(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-07
(54)【発明の名称】コレステロールの新規合成
(51)【国際特許分類】
C07J 9/00 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
C07J9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570098
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022063082
(87)【国際公開番号】W WO2022238572
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523427135
【氏名又は名称】コーデンファルマ インターナショナル ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523427146
【氏名又は名称】オットー - フォン - ゲーリケ - ウニヴエルズイテート マクデブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュインツァー、ディーター
(72)【発明者】
【氏名】シュピース、オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ムント、マキシム
(72)【発明者】
【氏名】インドレゼ、アドリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ルー、リオネル
【テーマコード(参考)】
4C091
【Fターム(参考)】
4C091AA02
4C091BB06
4C091CC03
4C091DD01
4C091EE04
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK01
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA02
4C091PA05
4C091PB05
4C091QQ01
4C091RR02
(57)【要約】
本発明は、コレステロールの合成に関する。式(I)の化合物の開環工程、その後の活性化および還元工程を経てコレステロールを得る。本発明はまた、該合成中に得られる中間体に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)の化合物
【化1】
をクレメンゼン反応またはその変形で反応させ、式(II)の化合物
【化2】
を得る、開環工程と、
b)式(III)、好ましくは(IIIa)の化合物
【化3】
を得る、SOCl
2、PBr
3、R
4SO
2Xを用いた活性化工程と、
c)化合物(III)を還元剤と反応させてコレステロール(IV)
【化4】
を得る還元工程と、
を含むコレステロールの合成方法であって、式中、
R
1が、非置換または置換アルキル、アミノ酸、環状アルキル、特にC
2-C
6環状アルキル、またはアルキル-R
2、複素環、芳香族またはヘテロ芳香族基から選択され、特にR
1は、非置換または置換アルキル、アミノ酸、環状アルキル、特にC
2-C
6環状アルキル、またはアルキル-R
2から選択され、より具体的には非置換または置換アルキル、アミノ酸またはアルキル-R
2から選択され、
R
2が、H、-OH、-CN、-NH
2、-NHR
3または-NR
3
2から選択され、
R
3が、非置換または置換C
1-C
6アルキルであり、
R
4が、置換または非置換アルキル、環状アルキルまたは芳香族基であり、
Xが、脱離基またはOSO
2R
4であり、
Zが、-Cl、-Brまたは-OSO
2R
4、好ましくは-OSO
2R
4である、
コレステロールの合成方法。
【請求項2】
化合物(I)が、ジオスゲニン(V)
【化5】
と式R
1COYの化合物との反応によって提供され、式中、R
1が上記で定義したのと同じ意味を有し、Yは脱離基であり、特に前記脱離基が、ハロゲン、特にClから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
1の前記アミノ酸が、α-、β-またはγ-アミノ酸、特にα-アミノ酸、より具体的にはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R
1の前記アルキルが、非置換または置換C
2-C
10アルキル、より具体的には非置換または置換C
2-C
6アルキル、さらにより具体的には-C(CH
3)
3であり、特に前記アルキルが分岐している、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
R
1の前記アルキル-R
2が、前記アルキルのC
1-C
6アルキルによって定義され、R
2が、H、-OH、-NHR
3または-NR
3
2から、特に-OH、-NHR
3または-NR
3
2から、より具体的にはNHR
3または-NR
3
2から選択され、さらにより具体的にはR
2が-NR
3
2であり、R
3が、非置換または置換C
1-C
6アルキル、特にC
1-C
3アルキル、より具体的にはC
1アルキルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
R
1の前記芳香族基が、フェニルまたは置換フェニル、特に置換フェニルであり、前記置換基が、NHR
3または-NR
3
2、特に-NR
3
2から選択され、R
3が、非置換または置換C
1-C
6アルキル、特にC
1-C
3アルキル、より具体的にはC
1アルキルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
R
1が(R
5)(R
6)(R
7)C-(C=O)-O-であり、R
5、R
6またはR
7の各々が、H、C
1-C
6アルキル、特にC
1-C
3アルキル、-OH、-NHR
3または-NR
3
2、特にC
1-C
6アルキル、特にC
1-C
3アルキル、-OHまたはNHR
3、-NR
3
2、より具体的にはC
1-C
6アルキル、特にC
1-C
3アルキル、OHまたは-NR
3
2、さらにより具体的にはC
1-C
6アルキル、特にC
1-C
3アルキルまたは-NR
3
2から独立して選択され、特にR
5、R
6またはR
7の1つが-OH、NHR
3または-NR
3
