(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-06
(54)【発明の名称】バリア層の形成方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/34 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
C23C16/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575410
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 KR2022008222
(87)【国際公開番号】W WO2022260473
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076038
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504210651
【氏名又は名称】ジュスン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ イル ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】シン セウン チュル
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA17
4K030BA18
4K030BA38
4K030CA04
4K030DA01
4K030FA01
4K030HA04
4K030JA10
(57)【要約】
本発明の実施形態に係るバリア層の形成方法は、NH3を含有するガスを噴射して基板に吸着させるステップと、NH3含有ガスの噴射を中断した後、基板に向かってパージガスを噴射する1次パージステップと、H2ガスを用いてプラズマを生じさせるステップと、基板に向かってTiを含有するガスを噴射して基板の上にTiN薄膜を形成するステップと、Ti含有ガスの噴射を中断した後、基板に向かってパージガスを噴射する2次パージステップと、を含む。
したがって、本発明の実施形態によれば、低温下で原子層堆積法によりTiN薄膜からなるバリア層を形成することができる。このため、高温の熱により基板又は基板の上に形成された薄膜が損傷されることを防ぐことができ、バリア層を備える素子の不良の発生の防止や性能の向上を図ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを生じさせて、基板の上にバリア層を形成するバリア層の形成方法であって、
NH
3を含有するガスを噴射して前記基板に吸着させるステップと、
前記NH
3含有ガスの噴射を中断した後、前記基板に向かってパージガスを噴射する1次パージステップと、
H
2ガスを用いてプラズマを生じさせるステップと、
前記基板に向かってTiを含有するガスを噴射して、前記基板の上にTiN薄膜を形成するステップと、
前記Ti含有ガスの噴射を中断した後、前記基板に向かってパージガスを噴射する2次パージステップと、
を含み、
前記NH
3含有ガスを噴射するステップと、1次パージステップと、プラズマを生じさせるステップと、Ti含有ガスを噴射するステップ、及び2次パージステップの順に行われるプロセスを一つのプロセスサイクルとする、バリア層の形成方法。
【請求項2】
前記プロセスサイクルを繰り返し行う、請求項1に記載のバリア層の形成方法。
【請求項3】
基板が位置付けられたプロセス空間にTiを含有するガスを噴射するステップと、
前記プロセス空間にNH
3を含有するガスを噴射し、前記NH
3含有ガスを用いてプラズマを生じさせて、前記基板の上にTiN薄膜を蒸着するステップと、
前記プロセス空間にH
2ガスを噴射し、前記H
2ガスを用いてプラズマを生じさせて、前記TiN薄膜上の不純物を取り除くステップと、
を含む、バリア層の形成方法。
【請求項4】
前記TiN薄膜を蒸着するステップ及び不純物を取り除くステップのそれぞれにおいてプラズマを生じさせるステップは、
前記NH
3含有ガス及びH
2ガスを前記プロセス空間に噴射するガス噴射部にRF電源を供給するステップを含み、
前記薄膜を蒸着するステップから前記不純物を取り除くステップまでに前記噴射部にRF電源を連続して供給する、請求項3に記載のバリア層の形成方法。
【請求項5】
前記TiN薄膜を蒸着するステップと前記不純物を取り除くステップとの間に、前記プロセス空間にパージガスを噴射するステップを含む、請求項4に記載のバリア層の形成方法。
【請求項6】
前記パージガスの噴射に際して前記噴射部にRF電源を供給して、前記パージガスを用いたプラズマを生じさせる、請求項5に記載のバリア層の形成方法。
【請求項7】
前記Tiを含有するガスを噴射するステップの前に行われる前処理ステップを含み、
前記前処理ステップは、
前記プロセス空間にNH
3を含有するガスを噴射して前記基板に吸着させるステップと、
前記プロセス空間にパージガスを噴射するステップと、
H
2ガスを用いてプラズマを生じさせるステップと、
を含む、請求項3に記載のバリア層の形成方法。
【請求項8】
