(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ヒュームドシリカの製造のためのプラズマアークプロセスおよび装置
(51)【国際特許分類】
C01B 33/12 20060101AFI20240528BHJP
H05H 1/42 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C01B33/12 Z
H05H1/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514595
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 CA2022050770
(87)【国際公開番号】W WO2022241545
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523432900
【氏名又は名称】エイチピーキュ―・シリカ・ポルヴェール・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アリ・シャーヴェルディ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ルネ・ギャニオン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キャラバン
【テーマコード(参考)】
2G084
4G072
【Fターム(参考)】
2G084AA15
2G084BB06
2G084CC23
2G084DD17
2G084DD22
2G084DD25
2G084DD63
2G084FF32
2G084GG02
2G084GG06
4G072AA25
4G072BB05
4G072GG01
4G072HH14
4G072RR05
4G072RR11
4G072RR13
4G072RR25
4G072UU12
(57)【要約】
シリカからヒュームドシリカを製造するための装置が説明され、この装置では、プラズマアーク反応器が、反応器に収容された溶融シリカへ延在する少なくとも1つの上部電極と、溶融シリカの下に設けられた導電板と、下部アノードとを含む。プラズマアークが生成されるように適合され、ここで、プラズマアークは、電極の先端において提供され、かつ、SiOを形成するために溶融シリカに直接移行されるように適合される。反応器に注入される水素および酸素含有ガスなどの急冷システムも設けられる。急冷システムは、SiO2をナノサイズのアモルファス粒子に再形成するように適合され、ヒュームドシリカの形態のアモルファスSiO2ナノ粒子が反応器から出ることを可能にするための反応器出口が設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒュームドシリカを製造するためのプラズマアークプロセスであって、
- 破砕石英などのシリカをプラズマアーク反応器内に供給するステップと、
- 供給されたシリカに添加物を追加して、シリカ溶融物の導電性を高め、ならびに/または前記シリカの溶融温度を下げ、ならびに/またはヒュームドシリカの製造速度および/もしくはその品質を向上させるステップと、
- 前記反応器内で、少なくとも1つの上部電極の先端においてプラズマアークを生成するステップと、
- 前記上部電極を通してガスを注入して、
シリカの気化エネルギーを減少させることにより、
アーク電力を増大させてシリカ気化速度を高めることにより、
蒸気などの注入ガスのプラズマアーク加熱を介してH、O、およびOHなどの反応種を導入してヒュームドシリカの形態のアモルファスナノサイズシリカ粒子の界面化学構造および特性を強化することにより、
ヒュームドシリカの製造を増進するステップと、
- 前記反応器に収容された溶融シリカに前記プラズマアークを直接移行させ、シリカを気化させてSiOを形成するステップと、
- 前記SiOを急冷してSiO
2をアモルファスナノ粒子として再形成するステップと、
- ヒュームドシリカの形態の前記アモルファスSiO
2ナノ粒子を前記反応器から取り出すステップと、
を含む、プラズマアークプロセス。
【請求項2】
ヒュームドシリカを製造するための装置であって、プラズマアークを生成するように適合された反応器と、前記反応器に収容された溶融シリカへ延在する少なくとも1つの上部電極と、前記溶融シリカの下に設けられた導電板と、下部アノードと、を備え、前記電極の先端において提供されるプラズマアークが、SiOを形成するために前記溶融シリカに直接移行されるように適合され、前記装置がまた、SiO
2をナノサイズのアモルファス粒子に再形成するように適合された、前記反応器内に注入される水素および酸素含有ガスなどの急冷システムと、ヒュームドシリカが前記反応器から出ることを可能にするための出口と、を備える、装置。
