(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-05
(54)【発明の名称】電子機器の発音の方法及び構成
(51)【国際特許分類】
H04R 23/02 20060101AFI20240529BHJP
H04R 11/02 20060101ALI20240529BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240529BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20240529BHJP
H04R 3/12 20060101ALI20240529BHJP
H04R 3/14 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H04R23/02
H04R11/02
H04R17/00
H04R1/02 102Z
H04R3/12 Z
H04R3/14
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023571985
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 FI2022050351
(87)【国際公開番号】W WO2022248768
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520137969
【氏名又は名称】ピーエス オーディオ デザイン オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ソロネン ペトリ
(72)【発明者】
【氏名】ルーッカネン ペッテリ
【テーマコード(参考)】
5D004
5D017
5D021
5D220
【Fターム(参考)】
5D004AA02
5D004AA09
5D004CD01
5D004DD01
5D017AE29
5D021AA05
5D021EE00
5D220AA14
5D220AA47
(57)【要約】
電子機器の発音構成は、永久磁石が設けられた第1部品(203)及び第2部品(204)と、少なくとも1つの誘導コイル(205)とを含む磁気振動子(101)を含む。この構成は、圧電材料を含み、第2電気信号を上記材料に供給することによって材料の変形から生じる可聴周波数の振動を発生させる圧電振動子(102)を更に含む。磁気振動子(101)及び圧電振動子(102)は、共通のオーディオ増幅器(103)を有する。上記第1電気信号及び第2電気信号は、同じオーディオ出力(104)から磁気振動子(101)及び圧電振動子(102)に供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石が設けられた第1部品(203)及び第2部品(204)と、第1電気信号が供給されることによって、前記第1部品と前記第2部品との間に可聴周波数の振動を発生させる少なくとも1つの誘導コイル(205)とを含む磁気振動子(101)を含む、電子機器の発音構成であって、
圧電材料を含み、第2電気信号を前記材料に供給することによって前記材料の変形から生じる可聴周波数の振動を発生させる圧電振動子(102)と、
前記磁気振動子(101)及び前記圧電振動子(102)に共通であり、前記第1電気信号及び第2電気信号を前記磁気振動子(101)及び前記圧電振動子(102)に供給するオーディオ出力(104)を有するオーディオ増幅器(103)と、を含む、ことを特徴とする構成。
【請求項2】
前記電子機器の第1部品(201)及び第2部品(202)を含み、前記第1部品(201)は、前記電子機器の外側カバー又は前記外側カバーの一部であり、これにより、
前記磁気振動子の前記第1部品(203)は、前記電子機器の前記第1部品(201)に固定され、
前記磁気振動子の前記第2部品(204)は、前記電子機器の前記第2部品(202)に固定される、請求項1に記載の構成。
【請求項3】
前記圧電振動子(102)は、前記電子機器の前記第1部品(201)又は前記電子機器の外側カバーの別の部分に固定される、請求項2に記載の構成。
【請求項4】
前記圧電振動子(102)は、前記磁気振動子の前記第1部品(203)と同様に前記電子機器の前記第1部品(201)に固定され、
