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  • 特表-平面状構造体の製造方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】平面状構造体の製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/00 20210101AFI20240604BHJP
   B22F 10/10 20210101ALI20240604BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20240604BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20240604BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240604BHJP
   H01F 3/02 20060101ALI20240604BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240604BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240604BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B22F3/00 A
B22F3/00 B
B22F10/10
B22F7/04 D
B22F3/24 B
H01F41/02 B
H01F3/02
B33Y30/00
B33Y10/00
H02K15/02 F
H02K15/02 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567872
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022056212
(87)【国際公開番号】W WO2022233480
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】21172177.4
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】デンネラー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ソレル,トーマス
【テーマコード(参考)】
4K018
5E062
5H615
【Fターム(参考)】
4K018BA13
4K018BD01
4K018BD04
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018FA08
4K018KA43
4K018KA44
5E062AC01
5E062AC11
5E062AC20
5H615AA01
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS05
5H615SS26
(57)【要約】
本発明は、平面状構造体(2)の製造方法であって、
-スクリーン印刷法(4)による支持基板(10)の表面(8)への構造体(2)のグリーン体(6)の印刷、
-前記支持基板(10)からの前記グリーン体(6)の分離、及び
-前記グリーン体の前記平面状構造体への変換のための前記グリーン体の熱処理
の工程を含み、前記支持基板(10)の温度制御が、前記グリーン体(6)の下の前記支持基板(10)の表面(8)において温度勾配(14)-ここで、前記温度勾配(14)は、表面平面(16)に沿って少なくとも0.5K/mmであり前記表面平面(16)において少なくとも10mmの範囲(17)を有する-が生成されるように、実行されることを特徴とする方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状構造体(2)の製造方法であって、
-スクリーン印刷法(4)による支持基板(10)の表面(8)への構造体(2)のグリーン体(6)の印刷、
-前記支持基板(10)からの前記グリーン体(6)の分離、及び
-前記グリーン体の前記平面状構造体への変換のための前記グリーン体の熱処理
の工程を含み、
-前記グリーン体(6)の下の前記支持基板(10)の表面(8)において温度勾配(14)が生成されるように、前記支持基板(10)の温度が制御され、
-前記温度勾配(14)は、表面平面(16)に沿って少なくとも0.5K/mmであり、
-前記表面平面(16)における前記温度勾配(14)の範囲(17)は少なくとも10mmである
