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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】PRPF31変異体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20240528BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240528BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240528BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240528BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240528BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20240528BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
C12N15/12
C12N15/864 100Z
C12N15/86 Z
C12N5/10
A61P43/00 107
A61P27/02
A61K35/76
A61K48/00
A61K47/62
A61K31/7088
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577815
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 CN2022098879
(87)【国際公開番号】W WO2022262756
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202110665266.8
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522229949
【氏名又は名称】北京中因科技有限公司
【住所又は居所原語表記】Building 1,No.27,Life Garden Road,Life Science Park,Changping District,Beijing 102206,China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鐘顯成
(72)【発明者】
【氏名】陳邵宏
(72)【発明者】
【氏名】張凡
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC10
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZB221
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZB22
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA33
4C087ZB22
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
SEQ ID NO.3~4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む外因性核局在化(NLS)ドメインを含むPRPF31変異体。PRPF31変異体は、網膜色素上皮(RPE)細胞の生物学的活性を改善することができ、PRPF31遺伝子変異によって引き起こされる疾患を治療することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO.3~4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む外因性核局在化(NLS)ドメインまたはそのトランケート体を含むPRPF31変異体。
【請求項2】
野生型PRPF31のNLSドメインを含まない、請求項1に記載のPRPF31変異体。
【請求項3】
NOSICドメインを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載のPRPF31変異体。
【請求項4】
NOPドメインを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のPRPF31変異体。
【請求項5】
RHO遺伝子を含む遺伝子のmRNAを切断することができる、請求項1~4のいずれか1項に記載のPRPF31変異体。
【請求項6】
前記PRPF31変異体はヒトPRPF31に由来する、請求項1~5のいずれか1項に記載のPRPF31変異体。
【請求項7】
SEQ ID NO.20~21のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のPRPF31変異体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のPRPF31変異体をコードする核酸分子。
【請求項9】
SEQ ID NO.28~29のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項10】
請求項8~9のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項11】
ウイルスベクターを含む、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
レンチウイルスベクターおよびAAVベクターを含む、請求項10~11のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項13】
前記レンチウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ならびに、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)および/またはビスナ・マエディウイルス(VMV)などの非霊長類レンチウイルスを含む、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
前記AAVベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9および/またはAAV10を含む、請求項12~13のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか1項に記載のPRPF31変異体、請求項8~9のいずれか1項に記載の核酸分子、および/または請求項10~14のいずれか1項に記載のベクターの、疾患を治療するための医薬品の調製における使用。
【請求項16】
前記疾患は、PRPF31遺伝子変異によって引き起こされる疾患を含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記疾患は、網膜色素変性症(RP)を含む、請求項15~16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記疾患は、常染色体優性網膜色素変性症(ADRP)を含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
網膜色素上皮(RPE)細胞の生物学的活性を改善する方法であって、前記RPE細胞に請求項1~7のいずれか1項に記載のPRPF31変異体、請求項8~9のいずれか1項に記載の核酸分子、および/または請求項10~14のいずれか1項に記載のベクターを投与することを含む、網膜色素上皮(RPE)細胞の生物学的活性を改善する方法。
【請求項20】
前記生物学的活性は、前記RPE細胞の貪食活性および/または前記RPE細胞の繊毛長を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記誘導されたRPE細胞は、多能性幹細胞および/または全能性幹細胞に由来する、請求項19~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記誘導されたRPE細胞はヒトiPS細胞に由来する、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記PRPF31変異体は、野生型PRPF31のNLSドメインを含まない、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記PRPF31変異体は、SEQ ID NO.20~21のいずれ1項に示されるアミノ酸配列を含む、請求項19~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記投与は、前記PRPF31変異体をコードする核酸分子を含むベクターを投与することを含む、請求項19~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸分子は、SEQ ID NO.28~29のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ベクターは、ウイルスベクターを含む、請求項19~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