前記プロセス空間及び前記プロセス空間内において前記基板を支持する支持台の温度を300℃以上、かつ、350℃未満に調節するステップを含む、請求項3から請求項7のいずれか一項に記載のバリア層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア層の形成方法に関し、より詳細には、低温下で原子層堆積法によりバリア層を形成することのできるバリア層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子、キャパシター素子などは、誘電体層と伝導層との間に形成されるバリア層を備える。そして、バリア層は、TiN薄膜から形成され、原子層堆積法により形成される。このとき、蒸着プロセスが行われるチャンバーの内部又はTiN薄膜が蒸着される基板の温度を350℃以上の高温に保った状態で蒸着する。すなわち、チャンバーの内部又は基板の温度が350℃以上の高温に保たれるとき、基板の上にTiN薄膜が蒸着されることが可能である。
【0003】
ところが、このように、高温下でTiN薄膜を形成する場合、基板又は基板の上に形成されている薄膜が熱により損傷されてしまうという問題がある。そして、これは、素子の品質又は性能を低下させる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-0323268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低温下で原子層堆積法によりTiN薄膜からなるバリア層を形成することのできるバリア層の形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、プラズマを生じさせて、基板の上にバリア層を形成するバリア層の形成方法であって、NH3を含有するガスを噴射して前記基板に吸着させるステップと、前記NH3含有ガスの噴射を中断した後、前記基板に向かってパージガスを噴射する1次パージステップと、H2ガスを用いてプラズマを生じさせるステップと、前記基板に向かってTiを含有するガスを噴射して、前記基板の上にTiN薄膜を形成するステップと、前記Ti含有ガスの噴射を中断した後、前記基板に向かってパージガスを噴射する2次パージステップと、を含み、前記NH3含有ガスを噴射するステップと、1次パージステップと、プラズマを生じさせるステップと、Ti含有ガスを噴射するステップ、及び2次パージステップの順に行われるプロセスを一つのプロセスサイクルとする。
【0007】
前記プロセスサイクルを繰り返し行ってもよい。
【0008】
本発明の実施形態に係るバリア層の形成方法は、基板が位置付けられたプロセス空間にTiを含有するガスを噴射するステップと、前記プロセス空間にNH3を含有するガスを噴射し、前記NH3含有ガスを用いてプラズマを生じさせて、前記基板の上にTiN薄膜を蒸着するステップと、前記プロセス空間にH2ガスを噴射し、前記H2ガスを用いてプラズマを生じさせて、前記TiN薄膜上の不純物を取り除くステップと、を含んでいてもよい。
【0009】
前記TiN薄膜を蒸着するステップ及び不純物を取り除くステップのそれぞれにおいてプラズマを生じさせるステップは、前記NH3含有ガス及びH2ガスを前記プロセス空間に噴射するガス噴射部にRF電源を供給するステップを含み、前記薄膜を蒸着するステップから前記不純物を取り除くステップまでに前記噴射部にRF電源を連続して供給してもよい。
【0010】
前記バリア層の形成方法は、前記TiN薄膜を蒸着するステップと前記不純物を取り除くステップとの間に、前記プロセス空間にパージガスを噴射するステップを含んでいてもよい。
【0011】
前記パージガスの噴射に際して前記噴射部にRF電源を供給して、前記パージガスを用いたプラズマを生じさせてもよい。
【0012】
前記バリア層の形成方法は、前記Tiを含有するガスを噴射するステップの前に行われる前処理ステップを含み、前記前処理ステップは、前記プロセス空間にNH3を含有するガスを噴射して前記基板に吸着させるステップと、前記プロセス空間にパージガスを噴射するステップと、H2ガスを用いてプラズマを生じさせるステップと、を含んでいてもよい。
【0013】
前記バリア層の形成方法は、前記プロセス空間及び前記プロセス空間内において前記基板を支持する支持台の温度を300℃以上、かつ、350℃未満に調節するステップを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、低温下で原子層堆積法によりTiN薄膜からなるバリア層を形成することができる。したがって、高温の熱により基板又は基板の上に形成された薄膜が損傷されることを防ぐことができる。これにより、バリア層を備える素子の不良の発生の防止や、性能の向上を図ることができる。
【0015】
また、水素プラズマを生じさせることにより、バリア層上の不純物を取り除くことができる。したがって、不純物によるバリア層又は素子の品質の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る方法により形成されたTiN薄膜を備える素子の一部を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る方法によりTiN薄膜を形成する方法を説明するための概念図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る方法によりTiN薄膜を形成する方法を説明するための概念図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るTiN薄膜又はバリア層を形成するのに用いられる蒸着装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。図面は、本発明の実施形態を説明する大きさが誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指す。
