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特表2024-521968白内障手術を受ける患者において使用するための、シクロスポリン製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】白内障手術を受ける患者において使用するための、シクロスポリン製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/13 20060101AFI20240528BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240528BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240528BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61K38/13
A61P27/12
A61K9/08
A61K47/44
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/02
A61K47/24
A61K9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576353
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 IB2022055462
(87)【国際公開番号】W WO2022264006
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/202,479
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.CARBOPOL
3.NOVEON
(71)【出願人】
【識別番号】503422000
【氏名又は名称】サン ファーマシューティカル インダストリーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUN PHARMACEUTICAL INDUSTRIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ホバネシアン,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA16
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD21
4C076DD22Z
4C076DD23
4C076DD26Z
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE53
4C076FF16
4C076FF61
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA44
4C084DA11
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA33
(57)【要約】
者を白内障手術に備えさせる方法は、シクロスポリン溶液の局所投与を含む。投与は、1日2回行われてもよく、28日間にわたって行われてもよい。方法は、1か月の等価球面屈折度数に対する誤差予測の改善、及び眼表面の不規則性の改善をもたらす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を白内障手術に備えさせる方法であって、
白内障手術が実施される眼に、シクロスポリンを含む溶液を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記シクロスポリン溶液が、局所投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シクロスポリン溶液が、1日2回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シクロスポリン溶液が、前記白内障手術の直前28日間投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シクロスポリンを含む溶液が、眼科水性局所製剤であって、前記眼科水性局所製剤が、
約0.087~0.093重量%のシクロスポリン、
約1.0重量%の水素化40ポリオキシルヒマシ油、約0.05重量%のオクトキシノール-40、
約0.3重量%のポビドン、
約0.05重量%の塩化ナトリウム、
約0.20~0.405重量%の一塩基性リン酸ナトリウム、及び
約0.23~0.465重量%の二塩基性リン酸ナトリウムからなり、水酸化ナトリウム/塩酸を用いて約5~約8のpHに調整され、
前記最終体積が水で補充される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シクロスポリンが、前記製剤の約0.09重量%の量で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記製剤のpHが、約6.6~7.0である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記シクロスポリンを含む溶液が、約0.05~0.5重量%のシクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、並びにHCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、及びポリオキシル35ヒマシ油又はそれらの組合せを含む1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーが、ポリオキシル35ヒマシ油を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、HCO-40である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーが、前記製剤の約0.5~1.5重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーが、HCO-40、HCO-60、HCO-80、又はそれらの組合せを含み、前記製剤の約0.5~1.5重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40を含み、前記製剤の約0.02~4重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40を含み、前記製剤の約0.02~0.1重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーが、前記製剤の約0.05~0.2重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーが、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含み、前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40である、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーが、前記製剤の約0.5~1.5重量%であり、前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40であり、前記製剤の約0.02~0.1重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーが、前記製剤の約0.5~1.5重量%であり、前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40を含み、前記製剤の約0.02~0.1重量%であり、前記シクロスポリンが、前記製剤の約0.05~0.2重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
眼表面の不規則性を低減する方法であって、
シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、方法。
【請求項22】
前記シクロスポリン溶液が、局所投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記シクロスポリン溶液が、1日2回投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記シクロスポリン溶液が、28日間投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記シクロスポリンを含む溶液が、眼科水性局所製剤であって、前記眼科水性局所製剤が、
約0.087~0.093重量%のシクロスポリン、
約1.0重量%の水素化40ポリオキシルヒマシ油、約0.05重量%のオクトキシノール-40、
約0.3重量%のポビドン、
約0.05重量%の塩化ナトリウム、
約0.20~0.405重量%の一塩基性リン酸ナトリウム、及び
約0.23~0.465重量%の二塩基性リン酸ナトリウムからなり、水酸化ナトリウム/塩酸を用いて約5~約8のpHに調整され、