mRNAのスプライシング効率を向上させる方法であって、前記mRNAを含む細胞にSEQ ID NO.3~4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む外因性核局在化(NLS)ドメインを含むPRPF31変異体を投与することを含む、mRNAのスプライシング効率を向上させる方法。
【請求項29】
前記PRPF31変異体は、野生型PRPF31のNLSドメインを含まない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記PRPF31変異体は、SEQ ID NO.20~21のいずれ1項に示されるアミノ酸配列を含む、請求項28~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記投与は、前記PRPF31変異体をコードする核酸分子を含むベクターを投与することを含む、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記核酸分子は、SEQ ID NO.28~29のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ベクターは、ウイルスベクターを含む、請求項31~32のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は生物医薬の分野に関し、特にPRPF31変異体およびその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
網膜色素変性症(Retinitis pigmentosa,RP)は、網膜光受容体と網膜色素上皮変性によって引き起こされる進行性網膜退行性病変の一種で、臨床的には夜盲症、進行性視野狭窄と視力喪失、網膜色素沈着、ワックス状視神経乳頭萎縮、網膜電図異常を特徴とする遺伝性失明性眼疾患である。RPは様々な様式で遺伝し、常染色体優性遺伝(ADRP)も含まれる。
【0003】
RHO遺伝子は、視覚伝達経路に関与する主要なタンパク質であるロドプシンタンパク質をコードしており、ADRP患者の約30~40%がRHO遺伝子変異を持っている。PRPF31遺伝子は、mRNA前駆体プロセシング因子31の略称で、mRNA前駆体のスプライシングの過程に関与する。中国人のADRP患者の約8~10%はPRPF31遺伝子変異が原因である。
【0004】
従って、RP細胞の正常な遺伝子スプライシングを回復し、それによって細胞機能を回復することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、特定のアミノ酸配列を有する外因性核局在化(NLS)ドメインを含むPRPF31変異体およびその使用を提供するものである。本願に記載のPRPF31変異体は、さらに、(1)核内に局在する、(2)遺伝子のmRNAスプライシングを促進する、(3)誘導されるRPE細胞の貪食機能を改善する、(4)誘導されるRPE細胞の繊毛長を増加させる、および(5)PRPF31遺伝子変異によって引き起こされる疾患を治療する、という性質を含む。また、本願は、前記PRPF31変異体の、PRPF31遺伝子変異によって引き起こされる疾患を治療する医薬品の調製、および、誘導されるRPE細胞の生物学的活性の向上および/またはmRNAのスプライシング効率の向上における使用を提供するものである。
【0006】
一態様において、本願は、SEQ ID NO.3~4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む外因性核局在化(NLS)ドメインまたはそのトランケート体を含むPRPF31変異体を提供するものである。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記PRPF31変異体は、野生型PRPF31のNLSドメインを含まない。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記PRPF31変異体は、NOSICドメインを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記NOSICドメインは、SEQ ID NO.35に示されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記PRPF31変異体は、NOPドメインを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記NOPドメインは、SEQ ID NO.36に示されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記PRPF31変異体は、RHO遺伝子を含む遺伝子のmRNAを切断することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記PRPF31変異体は、ヒトPRPF31に由来する。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記PRPF31変異体は、SEQ ID NO.20~21のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
別の態様において、本願は、本願に記載のPRPF31変異体をコードする核酸分子を提供するものである。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記核酸分子は、SEQ ID NO.28~29のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0017】
別の態様において、本願は、本願に記載の核酸分子を含むベクターを提供するものである。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、ウイルスベクターを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、AAVベクターを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、レンチウイルスベクターを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記AAVベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9および/またはAAV10を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記レンチウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ならびに、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)および/またはビスナ・マエディウイルス(VMV)などの非霊長類レンチウイルスを含む。
【0023】
別の態様において、本願は、本願に記載のPRPF31変異体、本願に記載の核酸分子、および/または本願に記載のベクターの、疾患を治療するための医薬品の調製における使用を提供するものである。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記疾患は、PRPF31遺伝子変異によって引き起こされる疾患を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記疾患は、網膜色素変性症(RP)を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記疾患は、常染色体優性網膜色素変性症(ADRP)を含む。
【0027】
