可能性があるPrP
Scの存在について解析し、蛍光閾値(MPR=2)に達するまでのRT-QuIC反応時間の逆数として決定したアミロイド形成速度(RAF、平均±標準偏差)として表した。
【
図11-1】
図11A~11Bは、スワブ及びステンレス鋼からのCWDプリオンのRT-QuIC検出-アミロイド形成速度としての2回目の抽出。CWD PrP
ScのためのRT-QuIC検出方法論は
図8Aに示される通りである。
図11A。スワブに直接塗布し、直ちに抽出したCWD PrP
Scの連続10倍希釈物についてのRT-QuIC検出。
図11B。ステンレス鋼表面に塗布され、22℃で24時間乾燥させた後、拭き取られ、続いて直ちにスワブ抽出したCWD PrP
Scの連続10倍希釈物についてのRT-QuIC検出。スワブ抽出物を、RT-QuIC反応においてrecHaPrPをアミロイドにミスフォールディングする可能性があるPrP
Scの存在について解析し、蛍光閾値(MPR=2)に達するまでのRT-QuIC反応時間の逆数として決定したRAF(平均±標準偏差)として表した。
【
図12-1】
図12A~12Eは、DPBSで湿らせたスワブ及び汚染されていないステンレス鋼から回収した試料のRT-QuIC検出を示す図である。
図12A。陰性スワブ及び表面対照から回収した試料のためのRT-QuIC検出方法論。
図12B及び
図12C。DPBSで湿らせたスワブから回収し、直ちに抽出した試料のRT-QuIC検出。
図12D及び
図12E。スワブによって汚染されていないステンレス鋼から回収し、直ちに抽出した試料のRT-QuIC検出。スワブ抽出物を、RT-QuIC反応においてrecHaPrPをアミロイドにミスフォールディングする可能性のあるPrP
Scの存在について解析し、(1)全RT-QuIC実行における最大ThT蛍光とRT-QuIC反応の開始サイクルのThT蛍光との比として決定されたMPR(平均±標準偏差)(
図12B及び
図12D)、及び(2)蛍光閾値(MPR=2、
図12C及び
図12E)に達するまでのRT-QuIC反応時間の逆数として決定したRAF(平均±標準偏差)として表した。
【
図13】ステンレス鋼表面から拭き取ったミスフォールドポリペプチドのRT-QuIC検出を最大点比(MPR)として示す図である。表5に指定したレベルに希釈した目的の全てのミスフォールドポリペプチドを、室温での24時間乾燥のためにステンレス鋼表面に塗布し、その後、直ちにスワブ抽出し、濃縮した。スワブ抽出物を、RT-QuIC反応においてrecHaPrPをアミロイドにミスフォールディングする可能性のあるPrP
Scの存在について解析し、全RT-QuIC実行における最大チオフラビンT(ThT)蛍光とRT-QuIC反応の開始サイクルのThT蛍光との比として決定される最大点比(MPR、平均±標準偏差)として表した。陽性シグナルの閾値を2(赤い破線)に設定した。全ての試料のRT-QuIC検出は、log-3の希釈物におけるスクレイピーを除いて、表5に列挙したそれらのそれぞれの希釈物についてであった。各RT-QuICプレートにおいて、ミスフォールドタンパク質を含まない試料(ブランク)、正常なプリオンタンパク質(陰性)及び/又は既知のミスフォールドタンパク質(陽性)を対照として試験した。脳ホモジネート(ウシ適応TMEについては全てlog-3、log-4に希釈した)を検出対照としてRT-QuIC(307CL、スクレイピー、ウシTME、TME及びリスザル)に直接添加した。1~27までの番号は、表5に列挙した試料を参照する試料IDであった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書は、ミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)を検出する方法及び材料を提供する。例えば、本明細書は、1匹以上(例えば、1匹以上の非ヒト哺乳動物、例えば、シカ科)からの装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置)(例えば、生体試料、例えば、唾液及び/又は粘液)を提供する。一部の場合、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)からの1つ以上の試料を本明細書に提供される装置の試料収集表面上に付着させることができ、試料は試料収集表面から取得することができ、試料中に存在する1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について評価することができる。本明細書に記載されるように、ミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)は、試料収集表面から回収することができ、特定することができる。例えば、各々が少なくとも1つの試料収集表面を有する1つ以上の給餌装置を特定の地理的領域及び/又は農場に配置して、給餌装置から餌を食べる哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)から唾液及び/又は粘液試料を収集することができる。本明細書はまた、本明細書に提供される装置から取得された、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在に少なくとも部分的に基づいて、哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)における1つ以上のプリオン病(例えば、CWD)を検出し、場合によりモニタリングする方法及び材料も提供する。例えば、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)からの1つ以上の試料を、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について評価することができる。一部の場合、哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)における1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)から取得された試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在を使用して、哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)における少なくとも1匹の哺乳動物(例えば、少なくとも1匹のシカ科)が1つ以上のプリオン病を有することを判定することができる。一部の場合、哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)における1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)から取得された試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の不在を使用して、その哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)がプリオン病を有していないことを判定することができる。
【0015】
本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)は、任意の数の試料収集表面を含むことができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置は、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上)の試料収集表面を含むことができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置は、1~約10個の試料収集表面(例えば、1~約7個、1~約5個、1~約4個、1~約3個、2~約10個、5~約10個、1~約10個、7~約10個、2~約8個、3~約5個、2~約4個、5~約7個、又は6~約8個の試料収集表面)を含むことができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置は、複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上)の試料収集表面を含むことができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置は、単一の試料収集表面を含むことができる。
