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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-10
(54)【発明の名称】核酸特性評価のための増幅手法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240603BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240603BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20240603BHJP
   C12Q 1/25 20060101ALI20240603BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20240603BHJP
   C12Q 1/682 20180101ALI20240603BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240603BHJP
   C12Q 1/6862 20180101ALI20240603BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240603BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20240603BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12N15/09 110
C12Q1/48
C12Q1/25
C12Q1/6816 Z
C12Q1/682 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6862 Z
C12Q1/6869 Z
C12N9/00
C12N9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566887
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022026777
(87)【国際公開番号】W WO2022232425
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/181,769
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ナイル・アンソニー・ゴームリー
(72)【発明者】
【氏名】クリフォード・リー・ワン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR20
4B063QR62
4B063QS32
4B063QX02
(57)【要約】
核酸増幅手法が開示される。実施形態は、例えば、全長mRNAのcDNAから、又は合成鋳型から出発して、鋳型のローリングサークル増幅を使用して連結核酸を生成することと、連結核酸を配列決定及び/又は検出することと、を含む。いくつかの実施形態では、開示された技術は、CRISPR-Cas相互作用の結果としてプライマーを生成するCRISPR-Cas相互作用を含む増幅反応を含み、それによって、その後、プライマーは、検出可能な増幅反応の一部として使用される。開示された増幅手法は、合成オリゴヌクレオチド又はプライマーを使用してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸組成物であって、
第1の5’プライマー配列、第1の3’プライマー配列、及び前記第1の5’プライマー配列と前記第1の3’プライマー配列との間に配置された第1の介在領域を含む第1のオリゴヌクレオチドと、
第2の5’プライマー配列、第2の3’プライマー配列、及び前記第2の5’プライマー配列と前記第2の3’プライマー配列との間に配置された第2の介在領域を含む第2のオリゴヌクレオチドと、
標的核酸と、を含み、前記第1の5’プライマー配列及び前記第1の3’プライマー配列が、前記標的核酸の第1の標的配列に隣接する第1の領域に相補的であり、前記第2の5’プライマー配列及び前記第2の3’プライマー配列が、前記標的核酸の第2の標的配列に隣接する第2の領域に相補的であり、その結果、前記第1のオリゴヌクレオチドが、前記標的核酸に結合すると、前記第1の標的配列の周りに第1のループ構造を形成し、前記第2のオリゴヌクレオチドが、前記標的核酸に結合すると、前記第2の標的配列の周りに第2のループ構造を形成する、核酸組成物。
【請求項2】
前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列が、50~350塩基長である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記標的核酸が、一本鎖RNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の5’プライマー配列と前記第1の3’プライマー配列との間で前記第1のループ構造を伸長させることができ、かつ前記第2の5’プライマー配列と前記第2の3’プライマー配列との間で前記第2のループ構造を伸長させることができるポリメラーゼを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリメラーゼが、RTポリメラーゼである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
伸長された第1の3’末端を前記第1の5’プライマー配列にライゲーションすることによって前記第1のループ構造を閉じることができ、かつ伸長された第2の3’末端を前記第2の5’プライマー配列にライゲーションすることによって前記第2のループ構造を閉じることができるリガーゼを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の介在領域及び前記第2の介在領域における共通配列に特異的であるローリングサークル増幅プライマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
反復単位を含む第1の一本鎖連結核酸を含み、前記反復単位が、前記第1の標的配列と、前記第1の5’プライマー配列、前記第1の3’プライマー配列、及び前記第1の介在領域の相補体と、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
反復単位を含む第2の連結一本鎖核酸を含み、前記反復単位が、前記第2の標的配列と、前記第2の5’プライマー配列、前記第2の3’プライマー配列、及び前記第2の介在領域の相補体と、を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の介在領域及び前記第2の介在領域が、同じ配列を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の介在領域及び前記第2の介在領域が、インデックス配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1の5’プライマー配列が、前記第1の標的配列の標的核酸5’を結合し、前記第1の3’プライマー配列が、前記第1の標的配列の3’を結合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の5’プライマー配列が、前記第2の標的配列の標的核酸5’を結合し、前記第2の3’プライマー配列が、前記第2の標的配列の3’を結合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1の標的配列及び前記第2の標的配列が、前記標的核酸上で離間している、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
標的配列を増幅するための方法であって、
オリゴヌクレオチドが標的核酸上の離間した標的結合配列に結合するように前記核酸を前記オリゴヌクレオチドと接触させて、前記標的核酸の標的配列の周りにループ構造を形成することと、
前記オリゴヌクレオチドの3’末端を5’末端に向かって、前記標的配列を横切って伸長させることと、
前記伸長された3’末端を前記オリゴヌクレオチドの前記5’末端にライゲーションして、閉ループを形成することと、
前記閉ループをローリングサークル増幅のための鋳型として使用して、連結一本鎖核酸を生成することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記連結一本鎖核酸を検出して、前記標的配列を検出することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記連結一本鎖核酸を配列決定して、前記標的配列を検出することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記連結一本鎖核酸を他の連結一本鎖核酸とプールすることを含み、前記連結一本鎖核酸が、前記他の連結一本鎖核酸中に存在しない固有のインデックス配列を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記プールされた連結一本鎖核酸を増幅して、1つ以上の更なるインデックス配列を導入することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
標的核酸を検出するための方法であって、
第1のクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)ガイドRNAであって、前記第1のガイドRNAが、標的核酸の第1の領域に相補的な標的特異的ヌクレオチド領域を含む、第1のCRISPRガイドRNA及び第1のCRISPR関連(Cas)タンパク質と、第2のCRISPRガイドRNAであって、前記第2のガイドRNAが、前記第1の領域から離間した標的核酸の第2の領域に相補的な標的標的特異的ヌクレオチド領域を含む、第2のCRISPRガイドRNA及び第2のCasタンパク質と、を有する系を提供することと、
