(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ポリ-α-オレフィンを製造するためのプロセスおよび装置
(51)【国際特許分類】
C07C 2/06 20060101AFI20240604BHJP
C07C 9/22 20060101ALI20240604BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20240604BHJP
C07C 7/04 20060101ALI20240604BHJP
C07C 5/03 20060101ALI20240604BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
C07C2/06
C07C9/22
C07C11/02
C07C7/04
C07C5/03
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506129
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 FI2022050414
(87)【国際公開番号】W WO2022263721
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワフルストレム、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ホンカネン、ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】プロラ、ベリ-マッチ
(72)【発明者】
【氏名】ティエリエ、フィリプ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC21
4H006BA31
4H006BA37
4H006BA45
4H006BC51
4H006BD53
4H006BD81
4H006BD82
4H039CA19
4H039CB10
4H039CF10
4H039CL10
(57)【要約】
本発明は、PAO生成物を形成するために、触媒複合体の存在下、オレフィンモノマーを反応させることを含むポリ-α-オレフィン(PAO)を製造するためのプロセスに関する。本反応は、反応器容器と、反応器出口流の一部をリサイクルしおよび冷却するシステムとを備える反応で行われる。少なくとも1つの反応器は、容器の上部に第1の断面積を有し、断面積が下方に向かって第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで減少するコーン型反応器である。本発明はまた、本プロセスを実施するための装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ-α-オレフィン(PAO)を製造するためのプロセスであって、以下の工程
a)反応器容器(60)を有する少なくとも1つの反応器(80)と、反応器容器出口流(67、70、72)の一部をリサイクルし、および冷却するシステムとを備える反応器システム(20)を提供する工程、
b)前記反応器システム(20)の少なくとも1つの反応器容器(60)に、少なくともα-オレフィンモノマー(10、50)、リサイクルされた反応器出口流(72)、触媒および共触媒(10、50、32)を導入する工程であって、前記触媒と共に共触媒が触媒複合体を形成する工程、
c)ポリ-α-オレフィン(PAO)生成物の混合物を形成するために、前記α-オレフィンモノマーを前記反応器容器(60)内で反応させる工程、
d)未反応のモノマー、PAO生成物および触媒複合体の混合物を含む出口流(66)を前記反応器容器から取り出す工程、
e)冷却され、および、リサイクルされる反応器出口流(72)として前記反応器容器(60)に戻される第1のストリーム(67)と生成物流(25)とに前記出口流(66)を分割する工程
を含み、ここで
前記反応器システム(20)内の少なくとも1つの反応器(60)がコーン型反応器であり、前記コーン型反応器では、前記反応器容器は容器の上部に第1の断面積(61)を有し、および、前記断面積は、下方に向かって、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積(62)まで減少する
プロセス。
【請求項2】
前記コーン型反応器が、反応ゾーンおよび前記反応器出口流が取り出される丸みを帯びた出口ゾーンを有し、ならびに、前記反応ゾーンが、前記容器の上部に第1の断面積を有し、および前記断面積が、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで下方に向かって減少している請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記コーン型反応器が反応ゾーンを有し、および、反応器出口流が前記反応ゾーンから直接取り出され、および、前記コーン型反応器が丸みを帯びた出口ゾーンを有さない請求項1記載のプロセス。
【請求項4】
前記コーン型反応器の反応ゾーンが少なくとも2つのセクションに分割され、そのうちの1つのセクションが、前記容器の上部に第1の断面積を有し、および前記断面積が下方に向かって、前記第1の断面積より小さい第2の断面積を有する円錐状セクションである請求項1または2記載のプロセス。
【請求項5】
前記コーン型反応器の反応ゾーンが、前記第1の断面積の部位における前記コーン型反応器の最大直径の0.2~5倍、好ましくは0.3~3倍、より好ましくは0.5~1.5倍の長さを有する請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記コーン型反応器の反応ゾーンが、管状セクションであって、前記管状セクションの上部には第3の断面積(63)を有し、および前記管状セクションの下部には第4の断面積(64)を有し、ここで、
前記第4の断面積は実質的に前記第3の断面積に等しい管状セクション;ならびに、
円錐状セクションであって、前記円錐状セクションの上部に第1の断面積(61)を有し、および前記断面積は下方に向かって、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで減少する円錐状セクション
を備える請求項4記載のプロセス。
【請求項7】
前記管状セクションの長さが、前記管状セクションの断面積の直径の0.1~8倍、好ましくは0.5~4倍、より好ましくは1~3倍であり、および、前記円錐状セクションの長さが、前記第1の断面積の部位における円錐状セクションの最大直径の0.2~5倍、好ましくは0.3~3倍、より好ましくは0.5~1.5倍である請求項6記載のプロセス。