前記最終体積が水で補充される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記シクロスポリンが、前記製剤の約0.09重量%の量で存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記製剤のpHが、約6.6~7.0である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記シクロスポリンを含む溶液が、水性透明ナノミセル眼科製剤であって、約0.05~0.5重量%のシクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及びHCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、ポリオキシル35ヒマシ油又はそれらの組合せを含む1つ以上のポリマーを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリマーが、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマーが、ポリオキシル35ヒマシ油を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリマーが、HCO-40である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーが、前記製剤の約0.5~1.5重量%である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリマーが、HCO-40、HCO-60、HCO-80、又はそれらの組合せを含み、前記製剤の約0.5~1.5重量%である、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40を含み、前記製剤の約0.02~4重量%である、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40を含み、前記製剤の約0.02~0.1重量%である、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記シクロスポリンが、前記製剤の約0.05~0.2重量%である、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリマーが、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含み、前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40である、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリマーが、前記製剤の約0.5~1.5重量%であり、前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40であり、前記製剤の約0.02~0.1重量%である、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記ポリマーが、前記製剤の約0.5~1.5重量%であり、前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40を含み、前記製剤の約0.02~0.1重量%であり、前記シクロスポリンが、前記製剤の約0.05~0.2重量%である、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
結膜紅斑を低減する方法であって、
シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、方法。
【請求項42】
前記シクロスポリン溶液が、局所投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記シクロスポリン溶液が、1日2回投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記シクロスポリン溶液が、28日間投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記シクロスポリンを含む溶液が、眼科水性局所製剤であって、前記眼科水性局所製剤が、
約0.087~0.093重量%のシクロスポリン、
約1.0重量%の水素化40ポリオキシルヒマシ油、約0.05重量%のオクトキシノール-40、
約0.3重量%のポビドン、
約0.05重量%の塩化ナトリウム、
約0.20~0.405重量%の一塩基性リン酸ナトリウム、及び
約0.23~0.465重量%の二塩基性リン酸ナトリウムからなり、水酸化ナトリウム/塩酸を用いて約5~約8のpHに調整され、
前記最終体積が水で補充される、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記シクロスポリンが、前記製剤の約0.09重量%の量で存在する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記製剤のpHが、約6.6~7.0である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記シクロスポリンを含む溶液が、約0.05~0.5重量%のシクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及びHCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、ポリオキシル35ヒマシ油又はそれらの組合せの1つ以上を含む、水性透明ナノミセル眼科製剤である、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記ポリマーが、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ポリマーが、ポリオキシル35ヒマシ油を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記ポリマーが、HCO-40である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記ポリマーが、前記製剤の約0.5~1.5重量%である、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリマーが、HCO-40、HCO-60、HCO-80、又はそれらの組合せを含み、前記製剤の約0.5~1.5重量%である、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40である、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40を含み、前記製剤の約0.02~4重量%である、請求項48に記載の方法。
【請求項56】
前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40であり、前記製剤の約0.02~0.1重量%である、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記シクロスポリンが、前記製剤の約0.05~0.2重量%である、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記ポリマーが、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含み、前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40である、請求項48に記載の方法。
【請求項59】
前記ポリマーが、前記製剤の約0.5~1.5重量%であり、前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40であり、前記製剤の0.02~0.1重量%である、請求項48に記載の方法。
【請求項60】
前記ポリマーが、前記製剤の約0.5~1.5重量%であり、前記ポリアルコキシル化アルコールが、オクトキシノール-40を含み、前記製剤の約0.02~0.1重量%であり、前記シクロスポリンが、前記製剤の約0.05~0.2重量%である、請求項48に記載の方法。
【請求項61】
屈折精度を改善するための方法であって、前記方法が、約0.087~約0.093重量%のシクロスポリンを含む眼科ナノミセル溶液製剤を投与することを含む、方法。
【請求項62】
角膜染色を改善(低下)するための方法であって、前記方法が、約0.087~約0.093重量%のシクロスポリンを含む眼科ナノミセル溶液製剤を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
今日の世界での白内障手術後の患者の満足度は、屈折誤差を最小化し、視覚イメージの品質を最適化することに依存する(D1、D2を参照のこと)。眼表面の不規則性は、術前の角膜測定値の一貫性に悪影響を及ぼし、術後の視覚の質に引き続き影響を与え得る(D3~D5を参照のこと)。これらの一貫性のない術前角膜測定値は、適切な眼内レンズ(IOL)インプラントを選択する、白内障外科医の能力に直接影響を与える。従って、例えば、ドライアイ疾患(DED)を有する患者において、眼表面を改善することは、術前において、レンズ選択のより高い屈折精度につながることになる(D6~D8を参照のこと)。
【0002】