前記標的核酸を前記系と接触させて、複合体を形成し、前記第1の領域及び前記第2の領域内で切断して、前記第1の領域と前記第2の領域との間に介在ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを放出させることと、
前記オリゴヌクレオチドを鋳型にアニーリングすることと、
前記アニーリングされたオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、前記鋳型を増幅することと、を含む、方法。
【請求項21】
前記増幅された鋳型を検出して、前記オリゴヌクレオチドを検出することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記増幅された鋳型を配列決定して、前記オリゴヌクレオチドを検出することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記鋳型が環状化され、前記増幅することが、前記オリゴヌクレオチドを前記プライマーとして使用するローリングサークル増幅を介して前記鋳型を増幅することによって、連結一本鎖核酸を生成することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記増幅することが、フォワード及びリバースプライマー対の別のプライマーを提供することを含み、前記フォワード及びリバースプライマー対が、前記プライマーを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
標的核酸を検出するための方法であって、
クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)ガイドRNAであって、前記ガイドRNAが、標的核酸の領域に相補的な標的特異的ヌクレオチド領域を含む、CRISPRガイドRNA及びCRISPR関連(Cas)タンパク質を有する系を提供することと、
複数の環状化オリゴヌクレオチドを提供することと、
前記標的核酸を前記系と接触させて、複合体を形成することと、
前記複合体中の前記Casタンパク質を使用して、前記複数の環状化オリゴヌクレオチドを線状化して、プライマーを生成することと、
前記プライマーのうちの1つ以上を鋳型にアニーリングすることと、
前記鋳型にアニーリングされた前記プライマーのうちの前記1つ以上を使用して、前記鋳型を増幅することと、を含む、方法。
【請求項26】
前記増幅された鋳型に基づいて前記標的核酸の前記領域を検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記増幅された鋳型の配列決定に基づいて前記標的核酸の前記領域を検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記プライマーのうちの前記1つ以上が、フォワード及びリバースプライマー対を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記増幅することが、フォワード及びリバースプライマー対の別のプライマーを提供することを含み、前記フォワード及びリバースプライマー対が、前記プライマーを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記複数の環状化オリゴヌクレオチドが、第2の環状領域に連結された第1の環状領域を有するダンベル構造を含み、前記複数の環状化オリゴヌクレオチドを線状化してプライマーを生成することが、前記第1の環状領域のみを線状化して第2の環状化部分を線状化しないことを含み、前記鋳型が、前記第2の環状領域を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記鋳型を増幅することが、前記プライマーのうちの前記1つ以上をローリングサークル増幅のためのプライマーとして使用して、前記第2の環状領域を増幅して、連結一本鎖核酸を生成することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
mRNA標的核酸を増幅するための方法であって、
逆転写酵素反応のためのプライマーであって、前記プライマーが、ローリングサークル増幅のためのプライマー結合配列及びリン酸化5’末端を含む、プライマーを提供することと、
前記プライマーをmRNAにアニーリングすることと、
逆転写酵素を使用して前記プライマーを伸長させて、前記プライマーを含むcDNAを生成することと、
前記cDNA中の前記プライマーの前記リン酸化5’末端を3’末端にライゲーションして、前記cDNAを環状化することと、
ローリングサークル増幅プライマーを、前記環状化されたcDNAの前記プライマー結合配列にアニーリングすることと、
前記環状化されたcDNAにアニーリングされた前記ローリングサークル増幅プライマーを用いて、前記環状化されたcDNAを増幅して、連結一本鎖核酸を生成することと、を含む、方法。
【請求項33】
第2鎖プライマーを前記連結一本鎖核酸の反復単位にアニーリングすることと、前記アニーリングされた第2鎖プライマーを伸長させて、前記連結一本鎖核酸の第2の鎖を合成することと、を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記連結一本鎖核酸を配列決定して、前記mRNAについての配列情報を生成することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記配列決定することが、前記連結一本鎖核酸を断片化して配列決定ライブラリーの断片を生成することと、前記断片を配列決定することと、を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記断片化することが、タグメンテーション反応を含む、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された技術は、全般的には核酸特性評価、例えば、検出及び/又は配列決定手法に関する。いくつかの実施形態では、開示された技術は、例えば、全長mRNAのcDNAから、又は合成鋳型から出発して、ローリングサークル増幅を使用して連結核酸を生成することと、連結核酸を配列決定及び/又は検出することと、を含む。いくつかの実施形態では、開示された技術は、CRISPR-Cas相互作用の結果としてプライマーを生成するCRISPR-Cas相互作用を含む増幅反応を含み、それによって、その後、プライマーは、検出可能な増幅反応の一部として使用される。開示された増幅手法は、合成オリゴヌクレオチド又はプライマーを使用してもよい。
【背景技術】
【0002】
このセクションで考察される主題は、単にこのセクションにおける言及の結果として、先行技術であると想定されるべきではない。同様に、このセクションで言及した問題、又は背景として提供された主題と関連付けられた問題は、先行技術において以前に認識されていると想定されるべきではない。このセクションの主題は、単に、異なるアプローチを表し、それ自体はまた、特許請求される技術の実装形態に対応し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
生体分子の研究における進歩は、部分的に、分子又はそれらの生物学的反応を特性評価するために使用される技術の改善によって導かれている。特に、核酸DNA及びRNAの研究は、配列分析に使用される開発技術から恩恵を受ける。ポリヌクレオチド鋳型を配列決定するための方法は、鋳型鎖に相補的な標識ヌクレオチド又はポリヌクレオチドを連続的に組み込むために、それぞれDNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼを使用して複数の伸長反応を実施することを含み得る。そのような合成による配列決定反応において、鋳型鎖に基づき、対となっている新しいポリヌクレオチド鎖は、鋳型鎖に相補的なヌクレオチドを連続的に組み込むことによって構築される。特定の状況において、合成による配列決定手法を使用して確実に得ることができる配列データの量は、制限され得る。いくつかの状況において、配列決定の実行は、配列の再整列を可能にする塩基の数(例えば、約25~30サイクルの組み込み)に限定され得る。しかしながら、例えば、SNP分析、バリアント分析、及びハプロタイプ決定のような適用について、多くの状況において、同じ鋳型分子について更なる配列データを確実に得ることが可能であることが有利であろう。更に、配列決定反応において使用される出発物質が低濃度である場合、25~30サイクルからの配列決定データは、所望の分析に不十分であり得る。したがって、低濃度出発物質のための標的化された次世代配列決定を容易にし、かつ/又はSNP若しくは他のバリアント配列例えば、体細胞突然変異、ウイルスバリアントを配列決定若しくは検出することができる新しい方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、本開示は、核酸組成物を提供する。核酸組成物は、第1の5’プライマー配列、第1の3’プライマー配列、及び第1の5’プライマー配列と第1の3’プライマー配列との間に配置された第1の介在領域を含む第1のオリゴヌクレオチドと、第2の5’プライマー配列、第2の3’プライマー配列、及び第2の5’プライマー配列と第2の3’プライマー配列との間に配置された第2の介在領域を含む第2のオリゴヌクレオチドと、を含む。核酸組成物はまた、標的核酸を含み、第1の5’プライマー配列及び第1の3’プライマー配列は、標的核酸の第1の標的配列に隣接する第1の領域に相補的であり、第2の5’プライマー配列及び第2の3’プライマー配列は、標的核酸の第2の標的配列に隣接する第2の領域に相補的であり、その結果、第1のオリゴヌクレオチドは、標的核酸に結合すると、第1の標的配列の周りに第1のループ構造を形成し、第2のオリゴヌクレオチドは、標的核酸に結合すると、第2の標的配列の周りに第2のループ構造を形成する。