【0016】
本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面は、任意の適切な材料から作製することができる。本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面として使用することができる材料の例としては、ステンレス鋼、雲母、スレート、アルミニウム、セラミック及びガラスが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に提供される給餌装置が複数の試料収集表面を含む場合、試料収集表面は同じ材料から作製されてもよく、又は異なる材料から作製されてもよい。
【0017】
本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)は、任意の適切な環境に配置することができる。本明細書に提供される装置が給餌装置である場合、給餌装置は、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上の非ヒト、例えば、シカ科)が給餌装置にアクセスできる場所に配置することができる。本明細書に提供される装置を配置することができる環境の例としては、飼育(例えば、家畜)の群れが生息する環境(例えば、農場、牧場、柵で囲まれた狩猟保護区、動物園、野生の群れが生息する環境(例えば、森林、草原、農地、例えば、アルファルファ、トウモロコシ、大豆、ジャガイモ、小麦及び大麦の畑)、ヒトが生活する環境(例えば、農村地域、郊外地域及び都市地域)、食品加工施設(例えば、食肉加工施設)、水処理施設及び病院(例えば、ヒトの病院及び動物病院)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)が給餌装置である場合、給餌装置は任意の適切な種類の餌を提供することができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置を使用して穀物を提供することができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置を使用してペレットを提供することができる。本明細書に提供される給餌装置を使用して提供することができる餌の例としては、トウモロコシ、大豆、オート麦、市販の飼料ペレット(例えば、市販のシカ飼料ペレット)及びそれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
一部の場合、本明細書に提供される給餌装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置)は、リザーバ(例えば、餌リザーバ)を含むことができる。例えば、リザーバは、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面を餌が通過するように、餌を貯蔵及び供給するために使用することができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置のリザーバから本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面まで通過する餌は、吐出口を通って出てくることができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置のリザーバから本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面まで通過する餌は、プレート(例えば、ヒンジ付きプレート)を通って出てくることができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置のリザーバから本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面まで通過する餌は、飼料収集表面であり得るプレート(例えば、ヒンジ付きプレート)を通って出てくることができる。一部の場合、餌は、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上の非ヒト、例えば、シカ科)と試料収集表面との相互作用を増大させるように、本明細書に提供される給餌装置のリザーバから本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面まで通過することができる。例えば、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上の非ヒト、例えば、シカ科)が、餌に届くように試料収集表面にわたって到達している間に試料収集表面上に試料を残すように、餌は、本明細書に提供される給餌装置のリザーバから通過することができ、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面に隣接する点に蓄積することができる。
【0020】
一部の場合、本明細書に提供される給餌装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置)は、
図6に示される通りであり得る。
【0021】
一部の場合、本明細書に提供される給餌装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置)は、
図7に示される通りであり得る。
【0022】
本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)は、任意の適切な種類の試料を収集するために使用することができる。本明細書に提供される装置の試料収集表面から取得することができる試料の例としては、生体液(例えば、血液、尿及び糞便)、唾液及び粘液が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に提供される装置が給餌装置である場合、給餌装置は、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上の非ヒト、例えば、シカ科)から任意の適切な種類の試料を収集するために使用することができる。一部の場合、哺乳動物(例えば、シカ科)が本明細書に提供される給餌装置から餌を食べる場合、哺乳動物は給餌装置の試料収集表面上に1つ以上の試料を付着させるであろう。哺乳動物が給餌装置から餌を食べる場合に、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面上に哺乳動物によって付着させられ得る試料の例としては、唾液、粘液及び上皮細胞(例えば、舌上皮細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)が給餌装置である場合、任意の適切な哺乳動物(例えば、任意の適切な非ヒト哺乳動物)は、給餌装置から餌を食べることができ、給餌装置の試料収集表面上に1つ以上の試料を付着させることができる。一部の場合、非ヒト哺乳動物はシカ科であり得る(例えば、シカ科の一員であり得る)。一部の場合、非ヒト哺乳動物は、野生の非ヒト哺乳動物(例えば、野生動物)であり得る。一部の場合、非ヒト哺乳動物は、飼育非ヒト動物(例えば、家畜)であり得る。