(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】手術中に患者の解剖学的構造を参照するための手術参照体
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20240528BHJP
【FI】
A61B34/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575661
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 IB2021055021
(87)【国際公開番号】W WO2022259019
(87)【国際公開日】2022-12-15
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ケンパー,ヤーコブ
(72)【発明者】
【氏名】メス,ラーズ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューグル,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】サイモン,ベルンド
(57)【要約】
手術参照体、手術ガイド装置、及び手術追跡システム、特に、手術コンポーネントの位置特定の改善を可能にする手術参照体、手術ガイド装置、及び手術追跡システムに関する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術中に患者の解剖学的構造を参照するための手術参照体であって、該手術参照体(50)は、
第1の放射線不透過性サブ幾何学形状(61)及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状(62)を有する放射線不透過性幾何学形状(60)であって、各サブ幾何学形状が前記手術参照体(50)に固定的且つ空間的に再現可能に接続される、前記放射線不透過性幾何学形状(60)と、
患者の解剖学的構造(100)に対して解剖学的に適合した表面(59)を有する第1の脚部(51)と、
患者の解剖学的構造(100)に対して解剖学的に適合した表面(59)を有する第2の脚部(52)と、を含み、
第1の端部(51a)を有する第1の脚部(51)は、脚接合部分(53)において前記第2の脚部(52)の第1の端部(52a)に接続されており、
前記第1の放射線不透過性サブ幾何学形状(61)及び前記第2の放射線不透過性サブ幾何学形状(62)のそれぞれが、前記手術参照体(50)の基端から先端への向き毎に固有の放射線投影(66、67)を有しており、それによって、前記第1の放射線不透過性サブ幾何学形状(61)及び前記第2の放射線不透過性サブ幾何学形状(62)のそれぞれだけで、前記手術参照体の少なくとも一部の2次元の放射線投影に基づいて、前記手術参照体(50)の前記空間的な位置及び向きの決定が可能になる、
手術参照体。
【請求項2】
前記第1の放射線不透過性サブ幾何学形状(61)は、前記第1の脚部(51)の第2の端部(51b)に割り当てられ、前記第2の放射線不透過性サブ幾何学形状(62)は、前記第1の脚部(51)と前記第2の脚部(52)との接合部(53)に割り当てられる、請求項1に記載の手術参照体。
【請求項3】
前記第2の脚部(52)の第2の端部(52b)に割り当てられた第3の放射線不透過性サブ幾何学形状(63)をさらに含む、請求項1又は2に記載の手術参照体。
【請求項4】
前記第1の脚部(51)及び前記第2の脚部(52)は互いに実質的に直交している、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項5】
前記第1の脚部(51)及び前記第2の脚部(52)がそれぞれ解剖学的に適合した表面(59)を有しており、前記第1の脚部(51)の解剖学的に適合した表面と、前記第2の脚部(52)の前記第1の端部(52a)を含む前記第2の脚部(52)の少なくとも一部の解剖学的に適合した表面との両方が、共通の平面内にあるか、又は一方向に曲がった平面内にある、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項6】
前記第1の脚部(51)及び前記第2の脚部(52)がそれぞれ解剖学的に適合した表面(59)を有しており、前記第1の脚部(51)の解剖学的に適合した表面と、前記第2の脚部(52)の前記第1の端部(52a)を含む前記第2の脚部(52)の第1の部分の解剖学的に適合した表面との両方が、共通の平面内にあるか、又は一方向に曲がった平面内にあり、前記第2の脚部(52)の第2の端部(52b)を含む前記第2の脚部(52)の第2の部分の解剖学的に適合した表面が、前記第1の脚部(51)と前記第2の脚部(52)の前記第1の部分との共通面に対して傾斜している、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項7】
前記第2の脚部の第2の部分の傾斜面が、前記第1の脚部の延長部と実質的に平行である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項8】
前記第2の脚部(52)の第2の端部(52b)に取り付けられた光パターン(80)が設けられる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項9】
前記第1の放射線不透過性サブ幾何学形状(61)は前記第1の脚部(51)に割り当てられ、前記第2の放射線不透過性サブ幾何学形状(62)は前記第2の脚部(52)に割り当てられる、請求項1に記載の手術参照体。
【請求項10】
前記第1の放射線不透過性サブ幾何学形状(61)は、前記第1の脚部(51)の第2の端部(51b)に割り当てられ、前記第2の放射線不透過性サブ幾何学形状(62)は、前記第2の脚部(52)の第2の端部(52b)に割り当てられる、請求項2に記載の手術参照体。
【請求項11】
手術中に患者の解剖学的構造を参照するための手術参照体(50)であって、当該手術参照体(50)は、
第1の放射線不透過性サブ幾何学形状(61)、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状(62)、及び第3の放射線不透過性サブ幾何学形状(63)を有する放射線不透過性幾何学形状(60)であって、各サブ幾何学形状が前記手術参照体(50)に固定的且つ空間的に再現可能に接続される、前記放射線不透過性幾何学形状(60)と、
患者の解剖学的構造(100)に対して解剖学的に適合した表面(59)を有する第1の脚部(51)と、
患者の解剖学的構造(100)に対して解剖学的に適合した表面(59)を有する第2の脚部(52)と、を含み、
第1の端部(51a)を有する前記第1の脚部(51)は、脚接合部分(53)において前記第2の脚部(52)の第1の端部(52a)に接続されており、
前記第1の放射線不透過性サブ幾何学形状(61)、前記第2の放射線不透過性サブ幾何学形状(62)、及び前記第3の放射線不透過性サブ幾何学形状(63)のそれぞれが、前記手術参照体(50)の基端から先端への向き毎に固有の放射線投影(66、67、68)を有しており、それによって、前記第1の放射線不透過性サブ幾何学形状(61)、前記第2の放射線不透過性サブ幾何学形状(62)、及び前記第3の放射線不透過性サブ幾何学形状(63)のそれぞれだけで、前記手術参照体(50)の少なくとも一部の2次元の放射線投影に基づいて、前記手術参照体(50)の前記空間的な位置及び向きを決定することができ、
前記第1の放射線不透過性サブ幾何学形状(61)は、前記第1の脚部(51)の第2の端部(51b)に割り当てられ、前記第2の放射線不透過性サブ幾何学形状(62)は、前記第2の脚部(52)の第2の端部(52b)に割り当てられ、前記第3の放射線不透過性サブ幾何学形状(63)は、前記第1の脚部(51)及び前記第2の脚部(52)の前記脚接合部分(53)に割り当てられる、
手術参照体(50)。
【請求項12】
前記手術参照体(50)は、少なくとも1つの尖端ピン孔(57)を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項13】
前記少なくとも1つの尖端ピン孔(57)は、前記第1の脚部(51)及び前記第2の脚部(52)の一方少なくとも前記第1の端部(51a/52a)と第2の端部(51b/52b)との間に位置する、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項14】
前記第1の脚部(51)及び前記第2の脚部(52)の少なくとも一方が、第1のサブ脚部(54)及び第2のサブ脚部(55)を含み、前記第1のサブ脚部(54)の第1の端部(54a)が、前記第1の脚部(51)及び前記第2の脚部(52)の少なくとも一方の前記第1の端部(51a/52a)に対応しており、前記第1のサブ脚部(54)の第2の端部(54b)は、サブ脚接合部分(56)において前記第2のサブ脚部(55)の前記第1の端部(55a)に対応している、請求項9乃至13のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項15】
前記サブ脚接合部分(56)は、前記少なくとも1つの尖端ピン孔(57)の少なくとも1つを含む、請求項14に記載の手術参照体。
【請求項16】
前記第1の脚部(51)と前記第2の脚部(52)との間のその接合点(53c)における角度が、90°未満、特に60°未満である、請求項9乃至15のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項17】
第1のサブ脚部(54)と第2のサブ脚部(55)との間のその接合点(56c)における角度が、特に90°未満、特に60°未満である、請求項14乃至16のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項18】