【0005】
一実施形態では、本開示は、標的配列を増幅するための方法であって、オリゴヌクレオチドが標的核酸上の離間した標的結合配列に結合するように核酸をオリゴヌクレオチドと接触させて、標的核酸の標的配列の周りにループ構造を形成するステップと、オリゴヌクレオチドの3’末端を5’末端に向かって、標的配列を横切って伸長させるステップと、伸長された3’末端をオリゴヌクレオチドの5’末端にライゲーションして、閉ループを形成するステップと、閉ループをローリングサークル増幅のための鋳型として使用して、連結一本鎖核酸を生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0006】
一実施形態では、本開示は、標的核酸を検出するための方法であって、第1のクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)ガイドRNAであって、第1のガイドRNAが、標的核酸の第1の領域に相補的な標的特異的ヌクレオチド領域を含む、第1のCRISPRガイドRNA及び第1のCRISPR関連(Cas)タンパク質と、第2のCRISPRガイドRNAであって、第2のガイドRNAが、第1の領域から離間した標的核酸の第2の領域に相補的な標的標的特異的ヌクレオチド領域を含む、第2のCRISPRガイドRNA及び第2のCasタンパク質と、を有する系を提供するステップと、標的核酸を系と接触させて、複合体を形成し、第1の領域及び第2の領域内で切断して、第1の領域と第2の領域との間に介在ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを放出させるステップと、オリゴヌクレオチドを鋳型にアニーリングするステップと、アニーリングされたオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、鋳型を増幅するステップと、を含む、方法を提供する。
【0007】
一実施形態では、本開示は、標的核酸を検出するための方法であって、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)ガイドRNAであって、ガイドRNAが、標的核酸の領域に相補的な標的特異的ヌクレオチド領域を含む、CRISPRガイドRNA及びCRISPR関連(Cas)タンパク質を有する系を提供するステップと、複数の環状化オリゴヌクレオチドを提供するステップと、標的核酸を系と接触させて、複合体を形成するステップと、複合体中のCasタンパク質を使用して、複数の環状化オリゴヌクレオチドを線状化して、プライマーを生成するステップと、プライマーのうちの1つ以上を鋳型にアニーリングするステップと、鋳型にアニーリングされたプライマーのうちの1つ以上を使用して、鋳型を増幅するステップと、を含む、方法を提供する。
【0008】
一実施形態では、本開示は、mRNA標的核酸を増幅するための方法であって、逆転写酵素反応のためのプライマーであって、プライマーが、ローリングサークル増幅のためのプライマー結合配列及びリン酸化5’末端を含む、プライマーを提供するステップと、プライマーをmRNAにアニーリングするステップと、逆転写酵素を使用してプライマーを伸長させて、プライマーを含むcDNAを生成するステップと、cDNA中のプライマーのリン酸化5’末端を3’末端にライゲーションして、cDNAを環状化するステップと、ローリングサークル増幅プライマーを、環状化されたcDNAのプライマー結合配列にアニーリングするステップと、環状化されたcDNAにアニーリングされたローリングサークル増幅プライマーを用いて、環状化されたcDNAを増幅して、連結一本鎖核酸を生成するステップと、を含む、方法を提供する。
【0009】
前述の説明は、開示される技術の作製及び使用を可能にするために提示されている。開示される実施態様に対する様々な修正は、明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、開示される技術の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施態様及び用途に適用され得る。したがって、開示される技術は、示される実施態様に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理及び特徴と一致する最も広い範囲を与えられるものである。開示される技術の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のこれらの特徴、態様、及び利点、並びに他の特徴、態様、及び利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むと、より深く理解されると考えられ、同様の特徴は、図面にわたって同様の部分を表している。
図1】本開示の実施形態による、核酸のローリングサークル増幅に基づく特性評価において使用するためのオリゴヌクレオチドの概略図である。
図2】本開示の実施形態による、核酸のローリングサークル増幅に基づく特性評価におけるプロトコルステップの概略図である。
図3】本開示の実施形態による、核酸の多重化ローリングサークル増幅に基づく特性評価の概略図である。
図4】本開示の実施形態による、cDNAから出発し、センス鎖アンプリコン及びアンチセンス鎖アンプリコンを生成する例示的なプロトコルの概略図である。
図5】本開示の実施形態による、核酸の特性評価のためのローリングサークル増幅鋳型のCRISPR-Cas媒介生成のためのステップの例示的なプロトコルの概略図である。
図6】本開示の実施形態による、核酸の特性評価のためのローリングサークル増幅鋳型のCRISPR-Cas媒介生成のためのステップの例示的なプロトコルの概略図である。
図7】本開示の実施形態による、核酸の特性評価のためのローリングサークル増幅鋳型のCRISPR-Cas媒介生成のためのステップの例示的なプロトコルの概略図である。
図8】ローリングサークル増幅及び第2の鎖の合成による二本鎖連結全長cDNA産物の生成のためのプロトコルの概略図である。
図9】本手法に従って配列決定データを取得するように構成された配列決定デバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の考察は、開示される技術を当業者が作製及び使用することを可能にするために提示され、特定の用途及びその要件に関連して提供される。開示される実施態様に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかとなり、本明細書で定義される一般原理は、開示される技術の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施態様及び用途に適用され得る。したがって、開示される技術は、示される実施態様に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理及び特徴と一致する最も広い範囲を与えられるものである。
【0012】
核酸の特性評価を可能にする様々な方法及び構成が本明細書に記載されている。核酸特性評価は、配列情報及び/又は配列検出データ、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びアンプリコンの検出、ハイブリダイゼーションに基づく検出、アレイに基づく検出などからのデータを取得することを含み得る。特定の実施形態では、開示された手法は、標的核酸の配列決定及び/又は検出手法を提供する。特定の実施形態において、本明細書に提供されるのは、増幅のための鋳型である天然に存在しない核酸、例えば、組換え及び/又は合成オリゴヌクレオチドである。一実施形態において、天然に存在しない核酸は、ローリングサークル増幅を介してアンプリコンを生成するための鋳型として使用される。生成されたアンプリコンは、配列決定及び/又は検出出力を生成するための配列決定及び/又は検出プロトコルにおける更なる処理のために提供され得る。
【0013】
本明細書に開示された特定の実施形態は、RNA標的核酸、例えば、一本鎖RNAに関して考察される。しかしながら、実施形態は、一本鎖又は二本鎖であるDNA又はRNAと併せて使用され得ることが理解されるべきである。特定の場合において、二本鎖核酸は、必要に応じて、一本鎖核酸標的核酸を生成するために、開示されたプロトコルの一部として変性され得る。
【0014】
図1は、開示された実施形態によるローリングサークル増幅を使用する核酸特性評価手法の構成要素の概略図を示す。この手法は、一本鎖として示される標的核酸12を含む。標的核酸は、天然に存在する一本鎖分子(例えば、mRNA若しくは一本鎖ウイルス)であり得るか、又は標的核酸12が逆相補鎖も含むように変性され得る。
【0015】
標的核酸12は、例示目的で一本鎖として示されているが、標的核酸は、互いに同じであっても異なっていてもよい複数の核酸鎖を含んでもよいことを理解されたい。例えば、標的核酸12がウイルスである場合、標的核酸12は、1本の核酸鎖(又は数本の鎖)上にウイルスゲノムを含み得る。一般に同じ配列であるウイルスゲノムの複数のコピーが存在してもよいが、標的核酸12の特定のコピーは、感染した個体内の配列多様性を表す変異を有してもよい。更に、試料が多重化される場合、標的核酸12はまた、ウイルス配列における個体間変異を表す変異を含み得る。標的核酸12がより大きなゲノムである場合、標的核酸12は断片化されてもよく、異なる鎖が異なるゲノム部分を表す。標的核酸12がトランスクリプトームである場合、異なる鎖は、異なるmRNA転写物又はそのcDNAコピーを表す。一実施形態では、標的核酸は、感染した個体由来のウイルス核酸、例えば、COVID-19 RNAゲノムであってもよく、ウイルス核酸は、開示された手法によって検出(例えば、配列決定)することができる個体内又は個体間バリアントを含んでもよい。一実施形態では、開示された手法は、多重化試料分析の一部として使用される。