本明細書に提供される給餌装置上に試料を残すことができる非ヒト哺乳動物の例としては、ヘラジカ、ダマジカ、アメリカヌマジカ、ミュールジカ、ホエジカ、アメリカヘラジカ、パンパスジカ、アカシカ、トナカイ、ノロジカ、サンバー、ニホンジカ、オジロジカ、レイヨウ、ヤギ、ラクダ、ミンク、ネコ、ウシ、ヒツジ、マウス、ラット、ハムスター、マザマジカ、アクシスジカ及び非ヒト霊長類(例えば、マカク、キツネザル、クモザル及びチンパンジー)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書はまた、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)から取得された1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)からの1つ以上の試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在を検出する方法も提供する。例えば、1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)からの試料は、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から取得することができ、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について評価することができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から取得された1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在は、(例えば、ミスフォールドポリペプチド、例えば、PrPScの存在に少なくとも部分的に基づいて)1つ以上のプリオン病を有するとして哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)を特定するために使用することができる。例えば、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)が、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から取得された試料中で検出される場合、給餌装置が配置される領域における哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)は、1つ以上のプリオン病を有するとして特定することができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から取得された1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の不在は、(例えば、ミスフォールドポリペプチド、例えば、PrPScの不在に少なくとも部分的に基づいて)1つ以上のプリオン病を有していないとして哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)を特定するために使用することができる。例えば、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)が、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から取得された試料中で検出されない場合、給餌装置が配置される領域における哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)は、1つ以上のプリオン病を有しないとして特定することができる。
【0025】
任意の適切な方法が、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面から試料を収集するために使用することができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を収集するためにスワブを使用することができる。任意の適切なスワブを、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を収集するために使用することができる。本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を収集するために使用することができるスワブの例としては、コットンスワブ(例えば、コットン付きスワブ)及びフォームスワブ(例えば、フォーム付きスワブ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
試料は、任意の適切な時間に、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面から取得することができる。本明細書に提供される給餌装置が、原生自然環境保全地域(例えば、森林又は草原)、農地、都市、郊外又は田舎環境)に設置される場合、給餌装置を約1日より長い間、無人状態のままにした後に試料を取得することができる。例えば、試料は、無人状態のままにしてから約1日~約14日後に、原生自然環境保全地域に設置される本明細書に提供される給餌装置から取得することができる。本明細書に提供される給餌装置が、都市、郊外又は田舎環境に設置される場合、給餌装置を約1日より長い間、無人状態のままにした後に試料を取得することができる。例えば、試料は、無人状態のままにしてから約1日~約14日後に、都市、郊外又は田舎環境に設置される本明細書に提供される給餌装置から取得することができる。本明細書に提供される給餌装置が農場に設置される場合、試料は毎日取得することができる。本明細書に提供される給餌装置が農場に設置される場合、試料は毎週取得することができる。
【0027】
一部の場合、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面から取得された試料は、試料を取得するために使用されるスワブから抽出することができる。任意の適切な方法がスワブから試料を抽出するために使用することができる。一部の場合、スワブから試料を抽出するために振盪を使用することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、マイクロチューブミキサー(Tomy MT-360、速度5)で振盪することができる(例えば、バッファー溶液、例えば、PBS溶液中で振盪することができる)。本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、任意の時間振盪することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、約5分~約40分(例えば、約5分~約30分、約5分~約20分、約5分~約10分、約10分~約40分、約20分~約40分、約30分~約40分、約10分~約30分、約15分~約25分、約10分~約20分、又は約20分~約30分)間、振盪することができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、約30分間振盪することができる。振盪ステップは任意の回数実施することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、約1回~約5回(例えば、約3回)振盪することができる。振盪ステップは任意の温度で実施することができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、室温で振盪することができる。
【0028】
