(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】低酸素血症性急性呼吸不全患者の治療における上皮成長因子受容体に対するモノクローナル抗体の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240528BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240528BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240528BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P11/00
A61P31/12
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577206
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 CU2022050006
(87)【国際公開番号】W WO2022262879
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】CU-2021-0046
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509352381
【氏名又は名称】セントロ デ インミュノロヒア モレキュラル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロムベット ラモス、タニア
(72)【発明者】
【氏名】ラモス スサルテ、マイラ
(72)【発明者】
【氏名】サアベドラ エルナンデス、ダナイ
(72)【発明者】
【氏名】アニェ コウリ、アナ ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ロランド、ペレス ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】ディアツ ロンドレス、ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ヒメネス アルマダ、ホルヘ
(72)【発明者】
【氏名】レオン モンソン、カレト
(72)【発明者】
【氏名】アブド クサ、アンセルモ アントニオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC15
4C076CC35
4C076FF11
4C076FF68
4C085AA14
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
(57)【要約】
本発明は、バイオテクノロジー及び医学の分野に関し、低酸素血症性急性呼吸不全をもたらす感染起源の疾患の治療における上皮成長因子受容体に対するモノクローナル抗体の使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低酸素血症性急性呼吸不全をもたらす疾患の治療における上皮成長因子受容体に対するモノクローナル抗体(MAb)の使用。
【請求項2】
前記低酸素血症性急性呼吸不全が急性呼吸窮迫症候群である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記疾患が感染起源を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の使用。
【請求項4】
前記感染症が、
コロナウイルス、リノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバー、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomona aeruginosa)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、エンテロバクター(Enterobacter spp)、アシネトバクター(Acinetobacter spp)、スタフィロコッカス(Staphilococcus spp)、クレブシエラ・セラチア(Klebsiella Serratia spp)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、リゾプス(Rhizopus spp)、アスペルギルス(Aspergillus spp)、ニューモシスチス(Pneumocystis spp)、ムコール(Mucor spp)及びリゾムコール(Rhizomucor spp)
を含む群から選択される微生物によって引き起こされる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記EGFRに対するMAbが、
ニモツズマブ、セツキシマブ及びパニツムマブ
を含む群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
1~6mg/Kg体重の範囲での静脈内又は皮下経路による抗EGFR MAbの投与を含む、治療を必要とする対象の治療方法。
【請求項7】
前記抗EGFR MAbが、2回の連続投与間の経過時間を72時間~168時間として、少なくとも2回から最大5回まで前記対象に投与される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー及び医学の分野に関し、特に、低酸素血症性急性呼吸不全患者の治療における上皮成長因子受容体に対するモノクローナル抗体(MAb)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
