(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-10
(54)【発明の名称】事故防止針装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
A61M5/32 510K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023558424
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 GB2022050747
(87)【国際公開番号】W WO2022200802
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515316506
【氏名又は名称】ティップ-トップドットコム リミテッド
【住所又は居所原語表記】2 Moss Road,Stanway,Colchester CO3 0LE Great Britain
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リバーシッジ,バリー ピーター
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066DD08
4C066FF06
4C066LL26
4C066NN06
4C066NN07
(57)【要約】
【構成】
本発明は医療用インジェクターとともに使用する事故防止針装置10に関する。ブロッキング手段が、使用前に、制御部材80が針支持部80に係合し、針12を操作位置に維持する設定位置から管状ハウジング20の長手軸線にそってスライド変位可能な制御部材80を有する。この事故防止針装置10を医療用インジェクターに装着し、使用した後は、医療用インジェクター11から事故防止針装置10を取り外す。次に制御部材80が設定位置から離間し、針支持部60との係合が外れる。次に、バネ手段70によって針12が遮蔽位置まで回転し、針12の非患者側端部15管状ハウジング20の遠位端部22に向かって移動する。この端部では、針12が管状ハウジング20の長手軸線に対して斜めの角度で伸長し、管状ハウジング20の内壁26に隣接する位置に針12の非患者側端部15を配置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インジェクターに併用する事故防止針装置であって、
前記医療用インジェクターに取り付ける構成の近位端部から遠位端部まで長手方向に伸長し、医療用インジェクターに着脱自在に取り付け可能な管状ハウシング、
患者側端部および非患者側端部を有する両頭針を直接または間接に支持する前記管状ハウジング内に位置する針支持部であって、針を操作位置から遮蔽位置まで移動させる構成の針支持部、
前記針の前記遮蔽位置までの移動を付勢するバネ手段、および
前記操作位置からの前記針の移動を阻止する解除可能なブロッキング手段であって、前記針は前記管状ハウジングの長手軸線方向に伸長し、前記ブロッキング手段が解除されると前記針が前記遮蔽位置へ移動されるブロッキング手段、を有する事故防止針装置であり、
前記針支持部は前記管状ハウジングに挿入され旋回位置に固定されて、前記管状ハウジングの長手軸線に交差する軸を中心に回転する一体部材であり、かつ前記バネ手段は前記軸線を中心とする前記針の回転を付勢し、そして
前記ブロッキング手段は前記管状ハウジングの長手軸線に沿って設定位置からスライド変位可能な制御部材を有し、該制御部材は前記針支持部を係合して前記針を使用前に操作位置に維持し、前記事故防止針装置を前記医療用インジェクターに取り付けて該医療用インジェクターを使用した後に前記事故防止針装置が前記医療用インジェクターから取り外されると、前記制御部材が前記設定位置から離間し、前記針支持部との係合が外れ、前記バネ手段が前記針を前記遮蔽位置まで回転させ、前記非患者側端部を前記管状ハウジングの遠位端部に向けて移動させ、前記針が前記管状ハウジングの長手方向位置に対して斜めの角度で伸長し、この針の非患者側端部を前記管状ハウジングの内壁に隣接する位置に設定する
ことを特徴とする事故防止針装置。
【請求項2】
前記管状ハウジングに対して前記回転軸を静的に固定し、前記非患者側端部がこの回転軸を中心とする円周方向経路を前記操作位置から前記遮蔽位置まで移動する請求項1に記載の事故防止針装置。
【請求項3】
前記遮蔽位置において、前記針の非患者側端部が前記管状ハウジングの内周壁に接触する請求項1又は2に記載の事故防止針装置。
【請求項4】
前記制御部材が係合開口を有し、前記設定位置において、前記針支持部の一部がこの係合開口内に位置し、前記針が操作位置から回転することを抑える請求項1~3のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項5】
前記制御部材が環状部材を有し、この環状部材の中心に前記係合開口が位置する請求項4に記載の事故防止針装置。
【請求項6】
前記針支持部が設定位置において前記制御部材の開口内に位置するカラーを有する請求項4又は5に記載の事故防止針装置。
【請求項7】
前記バネ手段が、前記管状ハウジングから内向きに伸長し、かつ前記回転軸からオフセットした位置において前記針支持部の外面に接触する弾性部材を有する請求項1~6のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項8】
前記バネ手段が前記管状ハウジングから内側に突き出る重ね板バネを有し、前記針が操作位置にある状態で、この重ね板バネがニュートラル位置に対して偏向位置にある請求項1~7のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項9】
前記重ね板バネの端面が前記針支持部の長手方向外面に接触し、前記回転軸を中心とするトルクを発生する請求項8に記載の事故防止針装置。
【請求項10】
前記針支持部が外面に軸方向部材が位置する一体的な構成要素からなる請求項1~9のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項11】
前記管状ハウジングが内面に位置する軸方向部材を有し、これら部材が前記針支持部に設けられた軸方向部材と協働する請求項10に記載の事故防止針装置。
【請求項12】
前記針支持部の軸方向部材および前記管状ハウジングによってこの管状ハウジングの軸方向部材内においてこの針支持部を前記旋回位置に押し込め嵌め係合する請求項11に記載の事故防針装置。
【請求項13】
前記管状ハウジングの軸方向部材および前記針支持部が、突出部を有する第1対の軸方向部材および対応する凹部を有する第2対の軸方向部材を有する請求項11または12に記載の事故防止針装置。
【請求項14】
前記突出部が半球状突出部である請求項13に記載の事故防止針装置。
【請求項15】
前記管状ハウジングの近位端部から離間して、前記針支持部を離脱するように前記制御部材が取り付けられた請求項1~14のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項16】
針遮蔽スリーブを有し、かつ前記制御部材がこの針遮蔽スリーブの遠位端面を有し、この遠位端面が、制御部材が設定位置にある状態で、針が操作位置から回転することを防止する係合開口になる請求項1~15のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項17】
前記制御部材がディスクを有し、このディスクが事故防止針装置の針遮蔽スリーブ内に位置する請求項1~15のいずれか一項に記載の事故防止針装置であって、前記ディスクが設定位置から前記針遮蔽スリーブ内でスライド変位可能で、前記制御部材が前記針遮蔽スリーブ内に摩擦係合し、注射時前記管状ハウジングによる移動時に前記針遮蔽スリーブの遠位端部に隣接する位置に維持される事故防止針装置。
【請求項18】
前記制御部材が遠位端面およびこの端面から延在するスカート部分を有し、この遠位端面が設定位置において前記針支持部の外面に係合する開口を有し、前記スカート部分が医療用インジェクターの一部に接触する接触面になり、そして前記制御部材が、前記事故防止針装置の取り付け時に前記設定位置から前記医療用インジェクターへ移動する請求項1~15のいずれか1項に記載の事故防止針装置。
【請求項19】
前記管状ハウジングの近位端部に向かって移動し、前記針支持部を脱係合するにように前記制御部材が取り付けられた請求項1~14のいずれか1項に記載の事故防止針装置。
【請求項20】
非注射構成において針遮蔽スリーブが前記針の患者側端部を取り囲み、かつ遮蔽し、そしてこの針遮蔽スリーブが前記設定位置から前記制御部材をスライド変位させる解除手段を有する請求項19に記載の事故防止針装置。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の事故防止針装置および医療用インジェクターを有する薬剤送達装置。
【請求項22】
前記医療用インジェクターがゴムシールを有し、前記事故防止針装置がこの医療用インジェクターに取り付けられることにより、前記針の非患者側端部が前記ゴムシールに貫通され、前記制御部材の前記設定位置からの移動後に、このゴムシールを貫通した非患者側端部の位置によって前記針を操作位置に維持する請求項21に記載の薬剤送達装置。
【請求項23】
医療用インジェクターとともに使用する事故防止針装置における針の非患者側端部を遮蔽する遮蔽方法であって、前記事故防止針装置は、
前記医療用インジェクターに取り付ける構成の近位端部から遠位端部まで長手方向に伸長し、前記医療用インジェクターに着脱自在に取り付け可能な管状ハウシング、
患者側端部および非患者側端部を有する両頭針を直接または間接に支持し前記管状ハウジング内に位置する針支持部であって、前記針を操作位置から遮蔽位置まで移動させる構成の針支持部、
前記針の前記遮蔽位置までの移動を付勢するバネ手段、および
前記操作位置からの前記針の移動を阻止する解除可能なブロッキング手段であって、前記針は前記管状ハウジングの長手軸線方向に伸長し、前記ブロッキング手段が解除されると前記針が前記遮蔽位置へ移動されるブロッキング手段、を有し、
前記針支持部は前記管状ハウジングに挿入され旋回位置に固定されて、前記管状ハウジングの長手軸線に交差する軸を中心に回転する一体部材であり、かつ前記バネ手段は前記軸線を中心とする前記針の回転を付勢する、事故防止針装置における針の非患者側端部を遮蔽する遮蔽方法であり、
該遮蔽方法は、
前記制御部材が前記針支持部に係合して使用前に前記針を操作位置に維持する設定位置から前記管状ハウジングの長手軸線に沿って前記ブロッキング手段の制御部材をスライド変位させ、
前記事故防止針装置を前記医療用インジェクターに取り付け、
前記事故防止針装置および前記医療注射器を使用して注射を行い、そして
