(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ジスルフィド結合した結合ポリペプチドのスクリーニング及び発現の方法
(51)【国際特許分類】
C40B 40/08 20060101AFI20240529BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240529BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240529BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240529BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240529BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240529BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240529BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240529BHJP
C40B 30/04 20060101ALI20240529BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240529BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240529BHJP
C12N 15/33 20060101ALN20240529BHJP
C12N 1/15 20060101ALN20240529BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20240529BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20240529BHJP
C40B 40/10 20060101ALN20240529BHJP
C07K 14/195 20060101ALN20240529BHJP
A61P 31/12 20060101ALN20240529BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240529BHJP
【FI】
C40B40/08
C12N15/63 Z
C07K16/00
C07K19/00
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 C
A61K38/17
C40B30/04
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/33
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C40B40/10
C07K14/195
A61P31/12
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568539
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022028864
(87)【国際公開番号】W WO2022241058
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523419211
【氏名又は名称】アプライド バイオメディカル サイエンス インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】マクレガー,ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ルイチー
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー ジェンキンス,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】スマイダー,ボーン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA06
4C084BA19
4C084BA20
4C084CA20
4C084MA55
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4C085AA14
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、例えば、標的分子に特異的な結合ペプチドを同定するために、ジスルフィド結合した結合ポリペプチドのディスプレイライブラリーを産生及びスクリーニングする方法に関する。いくつかの実施形態において、結合ペプチドは超長CDR3を含む。結合ペプチドは、超長CDR3を含むウシ抗体に由来し得るか、又はそれらは合成若しくは半合成であり得る。また、本明細書では、ジスルフィド結合した結合ポリペプチドを含むディスプレイライブラリーも提供される。本開示はまた、例えば、好適な宿主細胞を使用して、可溶性のジスルフィド結合した結合ポリペプチドを産生又は発現する方法に関する。可溶性のジスルフィド結合した結合ポリペプチドを含む組成物も本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウシ超長CDR3抗体ディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)ウシ抗体VH鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数の可変重(VH)領域をコードする配列を増幅することと、
(b)前記複数のVH領域のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、BLV1H12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、及びF18のVL領域からなる群から選択される可変ラムダ軽(VL)領域、又はそのヒト化バリアントに連結された増幅されたVH領域を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする核酸配列を含む、構築することと、
(c)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、前記複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(d)前記増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、前記増幅されたディスプレイ粒子が、scFvを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記VL領域が、BLV1H12 VL領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウシ超長CDR3抗体ディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)ウシ抗体VH鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数の可変重(VH)領域をコードする配列を増幅することと、
(b)前記複数のVH領域のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、前記BLV1H12ラムダ可変軽(VL)領域又はそのヒト化バリアントに連結された増幅されたVH領域を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする核酸配列を含む、構築することと、
(c)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、前記複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(d)前記増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、前記増幅されたディスプレイ粒子が、scFvを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
【請求項4】
前記cDNA鋳型ライブラリーが、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから調製される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから前記cDNA鋳型ライブラリーを調製することを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ウシを標的抗原で免疫化することを更に含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記増幅されたディスプレイ粒子が、細菌ディスプレイ粒子、酵母ディスプレイ粒子、哺乳類ディスプレイ粒子、ファージディスプレイ粒子、mRNAディスプレイ粒子、リボソームディスプレイ粒子、又はDNAディスプレイ粒子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記増幅されたディスプレイ粒子が、ファージディスプレイ粒子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記増幅されたディスプレイ粒子が、ファージミド粒子である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記核酸配列が、第1の核酸配列であり、各複製可能な発現ベクターが、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含み、前記方法が、前記ファージミド粒子を産生するのに十分な量の、前記ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された前記宿主細胞を感染させることを更に含み、それによって、前記融合タンパク質が、前記ファージコートタンパク質の少なくとも一部を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ウシ超長CDR3抗体ファージディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)ウシを標的抗原で免疫化することと、
(b)免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから抗体可変重(VH)鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーを調製することと、
(c)前記cDNA鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数のVH領域をコードする配列を増幅することと、
(d)前記複数のVH領域のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、(1)BLV1H12ラムダ可変軽(VL)領域又はそのヒト化バリアントに連結された増幅されたVH領域を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする第1の核酸配列、及び(2)ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を含む、構築することと、
(e)前記複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(f)増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分な量の、前記ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された前記宿主細胞を感染させることと、
(g)前記増幅されたファージミド粒子を収集することであって、前記増幅されたファージミド粒子が、前記ファージコートタンパク質の少なくとも一部及びscFvを含む融合タンパク質をディスプレイするファージミド粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記BLV1H12ラムダVL領域が、配列番号2に示される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記BLV1H12ラムダVL領域が、前記BLV1H12のラムダVL領域のヒト化バリアントである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒト化バリアントが、Kabat番号付けに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13S、及びP14L、CDR1領域におけるアミノ酸置換I29V及びN32G、並びに/又はCDR2領域におけるDNNからGDTへのアミノ酸置換のうちの1つ以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒト化バリアントが、配列番号107に示される配列を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記増幅されたVH領域が、ペプチドリンカーを介して間接的に前記BLV1H12ラムダVL領域に連結される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチドリンカーが、(Gly
4Ser)
3(配列番号94)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記cDNA鋳型ライブラリーからの前記IgHV1-7ファミリーの前記複数のVH領域が、配列番号84に示される配列を含むフォワードプライマー及び配列番号85に示される配列を含むリバースプライマーで増幅される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記構築の前に、前記方法が、複数の前記増幅されたVH領域をコードする配列に対してサイズ分離を行って、超長CDR3を有するVH領域を富化することを更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記サイズ分離が、ゲル電気泳動によって行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ゲル電気泳動が、1.2%、1.5%、又は2%のアガロースゲルを使用して、任意選択で2%のアガロースゲルを使用して行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記サイズ分離が、前記複数の増幅されたVH領域をコードする配列から550塩基対長、約550塩基対長又は550塩基対長を超える配列を分離することを含み、前記550塩基対長、約550塩基対長又は550塩基対長を超える配列が、超長CDR3を有するVH領域をコードする配列を含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約20%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約30%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約40%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約50%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記超長CDR3が、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを含む、25~70個のアミノ酸のペプチド配列である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記超長CDR3が、40~60アミノ酸長である、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記超長CDR3が、少なくとも42アミノ酸長である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記超長CDR3が、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、又は60アミノ酸長である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記超長CDR3が、少なくとも4つのシステイン残基を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記超長CDR3が、4つのシステイン残基を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記超長CDR3が、6、8、10、又は12のシステイン残基を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記超長CDR3が、少なくとも2つのジスルフィド結合を有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記超長CDR3が、2つのジスルフィド結合を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記超長CDR3が、3、4、又は5つのジスルフィド結合を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、scFv配列中のCDR3-ノブ配列を同定することを更に含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
超長CDR3-ノブディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)ウシ超長CDR3領域の上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインに特異的なフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、ウシ抗体可変重(VH)鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーから複数のCDR3-ノブのみの抗体をコードする配列を増幅することと、
(b)前記複数のCDR3ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、増幅されたCDR3ノブをコードする核酸配列を含む、構築することと、
(c)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、前記複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(d)前記増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、前記増幅されたディスプレイ粒子が、増幅されたCDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
【請求項39】
前記cDNA鋳型ライブラリーが、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから調製される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから前記cDNA鋳型ライブラリーを調製することを更に含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記ウシを標的抗原で免疫化することを更に含む、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
前記増幅されたディスプレイ粒子が、細菌ディスプレイ粒子、酵母ディスプレイ粒子、哺乳類ディスプレイ粒子、ファージディスプレイ粒子、mRNAディスプレイ粒子、リボソームディスプレイ粒子、又はDNAディスプレイ粒子を含む、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記増幅されたディスプレイ粒子が、ファージディスプレイ粒子である、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記増幅されたディスプレイ粒子が、ファージミド粒子である、請求項38~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記核酸配列が、第1の核酸配列であり、各複製可能な発現ベクターが、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含み、前記方法が、前記ファージミド粒子を産生するのに十分な量の、前記ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された前記宿主細胞を感染させることを更に含み、それによって、前記融合タンパク質が、前記ファージコートタンパク質の少なくとも一部を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
超長CDR3-ノブファージディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)ウシを標的抗原で免疫化することと、
(b)免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから抗体可変重(VH)鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーを調製することと、
(c)ウシ超長CDR3領域の上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインに特異的なフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、前記cDNA鋳型ライブラリーから複数のCDR3-ノブのみの抗体をコードする配列を増幅することと、
(d)前記複数のCDR3-ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、(1)増幅されたCDR3ノブをコードする第1の核酸配列、及び(2)ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を含む、構築することと、
(e)前記複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(f)増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分な量の、前記ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された前記宿主細胞を感染させることと、
(g)前記増幅されたファージミド粒子を収集することであって、前記増幅されたファージミド粒子が、前記ファージコートタンパク質の少なくとも一部及び増幅されたCDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするファージミド粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
【請求項47】
前記プライマーが、配列番号7~11及び121~130に示される配列のうちのいずれかを含むか又はそれらからなり、任意選択で、配列番号123、127、及び128に示される配列のうちのいずれかを含むか又はそれらからなる、請求項38~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記方法が、ウシ抗体可変重(VH)鎖鋳型配列から前記CDR3-ノブを同定することを更に含む、請求項38~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記CDR3-ノブが、
フレームワーク3中の保存されたシステイン及びフレームワーク4中の保存されたトリプトファンを同定すること、並びに
前記CDR-3ノブの配列を決定することであって、
前記CDR-3ノブが、アミノ酸配列長Kを有し、
前記配列が、位置X+1で始まり、X+Kで終わり、
K=L-2X
(式中、Lは、フレームワーク3中の前記保存されたシステインから始まり、フレームワーク4中の前記保存されたトリプトファンで終わるアミノ酸配列中のアミノ酸の数であり、Xは、フレームワーク3中の最初のシステインからCDR H3中のD
H領域によってコードされる最初の保存されたシステインまでのアミノ酸の数である)である、前記CDR-3ノブの配列を決定することを含むアルゴリズムによって抗体配列から同定される、請求項37又は48に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体配列が、ウシ抗体である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
同定された前記CDR3-ノブが、同定された配列と比較して、N及び/又はC末端で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸だけ伸長されている、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
前記複数のCDR3-ノブのみの抗体の各々が、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列を含む、請求項38~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記ペプチド配列が、40~60アミノ酸長である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記ペプチド配列が、少なくとも42アミノ酸長である、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
前記ペプチド配列が、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、又は60アミノ酸長である、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ペプチド配列が、少なくとも4つのシステイン残基を含む、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記ペプチド配列が、4つのシステイン残基を含む、請求項52~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記ペプチド配列が、6、8、10、又は12のシステイン残基を含む、請求項52~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ペプチド配列が、少なくとも2つのジスルフィド結合を有する、請求項52~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記ペプチド配列が、2つのジスルフィド結合を有する、請求項52~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記ペプチド配列が、3、4、又は5つのジスルフィド結合を有する、請求項52~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記標的抗原が、非病原性細菌、ウイルス、ウイルスタンパク質、免疫調節タンパク質、癌抗原、ヒトIgG、又はそれらの組換えタンパク質である、請求項6~37及び41~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記cDNA鋳型ライブラリーが、配列番号4に示される配列を含むか又はそれからなるプライマー、配列番号5に示される配列を含むか又はそれからなるプライマー、配列番号3に示される配列を含むか又はそれからなるプライマー、及び配列番号6に示される配列を含むか又はそれからなるプライマーを含む、IgM、IgA、及びIgG特異的プライマーのプールを使用して合成された、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
超長CDR3-ノブディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)複数のCDR3-ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列をコードする核酸配列を含む、構築することと、
(b)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、前記複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(c)前記増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、前記増幅されたディスプレイ粒子が、CDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
【請求項65】
前記増幅されたディスプレイ粒子が、細菌ディスプレイ粒子、酵母ディスプレイ粒子、哺乳類ディスプレイ粒子、ファージディスプレイ粒子、mRNAディスプレイ粒子、リボソームディスプレイ粒子、又はDNAディスプレイ粒子を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記増幅されたディスプレイ粒子が、ファージディスプレイ粒子である、請求項64又は65に記載の方法。
【請求項67】
前記増幅されたディスプレイ粒子が、ファージミド粒子である、請求項64~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記核酸配列が、第1の核酸配列であり、各複製可能な発現ベクターが、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含み、前記方法が、前記ファージミド粒子を産生するのに十分な量の、前記ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された前記宿主細胞を感染させることを更に含み、それによって、前記融合タンパク質が、前記ファージコートタンパク質の少なくとも一部を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
超長CDR3-ノブファージディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)複数のCDR3-ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、(1)1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列をコードする第1の核酸配列、及び(2)ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を含む、構築することと、
(b)複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(c)増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分な前記ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された前記宿主細胞を感染させることと、
(d)前記増幅されたファージミド粒子を収集することであって、前記増幅されたファージミド粒子が、前記ファージコートタンパク質の少なくとも一部及びCDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするファージミド粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
【請求項70】
前記複数のCDR3-ノブ抗体のうちの少なくとも1つが、
フレームワーク3中の保存されたシステイン及びフレームワーク4中の保存されたトリプトファンを同定すること、並びに
前記CDR-3ノブの配列を決定することであって、
前記CDR-3ノブが、アミノ酸配列長Kを有し、
前記配列が、位置X+1で始まり、X+Kで終わり、
K=L-2X
(式中、Lは、フレームワーク3中の前記保存されたシステインから始まり、フレームワーク4中の前記保存されたトリプトファンで終わるアミノ酸配列中のアミノ酸の数であり、Xは、フレームワーク3中の最初のシステインからCDR H3中のD
H領域によってコードされる最初の保存されたシステインまでのアミノ酸の数である)である、前記CDR-3ノブの配列を決定することを含むアルゴリズムによって抗体配列から同定される、請求項64~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記抗体配列が、ウシ抗体である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記少なくとも1つのCDR3-ノブ抗体が、同定された配列と比較して、N及び/又はC末端で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸だけ伸長されている配列を有する、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
前記ペプチド配列が、上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインを含み、前記システインモチーフが、前記上昇ストークドメインと前記下降ストークドメインとの間にある、請求項27~37及び52~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記ペプチド配列が、標的抗原で免疫化されたウシからのDNAから増幅される、請求項64~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記ペプチド配列が、ウシの超長CDR3領域の前記ストークドメインのいずれかの側に特異的なプライマーを使用して、前記免疫化ウシからの可変重鎖cDNAライブラリーから増幅される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記ペプチド配列が、前記システインモチーフのN末端側に上昇ストークドメインを含まない、請求項27~37、52~72、74、及び75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記ペプチド配列が、前記システインモチーフのC末端側に下降ストークドメインを含まない、請求項27~37、52~72、及び74~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記上昇ストークドメインが、配列CX
2TVX
5Qを含み、配列中、X
2及びX
5は、任意のアミノ酸である、請求項73~75及び77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
X
2が、Ser、Thr、Gly、Asn、Ala、又はProであり、X
5が、His、Gln、Arg、Lys、Gly、Thr、Tyr、Phe、Trp、Met、Ile、Val、又はLeuである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
X
2が、Ser、Ala、又はThrであり、X
5が、His又はTyrである、請求項78又は79に記載の方法。
【請求項81】
前記ペプチド配列が、合成CDR3-ノブである、請求項64~73及び76~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記ペプチド配列が、シクロチド又は修飾されたシクロチドである、請求項64~73及び76~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記ペプチド配列が、ウシCDR3-ノブに由来する半合成CDR3-ノブである、請求項64~73及び76~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記ペプチド配列が、40~60アミノ酸長である、請求項64~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記ペプチド配列が、少なくとも42アミノ酸長である、請求項64~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記ペプチド配列が、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、又は60アミノ酸長である、請求項64~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記ペプチド配列が、少なくとも4つのシステイン残基を含む、請求項64~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記ペプチド配列が、4つのシステイン残基を含む、請求項64~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記ペプチド配列が、6、8、10、又は12のシステイン残基を含む、請求項64~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記ペプチド配列が、少なくとも2つのジスルフィド結合を有する、請求項64~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記ペプチド配列が、2つのジスルフィド結合を有する、請求項64~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記ペプチド配列が、3、4、又は5つのジスルフィド結合を有する、請求項64~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記複数のCDR3ノブが、前記ペプチド配列をコードする核酸配列内の1つ以上の選択された位置で変異され、前記複数の複製可能な発現ベクターが、変異ベクターのファミリーである、請求項64~73及び76~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記発現ベクターが、分泌シグナル配列を更に含む、請求項1~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記分泌シグナル配列が、pelBシグナル配列である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記好適な宿主細胞が、E.coli細胞である、請求項1~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記好適な宿主細胞が、TG1エレクトロコンピテント細胞である、請求項1~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記ファージミド粒子が、M13ファージに由来する、請求項9~37、44~63、及び67~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記コートタンパク質が、M13ファージ遺伝子IIIコートタンパク質(pIII)である、請求項10~37、45~63、及び68~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記ヘルパーファージが、M13K07、M13R408、M13-VCS、及びファイX174からなる群から選択される、請求項10~37、45~63、及び68~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記ヘルパーファージが、M13K07である、請求項10~37、45~63、及び68~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記ディスプレイ粒子が、平均して、前記粒子の表面上に前記融合タンパク質の1つのコピーをディスプレイする、請求項1~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
請求項1~102のいずれか一項に記載の方法によって産生された、ディスプレイ粒子のライブラリー。
【請求項104】
複製可能な発現ベクターであって、BLV1H12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、及びF18のVL領域から選択される可変ラムダ軽(VL)領域、又はそのヒト化バリアントに連結された超長CDR3を含むウシ可変重(VH)領域を含む単鎖可変断片をコードする核酸配列を含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクター。
【請求項105】
複製可能な発現ベクターであって、BLV1H12ラムダ可変軽(VL)領域、又はそのヒト化バリアントに連結された超長CDR3を含むウシ可変重(VH)領域を含む単鎖可変断片をコードする核酸配列を含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクター。
【請求項106】
前記核酸配列が、第1の核酸配列であり、前記複製可能な発現が、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含む、請求項104又は105に記載の複製可能な発現ベクター。
【請求項107】
請求項104~106のいずれか一項に記載の複製可能な発現ベクターによってコードされる、ディスプレイ粒子。
【請求項108】
請求項107に記載の複数のディスプレイ粒子を含む、ディスプレイ粒子のライブラリー。
【請求項109】
前記ライブラリー中の前記ディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約20%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む、請求項103又は108に記載のライブラリー。
【請求項110】
前記ライブラリー中の前記ディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約30%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む、請求項103、108、及び109のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項111】
前記ライブラリー中の前記ディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約40%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む、請求項103及び108~110のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項112】
前記ライブラリー中の前記ディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約50%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む、請求項103及び108~111のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項113】
複製可能な発現ベクターであって、ジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列をコードする核酸配列を含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクター。
【請求項114】
前記核酸配列が、第1の核酸配列であり、前記複製可能な発現ベクターが、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含む、請求項113に記載の複製可能な発現ベクター。
【請求項115】
請求項113又は114に記載の複製可能な発現ベクターによってコードされる、ディスプレイ粒子。
【請求項116】
請求項115に記載の複数のディスプレイ粒子を含む、ディスプレイ粒子のライブラリー。
【請求項117】
前記ディスプレイ粒子が、ファージディスプレイ粒子である、請求項103、108~112、及び116のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項118】
前記ディスプレイ粒子が、ファージミド粒子である、請求項103、108~112、116、及び117のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項119】
抗体結合タンパク質を選択するための方法であって、
(1)ディスプレイ粒子の標的分子への結合を可能にする条件下で、請求項103、108~112、及び116~118のいずれか一項に記載のディスプレイ粒子のライブラリーを前記標的分子と接触させることと、
(2)結合する前記ディスプレイ粒子を結合しないものから分離し、それによって、前記標的分子に結合する抗体結合タンパク質を含むディスプレイ粒子を選択することと、を含む、方法。
【請求項120】
前記ディスプレイ粒子が、ファージディスプレイ粒子である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記ディスプレイ粒子が、ファージミド粒子である、請求項119又は120に記載の方法。
【請求項122】
前記標的分子が、非病原性細菌、ウイルス、ウイルスタンパク質、免疫調節タンパク質、癌抗原、ヒトIgG、又はそれらの組換えタンパク質である、請求項119~121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記標的分子が、コロナウイルス、コロナウイルス偽ウイルス、組換えコロナウイルススパイクタンパク質、又はコロナウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)である、請求項119~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記コロナウイルスが、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、及びSARS-CoV2からなる群から選択される、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記コロナウイルスが、Wuhan-Hu-1単離株、B.1.351南アフリカバリアント、又はB.1.1.7 UKバリアントから選択されるSARS-CoV2である、請求項123又は124に記載の方法。
【請求項126】
(i)好適な宿主細胞に、(2)で結合する選択された前記ディスプレイ粒子をコードする複製可能な発現ベクターで感染させることと、
(ii)増幅されたディスプレイ粒子を収集することと、
(iii)前記増幅されたディスプレイ粒子を前記ディスプレイ粒子のライブラリーとして使用して、ステップ(1)及び(2)を繰り返すことと、を更に含む、請求項119~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記ディスプレイ粒子がファージミド粒子であり、前記方法が、増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分な量の、前記ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることを更に含む、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記ステップが、1回以上繰り返される、請求項126又は127に記載の方法。
【請求項129】
前記ステップが、同じ標的分子又は異なる標的分子を用いて繰り返される、請求項126~128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記ステップが、異なる標的分子を用いて繰り返され、前記異なる標的分子が、前記標的分子に関連している、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記異なる標的分子が、前記標的分子と同じタイプの病原体であるか、前記標的分子と同じ病原体群にあるか、又は前記標的分子のバリアントである、請求項129又は130に記載の方法。
【請求項132】
前記選択されたディスプレイ粒子中の融合遺伝子を配列決定して、前記抗体結合タンパク質を同定することを更に含む、請求項119~131のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記選択された抗体結合タンパク質から全長IgG又はFabを産生することを更に含む、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記抗体結合タンパク質が、scFvであり、前記方法が、前記scFvのVH領域を定常領域又はその一部と連結することを含む、重鎖又はその一部を構築することを含む、請求項132又は133に記載の方法。
【請求項135】
前記方法が、ヒト化ウシVH領域の超長CDR3領域のノブ領域を、選択された抗体結合タンパク質の超長CDR3領域で置換することによってヒト化VH領域を構築することを含む、請求項132又は133に記載の方法。
【請求項136】
前記選択された抗体結合タンパク質の超長CDR3領域が、ヒト化ウシVH領域の上昇ストーク鎖と下降ストーク鎖との間で置換される、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記VH領域が、式V1-X-V2を含み、前記重鎖のV1領域が、配列番号111に示される配列を含み、X領域が、選択された抗体結合タンパク質の超長CDR3を含み、V2領域が、配列番号112に示される配列を含む、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記方法が、前記ヒト化VH領域を定常領域又はその一部と連結することを含む、重鎖又はその一部を構築することを更に含む、請求項135~137のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記重鎖又は前記その一部が、ヒトIgG1重鎖又はその一部である、請求項134又は138に記載の方法。
【請求項140】
前記重鎖又はその一部を軽鎖と共発現させることを更に含む、請求項134、138、及び139のいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
前記軽鎖が、BLVH12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、若しくはF18のウシ軽鎖であるか、又はそのヒト化バリアントである、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記軽鎖が、配列番号113に示される配列を含むBLV1H12軽鎖又はそのヒト化バリアントである、請求項140又は141に記載の方法。
【請求項143】
前記軽鎖が、配列番号114に示されるヒト化軽鎖である、請求項140~142のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
前記軽鎖が、配列番号115に示される配列を含むBLV5B8軽鎖又はそのヒト化バリアントである、請求項140又は141に記載の方法。
【請求項145】
前記軽鎖がヒト軽鎖である、請求項140に記載の方法。
【請求項146】
前記軽鎖が、VL1~47、VL1~40、VL1~51、及びVL2~18からなる群から選択される、請求項140又は145に記載の方法。
【請求項147】
前記軽鎖が、配列番号116~120のうちのいずれか1つに示される、請求項140、145、及び146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
可溶性超長CDR3ノブを産生するための方法であって、
(a)切断可能なリンカーによって連結された超長CDR3ノブ及び細菌シャペロンを含む融合タンパク質をコードする発現ベクターでE.coliを形質転換することであって、前記超長CDR3ノブが、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列である、形質転換することと、
(b)前記融合タンパク質の発現を許容する条件下で、細菌を培養することと、
(c)細菌細胞溶解物の上清から前記融合タンパク質を単離することと、
(d)前記融合タンパク質の前記切断可能なリンカーを切断し、それによって、前記細菌シャペロンを含まない1~6つのジスルフィド結合を含む可溶性超長CDR3ノブを産生することと、を含む、方法。
【請求項149】
前記超長CDR3ノブが、請求項119~132のいずれか一項に記載の方法によって選択された抗体結合タンパク質である、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
前記融合タンパク質が、前記超長CDR3ノブ単独と比較して増加した溶解度を有する、請求項148又は149に記載の方法。
【請求項151】
前記細菌シャペロンが、チオレドキシンA(TrxA)である、請求項148~150のいずれか一項に記載の方法。
【請求項152】
前記切断可能なリンカーが、アミノ酸配列DDDDK(配列番号106)を有するエンテロキナーゼ切断タグである、請求項148~151のいずれか一項に記載の方法。
【請求項153】
前記切断可能なリンカーを切断することが、エンテロキナーゼを前記上清に添加することを含む、請求項148~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
前記可溶性超長CDR3ノブが、化学的方法又は酵素的方法を介した前記可溶性超長CDR3ノブの環化を可能にする更なるリンカーを含み、任意選択で、前記更なるリンカーが、ソルターゼ媒介環化を可能にする、請求項148~153のいずれか一項に記載の方法。
【請求項155】
前記可溶性超長CDR3ノブを環化することを更に含む、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
(e)前記可溶性超長CDR3ノブを含む溶液から前記エンテロキナーゼ及び/又は前記細菌シャペロンを除去することを更に含む、請求項148~155のいずれか一項に記載の方法。
【請求項157】
前記可溶性超長CDR3ノブを含む前記溶液から前記可溶性超長CDR3ノブを富化することを更に含み、任意選択で、前記富化することが、サイズ排除クロマトグラフィを含む、請求項148~156のいずれか一項に記載の方法。
【請求項158】
前記可溶性超長CDR3ノブを含む多重特異性結合分子を産生することを更に含む、請求項148~157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
前記超長CDR3ノブが、3~8kDa又は4~5kDaのサイズである、請求項148~158のいずれか一項に記載の方法。
【請求項160】
切断可能なリンカーによって連結された超長CDR3ノブ及び細菌シャペロンを含む融合タンパク質であって、前記超長CDR3ノブが、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列である、融合タンパク質。
【請求項161】
前記細菌シャペロンが、チオレドキシンA(TrxA)である、請求項160に記載の融合タンパク質。