【請求項3】
前記反応器を通って流れる電流の経路が、前記電極から始まり、前記電極と前記溶融シリカとの間に前記プラズマアークを形成し、前記導電性溶融シリカを通って前記導電板へ流下して、前記下部アノードを通って流れる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記下部アノードに冷却フィンが設けられ、前記冷却フィンを冷却するための送風機が設けられる、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記急冷システムが、少なくとも1つのガス注入ポートを含む、請求項2から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
高温ガスおよびヒュームドシリカ粒子の流れが前記出口を通って前記反応器から出るときに、より大きなサイズのヒュームドシリカ凝集体を集めるためのサイクロンが設けられる、請求項2から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記高温ガスの流れを冷却するためにガス/液体冷却器が前記サイクロンの下流に設けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
より微細な前記ヒュームドシリカ粒子の大部分を前記ガス流から分離するためのバグハウス型フィルタが前記ガス/液体冷却器の下流に設けられる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ガスをさらに濾過してヒュームドシリカのトレースを除去するために微粒子フィルタが前記バグハウス型フィルタの下流に設けられる、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記反応器から前記ガスを引き出して準大気圧を提供するために誘引通風機が前記微粒子フィルタの下流に設けられる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
ヒュームドシリカを製造するためのプラズマアークプロセスであって、
- 破砕石英などのシリカをプラズマアーク反応器内に供給するステップと、
- 前記反応器内で、少なくとも1つの上部電極の先端においてプラズマアークを生成するステップと、
- 前記反応器に収容された溶融シリカに前記プラズマアークを直接移行させ、シリカを気化させてSiOを形成するステップと、
- 前記SiOを急冷してSiO
2をアモルファスナノ粒子として再形成するステップと、
- ヒュームドシリカの形態の前記アモルファスSiO
2ナノ粒子を前記反応器から取り出すステップと、
を含む、プラズマアークプロセス。
【請求項12】
従来のプロセスよりも低いエネルギー要求および低いカーボンフットプリントでヒュームドシリカを連続的に製造するためのプラズマプロセス。
【請求項13】
シリカを溶融させ、気化させ、分解し、続いて前記気相を急冷してヒュームドシリカを1つのステップにおいて形成しかつ官能基化するための装置。
【請求項14】
シリカをヒュームドシリカに直接変換するためのプラズマアークプロセス。
【請求項15】
実質的に廃棄物を出さず、かつ、いかなる有害廃棄物も生成しない、ヒュームドシリカを作るためのプラズマアークプロセス。
【請求項16】
いかなる還元剤も伴わずシリカを一酸化シリコンに熱的に分解するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2021年5月15日に出願した係属中の米国仮出願第63/189,069号の優先権を主張するものである。
【0002】
本主題は、ヒュームドシリカの製造に関し、より詳細には、プラズマアークによりヒュームドシリカを製造することに関する。
【背景技術】
【0003】
不活性かつ無害な物質であるヒュームドシリカは、様々な産業用途において使用される一般的な増粘剤である。ヒュームドシリカは、それを塗料、食品、化粧品、および触媒を含む様々な製品のための有益な原料とする高表面積および低嵩密度を有し、ほとんどの場合、増粘剤または乾燥剤として使用される。少量のヒュームドシリカ(1~5wt.%)が、塗料の粘度などの液体の流体力学的特性に対する大きな影響を有し得る。ヒュームドシリカはまた、バルク材料において軽量の研磨剤および自由流動剤として使用される。
【0004】
ヒュームドシリカは、長い3D鎖のナノサイズシリカ分子から構成される。これらの鎖の錯体形成は、低嵩密度、非常に大きな比表面積(+50m2/g)、および強力な増粘作用を有する製品につながる。
【0005】