【請求項8】
前記リサイクルされた反応器出口流の前記反応器容器への導入が、エジェクターを用いて行われる請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒の少なくとも一部が、それを用いて前記リサイクルされた反応器出口流が前記反応器容器に導入される前記エジェクターを使用して前記反応器容器に導入される請求項8記載のプロセス。
【請求項10】
α-オレフィンモノマーが、C
4~C
20α-オレフィン、好ましくはC
8~C
12α-オレフィン、およびより好ましくはC
10α-オレフィンを含む請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記触媒が、ハロゲン化アルミニウムまたはハロゲン化ホウ素であり、好ましくは触媒が、BF
3であり、および、共触媒が、C
1~C
10アルコールから選択され、好ましくは共触媒が、n-ブタノールである請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記出口流の第1のストリームと生成物流への分割が、前記出口流の50~99%、好ましくは80~97%、およびより好ましくは90~95%が前記第1のストリームを形成し、ならびに、残りが前記生成物流を形成するように行われる請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記プロセスが、未反応のモノマーおよび触媒複合体からPAO生成物流を分離するための分離ステップに前記生成物流が付される工程f)をさらに含む請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記工程f)が、減圧下、10℃~300℃の温度で蒸留により行われ、および、前記分離がまた、未反応のモノマーから触媒および共触媒としての前記触媒複合体を分離する請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記PAO生成物が、さらなるPAO留分にPAO生成物が分離され、次いで、貴金属触媒またはニッケル触媒の存在下で前記PAO留分が水素化される、または、貴金属触媒またはニッケル触媒の存在下で前記PAO生成物が水素化され、次いで、さらなる水素化PAO留分に水素化されたPAO生成物が分離されることによって、さらに処理される請求項13または14記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のプロセスを行うための装置であって、反応器容器を備える少なくとも1つの反応器を含む反応器システムと、反応器容器出口流の一部をリサイクルおよび冷却するためのシステムと、少なくとも1つの反応器容器に、少なくともα-オレフィンモノマー、リサイクルされた反応器出口流、触媒および共触媒を導入するための手段と、前記反応器容器から出口流を取り出すための出口とを備え、
ここで、
少なくとも1つの反応器容器がコーン型反応容器であり、前記コーン型反応器は、容器の上部に第1の断面積を有し、および、前記断面積は、下方に向かって、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで減少している装置。
【請求項17】
前記出口流を第1のストリームと生成物流とに分割する手段;ならびに、前記第1のストリームを冷却し、および前記第1のストリームを前記反応容器にリサイクルする手段をさらに備える請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α-オレフィンモノマーからポリ-α-オレフィン(または複数のポリ-α-オレフィン、PAO)を製造するためのプロセスおよび装置に関する。より特には、本発明は、PAOが、下方に向かって小さくなっていく断面積を有する少なくとも1つの反応器容器を備える反応器システム内で製造されるプロセスに関する。
【0002】
したがって、本発明は、高収率ならびに原料および触媒材料の効果的な使用を伴う、PAOの製造のための簡素化された、および効果的なプロセスおよび装置を提供する。開示されるプロセスは、また、最適化された生成物分布および組成を有するPAO製品を提供する。
【背景技術】
【0003】
合成潤滑油の製造に有用な様々なグレードの成分を形成するためのα-オレフィンのオリゴマー化反応は、よく知られている。この製造方法は、一般に、触媒または触媒複合体を用いたα-オレフィンモノマーのオリゴマー化、反応生成物からの触媒または触媒複合体の除去、およびオリゴマー化生成物の種々の反応後処理を含む。オリゴマー化生成物は一般にポリ-α-オレフィン(PAO)と名付けられ、および生成物のCStで測定される粘度に基づいて分類され得る。様々なPAO製品の粘度は、例えば2、4、6または8CStであり得る。
【0004】
α-オレフィンのオリゴマー化では、二量体、三量体、四量体、五量体などが形成される。より重質な生成物、すなわちオリゴマー中の結合モノマー数が多い生成物は、通常、より軽質な生成物に比べてより高い粘度を有する。PAO製品は様々な用途に使用され、用途に応じて様々な粘度およびその他の特性が要求される。種々のオリゴマーはまた、所望の特性を持つ製品を製造するために組み合わせられ得る。
【0005】
特許文献1は、合成潤滑油ベースストックを製造するための低分子量アルファオレフィンのオリゴマー化を記載している。このオリゴマー化は、三フッ化ホウ素およびプロトン性プロモーターであり得る触媒の存在下で行われる。
【0006】
製造プロセスのある重要な側面は、オリゴマー化生成物からの触媒または触媒複合体の分離である。特許文献2は、典型的なPAO製造プロセスと、三フッ化ホウ素(BF3)とブタノールとを含む触媒複合体のオリゴマー化された生成物からの減圧下での蒸留を用いる分離を記載する。
【0007】
PAO製造プロセスにおける主な課題は、少なくとも、反応の温度制御、効果的な反応を確実なものとするための均一な混合物を形成するための触媒のモノマー混合物との効果的な混合、および最適な生成物分布を確保するための滞留時間の制御に関する。オリゴマー化は発熱反応であり、および、反応および生成物の制御ならびにモノマーの使用のために一連のプロセス条件が制御される必要がある。本発明は、これらの課題に対する解決策を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,434,309号明細書
【特許文献2】欧州特許第493024号明細書