【0018】
本発明の実施形態は、TiN薄膜からなるバリア層の形成方法に関する。詳しくは、350℃未満の低温下でTiN薄膜を蒸着してバリア層を形成する方法に関する。より具体的には、原子層堆積(ALD:Atomic Layer deposition)法により300℃以上、かつ、350℃未満の低温下でTiN薄膜を蒸着してバリア層を形成する方法に関する。
【0019】
また、実施形態に係る方法により形成されたTiN薄膜は、誘電体層と伝導層との間に形成されて絶縁機能をするバリア層であってもよい。より具体例を挙げると、実施形態に係るTiN薄膜は、集積回路素子又はキャパシター素子などにおける誘電体層と伝導層との間に形成されるバリア層であってもよい。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る方法により形成されたTiN薄膜を備える素子の一部を示す図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る方法によりTiN薄膜を形成する方法を説明するための概念図である。ここで、
図1は、誘電体層と伝導層との間に形成されたバリア層を備える集積回路素子の一部を示すものであり、バリア層が本発明の第1の実施形態に係る方法により形成されたTiN薄膜から形成された状態を示す概念図である。
【0021】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る方法により形成されたバリア層200を備える素子は、基板Sと、基板Sの上に形成された誘電体層100と、誘電体層100の上に形成され、TiN薄膜からなるバリア層200と、バリア層200の上に形成された伝導層300と、を備えていてもよい。
【0022】
基板Sは、半導体基板であってもよい。より具体例を挙げると、基板は、Siウェーハ、GaAsウェーハ、SiGeウェーハであってもよい。
【0023】
誘電体層100は、基板Sの上部に形成される。このとき、誘電体層100は、金属酸化物から形成されてもよい。より具体例を挙げると、誘電体層100は、ZrO2、Al2O3、TiO2、TaO2及びHfO2のうちのいずれか1種から形成されてもよい。また、このような誘電体層100は、原子層堆積(ALD)法又は化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)法により形成されてもよい。
【0024】
バリア層200は、誘電体層100の上に形成される層であり、TiN薄膜から形成される。すなわち、バリア層200は、基板Sの上に誘電体層100を形成した後、伝導層300を形成する前に形成される層であり、TiN薄膜からなる。このとき、バリア層200、すなわち、TiN薄膜は、原子層堆積(ALD)法により形成される。
【0025】
上述したように、実施形態においては、誘電体層100と伝導層300との間に位置するようにTiN薄膜を形成し、前記TiN薄膜は、バリア層200である。このため、TiN薄膜とバリア層には、同じ図面符号「200」が附されて説明され得る。すなわち、図面符号「200」は、TiN薄膜及びバリア層を指すものであり得る。
【0026】
原子層堆積法によりバリア層200を形成するに際して、反応ガスの噴射を中断又は終了した後に、プラズマを生じさせる。すなわち、反応ガスの噴射が中断又は終了した後に、水素ガスを用いてプラズマを生じさせる。
【0027】
以下、
図2を参照して、原子層堆積法によりTiN薄膜又はTiN薄膜からなるバリア層200を形成する方法について説明する。このとき、
図2中、「on」は、ガスの噴射及びプラズマ発生を行うことを意味し、「off」は、ガスの噴射を中断又は終了したり、プラズマの発生を中断したり、又はプラズマの発生を行わなかったりする状態を意味する。
【0028】
図2を参照すると、TiN薄膜を形成する過程は、ソースガスを噴射するステップと、ソースガスの噴射を中断した後、パージガスを噴射するステップ(1次パージ)と、パージガスの噴射を中断した後、反応ガスを噴射するステップと、反応ガスの噴射を中断した後、パージガスを噴射するステップ(2次パージ)、及びパージガスの噴射を中断した後、水素プラズマを形成するステップを含んでいてもよい。このとき、ソースガスとして、Tiを含有するガスが使用可能であり、反応ガスとして、Nを含有するガスが使用可能であり、パージガスとして、Arガスが使用可能である。このとき、Ti含有ガスとして、TiCl
4を含有するガスが使用可能であり、反応ガスとして、NH
3を含有するガスが使用可能である。
【0029】
実施形態においては、反応ガスを噴射するステップにおいてプラズマを生じさせる。すなわち、反応ガスを噴射するときにRF電源を供給して、反応ガスを放電することにより、反応ガスプラズマを生じさせる。
【0030】
