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特表2024-521991車両用の超音波センサの機能状態を決定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-05
(54)【発明の名称】車両用の超音波センサの機能状態を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/52 20060101AFI20240529BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20240529BHJP
   G01S 7/536 20060101ALI20240529BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G01S7/52 U
G01S15/931
G01S7/536
H04R3/00 330
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571738
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2022062524
(87)【国際公開番号】W WO2022243090
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102021112996.6
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン、ハーク
(72)【発明者】
【氏名】ホセ、ヘナン、ベリツ、アルグエタ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、フリンツ
(72)【発明者】
【氏名】パウル、ボウ-サレハ
【テーマコード(参考)】
5D019
5J083
【Fターム(参考)】
5D019AA27
5D019FF01
5J083AA02
5J083AB12
5J083AB13
5J083AC26
5J083AD04
5J083AF05
5J083BA01
5J083CA01
5J083CB01
5J083FA04
(57)【要約】
車両(1)用の超音波センサ(2)の機能状態(FZ)を決定するための方法であって、a)電気試験信号(P)を超音波センサ(2)に適用するステップ(S1)、b)超音波センサ(2)から電気応答信号(A)を検出するステップ(S2)、c)適用された試験信号(P)の励起周波数(f)に基づいて、適用された試験信号(P)に対する検出された応答信号(A)の位相角(α)を含む位相周波数応答(PF)を決定するステップ(S3)、d)少なくとも、決定された位相周波数応答(PF)内の共振周波数(R)より下の第1の位相角(P1)およびこれより上の第2の位相角(P2)を、それぞれの予想位相角(PE1、PE2)と比較するステップ(S4)、e)比較に基づいて、決定された位相周波数応答(PF)を補正するステップ(S5)、およびf)補正された位相周波数応答(PFK)に基づいて、機能状態(FZ)を決定するステップ(S6)を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)用の超音波センサ(2)の機能状態(FZ)を決定するための方法であって、
a)電気試験信号(P)を前記超音波センサ(2)に適用するステップ(S1)、
b)前記超音波センサ(2)から電気応答信号(A)を検出するステップ(S2)、
c)前記適用された試験信号(P)の励起周波数(f)の関数として、前記適用された試験信号(P)に対する前記検出された応答信号(A)の位相角(α)を含む位相周波数応答(PF)を決定するステップ(S3)、
d)少なくとも、前記決定された位相周波数応答(PF)内の共振周波数(R)より下の第1の位相角(P1)およびこれより上の第2の位相角(P2)を、それぞれの予想位相角(PE1、PE2)と比較するステップ(S4)、
e)前記比較に基づいて、前記決定された位相周波数応答(PF)を補正するステップ(S5)、および
f)前記補正された位相周波数応答(PFK)に基づいて、前記機能状態(FZ)を決定するステップ(S6)を含む、方法。
【請求項2】
