(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-07
(54)【発明の名称】浮体製造装置及び浮体構造物を構築する方法
(51)【国際特許分類】
B63B 75/00 20200101AFI20240531BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240531BHJP
【FI】
B63B75/00
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023573095
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2022063882
(87)【国際公開番号】W WO2022248400
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523444903
【氏名又は名称】モバイル・ファブリケーション・サイト・アンド・ポート・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲイル・グリムスルード
(57)【要約】
浮体構造物(15)を構築するための浮体製造装置。浮体製造装置は、連続するデッキを有する浮体ユニット(1~4)と、浮体ユニット(1~4)に取り付けられた少なくとも一台のクレーン(5、6)と、浮体ユニット(1~4)を水域にて浮いた状態で係留することができる係留装置とを備える。浮体ユニット(1~4)は、デッキが実質的に水平な姿勢で水面上にある状態で浮体ユニット(1~4)が浮かぶ第1の構築位置と、デッキの第1部分が水没し、デッキの第2部分が水面上にある第2の傾斜進水位置との間で、浮体ユニット(1~4)をバラスト処理及び脱バラスト処理することができるバラスト室を有する。浮体構造物を構築する方法も記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物を構築するための浮体製造装置であって、
連続するデッキを有する浮体ユニットと、
前記浮体ユニットに取り付けられた少なくとも一台のクレーンと、
前記浮体ユニットを水域にて浮いた状態で係留することができる係留装置と、
を備え、
前記浮体ユニットは、前記デッキが実質的に水平な姿勢で水面上にある状態で前記浮体ユニットが浮かぶ第1の構築位置と、前記デッキの第1部分が水没し、前記デッキの第2部分が水面上にある第2の傾斜進水位置との間で、前記浮体ユニットをバラスト処理及び脱バラスト処理することができるバラスト室を有することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記浮体ユニットは、強固に相互連結された複数の艀から組み立てられることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、岸壁側に隣接して係留されるように適合され、前記デッキの前記第1部分は、前記浮体ユニットの遠位側に隣接しており、すなわち、前記岸壁側とは反対に面しており、前記デッキの前記第2部分は、前記浮体ユニットの近位側に隣接している、すなわち、前記岸壁側に面していることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記艀は、その長辺が対向するように相互連結されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
最も外側の前記艀の前記デッキ上に配置された二台のクレーンを備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記艀は、溶接によって互いに連結されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記艀は、前記艀間に取り付けられた器具によって互いに連結されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記岸壁と前記浮体ユニットとの間に延伸する傾斜路を備えることを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記係留は、前記浮体ユニットを前記岸壁に取り付ける大索を備えることを特徴とする、請求項3から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記係留は、前記浮体ユニットと海底にある1以上のアンカーとの間に取り付けられた係留索をさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
浮体構造物を構築する方法であって、
a.連続するデッキを有する浮体ユニットを水域にて係留するステップと、
b.前記浮体構造物を構築するための構成部材を前記浮体構造物に搬入するステップと、
c.前記構成部材を前記デッキ上に持ち上げ、前記構成部材を相互連結して前記浮体構造物を立設するステップと、
d.前記浮体ユニットをバラスト処理して傾斜姿勢にし、前記デッキの第1部分を水面下に浸水させるステップと、
e.前記完成した浮体構造物を前記浮体ユニットから離して水中へと摺動させるステップと、
f.前記浮体ユニットを脱バラスト処理して、前記デッキを水中から完全に浮上させるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
a.複数の艀を強固に相互連結して、連続するデッキを有する単一の浮体ユニットを形成するステップと、
b.前記ユニットを岸壁に隣接して係留するステップと、
c.前記浮体構造物を構築するための構成部材を、前記構成部材を前記デッキ上に持ち上げる前に、前記岸壁に搬入するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンの基礎などの浮体構造物を構築するための浮体製造装置、並びにそのような構造物を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浮体構造物を、海岸でまたは岸壁付近で構築すると都合がよい。構造物を海岸で構築する場合、構造物を水中へと持ち上げることができるクレーンまたは構造物を構築した後に構造物を水中へ進水させるためのスリップのいずれかが必要である。