低酸素血症性急性呼吸不全は、緊急入院の主な原因である。死亡率はほぼ20%である。最も頻度の高い病因は、肺炎、神経学的原因、非肺敗血症及び慢性閉塞性肺疾患である。この疾患は、安静時の呼吸困難、60mmHg未満の動脈O2圧(PO2)、及び/又は45mmHgを超える動脈CO2圧(PCO2)を特徴とする(Joao D et al.(2019)J Crit Care 49:84-91.;Piriano T et al.(2019)Respir Care.64(6):638-646)。
【0003】
呼吸不全は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に進行する可能性があり、これは肺疾患によって引き起こされるかどうかにかかわらず生命を脅かす状態である。(Butt Y and cols.(2016)Arch Pathol Lab Med.;140(4):345-50)。それは、肺浸潤、浮腫及び低酸素症をもたらす全身性炎症性疾患の結果である。このプロセスは、肺胞-毛細血管膜の完全性の喪失、好中球の過剰な浸潤、並びに炎症促進性サイトカイン及びケモカインの放出によって細胞レベルで特徴づけられる。(Shan X and cols.(2017)Oncotarget;8(16):26648-61)。病理学的レベルでは、急性期には肺胞内及び間質性浮腫があり、増殖期にはII型肺胞細胞の増殖があり、より進行した段階では線維症がある。(Poletti V and cols.(2010)Pathologica.102(6):453-63)
【0004】
臨床的には、低酸素血症によって顕在化し、胸部X線上の両側性混濁はコンプライアンス低下に関連する。形態学的に、びまん性肺胞損傷がARDSの急性期に見られる。ARDSによる死亡率は依然として高く、35%~46%の範囲である(Ferguson ND y cols.(2012)Intensive Care Med.;38(10):1573-82;Huppert LA y cols.(2019)Semin Respir Crit Care Med.;40(1):31-9)。生存者は、生活の質の著しい障害に関連する持続的な病的状態を有し得る(Butt Y y cols.(2016)Arch Pathol Lab Med.;140(4):345-50;Huppert LA y cols.(2019)Semin Respir Crit Care Med.;40(1):31-9;Fan E y cols.(2018)JAMA.;319(7):698-710)。
【0005】
いくつかの換気戦略は急性肺損傷の転帰を改善したが、コルチコステロイド又は界面活性剤を用いたほとんどの治療は、議論の余地のある結果を示している。(Fan E and cols.(2018)JAMA.;319(7):698-710)。
【0006】
上皮成長因子受容体(EGFR)は、170kDaの膜糖タンパク質であり、細胞移動、細胞周期、細胞代謝及び生存、並びに細胞増殖及び分化を含む基本的な細胞プロセスを制御する。(Shan X and cols.(2017)Oncotarget;8(16):26648-61;Mendelsohn J,Baselga J.(2006)Semin Oncol.;33(4):369-85;Saba NF and cols.(2006)Oncology;20(2):153-61)。EGFRの生理学的役割は、上皮組織の発達及び恒常性を調節することである。(Mendelsohn J,Baselga J.(2006)Semin Oncol.;33(4):369-85)。
【0007】
EGFR及びそのリガンドは、非小細胞肺癌、神経膠腫、頭頸部、子宮頸部及び食道の腫瘍を含む上皮起源の複数の腫瘍において上方制御される(Mendelsohn J,Baselga J.(2006)Semin Oncol.;33(4):369-85)。腫瘍におけるEGFRの過剰発現は、転移の増加、生存率の低下及び予後不良と相関する。その細胞内ドメインは、特定のタンパク質チロシンキナーゼ活性に関連し、細胞によるその過剰発現は、細胞周期調節を変化させ、アポトーシスを遮断し、血管新生を促進し、運動性を増加させ、細胞接着性及び転移を増加させる。(Mendelsohn J,Baselga J.(2006)Semin Oncol.;33(4):369-85,Saba NF and cols.(2006)Oncology;20(2):153-61)。ゲフィチニブ、エルロチニブ、及びオシメルチニブを含むチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、並びにセツキシマブ、パニツムマブ、及びニモツズマブ等の抗EGFR MAb等、EGFRを介したシグナル伝達を遮断する目的でいくつかの薬物が開発されている。(Mendelsohn J,Baselga J.(2006)Semin Oncol.;33(4):369-85,Saba NF and cols.(2006)Oncology;20(2):153-61;Perez R and cols.(2011)Clinical Effects.Cancers(Basel);3(2):2014-31;Smith D and cols.(2009)Bull Cancer.;96 Suppl:S31-40)。
【0008】
急性呼吸不全は、EGFRの正の調節及び過剰発現をもたらす。本質的に、EGFR活性化は、より重度の肺病態をもたらす。肺線維症における主要な節はEGFR経路であり、これは細胞増殖、粘液分泌、炎症応答、及び組織修復の多くのカスケードを制御する。(Venkataraman T,Frieman MB.(2017)Antiviral Res.;143:142-50)。
【0009】