また、反応ガスの噴射が中断又は終了した後、水素プラズマを生じさせる。すなわち、反応ガスの噴射が終了した後に、水素ガスを噴射し、RF電源を供給して前記水素ガスを放電することにより、水素プラズマ(水素ガスプラズマ)を生じさせる。このとき、水素プラズマを生じさせるステップは、例えば、反応ガスを噴射し、2次パージが終了した後に行われてもよい。
【0031】
上述したような「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-反応ガスの噴射(プラズマ発生)-パージガスの噴射(2次パージ)-水素プラズマの発生」をTiN薄膜の形成のための一つのプロセスサイクル(Cycle)としてもよい。また、上述したプロセスサイクルを複数回繰り返し行うことにより、複数回の原子層の蒸着が行われる。そして、プロセスサイクルを行うべき回数を調整することにより、目標の膜厚のTiN薄膜を形成することができる。
【0032】
上述した「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-反応ガスの噴射(プラズマ発生)-パージガスの噴射(2次パージ)-水素プラズマの発生」を含むプロセスサイクルは、水素プラズマの発生を終了した後に、ソースガスの噴射ステップに戻る。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、水素プラズマの発生後に、パージガスの噴射ステップ(3次パージ)がさらに行われてもよい。すなわち、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-反応ガスの噴射(プラズマ発生)-パージガスの噴射(2次パージ)-水素プラズマの発生-パージガスの噴射(3次パージ)」をTiN薄膜の形成のための一つのプロセスサイクル(Cycle)としてもよい。
【0033】
上述したようなプロセスサイクルにおいて、ソースガスの噴射が行われれば、ソースガスが誘電体層の上に吸着される。そして、パージガスの噴射(1次パージ)の後に、反応ガスを噴射しながらプラズマを生じさせると、誘電体層100の上に吸着されているソースガス(TiCl4含有ガス)と反応ガス(NH3含有ガス)との反応が起こって、反応物、すなわち、TiNが生成される。そして、この反応物が誘電体層100の上に堆積又は蒸着され、これにより、誘電体層100の上にTiNからなる薄膜が形成される。すなわち、誘電体層100の上にTiN薄膜からなるバリア層200が形成される。
【0034】
一方、従来には、原子層堆積法によりTiN薄膜を形成するに際して、蒸着プロセスが行われるプロセス空間、例えば、チャンバーの内部又はTiN薄膜が蒸着される基板Sの温度を350℃以上の高温に保っていた。別の言い方をすれば、チャンバーの内部又は基板Sの温度が350℃以上の高温に保たれなければ、基板S又は誘電体層100の上にTiN薄膜が蒸着されることができない。ところが、このように、高温下でTiN薄膜を形成する場合、基板S又はTiN薄膜の下部に形成された下地層、例えば、誘電体層100が熱により損傷されてしまうという問題がある。そして、これは、素子の品質又は性能を低下させる原因となる。
【0035】
しかしながら、実施形態においては、原子層堆積法を用いてTiN薄膜を形成又は蒸着するに際して、プラズマを生じさせる。すなわち、反応ガスを噴射するステップにおいてRF電源を供給してプラズマを生じさせる。このように、反応ガスを噴射するときに生じたプラズマは、ソースガスと反応ガスとの反応効率を向上させ、ソースガスと反応ガスとの反応物が基板S又は誘電体層100の上に堆積され易いように、又は付着し易いようにすることができる。したがって、チャンバーの内部又は基板Sの温度が低温、例えば、350℃未満である状態で、原子層堆積法によりTiN薄膜が形成されることが可能になる。すなわち、従来のように、基板Sを高温に加熱した状態で、TiN薄膜を形成せず、350℃未満の低温下でTiN薄膜を形成することができる。これにより、高熱により基板S又はTiN薄膜の下部の下地層が損傷されることを防ぐことができる。
【0036】
また、反応ガスの噴射が中断されれば、水素プラズマを生じさせる。すなわち、反応ガスの噴射が中断されれば、プロセス空間に水素ガスを噴射し、RF電源を供給して前記水素ガスを放電することにより、水素プラズマを生じさせる。このときに生じた水素プラズマは、不純物を取り除くことができる。ここで、不純物は、例えば、ソースガスと反応ガスとの反応による反応副産物であってもよい。より具体例を挙げると、ソースガスに含有されているTiCl4と反応ガスに含有されているNH3との反応により生成されたCl(不純物)であってもよい。そして、水素プラズマがプロセス空間に生じると、水素(H2)と不純物、例えば、Clとが反応してガス状のHClとなる。そして、HClガスは、反応空間に接続された排気部を介して外部に排出される。このとき、水素ガスにより生じたプラズマは、水素と不純物、例えば、Clとの反応を容易に起こしたり、促進したりする。このため、反応ガスの噴射後に水素プラズマを生じさせることにより、プロセス空間に存在する不純物を有効に取り除くことができる。これにより、TiN薄膜、すなわち、バリア層200の形成に際して不純物による汚染を防止もしくは抑止することができ、これにより、素子の性能を向上させることができる。
【0037】
