(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】センサを備え、流体中に存在する分析対象物を分析するための電子デバイス、およびセンサを交換する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/45 20060101AFI20240604BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240604BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20240604BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20240604BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G01N21/45 A
G02B6/42
G02B6/125 301
G02B6/32
G01N33/53 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570236
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 FR2022050586
(87)【国際公開番号】W WO2022238630
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522276459
【氏名又は名称】アリバル
【氏名又は名称原語表記】ARYBALLE
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シャヴィニェ,ティエリ
(72)【発明者】
【氏名】パディオロ,ヴァンサン
【テーマコード(参考)】
2G059
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059CC12
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE09
2G059GG01
2G059JJ17
2G059KK01
2H137AA14
2H137AB11
2H137BA34
2H137BA46
2H137BA48
2H137BB02
2H137BB12
2H137BC01
2H137DA07
2H137DA39
2H147AA02
2H147BD04
2H147BE01
2H147BE13
2H147BG04
2H147CA08
2H147CD04
2H147DA02
2H147DA08
2H147DA10
(57)【要約】
本発明は、流体中に存在する分析対象物(2)を分析するための電子デバイス(1)であって、光ガイド(13)を含むフォトニックチップ(12)を含むセンサ(10)であって、受容体(14)が流体中に存在する分析対象物と相互作用し、相互作用が局所的特性変化を引き起こすように配置されている、センサ(10)と、センサ支持体(50)と、閉鎖要素(60)と、局所的特性変化を、局所的特性変化を表す電子信号に変換することができ、光源(130)と光検出器(131)とを含む局所的特性変化変換器とを備え、光ガイドは、結果として得られる光ビームが導かれる干渉アーム(134)を備え、干渉アームに導かれる光ビームの放射パワーは、0.2μW以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に存在する分析対象物(2)を分析するための電子デバイス(1)であって、
フォトニックチップ(12)とキャップ(15)とを有し、消耗品であって交換可能なセンサ(10)であって、前記フォトニックチップ(12)が、流体中に存在する分析対象物と相互作用することができる一時的な受容体(14)が配置される光ガイド(13)を含む少なくとも1つの測定チャンバ(11)を含み、前記相互作用が局所的な特性変化を引き起こし、前記光ガイド(13)が光入口(135)および光出口(136)を含み、前記キャップ(15)が、前記フォトニックチップと一体であり、前記測定チャンバ内に流体を導入し前記測定チャンバから流体を排出するのに適した開口(16a、16b)を含む、センサ(10)と、
前記センサが可逆的に配置されることが意図されるハウジング(51)を含むセンサ支持体(50)と、
前記センサ支持体と協働して前記センサを封入する閉鎖要素(60)と、
前記受容体と前記分析対象物との間の相互作用によって引き起こされる局所的特性変化を、前記局所的特性変化を表す電子信号に変換することができる局所的特性変化変換器と、を備え、
前記変換器は、
一方ではコヒーレント光ビーム(129)を前記フォトニックチップの前記光ガイド内に放出することができ、他方では前記センサの前記キャップ上または前記閉鎖要素上に位置するコヒーレント光源(130)と、
前記光ガイドの前記光出口に面して配置され、前記光ガイドの前記出口において、前記局所的特性変化に応じて前記光ビームの光学パラメータを測定することができる光検出器(131)と、を含む、電子デバイス(1)。
【請求項2】
前記光ガイド(13)は、前記光源によって放射された光ビームの一部が全内部反射によって導かれることを意図する参照アーム(132)と、前記光源によって放射された光ビームの他の一部が全内部反射によって導かれることを意図し、前記受容体(14)が配置された測定アーム(133)とを含む少なくとも一つの分岐(137)を備え、
前記参照アーム(132)および前記測定アーム(133)は、前記参照アームに導かれた光ビームの一部と前記測定アームに導かれた光ビームの他の一部とを再結合する結果として生じる光ビームが導かれることを意図する干渉アーム(134)に再結合され、
前記干渉アーム(134)に導かれる結果として生じる光ビームの放射パワーは、0.2μW以上である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記結果として生じる光ビームは前記分岐の干渉アームから発せられ、これらの干渉アームは場合によっては少なくとも1回サブアームに分割され、前記光検出器において、特定の光強度分布(点)(以下、「分布」と呼ぶ)のマトリクスを生成し、各分布は好ましくはグレースケールの光スポットによって表される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記光源は、前記センサの前記キャップ上に位置しており、
前記光源が配置された前記キャップ上にエッチングされた電子トレース(128)と、
前記閉鎖要素上の電子回路(127)と、
前記光源に電力を供給するために、前記電子トレースを前記電子回路に接続することを可能にする電気接触器(126)と、を含む請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記光源は、前記閉鎖要素上に配置され、前記光ビームをコリメートするように意図された少なくとも1つのレンズを好ましくは含む光学系を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記センサが、前記センサ支持体の前記ハウジング内に前記センサが配置される前に活性化され、前記センサ支持体のハウジング内への前記センサの配置によって非活性化されるように構成された、前記一時的な受容体のための保護部材を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記測定チャンバ110を画定する前記キャップ150が、前記フォトニックチップ120の下に、特に、前記測定チャンバ110に面するその機能的に活性な下面121の下に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
コンピュータによって有利に実施される第1校正法を、少なくとも第1の検出の間に実行することを可能にする手段を備え、
この第1校正法は、
(i.1)前記光検出器に形成される画像に含まれる、グレースケールの光スポットからなる分布(点)のマトリクス上の、最も高いグレースケールを有する前記光スポットを識別する工程と、
(ii.1)この光スポットを基準とする工程と、
(iii.1)前記光検出器の前記露光時間、すなわち、基準光スポットが、少なくとも所定のグレースケールNg°に等しい、またはグレースケール範囲[Ng
1-Ng
2]内に含まれるグレースケールNgを有するように、前記光検出器が前記特定光強度分布を測定する持続時間を調整する工程と、から実質的になる、請求項3~7の少なくとも1項に記載のデバイス。
【請求項9】
少なくとも前記第1の検出の間に、コンピュータによって有利に実施される第2校正法を実行することを可能にする手段を備え、
この第2校正法は、
(i.2)前記光検出器に形成される画像に含まれる、グレースケールの光スポットからなる分布(点)の前記行列において、最も高いグレースケールを有する前記光スポットを識別する工程と、
(ii.2)この光スポットを基準とする工程と、
(iii.2)前記光検出器の前記露光時間、すなわち、前記基準光スポットが、グレースケールレンジ[Ng
10-Ng
20]の上限値に対応する、所定のグレースケールNg
maxに少なくとも等しいグレースケールNgを有するように、前記光検出器が前記特定光強度分布を測定する前記持続時間を調整する工程と、
(iv.2)Ng=Ng
maxの場合、(x)画像に含まれる光強度分布(点)の数行列を得るために、同一の検知、すなわち同一の測定を数回繰り返す工程と、
(v.2)各(x)画像におけるNgを測定する工程と、
(vi.2)Ng=Ng
max=Ng
xの場合、これらの(x)画像では、対応する露光時間が引き続く測定のために保存される工程と、から実質的になる、請求項3~8の少なくとも1項に記載のデバイス。
【請求項10】
コンピュータによって有利に実施される第3の校正法を、少なくとも第1の検出の間に実行することを可能にする手段を備え、
この第3の校正法は、