2から選択される場合、他の2つはH、C
1-C
6アルキル、特に、C
1-C
3アルキルから選択され、R
3が、非置換または置換C
1-C
6アルキル、特に、C
1-C
3アルキル、より具体的には、C
1アルキルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記開環工程が、卑金属、特にZn、および強酸の存在下で行われ、特に前記強酸がHCl、HBr、H
2SO
4、HNO
3から選択され、より具体的には前記強酸がHClである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記開環工程が、有機溶媒、極性溶媒または非極性溶媒、特にトルエンまたはアルコール、特にC
1-C
6アルコール、またはそれらの混合物中で行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、非極性溶媒と極性溶媒との混合物、特にトルエン/アルコール、より具体的にはトルエン/C
2-C
4アルコール、さらにより具体的にはトルエン/エタノールまたはトルエン/プロパノールであり、前記非極性溶媒と極性溶媒との間の比、特にトルエン/アルコールが、3:1から1:10の間、より具体的には1:1から1:3の間である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
R
4が、-F、過フッ素化C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルキル、またはC
1-C
6アルキルフェニル、特に-F、過フッ素化C
1-C
3アルキル、C
1-C
3アルキル、またはC
1-C
3アルキルフェニル、より具体的には-F、メチル、トリフルオロメチル、メチルフェニルから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
Xの前記脱離基が、ハロゲン、特にClから選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
還元剤が、金属水素化物または有機金属水素化物、特に水素化アルミニウムもしくは水素化ホウ素、または水素化アルミニウムもしくは水素化ホウ素を含む混合物もしくは錯体であり、より具体的には、前記還元剤が、LiAlH
4、Red-Al、DIBALまたはLiBHEt
3である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記脱離基Yが、OH、二窒素、ジアルキルエーテル、ハロゲン、アルキルカルボキシラート、パーフルオロアルキルスルホナート、アルキルスルホナート、ニトラート、ホスファート、アミド、特にハロゲン、さらにより具体的にはクロリドから選択される、請求項2~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
一般式(I)、式(II)または式(III)、特に(IIIa)、特に式(II)または式(III)、特に(IIIa)の化合物、
【化6】
式中、R
1が、R
1が非置換アルキルではないことを除いて上記と同じ定義を有し、
【化7】
式中、R
1が、上記と同じ定義を有し、
【化8】
式中、R
1、R
4およびZが、上記と同じ定義を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステロールおよびコレステロール中間体の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールは、動物体のすべての組織に見出される。それは、海馬、大脳皮質および脊髄ならびに膵臓および腎臓で特に一般的である。コレステロールは、これらの組織において重要な役割を果たす:それは、細胞膜の構成要素として働き、様々な生物学的に重要な分子の前駆体である。細胞膜の成分として、コレステロールは膜の流動性を調節する。それはまた、細胞シグナル伝達を促進するための脂質ラフトの形成を補助する。
【0003】
コレステロールは、いくつかの生化学的経路の前駆体として用いられる。最も顕著には、コレステロールは、コルチゾール、プロゲステロン、エストロゲンテストステロンおよびそれらの誘導体を含むすべてのステロイドホルモンの合成のための前駆体である。コレステロールはまた、カルシウム代謝においてビタミンD前駆体を構成する。
【0004】
コレステロールはまた、多くの産業において、最も顕著には化粧品産業においてスキンケアおよびメイクアップ製品の成分として広く使用されている。これらの製品において、コレステロールは、フェイシャルクリームおよびスキンコンディショナーなどの油性の組み合わせにおいて相分離を防止するための乳化剤として働く。これらの組成物において、コレステロールは皮膚軟化剤およびポリマー安定剤でもある。さらに、コレステロールは、粘度調節剤として様々な組成物に添加される。
【0005】
近年、脂質膜の形成および流動性を制御するコレステロールの生物学的特性が薬物送達系に用いられている。最も顕著には、コレステロールは、脂質ナノ粒子(LNP)の集合およびエンドソームからのそれらの脱出において重要な役割を果たす。LNPは、ウイルススパイクタンパク質をコードするmRNAを送達する、SARS-Cov2ワクチンなどのmRNAワクチンの送達に重要である。
【0006】
現在、工業的な量のコレステロールが動物組織から得られる。市販のコレステロールの最も顕著な供給源はウシ脊髄であり、コレステロールは石油エーテルで組織から抽出される。例えば、米国特許第2371467号明細書は、二塩化エチレンで動物の神経組織からコレステロールを抽出する方法を開示している。コレステロールの別の一般的な供給源は羊毛脂であり、コレステロールはアルコールで抽出される。例えば、米国特許第2650929号明細書は、羊毛脂をメタノールに溶解し、その後コレステロールを結晶化させることによるコレステロールの抽出を開示している。しかしながら、様々な産業がコレステロールの常時供給に大きく依存しているため、新規な製造方法の開発が関心を集めている。
【0007】
コレステロール抽出の既存の方法は、大量の物質を提供する。しかしながら、それらに関連するいくつかの問題がある:i)それらは大量の動物材料を必要とする。ウシの飼育は、世界のメタン排出の約25%に寄与し、温室効果ガス排出を削減するための世界的な努力により、近い将来にウシ神経組織が不足し、したがってより高価になる可能性がある。ii)抽出プロセスは、コレステロールが天然に、少ししか工業的利用がない化合物であるイソコレステロールを伴うので、かなりの量の廃棄生成物を生み出す;iii)動物源から産生されたコレステロールは、伝染性海綿状脳症を引き起こすプリオンによる汚染のリスクを有する。