次に前記事故防止針装置を前記医療注射器から取り外し、
これにより、前記制御部材が前記設定位置から離間し、前記針支持部との係合が外れ、前記バネ手段が前記針を前記遮蔽位置まで回転させ、前記非患者側端部を前記管状ハウジングの遠位端部に向けて移動させ、前記針が前記管状ハウジングの長手方向位置に対して斜めの角度で伸長し、この針の非患者側端部を前記管状ハウジングの内壁に隣接する位置に設定する
ことを特徴とする遮蔽方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋭い尖端をもつ針に使用して、この針を受動的に保護する事故防止装置に関する。また本発明は、医療用インジェクターと共に使用する事故防止針装置、事故防止針装置および医療用インジェクターを有する薬剤送達システム、および事故防止針装置における針の非患者側端部を遮蔽(shield)する方法にも関する。
【0002】
本発明の事故防止装置は主に、とはいっても限定するわけではないが、医療用針(medical needle。なお本明細書では「針」「注射針」ということもある。)を対象とする。医療用針は人体や動物に突き刺すために使用することができ、あるいは静脈内投薬システムの穿孔可能な膜への貫通などの他の医療用途にも使用可能である。
【0003】
以下の説明において、事故防止針装置の使用に関しては、例え他の使用方法を意図する場合であっても、身体への突き刺し(penetration of a body)のように表現するのにとどめる。
【背景技術】
【0004】
各種の流体は、必要な流体の流体源とともに中空針を使用して身体に投与することができる。例えば、このような針は液剤を保持したシリンジと併用することができ、この針を使用して液剤を投与すべき個所で身体に突きさすことができる。同様に、中空針を使用することによって体液を回収することもでき、この場合には体液を回収すべき個所に尖端が位置するまで身体に突き刺す。
【0005】
上記を行う際に臨床医や注射針を使用あるいは取り扱う他の者にとって認識されている危険の一つは所謂針刺し損傷である。このような損傷の原因は偶然発生する針刺しである。注射針を使用して流体を注射する前に、あるいは身体から流体を回収する前に、この問題が発生することは稀である。ところが、一旦注射針を使用した後は、臨床医や使用済み針を廃棄する者にとって重大な問題が発生する恐れがきわめて高くなる。
【0006】
この針刺し損傷は皮膚に注射を行うために使用する注射針の遠位尖端を原因とするが、注射針の近位端部も鋭い。液剤を保持するカートリッジまたは容器に突き通すか、あるいは突き刺すためである。従って、いったん注射針支持装置を注射装置から引き出した後にも、針の近位端部が臨床医や使用者にとってさらに危険の原因となり得る。
【0007】
事故防止針装置の近位端部は遠位尖端を遮蔽する遮蔽装置を備え、そしてさらに近位尖端を部分的にでも保護するシュラウド(shroud)またはスカート(skirt)を備えることができる。もっとも、尖端に依然としてアクセス可能であるため、針刺し損傷が依然発生する恐れがある上に、近位尖端がシュラウドまたはスカート内中心に位置するため、指尖端が近位端部にある針尖端に簡単に接触する恐れがある。
【0008】
本発明の一つの目的は、以上指摘した、あるいは従来いずれかにおいて指摘されている従来技術の少なくとも一つの問題を解決することにある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1態様に係る、医療用インジェクターとともに使用する事故防止針装置は、
前記医療用インジェクターに取り付ける構成の近位端部から遠位端部まで長手方向に伸長し、医療用インジェクターに着脱自在に取り付け可能な管状ハウシング、
患者側端部および非患者側端部を有する両頭針を直接または間接に支持する前記管状ハウジング内に位置する針支持部であって、針を操作位置から遮蔽位置まで移動させる構成の針支持部、
前記針の前記遮蔽位置までの移動を付勢するバネ手段、および
前記操作位置からの前記針の移動を阻止する解除可能なブロッキング手段であって、前記針は前記管状ハウジングの長手軸線方向に伸長し、前記ブロッキング手段が解除されると前記針が前記遮蔽位置へ移動されるブロッキング手段、を有する事故防止針装置であり、
前記針支持部は前記管状ハウジングに挿入され旋回位置に固定されて、前記管状ハウジングの長手軸線に交差する軸を中心に回転する一体部材であり、かつ前記バネ手段は前記軸線を中心とする前記針の回転を付勢し、そして
前記ブロッキング手段は前記管状ハウジングの長手軸線に沿って設定位置からスライド変位可能な制御部材を有し、該制御部材は前記針支持部を係合して前記針を使用前に操作位置に維持し、前記事故防止針装置を前記医療用インジェクターに取り付けて該医療用インジェクターを使用した後に前記事故防止針装置が前記医療用インジェクターから取り外されると、前記制御部材が前記設定位置から離間し、前記針支持部との係合が外れ、前記バネ手段が前記針を前記遮蔽位置まで回転させ、前記非患者側端部を前記管状ハウジングの遠位端部に向けて移動させ、前記針が前記管状ハウジングの長手方向位置に対して斜めの角度で伸長し、この針の非患者側端部を前記管状ハウジングの内壁に隣接する位置に設定する
ことを特徴とする事故防止針装置、を提供する。
【0010】
前記管状ハウジングの長手軸線は管状ハウジングの中心長手軸線とすることができる。
【0011】
前記バネ手段については、注射針の中心軸線に交差し、かつ直交する軸線を中心とする注射針の回転を付勢する構成が好ましい。
【0012】
前記回転軸線については、ハウジングの長手軸線および/または中心長手軸線に対して実質的にラジアル(radial)関係ないし半径方向にあるのが好ましい。
【0013】
前記制御部材については、管状ハウジング内に設けてもよく、あるいは管状ハウジングの近位端部に当接するように構成することができる。
【0014】
前記回転軸については、管状ハウジングに対して静的に(statically)固定するのが好ましく、また非患者側端部については、操作位置(注射処置位置)から遮蔽位置まで回転軸を中心とする円周方向経路で移動するのが好ましい。
【0015】
前記回転軸については、管状ハウジングの長手軸線に対してラジアル関係ないし半径方向にすることができ、また管状ハウジングの長手軸線に対して直交していてもよい。さらに、前記回転軸は管状ハウジングの長手軸線に対して斜角であってもよく、また管状ハウジングの内径を横断して伸長していてもよい。
【0016】
前記回転軸については、管状ハウジングの中心長手軸線と交差していてもよい。
【0017】
前記回転軸については、管状ハウジングの内部領域を横断するコード(chord)に沿って伸長してもよい。
【0018】
前記針支持部については、この針(注射針)がその操作(注射)位置にある場合に管状ハウジングに対して同軸であるのが好ましい。
【0019】
前記遮蔽位置において、注射針の非患者側端部は管状ハウジングの内部周壁に接触していてもよく、あるいはこれに隣接してもよい。遮蔽位置において、バネ手段は管状ハウジングの内部周壁に対して注射針の非患者側端部を付勢することができる。
【0020】
前記操作位置ないし注射処置位置では、バネ手段が内部にエネルギーを蓄えているのが好ましい。
【0021】
前記バネ手段については、第1側部/部分で管状ハウジングの内壁に取り付けてもよく、あるいはこの内壁に配置(又はこれに隣接配置)してもよく、注射針の非患者側端部は管状ハウジングの内壁の第2側/部分に隣接配置してもよい。第1側部/部分は第2側部部分に対して管状ハウジングに設けた対向側部分とすることができる。第1側部/部分については、第2側部/部分に対して管状ハウジングの周りで180度オフセットすることができ、また第2側部/部分に長手方向に整合してもよい。
【0022】
回転軸の遠位方向位置において、前記バネ手段は針支持部に接触することができる。
【0023】
回転軸近位方向位置において、前記バネ手段は針支持部に接触することができる。
【0024】
前記制御手段が係合開口を有し、そして設定位置において、前記針支持部の一部が係合開口内に位置し、注射針が注射処置位置から回転することを阻止することが好ましい。前記制御部材については、環状部材を有し、係合開口がこの環状部材の中心に位置するのが、好ましい。針支持部は設定位置にある制御部材の開口内に位置するカラーを有するものとすることができる。
【0025】
針支持部の遠位端部については、制御部材の係合開口に対して相補的な外面になるのが好ましい。
【0026】
前記制御部材は遮蔽スリーブの端面に対して相補的な端面を有するものとすることができる。この制御部材の遠位端面については、遮蔽スリーブの近位端面に対して相補的な関係にあるのが好ましい。
【0027】
前記バネ手段については、弾性部材から構成されるのが好ましく、この弾性部材は管状ハウジングから内向きに伸長し、回転軸からオフセットした位置において針支持部の外面に接触し、また回転力を印加して、針支持部を回転させるのが好ましい。
【0028】
前記バネ手段については、注射針が操作位置にある状態で、管状ハウジングから内側に向けて突き出す板バネから構成されるのが好ましく、この板バネは予め負荷をかけた状態にあり、ニュートラル/リラックス位置から偏向することができる。また、注射針が操作位置にある状態で、板バネが内部にエネルギーを溜めることが好ましい。板バネは針支持部の長手方向外面に接触し、回転軸を中心としてトルクを発生することができる。
【0029】
針支持部は外面に軸方向部材を設けた一体的な構成要素を有するのが好ましい。この軸方向部材は半球状表面になり、針支持部をボールソケット(玉継ぎ手)機構又はクリック-フィット(click-fit)機構によって固定することができる。管状ハウジングは、針支持部に設けた軸方向部材と連携する内面に設けられた軸方向部材で構成することができる。針支持部の軸方向部材および管状ハウジングについては、管状ハウジングの軸方向部材内の旋回位置に針支持部を押込み係合できるように構成するのが好ましい。管状ハウジングの軸方向部材および針支持部は、突出部を有する第1対の軸方向部材および対応する凹部を有する第2対の軸方向部材で構成することができる。突出部は半球形突出部とすることができる。また、軸方向部材はボールソケット形軸継ぎ手を形成することができる。これら軸方向部材については、針支持部の一方の側に第1ボールソケット形軸継ぎ手および針支持部の反対側に第2ボールソケット形軸継ぎ手を構成し、管状ハウジング内に設けた補足的なボールソケット形軸継ぎ手に接続できることが好ましい。
【0030】
制御部材については、管状ハウジングの近位端部から離間し(および/または管状ハウジングの遠位端部に向かって移動し)、針支持部との係合から外れるように設けるのが好ましい。また、制御部材については、管状ハウジングの近位端部に向かって移動し(および/または管状ハウジングの遠位端部から離間し)、針支持部との係合から外れるように設けることも可能である。
