(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】反応槽
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20240604BHJP
C01B 3/08 20060101ALI20240604BHJP
B01J 19/24 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C01B33/18 C
C01B3/08 Z
B01J19/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560293
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 GB2022050779
(87)【国際公開番号】W WO2022208069
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523369547
【氏名又は名称】バートン ブレイクリー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー バートン
【テーマコード(参考)】
4G072
4G075
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072AA41
4G072BB05
4G072CC13
4G072GG01
4G072GG04
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4G075AA03
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4G075AA37
4G075BA10
4G075BB05
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4G075CA14
4G075CA80
4G075DA18
4G075EB01
4G075EB46
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC15
(57)【要約】
ガスを混合するための供給システムを用いて供給されたシラン及び二酸化炭素のような酸化物を混合するための混合チャンバを使用して、官能化されたシリカと水素、炭素又は他の酸化物のような他の生成物とを生成するように反応する、官能化されたシリカを生成するための反応槽及び方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化されたシリカを生成するための反応槽であって、
シランガス及び酸化物ガスを混合するための密閉された混合チャンバと、
前記混合チャンバ内でシラン及び酸化物の混合を促進するために該混合チャンバにシラン及び酸化物を供給するための供給システムと、
反応生成物を前記反応槽から取り出すための1つ又は複数の排出口と、を備えたことを特徴とする反応槽。
【請求項2】
シラン及び酸化物ガスの少なくとも1つを帯電させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の反応槽。
【請求項3】
地面に対する反応槽の第1部分は、官能化されたシリカの生成を容易にするために、反応混合ガスに近接してシラン及び酸化物ガスの反応混合物から生成された反応生成物を収容するための収容領域を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の反応槽。
【請求項4】
反応槽の前記収容領域は、供給されたシラン及び酸化物が収束するような形状となっていることを特徴とする請求項3に記載の反応槽。
【請求項5】
反応槽の少なくとも前記収容領域は、ベル形状となっていることを特徴とする請求項4に記載の反応槽。
【請求項6】
反応槽の少なくとも前記収容領域は、円筒形状となっていることを特徴とする請求項4に記載の反応槽。
【請求項7】
前記収容領域は、反応槽内に吊り下げられ、閉鎖された上端と反応槽内に開放された下端とを有することを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか一項に記載の反応槽。
【請求項8】
前記収容領域は、壁により囲まれていることを特徴とする請求項7に記載の反応槽。
【請求項9】
前記1つ又は複数の排出口は、前記収容領域の外側にある反応槽の領域に接続されていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の反応槽。
【請求項10】
シラン及び酸化物の少なくとも1つは、前記混合チャンバに供給されるのに先立って帯電されるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の反応槽。
【請求項11】
前記供給システムは、シラン及び酸化物の少なくとも1つを帯電させるために、摩擦電気感受性材料及び誘電材料の少なくとも1つから成る部分を有することを特徴とする請求項10に記載の反応槽。
【請求項12】
前記供給システムは、シラン及び酸化物の少なくとも1つのために供給チューブ及び貯蔵槽の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項11に記載の反応槽。
【請求項13】
前記供給システムは、前記混合チャンバを通過する導電性の注入口パイプを有し、該注入口パイプは、前記混合チャンバでの反応から付与される電荷を用いてシラン及び酸化物ガスの少なくとも1つを前もって帯電させることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の反応槽。
【請求項14】
前記混合チャンバは、該混合チャンバとの相互作用を通じてシラン、酸化物及びそれらの混合物の少なくとも1つを帯電させるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の反応槽。
【請求項15】
反応槽の一部は、シラン及び酸化物の少なくとも1つを帯電させるために、摩擦電気感受性材料及び誘電材料の少なくとも1つから成ることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の反応槽。
【請求項16】
前記供給システムは、反応槽に設けられた注入口を介して前記混合チャンバにシラン及び酸化物を供給するように構成され、
前記注入口の少なくとも1つは、乱流で前記混合チャンバにシラン又は酸化物を供給するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の反応槽。
【請求項17】
反応槽は、長軸を持つ細長い形状とされ、前記注入口が概ね反応槽の前記収容領域にガスを向かわせるように、前記注入口の少なくとも1つは、反応槽の前記長軸に対して45から90度の間の角度でガスを供給するように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の反応槽。
【請求項18】
前記注入口の少なくとも1つは、酸化物のための注入口であることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の反応槽。
【請求項19】
シランのための前記注入口は、反応槽の前記収容領域にあり、概ね地表に面するように反応槽の前記長軸に平行な角度で配置されていることを特徴とする請求項18に記載の反応槽。
【請求項20】
前記混合チャンバは、前記収容領域の下方にシランを供給するための供給手段を含むことを特徴とする請求項19に記載の反応槽。
【請求項21】
シランのための前記注入口は前記混合チャンバに向かって延び、前記供給手段はシランのための前記注入口に向かって延びるシリンダを有し、前記シリンダは該シリンダ内の狭い空間にシランのための前記注入口を受け入れる開口部を有し、