ヒュームドシリカは、慣例的に火炎加水分解によって製造され、また、ヒュームドシリカは、以下の通り、シリコン製造の複雑なプロセスの製品である。石英の形態のシリカが鉱山から取り出され、その石英は、特定のサイズ範囲に破砕され、次いで、炭素源の存在下で、また、フェロシリコンの場合には鉄の存在下で、アーク炉においてシリコンまたはフェロシリコンに還元されて、大量のエネルギーを消費し、大量のCO2排出量をもたらし、かつ、シリカの別の形態であるシリカヒュームおよび鉱滓などの固体副生成物を生じさせる。次いで、シリコンは、別の施設に、しばしば海外に輸送されて、その施設においてHClガスおよびCl2ガスを使用してSiCl4に変換される。次いで、SiCl4は、水素および酸素を使用する火炎加水分解プロセスにおいて燃焼される。結果として得られる製品は、その物理的モルフォロジーおよび構造、ならびにその表面化学構造が異なる、出発物質とは異なるタイプのシリカ(SiO2)である。全体的なプロセスは、多ステップ式であり、かつ、汚染度が高く、温室効果ガス(GHG)および酸性ガスの両方を排出する。
【0006】
完全な製品ライフサイクルを考慮すると、ヒュームドシリカを作る従来のプロセスは、製品1kg当たり16.4kg CO2eqの高いカーボンフットプリントを有する(参考文献1)。さらに、各ステップにおけるプロセスの変換収率は、100%よりも低く、例えば、最良の産業的実施において、シリコン製造におけるシリコンの変換収率は80%に過ぎず、それにより、シリコンの約20%がシリカヒュームの形態で失われて、材料の損失をもたらす。
【0007】
したがって、GHGを含む汚染物質の排出量をより少なくし、かつ、より低コストで、単一のステップにおいて二酸化シリコンをヒュームドシリカに直接変換することが望ましいはずである。これは、高温でのSiO2のSiOへの直接気化および分解、ならびにSiOのSiO2への再酸化によって達成され得る。このプロセスにおいて必要とされる高温(+1,700℃)のため、バーナによる燃焼炎などの従来の加熱法は、このプロセスに適応しない。従来の電気加熱法(例えば、抵抗加熱素子)もまた、プロセスに必要とされる高温に達することができないため、また、素子がヒュームによって被覆されることにより素子の能率が影響されるため、このプロセスに適応しない。プロセスによって必要とされる高温を達成する1つの方法は、プラズマアーク反応器を使用することである。プラズマアークは、シリカの熱分解温度を超える温度に達することができ、それにより、プロセスの要件が満たされる。プラズマアークはまた、ヒュームドシリカ製造プロセス中にファウリング(fouling)または能率低下にさらされない。さらに、プラズマアークプロセスは、大いに拡張性がある。
【0008】
いくつかの大学によって行われた研究が、移行式アークプラズマトーチ技術の使用に基づくヒュームドシリカ製造の最新技術につながった。
【0009】
Addona(M.Eng. Thesis、Addona、1993、McGill University、Montreal、Canada)は、移行式DCアーク水冷プラズマトーチを使用する実験室規模のプラズマプロセスにおいてヒュームドシリカを製造した。この計画は、様々な急冷条件がヒュームドシリカの特性にどのように影響を及ぼしたかを研究した。ヒュームドシリカは、プラズマプロセスからの放射エネルギーを使用して首尾良く製造された。高い急冷前温度、高い急冷速度、および低い急冷前過飽和比から、高表面積の粉末が得られた。
【0010】
Addona(Ph.D. Thesis、Addona、1998、McGill University、Montreal、Canada)は、移行式DCアーク水冷プラズマトーチを使用するプロセスのエネルギー効率を大きく向上させるために、プラズマアークを溶融シリカに移行させることによるヒュームドシリカ製造のための新たな技法を調査した。成功したアーク移行は、特許:Method of Forming an Oxide Ceramic Electrode in a Transferred Plasma Arc Reactor(2003年4月1日に交付されたカナダ国特許第2,212,471号、および、2000年5月9日に交付された米国特許第6,060,680号)に結びついた。この研究では、製造されたヒュームドシリカは、他に負けない表面積を有したが、増粘性能が不足していた。
【0011】
Pristavita(M.Eng. Thesis、Pristavita、2006、McGill University、Montreal、Canada)は、ヒュームドシリカの流体力学的特性に対する凝集の影響を調べた。凝集は流体力学的特性を強化せず、増粘の不足は製品表面上の遊離ヒドロキシル基の欠如に起因するものであったという結論が下された。急冷条件が試験されて、全体的な品質の高さと260m2/gに達する他に負けない表面積とを有する製品をもたらした。
