(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】レーザーレーダーの制御方法及びレーザーレーダー
(51)【国際特許分類】
G01S 17/10 20200101AFI20240528BHJP
G01S 7/484 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01S17/10
G01S7/484
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575486
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 CN2022081305
(87)【国際公開番号】W WO2022257530
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110631357.X
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519434972
【氏名又は名称】上海禾賽科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Hesai Technology Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2 Building,No.468 XinLai Road,Jiading District,Shanghai,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】孫▲かい▼
(72)【発明者】
【氏名】向少卿
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA01
5J084AA05
5J084AD01
5J084CA62
5J084EA25
5J084EA29
(57)【要約】
S101パルス符号化及び現在のエネルギー分配戦略に基づき、レーザーパルス信号を送信するステップであって、レーザーパルス信号が、パルス符号化を用いた複数の目標物探知用のレーザーパルスを含むステップと、S102目標物によって反射された複数のレーザーパルスのエコー情報を受信するステップと、S103目標物のエコー情報に基づき、レーザーレーダーの次の送信時に使用されるエネルギー分配戦略を更新するステップと、を含む、レーザーレーダーの制御方法である。近距離範囲におけるクロストーク防止の需要と、遠距離範囲における探知精度及び探知性能の向上を両立し、人間の目の安全要件を満たしながら、レーザーパルスエネルギーの最も効率的な利用を得ている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S101パルス符号化及び現在のエネルギー分配戦略に基づき、レーザーパルス信号を送信するステップであって、前記レーザーパルス信号が、前記パルス符号化を用いた複数の目標物探知用のレーザーパルスを含むステップと、
S102目標物によって反射された前記複数のレーザーパルスのエコー情報を受信するステップと、
S103前記目標物のエコー情報に基づき、前記レーザーレーダーの次の送信時に使用される前記エネルギー分配戦略を更新するステップと、を含む、レーザーレーダーの制御方法。
【請求項2】
前記複数のレーザーパルスのエネルギーの和は第1エネルギー閾値より小さく、前記第1エネルギー閾値は、プリセット時間内に送信されるパルスの総エネルギーが人間の目の安全閾値より小さい要求に基づいて決定される、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記複数のレーザーパルスは、少なくとも1つの遠距離探知パルスと少なくとも1つの近距離探知パルスを含み、ステップS103は、
前記目標物のエコー情報に基づいて測距条件を判断し、測距条件が遠距離探知条件である場合、前記遠距離探知パルスのエネルギーを上げるステップをさらに含む、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
ステップS103は、
前記測距条件が遠距離探知条件である場合、前記遠距離探知パルスのエネルギーを上げ、前記近距離探知パルスのエネルギーを下げるステップをさらに含み、且つ前記近距離探知パルスのエネルギーが第2エネルギー閾値より大きい、請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記遠距離探知条件は前記目標物が第1距離範囲外にあることを含み、前記第2エネルギー閾値は第2距離範囲の探知需要に基づいて決定され、前記第2距離範囲は前記第1距離範囲以下である、請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記測距条件が遠距離探知条件である場合、前記複数のレーザーパルスのエネルギーの和が前記第1エネルギー閾値に近づくまで、探知のたびに前記遠距離探知パルスのエネルギーを段階的に上げる、請求項3~5のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記測距条件が遠距離探知条件である場合、次の探知で、前記複数のレーザーパルスのエネルギーの和が前記第1エネルギー閾値に近づき、且つ前記近距離探知パルスのエネルギーが前記第2エネルギー閾値に近づくように、前記遠距離探知パルスのエネルギーを上げる、請求項4又は5に記載の制御方法。
【請求項8】
前記複数のレーザーパルスは、少なくとも1つの遠距離探知パルスと少なくとも1つの近距離探知パルスを含み、ステップS103は、
前記目標物のエコー情報に基づいて測距条件を判断し、測距条件が近距離探知条件である場合、前記遠距離探知パルスのエネルギーを下げ、前記近距離探知パルスのエネルギーを上げるステップをさらに含み、且つ同一の送信において前記近距離探知パルスのエネルギーが前記遠距離探知パルスのエネルギー以下である、請求項2に記載の制御方法。
【請求項9】
前記測距条件が近距離探知条件である場合、次の探知でエネルギーが近い前記遠距離探知パルスと前記近距離探知パルスを送信し、且つ前記複数のレーザーパルスのエネルギーの和が前記第1エネルギー閾値に近づくようにする、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記レーザーレーダーの次の送信における前記複数のレーザーパルスのエネルギー分配を調整することにより、前記複数のレーザーパルスの強度ピーク又はパルス幅を調整するステップをさらに含む、請求項1~5、8、9のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項11】
前記複数のレーザーパルスの最大駆動電流/電圧を高めることにより、前記複数のレーザーパルスのパルスピークを高めるステップをさらに含む、請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
駆動電流/電圧を一定に保ち、前記複数のレーザーパルスの送信時間を延長/短縮することにより、前記複数のレーザーパルスのパルス幅を拡大/短縮するステップをさらに含む、請求項10に記載の制御方法。
【請求項13】
前記複数のレーザーパルスに対応するエコー情報に基づき、前記目標物の距離を算出するステップをさらに含む、請求項1~5、8、9のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項14】
パルス符号化及び現在のエネルギー分配戦略に基づき、レーザーパルス信号を送信する送信ユニットであって、前記レーザーパルス信号が、前記パルス符号化を用いた複数の目標物探知用のレーザーパルスを含む送信ユニットと、
目標物によって反射された前記複数のレーザーパルスのエコー情報を受信するように構成される受信ユニットと、
前記目標物のエコー情報に基づき、前記レーザーレーダーの次の送信時に使用される前記エネルギー分配戦略を更新するように構成される制御ユニットと、を含む、レーザーレーダー。
【請求項15】
前記複数のレーザーパルスのエネルギーの和は第1エネルギー閾値より小さく、前記第1エネルギー閾値は、プリセット時間内に送信されるパルスの総エネルギーが人間の目の安全閾値より小さい要求に基づいて決定される、請求項14に記載のレーザーレーダー。
【請求項16】
前記複数のレーザーパルスは、少なくとも1つの遠距離探知パルスと少なくとも1つの近距離探知パルスを含み、前記制御ユニットはさらに、
前記目標物のエコー情報に基づいて測距条件を判断し、測距条件が遠距離探知条件である場合、前記遠距離探知パルスのエネルギーを上げるように構成される、請求項15に記載のレーザーレーダー。
【請求項17】
前記制御ユニットはさらに、
前記測距条件が遠距離探知条件である場合、前記遠距離探知パルスのエネルギーを上げ、前記近距離探知パルスのエネルギーを下げるように構成され、且つ前記近距離探知パルスのエネルギーが第2エネルギー閾値より大きい、請求項16に記載のレーザーレーダー。
【請求項18】