前記第1電気信号及び前記第2電気信号は、前記オーディオ出力(104)から前記磁気振動子(101)及び圧電振動子(102)に反対の極性で供給され、前記極性は、前記電気信号の特定の極性が、一方では前記磁気振動子(101)の作用下で、他方では前記圧電振動子(102)の作用下で前記電子機器の前記第1部品(201)を変位させる方向に従って決定される、請求項3に記載の構成。
【請求項5】
前記第1電気信号及び前記第2電気信号は、それらの間に周波数分割フィルタリングを行うことなく、前記オーディオ出力(104)から前記磁気振動子(101)及び前記圧電振動子(102)に供給される、請求項1~4のいずれか一項に記載の構成。
【請求項6】
前記オーディオ出力(104)から前記圧電振動子(102)に供給する周波数信号成分に比べて、より低い周波数信号成分を前記オーディオ出力(104)から前記磁気振動子(101)に供給するように構成されたフィルタバンク(301)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の構成。
【請求項7】
前記オーディオ出力(401)と前記圧電振動子(102)との間に接続された制限インピーダンス(401)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の構成。
【請求項8】
前記制限インピーダンス(401)は、抵抗器又はコイルである、請求項7に記載の構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を可聴音に変換する電気音響変換器に関する。具体的には、本発明は、小型の携帯型電子機器において、このような変換器を、その音質が良好であり、機器のオーディオ増幅器に設定される要件が合理的になるように、どのように実現できるかを提案する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップなどの携帯型電子機器において、電磁的に機能する小型スピーカが、一般的に、発音に使用される。実際のスピーカに加えて、磁気振動子が知られており、該磁気振動子は、2つの部品を有し、その両方が1つ以上の永久磁石及び誘導コイルを含む。磁気振動子の2つの部品のうちの1つは、機器内の一部のフレーム部品に固定され、もう1つは、磁気振動子によって生成された振動を周囲の空気に伝達する弾性表面として機能するカバー部品、例えばディスプレイに固定される。振動は、誘導コイルに電気信号を供給することによって生成されることにより、その変化する磁場は、永久磁石の磁場とともに、磁気振動子の部品を相互に変位させる力を生成する。本明細書で意図する意味の磁気振動子は、例えば、フィンランド国特許出願公開第20195599号明細書、欧州特許出願公開第3603110号明細書、欧州特許出願公開第3222055号明細書、フィンランド国特許出願公開第20215101号明細書、フィンランド国特許出願公開第20205298号明細書及びフィンランド国特許出願公開第20175942号明細書などの同じ出願人の先行特許出願から知られている。
【0003】
以上に列挙されたものに加えて、電子機器の発音の1つの公知の方式は、圧電振動子である。圧電振動子において、圧電材料でコーティングされた金属片は、機器のカバー部品、例えばディスプレイの内側に固定される。圧電材料に供給された電気信号により、材料に急速かつ可逆的な変形が生じ、これによりカバー部品が全体的に振動して、音響素子として機能する。金属片は、非常に壊れやすい圧電材料の機械的支持体として機能する。
【0004】
公知の発音解決手段では、小型、全ての可聴周波数での優れた効率、及び低コストの制御電子機器などの好ましい特性の適切な組み合わせを達成することが困難であることが判明している。例えば、圧電振動子を駆動するオーディオ増幅器は、比較的高い電圧を生成できなければならないため、圧電振動子には、制御電子機器に対する難しい要件が伴うことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】フィンランド国特許出願公開第20195599号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3603110号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3222055号明細書
【特許文献4】フィンランド国特許出願公開第20215101号明細書
【特許文献5】フィンランド国特許出願公開第20205298号明細書