眼表面疾患の管理は、いくつかの理由から、白内障手術の成功に重要であることが十分に確立されている。無症状として自己報告している患者であっても、白内障手術がドライアイの徴候及び症状を悪化させる可能性があるだけでなく、眼表面の不規則性は、手術前のバイオメトリ、及び角膜トポグラフィー/トモグラフィーの精度を損なう可能性があり、不正確なIOL計算、最適以下の術後転帰、及び患者の不満を引き起こす(D9、D10を参照のこと)。高次収差(HOA)は、特に多焦点IOLが移植された場合、術後の患者の不満にも関連している。一般的に高い患者の術後の期待(D11を参照のこと)を考慮すると、白内障外科医は、患者のニーズを満たすために、これらの問題を最小化することを優先しなければならない。
【参考文献】
【0003】
D1. Monestam E. Long-term outcomes of cataract surgery:15-year results of a prospective study. J Cataract Refract Surg.Jan 2016;42(1):19-26.doi:10.1016/j.jcrs.2015.07.040
【0004】
D2. Gollogly HE,Hodge DO,St Sauver JL,Erie JC. Increasing incidence of cataract surgery:population-based study. J Cataract Refract Surg.Sep 2013;39(9):1383-9.doi:10.1016/j.jcrs.2013.03.027
【0005】
D3. Lee AC,Qazi MA,Pepose JS. Biometry and intraocular lens power calculation. Current opinion in ophthalmology. Jan 2008;19(1):13-7.doi:10.1097/ICU.0b013e3282f1c5ad
【0006】
D4. Jeong J,Song H,Lee JK,Chuck RS,Kwon BMS. The effect of ocular biometric factors on the accuracy of various IOL power calculation formulas. BMC Ophthalmol. May 2 2017;17(1):62.doi:10.1186/s12886-017-0454-y
【0007】
D5. Norrby S. Sources of error in intraocular lens power calculation. J Cataract Refract Surg.Mar 2008;34(3):368-76.doi:10.1016/j.jcrs.2007.10.031
【0008】
D6. Sheard R.Optimising biometry for best outcomes in cataract surgery. Eye. Feb 2014;28(2):118-25. doi:10.1038/eye.2013.248
【0009】
D7. Sahin A,Hamrah P.Clinically relevant biometry. Current opinion in ophthalmology. Jan 2012;23(1):47-53.doi:10.1097/ICU.0b013e32834cd63e
【0010】
D8. Hovanesian J,Epitropoulos A,Donnenfeld ED,Holladay JT. The Effect of Lifitegrast on Refractive Accuracy and Symptoms in Dry Eye Patients Undergoing Cataract Surgery. Clin Ophthalmol.2020;14:2709-2716.doi:10.2147/opth.S264520
【0011】
D9. Li XM,Hu L,Hu J,Wang W.Investigation of dry eye disease and analysis of the pathogenic factors in patients after cataract surgery. Cornea. Oct 2007;26(9 Suppl 1):S16-20.doi:10.1097/ICO.0b013e31812f67ca00003226-200710001-00005[pii]
【0012】
D10. Epitropoulos AT,Matossian C,Berdy GJ,Malhotra RP,Potvin R.Effect of tear osmolarity on repeatability of keratometry for cataract surgery planning. J Cataract Refract Surg. Aug 2015;41(8):1672-7. doi:10.1016/j.jcrs.2015.01.016
【0013】
D11. Addisu Z,Solomon B.Patients’preoperative expectation and outcome of cataract surgery at jimma university specialized hospital -department of ophthalmology. Ethiop J Health Sci. Mar 2011;21(1):47-55.doi:10.4314/ejhs.v21i1.69044
【発明の概要】
【0014】
本発明は、対象を白内障手術に備えさせる方法に関し、方法は、シクロスポリンを含む溶液を、白内障手術が実施される眼に投与することを含む。
【0015】
本方法の一実施形態では、シクロスポリン溶液は、局所投与される。
【0016】
本発明の別の実施形態では、シクロスポリン溶液は、1日2回投与される。
【0017】
本発明の更に別の実施形態では、シクロスポリン溶液は、白内障手術の直前に28日間投与される。
【0018】
本発明のまた更に別の実施形態では、シクロスポリンを含む溶液は、約0.087~0.093重量%のシクロスポリン、約1.0重量%の水素化40ポリオキシルヒマシ油、約0.05重量%のオクトキシノール-40、約0.3重量%のポビドン、約0.05重量%の塩化ナトリウム、約0.20~0.405重量%の一塩基性リン酸ナトリウム、及び約0.23~0.465重量%の二塩基性リン酸ナトリウムからなり、水酸化ナトリウム/塩酸を用いて約5~約8のpHに調整され、最終体積が水で補充される、眼科水性局所製剤である。上記の実施形態の一態様では、約0.20~0.405重量%の一塩基性リン酸ナトリウムは、約0.26~0.53重量%の一塩基性リン酸ナトリウム二水和物と等価である。上記の実施形態の別の態様では、二塩基性リン酸ナトリウムは、無水形態である。
【0019】
本発明の一実施形態では、シクロスポリンは、製剤の約0.09重量%の量で存在する。
【0020】
本発明の別の実施形態では、シクロスポリンの溶液のpHは、約6.6~7.0である。
【0021】
本発明の更に別の実施形態では、シクロスポリンを含む溶液は、約0.05~0.5重量%のシクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及びHCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、ポリオキシル35ヒマシ油又はそれらの組合せを含む1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤である。
【0022】
本発明のまた更に別の実施形態では、1つ以上のポリマーは、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含む。
【0023】
本発明の一実施形態では、前述のポリマーは、ポリオキシル35ヒマシ油を含む。
【0024】
本発明の別の実施形態では、ポリマーは、HCO-40である。
【0025】
本発明の一実施形態では、ポリマーは、シクロスポリン製剤の約0.5~1.5重量%である。
【0026】
本発明の別の実施形態では、ポリマーは、HCO-40、HCO-60、HCO-80、又はそれらの組合せを含み、製剤の約0.5~1.5重量%である。
【0027】
本発明の更に別の実施形態では、シクロスポリンの溶液に使用されるポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含む。
【0028】
本発明のまた更に別の実施形態では、ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含み、製剤の約0.02~4重量%である。
【0029】
本発明の別の実施形態では、ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含み、製剤の約0.02~0.1重量%である。
【0030】
本発明の別の実施形態では、方法は、シクロスポリンの溶液を使用し、シクロスポリンは、製剤の約0.05~0.2重量%である。
【0031】
本方法の更に別の実施形態では、シクロスポリンの溶液に使用されるポリマーは、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含み、前述のポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40である。
【0032】
