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特表2024-521965複素環タイプの親油性低分子治療薬の脂質製剤のための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】複素環タイプの親油性低分子治療薬の脂質製剤のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/551 20060101AFI20240528BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240528BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240528BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240528BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61K31/551
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/06
A61K47/20
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/02
A61K9/48
A61P25/18
A61P25/00
A61P43/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576209
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 US2022032955
(87)【国際公開番号】W WO2022261404
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/340,230
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/209,841
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TWEEN
3.CREMOPHOR
4.CARBOPOL
(71)【出願人】
【識別番号】508083460
【氏名又は名称】ニューロナセント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】ケルハー-アンダーソン,ジュディス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA54
4C076AA56
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD01F
4C076DD07F
4C076DD29G
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD37F
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD46F
4C076DD57F
4C076DD63F
4C076DD68
4C076DD70F
4C076EE03G
4C076EE10G
4C076EE16G
4C076EE23F
4C076EE31G
4C076EE32G
4C076EE53
4C076EE53F
4C076EE55G
4C076FF35
4C076FF43
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC54
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA18
4C086ZC52
(57)【要約】
例えば、神経細胞再生、神経保護および/または疾患進行の遅延に有用な治療薬を送達するための方法および組成物。神経変性を特徴とする疾患および症状の処置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質製剤中にAPIを含む医薬組成物であって、APIが、式(I):
【化1】
(I)
[式中、
各R1は、独立して、H、F、C1、Br、R7および-O-R7からなる群より選択され、R7は、置換された炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~14のアリール基またはアラルキル基であり;
R2は、OまたはSより選択され;
R3は、(CH2)mであり、mは、1、2または3であり;
R4は、Nおよび(CHn)からなる群より選択され、nは、1または2に等しく、ただし、R4が、窒素であるとき、R3のmは、1と等しくなく;
R6は、Hであり;
各R8は、独立して、-X、-R9、-OR9、-SR9、-N(R9)2、-CN、-NO2、-NC(O)R9、-C(O)R9、-C(O)N(R9)2、-S(O)2R9、-S(O)2NR9、-S(O)R9、-C(O)R9、-C(O)OR9または-C(O)N(R9)2であり;
各Xは、独立して、ハロゲンであり;
各R9は、独立して、-H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環、保護基またはプロドラッグ部分である]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項2】
化合物が、下記化合物:
【化2】
およびその生理学的に許容される塩からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
化合物が、
【化3】
またはその生理学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
化合物が、
【化4】
またはその生理学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
脂質製剤が、脂質製剤の重量に対して約85~95.5%のビヒクル、約1~8%の界面活性剤および約0.5~7%の増粘剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ビヒクルが、植物油、トリグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、油性脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、油性脂肪アルコール、ソルビトールと脂肪酸のエステル、油性スクロースエステル、鉱油、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ビヒクルが、中鎖トリグリセリド(MCT)である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンまたはポリエチレングリコールのエステル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)、レシチン、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、コレステロール、硬化ヒマシ油およびその誘導体または画分、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、水素化ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、プルロニック界面活性剤およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項5~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
界面活性剤が、HLB値が12~14の非イオン性界面活性剤である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
界面活性剤が、ポリオキシル35ヒマシ油である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
増粘剤が、ワックス、ポリアクリレートおよびポリアクリレート共重合体樹脂、セルロースおよびセルロース誘導体およびその塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニル樹脂、他のポリマー材料、無機増粘剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項5~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
増粘剤が、コロイド状シリカ、蜜蝋、微結晶性ワックスおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
増粘剤が、蜜蝋である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ビヒクルが、中鎖トリグリセリド(MCT)であり、界面活性剤が、ポリオキシル35ヒマシ油であり、増粘剤が、蜜蝋である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項15】
カプセル剤またはゲルカプセル剤の請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物を哺乳類に投与することを含む、APIを哺乳類に送達するための方法。
【請求項16】
処置を必要とする対象体において発達遅延、精神障害、神経変性疾患、神経障害および老化からなる群より選択される少なくとも1つの状態を処置するための方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物の治療有効量を対象体に投与することを含む方法。
【請求項17】
対象体が、哺乳類である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
哺乳類が、ペットまたは家畜である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
哺乳類が、ヒトである、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年6月11日出願の米国仮特許出願第63/209,841号および2022年5月10日出願の米国仮特許出願第63/340,230号の利益を主張し、その全内容は出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
(発明の分野)
本発明のいくつかの実施態様は、一般に、神経学および神経精神障害の分野に関する。より具体的には、本発明の特定の実施態様は、複素環の製剤のための方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、本開示の製剤は、神経変性疾患を予防し、進行を遅らせ、および/または回復させることができる。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病は、神経細胞が徐々に破壊される脳障害である。米国では450万人以上がアルツハイマー病に罹患しており、そのほとんどは高齢者で発生する。アルツハイマー病を発症するリスクは、65歳以降5年ごとに約2倍になり、85歳までに50%に達する。アルツハイマー病に罹患した患者は、学習、記憶、判断、意思決定、コミュニケーションおよび日常活動実施の能力を失う。アルツハイマー病患者の介護にかかる直接的および間接的な費用は、少なくとも年間1,000億ドルに増加している。
【0004】
脳卒中およびパーキンソン病もまた、神経細胞の喪失を引き起こし、行動の低下につながり得る。傷害、老化および医薬品の使用によって引き起こされる難聴は、蝸牛神経細胞の喪失によって引き起こされる。
【0005】
ダウン症候群および脆弱X症候群を含む多くの発達遅延障害は、海馬の神経新生不足によって引き起こされる可能性がある。海馬の神経新生を促進する治療法は、ダウン症候群および脆弱X症候群の行動表現型の改善に効果がある可能性がある。
【0006】