【特許文献6】フィンランド国特許出願公開第20175942号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、全ての可聴周波数での効率が良好になるように、電子機器において発音することができることを目的とする。本発明は、発音に主に必要な電子機器の部品が小さなスペースに適合し、製造コストが低くなることを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、共通のオーディオ増幅器を使用して圧電振動子及び磁気振動子を駆動することによって達成される。
【0008】
本発明の一態様では、電子機器の発音構成が提供される。前記構成は、永久磁石が設けられた第1部品及び第2部品と、第1電気信号が供給されることによって、前記第1部品と前記第2部品との間に可聴周波数の振動を発生させる少なくとも1つの誘導コイルとを含む磁気振動子を含む。前記構成は、圧電材料を含み、第2電気信号を前記材料に供給することによって前記材料の変形から生じる可聴周波数の振動を発生させる圧電振動子と、前記磁気振動子及び圧電振動子に共通であり、前記第1電気信号及び第2電気信号を前記磁気振動子及び圧電振動子に供給するオーディオ出力を有するオーディオ増幅器と、を含む。
【0009】
一実施形態では、前記構成は、前記電子機器の第1部品及び第2部品を含み、前記第1部品は、前記電子機器の外側カバー又は前記外側カバーの一部である。したがって、前記磁気振動子の前記第1部品は、前記電子機器の前記第1部品に固定されてもよく、前記磁気振動子の前記第2部品は、前記電子機器の前記第2部品に固定されてもよい。これは、前記電子機器の前記部品が、同時に他の目的を持っている場合でも、発音に参加するために利用し得るという利点を提供する。
【0010】
一実施形態では、前記圧電振動子は、前記電子機器の前記第1部品又は前記電子機器の外側カバーの別の部分に固定される。これは、前記電子機器の外側カバーの一部が、前記圧電振動子の変形から生じる音成分の発生に参加し得るという利点を提供する。
【0011】
一実施形態では、前記圧電振動子は、前記磁気振動子の前記第1部品と同様に前記電子機器の前記第1部品に固定される。これにより、前記第1電気信号及び第2電気信号は、前記オーディオ出力から前記磁気振動子及び圧電振動子に反対の極性で供給されてもよく、前記極性は、前記電気信号の特定の極性が、一方では前記磁気振動子の作用下で、他方では前記圧電振動子の作用下で前記電子機器の前記第1部品を変位させる方向に従って決定される。これは、異なる振動子によって発生し、振動子の容量性及び誘導性の性質から生じる振動に存在する位相差が発音にあまり影響を与えないという利点を提供する。
【0012】
一実施形態では、前記第1電気信号及び第2電気信号は、それらの間に周波数分割フィルタリングを行うことなく、前記オーディオ出力から前記磁気振動子及び圧電振動子に供給される。これは、接続が比較的簡単になり、製造コストが低くなるという利点を提供する。
【0013】
一実施形態では、前記構成は、前記オーディオ出力から前記圧電振動子に供給する周波数信号成分に比べて、より低い周波数信号成分を前記オーディオ出力から前記磁気振動子に供給するように構成されたフィルタバンクを含む。これは、異なるタイプの振動子の周波数特性を最大限に活用できるという利点を提供する。
【0014】
一実施形態では、前記構成は、前記オーディオ出力と前記圧電振動子との間に接続された制限インピーダンスを含む。これは、前記圧電振動子の一部の周波数に存在する低インピーダンス値に対して前記オーディオ増幅器の出力がより適切に保護されるという利点を提供する。
【0015】
一実施形態では、前記制限インピーダンスは、抵抗器又はコイルである。これは、よく知られている特性を備えた低コストの技術で前記オーディオ出力の保護を実現できるという利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、電子機器の発音構成を概略的に示す。この構成は、まず磁気振動子101を含む。この用語は、上述したように、永久磁石が設けられた第1部品及び第2部品と、少なくとも1つの誘導コイルとを含む電気音響変換器を意味することを意図している。磁気振動子101の目的は、電気信号がその誘導コイルに供給されるとき、可聴周波数の振動を発生させることである。本明細書では、磁気振動子101の誘導コイルに供給される電気信号は、第1電気信号と呼ばれる。磁気振動子は、電気回路の残りの部分では主にインダクタンスとして現れるため、