前記シリンダは、前記収容領域の下方への流路を提供するように構成されていることを特徴とする請求項20に記載の反応槽。
【請求項22】
前記シリンダの開口部は、前記収容領域の下方に近接していることを特徴とする請求項21に記載の反応槽。
【請求項23】
前記開口部は、酸化物のための前記注入口と前記収容領域との間にあることを特徴とする請求項22に記載の反応槽。
【請求項24】
シランのための前記注入口は、反応槽の前記収容領域内にあり、概ね前記収容領域の上部にシランを向けるように反応槽の前記長軸に平行な角度で配置されていることを特徴とする請求項18に記載の反応槽。
【請求項25】
生成されたガスと官能化されたシリカとを分離するための分離手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項24のいずれか一項に記載の反応槽。
【請求項26】
前記供給システムは、官能化されたシリカの生成を促進するために、反応混合ガスに近接して前記混合チャンバに水素及び一酸化物を供給するようにも構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項25のいずれか一項に記載の反応槽。
【請求項27】
酸化物は、二酸化炭素、二酸化窒素及び二酸化硫黄のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至請求項26のいずれか一項に記載の反応槽。
【請求項28】
官能化されたシリカを生成する方法であって、
収容領域にシラン及び酸化物を供給するステップと、
シラン及び酸化物の少なくとも1つを帯電させるように構成するステップと、
シラン及び酸化物を混合して反応混合ガスを生成するステップと、を備えたことを特徴とする方法。
【請求項29】
前記反応混合ガスから生成された水素及び一酸化物は、官能化されたシリカの生成を容易にするために前記反応混合ガスに近接して含まれることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
シランは、前記反応混合ガスに近接した前記収容領域内の領域に供給されることを特徴とする請求項28又は請求項29に記載の方法。
【請求項31】
シラン及び酸化物の少なくとも1つは、前記収容領域に供給されるのに先立って帯電されるように構成されていることを特徴とする請求項28乃至請求項30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
シラン及び酸化物の少なくとも1つは、前記収容領域で帯電されるように構成されていることを特徴とする請求項28乃至請求項31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
シラン及び酸化物の少なくとも1つは、乱流で流れるように前記収容領域に供給されることを特徴とする請求項28乃至請求項32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
生成された水素、酸化物及び官能化されたシリカを互いに分離するステップを更に備えたことを特徴とする請求項28乃至請求項33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
生成された水素、酸化物及び官能化されたシリカは、バッチプロセスを用いて分離されることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカを生成するのに適した反応槽及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的に、主に駆動力及びエネルギー生成のための燃焼及びエネルギー変換プロセスからの排出ガスは、大気中に放出され、局所及び地球規模の両方で環境に悪影響を及ぼす様々な望ましくない有害大気汚染物質を必ず含む。炭素酸化物(COx)、窒素酸化物(NOx)及び硫黄酸化物(SOx)は、すべて燃焼及びエネルギー変換プロセスからの排出ガスに見られる大気汚染物質の代表例である。
【0003】
シリカは、様々な形態で生じる。ナノシリカは、サブマイクロメートル域の極めて小さな粒子径を持つシリカの形態である。ナノシリカは、地質学的ナノシリカを含む様々な形態を有するが、一般的には合成的に形成される。合成非晶質シリカ(SAS)は、プラスチック、シリコーン、ゴム、光学、高性能コンクリート等での充填添加剤のように、多くの用途で使用されるシリカの有益な形態である。合成シリカを生成する従来の方法は、高温を必要とする。このような方法で生成されたシリカは、典型的には疎水性でなく、疎水性をシリカに付与するために少なくとも更なる高温及び/又は高圧処理ステップが必要とされる。シリカは、セメント、ガラス、スクリーン、製薬及び流動プロセス等のような、シリカで形成された材料又はシリカフィルムを有する材料(特に、疎水性を与えるために材料に適用されるナノシリカ)から利益を得る産業において主材料又は添加材料として一般的に使用されているので、疎水性は有用である。
【0004】
火炎堆積法は、シリカ生成に高温を必要とするシリカ生成のための従来法の一例である。これは、典型的には水素-酸素反応を用いて達成される。これら反応物を使用するということは、誤った条件下又は反応チャンバにこれら反応物を導入するのに先立って反応が起こるのを防ぐために、導入される他の反応化合物が最初の水素-酸素混合物と反応しないようにする必要があることを意味する。このプロセスは、点火及びコストがかかって不便な霧状塩化ケイ素の存在を必要とする。更に、有毒なため廃棄される必要のある塩酸ガスが、このプロセスから生成される。また、有用な商業的特性を持つ疎水性シリカを生成するために、シリカは、次いでポリジメチルシロキサンのようなシロキサンと共に高温で焼成される必要がある。これは非常にエネルギーを消費し、生成コストを高くする追加のシロキサン成分を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題の1つ又は複数を克服又は少なくとも改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様では、官能化されたシリカを生成するための反応槽であって、シランガス及び酸化物ガスを混合するための密閉された混合チャンバと、混合チャンバ内でシラン及び酸化物の混合を促進するために混合チャンバにシラン及び酸化物を供給するための供給システムと、反応生成物を反応槽から取り出すための1つ又は複数の排出口と、を備えた反応槽が提供される。
【0007】
シリカは、シランと酸化物との間の一段階反応により生成される。二酸化炭素(CO2)が酸化物として使用される場合、疎水性シリカが生成される。また、適切に調整されると、反応は燃料等として有用な水素を高い比率で生成し得る。
【0008】
好ましくは、シラン及び酸化物ガスの少なくとも1つは帯電される。チャンバ内でシラン及び酸化物の少なくとも1つに電荷を与えることで、シランと酸化物との間の一段階反応により官能化されたナノシリカが生成され得る。これは、ガスを静電帯電させることにより反応する混合ガスの電子密度を増加させ、シリカ、水素及び一酸化物を生成する反応の際に酸化物とシランとの結合をより容易に解離させる。その結果、反応する混合ガスの電子密度増加によりシリカの外層は官能基でコーティングされ、CO2を使用した場合にはシリカに疎水性を付与することができる。
【0009】
好ましくは、下面に対する反応槽の第1部分は、官能化されたシリカの生成を容易にするために、反応混合ガスに近接して反応混合ガスから生成された水素及び一酸化物を含む収容領域を有する。このようにすることで、反応混合ガスから生成された水素及び一酸化物の相対的な浮力により、水素及び一酸化物は、反応混合ガスに近接した領域に収容される。これは、官能化されたシリカを生成する際のシリカの核形成の間に水素及び一酸化物が利用されるので、疎水性シリカの生成を容易にするのを助ける。