この証拠にもかかわらず、マウスでは、線維症に対するEGFR TKIの効果に関する相反する報告がある。Suzukiらは、ゲフィチニブ治療後の線維症の増加を報告し(Suzuki H and cols.(2003)Cancer Res.;63(16):5054-9)、一方Ishiiらは、線維症の減少を報告した(Ishii Y,Fujimoto S,Fukuda T.(2006)Am J Respir Crit Care Med.;174(5):550-6)。この不一致の原因は不明であるが、マウス系統及びゲフィチニブ治療の期間における変動が、この相違を説明し得る。(Suzuki H and cols.(2003)Cancer Res.;63(16):5054-9;Ishii Y,Fujimoto S,Fukuda T.(2006)Am J Respir Crit Care Med.;174(5):550-6)。
【0010】
肺癌患者では、TKIは間質性肺炎に続発する急性低酸素血症性呼吸不全を誘発し得る。この有害事象は、1.1~2.2%の低い頻度で発生するが、全てのEGFR-TKI治療関連死の58%を占める致死的であり得る。(Ohmori T and cols.(2021)Int J Mol Sci.;22(2):792)。日本の患者は、この時点で原因不明の間質性肺炎の発生率が有意により高い(Suh CH and cols.(2018)Lung Cancer;123:60-9)。
【0011】
驚くべきことに、本発明者らは、低酸素血症性急性呼吸不全又はARDSに罹患している患者にニモツズマブを投与した場合、肺病変における、炎症における、換気パラメータの改善、及び生存率の増加を観察した。
【発明の概要】
【0012】
一実施形態では、本発明は、感染起源の低酸素血症性急性呼吸不全をもたらす疾患、特にARDSとして分類される疾患の治療におけるEGFRに対するMAbの使用に関する。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、急性呼吸不全は感染起源であり、コロナウイルス、リノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバー、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、エンテロバクター(Enterobacter spp)、クレブシエラ(Klebsiella spp)、アシネトバクター(Acinetobacter spp)、スタフィロコッカス(Staphylococcus spp)、セラチア(Serratia spp)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、リゾプス(Rhizopus spp)、アスペルギルス(Aspergillus spp)、ニューモシスチス(Pneumocystis spp)、ムコール(Mucor spp)及びリゾムコール(Rhizomucor spp)を含む群から選択される微生物によって引き起こされ得る。
【0014】
低酸素血症性急性呼吸不全又はARDSの治療において使用され得る本発明によって企図される抗EGFR MAbの中には、ニモツズマブ、セツキシマブ及びパニツムマブがある。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、72~168時間の間に少なくとも2回及び最大5回まで、1mg/kg体重~6mg/kg体重の用量範囲で静脈内又は皮下に抗EGFR mAbを投与することを含む、対象を治療する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
医薬組成物
本発明で使用されるEGFRに対するmAbは、mAbを有効成分として含有する医薬組成物の一部として、及び非経口使用のための薬理学的に適切な賦形剤として投与される。特に、これらのMAbの中には、配列が米国特許第5,891,996号に記載されているニモツズマブ、米国特許第6,217,866号に記載されているセツキシマブ、及び配列が米国特許第5,558,864号に記載されているパニツムマブがある。
【0017】
治療的適用及び治療方法
本発明は、急性低酸素呼吸不全又はARDSの治療における抗EGFR抗体の使用を記載する。特に、急性呼吸不全又は呼吸窮迫症候群が感染因子、例えばウイルス、細菌又は真菌によって引き起こされる患者の場合の使用が記載されている。特に、抗EGFRを使用して、コロナウイルス、ライノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルス等のウイルスによって誘導される急性呼吸不全又はARDSを治療することができる。細菌感染症の場合、連鎖球菌(streptococci)、肺炎球菌(pneumococci)又はブドウ球菌(staphylococci)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、エンテロバクター(Enterobacter spp)、クレブシエラ(Klebsiella spp)、アシネトバクター(Acinetobacter spp)及びセラチア(Serratia spp)によって引き起こされるものである。感染因子が真菌である場合、これは、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、リゾプス(Rhizopus spp)、アスペルギルス(Aspergillus spp)、ニューモシスチス(Pneumocystis spp)、ムコール(Mucor spp)、またリゾムコール(Rhizomucor spp)であり得る。
【0018】