一部の場合、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブから試料を抽出するために超音波処理を使用することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、任意の適切な速度(例えば、Tomy MT-360で約速度5)で超音波処理することができる(例えば、バッファー溶液、例えば、PBS溶液中で超音波処理することができる)。本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、任意の適切な振幅で超音波処理することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、約振幅15~約振幅20(例えば、約振幅17)で超音波処理することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、約0.7ワット/cm2~約7ワット/cm2(例えば、約0.7ワット/cm2~約6ワット/cm2、約0.7ワット/cm2~約5ワット/cm2、約0.7ワット/cm2~約4ワット/cm2、約0.7ワット/cm2~約3ワット/cm2、約0.7ワット/cm2~約2ワット/cm2、約0.7ワット/cm2~約1ワット/cm2、約1ワット/cm2~約7ワット/cm2、約2ワット/cm2~約7ワット/cm2、約3ワット/cm2~約7ワット/cm2、約4ワット/cm2~約7ワット/cm2、約5ワット/cm2~約7ワット/cm2、約6ワット/cm2~約7ワット/cm2、約1ワット/cm2~約6ワット/cm2、約2ワット/cm2~約5ワット/cm2、約3ワット/cm2~約4ワット/cm2、約1ワット/cm2~約3ワット/cm2、約2ワット/cm2~約4ワット/cm2、約3ワット/cm2~約5ワット/cm2、又は約4ワット/cm2~約6ワット/cm2)の超音波強度で超音波処理することができる。本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、任意の時間超音波処理することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、約15秒間~約60秒間(例えば、約15秒間~約60秒間、約15秒間~約45秒間、約15秒間~約30秒間、約30秒間~約60秒間、約45秒間~約60秒間、約20秒間~約40秒間、約20秒間~約30秒間、約30秒間~約40秒間、又は約40秒間~約50秒間)、超音波処理することができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、約15秒間超音波処理することができる。超音波処理ステップは、任意の回数実施することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、約1回~約12回、超音波処理することができる。一部の場合、超音波処理ステップは、1、3、6又は12回、実施することができる。超音波処理ステップは、任意の温度で実施することができる。一部の場合、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用されるスワブは、約37℃で超音波処理することができる。2回以上の超音波処理ステップが実施される場合、スワブは各超音波処理ステップの間、約37℃で維持することができる。
【0029】
一部の場合、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面から取得された試料は、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について試料を評価する前に濃縮(例えば、減圧濃縮)することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用したスワブから得られた抽出物は、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について試料を評価する前に濃縮(例えば、減圧濃縮)することができる。一部の場合、濃縮ステップ(例えば、減圧濃縮)は遠心分離を含むことができる。一部の場合、濃縮ステップ(例えば、減圧濃縮)は蒸発(例えば、溶媒蒸発)を含むことができる。一部の場合、濃縮ステップ(例えば、減圧濃縮)は、溶出液の不在化で実施することができる(例えば、濃縮ステップが溶出液の化学組成に依存しないように)。一部の場合、濃縮ステップ(例えば、減圧濃縮)は、試料の液相を除去することができ、試料の固相を保持することができる。濃縮ステップ(例えば、減圧濃縮)は、任意の時間、実施することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用したスワブから得られた抽出物は、約3時間~約5時間、減圧濃縮することができる。濃縮ステップ(例えば、減圧濃縮)は、任意の温度で実施することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用したスワブから得られた抽出物は、45℃で減圧濃縮することができる。例えば、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から試料を取得するために使用したスワブから得られた抽出物は、約65℃で減圧濃縮することができる。一部の場合、濃縮ステップ(例えば、減圧濃縮)は、約10倍~約100倍(例えば、約10倍~約90倍、約10倍~約80倍、約10倍~約70倍、約10倍~約60倍、約10倍~約50倍、約10倍~約40倍、約10倍~約30倍、約10倍~約20倍、約20倍~約100倍、約30倍~約100倍、約40倍~約100倍、約50倍~約100倍、約60倍~約100倍、約70倍~約100倍、約80倍~約100倍、約90倍~約100倍、約20倍~約90倍、約30倍~約80倍、約40倍~約70倍、約50倍~約60倍、約20倍~約40倍、約30倍~約50倍、約40倍~約60倍、約50倍~約70倍、約60倍~約80倍、又は約70倍~約90倍)試料を濃縮することができる。
【0030】
一部の場合、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面から取得された試料は、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について試料を評価する前に消化(例えば、酵素、例えば、プロテイナーゼKで消化)することができる。
【0031】
一部の場合、本明細書に提供される給餌装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面から試料を取得するために使用したスワブ、又は本明細書に提供される給餌装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面から試料を取得するために使用したスワブから抽出された試料は、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について試料を評価する前に保存することができる。例えば、スワブは、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について試料を評価する前に湿潤状態で(例えば、バッファー溶液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中で)保存することができる。例えば、スワブは、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について試料を評価する前に、約-80℃~約4℃(例えば、約-80℃、約-20℃、及び約4℃)の温度で保存することができる。一部の場合、スワブは、1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について試料を評価する前に、任意の時間、約-80℃~約4℃の温度で保存することができる。
【0032】
任意の適切な方法を、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面から取得された1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在を検出するために使用することができる。例えば、RT-QuIC、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫組織化学的検査(IHC)、タンパク質ミスフォールディングサイクリック増幅(PMCA)及び/又はウェスタンブロット試験を、本明細書に提供される給餌装置の試料収集表面から取得された1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在を検出するために使用することができる。
【0033】