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記温度勾配(14)が、前記グリーン体(6)によって覆われた表面(8)上に延在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度勾配(14)が交互となり、前記表面平面(16)において少なくとも10mm延在した後に第2の温度勾配(14’)が生成され、これが前記第1の温度勾配(14)とは反対の符号を伴って延在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記表面(8)と前記グリーン体(6)との間に付着促進層(18)が塗布されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持基板(10)の前記表面(8)の平均粗さRaが0.5μm未満であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記平均粗さRaが0.2μm未満、特に好適には0.09μm未満、であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記温度勾配(14)を生成するための温度制御要素(20)が前記支持基板の下に配置されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記温度制御要素(20)がペルチェ素子(22)であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記グリーン体(6)を印刷した後に前記支持基板(10)上で前記グリーン体(6)の乾燥工程(24)が実行されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法によって製造された複数の平面状構造体(2)が交互に積層されて三次元構造体(26)を形成する三次元構造体の製造方法。
【請求項11】
前記三次元構造体(26)が電気機械用の積層コア(28)であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行するための装置であって、スクリーン印刷工程(4)によってグリーン体(6)を塗布するための表面(8)と前記表面(8)とは反対側の基板底面(30)とを有する支持基板(10)を備え、温度制御要素(20)が前記基板底面(30)の上に又はその内部に配置されることを特徴とする、装置。
【請求項13】
前記温度制御要素がペルチェ素子(22)又は流体流路(32)であることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による平面状構造体の製造方法及び該方法を実施するための請求項12による装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷又はステンシル印刷は、例えば電気機械用の電磁鋼板などの平面状構造体の製造のための新しい方法である。この場合、金属粉末から出発して、最初に印刷ペーストが作られ、次に、これがスクリーン印刷技術及び/又はステンシル印刷技術によって加工されて厚い層のグリーン体が得られ、次いで、得られたグリーン体は、バインダー除去及び焼結のような熱処理によって、金属的に構造化された構成部品-以下、平面状構造体と称する-に変換される。このような平面状構造体は、例えば電磁鋼板であり、複数の電磁鋼板を積層して電気機械用の磁性鉄板積層体が得られる。このタイプの方法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
スクリーン印刷法又はステンシル印刷法による形成工程では、グリーン体は支持基板上に印刷され、その場合、欠陥のない印刷画像を保証するためには、印刷ペーストの基板上での良好な濡れとそれによる接着が望ましい。次に、熱処理の前に、グリーン体を支持基板から分離する必要がある。支持体とグリーン体との結合の解除は、厚さが一般的に約100μmのグリーン体は、過大な又は不利な力が作用すると容易に損傷を被る可能性があるので、重要な処理工程である。グリーン体は、その機能成分、例えば鉄粒子、に加えて、本質的にポリマーを基にしたマトリックス及び充填剤粒子を含んでいるので、それ自体は取り扱い可能であるが、損傷し易い。即ち、グリーン体は、加えられた機械的応力によって容易に亀裂を誘発する可能性があり、この亀裂は、次なる工程において、それから作られる平面状構造体の寸法安定性又は無欠陥性に関して不利に作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/099052A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術と比較して信頼性のより高いプロセス技術を提供すること、及び、平面状構造体製造時の不良品率を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって、そして、該方法を実施するための請求項12に記載の装置によって達成される。
【0007】
請求項1に記載の方法は、以下の工程を有する:
-スクリーン印刷法により、支持基板の表面に構造体のグリーン体を印刷する工程、