本発明に記載の抗EGFR抗体の使用は、急性低酸素血症性呼吸不全又は急性呼吸窮迫症候群の症状及び徴候を改善する。
【0019】
これらの症状の軽減は、医療チームによる患者の改善及びより良好な管理を可能にする。提案された治療の特定の利点は、ステロイド又は他の免疫抑制剤に基づく他の従来の治療とは異なり、患者における免疫不全の非誘導である。治療された患者における免疫能の維持は、重症又は重篤な患者において非常に一般的である他の日和見感染症の出現の可能性を低下させる。
【0020】
抗EGFR抗体療法を受けている患者は、集中治療室又は中間治療室に入院することが好ましいが、従来の治療室にいてもよい。それらは、少なくとも以下の症状を示す:安静時の呼吸困難、60mmHg未満の動脈O2圧(PO2)及び/又は45mmHgを超える動脈CO2圧(PCO2)、海水面での室内空気のより低い酸素飽和度(SO2)<94%、又はSO2を>93%に維持するための酸素療法の必要性、酸素の動脈圧/酸素の吸気分率の比(PaO2/FiO2)<300mmHg、呼吸数>30吸気/分、又は両方の肺野の50%を超える浸潤物の存在。確認診断は、動脈血ガスのパラメータ及びX線、肺超音波又はコンピュータ軸断層撮影のいずれかの放射線所見を考慮して確立される。
【0021】
他の徴候及び症状としては、呼吸困難、高い呼吸数、頻脈、チアノーゼ、錯乱、疲労、低血圧、乾性咳、発熱、38℃、頭痛、神経学的症状が挙げられる。Dダイマー、フェリチン、LDH、C反応性タンパク質、IL-6の値が正常範囲を超えて増加する等、様々な実験室パラメータに変動が観察される。
【0022】
抗EGFR MAbは、1mg/kg体重~6mg/kg体重の用量範囲で患者に静脈内又は皮下に適用され、これらはそれぞれおよそ合計50mg~600mgに相当する。好ましくは、抗EGFR抗体ニモツズマブの場合、1.42mg/kg~2.85mg/kgの用量が使用される。これらのMAbは、患者に少なくとも2回、最大5回投与されるであろう。連続する2回の投与間の時間は、72時間~168時間である。ニモツズマブの場合、好ましいスケジュールは、200mgの負荷用量及びその後の100mgの用量を使用して、72時間毎に間隔を置いた2~3回の用量である。種々の抗EGFR MAbに使用される用量及びスケジュールは、EGFRを認識するそれらの能力を評価することによって調整され得る。
【0023】
本発明の別の目的は、抗EGFR抗体と抗ウイルス療法又は抗生物質との連続的又は付随的な組合せである。組み合わせることが可能な抗生物質には、とりわけ、セフトリアキソン等のセファロスポリン系、アジスロマイシン等のマクロライド、バンコマイシン等の糖ペプチド、メロペネム等のベータラクタム及びリネゾリド等のオキサゾリジノンがある。組み合わせることができる抗ウイルス薬の中でも、とりわけ、1型及び2型インターフェロン、レムデシビル等のHIVの治療に使用される抗レトロウイルス薬である。使用される抗生物質又は抗ウイルスレジメンは、各薬物に従来使用されているものであり、抗EGFR抗体の使用のためのレジメンは、上記のものに応答する。
【0024】
更に、本発明の目的は、抗EGFR抗体と、ステロイド等の他の抗炎症療法又は抗凝固療法、又は他の免疫調節薬と、低分子量分画ヘパリン又はヘパリン、ヘパリンナトリウム、未分画等の抗凝固療法との連続的又は付随的な組合せである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ニモツズマブで治療した3人の患者の軸胸部コンピュータ断層撮影スキャンである。連続画像A)入院時(カラム、B)退院時及びC)追跡調査(退院後30~60日)。
【
図2】ニモツズマブ投与前後のPaO2/FiO2比の経時的な挙動の図である。
【
図3】ニモツズマブ投与前後の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)酵素濃度の変動の図である。
【
図4】ニモツズマブによる治療前後の3人の患者の放射線進化の図である:A)患者JMTR、B)患者JHV、C)患者MESS。
【
図5】ニモツズマブで治療されたCOVID-19患者の全体的進化の図である。
【
図6】ニモツズマブで治療した患者におけるD-ダイマー値の図である。
【0026】
例
例1.ニモツズマブの使用は、低酸素血症性急性呼吸不全を有する患者におけるSARS-CoV-2死亡率を低下させる。
低酸素血症性急性呼吸不全又は呼吸窮迫症候群の臨床的、放射線学的又は実験室的所見を有するSARS-CoV-2と診断された14人の患者に、200mg用量のモノクローナル抗体ニモツズマブを静脈内投与した。全ての患者は、最初の投与の72時間後に100mgに相当する2回目の投与を受けた。
【0027】
治験薬の使用への影響を評価するため、重症と分類され、キューバの20の病院でステロイド及び抗凝固薬の同時治療を受けたSARS-CoV-2陽性の患者群を対照として選択した。
【表1】
【0028】
表1は、ニモツズマブの使用が、対照群と比較して、死亡率を16%低下させたことを示す。国際的には、重度のCOVID-19患者の生存率は、一部の患者(トシリズマブ)では抗凝固療法及びステロイド並びに抗IL6受容体抗体を含む最良の支持療法の使用後に77%~81%の範囲に及ぶ(Group RC(2021)Lancet;397(10285):1637-45;Rosas IO y cols.(2021)N Engl J Med.;384(16):1503-16)。Cubanプロトコルで確立された治療と組み合わせたニモツズマブの回復データ(92.85%)は、Cuban対照患者(77%)及び国際試験(77~81%)と非常に良好に比較される。
【0029】
軸胸部コンピュータ断層撮影スキャンを、ニモツズマブで治療した3人の患者に実施した。
図1A及び