【0010】
好ましくは、供給システムは、官能化されたシリカの生成を容易にするために、反応混合ガスに近接して混合チャンバに水素及び一酸化物を供給するように配置される。このようにすることで、水素及び一酸化物は、反応混合ガスに供給されて疎水性シリカの生成を容易にする。
【0011】
好ましくは、反応槽の収容領域は、供給されたシラン及び酸化物が収束するように形成されている。このようにすることで、混合チャンバに供給されたガスは、混合チャンバの第1部分の近くに収束する。
【0012】
反応槽の収容領域は、ベル形状又は円筒形状であってもよい。
【0013】
収容領域は、反応槽内に吊り下げられた容器により形成されてもよく、閉ざされた上端及び反応槽に開放された下端を有する。
【0014】
収容領域は、好ましくは容器を形成する壁により囲まれている。
【0015】
1つ又は複数の排出口は、好ましくは収容領域の外側にある反応槽の領域に接続される。
【0016】
好ましくは、シラン及び酸化物の少なくとも1つは、混合チャンバに供給されるのに先立って帯電されるように構成されている。
【0017】
好ましくは、供給システムは、シラン及び/又は酸化物を帯電させるために摩擦電気感受性材料及び誘電材料の少なくとも1つから成る部分を含む。このようにすることで、シラン及び/又は酸化物は、ガスが混合チャンバに供給される際に、供給システムの摩擦電気材料を介して受動的に帯電される及び/又は誘電材料を介して能動的に帯電され得る。
【0018】
好ましくは、供給システムは、シラン及び/又は酸化物の供給チューブ及び/又は貯蔵槽である。
【0019】
供給システムは、混合チャンバ内の反応から注入口パイプに付与される電荷を用いてシラン及び酸化物のガスの少なくとも1つを前もって帯電させるために、混合チャンバを通過する導電性の注入口パイプを含んでいてもよい。
【0020】
或いは、混合チャンバは、壁をかすめたガスがガスに電荷を発生させるように、混合チャンバ自体との相互作用を通じてシラン、酸化物及びそれらの混合物の少なくとも1つが帯電されるように構成され得る。
【0021】
好ましくは、反応槽の一部は、シラン及び酸化物の少なくとも1つを帯電させるために摩擦電気感受性材料及び誘電材料の少なくとも1つから形成される。このようにすることで、シラン及び/又は酸化物は、ガスが混合チャンバ内にあるときに、槽の摩擦電気材料を介して受動的に帯電される及び/又は誘電材料を介して能動的に帯電され得る。
【0022】
好ましくは、供給システムは、反応槽に設けられた注入口を介して混合チャンバにシラン及び酸化物を供給するように構成され、該注入口の少なくとも1つは、乱流で混合チャンバにシラン又は酸化物を供給するように配置される。乱流で混合チャンバに酸化物及び/又はシランを供給することにより、シランと酸化物との間でより多くの衝突が起こることが保証され、また、摩擦電気感受性材料を有する槽の場合には、より良好な帯電のために酸化物と槽表面との間で起こる接触量が増加すれば、官能化されたシリカの生成効率が増加する。
【0023】
好ましくは、反応槽は、長軸を有する細長い形状であり、少なくとも1つの注入口は、注入口が概ね反応槽の第1部分にガスを向かわせるように、反応槽の長軸に対して45から90度の角度でガスを供給するように配置される。このようにすることで、混合チャンバに供給される酸化物の流れは乱流となり、供給チャンバの開口部に向かって流れる。更に、この配置は、望ましくないシランのようなガスの注入口への逆流可能性を低減する。
【0024】
好ましくは、少なくとも1つの注入口は、酸化物のための注入口である。
【0025】
好ましくは、シランのための注入口は、反応槽の収容領域にあり、シランのための注入口が概ね地表に面するように、反応槽の長軸に平行な角度で配置される。このようにすることで、シランは、シランから反応混合ガスへの直接流路が達成され得るように、シランの流れを制御することを可能とする供給チャンバに供給される。
【0026】
好ましくは、混合チャンバは、シランを収容領域の下方に供給するための供給手段を有する。このようにすることで、シランの流れが制御され、シランから反応混合ガスへの直接流路が達成され得る。
【0027】
好ましくは、シランのための注入口は混合チャンバに延び、供給手段は、シランのための注入口に向かって延びる円筒を含み、その円筒は、円筒内の狭い空間にシランのための注入口を受け入れる開口部を有し、収容領域の下方への流路を提供するように構成される。このようにすることで、シランの流れが制御され、シランから反応混合ガスへの直接流路が達成され得る。
【0028】
好ましくは、円筒の開口部は、収容領域の下方に近接している。このようにすることで、シランは、反応混合ガスに対して直接供給される。
【0029】
好ましくは、開口部は、酸化物のための注入口と収容領域との間にある。このようにすることで、シランは、収容領域の下方で反応混合ガスに供給される。
【0030】
シランのための注入口は、反応槽の収容領域にあってもよく、シランのための注入口が概ねシランを収容領域の上部に向かわせるように、反応槽の長軸に平行な角度で配置される。
【0031】
好ましくは、反応槽は、水素のような生成ガス、一酸化炭素のような酸化物及び官能化されたシリカを分離するための分離手段を有する。
【0032】
供給システムは、好ましくは官能化されたシリカの生成を容易にするために、反応混合ガスに近接して混合チャンバに水素及び一酸化物を供給するように配置される。
【0033】
好ましくは、酸化物は、二酸化炭素、二酸化窒素及び二酸化硫黄の少なくとも1つである。
【0034】
本発明の第2態様では、官能化されたシリカを生成する方法であって、シラン及び酸化物を収容領域に供給するステップと、シラン及び酸化物の少なくとも1つを帯電させるように構成するステップと、シラン及び酸化物を混合して反応混合ガスを生成するステップと、を備えた方法が提供される。
【0035】
好ましくは、反応混合ガスから生成された水素及び一酸化物は、官能化されたシリカの生成を容易にするために反応混合ガスに近接して含まれる。
【0036】
好ましくは、シランは、反応混合ガスに近接して収容領域の領域に供給される。
【0037】
好ましくは、シラン及び酸化物の少なくとも1つは、収容領域に供給されるのに先立って帯電されるように構成される。
【0038】
好ましくは、シラン及び酸化物の少なくとも1つは、収容領域で帯電されるように構成される。
【0039】
好ましくは、シラン及び酸化物の少なくとも1つは、乱流で流れるように収容領域に供給される。
【0040】
好ましくは、本方法は、生成された水素、酸化物及び官能化されたシリカを互いに分離するステップを更に有する。
【0041】
好ましくは、生成された水素、酸化物及び官能化されたシリカは、バッチプロセスを介して分離される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の実施形態は、図面を参照して例示的に説明される。
【
図2a】官能基がRで表される疎水性シリカの概略図。
【
図2b】官能基がメチル基である疎水性シリカの概略図。
【
図3】温度制御フロー反応器及び分離装置に取り付けられた反応槽を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
反応槽2の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、反応槽2は、混合チャンバ4を備える。混合チャンバ4は、シラン(本実施形態では四水素化ケイ素としても知られるSiH