-支持基板からグリーン体を分離する工程、
-グリーン体を熱処理して、グリーン体を平面状構造体に変換する工程。
【0008】
この方法は、以下の特徴を有する。即ち、
-グリーン体の下の支持基板の表面において温度勾配が生成されるように、支持基板の温度が制御されること、
-その温度勾配は、表面平面に沿って少なくとも0.5K/mmであり、表面平面において少なくとも10mmの広がりがあること。
【0009】
平面状構造体は、その高さの広がりよりも伸展面の広がりの方が実質的に大きい本質的に平坦な薄板状の構造体である。グリーン体は、後に行なわれる熱処理のための準備体を意味する。グリーン体は、それ自体、一般的に機械的に自立型であり、限られた範囲で機械的に荷重をかけることができる。熱処理、特に焼結工程の形の熱処理、により、グリーン体は焼結体に変換される。焼結工程では、溶融工程とは異なり、グリーン体の中の個々の粒子が、拡散プロセスにより、凝集性の材料結合的な組織を形成する。上述した熱処理及びそれにより生じる機械的安定性に基づき、平面状構造体について説明する。
【0010】
スクリーン印刷法は、ペーストが、例えばスキージー(Rakel)によって、基板に塗布され、通常70μm~150μmの範囲の厚さを有する層が形成される方法である。ペーストは、ステンシルを使用して透明に保たれた被覆されていない特定の領域にのみにおいて、基板上に印刷される。ペーストは、通常はスクリーンを介して印刷されるが、このことは必要不可欠ではない。スクリーンを使用しないステンシル印刷も、スクリーン印刷法という定義に含まれる。
【0011】
支持基板は、可能な限り平滑な表面を有する自立形の構造体である。その表面は、その上にグリーン体を印刷する目的で設けられており、所望により、その表面とグリーン体との間に、例えば付着促進層の形態の、もう一つの薄い層を塗布しておくことができる。この場合も、グリーン体が支持基板の表面に印刷されている、と言われる。この支持基板は、上述の表面を有する基板本体に加えて、フレーム、支持プレート及び/又は温度制御要素のような更に別の要素を有することもでき、これらは適切に互いに結合されている。支持基板の表面は、可能な限り平坦な表面平面内に延在している。
【0012】
上述の方法により、グリーン体を支持基板から確実に且つ手際よく分離することが可能になる。基板とグリーン体の熱膨張係数が異なるので、グリーン体と支持基板表面との間の表面平面に沿った温度勾配により、引張応力及び/又は圧縮応力及び/又は剪断応力が発生し、これらが基板からのグリーン体の分離を支援する。この場合、温度勾配に関してそしてその範囲に関して上述した数値範囲によって、これらの引張応力、圧縮応力及び剪断応力の強度は、表面からのグリーン体の分離をしっかりと支援するがグリーン体自体の損傷が生じないように、選択される。
【0013】
この温度勾配は少なくとも10mmの距離に亘って延びている。この温度勾配を形成するためには、さまざまな選択肢がある。一つには、温度勾配がグリーン体の下の支持基板の表面平面全体に亘って可能な限り遠くまで延びていると、技術的に容易に実現可能である。即ち、1つの起点、例えば、グリーン体が支持基板上でその平面的な拡張を開始する点、が存在する場合には、その温度勾配は、そのグリーン体の反対側端部まで継続することができる。例えば、グリーン体の範囲が200mmである場合、この範囲に亘る温度勾配の絶対値は100Kである。この温度範囲に亘ってグリーン体の下に発生する引張応力、圧縮応力及び剪断応力は、グリーン体を分離するのに適している。原則として、70K~150Kの間の温度勾配が上述の効果を達成するのに好適である。
【0014】
しかしながら、グリーン体が、その性質上、上述の引張応力、圧縮応力及び剪断応力の影響を受け易い場合には、そのグリーン体の範囲に亘って表面平面において交互の温度勾配を発生させることが好都合であり得る。即ち、この交互の温度勾配は少なくとも10mmに亘り、少なくとも次の10mm後(即ち、少なくとも20mmの総延長の後)は反対の符号で続き、次いで、例えば次の10mm後に再び元の符号を採ることができる。このようにして、異なる膨張係数によって局所的な引張応力、圧縮応力及び剪断応力が誘起され、この場合、絶対的な温度勾配は比較的小さく保たれる。このようにして、特に表面積が大きいグリーン体の場合、場合によってはグリーン体の内部特性に影響を及ぼす可能性のある過大な絶対温度変動が、温度勾配に沿って、生じることが防止される。交互の温度勾配の場合には、上述の10mmという間隔は、所望の効果が技術的にも容易に実現可能な下限である。これらは、より大きく選択することもでき、特に交互の温度勾配の場合には、上述の0.5K/mmより大きく、例えば1K/mmと、することもできる。
【0015】