別の態様において、本願は、網膜色素上皮(RPE)細胞の生物学的活性を改善する方法であって、前記RPE細胞に本願に記載のPRPF31変異体、本願に記載の核酸分子、および/または本願に記載のベクターを投与することを含む、網膜色素上皮(RPE)細胞の生物学的活性を改善する方法を提供するものである。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記生物学的活性は、前記RPE細胞の貪食活性および/または前記RPE細胞の繊毛長を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記誘導されたRPE細胞は、多能性幹細胞および/または全能性幹細胞に由来する。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記誘導されたRPE細胞はヒトiPS細胞に由来する。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記PRPF31変異体は、野生型PRPF31のNLSドメインを含まない。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記PRPF31変異体は、SEQ ID NO.20~21のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記投与は、前記PRPF31変異体をコードする核酸分子を含むベクターを投与することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記核酸分子は、SEQ ID NO.28~29のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、ウイルスベクターを含む。
【0036】
別の態様において、本願は、mRNAのスプライシング効率を向上させる方法であって、前記mRNAを含む細胞にSEQ ID NO.3~4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む外因性NLSドメインを含むPRPF31変異体を投与することを含む、mRNAのスプライシング効率を向上させる方法を提供するものである。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記PRPF31変異体は、野生型PRPF31のNLSドメインを含まない。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記PRPF31変異体は、SEQ ID NO.20~21のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記投与は、前記PRPF31変異体をコードする核酸分子を含むベクターを投与することを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記核酸分子は、SEQ ID NO.28~29のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記ベクターは、ウイルスベクターを含む。
【0042】
当業者であれば、以下の詳細な説明から本願の他の態様および利点を容易に理解することができる。以下の詳細な説明において、本願の例示的な実施形態のみが示され、説明される。当業者が理解するように、本願の内容により、当業者は、本願がカバーする本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態に変更を加えることができる。相応的に、本願の図面および説明は例示にすぎず、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本願に係る発明の具体的な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。本願に係る発明の特徴および利点は、以下に詳細に説明する例示的な実施形態および添付の図面を参照することによって、よりよく理解することができる。図面の簡単な説明は以下のとおりである。
図1図1は、蛍光標識を使用して細胞内のヒトPRPF31の発現を検出した主な分布結果を示している。
図2図2は、蛍光標識とDAPI染色を使用して細胞内のヒトPRPF31の発現を検出した主な分布結果を示している。
図3図3は、RHOレポーター遺伝子のmRNAスプライシングに対するヒトPRPF31の効果を示している。
図4図4は、ヒトPRPF31をトランスフェクトした細胞の検証結果である。
図5図5は、蛍光標識を使用して細胞内の本願に記載のPRPF31変異体の発現を検出した主な分布結果を示している。
図6図6は、蛍光標識を使用して細胞内の本願に記載のPRPF31変異体の発現を検出した主な分布結果を示している。
図7図7は、本願に記載のPRPF31変異体をトランスフェクトした細胞の検証結果である。
図8図8は、RHOレポーター遺伝子のmRNAスプライシングに対する本願に記載のPRPF31変異体の効果を示している。
図9図9は、RHOレポーター遺伝子のmRNAに対する本願に記載のPRPF31変異体のスプライシング効率を示している。
図10図10は、ヒトRPE細胞の貪食機能に対する本願に記載のPRPF31変異体の効果を示している。
図11図11は、ヒトRPE細胞の貪食機能に対する本願に記載のPRPF31変異体の効果を示している。
図12図12は、ヒトRPE細胞の貪食機能に対する本願に記載のPRPF31変異体の効果を示している。
図13図13は、ヒトRPE細胞の繊毛長に対する本願に記載のPRPF31変異体の効果を示している。
図14図14は、ヒトIPSCから誘導されたRPE細胞の貪食機能および繊毛長に対する本願に記載のPRPF31変異体の効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、特定の具体例を挙げて本願発明の実施形態について説明するが、本技術に精通した者であれば、本明細書の開示内容から本願発明のその他の利点や効果を容易に理解することができる。
【0045】
用語の定義
本願において、「PRPF31」という用語は、一般に、スプライセオソームのU4/U6.U5 trisnRNP(small nuclear ribonucleoprotein)サブユニットの構成要素であるmRNA前駆体プロセシング因子を指す。PRPF31は核内でのpre-mRNAのスプライシングを担当することができる。PRPF31遺伝子は長さ16kb、14個のエキソンを含み、染色体19q13.4に位置する。PRPF31によってコードされるタンパク質は、全長499アミノ酸、分子量61kDである。PRPF31は、NOSICドメイン、NOPドメイン、およびNLSドメインの3つのドメインを含むことができる。NOSICドメインおよびNOPドメインはRNA結合ドメインと考えられるが、NLSドメインは、pre-mRNAスプライシング機能を完了するように、細胞質内の翻訳されたPRPF31を核に局在させる。NOSICドメインおよびNOPドメインはより保存されている。NOSICドメインはヒトPRPF31のアミノ酸93~144であることができ、NOPドメインはヒトPRPF31のアミノ酸190~334であることができる。PRPF31の欠失は細胞内で異常なmRNAスプライシングを引き起こし、特に光受容細胞および網膜色素上皮細胞(RPE)に深刻な影響を及ぼす。
【0046】
本願において、「変異体」という用語は、一般に、それが由来するポリペプチドまたはタンパク質と比較して、1つまたは複数の長さの変化または配列の変化が異なるポリペプチドまたはタンパク質を指す。ペプチド変異体またはタンパク質変異体が由来するペプチドまたはタンパク質は、親ペプチドまたは親タンパク質(例えば、PRPF31タンパク質)と呼ばれることもある。「変異体」という用語は、親ポリペプチドまたは親タンパク質の「フラグメント」または「誘導体」を含むことができる。一般に、「フラグメント」は親分子よりも長さまたはサイズが小さい場合があり、誘導体は親分子と比較して配列に1つまたは複数の違いを示す場合がある。本願において、前記変異体は、また、翻訳後修飾されたタンパク質(例えば、グリコシル化、ビオチン化、リン酸化、ユビキチン化、パルミトイル化、またはタンパク質分解的に切断されたタンパク質)などの修飾分子を含むこともできるが、これらに限定されない。変異体は、例えば遺伝子技術によって人工的に構築されてもよく、親ポリペプチドまたは親タンパク質は野生型ポリペプチドまたは野生型タンパク質であってもよい。しかしながら、天然に存在する変異体も、本明細書に記載の「変異体」に包含されると理解される。また、本願に記載の変異体は、親分子のホモログ、オルソログもしくはパラログに由来するか、または人工的に構築された変異体に由来することもできるが、その変異体が親分子の少なくとも1つの生物学的活性、すなわち機能的活性を示すことが条件である。本願において、前記変異体は、それが由来する親ポリペプチドまたは親タンパク質とある程度の配列同一性を有することができる。例えば、前記変異体は、その親ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有することができる。例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の同一性を有することができる。