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の目的は、上記の課題を解決するための方法およびその方法を実施するための装置を提供することである。本発明の目的は、独立請求項に記載されていることを特徴とする方法および装置によって達成される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項に開示されている。
【0010】
したがって、本発明は、ポリ-α-オレフィン(PAO)を製造するためのプロセスであって、以下の工程
a)反応器容器を有する少なくとも1つの反応器と、反応器容器出口流の一部をリサイクルし、および冷却するシステムとを備える反応器システムを提供する工程、
b)前記反応器システムの少なくとも1つの反応器容器に、少なくともα-オレフィンモノマー、リサイクルされた反応器出口流、触媒および共触媒を導入する工程であって、前記触媒と共に共触媒が触媒複合体を形成する工程、
c)ポリ-α-オレフィン(PAO)生成物の混合物を形成するために、前記α-オレフィンモノマーを前記反応器容器内で反応させる工程、
d)未反応のモノマー、PAO生成物および触媒複合体の混合物を含む出口流を前記反応器容器から取り出す工程、
e)冷却され、および、リサイクルされる反応器出口流として前記反応器容器に戻される第1のストリームと生成物流とに前記出口流を分割する工程
を含み、ここで
反応器システム内の少なくとも1つの反応器がコーン型反応器であり、このコーン型反応器では、前記反応器容器は容器の上部に第1の断面積を有し、および、前記断面積は、下方に向かって、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで減少する
プロセスを提供する。
【0011】
本発明はまた、本発明によるプロセスを行うための装置であって、前記装置は、反応器容器を備える少なくとも1つの反応器を含む反応器システムと、反応器容器出口流の一部をリサイクルおよび冷却するためのシステムと、少なくとも1つの反応器容器に、少なくともα-オレフィンモノマー、リサイクルされた反応器出口流、触媒および共触媒を導入するための手段と、前記反応器容器から出口流を取り出すための出口とを備え、ここで、少なくとも1つの反応器容器がコーン型反応容器であり、このコーン型反応器は、容器の上部に第1の断面積を有し、および、前記断面積は、下方に向かって、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで減少する装置を提供する。
【0012】
以下では、図を参照しながら、好ましい実施形態によって本発明がより詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、PAOプロセスの概略プロセス説明図であり(
図1A)、および本発明による反応器の概略プロセス説明図(
図1B)である。
【
図2】
図2は、本発明で使用される反応容器の詳細、2A、および、比較のための円筒形反応容器2Bを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明で使用する様々な反応器形状の詳細を示す(
図3Aおよび3B)であり、比較のための円筒形反応容器を示す図(3C)である。
【
図4】
図4は、様々な容量における円錐型の反応器と管状の反応器の試薬レベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、α-オレフィンのオリゴマー化生成物であるポリ-α-オレフィン(PAO)の製造方法に関する。用語「α-オレフィン」は、ここでは、アルファ-オレフィンと同じものを意味し、1-アルケン、すなわちα炭素とも呼ばれる一級炭素に二重結合を有するものである。α-オレフィンの炭素鎖は、好ましくは直鎖状、すなわちn-アルケンである。α-オレフィンが分岐していることが特に記載されていない場合、直鎖状α-オレフィンを意味すると仮定される。本発明の一実施態様において、α-オレフィンモノマーは、C4~C20α-オレフィン、好ましくはC8~C12α-オレフィン、およびより好ましくはC10α-オレフィン(1-デセン)である。オリゴマー化反応のためのフィードストックが、例えばC10-α-オレフィン(1-デセン)を主成分として含むものであっても、フィードストックが完全に純粋な1-デセンであることはなく、および、常に様々な量の他のオレフィンを含むことに注意すべきである。他のオレフィンもまたオリゴマー化反応で反応するであろう。したがって、オリゴマー化反応で生成するPAO生成物は、常に、オリゴマー化度の異なる生成物(ジ、トリ、テトラマーなど)と、フィードストックの主成分であるα-オレフィン以外のオレフィンモノマーからのオリゴマーを含む混合物である。
【0015】
α-オレフィンモノマーのオリゴマー化反応生成物は、ポリ-α-オレフィン(PAO)と命名される。種々のオリゴマー化生成物が、オリゴマー中のモノマーユニットの数、すなわち二量体、三量体、四量体などに基づいて特徴付けられ得る。オリゴマー化生成物は、生成物のCStで表される粘度値に基づいて特徴付けることもできる。軽質PAO製品の典型的な粘度としては、これらに限定されるものではないが、CStである100℃における2、4、6、8等の動粘度が挙げられる。
【0016】
ある動粘度を有する、例えば4CStまたは6CStのPAO製品は、ほとんどの場合、様々なオリゴマーの混合物である。これは、モノマーを含むフィードストックが完全に純粋であることはなく、常に様々なα-オレフィンの混合物を含むためであり、また、様々なオリゴマーが常に形成されるためでもある。しかし、純粋な製品、すなわち1種類のオリゴマーしか含まない製品を得る必要はない。なぜなら、重要なのは製品の特性であり、化学構造ではないからである。動粘度などの特定の特性を持つ製品が望まれる。従って、所望の特性を持つ製品を得るためには、通常、製品は分画される必要がある。オリゴマー化反応は、常にオリゴマーの混合物を提供し、最終的なPAO製品は、通常、例えば粘度および揮発性などの所望の特性を持つ製品を得るために、PAO反応混合物を分画することによって形成される。
【0017】
オリゴマー化反応には、触媒または触媒複合体の使用が必要である。通常、オリゴマー化反応は、触媒と共触媒とを含む触媒複合体を用いて行われる。「触媒複合体(catalyst complex)」という用語は、ここでは触媒および共触媒(プロトン促進剤とも呼ばれる)の組み合わせを示すために使用される。触媒複合体は、物理的混合物であってもよく、触媒と共触媒とが互いに結合していてもよく、またはその両方の組み合わせであってもよい。本発明の一実施態様において、α-オレフィンのオリゴマー化に使用される触媒は、ハロゲン化アルミニウムまたはハロゲン化ホウ素であり、三フッ化ホウ素(BF3)が好ましい触媒である。一実施形態によれば、共触媒はC1~C10アルコール、好ましくはC1~C15アルコール、および最も好ましくはn-ブタノールから選択される。