標的領域への医薬有効成分(API)の送達を改善する医薬製剤が必要とされている。より具体的には、血液脳関門を通ってAPIを送達するための製剤を含む改善された方法および組成物が必要とされている。また、有効性を促進し、投与量および安定性の増加を可能にするために長期吸収を改善できる組成物も必要である。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの態様によれば、本発明は、血液脳関門を越えてAPIを送達するのに有用な製剤を含む方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、開示の組成物は、長期吸収を改善して有効性を促進する。いくつかの態様において、組成物は、投与量および安定性の増加を可能にし得る。
【0008】
本明細書に開示の方法および組成物は、アルツハイマー病などの神経変性疾患およびうつ病などの神経精神状態の処置に特に有用である。方法および組成物はまた、1つの組成物または複数組成物の混合物としての研究品の製造に適している可能性がある。化合物を含む方法および組成物はまた、神経変性を阻害するのに有用である。したがって、いくつかの態様において、本発明は、アルツハイマー病、パーキンソン病、外傷性脳傷害および難聴を含むが、これらに限定されない、神経細胞の喪失を特徴とする疾患および状態を処置するのに特に有用であることが見出された。本明細書には、代表的な製剤、化合物製品の製造方法、化合物を含む組成物、および化合物の使用方法が開示されている。
【0009】
一態様において、本発明は、神経変性障害を有するかまたは有しない、ヒト、特に高齢者を処置するのに有用な化合物を含む組成物を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明はさらに、神経細胞喪失に関連するあらゆる疾患の処置において有用性を有する化合物を含む、方法および組成物を対象とする。より具体的には、本発明はさらに、対象体、例えば高齢者に投与される脂質製剤中のAPIを投与する方法を提供する。一実施態様において、方法は、高齢者に液体製剤を投与することを含み得る。本明細書に記載の化合物を含む組成物は、高齢者において安全に吸収され、神経細胞の再生を刺激するのに有効な量で投与され得る。
【0011】
さらに別の態様において、本発明はまた、本明細書に開示の化合物を含む医薬品製剤を含む。化合物を含む医薬組成物の有効量の投与経路および投与量もまた開示する。本発明の化合物は、それを必要とする対象体、例えば高齢者における効果的な送達および疾患の処置のために、経口シリンジを使用するなどの液体として、あるいはカプセル剤または硬または軟ゲルカプセル剤と組み合わせて投与され得る。
【0012】
一態様において、脂質製剤中にAPIを含む医薬組成物であって、APIが、式(I)で示される化合物(下記に示す)またはその医薬的に許容される塩である医薬組成物を開示する。
【0013】
いくつかの実施態様において、化合物は、下記化合物:
【化1】
またはその生理学的に許容される塩の1つである。
【0014】
いくつかの実施態様において、化合物は、
【化2】
またはその生理学的に許容される塩である。
【0015】
いくつかの実施態様において、化合物は、
【化3】
またはその生理学的に許容される塩である。
【0016】
いくつかの実施態様において、脂質製剤は、脂質製剤の重量に対して約85~95.5%のビヒクル、約1~8%の界面活性剤および約0.5~7%の増粘剤を含む。
【0017】
いくつかの実施態様において、ビヒクルは、植物油、トリグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、油性脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、油性脂肪アルコール、ソルビトールと脂肪酸のエステル、油性スクロースエステル、鉱油、およびそれらの混合物の1つ以上を含む。
【0018】
いくつかの実施態様において、ビヒクルは、中鎖トリグリセリド(MCT)である。
【0019】
いくつかの実施態様において、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンまたはポリエチレングリコールのエステル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)、レシチン、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、コレステロール、硬化ヒマシ油およびその誘導体または画分、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、水素化ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、プルロニック界面活性剤およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0020】
いくつかの実施態様において、界面活性剤は、HLB値が12~14の非イオン性界面活性剤である。
【0021】
いくつかの実施態様において、界面活性剤は、ポリオキシル35ヒマシ油である。
【0022】
いくつかの実施態様において、増粘剤は、ワックス、ポリアクリレートおよびポリアクリレート共重合体樹脂、セルロースおよびセルロース誘導体およびその塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニル樹脂、他のポリマー材料、無機増粘剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0023】
いくつかの実施態様において、増粘剤は、コロイド状シリカ、蜜蝋、微結晶性ワックスおよびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0024】
いくつかの実施態様において、増粘剤は、蜜蝋である。
【0025】
いくつかの実施態様において、ビヒクルは、中鎖トリグリセリド(MCT)であり、界面活性剤は、ポリオキシル35ヒマシ油であり、増粘剤は、蜜蝋である。
【0026】
別の態様によれば、APIを哺乳類に送達するための方法を開示する。カプセル剤またはゲルカプセル剤に入れられた本明細書に開示の医薬組成物は、哺乳類に投与される。
【0027】
別の態様によれば、処置を必要とする対象体において発達遅延、精神障害、神経変性疾患、神経障害および老化からなる群より選択される少なくとも1つの状態を処置するための方法であって、本明細書に開示の医薬組成物の治療有効量を対象体に投与することを含む方法を開示する。
【0028】
いくつかの実施態様において、対象体は、哺乳類である。いくつかの実施態様において、哺乳類は、ペットまたは家畜動物である。他の実施態様において、哺乳類は、ヒトである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法、アッセイなどに限定されず、これらは変化し得ることが理解される。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施態様を説明する目的のみに使用されており、本発明の範囲を限定することを意図しないことを理解されたい。
【0030】
他に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例示的な方法および組成物を記載するが、本明細書に記載のものと同様または同等のあらゆる方法および組成物を本発明の実施または試験に用い得る。
【0031】
I. 定義
本明細書で用いる用語「化合物」は、本明細書に開示の構造および式のイテレーションのすべてを指し、また、その生理学的に許容される塩への言及も含む。本発明の化合物の生理学的に許容される塩の例は、適切な塩基、例えばアルカリ金属、例えばナトリウム、およびアルカリ土類金属、例えばマグネシウム、アンモニウムおよびNX4 +(式中、XはC1-C4アルキルである)から誘導される塩を含む。水素原子またはアミノ基の生理学的に許容される塩は、酢酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸およびコハク酸などの有機カルボン酸の塩;有機スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸;無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸などを含んでもよいが、これらに限定されない。ヒドロキシ基の化合物の生理学的に許容される塩は、Na+およびNX4 +(式中、Xは、独立してHまたはC1-C4アルキル基より選択される)などの適切なカチオンと組み合わせた化合物のアニオンを含むが、これらに限定されない。
【0032】
治療用途では、本発明の化合物の塩は、生理学的に許容されるものである、すなわち、塩は、生理学的に許容される酸または塩基に由来する。しかしながら、生理学的に許容されない酸または塩基の塩もまた、生理学的に許容される化合物の製造および精製に使用できる可能性がある。したがって、生理学的に許容される酸または塩基に由来するか否かに関わらず、すべての塩が本発明の範囲内である。
【0033】
「アルキル」は、ノルマル、第二級、第三級または環状炭素原子を含むC1-C18炭化水素である。「アルケニル」は、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち、炭素-炭素、sp2二重結合を有する、ノルマル、第二級、第三級または環状炭素原子を含むC2-C18炭化水素である。例としては、エチレンまたはビニル(--CH==CH2)、アリル(--CH2CH==CH2)、シクロペンテニル(--C5H7)、および5-ヘキセニル(--CH2CH2CH2CH2CH==CH2)を含むが、これらに限定されない。「アルキニル」は、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち、炭素-炭素、sp三重結合を有する、ノルマル、第二級、第三級または環状炭素原子を含むC2-C18炭化水素である。例としては、アセチレン(--C≡ --CH)およびプロパルギル(--CH2C≡ --CH)を含むが、これらに限定されない。
【0034】
「アリール」は、親芳香環系の単一炭素原子から1つの水素原子を除去することによって誘導される、6~20個の炭素原子の一価の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。典型的なアリール基は、ベンゼン、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導されるラジカルを含むが、これらに限定されない。
【0035】
「ヘテロアリール」は、親芳香環系の単一原子から1つの水素原子を除去することによって誘導される、1つ以上の炭素原子と、N、O、SまたはPより選択される1つ以上の原子との一価の芳香族ラジカルを意味する。ヘテロアリール基は、3~7個の環員を有する単環(2~6個の炭素原子と、N、O、PおよびSより選択される1~3個のヘテロ原子)または7~10個の環員を有する二環(4~9個の炭素原子と、N、O、PおよびSより選択される1~3個のヘテロ原子)であり得る。ヘテロアリール二環は、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系として配置された7~10個の環原子(6~9個の炭素原子と、N、OおよびSより選択される1~2個のヘテロ原子)またはビシクロ[5,6]または[6,6]系として配置された9~10個の環原子(8~9個の炭素原子と、NおよびSより選択される1~2個のヘテロ原子)を有する。ヘテロアリール基は、炭素、窒素、硫黄、リンまたは他の原子を介して安定な共有結合によって薬物足場に結合できる。ヘテロアリール基は、ピリジル、ジヒドロピリジル異性体、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、s-トリアジニル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チオフラニル、チエニル、およびピロリルを含む。
【0036】