【0016】
図示された実施形態において、標的核酸上の異なる標的結合配列20、22は、標的核酸12に沿って異なる標的領域24に隣接する。この手法は、オリゴヌクレオチド16(例えば、一本鎖オリゴヌクレオチド16)に、異なる標的領域24(例えば、標的領域24a、24b、24c、24d)に対する2つのプライマー30、32を提供することを含み、その結果、個々のオリゴヌクレオチド16は、結合されると、標的配列24の周りにループ構造を形成する(図2を参照のこと)。
【0017】
各個々のオリゴヌクレオチド16は、第2の標的結合配列20に結合する第2の標的特異的プライマー30と、第1の標的結合配列22に結合する第1の標的特異的プライマー32と、を有する。第2の標的特異的プライマー30は、第1の標的特異的プライマー32の5’側であり、第2の標的結合配列20の逆相補体である。第1の標的特異的プライマー32は、第1の標的結合配列22の逆相補体である。標的配列24の増幅を可能にし、場合によっては、標的核酸12上のバリアント情報の保存を可能にするために、オリゴヌクレオチド16は、標的核酸との接触及びその後の増幅の前に、標的配列24に相補的な配列を含まない。図示された実施形態において、第2の標的特異的プライマー30は、オリゴヌクレオチドの5’末端又はその近傍にあり、第1の標的特異的プライマー32は、オリゴヌクレオチド16の3’末端又はその近傍にある。
【0018】
標的核酸12にわたるカバレッジを達成するために、互いに対して識別可能な標的特異的プライマー配列30、32を有し、異なる標的領域24を増幅するための異なる標的結合配列20、22に対する結合特異性を有する複数のオリゴヌクレオチド16が提供され得る。すなわち、第2の標的特異的プライマー30aは、第2の標的特異的プライマー30b、第2の標的特異的プライマー30c、第2の標的特異的プライマー30dなどとは異なる配列を有する。更に、第1の標的特異的プライマー32aは、第1の標的特異的プライマー32b、第1の標的特異的プライマー32c、第1の標的特異的プライマー32dなどとは異なる配列を有する。更に、標的特異的プライマー配列30、32は、図2に示すように、指向性ループ結合を促進するために互いに異なっていてもよい。
【0019】
少数のオリゴヌクレオチド16のみが図示されているが、オリゴヌクレオチド16のセットは、2つ以上、5つ以上、10以上、100以上、又は1000以上のオリゴヌクレオチド16を含み得ることが理解されるべきである。異なるオリゴヌクレオチド16は、配列に基づいて互いに識別可能であってもよい。更に、オリゴヌクレオチド16は、異なる標的結合配列20、22のために設計された標的特異的プライマー配列30、32を用いて、標的核酸12にわたって完全な適用範囲を達成するように設計され得る。一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、標的領域24が標的配列決定反応において標的核酸12の一部のみを表すように設計され得る。オリゴヌクレオチド16は、配列決定キットの試料調製試薬の一部として提供されてもよい。実施形態において、開示された実施形態は、異なる標的領域24に隣接する異なる標的結合配列20、22に結合するプライマー30、32をそれぞれ有する10~50個、10~100個、又は10~500個のオリゴヌクレオチド16を有する反応混合物又はキットを含み得る。更に、反応混合物は、特定の標的領域24(例えば、標的領域24a、24b、24c、24d)に対する特異性を有する1つ以上の個々のオリゴヌクレオチド16の複数のコピーを含んでもよい。異なるオリゴヌクレオチド標的領域24の数は、所望のアッセイ特性に基づいて選択され得る。
【0020】
一実施形態では、各個々のオリゴヌクレオチド16は、約50~500塩基長(例えば、80~300塩基長)の範囲であってもよく、標的特異的プライマー配列30、32は、それぞれ個々に12~30塩基長であってもよい。各オリゴヌクレオチド16は、一対の標的特異的プライマー配列30、32を含むが、標的特異的プライマー配列30、32の間の介在領域(例えば、50~120塩基)はまた、1つ以上のバーコード又はインデックス配列、配列決定プライマー、モザイク末端配列などの機能的配列を含んでもよい。オリゴヌクレオチド16の長さは、標的配列24の長さに従って変化してもよく、より長いオリゴヌクレオチド16は、比較的長い標的領域24と共に使用される。一実施形態では、標的配列24は、1~2500塩基長(例えば、50~350塩基長)である。一実施形態では、標的配列24は、100~200塩基長、又は約150塩基長であり、ショートリード配列決定に適している。
【0021】
図2は、1つ以上の標的領域24の特性評価の一部として、個々のオリゴヌクレオチド16が標的核酸12に結合した後のローリングサークル増幅を示す。第1のステップにおいて、オリゴヌクレオチド16を標的核酸12と組み合わせた後(図1を参照のこと)、個々のオリゴヌクレオチド16は、標的特異的プライマー配列30、32の相補的結合を介して、標的核酸12上の個々の標的配列24の周りに開ループ構造を形成する。図示された実施形態において、オリゴヌクレオチド16は、二重インデックス配列i5及びi7を備えている。
【0022】
オリゴヌクレオチド16の標的特異的プライマー配列30、32間の介在領域36は、例としてB15’、A14、及びモザイク末端(ME)配列として示されるプライマー結合配列を含み得る。一実施形態において、オリゴヌクレオチド16の少なくとも1つのインデックス配列は、個々のオリゴヌクレオチド16に固有であり、標的核酸12と接触している他のオリゴヌクレオチド16上のインデックスから識別可能であってもよい。二重インデックス化配置において、オリゴヌクレオチドは、2つの固有かつ識別可能なインデックスを含み得る。一実施形態では、オリゴヌクレオチド16は、反応に共通であり、標的核酸12との反応における試料源を示す試料バーコードを含んでもよい。1つ以上のプライマー結合配列は、標的核酸12との反応に対して普遍的又は共通であり得る。一実施形態において、1つ以上のプライマー結合配列は、プロトコルステップを合理化するために、多重化反応の異なる試料間で普遍的又は共通であってもよい(図3を参照のこと)。
【0023】
次のステップでは、付加されたヌクレオチドが標的配列24中のヌクレオチドの逆相補体を形成するように、標的配列24に基づいて、ポリメラーゼ伸長を介して3’末端で5’末端に向かって開ループ構造を伸長させる。一実施形態では、標的核酸はRNAであり、伸長ポリメラーゼはRTポリメラーゼである。一実施形態では、標的核酸はDNAであり、伸長ポリメラーゼはDNAポリメラーゼである。伸長は、等温反応であってもよい。伸長された3’末端は、(例えば、リガーゼを介して)5’末端にライゲーションされる。オリゴヌクレオチド16の5’末端は、ライゲーションを促進するために、標的核酸12への結合の前又は後にリン酸化され得る。ニックライゲーションは、オリゴヌクレオチド16が、標的配列24の逆相補体42の組み込みを介して修飾される閉ループ構造40を形成するように、ループを閉じる。
【0024】
閉ループ構造40は、閉ループ構造内に存在するオリゴヌクレオチド16の配列のローリングサークル増幅反応プライミングオフを受ける。一実施形態では、閉ループ構造40は、ローリングサークル増幅プライマー50の結合を介してローリングサークル増幅を開始する前に、標的核酸12から熱分離され得る。しかしながら、他の反応(例えば、ワンポット反応)において、ローリングサークル増幅プライマー50は、より早い段階でオリゴヌクレオチド16を結合し得る。
【0025】
ローリングサークル増幅プライマー50は、単一のユニバーサルプライマー50が反応中の全ての閉ループ構造40を増幅するように、異なる標的領域24に特異的なオリゴヌクレオチド16間の共通配列に基づいて設計され得る。したがって、一実施形態では、プライマー50は介在領域36内の配列に特異的であり、プライマー30、32には特異的ではない。ローリングサークル増幅は、高い処理能力及び鎖置換活性を有するPhi29ポリメラーゼなどの鎖置換ポリメラーゼを使用して、連結一本鎖核酸60を生成する。ローリングサークル増幅プライマー50は、例えば5~20塩基であってもよい。ローリングサークル増幅反応は、市販のキット、例えばAmersham Biosciences製のtempliphiキット(GE製品番号25-6400-10)を使用して、オリゴヌクレオチド16の配列に基づいて設計されたカスタムプライマー50を用いて行ってもよい。
【0026】
本明細書中に開示されるようなローリングサークル増幅の連結一本鎖核酸60産物は、環状ではなく、環状物質が直鎖状鎖において複数回コピーされる配列の長い鎖であることに留意すべきである。したがって、各ローリングサークル増幅産物は、ここでは閉ループ40として示される、鋳型の環状配列のコンカテマー反復コピーを含む長い線状ストリングである。一実施形態では、ローリングサークル増幅は、終点(例えば、反応混合物中のdNTP試薬の枯渇)まで実行される。連結一本鎖核酸60の反復単位62は、標的配列24を含む。介在領域36に存在する配列に依存して、機能的配列(例えば、1つ又は2つのインデックス配列、ユニバーサル配列決定配列又はプライマー結合配列、酵素結合配列など)が、反復単位62における標的配列24の5’及び/又は3’に組み込まれ得る。連結一本鎖核酸60をプールし、PCRに供して、1つ以上の更なるインデックス配列及び/又はアダプター配列(例えば、P5及びP7、Illumina,Inc.)を含む第2のレベルのインデックス化を加えて、Illumina配列決定プラットフォームなどの特定の配列決定プラットフォームのための標準フォーマットで配列決定ライブラリーの断片を生成することができる。フォワード及びリバースプライマー対を形成し、かつ反復単位62に非相補的であるが増幅反応の過程でアンプリコンに組み込まれる更なる5’配列を有するプライマー64、66が示されている。
