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特表2024-522035ピロリルアシルピペリジンアミン系化合物及びその使用
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  • 特表-ピロリルアシルピペリジンアミン系化合物及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ピロリルアシルピペリジンアミン系化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20240603BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20240603BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20240603BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20240603BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240603BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240603BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20240603BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
C07D417/14
C07D413/14
A61K31/501
A61K31/454
A61K31/506
A61K31/497
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519962
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2022098033
(87)【国際公開番号】W WO2022258038
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110656714.8
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523467131
【氏名又は名称】インスティテュート オブ マテリア メディカ チャイニーズ アカデミー オブ メディカル サイエンシズ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF MATERIA MEDICA ,CHINESE ACADEMY OF MEDICAL SCIENCES
【住所又は居所原語表記】No.A2, Nan Wei Road, Xicheng District, Beijing, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ウェンシュアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ シントン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チンユン
(72)【発明者】
【氏名】フェン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チー
(72)【発明者】
【氏名】ハン ズンシェン
(72)【発明者】
【氏名】リ ティアンレイ
(72)【発明者】
【氏名】シア ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン クン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ボ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ フイフイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユエ
(72)【発明者】
【氏名】フー ユフア
(72)【発明者】
【氏名】ルオ シンユ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ハンイラン
(72)【発明者】
【氏名】リアン シュー
(72)【発明者】
【氏名】チュー ジハオ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC41
4C086BC42
4C086BC48
4C086BC69
4C086BC85
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA10
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、抗菌薬の技術分野に属し、ピロリルアシルピペリジンアミン系化合物及びその使用を開示する。具体的には、ピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及びその薬学的に許容される塩、並びに抗菌薬、抗マイコプラズマ薬、又は抗クラミジア感染症薬の製造におけるその使用に関する。前記化合物は、下記一般式で示される構造を有する。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iで示される構造を有することを特徴とするピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及びその薬学的に許容される塩又は立体異性体。
【化1】
(ここで、R、R、Rは、それぞれ独立に、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルアミノ、ジ(C1~6アルキル)アミノ、ヒドロキシC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、又はハロC1~6アルコキシから選択され、
は、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキルチオ、C1~6アルキルアミノ、ジ(C1~6アルキル)アミノ、アミノC1~6アルコキシ、アミノC1~6シクロアルキルオキシから選択され、
及びRは、それぞれ独立に、H、C1~6アルキル、ハロC1~6アルキルから選択される、又はR及びRは、これらが連結する炭素原子とともにC3~8シクロアルキル又はC3~8ヘテロシクロアルキルを構成し、
Aは、1~4個のQ1によって置換されてもよいフェニル又は5~8員ヘテロアリールから選択され、
Q1は、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、C1~6アルキルアミノ、ジ(C1~6アルキル)アミノ、ヒドロキシC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、カルボキシルC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、又はハロC1~6アルキルチオから選択される。)
【請求項2】
一般式IAで示される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及びその薬学的に許容される塩又は立体異性体。
【化2】
(ここで、R、R、Rは、それぞれ独立に、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキル、又はハロC1~6アルコキシから選択され、
は、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキルチオ、C1~6アルキルアミノ、ジ(C1~6アルキル)アミノ、アミノC1~6アルコキシ、アミノC1~6シクロアルコキシから選択され、
及びRは、それぞれ独立に、H、ハロゲン、C1~6アルキル、ハロC1~6アルキルから選択される、又はR及びRは、これらが連結する炭素原子とともにC3~6シクロアルキル又はC3~6ヘテロシクロアルキルを構成し、