【請求項162】
前記切断可能なリンカーが、アミノ酸配列DDDDK(配列番号106)を有するエンテロキナーゼ切断タグである、請求項160又は161に記載の融合タンパク質。
【請求項163】
前記超長CDR3ノブが、1~6つのジスルフィド結合を含む、請求項160~162のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項164】
請求項160~163のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む、組成物。
【請求項165】
抗体配列からCDR3ノブ配列を同定する方法であって、
フレームワーク3中の保存されたシステイン及びフレームワーク4中の保存されたトリプトファンを同定すること、並びに
前記CDR-3ノブの配列を決定することであって、
前記CDR-3ノブが、アミノ酸配列長Kを有し、
前記配列が、位置X+1で始まり、X+Kで終わり、
K=L-2X
(式中、Lは、フレームワーク3中の前記保存されたシステインから始まり、フレームワーク4中の前記保存されたトリプトファンで終わるアミノ酸配列中のアミノ酸の数であり、Xは、フレームワーク3中の最初のシステインからCDR H3中のD
H領域によってコードされる最初の保存されたシステインまでのアミノ酸の数である)である、前記CDR-3ノブの配列を決定することを含む、方法。
【請求項166】
前記抗体配列が、ウシ抗体である、請求項165に記載の方法。
【請求項167】
前記CDR3-ノブ抗体が、同定された配列と比較して、N及び/又はC末端で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸だけ伸長されている配列を有する、請求項165又は166に記載の方法。
【請求項168】
請求項148~159のいずれか一項に記載の方法によって産生される精製された可溶性超長CDR3ノブであって、可溶性超長CDR3が、25~75アミノ酸長であり、1~6つのジスルフィド結合を含む、精製された可溶性超長CDR3ノブ。
【請求項169】
前記超長CDR3ノブが、3~8kDaのサイズである、請求項168に記載の精製された可溶性超長CDR3ノブ。
【請求項170】
前記超長CDR3ノブが、4~5kDaのサイズである、請求項168又は169に記載の精製された可溶性超長CDR3ノブ。
【請求項171】
前記ノブが、アミノ酸配列長Kを有し、
配列が、位置X+1で始まり、X+Kで終わり、
K=L-2X
(式中、Lは、フレームワーク3中の保存されたシステインから始まり、フレームワーク4中の保存されたトリプトファンで終わる抗体のアミノ酸配列中のアミノ酸の数であり、Xは、フレームワーク3中の最初のシステインからCDR H3中のD
H領域によってコードされる最初の保存されたシステインまでのアミノ酸の数である)である、請求項168~170のいずれか一項に記載の精製された可溶性超長CDR3ノブ。
【請求項172】
前記抗体配列が、ウシ抗体である、請求項171に記載の精製された可溶性超長CDR3ノブ。
【請求項173】
前記ノブ配列が、N及び/又はC末端で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸だけ更に伸長されている配列を有する、請求項171又は172に記載の精製された可溶性超長CDR3ノブ。
【請求項174】
長さKのペプチドノブ配列であって、
ノブが、アミノ酸配列長Kを有し、
前記配列が、位置X+1で始まり、X+Kで終わり、
K=L-2X
(式中、Lは、フレームワーク3中の保存されたシステインから始まり、フレームワーク4中の保存されたトリプトファンで終わる抗体のアミノ酸配列中のアミノ酸の数であり、Xは、フレームワーク3中の最初のシステインからCDR H3中のD
H領域によってコードされる最初の保存されたシステインまでのアミノ酸の数である)である、ペプチドノブ配列。
【請求項175】
抗体配列が、ウシ抗体である、請求項174に記載のペプチドノブ配列。
【請求項176】
前記ノブ配列が、N及び/又はC末端で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸だけ更に伸長されている配列を有する、請求項174又は175に記載のペプチドノブ配列。
【請求項177】
請求項168~173のいずれか一項に記載の精製された可溶性超長CDR3を含む、組成物。
【請求項178】
薬学的に許容される担体を更に含む、請求項177に記載の組成物。
【請求項179】
非経口投与用に製剤化される、請求項177又は178に記載の組成物。
【請求項180】
静脈内、筋肉内、局所、耳、結膜、鼻、吸入、又は皮下投与用に製剤化される、請求項177~179のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項181】
吸入による投与用に製剤化される、請求項177~180のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府関心の声明)
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により付与された助成金R01 GM105826及びR01 HD088400の下で政府支援を受けて実施された。政府は本発明に一定の権利を有する。
(関連出願の相互参照)
【0002】
本出願は、2021年5月12日に出願された米国特許仮出願第63/187,931号、及び2021年12月13日に出願された米国特許仮出願第63/288,992号の優先権を主張するものであり、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
(シーケンスリスト参照による援用)
本出願は、電子フォーマットの配列表と共に出願されている。配列表は、2022年5月10日に作成された128キロバイトのサイズの165772000440SEQLIST.txtという名称のファイルとして提供される。配列表の電子フォーマットの情報は、その全体が参照により組み込まれる。
【0004】
(発明の分野)
本開示は、例えば、標的分子に特異的な結合ペプチドを同定するために、ジスルフィド結合した結合ポリペプチドのディスプレイライブラリーを産生及びスクリーニングする方法に関する。いくつかの実施形態において、結合ペプチドは超長CDR3を含む。結合ペプチドは、超長CDR3を含むウシ抗体に由来し得るか、又はそれらは合成若しくは半合成であり得る。また、本明細書では、ジスルフィド結合した結合ポリペプチドを含むディスプレイライブラリーも提供される。本開示はまた、例えば、好適な宿主細胞を使用して、可溶性のジスルフィド結合した結合ポリペプチドを産生又は発現する方法に関する。可溶性のジスルフィド結合した結合ポリペプチドを含む組成物も本明細書で提供される。
【背景技術】
【0005】
抗体は、脊椎動物の免疫系が外来物質(抗原)に応答して、主に感染に対する防御のために形成する天然タンパク質である。抗体は、標的抗原への結合を媒介する相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)を含む。いくつかのウシ抗体は、他の脊椎動物と比較して異常に長い可変重(variable heavy、VH)CDR3配列を有する。最大70アミノ酸長であり得るこれらの長いCDR3は、抗体表面から突出する固有のドメインを形成することができ、それによって固有の抗体プラットフォームを可能にする。長いCDR3を含む抗体又はその部分をスクリーニング及び産生するため、並びに他のジスルフィド結合したポリペプチドをスクリーニング及び産生するための改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3抗体ディスプレイライブラリーを調製する方法であって、(a)ウシ抗体VH鎖相補的DNA(complementary DNA、cDNA)鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数の可変重(VH)領域をコードする配列を増幅することと、(b)複数のVH領域のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、BLV1H12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、及びF18のVL領域からなる群から選択される可変ラムダ軽(VL)領域、又はそのヒト化バリアントに連結された増幅されたVH領域を含む単鎖可変断片(single chain variable fragment、scFv)をコードする第1の核酸配列を含む、構築することと、(c)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、(d)増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、増幅されたディスプレイ粒子が、scFvを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法が提供される。
【0007】
任意の実施形態のいくつかにおいて、VL領域は、BLV1H12 VL領域である。
【0008】
本明細書では、いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3抗体ディスプレイライブラリーを調製する方法であって、(a)ウシ抗体VH鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数の可変重(VH)領域をコードする配列を増幅することと、(b)複数のVH領域のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、BLV1H12ラムダ可変軽(variable light、VL)領域又はそのヒト化バリアントに連結された増幅されたVH領域を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする第1の核酸配列を含む、構築することと、(c)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、(d)増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、増幅されたディスプレイ粒子が、scFvを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法が提供される。
【0009】
任意の実施形態のいくつかにおいて、cDNA鋳型ライブラリーは、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)から単離されたRNAから調製される。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAからcDNA鋳型ライブラリーを調製することを更に含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、ウシを標的抗原で免疫化することを更に含む。
【0010】
任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅されたディスプレイ粒子は、細菌ディスプレイ粒子、酵母ディスプレイ粒子、哺乳類ディスプレイ粒子、ファージディスプレイ粒子、mRNAディスプレイ粒子、リボソームディスプレイ粒子、又はDNAディスプレイ粒子を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅されたディスプレイ粒子は、ファージディスプレイ粒子である。任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅されたディスプレイ粒子は、ファージミド粒子である。任意の実施形態のいくつかにおいて、各複製可能な発現ベクターは、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含み、方法は、ファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることを更に含み、それによって、融合タンパク質は、ファージコートタンパク質の少なくとも一部を含む。
【0011】
本明細書では、いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3抗体ファージディスプレイライブラリーを調製する方法であって、(a)ウシを標的抗原で免疫化することと、(b)免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから抗体可変重(VH)鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーを調製することと、(c)cDNA鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数のVH領域をコードする配列を増幅することと、(d)複数のVH領域のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、(1)BLV1H12ラムダ可変軽(VL)領域又はそのヒト化バリアントに連結された増幅されたVH領域を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする第1の核酸配列、及び(2)ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を含む、構築することと、(e)複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、(f)増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることと、(g)増幅されたファージミド粒子を収集することであって、増幅されたファージミド粒子が、ファージコートタンパク質の少なくとも一部及びscFvを含む融合タンパク質をディスプレイするファージミド粒子を含む、収集することと、を含む、方法が提供される。
【0012】
任意の実施形態のいくつかにおいて、BLV1H12ラムダVL領域は、配列番号2に示される。任意の実施形態のいくつかにおいて、BLV1H12ラムダVL領域は、BLV1H12のラムダVL領域のヒト化バリアントである。任意の実施形態のいくつかにおいて、ヒト化バリアントは、Kabat番号付けに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13S、及びP14L、CDR1領域におけるアミノ酸置換I29V及びN32G、並びに/又はCDR2領域におけるDNNからGDTへのアミノ酸置換のうちの1つ以上を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、ヒト化バリアントは、配列番号107に示される配列を含む。
【0013】
任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅されたVH領域は、ペプチドリンカーを介して間接的にBLV1H12ラムダVL領域に連結される。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチドリンカーは、(Gly4Ser)3(配列番号94)である。
【0014】
任意の実施形態のいくつかにおいて、cDNA鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数のVH領域は、配列番号84に示される配列を含むフォワードプライマー及び配列番号85に示される配列を含むリバースプライマーで増幅される。
【0015】
任意の実施形態のいくつかにおいて、構築の前に、方法は、複数の増幅されたVH領域をコードする配列に対してサイズ分離を行って、超長CDR3を有するVH領域を富化することを更に含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、サイズ分離は、ゲル電気泳動によって行われる。任意の実施形態のいくつかにおいて、ゲル電気泳動は、1.2%、1.5%、又は2%のアガロースゲルを使用して、任意選択で2%のアガロースゲルを使用して行われる。任意の実施形態のいくつかにおいて、サイズ分離は、複数の増幅されたVH領域をコードする配列から550塩基対長、約550塩基対長又は550塩基対長を超える配列を分離することを含み、550塩基対長、約550塩基対長又は550塩基対長を超える配列は、超長CDR3を有するVH領域をコードする配列を含む。
【0016】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ゲル電気泳動は、2%のアガロースゲルを使用して行われる。
【0017】
任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約20%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする。任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約30%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする。任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約40%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする。任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約50%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする。
【0018】
任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3は、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを含む、25~70個のアミノ酸のペプチド配列である。
【0019】
任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3は、40~60アミノ酸長である。任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3は、少なくとも42アミノ酸長である。任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3は、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、又は60アミノ酸長である。
【0020】
任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3は、少なくとも4つのシステイン残基を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3は、4つのシステイン残基を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3は、6、8、10、又は12のシステイン残基を含む。
【0021】
任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3は、少なくとも2つのジスルフィド結合を有する。任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3は、2つのジスルフィド結合を有する。任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3は、3、4、又は5つのジスルフィド結合を有する。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、scFv配列中のCDR3-ノブ配列を同定することを更に含む。
【0022】
本明細書では、いくつかの実施形態において、超長CDR3-ノブディスプレイライブラリーを調製する方法であって、(a)ウシ超長CDR3領域の上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインに特異的なフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、ウシ抗体可変重(VH)鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーから複数のCDR3-ノブのみの抗体をコードする配列を増幅することと、(b)複数のCDR3ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、増幅されたCDR3ノブをコードする第1の核酸配列を含む、構築することと、(c)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、(d)増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、増幅されたディスプレイ粒子が、増幅されたCDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法が提供される。
【0023】
任意の実施形態のいくつかにおいて、cDNA鋳型ライブラリーは、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから調製される。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAからcDNA鋳型ライブラリーを調製することを更に含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、ウシを標的抗原で免疫化することを更に含む。
【0024】
任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅されたディスプレイ粒子は、細菌ディスプレイ粒子、酵母ディスプレイ粒子、哺乳類ディスプレイ粒子、ファージディスプレイ粒子、mRNAディスプレイ粒子、リボソームディスプレイ粒子、又はDNAディスプレイ粒子を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅されたディスプレイ粒子は、ファージディスプレイ粒子である。任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅されたディスプレイ粒子は、ファージミド粒子である。任意の実施形態のいくつかにおいて、各複製可能な発現ベクターは、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含み、方法は、ファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることを更に含み、それによって、融合タンパク質は、ファージコートタンパク質の少なくとも一部を含む。
【0025】
本明細書では、いくつかの実施形態において、超長CDR3ノブファージディスプレイライブラリーを調製する方法であって、(a)ウシを標的抗原で免疫化することと、(b)免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから抗体可変重(VH)鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーを調製することと、(c)ウシ超長CDR3領域の上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインに特異的なフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、cDNA鋳型ライブラリーから複数のCDR3-ノブのみの抗体をコードする配列を増幅することと、(d)複数のCDR3-ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、(1)増幅されたCDR3ノブをコードする第1の核酸配列、及び(2)ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を含む、構築することと、(e)複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、(f)増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることと、(g)増幅されたファージミド粒子を収集することであって、増幅されたファージミド粒子が、ファージコートタンパク質の少なくとも一部及び増幅されたCDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするファージミド粒子を含む、収集することと、を含む、方法が提供される。
【0026】
任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号7~11及び121~130に示される配列のうちのいずれかを含むか又はそれらからなる。
【0027】
任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号7~11に示される配列のうちのいずれかを含むか又はそれらからなる。任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号8~11に示される配列のうちのいずれかを含むか又はそれらからなる。任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、121~130に示される配列のうちのいずれかを含むか又はそれらからなる。任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号123、127及び128に示される配列のうちのいずれかを含むか又はそれらからなる。
【0028】
任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号7~11及び121~130に示されるプライマーのうちの2つ以上を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号8~11並びに123、127、及び128に示されるプライマーのうちの2つ以上を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号8~11並びに123、127、及び128に示されるプライマーのうちの3つ以上を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号8~11並びに123、127、及び128に示されるプライマーのうちの4つ以上を含む。
【0029】
任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号8に示される配列からなるプライマー、配列番号9に示される配列からなるプライマー、配列番号10に示される配列からなるプライマー、及び配列番号11に示される配列からなるプライマーを含む。
【0030】
任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号123に示される配列からなるプライマー、配列番号127に示される配列からなるプライマー、及び配列番号128に示される配列からなるプライマーを含む。
【0031】
任意の実施形態のいくつかにおいて、プライマーは、配列番号8に示される配列からなるプライマー、配列番号9に示される配列からなるプライマー、配列番号10に示される配列からなるプライマー、配列番号11に示される配列からなるプライマー、配列番号123に示される配列からなるプライマー、配列番号127に示される配列からなるプライマー、及び配列番号128に示される配列からなるプライマーを含む。
【0032】
任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、ウシ抗体可変重(VH)鎖鋳型配列からCDR3-ノブを同定することを更に含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、CDR3-ノブは、フレームワーク3中の保存されたシステイン及びフレームワーク4中の保存されたトリプトファンを同定すること、並びにCDR-3ノブが、アミノ酸配列長Kを有し、配列が、位置X+1で始まり、X+Kで終わり、K=L-2X(式中、Lは、フレームワーク3中の保存されたシステインから始まり、フレームワーク4中の保存されたトリプトファンで終わるアミノ酸配列中のアミノ酸の数であり、Xは、フレームワーク3中の最初のシステインからCDR H3中のDH領域によってコードされる最初の保存されたシステインまでのアミノ酸の数である)である、CDR-3ノブの配列を決定することを含むアルゴリズムによって抗体配列から同定される。
【0033】
任意の実施形態のいくつかにおいて、抗体配列は、ウシ抗体である。任意の実施形態のいくつかにおいて、同定されたCDR3-ノブは、同定された配列と比較して、N及び/又はC末端で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸だけ伸長されている。
【0034】
任意の実施形態のいくつかにおいて、複数のCDR3-ノブのみの抗体の各々は、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、40~60アミノ酸長である。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、少なくとも42アミノ酸長である。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、又は60アミノ酸長である。
【0035】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、少なくとも4つのシステイン残基を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、4つのシステイン残基を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、6、8、10、又は12のシステイン残基を含む。
【0036】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、少なくとも2つのジスルフィド結合を有する。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、2つのジスルフィド結合を有する。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、3、4、又は5つのジスルフィド結合を有する。
【0037】
任意の実施形態のいくつかにおいて、標的抗原は、非病原性細菌、ウイルス、ウイルスタンパク質、免疫調節タンパク質(例えば、チェックポイント分子)、癌抗原、ヒトIgG、又はそれらの組換えタンパク質である。任意の実施形態のいくつかにおいて、免疫調節タンパク質は、チェックポイント分子である。
【0038】
任意の実施形態のいくつかにおいて、cDNA鋳型ライブラリーは、IgM(配列番号4)、IgA(配列番号5)、及びIgG特異的(配列番号3及び6)プライマーのプールを使用して合成された。任意の実施形態のいくつかにおいて、cDNA鋳型ライブラリーは、配列番号4に示される配列を含むか又はそれからなるプライマー、配列番号5に示される配列を含むか又はそれからなるプライマー、配列番号3に示される配列を含むか又はそれからなるプライマー、及び配列番号6に示される配列を含むか又はそれからなるプライマーを含む、IgM、IgA、及びIgG特異的プライマーのプールを使用して合成される。
【0039】
本明細書では、いくつかの実施形態において、超長CDR3ノブファージディスプレイライブラリーを調製する方法であって、(a)複数のCDR3-ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列をコードする第1の核酸配列を含む、構築することと、(b)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、(c)増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、増幅されたディスプレイ粒子が、CDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法が提供される。
【0040】
任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅されたディスプレイ粒子は、細菌ディスプレイ粒子、酵母ディスプレイ粒子、哺乳類ディスプレイ粒子、ファージディスプレイ粒子、mRNAディスプレイ粒子、リボソームディスプレイ粒子、又はDNAディスプレイ粒子を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅されたディスプレイ粒子は、ファージディスプレイ粒子である。任意の実施形態のいくつかにおいて、増幅されたディスプレイ粒子は、ファージミド粒子である。任意の実施形態のいくつかにおいて、各複製可能な発現ベクターは、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含み、方法は、ファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることを更に含み、それによって、融合タンパク質は、ファージコートタンパク質の少なくとも一部を含む。
【0041】
本明細書では、いくつかの実施形態において、超長CDR3ノブファージディスプレイライブラリーを調製する方法であって、(a)複数のCDR3-ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、(1)1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列をコードする第1の核酸配列、及び(2)ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を含む、構築することと、(b)複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、(c)増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分なファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることと、(d)増幅されたファージミド粒子を収集することであって、増幅されたファージミド粒子が、ファージコートタンパク質の少なくとも一部及びCDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするファージミド粒子を含む、収集することと、を含む、方法が提供される。
【0042】
任意の実施形態のいくつかにおいて、複数のCDR3-ノブ抗体のうちの少なくとも1つは、フレームワーク3中の保存されたシステイン及びフレームワーク4中の保存されたトリプトファンを同定すること、並びにCDR-3ノブが、アミノ酸配列長Kを有し、配列が、位置X+1で始まり、X+Kで終わり、K=L-2X(式中、Lは、フレームワーク3中の保存されたシステインから始まり、フレームワーク4中の保存されたトリプトファンで終わるアミノ酸配列中のアミノ酸の数であり、Xは、フレームワーク3中の最初のシステインからCDR H3中のDH領域によってコードされる最初の保存されたシステインまでのアミノ酸の数である)であるCDR-3ノブの配列を決定することを含むアルゴリズムによって抗体配列から同定される。任意の実施形態のいくつかにおいて、抗体配列は、ウシ抗体である。任意の実施形態のいくつかにおいて、少なくとも1つのCDR3-ノブ抗体は、同定された配列と比較して、N及び/又はC末端で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸だけ伸長されている配列を有する。
【0043】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインを含み、システインモチーフは、上昇ストークドメインと下降ストークドメインとの間にある。
【0044】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、標的抗原で免疫化されたウシからのDNAから増幅される。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、ウシの超長CDR3領域のストークドメインのいずれかの側に特異的なプライマーを使用して、免疫化ウシからの可変重鎖cDNAライブラリーから増幅される。
【0045】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、システインモチーフのN末端側に上昇ストークドメインを含まない。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、システインモチーフのC末端側に下降ストークドメインを含まない。
【0046】
任意の実施形態のいくつかにおいて、上昇ストークドメインは、配列CX2TVX5Qを含み、配列中、X2及びX5は、任意のアミノ酸である。任意の実施形態のいくつかにおいて、X2は、Ser、Thr、Gly、Asn、Ala、又はProであり、X5は、His、Gln、Arg、Lys、Gly、Thr、Tyr、Phe、Trp、Met、Ile、Val、又はLeuである。任意の実施形態のいくつかにおいて、X2は、Ser、Ala、又はThrであり、X5は、His又はTyrである。
【0047】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、合成CDR3-ノブである。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、シクロチド又は修飾されたシクロチドである。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、ウシCDR3-ノブに由来する半合成CDR3-ノブである。
【0048】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、40~60アミノ酸長である。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、少なくとも42アミノ酸長である。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、又は60アミノ酸長である。
【0049】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、少なくとも4つのシステイン残基を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、4つのシステイン残基を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、6、8、10、又は12のシステイン残基を含む。
【0050】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、少なくとも2つのジスルフィド結合を有する。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、2つのジスルフィド結合を有する。任意の実施形態のいくつかにおいて、ペプチド配列は、3、4、又は5つのジスルフィド結合を有する。
【0051】
任意の実施形態のいくつかにおいて、複数のCDR3ノブは、ペプチド配列をコードする核酸配列内の1つ以上の選択された位置で変異され、複数の複製可能な発現ベクターは、変異ベクターのファミリーである。
【0052】
任意の実施形態のいくつかにおいて、発現ベクターは、分泌シグナル配列を更に含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、分泌シグナル配列は、pelBシグナル配列である。
【0053】
任意の実施形態のいくつかにおいて、好適な宿主細胞は、E.coli細胞である。任意の実施形態のいくつかにおいて、好適な宿主細胞は、TG1エレクトロコンピテント細胞である。
【0054】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ファージミド粒子は、M13ファージに由来する。任意の実施形態のいくつかにおいて、コートタンパク質は、M13ファージ遺伝子IIIコートタンパク質(pIII)である。任意の実施形態のいくつかにおいて、ヘルパーファージは、M13K07、M13R408、M13-VCS、及びファイX174からなる群から選択される。任意の実施形態のいくつかにおいて、ヘルパーファージは、M13K07である。
【0055】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ディスプレイ粒子は、平均して、粒子の表面上に融合タンパク質の1つのコピーをディスプレイする。
【0056】
本明細書では、いくつかの実施形態において、提供される方法のうちのいずれかによって産生されるディスプレイ粒子のライブラリーが提供される。
【0057】
本明細書では、いくつかの実施形態において、複製可能な発現ベクターであって、BLV1H12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、及びF18のVL領域から選択される可変ラムダ軽(VL)領域、又はそのヒト化バリアントに連結された超長CDR3を含むウシ可変重(VH)領域を含む単鎖可変断片をコードする第1の核酸配列を含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクターが提供される。
【0058】
本明細書では、いくつかの実施形態において、複製可能な発現ベクターであって、BLV1H12ラムダ可変軽(VL)領域、又はそのヒト化バリアントに連結された超長CDR3を含むウシ可変重(VH)領域を含む単鎖可変断片をコードする第1の核酸配列を含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクターが提供される。
【0059】
任意の実施形態のいくつかにおいて、複製可能な発現ベクターは、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含む。
【0060】
本明細書では、いくつかの実施形態において、提供される複製可能な発現ベクターのうちのいずれかによってコードされるディスプレイ粒子が提供される。
【0061】
本明細書では、いくつかの実施形態において、複数の提供されるディスプレイ粒子のうちのいずれかを含むディスプレイ粒子のライブラリーが提供される。
【0062】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ライブラリー中のディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約20%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、ライブラリー中のディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約30%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、ライブラリー中のディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約40%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、ライブラリー中のディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約50%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む。
【0063】
本明細書では、いくつかの実施形態において、複製可能な発現ベクターであって、ジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列をコードする第1の核酸配列を含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクターが提供される。
【0064】
任意の実施形態のいくつかにおいて、複製可能な発現ベクターは、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含む。
【0065】
本明細書では、いくつかの実施形態において、提供される複製可能な発現ベクターのうちのいずれかによってコードされるディスプレイ粒子が提供される。
【0066】
本明細書では、いくつかの実施形態において、複数の提供されるディスプレイ粒子のうちのいずれかを含むディスプレイ粒子のライブラリーが提供される。
【0067】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ディスプレイ粒子は、ファージディスプレイ粒子である。任意の実施形態のいくつかにおいて、ディスプレイ粒子は、ファージミド粒子である。
【0068】
本明細書では、いくつかの実施形態において、抗体結合タンパク質を選択するための方法であって、(1)ディスプレイ粒子の標的分子への結合を可能にする条件下で、ディスプレイ粒子の提供されたライブラリーのうちのいずれかを標的分子と接触させることと、(2)結合するディスプレイ粒子を結合しないものから分離し、それによって、標的分子に結合する抗体結合タンパク質を含むディスプレイ粒子を選択することと、を含む、方法が提供される。
【0069】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ディスプレイ粒子は、ファージディスプレイ粒子である。任意の実施形態のいくつかにおいて、ディスプレイ粒子は、ファージミド粒子である。
【0070】
任意の実施形態のいくつかにおいて、標的分子は、非病原性細菌、ウイルス、ウイルスタンパク質、免疫調節タンパク質(例えば、チェックポイント分子)、癌抗原、ヒトIgG、又はそれらの組換えタンパク質である。任意の実施形態のいくつかにおいて、標的分子は、コロナウイルス、コロナウイルス偽ウイルス、組換えコロナウイルススパイクタンパク質、又はコロナウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(receptor-binding domain、RBD)である。任意の実施形態のいくつかにおいて、コロナウイルスは、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、及びSARS-CoV2からなる群から選択される。任意の実施形態のいくつかにおいて、コロナウイルスは、Wuhan-Hu-1単離株、B.1.351南アフリカバリアント、又はB.1.1.7 UKバリアントから選択されるSARS-CoV2である。
【0071】
任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、(i)好適な宿主細胞に、(2)で結合する選択されたディスプレイ粒子をコードする複製可能な発現ベクターで感染させることと、(ii)増幅されたディスプレイ粒子を収集することと、(iii)増幅されたディスプレイ粒子をディスプレイ粒子のライブラリーとして使用して、ステップ(1)及び(2)を繰り返すことと、を更に含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、ディスプレイ粒子はファージミド粒子であり、方法は、増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることを更に含む。
【0072】
任意の実施形態のいくつかにおいて、ステップは1回以上繰り返される。任意の実施形態のいくつかにおいて、ステップは、同じ標的分子又は異なる標的分子を用いて繰り返される。任意の実施形態のいくつかにおいて、ステップは、異なる標的分子を用いて繰り返され、異なる標的分子は、標的分子に関連している。任意の実施形態のいくつかにおいて、異なる標的分子は、標的分子と同じタイプの病原体であるか、標的分子と同じ病原体群にあるか、又は標的分子のバリアントである。
【0073】
任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、選択されたディスプレイ粒子中の融合遺伝子を配列決定して、抗体結合タンパク質を同定することを更に含む。
【0074】
任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、選択された抗体結合タンパク質から全長IgG又はFabを産生することを更に含む。
【0075】
任意の実施形態のいくつかにおいて、抗体結合タンパク質は、scFvであり、方法は、scFvのVH領域を定常領域又はその一部と連結することを含む、重鎖又はその一部を構築することを含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、ヒト化ウシVH領域の超長CDR3領域のノブ領域を、選択された抗体結合タンパク質の超長CDR3領域で置換することによってヒト化VH領域を構築することを含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、選択された抗体結合タンパク質の超長CDR3領域は、ヒト化ウシVH領域の上昇ストーク鎖と下降ストーク鎖との間で置換される。任意の実施形態のいくつかにおいて、VH領域は、式V1-X-V2を含み、重鎖のV1領域は、配列番号111に示される配列を含み、X領域は、選択された抗体結合タンパク質の超長CDR3を含み、V2領域は、配列番号112に示される配列を含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、ヒト化VH領域を定常領域又はその一部と連結することを含む、重鎖又はその一部を構築することを更に含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、重鎖又はその一部は、ヒトIgG1重鎖又はその一部である。
【0076】
任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、重鎖又はその一部を軽鎖と共発現させることを更に含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、軽鎖は、BLVH12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、若しくはF18のウシ軽鎖であるか、又はそのヒト化バリアントである。任意の実施形態のいくつかにおいて、軽鎖は、BLV1H12軽鎖(配列番号113)又はそのヒト化バリアントである。任意の実施形態のいくつかにおいて、軽鎖は、配列番号114に示されるヒト化軽鎖である。任意の実施形態のいくつかにおいて、軽鎖は、BLV5B8軽鎖(配列番号115)又はそのヒト化バリアントである。任意の実施形態のいくつかにおいて、軽鎖はヒト軽鎖である。任意の実施形態のいくつかにおいて、軽鎖は、VL1~47、VL1~40、VL1~51、及びVL2~18からなる群から選択される。任意の実施形態のいくつかにおいて、軽鎖は、配列番号116~120のうちのいずれか1つに示される。
【0077】
任意の実施形態のいくつかにおいて、軽鎖は、配列番号113に示される配列を含むBLV1H12軽鎖又はそのヒト化バリアントである。任意の実施形態のいくつかにおいて、軽鎖は、配列番号115に示される配列を含むBLV5B8軽鎖又はそのヒト化バリアントである。
【0078】
本明細書では、いくつかの実施形態において、可溶性超長CDR3ノブを産生するための方法であって、(a)切断可能なリンカーによって連結された超長CDR3ノブ及び細菌シャペロンを含む融合タンパク質をコードする発現ベクターでE.coliを形質転換することであって、超長CDR3ノブが、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列である、形質転換することと、(b)融合タンパク質の発現を許容する条件下で、細菌を培養することと、(c)細菌細胞溶解物の上清から融合タンパク質を単離することと、(d)融合タンパク質の切断可能なリンカーを切断し、それによって、細菌シャペロンを含まない1~6つのジスルフィド結合を含む可溶性超長CDR3ノブを産生することと、を含む、方法が提供される。
【0079】
任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3ノブは、提供される方法のうちのいずれかによって選択される抗体結合タンパク質である。
【0080】
任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3ノブは、提供される方法のうちのいずれかによって同定される抗体結合タンパク質である。
【0081】
任意の実施形態のいくつかにおいて、融合タンパク質は、超長CDR3ノブ単独と比較して増加した溶解度を有する。任意の実施形態のいくつかにおいて、細菌シャペロンは、チオレドキシンA(thioredoxin A、TrxA)である。
【0082】
任意の実施形態のいくつかにおいて、切断可能なリンカーは、アミノ酸配列DDDDK(配列番号106)を有するエンテロキナーゼ切断タグである。任意の実施形態のいくつかにおいて、切断可能なリンカーを切断することは、エンテロキナーゼを上清に添加することを含む。
【0083】
任意の実施形態のいくつかにおいて、可溶性超長CDR3ノブは、化学的方法又は酵素的方法を介した可溶性超長CDR3ノブの環化を可能にする更なるリンカーを含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、更なるリンカーは、ソルターゼ媒介環化を可能にする。任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、可溶性超長CDR3ノブを環化することを更に含む。
【0084】
任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、(e)可溶性超長CDR3ノブを含む溶液からエンテロキナーゼ及び/又は細菌シャペロンを除去することを更に含む。
【0085】
任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、可溶性超長CDR3ノブを含む溶液から可溶性超長CDR3ノブを富化することを更に含む。任意の実施形態のいくつかにおいて、富化することは、サイズ排除クロマトグラフィを含む。
【0086】
任意の実施形態のいくつかにおいて、方法は、可溶性超長CDR3ノブを含む多重特異性結合分子を産生することを更に含む。
【0087】
任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3ノブは、3~8kDaのサイズである。任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3ノブは、4~5kDaのサイズである。
【0088】
本明細書では、いくつかの実施形態において、切断可能なリンカーによって連結された超長CDR3ノブ及び細菌シャペロンを含む融合タンパク質であって、超長CDR3ノブが、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列である、融合タンパク質が提供される。
【0089】
任意の実施形態のいくつかにおいて、細菌シャペロンは、チオレドキシンA(TrxA)である。
【0090】
任意の実施形態のいくつかにおいて、切断可能なリンカーは、アミノ酸配列DDDDK(配列番号106)を有するエンテロキナーゼ切断タグである。