4であるが、例えば、ジシランやトリシラン等の他のシラン/ヒドロシランを用いてもよい)を受け入れるための反応物注入口8と、酸化物ガスを受け入れるための一対の酸化物(酸化剤)注入口10a、10bと、を有する。注入口8、10a、10bは、供給システム(不図示)から混合チャンバ4にシラン及び酸化剤の供給を可能とする。場合によっては、反応物注入口8は複数の注入口であってもよく及び/又は2つよりも多い又は少ない酸化物注入口10a、10bがあってもよい。
【0044】
本実施形態では、酸化物は二酸化炭素(CO2)である。他の実施形態では、酸化物は二酸化窒素(NO2)又は二酸化硫黄(SO2)のような他の酸化物若しくはCO2、NO2及びSO2のような少なくとも2つの異なる酸化物の混合物であってもよい。酸化物は、燃焼及び/又はエネルギー変換工業プロセスからの排ガスの一部であってもよい。シリカの官能化に特別な特性を付加するような、メタンやアンモニウム等の更なるガスが含まれてもよい。例えば、窒素の付加は、シリカ内にケイ素-窒化物結合を生じさせる。
【0045】
反応槽2、つまり混合チャンバ4は、地面又は(地球の地表に対して概ね平行な)下面に対する上端16と、分岐壁20を介して上端16に接続された反対側の下端18と、を有する細長形状である。本実施形態では、槽2の上端16はベル形状であり、その利点については後述する。一般に、上端及び下端は、一方が他方に垂直に配置され、これは一緒に使用されるガスを混合する場合に有利であるが、ガスの混合がガスの自然な浮力に依存する以外の他の方法で達成される場合には、反応槽は異なって配向されてもよい。
【0046】
反応物注入口8は、反応槽2の上端16の入口から送り込まれ、注入口8(すなわち、ガスが混合チャンバ4に供給される注入口のインターフェース)が概ね地表に面するように、反応槽の長軸と平行な角度で混合チャンバ4に向かって延びている。他の実施形態では、注入口8は、反応槽の長軸と実質的に平行でなくてもよい。
【0047】
混合チャンバ4は、混合チャンバ4内の中央に吊り下げられるようにして、取り付けアーム7を介して混合チャンバ4に取り付けられた実質的に円筒形状の供給チャンバ6を有する。供給チャンバ6は、注入口8と実質的に同心であり、供給チャンバ6内の狭い空間11への開口部9を有する。注入口8は、開口部9を介して狭い空間11に延びている。このようにすることで、混合チャンバ4に供給されるシランは、開口部を介して混合チャンバ4に流入するように構成される。この流路の利点については後述する。
【0048】
酸化物注入口10a、10bは、注入口10a、10bが概ね反応槽2の上端16に向けて混合チャンバ4に供給される酸化物を向かわせるように、槽2の長軸に対して、例えば、45度の角度で配置されている。このようにすることで、混合チャンバ4に供給される酸化物の流れは、乱流となって供給チャンバ6の開口部9に向かって流れる。更に、この配置は、シランのようなガスの注入口10a、10bへの望ましくない逆流可能性を低減する。
【0049】
本明細書において「乱流」という用語は、反応が酸化物とシランとの間で起こるよう十分に高いレイノルズ数を有する流れを意味する。好ましくは、混合チャンバ4に供給される酸化物の流れは、乱流への流れの層流遷移点よりも大きいレイノルズ数を有する。
【0050】
他の実施形態では、酸化物注入口の少なくとも1つは、反応槽の長軸に対して45から90度の角度で配置される及び/又は反応槽に対して正接しており、混合チャンバ内でガスの旋回を引き起こすために、注入口が概ね反応槽2の上端に向けて及び/又は接線方向へと混合チャンバ4に供給されるガスを向かわせるようになっている。
【0051】
供給システム(不図示)は、酸化物及びシラン各々の貯蔵槽(不図示)から反応物注入口8及び酸化物注入口10a、10bにそれぞれシラン及び酸化物を供給する供給チューブ(不図示)を有する。本実施形態では、供給チューブは、材料と粒子との間の接触を介してガス粒子へと摩擦電気的に電荷を付与及び受け取ることが可能な材料であるシリコーンから作られる(本明細書では、このような材料を摩擦電気感受性材料と呼ぶ)。このようにすることで、シラン及びCO2は、ガスと供給チューブの摩擦電気感受性材料との十分な接触により、混合チャンバ4への供給に先立って静電的に帯電される。言い換えれば、シラン及びCO2は、供給チューブを通過する際に帯電する。
【0052】
この構成では、シリコーンが摩擦電気感受性材料として使用される。他の構成では、PTFE、VITON又はBuna-Nのようなシリコーン以外の摩擦電気感受性材料が使用されてもよい。摩擦電気感受性材料は、少なくともシラン及び酸化物(特に炭素、窒素又は硫黄の酸化物)と混合可能であるべきである。好ましくは、摩擦電気感受性材料は、摩擦電気系列スペクトルの負の端に向かう。いくつかの実施形態では、シラン又は酸化物の少なくとも1つが混合チャンバ4に供給されるのに先立って帯電されるように、供給チューブの1つだけが摩擦電気感受性材料を有する。更に、いくつかの構成では、供給チューブがシリコーン製ではない。このような場合、供給チューブは、代わりにシリコーンのような摩擦電気感受性材料で被覆される。更に、いくつかの構成では、電荷は、供給チューブの少なくとも1つの中に取り付けられた摩擦電気感受性材料の1つ又は複数のメッシュを介して、供給チューブを通って流れるガス粒子に摩擦電気的に付与され得る。場合によっては、メッシュの摩擦電気材料は、印加された電界で分極可能な誘電材料である。このようにすることで、電荷は、分極された誘電メッシュからガス粒子に摩擦電気的に付与され得る。いくつかの構成では、これらメッシュ(すなわち、摩擦電気材料及び誘電材料の少なくとも1つから成るメッシュ)は、電荷がメッシュから槽内のガス粒子に付与されるように槽2内にも取り付けられ得る。
【0053】
このように、電荷は、少なくとも摩擦電気感受性材料及び/又は印加された電場により分極された誘電材料のいずれかを介して、ガス粒子に摩擦電気的に付与される。言い換えれば、ガス粒子は、摩擦電気感受性材料との接触を介して受動的様式で及び/又は印加された電場により分極された誘電材料との接触を介して能動的様式で、摩擦電気的に帯電され得る。また、摩擦電気感受性材料は誘電材料であってもよく、これにより、ガス粒子の受動的及び能動的両方による帯電が可能となる。この方法によりシラン及びCO2を帯電させる重要性については後述する。
【0054】
材料間の摩擦電気帯電の機構は、当業者によく知られている。化学処理の技術分野において摩擦電気帯電は、静電荷の不注意な放電が起こり得るので、一般的には望ましくない効果として認識されている。これは、装置上の静電荷の蓄積を除去するために、化学処理装置の一部を接地することによりしばしば管理される。
【0055】
シラン及びCO2が混合チャンバ4に供給されると、2つのガスは、供給チャンバ6の開口部9に近接して開口部9を取り囲む混合領域12に向かって流れ、そこでガスは互いに混合して反応し始める。この反応により、後述するようにシリカが生成される。
【0056】
また、供給システムは、圧力や速度等が予め決められた条件下で、且つCO2に対するシランの適切な化学量論比で混合チャンバ4にシラン及びCO2を供給するように構成されている。予め決められた条件及びCO2に対するシランの化学量論比は、槽2に供給されるシラン及びCO2の圧力及び/又は温度を調整することにより制御される。混合チャンバ4は、シランとCO2との混合が起こり得るようにする注入口8、10a、10bと連通した密閉領域である。
【0057】
反応は、供給システムを介して供給されるシランの温度及び/又は圧力と、CO2の温度及び/又は圧力を調整することによっても制御され得る。例えば、供給されるCO2の温度及び/又は圧力の低下は、混合チャンバ4内におけるガスの流れについて所望の質量流量又は圧力を維持するために、供給されるシランの温度及び/又は圧力の上昇により補償され得る。このようにすることで、化学量論比、シラン及びCO2の流れのレイノルズ数並びにシラン及びCO2の反応が制御され得る。
【0058】