「置換アルキル」、「置換アリール」および「置換ヘテロアリール」などの置換された置換基は、それぞれ、1つ以上の水素原子が、各々独立して置換基で置き換えられた、アルキル、アリールおよびアリールアルキルを意味する。典型的な置換基は、--X、--R、--O-、--OR、--SR、--S-、--NR2、--NR3、==NR、--CX3、--CN、--OCN、--SCN、--N==C==O、--NCS、--NO、--NO2、==N2、--N3、NC(==O)R、--C(==O)R、--C(==O)NRR --S(==O)2O-、--S(==O)2OH、--S(==O)2R、--OS(==O)2OR、--S(==O2NR、--S(==O)R、--OP(==O)O2RR、--P(==O)O2RR --P(==O)(O-)2、--P(==O)(OH)2、--C(==O)R、--C(==O)X、--C(S)R、--C(O)OR、--C(O)O-、--C(S)OR、--C(O)SR、--C(S)SR、--C(O)NRR、--C(S)NRR、--C(NR)NRR(式中、各Xは、独立してハロゲン:F、Cl、BrまたはIであり;各Rは、独立して--H、アルキル、アリール、複素環、保護基またはプロドラッグ部分である)を含むが、これらに限定されない。アルキレン、アルケニレンおよびアルキニレン基はまた、同様に置換されていてもよい。
【0037】
「ハロゲン」は、F、Cl、Brまたは-Iを含み、用語「ハロ」と相互交換可能に用いられる。
【0038】
「複素環」は、少なくとも1つのN、O、SまたはPを含む飽和、不飽和または芳香環系を意味する。したがって、複素環は、ヘテロアリール基を含む。本明細書で用いる複素環は、PAQUETTE, PRINCIPLES OF MODERN HETEROCYCLIC CHEMISTRY (W. A. Benjamin, New York, 1968)、特にチャプター1、3、4、6、7および9;THE CHEMISTRY OF HETEROCYCLIC COMPOUNDS, A SERIES OF MONOGRAPHS (John Wiley & Sons, New York, 1950 to present)、特にボリューム13、14、16、19および28;KATRITZKY ET AL., COMPREHENSIVE HETEROCYCLIC CHEMISTRY (Pergamon Press, 1996);および82 J. AM. CHEM. SOC. 5566 (1960)に記載の複素環を含むが、これらに限定されない。
【0039】
複素環は、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ピペリジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、2-ピロリドニル、ピローリニル、テトラヒドロフラニル、bis-テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、bis-テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H-ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、1H-インダゾールy、プリニル、4H-キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH-カルバゾリル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンズオキサゾーリニル、およびイサチノイルを含むが、これらに限定されない。
【0040】
炭素結合複素環は、ピリジンの2、3、4、5または6位、ピリダジンの3、4、5または6位、ピリミジンの2、4、5または6位、ピラジンの2、3、5または6位、フランの2、3、4または5位、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールまたはテトラヒドロピロール、オキサゾールの2、4または5位、イミダゾールまたはチアゾール、イソキサゾールの3、4または5位、ピラゾールまたはイソチアゾール、アジリジンの2または3位、アゼチジンの2、3または4位、キノリンの2、3、4、5、6、7または8位、またはイソキノリンの1、3、4、5、6、7または8位に結合したものを含むが、これらに限定されない。さらにより典型的には、炭素結合複素環は、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリジル、6-ピリジル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、6-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピラジニル、5-ピラジニル、6-ピラジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリルまたは5-チアゾリルを含む。
【0041】
窒素結合複素環は、アジリジンの1位、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H-インダゾール、イソインドールの2位、またはイソインドリン、モルホリンの4位、およびカルバゾールの9位、またはβ-カルボリンに結合したものを含むが、これらに限定されない。さらにより典型的には、窒素結合複素環は、1-アジリジル、1-アゼテジル、1-ピロリル、1-イミダゾリル、1-ピラゾリル、および1-ピペリジニルを含む。「炭素環」は、単環として3~7個の炭素原子または二環として7~12個の炭素原子を有する、飽和、不飽和または芳香族環系を意味する。単環式炭素環は、3~6個の環原子、さらにより典型的には5または6個の環原子を有する。二環式炭素環は、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]もしくは[6,6]系として配置された7~12個の環原子、またはビシクロ[5,6]もしくは[6,6]系として配置された9または10個の環原子を有する。単環式炭素環は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1-シクロペント-1-エニル、1-シクロペント-2-エニル、1-シクロペント-3-エニル、シクロヘキシル、1-シクロヘキサ-1-エニル、1-シクロヘキサ-2-エニル、1-シクロヘキサ-3-エニル、フェニル、スピリルおよびナフチルを含む。したがって、炭素環は、アリール基を含む。
【0042】
本明細書で用いる用語「キラル」は、鏡像パートナーと重ね合わせられない特性を有する分子を指し、用語「アキラル」は、鏡像パートナーに重ね合わせることができる分子を指す。
【0043】
用語「立体異性体」は、同一の化学構造を有するが、空間内の原子または基の配置に関して異なる化合物を指す。
【0044】
「ジアステレオマー」は、2つ以上のキラリティー中心を有し、その分子が互いに鏡像ではない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる融点、沸点、スペクトル特性および反応性などの物理的特性を有する。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動およびクロマトグラフィーなどの高分解能分析手順で分離し得る。
【0045】
「エナンチオマー」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である化合物の2つの立体異性体を指す。
【0046】
本明細書で用いる立体化学的定義および慣例は、一般に、MCGRAW-HILL DICTIONARY OF CHEMICAL TERMS(S. P. Parker, Ed., McGraw-Hill Book Company, New York, 1984);およびELIEL、ELIEL, E. AND WILEN, S., STEREOCHEMISTRY OF ORGANIC COMPOUNDS(John Wiley & Sons、Inc.、New York、1994)に従う。多くの有機化合物は、光学活性な形態で存在し、すなわち、それらは平面偏光の平面を回転させる能力を有する。光学活性化合物を記載する際、接頭辞DとL、またはRとSは、そのキラル中心についての分子の絶対配置を示すために使用される。接頭辞dとl、または(+)と(-)は、化合物による平面偏光の回転の符号を指定するために使用され、(-)またはlは化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞が付いている化合物は、右旋性である。所定の化学構造では、これらの立体異性体は、互いの鏡像であることを除けば同一である。特定の立体異性体は、エナンチオマーと称される場合もあり、そのような異性体の混合物は、しばしばエナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物またはラセミ体と称され、化学反応またはプロセスにおいて立体選択または立体特異性が存在しない場合に生じ得る。用語「ラセミ混合物」および「ラセミ体」は、光学活性を有しない2つのエナンチオマー種の等モル混合物を指す。
【0047】
「処置」、「処置する(treatment)」、「処置する(treat)」、「療法」、「治療的」などの用語は、本明細書では一般に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指すために使用される。効果は、疾患またはその症状を完全または部分的に予防するという点で予防的であり得て、および/または疾患および/または疾患に起因する有害な影響の部分的または完全な安定化または治療という点で処置的であり得る。本明細書で用いる「処置」は、対象体における疾患のあらゆる処置を包含し、下記:(a)疾患または症状を有する可能性があるが、まだ診断されていない対象体において、疾患または症状が発生するのを予防すること;(b)疾患症状を抑制する、すなわち、その発症を阻止することまたは;(c)疾患症状を軽減する、すなわち、疾患または症状の退行を引き起こすことを含む。
【0048】
本明細書で用いる用語「医薬的に許容される担体」は、当技術分野で周知の、医薬活性物質のためのあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤を指す。従来の媒体または薬剤が化合物と不適合である場合を除き、治療用組成物におけるその使用が企図される。補助化合物もまた、組成物に組み込み得る。
【0049】
本明細書で用いる用語「添加剤」は、活性化合物をその企図される目的に適した形態に変換するために使用される添加物を指す。ヒトへの投与に適した本発明の組成物では、用語「添加剤」は、HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS, American Pharmaceutical Association, 2nd Ed. (1994)(その全体として本明細書に組み込まれる)に記載される添加剤を含む。用語「添加剤」は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶媒、懸濁化剤、色素、増量剤、界面活性剤、助剤などを含むことを意味する。液体添加剤は、石油、動物、植物または合成起源の油、例えばピーナツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油、水素化植物油、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油またはヒマシ油などを含む様々な油より選択され得る。
【0050】
適切な添加剤はまた、賦形剤、例えば単糖類、ラクトース、フルクトース、スクロース、イノシトール、マンニトールまたはソルビトール、キシリトール、トレハロース、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム、リン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム、ならびに加工デンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプンを用いるデンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンおよびデンプングルコール酸ナトリウム、および/またはポリビニルピロリジンおよびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。必要に応じて、崩壊剤、例えば上記デンプン、およびカルボキシメチル-デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを加えてもよい。助剤は、シリカ、ステアリン酸またはその塩、例えばステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウムまたはステアリン酸カルシウムを含むが、これらに限定されない。