前記遠距離探知条件は前記目標物が第1距離範囲外にあることを含み、前記第2エネルギー閾値は第2距離範囲の探知需要に基づいて決定され、前記第2距離範囲は前記第1距離範囲以下である、請求項17に記載のレーザーレーダー。
【請求項19】
前記送信ユニットは少なくとも1つのレーザー機器を含み、前記レーザーレーダーは、
前記少なくとも1つのレーザー機器及び前記制御ユニットに結合され、前記制御ユニットの制御下で、前記レーザーレーダーの次の送信における前記複数のレーザーパルスのパルスピークを調整するために前記少なくとも1つのレーザー機器の駆動電流/電圧を調節できるように構成される第1エネルギー調節ユニットをさらに含む、請求項14~18のいずれか1項に記載のレーザーレーダー。
【請求項20】
前記送信ユニットは少なくとも1つのレーザー機器を含み、前記レーザーレーダーは、
前記少なくとも1つのレーザー機器及び前記制御ユニットに結合され、前記制御ユニットの制御下で、前記レーザーレーダーの次の送信における前記複数のレーザーパルスのパルス幅を調整するために前記少なくとも1つのレーザー機器の送信時間を調節できるように構成される第2エネルギー調節ユニットをさらに含む、請求項14~18のいずれか1項に記載のレーザーレーダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してレーザー探知の技術分野に関し、特に、レーザーレーダーの制御方法及びレーザーレーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーレーダーを用いた測距は、通常、直接飛行時間法(TOF)に基づいており、つまり、幅が狭いがピーク出力が高いレーザーパルスを送信し、レーザーパルスがレーザーレーダーと目標物との間を往復する飛行時間を測定することによって測距される。
【0003】
同じ測定範囲内で、同時に複数台のレーザーレーダーが動作するシーンにおいて、例えば、1台の車両に複数台のレーザーレーダーが設置されている場合や、レーザーレーダーが設置されている複数の車両が近い場合、レーザーレーダーの測定原理は送信したレーザーパルスの飛行時間を測定することに基づいているため、各レーザーレーダーが、受信したエコーパルスが自身で送信したものか否かを判断できないと、他のレーダーから送信したエコーパルスを受信した時にもエコー信号と判定してしまう確率があり、結果として、測距結果に誤りが生じ、つまりクロストークが発生する。複数台のレーザーレーダーが同時に動作する時の、異なるレーザーレーダー間の相互干渉の問題はその発展を制約するボトルネックの1つとなっている。
【0004】
現在、マルチパルス符号化の方式を用いてエコー信号を認識することは、レーザーレーダーの有効な干渉防止方法であるが、パルス符号化の使用は、レーザーレーダーの遠距離探知の性能に影響を与える。
【0005】
これは、レーザーレーダーがパルスを送信するたびのエネルギーが人間の目の安全要件の範囲よって制限されるためである。つまり、パルスを送信するたびのエネルギーを無制限に上げることはできず、人間の目の安全閾値を下回る必要がある。
【0006】
例えば、中国では、『中華人民共和国国家標準レーザー製品安全第14部ユーザーガイド』によれば、レーザー機器は4つのカテゴリーに分類される。カテゴリー1は、対応する波長及び送信持続時間内で、レーザー放射がカテゴリー1の閾値を超えないレーザー製品である。カテゴリー1Mは、0.3~4μmの波長範囲内で、エネルギー閾値がカテゴリー1を超えず、且つより小さい測定開口を用いたものである。カテゴリー2は、対応する波長及び送信持続時間内で、レーザー放射がカテゴリー2の閾値を超えないレーザー製品である。カテゴリー2Mは、0.7~1.4μmの波長範囲内で、エネルギー閾値がカテゴリー2を超えず、且つより小さい測定開口を用いるか、又は表現光からより遠い場所で評価されるものである。カテゴリー3R及び3Bは、任意の波長範囲内で、カテゴリー1、カテゴリー2のエネルギー閾値を超えてもよいが、3Rと3Bの各々のエネルギー閾値を超えないレーザー製品である。カテゴリー4は、人との接触がカテゴリー3Bの達成可能な送信限界を超える可能性があるレーザー製品である。
【0007】
実際の応用過程では、レーザーが人の目に直接照射されると、人の目にダメージを与えることがあるため、レーザー機器の選択には厳しい要件がある。通常、レーザー機器の波長は0.7~1.4μmに設定され、『ガイドライン』の分類によると、裸眼に安全な最大限度はカテゴリー3Rである。波長905nmを例とすると、照射持続時間tが10sに等しく、パルス繰り返し周波数fが8.8kHzであると仮定すると、この時間内のパルス数Nは8×104個であり、角膜への最大許容照射量MPEMAXは2601.4J/m2である。式MPEaverage=MPEmax/Nにより、単一パルスの照射量MPEAVERAGEは0.033J/m2であると算出される。連続パルスを採用すると、連続パルスのMPETRAINは1.962μJ/m2であると算出される。
【0008】
また、国際基準によれば、照射角度が規定されている場合、レーザー波長は単一パルスの最大許容照射量に影響する。同じ照射時間で、送信されるパルス周波数が増加するにつれて、連続パルスの最大許容照射量は減少し、同じレーザー繰り返し周波数の場合、照射時間が増加するにつれて、連続パルスの最大許容照射量は減少する。単一パルスのエネルギーは繰り返しパルスのエネルギーよりも低い。つまり、レーザーの最大許容照射エネルギーは、波長、繰り返し周波数、照射角度、及び照射時間によって共同で決定される。
【0009】
上記した人間の目の安全要件の制約のもとでは、レーザーレーダーが1回の探知で送信するパルス数が多いほど、各パルスに割り当てられるエネルギーが少なくなり、探知可能な距離が近くなる。1回の探知で単一パルスのみを送信すると、クロストーク防止の問題をうまく解決できず、レーザーレーダーの点群品質に大きな影響を与えることがある。マルチパルス符号化技術が採用される背景の下で、どのようにレーザーレーダーの遠距離探知能力と人間の目の安全要件を両立させるかは、当分野で早急に解決すべき技術問題である。
【0010】
背景技術部分の内容は公開者が知っている技術に過ぎず、当分野の従来技術を表すものではない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、従来技術の少なくとも1つの欠点に鑑みて、
S101パルス符号化及び現在のエネルギー分配戦略に基づき、レーザーパルス信号を送信するステップであって、前記レーザーパルス信号が、前記パルス符号化を用いた複数の目標物探知用のレーザーパルスを含むステップと、
S102目標物によって反射された前記複数のレーザーパルスのエコー情報を受信するステップと、
S103前記目標物のエコー情報に基づき、前記レーザーレーダーの次の送信時に使用される前記エネルギー分配戦略を更新するステップと、を含む、レーザーレーダーの制御方法を提供する。
【0012】
本発明の一態様によれば、前記複数のレーザーパルスのエネルギーの和は第1エネルギー閾値より小さく、前記第1エネルギー閾値は、プリセット時間内に送信されるパルスの総エネルギーが人間の目の安全閾値より小さい要求に基づいて決定される。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記複数のレーザーパルスは、少なくとも1つの遠距離探知パルスと少なくとも1つの近距離探知パルスを含み、ステップS103は、
前記目標物のエコー情報に基づいて測距条件を判断し、測距条件が遠距離探知条件である場合、前記遠距離探知パルスのエネルギーを上げるステップをさらに含む。
【0014】
本発明の一態様によれば、ステップS103は、
前記測距条件が遠距離探知条件である場合、前記遠距離探知パルスのエネルギーを上げ、前記近距離探知パルスのエネルギーを下げるステップをさらに含み、且つ前記近距離探知パルスのエネルギーが第2エネルギー閾値より大きい。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記遠距離探知条件は前記目標物が第1距離範囲外にあることを含み、前記第2エネルギー閾値は第2距離範囲の探知需要に基づいて決定され、前記第2距離範囲は前記第1距離範囲以下である。
【0016】
本発明の一態様によれば、前記測距条件が遠距離探知条件である場合、前記複数のレーザーパルスのエネルギーの和が前記第1エネルギー閾値に近づくまで、探知のたびに前記遠距離探知パルスのエネルギーを段階的に上げる。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記測距条件が遠距離探知条件である場合、次の探知で、前記複数のレーザーパルスのエネルギーの和が前記第1エネルギー閾値に近づき、且つ前記近距離探知パルスのエネルギーが前記第2エネルギー閾値に近づくように、前記遠距離探知パルスのエネルギーを上げる。
【0018】
本発明の一態様によれば、前記複数のレーザーパルスは、少なくとも1つの遠距離探知パルスと少なくとも1つの近距離探知パルスを含み、ステップS103は、