Aは、1~3個のQ1によって置換されてもよい5~6員ヘテロアリールから選択され、
Q1は、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、C1~6アルキルアミノ、ジ(C1~6アルキル)アミノ、ヒドロキシC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、カルボキシルC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、又はハロC1~6アルキルチオから選択される。)
【請求項3】
Aは、1~2個のQ1によって置換されてもよいフリル、チエニル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、又は1,2,4,5-テトラジニルから選択されることを特徴とする、請求項1~2のいずれか1項に記載のピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及びその薬学的に許容される塩又は立体異性体。
【請求項4】
、R、Rは、それぞれ独立に、H、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ、アミノ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、トリフルオロメトキシ、又はトリフルオロエトキシから選択され、
は、H、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ、アミノ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、トリフルオロメチルチオ、又はトリフルオロエチルチオ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アミノエトキシ、アミノプロポキシ、シクロペンチルオキシから選択され、
及びRは、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、又はトリフルオロプロピルから選択される、又は
及びRは、これらが連結する炭素原子とともにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、オキシラニル、オキセタニル、アゼチジニル、アゼチジニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピロリジニル、テトラヒドロピラゾリジニル、テトラヒドロイミダゾリジニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチアゾリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、ヘキサヒドロピリジル、ピペラジニル、又はモルホリニルを構成し、
Aは、フリル、チエニル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、又は1,2,4,5-テトラジニルから選択されることを特徴とする、請求項1~2のいずれか1項に記載のピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及びその薬学的に許容される塩又は立体異性体。
【請求項5】
一般式IAaで示される構造を有することを特徴とする、請求項1~2のいずれか1項に記載のピロリルアシルピペリジンアミン系化合物及び薬学的に許容される塩。
【化3】
(ここで、Rは、H、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ、アミノ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、トリフルオロメチルチオ、又はトリフルオロエチルチオ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アミノエトキシ、アミノプロポキシ、シクロペンチルオキシから選択され、
及びRは、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、又はトリフルオロプロピルから選択される、又は
及びRは、これらが連結する炭素原子とともにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを構成し、
Aは、フリル、チエニル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、又は1,2,4,5-テトラジニルから選択される。)
【請求項6】
下記構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のピロリルアシルピペリジンアミン系化合物及び薬学的に許容される塩。
【化4】
【化5】
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のピロリルアシルピペリジンアミン系化合物と、その薬学的に許容される塩又は立体異性体と、1種又は複数種の薬学的に許容される担体又は賦形剤と、を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
1種又は複数種の他の薬理活性成分をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
細菌感染症、マイコプラズマ感染症又はクラミジア感染症を治療する薬物の製造における、請求項1~6のいずれか1項に記載のピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及びその薬学的に許容される塩又は立体異性体、又は請求項7~8のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
前記細菌は、感受性又は薬剤耐性のグラム陽性菌、グラム陰性菌及びマイコバクテリアから選択され、前記マイコプラズマは、感受性又は薬剤耐性のマイコプラズマから選択され、前記クラミジアは、感受性又は薬剤耐性のクラミジアから選択されることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記グラム陽性菌は、枯草菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、クロストリジウム・ディフィシル、レンサ球菌、肺炎球菌、炭疽菌、ジフテリア菌、破傷風菌から選択され、前記グラム陰性菌は、大腸菌、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎クレブシエラ菌、赤痢菌、ジフテリア菌、プロテウス菌、コレラ菌、ナイセリア菌、赤痢菌属、クレブシエラ・ニューモニエ、バクテリア・バーゲリ、百日咳菌、インフルエンザ菌から選択され、前記マイコバクテリアは、結核菌、ウシ型マイコバクテリウム、マイコバクテリウム・レプラエから選択され、前記マイコプラズマは、肺炎マイコプラズマ、ウレアプラマ・ウレアリティクム、ヒト型マイコプラズマ、マイコプラズマ・ジェニタリウムから選択され、前記クラミジアは、肺炎クラミジア、オウム病クラミジア、トラコマチスクラミジア、及びウシクラミジアから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌薬の技術分野に属し、具体的には、ピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及びその薬学的に許容される塩、並びに、抗菌薬、抗マイコプラズマ薬、又は抗クラミジア感染症薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌感染症は、病原菌や日和見菌が体内に侵入して増殖し、毒素やその他の代謝産物を産生することによって引き起こされる感染症である。細菌感染症は、人間の健康を害する主要な要素の1つであり、近年出現した細菌の薬剤耐性は世界の公衆衛生が直面する挑戦を更に厳しくさせた。現在、超耐性細菌「ESCAPE」には、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)や腸桿菌(Enterobacteriaceae)が含まれ、これらは、すでに人間の健康に深刻な脅威をもたらした。抗生物質の乱用及び細菌自体の進化に伴い、臨床上でこれらの超耐性細菌に使用できる薬物がない状況に直面している。そのため、新たな作用機序を持つ抗菌薬の研究・開発が急務となっている。