(i.3)画像、好ましくは方形に含まれるマトリクスを構成するそれぞれの光スポットを、前記光スポットの中心によって、前記画像内の所与の点を原点とする座標系XY、好ましくは前記画像が方形であるときの前記画像の角のうちの1つにおいて識別し、位置付けることにより、マトリクスは、したがって、X
n行のY
m光スポットから構成される工程と、
(ii.3)行X
n=b内の前記画像の最も明るい光スポットT
lを識別する工程と、
(iii.3)矩形形状を有する画像において、Y軸にも平行でありながら、この最も発光するスポットの中心を通る走査線をトレースする工程と、
(iv.3)この走査線において、+アルファ/-アルファ角度に従って、最も発光するスポットの中心の周りを回転することによって角度走査を行い、Y軸に平行な線を含む角度セクタを形成する工程と、
(v.3)走査線が行X
n=b*のY
m-1光スポットと交差する回動角度(アルファC)を得る工程と、
(vi.3)Y
m光スポットのX
n-1線の各々について、
(vi.3.1)各行X
n≠b*において、行の最も発光する光スポットを識別し、
(vi.3.2)この最も発光するスポットの中心を通過する一方、長方形の像においてY軸にも平行である走査線をトレースし、
(vi.3.3)X
n≠b*の行のY
m-1光スポットと交差する線を見つけるために、より具体的にはX
n≠b*の行のこれらのY
m-1光スポットを見つけるために、最も発光するスポットの中心の周りを角度(アルファC)に従って回転により角度走査をこの走査線で実行する工程と、
(vii.3)前記光検出器における結像に含まれ、マトリクスを構成する[X
nxY
m]光スポットの座標(X,Y)を取得する工程と、
(viii.3)これらの座標をメモリへ格納する工程と、
(ix.3)本発明による装置によって、流体中に存在する分析対象物を分析する本発明による方法の文脈において、得られた光線を読み取るために、これらの座標を使用する工程と、を包含する、請求項3~9の少なくとも1項に記載のデバイス。
【請求項11】
請求項1~10の少なくとも1項に記載のデバイスによって流体中に存在する分析対象物を分析する方法であって、
前記方法が、第1の実施形態において、コンピュータによって有利に実施される、請求項8に記載の前記光検出器のための前記第1校正方法を包含することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~10の少なくとも1項に記載のデバイスによって流体中に存在する分析対象物を分析する方法であって、
前記方法が、第2の実施形態において、コンピュータによって有利に実施される、請求項9に記載の前記光検出器のための前記第2校正方法を包含することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1~10の少なくとも1項に記載のデバイスによって流体中に存在する分析対象物を分析する方法であって、
前記方法が、第3の実施形態において、コンピュータによって有利に実施される、請求項10に記載の前記光検出器のための前記第3の校正方法を包含することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電子分析デバイス(1)のセンサ(10)を交換する方法であって、
前記センサが、前記センサ支持体の前記ハウジングから取り外される工程と、
新しいセンサが前記センサ支持体の前記ハウジング内に配置される工程と、を包含する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明の分野は、測定および物理的分析技術、特に電子測定および物理的分析技術の分野である。より具体的には、本発明が流体中に存在する分析対象物を分析するための電子デバイスであって、センサを提示する電子分析デバイスに関する。本発明は、センサを交換する方法にも関する。
【0002】
(従来技術)
検出される気体または液体などの流体中の分析対象物の存在、同定されるべき分析対象物、および場合によっては測定されるべき流体中の分析対象物の濃度を可能にする電子分析デバイスが知られている。分析対象物は、標的化合物の組み合わせ、例えば、臭気を生成することができるVOC(揮発性有機化合物)の混合物であってもよい。このため、これらのデバイスは、ガスまたは液体のどちらに対して機能するかに応じて、電子鼻または舌として分類されることがある。
【0003】
これらの装置における検出の原理は、センサに組み込まれた受容体と分析対象物との間の相互作用に基づくことができる。相互作用は、受容体と分析対象物との間、特に受容体と分析対象物の標的化合物との間の物理的-化学的親和性の特性に基づく。これらの相互作用は、1つまたは複数の局所的特性変化をもたらし、分析対象物の存在、または存在する分析対象物の量さえも明らかにする。
【0004】
受容体は、標的化合物のための一時的リガンドを構成するのに適した様々な化合物または材料の中から選択され得る。特定の分子、ペプチド、ポリマー、バイオマーカー、ナノ粒子、カーボンナノチューブが挙げられるが、これらに限定されない。問題の結合力は、一般に弱い力(Van Der Waals型力)である。
【0005】
変換器は、一般に、この局所的特性変化を、この局所的特性変化を表す多次元電子信号に変換するために使用される。電子信号は、各受容体について生成される。電子信号のセットは、多次元電子信号を構成する。この多次元電子信号のプロセシングおよび解析の手段によって、分析された流体中に存在する分析対象物の定性的または定量的測定さえも行うことができる。
【0006】
いくつかの電子分析デバイスは、光干渉を使用することによって、局所的特性変化を検出することを可能にする。したがって、電子分析デバイスは、光ガイドを有するフォトニックチップを備えるセンサと、コヒーレント光ビームを光ガイド内に放出するコヒーレント光源を備える変換器と、光ガイドの出口において、光ビームの少なくとも1つの光学パラメータを測定する光検出器とを備える。
【0007】
光ガイドは光干渉の形成を可能にするように成形され、受容体は光ガイドに組み込まれる。分析対象物と光ガイド内の受容体との間の相互作用によって生成される局所的特性変化は、光干渉を作り出す。したがって、この光干渉は、分析対象物と受容体との間の相互作用に依存し、したがって、分析される分析対象物に特異的である。
【0008】
生成された光干渉は、光検出器によって測定された光学パラメータを変更する。したがって、光検出器によって測定された光学パラメータから、変換器は、局所的特性変化を表す電子信号を生成することができ、したがって、分析対象物を明らかにすることができる。
【0009】
光検出器が光ビームの光学パラメータを正確に測定するためには、光源と光ガイドとが位置合わせされなければならない。この位置合わせは、光ガイドに入る光の量が、光検出器が光ガイドの出口で光ビームの光学パラメータを検出するのに十分であることを可能にし、したがって、変換器によって生成される電子信号が局所的特性変化を表現することを可能にし、変換器が分析対象物の存在を検出することを可能にする。したがって、光源と光ガイドとの間の位置合わせは、分析される流体中に存在する分析対象物の定性的または定量的な決定にとっても非常に重要である。
【0010】
しかしながら、分析対象物と相互作用するために使用される受容体は、一時的な受容体であり、すなわち、デバイスの他の構成要素よりも制限された寿命を有する。実際、受容体と分析対象物との間の相互作用は、受容体の飽和をもたらし得る。受容体が飽和すると、受容体は、もはや流体の分析対象物と正しく相互作用することができない。次に、受容体を組み込んだセンサを交換しなければならない。
【0011】
受容体は、また、検出したい分析対象物のタイプに特異的であってもよい。実際、受容体は、所与のタイプの分析対象物に対して特定の親和性を示し得る。したがって、検出されるべき分析対象物のタイプを変更することを望む場合、センサを、検出することを望む新しいタイプの分析対象物を検出するのに適した受容体を有する別のセンサと置き換えることが必要になり得る。
【0012】
したがって、コストを制限するために、一時的受容体がもはや機能しない場合、または別の分析対象物を検出することを望む場合、デバイス全体を変更しなければならないのではなく、デバイス内のセンサを置き換えることが好ましいことが理解される。
【0013】
センサが交換されるとき、新しいセンサの光ガイドがデバイスの光源と位置合わせされることを確実にしなければならない。センサを交換するユーザにとって、光源と光ガイド入口との適切な位置合わせを確実にすることは、長く、面倒である。
【0014】
US20120214707A1は、流体(蒸気、ガス、[0002])のサンプルSAM中の分析対象物を検出するための方法および測定システムを開示する特許出願である。このシステムは、レーザLSOから発生する光ビームが光(チャネル)導波路構造WGSに結合される干渉センサを備える。導波路構造WGSは、基板SUBと、コア層CORと、カバー層COVとの3層から構成される(
図1(a)、(b))。(バイオ)センサデバイスは、(携帯)測定システムポッドと、ラボオンチップ(LOC)システムとを備える。LOCは、入口INLと、流体((マイクロ)流体キュベットFCV)の供給源と、測定(受容体RECで予めコーティングされた)および基準領域を含む検出部SRGと、検出部に試料を供給した後に流体または空気または別のガスを排出するための排気口OTLとを備える。システムは、交換可能であってもよい。LOCシステムとの流体接続は迅速な交換可能性を可能にするように構成されてもよく、例えば、PODシステムへのLOCシステムの挿入中に迅速に位置決めされ得るモジュール式ユニットとして構成されてもよい。このシステムはPODシステムへのLOCシステムの挿入後に、光導波路チップへの(レーザ)光ビームのより迅速かつより良好な結合を可能にするために、自動位置合わせ方法と組み合わせて好ましい場合がある。加えて、チップを予備被覆するために使用される受容体REC層は、そのような一体化され、密閉されたシステムにおいて、より良好に保存され得る。そのような閉鎖系は抗体などの受容体を(急速である)劣化から保護することができ、また、プレコーティング処理の後で、分析対象物サンプルの適用の前に、検出領域/窓の汚染を防止することができる。受容体RECを保護するためのこの閉鎖系は、ポッドによって形成される。検出器、例えば、ポッドに含まれる(ポッド上には含まれない)CCDカメラは、干渉センサから生じる光学測定信号を読み取ることを可能にする。