前記第1および第2の位相角(P1、P2)は、前記共振周波数(R)から前記共振周波数(R)の少なくとも20%、30%、または40%だけ離間されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップe)において、前記決定された位相周波数応答(PF)の前記第1および第2の位相角(P1、P2)は、前記それぞれの予想位相角(PE1、PE2)へと補正されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップe)は、前記第1の位相角(P1)と前記第2の位相角(P2)との間のサンプリング点(S)における前記決定された位相周波数応答(PF)の補正を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2の位相角(P1、P2)ならびに/または前記サンプリング点(S)において適用される前記補正は、アフィン直線状であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップf)において、前記超音波センサ(2)の状態モデル(8)のパラメータ(C1、C2、I1、I2、R1、R2)は、前記補正された位相周波数応答(PFK)に基づいて決定され、前記機能状態(FZ)は、予想パラメータ(C1、C2、I1、I2、R1、R2)との前記決定されたパラメータの比較に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記それぞれの予想位相角(PE1、PE2)および/または前記予想パラメータ(C1、C2、I1、I2、R1、R2)は、シミュレーションモデルまたは基準センサを使用して決定されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップa)~f)は、前記超音波センサ(2)を備える前記車両(1)が製造される生産ラインの最後に、および/または、前記車両(1)の各始動時もしくは始動直後に実行されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記超音波センサ(2)は、前記決定された機能状態(FZ)に従って動作されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記状態モデルは、互いと直列に接続される第1のコンデンサ(C1)、第1のインダクタ(I1)、および第1のレジスタ(R1)、ならびに並列に接続される第2のコンデンサ(C2)、第2のインダクタ(I2)、および第2のレジスタ(R2)を有することを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップf)において、前記補正は、振幅周波数応答の使用なしに実行されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップf)において、前記機能状態(FZ)は、前記補正された位相周波数応答(PFK)、および前記超音波センサ(2)または車両環境(10)の検出された温度(T)に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータプログラム製品であって、コンピュータによる前記プログラムの実行中、前記コンピュータに請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
車両(1)用の超音波センサ(2)の機能状態(FZ)を決定するためのデバイスであって、
電気試験信号(P)を前記超音波センサ(2)に適用するための励起ユニット(61)、
前記超音波センサ(2)から電気応答信号(A)を検出するための検出ユニット(62)、
前記適用された試験信号(P)の励起周波数(f)の関数として、前記適用された試験信号(P)に対する前記検出された応答信号(A)の位相角(α)を含む位相周波数応答(PF)を決定するための決定ユニット(63)、
少なくとも、前記決定された位相周波数応答(PF)内の共振周波数(R)より下の第1の位相角(P1)およびこれより上の第2の位相角(P2)を、それぞれの予想位相角(PE1、PE2)と比較するための比較ユニット(64)、
前記比較を使用して、前記決定された位相周波数応答(PF)を補正するための補正ユニット(65)、および
前記補正された位相周波数応答(PFK)に基づいて、前記機能状態(FZ)を決定するための決定ユニット(66)を含む、デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載されるようなデバイス(6)を有する車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用の超音波センサの機能状態を決定するための方法、コンピュータプログラム製品、デバイス、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の超音波センサは、場合によっては、物体の距離を測定するために設計される。超音波センサ内では、特に、電気音響エネルギー変換が発生する。数ある中でも、本質的に機械誘導性、機械容量性、機械制限的、または電歪性であり得るこのエネルギー変換の物理的原理に関わりなく、任意のエネルギー変換素子には、内的または外的に誘発された変化に暴露される可能性が存在し、それらの度合いに応じて、測定結果の改ざんまたは完全なセンサ故障が生じ得る。