制御システム(不図示)は、混合チャンバ4内の混合ガスの化学量論比及び/又は圧力を監視するように構成されている。これは、混合ガスの質量流量及び/又は圧力及び/又は温度を監視し、混合ガスの所望の化学量論比及び/又は圧力を維持するために、供給されるシランの質量流量及び/又は圧力及び/又は温度を適宜調整することにより達成される。
【0059】
本実施形態では、シランの温度及び/又は圧力は、混合ガスの化学量論比及び/又は圧力を制御するために調整される。他の実施形態では、制御システムは、混合ガスの所望の化学量論比及び/又は圧力を維持するために、供給されるシラン及びCO2の少なくとも1つの質量流量及び/又は圧力及び/又は温度を適宜制御してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、混合チャンバ4は、混合チャンバ4内でCO2とシランの混合を促進するために、旋回翼及び/又はピントル及び/又はメッシュを有していてもよい。旋回翼、ピントル又はメッシュは、混合チャンバ4内のシラン及びCO2の静電帯電も容易にするため、摩擦電気感受性材料により構成されてもよい。
【0061】
シランとCO2との間に起こる反応について説明する。シランは自然発火性であるので、流体混合物の乱流が十分に高い場合には、酸化物と瞬時に自然発火反応を起こすことができる。言い換えれば、2つのガスが、上述したようにシラン及びCO2が混合チャンバ4に供給される際の質量流量を制御することにより決定される所定のレイノルズ数以上で互いに混合されると反応が起こる。このようにすることで、シランとCO2との間の衝突が起こって、シランがCO2と反応することが保証される。
【0062】
この反応は、二酸化ケイ素(シリカ)、水素、熱エネルギー及び初期酸化物の一酸化物(すなわち、酸素原子が酸化物から剥がされる)を生成する。これは、NO2が初期酸化物の場合には一酸化窒素(NO)、SO2が初期酸化物の場合には一酸化硫黄(SO)、CO2が初期酸化物の場合には一酸化炭素(CO)を与える。この反応は、一般的に次のように要約され得る。
(化1)
SiH4+2XO2=SiO2+2XO+2H2+E (1)
【0063】
ここで、Xは炭素、窒素又は硫黄を表し、Eはエネルギーの放出を表す。
【0064】
混合物が反応すると、シリカは一酸化物や水素のような化合物と反応して、特にその表面構造上にSi-C-R及び/又はSi-O-R結合を生成する(ここで、Rはメチル基、アルキル基、カルボニル基等のような有機官能基を表す)。これら結合を持つシリカの核生成及び凝集が起こり始めると、シリカ粒子の表面を覆うメチル基、アルキル基、カルボニル基等のような有機官能基を持つシリカが形成され、表面に疎水性等のような機能性を与える。言い換えれば、反応は、官能化されたシリカ、すなわち、官能化された化学基が取り付けられたシリカを生成する。取り付けられる官能化された化学基のタイプは、反応に用いられる酸化物のタイプ及び反応条件に依存する。
【0065】
本実施形態では、シランは二酸化炭素と共に用いられ、水素、シリカ、一酸化炭素及び熱エネルギーを生成する。
(化2)
SiH4+2CO2=SiO2+2CO+2H2+E (2)
【0066】
しかしながら、ガスが最初に混合するときに多くの中間反応が起こって、炭素、ケイ素、水及びその他の生成物が生成され得る。典型的な反応は、以下の通りである。
(化3)
SiH4+CO2=SiO2+C+2H2O (3)
(化4)
SiH4+CO2=Si+CO+2H2O (4)
【0067】
これらの生成物は、更なる反応に参加する前に一時的にしか存在しない。例としてナノ状態の炭素は、水蒸気と反応して水素及び一酸化炭素を形成し得る。
【0068】
これらの反応中、一時的な水素及び炭素化合物又はラジカルが生成され、これらも互いに結合してメチル基、アルキル基及びその他の官能基を生成することもあり、これらの官能基は生成されたシリカに結合して、以下で詳述するように、シリカに疎水性を付与することが可能な官能化されたコーティングを表面に形成し得る。
【0069】
図2bに示すように、この場合、表面に形成される有機官能基コーティングは主にメチル基であり、表面に疎水性を付与する。エチル基等の他の基も、表面に形成され得る。
図2aは、官能基がRで表されるシリカの模式図である。
【0070】
CO2が酸化物として使用される場合、一般的に形成される官能基は、アルカン、アルデヒド、ケテン又はエーテル等である。その他の官能基は、アルキン、アルコール、カルボン酸、エステル及び無水物等であるが、これらは稀である。条件や入手可能な材料によっては、可能性は低いがハロアルケン、アリール、エポキシド、ハロゲン化アシル等が生成され得る。
【0071】
二酸化窒素(NO2)が酸化物として使用される場合、生成され得る官能基は、窒化物、アミン及びアミドを含み得る。生成され得る他の官能基は、硝酸塩、ニトロソ、シアネート、イソシアネート、アゾ、イミン及びイミド、そして量は少ないがアジド及びニトロ化合物である。
【0072】
二酸化硫黄(SO2)が酸化物として使用される場合、生成され得る官能基は、チオール及びスルフィドである。生成され得る他の官能基は、ジスルフィド、スルホキシド、スルフェン並びにスルフィン酸、スルホン酸及びスルホン酸エステルの化合物、そして量は少ないがチオシアン酸塩、チアル酸塩、イソチオシアン酸塩及びチオケトンである。
【0073】
上記反応から生成されるシリカの粒子径は5-125nmであり、そのため、シリカはナノシリカと考えられる。この構成では、粒子径は、槽2内の電場の強さに影響される。3-9kVの範囲であり得る槽2内の電場は、帯電粒子及び/又は槽2の帯電の結果として発生する。そのため、粒子径は、槽2内の電場の強さを制御、例えば、後述する槽2の帯電の際に槽2に印加される電圧を制御することによって操作され得る。シリカ粒子と水素及び炭素粒子との間の衝突率は、核生成過程が終了した後の粒子の形状及び大きさを規定する。生成されたナノシリカの分子量の一例は約60.08gmol-1で、比表面積(SSA)は約40m2g-1、密度は18g/lである。
【0074】
シリカ上への官能化された化学基の形成(この構成ではメチル基のようなアルキル基)は、静電的に帯電されたシランとCO2及び/又は槽により起こる。このようなガスの帯電は、反応する混合ガスの電子密度を増加させ、二酸化炭素及びシランの結合をより容易に切断させ、シリカ、水素、炭素/炭素一酸化物を生成するように反応する。その結果、反応混合ガスの電子密度の増加により、シリカの外層は、疎水性のメチル基又は他の官能基で被覆される。
【0075】
シリカの凝集速度は、ガス及び/又は槽が静電的に帯電されている度合いに影響される。一般に、反応粒子に付与される静電荷の程度が大きいほど、シリカの凝集速度は大きくなる。疎水性シリカの疎水性及びシリカの粒度分布は、共にシリカが凝集する程度及び速度に影響される。従って、ガス及び/又は槽が摩擦電気的に帯電される程度を制御することにより、シリカのこれら側面をユーザの望むように制御することができる。この制御は、反応粒子に静電荷を付与するために使用される摩擦電気感受性材料の長さ及び/又は厚さ、例えば、供給チューブの長さ及び/又は厚さを調整することにより達成され得る。いくつかの構成では、この制御は、使用される摩擦電気感受性材料のタイプを調整することによっても達成され得る。
【0076】
上述したように、シラン及びCO2は、各々の貯蔵槽からそれぞれ反応物注入口8及び酸化物注入口10a、10bにシラン及びCO2を供給する供給チューブを介して、混合チャンバ4へと供給されるのに先立って摩擦電気的に帯電される。他の実施形態では、貯蔵槽の少なくとも1つは、供給チューブの代わり又は供給チューブに加えて、ガラス又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような摩擦電気感受性材料を有し得る。更に他の実施形態では、槽2は、供給チューブ及び/又は少なくとも1つの貯蔵槽の代わり又はそれに加えて、シラン又は他の反応生成物と化学的に反応しない誘電体のような摩擦電気感受性材料を有し得る。