【0012】
上述の参照文献において説明されているようなヒュームドシリカの製造のための移行式アークプラズマトーチの使用は、いくつかの欠点、すなわち、エネルギーのかなりの部分がトーチ水冷回路において散逸して失われることによる比較的劣ったトーチの熱効率に起因する高い運用コスト、低い拡張可能性、および、水がシリカの溶融バスと反応することに起因する破局的な蒸気爆発につながり得る反応器内への水漏れの危険性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】カナダ国特許発明第2212471号明細書
【特許文献2】米国特許第6060680号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】M.Eng. Thesis、Addona、1993、McGill University、Montreal、Canada
【非特許文献2】Ph.D. Thesis、Addona、1998、McGill University、Montreal、Canada
【非特許文献3】M.Eng. Thesis、Pristavita、2006、McGill University、Montreal、Canada
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、高品質のヒュームドシリカを1つのステップにおいて製造することができる新たなプロセスおよび装置を提供することが望ましいはずである。
【0016】
したがって、高品質のヒュームドシリカを製造することができる新規のプロセスおよび装置を提供することが望ましいはずである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本明細書において説明される実施形態は、1つの態様において、従来のプロセスよりも低いエネルギー要求および低いカーボンフットプリントでヒュームドシリカを連続的に製造するためのプラズマプロセスを提供する。
【0018】
また、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、シリカを溶融させ、気化させ、分解し、続いて気相を急冷してヒュームドシリカを1つのステップにおいて形成しかつ官能基化するための装置を提供する。
【0019】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、シリカをヒュームドシリカに直接変換するためのプラズマアークプロセスを提供する。
【0020】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、実質的に廃棄物を出さず、かつ、いかなる有害廃棄物も生成しない、ヒュームドシリカを作るためのプラズマアークプロセスを提供する。
【0021】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、いかなる還元剤も伴わずシリカを一酸化シリコンに熱的に分解するための装置を提供する。
【0022】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、
破砕石英などのシリカをプラズマアーク反応器内に供給するステップと、
反応器内で、少なくとも1つの上部電極の先端においてプラズマアークを生成するステップと、
反応器に収容された溶融シリカにプラズマアークを直接移行させてSiOを形成するステップと、
SiOを急冷してSiO2をナノアモルファス粒子として再形成するステップと、
ヒュームドシリカの形態のSiO2ナノアモルファス粒子を反応器から取り出すステップと、
を含む、ヒュームドシリカを製造するためのプラズマアークプロセスを提供する。
【0023】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、ヒュームドシリカを製造するための装置であって、プラズマアークを生成するように適合された反応器と、反応器に収容された溶融シリカへ延在する少なくとも1つの上部電極と、溶融シリカの下に設けられた導電板と、下部アノードと、を備え、電極の先端において提供されるプラズマアークが、SiOを形成するために溶融シリカに直接移行されるように適合され、装置がまた、SiO2をナノサイズのアモルファス粒子に再形成するように適合された、反応器内に注入される水素および酸素含有ガスなどの急冷システムと、ヒュームドシリカが反応器から出るのを可能にするための出口と、を備える、装置を提供する。
【0024】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、反応器を通って流れる電流の経路が、電極から始まり、電極と溶融シリカとの間にプラズマアークを形成し、導電性溶融シリカを通って導電板へ流下して、下部アノードを通って流れることを提供する。