【0031】
安全針装置については、注射針遮蔽スリーブ(needle shielding sleeve)を有するのが好ましく、この場合制御部材は制御部材が設定位置にある間、操作位置から注射針を回転することを防止する係合開口を形成する注射針遮蔽スリーブの遠位端面を有する。
【0032】
前記制御部材としてはディスクで構成することができ、このディスクは安全注射針装置の針遮蔽スリーブ内に位置し、設定位置から針遮蔽スリーブ内でスライド変位可能であり、そして制御部材は注射針遮蔽スリーブ内に摩擦係合し、かつ注射時に管状ハウジングによって針遮蔽スリーブの遠位端部に隣接する位置にこれへの移動時に維持される。
【0033】
前記制御部材は遠位端面(遠位端部面)およびこれから伸長するスカート部分で構成することができ、この遠位端面は設定位置において針支持部の外面に係合する開口を有し、そしてスカート部分が医療用インジェクターの一部に接触する接触面になり、制御部材は針安全装置が医療用インジェクターに取り付けられる設定位置から移動する。
【0034】
前記制御部材は管状ハウジングの近位端部に向かって移動し、針支持部との係合から外れるように取り付けることができる。針遮蔽スリーブは非注射時には針の患者側端部を取り囲み、これを遮蔽するように構成することができる。この場合、針遮蔽スリーブは管状ハウジングと同軸であり、これに対して長手方向にスライド移動するように構成することもできる。針遮蔽スリーブは非注射時には針の患者側端部を取り囲み、これを遮蔽するように構成することもできる。この場合、針遮蔽スリーブは制御部材を設定位置からスライド変位させるリリース(解除)手段を備える。
【0035】
本発明の第2態様は本発明の第1態様に係る安全針装置、および医療用インジェクターを有する薬剤送達装置を提供するものである。
【0036】
前記医療用インジェクターはゴムシールを有し、安全針装置を医療用インジェクターに取り付けると、針の非患者側端部がゴムシールを突き破り、ゴムシールを突き破った非患者側端部の位置によって、制御部材の設定位置からの移動後に、針を操作位置に維持する。
【0037】
本発明は第3態様において、医療用インジェクターとともに使用する事故防止針装置における針の非患者側端部を遮蔽する方法を提供するもので、前記事故防止針装置は、
前記医療用インジェクターに取り付ける構成の近位端部から遠位端部まで長手方向に伸長し、前記医療用インジェクターに着脱自在に取り付け可能な管状ハウシング、
患者側端部および非患者側端部を有する両頭針を直接または間接に支持し前記管状ハウジング内に位置する針支持部であって、前記針を操作位置から遮蔽位置まで移動させる構成の針支持部、
前記針の前記遮蔽位置までの移動を付勢するバネ手段、および
前記操作位置からの前記針の移動を阻止する解除可能なブロッキング手段であって、前記針は前記管状ハウジングの長手軸線方向に伸長し、前記ブロッキング手段が解除されると前記針が前記遮蔽位置へ移動されるブロッキング手段、を有し、
前記針支持部は前記管状ハウジングに挿入され旋回位置に固定されて、前記管状ハウジングの長手軸線に交差する軸を中心に回転する一体部材であり、かつ前記バネ手段は前記軸線を中心とする前記針の回転を付勢する、事故防止針装置における針の非患者側端部を遮蔽する遮蔽方法であり、
該遮蔽方法は、
前記制御部材が前記針支持部に係合して使用前に前記針を操作位置に維持する設定位置から前記管状ハウジングの長手軸線に沿って前記ブロッキング手段の制御部材をスライド変位させ、
前記事故防止針装置を前記医療用インジェクターに取り付け、
前記事故防止針装置および前記医療注射器を使用して注射を行い、そして
次に前記事故防止針装置を前記医療注射器から取り外し、
これにより、前記制御部材が前記設定位置から離間し、前記針支持部との係合が外れ、前記バネ手段が前記針を前記遮蔽位置まで回転させ、前記非患者側端部を前記管状ハウジングの遠位端部に向けて移動させ、前記針が前記管状ハウジングの長手方向位置に対して斜めの角度で伸長し、この針の非患者側端部を前記管状ハウジングの内壁に隣接する位置に設定する
ことを特徴とする遮蔽方法を提供する。
【0038】
本発明は第4態様において医療用インジェクターと併用する事故防止針装置を提供するのもので、
この事故防止針装置は、
前記医療用インジェクターに取り付ける構成の近位端部から遠位端部まで長手方向に伸長し、医療用インジェクターに着脱自在に取り付け可能な管状ハウシング、
患者側端部および非患者側端部を有する両頭針を直接または間接に支持する前記管状ハウジング内に位置する針支持部であって、針を操作位置から遮蔽位置まで移動させる構成の針支持部、
前記針の前記遮蔽位置までの移動を付勢するバネ手段、および
前記操作位置からの前記針の移動を阻止する解除可能なブロッキング手段であって、前記針は前記管状ハウジングの長手軸線方向に伸長し、前記ブロッキング手段が解除されると前記針が前記遮蔽位置へ移動されるブロッキング手段、を有する事故防止針装置であり、
前記針支持部は前記管状ハウジングに挿入され旋回位置に固定されて、前記管状ハウジングの中心軸線に交差する軸を中心に回転する一体部材であり、かつ前記バネ手段は前記軸線を中心とする前記針の回転を付勢し、そして
前記ブロッキング手段は前記管状ハウジングの長手軸線に沿って設定位置からスライド変位可能な制御部材を有し、該制御部材は前記針支持部を係合して前記針を使用前に操作位置に維持し、前記制御部材を前記設定位置から離間すると、前記針支持部から前記ブロッキング手段を係合から外し、前記バネ手段が前記針を前記遮蔽位置まで回転させ、前記非患者側端部を前記管状ハウジングの遠位端部に向けて移動させ、前記針が前記管状ハウジングの長手方向位置に対して斜めの角度で伸長し、この針の非患者側端部を前記管状ハウジングの内壁に隣接する位置に設定する
ことを特徴とする事故防止針装置を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】WO2011/092518
【特許文献2】WO2010/079016
【図面の簡単な説明】
【0040】
例示のみを目的として、添付図面を参照して以下本発明の実施態様を説明する。なお、図中同じ参照符号は同じ部分を指す。
【0041】
【
図1】
図1は医療用インジェクターと共に使用する事故防止針装置の第1の好適な実施態様を示す展開図である。
【
図2】
図2は事故防止針装置および医療用インジェクターの装着前の第1の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図3】
図3は事故防止針装置の第1の好適な実施態様における管状ハウジング、針支持部および注射針を示す透視図である。
【
図4】
図4は医療用インジェクターに装着した事故防止針装置の第1の好適な実施態様を有するペンインジェクターを示す透視図である。
【
図5A】
図5Aは注射準備が整った医療用インジェクターに装着した事故防止針装置の第1の好適な実施態様を示す横断面図である。
【
図5B】
図5Bは注射準備を行うために装着した事故防止針装置と医療用インジェクターの第1の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図6】
図6は注射後に医療用インジェクターに装着した事故防止針装置の第1の好適な実施態様を示す横断面図である。
【
図7A】
図7Aは注射構成の医療用インジェクターから取り外した事故防止針装置の第1の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図7B】
図7Bは注射構成の医療用インジェクターから取り外した事故防止針装置の第1の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図8】
図8は医療用インジェクターへの装着前の事故防止針装置の第2の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図9】
図9は医療用インジェクターに装着し、注射の実施準備が整った事故防止針装置の第2の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図10】
図10は注射を行う事故防止針装置および医療用インジェクターの第2の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図11】
図11は注射後の事故防止針装置および医療用インジェクターの第2の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図12】
図12は使用後に医療用インジェクターとの接続を絶った(医療用インジェクターから取り外した)事故防止針装置の第2好適な実施態様を示す破断図である。
【
図13】
図13は医療用インジェクターへの装着前の事故防止針装置の第3の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図14】
図14は医療用インジェクターに部分的に装着した事故防止針装置の第3の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図15】
図15は医療用インジェクターに完全装着した事故防止針装置の第3の好適な実施態様を示す破断図である。
【
図16】
図16は事故防止針装置および注射を行う医療用インジェクターの好適な第3実施態様を示す破断図である。
【
図17】
図17は使用後に医療用インジェクターとの接続を絶った(注射器から取り外した)事故防止針装置の好適な第3実施態様を示す破断図である。
【
図18】
図18は医療用インジェクターへの装着前の事故防止針装置の好適な第4実施態様を示す破断図である。
【
図19】
図19は医療用インジェクターに装着した事故防止針装置の好適な第4実施態様を示す破断図である。
【
図20】
図20は事故防止針装置および注射を行う医療用インジェクターの好適な第4実施態様を示す破断図である。
【
図21】
図21は使用後に医療用インジェクターとの接続を絶った(注射器から取り外した)事故防止針装置の好適な第4実施態様を示す破断図である。
【
図22】
図22は注射針が操作位置にある、事故防止針装置の第5実施態様における管状ハウジング、注射針および針支持部を示す横断面図である。
【
図23】
図23は注射針が遮蔽位置にある、事故防止針装置の第5実施態様における管状ハウジング、注射針および針支持部を示す横断面図である。
【
図24】
図24は注射針が操作位置にある、事故防止針装置の第6実施態様における管状ハウジング、注射針および針支持部を示す横断面図である。
【
図25】