【0015】
EP2327955A1は光学測定システム(100)と、複数の分析物を有する流体を受容するための要素(200)とを含む、無標識高感度バイオアッセイのための光学検出システムを記載し、前記要素は、複数の生体感受性細胞(201)を含む。光学計測システム(100)は、少なくとも1つの励起源(101)と、前記生体感受性細胞およびそれらが含む分析対象物のそれぞれを分析するように構成された光学ヘッド(103、103a、103b)と、光学ヘッド(103、103a、103b)から生じる信号を検出するための光学手段(102)とを備える。各生体感受性細胞は、基板(55)、複数の共鳴キャビティ(53)を含み、各キャビティは該マイクロピラーのうちの1つによって画定され、該キャビティのベースは該マイクロピラーの間の空間が分析される流体を受容するように該基板上に置かれ、該マイクロピラーの各端部にそれぞれ配置された、共鳴キャビティ(53)当たり少なくとも2つの複数のブラッグ反射器、および該流体と接触するように該マイクロピラーの側面に結合された複数の分子受容体(54)を含む。この標識のないバイオ検出システムはいくつかの検出方法(新規なフォトニック構造の干渉および共鳴の利点を、特に垂直光インタロゲーション技術を含む、D2の段落[0001]の[..]インタロゲーション処理と同様に、分光法、エリプソメトリーなどの光インタロゲーション技術と組み合わせることによる)を組み合わせることによって、工業的商業化、感度、測定ケイデンス、ロバスト性、およびコストの点で競争力があることを意図している。
【0016】
したがって、本発明の目的はコンパクトで統合された電子分析デバイスを提供することであり、このデバイスではセンサが消耗可能であり、交換可能であり、光源と光ガイド入口との間の位置合わせはセンサを交換するユーザに残されない。
【0017】
本発明の別の目的は、分析される流体中に存在する分析対象物の誤った定性的または定量的測定さえも最小限に抑え、または防止さえする、コンパクトで統合された電子分析デバイスを提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、受容体と分析対象物との間の相互作用によって生成される局所的特性変化の検出器による検出が保証され、変換器によって生成される電子信号が受容体と分析対象物との間の実際の相互作用に対応する、コンパクトで統合された電子分析デバイスを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、光検出器によって測定される光ビームの光学パラメータが局所的特性変化を明らかにすることができることを保証することである。
【0020】
(概要)
本発明は、上述の必要性に対処することを目的とする。
【0021】
そのために、本発明は第1の態様によれば、流体中に存在する分析対象物を分析するための電子装置を提供し、この電子装置は、
-消耗品であって交換可能なセンサであって、
i)流体中に存在する分析対象物と相互作用することができる一時的な受容体が配置される光ガイドを含む少なくとも1つの測定チャンバを含むフォトニックチップであって、可能な相互作用が局所的特性変化を引き起こし、光ガイドが光入口および光出口を含む、フォトニックチップ、および、
ii)フォトニックチップと一体のキャップであって、流体を測定チャンバに入れ、流体を測定チャンバから排出するのに適した開口部を備えるキャップ、
を含む、センサと、
-センサが可逆的に配置されることが意図されるハウジングを含むセンサ支持体と、
-センサ支持体と協働してセンサを封入する閉鎖要素と、
-局所的特性変化変換器であって、該変化は該受容体と該分析対象物との間の相互作用によって引き起こされ、該局所的特性変化を、該局所的特性変化を表す電子信号に変換することができ、該変換器は、
-一方ではコヒーレント光ビームをフォトニックチップの光ガイド内に放出することができ、他方ではセンサのキャップ上または閉鎖要素上に位置決めされるコヒーレント光源と、
-光ガイドの光出口に対向して配置され、光ガイドの出口において、局所的特性変化に応じて光ビームの光学パラメータを測定することができる光検出器と、を含む。
【0022】
センサは、消耗品であり、可逆的に配置される。したがって、デバイスの他のすべての構成要素を変更する必要なく、センサを変更することができる。
【0023】
加えて、センサのキャップ上または閉鎖要素上の光源の位置決めのおかげで、センサを交換するユーザはセンサを交換するときに、光源を光ガイドの入口と整列させることに対処する必要がない。
【0024】
実際、光源がセンサのキャップ上に配置されるとき、センサの交換中、光源はセンサと共に取り外され、新しいセンサがセンサ支持体のハウジング内に一体化されるとき、新しいセンサのキャップ上に配置された新しい光源が装置内に導入される。したがって、光源と光ガイドの光入口との間の位置合わせは、キャップ上に光源を配置するセンサ製造業者の責任である。
【0025】
したがって、本発明の第1の実施形態によれば、光源がセンサのキャップ上に位置決めされ、光源と導光板の光入口との間の位置合わせは、本発明によるデバイスが製造されるときに実行される。
【0026】
さらに、本考案の第2の実施形態によれば、光源が閉鎖要素上に配置され、光源と光ガイドの入口との間の位置合わせが、センサを支持筐体内に配置することによって、および閉鎖要素と支持体との間の協働によって、センサが封入された瞬間に達成される。したがって、センサが交換されると、光源は閉鎖要素上に留まり、光源と光ガイドの光入口との間の位置合わせは、製造業者によって設計された、センサ支持体に対する閉鎖要素の割出しによって保証される。
【0027】
変形例によれば、導光体は光源によって放射された光ビームの一部が全内部反射によって導かれることを目的とする参照アームと、光源によって放射された光ビームの他の一部が全内部反射によって導かれることを目的とし、受容体が配置された測定アームとを備える少なくとも1つの分岐部を備え、参照アームおよび測定アームは、参照アームに導かれた光ビームの一部と測定アームに導かれた光ビームの他の一部とを再結合することから生じる光ビームが導かれることを目的とする干渉アームに再結合され、干渉アームに導かれる結果として生じる光ビームの放射パワーは、0.2μW以上である。
【0028】
結果として得られる光ビームの最小電力を0.2μWに設定することにより、十分な量の光が光ガイドを通過することが保証され、その結果、検出器は、光ガイドの出口における光ビームの光学パラメータを測定することができる。
【0029】
加えて、結果として生じる光ビームのこの最小パワーは、光ビームの光学パラメータが局所的特性変化によって変更されるとき、この変更が光検出器によって測定され得ることを保証する。特に、光検出器は、したがって、局所的特性変化によって、分析物の存在によって引き起こされる光学パラメータの値の変動に敏感である。したがって、変換器によって生成される電子信号は、局所的特性変化を明確に表現する。分析された流体中に存在する分析対象物の定性的または定量的な測定さえも、正確に行われる。
【0030】
変形例によれば、電子分析デバイスは複数の分岐を備え、各分岐は、干渉アームに再結合する参照アームと測定アームとを備える。例えば、電子分析デバイスは、64個の分岐を備える。分析対象物決定の検出精度は、各分岐の結果として生じる光ビームが測定されるので、改善される。各分岐はそれ自体の検出を提供し、ガイドの出口で光検出器によって測定された光ビームは、各分岐によって影響を受ける。
【0031】
一変形形態によれば、各分岐の干渉アームは、参照アームおよび測定アームに接続された第1の端部と、得られた光ビームがそこを通って発せられることが意図される第2の端部とを有する。したがって、第2の端部は、光ガイドの光出口を形成する。光ガイドがいくつかの分岐を含む場合、光ガイドの光出口は、各干渉アームの第2の端部によって形成される。したがって、光ガイドの出口における光ビームは、干渉アーム内に導かれる結果として生じる光ビームの全てによって形成される。
【0032】
変形例によれば、各分岐の干渉アームは、その第2の端部において、3つのサブアームに分割され、結果として生じる光ビームは、分離され、これら3つのサブアームの各々に導かれ、3つのサブアームは結果として生じる光ビームの位相をサブアームの各々の間で120°シフトさせるように構成される。言い換えると、干渉アームは、結果として生じる光ビームの第1の部分を受信し、結果として生じる光ビームの第1の部分の位相を、結果として生じる光ビームに対して0°シフトするように構成された第1のサブアームと、結果として生じる光ビームの第1の部分の位相をシフトしないように構成され、結果として生じる光ビームの第2の部分を受信し、結果として生じる光ビームに対して120°シフトするように構成された第2のサブアームと、結果として生じる光ビームの第3の部分を受信し、結果として生じる光ビームの第3の部分の位相を、結果として生じる光ビームに対して240°シフトするように構成された第3のサブアームとに分割される。
【0033】
次いで、光ガイドの光出口は、3つのサブアームすべてによって形成される。したがって、結果として生じる光ビームの放射電力は、3つのサブアームの各々の出口における放射電力の合計、すなわち、結果として生じる光ビームの第1の部分、結果として生じる光ビームの第2の部分、および結果として生じる光ビームの第3の部分からの放射電力の合計に対応する。
【0034】
光ガイドがいくつかの分岐を含む場合、光ガイドの光出口は、各干渉アームの3つのサブアームすべてによって形成される。したがって、光ガイドの出口における光ビームは、各干渉アームのサブアームに導かれる結果として生じる光ビームの全ての部分によって形成される。
【0035】
変形例によれば、キャップは閉鎖要素に面するように配置された上面を備え、光源によって放射される光ビームはキャップの上面に実質的に平行な放射軸を有する。