前記第1の脚部(51)及び第2の脚部の一方、及び前記第1の脚部及び第2の脚部(52)の他方の、第1のサブ脚部(54)及び第2のサブ脚部(55)は、W字形を形成する、請求項14乃至17のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項19】
前記解剖学的に適合した表面(59)の少なくとも一部が接着手段(58)を含む、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項20】
接着手段(58)は、人体の皮膚に対して刺激性のない接着剤でコーティングした表面部分である部分を含む、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項21】
接着手段(58)は、タッチファスナーの一部である部分を含む、その対応物が人間の皮膚に接着可能である、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項22】
前記手術参照体(50)の幾何学形状と、結合される光パターン(80)の前記位置及び向きとの間に再現可能な関係を形成するように結合される前記光パターン(80)の機械的インターフェイス(87a)のための機械的インターフェイス(57a)をさらに含む、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項23】
前記手術参照体(50)の幾何学形状と光パターン(80)の前記位置及び向きとの間に再現可能な関係を形成するための前記光パターン(80)をさらに含む、請求項1乃至22のいずれか一項に記載の手術参照体。
【請求項24】
前記光パターン(80)は、幾何学的に均一な明フィールド及び暗フィールドのラスター(82)、特に正方形の明フィールド及び暗フィールドのラスター、特に明フィールド及び黒フィールドのラスターから構成される、請求項23に記載の手術参照体。
【請求項25】
前記光パターン(80)は、異なる色の幾何学的に均一なフィールドのラスター(82)、特に正方形の色付きフィールドのラスター、特に色勾配フィールドのラスターから構成される、請求項23に記載の手術参照体。
【請求項26】
前記光パターン(80)は、明暗フィールドのハニカムラスター(83)、特にハニカムラスター内の明暗サークル又は明暗六角形のラスター(83)、特に明サークル及び黒サークル又は明六角形及び黒六角形のラスターから構成される、請求項23に記載の手術参照体。
【請求項27】
前記光パターン(80)は、異なる色フィールドのハニカムラスター(83)、特にハニカムラスター内の色付きサークル又は六角形のラスター(83)、特に色勾配サークル又は六角形のラスターから構成される、請求項23に記載の手術参照体。
【請求項28】
患者の解剖学的構造に関して手術参照体を校正するための方法であって、当該方法は、
患者の解剖学的構造に貼り付けられた、請求項1乃至27のいずれか一項に記載の前記手術参照体の第1の画像を第1の視線方向から撮影するステップと、
患者の解剖学的構造に貼り付けられた、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の手術参照体の第2の画像を、前記第1の視線方向とは異なる第2の視線方向から撮影するステップと、
患者の解剖学的構造を識別し、前記手術参照体の前記第1及び第2の画像及び解剖学的データベースに基づいて前記患者の解剖学的構造の3次元モデルを識別するステップと、
前記手術参照体の前記放射線不透過性幾何学形状に基づいて、前記患者の解剖学的構造に対する前記手術参照体の空間的な位置及び向きを決定するステップと、
前記患者の解剖学的構造の前記3次元モデルと、ユーザが選択できる視線方向から見た前記手術参照体の3次元イラストを共に示すステップと、を含む、
方法。
【請求項29】
第1の視線方向及び第2の視線方向とは異なる第3の視線方向から、患者の解剖学的構造に貼り付けられた、請求項1乃至27のいずれか一項に記載の前記手術参照体の第3の画像を撮影するステップをさらに含み、患者の解剖学的構造を識別し、前記患者の解剖学的構造の3次元モデルを識別するステップは、前記手術参照体の第1、第2及び第3の画像及び解剖学的データベースに基づく、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ガイド本体(15)と、放射線不透過性幾何学形状(20)とを有する手術ガイド装置の空間的な向きを決定するステップであって、前記放射線不透過性幾何学形状(20)は該ガイド本体(15)に対して所定の空間的な位置及び向きに配置され、前記手術ガイド装置の前記放射線不透過性幾何学形状に基づいて、撮像装置に対する任意の向きの固有の放射線投影を、前記患者の解剖学的構造及び前記手術参照体に対して提供するように適合される、ステップと、
前記患者の解剖学的構造の前記3次元モデルと、ユーザが選択可能な視線方向から見た前記手術ガイド装置の3次元イラストとを共に示すステップと、をさらに含む、請求項28又は29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
画像撮影の所定の最大誤差、患者の解剖学的構造の識別からの所定の最大誤差、及び前記手術参照体及び手術ガイド装置の空間的な位置及び向きを決定するための所定の最大誤差から、挿入され案内される手術インプラント及び手術ツールの少なくとも一方の移動経路(46)に沿った最大誤差を決定するステップをさらに含む、請求項28乃至30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
実行されると、請求項28乃至31のいずれか一項に記載の方法を実行するコンピュータプログラム。
【請求項33】
請求項32に記載のコンピュータプログラムの実行可能コードを記憶したデータ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術ガイド装置、手術参照体(reference body)、及び手術追跡システムに関し、特に、手術コンポーネントの位置特定の改善を可能にする手術ガイド装置、手術参照体、及び手術追跡システム、並びに対応する方法、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータプログラム製品を記憶した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外科手術は進歩してきた。手術中に臨床担当者、特に外科医をサポートするためのサポートシステムにより、大幅な改善が達成された。特に骨折は、外科医に器具を提供する外科医用サポートシステムからの恩恵を受け、これにより、外科医は、骨部分の再位置決め、及びネジ、釘、骨プレート等のインプラントの位置決めの正確性、並びにツールやターゲティング装置、及びガイド装置の正確性を向上させることができる。
【0003】
外傷を受けた骨、つまり骨折は視覚的にアクセスできる範囲が限られているため、モニタリングは、通常、X線撮像、又はコンピュータ断層撮影(CT)画像、又は磁気共鳴断層撮影(MRT)画像等の放射原理に基づいている。これら全ての原理及び方法には、放射線を大量に使用し、大型の装置を必要とし、かなりの時間がかかるという欠点が少なくとも1つある。手術中の各モニタリングステップは手術期間を延長し、こうして麻酔薬の影響の期間を延長し、コスト及び放射線の影響を増加させる。
【0004】
従って、撮像労力を削減し、こうして手術時間を短縮し、患者への放射線影響を軽減するが、同時に手術の正確さのレベルを維持又は向上させる、手術ガイド装置、手術参照体、及び手術追跡システム、並びに対応する方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、手術コンポーネントの位置特定及び位置決めの改善を可能にする手術ガイド装置、手術参照体、及び手術追跡システム、並びに対応する方法、コンピュータプログラム製品、及び独立請求項の主題によるそのコンピュータプログラム製品を記憶した記憶媒体を提供する。更なる実施形態は従属請求項に組み込まれる。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、手術中に患者の解剖学的構造を参照するための手術参照体が提供される。手術参照体は、第1の放射線不透過性(radio dense)サブ幾何学形状及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状を有する放射線不透過性幾何学形状であって、各サブ幾何学形状が手術参照体に固定的且つ空間的に再現可能に接続される、放射線不透過性幾何学形状と;患者の解剖学的構造に対して解剖学的に適合した表面を有する第1の脚部と;患者の解剖学的構造に対して解剖学的に適合した表面を有する第2の脚部と、を含み、第1の端部を有する第1の脚部は、脚接合部分において第2の脚部の第1の端部に接続されており、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状のそれぞれが、手術参照体の基端から先端への向き毎に固有の放射線投影を有しているため、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状のそれぞれだけで、手術参照体の少なくとも一部の2次元の放射線投影に基づいて、手術参照体の空間的な位置及び向きの決定が可能になる。
【0007】