図25は注射針が遮蔽位置にある、事故防止針装置の第6実施態様における管状ハウジング、注射針および針支持部を示す横断面図である。
【
図26】
図26は事故防止針装置の第7実施態様における管状ハウジング、針支持部、注射針および遮蔽スリーブを示す破断図である。
【
図27】
図27は注射針が操作位置にある、事故防止針装置の第8実施態様における管状ハウジング、注射針、針支持部および遮蔽スリーブを示す横断面図である。
【
図28】
図28は注射針が遮蔽位置にある、事故防止針装置の第8実施態様における管状ハウジング、注射針、針支持部および遮蔽スリーブを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の記載において、添付図面を参照して事故防止針装置(safety needle assembly)10を説明する。この針装置10は特に非患者側端部(近位端部)に位置する、あるいは場合によっては患者側端部(遠位端部)に位置するペン形針装置8の針12を遮蔽する針装置である。なお、本明細で使用する“遠位”および/または“前方”や“前方に”などの用語は使用時に患者側端部に全体として向かう方向を指し、そして“近位”および/または“後方”や“後方に”などの用語は使用時に患者から離間する方向を指す。
【0043】
添付図面に示すように、また以下に記載するように、事故防止針装置の近位端部は医療用インジェクター11の遠位端部に取り付ける。事故防止針装置10の遠位端部が注射時に患者の皮膚に押し付けられ、医療用インジェクター11の遠位端部は患者から離間する。
【0044】
本発明の事故防止装置の好ましい実施態様の説明全体を通して、各種実施態様の対応する部分または部材を指すために同じ参照符号を使用する。
【0045】
本発明ではペン形インジェクターを使用するため、これを使用する実施例に関して説明する。薬剤送達装置8の場合、一般にインシュリン等の投与を設定する投与調節機構を有する医療用インジェクター11、および患者に挿入して適正な薬剤を投与する事故防止針装置10に設けたペン形針12を有する。このペン形針は使い捨て針12を有し、各投与後に取り外し、廃棄する。
【0046】
ペン形針12は両頭針12であり、患者に挿入できる鋭い尖端を有する患者側端部14または遠位端部を有する。また、両頭針12はペン形インジェクター11が構成する薬剤バイアルまたはカートリッジ16に挿入できる鋭い尖端を有する非患者側端部即ち近位端部を有する。針の近位端部/非患者側端部15は一般にゴムシール18を突き破る必要があるため、このシールはバイアルまたはカートリッジ16の端部に形成した隔壁またはストッパーで構成することができる。従って、カートリッジ内に詰めた液体薬剤にアクセスできる。これら装置は従来両頭針12の遠位端部即ち患者側端部を遮蔽し、使用後に偶然生じる“針刺し損傷”を未然に防止するために開発されたものである。遠位端部14を遮蔽しても、両頭針12の近位端部即ち非患者側端部15は事故防止針装置10を医療用インジェクター11から取り外した後に露出する。
【0047】
図1は事故防止用のペン形針装置10及び医療用インジェクター11の展開図であり、
図4は組立を完成した薬剤送達装置8を示す図である。事故防止針装置10は全体としてハブまたは管状ハウジング20、注射針12、遮蔽スリーブ30を有する。管状ハウジング20の本体21は近位端部24から遠位端部22まで長手方向に伸長する。近位端部24は開放面を形成し、これがインジェクター11の一部を受け取り、事故防止針装置10をインジェクター11に装着する。以下に記載するように、近位端部24に隣接する管状ハウジング20に、対応する装着部材を設け、インジェクター11の遠位端部に設けた装着部材と協働するように構成する。例えば、装着部材としてはスレドおよび/または押し込み嵌めを可能にするテーパー面のような表面形状を使用することができる。注射針12としては任意の針設計、具体的には任意のペン形針設計のものを使用することができる。本発明の記載では、事故防止針装置10の両頭針を具体的に示すために用語“カニューレ12”を使用することにする。このカニューレ12は患者に挿入する遠位端部14、および近位端部15を有する。図示のように、カニューレ12の遠位端部14は管状ハウジング20の遠位端部22を超えて突き出る。カニューレ12の近位端部15は近位端部24に隣接する管状ハウジング20の内部に存在するか、あるいは(図示していないが)近位端部24から突き出るか、伸長することができる。カニューレ12は針支持部60内に設け、任意の公知技術を使用して固定することができる。例えば、針支持部60に粘着することができる。
【0048】
本発明の具体的な実施態様を以下説明する。
図1に示すように、医療用ペンまたはインジェクターペンの形を取る薬剤送達システム8は事故防止針装置10を有し、使用時に、この装置を医療用インジェクター11に装着する。医療用インジェクター11は薬剤/流体を封入したカートリッジ16を有し、特に、このカートリッジ16には一定容量の液体薬剤を封入する。
【0049】
カートリッジ16はハウジング17内に固定する。プランジャー装置(図示せず)は、液体薬剤をカートリッジ16から押し出すために使用されるピストン19またはストッパーを有する。このカートリッジ16は圧着キャップ38およびゴムシール18を有する。ゴムシール18は液体薬剤を封入するシールを形成し、以下に詳しく説明するように、カニューレ12(両頭針)の近位端部15によって突き破ることができる。
【0050】
カートリッジ16はハウジング17内に位置し、圧着キャップ38はハウジング17の遠位端部内に位置する。ハウジング17の遠位端部は遠位端部面(遠位端面)39に設ける開口32を有するボス40を有し、このボスが組立時にゴムシール18に整合し、ゴムシール18に対してアクセス用窓を形成するため、ゴムシール18が露出し、窓を介してこのゴムシールにアクセス可能になる。
【0051】
本発明は医療用インジェクター11に装着可能な事故防止針装置10を提供するものである。この事故防止針装置10が、液体薬剤をカートリッジ16から患者に送達するカニューレ12を供する。このカニューレ12は、患者側端部(遠位端部)14に鋭い尖端を、また非患者側端部(近位端部)15に鋭い尖端を備えた両頭針を有する。なお、ここで言及する針およびカニューレの用語は相互に交換可能であり、また本発明は他の形式の薬剤送達装置8に適用可能である。本発明は針またはカニューレ12と併用可能であり、針またはカニューレ12の近位端部/非患者側端部15を原因とする針刺し損傷を未然に防止することを目的とする。
【0052】
液体薬剤を送達するために、カニューレ12は操作位置に保持する。この操作位置では、線形のカニューレ12が薬剤送達装置8の端部から直接突き出す。具体的には、カニューレ12は管状ハウジング20の(中心の)長手軸線50に沿って伸長する。従ってこの操作位置では、カニューレ12は管状ハウジング20内の中心同軸位置に位置する。この同軸位置で、カニューレ12を事故防止針装置10の正面31から垂直に突き出すことができる。
【0053】
事故防止装置10はカニューレ12が突き出る又は突き出すことが可能な中心窓または開口32を有する正面31を備える。第1の好適な実施態様では、事故防止装置10に、中心窓32を有する遮蔽スリーブ30としての端部キャップを設ける。第1の好適な実施態様では、遮蔽スリーブ30または端部キャップが制御部材80の形を取るブロッキング手段として機能し、以下に記載するように、カニューレ12の位置を保持し、かつカニューレ12を解放する。
【0054】
制御部材80または遮蔽スリーブ30は管状ハウジング20に取り付ける。制御部材80または遮蔽スリーブ30は管状ハウジング20の外面23上に位置し、ここに保持する。なお、制御部材80または遮蔽スリーブ30は管状ハウジング20に対して長手方向にスライド可能である。長手方向にスライドできる重要性については、後述する。
【0055】
インジェクター11のハウジング17は遠位端部を有し、これが事故防止装置10に設けた内部ネジスレド37に係合する外部ネジスレドを構成する。具体的には、管状ハウジング20の近位端部24が、事故防止針装置10をハウジング17に装着する内部ネジスレド37を構成する。
【0056】
カニューレ12は針支持部60内に固定する。針支持部60は管状ハウジング20内に固定し、カニューレ12を事故防止針装置10内に固定する構成である。針支持部60に、突起(lug)64、65のとしての対応する軸方向部材を設け、これらが管状ハウジング20の内部に設けた凹部28、29としての2つの軸方向部材に係合する。具体的には、管状ハウジング20が回転軸になり、この回転軸としては固定式回転軸を使用することができ、この回転軸を中心にしてカニューレ12が回転(または旋回)できる。本発明においてこのような回転は機能上重要であり、カニューレ12を操作位置から遮蔽位置まで回転させることができる。遮蔽位置では、カニューレ12の非患者側端部15がバック端部における針刺し損傷を阻止および/または抑制できる。以下に記載するように、固定式回転軸は軸要素によって構成することができ、これら要素が対応する凹部内に係合し、管状ハウジング20に対する針支持部60の回転/旋回作用から離間する他の相対移動を阻止する。別な実施態様では、回転/旋回機能はライブヒンジ構成などの可撓性構成によって確保することができ、これによって回転軸が静的に固定されることがなくなるため、単独で静的な回転軸を中心とする回転が発生する。以下、静的な回転軸を参照して本発明を説明する。
【0057】
以下に説明するように、カニューレ12は管状ハウジング20内の固定軸線52(または固定点)を中心にして回転(または旋回)できる構成である。操作位置では、カニューレ12は管状ハウジング20の中心長手軸線にそって伸長する。固定の回転軸52が垂直方向に伸長し、中心長手軸線50と交差する。固定軸52は管状ハウジング20を横断して径方向に伸長し、中心長手軸線50からラジアル方向(半径方向)に伸長する。このため、中心長手方向軸線50に位置するカニューレ12の固定された軸線52、または固定された旋回点、または固定された回転点が生じる。
【0058】
前述したように、カニューレ12は、このカニューレ12が中心長手軸線50にそって伸長する操作位置からカニューレ12が中心長手軸線50に対して斜めに伸長する遮蔽位置まで固定軸52を中心にして回転する構成である。特に、遮蔽位置では、カニューレ12が中心長手軸線50に対して斜め方向に伸長する。
【0059】