【0047】
本願において、「核局在化ドメイン(NLS)」という用語は、一般に、例えば核輸送を介して、核へのタンパク質の進入を促進するアミノ酸配列を指す。前記核局在化ドメインは、タンパク質もしくはポリヌクレオチドの核への移入または核内でのその保持を媒介するドメインまたは複数のドメインであることができる。前記核局在化ドメインは、当業者に既知なものであることができる。例えば、NLS配列はWO/2001/038547を参照することができる。NLSの代表的な例は、単一成分の核局在シグナル、二成分の核局在シグナル、ならびに、N末端モチーフおよびC末端モチーフを含むが、これらに限定されない。N末端塩基性ドメインは一般にコンセンサス配列K-K/R-X-K/Rに合致しており、もともとSV40ラージT抗原で発見され、単一成分のNLSを表す。N末端塩基性ドメインNLSの非限定的な一例は、PKKKRKVである。二成分の核局在シグナルも知られており、これには約10アミノ酸のギャップによって分離された塩基性アミノ酸の2つのクラスターが含まれる。N末端モチーフおよびC末端モチーフは、例えば、hnRNP Alの酸性M9ドメイン、酵母転写リプレッサーMatα2にける配列KIPIKおよびU snRNPの複合シグナルを含む。これらのNLSのほとんどは、インポーチンβファミリーの特異的受容体によって直接認識される。
【0048】
本願において、「RHO」という用語は、一般に、ロドプシン2(Rhodopsin 2)、Opsin-2、Opsin2、OPN2、CSNBAD1、またはRP4を指す。ロドプシンタンパク質は、桿体外節(Rods Outer Segment,ROS)に位置しており、正常な視覚、特に弱い光の刺激の知覚に必要であり、Rodsは網膜の光受容体細胞における暗所視を司る細胞の一種である。網膜の別のタイプの光受容体細胞は暗所視と色覚を司る錐体細胞(Cones)である。ROSにおいて、ロドプシンは、一般に、ビタミンAの誘導体の一種である11-cisレチナール(11-cis retinal、11cRAL)と結合する。ROSは光子を吸収してロドプシンを活性型ロドプシン(R*)に変え、11cRALをオールトランスレチナール(all-trans retinal、atRAL)に異性化させ、atRALはR*から分離すると、すぐに全トランス型レチノール(all-trans retinol、atROL)に還元され、光受容体間レチノイド結合蛋白(interphotoreceptor retinoid-binding protein、IRBP)はatROLのRPE細胞への移行を担当し、RPE細胞において、atROLはレシチンレチノールアシルトランスフェラーゼ(lecithin retinol acyltransferase、LRAT)によりオールトランスレチニルエステルに変換され、さらに11-シスレチニルエステルに変換された後、加水分解異性化酵素RPE65により11-シスレチノール(11-cis retinol、11cROL)に異性化され、11-シスレチノールはRDHsにより11cRALに酸化され、IRBPと結合した後、光受容細胞に輸送されて再利用される;R*は、下流膜ディスク内のトランスデューシンG(Gt)のαサブユニット上のGDPをGTPに変換し、αサブユニットをβγサブユニットから分離し、環状グアノシン一リン酸ホスホジエステラーゼ6(cGMP-PDE6)を活性化し、cGMPを加水分解し、細胞内のcGMP濃度が低下してOSのcGMP依存性カチオンチャネルが閉じ、光受容細胞内のCa2+濃度が減少し、細胞膜が過分極し、光信号が視覚的な電気信号に変換される;光伝達が終了した後、光受容細胞は一連の化学反応を経て非光状態に戻り、このとき、R*がリン酸化されて阻害タンパク質に結合し、下流のシグナル伝達経路を阻害し、PDE6は不活性状態にあり、同時に、Rods内でcGMPが合成され、cGMP濃度の増加によりカチオンチャネルが開き、Ca2+が流入し、細胞膜が脱分極する。cGMP依存性カチオンチャネルの開閉によって引き起こされるこのような神経インパルスは、光受容細胞のシナプス末端と網膜のあらゆるレベルにおけるニューロンとの間の接続および視神経の大脳皮質の視覚中枢への伝導を介して、視覚を形成する。
【0049】
ヒトRHO遺伝子は染色体3の長腕の22.1(3q22.1)に位置し、分子は染色体3上の塩基対129,528,639~129,535,344に位置する(Homo sapiens,Annotation release、バージョン109.20200228、GRCh38.p13、NCBI)。RHO遺伝子のヌクレオチド配列は、NCBI GenBank Accession No.NG_009115.1を参照することができる。RHO遺伝子は、5つのエキソンを有するものである。表1は、Ensemblデータベース内のRHO遺伝子のエキソン識別子とエキソンの開始/停止部位を示している。
【0050】
【表1】
【0051】
本願において、「核酸分子」という用語は、一般に、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体などの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を持つことができ、既知または未知の任意の機能を実行できる。ポリヌクレオチドの非限定的な例として、遺伝子または遺伝子フラグメントのコード領域または非コード領域、結合解析によって定義される複数の遺伝子座(遺伝子座)、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、短鎖干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、micro-RNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含むことができる。ヌクレオチド構造の修飾が存在する場合、ポリマーの構築前または後にヌクレオチド構造の修飾を行うことができる。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されることができる。ポリヌクレオチドは、標識成分への結合などにより、重合後にさらに修飾することができる。
【0052】
本願において、「ベクター」という用語は、一般に、あるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入し、そのタンパク質を発現させることができる核酸送達媒体を指す。ベクターは、宿主細胞を形質転換、形質導入、またはトランスフェクトすることによって発現させることができ、その結果、ベクターが保有する遺伝物質要素が宿主細胞内で発現される。例えば、ベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージまたはM13ファージなどのファージおよびウイルスベクターなどを含む。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメントおよびレポーター遺伝子など、発現を制御するさまざまな要素を含むことができる。なお、ベクターは複製起点部位を含むこともできる。ベクターは、ウイルス粒子、リポソーム、タンパク質コートなど、細胞への進入を促進する成分を含むが、それだけではない。
【0053】
本願において、「ウイルスベクター」という用語は、一般に、遺伝子送達ベクターとして機能し、ウイルスカプシド内にパッケージされた組換えウイルスゲノムを含む非野生型組換えウイルス粒子を指す。ベクターとして使用される動物ウイルス種は、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、ポリオーマ空胞化ウイルス(例えばSV40)を含むことができる。
【0054】
本願において、「AAV」という用語は、アデノ随伴ウイルスの標準的な略語である。アデノ随伴ウイルスは、細胞内でのみ増殖する小さな一本鎖DNAウイルスであり、共感染するヘルパーウイルスによって一部の機能が提供される。現在、表1に示すように、特徴づけられたAAV血清型は13種類ある。AAVに関する一般的な情報とレビューは、例えば、Carter、1989、Handbook of Parvoviruses、Vol.1、169~228ページ、および、Berns、1990、Virology、1743~1764ページ、Raven Press、(New York)で見つけることができる。しかし、さまざまな血清型は遺伝子レベルでも構造的および機能的に非常に密接に関連していることが知られているため、これらと同じ原理が他のAAV血清型にも適用されることが十分に予想される。例えば、すべてのAAV血清型は、相同なrep遺伝子によって媒介される非常に類似した複製特性を明らかに示し、すべてがAAV6で発現されるものなど、3つの関連するカプシドタンパク質を保持している。関連性の程度はヘテロ二本鎖分析によってさらに実証され、当該ヘテロ二本鎖分析によって、ゲノムの長さに沿った血清型間の広範なクロスハイブリダイゼーションと、「逆方向末端反復配列(ITR)」に対応する末端の類似した自己アニーリングセグメントの存在が明らかになる。同様の感染パターンはまた、各血清型の複製機能が同様の制御下にあることを示している。