【0003】
DE 10 2017 105 043 A1は、電気試験信号が生成されて、超音波センサに適用される方法を説明しており、電気試験信号によって影響を及ぼされる超音波センサの少なくとも1つの電気的特性パラメータが評価される。この評価に応じて、超音波センサの伝達関数が決定され、これが基準伝達関数と比較される。比較に応じて、超音波センサの機能状態が決定される。特に、伝達関数はインピーダンス周波数応答により決定されると定められ、インピーダンス周波数応答14は、電気的特性パラメータKを、特に、2つの間の位相角αの関数としての電流および/または電圧として説明する。
【発明の概要】
【0004】
この背景技術を背景に、本発明の目的は、車両用の超音波センサの機能状態を決定するための改善された方法を提供することである。
【0005】
第1の態様によると、車両用の超音波センサの機能状態を決定するための方法が提供され、本方法は、以下のステップ:
a)電気試験信号(P)を超音波センサ(5a)に適用するステップ、
b)超音波センサから電気応答信号を検出するステップ、
c)適用された試験信号の励起周波数の関数として、適用された試験信号に対する検出された応答信号の位相角を含む位相周波数応答を決定するステップ、
d)少なくとも、決定された位相周波数応答内の共振周波数より下の第1の位相角(P1)およびこれより上の第2の位相角を、それぞれの予想位相角と比較するステップ、
e)比較に基づいて、決定された位相周波数応答を補正するステップ、および
f)補正された位相周波数応答に基づいて、機能状態を決定するステップ、を含む。
【0006】
共鳴原理に基づく超音波センサは、試験信号と応答信号との間の位相角の特徴的なプロファイルを有する。別の発見は、位相角が電圧振幅などの他の電気的特性パラメータよりも過渡効果によって強く影響を受けないことである。有利には、位相周波数応答内の過渡効果は、提案された方法によって補償され得、その結果として、超音波センサの機能状態は、さらにより高い信頼性で決定され得る。
【0007】
機能状態は、例えば、超音波センサの振動板の汚染もしくは氷結の度合い、または振動板の剛性における経年劣化関連の変化である。一般に、機能状態は、経年劣化またはその他に起因する超音波センサの機械特性における任意の変化に関し得る。
【0008】
超音波センサは、好ましくは、振動板、振動板の振動励起および振動検出のための音響変換器素子(特に、圧電素子)、ならびに振動励起および振動検出のために音響変換器素子を作動させるように構成される制御および評価ユニット(特に、マイクロプロセッサ、例えば、ASIC)を含む。
【0009】
車両は、自動車、特に、乗用車またはトラックであり得る。
【0010】
例えば、試験信号は、高調波信号、ステップ信号、チャープ信号、またはパルス信号である。適用された試験信号および検出された応答信号は、好ましくは、それらがエコー信号を含まないように選択される。
【0011】
好ましくは、適用された試験信号は電流を含み、検出された応答信号は電圧を含むが、この状況は逆にされてもよい。
【0012】
例えば、位相周波数応答は、-pi/2~+pi/2の間隔を含み得る。
【0013】
第1および第2の位相角または試験信号においてそれらの下にある周波数は、それらに関連する過渡効果が本質的に除去され得るように選択される。これは、たとえ過渡効果が共振周波数の周辺で発生するとしても、それらが第1および第2の位相角に対して影響を及ぼさないか、取るに足りない影響しか及ぼさないということを意味する。故に、第1および第2の位相角は、いずれの場合にも、予想位相角とのゆがみのない比較を可能にする(過渡効果が抑制され得るため)。予想位相角は、好ましくは、超音波センサまたは車両のデータメモリに格納される。
【0014】
特に、補正は、決定された位相周波数応答の線形シフトを含む。補正は、位相周波数応答の個々またはすべてのデータ点に関し得る。
【0015】
第1の実施形態によると、第1および第2の位相角は、共振周波数から共振周波数の少なくとも20%、30%、または40%だけ離間される。
【0016】