【0018】
本発明の性能および利点は、オリゴマー化に使用されるα-オレフィンまたは触媒複合体の選択には依存しない。しかし、本発明の好ましい一実施形態において、モノマーは直鎖状1-デセンであり、および、触媒複合体は、共触媒としてのn-ブタノールを含む触媒としてBF3から形成される。
【0019】
本発明によるプロセスは、反応器容器を有する少なくとも1つの反応器と、反応器容器出口の一部をリサイクルし、および冷却するためのシステムとを含む反応器システムを提供することを含む。「反応器システム」との用語は、ここでは、オリゴマー化反応が行われる1つまたはそれ以上の反応器のシステムを示すために使用される。「反応器」または「PAO反応器」という用語は、ここでは、反応器システム内の個々の反応器を示すために使用される。反応器には、反応器容器と、反応器容器出口の一部をリサイクルし、および冷却するためのシステムが含まれる。「反応器容器(reactor vessel)」との用語は、オリゴマー化反応が主に行われる容器を示すために使用される。本明細書で示される反応器は、反応器容器出口流の一部をリサイクルし、および冷却するためのシステムも含む。
【0020】
反応器容器出口流は、反応器容器から取り出され、2つの別個のストリームに分割される。総計の流出流から分離された流出流の一つは、流出流をリサイクルしおよび冷却するシステムに導入される。ストリームの冷却は、反応混合物の温度を制御するために行われる。オリゴマー化反応は発熱反応であり、および、反応混合物の温度は制御しなければ時間とともに上昇する。冷却されたストリームは、さらなる反応のために反応器容器に再導入される。
【0021】
本発明によれば、オリゴマー化反応は、少なくとも1つの反応器を含む反応器システム中で行われ、ここで反応器は、反応器容器と、反応器容器出口の一部をリサイクルし、および冷却するためのシステムとを含む。本発明によれば、反応器システム中の少なくとも1つの反応器は、コーン型反応器であり、このコーン型反応器では、反応器容器は容器の上部に第1の断面積を有し、該断面積は下方に向かって、第1の断面積より小さい第2の断面積まで減少する。
【0022】
反応器システムは、2つ以上の反応器を含み得る。反応器システムが2つ以上の反応器を含む場合、反応器システム内の反応器の少なくとも1つはコーン型反応器である。本発明の一実施形態において、反応器システムは、コーン型反応器である1つの一次反応器を含む。反応器システムがコーン型反応器である1つの一次反応器を備える場合、反応器システムは追加で1つ以上の二次反応器を含むことができ、それらはコーン型反応器であることができるが、コーン型反応器である必要はない。
【0023】
本発明の一実施形態において、反応器システムは、コーン型反応器であるただ1つの反応器を備える。
【0024】
反応器容器は、反応器容器の底部に向かって丸みを帯びている出口底部を構成することもできることに留意すべきである。本発明によるプロセスで使用されるコーン型反応器の反応器容器は、
図2A中にAで描かれている反応ゾーンを有する。反応器はまた、
図2AにおいてBで描かれている丸みを帯びた出口ゾーンを有していてもよい。反応器がコーン型反応器である場合、反応ゾーンは容器の上部に第1の断面積を有し、および断面積は下方に向かって第1の断面積より小さい第2の断面積まで減少する。
【0025】
また、円筒形または管状の反応容器は、
図2B中にBで描かれる丸みを帯びた出口底部と、
図2BにおいてAで描かれる反応ゾーンとを有する。従って、本発明によるプロセスおよび装置におけるコーン型反応器は、容器の反応ゾーン(A)を有し、この反応ゾーンは、容器の上部に第1の断面積を有し、および断面積は、第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで下方に向かって減少する。
図2Bの円筒形または管状の反応容器は、反応ゾーンの全高にわたって実質的に同じ断面積のみを有する反応ゾーンを有すると理解される。
【0026】
本発明の一実施形態において、コーン型反応器は反応ゾーンを有し、反応器出口流は反応ゾーンから直接的に取り出され、および、コーン型反応器は丸みを帯びた出口ゾーンを有さない。丸みを帯びた出口ゾーンのないコーン型反応器において、コーンの末端はフランジで出口配管に接続され、これが反応器出口流を形成する。反応器中では大量の冷却およびリサイクルが必要なため、出口配管は大きな直径を持つ必要がある。
【0027】
円筒形または管状の反応器容器は、ほとんどの場合、反応生成物を出口配管に向かわせるために、ある種の丸みを帯びた出口部または垂直出口部を必要とすることに注意すべきである。また、円筒形反応器の直径は出口配管の直径よりはるかに大きい。
【0028】
本発明の一実施形態において、コーン型反応器の反応ゾーンは少なくとも2つのセクションに分割され、そのうちの1つのセクションは容器の上部に第1の断面積を有する円錐状セクションであり、断面積は下方に向かって第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで減少する。これにより、いわゆるコーン型反応器においても、反応容器全体がコーン形状である必要はない。その代わりに、コーン型反応器の反応器容器の反応ゾーンの一部は、管状を有し、および一部はコーン形状を有し、ここで、断面積は反応ゾーン中、下方に向かって減少し得る。コーン型反応器の反応ゾーンは、第1の断面積の部位でコーン型反応器の最大直径の0.2~10倍、好ましくは0.3~8倍、より好ましくは0.5~4倍の長さを有することができる。
【0029】
本発明の一実施態様において、コーン型反応器の反応ゾーンは、管状セクションであって、管状セクションの上部には第3の断面積を有し、管状セクションの下部には第4の断面積を有し、ここで、第4の断面積は実質的に第3の断面積に等しい管状セクション;および、円錐状セクションであって、円錐状セクションの上部に第1の断面積を有し、および断面積は下方に向かって、第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで減少する円錐状セクション、を有する。反応が管状セクションおよび円錐状セクションを有する場合、管状セクションの長さは管状セクションの断面積の直径の0.1~8倍、好ましくは0.5~4倍、より好ましくは1~3倍とすることができ、および、円錐状セクションの長さは、第1の断面積の部位における円錐状セクションの最大直径の0.2~5倍、好ましくは0.3~3倍、より好ましくは0.5~1.5倍とすることができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、円錐状セクションの容積は、反応器容器出口流の一部をリサイクルし、および冷却するシステムの容積の0.1倍から5倍である。好ましくは、円錐状セクションの容積は、反応容器出口流の一部をリサイクルし、および冷却するためのシステムの容積の0.2倍から4倍、より好ましくは0.3倍から2倍である。