本方法の更に別の実施形態では、シクロスポリンの溶液に使用されるポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%であり、前述のポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40であり、製剤の約0.02~0.1重量%である。
【0033】
本方法の更に別の実施形態では、シクロスポリンの溶液に使用されるポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%であり、前述のポリアルコキシル化アルコールは、製剤の約0.02~0.1重量%の量のオクトキシノール-40を含み、シクロスポリンは、製剤の約0.05~0.2重量%である。
【0034】
更に、本発明は、眼表面の不規則性を低減する方法を提供し、方法は、シクロスポリンを含む溶液を、眼に投与することを含む。
【0035】
本発明の一実施形態では、シクロスポリン溶液は、局所投与される。
【0036】
別の実施形態では、シクロスポリン溶液は、1日2回投与される。
【0037】
更に別の実施形態では、シクロスポリン溶液は、28日間投与される。
【0038】
また更に別の実施形態では、シクロスポリンを含む溶液は、約0.087~0.093重量%のシクロスポリン、約1.0重量%の水素化40ポリオキシルヒマシ油、約0.05重量%のオクトキシノール-40、約0.3重量%のポビドン、約0.05重量%の塩化ナトリウム、約0.20~0.405重量%の一塩基性リン酸ナトリウム、及び約0.23~0.465重量%の二塩基性リン酸ナトリウムからなり、水酸化ナトリウム/塩酸を用いて約5~約8のpHに調整され、最終体積が水で補充される、眼科水性局所製剤である。
【0039】
本発明の一実施形態では、シクロスポリンは、製剤の約0.09重量%の量で存在する。
【0040】
本発明の別の実施形態では、シクロスポリンの溶液のpHは、約6.6~7.0である。
【0041】
本発明の更に別の実施形態では、眼表面の不規則性を低減する方法は、約0.05~0.5重量%のシクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及びHCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、ポリオキシル35ヒマシ油又はそれらの組合せを含む1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤を含む、シクロスポリン溶液を投与する。
【0042】
本発明の更に別の実施形態では、ポリマーは、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含む。
【0043】
本発明の更に別の実施形態では、ポリマーは、ポリオキシル35ヒマシ油を含む。
【0044】
本発明の更に別の実施形態では、ポリマーは、HCO-40である。
【0045】
本発明のまた更に別の実施形態では、ポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%である。
【0046】
本発明の一実施形態では、眼表面の不規則性を低減する方法は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤を含む、シクロスポリン溶液を投与し、ポリマーは、HCO-40、HCO-60、HCO-80、又はそれらの組合せを含み、製剤の約0.5~1.5重量%である。
【0047】
本発明の別の実施形態では、眼表面の不規則性を低減する方法は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤を含む、シクロスポリン溶液を投与し、前記ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含む。
【0048】
更に別の実施形態では、眼表面の不規則性を低減する方法は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤を含む、シクロスポリン溶液を投与し、ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含み、製剤の0.02~4重量%である。
【0049】
本発明のまた更に別の実施形態では、ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含み、製剤の0.02~0.1重量%である。
【0050】
本発明の一実施形態では、眼表面の不規則性を低減する方法は、シクロスポリンの溶液を使用し、シクロスポリンは、製剤の0.05~0.2重量%である。
【0051】
本発明の別の実施形態では、眼表面の不規則性を低減する方法は、シクロスポリン溶液の溶液を使用し、前記溶液は、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含むポリマーを含み、前記ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40である。
【0052】
本発明の更に別の実施形態では、前述のポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%であり、前述のポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40であり、製剤の約0.02~0.1重量%である。
【0053】
本発明のまた更に別の実施形態では、前述のポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%であり、前述のポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含み、製剤の約0.02~0.1重量%であり、シクロスポリンは、製剤の0.05~0.2重量%である。
【0054】
本発明はまた、結膜紅斑を低減する方法を提供し、方法は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む。
【0055】
本発明の一実施形態では、シクロスポリン溶液は、局所投与される。
【0056】
本発明の別の実施形態では、シクロスポリン溶液は、1日2回投与される。
【0057】
本発明の一実施形態では、シクロスポリン溶液は、28日間投与される。
【0058】
一実施形態では、本発明は、結膜紅斑を低減する方法を提供し、方法は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含み、シクロスポリンを含む溶液は、約0.087~0.093重量%のシクロスポリン、約1.0重量%の水素化40ポリオキシルヒマシ油、約0.05重量%のオクトキシノール-40、約0.3重量%のポビドン、約0.05重量%の塩化ナトリウム、約0.20~0.405重量%の一塩基性リン酸ナトリウム、及び約0.23~0.465重量%の二塩基性リン酸ナトリウムからなり、水酸化ナトリウム/塩酸を用いて約5~約8のpHに調整され、最終体積が水で補充される、眼科水性局所製剤である。
【0059】
本発明の別の実施形態では、シクロスポリンは、製剤の約0.09重量%の量で存在する。
【0060】
本発明の更に別の実施形態では、製剤のpHは、約6.6~7.0である。
【0061】
一実施形態では、本発明は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、結膜紅斑を低減する方法を提供し、シクロスポリンを含む溶液は、約0.05~0.5重量%のシクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及びHCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、ポリオキシル35ヒマシ油又はそれらの組合せを含む1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤である。
【0062】
本発明の一実施形態では、ポリマーは、HCO-40, HCO-60, HCO-80, HCO-100、又はそれらの組合せを含む。
【0063】
本発明の別の実施形態では、ポリマーは、ポリオキシル35ヒマシ油を含む。
【0064】
また更に別の実施形態では、ポリマーは、HCO-40である。
【0065】
本発明の一実施形態では、ポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%である。
【0066】
一実施形態では、本発明は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、結膜紅斑を低減する方法を提供し、シクロスポリンを含む溶液は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤であり、ポリマーは、HCO-40、HCO-60、HCO-80、又はそれらの組合せを含み、製剤の約0.5~1.5重量%である。
【0067】
一実施形態では、本発明は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、結膜紅斑を低減する方法を提供し、シクロスポリンを含む溶液は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤であり、ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含む。
【0068】