【0051】
用語「治療有効量」は、疾患または状態の予防、改善、処置または発症の遅延に有効な、本明細書に開示の化合物の量を指す。
【0052】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物の有益な効果を経験し得るあらゆる動物に投与され得る。このような動物は、ヒトおよび非ヒト、例えば霊長類、ペットおよび家畜を含む。
【0053】
II. 活性医薬成分(API)
特定の態様によれば、本明細書に開の医薬組成物は、様々なAPIを投与するために使用され得る。いくつかのAPIは、米国特許第8,999,972号に開示されており、その内容は、出典明示により本明細書の一部とする。特に有用なAPIの例は、式:
【化4】
[式中、
各R1は、独立して、H、F、C1、Br、R7および-O-R7からなる群より選択され、R7は、置換された炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~14のアリール基またはアラルキル基であり;
R2は、OまたはSより選択され;
R3は、(CH2)mであり、mは、1、2または3であり;
R4は、Nおよび(CHn)からなる群より選択され、nは、1または2に等しく、ただし、R4が、窒素であるとき、R3のmは、1と等しくなく;
R6は、Hであり;
各R8は、独立して、-X、-R9、-OR9、-SR9、-N(R9)2、-CN、-NO2、-NC(O)R9、-C(O)R9、-C(O)N(R9)2、-S(O)2R9、-S(O)2NR9、-S(O)R9、-C(O)R9、-C(O)OR9または-C(O)N(R9)2であり;
各Xは、独立して、ハロゲンであり;
各R9は、独立して、-H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環、保護基またはプロドラッグ部分である]
で示される化合物を含む。
【0054】
より具体的に、有用な化合物の具体的な例は、下記:
【化5】
化合物およびその生理学的に許容される塩を含むが、これらに限定されない。
【0055】
一態様によれば、NNI-362、下記:
【化6】
を有する化合物およびその生理学的に許容される塩を用い得る。NNI-362は、淡黄色から黄色の固体で、一般的な有機溶媒には可溶性であるが、水/水溶液には不溶性である。NNI-362は、152.4℃で融解し始める。
【0056】
別の態様によれば、NNI-351、下記:
【化7】
を有する化合物およびその生理学的に許容される塩を用い得る。
【0057】
最後に、本発明の化合物の一般構造は、任意の置換基のすべてのエン、ジエン、トリエンおよびイン誘導体など、示された置換基のすべての飽和状態を包含し得る。一般構造はまた、特定の置換基のセットから生じ得るすべての構造異性体、位置異性体および立体異性体を含む。一般構造はまた、すべてのエナンチオマー、ジアステレオマーおよび他の光学異性体(エナンチオマーもしくはラセミ体、または立体異性体の混合物)を含む。
【0058】
III. 医薬組成物
本発明はまた、本明細書に開示の化合物を含む医薬組成物を含む。化合物を含む医薬組成物の投与経路および有効量の投与量もまた開示されている。本発明の化合物は、疾患の効果的な処置のための様々なプロトコルで他の医薬物質と組み合わせて投与し得る。
【0059】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物の有益な効果を経験し得るあらゆる動物に投与し得る。このような動物は、ヒト、および非ヒト、例えばペットおよび家畜(例えば、使役動物/家畜/そり犬)を含む。
【0060】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で知られている方法で対象体に投与される。投与される投与量は、受手の年齢、健康状態および体重、同時処置がある場合にはその種類、処置の頻度、ならびに所望の効果の性質に依存する。
【0061】
本明細書に開示の化合物に加えて、本発明の医薬組成物は、希釈剤、結合剤、安定化剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、防腐剤、アジュバントなどを含むが、これらに限定されない少なくとも1つの任意の適切な助剤をさらに含み得る。医薬的に許容される助剤が好ましい。このような無菌溶液を製造する例および方法は、当該技術分野で周知であり、例えばこれに限定されないが、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Gennaro, Ed., 18th Edition, Mack Publishing Co. (1990))で見つけられる。医薬的に許容される担体は、投与方法、化合物の溶解度および/または安定性に適したものをルーチン的に選択し得る。
【0062】
本発明において有用な医薬添加剤および添加物はまた、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、および炭水化物(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖およびオリゴ糖を含む糖類;誘導体化糖類、例えばアルジトール、アルドン酸、エステル化糖など;および多糖類または糖ポリマー)を含むが、これらに限定されず、これらは、単独または組み合わせて存在でき、1~99.99重量%または容積%の範囲で単独または組み合わせて含まれる。例示的なタンパク質添加剤は、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどを含む。緩衝能としても機能し得る代表的なアミノ酸成分は、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどを含む。
【0063】
本発明での使用に適した炭水化物添加剤は、単糖類、例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖類、例えばラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖類、例えばラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキスロラン、デンプンなど;およびアルジトール、例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(glucitol)、ミオイノシトールなどを含む。
【0064】
組成物はさらに、医薬的に許容される担体またはビヒクル、例えば油、中鎖トリグリセリド、着色剤、乳化剤、懸濁化剤、エタノール、EDTA、クエン酸緩衝剤、香料および水を含んでもよいが、これらに限定されない。より具体的には、ビヒクルの例としては、植物油、例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ダイズ油、ゴマ油、綿実油、スウィートアーモンド油または落花生油;トリグリセリド、例えば例えば、半合成油(中鎖トリグリセリド(MCT)または長鎖トリグリセリド);モノグリセリド;ジグリセリド;油性脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル;油性脂肪アルコール;ソルビトールと脂肪酸のエステル、油性スクロースエステル、または鉱油、例えば、流動パラフィンまたはワセリン;および一般に、生理学的に忍容可能な油状物質、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0065】
一実施態様、ビヒクルは、MCT、すなわち、炭水化物鎖が約8~12個の炭素原子を有するトリグリセリド油を含む。
【0066】
組成物はまた、医薬的に許容される増粘剤を含み得る。増粘剤の例としては、ワックス(例えば、蜜蝋、カルナバ)、ポリアクリレートおよびポリアクリレート共重合体樹脂(例えば、Carbopol)、セルロースおよびセルロース誘導体およびその塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニル樹脂、他のポリマー材料(例えば、トラガントガム、アラビカムガム、アルギン酸塩)、無機増粘剤(例えば、アタパルジャイト、ベントナイトおよびケイ酸塩)を含むが、これらに限定されない。特に有用な増粘剤の例としては、コロイド状シリカ、蜜蝋および微結晶性ワックスを含むが、これらに限定されない。
【0067】
組成物はさらに、1つ以上の界面活性剤を含み得る。有用な界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンまたはポリエチレングリコールのエステル(例えばゲルシール)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)、レシチン、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、コレステロール、硬化ヒマシ油およびその誘導体または画分、様々なグレードのCremophorまたはKolliphor、例えば、Cremophor EL/Kolliphor EL(リシノール酸マクロゴールグリセロールまたはポリオキシル35ヒマシ油)およびCremophorまたはKolliphor RH-40(ヒドロキシステアリン酸マクロゴールグリセロールまたはポリオキシル40硬化ヒマシ油)水素化ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、およびプルロニック界面活性剤を含むが、これらに限定されない。Kolliphor(登録商標)ELは、本製剤において特に有用な界面活性剤である。Kolliphor ELは、ヒマシ油をエチレンオキシドと反応させることにより作られる非イオン性可溶化剤および乳化剤である。Kolliphor(登録商標)ELは、ポリエチレンオキシド界面活性剤であり、本質的に粘性である。疎水性親油性バランス(HLB)値は、12~14の範囲である。
【0068】
本発明の組成物はまた、防腐剤のメチルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル;メチル p-ヒドロキシベンゾエート;またはMETHYL CHEMOSEPTとしても知られる)、エチルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル;エチルp-ヒドロキシベンゾエート;またはETHYL PARASEPTとしても知られる)、プロピルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル;プロピルp-ヒドロキシベンゾエート;NIPASOL;またはPROPYL CHEMOSEPTとしても知られる)および/またはブチルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル;プロピルp-ヒドロキシベンゾエート;またはBUTYL CHEMOSEPTとしても知られる)を含み得る。いくつかの実施態様において、組成物は、メチルパラベンおよび/またはプロピルパラベンを含む。
【0069】
本発明の乳化剤は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレン グリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書に開示の化合物を含む医薬組成物はまた、緩衝剤またはpH調節剤を含み得る。典型的には、緩衝剤は、有機酸または塩基から調製された塩である。代表的な緩衝剤は、有機酸塩、例えばクエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸の塩;トリス、塩酸トロメタミンまたはリン酸緩衝剤を含む。
【0071】