【0031】
一実施形態において、コーン型反応器には試薬と触媒複合体とを混合するための外部混合装置または攪拌装置はない。反応器の円錐形は試薬と触媒複合体との十分な混合を可能にする。
【0032】
反応器容器と反応器容器出口流の一部を冷却しおよびリサイクルするためのシステムとを含む反応器における反応混合物の滞留時間は、1~90分のあいだ、好ましくは3~60分のあいだ、より好ましくは5~40分のあいだであり得る。管状セクションおよび円錐状セクションを有する反応器容器を使用する場合、管状セクションにおける液体滞留時間は、円錐状セクションにおける液体滞留時間と比較して、最大5倍、好ましくは最大4倍、より好ましくは最大2倍とすることができる。
【0033】
したがって、本発明の1つの目的は、ポリ-α-オレフィン(PAO)を製造するためのプロセスであって、以下の工程
a)反応容器を有する少なくとも1つの反応器と、反応容器出口流の一部をリサイクルし、および冷却するシステムとを備える反応器システムを提供する工程、
b)前記反応器システムの少なくとも1つの反応器容器に、少なくともα-オレフィンモノマー、リサイクルされた反応器出口流、触媒および共触媒を導入する工程であって、前記触媒と共に共触媒が触媒複合体を形成する工程、
c)ポリ-α-オレフィン(PAO)生成物の混合物を形成するために、前記α-オレフィンモノマーを前記反応器容器内で反応させる工程、
d)未反応のモノマー、PAO生成物および触媒複合体の混合物を含む出口流を前記反応器容器から取り出す工程、
e)冷却され、および、リサイクルされる反応器出口流として前記反応器容器に戻される第1のストリームと生成物流とに前記出口流を分割する工程
を含み、ここで
反応器システム内の少なくとも1つの反応器がコーン型反応器であり、このコーン型反応器では、前記反応器容器は容器の上部に第1の断面積を有し、および、前記断面積は、下方に向かって、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで減少する
プロセスを提供することである。
【0034】
本発明の一実施形態において、反応器システムは2つ以上の反応器から構成される。反応器システムに複数の反応器がある場合、反応器は、反応器容器出口流の一部が冷却され、および同じ反応器容器にリサイクルされ、ならびに出口流の一部が直列の次の反応器に導入されるように、直列にされ得る。反応器システムが2つ以上の反応器を含む実施形態において、反応器の少なくとも1つはコーン型反応器である。
【0035】
本発明によるプロセスは、未反応のモノマー、PAO生成物の混合物および触媒複合体を含む出口流を反応器容器から取り出す工程を含む。取り出された出口流は、第1のストリームと生成物流(第2のストリーム)とに分けられる。第1のストリームは冷却され、およびリサイクルされる反応器出口流として反応器容器に戻される。出口流から分けられた生成物流は、反応生成物流を構成し、および、PAO生成物を製造するためのさらなる処理工程に付される。
【0036】
反応器内の温度を制御するため、出口流の2つのストリームへの分離、ならびに、その後の第1のストリームの冷却およびリサイクルが必要とされる。オリゴマー化反応は発熱反応であり、最適なオリゴマー分布のため、反応器中の条件は、好ましくは反応器全体にわたって可能な限り等温または等温に近い状態であるべきである。反応器容器から取り出された出口流の一部を冷却し、およびリサイクルすることは、反応器全体にわたる温度条件のより良好な制御を可能にする。その目的は、反応器容器から取り出された出口流の一部を冷却し、および再利用することを含めて、反応器全体にわたって等温または等温に近い条件を達成することである。
【0037】
本発明の一実施形態において、出口流の第1のストリームと生成物流とへの分割は、出口流の50~99%、好ましくは80~97%、およびより好ましくは90~95%が第1のストリームを形成し、および、残りが生成物流を形成するように行われる。全反応器容器出口流に対する第1のストリームの割合は大きく、50%より大きく、または99%まででさえある。リサイクル流(第1のストリーム)の大部分は、反応混合物の十分な冷却を確実なものとし、および、それによって、反応器全体にわたって等温または等温に近い状態を確実なものとする。
【0038】
反応混合物の大部分、一実施形態においては50%より多い部分が、反応器ループ内にあり、および反応器容器内にはない。これは、以下
-反応器の容積の半分が、乱流の少ない反応器容器内にある代わりに、リサイクルループパイプ内の乱流中にあり、およびすべての反応混合物が高い頻度でリサイクルループを通るであろう;
-反応器入口での触媒混合は、リサイクルループのない単純な反応器よりも10倍多く起きるであろう;
-反応のあいだの反応温度は、出口のみで冷却する貫流式反応器容器と比較して10%しか上昇しないであろう
を意味する。
【0039】
本発明の一実施形態において、リサイクルされた反応器出口流の反応器容器への導入は、エジェクターを用いて行われる。触媒の少なくとも一部もまた、それを用いてリサイクルされた反応器出口流が反応器容器に導入されるエジェクターを使用して反応器容器に導入され得る。
【0040】
本発明の一実施形態において、プロセスは、未反応のモノマーおよび触媒複合体からPAO生成物流を分離するための分離ステップに生成物流が付される工程f)をさらに含む。生成物流は、反応器出口流から分割されているが、冷却および反応器容器へのリサイクルはされないストリームであることに留意すべきである。その代わりに、生成物流は、PAO生成物の製造のためのさらなる工程に付される。
【0041】
PAO生成物流の未反応のモノマーおよび触媒複合体からの分離は、生成物流の蒸留によって行われ得る。未反応のモノマーおよび触媒複合体は、PAO生成物の混合物に比べてより低い沸点を有しており、およびそれゆえ、蒸留によって容易に分離され得る。また、例えば液-液分離またはそれらの組み合わせなどの他の分離技術も使用され得る。
【0042】
一実施形態において、生成物の混合物からの未反応のモノマーおよび触媒複合体の分離は、減圧下、10℃~300℃、好ましくは20℃~150℃の温度で蒸留を用いて行われ、ここで圧力は、1mbara~20mbara、好ましくは2mbara~10mbara(0.1kPa~2kPa、好ましくは0.2kPa~1kPa)であり得る。