【0003】
DNAジャイレースGyr BサブユニットとトポイソメラーゼIV Par Eサブユニットに対するGyr B/Par E二重標的阻害剤は、抗菌薬の研究・開発において次のような利点がある。(1)細菌の2つの標的を同時に阻害することができ、薬剤耐性のリスクは低い。(2)殺菌メカニズムを有する。(3)Gyr B/Par E阻害剤であるノボビオシンの抗菌作用は歴史的に臨床検証を経た。そのため、この標的に対して抗菌薬を開発することはある程度の実行可能性がある。しかし、このようなGyr B/Par E阻害剤にも、抗菌薬としての研究・開発には以下の問題が存在している。1、多くの化合物は、酵素阻害活性が良いが、インビトロ抗菌活性がない。2、多数の化合物はインビボ抗菌活性を示さず、又は薬物動態の性質が悪い。3、大多数の化合物は、グラム陽性菌の生長のみを阻害し、グラム陰性菌には作用しないか、作用が低い。このような理由から、(発売後に廃止された)ノボビオシン以外に、市場に出たGyr B/Par E二重標的阻害薬はまだ存在しない。現在研究中のGyr B/Par E阻害剤に対して構造最適化や新しい構造タイプのGyr B/Par E阻害剤を開発することは、この標的に対する薬剤としての可能性を高めることが期待されている。
【0004】
DS2969は日本第一三共製薬社が研究・開発したGyr B/Par E二重標的阻害剤であり、比較的に良い抗菌活性と創薬性を有し、現在、第I相臨床研究が行われており、主にクロストリジウム・ディフィシルによって引き起こされる感染症の治療に使用される(WO2017056012)。しかし、インビトロの陽性菌(黄色ブドウ球菌ATCC 29213、MIC=0.2ug/mL)に対する活性の更なる向上が必要であり、かつ、グラム陰性菌への活性が低い(大腸菌ATCC25922、MIC=32ug/mL)などの欠点がある。これ以外にも、アストラゼネカ社が開発したAZD5099(J. Med. Chem. 57, 6060-6082)も臨床研究に入っていたが、生体内暴露量の変動係数が高く、ミトコンドリア損傷のリスクもあり、またグラム陰性菌に対する活性も低いため(大腸菌ATCC25922,MIC=32 ug/mL)、臨床試験が中止された。
【0005】
【化1】
【発明の概要】
【0006】
本発明は、従来技術におけるGyr B/Par E阻害剤の欠陥を解決して、抗菌活性、抗マイコプラズマ活性又は抗クラミジア活性がより高く、また、創薬性により優れた広域スペクトラムのピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及び薬学的に許容される塩、並びに抗菌薬/抗マイコプラズマ/抗クラミジア感染症薬としての使用を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】化合物誘導耐薬曲線である。
図2】マウスインビボ薬効生存曲線(1)である。
図3】マウスインビボ薬効生存曲線(2)である。
図4】マウスに胃内投与する場合の曲線である。
図5】マウス急性毒性試験生存曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、下記技術的解決手段を提供する。
【0009】
本発明の第1態様は、一般式Iで示される構造を有する、ピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及びその薬学的に許容される塩又は立体異性体を提供する。
【化2】
(ここで、R、R、Rは、それぞれ独立に、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルアミノ、ジ(C1~6アルキル)アミノ、ヒドロキシC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、又はハロC1~6アルコキシから選択され、
は、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキルチオ、C1~6アルキルアミノ、ジ(C1~6アルキル)アミノ、アミノC1~6アルコキシ、アミノC1~6シクロアルコキシから選択され、
及びRは、それぞれ独立に、H、C1~6アルキル、ハロC1~6アルキルから選択される、又はR及びRは、これらが連結する炭素原子とともにC3~8シクロアルキル又はC3~8ヘテロシクロアルキルを構成し、
Aは、1~4個のQ1によって置換されてもよいフェニル又は5~8員ヘテロアリールから選択され、
Q1は、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、C1~6アルキルアミノ、ジ(C1~6アルキル)アミノ、ヒドロキシC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、カルボキシルC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、又はハロC1~6アルキルチオから選択される。)
【0010】
さらに、前記ピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及びその薬学的に許容される塩又は立体異性体は、一般式IAで示される構造を有する。
【化3】
(ここで、R、R、Rは、それぞれ独立に、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキル、又はハロC1~6アルコキシから選択され、
は、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキルチオ、C1~6アルキルアミノ、ジ(C1~6アルキル)アミノ、アミノC1~6アルコキシ、アミノC1~6シクロアルコキシから選択され、
及びRは、それぞれ独立に、H、C1~6アルキル、ハロC1~6アルキルから選択される、又はR及びRは、これらが連結する炭素原子とともにC3~6シクロアルキル又はC3~6ヘテロシクロアルキルを構成し、
Aは、1~3個のQ1によって置換されてもよい5~6員ヘテロアリールから選択され、
Q1は、H、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、C1~6アルキルアミノ、ジ(C1~6アルキル)アミノ、ヒドロキシC1~6アルキル、アミノC1~6アルキル、カルボキシルC1~6アルキル、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、又はハロC1~6アルキルチオから選択される。)
【0011】
また、さらに、Aは、チアゾール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン又はピリダジンから選択され、
また、さらに、R、R、Rは、それぞれ独立に、H、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ、アミノ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、トリフルオロメトキシ、又はトリフルオロエトキシから選択され、
は、H、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ、アミノ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、トリフルオロメチルチオ、又はトリフルオロエチルチオ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アミノエトキシ、アミノプロポキシ、シクロペンチルオキシから選択され、