さらに、医薬組成物は、ポリマー性添加剤/添加物、例えばポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、着香剤、抗菌剤、甘味剤、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、ポリソルベートs、例えば「TWEEN 20」および「TWEEN 80」)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド類(例えば、コレステロール)、およびキレート剤(例えば、EDTAまたはEGTA)を含み得る。本発明での使用に適したこれらおよび更なる公知の医薬添加剤および/または添加物は、当該技術分野で知られており、例えばREMINGTON:THE SCIENCE & PRACTICE OF PHARMACY(19th ed.、Williams & Williams(1995))およびPHYSICIAN'S DESK REFERENCE(52nd ed.、Medical Economics(1998))(これらの開示は、参照により明示的に全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0072】
本発明は、医薬的に許容される組成物中に本明細書に開示される少なくとも1つの化合物を含む、安定な医薬組成物、および保存溶液および保存剤を含む組成物、ならびに医薬または獣医学的使用に適した複数回使用保存組成物を提供する。本発明による医薬組成物は、所望により、少なくとも1つの公知の防腐剤を含み得る。防腐剤は、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、亜硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、ベンザルコニウム塩化物、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサール、または水性希釈液中のそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。任意の適切な濃度または混合物が、当該技術分野で知られているように、例えば0.001~5%、またはその任意の範囲もしくは値で用いられ得る。非限定的な例としては、防腐剤なし、防腐剤、0.1~2%のm-クレゾール、0.1~3%のベンジルアルコール、0.001~0.5%のチメロサール、0.001~2.0%のフェニ(pheno)、0.0005~1.0%のアルキルパラベンなどを含む。
【0073】
他の添加剤、例えば等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤増強剤は、所望により希釈剤に添加され得る。グリセリンなどの等張化剤は、通常、公知の濃度で使用される。生理学的に忍容可能な緩衝液は、好ましくは、pH制御を改善するために、添加される。医薬組成物は、広範囲のpH、例えば約pH4~約pH10、具体的には約pH5~約pH9の範囲、より具体的には約6.0~約8.0の範囲を包含する。一態様において、本発明の製剤は、約6.8~約7.8のpHを有する。適切な緩衝液は、リン酸緩衝液、リン酸ナトリウム、およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。
【0074】
他の添加物、例えば医薬的に許容される可溶化剤、例えばTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、TWEEN 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、TWEEN 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、およびPEG(ポリエチレングリコール)または非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート20または80またはポロキサマー184または188、PLURONIC(登録商標)ポリオール(polyl)、他のブロックコポリマー、およびキレート剤、例えばEDTAおよびEGTAは、所望により、凝集を減少させるために、医薬組成物に加えられ得る。これらの添加物は、ポンプまたはプラスチック容器を医薬組成物の投与に用いる場合特に有用である。医薬的に許容される界面活性剤の存在は、組成物の凝集傾向を緩和する。
【0075】
本発明の組成物はまた、防腐剤のメチルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル;メチル p-ヒドロキシベンゾエート;またはMETHYL CHEMOSEPTとしても知られる)、エチルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル;エチルp-ヒドロキシベンゾエート;またはETHYL PARASEPTとしても知られる)、プロピルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル;プロピルp-ヒドロキシベンゾエート;NIPASOL;またはPROPYL CHEMOSEPTとしても知られる)および/またはブチルパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル;プロピルp-ヒドロキシベンゾエート;またはBUTYL CHEMOSEPTとしても知られる)を含み得る。いくつかの実施態様において、組成物は、メチルパラベンおよび/またはプロピルパラベンを含む。
【0076】
本発明の組成物はまた、リポソームの形態で投与され得る。当技術分野で知られているように、リポソームは、一般にリン脂質または他の脂質物質に由来する。リポソームは、水性媒体中に分散した単層または多層の水和液晶によって形成される。リポソームを形成できる、非毒性で生理学的に許容され代謝可能な任意の脂質を使用し得る。リポソーム形態の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定化剤、防腐剤、添加剤などを含み得る。好ましい脂質は、天然および合成の両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成する方法は、当技術分野で知られている(Prescott, ed., METH. CELL BIOL. 14:33 (1976)参照)。リポソーム、製造方法および使用方法は、米国特許第4,089,8091号(リポソームの製造プロセス)、第4,233,871号(脂質小胞中の生理活性物質に関する方法)、第4,438,052号(混合ミセルの製造方法)、第4,485,054号(大きな多層膜小胞)、第4,532,089号(巨大サイズのリポソームおよびその方法)、第4,897,269号(リポソーム薬物送達システム)、第5,820,880号(リポソーム製剤)などに記載されている。
【0077】
本発明の化合物を製造プロセスのいずれかにおいて、関連する分子のいずれか上の感受性基または反応性基を保護することが必要および/または望ましい場合がある。これは、従来の保護基、例えばPROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC CHEMISTRY (1973);およびGREENE AND WUTS, PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS (1991)に記載されているものによって達成できる。保護基は、当技術分野で知られている方法を用いて、好都合な後の段階で除去し得る。
【0078】
本明細書に開示の化合物は、(希釈剤で希釈する前に)予備濃縮物中に可溶化または懸濁し得て、希釈前に予備濃縮物に添加し得て、希釈された予備濃縮物に添加し得て、または予備濃縮物と混合する前に希釈剤に添加し得る。化合物はまた、治療効果のために、独立した投与形態の一部として共投与され得る。所望により、本明細書に開示の化合物は、第1の可溶化量、および第2の非可溶化(懸濁)量で存在し得る。
【0079】
医薬製剤はまた、本明細書に記載する、活性化合物を動物に投与できる製剤に加工するのを容易にする添加剤および助剤を含む適切な医薬的に許容される担体を含み得る。
【0080】
錠剤またはカプセル剤の形態での経口投与では、化合物は、エタノール、グリセロール、水などの経口の非毒性の医薬的に許容される不活性担体と組み合わせ得る。さらに、所望または必要に応じて、結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤もまた、混合物に組み込まれ得る。適切な結合剤は、デンプン;ゼラチン;天然糖類、例えばグルコースまたはベータ-ラクトース;トウモロコシ甘味剤;天然および合成ガム、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース;ポリエチレングリコール;ワックスなどを含むが、これらに限定されない。これらの投与形態で用いられる滑沢剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含むが、これらに限定されない。崩壊剤は、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含むが、これらに限定されない。
【0081】
経口投与では、組成物はまた、所望により甘味剤を含む。甘味剤は、スクロース、フルクトース、サッカリンナトリウム、スクラロース(SPLENDA(登録商標))、ソルビトール、マンニトール、アスパルテーム、サイクラミン酸ナトリウムなど、およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0082】
本発明の経口投与用の水性懸濁液、エマルションおよび/またはエリキシルは、様々な甘味剤、着香剤、例えば限定されないが、オレンジまたはレモンフレーバー、着色剤、例えば染料、天然着色剤などの色素を、本明細書に記載の希釈剤、例えば水、グリセリンおよび様々な組合せに加えて、組み合わせ得る。
【0083】
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、それぞれ所定量の化合物を含有するカプセル剤、糖衣錠、カシェ剤または錠剤などの個別の単位として;散剤または顆粒剤として;水性液体または非水性液体中の液剤または懸濁剤として;水中油型液体マルションまたは油中水型エマルションとして、およびボーラスとして提供され得る。液体製剤は、経口シリンジを用いて投与され得る。
【0084】
錠剤は、所望により1つ以上の補助的成分と共に、圧縮または成形によって製造され得る。圧縮錠剤は、所望により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、界面活性剤または分散剤と混合した、粉末または顆粒などの流動性のある形態の化合物を適切な機械で圧縮することによって製造され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって製造され得る。錠剤は、所望により、コーティングまたは割線を付けてもよく、その中の化合物の遅延または制御放出を提供するように製剤化してもよい。
【0085】
また、化合物を含む組成物は、化合物の持続放出を可能にする生分解性ポリマーに組み込まれ得る。生分解性ポリマーおよびその使用は、Brem et al., 74 J. NEUROSURG. 441-46 (1991)に詳細に記載されている。持続放出組成物の適切な例としては、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、このマトリックスは、成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出持続放出の例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)を含む)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-L-グルタミン酸エチルの共重合体、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸共重合体、例えばLUPRON DEPOT(登録商標)(Tap Pharmaceuticals, Inc., Chicago, Ill.)(乳酸グリコール酸共重合体およびリュープロレリン酢酸塩から構成される注射可能なマイクロスフェア)、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。
【0086】