【0043】
本発明の一実施態様において、方法は、PAO生成物流が、例えば生成物の動粘度に基づいて、別々のPAO留分にさらに蒸留される一または複数の追加の工程をさらに含む。全体としてのPAO生成物流または分離後のPAO留分のどちらかがまた、水素化工程に付され得る。水素化工程は、好ましくは、貴金属触媒またはニッケル触媒、好ましくはニッケル触媒の存在下で行われる。水素化処理は、固定床反応器内で行われ得る。
【0044】
一般的に、オリゴマー化反応が、例えば粘度および揮発性などの明確に区別できる生成物特性を有するPAO留分に分離され得る明確に区別できる生成物分布を結果としてもたらすことが有利である。したがって、形成されるオリゴマーに関し、生成物分布ができるだけ狭いことが有利である。例えば、より少ない量の例えば四量体および五量体などの高次オリゴマーしか伴わずに主に三量体を得ることが有利であり得る。もう一つの重要な問題は、未反応のモノマーの量は、PAO生成物の混合物中においてできる限り少なくあるべき、すなわち高収率であるべきことである。様々な態様およびプロセス条件が、どの種類のオリゴマーが主に形成されるかに顕著な影響を与える。
【0045】
形成されるオリゴマーは、少なくとも反応の温度、反応条件における試薬の滞留時間、ならびに、モノマーおよび生成物の混合物中への触媒複合体の混合に依存する。少なくともこれらの反応の条件および態様がモニターされること、および、最適なオリゴマー形成および全体的な結果のために制御し、および変えることができることが必要である。より狭い出口部分を備える反応器容器の現在の設計を用いることにより、これらのプロセス条件を制御することが可能である。特に、本質的に等しい反応セクション全体の断面積をもつ反応容器と比較して、より狭い塔底セクションをもつ反応器では滞留時間が制御され得る。反応混合物の広範囲にわたるリサイクルおよび冷却はまた、反応温度の向上された制御を可能にし、および、本発明による反応器容器と組み合わせることにより、反応器全体にわたって等温反応条件を得ることが可能である。試薬および触媒複合体から形成されるレベル(試薬のレベル)もまた、管状の反応器と比較して円錐型の反応器では、種々の反応器容量でより変化する。反応器の円錐形と関連して、必要とされる有効吸込みヘッドを含む機能的なポンプ吸引条件は、反応器容器内の反応容積が低くても、試薬のレベルにおける変動のため維持され得る。これは、ポンプ吸引条件を機能させながら冷却再循環が一定の冷却負荷で維持されることを可能にする。
【0046】
未反応のモノマーを多く含む生成物の混合物は避けられるべきである。生成物混合物中の未反応のモノマーを避ける一つの方法は、例えば蒸留などによって生成物混合物から未反応のモノマーを分離することである。別の方法は、触媒複合体のフィードストック中への十分な混合を確実なものとし、および、反応器内の反応生成物中でも均一な混合物を維持することである。これは、本発明の反応器容器でも可能である。
【0047】
図1Aは、本発明の一実施形態の概略的なプロセスを示している。前もって混合され得る、少なくともα-オレフィンモノマーおよび触媒複合体(10)を含むフィードストックが、PAO反応器システム(20)に導入される。PAO反応器システムは、1つまたは複数の反応器を備え得る。反応器は、反応器容器と、反応器容器出口流の一部をリサイクルし、および冷却するためのシステムとを備える。反応器の少なくとも1つは、円錐形状を有する反応器容器を備えるコーン型反応器である(
図1Aには示さず)。PAO反応器システム(20)中では、α-オレフィンモノマーが触媒複合体の存在下でオリゴマー化され、そして、未反応のモノマー、反応生成物および触媒複合体を含む反応生成物混合物が形成され、および、PAO反応器システム(20)から生成物流(25)として除去される。
【0048】
PAO反応器システム(20)から除去された生成物流(25)は、PAO生成物から少なくとも未反応のモノマーおよび触媒複合体を分離するための分離ユニット(30)に導入される。分離された未反応のモノマーおよび触媒複合体流(32)は、PAO反応器システム(20)にリサイクルされる。少なくとも未反応のモノマーおよび触媒複合体(ストリーム32)がそこから除去されるPAO生成物(35)は、さらなる処理(40)のために分離ユニット(30)から取り出される。さらなる処理は、PAO留分(41、42および43)を分離するための様々なPAO生成物の分離を少なくとも含み得る。概略
図1Aは、3つのPAO留分の形成を示しているが、これは例示としてのみ解釈されるべきであり、および、留分は3つより多くてもよく、3つより少なくてもよい。PAO留分(41、42および43)は、別個の留分として水素化に付され得、または代替的には、PAO生成物(35)は、PAO留分に分離される前に水素化され得る。PAO生成物(35)のPAO留分(41、42および43)への分離は、典型的には、蒸留によって行われる。
【0049】
図1Bは、PAO反応器容器(60)と、反応器容器出口(70およびストリーム67および72)の一部を冷却し、およびリサイクルするためのシステムとを含むPAO反応器(80)の概略的なプロセスを示す。α-オレフィンモノマーおよび触媒複合体(10)を含む新鮮なフィードストック、または、反応器上流(50)からの反応混合物が、PAO反応器容器(60)に導入される。反応器容器出口流(66)が反応器容器(60)から引き出され、2つのストリームに分割される。第1のストリーム(67)は、冷却のために熱交換器(70)に導かれる。冷却されたリサイクル流(72)は、さらなる反応のために反応器容器(60)に戻される。反応器容器出口流(66)の一部は、生成物流(25)に分割される。この生成物流(25)は、PAO生成物混合物、未反応のモノマーおよび触媒複合体を含む。この生成物流(25)は、
図1Aに示されている分離ユニット(30)に導かれる。
図1Bはまた、分離された未反応のモノマーおよび触媒複合体を含む、分離ユニット(30)からのストリーム(32)も示している。このストリームは、
図1Aおよび
図1Bでは1つのストリームとして示されているが、2つまたはそれ以上の別個のストリームであり得、あるストリームは未反応のモノマーを含み、および、他のストリームは触媒複合体および/または触媒を含み得る。
【0050】