及びRは、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、又はトリフルオロプロピルから選択される、又は
及びRは、これらが連結する炭素原子とともにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、オキシラニル、オキセタニル、アゼチジニル、アゼチジニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピロリジニル、テトラヒドロピラゾリジニル、テトラヒドロイミダゾリジニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチアゾリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、ヘキサヒドロピリジル、ピペラジニル、又はモルホリニルを構成し、
Aは、フリル、チエニル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、又は1,2,4,5-テトラジニルから選択される。
【0012】
好ましくは、前記化合物は、一般式IAaで示される構造を有する。
【化4】
(ここで、Rは、H、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ、アミノ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロプロピル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、トリフルオロメチルチオ、又はトリフルオロエチルチオ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アミノエトキシ、アミノプロポキシ、シクロペンチルオキシから選択され、
及びRは、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、又はトリフルオロプロピルから選択される、又は
及びRは、これらが連結する炭素原子とともにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを構成し、
Aは、フリル、チエニル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、又は1,2,4,5-テトラジニルから選択される。)
【0013】
最も好ましくは、前記化合物は、以下の構造を有する。
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】
【0016】
本発明の第2態様は、第1態様に記載のピロリルアシルピペリジンアミン系化合物と、薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される担体又は賦形剤と、を含み、さらに1種又は複数種の他の活性成分を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明の化合物又はそれを含有する医薬組成物は単位用量の形態で投与することができ、投与経路は、経口、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、鼻腔、口腔粘膜、眼、肺及び気道、皮膚、膣、直腸などの腸管又は非腸管のいずれかの経路であってもよい。
【0018】
投与剤形は、液体剤形、固体剤形、又は半固体剤形であってもよい。液体剤形は、溶液剤(真の溶液とコロイド溶液を含む)、乳剤(o/w型、w/o型及びマルチエマルションを含む)、懸濁剤、注射剤(水注射剤、粉末注射剤及び輸液を含む)、点眼剤、点鼻剤、ローション及び塗布剤などであってもよく、固形剤型は、錠剤(普通錠、腸溶錠、バッカル錠、分散錠、チュアブル錠、発泡錠、口腔内崩壊錠を含む)、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、腸溶カプセルを含む)、顆粒剤、散剤、ペレット、滴丸、坐剤、フィルム、パッチ剤、エアゾール(粉末噴霧)剤、スプレー剤などであってもよく、半固形剤形は、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤などであってもよい。
【0019】
本発明の化合物は、通常の製剤、徐放性製剤、放出制御製剤、標的製剤、各種粒子状ドラッグデリバリーシステムなどに製剤化することができる。
【0020】
本発明の化合物を錠剤にするためには、希釈剤、バインダ、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、助溶媒を含む、当業者に公知の種々の賦形剤を広く使用することができる。希釈剤は、デンプン、デキストリン、ショ糖、ブドウ糖、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、微結晶セルロース、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムなどであってもよい。湿潤剤は、水、エタノール、イソプロパノールなどであってもよい。バインダは、澱粉スラリー、デキストリン、シロップ、蜂蜜、グルコース溶液、微結晶セルロース、アラビアガムパルプ、ゼラチンパルプ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、アクリル樹脂、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどであってもよい。崩壊剤は、乾燥澱粉、微結晶セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ドデシルスルホン酸ナトリウムなどであってもよい。潤滑剤及び共溶媒は、タルク粉、シリカ、ステアリン酸塩、酒石酸、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどであってもよい。
【0021】
さらに、錠剤を、砂糖コーティング錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠や二層錠、多層錠などのコーティング錠にすることもできる。
【0022】
投与ユニットをカプセル化するために、有効成分である本発明の化合物を、希釈剤、共溶媒と混合し、この混合物を直接ハードカプセル又はソフトカプセルに入れてもよい。有効成分である本発明の化合物を、希釈剤、バインダ、崩壊剤とともに、顆粒状又はペレット状にしてから、ハードカプセル又はソフトカプセルに入れてもよい。本発明の化合物の錠剤を製造するために使用される種類の希釈剤、バインダ、湿潤剤、崩壊剤、及び共溶媒は、本発明の化合物のカプセル剤を製造するためにも使用され得る。
【0023】
本発明の化合物を注射剤にするには、水、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール又はこれらの混合物を溶媒とし、当業者に一般的に使用される可溶化剤、共溶媒、pH調整剤、浸透圧調整剤を適量添加することができる。可溶化剤又は共溶媒は、ポロクサマー、レシチン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどであってもよい。pH調整剤は、リン酸塩、酢酸塩、塩酸、水酸化ナトリウムなどであってもよい。浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ブドウ糖、リン酸塩、酢酸塩などであってもよい。凍結乾燥粉末注射剤を調製する場合、支持剤としてマンニトール、グルコースなどを添加してもよい。
【0024】
また、必要に応じて、着色剤、防腐剤、香料、矯味剤や他の添加剤を医薬製剤に添加することもできる。
【0025】
投薬目的を達成し、治療効果を高めるために、本発明の薬物又は医薬組成物は、公知のいずれかの投与方法で投与することができる。