【0008】
したがって、植物由来ジオスゲニンなどのコレステロール産生のための非動物源が重要である。
【0009】
ジオスゲニンは、ヤマノイモ属ワイルドヤム(wild yam Dioscorea)の塊茎から抽出されたサポニンの加水分解生成物である、植物ステロイドサポニンである。
【化1】
【0010】
本発明は、コレステロールのための動物源の、より安価で安全な代替物を提供することによって、上述の問題に対する解決策を提供する。それは、植物由来物質であるジオスゲニンからコレステロールを化学合成する方法を開示することによって達成される。
【0011】
新規な一連の反応では、ジオスゲニンの3-ヒドロキシル基がアシル化によって保護され、テトラヒドロフランおよびテトラヒドロピラン環が開環し、新たに得られたヒドロキシル基が活性化され、得られた化合物が還元され、コレステロールが得られる。
【発明の概要】
【0012】
コレステロールの合成方法における本発明の第1の態様は、
a)式(I)の化合物
【化2】
をクレメンゼン反応またはその変形で反応させ、式(II)の化合物
【化3】
を得る、開環工程と、
b)式(III)、好ましくは(IIIa)の化合物
【化4】
を得る、SOCl
2、PBr
3、R
4SO
2Xを用いた活性化工程と、
c)化合物(III)を還元剤と反応させてコレステロール(IV)
【化5】
を得る還元工程と
を含み、
R
1は、非置換または置換アルキル、アミノ酸、環状アルキル、特にC
2-C
6環状アルキル、またはアルキル-R
2、複素環、芳香族またはヘテロ芳香族基から選択され、特にR
1は、非置換または置換アルキル、アミノ酸、環状アルキル、特にC
2-C
6環状アルキル、またはアルキル-R
2から選択され、より具体的には非置換または置換アルキル、アミノ酸またはアルキル-R
2から選択され、
R
2は、H、-OH、-CN、-NH
2、-NHR
3または-NR
3
2から選択され、
R
3は、非置換または置換C
1-C
6アルキルであり、
R
4は、置換または非置換アルキル、環状アルキルまたは芳香族基であり、
Xは、脱離基またはOSO
2R
4であり、
Zは、-Cl、-Brまたは-OSO
2R
4、好ましくは-OSO
2R
4である。
【0013】
本発明の第2の態様は、一般式(I)、式(II)または式(III、特に式(II)または式(III)の化合物についての上記反応一連における中間体基質であり、
【化6】
式中、R
1は、R
1が非置換アルキルではないことを除いて、上記と同じ定義を有し、
【化7】
式中、R
1は上記と同じ定義を有し、
【化8】
式中、R
1およびZは上記と同じ定義を有する。
【0014】
用語および定義
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適切である場合には常に、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。以下に記載されるいずれかの定義が参照により本明細書に組み入れられるいずれかの文書と矛盾する場合、記載されている定義が優先するものとする。
【0015】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」および「含む(including)」という用語、およびその他の類似の形態、ならびにそれらの文法的等価物は、これらの単語の任意の1つに続く1つまたは複数の項目が、このような1つまたは複数の項目の網羅的な列挙であることを意味しないか、列挙された1つまたは複数の項目のみに限定されることを意味しないという点で、意味において等価であり、非限定的であることが意図される。例えば、構成要素A、BおよびCを「含む(comprising)」物品は、構成要素A、BおよびCからなる(すなわち、のみを含有する)ことができ、または構成要素A、BおよびCのみならず1つ以上の他の成分も含有することができる。したがって、「含む(comprises)」およびその類似の形態、ならびにそれらの文法的等価物は、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」の態様の開示を含むことが意図され、理解される。
【0016】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限の間にある、下限の単位の10分の1までの各介在する値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載されたまたは介在する値は、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界に服して、本開示内に包含されることが理解される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限界の一方または両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0017】
本明細書で使用される場合、添付の特許請求の範囲を含めて、単数形「a」、「or」および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。
【0018】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書の文脈におけるC1-C10アルキルという用語は、1から10個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐炭化水素に関し、特定の実施形態において、1つの炭素-炭素結合は不飽和であってもよく、1つのCH2部分は酸素(エーテル架橋)または窒素(NH、またはNR(Rはメチル、エチル、またはプロピルである);アミノ架橋)と交換されてもよい。C1-C10アルキルの非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、プロパ-2-エニル、n-ブチル、2-メチルプロピル、tert-ブチル、ブタ-3-エニル、プロパ-2-イニルおよびブタ-3-イニルである。特定の実施形態において、C1-C10アルキルは、メチル、エチル、プロピルまたはブチル部分である。