【0027】
一実施形態では、オリゴヌクレオチド16の介在領域36のプライマー結合配列及びインデックス配列は、ローリングサークル増幅を介してコピーされると、反復単位に組み込まれた相補配列が、本明細書で提供される配列決定プロトコルを用いて機能する配列決定に直接進むことができるように選択され得る。したがって、アダプター配列(例えば、P5及びP7、Illumina,Inc.)並びに任意の他の関連配列を、反復単位62に直接組み込むことができる。一例では、配列決定ライブラリー調製の目的で、連結一本鎖核酸60の断片化を促進するために、反復単位中に異なる断片化部位が存在してもよい。
【0028】
したがって、開示された実施形態において、比較的低濃度の標的核酸12は、ローリングサークル増幅(これは、バリアント情報を保持しながら、目的の標的配列を増幅する)の使用による特性評価のための出発物質として提供され得る。更に、開示された合成オリゴヌクレオチド16を使用して、ローリングサークル増幅のためのサイズ制御された鋳型を生成することができ、これは、約150塩基の配列決定リードを生成し、かつより長いリードを使用する手法よりも費用がかからないショートリード配列決定手法により特性評価のための断片を生成するのに有益であり得る。
【0029】
オリゴヌクレオチド16は、標的核酸12に結合する前に一本鎖状態であり得ることが理解されるべきである。しかしながら、標的核酸12への結合は、オリゴヌクレオチド16と標的核酸12との間に少なくとも部分的な二本鎖構造をもたらす。更に、閉ループ構造は、開示されたプロトコルの一部の間、少なくとも部分的に一本鎖であってもよいが、標的核酸12、ローリングサークル増幅プライマー50と共に、連結一本鎖核酸60の形成の間、少なくとも部分的に二本鎖構造を形成する。
【0030】
図3は、図2における連結一本鎖核酸60の生成後に起こる多重化反応のための例示的なプールステップを示す。第1の試料70a(試料1)から生成された標的核酸12aに結合するオリゴヌクレオチド16aがインデックス化される。インデックス化は、標的核酸12aに結合したオリゴヌクレオチド16aから生成された閉ループ構造40aにわたるローリングサークル増幅を介して、試料1特異的インデックス72a(i1として示される)を介して行われる。第2の試料70b(試料2)から生成された標的核酸12bに結合するオリゴヌクレオチド16bがインデックス化される。インデックス化は、標的核酸12bに結合したオリゴヌクレオチド16bから生成された閉ループ構造40bにわたるローリングサークル増幅を介して、試料2特異的インデックス72b(i2として示される)を介して行われる。したがって、プールされた連結一本鎖核酸60a、60bは識別可能であり、試料1又は試料2のインデックス配列の存在に基づいて元の試料に帰属させることができる。図示された例は、多重化反応における2つの異なる試料を示すが、任意の数の試料が存在してもよく、それぞれが異なる固有の試料特異的インデックス(i3、i4、i5・・・in)を有することを理解されたい。異なる試料からの連結一本鎖核酸60は、第2のレベルのインデックス化及び/又はアダプター組み込みのためのPCR反応を受けるために、第1のレベルのインデックス化の後にプールすることができる。
【0031】
本明細書で提供されるように、標的核酸12は、二本鎖又は一本鎖のRNA又はDNA分子であってもよい。図4は、標的核酸12が、センス及びアンチセンス鎖アンプリコン連結一本鎖核酸60の両方の生成を可能にするcDNAを含む変異を示す。一例では、鋳型RNA鎖80を用いて相補的cDNA鎖82を生成し、逆転写を介して二本鎖産物83を形成する。別の例において、二本鎖産物83は、次に、完全な二本鎖cDNA 86に変換される。実施形態では、元の一本鎖又は二本鎖RNAに加えて、これらのいずれか又は両方が標的核酸12であり得る。
【0032】
二本鎖産物83の鎖80、82及び/又は完全cDNA 86の配列を使用して、オリゴヌクレオチド16を設計してもよい。図示された実施形態において、オリゴヌクレオチド16は、それぞれの鎖80、82及び/又は82、84上の非相補的標的配列で結合するように設計してもよい。しかしながら、オリゴヌクレオチドは、追加的又は代替的に、それぞれの鎖80、82及び/又は82、84上の相補的な位置で結合するように設計してもよいことが理解されるべきである。アンプリコン連結一本鎖核酸60は、2つの異なる鎖からのアンプリコンを表し、本明細書に開示されるようにインデックス化され、その後の処理(更なるインデックス化、配列決定)のためにプールされ得る。実施形態において、RCAアンプリコンは、例えば、エキソヌクレアーゼを介して鋳型から分離されて、鋳型を消化して除去することができる。エキソヌクレアーゼは、RNA鋳型の場合にはRNA Hであり得る。
【0033】
図5~7は、鋳型分子の従来の増幅及び/又はローリングサークル増幅と併せて使用されるプライマーを生成するために追加的又は代替的に使用され得る、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)及びCRISPR関連タンパク質(Cas)相互作用の例を示す。本明細書で提供される場合、CRISPR-Casは、標的の領域に相補的又は実質的に相補的なヌクレオチド配列を含むガイドRNA配列と、ヌクレアーゼ活性を有するタンパク質と、を含む酵素系を指す。CRISPR-Cas系としては、I型CRISPR-Cas系、II型CRISPR-Cas系、III型CRISPR-Cas系、及びそれらの誘導体が挙げられる。CRISPR-Cas系は、天然に存在するCRISPR-Cas系に由来する操作された及び/又はプログラムされたヌクレアーゼ系を含む。CRISPR-Cas系は、操作された及び/又は突然変異したCasタンパク質を含み得る。CRISPR-Cas系は、操作された及び/又はプログラムされたガイドRNAを含み得る。ガイドRNAとは、標的に相補的又は実質的に相補的な配列を含むRNAを指す。ガイドRNAは、標的DNA配列の領域に相補的又は実質的に相補的であるヌクレオチド配列以外に、ヌクレオチド配列を含み得る。ガイドRNAは、crRNA又はその誘導体、例えば、crRNA:tracrRNAキメラであってもよい。特定の実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質、Cas3タンパク質、又はCas13タンパク質である。例えば、標的核酸がssRNAである実施形態において、CRISPR-Casは、ssRNAを切断するCas13タンパク質を含む。
【0034】
特定のCasタンパク質機能が標的核酸12の形態(例えば、一本鎖対二本鎖、RNA対DNA)に特異的である場合、標的核酸12は、一本鎖基質を二本鎖基質に変換するか、一本鎖基質を変性させるか、又は標的核酸12のうちの一方若しくは両方の鎖の相補的DNA若しくはRNAコピーを合成するための前処理ステップを受け得ることを理解されたい。したがって、本明細書で提供される反応混合物又はキットは、そのような前処理ステップの一部である酵素を含んでもよい。
【0035】
図5は、標的核酸12との例示的なCRISPR-Cas媒介反応を示す。図示された実施形態では、標的核酸12は一本鎖RNAである。しかしながら、標的核酸12は、DNA及び二本鎖又は一本鎖であってもよい。CRISPR-Cas系100は、第1のCasタンパク質102a及び関連するガイドRNA 104aを含む。ガイドRNA 104aは、標的核酸12の第1の標的領域105aに特異的なガイド標的特異的配列106aを有する。CRISPR-Cas系100はまた、第2のCasタンパク質102b及び関連するガイドRNA 104bを含む。ガイドRNA 104bは、標的核酸12の第2の標的領域105bに特異的なガイド標的特異的配列106bを有する。したがって、それぞれのガイド配列106a、106bは、標的核酸12上の離間した標的領域105a、105bとして示される標的特異的配列105に特異的である。特定の実施形態では、標的領域105a、105bは、標的核酸12の同じ鎖上にあるか、又はCasタンパク質が二本鎖切断を引き起こす二本鎖標的核酸12の異なる鎖上にあってもよい。領域105a、105b内のそれぞれのCas切断部位107a、107bでのCas媒介性切断は、107a、107bの間から介在オリゴヌクレオチド108を切断する。
【0036】
実施形態において、ガイド標的特異的配列106a、106bは、17~20塩基長である。したがって、介在オリゴヌクレオチド108のサイズは、標的核酸12上のガイドRNA 104a、104bの配置に依存し得る。特定の実施形態では、標的核酸12は二本鎖であってもよく、ガイドRNA 104a、104bは別々の鎖に結合するように設計されてもよいが、Casタンパク質102a、102bは二本鎖切断を引き起こす。一実施形態では、ガイド配列106a、106bは同じ鎖に結合する。一実施形態において、標的核酸12の同じ鎖上の3’結合ガイド標的特異的配列106bは、より短いオリゴヌクレオチド108が放出されることを可能にするために、より多くの5’結合ガイド配列106aよりも短い(例えば、15~17塩基)。実施形態において、オリゴヌクレオチドは、12~30塩基長である。標的領域105a、105bは、およそ介在オリゴヌクレオチド108の長さだけ離間している。しかしながら、特定の実施形態では、介在オリゴヌクレオチド108は、第1の、又はより5’側のCasタンパク質102aに対する切断部位の3’側であり、かつ第2の、又はより3’側のCasタンパク質102bに対する切断部位の5’側である標的領域105a、105bのいくつかの部分を含む。したがって、第1の標的領域105aの3’末端と第2の標的特異的配列105bの5’末端との間の塩基長は、介在オリゴヌクレオチド108の長さより短くてもよい。
