(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-10
(54)【発明の名称】[161Tb]ベースの放射性ペプチド
(51)【国際特許分類】
A61K 51/08 20060101AFI20240603BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240603BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20240603BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240603BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240603BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240603BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240603BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240603BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240603BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240603BHJP
C07K 14/655 20060101ALI20240603BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20240603BHJP
A61K 103/30 20060101ALN20240603BHJP
【FI】
A61K51/08 100
A61K47/22
A61K47/66
A61K9/08
A61K9/10
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/02
A61P35/00
A61P35/04
C07K14/655 ZNA
C07K7/06
A61K103:30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574332
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2021080220
(87)【国際公開番号】W WO2023051941
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】518375937
【氏名又は名称】ウニベルシテート バーゼル
(71)【出願人】
【識別番号】501494414
【氏名又は名称】パウル・シェラー・インスティトゥート
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】シブリ,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル モイレン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ボルグナ,フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルト,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】メルポメニ,ファニ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA16
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD23
4C076DD37
4C076DD41
4C076DD59
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4C076EE59
4C084AA12
4C084MA17
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4C084NA05
4C084ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA71
4H045EA20
(57)【要約】
(a)テルビウム-161である放射性核種、(b)テルビウム-161を配位するキレート剤、および(c)ソマトスタチン受容体(SSTR)アンタゴニストであるペプチドまたはペプチドアナログ、を含む放射性ペプチドが提供される。放射性ペプチドは腫瘍疾患の治療に用いるのに適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)テルビウム-161である、放射性核種、
(b)テルビウム-161のキレート剤、および
(c)ソマトスタチン受容体(SSTR)アンタゴニストであるペプチドまたはペプチドアナログ、を含む放射性ペプチド。
【請求項2】
前記ソマトスタチン受容体(SSTR)アンタゴニストが(b)に共有結合している、請求項1に記載の放射性ペプチド。
【請求項3】
前記キレート剤が環状キレート剤、特に大環状キレート剤である、請求項1または2に記載の放射性ペプチド。
【請求項4】
前記キレート剤が四座キレート剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項5】
前記キレート剤が4個の窒素原子を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項6】
前記キレート剤が12員テトラアザ環系である、請求項1~5のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項7】
前記キレート剤が、少なくとも1つのカルボキシ官能基を含有する少なくとも1つの置換基を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項8】
前記キレート剤がDOTAまたはDOTA誘導体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項9】
前記DOTA誘導体が、以下からなる群より選択される、請求項8に記載の放射性ペプチド。
【化1】
【請求項10】
前記キレート剤がDOTA(ドデカン四酢酸)である、請求項9に記載の放射性ペプチド。
【請求項11】
前記ソマトスタチン受容体アンタゴニストが、アミド結合を介して前記キレート剤に共有結合している、請求項1~10のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項12】
前記ソマトスタチン受容体アンタゴニストが、SSTR-2(sst2)に結合するか、またはSSTR-2(sst2)選択的アンタゴニストである、請求項1~11のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項13】
投与された前記ソマトスタチン受容体アンタゴニストの20%未満が細胞に内在化される、請求項1~12のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項14】
前記ソマトスタチン受容体アンタゴニストが環状ペプチドである、請求項1~13のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項15】
前記ソマトスタチン受容体アンタゴニストが2つのシステイン残基を含み、好ましくはジスルフィド架橋を形成する、請求項1~14のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項16】
前記ソマトスタチン受容体アンタゴニストが、ペプチドの2位および7位の位置にシステイン残基を含む、請求項15に記載の放射性ペプチド。
【請求項17】
前記ソマトスタチン受容体アンタゴニストが8~14アミノ酸、好ましくは8~10アミノ酸、より好ましくは8アミノ酸からなる、請求項1~16のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項18】
前記ソマトスタチン受容体アンタゴニストが式I:X1-シクロ[D-Cys-X3-X4-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH
2からなり、ここで、X1、X3およびX4は、天然または非天然に存在するD-またはL-アミノ酸から選択され得る、請求項1~17のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項19】
(i)X1が、天然に存在するPhe、フェニル環系に1つ以上の置換を有する置換PheおよびCpaからなる群より選択され、(ii)X3が、Aph(Hor)、Leu、L-Agl(NMe.ベンゾイル)、D-Agl(NMe.ベンゾイル)、Aph(Cbm)、Tyr、Aph(CONH-OCH
3)、Tyr、Aph(CONH-OH)からなる群より選択され、ならびに/または(iii)X4が、D-TrpおよびD-Aph(Cbm)(D-4-アミノ-Phe(カルバモイル))からなる群より選択され、ここで、X1が好ましくはpNOs-Phe、pCl-PheおよびCpaからなる群より選択され、X3が好ましくはTyr、Aph(Cbm)およびAph(Hor)からなる群より選択され、ならびに/または、X4が好ましくはD-TrpおよびD-Aph(Cbm)からなる群より選択される、請求項18に記載の放射性ペプチド。
【請求項20】
前記ソマトスタチン受容体アンタゴニストが、LM3([p-Cl-Phe-cyclo[D-Cys-Tyr-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]D-Tyr-NH
2])、JR11(Cpa-cyclo[D-Cys-Aph(Hor)-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH
2)、およびBASS(pNO
2-Phe-cyclo[D-Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH
2)からなる群から選択される、請求項18または19に記載の放射性ペプチド。
【請求項21】
テルビウム-161がガドリニウム-160の中性子照射によって生産される、請求項1~20のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項22】
テルビウム-161が非担体添加テルビウム-161(n.c.a.テルビウム-161)である、請求項1~21のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項23】
前記アンタゴニストが、他の組織と比較して腫瘍に優先的に取り込まれる、請求項1~22のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【請求項24】
好ましくは投与後2時間後に測定される、血液中の放射性ペプチド取り込みに対する腫瘍細胞中の放射性ペプチド取り込みの比率が少なくとも50.0であり、肝臓細胞中の放射性ペプチド取り込みに対する腫瘍細胞中の放射性ペプチド取り込みの比率が少なくとも10.0であり、および/または腎臓細胞中の放射性ペプチド取り込みに対する腫瘍細胞中の放射性ペプチド取り込みの比率が少なくとも2.0である、請求項23に記載の放射性ペプチド。
【請求項25】
前記放射性ペプチドが下記式の構造を有する、請求項1~24のいずれか1項に記載の放射性ペプチド。
【化2】
【請求項26】
請求項1~25のいずれか1項に記載の放射性ペプチド、および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、好ましくは水、を含む、薬学的組成物。
【請求項27】
前記組成物が0.001~1mg/mlまたは0.01~1mg/mlまたは0.05~0.5mg/mlの放射性ペプチドを含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物が、ゲンチジン酸、エタノール、酢酸塩、NaClおよびアスコルビン酸塩/アスコルビン酸からなる群の少なくとも1種を含有する、請求項26または27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記組成物がアスコルビン酸塩を含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記組成物が0.5mM~0.5M、特に1mM~100mM、または10mM~100mMのアスコルビン酸塩を含有する、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記組成物のpH値がpH3.5~pH6またはpH4~pH6である、請求項26~30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
疾患または腫瘍疾患を治療する方法であって、請求項1~25のいずれか1項に記載の放射性ペプチド、または請求項24~31のいずれか1項に記載の組成物を、疾患治療または腫瘍疾患治療を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項33】
前記対象が神経内分泌新生物および/またはその転移、特に肝転移に罹患している、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記新生物が、胃膵臓、気管支肺管、甲状腺、胸腺または下垂体における神経内分泌新生物である、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記神経内分泌新生物が、胃腸膵神経内分泌新生物、肺の神経内分泌腫瘍、肺の神経内分泌癌、特に小細胞肺癌胸腺神経内分泌腫瘍、傍神経節腫、褐色細胞腫、例えば悪性褐色細胞腫、髄膜腫、甲状腺髄様癌、甲状腺癌、乳癌、腎細胞癌、前立腺癌、および非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される、請求項32または33に記載の方法、。
【請求項36】
前記神経内分泌新生物が膵臓腫瘍である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記神経内分泌新生物がグレード1、グレード2またはグレード3である、請求項32~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記神経内分泌新生物が、ルテチウム(
177Lu)-オキソドトレオチド(Lutathera(登録商標))または他の放射性標識ソマトスタチンアナログによる治療に対して、安定または難治性である、請求項32~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
請求項1~25のいずれか1項に記載の放射性ペプチド、または請求項26~31のいずれか1項に記載の組成物が、全身的に、好ましくは静脈内に投与される、請求項32~38のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