一実施形態では、本発明は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、結膜紅斑を低減する方法を提供し、シクロスポリンを含む溶液は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤であり、ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含み、製剤の約0.02~4重量%である。
【0069】
一実施形態では、本発明は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、結膜紅斑を低減する方法を提供し、シクロスポリンを含む溶液は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤であり、ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含み、製剤の約0.02~0.1重量%である。
【0070】
一実施形態では、本発明は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、結膜紅斑を低減する方法を提供し、シクロスポリンを含む溶液は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤であり、シクロスポリンは、製剤の約0.05~0.2重量%である。
【0071】
一実施形態では、本発明は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、結膜紅斑を低減する方法を提供し、シクロスポリンを含む溶液は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤であり、前記ポリマーは、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はこれらの組合せを含み、前記ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40である。
【0072】
別の実施形態では、本発明は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、結膜紅斑を低減する方法を提供し、 シクロスポリンを含む溶液は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤であり、前記ポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%であり、前記ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40であり、製剤の約0.02~0.1重量%である。
【0073】
一実施形態では、本発明は、シクロスポリンを含む溶液を眼に投与することを含む、結膜紅斑を低減する方法を提供し、シクロスポリンを含む溶液は、シクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及び1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤であり、前記ポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%であり、前記ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含み、製剤の約0.02~0.1重量%であり、シクロスポリンは、製剤の約0.05~0.2重量%である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1図1は、試験来院及び検査のプロセスを図示するグラフ表示である。
図2図2は、シクロスポリン後に実施された角膜パワー測定値の予測精度が、シクロスポリン前に実施された場合よりも、有意に高かったことを示すグラフである(n=64、P<0.03、対応のあるt検定)。
図3図3は、28日間のシクロスポリン後に、二乗平均平方根高次収差の低下よりも、有意に多くの患者が改善したことを示すグラフである(n=64、P<0.0001、マクネマーのカイ二乗検定)。
図4図4は、シクロスポリンを使用した28日間の治療後に、SPEEDスコアが有意に改善したことを示すグラフである(P<0.00001、対応のあるt検定)。
図5図5は、シクロスポリンを使用した28日間の治療の前後に、角膜染色(オクスフォードスケール)が測定され、治療後に有意に改善され、患者の56%で完全な消失を示したことを示すグラフである(P<0.000001、対応のあるt検定)。全ての眼(n=64)は、試験に登録する条件として、治療前に少なくともグレード1の染色を有していたことに留意されたい。
図6図6は、シクロスポリンを使用した28日間の治療の前後に測定され、治療後に有意に改善された、涙液層破壊時間を示すグラフである(n=64、P<0.00001、対応のあるt検定)。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本開示は、術前28日間、白内障手術のために提示される患者における、シクロスポリン、例えば、シクロスポリン約0.09%(CEQUA)を含有する溶液の局所投与に関し、表面規則性の改善、及び術前角膜パワー測定値の予測精度を示す。本開示はまた、HOA、角膜染色、涙液層破壊時間(TBUT)、及び眼の赤みによって測定される、眼表面の不規則性に対する局所シクロスポリン溶液の影響を記載する。
【0076】
本明細書で使用される場合、「ポリオキシル脂質」又は「脂肪酸」という用語は、脂質又は脂肪酸、及びポリオキシエチレンジオールの、モノエステル及びジエステルを指す。ポリオキシル脂質又は脂肪酸は、当技術分野でよく理解されるように、オキシエチレン単位(例えば、40、60、80、100)の平均ポリマー長に従って、番号付け(「n」)されてもよい。「n-40ポリオキシル脂質」という用語は、ポリオキシル脂質又は脂肪酸が、40単位以上の平均オキシエチレンポリマー長を有することを意味する。ステアリン酸水素化ヒマシ油及びヒマシ油は、ポリオキシル脂質又は脂肪酸として市販されている、一般的な脂質/脂肪酸であるが、任意の脂質又は脂肪酸は、本明細書で企図されるポリオキシル脂質又は脂肪酸になるようにポリオキシル化され得ることが理解される。ポリオキシル脂質又は脂肪酸の例としては、限定されないが、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシル35ヒマシ油が含まれる。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語、一塩基性リン酸ナトリウム及び/又は二塩基性リン酸ナトリウムは、リン酸緩衝液を意味するために使用され、また、塩の異なる水和物及び無水形態で使用されてもよい。例えば、一塩基性リン酸ナトリウムは、等モル量の一塩基性リン酸ナトリウム二水和物と互換的に使用されてもよく、二塩基性リン酸ナトリウムは、等モル量の二塩基性無水リン酸ナトリウムと互換的に使用されてもよい。
【0078】
本明細書に記載される組成物及び方法のいずれかの、いくつかの実施形態では、ポリオキシル脂質又は脂肪酸の、オキシエチレン単位の平均ポリマー長は、比較的大きな活性成分についてはより長く、比較的小さな活性成分についてはより短く、例えば、活性成分がレゾルビン又はレゾルビン様化合物である、いくつかの実施形態では、ポリオキシル脂質は、HCO-60であり、活性成分が(レゾルビンよりも大きい)シクロスポリンAである、いくつかの実施形態では、ポリオキシル脂質は、HCO-80又はHCO-100である。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ミセル」又は「ナノミセル」という用語は、界面活性剤分子の凝集体(又はクラスター)を指す。ミセルは、界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度(CMC)よりも高い場合にのみ形成される。界面活性剤は、両親媒性である化学物質であり、これは、疎水性基及び親水性基の両方を含有することを意味する。ミセルは、球状、円筒形、及び円板状を含む、異なる形状で存在してもよい。少なくとも二つの異なる分子種を含むミセルは、混合ミセルである。いくつかの実施形態では、本開示の眼科組成物は、水性の、透明な、混合ミセル溶液を含む。
【0080】
本明細書全体を通して使用される場合、「約」という用語は、本発明による製剤/組成物で使用される量の数値の±10%を含むと見做される。
【0081】
本開示の組成物又は方法のいずれかによって治療される、患者又は対象は、ヒト又は非ヒト動物のいずれかを意味してもよい。一実施形態では、本開示は、ヒト対象を白内障手術に備えさせる方法を提供する。一実施形態では、本開示は、それを必要とするヒト患者における、眼表面の不規則性を低減するための方法を提供する。一実施形態では、本開示は、それを必要とするヒト患者における、結膜紅斑を低減するための方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、限定されないが、イヌ、ウマ、ネコ、ウサギ、アレチネズミ、ハムスター、齧歯類、鳥類、水生哺乳動物、ウシ、ブタ、ラクダ科動物、及び他の動物学上の動物を含む、それを必要とする獣医患者のための、上記の方法を提供する。
【0082】
シクロスポリン0.09%溶液