こうして、特により大きな参照体を使用する場合に、参照体の関連部分への焦点を減らすことが可能である。識別のためにそれぞれの放射線不透過性サブ幾何学形状を使用しながら、参照体の一部のみを監視することができる。脚部の構造により、患者の解剖学的構造の広い表面をカバーできると同時に、脚部同士の間のアクセスも可能になる。このような参照体は、骨盤の広い領域をカバーする参照体による信頼性の高い参照を必要とする骨盤領域の手術で使用することができる。放射線撮影を行う際の視線方向によっては、参照体全体の一部しか放射線画像に写らない場合がある。従って、部分的なビューしかない場合でも、位置及び向きを決定できることは重要である。複数の放射線不透過性サブ幾何学形状を提供し、各サブ幾何学形状が空間的な位置及び向きの決定を可能にする場合に、放射線不透過性サブ幾何学形状の少なくとも1つが画像化した部分内にある可能性が非常に高いため、参照体の位置及び向きの決定が可能になる。
【0008】
一実施形態によれば、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状は、第1の脚部の第2の端部に割り当てられ、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状は、第1の脚部と第2の脚部との接合部分に割り当てられる。
【0009】
こうして、外科医が、参照体の第1の脚部を患者の解剖学的構造の上下方向に対応する向きに向けると、第1の脚部の第2の端部における第1の放射線不透過性サブ幾何学形状と、第1の脚部及び第2の脚部の接合部における第2の放射線不透過性サブ幾何学形状とが配置され、第1の脚部の第1の端部に対応する部分では、外科医は、2つの最も一般的な撮像方向、入口及び出口で進めることができる。
【0010】
一実施形態によれば、手術参照体は、第2の脚部の第2の端部に割り当てられた第3の放射線不透過性サブ幾何学形状をさらに含む。
【0011】
こうして、外科医が、参照体の第1の脚部を患者の解剖学的構造の上下方向に対応する向きに向けると、外科医は、最も一般的な2つの撮像方向である入口及び出口だけでなく、横方向にも進むことができる。
【0012】
一実施形態によれば、第1の脚部及び第2の脚部は互いに実質的に直交している。
【0013】
こうして、外科医が行動するための最適な自由空間が提供され、これにより手術に十分なスペースが確保される。
【0014】
一実施形態によれば、第1の脚部及び第2の脚部はそれぞれ、解剖学的に適合した表面を有しており、第1の脚部の解剖学的に適合した表面と、第2の脚部の第1の端部を含む第2の脚部の少なくとも一部の解剖学的に適合した表面との両方は、共通の平面内にあるか、又は一方向に曲がった(uni-dimensionally bent)平面内にある。
【0015】
こうして、第1の脚部と第2の脚部の少なくとも一部とを患者の解剖学的構造、特に骨盤領域における患者の外側の解剖学的構造に配置することができる。一方向に曲がった平面とは、紙を曲げるように一方向にのみ曲げられた均一な平面を意味する。
【0016】
一実施形態によれば、第1の脚部及び第2の脚部はそれぞれ、解剖学的に適合した表面を有しており、第1の脚部の解剖学的に適合した表面と、第2の脚部の第1の端部を含む第2の脚部の第1の部分の解剖学的に適合した表面との両方が、共通の平面内にあるか、又は一方向に曲がった平面内にあり、第2の脚部の第2の端部を含む第2の脚部の第2の部分の解剖学的に適合した表面は、第1の脚部と第2の脚部の第1の部分との共通面に対して傾斜している。
【0017】
こうして、参照体は患者の解剖学的構造の曲がりに適合することができる。さらに、傾斜面は、患者の解剖学的構造に対する参照体の確実な位置決めをサポートする。
【0018】
一実施形態によれば、第2の脚部の第2の部分の傾斜面が、第1の脚部の延長部と実質的に平行である。
【0019】
こうして、参照体は患者の解剖学的構造の曲がりにより良く適合することができる。さらに、傾斜面は、患者の解剖学的構造に対する参照体の確実な位置決めをサポートする。
【0020】
一実施形態によれば、第2の脚部の第2の端部に取り付けられた光パターンが提供される。
【0021】
こうして、光学的にサポートされた標的システムは、永続的に繰り返される放射線イメージングを行う必要なく、以下に説明するように使用できる。
【0022】
一実施形態によれば、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状は第1の脚部に割り当てられ、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状は第2の脚部に割り当てられ、特に、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状は第1の脚部の第2の端部に割り当てられ、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状は第2の脚部の第2の端部に割り当てられる。
【0023】
こうして、各脚に放射線不透過性サブ幾何学形状を提供することが可能であり、それによって、関連する撮像方向毎に、放射線不透過性サブ幾何学形状が視野範囲内に収まり、それによって、位置及び向きの決定が、放射線不透過性サブ幾何学形状のそれぞれの投影に基づいて行われる。
【0024】
一実施形態によれば、手術中に患者の解剖学的構造を参照するための手術参照体が提供される。手術参照体は、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状、及び第3の放射線不透過性サブ幾何学形状を有する放射線不透過性幾何学形状であって、各サブ幾何学形状が、手術参照体に固定的且つ空間的に再現可能に接続される、放射線不透過性幾何学形状と;患者の解剖学的構造に対して解剖学的に適合した表面を有する第1の脚部と;患者の解剖学的構造に対して解剖学的に適合した表面を有する第2の脚部と;を含み、第1の端部を有する第1の脚部は、脚接合部分において第2の脚部の第1の端部に接続されており、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状、及び第3の放射線不透過性サブ幾何学形状のそれぞれが、手術参照体の基端から先端への向き毎に固有の放射線投影を有しており、それによって、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状、及び第3の放射線不透過性サブ幾何学形状のそれぞれだけで、手術参照体の少なくとも一部の2次元の放射線投影に基づいて、手術参照体の空間的な位置及び向きを決定することができ、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状は第1の脚部の第2の端部に割り当てられ、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状は第2の脚部の第2の端部に割り当てられ、第3の放射線不透過性サブ幾何学形状は第1の脚部と第2の脚部との脚接合部分に割り当てられる。
【0025】
こうして、3つの放射線不透過性サブ幾何学形状を使用すると、放射線不透過性サブ幾何学形状のより分散した配置を実現できる。これにより、撮影した各放射線画像内で放射線不透過性サブ幾何学形状の投影が見つかる可能性が高まり、これにより撮影した部分の空間的な位置及び向きを決定できるようになる。
【0026】
一実施形態によれば、手術参照体は、少なくとも1つの尖端(apex)ピン孔を含む。
【0027】
こうして、手術参照体を患者の解剖学的構造に固定することが可能であり、それによって、参照体と患者の解剖学的構造との間の空間的な位置及び向きを確立及び維持することができる。複数の尖端孔を設けることも可能であることに留意されたい。1つ又は複数の尖端ピン孔の他に、光学撮像装置又は光パターンを結合するために1つ又は複数のインターフェイスを提供してもよいことに留意されたい。このようなインターフェイスは、通常、患者の解剖学的構造に接着するために使用される表面側とは反対側の表面側に設けられる。
【0028】
一実施形態によれば、少なくとも1つの尖端ピン孔は、第1の脚部及び第2の脚部の少なくとも一方の第1の端部と第2の端部との間に位置する。
【0029】
こうして、これらの放射線不透過性サブ幾何学形状が脚部の端部と脚部の接合部分とに位置する場合には、放射線不透過性サブ幾何学形状から一定の距離を隔てて尖端ピン孔を設けることができる。尖端ピン孔を使用する代わりに、参照体を、例えばベルクロ取付け用のループ、ピン用の接続要素を介して患者の解剖学的構造に固定する、又はホフマンシステムをクランプするレールを用いて追加の手術器具に固定するともできることに留意されたい。
【0030】
一実施形態によれば、第1の脚部及び第2の脚部の少なくとも一方は、第1のサブ脚部及び第2のサブ脚部を含み、第1のサブ脚部の第1の端部は、第1の脚部及び第2の脚部の少なくとも一方の第1の端部に対応しており、第1のサブ脚部の第2の端部は、サブ脚接合部分において第2のサブ脚部の第1の端部に対応する。
【0031】
こうして、第1及び第2のサブ脚により、脚部の軌道が患者の解剖学的構造に従う配置が可能になる。
【0032】
一実施形態によれば、サブ脚接合部分は、少なくとも1つの尖端ピン孔の少なくとも1つを含む。
【0033】
こうして、第1のサブ脚部と第2のサブ脚部との接合部分に尖端孔を設けることができる。第1及び第2のサブ脚部の接合部分は、患者の露出した骨に対応することができ、骨は皮膚に近く、それによって、尖端ピンを患者の解剖学的構造の骨に取り付けることができる。
【0034】
一実施形態によれば、第1の脚部と第2の脚部との間のその接合点における角度は90°未満、特に60°未満である。
【0035】
こうして、脚部のコンパクトなフレーム構造を提供することができる。脚部の軌道は曲がっていてもよく、その曲がりが角度を開くような形であってもよい。
【0036】
一実施形態によれば、第1のサブ脚部と第2のサブ脚部との間のその接合点における角度は、90°未満、特に60°未満である。