支持基板の表面の平均粗さRaが、0.5μm未満、特に好適には0.2μm未満、更に特に好適には0.09μm未満、であると好適である。算術平均粗さ値(平均粗さとも呼ばれる)の略号Raは、DIN EN ISO 4287:2010に従って標準化されている。この測定値を求めるために、定義された測定セクションに亘って、表面を走査し、表面の全ての山と谷の差を記録する。測定区間に亘るこの粗さ曲線の定積分を計算した後、次にその結果が測定区間の長さで除算される。
【0016】
支持基板の非常に平滑な表面は、上述の温度勾配を用いる方法に加えて、表面からのグリーン体の分離し易さを支援する。表面が細かいほど、グリーン体を再び分離し易くなる。他方、印刷ペーストを印刷する際には、印刷ペーストが支持基板の表面にも付着することが必要であり、そのため、支持基板の表面とその上に印刷されるグリーン体の表面との間の付着促進層の塗布が効果的となる。このような背景から、支持基板の表面にグリーン体を印刷するという請求項1記載の特徴は、支持基板の表面とグリーン体との間に更に上述の付着促進層をも設けることができることを意味すると解すべきである。
【0017】
温度勾配を発生させるためには、支持基板の下に温度制御要素を配置することが有効である。これらの温度制御要素は、好ましくはペルチェ素子である。しかし、原理的には、支持基板の下に又は支持基板の下部領域内部に複数の流路を配置することも有効であり、この流路内を支持基板の温度を制御するための流体が流れる。
【0018】
更に、グリーン体を印刷した後に、支持基板上でグリーン体の乾燥工程が行なわれると効果的である。支持基板上でのグリーン体の乾燥は、また、グリーン体の分離を容易にし、グリーン体を分離した後の乾燥よりも有利である。
【0019】
更に、上述の方法によって複数の平面状構造体を製造し、これらを互いに積層して三次元構造体を形成すれば有利である。これは、電気機械用の積層コアの構成にとって特に有利である。この場合、これらの平面状構造体は、電磁鋼板として形成されている。
【0020】
本発明のもう一つの構成要素は、上記の実施形態のいずれかによる方法を実施するための装置である。この装置は、スクリーン印刷法によってグリーン体を塗布するための表面及びこの表面とは反対側の基板底面を有する支持基板を備えており、この基板底面上に又は基板底面内部に温度制御要素が配置されている。説明した装置は、上で説明した方法に関連して既に述べたのと同じ利点を有する。これらの温度制御要素がペルチェ素子の形態又は流体流路の形態で設計されていると好適である。
【0021】
本発明の更なる利点及び更なる特徴を、以下の図を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1a】平面状構造体を作るための基本的な概略フロー
図1b】平面状構造体を作るための基本的な概略フロー
図1c】平面状構造体を作るための基本的な概略フロー
図2a図1aの枠IIの可能な実施形態の1つの詳細図
図2b図1aの枠IIの可能な実施形態の1つの詳細図
図3】スクリーン印刷用ステンシルを備えた支持基板の上面図
図4】グリーン体が印刷された支持基板の上面図及び温度勾配を示す図
図5図4に類似であるが、異なる温度勾配を有する図
図6図4に類似であるが、半径方向の温度勾配を有する図
図7】典型的な平面状構造体の三次元表示
図8】複数の平面状構造体からなる電気機械用積層コアの形態の三次元構造体
図9】電気機械用ロータとしてシャフトに装着された図8と同様の積層コア
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1では、平面状構造体2を製造するための個々の方法工程が、その部分図a)、b)及びc)に示されている。図1a)ではスクリーン印刷法4が模式的に記載されており、ここでは、グリーン体6がスキージ34によって支持基板10上に印刷される。ここでは、印刷用ステンシル38(図3参照)を介してスキージ4が(ここでは表わされていない)印刷ペーストを押圧し、グリーン体6が支持基板の表面8に付着する。印刷用ステンシル38は、図3に従って印刷フレーム36内に取り付けられており、この印刷フレーム36内にスクリーンを張ることができるが、これはここでは示されていない。(ここには示されていない)このスクリーンは、印刷ペーストを支持基板10の表面8上に均一に分布させる働きをする。スクリーンを使用するかどうかは、印刷ペーストのレオロジー特性に依存する。従って、「ステンシル印刷」という用語は、ここでは、一般的な「スクリーン印刷」という総称に含まれる。
【0024】
一方では、上述の方法に関する課題は、印刷されたグリーン体の分離を可能な限り簡単にすることである。しかし、他方で、グリーン体が印刷されるときに基板の表面8に良好に付着する必要もある。この目的のために、印刷ペーストに応じて、しばしば付着促進層18が塗布される(図2(a)、図2(b))。この実施形態における表面8は、平均粗さRaが0.3μmの研磨された金属表面である。
【0025】