【0026】
本発明の化合物の医薬組成物の投与量は、予防又は治療しようとする疾患の性質及び重篤度、患者又は動物の個々の状況、投与経路及び剤形などに応じて広範囲に変化することができる。一般に、本発明の化合物の1日あたりの適切な投与量の範囲は、0.1~50mg/Kg体重である。上記の用量は、医師の臨床経験及び他の治療手段の使用により選択された投与計画に依存して、1つの用量単位又は複数の用量単位に分割して投与することができる。本発明の化合物又は組成物は、単独で、又は他の治療薬又は対症療法の薬と組み合わせて使用することができる。本発明の化合物と他の治療薬との相乗効果がある場合には、その用量は実情に応じて調整されるべきである。
【0027】
本発明の第3態様は、抗菌薬、抗マイコプラズマ薬又は抗クラミジア薬の製造における、前記ピロリルアシルピペリジンアミン系化合物、及び薬学的に許容される塩、立体異性体、薬物製剤、並びに医薬組成物の使用を提供する。前記感受性又は薬剤耐性のグラム陽性菌は、枯草菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、クロストリジウム・ディフィシル、レンサ球菌、肺炎球菌、炭疽菌、ジフテリア菌、破傷風菌から選択され、前記感受性又は薬剤耐性のグラム陰性菌は、大腸菌、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎クレブシエラ菌、赤痢菌、ジフテリア菌、プロテウス菌、コレラ菌、ナイセリア菌、赤痢菌属、クレブシエラ・ニューモニエ、バクテリア・バーゲリ、百日咳菌、インフルエンザ菌から選択され、前記マイコバクテリアは、結核菌、ウシ型マイコバクテリウム、マイコバクテリウム・レプラエから選択され、前記マイコプラズマは、肺炎マイコプラズマ、ウレアプラマ・ウレアリティクム、ヒト型マイコプラズマ、マイコプラズマ・ジェニタリウムから選択され、前記クラミジアは、肺炎クラミジア、オウム病クラミジア、トラコマチスクラミジア、及びウシクラミジアから選択される。
【0028】
本発明の第4態様は、第1態様に記載のピロリルアシルピペリジンアミン系化合物及び薬学的に許容される塩、立体異性体の製造方法を提供する。ピロール酸aを出発原料とし、まず、t-ブトキシカルボニルで保護された4-アミノピペリジン(b)と縮合した後、保護基を除去して、中間体dを得る。さらに、中間体を臭素化複素環(e)とカップリングして、中間体fを得、最後に、グリニャール反応などで中間体fを転化させて、目的生成物を得る。立体異性体を合成する場合、キラリ化合物b断片を用いて製造することができる。
【0029】
【化7】
【0030】
用語
本発明において、「アルキル」という用語は、所定の炭素原子数を持つ炭化水素原子からなる基を意味し、直鎖又は分岐鎖のアルキルであってもよく、「アミノアルキル」とは、アミノで置換されたアルキルを意味し、「ハロアルキル」とは、ハロゲンで置換されたアルキルを意味する。「アルコキシ」とは、アルキルと酸素原子が連結された基を意味する。「アルキルアミノ」とは、アルキルと窒素原子が連結された基を意味し、「ジアルキルアミノ」とは、2つのアルキルがそれぞれ窒素原子に連結された基である。「アルキルチオ」とは、アルキルと硫黄原子が連結された基を意味する。
【0031】
有益な技術的効果
本発明は、グラム陽性菌及び陰性菌、マイコバクテリア、マイコプラズマ及びクラミジアのいずれに対しても優れた阻害作用を有するピロリルアシルピペリジンアミン系化合物を提供する。この化合物は、DS2969より、グラム陽性菌、陰性菌、マイコバクテリウム、マイコプラズマやクラミジアに対する阻害活性がすべて明らかに向上し、代表化合物は、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、エンテロコッカス・フェカリスやエンテロコッカス・フェシウムに対する活性が、陽性対照薬DS2969より15倍以上向上した。また、代表化合物は、マウスの薬剤耐性菌感染敗血症モデルにおいて陽性対照薬DS2969よりも顕著な薬理活性を示した。陽性対照薬DS2969及びAZD5099に対して、代表化合物は、大腸菌に対する阻害活性が32倍、緑膿菌に対する活性が少なくとも8倍以上、アシネトバクター・バウマニ及び肺炎クレブシエラ菌に対する活性が少なくとも4倍以上向上した。
【実施例
【0032】
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更及び変化を加えることができることを理解する。
【0033】
実施例1: 3,4-ジクロロ-N-{(3S,4R)-1-[6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリダジン-3-イル]-3-メトキシピペリジン-4-イル}-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミドの合成(化合物1)
【化8】
【0034】
3,4-ジクロロ-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボン酸(1g、5.2mmol)を約6mlのDMSOに溶解し、HATU(3g、7.7mmol)及びDIPEA(1.3ml、7.7mmol)を加えて、室温で30分撹拌し、(3S,4R)-4-アミノ-3-メトキシピペリジン-1-カルボン酸t-ブチル(1.4g、6.2mmol)を加えて、室温で撹拌した。液体クロマトグラフィー-質量分析法で監視し、反応終了後、反応液に適量の水を加えて、有機沈殿を析出させ、濾過し、0.1M HCl溶液、飽和NaHCO溶液で濾過ケーキを順次洗浄し、白色固体として化合物(3S,4R)-4-(3,4-ジクロロ-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-3-メトキシピペリジン-1-カルボン酸t-ブチルを得た(収率85%)。
【0035】
化合物(3S,4R)-4-(3,4-ジクロロ-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-3-メトキシピペリジン-1-カルボン酸t-ブチル(1g、2.5mmol)を1,4-ジオキサン(12ml)に溶解し、6mlの4M HCl/1,4-Dioxane溶液を加えて、50℃で撹拌し、液体クロマトグラフィー-質量分析法で監視し、反応終了後、反応溶媒を減圧蒸発させ、化合物3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミドを得、次のステップに用いた。
【0036】
化合物3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(800mg、2.7mmol)をDMF(8ml)に溶解し、化合物6-ブロモピリダジン-3-カルボン酸メチル(700mg、3.2mmol)及びDIPEA(1.1ml、6.8mmol)を加えて、60℃で撹拌した。液体クロマトグラフィー-質量分析法で監視し、反応終了後、反応液に適量の水を加えて、有機沈殿を析出させ、濾過して、乾燥し、淡い茶色固体として化合物6-((3S,4R)-4-(3,4-ジクロロ-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-3-メトキシピペリジン-1-イル)ピリダジン-3-カルボン酸メチルを得た(収率71%)。
【0037】
化合物6-((3S,4R)-4-(3,4-ジクロロ-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-3-メトキシピペリジン-1-イル)ピリダジン-3-カルボン酸メチル(400mg、0.91mmol)を超乾燥テトラヒドロフラン(5ml)に溶解し、窒素保護、-5℃でCHBrMg(3M)エチルエーテル溶液(1.7ml、4.6mmol)を滴下し、滴下終了後、室温で撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチングし、反応液を酢酸エチルで3回抽出し、EA層を併せて、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾固まで減圧蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)にかけて、白色固体として化合物3,4-ジクロロ-N-{(3S,4R)-1-[6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリダジン-3-イル]-3-メトキシピペリジン-4-イル}-5-メチル-1H -ピロール-2-カルボキサミドを得た(収率46%)。