カニューレ12に対して固定された軸線52および固定された回転点があるため、カニューレが中心長手方向軸線50から斜め位置まで移動すると、このカニューレ12の非患者側端部15が管状ハウジング20の内壁26に向かって移動する。カニューレ12の非患者側端部15が管状ハウジング20の内壁26に向かいかつ隣接するこの位置では、非患者側端部15が大きく遮蔽されるため、針刺し損傷の発生する恐れを大きく抑制できる。さらに、軸52が固定式であるため、中心長手軸線50に位置する固定点を中心とする針の旋回作用は、カニューレ12の非患者側端部15が(遠位方向に)前進し、管状ハウジング20の解放端部24から離間することを意味する。管状ハウジング20の長手軸線50の遠位方向におけるカニューレ12の非患者側端部15がこのように移動することによって、管状ハウジング20の開放端部24とカニューレ12の非患者側端部15との距離が長くなる。このため、指先を管状ハウジング20の開放端部24に挿入し、カニューレ12の非患者側端部15に接触させる必要が出てくることにより、距離を長く取ることによって得られる保護レベルが高くなる。この分離した長い距離が、非患者側端部15が管状ハウジング20の壁部26に隣接する効果と相俟って、使用者が針刺し損傷を被る危険性を大きく減らす。
【0060】
後述するように、安全性の強化はカニューレ12の非患者側端部15の円弧状または円周方向の移行/移動から生じるものである。本発明は使用者による特別な介入や動作を行わずに、カニューレ12を操作位置から遮蔽位置まで自動的に移動させる受動的な事故防止システムを提供するものである。特に、通常のペン形インジェクターの場合と同様に、事故防止針装置10をインジェクター11から取り外すと、管状ハウジング12の開放端部24が、そして潜在的にはカニューレ12の非患者側端部15が露出し、後端において針刺し損傷の恐れが発生する。従って、以下に記載するように、本発明は、インジェクター11からの事故防止針装置10の取り外し時に自動的にカニューレ12を安全な遮蔽位置に移すシステムを提供するものである。事故防止針装置10を医療用インジェクター11からに取り付ける前に、ブロッキングシステムによってカニューレ12を操作位置に保持する。さらに、このブロッキングシステムが使用に先立って、かつ事故防止針装置10をインジェクター11に装着する前にカニューレ12を操作位置に維持する。具体的には、使用前に、ブロックシステムが患者側端部15を突き出し位置に保持して、非患者側端部15が管状ハウジング20の開放端部24の周囲の中心を位置するように設定する。インジェクター11を事故防止針装置10に装着すると、カニューレ12の非患者側端部15がゴムシール18を突き破り、液体薬剤を収容した内部リサーバに突き刺さる。従って、非患者側端部15が管状ハウジング20内の中心に同軸配置するため、尖端15がカートリッジ16を突き破り、その内部に位置する。
【0061】
本発明の第1の好適な実施態様の使用および操作について、
図1~
図7を参照して以下説明する。前述したように、薬剤送達装置8は事故防止針装置10およびペン形インジェクター11を有する。これらについては、
図2に使用前の取り外した状態を示す。この位置では、カニューレ12は操作位置に保持する。具体的には、カニューレ12の非患者側端部15は管状ハウジング20の中心長手軸線50にそって位置する。
【0062】
カニューレ12は対向側部において2つのアクスルラグ(axle lugs)64、65を形成する針支持部60内に固定する。これらアクスルラグ64、65は、カニューレ12が管状ハウジング20内において固定軸線52を中心として回転できるように、管状ハウジング20内の2つの対応する凹部28、29で受け取られる。
【0063】
ペン形インジェクター11の端部に設けられ、また管状ハウジング20にも設けられたネジスレド36、37を使用して事故防止針装置10をペン形インジェクター11に装着する。事故防止針装置10がペン形インジェクター11に係合すると、カニューレ12の非患者側端部15がゴムシール18に当接し、これを突き破り、そして突き出る。この装着時に、カニューレ12が中心長手軸線50にそって保持されるため、カニューレ12のゴムシール18を通過する動きが滑らかになる。
【0064】
一旦装着した後は、
図5Aおよび
図5Bに示すように、カニューレ12の非患者側端部15がカートリッジの中心リザーバ内に位置する。
【0065】
管状ハウジング20は重ね板バネ(leaf spring)70としてのバネ手段を有し、この重ね板バネは管状ハウジング20の内面26から内向きに突き出す弾性フィンガー72の形を取る。弾性フィンガー72は軸方向部材28、29、64、65が形成する固定した回転軸52からオフセットした位置において針支持部本体62の外面に接触するか、あるいは当接する接触尖端74を有する。従って、操作位置では、弾性フィンガー72は尖端74が針支持部60の外面に力、具体的にはモーメントまたはトルクを印加する状態にある。換言すると、操作位置では、弾性フィンガー72はニュートラルな位置ではなく、ニュートラルな緩和条件/状態/位置に対して偏向した状態にある。特に、操作位置では、エネルギーを重ね板バネ70/弾性フィンガー72内に蓄えるように重ね板バネ70/弾性フィンガー72に予め負荷をかけておく。この蓄えられたエネルギーが操作位置から離間するように、また管状ハウジング20の長手軸線との整合から外れるようにカニューレ12を付勢する。管状ハウジング20内に針支持部60を組み込む前は、重ね板バネ70/弾性フィンガー72はニュートラル状態にあり、エネルギーは蓄えられていない。針支持部60を管状ハウジング20内に設けるとき、重ね板バネ70/弾性フィンガー72は、針支持部60を操作位置から付勢する働きをするエネルギーを蓄えるため、偏向、移動する。制御部材80およびゴムシール18の両方によってカニューレ12/針支持部60を解除すると、カニューレ12の非患者側端部15が管状ハウジング20の内壁26に隣接する。この構成では、重ね板バネ70/弾性フィンガー72は一般にニュートラル位置にはなく、エネルギーが依然として蓄えられているため、重ね板バネ70/弾性フィンガー72が管状ハウジング20の内壁26に対してカニューレ12の非患者側端部15を押し続けかつ付勢し続ける。
【0066】
針支持部60は、針支持部60の一部に係合してカニューレ12を操作位置に維持する制御手段によって操作位置に維持させる。第1の好適な実施態様では、中心開口32を有する遮蔽スリーブ30によってブロッキング手段を構成する。この中心開口32は針支持部60の前端周囲に係合する。さらに、遮蔽スリーブ30は管状ハウジング20の周囲に固定し、遠位方向にある管状ハウジング20に対して長手方向のみに移動可能である。従って、
図5Aおよび
図5Bに示す設定位置では、遮蔽スリーブ30の開口32内に針支持部60の前端が固定されるため、弾性フィンガー72によってどんな力が発生しても、この力は相殺され、固定式軸線52を中心にして針支持部60またはカニューレ12が回転することはない。
【0067】
この設定位置では、図示のように、針支持部の患者側端部14が薬剤送達装置8から外向きに突き出し/突き出ることによって、患者に注射を行い、ペン形インジェクター11から液体薬剤を送達できる。注射が終了した後は、遮蔽位置に前方に遮蔽スリーブ30が移動する。前部遮蔽スリーブ30の構成の具体的に細部については、本明細書では説明しないが、例えばWO2011/092518などに開示されているように、多数の好適な装置を利用することができる。特に、
図6に示すように、遮蔽スリーブ30は管状ハウジング20に対して長手方向の遠位方向にスライドする。この位置では、針支持部60は遮蔽スリーブ30の開口32内に係合することはなく、バネ手段によって固定軸線52を中心にして針支持部60が回転するのを防ぐことはできない。しかし、カニューレ12の非患者側端部15が長手軸線50にそってゴムシール18内に係合したままになるため、固定軸線52を中心として針支持部60が回転することが防止される。
【0068】
使用後、事故防止針装置10は廃棄する必要があり、従ってネジ式表面36、37を使用して医療用インジェクター11から取り外し、事故防止針装置10を取り外し、ネジを外す。
図7Aに示すように、取り外し時には、カニューレ12の非患者側端部15をゴムシール18から後退させ、このシールとの係合を外すため、管状ハウジング20の長手軸線50にそってゴムシール18によってこれが保持されなくなる。この構成では、弾性フィンガー72が発生するトルクがあるため、針支持部60の回転を抑制する拘束手段がなく、従って、
図7Aおよび
図7Bに示すように、針支持部60が固定軸線52を中心にして自動的に回転する。
【0069】
カニューレ12が所定長さを有するため、および/または弾性フィンガー72にエネルギーが蓄えられているため、カニューレ12の非患者側端部15が管状ハウジング20の内側壁26に隣接し、そして好ましくは当接するまで針支持部60が固定軸線52を中心にして回転する。針支持部60の軸線52が固定されている結果、カニューレ12の非患者側端部15が遠位方向に移動し、軸線52の周囲に円弧方向に移動するため、管状ハウジング20の非患者側端部15と開放面24と間の長手方向に沿う長さが長くなる。従って、非患者側端部15が管状ハウジング20の内壁26に隣接するだけでなく、この非患者側端部15も管状ハウジング20内に引き込まれ/後退するため、針刺し事故に対する保護範囲をかなり大きく取ることができる。本発明は受動的な針刺し保護の改良を提供するように、非患者側端部15の半径方向の移動及び非患者側端部15の遠位方向における後退移動/引き込まれる動きが自動的にかつ同時に行われる。更に、遮蔽位置において重ね板バネ70は針支持部60に旋回力又は回転力を及ぼし続けることができ、これが管状ハウジング20の内壁26に対しカニューレ12の非患者側端部15を押圧する。
【0070】
さらに、カニューレ12の患者側端部14nが遮蔽スリーブ30の開口32に整合しない位置にあるため、遮蔽スリーブ30の長手方向にスライドする動きは、カニューレ12の患者側端部14が開口32から突き出すことはなく、事故をさらに未然に防止できる。
【0071】
全体として言えば、第1実施態様では、事故防止針装置10は別な制御部材80を有しない。この機能は針遮蔽スリーブ30によって得られるからである。つまり、バネ70がカニューレ12の長手軸線50に対して全体的に垂直な軸線であって、カニューレ12の長手軸線50に交差する軸線50を中心とする針支持部60の回転を付勢する。ただし、制御部材80(
図5Aおよび