【0055】
【表2】
【0056】
本願において、「AAVベクター」という用語は、一般に、AAV末端反復配列(ITR)が隣接する1つ以上の目的のポリヌクレオチド(または導入遺伝子)を含むベクターを指す。このようなAAVベクターは、repおよびcap遺伝子産物をコードおよび発現するベクターでトランスフェクトされた宿主細胞に存在する場合、複製され、感染性ウイルス粒子にパッケージングされる。「AAVビリオン」または「AAVウイルス粒子」または「AAVベクター粒子」という用語は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質およびカプシド化ポリヌクレオチドAAVベクターからなるウイルス粒子を指す。前記粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳類細胞に送達される導入遺伝子などの野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、それは、一般に、「AAVベクター粒子」と呼ばれか、または単に「AAVベクター」と呼ばれる。したがって、AAVベクター粒子の製造には、必然的に、ベクターがAAVベクター粒子内に含まれるようなAAVベクターの製造が含まれる。
【0057】
AAVの「rep」遺伝子および「cap」遺伝子は、それぞれ複製タンパク質およびカプシドタンパク質をコードする遺伝子を指す。AAVのrep遺伝子およびcap遺伝子は、これまでに研究されたすべてのAAV血清型で見出されており、本明細書および引用文献に記載されている。野生型AAVにおいて、rep遺伝子およびcap遺伝子は、一般に、ウイルスゲノム内で互いに隣接しており(すなわち、それらは互いに「共役」して連続または重複する転写単位となっている)、そして、一般にAAV血清型間で保存されている。AAVのrep遺伝子およびcap遺伝子は、個別にまたは集合的に「AAVパッケージング遺伝子」と呼ばれることもある。前記AAVのcap遺伝子は、Capタンパク質をコードし、前記Capタンパク質は、repおよびアデノウイルスヘルパー機能の存在下で、AAVベクターをパッケージングし、標的細胞受容体に結合することができる。いくつかの場合において、AAVのcap遺伝子は、表1に示す血清型などの特定のAAV血清型に由来するカプシドタンパク質をコードする。
【0058】
AAVの異なる血清型は、アミノ酸レベルと核酸レベルの両方で顕著に相同なゲノム配列を持ち、同様の一連の遺伝的機能を提供し、本質的に物理的および機能的に同等のビリオンを生成し、ほぼ同一のメカニズムによって複製および組み立てられる。
【0059】
本願において、「網膜色素変性症(RP)」という用語は、一般に、網膜光受容体の機能異常によって引き起こされる遺伝性の失明性眼底疾患の一種を指し、ほとんどが単一遺伝子の遺伝病である。RPの主な遺伝様式は、常染色体優性遺伝(ADRP)、常染色体劣性遺伝(ARRP)、およびX染色体連鎖遺伝を含む。P11はPRPF31の遺伝子変異によって引き起こされるADRPであり、ADRPにRP11が含まれる確率は約10%である。
【0060】
本願において、「網膜色素上皮(RPE)細胞」という用語は、一般に、網膜の感覚神経のすぐ外側にある色素細胞の層を指す。網膜色素上皮は、高密度に詰まった色素顆粒を含む六角形の細胞の単層で構成される。網膜色素上皮(RPE)は、その下の脈絡膜およびその上の網膜神経細胞と密接に関係しており、その主な機能には、網膜下腔の体液と栄養素を制御して、血液網膜関門として機能すること、成長因子を合成して、局所構造を調整すること、光を吸収して、電気的バランスを調整すること、視覚色素の再生と合成、光受容体外節の貪食と消化、網膜付着の維持、損傷後の再生と修復が含まれる。一般に、RPEは光受容体機能を維持するための重要な組織であり、脈絡膜や網膜の多くの病変にも影響を受けると考えられている。
【0061】
本願において、「網膜色素上皮(RPE)萎縮」という用語は、一般に、細胞死または機能不全として現れる網膜色素上皮(RPE)の変性変化を指す。加齢黄斑変性症または網膜色素変性症(RP)は、網膜色素上皮萎縮を伴うことがよくある。網膜色素変性症(Retinitis Pigmentosa、略してRP)は、網膜色素病変としても知られ、通常、一種の遺伝性眼疾患を指す。遺伝様式には常染色体劣性遺伝、優性遺伝、X染色体連鎖劣性遺伝の3つの様式があり、二重遺伝子遺伝やミトコンドリア遺伝もある。初期症状としては夜盲症や視野狭窄が多く、正面の景色は見えるのに左右のわずかに見えにくくなり、徐々に見えなくなっていく。RPは、単眼性原発性網膜色素変性症、四分円性原発性網膜色素変性症、中心または中心傍原発性網膜色素変性症、無色網膜色素変性症、白点網膜変性症、結晶性網膜変性症、静脈脂肪網膜色素変性症、細動脈色素上皮温存網膜色素変性症、Leber先天性黒内障およびその他の症候群における網膜色素変性症を含む。
【0062】
本願において、「医薬組成物」という用語は、一般に、患者、すなわちヒト患者への投与に適した組成物を指す。例えば、本願に記載の医薬組成物は、本願に記載の核酸分子、本願に記載のベクターおよび/または本願に記載の細胞、および任意の薬学的に許容されるアジュバントを含むことができる。また、前記医薬組成物は、1つ以上の適切な(薬学的に有効な)担体、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤および/または防腐剤を含むことができる。組成物の許容可能な成分は、使用される用量および濃度において受容者に対して無毒であり得る。本願の医薬組成物は、液体、冷凍および凍結乾燥組成物を含むが、これらに限定されない。
【0063】
本願において、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は互換的に使用され、一般に任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。当該ポリマーは直鎖状または分岐鎖状であり、修飾アミノ酸を含む場合もあり、非アミノ酸で中断される場合もある。これらの用語は、修飾されたアミノ酸ポリマーも含む。これらの修飾は、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化(lipidation)、アセチル化、リン酸化、またはその他の操作(標識成分への結合など)を含むことができる。「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDとL光学異性体を含む天然および/または非天然、或いは合成アミノ酸、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣物を含む。
【0064】
本願において、「多能性幹細胞」という用語は、一般に、最終的に完全な生物体に見られる細胞および組織を形成する能力はあるが、完全な生物体を形成することはできない幹細胞を指す。例えば、前記多能性幹細胞は、未分化状態を維持し、正常な核型(染色体)を示しながら、インビトロで長期間または実質的に無限に増殖することができる。前記多能性幹細胞は、適切な条件下で3つの胚葉のすべて(外胚葉、中胚葉、内胚葉)に分化する能力を有することができる。例えば、前記多能性幹細胞は、初期胚から単離されたES細胞および/または胎児期の始原生殖細胞から単離された等機能性EG細胞を含むことができる。
【0065】
本願において、「全能性幹細胞」という用語は、一般に、完全な分化多用途性を有する幹細胞、すなわち、任意の胎児または成体の哺乳類の体の複数の細胞型に成長する能力を有する幹細胞を指す。例えば、全能性幹細胞は、内胚葉、中胚葉、外胚葉の3つの胚葉に分化する可能性があり、その結果、あらゆる胎児または成人の細胞型を生じることができる。前記全能性幹細胞は、胚性幹(ES)細胞、胚性生殖(EG)細胞、および胚性癌(EC)細胞を含むことができる。
【0066】
本願において、「および/または」という用語は、オプションの一方または両方を意味すると理解されるべきである。
【0067】