図1では対応する図面記号が使用されている。そのより具体的な構造に関して、磁気振動子101は、例えば、同じ出願人の先行特許出願フィンランド国特許出願公開第20195599号明細書、欧州特許出願公開第3603110号明細書、欧州特許出願公開第3222055号明細書、フィンランド国特許出願公開第20215101号明細書、フィンランド国特許出願公開第20205298号明細書及びフィンランド国特許出願公開第20175942号明細書に記載されているタイプの磁気振動子のいずれかを表してもよい。
【0018】
この構成は、圧電振動子102を更に含む。圧電振動子は、それ自体の公知の方法で、圧電材料を含み、電気信号を材料に供給することによって材料の変形から生じる可聴周波数の振動を発生させる。本明細書では、圧電振動子に供給される電気信号は、第2電気信号と呼ばれる。圧電振動子は、電気回路の残りの部分では主に静電容量として現れるため、
図1ではコンデンサ記号から派生した図面記号が使用されている。
【0019】
振動子101及び102に加えて、この構成は、オーディオ増幅器103を含む。オーディオ増幅器103は、磁気振動子101及び圧電振動子102に共通である。言い換えれば、上記第1電気信号及び第2電気信号は、オーディオ増幅器103の同じオーディオ出力104から磁気振動子101及び圧電振動子102に供給される。
【0020】
磁気振動子及び圧電振動子に共通のオーディオ増幅器を使用することは、これら2つのタイプの振動子の周波数特性が相互に補完するという認識に基づくことである。オーディオ信号に対する磁気振動子の応答は、電気部品としての磁気振動子の誘導性の性質により、低周波数で最高になり、該磁気振動子の入力インピーダンスは、周波数の関数として増加し、数キロヘルツの高周波で非常に高いため、良好な高周波オーディオ信号を出力するために十分な電流を流すことが困難になる。圧電振動子の周波数応答は逆であり、これは、電気部品としての容量性のためである。圧電振動子を比較的高い電圧(30V以上、更には100V以上)で駆動する従来技術の典型的な条件は、より低い電圧(10V以下)で、特に低周波数が問題を引き起こすという事実のためである。オーディオ増幅器103が磁気振動子101及び圧電振動子102に共通である場合、オーディオ増幅器により出力されるオーディオ信号の低周波数は、磁気振動子101を通ってより自然に再生され、高周波数は、圧電振動子102を通ってより自然に再生される。本明細書で説明する構成により、オーディオ増幅器103のオーディオ出力104における信号の電圧振幅を10V未満にすることが可能になる。
【0021】
図2は、磁気振動子及び圧電振動子が電子機器内にどのように配置され得るかという一例を示す。
図2は、第1部品201及び第2部品202を含む電子機器の一部の概略断面図を示す。第1部品201は、電子機器の外側カバー又は外側カバーの一部、例えば、ディスプレイ、バックパネル、保護スクリーンなどである。電子機器が非常に薄い場合、第2部品202は、外側カバーの反対側の一部であってもよい。しかしながら、第2部品202は、回路基板又は支持フレームなどの電子機器の内側部品であってもよい。
【0022】
磁気振動子101は、
図2の右側に示される。その第1部品203は、電子機器の第1部品201に固定され、その第2部品204は、電子機器の第2部品202に固定される。磁気振動子の第1部品203と第2部品204がここでは互いに明確に分離して示されていることにより、誘導コイル205は、それらの間に示されている。しかしながら、この図示モードは、図を分かりやすくするためにのみ選択されている。実際の磁気振動子では、第1部品と第2部品は、部分的に互いに内側にあってもよく、誘導コイルは、外側から見えないように両方のいずれか一方の内側にあってもよい。
【0023】
多くの場合、磁気振動子の典型的なの例は、その第1部品と第2部品のそれぞれが磁性材料で作られたそれぞれのカバー部品を含み、そのカバー部品内に永久磁石及び誘導コイルなどの磁気振動子の他の部品が配置されることである。この場合、