【0036】
キャップの上面での光ビームの垂直入射は、特に光源がキャップ上に配置されるときに、電子分析デバイスへの光源の統合を容易にする。加えて、これは、光源と光ガイドの入口との間の位置合わせを容易にする。これにより、電子分析デバイスの製造コストが低減される。
【0037】
変形例によれば、測定チャンバの受容体は、分子、ペプチド、ポリマー、バイオマーカー、ナノ粒子、またはカーボンナノチューブの中から選択される。
【0038】
変形例によれば、分析対象物は、流体に含まれる標的化合物、例えば揮発性有機化合物の組み合わせであり、好ましくは、分析対象物が流体に含まれる臭気に特徴的な揮発性有機化合物の混合物である。
【0039】
変形例によれば、光検出器は、閉鎖要素上に配置される。
【0040】
したがって、光検出器の電源の接続が容易になる。
【0041】
第1の代替形態によれば、光源は、センサのキャップ上に配置され、電子分析デバイスは、
-光源が配置されたキャップ上にエッチングされた電子トレースと、
-閉鎖要素上の電子回路と、
-光源に電力を供給するために、電子トレースを電子回路に接続することを可能にする電気接触器と、を含む。
【0042】
したがって、光源は、電子回路および電子トレースを介して容易に電力を供給され得る。
【0043】
例えば、電気コネクタはPogo(登録商標)ピンである。
【0044】
第2の代替形態によれば、光源は閉鎖要素上に配置され、電子分析デバイスは好ましくは光ビームをコリメートするように意図された少なくとも1つのレンズを備える光学システムを備える。
【0045】
したがって、光ガイドの入口における光ビームの入射角は、より良好に制御される。
【0046】
変形例によれば、センサは、センサがセンサ支持体のハウジング内に配置される前にアクティブになり、センサ支持体のハウジング内へのセンサの配置によって非アクティブになるように構成された一時的な受容体に対する保護部材を備える。
【0047】
したがって、デバイスの感受性部分を形成する一時的受容体は、保護部材によって保護される。したがって、一時的な受容体は、センサがセンサ支持体内に配置される前に外部雰囲気から隔離され、デバイス内で使用される前に変更されない。この保護部材は製造直後に配置され、したがって、センサの保管中、およびセンサが電子分析デバイスに組み込まれるまで、定位置にあり、ここで、一時的な受容体は、もはや外因性の汚染のリスクを受けない。一時的な受容体の保護は、デバイスへのセンサの配置およびデバイスからのセンサの除去の容易さ、または分析の質を損なうことなく得られる。
【0048】
さらに、センサがセンサ支持体のハウジング内に配置されると、一時的な受容体保護部材とセンサ支持体との間の協働により、一時的な受容体の保護が停止されることが可能になる。したがって、流体は、センサの測定チャンバ内を循環することができ、一時的な受容体に到達することができる。したがって、保護の非活性化は、センサおよび一時的な受容体の最適な使用を保証する。
【0049】
変形例によれば、一時的な受容体保護部材は、構成された保護エンベロープを含む。
-センサがセンサ支持体のハウジング内に配置される前に、キャップ開口部を閉鎖し
-センサがセンサ支持体のハウジング内に配置されたときに、キャップ開口部に面して穿孔されるように、閉鎖要素と協働する。
【0050】
変形例によれば、閉鎖要素は、センサ支持体と可逆的に嵌合する周壁を備える。
【0051】
周壁とセンサ支持体との間のこの配置は、閉鎖要素とセンサ支持体との間の位置合わせを最適化する。光源が閉鎖要素上に配置されるとき、閉鎖要素の周壁とセンサ支持体との間の嵌合は、光源と光ガイドの入口との間の位置合わせを保証する。
【0052】
変形例によれば、閉鎖要素は、キャップ開口部と流体連通する接続部を備え、測定チャンバへの流体の流入および測定チャンバからの流体の流出を可能にする。
【0053】
したがって、流体は、接続部を介して、閉鎖要素によって受け入れられ得る。
【0054】
変形例によれば、キャップ開口部は、測定チャンバ内に流体を導入するように構成された吸入開口部と、測定チャンバから流体を排出するように構成された排出開口部とを備える。
【0055】
したがって、分析される流体は、測定中に吸入開口部と排出開口部との間を循環することができる。
【0056】
変形例によれば、閉鎖要素の接続部は、キャップの吸入開口部と流体連通する流体吸入導管と、キャップの排出開口部と流体連通する流体排出導管とを備える。
【0057】
変形例によれば、吸入導管、すなわち排出導管は、測定チャンバの気密性を保証するために、それぞれ、吸入開口部、すなわち排出開口部に面するように配置された接触面を有するベースを備え、この接触面は、それぞれ、排出開口部の両側に延在する。
【0058】
ベースは、吸入導管と吐出導管とセンサのキャップとの間の漏れ止めを保証するために、吸入導管と吐出導管と測定チャンバとの間の良好な接触を保証する。さらに、それは、一方では吸乳導管と吸入開口部との間、他方では排出導管と排出開口部との間の位置合わせを容易にする。
【0059】
変形例によれば、局所的特性変化は、センサにおける光学屈折率の変化である。
【0060】
変形例によれば、光学パラメータは、光強度又は放射パワーである。
【0061】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による電子分析デバイスのセンサを交換する方法を提供し
-センサは、センサ支持体のハウジングから取り外され、
-新しいセンサがセンサ支持体のハウジング内に配置される。
【0062】
(図面の簡単な説明)
他の特徴、詳細および利点は以下の詳細な説明を読み、添付の図面を分析することによって明らかになるのであろう。
【0063】
図1
[
図1]
図1は、センサと、センサ支持体と、閉鎖要素と、トランスデューサとを備える、本発明の第1の実施形態による電子分析デバイスを表す。
【0064】
図2
[
図2]
図2は、
図1の電子分析デバイスの長手方向平面に沿った断面図である。
【0065】
図3
[
図3]
図3は、光ガイドを備える測定チャンバを備える、
図1に表される電子分析デバイスのセンサのフォトニックチップの上面図を表す。
【0066】
図4
[
図4]
図4は、光ガイドの光入口の近くに位置する光ガイドの一部を表す、
図3のIVで参照される区域の拡大図を示す。
【0067】
図5
[
図5]
図5は、参照アームおよび測定アームを有する光ガイドの分岐を表す、
図4においてVで示される区域の拡大図を示す。
【0068】
図6
[
図6]
図6は、参照アームと、受容体が一体化された測定アームとを有する光ガイド分岐を概略的に示す。
【0069】
図7
[
図7]
図7は、分析される受容体と分析対象物との間の反応を概略的に示す。
【0070】
図8
[
図8]
図8は、光ガイドの光出口の一部を表す、
図3においてVIIIで示される区域の拡大図を示す。
【0071】
図9
[
図9]
図9は、変換器の光源がセンサのキャップ上に配置された、長手方向平面に沿った、第1の実施形態に従って構成された
図1の電子分析デバイスの概略断面図を表す。
【0072】
【0073】
図11
[
図11]
図11は、変換器の光源が閉鎖要素上に配置された、第2の実施形態に従って構成された電子分析デバイスの
図9と同様の概略断面図を表す。
【0074】
【0075】
【0076】
図14
[
図14]
図14は、変換器の光検出器によって形成された画像上の、本考案による第3校正法を示す。
【0077】
図15
[
図15]
図15は、変換器の光検出器によって形成される像に対する、本考案による第3校正法の変形例を示す。
【0078】
図16
[
図16]
図16は、本考案による第1、第2及び第3校正方法に従って校正されていない、変換器の光検出器によって形成された画像を表す。
【0079】
図17
[
図17]
図17は、本考案による第1、第2及び第3校正方法に従って校正された、変換器の光検出器によって形成された画像を表す。
【0080】
図18
[
図18]
図18は、測定チャンバを画定するキャップがフォトニックチップの下方に配置された、変形実施形態に従って構成された電子分析デバイスの
図9または
図11と同様の概略断面図を表す。
【0081】
(実施形態の説明)
図面において、同じ参照符号は、同一または類似の要素を示す。
【0082】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子分析デバイス1を示す。また、
図2には電子分析デバイス1の
図1に示す縦断平面Bに沿った断面図が示されており、
図9には電子分析デバイス1の
図1に示す縦断平面Bに沿った概略断面図も示されている。
【0083】
電子分析デバイス1は、消耗品で交換可能なセンサ10を備え、分析される流体中のその存在がセンサ10によって実証される分析対象物2を分析することを可能にする。したがって、電子分析デバイス1は、分析される流体中の分析対象物2の存在を検出すること、または分析される流体中の分析対象物2の量を決定することさえも可能にする。
【0084】
流体は、気体または液体であってよい。分析対象物2は、標的化合物、例えば、流体中に含有される揮発性有機化合物の組み合わせであってもよい。特に、分析対象物2は、流体に含まれる臭気に特徴的な揮発性有機化合物の混合物であってもよい。
【0085】
電子分析デバイス1は、また、センサ10が可逆的に配置されるハウジング51と、閉鎖要素60とを備えるセンサ支持体50を備える。特に、センサ支持体50は、ハウジング51を形成する凹部を備える。閉鎖要素60は、センサ10を封入するためにセンサ支持体50と協働する。したがって、センサ10は、センサ支持体50および閉鎖要素60によって保護される。
【0086】
図示の実施例では、閉鎖要素60が、センサ10に面して配置された上部62と、センサ支持体50に面して配置された下部とによって形成されている。上部62と下部63とは、ヒンジ64によって連結されている。したがって、閉鎖要素60は、センサ10を保護することを可能にする。あるいは、閉鎖要素60が上部62のみによって形成されてもよい。