本明細書に提供される方法及び材料は、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)の試料収集表面から取得された1匹以上の哺乳動物(例えば、1匹以上のシカ科)からの試料中の任意のミスフォールドポリペプチドの存在又は不在を検出するために使用することができる。一部の場合、ミスフォールドポリペプチドは疾患(例えば、プリオン病)に関連し得る。ミスフォールドポリペプチドが本明細書に記載される方法及び材料を使用して検出され得る、ミスフォールドされ得るポリペプチドの例としては、PrPSc、伝達性海綿状脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPTSE)、慢性消耗病に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPCWD)、ウシ海綿状脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPBSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPCJD)、ネコ海綿状脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPFSE)、伝達性ミンク脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPTME)、ラクダ海綿状脳症に関連するミスフォールドポリペプチド(PrPCSE)、ミスフォールドタウポリペプチド、ミスフォールドアルファ-シヌクレインポリペプチド及びミスフォールドアミロイドベータポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書に記載される方法(例えば、ミスフォールドポリペプチドの存在又は不在を検出する方法)は、任意のプリオン病に関連するミスフォールドポリペプチドの存在又は不在を検出するために使用することができる。本明細書で使用される場合、プリオン病は、ミスフォールド、及び場合により、ミスフォールドポリペプチドの1つ以上の凝集(例えば、PrPSc)に関連する任意の疾患である。ミスフォールドポリペプチドが本明細書に記載されるように検出することができる、ミスフォールドされ得るポリペプチドに関連するプリオン病の例としては、CWD、TME、BSE、スクレイピー、ネコ海綿状脳症、有蹄類海綿状脳症、ラクダ科海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、アルツハイマー病及びパーキンソン病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書はまた、(例えば、本明細書に提供される装置から取得された1匹以上の哺乳動物からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在に少なくとも部分的に基づいて)本明細書に記載される1つ以上のプリオン病の存在又は不在について哺乳動物の集団(例えば、シカの群れ)をモニタリングする方法及び材料も提供する。哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)が、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)から取得された試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在に少なくとも部分的に基づいて1つ以上のプリオン病を有するとして特定される場合、給餌装置から餌を食べる哺乳動物の集団(例えば、シカの群れ)を、1つ以上のプリオン病の存在又は不在についてより頻繁にモニタリングすることができる。例えば、(例えば、本明細書に提供される装置から取得された1匹以上の哺乳動物からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在に少なくとも部分的に基づいて)本明細書に記載される1つ以上のプリオン病を有すると特定された哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)を、1つ以上のプリオン病の存在又は不在についてほぼ毎日からほぼ毎月(例えば、1日に1回、1週間に1回又は月に1回)評価することができる。
【0036】
哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)が、本明細書に提供される装置(例えば、少なくとも1つの試料収集表面を有する給餌装置等の装置)から取得された試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在に少なくとも部分的に基づいて1つ以上のプリオン病を有すると特定されている一部の場合、近くに生息している1以上のさらなる哺乳動物の集団(例えば、1以上のさらなるシカ科の群れ)を、1つ以上のプリオン病のいくらかの広がりをモニタリングするために1つ以上のプリオン病の存在又は不在について評価することができる。例えば、(例えば、本明細書に提供される装置から取得された1匹以上の哺乳動物からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在に少なくとも部分的に基づいて)本明細書に記載される1つ以上のプリオン病を有すると特定された哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)から約1マイル~約60マイル(例えば、約1マイル~約50マイル、約1マイル~約40マイル、約1マイル~約30マイル、約1マイル~約20マイル、約1マイル~約10マイル、約10マイル~約60マイル、約20マイル~約60マイル、約30マイル~約60マイル、約40マイル~約60マイル、約50マイル~約60マイル、約10マイル~約50マイル、約20マイル~約40マイル、約10マイル~約20マイル、約20マイル~約30マイル、約30マイル~約40マイル、又は約40マイル~約50マイル)離れて生息している1以上の哺乳動物の集団(例えば、1以上のシカ科の群れ)を、1つ以上のプリオン病の存在又は不在について評価することができる。例えば、(例えば、本明細書に提供される装置から取得された1匹以上の哺乳動物からの試料中の1つ以上のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在に少なくとも部分的に基づいて)本明細書に記載される1つ以上のプリオン病を有すると特定されている哺乳動物の集団(例えば、シカ科の群れ)に隣接して(例えば、障壁、例えば、柵に隣接して、及びそれらによって隔てられて)生息している1以上の哺乳動物の集団(例えば、1以上のシカ科の群れ)を、1つ以上のプリオン病の存在又は不在について評価することができる。
【0037】
本発明は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない、以下の実施例でさらに説明される。
【実施例】
【0038】
[実施例1]
スワブ試料及び環境に関連した表面から回収した慢性消耗病プリオンの定量的測定
この実施例は、異なる種類の表面を拭き取り、スワブからプリオンを抽出し、スワブで回収したCWDプリオンを定量することによってプリオンを得る迅速な方法を記載している。
【0039】
材料及び方法
プリオン源及び組織の調製
伝達性ミンク脳症(TME)のハイパー(HY)株に感染したハムスター、並びに分離株CWD t1821、CWD JB R296、CWD JB B188及びCWD 307 CLと指定されたCWDに感染した3頭のヘラジカから脳組織を採取した。脳組織を、株専用のTenbroeck組織グラインダー(Kontes、Vineland、NJ)又はBeadblaster 24マイクロチューブホモジナイザー(D2400、Benchmark Scientific,Inc.、Sayreville、NJ、US)を使用して、Ca2+若しくはMg2+を含まないダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Mediatech、Herndon、VA)又はPBS中で10又は20%(w/v)にホモジナイズした。試料を使用するまで-80℃で保存した。