図2に示すような電子機器の第1部品201及び第2部品202への固定は、磁気振動子の第1部品203のカバー部品がその外面から電子機器の第1部品201に固定され、磁気振動子の第2部品204のカバー部品がその外面から電子機器の第2部品202に固定されるように実現することができる。このような固定は、直接的な固定(例えば、接着剤又ははんだによる固定)であってもよく、さらにそれらの間に特別な固定部品がある固定であってもよい。
【0024】
圧電振動子102は、
図2の左側に示される。
図2の実施形態では、圧電振動子102は、磁気振動子101の第1部品203と同様に電子機器の第1部品201に固定される。圧電振動子102は、電子機器の外側カバーの他の部分に固定されてもよい。したがって、圧電振動子102が必ずしも特に電子機器の外側カバーに固定される必要がないが、多くの場合、本明細書で意図されているように、外側カバーの一部が十分に効果的な弾性表面として機能するように比較的容易に配置できるため、このタイプの固定は、常に利点をもたらす。本明細書で意図されているように、圧電振動子の典型的な例は、圧電振動子が電子機器の2つの部品の間に設けられるのではなく、電子機器の1つの部品のみに強固に固定されることである。したがって、圧電振動子の圧電材料における電気信号から生じる変形は、電子機器のその部品の変形に伝達されて、所望の音を発生させる。
【0025】
電子機器のオーディオ増幅器又は他の電子機器は、
図2に示されていない。しかしながら、
図2は、導体206及び207を概略的に示し、該導体206及び207に沿って、適切な電気信号がオーディオ増幅器のオーディオ出力から磁気振動子101及び圧電振動子102に供給されてもよい。電子機器の第2部品202が回路基板である場合、オーディオ増幅器は、その回路基板のある箇所に自然に配置されてもよい。
【0026】
圧電振動子102と磁気振動子101は、電子機器内で必ずしも近接して配置される必要がない。それらの位置は、例えば、スペース要件、組み立て、及び音響操作の点で、それぞれの最適な位置を決定することによって選択されてもよい。
【0027】
図2のように、圧電振動子102及び磁気振動子101の第1部品203が電子機器の同じ第1部品201に固定される場合、電気信号の極性に注意を払うことが有利である。コンデンサ型圧電振動子102又はコイル型磁気振動子101はどちらも、例えばダイオードのように信号の極性にそれほど敏感ではない。しかしながら、電気信号がどの方向にそれらの変位を引き起こすかを考える場合、極性は重要である。磁気振動子101では、誘導コイル205を流れる一方向の電流により、第1部品203と第2部品204を互いに遠ざける力が発生する。同様に、誘導コイル205を流れる逆方向の電流により、第1部品203と第2部品204を互いに向かって引っ張る力が発生する。同様に、圧電振動子102では、電圧の一方の極性により、一方向の変形が発生し、他方の極性により、逆方向の変形が発生する。これらの動きは、電子機器の第1部品201の対応する変位を引き起こし、最終的に所望の音を発生させる。
【0028】
容量性負荷と誘導性負荷は、発振する電気信号に逆の位相シフトを発生させる。信号源と負荷との間のインピーダンス整合によって、この位相シフトが大きくなる場合がある。磁気振動子101及び圧電振動子102によって引き起こされる電子機器の第1部品201の変位が、互いに打ち消し合うのではなくむしろ補完するために、それらの固定及び配線は、電子機器の第1部品201への固定から生じる電気信号の極性の上記効果がそれらの間において逆になるように有利に実現されるべきである。言い換えれば、極性は、電気信号が磁気振動子101に供給されるとき、電子機器の第1部品201を外側方向に変位させ、電気信号が圧電振動子102に供給されるとき、電子機器の第1部品201を内側方向に変位させるような方法で有利に選択されるべきである。
【0029】
上記原理は、上記第1電気信号及び第2電気信号がオーディオ増幅器のオーディオ出力から磁気振動子及び圧電振動子に反対の極性で供給されると定義することができる。したがって、本明細書では、極性は、電気信号の特定の極性が、一方では磁気振動子の作用によって、他方では圧電振動子の作用によって電子機器の第1部品を変位させる方向に従って決定される。
【0030】
一方では圧電振動子の容量性、他方では磁気振動子の誘導性とそれらによって生じる位相差とが電子機器の部品の変位に与える影響は、大きく異なるが、該違いは、振動子が電子機器の同じ部品に固定されるかどうか、該同じ部品に固定される場合、振動子が互いにどれだけ離れているか、及び構造の他の特徴が何であるかによって決まる。したがって、いくつかの実施形態では、上記第1電気信号及び第2電気信号をオーディオ増幅器のオーディオ出力から磁気振動子及び圧電振動子に同じ特定の極性で供給することが最も有利である可能性がある。