伝導層300は、バリア層(TiN膜)200の上に形成される。このとき、伝導層300は、金属又は金属を含む材料から形成されてもよい。例えば、伝導層300は、Cu、Au、Ag、Ti、Ta、Co及びPtのうちの少なくとも1種の材料から形成されてもよい。また、伝導層300は、Cu、Au、Ag、Ti、Ta、Co及びPtのうちの少なくとも1種を含む材料から形成されてもよい。そして、伝導層300は、原子層堆積、化学気相成長法などにより形成されてもよい。
【0038】
上記においては、集積回路素子のバリア層200をTiN薄膜から形成することについて説明した。しかしながら、TiN薄膜からなるバリア層200が適用される素子は、集積回路素子に何ら限定されるものではなく、バリア層200が必要となる多種多様な素子、例えば、キャパシター素子のバリア層として適用可能である。
【0039】
上述した第1の実施形態に係るバリア層の形成方法は、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-反応ガスの噴射(プラズマ発生)-パージガスの噴射(2次パージ)-水素プラズマの発生」を一つのプロセスサイクルとする。
【0040】
このとき、前記バリア層の形成方法は、前記プロセスサイクルにおいて、水素ガスの噴射ステップの前に行われる前処理ステップを含んでいてもよい。そして、前処理ステップは、反応ガスを噴射するステップと、反応ガスの噴射を中断した後、パージガスを噴射するステップと、パージガスの噴射を中断した後、水素プラズマを生じさせるステップと、を含んでいてもよい。このとき、反応ガスは、NH3を含有するガスであってもよい。すなわち、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-反応ガスの噴射(プラズマ発生)-パージガスの噴射(2次パージ)-水素プラズマの発生」の順に行われるプロセスサイクルを行う前に、反応ガスの噴射ステップと、パージガスの噴射ステップ、及び水素プラズマの発生ステップを含む前処理ステップを先に行ってもよい。
【0041】
そして、上述した前処理ステップは、前記プロセスサイクルを最初に行うステップの前にのみ行い、それ以降には行われない場合もある。すなわち、前処理ステップが終了すれば、最初のプロセスサイクルを行い、最初のプロセスサイクルが終了すれば、前処理ステップに戻ることなく、2回目のプロセスサイクルのためのソースガスを噴射する。
【0042】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る方法によりTiN薄膜を形成する方法を説明するための概念図である。
【0043】
第2の実施形態に係るTiN薄膜の形成方法は、原子層堆積法によりTiN薄膜を形成するが、ソースガスの噴射及び反応ガスの噴射の順番を第1の実施形態とは異ならせた方法である。すなわち、第2の実施形態に係るTiN薄膜の形成過程は、
図3に示されているように、反応ガスを噴射するステップと、反応ガスの噴射を中断した後、パージガスを噴射するステップ(1次パージ)と、パージガスの噴射を中断した後、水素プラズマを形成するステップと、水素プラズマの発生を中断した後、パージガスを噴射するステップ(2次パージ)と、を含んでいてもよい。
【0044】
第2の実施形態においては、反応ガスを噴射するとき、プラズマの発生を省略してもよい。そして、反応ガスの噴射、1次パージの後に水素ガスを噴射して水素プラズマを生じさせる。
【0045】
そして、上述したような「反応ガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-水素プラズマの発生-ソースガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)」をTiN薄膜の形成のための一つのプロセスサイクル(Cycle)としてもよい。
【0046】
ソースガス、反応ガス、パージガスとしては、叙上の第1の実施形態と同種のガスが使用可能である。すなわち、ソースガスとして、Tiを含有するガスが使用可能であり、反応ガスとして、Nを含有するガスが使用可能であり、パージガスとして、Arガスが使用可能である。このとき、Ti含有ガスとして、TiCl4を含有するガスが使用可能であり、反応ガスとして、NH3を含有するガスが使用可能である。
【0047】
このように、第2の実施形態に係る方法においては、ソースガスの噴射の前に反応ガスを噴射し、水素プラズマを生じさせる。そして、反応ガスを噴射した後に水素プラズマを生じさせることにより、TiN薄膜の蒸着率又は膜質を向上させることができる。すなわち、反応ガスが噴射された後に、水素プラズマを生じさせることにより、反応ガスのイオン化を増加させることができる。このため、基板Sの上に吸着されるイオン化済みの反応ガスの量を増やすことができる。また、これにより、基板Sの上に吸着された反応ガスと反応するソースガスの量が増える。したがって、TiN薄膜の蒸着率を向上させることができ、膜質を向上させることができる。
【0048】
図4は、本発明の実施形態に係るTiN薄膜又はバリア層を形成するのに用いられる蒸着装置を概略的に示す図である。
【0049】
蒸着装置は、原子層堆積(ALD)法により薄膜を蒸着する装置であってもよい。このような蒸着装置は、