【0037】
こうして、脚部のコンパクトなフレーム構造を提供することができる。脚部の軌道は曲がっていてもよく、その曲がりが角度を開くような形であってもよい。
【0038】
一実施形態によれば、第1の脚部及び第2の脚部の一方、及び第1の脚部及び第2の脚部の他方の、第1のサブ脚部及び第2のサブ脚部が、W字形を形成する。
【0039】
こうして、参照体全体を患者の解剖学的構造、特に患者の解剖学的構造の骨盤領域に適合させることができる。W字形により、脚部及びサブ脚部の安定したフレーム構造が可能になり、患者の解剖学的構造の関連部分で脚部同士の間に十分なオープンスペースが提供され、患者の骨盤の解剖学的構造、特に患者の骨が皮膚表面の近くに露出している場所に十分に適合することができ、これによって信頼性の高い固定と、参照体と患者の解剖学的構造との間の位置及び向きの参照が可能になる。
【0040】
一実施形態によれば、解剖学的に適合した表面の少なくとも一部は接着手段を含む。
【0041】
こうして、追加の損傷を与えることなく、参照装置を患者の解剖学的構造に容易に接着させることができる。しかしながら、接着は、尖端ピンへの適用に加えて行わってもよい。
【0042】
一実施形態によれば、接着手段は、人間の皮膚に対して刺激性のない接着剤でコーティングされた表面部分である部分を含む。
【0043】
こうして、参照体を患者の解剖学的構造に容易に固定することができる。接着剤は、特定の温度又は放射線を適用することによって活性化又は非活性化され得る。
【0044】
一実施形態によれば、接着手段は、タッチファスナーの一部である部分を含み、その対応物は人間の皮膚に接着可能である。
【0045】
こうして、参照体を患者の解剖学的構造に容易に固定することができ、位置がずれた場合には、参照体の位置を容易に修正することができる。
【0046】
一実施形態によれば、手術参照体は、手術参照体の幾何学形状と、結合される光パターンの位置及び向きとの間に再現可能な関係を形成するように結合される光パターンの機械的インターフェイスのための機械的インターフェイスをさらに含む。
【0047】
こうして、接続された参照体に対する光パターンの相対的な位置及び向きが確立されることを保証することができる。この目的のために、ポジティブ・フィット・レセプタクル(確実に適合するレセプタクル)を提供することができる。このポジティブ・フィット・レセプタクルには、キー(key)及びキー孔のコード化した部分を設けることもでき、これにより、相対的な位置及び向きがシステムに既知である特定の組合せに対してのみ接続が可能になる。これにより、操作中の意図しない誤用及び誤解を避けることができる。機械的インターフェイスにより、コンポーネントを選択的に再利用するためにユニットを解放することができる。
【0048】
一実施形態によれば、手術参照体は、手術参照体の幾何学形状と、光パターンの位置及び向きとの間に再現可能な関係を形成するように、光パターンをさらに含む。
【0049】
こうして、手術参照体だけでなく、インターフェイスを介して手術参照体が取り外し可能に結合される光パターンも提供される。光パターンはまた、手術参照体と一体的に形成してもよい、すなわち、取り外し可能ではなく、分離可能な界面を有していないことに留意されたい。
【0050】
一実施形態によれば、光パターンは、幾何学的に均一な明フィールド及び暗フィールドのラスター、特に正方形の明フィールド及び暗フィールドのラスター、特に明フィールド及び黒フィールドのラスターから構成される。
【0051】
こうして、パターンの向き及び位置を再現することが容易になる。さらに、印刷プロセスの実現が容易になり、パターンの計算も容易になる。正方形のラスター内の様々な色又は色合い(shade:濃淡)のフィールドが、固有のパターン領域を形成する。幾何学的に均一とは、フィールドの寸法が幾何学的に均一であることを意味するが、各フィールドは、固有のパターン領域を形成するために異なる色又は色合いを有することができる。
【0052】
一実施形態によれば、光パターンは、幾何学的に均一な異なる色フィールドのラスター、特に正方形の色付きフィールドのラスター、特に色勾配フィールドのラスターから構成される。
【0053】
こうして、明フィールド及び暗フィールドだけでなく、異なる色も使用できる。これにより、外科医が、適切な光パターンを選択し易くなる色分け(color coding:カラーコーディング)が可能になる。さらに、2つのオプションの代わりに、3つ以上の色、つまり明るい色及び暗い色を使用すると、より多くの情報を同じ表面部分に保存できる。2つのオプションがあり、例えば、明暗の2つのフィールドで4つの異なる組合せを反映できる。4つのオプションがあり、例えば、黄、青、赤、緑の2つのフィールドは、4倍となる16の異なる組合せを反映できる。
【0054】
一実施形態によれば、光パターンは、明フィールド及び暗フィールドのハニカムラスター、特にハニカムラスター内の明暗サークル又は明暗六角形のラスター、特に明サークル及び黒サークル又は六角形のラスターから構成される。
【0055】
こうして、ハニカムラスターの各フィールドが正方形のラスターに比べて円に近いため、よりコンパクトなパターンを提供することができる。正方形パターンよりも充填密度が高くなる。ハニカムラスター内の様々な色又は色合いのフィールドが、固有のパターン領域を形成する。
【0056】
一実施形態によれば、光パターンは、異なる色のハニカムラスターフィールド、特にハニカムラスター内の色付きサークル又は六角形のラスター、特に色勾配サークル又は六角形のラスターから構成される。
【0057】
こうして、明フィールド及び暗フィールドだけでなく、異なる色も使用できる。これにより、外科医が、適切な光パターンを選択し易くなる色分け(color coding)が可能になる。さらに、2つのオプションの代わりに、3つ以上の色、つまり明るい色及び暗い色を使用すると、より多くの情報を同じ表面部分に保存できる。2つのオプションがあり、例えば、明暗の2つのフィールドで4つの異なる組合せを反映できる。4つのオプションがあり、黄、青、赤、緑の2つのフィールドは、4倍となる16の異なる組合せを反映できる。
【0058】
一実施形態によれば、患者の解剖学的構造に関して手術参照体を校正するための方法が提供される。この方法は、患者の解剖学的構造に接着している上述の手術参照体の第1の画像を第1の視線方向から撮影するステップと;患者の解剖学的構造に接着している請求項のいずれか一項に記載の手術参照体の第2の画像を、第1の視線方向とは異なる第2の視線方向から撮影するステップと;患者の解剖学的構造を識別し、手術参照体の第1及び第2の画像及び解剖学的データベースに基づいて患者の解剖学的構造の3次元モデルを識別するステップと;手術参照体の放射線不透過性幾何学形状に基づいて、患者の解剖学的構造に対する手術参照体の空間的な位置及び向きを決定するステップと;患者の解剖学的構造の3次元モデルと、ユーザが選択できる視線方向から見た手術参照体の3次元イラストを共に示すステップと;を含む。
【0059】
こうして、2つの画像に基づいて患者の解剖学的構造を識別することができる。両方の画像が放射線不透過性サブ幾何学形状の1つを有しているため、両方の放射線不透過性サブ幾何学形状の互いに対する相対的な空間的な位置及び向きが既知であるため、両方の画像の空間的な位置及び向きをまとめることができる。こうして、両画像の位置及び向き関係も互いに対応付けることができる。それぞれの解剖学的構造は、複数の解剖学的構造モデルを含むデータベースで提供してもよい。解剖学的構造モデルは、実際の解剖学的構造の集合、又は解剖学的構造を表すアルゴリズムに基づくことができ、アルゴリズムのパラメータを選択することによって解剖学的構造のバリエーションを実現することができる。識別は、画像内で認識した解剖学的構造を、データベースに保存される解剖学的構造の対応する部分と比較することによって行うことができる。どちらの画像も、患者の解剖学的構造の詳細を全て示しているわけではない。ただし、3次元モデルを図示又は増補(augmenting:増強、拡張)することで、両方の画像に存在しない詳細を3次元モデルから導き出すことができる。
【0060】
一実施形態によれば、この方法は、患者の解剖学的構造に接着した上述の手術参照体の第3の画像を、第1の視線方向及び第2の視線方向とは異なる第3の視線方向から撮影するステップをさらに含み、患者の解剖学的構造を識別し、患者の解剖学的構造の3次元モデルの識別は、手術参照体の第1、第2、及び第3の画像及び解剖学的データベースに基づいている。
【0061】
こうして、3次元モデルのより詳細な決定及び識別が達成され得る。第3の画像は、第1及び第2の画像には示されていない詳細を埋めるために使用できる。さらに、第3の画像は、識別したモデルの選択を検証するために使用することができる。
【0062】
一実施形態によれば、この方法は、ガイド本体と、ガイド本体に対して所定の空間的な位置及び向きに配置され、撮像装置に対する任意の向きの固有の放射線投影を提供するように適合された放射線不透過性幾何学形状とを有する手術ガイド装置の空間的な向きを、手術ガイド装置の放射線不透過性幾何学形状に基づいて、患者の解剖学的構造及び手術参照体に対して決定するステップと;患者の解剖学的構造の3次元モデルと手術参照体の3次元イラストとを、ユーザが選択可能な視線方向から見た手術ガイド装置の3次元イラストと共に示すステップと;をさらに含む。
【0063】
こうして、参照体及び解剖学的構造だけでなく、手術器具も視覚化できる。通常、手術器具の幾何学形状は既知であり、解剖学的構造は2つ又は3つの画像によって識別でき、さらに、参照体によりアイテムの互いに対する空間的な位置及び向きを決定できるため、手術器具、例えば案内ツールを含み、さらに、実際の状況では案内装置が未だ存在していないが、案内されるアイテム、つまりインプラント又は更なるツールを含む全体の状況を仮想的に図示することができる。これにより、計画した対策が成功するか、少なくとも有望かどうかを評価するためのツール又はインプラントの実際のシミュレーション及び仮想適用が可能になる。