【0040】
スワブ汚染
コットン付きスワブ(3M(商標) Quick Swab、3M、Saint Paul、MN、US)及びフォーム付きスワブ(Fisherbrand(商標) PurSwab Foam Swabs、カタログ番号:14-960-3E、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、US)を使用した。スワブをプリオンで汚染させるために、500(HY TME、CWD JB B188及びCWD JB R296)又は1000(CWD t1821)μg脳当量(BE)の脳ホモジネート(BH)をピペットによってスワブの表面に塗布した。3連の汚染させたスワブを室温でインキュベートして、0時間(未乾燥対照)、0.25時間、0.5時間、1時間、6時間、12時間又は24時間乾燥させた。乾燥後、スワブを300μL(フォームスワブの場合)又は500μL(コットンスワブの場合)のDPBSを含む1.7mLのマイクロ遠心分離チューブ中に直ちに保存して、スワブの先端を完全に覆った。スワブのハンドルは、キャップを閉じた状態でチューブに適合するように切断した。
【0041】
表面汚染
500~0.5(HY TME、CWD JB B188及びCWD JB R296)又は1000~1(CWD t1821)μgBEの範囲の脳ホモジネートの10倍連続希釈物を、スライドガラス(Fisherbrand Superfrost Plus Microscope slides、カタログ番号:12-550-15)、ステンレス鋼(316Lグレード、Millard Metal Services、La Vista、NE、US)、又はオーク材クーポン(Lowe's、Omaha、NE、US)にピペットによって塗布した。汚染した表面を室温で24時間乾燥させた後、フォーム付きのスワブで試料を採取した。スワブを超純水で湿らせた後、スワブ表面への曝露を最大にするために回転させながら表面に10回塗布した。陽性対照を調製するために、最高レベルのプリオン(CWD JB B188及びCWD JB R296の場合は500μgBE、CWD t1821の場合は1000μgBE)で汚染した表面を、全ての液体を吸収する様式で汚染直後に乾燥スワブで採取した。プリオン汚染のない表面(陰性対照)を、プリオン汚染表面について記載されているように採取した。RT-QuIC検出用のプリオンで汚染した表面を調製するために、CWD 307 CLの各希釈物(log-2~-6)から50μLをステンレス鋼に塗布し、22℃で24時間乾燥させた後、上記のようにフォーム付きスワブで拭き取った。陽性及び陰性対照を含む各試料について表面を3連で調製した。以前の実験によれば、後続のスワブは検出可能なプリオンを回収できなかったため、各領域について1つのスワブを使用した(表1)。チューブに適合するように切断したスワブの先端を、各々300μLのDPBSを含む1.7mLのマイクロ遠心分離チューブに入れて、フォームの先端を覆い、直ちに抽出した。
【0042】
【0043】
スワブ抽出
マイクロ遠心分離チューブ中のスワブを、プリオン抽出のために振盪又は超音波処理しながらインキュベートした。4反復のスワブをスワブ乾燥実験のために調製した。振盪抽出では、未乾燥又は乾燥スワブを300μL(フォームスワブの場合)又は500μL(コットンスワブの場合)のDPBS中でインキュベートし、1回目の抽出のために室温で30分間、マイクロチューブミキサー(Tomy MT-360、速度5)上で撹拌した。この後、各抽出について30分間、200μL(フォームスワブの場合)又は300μL(コットンスワブの場合)のDPBSを含む異なるマイクロ遠心分離チューブ中でスワブをインキュベートする2回の連続抽出を行った。超音波処理抽出では、マイクロ遠心分離チューブ中に保存したスワブを、超音波処理の間、約170Wの平均出力を生じる、振幅をレベル17に設定したQSonica超音波処理器(モデルQ700)に入れた。各抽出についての所望の合計処理時間の長さ(5秒間、15秒間、30秒間又は60秒間)に応じて、超音波処理を37℃で実施し、異なる回数(1、3、6又は12)の処理サイクル(5秒間の超音波処理、その後の5秒間のインキュベーション)から構成した。各スワブについて、同じ長さの超音波処理時間による3回の連続抽出を適用した。超音波処理抽出のためのバッファーの使用も、振盪の場合と同じであった。抽出物(フォームスワブの場合は各約200μL、コットンスワブの場合は各約300μL)を、濃縮の準備が整うまで-80℃で保存した。表面サンプリングのために使用したスワブを、各抽出について15秒間の超音波処理を使用して2回(陰性表面対照のスワブの場合は1回)抽出した(3回の処理サイクル)。各スワブについて抽出物を合わせ(約400μL)、-80℃で保存した。
【0044】
表面サンプリングに使用したスワブを、各抽出(3回の処理サイクル)について15秒間の超音波処理を使用して2回抽出した(免疫検出用の陰性表面対照のスワブの場合は1回)。抽出物を合わせるか(免疫検出用のスワブの場合は約400μL)、又は別個に保存した(RT-QuIC用のスワブの場合は約200μL)。全ての抽出物を-80℃で保存した。
【0045】
抽出物濃縮
全ての抽出物を、Savant冷却蒸気トラップ(RVT4104)を備えたSavant Speed-Vac濃縮器を用いて減圧濃縮した。試料を、200μL、300μL又は400μLの抽出物についてそれぞれ3時間、4時間又は5時間、高速(チャンバ内で65℃)で蒸発させた。RT-QuIC検出用の抽出物を、SpeedVac(SPD 1030、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、US)を用いて減圧濃縮した。試料を、10Torrの減圧で45℃にて2時間蒸発させ、50μLの超純水で再水和した。濃縮抽出物をそれぞれに応じて10μL、15μL又は20μLの超純水で再水和し、解析前に-80℃で保存した。
【0046】
検出及び定量化
試料を、37℃で30分間、絶えず撹拌しながら、23.25μg/mL(HY TME、CWD JB B188及びCWD JB R296)又は46.5μg/mL(CWD t1821)のプロテイナーゼK(PK)(Roche Diagnostics Corporation、Indianapolis、IN)で消化した。96ウェル免疫ブロットアッセイを、HY TMEに対して一次モノクローナル抗体3F4(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、US;0.1μg/mL、37℃1時間)又はCWDに対して8H4(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、US;0.17μg/mL、37℃1時間)、並びに二次抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgG、Invitrogen、Carlsbad、CA、US;0.01μg/mL、37℃30分間)を用いて実施した。ウェルプレートメンブレンを、製造業者の使用説明書(Pierce、Rockford、IL、US)に従って、Supersignal West Femto最大感度基質を用いて展開し、4000Rイメージングステーション(Kodak、Rochester、NY)で画像化し、各ウェルの正味の強度を出力するKodak(New Haven、CT)分子イメージングソフトウェア(V.5.0.1.27)を使用して解析した。各プレートについて、2倍希釈の対照を調製して、試料強度の定量化に使用するPrPSc存在量の線形回帰(標準曲線)を生成した。スワブ又は表面から回収したPrPScのアリコート(例えば、線形範囲内のシグナルを生成するために1/10)をウェルにロードし、標準曲線に従ってPrPScの量を計算した。次いで、回収したPrPScの総量をアリコートのために調整した。この研究に使用したPrPScの単位は、脳組織の湿重量の対応するμgでPrPSc含有量を示すμg脳当量(BE)であった。回収率を、回収したPrPScの総量と最初にロードしたPrPScの量との比として決定した。統計解析を、GraphPad Prism 8を使用して対応のないパラメトリックウェルチt検定を用いて実施した。