前記目標物のエコー情報に基づいて測距条件を判断し、測距条件が近距離探知条件である場合、前記遠距離探知パルスのエネルギーを下げ、前記近距離探知パルスのエネルギーを上げるステップをさらに含み、且つ同一の送信において前記近距離探知パルスのエネルギーが前記遠距離探知パルスのエネルギー以下である。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記測距条件が近距離探知条件である場合、次の探知でエネルギーが近い前記遠距離探知パルスと前記近距離探知パルスを送信し、且つ前記複数のレーザーパルスのエネルギーの和が前記第1エネルギー閾値に近づくようにする。
【0020】
本発明の一態様によれば、前記制御方法は、
前記レーザーレーダーの次の送信における前記複数のレーザーパルスのエネルギー分配を調整することにより、前記複数のレーザーパルスの強度ピーク又はパルス幅を調整するステップをさらに含む。
【0021】
本発明の一態様によれば、前記制御方法は、
前記複数のレーザーパルスの最大駆動電流/電圧を高めることにより、前記複数のレーザーパルスのパルスピークを高めるステップをさらに含む。
【0022】
本発明の一態様によれば、前記制御方法は、
駆動電流/電圧を一定に保ち、前記複数のレーザーパルスの送信時間を延長/短縮することにより、前記複数のレーザーパルスのパルス幅を拡大/短縮するステップをさらに含む。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記制御方法は、
前記複数のレーザーパルスに対応するエコー情報に基づき、前記目標物の距離を算出するステップをさらに含む。
【0024】
本発明は、
パルス符号化及び現在のエネルギー分配戦略に基づき、レーザーパルス信号を送信する送信ユニットであって、前記レーザーパルス信号が、前記パルス符号化を用いた複数の目標物探知用のレーザーパルスを含む送信ユニットと、
目標物によって反射された前記複数のレーザーパルスのエコー情報を受信するように構成される受信ユニットと、
前記目標物のエコー情報に基づき、前記レーザーレーダーの次の送信時に使用される前記エネルギー分配戦略を更新するように構成される制御ユニットと、を含む、レーザーレーダーをさらに提供する。
【0025】
本発明の一態様によれば、前記複数のレーザーパルスのエネルギーの和は第1エネルギー閾値より小さく、前記第1エネルギー閾値は、プリセット時間内に送信されるパルスの総エネルギーが人間の目の安全閾値より小さい要求に基づいて決定される。
【0026】
本発明の一態様によれば、前記複数のレーザーパルスは、少なくとも1つの遠距離探知パルスと少なくとも1つの近距離探知パルスを含み、前記制御ユニットはさらに、
前記目標物のエコー情報に基づいて測距条件を判断し、測距条件が遠距離探知条件である場合、前記遠距離探知パルスのエネルギーを上げるように構成される。
【0027】
本発明の一態様によれば、前記制御ユニットはさらに、
前記測距条件が遠距離探知条件である場合、前記遠距離探知パルスのエネルギーを上げ、前記近距離探知パルスのエネルギーを下げるように構成され、且つ前記近距離探知パルスのエネルギーが第2エネルギー閾値より大きい。
【0028】
本発明の一態様によれば、前記遠距離探知条件は前記目標物が第1距離範囲外にあることを含み、前記第2エネルギー閾値は第2距離範囲の探知需要に基づいて決定され、前記第2距離範囲は前記第1距離範囲以下である。
【0029】
本発明の一態様によれば、前記送信ユニットは少なくとも1つのレーザー機器を含み、前記レーザーレーダーは、
前記少なくとも1つのレーザー機器及び前記制御ユニットに結合され、前記制御ユニットの制御下で、前記レーザーレーダーの次の送信における前記複数のレーザーパルスのパルスピークを調整するために前記少なくとも1つのレーザー機器の駆動電流/電圧を調節できるように構成される第1エネルギー調節ユニットをさらに含む。
【0030】
本発明の一態様によれば、前記送信ユニットは少なくとも1つのレーザー機器を含み、前記レーザーレーダーは、
前記少なくとも1つのレーザー機器及び前記制御ユニットに結合され、前記制御ユニットの制御下で、前記レーザーレーダーの次の送信における前記複数のレーザーパルスのパルス幅を調整するために前記少なくとも1つのレーザー機器の送信時間を調節できるように構成される第2エネルギー調節ユニットをさらに含む。
【0031】
本発明の好ましい実施例はレーザーレーダーの制御方法を提供し、時間間隔で符号化された複数のレーザーパルスを送信し、目標物のエコー情報に基づき、次の送信における複数のレーザーパルスのエネルギー分配を調整する。本発明の好ましい実施例は、近距離範囲におけるクロストーク防止の需要と、遠距離範囲における探知精度及び探知性能の向上を両立し、人間の目の安全要件を満たしながら、レーザーパルスエネルギーの最も効率的な利用を得ている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図面は本発明の実施例を更に理解させ、明細書の一部を構成するためのものであり、本発明の実施例と共に本発明を解釈するために用いられるが、本発明を限定するものではない。図面の説明を次に記載する。
【
図1】本発明の好ましい一実施例に係るレーザーレーダーの制御方法を示す。
【
図2】人間の目に安全なレーザー出力の経時変化曲線を模式的に示す。
【
図3】レーザーレーダーの送信パルスシーケンス及びそのエコーパルスシーケンスを模式的に示す。
【
図4】レーザーレーダーの送信パルスシーケンス及び受信した他のレーダーのエコーパルスシーケンスを模式的に示す。
【
図5A】本発明の好ましい一実施例に係る少なくとも1つの近距離探知パルスと少なくとも1つの遠距離探知パルスの送信を模式的に示す。
【
図5B】本発明の好ましい一実施例に係る少なくとも1つの近距離探知パルスと少なくとも1つの遠距離探知パルスの送信を模式的に示す。
【
図6】本発明の好ましい一実施例に係る少なくとも1つの近距離探知パルスと少なくとも1つの遠距離探知パルスの異なる距離範囲におけるエコー状況を模式的に示す。
【
図7A】本発明の好ましい一実施例に係るパルス幅が同じ又は近似し、ピーク出力が異なる少なくとも1つの近距離探知パルスと少なくとも1つの遠距離探知パルスの送信を模式的に示す。
【
図7B】本発明の好ましい一実施例に係るピーク出力が同じ又は近似し、パルス幅が異なる少なくとも1つの近距離探知パルスと少なくとも1つの遠距離探知パルスの送信を模式的に示す。
【
図8】本発明の好ましい一実施例に係るレーザー機器の駆動回路を模式的に示す。
【
図9A】本発明の別の好ましい実施例に係るレーザー機器の駆動回路を模式的に示す。
【
図9B】
図9Aの駆動回路の各ノードのタイミング変化を示す。
【
図10】本発明の好ましい一実施例に係るエネルギー調節回路を模式的に示す。
【
図11】本発明の好ましい一実施例に係るスイッチ制御信号によるレーザーパルス信号のトリガを模式的に示す。
【
図12A】本発明の好ましい一実施例に係るスイッチ制御信号による符号化ダブルパルスのトリガを模式的に示す。
【
図12B】本発明の好ましい一実施例に係るスイッチ制御信号による別の符号化ダブルパルスのトリガを模式的に示す。
【
図13】本発明の好ましい一実施例に係るレーザーレーダーを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下において、単にいくつかの例示的な実施例を簡単に説明する。当業者に認識され得るように、説明された実施例は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な異なる方法で修正されてもよい。したがって、図面及び説明は、本質的に例示と見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。
【0034】
本発明の説明では、理解すべきところとして、用語の「中心」、「縦方向」、「横向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「后」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「逆時計回り」等で示す方位又は位置関係は図面に基づくものであり、本発明を容易に説明し記述を簡略化するためのものに過ぎず、記載される装置又は素子は必ず特定の方位を有したり、特定の方位で構成、操作されたりすることを明示又は暗示することがないので、本発明を限定するものと理解してはならないことである。また、用語の「第1」、「第2」は説明のためのものに過ぎず、相対的重要性を明示又は暗示したり、説明される技術特徴の数量を暗示したりするものと理解してはならない。したがって、「第1」、「第2」と限定される特徴は、1つ又は1つ以上の前記特徴を明示的又は暗示的に含んでもよい。本発明の説明では、明確且つ具体的に限定しない限り、「複数」は2つ又は2つ以上を意味する。
【0035】
本発明の説明では、説明すべきところとして、明確に規定、限定しない限り、用語の「取り付ける」、「連結する」、「接続する」を広義的に理解すべきであり、例えば、固定接続や、着脱可能な接続や、或いは一体的な接続でも可能であり、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続であってもよいし、通信によるものであってもよいし、直接接続であってもよいし、中間媒体によって間接的に接続されてもよいし、2つの素子の内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本発明での具体的な意味を理解することができる。