【0077】
槽2だけが摩擦電気感受性材料を有する場合、シラン及びCO2粒子は、槽2の表面に接触及び擦れる際に摩擦電気的に帯電される。この構成は、摩擦電気感受性材料を有する供給チューブ及び/又は貯蔵槽と組み合わせて使用される場合に有益である。
【0078】
いくつかの実施形態では、槽2は、反応前及び/又は反応中に、電圧発生器を介する等して帯電される導電材料により形成されてもよい。この場合、槽2は、槽2が帯電される際に起こり得るスパークを防止するために絶縁を有し得る。場合によっては、絶縁は、導電材料から混合チャンバを分離する誘電材料である。誘電材料は、上述したように誘電材料が混合チャンバ4内の粒子に電荷を与えるように、導電材料が帯電すると分極される。このようにすることで、混合チャンバ4内のシラン及びCO2の静電帯電が達成(粒子がまだ摩擦電気的に帯電されていない場合)又は補足(粒子がすでに摩擦電気的に帯電されている場合)される。後者の場合、これは、疎水性シリカの生成効率を向上させる。或いは又は追加的に、場合によって槽2の内面は、混合チャンバ4内でシラン及びCO2の静電帯電を促進するために、誘電体のような摩擦電気感受性材料で被覆されてもよい。
【0079】
シリカへの有機基(この構成ではアルキル基)の付加は、有機外層が材料化学構造を典型的な親水性シリカのSi-OH基から変化させて材料構造を通った水の侵入を防ぎ、疎水性をシリカに付与する。
【0080】
シリカ上への疎水性メチル基の形成は、これから説明するように槽2の構成により補足される。上で説明したように、シランは供給チャンバ6を介して混合チャンバ4に供給され、供給チャンバ6は混合領域12にシランを流入可能とする開口部9を有し、混合領域12は供給チャンバ6の開口部9に近接すると共に開口部9を取り囲んでいる。CO2も、混合領域12に向かって流れるように混合チャンバ4に供給される。この領域において、シラン及びCO2は出会って混合し、反応し始める。
【0081】
シラン及びCO2との相対的な浮力により、反応で生成された水素及び一酸化炭素は、槽2の上端16に向かって流れる。そのため、水素及び一酸化炭素は、槽2の上端16と開口部9との間の領域14に捕捉又は含まれる。このようにすることで、反応混合ガスから生成された水素及び一酸化炭素は、反応混合ガスに近接して捕捉され、シランは、捕捉された水素及び一酸化炭素の下方で混合領域12に供給される。これは、上で説明したように、水素及び一酸化炭素が官能化されたシリカを生成するためのシリカ、水素及び炭素の核生成中に利用されるので、疎水性シリカの生成を容易にするのを助ける。いくつかの構成では、槽2は、捕捉領域から過剰な一酸化炭素及び水素を除去するための通気孔を含み得る。
【0082】
槽2の上端16と供給チャンバ6の開口部9との間の距離は、捕捉された水素及び一酸化炭素が反応混合ガスに適切に近接するように、槽2の製造中に最適化され得る。捕捉された水素及び一酸化炭素の位置は、混合チャンバ4に供給されるシラン及びCO2の質量流量、混合チャンバ4の寸法及び圧力並びに水素及び一酸化炭素に対する槽材料の透過性を制御することによっても影響され得る。
【0083】
上で説明したように、槽2及び混合チャンバ4は、ベル形状となっている。これは、混合チャンバ4に供給されたガスが混合チャンバ4の上端16付近に収束することを可能とする。他の実施形態では、槽2及び混合チャンバ4は、水素及び一酸化炭素が混合領域12に近接して含有されることを可能とする円筒形のような別の適切な形状であってもよい。
【0084】
疎水性シリカの生成は、酸化物注入口10a、10bの構成により供給されたCO2に引き起こされる乱流によって更に促進される。乱流での混合チャンバ4への酸化物の供給は、シランとCO2との間の衝突程度を大きくし、また、摩擦電気感受性材料を含む槽の場合には、良好な帯電のためにCO2と槽表面との間の接触量を増加させ、疎水性シリカの生成効率を高めることを保証する。
【0085】
上記実施形態においてシランは槽2の上端を介して供給されるが、代替的に、シランは供給チャンバ6の底部及び/又は側部から混合チャンバ4に供給されてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、供給チャンバ6が設けられていない。この場合、反応物注入口8は、混合チャンバ4内に延びていない可能性がある。このとき、シランは、槽2の上端16で混合チャンバ4に供給される。この構成は、シランが槽2の下端18に向かって降下してしまってCO2と反応するシランが少なくなるので、あまり好ましくない。
【0087】
いくつかの実施形態では、シラン及び酸化物の供給は、酸化物が注入口8を介して供給され、シランが注入口10a、10bを介して供給されるよう逆に為され得る。
【0088】
上記のように、二酸化炭素以外の酸化物、例えば、二酸化窒素が使用され得る。
(化5)
SiH4+2NO2=SiO2+2NO+2H2+E (5)
【0089】
この場合、表面に形成される有機官能基コーティングはアミン基である。
【0090】
槽2は、シランとCO2との間の反応に触媒効果を持つ材料を含む。混合チャンバ4がピントルを含む場合、そのピントルは、混合ガスと触媒材料との間の表面接触を増加させるために触媒材料を含んでもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、シランとCO2との間の反応速度を更に制御するために、不活性ガス又は触媒ガスのような1つ又は複数の追加ガスが槽2に注入される。CO2とのシランの反応速度は、槽2に供給される1つ又は複数の追加ガスに応じて増加又は減少され得る。この場合、槽2は、混合チャンバ4に1つ又は複数の追加ガスを供給する1つ又は複数の追加注入口を含む。例えば、槽2は、反応速度を増加させるために、窒素のような触媒ガスを供給するための追加注入口を含み得る。
【0092】
下端18は、重力が反応混合ガス(すなわち、シリカ、水素及び一酸化炭素)により生成された生成物の上端16から下端18への流れを促進するような向きで、槽2を支持するための表面を与え得る。
【0093】
生成物は、重力により促進されて上端16から下端18へと沈降する。シリカは、下端18に向かって沈降する際に更に衝突し、更なる凝集を引き起こし得る。場合によっては、槽2は、槽2の下端18への生成物の流れを積極的に促進するように構成されてもよい。例えば、槽2は、槽2の下端18に向かう生成物の流れを促進するために、下端18に接地された又は負に帯電した導電材料を含んでもよい。
【0094】
混合チャンバ4の下端18は、上端16付近の混合チャンバ4の寸法が下端18に向かうに連れて大きくなるように上端16よりも広くなっている。この結果、上端16と下端18との間に圧力差が生じ、上端16から下端18への生成物の流れが促進される。混合チャンバ4の上下端16、18の間の寸法が大きくなることにより、シリカの凝集も促進される。
【0095】
図3に示すように、槽2の下端18はプラグフロー反応器22に連結され、これと流体連通している。ここで、シリカ、水素及び一酸化炭素は、これら生成物を互いに分離するように配置された微粒子分離器24に到達するまでプラグフロー反応器を通って流れる。プラグフロー反応器22は、その中を流れる生成物(すなわち、シリカ、水素及び一酸化炭素)に乱流を誘導し、シリカのさらなる凝集を助ける。
【0096】
いくつかの実施形態では、槽2は、プラグフロー反応器及び微粒子分離器に連結されない場合がある。この場合、シリカ、一酸化物及び水素は、生成されたシリカの量が特定の閾値量に達すると槽2から除去される。言い換えれば、槽2からのシリカ、一酸化物及び/又は水素の除去は、例えば、シリカを捕捉するためにエタノールを用いた液体トラップを使用したバッチプロセスにより達成され得る。場合によっては、これらガスのすべては、互いに分離される。他の場合には、シリカが水素及び一酸化炭素から分離され、水素と一酸化炭素の混合物が生じる。このようなガスの抽出及び分離は、水素及び一酸化物(特に、一酸化炭素)が別々のガス又は混合物として様々な工業化学プロセスで利用可能な貴重な生成物であるので有用である。