【0031】
磁気振動子と圧電振動子の逆に動作する周波数応答は、互いに十分に補完してもよいため、上記第1電気信号及び第2電気信号は、それらの間に周波数分割フィルタリングを行うことなく、オーディオ増幅器103のオーディオ出力104から磁気振動子101及び圧電振動子102に供給されてもよい。この場合、振動子の自然な特性により、異なる周波数の信号成分の伝播は十分な程度で制御される。この原理は、上記
図1に示される。
【0032】
図3は、別の可能な実施形態を示す。該実施形態は、オーディオ増幅器103のオーディオ出力104から圧電振動子102に供給する周波数信号成分に比べて、より低い周波数信号成分をオーディオ増幅器103のオーディオ出力104から磁気振動子101に供給するように構成されたフィルタバンク301を含む。フィルタバンク301は、それ自体、周波数に基づいて可聴周波数信号成分を識別するために使用されてもよい任意の技術を表してもよい。
【0033】
フィルタバンクが使用されているかどうかに関係なく、カットオフ周波数又はカットオフ周波数範囲について言及することができ、磁気振動子は、カットオフ周波数又はカットオフ周波数範囲より低い周波数の音の発生に主な役割を果たし、圧電振動子は、カットオフ周波数又はカットオフ周波数範囲より高い周波数の音の発生に主な役割を果たす。本発明の研究作業に関連して、2つの構成を比較すれば、両方は、いずれも同様のオーディオ増幅器及び磁気振動子を備えるが、それらのうちの1つのみは、圧電振動子を更に備える。可聴音の主観的な印象は、5kHz未満の周波数で、両方の構成では非常に似ている。これは予想通りである。というのは、この周波数より低い周波数で、圧電振動子の周波数応答が低振幅のオーディオ増幅器にとって特に不利であるため、圧電振動子が発音にあまり参加しないからである。5kHzより大きい周波数で、圧電振動子を含む構成では、主観的な音質が向上し始める。10kHzより大きい周波数を含むテスト信号の場合、この違いは特に明らかであった。これは、磁気振動子のみに基づく構成により再生する場合、これらのテスト信号では高音部分が完全にカットオフ(遮断)されているか、又は少なくとも不快な程度まで減衰しているようであったからである。
【0034】
最高周波数で圧電振動子102のインピーダンスがどの程度低くなるかは、圧電振動子102の構成に依存する。一方、オーディオ増幅器103がオーディオ出力104にどの程度の電流を発生させ得るかは、オーディオ増幅器103の構成に依存する。それらのいくつかの固有の要因が、特に最高周波数で危険となり得る過度に高い出力電流の影響によってオーディオ増幅器103が破壊されるのを防止するリミッタとして機能するように、圧電振動子102及び/又はオーディオ増幅器103を構成することが可能である。該構成のこの点における信頼性を向上させるために、オーディオ出力104と圧電振動子102との間に接続された制限インピーダンスを構成に追加することが可能である。これは、制限インピーダンス401がZとして示されている
図4に示されている。制限インピーダンス401は、例えば、抵抗器又はコイルであってもよい。
【0035】
上記構成は、触覚効果の生成にも使用することができる。これは、ユーザの触覚によって知覚されることを意図している振動が、所望の音の発生にも使用される同じ振動子を使用して発生することを意味する。しかしながら、本明細書で意図する触覚効果の典型的な例では、それらの周波数は高くてもほんの数百ヘルツである。したがって、これらの周波数は圧電振動子にとって低すぎるため、実際には磁気振動子のみが触覚効果の生成に参加する。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品(201)及び第2部品(202)と、電子機器の発音構成とを含む電子機器であって、前記第1部品(201)は、前記電子機器の外側カバー又は前記外側カバーの一部であり、前記構成は、
永久磁石が設けられ
前記電子機器の前記第1部品(201)に固定された第1部品(203)及び
永久磁石が設けられ前記電子機器の前記第2部品(202)に固定された第2部品(204)と、第1電気信号が供給されることによって、前記第1部品と前記第2部品との間に可聴周波数の振動を発生させる少なくとも1つの誘導コイル(205)とを含む磁気振動子(101)