【0091】
任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3ノブは、1~6つのジスルフィド結合を含む。
【0092】
本明細書では、いくつかの実施形態において、提供される融合タンパク質のうちのいずれかを含む組成物が提供される。
【0093】
本明細書では、CDR3ノブ配列を抗体配列から同定する方法であって、フレームワーク3中の保存されたシステイン及びフレームワーク4中の保存されたトリプトファンを同定すること、並びにCDR-3ノブが、アミノ酸配列長Kを有し、配列が、位置X+1で始まり、X+Kで終わり、K=L-2X(式中、Lは、フレームワーク3中の保存されたシステインから始まり、フレームワーク4中の保存されたトリプトファンで終わるアミノ酸配列中のアミノ酸の数であり、Xは、フレームワーク3中の最初のシステインからCDR H3中のDH領域によってコードされる最初の保存されたシステインまでのアミノ酸の数である)であるCDR-3ノブの配列を決定することを含む、方法が提供される。任意の実施形態のいくつかにおいて、抗体配列は、ウシ抗体である。任意の実施形態のいくつかにおいて、CDR3-ノブ抗体は、同定された配列と比較して、N及び/又はC末端で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸だけ伸長されている配列を有する。
【0094】
本明細書では、いくつかの実施形態において、提供される方法のうちのいずれかによって産生される精製された可溶性超長CDR3ノブであって、可溶性超長CDR3が、25~75アミノ酸長であり、1~6つのジスルフィド結合を含む、精製された可溶性超長CDR3ノブが提供される。
【0095】
任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3ノブは、3~8kDaのサイズである。任意の実施形態のいくつかにおいて、超長CDR3ノブは、4~5kDaのサイズである。
【0096】
いくつかの実施形態において、超長CDR3ノブは、アミノ酸配列長Kを有し、配列は、位置X+1で始まり、X+Kで終わり、K=L-2X(式中、Lは、フレームワーク3中の保存されたシステインから始まり、フレームワーク4中の保存されたトリプトファンで終わる抗体のアミノ酸配列中のアミノ酸の数であり、Xは、フレームワーク3中の最初のシステインから、CDR H3中のDH領域によってコードされる最初の保存されたシステインまでのアミノ酸の数である)である。いくつかの実施形態において、抗体配列は、ウシ抗体である。いくつかの態様において、ノブ配列は、N及び/又はC末端で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸だけ更に伸長されている配列を有する。
【0097】
本明細書では、長さKの配列を有するペプチドノブであって、ノブが、アミノ酸配列長Kを有し、配列は、位置X+1で始まり、X+Kで終わり、K=L-2X(式中、Lは、フレームワーク3中の保存されたシステインから始まり、フレームワーク4中の保存されたトリプトファンで終わる抗体のアミノ酸配列中のアミノ酸の数であり、Xは、フレームワーク3中の最初のシステインから、CDR H3中のDH領域によってコードされる最初の保存されたシステインまでのアミノ酸の数である)である、ペプチドノブが提供される。いくつかの実施形態において、抗体配列は、ウシ抗体である。いくつかの態様において、ノブ配列は、N及び/又はC末端で1、2、3、4、又は5個のアミノ酸だけ更に伸長されている配列を有する。
【0098】
本明細書では、いくつかの実施形態において、提供される精製された可溶性超長CDR3のうちのいずれかを含む組成物が提供される。
【0099】
任意の実施形態のいくつかにおいて、組成物は、薬学的に許容される担体を更に含む。
【0100】
任意の実施形態のいくつかにおいて、組成物は、非経口投与用に製剤化される。任意の実施形態のいくつかにおいて、組成物は、静脈内、筋肉内、局所、耳、結膜、鼻、吸入、又は皮下投与用に製剤化される。任意の実施形態のいくつかにおいて、組成物は、吸入による投与用に製剤化される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】4~6kDaのサイズを有する「ノブ」ペプチドを含む、例示的な超長CDR3ウシ抗体の概略図を示す。
【
図2A】ELISAによるSARS CoV-2 Sタンパク質のRBDドメインに対する免疫化ウシ血清の結合を示す。
【
図2B】SARS-CoV-2偽ウイルスに対する血清IgGの中和活性を示す。
【
図3A】各ディスプレイライブラリー(すなわち、scFv及び「ノブ」ディスプレイ)におけるpIIIファージ融合構築物を示す。
【
図3B】NcoI-NotI断片としてのウシCDR3ノブDNA断片の直接クローニングに使用されるpTAU1ファージベクター多重クローニング部位の概略図を示す。
【
図3C】BLV1H12 V-ラムダDNAとインフレームでNcoI-XhoI断片としてウシVH DNA断片をクローニングするために使用されるpTAU1-BLV1H12(-VH)ファージscFvベクター多重クローニング部位の概略図を示す。
【
図3D】アガロースゲル上の超長VH断片と超長CDR3領域を含まないより短いVH断片との間の分離を示す。
【
図4】例示的な超長抗体R2C1(SKD、配列番号68)、R2C3(SKM、配列番号69)、R4C1(配列番号70)、R5C1(配列番号71)、SR3A3(配列番号72)、RR2F12(配列番号73)、及びRR2G3(配列番号74)の配列アラインメントを示す。生殖系列配列も示されている(配列番号75)。
【
図5A】例示的なキメラウシ-ヒトIgG1抗体のスパイクタンパク質への結合を示す。
【
図5C】いくつかのSARS CoV株に由来する組換え安定化スパイクタンパク質へのIgG抗体のELISA結合を示す。
【
図5D】オミクロンバリアントRBD(左)又は組換え安定化スパイク三量体(右)に対する選択IgG抗体のELISA結合曲線を示す。
【
図5E】SARS-CoV-1と比較したSARS-CoV-2に対するR4C1及びR2D9の例示的なELISAデータを反映する。
【
図5F】WT(Wuhan)SARS CoV-2スパイクタンパク質に対する3つの異なる例示的な抗体ノブ候補についてのELISA結合活性を示す。
【
図5G】SDSを使用し、ビオチン化RBDで検出した改変ウエスタンブロットを示す。
【
図6A】trxA-CDR3-ノブ融合及びCDR3-ノブ発現に使用されるpET32bベクタークローニング部位の概略図を示す。
【
図6B】細菌溶解物からの精製プロセスの概略図を示す。
【
図6C】E.coli溶解物からの可溶性CDR3-ノブの効率的な精製を示すCDR3-ノブSDS-PAGEを示す。
【
図6D】いくつかの精製された超長CDR H3ノブペプチドの例示的なSDS-PAGEゲルを示す。
【
図7A】IMAC精製されたtrxA融合物の連続希釈を使用した、Wuhan-Hu-1スパイクタンパク質捕捉ELISAの結果を示す。
【
図7B】TrxA-R2G3融合タンパク質の結合も示す。
【
図8A】例示的な精製されたR2-G3 CDR3-ノブへの可溶性ビオチン化RBD結合のバックグラウンド除去ELISAを示す。
【
図8B】参照抗スパイク抗体(CR3022)と比較した可溶性R2G3ノブ結合を示す。
【
図8C】例示的な切断されたR2G3変異体のアミノ酸配列を示す。例示的な切断されたR2G3変異体としては、R2G3 TRUNC1(配列番号87)、R2G3 TRUNC2(配列番号88)、R2G3 TRUNC3(配列番号89)、R2G3 TRUNC3A(配列番号90)、R2G3 TRUNC3B(配列番号91)、R2G3 TRUNC4(配列番号92)、及びR2G3 TRUNC5(配列番号93)が挙げられる。例示的な切断された変異体が由来する親R2G3バリアントもまた示される(配列番号86)。
【
図8D】細菌発現及び精製後のR2G3切断物のSDS-PAGEを示す。
【
図8E】コーティングされたCDR3-ノブ切断によるビオチン化RBDのELISA結合の結果を示す。
【
図9A】精製されたR4C1ノブについてのサイズ排除クロマトグラフを示す。
【
図9B】2つの画分(A4及びA7)のゲル電気泳動ゲルを示す。
【
図9C】精製されたR2G3ノブについてのサイズ排除クロマトグラフを示す。
【
図10A】野生型(
図10A)、「UK」バリアント(
図10B)、「484K」バリアント(
図10C)、及び「SA」バリアント(
図10D)SARS CoV-2スパイクタンパク質発現ウイルスに対する4つの例示的な超長CDR3抗体(F12、G3、SKD、及びSKM)についての偽ウイルスルシフェラーゼアッセイの結果を示す。
【
図10B】野生型(
図10A)、「UK」バリアント(
図10B)、「484K」バリアント(
図10C)、及び「SA」バリアント(
図10D)SARS CoV-2スパイクタンパク質発現ウイルスに対する4つの例示的な超長CDR3抗体(F12、G3、SKD、及びSKM)についての偽ウイルスルシフェラーゼアッセイの結果を示す。
【
図10C】野生型(
図10A)、「UK」バリアント(
図10B)、「484K」バリアント(
図10C)、及び「SA」バリアント(
図10D)SARS CoV-2スパイクタンパク質発現ウイルスに対する4つの例示的な超長CDR3抗体(F12、G3、SKD、及びSKM)についての偽ウイルスルシフェラーゼアッセイの結果を示す。
【
図10D】野生型(
図10A)、「UK」バリアント(
図10B)、「484K」バリアント(
図10C)、及び「SA」バリアント(
図10D)SARS CoV-2スパイクタンパク質発現ウイルスに対する4つの例示的な超長CDR3抗体(F12、G3、SKD、及びSKM)についての偽ウイルスルシフェラーゼアッセイの結果を示す。
【
図11A】様々なコロナウイルス株からの偽ウイルスに対する異なるIgG抗体のIC50値を示す。
【
図11B】野生型SARS-CoV-2偽ウイルスの中和におけるR2G3 IgG、Fab、及びノブの比較を示す。
【
図12】多重特異性ノブペプチド組成物及びフォーマットの図である。複数のパラトープノブペプチドを、ホモ二量体又はヘテロ二量体として含む免疫グロブリンに結合させて、多重特異性結合ポリペプチドを提供することができる。複数のパラトープノブペプチドはまた、例えばリンカーを介して直列に直接連結されてもよい。複数のノブペプチドを混合物又はカクテルとして組み合わせて、組み合わせたポリクローナル組成物を提供することもできる。
【
図13A】BLV1H12 Fab(PDB 4k3d)の結晶構造を示す。
【
図13B】フレームワーク3システイン、ノブ位置1システイン、及びフレームワーク4トリプトファン側鎖を有するストーク及びノブ領域の拡大図が示される。
【
図14】12の例示的な抗体についてのストーク及びノブ領域の配列アラインメントを示す。ノブ領域は、黒色で強調された白色文字で示される上昇ストーク領域及び下降ストーク領域に隣接する。
【
図15】CDR H3に加えてN末端に3つの残基を含むストーク及びノブドメイン(L)の概略図である。
【
図16A】ELISAを介して評価した、コーティングされたCDR3-ノブ切断によるビオチン化RBDの結合を示す。
【
図16B】細菌発現及び精製後のR2G3切断物の例示的なSDS-PAGEを示す。
【
図17A】コーティングされたCDR3-ノブN末端切断によるビオチン化RBDのELISA結合を示す。
【
図17B】細菌発現及び精製後のR2G3 N末端切断の例示的なSDS-PAGEを示す。
【
図18A】ウシ超長CDR3領域の上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインに特異的なプライマーの配列アラインメントを示す。
【
図18B】プライマーを使用した増幅によって得られたPCR産物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0102】
本明細書では、いくつかの実施形態において、ウシ又は合成超長CDR3ディスプレイライブラリー又はシクロチドディスプレイライブラリーを含むディスプレイライブラリーを調製する方法、並びに標的分子に特異的な結合分子について当該ライブラリーをスクリーニングする方法が提供される。いくつかの実施形態において、ディスプレイライブラリーは、例えば、超長CDR3をコードする配列を富化又は選択するために、免疫化ウシのcDNAから選択的に増幅された配列に由来する。本明細書ではまた、いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドを産生する方法、場合によっては可溶性超長CDR3ノブを産生する方法も提供される。産生される可溶性超長CDR3ノブは、ウシ又は合成であり得る。提供される方法により産生される可溶性ペプチドはまた、シクロチドを含む。
【0103】
いくつかの態様において、提供される方法は、独立した結合単位として提供される方法により独立して発現及び産生され得る、超長CDR3を含むウシ抗体に由来するものを含む、ジスルフィド結合したノブペプチドのスクリーニング及び産生を可能にする。いくつかの態様において、提供される方法は、単純な免疫化に基づくディスカバリープラットフォームを提供する。このプラットフォームは、インビトロディスプレイベースのプラットフォームのペプチド構造多様性よりも大きいペプチド構造多様性を提供し、スクリーニング及び産生された各ノブペプチドは、潜在的にそれ自体の新規ジスルフィド結合構造を有する。このプラットフォームはまた、標的分子に対する迅速なヒットディスカバリーを可能にする。
【0104】
本明細書に記載されるように、ウシ抗体は、異常な構造を有するサブドメインが、2つの12残基の逆平行β鎖(上昇鎖及び下降鎖)から構成される「ストーク」、及び標準抗体パラトープから離れてストークの上に位置するより長い、例えば39残基のジスルフィド豊富「ノブ」から形成される構造を形成する超長CDR3配列を含む独特な構造を有する。超長CDR3のノブ領域は、抗原結合を付与する。ヒト及びマウスなどの他の種からの抗体とは異なり、ウシ又はウシ由来の抗体のCDR領域L1、L2、L3、H1、及びH2は、それらの配列多様性のほとんどがCDR H3にあるため、より少ない配列多様性を示す(Stanfield et al.2016 Sci.Immunol,1(1):doi:10.1126/sciimmunol.aaf7962)。したがって、ウシ又はウシ由来の抗体では、抗原結合は主にCDR H3を介して、又はそれのみを介してであり、他のCDRは抗原結合に寄与しない。
【0105】
独特な超長CDR H3構造の分析及び活用の利用可能な方法は、完全に満足できるものではない。多くの場合、方法は、単離されたノブドメインの切除及び精製を必要とする(Macpherson et al.2020 PLOS Biology,18(9):e30000821)。そのような方法は、治療用分子を生成するための良好な製造実施に容易に従うことができず、また、産生され得るノブタンパク質の量に関して非効率的である。更に、ノブの切除のための酵素の使用も、単離されたタンパク質の完全性を損ない得る。
【0106】
注目すべきことに、ウシ抗体の超長CDR-H3に由来するジスルフィド結合したノブペプチドは、独立して発現され得、独立した結合単位として提供される方法により産生され得、標的分子(例えば、SARS-CoV2)に対するピコモル濃度の結合親和性及び中和活性を保持することが本明細書において見出される。このノブペプチドは、およそ4~5kDa、例えば約4.4kDaのサイズしかなく、最小の独立した抗原結合ドメインを表す。これは、より大きな抗体と同様に、高い親和性及びエピトープ被覆度を示す。その小さなサイズは、小分子のサイズに近づき、それによって、新しい新規の治療薬としての抗原結合ドメインの有用性を開く。例えば、その小さいサイズは、より良好な組織浸透を可能にし、肺胞送達も可能にする。更に、提供されるノブペプチドは、それらの強固なジスルフィド結合した小ドメインにより安定である。この安定な構造は、ナノボディ及び他の免疫グロブリンドメインベースの断片において見られる凝集を回避する。また、本明細書で実証されるように、知見はまた、E.coliにおいて提供される方法により高収率で産生され得、ノブペプチドを治療用分子として非常に開発可能なものにすることを示す。提供される方法により生成されるペプチドは、mAb又はノブのいずれかとして、既知のウイルス又はウイルスクラスを標的とすることができる。いくつかの態様において、mAb及びノブは、パンデミック発生の場合に迅速な発見及び産生の準備ができており、疾患の新しい株の場合に迅速に旋回させることができる。いくつかの態様において、提供される方法によるmAb及びノブ産生は、GMP標準に迅速に移行することができる。いくつかの態様において、ノブは、治療レジメンの「カクテル」のために使用することができる。
【0107】
提供される方法によりスクリーニング及び産生されたノブペプチドのうちのいずれかを含む組成物も本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、SARS-CoV2などの所望の抗原に結合するための単一パラトープを提供する単一ノブペプチドを提供するモノクローナルであり得る。他の実施形態において、提供される組成物はポリクローナルであり、抗原の異なるエピトープ又は異なる抗原に対する異なるノブペプチドの混合物又はカクテルを含む(
図12)。
【0108】
更に、小さく独特なサイズのノブペプチドを活用する多重特異性結合フォーマットも本明細書において提供される(
図12)。例えば、異なるノブパラトープを、Fcの二量体化が二価又は多価フォーマットを提供するヒト又はヒト化超長CDR-H3全長抗体の骨格に操作することができる。場合によっては、「ノブ・イントゥ・ホール(knobs into hole)」Fc操作戦略を使用して、各々がSARS-CoV2のスパイクタンパク質などの所望の抗原に結合するための異なるパラトープを提供する2、3、4つ以上の異なるノブペプチドを含むヘテロ二量体二重特異性又は多重特異性フォーマットを産生することができる。
【0109】
本明細書ではまた、抗体又は抗原結合断片又はノブポリペプチドを含む提供される結合ポリペプチド、及びその組成物の治療方法及び使用も提供される。
【0110】
I.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、並びに他の専門用語及び科学用語又は用語法は、本特許請求の主題が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。場合によっては、一般的に理解される意味を有する用語は、明確さのために、及び/又は容易な参照のために本明細書において定義され、本明細書におけるそのような定義の包含は、必ずしも、当該技術分野において一般的に理解されるものに対する実質的な差異を表すと解釈されるべきではない。
【0111】
本明細書で使用される場合、冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つ又は1つより多いこと(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0112】
本開示全体を通して、特許請求される主題の様々な態様が範囲フォーマットで表される。範囲フォーマットでの記載は、単に便宜上及び簡潔さのためであり、特許請求される主題の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の数値を有すると考えられるべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、及びその記載される範囲内の任意の他の記載値又は介在値が、特許請求される主題内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さな範囲に含めることができ、また、特許請求される主題の範囲内に包含され、記載された範囲内で特に除外された制限を受ける。記載される範囲が限度の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれか又は両方を除く範囲もまた、特許請求される主題に含まれる。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0113】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当業者によって理解され、それが使用される文脈である程度変動する。本明細書で使用される場合、「約」は、測定可能な値、例えば、量、持続時間などに言及する場合、特定の値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%、なおより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は、開示される方法を行うのに適切である。
【0114】
本明細書において交換可能に使用される「超長CDR3」又は「超長CDR3配列」は、ヒト抗体配列に由来しないCDR3又はCDR3配列を含む。超長CDR3は、35アミノ酸長以上、例えば、40アミノ酸長以上、45アミノ酸長以上、50アミノ酸長以上、55アミノ酸長以上、又は60アミノ酸長以上であってもよい。いくつかの実施形態において、超長CDR3は、25~70アミノ酸長、例えば40~70アミノ酸長である。典型的には、超長CDR3は、重鎖CDR3(CDR-H3又はCDRH3)である。超長CDR3H3は、反芻動物(例えば、ウシ)配列のCDRH3の特徴を示す。超長CDR3の構造は、上昇鎖及び下降鎖(例えば、各々約12アミノ酸長)から構成される「ストーク」と、ストークの上に位置するジスルフィド豊富「ノブ」とを含む。超長CDR3の独特な「ストーク及びノブ」構造は、ミニ抗原結合ドメインを形成するために抗体表面から突出するジスルフィド結合したノブを支持する2つの逆平行β鎖(上昇ストーク鎖及び下降ストーク鎖)をもたらす。いくつかの実施形態において、超長CDR3抗体は、順に、上昇ストーク領域、ノブ領域、及び下降ストーク領域を含む。
【0115】
本明細書で使用される場合、交換可能に使用される「CDR3-ノブ」又は「ノブ」は、40~70アミノ酸長のペプチド配列である超長CDR3の一部を指し、当該CDR3-ノブは、少なくとも4つの非標準Cys残基、例えば6、8、10又は最大12の非標準システイン残基を有し、2~6つのジスルフィド結合を形成する。典型的には、ノブは、アミノ酸モチーフシステイン-プロリン(cysteine-proline、CP)を有する最初のシステイン残基を含む。場合によっては、CDR3-ノブは、超長CDR3を含む抗体又は抗原結合断片中の上昇ストーク(ストークA)又は下降ストーク(ストークB)の間に位置してもよく、CDR3-ノブは、抗体界面から突出して、抗原との抗原結合部位を形成する。他の場合において、CDR3-ノブは、独立して、本明細書に記載される「ノブ」ペプチドとして産生され得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、交換可能に使用される用語である「ノブペプチド」、「CDR3-ノブペプチド」、又は「ノブのみのペプチド」は、40~70アミノ酸長であり、少なくとも4つの非標準Cys残基、例えば6、8、10、又は最大12の非標準システイン残基によって形成される2~6つのジスルフィド結合を含む、独立して産生される直鎖状ジスルフィド結合ペプチドを指す。ノブペプチドは、超長CDR3に由来し得るか、又は合成的に産生され得る。典型的には、ペプチド配列の最初のシステインは、アミノ酸モチーフシステイン-プロリン(CP)を有する最初のシステイン残基を含む。ノブペプチドは、環状分子を形成する環化を受けることができない直鎖状分子である。
【0117】
「実質的に類似する」又は「実質的に同じ」は、当業者が、2つの値間の差異が、当該値(例えば、Kd値)によって測定される生物学的特徴の文脈内で生物学的及び/又は統計的有意性がほとんど又は全くないと考えるように、2つの数値間(一般に、一方は本明細書に開示される抗体に関連し、他方は参照/比較抗体に関連する)の十分に高い程度の類似性を指す。当該2つの値の間の差は、参照/比較抗体についての値の関数として、好ましくは約50%未満、好ましくは約40%未満、好ましくは約30%未満、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満である。
【0118】
「結合親和性」とは、一般的に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別段の指示がない限り、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に、解離定数によって表すことができる。低親和性抗体は、一般的に、抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるのに対して、高親和性抗体は、一般的に、抗原により速く結合し、より長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当該技術分野で既知であり、そのいずれも本開示の目的のために使用することができる。
【0119】
ペプチド又はポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、最大配列同一性パーセントを達成するために、必要であればギャップを導入した後、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない、特定のペプチド又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージを指す。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegAlign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当該技術分野の技術の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0120】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」、及び「タンパク質断片」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に使用され得る。これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0121】
「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるアミノ酸、並びに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)に結合する天然に存在するアミノ酸、例えばアルファ炭素と同じ基本化学構造を有する化合物を指す。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有し得るが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化学化合物を指す。
【0122】
「保存的に修飾されたバリアント」は、アミノ酸配列及び核酸配列の両方に適用される。「アミノ酸バリアント」は、アミノ酸配列を指す。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾されたバリアントとは、同一若しくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、又は核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一若しくは関連する(例えば、天然に隣接している)配列を指す。遺伝子コードの縮重により、多数の機能的に同一の核酸がほとんどのタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、及びGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定される全ての位置において、コドンは、コードされるポリペプチドを変更することなく、記載される対応するコドンの別のものに変更され得る。このような核酸変異は、保存的に修飾された変異の1種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書の全ての核酸配列はまた、核酸のサイレント変異を記載する。当業者は、ある特定の状況において、核酸中の各コドン(通常、メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、及び通常、トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一の分子を生じるように修飾され得ることを認識する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異は、発現産物に関しては記載の配列に潜在しているが、実際のプローブ配列に関しては潜在していない。アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中の単一のアミノ酸又はわずかな割合のアミノ酸を変更、付加、又は欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列に対する個々の置換、欠失、又は付加が、変更が化学的に類似したアミノ酸でのアミノ酸の置換を生じる場合を含む、「保存的に修飾されたバリアント」であることを認識する。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野で周知である。そのような保存的に修飾されたバリアントは、本明細書に開示される多型バリアント、種間ホモログ、及び対立遺伝子に追加され、これらを除外しない。典型的な保存的置換としては、以下が挙げられる:1)アラニン(A)、グリシン(G)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、7)セリン(S)、スレオニン(T)、及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照されたい)。
【0123】
非ヒト(例えば、ウシ)抗体の「ヒト化」又は「ヒト操作」形態は、例えば、最小配列が非ヒト免疫グロブリンに由来するものを含む、ヒト免疫グロブリン配列において表されるアミノ酸を含むキメラ抗体である。例えば、ヒト化抗体又はヒト操作抗体は、いくつかの残基がヒト抗体において類似部位からの残基によって置換されている非ヒト(例えば、ウシ)抗体であり得る(例えば、米国特許第5,766,886号を参照されたい)。ヒト化抗体はまた、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含み得る。更なる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。以下の総説及びそこで引用されている参考文献も参照されたい:Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105-115(1998)、Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995)、Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994)。
【0124】
抗体に関する「可変ドメイン」は、異なる抗体間で変動するアミノ酸の配列を含む抗体重鎖又は軽鎖の特異的Igドメインを指す。各軽鎖及び各重鎖は、1つの可変領域ドメイン(VL及びVH)を有する。可変ドメインは抗原特異性を提供し、したがって抗原認識に関与する。各可変領域は、抗原結合部位ドメイン及びフレームワーク領域(framework region、FR)の一部であるCDRを含有する。
【0125】
「定常領域ドメイン」は、可変領域ドメインよりも抗体間で比較的より保存されているアミノ酸の配列を含む抗体重鎖又は軽鎖中のドメインを指す。各軽鎖は、単一の軽鎖定常領域(CL)ドメインを有し、各重鎖は、1つ以上の重鎖定常領域(CH)ドメインを含み、これは、CH1、CH2、CH3、及び場合によってはCH4を含む。全長IgA、IgD、及びIgGアイソタイプは、CH1、CH2 CH3、及びヒンジ領域を含むが、IgE及びIgMは、CH1、CH2 CH3、及びCH4を含む。CH1及びCLドメインは、抗体分子のFabアームを伸長し、したがって、抗原との相互作用及び抗体アームの回転に寄与する。抗体定常領域は、例えば、様々な細胞、生体分子、及び組織との相互作用を介して、抗体が特異的に結合する抗原、病原体、及び毒素のクリアランスなどであるがこれらに限定されないエフェクター機能を果たすことができる。
【0126】
「超可変領域」又は「HVR」と同義である「相補性決定領域」及び「CDR」という用語は、抗原特異性及び/又は結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の非隣接配列を指すことが当該技術分野で既知である。一般に、各重鎖可変領域には3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)があり、各軽鎖可変領域には3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」及び「FR」は、重鎖及び軽鎖の可変領域の非CDR部分を指すことが当該技術分野で既知である。一般に、各全長重鎖可変領域に4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4)が存在し、各全長軽鎖可変領域に4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4)が存在する。
【0127】
所与のCDR又はFRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al.(1991),「Sequences of Proteins of Immunological Interest,」5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」番号付けスキーム)、Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948(「Chothia」番号付けスキーム)、MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996),「Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography,」J.Mol.Biol.262,732-745.」(「Contact」番号付けスキーム)、Lefranc MP et al.,「IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,」Dev Comp Immunol,2003 Jan;27(1):55-77(「IMGT」番号付けスキーム)、Honegger A and Pluckthun A,「Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool,」J Mol Biol,2001 Jun 8;309(3):657-70(「Aho」番号付けスキーム)、及びMartin et al.,「Modeling antibody hypervariable loops:a combined algorithm,」PNAS,1989,86(23):9268-9272(「AbM」番号付けスキーム)に記載のものを含む、いくつかの周知のスキームのうちのいずれかを使用して容易に決定することができる。
【0128】
所与のCDR又はFRの境界は、同定に使用されるスキームに依存して変化し得る。例えば、Kabatスキームは構造アラインメントに基づくが、Chothiaスキームは構造情報に基づく。Kabat及びChothiaスキームの両方の番号付けは、最も一般的な抗体領域配列長に基づき、挿入は、挿入文字、例えば、「30a」によって対処され、欠失は、いくつかの抗体に現れる。2つのスキームは、異なる位置にある特定の挿入及び欠失(「インデル」)を配置し、異なる番号付けをもたらす。Contactスキームは、複雑な結晶構造の分析に基づき、多くの点でChothia番号付けスキームに類似している。AbMスキームは、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されるものに基づくKabat定義とChothia定義との間の折衷である。
【0129】
以下の表1は、それぞれKabat、Chothia、AbM、及びContactスキームによって同定されるCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、及びCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3の例示的な位置境界を列挙する。CDR-H1について、残基番号付けは、Kabat及びChothia番号付けスキームの両方を使用して列挙される。FRは、CDR間に位置し、例えば、FR-L1はCDR-L1の前に位置し、FR-L2はCDR-L1とCDR-L2との間に位置し、FR-L3はCDR-L2とCDR-L3との間に位置するなどである。示されるKabat番号付けスキームは、H35A及びH35Bに挿入を配置するため、示されるKabat番号付け規則を使用して番号付けされる場合、Chothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さにより、H32とH34との間で変化することに留意されたい。
【0130】
【表1】
1-Kabat et al.(1991),「Sequences of Proteins of Immunological Interest,」5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD
2-Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948
【0131】
したがって、別段の指定がない限り、所与の抗体又はその可変領域などのその領域の「CDR」若しくは「相補性決定領域」、又は個々の指定されたCDR(例えば、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)は、前述のスキームのいずれかによって定義された、ある(又は特定の)相補性決定領域を包含すると理解されるべきである。例えば、特定のCDR(例えば、CDR-H3)が、所与のVH又はVL領域アミノ酸配列中に対応するCDRのアミノ酸配列を含むと述べられる場合、そのようなCDRは、前述のスキームのうちのいずれかによって定義されるように、可変領域内に対応するCDR(例えば、CDR-H3)の配列を有することが理解される。いくつかの実施形態において、特定のCDR配列が特定される。提供される抗体の例示的なCDR配列は、様々な番号付けスキームを使用して記載されているが、提供される抗体は、他の前述の番号付けスキーム又は当業者に既知の他の番号付けスキームのいずれかによって記載されるCDRを含み得ることが理解される。
【0132】
同様に、別段の指定がない限り、所与の抗体又はその可変領域などのその領域のFR又は個々の指定されたFR(例えば、FR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4)は、既知のスキームのいずれかによって定義された、ある(又は特定の)フレームワーク領域を包含すると理解されるべきである。場合によっては、Kabat、Chothia、AbM、又はContact法によって定義されるCDRなど、特定のCDR、FR、又はFR若しくはCDRを同定するためのスキームが指定される。他の場合には、CDR又はFRの特定のアミノ酸配列が与えられる。
【0133】
超長CDR3を含む抗体は、超長CDR3を有する可変重(VH)鎖を含む抗体である。抗体は、VH鎖と可変軽(VL)鎖との対合を更に含み得る。いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。したがって、抗体という用語は、全長抗体及び抗体断片を含むその部分を含み、そのようなものは、重鎖若しくはその部分及び/又は軽鎖若しくはその部分を含む。抗体は、2つの重鎖(H及びH’と表すことができる)及び2つの軽鎖(L及びL’と表すことができる)を含み得、各L鎖は、共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結されており、2つのH鎖は、ジスルフィド結合によって互いに連結されている。「全長抗体」又は「インタクトな抗体」という用語は、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために交換可能に使用される。全長抗体は、典型的には、2つの全長重鎖(例えば、VH-CH1-CH2-CH3又はVH-CH1-CH2-CH3-CH4)及び2つの全長軽鎖(VL-CL)並びにヒンジ領域を有する抗体である。
【0134】
本明細書において「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含み、断片抗原結合(fragment antigen binding、Fab)断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(recombinant IgG、rIgG)断片、特異的に結合することができる重鎖可変(VH)領域、及び単鎖可変断片(scFv)を含む、インタクトな抗体及び機能的(抗原結合)抗体断片を含む。
【0135】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部、インタクトな抗体の抗原結合及び/又は可変領域を含む。抗体断片としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ジスルフィド結合Fv(disulfide-linked Fv、dsFv)、Fd断片、Fd’断片、単鎖Fv(scFv)又は単鎖Fab(single-chain Fab、scFab)を含む単鎖抗体分子、上記のうちのいずれかの抗原結合断、及び抗体断片からの多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
「Fab断片」は、パパインによる全長免疫グロブリンの消化から生じる抗体断片、又は合成的に、例えば、組換え法によって産生される同じ構造を有する断片である。Fab断片は、軽鎖(VL及びCLを含む)、並びに重鎖の可変ドメイン(VH)及び重鎖の1つの定常領域ドメイン(CH1)を含む別の鎖を含む。
【0137】
「scFv断片」は、任意の順序でポリペプチドリンカーによって共有結合された可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)を含む抗体断片を指す。リンカーは、2つの可変ドメインが実質的な干渉なしに架橋されるような長さのものである。例示的なリンカーは、いくつかのGlu又はLys残基が溶解度を増加させるために全体に分散された、(Gly-Ser)n残基である。
【0138】
ヌクレオチド又はアミノ酸位置が配列表に示されるような開示された配列中のヌクレオチド又はアミノ酸位置「に対応する」という記載のように、タンパク質の位置に関して「に対応する」という用語は、構造的配列アラインメントに基づいて、又はGAPアルゴリズムなどの標準的なアラインメントアルゴリズムを使用して、開示された配列とのアラインメントの際に同定されたヌクレオチド又はアミノ酸位置を指す。例えば、類似配列(例えば、断片又は種バリアント)の対応する残基は、構造アラインメント法による参照配列に対するアラインメントによって決定することができる。配列を整列させることによって、当業者は、例えば、ガイドとして保存されたアミノ酸残基及び同一のアミノ酸残基を使用して、対応する残基を同定することができる。
【0139】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、治療される症状及び/又は状態を顕著にかつ前向きに修正する(例えば、前向きな臨床応答を提供する)のに十分な医薬組成物の量を意味する。医薬組成物における使用のための活性成分の有効量は、治療される特定の状態、状態の重症度、治療の期間、併用療法の性質、用いられる特定の活性成分、利用される特定の薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体、並びに主治医の知識及び専門知識を有する同様の要因によって変化する。
【0140】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、化合物の生物学的活性又は特性を抑止せず、比較的非毒性である、担体又は希釈剤などの材料を指し、すなわち、材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、又は材料が含まれる組成物の構成要素のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、個体に投与することができる。
【0141】
本明細書で使用される場合、組成物は、細胞を含む、2つ以上の産物、物質、又は化合物の任意の混合物を指す。これは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0142】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、本発明の少なくとも1つの化合物と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、及び/又は賦形剤などの他の化学構成要素との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺、及び局所投与、並びに吸入による投与を含むがこれらに限定されない、化合物を投与する複数の技法が当該技術分野に存在する。
【0143】
本明細書で使用される場合、「疾患又は障害」は、原因又は状態(感染、後天的状態、遺伝的状態が挙げられるが、これらに限定されない)から生じる生物における病的状態を指し、同定可能な症状を特徴とする。
【0144】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」という用語は、疾患又は障害を改善すること、例えば、疾患又は障害、例えば、障害の根本原因又はその臨床症状のうちの少なくとも1つの発症を遅延又は停止又は低減することを指す。
【0145】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトなどの哺乳動物を含む動物を指す。対象及び患者という用語は、交換可能に使用することができる。
【0146】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」又は「任意選択で」は、その後に記載される事象又は状況が起こる又は起こらないこと、並びにその記載が、当該事象又は状況が起こる場合及び起こらない場合を含むことを意味する。例えば、任意選択で置換されている基は、その基が非置換であるか、又は置換されていることを意味する。
【0147】
II.ディスプレイライブラリー及び選択方法
本明細書では、いくつかの態様において、超長CDR3抗体ディスプレイライブラリーを調製する方法が提供される。本明細書ではまた、いくつかの態様において、超長CDR3-ノブディスプレイライブラリーを調製する方法が提供される。いくつかの実施形態において、ディスプレイライブラリーは、ファージディスプレイライブラリーである。いくつかの実施形態において、超長CDR3抗体又はノブは、ウシ抗体に由来し、例えば、標的抗原で免疫化されたウシによって産生される抗体に基づく。いくつかの実施形態において、超長CDR3抗体又はノブは合成である。いくつかの実施形態において、超長CDR3抗体又はノブは、例えば、外因性ペプチド配列を含むシクロチド又は修飾されたシクロチドを含む。
【0148】
A.ライブラリー産生方法
核酸を操作するための技法、例えば、配列中に変異を生成する、サブクローニング、標識、プロービング、配列決定、ハイブリダイゼーションなどのための技法は、科学刊行物及び特許文献に詳細に記載される。例えば、Sambrook J,Russell DW(2001)Molecular Cloning:a Laboratory Manual,3rd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel ed.,John Wiley & Sons,Inc.,New York(1997)、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization With Nucleic Acid Probes,Part I,Theory and Nucleic Acid Preparation,Tijssen ed.,Elsevier,N.Y.(1993)を参照されたい。
【0149】
変異ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含むライブラリーを生成するための任意の既知の方法を、提供される方法及びベクターと共に使用して、ディスプレイライブラリー、例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、ライブラリーから結合タンパク質を選択することができる。ライブラリーは、例えば、任意のウイルス、細菌、他の病原体、免疫調節タンパク質(例えば、チェックポイント分子)、又は癌抗原を含む、任意の抗原についてライブラリーから結合タンパク質を選択するためのスクリーニングアッセイにおいて使用することができる。スクリーニングを容易にするために、抗体ライブラリーは、典型的には、ライブラリーの個々の分子(表現型)とそれらをコードする遺伝情報(遺伝子型)との間に物理的リンクが存在するように、ディスプレイ技法を使用してスクリーニングされる。これらの方法としては、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳類ディスプレイ、ファージディスプレイ(Smith,G.P.(1985)Science 228:1315-1317)、mRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、及びDNAディスプレイを含む細胞ディスプレイが挙げられるが、これに限定されない。
【0150】
いくつかの実施形態において、提供されるライブラリーは、ファージディスプレイライブラリーである。いくつかの実施形態において、ディスプレイライブラリーは、ファージディスプレイライブラリーである。いくつかの実施形態において、ファージディスプレイライブラリーは、ディスプレイのためのポリペプチドをコードすることに加えて、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードするファージミドの使用を介して産生される。いくつかの実施形態において、ファージミド粒子は、M13ファージに由来する。いくつかの実施形態において、コートタンパク質は、M13ファージ遺伝子IIIコートタンパク質(pIII)である。
【0151】
いくつかの実施形態において、ファージディスプレイライブラリーは、超長CDR3 scFv抗体断片又は超長CDR3ノブペプチドなどの本明細書に記載される候補結合ポリペプチドと、Escherichia coliのF特異的繊維状ファージの遺伝子IIIマイナーコートタンパク質(Ff:f1、M13、又はfd)との融合によって産生される。あるいは、Pseudomonas fluorescensを含む他の細菌種を使用して、ファージディスプレイライブラリーを産生することができる。いくつかの実施形態において、遺伝子IIIは、M13ファージのマイナーコートタンパク質(pIIIとも呼ばれる)である。遺伝子IIIマイナーコートタンパク質(ビリオンの一端に約5コピー存在する)は、適切なファージアセンブリに関与し、E.coliの線毛への付着による感染のためである。ファージディスプレイの方法は既知である。
【0152】
いくつかの実施形態において、超長CDR3 scFv抗体断片又は超長CDR3ノブペプチドなどの本明細書に記載される候補結合ポリペプチドをコードする核酸は、複製可能な発現ベクターに挿入されるか、又はその一部として構築され、核酸は、pIIIなどのファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする核酸に融合される。いくつかの実施形態において、超長CDR3 scFv抗体断片又は超長CDR3ノブペプチドなどの本明細書に記載の候補結合ポリペプチドをコードする核酸は、pIIIに融合される。
【0153】
いくつかの実施形態において、複製可能な発現ベクターは、プロモーター、シグナル配列、表現型選択遺伝子、複製起点部位、及び当業者に既知の他の必要な構成要素を含む様々な構成要素を一般的に含むプラスミドベクターである。原核生物ベクターにおいて最も一般的に使用されるプロモーターとしては、lac Zプロモーター系、アルカリホスファターゼpho Aプロモーター、バクテリオファージλPLプロモーター(温度感受性プロモーター)、tacプロモーター(lacリプレッサーによって調節されるハイブリッドtrp-lacプロモーター)、トリプトファンプロモーター、バクテリオファージT7プロモーター、又は他の好適な微生物プロモーターが挙げられる。プロモーター系の例としては、Lac Z、λPL、TAC、T 7ポリメラーゼ、トリプトファン、及びアルカリホスファターゼプロモーター、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。好適な原核生物シグナル配列は、例えば、LamB若しくはOmpF(Wong et al.,Gene,68:193 1983)、MalE、PhoA、E.coli熱安定性エンテロトキシンII(STII)シグナル配列、又はPel B分泌シグナル配列をコードする遺伝子から得ることができる。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、ポリペプチドをコードする核酸に動作可能に融合された分泌シグナル配列を更に含む。いくつかの実施形態において、分泌配列は、Pel B分泌シグナル配列である。いくつかの実施形態において、複製可能な発現ベクターはまた、表現型選択遺伝子を含み得る。典型的な表現型選択遺伝子は、宿主細胞に抗生物質耐性を付与するタンパク質をコードするものである。例として、アンピシリン耐性遺伝子(amp)、テトラサイクリン耐性遺伝子(tet)、又はカルベニシレン耐性遺伝子が使用され得る。
【0154】
所望のポリペプチドをコードする核酸を含む好適なベクターの構築は、標準的な組換えDNA手順を使用して調製される。ベクターを形成するために組み合わされる単離されたDNA断片は、切断され、調整され、所望のベクターを生成するために特定の順序及び配向で一緒にライゲートされる。いくつかの実施形態において、DNAは、好適な緩衝液中で適切な制限酵素(複数可)を使用して切断される。適切な緩衝液、DNA濃度、並びにインキュベーション時間及び温度は、制限酵素の製造業者によって指定される。一般的に、37℃で約1時間又は2時間のインキュベーション時間が適切であるが、いくつかの酵素はより高い温度を必要とする。インキュベーション後、酵素及び他の夾雑物を、フェノール及びクロロホルムの混合物での消化溶液の抽出によって除去し、DNAを、エタノールでの沈殿によって水性画分から回収する。
【0155】