【0064】
一実施形態によれば、この方法は、画像撮影の所定の最大許容誤差から、患者の解剖学的構造の識別からの所定の最大許容誤差、並びに、手術参照体及び手術ガイド装置の空間的な位置及び向きを決定する所定の最大許容誤差から、挿入され案内される手術インプラント及び手術ツールの少なくとも一方の移動経路に沿った最大誤差を決定するステップをさらに含む。
【0065】
こうして、誤差がどの程度互いに加算されるか、合計するとおそらく最大合計誤差より大きくなるかを推定できる。1つ又は複数のパラメータを選択又は適応させることにより、すなわち、異なるツール又は異なるインプラントを選択することにより、外科医は許容可能な誤差を見つけることができる。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、実行時に上述した方法を実行するコンピュータプログラム製品が提供される。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、上述したコンピュータプログラム製品の実行可能コードを記憶したデータ記憶媒体が提供される。
【0068】
上述した実施形態は組み合わせることもでき、組み合わせた形態では、単一の技術的効果及び利益の合計を超える相乗的な技術的効果及び相乗的利益を提供することに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明について、以下の図面を用いて説明する。
【
図1】手術ガイド装置/手術器具/ツールの例示的な実施形態の側面図である。
【
図2】手術ガイド装置/手術器具/ツールの例示的な実施形態を、基端から先端への向きで見た斜視図である。
【
図3】手術ガイド装置/手術器具/ツールの例示的な実施形態を、放射線画像において基端から先端への向きから見た斜視図である。
【
図4】患者の解剖学的構造に適用した手術ガイド装置/手術器具/ツールの放射線画像での側面図である。
【
図5】第1及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状の相補的な一致を示す図である。
【
図6】光学撮像装置に取り付けられた手術ガイド装置/手術器具/ツールの例示的な実施形態を示す図である。
【
図7】正方形の光パターンを有する手術参照体の例示的な実施形態を示す図である。
【
図8】患者の解剖学的構造に適用した六角形の光パターンを有する手術参照体の例示的な実施形態を、光学撮像装置に取り付けられた手術ガイド装置/手術器具/ツールとともに示す図である。
【
図9】画像処理装置の例示的な実施形態の概略図である。
【
図10】光学撮像装置がそれぞれのインターフェイスを介して手術ツールに接続され、パターンがそれぞれのインターフェイスを介して接続された参照体に接続される例示的な実施形態を示す図である。
【
図11】光学撮像装置がそれぞれのインターフェイスを介して参照体に接続され、パターンがそれぞれのインターフェイスを介して接続された手術ツールに接続される例示的な実施形態を示す図である。
【
図12】異なる放射線不透過性サブ幾何学形状の固有の放射線投影を含むW字形の手術参照体の例示的な実施形態を示す図である。
【
図13】尖端ピンを尖端ピン孔内に適用したW字形の手術参照体の例示的な実施形態を示す図である。
【
図14】手術参照体の別の実施形態を示す図である。
【
図15】患者の解剖学的構造に適用した
図14の手術参照体を第1の視点で示す図である。
【
図16】患者の解剖学的構造に適用した
図14の手術参照体を第2の視点で示す図である。
【
図17】患者の解剖学的構造に適用した
図14の手術参照体を第3の視点で示す図である。
【
図18】必須及びオプションの方法ステップを含む方法の例示的な実施形態を示す図である。
【
図19】本発明の実施形態の異なる応用例を示す図である。 同じ又は類似の参照符号は、同じ又は類似の構成要素を示していることに留意されたい。これらの図に沿って、本発明の例示的な実施形態について以下に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
手術インプラント及び手術ツールの場合に、先端部は患者の体内に最初に挿入される端部として規定され、基端部は反対側の端部として規定される。穿孔ツールの場合に、穿孔形状を含む端部は先端部であるとみなされ、穿孔ツールを穿孔駆動部に固定するためのシャフトは基端部であるとみなされる。
【0071】
(放射線)投影は、幾何学形状を2次元アレイに投影した画像とみなされる。
【0072】
第1及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状の相補的パターンは、一致するパターンとみなされ、一緒になって閉じた共通パターンを形成する。このような一致するパターンは、例えば、均一な周方向距離又は重なり(overlap)を有する同心円、多角形、又は他の形状によって、或いは、円又は多角形又は他の形状のセグメントのように、均一な距離又は重なりを有するセグメントをインターリーブすること等によって形成され得る。
【0073】
ツール、インプラント、又はその一部の中心線は、それぞれのツール、インプラント、又はその一部の側縁まで等しい距離を有する経路に従う仮想線である。
【0074】
2つの脚部の接合点は、2つの脚部の両方の中心線が互いに交差する点、又は距離が最小になる点とみなされる。
【0075】
2つの脚部の間の角度は、両方の中心線の接合点を通って延びる各脚部の中心線の接線によって規定される角度とみなされる。
【0076】
2つの脚部の接合部分は、接合点に向かう両方の脚部が分離されなくなった領域、つまりエッジを共有する領域である。
【0077】
第1及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状の相補的パターンは、一致するパターンとみなされ、一緒になって閉じた共通パターンを形成する。このような一致するパターンは、例えば、均一な周方向距離又は重なりを有する同心円、多角形、又は他の形状によって、或いは、円又は多角形又は他の形状のセグメントのように、均一な距離又は重なりを有するセグメントをインターリーブすること等によって形成され得る。
【0078】
手術ガイド装置又は手術器具の仮想視覚化には、それぞれ手術ガイド装置及び手術器具の完全な視覚化を含んでもよいが、追加又は代替として、それぞれ手術ガイド装置及び手術器具の軸線、及び/又はその代表的なスケール及び/又は輪郭であってもよい特徴的な幾何学形状の視覚化も含んでもよい。手術ガイド装置又は手術器具を仮想的に視覚化することには、利用可能な様々なインプラント等の視覚化、特にネジを意図して適用する患者の解剖学的構造と組み合わせて、利用可能な3つの異なる骨ネジの視覚化も含まれる場合があり、それによって、外科医が仮想的な視覚化を通じて様々なネジの中から適切なネジを認識し、識別できるようにする。これは、3つの数に限定されず、ネジにも限定されず、釘、特に、様々な曲率半径を有する釘、及び他のインプラント、及びKワイヤ等の手術器具も含み得ることに留意されたい。
【0079】
手術ガイド装置又は手術器具の任意の意図した使用向きの固有の投影は、システム及び/又は外科医が、第2及び同一の投影による更なる向きのそれぞれが意図した使用範囲又は合理的な使用範囲外であることを認識する限り、2つ以上の異なる向きの投影が同一であることを排除するものではない。この点に関して、意図した使用範囲又は合理的な使用範囲内の向きが固有の投影に基づいて決定できることが常に保証される場合に、繰り返しのパターン投影は許容される可能性がある。手術ガイド装置又は手術器具が逆さま又はある向きを向いている場合に、意図した使用又は合理的な使用の範囲外とみなされる可能性があるが、これは手術中に重大な損傷を引き起こす可能性はない。
【0080】
参照体と患者の解剖学的構造との間の対応関係は、参照体が患者の解剖学的構造に取り付けられた状態で、異なる位置/向き(例えば、ML、AP、又は他の異なる方向)からの複数(2つ以上)の画像を提供することによって確立することができる。これらの複数のビューに基づいて、参照体と患者の解剖学的構造との間の関係が画像増補によって実現される。参照体の既知の幾何学形状により、画像面内の参照体と器具/ツール/解剖学的構造とのスケーリングを決定することができる。異なる撮像ビューは、互いに参照することができる。さらに、患者の解剖学的構造に関連して様々な参照体を設定するために、自動又は手動の2D画像セグメンテーションを実行できる。これは、一般的に知られている骨の幾何学形状、又は例えば術後のCT等によって得ることができる個別に知られている骨の幾何学形状を含むデータベースによってサポートされ得る。
【0081】
図1及び