神経内分泌腫瘍(NENs)は、生物学的にも臨床的にも不均一な悪性腫瘍の一群であり、主に胃膵管または気管支肺管のびまん性神経内分泌系に発生する[1,2]。放射性標識ソマトスタチン(SST)アナログを用いたペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)は、ソマトスタチン受容体(SSTR)を発現する低悪性度から中悪性度のNENを治療するために、ほぼ30年にわたって採用されている[1,3,4]。当初使用されていた[111In]In-オクトレオチドは、症状緩和には有効であったが、NENに客観的なX線学的反応を引き起こすことはほとんどなかった。オージェ電子の短い組織透過範囲(<1μm)は、効果的な癌治療には十分ではなく、インジウム-111による相当量のγ線放出(Eγ=171keV,I=91%;245keV,I=94%)のため、線量の増加は不可能であった[5,6]。イットリウム-90(Eβ平均=934keV、T1/2=2.67d)のPRRTへの応用はより成功した[7]。しかし、高エネルギーのβ-粒子(組織範囲は10mmまで)は、腎臓毒性を引き起こすため、好ましくないことが時間の経過とともに認識された[8,9]。中エネルギーのβ-粒子放出種であるルテチウム-177(Eβ平均=134keV,T1/2=6.65d;組織範囲<2mm[10])がPRRTに好ましい放射性核種として登場した[11,12]。177Lu標識ソマトスタチンアナログは、一般的に良好な安全性プロファイルでNENの治療に有効であることが明らかになった[8]。ルテチウム-177のγ線放出は、γシンチグラフィーやSPECTイメージングに用いられてきた。現在、ルテチウム-177は、[177Lu]Lu-DOTATATE(Lutathera(商標))[13,14]または[177Lu]Lu-DOTATOC[15]を用いたPRRTに最もよく使用される放射性金属である。
【0002】
最近では、標的放射性核種治療用にα粒子放出種(LET=50~230keV/μm)が提案されている[16]。NENの場合、[213Bi]Bi-DOTATOC/DOTATATEと[225Ac]Ac-DOTATOC/DOTATATEが前臨床試験で有望な結果を示した[17-20]。臨床では、[213Bi]Bi-DOTATOCが、[90Y]Y-/[177Lu]Lu-DOTATOCによる治療に抵抗性の進行性神経内分泌肝転移患者(n=7)の治療に使用された[21]。[225Ac]Ac-DOTATATEは、[177Lu]Lu-DOTATATE療法で部分寛解または病勢が安定した後、病勢が安定または進行した患者32例を対象とした先行研究で検討された[22]。しかしながら、アクチニウム-225の応用に関しては多くの不確定要素があり、その中でもイメージングに使用することができないこと、そして最後に、その入手を一般的に困難にしている困難な製造シナリオがある[23~25]。アクチニウム-225の複雑な崩壊スキームとその結果生じる望ましくない副作用のリスクの増大は、高速で内在化する放射性リガンド(例えば[225Ac]AcベースのPSMA放射性リガンド)への適用を制限し、ソマトスタチンアンタゴニストのような細胞表面に局在する放射性医薬品との使用を妨げる。
【0003】
この研究の目的は、177Luについて説明したように、中エネルギーのβ-粒子の放出によって崩壊し、イメージング目的に適したγ線を放出する放射性核種治療を同定することであった。さらに、適切なターゲティング剤との併用により、協調的に作用する、放射性核種治療を可能にすることも目的であった。
【0004】
その目的に対する解決策は、請求項1の主題によって定義される。本発明は、テルビウム-161とアンタゴニスト性ソマトスタチンアナログとの組み合わせが高度PRRTをもたらすという発見に基づく。テルビウム-161は、ルテチウム-177に類似した標的放射線核種治療のための崩壊特性を示す。それは、中程度のエネルギーのβ-粒子の放出によって崩壊する(Eβ平均=154keV;T1/2=6.9d[27])、イメージングに適したγ線を放出する(Eγ=48.9keV、I=17%、74.6keV、I=10%)[28]。有利なことに、テルビウム-161は、腫瘍治療、特に単一癌細胞の治療を想定している場合に、相当数のオージェ電子と転換電子(その高い線エネルギー移動(LET:4-26keV/μm)による)を共放出する[26,29]。テルビウム-161は、標的化剤としてアンタゴニスト性ソマトスタチン(SST)アナログと有利に組み合わされることが見出され、標的化剤が細胞内に取り込まれるよりもむしろ細胞表面に優位に局在することが見出された場合にはなおさらであった。このような組み合わせは、共放出される転換電子とオージェ電子(高LET電子)の効果から恩恵を受けることが示された。
【0005】
(発明の詳細)
第1の態様により、本発明は、(a)テルビウム-161である放射性同位体/放射性核種、(b)テルビウム-161のキレート剤、および(c)ソマトスタチン受容体(sstr)アンタゴニストであるペプチドまたはペプチドアナログ、を含む放射性ペプチドの提供により、目的を解決する。したがって、「放射性ペプチド」という用語は、特許請求される実体が放射性同位体とペプチド成分を含むことを意味すると理解される。放射性核種」および「放射性同位体」という用語は、本明細書では同義に用いられる。
【0006】
本発明は、テルビウム-161を3価の放射性金属同位体(すなわち放射性同位体)として同定したことに基づいており、この同位体は、本発明の放射性ペプチドの他の成分と組み合わせて、β(-)粒子(腫瘍)治療の理想的な放射性候補となる。その崩壊特性(T1/2=6.89d)は、177Luと類似している。それゆえ、テルビウム-161の崩壊特性はPRRTに適している。さらに、オージェ電子の共放出により、β-/オージェ電子併用療法(~12e-/崩壊:オージェ/転換電子)が可能となる。本発明の実験的証拠が、SSTRアンタゴニストとして161Tb標識ソマトスタチンアナログは、161Tbおよび177Luが共にとても化学的に類似した3価の放射性ランタノイドであるにもかかわらず、177Lu標識ソマトスタチンアナログよりも有効であったことを、確実にした。
【0007】
161Tbの生産は、160Gd(n,γ)161Gd→161Tb核反応を利用することにより有利に行われる。高濃縮160Gd標的は、例えば、Paul Scherrer研究所(スイス)にある核破砕中性子源で2~3週間、またはフランスのLaue-Langevin研究所もしくはNecsa(Pelindaba、南アフリカ)にある原子炉などの高中性子束原子炉で1週間照射される。生産物は、イオン交換(樹脂)クロマトグラフィー法を用いてGd標的物質から分離され、少量の希塩酸(例えば1ml以下)で最終生成物を得ることができる。得られる量は10GBqを超えることもある。最終生成物の純度は、通常、98%以上または99%以上である(161TbCl2として)。放射性ペプチドの放射性核種テルビウム-161は、最終生成物中に非放射性テルビウムが存在しないことを定義する非担体添加テルビウム-161(n.c.a.テルビウム-161)として特に提供される場合がある。
【0008】
テルビウム-161は、典型的には、本発明によるキレート剤と安定に配位した状態で提供される。キレート剤は、キレート剤の原子を介して中心放射性核種原子に結合または配位する分子である。キレート剤は、典型的には、(i)放射性核種(a)と錯体を形成し、(ii)キレート剤(b)を本発明の放射性ペプチドのペプチド成分(c)に連結する、ことを可能にする二官能性分子である。1つの実施形態において、キレート剤は、例えばDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)またはDTPA誘導体のような開鎖構造である。別の好ましい実施形態において、キレート剤は環状構造である。特に、キレート剤は、大環状キレート剤であってもよい。さらに、キレート剤は、多座キレート剤、例えば四座キレート剤であってもよい。
【0009】
(大)環状キレート剤の環構造は、放射性同位体を配位するためのヘテロ原子、例えばOまたはN、特にNを含んでいてもよい。1つの実施形態において、大環状キレート剤は、中心放射性核種に結合または配位するための原子として作用する、4~6個、特に4個のヘテロ原子、より具体的には4個のN原子を含む炭素環式構造を基礎とする。有利には、本発明の放射性ペプチドのキレート剤の(大)環状基礎構造は、12員テトラアザ環系に相当するシクレン(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)に由来する。テトラアザ環系は、置換基、例えば中心放射性核種に結合または配位する置換基によって、さらに修飾されていてもよい。これにより、例えば2つの置換基が、例えばシクレン環系の4つのN原子による配位に加えて、錯体の八面体配位構造を確立していてもよい。その4つのうちの1つ以上、例えば4つ全てにおいて、シクレンのテトラアザ環系は、N-H中心を、H以外であるXを有するN-X基に置き換えることにより修飾されていてもよい。Xは、CH2CO2Hまたはカルボキシ官能基を有する他の置換基であってもよい。この点に関して、キレート剤は、DOTAGA(-テトラ)(2-[1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-4,7,10-トリス(t-ブチル酢酸)]-ペンタエジオ酸-1t-ブチルエステル)、AAZTA(1、4-ビス(カルボキシメチル)-6-[ビス(カルボキシメチル)]アミノ-6-メチルペルヒドロ-1,4-ジアゼピン)、DOTA(ドデカン四酢酸)、またはDOTAGA、AAZTAもしくはDOTA誘導体、例えばCyAAZTA、DATAもしくはAAZ3Aであってもよい。DOTA誘導体は、DOTA置換パターン以外のシクレン環系の置換パターンを示してもよい。それゆえ、DOTA誘導体は、環系のヘテロ原子の少なくとも1つにおいて、酢酸(DOTAを特徴付ける)とは異なる置換パターンを示していてもよい。
【0010】
本発明によって採用されるDOTA誘導体は、以下からなる群から選択されてもよい:DO3A、DO2A、HP-DO3A、BT-DO3A、PCTA、DO3AP、DO2A2P、DOA3P、DOTP、DOTPMB、DOTAMAE、DOTMA、TCE-DOTA、およびDOTAMAP。
【0011】
DOTAまたはその誘導体の1つは、テルビウム-161で例示されるような3価の放射性金属に対する好ましいキレート剤であり得る。本発明の放射性ペプチドのキレート剤、特にDOTAまたはDOTA誘導体は、錯体形成を促進するために、高温(例えば70℃~95℃)での錯体形成、マイクロ波照射の適用、溶媒混合物の使用、またはそれらの組み合わせによって、テルビウム-161と有利に錯体形成され得る。対照的に、室温での錯体形成は、より精巧な条件を適用することなく、むしろゆっくりと進行する。放射性同位体がDOTAまたはDOTA誘導体の空洞の中に入ると、室温で安定にその中に留まる。それゆえ、テルビウム-161放射性同位体とキレート剤との解離による活性の損失なしに、錯体を室温で保存することができる。
【0012】
より具体的には、DOTAは本発明の放射性ペプチドのキレート剤として使用される。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、放射性ペプチドは、(c)ソマトスタチン受容体(SSTR)アンタゴニストを(b)キレート剤に共有結合的にカップリングさせることを特徴とするコンジュゲート化合物である。そのカップリングは、ペプチド性ソマトスタチン受容体(SSTR)アンタゴニストのN末端アミノ基を含むことができる。それにより、ペプチド性ソマトスタチン受容体(SSTR)アンタゴニストとキレート剤は、特にN末端アミノ基とキレート剤のカルボキシ官能基、例えばシクレン環系の置換基のカルボキシ官能基との反応により、例えばアミド結合を形成することができる。この点に関して、例えばキレート剤のカルボキシ官能基、例えばそのN-CH
2CO
2H基(Nはシクレン環系の窒素原子である)は、例えばペプチド性成分(c)のN末端アミノ基と反応してコンジュゲート化合物を形成し得る。以下の式は、種々のキレート剤(DOTAまたはDOTA誘導体)がアミド結合を介して本発明の放射性ペプチドのペプチド性成分(c)(以下の式では図示せず)に連結されてなる本発明の放射性ペプチドの実施形態を例示する:
【化1】
本発明の放射性ペプチドは、その成分(c)によってさらに特徴付けられる。成分(c)はソマトスタチン受容体アンタゴニストである。sstrアンタゴニストによるソマトスタチン受容体(sstr)標的化は、例えば神経内分泌新生物の治療のための貴重な治療選択肢である。sstrアンタゴニスト(c)は、有利には、上述のように、キレート剤(b)とコンジュゲート化合物を形成する。本発明の成分(c)について定義したsstrアンタゴニストは、任意のsstrサブタイプに結合することができる。しかし、より具体的には、SSTR-2(sst2)に優先的または排他的に結合する。ソマトスタチン受容体2は、神経内分泌腫瘍において典型的に発現されるGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。SSTR2はそれぞれソマトスタチン(SST)-14と(SST)-28の受容体である。腫瘍におけるSSTR2の過剰発現を利用して、放射性ペプチドを腫瘍に選択的に送達することができる。腫瘍細胞との結合により、放射性同位体の放射能、あるいはむしろ放射性核種の粒子放出(a)により、腫瘍細胞に損傷を与え、最終的に破壊することができる。したがって、ペプチド成分(c)は、特に、SSTR-2(sst2)選択的アンタゴニストである可能性がある。
【0014】
それゆえ、ソマトスタチン受容体(SSTR)アンタゴニストは、本発明の放射性ペプチドが腫瘍細胞に結合することを可能にする。それにより、成分(c)としてSSTRアンタゴニストを選択することは、腫瘍細胞上への本発明の放射性ペプチドの蓄積を有利に支持し、それにより腫瘍細胞の細胞膜上への放射能の非常に高い蓄積を支持する。これはSSTRアンタゴニストが、放射性標識されたSSTRアゴニストよりもはるかに多い、細胞膜にアンカーされたSSTR上の結合部位を認識するため。これにより、放射性標識SSTRアンタゴニストは、そのアゴニスト性の対応物よりも非常に高い放射能を、腫瘍細胞に対して発現することを可能にする。
【0015】
有利なことに、腫瘍細胞結合体として(ペプチドを)アンタゴニスト成分(c)として含む放射性ペプチドは、内在化率が低いために腫瘍細胞によって有意に内在化されず、腫瘍細胞の表面に留まる。それゆえ、投与された放射性ペプチドの30%未満、25%未満、20%未満または10%未満が、in vivoまたはin vitro条件下で腫瘍細胞に内在化され得る。それゆえ、成分(c)は、有利には、sstr、より具体的にはsstr2を標的とするが、標的腫瘍細胞によって内在化されないか、または微量(例えば、30%未満または20%未満)しか内在化されないアンタゴニスト性ソマトスタチンアナログ(またはSSTRアンタゴニスト)を表していてもよい。標的sstrに結合する際に、放射性ペプチドの大部分が細胞表面膜上に保持されることは、治療的に相乗的に作用し得るか、あるいはテルビウム-161によるβ-/オージェ電子放出の組み合わせによる治療効果にさらに寄与し得る。