【0036】
本発明において、別に明確に規定、限定しない限り、第1特徴が第2特徴の「上」又は「下」にあるというのは、第1と第2特徴が直接接触する場合を含んでもよいし、第1と第2特徴が直接接触せず、それらの間の別の特徴を介して接触する場合を含んでもよい。また、第1特徴が第2特徴の「上」、「上方」及び「上面」にあるというのは、第1特徴が第2特徴の真上及び斜め上方にある場合を含み、又は単に第1特徴の水平高さが第2特徴より高いことを意味する。第1特徴が第2特徴の「下」、「下方」及び「下面」にあるというのは、第1特徴が第2特徴の真下及び斜め下方にある場合を含み、又は単に第1特徴の水平高さが第2特徴より小さいことを意味する。
【0037】
以下の開示は、本発明の異なる構造を実現するために、多くの異なる実施形態又は例を提供する。本発明の開示を簡略化するために、以下の記載では、特定例の部材及び設定について説明する。当然ながら、これらは単なる例であり、本発明を限定することを目的とするものではない。また、本発明は、種々の例において参照数字及び/又は参照アルファベット文字を繰り返すことができるが、このような繰り返しは、簡略化及び明確化を目的とし、それ自身は、論じている種々の実施形態及び/又は設定間の関係を指示しない。また、本発明は、様々な特定のプロセス及び材料の例を提供するが、当業者であれば、他のプロセス及び/又は他の材料の使用を意識することができる。
【0038】
以下では図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。以下に説明する実施例は本発明を説明、解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定する意図がないことを理解すべきである。
【0039】
現在、レーザーレーダーは、干渉を防止するために、通常、パルス符号化の方式を採用している。パルス符号化方式の基本的な考え方は、レーザーレーダーが、プリセット符号化情報を含む目標物探知用のレーザーパルスを送信し、エコーを受信する時、プリセット符号化により認識し、本レーダーから発した探知ビームの反射エコーを特定することである。
【0040】
パルス符号化は、時間間隔符号化、ピーク強度符号化、パルス幅符号化等の符号化方式のうちの1つ又は複数を使用することができる。例えば、時間間隔で符号化し、時間符号化情報を含む複数のレーザーパルスを送信し、好ましくは、プリセット時間間隔を有するダブルレーザーパルスを送信し、受信側で、パルスエコーの時間間隔に基づき、該エコーが本レーダーから発した探知ビームの反射エコーであるか否かを判断する。該プリセット時間間隔を有する2つのレーザーパルスに含まれるパルスのエネルギーは同じでも異なっていてもよく、つまり、エネルギーの大きさが異なるダブルレーザーパルスを送信することができる。
【0041】
また例えば、ピーク強度で符号化し、ピーク強度符号化情報を含む複数のレーザーパルスを送信し、好ましくは、ピーク強度が「高-低-高」の変化傾向を有する3つのレーザーパルスを送信し、受信側で、パルスエコーのピーク強度の比率(パルスエコーのピーク強度は送信パルスに比べて減衰するが、比率は基本的に変化せず、且つ一定の許容差を設定することができる)に基づき、該パルスエコーが本レーダーから発した探知ビームの反射エコーであるか否かを判断する。
【0042】
また例えば、パルス幅で符号化し、パルス幅符号化情報を含む複数のレーザーパルスを送信し、好ましくは、パルス幅が「広-狭-広」の変化傾向を有する3つのレーザーパルスを送信し、受信側で、パルスエコーのパルス幅の比率(エコーパルスの幅は送信パルスに比べて広くなるが、比率は基本的に変化せず、且つ一定の許容差を設定することができる)に基づき、該パルスエコーが本レーダーから発した探知ビームの反射エコーであるか否かを判断する。
【0043】
しかし、パルス符号化の方式を使用すると、1回の探知で複数のレーザーパルスを送信する必要があることになる。人間の目の安全上の理由から、各探知でレーザーレーダーにより送信されるパルスの総エネルギーは制限されている。
【0044】
パルス符号化の方式を使用すると、1回の探知で使用可能なパルスエネルギーを複数のレーザーパルスに分配する必要があり、複数のレーザーパルスの各々の振幅/パルス幅が影響を受ける。1回の探知で単一パルスのみを送信する方式に比べて、パルス符号化を使用する方式では各パルスで得られるエネルギーは低く、結果として、レーザーレーダーの遠距離探知の性能が低下する。
【0045】
本発明の好ましい実施例はレーザーレーダーの制御方法を提供し、人間の目の安全要件を満たす範囲内で、遠距離探知パルスのエネルギーを可能な限り増加させ、近距離探知パルスの最低レベルを可能な限り下げ、符号化情報を含むレーザーパルスがより優れた遠距離探知の性能を持つことができるようにするとともに、近距離測定におけるクロストーク防止效果を達成することもできる。レーザーレーダーの遠距離探知の性能とクロストーク防止機能の間でトレードオフをし、パルスエネルギーの最も効率的な利用を得ている。
【0046】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図1に示すように、本発明は、レーザーレーダーの制御方法10を提供し、該方法10は次のステップS101、ステップS102及びステップS103を含む。
【0047】
ステップS101で、パルス符号化及び現在のエネルギー分配戦略に基づき、レーザーパルス信号を送信し、該レーザーパルス信号は、該パルス符号化を用いた複数の目標物探知用のレーザーパルスを含む。該パルス符号化は、上記した時間間隔符号化、ピーク強度符号化、パルス幅符号化のうちの1つ又は複数を使用することができ、エネルギー分配戦略の前提は、送信されるパルスのエネルギーの総和が人間の目の安全閾値より小さいことである。
【0048】
図2は、人間の目に安全なレーザー出力の経時変化曲線図(異なる波長、繰り返し周波数、照射角度及び照射時間によって異なることがあり、即ち、レーザーレーダーのタイプよって、該変化曲線は異なる場合がある)を模式的に示す。1回の探知でパルスが送信される時間の総和が5μsよりもはるかに小さいので、1回の探知で送信されるパルスのエネルギーの総和を5μs以内の人間の目に安全なエネルギー閾値よりも小さくする(
図2に示す曲線の人間の目に安全なレーザー出力を積分する)ことを考慮するだけでよい。当業者であれば、
図2はレーザーレーダーに対応する人間の目に安全な出力曲線の1つの模式的な形式に過ぎず、実際の人間の目に安全な出力変換は、異なる次元の測定基準及び/又はレーザーレーダーの種類、構造、性能等によって、異なる曲線が生じる可能性があることが理解される。
【0049】
ステップS102で、目標物によって反射された該複数のレーザーパルスのエコー情報を受信する。エコーパルスが送信パルスと同じ符号化情報を含むか否かに基づき、エコーパルスの有効性を判断する。
【0050】
本発明の一実施例によれば、
図3に示すように、エコーパルスシーケンスのタイミングが送信パルスシーケンスのタイミングと同じである場合、該エコーパルスシーケンスを送信パルスシーケンスのエコー信号と判断し、該信号を保持し、該信号に含まれる情報を抽出する。
【0051】
本発明の別の実施例によれば、
図4に示すように、エコーパルスシーケンスのタイミングが送信パルスシーケンスのタイミングと異なる場合、該エコーパルスシーケンスを他のレーザーレーダーから送信された送信パルスシーケンスのエコー信号と判断し、該エコーパルスシーケンスを廃棄する。
【0052】
当業者であれば、ピーク強度、パルス幅に基づく符号化及び認識、あるいは時間間隔、ピーク強度、パルス幅のうちの1つ又は複数の組み合わせに基づく符号化も、同様に本発明の保護範囲内であることが容易に理解される。
【0053】
ステップS103で、目標物のエコー情報に基づき、レーザーレーダーの次の送信時に使用するエネルギー分配戦略を更新する。目標物のエコー情報に基づき、目標物の距離、エコーパルスの有効性を判断し、そして目標物の距離及び/又はエコーパルスの有効性に基づき、エネルギー分配戦略を調整することによって、人間の目の安全要件を満たしながら最適な遠距離探知性能を達成し、且つ一定の距離範囲内の干渉防止性能も保証する。
【0054】
マルチパルス符号化の方式を使用する場合、従来技術では通常、各探知パルスが比較的一致した測距能力を保持するようにし、即ち、送信エネルギーが近い複数のレーザーパルスを使用する。したがって、その中の小さいパルス(エネルギー又は出力が小さい探知パルス)は、レーザーレーダー遠距離探知性能のボトルネックとなることが多い。
【0055】