【0037】
オリゴヌクレオチド108は、標的核酸12から放出されると、環状化合成レポーター鋳型110のためのローリングサークル増幅プライマーとして自由に機能する。環状化合成レポーター鋳型110は、オリゴヌクレオチド108に相補的な配列112を含む。環状化された合成レポーター鋳型110は、アダプター配列、配列決定プライマー結合部位、1つ以上のバーコード又はインデックスなどの更なる機能的配列114を含み得る。生成された連結一本鎖核酸120は、本明細書で論じられる手法に従って検出/特性評価することができる。
【0038】
環状化合成レポーター鋳型110は、実施形態において、図1~4に開示されるようなオリゴヌクレオチド16から生成され、オリゴヌクレオチド16のプライマー30、32の標的結合配列20、22への結合及びその後のループの閉鎖によって生成される、閉ループ構造40であり得る。実施形態では、環状化合成レポーター鋳型110は、予め形成され、試薬として反応混合物に提供されてもよい。したがって、実施形態において、キットとして提供され得る反応混合物試薬は、設計されたガイド配列106a、106bを有するCRISPR-Cas系100、環状化合成レポーター鋳型110、及び検出試薬も含み得るローリングサークル増幅のための試薬を含み得る。
【0039】
一実施形態では、標的核酸のバリアント(COVID-19配列バリアント又は他の病原菌バリアントなど)は、目的の異なるバリアントのそれぞれの相補体を表すプライマー結合配列を有する異なる一意にインデックス化された環状化合成レポーター鋳型110を提供することによって、標的核酸12の試料中で同定され得る。遊離したオリゴヌクレオチド108は、遊離したオリゴヌクレオチド108中に存在する任意のバリアントを含む、オリゴヌクレオチド108に相補的な配列112を含む環状化合成レポーター鋳型110に優先的に結合し、プライマー結合配列が遊離したオリゴヌクレオチド108を相補しない他の環状化合成レポーター鋳型110への結合が減少する。したがって、検出段階において、生成された連結一本鎖核酸120中に存在する1つ以上のインデックスを、より長い配列決定リードよりも費用がかからない短いインデックスリードに供して、環状化合成レポーター鋳型110が相補体を含む特定の関連バリアントに関連するインデックス配列情報を生成することができる。したがって、反応混合物又はキットは、オリゴヌクレオチド108中の異なる観察されたバリアントを表すそれぞれ異なる配列112を有する鋳型110のサブセットを有する複数の環状化合成レポーター鋳型110を含み得る。更に、例示的な反応をオリゴヌクレオチド108について示したが、標的核酸12の複数の部位を反応に含めて、複数の異なるオリゴヌクレオチド108を異なる位置で並行して遊離させることができることを理解されたい。したがって、反応混合物の一部として提供される環状化合成レポーター鋳型110は、異なる遊離したオリゴヌクレオチド108の配列に基づいて異なる配列112を含み得る。
【0040】
図5の実施形態は、ローリングサークル増幅に基づく手法を示すが、CRISPR-Cas系100を使用して、従来の2プライマー増幅のうちの一方又は両方のプライマーを生成することもできる。一実施形態では、第2のプライマーが反応混合物の一部として提供され、オリゴヌクレオチド108と共に作用して合成鋳型を増幅する。合成鋳型は、環状化合成レポーター鋳型110の特徴を一般的に含み得るが、直鎖状に配置された直鎖状合成鋳型であってもよい。
【0041】
図6は、CRISPR-Cas系100の副次的切断活性が増幅のためのプライマーを生成するために利用される代替的なCRISPR-Cas媒介反応を示す。CRISPR-Cas系100は、目的の配列を有する標的領域105を含む標的核酸12に結合して示されている。系100は、標的領域105に結合するガイドRNA 104の標的特異的配列106を介して標的核酸12に結合される。したがって、標的特異的配列106の標的領域105への相補性を介した系100の結合は、標的領域105の特定の配列の存在に基づく。標的特異的配列106は、目的の特定の配列に基づいて設計することができる。結合によって活性化されるCasタンパク質102(例えば、Cas13、Cas12a)の副次的な一本鎖切断酵素活性は、標的領域105の特定の配列の存在のプロキシ指標の一部として機能し得る。図示された実施形態では、副次的な一本鎖切断活性は、ガイドRNAの標的特異的配列106による標的領域105への特異的結合によって引き起こされる。この切断は、一本鎖環状RNA鋳型140、144を線状化して、線状化プライマー150、152を生成することができる。
【0042】
したがって、プライマーが標的核酸12、例えばウイルスRNAから直接遊離される図5の例とは対照的に、図6は、Casの副次的活性を使用して、環状鋳型140、144からプライマー150、152を遊離させることができることを示す。次いで、遊離されたプライマーは、レポーター鋳型154上の増幅反応に関与し得る。図示された実施形態は、鋳型140、144がフォワード及びリバースプライマー対を表すことを示すが、フォワード又はリバースプライマーのうちの一方のみが環状鋳型として提供されてもよく、他方のプライマーは既に線状形態でスパイクされている。レポーター鋳型154は、アンプリコンのプールを可能にするバーコード又はインデックスなどの機能的配列、及び/又は下流の配列決定反応に適合するアダプター配列を含み得る。
【0043】
したがって、実施形態において、キットとして提供され得る反応混合物試薬は、設計されたガイド配列106を有するCRISPR-Cas系100と、フォワード及びリバースプライマー対のうちの一方又は両方を表す1つ以上の環状鋳型(例えば、環状鋳型140、144)と、プライマー対が特異性を有するレポーター鋳型154と、単一プライマーの実施形態において、直鎖状形態のプライマー対の他方のプライマーと、を含み得る。
【0044】
図7は、Casタンパク質の副次的活性がダンベルからプライマーを遊離させる実施形態の概略図である。図6と同様に、CRISPR-Cas系100は、目的の配列を有する標的領域105を含む標的核酸12に結合して示されている。系100は、標的領域105に結合するガイドRNA 104の標的特異的配列106を介して標的核酸12に結合され、これがCasタンパク質102の副次的活性を誘発する。副次的活性は、第1の環状領域161及び第2の環状領域162を含む一本鎖ダンベル核酸構造160の切断を引き起こす。離間した切断部位164でのCasタンパク質102による切断は、第2の環状領域162内の配列172の逆相補体であるオリゴヌクレオチド168を放出する。
【0045】
したがって、オリゴヌクレオチド168は、それらの部位でまだ切断を受けておらず、かつ第1の環状領域161及び第2の環状領域162を保持している別の一本鎖ダンベル核酸構造160のローリングサークル増幅のためのプライマーとして働くことができる。連結一本鎖核酸増幅産物180が生成され、これは、一実施形態において、検出可能なマーカー182の組み込みにより検出され得る。しかしながら、本明細書で提供される更なる又は代替の検出方法が企図される。更に、連結一本鎖核酸増幅産物180は、副次的なCas活性の標的であり、これは次に切断を介してより多くのプライマーを生成する。次に、プライマーは、指数関数的増幅におけるインタクトな一本鎖ダンベル核酸構造160のローリングサークル増幅によって、より多くの連結一本鎖核酸増幅産物180を生成することができる。したがって、一本鎖ダンベル核酸構造160とCRISPR-Cas系100との比は、非常に低い標的核酸濃度であっても、指数関数的増幅が、連結一本鎖核酸増幅産物180のロバストな検出可能な結果をもたらすように選択され得る。
【0046】
図8は、短いリードを介してエクソーム配列決定を可能にするが、ハプロタイプ決定を可能にするためにバリアントについての位相情報を保持する、例示的なローリングサークル増幅手法を示す。ハイスループットショートリードDNA配列決定は、低いエラー率でエクソームを配列決定するための費用効率の高い方法である。しかしながら、リードの長さは、典型的には、mRNAの全長よりも短いので、ショートリード技術は、典型的には、全長mRNAの配列を有するエクソームを産生することができない。この不足は、cDNAからの短いリードを処理する場合、(1)mRNAアイソフォーム(すなわち、スプライスバリアント)を完全に分析することができないこと(すなわち、ロングリード技術が提供することができるという確信をもって)、及び(2)エクソーム中に存在するバリアントをハプロタイプに従ってフェーズ化することができないことを意味する。更に、mRNA配列におけるハプロタイプフェーズ化バリアントは、解釈可能であり、臨床的に実施可能である可能性が最も高いハプロタイプフェーズ化バリアントである。したがって、エクソーム配列決定においてバリアントについてのフェーズ情報を保持することは、従来のショートリード配列決定手法を上回る利益を提供するであろう。
【0047】
連続性保存転位(CPT)技術(すなわち、Illumina空間的バーコード化又は配列バーコード化技術)などの特定の配列決定手法は、位相情報を保持するが、mRNAから生成された全長cDNAは、CPTを使用して効果的に配列決定することができない。タグメンテーション後、cDNAから生成された連結リードは、典型的には、全配列の約10%しか含まない。すなわち、CPTは、cDNAの異なる部分を互いに結合させるのに非効率的である。開示された手法は、ローリングサークル増幅cDNA基質を生成することを含む。基質は、CPT及びショートリード技術と組み合わせて使用されると、cDNAの全長エクソームの生成を可能にする、cDNAから生成された連結核酸である。
【0048】