【0003】
あるいは、浮いた状態で構造物を構築することができる。これは、乾ドックで行うこともできるし、既に構築された浮体土台の上で行うこともできる。乾ドックを使用する場合、完成した構造物を収容するための十分な大きさが必要である。大型構造物の場合、利用可能なそのようなドックの数には限りがある。
【0004】
これらの技術は、一般に、構造物が海底に衝突することなく進水できるよう、岸壁の隣に十分な水深を必要とする。唯一の例外は、構造物を乾ドックにて構築する場合であり、それにより、水深が十分な場所までドックを曳航することが可能である。
【0005】
上記制約があるため、浮体構造物を構築することができる場所には大きな制限がある。その制限は、浮体構造物の規模及び喫水に伴い増大する。
【0006】
したがって、浮体構造物の構築に適した場所から浮体構造物を配備する場所まで浮体構造物を曳航する必要が往々にしてある。その距離は相当なものであり得る。これは時間がかかるだけでなく、費用がかかる。また、曳航は良好な気象条件のもとで行われなければならないため、リスクを伴う。最後に、とはいえ重要なことではあるが、長距離にわたって構造物を曳航することは環境に非常によくない。特に、炭素排出量を削減することが想定される風力タービンを構築する際には、できるだけ環境に優しい製造を行うことが望ましい。
【0007】
これに対する明白な解決策は、既存の岸壁付近で海底を掘削するか、岸壁を構築するか、あるいは、既存の岸壁をより深い海域へ拡張することによって水深を深くすることであろう。しかしながら、これは、環境的観点からも、コストが高いという点からも望ましくない。
【0008】
先行技術文献としては、特許文献1、特許文献2及び特許文献3が挙げられる。これらはいずれも本発明の要件を満たさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2016/138088号公報
【特許文献2】特開昭55-83678号公報
【特許文献3】瑞典国特許第443962号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、大型の浮体構造物を該浮体構造物が配備される場所に近い既存施設にて構築することを、既存施設付近の水深が浮体構造物を浮かせるには浅すぎる場合であっても可能にする新規解決策への要望が高い。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、後の請求項1に定義された装置及び後の請求項11の方法によって上記の問題を解決する。好都合な実施形態は、従属請求項において定義される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】構築現場に曳航されているクレーン付きの一組の艀を示す図である。
【
図2】構築現場で組み立てられた一組の艀を示す図である。
【
図3】一組の艀に立設されている構造物を示す図である。
【
図4】一組の艀上にある完成した構造物を示す図である。
【
図5】一組の艀から進水されようとしている構造物を示す図である。
【
図7】一組の艀の外側に浮かぶ構造物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、構築現場に曳航されている一組の艀1~4を示す。艀は、標準タイプのものであってもよいし、互いに連結することができるように変更された標準の艀であってもよい。図面には4つの艀が示されているが、デッキ面積の大きさ及び必要な浮力に応じて、艀の数はより少なくてもよいし、より多くてもよい。
【0014】
それぞれの艀1、4の上部に取り付けられた二台のクレーン5、6もある。曳航中、クレーンのブームはそれぞれのブームレスト7、8に載置されている。
【0015】
艀は、艀1~4間に延伸する曳航索を有する一隻の曳航船9によって曳航することができると都合がよい。ただし、曳航対象の両端に一隻ずつ、少なくとも二隻の曳航船を用いるとより安全であろう。
【0016】
艀1~4が目的地、すなわち岸壁10に到達すると、艀は横一列に並べられ、艀1~4の一方の短辺が岸壁側に隣接するように係留される。好ましくは、艀1~4は岸壁10に接する。艀と岸壁との間に防舷材を配置してもよい。係留は、艀と岸壁との間に延伸する大索を備えてもよい。
【0017】
艀1~4を備える浮体ユニットは、岸壁からある程度離れた場所や、または、入江や狭湾内などの隔離地に係留されてもよい。
【0018】
そして、艀1~4は溶接などによって固定的に連結されて、艀が互いに対して移動または屈曲することのできない単一の浮体ユニットを構成する。この工程は、艀が係留される前に行ってもよい。
【0019】
溶接の代わりに、艀間に取り付けられた器具によって強固に艀を連結してもよい。連結は、艀1~4のデッキが面一であり、デッキの表面上に突出する障害物がないように行うべきである。
【0020】
艀は、二台のクレーン5、6がそれぞれの外側の艀1及び4上に位置するように、好ましくは、それら艀の外側付近並びに艀1、4の内側端部、すなわち、岸壁10に隣接する端部付近に位置するように配置される。より小さな浮体構造物の構築には、一台のクレーン5で十分であり得る。
【0021】
潮の干満差により、艀1~4、すなわち浮体ユニットのデッキは、岸壁10に対して異なる高度になる。これは、艀のバラストを変えることにより、少なくとも部分的に補償することができる。しかしながら、艀1~4と岸壁10との間に傾斜路(図示せず)を配置してもよい。傾斜路は、人や小さな手荷物専用の小さな傾斜路でもよいが、車両が横断できるようなより大きな傾斜路でもよい。
【0022】
また、艀はロープや鎖などの係留索を有してもよく、その一端は岸壁側から遠い側面に取り付けられ、他端は岸壁側から離れた海底に配置されたサクションアンカーなどのアンカーに取り付けられる。
【0023】
このように艀1~4が係留された状態で土台の構築を開始してもよい。土台を構築するための構成部材は、トラックまたはボートによって岸壁に搬入される。構成部材は、クレーン5、6によって、艀1~4のデッキ上に吊り上げられると都合がよい。