本願において、「含む」または「含有」という用語は、一般に、明示的に指定された特徴を含むことを意味するが、他の要素を排除することを意味するものではない。
【0068】
本願において、「約」といる用語は、一般に、特定の値の上下0.5%~10%の範囲内の変動、例えば、特定の値の上下0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%の範囲内の変動を指す。
発明の詳細な説明
【0069】
一態様において、本願は、SEQ ID NO.3~4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む外因性核局在化(NLS)ドメインを含むPRPF31変異体を提供するものである。
【0070】
本願において、前記PRPF31変異体は、野生型PRPF31のNLSドメインを含まないことができる。例えば、前記PRPF31変異体は、完全な野生型PRPF31のNLSドメインを含まないことができる。いくつかの場合において、前記PRPF31変異体は、野生型PRPF31のNLSドメインの生物学的機能(例えば、外因性核局在化の機能)を有さないことができる。いくつかの場合において、前記PRPF31変異体では、前記野生型PRPF31のNLSドメインが置換されるか、または少なくとも一部が前記外因性NLSドメインで置換される。例えば、前記PRPF31変異体は、完全な前記外因性NLSドメインを含むことができる。
【0071】
本願において、前記PRPF31変異体は、NOSICドメインを含むことができる。例えば、前記NOSICドメインは、PRPF31変異体のアミノ酸配列のアミノ酸93~144を含むことができる。例えば、前記NOSICドメインは、SEQ ID NO.35に示されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0072】
本願において、前記PRPF31変異体は、NOPドメインを含むことができる。例えば、前記NOPドメインは、PRPF31変異体のアミノ酸配列のアミノ酸190~334を含むことができる。例えば、前記NOPドメインは、SEQ ID NO.36に示されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0073】
例えば、前記PRPF31変異体は、前記外因性NLSドメイン、前記NOSICドメイン、および前記NOPドメインを含むことができる。
【0074】
本願において、前記PRPF31変異体は、RHO遺伝子を含むことができる遺伝子のmRNAを切断することができる。
【0075】
本願において、前記PRPF31変異体は、遺伝子のmRNAを切断することができ、例えば、前記PRPF31変異体は、mRNAのスプライシングに関与し得るmRNA前駆体スプライシング因子遺伝子であることができる。前記PRPF31変異体は、RHO遺伝子のmRNA前駆体(pre-mRNA)のスプライシングの過程に影響を与えることができる。前記PRPF31変異体は、前記RHP遺伝子と相互作用して網膜色素変性症(RP)に影響を与えることができる。本願において、前記RHO遺伝子は野生型RHO遺伝子を含むことができる。前記RHO遺伝子は、任意の変異のRHO遺伝子を含むことができる。例えば、前記RHO minigeneレポーター遺伝子は、SEQ ID NO.33に示されるヌクレオチド配列を含むことができる。
【0076】
本願において、前記PRPF31変異体は、ヒトPRPF31に由来する。例えば、前記PRPF31変異体は、ヒトPRPF31に加えて前記外因性NLSドメインを含むPRPF31変異体であってもよい。
【0077】
本願において、前記PRPF31変異体は、SEQ ID NO.20~21のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0078】
本願において、前記核酸分子は、本願に記載の、SEQ ID NO.3~4のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む外因性核局在化(NLS)ドメインをコードすることができる。
【0079】
例えば、前記核酸分子は、SEQ ID NO.10~11のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含むことができる。
【0080】
別の態様において、本願は、本願に記載のPRPF31変異体をコードする核酸分子を提供するものである。
【0081】
本願において、前記核酸分子は、SEQ ID NO.28~29のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含むことができる。
【0082】
別の態様において、本願は、本願に記載の核酸分子を含むベクターを提供するものである。
【0083】
本願において、前記ベクターはプラスミド、例えば、直鎖プラスミドを含むことができる。
【0084】
本願において、前記ベクターは、ウイルスベクターを含むことができる。前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルス関連ウイルスベクター、および/または単純ヘルペスウイルスベクターを含むことができる。
【0085】
例えば、前記レンチウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ならびに、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)および/またはビスナ・マエディウイルス(VMV)などの非霊長類レンチウイルスを含むことができる。
【0086】
本願において、前記ベクターは、AAVベクターを含むことができる。
【0087】
本願において、前記AAVベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9および/またはAAV10を含むことができる。
【0088】
別の態様において、本願は、本願に記載のPRPF31変異体、本願に記載の核酸分子、および/または本願に記載のベクターの、疾患を治療するための医薬品の調製における使用を提供するものである。
【0089】
本願は、疾患を治療する、本願に記載のPRPF31変異体、本願に記載の核酸分子、および/または本願に記載のベクターを提供するものである。
【0090】
本願は、本願に記載のPRPF31変異体、本願に記載の核酸分子、および/または本願に記載のベクターを投与することを含む、疾患を治療する方法を提供するものである。
【0091】
本願において、前記疾患は、PRPF31遺伝子変異によって引き起こされる疾患を含むことができる。いくつかの場合において、前記疾患は、網膜色素上皮(RPE)の機能的欠陥に関連している可能性がある。いくつかの場合において、前記疾患は、網膜光受容細胞の機能的欠陥に関連している可能性がある。
【0092】
本願において、前記疾患は、網膜色素変性症(RP)を含むことができる。本願において、前記疾患は、遺伝性網膜変性症(IRD)を含むことができる。
【0093】
本願において、前記疾患は、常染色体優性網膜色素変性症(ADRP)を含むことができる。
【0094】
別の態様において、本願は、網膜色素上皮(RPE)細胞の生物学的活性を改善する方法であって、前記RPE細胞に本願に記載のPRPF31変異体、本願に記載の核酸分子、および/または本願に記載のベクターを投与することを含む、網膜色素上皮(RPE)細胞の生物学的活性を改善する方法を提供するものである。
【0095】
本願において、前記生物学的活性は、前記RPE細胞の貪食活性および/または前記RPE細胞の繊毛長を含むことができる。例えば、前記生物学的活性は、栄養素および代謝物質の選択的輸送の維持、さまざまな成長因子の分泌の発現し、視循環の関与、血液網膜関門の維持、および/または、光受容体細胞から剥離した外節円盤膜の貪食を含むことができる。
【0096】
本願において、前記貪食活性は、消化性光受容体外節から剥離した円盤膜の貪食を含むことができる。また、前記貪食活性は、非特異的貪食を含むことができる。例えば、前記貪食活性は、ポリエチレン微小球、メラニン液滴、またはトリパンブルー色素などの、特異的識別部位を持たない物質の貪食を含むことができる。
【0097】
本願において、前記RPE細胞の繊毛は、RPE細胞上の一次繊毛(RPE、これは、RPE細胞上の小さな管状突起であることができる)であることができる。前記RPE細胞の繊毛は光伝達カスケードに参加することができる。
【0098】
本願において、前記誘導されたRPE細胞は、多能性幹細胞および/または全能性幹細胞に由来することができる。
【0099】