図2は、コンピュータ支援手術CASのための手術ガイドシステム1を示す。手術ガイドシステム1は、ここでは突き錐(awl)として示される手術ガイド装置10を含む。手術ガイド装置10は、手術ガイド装置の基端部11から手術ガイド装置10の先端部12までの長手方向の延長部を有するガイド本体15を含む。ガイド本体は、中空のシャフト15aを有しており、長手方向手術インプラント及び長手方向ツールの少なくとも一方を案内するように適合される。手術インプラントは、例えば、ネジ又は釘又はワイヤであってもよい。ツールは、Kワイヤ、ドリル、又は針であってもよい。中空シャフト15aは案内チャネル15bを有しており、案内チャネルは、案内本体に沿って延び、挿入され案内される手術インプラント又は手術ツールの移動経路46に沿って先端方向に続く案内軌道16を辿る。案内軌道は、直線であってもよく、屈曲又は曲線であってもよい。直線軌道は、ドリル又はネジ等の直線インプラント又はトール(tolls)を挿入するために使用できる。屈曲した軌道は、曲がった釘又は曲がったワイヤ等、曲がった又は湾曲したインプラントやツールを挿入するために使用できる。案内軌道は、ガイド本体15又は中空シャフト内、又はガイド本体15又は中空シャフト上の軌道として理解すべきである。移動経路46は、案内経路16を先端方向に向けて、すなわち患者に向かう方向に延びる経路として理解すべきである。移動経路は通常、案内軌道16と同様の曲率を有する。案内軌道16が直線であれば、移動経路46も直線である。案内経路が湾曲していれば、通常、湾曲したインプラント又はツールが移動する移動経路も湾曲している。移動経路は、挿入時に案内されるインプラント又はツールが、ここではツールのチップ(tip)18として示される先端部の中空シャフト15aを出た後に移動する経路を規定する。ここに示される突き錐はハンドル又はノブ17を有しており、これは突き錐を取り扱うために、特に突き錐の先端部12に刃を当てるために使用される。刃は開口部を残し、この開口部を通してツール又はインプラントを中空シャフト及び先端開口部を通して患者に向けて案内することができる。
【0082】
図1及び
図2は突き錐を示しているが、ガイド装置10は釘又はネジを位置決めするための標的装置であってもよいことを理解されたい。
【0083】
図2は、ノブ17における放射線不透過性幾何学形状20を示す。放射線不透過性幾何学形状20は、ガイド本体15に対して所定の空間的な位置及び向きに配置される。放射線不透過性幾何学形状20は、手術ガイド装置10の意図した使用向きにおける案内本体の任意の基端から先端への向きに固有の放射線投影25を提供する。固有の投影により、ガイド装置10、ひいてはガイド本体15及び中空シャフト15aの向きを決定することができるので、固有の投影は、案内軌道16と、中空シャフト15aによって案内されるときにツール又はインプラントが移動する移動経路46とを決定するために使用することができる。中空シャフトはまた、インプラント又は器具を横方向に挿入するための横方向スリット(ここでは図示せず)を有してもよいことに留意されたい。このスリットは、閉じた中空シャフト15aを形成するためにカバーによって閉じてもよい。ガイド本体(15)は、案内チャネル(15b)を有する中空シャフト(15a)を含み、案内チャネルは案内軌道(16)を辿る。
【0084】
放射線不透過性幾何学形状20は、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状21及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状22を有してもよい。この図では、第1及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状21、22はノブ17に配置されるが、ガイド装置10のいずれかの場所に配置してもよい。任意の放射線不透過性幾何学形状20又はサブ幾何学形状21、22、23もまた、例えばクリップ接続で解放可能に取り付けられた幾何学形状として提供してもよい。サブ幾何学形状21、22は、クリップに一緒に形成してもよい。ガイド装置と放射線不透過性幾何学形状20又は放射線不透過性サブ幾何学形状21/22/23とのキー/キー孔要素を一致させることにより、ガイド装置に対する放射線不透過性幾何学形状20/サブ幾何学形状21、22、23の所定の向き及び位置を確立することができる。キー/キー孔要素はまた、ガイド装置10とともに使用することを意図した放射線不透過性幾何学形状20/サブ幾何学形状21、22、23のみをガイド装置にクリップ留めできるように使用することもできる。放射線不透過性幾何学形状は、固有の3次元形状を有してもよく、及び/又は固有の投影を一緒に形成するサブ幾何学形状から構成してもよい。
【0085】
図2に示すように、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状21及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状22は、同心円状に配置されるが、同一平面内ではなく平行平面に配置された放射線不透過性材料の2つの円形リングによって実現され得る。基端から先端方向にまっすぐに見ると、投影内の両方のリングが同心円として表示される。この視線方向では、両方のリング、1つの第1の放射線不透過性サブ幾何学形状21と1つの第2の放射線不透過性サブ幾何学形状22とが相補的なパターン、ここでは互いに適合(fit)する2つの同心リングを形成することができる。僅かに横方向の位置から傾斜したビューを適用すると、リングは楕円として表示され、同心円ではなくなる。同心円シフトの測定値と楕円変形の測定値、及び両方のリングの相対的なサイズは、横方向の視野角だけでなく、視野距離も計算するための基礎を与え得る。ガイド装置の幾何学形状が既知であるため、その案内軌道16も既知であり、こうして、移動経路46も既知である。これは、直線の案内軌道だけでなく、湾曲した案内軌道16にも当てはまる。
図5に示すように、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状21の放射線投影26と、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状22の放射線投影27とが共に、所定の(直線の長手方向延長部に向かうものであり得る)視線方向に、相補的パターン29を有することができる。この相補的パターン29は、例えば、両方の同心リングにより形成することができる。他の相補的なパターンは、相補的な視線方向に向けて見たときに、互いに一致する任意のキー/キー孔の形状によって形成してもよい。
【0086】
図2に示すように、ガイド装置は、更なる第3の放射線不透過性サブ幾何学形状23を有してもよい。一方、図示の実施形態における第1及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状21及び22は、ノブ17を含む基端部11に位置しており、第3の放射線不透過性サブ幾何学形状23は、先端部12及びチップ18の近くに位置する。
図4に示されるように、第3の放射線不透過性サブ幾何学形状23には、基準マーカ24を設けてもよい。第3の放射線不透過性サブ幾何学形状23も基端部11に設けることができ、また、第1及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状21及び22と空間的に重なり得る。基準マーカ24は、放射線不透過性の球体又は他の幾何学形状であってもよく、どの視線方向に対しても共通して固有の投影を提供するように空間的に配置される。第1及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状21及び22の同心円は、基端から先端への正確な方向の非常に正確な決定を可能にし、基準マーカ24は空間的向きの正確な横方向の決定を可能にする。
【0087】
図3は、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状21のその固有の放射線投影26を含む視覚化を示す。放射線不透過性幾何学形状20、21、22、23により、特にガイド装置の輪郭のコントラストが高くない場合に、ガイド装置の輪郭としてより正確に決定できるようになる。第1の放射線不透過性サブ幾何学形状21の両方のリングの位置、サイズ、及び形状に基づいて、ガイド装置10の向きを決定し、案内軌道16及び移動経路46を増補及び視覚化することが可能である。
【0088】
視覚化及び増補は、コンピュータ又は他の任意の計算能力であり得る画像処理装置30によって実行することができる。画像処理装置は、ここでは、
図4に示されるように、その基準マーカ24を含む第3の放射線不透過性サブ幾何学形状23の、放射線不透過性幾何学形状20の固有の放射線投影25に基づいて、患者の解剖学的構造100に対するガイド本体15の向きを仮想視覚化19するように適合した視覚化手段36を有する。第3の放射線不透過性サブ幾何学形状23の固有の放射線投影27、特に基準マーカ24のパターンにより、ガイド装置の位置及び向きの決定が可能になる。これにより、ガイド本体15の向きの仮想視覚化19が可能になる。画像処理装置30はさらに、埋め込まれる手術インプラント又は手術ツール45の少なくとも一方の移動経路46を視覚化するために、ガイド本体15の向きの仮想視覚化19上に案内軌道16を増補するための増補手段38を有する。
【0089】
外科医の向きを単純化するために、増補手段38は、増補した案内軌道16に沿って再現可能なスケール39を増補することができる。このスケール39は、外科医に、インプラント・チップ又はツール・チップが、案内軌道16に沿って挿入されるときに、どこで終わるかというアイデアを与えることができる。このスケールは、外科医が正しいインプラント/ツールの長さを選択するのにも役立ち得る。画像認識と解剖学的構造の識別とを組み合わせて、どのツール又はインプラントの使用が推奨されるかを外科医に提案することができる。増補手段はまた、
図4に示すように、放射線不透過性幾何学形状20の固有の放射線投影25に基づいて、特に第3の放射線不透過性サブ幾何学形状23の基準マーカ24の固有の放射線投影27に基づいて、患者の解剖学的構造100に対して埋め込まれるインプラントに関連する幾何学形状を増補することもできる。
【0090】
図6及び