【0016】
放射性ペプチドのソマトスタチン受容体アンタゴニストは、天然または非天然に存在するアミノ酸からなるペプチドまたはペプチドアナログであってもよい。本発明の放射性ペプチドは、遊離ペプチドの形態であってもよいし、その塩、溶媒和物または互変異性体の形態であってもよい。本明細書で使用される「放射性ペプチド」のペプチド性成分を定義する用語「ペプチド」は、アミノ酸の長さまたは修飾またはアミノ酸の性質に関係なく、アミノ酸の任意の配列を指す。天然または非天然に存在するアミノ酸は、D-またはL-アミノ酸、すなわちD-またはL-配置であってもよい。これらは互いにアミド結合を介して連結している。ソマトスタチン受容体アンタゴニストの任意の反応性側鎖基が、キレート剤成分と共有結合してコンジュゲート化合物を形成することを可能にし得る一方で、アンタゴニストのN末端遊離アミノ基は、放射性ペプチドのキレート剤成分との共有結合に特に関与し得る。ペプチド性アンタゴニストは、典型的には、少なくとも8個の天然または非天然に存在するアミノ酸から構成されてもよい。より具体的には、アミノ酸の数は8~14アミノ酸、または8~10アミノ酸、または8アミノ酸である。
【0017】
1つの実施形態において、本発明の放射性ペプチドの成分(c)としてのアンタゴニストは、環状ペプチドとして提供される。環状構造は、2つの側鎖部分の間の共有結合によって導入されてもよい。特に、2つの側鎖部分による閉環は、その遊離チオール基によってジスルフィド架橋を形成する2つのシステイン残基によって実現されてもよい。ジスルフィド架橋に基づく環状構造を形成する場合、システイン残基は、少なくとも3個、少なくとも4個または少なくとも5個のアミノ酸、より具体的には3個、4個または5個のアミノ酸の間に離間するように、アンタゴニストのペプチド配列内に配置されてもよい。具体的な実施形態では、システイン残基は互いに4アミノ酸離れている。ジスルフィド架橋形成に関与する、よりN末端のシステイン残基は、アンタゴニストのペプチド配列の2位または3位に配置され得る。ジスルフィド架橋形成に関与する、よりC末端のシステイン残基は、アンタゴニストのペプチド配列の7位または8位に位置し得る。特に、2つのジスルフィド架橋形成システイン残基は、アンタゴニストのペプチド配列のそれぞれ2位および7位に位置し得る。
【0018】
本発明の放射性ペプチドのペプチドアンタゴニストのカルボキシ末端は、例えば、下記式(I)または下記実施形態(i)~(xxv)に示されるように、アミド化されていてもよい(「-NH2」)。
【0019】
成分(c)の非天然に存在するアミノ酸は、具体的には、(4-アミノ-Phe(カルバモイル))、(Aph(Cbm)、D-Agl(NMe.ベンゾイル)、Aph(Hor)、Aph(CONH-OCH3)、置換Phe、およびCpaからなる群から選択され得る。これらはすべてD-またはL-エナンチオマーとして提供され得る。さらに、天然に存在するアミノ酸はすべて、D-エナンチオマーとして使用してもよい。
【0020】
1つの実施形態によれば、本発明ラジオペプチドの成分(c)としてのソマトスタチン受容体アンタゴニストは、式Iによる配列からなり得:
X1-シクロ[D-Cys-X3-X4-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH2 (式(I))
またはその塩、溶媒和物もしくは互変異性体であり、
ここで、X1、X3およびX4は、天然または非天然に存在するD-またはL-アミノ酸から選択され得る。
【0021】
より具体的には、(i)X1は、天然に存在するPhe、フェニル環系に1つ以上の置換を有する置換PheおよびCpaからなる群より選択され得;(ii)X3は、Aph(Hor)、Leu、L-Agl(NMe.ベンゾイル)、D-Agl(NMe.ベンゾイル)、Aph(Cbm)、Tyr、Aph(CONH-OCH3)、Aph(CONH-OH)からなる群より選択され得;および/または(iii)X4は、D-TrpおよびD-Aph(Cbm)(D-4-アミノ-Phe(カルバモイル))からなる群より選択され得る。特に、式(I)のペプチド性アンタゴニストは、(i)によるX1、(ii)によるX3、および(iii)によるX4について、上記で定義したようなアミノ酸を含んでいてもよい。
【0022】
X1に置換Phe残基を選択する場合、少なくとも1つのフェニル環置換基は、フェニル環系のオルト(o)、メタ(m)またはパラ(p)位、より具体的にはパラ(p)環位に配置されてもよい。X1位のフェニル環における少なくとも1つの置換基は、典型的には、嵩高い置換基ではなく、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはニトロ基などの立体的に目立たない置換基を表すことができる。典型的には、置換Phe残基のフェニル環系は、1個または2個の置換基で置換されていてもよく、より具体的には1個の置換基で置換されていてもよい。フェニル環系が1つの置換基で置換されている場合、その置換基は、特にPhe環系のパラ位に配置されていてもよい。それは例えば、ニトロ基またはClなどのハロゲンから選択され得る。
【0023】
式(I)によるより具体的な実施形態は、以下に基づいてもよい:(i)X1は、pNO2-Phe、pCl-PheおよびCpaからなる群から選択され得;(ii)X3は、Tyr、Aph(Cbm)およびAph(Hor)からなる群から選択され得;および/または(iii)X4は、D-TrpおよびD-Aph(Cbm)から選択され得る。特に、式(I)のペプチド性アンタゴニストは、この段落によって定義される(i)によるX1、(ii)によるX3、および(iii)によるX4について、上記で定義されるようなアミノ酸を含み得る。
【0024】
より具体的な実施形態として、特に式(I)の場合、本発明の放射性ペプチドは、LM3([p-Cl-Phe-シクロ[D-Cys-Tyr-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH2])、JR11(Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Hor)-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH2)、JR10(p-NO2-Phe-シクロ[D-Cys-Tyr-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH2)、およびBASS(pNO2-Phe-シクロ[D-Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH2)からなる群から選択されるソマトスタチン受容体アンタゴニストを含んでもよい。アンタゴニストLM3、JR10、JR11、およびBASSはすべてsstr-2選択的アンタゴニストとして働く。
【0025】
別の実施形態によれば、本発明の放射性ペプチドの成分(c)としてのアンタゴニストは、以下からなる群より選択され得る:
(i) pNO2-Phe-シクロ[D-Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH2;
(ii) pNO2-Phe-シクロ[D-Cys-Tyr-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH2;
(iii) H2N-pNO2-Phe-シクロ[D-Cys-Tyr-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(iv) pNO2-Phe-シクロ[D-Cys-Tyr-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(v) pNO2-Phe-シクロ[D-Cys-Aph(Hor)-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(vi) Cpa-シクロ[D-Cys-L-Agl(NMe.ベンゾイル)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(vii) Cpa-シクロ[D-Cys-D-Agl(NMe.ベンゾイル)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(viii) Cpa-シクロ[D-Cys-Leu-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(ix) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(x) Cbm-Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(xi) [ベータ]Ala-Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(xii) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(xiii) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-NH2;
(xiv) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-Cha-NH2;
(xv) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-Aph(Hor)-NH2;
(xvi) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-DAph(Cbm)-NH2;
(xvii) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-Aph(Cbm)-NH2;
(xviii) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-D-Aph(Cbm)-GlyOH;
(xix) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(CONH-OCH3)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(xx) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(CONH-OH)-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(xxi) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-5F-D-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(xxii) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Cbm)-5F-Trp-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(xxiii) Cpa-シクロ[D-Cys-Tyr-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;
(xxiv) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Hor)-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-2Nal-NH2;および
(xxv) Cpa-シクロ[D-Cys-Aph(Hor)-D-Aph(Cbm)-Lys-Thr-Cys]-D-Tyr-NH2。
【0026】
またはその塩、溶媒和物もしくは互変異性体である。
【0027】
本発明の放射性ペプチドは、in vivoにおいて腫瘍患者の腫瘍組織に選択的に蓄積され得る。それにより、放射性ペプチドは腫瘍組織以外の組織にはあまり顕著に蓄積しない。腫瘍組織内への優先的蓄積は、他の組織、例えば腎臓、肝臓、血液における放射性ペプチドの取り込みに対する、腫瘍細胞における放射性ペプチドの取り込みの比率によって表され得る。本発明の放射性ペプチドを特徴付ける腫瘍/血液取り込み比率は、少なくとも50.0、または少なくとも75、または少なくとも100であってもよい。放射性ペプチドの腫瘍/肝臓取り込み比率は、少なくとも10.0または少なくとも20であってもよい。この比率は、以下の生体分布in vivo試験(セクションIII.)に示されるように決定してもよい。腫瘍/腎臓の取り込み比率は、少なくとも2.0であってよい。その測定は、対象への放射性ペプチドの投与の少なくとも2時間後、典型的には対象への放射性ペプチドの投与の2時間後または4時間後に実施されてもよい。
【0028】
本発明の具体的な実施形態により、本発明の放射性ペプチドは以下の構造を有する:
【化2】
その中で、放射性核種テルビウム-161はDOTAキレート剤によって錯化され、錯体の八面体配位構造を確立する。DOTAキレート剤は、sstr2選択的アンタゴニストLM3のN末端にアミドリンカーを介して共有結合的にコンジュゲート化されている。そのカルボキシ末端はアミド化されている。
【0029】
より一般的には、ペプチドアンタゴニストまたはペプチドアンタゴニスト/キレート剤コンジュゲート、または本明細書中で上述した放射性ペプチドは、水(水和物または半水和物など)または一般的な有機溶媒と溶媒和物を形成し得る。本明細書で使用される用語「互変異性体」は、最も広い意味で使用され、2つの異性体の間の平衡状態で存在することができる本発明のペプチドまたはペプチド/キレート剤コンジュゲートまたは放射性ペプチドを含む。このような化合物は、2つの原子または基を連結する結合および化合物中のこれらの原子または基の位置が異なっていてもよい。
【0030】
本発明の放射性ペプチドは、例えば亜鉛、鉄、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウムなどとの酸付加塩または金属錯体などの、薬学的または獣医学的に許容される非毒性の塩の形態で投与することができる。このような非毒性の塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タンニン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、アルギン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩などが挙げられる。
【0031】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の放射性ペプチドおよび少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物を指す。より具体的には、医薬組成物は液体製剤であってもよい。それは、任意に緩衝系を含む水溶液であってもよい。本発明の水性医薬組成物は、別の水混和性溶媒、例えばエタノールを含んでもよい。典型的には、水溶液は、他の溶媒、例えばエタノールを体積比で10%以上含有してはならない。医薬組成物は、pH3~pH7の範囲、より具体的にはpH3.5~pH6またはpH4~pH6の範囲のpHを有していてもよい。