【0025】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、下部アノードに冷却フィンが設けられること、および、冷却フィンを冷却するために送風機が設けられることを提供する。
【0026】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、急冷システムが少なくとも1つのガス注入ポートを含むことを提供する。
【0027】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、高温ガスおよびヒュームドシリカ粒子の流れが出口を通って反応器から出るときに、より大きなサイズのヒュームドシリカ凝集体を集めるためのサイクロンが設けられることを提供する。
【0028】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、高温ガスの流れを冷却するためにガス/液体冷却器がサイクロンの下流に設けられることを提供する。
【0029】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、より微細なヒュームドシリカ粒子の大部分をガス流から分離するためにバグハウス型フィルタがガス/液体冷却器の下流に設けられることを提供する。
【0030】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、ガスをさらに濾過してヒュームドシリカのトレースを除去するために微粒子フィルタがバグハウス型フィルタの下流に設けられることを提供する。
【0031】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、反応器からガスを引き抜いて準大気圧を提供するために誘引通風機が微粒子フィルタの下流に設けられることを提供する。
【0032】
さらに、本明細書において説明される実施形態は、別の態様において、
破砕石英などのシリカをプラズマアーク反応器内に供給するステップと、
供給されたシリカに添加物を追加して、シリカ溶融物の導電性を高め、ならびに/またはシリカの溶融温度を下げ、ならびに/またはヒュームドシリカの製造速度および/もしくはその品質を向上させるステップと、
反応器内で、少なくとも1つの上部電極の先端においてプラズマアークを生成するステップと、
上部電極を通してガスを注入して、
シリカの気化エネルギーを減少させることにより、
アーク電力を増大させてシリカ気化速度を高めることにより、
蒸気などの注入ガスのプラズマアーク加熱を介してH、O、およびOHなどの反応種を導入してヒュームドシリカの形態のアモルファスナノサイズシリカ粒子の表面化学構造および特性を強化することにより、
ヒュームドシリカの製造を増進するステップと、
反応器に収容された溶融シリカにプラズマアークを直接移行させ、シリカを気化させてSiOを形成するステップと、
SiOを急冷してSiO2をアモルファスナノ粒子として再形成するステップと、
ヒュームドシリカの形態のアモルファスSiO2ナノ粒子を反応器から取り出すステップと、
を含む、ヒュームドシリカを製造するためのプラズマアークプロセスを提供する。
【0033】
次に、本明細書において説明される実施形態のさらなる理解のために、また、それらがどのようにして実行に移され得るかをよりはっきりと示すために、単なる例として、少なくとも1つの例示的な実施形態を示す添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】例示的な実施形態による、ヒュームドシリカを製造するための炉の例示的な概略垂直断面図である。
【
図2】例示的な実施形態による、ヒュームドシリカを製造するためのプロセスの例示的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
上述の欠点は、電気プラズマアーク反応器を使用する本主題によって克服することができ、この電気プラズマアーク反応器では、プラズマアークが、上部電極の先端において生成され、いかなる水冷も必要とせずに溶融シリカに直接移行され、したがって、プロセスのエネルギー効率を高め、水漏れの可能性を排除し、かつ、プロセスの安定性を向上させる。
【0036】
図1を参照すると、好ましくは<2cmのサイズ範囲内である破砕石英などのシリカの流れが供給ポート1を通して炉内に連続的にまたは断続的に供給されるプラズマ反応器R(プラズマヒュームドシリカ反応器)の概略図が示されている。反応器Rは、好ましくは摂氏+1,700度のシリカ源の溶融点を超える反応器Rの内部温度を維持するように設計された耐火性ライニング8を有する鋼鉄シェルで構成される。