DNA断片を一緒にライゲートして機能的ベクターを形成するために、DNA断片の末端は、互いに適合性がなくてはならない。場合によって、末端は、エンドヌクレアーゼ消化後に直接適合性である。しかしながら、まず、エンドヌクレアーゼ消化によって一般的に産生される粘着末端を平滑末端に変換して、それらをライゲーションに適合させることが必要であり得る。末端を平滑化するために、DNAを、4つのデオキシヌクレオチド三リン酸の存在下で、10単位のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片(クレノウ)を用いて、15℃で少なくとも15分間、好適な緩衝液中で処理する。次いで、DNAをフェノール-クロロホルム抽出及びエタノール沈殿により精製する。
【0156】
一緒にライゲートされるDNA断片(ライゲートされる各断片の末端が適合性であるように、適切な制限酵素で予め消化されている)を溶液に入れる。いくつかの実施形態において、DNA断片は、ほぼ等モル量で提供される。いくつかの実施形態において、溶液はまた、ATP、リガーゼ緩衝液、及びリガーゼ、例えば、T4 DNAリガーゼを、例えば、0.5μgのDNA当たり10単位又は約10単位で含む。DNA断片がベクターにライゲートされる場合、ベクターは、適切な制限エンドヌクレアーゼで切断することによって最初に線状化される。次に、線状化ベクターをアルカリホスファターゼ又は仔ウシ腸ホスファターゼで処理する。ホスファターゼ処理は、ライゲーションステップ中のベクターの自己ライゲーションを防止する。
【0157】
いくつかの実施形態において、複数の構築された複製可能な発現ベクターは、好適な宿主細胞に形質転換される。好適な宿主細胞には、原核生物宿主細胞が含まれる。いくつかの実施形態において、ディスプレイライブラリーを発現又は産生するために使用される宿主細胞は、E.coli細胞である。好適な原核生物宿主細胞には、E.coli株JM101、E.coli K12株294(ATCC番号31,446)、E.coli株W3110(ATCC番号27,325)、E.coli X1776(ATCC番号31,537)、E.coli XL-1Blue(stratagene)、及びE.coli Bが含まれる。しかしながら、E.coliの多くの他の株、例えば、HB101、NM522、NM538、NM539、並びに原核生物の多くの他の種及び属が、同様に使用され得る。上記に列挙したE.coli株に加えて、Bacillus subtilisなどの桿菌、Salmonella typhimurium又はSerratia marcesansなどの他の腸内細菌科、及び様々なPseudomonas種が、全て宿主として使用され得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、E.coliのプロテアーゼ欠損株である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、TG1エレクトロコンピテント細胞である。
【0158】
原核生物細胞の形質転換は、Sambrookら(上記)のセクション1.82に記載される塩化カルシウム法を使用して容易に達成される。あるいは、エレクトロポレーション(Neumann et al.,EMBO J.,1:841 1982)を使用して、これらの細胞を形質転換してもよい。いくつかの実施形態において、方法は、形質転換された宿主細胞を、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージに感染させることを更に含む。いくつかの実施形態において、方法は、ファージミド粒子の十分な発現を促進するためにヘルパーファージの使用を更に含む。いくつかの実施形態において、ヘルパーファージは、M13K07、M13R408、M13-VCS、及びファイX174からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ヘルパーファージは、M13K07である。次いで、形質転換された感染宿主細胞は、プラスミドの少なくとも一部を含み、宿主を形質転換することができる組換えファージミド粒子を形成するのに好適な条件下で培養される。形質転換された細胞は、抗生物質、例えば、テトラサイクリン(tetracycline、tet)若しくはアンピシリン(ampicillin、amp)、カルベニシリン、又は特定の発現ベクターに依存する他の抗生物質上で成長させることにより選択され、ベクター上の耐性遺伝子の存在により耐性にされる。
【0159】
形質転換された細胞の選択後、これらの細胞を培養物中で成長させ、次いでプラスミドDNA(又は外来遺伝子が挿入された他のベクター)を単離する。プラスミドDNAは、当該技術分野で既知の方法を使用して単離され得る。単離されたDNAは、当該技術分野で既知の方法により精製され得る。次いで、この精製されたプラスミドDNAを、制限マッピング及び/又はDNA配列決定により分析する。
【0160】
1.ディスプレイのためのポリペプチド
いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは、超長CDR3を含む。ウシ抗体では、超長CDR3配列は、異常な構造を有するサブドメインが、2つの12残基の逆平行β鎖(上昇鎖及び下降鎖)から構成される「ストーク」、及び標準抗体パラトープから離れてストークの上に位置するより長い、例えば39残基のジスルフィド豊富「ノブ」から形成される構造を形成する。長い逆平行βリボンは、ノブドメインを主要抗体足場と連結するための架橋として機能する。超長CDR3の独特な「ストーク及びノブ」構造は、ミニ抗原結合ドメインを形成するために抗体表面から突出するジスルフィド結合したノブを支持する2つの逆平行β鎖(上昇ストーク鎖及び下降ストーク鎖)をもたらす。いくつかの実施形態において、超長CDR3抗体は、順に、上昇ストーク領域、ノブ領域、及び下降ストーク領域を含む。
【0161】
いくつかの実施形態において、超長CDR-H3は、上昇ストークドメイン(ストークA)、ジスルフィド豊富ノブ領域、及び下降ストークドメイン(ストークB)を含み、ノブ領域は上昇ストークドメインと下降ストークドメインとの間に位置する。いくつかの実施形態において、超長CDR-H3の配列は、ジスルフィド豊富ノブ領域が抗体の先端に位置する、抗体から突出する逆平行β鎖の構造を提供する(
図1)。ストークAは、主に疎水性側鎖、及び上昇鎖を開始する塩基に比較的保存されたモチーフを含む。この保存されたモチーフは、典型的には、様々なウシ(bovine)又はウシ(cow)配列の可変領域配列の最初のシステイン残基の後に見出される。いくつかの実施形態において、ストークAの塩基は、CDR-H1の残基と相互作用することによって塩基を安定化する残基CTTVHQ(配列番号98)、CATVHQ(配列番号99)、CAIVQQ(配列番号100)、又はCATVDQ(配列番号101)を含む。ストークAは、ジスルフィド結合したノブ領域の一部を形成する最初の保存されたシステイン残基の前に、可変数の残基、例えば、2~8つのアミノ酸残基によって接続される。いくつかの実施形態において、ノブ領域は、最初のシステイン残基がノブ内の別のシステイン残基と第1のジスルフィド結合を形成する、第1の保存されたアミノ酸モチーフCys-Pro(CP)を含む。ノブは、2~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含み得る。ストークは、可変長であり得、ストークBは、スタッキング相互作用を介してラダーを形成する交互芳香族を含み得、これは、長い溶媒曝露された2本鎖βリボンの安定性に寄与し得る(Wang et al.Cell.2013,153(6):1379-1393)。いくつかの実施形態において、ストークBは、ノブ構造を支持する交互チロシンの保存されたパターンを含み、モチーフYX
1YX
2Y(配列番号102)を有することもある。
【0162】
いくつかの実施形態において、超長CDR3は、25~70個のアミノ酸のペプチド配列を含むか、又はそれである。いくつかの実施形態において、超長CDR3は、35~70アミノ酸長、40~70アミノ酸長、45~70アミノ酸長、50~70アミノ酸長、55~70アミノ酸長、若しくは60~70アミノ酸長、又は約35~70アミノ酸長、40~70アミノ酸長、45~70アミノ酸長、50~70アミノ酸長、55~70アミノ酸長、若しくは60~70アミノ酸長であるペプチド配列である。
【0163】
いくつかの実施形態において、超長CDR3はシステインモチーフを含む。いくつかの実施形態において、システインモチーフは、2~20のシステイン残基、例えば、2~18、2~16、2~14、2~12、2~10、2~8、2~6、2~4、4~20、4~18、4~16、4~14、4~12、4~10、4~8、4~6、6~20、6~18、6~16、6~14、6~12、6~10、6~8、8~20、8~18、8~16、8~14、8~12、8~10、10~20、10~18、10~16、10~14、10~12、12~20、12~18、12~16、12~14、14~20、14~18、14~16、16~20、16~18、若しくは18~20、又は約2~18、2~16、2~14、2~12、2~10、2~8、2~6、2~4、4~20、4~18、4~16、4~14、4~12、4~10、4~8、4~6、6~20、6~18、6~16、6~14、6~12、6~10、6~8、8~20、8~18、8~16、8~14、8~12、8~10、10~20、10~18、10~16、10~14、10~12、12~20、12~18、12~16、12~14、14~20、14~18、14~16、16~20、16~18、若しくは18~20のシステイン残基(各々境界値を含む)を含む。いくつかの実施形態において、システインモチーフは、2~12のシステイン残基を含む。
【0164】
いくつかの実施形態において、超長CDR3ノブは、1~10個のジスルフィド結合、例えば、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~10、6~9、6~8、6~7、7~10、7~9、7~8、8~10、8~9、若しくは9~10個、又は約1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~10、6~9、6~8、6~7、7~10、7~9、7~8、8~10、8~9、若しくは9~10個のジスルフィド結合(各々境界値を含む)を含む。いくつかの実施形態において、超長CDR3ノブは、1~6つのジスルフィド結合を含む。
【0165】
いくつかの実施形態において、超長CDR3は、上昇ストークドメインを含む。いくつかの実施形態において、超長CDR3は、下降ストークドメインを含む。いくつかの実施形態において、システインモチーフは、上昇ストークドメインと下降ストークドメインとの間にある。いくつかの実施形態において、上昇ストークドメインは、配列CX2TVX5Q(配列番号103)を含み、配列中、X2及びX5は、任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態において、X2は、Ser、Thr、Gly、Asn、Ala、又はProであり、X5は、His、Gln、Arg、Lys、Gly、Thr、Tyr、Phe、Trp、Met、Ile、Val、又はLeu(配列番号104)である。いくつかの実施形態において、X2は、Ser、Ala、又はThrであり、X5は、His又はTyr(配列番号105)である。
【0166】
他の実施形態において、超長CDR3は、システインモチーフのN末端側に上昇ストークドメインを含まない。いくつかの実施形態において、超長CDR3は、システインモチーフのC末端側に下降ストークドメインを含まない。
【0167】
いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチド、例えば、超長CDR3を含むポリペプチドは、ウシ抗体に由来する。いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは、ウシ相補的DNA(cDNA)ライブラリーからの配列を増幅することによって産生される。いくつかの実施形態において、cDNA鋳型ライブラリーは、ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから調製される。いくつかの実施形態において、cDNA鋳型ライブラリーは、免疫グロブリン特異的プライマーのプールを使用して合成される。いくつかの実施形態において、cDNA鋳型ライブラリーは、IgM、IgA、及びIgG特異的プライマーのプールを使用して合成される。使用のための例示的なプライマーとしては、配列番号3(IgG)、配列番号4(IgM)、配列番号5(IgA)、及び配列番号6(IgG)に示される配列を有するものが挙げられる。
【0168】
いくつかの実施形態において、ウシは標的抗原で免疫化される。いくつかの実施形態において、標的抗原は、非病原性細菌、ウイルス、ウイルスタンパク質、免疫調節タンパク質(例えば、チェックポイント分子)、癌抗原、ヒトIgG、又はそれらの組換えタンパク質である。いくつかの実施形態において、標的抗原は、ウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、ウシは、複数の標的抗原、例えば、異なるウイルス抗原で免疫化される。いくつかの実施形態において、異なるウイルス抗原は、ウイルスの異なるバリアント、クレード、又は株に関連するタンパク質である。
【0169】
いくつかの実施形態において、標的抗原は、コロナウイルス、コロナウイルス偽ウイルス、又はそのようなウイルスの抗原、例えば、組換えコロナウイルススパイクタンパク質、又はコロナウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)である。コロナウイルスは、コロナウイルス科、ニドウイルス目、及びリボウィリア域の2つの亜科のうちの1つであるオルトコロナウイルス亜科からであり得る。4つの属:アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマコロナウイルス、及びデルタコロナウイルスが存在する。SARS CoV2は、サルベコウイルス亜属に属するベータコロナウイルスである。いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、及びSARS-CoV2からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、Wuhan-Hu-1単離株、B.1.351南アフリカバリアント、又はB.1.1.7 UKバリアントから選択されるSARS-CoV2である。いくつかの実施形態において、SARS CoV-2特異的抗原は、S三量体ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、SARS CoV-2特異的抗原は、S単量体ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、SARS CoV-2特異的抗原は、S三量体又は単量体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ウシは、コロナウイルス229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、及びSARS-CoV2の任意の組み合わせに関連する複数の標的抗原で免疫化される。いくつかの実施形態において、ウシは、Wuhan-Hu-1単離株、B.1.351南アフリカバリアント、又はB.1.1.7 UKバリアントから選択されるSARS-CoV2バリアントの任意の組み合わせに関連する複数の標的抗原で免疫化される。
【0170】
いくつかの実施形態において、抗原は、癌抗原である。いくつかの実施形態において、抗原は、ACTHR、内皮細胞Anxa-1、アミノペチダーゼN、抗IL-6R、アルファ-4-インテグリン、アルファ-5-ベータ-3インテグリン、アルファ-5-ベータ-5インテグリン、アルファ-フェトプロテイン(alpha-fetoprotein、AFP)、ANPA、ANPB、APA、APN、APP、1AR、2AR、AT1、B1、B2、BAGE1、BAGE2、B細胞受容体BB1、BB2、BB4、カルシトニン受容体、癌抗原125(cancer antigen 125、CA125)、CCK1、CCK2、CD5、CD10、CD11a、CD13、CD14、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD38、CD45、CD52、CD56、CD68、CD90、CD133、CD7、CD15、CD34、CD44、CD206、CD271、CEA(癌胎児性抗原)、CGRP、ケモカイン受容体、細胞表面アネキシン-1、細胞表面プレクチン-1、Cripto-1、CRLR、CXCR2、CXCR4、DCC、DLL3、E2グリコプロテイン、EGFR、EGFRvIII、EMR1、エンドシアリン、EP2、EP4、EpCAM、EphA2、ET受容体、フィブロネクチン、フィブロネクチンED-B、FGFR、frizzled受容体、GAGE1、GAGE2、GAGE3、GAGE4、GAGE5、GAGE6、GLP-1受容体、ファミリーAのGタンパク質結合受容体(ロドプシン様)、ファミリーBのGタンパク質結合受容体(セクレチン受容体様)、ファミリーCのGタンパク質結合受容体(代謝型グルタミン酸受容体様)、GD2、GP100、GP120、グリピカン-3、ヘマグルチニン、ヘパラン硫酸、HER1、HER2、HER3、HER4、HMFG、HPV 16/18及びE6/E7抗原、hTERT、IL11-R、IL-13R、ITGAM、カリクレイン-9、Lewis Y、LH受容体、LHRH-R、LPA1、MAC-1、MAGE 1、MAGE 2、MAGE 3、MAGE 4、MART1、MC1R、メソテリン、MUC1、MUC16、Neu(細胞表面ヌクレオリン)、ネプリライシン、ニューロピリン-1、ニューロピリン-2、NG2、NK1、NK2、NK3、NMB-R、Notch-1、NY-ESO-1、OT-R、変異p53、p97メラノーマ抗原、NTR2、NTR3、p32(p32/gC1q-R/HABP1)、p75、PAC1、PAR1、Patched(PTCH)、PDGFR、PDFG受容体、PDT、プロテアーゼ切断コラーゲンIV、プロテイナーゼ3、プロヒビチン、プロテインチロシンキナーゼ7、PSA、PSMA、プリン作動性P2Xファミリー(例えば、P2X1-5)、変異Ras、RAMP1、RAMP2、RAMP3 patched、RET受容体、プレキシン、平滑化、sst1、sst2A、sst2B、sst3、sst4、sst5、物質P、TEM、T細胞CD3受容体、TAG72、TGFBR1、TGFBR2、Tie-1、Tie-2、Trk-A、Trk-B、Trk-C、TR1、TRPA、TRPC、TRPV、TRPM、TRPML、TRPP(例えば、TRPV1-6、TRPA1、TRPC1-7、TRPM1-8、TRPP1-5、TRPML1-3)、TSH受容体、VEGF受容体(VEGFR1又はFlt-1、VEGFR2又はFLK-1/KDR、及びVEGF-3又はFLT-4)、電位開口型イオンチャネル、VPAC1、VPAC2、ウイルムス腫瘍1、Y1、Y2、Y4、及びY5の中から選択される。
【0171】
いくつかの実施形態において、抗原は、HER1/EGFR、HER2/ERBB2、CD20、CD25(IL-2Rα受容体)、CD33、CD52、CD133、CD206、CEA、CEACAM1、CEACAM3、CEACAM5、CEACAM6、癌抗原125(CA125)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、Lewis Y、TAG72、Caprin-1、メソテリン、PDGF受容体、PD-1、PD-L1、CTLA-4、IL-2受容体、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)、CD30、EpCAM、EphA2、グリピカン-3、gpA33、ムチン、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド(GD2、GD3、GM1、及びGM2など)、VEGF受容体(VEGF receptor、VEGFR)、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、テネイシン、AFP、BCR複合体、CD3、CD18、CD44、CTLA-4、gp72、HLA-DR 10β、HLA-DR抗原、IgE、MUC-1、nuC242、PEM抗原、メタロプロテイナーゼ、エフリン受容体、エフリンリガンド、HGF受容体、CXCR4、CXCR4、ボンベシン受容体、及びSK-1抗原である。
【0172】
いくつかの実施形態において、抗原は、CD25、PD-1(CD279)、PD-L1(CD274、B7-H1)、PD-L2(CD273、B7-DC)、CTLA-4、LAG3(CD223)、TIM3(HAVCR2)、4-1BB(CD137、TNFRSF9)、CXCR2、CXCR4(CD184)、CD27、CEACAM1、ガレクチン9、BTLA、CD160、VISTA(PD1ホモログ)、B7-H4(VCTN1)、CD80(B7-1)、CD86(B7-2)、CD28、HHLA2(B7-H7)、CD28H、CD155、CD226、TIGIT、CD96、ガレクチン3、CD40、CD40L、CD70、LIGHT(TNFSF14)、HVEM(TNFRSF14)、B7-H3(CD276)、Ox40L(TNFSF4)、CD137L(TNFSF9、GITRL)、B7RP1、ICOS(CD278)、ICOSL、KIR、GAL9、NKG2A(CD94)、GARP、TL1A、TNFRSF25、TMIGD2、BTNL2、ブチロフィリンファミリー、CD48、CD244、Siglecファミリー、CD30、CSF1R、MICA(MHCクラスIポリペプチド関連配列A)、MICB(MHCクラスIポリペプチド関連配列B)、NKG2D、KIRファミリー(キラー細胞免疫グロブリン様受容体、LILRファミリー(白血球免疫グロブリン様受容体、CD85、ILT、LIR)、SIRPA(シグナル調節タンパク質アルファ)、CD47(IAP)、ニューロピリン1(Neuropilin 1、NRP-1)、VEGFR、及びVEGFである。
【0173】
いくつかの実施形態において、抗原は、免疫調節タンパク質(例えば、チェックポイント分子)である。いくつかの実施形態において、抗原は、免疫チェックポイント受容体リガンドである。遮断又は阻害の標的となり得る例示的な免疫チェックポイント分子としては、PD1(CD279)、PDL1(CD274、B7-H1)、PDL2(CD273、B7-DC)、CTLA-4、LAG3(CD223)、TIM3、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、GITR(TNFRSF18、AITR)、CD40、Ox40(CD134、TNFRSF4)、CXCR2、腫瘍関連抗原(tumor associated antigen、TAA)、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、GAL9、B7H3、B7H4、VISTA、KIR、2B4(CD2ファミリーの分子に属し、全てのNK、γδ、及びメモリーCD8+(αβ)T細胞上で発現される)、CD160(BY55とも呼ばれる)、及びCGEN-15049が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント分子は、CD25、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、4-1BB、GITR、CD40、CD40L、OX40、OX40L、CXCR2、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、CD28、及びVISTAである。
【0174】
いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは合成である。いくつかの実施形態において、合成ポリペプチドは、ウシ抗体の全て又は一部、例えば、超長CDR3ノブを含む。いくつかの実施形態において、合成ポリペプチドは、修飾されたシクロチドである。いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチドは、例えば、ウシの超長CDR3ノブ配列を含む。
【0175】
いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは、超長CDR-H3を含む可変重領域及び可変軽領域を含む。特定のフォーマットには、単鎖可変断片(scFv)などの単鎖フォーマットが含まれる。他の実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは、25~70アミノ酸長、例えば40~70アミノ酸長のより小さいペプチド、すなわちノブペプチドである。ディスプレイ及びディスプレイライブラリーのための例示的な分子が記載される。
【0176】
a.ディスプレイのためのscFvペプチド
いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは、単鎖可変断片(scFv)である。いくつかの実施形態において、scFvは、ウシ超長CDR3を有するVH領域を含む。いくつかの実施形態において、VH領域は、ウシcDNA鋳型ライブラリー、例えば、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから調製されたものから増幅された配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、増幅は、超長CDR3を含むことが知られているか、又はその疑いがあるウシ抗体ファミリーのVH領域をコードする配列を増幅することによる。いくつかの実施形態において、IgHV1-7ファミリーのVH領域の配列を増幅して、scFvのVH領域をコードする配列を産生する。いくつかの実施形態において、IgHV1-7ファミリーのVH領域は、配列番号84に示される配列を含むフォワードプライマー及び配列番号85に示される配列を含むリバースプライマーを用いて増幅される。いくつかの実施形態において、フォワードプライマー及び/又はリバースプライマーは、クローニングを容易にするために、制限酵素部位に特異的な配列を更に含む。いくつかの実施形態において、IgHV1-7ファミリーのVH領域は、配列番号12に示されるフォワードプライマー及び配列番号13に示されるリバースプライマーを用いて増幅される。
【0177】
いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドのVH領域の配列の調製はまた、サイズ分離ステップを含む。いくつかの実施形態において、ウシcDNA鋳型ライブラリーなどからの、例えば、IgHV1-7ファミリーのVH領域配列の増幅後、超長CDR3を有するVH領域をコードする配列は、超長CDR3を有さないVH領域をコードするより短い配列から分離される。いくつかの実施形態において、サイズ分離ステップは、超長CDR3を有するVH領域をコードする増幅された配列を更に富化する。
【0178】
いくつかの実施形態において、サイズ分離ステップは、複数の増幅されたVH領域をコードする配列から、425、450、475、500、525、若しくは550塩基対長の配列、約425、450、475、500、525、若しくは550塩基対長の配列、又は425、450、475、500、525、若しくは550塩基対長を超える配列を分離することを含み、425、450、475、500、525、若しくは550塩基対長の配列、約425、450、475、500、525、若しくは550塩基対長の配列、又は425、450、475、500、525、若しくは550塩基対長を超える配列は、超長CDR3を有するVH領域をコードする配列を含む。いくつかの実施形態において、550塩基対長、約550塩基対長の配列、又は550塩基対長を超える配列は、残りの配列から分離される。
【0179】
いくつかの実施形態において、サイズ分離は、アガロースゲル電気泳動によって行われる。いくつかの実施形態において、1.2%、1.5%、又は2%のアガロースゲルが使用される。いくつかの実施形態において、2%のアガロースゲルが使用される。
【0180】
いくつかの実施形態において、scFvは、ディスプレイライブラリーのポリペプチドにわたって固定されているVL領域を含む。いくつかの態様において、固定VL領域の使用は、超長CDR3を有するVH領域を含むscFvの選択及び/又はスクリーニングを改善する。いくつかの実施形態において、VL領域は、BLV1H12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、及びF18からなる群より選択される可変ラムダ軽(VL)領域であるか、又はそのヒト化バリアントである。いくつかの実施形態において、VL領域は、BLV5B8ラムダVL領域(配列番号110)又はそのヒト化バリアントである。いくつかの実施形態において、VL領域は、BLV1H12ラムダVL領域又はそのヒト化バリアントである。いくつかの実施形態において、BLV1H12 VL領域は、配列番号2に示される。いくつかの実施形態において、ヒト化バリアントは、Kabat番号付けに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13S、及びP14L、CDR1領域におけるアミノ酸置換I29V及びN32G、並びに/又はCDR2領域におけるDNNからGDTへのアミノ酸置換のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、BLV1H12のヒト化バリアントは、配列番号107に示される配列を含む。
【0181】
いくつかの実施形態において、ディスプレイされたscFvの少なくとも又は少なくとも約20%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイされたscFvの少なくとも又は少なくとも約30%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイされたscFvの少なくとも又は少なくとも約40%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイされたscFvの少なくとも又は少なくとも約50%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイされたscFvの少なくとも又は少なくとも約60%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイされたscFvの少なくとも又は少なくとも約70%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイされたscFvの少なくとも又は少なくとも約80%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイされたscFvの少なくとも又は少なくとも約90%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイされたscFvの少なくとも又は少なくとも約95%は、超長CDR3領域を含むVH領域を含む。
【0182】
いくつかの実施形態において、scFvのVH及びVL領域は、直接連結される。いくつかの実施形態において、scFvのVH及びVL領域は、例えば、ペプチドリンカーを介して間接的に連結される。いくつかの実施形態において、リンカーは、可動性リンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーは、(Gly4 Ser)3(配列番号94)である。
【0183】
b.ディスプレイのためのノブペプチド
いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは、超長CDR3ノブ、例えば、ウシ超長CDR3である。いくつかの実施形態において、超長CDR3ノブは、ウシcDNA鋳型ライブラリー、例えば、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから調製されたものから増幅された配列によってコードされる。
【0184】
いくつかの実施形態において、増幅は、超長CDR3ノブをコードする配列を増幅することによる。いくつかの実施形態において、ウシの超長CDR3領域の上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインに特異的なプライマーを使用して、超長CDR3ノブをコードする配列を増幅する。いくつかの実施形態において、超長CDR3ノブは、1、2、3、4、5、又は6個のアミノ酸などの上昇ストークドメインの一部を含む。いくつかの実施形態において、超長CDR3ノブは、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個のアミノ酸などの下降ストークドメインの一部を含む。いくつかの実施形態において、上昇ストークドメインは、配列CX2TVX5Qを含み、配列中、X2及びX5は、任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態において、X2は、Ser、Thr、Gly、Asn、Ala、又はProであり、X5は、His、Gln、Arg、Lys、Gly、Thr、Tyr、Phe、Trp、Met、Ile、Val、又はLeuである。いくつかの実施形態において、X2は、Ser、Ala、又はThrであり、X5は、His又はTyrである。いくつかの実施形態において、増幅に使用されるプライマーは、配列番号7~11に示される配列を含むか又はそれらからなる。いくつかの実施形態において、増幅に使用されるプライマーは、配列番号8~11に示される配列を含むか又はそれらからなる。いくつかの実施形態において、増幅に使用されるプライマーは、配列番号121~130に示される配列を含むか又はそれらからなる。いくつかの実施形態において、増幅に使用されるプライマーは、配列番号123、127、及び128に示される配列を含むか又はそれらからなる。
【0185】
いくつかの実施形態において、増幅に使用されるプライマーは、上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインに特異的な異なるプライマーのプールである。いくつかの実施形態において、プライマーのプールは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の異なるプライマーを含む。いくつかの実施形態において、プライマーのプールは、配列番号7~11及び121~130に示されるプライマーとは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の異なるプライマーを含む。いくつかの実施形態において、プライマーのプールは、配列番号8~11、123、127、及び128に示されるプライマーから少なくとも2、3、4、5、6、又は7つの異なるプライマーを含む。いくつかの実施形態において、プライマーのプールは、配列番号8~11に示されるプライマーを含む。いくつかの実施形態において、プライマーのプールは、配列番号123、127、及び128に示されるプライマーを含む。いくつかの実施形態において、プライマーのプールは、配列番号8~11、23、27、及び28に示されるプライマーを含む。
【0186】
いくつかの実施形態において、ノブペプチドは、セクションII.Cに記載される方法を使用して同定されるペプチドである。同定されたら、ノブペプチド配列は、当業者に既知の方法を使用して増幅され得る。他の実施形態において、ノブペプチドは、合成的に生成され得る。組換え法、化学合成、又はそれらの組み合わせを含む様々な技法を用いることができる。いくつかの実施形態において、化学合成法は、ホスホラミダイト法などの既知の化学合成技法を含み得る。場合によっては、組換え又は合成核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)によって生成され得る。
【0187】
c.ディスプレイのための合成ペプチド
いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは、合成ペプチドである。いくつかの実施形態において、合成ペプチドは、本明細書に記載されるシステインモチーフ及びジスルフィド結合を有する、例えば、2~20のシステイン残基及び1~10のジスルフィド結合を有するランダム配列ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、合成ペプチドは、本明細書に記載されるシステインモチーフ及びジスルフィド結合を有することについて、例えば、2~20のシステイン残基及び1~10のジスルフィド結合を有することについて、ランダム配列ライブラリーから選択されている。ランダム配列ライブラリーを産生する方法は既知である。
【0188】
いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは、半合成超長CDR3ノブである。いくつかの実施形態において、半合成超長CDR3ノブは、修飾のための足場として使用されているウシ超長CDR3ノブに由来する。いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3ノブは、例えば、半合成超長CDR3ノブが依然として2~20のシステイン残基及び1~10のジスルフィド結合を含むように、例えば、本明細書に記載されるシステインモチーフ及びジスルフィド結合構造を保存しながら、ランダム変異を含むように修飾されている。いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3ノブは、外因性ペプチド配列を含むように修飾されている。いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3ノブは、例えば、半合成超長CDR3ノブが依然として2~20のシステイン残基及び1~10のジスルフィド結合を含むように、例えば、本明細書に記載されるシステインモチーフ及びジスルフィド結合構造を保存しながら、その中の1つ以上のペプチド配列を欠失させるように修飾されている。
【0189】
いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは、シクロチドである。いくつかの実施形態において、ディスプレイのためのポリペプチドは、例えば、外因性ペプチド配列を含むように修飾されている修飾されたシクロチドである。いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチドは、本明細書に記載されるか又は提供される方法により同定される任意のものを含む、超長CDR3ノブ配列又はその一部を含む。
【0190】
システイン-ノットマイクロタンパク質(シクロチド)は、様々な植物種において見出されるシステイン-ノットマイクロタンパク質又はシクロチドの天然に存在するファミリーを含む。システイン-ノットマイクロタンパク質(シクロチド)は、典型的には、約30~40個のアミノ酸からなる小ペプチドであり、環状又は直鎖状形態として天然に見出すことができ、環状形態は、遊離N末端又はC末端のアミノ又はカルボキシル末端も有さない。それらは、3つの分子内ジスルフィド結合及び小さな三本鎖βシートに基づく明確な構造を有する(Craik et al.,2001;Toxicon 39,43-60)。環状タンパク質は、本明細書において「システインノット」と呼ばれる構造を明確にする保存されたシステイン残基を示す。このファミリーは、天然に存在する環状分子及びそれらの直鎖状誘導体の両方、並びに環化を受けた直鎖状分子を含む。これらの分子は、あまり構造化されていないペプチドよりも高い安定性を有する分子フレームワーク構造として有用である。(Colgrave and Craik,2004;Biochemistry 43,5965-5975)。
【0191】
主なシクロチドの特徴は、システインノットによる顕著な安定性、化学合成に容易に利用できるようにする小さなサイズ、及び配列変異に対する優れた耐性である。シクロチド足場は、ほぼ30の異なるタンパク質ファミリーにおいて見出され、その中で、コノトキシン、クモ毒、カボチャ属阻害剤、アグーチ関連タンパク質、及び植物シクロチドが、最も多く存在するファミリーである。Rubiaceae科及びViolaceae科の植物からのシクロチドは、大部分が頭-尾環状ペプチドであることが見出されている(Craik et al.2010.Cell.Mol.Life Sci.67:9-16)。しかしながら、シクロチドのカボチャ属阻害剤ファミリー内では、環状及び直鎖状の両方のシクロチドは、Momordica cochinchinensisから同定されている:環状トリプシン阻害剤(MCoTI)-I及び-II、並びにそれらの直鎖状対応物MCoTI-III(Hernandez et al.2000.Biochemistry,39,5722-5730)。現在、環状及び直鎖状バリアントの両方が異なるシクロチドファミリーに存在し得ることが明らかであるが、環化の影響はあまり理解されていない。環状ペプチドは、それらの直鎖状対応物と比較した場合、改善された安定性、プロテアーゼに対するより良好な耐性、及び低減された可動性を示すことが予想され、望ましくは、増強された生物学的活性をもたらす。しかしながら、直鎖状シクロチドは、他のペプチド又はタンパク質により容易に結合することができるという利点を有する。
【0192】
例えば、シクロチドは、植物において一般的に見出される。提供される実施形態の態様において、シクロチドは、Momordicae、Rubiaceae、及びViolaceaeの植物種のシクロチドの直鎖状又は環状形態に由来する。好ましい態様において、本発明のシクロチドは、カボチャ属セリンプロテアーゼ阻害剤ファミリーを含むMomordicae種のシクロチドの直鎖状又は環状形態に由来し(Otlewski & Korowarsch Acta Biochim Pol.1996;43(3):431-44)、より好ましい態様において、以下のMomordica cochinchinensisトリプシン阻害剤MCoTI-I[配列番号95]及び-II[配列番号96](天然に環状)、並びにMCoTI-III(天然に直鎖状)[配列番号97]に由来する。
Mcoti-I GGVCPKILQRCRRDSDSPGACICRGNGYCGSGSD[配列番号95]
Mcoti-II GGVCPKILKKCRRDSDSPGACICRGNGYCGSGSD[配列番号96]
Mcoti-III ERACPRILKKCRRDSDSPGACICRGNGYCG[配列番号97]
【0193】
いくつかの実施形態において、シクロチド分子フレームワークは、システイン-ノット骨格を形成するアミノ酸又はその類似体の配列を含み、当該システイン-ノット骨格は、当該システイン-ノット骨格の三次元構造にノットトポロジーを付与するのに十分なジスルフィド結合又はその化学的等価物を含み、1つ以上のベータターン上及び/又は1つ以上のループ内などの少なくとも1つの露出したアミノ酸残基が、天然に存在するアミノ酸配列と比較して挿入又は置換されている(置き換えられている)。いくつかの実施形態において、シクロチドは、外因性ペプチド配列の挿入又は外因性ペプチド配列による置換によって修飾される。したがって、本明細書に記載のシクロチドは、天然又は野生型非修飾シクロチドと比較して修飾されたシクロチドであり、修飾されたシクロチドは、1つ以上のアミノ酸配列、例えば、外因性ペプチド配列によって挿入又は置換された1つ以上のループを有する。提供される実施形態の態様において、修飾されたシクロチドは、高い酵素安定性を提供するのに十分なアミノ酸構造を組み込む。
【0194】
いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチド配列は、システインノット骨格部分及び外因性ペプチド配列を有するものとして定義されてもよく、当該修飾されたシクロチドは、i)外因性ペプチド配列であって、当該配列が約2~50のアミノ酸残基である外因性ペプチド配列と、ii)ステップi)の当該配列にグラフトされたシステインノット骨格であって、当該システインノット骨格が、構造(I):
【化1】
【0195】
(式中、C1~C6は、システイン残基であり、C1及びC4、C2及びC5、並びにC3及びC6の各々は、ジスルフィド結合によって連結されてシステインノットを形成し、各Xは、ループ内のアミノ酸残基を表し、当該アミノ酸残基は、同じであるか又は異なり、dは、約1~2であり、ループ1、2、3、5、又は6のうちの1つ以上は、節i)の配列を含むアミノ酸配列を有し、節i)の当該配列を含む任意のループは、2~約50個のアミノ酸を含み、節i)の当該配列を含まないループ1、2、3、5、又は6のうちのいずれかについて、a、b、c、e、及びfは、同じであるか又は異なり、各々3~10の任意の数であり、b、c、e、及びfは、各々1~20の任意の数である)を含むシステインノット骨格と、を含む。
【0196】
いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチド配列は、直鎖状又は環状のいずれかであり得る。
【0197】
いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチドは、Momordicae、Rubiaceae、及びViolaceaeの植物種のシクロチドの直鎖状又は環状形態に由来する。いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチドは、カボチャ属セリンプロテアーゼ阻害剤ファミリーを含むMomordicae種のシクロチドの直鎖状又は環状形態に由来する(Otlewski & Korowarsch Acta Biochim Pol.1996;43(3):431-44)。いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチドは、以下のMomordica cochinchinensisトリプシン阻害剤MCoTI-I[配列番号95]及び-II[配列番号96](天然に環状)、並びにMCoTI-III(天然に直鎖状)[配列番号97]に由来する。
Mcoti-I GGVCPKILQRCRRDSDSPGACICRGNGYCGSGSD[配列番号95]
Mcoti-II GGVCPKILKKCRRDSDSPGACICRGNGYCGSGSD[配列番号96]
Mcoti-III ERACPRILKKCRRDSDSPGACICRGNGYCG[配列番号97]
【0198】
例えば、未修飾又は野生型シクロチドは、配列番号95~97のいずれか1つに示されるシクロチドであり、その1つ以上のループが1つ以上のアミノ酸配列(例えば、外因性ペプチド配列)によって挿入又は置換されているシクロチドであり得る。特定の実施形態において、修飾されたシクロチドは、Mcoti-II(配列番号96)に基づくループ置換ライブラリーに由来する。
【0199】
いくつかの実施形態において、外因性ペプチド配列が挿入又は置換されるループは、ループ1である。いくつかの実施形態において、外因性ペプチド配列が挿入又は置換されるループは、ループ5である。いくつかの実施形態において、外因性ペプチド配列が挿入又は置換されるループは、環化を受けて形成されるようなループ6である。
【0200】
いくつかの実施形態において、未修飾シクロチド、例えば、シクロチドMcoti-II(配列番号96)に挿入又は置き換えられる外因性ペプチド配列は、2~50のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態において、外因性ペプチド配列は、2~40個のアミノ酸、2~30個のアミノ酸、2~25個のアミノ酸、2~20個のアミノ酸、2~15個のアミノ酸、2~10個のアミノ酸、2~5個のアミノ酸、5~50個のアミノ酸、5~40個のアミノ酸、5~30個のアミノ酸、5~25個のアミノ酸、5~20個のアミノ酸、5~15個のアミノ酸、5~10個のアミノ酸、10~50個のアミノ酸、10~40個のアミノ酸、10~30個のアミノ酸、10~25個のアミノ酸、10~15個のアミノ酸、15~50個のアミノ酸、15~40個のアミノ酸、15~30個のアミノ酸、15~25個のアミノ酸、15~20個のアミノ酸、20~50個のアミノ酸、20~40個のアミノ酸、20~30個のアミノ酸、20~25個のアミノ酸、25~50個のアミノ酸、25~40個のアミノ酸、25~30個のアミノ酸、30~50個のアミノ酸、30~40個のアミノ酸、又は40~50個のアミノ酸である。いくつかの実施形態において、外因性ペプチド配列は、2~30個のアミノ酸、例えば、2~24個のアミノ酸、2~18個のアミノ酸、2~12個のアミノ酸、2~6個のアミノ酸、6~30個のアミノ酸、6~24個のアミノ酸、6~18個のアミノ酸、6~12個のアミノ酸、12~30個のアミノ酸、12~24個のアミノ酸、12~18個のアミノ酸、18~30個のアミノ酸、18~24個のアミノ酸、又は24~30個のアミノ酸である。
【0201】
B.ディスプレイライブラリー
本明細書ではまた、任意の提供される方法によって産生される任意のものを含む、ディスプレイ粒子、例えばファージミド粒子のライブラリーも提供される。
【0202】
本明細書ではまた、BLV1H12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、及びF18からなる群から選択される可変ラムダ軽(VL)領域、又はそのヒト化バリアントに連結された超長CDR3を含むウシ可変重(VH)領域を有する単鎖可変断片をコードする第1の核酸配列と、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列とを含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクターを含むか、又は複製可能な発現ベクターであるファージミドも提供される。いくつかの実施形態において、VL領域は、BLV1H12のVL領域である。
【0203】
本明細書ではまた、ウシ超長CDR3ノブをコードする第1の核酸配列と、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列とを含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクターを含むか、又は複製可能な発現ベクターであるファージミドも提供される。
【0204】
本明細書ではまた、連結されたジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列をコードする第1の核酸配列と、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列とを含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクターを含むか、又は複製可能な発現ベクターであるファージミドも提供される。
【0205】
いくつかの実施形態において、ディスプレイ粒子、例えば、本明細書に記載のファージミドのうちのいずれかによってコードされるファージミド粒子のライブラリーも本明細書において提供される。
【0206】
いくつかの実施形態において、ディスプレイ粒子は、超長CDR3ノブ、例えば、本明細書に記載のいずれかを含む。
【0207】
いくつかの実施形態において、ディスプレイ粒子は、合成又は半合成の超長CDR3ノブ、例えば、本明細書に記載のいずれかを含む。
【0208】
いくつかの実施形態において、ディスプレイ粒子は、シクロチド、例えば、本明細書に記載のいずれかを含む。
【0209】
いくつかの実施形態において、ディスプレイ粒子は、修飾されたシクロチド、例えば、本明細書に記載のいずれかを含む。
【0210】
いくつかの実施形態において、ディスプレイ粒子は、超長CDR3領域を含むVHを有するscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約20%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約30%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約35%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約40%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約45%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約50%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約60%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約70%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約80%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約90%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリー中のディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子の少なくとも又は少なくとも約95%は、超長CDR3領域を有するVH領域を含むscFvを含む。
【0211】
C.細胞選択方法
本明細書ではまた、本明細書に記載のディスプレイライブラリーのうちのいずれかから、標的分子に特異的な抗体結合タンパク質を選択するための方法も提供される。次いで、これらのディスプレイライブラリーを、標的分子と接触させ、標的に対して最も高い親和性を有するライブラリーのメンバーを、より低い親和性のメンバーから分離する。次いで、これらのディスプレイライブラリーを、標的分子と接触させ、標的に対して最も高い親和性を有するライブラリーのメンバーを、より低い親和性のメンバーから分離する。次いで、高親和性結合物は、任意の適切な系によって増幅される。このプロセスは、所望の親和性のポリペプチドが得られるまで繰り返される。
【0212】
例えば、ディスプレイライブラリーは、超長CDR3 scFvポリペプチド又はCDR3-ノブペプチドがファージコートタンパク質に融合され、そのポリペプチドをコードするDNAを含むファージミド粒子の表面上に、通常は平均して各関連ポリペプチドの単一コピーとしてディスプレイされる、本明細書に記載されるファージディスプレイライブラリーである。次いで、これらのファージミド粒子を、標的分子と接触させ、標的に対して最も高い親和性を有する粒子を、より低い親和性の粒子から分離する。次いで、高親和性結合物は、細菌宿主の感染によって増幅され、競合的結合ステップが繰り返される。このプロセスは、所望の親和性のポリペプチドが得られるまで繰り返される。
【0213】
いくつかの実施形態において、提供される方法は、ディスプレイ粒子、例えばファージミド粒子の、標的分子への結合を可能にする条件下で、本明細書において提供されるディスプレイライブラリーのうちのいずれかを標的分子と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、方法は、結合するディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子を結合しないものから分離し、それによって、標的分子に結合する抗体結合タンパク質を含むディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子を選択することを更に含む。いくつかの実施形態において、方法は、選択された粒子中の融合遺伝子を配列決定して、抗体結合タンパク質を同定することを含む。
【0214】