しかし実際には、レーザーレーダーによる遠距離探知と近距離探知の要件は異なる。遠距離探知の時、遠距離探知の能力を考慮する必要があり、可能な限り遠くの探知距離を達成することが期待され、これには遠距離探知時のレーザーパルスが高いエネルギーを持つことができることが要求される。また、遠距離探知時にクロストークが発生し得る確率は低い。一方、近距離探知の時、特に探知器自体の飽和要因の影響を受けて、大きいパルス(エネルギー又は出力が大きい探知パルス)のパフォーマンスは際立っていない。また、近距離でクロストークが発生する確率は増加する。したがって、実践では、近距離の時だけクロストーク防止の符号化を提供する必要があり、目標物のエコー情報に基づき、現在の目標物の距離範囲、又は現在のレーザーレーダーの測距条件を判定してから、目標物の距離範囲/測距条件に基づき、レーザーパルスのエネルギー分配を調整する。
【0056】
本発明の好ましい一実施例によれば、制御方法10において、1回の探知時間内で、複数のレーザーパルスを送信するエネルギーの総和は第1エネルギー閾値より小さく、ここで第1エネルギー閾値は、プリセット時間内に送信されるパルスのエネルギーの総和が人間の目の安全閾値より小さい要求に基づいて決定される。
【0057】
具体的には、人間の目の安全要件に応じて、レーザーレーダーによる所定期間内の複数回の探知で送信されるレーザーパルスの総エネルギーは人間の目の安全閾値より小さい必要がある。ここで、該所定期間及び対応する人間の目の安全閾値は、レーザーレーダーの異なる探知方式や性能によって異なる。
【0058】
例えば、同じ時間内に、機械的回転走査の探知方式を用いたレーザーレーダーは、探知プロセス中に一方向に固定されるのではなく、回転して走査するため、使用可能な総エネルギーを比較的高くすることができ、一方、エリアアレイフラッシュ式の探知方式を用いたレーザーレーダーは、固定された方向を向くため、許容可能なエネルギーが小さい等である。
【0059】
一般に、該所定期間は、マイクロ秒レベルの時間区間、例えば、5μs前後である。通常、レーザーレーダーの1回の探知にかかる時間は数十ナノ秒から百ナノ秒のレベルである。つまり、レーザーレーダーの1回の探知の時間は所定期間より小さい。
【0060】
特定のレーザーレーダーの1回の探知にかかる時間は確定的であるため、各探知で使用可能なパルスエネルギーの総和を決定することができ、つまり、1回の探知で送信される複数のレーザーパルスのエネルギーの総和を決定することができる。例えば、1回の探知でパルスが送信される時間の総和が5μsよりもはるかに小さいので、1回の探知で送信されるパルスのエネルギーの総和を5μs以内の人間の目の安全閾値よりも小さくすることを直接考慮してもよい。
【0061】
また、本発明の好ましい一実施例によれば、制御方法10において、1回の探知で送信される複数のレーザーパルスは、少なくとも1つの遠距離探知パルスと少なくとも1つの近距離探知パルスを含み、該少なくとも1つの遠距離探知パルスと少なくとも1つの近距離探知パルスの送信の前後順序は限定されないが、近距離探知パルスのエネルギー/出力は、遠距離探知パルスのエネルギー/出力以下であるべきである。
【0062】
好ましくは、異なる大きさの符号化パルスが複数(例えば3つ以上等)ある場合、測距能力を最大にするために、エネルギーが最も大きいパルスを遠距離探知パルスとし、残りの少なくとも2つのパルスを近距離探知パルスとすることができる。
【0063】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図5A、
図5Bに示すように、時間間隔で符号化された1つの近距離探知パルスと1つの遠距離探知パルスを送信し、ここで近距離探知パルスと遠距離探知パルスの送信の前後順序は限定されない。時間間隔で符号化する以外にも、ピーク強度、パルス幅で符号化したり、又は時間間隔、ピーク強度、パルス幅のうちの複数の符号化方式を組み合わせて符号化したりすることもでき、これらは全て本発明の保護範囲内である。
【0064】
説明の便宜上、時間間隔で符号化されたダブルパルスを送信する方式を例とする。制御方法10のステップS103は、目標物のエコー情報に基づいて測距条件を判断し、測距条件が遠距離探知条件である場合、遠距離探知パルスのエネルギーを上げるステップをさらに含む。
【0065】
好ましくは、次の条件(1)、(2)の少なくともいずれか1つが満たされると、レーダーが現在遠距離探知条件にあると判定する。
【0066】
(1)目標物は第1距離範囲外にある。例えば、目標物は80メートル外にあり、この時、レーザーレーダーの遠距離探知性能に対する要求が高まり、クロストーク防止に対する需要が低下する。ここで、第1距離は実際の状況と需要に応じて調整することができ、通常、第1距離範囲は、遠距離探知パルスだけで優れた測距性能が得られる領域を指示するためのものである。
及び/又は
(2)受信した近距離探知パルスのエコーが弱いか、又は近距離探知パルスのエコーを受信していない。この場合、例えば、目標物が第1距離範囲外にあり、近距離探知パルスのエネルギーが該目標物を探知するには十分ではなく、全部減衰し又はほぼ全部減衰することや、目標物の反射率が低いこと等、多くの原因が考えられる。
【0067】
図6に示すように、目標物が50メートル未満の距離範囲内にある場合、レーザーレーダーは近距離探知パルスと遠距離探知パルスの両方のエコーを受信することができ、目標物が80メートル超の距離範囲にある場合、レーザーレーダーは遠距離探知パルスのエコーだけ受信できる。
【0068】
したがって、遠距離探知の条件で、次の探知で遠距離探知パルスのエネルギー/出力を高めることにより、レーザーレーダーの遠距離探知の精度を高める必要がある。
【0069】
本発明の好ましい一実施例によれば、測距条件が遠距離探知条件である場合、遠距離探知パルスのエネルギーを上げ、近距離探知パルスのエネルギーを下げ、且つ近距離探知パルスのエネルギーが第2エネルギー閾値より大きい。ここで第2エネルギー閾値は、該レーザーレーダーの干渉防止に対する基本的な需要によって決定される。
【0070】
上記した1回の探知で複数のレーザーパルスのエネルギーの総和が第1エネルギー閾値未満でなければならないという制限があるので、遠距離探知パルスのエネルギーをさらに上げるためには、近距離探知パルスのエネルギーを下げることによって実現することができる。遠距離探知の条件で、目標物が第1距離範囲(例えば80メートル)外にあると、遠距離探知の性能に対する要求が高まり、クロストーク防止機能に対する需要が低下し、近距離探知パルスのエネルギーを適宜低減することができる。及び/又は、近距離探知パルスのエコーが弱く、又は近距離探知パルスのエコーを受信していない場合にも、近距離探知パルスは目標物までの距離の解析に実質的な役割を果たせないため、近距離探知パルスのエネルギーを適宜低減することができる。近距離探知パルスのエネルギーに対する制限は、レーザーレーダーの基本的なクロストーク防止需要によって決定され、つまり、目標物が第2距離範囲(例えば50メートル)内に戻った時、レーザーレーダーのクロストーク防止機能に対する需要が高まり、遠距離探知の性能に対する要求が低下し、この場合、レーザーレーダーが依然として本レーダーから送信した探知ビームの反射エコーを探知及び認識できることが要求される。
【0071】
本発明の好ましい一実施例によれば、遠距離探知条件は、目標物が第1距離範囲(例えば80メートル)外にあることを含み、第2エネルギー閾値は、第2距離範囲(例えば50メートル)の探知需要に基づいて決定される。当業者であれば、好ましい実施例において第1距離範囲が80メートル、第2距離範囲が50メートルであるが、実際の探知需要に応じて、第1距離範囲をそれ以下に設定する技術的解決手段も可能であり、これらはいずれも本発明の保護範囲内であることが容易に理解される。
【0072】
近距離探知パルスのエネルギー制限は、第2距離範囲内でも探知できることであり、第2距離範囲は、レーザーレーダーのクロストーク防止需要が高い範囲である。例えば、本レーザーレーダーの近くの50メートルの範囲内で、本レーザーレーダーから発した探知ビームに対応するエコー信号は、本車両に搭載された他のレーザーレーダーの影響を受ける可能性があり、近くを通過する車両に搭載されたレーザーレーダーの影響を受ける可能性もある。一方、第1距離範囲は、レーザーレーダーの遠距離探知性能に対する要求が高い範囲であり、例えば、本レーザーレーダーから80メートル離れた範囲であり、遠距離探知条件は、エコー情報に基づいて目標物が該第1距離範囲外にあることが解析されたことを含む。
【0073】
本発明の好ましい一実施例によれば、制御方法10において、測距条件が遠距離探知条件である場合、複数のレーザーパルスのエネルギーの和が第1エネルギー閾値に近づくまで、探知のたびに遠距離探知パルスのエネルギーを次第に上げ、その中の近距離探知パルスのエネルギーは第2エネルギー閾値以上である。ここで第1エネルギー閾値は、人間の目の安全閾値に基づいて決定され、第2エネルギー閾値は、該レーザーレーダーの干渉防止性能に対する基本的な需要に基づいて決定される。つまり、エネルギー分配戦略を段階的に切り替える。
【0074】
例えば、人間の目の安全閾値に基づいて決定された第1エネルギー閾値は800nJであり、該レーザーレーダーの基本的な干渉防止需要に基づいて決定された第2エネルギー閾値は100nJである。時間間隔で符号化されたダブルパルスによる探知方式を使用し、エネルギー分配戦略を下表に示す。