図7は、手術参照体50に対して手術器具10を追跡するための手術追跡システムを示す。手術追跡システム2は、光学撮像装置70及び光パターン80を有する。撮像装置70はパターン80の画像を撮影し、パターン80には固有の部分、サイズ、歪みがあるため、認識した特有のパターン部分によって、光学撮像装置70及びパターン80の相対的な位置を決定することができる。撮像装置70は、カメラ又は任意の他の画像撮影装置であってもよい。撮像装置は、患者の解剖学的構造に取り付けられる手術ツール10又は参照体50のいずれかに結合され得る。パターン80は、参照体50及び光学撮像装置70の他方に結合してもよい。
図5は、光学撮像装置70が手術ツール/装置10に結合されることを示す。
図6は、光パターン80が参照体50に結合されることを示す。ここで、パターン80は参照体50に直接印刷される。パターンは手術器具/ツール10側にも設けてもよく、光学撮像装置70を参照体50側に設けてもよいことに留意すべきである。パターン80及び光学撮像装置70は両方とも、それぞれの器具10及び参照体50に固定的に結合してもよく、又はそれらに取り外し可能に結合してもよい。貴重なカメラ装置を再利用するために、光学撮像装置70を手術器具10に取り外し可能に結合することも可能であるが、パターン80は、参照体10上に取り外し不可能に印刷され、使用後に廃棄され得る。
【0091】
撮像装置70は、手術器具10に取り付けられると、光学撮像装置70の所定の視線方向71に対する手術器具10の位置及び向きを表し、同様に、光パターン80は、固有の光サブパターン80aに対する手術参照体50の位置及び向きを表す。こうして、パターン80から画像を取得することにより、手術器具10の位置及び向きに対する手術参照体50の相対的な位置及び向きを決定することができる。この目的のために、
図9に示すように、システムには、パターン認識手段32及び視覚化手段38を含む画像処理装置30が設けられる。さらに、画像処理装置30は増補手段36を有してもよい。
【0092】
画像処理装置30は、撮像装置70から撮影した画像と光パターンの記憶した表現とに基づいて、撮像装置70の位置及び視線方向71に対する光パターン80の少なくとも光サブパターン80aの位置及び向きを認識するためのパターン認識手段32を有する。さらに、画像処理装置30は、光学撮像装置70によって表される手術器具10を仮想的に視覚化し、光パターン80によって表される手術参照体50を仮想的に視覚化するための視覚化手段38を有する。あるいはまた、視覚化手段38は、撮像装置70及びパターン80が器具10及び参照体50のいずれかに取り付けられるかに応じて、光パターン80によって表される手術器具10を仮想的に視覚化し、光学撮像装置70によって表される手術参照体50を仮想的に視覚化する。増補手段36が提供される場合に、増補手段は、視覚化に対する器具、スケール、さらには仮想器具又は仮想インプラントの移動軸線又は軌道を増補することができる。増補アイテムは、少なくとも2つの2次元画像を3次元画像に変換する変換プロセスから、又はデータベースの仮想的に記憶したアイテムから提供され得る。さらに、定量的な尺度、インプラントの特性、又は識別子等の追加情報が増補される場合があり、これは、外科医が正しい測定値及びアイテムを特定するのに役立ち得る。増補手段は、撮像装置70の位置及び視線方向71に対する光パターン80の少なくとも光サブパターン80aの認識した位置及び向きに基づいて、手術器具10の所定の動作軌道16、46を手術器具10の仮想視覚化上に増補して、光パターン80によって表される手術参照体50に対する手術器具10の動作経路46を視覚化することができる。この増補は、スクリーン上で、又は手術中に外科医が着用する増補メガネ画面でさえも行ってもよい。
【0093】
図10及び
図11は、光学撮像装置70が、手術器具10及び手術参照体50の一方の幾何学形状と、光学撮像装置70の位置及び視線方向71との間の再現可能な関係を有するユニットを形成するための、手術器具10及び手術参照体50の一方のポジティブ・フィット・レセプタクル17a、57aに結合される機械的インターフェイス77aを有し得ることを示す。同様に、光パターン80は、手術器具10及び手術参照体50の一方の幾何学形状と、光パターン80の位置及び向きとの間の再現可能な関係を有するユニットを形成するための、手術器具10及び手術参照体50の一方のポジティブ・フィット機械的インターフェイス17a、57aに結合される機械的インターフェイス87aを含むことができる。取り外し可能なレセプタクルを提供する代わりに、手術器具10及び手術参照体50の一方の幾何学形状と、光学撮像装置70の位置及び視線方向71との間の再現可能な関係を有するユニットを形成するために、光学撮像装置70を手術器具10及び手術参照体50の一方に固定して接続することも可能である。同様に、光パターン80は、手術器具10及び手術参照体50の一方の幾何学形状と、光パターン80の位置及び向きとの間の再現可能な関係を有するユニットを形成するために、手術器具10及び手術参照体の他方に固定的に取り付けてもよい。
【0094】
図7に示すように、光パターン80は、幾何学的に均一な明フィールド及び暗フィールドのラスター82から構成される。フィールドは、正方形又は円形のフィールドであってもよく、又は長方形のラスターにある程度フィットする形状を有してもよい。ラスターフィールドの色は、明るい、白い、又は金属の表面(例えば、インプラント、ツール、又は参照体等の陽極酸化表面)上に暗フィールド又は黒フィールドを印刷することを含む、任意の異なる色にすることができる。特に、正方形の明フィールド及び暗フィールドのラスター、特に明フィールド及び黒フィールドのラスターは、QRコードと同様に使用され得る。特定のアンカーパターンは、規定したサブパターンを要求するために使用できる。明暗フィールド又は白黒フィールドの代わりに、異なる色のフィールド、例えば赤と緑、黄と青、又は黄と黒も使用できる。代替として、
図8に示すように、光パターン80は、明フィールド及び暗フィールドのハニカムラスター83から構成してもよい。フィールドは、六角形又は円形フィールドであってもよく、又はハニカムラスターにある程度フィットする形状を有してもよい。ハニカムラスターフィールドの色は、明るい、白い、又は金属の表面(インプラント、ツール、又は参照体等の陽極酸化表面)に暗フィールド又は黒フィールドを印刷することを含む、任意の異なる色にすることができる。特に、正方形の明フィールド及び暗フィールドのラスターである。明暗フィールド又は白黒フィールドの代わりに、異なる色のフィールド、例えば赤と緑、黄と青、又は黄と黒も使用できる。
【0095】
図12は、
図8に示されるように、患者の解剖学的構造100に位置合わせされ得る手術参照体50の形状を示す。
【0096】
手術参照体50は、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62を有する放射線不透過性幾何学形状60として、放射線ベースの識別を目的としており、各サブ幾何学形状が手術参照体50に固定的且つ空間的に再現可能に接続される。参照体50(ここではその一般的な形状は示していない)は、第1の脚部51及び第2の脚部52を有しており、各脚部が患者の解剖学的構造100に対して解剖学的に適合した表面59を有する。解剖学的に適合した表面は
図13に示される。第1の端部51aを含む第1の脚部51は、脚接続部53において第2の脚部52の第1の端部52aに接続される。第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62のそれぞれは、手術参照体50の基端から先端への向き毎に固有の放射線投影66、67を有しており、それによって、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62のそれぞれだけで、手術参照体の少なくとも一部の2次元の放射線投影に基づいて、手術参照体50の空間的な位置及び向きを決定することができる。放射線不透過性幾何学形状は、
図1~
図4、特に
図4に関して説明したように、一組の基準マーカ24によって形成することができる。サブ幾何学形状61、62の放射線不透過性幾何学形状は、パターン80によっても提供することができ、ここで、例えばパターンの暗フィールドは、放射線不透過性物質又は塗料でできている。第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61は第1の脚部51に割り当てられ、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62は第2の脚部52に割り当てられる。特定の実施形態では、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61は第1の脚部51の第2の端部52bに割り当てられ、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62は、第2の脚部52の第2の端部52bに割り当てられる。
【0097】
図12は、手術中に患者の解剖学的構造を参照するための手術参照体50を示し、手術参照体50は、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62、及び第3の放射線不透過性サブ幾何学形状63を有する放射線不透過性幾何学形状60を有する。サブ幾何学形状のそれぞれは、手術参照体50に固定的且つ空間的に再現可能に接続される。
図4に示されるように、放射線不透過性サブ幾何学形状は一組の基準マーカとして提供され得るが、
図2又は
図3に示すようにラスターとして提供することもでき、例えば暗フィールドは放射線不透過性の材料で作られ、明フィールドは放射線不透過性の材料で覆われていない。第1及び第2の脚部51、52は、
図8及び