【0087】
センサ10は、
図2および
図9に見られるフォトニックチップ12を備え、その上面図が
図3に表されている。フォトニックチップ12は、分析される流体中の分析対象物2の存在を実証することを可能にする測定チャンバ11を備える。受容体14が配置された光ガイド13は、測定チャンバ11内で、測定チャンバ11に面するフォトニックチップ12の表面12°に配置される。このようにして受容体14によって機能的に活性化されたこの表面12°は、分析される流体中に存在する分析対象物2と相互作用し得る。受容体14と分析対象物2との間の相互作用は、局所的特性変化を引き起こす。したがって、受容体14が分析対象物2の存在下にあるとき、受容体14が配置される媒体に特徴的な少なくとも1つの局所特性が修飾される。図示の実施例では、局所特性は媒体の光学屈折率である。
【0088】
受容体14は、分子、ペプチド、ポリマー、バイオマーカー、ナノ粒子またはカーボンナノチューブの中から選択することができる。受容体14は一時的な受容体である。これらは、電子分析デバイス1の他の構成要素よりも限られた寿命を有する。実際、受容体14は、受容体14と分析対象物2との間の相互作用によって飽和され得る。加えて、それらは、あるタイプの分析対象物の検出に特異的であり、検出されるべき分析対象物が変化するときに取り換えなければならない。
【0089】
光ガイド13は、光入口135および光出口136を備える。
【0090】
図4には光入口135付近に位置する光ガイド13の一部を示す
図3の参照IVの拡大図が表され、
図5には
図4の参照Vの拡大図は示され、光ガイド13が複数の分岐137に分割され、各分岐137が参照アーム132と測定アーム133とに分割され、そこに受容体14が配置されている。参照アーム132および測定アーム133は、干渉アーム134に再結合する。
【0091】
図6は光ガイド13の分岐137を概略的に表し、受容体14は、測定アーム133内に配置され、分析対象物2と相互作用する。
【0092】
分岐137を形成するために、光ガイド13は、光入口135から開始して連続的に分割される。特に、
図3及び
図4に見られるように、光ガイド13は光ガイド13の第1段を構成する同一長さの2つの第1列部分13a、13bに分割され、次いで、これらの第1列部分13a、13bの各々は2つに分割されて、光ガイド13の第2段を構成する同一長さの4つの第2列部分13aa、13ab、13ba、13bbを形成する。各第2の列部分13aa、13ab、13ba、13bbは順に、2つに分割されて、光ガイド13の第3の段階を構成する同一の長さの8つの第3の列部分を形成し、次いで、各第3の列部分は順に、2つに分割されて、光ガイド13の第4の段階を構成する同一の長さの16個の第4の列部分を形成し、次いで、各第4の列部分は順に、2つに分割されて、光ガイド13の第5の段階を構成する同一の長さの32個の第5の列部分を形成し、次いで、各第5の列部分は順に、2つに分割されて、光ガイド13の第6の段階を構成する第64個の第6の列部分を形成する。これらの64個の第6列部分は、それぞれ1つの分岐137を形成する。
【0093】
光ガイドのこれらの連続的な分割は、分析対象物2の存在を明らかにすることを可能にする分岐137の数を増加させることを可能にする。光ガイド13は、図示の実施例よりも多い又は少ない分岐137を含むことができる。したがって、光ガイド13は、図示の実施例よりも多い又は少ないステージを備えてもよい。例えば、光ガイド13は5つの段階を備えてもよく、したがって、第5の段階はそれぞれ分岐を形成する32個の第5の行部分を備え、または7つの段階を備えてもよく、したがって、第7の段階はそれぞれ分岐を形成する128個の第7の行部分を備える。
【0094】
図5に示すように、各分岐137の干渉アーム134は、参照アーム132および測定アーム133に接続された第1の端部1341と、第2の端部1342とを有する。光ガイド13の光出口136は、各分岐137の干渉アーム134の第2の端部1342によって形成される。
【0095】
図示の実施例では、各分岐137の干渉アーム134が、その第2の端部1342において、第1のサブアーム134a、第2のサブアーム134b、および第3のサブアーム134cに分割される。
図3および
図8に示されているように、
図3においてVIIIで示されているゾーンの拡大図を表しているように、光ガイド13の光出口136は、したがって、分岐137の各々の3つのサブアーム134a、134b、134cの全てによって形成される。
【0096】
センサ10は、また、フォトニックチップ12と一体のキャップ15を備えてもよい。キャップ15は、閉鎖要素60に面して配置された上面15aを備える。キャップ15は、また、分析される流体を測定チャンバ11に入れることを可能にする吸入開口部16aと、測定チャンバ11から流体を排出することを可能にする排出開口部16bとを備える。したがって、流体は、吸入開口部16aから排出開口部16bに循環することができる。
【0097】
吸入開口部16aは測定チャンバ11の第1の端部の近くに配置され、排出開口部16bは測定チャンバ11の第2の端部の近くに配置され、したがって、受容体14における流体の通過を保証する。図示されていない変形例では、キャップ15が分析される流体を測定チャンバ11に入れることと、測定チャンバ11から流体を排出することとの両方を可能にする単一の開口部を備えてもよい。
【0098】
閉鎖要素60は、キャップ開口部と流体連通する接続部57a、57bを備え、測定チャンバへの流体の流入および測定チャンバからの流体の流出を可能にする。閉鎖要素60の接続部57a、57bは、キャップ15の吸入開口部16aと流体連通する流体吸入導管57aと、キャップ15の吐出開口部16bと流体連通する流体排出導管57bとを備える。分析される流体は、したがって、吸入導管57aによって吸入開口部16aに導入され得、排出導管57bによって排出開口部16bから排出され得る。
【0099】
吸入導管57a、吐出導管57bは測定チャンバ11の気密性を保証するために、それぞれ吸入開口部16aに対向して配置された接触面を有するベース55と、それぞれ吐出開口部16bの吸入開口部16aの両側に延在する吐出開口部16bとを備える。ベース55は、一方では吸入導管57aと排出導管57bとの間の良好な接触を保証し、他方では、センサ10の吸入導管57aと排出導管57bとキャップ15との間の漏れ止めを保証するために、測定チャンバ11との間の良好な接触を保証する。加えて、ベース55は、一方で吸入導管57aと吸入開口部16aとの間、および他方で排出導管57bと排出開口部16bとの間の位置合わせを容易にする。
【0100】
電子分析デバイス1は、また、一時的な受容体14と分析対象物2との間の相互作用によって引き起こされる局所的特性変化のための変換器を備える。この変換器は、局所的特性変化を、局所的特性変化を表す電子信号に変換することを可能にする。
【0101】
変換器は、コヒーレント光源130と、光検出器131とを備える。光源130は例えば、レーザダイオードであってもよい。光源130は、光源130がコヒーレント光ビーム129をフォトニックチップ12の光ガイド13内に放出できるように、光入口135と位置合わせされる。光源130によって放射される光ビーム129は、キャップ15の上面15aに対して実質的に垂直な放射軸Aを有する。したがって、光源130と光ガイド13の光入口135との間の位置合わせが容易になる。
【0102】
あるいは、光ビーム129の出射軸Aがキャップ15の上面15aに垂直な軸とゼロ以外の角度を形成してもよい。例えば、角度は、5°未満、又は更には1°未満であってもよい。
【0103】
光検出器131は、光ガイド13の光出口136に面して配置され、光ガイド13の出口において、局所的特性変化に従って光ビーム129の光学パラメータを測定することができる。例えば、光検出器131は、光ガイド13の排気口における光ビーム129の光強度、又は光ガイド13の排気口における光ビーム129の放射パワーを測定することができる。光検出器131は、閉鎖要素60上に配置される。
【0104】
図1、
図2、および
図9に示される第1の実施形態では、光源130がセンサ10のキャップ15上に配置される。センサ10はセンサ支持体50のハウジング51内に消耗可能、交換可能、および可逆的に配置されるので、センサ10は、デバイスの他の部分を変更する必要なく、容易に交換され得る。センサ10のキャップ15上に配置された光源130のみが、センサ10と同時に取り換えられる。
【0105】
センサ10が新しいセンサと交換されると、新しいセンサは、また、キャップ上に光源を備える。その場合、交換を行うユーザは、位置合わせが新しいセンサの製造業者によって実行されるので、光源130と光ガイド13の光入口135との間の位置合わせに対処する必要がない。したがって、電子分析デバイス1の動作は、センサ10の交換後に保証される。
【0106】
第1の実施形態では、光源130が
図10で見えるキャップ15上にエッチングされた電子トレース128上に配置され、閉鎖要素60は電子回路127を備える。電気接触器126は光源130に電力を供給するために、電子トレース128を電子回路127に接続することを可能にする。例えば、電気コネクタ127はPogo(登録商標)ピンである。
【0107】
図11に示される第2の実施形態によれば、光源130は、閉鎖要素60上に配置される。センサ10はセンサ支持体50のハウジング51内に消耗可能、交換可能、および可逆的に配置されるので、センサ10はデバイスの他の部分を変更する必要なく、容易に交換され得る。第1の実施形態とは異なり、光源130は、センサ10が変更されたときに保持されてもよい。
【0108】