図5Bの針支持部に対する第1位置に位置する)が針支持部60の回転を抑制する。事故防止針装置10(ペン形針)をインジェクター11(ペン形インジェクター)に締め付けると、針12の非患者側端部15がカートリッジ16のゴムシール18を突き破り、ペン形インジェクター11内の薬剤リザーバに進入する。この状態では、針遮蔽スリーブ30が既に後退し、患者に薬剤を送達できる態勢にある。ペン形針10を注射サイトから取り出し、針遮蔽スリーブ30を次に前進させ、針遮蔽位置にこれを自動的に安全にロックする。上記のように、遮蔽スリーブの移動機構については本明細書では説明しないが、対応する構成はWO2011/092518などに開示されている。なお、(制御部材80は針支持部60の回転をこれ以上抑制することはないが)針支持部60は回転できない。というのは、カニューレ12の非患者側端部15が依然としてペン形インジェクターのリザーバのゴムシール18内に挿入されたままになっているからである。ペン形針10をペン形インジェクター11から取り外すと(接続を解除すると)、バネ70によって針支持部60が回転し、カニューレ12の非患者側端部15を“安全に係留”するため、カニューレ12の尖端部が管状ハウジング20の内壁26に当接する。
【0072】
さらに好適な実施態様の操作および使用について、
図8~
図28を参照して以下説明する。
【0073】
図8~
図12に示す第2の好適な実施態様は、管状構成部材182としての制御部材180を有するブロッキング手段を有し、この構成部材182はディスクの形を取り、遮蔽スリーブ130とは別体である。使用前のこの構成では、即ち事故防止針装置110をペン形インジェクター111に装着していない状態では、制御部材180によって操作位置に針支持部160を上記同様に保持する。既に記載したように、この実施態様では、制御部材180は針支持部160の前部の外面161に、前記と同様に、整合し、かつ係合する中心開口184を備えたディスク又は環状構成部材182を有する。なお、第2の好適な実施態様の遮蔽スリーブ130は使用前にカニューレ112の患者側端部114を保護する遮蔽体として作用する。この実施態様の操作は上記と同じである。すなわち、ネジスレッドにより管状ハウジング120をインジェクター111に取り付け、カニューレ112の非患者側端部115がゴムシール118を突き破り、かつ突き出てカートリッジ116のリザーバに進入する。
【0074】
図9は薬剤送達装置108が使用状態にある設定位置における薬剤送達装置108を示す図である。遮蔽スリーブ130は長手方向に管状ハウジング120上をスライドできる。特に、遮蔽スリーブ130はバネ手段(図示省略)で構成することができ、このバネ手段が遮蔽スリーブ130を付勢し、遠位方向に
図9に示す外側位置にこれを移動させる。注射を行うためには、遮蔽スリーブ130の前面131を患者の皮膚に押し付け、遮蔽スリーブ130をインジェクター111に向けて管状ハウジング120上にスライドさせる。カニューレ112の患者側端部114が遮蔽スリーブの中心開口132を介して注射状態の患者に達する。管状ハウジング120上を遮蔽スリーブ130が完全に後退すると、カニューレ112が予め設定した量突き出し、必要な注射を行う。この位置では、
図10に示すように、制御部材180(環状構成部材182)は遮蔽スリーブ130の前端(遠位端部)に隣接する。
【0075】
一旦液体薬剤を送達した後は、薬剤送達装置108が患者の皮膚から離間し、バネ手段(図示省略)が遮蔽スリーブ130をインジェクター111から離間する遠位方向に遮蔽スリーブ130を押し出し、遮蔽スリーブ130が管状ハウジング120上を使用済み位置(図示省略)までスライドし、ロッキング手段がこの遮蔽スリーブを使用済み位置(図示省略)にロックする。環状構成要素182としての制御部材180が摩擦係合やラッチングなどによって遮蔽スリーブ130の遠位端部に隣接する外側/遠位位置に保持される。これによって、注射実施時に制御部材180が針支持部160との係合から自動的に、あるいは受動的に外れる。針支持部160を備えた管状ハウジング120がインジェクター111とともに患者の皮膚から離間するからである。従って、この構成では、制御部材180がカニューレ112を操作位置に保持することはない。ただし、カニューレ112は、カニューレ112の非患者側端部115のゴムシール118との係合によって操作位置に維持される。なお、本実施態様における制御部材180も注射が正確に、そして正確な深さまで行われたことを示す視覚表示を備えることができる。制御部材を遠位端部の視覚表示位置に保持するからである。
【0076】
この状態で前記と同様に、事故防止針装置110はネジスレッド136、137の解除によってペン形インジェクター111から取り外すことができる。一旦カニューレ112の非患者側端部115がゴムシール118を通って解除された後は、弾性フィンガー172としての重ね板バネ170によって、
図12に示すように、針支持部160を遮蔽位置まで回転する。上記と同様に、この動作は自動であり、針刺しを受動的に保護するものである。
【0077】
遮蔽位置では、カニューレ112の非患者側端部115が管状ハウジング120の内壁126に隣接する。さらに、動作の固定軸線が上記位置にあるため、カニューレ112の非患者側端部115がさらに開放端部124から離間する管状ハウジングにさらに引き込まれるため、保護作用がさらに強くなる。カニューレ112の移動軸線52が管状ハウジング120の長手軸線に交差し、重ね板バネ170の針支持部160との接触点によって非患者側端部115が近位方向ではなく、遠位方向に確実に移動する。医療用インジェクター111から事故防止針装置110を取り外す前に、非患者側端部115がゴムシール118を突き破るため、カニューレを管状ハウジング120の長手軸線にそって保持できる。
【0078】
図13~
図17に第3の好適な実施態様を示す。この実施態様では、ブロッキング手段はスカート部分284に結合した環状構成部材282により構成される制御部材280を有する。事故防止針装置210には、使用前にカニューレ212の患者側端部214を遮蔽する遮蔽スリーブ230を設ける。
図14に示す実施態様では、事故防止針装置210をインジェクター211に捻じ込むと、制御部材280のスカート部分284の下面285がインジェクター211のボス240の端部239に当接し、これによって力を制御部材280に印加し、これをインジェクターに対して、そして管状ハウジング220に対して遠位方向あるいは前進方向に制御部材280を移動させる。この移動によって、制御部材280が針支持部260との係合から自動的に外れる。特に、この脱係合を助けるために、針支持物260にはカラー266を設ける。このカラー266がステップ面になり、制御部材280の配置を係合位置から脱係合位置へいきなり変更するため、針支持部260の旋回動作を確実に可能にする。制御部材280のスカート部分284には、切り欠き部分を設け、ここにおいて管状ハウジング220の内壁226に重ね板バネ270(弾性フィンガー272)を設ける。
【0079】
前述したように、遮蔽スリーブ230の前面231を患者の皮膚に対して押し付け、開口232を介してカニューレ212の患者側端部214を必要な深さまで患者に突き刺す。注射終了後、遮蔽スリーブ232を自動的に付勢し、バネ機構(図示省略)によって遮蔽位置に戻す。
【0080】
ネジスレッド236、237を使用して事故防止針装置210をインジェクター211から取り外す。針支持部260がカニューレ212の非患者側端部215とゴムシール218との係合によって保持されているに過ぎないため、ゴムシール218から外すと、針支持部260が固定された軸線52を中心にして遮蔽位置まで自動的に回転する。同様に、軸線位置では、カニューレ212の非患者側端部215が遠位方向に引き込まれ、さらに管状ハウジング220内を進み、カニューレ212の非患者側端部215が、
図17に示すように、管状ハウジング220の内壁226に隣接する。この好適な実施態様の場合も、針の非患者側端部を受動的に針刺し事故から保護できる。事故防止針装置210がインジェクター211に固定されているため自動的に制御部材280が針支持部260から外れるからである。この構成では、事故防止針装置210はインジェクター211に装着できず、これから取り外すこともできず、同じか別な事故防止針装置210に取り付けることができない。カニューレ212が既に斜め位置に進み、医療用インジェクター211のゴムシール218を介して非患者側端部215を挿入できなくなるためである。この保護機構は第1の取り付け状態で注射が実施されない場合であっても適用される。事故防止針装置210を医療用インジェクター211に装着すると直ちに、同じ事故防止針装置210を再度装着することができなくなる。
【0081】
図18~
図21に本発明の第4の好適な実施態様を示す。この実施態様では、制御部材380としてブロッキング手段は、管状ハウジング320内に位置する管状構成部材382によって構成する。この実施態様では、解除手段は遮蔽スリーブ330の内正面333に位置する、具体的には遮蔽スリーブ330の前面331の内面に位置する脱係合部材390として構成する。この脱係合手段390は遮蔽スリーブ330の前面331の開口周囲に位置する。また、この脱係合手段390は突出部の形を取り、薬剤送達装置308を使用する場合には、インジェクター311に向けて後方に、または近位方向に制御部材380を移動させる構成である。一部の実施態様では、脱係合部材390は制御部材に接触する環状面または不完全な環状面を有することができる。なお、脱係合部材390は遮蔽スリーブ330の内前面331から近位方向/後方に伸長する一つかそれ以上の突出部で構成することができる。例えば、一つかそれ以上のフィンガーを使用して制御部材380の脱係合を行うことができる。特に、遮蔽スリーブ330を患者の皮膚によってインジェクター311に向かって押し戻される場合には、脱係合部材390も近位方向または後方に押され、制御部材380に当接し、これを近位方向または後方に移動させる。この制御部材380の動作によって、針支持部360が開口384との係合から外れる。同様に、制御部材380が管状ハウジング320内に位置する環状構成部材382であり、針支持部360は係合状態と脱係合状態との間に明瞭なステップを構成するカラー366を有する。
【0082】
非注射位置では、制御部材380は一つかそれ以上の戻り止め(detent)によって保持するか、あるいは管状ハウジング320内に係合させて、摩擦係合その他の保持手段によって針支持部360に係合することを防止する。前述したように、使用後は、カニューレ312の非患者側端部315がゴムシール318から解除されるため、固定した軸線を中心とする針支持部360の回転を防ぐ手段はない。従って、カニューレの非患者側端部315が長手方向にさらに管状ハウジング320に引き込まれるだけでなく、管状ハウジング320の側周壁326まで移動する。
【0083】
図22および