標的分子は、天然の供給源から単離され得るか、又は当該技術分野で既知の手順による組換え方法によって調製され得る。精製された標的分子は、好適なマトリックス、例えば、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、ガラスビーズ、セルロース、様々なアクリルコポリマー、ヒドロキシアルキルメタクリレートゲル、ポリアクリル及びポリメタクリルコポリマー、ナイロン、中性及びイオン性担体などに結合され得る。マトリックスへの標的タンパク質の結合は、Methods in Enzymology,44 1976に記載される方法によって、又は当該技術分野で既知の他の手段によって達成され得る。
【0215】
マトリックスへの標的分子の結合後、固定化された標的は、ディスプレイ粒子の少なくとも一部と固定化された標的分子との結合に好適な条件下で、ディスプレイ粒子、例えば、ファージミド粒子のライブラリーと接触させることができる。通常、pH、イオン強度、温度などを含む条件は、生理学的条件を模倣する。例示的な「接触」条件は、4℃~37℃、例えば室温で、15分~4時間、例えば、1時間インキュベートすることを含み得る。しかしながら、これらは、相互作用する結合パートナーなどの性質に応じて適宜変化してもよい。混合物を、穏やかな揺動、混合、又は回転に供することができる。加えて、他の適切な試薬、例えば、非特異的結合を低減するための遮断剤が添加され得る。例えば、1~4%のBSA又は他の好適な遮断剤(例えば、乳汁)を使用することができる。しかしながら、接触条件は、スクリーニング方法の目的に応じて当業者によって変更及び適応され得ることが理解されるであろう。例えば、インキュベーション温度が、例えば、室温又は37℃である場合、これは、これらの条件下で安定である(例えば、37℃でのインキュベーションの場合、ヒト身体において見出される条件下で安定である)結合剤を同定する可能性を増加させ得る。そのような特性は、結合パートナーの一方又は両方が、ある種の治療用途、例えば抗体において使用される候補である場合、非常に有利であり得る。再び、条件に対するそのような適応は、当業者の範囲内である。
【0216】
固定化された標的分子に対して高い親和性を有する結合したディスプレイ粒子(「結合剤」)は、洗浄により低い親和性を有する(したがって標的に結合しない)ものから分離することができる。結合剤は、様々な方法によって固定化された標的分子から解離され得る。これらの方法には、野生型リガンドを使用する競合的解離、pH、及び/又はイオン強度の変更、並びに当該技術分野で既知の方法が含まれる。
【0217】
いくつかの実施形態において、標的分子は、非病原性細菌、ウイルス、ウイルスタンパク質、癌抗原、ヒトIgG、又はその組換えタンパク質である。いくつかの実施形態において、標的分子は、ウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、標的分子は、コロナウイルス、コロナウイルス偽ウイルス、組換えコロナウイルススパイクタンパク質、又はコロナウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)である。いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、及びSARS-CoV2からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、Wuhan-Hu-1単離株、B.1.351南アフリカバリアント、又はB.1.1.7 UKバリアントから選択されるSARS-CoV2である。
【0218】
いくつかの実施形態において、方法は、以前に選択されたディスプレイ粒子が再発現され、同じ又は異なる標的分子を用いることを含む更なる選択ステップに供されるステップを含む。いくつかの実施形態において、選択ステップは、1回以上繰り返される。いくつかの実施形態において、更なる選択ステップは、好適な宿主細胞を、以前に選択されたディスプレイ粒子をコードする複製可能な発現ベクターに感染させることと、追加の増幅されたディスプレイ粒子を収集することと、追加の増幅されたディスプレイ粒子を同じ又は異なる標的抗原と接触させることと、を含む。いくつかの実施形態において、異なる標的分子は、標的分子に関連し、同じ種類の病原体、同じ群の病原体、又は標的分子のバリアントである。いくつかの実施形態において、標的分子及び異なる標的分子は、コロナウイルス229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、及びSARS-CoV2の任意の組み合わせに関連する。いくつかの実施形態において、標的分子及び異なる標的分子は、Wuhan-Hu-1単離株、B.1.351南アフリカバリアント、及びB.1.1.7 UKバリアントから選択されるSARS-CoV2バリアントの任意の組み合わせに関連する。
【0219】
提供される方法により結合剤のうちの1つ以上のセットが選択又は単離されたら、これらを更なる分析に供することができる。いくつかの実施形態において、更なる分析は、増幅ステップとしての細菌の感染による結合剤の単離、ファージ又はファージミドDNAの単離、及び当該ファージ又はファージミドDNAに含まれる候補結合剤をコードするDNA配列の好適な発現ベクターへのクローニングを伴う。そのような感染ステップはまた、結合剤の増幅を可能にし得る。あるいは、結合剤は、他の適切な方法によって、例えば、当該結合剤をコードする核酸のPCR又は当該核酸の適切な宿主細胞への形質転換(好適な発現ベクターの状況において)によって、この段階で増幅され得る。
【0220】
結合剤をコードするDNAが好適な発現ベクターにクローニングされると、結合剤をコードするDNAを配列決定することができるか、又はタンパク質を可溶性形態で発現させることができ(例えば、本明細書において提供される方法によるものを含む)、適切な結合研究に供して、タンパク質レベルで候補を更に特徴付けることができる。適切な結合研究は、結合剤の性質に依存し、ELISA、フィルタースクリーニングアッセイ、FACS、若しくは免疫蛍光アッセイ、BiaCore親和性測定、又は結合定数を定量するための他の方法、組織スライド若しくは細胞の染色、及び他の免疫組織化学法を含むが、これらに限定されない。これらの結合研究のうちの1つ以上を使用して、結合剤を分析することができる。
【0221】
本明細書ではまた、配列ライブラリーからのものを含む、アミノ酸配列によってウシCDR H3ノブなどの超長CDR H3ノブを同定するための方法も提供される。いくつかの態様において、超長CDR H3ノブを同定するための方法は、例えば、本明細書に記載される、例えば以下に示される式を参照することなどによって、ノブドメインの領域を定義することを含む。
【0222】
いくつかの実施形態において、超長CDR H3ノブを同定するための方法は、ノブ領域N末端境界を「CPDG」モチーフ中の第1のDHシステインとして定義することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、フレームワーク4トリプトファン位置から上昇ストーク残基の数を減算することによって位置付けられる位置としてC末端境界を定義することを更に含む。いくつかの態様において、方法は、任意の抗体配列から超長CDR H3ノブを同定するために使用することができる。特定の実施形態において、抗体配列は、本明細書に記載の抗体のうちのいずれかなどのウシ抗体である。
【0223】
方法のこの実施形態の表現を以下に示す。
【0224】
ノブ境界位置(C末端)=保存されたフレームワーク4トリプトファン-Xの位置;式中、X=上昇ストークを定義するフレームワーク3標準システインから始まり、「CPDG」モチーフ中の保存された最初のD領域システインの前のアミノ酸で終わる、アミノ酸の数。
【0225】
ノブ中の残基の数(K)=L-2X;式中、L=標準フレームワーク3システインで始まり、標準フレームワーク4トリプトファンで終わる、ストークドメイン及びノブドメインを包含するアミノ酸の数。
K位置=(X+1)~(X+K)
【0226】
III.可溶性ペプチドの発現
本明細書ではまた、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法のいずれかによって同定された抗体結合タンパク質(結合剤とも呼ばれる)のいずれかを産生する方法を含む、可溶性ジスルフィド結合含有ペプチドを産生する方法も提供される。提供される方法によって産生される可溶性ペプチドは、ジスルフィド結合した可溶性タンパク質を産生することが望ましい2つ以上のシステイン残基を含むペプチド(例えば、25~70アミノ酸長)である。いくつかの実施形態において、提供される方法は、宿主細胞、例えばE.coliを、可溶性ペプチドをコードする発現ベクターで形質転換することを含む。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、可溶性ペプチド及びシャペロン、例えば細菌シャペロンを含む融合タンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチド及びシャペロン、例えば細菌シャペロンは、リンカーによって連結されている。いくつかの実施形態において、リンカーは切断可能なリンカーである。
【0227】
核酸を操作するための技法、例えば、配列中に変異を生成する、サブクローニング、標識、プロービング、配列決定、ハイブリダイゼーションなどのための技法は、科学刊行物及び特許文献に詳細に記載される。例えば、Sambrook J,Russell DW(2001)Molecular Cloning:a Laboratory Manual,3rd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel ed.,John Wiley & Sons,Inc.,New York(1997)、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization With Nucleic Acid Probes,Part I,Theory and Nucleic Acid Preparation,Tijssen ed.,Elsevier,N.Y.(1993)を参照されたい。
【0228】
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、可溶性タンパク質単独と比較して増加した溶解度を有する。いくつかの態様において、この増加した溶解度は、シャペロン、例えば細菌シャペロンの包含によって少なくとも部分的に付与される。いくつかの態様において、シャペロン、例えば細菌シャペロンの包含は、融合タンパク質の可溶性を促進する一方で、ジスルフィド結合形成を促進するように操作又は修飾された宿主細胞環境を含む可溶性ペプチドにおけるジスルフィド結合形成を可能にする。いくつかの実施形態において、シャペロン、例えば細菌シャペロンは、チオレドキシンA(TrxA)である。
【0229】
いくつかの実施形態において、提供される方法は、宿主細胞、例えば、E.coliなどの細菌を、融合タンパク質の発現を許容する条件下で培養することを更に含む。いくつかの実施形態において、提供される方法は、培養後に、発現された融合タンパク質を宿主細胞、例えば、E.coliなどの細菌の溶解物の上清から単離することを更に含む。いくつかの実施形態において、提供される方法は、切断可能なリンカーを切断し、それによって細菌シャペロンを含まない可溶性ペプチドを産生することを更に含む。
【0230】
いくつかの実施形態において、切断可能なリンカーは、エンテロキナーゼ切断タグである。いくつかの実施形態において、切断可能なリンカーは、アミノ酸配列DDDDK(配列番号106)を含む。いくつかの実施形態において、切断可能なリンカーの切断は、エンテロキナーゼを添加することを含む。いくつかの実施形態において、エンテロキナーゼは、宿主細胞溶解物の上清に添加される。いくつかの実施形態において、提供される方法は、切断可能なリンカーを切断した後に、可溶性ペプチドを含む溶液からエンテロキナーゼ及び/又は細菌シャペロンを除去することを更に含む。
【0231】
いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、最大70アミノ酸長である。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、40~60アミノ酸長である。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、少なくとも42アミノ酸長である。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、又は60アミノ酸長である。
【0232】
いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、25~70個のアミノ酸である。例えば、いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、35アミノ酸長以上、40アミノ酸長以上、45アミノ酸長以上、50アミノ酸長以上、55アミノ酸長以上、又は60アミノ酸長以上である。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、35~70アミノ酸長、40~70アミノ酸長、45~70アミノ酸長、50~70アミノ酸長、55~70アミノ酸長、若しくは60~70アミノ酸長、又は約35~70アミノ酸長、40~70アミノ酸長、45~70アミノ酸長、50~70アミノ酸長、55~70アミノ酸長、若しくは60~70アミノ酸長である。
【0233】
いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、6~50個のアミノ酸、6~40個のアミノ酸、6~30個のアミノ酸、6~25個のアミノ酸、6~20個のアミノ酸、6~15個のアミノ酸、6~10個のアミノ酸、10~50個のアミノ酸、10~40個のアミノ酸、10~30個のアミノ酸、10~25個のアミノ酸、10~15個のアミノ酸、15~50個のアミノ酸、15~40個のアミノ酸、15~30個のアミノ酸、15~25個のアミノ酸、15~20個のアミノ酸、20~50個のアミノ酸、20~40個のアミノ酸、20~30個のアミノ酸、20~25個のアミノ酸、25~50個のアミノ酸、25~40個のアミノ酸、25~30個のアミノ酸、30~50個のアミノ酸、30~40個のアミノ酸、又は40~50個のアミノ酸である。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、6~30個のアミノ酸、6~24個のアミノ酸、6~18個のアミノ酸、6~12個のアミノ酸、12~30個のアミノ酸、12~24個のアミノ酸、12~18個のアミノ酸、18~30個のアミノ酸、18~24個のアミノ酸、又は24~30個のアミノ酸である。
【0234】
いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、ジスルフィド結合を形成することができるシステインモチーフを含む。いくつかの実施形態において、システインモチーフは、2~20のシステイン残基、例えば、2~18、2~16、2~14、2~12、2~10、2~8、2~6、2~4、4~20、4~18、4~16、4~14、4~12、4~10、4~8、4~6、6~20、6~18、6~16、6~14、6~12、6~10、6~8、8~20、8~18、8~16、8~14、8~12、8~10、10~20、10~18、10~16、10~14、10~12、12~20、12~18、12~16、12~14、14~20、14~18、14~16、16~20、16~18、若しくは18~20、又は約2~18、2~16、2~14、2~12、2~10、2~8、2~6、2~4、4~20、4~18、4~16、4~14、4~12、4~10、4~8、4~6、6~20、6~18、6~16、6~14、6~12、6~10、6~8、8~20、8~18、8~16、8~14、8~12、8~10、10~20、10~18、10~16、10~14、10~12、12~20、12~18、12~16、12~14、14~20、14~18、14~16、16~20、16~18、若しくは18~20のシステイン残基(各々境界値を含む)を含む。いくつかの実施形態において、システインモチーフは、2~12のシステイン残基を含む。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、少なくとも4つのCys残基を含む。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、4つのCys残基を含む。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、6、8、10、又は12のCys残基を含む。
【0235】
いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、1~10のジスルフィド結合、例えば、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~10、6~9、6~8、6~7、7~10、7~9、7~8、8~10、8~9、若しくは9~10、又は約1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~10、6~9、6~8、6~7、7~10、7~9、7~8、8~10、8~9、若しくは9~10のジスルフィド結合(各々境界値を含む)を含む。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、1~6つのジスルフィド結合を含む。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、2~6つのジスルフィド結合を含む。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、少なくとも2つのジスルフィド結合を有する。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、2つのジスルフィド結合を有する。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、3、4、又は5つのジスルフィド結合を有する。
【0236】
いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、可溶性ペプチド中に存在する最もN末端のシステイン残基の前に3~6個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、可溶性ペプチド中に存在する最もN末端のシステイン残基の前に、3、4、5、又は6個のアミノ酸を含む。
【0237】
いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、可溶性ペプチド中に存在する最もC末端のシステイン残基の後に少なくとも6個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、可溶性ペプチド中に存在する最もC末端のシステイン残基の後に6~9個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、可溶性ペプチド中に存在する最もC末端のシステイン残基の後に、6、7、8、又は9個のアミノ酸を含む。
【0238】
いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、可動性リンカーを含む。いくつかの実施形態において、可動性リンカーは、可溶性ペプチドのN末端に含まれる。いくつかの実施形態において、可動性リンカーは、可溶性ペプチド中に存在する最もN末端のシステイン残基の前の3~6個のアミノ酸に付加される。いくつかの実施形態において、可動性リンカーは、可溶性ペプチド中に存在する最もN末端側のシステイン残基の前の3~6個のアミノ酸に含まれる。いくつかの実施形態において、可動性リンカーは、可溶性ペプチドのC末端に含まれる。いくつかの実施形態において、可動性リンカーは、可溶性ペプチドに存在する最もC末端のシステイン残基の後の少なくとも6個のアミノ酸に付加される。いくつかの実施形態において、可動性リンカーは、可溶性ペプチド中に存在する最もC末端側のシステイン残基の後の少なくとも6個のアミノ酸に含まれる。
【0239】
いくつかの実施形態において、可動性リンカーは、GGGGAMGS(配列番号108)である。いくつかの実施形態において、可動性リンカーは、GGS(配列番号109)である。いくつかの実施形態において、可動性リンカー(例えば、GGGGAMGS、配列番号108)は、可溶性ペプチドの環化を可能にする。いくつかの実施形態において、環化は、化学的方法又は酵素的方法を介する。いくつかの実施形態において、可動性リンカー(例えば、GGGGAMGS、配列番号108)は、可溶性ペプチドのソルターゼ媒介環化を可能にする。いくつかの実施形態において、提供される方法は、例えば、化学的方法又は酵素的方法を介して、可溶性ペプチドを環化するステップを更に含む。
【0240】
いくつかの実施形態において、提供される方法は、可溶性ペプチドを富化するステップを更に含む。いくつかの実施形態において、提供される方法は、可溶性ペプチドの可溶性凝集体を含む、溶液中に存在する任意の可溶性凝集体から可溶性ペプチドを分離することを更に含む。いくつかの実施形態において、分離は、活性な可溶性ペプチドを、そのより大きい、不活性な、又はあまり活性でない可溶性凝集体から分離することを伴う。いくつかの実施形態において、分離は、クロマトグラフィ法を使用して達成される。いくつかの実施形態において、富化又は分離は、サイズ排除クロマトグラフィによる。いくつかの実施形態において、分離は、可溶性ペプチドを含むが、その可溶性凝集体を含まない1つ以上の溶出画分を収集し、それによって可溶性ペプチドの富化又は精製された組成物を産生することを伴う。
【0241】
いくつかの実施形態において、提供される方法は、可溶性ペプチドを含む多重特異性結合分子を産生することを更に含む。いくつかの実施形態において、多重特異性結合分子は、可溶性ペプチドの複数のコピーを含む。いくつかの実施形態において、多重特異性結合分子は、異なる可溶性ペプチドを含む。いくつかの実施形態において、多重特異性結合分子は、可溶性ペプチド間(例えば、一方の可溶性ペプチドコピーのC末端と他方の可溶性ペプチドコピーのN末端との間)に可動性リンカー(例えば、Gly-Gly-Gly-Ser)を含む。いくつかの実施形態において、1つの可溶性ペプチドは、IgGとして軽鎖と共に発現されるVH領域に存在し、第2の可溶性ペプチドは、重鎖定常領域に融合される。いくつかの実施形態において、多重特異性結合分子は、同じ可溶性ペプチドを有する2つのVH領域を含む。いくつかの実施形態において、多重特異性結合分子は、例えば、異種重鎖のみが互いに効果的に対合して二量体を形成するような定常領域変異を有する重鎖を使用して、異なる可溶性ペプチドを含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、これらの変異は、FcのCH3ドメインにおける一方の鎖上のT22Y及び他方の鎖上のY86Tなどの「ノブ・イントゥ・ホール」変異である。
【0242】
いくつかの実施形態において、発現ベクターは、融合タンパク質の発現を制御するための誘導性プロモーター配列を更に含む。本明細書で使用される場合、「プロモーター配列」という用語は、一般的にDNAポリマー中に存在する遺伝子の上流に位置し、当該遺伝子のmRNAへの転写の開始部位を提供するDNA配列を指す。本発明における使用に好適なプロモーター配列は、ウイルス、バクテリオファージ、原核生物細胞又は真核生物細胞に由来してもよく、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターであってもよい。
【0243】
いくつかの実施形態において、誘導性プロモーター配列は、融合タンパク質をコードする配列に作動可能に連結される。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、第1の配列が第2の配列の制御下で第2の配列又は領域に影響を及ぼすことができるように、第1の配列が第2の配列に十分に近接して配置されていることを意味する。例えば、プロモーター配列は、遺伝子配列に作動可能に連結されてもよく、通常、遺伝子配列の発現がプロモーター配列の制御下にあるように、遺伝子配列の5’末端に位置する。加えて、調節配列は、転写を促進する際にプロモーター配列の能力を増強するように、プロモーター配列に作動可能に連結され得る。このような場合、調節配列は、一般的に、プロモーター配列の5’末端に位置する。
【0244】
本発明における使用に好適なプロモーター配列は、好ましくは、以下のうちのいずれか1つに由来する:ウイルス、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、及びヒト細胞。例えば、細菌細胞において有用なプロモーターとしては、tacプロモーター、T7プロモーター、T7 A1プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、araBADプロモーター、及びλPRPLプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。植物細胞において有用なプロモーターとしては、例えば、35S CaMVプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーターなどが挙げられる。哺乳動物細胞における使用に好適な調節エレメントとしては、CMV-HSVチミジンキナーゼプロモーター、SV40、RSVプロモーター、CMVエンハンサー、又はSV40エンハンサーが挙げられる。
【0245】
本発明における使用に好適なベクターとしては、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ウイルス、又はレトロウイルスなどの遺伝子工学技術において一般的に使用されるものが挙げられる。
【0246】
本発明における使用に好適なベクターは、転写開始部位、転写終結部位、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位、翻訳終結部位などの他の発現制御エレメントを含んでもよい。本発明における使用に好適なベクターは、転写/翻訳エンハンサー配列などの更なる調節エレメント、及び好適な条件下でベクターのスクリーニングを可能にする少なくともマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子を更に含んでもよい。本発明における使用に好適なマーカー遺伝子としては、例えば、真核生物細胞培養において有用なジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子及びG418又はネオマイシン耐性遺伝子、並びにE.coli及び他の細菌培養において有用なアンピシリン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、又はカナマイシン耐性遺伝子が挙げられる。本発明における使用に好適なベクターは、分泌シグナルをコードする核酸配列を更に含み得る。これらの配列は当業者に周知である。
【0247】
使用されるベクター及び宿主細胞系に依存して、本発明により産生される組換え遺伝子産物(タンパク質)は、組換え細胞内に残存するか、培養培地中に分泌されるか、周辺質中に分泌されるか、又は細胞膜の外表面上に保持されるかのいずれかであり得る。本発明の方法によって産生される組換え遺伝子産物(タンパク質)は、様々な標準的なタンパク質精製技術(アフィニティークロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過、電気泳動、逆相クロマトグラフィ、等電点電気泳動などが挙げられるが、これらに限定されない)を使用することによって精製され得る。本発明の方法によって産生される組換え遺伝子産物(タンパク質)は、好ましくは、「実質的に純粋な」形態で回収される。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」という用語は、市販製品としての精製されたタンパク質の有効な使用を可能にする当該精製されたタンパク質の純度を指す。
【0248】
A.宿主細胞
「宿主細胞」という用語は、核酸配列で形質転換、トランスフェクト、若しくは感染させた細胞、又は核酸配列で形質転換、トランスフェクト、若しくは感染させ、次いで目的のタンパク質を組換え産生するために目的の選択された遺伝子を発現することができる細胞を指すために使用される。この用語は、選択された遺伝子又は遺伝子修飾が存在する限り、子孫が形態又は遺伝的構成において元の親と同一であるか否かにかかわらず、親細胞の子孫を含む。
【0249】
可溶性ペプチド又は可溶性ペプチド及びシャペロン、例えば細菌シャペロンを含む融合タンパク質を産生するための提供される方法は、異種ポリペプチドを発現することができ、かつ遺伝子修飾することができる任意の宿主生物を使用して行うことができる。宿主生物は、好ましくは単細胞宿主生物であるが、生物が本明細書に記載されるように修飾され得、目的のポリペプチドがその中で発現され得る限り、多細胞生物の使用もまた、提供される方法によって包含される。明確にする目的のために、「宿主細胞」という用語は、本明細書全体を通して使用されるが、技術的理由のために実行不可能でない限り、宿主生物が宿主細胞の代わりに用いられ得ることが理解されるべきである。
【0250】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、細菌細胞などの原核生物細胞である。宿主細胞は、Bacillusなどのグラム陽性細菌細胞又はE.coliなどのグラム陰性細菌であり得る。宿主生物は、好気性生物又は嫌気性生物であり得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、他の細胞型よりも少ないプロテアーゼを有する宿主細胞など、ポリペプチドを発現するのに好ましい特徴を有するものである。この目的に好適な細菌には、古細菌及び真正細菌、例えば、腸内細菌科が含まれる。有用な細菌の他の例としては、Escherichia、Enterobacter、Azotobacter、Erwinia、Bacillus、Pseudomonas、Klebsiella、Proteus、Salmonella、Serratia、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、及びParacoccusが挙げられる。有用な細菌の更なる例としては、Corynebacterium、Lactococcus、Lactobacillus、及びStreptomyces species、特に、Corynebacterium glutamicum、Lactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、Streptomyces coelicolor、Streptomyces lividansが挙げられる。好適なE.coli宿主としては、E.coli DHB4、E.coli BL-21(両方のlonが欠損している(Phillips et al.J.Bacteriol.159:283,1984)及びompTプロテアーゼ)、E.coli AD494、E.coli W3110(ATCC 27,325)、E.coli 294(ATCC 31,446)、E.coli B、及びE.coli X1776(ATCC 31,537)が挙げられる。他の株としては、メチオニン欠損であり、したがって、35 S-メチオニン又はセレノメチオニンによる標的タンパク質の高特異的活性標識を可能にするE.coli B834が挙げられる(Leahy et al.Science 258:987,1992)。更に他の目的の株としては、BLR株、並びにK-12株HMS174及びNovaBlueが挙げられ、これらは、プラスミド単量体収率を改善し、反復配列を含む標的プラスミドを安定化するのに役立ち得るrecA誘導体である。
【0251】
いくつかの実施形態において、提供される方法において使用されるE.coli宿主細胞は、E.coliサイトゾルにおけるジスルフィド結合したタンパク質の可溶性発現を改善するように操作又は修飾される。いくつかの実施形態において、細胞質チオール-レドックス平衡環境は、チオレドキシンレダクターゼなどの還元経路における変化を介して変更される。いくつかの実施形態において、E.coli宿主細胞は、ジスルフィド結合形成を許容する酸化細胞質を有する。グルタチオンレダクターゼΔgor、チオレドキシンレダクターゼ、及び/又はグルタチオン生合成経路を欠く、SHuffle(New England Biolabs)及びOrigami(商標)(DE3)(Novagen,Germany)を含む様々な種類の変異株が市販されている。いくつかの実施形態において、提供される方法の一部として形質転換されたE.coli株は、Origami(商標)(DE3)(Novagen,Germany)変異株である。
【0252】
好適なBacillus株としては、Bacillus subtilis、Bacillus anzyloliguelaciens、Bacillus licheniformis、Bacillus brevis、Bacillus alcalophilus、Bacillus clauseii、Bacillus cereus、Bacillus pumilus、Bacillus thuringiensis、又はBacillus haloduransが挙げられる。グラム陽性細菌B.subtilisは、バイオテクノロジー産業における分泌タンパク質産生のための好ましい生物である。その需要は、主に、B.subtilisが、Escherichia coliなどのグラム陰性細菌の周辺質において多くのタンパク質を保持する外膜を欠くという事実に基づいている。したがって、細胞質膜を横切って輸送されるB.subtilisタンパク質の大部分は、成長培地中で直接終わる。加えて、外膜の欠如は、B.subtilisで産生されたタンパク質がリポ多糖(エンドトキシン)を含まないことを意味する。タンパク質産生宿主としてB.subtilisを使用する他の利点は、その高い遺伝的従順性、約4100個の遺伝子のほぼ全てにおいて変異を有する株の利用可能性、遺伝子発現のための株及びベクターを有するツールボックス、並びにこの細菌が一般的に安全であると認識されているという事実である(Braun et al.,Curr.Opin.Biotechnol.10:376-381,1999、Kobayashi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 100:4678-4683,2003、Kunst et al.Nature 390:249-256,1997、Zeigler et al.,In E.Goldman and L.Green(ed.),Practical Handbook of Microbiology.CRC Press,Boca Raton,Fla.,2008)。
【0253】
別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞又は哺乳類細胞などの真核生物細胞である。哺乳類細胞の例としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster ovary cell、CHO)(ATCC番号CCL61)、CHO DHFR細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:4216-4220(1980))、ヒト胎児腎臓(human embryonic kidney、HEK)293若しくは293T細胞(ATCC番号CRL1573)、又は3T3細胞(ATCC番号CCL92)が挙げられる。好適な哺乳類宿主細胞の選択、並びに形質転換、培養、増幅、スクリーニング、及び産物産生及び精製のための方法は、当該技術分野で既知である。他の好適な哺乳類細胞株は、サルCOS-1細胞株(ATCC番号CRL1650)及びCOS-7細胞株(ATCC番号CRL1651)、並びにCV-1細胞株(ATCC番号CCL70)である。更なる例示的な哺乳類宿主細胞としては、霊長類細胞株及びげっ歯類細胞株(形質転換細胞株を含む)が挙げられる。正常な二倍体細胞、初代組織のインビトロ培養に由来する細胞株、並びに初代外植片もまた好適である。候補細胞は、選択遺伝子が遺伝子型的に欠損していても、優性に作用する選択遺伝子を含んでいてもよい。他の好適な哺乳類細胞株としては、マウス神経芽細胞腫N2A細胞、HeLa、マウスL-929細胞、Swiss、Balb-c、又はNIHマウスに由来する3T3株、BHK又はHaKハムスター細胞株(これらは、ATCCから入手可能である)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞株の各々は、タンパク質発現の当業者に既知であり、利用可能である。
【0254】
当業者に既知の酵母細胞の多くの株もまた、本明細書に記載のポリペプチドの発現のための宿主細胞として利用可能である。例示的な酵母細胞としては、例えば、Saccharomyces cerivisae及びPichia pastorisが挙げられる。Aspergillumなどの真菌もまた、本明細書に記載のポリペプチドの発現のための宿主細胞として利用可能である。
【0255】
加えて、所望される場合、昆虫細胞系が、提供される方法において利用され得る。そのような系は、例えば、Kitts et al.,Biotechniques,14:810-817(1993)、Lucklow,Curr.Opin.Biotechnol.,4:564-572(1993)、及びLucklow et al.(J.Virol.,67:4566-4579(1993)に記載されている。例示的な昆虫細胞は、Sf-9及びHi5(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)である。
【0256】
B.可溶性ペプチド
いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、可溶性超長CDR3ノブである。いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、可溶性の合成又は半合成ペプチドである。いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、シクロチドである。いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、修飾されたシクロチドである。いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、半合成又は修飾された超長CDR3ノブである。
【0257】
1.可溶性ウシ超長CDR3ノブ
いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、可溶性超長CDR3ノブである。いくつかの実施形態において、可溶性超長CDR3ノブは、ウシ超長CDR3である。いくつかの実施形態において、可溶性超長CDR3ノブは、ウシcDNA鋳型ライブラリー、例えば、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから調製されたものから増幅された配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、可溶性超長CDR3ノブは、本明細書で提供される方法(例えば、セクションII-A-1-a及びII-A-1-bを参照されたい)のいずれかによりウシcDNA鋳型ライブラリーから増幅された配列の全て又は一部を含む。いくつかの実施形態において、可溶性超長CDR3ノブは、標的分子の結合剤として同定又は選択された任意のものである。いくつかの実施形態において、可溶性超長CDR3ノブは、本明細書に提供される方法(例えば、セクションII~Cを参照されたい)のいずれかにより標的分子の結合剤として同定又は選択された任意の超長CDR3ノブであるか、又はその一部である。
【0258】
2.可溶性合成ペプチド
いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、可溶性の合成又は半合成ペプチドである。いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、半合成又は修飾された超長CDR3ノブである。いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、シクロチドである。いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、修飾されたシクロチドである。
【0259】
a.可溶性合成超長CDR3ノブ
いくつかの実施形態において、可溶性ペプチドは、半合成超長CDR3ノブである。いくつかの実施形態において、半合成超長CDR3ノブは、修飾のための足場として使用されているウシ超長CDR3ノブに由来する。いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3ノブは、ウシcDNA鋳型ライブラリー、例えば、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから調製されたものから増幅された配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3ノブは、本明細書で提供される方法(例えば、セクションII-A-1-a及びII-A-1-bを参照されたい)のいずれかによりウシcDNA鋳型ライブラリーから増幅された配列の全て又は一部を含む。いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3ノブは、標的分子の結合剤として同定又は選択された任意のものである。いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3ノブは、本明細書に提供される方法(例えば、セクションII~Cを参照されたい)のいずれかにより標的分子の結合剤として同定又は選択された任意の超長CDR3ノブであるか、又はその一部である。
【0260】
いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3ノブは、例えば、半合成超長CDR3ノブが依然として2~20のシステイン残基及び1~10のジスルフィド結合を含むように、例えば、本明細書に記載されるシステインモチーフ及びジスルフィド結合構造を保存しながら、ランダム変異を含むように修飾されている。いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3ノブは、外因性ペプチド配列を含むように修飾されている。いくつかの実施形態において、ウシ超長CDR3ノブは、例えば、半合成超長CDR3ノブが依然として2~20のシステイン残基及び1~10のジスルフィド結合を含むように、例えば、本明細書に記載されるシステインモチーフ及びジスルフィド結合構造を保存しながら、その中の1つ以上のペプチド配列を欠失させるように修飾されている。
【0261】
b.可溶性シクロチド
いくつかの実施形態において、提供される方法において産生される可溶性ペプチドは、可溶性シクロチドである。いくつかの実施形態において、シクロチドは、外因性ペプチド配列を含むように修飾されたシクロチドである。
【0262】
システイン-ノットマイクロタンパク質(シクロチド)は、様々な植物種において見出されるシステイン-ノットマイクロタンパク質又はシクロチドの天然に存在するファミリーを含む。システイン-ノットマイクロタンパク質(シクロチド)は、典型的には、約30~40個のアミノ酸からなる小ペプチドであり、環状又は直鎖状形態として天然に見出すことができ、環状形態は、遊離N末端又はC末端のアミノ又はカルボキシル末端も有さない。それらは、3つの分子内ジスルフィド結合及び小さな三本鎖βシートに基づく明確な構造を有する(Craik et al.,2001;Toxicon 39,43-60)。環状タンパク質は、本明細書において「システインノット」と呼ばれる構造を明確にする保存されたシステイン残基を示す。このファミリーは、天然に存在する環状分子及びそれらの直鎖状誘導体の両方、並びに環化を受けた直鎖状分子を含む。これらの分子は、あまり構造化されていないペプチドよりも高い安定性を有する分子フレームワーク構造として有用である。(Colgrave and Craik,2004;Biochemistry 43,5965-5975)。
【0263】
主なシクロチドの特徴は、システインノットによる顕著な安定性、化学合成に容易に利用できるようにする小さなサイズ、及び配列変異に対する優れた耐性である。シクロチド足場は、ほぼ30の異なるタンパク質ファミリーにおいて見出され、その中で、コノトキシン、クモ毒、カボチャ属阻害剤、アグーチ関連タンパク質、及び植物シクロチドが、最も多く存在するファミリーである。Rubiaceae科及びViolaceae科の植物からのシクロチドは、大部分が頭-尾環状ペプチドであることが見出されている(Craik et al.2010.Cell.Mol.Life Sci.67:9-16)。しかしながら、シクロチドのカボチャ属阻害剤ファミリー内では、環状及び直鎖状の両方のシクロチドは、Momordica cochinchinensisから同定されている:環状トリプシン阻害剤(MCoTI)-I及び-II、並びにそれらの直鎖状対応物MCoTI-III(Hernandez et al.2000.Biochemistry,39,5722-5730)。現在、環状及び直鎖状バリアントの両方が異なるシクロチドファミリーに存在し得ることが明らかであるが、環化の影響はあまり理解されていない。環状ペプチドは、それらの直鎖状対応物と比較した場合、改善された安定性、プロテアーゼに対するより良好な耐性、及び低減された可動性を示すことが予想され、望ましくは、増強された生物学的活性をもたらす。しかしながら、直鎖状シクロチドは、他のペプチド又はタンパク質により容易に結合することができるという利点を有する。
【0264】
例えば、シクロチドは、植物において一般的に見出される。提供される実施形態の態様において、シクロチドは、Momordicae、Rubiaceae、及びViolaceaeの植物種のシクロチドの直鎖状又は環状形態に由来する。好ましい態様において、本発明のシクロチドは、カボチャ属セリンプロテアーゼ阻害剤ファミリーを含むMomordicae種のシクロチドの直鎖状又は環状形態に由来し(Otlewski & Korowarsch Acta Biochim Pol.1996;43(3):431-44)、より好ましい態様において、以下のMomordica cochinchinensisトリプシン阻害剤MCoTI-I[配列番号95]及び-II[配列番号96](天然に環状)、並びにMCoTI-III(天然に直鎖状)[配列番号97]に由来する。
Mcoti-I GGVCPKILQRCRRDSDSPGACICRGNGYCGSGSD[配列番号95]
Mcoti-II GGVCPKILKKCRRDSDSPGACICRGNGYCGSGSD[配列番号96]
Mcoti-III ERACPRILKKCRRDSDSPGACICRGNGYCG[配列番号97]
【0265】
いくつかの実施形態において、シクロチド分子フレームワークは、システイン-ノット骨格を形成するアミノ酸又はその類似体の配列を含み、当該システイン-ノット骨格は、当該システイン-ノット骨格の三次元構造にノットトポロジーを付与するのに十分なジスルフィド結合又はその化学的等価物を含み、1つ以上のベータターン上及び/又は1つ以上のループ内などの少なくとも1つの露出したアミノ酸残基が、天然に存在するアミノ酸配列と比較して挿入又は置換されている(置き換えられている)。いくつかの実施形態において、シクロチドは、外因性ペプチド配列の挿入又は外因性ペプチド配列による置換によって修飾される。したがって、本明細書に記載のシクロチドは、天然又は野生型非修飾シクロチドと比較して修飾されたシクロチドであり、修飾されたシクロチドは、1つ以上のアミノ酸配列、例えば、外因性ペプチド配列によって挿入又は置換された1つ以上のループを有する。提供される実施形態の態様において、修飾されたシクロチドは、高い酵素安定性を提供するのに十分なアミノ酸構造を組み込む。
【0266】
いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチド配列は、システインノット骨格部分及び外因性ペプチド配列を有するものとして定義されてもよく、当該修飾されたシクロチドは、i)外因性ペプチド配列であって、当該配列が約2~50のアミノ酸残基である外因性ペプチド配列と、ii)ステップi)の当該配列にグラフトされたシステインノット骨格であって、当該システインノット骨格が、構造(I):
【化2】
【0267】
(式中、C1~C6は、システイン残基であり、C1及びC4、C2及びC5、並びにC3及びC6の各々は、ジスルフィド結合によって連結されてシステインノットを形成し、各Xは、ループ内のアミノ酸残基を表し、当該アミノ酸残基は、同じであるか又は異なり、dは、約1~2であり、ループ1、2、3、5、又は6のうちの1つ以上は、節i)の配列を含むアミノ酸配列を有し、節i)の当該配列を含む任意のループは、2~約50個のアミノ酸を含み、節i)の当該配列を含まないループ1、2、3、5、又は6のうちのいずれかについて、a、b、c、e、及びfは、同じであるか又は異なり、各々3~10の任意の数であり、b、c、e、及びfは、各々1~20の任意の数である)を含むシステインノット骨格と、を含む。
【0268】
いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチド配列は、直鎖状又は環状のいずれかであり得る。
【0269】
いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチドは、Momordicae、Rubiaceae、及びViolaceaeの植物種のシクロチドの直鎖状又は環状形態に由来する。いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチドは、カボチャ属セリンプロテアーゼ阻害剤ファミリーを含むMomordicae種のシクロチドの直鎖状又は環状形態に由来する(Otlewski & Korowarsch Acta Biochim Pol.1996;43(3):431-44)。いくつかの実施形態において、修飾されたシクロチドは、以下のMomordica cochinchinensisトリプシン阻害剤MCoTI-I[配列番号95]及び-II[配列番号96](天然に環状)、並びにMCoTI-III(天然に直鎖状)[配列番号97]に由来する。
Mcoti-I GGVCPKILQRCRRDSDSPGACICRGNGYCGSGSD[配列番号95]
Mcoti-II GGVCPKILKKCRRDSDSPGACICRGNGYCGSGSD[配列番号96]
Mcoti-III ERACPRILKKCRRDSDSPGACICRGNGYCG[配列番号97]
【0270】
例えば、未修飾又は野生型シクロチドは、配列番号95~97のいずれか1つに示されるシクロチドであり、その1つ以上のループが1つ以上のアミノ酸配列(例えば、外因性ペプチド配列)によって挿入又は置換されているシクロチドであり得る。特定の実施形態において、修飾されたシクロチドは、Mcoti-II(配列番号96)に基づくループ置換ライブラリーに由来する。
【0271】
いくつかの実施形態において、外因性ペプチド配列が挿入又は置換されるループは、ループ1である。いくつかの実施形態において、外因性ペプチド配列が挿入又は置換されるループは、ループ5である。いくつかの実施形態において、外因性ペプチド配列が挿入又は置換されるループは、環化を受けて形成されるようなループ6である。
【0272】
IV.ペプチドを含む抗体
また、本明細書では、いくつかの実施形態において、全長IgG又はFabを産生することを含む方法も提供される。いくつかの実施形態において、全長IgG又はFabは、本明細書で提供される方法のいずれかにより選択される抗体結合タンパク質又はペプチドから産生される。いくつかの実施形態において、全長IgG又はFabは、本明細書に提供される方法のいずれかにより産生される可溶性ペプチドから産生される。
【0273】
いくつかの実施形態において、抗体結合タンパク質はscFvであり、方法は、scFvのVH領域を定常領域又はその一部と連結することを含む、重鎖又はその一部を構築することを含む。
【0274】
いくつかの実施形態において、方法は、ヒト化ウシVH領域の超長CDR3領域のノブ領域を、選択された抗体結合タンパク質の超長CDR3領域で置換することによってヒト化VH領域を構築することを含む。いくつかの実施形態において、選択された抗体結合タンパク質の超長CDR3領域は、ヒト化ウシVH領域の上昇ストーク鎖と下降ストーク鎖との間で置換される。いくつかの実施形態において、VH領域は式V1-X-V2を含み、重鎖のV1領域は、配列番号111に示される配列を含み、X領域は、選択された抗体の超長CDR3を含み、V2領域は、配列番号112に示される配列を含む。
【0275】
いくつかの実施形態において、方法は、ヒト化VH領域を定常領域又はその一部と連結することを含む、重鎖又はその一部を構築することを更に含む。いくつかの実施形態iにおいて、重鎖又はその一部は、ヒトIgG1重鎖又はその一部である。いくつかの実施形態において、方法は、重鎖又はその一部を軽鎖と共発現させることを更に含む。
【0276】
いくつかの実施形態において、軽鎖は、BLVH12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、若しくはF18のウシ軽鎖であるか、又はそのヒト化バリアントである。いくつかの実施形態において、軽鎖は、BLV1H12軽鎖(配列番号113)又はそのヒト化バリアントである。いくつかの実施形態において、軽鎖は、配列番号114に示されるヒト化軽鎖である。いくつかの実施形態において、軽鎖は、BLV5B8軽鎖(配列番号115)又はそのヒト化バリアントである。いくつかの実施形態において、軽鎖はヒト軽鎖である。いくつかの実施形態において、軽鎖は、VL1~47、VL1~40、VL1~51、及びVL2~18からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、軽鎖は、配列番号116~120のうちのいずれか1つに示される。
【0277】
いくつかの実施形態において、方法によって選択又は産生される抗体結合タンパク質又はペプチドは、複数の提供されるペプチド(例えば、ノブペプチド)のうちのいずれかを含む多重特異性結合タンパク質としてフォーマットされる。いくつかの実施形態において、ノブペプチドなどの複数のペプチドは、パラトープである。いくつかの実施形態において、ノブペプチドなどの複数のペプチドは、2、3、又は4つのペプチドである。多重特異性ポリペプチドを生成するための例示的なフォーマットを
図12に示す。
【0278】
いくつかの実施形態において、ノブペプチドなどの1つ以上のペプチドは、可動性リンカー(例えば、GGGS又は他の類似の可動性リンカー、(GGGS)n(式中、nは1~3である)のより長いリンカーを含む)で分離された単一ポリペプチド鎖中で直列に連結される。いくつかの実施形態において、直列単一ポリペプチドは、二価、三価、四価、又は他の多価分子を産生するために、2、3、4つ以上のペプチド、例えばノブペプチドを含んでもよい。
【0279】