【0020】
本明細書の文脈におけるC1-C6アルキルとの用語は、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐炭化水素に関し、1つの炭素-炭素結合は不飽和であってもよく、および/または1つのCH2部分は酸素(エーテル架橋)または窒素(NH、またはNR(Rはメチル、エチル、またはプロピルである);アミノ架橋)と交換されてもよい。C1-C6アルキルの非限定的な例としては、上記のC1-C4アルキル、さらに3-メチルブタ-2-エニル、2-メチルブタ-3-エニル、3-メチルブタ-3-エニル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ペント-4-イニル、3-メチル-2-ペンチルおよび4-メチル-2-ペンチルに与えられる例が挙げられる。特定の実施形態において、C5アルキルは、ペンチルまたはシクロペンチル部分であり、C6アルキルは、ヘキシルまたはシクロヘキシル部分である。C1-C3アルキルについても同様である。
【0021】
本明細書の文脈におけるC4-C7シクロアルキルという用語は、4、5、6または7個の炭素原子を有する飽和炭化水素環に関し、特定の実施形態において、1つの炭素-炭素結合が不飽和であってもよく、および/または1つのCH2部分が酸素(エーテル架橋)または窒素(NH、またはNR(Rはメチル、エチル、またはプロピルである);アミノ架橋)と交換されてもよい。C4-C7シクロアルキル部分の非限定的な例としては、シクロブチル(-C4H7)、シクロペンテニル(C5H9)およびシクロヘキセニル(C6H11)部分が挙げられる。特定の実施形態において、シクロアルキルは、1個のC1-C4非置換アルキル部分によって置換されている。特定の実施形態において、シクロアルキルは、2つ以上のC1-C4非置換アルキル部分によって置換されている。複素環は、1つまたはいくつかの窒素、酸素および/または硫黄原子を含むシクロアルキルである。本明細書の文脈における複素環は、1つ以上のアルキル基でさらに置換されていてもよい。
【0022】
置換アルキルという用語は、その最も広い意味で、炭素または水素ではない原子、特にN、O、F、B、Si、P、S、Cl、BrおよびIから選択される原子に共有結合している、最も広い意味で上記で定義したようなアルキルを指し、それ自体は、適用可能であれば、この基の1つまたはいくつかの他の原子、または水素、または不飽和もしくは飽和炭化水素(それらの最も広い意味でのアルキルまたはアリール)に結合していてもよい。より狭義には、置換アルキルは、アミンNH2、アルキルアミンNHR、イミドNH、アルキルイミドNR、アミノ(カルボキシアルキル)NHCORまたはNRCOR、ヒドロキシルOH、オキシアルキルOR、オキシ(カルボキシアルキル)OCOR、カルボニルOおよびそのケタールまたはアセタール(OR)2、ニトリルCN、イソニトリルNC、シアネートCNO、イソシアナートNCO、チオシアナートCNS、イソチオシアナートNCS、フッ化物F、塩化物Cl、臭化物Br、ヨウ化物I、ホスフォナートPO3H2、PO3R2、ホスファートOPO3H2およびOPO3R2、スルフヒドリルSH、スフルアルキルSR、スルホキシドSOR、スルホニルSO2R、スルファニルアミドSO2NHR、スルファートSO3HおよびスルファートエステルSO3R(式中、本段落で使用されるR置換基は、本明細書の本文でRに割り当てられた他の使用とは異なり、それ自体がその最も広い意味で非置換または置換C1-C12アルキルであり、より狭い意味では、Rは特に明記しない限り、メチル、エチルまたはプロピルである)から選択される基で1つまたはいくつかの炭素原子が置換された、最も広い意味での上記で定義されるアルキルを指す。
【0023】
アミノ置換アルキルまたはヒドロキシル置換アルキルという用語は、1つまたはいくつかのアミンまたはヒドロキシル基NH2、NHR、NR2またはOHによって修飾された上記の定義によるアルキルを指し、本段落で使用されるR置換基は、本明細書の本文でRに割り当てられた他の使用とは異なり、それ自体がその最も広い意味で非置換または置換C1-C12アルキルであり、より狭い意味では、Rは特に明記しない限り、メチル、エチルまたはプロピルである。2つ以上の炭素を有するアルキルは、2つ以上のアミンまたはヒドロキシルを含み得る。特に明記しない限り、「置換アルキル」という用語は、アルキル鎖、末端メチルまたは水素への結合に加えて、各Cが最大で1つのアミンまたはヒドロキシル基によってのみ置換されているアルキルを指す。
【0024】
カルボキシル置換アルキルという用語は、1つまたはいくつかのカルボキシル基COOHまたはその誘導体、特にカルボキシルアミドCONH2、CONHRおよびCONR2、またはカルボン酸エステルCOORによって修飾された上記の定義によるアルキルを指し、Rは前の段落に記載の意味を有し、本明細書の本文でRに割り当てられた他の意味とは異なる。
【0025】
アミノ置換アルキルの非限定的な例としては、末端部分については-CH2NH2、-CH2NHMe、-CH2NHEt、-CH2CH2NH2、-CH2CH2NHMe、-CH2CH2NHEt、-(CH2)3NH2、-(CH2)3NHMe、-(CH2)3NHEt、-CH2CH(NH2)CH3、-CH2CH(NHMe)CH3、-CH2CH(NHEt)CH3、-(CH2)3CH2NH2、-(CH2)3CH2NHMe、-(CH2)3CH2NHEt、-CH(CH2NH2)CH2CH3、-CH(CH2NHMe)CH2CH3、-CH(CH2NHEt)CH2CH3、-CH2CH(CH2NH2)CH3、-CH2CH(CH2NHMe)CH3、-CH2CH(CH2NHEt)CH3、-CH(NH2)(CH2)2NH2、-CH(NHMe)(CH2)2NHMe、-CH(NHEt)(CH2)2NHEt、-CH2CH(NH2)CH2NH2、-CH2CH(NHMe)CH2NHMe、-CH2CH(NHEt)CH2NHEt、-CH2CH(NH2)(CH2)2NH2、-CH2CH(NHMe)(CH2)2NHMe、-CH2CH(NHEt)(CH2)2NHEt、-CH2CH(CH2NH2)2、-CH2CH(CH2NHMe)2、-CH2NMe2、-CH2NMeEt、-CH2CH2NMe2、-CH2CH2NMeEt、-(CH2)3NMe2、-(CH2)3NMeEt、-CH2CH(NMe2)CH3、-CH2CH(NMeEt)CH3、-(CH2)3CH2NMe#2、-(CH2)3CH2NMeEt、--CH(CH2NMe2)CH2CH3、-CH(CH2NMeEt)CH2CH3、-CH2CH(CH2NMe2)CH3、-CH2CH(CH2NMeEt)CH3、-CH(NMe2)(CH2)2NMe2、-CH(NMeEt)(CH2)2NMeEt、-CH2CH(NMe2)CH2NMe2、-CH2CH(NMeEt)CH2NMeEt、-CH2CH(NMe2)(CH2)2NMe2、-CH2CH(NMeEt)(CH2)2NMeEtおよび-CH2CH(CH2NHEt)2、ならびに2つの他の部分を架橋するアミノ置換アルキル部分については-CH2CHNH2-、-CH2CHNHMe-、-CH2CHNHEt-が挙げられる。