【0075】
【0076】
プリセットはPCode1で符号化され、エコー情報から測距条件が遠距離探知条件であると判断した場合、次の探知で遠距離探知パルスのエネルギーを100nJ上げ、即ちPCode2に切り替える。エコー情報から測距条件が依然として遠距離探知条件であると判断した場合、次の探知で遠距離探知パルスのエネルギーを100nJ上げ、即ちPCode3に切り替え、この時、ダブルパルスのエネルギーの和は第1エネルギー閾値に達した(実際の探知プロセスでは、エネルギー消費等の他の考慮事項に基づいて、ダブルパルスのエネルギーの和の上限を第1エネルギー閾値の近く且つ第1エネルギー閾値を超えないように設定することができ、例えば、750nJとする)。エコー情報から測距条件が依然として遠距離探知条件であると判断した場合、次の探知で遠距離探知パルスのエネルギーを100nJ上げるとともに、近距離探知パルスのエネルギーを100nJ下げ、即ちPCode4に切り替える。エコー情報から測距条件が依然として遠距離探知条件であると判断した場合、次の探知で遠距離探知パルスのエネルギーを100nJ上げるとともに、近距離探知パルスのエネルギーを100nJ下げ、即ちPCode5に切り替え、この時、近距離探知パルスのエネルギーは第2エネルギー閾値まで低下した。エコー情報から測距条件が依然として遠距離探知条件であると判断した場合、次の探知で引き続きPCode5で探知する。例えば、いずれかの探知において、エコー情報から測距条件が近距離探知条件であると判断した場合(即ち近距離で目標物が存在し得る場合)、符号化をPCode1に切り替え戻すことができ……ここで遠距離探知条件は次の(1)~(3)を含む。
【0077】
(1)所定時間内で取得した測距情報はいずれも第1距離範囲(例えば80メートル)外にある。エコー情報に基づいて目標物の距離を解析し、所定時間内で得た測距情報はいずれも目標物が第1距離範囲外にあることを示す。及び/又は
(2)受信した近距離探知パルスのエコーが弱いか、又は近距離探知パルスのエコーを受信していない。及び/又は
(3)いくつかの場合で、レーダーの光軸が特定の角度を向いている時(例えば、車両走行の真正面を向いている時)。車両走行の真正面の場合、探知精度に対する需要が高まり、且つ真正面方向の場合、周囲車両のクロストーク状况が改善され、干渉防止に対する需要が相対的に低くなる。
【0078】
要約すると、人間の目の安全に許容される第1エネルギー閾値を超えることなく、つまり総エネルギーを一定に保ったまま、近距離探知パルスと遠距離探知パルスとの間でエネルギー分配測定を調整し、探知結果を最適化する。
【0079】
ここで、当業者であれば、回路を合理的に設計することにより、段階的調整のステップサイズを大きくしたり小さくしたりすることができ、無段階調整に近い効果さえ実現できることが理解できる。例えば、ほぼ無段階変化可能な抵抗調節モジュールを設けることで、レーザー機器のエネルギーに対する無段階調整を実現する。
【0080】
本発明の好ましい一実施例によれば、測距条件が遠距離探知条件である場合、次の探知で、複数のレーザーパルスのエネルギーの和が第1エネルギー閾値に近づき、且つ近距離探知パルスのエネルギーが第2エネルギー閾値に近づくように、遠距離探知パルスのエネルギーを上げる。具体的には、ここでいう「近づく」は、エネルギー調整の傾向を示すためのものであり、つまり、該複数のレーザーパルスの調整後のエネルギーの和は、調整前のエネルギーの和よりも第1エネルギー閾値に近き、且つ、近距離探知パルスの調整後のエネルギーは、調整前のエネルギーよりも第2エネルギー閾値に近い。
【0081】
ここで第1エネルギー閾値は、人間の目の安全閾値に基づいて決定され、例えば、該第1エネルギー閾値は、各国又は地域のレーザー製品安全基準及び実際に使用するレーダー製品のタイプと探知モードに基づいて算出できる。第2エネルギー閾値は、該レーザーレーダーの干渉防止性能に対する基本的な需要に基づいて決定される。つまり、エネルギー分配戦略の切り替えを1回限りで行う。
【0082】
例えば、人間の目の安全閾値に基づいて決定された第1エネルギー閾値は800nJであり、該レーザーレーダーの基本的な干渉防止需要に基づいて決定された第2エネルギー閾値は100nJである。時間間隔で符号化されたダブルパルスによる探知方式を使用し、エネルギー分配戦略を下表に示す。
【0083】
【0084】
プリセットは表2に示すPCode6で符号化され、遠距離探知条件が満たされると、PCode7に切り替える。遠距離探知条件は次の(1)~(3)を含む。
【0085】
(1)所定時間内で取得した測距情報はいずれも第1距離範囲(例えば80メートル)外にある。及び/又は
(2)受信した近距離探知パルスのエコーが弱いか、又は近距離探知パルスのエコーを受信していない。及び/又は
(3)いくつかの場合で、レーダーの光軸が特定の角度を向いている時(例えば、車両走行の真正面を向いている時)。
【0086】
本発明の好ましい一実施例によれば、制御方法10において、複数のレーザーパルスは、少なくとも1つの遠距離探知パルスと少なくとも1つの近距離探知パルスを含み、ステップS103は、
目標物のエコー情報に基づいて測距条件を判断し、測距条件が近距離探知条件である場合、遠距離探知パルスのエネルギーを下げ、近距離探知パルスのエネルギーを上げるステップをさらに含み、且つ同一の送信において近距離探知パルスのエネルギーが遠距離探知パルスのエネルギー以下である。
【0087】
ここで近距離探知条件次の(1)と(2)を含む。
(1)所定時間内で取得した測距情報はいずれも第2距離範囲(例えば50メートル)内にある。即ちエコー情報に基づいて目標物の距離を解析し、所定時間内で得た測距情報はいずれも目標物がレーザーレーダーの近くのクロストークが頻繁に発生する領域内にあることを示す。及び/又は
(2)レーダーの光軸が該特定の角度を向いていない時(例えば、車両走行の真正面以外の他の方向を向いている時)。車両走行の真正面以外の他の探知方向の場合、周囲車両に搭載されたレーザーレーダーと相互干渉することがあり、近距離探知の性能を高めるように、近距離探知パルスのエネルギーを上げるべきである。
【0088】
本発明の好ましい一実施例によれば、測距条件が近距離探知条件である場合、次の探知でエネルギーが近い遠距離探知パルスと近距離探知パルスを送信し、且つ複数のレーザーパルスのエネルギーの和が第1エネルギー閾値に近づくようにする。エネルギーが近い時間間隔で符号化されたダブルパルスシーケンスを送信することによって、近距離探知性能(クロストーク防止性能)を最適にする。
【0089】
例えば、人間の目の安全閾値に基づいて決定された第1エネルギー閾値は800nJであり、該レーザーレーダーの基本的な干渉防止需要に基づいて決定された第2エネルギー閾値は100nJである。時間間隔で符号化されたダブルパルスによる探知方式を使用し、エネルギー分配戦略は上記表2に示した通りである。暫くはPCode2で符号化されるが、近距離探知条件が満たされると、PCode1に切り替える。
【0090】
本発明の好ましい一実施例によれば、制御方法10は、
レーザーレーダーの次の送信における複数のレーザーパルスのエネルギー分配を調整することにより、複数のレーザーパルスの強度ピーク又はパルス幅を調整するステップをさらに含む。
【0091】
通常、該レーザーレーダーが時間間隔で符号化する場合、エネルギー分配を調節する目的を達成するために、レーザーパルスのピーク強度及び/又はパルス幅のいずれも調整することができる。該レーザーレーダーがピーク強度で符号化する場合、ピーク強度の比率(変化傾向)を一定に保ち、パルス幅を調整することによりエネルギー分配を調節することができる。該レーザーレーダーがパルス幅で符号化する場合、パルス幅の比率(変化傾向)を一定に保ち、ピーク強度を調整することによりエネルギー分配を調節することができる。
【0092】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図7A、
図7Bに示すように、同一の探知における近距離探知パルスと遠距離探知パルスは、パルス時間が同じ又は近似するが、ピーク出力が異なるもの(
図7Aに示す)であってもよいし、パルスピーク出力が同じ又は近似するが、パルス時間が異なるもの(
図7Bに示す)であってもよい。
図7Aに示す実施例の場合は、好ましくは、マルチチャネル機械式レーダーに応用され、ピーク出力が高い遠距離探知パルスによって探知精度を向上させ、ダブルパルス符号化によってクロストークを防止する。
図7Bに示す実施例の場合は、好ましくは、エリアアレイフラッシュソリッドステートレーザーレーダーに応用され、パルス幅が広い遠距離探知パルスによって光子受信の確率を高め、ダブルパルス符号化によってクロストークを防止する。
【0093】