本願において、前記多能性幹細胞は、最終的に完全な生物体に見られる細胞および組織を形成する能力はあるが、完全な生物体を形成することはできない幹細胞を含むことができる。例えば、前記多能性幹細胞は、未分化状態を維持し、正常な核型(染色体)を示しながら、インビトロで長期間または実質的に無限に増殖することができる。前記多能性幹細胞は、適切な条件下で3つの胚葉のすべて(外胚葉、中胚葉、内胚葉)に分化する能力を有することができる。例えば、前記多能性幹細胞は、間葉系幹細胞を含むことができる。例えば、前記多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞、すなわちiPS細胞を含むことができる。
【0100】
本願において、前記全能性幹細胞は、完全な生物体に見られるすべての細胞および組織を形成できる細胞を含むことができる。例えば、前記全能性幹細胞は、完全な生物体を形成することができる。
【0101】
例えば、前記誘導されたRPE細胞はヒトiPS細胞に由来することができる。
【0102】
本願において、前記PRPF31変異体は、野生型PRPF31のNLSドメインを含まないことができる。
【0103】
本願において、前記PRPF31変異体は、SEQ ID NO.20~21のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0104】
本願において、前記投与は、前記PRPF31変異体をコードする核酸分子を含むベクターを投与することを含むことができる。
【0105】
本願において、前記核酸分子は、SEQ ID NO.28~29のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含むことができる。
【0106】
本願において、前記ベクターは、ウイルスベクターを含むことができる。
【0107】
別の態様において、本願は、mRNAのスプライシング効率を向上させる方法であって、前記mRNAを含む細胞にSEQ ID NO.20~21のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む外因性NLSドメインを含むPRPF31変異体を投与することを含む、mRNAのスプライシング効率を向上させる方法を提供するものである。
【0108】
本願において、前記PRPF31変異体は、野生型PRPF31のNLSドメインを含まないことができる。
【0109】
本願において、前記PRPF31変異体は、SEQ ID NO.20~21のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0110】
本願において、前記投与は、前記PRPF31変異体をコードする核酸分子を含むベクターを投与することを含むことができる。
【0111】
本願において、前記核酸分子は、SEQ ID NO.28~29のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含むことができる。
【0112】
本願において、前記ベクターは、ウイルスベクターを含むことができる。
【0113】
いかなる理論によっても制限されることを意図するものではないが、以下の実施例は、本願のPRPF31変異体、調製方法および使用などを例示することのみを目的とし、本願発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0114】
実施例1 Mcherry-PRPF31の核への局在
PRPF31の局在検出を容易にするために、ヒトPRPF31 cDNA(SQE ID NO.25)をベクターpMcherry-N1(Clontechから購入)にクローニングして、ベクターpMcherry-PRPF31を得た。そのうち、ベクターpMcherry-N1は、トレーサーとして使用できる赤色蛍光タンパク質であるmcherryを発現することができる。mcherryをコードする核酸分子のヌクレオチド配列をSEQ ID NO.34に示す。
【0115】
ベクターpMcherry-PRPF31(即ち、mcherry-PRPF31)および対照であるベクターpMcherry-N1(即ち、mcherry)をそれぞれHEK293細胞にトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後と48時間後にmCherryの赤色蛍光発現を観察した。結果を図1に示す。
【0116】
DAPIで染色し、mCherryの赤色蛍光発現の位置を観察し、トランスフェクションから48時間後の状況を確認した。図1図2の結果は、ベクターpMcherry-PRPF31によって発現された赤色蛍光タンパク質は主に核内で発現され、DAPIと良好な共局在性を有する一方、対照であるベクターpMcherry-N1によって発現された赤色蛍光タンパク質は核や細胞質を含む細胞全体で発現することを示している。
【0117】
実施例2 Mcherry-PRPF31のRHOレポーター遺伝子のmRNAスプライシングに対する促進
PRPF31のpre-mRNAスプライシング機能を検出するために、RHOのminigeneレポーター遺伝子を構築した(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.33に示される)。
【0118】
RHO遺伝子のエキソン3~エキソン4の領域は、HEK293細胞のゲノムからクローンされた。当該レポーター遺伝子が正常に切断された場合、E3とE4の間のイントロンは切除され、229bpのmRNAフラグメントが得られ、逆に、当該レポーター遺伝子の正常なスプライシングが阻害された場合、E3とE4の間のイントロンは保持され、345bpのmRNAフラグメントが得られる。PRPF31の機能は、345bpフラグメントと225bpフラグメントとの比を比較することによって特徴付けることができる。
【0119】
RHO minigeneレポーター遺伝子をベクターpcDNA4(Thermo Fisherから購入)にクローニングして、ベクターp4-RHOを得た。
【0120】
結果を図3に示す。ベクターp4-RHOと対照であるベクターpMcherry-N1を同時トランスフェクションした場合(即ち、mcherry)、345bp/225bp=7.3であった。つまり、mRNAのほとんどはイントロンを含む正常に切断されなかったmRNAであった。それに対し、ベクターp4-RHOとベクターpMcherry-PRPF31を同時トランスフェクションした場合(即ち、m31)、RHO遺伝子とMcherry-PRPF31の共発現により、345bp/225bp=1.9であった。切断比がほぼ4倍増加することがわかる。これは、PRPF31の存在がRHOのminigene遺伝子のmRNAスプライシングを促進できることを示している。
【0121】
図4は、ベクターpMcherry-PRPF31がMcherry-PRPF31融合タンパク質を正常に発現できることを検証している。
【0122】
実施例3 異なるNLS配列がPRPF31の局在に及ぼす影響の検出
NLSがPRPF31の機能に影響を与えるかどうかを研究するために、PRPF31タンパク質の核局在化シグナルを置換することができ、即ち、PRPF31タンパク質の核局在化配列(そのアミノ酸配列はSQE ID NO.15に示される)をそれぞれSV40(そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示される)、A1(そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.2に示される)、D(そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.4に示される)、M(そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.5に示される)、NP(そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.6に示される)、SRY(そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.7に示される)、または、TAT(そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.3に示される)に置換した。
【0123】