【0026】
ヒドロキシ置換アルキルの非限定的な例としては、末端部分については-CH2OH、-(CH2)2OH、-(CH2)3OH、-CH2CH(OH)CH3、-(CH2)4OH、-CH(CH2OH)CH2CH3、-CH2CH(CH2OH)CH3、-CH(OH)(CH2)2OH、-CH2CH(OH)CH2OH、-CH2CH(OH)(CH2)2OHおよび-CH2CH(CH2OH)2、ならびに2つの他の部分を架橋するヒドロキシル置換アルキル部分については-CHOH-、-CH2CHOH-、-CH2CH(OH)CH2-、-(CH2)2CHOHCH2-、-CH(CH2OH)CH2CH2-、-CH2CH(CH2OH)CH2-、-CH(OH)(CH2CHOH-、-CH2CH(OH)CH2OH、-CH2CH(OH)(CH2)2OHおよび-CH2CHCH2OHCHOH-が挙げられる。
【0027】
ハロゲン置換アルキルという用語は、F、Cl、Br、Iから(独立して)選択される1つまたはいくつかのハロゲン原子によって修飾された上記の定義によるアルキルを指す。
【0028】
フルオロ置換アルキルという用語は、1つまたはいくつかのフッ化物基Fによって修飾された上記の定義によるアルキルを指す。フルオロ置換アルキルの非限定的な例には、-CH2F、-CHF2、-CF3、-(CH2)2F、-(CHF)2H、-(CHF)2F、-C2F5、-(CH2)3F、-(CHF)3H、-(CHF)3F、-C3F7、-(CH2)4F、-(CHF)4H、-(CHF)4Fおよび-C4F9が含まれる。
【0029】
ヒドロキシル置換アルキルおよびフルオロ置換アルキルの非限定的な例としては、-CHFCH2OH、-CF2CH2OH、-(CHF)2CH2OH、-(CF2)2CH2OH、-(CHF)3CH2OH、-(CF2)3CH2OH、-(CH2)3OH、-CF2CH(OH)CH3、-CF2CH(OH)CF3、-CF(CH2OH)CHFCH3、および-CF(CH2OH)CHFCF3が含まれる。
【0030】
本明細書の文脈におけるアリールという用語は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S)を含み得る環状芳香族C5-C10炭化水素に関する。アリールの例としては、フェニルおよびナフチル、ならびに任意のヘテロアリールが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリールは、1つまたはいくつかの窒素、酸素および/または硫黄原子を含むアリールである。ヘテロアリールの例としては、ピロール、チオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリミジン、チアジン、キノリン、ベンゾフランおよびインドールが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の文脈におけるアリールまたはヘテロアリールは、1つ以上のアルキル基でさらに置換されていてもよい。
【0031】
本明細書の文脈におけるアルキルアリールは、アリール部分によって置換されたアルキル基に関する。特定の例は、メチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニルおよびそれらの高級同族体である。置換アルキルアリールは、化学的に実行可能であれば、アルキル部分またはアリール部分の該部分に示される置換基で置換されていてもよい。
【0032】
カルボン酸エステルは基-CO2Rであり、Rは本明細書でさらに定義される。カルボン酸アミドは基-CONHRであり、Rは本明細書でさらに定義される。
【0033】
脱離基という用語は、-Mおよび/または-I効果を発揮し、したがって容易に切断することができる分子内の官能基に関し、結合電子対は切断後に脱離基と共に残る。
【発明を実施するための形態】
【0034】
コレステロールの合成方法における本発明の第1の態様は、
式(I)の化合物
【化9】
をクレメンゼン反応またはその変形で反応させ、式(II)の化合物を得る、開環工程を含む。
【0035】
この反応は、テトラヒドロフラン環およびテトラヒドロピラン環の両方の効率的な開環を可能にし、コレステロールのその後の合成に重要な長い飽和分岐側鎖をもたらす。
【0036】
その後、式(II)の化合物
【化10】
をSOCl
2、PBr
3またはR
4SO
2Xから選択される活性化剤と活性化工程において反応させて、式(III)の化合物、好ましくは(IIIa)を得る。
【化11】
【0037】
活性化は、2つのヒドロキシル基の位置のその後の還元を可能にする。
【0038】
その後の還元工程では、還元剤を用いて、コレステロール(IV)を得る。
【化12】
還元工程は、1つの合成工程において、活性化ヒドロキシル位置の還元ならびに保護されたR
1CO-O-位置の脱保護を可能にする。
【0039】
一連の反応全体により、植物ベースの化合物からコレステロールを高収率および最小限の廃棄物生成で合成することが可能になる。上記の一連において、
-R1は、非置換または置換アルキル、アミノ酸、環状アルキル、特にC2-C6環状アルキル、またはアルキル-R2、複素環、芳香族またはヘテロ芳香族基から選択され、特にR1は、非置換または置換アルキル、アミノ酸、環状アルキル、特にC2-C6環状アルキル、またはアルキル-R2、より具体的には非置換または置換アルキル、アミノ酸またはアルキル-R2から選択され、
-R2は、H、-OH、-CN、-NH2、-NHR3または-NR3
2から選択され、
-R3は、非置換または置換C1-C6アルキルであり、
-R4は、置換または非置換のアルキル、環状アルキルまたは芳香族基であり、