図8は、全長cDNA 200を連結して二本鎖DNAの長い分子を生成するためのプロトコルの概略図を示す。最初に、cDNA(すなわち、cDNAの非連結単一コピー)を生成するために、全長mRNA 202が、逆転写酵素及び5’-リン酸化オリゴ-dTプライマー204を使用してコピーされる。このDNAオリゴヌクレオチドプライマー204は、プライマー結合部位(PBS)206、及び必要に応じて固有分子識別子(UMI)208を含む。5’リン酸化プライマーは、その後のステップにおいて5’リン酸化末端210でライゲーションすることができる。例示される実施形態において、オリゴ-dTプライマーは、任意の3’V(A、G、又はC)を有する。
【0049】
逆転写後、mRNA 202は、RNaseHを使用して分解され、残りのcDNA 200は、一本鎖DNAリガーゼ(例えば、CircLigase)を使用して環状化される。次に、DNAオリゴヌクレオチドプライマー220を用いて、PBS配列206でDNA合成をプライミングする。高度にプロセッシブであり、鎖置換が可能であるDNAポリメラーゼ(例えば、Phi29)を使用することによって、cDNA 200の連結コピー224が、ローリングサークル増幅(RCA)によって生成される。次いで、PBS配列206を有する5’-リン酸化DNAオリゴヌクレオチドプライマー230を使用して、相補的な第2の鎖の合成をプライミングする。鎖置換活性のないDNAポリメラーゼ(例えば、大腸菌リガーゼ、Phusion)及びDNAニックリガーゼ(例えば、T4リガーゼ、Taqリガーゼ)を使用して、相補鎖236を完成させる。
【0050】
二本鎖DNA産物240をアッセイ基質として使用して、連続性維持転位(CPT)配列決定手法を使用して、連結されたIlluminaショートリードライブラリーを生成することができる。CPT技術は、米国特許第10,557,133号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に一般的に開示されているように実施され得る。このライブラリーの配列決定及び分析により、全長エクソームが得られる。連結された核酸を使用して、潜在的に100コピーを超えるcDNAが端から端まで連結された二本鎖DNA基質(すなわち、潜在的に>100kbの基質)を生成することができる。cDNAの非常に多くのコピーがここでDNAの長い鎖上に連結されるので、CPT技術がこの基質鎖からのリードの小さな画分のみを連結する場合であっても、連結された基質における配列重複性は、ここで、同じハプロタイプからのスプライス接合部及びエクソームバリアントが効果的に連結及び分析されることを可能にする。
【0051】
いくつかの実施形態において、開示された手法は、本明細書において提供される増幅産物から核酸配列決定ライブラリー又はDNA断片ライブラリーを生成するために使用される。一例において、ライブラリーは、本明細書において提供される増幅手法の一部として、インデックス配列及びプライマー結合配列などの機能的配列を付加することによって核酸から生成される。したがって、増幅産物は、配列決定反応において生成されたライブラリーを配列決定して配列決定データを生成することによって検出され得る。一実施形態では、生体試料は、ウイルス、例えば、COVID-19に感染した、又は特定の臨床状態を有する患者からの試料であり、配列決定データは、開示された増幅手法のうちの1つ以上を使用して試料中で検出されたバリアントの読み出しを含む。一例では、増幅手法は、試料自体ではなく、合成鋳型などのプロキシ鋳型を増幅及び配列決定する。したがって、読み出しは、目的のバリアントについてのyes/no指標を含み得る。配列決定データは、より短いインデックス/バーコードリードのみを含んでもよく、それによって、特定の第1のインデックスに連結された特定のリードの存在は、リードを多重化試料中の特定の患者に結び付け、特定の第2のインデックス又はUMIの存在は、リードを特定のバリアントに結び付ける。特定の合成鋳型は、標的核酸中の特定の配列に結合した上流反応がプライマーを遊離させて合成鋳型の増幅を可能にする場合にのみ増幅され得る。更なる例において、合成鋳型は遊離プライマーに相補的であってもよく、したがって、合成鋳型配列はバリアント情報を提供し得る。
【0052】
図9は、本明細書に提供される核酸(例えば、配列決定リード、リード1、リード2、インデックスリード、インデックスリード1、インデックスリード2、多重試料配列決定データ)から配列決定データを取得するために、開示された実施形態と併せて使用され得る配列決定デバイス260の概略図である。配列決定デバイス260は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2007/0166705号、同第2006/0188901号、同第2006/0240439号、同第2006/0281109号、同第2005/0100900号、米国特許第7,057,026号、国際公開第05/065814号、同第06/064199号、同第07/010251号に記載されているsequencing-by-synthesis法を組み込んだものなどの任意のシーケンシング手法に従って実装され得る。あるいは、ライゲーション手法による配列決定が、配列決定デバイス260において使用されてもよい。そのような手法は、DNAリガーゼを使用して、オリゴヌクレオチドを組み込み、かかるオリゴヌクレオチドの組み込みを特定し、米国特許第6,969,488号、同第6,172,218号、及び同第6,306,597号に記載されており、これらの特許の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態は、ナノ細孔シーケンシングを利用することができ、それによって、試料の核酸鎖又はヌクレオチドは、試料の核酸からエキソヌクレアーゼによって除去され、ナノ細孔を通過する。試料の核酸又はヌクレオチドがナノ細孔を通過するとき、それぞれの塩基種は、細孔の電気コンダクタンスの変動を測定することによって特定され得る(その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,001,792号、Soni & Meller,Clin.Chem.53,1996-2001(2007)、Healy,Nanomed.2,459-481(2007)、及びCockroft et al.J.Am.Chem.Soc.130,818-820(2008))。更なる他の実施形態は、伸長産物へのヌクレオチドの組み込み時に放出されるプロトンの検出を含む。例えば、放出されたプロトンの検出に基づく配列決定は、Ion Torrent(Guilford,CT、Life Technologiesの子会社)から市販されている電気検出器及び関連技術、又は、米国特許出願公開第2009/0026082(A1)号、同第2009/0127589(A1)号、同第2010/0137143(A1)号、同第2010/0282617(A1)号に記載されているシーケンシング方法及びシステムを使用することができる。特定の実施形態は、DNAポリメラーゼ活性のリアルタイムモニタリングを含む方法を利用することができる。ヌクレオチドの取り込みは、フルオロフォア担持ポリメラーゼとγ-リン酸標識ヌクレオチドとの間の蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer、FRET)の相互作用を介して、又はこれらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、例えば、Levene et al. Science 299,682-686(2003)、Lundquist et al.Opt.Lett.33,1026-1028(2008)、Korlach et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105,1176-1181(2008)に記載されているようなゼロモード導波路を用いて検出することができる。他の好適な代替的な技術としては、例えば、蛍光インサイチュシーケンシング(fluorescent in situ sequencing、FISSEQ)、及び超並列シグネチャシーケンシング(Massively Parallel Signature Sequencing、MPSS)が挙げられる。特定の実施形態では、配列決定デバイス260は、Illumina(La Jolla、CA)製iSeqであり得る。他の実施形態では、配列決定デバイス260は、DNA堆積がそれぞれのフォトダイオードと1対1にアライメントされるように、フォトダイオード上に作製されたナノウェルを備えたCMOSセンサを使用して動作するように構成され得る。
【0053】
配列決定デバイス260は、4つのヌクレオチドのうちの2つのみが標識され、任意の所与の画像について検出可能である「1チャネル」検出デバイスであってもよい。例えば、チミンは、永久的な蛍光標識を有し得るが、アデニンは、同じ蛍光標識を分離可能な形態で使用する。グアニンは永久的に暗色であってもよく、シトシンは最初は暗色であるが、サイクル中に標識を付加することができる。したがって、各サイクルは、最初の画像及び第2の画像を含むことができ、ここで最初の画像ではチミン及びアデニンのみが検出可能であるが、第2の画像ではチミン及びシトシンのみが検出可能であるように、色素が任意のアデニンから切断され、任意のシトシンに付加される。両方の画像を通して暗色の任意の塩基はグアニンであり、及び両方の画像を通して検出可能な任意の塩基はチミンである。第1の画像で検出可能であるが第2の画像で検出可能でない塩基はアデニンであり、第1の画像で検出可能でないが第2の画像で検出可能な塩基はシトシンである。最初の画像及び第2の画像からの情報を組み合わせることにより、1つのチャネルを使用して4つ全ての塩基を識別することができる。他の実施形態では、配列決定デバイス260は「2チャネル」検出デバイスであってもよい。