具体的には、パルス符号化の方式によって、ピーク強度及び/又はパルス幅を調節する際に必要な操作は異なる。例えば、時間間隔のみで符号化される場合、初期波形における各パルスのピーク比率又はパルス幅比率を考慮する必要はなく、よって、エネルギー調節の時、探知側をそれに応じて調節する必要はない。また例えば、ピークで符号化される場合、初期波形における各パルスのパルス幅が同じで、ピークが異なると、エネルギー分配を変更する時、検証時に各探知側が根拠とするエネルギー分配比率を同時に更新する必要があり、つまり、探知側が検証に用いる分配比率の情報は、エネルギー分配の調節に応じて更新することができる。同様に、パルス幅で符号化される場合、初期波形における各パルスのパルス幅が異なり、ピークが同じであり、よって、エネルギー分配調節の時、探知側が使用する分配比率情報をそれに応じて更新することができる。
【0094】
本発明の好ましい一実施例によれば、レーザーレーダーの送信ユニットは、時間間隔符号化及びエネルギー分配戦略を用いたマルチパルスシーケンスを送信し、該マルチパルスシーケンスは、例えば、第1レーザーパルスと第2レーザーパルス(1つの遠距離探知パルスと1つの近距離探知パルス)を含み、当然ながら、一般的ではないが、第1レーザーパルス、第2レーザーパルス……第Nレーザーパルスを含んでもよく、複数のレーザーパルスはタイミング関係にある。上記時間間隔は、送信パルスシーケンスのタイミング関係を表し、エネルギー分配戦略を調整した後も、受信ユニットは、依然としてエコーパルスシーケンスと送信パルスシーケンスのタイミング関係を検証することによって、本レーダーから発した送信パルスシーケンスの反射エコーを特定することができる。
【0095】
本発明のさらなる好ましい実施例によれば、レーザーレーダーの送信ユニットは、ピーク強度符号化及びエネルギー分配戦略を用いたマルチパルスシーケンスを送信し、ここでエネルギー分配戦略は、遠距離探知モードに合致する場合、近距離探知パルスのエネルギーを減少させ、遠距離探知パルスのエネルギーを増加させることを含む。引き続き本実施例の形態を説明する。該マルチパルスシーケンスは1つの遠距離探知パルスと1つの近距離探知パルスを含み、遠距離探知パルスと近距離探知パルスのピーク比率は1.2:1であり、これに応じて、探知側は、連続して受信した2つのパルスのピークエネルギー比が1.2:1を満たすか否かに応じて、受信したのが自身が所属するレーザーレーダーのパルスであるか否かを判断する。
【0096】
その後、探知において、現在は遠距離探知モードに該当することが判明されると、近距離探知パルスのエネルギーを50%減少させ、該50%のエネルギーを遠距離探知パルスに加え、この時、遠距離探知パルスと近距離探知パルスのピーク比は1.7:0.5、つまり3.4:1であってもよく、それに応じて探知側がエコーパルスを判断するためのピーク比率を3.4:1に更新する。その後、送信側は、新しいエネルギー分配比率測定に基づき、遠距離探知パルスと近距離探知パルスを送信し、探知側は、該新しいエネルギー分配比率に基づき、受信したエコーが正確なエコーパルスであるか否かを判断する。
【0097】
本発明のさらなる好ましい実施例によれば、レーザーレーダーの送信ユニットは、パルス幅符号化及びエネルギー分配戦略を用いたマルチパルスシーケンスを送信する。該マルチパルスシーケンスは、1つの強いパルスと1つの弱いパルスを含み、強いパルスと弱いパルスのパルス幅比率は2:1であり、つまり、強いパルスのパルス幅は弱いパルスの2倍である。これに応じて、探知側は、連続して受信した2つのパルスのパルス幅比が2:1を満たすか否かに応じて、受信したのが自身が所属するレーザーレーダーのパルスであるか否かを判断する。
【0098】
その後、探知において、現在は遠距離探知モードに該当することが判明されると、遠距離探知パルスと近距離探知パルスのパルス幅比率が3:1となるように、近距離探知パルスのエネルギーを減少させ、遠距離探知パルスのエネルギーを上げ、それに応じて探知側がエコーパルスを判断するためのパルス幅比率を3:1に更新する。その後、送信側は、新しいエネルギー分配比率測定に基づき、遠距離探知パルスと近距離探知パルスを送信し、探知側は、該新しいエネルギー分配比率に基づき、受信したエコーが正確なエコーパルスであるか否かを判断する。
【0099】
その後、レーザーレーダーは、引き続き新しいエネルギー分配比率に基づいて探知する。さらなる探知において、現在の測距情報が46メートルで、近距離探知モードに該当することが判明されると、遠距離探知パルスと近距離探知パルスのパルス幅比率が1.5:1となるように、遠距離探知パルスのエネルギーを減少させるとともに、近距離探知パルスのエネルギーを増加させ、これにより、遠距離探知パルスと近距離探知パルスのパルス符号化をより効果的に利用して、本レーザーレーダーから送信したパルスを認識することができる。
【0100】
より好ましい一形態として、遠距離探知モードは複数のレベルを有することができ、例えば、遠距離探知モードを中長距離(例えば50~100メートル)と超長距離(例えば100メートル超)に分けることができ、そして、探知側は、中長距離モードにおいてのみ、新しいエネルギー分配比率に基づいて判断し、超長距離の場合、エコーパルスを受信すれば、遠距離探知パルスに対応するエコーパルスとみなされる。
【0101】
つまり、一部の探知モード、例えば超長距離モードでは、他のレーザーレーダー又は送信源からの干渉は非常に小さくて無視できるため、受信できるパルスだけを考慮すればよい。この時、探知側は、パルス符号化を検証しなくてもよい。
【0102】
本形態のさらなる好ましい実施例として、1回の探知で1つの遠距離探知パルスと2つ以上の近距離探知パルスを用いて符号化する場合、近距離探知パルスの一部を除去し、該部分の近距離探知パルスのエネルギーを遠距離探知パルスに分配し、それに応じて探知側が用いるクロストーク防止の判断条件を調節し、エネルギーを再分配した後のパルス符号化に基づいて判断する。
【0103】
例えば、レーザーレーダーは最初に3つのパルスを用いて符号化し、3つのパルスpulse1、pulse2、pulse3のピーク比率は1:2:3であり、その中でピークが最も大きいのは遠距離探知パルスであり、残りの2つは近距離探知パルスである。また、探知側は、3つのエコーパルスを受信し且つ該3つのエコーパルスのエネルギー比が1:2:3である場合に、該エコーパルスが本レーザーレーダーに属するものであると判断する必要がある。レーザーレーダーは現在が遠距離探知モードであると判断した場合、エネルギーが最も小さいパルスpulse1のエネルギーをエネルギーが最も大きいパルスpulse3に分配し、つまり、レーザーレーダーは、ピーク比率2:4の比率でダブルパルス符号化を送信するだけであり、そして、エネルギー比2:4の2つのパルスを受信すると該エコーパルスが本レーザーレーダーに属すると判断するように探知側の判断条件を更新する。逆に、遠距離探知モードから近距離探知モードに移行すると、依然として1:2:3のピーク比率の3つのパルス符号化に従って送信と探知を行う。
【0104】
同様に、より多くのパルスを用いて符号化する場合、同様の分配方式を採用することができ、これにより、遠距離探知モードにおける遠距離探知パルスのエネルギーを強化し、より高い遠距離探知性能を得る目的を実現する。
【0105】
より好ましくは、遠距離探知パルスと近距離探知パルスのエネルギー分配に一定の許容差を設定することができる。エネルギー分配戦略を調整した後、送信ユニットが、複数のレーザーパルスのパルス幅を調整することによりエネルギー分配戦略を調整すると、受信ユニットは、レーザーレーダーの制御ユニットによって更新されたエネルギー分配戦略に基づき、今回の探知で送信されるマルチパルスシーケンスのパルス幅のプリセット比率関係を決定し、その後、エコーパルスシーケンスと送信パルスシーケンスのパルス幅の比を検証することによって、本レーダーから発した送信パルスシーケンスの反射エコーを特定し、ここで一定の許容差を設定することができる。
【0106】
好ましい一代替案として、1回の探知の総エネルギーに余裕がある場合、つまり、1回の探知で送信される総エネルギーが人間の目の安全閾値よりも小さい場合、遠距離探知の場合のエネルギー分配測定は、近距離探知パルスのエネルギーを減少させることなく、遠距離探知パルスのエネルギーを増加させるだけであってもよい。
【0107】
本発明の好ましい一実施例によれば、制御方法10は、複数のレーザーパルスの最大駆動電流/電圧を高めることにより、複数のレーザーパルスのパルスピークを高めるステップをさらに含む。
【0108】
回路実現には様々な実現形態を採用することができ、例えば、電圧調節可能な駆動回路や複数のエネルギー蓄積回路を含むレーザー機器駆動回路等を使用して、各パルスのエネルギーを調節することができる。通常、レーザー機器上の電流は、レーザー機器に印加される駆動電圧に比例し、レーザー機器が位置する回路の抵抗に反比例する。したがって、レーザー機器上の電流/電圧を調節するには主に2つの方法があり、1つは駆動電圧を調節すること、もう1つは抵抗を調節することである。
【0109】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図8は、レーザー機器上の電流を調節することによって送信されるパルスのエネルギーを調節することができる回路構造の実現模式図を模式的に示す。
【0110】
ここで、