【0047】
結果
表面の乾燥により、穏やかな振盪下で抽出したスワブからのプリオン回収率が減少した
異なる時間乾燥させたスワブの各抽出及び/又は3回の連続抽出からのHY PrP
Sc(
図1A、1B、1C及び1D)及びCWD t1821 PrP
Sc(
図1E、1F、1G及び1H)の検出及び定量化を提示する。乾燥させていない(0時間)フォームスワブからのHY PrP
Scの回収率は、49%±1%(平均±平均の標準誤差)であった(
図1B)。15分の乾燥後(0.25時間)、フォームスワブからのHY PrP
Sc回収率は同様に50%±4%に維持され(p>0.05)、30分の乾燥後(0.5時間)は36%±2%に有意に減少した(p<0.05)(
図1B)。1時間の乾燥後、抽出されたHY PrP
Scは、PrP
Sc検出限界近くになり(
図1A)、回収率はほぼ1%まで有意に減少した(p<0.05)(
図1B)。コットンスワブにHYを塗布すると(
図1C及び1D)、乾燥なし(0時間)ではPrP
Scが51%±12%回収され、15分の乾燥後(0.25時間)は6%未満に有意に減少した(p<0.05)。同様の結果がCWDでも観察された。フォームスワブからでは、0時間、0.25時間及び0.5時間の乾燥後のCWD PrP
Scの総回収率は、それぞれ、68%±7%、58%±3%及び59%±7%であった(
図1E及び1F)。1時間の乾燥後、抽出されたCWD PrP
Scは5%未満まで有意に減少した(p<0.05)(
図1E及び1F)。コットンスワブからでは、乾燥なし(0時間)で43%±3%のCWD PrP
Scが回収され、その後の総CWD回収率は12%以下に有意に減少した(p<0.05)(
図1G及び1H)。
【0048】
フォームスワブとコットンスワブとの相違が、乾燥ダイナミクスに関連しているかどうかを調査するために、HY若しくはCWD PrP
Sc、又は同体積の超純水を含有する両方の種類のスワブの水分含量を測定した。スワブの水分含量の全体的な傾向は全ての条件の間で同様であり、水分含量は30分の表面乾燥後、ほぼ10%まで減少し、1時間の乾燥を通じてさらに減少し(
図1)、コットンスワブとフォームスワブとの間の水分含量の相違は、プリオン回収率に影響を及ぼさなかったことを示唆している。
【0049】
超音波処理を使用した乾燥させたフォームスワブからのHY回収率の向上
より高いエネルギーの機械力が、表面を乾燥させたPrP
Scの抽出効率を改善することができるかどうかを調査するために、穏やかな振盪の代わりに超音波処理を使用した。HYの塗布直後にフォームスワブを、5秒間、15秒間、30秒間及び60秒間超音波処理すると(
図2A及び2B)、総HY PrP
Sc回収率は、それぞれ、66%±16%、58%±4%、51%±4%及び52%±5%になった。HY PrP
Scの回収率は、試験した超音波処理時間と、穏やかに振盪して抽出した未乾燥フォームスワブからの回収率との間で同様であった(p>0.05)(
図1A及び1B)。フォームスワブ上で24時間乾燥させた後、総HY PrP
Sc回収率は、短時間(5秒間)から長時間(60秒間)まで試験した超音波処理時間について、22%±6%、46%±14%、57%±21%及び41%±18%であった。超音波処理して乾燥させたフォームスワブからのPrP
Scの回収率は、穏やかに振盪して抽出した乾燥させたスワブ(1時間以上)からの回収率よりも全体的に有意に(p<0.05)大きかった(
図1A及び1B)。全体として、超音波処理により、乾燥させたフォームスワブからのPrP
Scの回収率が増加した。
【0050】
超音波処理抽出によるフォームスワブからの表面を乾燥させたCWDの回収率は分離株の間で異なった
フォームスワブからの表面を乾燥させたCWDの超音波処理抽出の効率を調べるために、CWDで汚染されたスワブを直ちに(0時間)又は24時間の乾燥後(24時間)、15秒間の超音波処理で抽出した。3回の連続抽出後、未乾燥フォームスワブからの総CWD PrP
Sc回収率は、CWD t1821では57%±4%、CWD JB R296では50%±5%、及びCWD JB B188では34%±3%であった(
図3)。24時間の乾燥後、総CWD PrP
Sc回収率は、それぞれ、13%±2%、32%±3%及び10%±2%に有意に(p<0.05)減少した。CWD t1821又はCWD JB R296のいずれかで汚染された未乾燥のフォームスワブからのPrP
Scの総回収率は、CWD JB B188で汚染されたフォームスワブと比較して有意に(p<0.05)高かったのに対して、24時間乾燥させたフォームスワブからでは、CWD JB R296の総回収率が他の試料よりも高かった(p<0.05)。乾燥させたスワブからのCWD PrP
Scの回収率は、超音波処理抽出により向上した。未乾燥のフォームスワブからでは、総CWD t1821回収率は、穏やかに振盪した場合と超音波処理した場合との間で同様であった(p>0.05)(
図1E及び1F並びに
図3A及び3B)。乾燥させたフォームスワブからの超音波処理抽出は、振盪抽出と比較して、より高い(p<0.05)CWD PrP
Sc回収率をもたらした(
図1E及び1F並びに
図3A及び3B)。
【0051】
ガラス及びステンレス鋼からのプリオン回収率は木材からの回収率よりも高い
3つのCWD分離株で汚染された3つの環境に関連する表面からのプリオンを、フォームスワブを使用してサンプリングした。PrP
Scを、短い超音波処理抽出(15秒間)を使用してスワブから抽出した(
図4)。最も高いレベルのCWDプリオン(CWD t1821では1000μg脳当量(BE)、CWD JB R296及びCWD JB B188では500μgBE)で表面汚染した後の即座の拭き取り、及び即座のスワブ抽出(対照)により、CWD PrP
Scの回収率は、ガラス及びステンレス鋼表面では25%~99%の範囲であり、大部分は約30%であった(表2及び
図4A~4I)。対照的に、CWDによる木材の汚染では、試験した全てのCWD分離株について未乾燥の表面(対照)から有意に低い(p<0.05、
図4G対4J及び4I対4Lを除く)PrP
Scの回収率を生じた(11%~16%)(表2及び
図4A~4C、並びに4J~4L)。最も高い汚染レベルにおいて、全てのCWD分離株は、それらの対照と比較して、ガラス及びステンレス鋼から24時間の乾燥後に同等(p>0.05)の回収率を有した(表2及び
図4A~4I)。しかしながら、最も高い汚染レベルにおいて、24時間の乾燥後の木材から抽出したCWD PrP
Scは、それらの対照と比較して有意に減少した(p<0.05)(表2並びに
図4A~4C及び4J~4L)。他の全てのより低い汚染レベルでは、表面の種類に関係なく、CWD PrP
Scは検出されなかった。プリオン汚染のない表面からのスワブ抽出物(陰性対照)は、全ての表面の種類について検出不可能なCWD PrP
Scを生成した(表3)。
【0052】
【0053】
【0054】
スワブを使用しない実験システムでは、前述のプロセスを経た後でも、2つのCWD分離株のPrP
Scの10~50%は回収されなかった(
図5B及び5D)。
【0055】
しかしながら、HY及び1つのCWD分離株は有意に減少しなかったため(p>0.05)、この寄与は限定される可能性があり、及び/又はプリオン株/分離株によって異なる可能性がある(
図5A及び5C)。
【0056】
まとめると、これらの結果により、ミスフォールドポリペプチド(例えば、CWDプリオン)は、スワブを使用してステンレス鋼、ガラス及び木材から回収できることが実証される。ミスフォールドポリペプチドを回収する方法及び材料は、プリオン検出及び場合により、自然環境におけるモニタリングに使用することができる。
【0057】
[実施例2]