【0032】
本発明による医薬組成物は、治療される対象または治療される疾患に応じて、本明細書で定義されるように0.001~1mg/mlの放射性ペプチドを含む。具体的には、放射性ペプチドの濃度は、0.01~1または0.5mg/ml、または0.05~0.5mg/mlの範囲であってもよい。
【0033】
医薬組成物は、ゲンチジン酸、エタノール、酢酸塩、NaClおよびアスコルビン酸/アスコルビン酸塩からなる群の添加物の少なくとも1つ、例えば1つ、2つまたは3つを含んでいてもよい。
【0034】
1つの実施形態において、医薬組成物は、安定剤として抗酸化剤アスコルビン酸/アスコルビン酸塩を含む。典型的にはスカベンジャーとして作用するアスコルビン酸/アスコルビン酸塩の存在は、医薬組成物を安定化させ、それにより医薬組成物の貯蔵寿命を向上させ、一方で医薬組成物をヒト、および他の哺乳動物対象への投与に適したものとして維持し得る。それゆえ、医薬組成物は、1ミリリットル当たり約5mgを超えるアスコルビン酸、または1ミリリットル当たり約10mgを超えるアスコルビン酸、または1ミリリットル当たり約20mgを超えるアスコルビン酸、または1ミリリットル当たり約30mgを超えるアスコルビン酸、または1ミリリットル当たり約40mgを超えるアスコルビン酸、または1ミリリットル当たり約50mgを超えるアスコルビン酸、または1ミリリットル当たり約100mgを超えるアスコルビン酸、または1ミリリットル当たり約200mgを超えるアスコルビン酸を含んでもよい。それゆえ、医薬組成物は、5~100mg/mlのアスコルビン酸/アスコルビン酸、または25~500mg/ml、または50~200mg/mlを含有していてもよい。別の言い方をすれば、医薬組成物は、0.5mM~0.5M、特に1mM~100mMまたは10mM~100mMの範囲のアスコルビン酸/アスコルビン酸塩を含んでいてもよい。
【0035】
医薬組成物は、50~800MBq/mlまたは100~600MBq/mlまたは200~400MBq/mlの範囲の放射能を示すことができる。
【0036】
別の態様において、本発明は、疾患、特に腫瘍疾患を治療する方法を指す。この治療方法は、本発明の放射性ペプチドまたは本発明の組成物を、疾患治療、特に新生物または腫瘍治療を必要とする対象に投与することを含んでいてもよい。対象は哺乳動物、特にヒトであってよい。
【0037】
本発明の放射性ペプチドまたはその無毒性塩は、典型的には、薬学的または獣医学的に許容される担体/賦形剤と組み合わせて本発明の医薬組成物を形成し、ヒトおよび他の哺乳動物を含む動物に、静脈内、皮下、筋肉内、経皮、例えば経鼻、脳脊髄内または経口のいずれかで投与されてもよい。具体的には、本発明の放射性ペプチドまたは本発明の医薬組成物は、全身的に、好ましくは静脈内に、例えば点滴により投与されてもよい。医薬組成物は、対象の静脈内へ点滴により、例えば調製されたカテーテルまたはヘパリンロックラインにより、長時間にわたって、例えば10~60分間投与してもよく、適切な生理食塩水およびまたはヘパリン溶液でフラッシュしてもよい。投与は、カテーテルまたはヘパリンロックラインにルアーロックを介して行うことができる。投与部位は患者の腫瘍/転移プロファイルに依存する。具体的な投与部位としては、腕の静脈が考えられる。
【0038】
治療プロトコールは、腫瘍疾患、腫瘍疾患の重症度、および治療経過に依存し、通常、各治療サイクル後にPET/CTまたはSPECT/CTスキャンによってモニターされる。SPECTは、好ましくは、体内における放射性ペプチドの分布を研究する技術として機能し得る。1つの実施形態において、治療プロトコールは、2~10治療サイクル、例えば4、5、6又は7治療サイクルで構成され得る。それゆえ、治療プロトコールは、4~10週間ごと、例えば5~8週間ごと又は約6週間ごとに2回以上の治療サイクルを予見することができる。病勢が進行した場合には、最初の治療サイクルのプロトコールの後に再治療を行うことが想定される。
【0039】
腫瘍、例えば良性腫瘍または悪性腫瘍の治療に使用するように設計されたこのような医薬組成物は、他の組織におけるその転移の治療を含め、腫瘍の治療または制御に十分な量で投与することができる。放射性ペプチドは、少なくとも約90%の純度であるべきであり、好ましくは少なくとも約98%の純度を有することができる;しかしながら、より低い純度でも有効であり、ヒト以外の哺乳動物に使用してもよい。この純度とは、意図するペプチドが、組成物中に存在するすべての同種のペプチドおよびペプチドフラグメントの重量%を構成することを意味する。必要な投与量は、治療される特定の状態、状態の重篤度、および想定される治療期間によって変化する。
【0040】
より具体的には、本発明の放射性ペプチドまたは医薬組成物によって治療されるべき疾患は、内分泌(ホルモン)系および(末梢)神経系の細胞から生じる新生物である。治療すべき新生物または腫瘍の異常細胞は、典型的にはその細胞表面にsstr2を発現する。これらはより多くの様々な組織に発生する可能性があるが、最も一般的には腸に発生する。それゆえ新生物は、消化管膵臓(例えば、前腸、中腸、後腸、または膵臓:膵島細胞)または気管支肺管における神経内分泌新生物であってもよい。本発明の方法は、より多様な組織における神経内分泌新生物、および/または神経内分泌腫瘍転移、特に肝転移の治療を含み得ることが理解される。神経内分泌新生物/腫瘍は良性であっても悪性であってもよい。その組織学的悪性度は、WHOの悪性度分類によれば、G1、G2またはG3に分類される。G1、G2およびG3に分類される消化管膵臓系の分化神経内分泌新生物は神経内分泌腫瘍と定義される一方で、G3に分類される消化管膵臓系の低分化神経内分泌新生物は神経内分泌癌に相当する。本発明は、消化管膵臓系の分化または低分化神経内分泌腫瘍または癌腫、例えば膵臓腫瘍または癌腫を治療する方法を提供する。
【0041】
様々な他の臓器が神経内分泌新生物/腫瘍およびその転移によって冒される可能性がある。それゆえ、肺の神経内分泌腫瘍、例えば、小細胞肺癌を含む肺または気管支の神経内分泌癌は、本発明に従って治療され得る。副腎腫瘍、特に副腎髄質腫瘍は、例えば副腎髄質の腫瘍として褐色細胞腫も、本発明方法によって治療することができる。末梢神経系の腫瘍、例えば傍神経節腫、シュワンノーマまたは神経芽細胞腫は、本発明方法による治療の対象となる腫瘍疾患となり得る。胸腺、甲状腺または下垂体の腫瘍についても同様に、例えば神経内分泌甲状腺腫瘍、特に甲状腺髄様癌が治療されうる。乳癌または泌尿生殖器の癌も本発明方法によって治療され得る。前立腺癌、特に神経内分泌起源の前立腺癌も治療され得る。また、髄膜腫、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫の治療にも本発明の方法を適用することができる。
【0042】
有利には、本明細書に記載される治療法は、例えば取り込み値(SUV)を決定することによって、腫瘍の新生物の異常細胞による、本発明の放射性ペプチドのトレーサー投与の取り込み量を決定することを可能にするイメージング工程(例えばPET/CTスキャンおよび/またはMRI)が先行してもよい。それにより、ソマトスタチン受容体、例えばソマトスタチン受容体サブタイプ2(sstr2)が高発現している腫瘍患者が選択され、本発明のアプローチによる治療が成功する。代替的または付加的に、腫瘍細胞を分子生物学的方法またはin vitro診断方法によって分析し、sstr陽性細胞またはsstr2陽性細胞、すなわち腫瘍細胞表面上のsstr発現レベルを決定してもよい。
【0043】
この治療アプローチは、腫瘍以外の組織への副作用を最小限に抑えながら、腫瘍の治療に非常に有効である。放射性ペプチドは体内の腫瘍部位に急速な速度で蓄積する。放射性ペプチドの放射線は腫瘍部位で本質的に吸収されるか、尿中に排泄されるため、他の組織は放射性同位体の(β-)粒子放射線の影響を本質的に受けない。テルビウム-161で標識されたアンタゴニスト性ソマトスタチンアナログは、放射性同位体の放射線によって損傷を受けた腫瘍細胞に結合するかまたはその中に入り込み、好ましくは結合する。その後、腫瘍細胞はアポトーシスまたはネクローシス現象を受け、治療の結果として被験者の腫瘍負荷が減少する。
【0044】
具体的な実施形態では、本発明の治療法は、原発性内分泌新生物/腫瘍および、潜在的にその転移を患う患者に適用される。
【0045】
別の実施形態では、本発明の放射性ペプチドに基づく治療法は、併用治療と組み合わせて実施することができる。特に、ArgまたはLysのようなアミノ酸を含む溶液の併用注射による腎保護が想定され得る。このようなアミノ酸溶液による併用治療は、例えば3時間~0.2時間前、典型的には約1時間~約1.5時間前に開始し、放射性ペプチドの投与終了後さらに1時間~5時間継続することができる。また、本発明の放射性ペプチドによる治療サイクルの前に、制吐剤および/またはコルチコステロイドによって患者を前処置してもよい。
【0046】
具体的な実施形態において、本発明は、
90Y-DOTATOC、
177Lu-DOTATOC、(
177Lu)-オキソドトレオチド(Lutathera(登録商標));
177Lu-DOTATATEおよび他の放射性標識ソマトステインアナログ、特に
177Lu-DOTATOCまたは(
177Lu)-オキソドトレオチド(Lutathera(登録商標));より特に(
177Lu)-オキソドトレオチド(Lutathera(登録商標));
177Lu-DOTATATEによる治療に対して、安定または難治性である神経内分泌新生物/腫瘍および他のSSTR2陽性新生物の治療を可能にする。
【化3】
別の態様により、本発明はキットまたは部品キットを提供する。
【0047】
放射性核種を用いた標識反応は、治療の前に臨床病院または実験室で実施する必要がある場合がある。このような場合、種々の反応成分は、「キット」または「複数のキット」の形態で使用者に提供され得る。したがって、本発明による医薬組成物を調製するためのキットは、(i)放射性核種のキレート剤に結合した本明細書に記載のソマトスタチン受容体(SSTR)アンタゴニスト、(ii)任意のアジュバントを有する不活性な薬学的に許容される担体および/または製剤化剤、(iii)放射性金属同位体テルビウム-161の塩の溶液、典型的にはその塩の形態、および任意に、(iv)キットに存在する成分を反応させるための処方箋を伴う使用説明書、以上のすべてをキットの部分として含んでいてもよい。構成要素(i)、(ii)、(iii)および任意に(iv)は、通常、キットの別個の部分として提供される。あるいは、構成要素(iii)は第一のキットにより提供され、構成要素(i)および(ii)は別個の第二のキットにより部品として提供されてもよい。それゆえ、第一のキットと第二のキットは別個の存在として使用部位に送達され、放射性核種のさらなる製剤化およびその後の治療的使用のための「オンタイムでの」提供を可能にする。
【0048】
ソマトスタチンアンタゴニスト(放射性ペプチドのペプチド成分(c))は、本明細書で定義されるように、キレート剤(放射性ペプチドの成分(b))との反応によってコンジュゲートされ得る。得られたペプチド/キレート剤コンジュゲートは、放射性同位体テルビウム-161(放射性ペプチドの成分(a))を使用部位で簡便な方法で安定に錯化するための有利な実体を提供する。ペプチド/キレート剤コンジュゲートは、例えばその塩の形態で、乾燥形態で提供され得るか、またはより典型的には、キットの一部として溶液、例えば緩衝化または非緩衝化水溶液で提供され得る。乾燥形態で提供される場合、凍結乾燥形態で提供されることがあり、凍結乾燥コンジュゲートは使用部位で溶液に溶解する必要がある。注射液としての性質上、無菌であることが望ましい。成分が乾燥状態である場合、使用者は、溶媒として滅菌生理的食塩水を使用することが好ましく、これは任意に緩衝化されている。
【0049】
放射性核種/同位体が、すべての部分を含むキット中に存在する場合、または(iii)放射性核種を唯一の化学的実体として含む別個のキット中に存在する場合、放射性核種またはその塩は、典型的には、例えば2未満または1未満のpHを示す酸性水溶液中、例えば塩酸水溶液中で提供される。放射性核種は別個のキットまたはキットの別個の部分として提供されるので、放射性核種は錯体形成反応によってペプチド/キレート剤結合体に結合するように調製されなければならない。有利には、ペプチド/キレート剤結合体を含む溶液と放射性核種を含む溶液の両方が組み合わせられる。ペプチド/キレート剤結合体を含む溶液は、例えば酢酸塩のような酸性域のpHを緩衝する緩衝剤を有利に含み得、適切な酸性条件下で錯体形成反応を起こし得る。(例えばヒドロキシ塩の形成による)放射性金属の沈殿を防ぐために、錯体形成反応はアルカリ性条件下で進行させるべきではない。有利には、錯形成反応は、例えば、放射性核種とペプチド/キレート剤結合体の混合溶液を、例えば、溶液の沸点に近い温度まで加熱することにより、平衡が錯形成に移行する条件下で行われる。
【0050】
さらに、得られた生成物は、安定化添加剤を添加して最終的に再製剤化してもよい。それによって、上記のテルビウム-161錯体化ペプチド/キレート剤結合体は、適当な安定剤、例えば、エタノール、アスコルビン酸、ゲンチジン酸またはこれらの酸の塩で安定化され得る。
【0051】
[図面の簡単な説明]
(
図1)ソマトスタチン(SST)アナログの化学構造。(a)DOTATOC(ソマトスタチン受容体(SSTR)アゴニスト)[15,41];(b)DOTA-LM3(SSTRアンタゴニスト)[42]。
(
図2)
161Tb-および
177Lu-標識ペプチドの代表的なHPLCクロマトグラムのグラフ。(a)[
161Tb]Tb-DOTATOC;(b)[
177Lu]Lu-DOTATOC;(c)[
161Tb]Tb-DOTA-LM3
);(d)[
177Lu]Lu-DOTA-LM3。未反応のテルビウム-161またはルテチウム-177の痕跡が2.5分の保持時間で現れた[44]。
(
図3)調製および生理食塩水(10MBq/250μL)希釈の1時間後、4時間後、24時間後に調べた、無傷の放射性ペプチドの割合を示す棒グラフ。(a)l-アスコルビン酸非存在下および存在下における無傷の[
161Tb]Tb-DOTATOCおよび[
177]Lu-Lu-DOTATOCの割合;(b)l-アスコルビン酸非存在下および存在下における無傷の[
161Tb]Tb-DOTA-LM3および[
177]Lu-Lu-DOTA-LM3の割合。
(
図4)AR42J腫瘍細胞を0.5時間、2時間、4時間インキュベートした後の放射性ペプチドのin vitro腫瘍細胞への取り込みと内在化の結果。(a)[
161 Tb]Tb-DOTATOCと[
177Lu]Lu-DOTATOC;(b)[
161Tb]Tb-DOTATOCと[
177Lu]Lu-DOTATOCにSSTRをブロックするための過剰ペプチドを加えたもの;(c)[
161Tb]Tb-DOTA-LM3および[
177Lu]Lu-DOTA-LM3;(d)[
161Tb]Tb-DOTA-LM3および[