非経腸投与に適した医薬組成物は、製剤を受手の血液と等張にする抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含み得る水性および非水性の無菌注射溶液;懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の無菌懸濁液を含み得る。組成物は、単位用量または複数回用量の容器、密封されたアンプルおよびバイアルで提供され得て、使用直前に無菌液体担体、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存され得る。即時の注射溶液および懸濁液は、先に記載した種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から製造され得る。
【0087】
非経腸投与では、無菌懸濁液および溶液が望ましい。静脈内投与が望ましい場合、一般に適切な防腐剤を含む等張製剤が用いられる。医薬組成物は、不活性液体担体に溶解した化合物を含む医薬組成物の注射によって非経腸的に投与され得る。本明細書で用いる用語「非経腸」は、皮下注射、静脈内、筋肉内、腹腔内注射、または注入技術を含むが、これらに限定されない。許容される液体担体は、植物油、例えば例えばピーナツ油、綿実油、ゴマ油など、および有機溶媒、例えばソルケタール、グリセロールホルマールを含む。医薬組成物は、最終製剤が約0.005~30重量%の化合物を含むように、液体担体中に化合物を溶解または懸濁させることによって製造され得る。
【0088】
本発明の組成物はまた、更なる治療薬、例えば限定されないが、親水性薬物、疎水性薬物、親水性高分子、サイトカイン、ペプチド模倣物、ペプチド、タンパク質、トキソイド、血清、抗体、ワクチン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ヌクレオシド類似体、遺伝子物質および/またはそれらの組合せを含み得る。
【0089】
本発明の医薬組成物において用いられ得る治療薬の例としては、他の抗腫瘍薬、鎮痛薬および抗炎症薬、抗狭心症薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗細菌薬、抗ウイルス薬、抗生物質、抗凝固薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、制吐薬、抗真菌薬、抗痛風薬、抗高血圧薬、抗マラリア薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗パーキンソン病薬、抗原虫薬、抗甲状腺薬、甲状腺治療薬、鎮咳薬、抗不安薬、催眠薬、神経弛緩薬、β遮断薬、強心薬、コルチコステロイド、利尿薬、胃腸薬、ヒスタミンH受容体拮抗薬、免疫抑制薬、角質溶解薬、脂質調節薬、筋弛緩薬、栄養剤、サイトカイン、ペプチド模倣薬、ペプチド、タンパク質、トキソイド、血清、鎮静薬、性ホルモン、性ホルモンアンタゴニストまたはアゴニスト、興奮薬抗体、ワクチン、ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体および遺伝子物質を含むが、これらに限定されない。両親媒性の治療薬および栄養剤もまた、含まれ得る。
【0090】
更なる治療薬は、(希釈剤で希釈する前に)予備濃縮物中に可溶化または懸濁し得て、希釈前に予備濃縮物に添加し得て、希釈された予備濃縮物に添加し得て、または予備濃縮物と混合する前に希釈剤に添加し得る。更なる治療薬はまた、治療効果のために、独立した投与形態の一部として共投与され得る。所望により、更なる治療薬は、第1の可溶化量、および第2の非可溶化(懸濁)量で存在し得る。このような更なる治療薬は、動物、特に哺乳動物に投与される場合、治療的価値または他の価値を有するあらゆる物質、例えば薬物、栄養剤および診断薬であり得る。
【0091】
本発明の化合物および組成物ならびに更なる医薬的に活性な物質に加えて、医薬製剤はまた、本明細書に記載する、活性化合物を動物に投与できる製剤に加工するのを容易にする添加剤および助剤を含む適切な医薬的に許容される担体を含み得る。
【0092】
本発明において有用な医薬製剤は、処置される対象体の状態、障害または疾患を処置するのに有効な量の化合物を含み得る。
【0093】
本発明はまた、それを必要とする患者への投与に有用なキットの形態に関する。キットは、治療上有効量の本発明の医薬組成物および担体、添加剤または希釈剤を含む第1の容器手段を有する、2つ以上の容器手段をその中に受容するように厳重に閉鎖されて区画化された担体手段を有し得る。所望により、キットは、治療有効量の更なる薬物を含む更なる容器手段を有し得る。
【0094】
キットは、別個の組成物、例えば分割されたボトルまたは分割されたホイルパケットのための容器を含み、別個の組成物はまた、単一の分割されていない容器に含まれ得る。典型的には、キットは、別個の成分の投与のための指示書を含む。キット形態は、別個の成分が好ましくは異なる投与間隔で投与される場合、または組合せの個々の成分のタイトレーションが処方医師によって望まれる場合、特に有利である。本発明のキットは、医師が体液中の活性成分のレベルを測定できるようにするための試験およびスクリーニングのキットおよび方法を含む。本発明のキットはまた、研究機関による使用および購入が可能な研究グレードの試薬およびキットを含む。
【0095】
一態様において、本開示の組成物は、ベース組成物中にAPIを含む。いくつかの態様に従って、ベース組成物は、ビヒクル、界面活性剤および増粘剤を含む。以下に、本明細書で使用するベース組成物の代表的な製剤を示す:
【表1】
【0096】
ビヒクルは、ベース製剤の約85%~98.5重量%の量でベース製剤中に存在し得る。いくつかの実施態様において、ビヒクルは、ベース製剤中約88~97重量%、約90~95重量%、約92~94重量%、約94~96重量%に存在し得る。
【0097】
界面活性剤は、ベース製剤の約1%~8重量%の量でベース製剤中に存在し得る。いくつかの実施態様において、界面活性剤は、ベース製剤中に約2~6重量%、約3~5重量%、約2~4重量%、約2~5重量%存在し得る。
【0098】
増粘剤は、ベース製剤の約0.5%~7重量%の量でベース製剤中に存在し得る。いくつかの実施態様において、増粘剤は、ベース製剤中に約1~6重量%、約2~5重量%、約2~4重量%、約1~3重量%存在し得る。
【0099】
APIを、ベース製剤に加えて、最終製剤を製造し得る。一態様によれば、APIは、ベース製剤の約5~40%の量で加えられ得る。いくつかの実施態様において、APIは、組成物中に約8重量%~約35重量%、約10重量%~約30重量%、約12重量%~約25重量%、約15重量%~約35重量%、約20重量%~約30重量%、約22重量%~約28重量%、約5重量%~約18重量%、約8重量%~約15重量%存在する。
【0100】
いくつかの態様に従って、界面活性剤(例えば、Kolliphor EL)と増粘剤(例えば、蜜蝋)の相対比は比較的一定に保たれ得て、一方、ビヒクルとAPIの相対比は変更される。
【0101】
一態様による例示的組成を以下に示す:
【表2】
【0102】
別の態様による例示的組成を以下に示す:
【表3】
【0103】
IV. 組成物の投与経路
本発明はさらに、経口、非経腸、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内(intraabdominal)、関節包内、軟骨内、腔内(intracavitary)、脳内(intracelial)、小脳内(intracelial)、脳室内、結腸内(intracolic)、頸部内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内(intraperitoneal)、胸膜内、前立腺内、肺内、腎臓内、網膜内、髄腔内、滑膜内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、バッカル、舌下、鼻腔内、イオン導入手段または経皮手段を含むが、これらに限定されない経路による、本明細書に開示の少なくとも1つの化合物の投与に関する。
【0104】
本明細書に開示の化合物を、単回投与から1週間から1年の長期間にわたって対象体に送達することが望ましい場合がある。特定の医療デバイスは、患者に継続的に間欠的またはオンデマンドの投与を提供するために使用され得る。デバイスは、拡散装置のポンプ、または薬物のリザーバーと、所望により薬物の送達を制御するための診断または監視構成要素を含む他の装置であり得る。様々な徐放性、デポーまたはインプラントの投与形態が用いられ得る。投与形態は、体液中で溶解度が低い本明細書に開示の化合物の医薬的に許容される非毒性塩、(a)多塩基酸との酸付加塩、例えばリン酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンモノもしくはジスルホン酸、ポリガラクツロン酸など;(b)多価金属カチオンとの塩、例えば亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムなど、または例えばN,N'-ジベンジル-エチレンジアミンもしくはエチレンジアミンから形成される有機カチオンとの塩;または(c)(a)と(b)の組合せ、タンニン酸亜鉛塩を含み得る。また、本発明の化合物または比較的不溶性の塩、例えばここで記載したものは、注射に適したゲル、例えばゴマ油を含むモノステアリン酸アルミニウムゲルとして製剤化され得る。塩は、亜鉛塩、タンニン酸亜鉛塩、パモ酸塩などを含むが、これらに限定されない。別の種類の注射用の徐放性デポー製剤は、米国特許第3,773,919号に記載の製剤を含む、ポリ乳酸/ポリグリコール酸ポリマーなどのゆっくり分解し、無毒性で、非抗原性のポリマー中に分散またはカプセル化した化合物または塩を含む。化合物または比較的不溶性の塩、例えば上記したものは、上述したような化合物またはその比較的不溶性の塩は、特に動物に使用するために、コレステロールマトリックスシラスティックペレットとして製剤化され得る。更なる徐放性、デポーまたはインプラント製剤、例えば気体または液体リポソームは、文献で知られている。例えば、米国特許第5,770,222号;SUSTAINED AND CONTROLLED RELEASE DRUG DELIVERY SYSTEMS (1978)参照。
【0105】
他の例としては、生分解性組成物を含む徐放性送達システムによって投与される、本明細書に開示の化合物の提供が含まれる。生分解性組成物は、生分解性で水凝固性の非ポリマー材料、および水性媒体中で混和性または分散性である生体適合性で無毒性の有機溶媒から構成され得る。送達システムは、インプラント部位に埋め込まれ、得られる微多孔質マトリックスを通って組成物から周囲の組織液へ溶媒を消散、分散または浸出させ得る。
【0106】
用語「インプラント部位」は、非ポリマー組成物がその中または上に適用される部位を含むことを意味する。埋め込みまたはインプラント部位はまた、本発明の少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物を固体デバイスに組み込むことを含み得る。医薬組成物は、対象体に埋め込まれるステント上のコーティングに組み込まれ得る。また、他の固体または生分解性材料は、医薬組成物が適用される基材として用いられ得る。その後、医薬組成物を含むコーティングされた材料が、対象体または患者に埋め込まれるか、挿入されるか、または隣接される。用語「生分解性」は、インプラントの非ポリマー材料および/またはマトリックスが、酵素の作用、単純なまたは酵素触媒による加水分解作用、および/または人体内の他の同様のメカニズムによって時間の経過とともに分解することを意味する。「生侵食性」は、インプラントマトリックスが、少なくとも部分的に、周囲の組織液、細胞作用などで見られる物質との接触により、時間の経過とともに侵食または分解することを意味する。「生体吸収性」は、非ポリマーマトリックスが人体内、細胞、組織などによって分解および吸収されることを意味する。
【0107】
組成物において用いられ得る非ポリマー材料は一般に、生体適合性、水および体液に実質的に不溶性、生分解性および/または生侵食性であるものである。非ポリマー材料は、水溶性有機溶媒に少なくとも部分的に可溶化できる。非ポリマー材料はまた、凝固または固化して、固体インプラントマトリックスを形成できる。非ポリマー材料は、適合性で適切な有機溶媒と組み合わせて、相溶性のある適切な有機溶媒と組み合わされて、水っぽいものから粘稠なもの、さらには展延性のパテまたはペーストまでの範囲の所望の粘度を有する組成物を形成する。
【0108】