いくつかの実施形態において、ノブペプチドなどのペプチドは、本明細書に記載のヒト化超長重鎖分子のうちのいずれかを含む超長CDR-H3足場のノブ領域の置換によって再フォーマットされる。重鎖は、本明細書に記載の軽鎖分子のうちのいずれかなどの軽鎖と複合体化され得る。いくつかの実施形態において、細胞において産生される場合、2本鎖ポリペプチドは、2つの重鎖分子間のジスルフィド形成から生じる二量体化によって形成される。いくつかの実施形態において、ノブペプチドなどのペプチドを含む修飾された免疫グロブリンは、ペプチド、例えばノブペプチドを含むホモ二量体である。他の実施形態において、2つの異なる重鎖は、各々異なるペプチド(例えば、ノブペプチド)を保有する2つの異なる重鎖が相互作用して、ヘテロ二量体を形成し得るヘテロ二量体を産生するために、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-hole)操作戦略又は他の戦略を使用して細胞において共発現され得る。いくつかの実施形態において、定常鎖の残基は、ヘテロ二量体形成を促進するためにアミノ酸置換によって修飾される。任意の実施形態のいくつかでは、1つ以上のアミノ酸修飾は、電荷反発による自己会合を低減又は防止するために、ノブ・イントゥ・ホール修飾及び電荷変異から選択される。ヘテロ二量体は、第1のポリペプチドサブユニットをコードする第1の核酸分子及び第2の異なるポリペプチドサブユニットをコードする第2の核酸分子の両方を細胞に形質転換することによって形成され得る。いくつかの態様において、ヘテロ二量体は、二量体の形成を媒介するための2つのポリペプチドサブユニットの残基間の共有結合又は非共有結合相互作用の結果として、細胞からの発現及び分泌の際に産生される。そのようなプロセスにおいて、一般的に、ホモ二量体及びヘテロ二量体を含む二量体分子の混合物が形成される。ヘテロ二量体の生成のために、精製のための更なるステップが必要であり得る。例えば、第1及び第2のポリペプチドは、金属キレート又は他のエピトープを有するタグを含むように操作することができ、タグは異なる。タグ付けされたドメインは、ウエスタンブロット、免疫沈降、又はバイオアッセイにおける活性枯渇/遮断による検出を可能にするために、金属キレートクロマトグラフィ及び/又は抗体による迅速な精製のために使用され得る。方法としては、米国特許第10,995,127号に記載されるものが挙げられる。いくつかの実施形態において、ヒトIgG1は、CH3ドメインにT22Yアミノ酸置換を含み、第2のIgG1重鎖は、重鎖にY86Tアミノ酸置換を含む。
【0280】
V.免疫化
いくつかの実施形態において、提供される方法は、免疫化ウシから単離されたRNAから調製されるcDNA鋳型ライブラリーの使用又はそれからの増幅を含む。いくつかの実施形態において、方法は、ウシを標的抗原で免疫化することを更に含む。
【0281】
いくつかの実施形態において、標的抗原は、非病原性細菌、ウイルス、ウイルスタンパク質、癌抗原、ヒトIgG、又はその組換えタンパク質である。いくつかの実施形態において、標的抗原は、例えばコロナウイルス、例えばSARS CoV-2に関連するウイルス又はウイルスタンパク質である。
【0282】
いくつかの実施形態において、ウシは、標的抗原又は関連する標的抗原の群、例えばウイルスのバリアントに関連する抗原を含む抗原組成物の少なくとも1用量を投与することによって免疫化される。いくつかの実施形態において、抗原組成物は、アジュバントを更に含む。当業者は、多くの潜在的に有用なアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバント、ミョウバン、及びスクアレンに精通している。例えば、米国特許出願公開第2015/0361160号を参照されたく、これは、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明の組成物中で使用され得るアジュバントとしては、油型エマルジョン組成物(水中油型エマルジョン及び油中水型エマルジョン)、完全フロイントアジュバント(complete Freund's adjuvant、CFA)、及び不完全フロイントアジュバント(incomplete Freund's adjuvant、IFA)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、アジュバントは、RIBI、Iscomatrix、又はENABL Cl(VaxLiant)を含む。本発明における使用に好適なアジュバントには、腸内細菌性リポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)の誘導体、リピドA誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、及びADP-リボシル化毒素、並びにそれらの無毒化誘導体などの細菌又は微生物誘導体が含まれる。
【0283】
ウシ(cattle)などのウシ(bovine)を免疫化して、例えば、高力価の初乳、乳汁、血清、又は免疫組織(例えば、PBMC)を産生するための方法は、当該技術分野において既知である。そのような方法は、例えば、米国特許出願公開第2007/0053917号及び第2013/0022619号に開示されており、これらの各々は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0284】
いくつかの実施形態において、免疫化は、抗原組成物の初回刺激用量及び少なくとも1回の追加免疫用量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、免疫化は、抗原組成物の2回以上の追加免疫用量を投与することを含む。一実施形態において、初回刺激用量及び少なくとも1回の追加免疫用量は、同じ抗原組成物を含む。いくつかの実施形態において、2回以上の追加免疫用量は、同じ抗原組成物を含む。動物は、数日、数週間、又は数ヶ月の期間にわたって間隔を置いて免疫原組成物を投与され得る。免疫化レジメンの終わりに、血液、乳汁、又は初乳などの過免疫材料を採取する。一実施形態において、過免疫材料は、初回刺激用量を投与してから2ヶ月未満、3ヶ月未満、4ヶ月未満、5ヶ月未満、6ヶ月未満、9ヶ月未満、又は12ヶ月未満後に収集される。一実施形態において、過免疫材料は、初回刺激用量を投与してから約3ヶ月~約6ヶ月後に収集される。一実施形態において、過免疫材料は、初回刺激用量を投与してから約3ヶ月~約9ヶ月後に収集される。いくつか実施形態において、過免疫材料は、初回刺激用量を投与してから約3ヶ月~約12ヶ月後に収集される。一実施形態において、過免疫材料は、初回刺激用量を投与してから約6ヶ月~約12ヶ月後に収集される。
【0285】
いくつかの実施形態において、方法は、ウシから生物学的試料を単離することを更に含む。いくつかの実施形態において、生物学的試料は、乳汁、血液、血清、初乳、又は末梢血単核細胞(PBMC)である。一実施形態において、生物学的試料は、初回刺激用量を投与してから2ヶ月未満、3ヶ月未満、4ヶ月未満、5ヶ月未満、6ヶ月未満、9ヶ月未満、又は12ヶ月未満後に収集される。一実施形態において、生物学的試料は、初回刺激用量を投与してから約3ヶ月~約6ヶ月後に収集される。いくつか実施形態において、生物学的試料は、初回刺激用量を投与してから約3ヶ月~約9ヶ月後に収集される。いくつか実施形態において、生物学的試料は、初回刺激用量を投与してから約3ヶ月~約12ヶ月後に収集される。いくつかの実施形態において、生物学的試料は、初回刺激用量を投与してから約6ヶ月~約12ヶ月後に収集される。
【0286】
いくつかの実施形態において、方法は、ウシから末梢血単核細胞(PBMC)を単離することと、例えば、超長CDR3を含む候補結合ペプチドをコードするポリヌクレオチドをクローニングすることとを更に含む。一実施形態において、ポリヌクレオチドをクローニングすることは、単一細胞RT-PCR増幅を行うことを含む。
【0287】
VI.組成物及び製剤
医薬組成物及び製剤を含む、本明細書に記載の抗体若しくは抗原結合断片又はノブペプチドなどの結合ポリペプチドを含む組成物も提供される。一実施形態において、組成物は、本明細書に記載されるように産生される可溶性ペプチドを含む。一実施形態において、組成物は、本明細書に記載されるように産生される可溶性ペプチドを含む融合タンパク質を含む。一実施形態において、組成物は、標的分子への結合能力について同定された、例えば、本明細書に記載されるように同定された可溶性ペプチドを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、超長CDR3を含むノブポリペプチド又は合成ペプチドを含む。医薬組成物及び製剤は、一般的に、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。
【0288】
「医薬製剤」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性である追加の構成要素を含まない調製物を指す。
【0289】
「薬学的に許容される担体」は、対象に非毒性である、活性成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0290】
いくつかの態様において、担体の選択は、特定の細胞、結合分子、及び/若しくは抗体によって、並びに/又は投与方法によって部分的に決定される。したがって、様々な好適な製剤が存在する。例えば、医薬組成物は保存剤を含むことができる。好適な保存剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、及び塩化ベンザルコニウムが挙げられ得る。いくつかの態様において、2つ以上の保存剤の混合物が使用される。防腐剤又はその混合物は、典型的には、全組成物の約0.0001重量%~約2重量%の量で存在する。担体は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16 th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されている。薬学的に許容される担体は、一般的に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメソニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、又はベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又はポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0291】
いくつかの態様において、緩衝剤が組成物に含まれる。好適な緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、並びに様々な他の酸及び塩が挙げられる。いくつかの態様において、2つ以上の緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤又はその混合物は、典型的には、全組成物の約0.001重量%~約4重量%の量で存在する。投与可能な医薬組成物を調製するための方法は既知である。例示的な方法は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams & Wilkins;21st ed.(May 1,2005)により詳細に記載されている。
【0292】
本明細書に記載の抗体の製剤は、凍結乾燥製剤及び水溶液を含み得る。
【0293】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体は、薬学的に許容される希釈剤、担体、又は賦形剤内で、単位用量形態で投与され得る。SARS CoV-2感染の治療を受ける個体に投与するための好適な製剤又は組成物を提供するために、従来の薬務を用いることができる。いくつかの実施形態において、投与は、予防的である。任意の適切な投与経路が用いられてもよく、例えば、投与は、非経口、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、エアロゾル、坐剤、経口投与、又は吸入によるものであってもよい。
【0294】
製剤には、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、頬側、舌下、又は坐剤投与用のものが含まれる。いくつかの実施形態において、細胞集団は、非経口的に投与される。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣、頭蓋内、胸腔内、及び腹腔内投与を含む。
【0295】
いくつかの実施形態において、組成物は、滅菌液体調製物、例えば、等張水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液、又は粘性組成物として提供され、これらは、いくつかの態様において、選択されたpHに緩衝化され得る。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性組成物、及び固体組成物よりも調製が容易である。加えて、液体組成物は、特に注射によって投与するのに幾分より便利である。一方、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間を提供するために、適切な粘度範囲内で製剤化され得る。液体又は粘性組成物は担体を含むことができ、担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、及びそれらの好適な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。
【0296】
滅菌注射溶液は、結合分子を溶媒中に、例えば、無菌水、生理学的生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの好適な担体、希釈剤、又は賦形剤と混合して組み込むことによって調製することができる。組成物はまた、凍結乾燥され得る。組成物は、投与経路及び所望の調製物に応じて、補助物質、例えば、湿潤剤、分散剤、又は乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化若しくは粘度増強添加剤、保存剤、香味剤、着色剤などを含むことができる。いくつかの態様において、好適な調製物を調製するために標準的な教科書を参考にすることができる。
【0297】
抗菌性保存剤、抗酸化剤、キレート剤、及び緩衝剤を含む、組成物の安定性及び無菌性を増強する様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にすることができる。注射可能な医薬形態の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0298】
本発明による医薬組成物は、例えば、アンプル、バイアル、坐剤、錠剤、丸剤、又はカプセル剤の形態などの単位用量形態であってもよい。製剤は、治療有効量又は予防有効量(例えば、病的状態を予防、排除、又は低減する量)でヒト個体に投与して、疾患又は状態のための療法を提供することができる。投与される治療剤の好ましい投薬量は、障害の種類及びi程度、特定の患者の全体的な健康状態、複合賦形剤の製剤化、並びにその投与経路などの変数に依存する可能性がある。
【0299】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、肺(pneumonal)投与用に製剤化することができ、ある特定の実施形態において、組成物は、吸入(例えば、気管支内、鼻腔内、又は経口吸入、鼻腔内点滴薬)による投与用に製剤化される。組成物は、ネブライザー、吸入器、アトマイザー、エアロゾル化装置、ミスター、乾燥粉末吸入器、定量吸入器、定量噴霧器、定量ミスター、定量アトマイザー、又は他の好適な送達装置を使用して投与することができる。
【0300】
いくつかの実施形態において、組成物は、凍結乾燥させた組成物である。いくつかの実施形態において、組成物はエアロゾル投与用に製剤化され、ある特定の実施形態において、組成物は経口投与又は吸入による投与用に製剤化される。
【0301】
本明細書に記載の医薬組成物は、それ自体既知の方法で、例えば、従来の溶解、凍結乾燥、混合、造粒、又は糖衣化プロセスによって調製される。医薬組成物は、従来の薬務(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(21st ed.),ed.A.R.Gennaro,2005,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,2013,Marcel Dekker,New York,NY)に従い製剤化され得る。
【0302】
エアロゾル投与が適切である場合、スクアラミン又はその誘導体は、標準的な手順を使用してエアロゾルとして製剤化され得る。「エアロゾル」という用語は、細気管支又は鼻腔に吸入することができるスクアラミン又はその誘導体の任意のガス中懸濁相を含み、乾燥粉末及び水性エアロゾル並びに肺及び鼻エアロゾルを含む。具体的には、エアロゾルは、定量吸入器若しくはネブライザー、又はミスト噴霧器においてもたらされ得るように、スクアラミン又はその誘導体の液滴のガス中懸濁液を含む。エアロゾルはまた、空気又は他のキャリアガス中に懸濁された本発明の化合物の乾燥粉末組成物を含み、これは、例えば、吸入器デバイスからの吹送によって送達され得る。Ganderton & Jones,Drug Delivery to the Respiratory Tract(Ellis Horwood,1987)、Gonda,Critical Reviews in therapeutic Drug Carrier Systems,6:273-313(1990)、及びRaeburn et al.Pharmacol.Toxicol.Methods,27:143-159(1992)を参照されたい。
【0303】
インビボ投与に使用される製剤は、一般的に無菌である。注射用組成物は、無菌条件下で通常の方法で調製される。同じことが、組成物をアンプル又はバイアルに導入し、容器を密封することにも当てはまる。無菌性は、例えば、無菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成され得る。
【0304】
いくつかの態様において、医薬組成物は、組成物の送達が、治療されるべき部位の感作の前に、かつ感作を引き起こすのに十分な時間で生じるように、時間放出送達系、遅延放出送達系、及び持続放出送達系を用いることができる。多くの種類の放出送達系が利用可能であり、既知である。そのような系は、組成物の反復投与を回避することができ、それによって対象及び医師に対する利便性が増大される。
【0305】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、抗体又は抗原結合断片などの結合ポリペプチドを、疾患又は状態を治療又は予防するのに有効な量、例えば、治療有効量又は予防有効量で含む。いくつかの実施形態において、治療的又は予防的有効性は、治療された対象の定期的な評価によってモニタリングされる。数日以上にわたる反復投与の場合、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで治療を繰り返す。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であり得、決定され得る。所望の投薬量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、又は組成物の連続注入投与によって送達することができる。
【0306】
VII.使用方法
本明細書において、対象における疾患又は状態を治療するための治療方法及び使用が提供される。いくつかの実施形態において、方法及び使用は、提供される結合ポリペプチド、例えば、抗体若しくは抗原結合断片又はノブペプチドを対象(例えば、ヒト)に投与することを含む。いくつかの実施形態において、結合ポリペプチド又はそれを含む組成物は、非経口投与によって対象に投与される。いくつかの実施形態において、結合ポリペプチド又はそれを含む組成物は、筋肉内、皮下、静脈内、局所、経口、又は吸入によって投与される。特定の実施形態において、特にノブペプチドの送達のために、投与は吸入による。いくつかの実施形態において、提供される結合ポリペプチド、例えば、ノブペプチドは、エアロゾル投与によって、例えば、吸入器若しくはネブライザー又はミスト噴霧器を使用する送達によって投与され得る。
【0307】
いくつかの実施形態において、提供される実施形態は、対象における癌又は増殖性疾患を治療又は予防するための方法に関する。いくつかの実施形態において、提供される実施形態は、対象におけるコロナウイルス感染を治療又は予防するための方法に関する。いくつかの実施形態において、方法は、ウイルス感染のリスクがある対象におけるウイルス感染の予防的治療のためのものである。いくつかの実施形態において、方法は、ウイルス感染を有することが既知であるか又は疑われる対象を治療するためのものである。いくつかの実施形態において、方法は、対象におけるコロナウイルス感染症などのウイルス感染を予防し得る。いくつかの実施形態において、方法は、1つ以上の徴候又は症状の存在又は重症度を緩和するなど、対象におけるコロナウイルス感染症の症状の徴候を低減することができる。いくつかの実施形態において、抗体若しくは抗原結合断片又はノブペプチドなどの結合分子は、感染の治療をもたらすのに有効な量で対象に投与される。本明細書ではまた、そのような方法及び治療における、並びにそのような治療方法を実行するための医薬の調製における、抗体若しくは抗原結合断片又はノブペプチドなどの結合ポリペプチドの使用も提供される。いくつかの実施形態において、方法は、結合ポリペプチド又はそれを含む組成物を、疾患又は状態を有する、有していた、又は有することが疑われる対象に投与することによって実施される。いくつかの実施形態において、方法は、それによって、対象における疾患若しくは状態又は障害を治療する。本明細書ではまた、例えば、SARS-CoV-2に起因するコロナウイルス感染に関連する疾患又は障害の治療のための、本明細書で提供される医薬組成物などの組成物のうちのいずれかの使用も提供される。
【0308】
いくつかの実施形態において、提供される結合ポリペプチド、例えば、抗体若しくは抗原結合断片又はノブペプチドは、有効量又は治療有効量で対象に投与される。ウイルス感染を治療又は予防するための、提供される結合ポリペプチド、例えば、抗体若しくは抗原結合断片又はノブペプチドの有効用量又は治療有効用量は、治療される対象における感染の1つ以上の徴候及び/又は症状を、そのような徴候及び/又は症状の退行又は排除を誘導することによるか、あるいはそのような徴候及び/又は症状の進行を阻害することによるかにかかわらず、緩和するのに十分な量である。投与量は、投与される対象の年齢及びサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。実施形態において、例えば、成人ヒト対象におけるウイルス感染を治療又は予防するための、提供される結合ポリペプチド、例えば、抗体若しくはその抗原結合断片又はノブペプチドの有効用量又は治療有効用量は、約0.001mg/kg~約200mg/kg、例えば、0.01mg/kg~200mg/kg又は0.1mg/kg~200mg/kgである。感染の重症度に応じて、治療の頻度及び期間を調整することができる。
【0309】
提供される方法及び使用は、対象におけるウイルス感染を治療するための方法及び使用を含む。例えば、治療方法は、提供される結合ポリペプチド、例えば、抗体若しくは抗原結合断片又はノブペプチドを、疾患又は感染、例えばウイルス感染の1つ以上の徴候又は症状を有する対象に、有効な又は治療的に有効な量又は用量で投与することを含む。
【0310】
いくつかの実施形態において、提供される方法及び使用は、予防的方法及び使用を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において、提供される結合ポリペプチド、例えば、抗体若しくは抗原結合断片又はノブペプチドを、ウイルス感染のリスクがある対象に予防的に投与して、そのような感染を予防するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、投与される量は、有効な又は治療的に有効な量又は用量である。いくつかの実施形態において、提供される方法及び使用は、対象におけるウイルス感染を予防する。いくつかの実施形態において、提供される方法によるウイルス感染の予防は、提供される結合ポリペプチド、例えば、抗体若しくは抗原結合断片又はノブペプチドなどを対象に投与して、対象の体内での疾患又は感染(例えば、ウイルス感染)の兆候を阻害することを伴う。いくつかの実施形態において、方法は、ウイルス感染の1つ以上の徴候又は症状を低減する。
【0311】
VIII.例示的な実施形態
提供される実施形態には以下のものがある。
1.ウシ超長CDR3抗体ディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)ウシ抗体VH鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数の可変重(VH)領域をコードする配列を増幅することと、
(b)複数のVH領域のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、BLV1H12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、及びF18のVL領域からなる群から選択される可変ラムダ軽(VL)領域又はそのヒト化バリアントに連結された増幅されたVH領域を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする第1の核酸配列を含む、構築することと、
(c)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(d)増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、増幅されたディスプレイ粒子が、scFvを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
2.VL領域が、BLV1H12 VL領域である、実施形態1に記載の方法。
3.ウシ超長CDR3抗体ディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)ウシ抗体VH鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数の可変重(VH)領域をコードする配列を増幅することと、
(b)複数のVH領域のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、BLV1H12ラムダ可変軽(VL)領域又はそのヒト化バリアントに連結された増幅されたVH領域を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする第1の核酸配列を含む、構築することと、
(c)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(d)増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、増幅されたディスプレイ粒子が、scFvを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
4.cDNA鋳型ライブラリーが、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから調製される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAからcDNA鋳型ライブラリーを調製することを更に含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
6.ウシを標的抗原で免疫化することを更に含む、実施形態4又は5に記載の方法。
7.増幅されたディスプレイ粒子が、細菌ディスプレイ粒子、酵母ディスプレイ粒子、哺乳類ディスプレイ粒子、ファージディスプレイ粒子、mRNAディスプレイ粒子、リボソームディスプレイ粒子、又はDNAディスプレイ粒子を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.増幅されたディスプレイ粒子が、ファージディスプレイ粒子である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.増幅されたディスプレイ粒子が、ファージミド粒子である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.各複製可能な発現ベクターが、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸を更に含み、方法が、ファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることを更に含み、それによって、融合タンパク質が、ファージコートタンパク質の少なくとも一部を含む、実施形態9に記載の方法。
11.ウシ超長CDR3抗体ファージディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)ウシを標的抗原で免疫化することと、
(b)免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから抗体可変重(VH)鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーを調製することと、
(c)cDNA鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数のVH領域をコードする配列を増幅することと、
(d)複数のVH領域のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、(1)BLV1H12ラムダ可変軽(VL)領域又はそのヒト化バリアントに連結された増幅されたVH領域を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする第1の核酸配列、及び(2)ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸を含む、構築することと、
(e)複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(f)増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることと、
(g)増幅されたファージミド粒子を収集することであって、増幅されたファージミド粒子が、ファージコートタンパク質の少なくとも一部及びscFvを含む融合タンパク質をディスプレイするファージミド粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
12.BLV1H12ラムダVL領域が、配列番号2に示される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.BLV1H12ラムダVL領域が、BLV1H12のラムダVL領域のヒト化バリアントである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
14.ヒト化バリアントが、Kabat番号付けに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13S、及びP14L、CDR1領域におけるアミノ酸置換I29V及びN32G、並びに/又はCDR2領域におけるDNNからGDTへのアミノ酸置換のうちの1つ以上を含む、実施形態13に記載の方法。
15.ヒト化バリアントが、配列番号107に示される配列を含む、実施形態13又は14に記載の方法。
16.増幅されたVH領域が、ペプチドリンカーを介して間接的にBLV1H12ラムダVL領域に連結される、実施形態2~15のいずれか1つに記載の方法。
17.ペプチドリンカーが、(Gly4Ser)3(配列番号94)である、実施形態16に記載の方法。
18.cDNA鋳型ライブラリーからのIgHV1-7ファミリーの複数のVH領域が、配列番号84に示される配列を含むフォワードプライマー及び配列番号85に示される配列を含むリバースプライマーで増幅される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
19.構築の前に、方法が、複数の増幅されたVH領域をコードする配列に対してサイズ分離を行って、超長CDR3を有するVH領域を富化することを更に含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0312】
20.サイズ分離が、ゲル電気泳動によって行われる、実施形態19に記載の方法。
21.ゲル電気泳動が、1.2%、1.5%、又は2%のアガロースゲルを使用して、任意選択で2%のアガロースゲルを使用して行われる、実施形態20に記載の方法。
22.サイズ分離が、複数の増幅されたVH領域をコードする配列から550塩基対長、約550塩基対長又は550塩基対長を超える配列を分離することを含み、550塩基対長、約550塩基対長又は550塩基対長を超える配列が、超長CDR3を有するVH領域をコードする配列を含む、実施形態19~21のいずれか1つに記載の方法。
23.増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約20%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
24.増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約30%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
25.増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約40%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
26.増幅された粒子の少なくとも又は少なくとも約50%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvをディスプレイする、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
27.超長CDR3が、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを含む、25~70個のアミノ酸のペプチド配列である、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
28.超長CDR3が、40~60アミノ酸長である、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
29.超長CDR3が、少なくとも42アミノ酸長である、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
30.超長CDR3が、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、又は60アミノ酸長である、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
31.超長CDR3が、少なくとも4つのシステイン残基を含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
32.超長CDR3が、4つのシステイン残基を含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
33.超長CDR3が、6、8、10、又は12のシステイン残基を含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
34.超長CDR3が、少なくとも2つのジスルフィド結合を有する、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
35.超長CDR3が、2つのジスルフィド結合を有する、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
36.超長CDR3が、3、4、又は5つのジスルフィド結合を有する、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
37.超長CDR3-ノブディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)ウシ超長CDR3領域の上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインに特異的なフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、ウシ抗体可変重(VH)鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーから複数のCDR3-ノブのみの抗体をコードする配列を増幅することと、
(b)複数のCDR3ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、増幅されたCDR3ノブをコードする第1の核酸配列を含む、構築することと、
(c)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(d)増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、増幅されたディスプレイ粒子が、増幅されたCDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
38.cDNA鋳型ライブラリーが、免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから調製される、実施形態37に記載の方法。
39.免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAからcDNA鋳型ライブラリーを調製することを更に含む、実施形態37に記載の方法。
40.ウシを標的抗原で免疫化することを更に含む、実施形態38又は39に記載の方法。
41.増幅されたディスプレイ粒子が、細菌ディスプレイ粒子、酵母ディスプレイ粒子、哺乳類ディスプレイ粒子、ファージディスプレイ粒子、mRNAディスプレイ粒子、リボソームディスプレイ粒子、又はDNAディスプレイ粒子を含む、実施形態37~40のいずれか1つに記載の方法。
42 増幅されたディスプレイ粒子が、ファージディスプレイ粒子である、実施形態37~41のいずれか1つに記載の方法。
43.増幅されたディスプレイ粒子が、ファージミド粒子である、実施形態37~42のいずれか1つに記載の方法。
44.各複製可能な発現ベクターが、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸を更に含み、方法が、ファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることを更に含み、それによって、融合タンパク質が、ファージコートタンパク質の少なくとも一部を含む、実施形態43に記載の方法。
45.超長CDR3-ノブファージディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)ウシを標的抗原で免疫化することと、
(b)免疫化ウシからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたRNAから抗体可変重(VH)鎖相補的DNA(cDNA)鋳型ライブラリーを調製することと、
(c)ウシ超長CDR3領域の上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインに特異的なフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、cDNA鋳型ライブラリーから複数のCDR3-ノブのみの抗体をコードする配列を増幅することと、
(d)複数のCDR3-ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、(1)増幅されたCDR3ノブをコードする第1の核酸配列、及び(2)ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸を含む、構築することと、
(e)複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(f)増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることと、
(g)増幅されたファージミド粒子を収集することであって、増幅されたファージミド粒子が、ファージコートタンパク質の少なくとも一部及び増幅されたCDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするファージミド粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
46.プライマーが、配列番号7~11に示される配列のうちのいずれかを含むか又はそれらからなる、実施形態37~45のいずれか1つに記載の方法。
47.複数のCDR3-ノブのみの抗体の各々が、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列を含む、実施形態37~46のいずれか1つに記載の方法。
48.ペプチド配列が、40~60アミノ酸長である、実施形態47に記載の方法。
49.ペプチド配列が、少なくとも42アミノ酸長である、実施形態47又は48に記載の方法。
50.ペプチド配列が、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、又は60アミノ酸長である、実施形態47~49のいずれか1つに記載の方法。
51.ペプチド配列が、少なくとも4つのシステイン残基を含む、実施形態47~50のいずれか1つに記載の方法。
52.ペプチド配列が、4つのシステイン残基を含む、実施形態47~51のいずれか1つに記載の方法。
53.ペプチド配列が、6、8、10、又は12のシステイン残基を含む、実施形態47~51のいずれか1つに記載の方法。
54.ペプチド配列が、少なくとも2つのジスルフィド結合を有する、実施形態47~53のいずれか1つに記載の方法。
55.ペプチド配列が、2つのジスルフィド結合を有する、実施形態47~54のいずれか1つに記載の方法。
56.ペプチド配列が、3、4、又は5つのジスルフィド結合を有する、実施形態47~54のいずれか1つに記載の方法。
57.標的抗原が、非病原性細菌、ウイルス、ウイルスタンパク質、免疫調節タンパク質、癌抗原、ヒトIgG、又はそれらの組換えタンパク質である、実施形態6~36及び40~56のいずれか1つに記載の方法。
58.cDNA鋳型ライブラリーが、IgM(配列番号4)、IgA(配列番号5)、及びIgG特異的(配列番号3及び6)プライマーのプールを使用して合成された、実施形態1~57のいずれか1つに記載の方法。
59.超長CDR3-ノブディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)複数のCDR3-ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列をコードする第1の核酸配列を含む、構築することと、
(b)増幅されたディスプレイ粒子を産生するのに好適な条件下で、複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(c)増幅されたディスプレイ粒子を収集することであって、増幅されたディスプレイ粒子が、CDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするディスプレイ粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
60.増幅されたディスプレイ粒子が、細菌ディスプレイ粒子、酵母ディスプレイ粒子、哺乳類ディスプレイ粒子、ファージディスプレイ粒子、mRNAディスプレイ粒子、リボソームディスプレイ粒子、又はDNAディスプレイ粒子を含む、実施形態59に記載の方法。
61.増幅されたディスプレイ粒子が、ファージディスプレイ粒子である、実施形態59又は60に記載の方法。
62.増幅されたディスプレイ粒子が、ファージミド粒子である、実施形態59~61のいずれか1つに記載の方法。
63.各複製可能な発現ベクターが、ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸を更に含み、方法が、ファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることを更に含み、それによって、融合タンパク質が、ファージコートタンパク質の少なくとも一部を含む、実施形態62に記載の方法。
64.超長CDR3-ノブファージディスプレイライブラリーを調製する方法であって、
(a)複数のCDR3-ノブのみの抗体のための複数の複製可能な発現ベクターを構築することであって、各複製可能な発現ベクターが、(1)1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列をコードする第1の核酸配列、及び(2)ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸を含む、構築することと、
(b)複数の複製可能な発現ベクターで好適な宿主細胞を形質転換することと、
(c)増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分なファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることと、
(d)増幅されたファージミド粒子を収集することであって、増幅されたファージミド粒子が、ファージコートタンパク質の少なくとも一部及びCDR3ノブを含む融合タンパク質をディスプレイするファージミド粒子を含む、収集することと、を含む、方法。
65.ペプチド配列が、上昇ストークドメイン及び下降ストークドメインを含み、システインモチーフが、上昇ストークドメインと下降ストークドメインとの間にある、実施形態27~36及び47~64のいずれか1つに記載の方法。
66.ペプチド配列が、標的抗原で免疫化されたウシからのDNAから増幅される、実施形態64又は65に記載の方法。
67.ペプチド配列が、ウシの超長CDR3領域のストークドメインのいずれかの側に特異的なプライマーを使用して、免疫化ウシからの可変重鎖cDNAライブラリーから増幅される、実施形態66に記載の方法。
68.ペプチド配列が、システインモチーフのN末端側に上昇ストークドメインを含まない、実施形態27~36、47~64、66、及び67のいずれか1つに記載の方法。
69.ペプチド配列が、システインモチーフのC末端側に下降ストークドメインを含まない、実施形態27~36、47~64、及び66~68のいずれか1つに記載の方法。
70.上昇ストークドメインが、配列CX2TVX5Qを含み、配列中、X2及びX5は、任意のアミノ酸である、実施形態65~67及び69のいずれか1つに記載の方法。
71.X2が、Ser、Thr、Gly、Asn、Ala、又はProであり、X5が、His、Gln、Arg、Lys、Gly、Thr、Tyr、Phe、Trp、Met、Ile、Val、又はLeuである、実施形態70に記載の方法。
72.X2が、Ser、Ala、又はThrであり、X5が、His又はTyrである、実施形態70又は71に記載の方法。
73.ペプチド配列が、合成CDR3-ノブである、実施形態64、65、及び68~72のいずれか1つに記載の方法。
74.ペプチド配列が、シクロチド又は修飾されたシクロチドである、実施形態64、65、及び68~73のいずれか1つに記載の方法。
75.ペプチド配列が、ウシCDR3-ノブに由来する半合成CDR3-ノブである、実施形態64、65、及び68~73のいずれか1つに記載の方法。
76.ペプチド配列が、40~60アミノ酸長である、請求項64~75のいずれか1つに記載の方法。
77.ペプチド配列が、少なくとも42アミノ酸長である、実施形態64~76のいずれか1つに記載の方法。
78.ペプチド配列が、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長、51アミノ酸長、52アミノ酸長、53アミノ酸長、54アミノ酸長、55アミノ酸長、56アミノ酸長、57アミノ酸長、58アミノ酸長、59アミノ酸長、又は60アミノ酸長である、実施形態64~77のいずれか1つに記載の方法。
79.ペプチド配列が、少なくとも4つのシステイン残基を含む、実施形態64~78のいずれか1つに記載の方法。
80.ペプチド配列が、4つのシステイン残基を含む、実施形態64~79のいずれか1つに記載の方法。
81.ペプチド配列が、6、8、10、又は12のシステイン残基を含む、実施形態64~79のいずれか1つに記載の方法。
82.ペプチド配列が、少なくとも2つのジスルフィド結合を有する、実施形態64~81のいずれか1つに記載の方法。
83.ペプチド配列が、2つのジスルフィド結合を有する、実施形態64~82のいずれか1つに記載の方法。
84.ペプチド配列が、3、4、又は5つのジスルフィド結合を有する、実施形態64~82のいずれか1つに記載の方法。
85.複数のCDR3ノブが、ペプチド配列をコードする核酸配列内の1つ以上の選択された位置で変異され、複数の複製可能な発現ベクターが、変異ベクターのファミリーである、実施形態64、65、及び68~84のいずれか1つに記載の方法。
86.発現ベクターが、分泌シグナル配列を更に含む、実施形態1~85のいずれか1つに記載の方法。
87.分泌シグナル配列が、pelBシグナル配列である、実施形態86記載の方法。
88.好適な宿主細胞が、E.coli細胞である、実施形態1~87のいずれか1つに記載の方法。
89.好適な宿主細胞が、TG1エレクトロコンピテント細胞である、実施形態1~88のいずれか1つに記載の方法。
90.ファージミド粒子が、M13ファージに由来する、実施形態9~36、43~58、及び62~89のいずれか1つに記載の方法。
91.コートタンパク質が、M13ファージ遺伝子IIIコートタンパク質(pIII)である、実施形態10~36、44~58、及び63~90のいずれか1つに記載の方法。
92.ヘルパーファージが、M13K07、M13R408、M13-VCS、及びファイX174からなる群から選択される、実施形態10~36、44~58、及び63~91のいずれか1つに記載の方法。
93.ヘルパーファージが、M13K07である、実施形態10~36、44~58、及び63~92のいずれか1つに記載の方法。
94.ディスプレイ粒子が、平均して、粒子の表面上に融合タンパク質の1つのコピーをディスプレイする、実施形態1~93のいずれか1つに記載の方法。
95.実施形態1~94のいずれか1つに記載の方法によって産生された、ディスプレイ粒子のライブラリー。
96.複製可能な発現ベクターであって、BLV1H12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、及びF18のVL領域から選択される可変ラムダ軽(VL)領域、又はそのヒト化バリアントに連結された超長CDR3を含むウシ可変重(VH)領域を含む単鎖可変断片をコードする第1の核酸配列を含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクター。
97.複製可能な発現ベクターであって、BLV1H12ラムダ可変軽(VL)領域、又はそのヒト化バリアントに連結された超長CDR3を含むウシ可変重(VH)領域を含む単鎖可変断片をコードする第1の核酸配列を含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクター。
98.ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含む、実施形態96又は97に記載の複製可能な発現ベクター。
99.実施形態96~98のいずれか1つに記載の複製可能な発現ベクターによってコードされる、ディスプレイ粒子。
100.実施形態95又は99に記載の複数のディスプレイ粒子を含む、ディスプレイ粒子のライブラリー。
101.ライブラリー中のディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約20%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む、実施形態100に記載のライブラリー。
102.ライブラリー中のディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約30%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む、実施形態100又は101に記載のライブラリー。
103.ライブラリー中のディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約40%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む、実施形態100~102のいずれか1つに記載のライブラリー。
104.ライブラリー中のディスプレイ粒子の少なくとも又は少なくとも約50%が、超長CDR3領域を含むVH領域を含むscFvを含む、実施形態100~103のいずれか1つに記載のライブラリー。
105.複製可能な発現ベクターであって、ジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列をコードする第1の核酸配列を含む融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を含む、複製可能な発現ベクター。
106.ファージコートタンパク質の少なくとも一部をコードする第2の核酸配列を更に含む、実施形態105に記載の複製可能な発現ベクター。
107.実施形態105又は106に記載の複製可能な発現ベクターによってコードされる、ディスプレイ粒子。
108.実施形態107に記載の複数のディスプレイ粒子を含む、ディスプレイ粒子のライブラリー。
109.ディスプレイ粒子が、ファージディスプレイ粒子である、実施形態95、100~104、及び108のいずれか1つに記載のライブラリー。
110.ディスプレイ粒子が、ファージミド粒子である、実施形態95、100~104、108、及び109のいずれか1つに記載のライブラリー。
111.抗体結合タンパク質を選択するための方法であって、
(1)ディスプレイ粒子の標的分子への結合を可能にする条件下で、実施形態95、100~104、及び108~110のいずれか1つに記載のディスプレイ粒子のライブラリーを標的分子と接触させることと、
(2)結合するディスプレイ粒子を結合しないものから分離し、それによって、標的分子に結合する抗体結合タンパク質を含むディスプレイ粒子を選択することと、を含む、方法。
112.ディスプレイ粒子が、ファージディスプレイ粒子である、実施形態111に記載の方法。
113.ディスプレイ粒子が、ファージミド粒子である、実施形態111又は112に記載の方法。
114.標的分子が、非病原性細菌、ウイルス、ウイルスタンパク質、免疫調節タンパク質、癌抗原、ヒトIgG、又はそれらの組換えタンパク質である、実施形態111~113のいずれか1つに記載の方法。
115.標的分子が、コロナウイルス、コロナウイルス偽ウイルス、組換えコロナウイルススパイクタンパク質、又はコロナウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)である、実施形態111~114のいずれか1つに記載の方法。
116.コロナウイルスが、229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、及びSARS-CoV2からなる群から選択される、実施形態115に記載の方法。
117.コロナウイルスが、Wuhan-Hu-1単離株、B.1.351南アフリカバリアント、又はB.1.1.7 UKバリアントから選択されるSARS-CoV2である、実施形態115又は116に記載の方法。
118.