177Lu]Lu-DOTA-LM3を過剰のペプチドでSSTRをブロックする。
(
図5)AR42J腫瘍細胞を用いて、ペプチドのモル量を変化させて適用した放射性ペプチドの取り込みと内在化率を表すグラフ。AR42J腫瘍細胞をそれぞれの放射性ペプチドと2時間インキュベートした。(a)[
177Lu]Lu-DOTATOC;(b)[
177Lu]Lu-DOTA-LM3.
(
図6)放射性ペプチドの細胞内取り込みと局在性研究のグラフ。(a)放射性標識DOTATOCの細胞局在;(b)放射性標識DOTA-LM3の細胞局在。
(
図7)AR42J腫瘍細胞生存可能性アッセイ(MTT)を表すグラフ。(a)[
161Tb]Tb-/[
177Lu]Lu-DOTATOCで処理した細胞の結果;(b)[
161Tb]Tb-/[
177Lu]Lu-DOTA-LM3で処理した細胞の結果。
(
図8)AR42J腫瘍細胞の生存率(クローン形成アッセイ)を表すグラフ。(a)[
161Tb]Tb-DOTATOCまたは[
177Lu]Lu-DOTATOCで処理した細胞の結果;(b)[
161Tb]Tb-DOTA-LM3または[
177Lu]Lu-DOTA-LM3で処理した細胞の結果。
(
図9)放射線ペプチド(2.5MBqおよび10MBq)曝露後のDNA DSBを代表するγ-H2AX陽性AR42J腫瘍細胞の定量。(a)偽処置後のγ-H2AX陽性AR42J腫瘍細胞;(b)[
161Tb]Tb-DOTATOCまたは[
177Lu]Lu-DOTATOCで処置後のγ-H2AX陽性AR42J腫瘍細胞;(c)[
161Tb]Tb-DOTA-LM3または[
177Lu]Lu-DOTA-LM3(2.5および10MBq)で処置後のγ-H2AX陽性AR42J腫瘍細胞。陽性細胞数は、偽処置したAR42Jの陽性例(1.0とした)に対するパーセンテージで表した。
(
図10A)最大強度投影(MIP)として示された、[
161Tb]Tb-DOTATOC(15MBq,0.5nmol/マウス)および[
177Lu]Lu-DOTATOC(15MBq,0.5nmol/マウス)の注射2時間後、4時間後および24時間後の、AR42J腫瘍保有マウスの二重同位体SPECT/CT画像である。(a/b/c)放射性ペプチドの注射2時間後のスキャン、(d/e/f)放射性ペプチドの注射4時間後のスキャン、(g/h/i)放射性ペプチドの注射24時間後のスキャン。(a/d/g)テルビウム-161のX線およびγ線に基づく再構成、(b/e/h)テルビウム-161のX線およびγ線、ルテチウム-177のγ線に基づく再構成、(c/f/i)ルテチウム-177のγ線に基づく再構成。AR42J=SSTR陽性腫瘍異種移植片;Ki=腎臓;Bl=膀胱。(
図10B)AR42J腫瘍保有マウスで実施したブロッキング試験の二重同位体SPECT/CT画像。画像は、[
161Tb]Tb-DOTATOC(15MBq、0.5nmol/マウス)および[
177Lu]Lu-DOTATOC(15MBq、0.5nmol/マウス)ならびに過剰の非標識DOTATOC(20nmol/マウス)の注射2時間後および4時間後の最大強度投影(MIP)として示す。(A/B/C)放射性ペプチドの注射2時間後のスキャン、(D/E/F)放射性ペプチドの注射4時間後のスキャン。(A/D)テルビウム-161のX線およびγ線に基づく再構成;(B/E)テルビウム-161のX線およびγ線、ルテチウム-177のγ線に基づく再構成;(C/F)ルテチウム-177のγ線に基づく再構成。AR42J=SSTR2陽性腫瘍異種移植片;Ki=腎臓;Bl=膀胱。
(
図11A)最大強度投影(MIP)として示された、[
161Tb]Tb-DOTA-LM3(15MBq,0.5nmol/マウス)および[
177Lu]Lu-DOTA-LM3(15MBq,0.5nmol/マウス)の注射2時間後、4時間後および24時間後のAR42J腫瘍保有マウスの二重同位体SPECT/CT画像である。(a/b/c)放射性ペプチドの注射2時間後のスキャン、(d/e/f)放射性ペプチドの注射4時間後のスキャン、(g/h/i)放射性ペプチドの注射24時間後のスキャン。(a/d/g)テルビウム-161のX線およびγ線に基づく再構成、(b/e/h)テルビウム-161のX線およびγ線、ルテチウム-177のγ線に基づく再構成、(c/f/i)ルテチウム-177のγ線に基づく再構成。AR42J=SSTR陽性腫瘍異種移植片;Ki=腎臓;Bl=膀胱。(
図11B)AR42J腫瘍保有マウスで実施したブロッキング試験の二重同位体SPECT/CT画像である。画像は、[
161Tb]Tb-DOTA-LM3(15MBq,0.5nmol)および[
177Lu]Lu-DOTA-LM3(15MBq,0.5nmol)および過剰の非標識DOTA-LM3(20nmol/マウス)の注射2時間後および4時間後の最大強度投影(MIP)として示す。(A/B/C)放射性ペプチドの注射2時間後のスキャン、(D/E/F)放射性ペプチドの注射4時間後のスキャン。(A/D)テルビウム-161のX線およびγ線に基づく再構成;(B/E)テルビウム-161のX線およびγ線、ルテチウム-177のγ線に基づく再構成;(C/F)ルテチウム-177のγ線に基づく再構成。AR42J=SSTR2陽性腫瘍異種移植片;Ki=腎臓;Bl=膀胱。
(
図12)AR42J腫瘍保有マウスで得られた生体内分布データ。(a/b)放射性ペプチド注射2時間後の組織分布;(c/d)放射性ペプチド注射24時間後の組織分布。(a/c)[
161Tb]Tb-DOTATOCおよび[
177Lu]Lu-DOTATOCで得られたデータ(p>0.05);(b/d)[
161Tb]Tb-DOTA-LM3および[
177Lu]Lu-DOTA-LM3で得られたデータ(p>0.05)。
(
図13)異なるモル量の放射性ペプチドを注射した2時間後にAR42J腫瘍保有マウスで得られた生体内分布データ。(a)[
161Tb]Tb-DOTATOCの組織分布;(b)[
177Lu]Lu-DOTATOCの組織分布;(c)[
161Tb]Tb-DOTA-LM3の組織分布;(d)[
177Lu]Lu-DOTA-LM3の組織分布。結果は、組織質量あたりの注射活性のパーセンテージ(%IA/g)で示される。
(
図14)AR42J腫瘍保有マウスに放射性ペプチド(マウス1匹あたり0.2nmol)を注射して得られた生体内分布データ。(a)[
161Tb]Tb-DOTATOC;(b)[
161Tb]Tb-DOTA-LM3の組織分布プロファイル。結果は、組織質量あたりの注射活性の割合(%IA/g)で示した。
(
図15)AR42J腫瘍保有マウスに
161Tbおよび
177Lu標識DOTATOCとDOTA-LM3を投与した治療試験。(a)偽治療を受けたマウス(A群)、[
161Tb]Tb-DOTATOC(10MBq、0.2nmol、0日目と7日目に投与)(B群)、および[
177Lu]Lu-DOTATOC(10MBq、0.2nmol、0日目と7日目に投与)(C群)。(b)偽処置(A群)、[
161Tb]Tb-DOTA-LM3(10MBq、0.2nmol、0日目と7日目に投与)(D群)、[
177Lu]Lu-DOTA-LM3(10MBq、0.2nmol、0日目と7日目に投与)(E群)を受けたマウスの腫瘍増殖曲線。データは各群の最初のマウスがエンドポイントに達するまで示した。(c)A/B/C群のKaplan-Meierプロット;(d)A/D/E群のKaplan-Meierプロット。
(
図16)AR42J腫瘍保有マウスにおいて、
161Tb-および
177Lu-SSTアゴニストおよびアンタゴニスト(2×10MBq;0.2nmol)を用いて行った治療試験の解析。(a)A-E群の腫瘍増殖遅延;(b)A-E群の腫瘍倍加時間。
(
図17)治療マウスの相対体重(RBW)を示す。(a)治療を受けなかったマウス(A群)、[
161Tb]Tb-DOTATOC(B群)および[
177Lu]Lu-DOTATOC(C群)のRBW。(b)治療を受けなかったマウス(A群)、[
161Tb]Tb-DOTA-LM3(D群)および[
177Lu]Lu-DOTA-LM3(E群)のRBW。データは各群の最初のマウスがエンドポイントに達するまで示した。
(付録)2つのソマトスタチン受容体(SSTR)標的ペプチドDOTATOC(SSTRアゴニスト)とDOTA-LM3(SSTRアンタゴニスト)を
161Tbまたは
177Luで標識し、前臨床実験で評価した。それらの挙動は前臨床試験で研究された。
図18は、本発明者らが2020年11月に発表したポスターに対応する。
【0052】
[実施例]
本開示の実施例は、in vitroおよびin vivoにおけるテルビウム-161対ルテチウム-177の治療効果に対する細胞局在の影響を示している。DOTATOCとDOTA-LM3が用いられた。これらはそれぞれ161Tb標識と177Luで標識された。テルビウム-161から放出される転換電子とオージェ電子の効果が、放射性核種の細胞局在性に依存するかどうかを調べるために、標識された161Tb放射性ペプチドを、177Lu標識された対応物と比較した。テルビウム-161とルテチウム-177の治療効果を一対一で比較することは、161Tb-と177Lu-がin vitroでの細胞内取り込みとin vivoでの生体内分布に関して同等の挙動を示すことから可能であった[44]。
【0053】
放射性ペプチドの細胞局在は、その治療効果に影響を及ぼすことが判明し、その効果は使用する放射性核種に依存した。
【0054】
161Tb標識ペプチドと177Lu標識ペプチドの間の有効性の違いが証明された。それはDOTA-LM3の場合に最も顕著であった。[161Tb]Tb-DOTA-LM3は、[177Lu]Lu-DOTA-LM3よりも、in vitroで細胞生存可能性を低下させる効果が102倍高いことが明らかになった。
【0055】
前臨床治療研究により、161Tb標識ソマトスタチンアナログは、177Lu標識ソマトスタチンアナログよりもin vivoでより有効であることが確認された。放射性標識DOTA-LM3の治療効果は、放射性標識DOTATOCの治療効果よりも有意に顕著であった。これは、生体内分布データによって示されたように、放射性標識DOTA-LM3の腫瘍への取り込みがより高いためと考えられる。細胞膜に局在する161Tb標識ソマトスタチン受容体アンタゴニスト(DOTA-LM3)は、ルテチウム-177よりもテルビウム-161の使用が有益であることが判明した。これは、オージェ電子放出剤としてのテルビウム-161の有効な標的が細胞膜であることを示唆している。
【0056】
I.生産
テルビウム-161とルテチウム-177は、ターゲティング剤の細胞局在に基づく効果を比較するために使用された。これに関しては、2種類のペプチドが使われた:(i)主に細胞質に局在するDOTATOCと、(ii)主に細胞膜に留まるDOTA-LM3。
【0057】
A.放射性核種およびペプチドの生産方法
テルビウム-161は、既報[1、2]のように160Gd(n,γ)161Gd→161Tb核反応を用いて生産された。標的物質は、南アフリカのPelindabaにあるNecsaのSAFARI-1原子炉、またはフランスのGrenobleにあるLaue-Langevin研究所のRHF、またはスイスのVilligen-PSIにある核破砕中性子源SINQで照射された。テルビウム-161の化学分離は、既報[2]のようにPSIで行われた。テルビウム-161は、0.05M HCl中の無キャリア添加(n.c.a.)[161Tb]TbCl3として入手可能であった。ルテチウム-177は、ドイツのITM Medical Isotopes GmbHから、0.04M HCl中のn.c.a.[177Lu]LuCl3として入手した。
【0058】
DOTA-[Tyr
3]-オクトレオチド(DOTATOC)は、ドイツのITM GmbHから提供された(
図1a)。DOTA-LM3は、Fani et al.によって発表された構造に基づいて、CSBio(Silicon Valley Menlo Park、California、米国)によるカスタム合成物として入手した(
図1b参照)[3、4]。
【0059】
テルビウム-161は、11~21MBq/μLの活性濃度と99%以上の放射性核種および放射化学的純度で、高収率(平均10GBqを超え、分離終了時には15GBq/生産まで)で生産された[43]。最大100MBq/nmolのペプチドの放射性標識は、化学分離の2週間後まで可能であり、これによって臨床前研究を計画し実行することが可能になった。テルビウム-161の正確な製品規格は、Gracheva et al.によって報告されたn.c.a.ルテチウム-177と同等であった[43]。
【0060】
B.放射性ペプチドの調製
[161Tb]Tb-DOTATOCおよび[161Tb]Tb-DOTA-LM3、ならびに[177Lu]Lu-DOTATOCおよび[177Lu]Lu-DOTA-LM3を高モル活性で調製し、in vitroおよびin vivoでの放射性ペプチドの評価および比較を行った。
【0061】
DOTATOCとDOTA-LM3のストック溶液は、最終濃度が1mMになるようにMilli-Q水で調製した。酢酸ナトリウム(0.5M)と塩酸(0.05M)の1:5(v/v)混合溶液を用いて、pH~4.5で、100MBq/nmolまでのモル活性で、ソマトスタチンアナログをテルビウム-161またはルテチウム-177で標識した。反応混合物を95℃で10分間インキュベートした後、HPLCを用いて品質管理を行った。この目的のために、D-7000インターフェース、L-7200オートサンプラー、放射能検出器(LB506B;Berthold)、逆相C18カラムを接続したL-7100ポンプ(Xterra(商標)MS,C18,5μm,150×4.6mm;Waters)を備えた、Merck Hitachi LaChrom HPLCシステムを使用した。移動相はMilli-Q水中の0.1%(v/v)TFA(A)とアセトニトリル(B)であった。溶液A(95-20%)と溶媒B(5-80%)の15分間の直線勾配を1.0mL/分の流速で使用した。放射性ペプチドは、HPLCに注射する前に、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム(Na5-DTPA;50μM)を含むMilli-Q水で希釈した。
【0062】
[
161Tb]Tb-DOTATOCおよび[
177Lu]Lu-DOTATOC、ならびに[
161Tb]Tb-DOTA-LM3および[
177Lu]Lu-DOTA-LM3は、100MBq/nmolのモル活性まで放射化学的純度98%以上で得られた(
図2参照)。
【0063】
C.放射性ペプチドの放射線分解安定性
放射性標識ソマトスタチンアナログの安定性を試験し、in vitroおよびin vivo評価における完全性を確認した。
【0064】
放射性標識ソマトスタチンアナログの放射線分解安定性を24時間にわたって評価した(n=2)。この目的のために、DOTATOCとDOTA-LM3をテルビウム-161またはルテチウム-177で50MBq/nmolのモル活性で標識した。HPLCを用いた品質管理(t=0、放射化学的純度98%以上、100%として設定)の後、標識溶液を生理食塩水で希釈し、最終容量250μL、活性濃度40MBq/mLとし、l-アスコルビン酸(最終容量250μL中120μg/10MBq)の添加の有無にかかわらず室温(RT)でインキュベートした。放射性ペプチドの潜在的分解は、HPLCを用いてサンプルを分析することにより、1時間後、4時間後、24時間後に決定した。クロマトグラムの定量的評価は、放出されたテルビウム-161とルテチウム-177、および構造不明の分解生産物からなるクロマトグラム全体の積分ピーク面積の合計に対する、無傷の生産物の積分ピーク面積の割合として表すことにより行った。