次に、図1b)により、乾燥工程24が実行され、この有利な実施形態では、グリーン体6を備えた支持基板10の上方に乾燥装置40が配置される。この乾燥装置40は、例えば赤外線ヒーターとすることができる。
【0026】
次に、図1c)において、連続炉42の形態の熱処理炉が模式的に示されている。この連続炉42は加熱室43を有し、支持基板から分離されたグリーン体6は、この加熱室を通ってコンベヤベルト44上を搬送され、焼結プロセスの形態の熱処理プロセスに供される。加熱室43から出た後のグリーン体6は、平面状構造体2と呼ばれる。この連続炉42は、より低温であって、グリーン体のバインダー除去又は追加の乾燥に寄与し得る領域を含むこともできる。
【0027】
部分図1b)と1c)との間で、支持基板10の表面8からのグリーン体6の分離が行なわれる。グリーン体6を分離するための手段について、図2で2つの異なる代替手段について説明する。温度制御要素20は、支持基板10の基板底面30に又は基板底面内部に取り付けられている。図2a)では、温度制御要素20は、底面30に配置されたペルチェ素子22の形態で設計されている。この場合、ペルチェ素子22の各々は、非常に特定の温度を、支持基板10に、更にその表面8上に、又は支持基板10に対して垂直に見てその表面平面16に、導入することができるように、制御することができる。各ペルチェ素子22は、電気的制御によって異なる温度を発生することができるので、表面平面16において温度勾配14を生成することができる。複数の異なる温度勾配14及びその形状を、図4~6において例として説明する。
【0028】
温度制御要素20の代替実施態様が、図2b)において、流体流路32の形態で示されている。流体流路32は、支持基板10の底面30の内部に組み込まれている。流体流路32は、温度勾配14の形状に応じて、例えば、蛇行状に又は円形状に走っている。例えば、或る温度勾配14は、この流体流路32に特定の温度を有する流体を導入することによって、生じさせることができる。というのは、この流体は、蛇行する流体流路32を通過するときに支持基板10に熱を連続的に放出し、その結果、その温度が段々と低くなるからである。しかしながら、基本的には、異なる温度を有する複数の流体を目的に合わせて供給して表面平面16において温度勾配14を生成するために、複数の流体流路32から成る複数の別々の流路システムを導入することも好都合である。
【0029】
図4は、温度勾配14の1つの形状を示す。ここでは、この温度勾配14は、支持基板10の表面平面16において、グリーン体6の一端から他端まで延びている。これは、温度勾配14の伝播の単一の目標方向である。グリーン体6の直径又は寸法が比較的小さい場合には、0.5K/mmの温度勾配で、表面平面16全体に亘って比較的大きい絶対温度勾配を達成することができる(この場合、達成すべき温度勾配は70K~150Kである)。グリーン体6の直径が例えば150mmの場合、その寸法17に亘る温度勾配14は、勾配が0.5K/mmの場合には、75℃である。グリーン体6の下の表面8の温度が温度勾配の起点において例えば20℃である場合、反対側の端部における温度は95℃である。どちらの温度も、支持基板10とグリーン体6の膨張係数が異なることによる適切な引張応力、圧縮応力又は剪断応力を生じさせ、支持基板10からのグリーン体6の分離を容易にするのに、適している。同一のグリーン体では、温度勾配14が0.7K/mmの場合には、温度差の絶対値は105Kとなる。
【0030】
更に、上述の温度勾配14及びその場合に生じる絶対温度は、グリーン体6の機械的特性にとって無害である。しかし、グリーン体がより大きい場合、例えば直径が250mmの場合、には、勾配が0.5K/mmでは175℃の温度差が発生する。これは、グリーン体の構造変化を生じさせる可能性がある。
【0031】
その場合には、図5に示すように、交互の温度勾配14、14’を適用することが好都合であり、この交互の温度勾配はそれぞれ好ましくは10~20mmの範囲を有し、その後、図5に示されるように、符号を変えて同じ方向に更に延びている。この交互の温度勾配14、14’は、基板表面8上の絶対温度差、ひいてはグリーン体6の熱負荷、が低く保たれるという利点を有する。勾配14又は14’の範囲17が30mmである場合、30°Kの絶対温度差が支配的である。図5によるこの温度勾配14及び14’は、もちろん大きくすることができるので、例えば温度勾配が4K/mmの場合には、ここで説明される範囲17において、同様に70~150℃の範囲の温度勾配が形成される。ここで説明するすべての例において、温度勾配14及び14’の設計は、常に、支持基板10に使用された材料及び製造されたグリーン体6の膨張係数に基づいて適合させることができる。支持基板の材料としては、一般的には、研磨された金属ディスク、例えばステンレス鋼ディスク、が使用される。
【0032】
温度勾配14及び14’の代替実施形態を図6に示す。この温度勾配14及び14’は、図5と同様に、交互に設計されているが、グリーン体の中心からその外側に延びる同心円の形状となっている。