【0038】
ESI-MS (m/z): 442.13 [M+H]H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 9.58 (s, 1H), 7.36 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 4.91 (dd, J = 15.0, 2.8 Hz, 1H), 4.35 (dq, J = 6.4, 3.1 Hz, 2H), 4.20 (d, J = 13.6 Hz, 1H), 3.60 - 3.54 (m, 1H), 3.44 (s, 3H), 3.18 - 3.08 (m, 2H), 2.28 (s, 3H), 2.00 - 1.90 (m, 2H), 1.57 (s, 6H).
【0039】
実施例2: 3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-1-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(化合物2)
【化9】
【0040】
実施例1と同様の方法に準じて、化合物3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(実施例1)を5-ブロモ-チアジアゾール-2カルボキシレートと反応させ、次に、CHBrMgとグリニャール反応させ、精製して、目的生成物を得た。収率は70%であった。
【0041】
ESI-MS (m/z): 448.36 [M+H]H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 9.87 (s, 1H), 4.43 (ddd, J = 14.5, 3.2, 2.1 Hz, 1H), 4.36 - 4.23 (m, 1H), 3.83 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 3.52 (q, J = 3.2 Hz, 1H), 3.47 (s, 3H), 3.29 (ddd, J = 13.4, 12.1, 3.1 Hz, 1H), 3.19 (dd, J = 14.4, 1.7 Hz, 1H), 2.88 (s, 1H), 2.28 (s, 3H), 2.12 - 1.96 (m, 1H), 1.94 - 1.83 (m, 1H), 1.67 (s, 6H).
【0042】
実施例3: 3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-1-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリミジン-2-イル)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(化合物3)
【化10】
【0043】
実施例1と同様の方法に準じて、化合物3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(実施例1)を2-ブロモ-ピリミジン-2カルボキシレートと反応させ、次に、CHBrMgとグリニャール反応させ、精製して、目的生成物を得て、収率は62%であった。
【0044】
ESI-MS (m/z): 442.34 [M+H]H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 9.92 (s, 1H), 8.43 (s, 2H), 7.28 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.16 (d, J = 14.8 Hz, 1H), 4.77 (d, J = 14.9 Hz, 1H), 4.32 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 3.48 (s, 1H), 3.43 (s, 3H), 3.01 (d, J = 13.9 Hz, 2H), 2.28 (s, 3H), 1.86 (d, J = 9.5 Hz, 2H), 1.57 (s, 6H).
【0045】
実施例4: 3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-1-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピラジン-2-イル)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(化合物4)
【化11】
【0046】
実施例1と同様の方法に準じて、化合物3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(実施例1)を5-ブロモ-ピラジン-2カルボキシレートと反応させ、次に、CHBrMgとグリニャール反応させ、精製して、目的生成物を得た。収率は65%であった。
【0047】
ESI-MS (m/z): 442.34 [M+H]H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 9.57 (s, 1H), 8.20 (s, 1H), 8.06 (s, 1H), 4.83 - 4.69 (m, 1H), 4.33 (s, 1H), 4.22 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 3.57 - 3.48 (m, 1H), 3.43 (s, 3H), 3.09 (d, J = 10.3 Hz, 1H), 3.03 (d, J = 15.4 Hz, 1H), 2.28 (s, 3H), 1.93 (d, J = 13.0 Hz, 2H).
【0048】
実施例5: 3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-1-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)オキサゾール-2-イル)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H -ピロール-2-カルボキサミド(化合物5)
【化12】
【0049】
実施例1と同様の方法に準じて、化合物3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(実施例1)を2-ブロモ-オキサゾール-5-カルボキシレートと反応させ、次に、CHBrMgとグリニャール反応させ、精製して、目的生成物を得た。収率は52%であった。
【0050】
ESI-MS (m/z): 431.31[M+H]H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 9.35 (s, 1H), 7.22 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.99 (s, 1H), 4.41 (d, J = 14.3 Hz, 1H), 4.32 - 4.20 (m, 1H), 4.10 (d, J = 13.1 Hz, 1H), 3.45 (s, 4H), 3.14 - 2.98 (m, 2H), 2.28 (s, 3H), 1.94 (qd, J = 12.3, 11.7, 4.5 Hz, 1H), 1.82 (dd, J = 13.0, 4.5 Hz, 1H), 1.50 (s, 6H).