【0065】
テルビウム-161またはルテチウム-177で標識した放射性ペプチドにかかわらず、すべての放射性ペプチドは調製後1時間までは安定であった(無傷の放射性ペプチドが90%以上)(
図3参照)。しかし、4時間後と24時間後には、放射線分解により無傷の部分はそれぞれ90%と60%に減少した。発表されたデータ[36、43]において、無傷の
161Tb標識体および
177Lu標識体のパーセンテージは同一であったことから、付加的な活性酸素種(ROS)の可能な形成は短距離転換によること、およびオージェ電子[45]は放射性ペプチドの完全性に影響を与えなかったことが示された。臨床応用のための放射性ペプチドの安定化は、一般的にアスコルビン酸の追加によって達成され[46]、
161Tbおよび
177Lu標識ソマトスタチンアナログの長期安定化にも有効であった(
図3参照)。
【0066】
放射性ペプチドが40MBq/mL以下の濃度および/または調製直後に使用された場合、l-アスコルビン酸の添加は必要なかった。デュアルアイソトープSPECT/CTイメージング試験は、40MBq/mLを超える活性濃度(マウス1匹あたり100μL中4MBqを超える)で実施され、放射性ペプチドの完全性を確保するためにL-アスコルビン酸の添加(100μL中30MBqあたり~300μg)が必要であった。
【0067】
D.n-オクタノール/PBS分配係数(LogD値)の測定
n-オクタノール/PBS分配係数(logD値)を各放射性ペプチドについて評価し、親水性を調べ、3つのアナログの比較を可能にした。
【0068】
放射性標識アナログ(DOTATOCおよびDOTA-LM3;30MBq/nmol)のlogD値は、既報[47]のようにシェイクフラスコ法で決定した。放射性標識ペプチド(0.5MBq、25μL)のアリコートをpH7.4のPBS 1475μLとn-オクタノール1500μLの混合液に加えた。それぞれのチューブを60秒間ボルテックスし、2500rpmで6分間遠心分離した後、γ-counter(Perkin Elmer, Wallac Wizard 1480)を用いて各層の一定量の活性濃度を測定した。logD値は、pH7.4のPBS相で測定したcpmに対するn-オクタノール相で測定したcpmの比の対数として計算した。実験は各放射性ペプチドについて5反復で3回行い、logD値は各実験で得られた値の平均±標準偏差(SD)で表した。データは、Tukeyの多重比較検定による二元配置分散分析を用いて有意性を分析した。p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0069】
低いlogD値によって示されるように、放射性ペプチドは親水性を示した。重要なことは、161Tb-および177Lu-標識された対応物は、同様のlogD値(p>0.05)を示したことである(表1)。
【0070】
【0071】
II.in vitro試験
A.細胞培養
本研究では、SSTR陽性ラット膵外分泌癌細胞株であるAR42J腫瘍細胞株[48]を、in vitroおよびin vivoの試験に用いた。
【0072】
AR42J腫瘍細胞(ECACC 93100618;Health Protection Agency Culture Collections,Salisbury,英国)は、グルタミン、抗生物質、20%子牛胎児血清を添加したRPMI1640培養液中で、既報[44]のように維持した。すべてのin vitroアッセイには、グルタミンと抗生物質を含み、1%FCSのみを添加した細胞培養培地(本明細書では「アッセイ培地」と呼ぶ)を用いた。細胞のインキュベートは、特に他の指示がない限り、常に37℃、5%CO2の加湿雰囲気という標準的な培養条件下で行った。pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を、特に他の指示がない限りin vitro実験に用いた。ポリスチレンウェルプレートは、細胞の接着を促進し、ウェルプレート材料への放射性ペプチドの付着を防ぐため、すべてのin vitro実験においてポリ-l-リジン(0.5mg/mL)でコーティングした。
【0073】
B.細胞の取り込みと内在化:161Tb標識ペプチドと177Lu標識ペプチドの比較
各放射性ペプチドの161Tb標識体および177Lu標識体を用いて、細胞の取り込みと内在化の試験を行った。
【0074】
細胞の取り込みと内在化の試験は、AR42J腫瘍細胞を用い、既報[5]の手順に従って行った。AR42J腫瘍細胞(106細胞/2mL)をポリ-l-リジンコートした12ウェルプレートに播種し、サプリメントを加えたRPMI培地で一晩インキュベートした。PBS(pH7.4)で細胞を洗浄した後、アッセイ培地(975μL)と25μLの放射性ペプチド溶液(~15kBq、~0.75pmol/ウェル)を各ウェルに加え、放射性リガンド濃度を0.75nMとした。ウェルプレートを標準的な細胞培養条件下で0.5時間、2時間または4時間インキュベートした。1μM DOTANOCまたは1μM DOTA-LM3を用いてSSTRブロッキング実験を行った。γ-counter(Perkin Elmer,Wallac Wizard 1480)を用いて、全取り込み量と内在化画分を決定した。サンプルの活性は、Micro BCA Protein Assay kit(Pierce,Thermo Scientific)を用いて、各ウェルの平均タンパク質濃度(~0.3mg)で標準化した。実験は3連で2回または3回行った。統計解析は、Tukeyの多重比較事後検定による二元配置分散分析を用いて行った。p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0075】
AR42J腫瘍細胞への取り込みと内在化は、
161Tb-および
177Lu-標識SSTRアナログについて同等であった(p>0.05)(
図4参照)。AR42J細胞への[
161Tb]Tb-/[
177Lu]Lu-DOTATOCの取り込みは、4時間のインキュベーション後に最も高くなった(添加した全活性の約15%)。酸洗浄した細胞は全吸収量の40-50%を保持しており、これは既報[49]のように放射性ペプチド-レセプター複合体の効率的な内在化を示していた。[
161Tb]Tb-/[
177Lu]Lu-DOTA-LM3は、調査した全ての時点でAR42J細胞の取り込みを示し、4時間のインキュベーションでほぼ70%に達した。しかし、放射性標識DOTA-LM3の内在化画分はほとんど無視できるものであった(全取り込みの10%未満)[42]。過剰のDOTANOCの添加により、[
161Tb]Tb-/[
177Lu]Lu-DOTATOCの細胞取り込みが阻害され、放射性ペプチドのSSTR特異的結合が確認された。しかしながら、DOTANOCは放射性標識DOTA-LM3の取り込みを完全にブロックする効果はなかった(データは示さず)。なぜなら、SSTR-アンタゴニストはSSTR-アゴニストに比べて細胞膜上のより多くの結合部位にアクセスできるからである(最大14倍)[50]。ブロッキングは過剰の非標識DOTA-LM3を用いて達成された。
【0076】
C.ペプチドのモル量を増加させた場合の細胞への取り込みと内在化
このin vitro試験の目的は、DOTATOCとDOTA-LM3の量を変化させて放射性ペプチドを添加し、AR42J腫瘍細胞のSSTR飽和をもたらすペプチド量を決定することであった。
【0077】
AR42J腫瘍細胞におけるペプチドの取り込みと内在化率は、上記と同じ方法で測定したが、放射性ペプチドは可変モル量のペプチドを用いて適用した。AR42J腫瘍細胞をPBS(pH7.4)で洗浄した後、0.375-75pmolの[
177Lu]Lu-DOTATOCまたは[
177Lu]Lu-DOTA-LM3(25μL、~15kBq)とインキュベートした。37℃で2時間インキュベートした後、細胞の取り込みと内在化画分を決定し、サンプルの活性を各ウェルの平均タンパク質濃度(~0.3mg)に標準化した。実験は3連で2回行った。
すべての場合において、非標識ペプチドのモル量を増加させるとともに、それぞれの放射性ペプチドの取り込みと内在化は減少した(
図5参照)。ペプチド量0.375pmolおよび0.75pmolではSSTRの飽和は観察されなかったが、ペプチド量が1.5pmolおよび7.5pmolにおいては[
177Lu]Lu-DOTATOCの取り込みと内在化が30%程度減少した。ペプチドの適用モル量が最も高い場合(75pmol)、[
177Lu]Lu-DOTATOCの取り込みと内在化は~90%低下した。[
177Lu]Lu-DOTA-LM3の取り込みは、[
177Lu]Lu-DOTATOCと同様に、1.5pmolのペプチドが適用された場合、~30%低下した。[
177Lu]Lu-DOTA-LM3の取り込みは、7.5pmolのモル量で~80%低下したが、同じ条件では[
177Lu]Lu-DOTATOCの取り込みは30%しか低下しなかった。
【0078】
D.放射性ペプチドの核局在性
AR42J腫瘍細胞をそれぞれの放射性ペプチドとインキュベートした後、細胞核を分離し、核に局在する放射性ペプチドの割合を決定した。
【0079】
AR42J腫瘍細胞(10×106)をPLLコートペトリ皿に播種し、サプリメントを含む15mLの細胞培養培地を用い、37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。翌日、培地を除去し、腫瘍細胞をPBS(pH7.4)で洗浄し、19.5mLのアッセイ培地を加えた。放射性ペプチドを0.5mL(2.5MBq、125pmol)添加し、腫瘍細胞を37℃で2時間インキュベートした。その後、細胞をPBS(pH7.4)で数回洗浄し、過剰の放射性ペプチドを完全に除去した。その後、Nucli EZ Prep Nuclei Isolation Kit(Sigma Aldrich, 米国)を用いて、メーカーのプロトコールに従って細胞核と細胞質/膜画分を採取した。氷冷したNuclei EZ溶解バッファー(4mL)を各ペトリ皿に加え、腫瘍細胞を溶解した後、細胞懸濁液をエッペンドルフチューブに移し、500rcf、4℃で5分間遠心した。細胞質/膜画分を含む上清を、γ-counterで活性を計数するためのチューブに移した。ペレットを4mLの氷冷Nuclei EZ溶解バッファーに懸濁し、さらに500rcf、4℃で5分間遠心した。残存する細胞質/膜画分を含む上清を活性測定用に収集し、ペレットを200μLのNuclei EZ保存バッファーに懸濁した後、γ-counterでの活性測定用にチューブに移した。核および細胞質/細胞膜画分の測定活性は、細胞内取り込みの100%と定義した。核への局在は、全細胞内取り込みに対するパーセンテージで表した。収集した画分を0.4%トリパンブルー溶液で染色し、核が他の細胞断片から適切に分離されていることを確認するため、顕微鏡を用いて分析した。
【0080】
[
177Lu]Lu-DOTATOCおよび[
177Lu]Lu-DOTA-LM3の核内取り込みは、全細胞内取り込みの1%未満および~2%であった。これらの結果を取り込みと内在化のデータと組み合わせ(
図5参照)、単一放射性ペプチドの細胞内分布を計算し、円グラフで示した(
図6参照)。[
177Lu]Lu-DOTA-LM3の内在化率は全取り込みの約9%であり、放射性標識DOTATOCの内在化率(全取り込みの約81%)よりはるかに低かった。核に局在する割合は2%以下であった(
図6参照)。
【0081】
E.細胞生存可能性アッセイ
AR42J腫瘍細胞を用いて細胞生存可能性試験を行い、161Tb-および177Lu標識DOTATOCとDOTA-LM3の潜在的に異なる効果を評価した。
【0082】
合計7500個のAR42J腫瘍細胞を、PLLコート96ウェルプレート中の200μLの細胞培養培地に播種した。細胞が接着するように一晩インキュベートした後、培地を除去し、アッセイ培地で希釈したDOTATOCまたはDOTA-LM3とインキュベートし、テルビウム-161またはルテチウム-177で100MBq/nmolのモル活性で放射性標識した。ウェルあたりの適用活性濃度は0.001MBq/mLから40MBq/mL(0.01-400pmol/mL)の範囲であった。37℃で2時間のインキュベーション後、細胞をPBSで1回洗浄し、その後サプリメントを加えた新鮮な細胞培養培地を添加した。腫瘍細胞は細胞培養培地を交換することなく37℃で6日間増殖させ、既報のように3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイ[51]を用いて、細胞生存可能性を分析した。細胞をMTT試薬で2時間インキュベートした後、形成されたフォルマザン結晶をジメチルスルホキシドに溶解した。マイクロプレートリーダー(560nm,Victor(商標) X3,Perkin Elmer,Waltham,MA,米国)で560nmの吸光度を測定した。未処理の対照細胞について測定した吸光度を、腫瘍細胞生存可能性100%と定義した。処理した腫瘍細胞(各濃度につきn=12)の生存可能性は、対照細胞の吸光度に対するパーセンテージで表した。細胞生存可能性を適用活性濃度(対数変換)に対してプロットし、用量反応曲線に当てはめた。細胞生存可能性阻害は、AR42J腫瘍細胞の生存可能性を未処置の対照細胞の50%まで低下させるのに必要な活性濃度として計算した(EC50)。EC50値は、少なくとも4回の独立した実験で決定した。
【0083】
AR42J細胞の生存可能性を、未処理の対照細胞の生存可能性(100%として設定)と比較して10%未満に減少させることは、それぞれ採用したソマトスタチンアナログと放射性核種に依存する可変の活性濃度で達成された。すべての場合において、
161Tb標識ソマトスタチンアナログは、
177Lu標識対応物よりも強力であることが観察された(
図7参照)。[
161Tb]Tb-DOTATOCは[
177Lu]Lu-DOTATOCより5倍強力であった。しかし、[
161Tb]Tb-DOTA-LM3は[
177Lu]Lu-DOTA-LM3より102倍強力であった。
161Tb標識ソマトスタチンアナログのEC
50を比較すると、[
161Tb]Tb-DOTA-LM3は[
161Tb]Tb-DOTATOCよりも157倍高い効力を示した(表2)。[
177Lu]Lu-DOTA-LM3では状況は異なり、[
177Lu]Lu-DOTATOCより7.7倍強力であった(表2)。
【0084】
【0085】
F.細胞生存率(クローン形成アッセイ)
161Tb-および177Lu-放射性標識DOTATOCまたはDOTA-LM3に暴露されたAR42J腫瘍細胞1個がコロニーに増殖する能力は、クローン形成アッセイ[8]を行うことによって決定された。
【0086】