本開示に従って有用なシクロスポリン溶液は、例えば、米国特許第8,980,839号、第9,937,225号、第10,441,630号、及び第10,918,694号に開示されるような、シクロスポリンを含む溶液であり、それら各々の全内容が、参照によりその全体が組み込まれる。
【0083】
好ましい実施形態では、 シクロスポリンを含む溶液は、米国特許第10,918,694号に開示されている通りであり、約0.087~0.093重量%のシクロスポリン、約1.0重量%の水素化40ポリオキシルヒマシ油、約0.05重量%のオクトキシノール-40、約0.3重量%のポビドン、約0.05重量%の塩化ナトリウム、約0.20~0.405重量%の一塩基性リン酸ナトリウム、 及び約0.23~0.465重量%の二塩基性リン酸ナトリウムからなり、水酸化ナトリウム/塩酸を用いて約5~約8のpHに調整され、最終体積が水で補充される、眼科水性局所製剤からなる。この実施形態の特定の調整では、シクロスポリンは、製剤の約0.09重量%の量で存在する。この実施形態の他の調整では、製剤のpHは、約6.6~7.0である。
【0084】
特定の好ましい実施形態では、シクロスポリンを含む溶液は、CEQUAである。
【0085】
別の実施形態では、シクロスポリンを含む溶液は、米国特許第9,937,225号に開示されている通りであってもよい。こうした実施形態では、シクロスポリンを含む溶液は、約0.05~0.5重量%のシクロスポリン、ポリアルコキシル化アルコール、及びHCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、ポリオキシル35ヒマシ油又はそれらの組合せを含む1つ以上のポリマーを含む、水性透明ナノミセル眼科製剤であってもよい。この実施形態の特定の調整では、ポリマーは、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含んでもよい。この実施形態の他の調整では、ポリマーは、ポリオキシル35ヒマシ油を含んでもよい。この実施形態の更に他の調整では、ポリマーは、HCO-40である。この実施形態の特定の調整では、ポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%の量で存在してもよい。この実施形態の特定の調整では、ポリマーは、HCO-40、HCO-60、HCO-80、又はそれらの組合せを含んでもよく、製剤の約0.5~1.5重量%の量で存在してもよい。この実施形態の更に他の調整では、ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40を含んでもよく、ポリアルコキシル化アルコールがオクトキシノール-40を含む調整では、オクトキシノール-40は、製剤の約0.02~4重量%、又は約0.02~0.1重量%の量で存在してもよい。この実施形態の特定の調整では、シクロスポリンは、製剤の約0.05~0.2重量%の量で存在してもよい。この実施形態の他の調整では、ポリマーは、HCO-40、HCO-60、HCO-80、HCO-100、又はそれらの組合せを含んでもよく、ポリアルコキシル化アルコールは、オクトキシノール-40であってもよい。この実施形態の更に他の調整では、ポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%の量で存在してもよく、ポリアルコキシル化アルコールは、製剤の約0.02~0.1重量%の量の、オクトキシノール-40であってもよい。この実施形態の別の調整では、ポリマーは、製剤の約0.5~1.5重量%の量で存在してもよく、ポリアルコキシル化アルコールは、製剤の約0.02~0.1重量%の量の、オクトキシノール-40を含んでもよく、シクロスポリンは、製剤の約0.05~0.2重量%の量で存在してもよい。
【0086】
追加の製剤成分
本開示の組成物はまた、限定されないが、添加剤、アジュバント、緩衝剤、等張化剤、生体接着性ポリマー、及び保存剤などの、他の成分を含有してもよい。眼に局所的に投与するための、本開示の組成物のいずれかにおいて、混合物は、好ましくは、約pH5~約pH8で製剤化される。このpH範囲は、実施例に記載される組成物への、緩衝剤の添加によって達成されてもよい。一実施形態では、製剤中の組成物中のpH範囲は、約pH6.4~約7.5である。更に別の実施形態では、製剤中の組成物中のpH範囲は、約pH6.6~約pH7.0である。本開示の組成物は、リン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、及びホウ酸塩-ポリオール複合体などの、任意の一般的な緩衝系によって緩衝されてもよく、pH及び浸透圧は、適切な生理学的値に対して周知の技術に従って調整される。本開示の混合ミセル組成物は、緩衝水溶液中で安定である。すなわち、緩衝液と、組成物を不安定にするであろう任意の他の成分との間に、有害な相互作用はない。
【0087】
等張化剤としては、例えば、マンニトール、塩化ナトリウム、キシリトールなどが含まれる。これらの等張化剤を使用して、組成物の浸透圧を調整してもよい。一態様では、製剤のオスモル濃度は、約250~約350mOsmol/kgの範囲内に調整される。好ましい態様では、製剤のオスモル濃度は、約280~約300mOsmol/kgの間に調整される。
【0088】
糖、グリセロール、及び他の糖アルコールなどの添加剤を、本開示の組成物に含めてもよい。医薬添加剤を添加して、組成物中の他の成分の有効性又は効力を増大させてもよい。例えば、カルシニュリン阻害剤又はmTOR阻害剤の安定性を改善するために、組成物の浸透圧を調節するために、組成物の粘度を調節するために、又は薬剤送達をもたらすなどの別の理由で、医薬添加剤を本開示の組成物に添加してもよい。本開示の医薬添加剤の非限定的な例としては、トレハロース、マンノース、D-ガラクトース、及びラクトースなどの糖が含まれる。一実施形態では、本開示の水性透明混合ミセル溶液は、糖などの添加剤を含む。
【0089】
一実施形態では、本開示の組成物は、1つ以上の生体接着性ポリマーを更に含む。生体接着とは、特定の合成及び生物学的高分子、並びに親水コロイドが、生物組織に接着する能力を指す。生体接着は、ポリマー、生物組織、及び周囲の環境の特性に部分的に依存する、複雑な現象である。ポリマーの生体接着能力に寄与するいくつかの因子が見出されている:水素架橋(--OH、COOH)を形成することができる官能基の存在、陰イオン電荷の存在及び強度、ポリマー鎖が粘膜層を貫通するのに十分な弾性、並びに高分子量。生体接着系は、歯科、整形外科、眼科、及び外科用途に使用されてきた。しかしながら、最近、軟組織ベースの人工置換、及び生物活性薬剤の局所放出のための制御放出系などの、その他の領域での生体接着性材料の使用に、著しい関心が浮上してきた。こうした用途には、口腔又は鼻腔内の薬剤の放出のための系、及び腸内又は直腸投与のための系が含まれる。
【0090】
一実施形態では、本開示の組成物は、少なくとも1つの生体接着性ポリマーを含む。生体接着性ポリマーは、組成物の粘度を高め、それによって、眼内の滞留時間を増加させてもよい。本開示の生体接着性ポリマーには、例えば、CARBOPOL(カルボマー)、NOVEON(ポリカルボフィル)などの、カルボン酸ポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの、アルキル及びヒドロキシアルキルセルロースを含むセルロース誘導体、ローカストビーン、キサンタン、アガロース、カラヤ、グアーなどの、ガム、 及び、限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、PLURONIC(ポロキサマー)、トラガカント、及びヒアルロン酸などの、他のポリマー;眼への封入された薬剤の持続的かつ制御された送達を提供するための相転移ポリマー(例えば、アルギン酸、 カラギーナン(例えば、Eucheuma)、キサンタン、及びローカストビーンガム混合物、ペクチン、酢酸フタル酸セルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース及びその誘導体、ヒドロキシアルキル化ポリアクリル酸及びその誘導体、ポロキサマー及びその誘導体などが含まれる。これらのポリマーの物理的特性は、イオン強度、pH、又は温度などの環境要因を単独で、又は他の要因と組合せて変化させることによって、媒介されてもよい。一実施形態では、任意選択的な1つ以上の生体接着性ポリマーは、組成物中に、約0.01重量%~約10重量%/体積、好ましくは、約0.1~約5重量%/体積で存在する。一実施形態では、本開示の組成物は、例えば、PVP-K-30、PVP-K-90、HPMC、HEC、及びポリカルボフィルから選択される、少なくとも1つの親水性ポリマー賦形剤を更に含む。一実施形態では、ポリマー賦形剤は、PVP-K-90、PVP-K-30、又はHPMCから選択される。一実施形態では、ポリマー賦形剤は、PVP-K-90、又はPVP-K-30から選択される。
【0091】
一実施形態では、防腐剤が所望される場合、組成物は、EDTAを含む/含まないベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、COSMOCIL CQ、又はDOWICIL 200を含む、多くの周知の防腐剤のいずれかで、任意選択的に、保存されてもよい。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、いかなる防腐剤も含まないことが望ましい場合がある。これに関して、防腐剤は、いくつかの実施形態では、単回使用容器に含まれる製剤において、必要でもなく、望ましくもない場合もある。他の実施形態では、製剤が複数回使用容器に含まれる特定の実施形態などでは、防腐剤を含むことが有利な場合もある。