言い換えると、第1および第2の位相角が検出される試験信号の周波数は、0から無限の間の[共振周波数-20%~40%×共振周波数]および[共振周波数+20%~40%×共振周波数]の間隔で位置する。本発明者らは、過渡効果が、これらの値を用いて選択された極周波数では、全くまたはほとんど発生しないことを発見した。すなわち、極周波数では、超音波センサの挙動は、その定常(すなわち、安定)状態に対応する。予想位相角もまた、安定状態に対応する。これは、良好な比較可能性を結果としてもたらす。加えて、この比較から決定される補正因子は、信頼性が高く、以下に説明されるように、第1の位相角と第2の位相角との間のサンプリング点において補正を適用するためにも使用され得る。
【0017】
1つの実施形態によると、ステップe)において、決定された位相周波数応答の第1および第2の位相角は、それぞれの予想位相角へと補正される。
【0018】
これは、第1および第2の位相角が各々、予想位相角へとマッピングされることを意味する。
【0019】
1つの実施形態によると、ステップe)は、第1の位相角と第2の位相角との間のサンプリング点における決定された位相周波数応答の補正を含む。
【0020】
予想位相角への第1および第2の位相角のマッピングにおいて、補正因子が決定される。サンプリング点における補正は、この補正因子の関数として適用される。位相周波数応答は、通常、サンプリング点において過渡効果による影響を受ける。それにもかかわらず、信号内の定常(安定状態)成分は、補正因子を使用して高信頼性で補正され得る。
【0021】
更なる実施形態によると、第1および第2の位相角ならびに/またはサンプリング点において実行される補正は、アフィン直線状である。
【0022】
これは、改善された補正結果を可能にする。
【0023】
更なる実施形態によると、ステップf)において、超音波センサの状態モデルのパラメータは、補正された位相周波数応答を使用して決定され、機能状態は、決定されたパラメータおよび予想パラメータの比較に基づいて決定される。
【0024】
状態モデルは、好ましくは、超音波センサの完全定常モデルである。これは、過渡効果が考慮されないことを意味する。そのようなモデルまたは対応するパラメータは、迅速に計算され得る。予想パラメータは、超音波センサまたは車両のデータメモリに格納される。パラメータは、例えば、超音波センサまたはその個々の構成要素の機械的慣性、剛性、または粘性を代表するものであり得る。
【0025】
1つの実施形態によると、それぞれの予想位相角および/または予想パラメータは、シミュレーションモデルまたは基準センサを使用して決定される。
【0026】
シミュレーションモデルは、特に、コンピュータ支援設計(CAD)プログラム内で生成され得る。特に、シミュレーションモデルは、超音波センサの機械的および/または熱力学的挙動をシミュレートし得る。
【0027】
1つの実施形態によると、ステップa)~f)は、超音波センサを含む車両が製造される生産ラインの最後に、および/または、車両の各始動時もしくは始動直後に実行される。
【0028】
生産ラインは、車両製造業者の生産ラインを指す。「車両の始動」は、駆動動作に必要な機能を起動すること、特に、内燃機関を伴う車両の場合、イグニッションをオンに切り替えることを意味する。
【0029】
1つの実施形態によると、超音波センサは、決定された機能状態の関数として動作される。
【0030】
例えば、音響変換器素子の振動励起は、決定された機能状態に応じて発生する。加えて、または代替的に、評価ユニットが音響変換器素子を用いて検出される振動をどのように評価するかは、決定された機能状態に依存する。例えば、氷の影響を受けた超音波センサ(機能状態:氷によって影響を受けた超音波センサ)の距離検出または距離計算は、氷の影響を受けていない状態と比較して異なるやり方で実行される。
【0031】
1つの実施形態によると、状態モデルは、互いと直列に接続される第1のコンデンサ、第1のインダクタ、および第1のレジスタ、ならびに並列に接続される第2のコンデンサ、第2のインダクタ、および第2のレジスタを有する。
【0032】
これは、正確な状態モデルを提供する。
【0033】
1つの実施形態によると、ステップf)において、補正は、振幅周波数応答の使用なしに適用される。
【0034】
振幅周波数応答は、望ましくない過渡効果の影響を比較的受けやすく、したがってこれは、有利には除去され得る。
【0035】
1つの実施形態によると、ステップf)において、機能状態は、補正された位相周波数応答、および超音波センサまたは車両環境の検出された温度に基づいて決定される。
【0036】
機能状態の決定に温度を含めることにより、結果はさらにより正確になる。
【0037】