【0097】
従って、本発明により説明されるシラン及び酸化物を反応させる方法は、所望の官能化されたシリカだけでなく、水素及び一酸化物という貴重な副生成物も与える。
【0098】
いくつかの構成では、槽2は、プラグフロー反応器の入力構造/部分であってもよい。この場合、帯電したシラン及び/又はCO2は、機能化シリカを生成するために混合チャンバと等価なプラグフロー反応器の入力部分に供給される。この構成は、シリカの大量生成を可能とするのに有益である。この場合、水素及び一酸化炭素は、シランとCO2との間の反応を促進するために、プラグフロー反応器に沿った1つ又は複数の場所で反応器に注入される。プラグフロー反応器の長さは、官能化されたシリカを生成するのに十分な反応及び凝集が起こるように最適化される。
【0099】
いくつかの実施形態では、混合チャンバ4の寸法変化によるシリカの凝集は、長さに沿った変化程度を調整することによって、すなわち、より狭い又はより広いベル形状の混合チャンバ4を有することによっても影響され得る。混合チャンバ4の寸法選択を介したシリカ凝集の制御は、以下で更に詳細に説明されるように利点である。
【0100】
槽2の設計パラメータ並びにシラン及びCO2の反応が起こる条件は、シリカの凝集に影響を与える。言い換えれば、設計パラメータ及び反応条件は、ユーザにより所望されるシリカのバリエーションを生成するために制御され得る。従って、他の実施形態では、槽2の設計パラメータ及び反応が起こる条件は、ユーザにより所望されるように、槽から抽出されるシリカの生成量を較正するために変更され得る。設計パラメータは、槽2の製造の間に決定され得る。
【0101】
上述したように、シリカの生成量を較正するのに使用される設計パラメータ及び条件は、混合チャンバ4の形状、チャンバ4の上下端16、18間の寸法差、チャンバ4の上下端16、18間の距離、供給されるシラン及び/又は酸化物の温度及び/又は圧力、チャンバ4内の温度及び/又は圧力並びにシラン及びCO2の化学量論比を含む。他の実施形態は、ユーザにより所望されるシリカの特定の生成量に応じて、上述した設計パラメータ及び/又は条件のいずれか異なる組み合わせ及び/又は程度を有し得る。
【0102】
場合によっては、追加のガスがシラン及び酸化物と共に混合チャンバ4に供給され得る及び/又はシラン及び酸化物が混合チャンバ4に供給される前に、槽2が他のガスでフラッシュされ得る。例えば、槽2が、シラン及びCO2が混合チャンバ4に供給される前に窒素でフラッシュされ得る及び/又は窒素が、シラン及びCO2と共にチャンバ4に供給され得る。これにより、生成されたシリカにユニークな窒素ベース結合構造が導入され、これは、例えば、赤外線(IR)検出を使用して検出され得る。このタイプのシリカは、セキュリティ産業で応用されている。このシリカで物品をコーティングすると、IR検出システムが、物品上のコーティング内のユニークな窒素ベース結合を検出することが可能となる。このようにすることで、コーティングが施されていない偽造品が識別可能となる。
【0103】
本発明の更なる実施形態について説明する。
図4aに示すように、槽40は混合チャンバ44を備える。混合チャンバ44は、シランを受け入れるための反応物注入口48と、酸化物ガスを受け入れるための酸化物注入口50と、を有する。注入口48、50は、それぞれ供給ライン48a、50aを介して、供給システム(不図示)から混合チャンバ44へのシラン及び酸化剤の供給を可能とする。反応物注入口48は複数の注入口であってもよく、或いは複数の酸化物注入口50があってもよい。
図4a及び4bに示すように、反応物注入口は、好ましくは酸化物注入口よりも僅かに高い。
【0104】
注入口48、50は、端部にガス出口を有する概ねJ字型のパイプ部を含む。J字型は、低圧及び低流量において非対称な流れを生む。これは、圧力差によってだけでなく内側ガラスカバー44の壁にぶつかるガスによっても混合も引き起こし、こすれを通じてだけでなくガスの旋回を通じた混合によっても材料を帯電させる。
【0105】
注入口パイプは、反応が進行するにつれて反応生成物に生成された電荷が注入口パイプに伝達され、流入してくる反応物(シラン及び酸化物)を前もって帯電させるように、少なくとも部分的に混合チャンバ44を通過している。
【0106】
注入口48は、混合チャンバ44を通過した後、シランを混合チャンバに向かわせるために折り返している。注入口50は混合チャンバ44の周囲を通り、J字型は、混合チャンバの底部の下を伸長して、酸化物ガスを混合チャンバに向かわせる。この配置は例示的なものであり、どちらか一方又は両方の注入口は、注入口48のように混合チャンバを通って通過する又は注入口50のように混合チャンバの外側を通過し得る。
【0107】
シラン及び二酸化炭素(又は他の酸化物)混合物(「SiTet-CO」)の自然発火特性は、自然発火反応が起こるのを保証するために、物理的なプレ混合法を必要とする。混合チャンバ44は、自然発火混合物を形成するためにガスが導入され得る空間を与える。自然発火混合物の性質上、チャンバ外側でのプレ混合は、プレ点火を防止するために望ましくない。また、それは、遅延爆発反応を引き起こす可能性の有る半安定混合物として知られる現象も引き起こし得る。
【0108】
チャンバ自体は、反応の制御を維持すると共に失火の危険を回避するために重要である。SiTet-COのような自然発火混合物は、混合しても全く発火しなかったり、遅延反応を起こしたり、自発的な爆発反応を起こしたりするという意味で半安定と言える。誤った段階での点火は、内燃機関における過早点火又は不完全燃焼と同様に、不完全燃焼又は望ましくない生成物を引き起こし得る。プレ混合チャンバは、ガスが混合されると即座に着火するように設計されている。
【0109】
チャンバ44は、平らな上面44aで示されているが、ドーム型又は他の形状でもうまく機能する。
【0110】
混合チャンバ44の材料選択は、触媒的に反応に影響を与えるので重要である。本実施形態では、ガラスが混合チャンバ44に使用されているが、他の材料が使用されてもよい。非導電材料は、チャンバの内容物の静電帯電による放電を避ける。また、非導電材料は、より大きな潜在的静電荷を付与する傾向がある。しかしながら、帯電及び放電を抑制するために導電部分の注意深い接地が望まれるものの、導電材料は依然として使用可能である。例えば、本実施形態では、注入口及び排出口の配管は金属であるが、ガラスであってもよい。
【0111】
絶縁材料に対するガスの摩擦作用(摩擦電気効果)は、反応の進行を助けるのに必要な望ましい静電荷を発生させるのに役立つ。また、絶縁材料は、反応が室温よりかなり高い温度(典型的には30-200℃)で行われるので、槽内の温度を維持するのにも役立つ。更に、絶縁材料は、偶発的な燃焼を避けるために水素を用いたシステムで重要な火花発生の危険も低減する。
【0112】
ステンレス鋼のような導電材料は使用可能であるが、これは、鋼表面の炭化を引き起こし得る。その初期形態では、鋼表面のクロムが反応を積極的にサポート又は触媒するが、時間が経過すると表面付近で大気中に存在するカルボニル基が、反応を阻害する炭化層によりゆっくりと表面を覆う。これは、ステンレス鋼にガラス又は同様のコーティングを施して鋼に電荷を供給することで軽減され得るが、反応器の製造を複雑にする。
【0113】
チャンバ44の寸法は、使用される反応物のパラメータ、例えば、シラン及び二酸化炭素の圧力及び流量に依存して適宜調整される。
【0114】