(i)好適な宿主細胞に、(2)で結合する選択されたディスプレイ粒子をコードする複製可能な発現ベクターで感染させることと、
(ii)増幅されたディスプレイ粒子を収集することと、
(iii)増幅されたディスプレイ粒子をディスプレイ粒子のライブラリーとして使用して、ステップ(1)及び(2)を繰り返すことと、を更に含む、実施形態111~117のいずれか1つに記載の方法。
119.ディスプレイ粒子がファージミド粒子であり、方法が、増幅されたファージミド粒子を産生するのに十分な量の、ファージコートタンパク質をコードする遺伝子を有するヘルパーファージで、形質転換された宿主細胞を感染させることを更に含む、実施形態118に記載の方法。
120.ステップが、1回以上繰り返される、実施形態118又は119に記載の方法。
121.ステップが、同じ標的分子又は異なる標的分子を用いて繰り返される、実施形態118~120のいずれか1つに記載の方法。
122.ステップが、異なる標的分子を用いて繰り返され、異なる標的分子が、標的分子に関連している、実施形態121に記載の方法。
123.異なる標的分子が、標的分子と同じタイプの病原体であるか、標的分子と同じ病原体群であるか、又は標的分子のバリアントである、実施形態121又は122に記載の方法。
124.選択されたディスプレイ粒子中の融合遺伝子を配列決定して、抗体結合タンパク質を同定することを更に含む、実施形態111~123のいずれか1つに記載の方法。
125.選択された抗体結合タンパク質から全長IgG又はFabを産生することを更に含む、実施形態124に記載の方法。
126.抗体結合タンパク質が、scFvであり、方法が、scFvのVH領域を定常領域又はその一部と連結することを含む、重鎖又はその一部を構築することを含む、実施形態124又は125に記載の方法。
127.方法が、ヒト化ウシVH領域の超長CDR3領域のノブ領域を、選択された抗体結合タンパク質の超長CDR3領域で置換することによってヒト化VH領域を構築することを含む、実施形態124又は125に記載の方法。
128.選択された抗体結合タンパク質の超長CDR3領域が、ヒト化ウシVH領域の上昇ストーク鎖と下降ストーク鎖との間で置換される、実施形態127に記載の方法。
129.VH領域が、式V1-X-V2を含み、重鎖のV1領域が、配列番号111に示される配列を含み、X領域が、選択された抗体の超長CDR3を含み、V2領域が、配列番号112に示される配列を含む、実施形態128に記載の方法。
130.方法が、ヒト化VH領域を定常領域又はその一部と連結することを含む、重鎖又はその一部を構築することを更に含む、実施形態127~129のいずれか1つに記載の方法。
131.重鎖又はその一部が、ヒトIgG1重鎖又はその一部である、実施形態126又は130に記載の方法。
132.重鎖又はその一部を軽鎖と共発現させることを更に含む、実施形態126、130、及び131のいずれか1つに記載の方法。
133.軽鎖が、BLVH12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8、若しくはF18のウシ軽鎖であるか、又はそのヒト化バリアントである、実施形態132に記載の方法。
134.軽鎖が、BLV1H12軽鎖(配列番号113)又はそのヒト化バリアントである、実施形態132又は133に記載の方法。
135.軽鎖が、配列番号114に示されるヒト化軽鎖である、実施形態131~134のいずれか1つに記載の方法。
136.軽鎖が、BLV5B8軽鎖(配列番号115)又はそのヒト化バリアントである、実施形態132又は133に記載の方法。
137.軽鎖がヒト軽鎖である、実施形態132に記載の方法。
138.軽鎖が、VL1~47、VL1~40、VL1~51、及びVL2~18からなる群から選択される、実施形態132又は137に記載の方法。
139.軽鎖が、配列番号116~120のうちのいずれか1つに示される、実施形態132、137、及び138のいずれか1つに記載の方法。
140.可溶性超長CDR3ノブを産生するための方法であって、
(a)切断可能なリンカーによって連結された超長CDR3ノブ及び細菌シャペロンを含む融合タンパク質をコードする発現ベクターでE.coliを形質転換することであって、超長CDR3ノブが、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列である、形質転換することと、
(b)融合タンパク質の発現を許容する条件下で、細菌を培養することと、
(c)細菌細胞溶解物の上清から融合タンパク質を単離することと、
(d)融合タンパク質の切断可能なリンカーを切断し、それによって、細菌シャペロンを含まない1~6つのジスルフィド結合を含む可溶性超長CDR3ノブを産生することと、を含む、方法。
141.超長CDR3ノブが、実施形態111~124のいずれか1つに記載の方法によって同定された抗体結合タンパク質である、実施形態140に記載の方法。
142.融合タンパク質が、超長CDR3ノブ単独と比較して増加した溶解度を有する、実施形態140又は141に記載の方法。
143.細菌シャペロンが、チオレドキシンA(TrxA)である、実施形態140~142のいずれか1つに記載の方法。
144.切断可能なリンカーが、アミノ酸配列DDDDK(配列番号106)を有するエンテロキナーゼ切断タグである、実施形態140~143のいずれか1つに記載の方法。
145.切断可能なリンカーを切断することが、エンテロキナーゼを上清に添加することを含む、実施形態140~144のいずれか1つに記載の方法。
146.可溶性超長CDR3ノブが、化学的方法又は酵素的方法を介した可溶性超長CDR3ノブの環化を可能にする更なるリンカーを含み、任意選択で、更なるリンカーが、ソルターゼ媒介環化を可能にする、実施形態140~145のいずれか1つに記載の方法。
147.可溶性超長CDR3ノブを環化することを更に含む、実施形態146に記載の方法。
148.(e)可溶性超長CDR3ノブを含む溶液からエンテロキナーゼ及び/又は細菌シャペロンを除去することを更に含む、実施形態140~147のいずれか1つに記載の方法。
149.可溶性超長CDR3ノブを含む溶液から可溶性超長CDR3ノブを富化することを更に含み、任意選択で、富化することが、サイズ排除クロマトグラフィを含む、実施形態140~148のいずれか1つに記載の方法。
150.可溶性超長CDR3ノブを含む多重特異性結合分子を産生することを更に含む、実施形態140~149のいずれか1つに記載の方法。
151.超長CDR3ノブが、3~8kDa又は4~5kDaのサイズである、実施形態140~150のいずれか1つに記載の方法。
152.切断可能なリンカーによって連結された超長CDR3ノブ及び細菌シャペロンを含む融合タンパク質であって、超長CDR3ノブが、1~6つのジスルフィド結合を形成することができる2~12のシステイン残基を含むシステインモチーフを有する25~70個のアミノ酸のペプチド配列である、融合タンパク質。
153.細菌シャペロンが、チオレドキシンA(TrxA)である、実施形態152に記載の融合タンパク質。
154.切断可能なリンカーが、アミノ酸配列DDDDK(配列番号106)を有するエンテロキナーゼ切断タグである、実施形態152又は153に記載の融合タンパク質。
155.超長CDR3ノブが、1~6つのジスルフィド結合を含む、実施形態152~154のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
156.実施形態152~155のいずれか1つに記載の融合タンパク質を含む、組成物。
157.実施形態140~151のいずれか1つに記載の方法によって産生される精製された可溶性超長CDR3ノブであって、可溶性超長CDR3が、25~75アミノ酸長であり、1~6つのジスルフィド結合を含む、精製された可溶性超長CDR3ノブ。
158.超長CDR3ノブが、3~8kDaのサイズである、実施形態157に記載の精製された可溶性超長CDR3ノブ。
159.超長CDR3ノブが、4~5kDaのサイズである、実施形態157又は158に記載の精製された可溶性超長CDR3ノブ。
160.実施形態157~159のいずれか1つに記載の精製された可溶性超長CDR3を含む、組成物。
161.薬学的に許容される担体を更に含む、実施形態160に記載の組成物。
162.非経口投与用に製剤化される、実施形態160又は161に記載の組成物。
163.静脈内、筋肉内、局所、耳、結膜、鼻、吸入、又は皮下投与用に製剤化される、実施形態160~162のいずれか1つに記載の組成物。
164.吸入による投与用に製剤化される、実施形態160~163のいずれか1つに記載の組成物。
【実施例】
【0313】
以下の実施例は、単に例示目的のために含まれており、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0314】
実施例1:抗SARS CoV-2抗体の生成
ウシをSARS CoV-2スパイクタンパク質又はその受容体結合ドメイン(RBD)部分で免疫化し、血清を収集して結合活性を評価した。
【0315】
A.スパイクタンパク質及び受容体結合ドメインの発現及び精製
親Wuhan-Hu-1単離株(NCBI YP_009724390.1)又は変異E484K(並びにK417N及びN501Y)を有するB.1.351「南アフリカ」バリアントからのSARS CoV-2スパイク三量体タンパク質、又は親受容体結合ドメイン(RBD)タンパク質(スパイクタンパク質のアミノ酸319~541)を、HEK293細胞のトランスフェクションにより産生した。293fectinを有する約120×106個のHEK293 Freestyle細胞(Invitrogen)を、(1)フューリン切断部位が除去され、K986P及びV987P安定化変異、T4-フィブリチン三量体化ドメイン、並びにc末端6x Hisタグを有するスパイクタンパク質の細胞外ドメインをコードする配列、又は(2)c末端6x Hisタグを有するスパイクRBDドメイン(スパイクタンパク質のアミノ酸319~541)を含む、120μgのpCAGGSベースのベクターと組み合わせた。
【0316】
細胞を37℃で4日間、8%CO2で振盪し、150μlのTCM-ProteaseArrest組織培養プロテアーゼ阻害剤(G-Biosciences)を3日目に添加した。分泌されたスパイク又はRBDタンパク質を含む上清を、4000 RPMで5分間遠心分離し、続いて0.45μmのPESフィルターを通して濾過することによって上清から清澄化した。上清を濃縮し、Amicon Ultra Centrifugal Filterユニット(Sタンパク質調製物についてはMWCO=50,000、RBDタンパク質については10,000)(EMD-Millipore)を4℃で使用してPBSに緩衝液交換した。次いで、濃縮した上清を、50mM、100mM、200mM、300mM、及び400mMのイミダゾール勾配溶出画分(各々1カラム容積)を収集したことを除いて、製造業者のプロトコルに従って、TALONコバルト金属親和性樹脂(Takara Bio)を使用して精製した。各溶出画分を、InstantBlue Coomassie Protein Stain(Abcam)で染色したSDS-PAGEゲル上で分離した。単一のスパイクタンパク質バンド又は単一のRBDバンドを含む画分をプールし、上述のようにPBSに緩衝液交換し、タンパク質の濃度を、Nanodrop One(Thermo Scientific)を使用して、それぞれ、スパイク又はRBDタンパク質の吸光係数及び分子量に基づいて定量した。
【0317】
B.免疫化プロトコル
2頭の仔ウシを、精製されたWuhan-Hu-1スパイクタンパク質又はRBDタンパク質バリアントを用いて、200μg/用量を5つの首位置に広げて免疫化し、公開された方法に従って追加免疫した(Sok et al.Nature 2017,548(7665108-111、Wang et al.Cell 2013,153(6):1379-1393)。血清を収集し、1:100~1:10,000の血清希釈範囲で、RBD免疫化仔ウシからの血清に対して、SARS-CoV-2スパイクのRBDドメインに対してIgG ELISAを行った。スパイクタンパク質反応性は、免疫化の7~21日後に観察された。
図2Aに示すように、RBDドメインに対する結合活性は、最初の免疫化後に顕著であった。
【0318】
また血清IgGを、プラーク低減及び中和試験(plaque reduction and neutralization test、PRNT)を使用して、スパイクタンパク質及びウイルスの中和について評価した。このインビトロアッセイにおいて、ウイルス及び血清IgGは、抗体によって首尾よく結合されたウイルスがもはや細胞に浸透することができず、かつ/又はもはや感染を更に伝播することができないように、許容細胞に同時に適用される前に、一緒にプレインキュベートされる。結果として、感染の病巣及び「プラーク」と呼ばれる細胞損傷は、細胞単層が染色される場合、サイズ及び/又は数がより小さいようである。
【0319】
SARS CoV-2スパイクタンパク質を発現する偽ウイルスを、モデルウイルスとして使用して、Vero6細胞における親スパイクタンパク質及びRBD免疫化ウシの両方からの血清IgGの中和率をアッセイした。天然ウイルスと比較して、偽ウイルスを、高力価でBSL-2を考慮して取り扱うことができ、1回のラウンドで細胞に感染させるだけである。
図2Bに示されるように、免疫化プロトコルのいずれかにおいてウシから得られたIgGは、用量依存的に偽ウイルスを首尾よく中和することができた。より高い濃度では、RBD単独で免疫化したウシからの血清IgG(ng/mL)は、偽ウイルスの100%を中和することが観察された。
【0320】
総合すると、これらの結果は、免疫化ウシ血清及びそれに含まれる抗体がSARS-CoV-2を中和することができることを支持する。
【0321】
実施例2:抗体発見のための超長CDR3 scFv抗体又はCDR3-ノブのみのファージディスプレイライブラリーの生成
末梢血単核細胞(PBMC)を、実施例1に記載される免疫化ウシから収集し、RNAを抽出して、以下に記載される2つのファージディスプレイライブラリーを生成するために使用した。具体的には、免疫化の14~64日後に約1~5×107個のPBMCを収集し、RNA抽出及びcDNA合成の前に保存した。
【0322】
可変重鎖(VH)断片及び可変軽鎖(VL)断片が可動性リンカーペプチド((Gly
4Ser)
315アミノ酸リンカー、配列番号94)によって連結されたscFvフォーマットの抗体を使用するか、又は独立したCDR3-ノブを使用するかのいずれかの2つのライブラリー戦略を用いた。両方のアプローチにおいて、scFv又はCDR3-ノブを、可動性Gly4Serリンカーを介してpIIIに融合した。
図3Aは、各ディスプレイライブラリーにおけるpIII融合構築物を示す。ディスプレイライブラリーの生成を以下に要約する。
【0323】
A.scFvライブラリー構築
第1の戦略では、免疫ウシ由来のVH DNA断片を、固定軽鎖BLV1H12と組み合わせた(Stanfield et al.Science immunology 2016,1(1):aaf7962.)。RBD及び全長スパイクタンパク質免疫ライブラリーを、異なる免疫化時点について構築した。
【0324】
RNAを、RNAeasyキット(Qiagen)を使用して、5×106~107個のウシPBMCから単離した。Superscript IV First-Strand cDNA合成キット(ThermoFisher、#18091050)を使用して、5μgの全RNAからのcDNA合成、続いてPCR増幅を行うことによって、免疫ウシ抗体VHレパートリーを得た。VH鋳型ライブラリーを生成するために、VHのためのcDNA鋳型は、IgM(配列番号4)、IgA(配列番号5)、及びIgG特異的(配列番号3及び6)プライマーのプールを使用して合成された。
【0325】
これらのハイブリッドライブラリーにおいて、全長ドナー超長VHを、VHファミリー特異的プライマー対を用いてVH鋳型ライブラリーから増幅した。具体的には、超長CDR3領域を有するVH領域を富化するために、ウシIgHV1-7ファミリーに特異的なFR1及びFR4プライマー(それぞれ配列番号12及び13)を用いて、両方のVH領域を増幅した。増幅した産物を、予めクローニングされたpTAU1 pIII融合ファージディスプレイベクター(pTAU1-BLV1H12(-VH)にクローニングすることによって、リンカー-BLV1H12ラムダ軽鎖可変領域(配列番号2に示され、1に示されるDNA配列によってコードされるBLV1H12軽鎖)と組み合わせた(
図3Cを参照されたい)。増幅した産物を、NcoI及びXhoI(NEB)で2時間消化し、可動性リンカーペプチド((Gly
4Ser)
3、配列番号94)によるVH及びVLの分離のためにNcoI-XhoI断片としてpTAU1-BLV1H12(-VH)にサブクローニングした。更なるステップにおいて、いくつかの超長VH断片を、NcoI及びXhoI制限酵素で消化する前に、アガロースゲル電気泳動を使用してより短いVH断片から分離することによって更に富化した。
図3Dに示されるように、2%のアガロースゲルは、超長VH断片(約550塩基対長)と超長CDR3領域を有さないより短いVH断片(約400塩基対長)との間で最も多くの分離を達成した。
【0326】
次に、これをT4 DNAリガーゼを用いて、16℃で一晩ライゲートした。最終ライブラリーは、精製されたライゲーション産物を用いたエレクトロコンピテントTG1細胞(Lucigen)のエレクトロポレーションにより得た。各ライブラリーは、>90%がインサートである最小107のクローンであった。
【0327】
B.CDR3-ノブライブラリー構築
第2の戦略において、VH鋳型のライブラリーを、実質的に第1の戦略に記載されるように生成した。次いで、超長VHのみの免疫ウシ由来CRD3-ノブ(「CDR3-ノブのみ」とも呼ばれる)ライブラリーを、保存されたプライマーを使用してVH鋳型ライブラリーからストーク-ノブCDRを増幅し、pIII融合物としてpTAU1ファージディスプレイpIII融合ベクターにクローニングすることにより構築した。
【0328】
具体的には、RNAを、RNAeasyキット(Qiagen)を使用して、5×106~107個のウシPBMCから単離した。Superscript IV First-Strand cDNA合成キット(ThermoFisher)を使用して、5μgの全RNAからのcDNA合成、続いてPCR増幅を行うことによって、免疫ウシ抗体CDR3-ノブレパートリーを得た。VH鋳型ライブラリーを生成するために、CDR3-ノブのためのcDNA鋳型は、IgM(配列番号4)、IgA(配列番号5)、及びIgG特異的(配列番号3及び6)プライマーのプールを使用して合成された。
【0329】
一次ストーク-ノブCDR3を、CDR3領域(配列番号7~11)のストークドメインのいずれかの側に特異的なIgHV1-7ファミリー特異的プライマーを用いて、第1の鎖cDNAから増幅した。次いで、これらを、NcoI及びNotI(NEB)で2時間消化した後にNcoI-NotI断片としてpTAU1ファージベクターにクローニングし、T4 DNAリガーゼを用いて、16℃で一晩ライゲートした(
図3Bを参照されたい)。最終ライブラリーは、精製されたライゲーション産物を用いたエレクトロコンピテントTG1細胞(Lucigen)のエレクトロポレーションにより得た。各ライブラリーは、>90%がインサートである最小10
7のクローンであった。
【0330】
実施例3:ファージディスプレイライブラリーのスクリーニング及びSARS Cov-2に対する超長VH又はCDR3-ノブドメインの選択
実施例2に記載されるように生成されたVH超長CDR3 scFv抗体又はCDR-ノブのみのライブラリーを、SARS CoV-2標的タンパク質(親Wuhan Hu-1又は「南アフリカ」B.1.351バリアントスパイクタンパク質又は親Wuhan Hu-1 RBDの両方)に対する2~5ラウンドのファージディスプレイ選択に供した。ウイルス単離株又は親RBDのいずれかからのスパイクタンパク質を、4℃で一晩、PBS中1mLの10μg/mLの標的タンパク質を含むNUNCイムノチューブ上にコーティングした。次いで、チューブを、PBS中に溶解した3~4mLの2%の粉乳を用いて血液ミキサーで室温で1時間遮断し、PBSで3回洗浄した。
【0331】
各選択について、実施例2に記載されるように生成された異なる免疫化scFv又はCDR3ノブライブラリーからの約1012のファージ粒子を、PBSに溶解した1mLの4%の粉乳に添加し、PBSで最大総容量2mLとし、次いで、標的タンパク質を含むチューブに添加し、室温で2時間、血液ミキサーでインキュベートした。次いで、チューブを10xPBS/0.1%のTween20及び10×PBSで洗浄した。
【0332】
結合したファージを、血液ミキサーで10分間、1mLの新鮮な0.1Mのトリエチルアミンで回収し、氷上で0.5mLの1Mのトリス(pH7.0)で中和した。対数期TG1 Phage-Competent(商標)細胞を、37℃/200rpmで1時間、溶出されたファージに感染させ、次いで2%のグルコース/50μg/mLのカルベニシリンを補充した2xTY寒天上で一晩30℃で成長させた。
【0333】
上述の各ラウンドの選択後、TG1細菌をマスタープレートから、20%のグリセロール/2%のグルコース/50μg/mLのカルベニシリンを補充した20mLの2xTY培地中にこすり落とした。約4~5mLのこの溶液を、100μlのM13K07ヘルパーファージ(MOI=10)を含む2%のグルコース/50μg/mLのカルベニシリンを補充した20mLの2xTY培地に添加した。この懸濁液を、37℃/200rpmで1時間インキュベートし、200mLの2xTY/0.2Mのスクロース/50μg/mLのカルベニシリン/25μg/mLのカナマイシン/20μmのIPTGに添加した後、30℃/200rpmで一晩インキュベートした。増幅したファージを、氷上で1時間インキュベートした後、250mLのOakridge遠心チューブ中で、1/5容積の2.5MのNaCl、20%のPEG 8000を用いて、清澄化した培養上清から沈殿させた。ファージ含有物質をSorvall遠心機で20分間14,000gでペレット化し、2mLのPBSに再懸濁し、1mLを次の選択ラウンドで使用するために保存した。各ライブラリーについて2~5ラウンドの選択を行い、ラウンド2から各ラウンドについてファージELISAを行った。
【0334】
各選択から、個々のコロニーを、96ディープウェル培養プレート中の50μg/mLのカルベニシリン及び2%のw/vグルコースを補充した600μLの2xTY培地に採取し、200rpmで、一晩37℃で(振盪しながら)インキュベートした。各培養物について、50μLを、200μL/ウェルの同じ培地を含む新しい96ディープウェルプレートに移し、3時間成長させた。M13K07カナマイシン耐性ヘルパーファージのおよそ108のカナマイシン耐性単位(kanamycin resistance unit、k.r.u.)を各ウェルに添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートした。発現培地(0.2Mのスクロース、100μg/mLのカルベニシリン、25μg/mLのカナマイシン、及び20μMのIPTGを補充した800μL/ウェルの2xTY培地)を各ウェルに添加し、増幅を30℃で一晩継続した。
【0335】
培養プレートを2000gで10分間、4℃で遠心分離し、ウェル当たり25μLの培養上清をELISAに使用した。ハーフエリアCostar ELISAプレートを、50μL/ウェルのRBD又はPBS中1μg/mLのスパイク標的タンパク質を用いて、4℃で一晩コーティングし、PBSに溶解した100μL/ウェルの2%の粉乳を用いて室温で1時間遮断し、次いで2×100μL/ウェルのPBSで洗浄した。ウェル当たり約25μLのファージ培養上清を、25μL/ウェルの4%の粉乳/PBSを含む各標的プレート又は陰性対照プレートに添加し、室温で1時間結合させた。各プレートを、0.1%のTween20を含む200μL/ウェルのPBSで2回、次いで200μL/ウェルのPBSで2回洗浄した。結合したファージを、50μL:/ウェル、2%の粉乳/PBS中1:5000希釈した抗M13-HRPコンジュゲート(Sinobiologicals)を用いて、室温で1時間検出した。プレートを洗浄し、50μL/ウェルのTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質緩衝液(Thermofisher)を用いて室温で5~10分間展開させた。製造プロトコルに従って100μL/ウェルの0.5NのH2SO4で反応を停止させ、光学密度を450nmで読み取った。
【0336】
scFvライブラリーのスクリーニングからの陽性クローンを配列決定し、哺乳類HEK293細胞におけるキメラBLV1H12ラムダ軽鎖-ヒトラムダ軽鎖定常領域との共発現のために、短いVH配列及び超長VH配列の両方をpFUSEヒトIgG1 Fc重鎖発現ベクターに移した。ノブ-CDR3のみのライブラリーのスクリーニングからの陽性クローンを、完全VH遺伝子断片として合成し、pFUSEヒトIgG1 Fcベクターにクローニングし、上述のようにキメラBLV1H12ラムダ軽鎖と共に同様に発現させた。具体的には、各VHを、2X Phusion Hot Start II High-Fidelity PCR Master Mix(Thermo Scientific)並びにVHフレームワーク1(フォワード)及びJHフレームワーク4(リバース)に特異的なプライマーを用いた50μL反応において、10ngのファージプラスミドミニプレップ(Qiagen)からPCR増幅した。PCR生成されたインサートを、ヒトIgG1 Fc遺伝子の5’末端上の5’EcoRI及び3’NheI部位でpFUSE哺乳類発現ベクターにクローニングした。これを、HEK293F細胞へのトランスフェクションのために、ウシVL(BLV1H12)及びヒトλCL配列を含む第2のpFUSEプラスミドと対合した。細胞を、30~60mLのFreestyle 293 Expression Medium(Gibco)中1×106細胞/mLの密度で播種し、次いで、37℃及び8%のCO2の加湿環境でインキュベートした。重鎖及び軽鎖プラスミドを、1:1で組み合わせて、293F培養物1mL当たり1μgのDNAの総量とし、次いで、Opti MEM I培地(Gibco)中で希釈して、293F培養物30mL当たり1mLの最終体積とした。各30mLの293F培養物について、約60μLの293fectinトランスフェクション試薬(Gibco)及び940μLのOpti MEM Iを合わせ、次いで穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした後、希釈したDNAに添加した。この混合物を室温で30分間インキュベートし、次いで、293F培養物に移した。
【0337】
トランスフェクションの5日後に培地を採取し、発現されたキメラウシヒトIgG1抗体を固定化されたProtein A Sepharose(Cytiva Life Sciences)クロマトグラフィにより精製し、次いで、生ウイルス及び偽ウイルスの抗原結合及び中和について試験した。
【0338】
ライブラリースクリーニングからの選択された候補抗体を同定し、配列決定した(表E1)。いくつかの選択された抗体は、超長CDR3ドメインを含んでいた。したがって、超長CDR3抗体は、天然に存在するウシ抗体の約10%しか示さないにもかかわらず、上記のファージディスプレイアプローチによって生成及びスクリーニングされた実施例1に記載の免疫化からの候補抗体は、超長CDR3を有するウシ抗体について高度に富化された(すなわち、候補の40%超が少なくとも50個のアミノ酸のCDR3を特徴とする)。
【0339】
例示的な抗体SA-R2C3及びSA-R2D9抗体は、超長scFvライブラリー(親Wuhan-Hu1 Sタンパク質による免疫化)に由来し、南アフリカバリアントスパイクタンパク質に対する選択を伴うスクリーニングによって同定された。例示的なSKM及びSKD抗体を、記載されるCDR3-ノブライブラリーから直接誘導されたファージライブラリーからのスクリーニングから同定した。
【0340】
例示的な超長抗体SKD(配列番号68)、SKM(配列番号69)、R4C1(配列番号70)、R5C1(配列番号71)、SR3A3(配列番号72)、R2F12(配列番号73)、及びR2G3(配列番号74)の配列アラインメントを、生殖系列参照配列(配列番号75)と共に
図4に示す。CDR3の長さ及びシステイン残基の数も各々について示す。
【0341】
【0342】
実施例4:スパイクタンパク質及びRBDへの結合評価
次いで、実施例3に記載されるキメラウシ-ヒトIgG1抗体として発現及び精製された選択されたクローンを、RBD及びスパイクタンパク質に結合するそれらの能力についてアッセイした。
【0343】
A.SARS-CoV-2
キメラウシ-ヒトIgG1抗体のRBD及びスパイク結合をELISAによって評価した。PBS中1μg/mLのRBD又はスパイクタンパク質約50μLをハーフエリアCostar ELISAプレート(Corning)の各ウェルに添加し、4℃で一晩コーティングした。プレートを、180μL/ウェルの2%の粉乳/TBS/0.1%のTween20で室温で2時間遮断した。精製したキメラウシ-ヒトIgG1抗体を、2%の粉乳/TBS/0.1%のTween20中で20nM~0.00129nMに5倍希釈し、50μL/ウェルの各希釈物をコーティングされた/コーティングされていないウェルに2つ組で添加した。プレートを、室温で1時間インキュベートし、次いで180μLのTBS/0.1%のTween20で4回洗浄し、結合したIgGを、2%の粉乳/TBS/0.1%のTween20中で1:5000に希釈した50μL/ウェルの抗ヒトFc-HRP(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)を用いて室温で30分間検出した。次いで、プレートを180μLのTBS/0.1%のTween20で5回洗浄した後、50μL/ウェルのTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質緩衝液(Thermo Scientific)を添加した。室温で1~2分後、50μL/ウェルの1NのH2SO4で反応を停止させ、OD 450nm値を記録した。
【0344】
試験した3つのクローンの代表的な結果を、
図5A及び
図5Bに示す。
図5Aに示されるように、精製されたキメラウシ-ヒトIgG1抗体(R2G3、R2F12、及びR4C1)の各々は、スパイクタンパク質への結合を示した。非関連ウシ-ヒトIgG1(136S IgG)は、スパイクタンパク質への結合を示さなかった。
図5Bに示されるように、クローンR2G3及びR2F12のV
Hを有する精製されたキメラウシ-ヒトIgG1抗体は、RBDへの結合を示した。非関連ウシ-ヒトIgG1(136S IgG)、並びにクローンR4C1のV
Hを有するキメラ抗体は、RBDタンパク質への結合を示さなかった。これらの結果は、抗体R4C1はスパイクタンパク質中の非RBDエピトープに結合するが、R2G3及びR2F12はRBDエピトープに結合するという知見と一致する。
【0345】
【0346】
B.SARS CoV-2バリアント
キメラウシ-ヒトIgG1抗体のRBD及びスパイク結合を、SARS CoV-2の更なる単離株(ベータ、デルタ、及びオミクロン系統からのバリアント、並びにSARS CoV-1ウイルスを含む)に対してELISAにより評価した。実施例4に記載されるように、PBS中1μg/mlのRBD又はスパイクタンパク質約50μLを各ウェルに添加し、4℃で一晩コーティングした。プレートを、室温で2時間遮断した。精製されたキメラウシ-ヒトIgG1抗体を、20nM~0.00129nMの5倍に希釈し、50μL/ウェルの各希釈物をコーティングされた/コーティングされていないウェルに2つ組で添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いで4回洗浄し、結合したIgGを抗ヒトFc-HRP(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)で検出した。次いで、プレートを5回洗浄した後、TMB基質緩衝液を添加した。室温で1~2分後、H2SO4で反応を停止させ、OD 450nm値を記録した。
【0347】
図5Cは、野生型(wild-type、WT)Wuhan-Hu-1株、ベータ株(以前は南アフリカ株と記載された)、又はデルタ株に由来する組換え安定化スパイクタンパク質へのIgG抗体のELISA結合を示す。例示的な抗体SKD及びSKMは、ベータへの検出可能な結合を失うが、WT及びデルタSARS CoV-2への結合を維持するようであることが観察された。他の抗体は、各Sタンパク質について試験した濃度範囲にわたって結合することが示されている。
【0348】
RBDを用いて実施された実験の相補的セットにおいて、
図5Dは、オミクロンバリアントRBD(左)又は組換え安定化スパイク三量体(右)に対する選択IgG抗体のELISA結合曲線を示す。試験した例示的なRBD結合物のうち、R2D9のみが、オミクロンバリアントスパイクRBDへの結合を維持することが観察された。R4C1、R5C1、及びR2D9はまた、ナノモル以下の範囲のEC50で全長オミクロンスパイクに結合することが観察された。
【0349】
図5Eは、SARS-CoV-1と比較したSARS-CoV-2に対するR4C1及びR2D9の例示的なELISAデータを反映する。NC-Cowlとしても知られるP1B4を陰性対照として使用した。Sok,et.al.Nature 2017を参照されたい。これらのデータは、R4C1がSARS-CoV-1に対する完全な結合活性を維持するのに対して、代替的な例示的な抗体R2D9は>10倍の結合を失うことを示す。しかしながら、R2D9は、SARS-CoV-1に対して低ナノモル範囲でいくらかの結合活性を依然として維持することが観察された。
【0350】
最後に、
図5Fは、WT(Wuhan)SARS CoV-2スパイクタンパク質に対する3つの異なる例示的な抗体ノブ候補についてのELISA結合活性(上)を示す。この実験では、各例示的なノブをDO1エピトープタグと共に発現させ、これをX軸に反映された抗DO1抗体で検出した。
図5Gは、改変されたウエスタンブロットを更に示す。ここで、示された例示的な抗体ノブを、SDSの存在下で70℃に加熱し、次いでSDS-PAGEにより分離した後、ニトロセルロース膜に移し、ビオチン化RBDで検出した。EZ-Link NHS-LC-LC-ビオチン(Thermo Fisher)を使用して、RBDをビオチン化した。NHS-LC-LC-ビオチンをDMF中で再構成し、1:5(RBD:ビオチン)モル比で精製されたRBDと混合し、次いで室温で30分間インキュベートした。次いで、反応物を、PBS中で平衡化したPierceポリアクリルアミドスピン脱塩カラム7K MWCOに適用した。アプロチニンを同様のサイズ対照として選択した。R2G3ノブは、熱及びSDS処理にもかかわらず、RBDへの結合を維持することが観察された。
【0351】
実施例5:ウイルス中和
いくつかの態様において、ウイルス抗原タンパク質への抗体の結合は、細胞侵入又は感染伝播を軽減するのに不十分である。一方、中和抗体として知られるいくつかの抗体は、インビトロ及び/又はインビボでウイルスを阻害する能力を有し、したがって、治療用途により関連すると考えられる。したがって、上述される候補抗体を、候補抗体の中和能力をアッセイするためのモデルウイルスであるSARS CoV-3偽ウイルスによる細胞の感染を中和するそれらの能力について試験した。SARSウイルスの天然に存在する単離株と比較して、偽ウイルスは、高力価でBSL-2を考慮して取り扱うことができ、したがって、偽ウイルスルシフェラーゼアッセイ(pseudovirus luciferase assay、PVLA)などにおけるスクリーニングに適している。
【0352】
親Wuhan-Hu-1スパイクタンパク質配列のSARS CoV-2 Sタンパク質をそのウイルスエンベロープにおいて発現する偽ウイルスを、ルシフェラーゼ発現のための遺伝子がそのカーゴとして運ばれるように操作した。細胞への浸透が成功すると、ルシフェラーゼは、偽ウイルス中和阻害率が相対光単位(relative light unit、RLU)として表されるルシフェラーゼ活性に反比例するように発現される。これらの偽型ウイルスを、CRFK-hACE2細胞において行われる中和アッセイにおいて使用した。SARS-CoV-2侵入のための受容体として、ACE2過剰発現は、「高い感染力」を示す細胞株を産生することができる機構と考えられる。逆に、最小又はより低いACE2発現を有する細胞系は、「低感染力」を示すと考えることができる。