それぞれの「ユニット」(例えば、以下に言及される制御および評価ユニットまたは励起ユニット)は、ハードウェアおよび/またはソフトウェア内に実装され得る。ハードウェア内の実装の場合、それぞれのユニットは、例えば、コンピュータまたはマイクロプロセッサの形態にあり得る。ソフトウェア内の実装の場合、それぞれのユニットは、コンピュータプログラム製品、関数、ルーチン、アルゴリズム、プログラムコードの部分、または実行可能なオブジェクトの形態にあり得る。さらには、ここに記載されるユニットの各々はまた、中央制御システムおよび/またはECU(エンジン制御ユニット)など、車両の上位制御システムの部分の形態にあり得る。
【0038】
第2の態様は、コンピュータプログラム製品を提案し、このコンピュータプログラム製品は、プログラムがコンピュータによって実行されるとき、上記コンピュータに上に説明される方法を実施させる命令を含む。
【0039】
コンピュータプログラム手段などのコンピュータプログラム製品は、例えば、メモリカード、USBスティック、CD-ROM、DVDなどの記憶媒体として、またはネットワーク内のサーバからのダウンロード可能ファイルの形態で、提供または配信され得る。これは、例えば、コンピュータプログラム製品またはコンピュータプログラム手段を含む対応するファイルを送信することによってワイヤレス通信ネットワーク内で発生し得る。
【0040】
第3の態様によると、車両用の超音波センサの機能状態を決定するためのデバイスが提供される。このデバイスは:
電気試験信号を車両の超音波センサに適用するための励起ユニット、
超音波センサから電気応答信号を検出するための検出ユニット、
適用された試験信号の励起周波数の関数として、適用された試験信号に対する検出された応答信号の位相角を含む位相周波数応答を決定するための決定ユニット、
少なくとも、決定された位相周波数応答内の共振周波数より下の第1の位相角およびこれより上の第2の位相角を、それぞれの予想位相角と比較するための比較ユニット、
比較を使用して、決定された位相周波数応答を補正するための補正ユニット、および
補正された位相周波数応答に基づいて、機能状態を決定するための決定ユニット、を含む。
【0041】
第4の態様によると、上に説明されるようなデバイスを有する自動車が提案される。
【0042】
第1の態様に対して提案される実施形態および特徴は、変更すべきところは変更して、更なる態様に当てはまり、その逆も然りである。
【0043】
本発明の更なる可能な実装形態はまた、例示的な実施形態に関して上または下に説明される特徴または実施形態の、明示的には記載されない組み合わせを含む。当業者はまた、この場合、本発明のそれぞれの基本形態への改善または追加として個々の態様を追加する。
【0044】
本発明の更なる有利な構成および態様は、従属クレームの、および以下に説明される本発明の例示的な実施形態の主題である。本発明は、添付の図面を参照して好ましい実施形態に基づいて以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、1つの実施形態による超音波センサを有する自動車の平面図である。
図2図2は、車両において使用されるデバイスを示す。
図3図3は、1つの実施形態による位相周波数応答を示す。
図4図4は、1つの実施形態による等価回路図である。
図5図5は、1つの実施形態によるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
同一または機能的に同一の要素は、別途記載のない限り、図内で同じ参照符号が提供されている。
【0047】
図1は、例えば、乗用車の形態で設計される、車両1を示す。車両1は、超音波センサ2を含み、これは、詳細には示されない運転者支援システムの一部であり得、特に、物体3までの車両1の距離を測定するために使用される。この目的のため、超音波センサ2は、超音波4を発し、これは、物体3によって反射され、超音波センサ2によって再び受信される。伝送および受信された超音波4に基づいて、超音波センサ2は、測定データを生成し、これを中央車両制御ユニット5(「電気制御ユニット(Electronic Control Unit」-短縮してECU、としても知られる)に伝送する。これは、車両データバスを介して実行され得る。
【0048】
環境影響、経年劣化、または他の効果に起因して、測定データは変化し得る。この影響は、これらの因子を踏まえて、距離測定をできる限り正確にするために、距離測定に入力されなければならない。
【0049】