上述したように、混合物点火の制御は重要であり、特に反応器が始動したばかりやその他の特定状況下では、自然発火混合物が所望の時間に自発的に反応しないことがある。内燃機関では、確実な燃焼を開始及び維持するために、高比率の炭化水素又は「富んだ」混合物により始動することが好ましい。本発明では、運転開始時には低帯電構成、つまり、「乏しい」混合物である低比率のシランが開始に用いられるものの、一旦燃焼が起こるとずっと大きな電荷がシリカによってガラスに付与されるので、通常の混合物の使用が可能となる。
【0115】
シランと酸素の反応は、メインのSiTet-CO混合物の反応を開始するのに使用され得る、より信頼性の高い点火を可能にする傾向がある。これを可能とするため、点火開始のために酸素への制限されたアクセスを許可する小さなアクセスパイプ45が設けられている。これは、一旦反応が始まると閉ざされて制御された量の酸素の導入を可能とする、チャンバへのアクセスを制御するソレノイド又は同等のものにより制御される。
【0116】
酸素又は酸素を含む典型的な大気は、チャンバ44の上部に供給され、ガスの相対的な浮力によって二酸化炭素中で浮き上がって二酸化炭素の上に上昇する傾向のあるシランと相互作用する。これは、酸素がシランと反応することを可能とする。シランと二酸化炭素との反応を開始するシランと酸素との間の反応は、より信頼性が高く、自発的に始まる傾向がある。
【0117】
アクセスパイプ45を介した酸素の供給は、点火プラグのように作用する。アクセスパイプ45は、温度上昇を検知すると即座に閉じて反応を開始するように設計され、プランジャ式キャップは、アクセスパイプ45を通った固体生成物及び水素の流出を阻止するのに用いられる。温度プローブ49は、槽内の温度をモニタするために設けられている。注入された酸素の制御は、槽内において主反応物の点火タイミングの制御を可能とする。
【0118】
メイン還元チャンバ46は、混合チャンバ44及び注入口48、50を囲んでいる。これは、反応で形成された固体材料を収容する一方、反応が一定の容積内で制御されて外部大気から分離されることを保証するのに使用される。
【0119】
チャンバ46は、理想的には使用される燃料及び反応と触媒的及び熱的に適合する材料から作られる。例えば、金属材料からのチャンバ46の形成は、状況によっては、望ましくない量の一酸化炭素を放出する反応を引き起こす傾向がある。しかしながら、状況によっては、水素/一酸化炭素混合物の生成は、望ましい結果となることもある(上記反応参照)。上述したように、ステンレス鋼槽の表面は、反応にとって触媒的に有効であるが、炭化により後に害となり得る酸化物層を有する。理想的な状況では、反応は、ステンレス鋼の酸化物層(SS-Oのように表現される)から酸化物を借り、他の酸化物と置き換えることで反応を加速させる。しかしながら、酸化物は、次第に結合された炭素原子で置き換えられ(SS-C/SS-C-O)、更なる反応を阻害することで表面を害し得る。これは、金属への積極的な電気入力又はガラスのような異なる材料を使用することによって克服され得る。
【0120】
排出パイプ47aは、還元チャンバ46内の排出口47と接続されている。この排出口47は、反応中に生成されたガス(例えば、高温の水素)のチャンバ46からの排出を可能とする。また、排出口47は、他の固体生成物のチャンバ46からの除去も可能とする。ガス及び固体の混合物は、パイプ47aを経由してチャンバ46を出た後、チャンバが満たされると残存水素及び固体物を除去するエジェクタ真空システム62(
図6参照)に渡される。パイプ47aは、生成されたシリカを回収するために、複数の反応槽からの反応生成物をホッパーに供給する他の同様の排出パイプと合流され得る。生成された水素はシリカから分離され、水素は回収又は使用され、シリカは移動される。
【0121】
反応器はバッチプロセスで運転され、各サイクル後に生成された水素及び他のガス60は、排出パイプ47aを介して貯蔵タンク又は分離タンク(不図示)に移動される。生成されたシリカはチャンバ内に残るが、一部は、粒子径及び密度が低いのでガスと一緒に排出される。このようなシリカ材料は極めて低い密度を有し、流れるガスからの分離が難しい。槽は、水素が浮力により槽から流出して(特に高温時)チャンバ46内で材料が沈殿するように、サイクル間に静流又は一時的な無流を有するように構成される。いくつかのサイクルの後、シリカは、チャンバ内に蓄積して最終的にはパージされる必要がある。これは、エジェクタ真空システム62を用いて達成される。
図6に示すように、窒素ガス(又は他の好ましい不活性パージガス)は、ベンチュリ型の真空装置を含むエジェクタ真空システム62に供給され、該真空装置は、排出系を通して数サイクルに亘って生成された残存ガス及びシリカを含む内容物を引き込む。
【0122】
排出口から流出させるエジェクタ真空ユニット62がないと、槽内の水素濃度が上昇し、反応物の不均衡又は水素と接触している発火性ガスによる水素の発火へと繋がる。チャンバ46が、例えば、連続的な流れによりバッチプロセスでパージされないと、以前に生成されたシリカ材料が次の反応を妨害して、生成物の減少が引き起こされ得る。
【0123】
反応効率を最大化するために、反応槽は理想的には大気圧付近で運転され、反応物は大気圧より少し高い圧力で注入される。
【0124】
反応終了後、反応槽は、生成された残存爆発性水素及び一酸化炭素生成物を排出するために、好ましくは二酸化炭素を用いてパージされる。
【0125】
反応チャンバに供給されるガスの流量は、反応生成物の特性を操作するために調整され得る。高流量は、元素状ケイ素が多くてシリカが少ない生成物が生成されるようにシリカ生成を変化させる傾向がある。温度も、高流量では200℃を超えて上昇する傾向がある。高流量では、生成された水素は燃焼される傾向がある。200℃又はそれ以上の高温で操作することで、システムは、シリカに富んだケイ素を製造すると共に、蒸気発生熱交換器を介して電力を生成するのに用いられ得る。
【0126】
反応物は、反応槽に連続的に加えられる。まず二酸化炭素が投入され、次にシランが投入される。反応物は別々に投入され得るが、一般的には連続的に投入する方が効率的である。これは、失火の危険を低減するのを助け、シランを排出する可能性を避ける。これは、酸化剤からの余分な流れによって炎が効率的に燃え上がる又は自然発火反応が維持できないことにより起こり得る。
【0127】
上記の実施形態では、プラグフロー反応器と共に使用される場合は別として、反応チャンバは、反応物がチャンバに導入され、反応が行われ、次いで反応生成物が更なるサイクル準備のために除去されるというバッチ処理様式で動作する傾向がある。これら反応槽のいくつかは、バッテリ又は反応槽のバンクとして並列に動作するように配置され得、それぞれが反応を実行し、その後パージされるように動作する。これらバンクのいくつか(「バンク」が単一の反応槽を含む場合であっても)は、各バッテリが他のバンクと同期せずに動作する状態で、共に動作するように接続され得る。
【0128】
例えば、100ユニットの3バンクは、3分サイクルで運転し得る。システムが一度に稼動すると、熱の爆発、シリカの爆発及び水素の爆発が起こる。これは、システム全体に高圧供給するための設計、起動を停止するシステム、すなわち、CO2及び水素に対する蓄積ポイントのための設計、より危険な量の可燃性ガスの取り扱い増加を意味する。1分遅延ステージのサイクリングに対し、3つのバンクは、少ない危険でバーストよりもむしろ連続的な出力で、3分に亘って同じ出力を与える。これは、現在のCO2生成システムとの統合において重要となり得る。
【0129】
このようにして、1つのバッテリが反応している間、次のバッテリは反応生成物をパージし、3つ目のバッテリは次サイクルのために反応チャンバを準備する。このようにすることで、システム全体は、バンクがバッチ様式で動作しているとしても、ほぼ連続的な生成サイクルを提供するように動作し得る。これは、反応生成物が周期的様式ではなく、より連続的な様式で生成されるのを可能とする。
【国際調査報告】