と、
圧電材料を含み、第2電気信号を前記材料に供給することによって前記材料の変形から生じる可聴周波数の振動を発生させる圧電振動子(102)と、
前記磁気振動子(101)及び前記圧電振動子(102)に共通であり、前記第1電気信号及び第2電気信号を前記磁気振動子(101)及び前記圧電振動子(102)に供給するオーディオ出力(104)を有するオーディオ増幅器(103)と、を含
み、
前記圧電振動子(102)は、前記磁気振動子の前記第1部品(203)と同様に前記電子機器の前記第1部品(201)に固定され、
前記第1電気信号及び前記第2電気信号は、前記オーディオ出力(104)から前記磁気振動子(101)及び圧電振動子(102)に反対の極性で供給され、前記極性は、前記電気信号の特定の極性が、一方では前記磁気振動子(101)の作用下で、他方では前記圧電振動子(102)の作用下で前記電子機器の前記第1部品(201)を変位させる方向に従って決定される
ことを特徴とする
電子機器。
【請求項2】
前記第1電気信号及び前記第2電気信号は、それらの間に周波数分割フィルタリングを行うことなく、前記オーディオ出力(104)から前記磁気振動子(101)及び前記圧電振動子(102)に供給される、請求項
1に記載の
電子機器。
【請求項3】
前記オーディオ出力(104)から前記圧電振動子(102)に供給する周波数信号成分に比べて、より低い周波数信号成分を前記オーディオ出力(104)から前記磁気振動子(101)に供給するように構成されたフィルタバンク(301)を含む、請求項
1に記載の
電子機器。
【請求項4】
前記オーディオ出力(401)と前記圧電振動子(102)との間に接続された制限インピーダンス(401)を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の
電子機器。
【請求項5】
前記制限インピーダンス(401)は、抵抗器又はコイルである、請求項
4に記載の
電子機器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
公知の発音解決手段では、小型、全ての可聴周波数での優れた効率、及び低コストの制御電子機器などの好ましい特性の適切な組み合わせを達成することが困難であることが判明している。例えば、圧電振動子を駆動するオーディオ増幅器は、比較的高い電圧を生成できなければならないため、圧電振動子には、制御電子機器に対する難しい要件が伴うことが多い。
先行技術文献フィンランド国特許出願公開第20195599A1号明細書は、電子機器の発音のための、永久磁石及びコイルを有する2部構成の磁気振動子を開示する。
別の先行技術文献米国特許出願公開第2020/233629A1号明細書は、音発生装置が第1、第2、第3及び第4の振動子を含むディスプレイ装置を開示する。
別の先行技術文献米国特許出願公開第2019/0334076A1号明細書は、振動信号及びオーディオ信号の両方を再生することができるハイブリッドアクチュエータを開示する。
別の先行技術文献国際公開第97/09842A2号パンフレットは、横方向に延在する部材がパラメータ依存領域にわたってその部材の自然な屈曲波振動の共振モードの分布を有する、音響装置を開示する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
【特許文献1】フィンランド国特許出願公開第20195599号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3603110号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3222055号明細書
【特許文献4】フィンランド国特許出願公開第20215101号明細書
【特許文献5】フィンランド国特許出願公開第20205298号明細書
【特許文献6】フィンランド国特許出願公開第20175942号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2020/233629A1号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2019/0334076A1号明細書
【特許文献9】国際公開第97/09842A2号パンフレット
【国際調査報告】