したがって、超音波センサ2の機能状態は、好ましくは定期的に、例えば、生産ラインの最後に車両1の製造中に、および各車両始動時または後に、すなわち、搭載ネットワークがオンに切り替えられた後に、決定される。この機能状態は、例えば、「氷によって影響を受けたセンサ」または「経年劣化した圧電素子」であり得る。一般に、機能状態は、実際の基準センサ(ここでは、経験値が獲得されて比較される)またはシミュレーションモデル(ここでは、例えばCADコンピュータプログラムを使用したシミュレーションの文脈において、値は計算されて比較される)との比較における超音波センサ2またはその一部の特徴付けからなり得る。
【0050】
この目的のため、デバイス6は、車両制御ユニット5に、または車両1の任意の他の地点に提供される。デバイス6は、図2により詳細に例証され、車両制御ユニット5上のハードウェアおよび/またはソフトウェアとして実装され得る。代替的に、デバイス6および超音波センサ2は、共通ハウジング内に、ならびに/または少なくとも部分的に、同じ印刷回路基板(PCB)上に、および/もしくは少なくとも部分的に、同じマイクロチップ上に(いずれの場合にも示されない)、形成され得る。
【0051】
デバイス6は、励起ユニット61を含み、これは、電気試験信号Pを超音波センサ2に、特に、その音響変換器素子(図示せず)に適用するように設計される。これは、図5に例証される方法ステップS1に対応する。
【0052】
音響変換器素子は、例えば、圧電素子である。変換器素子は、試験信号Pに基づいて振動を生成するために超音波素子2の振動板を作動させる。試験信号Pは、特に、電流振幅の時間依存プロファイルを、例えば、チャープの形態で、含む。
【0053】
本質的に方法ステップS1と同時に、デバイス6の検出ユニット62は、超音波センサ2の応答信号A(図2および図4)を検出する。図5の方法ステップS2も参照されたい。例示的な実施形態によると、これは、超音波センサ2、特にその音響変換器素子、を通して降下される検出電圧にある。
【0054】
加えて、デバイス6は、決定ユニット63を含む。これは、ステップS3(図5)において、図3では一点鎖線で示される位相周波数応答PFを決定するように設計される。これは、試験信号Pおよび応答信号Aにおける相対位相角(単位度での角度α、図3の縦座標)が、とりわけ試験信号Pの周波数(本明細書では「励起周波数」とも称される-単位kHzでのf、図3の横座標)の関数として、決定されることを意味する。励起周波数は、超音波センサ2の、特にその振動板および音響変換器素子の、共振周波数R(図3)を含む間隔を含む。例示的な実施形態において、共振周波数Rは、52kHzであり、励起間隔(この場合、「極周波数」EuおよびEoとも称される)の限界は、下限が30kHz(Eu)、および上限が90kHz(Eo)である。下方極周波数Eu(例えば、30kHz)では、位相周波数応答は、第1の位相角P1を有し、上方極周波数Eoでは、第2の位相角P2を有する。第1および第2の位相角P1、P2ならびにそれらの下にある極周波数は、有利には、共振周波数Rからその値の40%だけ離間される。この場合、極周波数EuおよびEoまでの距離は、それぞれ22kHzおよび38kHzであり、共に、52kHz×40%=20.8kHzよりも大きい。有利には、これらの極周波数での位相周波数応答内の過渡効果の割合は低い。振幅周波数応答は、それが過渡事象に対してはるかにより感受性が高いことから、有利には検出さえされないが、いずれにせよ評価されない。
【0055】
デバイス6の比較ユニット64は、第1の予想位相角PE1および第2の予想位相角PE2を、例えば、車両制御ユニット5内に同様に提供されるデータメモリ7から読み取る。第1および第2の位相角PE1、PE2は、好ましくは、超音波センサ2の開発中、または少なくとも、距離測定のための車両1内でのその初期動作の前に、既に決定されている。例えば、これらの角度は、CADもしくは他のシミュレーションモデルを使用して計算され得るか、または基準センサを使用して試験的に測定され得る。
【0056】
比較ユニット64は、次いで、方法ステップS4において、第1の位相角P1を第1の予想位相角PE1と、および第2の位相角P2を第2の予想位相角PE2と比較し、比較結果を計算する。
【0057】
方法ステップS5において、補正ユニット65(図2)は、その比較結果に基づいて、検出した位相周波数応答PFを補正する。例示的な実施形態によると、アフィン直線変換が決定され、これにより、第1の位相角P1を第1の予想位相角PE1へ、および第2の位相角P2を第2の予想位相角PE2へマッピングする。この変換(本明細書では補正因子とも称される)に基づいて、位相周波数応答PFはまた、極周波数EuとEoとの間の更なるサンプリング点Sにおいて、それらの位置(すなわち周波数)に従ってアフィン直線様式で比例的に補正される。簡略性の目的で、1つのそのようなサンプリング点のみが図3に示される。周波数Sにおける位相角PSは、補正された位相角PSKへマッピングされる。複数の更なるサンプリング点(図示せず)における補正の後、補正された位相周波数応答PFKが獲得される。