加えて、センサ10が新しいセンサに置き換えられるとき、新しいセンサの光源130と光ガイド入口135との間の位置合わせは、センサ支持体50と閉鎖要素60との協働によって保証される。実際、新しいセンサは、センサ支持体50のハウジング51内に配置され、閉鎖要素60もまた、センサ支持体50に対してインデックス付けされる。したがって、センサ支持体50および閉鎖要素60の設計のおかげで、光源130と光ガイド13の光入口135との間の位置合わせが保証される。光源130と光ガイド13の光入口135との間の位置合わせは、デバイスの製造者の責任であり、交換を行うユーザではない。
【0109】
光学系125は、光源130によって放射される光ビーム129をコリメートするために、光源130に面して配置される。例えば、光学系125は、少なくとも1つのレンズを備える。変形例では電子分析デバイス1が光学系を欠いてもよく、光源130によって放出された光ビーム129は光ガイド13の光入口135に直接送られてもよい。
【0110】
この第2の実施形態では、光源130が閉鎖要素60の電子回路127によって直接エネルギーが供給される。
【0111】
この第2の実施形態は電子分析デバイス1における光源130の位置決めと、光源130へのエネルギーの供給とによってのみ、第1の実施形態と異なる。電子分析デバイス1の他の特徴は、第1の実施形態と同様である。
【0112】
第1および第2の実施形態のそれぞれにおいて、センサ10を交換するために、センサ10は最初にセンサ支持体50のハウジング51から取り外され、次いで、新しいセンサはセンサ支持体50のハウジング51内に位置決めされる。
【0113】
さらに、第1および第2の実施形態のそれぞれにおいて、閉鎖要素60はセンサ支持体50と可逆的に嵌合する周壁61を備え、これにより、センサ10への容易なアクセスが可能になる。加えて、この適合はセンサ支持体50との閉鎖要素60の適切な位置合わせに寄与し、したがって、第2の実施形態では、光源130と光ガイド13の光入口135との間の適切な位置合わせに寄与する。
【0114】
加えて、センサ10は、センサがセンサ支持体10のハウジング51内に配置される前にアクティブになり、センサ10をセンサ支持体50のハウジング51内に配置することによって非アクティブになるように構成された一時的な受容体14に対する保護部材を備える。
【0115】
一時的な受容体14に対するこの保護部材は、
図9および
図11に見ることができ、センサ10がセンサ支持体50のハウジング51内に配置される前に、キャップ15の吸入開口部16aおよび排出開口部16bを閉鎖する保護エンベロープ18を含む。センサ10がセンサ支持体50のハウジング51内に配置されると、保護エンベロープ18は、キャップ15の吸入開口部16aおよび排出開口部16bに面して穿孔されるように、閉鎖要素60と協働する。
【0116】
以下の説明では、電子分析デバイス1、特定光ガイド13において、光源130によって放射される光ビーム129の伝搬を説明する。この伝播は、記載された全ての実施形態について同一である。
【0117】
光ビーム129が光源130によって放出されると、光ビーム129は、光入口135を介して光ガイド13に入る。
【0118】
例えば、光ガイドの入口における光ビーム129の放射パワーは、1mW以上である。
【0119】
次いで、光ビーム129は、光ガイド13内に導かれる。特に、光ビーム129は、光ガイド13の各段階で分割され、段階を構成する各部分に伝播する。したがって、光ビームは、光ガイド13の分岐137の各々に伝搬する。
【0120】
光ガイド13の各分岐137において、光ビームの一部は参照アーム132における全内部反射によって導かれ、光ビームの別の一部は測定アーム133における全内部反射によって導かれる。「全内部反射によって導かれる」とは、光ビームが光ガイド13内に伝播し、光ガイド13の表面に接触するとき、光ビームの一部が屈折されない、すなわち、光ビームが完全に反射されることを意味すると理解される。
【0121】
参照アーム132に導かれた光ビームの一部と、測定アーム133に導かれた光ビームの他の一部とを再結合することによって得られる光ビームは、干渉アーム134に導かれる。
【0122】
光ガイド130の各分岐137は、流体中の分析対象物2の存在を検出することを可能にする干渉計を形成する。実際、分析される流体が測定チャンバ11に入ると、光ガイド13の分岐137の測定アーム133の各々に存在する一時的な受容体14は、分析対象物2と相互作用する。
図7に見られるように、分析対象物2は、例えば、受容体14に結合する。次いで、受容体14と分析対象物2との間の相互作用は、測定アーム133内の光学屈折率を変更する。測定アーム133内の光学屈折率のこの変更は、測定アーム133内に導かれる光ビームに位相遅延を生成するが、参照アーム132内に導かれる光ビームの位相は変更されない。
【0123】
測定アーム133から出射された光ビームと参照アーム132から出射された光ビームとが干渉アーム134で再結合されて光ビームが形成されると、測定アーム133に導かれた光ビームによる位相遅れから特定の干渉が形成される。これらの干渉は、特定の光強度分布に関与する。次いで、この特定の光強度分布は、光検出器131によって検出される。
【0124】
一般に、本発明によるデバイスでは結果として生じる光ビームが分岐の干渉アーム134から発せられ、これらの干渉アームは場合によっては少なくとも1回、サブアームに分割され、光検出器において、特定の光強度分布(点)(以下、「分布」と呼ばれる)のマトリクスを生成し、各分布は好ましくはグレースケールの光スポットによって表される。この分布行列は以下に説明する検出例を示すために、
図12に示すような画像、好ましくは長方形に含まれる。
【0125】
図示の実施例では、結果として生じる各分岐137の光ビームが分離され、干渉アーム134の第2の端部を形成する3つのサブアーム134a、134b、134cの各々に導かれる。これらの3つのサブアームの各々は、各サブアーム間の位相シフトが120°に等しくなるように、結果として生じる光ビームの位相をシフトする。言い換えると、第1のサブアーム134aは結果として得られる光ビームの第1の部分を受け取り、結果として得られる光ビームに対して0°だけ結果として得られる光ビームの第1の部分の位相をシフトさせ、すなわち、第1のサブアーム134aの位相は、結果として得られる光ビームの第1の部分によってシフトされず、第2のサブアーム134bは結果として得られる光ビームの第2の部分を受け取り、結果として得られる光ビームに対して120°だけ結果として得られる光ビームの第2の部分の位相をシフトさせ、第3のサブアーム134cは結果として得られる光ビームの第3の部分を受け取り、結果として得られる光ビームに対して240°だけ結果として得られる光ビームの第3の部分の位相をシフトさせる。
【0126】
結果として得られる光ビームの位相を120°位相シフトされた結果として得られる光ビームの3つの部分にシフトすることは、光検出器131が結果として得られる光ビームに形成される干渉に対してより高い精度を得ることを可能にする。したがって、特に、光検出器131は、測定アーム133内の光ビームの位相シフトの符号を検出することができる。その結果、この位相シフトは受容体14と分析対象物2との間の相互作用に起因するので、位相シフトの符号を得ることは分析対象物2のより良好な検出を可能にする。
【0127】
各分岐137の干渉アーム134に導かれる結果として生じる光ビームの放射パワーは0.2μW以上であり、これは、光検出器131が各分岐137の結果として生じる光ビームにおいて生成される特定の強度分布を検出することを可能にする。
【0128】
結果として生じる光ビームの放射電力は、干渉アーム134のサブアーム134a、134b、134cの各々の排出口における放射電力の合計に対応する。言い換えれば、結果として生じる光ビームの放射電力は、結果として生じる光ビームの第1の部分から、結果として生じる光ビームの第2の部分から、および結果として生じる光ビームの第3の部分からの放射電力の合計に対応する。
【0129】
光検出器131によって実行される検出の一例を
図12に示す。光ガイド13の各分岐137について、より具体的には各分岐137の干渉アーム134の各サブアーム134a、134b、134cについて、光検出器131は特定の光強度分布を受信する。各特定の光強度分布は、グレースケールの光スポット1314a、1314b、1314cによって表される。各分岐137について、第1のサブアーム134aの特定の光強度分布は光スポット1314aによって表され、第2のサブアーム134bの特定の光強度分布は光スポット1314bによって表され、第3のサブアーム134cの特定の光強度分布は光スポット1314cによって表される。
【0130】
それぞれの結果として生じる光ビームの放射電力は、それぞれ、結果として生じる光ビームの第1の部分、結果として生じる光ビームの第2の部分、および結果として生じる光ビームの第3の部分の比光強度分布を表す、3つの光スポット1314a、1314b、1314cの放射電力に対応する。
【0131】
各光スポット1314a、1314b、1314cのグレースケールは、0~255であり得る。グレースケールが高いほど、光スポットは明るくなる。
【0132】
光検出器131によって実行される検出を最適化するために、検出器は、好ましくはセンサ10の最初の使用中に較正される。
【0133】
光検出器を較正するいくつかの方法が、本発明の範囲において、特に、本開示に記載される本発明による装置のすべての実施形態について可能であり、光検出器内の画像を構成する各光強度分布は、グレースケールの光スポットによって表される。例えば、最も階調の高い光スポットを基準とした第1校正方法、光源130と光ガイド13の光入口135との位置合わせの良否を考慮した第2校正方法、及び光ガイド13が出射する光強度分布(点)を特定する第3校正方法について説明する。
【0134】
(最も高いグレースケールを有する光スポットを基準とした光検出器の第1校正方法)
この校正は、有利には第1の検出の前に行われるが、好ましくは次いで、すべてのセンサ取得のために使用され得る。校正は、また、出力値を調整するために、自動化システムによって、またはユーザによって、いつでも呼び出されてもよい。
【0135】