【0033】
上述の温度勾配は、基板からのグリーン体6の確実な分離に役立つ。しかし、一般的には更に機械的助力も必要である。支持基板10の表面8からのグリーン体6の分離は、上述の温度勾配14ばかりでなく、他の補助手段、例えば、真空グリッパー又は電磁グリッパーによって、更に、吸引ローラによって又は例えばワイヤ若しくはナイフのような分離装置によって、補助することができる。
【0034】
図7に、上述の方法によって製造され、磁性鉄板29の形に設計された平面状構造体2を、例として示す。これらの複数の磁性鉄板29が積層されて、図8に示すように、積層コア28の形の三次元構造体26が形成される。このような積層コア28が、次にシャフト46に取り付けられて、電気機械(図示せず)のロータが形成される。
【符号の説明】
【0035】
2 平面状構造体
4 スクリーン印刷法
6 グリーン体
8 表面
10 支持基板
12 熱処理
14 温度勾配
16 表面平面
17 温度勾配Tの範囲
18 付着促進層
20 温度制御要素
22 ペルチェ素子
24 乾燥工程
26 三次元構造体
28 積層コア
29 磁性鉄板
30 基板底面
32 流体流路
34 スキージ
36 印刷フレーム
38 印刷用ステンシル
40 乾燥装置
42 連続炉
43 加熱室
44 コンベヤベルト
46 シャフト
図1
図2a)】
図2b)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状構造体(2)の製造方法であって、
-スクリーン印刷法(4)による支持基板(10)の表面(8)への構造体(2)のグリーン体(6)の印刷、
-前記支持基板(10)からの前記グリーン体(6)の分離、及び
-前記グリーン体の前記平面状構造体への変換のための前記グリーン体の熱処理
の工程を含み、
-前記グリーン体(6)の下の前記支持基板(10)の表面(8)において温度勾配(14)が生成されるように、前記支持基板(10)の温度が制御され、
-前記温度勾配(14)は、表面平面(16)に沿って少なくとも0.5K/mmであり、
-前記表面平面(16)における前記温度勾配(14)の範囲(17)は少なくとも10mmである
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記温度勾配(14)が、前記グリーン体(6)によって覆われた表面(8)上に延在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度勾配(14)が交互となり、前記表面平面(16)において少なくとも10mm延在した後に第2の温度勾配(14’)が生成され、これが前記第1の温度勾配(14)とは反対の符号を伴って延在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記表面(8)と前記グリーン体(6)との間に付着促進層(18)が塗布されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持基板(10)の前記表面(8)の平均粗さRaが0.5μm未満であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記平均粗さRaが0.2μm未満であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記温度勾配(14)を生成するための温度制御要素(20)が前記支持基板の下に配置されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記温度制御要素(20)がペルチェ素子(22)であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記グリーン体(6)を印刷した後に前記支持基板(10)上で前記グリーン体(6)の乾燥工程(24)が実行されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法によって製造された複数の平面状構造体(2)が交互に積層されて三次元構造体(26)を形成する三次元構造体の製造方法。
【請求項11】
前記三次元構造体(26)が電気機械用の積層コア(28)であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行するための装置であって、スクリーン印刷工程(4)によってグリーン体(6)を塗布するための表面(8)と前記表面(8)とは反対側の基板底面(30)とを有する支持基板(10)を備え、温度制御要素(20)が前記基板底面(30)の上に又はその内部に配置されることを特徴とする、装置。
【請求項13】
前記温度制御要素がペルチェ素子(22)又は流体流路(32)であることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【国際調査報告】