-Xは脱離基またはOSO2R4であり、
-Zは、-Cl、-Brまたは-OSO2R4、好ましくは-OSO2R4である。
【0040】
本発明に開示される方法は、植物ベースのジオスゲニンのコレステロールへの効率的な変換を可能にする。有機部分を3-ヒドロキシル基に付加することにより、その後の任意の工程において有機部分が穏やかな反応物と反応するのを防ぐが、最後の還元工程において有機部分は脱保護される。この保護により、これまで達成できなかった方法でテトラヒドロピランおよびテトラヒドロフラン環を開環することが可能になり、遊離ヒドロキシル基とペンタン環において遊離ヒドロキシル基でキャップされた長い飽和および分岐側鎖とを有するステロイド核の形成がもたらされる。次いで、遊離ヒドロキシル基が活性化され、これにより、元のヒドロキシル基を保持しながらこれらの基を除去することが可能になる。この溶液は、ジオスゲニンのコレステロールへの容易かつ効率的な変換を可能にする。
【0041】
一実施形態において、化合物Iは、ジオスゲニンV
【化13】
と式R
1COYの化合物との反応によって達成され、式中、R
1は上記のように定義され、Yは脱離基である。
【0042】
保護基R1COは、開環反応中の保護および開環配列の活性化ヒドロキシル基の還元工程中の脱保護を可能にする。保護基は、開環工程の反応プロセス中に適切な溶解度を保持しながら良好な保護を可能にするように選択される。
【0043】
特定の実施形態において、R1は、アミノ酸である。
【0044】
いくつかの実施形態において、R1は、α-、β-またはγ-アミノ酸、特にα-アミノ酸、より具体的には炭化水素鎖の短い疎水性アミノ酸である。
【0045】
いくつかの実施形態において、R1は、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンである。
【0046】
特定の実施形態において、R1は、分枝または直鎖の非置換または置換C2-C10アルキルである。特定の実施形態において、R1は、分枝または直鎖の非置換または置換C2-C6アルキルである。いくつかの実施形態において、R1は、分岐アルキルである。
【0047】
特定の実施形態において、R1は、分枝または直鎖のC2-C10アルキルである。特定の実施形態において、R1は、分枝または直鎖のC2-C6アルキルである。
【0048】
いくつかの実施形態において、R1は、-C(CH3)3である。
【0049】
特定の実施形態において、R1は、アルキル-R2の形態であり、アルキルは、C1-C6アルキルであり、R2は、-H、-OH、-NHR3または-N(R3)2から選択され、R3は、非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルである。
【0050】
特定の実施形態において、R1は、アルキル-R2の形態であり、アルキルは、C1-C6アルキルであり、R2は、-OH、-NHR3または-N(R3)2から選択され、R3は、非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルである。
【0051】
特定の実施形態において、R1は、アルキル-R2の形態であり、アルキルは、C1-C6アルキルであり、R2は、-NHR3または-N(R3)2から選択され、R3は、非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルである。
【0052】
特定の実施形態において、R1は、アルキル-R2の形態であり、アルキルは、C1-C6アルキルであり、R2は、-N(R3)2であり、R3は、非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルである。
【0053】
特定の実施形態において、R1は芳香族基の形態であり、芳香族基はフェニルまたは置換フェニルである。
【0054】
特定の実施形態において、R1は芳香族基の形態であり、芳香族基は置換フェニルであり、置換基はNHR3または-NR3
2であり、R3は非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルである。
【0055】
特定の実施形態において、R1は芳香族基の形態であり、芳香族基は置換フェニルであり、置換基は-NR3
2であり、R3は非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルである。
【0056】
特定の実施形態において、R1は、式(R5)(R6)(R7)C-(C=O)-O-の部分の形態であり、R5、R6またはR7の各々は、H、C1-C6アルキル、特にC1-C3アルキル、-OH、-NHR3または-NR3
2から独立して選択され、式中、R3は、非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルであり、特にR5、R6またはR7の1つが-OH、NHR3または-NR3
2である場合、他の2つは、-HまたはC1-C6アルキル、特にC1-C3アルキルから選択される。
【0057】
特定の実施形態において、R1は、式(R5)(R6)(R7)C-(C=O)-O-の部分の形態であり、R5、R6またはR7の各々は、H、C1-C6アルキル、特にC1-C3アルキル、-OH、-NHR3または-NR3
2から独立して選択され、式中、R3は、非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルであり、特にR5、R6またはR7の少なくとも1つが-OH、NHR3または-NR3
2であり、他の2つが-HまたはC1-C6アルキル、特にC1-C3アルキルから選択される。
【0058】
特定の実施形態において、R1は、式(R5)(R6)(R7)C-(C=O)-O-の部分の形態であり、R5、R6またはR7の各々は、C1-C6アルキル、特にC1-C3アルキル、-OH、-NHR3または-NR3
2から独立して選択され、式中、R3は、非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルであり、特にR5、R6またはR7の1つが-OH、NHR3または-NR3
2である場合、他の2つは、-HまたはC1-C6アルキル、特にC1-C3アルキルから選択される。
【0059】
特定の実施形態において、R1は、式(R5)(R6)(R7)C-(C=O)-O-の部分の形態であり、R5、R6またはR7の各々は、C1-C6アルキル、特にC1-C3アルキル、-OH、または-NR3