センサは、飽和していないことが好ましいが、それでも特定の光強度分布を検出することができる。したがって、少なくとも光検出器131の第1の検出の間、最も高いグレースケールを有する光スポット1314が基準として取られ、光検出器131の露光時間、すなわち、光検出器131が特定の光強度分布を測定する持続時間は、各基準光スポット1314が所定のグレースケールを有するか、または所定のグレースケール範囲内に含まれるように修正される。言い換えれば、コンピュータによって有利に実施されるこの第1校正法は、少なくとも第1の検出の間、本質的に以下からなる。
(i.1)光検出器に形成される画像に含まれる、グレースケールの光スポットからなる分布(点)の行列において、最も高いグレースケールを有する光スポットを識別する工程。
(ii.1)この光スポットを基準とする工程。
(iii.1)光検出器の露光時間、すなわち、基準光スポットが、少なくとも所定のグレースケールNg°に等しい、またはグレースケールレンジ[Ng1_Ng2]内に含まれるグレースケールNgを有するように、光検出器が比光強度分布を測定する持続時間を調整する工程。
【0136】
本考案の別の目的は、流体中に存在する分析対象物を分析するための電子装置であって、この第1校正法を分析中に実行することを可能にする手段を備えている電子装置である。
【0137】
例えば、基準光スポット1314のグレースケールが所定のグレースケールNg°未満である場合、又は所定のグレースケール範囲[Ng1-Ng2]の最低値Ng1未満である場合、光検出器131の露光時間は、光検出器131が測定の持続時間にわたってより多くの光を受光できるように増加される。一方、基準光スポット1314の階調が所定の階調Ng°よりも大きい場合、または所定のグレースケール範囲[Ng1-Ng2]の最高値Ng2よりも大きい場合、光検出器131の露光時間は、光検出器131が測定の持続時間にわたってより少ない光を受信できるように短縮される。
【0138】
しかしながら、光検出器131の露光時間は、例えば1000μsなどの最大露光時間を超えないことが好ましい。実際、最大露光時間を超えると、測定を実行するための時間が長すぎて、十分な検出精度を有することができない。
【0139】
結果として生じる光ビームの放射パワーが0.2μWに近づくと、0.2μWを超えたままであるが、露光時間が長くなるので、光検出器131は結果として生じる光ビームの特定の光強度分布を正確に検出することができる。
【0140】
結果として生じる光ビームの放射パワーが0.2μW未満である場合、結果として生じる光ビームの特定の光強度分布の良好な検出を可能にするために、光検出器131を適切に較正することが困難になる。実際、光検出器131が結果として生じる光ビームを捕捉することを可能にする露光時間は最大露光時間よりも大きくなり、特に、露光時間は1000μsよりも大きくなる。
【0141】
1つの注目すべき可能性によれば、グレースケールNg°、Ng1&Ng2は、8ビットで符号化され、したがって、0から255まで変化することができる。たとえば、Ng°=150、Ng1=140、Ng2=160である。
【0142】
この「最も高いグレースケールを有する光スポットに関する光検出器の第1校正方法」に関して、本発明の別の目的は、本発明によるデバイスの手段によって流体中に存在する分析対象物を分析する方法の、有利にはコンピュータによって実施される第1の実施形態に関する。この第1の実施形態は、光検出器を較正する第1方法を含むことを特徴とする。
【0143】
コンピュータによって実施されるこの第1の実施形態は、本発明によるシステムと、システムの中央処理システムとを備え、好ましくはシステムの一体部分(「ファームウェア」)を形成するシステムによって実施することができる。
【0144】
(光源130と光ガイド13の光入口135との間の位置合わせの質を考慮するための第2校正法)
光検出器の表面に入射する有用な放射パワーは、特に、光源と光ガイドの入口との位置合わせの品質に依存する。
【0145】
本発明による第2校正法は、特に本発明によるデバイスにおけるセンサの交換後に、光源と光ガイドの入口との間の位置合わせ/位置ずれに従って、得られる光ビームの計測値を適切な場合に補正するための、光検出器131の露光時間の校正である。
【0146】
この校正は、有利には第1の検出の前に行われるが、好ましくは次いで、すべてのセンサ取得のために使用され得る。校正は、また、出力値を調整するために、自動化システムによって、またはユーザによって、いつでも呼び出されてもよい。
【0147】
言い換えれば、有利にはコンピュータによって実行されるこの第2校正法は、少なくとも第1の検出の間に、本質的に以下からなる。
(i.2)光検出器に形成される画像に含まれる、グレースケールの光スポットからなる分布(点)の行列において、最も高いグレースケールを有する光スポットを識別する工程。
(ii.2)この光スポットを基準とする工程。
(iii.2)光検出器の露光時間、すなわち、基準光スポットが、グレースケールレンジの上限値[Ng10;Ng20]に対応する、所定のグレースケールNgmaxに少なくとも等しいグレースケールNgを有するように、光検出器が比光強度分布を測定する持続時間を調整する工程。
(iv.2)そして、Ng=Ngmaxの場合、(x)画像に含まれる光強度分布(点)の数行列を得るために、同一の検知、すなわち同一の測定を数回繰り返す工程。
(v.2)各(x)画像におけるNgの測定する工程。
(vi.2)Ng=Ngmax=Ngxである場合、これらの(x)画像の全て又は一部において、好ましくはこれらの(x)画像の全てにおいて、対応する露光時間は、引き続く測定のために保存される工程。
【0148】
したがって、本考案の別の目的は、流体中に存在する分析対象物を分析するための電子装置であって、この第2校正法を分析中に実行することを可能にする手段を備えている電子装置である。
【0149】
この第2校正法は、特にその工程(iv.2)を通して、いくつかの画像上の雑音に起因する起こり得るあらゆる変動を平滑化することを可能にする。
【0150】
有利には、(x)は1~30、好ましくは2~20である。
【0151】
有利には、露光時間は25~10,000μs、好ましくは500~5,000μsである。
【0152】
有利には、[Ng10;Ng20]は以下のように定義される[16;150]。
【0153】
この第2校正方法に関して、光源130と光ガイド13の光入口135との間の位置合わせの質を考慮するために、本発明の別の目的は、本発明によるデバイスによって流体中に存在する分析対象物を分析するための方法の、有利にはコンピュータによって実施される第2の実施形態に関する。この第2の実施形態は、光検出器の第2校正法を含むことを特徴とする。
【0154】
解析法のコンピュータによって実施されるこの第2の実施形態は、本発明によるシステムと、システムの中央処理システムとを備え、好ましくはシステムの一体部分(「ファームウェア」)を形成するシステムによって実施することができる。
【0155】
(光ガイド13によって放射される光強度分布(点)を位置付けるための第3校正法)
本発明によるデバイスの性能を向上させることは、光検出器内の画像形成に含まれる特定の光強度分布(点)の行列内に、光ガイド13によって放射される光強度分布(点)を配置することを含む。これらの分布を見つけることにより、システムは測定された分析対象物を反映する信頼できる情報から、測定された分析信号(例えば、臭気)を正確に構築することができる。
【0156】
この校正は、有利には第1の検出の前に行われるが、好ましくは次いで、すべてのセンサ取得のために使用され得る。校正はまた、出力値を調整するために、自動化システムによって、またはユーザによって、いつでも呼び出されてもよい。
【0157】
第3校正法は、有利にはコンピュータによって、少なくとも第1の検出の間に実施され、基本的に以下からなる。
(i.3)原点が画像内の所与の点である座標系XY、好ましくは画像が矩形であるときに画像の角のうちの1つにおいて、光スポットの中心によって、好ましくは矩形である画像内に形成する画像の分布(点)のマトリクスを識別し、位置付けることにより、マトリクスは、したがって、Xn行のYm光スポットから構成される工程。
(ii.3)行Xn=b*内の画像の最も明るい光スポットTlを識別する工程。
(iii.3)Y軸にも平行でありながら、この最も発光するスポットの中心を通過する走査線をトレースする工程。
(iv.3)この走査線において、+アルファ/-アルファ角度に従って、最も発光性のスポットの中心の周りを回転することによって角度走査を行い、Y軸に平行な線を含む角度セクタを形成する工程。
(v.3)走査線が行Xn=b*のYm-1光スポットと交差する回動角度(αC)を得る工程。
(vi.3)Ym光スポットのXn-1行の各々について、
(vi.3.1)各行Xn≠bにおいて、行の最も発光する光スポットを識別し、
(vi.3.2)この最も発光性のスポットの中心を通過する走査線を、Y軸に平行でありながらトレースし、
(vi.3.3)この走査線で、行Xn≠bの線交差Ym-1光スポットを見出し、より具体的には行Xn≠bのこれらのYm-1光スポットを見出すために、最も発光性の高いスポットの中心の周りの回転による角度走査を、角度(αC)に従って行い、
(vii.3)光検出器内の結像に含まれるマトリクスを構成する[XnxYm]光スポットの座標(X,Y)を求める工程。
(viii.3)座標をメモリへ格納する工程。
(ix.3)本発明によるデバイスによって、流体中に存在する分析対象物を分析する本発明による方法の文脈において、得られた光線を読み取るために、これらの座標を使用する工程。
【0158】
したがって、本考案の別の目的は、流体中に存在する分析対象物を分析するための電子装置であって、この第3校正法を分析中に実行することを可能にする手段を備えている電子装置である。
【0159】
有利には、|アルファ|角度(度)は、1~10、好ましくは2~8、より好ましくは3~7である。
【0160】
添付の
図14は、この第3校正法を示す。この図では、矩形画像201に含まれる行列200を見ることができる。行列200は、光スポット202によって形成される。最も明るい光スポットは202*で示される。