【0051】
実施例6: 3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-1-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)チアゾール-2-イル)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(化合物6)
【化13】
【0052】
実施例1と同様の方法に準じて、化合物3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(実施例1)を2-ブロモ-チアゾール--5-カルボキシレートと反応させ、次に、CHBrMgとグリニャール反応させ、精製して、目的生成物を得た。収率は50%であった。
【0053】
ESI-MS (m/z): 447.38[M+H]H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 10.03 - 9.97 (m, 1H), 7.28 (s, 1H), 4.94 (s, 1H), 4.80 (s, 1H), 4.39 (dd, J = 27.6, 13.9 Hz, 1H), 4.29 (s, 1H), 3.90 (t, J = 16.0 Hz, 1H), 3.51 (s, 1H), 3.46 (s, 3H), 3.15 (dt, J = 24.3, 13.8 Hz, 2H), 2.28 (s, 3H), 2.11 - 1.95 (m, 3H), 1.91 - 1.81 (m, 1H), 1.28 (d, J = 31.3 Hz, 3H).
【0054】
実施例7: 3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-1-(6-(1-ヒドロキシシクロペンチル)ピリダジン-3-イル)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2 -カルボキサミド(化合物7)
【化14】
【0055】
化合物3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(実施例1)を3,6-ジブロモ-ピリダジンと反応させ、次に、n-ブチルリチウムの存在下でシクロペンタノンと反応させ、精製して、目的生成物を得た。収率は54%であった。
【0056】
ESI-MS (m/z): 468.38 [M+H]H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 9.80 (s, 1H), 8.68 - 8.40 (m, 1H), 7.24 - 7.18 (m, 1H), 6.94 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 5.07 - 4.93 (m, 1H), 4.34 (d, J = 11.3 Hz, 1H), 4.25 - 4.13 (m, 1H), 3.55 (s, 1H), 3.43 (s, 3H), 3.19 - 3.03 (m, 2H), 2.28 (s, 3H), 1.85 (d, J = 74.1 Hz, 4H), 1.25 (s, 4H).
【0057】
実施例8: 3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-1-(6-(1-ヒドロキシシクロヘキシル)ピリダジン-3-イル)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(化合物8)
【化15】
【0058】
実施例7と同様の方法に準じて、化合物3,4-ジクロロ-N-((3S,4R)-3-メトキシピペリジン-4-イル)-5-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド(実施例1)を3,6-ジブロモ-ピリダジンと反応させ、次に、n-ブチルリチウムの存在下でシクロペンタノンと反応させ、精製して、目的生成物を得た。収率は64%であった。
【0059】
ESI-MS (m/z): 482.41 [M+H]H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 10.11 (s, 1H), 7.30 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 4.93 (dt, J = 14.5, 2.9 Hz, 1H), 4.33 (ddt, J = 11.7, 8.6, 4.2 Hz, 1H), 4.16 - 4.07 (m, 1H), 3.53 (s, 1H), 3.43 (s, 3H), 3.15 - 3.03 (m, 2H), 2.82 (dd, J = 8.5, 6.7 Hz, 2H), 2.28 (s, 3H), 2.04 - 1.87 (m, 2H), 1.70 (p, J = 7.7 Hz, 2H), 1.40 (dd, J = 15.1, 7.6 Hz, 2H).