【0092】
本明細書に開示される組成物及び方法の、いくつかの実施形態では、シクロスポリンは、1つ以上の追加の活性成分、例えば、レゾルビン又はレゾルビン様化合物、ステロイド(コルチコステロイドなど)などからなる群から選択される活性剤を、更に含む。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、レゾルビンを含む。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、コルチコステロイドを含む。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、レゾルビン及びコルチコステロイドを含む。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、抗生物質、例えば、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ベシフロキサシン、及びレボフロキサシンからなる群から選択される1つ以上の抗生物質を含む。いくつかの実施形態では、追加の活性剤は、抗生物質、例えば、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ベシフロキサシン、及びレボフロキサシンからなる群から選択される1つ以上の抗生物質を含み、こうした活性剤の第二は、レゾルビンである。いくつかの実施形態では、活性剤は、2つ以上の活性剤を含み、前記活性剤の1つは、抗ウイルス剤、例えば、ガンシクロビル、トリフルリジン、アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、及びシドフォビルからなる群から選択される、1つ以上の抗ウイルス剤である。いくつかの実施形態では、活性剤は、2つ以上の活性剤を含み、活性剤の1つは、抗生物質、例えば、ガンシクロビル、トリフルリジン、アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、及びシドフォビルからなる群から選択される、1つ以上の抗ウイルス剤であり、活性剤の第二は、レゾルビンである。
【0093】
投与方法
シクロスポリンを含む溶液は、好ましくは、眼に局所投与される。投与方法は、例えば、米国特許第8,980,839号、第9,937,225号、第10,441,630号、及び第10,918,694号に記載される通りであってもよい。
【0094】
以下に報告された実験では、シクロスポリン0.09%溶液(CEQUA)を、患者に、1日2回、28日間投与した。しかしながら、投与方法は、示される方法に限定されない。投与は、眼表面の不規則性を改善するために、必要に応じて、長期間又は短い期間にわたってなされてもよい。用量はまた、眼表面の不規則性の改善を達成するために必要であり得るように、変更されてもよい。
【0095】
実験
以下に報告された実験では、シクロスポリン0.09%溶液(CEQUA)を使用した。
【0096】
図1は、概して、患者の試験に使用される手順を示す。以下の実験には、フルオレセインを使用した角膜染色、及び10秒以下のTBUTを含む、DEDの徴候を伴う白内障手術評価のために提示された、(75人の患者からの)75眼を含む、非盲検、多施設、前向き研究が含まれた。各患者は、シクロスポリン0.09%を使用した治療の前後に、同一の一連の術前診断を受けた。両眼手術を受ける予定であった患者は、最初の眼を試験に登録した。
【0097】
選択基準/除外基準及び治験実施計画書は、D8に、前もって公開された。除外基準には、過去3か月以内の以前の眼手術、眼の炎症若しくは角膜瘢痕化、角膜ジストロフィー、又は眼表面の他の欠陥若しくは異常が含まれた。対象は、任意のベースラインドライアイ治療(潤滑剤滴、温罨法)を、変化させずに続けることを許可されたが、局所的シクロスポリン0.09%の添加を超えて、いかなる修正も行わなかった。
【0098】
シクロスポリン0.09%治療後1か月の来院時に、患者は、コンプライアンスについて報告するよう求められ、非コンプライアンス患者は除外された。
【0099】
患者は、1日2回(BID)、28日間、局所シクロスポリン0.09%を処方された。以下で論じるように、角膜曲率測定値、スリットランプ検査、及び眼の乾燥の標準的な患者評価(SPEED)質問票を、初回及びフォローアップ来院時に評価した。白内障手術は、2回目のバイオメトリ来院後の、1~3週間に行われた。屈折及び矯正遠見視力の測定は、術後1か月に行った。主な転帰は、シクロスポリン治療の前後1カ月の、等価球面屈折度数の絶対予測誤差の差であった。副次的転帰には、眼表面の不規則性に対する、局所シクロスポリン0.09%の効果が含まれた。
【0100】
IOL Master 500又は700(CARL ZEISS MEDITEC、California、US)を使用して、初回来院時及び28日間のシクロスポリン0.09%後の両方で、角膜曲率測定を行った。角膜トポグラフィーを、ZEISS ATLAS 900又はそれ以降のトポグラファーで収集し、各来院について、角膜の中央6.0mmに根平均二乗(RMS)HOAを記録した。他の評価には、スリットランプ検査(シュルツェスケールによる結膜充血(D3及びD5を参照のこと)、オクスフォード評価スケールによる角膜染色、及びTBUT)が含まれた。眼の乾燥の標準的な患者評価(SPEED)調査も実施され、10超のスコアは、異常とみなされた。D3、D6を参照のこと。初期評価後、患者は、28日間のシクロスポリン0.09% BIDを処方された。28日間のサイクルの終了時に、バイオメトリ及び試験測定を繰り返した。2回目の評価の1~3週間後に、後者の評価からのバイオメトリ測定によって示唆される眼内レンズ(IOL)パワーを使用して、白内障手術を行った。
【0101】
術後約1か月で、屈折、及び矯正遠見視力(CDVA)測定を行った。
【0102】
バイオメトリ測定値の各セットを使用して、バレット・ユニバーサル II式を使用して、試験眼のIOLパワー計算を生成し、手術のために選択されたIOLの、予測される顕在屈折球面等価を、測定値の各セットについて計算した。次いで、これらの予測される球面等価を、手術の30日後に測定された実際の最終顕在屈折球面等価と比較して、各予測の絶対測定誤差を決定した。
【0103】
SPEED質問票スコア、結膜充血スコア、角膜染色、及びTBUTを、各来院について記録し、手術の前後の比較のために、データベースに入力した。対応のあるt検定を使用して、95%の信頼性で、統計的有意性の差を評価した。対応のあるt検定を使用して、シクロスポリン0.09%治療前後のRMS HOA測定値も比較した。
【0104】
合計75人の患者が、最初に登録された。これらのうち、8人(11%)が、手術をキャンセルするか、又はクリニック来院を減少させるために試験参加から離脱することによって、SARS-CoV-2関連の自宅待機命令を更新したために、離脱した。2人(3%)が、保険又は予定上の不一致によりキャンセルし、1人(1%)が、治験薬に耐えられなかったために離脱した。試験を完了した64人の患者のうち、34人(53%)が女性であり、30人(47%)が男性であった。合計36人(56%)の患者が右眼を試験し、28人(44%)が左眼を試験した。平均年齢は、70.5±7.4歳(50~84歳の範囲)であった。患者は、ハーバード・アイ・アソシエイツ(n=27)、オプサルモロジー・アソシエイツ(n=20)、及びオハイオ州の眼科外科医及びコンサルタント(n=17)に登録された。
【0105】
主要評価項目の測定
図2は、シクロスポリン治療の前後に実施された、角膜パワー測定値の予測精度を示すグラフである。1ヶ月の等価球面屈折度数の絶対予測誤差は、各々、シクロスポリン0.09%を使用した治療の前後に実施された、バイオメトリに基づいて、0.39±0.30D対0.33±0.25Dであった。この差は統計的に有意であった(P<0.03、対応のあるt検定)。標的の屈折度数を達成したであろう眼の割合は、シクロスポリンの0.09%後の方が大きかった:0.25D内では、41%対47%(P<0.05、マクネマーのカイ二乗検定)、0.5D内では、72%対73%(P<0.31)、0.75D内では、88%対95%(P<0.03)。これらの差は、0.25D~0.75D以内の精度について、統計的に有意であった。
【0106】
副次的評価項目の測定
図3は、RMS HOAの測定結果を示し、シクロスポリンを使用した28日間の治療後に、より多くの患者が、RMS HOAの低下と比較して改善を示したことを示す。図3に示すように、シクロスポリン0.09%治療は、角膜の中央6.0mm内で測定された総HOAの変化を引き起こし、28眼(44%)で平均0.28±0.27μの改善、18眼(28%)で変化なし、及び18眼(28%)で平均0.17±0.15μの悪化があった。これらの差は、統計的に有意であり、改善に有利であった(P< 0.0001、マクネマーのカイ二乗検定)。角膜HOAの全体的な平均の大きさはまた、治療前0.68±0.32μの値、及び治療後0.60±0.22μの値で、シクロスポリン0.09%によって有意に改善された(P<0.02、対応のあるt検定)。
【0107】