【0058】
さらには、デバイス6は、決定ユニット66を有する(図2)。これは、補正された位相周波数応答PFKに基づいて機能状態FZ(図2)を出力するように設計される(図5の方法ステップS6)。例えば、機能状態は、「氷によって影響を受けたセンサ」であり得る。または、機能状態は、1つまたは複数の補正値または同様のもので構成され、超音波センサ2によって検出される距離データを補正するために超音波センサ2または車両1の動作において使用される。
【0059】
特に、超音波センサ2の、図4-ここでは等価回路図-に示される状態モデル8のパラメータが決定されるものとされる。これらは、予想パラメータと比較される。例示的な実施形態において、状態モデル8は、試験信号Pに対して互いと直列に接続されるコンデンサC1、インダクタI1、およびレジスタR1を含む。さらには、状態モデル8は、試験信号Pに対して互いと並列に接続されるコンデンサC2、インダクタI2、およびレジスタR2を含む。決定ユニット66は、次いで、補正された位相周波数応答PFKがモデルのために獲得されるように、パラメータC1、C2、I1、I2、R1、およびR2を決定する。更なるステップにおいて、決定されたパラメータC1、C2、I1、I2、R1、およびR2は、予想パラメータC1’、C2’、I1’、I2’、R1’、およびR2’と比較される。比較の結果に応じて、機能状態FZが決定される。例えば、予想パラメータC1’、C2’、I1’、I2’、R1’、およびR2’は、超音波センサ2の氷による影響を受けた状態に対応する。例えば、予想パラメータC1’、C2’、I1’、I2’、R1’、およびR2’は、CADもしくは他のシミュレーションモデルを使用して計算され得るか、または基準センサを使用して試験的に測定され得る。これは、好ましくは、超音波センサ2の開発ステージにおいて、または少なくとも、距離測定のための車両1におけるその初期動作の前に、実行される。
【0060】
好ましくは、車両1は、車両環境10の温度Tを検出する温度センサ9を含む。検出された温度Tは、好ましくは、決定されたパラメータC1、C2、I1、I2、R1、およびR2をさらに補正するために、決定ユニット66によって使用される。この補正は、例えば、ルックアップテーブルまたは変換テーブルを使用して、実施され得る。予想パラメータC1’、C2’、I1’、I2’、R1’、およびR2’との後続の比較は、次いで、機能状態FZのさらに良好な決定を可能にする。
【0061】
本発明は例示的な実施形態に基づいて説明されているが、それは、多くのやり方で修正され得る。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
2 超音波センサ
3 物体
4 超音波
5 車両制御ユニット
6 デバイス
61 励起ユニット
62 検出ユニット
63 決定ユニット
64 比較ユニット
65 補正ユニット
66 決定ユニット
7 データメモリ
8 状態モデル
9 温度センサ
10 車両環境
A 応答信号
C1、C2 コンデンサ
Eu、Eo 極周波数
f 周波数
FZ 機能状態
I1、I2 インダクタ
P 試験信号
P1、P2 位相角
PE1 予想位相角
PE2 予想位相角
PF 位相周波数応答
PFK 補正された位相周波数応答
PS サンプリング点の位相角
PSK サンプリング点の補正位相角
R 共振周波数
R1、R2 レジスタ
S サンプリング点
T 温度
α 角度
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)用の超音波センサ(2)の機能状態(FZ)を決定するための方法であって、
a)電気試験信号(P)を前記超音波センサ(2)に適用するステップ(S1)、
b)前記超音波センサ(2)から電気応答信号(A)を検出するステップ(S2)、
c)前記適用された試験信号(P)の励起周波数(f)の関数として、前記適用された試験信号(P)に対する前記検出された応答信号(A)の位相角(α)を含む位相周波数応答(PF)を決定するステップ(S3)、
d)少なくとも、前記決定された位相周波数応答(PF)内の共振周波数(R)より下の第1の位相角(P1)およびこれより上の第2の位相角(P2)を、それぞれの予想位相角(PE1、PE2)と比較するステップ(S4)、
e)前記比較に基づいて、前記決定された位相周波数応答(PF)を補正するステップ(S5)、および
f)前記補正された位相周波数応答(PFK)に基づいて、前記機能状態(FZ)を決定するステップ(S6)を含む、方法。