コロニーの適切な形成を可能にするため、添加物を含まないRPMI細胞培地で希釈した300μLのMatrigel(Growth Factor Reduced Basement Membrane Matrix,Corning Inc,New York,米国;2mg/mL)を、PPLでコートした6ウェルプレートの各ウェルに加えた。固化したマトリゲル上にAR42J腫瘍細胞を2mLの細胞培養培地(サプリメントを含む)に1ウェルあたり2000個の密度で播種し、一晩インキュベートした。翌日、培地を除去し、細胞を161Tb-および177Lu-放射性標識ソマトスタチンアナログ(30MBq/nmol)と共に、0.01MBq/mLから0.5MBq/mL(0.3-15pmol/mL)の活性濃度で、37℃、5%CO2で2時間インキュベートした。未処理の対照細胞にも同様の操作を行った。インキュベート後、上清を捨て、腫瘍細胞をPBSで洗浄してから新しい細胞培地を加えた。37℃、5%CO2で2週間インキュベートした後、培地を除去し、ウェルをPBSで1回洗浄した。コロニーをクリスタルバイオレット溶液(0.5%クリスタルバイオレット、6%グルタルアルデヒド水溶液、800μL)で染色した。0.1mm以上のコロニー数は、顕微鏡下で0.5cm×0.5cmの5つの正方形を選び、目視で決定した。プレーティング効率(PE)と生存率(SF)は以下の式に従って算出した:PE=([形成されたコロニー数(未処理)]/[播種した細胞数])*100;SF=([処理後に形成されたコロニー数]/[播種した細胞数*PE])*100[52]。
【0087】
放射性リガンドの様々な放射能濃度への曝露に伴うSFは、各実験で3連複を用い、少なくとも3回の独立した実験で測定した。データはSidakの多重比較事後検定による二元配置分散分析で解析した。p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0088】
コロニー形成アッセイでは、
161Tb標識ペプチドは、
177Lu標識ペプチドよりも細胞の生存率を低下させる効果があることが確認された(
図8参照)。未処理の対照細胞と比較して、0.50MBq/mLの[
161Tb]Tb-DOTATOCで処理した細胞の生存率は3%未満であった。[
177Lu]Lu-DOTATOCで同様の効果を得るには、10倍高い活性濃度(5MBq/mL)を適用しなければならなかった(n=1)。[
161Tb]Tb-DOTA-LM3は0.1MBq/mLの活性濃度で細胞生存率を5%未満に低下させたが、[
177Lu]Lu-DOTA-LM3は10倍高い濃度(1MBq/mL)で適用され、生存率をわずか15%程度に低下させた。
【0089】
G.DNA損傷の評価
[161Tb]Tb-DOTATOCと[177Lu]Lu-DOTATOC、または[161Tb]TbのDOTA-LM3と[177Lu]Lu-DOTA-LM3で処理したAR42J腫瘍細胞を用いて実験を行い、それぞれの場合に誘導された二本鎖切断(DSB)の数を調べた。
【0090】
2.5MBq/mLまたは10MBq/mLの各放射性ペプチドで処理したAR42J細胞のγ-H2AXの免疫染色により、DNA DSBの数を評価した。細胞を播種し(5×106cells/ペトリ皿)、一晩増殖させた。翌日、培地を除去し、細胞をアッセイ培地で希釈した放射性ペプチドで2時間処理した。上清を除去し、新しい培地を加える前にAR42J腫瘍細胞をPBSで洗浄した。24時間インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄し、1.5mLのPBSを用いてスクレイピングにより剥離し、1.5mLのエッペンドルフチューブで遠心分離した。細胞ペレットは、1mLの4%中性緩衝ホルマリンを加え、24時間室温で静置した後、PBSと交換して固定した。パラフィン包埋後、厚さ4μmの切片を作製した。簡単に説明すると、EDTA(pH9)を含む溶液を用いて98℃で20分間脱パラフィンした後、REAL Antibody Diluent(Agilent)を用いてRTで30分間、過酸化水素(Agilent)を用いてRTで10分間インキュベートすることにより抗原検索を行った。切片を一次抗体(細胞シグナリングウサギモノクローナル抗体(Ser139);希釈度1:200)と共にRTで1時間インキュベートした。Envision horseradish peroxidase rabbit(Agilent Technologies,Inc)検出システムをDAB基質バッファー(Agilent)とともに使用した。免疫染色した切片をデジタルスライドスキャナー(NanoZoomer-XR C12000;浜松、日本)でスキャンし、病理画像解析ソフトウェアVIS(Visiopharm Integrator System,Version 208 2019.02.2.6239,Visiopharm,Hoersholm,デンマーク)を用いて陽性細胞と陰性細胞の合計を定量した。まず、ディシジョンフォレスト分類法を用いて、組織細胞ペレットを関心領域(ROI)として概説した。その後、細胞分類法を用いて各ROI内の細胞核を検出し、陽性(茶)と陰性(青)に分類した。核の種類の分離は、「標準陽性核」と「標準陰性核」というあらかじめ決められたオプションでソフトウェアをトレーニングすることで行った。結果は総陽性細胞数と総陰性細胞数で表した。データは、Dunnetの多重比較事後検定による一元配置分散分析で分析した。p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0091】
高活性濃度(10MBq/mL)では、すべての
161Tb処理サンプルにおいて、対照と比較してγ-H2AX陽性病巣の数が増加したが、有意なレベルには達しなかった(p<0.05)。
177Lu標識ソマトスタチンアナログは、γ-H2AX陽性病巣のわずかな増加しかもたらさなかったが、これは高活性濃度でのみ明らかであった(p>0.05)。結果を
図9に示す。
【0092】
III.in vivo試験
放射性ペプチドの組織分布を評価し、注射するペプチドのモル量を最適化するためにin vivo試験を行った。さらに、放射性ペプチドの治療効果と初期の副作用を評価した。
【0093】
動物の世話と使用に関して適用されるすべての国際的、国内的、および/または研究機関のガイドラインに従った。特に、すべての動物実験はスイス動物福祉規則のガイドラインに従って実施された。前臨床試験は、カントン動物実験委員会により倫理的に承認され、管轄のカントン当局により許可された(許可番号75721および79692)。5週齢の雌の無胸腺性ヌードマウス(CD-1 Foxn-1/nu)をCharles River Laboratories(Sulzfeld、ドイツ)から入手した。マウスにAR42J腫瘍細胞(100μLPBS中5×106細胞)を皮下接種し、SPECT/CTイメージング、生体内分布および治療試験を行った。SPECT/CTおよび生体内分布試験は、腫瘍細胞接種後10-14日目に腫瘍サイズが~250mm3に達した時点で実施した。
【0094】
A.二重同位体SPECT/CTイメージング試験
その目的は、161Tb-と177Lu-標識ソマトスタチンアナログが同じin vivo分布を持ち、腫瘍への取り込みがSSTR特異的であることを証明することであった。第二の目的は、3つのソマトスタチンアナログの組織分布を比較することであった。
【0095】
二重同位体SPECT/CTスキャンは、小動物専用SPECT/CTスキャナー(NanoSPECT/CT,Mediso Medical Imaging Systems,Budapest,Hung;Supplementary Material)を用いて既報[44]のように実施した。スキャンはNucline software(version1.02,Mediso Ltd.,Budapest,ハンガリー)を用いて取得した。テルビウム-161とルテチウム-177から生じたカウントの同時取得は、2つの放射性核種に対して異なるエネルギーウィンドウを選択することによって行った。テルビウム-161については、X線とγ線(46.0keV,48.9keV,52.0keV)の検出を可能にする47.7keV±10%と、74.6keVのγ線の検出を可能にする74.6keV±10%の2つのエネルギー窓を選択した。ルテチウム177については、ウィンドウを208.4±10%と112.9keV±10%に設定し、それぞれ208.4keVと112.9keVのγ線を検出できるようにした。SPECTデータはHiSPECTソフトウェア(version1.4.3049,Scivis GmbH,Gottingen,ドイツ)を用いて繰り返し再構成した。CTはコーンビームフィルターによる逆投影を用いてリアルタイムで再構成した。SPECTとCTスキャンの融合データセットは、VivoQuantポスト処理ソフトウェア(バージョン3.5、inviCRO Imaging Services and Software、Boston、米国)を用いて解析した。Gauss post-reconstruction filter(FWHM=1.0mm)を適用した。
マウスに、0.05%BSAおよびアスコルビン酸(~300μg/30MBq)を含むPBS(pH7.4)中の、[
161Tb]Tb-DOTATOC(~15MBq、0.5nmol/マウス)と[
177Lu]Lu-DOTATOC(~15MBq、0.5nmol/マウス)との混合物、または[
161Tb]Tb-DOTA-LM3と[
177Lu]Lu-DOTA-LM3との混合物を静脈注射した。ブロッキング試験は同じ実験条件で行ったが、この場合、過剰(20nmol/マウス)の非標識DOTATOCまたはDOTA-LM3を注射液に加えた。SPECT/CTスキャンは、放射性ペプチド注射の2時間後、4時間後、24時間後に、フレームタイム60秒、スキャン時間45分の二重同位体SPECT収集プロトコールを用いて取得した。in vivoスキャン中、マウスはイソフルランと酸素の混合吸入により麻酔された。
AR42J腫瘍を有するマウスのSPECT/CT画像は、同時に注射された[
161Tb]Tb-DOTATOCおよび[
177Lu]Lu-DOTATOCのin vivoでの等しい分布を示した(
図10参照)。同じ観察が[
161Tb]Tb-DOTA-LM3および[
177Lu]Lu-DOTA-LM3についてもなされた(
図11参照)[44]。
【0096】
SPECT/CT画像は、AR42J異種移植片における活性の蓄積を示し、その蓄積量は[161Tb]Tb-DOTA-LM3および[177Lu]Lu-DOTA-LM3の方が、[161Tb]Tb-DOTATOCおよび[177Lu]Lu-DOTATOCよりも、調査した全ての時点において高かった。活性は腎臓を通して時間の経過とともに効率よく消失し、24時間後にはほぼ完全に排泄された。腫瘍組織における放射性標識DOTA-LM3の良好な取り込みにより、腫瘍と腎臓の比率は、放射性標識DOTATOCの注射後に得られた比率と比較して高かった[44]。
【0097】
それぞれの非標識ペプチドを過剰に共注射した実験では、AR42J腫瘍における放射性ペプチドの集積が阻害され、取り込みがSSTR特異的であることが証明されていることが
図10Bおよび11Bに示されている。
【0098】
B.生体分布試験:161Tb標識ペプチドと177Lu標識ペプチドの比較
生体分布試験は、161Tb標識ペプチドの組織分布を定量的に評価し、177Lu標識ペプチドと比較するために行われた。
【0099】
0.05%BSAを含むPBS(pH7.4)で希釈した[161Tb]Tb-DOTATOCまたは[177Lu]Lu-DOTATOC(5MBq;マウス1匹あたり100μL中1nmol)をマウスに静脈内注射した後、生体分布試験を行った。[161Tb]Tb-DOTA-LM3または[177Lu]Lu-DOTA-LM3も同じ条件で使用した。マウスは、注射2時間後と24時間後(p.i.)に犠牲にした。選択した組織と臓器を収集し、重量を測定し、蓄積した活性をγ-counterで計数した。減衰補正されたデータは、組織質量1gあたりの注射活性のパーセンテージ(%IA/g)として記載された。データは、Tukeyの多重比較事後検定による二元配置ANOVAを用いて有意性を分析した。p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0100】
161Tb標識DOTATOCの生体内分布は、
177Lu標識DOTATOCの生体内分布と同程度であり、2時間後および24時間後に調査した両方の組織および臓器において、それぞれ同様の活性蓄積により示された(p>0.05)。DOTA-LM3を用いた場合にも、
161Tb標識と
177Lu標識の同等な組織分布が観察された(
図12、表A1/A2参照)。これらの結果から、テルビウム-161とルテチウム-177は、
161Tb-および
177Lu-標識葉酸コンジュゲートおよびPSMAリガンドですでに実証されているように[34、36]、放射性ペプチドの薬物動態学的特性を変化させることなく交換可能であることが確認された。
【0101】
【0102】
C.生体分布試験:最適な注射モル量の評価
その目的は、161Tb-および177Lu標識DOTATOCとDOTA-LM3の生体内分布に対するペプチド注射量の影響を評価することであった。
【0103】
0.05%BSAを含む100μLのPBS(pH7.4)中の、放射性標識DOTATOCまたはDOTA-LM3(3MBq,0.04nmol/マウス;5MBq,0.2nmol/マウス;5MBq,1.0nmol/マウス)を、マウス(各群n=3)に静脈注射した。マウスは2時間後に犠牲とし、選択した組織と臓器を収集して重量を測定し、γ-counter(Perkin Elmer)を用いて蓄積した活性をカウントした。減衰補正されたデータは%IA/gで表示された。データは、Tukeyの多重比較事後検定による二元配置ANOVAを用いて有意性を分析した。p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0104】
先行研究と一致して[53]、注射されたペプチドの量は、様々な臓器や組織における蓄積活性に大きな影響を与えた(
図13、表A3/A4参照)。
【0105】
【0106】
[
161Tb]Tb-/[
177Lu]Lu-DOTATOCの腫瘍への取り込みは、マウス1匹あたり0.04nmolと0.2nmolの投与で同程度(それぞれ~17%IA/gと~15%IA/g、p>0.05)であったが、1.0nmolを注射した場合(~8%IA/g、p<0.05)に比べて有意に高かった。胃での取り込みは、0.2nmolまたは1.0nmolの注射に比べ、0.04nmol注射後において高かった(p<0.05)。膵臓、副腎、肺での取り込みも同様の傾向を示したが、設定による差は有意ではなかった(p>0.05)。腎臓の取り込み(~10%)と肝臓の取り込み(~0.2%IA/g)には、適用する設定にかかわらず差は認められなかった。[
161Tb]Tb/[
177Lu]Lu-DOTA-LM3は、マウス1匹あたり0.040nmolと0.20nmolのペプチドを注射した場合、同様に高い腫瘍取り込みを示した(~34%と~38%のIA/g、p>0.05)。1.0nmolでは取り込みは低かった(~18%IA/g、p<0.05)。膵臓、副腎、肺および胃における取り込みは、0.040nmolのペプチドを注射した場合、0.2nmolの場合よりも有意に高く、最も低い取り込みは、1.0nmolのペプチドを注射した場合であった(p<0.05)。肝臓での取り込みは、注射した最低モル量ではわずかに上昇したが、有意ではなかった(p>0.05)。[