図13に示すように、患者の解剖学的構造100に対して解剖学的に適合した表面59を有する。第1の端部51aを含む第1の脚部51は、脚接合部分53において第2の脚部52の第1の端部52aに接続される。第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62、及び第3の放射線不透過性サブ幾何学形状63のそれぞれは、手術参照体50の基端から先端への向き毎に固有の放射線投影66、67、68を有しており、それによって、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62、及び第3の放射線不透過性サブ幾何学形状63のそれぞれだけで、手術参照体の少なくとも一部の2次元の放射線投影に基づいて、手術参照体50の空間的な位置及び向きを決定することができる。第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61は第1の脚部51の第2の端部51bに割り当てられ、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62は第2の脚部52の第2の端部52bに割り当てられ、第3の放射線不透過性サブ幾何学形状は、第1の脚部51と第2の脚部52の脚接合部53に割り当てられる。
【0098】
図12は、手術参照体50が尖端ピン孔57を含むことを示す。参照体50はまた、図示していないが、更なる尖端孔を有してもよい。ここでの尖端ピン孔57は、第2の脚部52の第1の端部52aと第2の端部52bとの間に位置する。
図12に示すように、第1の脚部51及び第2の脚部52の少なくとも一方、ここでは
図12の第2の脚部52は、第1のサブ脚部54及び第2のサブ脚部55から構成され、第1のサブ脚部54の第1の端部54aは、第2の脚部52の第1の端部52aに対応しており、第1のサブ脚部54の第2の端部54bは、サブ脚接合部分56において第2のサブ脚部55の第1の端部55aに対応している。この図示の実施形態では、サブ脚接合部分56は尖端ピン孔57を含む。
図13に示すように、尖端ピン孔57は、尖端ピン孔を受け入れることができる。図示の参照体50はW字形を有することができ、第2の脚部の第1のサブ脚部54及び第2のサブ脚部55と、第1の脚部51とがW字形を形成する。参照体50を患者の解剖学的構造に固定するために、参照体50は、解剖学的に適合した表面59の少なくとも一部に接着手段58を有してもよい。接着手段は、人間の皮膚に対して刺激性のない接着剤でコーティングした表面部分である部分であってもよい。あるいはまた、又は別の表面部分において、接着手段58は、タッチファスナーの一部である部分を含み、その対応物は人間の皮膚に接着可能である。
【0099】
図14は、
図15、
図16、及び
図17に示されるように、患者の解剖学的構造100に位置合わせされ得る手術参照体50の別の実施形態を示す。
【0100】
放射線ベースの識別目的のための手術参照体50は、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62を有する放射線不透過性幾何学形状状60を有しており、各サブ幾何学形状が手術参照体50に固定的且つ空間的に再現可能に接続される。参照体50は、第1の脚部51及び第2の脚部52を有しており、各脚部が患者の解剖学的構造100に対して解剖学的に適合した表面59を有する。第1の端部51aを含む第1の脚部51は、脚接続部53において第2の脚部52の第1の端部52aに接続される。第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62のそれぞれは、手術参照体50の基端から先端への向き毎に固有の放射線投影66、67を有しており、それによって、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61及び第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62のそれぞれだけで、手術参照体の少なくとも一部の2次元の放射線投影に基づいて、手術参照体50の空間的な位置及び向きを決定することができる。放射線不透過性幾何学形状は、
図1~
図4、特に
図4に関して説明したように、1組の基準マーカ24によって形成することができる。第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61は、第1の脚部51の第2の端部51bに割り当てられ、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62は、第1の脚部51の第1の端部51aに対応する、第1及び第2の脚部の接合部分53に割り当てられる。第2の脚部52の第2の端部52bには、光パターンが取り付けられ得、その構造及び機能は、
図6~
図8に関して説明したものに対応する。
【0101】
図15は、手術中に患者の解剖学的構造100を参照し、第1の放射線不透過性サブ幾何学形状61、第2の放射線不透過性サブ幾何学形状62、及びこの特定の実施形態では第3の放射線不透過性サブ幾何学形状63を有する手術参照体50を示す。サブ幾何学形状のそれぞれは、手術参照体50に固定的且つ空間的に再現可能に接続される。
図4に示すように、放射線不透過性幾何学形状には、1組の基準マーカが設けられる。第1及び第2の脚部51、52は、
図16及び
図17に示すように、患者の解剖学的構造100に対して解剖学的に適合した表面59を有する。
【0102】
図18は、患者の解剖学的構造に対するインプラント/ツールの適用位置の位置決めを支援する方法を示す。この方法は、パターンを認識するステップS32と、認識した(サブ)パターンを所定のパターンと比較するステップS33とを含み得る画像処理ステップS30を含む。さらに、画像処理ステップS30は、(サブ)パターンの位置及び向きを決定するステップS34、アイテムを視覚化するステップS36、及び例えばガイド軌道、インプラント/ツール/器具の輪郭又はイラストを増補するステップS38を含むことができる。光学撮像装置及び光パターンの相対的な位置及び向きを提供するために、この方法は、撮像装置を用いてパターンの光学画像を取得するステップS70を含むことができる。
【符号の説明】
【0103】
1 コンピュータ支援手術CAS用の手術案内システム
2 手術追跡システム
10 手術ガイド装置/手術器具
11 手術ガイド装置/手術器具の基端部
12 手術ガイド装置/手術器具の先端部
15 ガイド本体
15a 中空シャフトガイド本体
15b ガイド本体の案内チャネル
16 ガイド本体の案内軌道/手術器具の動作軌道
17 手術ガイド装置のノブ/ハンドル
17a 光学撮像装置又はパターン用の手術器具の機械的インターフェイス
18 手術ガイド装置のチップ
18a 手術ガイド装置のチップの刃/ツール
19 ガイド本体の仮想視覚化/ガイド本体の向き
20 手術ガイド装置の放射線不透過性幾何学形状
21 手術ガイド装置の第1の放射線不透過性サブ幾何学形状
22 手術ガイド装置の第2の放射線不透過性サブ幾何学形状
23 手術ガイド装置の第3の放射線不透過性サブ幾何学形状
24 基準マーカ
25 手術ガイド装置の放射線不透過性幾何学形状の放射線投影
26 手術ガイド装置の第1のサブ幾何学形状の放射線投影
27 手術ガイド装置の第2のサブ幾何学形状の放射線投影
28 手術ガイド装置の第3のサブ幾何学形状の固有の放射線投影
29 第1/第2のサブ幾何学形状の放射線投影の相補的パターン
30 画像処理装置
32 パターン認識のための認識手段
36 視覚化手段
38 案内軌道を増補するための増補手段
39 増補した案内軌道に沿った再現可能なスケール
45 手術インプラント/手術ツール
46 挿入及び案内される手術インプラント/手術ツールの移動経路/手術器具の延長した動作軌道
50 手術参照体
51 手術参照体の第1の脚部
51a 第1の脚部の第1の端部
51b 第1の脚部の第2の端部
51c 第1の脚部の中心線
52 手術参照体の第2の脚部
52a 第2の脚部の第1の端部
52b 第2の脚部の第2の端部
52c 第2の脚部の中心線
53 手術参照体の第1及び第2の脚部の接合部分
53c 第1の脚部及び第2の脚部の中心線の接合点
54 手術参照体の第1のサブ脚部
54a 第1のサブ脚部の第1の端部
54b 第1のサブ脚部の第2の端部
54c 第1のサブ脚部の中心線
55 手術参照体の第2のサブ脚部
55a 第2のサブ脚部の第1の端部
55b 第2のサブ脚部の第2の端部
55c 第2のサブ脚部の中心線
56 手術参照体の第1及び第2のサブ脚部の接合部分
56c 第1/第2のサブ脚部の中心線の接合点
57 手術参照体の固定孔/尖端ピン孔
57a 光学撮像装置又はパターン用の手術参照体の機械的インターフェイス
58 手術参照体の接着手段
59 第1/第2の(サブ)脚部の解剖学的に適合した表面
60 手術参照体の放射線不透過性幾何学形状
61 手術参照体の第1の放射線不透過性サブ幾何学形状
62 手術参照体の第2の放射線不透過性サブ幾何学形状
63 手術参照体の第3の放射線不透過性サブ幾何学形状
64 基準マーカ
65 手術参照体の放射線不透過性幾何学形状の固有の放射線投影
66 手術参照体の第1のサブ幾何学形状の固有の放射線投影
67 手術参照体の第2のサブ幾何学形状の固有の放射線投影
68 手術参照体の第3のサブ幾何学形状の固有の放射線投影
70 光学撮像装置
71 光学撮像装置の視線方向
77a 器具又は参照体用の光学撮像装置の機械的インターフェイス
80 光パターン
80a 光サブパターン
82 均一な光パターンのラスター
83 光パターンのハニカムラスター
87a 器具又は参照体用の光学撮像装置の機械的インターフェイス
100 患者の解剖学的構造
S30 画像処理
S32 パターン認識
S33 認識した(サブ)パターンと所定のパターンとの比較
S34 (サブ)パターンの位置及び向きの決定
S36 視覚化
S38 案内軌道を増補するための増補
S70 光学画像の撮影
【国際調査報告】