図3は、本発明の形状を有する2つの異なる反応器3Aおよび3Bと、比較のための円筒形反応器3Cとを示している。反応器形状3Aは、本発明によるものであり、図では丸みを帯びた出口ゾーンBと、反応ゾーンA1およびA2が示されている。本発明によれば、円錐形状の反応器容器は丸みを帯びた出口ゾーンを備え得るが、これは必須ではない。反応ゾーンは2つのセクション、円錐状セクションA2と管状セクションA1とに分離される。円錐状セクションA1は第1の断面積(61)および第2の断面積(62)を有する。第2の断面積(62)は、第1の断面積(61)よりも小さい。管状セクションA1は、第3の断面積(63)および第4の断面積(64)を有する。第3の断面積(63)は、第4の断面積(64)と実質的に等しい。
【0051】
図3Bは、反応ゾーンA3およびA4と丸みを帯びた出口ゾーンBとを有する本発明による反応器形状を示している。
図3Bの反応ゾーンは、円錐状セクションA3および管状セクションA4の2つのセクションに分離されている。比較のために、
図3Cでは、反応ゾーンA5および丸みを帯びた出口ゾーンBを有する筒状反応器が示されている。円筒形反応器(3C)の反応ゾーンA5は、反応セクションに分離され得ない。
【0052】
本発明はまた、本発明によるプロセスを実施するための装置に関し、ここで、該装置は、反応器容器を備える少なくとも1つの反応器と、反応器容器出口流の一部をリサイクルし、および冷却するためのシステムと、少なくとも1つの反応器容器に少なくともα-オレフィンモノマー、リサイクルされた反応器出口流、触媒および共触媒を導入するための手段と、反応器容器から出口流を取り出すための出口とを備え、ここで、少なくとも1つの反応器容器がコーン型反応器であり、該コーン型反応器は、容器の上部に第1の断面積を有し、ならびに、該断面積は、第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで下方に向かって減少している。
【0053】
開示される装置は、出口流を第1のストリームと生成物流とに分割する手段;ならびに、第1のストリームを冷却し、および第1のストリームを反応器容器に再利用する手段をさらに含み得る。
【0054】
技術の進歩に伴い、本発明の概念を様々な方法で実施できることは当業者にとって明らかであろう。本発明およびその実施形態は、上述した例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々変形可能である。
【実施例】
【0055】
1-デセンのオリゴマー化が、0.002m3バッチ反応器中で試験された。反応は、1mol-%の三フッ化ホウ素(BF3)n-ブタノール複合体で触媒された。反応器内の圧力は200kPaに設定され、そして、BF3ガスの流れで制御された。温度は冷却ジャケットおよび内部コイルで制御された。バッチ反応器は、タービンミキサーを用いて混合された。バッチ反応器には十分な混合を可能にするであろうリサイクリングが含まれていなかったため、混合が必要であった。生成物はガスクロマトグラフィーおよび質量分析計検出器を用いて分析された。
【0056】
実施例1
様々な温度における反応(オリゴマー化)の速度を試験するために、最初に一連の反応が行われた。10℃、30℃、70℃の3つの異なる温度が選択された。反応は上記のように等温条件下で行われた。反応速度は、モノマーの1-デセンが反応混合物中で減少される速度として測定された。
【0057】
様々な温度における、モノマーである1-デセンの減少として示される反応の転換率は、以下の表1に見ることができる。
【0058】
【0059】
表1に示される結果から、反応温度10℃では、30℃および70℃のより高い温度に比べて反応は著しく遅かったことがわかる。10℃での完全な転換には、反応時間約60分後に達した。結果はまた、30℃から70℃へ温度を上昇させることは、転換率は有意には増大させなかったことを示している。反応温度が30℃および70℃であった場合、実際に30分の反応時間で完全な転換に達した。
【0060】
実施例2
実施例1で得られた知見に基づき、30℃の反応温度が。最適な反応温度として選択された。一連の反応が、実施例1と同じ装置およびパラメーターを用いてを行われた。ここでは、生成物分布が、反応時間の関数として測定された。総計の反応時間は120分であった。
【0061】
1-デセンのオリゴマー化ならびに三量体および四量体の形成が以下の表2に示されている。
【0062】
【0063】
表2にまとめられた結果は、三量体の選択性は、短い滞留時間で最大化され得ることを示している。より長い滞留時間は、より重質なオリゴマーを与える。この結果に基づき、滞留時間が生成物の形成に影響することは明らかである。したがって、反応滞留時間および重要な操作条件パラメーターが、さまざまな容量においてでさえも、生成物の選択性を最適化するためには作動中変わらずに維持されるべきである。
【0064】
実施例3
これまでの例は、最適な生成物分布を得るための反応温度の重要性、しかし特には滞留時間の重要性を示している。種々の反応器容量で滞留時間を最適化するため、コーン型反応器を用いて計算が行われた。計算では、100%の容量は13125kg/hで設定された。冷却ループ、ポンプ、および配管の容積は、固定された。シミュレーションでは、試薬のレベルが逆円錐型反応器、円錐状セクションA2の頂部であるように100%容量が設定された。計算は、100%、90%、80%、70%、および60%の反応器容量を用いて行われた。計算の結果が表3にまとめられている。
【0065】
【0066】
表3の結果から、総計の滞留時間が、様々な反応器容量で10分に維持され得ることがわかる。ループ(冷却ループ、ポンプ、および配管を意味する)の容積は、1.59m3で一定である。反応器の円錐状セクション内の試薬のレベルは容量と共に変化される。ループ循環ポンプ速度を変えることにより(180m3/hから300m3/hまで)、冷却再循環は、すべての容量において一定の冷却負荷に保たれ得、一方、反応器のコーン形状に関連して、有効吸込みヘッドを含む機能的なポンプ吸込条件は、反応器容器の小さな反応容量においてでさえも維持され得る。
【0067】
図4は、様々な反応器容量におけるコーン型反応器中および管状の反応器中での試薬レベルの違いを示している。
図4から、管状の反応器と比較して円錐型の反応器では、レベルはより低い容量でより速く減少することがわかる。したがって、管状の反応器と比較してコーン型反応器では、特により低い反応器容量において、試薬のレベルにおける変動をモニターすることがより容易である。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ-α-オレフィン(PAO)を製造するためのプロセスであって、以下の工程
a)反応器容器(60)を有する少なくとも1つの反応器(80)と、反応器容器出口流(67、70、72)の一部をリサイクルし、および冷却するシステムとを備える反応器システム(20)を提供する工程、