適切な有機溶媒は、生体適合性で、医薬的に許容され、非ポリマー材料を少なくとも部分的に溶解するものである。有機溶媒は、水に対して混和性から分散性までの範囲の溶解度を有する。所望により、細孔形成剤は、インプラントマトリックス中に更なる細孔を生成するために、組成物中に含まれ得る。細孔形成剤は、水または体液に実質的に可溶性であり、インプラントの凝固非ポリマー材料および/または固体マトリックスからインプラント部位の周囲の体液中に消散する任意の有機または無機の医薬的に許容される物質であり得る。
【0109】
本発明の化合物は、動物の体内に局所的または全身的な生物学的、生理学的または治療的効果を提供できる。本明細書に記載のいくつかの医薬組成物を製剤化する際、化合物は、好ましくは、非ポリマー組成物に可溶性または分散性であり、均一な混合物を形成し、埋め込み時にインプラントマトリックスに組み込まれるようになる。固体マトリックスが時間の経過とともに分解するにつれて、化合物は、マトリックスから隣接する組織液へ、およびインプラント部位と隣接または離れた関連する身体組織または器官へ、好ましくは制御された速度で放出されることができる。マトリックスからの化合物の放出は、水性媒体中の化合物の溶解度、マトリックス内での化合物の分布、サイズ、形状、多孔度、固体マトリックスの溶解度および生分解性によって変化し得る。例えば、米国特許第5,888,533号参照。患者に投与される組成物中の成分の量および濃度は、一般に、意図された課題を達成するのに有効である。
【0110】
他の実施態様において、本発明の化合物は、ポリマーマトリックス中に懸濁された微粒子を含む生物活性剤送達システムによって投与され得る。微粒子は、当技術分野で現在知られているマイクロカプセル、マイクロスフェアまたはナノスフェアであり得る。微粒子は、ゲルであるかまたは生物学的環境に入るとゲルになるポリマー内にそのまま取り込まれることができなければならない。微粒子は、生分解性または非生分解性であり得る。生物活性剤を微粒子担体に組み込むために使用される多くのマイクロカプセル化技術が、当技術分野で教示されている。例えば、米国特許第4,652,441号;第5,100,669号;第4,438,253号;および第5,665,428号参照。
【0111】
好ましいポリマーマトリックスは、生分解性であり、低温で水溶性を示し、哺乳類の生理学的体温で可逆的な熱ゲル化を受ける。ポリマーマトリックスは、マトリックス内に取り込まれた物質を、時間の経過と共に制御された方法で放出できる。ポリマーは、水性または生理学的環境において酵素的または非酵素的加水分解によって徐々に分解される。例えば、米国特許第6,287,588号参照。
【0112】
V. 製造方法
一定量の活性成分を含む様々な医薬組成物を製造する方法は、当業者に公知であるか、または本開示に照らして明らかである。当該医薬組成物の製造方法は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Martin, E.W., ed., Mack Publishing Company, 19th ed. (1995)に記載されている他の適切な医薬添加剤およびその処方を組み込み得る。
【0113】
本発明の医薬製剤を製造する方法は、従来の混合、溶解または凍結乾燥プロセスを含む公知の方法で製造される。したがって、液体医薬製剤は、所望または必要に応じて適切な助剤を添加した後、活性化合物を固体添加剤と組み合わせ、所望により得られた混合物を粉砕し、顆粒混合物を加工することによって得られ得る。
【0114】
VI. 処置方法
当業者は、本明細書に開示の組成物の医薬的有効量をそれを必要とする患者に投与する方法が、経験的に、または医療分野で現在認識されている基準によって決定できることを理解する。薬物は、1つ以上の医薬的に許容される添加剤と組み合わせた医薬組成物として患者に投与され得る。ヒト患者に投与する場合、本発明の組成物の薬物の1日の総使用は、担当医師による健全な医学的判断の範囲内で決定されることが理解される。特定の患者に対する具体的な治療上有効な用量レベルは、達成されるべき細胞反応の種類および程度;使用される特定の薬物または組成物の活性;使用される特定の複数薬物または組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事;薬物の投与時間、投与経路および排泄速度;処置期間;特定の薬物と組み合わせでまたは同時に使用される薬物;および医療分野で周知の同様の要因等の様々な要因に依存する。所望の治療効果を達成するのに必要なレベルよりも低いレベルで薬物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは、十分に当業者の範囲内である。
【0115】
投薬量はまた、当該技術分野で受け入れられ日常的な技術によって決定される、血中の薬物の所定の濃度を提供するために、患者に特異的な方法で投与することもできる。
【0116】
VII. 用量の決定
一般に、本明細書に開示の化合物は、潜在的な毒性を最小限に抑えながら最適な有効性を得るために、ルーチン試験によって定められた適切な用量で、単独または組み合わせて用いられ得る。本発明の化合物を利用する投与レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別、病状;治療すべき状態の重症度;投与経路;患者の腎臓および肝臓の機能;および使用される特定の化合物を含む様々な要因に従って選択され得る。通常の技術を有する医師または獣医師は、症状の進行を予防、対抗または阻止するために必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方できる。
【0117】
最小限の毒性で最大限の有効性が得られる範囲内で薬物濃度を達成するのに最適な精度は、1つ以上の標的部位に対する化合物の利用可能性の動態に基づくレジメンを必要とし得る。処置レジメンの最適濃度を決定するときに、薬物の分布、平衡および除去が考慮され得る。本明細書に開示の化合物の投与量は、所望の効果を達成するために組み合わせる場合、調整され得る。一方、これらの様々な治療薬の投与量は、独立して最適化され、組み合わされて、いずれかの薬物を単独で使用した場合より病状を軽減する相乗効果を達成し得る。
【0118】
特に、本明細書に開示の化合物の毒性および治療有効性は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順、例えばLD50(集団の50%が致死する用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)により決定され得る。毒性と治療効果間の用量比は治療指数であり、比LD50/ED50として表され得る。化合物の細胞毒性が所望の活性または治療結果である場合を除いて、大きな治療指数を示す化合物が好ましい。有毒な副作用を示す化合物が使用され得るが、送達システムは、非感染細胞への潜在的な損傷を最小限にし、これによって副作用を軽減するために、そのような化合物を罹患組織の部位に標的化し得る。一般に、本発明の化合物は、有効性を最大化し、毒性を最小化する方法で投与され得る。
【0119】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用のための投与量範囲を公式化するのに用いられ得る。このような化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される投与形態および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変化し得る。本発明の方法で用いられる任意の化合物について、治療上有効な用量は、最初に細胞培養アッセイから推定され得る。用量は、細胞培養で決定されるIC50(症状の半量最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて公式化され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量を正確に決定するために使用され得る。血漿レベルは、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0120】
さらに、本発明の医薬組成物の用量投与は、薬物動態学的/薬力学的モデリングシステムを用いて最適化され得る。1つ以上の投与レジメンが選択され得て、薬物動態学的/薬力学的モデルが、1つ以上の投与レジメンの薬物動態学的/薬力学的プロファイルを決定するために用いられ得る。次に、所望の薬物動態学的/薬力学的応答を達成する投与レジメンの1つは、特定の薬物動態学的/薬力学的プロファイルに基づいて選択され得る。米国特許第6,747,002号(参照によりその全体として明示的に組み込まれる)参照。
【0121】
開示の医薬組成物または開示の薬物の組み合わせについて、同じ組成物中で製剤化されるからどうかにかかわらず、治療および予防目的のための有効用量を決定するための方法は、当技術分野で知られている。治療目的の場合、本明細書で用いる用語「共同有効量」は、処置されている疾患または障害の症状の軽減を含む、研究者、獣医師、医師またその他の臨床医が求めている組織系、動物またはヒトにおいて生物学的または医学的反応を誘発する、単独または組み合わせた各活性化合物または薬剤の量を意味する。予防目的(すなわち、障害の発生または進行の阻害)の場合、用語「共同有効量」は、対象体における障害の発生または進行を阻害する、研究者、獣医師、医師またその他の臨床医が求めている単独または組み合わせた各活性化合物または薬剤の量を指す。したがって、本発明はさらに、(a)各治療薬は、独立して治療上または予防上有効な量で投与されるか;(b)組合せ中の少なくとも1つの治療薬は、単独で投与される場合は治療量以下または予防量以下であるが、本発明による第2または更なる治療薬と組み合わせて投与される場合は治療量または予防量である量で投与されるか;または、(c)両治療薬は、単独で投与される場合は治療量以下または予防量以下であるが、一緒に投与される場合は治療量または予防量である量で投与される、2つ以上の治療薬の組み合わせを提供する。3つ以上の治療薬の組合せが同様に可能である。併用療法の方法は、すべての活性薬物を含む単一製剤の共投与;2つ以上の製剤の本質的に同時投与;および別々に製剤化2つ以上の活性薬物の投与を含む。
【0122】
より具体的には、医薬組成物は、1日1回の用量で投与されてもよく、または1日の総投与量を1日2、3または4回の分割用量で投与してもよい。投与量は、1週間、1か月間、または数か月、3、6、9もしくは12か月にわたって、または当技術分野で知られ臨床的に関連すると判断される間隔にわたって投与され得る。用量は、患者の生涯を通じて継続され得て、または臨床上の判断から必要である場合は中止され得る。組成物の1日投与量は、患者当たり1日当たり約0.0001~約1,000mgの広い範囲で変動し得る。より具体的には、範囲は、成人(約60kg)の場合、1日当たり体重1kg当たり約0.001mg~10mg、1日当たり約0.1~100mg、約1.0~50mgまたは約1.0~20mgであり得る。また、投与量は、臨床的に関連する血清濃度を達成するために、1日当たり約0.5~10mg/kg、1日当たり約1.0~5.0mg/kg、1日当たり5.0~10mg/kg、または専門家によって決定される同等用量であり得る。
【0123】
注射の場合、通常、成人(約60kg)に1日当たり約0.01~30mg、約0.1~20mgまたは約0.1~10mgの量を静脈内経路で投与されるのが好都合である。静脈内投与は、ボーラス投与またはゆっくりした投与を含み得る。他の動物の場合、60kgで計算した用量を同様に投与し得る。
【0124】
非限定的な例として、ヒトまたは動物の処置は、本発明の化合物を患者1人当たり1日当たり0.0001~約1,000mgの1回または定期投与量として提供され得る。より具体的には、範囲は、成人(約60kg)の場合、1日当たり体重1kg当たり約0.001mg~10mg、1日当たり約0.1~100mg、約1.0~50mgまたは約1.0~20mgであり得る。また、投与量は、臨床的に関連する血清濃度を達成するために、1日当たり約0.5~10mg/kg、1日当たり約1.0~5.0mg/kg、1日当たり5.0~10mg/kg、または専門家によって決定される同等用量であり得る。別の態様によれば、本明細書に開示の化合物は、最大約250mg/kgの用量で経口的に、または他の送達方法によって送達され得る。