【0054】
描写された実施形態では、配列決定デバイス260は、別個の試料基板262、例えば、フローセル又は配列決定カートリッジ、及び関連するコンピュータ264を含む。しかしながら、上記のように、これらは単一のデバイスとして実装されてもよい。描写された実施形態では、生体試料は、撮像されて配列データを生成する基板262に装填され得る。例えば、生体試料と相互作用する試薬は、撮像モジュール272によって生成された励起ビームに応答して特定の波長で蛍光発光し、それにより撮像のための放射線を戻す。例えば、蛍光成分は、成分の相補的分子にハイブリダイズするか、又はポリメラーゼを使用してオリゴヌクレオチドに組み込まれた蛍光タグ付きヌクレオチドにハイブリダイズする蛍光タグ付き核酸によって生成され得る。当業者には理解されるように、試料の染料が励起される波長、及びそれらが蛍光を発する波長は、特定の色素の吸収及び発光スペクトルに依存することとなる。そのような戻された放射線は、指向光学系を通って伝播し得る。このレトロビームは、一般に、カメラ又は他の光学検出器であり得る撮像モジュール272の検出光学系に向けられ得る。
【0055】
イメージングモジュール検出光学系は、任意の好適なテクノロジに基づき得、例えば、デバイス内の場所に影響を与える光子に基づいて画素化画像データを生成する荷電結合デバイス(charged coupled device、CCD)センサであり得る。しかしながら、時間遅延積分(time delay integration、TDI)動作のために構成された検出器アレイ、相補的金属酸化物半導体(complementary metal oxide semiconductor、CMOS)検出器、アバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode、APD)検出器、Geiger-モード光子カウンタ、又は任意の他の適切な検出器を含むがこれらに限定されない、様々な他の検出器のいずれかを使用することもできることが理解されるであろう。TDIモードの検出は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,329,860号に記載されているように、ライン走査と連動することができる。他の有用な検出器は、例えば、様々な核酸シーケンシング方法学の文脈において本明細書で以前に提供された参考文献に記載されている。
【0056】
撮像モジュール272は、例えば、プロセッサ274によるプロセッサ制御下にあってもよく、I/O制御276、内部バス278、不揮発性メモリ280、RAM282、及びメモリが実行可能命令を記憶することができるような任意の他のメモリ構造、並びに図10に関して説明されたものと同様であり得る他の好適なハードウェア構成要素も含み得る。更に、関連付けられたコンピュータ264はまた、プロセッサ184、I/O制御286、通信モジュール284、並びに実行可能命令292を記憶することができるようなRAM288及び不揮発性メモリ290を含むメモリアーキテクチャを含み得る。ハードウェア構成要素は、ディスプレイ296にも連結することができる内部バス294によって連結され得る。シーケンシングデバイス260がオールインワンデバイスとして実装される実施形態では、特定の冗長なハードウェア要素を排除することができる。
【0057】
プロセッサ284は、本明細書に提供される手法に従い、関連する1つ以上のインデックス配列に基づいて個々の配列決定リードを試料に割り当てるようにプログラムされ得る。特定の実施形態では、撮像モジュール272によって取得された画像データに基づき、配列決定デバイス260は、個々のクラスターの配列リードを含む配列決定データを生成するように構成されてもよく、それぞれの配列リードは、基板270上の特定の場所に関連付けられている。それぞれのシーケンスリードは、インサートを含むフラグメント由来のものであり得る。シーケンシングデータは、シーケンシングリードのそれぞれの塩基に対する塩基コールを含む。更に、画像データに基づいて、順次に行われるシーケンシングリードについても、個々のリードは、画像データを介して同じ場所、したがって同じテンプレート鎖に連結され得る。このようにして、インデックスシーケンシングリードは、オリジナルの試料に割り当てられる前に、インサートシーケンスのシーケンシングリードと関連付けられ得る。プロセッサ284はまた、試料への配列決定リードの割り当てに続き、特定の試料のインサートに対応する配列に対して下流分析を実施するようにプログラムされ得る。
【0058】
開示された増幅産物は、例えば、配列決定デバイス260を介して、本明細書に提供されるような配列決定データを生成することによって検出され得るが、更なる検出方法もまた企図される。標的配列又は増幅産物は、ローリングサークル増幅(RCA)又は従来の増幅を使用して、開示された実施形態の検出方法において検出することができる。これは、様々な方法で達成することができる。例えば、プライマー、例えば、ローリングサークル増幅プライマーは標識され得るか、又はポリメラーゼは、標識されたヌクレオチド及び検出アレイ中の捕捉プローブによって検出される標識された産物を組み込み得る。ローリングサークル増幅は、Baner et al.(1998)Nuc.Acids Res.26:5073-5078;Barany,F.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:189-193及びLizardi et al.(1998)Nat Genet.19:225-232に一般的に記載されているような条件下で行うことができる。加えて、ローリングサークル増幅産物は、固相フォーマット(例えば、ビーズのアレイ)におけるプローブへのハイブリダイゼーションによって容易に検出される。RCAの更なる利点は、多数の配列が並行して分析され得るように、多重分析の能力を提供することである。更に、アレイ上でのハイブリダイゼーションに基づく検出及び/又は定量的PCRに基づく検出手法も企図される。
【0059】
開示された手法は、標的核酸(例えば、標的核酸12)を特性評価するために使用されてもよい。「標的核酸」又は試料核酸は、生死にかかわらず、1つ若しくは複数の細胞、組織、器官、若しくは生物、又は任意の生物学的又は環境供給源(例えば、水、空気、土壌)を含む、任意のインビボ又はインビトロの供給源に由来する可能性がある。例えば、いくつかの実施形態では、試料の核酸は、ヒト、動物、植物、真菌(例えば、カビ又は酵母)、細菌、ウイルス、ウイロイド、マイコプラズマ、又は他の微生物を起源とするか又は由来する真核生物及び/又は原核生物のdsDNAを含むか又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、試料の核酸は、ゲノムDNA、サブゲノムDNA、(例えば、単離された染色体又は染色体の一部由来、例えば、染色体由来の1つ以上の遺伝子又は遺伝子座由来の)染色体DNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、プラスミド若しくは他のエピソーム由来のDNA(又は内部に含有されている組換えDNA)、又はRNA依存性DNAポリメラーゼ若しくは逆転写酵素を使用してRNAを逆転写して第1の鎖cDNAを生成し、次いで、第1の鎖cDNAにアニーリングしたプライマーを伸長させて、dsDNAを生成することによって作製された二本鎖cDNAを含むか又はこれらからなる。いくつかの実施形態では、試料の核酸は、核酸分子中の又は核酸分子から調製された複数のdsDNA分子(例えば、生物学的(例えば、細胞、組織、器官、生物)又は環境(例えば、水、空気、土壌、唾液、痰、尿、糞便)供給源中の又はこれらに由来するゲノムDNA又はRNAから調製されたcDNA中の又はこれらから調製された複数のdsDNA分子)を含む。いくつかの実施形態では、試料の核酸は、インビトロ源由来である。例えば、いくつかの実施形態では、試料の核酸は、一本鎖DNA(ssDNA)から又は一本鎖若しくは二本鎖RNAから(例えば、好適なDNA依存性及び/又はRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)を使用するプライマー伸長などの、当該技術分野において周知の方法を使用して、インビトロで調製されるdsDNAを含むか又はdsDNAからなる。いくつかの実施形態では、試料の核酸は、以下のための方法を含む、当該技術分野において既知の任意の方法を用いて、1本以上の二本鎖又は一本鎖DNA又はRNA分子の全て又は一部から調製されるdsDNAを含むか又はdsDNAからなる:DNA又はRNAの増幅(例えば、PCR又は逆転写酵素PCR(RT-PCR)、転写媒介増幅法、1つ以上の核酸分子の全て又は一部の増幅を伴う);その後に好適な宿主細胞内で複製されるプラスミド、フォスミド、BAC、又は他のベクター中の1つ以上の核酸分子の全て又は一部の分子クローニング;あるいは、アレイ又はマイクロアレイ上のDNAプローブへのハイブリダイゼーションなどのハイブリダイゼーションによる、1つ以上の核酸分子の捕捉。
【0060】
開示された連結核酸、CRISPR修飾配列、及び/又はプライマー配置は、天然に存在しない核酸配列又は合成核酸配列を含んでもよい。
【0061】
この書面による説明は、開示の一部として例を使用して、任意のデバイス又はシステムを作製及び使用すること、及び任意の組み込まれた方法を実施することを含めて、開示された実施形態をあらゆる当業者が実践することを可能にする。特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含み得る。そのような他の例は、これらが特許請求の範囲内の文字通りの言葉とは異ならない構造要素を含む場合、又はこれらが、特許請求の範囲内の文字通りの言葉とのごくわずかな違いを有する等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】