ステンレス鋼表面から拭き取ったCWDのRT-QuIC検出感度
材料及び方法
RT-QuIC反応
RT-QuICを、他で記載されているように実施し、解析した(Schwabenlanderら、J. Wildl. Dis.、58(1):50-62(2022);及びWilhamら、PloS Pathog.、6(12):e1001217(2010))。簡潔に述べると、対照連続希釈物及び実施例1からのスワブ抽出物を、0.1%のSDS/1X PBS/1x N2中で10倍に希釈した。2μLの対照及びスワブ抽出希釈物を98μLのRT-QuIC反応バッファーに添加した。反応バッファーは以下の濃度で作製した:1X PBS、170mMのNaCl、1mMのEDTA、10μMのチオフラビンT(ThT)及び0.1mg/mLの組換えハムスタープリオンタンパク質(recHaPrP)。反応を、45分ごとに48時間、およそ450/480の最大励起/放出で発光するThT蛍光について読み取った。振盪を700rpmの二重軌道で1分間実施し、1分間休止した。最大点比(MRP)を、他で記載されているように、各ウェルの最大蛍光を取得し、それを初期蛍光(すなわち、バックグラウンド蛍光)で割ることによって計算した(Vendramelliら、J. Clin. Microbiol.、56:e00423-18(2018))。アミロイド形成速度(RAF)も、蛍光がバックグラウンド蛍光の2倍に達するのに必要な時間の逆数としてウェルごとに計算した。
【0058】
結果
スワブ及びステンレス鋼表面からのCWDプリオンのRT-QuIC検出
最適化されたプリオンスワブ抽出法を表面から拭き取ったプリオンの検出に適用するために、次の実験方法を利用した。まず、CWD感染脳(分離株307CL)の連続10倍希釈物を、10
-2(10μg脳当量/ml)~10
-6(0.001μg脳当量/ml)の範囲で調製した(
図8A)。これらの希釈物をRT-QuICで直接解析した結果、10
-5の検出限界が生じた(
図8B及び8Cの対照)。次に、CWD感染脳の同じ連続10倍希釈物を、フォーム付きのスワブに塗布し、最適化されたプロトコールを使用して抽出し、RT-QuICを使用して抽出物を解析した結果、3回全ての実験的反復において10
-5の検出限界が生じた(
図8A及び8B)。最後に、CWD感染脳の同じ連続10倍希釈物を、ステンレス鋼の表面に塗布し、22℃で24時間乾燥させ、次いで表面を拭き取り、最適化されたプロトコールを使用してスワブを抽出し、RT-QuICを使用した抽出物の解析の結果、3回全ての実験的反復において10
-5の検出限界が生じた(
図8A及び8C)。RT-QuIC CWDの検出限界は、CWD感染脳の連続10倍希釈物の直接解析、スワブに直接塗布したCWDの解析(
図8Bのプール)、及びステンレス鋼表面に塗布し、24時間乾燥させ、次いで拭き取ったCWD(
図8Cのプール)の間で同様であった。CWDを同じスワブから2回目に抽出して、さらなるRT-QuICシーディング活性が回収できるかどうかを判定した。スワブに直接塗布されたCWDプリオン(
図8B)、又は表面から回収されたCWDプリオン(
図8C)の2回目の抽出からのRT-QuICシーディング活性は、最初の抽出と比較して1log減少した(
図9)。RAF解析では、1回目(
図10)及び2回目(
図11)の抽出物の両方で一貫した結果が観察された。DPBSをロードしたスワブ及び非汚染表面であった陰性対照の抽出物は、RT-QuIC反応を開始しなかった(
図12)。全体として、スワブサンプリングによってステンレス鋼表面から回収したCWDプリオンのRT-QuIC検出は、RT-QuIC反応に直接添加した場合のCWDプリオンの検出に匹敵した。
【0059】
まとめると、これらの結果により、超高感度検出方法と組み合わせたプリオンのサンプリング及び回収の方法は、汚染された環境表面からの高感度プリオン検出を可能にすることが実証される。
【0060】
[実施例3]
ステンレス鋼表面から拭き取られたCWD及びTSEのRT-QuIC検出
この実施例は、CWDに加えて他のプリオン、及び他のプリオン様ポリペプチドが、RT-QuICによって検出できることを実証する。この実施例はまた、RT-QuICが様々な超音波処理及び濃縮条件でミスフォールドポリペプチドを首尾よく検出できることを実証する。
【0061】
材料及び方法
RT-QuICにおいて異なる超音波処理及び濃縮条件を使用できるかどうかを調べるために、次の実験を実施した。
【0062】
合成アルファ-シヌクレイン及びヒツジスクレイピー、伝達性ミンク脳症(TME)、ウシ適応TME又はリスザル適応CWDプリオンを含む4つのプリオン株により影響を受けた脳ホモジネート(10%w/v)を、PBSで所望のレベルまで希釈して、ステンレス鋼の表面を汚染させた(表4)。CWD 307 CL及びPBSを、抽出及び検出のための陽性対照及び陰性対照として試験した。各希釈物からの50μLの試料を3連でステンレス鋼表面に添加し、室温で24時間乾燥させた。フォーム付きスワブを超純水で湿らせて表面を拭き取った。スワブを、500μLのPBSを予めロードした15mLのコニカルチューブ(チューブ当たり1つのスワブ)に入れるか、又は300μLのPBSを予めロードした1.7mLのマイクロ遠心分離チューブ(チューブ当たり1つのスワブ)に適合するようにハンドルをカットし、次いで試料を抽出し、試験条件下で濃縮した(表5)。各スワブを1回抽出した。15mLのチューブからの抽出物を、濃縮のために1.7mLのマイクロ遠心分離チューブに移した。減圧濃縮試料の場合、N-2(1x)を補充したPBS中の0.1%のSDS 50μLを再懸濁のために添加した。遠心分離濃縮試料の場合、上清をピペットによって収集し、目に見えないペレットを、PBS中の50μL(307CL)又は20μL(合成アルファ-シヌクレイン)の0.1%のSDSに再懸濁した。再懸濁後、試料をRT-QuICプレートに直接ロードするか、又は検出のためにさらに希釈した。
【0063】
【0064】
結果
試験した条件の全ての試料は首尾よく検出され、約0.72~約8.84ワット/cm
2の範囲の超音波強度が、減圧濃縮及び16000×g以上の遠心分離の両方を用いてステンレス鋼表面から拭き取られた様々なミスフォールドポリペプチドを抽出できることを示している。マイクロ遠心分離チューブ及び遠心分離チューブの両方をスワブ抽出のために使用することができる。ステンレス鋼表面から拭き取られたミスフォールドポリペプチドの最大点比(MPR)としてのRT-QuIC検出を
図13に示す。
【0065】
【0066】
[実施例4]
環境におけるCWDの群れレベルの監視
少なくとも1つの試料収集表面(例えば、ステンレス鋼試料収集表面)を有する給餌装置を、シカの群れが生息していることが知られている領域(例えば、特定の地理的領域及び/又は農場)に配置する。例示的な給餌装置を
図6及び
図7に示す。
【0067】
少なくとも1つの試料収集表面(例えば、ステンレス鋼の試料収集表面)を有する給餌装置から餌を食べるとき、シカ科は、唾液及び/又は粘液の付着物を試料収集表面上に残す。給餌装置の試料収集表面(例えば、ステンレス鋼の試料収集表面)を、付着した唾液及び/又は粘液中のミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)の存在又は不在について検査する。例えば、給餌装置の試料収集表面(例えば、ステンレス鋼の試料収集表面)を、フォームスワブ及び/又はコットンスワブで拭き取る。場合により、スワブは湿潤状態(例えば、バッファー溶液、例えば、PBS溶液中)で維持される。ポリペプチドは、実施例1に記載されるようにスワブから抽出される。ミスフォールドポリペプチド(例えば、PrPSc)が存在する場合、実施例1に記載されるように検出され、定量される。
【0068】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、上述の説明は例示することを目的としており、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点及び変更は、特許請求の範囲内である。
【国際調査報告】