b)前記反応器システム(20)の少なくとも1つの反応器容器(60)に、少なくともα-オレフィンモノマー(10、50)、リサイクルされた反応器出口流(72)、触媒および共触媒(10、50、32)を導入する工程であって、前記触媒と共に共触媒が触媒複合体を形成する工程、
c)ポリ-α-オレフィン(PAO)生成物の混合物を形成するために、前記α-オレフィンモノマーを前記反応器容器(60)内で反応させる工程、
d)未反応のモノマー、PAO生成物および触媒複合体の混合物を含む出口流(66)を前記反応器容器から取り出す工程、
e)冷却され、および、リサイクルされる反応器出口流(72)として前記反応器容器(60)に戻される第1のストリーム(67)と生成物流(25)とに前記出口流(66)を分割する工程
を含み、ここで
前記反応器システム(20)内の少なくとも1つの反応器(60)がコーン型反応器であり、前記コーン型反応器では、前記反応器容器は容器の上部に第1の断面積(61)を有し、および、前記断面積は、下方に向かって、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積(62)まで減少する
プロセス。
【請求項2】
前記コーン型反応器が、反応ゾーンおよび前記反応器出口流が取り出される丸みを帯びた出口ゾーンを有し、ならびに、前記反応ゾーンが、前記容器の上部に第1の断面積を有し、および前記断面積が、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで下方に向かって減少している請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記コーン型反応器が反応ゾーンを有し、および、反応器出口流が前記反応ゾーンから直接取り出され、および、前記コーン型反応器が丸みを帯びた出口ゾーンを有さない請求項1記載のプロセス。
【請求項4】
前記コーン型反応器の反応ゾーンが少なくとも2つのセクションに分割され、そのうちの1つのセクションが、前記容器の上部に第1の断面積を有し、および前記断面積が下方に向かって、前記第1の断面積より小さい第2の断面積を有する円錐状セクションである請求項
1記載のプロセス。
【請求項5】
前記コーン型反応器の反応ゾーンが、前記第1の断面積の部位における前記コーン型反応器の最大直径の0.2~5倍、好ましくは0.3~3倍、より好ましくは0.5~1.5倍の長さを有する請求項
1記載のプロセス。
【請求項6】
前記コーン型反応器の反応ゾーンが、管状セクションであって、前記管状セクションの上部には第3の断面積(63)を有し、および前記管状セクションの下部には第4の断面積(64)を有し、ここで、
前記第4の断面積は実質的に前記第3の断面積に等しい管状セクション;ならびに、
円錐状セクションであって、前記円錐状セクションの上部に第1の断面積(61)を有し、および前記断面積は下方に向かって、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで減少する円錐状セクション
を備える請求項4記載のプロセス。
【請求項7】
前記管状セクションの長さが、前記管状セクションの断面積の直径の0.1~8倍、好ましくは0.5~4倍、より好ましくは1~3倍であり、および、前記円錐状セクションの長さが、前記第1の断面積の部位における円錐状セクションの最大直径の0.2~5倍、好ましくは0.3~3倍、より好ましくは0.5~1.5倍である請求項6記載のプロセス。
【請求項8】
前記リサイクルされた反応器出口流の前記反応器容器への導入が、エジェクターを用いて行われる請求項
1記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒の少なくとも一部が、それを用いて前記リサイクルされた反応器出口流が前記反応器容器に導入される前記エジェクターを使用して前記反応器容器に導入される請求項8記載のプロセス。
【請求項10】
α-オレフィンモノマーが、C
4~C
20α-オレフィン、好ましくはC
8~C
12α-オレフィン、およびより好ましくはC
10α-オレフィンを含む請求項
1記載のプロセス。
【請求項11】
前記触媒が、ハロゲン化アルミニウムまたはハロゲン化ホウ素であり、好ましくは触媒が、BF
3であり、および、共触媒が、C
1~C
10アルコールから選択され、好ましくは共触媒が、n-ブタノールである請求項
1記載のプロセス。
【請求項12】
前記出口流の第1のストリームと生成物流への分割が、前記出口流の50~99%、好ましくは80~97%、およびより好ましくは90~95%が前記第1のストリームを形成し、ならびに、残りが前記生成物流を形成するように行われる請求項
1記載のプロセス。
【請求項13】
前記プロセスが、未反応のモノマーおよび触媒複合体からPAO生成物流を分離するための分離ステップに前記生成物流が付される工程f)をさらに含む請求項
1記載のプロセス。
【請求項14】
前記工程f)が、減圧下、10℃~300℃の温度で蒸留により行われ、および、前記分離がまた、未反応のモノマーから触媒および共触媒としての前記触媒複合体を分離する請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記PAO生成物が、さらなるPAO留分にPAO生成物が分離され、次いで、貴金属触媒またはニッケル触媒の存在下で前記PAO留分が水素化される、または、貴金属触媒またはニッケル触媒の存在下で前記PAO生成物が水素化され、次いで、さらなる水素化PAO留分に水素化されたPAO生成物が分離されることによって、さらに処理される請求項
13記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のプロセスを行うための装置であって、反応器容器を備える少なくとも1つの反応器を含む反応器システムと、反応器容器出口流の一部をリサイクルおよび冷却するためのシステムと、少なくとも1つの反応器容器に、少なくともα-オレフィンモノマー、リサイクルされた反応器出口流、触媒および共触媒を導入するための手段と、前記反応器容器から出口流を取り出すための出口とを備え、
ここで、
少なくとも1つの反応器容器がコーン型反応容器であり、前記コーン型反応器は、容器の上部に第1の断面積を有し、および、前記断面積は、下方に向かって、前記第1の断面積よりも小さい第2の断面積まで減少している装置。
【請求項17】
前記出口流を第1のストリームと生成物流とに分割する手段;ならびに、前記第1のストリームを冷却し、および前記第1のストリームを前記反応容器にリサイクルする手段をさらに備える請求項16に記載の装置。
【国際調査報告】