2から独立して選択され、式中、R3は、非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルであり、特にR5、R6またはR7の1つが-OHまたは-NR3
2である場合、他の2つは、-HまたはC1-C6アルキル、特にC1-C3アルキルから選択される。
【0060】
特定の実施形態において、R1は、式(R5)(R6)(R7)C-(C=O)-O-の部分の形態であり、R5、R6またはR7の各々は、C1-C6アルキル、特にC1-C3アルキル、または-NR3
2から独立して選択され、式中、R3は、非置換または置換C1-C6アルキル、特に非置換アルキル、特にC1-C3アルキル、より具体的にはC1アルキルであり、特にR5、R6またはR7の1つが-NR3
2である場合、他の2つは、-HまたはC1-C6アルキル、特にC1-C3アルキルから選択される。
【0061】
特定の実施形態において、開環工程は、卑金属、特にZn、および強酸の存在下で行われる。
【0062】
特定の実施形態において、開環工程は、卑金属、特にZn、および強酸の存在下で行われ、強酸はHCl、HBr、H2SO4、HNO3から選択され、より具体的には強酸はHClである。
【0063】
特定の実施形態において、開環工程は、卑金属、特にZn、およびHClの存在下で行われる。
【0064】
特定の実施形態において、開環工程は、ZnおよびHClの存在下で行われる。
【0065】
特定の実施形態において、開環工程は、有機溶媒、極性溶媒または非極性溶媒中で行われる。
【0066】
特定の実施形態において、開環工程は、トルエンまたはアルコール、特にC1-C6アルコール、またはそれらの混合物中で行われる。
【0067】
特定の実施形態において、開環工程は、トルエンまたはアルコール、特にC1-C4アルコール、またはそれらの混合物中で行われる。
【0068】
特定の実施形態において、開環工程は、非極性溶媒と極性溶媒との混合物中で行われ、非極性溶媒と極性溶媒との比は3:1から1:10の間、より具体的には1:1から1:3の間である。
【0069】
特定の実施形態において、開環工程は、トルエンとアルコールとの混合物中で行われ、トルエンとアルコールとの比は、3:1から1:10の間、より具体的には1:1から1:3の間である。
【0070】
特定の実施形態において、開環工程は、トルエンとC2-C4アルコールとの混合物中で行われ、トルエンとアルコールとの比は、3:1から1:10の間、より具体的には1:1から1:3の間である。
【0071】
特定の実施形態において、開環工程は、トルエンとエタノールまたはトルエンとプロパノールとの混合物中で行われ、トルエンとアルコールとの比は、3:1から1:10の間、より具体的には1:1から1:3の間である。
【0072】
特定の実施形態において、R4は、-F、過フッ素化C1-C6アルキル、C1-C6アルキル、またはC1-C6アルキルフェニルから選択される。いくつかの実施形態において、R4は、-F、過フッ素化C1-C3アルキル、C1-C3アルキルまたはC1-C3アルキルフェニルから選択される。いくつかの実施形態において、R4は、-F、メチル、トリフルオロメチル、メチルフェニルから選択される。
【0073】
特定の実施形態において、脱離基Xは、ハロゲンまたはOSO2R4である。
【0074】
特定の実施形態において、脱離基Xは、ハロゲンである。
【0075】
特定の実施形態において、脱離基Xは、Clである。
【0076】
特定の実施形態において、還元剤は、金属水素化物または有機金属水素化物である。
【0077】
いくつかの実施形態において、還元剤は、水素化アルミニウムもしくは水素化ホウ素、または水素化アルミニウムもしくは水素化ホウ素を含む混合物もしくは錯体である。
【0078】
いくつかの実施形態において、還元剤は、LiAlH4、Red-Al(水素化ナトリウム-ビス(2-メトキシエトキシ)-アルミニウム)またはDIBAL(水素化ジイソブチルアルミニウム)またはLiBHEt3である。
【0079】
特定の実施形態において、脱離基Yは、OH、二窒素、ジアルキルエーテル、ハロゲン、アルキルカルボキシラート、パーフルオロアルキルスルホナート、アルキルスルホナート、ニトラート、ホスファート、アミドから選択される。
【0080】
特定の実施形態において、脱離基Yは、ハロゲンである。
【0081】
特定の実施形態において、脱離基Yは、Clである。
【0082】
本発明の第2の態様は、一般式(I)、式(II)または式(III)、特に式(II)または式(III)の化合物の形態の上記反応鎖の中間生成物であり、
【化14】
式中、R
1は、R
1が非置換アルキルではないことを除いて、上記と同じ定義を有し、
【化15】
式中、R
1は上記と同じ定義を有し、
【化16】
式中、R
1およびZは上記と同じ定義を有する。
【0083】
これらの新規化合物は、上記の反応において高収率で合成することができる。それらの特有の特徴は、それらを様々なステロイドの効率的な合成に適したものにする。
【0084】
方法
1つの潜在的な経路は、スキーム1に記載されている。
【化17】
スキーム1:ジオスゲニンをピバロエートに変換し、これを亜鉛でジオールに還元する(クレメンゼン還元)。ヒドロキシル基をMsClと反応させてビスメシラートにする。メシラートおよびピバロイルエステルはLiAlH
4で除去される。この戦略は非常によく機能し、スケールアップが容易であり、4段階のみでコレステロールを高収率で提供する。Piv-Clによる保護は、高収率工程(90%)であり、その後、60分間(0℃→室温)の、クレメンゼン還元、ビスメシラートとしての保護(95%)およびエーテル/THF中の最終LiAlH4還元について少なくとも80%が続き、97%粗収率でコレステロールを得る(薄層クロマトグラフィーTLCでスポットごと)。
【0085】
例スキーム1
【化18】
ジオスゲニン13gをピリジン110mlに溶解し、塩化ピバロイル4、6mlを滴下した。反応物を室温で6時間混合した。完了後、反応物をトルエン250mlに希釈した。有機相を1MのHCl溶液(3×150ml)、飽和NH
4Cl溶液(1×100ml)、水(1×100ml)および飽和NaClで洗浄した。溶液をNa
2SO
4で脱水した。次いで、生成物を繰り返し結晶化し、洗浄し、再溶解させてその純度を高めた。反応により、12.66gのpiv-ジオスゲニンを得た。