図4に示されているように、チャンバー100と、チャンバー100内に配設されて基板Sを支持するための支持台200と、支持台200と向かい合うように配置されてチャンバー100の内部にプロセスのためのガス(以下、プロセスガスと称する。)を噴射する噴射部300と、噴射部300にプロセスガスを提供するガス供給部400と、互いに異なる経路を有するように噴射部300に接続され、ガス供給部400から提供されたガスを噴射部300に供給する第1及び第2のガス供給管500a、500bと、チャンバー100内にプラズマを生じさせるように電源を供給するRF電源部600と、を備えていてもよい。
【0050】
また、蒸着装置は、支持台200に昇降動作及び回転動作のうちの少なくとも一方の動作を行わせる駆動部700と、チャンバー100に接続されるように配設されてチャンバー100の内部を排気する排気部800と、を備えていてもよい。
【0051】
チャンバー100は、内部に搬入された基板Sの上に薄膜が形成可能な内部空間を備えていてもよい。例えば、その断面の形状が四角形、五角形、六角形などの形状であってもよい。いうまでもなく、チャンバー100の内部の形状は種々の形状に変形可能であり、基板Sの形状と対応するように設けられることが好ましい。
【0052】
支持台200は、噴射部300と向かい合うようにチャンバー100の内部に配設されて、チャンバー100の内部に装入された基板Sを支持する。このような支持台200の内部には、ヒーター210が設けられてもよい。このため、ヒーター210を動作させると、支持台200の上に載置された基板S及びチャンバー100の内部が加熱されることが可能になる。
【0053】
また、基板S又はチャンバー100の内部を加熱するための手段として、支持台200に設けられたヒーター210に加えて、チャンバー100の内部又はチャンバー100の外部に別途のヒーターが設けられてもよい。
【0054】
噴射部300は、支持台200の延在方向に互いに離れるように並置された複数本の孔(以下、孔311と称する。)を有し、チャンバー100の内部において支持台200と向かい合うように配置された第1のプレート310と、少なくとも一部が複数本の孔311のそれぞれに嵌入されるように設けられた複数本のノズル320と、チャンバー100の内部において前記チャンバー100内の上壁と第1のプレート310との間に位置するように配設された第2のプレート330と、を備えていてもよい。
【0055】
また、噴射部300は、第1のプレート310と第2のプレート330との間に位置付けられた絶縁部340をさらに備えていてもよい。
【0056】
ここで、第1のプレート310は、RF電源部600と接続され、第2のプレート330は接地されてもよい。そして、絶縁部340は、第1のプレート310と第2のプレート330との電気的な接続を防ぐ役割を果たすことができる。
【0057】
第1のプレート310は、支持台200の延在方向に延設された板状のものであってもよい。そして、第1のプレート310には、複数本の孔311が設けられるが、複数本の孔311のそれぞれは、第1のプレート310を上下方向に貫通するように設けられてもよい。そして、複数本の孔311は、第1のプレート310又は支持台200の延在方向に並べられてもよい。
【0058】
複数本のノズル320のそれぞれは、上下方向に延びた形状を呈していてもよく、その内部には、ガスの通過可能な通路が設けられており、上端及び下端が開口された形状であってもよい。そして、複数本のノズル320のそれぞれは、少なくともその下部が第1のプレート310に設けられた孔311に嵌入され、上部は第2のプレート330とつながるように配設されてもよい。このため、ノズル320は、第2のプレート330から下部へと突出した形状であると説明可能である。
【0059】
ノズル320の外径は、孔311の内径に比べて小さくなるように設けられてもよい。そして、ノズル320が孔311の内部に嵌設されるに際して、ノズル320の外周面が孔311の周壁(すなわち、第1のプレート310の内側壁)から離れるように配設されてもよい。このため、孔311の内部は、ノズル320の外側空間と、ノズル320の内側空間と、に仕切られ得る。
【0060】
孔311の内部空間において、ノズル320内の通路は、第1のガス供給管500aから提供されたガスが移動、噴射される通路である。そして、孔311の内部空間におけるノズル320の外側空間は、第2のガス供給管500bから提供されたガスが移動、噴射される通路である。したがって、以下では、ノズル320内の通路を第1の経路360aと称し、孔311の内部におけるノズル320の外側空間を第2の経路360bと称する。
【0061】
第2のプレート330は、その上部面がチャンバー100内の上壁から離れ、下部面が第1のプレート310から離れるように配設されてもよい。このため、第2のプレート330と第1のプレート310との間、及び第2のプレート330とチャンバー100の上壁との間のそれぞれに空いた空間(空きスペース)が設けられることが可能になる。
【0062】
ここで、第2のプレート330の上側空間は、第1のガス供給管500aから提供されたガスが拡散・移動する空間(以下、拡散空間350と称する。)であって、複数本のノズル320の上側の開口と連通してもよい。別の言い方をすれば、拡散空間350は、複数の第1の経路360aと連通している空間である。このため、第1のガス供給管500aを通過したガスは、拡散空間350において第2のプレート330の延在方向に拡散した後、複数の第1の経路360aを通過して下側に噴射されることができる。