図14は、また、アルファ走査角度を示す。
【0161】
像が矩形形状を有し、その周囲を画定するフレームを備えるこの第3校正法の有利な変動では、以下の本質的な工程を含む追加の工程が提供される。
(ic.3)画像は、この画像のフレームの少なくとも1つの角、好ましくは画像の少なくとも2つの対角線上で対向する角、さらにより優先的には各画像の右下角および左下角から開始して、XまたはY軸とベータ角を形成する方向に沿って走査される工程。
(iic.3)走査中にP以上の放射電力/値が検出されると、前記電力/値は、画像のコーナーにおける対応する光スポットに帰属され、それに応じて関連する光スポットが識別される工程。
【0162】
有利には、|ベータ|角度(度)は、30~80、好ましくは40~50、さらにより優先的には45のオーダーである。
【0163】
添付の
図15は、第3校正法のこの変形例を示す。この図では、矩形画像201に含まれる行列200を見ることができる。行列画像200は、光スポット202によって形成される。走査線203および204はそれぞれ、画像201の右上隅および左下隅に由来し、X軸およびY軸と45°の角度を形成する。
【0164】
図16および
図17は、それぞれ、第1の、較正されていない行列/画像200および第2の、上述の第1、第2および第3方法に従って較正された行列200を示す。
【0165】
光ガイド13によって放射される光強度分布(点)を位置付けるためのこの第3校正方法に関して、本発明の別の目的は、本発明に記載されるような、本発明によるデバイスによって流体中に存在する分析対象物を分析する方法の、有利にはコンピュータによって実施される第3の実施形態に関する。この第3の実施形態は、光検出器を較正する第3校正方法を含むことを特徴とする。
【0166】
解析法のコンピュータによって実施されるこの第3の実施形態は、本発明によるシステムと、システムの中央処理システムとを備え、好ましくはシステムの一体部分(「ファームウェア」)を形成するシステムによって実施することができる。
【0167】
検出中、分析対象物2は、吸入口16aによって測定チャンバ11内に導入された後、吐出口16bによって測定チャンバ11から吐出される。したがって、分析対象物2は、測定チャンバ11内を循環する。したがって、受容体14と分析対象物2との間の相互作用は、経時的に変化する。各分岐137の結果として生じる光ビームに形成される干渉も経時的に変化し、これは、各分岐137の結果として生じる光ビームの比光強度分布が経時的に変化することを手段する。したがって、各光スポット1314a、1314b、1314cのグレースケールは、経時的に変化する。
【0168】
結果として得られる各光ビーム、したがって、結果として得られる各光ビームの第1、第2、および第3の部分について、グレースケールにおけるこの変動は、光検出器131によって電子信号に変換される。このようにして生成された電子信号の全てが、多次元電子信号31を形成する。光検出器131によって生成される多次元電子信号31の一例を
図13に示す。
【0169】
電子信号は、測定アーム133内に導かれた光ビームの、参照アーム132内に導かれた光ビームと比較した位相遅延を、分岐137ごとに表し、したがって、測定アーム133内の光学屈折率変化、すなわち、分析対象物2と一時的受容体14との間の相互作用を表す。したがって、光源130、光ガイド13、および光検出器131のおかげで、分析対象物2と受容体14との間の相互作用によって生成される光学屈折率変化を検出することができ、したがって、分析された流体中の分析対象物2の存在を検出することができる。
【0170】
図13は、結果として生じる光ビームに対応する電子信号S1、S2、S3を表す。したがって、結果として生じる光ビームの第1の部分の光スポット1314aのグレースケールの経時的な変化、結果として生じる光ビームの第2の部分の光スポット1314bのグレースケールの経時的な変化、および結果として生じる光ビームの第3の部分の光スポット1314cのグレースケールの経時的な変化をそれぞれ表す3つの曲線が観察される。
【0171】
時間Tbの間、既知の基準流体が測定チャンバ11に導入される。多次元電子信号31は、基準値を提示する。時間期間Tiの間、分析される流体は、測定チャンバ11内に導入される。次いで、多次元電子信号31の修正が観察される。この修正は、分析対象物2と受容体14との間の相互作用の特徴である。期間Tpの間、基準流体は、測定チャンバ内に再び導入される。次いで、多次元電子信号31は、その基準値に戻るまで修正される。この期間Tpは測定チャンバ11を一掃することを可能にし、受容体14と相互作用した分析対象物2が測定チャンバ11からも出ることを可能にする。期間Tpの終わりに、測定チャンバ11は分析されるべき新しい流体を受け取る準備ができており、次いで、受容体14は、分析されるべき新しい流体の分析対象物2を受け取る準備ができている。
【0172】
しかしながら、分析された流体の分析対象物2の一部が一時的な受容体14上に残ることが起こり得る。この場合、多次元電子信号は、その正確な基準値には戻らず、この基準値に近い値に戻る。この値が基準値からあまりにも遠い場合、一時的受容体14を変更しなければならない。センサ10を交換する必要がある。
【0173】
例えば、一時的受容体14は、周囲空気中で、任意の使用前に試験され得る。次いで、多次元電子信号31の初期基準値が得られる。期間Tp中に、多次元電子信号31の値が初期基準値と比較して10%未満の偏差を有する値をとる場合、一時的受容体14を維持することができ、センサ10を維持することができる。
【0174】
一方、時間Tpの間に、多次元電子信号31の値が初期基準値と比較して10%を超える偏差を有する値をとる場合、一時的な受容体14は変更されなければならず、センサ10または電子分析デバイス1は交換されなければならない。
【0175】
本発明による装置の上記および
図9および
図11に示される第1および第2の実施形態では、フォトニックチップ12が測定チャンバ11に面するその機能的に活性な上面に、分析対象物2と反応するように意図された光ガイド13および受容体14を提示する。測定チャンバ11を定義するキャップ15、ならびに吸入導管57aおよび排出導管57bによって横断される閉鎖要素60はフォトニックチップ12の上に、特にその活性上面の上に配置される。
【0176】
図18に示される本発明によるデバイスの変形実施形態によれば、測定チャンバ110を定義するキャップ150は、フォトニックチップ120の下に、特に、測定チャンバ110に面するその機能的に活性な下面121の下に配置される。
【0177】
有利には、閉鎖要素600は、また、フォトニックチップ120の下、特にその機能的に活性な下面121の下に配置されてもよい。
【0178】
表面121は、光ガイド130と、分析対象物200(
図18では見えない)と反応するように意図された受容体140とを含む。
【0179】
閉鎖要素600は、吸入導管570aおよび排出導管570bによって横断される下側ピース630と、上側ピース620とから構成される。下側ピース630と上側ピース620とは、
図18には示されていないヒンジ640によって互いに接続されている。
【0180】
本発明によるデバイスのこの変形実施形態は、測定チャンバ110内に存在する可能な汚れ700が重力のために、測定チャンバ110の底部に載っているという利点を提供する。この底部は、キャップ150のベースによって形成される。
【0181】
この有利な形態は汚染のリスクを制限し、これは、測定の信頼性及びフォトニックチップの寿命を延ばすために特に肯定的である。
【0182】
この
図18の参照番号はデバイスの最初の2つの実施形態の要素と等価な要素を示し、同じ参照番号に10を掛けたもので識別される。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【
図1】センサと、センサ支持体と、閉鎖要素と、トランスデューサとを備える、本発明の第1の実施形態による電子分析デバイスを表す。
【
図2】
図1の電子分析デバイスの長手方向平面に沿った断面図である。
【
図3】光ガイドを備える測定チャンバを備える、
図1に表される電子分析デバイスのセンサのフォトニックチップの上面図を表す。
【
図4】光ガイドの光入口の近くに位置する光ガイドの一部を表す、
図3のIVで参照される区域の拡大図を示す。
【
図5】参照アームおよび測定アームを有する光ガイドの分岐を表す、
図4においてVで示される区域の拡大図を示す。
【
図6】参照アームと、受容体が一体化された測定アームとを有する光ガイド分岐を概略的に示す。
【
図7】分析される受容体と分析対象物との間の反応を概略的に示す。
【
図8】光ガイドの光出口の一部を表す、
図3においてVIIIで示される区域の拡大図を示す。
【
図9】変換器の光源がセンサのキャップ上に配置された、長手方向平面に沿った、第1の実施形態に従って構成された
図1の電子分析デバイスの概略断面図を表す。
【
図10】光源を含む、
図9においてXで示される区域の拡大図を表す。
【
図11】変換器の光源が閉鎖要素上に配置された、第2の実施形態に従って構成された電子分析デバイスの
図9と同様の概略断面図を表す。
【
図12】変換器の光検出器によって形成される画像を表す。
【
図13】変換器によって形成される電気信号を示すグラフを表す。
【
図14】変換器の光検出器によって形成された画像上の、本考案による第3校正法を示す。
【
図15】変換器の光検出器によって形成される像に対する、本考案による第3校正法の変形例を示す。
【
図16】本考案による第1、第2及び第3校正方法に従って校正されていない、変換器の光検出器によって形成された画像を表す。
【
図17】本考案による第1、第2及び第3校正方法に従って校正された、変換器の光検出器によって形成された画像を表す。
【
図18】測定チャンバを画定するキャップがフォトニックチップの下方に配置された、変形実施形態に従って構成された電子分析デバイスの
図9または
図11と同様の概略断面図を表す。
【国際調査報告】