【0024】
別の実施形態では、浮体ユニットは、艀から組み立てるのではなく、単一または複数の船体構造物として専用に構築してもよい。
【0025】
図3は、土台の二本の円柱11、12が設置され、支柱13によって相互連結されている状態を示す。連結は、支柱の管状部分を互いに溶接することによって行うと都合がよい。
【0026】
図4では、三本目の円柱14が設置され、最初の二本の円柱11、12に連結されている。かくして土台15が完成する。
【0027】
図5は、進水工程の第1のステップを示す。クレーン5、6のブームは、ブームレスト7、8上に下降されて固定されている。艀は、艀1~4の遠位端にあるバラスト室に水を流入することによってバラスト処理される。このバラスト処理によって、艀1~4の遠位端が水中に沈む。バラスト室への水の流入は、艀1~4の外縁に最も近い二本の円柱12、14が部分的に水沈し、好ましくは、艀1~4のデッキから浮き上がるまで続く。
【0028】
艀1~4が、土台15がデッキから離れて水中へと摺動するのに十分な傾斜に達すると、土台と艀1~4との間のすべての拘束が解除される。土台が重力により摺動しない場合は、ウインチなどを作動させて、土台をデッキに沿って牽引してもよい。
【0029】
図6では、土台15はデッキからほぼ完全に離れて摺動していて、最も内側の円柱11が浮き始めている。
【0030】
図7では、土台15は、艀1~4の外側で浮いている。岸壁側からこの距離では、水深は、土台15が海底に触れることなく浮くのに十分である。これにより、風力タービンなどの上部構造物の設置に都合のよい近くの場所まで曳航することができる。
【0031】
土台15の進水後、バラスト室内の水を汲み出すことによって、艀1~4が脱バラスト処理され、その結果、艀1~4は、デッキが水平面にある状態で浮上する。その後、次の土台の構築を開始することができる。
【0032】
上記のように、予定された数の土台を構築して進水させると、艀1~4を互いに切り離して、曳航する。あるいは、艀が次に別の場所などで単一ユニットとして使用される場合には、艀1~4を1ユニットとして曳航してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1~4 艀、5,6 クレーン、7,8 ブームレスト、9 曳航船、10 岸壁、11,12,14 円柱、13 支柱
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物を構築するための浮体製造装置であって、
連続するデッキを有する浮体ユニットと、
前記浮体ユニットに取り付けられた少なくとも一台のクレーンと、
前記浮体ユニットを水域にて浮いた状態で係留することができる係留装置と、
を備え、
前記浮体ユニットは、前記デッキが実質的に水平な姿勢で水面上にある状態で前記浮体ユニットが浮かぶ第1の構築位置と、前記デッキの第1部分が水没し、前記デッキの第2部分が水面上にある第2の傾斜進水位置との間で、前記浮体ユニットをバラスト処理及び脱バラスト処理することができるバラスト室を有
し、
岸壁側に隣接して係留されるように適合され、前記デッキの前記第1部分は、前記浮体ユニットの遠位側に隣接しており、すなわち、前記岸壁側とは反対に面しており、前記デッキの前記第2部分は、前記浮体ユニットの近位側に隣接している、すなわち、前記岸壁側に面していることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記浮体ユニットは、強固に相互連結された複数の艀から組み立てられることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記艀は、その長辺が対向するように相互連結されることを特徴とする、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
最も外側の前記艀の前記デッキ上に配置された二台のクレーンを備えることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記艀は、溶接によって互いに連結されることを特徴とする、
請求項2または3に記載の装置。
【請求項6】
前記艀は、前記艀間に取り付けられた器具によって互いに連結されることを特徴とする、
請求項2または3に記載の装置。
【請求項7】
前記岸壁と前記浮体ユニットとの間に延伸する傾斜路を備えることを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記係留は、前記浮体ユニットを前記岸壁に取り付ける大索を備えることを特徴とする、
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記係留は、前記浮体ユニットと海底にある1以上のアンカーとの間に取り付けられた係留索をさらに備えることを特徴とする、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
浮体構造物を構築する方法であって、
a.連続するデッキを有する浮体ユニットを水域にて係留するステップと、
b.前記浮体構造物を構築するための構成部材を前記浮体構造物に搬入するステップと、
c.前記構成部材を前記デッキ上に持ち上げ、前記構成部材を相互連結して前記浮体構造物を立設するステップと、
d.前記浮体ユニットをバラスト処理して傾斜姿勢にし、前記デッキの第1部分を水面下に浸水させるステップと、
e.前記完成した浮体構造物を前記浮体ユニットから離して水中へと摺動させるステップと、
f.前記浮体ユニットを脱バラスト処理して、前記デッキを水中から完全に浮上させるステップと、
g.複数の艀を強固に相互連結して、連続するデッキを有する単一の浮体ユニットを形成するステップと、
h.前記ユニットを岸壁に隣接して係留するステップと、
i.前記浮体構造物を構築するための構成部材を、前記構成部材を前記デッキ上に持ち上げる前に、前記岸壁に搬入するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【国際調査報告】