【0037】
反応器Rは、電極腐食物質がガス化され、ヒュームドシリカ最終製品を汚染しないことを確実にするために、好ましくは黒鉛で作られた2つ以上の電極2(ガス注入部を含む黒鉛電極)を使用して加熱される。電極2は、反応器Rにおける過度の空気侵入を防止するために、および、プロセスがわずかな真空下で行われることを可能にするために、高温シーラント(シール)3を使用することによってシールされる。まず、プロセスの開始時に、プラズマアーク6が電極2と下方の導電板9との間に生成されて、溶融シリカプール7(溶融シリカバス)を作り出し、溶融シリカプール7は、プラズマアーク6と導電板9との間で導電媒体として作用し、また、溶融シリカプール7は、気化プロセスに起因してプラズマアーク6によって消費される。
【0038】
電極2は、非常に高温のプラズマを得るためのアルゴンなどの不活性プラズマ形成ガス、ならびに/または蒸気および/もしくは主にSiOであるシリカの分解生成物を再酸化させるための酸素の供給源としてのO2とヒュームドシリカ粒子の水素結合のための水素の供給源としてのH2との混合物などの反応性プラズマ形成ガスの注入を可能にする、中空シリンダであり得る。アンモニアなどの他のガスが、シリカの気化/分解温度を下げるために、および/またはヒュームドシリカの製造速度を増大させるために、および/またはH2注入と同じ理由のために、中空電極2を通して注入されてもよい。
【0039】
シリカは、プラズマアーク6とシリカの溶融バス7との界面において同時に気化および分解される。プラズマアーク6の強烈な熱により、シリカ、すなわちSiO2(石英の形態)が溶融され、気化され、分解されて、SiOを形成する。SiOは、SiOをSiO2に酸化させ、かつ、ナノサイズのアモルファスシリカ粒子の表面上にヒドロキシル基(OH-)を導入するために、蒸気または蒸気と空気の混合物などの水素および酸素含有ガスを使用して、ガス注入ポート5(急冷ガス注入ポート)を使用して迅速に急冷される。ヒュームドシリカの表面特性を強化するために、例えば、ヒュームドシリカを疎水性または親水性にするために、他の試薬が急冷ポート5を介して反応器R内に導入され得る。異なる製品特性をもたらす、いくつかの異なる急冷構成が使用され得る。SiOは、酸素と反応して、SiO2をナノサイズのアモルファス粒子の形態で再形成する。次いで、ナノ粒子は、ガス流とともに反応器出口4(ヒュームドシリカ反応器出口)を通って反応器Rから出るときに、凝集して3次元鎖構造を形成する。
【0040】
反応器Rを通る電子の経路は、黒鉛電極2から始まり、電極2と溶融シリカバス7との間にプラズマアーク6を形成し、導電性溶融シリカを通り、好ましくは黒鉛などの炭素系材料で作られた導電板9へ流下する。次いで、電流は、アノード10として作用する銅ステムを通過し、このアノード10には、冷却フィンが設けられ、また、強制空冷を使用して冷却される。炉の設計はまた、アノード-カソード構成において上部電極のみを使用して最初に電極間にプラズマアークを生成し、固化したシリカを再溶融させ、次いで下部アノード構成に切り替えることによりプラズマアークを溶融シリカに移行させて、アーク6が点火されるか、または、動作中に失われた場合に再点火されることを可能にする。アーク点火を支援するために、ヘリウムガスが電極を通して注入され得る。
【0041】
次に
図2に目を向けると、破砕石英11の形態のシリカが、自動供給システムを通じてプラズマ反応器R内に導入される。溶融シリカの導電性を高めるために、ならびに/または、シリカの溶融温度を下げることおよびより高い動作温度範囲を提供することによりプラズマアーク放電プロセスを改善して動作中に反応器内の溶融物が固化する可能性を最小限に抑えるために、金属または金属酸化物などの添加物が、石英供給物と同じ形態でまたは粉末の形態で、石英供給物と予混合されて石英と共供給されるかまたは断続的に供給されてもよく、この添加物は、シリカと共気化/分解してヒュームドシリカ製品を汚染しないように、またはシリカの速度よりも実質的にはるかに低い速度で共気化/分解するように、溶融シリカに混和可能であること、つまり、任意の動作温度において、好ましくは(温度および圧力などの)反応器動作条件下でシリカの蒸気圧に優る蒸気圧を有する1つだけの相すなわち単一のスラグ相が存在することが、好ましい。例えば、シリカ溶融物にわずかに0.043mol%のAl
2O
3を加えることにより、SiO
2-Al
2O
3相図によればその溶融温度を1723℃から1597℃に下げることができ[参考文献5を参照]、さらに、その導電性を10~20倍向上させることができる[参考文献6を参照]。
【0042】