図23に、針支持部460およびカニューレ412とともに管状ハウジング420を有する第5の好適な実施態様を示す。これらの図は、同時に生じるカニューレ412の非患者側端部415の管状ハウジング420への引き込みおよび遮蔽目的での内壁426への移動を始めとするカニューレ412の非患者側端部415の動作を示す概略図である。なお、カニューレの前部(患者側)長さが後部(非患者側)長さよりも十分短く、カニューレ412の非患者側端部415が十分な程度回転するため、管状ハウジング420の内壁426に当接することになる。特に、カニューレ412の非患者側端部415が内壁426に当接するか、あるいはこれに隣接することができる。前部分がかなり長い針はそれ程すぐれた保護を与えることができない。というのは、非患者側端部をより露出される位置に残す遮蔽スリーブに当接することができるのは針の患者側端部になるからである。さらに、本発明では針支持部の回転軸が長手軸線に交差するが、これは非患者側端部の有効な引き込み距離を最大化することを目的とする。これは本発明によって最適化できる。
【0084】
図22に示す操作位置では、針は管状ハウジングの中心長手軸線450にそって伸長する。遮蔽位置では、カニューレ412はこの中心長手軸線450に対して斜め(
図23を参照)の軸線451にそって伸長する。伸長動作時、針支持部460/カニューレ412の垂直面は第1位置458から第2位置459に移動/傾動する。これら2つの位置の間の角度が大きくなる程、遮蔽位置でのカニューレ412の非患者側端部415の潜在的な後退距離498が長くなる。本実施態様では、
図22および
図23に示すように、重ね板バネ470によって針支持部460が反時計方法402に移動する。
【0085】
図22に示すように、カニューレ412の非患者側端部415と管状ハウジング420の近位開放面424との間の分離距離496は非操作位置および操作位置では最初は1mmとすることができる。本発明の遮蔽位置、即ち固定軸線が形成する最適位置では、この分離距離が長くなり、特に
図23に示すように、最終的な分離距離498はほぼ1.8mmとすることができる。例えば、本発明では分離距離を80%ほど長くすることができる。従って、管状ハウジングの長手軸線にそって固定軸線52を使用することによってこの後退/抜き取り距離をかなり長く取ることができる。
【0086】
この第5実施態様では、バネ手段は弾性部材または重ね板バネを有し、この一部が針支持部460に設けたフランジ476の遠位部分にあるフランジ476に接触/係合し、これを下向きに付勢する。このため、針支持部460へのトルクまたはモーメントが強くなるので、制御部材としてのブロッキング手段によって薬剤送達装置の構成および状態に応じて針支持部の回転を抑制、あるいはこの回転を可能にする。
【0087】
本発明の第6実施態様では、
図24および
図25に示すように、一体的な重ね板バネ570が針支持部560の前方/遠位部分に作用しかつ接触する。この実施態様では、カニューレ512の非患者側端部515が同様に遮蔽位置に移動する。ところが第5実施態様とは違って、遮蔽位置では、カニューレ512の非患者側端部515は重ね板バネ570と同じ側の管状ハウジングの側部にそって位置する。なお、重ね板バネ570が軸線の遠位方向/前方位置において針支持部560に接触すると、
図24および
図25に示すように、この重ね板バネ570によって針支持部560が反時計方向502に移動することになる。逆に、重ね板バネ570が回転軸線に対して近位方向/後方にある位置で重ね板バネ570が針支持部560に接触すると、針支持部560の付勢方向が反時計方向になる。本実施態様では、カニューレ512の非患者側端部515が円周/円弧経路502を走行し、分離距離が第1距離596から第2距離598に長くなる。
【0088】
図26に示すように、第7実施態様では、針支持部660の回転軸604が管状ハウジング620の長手軸線605に対して斜角である(半径方向ではない)。特に、回転軸604は管状ハウジング620の半径または直径に対して斜角である。図示のように、管状ハウジング620は2つのオフセット凹部628、629を形成する。同様に、針支持部660は2つの対応するオフセット突起664、665を有する。対応する突起664、665および凹部628、629からなるこの構成がボールソケットジョイント(形軸継手)になり、針支持部660の旋回動作を容易にする。
【0089】
最後に、本発明の第8実施態様を
図27および
図28に示す。図示のように、針支持部760は管状ハウジング720の中心長手軸線707からオフセット位置にある軸線704を中心にして回転する。上記と同様に、針支持部760の前部の外面761は制御部材780に係合する構成である。回転軸704は管状ハウジングの長手方向軸線705にそって位置するが、この長手方向軸線は管状ハウジング720の中心長手方向軸線ではない。なお、この実施態様では、軸すなわち回転704がオフセット位置にあるため、遮蔽位置への移動時にカニューレ712の非患者側端部715の後退距離796、798が長くなる。これは、非患者側端部715の円弧状走行経路702の長さが長くなるためであり、これによって最終的な分離距離798が長くなる。
【0090】
要約すると、本発明は一体的な軸支持部を備えた一体的な構成部材を有し、管状ハウジングも重なり板バネ及び軸支持部を有する一体的な構成を有する。これら一体的な構成部材によって製造時の複雑性およびコストを下げることができ、また組立を簡略化できる。
【0091】
針/カニューレはハウジングの中心軸線に対して半径方向にある軸線を中心にして旋回する位置に固定保持する。このため、発生するおそれのある針支持部の近位方向の後進を抑制、阻止することができる。
【0092】
本発明では、バネ手段が所定の軸線を中心とするカニューレの回転を付勢するため、カニューレの非患者側端部を遠位方向/前進方向に前進させることができる。このような前進/遠位方向移動は有利に作用し、針刺し事故の発生を抑制できる。
【0093】
制御部材は管状ハウジングの端部内に位置し、および/または隣接し、ハウジングの中心軸線にそってスライド変位可能である。多数の実施態様に示すように、このような長手方向の移動は自動であり、複雑な設計で針支持部からの離脱を行う半径方向移動の場合信頼性に欠け組立/製造に困難を伴う従来技術よりも、信頼性が極めて高い。
【0094】
本発明は、例えばWO2011/092518などに開示されている針刺し事故から前端を保護する従来装置に組み込み、これと併用することができる。
【0095】
以上説明してきたように、各実施態様は全体として針支持部に係合する移動可能な部材を有する。設定位置では、例えトルクまたはモーメントがバネ手段によって針支持部に付勢されたとしても、制御部材によって針支持部を操作位置に保持できる。事故防止針装置を医療用インジェクターに装着し、これらを使用した後、医療用インジェクターから事故防止針装置を取り外すと、制御部材が設定位置から離間する。このため、制御部材が作動し、バネ手段によって針を遮蔽位置に回転させ、針の非患者側端部が管状ハウジングの遠位端部に向かって移動する。遮蔽位置では、針が管状ハウジングの中心長手軸線に対して斜めの角度で伸長し、管状ハウジングの内壁に隣接する位置に針の非患者側端部を配置する。非患者側端部が円周方向経路にそって進み、この非患者側端部が管状ハウジング内に後退するか、あるいはさらにこのハウジング内に引き込まれる。
【0096】
逆針刺し事故の防止に関する従来装置はWO2010/079016に開示されている。この装置は内部に針を取り付ける部分から脱係合する半径方向に移動する解除部分を有する。この装置は遮蔽部の前進/遠位方向移動を行うバネを有する。このバネはカニューレに作用し、カニューレを傾斜させ、カニューレをスカートに対して移動させる。ところが、このバネはカニューレの非患者側端部を後退させないため、スカートの開放端部に向けて非患者側端部を近位方向/後方に付勢する傾向がある。
【0097】
本発明は管状ハウジング内に位置するペン形針の非患者側端部を保護するものである。バネについては、針の長手軸線か、あるいは針の長手軸線からオフセットされ得る管状ハウジングの長手軸線のいずれかと交差する軸線を中心とする針の回転を付勢する構成である。このバネが針支持部を付勢し、カニューレの非患者側端部を後退させる方向に針支持部を移動させる。一部の実施態様では、回転軸を針の長手軸線に全体として直交させてもよく、他の実施態様では、針の長手軸線に対して斜交させてもよい。ただし、制御部材が針支持部の回転を阻止する。ペン形針をペン形インジェクターに捻じ込むと、針の非患者側端部がカートリッジのゴムシールを突き破り、ペン形インジェクター内の薬剤リザーバに進入する。針が患者に挿入され、薬剤を注入する。その後、ペン形針を注射サイトから取り出す。ただし、(例え制御部材が針支持部の回転をこれ以上抑制しなくても)針支持部は回転しない。針の非患者側端部がペン形インジェクターの薬剤リザーバのゴムシール内に挿入されているからである。ペン形インジェクターの接続を切り離すと(インジェクターを取り外すと)、バネによって針支持部が回転し、針の非患者側端部を“安全に係留”するため、偶然発生する針刺し事故を抑制するために役立つ。
【符号の説明】
【0098】
8 ペン形針装置、薬剤送達装置
10 事故防止針装置
11 医療用インジェクター
12 針、ペン形針、使い捨て針、両頭針、カニューレ
14 患者側端部、遠位端部
15 近位端部/非患者側端部
16 カートリッジ
17 ハウジング
18 ゴムシール
19 ピストン
20 管状ハウジング
22 遠位端部
23 外面
24 近位端部
28 凹部、軸方向部材
29 凹部、軸方向部材
30 遮蔽スリーブ
32 開口、中心窓、中心開口
36 ネジ式表面
37 ネジ式表面
38 圧着キャップ
40 ボス
50 長手軸線
52 固定式軸線、移動軸線、軸線
60 針支持部
62 針支持部本体
64 突起(lug)、軸方向部材
65 突起(lug)、軸方向部材
70 重ね板バネ(leaf spring)
72 弾性フィンガー
74 接触尖端
80 制御部材
108 薬剤送達装置
110 事故防止針装置
111 ペン形インジェクター
112 カニューレ
114 患者側端部
115 非患者側端部
120 管状ハウジング
124 開放端部
130 遮蔽スリーブ
131 前面
136 ネジスレッド
137 ネジスレッド
160 針支持部
170 重ね板バネ
180 制御部材
182 管状構成部材
184 中心開口
210 事故防止針装置
211 インジェクター
212 カニューレ
214 患者側端部
215 非患者側端部
218 ゴムシール
220 管状ハウジング
226 内壁
230 遮蔽スリーブ
231 前面
232 開口
232 遮蔽スリーブ
236 ネジスレッド
237 ネジスレッド
239 端部
240 ボス
260 針支持部
270 重ね板バネ
272 弾性フィンガー
280 制御部材
282 環状構成部材
284 スカート部分
285 下面
308 薬剤送達装置
315 非患者側端部
320 管状ハウジング
326 側周壁
330 遮蔽スリーブ
331 前面
333 内正面
360 針支持部
366 カラー
380 制御部材
382 管状構成部材