図1Bは、すりガラス陰影の広範な領域、滲出期における気腔の固化、並びに組織化期及び線維化期における肺体積の減少を示す。対照的に、
図1Cは、3名の患者が肺炎症性病変の消散を示し、線維症の徴候を示さなかったことを示す。
【0030】
例2.ニモツズマブの使用は、治療患者の換気パラメータを改善する。
重症の10人のCOVID-19患者において、動脈酸素圧(PaO2)と酸素の吸気分率(FiO2)との比を換気パラメータの一つとして計算した。
図2は、ニモツズマブ前及び72時間離れた抗体の2回の投与後の、この比の経時的な挙動を示す。図に見られるように、患者は経時的に肺換気の改善を示した。
【0031】
例3:ニモツズマブによる治療は、治療された患者の炎症パラメータを改善する。
8人の重症COVID-19患者における炎症の尺度として、LDH及びIL-6を、ニモツズマブによる治療の前後に測定し、後者は、ELISA(Quantikine)によって測定した。全ての患者は、モノクローナル抗体の投与前にステロイド治療を受けていた。
【0032】
図3は、MAbニモツズマブの2回の投与後にLDHの減少が起こることを示す。
【0033】
表2は、ニモツズマブによる治療の前及び異なる時点におけるIL-6の濃度を示す。
【表2】
【0034】
8名の患者のうち5名では、0日目及び7日目の血清IL-6濃度の低下が有意であった(p=0.048フリードマン検定、0日目対7日目 p=0.03ダン検定)。患者MVHでは、IL-6は48時間で増加し(平均未満のままであるが)、その後減少するが、RGR患者では、IL-6濃度は安定したままである。これらの7人の患者では、疾患の自然歴の一部としての顕著な増加傾向を考慮すると、進化は好ましいと分類される。MAST患者では、IL-6が増加し、これは疾患の鈍い経過と相関した。
【0035】
例4.ニモツズマブ治療は、多巣性間質性肺炎に罹患した領域を改善する。
2回のニモツズマブ投与後にCOVID-19の異なる時間進化の8名の患者において、両方の肺野(右肺及び左肺)の患部の割合を計算した。これらの結果を表3に示す。
【表3】
【0036】
全体として、ニモツズマブの使用は、モノクローナル抗体の初回投与の168時間後に、治療患者の62.5%において患部を改善した。1名の患者では、両肺野の患部は変化しなかったが、2名の患者では、患部は進化の7日目に10%しか増加しなかった。
図4は、ニモツズマブによる治療前後のこれらの患者のうちの3人の放射線学的進化を示す。
【0037】
例4.COVID-19によって引き起こされるARDSを有する患者は、ニモツズマブによる治療後に臨床的改善を有する。
これらの各評価で日常的に測定されるパラメータの一部の改善を考慮した、それらの全体的進化(臨床、放射線学及び実験室)の評価。
図5は、全体的に、75%の患者がニモツズマブの初回投与の1週間後に臨床的改善の徴候を示したことを示す。
【0038】
例5.ニモツズマブ治療は、重症COVID-19患者においてD-ダイマーの減少をもたらす。
ニモツズマブで治療したCOVID-19患者2名と、この疾患を管理するためのCubanプロトコルに含まれる残りの薬物は、Dダイマーが測定される。
図6は、Cubanプロトコルにおいて、ニモツズマブとCOVID-19に提供される残りの療法との組合せ後に、両方の患者がD-ダイマーを有意に減少させたことを示す。抗凝固薬(分画ヘパリン)、ステロイド及び他の免疫調節薬による治療下であっても、両患者が高レベルのD-ダイマーに到達したことを明確にする必要がある。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低酸素血症性急性呼吸不全をもたらす疾患の治療におけるモノクローナル抗体ニモツズマブの使用。
【請求項2】
前記低酸素血症性急性呼吸不全が急性呼吸窮迫症候群である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記疾患が感染起源を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の使用。
【請求項4】
前記感染症が、
コロナウイルス、リノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバー、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomona aeruginosa)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、エンテロバクター(Enterobacter spp)、アシネトバクター(Acinetobacter spp)、スタフィロコッカス(Staphilococcus spp)、クレブシエラ・セラチア(Klebsiella Serratia spp)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、リゾプス(Rhizopus spp)、アスペルギルス(Aspergillus spp)、ニューモシスチス(Pneumocystis spp)、ムコール(Mucor spp)及びリゾムコール(Rhizomucor spp)
を含む群から選択される微生物によって引き起こされる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
1~6mg/Kg体重の範囲での静脈内又は皮下経路による抗EGFR MAbの投与を含む、低酸素血症性急性呼吸不全の治療を必要とする対象に対する低酸素血症性急性呼吸不全の治療方法。
【請求項6】
前記抗EGFR MAbが、2回の連続投与間の経過時間を72時間~168時間として、少なくとも2回から最大5回まで前記対象に投与される、請求項5に記載の方法。
【国際調査報告】