【0063】
また、第2のプレート330の内部には、ガスが移動する通路であるガンドリル穴(図示せず)が設けられており、前記ガンドリル穴は、第2のガス供給管500bと接続され、第2の経路360bと連通するように設けられてもよい。したがって、第2のガス供給管500bから提供されたガスは、第2のプレート330のガンドリル穴、第2の経路360bを経て基板Sに向かって噴射されることが可能になる。
【0064】
ガス供給部400は、原子層堆積法により薄膜を蒸着するのに必要となるガスを提供する。このようなガス供給部400は、ソースガスが貯留されたソースガス貯留部410と、ソースガスと反応する反応ガスが貯留された反応ガス貯留部420と、パージガスが貯留されたパージガス貯留部430と、水素ガスが貯留された水素ガス貯留部440と、ソースガス貯留部410と第1のガス供給管500aとをつなぐように配設された第1の搬送管450aと、反応ガス貯留部420、パージガス貯留部430及び水素ガス貯留部410のそれぞれと第2のガス供給管500bとをつなぐように配設された第2の搬送管450bと、を備えていてもよい。
【0065】
また、ガス供給部400は、反応ガス貯留部420、パージガス貯留部430及び水素ガス貯留部410のそれぞれと第2の搬送管450bとをつなぐ接続管460と、第1の搬送管450a及び複数の接続管460のそれぞれに配設された弁と、を備えていてもよい。
【0066】
以下、
図1、
図2及び
図4を参照して、本発明の第1の実施形態に係るTiN薄膜からなるバリア層を形成する方法について説明する。このとき、誘電体層の上部にバリア層を形成する方法を例にとって説明する。
【0067】
まず、支持台200に設けられたヒーター210を動作させて支持台200を加熱する。このとき、支持台200又は前記支持台200に載置されるべき基板Sの温度がプロセス温度、例えば、300℃以上、かつ、350℃未満となるようにヒーター210を動作させる。より具体例を挙げると、基板Sの温度が300℃となるようにヒーター210を動作させる。
【0068】
次いで、上面に誘電体層100が形成された基板Sをチャンバー100の内部に装入して支持台200の上に載置する。この後、支持台200の上に載置された基板Sが目標のプロセス温度、例えば、300℃となると、誘電体層100の上にTiN薄膜からなるバリア層200を形成する。
【0069】
このとき、原子層堆積法を用いてバリア層200を形成する。そして、原子層堆積は、ソースガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、反応ガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、水素プラズマの発生の順に行われ、反応ガスの噴射に際してプラズマを生じさせる。すなわち、原子層堆積法によりバリア層200を形成するプロセスサイクルは、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-反応ガスの噴射(プラズマ発生)-パージガスの噴射(2次パージ)-水素プラズマの発生」であってもよい。そして、上述したプロセスサイクルを複数回繰り返し行って、目標の層厚のバリア層200を形成する。
【0070】
以下、噴射部300及びガス供給部400を用いてチャンバー100の内部にガスを噴射してバリア層200を形成する方法について説明する。
【0071】
まず、チャンバー100の内部にソースガスを噴射する。このために、ソースガス貯留部410に貯留されているTiCl4含有ガスを第1の搬送管450aを供給する。ソースガスは、第1の搬送管450a及び第1のガス供給管500aを経て噴射部300内の拡散空間350に流れ込む。そして、ソースガスは、拡散空間350内において拡散した後、複数本のノズル320、すなわち、複数の第1の経路360aを通過して基板Sに向かって噴射される。
【0072】
予め設定された時間の間にソースガスを噴射した後、ソースガスの噴射を中断する。そして、ソースガスの噴射が中断又は終了すれば、パージガス貯留部430を介してパージガスを提供してチャンバー100の内部にパージガスを噴射する(1次パージ)。このとき、パージガス貯留部430から排出されたパージガスは、接続管460と、第2の搬送管450b及び第2のガス供給管500bを経た後、第2の経路360bを介して下側に噴射されてもよい。
【0073】
次いで、反応ガス貯留部420から反応ガス、例えば、NH3含有ガスを提供されてチャンバー100の内部に噴射する。このとき、反応ガスは、パージガスと同じ経路を介してチャンバー100の内部に噴射されてもよい。すなわち、反応ガスは、接続管460と、第2の搬送管450b及び第2のガス供給管500bを経た後、第2の経路360bを介して下側に噴射されてもよい。反応ガスが噴射されれば、誘電体層100の上に吸着されているソースガスと前記反応ガスとの反応が起こって、反応物、すなわち、TiNが生成可能である。そして、この反応物が誘電体層100の上に堆積又は蒸着され、これにより、基板Sの上にTiNからなる薄膜が形成される。
【0074】
このように、チャンバー100の内部に反応ガスが噴射されるとき、RF電源部600を動作させて第1のプレート310にRF電源を供給する。このため、反応ガスによるプラズマが生じる。