【0125】
具体的には、本発明の医薬組成物は、数週間にわたって少なくとも1週間に1回投与され得る。一実施態様において、医薬組成物は、数週間から数か月にわたって少なくとも1週間に1回投与される。別の実施態様において、医薬組成物は、4~8週間にわたって1週間に1回投与される。さらに別の実施態様において、医薬組成物は、4週間にわたって1週間に1回投与される。
【0126】
VIII. 本発明の化合物の使用方法
別の態様において、本発明はさらに、神経変性疾患または状態に関連するあらゆる疾患の処置において有用性を有する方法に関する。より具体的には、本発明はさらに、哺乳類において神経変性疾患を予防し、進行を遅らせおよび/または回復させるための方法を提供する。特定の実施態様において、方法は、本明細書に記載の化合物を含む組成物を哺乳類に投与することを含み得る。本明細書に記載の化合物を含む組成物は、哺乳類において疾患または状態を予防、改善、処置または発症を遅延するのに有効な量で投与され得る。
【0127】
更なる実施態様において、神経変性疾患または状態に罹患している哺乳類を処置する方法は、本明細書に記載の化合物を含む組成物の有効量を哺乳類に投与することを含み得る。他の実施態様において、神経変性疾患または状態は、虚血性脳卒中、外傷性脳損傷、急性播種性脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜色素変性症、軽度認知障害、アルツハイマー病、ピック病、老人性認知症、進行性核上性麻痺、皮質下認知症、ウィルソン病、多発性梗塞疾患、動脈硬化性認知症、エイズ関連認知症、小脳変性、脊髄小脳変性症候群、フリードライヒ運動失調症、毛細血管拡張性運動失調症、てんかん関連脳損傷、脊髄損傷、下肢静止不能症候群、ハンチントン病疾患、パーキンソン病、線条体黒質変性症、脳血管炎、ミトコンドリア脳筋症、神経セロイドリポフスチン症、脊髄性筋萎縮症、中枢神経系関与を伴うリソソーム蓄積障害、白質萎縮症、尿素サイクル欠損障害、肝性脳症、腎性脳症、代謝性脳症、ポルフィリン症、細菌性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎、髄膜脳炎、プリオン病、神経毒性化合物による中毒、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性神経障害、多発性筋炎、皮膚筋炎、放射線誘発性脳損傷からなる群より選択され得る。実施態様には、頭蓋照射または化学療法剤の治療的投与による末梢神経障害を含む神経変性が含まれる。
【0128】
別の実施態様において、神経精神疾患または状態に罹患した哺乳類を処置するための方法は、本明細書に記載の化合物を含む組成物の有効量を哺乳類に投与することを含み得る。他の実施態様において、神経精神疾患または状態は、不安障害、小児障害、摂食障害、気分障害、認知障害、パーソナリティ障害、精神病性障害、および物質関連障害からなる群より選択され得る。
【0129】
より具体的には、本発明の化合物を用いて処置され得る精神疾患/障害/状態の種類は、急性ストレス障害、パニック障害、広場恐怖症、社交恐怖症、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害および全般性不安障害を含むが、これらに限定されない不安障害;注意欠陥多動性障害、アスペルガー障害、自閉症障害、素行障害、反抗挑戦性障害、分離不安障害、トゥレット障害を含むが、これらに限定されない小児障害;神経性拒食症および神経性過食症を含むが、これらに限定されない摂食障害;大うつ病性障害、双極性障害(躁うつ病)、気分循環性障害、および気分変調性障害を含むが、これらに限定されない気分障害;せん妄、多発梗塞性認知症、アルコール依存症に伴う認知症、アルツハイマー型認知症および認知症を含むが、これらに限定されない認知障害;妄想性パーソナリティ障害、統合失調質パーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害、非社会的パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害を含むが、これらに限定されないパーソナリティ障害;統合失調症、妄想性障害、短期精神病性障害、統合失調症様障害、統合失調感情障害、および共有精神病性障害を含むが、これらに限定されない精神病性障害;アルコール依存症、アンフェタミン依存症、大麻依存症、コカイン依存症、幻覚剤依存症、吸入薬依存症、ニコチン依存症、オピオイド依存症、フェンシクリジン依存症、および鎮静剤依存症を含むが、これらに限定されない物質関連障害を含む。
【0130】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の具体的な実施例から明らかになる。具体的な実施例は、本発明の特定の実施態様を示しているが、例示のみを目的として提供される。したがって、本発明はまた、この詳細な説明から当業者に明らかとなり得る本発明の精神および範囲内の様々な変更および改変も含む。本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【実施例
【0131】
実施例1
【表4】
【0132】
例示的製剤F2を、100mLの脂質ベースのMCT/Kolliphor EL/蜜蝋(95/3/2%w/w)を含むジャーに混合しながらNNI-362をゆっくり加え、その後すべての粉末が湿るまで撹拌することにより製造した。NNI-362の実際の重量は、11.88~12.12gであり、120mg/mlの公称濃度を得た。
【0133】
実施例2
第1A相無作為化プラセボ対照単回および複数回用量の用量漸増試験を実施し、経口NNI-362の安全性、忍容性、薬物動態を50~72歳の健常な高齢ボランティアにおいて評価した。被験者は、投与前に絶食した。NNI-362の血漿濃度を、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)を用いた検証済みの生物分析方法により決定した。安定な標識d5-NNI-362を、このアッセイの内部標準として用いた。
【0134】
NNI-362を、コホートA~Eに投与する経口懸濁液として、滅菌水中1%(w/v)メチルセルロース中で製剤化した。コホートFおよびGには、NNI-362を、脂質ベースの製剤(中鎖トリグリセリド、Kolliphor ELおよび蜜蝋;95/3/2%;NNI-362が120mg/mlになるように加える)の経口懸濁液中で投与した。
【0135】
薬物動態データの分析方法
PKデータ分析を、NNI-362の血漿濃度に対して実施した。血漿濃度データを、Phoenix 64(登録商標)WinNonlin(登録商標)ソフトウェア(Version 8.3)を用いて評価し、ノンコンパートメント分析を実施した。
【0136】
各対象体のNNI-362血漿濃度について次のPKパラメーターを決定した:観察された最大血漿濃度(Cmax)、Cmaxに達するまでの観察時間(Tmax)、最後の採血時間まで(AUClast)、および無限大に外挿した(AUCinf)の血漿濃度時間曲線下面積、外挿したAUCinfの割合(%Extrap AUCinf)、終末消失半減期(t1/2)、および無限大までの平均滞留時間(MRTinf)。終末t1/2、AUCinf、MRTinfは、データが限られているか、または血漿濃度と時間曲線の終末期の適合度が低い(r<0.8)ため、一部の被験者において算出できなかった。AUCの20%を超える外挿は、終末パラメーターの値を信用できないものとし得る。
【0137】
PK結果
終末期の相関係数を、WinNonlinを用いて決定した。コホートFおよびGのSADとMAD用量群間の選択された薬物動態パラメーターにおける有意差を、t検定を使用して評価した(両側検定、対応検定;p<0.05)。
【0138】
コホートAは、被験者当たり10mgの単回経口用量が投与され、これらの被験者からの血漿試料には、定量可能な濃度のNNI-362を含まれなかった。コホートBは、20mgの用量が投与され;2名の被験者には、薬物濃度が定量限界(LLOQ=25pg/ml)を超えるそれぞれ1つの血漿試料があった。表1は、コホートC、DおよびEについて、25pg/mlを超えるNNI濃度を含む血漿試料の数を示す。NNI-362への曝露は、これらの試料において低く、得られた薬物動態データは限られていた。Cmax値は、15.1pg/ml(被験者5006 MAD、20mg)から69.0pg/ml(被験者3007 SAD、60mg)までの範囲であった。3名の被験者のAUClastおよび2名の被験者のAUCinfを計算するのに十分なデータポイントがあった。終末t1/2を、2名の対象体について計算し、4.09時間(被験者3007)および13.7時間(被験者4008)であった。MRTinf値は、3007および4008でそれぞれ9.2時間および5.5時間であった。
【0139】
コホートA~Eにおいて観察されたNNI-362への曝露が低いため、本発明の一態様によるNNI-362の経口投与のための脂質ベースの製剤を評価した。表2は、コホートFおよびG、SADおよびMAD相の薬物動態パラメーターを示す。プラセボを投与されたものを除くすべての被験者には、血漿濃度がLLOQより高い試料が少なくとも1つあった。試験した用量は、120mg(コホートF、SADおよびMAD)および240mg(コホートG、SADおよびMAD)であった。AUC値に基づく曝露は、単回投与後より複数回投与(MAD)後で高かった。コホートFおよびGでのTmax値は、0.5~8時間の範囲であり、表2に示すように4つの処置レジメンすべてで同様のばらつきを示し、そして、MAD処置の平均Tmax値は、SADでの平均よりわずかに高いが、差は統計的に有意ではなかった。コホートF、SADの平均Cmaxは、92.4±60.6pg/mlであった(コホートG、SADでは、99.0±63.9 ng/mlであった)。複数回投与後のCmax値は、単回投与後のものより高く、それぞれ129±67.3 ng/ml(コホートF、MAD)および239±230pg/ml(コホートG、MAD)であり、これは、増加は統計的に有意ではないが、血漿濃度の用量依存的増加を示唆している。AUCinf値は、590±184時間・pg/ml(コホートF、SAD);1323±681時間・pg/ml(コホートG、SAD);2826±1959時間・pg/ml(コホートG、MAD);3426±3298時間・pg/ml(コホートF、MAD)であった。これらの結果は、NNI-362への曝露が反復投与により増加することを示している。終末t1/2値は、6.24±1.84時間(コホートF SAD);12.2±10.2時間(コホートF、MAD);2.58±0.25時間(コホートG、SAD);および11.7±8.94時間(コホートG、MAD)であった。t1/2値は、NNI-362が24時間以内に完全には除去されず、その結果NNI-362が蓄積し、毎日の投与後のAUC値が単回投与のNNI-362と比較して高くなることを示す。平均MRTinf値は、コホートF SADで最も低く(9.99±2.55時間)、他の3つの群で高かった:19.2±14.3時間(コホートF MAD)、16.7±17.5時間(コホートG SAD)、および17.7±13.0(コホートG MAD)。
【0140】
結論
NNI-362の製剤の変更は、コホートA~Eと比較して、コホートFおよびGで観察された血漿濃度を増加させた。コホートDおよびFは、両方とも120mgのNNI-362を投与されたが、2つの異なる製剤中であった。被験者間のばらつきは大きかったが、NNI-362は、NNI-362を投与されたコホートFのすべての被験者からの血漿試料において定量可能であり、元の製剤中のNNI-362が投与されたコホートDの対象体より多くの時点で定量可能であった。複数回の毎日投与および脂質製剤での用量増加はまた、CmaxおよびAUC値に基づいてNNI-362のより高い曝露およびより長い終末t1/2およびMRTinf値をもたらす傾向があった。
【表5】


【表6】
【0141】
ここまで本発明を説明したが、本発明の範囲またはその任意の実施態様に影響を与えることなく、広範かつ同等の範囲の条件、処方および他のパラメーター内で同じことを実施できることが当業者には理解される。本明細書で引用するすべての特許および刊行物は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【国際調査報告】