【0353】
具体的には、模擬培地又は連続希釈(5倍)抗体Fabを、同量のSARS-CoV-2野生型(WT)を保有する偽型ウイルスと混合し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、混合物を、ポリブレン(Santa Cruz Biotech,Santa Cruz,CA)(10μg/mL)の存在下でCRFK-hACE又はCRFK-hDDP4細胞に形質導入した。形質導入細胞を37℃で48時間インキュベートした後、溶解緩衝液を添加し、RLUを測定した。
【0354】
同定された抗体の偽ウイルス中和の概要を表E3に示す。ウシ超長CDR3抗体は非常に強力であり、変異株を中和し、いくつかの抗体について1~5ng/mL未満の濃度で半最大阻害を有する。一般に、超長CDR3抗体は、標準的なCDR3長を有する抗体よりも強力な中和を示した。
【0355】
【0356】
実施例6:CDR3-ノブのみの抗体の細菌発現及び精製
上述の超長CDR3ウシ抗体に由来する1~6つのジスルフィド結合を有する25~50個のアミノ酸の小ペプチド配列であるCDR3-ノブを発現及び精製するための系を開発した。発現系は、細菌シャペロンTrxAとの融合を含んだ。CDR3-ノブ並びにtrxA-CDR-ノブ融合物を、スパイク及びRBD結合について試験した。
【0357】
A.TrxA-CDR3-ノブ融合物並びにCDR3-ノブの発現及び精製
実施例2~5に記載される候補超長CDR3抗体からのCDR3-ノブを、KpnI-XhoI(又は適切な場合にはNcoI-XhoI)断片としてpET32bベクター(EMD-Millipore)にクローニングし(
図6A)、Origami 2 DE3細菌に形質転換し、以下に記載されるように発現させた。これらのCDR3-ノブは、それぞれ、配列番号60~67に示される配列を有し、配列番号52~60に示されるDNA配列によってコードされた。
【0358】
trxA-CDR3-ノブ融合クローンを、20mLの2xTY/50μg/mLのカルベニシリン/10μg/mLのテトラサイクリン/2%のグルコース中で、37℃で一晩成長させ、200mLの同じ培地に移し、OD600nmが約1.0になるまで37℃で成長させ、その後、細菌を遠沈し、200mLの2xTY/50μg/mLのカルベニシリン/0.5mMのIPTGに再懸濁し、22℃で一晩成長させた。細菌を再びペレット化し、10mLのBugbuster HT(EMD-Millipore)に再懸濁し、室温で30分間回転させ、デブリを14,000gで、4℃で20分間ペレット化した。上清を平衡化したTalon樹脂カラム(1mL樹脂TaKaRa)に添加し、4℃で2時間回転させ、5カラム容積の洗浄緩衝液(5mMのイミダゾール)、次いで1カラム容積の洗浄緩衝液(10mMのイミダゾール)で洗浄し、2.5mLの300mMのイミダゾール溶出緩衝液で溶出し、次いでPD10スピンカラム(GE Healthcare)を用いて緩衝液をPBS/生理食塩水に交換した。trxA-CDR3-ノブを、50mMのTris pH7.4、150mMのNaCl、及び2.5mMのCaCl2(1×エンテロキナーゼ(enterokinase、EK)反応緩衝液)に調整し、400u組換えhisタグ付けされたエンテロキナーゼ(Genscript)を添加し、室温で一晩インキュベートした。消化されたtrxA及びエンテロキナーゼを、新鮮な平衡化Talon樹脂カラム(1.2mLの樹脂)上で、4℃で2時間インキュベーションすることによって除去し、精製されたCDR-ノブをフロースルー中に収集した。再び、試料を生理食塩水/PBSに緩衝液交換した。場合によっては、エンドトキシン除去が、使用又は試験(例えば、ウイルス中和アッセイにおける試験)の前に、陰イオン交換クロマトグラフィによって行われてもよい。独立したドメインとしてE.coliにおいてクローニング及び発現されたCDR3-ノブは、配列番号60~67に示される。
【0359】
段階的精製を
図6Bに示す。
図6Cに示されるように、SDS-PAGEによってモニタリングされる段階的精製は、E.coli溶解物からtrxA-CDR3-ノブ融合タンパク質及び可溶性CDR3-ノブの両方を効率的に精製した。
図6Dは、いくつかの精製された超長CDR H3ノブペプチドの例示的なSDS-PAGEゲルを示す。試料を還元剤DTTで処理したが、これはいくつかの態様において、ジスルフィド結合を破壊するのに十分である。同様のサイズのタンパク質アプロチニンをサイズ対照として含めた。
【0360】
IMAC精製されたtrxA-CDR3-ノブ融合スパイク又はRBD結合
trxA融合物としてCDR3-ノブ結合を評価するために、trxAからのエンテロキナーゼ切断の前に、ハーフエリアCostar ELISAプレートを、50μl/ウェルPBS中の25μLのtrxA融合物からのIMAC精製されたtrxA-ノブ融合物の連続希釈物で4℃で一晩コーティングした。RBD結合クローンR2G3、R2F12、SKM、及びSKD(それぞれ配列番号52、配列番号54、配列番号56、及び配列番号57に示される核酸配列、並びにそれぞれ配列番号60、配列番号62、配列番号64、及び配列番号65に示されるアミノ酸配列)、並びにスパイク結合クローンR4C1(配列番号55に示される核酸配列、及び配列番号63に示されるアミノ酸配列)を試験した。
【0361】
次いで、プレートを、100μL/ウェルの2%の粉乳/PBSで室温で1時間遮断し、次いで100μL/ウェルのPBSで2回洗浄した。約50μL/ウェルの2%の粉乳/PBS中1μg/mLのWuhan-Hu-1スパイクタンパク質を1時間インキュベートし、次いで、ウェルを100μl/ウェルのPBSで3回洗浄した。結合したスパイクタンパク質を検出するために、1μg/mLの全長IgGキメラ超長CDR3を、2%の粉乳/PBS中の抗RBD R2G3 IgG1(R4C1の場合)又は抗R4C1 IgG1抗体(R2F12、R2G3、SKD、及びSKM融合物の場合)のいずれかに添加し、1時間インキュベートし、次いで、ウェルを100μL/ウェルのPBSで3回洗浄した。次いで、結合したIgGを、2%の粉乳/PBS中の1:5000希釈抗ヒトIgG-Fc-HRPコンジュゲートと共に1時間インキュベートすることにより検出し、次いで、ウェルを100μL/ウェルのPBSで3回洗浄した。次いで、プレートを洗浄し、50μL/ウェルのTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質緩衝液(Thermofisher)を用いて室温で5~10分間展開させた。100μL/ウェルの0.5NのH2SO4で反応を停止させ、450nmで読み取った。
【0362】
図7Aに示されるように(R2F12は「F12」として示され、R2G3は「G3」として示される)、試験したtrxA-ノブ融合タンパク質は、スパイクタンパク質結合を示した。融合タンパク質R3C1及びR2G3をスパイクタンパク質の不在下でインキュベートした対照条件(「R3C1 NOスパイク」及び「G3 NOスパイク」と示される)は、結合を示さなかった。TrxA-R2G3融合タンパク質についての結合も、コーティングされていないプレートと比較して、
図7Bにおいて別々に示される。
【0363】
B.精製されたR2G3 CDR3-ノブのWuhan-Hu-1 RBDへの結合
精製されたR2G3 CDR3-ノブ(上述のtrxAからのエンテロキナーゼ切断後)のRBDへの結合を、ELISAにより評価した。R2G3 CDR3-ノブをコードする核酸配列を配列番号52に示し、アミノ酸配列を配列番号60に示す。
【0364】
ハーフエリアCostar ELISAプレート(Corning)のウェルを、PBS中50μL/ウェルの84~0.082031nMから2倍希釈した精製されたCDR3-ノブで、2つ組でコーティングした。プレートを、37℃で1時間インキュベートし、次いで、180μL/ウェルの2%の粉乳/TBS/0.1%のTween20で室温で2時間遮断した。次いで、ビオチン化RBDを、2%の乳汁/TBS/0.1%のTween20中で0.5ng/μLに希釈し、50μL/ウェルをコーティングされた/コーティングされていないウェルに添加した。室温で1時間後、ウェルを180μL/ウェルのTBS/0.1%のTween20で4回洗浄し、結合したビオチン化RBDを、2%の乳汁/TBS/0.1%のTween20中で1:5000に希釈した50μL/ウェルのストレプトアビジン-HRP(Invitrogen)を用いて室温で30分間検出した。次いで、ウェルを180μL/ウェルのTBS/0.1%のTween20で5回洗浄した後、50μL/ウェルのTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質緩衝液(Thermo Scientific)を添加した。室温で1~2分後、50μL/ウェルの1NのH2SO4で反応を停止させ、OD 450nm値を記録した。コーティングされていないウェルの平均OD450を、コーティングされた各ウェルのOD450から差し引いた。バックグラウンドを差し引いたOD450値を、GraphPad Prism(GraphPad Software LLC)においてLog(CDR3-ノブnM)に対してプロットした。
【0365】
図8Aに示すように、可溶性R2G3ノブは、RBDへの結合を示した。
図8Bに示されるように、可溶性R2G3ノブ結合は、参照抗スパイクタンパク質抗体CR3022の結合と比較して増加した。
【0366】
C.切断されたR2G3 CDR3-ノブのWuhan-Hu-1 RBDへの結合
切断されたR2G3 CDR3-ノブをクローニングし、R2G3切断された変異体、続いてエンテロキナーゼ切断部位をコードするpET32bベクターを使用して上述のように産生した。切断されたR2G3変異体のアミノ酸配列を
図8Cに示す。
図8Dに示すように、切断物1~3は、エンテロキナーゼ切断及びゲル電気泳動後にコンパクトなバンドを示した(レーン当たり0.75μgの切断されたノブタンパク質、250mM DTT)。
【0367】
切断されたR2G3 CDR3-ノブも、上述のようにRBD結合について試験した。
図8Eに示すように、切断物1~3はRBD結合能力を保持したが、切断物4及び5はRBD結合を欠いていた。
【0368】
D.最小CDR3-ノブC末端要件の定義
原型CDR3-ノブのC末端要件(すなわち、C末端最小配列)を定義するために、一連のR2G3切断物を、上記実施例6に記載されるようにpET32bにクローニングし、発現させ、精製した。これらの切断物は、以下の表E4に示されるとおりであった。
【0369】
【0370】
発現させた材料の質を、上記の実施例6Dに記載されるように、SDS-PAGE及びRBD ELISAにより評価した。切断物4(G3 TRUNC4)及び5(G3 TRUNC5)だけが、RBD結合能力を示さないことが観察された。切断物3A(G3 TRUNC3A)及び3B(G3 TRUNC3B)は、
図8Aに示されるように、ELISAにおける結合の低減及びSDS-PAGEにおけるバンド拡散性の増加を実証した。切断物1~3を用いて実施したELISAでは、
図8Bに示されるように、親R2G3 CDR3-ノブと比較して、結合活性の喪失が観察されなかった。これらのデータは、R2G3結合のために最後の非標準Cys残基の後に最低少なくとも9個のアミノ酸が必要であることを支持する。
【0371】
E.サイズ排除クロマトグラフィによるCDR3-ノブ精製
サイズ排除クロマトグラフィ(size exclusion chromatography、SEC)を使用して、細菌発現後に精製された可溶性CDR3-ノブが複数の形態で存在するかどうかを解明した。可溶性R4C1及びR2G3ノブを上述のように産生し、SECに供した。
【0372】
図9Aに示されるように、SECは、精製されたR4C1ノブについて少なくとも2つの別個の溶出画分(画分A4及びA7)を明らかにし、精製されたR4C1ノブが細菌発現後に複数の形態で存在したことを示した。画分A4及びA7についてゲル電気泳動を行った。
図9Bに示されるように、画分A4は、より大きな可溶性凝集体及びより小さい活性の可溶性CDR3-ノブを含んだ。画分A7は、より小さい活性の可溶性CDR3-ノブのみを含んだ。
【0373】
図9Cに示されるように、SECは、精製されたR2G3ノブ(画分A6)について1つの明確な溶出画分(画分A6)のみを明らかにした。この結果は、画分A6に対して行ったゲル電気泳動により確証された(
図9D)。
【0374】
実施例7:キメラFab超長CDR3及びCDR3-ノブのSARS-CoV 2ウイルス中和の比較
CDR3-ノブのみの抗体のウイルス中和を評価するために、偽ウイルス又は生WT SARS-CoV2ウイルスの中和を評価するアッセイを行った。この実施例において、精製されたR2G3 CDR3-ノブ(「G3-ノブ」)若しくはキメラR2G3超長CDR3抗体のFab(「G3-Fab」)、又は全長IgGキメラR2G3超長CDR3抗体(「G3」)を、示されるように試験した。
【0375】
実質的に実施例5に記載される偽ウイルスルシフェラーゼアッセイ(PLSA)を行った。ウイルス中和を、SARS-CoV-2(Wuhan-Hu-1)野生型(WT)スパイクタンパク質、又はSバリアント(E484K/N507Y;B.1.1.7又は「UK」バリアント及びK417N/E484K/N501Y;B.1.351又は「SA」バリアント)を保有する偽型ウイルスに対して評価した。模擬培地又は連続希釈(5倍)抗体G3-ノブ、G3-Fab、又はG3を、同量のSARS-CoV-2野生型(WT)、Sバリアント(484K、B.1.1.7、及びB.1.351)を保有する偽型ウイルスと混合し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、混合物を、ポリブレン(Santa Cruz Biotech,Santa Cruz,CA)(10μg/mL)の存在下でCRFK-hACE又はCRFK-hDDP4細胞に形質導入した。SARS-CoV-2侵入のための受容体として、ACE2過剰発現は、「高い感染力」を示す細胞株を産生することができる機構と考えられる。逆に、最小又はより低いACE2発現を有する細胞系は、「低感染力」を示すと考えることができる。
【0376】
形質導入細胞を37℃で48時間インキュベートした後、溶解緩衝液を添加し、RLUを測定した。模擬処理に対する各抗体、G3-Fab又はG3-ノブの連続希釈の阻害曲線を生成し、50%有効濃度(EC50)値を、可変勾配を使用してGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad,La Jolla,CA)により決定した。結果を表E5に要約した。
【0377】
生SARS-CoV-2に対する中和活性を評価するために、G3、G3-Fab、又はG3-ノブの選択された抗体を、Vero E6細胞におけるSARS-CoV-2、又はB.1.17若しくはB.1.351バリアントの複製に対するそれらの中和活性について調査した。簡単に説明すると、50~100のプラーク形成単位のSARS-CoV-2 hCoV/USA-WA1/2020(野生型)、SARS-CoV-2 hCoV-19/英国/204820464/2020(B.1.1.7バリアント)、又はSARS-CoV-2 hCoV-19/南アフリカ/KRISP-EC-K005321/2020(B.1.351バリアント)を模擬培地又は連続希釈(5倍)G3-Fab又はG3-ノブと混合した。37℃で1時間インキュベートした後、混合物を24ウェルプレート中のコンフルエントなVero E6細胞に播種した。2時間のインキュベーション後、寒天(最終濃度1%)及びニュートラルレッドを含む培地を細胞に添加した。48~72時間後、各ウェル中のプラークを計数した。EC50値を上述のように決定し、以下の表E5に示した。
【0378】
総合すると、表E5に示される結果は、標準IgG Fabフォーマット又はCDR3-ノブのみのフォーマットのいずれかの例示的なウシ超長CDR3 R2G3が、WT SARS-CoV-2並びに試験されたバリアントに対して強力な中和活性を示したことを実証する。ウシ超長CDR3抗体は非常に強力であり、変異株を中和し、抗体フォーマットにより1~5ng/mL未満の濃度で半最大阻害を有する。注目すべきことに、わずか51アミノ酸長の短い配列であるにもかかわらず、CDR3-ノブのみの抗体は、ナノモル以下の効力を保持した。CDR3-ノブ抗体のサイズが小さいため、本実施例は、他のウイルス、細菌、他の感染症、喘息、又は肺癌を含む呼吸器標的用の吸入製剤のための新規治療用抗体候補としてのCDR3-ノブ抗体の有用性を支持する。
【0379】
【0380】
A.SARS CoV-2バリアント
超長CDR3抗体のウイルス中和の更なる評価において、生WT SARS-CoV2ウイルス又はいくつかのバリアントSARS CoV-2ウイルスの中和を評価するための更なるアッセイを行った。本実施例において、全長IgGキメラ超長CDR3抗体F12、G3、SKD、及びSKMを、示されるように試験した。
【0381】
実質的に実施例5に記載される偽ウイルスルシフェラーゼアッセイ(PLSA)を行った。ウイルス中和を、SARS-CoV-2(Wuhan-Hu-1)野生型(WT)スパイクタンパク質、Sバリアント(E484K/N507Y;B.1.1.7又は「UK」バリアント及びK417N/E484K/N501Y;B.1.351又は「SA」バリアント)、又は484Kを保有する偽型ウイルスに対して評価した。模擬培地又は連続希釈(5倍)抗体を、同量のSARS-CoV-2野生型(WT)、Sバリアント(484K、B.1.1.7、及びB.1.351)を保有する偽型ウイルスと混合し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、混合物を、ポリブレン(Santa Cruz Biotech,Santa Cruz,CA)(10μg/mL)の存在下で、Vero、CRFK-hACE、又はCRFK-hDDP4細胞に形質導入した。SARS-CoV-2侵入のための受容体として、ACE2過剰発現は、「高い感染力」を示す細胞株を産生することができる機構と考えられる。逆に、最小又はより低いACE2発現を有する細胞系は、「低感染力」を示すと考えることができる。
【0382】
形質導入細胞を37℃で48時間インキュベートした後、溶解緩衝液を添加し、RLUを測定した。
図10A~10Dに示されるように、各例示的な超長CDR3抗体は、2つ以上のバリアントSARS CoV-2 Sタンパク質に対する活性を示した。模擬処理に対する各抗体の連続希釈の阻害曲線を生成し、50%有効濃度(EC50)値を、可変勾配を使用してGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad,La Jolla,CA)により決定した。結果を表E6に要約した。
【0383】
【0384】
総合すると、表E5に示される結果は、例示的なウシ超長CDR3抗体、F12、G3、SKD、及びSKMが、WT SARS-CoV-2並びに試験されたバリアントに対して強力な中和活性を示したことを実証する。ウシ超長CDR3抗体は非常に強力であり、変異株を中和し、抗体フォーマットにより1~5ng/mL未満の濃度で半最大阻害を有する。注目すべきことに、わずか51アミノ酸長の短い配列であるにもかかわらず、CDR3-ノブのみの抗体は、ナノモル以下の効力を保持した。CDR3-ノブ抗体のサイズが小さいため、本実施例は、他のウイルス、細菌、他の感染症、喘息、又は肺癌を含む呼吸器標的用の吸入製剤のための新規治療用抗体候補としてのCDR3-ノブ抗体の有用性を支持する。
【0385】
実施例8:SARS CoV-1交差反応性
例示的な超長CDR3抗体の可能な交差反応性及び広範な中和を評価するために、偽ウイルスの中和を評価するアッセイを実施した。本実施例において、例示的なR4C1及びR2D9超長CDR3抗体を、示されるように試験した。
【0386】
実質的に実施例5に記載される偽ウイルスルシフェラーゼアッセイ(PLSA)を行った。SARS-CoV-2(Wuhan-Hu-1)野生型(WT)スパイクタンパク質、SARS-CoV-1ウイルスのSタンパク質、又はVSV-G対照を保有する偽型ウイルスに対するウイルス中和を評価した。模擬培地又は連続希釈(5倍)抗体G3-ノブ、G3-Fab、又はG3を、同量のSARS-CoV-2野生型(WT)、SARS-CoV-1野生型、又はVSV-Gを保有する偽型ウイルスと混合し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、混合物をポリブレン(Santa Cruz Biotech,Santa Cruz,CA)(10μg/mL)の存在下で細胞に形質導入した。
【0387】
形質導入細胞を37℃で48時間インキュベートした後、溶解緩衝液を添加し、中和パーセントを測定した。模擬処理に対する各抗体の連続希釈の阻害曲線を生成し、最大中和パーセント(maximum percent neutralization、MPN)、すなわち中和されたウイルスについて中和曲線がプラトーになるパーセントを、可変勾配を使用してGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad,La Jolla,CA)により決定した。
【0388】
図11Aは、様々なコロナウイルス株からの偽ウイルスに対する異なるIgG抗体のIC50値を示す。R4C1及びR2D9は、SARS-CoV-2のオミクロンバリアントに対する活性を維持することに留意されたい。全ての抗体はナノモル以下の効力を示し、いくつかは低ピコモル範囲にある。
【0389】
実施例9:生変異ウイルスの中和
例示的な抗体の更なる交差反応性及び潜在的な広範な中和を評価するために、生ウイルスに加えて偽ウイルスの中和を評価するアッセイを実施した。本実施例において、上述の例示的なSKM、SKD、R4C1(IgG、Fab、及びノブ)、G3(IgG、Fab、及びノブ)、並びにR2D9(IgG及びノブ)を、示されるように試験した。
【0390】
実質的に実施例5に記載される偽ウイルスルシフェラーゼアッセイ(PLSA)を行った。SARS-CoV-2(Wuhan-Hu-1)野生型(WT)スパイクタンパク質、SARS-CoV-2ベータ系統ウイルスのSタンパク質、又はSARS-CoV-2デルタ系統ウイルスを保有する偽型ウイルスに対するウイルス中和を評価した。模擬培地又は連続希釈(5倍)抗体、ノブ、若しくはfabを、同量のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を保有する偽型ウイルスと混合し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、混合物をポリブレン(Santa Cruz Biotech,Santa Cruz,CA)(10μg/ml)の存在下で細胞に形質導入した。形質導入細胞を37℃で48時間インキュベートした後、溶解緩衝液を添加し、RLUを測定した。
【0391】
中和はまた、BSL-3条件下で生ウイルスを使用してアッセイされた。上述と同様に、連続希釈(5倍)抗体、ノブ、又はfabを、同量の野生型SARS-CoV-2ウイルス(Wuhan-Hu-1)、又はアルファ(英国)若しくはベータ(南アフリカ)系統バリアントのいずれかと混合し、37℃で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、次いで、細胞を37℃で48時間インキュベートした後、プラーク形成単位(plaque forming unit、PFU)を測定した。
【0392】
偽ウイルス又は生ウイルスを用いた実験において、中和パーセントを測定した。模擬処理に対する各抗体の連続希釈の阻害曲線を生成し、最大中和パーセント(MPN)、すなわち中和されたウイルスについて中和曲線がプラトーになるパーセントを、可変勾配を使用してGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad,La Jolla,CA)により決定した。例えば、例示的な候補R2G3(IgG、Fab、及びノブ)についての結果を
図11Bに示す。結果をng/mLで表E7に要約し、3つの独立した複製の標準偏差を右側に示す。
【0393】
【0394】
実施例10:超長CDR3を有する二重特異性及び多重特異性抗体
ウシ超長CDRH3抗体に由来するノブは、融合タンパク質として、又は二量体若しくは多量体分子の一部として発現され、二価、二重特異性、多価、又は多重特異性タンパク質を作製する(
図12)。2つ以上のノブは、例えば、1つのノブのC末端と別のノブのN末端との間に可動性リンカー(例えば、Gly-Gly-Gly-Serなど)を有する融合タンパク質として発現される。加えて、一方のノブがウシ又はヒト化ウシのVH領域としてのその野生型立体構造であり、IgGとして軽鎖と共に発現され、第2のノブが重鎖定常領域のC末端に融合されている二重特異性分子が作製される。この状況において、2つのVH領域は同一であり、ノブ1の特異性を有するが、C末端はノブ2によって決定される新しい特異性を有する。
【0395】
別のアプローチでは、2つの重鎖が共発現される「ノブ・イントゥ・ホール(knobs into holes)」技術が用いられ、ここで、一方の重鎖は、そのCDRH3内に1つのノブ(ノブ1)を有するVH領域を含み、第2の重鎖は、そのCDRH3内に第2のノブ(ノブ2)を有するVH領域を有する。2つの重鎖はまた、異種重鎖のみが互いに効果的に対合して二量体を形成するような定常領域変異を有することによっても異なる。この場合、ホモ二量体は、認識できる程度には形成されない。そのような「ノブ・イントゥ・ホール」変異は、FcのCH3ドメインにT22Y(一方の鎖上)及びY86T(他方の鎖上)を含む。
【0396】
そのような分子をコードするDNAベクターは、標準的な分子生物学技術によって生成され、前の実施例に上述されるように発現及び精製される。加えて、個々のノブは、ヘテロ二官能性又はヘテロ多官能性リンカー(例えば、Pierce)を含む、小分子リンカー又はポリエチレングリコール(PEG)リンカーを使用して一緒に化学的に共有結合される。この場合、個々のノブを発現させ、精製し、次いで、リンカー及び適切な反応条件の存在下で一緒に加えて、リンカーをノブタンパク質に共有結合させる。アミン、カルボキシル、マレイミド、NHSエステル、及びヒドラジド化学が、これらの架橋アプローチにおいて一般的に使用される。更に、ノブは、ナノ粒子に特異性又は活性を提供するためにナノ粒子との関連で使用される。これに関して、ナノ粒子は、ウイルスタンパク質、アルブミンナノ粒子などから形成される粒子を含む、タンパク質ベースのナノ粒子であり得る。ナノ粒子はまた、脂質(例えば、リポ粒子(lipoparticles))、炭水化物などを含む非タンパク質分子に由来し得る。
【0397】
実施例11:ウシ超長CDR H3ノブドメイン末端のバイオインフォマティクスによる同定
アミノ酸配列によってウシ超長CDR H3ノブドメインの境界を同定するためのアルゴリズムを開発した。配列によって、ウシ超長CDR H3領域は、「フレームワーク3中の保存されたシステインに続く3番目の残基からフレームワーク4中の保存されたトリプトファンの直前の残基」に及ぶ(Wang et al.Cell 2013,153(6):1379-1393)。構造的には、ノブドメインは、逆平行β-リボンストークドメインの遠位端に位置する小さなジスルフィド豊富ドメインとして定義される(
図13A及び13B)。
【0398】
例示的なウシ超長抗体の結晶構造(表E8)を配列(
図14)と併せて分析して、配列及び構造の両方によるノブ境界の正確な定義を定式化した。分析において、ノブドメインの最初の残基は、保存された「PDG」モチーフの前の最初の保存されたD
Hシステイン、又はA01などの稀な例外ではこの位置の他の残基として定義された。最後のノブドメイン残基の位置を特定する目的で、ストークドメインも定義した。結晶構造分析により、上昇及び下降ストークβ-リボン鎖の長さに対称性が観察された。最初のCDR H3残基に3アミノ酸位置だけ前の保存されたフレームワーク3システイン(Wang et al.2013)は、上昇ストーク鎖の塩基の近位に位置し、最後のCDR H3残基の1残基下流である保存されたフレームワーク4トリプトファンの真向かいに位置する(Wang et al.2013)。分析において、最初の上昇ストーク残基を保存されたフレームワーク3システインと定義し、最後の下降ストーク残基を保存されたフレームワーク4トリプトファンと定義した。C末端ノブ境界位置は、フレームワーク4トリプトファン位置から上昇ストーク残基の数を差し引くことによって位置を特定した(表E8)。
【0399】
要約すると、本発明者らのアルゴリズム(以下)は、ノブ領域N末端境界を、「CPDG」モチーフ中の最初のD
Hシステインとして定義し、C末端境界を、フレームワーク4トリプトファン位置から上昇ストーク残基の数を差し引くことによって位置を特定した位置として定義する(
図15)。アルゴリズムは、ウシ超長CDR H3抗体配列に適用することができる一般的な規則として機能する。
【0400】
要約すると、本発明者らのアルゴリズム(以下)は、ノブ領域N末端境界を、「CPDG」モチーフ中の最初のD
Hシステインとして定義し、C末端境界を、フレームワーク4トリプトファン位置から上昇ストーク残基の数を差し引くことによって位置を特定した位置として定義する(
図15)。アルゴリズムは、ウシ超長CDR H3抗体配列に適用することができる一般的な規則として機能する。
【0401】
アルゴリズムは以下のように記載される:L=標準フレームワーク3システインで始まり、標準フレームワーク4トリプトファンで終わる、ストークドメイン及びノブドメインを包含するアミノ酸の数。X=上昇ストークを定義するフレームワーク3標準システインから始まり、「CPDG」モチーフ中の保存された最初のD領域システインの前のアミノ酸で終わる、アミノ酸の数。
【0402】
保存されたフレームワーク4トリプトファン-Xの位置=ノブ境界位置(C末端);ノブ中の残基の数(K)=L-2X;K位置=(X+1)~(X+K)
【0403】
【表9】
分析した公表された結晶構造を有するウシ超長抗体は、上昇鎖及び下降鎖にX個のアミノ酸を有する。各抗体のストークドメイン及びノブドメイン(L)、並びにノブドメイン単独(K)を含むアミノ酸の総数も記載する。
【0404】
実施例12:最小CDR3-ノブC末端及び最小CDR3-ノブN末端を定義する
実施例11に記載のアルゴリズムは、未知の構造を有する抗体からのストーク及びノブ領域のC末端切断(以下のサブセクションA)及びN末端切断(以下のサブセクションB)を発現させ、試験することによって実験的に検証された。場合によっては、発現又は安定性を改善するために、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸をノブ末端に付加してもよい。
【0405】
A.最小CDR3-ノブC末端の定義
原型CDR3-ノブのC末端要件を定義するために、上記の実施例6に記載されるように、一連のR2G3切断物をpET32bにクローニングし、発現させた。発現させた材料の質を、同様に実施例6に記載されるように、SDS-PAGE及びRBD ELISAにより評価した。例示的な試験したR2G3切断物は、以下の表E9に示され、各切断は、低減された末端リンカーを用いて行われた。
【0406】
【0407】
図16Aに示されるように、切断物4及び5のみが、観察されたRBD結合をもたらさなかった。切断物3A及び3Bは、ELISAにおける結合の低減及びSDS-PAGEにおけるバンド拡散性の増加を実証した(
図16B)。切断物1~3は、親R2G3 CDR3-ノブと比較して結合活性の喪失を有さなかった。まとめると、これらの結果は、R2G3結合のための最後の非標準Cys残基の後の最低9個のアミノ酸を支持する。
【0408】
B.最小CDR3-ノブN末端の定義
実施例11に記載したのと同様に、一連のR2G3切断物をpET32bにクローニングして、原型CDR3-ノブのN末端要件を定義し、上記の実施例6に記載されるように発現させた。発現させた材料の質を、実施例6に記載されるように、SDS-PAGE及びRBD ELISAにより評価した。例示的な試験したR2G3切断物を以下の表E10に示す。
【0409】
【0410】
試験した例示的なN末端切断物の各々は、ELISAによるビオチン化RBDに対する同様の結合プロファイル及びSDS-PAGEにおけるバンド拡散性を示すことが観察された(それぞれ
図17A及び17B)。切断物5は、SDS-PAGEを介して2つのバンドをもたらしたが、これは結合活性のいかなる低減とも相関しなかったことが注目された。これらの結果は、これらの例示的な切断されたR2G3配列において欠失されたアミノ酸のいずれも、ノブドメインの一部ではないことを示唆する。
【0411】
実施例13:超長CDR3-ノブドメインの選択的増幅
超長CDR3-ノブドメインを、ウシVH鋳型ライブラリーから選択的に増幅した。ウシVH鋳型ライブラリーを、実質的に実施例2に記載されるように調製した。
【0412】
具体的には、RNAを、RNAeasyキット(Qiagen)を使用して、5×106~107個のウシPBMCから単離した。Superscript IV First-Strand cDNA合成キット(ThermoFisher)を使用して、5μgの全RNAからのcDNA合成、続いてPCR増幅を行うことによって、免疫ウシ抗体CDR3-ノブレパートリーを得た。VH鋳型ライブラリーを生成するために、CDR3-ノブのためのcDNA鋳型は、IgM(配列番号4)、IgA(配列番号5)、及びIgG特異的(配列番号3及び6)プライマーのプールを使用して合成された。
【0413】
一次ストーク-ノブCDR3を、CDR3領域のストークドメインのいずれかの側に特異的なIgHV1-7ファミリー特異的プライマーを用いて、第1の鎖cDNAから増幅した。一次ストーク-ノブCDR3を、配列番号8~11に示されるプライマーの全て並びに配列番号122~130に示されるプライマーのうちの1つを含むプライマーのプールを使用して増幅した。次いで、増幅した配列を、2%のアガロースゲルでのゲル電気泳動を使用して、超長CDR3-ノブドメインの優勢について分析した。
【0414】
配列番号122~130に示されるプライマー(プライマーp1~p9)の、例示的な標準的な短いCDR3抗体(抗体028~030)及び超長CDR3抗体(抗体01~026)の配列に対するアラインメントを
図18Aに示す。
図18Aに示される配列の配列識別子(配列番号)を表E11に示す。
【0415】
【0416】
ゲル電気泳動の結果は、配列番号123、127、及び128に示されるプライマーを含むプライマーのプールによる増幅が、特に65~68℃のアニーリングで、超長CDR3-ノブドメインの富化をもたらすことを示した(
図18B)。具体的には、いくつかのプライマーを使用して得られたPCR産物について2つのバンドが明らかであり、標準的な短いCDR3-ノブドメイン及び超長CDR3-ノブドメインの増幅を示したが、配列番号123、127、及び128に示されるプライマーを使用して、超長CDR3-ノブドメインの配列に対応する1つのバンドのみ(約300~350bpの予想されるPCR産物サイズ)が得られた。
【0417】
ストーク-ノブCDR3ライブラリーを、配列番号8~11、123、127、及び128に示されるプライマーを使用して増幅されたDNAから構築した。ライブラリーを実質的に実施例2に記載されるように構築し、実施例3に記載されるように2ラウンドの選択のためにスパイクタンパク質に対して選択した。スクリーニングしたクローンの90%超がスパイク結合クローンであり、全ての結合クローンが超長CDR3抗体であった。
【0418】
これらの結果は、超長CDR3-ノブドメインが、CDR3領域のストークドメインに特異的な特定のプライマーを使用して、VH鋳型ライブラリーから選択的に増幅され得ることを示す。
【0419】
本発明は、例えば、本発明の様々な態様を例示するために提供される特定の開示された実施形態に範囲を限定することを意図していない。記載の組成物及び方法に対する様々な修正は、本明細書における記載及び教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲及び趣旨から逸脱することなく実施され得、本開示の範囲内に入ることが意図される。
【0420】
【0421】
【0422】
【0423】
【0424】
【0425】
【0426】
【0427】
【0428】
【0429】
【0430】
【0431】
【0432】
【配列表】
【国際調査報告】