【0075】
このように、反応ガスを噴射するときに生じたプラズマは、ソースガスと反応ガスとの反応効率を向上させ、ソースガスと反応ガスとの反応物が誘電体層100の上に堆積され易いように、又は付着し易いようにすることができる。別の言い方をすれば、ヒーター210により加熱されたチャンバー100の内部又は基板Sの温度が350℃未満の低温であるとしても、反応ガスの噴射の際に生じたプラズマにより前記反応ガスとソースガスとの反応が起こりやすい。したがって、チャンバー100の内部又は基板Sの温度が低温、例えば、350℃未満である状態で、原子層堆積法によりTiN薄膜を形成することができる。すなわち、従来のように、基板Sを高温に加熱した状態でTiN薄膜を形成せず、350℃未満の低温下でTiN薄膜を形成することができる。このため、高熱により基板S又はTiN薄膜の下部の下地層、例えば、誘電体層100が損傷されることを防ぐことができる。
【0076】
予め設定された時間の間に反応ガスを噴射した後、反応ガスの噴射を中断する。そして、反応ガスの噴射が中断又は終了すれば、パージガス貯留部430を介してパージガスを提供してチャンバー100の内部にパージガスを噴射する(2次パージ)。このとき、2次パージによりソースガスと反応ガスとの反応による副産物などがチャンバー100の外部に排出されてもよい。
【0077】
2次パージが終了すれば、チャンバー内に水素ガスを噴射する。このとき、水素ガスは、パージガスと同じ経路を介してチャンバー100の内部に噴射されてもよい。すなわち、水素ガスは、接続管460と、第2の搬送管450b及び第2のガス供給管500bを経た後、第2の経路360bを介して下側に噴射されてもよい。このように、水素ガスが噴射されるとき、RF電源600を動作させて第1のプレート310にRF電源を供給する。このため、チャンバー100の内部に水素ガスを用いたプラズマ、すなわち、水素プラズマが生成される。
【0078】
このとき、生成された水素プラズマは、チャンバー100の内部に残留する不純物を取り除くことができる。例えば、ソースガスに含有されているTiCl4と反応ガスに含有されているNH3との反応により生成されてチャンバー100の内部に残留する、又はTiN薄膜の上に残留する反応副産物であるCl(不純物)は、水素と反応してHClとなる。このとき、水素ガスにより生じたプラズマは、水素とClとの反応を促進する。そして、HClガスは、チャンバーに接続された排気部を介して外部に排出される。したがって、TiN薄膜、すなわち、バリア層200の形成の際の不純物による汚染を防止もしくは抑止することができ、これにより、素子の性能を向上させることができる。
【0079】
上述したような「ソースガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、反応ガスの噴射(プラズマ発生)、パージガスの噴射(2次パージ)、水素プラズマの発生」の順に行われるプロセスサイクルは、複数回繰り返して行われてもよい。そして、目標の層厚に応じて、プロセスサイクルを行うべき回数を決定してもよい。また、水素プラズマ発生ステップとソースガス噴射ステップとの間にパージガスの噴射(3次パージ)ステップがさらに追加されてもよい。
【0080】
また、上記においては、反応ガスの噴射時と水素ガスの噴射時にプラズマを生じさせ、2次パージの際にプラズマを生じさせないことについて説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、2次パージの際にパージガス、すなわち、Arガスを用いたプラズマを生じせてもよい。別の言い方をすれば、反応ガスを噴射するときから水素ガスの噴射が終了するまでにRF電源を連続して供給してもよい。このため、反応ガスの噴射ステップと、パージガスの噴射(2次パージ)及び水素ガスプラズマの発生ステップにおいてプラズマが連続して生じることができる。
【0081】
目標の層厚のTiNバリア層200が形成されれば、バリア層200の上に伝導層300を形成する。このとき、伝導層300は、原子層堆積、化学気相成長法などにより形成されてもよく、Cu、Au、Ag、Ti、Ta、Co及びPtのうちのいずれか1種又はこれらのうちの少なくともいずれか1種を含む材料から形成されてもよい。
【0082】
このように、実施形態に係る方法によれば、350℃未満の低温下でTiN薄膜、すなわち、TiNバリア層200を形成することができる。したがって、TiN薄膜が形成される下地層又は基板が損傷されることを防ぐことができる。また、水素プラズマを生じさせることにより、バリア層上の不純物を取り除くことができ、これにより、バリア層又は素子の品質を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の実施形態によれば、低温下で原子層堆積法によりTiN薄膜からなるバリア層を形成することができる。したがって、高温の熱により基板又は基板の上に形成された薄膜が損傷されることを防ぐことができる。これにより、バリア層を備える素子の不良の発生の防止や、性能の向上を図ることができる。
【0084】
また、水素プラズマを生じさせることにより、バリア層上の不純物を取り除くことができる。したがって、不純物によるバリア層又は素子の品質の低下を防ぐことができる。
【国際調査報告】