図8に示すレーザー機器の電流と印加される電圧及び抵抗とは次の関係にある。
Imax=HVDD1/(Rd+Rdson)
式中、HVDD1はレーザー機器に印加される駆動電圧であり、Rdはレーザー機器自身の等価抵抗であり、RdsonはPMOS及びそれに接続された他のデバイスの総抵抗である。したがって、Imaxを調節するには主に2つの方法があり、1つは電圧HVDD1を調節すること、もう1つは抵抗Rdsonを調節することである。
【0111】
上記調整可能な回路の基に1つの制御モジュールが統合され、制御モジュールは、複数セットのパルス符号化を切り替えることができ、上述した2つの符号化方式に基づいて直接切り替えるか、又はパルス符号化を段階的に調節して、パルス制御信号をそれぞれ生成し、パルス制御信号によって出力電圧HVDD1又は抵抗値Rdsonを調節して、対応するレーザーパルスを送信することができる。
【0112】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図9Aに示す調節回路のタイミング図は
図9Bに示す通りである。この実施例において、レーザー機器の電流強度は電圧Vxの大きさに対応し、Vxは低電圧リニアレギュレータ(LDO)から出力されるV2によって調節できる。V2が大きくなると、Vxは小さくなり、V2が小さくなると、Vxは大きくなる。対応するV2を出力するようにLDOを制御することで、レーザー機器の電流に対する調節を実現することができ、つまり、送信パルスの調節が実現される。
【0113】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図10は、エネルギー蓄積モジュールを用いた回路の実現形態を模式的に示す。
図10に示すように、複数のエネルギー蓄積モジュールは電源モジュールに接続され、各エネルギー蓄積モジュールは1つの制御スイッチに接続され、制御スイッチは、エネルギー蓄積モジュールとレーザー送信ユニットのオンオフを制御すること担う。あるエネルギー蓄積モジュールとレーザー送信ユニットとの間の制御スイッチが閉じられると、エネルギー蓄積モジュールに蓄積された電荷は、レーザー送信ユニットを駆動して光パルスを送信する。具体的には、
図10に示す各ユニットのスイッチは、互いに独立していてもよく、且つ制御スイッチは、制御ユニットによってそれぞれ独立して制御され、タイミングの同一時刻に、制御ユニットは、独立して開閉するように制御スイッチを制御することができる。同一時刻に複数の制御スイッチが閉じられると、送信されるレーザーパルスのエネルギーは、複数のエネルギー蓄積モジュールのエネルギーの総和である。同一時刻に複数の制御スイッチを同時に閉じて高エネルギーパルスを送信することで、遠距離物体に対する探知を実現することができる。タイミング内で閉じられる制御スイッチの数と時刻を制御することによって、タイミング内で送信されるパルスの形状を制御することができる。例えば、ある時刻に、制御スイッチが1つだけ閉じられると、該時刻に送信されるパルス強度は1単位となり、その後の時刻に制御スイッチがN個閉じられると、対応する時刻に送信されるパルス強度はN単位となる。制御ユニットによって異なる時刻に閉じられるスイッチの数を制御することにより、パルスが送信されるタイミングと強度を制御することができる。
【0114】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図11に示すように、複数のレーザーパルスの送信時間を制御することにより、パルス幅が同じ又は近似し、ピーク出力が異なる複数のレーザーパルスを得る。スイッチ制御信号(GATE1、GATE2、…、GATEN)の終了時にスイッチトリガ信号(TRIGGER)がトリガされ、例えば、図に示すスイッチ制御信号(GATE1、GATE2、…、GATEN)のタイミング立ち下がりエッジは、スイッチトリガ信号(TRIGGER)の立ち下がりエッジをトリガする。一般性を失うことないが、スイッチトリガ信号(TRIGGER)の終了がタイミング信号の立ち上がりエッジである場合、該立ち上がりエッジをスイッチ制御信号のトリガ機会とし、充電終了後に発光プロセスが開始され、且つ前の充電-発光プロセス終了後に直ちに次の充電-発光プロセスが開示されることを保証する。
図11に示す実施例において、スイッチ制御信号(GATE1、GATE2、…、GATEN)の時間幅は等しく、これにより送信されるパルスシーケンス内の各パルス幅がほぼ同じであることを保証する。
【0115】
図12A、
図12Bは、スイッチ制御信号のトリガにより前述したPCode1及びPCode2が得られることを示す。
【0116】
本発明の好ましい一実施例によれば、制御方法10は、
駆動電流/電圧を一定に保ち、複数のレーザーパルスの送信時間を延長/短縮することにより、複数のレーザーパルスのパルス幅を拡大/短縮するステップをさらに含む。即ち、
図7Bに示すピーク出力が同じ又は近似し、パルス幅が異なる複数のレーザーパルスを得る。送信時間を調整するための具体的な回路実現構造はここでは説明を省略する。
【0117】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図13に示すように、本発明はレーザーレーダー100をさらに提供し、該レーザーレーダー100は、送信ユニット110、受信ユニット120及び制御ユニット130を含む。ここで、
送信ユニット110は、レーザーパルス信号を送信し、該レーザーパルス信号は、時間間隔で符号化された複数の目標物探知用のレーザーパルスを含む。
受信ユニット120は、目標物によって反射された該複数のレーザーパルスのエコー情報を受信するように構成される。
制御ユニット130は、目標物のエコー情報に基づき、レーザーレーダーの次の送信における該複数のレーザーパルスのエネルギー分配を調整するように構成される。
【0118】
本発明の好ましい一実施例によれば、複数のレーザーパルスのエネルギーの和は第1エネルギー閾値より小さく、該第1エネルギー閾値は、プリセット時間内に送信されるパルスの総エネルギーが人間の目の安全閾値より小さい要求に基づいて決定される。
【0119】
本発明の好ましい一実施例によれば、複数のレーザーパルスは、少なくとも1つの遠距離探知パルスと少なくとも1つの近距離探知パルスを含み、制御ユニット130はさらに、
目標物のエコー情報に基づいて測距条件を判断し、測距条件が遠距離探知条件である場合、遠距離探知パルスのエネルギーを上げるように構成される。
【0120】
本発明の好ましい一実施例によれば、制御ユニット130はさらに、
測距条件が遠距離探知条件である場合、遠距離探知パルスのエネルギーを上げ、近距離探知パルスのエネルギーを下げるように構成され、且つ近距離探知パルスのエネルギーが第2エネルギー閾値より大きい。
【0121】
本発明の好ましい一実施例によれば、遠距離探知条件は目標物が第1距離範囲外にあることを含み、該第2エネルギー閾値は第2距離範囲の探知需要に基づいて決定され、該第2距離範囲は該第1距離範囲以下である。
【0122】
本発明の好ましい一実施例によれば、送信ユニット110は少なくとも1つのレーザー機器を含み、レーザーレーダー100は、
該少なくとも1つのレーザー機器及び制御ユニット130に結合され、制御ユニット130の制御下で、レーザーレーダー100の次の送信における複数のレーザーパルスのパルスピークを調整するために該少なくとも1つのレーザー機器の駆動電流/電圧を調節できるように構成される第1エネルギー調節ユニットをさらに含む。
【0123】
本発明の好ましい一実施例によれば、送信ユニット110は少なくとも1つのレーザー機器を含み、レーザーレーダー100は、
該少なくとも1つのレーザー機器及び制御ユニット130に結合され、制御ユニット130の制御下で、レーザーレーダー100の次の送信における複数のレーザーパルスのパルス幅を調整するために該少なくとも1つのレーザー機器の送信時間を調節できるように構成される第2エネルギー調節ユニットをさらに含む。
【0124】
本発明の好ましい実施例はレーザーレーダーの制御方法を提供し、時間間隔で符号化された複数のレーザーパルスを送信し、目標物のエコー情報に基づき、次の送信における複数のレーザーパルスのエネルギー分配を調整する。本発明の好ましい実施例は、近距離範囲におけるクロストーク防止の需要と、遠距離範囲における探知精度及び探知性能の向上を両立し、人間の目の安全要件を満たしながら、レーザーパルスエネルギーの最も効率的な利用を得ている。
【0125】
最後に、説明すべきことは、以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではない。前記実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、前記各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はその一部の技術的特徴に同等な取り替えを実施することも可能である。本発明の精神と原則から逸脱しない限り行った修正、同等な取替、改良等は、全て本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】