161Tb]Tb/[
177Lu]Lu-DOTA-LM3の腎臓への取り込みは、ペプチドの注射量に関係なく、10%IA/gの範囲であった。結果を
図13に示す。
【0107】
これらの所見の結果、腫瘍対臓器の比率は注射された放射性ペプチドの量に依存して変化していた(表3および4)。DOTATOCおよびDOTA-LM3では、低モル量のペプチド(0.04nmolまたは0.2nmol)を注射した場合、腫瘍対腎臓(tu-to-ki)および腫瘍対肝臓(tu-to-li)の比率はいずれも良好であった。腫瘍対膵臓(tu-to-panc)、腫瘍対副腎(tu-to-adr)、腫瘍対肺(tu-to-lung)および腫瘍対胃(tu-to-sto)の比率は、0.2nmolまたは1.0nmolの[161Tb]Tb/[177Lu]Lu-DOTATOCを注射した後に高くなった。しかし、これらの比率は、161Tb-および177Lu標識DOTA-LM3の1.0nmolペプチドを注射した後の方が、マウスあたり0.2nmolペプチドを使用した後よりも良好であった。マウス1匹あたり0.04nmolペプチドを注射した場合、最も低い比率となった。マウス1匹あたり0.2nmolのペプチドを注射した場合、腫瘍への取り込みが最も高く、腫瘍とバックグラウンドの比率もほとんどの場合良好であったことから、このモル量のペプチドをさらなるin vivo試験に使用した。
【0108】
【0109】
D.時間依存的な生体分布試験
腫瘍および健常臓器・組織における放射性ペプチドの全吸収量を評価するために、時間依存的な生体分布試験が行われた。
【0110】
0.05%BSAを含む100μLのPBS(pH7.4)中で、放射性標識DOTATOCまたはDOTA-LM3(5MBq、0.2nmol/マウス)をマウス(各群n=3)に静脈注射した。0.5時間、2時間、4時間、24時間、48時間後にマウスを犠牲にし、選択した組織と臓器を収集して重量を測定し、γ-counter(Perkin Elmer)を用いて蓄積した活性をカウントした。減衰補正されたデータは%IA/gで表示された。データは、Tukeyの多重比較事後検定による二元配置ANOVAを用いて有意性を分析した。p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0111】
[
161Tb]Tb-DOTATOCは、注射後0.5時間ですでに腫瘍への取り込みが最高(15±2%)に達した。活性は4時間後まで腫瘍組織に保持されたが、その後数時間かけて消失し、注射24時間後および48時間後には6.4±0.5%IA/gおよび3.7±0.7%IA/gとなった。肺、胃および膵臓で有意な活性蓄積が観察されたが、効率よく消失し、注射4時間後には1%IA/g以下となった、~4-5%IA/g、注射24時間後および48時間後では2-3%であった(
図14a;表A5参照)。
【0112】
【0113】
ソマトスタチンアナログがテルビウム-161またはルテチウム-177のどちらで標識されていても組織分布は変わらないという事実に基づき、これらの結果は
177Lu標識された対応物においても推定できる[44]。[
161Tb]Tb-DOTA-LM3の腫瘍への取り込みも速く、注射4時間後で35±7%IA/gであった。48時間後、腫瘍内の活性(21±4%IA/g)は依然として高かった。肺、胃、膵臓のような他の臓器では、最初の4時間で活性の保持が見られたが、その後は効率よく消失した。腫瘍、膵臓および胃における[
161Tb]Tb-DOTA-LM3の蓄積活性は、調査したすべての時点において[
161Tb]Tb-DOTATOCの場合よりも有意に高かった(p<0.05)が、腎臓での取り込みは[
161Tb]Tb-DOTATOCで観察されたのと同様であった(p>0.05)(
図14b;表A6参照)。
【0114】
【0115】
E.AR42J腫瘍保有マウスを用いた前臨床治療試験
この前臨床試験の目的は、テルビウム-161またはルテチウム-177で放射性標識したDOTATOCおよびDOTA-LM3ペプチドの治療効果と潜在的な初期副作用を評価することであった。
【0116】
治療試験は、AR42J腫瘍が平均体積99±16mm3に達した時点で、マウスを5群(n=6)に無作為に割り当てて開始した。試験の0日目と7日目に、マウスにビヒクルのみ(A群:0.05%BSA入りPBS;偽処置)、[161Tb]Tb-DOTATOC(B群:10MBq、0.2nmol)、[177Lu]Lu-DOTATOC(C群:10MBq,0.2nmol)、[161Tb]Tb-DOTA-LM3(D群:10MBq,0.2nmol)、および[177Lu]Lu-DOTA-LM3(E群:10MBq,0.2nmol)を静脈注射した(表5)。
【0117】
相対体重(RBW)および相対腫瘍体積(RTV)は、治療開始時の値に基づいて、既報[54]のように定義された。RBWは、[BWx/BW0]として定義された。ここで、BWxは所与の第x日目におけるグラム単位の体重であり、BW0は第0日目におけるグラム単位の体重である。腫瘍の寸法は、腫瘍の最長軸(L)とその垂直軸(W)をデジタルノギスで測定することにより決定した。腫瘍体積(TV)は、式[TV=0.5×(L×W2)]に従って算出した。相対腫瘍体積(RTV)は、[TV/TVx0]として定義された。ここでTVxは所与の第x日目における腫瘍体積(mm3)であり、TV0は第0日目における腫瘍体積(mm3)である。
【0118】
エンドポイント基準はスコアリングシステムに従って定義され、スコア3以上のマウスは安楽死させた。2日おきに以下の基準を評価し、各基準に0~3のスコアをつけた:(i)外見(全身状態、皮膚の色など)、(ii)行動(活力、社会性、しゃがみ込みなど)、(iii)体重(初期の体重と比較して、安定、5%を超え10%以下の減少、10%を超え15%未満の減少、15%以上の減少)、(iv)腫瘍の大きさ(800mm3未満、800mm3以上900mm3未満、900mm3以上1000mm3未満、1000mm3以上)、(v)腫瘍の潰瘍化。スコアが3以上であるのは、例えば以下のような場合である:(i)しわの寄った半透明の皮膚、(ii)しゃがんだ姿勢および/または無気力なマウス、(iii)初期体重の15%以上の体重減少、(iv)1000mm3以上の腫瘍体積、(v)800mm3以上の腫瘍サイズおよび10%以上の体重減少の組み合わせ、および/または(vi)腫瘍の潰瘍化。
【0119】
治療の有効性は、Sidakの多重比較事後検定による二元配置分散分析を用いて、各群のマウスの2日ごとに測定したRTVを比較することにより評価した。腫瘍が増殖しなかったか、あるいはサイズが減少した時間として本明細書で定義される平均腫瘍増殖遅延を、各群のマウスについて決定した。腫瘍が再生し始めるその後の段階について、腫瘍体積の倍加時間を、適合させた指数関数的腫瘍増殖曲線に基づいて計算した。単一マウスにおける腫瘍増殖遅延の平均±SDおよび腫瘍体積の倍加時間をそれぞれ、一元配置分散分析およびTukeyの多重比較事後検定により群間で比較した。マウスの生存期間はKaplan-Meier曲線で示し、log-rank検定(Mantel-Cox)を用いて解析した。
【0120】
【0121】
A群の偽薬投与マウスは指数関数的な腫瘍増殖を示し、すべての症例で最初の14日以内にエンドポイントに達した。B-E群の治療マウスでは腫瘍増殖が遅延し、その結果、生存期間中央値は対照群の9日に比べて有意に延長した(
図15、表6)。[
161Tb]Tb-DOTATOCで治療したマウス(B群)は、[
177Lu]Lu-DOTATOCで治療したマウス(C群)と比較して、腫瘍の増殖がわずかに遅かった。治療開始から12日後、これら2群のマウスのRTVは有意に異なっていた(2.0±0.7対4.0±3.3,p<0.05)。腫瘍増殖遅延および倍加時間は、C群(それぞれ6.0±4.4日および3.4±0.8日、p>0.05)に比べ、B群(それぞれ9.0±5.5日および3.4±3.6日)で高かった(
図16)。そのため、B群のマウスはC群(12~22日目)に比べて遅い段階(20~26日目)で安楽死させられた。しかし、生存期間中央値(21日対19.5日)は群間で同等であった(p>0.05)。
【0122】
[
161Tb]Tb-DOTA-LM3で処置したマウスの腫瘍増殖遅延は44±5日であったが、[
177Lu]Lu-DOTA-LM3で処置したマウスでは35±7日に過ぎなかった(p<0.05)。その後、腫瘍は両群の6匹中5匹で指数関数的に再生し始めたが、[
161Tb]Tb-DOTA-LM3で処置したマウスの倍加時間は、[
177Lu]Lu-DOTA-LM3で処置したマウスの腫瘍増殖(7.4±4.6日vs3.8±1.1日、p>0.05)と比較してかなり長かった(
図16)。[
161Tb]Tb-DOTA-LM3で治療したマウスはすべて試験終了まで生存したが、[
177Lu]Lu-DOTA-LM3で治療したマウスは6匹中3匹のみであった。
【0123】
【0124】
F.初期副作用の評価
[161Tb]Tb-DOTATOC、[177Lu]Lu-DOTATOC、[161Tb]Tb-DOTA-LM3、または[177Lu]Lu-DOTA-LM3を2×10MBq投与したマウスにおける初期副作用の徴候を評価することが目的であった。
【0125】
初期の副作用は、2日おきにモニターされた各マウスのRBWに基づいて評価された。エンドポイントに達したとき、あるいは試験終了時(49日後)に、関連する臓器と組織を収集し、重量を測定して、それぞれのマウスの脳質量と体重に関連付けた。これにより、臓器対脳および臓器対体の質量比を比較することができた。さらに、安楽死直後に収集した血液から血漿パラメータを測定した。
【0126】
エンドポイントにおけるRBW、臓器質量および質量比:RBWは2日おきにモニターした。マウスはあらかじめ定義されたエンドポイント基準に達したとき、または49日目に試験が終了したときに安楽死させた。RBW、臓器質量、臓器質量の比率(腎臓対脳、肝臓対脳、脾臓対脳)、および臓器質量対体重の比率(腎臓対体重、肝臓対体重、脾臓対体重)を、Tukeyの多重比較事後検定付き一元配置分散分析検定を用いて有意性を分析した。p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0127】
血漿化学:エンドポイントに達したマウスを安楽死させる直前に、球後の静脈から血液を採取した。クレアチニン(CRE)、血中尿素窒素(BUN)、アルカリホスファターゼ(ALP)、総ビリルビン(TBIL)およびアルブミン(ALB)の値は、血液を遠心分離した後、乾式化学分析装置(DRI-CHEM 4000i、富士フイルム、日本)を用いて血漿中で測定した。各群の平均血漿パラメータは、Tukeyの多重比較後検定付き一元配置分散分析検定を用いて有意性を分析した。p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0128】
投与したマウスに明らかな初期副作用は見られなかった。相対体重は試験期間中に増加し、これはマウスの健康状態を示すものであった(
図17参照)。対照群の最初のマウスがエンドポイント(p>0.05)に達した6日目には、対照マウスと投与マウスの間に体重の差は観察されなかった(表7)。
【0129】
安楽死時の臓器量、臓器対脳の比率、臓器対体重の比率について、投与マウス(B~E群)と無処置対照マウス(A群)の間に有意差はなかった(p>0.05)(表8および9)。
【0130】
血漿化学検査では、投与マウスと未投与の対照マウスに差は認められなかった。BUN値はすべてのマウスで許容範囲内であったが、対照マウス(6.2±0.7mmol/L)と比較して、[161Tb]Tb-DOTA-LM3(9.9±1.5mmol/L;p<0.05)および[177Lu]Lu-DOTA-LM3(8.2±1.9mmol/L;p>0.05)で処置したマウスでは上昇した(表10)。
【0131】
【0132】
(参考文献)
ここに引用されたすべての文献は、参照することにより組み込まれる。
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【0133】
【図面の簡単な説明】
【0134】
【
図1】ソマトスタチン(SST)アナログの化学構造を示す図である。
【
図2】
161Tb-および
177Lu-標識ペプチドの代表的なHPLCクロマトグラムのグラフである。
【
図3】調製および生理食塩水(10MBq/250μL)希釈の1時間後、4時間後、24時間後に調べた、無傷の放射性ペプチドの割合を示す棒グラフである。
【
図4】AR42J腫瘍細胞を0.5時間、2時間、4時間インキュベートした後の放射性ペプチドのin vitro腫瘍細胞への取り込みと内在化の結果である。
【
図5】AR42J腫瘍細胞を用いて、ペプチドのモル量を変化させて適用した放射性ペプチドの取り込みと内在化率を表すグラフである。
【
図6】放射性ペプチドの細胞内取り込みと局在性研究のグラフである。
【
図7】AR42J腫瘍細胞生存率アッセイ(MTT)を表すグラフである。
【
図8】AR42J腫瘍細胞の生存率(クローン形成アッセイ)を表すグラフである。
【
図9】放射線ペプチド(2.5MBqおよび10MBq)曝露後のDNA DSBを代表するγ-H2AX陽性AR42J腫瘍細胞の定量である。
【
図10-1】最大強度投影(MIP)として示された、[
161Tb]Tb-DOTATOC(15MBq,0.5nmol/マウス)および[
177Lu]Lu-DOTATOC(15MBq,0.5nmol/マウス)の注射2時間後、4時間後および24時間後の、AR42J腫瘍保有マウスの二重同位体SPECT/CT画像である。
【
図10-2】AR42J腫瘍保有マウスで実施したブロッキング試験の二重同位体SPECT/CT画像である。
【
図11-1】最大強度投影(MIP)として示された、[
161Tb]Tb-DOTA-LM3(15MBq,0.5nmol/マウス)および[
177Lu]Lu-DOTA-LM3(15MBq,0.5nmol/マウス)の注射2時間後、4時間後および24時間後のAR42J腫瘍保有マウスの二重同位体SPECT/CT画像である。
【
図11-2】AR42J腫瘍保有マウスで実施したブロッキング試験の二重同位体SPECT/CT画像である。
【
図12】AR42J腫瘍保有マウスで得られた生体内分布データである。
【
図13】異なるモル量の放射性ペプチドを注射した2時間後にAR42J腫瘍保有マウスで得られた生体内分布データである。
【
図14】AR42J腫瘍保有マウスに放射性ペプチド(マウス1匹あたり0.2nmol)を注射して得られた生体内分布データである。
【
図15】AR42J腫瘍保有マウスに
161Tbおよび
177Lu標識DOTATOCとDOTA-LM3を投与した治療試験である。
【
図16】AR42J腫瘍保有マウスにおいて、
161Tb-および
177Lu-SSTアゴニストおよびアンタゴニスト(2×10MBq;0.2nmol)を用いて行った治療試験の解析である。
【国際調査報告】