【0060】
実験例1 インビトロ抗菌活性評価
試験方法: ブロス微量希釈法を用いて感受性/薬剤耐性菌株に対する化合物のインビトロ抗菌活性を評価し、様々な菌株に対する化合物のインビトロ抗菌活性を試験した。具体的な操作ステップは以下の通りである。滅菌した96ウェルプレートをクリーンベンチに置き、1列目に希釈した菌液200μLを加え、2列目から各列に菌液100μLを加えた。DMSOに溶解した濃度5mg/mLの被験品溶液を4μLずつ1列目の各ウェルに順次加え、空白対照群(無添加)と陽性薬群(濃度5mg/mLのレボフロキサシン)を設置し、サンプルごとに3回繰り返した。サンプル添加終了後、8チャンネルマイクロピペットを用いて前の列から128μLのサンプルを順に後の列に加えて2倍勾配希釈を行い、最後のウェルまで添加する際には、サンプルを均一に混合した後に100μLの液体を吸引し、希釈後の各ウェル中の化合物濃度をそれぞれ128、64、32、16、8、4、2、1、0.5、0.25、0.125、0.06、0.03、0.015、0.008μg/mLとした。96ウェルプレートを37℃のインキュベータで18時間培養し、各ウェル中の細菌の成長状況を観察した。化合物ごとに、サンプルを加えたウェルから後ろに数えて、細菌の成長が見られない最初のウェルに対応する化合物の濃度を当該化合物の最低静菌濃度(MIC:Minimal Inhibitory Concentration)とした。
【0061】
結果: 下記表1、表2、及び表3から、化合物は、非常に強いインビトロ抗菌活性を示し、その中で、化合物1及び化合物2は、グラム陽性菌に対する活性がDS2969より15倍以上向上し、同時に対照薬のレボフロキサシンよりも強く、グラム陰性菌に対する活性がDS2969とAZD5099よりも少なくとも4倍、最高で32倍向上し、クロストリジウム・ディフィシルに対する活性がDS2969と陽性対照薬バンコマイシンよりも強かった。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
実験例2 化合物1のインビトロ誘導薬剤耐性評価
試験方法: 米国臨床・検査標準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute、CLSI)による抗菌薬物感受性試験操作規程に推奨されたブロス微量希釈法を用いて黄色ブドウ球菌ATCC 29213に対する化合物1と対照化合物DS2969のMIC値を測定した。
【0066】
MIC値を測定した後、準MIC濃度(1/2 MIC)の細菌を採取して希釈し、菌液濃度を10CFU/mLに調整し、次のMIC値テストを行った。24時間インキュベートした後、薬物準MIC濃度(1/2 MIC)の細菌懸濁液を用いて細菌懸濁液を調製し、別のMIC試験を行った。このプロセスを20回繰り返し、各試験のMIC値を記録した。
【0067】
黄色ブドウ球菌ATCC29213の20世代を誘導する化合物1とDS2969のMIC値を、誘導される細菌代数を横軸、MIC値を縦軸として記録した(図1に示す)。
【0068】
結果:継代20代後、化合物1のMIC値は1.0μg/mL未満であったが、陽性対照薬DS2969のMIC値は16μg/mLであった。
【0069】
実験例3 マウスのインビボ抗菌活性評価
実験動物: 北京維通利華実験動物技術有限公司、ICRマウス、体重20~22g、同体重、雌雄半々。
【0070】
モデル化: 黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 43300)感染敗血症モデル
モデル化方法:2×10-8×10CFU/mL(5%殺菌酵母液で希釈調製)黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 43300)をマウスに感染させ、マウスの敗血症モデルを形成させた(マウス1匹あたり0.5mLの菌液を腹腔内注射)。
【0071】
実験スキーム: 化合物1と陽性薬をDMSOに溶解した後、他の溶媒で希釈し、溶媒の比率を生理食塩水:Tween80:DMSO=9:0.5:0.5とした。マウスを雌雄半々の5群に4匹ずつ分け、投与群は、モデル化から1時間後、それぞれ2.5mg/mLの化合物溶液0.4mLを50mg/kgの投与量で静脈注射、皮下注射、及び胃内投与し、陰性対照群は、モデル化後、空の溶媒0.4mLを注射し、陽性対照群は、モデル化後、陽性薬DS2969を化合物群と同じ投与量で皮下注射し、マウスの14日間生存率を観察した。
【0072】
結果: 図2を参照すると、化合物1は、顕著なインビボ抗菌活性を有し、しかもDS2969より良い抗菌活性を示した。
【0073】
同じモデルで、化合物1のより低用量胃内投与の場合の薬効をさらに検討した結果、図3に示すように、化合物1のED50が5mg/kgであるのに対し、DS2969のED50は、10mg/kg以上であった。
【0074】
実験例4 マウスのインビボ薬物動態試験
実験動物: 北京維通利華実験動物技術有限公司、ICRマウス、体重20~22g、同体重、雌雄半々。
【0075】
実験スキーム: 化合物1の薬剤投与量を150mg/kg(溶媒は生理食塩水:Tween80:DMSO=9:0.5:0.5)として、胃内投与で、それぞれ投与後10分、20分、30分、1時間、3時間、5時間、8時間、24時間、36時間、48時間に眼窩採血又は眼球摘出採血でサンプリングし、UPLCで血中濃度を測定し、薬物時間曲線を描き、重要な薬物動態パラメータを計算した。
【0076】
結果: 図4に示す薬物時間曲線、表3に示す重要な薬物動態パラメータから、半減期は9.2時間で、生物利用度は86%であり、化合物1の体内における血中薬物濃度は比較的に長い時間に亘って維持できることを示した。しかも、化合物1は、体内でよく吸収され、治療効果を良好に裏付けることができることを示す。
【0077】
【表4】
【0078】
実験例5 マウスのインビボ急性毒性試験
実験動物: 北京維通利華実験動物技術有限公司、ICRマウス、体重20~22g、同体重、雌雄半々。
【0079】
実験スキーム: 化合物1(溶媒は生理食塩水:Tween80:DMSO=9:0.5:0.5)を、それぞれ尾静脈注射、腹腔投与、及び胃内投与し、マウスの14日間生存率を観察した。尾静脈投与群は1群につき10匹、雌雄半々であった。胃内投与群と腹腔投与群は1群につき4匹、雌雄半々であった。
【0080】
結果: 図5に示すように、95mg/kg尾静脈投与群の14日間生存率は60%、200mg/kg腹腔投与群の14日間生存率は100%、800mg/kg胃内投与群の14日間生存率は75%であった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】