390 脱係合部材
402 反時計方法
412 カニューレ
415 非患者側端部
420 管状ハウジング
424 近位開放面
426 内壁
450 中心長手軸線
451 軸線
460 針支持部
470 重ね板バネ
476 フランジ
496 分離距離
498 後退距離
502 円周/円弧経路
512 カニューレ
515 非患者側端部
560 針支持部
570 重ね板バネ
596 第1距離
598 第2距離
604 回転軸
605 長手軸線
620 管状ハウジング
628 オフセット凹部
629 オフセット凹部
660 針支持部
664 オフセット突起
665 オフセット突起
702 円弧状走行経路
704 軸線
705 長手方向軸線
707 中心長手軸線
712 カニューレ
715 非患者側端部
720 管状ハウジング
760 針支持部
761 前部外面
780 制御部材
796 後退距離
798 後退距離
【手続補正書】
【提出日】2023-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インジェクターに併用する事故防止針装置であって、
前記医療用インジェクターに取り付ける構成の近位端部から遠位端部まで長手方向に伸長し、医療用インジェクターに着脱自在に取り付け可能な管状ハウシング、
患者側端部および非患者側端部を有する両頭針を直接または間接に支持する前記管状ハウジング内に位置する針支持部であって、針を操作位置から遮蔽位置まで移動させる構成の針支持部、
前記針の前記遮蔽位置までの移動を付勢するバネ手段、および
前記操作位置からの前記針の移動を阻止する解除可能なブロッキング手段であって、前記針は前記管状ハウジングの長手軸線方向に伸長し、前記ブロッキング手段が解除されると前記針が前記遮蔽位置へ移動されるブロッキング手段、を有する事故防止針装置であり、
前記針支持部は前記管状ハウジングに挿入され旋回位置に固定されて、前記管状ハウジングの長手軸線に交差する軸を中心に回転する一体部材であり、かつ前記バネ手段は前記軸線を中心とする前記針の回転を付勢し、そして
前記ブロッキング手段は前記管状ハウジングの長手軸線に沿って設定位置からスライド変位可能な制御部材を有し、該制御部材は前記針支持部を係合して前記針を使用前に操作位置に維持し、前記事故防止針装置を前記医療用インジェクターに取り付けて該医療用インジェクターを使用した後に前記事故防止針装置が前記医療用インジェクターから取り外されると、前記制御部材が前記設定位置から離間し、前記針支持部との係合が外れ、前記バネ手段が前記針を前記遮蔽位置まで回転させ、前記非患者側端部を前記管状ハウジングの遠位端部に向けて移動させ、前記針が前記管状ハウジングの長手方向位置に対して斜めの角度で伸長し、この針の非患者側端部を前記管状ハウジングの内壁に隣接する位置に設定する
ことを特徴とする事故防止針装置。
【請求項2】
前記医療用インジェクターへの事故防止針装置の取り付け、使用及びその後の前記医療用インジェクターからの事故防止針装置の取り外しにより、前記制御部材を前記設定位置から離間させ前記針支持部から係合を外し、前記バネ手段が前記針を前記遮蔽位置まで回転させ、前記バネ手段は前記針の前記非患者側端部を近位方向でなく遠位方向に移動させるように構成された請求項1に記載の事故防止針装置。
【請求項3】
前記軸線の位置で前記針の前記非患者側端部が遠位方向へ引き込まれ、前記管状ハウジング内を進み、前記針の前記非患者側端部が前記管状ハウジングの前記内壁に隣接するように位置する請求項1又は2に記載の事故防止針装置。
【請求項4】
前記管状ハウジングに対して前記回転軸を静的に固定し、前記非患者側端部がこの回転軸を中心とする円周方向経路を前記操作位置から前記遮蔽位置まで移動する請求項1~3のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項5】
前記遮蔽位置において、前記針の非患者側端部が前記管状ハウジングの内周壁に接触する請求項1~4のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項6】
前記制御部材が係合開口を有し、前記設定位置において、前記針支持部の一部がこの係合開口内に位置し、前記針が操作位置から回転することを抑える請求項1~5のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項7】
前記制御部材が環状部材を有し、この環状部材の中心に前記係合開口が位置する請求項6に記載の事故防止針装置。
【請求項8】
前記針支持部が設定位置において前記制御部材の開口内に位置するカラーを有する請求項6又は7に記載の事故防止針装置。
【請求項9】
前記バネ手段が、前記管状ハウジングから内向きに伸長し、かつ前記回転軸からオフセットした位置において前記針支持部の外面に接触する弾性部材を有する請求項1~8のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項10】
前記バネ手段が前記管状ハウジングから内側に突き出る重ね板バネを有し、前記針が操作位置にある状態で、この重ね板バネがニュートラル位置に対して偏向位置にある請求項1~9のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項11】
前記重ね板バネの端面が前記針支持部の長手方向外面に接触し、前記回転軸を中心とするトルクを発生する請求項10に記載の事故防止針装置。
【請求項12】
前記針支持部が外面に軸方向部材が位置する一体的な構成要素からなる請求項1~11のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項13】
前記管状ハウジングが内面に位置する軸方向部材を有し、これら部材が前記針支持部に設けられた軸方向部材と協働する請求項12に記載の事故防止針装置。
【請求項14】
前記針支持部の軸方向部材および前記管状ハウジングによってこの管状ハウジングの軸方向部材内においてこの針支持部を前記旋回位置に押し込め嵌め係合する請求項13に記載の事故防針装置。
【請求項15】
前記管状ハウジングの軸方向部材および前記針支持部が、突出部を有する第1対の軸方向部材および対応する凹部を有する第2対の軸方向部材を有する請求項13または14に記載の事故防止針装置。
【請求項16】
前記突出部が半球状突出部である請求項15に記載の事故防止針装置。
【請求項17】
前記管状ハウジングの近位端部から離間して、前記針支持部を離脱するように前記制御部材が取り付けられた請求項1~16のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項18】
針遮蔽スリーブを有し、かつ前記制御部材がこの針遮蔽スリーブの遠位端面を有し、この遠位端面が、制御部材が設定位置にある状態で、針が操作位置から回転することを防止する係合開口になる請求項1~175のいずれか一項に記載の事故防止針装置。
【請求項19】
前記制御部材がディスクを有し、このディスクが事故防止針装置の針遮蔽スリーブ内に位置する請求項1~17のいずれか一項に記載の事故防止針装置であって、前記ディスクが設定位置から前記針遮蔽スリーブ内でスライド変位可能で、前記制御部材が前記針遮蔽スリーブ内に摩擦係合し、注射時前記管状ハウジングによる移動時に前記針遮蔽スリーブの遠位端部に隣接する位置に維持される事故防止針装置。
【請求項20】
前記制御部材が遠位端面およびこの端面から延在するスカート部分を有し、この遠位端面が設定位置において前記針支持部の外面に係合する開口を有し、前記スカート部分が医療用インジェクターの一部に接触する接触面になり、そして前記制御部材が、前記事故防止針装置の取り付け時に前記設定位置から前記医療用インジェクターへ移動する請求項1~17のいずれか1項に記載の事故防止針装置。
【請求項21】
前記管状ハウジングの近位端部に向かって移動し、前記針支持部を脱係合するにように前記制御部材が取り付けられた請求項1~16のいずれか1項に記載の事故防止針装置。
【請求項22】
非注射構成において針遮蔽スリーブが前記針の患者側端部を取り囲み、かつ遮蔽し、そしてこの針遮蔽スリーブが前記設定位置から前記制御部材をスライド変位させる解除手段を有する請求項21に記載の事故防止針装置。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の事故防止針装置および医療用インジェクターを有する薬剤送達装置。
【請求項24】
前記医療用インジェクターがゴムシールを有し、前記事故防止針装置がこの医療用インジェクターに取り付けられることにより、前記針の非患者側端部が前記ゴムシールに貫通され、前記制御部材の前記設定位置からの移動後に、このゴムシールを貫通した非患者側端部の位置によって前記針を操作位置に維持する請求項23に記載の薬剤送達装置。
【請求項25】
医療用インジェクターとともに使用する事故防止針装置における針の非患者側端部を遮蔽する遮蔽方法であって、前記事故防止針装置は、
前記医療用インジェクターに取り付ける構成の近位端部から遠位端部まで長手方向に伸長し、前記医療用インジェクターに着脱自在に取り付け可能な管状ハウシング、
患者側端部および非患者側端部を有する両頭針を直接または間接に支持し前記管状ハウジング内に位置する針支持部であって、前記針を操作位置から遮蔽位置まで移動させる構成の針支持部、
前記針の前記遮蔽位置までの移動を付勢するバネ手段、および
前記操作位置からの前記針の移動を阻止する解除可能なブロッキング手段であって、前記針は前記管状ハウジングの長手軸線方向に伸長し、前記ブロッキング手段が解除されると前記針が前記遮蔽位置へ移動されるブロッキング手段、を有し、
前記針支持部は前記管状ハウジングに挿入され旋回位置に固定されて、前記管状ハウジングの長手軸線に交差する軸を中心に回転する一体部材であり、かつ前記バネ手段は前記軸線を中心とする前記針の回転を付勢する、事故防止針装置における針の非患者側端部を遮蔽する遮蔽方法であり、
該遮蔽方法は、
前記制御部材が前記針支持部に係合して使用前に前記針を操作位置に維持する設定位置から前記管状ハウジングの長手軸線に沿って前記ブロッキング手段の制御部材をスライド変位させ、
前記事故防止針装置を前記医療用インジェクターに取り付け、
前記事故防止針装置および前記医療注射器を使用して注射を行い、そして
次に前記事故防止針装置を前記医療注射器から取り外し、
これにより、前記制御部材が前記設定位置から離間し、前記針支持部との係合が外れ、前記バネ手段が前記針を前記遮蔽位置まで回転させ、前記非患者側端部を前記管状ハウジングの遠位端部に向けて移動させ、前記針が前記管状ハウジングの長手方向位置に対して斜めの角度で伸長し、この針の非患者側端部を前記管状ハウジングの内壁に隣接する位置に設定する
ことを特徴とする遮蔽方法。
【国際調査報告】