【化19】
【0086】
piv-ジオスゲニン全体および亜鉛粉末250gをn-プロパノール/トルエン(3:1)0.5lに懸濁し、75℃まで加温した。塩酸(37%)を滴下し、80℃で3時間反応させた。固体を液体から分離し、トルエンおよび水で洗浄した。相を分離し、有機相を水(2×150ml)で洗浄した。合わせた相をトルエン(1×100ml)で抽出した。合わせた有機相をNa
2SO
4で脱水した。生成物を一晩結晶化させた。次いで、生成物を繰り返し結晶化し、洗浄し、再溶解させてその純度を高め、10.33gのpiv-ジオスゲニン-ジオールを得た。
【化20】
【0087】
10.33gのpiv-ジオスゲニン-ジオールを100mlのピリジンに添加した。メタンスルホニルクロリド4.75mlをゆっくり滴下した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をエチルアセタート300mlで希釈し、1MのHCl(3×200ml)、飽和NH
4Cl溶液(1×200)、飽和NaCl溶液で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、白色泡の形態の粗生成物を得た。
【化21】
【0088】
4g(5当量)の水素化リチウムアルミニウム(LAH)を50mlの乾燥テトラヒドロフランに懸濁し、0℃に冷却した。ピブジオスゲニンメシラートを脱水テトラヒドロフラン50mlに溶解し、ゆっくり滴下した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。もはや出発物質が検出されなくなった後、混合物を0℃に冷却し、過剰なLAHを水(30ml)で慎重にクエンチした。次いで、溶液をエチルアセタート(300ml)および水(200ml)で希釈し、相を分離した。有機相を飽和NH4Cl溶液(1×100ml)、飽和NH4HCO3溶液(1×100ml)、水(1×100ml)、飽和NaCl溶液で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させた。エチルアセタートをロータリーエバポレーターで除去した。粗生成物を還流下でMTBE/エタノール溶媒混合物(1:2)50mlに溶解し、室温で一晩放置した。コレステロールは、銀光沢フレークとして結晶化する。
【0089】
【0090】
スキーム2:N,N-ジメチル-L-バリンを介した代替経路
例スキーム2
DCM(10ml)中のN,N-ジメチル-L-バリン(251mg、1.2当量)をジシクロヘキシルカルボジイミド(386mg、1.3当量)と室温で17分間撹拌し、続いてジオスゲニン(517mg、1.0当量)および4-N,N-ジメチルアミノピリジン(35mg、0.2当量)を添加した。1時間後、混合物を水で2回洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、蒸発させた。残渣をシリカのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/エーテル4:1)によって精製して、エステル(452mg、61%)を得た。
【0091】
エタノール(26ml)中の亜鉛(7.6g)およびエステル(405mg)の懸濁液を加熱還流し、塩酸(37%、8ml)を1時間にわたって添加した。還流でさらに2時間後、残りの亜鉛を濾別し、濾液を水で処理し、トルエンで抽出した。MgSO4で乾燥させ、蒸発させた後、所望のジオール(147mg、36%)をシリカのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/エーテル3:1)によって単離した。
【0092】
ジオール(147mg)のピリジン(1.35ml)溶液を0℃冷却し、メタンスルホニルクロリド(0.23ml、4当量)を添加した。周囲温度で1時間後、混合物をエチルアセタートで希釈し、続いて1MのHCl溶液、NaHCO3の飽和水溶液、およびブラインで洗浄した。溶液を乾燥させ(MgSO4)、蒸発させて粗ビスメシラート(215mg)を得、これを次の工程に使用した。
【0093】
粗ビスメシラート(215mg)をTHF(3ml)に溶解し、LiAlH4(17mg、1.5当量)のTHF(3ml)懸濁液に室温で添加した。1時間後、別のLiAlH4(17mg、1.5当量)を添加し、混合物をさらに1時間撹拌した。反応混合物を最初に1MのNaOH溶液でクエンチし、次いで、Na-K-タートラートとエチルアセタートとの間で分配した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、蒸発させた。コレステロール(47mg、2工程で45%)を、シリカのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/ジエチルエーテル2:1)によって単離した。
【0094】
他の代替経路は、保護基m-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸またはα-ヒドロキシ-イソ-酪酸を介する。
【0095】
m-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸経路
【化23】
ジオスゲニン1g、DCC0.5g、4-DMAP0.2gおよびm-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸0.4gを、試行DCM15ml中室温で18時間撹拌した。混合物をDCM20mlで希釈し、飽和NaHCO
3溶液、飽和NH
4Cl溶液、水およびブラインで洗浄した。有機層をMgSO
4上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をHV下で乾燥させた。
【0096】
α-ヒドロキシ-イソ-酪酸経路
【化24】
ジオスゲニン5g、B(OH)
3 40mgおよびα-ヒドロキシ-イソ-酪酸1.5gをトルエン50mlに溶解し、ストークディーントラップを用いて2日間還流した。混合物をトルエン50mlで希釈し、飽和NaHCO
3溶液、飽和NH
4Cl溶液、水およびブラインで洗浄した。有機層をMgSO
4上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ペンテン/エーテル1:1)に供し、3.9gの白色粉末を得た。
【国際調査報告】