そのうち、これらの置換された核局在化配列をコードするヌクレオチド配列は、それぞれ以下のように示される:SV40(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.8に示される)、A1(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.9に示される)、D(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.11に示される)、M(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.12に示される)、NP(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.13に示される)、SRY(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.14に示される)、または、TAT(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.10に示される)。
【0124】
前記置換されたPRPF31変異体をコードする核酸分子を、それぞれ実施例1に記載の手順に従って、ベクターpMcherry-N1にクローニングして、それぞれ、ベクターpMcherry-SV40(SV40と略すこともできる)、ベクターpMcherry-A1(A1と略すこともできる)、ベクターpMcherry-D(Dと略すこともできる)、ベクターpMcherry-M(Mと略すこともできる)、ベクターpMcherry-NP(NPと略すこともできる)、ベクターpMcherry-SRY(SRYと略すこともできる)、ベクターpMcherry-TAT(TATと略すこともできる)を得た。
【0125】
そして、実施例1に記載の手順に従って、上記で検出されたベクターに含まれる核酸分子の細胞内での発現分布を検出した。結果を図5図6に示す。そのうち、左の列は赤色蛍光の発現を示しており、右の列は赤色蛍光と明視野が重ね合わせした場合xxを示している。
【0126】
実施例4 異なるNLS配列がRHOレポーター遺伝子のmRNAスプライシングに及ぼす影響の検出
実施例2に記載の方法に従って、RHO minigeneレポーター遺伝子(SQE ID NO33)を含むベクターp4-RHOを、実施例3で調製したベクターpMcherry-SV40(SV40と略すこともできる)、ベクターpMcherry-A1(A1と略すこともできる)、ベクターpMcherry-D(Dと略すこともできる)、ベクターpMcherry-M(Mと略すこともできる)、ベクターpMcherry-NP(NPと略すこともできる)、ベクターpMcherry-SRY(SRYと略すこともできる)、ベクターpMcherry-TAT(TATと略すこともできる)とそれぞれ細胞に同時トランスフェクトし、または、ベクターp4-RHOを、実施例1で調製した対照であるベクターpMcherry-N1(即ち、mcherry)またはベクターpMcherry-PRPF31(即ち、mcherry-PRPF31)とそれぞれ細胞に同時トランスフェクトし、プラスミドトランスフェクションを行わない細胞(mock)xxを空白対照として使用した。
【0127】
図7は、ベクターSV40、ベクターA1、ベクターD、ベクターM、ベクターNP、ベクターSRY、およびベクターTATが、いずれも、対応するMcerry-PRPF31融合タンパク質変異体をうまく発現させることができることを検証している。
【0128】
ベクターSV40、ベクターA1、ベクターD、ベクターM、ベクターNP、ベクターSRY、およびベクターTATがRHOレポーター遺伝子のmRNAスプライシングに及ぼす影響の結果を図8図9に示す。図8図9の結果は、異なるNLS配列を有するPRPF31変異体がRHOレポーター遺伝子のmRNAに対して異なるスプライシング効率を有することを示している。そのうち、NLS配列が配列DまたはTATであるPRPF31変異体はレポーター遺伝子のmRNAに対してスプライシング効率が高く、NLS配列が配列DであるPRPF31変異体はPRPF31よりもスプライシング効率が若干高い。
【0129】
そして、NLS配列がその他の配列であるPRPF31変異体のスプライシング効率は、PRPF31のスプライシング効率よりわずかに低かった。
【0130】
実施例5 ヒトIPSCから誘導されたRPE細胞の貪食機能に対するPRPF31またはその変異体の促進
実施例1で調製したベクターpMcherry-PRPF31、実施例3で調製したベクターD、および、対照であるベクターpMcherry-N1に基づいて、Mcherry-PRPF31をコードする核酸分子(ここで、PRPF31ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.25に示される)、Mcherry-PRPF31変異体(ここで、NLS配列は配列Dであり、当該変異体のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.29に示される)をコードする核酸分子、および、Mcherryをコードする核酸分子(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.34に示される)を得た。
【0131】
前記核酸分子を、それぞれ、ウイルス発現ベクターpFG12(Addgene,#14884)にクローニングした。293T細胞において、3種類のプラスミドがパッケージレンチウイルスを同時トランスフェクトし、濃縮後、ヒトIPSCから誘導されたRPE細胞を感染した。感染の8日後、FITCと結合したラットPOSを添加し、RPEによるラットPOSの貪食を観察した。
【0132】
結果を図10図12に示す。図10図12の結果は、PRPF31またはそのNLS変異体がいずれもヒトIPSCから誘導されたRPE細胞の貪食機能を促進することができることを示している。
【0133】
実施例6 ヒトIPSCから誘導されたRPE細胞の繊毛長に対するPRPF31またはその変異体の促進
実施例1で調製したベクターpMcherry-PRPF31、実施例3で調製したベクターD、および、対照であるベクターpMcherry-N1に基づいて、Mcherry-PRPF31をコードする核酸分子(ここで、PRPF31ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.25に示される)、Mcherry-PRPF31変異体(ここで、NLS配列は配列Dであり、当該変異体のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.29に示される)をコードする核酸分子、および、Mcherryをコードする核酸分子(そのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.34に示される)を得た。
【0134】
前記核酸分子を、それぞれ、ウイルス発現ベクターpFG12(Addgene,#14884)にクローニングした。293T細胞において、3種類のプラスミドがパッケージレンチウイルスを同時トランスフェクトし、濃縮後、患者IPSCから誘導されたRPE細胞を感染した。
【0135】
感染の8日後、細胞を固定し、anti-ARL13B抗体(Proteintech)を使用して免疫染色した。図13の結果は、PRPF31またはそのNLS変異体がいずれも患者IPSCから誘導されたRPE細胞の繊毛長を促進することができることを示している。
【0136】
実施例7 ヒトIPSCから誘導されたRPE細胞の貪食機能および繊毛長に対するPRPF31またはその変異体を発現するAAVの促進
PRPF31のCDS、または、変異体DのCDS部分をpAV-CAG発現ベクターにクローニングし、293T細胞において、3種類のプラスミドがパッケージ組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を同時トランスフェクトし、濃縮後、患者IPSCから誘導されたRPE細胞を感染した。
【0137】
感染の21日後、AAVによって感染したiPSC-RPE細胞の一部がFITCと結合したラットPOS(自家製)を添加し、RPEによるラットPOSの貪食を観察した。AAVによって感染したiPSC-RPE細胞の別の部分を固定し、anti-ARL13B抗体(Proteintech)を使用して免疫染色した。図14の結果は、PRPF31またはその変異体を発現するAAVがいずれもヒトIPSCから誘導されたRPE細胞の貪食機能を促進することができ、そして、患者IPSCから誘導されたRPE細胞の繊毛長を促進することができることを示している。
【0138】
前述の詳細な説明は、説明および例として提供されたものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。本願に現在列挙された実施形態の複数の変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に保持される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図14
【配列表】
2024521975000001.app
【国際調査報告】