この供給システムは、供給ホッパ兼攪拌機13、およびスクリュコンベヤ14を含む。石英11は、添加物とともにまたは添加物を伴わずに反応器R内に断続的にまたは連続的に導入される。電極2は、15’にスイッチが設けられているAC/DC電源15を使用して、反応器Rの内側にプラズマアーク6(
図1)を生成する。このプラズマアーク6は、石英11を溶融させて分解する。蒸気などの急冷ガスが、16(蒸気発生器)において生成されて、反応器R内に注入される。ガスの形態のシリカは、急速に冷えて固化するときに、ヒュームドシリカの形態のアモルファスSiO
2ナノサイズ粒子の鎖を形成し、この鎖は、高温ガスの流れとともに空中にある間に反応器Rから出る。送風機17(冷却フィン送風機)が、下部アノード10の冷却およびその電気的接続のために使用される。高温ガスおよびヒュームドシリカ粒子の流れは、反応器Rから出て、より大きなサイズのヒュームドシリカ凝集体が、サイクロン18によって集められる。高温ガスの流れは、間接ガス/液体冷却器19を使用して冷却される。次いで、バグハウス型フィルタ20(バグハウスヒュームドシリカ収集器)が、より微細なヒュームドシリカ粒子の大部分をガス流から分離するために使用される。次いで、ガスは、シリカが大気中に放出されないことを確実にするために、微粒子フィルタ21を用いてもう一度濾過される。ガスを炉から引き出しかつシステムを大気圧よりもわずかに低く維持するために、誘引通風機22が使用される。
【0043】
以下の表は、ヒュームドシリカを製造するための本プラズマ法および装置(反応器)の環境に関する便益を従来の方法と対比して要約する。
【0044】
【0045】
したがって、ヒュームドシリカを作るための革新的な本プラズマアークプロセスおよび装置は、既存の産業的なヒュームドシリカ作製プロセスと比較して、GHG放出量の約85%の減少とエネルギー消費量の約89%の減少とを提供する。
【0046】
上記の説明は、実施形態の例を提供するが、説明された実施形態のいくつかの特徴および/または機能は、説明された実施形態の精神および動作の原理から逸脱することなしに修正を受けやすいことが、理解されるであろう。したがって、上記で説明されてきたことは、実施形態の実例でありかつ限定的ではないものであることが意図されており、当業者であれば、添付の特許請求の範囲において定められる実施形態の範囲から逸脱することなしに他の変形および修正がなされ得ることを理解するであろう。
【0047】
(参考文献)
[1]ソース:PCI計算、以下からのデータを使用:Brandt,B.他,“Silicon-Chemistry Carbon Balance―An assessment of Greenhouse Gas Emissions and Reductions”,Executive Summary,Global Silicones Council他,2012.
[2]カナダの電力炭素強度の平均を仮定(0.15t CO2eq/MWh).
[3]Everest,D.A.,Sayce,I.G.およびSelton,’B.,“Preparation of Ultrafine Silica powders by Evaporation Using a Thermal Plasma”,Symposium on Electrochemical Engineering,Institution of Chemical Engineers,I p.2.108-2.121(1971).
[4]IEA PVPS Task 12,Subtask 2.0,LCA Report IEA-PVPS 12-04:2015-January 2015ISBN 978-3-906042-28-2.
[5]Strelov,K.K.,Kashcheev,I.D. Phase diagram of the system Al2O3-SiO2.Refractories 36,244-246(1995).
[6]Thibodeau,E.,Jung,IH.A Structural Electrical Conductivity Model for Oxide Melts.Metallurgical and Materials Transactions B,第47巻,第1号,355-383(2016).https://doi.org/10.1007/s11663-015-0458-z
【符号の説明】
【0048】
1 供給ポート
2 電極、黒鉛電極
3 高温シーラント、シール
4 反応器出口
5 ガス注入ポート
6 プラズマアーク
7 溶融シリカプール、シリカバス
8 耐火性ライニング
9 導電板
10 アノード
11 破砕石英、石英
13 供給ホッパ兼攪拌機
14 スクリュコンベヤ
15 AC/DC電源
15’ スイッチ
16 蒸気発生器
17 送風機
18 サイクロン
19 ガス冷却器
20 バグハウス型フィルタ
21 微粒子フィルタ
22 誘引通風機
R プラズマ反応器
【国際調査報告】