手術前の0.5μを超える全角膜HOAの存在は、術後の最適ではない患者の主観的な知覚と関連している。このカットオフを多焦点IOLでの成功確率の尺度として使用して、シクロスポリンの0.09%治療前の患者25名(39%)、及びシクロスポリンの0.09%治療後の患者29名(45%)が、多焦点IOLの候補とみなされる。この差は、統計的に有意であった(P<0.05、マクネマーのカイ二乗検定)。
【0108】
図4は、SPEEDスコアの結果を示す。図4に見られるように、0.09%のシクロスポリンを使用した28日間の治療後に、SPEEDスコアは有意に改善し、平均スコアは、治療前7.9±6.2、及び治療後5.2±5.3であった(P<0.00001、対応のあるt検定)。5以下のスコアは、シクロスポリン0.09%治療前の患者25名(39%)、及びシクロスポリン0.09%治療後の患者40名(63%)において観察され、10未満のスコアは、シクロスポリン0.09%治療前の患者48名(75%)、及びシクロスポリン0.09%治療後の患者56名(88%)において観察された。これらの差は、統計的に有意であった(各々、P<0.007、及びP<0.04、マクネマーのカイ二乗検定)。
【0109】
図5は、シクロスポリンを使用した28日間の治療の前後に測定された、角膜染色(オクスフォードスケール)試験の結果を示す。図4は、角膜染色が治療後に有意に改善(低下)し、患者の56%で消失したことを図示する。特に、オクスフォードスケールによって測定される角膜染色は、シクロスポリン0.09%治療前の1.6±0.56の平均グレードから、治療後の0.5±0.62に有意に改善した(P<0.000001、対応のあるt検定)。全ての眼は、治療前に少なくともグレード1の染色を有し、36眼(56%)はグレード0(染色なし)まで改善し、24眼(38%)はグレード1まで改善し、4眼(6%)はグレード2の染色で試験を完了した。2眼(3%)のみが、角膜染色の改善を示さず、治療後もグレード2のままであった。
【0110】
図6は、0.09%のシクロスポリンを使用した治療の前後28日に測定された、涙液層破壊時間(TBUT)の測定結果を示す。図6に見られるように、涙液層破壊時間は、治療後に有意に改善された。特に、TBUTは、治療前の平均5.2±2.2秒から、治療後の7.0±2.9秒まで、有意に改善した(P<0.000001、対応のあるt検定)。平均改善は、2.6±2.4秒であった。TBUTは、各々、シクロスポリン0.09%治療の前後、37眼(59%)及び23眼(36%)において、0~5秒であり(P<0.002、マクネマーのカイ二乗検定)、及びシクロスポリン0.09%治療の前後、26人(41%)及び33人(52%)の患者において、6~10秒であった(P<0.03、マクネマーのカイ二乗検定)。
【0111】
シュルツェスケールによって測定される結膜紅斑はまた、シクロスポリン0.09%治療で有意に改善した(平均スコアは、各々、治療前19.1±8.9及び治療後15.3±6.7、P<0.002、対応のあるt検定)。10の最も低いグレードは、治療前23眼(36%)、及び治療後36眼(56%)で観察された(P<0.02、マクネマーのカイ二乗検定)。結膜充血の他の値を、表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
64人の患者が、試験を完了した。1か月の等価球面屈折度数の絶対予測誤差は、各々、治療前0.39±0.30D、対治療後0.33±0.25D(P<0.03)であった。標的屈折を達成した眼の割合は、局所的シクロスポリン0.09%後の測定値に基づいて、治療前測定値を使用して発生したであろう割合よりも大きかった。
【0114】
上記の結果から見られるように、手術前の28日間、1日2回(BID)、局所シクロスポリン0.09%を処方された、ドライアイを有する白内障手術患者は、手術の等価球面度数の予測誤差の、統計的に有意な改善を示した。ドライアイ重症度の他の尺度は、治療後に有意な改善を示した。
【0115】
上記で報告された試験は、DEDを有する患者を登録し、白内障手術の屈折精度に対する、新しいシクロスポリン製剤の影響を評価した。本発明者らは、治療前に実施された測定値と比較した場合、シクロスポリン0.09%治療が開始された28日後に測定値を使用した場合、手術の等価球面度数の予測誤差における、統計的に有意な改善を見出した。角膜RMS HOA、角膜染色、TBUT、結膜紅斑、及びSPEEDスコアを含む、ドライアイ重症度の他の尺度も、シクロスポリン0.09%治療後に有意な改善を示した。
【0116】
涙液層破壊時間についても有意な改善が見られ、治療が、手術を前にしたドライアイにおいて、より安定した涙液破壊層を確立した証拠となった。これは術後患者にとって特に重要である。その理由は、手術に満足できる状態を達成することは、明瞭さを確立するだけでなく、長時間の読書やその他の視覚的に集約された作業を支援する能力にも依存するためである。
【0117】
ドライアイに対する多くの薬理学的治療が存在するが、シクロスポリン0.09%は、FDAによって現在承認されているシクロスポリンの最高用量である。また、Goldberg DF, Malhotra RP, Schechter BA, Justice A, Weiss SL, Sheppard JD. A Phase 3, Randomized, Double-Masked Study of OTX-101 Ophthalmic Solution 0.09% in the Treatment of Dry Eye Disease. Ophthalmology. Sep 2019;126(9):1230-1237. doi:10.1016/j.ophtha.2019.03.050に報告されているように、より良好な浸透及び薬物吸収のためのナノミセル技術を含む、シクロスポリンのみが承認されいている。本開示にはいくらかの制限があるが、すなわち、手術をキャンセルする患者や、事務局への来院を回避するために離脱を望む患者が多かったため、治療を開始し、試験を完了した患者の数は、当初計画されたものよりも少なく、1人の患者が治験薬に対する不耐性のために離脱し、中止率は、上記のシクロスポリン0.09%のGoldberg米国食品医薬品局第3相承認試験で報告された中止率2.4%よりも、わずかに良好であり、前記主要評価項目の尺度-屈折率精度の改善は-統計的に有意な結果を示した。
【0118】
本発明の知識によれば、これは、治療前シクロスポリン0.09%を使用した、白内障手術の屈折精度の改善を実証する、最初の開示である。本結果は、シクロスポリン0.09%が、一般的なドライアイ治療を超えて、有用性を追加したことを示す。
【0119】
本方法は、人工涙液、温罨法、食餌及び習慣の改変、並びにDEDに対する治療法などの、他の治療と組合されてもよい。
【0120】
シクロスポリン0.09%の以前のピボタル試験(Goldberg、上述)は、DEDの治療において、ビヒクル単独よりもこの製剤の優越性を実証した。したがって、シクロスポリン0.09%からの本開示に示される屈折精度の改善は、そのビヒクルの改善よりも、同様に優れていることが想定される。
【0121】
DEDと同様に、角膜HOAは、季節性、身体の水分状態、ホルモン変化、及び眼の水分状態に影響を及ぼす任意の他の因子を含む、多くの因子によって影響を受け得る。これらの各々は、無作為に作用し、眼表面の「滑らかさ」に変動を引き起こす可能性がある。これは、この試験において、シクロスポリン0.09%で治療を受けた患者の28%がHOAの悪化を有した理由を説明し得る。これらの注目すべき変動及び無作為な変動も関わらず、44%の、有意に高い割合の眼が、この指標の改善を示した。
【0122】
興味深いことに、本試験の全ての患者は有意なDEDを有していたが、大多数はベースラインで無症状であったことに留意されたい。SPEEDスコアは、75%で、10以下であり、ほぼ40%で、5未満であった。これは、PHACO試験(Trattler WB,Majmudar PA,Donnenfeld ED,McDonald MB,Nachcipher KG,Goldberg DF,The Prospective Health Assessment of Cataract Patients’ Ocular Surface(PHACO)study:the effect of dry eye;poster.Clin Ophthalmol.2017年3月;11:1423-1430.doi:10.2147/OPTH.S120159)を含む、以前の試験を裏付けるものとなっており、無症状の患者の同様の割合を示し、DEDの白内障手術候補をスクリーニングするための、一般的な臨床的手順を補強する。
【0123】
ある特定の実施形態が本出願に完全に記述されているが、それらの特定の実施形態に関して開示されるのと同一の概念が、他の実施形態にも適用可能であることが理解されるべきである。更に、本明細書に開示される製剤及び方法の個々の要素は、便宜上、特定の実施形態を参照してのみ説明される。本明細書に開示される製剤及び方法の個々の要素は、それらが説明される特定の実施形態以外の実施形態に適用可能であることが理解されるべきである。
【0124】
更に、本開示で考察される全ての文書の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0125】
更に、本開示の範囲は上述の実施形態に限定されず、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更が可能であることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】