【請求項2】
前記第1および第2の位相角(P1、P2)は、前記共振周波数(R)から前記共振周波数(R)の少なくとも20%、30%、または40%だけ離間されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップe)において、前記決定された位相周波数応答(PF)の前記第1および第2の位相角(P1、P2)は、前記それぞれの予想位相角(PE1、PE2)へと補正されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップe)は、前記第1の位相角(P1)と前記第2の位相角(P2)との間のサンプリング点(S)における前記決定された位相周波数応答(PF)の補正を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2の位相角(P1、P2)ならびに/または前記サンプリング点(S)において適用される前記補正は、アフィン直線状であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップf)において、前記超音波センサ(2)の状態モデル(8)のパラメータ(C1、C2、I1、I2、R1、R2)は、前記補正された位相周波数応答(PFK)に基づいて決定され、前記機能状態(FZ)は、予想パラメータ(C1、C2、I1、I2、R1、R2)との前記決定されたパラメータの比較に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記それぞれの予想位相角(PE1、PE2)および/または前記予想パラメータ(C1、C2、I1、I2、R1、R2)は、シミュレーションモデルまたは基準センサを使用して決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップa)~f)は、前記超音波センサ(2)を備える前記車両(1)が製造される生産ラインの最後に、および/または、前記車両(1)の各始動時もしくは始動直後に実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記超音波センサ(2)は、前記決定された機能状態(FZ)に従って動作されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記状態モデルは、互いと直列に接続される第1のコンデンサ(C1)、第1のインダクタ(I1)、および第1のレジスタ(R1)、ならびに並列に接続される第2のコンデンサ(C2)、第2のインダクタ(I2)、および第2のレジスタ(R2)を有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
ステップf)において、前記補正は、振幅周波数応答の使用なしに実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップf)において、前記機能状態(FZ)は、前記補正された位相周波数応答(PFK)、および前記超音波センサ(2)または車両環境(10)の検出された温度(T)に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータプログラム製品であって、コンピュータによる前記プログラムの実行中、前記コンピュータに請求項1に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
車両(1)用の超音波センサ(2)の機能状態(FZ)を決定するためのデバイスであって、
電気試験信号(P)を前記超音波センサ(2)に適用するための励起ユニット(61)、
前記超音波センサ(2)から電気応答信号(A)を検出するための検出ユニット(62)、
前記適用された試験信号(P)の励起周波数(f)の関数として、前記適用された試験信号(P)に対する前記検出された応答信号(A)の位相角(α)を含む位相周波数応答(PF)を決定するための決定ユニット(63)、
少なくとも、前記決定された位相周波数応答(PF)内の共振周波数(R)より下の第1の位相角(P1)およびこれより上の第2の位相角(P2)を、それぞれの予想位相角(PE1、PE2)と比較するための比較ユニット(64)、
前記比較を使用して、前記決定された位相周波数応答(PF)を補正するための補正ユニット(65)、および
前記補正された位相周波数応答(PFK)に基づいて、前記機能状態(FZ)を決定するための決定ユニット(66)を含む、デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載されるようなデバイス(6)を有する車両(1)。
【国際調査報告】